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参考人(
冨田秀実君)
ソニーの
冨田と申します。よろしく
お願いいたします。(
資料映写)
私の方から、
企業の
活動の一
事例といたしまして、
ソニーの
CSR活動、特に
国際支援にかかわります
案件といたしまして、
ガーナ共和国における
JICAとの
共同プロジェクト、こういった
事例を踏まえて御説明をさせていただきたいと思います。
まず初めに、
CSR、
企業の
社会的責任ということについて簡単に触れさせていただきたいと思いますが、これは非常に広範な
概念でありまして、非常に狭い
意味での
社会貢献という以上の
意味を持っております。当然、コンプライアンスですとか倫理的な
経営といったような問題、さらには
製品の品質を保っていく、安全を確保していく、こういったそもそも
企業経営に必要な最低限の
経営の質を担保する
部分、これも
一つ重要な要素としてございますし、さらには、これだけにとどまらず、持続可能な
社会を実現していく上で
企業ができる
貢献というのも多面にわたってあると思いますので、そういったところを含めた全体的な
概念として私
どもはとらえております。
特に、本日の
お話に関しましては、この
分野で、右の方にあります
社会貢献の
活動でありますとか
BOPビジネス、こういったところが国際的に
貢献として意義のある
活動ではないかというふうに考えております。
少し歴史をひもといてみますと、そもそも
ソニーは一九四六年にこの
写真にあります
井深大によって
創業された
会社でございますが、
創業当時から自由闊達にして愉快なる
理想工場の
建設というのを
目標に掲げまして、単に利益の追求という以上に、
技術を通じて
日本の文化に
貢献する、さらには
国民の
科学知識の啓発をしていくと、こういったところを
企業理念として掲げて始まった
会社であります。この
目標に基づきまして、かなり
創業間もないころから小中
学校の
理科教育を
支援する事業というのを開始しておりまして、ちょうど昨年五十周年を迎えましたが、この
活動は五十年にわたりまして脈々と受け継がれまして、現在では
ソニー教育財団の方でこの
理科教育の振興を引き続き行っております。
ただ、この五十年間に
ソニーという
会社の
規模も非常に大きくなりまして、
ビジネスの範囲、さらには
グローバルな展開がなされましたので、この
社会貢献活動も非常に
グローバルスケールをもって現在では行っております。特に、
創業以来の
重点分野であります
次世代育成、この
分野に関しましては、私
どもの
強みを生かすという
意味で
科学、音楽、映像といった
分野に集中的に取り組んでおりますが、やはり現在のこの様々な
グローバル課題をかんがみるに当たりまして、
グローバル企業であります
ソニーも持続可能な
社会、
グローバルな持続可能な
社会をつくっていくといった
意味での
貢献も近年力を入れて取り組んでいる
部分でございます。この
部分に関しましては、先ほど御
紹介のありました
ミレニアム開発目標への
貢献、
達成への
貢献、さらには
災害支援、こういったところがこの
部分に当たる
項目でございます。
こういった
活動を展開していくわけですが、これも単純に金銭的な
支援というよりは、我々が持っている
強みをいかに生かしていくかというところに
重点を置いておりまして、特に、例えば
技術でありますとか
製品といった
ソニーのユニークなものを
中心に考え、さらには一人でも多くの
社員に
参画をしてもらう、こういったところに基づいた
アプローチをしております。
さらに、
グローバルなこの
ミレニアム開発目標のような
課題に取り組む際には
パートナーシップというのが非常に必要不可欠の
項目となってまいりまして、これはいわゆる
官民連携だけではなくて、我々と
NGOの
協力、さらには
企業間の
協力、こういった様々な形の
パートナーシップを有効に
活用しながら取り組んでいくということを目指しております。
まず簡単に、先ほど
ハイチの
お話もありましたので
緊急人道支援の
取組もちょっと御
紹介させていただきますが、今回のように非常に大
規模な
災害が発生した場合には、やはり我々も
グローバル社会の
一員として、
会社からの
支援、
義援金という形でお手伝いをさせていただくわけですが、その際にも
企業からの
義援金にとどまることなく、一人でも多くの
社員に
参画をしてもらう、
認識してもらうということを意識して常に取り組んでおりまして、例えば、ここにありますように
ファミリーカード、これはクレジットカードのようなものですが、こういったもの、さらには銀行の振り込み、そして
Edy、これは
ソニーの非
接触カード技術、FeliCaというのが使われております
電子マネーですね、によって
募金ができる。このすべての方法はもうパソコン上ですべてできる
仕組みになっておりますので、事実上、
社員が仕事をしながら本当に数分のうちに
募金ができるというような
仕組みになっておりまして、効果的な
募金ができるようなスキームを確立しております。
特に、この一番
最後の
Edyという
電子マネーの
募金は、これを導入してから
募金に
参画する
社員の数が非常に増えたということで、金額の多寡に関しましては比較的少額な
寄附が多いんですが、こういったことは非常に
社員参画という
意味では
意味がある
活動ではないかというふうに考えております。
さらに、こうした集まりました
社員募金並びに
義援金ですが、これが
現地支援に行くわけですが、これも私
どもとして意識しておりますのは、特に大きな
災害の場合、
災害の直後は
メディア等の非常に報道もありまして注目を浴びますが、ある
一定期間を過ぎますとどうしても
認知度が落ちてしまうということもありますので、我々の
支援はなるべく中期的な
復興支援というところに近年特に力を入れておりまして、過去にもこれまで、
中国の
四川省の
地震、これに関しましては、やはり
教育の崩壊が起こりましたので
学校の
設備の
建設に
支援するとか、ミャンマーのサイクロンにおきましては、やはり住民の
方々が持続可能な
農業をできるような形での
農業の
復興支援、こういったところに我々の
義援金を投じるような
取組をしております。
そして、主な
国際支援の
中心的な
課題は、先ほど御
紹介のありました
ミレニアム開発目標への
貢献ということですが、これも我々といたしまして、
グローバル社会の
一員としてきちんと
企業としても
役割を果たしていこうということで
取組をしております。
必ずしも、この
ミレニアム開発目標は我々の
得意分野、一見
ビジネスとは無
関係な
分野もありますが、ここはある
種想像力を働かせながらいろいろな
アプローチを試みようということで、次に御
紹介させていただくような
事例がございます。
このまず
活動なんですが、例えば先ほ
どもありました
アフリカですね。これは我々の
ビジネスにとっても
未開地域で、拠点が必ずしも多くあるわけではございませんが、ここにありますように、多様な形の
プロジェクトを多様な
方々と
協力しながら、例えばここにありますようなUNHCRでありますとかユニセフさん、それからローカルな
NGOとタイアップした形で
プロジェクトを進めております。
一つ御
紹介させていただきますが、
南アフリカの
移動図書館プロジェクトということでございますが、
南アフリカは今非常に急速に発展しておりますが、まだまだ非常に
識字率が低いという問題を抱えておりまして、特にその
原因として
学校設備に
図書館がまだ十分に行き渡っていないという
課題があります。ここに
アプローチするために、
NGOであります
SAPESIという
団体が
日本の
中古の
図書館車を
南アフリカに寄贈するという
プロジェクトを行っております。
日本の
中古の
図書館車というのは、十年ぐらい使った後でもまだまだマイレージがそれほど行っておりませんので、まだ
南アフリカに持っていけば事実上新品同様といった形で使えるということで、これを
外務省の
草の根援助等の
資金援助を
活用しながら南アに輸出しているという
団体でございます。
ここに対して、
ソニーは、これは特に我々の
社員の力を利用するという
プロジェクトになっていますが、
英語圏の
関連会社から
中古の本を寄贈して、これまで累計三万冊という冊数の本を
南アフリカ、この
移動図書館車の
プロジェクトに
寄附をさせていただいております。
具体的には、ここにありますように
英語圏の我々の
販売会社が
世界各地にございますので、こういったところの
社員などから寄贈の本を集めてこの
SAPESIという
団体に
寄附をしていくと、こういった
活動をしております。また、本社の方からは、
南アフリカには
現地語として全部で十一か国の
言葉が話されていまして、
英語も含めて十一か国語ありますが、
現地語の書籍が非常に少ないという
問題点もありますので、ここはある程度
金銭支援をしてサポートしていくという
取組をしています。
昨年、ちょうど
南アフリカのフリーステート州とこの
SAPESIという
NGO団体、
ソニーの三者で、今後三年間にわたってもこの
活動を
支援していくというコミットをさせていただいております。
そして、次の
課題がこのガーナでの
JICAとの
共同プロジェクトということでございますが、
プロジェクトの実施のまず
背景といたしまして、私
どもソニーはオフィシャルのFIFAのパートナー契約を現在しておりまして、今年、ちょうどこの二〇一〇年、
アフリカ大陸初のFIFAのワールドカップが開催されると、こういったタイミングであります。
一方、この
アフリカの代表国が今六か国、今回出場することになっておりますが、幾つかの国ではまだまだテレビの普及率が非常に低く、特に今、都市部は除いて地方の都市では観戦が十分にできず、自国の選手が活躍しているにもかかわらず選手の顔を知らないと、そういったことすら実際起こっているわけでございます。
一方、先ほど来御
紹介のありますように、
アフリカ諸国はMDGsの
達成に向けてまだまだ
課題が山積している
地域であると。こういったところにかんがみまして、
ソニーの
技術とこの権利ですね、FIFAの映像の使用権が幸いありますので、これを
活用してサッカーの映像を届けると同時に
ミレニアム開発目標に
貢献していこうということを考えて、この
プロジェクトを始めました。
特にこのサッカーの映像、先ごろも冬季のオリンピックが開かれまして、その映像を実際サッカー、サッカーに限らずスポーツイベントが
国民に与える勇気と希望といいますか夢ですね、これでも非常に大きなインパクトがあるというふうに感じておりますので、それだけでも十分に
意味のある
プロジェクトだとは思っておりますが、それに加えまして、いかにこの
ミレニアム開発目標に
貢献するかと、これをうまくやっていこうというのが今回の
プロジェクトであります。
実際、こういった
プロジェクトをやるに当たりまして、私
どもソニーでは、このガーナといった
地域はまだまだ拠点がございませんので、ここでこういった拠点、現地の強力なネットワークを持ってい、なおかつ、このMDGsの
達成に向けての様々なプログラムを持っておられる
JICAさんと
協力をさせていただくという決断をいたしました。
実際どんなことをしたかということですが、ちょうど昨年、二〇〇九年の六月から七月にかけてガーナの共和国の中で七
地域にわたってこの
プロジェクトを実施したわけですが、このHAPE
プロジェクトという
JICAさんのやられている
HIV、エイズの啓発・
教育イベントをやり、これと組み合わせる形で
ソニーの
技術であります大型のハイディフィニションの映像装置を設置してガーナのサッカーの映像を提供するということで、このタイミングでちょうどFIFAのコンフェデレーションズカップというのが開かれておりましたので、これの生中継及び前回ワールドカップの録画映像、これを提供するということでありまして、
ソニーの機材として、ここにありますように、ビデオプロジェクター、ブルーレイのプレーヤー等が使われております。
実際、これがどういうふうにプログラムをやられるかということですが、基本的には、こういったかなり半日にわたるプログラムになっておりまして、まず広報
活動で、様々なメディアを通じて周知をして、まず人を集めるということがあります。そして、HAPE
プロジェクト、この
HIV、エイズの啓発ですね。ここに幾つか
写真がありますが、このドラマの実演であるとかクイズの大会とかサッカー大会、こういうことをやりながら学んでいくということがありまして、
最後、ちょうど暗くなったときに屋外でこのパブリックビューイングですね、サッカーの映像の提供をいたしますので、これで見ていくと。こういう形で、この過程を通じまして、この右下の
写真にありますように、
HIVの検査な
どもやるテントをやって、集まっていただいた方に順次検査を受けていただく、こういった包括的なプログラムを実施いたしました。
実際、やられた
地域なんですが、先ほど七拠点というふうにお知らせいたしましたが、特にこれまで
JICAさんがやられていたHAPE
プロジェクトで、この
HIV、エイズの
教育イベントですが、なかなか地方部で人を集めるのが難しいという現実に直面しておりまして、都市部のみでやられていたと。今回は地方部での集客が非常に図れるだろうということで地方に積極的に展開いたしまして、実際これが非常にうまく成功しまして、地方でもかなりの人数を集めることに成功し、このHAPE
プロジェクトの効果を倍増することができたというふうに言えるんではないかと思います。
実際、その
プロジェクト成果ですが、これまで
JICAさんがやられていた
プロジェクト、大体七か所程度でやりますと、ここにありますように、参加者、
HIVの検査の受診者、この程度の
規模感になるわけですが、今回、
JICAさんと
ソニーで
協力して大きなプログラムを組むことによって、実際この効果として二・五倍、三倍といった非常に大きな効果を得ることができた。さらには、州大臣の
HIV、エイズに関する感染防止へのコミットメントも得ることに成功いたしましたし、先ほ
ども御
紹介いたしましたように地方展開等にも成功し、非常に質的にも優れたプログラムを展開することができたのではないかというふうに考えております。
このように、一見保健衛生の
分野とは
関係ないプロジェクターですとかサッカーのコンテンツといったものをうまく有効
活用することによって、こういった
分野でも
ミレニアム開発目標に
貢献していくということがある種証明されたのではないかというふうに思っております。
この成功を受けまして、本年開かれますFIFAのワールドカップの期間中、今回は
JICAさん並びにUNDPさんとも連携させていただきまして、ガーナとカメルーンにおいて同様の
プロジェクトを実施する予定になっておりますので、御興味のある方は是非とも御参加いただければと思います。
最後に、
BOPビジネス、最近ちょっと話題になっているベース・オブ・ザ・ピラミッドという、いわゆる途上国の
貧困層に向けた
ビジネスという話題についてもちょっと触れさせていただきたいと思いますが。
このBOPの
ビジネスでは、最近の
議論では、特に
貧困層から搾取するというよりは、
ビジネスを通じて
社会の開発効果も同時に実現していくような形の新しいタイプの途上国
ビジネスというふうに位置付けられておりまして、
日本の国内におきましても様々な
企業や経済産業省、ジェトロ、
JICAさん等で様々現在
研究が進んでいるというふうに
認識しております。
昨年、ちょうど経済産業省様の委託事業として
BOPビジネスのフィージビリティー
調査の公募がございまして、十件が選ばれたわけですが、その中では
ソニーのテーマも採択をしていただきまして、私も含めてメンバーが実際インドの農村部の電力状態の
調査などをして農村部での民家の宿泊等も含めたプログラムでこのスタディーをさせていただきまして、やはりこういった
意味で
現場のニーズをきちんと的確にとらえていくというのはこの
BOPビジネスの展開には非常に重要な要素だと思いますので、こういった委託事業、政府からの委託事業という形での
支援というのは非常に有り難いというふうに感じた次第でございます。
簡単にまとめさせていただきますが、特に
ミレニアム開発目標のようなものを意識しますと、やはりこの
パートナーシップというのが非常に我々常日ごろ重要だと考えておりまして、政府、
企業並びに
NGO、こういった様々な
得意分野を持つプレーヤーがうまい形で連携することによってより効果的な
支援が可能になるんではないかというふうに考えております。
またさらには、特に
企業の
視点ということに関しましては、国際開発
分野でも
企業は非常に様々なオポチュニティーがあるのではないかというふうに思っておりまして、特に
企業が持ちます多様な
技術力などの資産というのはこういった
分野においても非常に有効なツールとなるというふうに言えるのではないかと思います。
また、
CSR分野における
官民連携ですとか、
BOPビジネスの
支援、最先端
技術の
ODA活用などを通じて
企業の積極的な関与ができるような形になれば、加速、こういった開発
分野での
貢献、ひいては
ミレニアム開発目標の少しでも
達成に近づくという
意味での大きな力になるのではないかというふうに考えております。
以上、簡単ですが、私の方からの御報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。