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2011-05-11 第177回国会 参議院 国民生活・経済・社会保障に関する調査会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十三年五月十一日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      加賀谷 健君     高橋 千秋君      金子 洋一君     平山  誠君  五月十日     辞任         補欠選任      高橋 千秋君     難波 奨二君  五月十一日     辞任         補欠選任      増子 輝彦君     姫井由美子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         山崎  力君     理 事                 梅村  聡君                 舟山 康江君                 関口 昌一君                 古川 俊治君                 山本 博司君                 寺田 典城君     委 員                 郡司  彰君                 佐藤 公治君                 谷  亮子君                 津田弥太郎君                 難波 奨二君                 姫井由美子君                 平山  誠君                 藤田 幸久君                 松井 孝治君                 柳澤 光美君                 石井 準一君                 岸  宏一君                 中原 八一君                 牧野たかお君                 松村 祥史君                三原じゅん子君                 竹谷とし子君    事務局側        第二特別調査室        長        近藤 俊之君    参考人        一橋大学経済研        究所准教授    小黒 一正君        東京大学社会科        学研究所教授   大沢 真理君        慶應義塾大学経        済学部教授    土居 丈朗君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活経済社会保障に関する調査  (「持続可能な経済社会社会保障在り方」  のうち、持続可能な社会保障給付負担の在  り方)について)     ─────────────
  2. 山崎力

    会長山崎力君) ただいまから国民生活経済社会保障に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十七日、金子洋一君及び加賀谷健君が委員辞任され、その補欠として平山誠君及び高橋千秋君が選任されました。  また、昨日、高橋千秋君が委員辞任され、その補欠として難波奨二君が選任されました。  また、本日、増子輝彦君が委員辞任され、その補欠として姫井由美子君が選任されました。     ─────────────
  3. 山崎力

    会長山崎力君) 国民生活経済社会保障に関する調査を議題とし、「持続可能な経済社会社会保障在り方」のうち、持続可能な社会保障給付負担在り方)について参考人方々から御意見を聴取いたします。  本日は、一橋大学経済研究所准教授小黒一正君、東京大学社会科学研究所教授大沢真理君及び慶應義塾大学経済学部教授土居丈朗君に御出席いただいております。  この際、参考人方々に一言御挨拶申し上げます。  御多用中のところ御出席いただいて、誠にありがとうございます。  本日は、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にさせていただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず小黒参考人大沢参考人土居参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただきました後、各委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず小黒参考人、お願いいたします。
  4. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 一橋大学小黒と申します。  本日は、名誉ある参議院の調査会にお呼びいただきまして、ありがとうございます。  ちょうだいしている時間が二十分ということでございますので、なるべく簡潔な形で説明させていただきたいと思います。よろしくお願いします。(資料映写)  お手元資料のまず三ページ目をめくっていただきたいんですけれども、この辺の話は、財政がいつぐらいに本当におかしくなるかという話があるところでございます。  例えば、今のままでは、この下のグラフにありますように、政府借金トレンドをそのまま横軸に引っ張っていきまして、あと政府借金を引き受ける原資であります家計金融資産、これ大体一千四百兆円ぐらいあるという形になっておりますが、これとの関係で、仮に一千四百兆円くらいの金融資産がなかなか伸びないという想定でいきますと、大体二〇二〇年ごろぐらいに政府借金家計貯蓄を食い潰してしまう可能性があるかもしれないというような議論があります。二〇二〇年という形ですと、今二〇一一年ですので、あと十年ぐらいしかないかもしれないというような話があります。  本日、御一緒に出席しております慶應大学土居教授ですと、今の議論は、政府借金グロスでありまして、あと家計資産グロスという形でありますけれども、次のスライドの四ページ目を見ていただきたいんですけれども、例えばネットという形で、政府借金を純負債、それから家計資産の方、ローンとかも持っておりますので、こういったものを差し引いた形で純資産という形に取ったものがお手元スライド左側にございます。このような形でいきますと、もっと厳しいような状況になっているというような指摘もございまして、三年以内に政府借金家計金融資産を超えてしまうかもしれないというような話もございます。  そういった状況の中で、今財政社会保障という形のいろいろ議論がされているものと存じますが、一つだけ指摘させていただきたいのは、このスライド七になります。  これは余り新聞等でも報じられることがないんですけれども、政府借金がかなり増えていく中で、このちょっと左側のかなり高いところから始まっている金利というのがありますけれども、例えば昭和五十年ぐらいは七・四%でありましたが、これがだんだんだんだん下がってきておりますので、政府借金が増えている一方で金利が下がってきていますので、利払い費というのは金利借金残高を掛けたものになります。  それのトレンドがどうなっているかといいますと、例えば昭和六十年ぐらいでありますと十兆円ぐらいでずっと横ばいで進んでいたものが、平成十年ぐらいから少し金利低下効果の方が大きくなりましたので利払い費が下がっているという状況になっておりました。ですけれども、平成十八年度ぐらいから逆にだんだん金利が一・四%という形でそれ以上下に下がらなくなっているような状況になっていますので、むしろ借金が増えることによって利払い費の方がもう増えてきてしまうというような状況に今なっているということ、ちょっと一点だけ御指摘させていただきたいと思います。  ここでは「金利低下ボーナスの終焉」という形で書いてありますけれども、要は借金が増えていく一方で金利低下がもう限界に来ていますので、むしろ借金がこれから増えていけばいくほど金利利払い費は増えていく構図になっているということであります。  そういった中で、金利が低い理由について幾つか御指摘させていただこうかと思ったんですけれども、時間が余りありませんのでちょっとスライドだけ見ていただきまして、多分、今回のメーンになる話だと思いますけれども、例えば社会保障財源を持ってくるときに、社会保障はどんどん膨脹していきますと、そのときに成長によってその財源を賄う、要するに増収効果によって財源を賄うというような話がありますけれども、それが難しいという話をちょっと強調させて説明させていただきたいと思います。  どういうことかといいますと、お手元スライドの十二ページになりますけれども、成長財政再建は難しいというふうに私は思っております。その理由としましては、このスライドの真ん中にありますように、公的債務の対GDP比変化というのは、基礎的財政収支の対GDP比、これは赤字になりますけれどもプライマリー赤字、それから今の公的債務金利成長率の差を掛けたもの、これによって決まるということになります。これは数学的に絶対正しい式でありますので、ここに数値を当てはめていけばその公的債務変化が分かるというものになります。  ここで重要なポイントとしましては、下に書いてありますように、金利成長率は大体同じ動きをするということがまず一点重要な話になります。それから、金利成長率を上回るリスクがあるということがもう一つ重要な話になりまして、ここまでは「二〇二〇年、日本が破綻する日」という本がありまして、私が執筆したものなんですけれども、その中で述べている内容になります。  あともう一つ重要なものがありまして、これは成長の壁というものがあります。これは私が付けた名前なんですけれども、経済学の文脈では収束という概念がありまして、コンバージェンスという概念があります。これはどういうものかといいますと、だんだん国が豊かになるに従って一人当たりGDPが増えていきます。その場合には一人当たりGDP成長率がだんだんどうしても低下していってしまうと。要するに、成熟するに従ってなかなかその成長が思うように、過去、日本高度成長期も例えば五パーとか七パーとか高い成長率をしていたわけですけれども、それが今や二パーとか一パーとか、かなり落ち込んできていると。ただ、そういったものは逆に経済が成熟してきた証拠であって、そういうものがあるとなかなか成長によって財政再建は難しいというようなことがあるということを、ちょっと分かりやすく説明させていただきたいと思います。  まず、一点目の金利成長率の推移ですけれども、これ、お手元スライドの十三ページにございますが、一九八〇年から二〇〇八年ぐらいまでのデータをプロットしてあります。太い、何ていうんですか、折れ線グラフ国債の利回りになっておりまして、細い実線が成長率になっております。  大ざっぱに見ていただけますと分かりますように、金利成長率は大体同じ動きをしております。ただ、例えば一九八〇年代ですと金利の方が前半は成長率よりも高いという状況になっておりましたが、例えばバブル期に入りました八五年以降は、バブルがはじける一九九〇年ぐらいまで成長率の方が高いという状況になっております。バブルが崩壊した後はどちらかというと金利の方が高いという状況になっておりますが、そうはいっても金利成長率は大体同じ動きをしているということになります。ただ、重要なのは、金利の方が成長率よりも高いような状況が時々発生しているということになります。  そうしますと、この十二ページのスライドにありますように、公的債務残高を減少させるときに何が重要かということなんですけれども、まずその第一項の基礎的財政収支、これを黒字化することによればその公的債務残高を減らすことができるというのがまず一点重要な話になりますけれども、ここを余り変化させないとした場合に、金利成長率の差がありますので、成長率を高める、例えば金利が一%であるときに成長率が四%でありますとか五%でありますとか、そういった形で高めてあげますと金利成長率の差はマイナスになりますので、それに今の公的債務残高が掛かって、その公的債務残高変化マイナスになるというふうな形で公的債務を減らすことができるというような可能性があるわけですけれども、今重要な指摘としましては、金利成長率は大体同じ動きをしていますので、どちらかというとこの第二項というのは余り利いてこないという可能性があるということになります。しかも、金利成長率では、どちらかというと金利の方が結構高くなってしまいますと、先ほどのこの式の第二項の方はむしろ増えていってプラスに加算されて公的債務残高がどんどん膨らんでいってしまうリスクもあるということになります。  じゃ、そのリスクがどれぐらいあるのかということですけれども、例えば日本アメリカフランスドイツイギリスとかイタリアとかを見ていただきますと、一プラスgと書いてありますのは、これは例えば成長率が五%ですと一・〇五という値を取りまして、金利が例えば三%ですと一・〇三という値を取ります。こういったものの、例えば日本の場合は一九六六年から二〇〇五年までの平均を取りますと〇・九八四五という形で一より小さい値を取っています。これ、何を意味しているかといいますと、平均的には成長率の方が高いような状況であったということを意味します。  ですけれども、例えば二番目の標準偏差を見ていただきたいんですけれども、この平均のところを中心にしてばらつきがある状態になっているときに、大体①引く②というレンジとそれから①プラス②という値のレンジのところに金利成長率がばらつく感じになるんですね。そのときには、①引く②というのは〇・九四二三という形、これ、当然一より小さいわけですけれども、①プラス②をしますと、日本もそうですけれども、アメリカフランスドイツイギリスイタリアと、これ全部一を超えてしまうということになります。一を超えてしまうということは、金利の方が高くなってしまうリスクがあるということになります。  今のような状況で、じゃ、金利成長は大体同じ動きをするという話だったんですけれども、仮に条件を緩めてあげて、例えば金利が一%のときに成長率が何%を取れば公的債務残高を縮小若しくは変化させないようにできるかということをちょっと考えてみたいと思います。  その場合に、例えば二〇一〇年度から二〇二〇年度まで、これは内閣府が今出しています二〇一〇年度の経済財政中長期試算がありますけれども、これで慎重シナリオですと大体プライマリー赤字が四%から六%で推移するという形になりますので、かなりいい状況で四%だったというふうに仮定してみます。そうしますと、この公的債務残高変化というところをゼロという数字を置きまして、基礎的財政収支のところを四%と置いてあげまして、金利を一%と入れます。成長率をXと入れてあげまして、今の公的債務残高、まあ一九〇%でありますとかそういった値を入れてあげますとXを解くことができます。その解いたXを求めてみますと大体三%という値が出てきます。これは金利が一%であるときに成長率が三%という値でしたので、かなりゆるゆるな条件になっています。  例えば、そういった状況の中で、じゃ、その三%という成長率が実際に達成可能であるかどうかということを見てみたいんですけれども、仮にその公的債務残高の改善に必要な実質成長率が三%以上であるとした場合には、実質成長率が一人当たり成長率にそれから人口成長率を加えたものですので、社人研等データを使ってあげまして二一〇〇年までの大ざっぱな人口成長率を求めてみますと、大体〇・七%で減っていくというふうな形が分かります。そうしますと、一人当たりでは大体実質GDPで三・七%以上の成長が必要ということになります。  じゃ、それが可能かどうかということを見てみたいんですけれども、横軸に一人当たりGDPを取ったもの、これはOECDデータをプロットしております。縦軸にその成長率を取っておりますが、ちょっとばらつきはあるんですけれども、ここに回帰線をかいてみますとお手元の図にありますような形になります。これは何を意味しているかといいますと、先ほど申し上げましたように、横軸、要するに一人当たり実質GDPが高くなればなるほど成長率が落ちるという状態を意味しています。  日本は、例えば七〇年代でありますと、ここに書いてありますように四%ぐらいの成長率だったわけですけれども、バブル期にはこの回帰線からかなり上に上がった部分に位置しておりまして、バブル崩壊後苦しんだ状況日本がありましたけれども、この辺になってこの回帰線より大分下にあるような状況になっております。現在のところを大体求めてみますと二%ぐらいの成長率であるだろうということが推測が付きます。二%ということは、先ほどの三・七%の成長率には優に及びませんので、やっぱりなかなか難しいような状況にあるということが数字的に読み取れると思います。  同じグラフを、これはかなりデータがありますので、横軸に一人当たり成長率を取りまして、日本だけではない、ほかのOECD諸国の何個ぐらい、例えば三%の成長率をしている機会が何回ぐらいありましたかという度数を取ってきたものになります。このヒストグラムで大体一人当たり実質GDPが三%以上になるのは四五%でありまして、先ほどは三・七%でしたので、例えば四%というレンジにしますと二八%しかこの中で該当しないということになります。  これは結局何を意味しているかといいますと、ちょっとこれは経済学ではないですけれども、野球でバッターボックスに立ったときに、十回スイングしたら三回しかホームランを打てないというような状態ホームランを打ち続けなきゃいけないという状況を意味しています。これは難しいということは当然お分かりだと思いますけれども、要は、だから経済成長だけで財政再建をすることは相当難しいということになりますので、結局何が重要かといいますと、この最初のドーマー条件の第一項、基礎的財政収支を黒字化するしかないということになります。  余り時間もありませんので、そういった状況の中で、じゃ、その財政赤字がどういう状況を生み出しているかということだけ簡単に説明させていただいて、その解決策を最後にちょっと述べさせていただきたいんですけれども、これ、財政赤字というのは、同じ個人がずっと生き続けている場合には基本的には余り問題がないんですけれども、世代交代があるとそうではないということをちょっと簡単に説明させていただきたいと思います。  余り難しい話をすると議論が混乱しますので、簡単にちょっと説明させていただきたい。下のお手元の図にありますように、公債発行時に、例えば今政府財政の支出は九十二兆円ぐらいあるわけですけれども、そこで例えば一億円の減税をするようなケースをちょっと考えていただきたいんですね。その場合に、家計が二つある、家計一と家計二がある場合に、五千万円ずつ減税すると。その場合に、家計一の方が少し豊かであったというふうに仮定しますと、家計一に国債を引き受けていただいて、それを財源にして五千万円ずつ減税するというケースを考えてください。  この場合は、家計一は五千万円もらって一億円出していますので、五千万円外に出ていっているんですね。他方で、家計二というのは五千万円もらっていますので、政府はこれはある種、導管にすぎないような状態になっていまして、その下の図にありますように、家計一から家計二に五千万円お金をあげているような状態になっています。  逆に、公債償還するときにどういう状態が発生するかといいますと、一億円家計一に返さなきゃいけませんので、例えば増税するような形でお金を引っ張ってこなければいけないという状況になります。その場合には、例えば家計一と家計二、均等に五千万円ずつ取ってくるとしますと、その二十ページのスライド右側の方の形になりまして、二人から五千万円ずつ取ってきて一億円家計一に返すという状況になります。この場合は、家計二は五千万円取られるだけになりまして、家計一は五千万円払うんですけれども、一億円入ってきますので五千万円入ってくるという状況になります。そうしますと、その下にありますように、家計二から家計一に五千万円お金を渡す状況になります。  ここで注意していただきたいのは、家計二と家計一が同じ状態、要するに同じ世代であった場合には家計二はどういうことになっているかといいますと、公債発行時に五千万円もらっているんですね。ですけれども、その家計二というのが今度公債償還時には五千万円取られている形になります。両方合わせたときに、ちょっと金利とか難しい話は除いて、そういったものがないとしますと、プラスマイナス・ゼロ、損得ゼロの状態になります。家計一も同じような状態で、一回五千万円貸すんですけれども、償還時には返ってきますので、損得ゼロという形になります。  ただ、重要なのは、ここで世代交代があるとそうではないということになりまして、例えば家計二と家計一のところで、右側左側でちょっと違うような感じになっていまして、家計一のところにプライムというダッシュが付いています、家計二もプライムというのが付いているんですけれども。これ、親世代子世代であった場合に、例えば家計二が五千万円もらってしまった場合に、それを将来増税されることを知らないで使ってしまったりすると、家計二の子供は今度五千万円取られ損になってしまうんですね。そういった状態が発生してしまうということになります。ただ、家計二の親が、家計二の、二ダッシュというか子供を、増税されることが分かっているときに例えば遺産みたいな形で五千万円残してあげればそうではなくて、家計二の子供損得ゼロという形を取ることができるということになります。  そのような状態が成立することをバロー理論では中立命題が成立するといいますけれども、そういった状態が成立するかどうかということが重要になってくるという形になります。  では、五千万円取っておくだけの本当に資産があるかということなんですけれども、先に、世代会計というものがありますので、ちょっと説明させていただきたいんですけれども、これは御存じのとおり、横軸に各世代を取りまして、一番右側が六十歳以上の世代方々で、一番左側が将来世代になっております。縦軸の青い部分政府から受ける便益、これは社会保障も含んでおりますけれども、年金とか医療とかそういったものの価値を全部プレゼントバリューという形で統合したもの、それから下側の方は税金とか払った保険料を現在価値に割り引いたものになっています。六十歳以上は、見ていただきますと、大体四千八百七十五万円生涯得をするという形になっておりますので、大体五千万円ぐらい得をしている形になっています。他方で、将来世代は五千万円損をするという形になっております。  先ほど五千万円という数字を出したのはこのためなんですけれども、じゃ六十歳以上の世代方々がその五千万円を持っているかということが重要になるんですが、これは平成二十一年度の家計金融行動に関する世論調査、これは中央銀行金融庁が合同でやっている金融広報委員会が出しているものですけれども、六十歳以上の方々では大体平均で一千六百七十七万円しか持っていない、他方で、その中央値はもっと低くて九百万円しか持っていないという形になっています。むしろ注目すべきは、貯蓄がない世帯が、六十歳代それから七十歳代以上の方々、もう大体二割ぐらいいるという答えになっていますので、先ほどのこの図でいうところの五千万円を子供世代に残すというような行動というのはほとんどできないということになります。したがって、財政赤字というのは世代間の問題に直結しているということになるということでございます。  その中で財政は、基本的には社会保障が毎年一兆円膨らんでいく中で、それをどうにかファイナンスをしなければいけないわけですけれども、じゃそれをどうすればいいかということなんですけれども、一番いいのは、先ほど言っている社会保障財源をファイナンスするためには、まず入ってくる保険料と出ていく給付があって、その間のところのお金が、公費という形で補填していますけれども、それが税金であったり場合によっては公債によっているわけですね。高齢化をしていけばいくほど、例えばこの下の図にありますように、第一期がまだ高齢化が今の状態、まだ超高齢化の前段階で、例えば二〇五五年とか二〇五〇年代、これからもっと高齢化していく状況になりますけれども、その状況で仮に社会保障財源を税金なり保険料なりという形でとじていくという形をしていく場合には、この図にありますように、だんだん保険料なり税金が上がっていくという形になります。  そうすると、先ほど言ったみたいに、世代間の格差が発生してしまうわけですけれども、一番簡単なのは、最初から保険料を一気に上げてしまう、若しくは税金みたいなものを上げてしまって、入ってくる保険料の方が出ていく社会保障給付よりも多くしてあげると、最初積立てができます。この積立金を使って第二期に、今度は保険料の方が出ていく給付よりも少なくなるわけですけれども、そこをファイナンスしてあげるような形を取りますと、大体各世代とも同じような形で負担を平準化できるという形が取れるということになります。
  5. 山崎力

    会長山崎力君) 小黒参考人、申し訳ございませんが、時間も来ておりますので、おまとめ願います。
  6. 小黒一正

    参考人小黒一正君) はい、分かりました。  今ので終了させていただきたいんですけれども、大体そういう形でやれば、財政で発生している世代間の問題もそうですし、まず成長では難しいということなので、保険料なり増税をすることによって解決できると。ただ、その場合に、ただ引き上げてしまうだけですと世代間の格差が発生してしまいますので、事前に積み立てることによって世代間の負担を平準化することができるというふうに思っております。
  7. 山崎力

    会長山崎力君) よろしゅうございますか。
  8. 小黒一正

    参考人小黒一正君) はい、済みません。失礼しました。
  9. 山崎力

    会長山崎力君) ありがとうございました。  次に、大沢参考人、お願いいたします。
  10. 大沢真理

    参考人大沢真理君) 大沢でございます。  本日はこのような機会を与えていただき、誠にありがとうございます。  お手元にフルサイズの、しかもカラーコピーの資料があるようでございますので、スライドは飛ばし飛ばし説明をしてまいりたいと存じます。(資料映写)  まず、お金の回りの悪さというのが日本経済の抱える問題の一つであるということは、昨年の年次経済財政報告への大臣端書きの中に述べられております。中身は、国債残高が、ただいまの小黒参考人のお話にもありましたように、非常に主要国で群を抜いて大きいとか、リーマン・ショック後のGDPの落ち込みが主要国で最大であったこと、それからデフレ、あるいは株価の問題です。  この経済財政報告は、日本の歳入力が弱いというところに着目をしております。そのことは、取りも直さず、財政による景気の自動安定化機能が極めて低いということでもあると着目しております。これらはマクロの問題ですが、個々人の日々の生活に影響を与えますし、またミクロの集成でもございます。  そこで、ミクロで幾つかの指標を取り出しますと、自殺死亡率、日本の数値は統計が取れる諸国の中で最高のレベルにございます。十三年連続で年間の自殺死亡数が三万人を超えているということは御案内のとおりですけれども、率で取っても諸国で最高のレベルにございます。それから、出生率は文字どおり世界最低レベルです。そして、貧困率は主要先進国の中で最高のレベルにございます。  これらは、ジェンダー、男女の性別の分業や役割期待と強く関連しております。出生率はもとより男女の分業や役割期待と関連しておりますが、自殺に関しても、その大多数は男性であるとはいえ、国際比較すると日本の自殺率の高さは女性においてこそ深刻でございます。後ろの方にグラフがございます。  また、国際比較をしますと、日本の貧困層、これ労働年齢人口の話でございますが、その顕著な特徴は、有業者が二人以上の世帯が占める割合が高い点にございます。つまり、共稼ぎをしても貧困から脱出しにくいというのが日本の労働年齢人口の貧困の特徴でございます。  以上は、雇用労働の条件や労働をめぐる社会政策と強く関連をしております。  これはGDPの落ち込み等でございまして、経済財政報告の図になります。それから、自動安定化機能についてのグラフですね。そして、とにかく歳入が低いということが同じ経済財政報告の中に掲げられております。これは財務省の資料で、税や社会保障負担の推移を見ております。  これは、自殺対策白書に掲示されております主要国の自殺死亡率でございます。総数、男性、女性というふうになっておりまして、横並びに見ていただきますと、日本の女性、黄色いグラフは、ここに掲げられている諸国の中では際立って高いと。もっと多くの国を比べますと、直近の順位は日本は女性では韓国に次いで自殺死亡率が高いと。男性では、ベラルーシ、リトアニアといった国が来まして、そして日本が来るというようなことでございます。  そういうことを、生きにくい国であると、日本はというふうに表現しても過言ではないと考えております。  貧困率について申し上げますと、OECD方式で可処分所得レベルの相対的貧困率を取りますと、主要国の中ではアメリカが最高で、日本が第二位になっております。相対的貧困率の定義はそこに掲げたとおりでございます。先ほど申しました労働年齢人口の相対的貧困層の構成は、日本では三九%が有業者二人以上世帯、有業者なしの世帯は一七・三%にすぎません。これをOECD平均と比べますと、ちょうど逆転しております。日本では共稼ぎでも貧困から脱却できないという論点の繰り返しになりますが、その背景には女性の稼得力が貧弱であるということにございます。  単身高齢女性の貧困率は、一九八〇年代から見れば改善しておりますけれども、依然として半数近くが貧困状態です。更に懸念されるのは、二十代単身女性の貧困率がこの間上昇してきたことでございます。  これらは分配の問題、雇用の非正規化に代表される雇用の劣化と、それから税・社会保障による再分配の問題が混ぜ合わさっているわけですけれども、実は、これから申しますように、日本の場合、より大きな問題は再分配にございます。  これは経済財政諮問会議のデータに出たもので、先ほど言いました黄色いところを見ていただきますと、日本では四割近くが有業者二人以上世帯であると。ほかの国とは非常に労働年齢の貧困層の状況が違うということを示しております。  それから、女性の稼得力ということでいえば、高学歴女性の労働力率が低いと。働けばかなり稼げるはずの人が日本では働いていないという問題と関連しております。  それから、景気が拡張しても貧困率は上昇してきたというのがこのデータに示されております。  もう少しスパンを長く取りますと、主要国で九七年以降実質賃金が低下したのは日本だけでございます。日本でのみデフレでございますから、実質賃金が低下しているというのは、名目賃金が更に大きく低下しているということを示しております。  それで、企業収益の伸びと雇用者所得の伸びというのを見ますと、二〇〇二年二月から七年十一月の六十九か月、戦後最長景気と言われる景気の間、雇用者の実質所得というのは全く伸びなかったと。これに対して、実質企業収益というのはそれなりに伸びたということが分かります。それから、名目で家計所得を見ますと、低所得層ほど景気拡張期にも家計所得が低下したことが明らかであります。  簡単に言うと、日本では企業から家計に潤いが波及しない構造にあるというのが、これも同じ経済財政報告の図が指摘しているところです。ピンクがマイナスになっているのは日本だけというか、ドイツもややその嫌いがありますけれども、相当日本の構造というのは特異であるということが分かります。  何で賃金が低下したかというのがこの後の三枚くらいのグラフに来ていますけれども、簡単に申しますと、パート比率が上昇したことで名目賃金が低下したと。雇用の非正規化というものが平均賃金の低下に大きく寄与をしたということでございます。  日本では雇用保護規制、正社員に対する雇用保護規制が強過ぎるという議論がしばしばございますので、このグラフではそれは大して強くないと、日本は真ん中辺に来ておりますし、非正規の労働市場の規制に関しては最も弱い方になった。九〇年代の規制緩和によって最も弱いグループに入っているということを示しております。  日本では低賃金の水準が低いと、それから制度的な最低賃金も主要国の中で最低のレベルにあるというのがこのOECDデータが示すところでございます。  そこで、この辺りから私が作ったグラフになりますけれども、OECD諸国の相対的貧困率とそれから貧困削減率と。この削減率というのは市場所得から可処分所得への貧困率の削減幅を市場所得の貧困率で割ったものでございまして、簡単に言うと、税制と社会保障制度はどの程度貧困を緩和しているかということを示すもので、黄色いグラフで表されております。労働年齢人口について、二〇〇〇年代半ばを取りますと、大抵のヨーロッパ諸国では政府による再分配が貧困率を半分以上削減して結果として一〇%以内、えんじ色のグラフですけれども、抑えています。  日本状況はかなり特異でございまして、市場所得での貧困率はほかの国よりもかなり低いと、まあ韓国に次いで低いと言った方がよろしいんでしょうか。ところが、可処分所得で見ると六番目に高い貧困率になってしまいます。ちなみに、市場所得での貧困率が低いといってもこれはバーチャルな話でございまして、人々が実際に経験する所得というのは可処分所得でございますから、市場所得での貧困率が低いからといって、それが何かの救いになるわけではございません。  それから、労働年齢世帯というのを二つのグループに分けて、成人が全員就業している世帯とそれからカップルの一人が就業している世帯と、えんじ色でございますね、に分けてみると。カップルの一人が就業しているというのは大多数において男性であるというふうに考えられますから、言葉を換えれば専業主婦世帯というふうになります。このように分けて貧困削減率を見ますと、日本の成人が全員就業している世帯、共稼ぎ世帯や一人親世帯、単身世帯では、税と社会保障制度による貧困削減率がマイナスになってしまいます。このような国はOECD諸国日本のみであることも同時にこのグラフに示されているとおりです。類型による差が小さいのはアングロサクソン諸国と韓国、スウェーデンやハンガリーでございます。  同じことが子供についても言えます。子供についても日本では税と社会保障制度による貧困削減率がマイナスです。これはOECDデータですけれども、経済財政諮問会議が作成されたデータでも同じことが八〇年代半ばから起こっていたということが分かります。  日本の再分配の特徴をまとめますと、税は軽く社会保険料は重いというふうにまとめることができます。  日本の税・社会保障負担、これは政府にとっては歳入でございますが、そのGDP比は国際的に見て軽いです。税が特に軽く、逆に社会保障負担ドイツやスウェーデンに次いで重いという構造になっております。この租税負担率は一九八九年にピークをしるした後、二〇〇三年まで一貫して低下いたしました。こういうふうに長期にわたって租税負担率が低下した国というのも、OECD諸国の中では日本だけでございます。その中身は個人所得税収が特に低下したというところにあります。  九〇年代前半はバブル景気の破綻と不景気に伴う自然減収でございましたが、九八年以降、構造改革の一環として法人と高所得者や資産家に軽減した結果、累進性が低下しております。他方で、社会保険料負担は労使折半ですが、その労働者負担分は日本では主要国でも最も重くなってきています。  社会保険料負担には逆進性がございます。特に、定額の部分がある国民年金第一号と国民健康保険の負担が低所得者に重くなっています。年金の第一号の過半というのは、今や四十歳未満の雇用者になっています。かつては五十歳以上の自営業者というイメージでございましたが、今では国民年金第一号というのは半分以上フリーターといいますか、そういう方々であるということに注意しなければなりません。  その上でこのグラフを見ていただきたいんですけれども、当初所得階級別に分けて、その税負担と社会保険料負担、当初所得に対する。ただし、この当初所得は等価所得という調整をしております。つまり、世帯のサイズについて調整をしているわけでございます。ピンクの線が社会保険料負担でございまして、明らかに逆進的になっています。それから、ブルーの方が税負担で、ここには間接税が含まれておりませんが、税負担といえどもさほど累進的なわけではないということを見て取っていただけると思います。  ちなみに、五十万円未満の階級のグラフが記入してございませんが、税負担は一一二・二%、社会保険料負担は一五五・四%で、これを記入しますとグラフが全部潰れてしまうので、そこはブランクになっております。  二〇〇一年と二〇〇七年で社会保険料負担だけを比べますと、このようにピンクの二〇〇一年から二〇〇七年ブルーにかけては、負担が上にせり上がると同時に、逆進性もやや強まっているというふうなことが見て取れるかと思います。  貧困率を抑えている諸国というのは一体何をやっているのかと。現金をばらまいているわけではございません。デンマーク、スウェーデン、チェコ、オーストリア、ノルウェー、フランスといった国の公的社会支出の内訳を見ますと、北欧では医療以外のサービス給付の比重が大きいということが明らかでございます。逆に言うと、貧困率を抑えることに失敗している国というのは公的社会支出に占める年金給付の比率というのが比較的高いと。ばらつきはございます。  ここでは、国が、全人口の相対的貧困率が低い順にデンマークからメキシコまで並んでおりまして、グラフは純公的社会支出に占める年金給付の比率を示しております。年金を偏重する国では労働年齢人口の貧困率が高いという相関が認められます。グラフは示してございません。年金を偏重すると高齢者は優遇されているのかといえばそうではなく、年金の最低保障がない国では高齢者の貧困率も高くなっております。  最後に、福祉の純負担についてお話しさせていただきます。  これは、公的支出を抑えても私的負担が増えれば国民にとって費用は重いということを示しています。一般に、北欧諸国は高福祉高負担、アングロサクソン諸国、特にアメリカのような国は低福祉だが低負担というふうに考えられておりますが、私的な社会支出、医療、保育、介護などの私的金銭負担というのを足し合わせますと、一番右側の水色のグラフになります。アメリカの水色のグラフをずっと左側にたどっていただきますと、スウェーデンと大差はないと。  しかし、このような福祉の負担によって誰が助かっているのかという中身は、福祉が私的に負担される場合と公的に負担される場合では異なってくると。このことが貧困率の各国の違いというようなことにも反映してくるというふうに考えられます。  日本を見ていただきますと、韓国と並んで、大陸西欧諸国とアングロサクソン諸国の間くらいのパターンであることが認められます。日本の純合計社会支出を見ていただきますと、ノルウェーとほとんど変わらないということが分かります。日本の私的な社会支出の多くは私的な年金でございます。韓国は、黄色い部分、これは私的な医療費負担になっております。  日本とノルウェーは純合計社会支出という意味では変わりませんが、日本の貧困率がOECD諸国で労働年齢人口については六番目に高いけれども、ノルウェーというのは非常に貧困率を低く抑えることに成功しているわけで、同じ社会支出でこのパフォーマンスの違いは何なのかということが問われなければならない。そういう意味で、日本の社会支出というのは決して効率的ではないというふうに言えるかと思います。  社会保障・税一体改革の課題をまとめさせていただきます。  第一は、歳入を増し累進性を強める必要があります。ここには税制の役割が大きいと考えています。そのことがショックに対してタフな財政経済をつくっていくことにも資すると考えます。肝心なのは、それで福祉の純負担が増えるのではありません。私的に負担されている社会支出が税や社会保険料負担へと再転換され、リスクが分かち合われるという意味で、生活と社会保障制度の両方の持続可能性が増すと考えております。社会保険料負担の逆進性の解消は急務でございます。  給付面では、年金給付の最低限を確保しつつ、公的社会支出の年金偏重を改めていく必要があります。社会サービスを拡充し、人々が貧困に陥るあるいは高齢期になって働くことが無理になる、その前に元気で働ける間に働きに出られる条件を各種の社会サービスで強めるということが役に立つと思います。それが、貧困や少子化や自殺といった社会問題と有効かつ効率的に闘う方向でもあると考えます。  〇九年の十一月にOECDの事務総長が来日されまして大変興味深いコメントを出しております。日本成長戦略にとっては女性の就業率アップが鍵であるというふうにコメントされました。なぜ女性の就業率がアップしないかということの障害として、ワーク・ライフ・バランスが困難である、雇用が非正規化している、年功賃金制度が非常に強固である、それから税・社会保障制度の中に女性の就業を阻害する面があるといったことを指摘されました。  これが最後のスライドになります。  リーマン・ショック後の金融経済危機から何年かたちましたけれども、決して原因が取り除かれたわけではございません。グローバル経済の中には断層線が潜んでおり、それが次の金融危機を引き起こすおそれは非常に高いということが指摘されております。  この断層線の一つとして、いわゆるグローバル・インバランス、天文学的規模の貿易不均衡がございます。その原因は、アメリカでの過剰消費、それから日独や中国といった輸出国の過少消費があって、それは言わば構造プレートが衝突しているようなものだというふうに指摘されています。ところが、アメリカの過剰消費の最大の項目は実は医療費にございます。それから、日本での過少消費は、先ほど申し上げました企業から家計に波及しない構造の中で格差と貧困が拡大してきたことと関連していると考えられます。  OECD諸国で日米の貧困率がワーストクラスにありますが、その原因は非常に異なっているわけです。日本の問題は、税と社会保障による逆再分配が大きいと考えられます。米国の問題は分配にむしろあり、それから公的社会支出が低過ぎることにあるのではないかと。これは仮説の段階とも言えますが、当面の仮説的な結論とさせていただきます。  以上でございます。
  11. 山崎力

    会長山崎力君) どうもありがとうございました。  続きまして、最後に土居参考人、お願いいたします。
  12. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 慶應義塾大学の土居でございます。  今日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  お手元にあります「大震災後の社会保障・税一体改革 財源を中心に」ということでお話をさせていただきたいと思います。(資料映写)  御承知のように、非常に大きな被害をもたらしました東日本大震災ですが、私は、この震災復興、これは非常に重要で、それを進めていかなければならないこれからの時期においても、なお社会保障・税の一体改革を同時並行で進めていくべきであり、それがむしろ震災復興、さらには被災者の方々にもためになるというふうに思っております。特に、その大きな根拠は、被災地において多くの方が高齢者でありまして、高齢化が被災地で進んでいるということですから、ここに社会保障を充実させるということは被災者のためにもなるということになります。  もちろん、そのためには財源の裏付けというものは当然必要となってまいりますので、ここではやはり社会保障と税の一体改革というものも震災復興と同時並行で行うべきであると。そんなことは本当にできるのかという、そういう見方もあるかもしれませんが、私はこれは実現可能であるというふうに思っております。その実現可能性についてはまた後で申し上げますけれども、それが実現可能であるならば、むしろそれを積極的に同時並行で進行をさせていくべきではないかというふうに思っております。  震災前の段階で既に我が国の財政状況は、社会保障が高齢化に伴って増えていくということが分かっておりましたので、もし社会保障給付の増大に伴ってきちんと税や社会保険料負担を増やしていかなければどんどん財政赤字が膨らんでいくということが予測されておりました。  スライドの四枚目でありますけれども、ここの赤い線、これはイメージでありますが、足下では政府債務残高GDP比はGDPの二倍、二〇〇%ぐらいに達していると言われておりますが、これが二二〇%、二五〇%と、さらには二〇三〇年になると三〇〇%になるかもしれないなんというような、財源の裏付けがなければそれぐらいの借金の累増というものが懸念されておったわけでありますが、震災前からも、社会保障と税の改革を進めることで、社会保障財源をきちんと確保するとともに財政健全化にも資するという、一挙両得と言えるようなプランというものはできるのではないかというふうに思っています。  もちろん、増税をする前にやるべきことがあるだろうというのは、それはもちろんそのとおりであります。無駄な支出を削減する、それから、できるだけ経済成長を促して税収がより多く入るようにするということはもちろん期待したいところであります。  しかし、今の社会保障の仕組みに関して言えば、我が国の社会保障は残念ながらその財源の多くを赤字国債で賄っております。もちろん赤字国債は色は付いていないわけですけれども、赤字国債の発行額を見れば、社会保障の全てを税で賄い切れていないという、社会保障は税の財源で賄うべきところを税で賄っていないということであります。  そういうことを考えますと、社会保障給付というのは、基本的に今を生きる者が恩恵を受ける。それが財源を将来に先送りして、子や孫のために、今の社会保障の恩恵を受けるために借金をツケ回しているということでは、それは将来世代に対して我々は責任を果たしていないのではないかというふうに思うわけであります。ですから、今の社会保障給付のための財源は今を生きる世代の者どもで分かち合っていくということが求められる。それはひいては社会保障給付のために借金を増やすというようなことにはしないようにするということになるわけで、それはひいては借金の累増を食い止めるということにつながっていくということであります。  もちろん、増税をするという名目を借金を増やさないようにするというようなことでは、国民の理解はなかなか得られないということはあろうと思います。ですから、最初の政治のメッセージとしては、社会保障財源をきちんと今の世代で賄うということを、責任を果たすということで賄っていくということが第一義的にあって、それがひいては社会保障給付が十分に財源が賄えていないということで借金が膨らむというようなことを防ぐということを通じて将来世代に対しても責任を果たしていくということにつながってくるんだろうというふうに思います。  その上に、悩ましい問題として、震災復興のための財政支出の財源をどうするか。恐らくある程度は一時的に国債発行をせざるを得ないとは思いますが、その震災復興のための財政支出の財源として発行された国債を、ずっと償還を先送りすると、返済を先送りするということになりますと、ただでさえ震災前から借金が増えていくということが予想されていた上に更に震災復興のための国債発行でもっと借金が増えてしまうということになりますと、二〇二〇年代、二〇三〇年代にもっと借金返済のための負担が増えてしまうということになります。  二〇二〇年代というのは、御承知のように団塊の世代が七十五歳以上になるという年代であります。そういたしますと、今よりも医療費や介護、これのお金がもっと掛かることは必至であります。もちろん必要なお金はきちんと手当てするべきで、増やさないようにするということに躍起になるという必要はないと思いますが、二〇二〇年代に団塊の世代方々が七十五歳以上になられるということであるならば、その負担をきちんと二〇二〇年代にしなければならないと。その上に、二〇二〇年代に震災復興のための借金、この返済がまだ終わっていないということになると更にその負担が上乗せされてしまうということになりますので、やはり二〇二〇年代以降のもっと本格化する高齢化の前には震災復興もきちんと成し遂げておき、そして、その二〇二〇年代以降の本格的な高齢化に備えた制度改革を今すぐ着手していくべきであろうというふうに思います。  もちろん、震災復興のための社会保障に関する優遇措置というのは、これは復興初期においてはあり得ると思います。被災者の医療費の窓口負担の減免とかいろいろあると思いますが、しかし、例えば一つ、この窓口負担の減免というものを、社会保障の充実だということで復興が終わってもなおこれを全国展開して一般化するということで果たして本当に良いのだろうかということは私は一つ懸念をしておりまして、一九七〇年代にあった老人医療費無料化の失敗というものの繰り返しを避けるためにも、やはり、無料化すればそれでいいと、優遇したことになると、社会保障を充実したことになるという話ではなくて、本格的に高齢化する二〇二〇年代までには、先ほど大沢参考人もおっしゃったような、同じお金を投じるとしても、そのお金が有効に社会保障で使われるようにきちんと制度を整えていくというような取組の方がむしろこの震災復興期においても重要であろうというふうに思います。  少し震災の話から離れまして、我が国の税制を取り巻く環境についてお話しさせていただきたいと思います。  私の見方は、我が国の税制というのはもちろん先進国として胸を張れるだけの徴税システムを持っているわけでありますが、残念ながら、税の取り方としていろいろ今、日本が直面している課題をうまくこなし切れていないというものになっているのではないかというふうに思います。  私は、例えばその税で、税制に関連する四つの日本の重要課題、少子高齢化、グローバル化への対応、財政健全化に向けた税収確保、それから地方分権化というものがありますけれども、この四つの課題については、今の税制のままだと十分にはこれにこたえられていないと思います。  例えば、後で御紹介するように所得税。これは実は勤労世代に集中的に負担が及んでいて、高齢世代はほとんど所得税を払わないということになっておりますので、高齢者には所得税は余り負担を強いないけれども、若い世代には所得税の負担を強いるという税制になっているという点で世代間格差、これは小黒参考人先ほど紹介されましたような世代間格差が税制ではなかなか是正できないという現状であります。  それから、グローバル化への対応ということでいえば、中国、韓国、アジア諸国ではかなり低い企業の税負担というものがあるわけですが、我が国はアメリカと並んで法人税率が高いという状況がある。  それから、財政健全化は、先ほど触れましたように借金の累増が止まらないという意味で十分な税収が確保できていない。  さらには、今日は余り重立って触れませんが、地方分権を進めるならば農村部でも十分な税収が入るような税収構造を持たなければならないわけですが、沖縄と東京の税収格差というのは、東京の一人当たりの税収というのは沖縄の一人当たり税収の三倍という、この格差が地域間であるというような地方税制になっているので、こういったものはそれぞれ一つ一つ解決していかなければならないという意味においても、社会保障財源を確保するということと同時に、こういった課題に備えるためにも税制改革を抜本的に行っていくということは急務の課題であろうというふうに思います。  その中で、残念ながら今まで我が国は支出に見合うだけの税収を確保してこなかったと、それだけ借金を膨らましてきたということなので、減税をどしどし行うような税制抜本改革というのは残念ながら今後できません。むしろ、増税を国民にお願いしなければならないという方向に変えていくということしか方向は残されていないわけですが、増税をすれば経済成長を阻害するではないかということは当然懸念されます。  ですから、私が思うのは、ある程度の税収確保のためには税負担を国民にお願いしなければならないのはやむを得ないにしても、できるだけ経済成長率を下げないようにするような税の取り方というのはないのだろうかということは、一つの税制改革の焦点として検討する重要な一つのポイントであろうというふうに思っています。  結論から申しますと、実は法人税、所得税、消費税、それぞれ多くの税収が上がっている税目がありますが、重立った税収が上がる税目の中で経済成長率をできるだけ阻害しないようにするということ、この一点に関していえば、実は所得税や法人税よりも消費税の方が経済成長率を下げないで済む税目であります。  例えば、同じ十兆円の税収を得るにしても、所得税や法人税よりもそれを消費税で賄った方が経済成長率は下がらないで済むと。もちろん、増税すればするほど経済成長に悪い影響を与えるという可能性はあるわけですが、得なければならない税収は、確保しなければならない税収はやむを得ず国民に御負担をお願いしなければならないわけで、それを前提としたならば、どの税で取るならまだましかという観点でいえば、消費税の方がまだましだろうというふうに思います。その根拠は九枚目のスライドに研究を紹介しております。  それから、社会保障財源として消費税を考える上で、幾つか利点があるというふうに思っております。  それは、まず一つは、消費税というのは景気の変動に左右されにくい税収ということで、景気が良くても悪くてもある程度皆さん消費されるということで、社会保障給付というのは、景気が良ければ減らして景気が悪ければ増えるというほど景気によって年金の給付が増えたり減ったりするというものではありません。ですから、社会保障給付のための財源というのはできるだけ景気の変動を受けにくいような形で収入が入ってくるものにした方が望ましいという、そういう一つの性質があろうかと思いますが、これは所得税や法人税よりも消費税の方がそれを担える資格があるということであります。  それからもう一つは、後で詳しく申し上げますが、なかなか所得税だと高齢者から御負担をお願いするというのが難しいと。もちろん、高齢者の方々は既に年金保険料を中心として若いときに既に御負担をなさっておられて、更に高齢者になってからもまた税という形で負担を求められるのかという御不満は聞こえてくるわけでありますが、あいにく、先ほど小黒参考人が御紹介になったように、残念ながら我が国の社会保障をめぐる受益と負担世代間格差があります。今の若い世代は今の高齢者よりも負担の割には給付が受けられないという、そういう状況がありますので、やはりここは世代を超えて負担を分かち合っていただくということが必要なのではないかというふうに思います。  その意味においても、社会保険料や所得税だと勤労世代負担が集中してしまうという問題が残ってしまいますので、消費税によって高齢者の方々にも御負担をお願いすると。もちろん、そのためには年金給付の物価スライドには工夫が必要ですけれども、消費税をお願いすることで高齢者の方々にも御負担をお願いして、世代間格差をできるだけ広げないようにするという点も消費税というものは利点としてあると思います。  所得税がなぜ高齢者の方々から余り御負担をいただけないものなのかといいますと、典型的にいえば所得税制の中に含まれる公的年金等控除と言われるものであります。高齢者の方で年金給付をたくさん受けておられる方がおられるわけですが、そのほとんどの部分は課税対象所得から外れる形で控除されます。したがって、このスライドの十二枚目にありますように、七十歳以上の世帯で半分以上の、五〇%を超える世帯が所得税非課税ということであります。それに比べて、四十代、五十代の世帯主の世帯では年間に五十万円以上の所得税を納めておられるという方々が相当数いらっしゃると。  さらには、社会保険料ももっと顕著でありまして、年間に八十万円以上の社会保険料を納めておられる四十代、五十代の方々がその世代の中の半数おられるわけですが、高齢者の方々は五万円から十万円といったところがより多い階層ということになっております。  老いも若きも消費が多ければ消費税を多く納めるということですので、これには世代間で特に顕著な差異はないということでありますので、そういう意味では、今の日本の所得税制を前提とすれば、若い世代に集中して所得税や社会保険料負担が及んでいるということになっているという点はこれから改善が必要なのではないかというふうに思います。  それから、実は残念ながら消費税、今五%でありますが、その五%の消費税だけでは十分に今後の社会保障給付財源を賄い切れないということを十九枚目のスライドでお示しをしております。  消費税は、御承知のように、全てが国庫に入るわけではありません。税率五%分のうちの一%分は地方消費税となり、四%分のうちの二九・五%は地方交付税の財源となっておりまして、四%の国税の消費税のうちの七〇・五%分、税率に換算いたしますと二・八二%分が消費税としてこれを国のための支出に充てることができるということになります。したがって、この十九枚目のスライドの水色のグラフで「消費税収(国分)」と書いているのは、税率に直しますと二・八二%分の消費税収ということで示しております。  御承知のように、今も予算総則では高齢者三経費を消費税の財源を充てるという形で示されておりますけれども、昨年度の予算でいいますと、高齢者三経費は十六・六兆円あったわけですが、二・八二%分の消費税は六・八兆円ということで九・八兆円の財源不足と。もちろんこれは、残りは所得税とか法人税とか赤字国債とか様々な、色は付いていないけれどもその収入が充てられているということで、消費税だけでは十分に賄い切れていない。これが二〇二〇年になりますと、更に高齢化によって給付が拡大するとともに、景気が良くなったとしてもこのすき間が埋まらないというような状況。つまり、経済成長で税収が増えるというスピードよりも、高齢化によって社会保障給付のために投入しなければならない税財源が増えると、そっちの方がスピードが速いということを意図しているわけです。そういう意味では、しかるべき時期にきちんと財源を確保できるような増税が求められると思います。  残り時間僅かですので簡単に残りの論点を触れさせていただきたいと思いますが、消費税は逆進的だと、低所得者により重い負担を課すのではないかという話がありますが、逆進的というのはある一年、単年度を取ったときには確かにそうであります。高齢者は貯金をする、その貯金をした分には消費税は掛からないので、消費した分だけしか掛からないので、例えば低所得の方が百万円稼いで百万円を消費すればその分の五%の消費税が掛かるということに対して、高所得の方で、四百万円稼いだけれども二百万円しか消費しなかった場合にはその分の消費税しか払わなくて済むので負担率は二・五%になるというようなことで、これを称して、より高所得の人ほど税負担が低いということで逆進的だということですが、実は高所得の方も、生きている間にその貯金を取り崩して消費するということになりますと、消費したときに消費税を負担するということになりますので、実は消費税というのは所得に対して比例的な税だと言うべきであります。ただし、消費税は累進的な税ではない。つまり、高所得の人により多く負担を求めるというものに適したものではありません。  ですから、その意味においては、もし累進性を担保するべきだということであるならば、やはり所得税でその累進性を担保すると。ただし、所得税ばかりであると、勤労世代負担を求めたり、さらには経済成長に悪化の影響を与えたりということになりますので、そのバランス、消費税で取るということと所得税で取るということとのこのバランスが重要なのではないかというふうに考えております。  それから、あと最後に一点だけ申し上げたいんですが、社会保障に関連して、社会保障財源は御承知のように税と保険料の二つから重立った収入を得ておりますが、保険料をこれ以上引き上げたくないということから、国庫負担をもっと増やすべきではないかという議論があります。ただ、私が思うのは、どうも国庫負担というと、それがスケープゴートになってはいないのかと。国庫負担といえども国の税で賄うべき財源というものでありますので、国民が広く負担を分かち合うということであります。  確かに、目先の保険料を上げたくないということで、それを税負担保険料が上がらないように措置してもらえないかという意見はあります。ただ、保険料が上がらないからそのほかに何ら負担増はないと、あたかも打ち出の小づちであるかのように、保険料を引き上げないで国庫負担を増やすということで物事が解決するかというと、それはそうではない。国庫負担を増やすということは、すなわち、国税による負担を増やさない限りこの国庫負担をきちんと賄うことはできないという点には留意すべきなのではないかというふうに思っております。  以上です。どうもありがとうございました。
  13. 山崎力

    会長山崎力君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を待って着席のままで御発言くださるようお願いいたします。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるよう御協力のほどよろしくお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方の挙手をお願いいたします。  松井孝治君。
  14. 松井孝治

    ○松井孝治君 民主党の松井孝治と申します。三人の参考人の先生方、大変ありがとうございました。貴重なお話を聞かせていただきました。  最初に、最初にというか、一括でそれぞれお答えをいただきたいんですが、小黒先生の方が恐らくこれからもう少し説明をされようとしていたところでちょっと時間切れになってしまったと思うので、小黒先生の方からは、この世代間公平法でしたですか、御提案をほかの論文などでもされていますが、事前積立ての話をされていて、世代間公平基本法とかあるいは世代間公平委員会という御提案についての御説明まで伺う時間がなかったものですから、これがどういう趣旨であるのか。あるいは、そういうまさにこの社会保障予算のマクロフレームをどうするかというのは、ある意味では国政の経済政策、社会政策の根幹であろうと思うんですが、そこを三条委員会的独立委員会に委ねるということが議会制民主主義の中でどういう意味合いを持つのか。その辺りも含めて、それは国会がだらしないという一言に尽きるのかもしれませんが、それをどういう御見識の下に御提案をされているのかということについて補足的に御説明いただければと思います。それが小黒先生に固有の御質問です。  あとは、三先生に共通の御質問をさせていただきたいんですが、最初に小黒先生の方から分かりやすいお話があったように、このドーマー条件というようなものを満たすために、ある意味ではこれから成長率というものを高めていかなければいけない。この金利成長率の論争というのは以前の、あれは小泉内閣のころからずっとあった議論だと思います。そういう意味で、私は成長率というのは非常に大事ではあると思うんですが、せっかくのこの調査会で、国民生活も入った調査会ですし、今日は大沢参考人もいらっしゃるので、そもそも我々が目的とするのは、もちろん財政が破綻しないというのも我々が経済政策上、最も重要な政策目標の一つであろうと思うんです。そういう意味において成長率というのも非常に重要ですし、豊かさというものを考える上でも成長率というのは大事だと思うんですが、その成長率というものの意味合いというのも時代によって変わってきていると思うんです。  特に、大沢参考人におかれては、貧困率というような概念、これは相対的貧困率ですから、いわゆる貧困という概念とはちょっと違うのかもしれませんが、その貧困率をどうやって低めていくかということを一つの大きな社会目標にしていくべきではないかという御提言をされているようにも拝聴いたしましたけれども、例えば、これからどうやって成長率を高めていくのか、その成長率を高めるというのは何のために成長率を高めるのか。あるいは、貧困率を削減することとどういう意味合いがあるのか。  この調査会の前身の調査会で、豊かさというものをどう高めていくのかというようなことにも関連するわけですが、三先生には、共通して、我々が目標として、大きな目標でいうと、いかに豊かで持続的で幸福度の高い社会をつくっていくか。そのために今、日本にとってどのような社会保障制度をどのような負担、それは税による負担なのか、税目はどういう税目なのか、あるいは保険料をどの程度、これからどういう形の保険料制度をつくっていくのか。全体、大きな豊かさ、あるいは幸福度の高い社会をつくっていくために今何に力点を置くべきなのか。そのときに、それぞれのより大きな目標の下の小さな、あるいは中程度の目標の中の、トレードオフというのもあると思うんですが、そこについてどこに力点を置くべきではないかということについて、それぞれ御専門の立場の視点からもう少し補足的に御説明いただければと思います。
  15. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 松井先生、ありがとうございます。  御質問がありました件についても簡潔にお答えさせていただきたいんですけれども、まずこのグラフを見ていただきたいんですが、これはある海外の有名な学者が作っているデータでございまして、ある一定の評価によって各国の財政ルールがどれぐらい厳格であるかというものを総合評価して、それをポイントにして評価したものを横軸にプロットしてあります。それから、縦軸の方には各国の公的債務をプロットしたものになっておりまして、ちょっと傾斜は緩いんですけれども、一目で分かることは、財政ルールが厳しい国々の方が比較的その公的債務残高、対GDP比は低いというような形になっている。これは、日本を見ていただきますと一番その財政ルールの指標としては弱いようなグループに属しておりまして、その中でもトレンド線からかなり乖離した部分公的債務残高が位置しているという形になっております。  御承知のとおり、イギリス等ではゴールデンルールでありますとか、いろいろマクロフレームをきちんとすることによって、一番分かりやすく言いますと、まず経済成長率を予測して、そこからまた、あと金利が出てくると、その金利成長率の差から、あとプライマリーバランスの経路等を決めて公的債務残高にキャップを掛けた形で政府の歳出の経路を出すというような形で運営をしているというのは御承知のとおりだと思いますけれども、そういった財政ルールをきちんとすることによってイギリスはこれまで財政がおかしくなるようなことがなく、かつ経済成長も促進するというようないろいろな経済財政運営をしてきたというような経緯があるところでございます。  ただ、これは直近の、民主党政権になられましてから作られた、御承知と思いますけれども、「世界経済の潮流」というものが内閣府から出ておりますけれども、その中で指摘されているものでございますが、要は硬直的なそういう財政ルールだけでは、経済成長を伸ばしつつ、かつ財政も健全な形に持っていくことがなかなか難しいというような例があると。例えば、リーマン・ショックみたいなものがありますと、なかなか余り硬直的な財政ルールをしてしまうと経済に対して機動的な対応ができないと。  他方で、余り緩めてしまうと、これは日本がそうなっているかどうかは分かりません、これは私の仮説なんですけれども、高齢化していきますと、選挙の年齢がだんだん、今四十三歳ぐらいか四十四歳ぐらいだと思いますけれども、選挙に行かれる方々中央値というか年齢が大体四十四歳ぐらいになってきていると。そうすると、これは民主主義のある意味での欠陥と言っていいのか分かりませんけれども、どうしてもいろんな選挙民の方々意見を伺わなければいけませんので、その選挙民の方々につらい申出をすると。要するに、例えば社会保障改革をして歳出をカットするなり、若しくは先ほど土居先生が申し上げられましたように消費税を引き上げるという形で社会保障財源を持ってくるという形を取ると。  いずれにしても、例えばどこかの世代が損をしたりどこかの世代が得をしたりするという形になってきているわけですけれども、一番やりやすいのは、社会保障給付の方はなるべく増やしてあげて、むしろ削らないで、増税はしないでという形を取るというのが一番いいわけですけれども、そうすると今度、財政赤字が膨らんでしまって、最終的にはどこかで財政がおかしくなって、その負担がもしかすると十年後とか若しくはもうちょっと先の、日本経済か分かりませんけれども、そのときに何らかの形でショックを受けるというような形になってしまうと。  そういったものをやっぱり避ける一つの手段として提言させていただいているのはこの世代間公平基本法というものなんですけれども、これはイメージとしましてはいろいろあると思うんですが、日本銀行のようにある程度独立性が強い機関としまして、基本的には財政は議会で決めていただくことのお話になっておりますから、社会保障財源の、例えばイメージとしまして給付水準みたいなものを仮に議会の方々の方で決めていただくという形に取りましたら、その裏側の財源として例えば保険料なり消費税みたいなものも同時に決めておいていただくと、あとは高齢化のスピードによって大体どれぐらいの負担をしなければいけないかというのが分かりますので、その専門機関が世代間公平が実現できるような形であとは税率を決定して、それをもう一回議会に掛けさせていただいて決定するというような仕組みを取ってはどうかということを提言しているもので、逆に、その社会保障財源の方を議会の方々の法律内で決めていただくということになりますと、逆に世代間格差が悪化しないような、若しくは世代間格差が改善するような形で給付水準の方を政府の方が決定するというようなルールにしてはどうかということをここで提言させていただいています。  それと同時に、余りお話しすると長くなってしまうので難しいんですけれども、土居先生が、社会保障財源が膨らんでいく中でいろいろ政府としてまだ無駄な部分があるので、そこは当然効率化していかなければいけないという話がございましたが、そこは全くおっしゃるとおりでございますけれども、ただ、一つ気を付けなければいけないのは、例えば公共事業でありますとか、例えば羽田の国際化みたいなものがありましたけれども、もしかすると、追加的な公共投資をもうちょっと都市部にした場合に、より高い経済成長ができるような場合もあるようなケースがあるとした場合、その財源を削ってしまいますと将来の成長率が落ちてしまう可能性もあると。  そうすると、まず一つは、社会保障財源を賄うために今公債を発行していて、それでは将来世代へのツケの先送りになっているわけでございますが、それと同時に、今度は社会保障財源を賄うためにその必要な将来への投資の部分を削ってしまいますと、それも将来の成長率を落としてしまうような可能性があると。そうすると、それが二重のツケの先送りという形で私呼ばせていただいているんですけれども、そういう形を取らないようにするためには、社会保障財源とそれ以外の財源をきちんと区分するというようなことが必要なんではないかというふうに思っております。そこをきちんと監督するための機関として……
  16. 山崎力

    会長山崎力君) 簡潔にお願いいたします。
  17. 小黒一正

    参考人小黒一正君) はい。  機関として世代間公平委員会みたいなものをつくって、そこで財源負担なり給付の経路を決めていくような形を取ってはどうかということを提言させていただいているものでございます。これは土居先生のスライドの方にもたしか、ちょっと土居先生は御説明されなかったようですけれども、土居先生の十八ページのスライドにも同じようなことが書いてありますので、多分同じ御意見なのではないかというふうに思っております。  済みません、失礼しました。
  18. 大沢真理

    参考人大沢真理君) 松井先生の御質問ですけれども、私は、成長しなくてもいいとは考えてはおりませんけれども、やっぱり成長はその質が非常に重要であるというふうに考えておりまして、そのためもあって、先ほど通商白書のグラフ経済財政報告等のグラフを引用させていただいたものでございます。  日本は、かつての経済成長では企業も潤ったけれども、働く普通の人々もかなり潤ってきて、豊かさというのを実感できる成長であったと言えるかと思います。しかし、九〇年代の半ば以降、とりわけ二〇〇〇年代になっての経済成長というのは非常にアンバランスなものであって、これは私が申し上げているだけでなく、例えば、既に二〇〇八年の通商白書などは非常にアンバランスであると。一部の製造業大手の企業というのはキャッシュフローも潤沢だし、株主への配当も、それから経営者への報酬というのも高いけれども、中小企業は非常に潤っていない。これは結局、雇用者に所得が回らないがために雇用者の普通の消費需要にこたえているような中小企業にとっては非常に厳しい経済であったと。  このアンバランスさというのが金融経済危機に対しても一定の原因となったということを考えれば、これは日本国民の生活や豊かさというだけの問題ではない。やはり、日本アメリカという国は、世界経済の安定化に対する責任も非常に大きいということも併せて考えなければいけないというふうに思っております。  そこで、成長率だけが自明の目標になるのではなく、その質が問われなければいけない。その質と言ったときに格差あるいは貧困ということをなぜ申し上げるかといえば、通常、格差についてはジニ係数が指標として使われますが、これは簡単に言いますと、所得分布の真ん中辺りの人とそれ以上の上の人との間の格差を表します。ジニ係数が大きいこと自体は、頑張るともっと上に行けるかもしれないという人々の気持ちをそれで刺激をするとすれば、ジニ係数が大きいこと自体がさほど問題になるわけではありません。  これに対して、相対的貧困率というのは、等価の処理を施した世帯の規模を調整した上での所得の中央値の五〇%未満の比率でございますから、簡単に言うと、所得の分布の真ん中からそれより半分よりも下にどのくらいの人々がいるかということを表して、どちらも格差の指標なんだけれども、真ん中から上を見た格差なのか、真ん中から下を見た格差なのかということを示しております。  絶対的貧困とは当然違いますけれども、日本ケースでいいますと、相対的貧困の尺度というのはほぼ生活保護基準と合致をしておりますので、国が考えている貧困線というんでしょうか、健康で文化的な最低限度の生活というのを割り込んでいるのが日本での相対的貧困層であるということを考えれば、これは深刻に考えなければいけないことで、こういった層がなるべく少なくなるような、あるいは生涯のいずれかの時点で不幸にして貧困に陥ることがあっても、それが固定化しない、いつかは脱出できるというような経済の社会の仕組みというのを考えていくべきではないかというのが私が考えているところでございます。それが、本当に豊かで、豊かさが実感できる持続的な社会の在り方なのではないか。  その際に、繰り返しになりますが、日本では財政ですね、税制や社会保障制度が何もしなければ貧困でなかったはずの人が財政が働いた結果として貧困に陥っていると。特に子供がそうであるということは大問題ですので、これは私は一刻も早く是正をする必要があるというふうに思います。  世代間の公平というときに、将来世代負担を負わせるべきでない、これは全く正論でございますけれども、私にとって最近印象的だったのは、復興構想会議の中で岩手県の達増知事が発言をされまして、つまり、将来世代というのは今生まれなければ将来存在しないので、今例えば二十代や三十代の人々が貧困に陥っていて結婚もできない、子供を産もうにも子供が持てないという状況の中で将来世代の話をしてもむなしく聞こえるということをたしか達増知事はおっしゃったと思うんですけれども、これにかなり強い印象を受けております。  以上です。
  19. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 松井先生、どうも御質問ありがとうございます。  私は、先生の御質問に関して一点挙げるとすれば、将来不安の払拭ということに力点を置いていろいろと政策を講じることで国民生活の豊かさを更に高めることができるのではないかと思います。もちろん、将来不安の払拭ができた後に更に次なる目標はということになれば、それはまた別の、次の次元の問題だと思いますが、今この日本の置かれている状況、当面の課題を考えると、先ほど指摘あったように、財政破綻の懸念というのは払拭できていませんし、社会保障の今の制度のままだと十分に老後に豊かな生活が享受できるかどうか必ずしも安心できない状況や、さらには働いている世代方々もいつ失業の憂き目に遭うかもしれないという不安があるとか、そういうような問題が残されているという点で申しますと、社会保障改革も当然これは将来不安の払拭に資するものだと思います。  私は、改革をするということは、今よりも手当や給付を充実させるということだけが改革だとは思いません。もちろん、それによって解決できるものはあると思いますが、むしろ予見可能性を高めるということに力点を置くことが重要なのではないかというふうに思います。  例えば、老後に月五万円の収入しか得られないという可能性もあれば、二十万円も得られるかもしれないというような、そういう不確実性があるという方がいらっしゃったとして、それはもちろん全てが年金のお金ではないですけれども、年金給付も含めてそういうような状況に置かれているという方がいらっしゃって、社会保障制度改革とか税制改革とか、様々な将来の予見可能性を高めるような改革を行うことを通じて、最低限でも月十万円以下にはならないということがかなりの確率で予見できるというような社会の仕組みを政治がつくっていくということができたならば、確かに二十万円も得られるというほど豊かではないかもしれないけれども、十万円以下にはならないという意味において、これ以上貧しくなるということはないんだという将来不安を払拭するという、そういうことができれば、決して年金の改革にしても、給付削減を全く強いないで年金改革というのは難しいわけですけれども、これ以下にはならないということを示すだけでもかなり大きな将来不安の払拭にはつながると。  もちろん、それは夢物語を国民に示し得ないという意味においてはネガティブなものかもしれませんが、むしろそれ以下にならないということを示すことによって不安を払拭するというポジティブな効果もあるんだろうというふうに思います。そういう意味においては、もちろん社会保障財政健全化という話もそうなんですけれども、我が国においては経済成長を低迷させている要因というのも、これも一つ一つ改革によって払拭していく必要があろうかと思います。  そういう意味でいうと、確かに貧困率を下げるということも一つ重要な課題であって、格差是正というのも重要なんですけれども、私が思うには、格差是正ないしは貧困率を下げるということは、より平等な社会をつくるということよりかは、むしろ貧困になる確率が低くなるということによって人々の将来不安を払拭する。ああ、自分はそんなに高い確率で貧困になるということはないんだなというふうに思ってもらえるということによって将来の人生設計がより国民の不確実性のない中で設計できて、自分がある程度予見できるということによって分相応の豊かさというものを追求できるということになるのではないかなというふうに思います。  そういう意味では、もちろんどれだけ格差是正をするかということも重要なんですけれども、成長戦略といいましょうか、日本経済を引っ張ってくれるリーディングセクターをどういうふうに育てていくか、それによって富が均てんされて日本経済全体が潤っていくということを通じて自分も国民の一人として豊かさを享受できるのではないかと、そういう見通しを作れるような仕組みを様々な形で整えていくことが重要なのではないかというふうに思います。
  20. 山崎力

    会長山崎力君) 誠に恐縮ですが、議論のやり取り、トータルで一人の質問で十分という形なものですので、参考人方々には恐縮でございますけれども、せいぜい二分から三分程度で御回答願えればというふうに思います。  それでは、関口昌一君。
  21. 関口昌一

    ○関口昌一君 自民党の関口昌一です。  今日は三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました、いろいろな貴重な御意見、御提言を聞かせていただきまして。  もう限られた時間でございますので、質問させていただきたいと思いますが、まず、小黒参考人、現行の社会保障制度は持続が非常に厳しいという考えの中でいろいろ御提案をいただいて、ちょっと時間がなかったんで全て説明がなかったわけでありますけど、その三つの提案の中で一つ、例の事前積立てによる解決策について、これが現実の今制度ありますよね。例えば社会保障でいきますと、医療、年金、介護、こうした中へどういうふうに仕組んでいくのかという大きな問題点があるかと思います。そして、例えば年金を一つ例に取ると、厚生年金なんか百四十兆の積立金があるということで、これを医療と介護の部分でどのように一緒に考えてやっていくのかというような大きな問題があるし、私はそれぞれの分野でやっぱり対応すべきだと考えているんですが、いかがでしょうか。まずそれを聞かせてください。
  22. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 事前積立てについては、今先生が御指摘ありましたように、公的年金では実際似たような制度がございます。ただ、残念なことに、世代間格差を改善するまでの積立金は持っていないということで、例えば本当に積み立てるとしたらあと五百、GDPと同じぐらい、若しくは対GDP比一五〇%ぐらいか分かりませんけれども、それぐらいの積立金がないと世代間格差が改善しないという話がございます。  ただ、一つ重要なことは、年金については制度を持っておりますので、給付の方を決めて、しかも保険料の方の負担の限界も決めてしまっているので、そのツケが積立金に出てきてしまっているという現実がありますので、どちらか一方、先ほど申し上げましたように、例えば給付水準、これ所得代替率で、例えばその五〇%というものを維持するのであれば、自動的にそれに見合うような形の負担水準の経路をまずその専門家に委ねてきちんと出すというところがやっぱり重要なのではないかというふうに思っております。そうしますと、積立ての経路が決まりますので、あとはその運用というところが問題になるということで、ただ実際は株式市場等の影響を受けますから、なかなか、ある期間では損をしたりある期間では得をしたりということがありますけれども、中長期で見れば、その損得もある程度ならせるのではないかというふうに思っております。  それと同じような形で医療と年金の方も、これは先生から御指摘ありましたように、全く同じような制度でやる必要性は私もないと思いますけれども、少なくとも世代間の格差がならせるようなぐらいのバッファーとして何らかの積立金みたいなものを用意してはどうかというふうに考えております。
  23. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございました。  次に、もうこちらは質問だけにさせていただきますけど、大沢参考人、お二人の参考人のお話を聞いた中で、将来の社会保障の安定的な財源を担うために保険料、税というような話があったわけでありますけど、参考人はどのようなお考えであるかですね。
  24. 大沢真理

    参考人大沢真理君) ありがとうございます。  社会保険料全体として、これ以上の引上げというのは無理なところに来ておるというのは、これは土居参考人もおっしゃいましたし、意見は一致しているのではないかと思うんですけれども、問題は、この社会保険料負担がやはり均等ではないと。お示ししたグラフのように大変逆進的でございます。消費税についての逆進性というのは、私自身、言われているほどの逆進性は現在の税率の下ではないというふうに考えておりまして、より問題なのは社会保険料負担の逆進性です。  これは、所得の低い人にも比例的に掛かるということと同時に、標準報酬の最高限というものがありまして、高所得の人ほど総報酬、総収入に対する社会保険料負担が低くなるという仕組みがもう仕込まれているわけです。これは、年金と健康保険では標準報酬の最高限は違っておりまして、たしか年金はまだ六十万円台、これに対して健康保険の方は百二十万円を超える標準報酬の最高限になっていると思います。  こういうことを放置をしておいて財源をどこに求めるかという話をするのは、ややむなしいというふうに私思っているところでございます。  以上です。
  25. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございました。  次に、最後に土居参考人ですね、前、一月にジュリストだったですか、論文をちょっと読ませていただいて、これ保険機能を果たそうとする部分保険料財源を充てるということ、また、所得再配分機能を果たそうとする部分には税財源を充てるというようなことが望ましいというようなことをちょっと書かれたんでありますけれども、ただ現行の制度を見ますと、私もデンティストなんで医療の部分を見ますと、例えば国保や後期高齢者医療制度ありますね、これについては低所得者や高齢者の方々に対して、政策的な配慮として公費が多く投入されているというのも現実であります。そうしたある意味、参考人の考えは現行の制度にも行われているように私は思うんですが、その点について伺う。  もう一つ最後に、我が党は昨年参議院選挙で消費税を社会目的税化して、プラス五ということで選挙を戦わさせていただきました。大変厳しい選挙でしたけど、何とかようやく当選させていただいたんですが、消費税で対応した場合に何%ぐらい必要か、その辺もお聞きをさせていただきます。
  26. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 関口先生、どうも御質問ありがとうございます。  まず、税と保険料の話ですが、まさにおっしゃるとおり今もう既に税と保険料、それぞれ投入されております。ただ、やはり今の保険料水準について国民の多くの方々は、なぜその保険料水準なのかということについて余りその根拠がはっきり実感しておられないんではないかと思います。極端に言えば、今のお財布の中から出ていく保険料をこれ以上増やしてほしくないから減免してくれと言って、政治がそれにこたえて減免制度を設けて、それで減免されていると。本来、その減免制度がなければ、国民が病気にかかる、要介護になる、ないしは老後必要になる年金の給付というのはこれぐらいで、そのもし税の助けがなければどのぐらいの保険料になるかということをまず示してないというところが私の考えと現状との違いであります。  それを示した上で、やはり生活のことを考えると、低所得の方には減免が必要ですねということであれば、本来、税や何らかの優遇の助けがなければ必要な保険料をこれぐらい減免しているんですという、その減免の恩恵というものを明示的に示すことで、国民も本来はこれぐらい掛かるんだけど低所得だということでこれだけの負担減免になっているんだなとか、そういうことが分かる。さらには、そこの部分に税が当たっているということであれば幾ら税金が投入されているかということも分かるということになるんですが、今はどちらかというと、まず必要な財源のうちの、介護保険なんかは典型ですが、半分は税で半分は保険料というふうなところからスタートして、あとはもう少しミクロに、それぞれ国が負担する分、県が負担する分、市が負担する分とか第一号被保険者へと、こういうふうにだんだん掘り下げていくというスタイルになっているのでなかなか、税と保険料は確かに投入されているんですが、どちらになるかというのは微妙に分かりにくい状況になっているんじゃないかというふうに思います。  それから、二点目の御質問は、私もまずは当面五%だというふうには思っております。ただ、先ほどお示ししたように、二〇二〇年ぐらいまでを考えますとちょっと五%では足らないのかなと。さらには、今よりも七、八%ぐらい上げて、場合によってはもっと、一〇%ぐらいまで上げて一五%という税率に近づくようなことを考えないと二〇二〇年代迎えられないのかなというふうに思います。  以上です。
  27. 関口昌一

    ○関口昌一君 ありがとうございました。
  28. 山崎力

    会長山崎力君) それでは、続きまして、竹谷とし子君。
  29. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 公明党の竹谷とし子でございます。  今日は三人の参考人の先生方、貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。  まず小黒先生にお伺いしたいんですけれども、マイルドなインフレ、リフレというふうに言われている考え方がありますけれども、リフレで財政赤字を解消できるというそういう考え方につきまして、小黒先生の御意見、お考え、伺えればというふうに思います。  そして次に、大沢先生にお伺いしたいんですけれども、日本の貧困の問題で、生産性が上昇しても賃金が伸びていないという問題点の御指摘ありました。企業の営業余剰が雇用者の報酬の方に行っていないという問題ですけれども、これについて、最低賃金を引き上げるという、そういう一つ解決方法があるかとは思いますけれども、それとトレードオフで、製造業などでは賃金の上昇を嫌って海外に企業が出ていってしまうというそういう問題もあると思うんですけれども、そういった、賃金を上げることによって雇用機会がかえって失われてしまうというそういう問題についての先生のお考えをお伺いしたいというふうに思います。  土居先生にお伺いしたいんですけれども、今貯蓄率が徐々に下がってはいるものの、まだまだ個人の金融資産というのはあるというふうに思います。特に、高齢者の方々が持っていらっしゃる金融資産というのは非常に若者に比べて比重が高いと思うんですけれども、寿命を全うされたときに手元に残っている金融資産、余剰貯蓄とか過剰貯蓄とかそういうふうに言われることがありますが、これが百兆以上あるというそういう研究などもあるんですけれども、これが、高齢者の方が亡くなられて、そして相続で移転するときに、その相続を受けるお子さんに当たる方も既に高齢者であるということで、そこでずっと高齢者の中で移転が続いて、消費意欲が高い若者世代に来ないというそういう問題点があるんですけれども、その過剰貯蓄と言われる部分がもっと市場に、消費に回ってくれば経済成長に結び付いていくというふうに考えありますけれども、それが実現するための税制という点から考えた場合にどういったことが考えられるかということをお聞きしたいと思います。
  30. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 竹谷先生、ありがとうございます。  リフレでまずその財政再建ができるのかというお話ですけれども、これは例えば名目成長率四%、実質二%、インフレ二%という話を多分念頭に置かれているんだと思いますので、そういった話を念頭にちょっとお話しさせていただきたいんですけれども、ただ、ちょっと時間が短いですので、もし詳細に御確認されたいのであれば、「Voice」の、お配りされている資料の中に配られていないんですけれども、この「Voice」の二〇一一年の三月号か四月号ぐらいにちょっと詳細なものを載せていますので、そちらを見ていただければと思います。  ただ、要点だけちょっと簡単に説明させていただきたいんですけれども、このスライドにありますように、ドーマー条件のところでよく出てくるリフレ論の重要なポイントとしましては、基礎的財政収支の中にある、これは歳出と歳入に分解した場合に、その歳入の部分で、ちょっと細かい専門的な話になって恐縮ですけれども、税収弾性値というのがあります。これ、政府では大体一・一というふうに置いておりますけれども、要するに、一%成長すると税収が一・一%増えるというふうな形を想定していると。  ただ、これデータを取ってみればすぐに確認できることなんですが、税収弾性値というのは極めて不安定です。土居先生が先ほど御説明されましたように、所得税収若しくは法人税収といったものは景気の変動によって物すごい変動しますので、そういったものが入っているトータルの税収で見た場合、消費税であれば比較的安定しているんですけれども、そういったものが入っていると極めて不安定ですので、よくリフレ論で、成長を二%にした場合に税収が二・二%増えるというような想定を置くことはかなり難しいというのがまず一点目になります。  なので、税収の見積りというのは相当難しくて、インフレにしたからといってすぐに税収が上がってくるとは限らないというのがまず一点目になります。  それからもう一つ、この項の二項めですけれども、重要なポイントとしまして、大ざっぱに言いますと、ここで金利と書いてあるものは国債の利回りになるわけですけれども、その場合、これ名目の金利で考えた場合は、名目金利はイコール実質金利プラスインフレ期待になります。成長率の方は、名目の場合ですと実質経済成長プラスインフレ率というふうになるわけですけれども、基本的には相殺されますので、期待インフレ率とインフレ率は大体同じような形で推移しますので相殺されまして、ほとんどここの部分は変わらないと。ですので、基本的には、実質金利と実質経済成長率の差のみが重要になってくるということになります。その場合も、基本的には成長率金利は同じような動きをしますので、その場合にはこの項というのはほとんど意味がないということになってきまして、なかなかやっぱり難しいというのが簡潔な答えになります。  もう一点ちょっと加えさせていただきますと、先ほど成長率が、例えば金利が一%の場合、成長率三%というふうに説きましたけれども、それを実質で考えた場合、実質金利が二%、要するに、今、国債金利の利回りは一・四%ですけれども、これに例えばデフレを加えたりしますと二%ぐらいになったりしてしまうような可能性もあるわけですね。そうしますと、今度は成長率は実質では今度四%とならなきゃいけないという形になりますので、より先ほどのこのヒストグラムで示した部分は厳しくなるという形になります。  ですので、結論から申しますと難しいというのがもう結論ではないかというふうに考えております。
  31. 大沢真理

    参考人大沢真理君) 竹谷先生、どうも御質問ありがとうございます。  私が考える対策というのは、最低賃金のアップには限られておりません。もちろん、グラフデータでお示ししましたように、日本の最低賃金のレベルというのは主要国の中でアメリカに次いで低いということでございますから、これを引き上げる必要と余地というのはあろうかと思いますけれども、それよりもむしろ重要と言っていいのは、正規と非正規の間の格差の解消ということではないかと考えております。すなわち、平均賃金の低下というのは専ら非正規の比率が高まったことによって起こっておりますので、ここを上げる必要があるのではないかと。  そのように申しますと、非正規も割高な労働力になったらまた雇用が失われるのではないかという御意見があろうかと思います。これについては、幾つかのシンクタンクがシミュレーションもしておりまして、正規の賃金を必ずしも下げることなく、非正規との格差を埋めることによって、結果的には生産が増え、正規の雇用も増えるというようなシミュレーション結果もございますので、そのことについては、一概に非正規の格差を解消したからといって雇用が失われることにもならないというふうに考えております。  ごく最近の、例えば富国生命のリサーチペーパーなどでも、失業期間の長い人というのは正規の職を探しているから失業期間が長い。これは、つまり正社員になりたい人にとっては割高な労働力になっているおかげで雇用機会が狭まっているということをも示しておりますので、その辺りを含めたシミュレーションが必要かと思います。  最後に、海外に企業が出ていってしまうというときに、今の日本の国内市場というのがやはり非常に懐の浅いものになってしまったと。もし国内市場がより懐の深いものになれば、有利な地元にいてそこで営業していくというインセンティブも強まるのではないかということを考えますと、やはり普通の働く人の所得を増やすということによって企業にとっても懐の深い国内市場をつくることの意味は大きいのではないかと思っております。  以上です。
  32. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 竹谷先生、御質問どうもありがとうございます。  確かに、高齢者の貯蓄は何とかうまくこの経済で活用できないかという点には私も同感であります。ただ、相続をすると、結局また、若干年齢は下がるにしても高齢者の方に再びその富が移るということにとどまってしまうという点も私も同感でありまして、そういう意味でいいますと、やはりここは一時的に相続税を上げるというようなことだとか、そういう形で何らかの富の再分配を図るということはやむを得ないのではないかと思います。  未来永劫相続税を上げ続けると、これから高齢化でどんどん日本貯蓄家計貯蓄は減っていくということになりますので、ただでさえ高齢化で貯蓄が減っていくという中で、更にもっと相続税が掛かるんだったらもうとにかく消費してしまおうといって、必要な貯蓄もためないということになってしまうのは良くないので、二〇二〇年代ぐらいにはそれはやめた方がいいかもしれませんが、少なくともこのデフレの状況が止まるまでは相続税を上げる。これは、相続税を上げて召し上げようというよりも、むしろ相続税が掛かるぐらいだったらば消費をしようというふうに思っていただくというポジティブな効果もあると思っておりまして、高齢者の方に相続税で取られるぐらいだったら消費をもっと活発にやっていただくというふうなシグナルということで相続税を上げるということは一時的にはあり得るのではないかというふうに思います。  さらにもう一つ、これはラディカルなものなのでなかなか政治的には実現しないかもしれませんが、それなりに資産をお持ちの方、ないしはそれなりにたくさん年金給付を受けておられる方の給付を抑制すると。貯金をたくさんおためになっておられる高齢者の中には、年金給付がなくても十分生活ができるという方で、もちろん受給権があるので年金給付はいただくんだけれども、それはそのまま銀行口座に入ったまま貯金として残っているというケースもあるかと思います。そういうような方には、もし御協力いただけるならば年金給付を、辞退とは言いませんけれども、抑制する、ないしは寄附していただくなりというようなことがあれば、高齢者に貯金が集中するという事態も少しは改善されるのかなというふうに思います。
  33. 山崎力

    会長山崎力君) それでは、寺田典城君。
  34. 寺田典城

    ○寺田典城君 済みません、寺田でございます。  今、日本の社会というのは、非常に閉塞感というか、もう固まってしまってがっちんがっちんになっているような感じがします。このままずるずると行っちゃって財政的にも破綻してしまう懸念だってあるんじゃないのかなと、率直に私はそう思います。  所得からいいますと一九八九年並みと、格差の付いた、その並みの給料にもう賃金も下がっているということと、毎年それこそ、約二、三十万人近い人方がワーキングプアみたいな働き手になっちゃって、例えば子供を産む、育てるといったって、これ今、所得格差が子育て格差、それから学力格差にもつながっちゃっていると。  ですから、子供のころから要するに幼児保育・教育でも支援制度をつくっていかなければ、今子供を産んでくださいなんて簡単に言えるような状況でもないというのが現実じゃないのかなと思うんですね。大体三百万円以下の所得の人方が五〇%いるという、五〇%が三百万ぐらいだというんです。その人方が今子育てとか何か一生懸命頑張っていらっしゃるというような現実なんですね。  それで、私たちの国というのは、ピークは御存じのとおり一九九〇年でした。あの当時、まだ日本の国というのは三百兆円以下の借金しかなかったんですが、今は三倍ぐらい増えちゃっているというような、二十年後ですね。  私は、それの中で一番やはり懸念しているのは、その当時は高齢化率、六十五歳以上が一二%ぐらいで、今二二%ぐらいで、そしてもう十年すると約二九%、三〇%近くまでなっちゃうというようなこと。それで、団塊の世代がもう二〇二〇年になると七十五歳以上という先ほど話出たんですが、この人方が一五%近くなっちゃうと。そうすると、医療費とか年金とかそういうのは全てが累進的にこう上がってくるということですね。  ですから、借金は増えた、高齢化率が増える、そういうことですね。今二〇一〇年から二〇年の間に十年間で八%も高齢化率増える、一七%ぐらいですか、増えるということ。介護の問題もあるでしょう。介護だって六十五歳以上で大体一七、八%が介護認定受けざるを得ないというような状況なんですね。  よく皆さん、大変勉強になっているんですけれども、お三方に同じような質問をさせていただきたいんですが、何かでやはりガス抜きとか、これを諦めるとか、維持できないとかという考えもやっぱり成り立つじゃないのかなと思うんですね、それぞれに。私は、どちらかというとやっぱりどこかでガス抜きしなければ、日本のシステムというのは硬直化しちゃっているんで、私たちがやはり、若い人が海外に打って出るぐらいのとか、行政が打って出るとか、そのぐらいのことしていかない限りは、今の制度ではやっていけないじゃないのかなと思うんです。  ですから、年金、医療もそういうふうに増えてきていることも事実ですし、数値は皆さんの方が御承知であれなんでしょうけれども、その辺について御意見伺いたいと思います。  以上です。
  35. 山崎力

    会長山崎力君) それでは、ちょっと順番を変えまして、まず大沢参考人からお答え願えますでしょうか。
  36. 大沢真理

    参考人大沢真理君) 寺田先生、どうも御質問ありがとうございます。  ガス抜きということで、どのようなイメージを持たれているのかはよく私分からないんですけれども、年金が持続可能でないのではないかということもおっしゃいましたので、年金に関して私の考えを申し上げさせていただきますと、現在の給付水準というのは、日本は諸外国に対して決して引けを取らないだけではなく、五〇%ということがございまして、これは世帯類型によって違います。四十年間専業主婦だった世帯というのが年金水準が現役のときの五〇%というので、共稼ぎとか単身ですともっと給付水準は低くなります。  ただ、この五〇%というのを目安にほかの国と比べますと、例えばドイツなどは年金大国ではございますが所得代替率は四三%程度ですし、高負担の国と思われるスウェーデンなどは三八%ぐらいというふうに切っているわけです。これは、年金で賄わなければいけない様々な掛かりが少ないからこのような年金でも豊かさを実感してやっていけるということと裏腹ではございます。  いずれにしても、私は、高所得の方には保険料はしかるべく負担をしていただいた上で、保険料と年金給付の間の、単価というのでしょうか、これをアメリカの制度のように途中で二回ぐらい屈折をさせる、ベンドポイントのようなものを導入いたしまして、負担の割には年金給付はそれほど高くないという改革をする必要があるのではないかと思っております。  これがガス抜きになるのかどうかは果たして分かりませんが、国民の多くは、日本ではゆとりのある層がしかるべき応分の負担をしていないのではないかということがその不公平感、ガスの一つではないかと考えれば、意味がある改革ではないかと思っております。  以上です。
  37. 寺田典城

    ○寺田典城君 ガス抜きに誤解を受けているんで、済みません、ガス抜きというのは、制度をどこか変えてしまわなきゃならないんじゃないのかという、今の制度で物を考えたって、例えば消費税上げるとか何を上げる、そういうことではもたないんじゃないのかという意味なんですが、そういう意味でガス、何というか、申し訳ないですけれども、ガスという言葉は、今回、原子力の問題でベンチレーションで、そういう表現しちゃってごめんなさい。
  38. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 御質問の趣旨はよく分かりました。寺田委員、どうもありがとうございます。  私は、やはりこれは政治も行政もということだと思いますが、経済学の言葉の中でノーフリーランチという、ただ飯は食えないというそういう言葉があるんですが、それをもっと国民に周知、広めていくべきではないかというふうに思っております。  やはり何らかの形で誰かに負担してもらえれば給付が受けられるんじゃないか、恩恵が受けられるんじゃないかという、そういうある種逃げ道といいましょうか、自分は負担から免れられるんじゃないかという思いがどうも渦巻いているように思います。確かに不必要な負担はすべきでないしさせるべきではないと思いますが、さはさりながら、これだけの財政赤字がたまっているということからしても、単に無駄遣いをなくしただけでは済まない、仮に今の給付を維持しよう、今の恩恵を維持しようということであるならば負担増は避けられないと思います。  そういう意味では、負担増なくして給付の維持はないとか、ないしは給付を充実させるということはできないということをセットでお示しになって、それでその中でどういう形の負担ないしはどういう形の給付の充実というメニューが国民の多くの支持を得られるかということをいろいろと政治の場からも提起を国民にされて、それの中で国民が自分の望みがかないそうなプランに手を挙げるといいましょうか、票を入れるといいましょうか、そういうような姿が出てくるといいのではないかというふうに思います。  そういう意味では、私は、だんだんそういう機運は高まってきてはいるけれども、まだやっぱりどうしても景気が悪いのでこれ以上の負担増は御免被りたいという国民がまだ残念ながらそれなりにいるので、できるだけ早く、今の給付ないしは行政サービスを維持しようと思うんならば負担増は避けられないということをベースにして、その給付負担のパッケージを政党間で競争なさって、善政競争といいましょうか、いろいろなアイデアの切磋琢磨というものが繰り広げられるといいのではないかというふうに思います。
  39. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 寺田先生、ありがとうございます。  一つ閉塞感という話がございましたけれども、しかし逆に言うと、これだけ閉塞感が充満している中で、もうあとやることは決まってきているのではないかということがあります。それは、財政なり社会保障をまずきちんとするということ、当然に成長戦略は必要でございますけれども、ただ財政社会保障のところをきちんとするだけでもこれはかなりプラス効果があるのではないかというふうに思っております。  一点だけちょっと補足させていただきますと、先ほど世代会計を取り上げさせていただいたんですけれども、これ例えば社会保障負担を税と保険料どっちにするのかといういろいろ神学論争みたいなものがありますけれども、これ世代ごとに分解して見た場合には、重要なのは、このスライドにありますように、各世代が消費できる原資というのは、その彼らが、我々もそうですけれども、各世代が稼ぐ生涯賃金から払ったその保険料なり税、それからあと生涯に受け取る年金とか医療とか介護、こういったものの手取りベースで決まるということになります。  そのときに重要なのは、負担と受益の差ですね、例えば純負担というふうに定義させていただきますと、これを生涯賃金で割ったものがある意味で本当の税率、その生涯で負担した純税率になるということが重要なポイントであると思います。  そのときに世代会計で教えてくれる重要なポイントとしましては、将来の世代ほど純税率が重たくなるんだと。要するに、仮に生涯賃金が余り変わらない、そのプレゼントバリューで評価したときに余り変わらないとすれば、これだけ格差が出ているということは、それは将来世代ほど重い純税率を負担しなきゃいけないという状況になっているということで、これを先ほど、私でいいますと例えば事前積立てみたいなのを提起をさせていただいていますけれども、こういったものを導入することによって、導入するとどういう効果があるかというと、その純税率がならされるわけですね。土居先生のスライドにもありますけれども、課税の平準化というのがありますけれども、これがならされると。ならされると、場合によっては税負担が軽くなって消費が増えたりする効果もありますし、そういった効果があると逆に経済成長が促進される可能性も十分あり得るということが、例えばこのスライドの三十一ページからでも読み取れる状況になります。  逆に言いますと、きちんと社会保障財政の改革をすればもっと明るい未来がもしかするとこれから描くことができるかもしれないというところがやっぱり日本状況で、むしろ今これだけ閉塞感に包まれた中でもこれだけ成長しているわけですので、逆に言いますと改革をきちんとすればもっとすごい、我々が思っている以上の成長が期待できるかもしれないというところがやっぱり重要なんではないかというふうに思っております。  そういった意味で、これは制度を変えるのは政治しかできない役割ですので、これはどの政党も基本的には社会保障をどうにかしなきゃいけない、財政をどうにかしなきゃいけないということは認識が深まってきていますから、むしろ今すごいいい転換点に差しかかってきているのではないかとプラスの意味で受け止められて、是非政治の側で積極的に改革していただければというふうに思っております。
  40. 寺田典城

    ○寺田典城君 どうもありがとうございました。
  41. 山崎力

    会長山崎力君) それでは、梅村聡君。
  42. 梅村聡

    ○梅村聡君 民主党の梅村聡です。  今日はどうもお三方の参考人方々、ありがとうございました。  まず、小黒参考人にお聞きしたいと思いますが、今日、事前積立てという世代間の問題に対する一つの方向性を示していただいたんですけれども、これ、具体的にその事前積立てというのが実際に行われる場合にどういった運用の仕方をされるのかなと。  具体的に言いますと、年金なんかは、これ国民年金であったり厚生年金であったり、現実、基金という形でもう既に積み立てられているわけですよね。ですから、これをピークまで持っていってその後取り崩していくと、これは現実的には事前積立てに近いのかなと思いますけれども、逆に、じゃ医療はどうなのかと考えると、これは三千近い健康保険組合あるいは政管健保があって、今まで単年度収支でやってきたと。昔のように高齢者が少ないときは、例えば高額療養費の自己負担を下げるためにそこを使っていたとか、あるいは保養所等を被保険者に還元するとか、そういうことが三千の保険組合でそれぞれやってきたと。介護の場合は、これは保険者は市町村ということで、それぞれ運営の仕方がばらばらなんですけれども、例えば具体的に医療や介護でこういった事前積立てをされる場合にはどのようなやり方が考え得るのかと、そのことをお聞かせいただければと思います。  それから、大沢参考人には、今日は社会保険料の逆進性というお話をいただきました。確かに上限が頭打ちになっていますので必ずこれは生じてくるという問題になるんですが、じゃ、仮に逆にこれ、上限をなくす、あるいは低所得者の方にはもう少し負担を軽減していくということを導入した場合に、確かに逆進性は軽減されるかとは思うんですけれども、財源そのものとしてしっかりした財源ということが確保できるのかどうか。  つまり、逆に上限をなくすと、確かにそこはずっと右肩上がりに保険料は入ってくるんでしょうけれども、その数というのは非常に人数としては少ないわけだと思うんですね。ですから、あくまでも逆進性をなくすということについては意味があるんだと思うんですけれども、そこでしっかりした保険料財源を確保できるものなのかどうなのか、そこを少しお聞かせいただければと思います。  そして、最後に土居参考人にお伺いしますが、確かに社会保障と消費税というのは、これ相性はいいかと思うんです。ただ、現実的には今の日本の消費税も、区分会計等はされていませんが、高齢者医療であるとかあるいは年金国庫負担であるとかには使われることになっておりますので、改めて社会保障目的ということをそれほど声高に言う必要は今はないのかなと思っているんですが、しかしこの国の不幸なところは、過去消費税の問題に触れた政党は全て選挙で負け続けるという、非常に悲しい現実はあるかと思います。  一方、ヨーロッパですとか海外に目を転じますと、例えばEUなんかは、消費税、一定の率にならなければEUにも参加させてもらえないというようなこともあります。ですから、国民との、選挙であるとか民意であるとか、そういったもののコンセンサスを海外はどのようにして取っているのかと。  つまり、これは選挙制度であるとか民主主義というものが同じであればそれほど大きな違いがないかと思うんですが、しかし一方では、欧米諸国はそれをきっちり達成することができていると。ここのその国民とのコンセンサスの取り方が日本と海外ではどう違うのかと、そのことを是非御参考にお伺いできればと思います。  以上でございます。
  43. 小黒一正

    参考人小黒一正君) 梅村先生、ありがとうございます。  年金等では積立金を持っているという話で、介護と医療の方についてのお話がございましたけれども、その積立金を持つことの是非については、諸外国に目を転じてみますと、例えばシンガポールでは医療貯蓄制度というのを、御存じだと思いますけれども、持たれているということで、これは医療の方にそういう貯蓄みたいな性質を持ったバッファーを、その積立金を持つこと自体について駄目かどうか、若しくはできるかできないかということであれば、これはシンガポールでもやっている事例がありますので、日本でもそれなりにうまくワークさせればできるのではないかというふうに思っております。  ただ、そのときにどうしても制度設計上いろいろ問題が発生するということも御指摘のとおりでございます。日本であれば、当然、その制度ごと、制度というか職域ごとにばらばらになっておりますので、まず実際の、このスライドにありますように、その制度設計全体を政府がするかどうかというところがまず一点ありますけれども、そこはちょっと議論が混乱しますので取りあえず除くとして、そのファイナンス自体を取りあえず一元化するということは当然まず必要な措置ではないかというふうに思っております。  これは、理由としましてどうしてかと申しますと、各医療保険もそうですけれども、高齢化の段階に従って、たまたまその高齢者の割合が高い保険者なんかでは収支が悪化してしまうという状況に今追い込まれておりますので、どうしてそういうことが行われてしまうかというと、それはたまたまそうなってしまったからであるわけですね。  そうだとすると、これから高齢化していくのはどの組合も同じですので、そうであれば、むしろ財政的な基盤をしっかりするという意味でも、取りあえず一回そのファイナンスを一元化してあげるということが必要なのではないのかと思っております。これはなかなか難しい話でございますが、ここは政治主導でやっていただいてきちんと一元化すると。  その上で、集まったファイナンスが、その財政が全部一元化されてしまいますとなかなか効率的な運営ができないという場合もありますので、その場合についてはまた別途、私は本の中で例えば、これは私自身が最初に主張したわけではなく、私の一橋大学の同僚というか同じ教授であります佐藤主光先生がいらっしゃいますけれども、田近先生と一緒に、管理競争という概念がありますけれども、そういったものを入れたらどうかというようないろいろな御提言をされています。そういった制度を入れることによって効率性を高めていくということと同時に、その積立金を持って世代間格差をならしていくというようなことを医療でもやり、介護でも同時にやっていく必要性があるのではないかというふうに思っております。
  44. 大沢真理

    参考人大沢真理君) 梅村先生、どうも御質問ありがとうございます。  逆進性を軽減すると財源が確保できるのかという御質問でございますけれども、健康保険の標準報酬最高限百二十万円超というのは確かに高収入だとは思いますが、年金に関しての六十万円程度というのは、これは税込み、社会保険料込み、なおかつ通勤手当込みでございますから、四大卒で都市でそれなりの企業に勤めていれば三十代の半ばぐらいには到達するレベルでございます。やはりこれは低過ぎるのではないかということを考えた方がよろしいかと思います。  それから、低所得層に対する逆進性の緩和については、これは保険料を減免するという社会保険の会計内でやるという方法もございますが、国によってはここのところを税額控除、場合によったら給付付き税額控除という方法で解消している国もございまして、消費税率を、これ、やや消費税の話になって恐縮ですが、上げていくとすれば、つまり一〇%、一五%というふうに上げていくとすれば逆進性の問題は今よりもずっと深刻になりますので、それの解消にも給付付き税額控除といったものが考えられておりまして、十分に実現性のある話なのではないかと考えております。  以上です。
  45. 土居丈朗

    参考人土居丈朗君) 梅村先生、どうもありがとうございます。  確かに、おっしゃるように、ヨーロッパ諸国は、消費税含めて、いわゆる増税と行政サービスの対応関係というのをかなり明示的に意識して選挙とかでも議論されておるようであります。例えばスウェーデンでは、税率を上げますか、それとも病院を閉めますかという、そういうことを実際に住民に問う形での選挙、これは住民投票ではなくて選挙があったという、増税するという党と、いや、病院閉めるという党とが出たという、地方選挙ですけれども、そういうようなことがあったりするという、そういう感覚がなかなか日本でまだ芽生えていないというところがあります。  一つの大きな理由は、特に国政については、やはり国債金利が上がらないということにある種あぐらをかいているのではないかというふうに思っております。小黒参考人もおっしゃっていましたけれども、決してこのまま低い金利のまま続くわけではないと思います。  そういう意味では、私も、日本国民もばかではないので、国債金利が今よりも三%、四%と、こういうふうに上がってきたときには、それまで待つのかどうかというのは未然に防いでいただきたいと思いますが、そういうかなり切迫した状況になれば、税率を上げるのがいいのか、それとも国債を増発して更に金利上昇圧力を高めるということにしてでも給付や行政サービスを維持するということでいいのかどうなのかという、そういう選択肢の提起というのはかなり真剣に考えて、ひょっとすると税率を上げるということにも賛同するという国民がそれなりに出てくるという場面が今後出てくるんではないかというふうに私は期待をしております。
  46. 山崎力

    会長山崎力君) 他に御発言もなければ、以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  小黒参考人大沢参考人及び土居参考人におかれましては、御多用の中、本調査会に御出席いただき、御協力誠にありがとうございました。  本日お述べいただきました御意見は、今後の調査参考にさせていただきたいと思います。本調査会を代表して厚く御礼申し上げます。  本当にありがとうございました。(拍手)  次回の調査会でございますが、中間報告を取りまとめるに当たり、本日までの調査を踏まえ、委員間の意見交換を行う予定でございます。よろしく御承知おき願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十七分散会