○
松下新平君
イギリスで二〇〇一年に
口蹄疫が猛威を振るいました。その
被害は、
感染施設数二千三十、殺
処分された
家畜は六百万頭を超え、
損害額は
日本円で一兆円にも達しました。
終息の後、翌年、この
事例を分析した
調査報告書には次のように記されています。
政府の
危機管理の失敗と、
初動の
対応の遅れや
ワクチン接種を見送ったことが挙げられています。
議場の
皆さん、
国民の
皆さん、この
イギリスでの
教訓を心に留めてお聞きいただきますように
お願い申し上げます。
自由民主党を代表して、ただいま
報告のありました
宮崎県で
発生した
口蹄疫に関し、
質問いたします。
手塩に掛けて育ててきた家族同然の
家畜を何の落ち度もないのに
処分させられた
農家の
皆さん、今日は大丈夫か、今日は大丈夫かとおびえながら必死の
防疫を取られている
農家の
皆さん、この間、この時間も必死に殺
処分や埋却、
消毒など
一連の
作業に従事されている
方々など、
関係すべての
皆さんのお顔を思い浮かべながら、
農家出身の一人としてもただしてまいります。なお、答弁が不明確、不十分である場合には、再
質問、
再々質問を行う
考えがあることをあらかじめ申し上げます。
我が国でも、十年前に
宮崎、
北海道で
口蹄疫が
発生いたしました。実に、
前回発生から九十二年を経ての
発生でした。
宮崎、
北海道で起きているのではない、
日本で起きているんだ、これは当時の
自由民主党総合農政調査会最高顧問の
江藤隆美先生が
関係者に呼びかけられた
言葉です。
九十二年たってですから、だれも
経験がないわけです。
現場は
経験がない中でしたが、必死の
防疫で
協力しました。私も
地元の
県議会議員として
対処しておりましたので、鮮明に覚えております。まさにこの
言葉どおりに、
日本全体の
防疫の観点から、
政治のリーダーシップによって、
発生直後、即座に
予備費を含め百三十億を
確保し、様々な
施策を次々に打ち出し、
最小限にとどめることに成功したのでございます。OIEは、この
早期の
終息に世界に例を見ないと絶賛し、
我が国の
獣医学、
家畜衛生は高い
評価をいただいたのでございます。もちろん、今回の
発生ケースと様々な
状況の違いはございますが、肝心なのは、リーダーの
認識、心構えが重要だということです。
家畜伝染病への
対処は、
イギリスの
教訓のとおり、時間との勝負です。
初動が決定的に重要であり、最悪の
ケースを想定して行うのが
危機管理のイロハでございます。当時、
江藤隆美先生も
宮崎の選出ということで奮闘したこともあったでしょうが、それよりも増して、大所高所から
日本の
防疫の
認識、
重要性による
取組が功を奏したのだと
考えます。これは
宮崎、
北海道で起きているのではない、
日本で起きているんだ、この
認識を改めて共有したいと思います。
そこで、昨日、非常に看過できない閣僚の
発言がありましたので、まず最初に
防疫対策の
本部長として
鳩山総理の答弁を求めます。
その
発言とは、中井洽国家公安委員長の昨日の閣議後の会見での
発言です。
口蹄疫が広がっているこの問題に関して、隔離したエース級
種牛六頭のうち一頭が
感染の疑いで殺
処分されたことについて、中井
大臣は、信じられないような隔離の仕方、同じトラックで運ぶとか、同じ牛舎に入れていたとかと述べたとされています。
宮崎県の東国原英夫
知事がエース級以外の
種牛四十九頭の延命を求めたことについては、中井
大臣は、六頭の隔離のやり方を失敗したから、残りを何とかというのはちょっと違うと批判されましたと報道しました。
これは全くお門違いです。そもそも、
初動がきちんとされていれば、このような事態にならなかったのです。本末転倒です。
鳩山総理を
本部長とする
防疫対策本部が
設置され、中井
大臣はこのメンバーでもあり、このメンバーの
発言ですから看過できません。
さらに、会見では、米軍普天間飛行場の移設問題に関連し、社民党の福島みずほ党首の言動について
質問された際、福島党首が
宮崎の御出身と述べた上で、
宮崎の人というのは
口蹄疫の
対策でも頑固なところがあるから、赤松さんも苦労していると
発言したと報道されました。
私は耳を疑いました。今、苦しい、厳しい
宮崎県、
宮崎県民の置かれている
状況に何と卑劣な
発言でしょうか。もちろん、
宮崎出身だから悔しいといった次元ではなくて、
対策本部のメンバーである
大臣として全くなっておりません。そのような
認識で
危機管理ができますか。それが生活第一を掲げる政党ですか。一事が万事です。中井
大臣のこの
発言に対して、
防疫対策本部長として、
鳩山総理、即刻罷免してください。
四月二十日の
疑似患畜確認から今日で一か月と六日になります。既に
関係者の体力、気力共に限界に達する中、更に大量の未患畜の牛、豚までも手に掛けなければならない、このことがどんなにつらいことか、
総理、分かりますか。また、
関係者の
皆様が今後の生活にどんな不安を感じておられるか想像できますか。
殺
処分された牛や豚について、個別の
家畜の価格に見合った
時価評価方式で全額補償することなどが
宮崎県と合意されています。しかし、これは最低限の補償であります。
鳩山総理、
農家を始めとする
感染地域の
方々は、この瞬間も
口蹄疫と闘っておられ、毎日が不安でなりません。
感染を一刻も早く止めると同時に、現在の合意から一歩も後退することなく万全の補償を
実施されることをこの場でお約束願います。
さらに、
地元の試算を勘案しますと、現状復帰には一千億円、一千五百億円を超える
予算が必要と言われております。
総理は、昨日の
衆議院本
会議で古川代議士の
質問に対して、やり過ぎたと言われるほどやりますと答弁されました。有り難いことです。それでは、具体的にやり過ぎだと言われるほどとは補償にどれぐらいの
予算が必要と
考えるのか、併せて
お答えください。
総理、
沖縄普天間基地の移設先が座礁してしまったように、努力したけれども、頑張ったけれどもできませんでは話になりませんよ。
今回の
発生に当たって、こんなにも
感染が
拡大し三十万頭以上の殺
処分に及んでしまったのはなぜでしょうか。それは、
政府の
危機意識が余りに低く、
初動が遅れ、
感染封じ込めに失敗したことにほかなりません。標榜する
政治主導が泣きます。政務三役がかえって足かせになりました。山火事で例えれば、火が
蔓延してから消防団が出動するようなものです。私の五月十三日の参院農林水産委員会での
質問に対して、赤松
大臣は、
口蹄疫自体の
報告を受けたのは第一例目確認の前日の四月十九日とおっしゃいました。あれだけ韓国などで猛威を振るっていたにもかかわらず、遅過ぎます。
自民党政権下での
対応を紹介しましたが、私どもは、当時の
経験を生かし、
発生後直ちに党内に
対策本部を立ち上げました。そして、
発生翌日には我が党の宮腰農林部会長と
地元議員が、四月二十八日には
本部長である谷垣総裁も
現地入りし、
農家の
方々の声を直接伺った上で、計三回にわたり
政府に具体策を申し入れてきました。
感染拡大防止のため
防疫対策を
徹底すること、このようなきめ細かい要求をいたしました。
しかし、その
時点で、
鳩山総理、赤松
大臣に
危機意識は全く希薄でした。特に赤松
大臣は、我が党が、先ほど申し上げましたように、谷垣総裁の視察結果を踏まえ、万全の
対策を申し入れたまさにその日、外遊に出かけました。四月三十日から五月八日まで、メキシコ、キューバ、コロンビアへ外遊に出かけました。赤松
大臣はよく農林水産委員会の答弁で、今ごろでは駄目だ、私に前もってなぜ言わなかったのかとおっしゃいますが、我々は、この非常事態に
大臣が国を離れる場合ではないと外遊の取りやめを前もって
要請しておりました。それを振り切っての外遊でした。
畜産農家の
皆さんが苦しんでいる真っただ中、九日間にもわたって外遊に出かけられた目的は何でしょうか、そして成果はどのようなものでしょうか。農水省はEPAに関するものと説明されていますが、訪問先の一つであるメキシコとは二〇〇五年に既にEPAが発効済みであります。
口蹄疫発生の最中、どうしても行かなくてはならなかったんでしょうか。赤松
大臣、被災された
畜産農家の
皆さんが納得する答弁をしてください。
また、
鳩山総理は、赤松
大臣が
口蹄疫対策より優先された外遊は適切な
対応だったと
考えておられるのですか。いかがですか。また、先ほど、赤松
大臣が今回の
口蹄疫の説明を受けたのが
発生確認の前日ということを余りにも遅過ぎると指摘しましたが、
鳩山総理自身がこの
口蹄疫について
認識されたのはいつの
時点ですか。併せて
お答えください。
我が党は、
蔓延する
状況に苦渋の
政治判断をすべきと、五月六日に一定エリア内における全頭殺
処分、これを
要請しておりました。しかし、当初、
政府は拒否しました。そして、
発生から一か月たってようやく方向転換をしました。
初動段階で迅速に
対策を打ち出していれば、
被害の
拡大防止だけでなく、財政支出も抑えられたはずであります。明らかに
政治判断のミスです。
鳩山総理、今回の
口蹄疫の大量
感染は、
政府の
認識の甘さ、
危機に対する感覚の鈍さが引き起こした人災ですよ。正直な
考えをお聞かせください。
最後に、今後の
対応について、
鳩山総理、原口総務
大臣にお伺いいたします。
自民党は昨日、
家畜の全頭
処分や埋却を国の
責任とし、被災
農家への
手当金や
処分費用を国の全額負担とする
口蹄疫対策緊急措置法案を
衆議院に提出いたしました。
家畜伝染病予防法は昭和二十六年の制定であり、現代のグローバル化、
経営の大規模化には
対応できません。
地域再生
支援のために基金を創設し、
地域の実態に即した
対策を柔軟に行えるようにすることが急務であります。
政府・与党の
皆さんには積極的に協議に応じていただき、一刻も早く
感染を食い止め、殺
処分した
畜産農家への補償を法的に裏付けして、
関係者を安心させていただきたいと思います。
鳩山総理、我が党の提案に対して、待ったなしの
状況にどう
対応されますか。明確に
お答えください。
原口総務
大臣には、昨日の
衆議院本
会議で古川代議士の
質問に対して、現行法でやることはすべてやる、現行法にないものは枠を超えてやると勇ましく答弁されました。それでは、具体的にお伺いします。何をしてくださいますか。財源の心配はありませんか。明確な御答弁を求めます。
このような
状況下でありますが、涙の出るような有り難い話もありました。
宮崎県にふるさと納税制度に基づく寄附の申出や義援金が
全国から多数寄せられていることです。
全国各地から励ましの声も元気が出ます。本当に
皆様方の善意が身にしみます。
宮崎県民の一人として、心から厚く厚く御礼を申し上げます。
十年前の
口蹄疫も原因の特定には至りませんでした。原因が特定できないということは、不可抗力、天災と同じです。ある日突然、通常の生活が壊れてしまうのです。
皆さん、これまで
日本各地で幾度となく被災した地震や豪雨災害と同じではないでしょうか。今後、
日本のどこで
発生するか分かりません。
日本の
防疫の課題としてとらえることが重要です。
冒頭に
イギリスでの二〇〇一年の
報告書を紹介しましたが、
イギリスでは、六年後に再び
発生したときにはこの
教訓が見事生かされ、約一か月間で
終息することに成功したそうです。二十一世紀は人類と
ウイルスとの闘いの世紀になると予測する学者もいます。我々は謙虚に、そして周到に備えておかなければなりません。
私たち
自由民主党は、これからも
現場に足を運び、
皆様たちの声を真摯にお聞きし、解決策を見出していくことをお約束します。そして、今回の
口蹄疫の一刻も早い事態の
終息を祈り、
畜産王国
宮崎の復活を誓い合いながら、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣鳩山由紀夫君
登壇、
拍手〕