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2010-09-09 第175回国会 参議院 財政金融委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年九月九日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  九月七日     辞任         補欠選任      山崎 正昭君     佐藤ゆかり君  九月八日     辞任         補欠選任      尾立 源幸君     石橋 通宏君      川上 義博君     藤谷 光信君      水戸 将史君     金子 洋一君  九月九日     辞任         補欠選任      風間 直樹君     川崎  稔君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         藤田 幸久君     理 事                 大久保 勉君                 愛知 治郎君                 林  芳正君                 荒木 清寛君     委 員                 石橋 通宏君                 金子 洋一君                 川合 孝典君                 川崎  稔君                 田城  郁君                 谷  亮子君                 中谷 智司君                 藤谷 光信君                 前田 武志君                 片山さつき君                 金子原二郎君                 熊谷  大君                 鴻池 祥肇君                 佐藤ゆかり君                 鶴保 庸介君                 中川 雅治君                 竹谷とし子君                 中西 健治君                 大門実紀史君                 中山 恭子君    国務大臣        財務大臣     野田 佳彦君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融)        )        自見庄三郎君    副大臣        財務大臣    池田 元久君        財務大臣    峰崎 直樹君    大臣政務官        内閣大臣政務        官        津村 啓介君        経済産業大臣政        務官       近藤 洋介君    事務局側        常任委員会専門        員        大嶋 健一君    参考人        日本銀行総裁   白川 方明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (現下の経済情勢を踏まえた財政金融政策の  在り方に関する件)  (外国為替市場動向に関する件)  (外貨準備運用為替介入に関する件)  (日本銀行金融調節に関する件)  (政府経済対策に関する件)  (日本銀行による国債引受けに関する件)     ─────────────
  2. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、山崎正昭君、尾立源幸君、水戸将史君及び川上義博君が委員辞任され、その補欠として佐藤ゆかりさん、石橋通宏君、金子洋一君及び藤谷光信君が選任されました。  また、本日、風間直樹君が委員辞任され、その補欠として川崎稔君が選任されました。     ─────────────
  3. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) この際、野田財務大臣、自見内閣府特命担当大臣及び池田財務大臣から発言を求められておりますので、順次これを許します。野田財務大臣
  4. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) おはようございます。  去る六月に財務大臣を拝命をいたしました野田佳彦でございます。  財務省行政運営に関して国民関心は大変高まっております。財務大臣としての重責を果たすべく、国家国民のために懸命に努力をしていきたいと思います。  藤田幸久委員長を始め参議院財政金融委員会委員皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げて、一言ごあいさつとさせていただきます。  ありがとうございます。
  5. 藤田幸久

  6. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) おはようございます。  去る六月に金融担当大臣を拝命いたしました自見庄三郎でございます。よろしくお願いをいたします。  金融担当大臣としての重責を果たすべく、金融行政運営に全力を傾注する所存でございます。  藤田幸久委員長を始め参議院財政金融委員会の理事の皆様方委員皆様方の御協力、御理解をいただきながら、切にお願いをいたしながら、しっかり職責を果たしていきたいと思います。どうぞ御指導をよろしくお願いをいたします。  ありがとうございました。
  7. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 続きまして、池田財務大臣
  8. 池田元久

    ○副大臣池田元久君) おはようございます。  六月から財務大臣を務めることになりました池田元久でございます。  経済財政国民皆様関心が集まる中、野田大臣の指示の下、峰崎大臣古本政務官大串政務官とともにしっかりと職務の遂行に当たるつもりでございます。  藤田幸久委員長を始め参議院財政金融委員会皆様の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。     ─────────────
  9. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁白川方明君出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  11. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 財政及び金融等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 大久保勉

    大久保勉君 民主党の大久保勉です。  最初に、白川日銀総裁質問したいと思います。  八月三十日、臨時政策決定会合追加金融緩和が発表されました。その効果、またその結果が満足いくものだったかということをお尋ねしたいんですが、たまたま今日の日経新聞の市場欄、ここを読みますと、昨日は八十三円三十四銭まで円が上昇したと、十五年ぶりの高値を記録したということです。また、株価に関しましては、日経平均は心理的な節目となる九千円を一時割り込むこともあったということで、金融緩和をしてもほとんど効いていない、むしろかえって状況は悪くなったんじゃないかと、こういった指摘もあるのかなと思います。タイミングが遅かった又は小出しだったと、こういった批判もあるのかなと思いますが、この点に関して総裁質問したいと思います。
  13. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  先般の臨時会合で決定しました金融緩和措置は、これは為替相場株価などの相場変動そのものに焦点を当てたものではございませんで、我が国経済物価見通しの下振れリスクにより注意が必要だというふうに判断しまして決定したものでございます。  日本銀行は、これまでも強力な金融緩和を行ってきておりまして、先生案内のとおり、イールドカーブの水準あるいは形状を見ましても、極めて低い水準になっております。臨時会合後の金融市場の動きを見てみますと、ターム物、いわゆる三か月とか六か月の市場金利でございますけれども、その金利は幾分弱含むなど、臨時会合で決定しました追加緩和措置は既に金融緩和の更なる浸透に貢献し始めております。日本銀行としては、今回のこの措置政府措置とも相まちまして日本経済回復をより確かなものにしていくというふうに考えております。  これは先生案内のことで大変申し訳ございませんけれども金融政策効果、これが発現するには、これはどの国もそうですけれども、一日、二日、あるいは一週間というタームではなくて、これは一年とか二年というそういうターム金融政策効果は発現していくものであります。私どもは、これまでも累積的に金融緩和を行っておりますけれども、そうした金融緩和を全体として是非評価をいただきたいというふうに思っております。さらに、先般の決定会合後の記者会見でも、それから発表文でも書いてございますとおり、先行き経済物価情勢注意深く点検した上で、必要と判断される場合には適時適切に対応を行っていく方針でございます。  それから、円相場でございますけれども、これは米国経済中心世界経済先行きをめぐる不確実性が高まっております。その中で、グローバルな投資家リスク回避姿勢が強まっている、その結果として、相対的に安全な資産である円であるとかスイス・フランが買われているということでございます。  いずれにせよ、私どもとしては、為替影響も含めて景気情勢をしっかり点検し、適切な政策を行ってまいりたいと思っています。
  14. 大久保勉

    大久保勉君 いつものことですが、短期的なことはほとんど気にされていなくて、非常に学者的な答弁だと思っています。ただ、経済というのは生き物ですから、どうしても株式市場が下落する、若しくは為替円高、心理的な影響もありますから、是非その点は気にしてほしいと思います。  今、九月七日に発表されました政策決定後の当面の金融政策運営というものを持っています。ここでも若干世間の認識と違うなという表記がありましたので申し上げますと、リスク要因に関してということで上振れリスクと下振れリスクというのがありますが、下振れリスクに関しましては景気が悪くなるということで、全員が共有していると思いますが、まだ、この場に及んで上振れリスクというのが書かれています。特に、新興国資源国経済の強まりなど上振れ要因があると、さらには、物価面では、新興国資源国の高成長背景とした資源価格の上昇によって我が国物価が上振れる可能性もある、こういった指摘がありますが、これはもう半年前からほとんど表現が変わっていません。ところが、実体経済は急激な円高、さらには中国景気が少しずつ下落しているという状況があります。こういった認識はないんですか。こういった景況感に関する変更はないか、このことを質問します。
  15. 白川方明

    参考人白川方明君) まず、上振れリスクそれから下振れリスクについての御質問でございますけれども日本銀行に限らずどの中央銀行も、あるいはどの民間の予測機関につきましても、先行き経済の標準的な見通しと、それから上下リスクをやっぱり点検するということは、これは行っていることでございます。  今、日本銀行について例がございましたけれども、どの中央銀行上下共に発表しておりますけれども、例えばFRBでは、六月の議事要旨で、これはFRBリスク評価ですけれども、現在の緩和的な金融政策が過度に長期化してしまうことを上振れリスクとして明記する一方で、金融危機の連鎖や投資家リスク回避姿勢の高まりなどを下振れリスクとして指摘しております。それから、ECBも先週金融政策決定会合を開きましたけれども、そこで世界経済回復に伴う輸出の増加ということを上振れリスクとして、一方で、金融市場の緊張の再燃というのを下振れリスクとして挙げております。  これは、その時点時点で見ますと、もちろん下振れリスクの方が強いんじゃないかというふうに判断される局面もございます。しかし、これは振り返ってみますと、我々の予測、これはどの予測もそうですけれども、将来を完全に見通すことはできない、したがって、どんなときであっても、一方で人々が上振れを議論しているときには下振れのリスクはないんだろうか、下振れを議論しているときには上振れはないんだろうかということをバランス良く点検していくということは、これは中央銀行に求められる、これが節度だというふうに思っております。  そう申し上げた上で、現在の状況につきましては、世界経済の下振れリスク、特に米国経済からスタートしまして、下振れリスクの方により注意が必要な局面であるというふうにこれは判断しておりまして、この点は決定会合後の発表文にも明らかにしておるところでございます。
  16. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。次の政策決定会合で上振れリスク表記を若干弱くしてもらうとか削除してもらうと、そういうことを期待したいなと思っております。  もう一つ、次のページに、日本銀行物価安定の下で持続的な成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している、そのために強力な金融緩和推進、こういう表現がありますが、強力な金融緩和推進をしているかどうか、ここが私、疑問な点です。  資料を配付しておりまして、資料一を御覧ください。  強力な金融緩和ということですから、いわゆる日銀バランスシートが増えているのかということに関して調べてもらいました。一九九〇年から直近までなんです。特に御覧いただきたいのは、二〇〇五年の段階で百五十五兆円ありました日本銀行の総資産が現在は百十七兆円まで減少しております。二五%も減少しているんです。二〇〇八年九月、リーマンショック段階から、いったんはバランスシートを膨らまして金融緩和しているんですが、ここに来ましてまた縮小しているということです。ですから、五年の単位では急激な資産縮小、つまり経済を冷やしているという状況です。さらに、リーマンショックは一時的には緩和したんですが、その後また冷やしているという、ですからデフレが直らないはずだと思います。  この点に関して、総裁の御所見を聞きたいと思います。
  17. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行バランスシートの大きさの変化でございますけれども先生がお配りになっていますグラフ、これは、数値化いたしますと、二〇〇五年末のピーク時から二〇〇七年にかけまして二五%減少いたしました。これは量的緩和の解除によります日本銀行当座預金残高の減少が、これが基本的な背景でございます。  量的緩和に関する多くの研究では、これは、量の拡大というものは、金融システムの安定を維持する上ではこれは大きな効果があった、しかし、景気物価を刺激する上ではその効果は限定的であったというのが大方の結論であったというふうに思います。量的緩和を二〇〇六年の三月に解除いたしましたけれども、あの前後に現れました新聞の論説等を見ましても、今私が申し上げたのとほぼ同じような評価を多くの方がなさっていたというふうに記憶しております。したがって、私は、バランスシート縮小それ自体金融引締めであるというふうには考えておりません。  今回、海外中央銀行バランスシートが拡大したということ、これは事実でございますけれども、彼らが、多くの中央銀行が量的に拡大しまして金利が実質的にゼロ状態になったのはこの二年間でございます。日本銀行は、今回、海外中央銀行が到達した状態、これを一九九〇年代の半ばに実はその状態に達したわけでございます。つまり、実質的なゼロ金利に達したのは、これは一九九〇年代の半ばでございます。先生がお配りになりましたこのグラフを見ていただきますと、一九九〇年代の半ばは、日本銀行のこの総資産の規模というのは四十兆円ぐらい、これよりは現在相当に増えております。この累積的な増加率という点から見ますと、日本銀行の方がはるかに増加をさせているということでございます。
  18. 大久保勉

    大久保勉君 ゼロ金利を、若しくはゼロ%に近い金利を付けることによって緩和しているということに関してもう少し議論したいんですが、長期金利はまだ非常に高い状況があります。でしたら、短期金利をゼロ%に近くするんでしたら、いわゆる長期国債の買い切りオペレーションを増やす、その結果長期金利を下げて景気を良くする、こういったことも是非考えるべきだと思います。  日銀の場合は日銀券ルールというのを内規で決めまして、それ以上に国債を買わないということになっていますが、これを撤廃しましたら相当長期金利が下がりまして住宅投資若しくは設備投資が増える、こういった効果はないんでしょうか。
  19. 白川方明

    参考人白川方明君) 御質問長期国債の買入れオペでございます。  現在、日本銀行は、金融緩和効果を最大限発揮するために現に長期国債の買入れを大いに活用しておりまして、金融調節を行っております。現在、年間で二十一・六兆円、残高でもって見ますと五十七兆円でございます。この買入れ金額というのは、これはFRBと比べてもこれははるかに大きな金額を現に買っております。  今、銀行券ルールというお話ございましたけれども、その目的ということに照らして考えてみます。  まず、潤沢に資金を供給するという上で、現在、今申し上げましたとおり、日本銀行は十分潤沢に資金を供給しております。国債買入れオペ、それからそれ以外のオペ手段も使って潤沢な資金供給を現に行っていますし、これからもやっていきたいというふうに思っております。  それから、もし長期国債の買入れが財政ファイナンス容易化あるいは長期金利の人為的な誘導にあるというふうに市場で見られますと、むしろ逆効果でございます。現在、日本財政バランスは非常に悪い状況であるということは皆さん御案内のとおりであります。最終的になぜ長期金利が低位安定しているかということについては、最終的な財政バランスの確保に向けて日本国民はしっかり取り組む、それから日本中央銀行物価安定の下での経済の安定ということに努力をしていくという姿勢が信頼されているわけであります。もし、その点について疑念が生じますと、長期金利自体が上がってしまって経済活動にも結果的には悪影響が及ぶというふうに考えております。  いずれにせよ、長期国債オペも活用して潤沢な資金供給を行っていきたいというふうに思っております。
  20. 大久保勉

    大久保勉君 次に、為替に関して議論したいと思います。  資料二を御覧ください。  為替の方が十五年来の円高水準に来ているということなんですが、これは十五年前の七十九円七十五銭と今の八十三円というのはどのくらい違うのかと、この辺りを十五年間の日本アメリカ物価変動率からこれは日本銀行に計算してもらいました。その結果、一九九五年四月に付けました七十九円七十五銭は現在の基準では五十五円に相当するということです。ですから、まだ今の八十三円台というのは、まだ十五年前に比べたら実質的には大したことないんじゃないかと、こういった意見もあります。別の言い方をしましたら、八十四円十六銭で計算しますと、これは一九九五年四月の段階では百二十三円に相当します。ですから、為替介入是非が議論されておりますが、取りあえず実質的な為替水準というのも是非頭に入れるべきだと思っています。こういうことを前提にしてこれから質問したいと思います。  ただ、十五年前と違いまして、世界貿易水準が変わってきます。特に中国アジア諸国貿易水準が増えておりますから、対ドル、対米国だけではなくて対中国若しくは対東南アジアに対する貿易が必要ですから、その辺り通貨水準が必要です。  そこで、峰崎大臣質問したいんですが、最近、中国日本国債を大量に買っていると、こういった報道があります。どういった国が日本国債、特に短期国債を購入しているのか、こういった点に関してもし資料がありましたら御報告お願いします。
  21. 峰崎直樹

    ○副大臣峰崎直樹君) 大久保議員にお答えしたいと思いますが、ちょうど七十九円七十五銭と付けたときに、ちょうど私、自社さ政権でございまして、アメリカに、この自社さ政権円高を何とか阻止するためにアメリカ当局にいろんな形である意味ではプッシュしに行ったその代表団の一員であったので、あれは一九九五年でございましたけれども、今から十五年前のことを覚えておりますが、あのときから比べると非常に大きく変わってきているということは、特にやはり今のおっしゃられた中国とかそういったアジアの国々の台頭が大変著しいということもあるだろうと思います。  今、質問にありました中国外貨準備の内訳ですけれども中国当局はこれは明らかにしておりません。しかし、議員が御指摘のように、我が国としても大変この点については関心を強く持っておりまして、是非中国当局とも緊密に連絡を取っていきたいなというふうに思っております。  先日も日中ハイレベル対話野田財務大臣ほか交流しておりますし、私も中国財務省との間での日中財務対話、こういったところにも参加をさせていただきました。是非そういった点は、コメントは差し控えますけれども、これからも情報共有を強めていきたいなと思っております。  なお、主要国の、日本の円をどれだけ資産を持っているのかということで、ちょっと数字だけ申し上げますと、アメリカ日本国債保有額は一・三兆円、ヨーロッパ中央銀行の円での純資産額は一・一兆円、イギリスの円資産額は四千億円と、こういう状況になっていることだけ申し上げておきたいと思います。
  22. 大久保勉

    大久保勉君 肝心の中国に関して、一応市場関係者情報とか、昨日は国際収支統計財務省から発表されております。この数字だけでも、今年一月から七月までの累計で二兆三千億円の国債中国が購入したと、これは事実ですか。だれか分かる方。
  23. 峰崎直樹

    ○副大臣峰崎直樹君) 昨日発表しました二十二年度七月国際収支状況によりますと、中国からの対内証券投資については、平成二十二年一月からの投資額ネット合計で、取得マイナス処分でございますけれども、これが二兆三千百五十九億円ということになりまして、そのうち短期債が二兆三千六百十二億円ということで大部分を占めております。  なお、短期債の一—六月期の累計は一兆七千二百四億円でありまして、議員指摘の一・七兆円はこの計数に当たるものだということでございます。
  24. 大久保勉

    大久保勉君 ここで注目したいのは、中国が半年ちょっとで二兆三千億円の国債を純投資したということです。ということは、人民元か若しくはドルを売却して円を購入した、こういう為替取引があるはずなんです。一方で、中国人民元をある程度ペッグ、ドルに対して安定化させるために絶えず人民元を売ってドルを購入すると。その結果、大量の外貨準備があります。その外貨準備の一部の資産を、ドル資産を売却して円を二・三兆円買っているという事実です。  ということは、中国人民元売り円買い介入をして、中国相場人民元相場を円に対して比較的安くしていると、こういうことになりますが、そのことに対して野田大臣若しくは峰崎大臣、どういうふうに思われますか。
  25. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 委員指摘のとおり、特に五月だったと思いますけれども中国が多額の短期債購入という現象がございました。以来、こうした動向には私も注目をしております。本当の意図というのがどこかこれは分かりませんが、先ほど来副大臣からも答弁ありましたとおり、当局間でも緊密に連携を図りながら、その意思というものを確かめながら推移を見守っていきたいというふうに思っています。
  26. 大久保勉

    大久保勉君 日本中国貿易活性化若しくは発展のために、若しくは為替安定化のために中国日本国債を買うんでしたら、日本中国人民元建て国債を購入する、こういったスワップ契約なんかを是非交渉すべきだと思います。特に外貨準備、今一兆ドルありますが、大半がドル若しくはユーロでありますから、是非とも人民元国債を購入しまして、いわゆる為替の安定が是非必要だと思います。  ただし、現在、人民元建て国債は非居住者は購入できませんから、これは財務省がしっかり中国政府と交渉すべきじゃないですか。
  27. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 外為特会の保有する外貨準備というのは、これ将来の為替介入に必要な通貨を保有するという考え方から現在は米ドル中心運用をしてまいりました。  人民元をその運用対象にすべきではないかという委員の御指摘でございますが、この外貨準備の目的であるとか運用においての流動性あるいは安全性を確保するというような方針に沿って検討をされるべき課題だろうというふうに基本的には思います。  ただ、中国の外準当局日本国債は買える、日本の外準では中国国債は買えないということについては不自然さを感じる点もあると思いますので、当局間でその改善に向けて話し合う余地はあると私も思います。
  28. 大久保勉

    大久保勉君 後半に関しては是非頑張ってください。是非日本中国人民元建て国債を買うというオプションを使えるようにしてください。  あと、最初の答弁に関して私は若干疑問です。外為特会資産、外貨資産というのは将来の介入のために持っているということは、将来ドル売り介入するんですか。今、ドル売りが必要なんですか。むしろドル売りの介入をしなくてドル買いをしないといけないんだったら、もうドル売りをしなくていいような状況にしますと、つまり、ドル資産を固定化して、日本は将来ドルを売ることはしませんよと、こういった意思が今必要じゃないですか。是非このことに関して確認したいと思います。
  29. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 今現時点でドル買い、ドル売りの話の具体的な話は差し控えさせていただきたいと思います。
  30. 大久保勉

    大久保勉君 与党議員ですからこの辺にしまして、次に外為特会のしっかりとした運用、ここを議論したいんですが、その前に日本銀行はやるべきことがあるんじゃないかと思います。例えば、通貨に対しまして、過度な投機に対しましては、過去にスイスがゼロ金利、マイナス金利にすることによりまして、過度な自国通貨高を防衛したというケースがあります。これは日本銀行からいただきました資料三です。ここは説明することがありませんが。  そこで、将来、理論的な話をしますが、日本銀行は当座預金をマイナスにする、あるいは当座預金の残高に対して、平均残高に対しまして手数料を課すことによって実質マイナス金利にする、そういったことによりまして、いわゆる過度な投機、円高に対して対処できるんじゃないかと思いますが、その点に関して白川総裁の御所見を聞きたいと思います。
  31. 白川方明

    参考人白川方明君) 今、大久保先生がおっしゃった提案というのは、この十年ぐらいの間にも何回か提案されたことがございます。典型的には銀行券について、金融機関は、これは銀行券を保有できるわけでございます。  したがいまして、もし日本銀行の当座預金に対してマイナスの金利を課すとなりますと、今度はそのマイナスの金利になるものを、それを持つインセンティブが生まれませんから、当然銀行券を持つということになります。この点は、金融機関の当座預金に対してマイナスの金利を付けても同じでございます。つまり、銀行からしますと、銀行券という手段がある以上、コールレートをマイナスにしていくということは、これはなかなか難しいわけでございます。  そういう意味で、理論的なアイデアとしては確かに面白いわけですけれども、しかし実務的には難しいというのがこれはほぼ関係者の一致した見解かなというふうに思います。
  32. 大久保勉

    大久保勉君 次に、野田財務大臣外為特会運用に関しましてさっきの続きをしますが、ドル資産の在り方をもう少し考えるべきじゃないかと。例えば、一兆ドル資産がありますから、そのうちの例えば一割でも超長期の貸出しをJBICにしまして、JBICが例えば資源を購入するとか、若しくは日本が新幹線あるいは原子力発電所等のプラントを輸出する場合のファイナンスを付けさせる、こういったことができないのかなと思いますが、この点に関して御所見を聞きたいと思います。
  33. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 議員の御指摘は、JBIC等に対する外貨資産の貸付け等についての御提案だというふうに受け止めさせていただきますけれども、実態としてもう既に昨年の三月から、為替市場の安定を図るという観点から、JBICが我が国企業の海外事業支援のため必要な資金を円滑に確保できるよう、これJBICに対する外貨資金の貸付けはもう既に行っているところでございます。  という現状で、あとは、そのほかどうやって運用していくかについてはこれから検討させていただきたいと思います。
  34. 大久保勉

    大久保勉君 残り時間あと三分ほどになりましたので、最後の質問をしたいんですが、峰崎財務大臣質問したいと思います。  峰崎財務大臣は、十八年間、参議院の方で活躍されております。特に財政金融委員会中心に理事、そして財政金融委員会委員長もなされていました。また、税の専門家ということで、政府におかれましては税及び国債業務に関して責任を持つ立場であります。  今、参議院というのは非常に厳しい、私ども民主党、与党にとりましては厳しい状況でねじれがございまして、二年前は野党のときにねじれがありました。様々なことをこの委員会で行ってまいりましたが、峰崎大臣のこれまでの経験、そしてこれから私どもに対する、後進に対する御助言がありましたらお尋ねしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  35. 峰崎直樹

    ○副大臣峰崎直樹君) 大久保委員、本当にこういう機会を与えていただきましてありがとうございました。今日御参集されています議員の皆さん方で新しく当選された人、本当にこれから頑張っていただきたいと思いますし、また再選された議員の皆さん方も本当に心からおめでとうというふうに申し上げたいと思います。  私、九二年に当選しまして、ちょうどいわゆるデフレ、バブル後の、最初に宮澤総理大臣が、これは金融機関は大変なことになるということで公的資金を投入しなきゃいかぬという発言をなさいましたけれども、結果的にそれが様々な理由でできませんでした。以来、本当に十八年間、何だか私は日本経済の停滞の十八年間ずっと付き合ってきたような気がいたします。  その中で思い出すのは、九五年に先ほどの円高がございましたときでございましたが、ちょうど国会の場で、恐らく国会質問で初めてデフレが日本に蔓延し始めているんじゃないかという指摘をいたしました。以来、このデフレ問題が依然として今も脱却できていないわけでありますが、是非この財政金融委員会の場は、そういうデフレの問題、長期的に本当に呻吟して今日本経済がのたうち回っているわけでありますが、そのことについてこれからも継続して解明をしていただきたいなという思いでいっぱいでございます。  そして、是非お願いを。私自身の税をやってきた立場からすると、日本財政というのは、あるいは日本の社会保障、あるいは日本国民負担率、これを是非皆さん方に頭に入れていただきたいというふうに思っているわけであります。いわゆる国民所得に対する税やあるいは社会保険の比率は、日本は今三九%前後でございます。高齢化比率は二三%にも達しました。毎年、一兆二千五百億円、これが自然増として社会保障の負担が伸びてまいりました。こういう中で、この世界で最も高齢化比率の高い国で本当に日本の社会保障というものを守っていけるんだろうか。  是非、そういう意味では、マクロ的に、またこういう国際比較を是非皆さん方の頭の中にしっかり入れていただいて、そして、これまでともすると、やはり税の問題を議論するときは減税と増税が抱き合わせをする、あるいは減税先行になっていると。これからは恐らく、増税しか道はないだろうというふうに思います。  その意味で、税制という長いタームで物事をとらえなきゃいけない課題、あるいは国民生活に大きな影響を与える問題でございますので、財政金融委員会というのは、是非この税制問題を前面に取り上げて、そして国民の皆さんに、本当に税の現状について、なぜ今日本財政はこんな状況になっているのかということをしっかり訴えていただけるような、そういう場にしていただければなというふうに思っております。  大変ちょっと差し出がましい、ちょっと時間もオーバーしてしまいましたけれども、私の思いを語らせていただきました。御清聴ありがとうございました。
  36. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。よろしくお願いいたします。  峰崎大臣には、私も三年遅れるところ九五年にこちらに参りまして以来、ずっと御指導をいただきまして、本当にありがとうございました。しみじみと今のお話を聞かせていただきました。  津村政務官がお見えでありましたら、そこから始めさせていただきたいと思いますが、今、峰崎大臣もおっしゃったように、経済のたうち回っているという言葉がありましたが、非常に危機的な状況であるという認識をしておるわけでございますが、このまず今の現状をどう考えるかということをきちっと踏まえた上で、こういう現状であるからこういう対策が必要だと、こういう姿勢が必要であろうと、こういうふうに思っております。  そこで、今回、株が急速に下がるとか為替市場が動くとかいう、今回の一連の動きの発端の一つとなったのがこの四—六のGDPの数字だっただろうと、こういうふうに思っております。  当日、八月十六日でございますが、まず、津村政務官数字の説明をされまして、その後、荒井大臣がGDPの正式な発表と。その後、八月二十日でございますが、野田大臣景況感について定例会見のときに述べられておりますが、津村政務官がおっしゃったことで私もなるほどなと思いましたのは、先ほど日銀総裁も上振れ、下振れのリスクと、こういうふうにおっしゃっておりましたけれども、特に政務官が、三つの景気先行き下振れ要因があると考えると、こうおっしゃっておられます。一つは、急激な円高が企業の国内における投資マインドを冷やすこと。二つ目が、海外景気の減速により純輸出のプラス寄与が剥落するリスク。三つ目が政策効果の剥落と。まさにこういうリスクがあるだろうなというふうにうなずくところでございまして、その同じ会見の中で、この例の、ある意味では既に踊り場入りしているとも言えるかもしれないと、こういうことをおっしゃっておられるわけですが。  まず政務官に、私はこの認識というのはかなり正鵠を得ているのではないかなと、こういうふうにも思うんですが、今でもその御認識は変わっておられないか、お尋ねしたいと思います。
  37. 津村啓介

    大臣政務官(津村啓介君) 御質問ありがとうございます。  少し何といいますか一部切り取って報道された部分もありますので、当時の私の認識を改めてここで少し紹介をさせてください。それから一か月たっておりますので景気認識自体は多少の変化はあると思っておりますが、当時のことをお話しさせていただこうというふうに思います。  私はそのときに、こういうふうに発言をいたしました。記者さんから、耐久財、半耐久財等が伸びていない要因は何かという御質問があった文脈の中ですけれども、耐久財の伸びが横ばいになる一方で、政策効果とは無縁な耐久財以外についても政策効果などの要因が剥落する中で、個人消費の伸び悩み、設備投資の伸び悩みの自律的回復の芽が今後摘まれていくことを懸念する状況である。ある意味では既に踊り場入りしているとも言えるかもしれないというふうに発言をいたしました。  御案内のとおり、政府としての景気認識につきましては月に一回の月例経済報告というのが正式な場で、釈迦に説法でございますが、ありまして、そこでの判断としては、八月の基調判断としては、「景気は、着実に持ち直してきており、自律的回復への基盤が整いつつあるが、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」。これは八月のたしか十日の週にこういう発表をして、その一週間後のことでした。  先ほど林先生から、このところの円高株安については一次QEがその発端というふうにおっしゃられていましたけれども、実はもう少し正確に申し上げますと、この前の週に随分動きがありまして、アメリカの方での金融政策対応等もあって、その十六日の月曜日がQEですけれども、その前の週の週末に、木曜日から金曜日だったと思いますが、十五年ぶりの円高になったと、水準ということがありまして、週末にかけていろいろ議論をしていた時期。その週明けの朝八時五十分に一次QEという、そういうタイムスケジュールだったと思います。  私が申し上げたかったのは、政府としての景気認識を一次QEをもって変えるという趣旨ではございませんで、これは一年間、経済財政担当の政務官をしながら常に煩悶しているところですけれども経済統計というのは、御案内のように、一次QEというのは四—六月の数字でございますし、昨日、今日にかけていろんな統計発表していますが、例えば機械受注統計も七月の数字を今になって発表しているというような具合で、一か月から二か月、どうしても認識のラグが生じます。  そういう意味で、四—六の数字が非常に厳しい、そして七月の数字もいろんな数字が悪かったものですから、これは先行きといいますか、ある意味ではまだ数字に表れていない足下が非常にリスクを抱えている状況にあると。そのことについて触れたもので、政府の、何といいますか、霞が関文学という言葉もありますけれども政府のルールにのっとった言い方で言えば、足下についての発言ではなくて先行きについての懸念を述べたものというふうに御理解いただくとより正確かと思います。
  38. 林芳正

    ○林芳正君 私もやっておりましたからお気持ちは分かるんですが、これを発表するときには四—六のお話をして、四—六から先を見たら今は踊り場入りしているかもしれないと、こういうことだと思うんですね。ですから、これは民間のエコノミストがおっしゃるんではなくて、GDPの発表のときに政府のいわゆる高官、政務官がおっしゃることなので、個人的な感触というよりも、政府の今踊り場に入っているかもしれないというメッセージとして外に出ていくと、そういうことを想定しておっしゃっていたんではないかなというふうに市場は受け止めたと思いますが。  一か月たってみて、では、やはり踊り場入りはしていなかったという認識ですか、今は。
  39. 津村啓介

    大臣政務官(津村啓介君) 政府の、これから月例経済報告、近々また開いていくわけで、今そのときの表現ぶりについては最終的な検討をしている状況ですので、私がそれを先取りしたような発言をさせていただくのは差し出がましいと思っております。  いずれにいたしましても、先ほど触れていただきましたが、円高、それから海外経済の減速、そして私は政策効果の剥落という三つの景気下押しリスクを当時指摘しましたが、そのうちの一つの政策効果の剥落という点については、この度、経済対策の基本方針ということで八月三十日に決定をしておりますし、明日には閣議決定ということで、現段階でできる九千二百億の予備費使用について最大限のこれは菅内閣としての経済対策を打とうとしているわけですから、そういう意味では下押しリスクのうちの一つについては払拭しつつある状況だというふうに思っています。
  40. 林芳正

    ○林芳正君 財政が厳しいときですから下押しリスクが実際に顕在化してきて踊り場になっていると、ですから経済対策をこういうリスクを取り除くためにやるとこう言ってくだされば非常にすっと落ちるんですが、いや、踊り場になっていたかどうかは今はよく分からない、だけれども経済対策をやるんだと、こういうふうに言われると、景気状況はまだ基調は変わっていないということであるけれども対策をやると、こういうふうに聞こえるので、むしろ政務官はここを、せっかくおっしゃったんだから、おれが正しかったんじゃないかというふうに言っていただいた方がいいと思うんですけれどもね。  まあ、ちょっと野田大臣、二十日に踊り場だと思っていないと、こういうふうに会見でおっしゃっているので、そのときの認識も今もそういうふうにお考えですか。
  41. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 私の発言のベースラインは一応月例経済報告が政府のメンバーでございますのでベースラインで、そのことを念頭に置いて発言をしました。そこでは踊り場という表現を使っていなくて、先ほど津村政務官が御説明をしたとおり、景気は着実に持ち直しつつあると、で、自律的回復基盤云々というのがベースラインですから、それに基づいた発言をしたつもりでございます。  ただし、経済対策の基本方針、八月三十日に決めておりますが、これは景気への下振れリスク、これを排除するという意味合いが強いものだということでございます。
  42. 林芳正

    ○林芳正君 大臣はその二十日の会見で、一—三月と比べると少しペースダウンしたことがあるだろうと思うが、引き続きその動向を見守っていきたいと、私自身は決して踊り場だと思っていないと、景気は着実に持ち直しているとの景気認識を述べた、こういうことになっておりますので、これは大臣の、津村さんがこうおっしゃっているからというよりは大臣大臣としての認識と、こういうふうにおっしゃっているというふうに理解をしておりますが、これだと、景気が着実に持ち直しているときになぜ慌てて予備費を使って景気対策をやらなきゃいけないのかと。そこのやっぱり基本的な認識のところが、私はどうも津村さんがこの最初のときにおっしゃったことの方がより正確に今の状況を把握していらっしゃるように思うんですが、その後、荒井大臣が踊り場じゃないと言い、二十日に野田大臣が踊り場でないとこうおっしゃってしまったので、どうも何か津村政務官が結局何か歯に衣を着せちゃったような感じがするんですが。  景気は着実に持ち直しているという認識は、今でも野田大臣、変わられませんか。
  43. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) あの八月二十日のときの発言は、一—三に比べて間違いなくそれは減速感が出ているということは、四—六の数字でその認識はお示しをしたとおりであります。その後の八月以降、様々な為替の問題も含めて足下の経済金融情勢というのは下振れリスクが高まっているというふうに認識しております。
  44. 林芳正

    ○林芳正君 さっき津村政務官がおっしゃったように、実はこの前から為替の問題は出ているんですね。ですから、二十日に会見されたときは既にそういう為替の問題等は出ていたと思うんですが、二十日以降、どういうことで、じゃ、どういうふうに認識が、景気が着実に持ち直しているところからどういうふうに変わったということなんでしょうか。
  45. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 一つは、やっぱり様々な株式市場あるいは為替のマーケット等々の動向と、それから国民の声、様々な声を踏まえて厳しい認識をより持つようになってきているということでございます。
  46. 林芳正

    ○林芳正君 株式市場も実は二十日の前にかなり動いておりまして、例えば白川総裁は八月十二日に、為替市場株式市場では大きな変動が見られている、日本銀行としてはこうした動きやその国内市場に与える影響について注意深く見ていくとおっしゃっていますし、野田大臣も八月十二日には、昨今の為替に重大な関心を持ち、極めて注意深く見守る、景気動向を見て適切に対応すると、こうおっしゃっているんですね。  ですから、こういうふうにおっしゃって市場為替も株も動いていて、それで十六日にQEがあって、その後、二十日なんですよ。その二十日に、景気は着実に持ち直していると、こうおっしゃっているのがどうもすんなり落ちない。本当にそうであって、QEの後、二次QEが出たりほかの数字が出て、やっぱり良くなってきたな、さすが野田大臣だったなと、こういうふうになるんならそれはもっといいことですし、それならそんなに予備費をすぐ使って緊急対策だということにならないと思うんですが、いかがですか。
  47. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 八月中の、だから基本認識は、今、十二日とか二十日とかいろんなお話がございましたけれども、ベースラインは私の基本認識は同じです。ただ、先ほど申し上げたとおり、下振れリスクの懸念が強まっている、それに対する対応が予備費の活用を含めての緊急経済対策になるということでございます。
  48. 林芳正

    ○林芳正君 それでは、ベースラインということで景気は着実に持ち直しているという認識は今でも変わらないということでよろしいですか。
  49. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 月例経済報告が政府認識でございますので、私も政府の一員としてその認識は共有をしています。
  50. 林芳正

    ○林芳正君 それでは、そういう認識で、着実に持ち直しているということであるけれども、下方リスクに対処するために今回対策をやると、こういうことだということで、まあお考えは分かりました。  まあそれではちょっと足らないんではないかなと。私は冒頭申し上げましたように、津村政務官が最初におっしゃった、下方リスクとおっしゃっているんで、それが全部だということではないでしょうけれども、そういうことが現実に起きているというふうに思うんです。企業の方やいろんな方の話を聞いても、そういう話をよく聞きます。投資マインドが冷えるとかいうことや、やっぱり特に新興国に対する輸出がちょっと先行き、足下もそうですが、やっぱり純輸出のプラス寄与が剥落するリスクというのは、もうこれはリスクじゃなくて顕在化していると。ですから、景気が着実に持ち直しているけれどもこういうリスクがあるんでというよりは、こういうリスクが顕在化しているんで、この持ち直しているという現状認識を、もう少しそのリスクが顕在しているということで併せて変えていかないと、それに対応した対策というのが取れないんではないかと、こういうふうに思いますが、それは津村政務官、何かコメントありますか。
  51. 津村啓介

    大臣政務官(津村啓介君) 委員の御指摘というのは、まさに現在の月例経済報告の在り方だとか政府景気認識というもののこれまでのルールについての論点を御指摘になっているのかなというふうに思います。  もう大臣も御経験されてよく御存じだと思いますが、個人消費だとか設備投資だとか輸出だとか、各需要項目を一つ一つつぶさにチェックをして、その上で、月に一度政府としての野田大臣のおっしゃるベースラインをきっちりと定めていくと。そのルールを政権交代後も私ども引き継ぎまして、日によって景気認識がぶれるようなことのないように、政府としての安定した物の見方ということを国民の皆さんに示しているというわけですけれども、一方で、そのマーケットの動きというのは日々非常に振れるものですから、それについてはそのベースラインをしっかりと月に一回チェックしていくということとは別に非常に注視しているということで、そういう中で様々な先行きについての下振れリスクについては非常に、何といいますか、丁寧に見ていると。  そういう中での先行きについての、何といいますか、懸念を示したということでありまして、その際に、改めて申しますが、その政府景気認識、月に一度の月例経済報告の認識というのが、タイムラグといいますか認識のラグが生じるということのこれは可能性があるわけで、そのことへの危機感を持ちながら、自民党時代のことはいざ知りませんけれども、私たち民主党政権としては少しでもスピーディーにその予見可能なリスクについては対処していこうということで今回の経済対策に踏み切っているわけで、それが月例経済報告の文言と一字一句整合していないからといって、それが私たちの経済対策がちぐはぐだということにはならないと思います。
  52. 林芳正

    ○林芳正君 それはそのとおりだと思うんですが、先行きリスクに対処するということは否定しませんが。  さっき霞が関文学とおっしゃったんですが、政務官、副大臣大臣、そして最終的には内閣として文章は書く責任がありますから、それは政務官がそう思っていらっしゃるんだったら上がってきたものを変えていただいていいと思うんですね。ですから、そこはちゃんと申し上げておきたいと思いますし、我々の時代もそういうふうにやっていたつもりであるということは申し上げておきたいと思います。  次に、日銀総裁にお伺いをしたいと思いますが、先ほど大久保委員からも私が申し上げようと思っていたことをかなり言っていただきました。認識をかなり共有しておりますが、我々は野党でございますので更にやりたいと、こう思いますけれども。  日銀券ルールということを先ほどおっしゃっておられますが、これ国債の買い切りは日銀券の発行残高を超えないと、こういうことだというふうに承知しておりますが、日銀の内規で定められているというようなお話でありましたが、これどういう拘束力があって、もし破るとどうなるのか、御説明いただければと思います。
  53. 白川方明

    参考人白川方明君) まず、日本銀行金融政策それ自体につきましては毎回の決定会合で議論し決定をしております。その上で、現在は無担保のコールレートを〇・一%前後で推移するという調節方針を決めまして、その目的を実現する上で様々な金融調節手段を使っているわけでございます。  長期国債オペ、これは我々にとって非常に主力のオペでございますから、基本的な運営の仕方というものをこれは政策委員会で議論し、それに基づいて行っております。内規という表現が適切かどうかは分かりませんけれども日本銀行で、政策委員会で議論し、その上でこの運営のルールを決めているということでございます。  それで、先ほど申し上げましたとおり、国債は十分に買っておりますけれども、ただこの銀行券との関係を意識しなくてもいいんではないかということでございますけれども日本銀行通貨の供給、これはバランスシートになりますと、右側、負債の方には銀行券がございます、資産の方にはこれは国債を始めとして銀行に対する貸出しがございます。日々金融市場はこれは変動をしております。したがいまして、あるときは資金の供給、あるときは資金の吸収ということも必要になってまいります。長期国債ばかりでこれを、資金供給を行いますと、今度は資金を吸収するということもできません。したがいまして、ある程度経済成長する上で必要な資金、それに対して銀行券、それは銀行券にほぼ対応するわけでございますけれども、そうしたものをめどにして国債の買入れ金額を決めていくということでございます。このルールは、決してこうした考え方自体日本銀行に固有ということではなくて、多くの中央銀行が取っている考え方でございます。  長くなって恐縮でございますけれども、現在相当に買っておりますけれども資金の供給量を増やす上で、長期国債のこの銀行券のルールでもって、銀行券のルールがあるがために潤沢に資金が供給できないということではございません。市場の方には今資金が本当に潤沢にあふれております。  もし、この日本銀行国債の買入れがそうした金融政策の目的から離れまして運営されているというふうに市場で見られますと、これは先ほど申し上げましたように、むしろ長期金利への悪影響ということも懸念されます。そうしたことを考えまして、私どもとしては、銀行券の成長というものを念頭に置きながら国債の買入れを行っているということでございます。
  54. 林芳正

    ○林芳正君 ちょっと半分お答えいただいていないような感じがいたしますが。  それでは、もしその日銀券ルールというのがあって、それを変えるためには政策決定会合による議決が必要なのかということがまず第一点。それから、もしそれを変更して、超えた場合にどういう経済に対する影響が出るというふうに思われているか。その二つ、お聞きしたいと思います。
  55. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  今の金融政策決定会合で決めていますことは、これは無担保コールレート、この水準について誘導目標を決定しております。その目的を達成する上でのそれぞれの手段についての具体的な金額について、政策委員会決定会合それ自体で決定しているということではございません。ただ、金融調節を行うときには、当然これは政策委員会、私を含めまして政策委員会のメンバーの意見、これを十分に踏まえて金額を定めております。その意味で、もしこの銀行券ルールが不適切であるというふうに政策委員会のメンバーが考えた場合には、当然それに、銀行券ルールに縛られた運用ということではございません。あくまでも最終的に日本銀行政策を決めていく場は、これは政策委員会でございます。  次に、日本銀行がこの銀行券ルールという考え方を今この時点で放棄した場合にどういうことが起こり得るのかという二番目の質問でございます。  先ほどの質問に対するお答えと重複いたしますけれども日本銀行が何を基本的な原則として国債の買入れを行っているかということに懸かっております。潤沢に資金を供給している、あるいは金利の誘導、こうしたことを離れて、例えば財政ファイナンスを目的として日本銀行国債の買入れをいよいよ始めたということになってまいりますと、これは長期金利に対してリスクプレミアムが発生し、むしろ望ましくない状態になるというふうに思います。  そういう意味で、我々としては、現在、この銀行券ルールという言い方がいいかどうかは分かりませんけれども、こうした考え方で行うことが日本経済の長期的な発展のために望ましいというふうに考えております。
  56. 林芳正

    ○林芳正君 与党であればこの辺でやめるんですが。  要するに、どんどんどんどん潤沢に供給していけば確かにそういうリスクはあると。ただ、銀行券の発行という一定の枠を超えるとそれまでと違ったどういうデメリットが出るのかというのがよく分からないんですが、このターゲットというか、この数字を超えた瞬間に起こるデメリットというのは何がありますか。
  57. 白川方明

    参考人白川方明君) これは、経済金融について、一方で連続的に経済金融が変化していくという側面と、それからある段階で非連続的に変化するという両方の側面があるというふうに思います。したがいまして、銀行券ルールというもの、銀行券の残高に到達するその前日までは何もなくて、到達したその日から突然何か世の中が激変するという、そういう性格のものではないと思います。  ただ、繰り返しになりますけれども日本銀行が、つまり一国の通貨の信認を預かる中央銀行がどういう原理原則で行動しているのか、その点についてある段階で疑念が生じますと、その段階で多分変化が起こるんだろうというふうに思います。したがいまして、銀行券に抵触したその日から、その日を境として世の中が激変するという性格のものではないと思いますけれども、しかし、繰り返しになりますけれども、どういう原理原則で中央銀行が行動しているかということは、これは一国の通貨の信認にとって大事だというふうに思っております。
  58. 林芳正

    ○林芳正君 結局、お聞きしておりますと、今までそういうルールでやっていたんで、それを超えるとそういうメッセージが出てしまうという以外に、経済的に何かその線が意味があるというふうには聞こえないわけでございまして、今すぐそれを超えろとか言っているわけではないんですが、むしろ最初にお聞きしたことで、では、政策決定会合国債の額をこれぐらいにしろと、それが結果として十二倍して年の額になって、それが超えてもそれは政策決定会合の決定だからそういうふうにやると、そういうこともあり得るということですね、理論上は。
  59. 白川方明

    参考人白川方明君) 同じお答えで恐縮でございますけれども銀行券ルールというもので政策オペは行っておりますけれども、最終的な我々の目的は物価安定の下での経済の持続的な発展ということでございます。その目的を達成する上で、この国債の買入れも含めて様々な政策の選択肢についてメリットとデメリットを勘案して決定していくということでございます。  したがいまして、何か我々自身があらかじめ決めたルールに縛られて我々自身が最終的な目標の遂行ができないということでは、これは決してございません。
  60. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  続きまして、二十六日から二十九日にカンザスシティ連銀が主催されましたカンファレンスですか、総裁、お行きになって、そして、ニュースでしか拝見しておりませんが、学者の方と少し時間を取ってお話しされたというニュースがありましたが、トリシェさんやバーナンキさんとバイで会合はおやりになったでしょうか。
  61. 白川方明

    参考人白川方明君) バーナンキ議長、それからトリシェ総裁ともかなり長い時間掛けて個別に面談を行いました。
  62. 林芳正

    ○林芳正君 その部分が余り報道されなかったんでちょっと心配しておりましたが、安心をいたしました。  その場でどういうやり取りをやったかというのは当然ここで全部つまびらかにされるということは難しいということは理解しておりますが、やはりこういう状況の中で、G8、G20でずっとここ一、二年、出口戦略どうするかということを話してこられて、その中でどうも、我々見ておりますと、そこがまだはっきり国際的なコンセンサスができない中で、取りあえず財政ももう使ってしまったし、残っている手は自国の通貨をなるべく切り下げる方向にして輸出を促進しようという、何というか疑心暗鬼になって通貨の切下げ競争みたいなことになっているんではないかというふうに危惧をしておりますが、やっぱりそれをきちっとしたG8やG20の場で整合性を持ってそれぞれの国に応じて出口戦略というのをつくっていく必要があると思いますが、そういうお話出たでしょうか、そのときに。
  63. 白川方明

    参考人白川方明君) 今回のジャクソンホールのコンファレンスそれ自体で、今、林先生がおっしゃった議論がなされたというわけではございません。ただ、G20、それからG7含めまして、様々な国際会議の場で今委員がおっしゃったような問題意識を共有した上でいろんな議論は、これは常日ごろからなされております。
  64. 林芳正

    ○林芳正君 是非それをお願いをしておきたいと思います。これは野田大臣にも同じお願いでございますが、やっぱりマクロでそういう枠組みがあって行かれていろんな話をするときにバイの話もやっていただいて、是非疑心暗鬼にならないようにしていただきたいと。  今、日米関係は安全保障の方でぎくしゃくしておりますので、なかなか協調しようと思っても難しいんじゃないかと、こういうふうに思われておりますんで、むしろそういうことではなくて、電話で野田さんとガイトナーさんが話をして協調するかもしれないというニュースが出るだけでもかなり大きなインパクトはあると思いますが、野田さん、どうでしょうか。
  65. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) G20等の国際会議の場でも、マルチだけではなくてバイの会合はこれまでも随時やってまいりました。加えて、そういう国際会議以外のところでも、電話も含めて様々な意見交換はこれからもやっていきたいと、緊密な連携を取っていきたいと思っています。
  66. 林芳正

    ○林芳正君 近藤政務官にお見えいただきましたので一つだけ最後にお聞きしたいと思いますが。  今度、認識はちょっと私と違いますが、対策を打っていくと。規模ももう少し、認識が危機的な認識ならもう少し大きいものになっていくべきだと思っておりますが、そういうことをやる前提として、やっぱり今円高になって空洞化するんじゃないかという、ここへ来る前に、そもそも非常にビジネスにとってはつらい政策環境と。例えば、最低賃金をかなり大きな目標ですぐにも引き上げるんではないかといった懸念や、派遣業の規制緩和をするとか、CO2も国内の議論なしに海外、外で公約すると。特に製造業の皆さんは追い出されているんじゃないかというようなことをよく聞くんですが、経産省としてそういう空洞化を促進するような施策というのを少し変えていく必要があるんじゃないかと私は思っておりますが、どうお考えでしょうか。
  67. 近藤洋介

    大臣政務官(近藤洋介君) 林先生にお答えをいたします。  御指摘のそれぞれの施策はそれぞれが異なる背景と目的を持っているものですから、具体的にその内容を検証することなく空洞化促進策と言われるとつらいと、このように思います。  例えば、温暖化でございますけれども、地球温暖化に対する課題を解決するために低炭素型社会をつくる、そのためにイノベーションを起こす、そしてそのイノベーションによって日本の企業の競争力が高まる、そして輸出競争力が高まると、こういうロジック、こういう道筋を立てて、課題解決型国家で、エネルギー、グリーンイノベーションで二〇二〇年までに約五十兆円と、こういう目標を立てているわけでございます。  ですから、具体的な温暖化対策の国内対策については、これは先生指摘のように、産業界からも大変不安感を持って見られている部分もございますから、丁寧にそのスケジュールをお示しすることが重要だろうと思っておりますが、例えば温暖化対策についてはそうしたイノベーションを起こすための起爆剤になるんだと、このように考えているわけであります。  また、足下の空洞化懸念に対しては、本日も新成長戦略実現会議、官邸で菅総理の下にございまして、経済産業大臣から国内投資促進プログラムの骨子を提案をさせていただきました。  この急激な円高、そして国内投資をためらう産業界がある御意見を十分踏まえて、アメリカのオバマ政権も相当大きな国内投資プログラムを出しています。世界中でそういうプログラムを出しておりますので、我々としては、この十日に発表される緊急経済対策、九千二百億円が少ないという御指摘もございますが、すぐ動けるお金を活用して、金額はこの場では申し上げにくいわけでありますけれども、相当思い切った国内投資プログラムを出させていただくと、このような考えでございますし、今後も切れ目ない対策を打っていきたいと、このように考えておるわけであります。
  68. 林芳正

    ○林芳正君 私が少なくとも聞いております民間の企業の方の認識とちょっとまだ遠いなと。まあ政務官も心の中ではそう思っていらっしゃるかもしれませんが、そういうことを申し上げて、同僚に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  69. 片山さつき

    片山さつき君 自民党の片山さつきでございます。一年ぶりに戻ってまいりました。  お手元の資料を御覧いただきながら質問をさせていただきたいんですが、今、八月、九月、大変な円高になっていますが、これ珍しいことじゃないんですよ。八月というのは円高になりやすいんです。過去十年で八回円高になっております。古くはニクソン・ショックのときからずっとそうですから、これは財務省、大蔵省には知見があるんですね。  しかも、このお手元の資料のちょっと前からのマーケットの動きを見ていただきますと、ドル・円については、もう七月ぐらいから既に相当な円高でみんな苦しんでいたんですね。ユーロの相場が急に円高になっていた。それが全部分かっているはずの政府としては、野田大臣以下、万全の体制で臨んでいて当然な状況でございますが、そして八月十日にキーとなる会合があるわけです、金融政策決定会合ですね。この前後の御発言ですが、野田大臣、非常に控えめなんですね。為替介入への言及は控えたい、日銀決定会合もコメントしない、そしてその後、白川総裁アメリカのFOMCを見ながら事実上見送ってしまった。ここでマーケットは、もう円高で容認しているな、この政府日銀はと思っちゃってこれは当然だと思います。  見るに見かねた経済産業省の方が十一日から円高影響ヒアリング調査というのを始めた。そして、八十五円割れを受けてようやく野田財務大臣も、注意深く見守る、単に見守るから注意深く見守るになりましたが、この時点でも介入のコメントはない。十二日になって、じりじりしていらした菅総理が、ちょっと急過ぎるんじゃないのと。これ普通は財務大臣の御発言ですが、自分でリスク取っちゃった。まあそれはそれでいいでしょう。  その後お盆休みに入るんですが、私は大蔵省の出身ですが、野田財務大臣、お世辞じゃなくて非常に評判いいですよ。官僚のことをよく聞いてくれる、勉強をされる。ですから、お盆休みは恐らく一日も休みを取られずに地元に帰ってお酌なんかすることもなく、欧米当局と毎日のように二十四時間お話をして、介入は協調じゃなきゃ効かないんだから、協調介入の下地はどうなっているのということをやっていただいているだろうなと思うんですよね。  私は大蔵省に長年お世話になって、九〇年代の前半、財務大臣財務官のかばん持ちで二十回以上G7に出ております。声明の下地も作っておりました。そういう経験の上から聞かせていただくんですが、この八月、九月の野田大臣御自身の累次の御発言、御対応をどのように自己評価していらっしゃいますか。
  70. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 改めてこれはおさらいで資料として拝見させていただきました。私の発言の経緯というのがこれは手に取るように分かってまいりました。  いずれにしても、マーケットの状況注意深く見守るという基本ラインでずっと発言をしてきたつもりです。特に、委員御承知のとおり、G7の声明、これを踏まえた発言がベースラインでございまして、為替相場の過度な変動、無秩序な動きは経済金融の安定に悪影響を及ぼすと、こういうことをベースラインにしながら、多少表現を、少し形容詞を入れたり強めたり等々の工夫をしているつもりでございますが、結果はこういうことだということでございます。
  71. 片山さつき

    片山さつき君 まさにこのG7声明が問題なんですよ、野田大臣の手足を縛っちゃっている。で、二十四日にまた円高が進んだときに、朝、ぶら下がりではちょっと踏み込まれたんですね。それは気持ちは分かりますよ、だれだって言いたい。でも、よく考えたら、G7声明があるからというので、わざわざお開きになった緊急会見でまた元へ戻っちゃったんで、これで八十三円台に入っちゃったんですね。この決定がある程度クルーシャルだった。  そして、八月の二十七日に円高影響調査が出たんですね、ここに付いていますがね。これ、悲惨なものですよ。大臣、これ政治家としてどうですか。中小企業は血を吐く思いで死にそうですよ、大企業もですよ、四割が八十五円前後が定着したら海外に行く。その分雇用もGDPも減ることが目に見えている統計が出たのにもかかわらず、それを受けた大臣のコメントは、ここにあるように、必要なときには適切な対応のみで、さらに、言わなきゃいいのに、為替は昨日今日小康状態まで言っちゃった。小康という意味は普通安心という意味ですが、企業は全然安心していないんですね、血が流れているんですよ。  なぜこういう状態になっちゃっているのか。ここにG7の合意があるんですね、御覧ください、G7とサミットの合意です。自民党政権のときのG7の声明には、為替レートは経済ファンダメンタルズを反映すべきと書いてあるんですが、政権交代後、これは野田大臣、副大臣としてプロセスに参加されていますね。その後、その当時はまだ菅大臣でしたが、ファンダメンタルズはなくなっちゃっているんですよ。で、この為替レートにおける経済ファンダメンタルズの意味するところをそもそも御理解してどう思われているかということも聞きながら、これがなくなっていることによって、今の日本が陥っているようなじりじり円高定着相場では我が国は事実上介入なんかできないんですよ。なんだけれども、昨日の衆議院の財金でも、大臣は、はっきり介入も含めて最終的に必要なときに断固たる措置をとるとおっしゃっている。これは、八月の末になって、もうそろそろ本当に経済がやばくなってからおっしゃるようになっている。これ、御自分が関与して作った合意で、無秩序な動きや過度な変動がない限り、為替レートの介入には付き合わないよとみんなで握っちゃっているんだから、できないことをあなたは言っているんじゃないですか。  私は、財務大臣というのは通貨担当大臣である部分が一番国益を背負っていらっしゃるんですよ、これは与党の皆さんそうでしょう。それで、国益を背負って、通貨戦争を戦っていただかなきゃ困るんですよ。戦う姿勢であなたはG7で交渉していらっしゃるんですか。それを伺いたい。
  72. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 基本的には、日本の国益をしっかり守るという基本姿勢の中で意見交換をし、交渉をしてまいりました。これからもそういう決意でやっていきたいと思います。
  73. 片山さつき

    片山さつき君 仮に、この民主党の大変な総裁選をくぐり抜けて御留任されるとしたら、九月のG7であなたにやっていただくべきことは、トロント・サミットでファンダメンタルズという言葉が入っているんですよ、これは財務大臣プロセスが余り関係ないところで入っちゃった。恐らく中国抑え込みのためでしょうが、そんなことどうでもいいんですよ、入っているんだから。我が国は困っていると、この状況では我が国の製造業は食べられない。だったら、日本は国際経済の中で安定的な役割が果たせないんだから、入れろとあなたが言って交渉してください。  次に、白川総裁ですが、八月三十日、日銀の緊急政策決定会合を開いて二十兆から三十兆に新型オペが決まった後、ともかくこの対策が二十八日から新聞にもうリークされているものですから、織り込んじゃって全然効果がない。その効果がないものを発表するあなたの記者会見で何とおっしゃったかというと、市場の動き一つ一つ、株安や円高日銀は適合させません。  そして、これもおっしゃらなきゃいいのに、政策委員のお一人の須田美矢子さんが、今緩和措置をとると為替政策と受け取られかねず、為替政策をやってほしいとみんな思っているんじゃないですか、為替政策と受け取られかねず、効果は限定的ということを、言わなくてもいいのに御自分の口で会見でおっしゃっている。その結果、また円高になっちゃったわけなんですけれども。これ、総裁、大変高名なエコノミストです。私もお仕事したことがあります。誠実な方ですよ。  累次のあなたの御発言を見ていると、この局面日銀にできることなんか限られているんだというようにしか聞こえないですよ。ついに、九月六、七の金融政策決定会合で追加緩和がないわけですね、八月三十日に前倒しでやっているから。ないんだから、その後、これだけでもマーケットに影響が悪いのに、駄目押しで、当局為替相場を自由にコントロールできるわけでないと言ってしまったので、また円買いを助長して八十三円になっちゃった。これだけ全部分かっている総裁がおっしゃっているということは、そろそろ本音をおっしゃったらいかがですか。  この私が手元にお配りした資料には、最後に中央銀行バランスシートとマネーのGDP比が書いてあります。これ、私も大蔵省にいたとき、ある程度意図的にそういう政策を取っておりましたが、もうこの国のそのマネーの対名目GDP比はもう十分高いんですよ。じゃぶじゃぶなんですよ。大久保先生、うなずいていますね、金融界御出身ですから。だから、この上やれと言っても無理なんだと。むしろ、今何が足りないか、日本経済がこれだけ縮小して成長しないのは何が悪いのか。追い出し四点セットと言われる、法人税がいつまでも高い、ゼロの特区もつくらない、CO2はマイナス二五%、派遣法制もおかしい。そういう問題も、それから総裁御自身もおっしゃったように、私どもも提言していますが、これだけ円高なんだから、これ以上円高にしないという姿勢を見せる意味でも、ここでファンドをつくって資産を買いに入る。これ、民主党の方も言っているんですよ。我々も提言している。やりましょうよ。  そういうことを、単に通貨の番人だけじゃなくて、トップエコノミストなんです、中銀総裁は。だから、言ってもいいんですから、この際、楽になりますから言っちゃいましょうよ。
  74. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) お二人への質問でしたか。
  75. 片山さつき

    片山さつき君 いえ、白川総裁
  76. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) じゃ、白川総裁
  77. 白川方明

    参考人白川方明君) 片山議員の御質問、多岐な論点にわたっていますので、すべてお答えしますと時間をオーバーしますので、一番最後の点を中心にお答えいたします。  先生指摘のとおり、日本銀行は現在潤沢に量を供給しております。この量の供給は、これは金融システムの安定を保つ上で、緩和的な金融環境を保つ上でこれは大いなる効果を発揮していると思います。しかし、このことだけで日本が本格的な経済成長軌道に復帰するということは、これは、これだけではやっぱり実現しない。あわせて、やっぱり成長基盤を強化していくということが必要であります。  現在、将来の成長に対する自信がない、そのことが人々の支出意欲を弱めていることであります。そのことがまたデフレにも影響しているということでございまして、この成長基盤をしっかりと強化していくということが大事であります。この点は日本銀行はかなり強調して言っておるところでございます。
  78. 片山さつき

    片山さつき君 今までの会見で一番歴史に残るいいポイントだったと思っておりますが、その成長戦略、長年、自民党は民主党に成長戦略がないと批判してきたところ、成長戦略を打ち出しておつくりになる。これは非常に期待しております。  そして、その財源となる平成二十三年度予算の概算要求組替え基準の元気な日本復活特別枠、いいお名前ですね。これに二・九兆円の要求が出てきて、私も元主計官ですから、拝見して愕然といたしました、これは一体何なの。つまり、この中で義務的経費や人件費も入っているんですよ。入っちゃいけないとは言いませんが、しかも、これは民主党さんはパブリックコメントにかけるんでしょう。一般の方は、パブリックコメントにかけたということは、これをゼロ査定でもしていいんだなと思いますよ、普通は。ああ、片山さんが防衛の主計官でがばがばやったから、私も市民だけどやりたいわ、この思いやり予算はゼロにしていいのねと、このICT予算は日本の競争力の根源だけれどもゼロにしていいのね、そして海上保安庁は今中国船でばんばんやっている、その体制の問題もゼロと言っていいのねと思っちゃいます。  予算の裏には膨大な数の法律があります。今、この選挙後の参議院の結果では、野田大臣がそう思われても、すべての法律を予算査定と同様に変えることはできないですね、難しいですね。そのこともしっかりとすべて明確にしながら、この二・九兆円の要望をパブリックコメントにかけるときには、この中に法律や条約、協定に縛られている経費が一々どのぐらいあって、どれはどの法律を作らなければ変えられなくて、人件費はどうせ人事院勧告で決まっちゃうんだよということを正直に言わなければ、一体どこがオープンな予算編成なんでしょうか。お答えください。
  79. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 委員の御指摘のとおり、特別枠にかかわる各省からの要望というのは約二・九兆円出てまいりました。実際、歳出の枠の七十一兆と、出てきている要求との差額の一・三兆が現状では特別枠でございますので、その一・三兆の中に二・九兆分がどういう形で入るかというのは、競争率二・三倍という状況です。  その中で、おっしゃるようないろいろ義務的経費が要望で出てきている府省もございます。一つ一つをまだ精査をしているわけではなくて、元主計官だけにもう手早く作業されているようですが、私はこれから精査をさせていただきたいと思いますけれども、これ、すべて一応パブリックコメントにかけることにはなります。今までもこういう要望等は公表はしてきました。ただ、国民意見を求めるということはやってきませんでしたけれども、予算編成のより透明化という意味でパブコメはやりますが、それで物事が決まるわけではありません。それも参考にしながらも、これは評価会議という、まだ仮称でございますけれども政策の優先順位を決めるそういう組織をつくり、最終的には総理が決めていくというプロセスをたどることになります。
  80. 片山さつき

    片山さつき君 政治というのは優先順位を決めるということなんですよ。これをアウトソースとして丸投げしちゃうんであったら、財務大臣のポストも民間募集された方がいいんじゃないでしょうかということを最後に申し上げて、終わります。  ありがとうございます。
  81. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 財政金融委員会委員ではございませんが、本日は衆議院の一期四年間、財務金融委員会でずっと財政金融の関連のことを審議させていただいた関連から今日はお招きをいただきました。委員長並びに理事、筆頭理事の皆様方には感謝を申し上げるところでございます。  私は経済を職業としてかれこれ二十年やってまいったわけでありますが、今のこの円高というのは極めてゆゆしき事態であるということだと思います。そういう意味で、今回、財務大臣白川総裁中心に御意見をお伺いしたいと思います。  まず、一言で、確認をさせていただきたいんですが、野田財務大臣にお伺いいたします。  菅総理と野田大臣は、八月下旬から、そしてまた最近では、おとといの報道番組では菅総理が、そして昨日の衆議院の財金委員会では野田大臣が、それぞれ為替の動きに対して必要とあらば断固たる措置を辞さないと御発言をされておられますが、その姿勢に変更はございませんでしょうか。
  82. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 為替相場の過度な変動、そして無秩序な動きは経済金融安定化に悪影響を及ぼすという基本姿勢の下で、マーケットの動向を重大な関心を持って見詰めていく中で、必要なときには断固たる措置をとる、この方針に変わりはございません。
  83. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 それで、これまで財務省主導で何回も当然ながらヒストリカルに介入というのはされてこられたわけでありまして、断固たる措置の一つの手段として為替介入というのは当然考え得るわけだと思います。  そこで、前回、二〇〇三年から四年にかけて大量な介入をされたエピソードを振り返ってみたいわけでありますが、当時の介入規模は全体として三十五兆円を超えていたわけであります。巨額の資金を要しました。しかしながら、為替レートにどれだけ影響を及ぼしたかといいますと、介入が始まりました二〇〇三年一月から終了した二〇〇四年三月までの十五か月間で、ドル・円レートは最初から最後の比較で一〇%前後円高に更になっているという状況であります。介入の効果が余り見られなかったというわけでありますが、その原因は何とお考えか、一言、一つ若しくは二つの要因に絞ってお答えいただけませんでしょうか。
  84. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) その効果があったかどうかというのは、ちょっと評価は定めにくいんではないかなというふうに思います。
  85. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 今、円高でこれだけ産業界が苦しんでいるわけであります。そういうときに、過去の介入の効果があったかないか分からないと、こういう答弁はあり得ないんじゃないでしょうか。やはり、介入の効果があったとするならば、今回もそういう方針で介入をやっていこうと、そういう内々の方針があってしかるべきだと思います。  仮に、二〇〇三年、四年の介入時期が、介入効果がなかったと御判断をされていたのであれば、それならば介入効果を上げるにはどうしたらいいかと、そういう準備というものが、もう今の局面にあってはすぐに手持ちの玉とあってしかるべきでありますが、いかがでしょうか。
  86. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 一般論としか言いようがないんですけれども、その介入をする場合に、一定の水準を目指して行う介入なのか、そうじゃなくて、いろいろな介入の目的、目標があると思います。それは、国内でのこれまでの経緯もいろいろありました。諸外国の介入の例もいろんな例があります。それを一つ一つ個別に今評価をするということは差し控えたいと思います。
  87. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 私は、当時の財務省日銀関係者、周辺の方々も含めましていろいろな方々から、私は民間で当時介入が入ったときはマーケットで見ていた一人でありますので、よくその辺の周辺状況というのは理解をしているつもりでありますが、私が考えますには、やはり介入が失敗した大きな一つの原因は、当時の財務省の介入に関する公表の方針そのものにあったのではないだろうかというふうに思うわけであります。  当時は、介入をいたしますと新聞の見出しにも規模まで書かれて、介入というふうに即公表をされたわけでありまして、また同時に、添付資料でも今日はお配りしておりますが、外為特会のディスクロージャーにつきましても、月一回介入金額の公表がなされているということであります。このディスクロージャー云々以前の段階として、当時財務省が積極的に介入の事実を即公表する方針に転換をしていた、私はこれが投機筋の大量の資金流入を招いた失敗の一つではないかというふうに思うわけであります。  そういう過去のやはり精緻な分析、何が起きて結果として何を引き起こしたか、どこが有効性を剥落させる原因であったか、そういうものはやはり今の時点で、円高が進み始めたもう一年前からきちっと分析をしていなければ断固たる措置というのは、大臣最初におっしゃられましたけれども、断固たる措置はとりたくてもとれないんではないでしょうか。
  88. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 余り細かいことを言うのは差し控えますが、シミュレーションはいろいろやっています。
  89. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 それでは、この介入の公表方針について、やはり是非改めていただきたいと思いますが、一つ私の方で提言をさせていただきたいと思います。(資料提示)  これは、二〇〇三年から四年にかけましたこの介入が失敗したという事実の一つに、原因としてこの財務省の公表方針があったと私は様々な関係者からヒアリングをしているわけでありますけれども。  そこで、この単独介入というのは財務省は非常にトラウマで、二〇〇三年、四年の失敗からなかなかトラウマで積極的でないというふうに伺っているわけでありますが、是非政治主導で大臣自ら新しいやり方でやはり介入の効果を増すと、そういうことを、今の局面でありますから、国民生活を守るという意味で是非一歩前に進めていっていただきたいと思いますが、単独でも覆面を徹底的にすると。覆面介入で効果を高める新しい手法ということで、覆面のポイントですけれども、三つ側面がありまして、情報開示、それから資金調達もできるだけ見せないと、そして介入規模も小規模にする。  情報開示は、この月一の報告はもう取りやめていただいて、外為特会の決算年一回だけにすると、そういうことで情報開示の透明性というのは、少し介入の効果を出すという観点から改めていただきたいと思いますし、また資金調達も介入毎に為券を発行して資金調達をしていれば、これは市場関係者には介入資金を調達しているとすぐに分かるわけでありますから、これも工夫をしていただいて、年度の初めに当初の予算の辺りで一括プール金として資金調達をしていただくとか、このようなやはり工夫をして徹底した覆面介入にもう一度スタンスを戻していただく。そういうことを是非御検討していただきたいというふうに思うわけであります。  さて、時間が限られておりますので次の質問に移らさせていただきたいと思いますが、当然ながら、この為替日本円高というのは産業界の方々にはもう大変な悲鳴が上がっているということは周知のとおりだと思います。しかしながら、民主党政権が昨年発足して以降、大変ゆゆしき事態として、日本の国際競争力の更なる低下というのも非常に顕著になってきているという問題があります。  例えば、毎年公表されていますが、スイスの著名な研究機関でありますIMDの世界競争力調査というのがありますけれども、今年五月に今年の二〇一〇年の分が発表されましたが、ここで、何と日本我が国日本の国際競争力は世界第二十七位まで下がってしまったということでございます。昨年は世界第十七位、まあ十七位も悪いんですけれども政権交代をして一気に十位もずどんと落とされてしまった。  これは、調査期間を調べますと、今年の調査は今年の一月に行われているということでありますので、当然政権交代後で、昨年の十二月の事業仕分の直後の調査であったわけであります。当然、事業仕分では、スーパーコンピューター世界第二位でなぜ悪いんですかと、ああいう御発言もあったわけでありますから、当然ながら日本は技術立国に関心がないものと、そういうレッテルを海外から張られてしまったと言っても仕方がないと思うわけでありますが、そのような政府としての方針が世界に打ち出された結果、世界の方々が見て日本の国際競争力というのは二十七位だ、こういうレッテルを張られますと、実は二十七位の国なんかにだれが、世界のどこから投資をしたいと思うようになるでしょうか。  この同じ二〇一〇年の国際競争力調査の一位は、皆さん、何とシンガポールなんです、今年は。そして、二位は香港です。もうアジア経済の台頭がすさまじいわけでありますね。そこで、アジア通貨についてお伺いしたいと思います。  日本の産業界の輸出の企業の方々は、やはり日本経済アジアとの接点が年々深まっている中で、大変アジア通貨に対しての今回円高局面での懸念を示されているわけでありますが、民主党さんの方々はどうも、ドル・円の御発言は聞かれるんですが、アジア通貨について余り聞かれないということでありますので、財務大臣通貨の番人でもおられるわけですから、是非ここでアジア通貨について、ドルペッグをしているアジア通貨というのがどれだけあるか、通貨の名前を、名称を少し挙げていただきたいと思います。  要は、ドルペッグをしていると、今回のドル円高で引きずられて、全面的にペッグをしている、あるいは管理フロートでドルと連動しているようなアジア通貨に対しては日本円は全面的に高くなり、そして経済競争の中で全面的に負けるという構造になりつつあるわけですね。ですから、ドルペッグという狭義の定義ではなくて広い意味で、通貨バスケット、管理フロートも含めて、どれだけのアジア通貨ドルと連動しているか、お答えいただきたいと思います。
  90. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) まず、前段の国際競争力の順位が日本が二十何位になったというお話で、それと事業仕分と結び付けるお話がございましたが、これは全く飛躍し過ぎるというふうに思いました。  そのことを申し上げた上で、今通貨のお話でございますけれども、ここ一か月間の動きを見ていると、ドルを軸にすると、ドルに対しては大体ほかはみんな弱くなっています、諸外国。ドルより強いというのは、この一か月は、これはブラジルのレアルとスイスのフランと日本の円という状況、傾向でございます。  事実上ドルペッグという言い方をされましたけれども人民元も、これ為替制度の改革とそして人民元の柔軟化はありますけれども、非常にまだ近い動きをしているな、ウォンもそうだなと、アジアは結構そういう傾向が強いと思っています。その分、輸出を考えたときには、日本の輸出型の産業はそういうライバルとは厳しい状況に陥っているという認識を持っています。
  91. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 今、一般的なお答えを、御答弁をいただいたという認識でございますが、実はドルペッグ若しくは管理フロート若しくはカレンシーバスケットを採用しているアジア通貨というのは、人民元もその範疇に広い意味で入りますけれども、そして香港ドル、それからマレーシア・リンギ、シンガポール・ドルなど、すべて、タイ・バーツもそうですけれども、広い意味でドルと連動性が高い通貨であります。  ですから、やはり政権与党の方々からこういったアジア通貨に対する円高の問題というのがコメントとしてなかなか聞かれないというのは、本当に産業界のことをお考えでおられるのか、経済関心がないんではなかろうかとも言われかねないわけでありますが、その辺は少し苦言を申し上げておきたいというふうに思います。  時間も限られておりますので、最後に日銀政策について少しお伺いをさせていただきたいと思います。  先ほど来、国債の買い切りオペですとかあるいはインフレターゲットというのはもうここ数年議論の対象になっているわけでありますけれども、今回の円高要因、大きく分けて私は二つ要因があると思います。一つは、多くの方が御指摘しているとおりですが、日米の長期金利金利差が縮小している。それからもう一つは、これ、実質為替レート、この添付資料の中で一番最後のページに当たるかと思いますが、私の事務所で試算をしてみました実質為替レート、これは実質で、実効為替レートではありません。ドル・円の実質化したものでありまして、日米の物価格差で調整をしております。これで見ますと、実は赤い線がこの実質為替レートの数値でありますけれども、青い線が名目のドル・円レート、緑色の線が名目のドル・円レートの長期的なトレンドラインであります。  この実質為替レートの赤いラインが名目為替レートのトレンドの緑色のラインと非常に勾配が、いわゆる傾き、右肩下がりのいわゆる円高傾向が連動しているということがこのグラフから御確認いただけるかと思いますが、要するに、金利格差と同時に、この今の円高というのは長期的な視野で見れば、日本のデフレの進行が円高を招いているということにほかならないと思います。金利格差の縮小の方は、もうこれは日米の金融政策の歩調の乱れといいましょうか、やはりバーナンキさんの方が金融緩和に積極的な姿勢を示されているということが、少し日本が後れを取っている原因の一つではないかと思いますが。  そこで、このデフレ克服についてお伺いしたいと思いますが、まず、デフレ克服、克服とはよく皆さんがおっしゃいますが、正しい物価指標をきちっと見ているかどうか、その観点をお伺いしたいと思います。  コアCPI、CPIには当然ながら上方バイアスというのが統計上あるとよく言われているとおりであります。これはパソコン価格の下落とか、あるいはディスカウントショップに行く買物客が多くなったとか、こういうふうなことでインデックスに絶えず上方バイアスがある。  白川総裁野田大臣、一言で御回答いただきたいと思いますが、この上方バイアスはコアCPIで今大体どのぐらいとお考えでしょうか。
  92. 白川方明

    参考人白川方明君) 一言ではちょっとお答えできないんですけれども、CPIについて過去バイアスの研究がございました。一九九〇年のCPIを対象にしまして、これは〇・九という研究がございました。ただ、その後、日本の統計作成当局におかれて様々な努力をされてきまして、近年ではこのバイアスが大分小さくなってきたというのが一般的な認識でございます。  今正確に幾らというふうに申し上げることはできませんけれども、以前に比べますとこのバイアスはかなり小さくなったというのが一般的な見解だというふうに認識しております。
  93. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 上方バイアスがあることはこれ間違いないというふうに思うんですが、これ、総務省が担当されているので、算出基準についてはちょっとよく勉強させてほしいと思いますが、来年の八月にまた改定がありますので、そこでより精度の高いものにするように努力すべきだろうと思います。
  94. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 当然物価の統計を作られるのは総務省でありますが、しかしながらやはり財務大臣財政健全化も掲げておられるわけでありまして、このデフレの問題でどれだけ財政健全化の足が引っ張られているかという観点からすれば、やはりこれは財務大臣も常時そのぐらいは頭に入れておいていただきたいなということだと思います。  最後になりますが、この〇・九%程度で幾らか縮小しているということでありますが、日銀の公表されております中長期的な物価安定の理解、これは何%でしょうか。中央値で結構です。
  95. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 白川総裁、時間ですのでお答えは簡潔にお願いいたします。
  96. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央値は一%程度でございます。
  97. 佐藤ゆかり

    佐藤ゆかり君 ありがとうございます。要するに中央値が一%ということは、同時に日銀は、中長期的な物価安定の理解でコアCPIゼロ%以下は許容しないというふうに明言されているわけですね。  ですから、仮に以前の〇・九%ポイント上方バイアスがあったとすれば、日銀政策委員の方々の中央値は〇・一%を目指しているということになるわけでありますから、本当に物価を上げることに関心があるのかということも、これは問うていかなければいけないということになりますので、より精緻な政策の立案をお願い申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  98. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 七月の参院選で初当選させていただきました竹谷とし子でございます。  本日が初めての質問となります。先輩、同僚議員の御指導のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。  私は、本日の議論の中心ともなっております日本経済を襲っている急激な円高、そして長期化するデフレの脱却に向けた政府経済対策について質問させていただきたいと思います。  昨日、円の為替レートが一時一ドル八十三円三十五銭まで上昇、十五年三か月ぶりの円高水準になりました。先ほど片山議員からもお話がありましたけれども、先月の経産省の調査によりますと、円が八十四円から八十五円の水準で製造業の約六割が減益となる、また四割が生産工場や開発拠点を海外に移転する、六割が海外での生産比率を拡大すると回答されています。このまま円高を放置すれば、日本の産業が空洞化いたします。雇用が失われて、ますます景気が悪化していきます。  八月三十日に政府経済対策の基本方針をお出しになりました。しかし、具体的な経済対策は明日の九月十日に発表する、また予備費を使った対策の発動も九月末までと大きくずれ込んでいると思います。その結果はどうだったでしょうか。基本方針を発表された翌日の八月三十一日には、更に円高が進行、株価は年初来安値を更新しました。市場には打つ手なしとの印象を与えて、かえって円高、株安を誘ったという見方もあります。  政府がお出しになった経済対策はタイミングが遅いと市場評価したものと思いますけれども、これについて財務大臣の御認識を伺いたいと思います。
  99. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 竹谷委員の御質問にお答えしたいと思います。  円高の進行、そしてこれが今長期化しつつあるということの弊害は委員が御指摘のあった経産省の調査でも明らかでございまして、大変厳しい状況だというふうに認識をしています。その状況認識踏まえて、総理から経済閣僚それぞれ呼ばれてヒアリングが行われ、荒井大臣中心にこの度八月三十日にまとめた経済対策の基本方針を取りまとめました。これは、即応性のある施策をまず展開しようということで、経済危機対応・地域活性化の予備費九千二百億円を活用するということを柱とするものを明日閣議決定する予定でございます。  予算措置というものについては九千二百億円でございますが、事業規模はもっとはるかに大きな額になるというふうに思います。今その最終的な詰めを行っているところでございますが、この政策がしっかりといわゆる浸透をして、そして最終的にはマーケットにも支持をされるようにこれから努めていきたいというふうに思います。
  100. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 タイミングが遅かったという市場評価についてはいかが御認識をお持ちでしょうか。
  101. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 八月三十日は、政府のこういう対策と、加えて日銀金融緩和、これ臨時決定会合をやっていただいたと。これは歩調を合わせてやったつもりでございます。その評価については、遅かったとか内容がどうだったということももちろんあるかもしれませんけれども、マーケットの様々な要因で次の日のマーケットの動きになったというふうに理解をしています。
  102. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 今回の円高対応も、それもさることながら、一方で中長期的な問題として深刻なデフレがあると思います。今おっしゃられましたように、日銀も八月三十日に追加の金融緩和を決められました。しかし、同じ日に発表された政府経済対策とともに市場評価は芳しくないと思います。  私は、この数か月間、製造業、建設業、運輸業、サービス業など、中小零細企業の経営者から話を聞いてまいりました。日本の企業の九九%が中小企業です。皆様が口をそろえておっしゃるのは、仕事があっても単価が安い、採算が悪くて利益が出ない、資金繰りが苦しい、資金繰りを支援してほしいということです。しかし、決算書で利益が出ていない企業には銀行が新規の融資に応じないという現実があります。中には、御自身の生命保険を解約して従業員の給料など経費の支払に充てているという経営者もおられました。  日銀金融緩和をしても、景気が悪いために金融機関は中小零細企業に対して融資を渋っているのが現実だと思います。こうした企業を支えていくために、更なる金融緩和とともに、景気浮揚効果をねらった、政府が投資や消費を新たに生み出す大胆な政策を実施する必要があると考えますが、これについて内閣府の御認識を伺いたいと思います。
  103. 津村啓介

    大臣政務官(津村啓介君) 内閣府政務官の津村でございます。  竹谷委員おっしゃられたとおりだと思います。デフレ脱却には、通貨供給量、マネーサプライをどうするという議論も一方であると思いますけれども、そちらは日本銀行がしっかり対応されているということですけれども、一方で、政府としましては、今回の緊急経済対策もそうですが、新成長戦略ということで、この半年余り議論をして、六月に需給ギャップを埋めることが中長期的なデフレ脱却に最も重要なことだという認識で新成長戦略をまとめまして、今回の緊急経済対策においても、需要、雇用の創出効果が高い、そうした新成長戦略の施策を前倒して実施することによって、まさに委員おっしゃられるような消費そして投資をしっかりと喚起していこうと、そういう哲学で対策を考えております。
  104. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 今後の更なる円高を阻止してデフレから脱却するためには、経済対策のタイミングもさることながら、その規模も重要だと思います。明日、政府が発表される対策の規模は予備費九千二百億円ということですけれども、本当にそれで十分だとお考えでしょうか。財務大臣認識をお伺いしたいと思います。
  105. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 明日、閣議決定する予定の経済対策というのは、先ほどの、これまでの委員との質疑の中でも少しお話ししましたとおり、景気の下振れリスクに対する対応を緊急にやろうという意味でのまずは経済対策でございまして、だから即応性のある政策を集めて九千二百億円の予算規模ということです。元々、予備費は経済危機対応という位置付けでありますので、そういう意味での予備費の活用であるということは御理解をいただきたいというふうに思います。  中身は明日出てくるということでありますけれども、各省それぞれ精選をした内容です。予算規模は九千二百億円でございますけれども、事業規模は、今私から数字を申し上げる段階ではありませんが、規模はもっとはるかに大きくなるということで御理解いただきたいと思います。
  106. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 経済対策は、小出しにやるのではなくて、後から景気状況を見ながら追加するのであれば、今やった方がいいと私どもは考えております。  公明党は、九月二日に四兆円規模の経済対策を発表させていただきました。財源のうち一兆五千億円は建設国債を提案しています。  昨日の大雨で、この国会近くの千代田区平河町の区道で冠水によってセンターライン付近の約七メートルにわたってアスファルトに亀裂が入り、一時通行止めになっていました。原因は、下水管の太さが不足していたことによると聞いています。一方で、国土交通省の発表では、平成二十年度の管路の老朽化による道路の陥没は四千百か所。下水道が破裂すると、トイレやおふろが使用できなくなるなど生活に支障が出てきます。  今後二十年間で、建設後五十年を経過する社会資本が約五割になると推計されています。壊れた後の取替えには大きな費用が掛かります。しかし、壊れる前の予防保全によって、国民の安全を守ると同時に、設備を延命してライフサイクルコストを抑えるという手法もあります。  公明党では、今回の経済対策の中で、このような老朽化した下水道、橋梁、道路、港湾などの予防保全対策を始めとして、待機児童解消のための保育施設の拡充、子供の命を守る学校の耐震化、公共施設への太陽光発電、洋上風力発電など、国民の安全、快適な生活を守りながら、雇用を生み出し、さらに新しい技術を生み出す可能性のある公共事業を提案させていただいています。財源として建設国債を発行するということを提案させていただいておりますが、財務大臣はいかがお考えでしょうか。
  107. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 九千二百億円を小出しというふうにおっしゃっておりますけれども、今すぐ対応できるのはやっぱりこの予備費ですから、小出しではなくて今使えるものをすぐ使っていこうという発想であるということで、今建設国債云々のお話ありましたが、それは補正予算に対応する場合にはそういう議論があると思います。それは、この即応性のある政策を展開した後に、なお景気動向を見ながら、我々もそれは機動的に対応する中で補正予算というのも視野に入れていきたいというふうには思いますけれども、まず今使える、緊急避難的に使えるお金は何なのかというと、今は予備費なんです。だから小出しではないんです。これを有効に使おうということは、そこは御理解いただきたいというふうに思います。建設国債発行の云々は、これは補正をこれからやるのかやらないのか含めての議論になりますけれども、引き続き社会資本整備の中で重点的に整備した方がいいものがあることは事実だと思います。  ただ一方で、安易に国債発行することが財政上考えていいのかどうかということも慎重に判断をしなければいけないと思います。個別のお話で耐震化の問題であるとかゲリラ豪雨における対策、お話しされました。この認識は全く私どもも共通点でございまして、これ九千二百億円の中でもこういういわゆる地域防災という観点で、耐震化や、あるいはゲリラ豪雨対策も入れていきたいというふうに思っています。
  108. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 今、大臣が安易に国債を発行するべきではないということについては私も認識は同じでございます。私は十八年間、公認会計士、経営コンサルタントとして、バブルの崩壊後、企業の業務改善のために民間で働いてまいりました。企業の経営者にとって、バランスシート資産と負債を見ていくということですけれども、その財務書類というものは適正な経営を行うために必須のものです。どれぐらい資産があって負債があるか、そういったことに注意を払っていくというのは経営者として当たり前のことだと思います。  財界人に、国においては複式簿記、発生主義会計を行っていないんですとお話をしますと、皆さん信じられない、それでは適切な財務運営ができるわけがないとおっしゃいます。国においては、過去の経済対策効果評価する際に経済成長率を始めとして個別の経済指標の改善の度合いがよく用いられていると思います。同時に、財政支出を伴う対策の効果を測る指標として、良質な資産ストックの増加資産と負債のバランスといった国全体のバランスシートの改善の視点から評価をするということも重要ではないでしょうか。  例えば、ニュージーランドでは、予算段階から予測財務諸表を作成して実績との比較を行うなど、先進的な取組を行っています。また、東京都では、公会計制度を改革し、財務書類を活用する中で財政健全化を行った実績があります。例えば、高い金利で借入れを行って塩漬けになっていた土地を外部に売却するなどして負債を減らしたり、年末に予算が余った場合、使い切るのではなく資産の減価償却を行って将来の支出に備えて基金として積み立てるなど、改善を行いました。その結果、負債を早期に返済して基金の積み増しを行い、財政健全化を図ってきました。  複式簿記、発生主義会計によってこのような財政の透明化、可視化、財政の見える化を進めていくということは、国民皆様に対する説明責任を果たせるだけではなくて、実際の事業を行う行政にとっても事業のトータルコストを把握して無駄をより発見しやすくなります。  このような仕組み、財政の見える化は、財政状況が逼迫する今のような状況で大きな意味を持つと私は考えております。現在、公会計制度改革については、財務省において国の財務書類の作成、公表がなされています。同時に、総務省が主導で地方公共団体の財政健全化のための制度整備等が進められてきましたが、今になっても地方公会計の処理方法というのは複数分立しています。国の公会計とは統一されていないなど、課題があります。国と地方自治体、また地方自治体間の公会計が一元化できないというのは、ある意味で縦割り行政の弊害と言えるのではないでしょうか。政策バランスシートの改善という視点から評価し、国民皆様への説明責任を果たすためには、国と地方を連結した財務書類の作成が必要であると私は考えております。  これにつきまして、財務大臣認識を伺いたいと思います。
  109. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 委員指摘のように、国の方は企業会計の慣行を参考としながら、平成十五年から毎年、国の財務書類等を公表してまいりました。資産と負債の差額というのは平成二十年度末でマイナス三百十七兆円、こういう数字も明らかになっております。  一方で、地方との連結という御提案でございましたが、もう委員御自身が御説明されたとおり、これはちょっと統一されていません。基準モデル、総務省改訂モデル、総務省モデル、この辺を中心に作られていて、ただ、すぐ地方と連結するということは、地方がばらばらな分、今すぐやるということは困難だというふうに思いますけれども、いずれにしても、分かりやすい財務諸表の公開ということはやっぱり国民日本の国の財務が分かってもらうためには大事だと思いますので、更に工夫ができるように、委員からもこれから知恵をちょうだいできればと思います。  よろしくお願いします。
  110. 竹谷とし子

    竹谷とし子君 今、財務大臣から前向きな御発言を伺ったというふうに認識をいたしました。  これで私の質問を終わらせていただきますが、国、地方の公会計制度の問題というのは大変大事な課題だと思っております。財政の見える化に向けて今後も重ねて質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  111. 中西健治

    ○中西健治君 みんなの党の中西健治です。私自身は二十一年間、相場を相手にして仕事をしてまいりましたので、その経験も踏まえて質問させていただきたいというふうに考えております。  お手元に資料をちょっとお配りさせていただいておりますが、まず野田財務大臣にお伺いをしたいというふうに思っております。  最近の外国為替市場動向についてどういう御認識をお持ちかということなんですが、先ほど来、八月の中旬の話が随分出ておりますけれども財務省がしっかり危機感を、危機意識を持っているのか、危機管理をどうしているのかということについてまずお聞きしたいというふうに考えていると。  どうしてこんなことを申し上げるかと申し上げますと、八月十八日の日本経済新聞の朝刊で、「経済対策 半身の構え」、「関心は代表選に」、「司令塔も夏休み中」という記事が出ておりました。十七日に野田財務大臣が小田原で会合をやっていらっしゃるときに、その日は財務政務三役が全員不在であったと。副大臣もお休みであった、そして政務官も夏休み中ということで、だれ一人登庁してこなかったということであります。こういった日経の記事がございましたので、やはりちょっと危機意識がないのではないかというふうに市場の方は思ってしまうのではないかというので、危機意識を持っているかというのが一つ目の質問です。  あともう一つ、財務大臣、九月四日のテレビ番組で介入ということをおっしゃられました。昨日の衆議院の方の委員会でも介入ということをおっしゃられたわけでございますが、この介入の目標をどこに置いていらっしゃるのだろうかと、どういう目標を置いての御発言なのかということについてお伺いしたい。  これは本当に相場を反転させるつもりで、相場に勝つつもりでの御発言なのか。それとも、急激な為替の動きはやはり困るのでスムーズにしようかというような意図でおっしゃられているのか。それとも、政治的な決意、これ諸外国に対して、言葉は悪いかもしれませんが、なめられたら困るということで政治的意思を表明すると、そういうつもりでお話しになっているのか。  その二点について、まず質問させていただきたいと思います。
  112. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 基本的には、先ほど片山委員の御指摘もありましたけれども、八月に円高傾向になるということは過去にも何度もありました。それを踏まえて、お盆等ありましたけれども、基本的には政務三役ローテーションでだれかが必ずいるという態勢は取ってきたし、ちょっと離れたとしてもせいぜい一時間以内に戻れるところにいるという状況はつくってきたつもりでございますので、その点での危機感とあと危機管理はきちっと対応してきたというふうに思っていまして、代表選があったから空白を生むということはあり得ないということは明言をさせていただきたいというふうに思います。  それから、テレビ番組を踏まえて、介入の話が云々とありました。  これは目標について、まだ介入するかしないか、もちろん必要なときには断固たる措置には介入という言葉は含まれておりますけれども、その目標について今つまびらかにすることは、コメントは差し控えたいというふうに思っております。
  113. 中西健治

    ○中西健治君 どうもありがとうございます。  介入をされるのであれば効果的な介入をしていただきたいというふうに私どもはいつも思っているわけでございますが、今の外為特会の現状についてお聞きをいたします。  資料二ページ目に外国為替等繰越評価損というこの外為特会バランスシート評価損が二十七・五兆円になっているということを示させていただきました。これ三月時点でございますので、それから円高が進んでいますので、今評価損は三十兆円を超えているだろうというふうに思われております。こうした評価損、介入に関するリスクについてどのように認識されているかということをまず一点お聞きしたいというふうに考えております。  そして、もう一つ、介入するのであれば効果的な介入ということを私申し上げましたけれども、次のページにそれぞれの外国為替市場におきまして通貨の取引割合というのを掲げさせていただきました。そして、御案内のとおり、ドル・円のマーケットというのは非常に大きなマーケットであるわけです。そして、そちらで介入を行うということになっていきますと相当大きな金額、非常にいいタイミングでやらなければ効果はなかなかないだろうということが言えるかと思います。それに比して、ユーロ・円ですとか韓国ウォン・ドル、こうした市場というのはずっと小さいということがまず言えるということでございます。  そして、次のページ、御覧いただきたいんですが、これは財務省の方で発表しております通貨別の貿易統計でございます。これによりますと、これ余り知られていないことかもしれませんが、米ドルは輸入超ということになっておりますので、米ドル・円だけを取り上げてみると、ドル・円が円高の方に振れることはマクロで日本にとってはプラスになるということです。ただ、ドル・円にペッグしている通貨はいろいろございますので、これはドル・円だけを見たという場合のことでございますが。  そして、輸出で実際に困るのは何なのかというと、実はユーロ・円のクロスレートですとか、あと円建てで行われています輸出の中でアジアの部分、アジア地域に輸出というのは非常に多いということで、これ円建てだから大丈夫というわけではないんです。当然、円高そしてアジア通貨安ということになると、日本の商品の競争力というのが落ちていくわけでございますので、やはりこのアジア通貨を何とかしなければいけないのではないかということが言えるのではないかというふうに思っているわけです。  その中で、私が御提言申し上げたいのは、今の外貨準備、これはやはりドル中心、そしてユーロが少しあるということだと思いますけれども通貨分散を図っていくべきなのではないか。特に貿易相手国がどんどん替わっている、そして決済通貨も替わっているという中ですので、アジア通貨、コリアン・ウォンですとか中国人民元、こういったところの債券、国債を買うべきなのではないかというふうに考えております。G7の一員ですので、なかなか為替の介入はしにくいということだと思いますけれども外貨準備の分散を図るということであれば、十分正当性があるのではないかというふうに思っているということですし、民主党は東アジア共同体ということもおっしゃられているわけでございますので、何ら中国の債券を買うということについては妥当性があるのではないかというふうに思っている。リスク分散、そして介入の副次的な効果が高いということと、あと収益が高いということも言えるかと思います。韓国の十年債四・五%の利回り、ドル債二%の前半、二%の中盤ということですから、こういった観点からも通貨分散をお考えになった方がよろしいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  114. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 大変、論点多岐にわたった御指摘でございました。  まず、前提となっている外為特会の現状です。三月の時点での試算を今述べられたと思いますが、もうちょっと近いところのデータでまず申し上げたいと思いますが、七月末の試算、一ドル八十五円で試算をさせていただきました。そうしますと、為替評価損は約三十二兆円、積立金二十・六兆円を上回る為替評価損マイナス十二兆円が発生しているという状況です。ただし、昭和五十七年度以降の一般会計、繰り入れる計画、二十八・五兆円を考慮すれば、差額は約十七兆円のプラスになるというのが現状ということでございます。  それから、通貨分散のお話もございました。これ、外貨準備の性格というのは将来の為替介入に必要な通貨、だからその流動性とか安定性、そういうものを勘案をしながら検討すべきものだろうというふうに思います。  御提案としては承らさせていただきたいというふうに思います。
  115. 中西健治

    ○中西健治君 是非、前向きに御検討いただきたいと思います。  白川日銀総裁にお伺いいたします。  七日の会見で総裁は、必要な場合に適時適切に政策対応を行っていくと御発言をされたわけでございますが、これまでの日銀の動き、やはり事後的に動いているのではないか、相場を見守った上で遅きに失したという評価というのもかなりあるのではないかというふうに思っておりますが、この適時という中には、今度はさすがに事前に予防的に動くというようなことを含めてお考えになっていらっしゃるかどうかということについてまずお聞きしたいというふうに思います。
  116. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  日本銀行は、先々の景気物価、この見通しに沿って行動をしております。その意味では、日本銀行は常に予防的に動いております。  今、御質問の趣旨が為替市場の動きに対して株価あるいは為替相場、それに対して一つ一つ対応していくのかという意味での先取りであれば、そういう形は取っておりません。中央銀行として、これはどの中央銀行もそうですけれども、将来の経済物価情勢をしっかり見据えて、それに対して私どもとしてはしっかり先取り的に対応をしていきたいというふうに考えています。
  117. 中西健治

    ○中西健治君 金融政策について二点お伺いを申し上げます。  量的緩和、速水総裁そして福井総裁の時代には行われていたわけでございますが、二〇〇六年三月からもう解除されて行われていないということでございます。量的緩和を私自身はやはり行うべきなのではないかというふうに考えているわけでございますが、日銀総裁は、白川総裁効果と副作用を考えるということをおっしゃっていらっしゃいます。そして、副作用というところでどこまでのことを考えていらっしゃるのかということが一つ目の質問でございます。  あともう一つ、最後の質問になりますが、あわせて政策金利、〇・一%でございますけれども、やはりこれもゼロに戻すべきなんではないかというふうに私自身は考えております。これについては、日銀総裁は短期金融市場の機能を損なうことが副作用として懸念されるということを繰り返しおっしゃられているわけでございますが、やはりこれだけ国民経済が厳しい、デフレから脱却しなきゃいけない、そういったことを日銀が断固としてやっていくんだという意思を示すことが、短期金融市場、ブローカーがちょっといなくなります、銀行の担当者がいなくなります、こういったことと引き比べてそれほど大きな懸念なのかということについて。この二点をお聞きしたいと思います。これが最後です。
  118. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 白川総裁、時間が過ぎておりますので、お答えは簡潔にお願いをいたします。
  119. 白川方明

    参考人白川方明君) はい。  徹底的な量的緩和も、それからゼロ金利政策も、最終的には金利が極限的なゼロになるという点では同じでございます。  その副作用でございますけれども、これは金利が徹底的なゼロになりますと、だれも市場資金を出さなくなります。そうしますと、銀行間の資金取引ができなくなってきて、これは今おっしゃったようなブローカー云々ということじゃなくて、銀行がいざという場合に資金を調達するその場自体が機能しなくなってくるということで、かえって経済全体の安定性が阻害されるということでございます。これが一番大きな副作用でございます。  この点につきましては、かつては日本銀行のみがこういう状況に直面していましたから、ほかの中央銀行が余り言うことはありませんでした。ところが、今回のジャクソンホールのコンファレンスでは、バーナンキ議長がこの点について随分と時間を割いてそうした弊害がある、副作用があるということを言っておりました。今や、そういう認識日本銀行だけじゃなくてFRBを含めて共有されているというふうに思っております。
  120. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。昨日までヨーロッパにおりましたので、この十分の質問のために戻ってまいりましたので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。  現在、今日もありましたけれども為替相場を決定する、まあいろいろあっても一番の条件は金利金利差の問題だというふうに思います。要するに、金利の高い国の通貨は買われると、だから通貨高になるというようなことが、いろいろありますけれども、この間は特に円とドルでいえばその点が大きいのではないかなと思います。  更に重要なことは、実質金利の差だと。御存じのとおり、実質金利というのは物価上昇率を加味した金利でございます。幾ら金利が高くても物価上昇が高いと相殺されてしまうということで、実質金利が焦点になってくると思いますけれども。その点でいきましたら、日米間の実質短期金利差、これはいろんなデータがありますけれども、大体今もう日本の方がアメリカよりも高くなっていると、実質の短期金利差ではですね。名目の場合はほとんどもう変わらない数字になっていますけれども、実質短期金利差では日本がむしろ高くなっていると。これはもう取りも直さず、物価上昇率がアメリカはプラスですけれども日本はデフレでマイナスということにあるんだと思います。したがって、この円高対策問題は、当面の金利政策だけではなくてやはりこのデフレの問題、物価そのものの問題が根幹にあるといいますか、その方が重要ではないかと思っております。  この点で、私もちょっとヨーロッパへ行っていろいろ聞いたことも含めて質問したいと思いますけれども。デフレですね、すなわち消費者物価指数、CPIが恒常的に下落しているのはこの先進国の中で日本だけの現象でございます。確かに今、欧米も景気後退局面でございますけれども、デフレではないという状況ですね。ですから、不況一般とデフレというのは分けてきちっと議論しないといけないんではないかと、混同した議論が今日もされているんではないかと思います。  じゃ、なぜ日本だけ長期にわたってデフレが続いているのかと。ヨーロッパでも話聞きましたけれども、グローバル化の進行とか中国アジアの安い商品が入ってくるというのは、これはヨーロッパも同じです。ですから、その辺の条件は別に日本だけで起こっているものではございません。要するに、日本特有の、じゃ原因は何なのかということで、これはヨーロッパ行って詳しく聞いてよく分かったんですけれども日本だけが賃金が傾向的に下がり続けていると、これがほかの国と日本との先進国の中では違いでございます。  ですから、ヨーロッパでメガバンクの関係者等にも聞きましたけれども日本のこのデフレというのは、これは共産党が言うんじゃないんですよ、メガバンクの人が言うんですけれども、賃金の減少、購買力の低下、それが価格が下がる、そうするとまたコスト削減して賃金をまた下げる、この物価の下落と賃金の下落のスパイラルが起きている、ヨーロッパではそこには歯止めが掛かっていると、だからそういうスパイラルにはならないというようなことをおっしゃっておりました。  したがって、私は、この円高、株安の当面のいろんなあれこれの議論もありますけれども、根本的にはやっぱりこのデフレ克服、そのためには日本特有の事情であります賃金のこのずっと下降をたどっている、これに手を打たないとあれこれやってもまた同じことを繰り返すんではないかと思いますけれども財務大臣認識をまず伺いたいと思います。
  121. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 円高の一つの原因というのは、委員もおっしゃったように、欧州、これは景気減速というか、後退というよりは先行きの不透明感が強いということだと思います。それから、アメリカ回復が思ったより遅れていると、そういう海外経済要因があってリスク回避から円を買うという傾向と、それからもう一つは、やっぱり金利差の問題、これは特にドル・円においては縮小傾向があるということが大きな原因だと思いますし、委員が御指摘のとおり、その中でのデフレというのは、貨幣の実質価値の相対的な上昇を通じて、これは円高の一つの要因にはなっていると、そういう認識はやっぱり共有できるというふうに思います。  その中で、賃金のお話しされました。賃金というよりも、私はもうちょっと幅広く雇用の問題としてとらえて、それが今の厳しい状況が続いていることが一つの要因になっているのではないかなというふうに認識を持っていますし、需要と雇用をつくっていくという意味でも経済対策を短期的にも中長期的にも打ち出していくことが必要だというふうに思っています。
  122. 大門実紀史

    大門実紀史君 そこで、その雇用というのは何にも否定しません。今、円高で企業が厳しいですから、企業に必要な支援をするということも重要です。雇用を生んでもらうと。ところが、今までもそれは何度も言ってきたことであるんですが、その雇用の次なんですね。ここがヨーロッパとの違いでございまして、ヨーロッパは非正規雇用にしたって同一労働同一賃金というのが基本的に確保されていますから、コスト削減の手段として非正規雇用が雇われているわけではないという、つまり雇用を増やす、守るということは賃金を増やすことにもつながるわけですが、日本の場合は雇用が増えたからといって、非正規雇用が増えたからといって賃金上がらないというのはこの間続いてきたことでございます。それが二〇〇二年から二〇〇七年のいわゆる景気回復のときも一向に賃金が上がらなかった理由はそこにあるわけでございまして、大臣おっしゃる雇用まではもうそのとおりなんですが、その次の賃金のこともやらなければいけないんじゃないかというのが私先ほど聞きたかったことでございます。  その点で、企業の回復ももちろん重要ですが、同時に賃金の問題、雇用と賃金の問題を並行して今度はやっていかないとデフレ克服につながらない。したがって、こういう議論は何度もこの十年間ここでやってきたわけですが、一向にデフレが克服されないところは、光が当たっていないのはそこだけですので、やっぱり賃金に注目した政策が必要ではないかという点で、最低賃金を引き上げるとかいろいろありましたが、企業にも配慮しなきゃいけませんが、やはり踏み込んだ賃金を上げる政策が必要じゃないかと思いますが、その点、簡潔に一言お願いします。
  123. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 賃金、そして雇用含めての総合的なイメージは共有できると思います。その意味でも最低賃金の引上げ等で我々も努力をさせていただいているところでございます。
  124. 大門実紀史

    大門実紀史君 白川さんにも同様の趣旨で聞きたいんですけれども、要するに、こういう円高・株安対策の議論というのは、この委員会ではこの十年間もう何回も何回もやられて、同じような議論があります。毎回、日銀にあれやれこれやれとか、打つ手が遅いとか、後手に回っているとか、もう毎度のように言われてきたんじゃないかというふうに思います。  今日も、銀行券ルールを外せとか、あるいはマイナス金利ですか、もういろんな話が出てくるんですけれども、私は、既に日銀はもう何年も前から撃つ弾はもう撃っちゃっていると。打つ手がほとんど、正攻法の手はほとんどもうなくなっているのではないかと思います。それなのに、毎回こうなるとあれやれこれやれと言われる。どうしても政府・与党、与党が替わったりしますけれども、いろんな圧力とかがあって、最後の規律は守られていると思いますけれども、どんどんイレギュラーなあらぬ方向の手を打ってこられたのではないかと。  今回の成長分野への直接資金供給ですか、あれはいいことだと思いますが、中央バンクがやることなのかというふうに私は思っておりまして、そういうふうにやってどんどんどんどん供給するのはいいですけれども、その金余りが実体経済には供給されないで、結局、海外に回ったりバブルをつくる手伝いをしてきているというようなこともありますので、本来的な役割を日銀が果たすために、やっぱりどこかで適正金利に戻していって手段を持つしかないと、私は基本的にそう思っております。それにはやっぱり実体経済を、もちろん日銀何もやらなくていいという意味じゃないですけれども実体経済を良くしないでこのまま日銀にいろいろやれやれと言っても、どんどんどんどんあらぬ方向に行ってしまうのではないかということを前から思って、ここでも申し上げていたところですけれども。  その点で、今申し上げたデフレ賃金の問題、白川さんの見解で結構ですが、簡単にお願いしたいと思います。
  125. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほど日本に固有のデフレの要因は何かということでございまして、私は、一つは賃金の伸縮的な動き、賃金が下がっているということ。それから二つ目には、日本成長期待が下がっているということだと思います。  前者についてのみ申し上げますけれども、欧州と日本を比較した場合の大きな特徴は、日本の賃金は欧州対比下がっているということであります。このことが、欧州は賃金は下がっていませんけれども、逆に欧州の高い失業率の原因にもなっているということでございます。日本の場合は、労使が協力して最終的に雇用を守っていく、そのために賃金の伸縮的な調整を受け入れるという決定をしたというふうに認識しております。  いずれにしても、大きなショックが加わったときにどちらの対応が望ましいのか、これは先見的にどっちがいいかというふうにはなかなか申し上げられませんけれども、しかし、日本はそういう選択をした結果賃金は下がり、その分はデフレの圧力になっているということだと思います。  もう一つの大きな要因は、これは成長期待の低下ということで、これは成長基盤を強化していく、今先生がおっしゃったそうした努力をしっかりしていくということが大事だと思っています。
  126. 大門実紀史

    大門実紀史君 一言だけ。いま一言だけ。  ヨーロッパは確かにそうですけれども、社会的なセーフティーネットがあって、失業しても所得が保障されるというのがあるから購買力が落ちなくてデフレにならないというのがありますので、その点は踏まえていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  127. 中山恭子

    ○中山恭子君 たちあがれ日本・新党改革の中山恭子でございます。よろしくお願いいたします。  日本経済情勢につきましては、これまで各先生方からお話がたくさん出ておりますように、極めて深刻な状況にあると考えております。現在のデフレ、円高状況下では、民間だけでは対応できないということが明らかでございますので、政府景気回復のために積極的に取り組む必要があると考えております。  日本経済を立て直すには、社会インフラの整備やエネルギー分野の技術革新のうねりを取り込むための施策を政府自らが緊急に実施することが有効であると考えております。その場合、現在の厳しい財政事情の下では、新たな財源措置をとる必要があります。明日、緊急対策が発表されるとのことでございますが、そういった予備費を使うというだけではなく、新たな財源措置をとって政府が思い切った施策を打ち出す必要があると考えております。  そこで、今回、今日はデフレ克服に絞って、財政法第五条ただし書にあります日本銀行による国債引受けについてお聞きしたいと考えています。  財政法第五条はただし書で、公債の発行については、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、日本銀行にこれを引き受けさせることができると規定しています。現在のようなデフレ、円高をそのままに放置すれば、企業が海外に事務所を移すなど、日本経済の根底が崩れかねません。国内の雇用状況の改善も到底望めません。こうした状況を食い止め、改善の方向に向かわせるためには、直ちに対応措置をとることが必要でございます。現在の日本状況はこのただし書に言う特別の事由がある場合に当たると考えますが、財務大臣の御見解をお伺いいたします。あわせて、自見金融担当大臣のお考えもお尋ねいたします。
  128. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) 中山委員の御質問にお答えをしたいと思います。もう中山委員にはちょっと釈迦に説法的な答弁になるかもしれませんけれども、お許しをいただきたいと思います。  日銀による国債の直接引受けというのは、国債の市中消化の原則を定めた財政法第五条によって原則として禁じられていると。それは過去の、戦前戦中に軍事費の調達のために多額の公債を日銀に引き受けさせて、その結果急激なインフレが生じたという、そういう反省から規定をされたというふうに理解をしています。その意味では、法律上は日銀による国債の引受けについては慎重な考え方であると。  ただし書のお話でございましたけれども、このただし書で今行っていることは、日銀が保有する公債の借換え、そのために発行する公債についてこれを適用していて、これは借換債の性質上、通貨膨脹の要因にはなっていないと、そういうただし書として今理解をし、活用しているというふうに理解をしています。
  129. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 中央銀行による国債の引受けについてはもう中山恭子議員御専門でございますが、先ほど野田財務大臣から発言があったように様々な問題点がございまして、原則としては今のこの、戦前戦中の大変多額の公債を日本銀行に引き受けさせたという結果、大変急激なインフレが来たということも今、野田財務大臣からございましたが、極めて私は慎重に考えるべきだというふうに思っております。  しかし、一方、今、中山議員の御指摘のとおり、我が国経済、なかんずくデフレ状況を考えますと、従来の発想にとらわれず、思い切った対策を大胆に講じていくことも必要じゃないかというふうに思っております。  先般も、八月の十七日でございますか、ニューヨークでFRBのバーナンキ議長とお会いしたときも、一国の経済がデフレに陥ったときに大変その回復が難しいということを大変強く主張しておられまして、そんなことも私考えております。  しかし、そのとおり、財務大臣が原則はもうまさに慎重に考えるべきだというのは当然でございますけれども我が国国債市場状況を見れば、国債の市中消化が直ちに懸念される状況じゃないというふうに考えておりまして、必要な場合、いかなる手段もあらかじめ例外として除外することなく検討を行い、我が国経済を復活させることが、決意を持って、必要じゃないかと。政府としてもそういった、一切の可能性でございますから、可能性を一切否定することではなく、そういった取組も、非常にこういったデフレが長く続くというような状況でございますし、また、今御承知のように、円高というようなことでございますから、考えてもいいんじゃないかなというふうに私は思っております。
  130. 中山恭子

    ○中山恭子君 ありがとうございます。お二方から大変予期したとおりのと言っていいんでしょうか、お答えいただきました。  もちろん、原則はこれは無理という、原則禁止ということはよく承知しておりますし、ハイパーインフレの問題ですとか、それから財政規律を失うのではないかといった懸念があるということは十分承知しております。  ただ、これだけ長期間デフレが続いて、逃げ出しようがないというような状況に陥っている中で、やはり何らかのこの事態解決のためには新たな手を打つ必要があると考えております。そして、その懸念されるような事態を招かないために引受額の枠を設定するとか、使途を限定する、政府が直接支出していくといったような厳しい条件を付すということを行えば心配は無用であり、またそのようなかじ取りをするのが政府の役目であろうと考えております。賢明な政府がしっかり対応すれば、その懸念も払拭した上でデフレ克服への道が開けるのではないかと、そのように考えております。  現下の経済情勢にあってデフレの克服、これは喫緊の課題でございます。デフレを克服するために国債日銀引受けを活用してでも社会資本を整備し、民間の資金需要を喚起していく、そのようなことが今政府日銀に対して求められているのではないかと考えております。  今必要なことは、民間だけでは推進できない例えば都市のインフラ整備、電気、上下水道、ガス、ごみ等を一緒に扱う共同溝を日本のそれぞれの都市に整備していく。そして、美しい都市が日本各地ででき上がってくるといったような共同溝の整備ですとか住宅整備、これも、これまでの一人当たりの生活面積を二倍、三倍に広げるような形の住宅政策を取る。二世代、三世代、核家族解消のため、又はこれは少子化問題にもつながりますし、高齢化問題にもつながると思いますが、そういった形の住宅整備を政府が率先して行っていくというようなことを行う、そのためにこの国債を使うということはあり得るのではないかと考えております。  さらに、今後日本世界の中で重要な地位を占めていく上で欠かせないエネルギー、技術革新のための施策等も政府自ら推進することが必要であると考えております。現在のデフレ、円高経済情勢下では、国債日本銀行引受けはある意味では無理なく導入できると考えておりますが、財務大臣金融大臣日銀総裁のお考えを再度お伺いいたします。
  131. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) では、時間が過ぎておりますので、簡潔にお三人。  では、まず野田大臣
  132. 野田佳彦

    国務大臣野田佳彦君) もう端的に申し上げますが、二〇一一年に民主党を中心とした政権での新成長戦略では、消費者物価上昇率がプラスに転ずるように、そしてデフレ脱却できるようにという目標の下に需要と雇用をつくる、そういう政策をこれからどんどんやっていきたいと思います。  日銀引受けの分については、先ほどの冒頭の発言のとおりで御理解をいただきたいと。やっぱりマーケットへの影響を含めて慎重に考えざるを得ないと思います。  後段のいろいろ政策提言は、アイデアとしては大変面白いと思いました。
  133. 自見庄三郎

    国務大臣(自見庄三郎君) 野田財務大臣と基本的には一致でございますが、この政権は民主党と国民新党の政権でございまして、我々はそういった意味でも原則は原則、慎重にこの国債日銀引受けは考えねばならないということはもう重々承知でございますけれども。  しかしながら、今先進国の中で、デフレ脱却というのが今の内閣の大きな目標でもございます。今日の朝、成長戦略を実現するというのを総理大臣の下でも行われました。そういった必死の努力もさせていただいておりますけれども、まあまあ法律にもあることですから、そういう一切の可能性を全部消し去るというのも私は政治家としていかがなものかなと、こう思うわけでございます。
  134. 白川方明

    参考人白川方明君) 一言で答えるには余りにも重要な問題提起をいただきました。  現在、世界の多くの国で中央銀行による国債の引受けは禁止されております。これは先進国はもとよりでございますけれどもアジア金融危機を経て、多くの先進国はこれは中央銀行による国債の引受けを禁止しております。そういう中で日本銀行国債の引受けを行うということは、世界の多くの国の採用している基本的なルールを今回踏み外すというメッセージを送ることになるように私は思います。  確かに、最初、国債を引き受けても問題がないように見えるかもしれません。しかし、多くの経験を見てみますと、最初はそうであってもどこかで歯止めが利かなくなる、それが人間の社会の現実でございます。そういう人間の弱さを自覚するがゆえにあらかじめ引受けを禁止するという、そういうものを入れる、これが人類の私は英知だというふうに思います。  それから、国債の消化に今困っているわけではございません。今、民間金融機関は貸出先がなくて、むしろないからこそ国債を買っている、したがって長期金利が下がっているという状況でございます。現状、財源が、国債市場で消化できないから国債が発行できないという状況の実際に今正反対の極にあるという感じでございます。  いずれにせよ、日本銀行としては日本銀行という職責をしっかりと果たしていきたいというふうに思っております。
  135. 中山恭子

    ○中山恭子君 是非、改めて御検討いただけたらと考えております。  ありがとうございました。
  136. 藤田幸久

    委員長藤田幸久君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時三十一分散会