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仁志田参考人 御
紹介いただきました、
福島県
伊達市長の
仁志田昇司と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
このような場にお招きいただきまして、本当に大変光栄に思っているところでございますけれ
ども、なぜ呼ばれたかということにつきましては、今
福島県は、
放射能被害があるわけでございまして、特に
子供の
父兄の方から強い不安が寄せられておりまして、そうした中で、
学校の
表土をはぐという手段によって
放射能の
低減を、
線量の
低減を図ったということについて
お話をしたいと思います。
それでは、お手元に
資料をお配りしてありますので、そして
レジュメも用意しましたので、これに基づいて御説明を申し上げたいと思います。
まず、
伊達市でございますけれ
ども、
福島県
伊達市は、五年前に合併した新しい市でございまして、五つの町が集まって、六万七千人の人口の、
農村地帯の町でございます。
位置といたしましては、これは三
ページを見ていただきたいと思いますけれ
ども、
積算線量推定マップの中で左上の方が
伊達市でございます。
原発地域から約六十キロ離れておるわけですけれ
ども、
北西方向に
放射線が風に乗って来ているという
状況にあります。
それで、
小学校、
中学校につきましては、五
ページを見ていただきたいと思いますけれ
ども、
伊達市立の
小学校は二十一校ございます。
中学校が六校ございます。そのほか、
地図には落としてありませんけれ
ども、
幼稚園が公私立合わせて十五園、保育園が
認可外も入れまして十三園、計二十八園あるわけでございます。これらがすべて、これから
お話しする
放射能ということについて
父兄の方から大きな不安が寄せられている、こういうことでございます。
伊達市の
被害としまして、
地震で
小学校二校が使用不能になりまして、これは今バスで通っておりますけれ
ども、そうした
地震の
被害の
対策よりも、これから
お話しする
子供たちの
放射能の
対策、それから、これから具体的になってくるであろう農産物の
風評被害も含めた
放射能の
被害といいますか、そうしたことがこれからの課題であろうと。
当初、六十キロも離れておりますと、そんなに
放射能は怖くはないというふうに私も市民に言っておりました。距離の自乗に反比例するということですから、離れても大丈夫だと。しかし、一週間もしないうちに
原発地帯から
避難する方がどんどん来まして、一時は千七百人近くの方が
伊達市に
避難してきました。現在でも百人を超えてまだいらっしゃるんですけれ
ども。
そして、
伊達市は、
計画的避難区域ということで今回指定されました
飯舘村と川俣町に隣接しているということでありまして、かつまた、
伊達市の一部については、
計画的避難区域であるが今回は検討から外したという
官房長官の
発言もありましたように、
伊達市においても、そういう部分があるということでございます。
それで、当初、
放射能はそんなに心配ないと思っていましたけれ
ども、十日ぐらいしたときにSPEEDIの公表があって、そして
現実に
飯舘村とかが高いということになりまして、私
どもの
伊達市も、はかってみると。ただ、はかる器械もないという
状況の中で、急遽借りてきまして、はかってみると高いということで、そして
学校ということから県の方も測定をいたしまして、四月の初めには、かなり高い
学校がある、こういうことはわかっておりまして、はて、どうしたものかということでございました。
いろいろ識者の
意見を聞いたり新聞を読みますと、
表土をはぐということが効果があるということで、それをお聞きしましたので、それからまた、そうこうしているうちに、
文科省の方から、
暫定基準で年間二十
ミリシーベルト以下である、三・八
マイクロシーベルト以上であれば
屋外活動は控えなくてはならないけれ
ども、逆に、三・八未満であれば
屋外活動も含めて大丈夫だ、こういうものが示されたわけでありますけれ
ども、この三・八を超えているところが、実は三カ所、
幼稚園一カ所、
小学校二カ所あったものですから、これについてどうするかと。
このことについては、
放射能的には大丈夫だということでございますけれ
ども、
屋外活動が制限されるということは、
子供の心身の発育ということを考えた場合に、やはり
子供は表で元気に遊ぶということが大事なのではないかというような思いから、これを何とかクリアする方法がないのかと。そうすると、思いつくというよりも、具体的にあるのは
表土をはぐしかないなということで、そのことにつきまして、では、我々も実験してみようということでやったものがあります。
それは四月二十七日のもので、六
ページをお開きいただきたいと思います。
六
ページに写真が載っておりますけれ
ども、
伊達市霊山町
小国小学校でございますが、ここに一・八メートル四方の区画を広げまして、そして、そのとき、一メートルで四・三六
マイクロシーベルト、五十センチで四・八二でありました。
地上の一センチでは五・五四ということだったんですね。
これを三センチ、それから五センチ、十センチ、六
ページ、七
ページにその模様が載っておりますけれ
ども、やってみましたところ、三センチでも、五センチになればさらに、三センチで一・七八、五センチで一・三五
マイクロシーベルト、十センチ掘れば一・〇五になる、こういうことであります。
しかし、一方において、七
ページの一番下にありますように、その掘った土、
表土を集めるとどのぐらい残留
放射能といいますかあるかというと、四・六
マイクロシーベルトある、こういうことなんです。
その残土をどうするかという問題はあったんですけれ
ども、残土はどこかに仮置きしようということで、財産区の山林に置くことにしたんです。これは残念ながら
周辺住民の理解が得られなくて、結局は
小学校校庭に置かざるを得ないということでありますけれ
ども、実施しようということで実施したものが八
ページでございまして、これは
小国小学校について具体的に実施いたしました。写真のように工事をしたわけでございまして、残土につきましては、ブルーシートといいますか、遮へいシートをかけて校庭の片隅にこのように置いてある。
これは面積で八千平米ぐらいのところでございまして、工事費は百六十万でございます。処理土も五百三十六立米ということですから、トン数にしても四百トンくらいのものがあるということですので、かなり小山のようになっているということでございます。
それから、
学校が休みということで二十九、三十日でやったんですけれ
ども、八
ページが
小国小学校で、次の
ページ、九
ページは富成
小学校でございます。
これも同様に工事をいたしました。これは
幼稚園と合わせまして、次の
ページが
幼稚園でございますけれ
ども、工事費で百八十万かかっております。面積は七千三百平米ということでございます。
幼稚園の方は三十三平米ぐらいでございまして、非常に狭いんですけれ
ども、遊具があったり花壇があったり、もう手でやらざるを得ないというところもありまして、工事業者の方には、お願いして丁寧にやっていただいた。
ここが狭いんですね。ですから、仮置きにつきましては、富成
小学校がすぐそばにありますので、これにつきましては富成
小学校の仮置きのところに一緒に置いた、こういうことを実施したわけでございます。
福島県内においては、私
どもより数日早く郡山市さんの方でも実施されておりまして、これはそれぞれ独自に検討した結果、実施したということでございます。
では、
レジュメの方に戻っていただきまして、そういうことでやってまいりましたが、この
表土の処理につきましては、このままでいいというわけにはまいらないのは当然でありまして、このことについての扱いについては、五月初めに、一日でしたか、文科
大臣まで、
福島市長、郡山市長、私
どもと一緒に陳情もしておりまして、この処理について国の指示をいただきたいと。
と申しますのは、産業廃棄物等の
法律上の定めはあるんですけれ
ども、すべて
放射性物質は除くと書いておりまして、要するに、放射性の物質が入ったものについての処理というのは定めがないというのが実情であって、仮置きせざるを得ないということであります。
今回、国においていろいろ試験をされまして、
表土入れかえ方式とか、あるいは取った
表土について穴を掘って埋めるとか、そういうことについて具体的に、そういうことをやってもよろしいということをいただきまして、これは非常にわかりやすいというふうに思っておりますけれ
ども、ただ、仮置きであるということについては余り変わりはないので、いずれきちっとした最終処分というものが必要になるのではないか。
天地法というのは、そういう
意味でいうと、その場合、全部もう一回削り直すのかなというふうにも思うんですけれ
ども、ただ、こういう軽い、軽度のといいますか、あるいは微弱のといいますか、そういうものはそのままでいいというような定めになればそのままでいいんでしょうけれ
ども、その辺のところは、これから具体的に国においてお示しいただければありがたいというふうに思っております。
レジュメの五番に参りまして、
暫定基準三・八ということに対しましては、保護者からは、大変強い、これでいいのかというふうなことを我々市町村長に本当にたくさん寄せられておるわけです。
この辺につきましては、私も、大人と
子供が同じでいいのかとか言われましても、何とも説明のしようがないということです。私としては、大人も
子供も同じだとは言えないので、
子供にとっても安全で、大人にとっては十分安全だけれ
どもというふうに言っているところなんです。
私としましては、
行政機関の一員として、国の示した基準に従うということでやっておりますから、私
どもも、三・〇を超えている
学校はほかにも多数あるんですけれ
ども、それもやれ、あるいは二マイクロでもやってくれという声は非常に強いんですが、それは国が定めた三・八を超えていないんだから、大丈夫だから遊びなさい、安心しなさいと言っているんです。
学校の先生も、保護者からそういうふうに言われると、
子供を表に出せないとか、あるいはその
子供だけを別にするとか、非常に扱いに苦慮しているということでありまして、このことについては、国の方から何かそういった説明をしていただければというふうに思うところであります。
そして六番に、そういうことに対する我々首長の
立場といいますか、これはなかなか厳しいものがあるというのは申し上げたとおりでございますけれ
ども、自分でもはぐというようなことも言っている
父兄もいるんです。
私は、これに対してはだめだと言っております。それはもちろん、剥離した
表土の扱いとかが決まっていないこともあるし、一応三・八というのが示されているんだから、勝手な行動はするべきでない、こういうことなんです。
そういう
意味で、
資料の一番最後に、十一
ページ、十二
ページに、これは震災後、特に
放射能の問題が出てきてから、そうした市民の不安を解消するために、「だて市政だより」ということで、臨時号、災害
対策号というのを一週間に一遍出しております。
これの編集方針は、とにかく軽挙妄動しないで、
放射能に対して、一定のしっかりした考え方で対応するようにしよう、そのことについては、市もきちっと皆さんに場合によっては指示をするから、それまで勝手に
避難したりとか、そういうことをしてはならないという基本的な態度で当たっているところでございます。
しかしながら、そういう中でも、やはり
父兄の
子供を思う気持ちというのは強いものがあって、ほかの市ではやったのに、なぜ当市はやらないのかと。
伊達市でいうと、私は三・八という基準を守っている。ただ、
表土をはいだのは、外で
子供の行動が制限されるのをクリアしたいからやっただけであって、それ以外はやらないと言っているんですけれ
ども、市によっては二・幾つとか、三・八の半分だから一・九ですね、それでやるとかというようなことで検討されている市もあるんですけれ
ども、そういうふうにしますと、今言ったように、なぜほかがやっているのにここはやらないんだ、こういう話になるんですね。
こういうことについては、なかなかやはり、選挙で選ばれる
立場になると非常に苦しいものがあるわけでございまして、心ならずも、もしくは積極的な政治的判断でやられる方もいるんですけれ
ども、この辺は、やはりきちっとした基準があって取り組むべきではないか。
それから最後に、剥離による効果と国
暫定基準の
低減の可能性ということで、
意見といいますか、私
どもも、三・八ではやりましたけれ
ども、それ以下についてどうするかというのは非常に大きな悩みでございまして、いろいろ検討しております。
表土剥離には一定の効果があることは明らかでありますから、
先ほど御説明しましたように、はげば一マイクロ以下になるということであります。そうすると、三・八と一マイクロを比較しますと、単純に言うと、これを年間累積に直せば五・三
ミリシーベルトになるのではないか。つまり、四分の一に標準を下げても別に問題ないのではないか。
つまり、全部
表土をはいでしまえば、三・八が高いとか低いとかという
議論に対しては、下げることも可能でありますし、逆に三・八を、これは医学的あるいは学術的に問題ないんだという
立場であっても、下げる努力をしていくということになると、年間累積
シーベルトで一ミリ以下という国際的な標準からすれば、いろいろなことをやれば一ミリ以下にもできないわけでもないのではないかなと。
表土をはいだだけでは今四分の一ぐらいでありますけれ
ども、そのほかのことを考えれば何とかなるのではないかというふうに思っております。そういう
意味では、校舎の洗浄とかそういうこともやる。
また、あと今、これからプールの季節になりますけれ
ども、プールで泳がせることについていかがかというのももう既に問題が惹起しておりまして、ほとんどの校長はことしはやめますと言っておりますけれ
ども、しかしこれも、表で
子供を遊ばせることは心身の発育上極めて重要だというふうな観点に立てば、プールをことしはやめだというのを軽々に言うべきではないのではないかと私は思っておりまして、何とかしろというふうに
教育委員会には言っているところでございます。
それから、もう一つ最後に、
幼稚園、保育園児への対応ということでは、
幼稚園児等の行動については、もちろん背がかなり低いということもありますけれ
ども、園庭にしゃ
がんだり、寝転んだり、お友達と土いじりしたり、そういうことが実態としてある。そうするとこれは、小学生で五十センチの
放射線量とかいうような
被曝の問題ではなくて、食べるというようなことから、内部
被曝的な話になるのではないかと。
これも
父兄から強い話がありまして、いろいろ聞いていますとなるほどなというふうに思うところがありますので、
伊達市といたしましては、国の定めた三・八というものを逸脱するつもりはありませんけれ
ども、それとは別の考え方で内部
被曝を避けるというような
意味においては、
伊達市には二十八、
幼稚園、保育園がありますけれ
ども、これらについては実施するということでただいま検討しているということを御報告申し上げたいと思います。
以上、
伊達市から、今の取り組みについて御報告させていただきました。
どうもありがとうございました。(拍手)