○志位和夫君 私は、
日本共産党を
代表して、
菅総理に
質問します。(
拍手)
まず、
民主党小沢元
代表の
政治資金疑惑についてです。
検察審査会が、
政治資金規正法違反の罪で起訴すべきだと二度にわたって
判断を下し、強制起訴となったことは極めて重大です。
国会は、
小沢氏の
証人喚問を行い、収支報告書の虚偽記載だけでなく、ゼネコンによるやみ献金疑惑を含めた真相の徹底的な究明を図り、
政治的道義的
責任を明らかにすべきです。同時に、
民主党と
総理自身が約束してきた
企業・
団体献金禁止を直ちに行うべきです。
民主党代表である
総理の
見解を問うものです。
次に、
尖閣諸島問題について
質問します。
私は、この間の
中国漁船衝突事件のような
事態を繰り返させないために何よりも重要なことは、
日本政府が
尖閣諸島の領有の大義を理を尽くして主張することにあると考えます。
日本共産党は、一九七二年に
見解を発表し、
日本の領有には歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。さらに、十月四日、より踏み込んだ
見解を発表し、
日本政府並びに各国
政府に我が党の
見解を伝えています。
尖閣諸島の存在は、古くから
日本にも
中国にも知られていましたが、近代に至るまで、いずれの国の領有にも属さない、国際法で言う無主の地、持ち主のない土地でした。
日本政府は、一八九五年一月十四日の閣議
決定によって
尖閣諸島を
日本領に編入しましたが、これが歴史的には最初の領有行為となりました。これは、無主の地を領有の意思を持って占有する、国際法で言う先占に当たります。そして、それ以降、今日に至るまで、尖閣列島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことがありましたが、
日本による実効支配が続いています。
以上の歴史的事実に照らして、
日本による領有は国際法上明確な根拠があることは明らかですが、まず、
総理に確認しておきたい。
中国側は
尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、
中国が、一八九五年から一九七〇年までの七十五年間、一度も
日本の領有に対して異議も抗議も行っていないという事実にあります。
中国は、一九七〇年代に入ってから、にわかに
尖閣諸島の領有権を主張し、その主張の中心点は、日清戦争に乗じて
日本が不当に奪ったものだというものです。しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約と、それに関するすべての交渉記録に照らしても、
日本が
中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎湖列島であり、
尖閣諸島がそこに含まれていないことは明らかです。
日本共産党は、過去の
日本による侵略戦争や植民地支配に最も厳しく反対してきた政党ですが、
日本による
尖閣諸島の領有は日清戦争による侵略とは全く性格が異なる正当な行為であり、
中国側の主張が成り立たないことは明瞭だと考えます。
総理の
見解を示していただきたい。
日本側の問題点はどこにあるか。それは、歴代
政府が、一九七二年の日
中国交正常化以来、本腰を入れて
日本の領有の正当性を主張してきたとは言えない点にあります。
一九七八年の日中平和友好条約締結の際に、
中国のトウショウヘイ副首相が
尖閣諸島の領有問題の一時棚上げを唱えたのに対し、
日本側は領有権を明確な形では主張しませんでした。一九九二年に
中国が領海法を決め、
尖閣諸島を自国領と明記した際にも、外務省が口頭で抗議しただけで、
政府としての本腰を入れた
政治的、
外交的
対応が何らなされなかったことは極めて重大であります。
そして、今回の事件でも、
民主党政権は、
国内法で粛々と対処すると言うだけで、領有の大義を、根拠を示し、理を尽くして主張するという
外交活動を行っているとは言えません。
総理、ここにこそ一番の問題があると考えませんか。
我が党は、
日本政府に、こうした態度を改め、歴史的事実、国際法の道理に即して
尖閣諸島の領有の正当性を
中国政府と国際社会に堂々と主張する
外交努力を強めることを求めるものです。
同時に、
中国政府に対しても、今回のような事件が起こった場合、
事態をエスカレートさせたり、緊張を高める
対応を避け、冷静な言動や
対応を行うことを求めます。
以上の諸点に対して
総理の
見解を伺いたい。
次に、
経済危機をどう打開するかについて
質問します。
リーマン・ショックから二年、大
企業の生産はV字回復を果たし、利益を急増させています。しかし、
国民の暮らしの実態はどうでしょう。民間
企業の賃金は、この一年間で平均二十三万七千円も減り、過去最大の落ち込みです。多くの
中小企業から、大不況に加えて急激な
円高でいよいよ立ち行かないとの
悲鳴が聞こえてきます。
農家からは、米価の大暴落で血の気が引いてみんな真っ暗な顔だ、とても
生活ができないなどの声が殺到しており、
政府による過剰分の買い上げは
急務であります。
ところが、
総理の
所信表明演説では、
経済危機のもとで
国民生活がどんなに深刻な実態にあるかについての
認識が全く語られませんでした。これは一体どういうことか。まず、
国民の暮らしの実態を直視し、苦しみに心を寄せることが、
日本の
政治に
責任を負う者の務めではありませんか。
国民生活の苦境をどう
認識しているのか、
答弁を願いたい。
それでは、どうやって
国民の暮らしを守り、
経済危機を打開するか。
この間の
日本経済の異常さの
一つに、大
企業の空前の金余りという現象があります。大不況のもとでも、大
企業は、内部留保を一年間に二百三十三兆円から二百四十四兆円に膨張させ、現預金など手元資金だけでも五十二兆円に達しています。
企業が利益を上げても、そのお金が、設備投資や
雇用に回らず、使い道のないまま
企業の内部に滞留しているのであります。
この巨額の資金を投資や
雇用などの生きたお金として
日本経済に還流させることが
日本経済の
危機打開のために必要不可欠であることは論をまたないでしょう。それは、
総理も、
企業が抱える現預金は二百兆円超、この資金を
国内投資などに誘導する必要があると述べているとおりです。
では、そのために何が必要か。
政策投資銀行が
日本の大
企業三千六百三十八社を
対象に行った調査報告では、
企業が新たな設備投資を行う最大の
判断基準は、製造業、非製造業ともに
需要の動向にあるという結果を紹介し、多くの
企業で、
需要のあるところで生産することが基本
方針になっていると
指摘しています。逆に言えば、
企業の利益が、投資や
雇用に回らず、内部にため込まれたままになってしまうのは、
日本経済が極度の
需要不足に落ち込んでいるからにほかなりません。
需要といっても、世界
経済危機のもとで、これまでのような外需頼み一本やりでは立ち行かないことは明らかです。私は、
経済危機を打開する唯一の道は、家計を直接応援し、内需を底上げする
政策への転換を図ることにあると考えますが、
総理の
見解を求めます。
私は、そのために、二つの点に絞って具体的提案をいたします。
第一は、人間らしい
雇用を保障することです。
派遣労働者を初めとした非正規
雇用労働者の解雇や雇いどめは、ことしに入ってからも四万二千人に達しています。
労働者派遣法を抜本改正し、
雇用は正社員が当たり前の社会に踏み出すことは
急務であります。我が党は、抜け穴だらけの
政府案に対して、製造業派遣の
全面禁止、専門業務の抜本見直しなど、派遣労働者から正社員への道を開く抜本的修正案を提案しております。我が党の修正案に対する
総理の
見解を求めます。
最低賃金を時給千円以上に引き上げることは
民主党の公約だったはずです。ことしは労働者の運動で平均十七円の引き上げとなりましたが、
全国平均は、なお七百三十円です。七百三十円では、盆暮れ、正月、休み返上で働いても年収百五十万円。
総理、公約した時給千円は、いつ
実現するつもりですか。財界系のシンクタンクも、最低賃金の引き上げは、
国民の購買力を高め、
需要を拡大し、最大の
成長戦略になると主張していることを、どう受けとめますか。
中小企業への賃金助成を含む
支援をとりながら、
全国一律の最低賃金制の確立と時給千円以上への抜本引き上げを早急に図るべきではありませんか。
新卒者の
就職難は、超氷河期と言われる深刻な
事態です。学校を
卒業した若者の社会人としての第一歩が失業者という社会でいいのか。
政府は、二つの方向で
経済界に協力を働きかけるべきです。
第一は、新卒者の採用数を
確保することであります。
かつて、超氷河期と言われた時期に、どの
企業も新卒採用を急激に絞り込み、その結果、
企業としても社員の年齢構成に大きなひずみが生まれた過ちを繰り返さないことが大切です。
第二に、学業と両立できる
就職活動のルールを確立することです。
今、学生の
就職活動は、三年生から就活に追われる、
一つの
企業からの四次面接、五次面接など繰り返しの呼び出しなど、学生の大きな負担となり、大学教育に深刻な障害をもたらしています。
卒業後三年間は
新卒扱いとすることも含め、過熱した
就職活動を是正するルールをつくるために、大学、
経済界、
政府の三者による協議を直ちに開始することを提案します。
総理の
答弁を求めます。
第二は、社会保障を
削減から拡充に転換することです。
民主党政権は、後期
高齢者医療
制度は直ちに廃止という公約を投げ捨て、廃止を先送りにしました。しかも、八月二十日に
決定された
方針では、
高齢者を別勘定とし、給付費の一割を
高齢者自身に負担させる新
制度案をつくり、来年の
通常国会に
法案を提出するとしています。これは、うば捨て山との激しい怒りを呼んでいる現在の
制度と、その根本思想においてどこが違うのですか。
後期
高齢者医療
制度は速やかに撤廃し、老人保健
制度に戻し、
国民合意で、よりよい
制度への
改革を図るべきです。
答弁を求めます。
いま
一つ、看過しがたい重大な問題があります。
厚生労働省は、五月十九日、
全国の都道府県に、国保料の値上げを抑えるために市町村が独自に行っている一般会計からの繰り入れをやめよとの通知を出しています。今でも、一人当たりの国保料は平均で九万六百二十五円。高過ぎる国保料が払えず、国保証が取り上げられ、命を落とす悲劇が
全国に広がっています。
市町村からの繰り入れをやめよということは、異常に高い国保料を国がさらに値上げせよと迫ることであり、政令市などでは一万円から三万円の値上げになってしまいます。命を削る通知は撤回し、国保への国庫負担の増額で国保料
引き下げに踏み出すべきではありませんか。
答弁を求めます。
総理が真剣に家計と内需を活発にしようと考えておられるならば、とるべき
政策は、今提案した人間らしい
雇用と社会保障の充実こそが土台になるべきです。ところが、
総理が新
成長戦略の柱に据えているのは
法人税の減税です。
しかし、
日銀の白川総裁も、我が党議員の
質問に対して、大
企業の手元資金は今は非常に潤沢、この資金を使う場所がないことを金融機関の経営者からも
企業の経営者からもしょっちゅう聞くと
答弁しています。
空前の金余りにある大
企業に
法人税減税でさらに数兆円ばらまいたとして、一体どのような
効果が生まれるのか、どうして投資や
雇用が生まれるのか、
説明していただきたい。内部留保がさらに積み上がるだけではないですか。税収が減り、その穴埋めを消費税増税に頼るとなれば、家計と内需をさらに落ち込ませ、
企業の投資や
雇用もいよいよ低迷するだけではないですか。
大
企業を応援すればいずれ
経済がよくなり家計に回る、こうした自民党流の破綻した古い道から抜け出し、
国民の暮らし最優先で内需主導の
経済発展を目指す、
政策の大転換が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
総理の
答弁を求めます。
最後に、沖縄の米軍基地問題について
質問します。
総理は、
所信表明で、普天間基地の辺野古移設を決めた日米合意を推進すると宣言しました。しかし、沖縄県民の総意は、いよいよ揺るぎないものとなっています。ことしに入ってからも、名護市長選挙、全会一致の県議会決議、九万人の県民大会、名護市議選挙など、沖縄県民は、普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設反対という総意を、繰り返し日米両
政府に突きつけてきました。
総理は、沖縄県民の総意を踏みつけにした日米合意を、民主主義の国で
実行できると本気で考えておられるのですか。もはや不可能であることは、だれの目にも明瞭ではありませんか。
答弁を求めます。
しかも、この間発表された
民主党政権の初めての防衛白書は、普天間飛行場の代替の施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはないと言い放ちました。辺野古移設を受け入れなければ、普天間は返さない。東京新聞も、これでは恫喝に近いと批判しました。このような居丈高な姿勢が許されると考えているのですか。
さらに、米軍は、嘉手納基地の滑走路の改修に伴って、嘉手納基地の周辺空域で訓練を繰り返しているF15戦闘機など百数十機の米軍機を普天間基地などに目的地外着陸させると発表し、既にその訓練が始まり、地元
自治体から激しい抗議の声が起こっています。嘉手納基地を使用する航空機の墜落事故は、一九八二年以降だけで、十三件十五機に達しています。世界一危険な基地と裁判所も認定している普天間基地にさらなる危険を負わせるということは断じて許されるものではありません。
総理、負担軽減に最大限努力という言明が口先だけのものでないというなら、普天間基地への目的地外着陸を中止するよう、アメリカにきっぱりと要求すべきではありませんか。
普天間問題の解決の唯一の道は、日米合意を白紙撤回し、移設条件なしの撤去、無条件撤去を求めて、アメリカと本腰の交渉をするしかない。私は、
総理にこのことを強く求めるものであります。
今沖縄に新基地建設を迫ることは、二十一世紀の先々まで県民に、基地との共存、永久共存を迫るものであり、そうした勢力にはおよそ国の独立も平和も語る資格はないと言わなければなりません。
日本共産党は、
国民とともに二十一世紀に基地も安保もない独立、平和の
日本を目指す
決意を申し上げて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣菅直人君登壇〕