○
参考人(
村木厚子君)
村木でございます。
今回、こういう機会を与えていただきましたことを心から感謝しております。よろしく
お願いいたします。
それでは、座らせていただきます。
私からは、まず、今回の
事件を通じて感じた
検察の
捜査の
問題点について
お話をし、その上で、そうした
問題点の改善のためにこうしたことに取り組んでいただきたいということについて、私なりの
意見を
お話をさせていただきたいと
思います。
まず、
検察の
捜査の
問題点について、
二つの点を
指摘をしたいというふうに
思います。
まず、
問題点の
一つ目でございます。
これは、事実と異なる
調書が大量に作られたということでございます。少しきつい言い方になるかもしれませんが、率直な
印象としては、
検事さんというのは
調書を
いかようにも作れるもんなんだなというのが私の実感でございます。今回、私
自身はこの偽の
証明書を作ったことに全くかかわっていなかったわけですが、私がかかわっていると、かかわったという
調書は三、四十通作られております。何人もの
検事さんがその
作成にかかわっておられます。そして、その
調書は結果的には
公判で、
取調べに問題があった、
誘導があったと見られるということでほとんどは
否定をされたわけでございます。
確かに、今回、
フロッピーディスクの
改ざんという非常に私にとっても衝撃的な出来事がございましたが、一人の
検事さんが
フロッピーディスク、
証拠を
改ざんをしたということよりも、私にとっては、たくさんの
検事さんが
チームとして
一つの
ストーリーに沿った事実とは異なる
調書を作っていったということの方が非常に恐怖でございます。
私がかかわったという
調書のほかにも、実は、
事件当時は、
障害者自立支援法の円滑な成立のために当時野党であった
民主党有力議員の要請を受け入れざるを得なかったという
内容の
調書も同じような時期にたくさん作られております。これが私の犯行の動機だというふうに言われました。ところが、実際は、
障害者自立支援法というのは
事件当時はまだ影も形も全くない
状況でございまして、よく見ると、
調書に添付をされている
参考資料は翌年のものでございました。しかし、こうした
調書もたくさん作られたということでございます。
どうしてこういうことが起きるのか、こういうことが可能になるかということでございますが、私が見聞きした
範囲で幾つかその
方法がございます。
一つには、
上司から
調書の
内容について指示がされているということでございます。私は、
取調べの
冒頭に
検事から、あなたは起訴されることになるだろう、私の仕事はあなたの供述を変えさせることだというふうに宣言をされました。また、
検事さんがあらかじめ
調書を作って
取調べ室に持ってこられて、
取調べを受けてそれを修正をしていただいたら、
上司と
相談をしていたものとニュアンスが随分変わってしまったのでと言って、私に
サインをさせずにその
調書を持って
上司に
相談に行かれてしまったということもございました。
二つ目には、
捜査にかかわる
チームの
検事さんたちが
情報を共有をしていて、それに合わせて
調書を作っているということでございます。
公判でも明らかになりましたが、
検察の描いている
ストーリーと違う話をしている間は
調書は
作成をされません。
検察の意向に沿う
調書に
サインが取れると、それがその日のうち、あるいは明くる日にはとおっしゃっておりましたが、直ちに
チームの
全員に配付をされていました。だから、相互に非常に
整合性の取れた
調書が作れたということでございます。
三つ目は、
誘導や脅迫があったということでございます。私
自身は肉体的な暴力はございませんでした。机をたたかれたこともございませんでした。しかし、否認をしていると罪が重くなりますよということを非常に執拗に言われて、
執行猶予が付くんならいいじゃありませんかということで、罪を認めるように何度も迫られました。
先生方は、それでも事実と違う
調書に
サインしなければいいではないかというふうにお考えになるかもしれません。
当時、
事件に関係をした
決裁ラインにいた
厚生労働省の
職員、大体十人ほどでございました。その中で私が
事件にかかわっているという
調書に
サインをされた方は五人でございます。ちょうど半分でございます。残りの五人の方はそれを
否定をされました。それでも、その
否定をされた方が証明できること、証言できることというのは、私は
村木さんが関与をしているのを見ていませんということだけでございます。私が自分の見ていないところで関与したかもしれないということまでは
否定ができない、証明ができないわけでございます。
したがいまして、結局、少し気が弱いとか、あるいは
検事さんに弱みを握られてしまったとか、あるいは、ほかの人がこう言っているけど、その人がまさかうそをついていないからこれは正しいですよねというようなことを言われて、はいと言ってしまうような方が何人かいれば、そういった方たちから事実と異なる
調書を取ることができれば、要は容疑が固まってしまうということになるわけでございます。それゆえにだと
思いますが、
検事さんも
調書を取るときについ無理をしたくなるということなのではないかというふうに
思います。
また、
調書には
検察側にとって都合の悪いことというのは書かれません。例えば、問題になった
フロッピーディスクのことですが、
取調べではこの
フロッピーディスクを基に
取調べが行われているんですが、それにもかかわらず、
調書には
フロッピーディスクという言葉は一文字も出てまいりません。都合の悪いことは書かない、
調書上はないものとして扱われてしまうということでございます。先日、
検察の
在り方検討会議で行った
調査でも、
検事さんのうちの二六%の方が、実際の供述と異なる方向での供述
調書の
作成を指示されたというふうにアンケートに答えておられます。したがって、こういったことは今までも実は何度もあったんだろうというふうに思っておりますし、これからも何度でも起こるだろうというふうに私は大変懸念をしております。
次に、
問題点の
二つ目でございます。
客観的な
証拠が私の
事件の場合ほとんど無視をされるか軽視をされていたということでございます。
最後は
改ざんをされたということもありましたが、さすがに私はこれは特殊な例と
思いたいというふうに思っております。
具体的な例を二、三挙げますと、
一つは、固有名詞、もうお出ししますが、石井先生、石井議員のアリバイでございます。この
事件では、本件の
証明書は議員案件だということになっておりまして、凜の会という団体が石井先生に依頼に行ったということになっていたのですが、この石井先生の依頼を受けたという日の行動というものについては全く調べられていませんでした。これは後で弁護側が
調査をして、先生はそのときゴルフ場にいらっしゃったというアリバイがあったことが分かったという
状況でございます。
もう
一つは、問題となった
フロッピーディスクでございます。この
フロッピーディスクを
検察の方は持っていたにもかかわらず、
証拠の請求をせずに、率直に申し上げれば、この存在を隠して裁判を進めようとされていました。
このほかにも、大量の名刺や手帳、関係先に残っていた
相談記録、そういった様々な客観
証拠が実はこの
事件についてはありましたが、それらは全部無視をされてしまいました。結果として、
調書だけを見ると
調書同士は大変
整合性が取れたものになっておりますが、それを示す客観
証拠というものはありませんでしたし、あるいは、後で、存在した客観
証拠と
調書を見比べてみると、それは全く矛盾をするというものになっておりました。
以上が、私が感じた今回の
検察の
捜査の
問題点でございます。
こうしたことを受けて、是非こういう改善をしていただきたいという点を五つほど私から申し上げたいと
思います。
まず
一つ目でございますが、これが一番大きな
お願いでございます。
調書にだけ重きを置く
捜査や
公判のやり方を是非改めていただきたいということでございます。
調書に重きを置く限り、今回と同じようなことが今後も必ず起きます。客観的な
証拠や
公判での証言が重視をされる方向に是非改めていただきたいと
思います。
検察の
取調べは言わば密室でございます。そして、
検察官が一方的に主導権を握っておられます。こうした
状況下で私は二十日間
取調べを受けました。これも非常に長く感じました。でも、実際に偽の
証明書を作ってしまった元係長さんはその倍の四十日間、それから凜の会の会長さんは八十日間、大変御高齢の方ですけれども、
取調べを受けています。
公判であれば、公開の場で
検察側、弁護側それから裁判官の方から多角的に尋問をすることができます。そうしたものがより重視されるという方が本来のあるべき姿ではないかというふうに考えます。
二つ目は、そうはいっても、
調書を重視する今の制度が簡単には変わらない、あるいは時間が掛かるのかもしれません。それまでの間、是非、
取調べについて全面的な録画、録音をしていただきたいというふうに
思います。
今回、私がかかわったという
調書に
サインをした
方々は、法廷で次々と
調書の
内容を
否定をして、不当な
取調べを受けたというふうに主張をされました。その一方で、
取調べに当たった
検事さんが六人も証人に立って、
取調べは適切にやりましたということを主張をされました。密室の中の出来事ですから、双方がそのように主張をされて、完全な水掛け論で、実際はどうだったかということは全く分かりませんでした。
検察が
検察の主導の下で密室の中で作った
調書については、やはり当然に
検察の側がそれが適正であるということを証明すべき、その挙証
責任を負うべきだというふうに
思います。そのために客観的な証明、すなわち
取調べの全過程の録画、録音が不可欠というふうに私は考えております。
また、任意の
取調べについてですが、すぐにできることとして、自分で
取調べを録音することは法律上禁止されていないということをきちんと確認をしていただきたいと
思います。これは既にその旨の国会
答弁が、昨年の十月でしたか、参議院の法務
委員会であったというふうに承知をしております。ただ、もちろん制度として
検察の側できちんと録画や録音をされるようになれば更に良いというふうに考えます。
三つ目は、客観的
証拠の開示を是非拡充をしていただき、また今回の
改ざんのようなことが起こらないように、
証拠の管理が適正に行われるようにしていただきたいということです。
家宅
捜査で
証拠品を押収することは
検察や警察にしかできないことです。弁護側や裁判官はそういうことができません。
検察が真実の追求をするという
公共の利益を代表する者であるのであれば、いわゆる消極
証拠も含めて客観
証拠をきちんと弁護側に開示をしていただきたいというふうに考えます。
四つ目は、弁護人の立会いの強化です。
弁護人の方が
取調べに全て立ち会うということは、今二十日も
取調べがあるというような
状況では非現実的だとは
思いますが、最低限
調書に
サインするときぐらいは、少なくとも
調書の
内容について弁護人としっかりと
相談をできるようにしていただきたいというふうに考えます。
五つ目は、
検察の
組織の
在り方の見直しを是非しっかりやっていただきたいということでございます。
今回の
事件で大変私の
印象に残った言葉がございます。これは、
大阪地検の元
特捜部の部長さんであった、
特捜部長さんであった大坪さんの言葉でございます。一片の私心なく
検察のために尽くしてきたというふうにおっしゃっておられました。私も公務員でございますが、随分この言葉は我々の感覚と違うな、
国民のためとか
公共のためという言い方を一般の公務員はするんではないかなというふうに感じました。
組織に対する
思い入れの強さ、忠誠心の強さというのが非常に強烈に
印象に残りました。このことは、
検察という
組織の強さの源でもあり、またその危うさの源でもあるのではないかというふうに感じました。だからこそ、
人事や
教育なども含めた
組織の
在り方というのが非常に重要だというふうに考えております。
検察の
在り方検討会で多くの提言がなされ、法務大臣からその実施について指示があったことは大変意味のあることだというふうに考えております。具体的に五つ申し上げたいと
思います。
一つは、是非
組織全体としてのミッションを明確化してほしいと
思います。
検察官個々人の倫理規程の前に、まず
検察という
組織全体のミッション、特に公益の代表者であること、そして真実の追求、公正な裁判の実現を担っているということを再確認をして、それを
組織のメンバーに徹底をしていただきたいというふうに考えます。
二つ目は、倫理規程の策定です。
検事さんたちは非常に強い
権限を持っておられますので、
組織のミッションの下で仕事をしていく上でのお一人お一人の
検察官のよって立つべき倫理規程を明文化をしていただき、徹底をしていただきたいというふうに
思います。
三つ目は、こうしたミッションや倫理規程が大切にされるような
教育や
人事評価をしていただきたいということです。
それから、四つ目はチェック体制です。どんなに
検事さんたちが基本的には立派な方であっても、あるいは
組織として努力をしても、どうしても間違った方向へ行く人、暴走する人というのはどの
組織にあっても必ず出てきます。それを
組織として止めることのできるチェックシステムを是非つくっていただきたいと
思います。決裁ルート、縦のチェックを幾ら厳しくしても、恐らく問題は解決しないだろうと思っております。横からのチェックの仕組みあるいは
権限の分割が必要だと考えます。
また、
組織として監察のシステムを是非構築をしていただきたいと
思います。不正をチェックするという狭い意味ではなくて、十分な
捜査が行われたかとか、
証拠の評価が適正かとかいった、仕事の水準がきちんとしているかということをチェックをして業務指導するという意味での監察を是非やっていただきたいと
思います。
最後は、外部の目、外部の風を是非入れていただきたいと
思います。
検察という
組織は、その仕事の
内容もあって非常にやはり閉鎖的な
組織という
印象がいたします。先般の最高検の
検証過程において、私
自身もそうですが、私も含めて外部の
事件の関係者から全く事情を聴かなかったというのは、これはさすがに大変驚きました。外部からの目や風が入らない
組織というのはどうしても
国民のニーズ、現状から遊離をするのではないでしょうか。評価や監視をするところに第三者を入れるということも意味があるというふうに
思いますが、更に効果があるのは、
検察の中で共に働く人として多様な職種や人材を取り入れることがいいのではないかというふうに
思います。
最後になりますが、率直に申し上げて、最高検の
検証が出たときには、その
検証が何の
問題点も解明をしてくれなかったというふうに
思いまして大変落胆をいたしました。
在り方検討会の提言については、
検察の
問題点について直視をしていただいて、改善の方策について課題設定をしていただいたというふうに
思いました。ただ、
取調べの録音、録画の問題ですとか新しい刑事司法制度の構築といった大きな問題については試行とか検討とかいう言葉が並んで、このまま先送りをされてしまうんではないかという不安もありました。
でも、その後報道で、法務大臣から全過程の録音、録画を含む試行の実施や様々な検討に関しても具体的な期限を切った指示をしていただいたということ、また
検事総長もそれを受け止められたということを聞きまして、
改革が進んでいくのではないかという大きな期待を持っているところでございます。どうか
改革が前に進むよう、大臣の御指導、そして
先生方、国会での監視をよろしく
お願いをしたいと
思います。
また、随分偉そうなことを申し上げましたが、いずれにしろ、今回の
事件は
厚生労働省で起きた
不祥事でございます。私もその管理
責任を問われる立場にございます。元係長さんの裁判が続いておりますが、それが終われば処分ということもあろうかと
思います。それはしっかり受け止めて、役所の
信頼回復にも努力をしたいと考えております。
また、この
事件だけではなくて、今回の報道等を通じてですが、役人というのは議員案件でもあれば何でもするんだということ、それから、
先生方に叱られるかもしれませんが、議員は変なことを頼んでくるんだということがマスコミを通じて流されて、それをたくさんの方が信じたということがあるわけでございます。そのことをしっかりと真剣に受け止めて、公務員がきちんと
国民から
信頼をしていただけるように更に努力をしたいというふうに考えております。
私からは以上でございます。
ありがとうございます。