○服部
参考人 皆さん、おはようございます。立教大学の服部でございます。
私は、
平成十一年、十二年ほど前に東京の渋谷区で渋谷区第一号のNPO法人を設立いたしまして、
居宅介護支援、
ケアマネジメントだけの
事業をやってまいりました。私も非常勤の
ケアマネジャーの一人として、ずっと
在宅のプランをつくってまいりました。その意味から、きょうは、
在宅を
中心にして、今回の
介護保険法の
改正に関して、現場の
実態と
意見を申し上げさせていただきます。
お
手元に、パワーポイントの形の
資料と、
全国二千名の
ケアマネジャーさんからいただきました、
介護保険の未来を考える
ケアマネジャーの会の
資料を用意させていただきました。きょうは、パワーポイントの
資料を
中心にお話をさせていただきます。
まず、
介護保険の
利用者は、昨年の段階で二倍になりました。
介護保険が入って二倍になりました。どこで
介護サービスを
利用しているかということでございますが、その七二%は
自宅でございます。
予防も
介護も含めて、
自宅で
サービスを
利用されている方が全
利用者の七二%でございます。
二枚目のパワーポイントを見ていただきますと、その
自宅で
サービスを
利用されている方の要
介護度がどのようになっているかというのが二枚目でございます。要支援一、二の
予防給付が約三割です。そして、要
介護度一が二一%、要
介護度二が二一%、あわせて、
自宅で
介護保険を
利用されている方は七割以上が要支援から要
介護度二、いわゆる今軽度者と言われているものでございます。要
介護度五と認定された方は、既に六割は
施設入所です。要
介護度四と認定された方も半数は
施設入所をしております。このような
実態で、
在宅で
介護保険を
利用されながら
生活をしている人は非常に軽度者が多い、国で言うところの軽度者ということでございます。
では、どのような理由で
介護保険を
利用されているかということですが、その下の
国民生活基礎調査のデータによりますと、四人に一人は脳血管疾患、脳溢血、脳梗塞、脳出血でございます。そうしますと、ほぼ片麻痺というものが起こります。歩行ができにくい、嚥下ができにくい、または寝返りができない等々の問題が出てまいります。
そうしますと、たとえ軽度で室内は伝わり歩行ができたとしても、台所に立って料理をするということや、狭いトイレの中でかがんで掃除をしたり、またはおふろ場のすのこを上げておふろ場を掃除したり、片麻痺でつかまりながら掃除機を使うということが、実質困難であります。そのような
方々が掃除や洗濯やまたは調理を専門の
介護職から受けることがどうして
介護保険の
サービスであってはならないのでしょうか。このような
生活を支えることが
基本であると私は思います。
特に、そういうものがなければ、例えば酒屋さんからインスタントラーメンを大量に買い込むとか、または、
在宅から通院が非常にできにくいということでまともな薬が飲めない、または、薬をもらったとしても、超高齢の方で十分な服薬管理ができない。そして、昨年のような場合ですと、熱中症で亡くなることすらある。そして今は、ノロウイルスやまたは寒さによるインフルエンザによる感染。
こういうことで、ちょっと専門職が入って
予防をすれば、体調チェックをすれば、まともな食事を提供すれば、またはごみまみれの中でぜんそくの人が暮らすような
状況を解決すれば救われる
状況、
改善できる
状況が、やはり専門職の
生活援助が入ることによって支えられているというふうに私は思います。
その意味で、今回、
生活援助に関しては、軽度者は
地域支援
事業ということが言われておりますけれ
ども、これは
在宅の多くの
高齢者の悪化につながるというふうに私は思います。
また、
介護が必要になる原因の二番目は
認知症、三番目は老衰でございます。これらの
方々は、
在宅の中で自己の
生活管理が十分できないということで、軽度者であったとしても、その方の命をつないでいくということに専門職が入ることの意義がございます。そのことも含めて、
介護保険の
対象であると私は思います。
そのほか、今回の
介護保険法の改定に関して具体的に
意見を申し上げます。
まず、今話題の定時巡回・
随時対応型の
訪問介護看護でございますが、これは厚生労働省に質問したところでは、
地域包括エリアごとに、つまり
地域包括支援センターのエリアごとに、
基本的には一社を指定するということでございます。これであっては
利用者が選択することができないということで、
介護保険の選択制というものが失われてしまいます。
また、
看護、
介護ということを入れていく要件として、
看護がなかなか入らないからということが言われております。私も元
看護職でございますが、
在宅で
介護と
看護の割合を見れば、圧倒的に
介護が
在宅の
生活の中のサポートの中では主要であります。そして、その中で専門的な
対応に関して、
看護も
医療ももちろん大切であります。
看護が入りづらいということは
ケアマネジャーの責任ではなくて、
主治医がしっかりと、この人に訪問
看護が必要であるということを
ケアマネジャーに伝えていただく。そうすれば、それを拒否する
ケアマネジャーはいないだろうと私は思っております。
また、今回問題なのは包括単価。一カ月まとめて、この
介護度なら
看護、
介護で幾らということが決められます。そして、それは
介護度別の限度額の中でその金額が決められます。そうすると、一方では必要な
サービスは同じ単価で受けられるということが言われておりますが、
実態は逆でございます。
平成十八年に
予防訪問介護、
予防通所
介護というのが入りました。そのときは、その総額の枠内で、今までの
サービスの時給に計算をした数しか入っておりません。ですから、
訪問介護に関しては一時間半。
全国どこでも一時間半。まして、五週ある週、一カ月に同じ日が五週ある週は行かないということまで当初言われておりました。
これはある意味では、
サービスを提供する
事業者は、入ったヘルパーさんにお金を払わなければいけない、それを削減するわけにはいかないというその結果として、結局は、各
回数というのは今の
介護報酬の、報酬ごとの限度額の枠内に抑えられてまいります。結果として
利用回数が制限をされるということであります。
この報酬に関して、マルメと言われる定額報酬を導入することが結果としてその枠内でしか
利用できないということで、それをはみ出れば自費になる、ないしは我慢せざるを得ない。また、考えられることとすれば、
看護に関しては
医師が
指示を出せます。そうすると、その結果として、例えば夜間入ろうと何時間入ろうとどういう
ケアをしようと、今回は単価は一緒であります。そうした場合に
看護が
中心にならざるを得ない、私は
看護が
中心にならざるを得ない
利用者もいると思います。
でも、圧倒的な
在宅の
利用者を見ていただきますと、軽度者が多い中で、やはりこの人に何が必要なのかということをしっかり
ケアマネジャーがアセスメントをして、それに即した
サービスが提供できる、そのためには包括単価というのは非常に問題があるというふうに思います。
また、
ケアマネジメントも、今まででしたら、この
利用者にこの時間にこの
サービスが必要だということで働きかけて、それが入っておりました。ところが、一社まとめて
一つの
事業所から提供されますと、その
事業所の
判断、
事業所の意向で結果として
サービスが決まるということにつながりかねない、このような危惧を持っております。
次のページを見ていただきますと、「
自宅の看取りが困難な理由」というのを厚生労働白書で載せております。それの七八・四%、「
介護してくれる
家族に
負担がかかる」。左の、
医師が足りない、訪問
看護が足りない、これの何倍も、
介護負担が
在宅のみとりができない理由になっております。
たとえ毎日
訪問看護師さんが入っていただいて一時間、三日に一度往診の
医師が入って三十分、でも、あとの二十何時間はだれが食事をし、だれが薬を飲ませ、だれが体をふき、だれが向きを変え、褥瘡を
予防していくのか。圧倒的に
介護が必要であります。この
実態の現状を見ても、今回、
介護というのが非常に軽くみなされていくことに対して、大変な危惧を持っております。
あわせて、今回、
高齢者住まい法が既に可決をしまして、施行を待っているところであります。この前提としては、今いる
在宅の方、
施設の方が
高齢者住宅に移り住み、そこに
サービスを併設させて、そこから
サービスを提供するということが前提に考えられております。
ところが、
高齢者は持ち家率が高いんです。一般的に六〇%と言われる中で、
高齢者の持ち家率は八〇%であります。家があるということは、居
場所があります、やることがあります。こういうものを、移り住むことによって死ぬまで家賃を発生させるということが本当に妥当なことでしょうか。
そこで、
サービスを隣に併設するということを考えると、そこの
サービスが入るということで、ある意味では効率的かもしれません。でも、
利用者が選べるという、ここの
生活に対する個別性というものが失われてしまうのではないか、このことに危惧を覚えます。
特に、昨年、
診療報酬では、
一つの建物の中に二回往診をすれば単価を三分の一にする、訪問
看護も訪問リハビリも単価を下げるということが導入されました。それを考えると、今回のことは、結果として、隣にいる、または、まとめて食事を提供する、順番に排せつ介助ができる、順番におふろに入れることができるという効率性から単価を下げられるということで、実質、
サービス事業者にとっても非常に厳しい経営になるのではないか、このようなことの危惧を考えます。
したがって、この中においても、包括単価の見直し、そして
地域の
サービスからも選べるという、この自由性を奪ってはならないと思います。
五ページのところに、小規模多
機能と訪問
看護の複合型ということが今回言われております。なぜ小規模多
機能がふえないか。それは、経営が苦しいからであります。
現在の小規模多
機能の
利用者の平均要
介護度が二・二から二・三、それは、
在宅の
認知症の方とかまたは老老
介護の方にとって、軽度であっても
在宅が
暮らしづらい、その方にとって非常にいい
サービスである。しかし、
重度の方、要
介護度五、要
介護度四の方がこれを
利用するとなりますと、限度額と毎月の定額報酬の差が少ない。その結果として、訪問
看護を必要数を入れると自費が出るという、この
実態でございます。これの中で、さらに
看護も入れて包括単価をすれば、結果としてデイ
サービスやお泊まりや
介護が影響を受けるということで、問題の解決にはならないだろうと私は思います。
したがって、
主治医が認めた場合は訪問
看護を
医療保険で
対応する、こういう
対応が妥当であろうというふうに思います。
次のページを見ていただけますでしょうか。
特別養護老人ホームで待機している方に、何があれば
在宅が継続できるかという質問をさいたま市が行っております。必要なときに
利用できるショートステイがあれば
在宅できる、
在宅サービスの量がふえれば、または
在宅で受けられる
認知症系の
サービスが、
医療系の
サービスが。どんな理由があっても
在宅不可能というのが四二%。四割ぐらいの方は、
在宅サービスの
充実があれば
在宅ができるというふうに言っております。これが特養の待機者の
実態でございます。
下のデータを見ていただきますと、一人当たりの一カ月の
介護費の単価でございます。
居宅は十万三千円、
施設は、それぞれ三
施設ありますけれ
ども、三十万。この
実態を見ると、もちろん
施設は二十四時間
対応ですので、お金がかかるのは当然であります。しかし、より長く
在宅でいることができれば、
介護報酬もその分少なくて済むわけであります。今、
在宅が
暮らしづらくなっているというこの現実に、私は、今回の
介護保険の改定では目を向けるべきではないか、このように考えております。
次のページに参ります。
在宅重視の
介護保険の
充実。独居だから
在宅をあきらめるということではなくて、
在宅で要
介護者があきらめずに暮らす居
場所がある。家具ももちろん持っています。その中で、使いやすい、使えるような
サービス、例えば、厚生労働省も言っておりましたリバースモーゲージも含めて、
自宅と
地域と
介護保険と
医療、この総合的な
ケアマネジメントをしていくこと、このことを再度私は問題提起をしたいと思います。
一番最後、残された時間で
一つ申し上げたいのは、二枚おめくりいただきますと、郡山市の
介護保険課の事務通達というのがございます。
これは何かといいますと、被災地で、福島県でございます、今回の被災の結果、
サービス事業所もその職員も
利用者も被災をしております。そこで、先ほど言われたように、ガソリンがないです。動く手段がない。十二日の朝には、朝の五時ぐらいからガソリンスタンドに人が並んで、避難のためにガソリンを満タンにする、一週間分のガソリンが午後の二時にはなくなる、こういう
実態でございました。
その中で、
訪問介護事業所がなかなか
利用者のところにガソリンがなくて行けない。歩いて行く、自転車で行く、または、そこにいろいろなものを、おむつや何かを届けるということで苦労している
実態があります。それに対して、ガソリンがなくなったのは
事業所の責任だから、包括単価、一カ月の
予防の方に対する月の包括単価を日割り計算で返させるということを厚生労働省はやっております。
これは、被災地の
介護事業所が
自分たちも被災しながらその
利用者のためにやって、それでもなおガソリンがなくなったというのは、その
事業所の責任ではございません。こういうことが実際行われているということに対して、やはりもっと被災地に支援の目を向けていくということ、これをすべきではないか。
このことを最後にこの中で御提案をして、私は、もっと
在宅重視ということで、今回の
介護保険法に関して、今の
制度の中でも、包括単価をやめることによって、または
サービスを
利用者さんが選べるようにすることによって、まだまだ
改善の余地があるというふうに考えます。ぜひ一考をお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)