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参考人(
岡芳明君) 岡でございます。よろしくお願いします。
資料に基づいて御説明させていただきたいと思います。
資料の二ページ、一枚目の下に
福島第一
原子力発電所がございます。御存じのように、一号機から四号機が今問題になっております。四号機は
停止中だったんですけれども、一、二、三号機が動いておりました。
日本で非常に
初期のころの
発電所でございます。
二枚目へ行きまして、三ページですけれども、
事故の
発生なんですけれども、
地震で
原子炉は運転していたものは
停止をしまして、それで
地震は
想定していたより大きかったわけですけれども、非
常用の
設備等は動いております。そういう
意味で、
耐震設計上のマージンの中で何とか動いたということなんですが、その後、一時間後ぐらいに
津波が来まして、
海水取り入れ用の
ポンプとか、あるいは非
常用ディーゼル発電機とかが損傷いたしまして、いわゆる全
交流電源喪失、
ポンプなんかの
電源が
喪失してしまう、
外部からの
電源は
地震のときになくなったんですけれども。それともう
一つ、
海水に除去した熱を捨てる
システムになっているんですけれども、それも失われてしまったということで、いわゆる
想定を超えた
過酷事故という
状況が生じました。
ただ、
過酷事故に対しては、
運転員等がいろいろなそれ以外の
消火系の
設備等を用いて対処するということは
手順としてございまして、それを開始したということでございます。
それから、
交流電源がない場合に、
設備としては
原子炉隔離時
冷却系という、余熱の
蒸気でできる、
蒸気を使って
蒸気タービンを回して
ポンプを回すという
システム、あるいは
蒸気を
配管に導いて凝縮して戻すという、そういう
システムがございまして、これは動いたんですけれど、短いものは半日ぐらい、長いもので二、三日ということで、
制御用の
直流電源がなくなってしまって止まってしまったということになります。
こういうことで、水の
蒸発しか除熱されなくなりまして、
水位が下がりまして
燃料が露出をして、
燃料と
被覆管の
相互作用で
水素が
発生をして、それが
建屋にたまってということになってしまいました。今の
交流電源喪失と
放熱先の
喪失は共通ですので、四号機まで
危機になってしまったということでございます。
五、六号機は、非
常用電源が動いたということと、電気をお互いに供給するという、これは先ほどの
過酷事故対応の
手順の
一つなんですけど、それを行ったために
危機にはなっておりません。
四ページですけれど、下に
沸騰水型原子炉のあれがございますが、今の
状況は、上の、
原子炉建屋の四階に
燃料交換フロアがあるんですけど、これが一号機は
水素爆発で吹っ飛んでおります。それから、三号機はもう少し下の方から
爆発しているんですけど、それから四号機は右にあります
使用済燃料プールに大量の
燃料がございまして、これが
水位が下がったということでございます。
それから、
格納容器については、
原子炉容器の外側に
格納容器というものがあるんですけれど、これは、二号機については、下部の
トーラスといいますか、ドーナツみたいなところの上の方、
基層部といいますけど、ここで損傷があるんじゃないかと言われております。
それから、
原子炉容器については、二号機については
底部でリークしているんではないか、そのほかの号機についても、
配管等がいろいろありますので、完全にリークタイトにはなっていないんではないかという
推測がなされております。
次の五ページ、六ページでございますが、一号機は
爆発後、上の方が吹っ飛んで鉄骨だけになってございます。
対策ですけれど、今、注水をして、それの
蒸発で
冷却をするということでございます。目標は
冷温停止といいますか、
原子炉を百度C以下に下げるということでございますが、このために
格納容器を水で満たして、
外部から
熱交換器をつないで
冷却をしたいという
作業が進んでいるということでございます。それからもう
一つは、
線量低減のために、
局所排風機を
建物に付けまして、それで
低減をしたいということですが、昨日の情報では、まだあの
建屋の中に高い
線量のところがあるので、
放射線遮蔽を使って
作業をしたいというふうなことが出ております。ここで、一号機でやっておりますことをほかの二号機、三号機にも適用していきたいというふうに
考えていると思います。
それから、二号機につきましては、
原子炉容器の
底部がリークしておりますので、冷やした水がそこから流出しているようでございまして、
原子炉建屋、それからタービン
建屋の方に高い放射能濃度の汚染水が出てしまっているということで、これが問題になっておりました。実施中の方策としては、タービン
建屋にたまったその汚染水を、廃棄物処理
建屋といいますか、そういうところに移して処理をしてまた再利用をしたいということと、先ほど一号機でやったようなところをやりたい、それから
格納容器が損傷しておりますので、これを粘着セメントで補修をしたいと言っております。高い
放射線量が全ての
作業を遅らせていると思いますけれど、補修がうまくいかなくて
格納容器が完全に密閉できないときは、上の写真にありますように、
原子炉の
建屋自身は大きく損傷しておりませんので、これを格納機能として使うことができるんではないかと思います。
それから、三号機ですけれど、九ページでございますが、
爆発の写真が出ておりますが、上の方に
爆発しております。これはよく見ますと、デブリといいましてコンクリートのようなものが一緒に上に飛んでいるということで、右に写真がありますが、かなり上部の、四階だけじゃなくて、ちょっと下の方から
爆発したということがあるということでございます。幸い、
格納容器は損傷していないんじゃないかというふうに言われておりますので、まず一号機と同様、
格納容器を水で満たして冷やしたいと。
ただ、デブリが高い
放射線量、これは
原子炉の周りのそういう
構造物が吹っ飛んだということで、そこは元々放射化していて
線量が高いんだと思うんですが、そういうことでそれを片付けないといけない。徐々に片付けて、特に外に散らばっているものは片付けていると理解しておりますが、中も片付けないといけないんではないかということで、これは
建屋に覆いを付けたりをして、全体、最後収める必要があるんではないかと思います。
それから、四号機につきましては
水素爆発があったんですけれど、これは多分三号機側から
水素が空調系を通じて回り込んだんではないかと思います。
燃料は幸い損傷していない様子でございます。これは初め損傷しているという話で、随分時間を使ったと思いますけれど、損傷していない。使用済
燃料交換のときは
原子炉容器の上の方にたくさん水がありますので、水で
蒸発はしていましたけれどということです。それからあと、プールについては壁が少し弱くなっているので補強をしないといけないということで、今そういうことが行われて、プールについて循環
冷却をして、プールの水温を安定化させるという
作業が残っていると思います。
それから、十三ページに行きまして、放射性物質で汚染された水でございますが、汚染水は今は流出は止まって、今度は立て坑を埋めてもっと流出を防ぎたいということで、あと低濃度の汚染水等を含めてバージとかタンクで貯留したいと。それから、サイトの土壌ですけれど、これは飛散しないように何か薬品をまいて、飛散しないような抑制が行われております。
十五ページでございますが、まとめますと、炉心を注水で
冷却継続することが
水素の
発生と
爆発を防止するためにまず最重要でございまして、これが長く続けられていると。次のステップは、
熱交換器を持つ
冷却系をつなぐということでございます。プールについては
冷却系をつないで
冷却するということで、時間が残念ながら掛かっているのは、高い
放射線量と
設備の製作に時間が掛かるためと理解をしております。
それから、政府の対応に対する所見も申し述べるように言われておりますので、僣越ながら申し上げさせていただきますと、大震災で、
初期は交通、
外部電源、それから多分通信網、非常に悪かったんだと思うんですが、皆さんよく努力したんだと思います。それから、
発電所サイトの
事故の収束は、やはり当事者が一番知っておりますし、支援
体制もできておりますので、それを支援する
体制がいいんではないかと。政府の役割はサイト外、避難地域、それから
日本の陸海域、それから海外対応ということではないかと思います。
十七ページでございますが、政府のおやりになっておられることは
原子力災害特別
措置法等に沿って行われているということは理解しておりますけれど、もう少し何かやはり、皆同じだと思うんですけど、住民の配慮というのがもうちょっとあればというふうな感じがいたします。例えば、避難しなさいよということではなくて、もう少し避難住民の暮らしの維持というのを何とかならないかなということでございます。
反省点としては、一生懸命やっているんだけど、
事故収束がどうしても遅くなっているということと、情報開示、発信もやはり非常に不十分なところもあるんではないかと。この辺りは、省庁縦割り、お上意識、責任
体制と書かせていただいておりますけど、
日本の言われております弊害が露呈をしておると。中国、韓国も非常に強い仕組みがありますので、この辺りは、
事故だけじゃなくて、
日本の課題ということではないかと思います。
それから、もう
一つ申し上げたいのは、再度の大量放射性物質の放出の
可能性は非常に低いんじゃないかと思います。今、多分避難を解除する条件として
冷温停止というのが求められていると
考えている方が多いと、私もそう
考えていたんですけど、先ほども住民の方のこともありまして、もうちょっと何かと思いまして
考えましたところ、やはり非常に低くなっている。というのは、
冷却に失敗をする
可能性は非常に低いということと、それから放射性物質はもうかなり減衰しているということで、何かいい方策はないんでしょうかということで、安全側に
考えるだけじゃなくて、早く解除できないかとの方向で検討されたことはあるのかどうか、もちろん検討されたことはあるんだと思うんですが、知りませんので、勝手に書かせていただきました。
それから、避難地域等の除染でございますが、
放射線管理の方針、できるだけ合理的に低くという方針に従えば、
線量低減を表土の入替え等によって行うのが適当だと思います。こういうことは防災指針にも書かれております。
それから、避難地域の生活支援策、ちょっと重複しますけど、やはり非常にもう生活が破壊されるということで、非常に申し訳ないお気の毒な
状況になっているかと思います。それから、セシウムがまだ残っているわけですけど、昔、大気中核実験というのが一九六〇年代にございまして、大体今の千倍ぐらい濃度がございました。現在も、再浮遊といいまして、黄砂とともに大陸から飛んできます。こういうときの経験、植物への取り込みの経験等ございます。それからチェルノブイリの経験もございますので、何かこういうことにもやはり国は意を用いるんではないかと思います。
それから、もう
一つ申し上げたいのは二十一ページで、安全確保というのは常に安全側に
考えることになっております。安全屋さんというのは常にそう
考えるんですけれども、これを避難地域に対しても本当にこれでいいのかと思います。というのは、避難による被害の方が健康被害よりも大きいんではないかという感じもいたします。
放射線障害は
山下先生御
専門ですけれども、あるレベル以下ではグレーな
領域といいますか、低いけれどもなるべく下げた方がいいけれどもというそういう
領域で、はっきり決まっていない。ただ、
考え方としては直線を引いて、少しの
放射線でも害があると
考えようということになっている。
ちなみに、今は二十ミリシーベルト・パー・イヤーを避難の
基準になっていますけれども、積算
線量として百ミリシーベルトを月でいいと、一年積算しなくていいと言っているオックスフォード大学の教授もおりますので、この辺りはもう既に決めて運用しておられますので云々するべきではないかもしれませんが、そういうグレーな
領域ということでございます。
それから風評被害ですけれども、私は
事故の進展しているときはカナダ・バンクーバーにおりましてテレビを見ていたんですけれども、あの
爆発を何度も映しまして、はっきり言って言いたい放題といいますか、内閣府の方が出ておられましたけれども、多勢に無勢といいますか、そういうことで、やはり風評被害を含めて外国語での発信が
初期は非常に少なかったんだと思います。
このときに、単に事実を話すだけじゃなくて、低
線量健康影響の話とか風評被害防止の観点で、やはりジャーナリズムといいますか、そういう方が御覧になるような
視点で
専門的に発信される方はやはり、これは
原子力災害に限らず必要なんではないかと思います。
それから、インターネットなんかも普及しておりますので、こちらの方でどういうことだったかということもあるかと思います。
それから、今後の
原子力安全確保
対策ですけれども、安全確保の仕組みの抜本的改善が必要だと思います。
原子力規制というのは、もう一貫して細かい強化はなされてきましたし、ジェー・シー・オーの後は保安院もできておりまして、仕組みとかそういうのはできているんですけれども、今回はそういうことでは駄目だったと。
具体的には、大
津波、大震災、全
交流電源喪失、最終
放熱先喪失対策、共倒れ防止
対策とかいうことである。さらに、
原子炉を開発するとしたら、炉心溶融
事故が生じても避難をしなくてもよい
原子炉、
原子力発電所を設計するとか、そういう課題があるんではないかと思います。
まとめまして今申し上げましたので、ちょっと時間もございますのでまとめのところは省略させていただきます。
それから二十五ページでございますが、二十五ページの一番上に書いてありますのは、千年に一回の大
津波、貞観
津波というのを見落としたということですけれども、やはり全員予測できなかったということではないかと思います。
考えますと、東海、東南海・南海の連動というのは、これは警戒しているんでしょうか。浜岡のことだけではないんだと思う。もしこれで中部から関西がやられたら、
日本は大変な大
災害になって大変なことになると思います。
それ以外については、既存
原発について、やはり主要点に六か月以内ぐらいで早急に結論を出して
調査をして、要点について結論を出して
調査をして、ちゃんと国がまとめるべきだと思います。
それから、風評被害の防止は、そういう技術的な
対策以外にもっと必要だと。やはり
専門家の育成というのも重要だと思います。
それから、個人的な印象になりますけれども、先ほどの低
線量被曝のことから
考えますと、やはり非常に大きな影響をこの
事故が与えているということは残念でございます。
原子力発電というのは、
歴史的にも公衆の死亡被害が非常に少ない
分野です。今のところチェルノブイリだけということでございます。低
線量被曝の健康被害の正しい理解というのは期待したいと思います。
それから、
原子力の役割、最後に書かせていただきましたが、やはり国家安全保障の一環、それから電力の安定、安価な供給という役割があると思います。韓国は
原子力発電開始以来、電気料金がほとんど上がっておりません、三十年間。これは、韓国の
経済成長を
原子力発電が支えたと国際
会議で何度も堂々と発表いたします。
あと、ちょっと話が違いますけれども、ユッケによる食品中毒が問題になるという、これは
放射線殺菌で完全に解決できます。米国ではこれを行われております。規制するとかいうことじゃなくて、
日本は
放射線に対するアレルギーがあってこれなかなか行われていないんですが、これもちょっと改善しないといけないということで。
原子力発電所は
日本人が能力を発揮している
分野で、この
事故の教訓を生かして高い技術を持って発展してほしいと期待しております。
以上でございます。