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2010-04-13 第174回国会 参議院 財政金融委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年四月十三日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      徳永 久志君     尾立 源幸君      山本 香苗君     白浜 一良君  三月三十一日     辞任         補欠選任      姫井由美子君     田村耕太郎君  四月二日   委員若林正俊君は議員を辞職した。  四月五日     辞任         補欠選任      風間 直樹君     藤末 健三君  四月六日     辞任         補欠選任      藤末 健三君     風間 直樹君  四月七日     辞任         補欠選任      牧野たかお君     野村 哲郎君  四月八日     辞任         補欠選任      野村 哲郎君     牧野たかお君  四月十二日     辞任         補欠選任      尾立 源幸君     姫井由美子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大石 正光君     理 事                 大久保 勉君                 藤田 幸久君                 円 より子君                 愛知 治郎君                 林  芳正君     委 員                 風間 直樹君                 川合 孝典君                 川上 義博君                 自見庄三郎君                 田村耕太郎君                 姫井由美子君                 前田 武志君                 水戸 将史君                 峰崎 直樹君                 尾辻 秀久君                 鴻池 祥肇君                 中川 雅治君                 牧野たかお君                 白浜 一良君                 大門実紀史君    国務大臣        財務大臣     菅  直人君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融)        )        亀井 静香君    副大臣        内閣府副大臣   大塚 耕平君        財務大臣    野田 佳彦君        財務大臣    峰崎 直樹君    事務局側        常任委員会専門        員        大嶋 健一君    政府参考人        総務省統計局長  川崎  茂君    参考人        日本銀行総裁   白川 方明君        日本銀行総裁  山口 廣秀君        日本銀行理事   水野  創君        日本銀行理事   山本 謙三君        日本銀行理事   中曽  宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 大石正光

    委員長大石正光君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、徳永久志君及び山本香苗君が委員辞任され、その補欠として田村耕太郎君及び白浜一良君が選任されました。     ─────────────
  3. 大石正光

    委員長大石正光君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として総務省統計局長川崎茂君の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大石正光

    委員長大石正光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 大石正光

    委員長大石正光君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁白川方明君、同副総裁山口廣秀君、同理事水野創君、同理事山本謙三君及び同理事中曽宏君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 大石正光

    委員長大石正光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 大石正光

    委員長大石正光君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題といたします。  日本銀行から説明を聴取いたします。白川日本銀行総裁
  8. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行は、昨年六月と十二月に、平成二十年度下期と平成二十一年度上期の通貨及び金融調節に関する報告書をそれぞれ国会に提出いたしました。今回、最近の日本経済動向日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。  まず、最近の経済金融情勢について御説明申し上げます。  我が国景気は、国内民間需要自律的回復力はなお弱いものの、海外経済改善各種対策効果などから持ち直しを続けており、その持続傾向がより明確になっています。輸出や生産は、新興国経済が力強い成長を続けていることなどを背景に増加を続けています。四月初に公表された三月短観を見ますと、企業業況感は、製造業企業に加え、非製造業中小企業にも広がりを伴いながら、引き続き改善しています。また、設備投資が下げ止まっているほか、個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策効果などから耐久消費財を中心に持ち直しています。  先行きについては、当面、我が国経済持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いと見ていますが、ひところ市場等で懸念されたような、景気が再び大きく落ち込む、いわゆる二番底に陥るおそれはかなり後退したと判断しています。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及するにつれて、我が国成長率も徐々に高まってくると予想しています。  金融環境を見ますと、厳しさを残しつつも、緩和方向動きが強まっています。企業銀行からの借入金利は、日本銀行による金融緩和に加え、金融機関融資姿勢積極化もあって、低下傾向が続いています。CP市場では、リーマンショック以前を上回る良好な発行環境となっています。また、社債市場も良好な発行環境が続き、低格付社債にも改善動きが見られています。この間、企業資金繰りは、中小企業ではなお厳しいとする先が多いものの、これらも含め、全体として緩和方向動きが続いています。  物価面では、生鮮食品を除くベースで見た消費者物価の前年比は、経済全体の需給緩和状態にある下で下落していますが、その幅は昨年八月をピークに縮小傾向を続けています。先行き物価基調的な動きは、マクロ的な需給バランスと中長期的な予想物価上昇率規定されます。この点、今年度から実施される高校授業料実質無償化等によって、統計上、消費者物価指数の前年比は一年間にわたって低下しますが、物価基調的な動きを判断する際には、このような制度変更に伴う変動要因を取り除くことが必要となります。そうした物価基調という点では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移すると見込まれる中で、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、今後も消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えています。  以上、経済物価に関する中心的な見通しを申し上げましたが、日本銀行では、このような見通しをめぐるリスク要因についても十分意識しています。  まず、上振れ方向リスクとしては、新興国資源国経済が挙げられます。新興国資源国経済の力強い成長は、我が国経済のこれまでの持ち直しを牽引してきました。これが更に強まる場合には、我が国景気が上振れる可能性があります。一方、下振れ方向リスクとしては、ひところより低下しましたが、米欧バランスシート調整の帰趨や、企業の中長期的な成長期待動向などがあります。また、最近の国際金融面での様々な動きとその影響についても引き続き注意が必要です。  物価面については、新興国資源国の高成長背景資源価格が上昇する場合には、物価上昇率が上振れるリスクがあります。一方で、中長期的な予想物価上昇率低下することなどによって、物価上昇率が下振れるリスクもあります。  以上を踏まえ、金融政策運営について御説明申し上げます。  日本銀行は、日本経済デフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識しています。そのため、物価基調的な動き規定する二つ要因に即して様々な施策を講じています。  まず、マクロ的な需給バランス改善に働きかける施策として、金利面では、政策金利実質的にゼロ水準に据え置いています。また、長め短期金利の更なる低下を促すため、〇・一%という極めて低い金利で期間三か月の資金を供給する手段を昨年十二月に十兆円規模で導入し、先月にはこれを二十兆円に増額しました。資金供給面では、この手段も含め、各種資金供給手段を活用しながら潤沢な資金供給を続けています。さらに、以上のような極めて緩和的な金融環境を粘り強く維持していく姿勢を明らかにしています。  物価規定するもう一つ要因である予想物価上昇率に関しては、人々物価に対する見方が下振れないように、中長期的な物価安定の理解という形で消費者物価の前年比がプラス状態を実現することが大事であるという姿勢をはっきりと示しています。  日本銀行としては、デフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長を実現するため、今後とも中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針です。  ありがとうございました。
  9. 大石正光

    委員長大石正光君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 最近、ちょっとぎっくり腰になっちゃいまして、立ったり座ったりがあれなんでちょっと長め質問するかもしれませんけど、是非よろしくお願いします。  日本銀行さんに対しては建設的な提言を幾つかさせていただきたいと思うんですけど、一方的な提言だと、中央銀行独立性いかんとか、モラルハザードとかいう議論も出てくるんですけど、まず最初に申し上げたいのは、やっぱりこの日本状況ですね。期待成長率が下方屈折して、実質で一・三、今後五年間ですね、名目で一・〇ということで、縮小均衡型の経済になっていると思うんですけど。  これは、もちろん日銀さんにも頑張ってもらわなきゃいけないという話を今日はさせていただくんですが、もちろん国会政府の方もしっかり頑張ると。成長戦略というのを今作っていますけど、税制の改革とか規制の改革とか、日本にある技術やコンテンツの海外セールスとか、もちろん場合によっては財政の出動とか、こういうことも含めて、国家戦略として国益の観点から日本経済をしっかり成長させよう。  今お話があったとおり、循環的に経済が良くなっているというのは事実だと思いますし、そういう数字も出ています。ただ、過去十五年間、十五年前のGDPが百、名目で四百九十七、去年が四百九十八。名目ベースでは日本経済は十五年間ほぼゼロ成長と。その中でもやっぱりサイクルはあったわけですね。良くなったり悪くなったりしていたわけですね。  ですから、循環的なものともうデフレ基調、つまり物価の問題とは切り離して考えるべきだと思っていまして、そのために何をしていただくのか。今日はこの観点で、お聞きするだけじゃなくてこちらからも、我々も頑張るから日銀さんも一緒に頑張ろうねという形で、一方的なお願いではありませんので、そういう前提でお聞きいただければと思っています。  今もお話にあったんですけれども、ちょっとベーシックな質問をさせていただきますけれども日本経済脱却しなければならないこのデフレというものなんですけれどもデフレ定義というのは、白川総裁、何ですか。端的にお願いします。
  11. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行は、先ほど申し上げましたとおり、日本経済デフレから脱却物価安定の下での持続的成長経路に早期に復帰することが極めて重要な課題であるというふうに認識しております。  ここで申し上げておりますデフレということは、物価が持続的に下落する状態、これを念頭に置いております。
  12. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 物価下落を指すのか景気そのものの低迷を指すのかということでは、じゃ物価下落のことを指すということでよろしいんでしょうか。
  13. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行金融政策目的、使命につきまして日銀法規定されておりまして、それは、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。  そういう意味では、日本銀行物価の安定を図るときに、究極的には国民経済の健全な発展ということを意識し、物価の安定を通じてここに貢献するということでございます。  今御質問デフレということについて、ある程度の共通の定義でもって議論していこうというときに、我々として現在、物価が持続的に下落する状態、これをデフレと呼んでおります。  繰り返しになりますけれども、我々自身が目指していることは、このデフレ状態から脱却し、最終的に経済が持続的に成長する、そういう姿を実現したいという思いでございます。
  14. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 物価という話があって、これも神学論争みたいにならない範囲で端的に答えていただきたいんですけれども物価定義は何ですか。
  15. 白川方明

    参考人白川方明君) 経済学の本を見ますと、物価定義については様々な定義がございますけれども、私どもの方は、これは政策当局者中央銀行でありますから、物価の問題を議論していくときには、国民の実感に即した物価というものがやはり出発点になるというふうに思っています。その意味では、家計消費します財・サービス、これを対象とした物価指標を見ていくことが大事だというふうに思っておりまして、その意味では消費者物価指数、これが基本的な指標になります。ただ、物価はこれ様々な財・サービスですから、消費者物価がとらえるのは全体の財の中である部分でありますから、それ以外の財・サービスをカバーする統計、例えば企業物価指数であるとか、あるいは企業間のサービス価格指数であるとか、様々な物価指標も併せて点検をしております。  ただ、繰り返しになりますけれども、一番重要視しているのは消費者物価指数でございます。
  16. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 そうなりますと、日本銀行デフレ脱却のために行う貢献ということを今言われましたが、具体的には何を指すんでしょう。
  17. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほどの説明とも多少重なる点はお許しいただきたいと思いますけれども物価上昇率を左右する要因というのは大きく分けて二つあると思います。これは、議論の仕方によっては二つともあるいは三つとも言えますけれども、ここで一番大事なこととして私は二つあると思っております。一つは、これは経済全体の需給バランスであります。もう一つは、人々が少し長い目で見て将来物価がどういうふうになっていくのかという予想、我々の言葉でいきますと中長期的な予想物価上昇率、この二つでございます。  こういうふうに考えた場合、我々の政策もこの二つ要因に働きかけていくということが基本になってまいります。  まず第一の需給ギャップ需給バランスの方ですけれども、これは金融面から、家計企業経済活動を支援し、デフレの根本的な要因である需要不足を解消していくということに資する政策でないといけないというふうに思っております。この点、日本銀行では、現在、政策金利世界で最も低い実質ゼロ金利まで引き下げています。また、長め短期金利の一段の低下を促す措置を講じております。  昨年十二月に〇・一%の超低金利で三か月の資金を十分潤沢かつ安定的に供給するためにいわゆる固定金利オペというものを導入し、このオペによる資金供給を十兆円行うということを発表し、実行しました。さらに、このオペを三月の決定会合で十兆円増額するということを行いました。それから、先行きも極めて緩和的な金融環境を維持するというその姿勢を明確にしているということでございます。こうしたことは、様々なルートを通じて需給バランス改善に寄与していくというふうに考えています。  もう一つ予想物価上昇率の方ですけれども日本銀行が中長期的に物価が安定している姿はどういうものなのかということをはっきり示していく。その際に、これは物価マイナスであるという状況はこれは許容していない、消費者物価の前年比がプラス状態を実現することが大事であるという姿勢を明確にしております。  日本銀行としては、こうした二つのことを通じてデフレからの脱却ということに最大限努力をしていきたいというふうに思っております。  多少、金融緩和政策はあくまでも需給バランスというものを通じて働ける、そういう意味では間接的な方法になりますから、時間がある程度掛かるということをこれは認識した上で、しかし、そうした基本姿勢をしっかりと維持していくということでございます。
  18. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 日銀方針は分かったんですけど、展望レポートを見ますと、コアCPI見通しというのがあるんですけど、二〇〇九年度が前期比マイナス一・五、二〇一〇年度がマイナス〇・五、二〇一一年度マイナス〇・二と。新型オペは、今言われたことも含めて、もう白旗上げちゃっているような数字を出されているわけですね。  方針は分かるんですけど、私は、デフレというのをすごく狭くとらえられて、すごく超安全運転みたいなことでやられようとしていると思うんですけど、やっぱり今世界日本以外はもう総裁御存じのとおりインフレですよ。IMFのスタッフなんかはインフレ目標を四%へ引き上げよう、こんな発言ももうされているわけですね。日本だけがこんなデフレであって、循環的に経済は良くなっているけど基本的な基調は全く変わっていない。  やっぱり私は、もちろん自分たち、自戒の念も込めて、我々もしっかり頑張らなきゃいけないんですけど、お互いやっぱり危機感をもっと持たなきゃいけないと思うんですけど、この展望レポートで出された数字、これ、白旗上げているんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。
  19. 白川方明

    参考人白川方明君) 最初に結論から申し上げますと、白旗を上げているということではございません。  物価規定する要因は、これは基本的には需給バランスでございます。二〇〇八年のリーマンショックによって世界的に大きな需要落ち込みというのが発生いたしました。特に先進国では大きな落ち込みが発生しました。その結果、物価上昇率水準がそれぞれの国において望ましいと考える状態からかなり下に振れて、それが長い期間続いているという点では、実はこれは日本だけではなくてアメリカそれから欧州も同様でございます。  今委員から欧米の物価上昇率の話がございましたけれども、例えば米国でございます。米国が一番重視している消費者物価指数、これは消費者物価指数から、アメリカの場合は変動の大きいガソリンあるいは石油製品あるいは食料品を除いたベースで判断しております。これはコア消費者物価指数と呼んでおりますけれども。実は、この消費者物価指数はこのところ趨勢的に下がってきて、ごく最近のアメリカ金融政策議論する場での議事要旨を見ますと、むしろこの先アメリカ物価上昇率低下していくということに対する懸念が強く表明されております。  これはもちろんアメリカとしても決して好ましい状況ではなくて、早くこういう状況を打開したいというふうに思っておりますけれども、しかし、これは日本と同様、需給ギャップ需給バランスの崩れということが大きかったために、これは粘り強く政策をやっていくということであります。  議員指摘のとおり、これは日本銀行日本銀行の精神に従って一生懸命やっていく、それから政府も現に御努力されていますし、それから民間企業努力をしている、そうした努力の集積としてこのデフレから脱却できるということでありまして、日本銀行日本銀行のできることをしっかりやっていきたいというふうに思っております。決して白旗を上げるということではございません。
  20. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 そのアメリカですけど、そういうこともあってインフレに持っていこう、それで、非伝統的な手段まで、バランスシートを、まあ日銀さんもリーマンショック以降バランスシートを一一四%ぐらい拡大されてますけど、アメリカはもう三〇〇%近く拡大していまして、アメリカは非伝統的な手段ですね、住宅ローン担保証券なんかも買い取っているということで。中国なんかドルペッグしてますから、ドルペッグ自体アメリカ緩和したら自分たち緩和しなきゃいけないということで、お隣の中国だって大幅な緩和をやっているわけですね。  そして、物価の話を最初に聞いたんですけど、消費財物価というのはもう非常に大事だと思うんですけど、やっぱり経済がこれだけ複雑、大きくなってくると、資産効果というのもすごく大きいと思うんですよ。資産効果というのは何かというと、資産市場デフレですね、株とか不動産、これが経済に与える影響というのもすごく大きいと思うんですよ。ですから、株や不動産を下げたまんまだと、それは循環的なものが良くなったって、人々の気持ち、逆資産効果というやつで、なかなか経済が良くならない。  やっぱり、日本銀行は、もちろんバブル未然に防ぐという意味は、インフレ未然に防ぐという意味では消費財物価を見るのが伝統的な見方ですけど、今や資本市場資産市場消費が引っ張られる、で、消費財物価が引っ張られる、こういうことは世界的な傾向になっておるわけですから、やはり伝統的な消費財物価だけじゃなくて、資産市場物価ですね、不動産や株式、この価格にも注意を払うべきで、これがインフレになったりデフレになった場合はやはり日本銀行の出番だと思うんですけど、この株価、ちょっと上がってきていますけど、これ三十年近く前の株価ですよ。不動産に至っては、東京都心でも二十五年前の地価になっていますよ。私のいる鳥取県なんか、鳥取市では、五十年前の当時の取引価格になっています。こういう資産面デフレからも何らかの手を打つべきだと思うんですけど、これ、いかが思われますか。
  21. 白川方明

    参考人白川方明君) 議員指摘のとおり、資産市場資本市場というものの役割が大変大きくなってきているということは、私どもも全く同じ認識に立っております。  振り返ってみますと、一九八〇年代後半の日本バブルのときのあの経験以来、日本経済は、資産価格変動、あるいはその下での様々な信用の膨張ということが経済に大きな変動をもたらしたということを、これは身をもって経験してきたというふうに思っております。多分、このことについて先進国中央銀行で最も早く経験を通じて認識をしたというのは日本銀行でありまして、このことを様々な国際会議の場でも、私自身繰り返し繰り返し海外中央銀行に主張をしております。  日本銀行政策目的ということは、先ほど申しましたとおり、これは法律で規定されていますけれども物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するというふうに定められております。確かに、日本銀行金融政策目的は、これは先ほど申し上げたような意味物価の安定でございますけれども、しかし究極の目的は、これは国民経済の健全な発展に資するということであります。  この国民経済の健全な発展に資するということが何なのかについて、これは様々な議論がありますけれども、これは金融システムの、例えば資産市場が安定的に機能する、資本市場が安定的に機能することを通じて金融システムが安定性を維持するということも、そうしたことも含めて最後、国民経済が健全に発展するということを我々は意識しているわけであります。そういう意味で、資産市場動向について我々が無頓着であるということではありませんで、これはむしろ非常に我々としては、景気の判断をしていく上で大事な要素の一つとして意識しております。展望レポートでも、この資産市場動向についてはいつも分析を加えております。そういうふうに基本認識を申し上げた上で、資産市場に対して直接働きかける政策を考える必要があるのではないかということだと思います。  日本銀行は、あらかじめ特定の政策手段を排除するとかいうことは、こういうふうな考えには立っておりません。この十数年間を振り返ってみてもそうであるように、日本の置かれた経済が非常に厳しいときに、異例な手段ではありますけど、日本銀行として異例の措置を講じて様々な手段を、現実に買い入れるということを行いました。量的緩和のあの局面で日本銀行は、これはCP、これは資産担保証券、資産担保CP、資産担保証券を買い入れました。それから、金融政策という位置付けではございませんけど、金融機関の保有する株式も買い入れました。これは当時中央銀行としては極めて異例でありましたけれども、今回アメリカが取りました手段も当時日本銀行が取ったことと基本的に同じだなというふうに思っております。このことが示しますように、日本銀行は決して、かつてそういう手段を現に行っていますし、排除するものではありません。  ただ、先ほど先生がおっしゃったアメリカの買入れでございますけれどもアメリカの場合は、御案内のとおり、住宅ローン債権を担保とする証券市場、これが非常に大きな市場でございます。約五百兆円、円換算、あります。この五百兆円の市場において、もう新規の発行がほとんどできないという状況にまでアメリカは市場が壊れてしまいました。一方、日本の場合は、これは中心は銀行による住宅ローンでございます。住宅ローンを証券化した商品は日本では十九兆円でございまして、規模ははるかに小さくて、かつこの住宅ローンの市場はアメリカと異なって、あのリーマンショックの時点でも日本はその住宅ローンが大きく落ち込むという事態にはなりませんでした。したがって、日本の現実の住宅ローンの市場に即して我々は判断をして、金融機関に対して潤沢に資金を供給することを通じて貸出しの順便化を図ったということであります。  そういう意味で、長々申し上げましたけれども経済状況を見て我々としては適切に判断をしていきたいというふうに思っております。
  22. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今、状況によっては直接市場に働きかける政策も、アメリカのモデルとなるようなことも考えていただけるような趣旨の発言があったんですけど、日銀さん頑張っていただいて、銀行に対する資金提供というのはやっていただいているんですけど、直接市場に対する資金供給というのが今の時点では行われていないんですが、銀行の今信用創造能力というのは、もう総裁も御存じのとおり、もう急激におかしくなっているわけですね。金を貸し出さずに国債ばっかり買っているわけですよ。こんな銀行資金提供ばっかりやったって、その先の企業や個人、そして消費設備投資、そこになかなか行かないわけですね。後でこれは日銀考査の問題として金融機関の検査や指導をどう考えられているのかでもお聞きしたいと思いますのでこの辺にしておきますけど。そうなると、銀行の信用創造機能をどうするかという問題を一つ後で聞きますけど、だったら、これ問題があるんだったら直接市場にお金を入れると。  量的緩和というのは、私は、量だけの問題じゃなくて、量掛けるスピードだと思うんですね、量掛けるスピード。ここで止まっちゃっていますから、銀行の間で、銀行の中で。だとしたら、個人や企業設備投資消費、ここにお金が届くまでのスピードが今の日本経済の本当の問題になっていると思うんですよ。  そうしますと、やっぱりスピードがあって経済に直接資金供給をするんだったら、私は、直接市場に日本銀行さんがもっと乗り込んでいっていいと思うんですね。例えば株を買ったり不動産を買ったり、こういうことを日本銀行さんが今こそされるべきだと思うんですけど、いかがですか。
  23. 白川方明

    参考人白川方明君) 直接市場に日本銀行が乗り出してはどうかという御質問でございますけれども、市場という意味で最も代表的な市場、企業資金を調達する最も代表的な市場は、これは短期の社債であるコマーシャルペーパー、CPあるいは社債でございます。このCP・社債市場については、発行環境は確かにリーマンのときにこれは急速に悪化いたしましたけれども、昨年の春以降、これは急速に改善をしてきました。ごく最近、我々の行っています短観で企業に対してCPの発行環境はどうですかというふうにアンケートの項目がありますけれども、その項目を見てみますと、実はリーマンのあのショックの起こる前の水準を上回る良好な発行環境になっております。社債についても同様でございます。つまり、企業が今直接市場で資金を調達するときに、市場のサイドの何か障害があって資金が調達できないという状況ではもはやなくなっているというふうに思います。  問題の基本的なところは、これは企業設備投資をしていくということがまだ十分に行われない。それは最終的に十分に採算の合うプロジェクト、投資プロジェクトが多くない、仕事が余りないということが基本的な原因であります。そのために日本銀行としてできることは、企業が積極的な支出活動、投資活動を行えるような環境を用意するということで、この点では我々は十分今用意していると思いますし、今後ともそれを続けたいというように思っておりますけれども、しかし、今先生が御指摘のように、マーケットで資金が調達できないために投資が行えないという状況ではだんだんなくなってきているというふうに認識しております。  ただ、いずれにせよ、我々自身は、これは現在の情勢についての判断でございまして、先生は同時に中央銀行の一般的な政策姿勢という意味でのお尋ねということだと思います。一般的なお尋ねということでありますと、中央銀行としては常に金融市場の状況を見て適切に判断し、対応していきたいというように思っています。
  24. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今、住宅産業のすそ野の広さがアメリカ経済に与える影響は大きいという話をされましたけど、例えばGDPで見ますと、アメリカの住宅、不動産、建設産業というのは一六・四%ぐらいです。日本における住宅、不動産、建設、日本のGDPに占めるシェアというのは一八・六%ぐらいです。日本の方がやや大きいんですね。  今見てみますと、二〇〇八年、二〇〇九年のデータを見ますと、二〇〇八年で上場企業の倒産、二〇〇八年は三十三社、そのうち二十四社が不動産、建設ですね。二〇〇九年は、上場企業の上場廃止、倒産の二十社のうち十一社が建設、不動産ということになっているんです。やっぱりすそ野の広いものがこれだけ傷んでいるという意味では、アメリカはもう脱却したかもしれませんけど、日本は私、まだまだだと思うんですね。やっぱりこういう認識に立っていただきたいと思うんですよ。  国債を買われるのもいいですけど、国債というのは、国が消費をしたり投資をしたりして、そして直接経済を刺激していく、その裏の担保を買うような話ですよね、国債を買われるというのは。しかし、そういうこともいいですけど、直接日銀さんが国を通さずにそういうものに直接市場に働きかける、今こそ私はこれが必要だと思うんですね、もう。  為替の環境を見ても、円も人民元も上がり始めましたから、今、日本銀行さんがこういう非伝統的な手法も含めて循環的には良くなっているんですけど、やっぱり、さっきの展望レポートにもありました、二〇一一年のコアCPIもまだマイナス〇・二というところを深刻に受け止められて、本当に脱却されようと思うんだったら、今こそ世界的な為替の環境も、こういう非伝統的な手法を含めた緩和策、スピードある緩和策、これにとって一番いい環境だと思うんですけど、こういうのをやっていただけませんかね。政府国会も頑張りますから、一緒に頑張りませんか。
  25. 白川方明

    参考人白川方明君) 最後の点でございますけれども政府も御努力されていますし、日本銀行もこれは一生懸命頑張っております。我々の目的物価安定の下での国民経済の健全な発展ということでございますので、これは現に一生懸命頑張っている。そのためにどういう手段が最もその目的に対して有効かというその一念で考えております。  不動産あるいはその関連証券あるいは株式を対象とする買入れでございますけれども、現在のこの状況ですと、中央銀行としては極めてやっぱり慎重に考える必要があるというふうに思っています。こうした資産の価格は多数の市場参加者による、例えば不動産収益や企業業績の見通しに基づいて形成されるものでありますから、日本銀行による買取りが結果としてこれらの資産形成、価格形成にゆがみを与えるということになります。このことは結局お金が回るという面で見ると、むしろこれは逆効果になることも考えられます。  FRBが住宅ローンを担保化した証券を買い入れたのは、これは現実にもう不動産金融市場ではお金が回らなくなってしまった、機能が崩れてしまったという中で行ったものであります。  逆に言いますと、不動産金融をめぐる状況が正常化の方向に向かいますと、FRBはこれをやめるという判断をしまして、実は先月末でFRBはこの買入れをこれは完了いたしました。もちろん、今アメリカの住宅投資が活発ということではなくて、現在も落ち込んだ水準の中で今アメリカは横張っているという状況でありますけれども、しかし、金融が引っ張るという状況ではなくなったという判断の下で、むしろこれ以上続けると弊害の方が大きいということで、アメリカはこの三月末で停止をいたしました。  私が申し上げていることは、あくまでもそのときの、今の例えば住宅金融で申し上げますと、市場の状況に即して判断をする必要があると。中央銀行が買うことによって、実は、危機においてはプラスもありますけれども、しかし、それを長く続けると逆にマイナスの方が大きくなるということであります。そうしたことをきちんと点検をしていきたいということでありまして、いずれにせよ、現在の環境の中で最もふさわしいことを考えていきたいというふうに思っております。
  26. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 何かこんな言い方をしちゃいけませんけれども、理論的に正しいことと国民生活を守ることとどっちが重要なのかなと。理論的に正しい、例えば、私が証券会社に入った年の話をして恐縮なんですけど、株価が三万八千九百円でした。二十年前ですね、一番高かったときです。あのときに、二十年後の日本株価、あれもう日銀の方も含めてあらゆる識者がもう十万円超えていると言っていましたよ。ところが、二十年たって一万一千円、これが本当に日本の実力を表して、日本の正しい株価なんでしょうか。  そして、不動産価格、二十五年前の今の価格が、ほうっておいて、これは市場が決めた、これは歴史的に正しいものだ、これに介入することはゆがめることだと。本当にそんなレベルなんでしょうか、日本株価とか日本不動産価格が。そして、それがもうゆがめちゃいけない神聖なもので、それに日本銀行がタッチすることはできなくて、そのために企業が倒れたり、個人の消費が縮小して、人が、国民生活が窮乏してもそれはもういいんだと。日銀としては、経済理論、金融理論上、正しい市場の構造や市場の構成を守ることの方が重要なんだと。  私は、一つ言えるのは、そんなことよりもやっぱり今起こっている国民生活や企業の活動、循環的に良くなっているとはいえ基本的なデフレの構造は変わっていませんから、ここを深刻にとらえて、やっぱりガッツを持って国の難局を打破するんだというところを持っていただきたいと思いますし、今の不動産価格や税収や株価が理論的に正しいとか、これをゆがめちゃいけないとかいう水準なのかどうなのか。私は非常にそこは違うと思うんですけど、これはいかがですか。
  27. 白川方明

    参考人白川方明君) 私は、これは中央銀行を預かるという立場でありますので、もちろん理論は大事ではありますけれども、しかし、今ある理論だけに従って政策を判断するというふうなアプローチはこれは取るべきではないというふうに思っています。  理論は非常に大事だと思っていますし、いろんな理論を活用しながら、しかし、理論だけで解けない様々な現象もあります。そういう意味で、我々に課せられた最終的な課題は、どうやって物価安定の下での経済の健全な発展を図るかという、その一点にあります。したがいまして、まず構えとして理論だけを見ているということでは、これは決してございません。私が申し上げていることは、あくまでも中央銀行が取る行動が目的にかなっているかどうかということを、これは極めて実践的に判断していく必要があるということであります。  株価でありますけれども、先ほど少し二十年前のお話ございました。当時、日本銀行株価について、株価も含めてこれはバブル経済について警告も発しておりました。決してその当時の株価水準が、これはもっともっと先に上がるというふうに思っていたわけでは決してありません。市場は時としてバブル的に大きく上がることもあれば、あるいは逆のバブルが発生して下押すこともあるというふうに私自身は認識しています。だからこそ、日本銀行が株式の買入れを行ったのも、そういうふうな局面においては、中央銀行としては異例であるけれども、やる必要があるというふうに判断したからであります。今回のこの局面でも、昨年の二月にこれを決定して実行いたしたのも、まさにそういう思いからであります。  現在、株価が低迷しているということの基本的な原因は、これは釈迦に説法でありますけれども株価というのは企業収益が反映したものであります。つまり、将来にわたって企業収益が増えていくというふうな期待がなかなか持てないということであります。このことは先ほど議員が冒頭におっしゃっていた点とも絡みますけれども日本経済の力を強めていく、つまり生産性を上げていくという、そういう努力の結果として収益が上がり、それから株価も上がっていくということであります。  そういう意味では、日本銀行は決して危機感を持っていないのではなくて、むしろ危機感を持っているがゆえに非常に異例のこの極めて緩和的な政策を現在も粘り強く続けているということであります。そういう意味で、思い自体は私は同じだというふうに受け止めさせていただきました。
  28. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 株価の話で見れば、一つ、PERという指標がありますよね。一株当たりの利益ですね、それを株価で割ったものですけど、やっぱり、今、日本は低いんですよね。収益性が株価に反映されてない部分があると思うんですよ。ほかの中国アメリカ株価、だから、収益性が低いから株価が低いというのは一概に言えないと思うんですね。そのPERという指標でほかのグローバルな市場と比較しても、やっぱり極端に東京の市場はまだ低いと思うんですね。  それと、鶏か卵かという議論がありますけど、市場に直接入れることによって、企業設備投資や個人の消費にもっと早く大きくお金が流れていくことによってその期待成長率や期待収益率を変えることだって、日銀さんの行動によってはできると思うんですよ。  ですから、そっちが変わったらおれたちがやってやるということも考え方としてはありますけど、我々が、やっぱりまだ国家の危機なんだから、確かにアメリカは脱したかもしれません、まだ脱してないかもしれません、また逆戻りするかもしれません、出口を考えているところかもしれません。しかし、まだ日本はそこまで行ってない、ちょっと遅れていると私は思っていまして、そこまで行くまでバランスシートを膨らませていただいていませんし、そこまで行くまで、まあいろんな非伝統的な手法はやっていただきましたが、アメリカやイギリスと比べてそこまで多様な非伝統的な、直接市場へ中央銀行が買いに入るということは、米英と比較してはやっていただいてまだないと思うんですね。  ですから、もうアメリカやイギリスと同じで、出口戦略でやり過ぎたのを憂う段階にはまだないですし、そしてコアCPI動きを見ても、それはアメリカは比較して前期比で下がっているかもしれませんけど、日本みたいにずっと下がり続けている、ずっともう下をはいつくばっている、そういう状況とは違うわけですね。ですから、まだまだやっていただけることはあるんじゃないかと思っていまして、まあそれはちょっと違う言い方をしてみようと思うんですけど、例えば、極端な言い方しますと、危機対応です、日本銀行バランスシート。  もちろん、バランスシートを守る、変なものは持たない、規模も適正に保つ、そういうことを総裁しっかり考えて運営されていると思うんですけど、逆に言えば、こんなこと言ってちゃいけないかもしれませんけど、日本国債だってデフォルトする可能性だってなきにしもあらずなんですね。ほかの中央銀行はどうかというと、もう資産の中に金を入れたり違う通貨金融商品を入れたり、多様化を始めているわけですよ。日本国債のデフォルトに備えるという意味でも、多様な資産を持つということは私は十分検討、そして対応すべきだと思うんですけど。  その直接市場にお金を入れるという考え方。そして、資産市場も、資産市場価格物価の番人として見ていかねばならないということ。三番目の柱として、バランスシート、これを危機対応で、もしも日本国債ばっかり買っていてデフォルトした場合に、本当に中央銀行としてリスクマネジメントになるのかという観点から、もうほかの中央銀行と比べて日本銀行バランスシートには多様性が足りないと思うんですけど、この観点からもいろんな金融商品を持つということは絶対に必要だと思うんですけど、総裁、いかがですか。
  29. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私どもバランスシートについては、先生もよく御存じのとおり、財務の健全性を確保するということが非常に重要な観点であります。これはまた、円という通貨に対する人々の信任を得るという意味でも非常に重要な点でありまして、ここのところを忘れるわけにはいかないというふうに思っております。そうした考え方に立って、私どもの保有資産については、十分な信用力を持つということとそれから流動性を確保していくこと、この二つの点が非常に大事だというふうに思っております。  したがって、先生が御指摘のようなそういうことというのももちろんあり得ないとまで申し上げるつもりはありませんが、私どもとしてはやはり現状においては資産の多様化ということを優先しながら行動を起こしていくというようなことを考えるべき時期にはないというふうに思っております。特に、私ども日本中央銀行であります。そうした中央銀行がこの国の国債についてデフォルトを前提にして資産の多様化を図るというようなことは取り得ない選択肢ではないかというふうに思っておりますが。
  30. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 極論をしましたけれども、でもほかの中央銀行というのは、もう御案内のとおり金をたくさん買ったり外国の債券を買ったり、自国の経済の危機脱出のためだけじゃなくてバランスシート中央銀行としてリスクマネジメントの観点から多様化するということをやっているわけですね。ですから、本当はやっていらっしゃるというような声も聞きますけれども、別に国債がデフォルトすることに備えるとかいうのは私の極論でしたけど、そういう観点からも直接市場に介入するということも選択肢の一つだと思います。  ちょっとまた別な観点で、その金融緩和が本当に十分かなという話をさせていただきたいんですけど、これまあ総裁よく御存じのとおり、TIBORってありますよね、東京のインターバンク取引の金利ですね。TIBORとLIBORというのがありまして、ロンドンの銀行間取引の金利ですね。これグラフで趨勢で見ますと、TIBORはLIBORに比べて、これ三か月のグラフを私ここで見ているんですけど、下げ渋っている。直近二回ぐらい金融緩和があったんで、がくっがくっとは下がっているんですけど、TIBORが高止まっている、この状況だけ見てもやっぱり金融緩和が不十分じゃないか、貸し渋りが起こっているんじゃないかというふうに思うんですけど、このTIBORがLIBORに対して高止まりしている、この事実からまだ金融緩和は不十分だと私は思うんですけど、いかがですか。
  31. 白川方明

    参考人白川方明君) TIBOR、LIBORについてでございますけれども日本銀行として短期の金利銀行間の短期の金利を下げ、そのことが貸出しの金利企業に対する貸出しの金利にも反映されていく、そういう状況をつくりたいというふうに考えています。そのための手段として日本銀行は現に潤沢な資金を供給する、それから短期の金利、オーバーナイトの金利を〇・一にしておりますけれども、そうしたことに加えまして期間三か月の資金金利〇・一%で供給するという、固定金利を供給するというオペを、これを導入し拡充をいたしました。  こうした手段には幾つかのねらいがありますけれども一つのねらいは今議員がおっしゃったそうした姿を実現するためのものであります。最終的に金融機関がどの程度の金利で貸出しするかというのは、これは企業の信用のリスク、収益性とそれからリスクをどのように評価するかという、銀行のこれは判断であります。日本銀行資金供給という面からその低下を促すということを行っております。まだまだその効果が出尽くしたというわけではございません。先生も少し触れましたけれども、現実に我々の行動を受けてTIBORの金利もこれは徐々に更に低下をしております。それから、銀行間の金利に対して貸出金利が幾ら上乗せされているか、言わば貸出しの利ざやというものをこれ国際比較してみますと、日本世界で、少なくとも先進国の中ではこれは最も低い水準にまで今圧縮されております。これは我々のそうした政策姿勢もその背後に一つあるというふうに思っております。いずれにせよ、今この効果がまだ波及をしているという段階であります。
  32. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 日銀さんもリーマンショック以降、政府の方にいろいろ、昔からそうかもしれませんけれども、無理やり水を飲まされてきたという思いがおありになるのか、そして政治や政府の方も無理をお願いしてきた点もあるのか、そういうお気持ちを持っていらっしゃるのか。  そしてまた、逆に言うと、日銀さんの方から見たら、政府や政治の日本経済に対する対応、我々に言う割には不十分じゃないかと、そういう思いがあってか分かりませんけど、我々も自戒の念を込めて申し上げますと、やっぱり何か観察者のような発言に聞こえてしまうわけですね。私が間違っているかもしれません。市場を観察されて、そして、我々がきっかけになっちゃいけない、我々が仕掛けちゃいけないみたいなことを思うわけですけど。  ここは危機認識の差だと思うんですけどね、もう循環的に良くなっているからと。さっきも申し上げましたように、十五年間でそういうチャンス、二〇〇六年、二〇〇五年もありました。一九九九年、二〇〇〇年もありました。ちょっと本当に良くなったときがあって、しかしまた、やっぱりデフレのわなから逃げ出すことができずに、十五年間ゼロ成長だったわけですけど。  本当に何度も申し上げて恐縮ですけど、循環的な景気回復と物価の問題を切り離して物価の問題だけ見ますと、世界で異例な日本だけのデフレなんですね。それがまだ完全に払拭、脱却できる見通し展望レポートの中でも示されていない状況なわけですね。そして、企業や個人は大変苦しんでおられるというところなんです。  ですから、自ら仕掛けて経済のお金の流れを変えていく。銀行にお金を供給するだけじゃなくて、株や不動産を直接日銀さんが買われることによって、直接お金を企業や個人、設備投資消費に流していく。今こそ、米英が二〇〇八年、二〇〇九年に取ったような非伝統的な手段によって、資産市場の番人でもある日本銀行さんがもう出ていく、自ら仕掛ける、国の経済を守るために。それは、日銀さんだけにお願いするだけじゃなくて、我々もしっかり成長戦略財政や規制緩和や税制の改革を通じてやっていきますので、一緒になって、一緒にやろうぜとかいうことがどこかありましたけど、本当に頑張ろうと思いますので、そういう意味で、日本銀行さんが、もう自ら市場に、経済にアクションを起こしていくんだというところを見せていただきたいんですけど、総裁、いかがですか。
  33. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行全体として、それから私自身も、日本経済のこの現状あるいは近年の状況について私は危機意識を持っております。これは先ほど、先生、観察者という言葉を使われましたけれども、これは冷静な観察、これはもちろん必要であります。その意味で、我々は観察も行っておりますけど、しかし、最終的に中央銀行はこれ銀行であります。あくまでも、これ政策を実行する、これは行動、アクションの組織であります。この点においては、日本銀行は決して他の中央銀行に負けぬだけのアクションを行ってきたというふうに自負をしております。  私が強い危機意識を持っているというのは、先生が御指摘のとおり、私は日本経済の循環的な話ということもさることながら、より日本経済の趨勢的、基調的な動きについて、私はもっともっと日本全体として危機意識を持って取り組む必要があるというふうに思っております。  成長率という数字で、ベースで見ますと、日本成長率はこの十年間あるいはこの十五年間、海外先進国に比べて低いという状況が続いてきました。それはなぜかというと、これは釈迦に説法ですけれども一つは人口、生産年齢人口が減ってきているということ、それからもう一つは、その生産年齢人口当たりの生産量、つまり生産性が、これが伸びていないということにあります。これは循環的な話ではなくて、これは趨勢的な話であります。この問題に正面から日本経済は取り組まないといけないということでありまして、それは、資金流動性を出すことによって解決するという話ではないということであります。  資金流動性が問題のとき、これはまさに金融危機ですけど、そのときにはまさに中央銀行が積極的に資金を出すことこそが大事でありまして、それは日本銀行はそういうふうに行動しました。  今まさに循環的な問題について少しずつめどが立っている。そういうときに実は必要なことは、もっと生産性の問題に真正面から向き合う様々な政策であるということであります。日本銀行は、そうした取組を民間の企業が行うときに取り組みやすいような環境をしっかりつくるということで、この面で趨勢的な問題に対してもしっかり貢献していきたいというふうに考えております。そういう意味で、危機感を大いにこれは共有をしているということであります。
  34. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 本当に循環的には良くなっている数字がいっぱい出ていますけど、物価の問題は別問題ですので、是非、更に危機感を持って、政治も政府もしっかりやっていきますので、もう是非一緒になって、この日本だけが陥っているデフレのわなというのを脱却するためには何でもやるんだということで、総裁は米英の中央銀行に取ってきた手法で負けていないと言われましたが、多様性やバランスシートの膨らみ方、これから見ると、やっぱり負けていないかどうかという、これはもうその数字を見れば明らかだと思うんですね。  ですから、彼らは出口に近づいたかもしれない、まだ出口は本当は遠いかもしれません。しかし、日本は出口もまだ見えないようなコアCPIの趨勢、展望レポートで自身で発表されていますので、是非、政治もやるし日銀もやるんだということをしっかりやっていただきたいと思います。そして、できたら資産市場へ、そして市場に直接お金を入れるということも考えていただきたいということをもう一度申し上げて、ちょっと次の話題に移ろうと思うんですけど。  これは、日銀考査の話ですね、日銀考査の話。金融システムが安定しているかどうか。金融庁の検査というのは健全性を主に見られるんですけど、日銀考査というのはシステミックリスクへのインパクトという観点から見られると思うんですね、金融機関を。  じゃ、今の日本金融システムが安定しているかどうかという議論をちょっとさせていただきたいんですけど、本当に安定していると言えるんでしょうかと。  例えば、今のメガの支店長クラスでも、バブル以前の日本経済成長の時代を知らないわけですね。そして、面白い技術とかサービスのネタがあっても貸そうとしない。そして、残念なことに、じゃ成長著しい新興国に行って貸そうかといったら、そんなアクションも大々的に取っているような銀行はないわけです。覇気もないしリスクも取らない、チャンスはあるのに。そういう銀行が安定した金融システム、これをつくり上げていると見るのか、単に無能化していると見るのか。  日銀総裁から見て、金融機関が経営者の資産を担保に取っている、こういうところを日銀考査で見付けたとされます。こういうことを日銀総裁がどう判断されるかによって、この金融機関資金提供をしても、そこから先のお金の流れが日本経済を変えるという意味で大きく日本経済を左右すると思うんですけど、今の金融システムですね、覇気のない金融システム、これが安定していると見るのか。単に本当にリスクを取る、経済を育てる、その経済を支える企業を育てる、その観点から見て無能化しているんじゃないか。私は後者じゃないかと思うんですけど、その辺り、総裁はどう見られますか。
  35. 白川方明

    参考人白川方明君) まず、金融システムでございますけれども経済発展を実現する上で非常に重要な役割を果たしているものであります。この金融システムを評価する際に、私ども二つの判断軸を持ってこれは判断しております。一つは頑健性、もう一つは機能度ということであります。  ちょっと意味合いを御説明いたしますけれども、頑健性というのは、これは、例えばあのリーマンショックもそうですけれども、大きなショックが加わったときに、そのショックに耐えて金融システムが安定的な状況を維持できるかどうかという、そういう評価軸であります。この面では、十分な資本を持っている、十分な流動性を持っているということが、これがかぎになってまいります。  そういう意味での頑健性ということと、それからもう一つ、私ども大事なことは、金融システムの機能度。これは、効率的な資源配分を促す方向金融仲介機能が適切に発揮されているかどうかということであります。  今先生が御指摘の点は、この金融の信用の仲介機能という意味で十分に機能しているか、この点でまだまだ課題があるんではないかという御指摘だというふうに思います。  通常、安定性という言葉は、どちらかといいますと頑健性ということで通常議論されることが多いと思いますけれども、しかし、機能度という面で見てまだまだ課題があるという点については私どもも同じような認識を持っております。  この仲介機能をどうやって高めていくのかということでありますけれども、これはまずは金融機関自身が目利きの力を蓄えていく、磨いていくということが必要になってまいります。  日本銀行の行う、先生が考査との関係でおっしゃったので、考査についても少し御説明いたしたいと思います。例えば、経営者が私財を担保に貸付けを行っている場合に、日本銀行の考査ではどういうふうに考査をしているのか、そのことがひいては信用仲介機能にも影響するのではないかという、そういう問題意識であったと受け止めましたけれども、そういうふうなことでよろしいでしょうか。そこも含めてお答えいたしましょうか。どういうふうにいたしましょうか。
  36. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 学問の定義みたいな話じゃなくて、総裁がどう思われるかですね。こういう状況、つまり日銀が幾ら資金提供をしたって銀行が信用創造機能をほぼ失っている状況ですから、そこから先の企業や個人に行かないわけですから、技術革新も起こらないし、技術革新も労働投入も起こらなければ、経済成長なんか理論上起こるわけないんですよね。ですから、ここに目詰まっているものを流していくのも私は日銀姿勢だと思うんですね。  考査上、定義上、どれが正しいかみたいな、さっきの話じゃないですけれども、アカデミックな話というか、事実を観察する定義の話じゃなくて、総裁が今の日本をどれぐらい危機に思われていて、その中で、日銀考査という武器を持っていらっしゃるわけですから、これを、信用を銀行まではつくったわけですから、銀行から信用が広がるためには考査をどう使うか、考査という武器をどう使うか、その気持ち、ガッツを聞いているんですけど。
  37. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融機関企業に対してお金を貸し付けるのは、これは日本銀行ではなくて、あくまでもこれは金融機関であります。  過去の多くの経験が示しますように、あるときはこれで収益が上がると思った貸出しが結果的には大きな損失を計上するということもこれはたくさんありました。逆に、あるときに、これは将来性がないと思って貸出しをしなかったものが最終的にこれは大きな、企業成長をしたということも、そういう事例もこれはございます。  そういう意味で、金融機関企業の将来性、収益性、リスク、これを適切に評価する目利きの力が非常に大事であるというふうにまず思っております。  日本銀行が行う考査というのは、これは金融機関の行う様々な貸出しあるいは有価証券投資について、リスク管理体制、これが適切に行われているかどうかということをこれは検証するものであります。Aという企業、Bという企業に対してお金を貸すかどうかは、これはあくまでも私企業たる民間金融機関の判断であります。  日本銀行としては、様々な貸出しについてリスク管理体制が適切に行われるということがあって初めて実は積極的にリスクを取ることもできるということであります。リスク管理体制を検証するというふうにいいますと、貸出しをすべて抑制する方向で何か中央銀行が指導をしているんじゃないかというふうに思われるかもしれませんけれども、決してそうではありません。リスクをしっかり管理しているからこそリスクを取れるということになってくるわけであります。  そういう意味で、日本銀行金融機関の現状の信用仲介の力についてもっともっと向上していくことが大事だというふうに思っております。そのために、日本銀行としてできるアクションとしては、リスク管理体制を金融の市場の変化に即してしっかりこれを判断して、その判断を金融機関の経営者に伝えていくということだと思うので、そういうふうなアクションを取っております。
  38. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 日本銀行さん、たくさんの武器を持っていらっしゃるわけですよね。新型オペもそうですし、日銀考査もそうですし、今日いろいろお聞きしましたが、最後は危機認識の差だと思うんですけど。  やっぱり、何度も申し上げますけれども、循環的な景気回復というのは過去十五年間ほぼゼロ成長の中でも二、三回あったわけです。でも、やっぱりデフレを脱し得なかった。今やもう日本だけがデフレで、世界インフレを心配するような時代です。もう世界の情勢から見てもやっぱりおかしい、危機的な状況は変わっていないわけです。  ですから、静観する、確かにゆがめちゃいけないとか出しゃばっちゃいけないとか、そういうこともあるかもしれませんけど、もう国民生活を守るためにできた機関だと思いますし、そのための地位だと思うわけですね。ですから、そのためには、国民生活をもうより良くする、守り育てる、そしてこれ以上の困窮から防いでいく。  もうその危機認識が共有いただけるかどうか分かりませんし、また、今まで政府や政治に引っ張られていろいろやらされたことを苦々しく思っていらっしゃるのかもしれませんが、日銀さんだけにお願いしているんじゃなくて、政府でもこれから政治の方でも成長戦略というのをしっかりつくっていって、税制改革、規制改革、コンテンツや技術の海外セールス、いろんなことで日本経済のために一緒になって、できる武器は全部使ってやっていきましょうということは、日銀さんだけにプレッシャーを与えている気持ちは毛頭ありませんけど、是非、できる武器は全部使って直接市場に介入する。市場にお金が行かないんだったら、そこの銀行をしっかりしりをたたく。これぐらいのことをやって、量だけ増やしても、それが全体に血液のように行き渡って新たな技術革新とか労働投入につながらないと経済良くなりませんし、物価も上がりませんから、そのために何でもやるんだと。もうおれは何でもやるんだと、日本のためだったら何でもやるんだというところまで是非踏み込んで頑張っていただきたいということで。  時間がなくなりましたので、私の一方的な話になっちゃいましたけど、是非もう一緒になって頑張りましょう。よろしくお願いします。  ありがとうございました。
  39. 牧野たかお

    牧野たかお君 自民党の牧野たかおです。  ちょうどお三人そろったものですから、ちょっと質問の順番を変えさせていただいて、佳境の質問を先にやらせていただきます。  ゆうちょ銀行の預入限度額の引上げの話でございますけれども政府は今月中に法案を提出されるということでございますが、ゆうちょ銀行の預け入れの限度額を一千万から二千万に引き上げるということが政府で閣議決定で決まりましたが、その前段はいろいろ、この間も質問しましたけれども、ちょっと外から見ていると何かすったもんだという感じがしましたけど、そういう方針をお決めになりました。  そういう中で、そのときから言われていたのが、要するに中小零細企業の地方で融資をしているのは信用組合とか信用金庫でありまして、そういうところに預けているようなお金がゆうちょの方に回って、要は、国債の引受けの原資になるけれども、地方に回っている中小零細企業向けのお金というのが吸い上げられてしまうのではないかという心配が出ています。  このことについて、今回預入限度額を上げるということについて、日銀白川総裁はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  40. 白川方明

    参考人白川方明君) 郵貯資金の運用対象など金融業務の範囲につきましては、現在政府において検討が進められているという段階にあるというふうに承知をしております。したがって、郵貯資金の運用といいますか、限度額の引上げに伴って郵貯資金の運用がどういうふうになるのか、我が国資金の流れ全体にどのような影響を与えるかについて、現在具体的にちょっとコメントするということは差し控えさせていただきたいと思います。  これは限度額の引上げの後どのような業務規制になるのかということがかかわっておりますので、発言を控えさせていただきたいというふうに思っております。
  41. 牧野たかお

    牧野たかお君 発言を控えられちゃうと、あとの二人に聞くことがなくなっちゃうんですが。  記者会見では、ちょっと何か割と慎重にあるべきだと、出ていたわけじゃありませんので、新聞の論調だと、総裁のおっしゃったのは、慎重に考えるべきだというようなことの御発言があったようにその記事を見ましたけれども、それはそういうことでいいんですか。
  42. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほどお答えをいたしましたのは、国債の運用との関係での御質問と受け止めまして、そのようにお答えさせていただきました。  郵政改革についての一般論ということで、先日の記者会見で申し上げたことの繰り返しになりますけれども、こういうふうに申し上げました。  まず、郵政改革については、先般、郵貯の預入限度額や郵政グループへの政府の出資比率に関する政府としての方針が示されたものというふうに理解しております。政府においては、今後、その他の要検討事項に関する検討を進め、四月中に法案を国会に提出することを目指しているというふうに承知しております。こうした点を踏まえまして、中央銀行の立場から重要と思われる点について申し述べたいと思います。  中長期的に見て、金融システムの安定を維持していく上では、政府金融のかかわりの在り方というのが非常に重要な論点であるというふうに認識しております。  今回の金融危機、世界的な金融危機の震源地であります米国を例に取りますと、GSEという暗黙の政府保証を付けた、有した公的金融機関の経営難が問題となったわけであります。このことからも明らかなように、政府金融のかかわり方は、これは極めて重要な論点でして、したがいまして、この郵政改革についても同じように、長い目で見て我が国金融システムや金融市場に大きな影響を与え得る可能性があることを十分踏まえて検討がなされるという、そうした姿勢が大事だというふうに申し上げました。  現在、これまた世界金融システムの改革議論でございますけれども、いわゆるツービッグ・ツーフェールというものの扱いが問題になっております。例えば、これは日本状況に即して申し上げますと、公益性の高い民間企業の位置付けの下で民間金融機関との競争条件の公平性をどのように確保するのが適当かといった点や、あるいは郵政事業を新しい経営形態に再編する中で金融業とその他の事業のリスク遮断をどう実現するかといった点は重要な論点でありまして、しっかり検討する必要があると思うと、こういうふうに記者会見では申し上げました。
  43. 牧野たかお

    牧野たかお君 一言一句言ってもしようがないですが、全体的な要は論調というのは、慎重にあるべきだというふうにおっしゃっているように私は今受け止めたんですが、そういうことでいいんですか。
  44. 白川方明

    参考人白川方明君) 郵政事業全体をどのようにするかということは、これは国民の意思を踏まえて最終的に政府国会で決めるという性格かと思います。私は、郵政事業全体についてのこれは専門家ではありません、あくまでも金融について、これは中央銀行総裁という立場でこの論点を検討する場合にどういう論点が大事かということについて正確に国会の場で説明をすると、あるいは記者会見の場で説明するというのが、これは私に課せられた使命だというふうに思っております。そうした観点から、この問題を考える金融面での論点ということについて申し上げました。
  45. 牧野たかお

    牧野たかお君 それはもちろん分かっているんですが、日銀総裁だから伺ったのは、要するにさっき私が申し上げたみたいに、金融面で考えたときに、要は市中の出回るお金がそこに集まってしまって、国債の原資になるんでしょうけれども、地方の要するにそういう中小零細企業向けの融資が滞ってしまうんじゃないかという心配が、元々これがあったんですが、そのことについては、やっぱり今おっしゃったみたいに、要は金融上の懸念はやはりあるというふうに、今の会見の、そのまま今の話を聞くと何かそんなふうに受け止められるんですが、そういう意味ですか。
  46. 白川方明

    参考人白川方明君) 今、金融機関、特に地域の金融機関は、預金を集めて、なかなか十分な貸出し機会がないということで、貸出しの割合が低下する、預貸率が低下するという現象に今悩まされています。これは、先ほどの質疑の中でも随分出た論点でございますけれども、これは二つ、マクロ的な話とそれからミクロ的な話というのがあると思います。  マクロ的にはこれは景気でございまして、景気は足下持ち直しが明確化してきてはおりますけれども、しかしまだ景気が本格的に回復するという局面には至っていません。したがって、企業の設備資金需要もこれはなかなか出てこないということであります。加えて、金融機関の目利きという面でもこれはまだまだ課題があるということ、これはミクロ的な要因であります。そういう中で、金融機関が貸出しをしたいんだけれどもなかなか貸出しが伸びてこないというのが今の実態かなと、実態であるというふうに認識しています。
  47. 牧野たかお

    牧野たかお君 私がそれはいいとか悪いとかという話で言っているんじゃなくて、いろんな意見がある中で日銀の立場としてはどう思うかというふうに今伺いました。  それで、本家本元の亀井大臣に伺いたいと思いますが、余り長く御答弁いただかなくても結構ですけれども、今、日銀総裁がおっしゃった見解ということを受けて、どういうふうに思われますか。
  48. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 日銀総裁のおっしゃるとおりであろうと思います。
  49. 牧野たかお

    牧野たかお君 ひょっとしたらそれぞれの役所で事前に打合せをしたのかなという気もしないでもないですが。  それで、もう一つ亀井大臣のお顔を見ていたら思い出したんですが、さっき田村委員、いなくなっちゃいましたけど、時々おっしゃるのは、日銀がマーケットからじゃなくて直接要するに国債を引き受けるべきだと、そのお金を使っていろんな景気対策をすべきだというようなことをおっしゃっていますよね。もう一度その持論というか、それをどういうことか確認したいと思います。
  50. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 私は、国家財政運用上、国債発行が少なければ少ないほどいいと、ゼロが一番私は望ましいと思っておりますけれども、現実にそれがかなわない場合、この市中で国債を消化していくということを今後これ以上続けていくことが、これが果たして大丈夫かという懸念がないわけではありません。そういう場合に、日銀が直接これを引き受けるという処置を私はとれば、それによって菅大臣の方に財源を渡してあげれば菅大臣がこれを自由に使えるわけでありますから、そういう形で、もう税収が当面うんと上がってくるという期待がない以上は、特別会計といったって限度があるとなれば、残りは借金でありますから、金の借り方の問題でありますから、そのことについては私は日銀がそういう役割を、デフレギャップという世界にない状況が起きている状況から脱出する場合には、そういう役割を日銀が果たされてもいいのではないかということを申し上げておるわけであります。
  51. 牧野たかお

    牧野たかお君 そこで、日銀総裁白川総裁に伺いたいんですが、先ほどの質疑の中でも、やっぱり中央銀行というのが健全な運営をしなきゃいけないという御答弁だったと思いますが、今の亀井大臣の御意見と言っていいのか分かりませんが、そういう提言、御意見についてはどういう御見解をお持ちですか。
  52. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行は、法律に従って行動をしております。法律でどういうふうに規定されているかということを、海外の事例も交えて最初お話ししたいと思います。  現在、世界の多くの国で中央銀行による国債の引受けは、これは禁止されております。例えば、欧州ではユーロ参加の条件を定めましたいわゆるマーストリヒト条約によりまして中央銀行の国債引受けが禁止されております。我が国でも財政法五条の本則で日本銀行による国債の引受けが禁じられております。  どうしてこれが禁じられているかということでありますけれども中央銀行の国債引受けによる財政支出を始めますと、初めは問題がないように見えても、やがて通貨の増発に歯止めが利かなくなると。その結果、激しいインフレを招き、結局、国民生活や経済活動に大きな打撃を与えたという各国における苦い歴史の教訓に基づくものだというふうに理解をしております。つまり、これは人間の弱さというものを自覚するがゆえにこうした制度をあらかじめ法律に組み込んで自らの行動を律するという仕組みだというふうに思っております。したがいまして、日本銀行にとっては、これはもう現実に国債引受けは財政法でもこれは禁止されております。  日本銀行としては、現実に資金を潤沢に供給するということは、これは様々な資金供給手段を使って行っております。そのことを通じて経済全体に流動性が、しっかり資金が回るように努力をしていきたいというふうに考えています。
  53. 牧野たかお

    牧野たかお君 先ほど亀井大臣からもお名前が出ましたけれども、菅大臣は今のお二人の御意見、御意見というか御見解を聞いて、その国債の引受けというのは、直接その引受けということについてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  54. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) いろんな場でそういう御質問をいただいていますが、今も日銀総裁からもありましたように、現在の法律では市中からの国債を日銀が買われることは認められているけれども、直接新発債を買うということは一応できないことになっているわけで、もちろん乗換えとかいろんな手法があることも最近私も少し勉強しまして知りましたけれども基本的には新発債は買わないということがルールになっているということであります。  今の現状で、国債のマーケットの消化状況というのは比較的順調に動いておりますし、法律の範囲内での在り方でいいのではないかと、私はそう思っております。
  55. 牧野たかお

    牧野たかお君 もう一度聞くともう際限がなくなりますので、その質問はやめますけれども。  じゃ、元々の予定の順番に行きますが、先ほどのもちろんやり取りは伺っておりましたので、重複するところも若干あるんですが、今月の金融政策決定会合で、足下の景気判断について、持ち直しているから、持ち直しを続けているというふうにやや上向かせた判断をしたという報道記事が出ておりました。何か言葉だけ聞いていると上向かせた判断なのかなと思いましたけれども白川総裁景気の二番底の懸念がかなり薄れたという認識を記者会見で示されたというふうに伺っておりますけれども、この二番底の懸念が薄れたという判断の根拠というのはどこにあるんでしょうか。
  56. 白川方明

    参考人白川方明君) 議員指摘のとおり、今月七日の金融政策決定会合で、足下の経済情勢を点検し、私ども景気の現状につきまして、持ち直し持続傾向がより明確になったというふうに判断をいたしました。その際、いわゆる二番底の危険ということもこれはかなり薄れたというふうに申し上げました。  私どもが判断を一歩前進させた根拠でございますけれども、大きく分けまして四点ございます。  第一点は、輸出や生産が新興国経済の力強い成長、拡大を背景に増加を続けているということであります。  第二点は、先般の短観でも確認されましたし、それからそれ以外のアンケート調査でも出ておりますけれども企業業況感が、あるいは企業マインドが、製造業、大企業に加えまして、非製造業やあるいは中小企業にも広がりを伴いながら改善しているということであります。まだ、この業況感水準自体は高いというわけではございませんけれども、しかし、持ち直しという意味ではこれは着実に持ち直してきているというふうに思います。  それから三番目、これは企業収益の回復を背景に、設備投資の下げ止まりが明確になってきたということであります。  これは、企業からいただいています、この時点での二〇一〇年度の設備投資計画においてそうした数字が確認されている、あるいは、その他の機械受注であるとか関連するデータから見ても、そうした感じがうかがえるところであります。  もちろん、この設備投資水準としては決して高くはございません。しかし、設備投資がもう落ちるところまで落ちて、そこから先、変化、つまり成長という目で見ると、少しずつ局面が変わるその兆しが感じられるということであります。  それから四番目は、雇用・所得環境の悪化にも歯止めが掛かってきたということであります。  もちろん、雇用情勢厳しいわけですけれども、しかし、有効求人倍率について少しずつこれが回復をしてくる。あるいは、所定外労働時間が増えてくる等々に出ていますように、これ以上落ちるという感じから少しずつこれが良くなる兆しが出てきております。  そうしたことを基に、先ほど申し上げたような判断を行いました。
  57. 牧野たかお

    牧野たかお君 こういう問題というのは非常に難しくて、どの場でも要は余り深刻なことを言うともっと深刻になってしまうというジレンマに陥っちゃうものですから、余り悲観的なことを言えないんですけれども。  確かにそういう指標は、短観も、私、見させてもらいましたけれども、大企業製造業を中心に改善は四期続けてしているというふうに表には出ていますけれども、実際に景気が底を打ったという感じは、自分の生活だったり、自分の身の回りの生活だったり、いろんなところを見ても聞いても余り聞こえてこないというか、むしろもっと厳しくなっているなというのがちまたの声といえばちまたの声じゃないかなという気がします。  私はよくタクシー乗るとき必ず運転手さんに聞くんですけど、去年の暮れと比べてどうとか、正月明けてからどうとか聞くんですが、都内でも、また私の地元の静岡でもますます悪くなっているねという方の方が聞いていて多いんですよね。そういうことだけで判断することもないんでしょうけれどもデフレの話はまた後ほどしようと思っていますが。  日銀景気判断という指標はいつもいろんなときにもらいますけれども、どうも大手とか、また調べる先というのが割と、偏っていると言うと怒られるのかな、幅広く本当に調査されているのかなという気がするんですけれども、何か今までとこれからそういう調査について変えるようなお考えみたいなのはありますか。
  58. 中曽宏

    参考人中曽宏君) 企業業況感についてのお尋ねというふうに思います。  業況感なんですが、製造業の大企業に加えまして、非製造業あるいは中小企業にも広がりを伴いながら引き続き改善はしているというふうに思っております。  もっとも、御指摘のように、中小企業では相対的に改善のペースが遅くて、あるいは水準も低めにとどまっておりまして、業種や企業規模などによって改善の度合いに違いが残っているというふうに認識しております。これは先生の御指摘のとおりだというふうに思っております。  日本銀行調査の方法なんでございますけれども、私ども、中小零細企業あるいは地方経済動向も含めまして、景気をなるべくきめ細かく把握したいというふうに思っております。したがいまして、短観に加えまして個人を対象としたアンケート調査を実施しておりますほか、本店ですとか支店、これ全国三十二か店ございますけれども、様々な規模の企業ですとか業界団体のミクロヒアリングも実施しているところでございます。  実際、今週も私どもの支店長会議というのがございまして、全国の支店長から中小企業動向も含めた各地の景気動向を報告を受けることになってございます。  さらに、短観でもカバーし切れないような中小零細企業につきましては、日本政策金融公庫を始めまして各種調査などを用いて現状の把握に努めているところでございます。  景気動向の把握については、きめ細かく今後とも、今申し上げましたような努力を続けてまいりたいというふうに思っております。
  59. 牧野たかお

    牧野たかお君 その調査で大体のことは、今おっしゃったことをやっていらっしゃること分かるんですが、そのサンプリングの取り方だとか、もう一個は、個人事業者なんかにはそういう中のその調査に反映されてないような、あくまでも感覚的な問題ですけれども、そういう気がするんですよね。  自分のところの政党の話をしてはちょっと恐縮ですが、今、自民党で各全国地方を回って対話集会ってやっているんですが、そこを私も五、六か所、六か所ぐらいかな昨日で、行くと、そこにいろんな業種、建設業もあれば小売業もあれば農家もいれば、いろんな方がいらっしゃるんですけれども、本当に悪いという、このままじゃもう、年度を超えたけれども、多分あと一か月、二か月もつかもたないか、そういうことをおっしゃる方がかなりいるものだから、なかなか、底を打ったとかそういう言葉を聞くと、何か現実とちょっとまだ乖離しているんじゃないかなという、特に最近そういうふうに感じるんですけれども。  その調査の中に、今申し上げたみたいに、サンプリングの取り方で対象をずっと固定にしているのか、それとか、個人事業者なんかを幅広く取っているのかといえば、取っていらっしゃるんですか。
  60. 中曽宏

    参考人中曽宏君) 短観などにつきましては、中小企業も対象にしてございます。対象企業については、これは定期的に見直すような形にしております。なるべく実態が把握できるような形に定期的に見直しをしております。  それから、個人の方々については、先ほど申し上げましたようなアンケート調査などを行っておりますほか、支店は何人かの調査職員を配備してございますので、こういった調査機能を生かしながら、なるべく幅広く実際のその景気動向というのをきめ細かく把握していく一応体制は整っているというふうに認識をしてございます。
  61. 牧野たかお

    牧野たかお君 ここでそうは言っても、水掛け論になっちゃいますので。  とにかく、現実的に本当に社会全般的な景気の要は状況というのは細かく取っていただいて、その上で、そういう、何と言うんでしょう、日銀としての判断をしていただきたいと思います。  それで、ちょっと事は前後するんですけれども、私も項目を分けて原稿書いたんですが、今やっていながらふと、順番が入れ子になっちゃいますが、その方がいいかなと思って今変えますけど、景気物価というのはどうしても切り離せないものですから、その話を先にしますけれども。  菅大臣は、昨年の十一月に当時経済財政担当大臣としてデフレ宣言を行われましたけれども、このデフレ宣言を行ったという意図ってどういうことかなというふうに伺いたいと思います。  それはなぜかというと、デフレ宣言をしたことによって、その後の経過を見ると、日銀がいろいろ新しい今までやったことがないようなオペをやられたり、そういう意味では、日銀に対してのそういう効果はあったと思うんですけれども。実は、そのデフレという言葉がそこである意味、社会の中で固定化されちゃったような気がいたしておりまして、それでその宣言を行ったまず意図は何だったかということを伺いたいと思います。
  62. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) まず、意図という前に、その時点で物価関連の指数の傾向を当時見たところ、消費者物価、これはコアコアとかいろいろありますが、一般的にいって、この消費者物価が六か月連続で前月比マイナスになっていたこと、それから名目GDP成長率実質GDP成長率を下回る状況が二四半期連続で生じたこと、さらに需給ギャップの大幅なマイナスが続いていると見込まれ、これが物価の下押し圧力となっていることなどから持続的な物価下落が生じていると、こういう状況であるというふうに認識をいたしました。こういう認識の上で、そういう表現をどのようにするかということはもちろんあるわけですけれども基本的には持続的な物価下落している状況というのはまさにデフレ状況であるわけでありまして。  実は、もう委員も御存じのように、二〇〇〇年代初めから、当初、デフレ状況と言って、一時期多少緩和された時期はありますが、デフレからの脱却というところの宣言はその間もなされておりません。ですから、私が改めてデフレ状況と言ったことになるわけですが、必ずしも私が最初に言ったというよりは、デフレ状況脱却されていない中でまだ続いているということを申し上げたところです。  そのことの意図ということをよく聞かれるんですけれども、もちろん政府としても政権担当直後に雇用対策本部をつくり、緊急雇用対策など幾つかの経済対策を打ってきたわけでありますが、同時に、日銀においてもそうした形である意味での政策の協調的な行動を期待をしたというところも率直なところあったことは事実であります。
  63. 牧野たかお

    牧野たかお君 私も、状況は今大臣がおっしゃったみたいにずっとデフレ状況というか傾向が続いていて、デフレというのは正しい状況の言葉だと思っておりますが。  私が感じているのは、今の政権、内閣というのは皆さん正直なものだから、ずばりそのものの言葉をお使いになっちゃうところがあるのかなと思うんですが。実は、私が今感じているのは、デフレという言葉が固定化されてきて、農林水産業の農水でいうと、魚にしても農産物にしても、今スーパーが、もうどこのスーパーも価格破壊というか、卵が一個、ワンパック五円とか十円とか、そういうのを売り物にしないともう商売ができなくなっちゃっていると。  だから、そのデフレという中でいうと、価格破壊とデフレがもう同義語のように使われていて、そうするとそこに供給する一次産業の農家だったり漁業の皆さんだったり、価格がもう去年もひどかったって、去年も私農林水産委員会でそういうことで質疑をさせていただきましたけれども、今年になってもっとひどくて、もう本当に幾ら生産してもとても割に合わないような、そういう値段でしか買ってもらえなくなってしまったんだけれども、かといって、じゃ、買ってくれるところが大口であるかというとやっぱりないということで、今作れば作ってももう本当に赤字覚悟で、捨てるよりはいいだろうと言って納入しているところが多いということがございます。  それは、一部マスコミなんかでもそういうことを報道するようになってきましたし、私の周りでも、私のところはお茶が産地なんですけれども、もうこれ以上の価格では要らないというか、これ以下の価格でないと、何十年も取引したところでももう要らないよというふうに、もうそういうふうに今されているんですが、それもやっぱりデフレというのが言葉として固定されちゃうと、これやっぱり社会の中で、経済成長とか何かそういうものとは全く別の話で、固定化されてしまうとそういう関係する、生産をしているところはなかなか立ち直れなくなっちゃうんじゃないかなというか、むしろもう立ち直れないどころか、もうこれはやめちゃうというところが出てくるというふうに思っておりますけれども、そういう認識というのは総裁はお持ちでしょうか。
  64. 白川方明

    参考人白川方明君) デフレという言葉が、日本銀行自身が現在デフレという言葉を使うときには物価の持続的な下落という形で使っておりますが、新聞あるいは雑誌等の論調、あるいは一般の方の御議論の中で事実としてデフレという言葉がいろんな意味合いで使われているということは、これは先生の御指摘のとおりだと思います。  今、小売の末端では非常に激しい競争が行われているということは、私ども十分認識しています。小売段階でいろんな競争が行われるときに、値段で、価格でもって勝負をするということもありますし、それからいろんな品質、附帯するサービス、いろんな面で競争する条件はあるわけですけれども、先生のお言葉を借りますと、昨年の秋以降、デフレという言葉として固定化されて、人々がそのデフレ、その物価というところに関心が過度に集まった結果として多少今先生がおっしゃったような現象が起きているということも私は事実としては認識しております。いろんなアンケートの結果を見てみますと、昨年末以降、またいったんそれまで少し下がっていたデフレに関するいろんな言葉の頻度、またこう上がっていく、その結果として心理面にも影響を与えるという要素があったということは、これは事実だと思います。  ただ、そのことを申し上げた上で、しかし、現実に今、日本経済にとってこの物価デフレ状態から脱却することがこれは大事であるということは同じ認識であります。そういう意味で、実際の政策、これ社会経済というのは、人々の成す、人々の集合体がつくる行為でありますから様々な側面があるというふうに認識しております。
  65. 牧野たかお

    牧野たかお君 そういうふうに御認識をしていただければ有り難いなというふうに思っています。  それで、余り後ろ向きの話ばかりしているとそれこそよくないので、菅大臣に伺いたいんですが、中長期の経済成長の戦略というのがこれから、今でもつくられてその話をされましたけど、まずその中長期、もちろん大事なんですけれども、当面というか直近の中で、なかなか財政的な余力がないのはよく分かっていますけれども、それでも景気の刺激策みたいのを打ち出さないと、今申し上げたみたいにみんなの心理はもう冷え込んじゃっておりますので、五年先、十年先の話ばかりしていてもなかなかみんなそれに反応してくれないというふうに思うんですが、だから、当面というよりか直近でどんな景気刺激策を考えていらっしゃるのか、考えていらっしゃらないのか、その辺を伺いたいと思います。
  66. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) これ政権担当をした昨年の九月以降の財政を本当に冷静にというか普通に見ていただければ分かると思うんですが、決してこの間、何か緊縮財政を取ったつもりはありませんし、客観的にもそうはなっておりません。  確かに二十一年度の一次補正を一部見直したことを皆さんからもいろいろ指摘をされましたけれども、その後それを超える二次補正を出しましたし、また、先日成立をさせていただいた二十二年度予算の規模も、まあいろいろな言い方はありますけれども、少なくとも規模そのものが前年度に比べて、まあもちろん補正の前後のことはありますが、例えば二次補正と加えていえば百兆円近くになっておりますので、そういった意味で、当面のという意味でいえば、まず一番大きいのはこうした二次補正と二十二年度予算そのものにあると思っております。またさらに、その中には景気のための一兆円の予備費も積んでありますので、そういったことも、今後の形としてどういう形でそれを景気の刺激に活用するかということも議論がいろいろいただいているところです。  それから、あえて言いますと、私は最近、私なりにいろんな専門家なりいろんな意見を聴いた中で、先ほど値段が安くないと買わないということを言われて、まさに現実にそういうことがあることは私も承知しておりますが、別の見方をすると、物を買うのか、お金のままで持っておくのか、つまり安ければ買うというところもあると同時に、安い高いにかかわらずお金のままで持っておきたいという傾向が、私は、やはり長く言えば、二十年前の日本の土地のバブルの崩壊あるいは株の暴落といいましょうか、今でも三分の一水準にとどまっていますが、そういう中で個人消費あるいは企業の投資行動に根強く私は残っているように思います。  そういう意味で、デフレ状況というのは、別の表現をすると、お金が流れない状況だと、循環しない状況だと。これをいかに循環させるかということで、この間は、国債を発行する中で、それをある意味では国債という形でお金を預かって循環させてきたわけですが、それもやや厳しい状況にもなり得るわけで、それじゃ全体を緊縮していいかというと、私はそうも思っておりません。少なくとも、お金の循環をさせることにおいて、税制の在り方やそれから財政出動の在り方、中身が問題で、私は、やはり仕事をつくって雇用をつくっていく、雇用というものが拡大していって雇用情勢が健全化していけば、結果として賃金も上昇してデフレ状況から脱出する、まあ一番か二番か分かりませんけれども、少なくとも有力な道筋であるというふうに思っておりまして、そういう中でのデフレ脱却努力政府としてもしていきたいと、こう思っております。
  67. 牧野たかお

    牧野たかお君 私も、雇用というか仕事をつくることというのが直近でいえば一番大事だと思いますが、じゃ、今の出しているその中身がそれに直接すぐつながるかなというのは、立場によって見方が違うのかもしれませんが、とにかく雇用の拡大、仕事をつくるということに今積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。  それで、順番があっち行ったりこっち行ったりしておりますが、これは総裁に伺いたいんですが、金融経済情勢の中で、やっぱりこの中の概要説明、もっと言えば、元々報告書にも書いてありましたけれども、要は、新興国日本経済を引っ張っていかなければ、引っ張るというのかな、そこに要するに日本輸出をして外貨を稼がなければ当面のこの経済の不況から脱出することは難しいという、そういうことが書いてあると思うんですが、その中で一番日本にとってウエートが大きいのが中国だと思いますけれども、これはいろんな見方もやっぱりあるんでしょうが、中国は高度成長をずっと続けてきております。  もはや日本アメリカ中国経済を抜きにして自国の経済を語れないまで行っておりますが、やっぱりこれも心配されているのが、バブル的な経済成長が続いてきたんではないかと。だから、やがては中国経済バブルとしてはじけてしまったら大変だという心配がいろんなところで見受けられるんですが、その中国経済成長というのは果たしてバブルなのかどうかという御見解を総裁に伺いたいと思いますが。
  68. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 先生御指摘のとおり、近年、中国の高い成長というのは際立っております。二〇〇九年の実質成長率を見てみますと、先進国マイナス成長ということになりました。その一方で、中国は九%弱の高めの成長を遂げているという状況であります。  それで、御指摘のとおり、その間、中国不動産価格の上昇は続いておりまして、これについて、その上昇テンポが顕著だということで過熱を懸念する声というのが高まっていることは事実でございます。ただ、こうした不動産価格の上昇については、やはり実需による面もあるだろうというふうに私どもは思っております。潜在成長率が高いということと都市化が進展していると、こういったことを背景にして、実需の高さというのが不動産価格の上昇を裏付けているという面もあろうかと思います。さらには、御承知のことでありますが、地方政府主導の活発な不動産の開発ですとか、あるいは海外からの資金流入と、こういったようなことも要因として響いているようであります。  こんな状況であるわけでありますが、こうした状況の下で、中国政府自体が持続的成長を維持するために幾つかのことを既にやり始めております。  一つは、適度に緩和した金融政策を継続しながらということでありますが、流動性管理の強化ですとか、あるいは金融政策手段をいろいろと使いまして、マネーと貸出しを合理的な伸びに誘導していくようなことを打ち出しております。  それから、不動産市場に関しては、中国政府自体、一部都市において不動産価格の上昇というのが早過ぎるぞという判断をしておりまして、不動産向け融資に対する窓口指導の強化ですとか、あるいは住宅購入時の最低頭金比率の引上げといったような過熱の抑制に向けた取組も強めてきております。  こういったことでありますので、私どもとしては、引き続き中国経済が持続的な成長を維持していけるのかどうか、そういったことをきっちり見ていきたいと、かように思っております。
  69. 牧野たかお

    牧野たかお君 そういう不動産バブルもそうなんですが、元々私は中国にたまたまいろんな機会にいろんなことで行くことがあったんですけれども日本製造業で比べてみたり、発電なんかを見てもそうなんですが、要は、環境基準を守るためにコストを使っているとか、そういうのが余り日本と違って見受けられないと。  それと、為替相場も事実上固定の為替制度に近い管理変動相場制というんですか、になって、今ちょうどアメリカ中国で切上げするだ切上げしないだというので新聞に出ていますけれども、要は、そういうある意味特殊な環境の中で経済成長を続けてきたと思うんですが、これが先進国、西側、今西側とか言わないのかな、先進国に合わせてそういう環境基準を守るとか、実体経済に合わせた変動相場制になったりしたら、多分、私は中国経済成長というのはもう今までと全く変わってしまうと思うんですが、それで、要するに余り依存していて大丈夫かなという気もするんですが、その点は総裁はどういうふうに思っていらっしゃいますか。
  70. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 御指摘のとおり、中国につきましては、これまでの高成長の結果としてCO2の排出量が多くなっております。このために大幅なCO2削減をやるということになりますと、経済成長を下押す可能性はあるだろうというふうには思っております。ただ、中国政府としては、成長の大きな変動というのを回避すべく、環境政策経済成長バランスというのを考えた政策運営を進めていくだろうというふうに見ております。CO2削減絡みについては以上のような認識に私どもは今立っているということであります。  次に、為替相場の件ですが、人民元の先行きについて予断を持ってお話しするのは難しいので、この点は御理解いただきたいと思いますが、一般論として申し上げるとすると、仮に人民元が上昇した場合には定性的には輸出を下押しするということがあるわけでありますが、実際にどの程度輸出を下押しすることになるかについては、これは定かではありません。  また一方で、人民元の上昇自体は、原材料ですとかあるいは最終製品の輸入コストを引き下げるというようなことをもたらしまして、結果として、家計ですとかあるいは企業の所得を支えるといったようなことを通じて内需の増加をサポートする側面もあるということであります。  したがって、人民元の動きについては、輸出動向とそれから内需の動向バランスよく点検しながら評価していく必要があるだろうと、かように思っております。
  71. 牧野たかお

    牧野たかお君 そろそろ時間がなくなってきましたので、事務的に一つだけ総務省に聞きますが、さっき概要説明の中にも書いてありましたけれども消費者物価指数のこれからの指標の作り方ですけれども、高校の無償化というのも書いてありましたが、それだけなのか、子ども手当なんかもそれに入るのかもしれませんが。要するに、そういうふうに政策変わったときに消費者物価指標の作り方というのは、単純な質問なんですけれども、どうして作るんでしょうか。
  72. 川崎茂

    政府参考人川崎茂君) お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの消費者物価指数でございますが、この消費者物価指数消費者の購入いたします様々な商品やサービス価格動向をとらえるということで、そのために約二十万の価格を全国で調べまして、これを一定の計算方式で畳み上げていくということで、毎月公表しておるものでございます。  実際の調査といたしましては、世帯が購入する様々な財やサービスの中から約六百ぐらいの代表的なものを調査するということでやっておりまして、それはまたウエートによりまして全体の指数として畳み上げるということをやっております。  ただいまお尋ねのございました高校授業料の無償化ということでございますが、こういった六百ぐらいの品目の中に教育関係が十六品目ございまして、この中に公立高校の授業料とかあるいは私立高校の授業料といったものがございまして、これは二品目でございます。これは、実は計算してみますと、高校の公立の方の授業料は約全体の〇・四%程度のウエートを占めておりますので、これが仮にゼロになったらどれだけ影響があるかというのは今の段階でも試算することは可能でございまして、したがいまして、公立高校だけで大体総合指数を〇・四ポイント程度下げるということで試算をすることができるわけです。このほかにも、もちろん私立高校についても一定の効果がございますが、これは何と申しましても調べてみなければ分からないというのが実態でございます。  物価指数というのは最終的に消費者が支払う価格を基に作成いたしますので、したがいまして制度が変更になりましても、これは公的な制度であろうがあるいは市場での価格変動であろうがすべて反映するというのが原則でございますので、この授業料の無償化といったことによりまして指数の作成方法が変更されるということではございません。なお、このデータが授業料の無償化による影響がどれぐらいのものかということを、その寄与分を実際に公表するときには別途公表させていただこうと思っております。  それから、あと、例えば子ども手当といったようなものがございますが、こちらの方は世帯の受け取る給付の方でございますので、物価水準ということではございませんので、そちらは物価指数の方には特に影響はございません。
  73. 牧野たかお

    牧野たかお君 終わります。
  74. 大石正光

    委員長大石正光君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  75. 大石正光

    委員長大石正光君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  76. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。午前中に引き続き、質疑をお願いしたいと思います。  今日は日銀の報告の質疑でございますが、大変お忙しい中、財務大臣にも御陪席をいただきましてありがとうございました。  まず、九日に総裁と総理の会合ということが行われたというふうに承知をしておりますので、ちょっとそのことにまず触れたいというふうに思っております。  総裁の方からは、この景気認識の共有やデフレ脱却へ向けての対応の必要性等について合意をされたのか、意見交換されたのか、そういう趣旨の報道があったところでございますが、改めてどういうお話をされたのか、お聞かせ願えればというふうに思います。
  77. 白川方明

    参考人白川方明君) 最初に、今回の意見交換について経緯を申し上げたいというふうに思います。  私どもとしましては、総理との間で折に触れまして経済金融情勢に関する意見交換の機会を持ちたいという、そういう希望を持っておりまして、そういう希望をかねがね政府の方にもお伝えしておりました。また、今回政府の方からもそうした会合を持ちたいという御意向をいただきまして、今回の意見交換の機会が実現になったということになります。  日本銀行、私の方からは、経済金融情勢について現在どういうふうに見ているのか、政策面についてどういう考え方でやっているのかということについて御説明し、その後意見交換を行ったということでございます。
  78. 林芳正

    ○林芳正君 特に、意見交換を行われて、その結果として景気認識はこうであるとか、こういうデフレ対策についてこうであるというような、例えばこういう合意に達したということはございますでしょうか。
  79. 白川方明

    参考人白川方明君) 経済金融情勢につきましては、この意見交換の場ももちろんそうでございますけれども、それ以外にも様々な機会がございます。林議員も以前、経済財政のお仕事をなさっているときにありました月一回の月例の経済報告、あの場でも私の方からかなり詳しく金融情勢について御説明しておりまして、随分活発な御意見をいただいています。  そうした機会も含めて様々な場を使って意見交換を行っております。それから、金融政策決定会合の席でも政府の代表の方が意見を述べられておりまして、そういう意味では、常日ごろから意思疎通は行っております。  今回、これまた大臣の方から御答弁があるかと思いますけれども、私としましては、経済金融情勢基本認識について意見の違いがあったということではなかったというふうに受け止めております。  それから、金融政策そのものでございますけれども、これは日銀法規定に沿って、政府との間で十分な意思疎通を図って、その上で政策委員会で毎回議論をし、決定をしていくという枠組みになっております。
  80. 林芳正

    ○林芳正君 時々お会いして率直な意見交換をして認識を共有すると、これは日銀法にも書かれているとおりのことでございまして、実は私もこの場、財政金融委員会でも、また予算委員会でも申し上げたかもしれませんが、今総裁からお話がありましたように、経済財政諮問会議やそれから月例経済というのをやっておりまして、そういう場を設けますと、総裁と総理とか、総裁財務大臣経済財政担当大臣がお会いするということが非常に自然な形でできると。私は、政務次官のときでございましたが、当時の大蔵大臣日銀総裁がお会いになるということはうわさだけでもニュースになって、そのことがもう市場にいろんな憶測を呼ぶということでございまして、今おられる山口総裁じゃなくて、前の山口総裁と私と人目を忍んで、デートをしていたわけじゃないんですが、いろんな意見交換をやっておったということがございました。経済財政諮問会議ができる前でございます。  ですから、そのことは非常に、定期的にお会いすると、定期的というのが大事で、これ別に何か懸案事項があるから会うんじゃなくて、定期的に会っているんだからいいんですよというこの仕組みというのは大変に私も評価をするところでございまして、財務大臣は三か月に一回の準定期的な協議になるんではないかというようなことを会見でおっしゃったというふうに聞いておりますが、このとおりでよろしいのか。それから、準定期的というのがどんな意味なのかなということをお答えいただけたらと思います。
  81. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 林委員言われたように、いろんな機会に林委員からもそうした会を持った方がいいんではないかという御示唆をいただきました。  十二月のたしか二日に一度総理と総裁、私も同席をした会が官邸で行われました。今回は、そういう意味では同じような形では二度目ということになります。そのときの話合いの中で、余りかっちりと、何か月に一回というかっちりとした形ではなくて、場合によったらいろんな時期にいろんな出来事がありますので、大体三か月に一回ぐらいということでやったらどうだろうかということで総裁とも話が合いましたので、そういうことで続けたいと。準というのはその程度の意味です。
  82. 林芳正

    ○林芳正君 分かりました。  私が申し上げているのは、なるべくいつごろどういうメンバーでやるということがあらかじめ決まっているということの重要性というのを申し上げたかったわけでございます。メンバーが少し替わったりとか大体三か月が少し延びたりとかということになると、そのことが逆なメッセージになり得るということもあり得ますので、そこはいろんな詰め方があると思いますけれども、そういうところに留意をしていただいてやっていただいたらというふうに思います。  そういうことを申し上げるのも、昨年十二月に初めてやられて今回ということでございますが、その前の十一月のデフレ宣言のときというのがやはり少しスムーズに連携ができていないのかなというふうに我々ちょっと心配をしておったわけでございます。  午前中の質疑でも総裁デフレ定義を、ちょっと今外されておられますが、田村委員質疑の中で、持続的な物価下落というふうにお話をされておられました。  これは、デフレ定義というと大変経済学上も難しい話だと思いますが、前回政府デフレ宣言をしたときは、大体二年ぐらい物価下落が続いていたと。物価は、我々が内閣府におりましたときは、大体コアコアというのを見てやっておったと、消費者物価の、ということでございましたけれども、十一月のデフレ宣言はまだ一年未満の時期であったというふうに思っておりまして、そのときに総裁は何ておっしゃったかというと、十一月二十日ですが、デフレという言葉は使う人によって定義が違うと、こういうことをおっしゃって、しかし、この日銀政府の間がぎくしゃくしているんではないかという議論がいろいろ出て、十一月三十日に、デフレ克服のために最大限の努力を行うということを、これドバイ・ショックの直後でございましたが、おっしゃっておられます。  ですから、三十日にはもうデフレであるということを事実上そこで認識を明らかにされておられるということでございますが、そういう意味では、十一月二十日以前というのは、今日午前中におっしゃった定義というのは対外的には明らかにされておられなかったということでございましょうか。
  83. 白川方明

    参考人白川方明君) 昨年十一月の決定会合におきまして、今議員指摘のとおり、デフレには様々な定義があるというふうに申し上げましたけれども、これは論者によって一般物価下落を指す方もいれば、あるいは資産デフレという形で資産価格下落のことを言う人もいるし、あるいは経済活動落ち込みのことをデフレという表現で言う人もいるし、さらには、物価下落とそれから経済活動落ち込み、この両方が加わった場合をデフレと言うと。様々な定義が現に存在すること、これは当時もそうですし、今もそうでございます。  ただ、我々自身がデフレ、いろんな経済政策議論を行うときに、そのときにデフレという言葉をこういう形で使うということを申し上げたのが、今議員がおっしゃった話でございます。一般物価の持続的な下落、これをデフレという言葉で呼んで、それでこのデフレの克服、デフレから脱却し、物価安定の下での持続的な成長軌道にできるだけ早く復帰することが極めて重要だという認識を明らかにしたものであります。  一点申し上げたいことは、現実に様々なデフレ定義を使っている方、今現在でもいらっしゃいますけど、ただいずれにせよ、物価情勢についての認識という意味では、実は十一月以前からこれは同じでございます。昨年十一月に政府は、月例経済報告において緩やかなデフレ状況にあるという見解を示されましたけれども、その際の政府物価の評価は、それ以前に日本銀行展望レポートで示しました物価に関する見方と、これは異なっていたわけではなかったというふうに思います。そういう意味で、あくまでもコミュニケーションを図っていく上でデフレ定義をこういう形で使っていきますよということを明らかにしたというわけでございます。
  84. 林芳正

    ○林芳正君 せっかくでございますので、総裁定義は今おっしゃられたとおりでありますが、菅大臣も同じようなデフレについては定義をされておられますでしょうか。
  85. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) デフレというものについて、当時のことでいえば、物価関連の指標を見ると、当時、消費者物価がコアコアで六か月連続で前年比マイナスだったと。また、名目GDP成長率実質GDP成長率を下回る状況が二四半期連続で生じていたと。また、需給ギャップの大幅なマイナスが続いていると見込まれ、これが物価の下押し圧力となっていることなどから、持続的な物価下落が生じていると考えられたと。こういうことをベースにして月例経済デフレ状態にあるということを申し上げたわけで、基本的には総裁が言われた見方、考え方と共通していると、こう認識しております。
  86. 林芳正

    ○林芳正君 六か月のコアコアの下落ということでございましたので、前回は二年でございましたけれども、今回は六か月ぐらいで、ほかの数字も加味してということでございましたんで、持続的なというところと物価下落、持続的と物価下落と三つあるわけでございますが、その持続的という意味がどれぐらいのスパンなのかというのは、今大臣おっしゃったように六か月程度でもデフレになり得るということでございましたけれども総裁も同じような考え方ということでよろしいですか。
  87. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 私が申し上げたのは、そのときの状態はそうであったということで、いろいろ国際機関などで二年間というものが言われていることも承知をいたしております。  先ほども申し上げましたように、この時期、デフレ状態にあるというのはたしか二〇〇一年ごろに一度言われて、その後デフレ状況から脱却したという表現は多分されていないはずでありまして、その中で、今申し上げたのはその時点のことを申し上げましたが、その後の見通しも二年程度は続くものという見通しもあって、それらも併せて申し上げたというのが当時の私の気持ちです。
  88. 林芳正

    ○林芳正君 実際に過去何か月かコアコアが持続的に下落したということと、それから将来どれぐらいになるかという見通しというのは別のことですが、今、菅大臣は、六か月過去下落したということに加えて、将来的にも二年ぐらい下落見通しがあるということでおっしゃったと。  将来的な見通しもこのデフレの判断に入ったということだとすると、この持続的な物価下落の持続的というところは将来の見通しも含めてということになるかと思いますが、そういうお考えですか。菅大臣、もう一回。
  89. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) 月例経済報告がもちろん林議員がおられたころも同様の形で作られてきたと思いますが、私も、その当時この報告を受けたときに、大体機械的に決まることなのか、それとも政治的な判断を含めてこういうものは決まることなのかという表現については少し議論いたしました。  そういう中で、事務方からは二年間という外国のそういう認識もあるということは聞きました。同時に、必ずしもそれが一義的にこうだということになっているわけではなくて、そういう認識をしているところもあると。  そういうことを含めて、先ほど申し上げたように、その時点では確かに六か月の持続的物価下落でありましたので、私もそういう考え方で、デフレ状態にあるということを申し上げるときの私の判断として、二年程度の国際的な一つの考え方がある中で、今後も含めてなかなかこの状態がまだ続くのではないかということも、私が最終的に判断する上ではそういうものも若干は自分の中では考え方の中に取り入れたと、そういう意味です。
  90. 林芳正

    ○林芳正君 ちょっと頭の中が混乱してきましたが、大臣経済財政担当大臣として個人的に政治的な判断をされたと。そのときには、六か月今まで下がってきたことに加えて将来的な見通しも入れたと。  私なぜ聞くかというと、やっぱり明らかに今まで二年で、過去一回やったものが六か月になっていますので、デフレというものに対する政府側の見方というものが変わったのかなと。これはまさに大臣おっしゃったように政治的判断ということも加えてということでございますが、こういう場合にこういう判断するということは、ある程度予見可能性があってこういう条件になったのでということは、余り恣意的に変わるとこれは影響が出てきてしまいますので、さっきの定期的に会合するというのも一緒なんですが。  今のお言葉は、ちょっとそのまま議事録に残ると若干問題があるんじゃないかなと、こう思ったりするんですが、よろしいですか、菅大臣
  91. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) もうちょっと正確に言うべきかもしれませんが。  率直に申し上げて、こういうデータが出てきたときに私が逆に聞いたわけです。つまり、こういう問題というのは一つ定義があって、こうなったらこういう表現をするという一義的に決まったものなのか、それともそのときに政治的なある種の判断で判断していい種類のものなのかということを聞いたわけです。基本的には、政治的な判断ではなくて、ある程度こういう状態になったらこういう表現をするんだと。  つまりは、まさに林さんは私より前に同じようなポストをやっておられますから、つまりデフレというのは、こういう場面が来たときはこういう表現をするんだというのが基本的にはあるということを聞いて、その上で、先ほど申し上げたように外国の例とか幾つかの例もこれは付加的に聞きました。必ずしも外国のその二年というのが日本におけるきちんとしたルールになっているというふうには私はその当時は聞いておりません、日本においてですよ。  そういう付加的なことも含めて、私としては事務方から上がってきたそのことを、簡単に言えば、よほど何かあれば、私が、いや、ちょっと、そうはいってもやめておこうということがあったかもしれませんが、基本的には、そういう政治的な判断はこの場ではあえてしないで、従来的なルールの中で私としてはやったと、このように認識しています。  だから、二年間というのはあくまで外国の一つの考え方の中にあるということで、それが必ずしも我が国のその部門で二年間ということが定義されているというふうには、私は当時も理解していませんし、今も一つの有力な意見であるという程度に理解をしております。
  92. 林芳正

    ○林芳正君 二年間、外国の例もありますし、ただ、政府デフレ宣言をすること自体余りケースはないことでありますから、どこかにこういう数字とこういう数字とこういう数字があって、これで三つのうち二つが該当したらデフレ宣言すると、こういうルールはないんだと思います。  私が申し上げているのは、前回日本デフレ宣言をしたときに、大体二年ぐらい見て、これは持続的な物価下落だということで宣言をしているという実例があるわけですから、もしそれを変更されるということであれば、こうこうほかの事情もこういうふうに加味して、二年じゃなくて今回六か月だけれども、こういう判断をしたということを併せてその判断をするときにおっしゃっておられないと、結局、菅大臣が、変な話、鉛筆なめて、今回これとこれとこれで最終的に、ちょっと私、政治的判断とさっきからおっしゃられるので、そのことは削除した方がいいんじゃないかなと思って御質問しているんですが、そういう言葉が独り歩きをするんですね。  ですから、やっぱりきちっとした、こういうクライテリアでこうだからということはマーケットの人にきちっと届くようなやり方でデフレ宣言をしたんだということを、宣言をされたときにも、文言を読みましたけれども、どうもその辺がはっきり出てこないと。それが先ほどの、総裁が、デフレという言葉は使う人によって定義が違うということが、どうしても反射的に出てしまったのかなという感じがするわけですね。  ちょっとこの話ばっかりやっているわけにはいかないですが、非常に大事な問題なので、私は、やっぱり政治的な判断ということが余りデフレ宣言に、政治的な判断でやったんだということではなくて、政治的判断じゃないということですね。いろんな政策的な今おっしゃったようなことを加味してやったんだということであれば、今説明をきちっともう少ししていただいた方がいいなと思いますが。  総裁の方に聞こうとさっきから思っていたんですけれども、この持続的な物価下落が、今、菅大臣おっしゃったように六か月で、先の見通しと直近のGDPというお話でしたが、大体総裁の頭の中におありになる持続的な物価下落といったときの持続的なというのは、今の菅大臣の御認識と大体同じだということでよろしゅうございますか。
  93. 白川方明

    参考人白川方明君) 私ども物価の持続的な下落という状況が続くことは、これは好ましくないというふうに思っています。そういう意味において、そういう場合の基本的な判断を伝えるためにデフレからの脱却という言葉を使っております。  先ほど来の議員の御質問、御発言の中にもございましたとおり、そういうふうな判断をした上で、しかしデフレということを機械的に定義できるわけではないということを我々も感じております。したがいまして、公式のように、この指数で何か月間でこれで直ちにデフレとかあるいはデフレじゃないというふうに宣言することはやっぱりなかなか難しいというふうに思っています。  物価指数どれを選ぶかということで、午前中、消費者物価指数基本となりますということを申し上げましたけれども、実はこの消費者物価指数についても、例えばアメリカ食料品とエネルギーを除くベース、これが一番いいという判断をしておりますけれども日本は、過去の実績から判断しますと、生鮮食品を除くベースがいい、あるいは欧州、これはイギリスもそうですけれども、これはそういう調整をしないベースがいいというふうに、これ三つの地域、国でかなり分かれております。これは国によって分かれているだけではなくて、それはその経済の置かれた状況によっても多分違ってくるんだというふうに思います。  我々にとっては、どういうふうに定義するか、機械的にどう定義するかということよりか、最終的に政策判断を間違えないということだと思いますので、そういう意味では、デフレ状況物価状況を見て機械的にこれで判断をしていくということには必ずしもなりにくいと思います。  じゃ、どういう要素を大事にしているかということですけれども人々経済的な意思決定を行う上で大事なことは、将来物価がどんどん下がっていくという経済なのか、あるいは物価はもう下げ止まった経済なのかということがより大事だと思います。それが人々消費・貯蓄行動を規定していくというふうに思います。  そういう意味では、将来どういうふうになっていくのか、これ我々の言葉でいきますと予想物価上昇率ということになりますし物価見通しになりますけど、これを私どもは出していくということを重視しております。  それから、もう一つ、長くなって恐縮ですけれどもデフレの反対はインフレでありますけれども、これもデフレについて機械的に定義しにくいのと同じように、インフレもある瞬間から突然に、今まではインフレではないけど今日からインフレだというふうにはやっぱりなかなかなりにくいというふうに思います。  その物価の上昇なり下落がどういう性格で生じているのかによって、実は金融政策上の判断が異なってまいります。仮にインフレなりデフレなりというふうにみなしたとしても、そのことが直ちに金融政策についてある方向意味するわけではなくて、それはやっぱり経済全体のバランスも同時に見ていく必要があるというように思っています。  長々と申し上げて恐縮でございますけれども、そういう意味で、機械的に判断していくということではなくて、物価の持続的な下落ということを軸に時々判断をしていくということが原則的な考えになってまいります。
  94. 林芳正

    ○林芳正君 基本的なお考えよく分かりましたけれども、同じ体温が下がっても、ほかの病気があるかとか、体力が十年たって少し年取って落ちているとか、そういうことも加味してやるんだということでありましたけれども。  とどのつまり、基本的には先ほど財務大臣が、経済財政担当大臣ですか、デフレですから、がおっしゃったような六か月プラスこういうことでということは総裁デフレ定義の中に収まるということでよろしゅうございますか。
  95. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほど大臣も御答弁なさったように、当時の宣言をしたときの経済状況についての御説明だったというように私は理解いたしておりました。六か月下落だから即デフレであるとかいう形での判断では必ずしも私どもはございません。  ただ、いずれにしても、物価が持続的に下落しているという状況についての認識はこれは変わりません。それを、数字について、今おっしゃった六か月ということであれば、それは必ずしも六か月ということで私どもは判断したわけではございません。
  96. 林芳正

    ○林芳正君 十一月二十日と十一月三十日でかなりいろんなことをお考えになった結果、三十日にデフレ克服のための努力を行うとおっしゃっておられるわけですから、そういう認識でやっておられるということだと思います。  ただ、今、総裁もおっしゃったように、六か月がメルクマールということではなくて、そのことも併せていろんなことを判断して今の経済の体温といいますか、デフレかどうかを判断するということでありますけれども、これは実例として、一つは、一回目は二年プラスいろんなことがあって、今回は六か月でやったということは、これはもう歴史として残るということであろうかなと、こういうふうに思っております。  これは四月七日の会見の方にも少し入るんでございますが、政府との関係ということで、随分報道でも、騒ぎというほどのことではないかもしれませんが、取り上げられました郵貯の問題に、郵貯、簡保の問題についても総裁はちょっと懸念を表明されておられまして、まさにアメリカのGSEですね、政府系の住宅金融機関のことを指摘をされたと。金融機関が大き過ぎてつぶせないことが問題となっているということと、民間金融機関との競争条件の公平性をどのように確保するのかということをおっしゃっておられますが、この辺りは少し御懸念を持たれているというふうに受け止めておられますか、改めてそのことに対する御見解をお聞きいたします。
  97. 白川方明

    参考人白川方明君) 郵政事業は、貯金あるいは保険だけではなくて郵便事業も含む事業でございます。そういう意味で、私ども郵政改革全体について議論をするということじゃなくて、日本銀行あるいは日本銀行総裁として、その中で特にその金融という面で、この改革の際の基本的な論点は何であるのかということをしっかり説明する義務があるというふうに思っております。そうした観点から、せんだっての記者会見でも私どもの考える考えを申し上げました。  中長期的に見て、金融システムの安定を維持していくという上で政府とそれから金融のかかわり方というのは、これは非常に重要でございます。今回の世界的な金融危機を振り返ってみましても、震源地であったアメリカでは、いわゆるGSE、これはこの扱いが大きな問題になりました。つまり、暗黙の政府保証を有している金融機関がそのために規模が拡大するということになりまして、その結果、最終的にそれが様々な形として問題が顕在化をしたということだというふうに理解しております。  このことからも明らかなように、政府金融のかかわりの在り方ということについて十分なこれは検討を行い、その上で最終的に様々な角度から郵政改革をどうするのかという決定に至るものだというふうに考えております。  今、GSEの話を申し上げましたけど、もう一つ政府金融のかかわり方という意味で大事な論点であったのが、アメリカの今回の金融危機で、これはツービッグ・ツーフェールということだったと思います。ツービッグ・ツーフェールは、これは主として民間の金融機関について当てはまるものでありますけれども、しかし、ある金融機関が非常に大きい、そうすると実際上金融機関が突然破綻になりますと金融システムに与える影響が非常に大きい、そういうことを考えますと金融機関の破綻を許しにくいというふうになってくるわけであります。そのことがあらかじめ金融市場の参加者に認識されますと、今度は金融機関の行動自体にチェックが掛かりにくくなってくるというふうになってまいります。  したがいまして、郵政の問題を考えるときにもこのツービッグ・ツーフェールの論点も大事であるということであります。その上で、具体的にどういうふうな制度設計にしていくのか、運営にしていくのかということで様々な論点があるというふうに申し上げた次第でございます。
  98. 林芳正

    ○林芳正君 ツービッグ・ツーフェールということとそれから政府の暗黙の保証と、これはGSEのときに大変大きな問題になったわけでございまして、今回のこの間の決定、全閣僚でお集まりになって決めたということを報道で見ますと、暗黙ではなくて明示的に政府が三分の一をお持ちになると、それからこのツービッグということの一つの表れだと思いますが、限度額が上がると。我々のころも随分議論はいたしましたが、どっちかだろうと、政府の関与が下がれば金融機関として、民間として自由にやるし、政府の関与が上がれば厳しくミニマムに限定をしていくと。  両方やっていくという方向性というのはちょっと考えが及ばなかったわけでございますが、菅大臣も随分議論をされたと思いますけれども、まあこれいったん政府で決定をされたことですので、これおかしいと今おっしゃられるわけにはいかないと思いますが、今、総裁、そのようなところを留意していただきたいということがございましたけれども財務大臣として何かコメントおありでございましょうか。
  99. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) なかなかコメントしにくいんですが、一つは、財務大臣は今は金融は直接は担当いたしておりません。そんなことで、制度設計についてはある程度いろいろ聞いておりまして、そういう中で三分の一というのが聞こえてはきておりました。また、若干報道されましたが、消費税の取扱い等については、そういうことはすぐには申し上げないという形で伝わってはきておりました。  そんなこともありまして、この問題はもちろんそれぞれの意見があることはそれぞれ承知をしておりましたが、最終的には、三月三十日ですか、そのときの全閣僚が集まった閣僚懇談会でそれぞれの説明等をいただいた上で最終的には総理に判断を一任するということで、総理はその中での判断を下されたわけであります。議論は多少いろいろありましたけれども、最終的には内閣としてはそういう形で物を決めたと、私も一任するという形でそのことは了解をいたしております。
  100. 林芳正

    ○林芳正君 決まってしまったことなんで、今更何を言ってもという感もしますが、せっかく菅大臣、今財務大臣経済財政担当大臣を兼ねられている副総理でございますので、やっぱり経済に関してはもう菅大臣が司令塔だというふうに言っても私は過言ではないと思いますので、この話はまさに経済に大きな影響がある話でございますので、むしろ菅さんにみんなで一任するんだというぐらいの気迫を持って、今度も消費税のところだけではなくて全般にも是非いろんな指導、御発言をしていただけたらということをお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、四月七日の会見で総裁がいろいろとおっしゃっておられますので、まず、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及をしていくと。確かに一般論としては、これはそうではないというほどの強い反論を持つものではないんですが、これを見たときに、私まさに政策決定会合にお邪魔していたころのこと、二〇〇〇年の頭から夏にかけてでございますが、いったんゼロ金利を解除をあの年の夏にいたしまして、もう一度その次の年に戻ってきたというあのときでございますが、当時言われておりましたのはダム理論というやつでございまして、ダムの中に水がたまれば、それはどんどんどんどんにじみ出ていって必ず波及するんだというようなことでダム理論と言っておったと思いますが、結局余り波及がなくて、結果としてゼロ金利にもう一度戻ってしまったというふうに我々は受け止めておりますが。  今回も企業部門輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門へ波及するというのは、このままさらっと聞くとどうもダム理論のように聞こえるんで、今回どういう波及経路で実際にこれが家計部門に波及をしていく、それはどれぐらいの速度でもって波及していくというふうに考えられておられるのかということをまずお聞きしたいと思います。
  101. 白川方明

    参考人白川方明君) 現在の先進国経済、これは日本も含めてそうですけれどもリーマンショックによって大きく落ち込みました。その後の回復のプロセスを考えてみますと、大きく分けて二つあったというふうに思います。  一つは、金融システムが大きく機能を低下させたという事態が徐々に後退した、つまりマイナスが消えるという形であります。こちらの方はもう既にこの局面はほぼ終わったわけでありますけれども、積極的に経済を引っ張り上げる要因は何なのかということでありますけれども、今回の場合は間違いなくこれは新興国景気の拡大、経済の拡大、これが先進国に及ぶという形、これがまず基本的なメカニズムだというふうに思います。  現実に、日本企業輸出を地域別に見ますと、先進国向けよりかはるかに新興国向けが高く、その中でも東アジア、なかんずく中国が高いというのは議員も御案内のとおりでございます。  そういう意味で、まずルートでございますけれども、第一のルートは新興国景気の拡大に伴って輸出が増えるというルートであります。二つ目は、これは新興国の市場の拡大をにらんで先進国が、日本も含めてですけれども、そのための設備投資を行うということであります。  私ども随分ミクロのヒアリングも行っておりますけれども、例えば電機関連で設備投資いったん見合わせたけれども、これをまた再開するというふうな動きが出ています。これもそういう設備投資のルートであります。あとは、これは収益の改善を通じて出てくるということでございます。  長くなって恐縮ですが、一点だけ申し上げたいことは、ただ、そういうふうなルートがございますけれども、これは新興国との競争が一方では激しいということで、なかなか賃金あるいは雇用に跳ねにくいという状況がございます。これは、日本だけではなくて、アメリカも今ジョブレスリカバリーとか、あるいは今回はジョブロスリカバリーという言葉が言われておりますけれども、なかなか及びにくいということであります。  ただ、このケースも、これいわゆるダム論と違って、ダムというのは、これは企業収益というダムが上がっていくということでございますけれども、今私が申し上げていることは、新興国経済が拡大していくと、それはやがて先進国の方にも波及をしてくるということであります。ただ、この波及のスピードは、今申し上げた国際的な競争が激しいわけですから、なかなか思ったほど急激に進まないということがございますけれども、ルートとしては今申し上げたようなことになります。
  102. 林芳正

    ○林芳正君 私が申し上げたのは、輸出とか海外新興国企業にどう波及するかのルートじゃなくて、最後に総裁がちょっと触れられた企業数字、いいものが家計部門に波及するルートはどういうものがありますかということをお聞きしているんです。ダム理論のときもそうだったんです。  今最後にちょっとおっしゃった賃金、雇用と、あとはせいぜい配当かなと、こういうふうに思いますが、そういう企業部門から家計部門への波及がどういうルートでどれぐらいのスピードで起きるとお考えかと、もう一度お聞きします。
  103. 白川方明

    参考人白川方明君) 失礼いたしました。企業部門から家計部門にどういうふうに波及していくのかということでありますけれども、これは今、林議員が御指摘のとおりであります。  まず、改めて整理をいたしますと、リーマンの破綻直後は、これは家計が、いつこれは自分たちの職がなくなるか知れない、そういうふうな大きな不安がありました。消費を考えますと、特に耐久消費財がそうですけれども、自分の生活について基本的な不安があるときにはなかなか消費が増やせません。したがって、まず起きたことは、この大きな不安が少しずつ解消しているということであります。  その次に起きていることは、これは、賃金なりあるいは労働時間が少しずつこれは改善をしております。数か月前まではこれらの数字はいずれもずっと悪くなるということでございましたけれども、足下はこれが若干マイナス幅が小さくなったり、あるいはこれが若干プラス方向に転化するという動きが所定外労働、有効求人倍率等で今起きております。ただ、残念ながらこのスピードが非常に速いかというと、緩やかなスピードであることは、これはそのとおりであります。  ただ、二〇〇三年、四年、五年というあの景気回復の過程を振り返ってみますと、当初はなかなか波及しないというふうに言われておりました。しかし、後から振り返ってみて、今日、今、我々が現に直面している雇用者所得の数字と比べますと、やはり二〇〇三、四、五年は、結果としてはかなり数字が上がってきたということであります。  そういう意味で、時間は掛かるわけですけれども、そうした波及のルート、これが先生の御指摘のとおり存在するということで、私どももそれを意識しております。
  104. 林芳正

    ○林芳正君 ルートは、じゃおっしゃったように、賃金、雇用、若干配当というのがあるのかもしれませんが、少し時期はまだ具体的ではありませんけれども、ちょっと底打ちの数字が出ていると、こういうことでございましたので、家計部門に波及するというのは、そういうような感触でおっしゃっておられるということが分かりました。そうしますと、まだ、今すぐにこのショックを受けたものがすぐに回復をするということでも必ずしもないと。  もう一つ私がちょっと心配しておりますのは、この四月以降に入りまして内定率が非常に低かったものですから、そのままそれが雇用の状況に表れてくるということでございまして、四月、五月ぐらいの雇用の数字が今から出てきたときにちょっとがくんと来るんではないかなというふうに思いますが。  先ほどのところと併せて、その辺の見通しはどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。
  105. 白川方明

    参考人白川方明君) 労働関係の統計を見てみますと、議員指摘のとおり、実は四月、五月という段階で、若干過去もそういうあやがあるということは私どもも意識しております。  私どもがいろんな統計を見ておりますし、あるいは作成しておりますけれども、その一つに短観の雇用情勢判断、つまりどの程度企業から見て雇用情勢について厳しいか緩いかということを判断したものがありますけれども、これも一律なパターンはございませんけれども、毎年春先、若干新卒者の関係で一時的に緩和するという局面がございます。今年それがどういうふうになるのかということは、私ども注意して見ております。  そういう意味で、雇用の数字はこれ振れが大きいもので、私、若干明るい動きがあるということは申し上げましたけれども、これは振れの大きい統計ですから、基調的な判断をまだ変えているというわけではございません。そういう意味で、若干見えるその明るい動きを、これがどうなるのかを注意深く見ていきたいと、そういう構えでございます。
  106. 林芳正

    ○林芳正君 責任者のトップにおられる方というのは、なるべくいい方の数字を強調すべきだということを私どこかで教わったことがありますので、今の総裁の御発言はそういう部分もあるのかなと思って聞きましたが、四月、五月は注意して見ていただきたいと思いますし、それから、先ほどちょっと最初質問設備投資や収益のお話もしていただきましたが、販売価格の判断がやや大きな下落基調にある中で、限定的に引上げもあるというようなこともおっしゃっておられます。  具体的に、総裁御覧になっていて、引上げが限定的にしろ起こっている分野というのはどういう分野を御覧になっているか。それから、これは需給ギャップともう一つ、先ほどお話があったように予想物価上昇率というのが、二つが大事だということでありますが、こちらの方がデフレ宣言もあって非常に低いままで推移をしているということでございますので、これもリーダーとして少し明るい話をということかもしれませんが、いずれは需給ギャップが回復する、少なくなっていくにつれて上昇率も改善をしていくんだということでありますけれども、現状非常に根強い下落予想というのがあるんではないかと思いますが、この辺についてはどう御覧になっているでしょうか。
  107. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) まず最初に、短観におけます販売価格DIの動きについて確認させていただきたいと思います。  全産業・全規模ベースで見ますと、このところマイナス二十台後半の大幅な下落が続いているということであります。他方で、しかし販売価格は、国際商品市況に連動しやすい産業につきましては、市況の上昇を映しまして上昇超に転じる動きとか、あるいは下落超幅が大幅に縮小する動きが見られているということであります。  具体的に言いますと、石油・石炭関連の業種では、原油価格の上昇を映じて昨年秋から上昇超を続けております。それから、電気・ガス関連でも三月短観ではプラス一八ということでありまして、大幅な上昇超に転じております。更に言いますと、非鉄金属につきましても三月短観ではプラス一と、小幅ではありますが上昇超となっております。  このように、国際商品市況の上昇を背景にしまして、市況連動型の産業を中心に販売価格引上げの動きは見られるということでありますが、御承知のとおり、マクロ的な需給バランス緩和的な現状にあります。したがって、財・サービス価格全般への波及も限定的だと、私どももそのように理解しております。  それから、もう一点御質問の、販売価格DIとの関係でもって予想インフレ率をどういうふうに見ているかということでありますが、まず、販売価格DIについては今申し上げたことと重なりますが、一四半期先の見通しマイナス二八と大幅な下落超を続ける見通しとなっております。しかし、これはもう釈迦に説法でありますが、企業家計予想物価上昇率を評価するという場合には、より長い目で見ての予想物価上昇率動向をしっかり見ていく必要があるというふうに思っております。  その際、予想物価上昇率を何で測るかということでありますが、様々な指標が一応存在しているということであります。例えば、私どもが実施しております生活意識アンケート調査、これによりますと、家計予想物価上昇率の中央値、これを見てみますと、今後一年間の予想物価上昇率につきましては、このところほぼゼロ%で推移しております。一方、今後五年間の予想物価上昇率ということになりますと、二%ということで安定的な推移をたどっております。生活意識に関するアンケート調査から得られた情報としてはそういったところであります。  もう一点、予想物価上昇率にかかわる情報源といいますか、指標といいますのは長期金利動向であります。これを見てみますと、御承知のとおり、総じて安定的に推移しております。ここから推測されることは、市場参加者の予想する中長期で見た物価上昇率が総じて安定していると、このように見えるということであります。  以上申し上げましたように、企業ですとかあるいは家計ですとか、さらには市場参加者一般ということになりますが、そうした人々の中長期的に見た予想物価上昇率についてはプラスの領域で比較的安定的に推移していると、このように受け止めているということでございます。
  108. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  今の数字は、過去二、三年間ぐらいどういう推移であったかというのは後で勉強させていただきたいと思いますが、思いのほか、今後五年間プラスの二%ということでありますと、非常に安定的に、物価がどんどん下がり続けるという意識は余りないということがその調査からは見えるようでございますが、気になるのは先ほどの販売価格判断の方で、石油、石炭、電力、ガス、非鉄ということになりますと、これコアコアにすると大体全部外れちゃうわけですね。ですから、市況に関連するやつということであれば、国内のいろんな政策とかとは関係なく、市況が逆に行ったときにはまた逆のことが起こると。それゆえに、デフレ云々するときにはコアコアを使うということだと思うんですが。そうしますと、もう少しコアコアに入ってくるようなもののところがやっぱり底上げしてこないとなかなか安心できないなということではないかというふうに思いました。  それから、設備投資の話も、さっき総裁からありましたように、新興国、どれだけ競争の中で入っていくかということであると思いますが、逆に言いますと、この直近、足下で、二月の前月比の機械受注がマイナス五・四ということでございますので、やはり六か月から一年弱先の設備投資の先行指標だと言われておりますので、なかなか厳しいなということと、よく企業の方と話していますと、やはり国内で今設備投資をするという、なかなかそういう環境にないなということをよく聞くわけでございます。  そういう中で、この設備投資数字というのは国内の設備投資数字ということであろうと、こういうふうに思いますので、新興国に向けて国内で設備投資をしてというよりは、もうマーケットに近いところで設備投資を重点化していこうというのが国際化した企業の趨勢ではないかと受け止めておりますし、そういうことになりますと、そこに今までいろんな形で納入等をしていた企業も、付いていくか、若しくはもう海外のそういう納入の企業に切り替わってしまうと、こういうことが懸念をされるわけでございますけれども、この辺は総裁はどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  109. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  私どもの毎月の政策決定会合では、頭の中を分解してみますと、一方では、企業海外における設備投資についても、しっかりその動きについて検討しております。分析もしております。ただ、設備投資動向ということになると、先生御指摘のとおり、国内の設備投資について一定の判断を下しているというのが実情であります。それをまずお答えした上で、先行き設備投資については回復していく可能性が高いというように思っております。  その背景でありますが、先生が御指摘の機械受注についてでありますけれども、これは設備投資の先行指標であります。月々の振れが非常に高いというのはもう御承知のとおりでありまして、これを四半期単位でならしてみますと、製造業につきましては昨年の十—十二月期にプラスに転じておりますが、その後も増加を続けているという状況であります。こうした振れをならした評価としては、機械受注についてもいい方向動きが出ているということが一点であります。  それからもう一点は、先刻来、先ほど来議論になっているところでありますが、輸出や生産が増加している製造業企業収益が回復してきていると。これは設備投資を支える大きな力になるだろうというのがもう一点であります。  それから、先般公表しました私どもの短観でも、この時期の設備投資計画としては、実は過去の平均的な水準になっております。このまま景気が今後持ち直していくと、そうした過去の教えによれば、上方修正されて、最終的な着地としては前年比プラスということになる可能性があるということであります。  ただ、一方で、先生が頭の中に置いておられるとおり、海外での投資は増やすけれども、一方で国内での投資は抑制するといった企業の声があることも私ども認識しておりますし、収益環境自体については企業のばらつきが非常に大きいということも理解しておるつもりであります。  そうしたことでありますので、今後の設備投資動向については、予断を持つことなく、ミクロとマクロの情報をしっかりと集めながらきちっと見ていきたいと、かように思っております。
  110. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございます。  統計上、海外設備投資というのは入らないけれども日銀としてはそこはよく見ていらっしゃるということを聞いて少し安心をいたしましたが、まさにグローバル化しているところでございますので、国内でしか設備投資をしちゃいかぬぞというようなことを言ったってしようがないわけでございますけれども。  これは菅大臣の方にお願いでございますが、なるべく、同じやるんなら国内で設備投資をしようというふうになるような環境づくり。なかなか、民主党がおっしゃっておられるマニフェストを全部やりますとその逆になっちゃうものですから、そこは難しいと思いますけれども成長戦略を今度お作りになるときはそこも少し加味してお作りになった方がよろしいんではないかなということだけ申し上げておきたいと思います。  それで、そういう状況でございますので、最悪の時期はリーマンショック以降脱したけれども、そういう意味では総裁おっしゃったように二番底の懸念というのは薄れてきたということかもしれませんが、オペ室から出てきて少しリハビリをじっくりやるという時期でありますので余り、もう一回手術をするということではないかもしれませんけれども、ここでやはりもう一押しという声というのは市場にもあるわけでございます。  新型オペを十から二十へ増やしていただきましたが、過去、先ほど二〇〇〇年の話をいたしましたけれども、その後、私は、世界中央銀行の中で最も先進的な政策をずっと何年かやっていただいて、そのことのノウハウの蓄積というのも持っておられると。全部が良かったかどうかというのは中でも検討されておられると思いますけれども、しかし実際にあそこまでやってみたという国はそんなにないんではないかと、こう思いますので。ある意味では、もっと下方リスクが出て、悪くなればああいうことをやったという、まあ変な意味での安心感みたいなのはあるかもしれませんけれども。  今後、そういうあと一押しということと、下方リスクが顕在化したときにどういうことがあり得るのかということで、私なりにちょっと考えてみますと、よく市場で言われていますのは国債の買い増し。これは日銀券ルールとの関係もあるかもしれませんが、そういうことがございますし、これは量的なものもありますが、残存期間を少し長いものを買っていただくということも、そっちの方向で行くというのもあると思いますし、それから、実質ゼロから名目もゼロ金利ということで、まさに量的緩和世界、時間軸を入れるかどうかということがあるかと思います。  そこまでは現行法制内でやれることですし、実際やっていただいたことでございますが、更に言いますと、この日銀法改正まで視野に入れますと、例えばインフレターゲット論というのが前からございます。先ほど統計の話が少しありましたが、消費者物価指数というのもバイアスがあるということと、それからデフレインフレ、どちらがより重い病気かと考えますと、まあインフレの方が若干デフレよりもいいのかなということであれば、この間、菅大臣総裁お会いになった後で、ゼロから二%ぐらいの間ということは大体合意ができているんだというお話もされておられましたが。  ゼロというのが消費者物価指数でゼロですと、実際にはマイナスというところにちょっとはみ出してしまうのではないかということがございますので、例えば二プラスマイナス一というような目標で頑張っていただくというようなこともあり得るのかなということを議論されておられるわけでございまして、その辺の今後の金融政策、どういうオプションがあり得るのかということについて総裁のお考えをお聞きしたいと思います。
  111. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行の使命は物価の安定、それから金融システムの安定、こうしたことを通じて経済の持続的な発展貢献するということだと思っています。そのために日本銀行が持っている手段というのは基本的には金利を操作すること、あるいは金融資産を買って量を市場に対して供給するということであります。そうした政策手段を使って、どのような政策がいいのかというのはそのときの日本経済の置かれた状態に即して最もいい政策手段を追求していきたいということでこれまでやってまいりました。  先ほど、先生から御指摘のとおり、日本銀行は過去十数年間を振り返ってみますと、世界中央銀行の中でこれは最も先進的、革新的な中央銀行であったというのもまさにそういう気持ちで仕事をやってきたからというふうに思います。  この先ということでありますけれども、私自身、将来こういう政策を必ずやるとか、あるいはこういう政策は絶対にやらないというふうにあらかじめ選択肢を排除するとか決めるというふうなアプローチは取るべきでないというふうに自戒しております。  繰り返し、ちょっと抽象的な答えになるかもしれませんけれども、その局面で何が一番ふさわしいのかということをこれは一生懸命考えていきたいというふうに思いますけれども、しかし基本はこれは金利政策であり、それから金融市場が不安定化するときには市場に対して潤沢に量を供給するということであります。  先生から具体的に物価数字と、それからインフレーションターゲティングについて言及がありましたので、その点についてもちょっとお答えいたしたいと思います。  私ども、中長期的な物価安定の理解という形で、これは二%以下のプラスですと中心は一ですというふうにこれは申し上げておりまして、そういう姿を我々は中長期的な物価安定として念頭に置いています。消費者物価指数にはバイアスがあるので、あるいはインフレデフレの危険の非対称性を考えてもう少し厚めの、高めの数字がいいんではないかという議論でありますけれども、まずバイアスでございます。これは、消費者物価指数を作られています総務省さんが近年いろんな努力をされてきて、その結果、バイアスはかつてに比べると小さくなってきているというのが一般的な研究者の間での理解かなというふうに思っています。  それから、のりしろですけれども、確かにデフレの危険性を考えた場合に少しのりしろを持った方がいいということはそれはそのとおりでありまして、私どももそうした考えも入れて先ほどの数字を作っております。  これを更に上げてはどうかということでございますけれども、実は今回、世界的な金融危機が起きてみて、各国とも今物価上昇率が下がってきたわけですけれども、もし仮にもう一%目標物価上昇値が高ければ、確かにその分、一%金利低下幅は出てきますけれども、しかしもう一%、例えばアメリカ金利を下げられればアメリカ状況は変わったかというと、多分そういう状況ではなかったなと思います。多分物価のその差をはるかに上回るこの金融的なショックが大きかった、つまり事前のバブルが余りにも大きかったということであります。  そう考えますと、結局物価情勢を点検して、持続的な経済成長を実現するという、そちらの方に話が来まして、必ずしももう一%ということではないのかなという感じはします。ただ、いずれにしても、この点についても将来とも私どもの考え方がいいのかどうか、これは毎回毎回、毎年四月に、春に点検をしておりますけれども、こうした点検をしていきたいというふうに思っております。  インフレーションターゲティングについても同様でございまして、私ども、既に物価安定の姿について公表しております。今の日本銀行金融政策はいわゆる二つの柱という形で、標準的な経済の姿と、それからそれに伴う様々なリスクを勘案、点検してやっていくという枠組みでございまして、これは多少手前みそになりますけれどもインフレーションターゲティングの良いところは取り込んだ上で、その上でインフレーションターゲティングの欠点と言われる部分にも対応したより進化した枠組みかなというふうに思っております。いずれにせよ、どういう枠組みがいいかは、今後ともしっかり考えていきたいと思っています。
  112. 林芳正

    ○林芳正君 終わります。
  113. 白浜一良

    白浜一良君 公明党の白浜一良でございます。  日本経済の現状に関しましては、既にいろいろな方から今日は議論をされているわけでございますが、三月の日銀短観によりますと、中国など新興国への輸出や内外の政策効果に支えられ、大企業製造業を中心に景況感が改善と。その一方で、設備や雇用の過剰感は、前回の短観より改善したものの依然として高いと、こういうふうにおっしゃっている。また、四月七日の金融政策決定会合後の記者会見では、景気持ち直しを続けているとしたものの、雇用・所得環境は依然厳しく、国内民間需要自律的回復力はなお弱いと、警戒感を示していると、こういうことになっているわけですね。  いろいろ政府デフレ宣言される以上は、デフレとは何かと今日も議論されておりました、まあデフレ定義もこれは大事でございますが。しかし、いわゆるこの経済の実態から申し上げますと、小売という面からいいましたら、非常に余りに下世話な話かも分かりませんが、牛丼が二百五十円になったとか、それからスーパーで豆腐が幾ら、卵が幾ら、安くしないと売れないと、安く売るためには当然コストをカットせなあきませんね、当たり前の話でございますが。そうすると、労働コスト下げる、仕入れコスト下げる、こういうふうになるわけでございまして、それが結局、給料が下がる、仕入れも下げるということは、製造メーカーは本当にもうもうからないけれども作らざるを得ないという、デフレスパイラルとは申し上げません、しかしこういう実態というのが小売の中に実態としてあるわけでございます。そうですね。これは経済の縮小であることには違いないですよね。  こういう、これはまあ小売の日本の今、現状の一つの姿、すべてとは申し上げません、そういう実態があるということを申し上げたわけでございますが、そういう現状を日銀総裁としてどのように受け止めていらっしゃるのか、日本経済一つの実態でございますが、まずお聞きしたいと思います。
  114. 白川方明

    参考人白川方明君) 私、中央銀行総裁として金融政策に責任を有するという立場で、物価状況、今のデフレ状況、それから経済の実態についても、マクロ、ミクロ両面で常に点検をしております。マクロ的には、これは様々なデータでありますし、それからミクロ的にも大小様々な企業、地域の状況を把握するように努めております。個人的にも、これは週末などに買物をするとか、あるいは近くの店でよく食事をするんですけれども、そういうときに物価がどういうふうに下がっているのかということも肌身で感じております。  それで、現在のこの経済状況について、私は、短期的、循環的な問題と、それから構造的、趨勢的な問題に分けて、それぞれについてきっちり対応していく必要があると思っています。  短期的な意味では、先ほど議員からも御紹介ありましたけれども景気は少しその変化の兆しはございますけれども、しかし日本経済が直面している最も大きな問題は、やはり需給バランスがまだまだ崩れている、そういう中で経済が本格的に成長していない、したがって将来に対してなかなかみんなが所得が増加するという期待が生まれてこない、そのためにどうしても需要が下がる、物価が下がるということであります。こうした状況はできるだけ早く是正したいというふうに思っておりまして、日本銀行の持っている様々な手段を使ってそうした状況から早く脱却したいというふうに思っております。そうした基本認識を持っております。
  115. 白浜一良

    白浜一良君 そういう意味で、この三月ですか、去年の十二月に新型オペをされたと、十兆円の枠でされたということで、三月のこの金融政策決定会合でそれを二十兆円枠にされたということで、そういうこともそういう危機感一つの判断の上での施策なんだと、こういうふうに理解していいんでしょうか。
  116. 白川方明

    参考人白川方明君) 三月にとりました措置も、これは日本経済の置かれた状況をできるだけ早くこれを改善をしたいという気持ちから行ったものであります。  少し細かい話になりますけれども、この新型オペというのは、期間三か月、金利は〇・一%という、これは固定金利で、一定の金利でもって資金を供給しようというものであります。既に金利が相当低い水準にありますから、この政策だけで景気が目覚ましく変わるというものではございませんけれども、しかし我々の資金供給を通じて短期金利低下が促進されるし、それは貸出金利にも影響してくるわけであります。  それから、さらに、日本銀行金融緩和をしている、日本銀行が真剣に取り組んでいるということは多くの方の御理解を得ていると思いますけれども、さらに、そうした点についての理解が広がることによって企業マインドが改善していくという効果も期待できます。現実に、私どもはそれ自体を目的として行っているわけではございませんけれども、私ども政策姿勢が理解されることによってそれなりに株価あるいは為替市場にも相応の影響が出ているなという感じがいたします。  そういう意味で、目覚ましい手段ではございませんけれども、我々自身の政策的な構え、判断がそこに出ているということでございます。
  117. 白浜一良

    白浜一良君 この三月の措置だけじゃございませんが、いわゆるリーマン・ブラザーズが破産した以降の様々ないわゆる施策日銀として打ってこられたわけでございまして、そういう効果があったという前提かも分かりませんが、今日の日経新聞見ますと、いわゆる消費者物価動向を、今日、日経新聞の記事に朝刊で出ておりました。  当初の、これ一月の予測ですか、によりますと、一一年度、来年度はマイナス〇・二%だというふうに予測されていたけれども、これを〇%近辺にいわゆる上方修正されるんじゃないかと、こういう報道が今日のこの日経新聞に出ていたわけでございますが、その辺が一連の上向いているというふうな認識をされているということでしょうか。
  118. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行は、金融政策決定会合という会合を開きまして、定期的に経済金融情勢、データを点検し、それから先行きの判断を行っております。前回の会合は先週ございましたけれども、次回、四月末の決定会合で、私ども展望レポートという名前で呼んでいるレポートを公表をいたします。現在、この展望レポートに向けて日本銀行の中で様々な作業をやっているという段階でございまして、四月の末に向けて様々な作業、現にやっている段階でございますので、最終的に今八名いる政策委員会メンバーがどういうふうな判断をするのかというのは、現在、私自身、まだもちろん分かる立場にはありません。  ただ、これは経済、生き物ですから、この後まだ数週間ございます、その間のデータをしっかり点検して、その上で私どもとしてのしっかりとした見通しを出していきたいというふうに思いますけれども、どういう数字になるかについては、これは現時点ではまだ今作業中であるということで、御勘弁いただければと思います。
  119. 白浜一良

    白浜一良君 まあそうなんでしょうね。四月の末に決められるわけですから、まだ日数もございますし、委員の皆さん個々の判断もございますから、今、総裁とて全体のことを述べるお立場にはないということ、それはよく分かりますが、こういう報道されるというのは何か根拠があるんでしょう。ですから、少しは消費者物価という面で見ると明るい兆しはあると、具体的なことは言えないけれどもと、こういうふうに認識されているということなんでしょうかね。
  120. 白川方明

    参考人白川方明君) 四月末の展望レポートということを離れまして、もう少し一般的な物価情勢ということで御質問でありましたので、そういう形でお答えしたいと思います。  まず、消費者物価の面で明るい方面での動きということで、幾つか申し上げます。  消費者物価で我々最も重視していますのは、生鮮食品を除くベースでありますけれども、これは昨年の八月がマイナス二・四%ということでマイナス幅が最も大きかったわけであります。その後マイナス幅が縮小してきて、今判明しています一番新しい二月の数字マイナス一・二%であります。もちろんこれにはいろんな要因はありますけれども、しかし、とにもかくにもマイナス幅が今縮まってきているという、これが実績、これが一つ要因でございます。  それから二つ目は、物価を左右する最も大きな要因である需給バランス需給ギャップという面で、これもマイナス幅が方向としては今縮まる方向に向かい始めているということであります。景気の方は昨年の春ごろから、一—三月はまだ落ちていましたけれども、春ごろから方向としては上がり始めていって、この成長のスピードが、潜在的な成長率といいますか、供給の伸びを上回るテンポで拡大し始めますと、需給ギャップが縮小する局面に入ってまいります。現在そういう局面に入ってきているわけであります。  ラグが、時間的なずれがありますけれども、大体過去の経験でいきますと、単純な統計的な分析でいきますと、一年程度のずれがあるというふうに言われています。そうすると、これまでの景気改善が時間を経て物価にも影響してくるだろうというのは、これはプラス方向動きであります。  それから、先ほど賃金の話申し上げました。特にこれ、賃金は、サービスについては労働集約的な活動でございますので賃金の影響を受けるわけでありますけれども、賃金が下がるという局面が終わって、わずかでありますけれども変化があるということでもございます。  そうしたことと、あとはこれは国際的な商品市況がどうなるかということであります。消費者物価指数というものを考えてみた場合に、様々な市況商品の影響も出てまいります。これがどういうふうになっていくのかということは、これは世界経済がどうなっていくのかということとかなり相関関係があるわけであります。  そういうふうに考えますと、材料的にはこの後マイナス材料が増えていくというよりか、プラスの材料の方が、程度はともかくとして今出ているなということであります。ただ、それがどの程度なのかはこれから入念な点検作業を行っていきたいと思っています。
  121. 白浜一良

    白浜一良君 非常に大事なトレンドでございますので、しっかり注視をして対応していただきたいと、このように思うわけでございます。  それで、総裁総裁に就任されて二年と、こういうことでございますが、その間に世界的な金融危機もあったということで、大変な時期を総裁という重責を全うしていただいているわけでございますけれども、二年たつということで、マスコミでこの二年間を振り返ったいろいろ評価といいますか、見解がいろいろ言われています。  まあ金融政策というのは、これが絶対的な基軸だというのもないので、その時々、どう世相を読み、この金融市場を判断し、施策を決定するかということは大変リスクがあることでもあるわけでございますが、これは世の常でございまして、いろんな評論家の言葉を借りますと、異例の対応で高く評価するという、こういうふうにおっしゃっている方もいますし、一方で、いわゆるデフレというものに対する危機感は乏しかったと、こういうふうに評価されている方、これは極端な方いらっしゃるのは当たり前なんですが、そういういろいろ二年間を振り返ってこういう評価が出ているということに対して、総裁としてどのような所感をお持ちになりますか。
  122. 白川方明

    参考人白川方明君) 過去二年間を振り返る形で多くの方から様々な評価をいただいているということは承知しております。仮に肯定的な評価があったとすれば、それについては慢心せず、また否定的な評価に関しては、受け止めるべき点がもしあればそれは真摯に受け止めたいというふうに思っております。その上で、私としては、日銀法に定められた使命をしっかり果たしていく、職責をしっかり果たしていくという気持ちだけでこれからも仕事をしていきたいというふうに思っております。
  123. 白浜一良

    白浜一良君 そうですよね。  それで、一つだけ、こういうお話があるわけでございます。菅大臣が、いわゆる財務金融委員会、これは具体的に言いますと三月一日ですか、衆議院の財務金融委員会で、日銀デフレ脱却についてしっかり、より努力をお願いしたいと、こういう答弁を菅大臣がされているわけでございます。これが三月一日の委員会。そういう政府の意向を勘案してかどうか分かりませんけれども、三月のいわゆる新型オペの追加的な措置を日銀が発表されたと。日銀としては、政府から影響を受け過ぎているんじゃないかという御批判が一つあるんですよ。まあそれは当たっているかどうかは別でございますが、そういう意見に対しまして、日銀総裁としてどういうお考えをお持ちですか。
  124. 白川方明

    参考人白川方明君) 政府デフレ脱却日本経済にとって極めて重要な課題であり、そのために政府日本銀行がそれぞれ最大限の取組を図ることが大事であるというふうに認識されていると、私自身は理解しております。御指摘のあった金融政策への政府の方々の言及も、そうした認識を示されたものであるというふうに受け止めております。  私自身、日本銀行としてという御質問でありますけれども通貨のコントロール、すなわち金融政策が有効に機能するためには、これは中央銀行に対する市場や国民からの信任、信頼を確保することがこれは不可欠であります。この点、先進各国においては、中央銀行が責任を持って職務を果たすと同時に、中央銀行をめぐる法制度の趣旨や、その下での中央銀行の判断が十分尊重される慣行が確立してきているというふうに思います。中央銀行がしっかり仕事をすること、それから中央銀行に対して国民が信任を持っている、それから中央銀行が信頼されているというふうなことは、これはその国にとっての資産であります。そうしたものが崩れますと、これは通貨という国の最も大事な機能が損なわれることになります。日本銀行としては、今後とも様々な御意見に耳を傾けながら、適切な金融政策を行い、信任をしっかり確保していきたいというふうに思っております。
  125. 白浜一良

    白浜一良君 まあ当然そういう御答弁ですよね、やっぱり。適切な独自の御判断をされたということなんでしょう。  三月の金融政策決定会合の議事録が発表、公表されて、それ読みますと、委員の皆さんでお二人がこれを拡大することに反対されたと、こういうふうに報道されているわけでございますが、これはまあ分かりません。その方が独自の判断で反対されたんでしょうけれども、ちょっとそういう、政府影響され過ぎるんじゃないかということを御懸念されたのかなというふうに私は邪推しているわけでございますが、その会議政策決定会合でいろんな御議論をされたんでしょうけれども、お二人の方が反対されたという、そういう現状の御意見の受け止め方はどうなんでしょう。
  126. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行では、金融政策の決定の際の議事の模様を、これは約一か月後に議事要旨という形で公表をしております。今議員が御指摘のことも、その議事要旨の公表を受けての報道でございます。二人の委員がどういう理由で反対をしたのかという、その理由もはっきりと書かれております。  これは、反対された委員がどういう理由で反対したかについて、私がその方に代わって詳しく説明するというのは適切ではないと思います。ただ、議事要旨に書かれていますとおり、物価安定の下での持続的な経済成長という、その日本銀行に定められた使命を達成していくということにおいて、これはもうもちろんみんな同じでございます。その上での政策の決定についての差でございますけれども、三月の決定において悩ましかったことの一つは、市場で様々な報道がなされているということであります。市場で様々な報道がなされていて、それが相場形成に織り込まれているというところからスタートした場合に、それと違う判断をした場合には、今度は、決定をした場合には、市場に対して悪影響を与えるかもしれないという懸念がございます。しかし、一方で市場で織り込まれていたことどおりに行っていきますと、これは中央銀行として、本来中央銀行に求められている中長期的な判断からの政策決定という面でこれは問題が出るおそれもあります。  過去の内外の経済を振り返ってみますと、バブルのときが典型ですけれども、著しい強気が市場に織り込まれていたわけであります。結果としては、それをすべて容認するような政策運営を行うことは、これは更にバブルを助長するわけであります。今回は別にバブルということでは必ずしもないかもしれませんけれども、そういう意味で、市場での、既に、事前に報道がなされているということをどう受け止めるのかということは、これは一つの論点ではありました。  ただ、いずれにしても、中央銀行として大事なことは、物価安定の下での国民経済の健全な発展ということに照らして、毎回毎回何が最善の選択、決定であるのかということを真摯に考えていきたいということでありまして、その点では全委員、同じ思いでございます。
  127. 白浜一良

    白浜一良君 分かりました。  そういう意味では、三月十七日の決定会合の後の記者会見で総裁は、今後とも極めて緩和的な金融環境を維持していくと、そのようにお述べになって、政策効果が出るまで粘り強く対応するというそういう姿勢を示されたということなんですが、それは、もし必要ならば適切な措置を今後もとりますよということなんですかね。
  128. 白川方明

    参考人白川方明君) 次回の金融政策決定会合もそうですけれども、毎回の決定会合では、常に前回の決定会合以降新たにどういうデータが出てきたのか、それは先々の経済見通しに対してどういう意味合いを持っているのかということを点検するわけであります。  その際、私どもが大事にしていますことは、この足下の経済物価情勢、金融情勢ということではなくて、この先経済がどういう経路を歩んでいくのかということを点検しております。と申しますのも、金融政策効果が発揮されるのは、これは一年半あるいは長ければ二年というかなり長い時間が掛かります。したがって、先々を見通した上でということであります。我々は、常にそうした経済見通しに照らして最適な政策をこれはいつも考えていくということであります。そういう一般的な姿勢を申し述べたということでございます。
  129. 白浜一良

    白浜一良君 こういうことを、当たり前のことを何で聞いたかといいますと、最近もいろんなことを論評されている経済人がいまして、この新型オペも、先ほどお話ございましたように三か月ということでございますけれども、これを六か月にするんじゃないかと、六か月に、というようなそういう論評をされている方もいるわけです。それはまあ論評ですから事実でないかも分かりませんが、そういういろんな面で今後も追加的なことをされるんじゃないかという、そういう予測的な論評もございますので、それで伺ったわけでございますが、そういう論評をされていることまで含めて必要ならばやると、こういうことなんでしょうか。
  130. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほど申し上げたこととの繰り返しになって申し訳ございませんけれども、私どもに課せられた使命は、物価安定の下での経済の健全な発展でございます。それを点検しながら、そのことを常に念頭に置いた上で政策を考えていくわけでありますから、あらかじめこの手段だけは排除をするとか、この手段だけは必ずやるというふうな固定的な発想は取っておりません。少し抽象的な答えになって申し訳ございませんけれども、これは、今先生がおっしゃったことに限らず、どの手段についても日本銀行目的に照らして何が一番いいのかということを常に考えていきたいということであります。
  131. 白浜一良

    白浜一良君 当然、うかつなことは言えませんからね。それはおっしゃるとおりで、そういう原則的なことをおっしゃるお立場なんでしょう。  そういう面でいいますと、それはもうそれで結構でございます。この委員会議論したときに閣僚の一人の亀井金融担当大臣は、もう国債を直接日銀に引き受けてもらえばいいんだというような極端な御意見も述べられたわけでございます。これの論評は聞きません。お考えは聞きませんが、そういう方もいらっしゃるということだけ申し上げておきたいと思います。  先ほども出ておりましたが、郵貯に対する御懸念お話しになったと。先ほど聞いていますと、要するに、金融システムの維持、政府金融の関係の在り方ということを原則論をおっしゃって、もう一つはツービッグ・ツーフェールの話をされたということでございますが。これは、しかし、三分の一以上政府が株を保有して、そういう銀行が預金の限度額を引き上げる、一方で民間銀行として考えたら預金保険機構のそういう制度の中にある。これはちょっと普通は理解しづらいですよね、これ。大きいからつぶせないという意味だけじゃなしに、国が関与しているわけでございます。そういう一つの考え方に対して総裁はどう思われます。
  132. 白川方明

    参考人白川方明君) 郵便貯金の預入限度とそれから預金保険制度との関係という、これは大変重要な論点でありますけれども、預金保険制度というのは、これは釈迦に説法でございますけれども金融機関に預金を預けている預金者に対して一定限度までこれは元本、あるいは場合によっては利息も保護するという制度でございますから、こういう預金保険制度は、これはプラスの面と、それからこれが行き過ぎるとマイナスの面も出てまいります。  プラスの面は、金融システムの安定を維持する上でこれは一定の効果があるということであります。しかし、これが拡大され過ぎますと、今度は本来預金者が払うべき注意がおろそかになるということを通じて、最終的に金融システムの安定にむしろマイナス効果を及ぼすこともあり得るというわけであります。それだけにこの預金保険制度は、これはセーフティーネットを構成する重要な一要素であるというように思っています。  預金保険制度をどういうふうに運営するか、それで郵便貯金の限度額をどうするのかという話は、実は郵便貯金の限度額の中でこの預金保険制度を議論するということではなくて、そもそも一国のセーフティーネットをどう我々は設計すべきなのかということをしっかり議論し、その中で郵便貯金の話も出てくるという、そういう関係にあるというふうに思っております。
  133. 白浜一良

    白浜一良君 原則はそうなんでしょうね。そうなんですが、政府の関係している、そういうゆうちょ銀行が非常にバランスが悪いなと率直に思うわけでございまして、その辺が整理されておらぬなというふうに私は思うわけでございまして、それだけにとどめたいと思います。  これも先ほど議論が出ておりましたけれども、いわゆる経済財政諮問会議というのが、今はやっていらっしゃらないわけでございますが、前の政権までは政府の中にあったわけですね。定期的に日銀総裁も入られて、時局のいろいろ懇談をされていたと、意見交換をされていたと。これがなくなって、今回初めて九日の日に、総理と財務大臣総裁が会談されたということでございまして、これも先ほど出ておりました。  これ、総裁、どうなんでしょう、こういう経済財政諮問会議があったから普通に幅広な議論を意見交換をできる場がセットされていたから、非常に自然な形でそういう意見交換の場に参加されたわけでございますが、そういうものがないと、いざ会談するといっても何かあるんだろうかと、こういうふうになりがちですよね。これはどちらがどういう呼びかけてされるんでしょう、これ。財務大臣でもいいです、総裁でもいいですが、今後される場合は呼びかけてされるわけでしょう、どっちが呼びかけるんですか、これ。
  134. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) この委員会でもいろんな方から、先ほどの経済財政諮問会議等では比較的頻繁に総裁も出られた席があって意見交換がなされたと、そういうことを勧めるといいましょうか、声もありました。  実は十二月の二日に一度、総裁、副総裁おいでをいただいて、総理と私と官房長官でお話をした、そういう意味では二度目になります。今回、私が理解しているのは、場合によったらいろんな動きが私以外のところでもあったのかもしれませんが、一度そういう機会を設けたらどうだろうかということを私も思っておりましたので、総理の方がそういう意向を多分日銀に伝えられて、日銀の方でもそう思われていたので、それではということでできたと、こういうふうに理解しております。
  135. 白浜一良

    白浜一良君 総理からそういう呼びかけがあったということですね。今後も総理が呼びかけるというのが基本なんでしょうか、これ。
  136. 菅直人

    国務大臣(菅直人君) その席でも総理、総裁、私も加えての話の中で、定期的といってもかっきりと確実にというよりも、まあ三か月程度に一回程度こういう会を開こうじゃありませんかということで合意をいたしまして、私たちのいろんな国際会議があったり、場合によったら選挙があったりとかいろいろありますので、その少し前ぐらいに相談をして日程を決めたいと。一般的に言えば、やはり総理の方からというか、官邸の方から適宜御相談をするというのが適当ではないかと私は思っております。
  137. 白浜一良

    白浜一良君 総裁もそういう御認識でしょうか。
  138. 白川方明

    参考人白川方明君) 基本的に同じような認識に立っておりまして、私どもも、政府との間で経済金融情勢について意見交換を行う、そういう場を持ちたいという希望を持っておりました。そういう形で、そういう希望自体を去年の秋の段階でこれは総理にもお伝えしておりまして、去年の十二月、それから今回四月ということになったわけであります。おおよその時間的なめどというのがやっぱりあった方がいいわけですから、今、菅副総理がおっしゃったように、三か月程度に一回ということでできれば開ければというふうに思っております。
  139. 白浜一良

    白浜一良君 最後に、これは政府の責任でも日銀の責任でもございません。本日の委員会に臨むに当たりまして私は素朴に思ったことを申し上げたいと思うんですが、今日は一応テーマは、昨年の、これ分厚いのをいただいておりますが、六月と十二月に発表されたいわゆる日銀報告書なんですね。これに基づき質疑ということでございますが、まあ余りに間抜けしてますわね、これ。去年の六月と十二月なんで、私は率直にそう思います。  本当に今はもう国際的な動きが常に連動されているわけで、非常に動きが速いですよね、テンポが速いし。こういうものは出されたときに、その時々にすぐ国会で、法律上は日銀法の中に、国会に対して説明するよう努めなければならない、努力規定規定されているわけでございます。やらなければならないということじゃないわけでございますが、こういう委員会を開くならば、やっぱりもっと、その時々の国会状況というのもあります、紛糾しているとなかなかできないんで。  しかし、本来、こういうものは報告されたときに、財務大臣に報告される、同時にそれに基づいて国会でも迅速に議論をすると……(発言する者あり)いやいや、だれの責任と言っているわけじゃないよ。僕は素直な感想を述べているだけですから。民主党が悪いって言っていないでしょう、別に。そういうひがんだ受け止め方はよくないというふうに私は思うわけでございます。それは、当時私たちも与党だったかも分かりません。与党が悪い、やらなかったら。それは当たり前で、私はそのように思うんですが、最後に日銀総裁のお考えを、そういう報告されたときに国会でも審議した方がいいんじゃないかという、私の素朴な意見でございますが、それに対する御意見を伺って質問を終わりたいと思います。
  140. 白川方明

    参考人白川方明君) 国会委員会の場での審議、それ自体については、これは私の立場での意見を述べるということは不適切だというふうに思います。私どもとしましては、与えられた機会を使って日本銀行政策運営についてしっかり御説明させていただきたいというふうに思っております。
  141. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  白川総裁、久しぶりの国会でお疲れだと思いますので、山口総裁だけにお聞きしたいと思います。  あのリーマンショックから一年半ということでございますけれども、あのときは金融の大崩壊、世界同時不況ということでもう大変なことでございましたので、世界各国の首脳も政府機関も中央銀行もそれなりに反省をしたり、教訓を引き出したわけでございます。  ところが、日本の当時の自公政権は余りその反省がなく、日本は余り関係なかったみたいな、金融庁もそういうところがございましたけれども、それで、この間株価がちょっと戻ってきたと。もうのど元過ぎればといいますか、また行け行けどんどんみたいな今日も発言がありましたけれども日銀に対してもあれやれこれやれと。金を買えですか、金を買えとか土地を買えとか、もうしまいには原油を買えと言い出すんじゃないかと思うぐらい、もうむちゃくちゃな話ですよね。ああいう意見には耳を貸さないようにしてもらいたいというふうに思います。  やっぱりきちっと、のど元過ぎればじゃなくて、あのときの教訓をきちっと引き出さなきゃいけないと。大体、この間もお話ししたことあるんですけれども、あれやれこれやれと言う人に共通しているのは結構資産家の方が多いですね。自分の資産がかなり目減りした、何でもいいから増やしてくれ、戻してくれと、そんな人が中心に言っていることでございますので、世のため人のためなんて、もうちゃんちゃらおかしい話でございますので、その辺も正確に聞いてもらいたいなと思います。  私は、そういう疑問を持ったときに山口総裁の講演録を読んで大変興味深かったわけでございます。これ、「ユーロマネー」というのはイギリスの雑誌か何かですかね。これ、講演されたのは去年の九月ということですが、私が読んだのはもうちょっとその後なんですけれども、ユーロマネー日本資本市場コングレスにおける講演ということで、金融危機一年、若干の感想ということで、私は今日はちょっと時間がないので、全部私が紹介するわけにいきませんけれども、特にこの中で山口総裁が言われている、政策当局と市場参加者との間でこれまでの金融危機から得られた教訓を一つの常識として広く共有することができれば、このインセンティブの在り方が変わって市場参加者の行動の行き過ぎを小さくすることができるというふうなことも書かれておられます。  とにかく規制とか金融技術だけではなくて、もっと、何といいますか、人間が懲りもせず同じ失敗を繰り返すというか、どうしても欲に目がくらんでしまうというか、こういう部分について非常に示唆に富んだことを言われておりますので、大変私興味を持って読ませてもらいました。  山口総裁として、あのような金融危機を二度と繰り返さないためにどういうことが重要かという点を二分ぐらいでしゃべってもらえればというふうに思います。
  142. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お褒めの言葉をいただきまして、ありがとうございます。  多分、先生自身、金融危機を二度と起こさないということ自体が非常に難しいテーマだということは十分御理解された上での御質問かというふうに思っております。  実は、金融危機あるいは信用バブルの生成と崩壊というようなことをどう防いでいくのかということについては、二つ観点を持って今議論されていると思います。一つ金融機関に対する規制、監督の在り方、それから、それと重なる部分はありますが、マクロプルーデンス的視点の踏まえ方、こういったことを含めて、現在、各国政策当局それから国際機関などで鋭意検討が進められているということでございます。この点は御承知のとおりであります。  世界的に見てみますと、金融危機は姿や形を変えながらこれまでも繰り返し発生してきております。今回の金融危機ということに即して考えてみますと、実はその前段として非常に重要なことが起きておりました。グローバルに見てみますと、高い経済成長が続いたということであります。それから低い物価上昇も続いた、それから金融緩和が長く続いたと、この三点セットが存在したわけであります。  こうした中で様々な過剰ですとか行き過ぎの蓄積が行われたということでありますが、こうしたことを人々の行動様式といった切り口で見てみると何が言えるかということでありますが、やはり良好な経済金融環境が続く下では、各経済主体において過剰な自信、自信過剰と言ってもいいんであろうと思いますが、あるいは慢心といったことが生ずるおそれがあると。これが結果として経済全体の大幅なリスクテークにつながったということであったように思っております。  したがって、問題の一つは、こうした人々の行動をいかに制御していくかということになるんだろうと思っておりますが、先生御想像付くとおり、非常に答えを出すのは難しいところであります。  ただ、幾つかの点は今の時点においても頭に置いておく必要があるかというふうに思っております。三つあるんじゃないかと思っています。  一つは、良い経済金融環境が続くと、そのこと自体に将来に向けての落とし穴あるいは不均衡が潜んでいるということであります。これをひとつ頭にきちっと置いておく必要があるということであります。  二つ目は、良好な金融経済環境というのは永遠に続くことはないということであります。いずれかの時点で必ず終えんを迎えるということが二つ目であります。  それから三つ目は、良いそうした経済環境の下では危険な落とし穴が先々待ち構えていることについて警鐘を鳴らしても、警鐘を鳴らす勇気を持った人がいたとしても、それが無視されがちだというのが三つ目であります。  今申し上げたような三点を、政策当局者とかあるいは市場参加者を含めて多くの人々の間で常に忘れない常識として持っておくことが大事だというふうに思っておりますし、それができれば人々の行動のコントロールという点でもこれから先何がしか有益なものがあるのではないかというふうに思っております。  簡単ですが、以上であります。
  143. 大門実紀史

    大門実紀史君 いいお話をありがとうございました。  もう今日はいろんな議論ありましたので、個別のことはお聞きいたしません。  ちょっと抽象的な議論が今日は一日続きましたので、ちょっと生々しい話を質問したいというふうに思いますが。  この間私が取り上げてきた問題で、第一生命の不払隠し関連でございますが、亀井大臣、わざわざありがとうございます。最初に第一生命の不払隠しを取り上げて二週間がたちました。途中、決算委員会でも一度やらせていただきまして、今日が三回目ということになります。  今日は国会の運営にかかわる重大な問題として取り上げたいと思いますが、その前に、この間、第一生命の不払隠しのその後のことについて若干お聞きしておきたいと思います。  この前は別病院の事案について第一生命が個別の請求案内をしていないということを指摘しました。これだけで二万件以上、二十億から三十億の不払隠しになります。  前回の質問で、質問するときに朝日の報道があったものですから、第一生命が既にホームページで、朝日新聞の報道は事実無根だと、我が社は支払総合システムで全部案内していますと、公表していると。それを私、この委員会でそれはうそだと、そのシステムでは別病院について検索ができない、別病院検索は手作業、目視だと、だから第一生命のホームページにはうそが書いてあるという指摘をしたら、すぐ削除をいたしました、第一生命のですね。  これは、一般契約者には分からないだろうと思って、うそを堂々とホームページで載せていて、指摘されたらすぐ削除するということでございまして、いかに契約者をばかにした会社かというのが分かるかと思いますけれども。その削除したことそのものが指摘どおりだということ、つまり個別の請求案内はしていなかったことを自ら告白するようなことにもなるわけでございます。  この問題は、全体として、亀井大臣にも大塚副大臣にも厳正に対処するというふうにおっしゃっていただいて、具体的にいろいろやっていただいているのはもう承知しておりますので、全体としては信頼しております。  ただ、このホームページが削除されたということからすると、もし大臣、報告を受けておられたら教えてほしいんですけれども、この別病院について請求案内を私はしていないという指摘をしたわけですけれども、結局、請求案内していなかったのか、していたのかということは、どうでしょう、それぐらいは二週間あったら確認できたと思うんですが、大臣、報告受けておられますか。
  144. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 委員から具体的な御指摘をいただいておりますが、委員指摘のように、契約者との関係また社会との関係、誠実に業務をやるのは当たり前の話でありますが、いろいろ問題があるということを深刻に金融庁としても受け止めておりまして、現在鋭意もう全力を挙げて調査中でございます。私が怠けておるわけじゃございませんが、そういう具体的な問題についてまだ詳細に承知しておる状況ではございません。
  145. 大門実紀史

    大門実紀史君 更にございまして、私の知り合いで第一生命の保険に入っている者がおりまして、彼が第一生命に対して、朝日新聞やあるいは大門議員指摘したことは本当かということを直接第一生命に問い合わせたら、あれは事実無根ですということを答えております。全面否定しているわけですけれども、その一方で、金融庁から聞いたら、第一生命は、私が指摘した点について、部長を交代させて新たなチームをつくって過去にさかのぼって検証するという体制を新たにつくったそうでございます。  私、このこと自体ちょっと気を付けなきゃいけないなと思うのは、第一生命の今までのやり方でいきますと、よくこういうことやるんです。アリバイづくり的にチームをつくったりして、責任者を替えてトカゲのしっぽ切りみたいにやってですね。  実際には、この不払隠しを一貫して陣頭指揮を執ってきたのは、上場した今の社長の渡邉光一郎、当時の常務、専務でございますから、その体制を変えるとか、下だけ何か替えたからって、陣頭指揮を執っているのは彼なんですから、彼が責任を取らない限り何も変わらないわけでございまして、したがって、前の責任者の責任にするとか、改めて、知らなかった、検証するというのは、そういう言い訳は通らないということを指摘した上なんですけれども、いずれにしても、国会で私が指摘した別病院とか入院中の請求、あるいは病院で死亡したケース、この一連の請求案内をしない、言ってきたものだけ払うという案内漏れ、支払漏れですね、これをもう何か今後請求案内をするという方向に第一生命の中でなってきているようでございます。  国会指摘したり朝日新聞に取り上げられたりして、これから案内を出す、支払漏れを払っていくというのは、それそのものは結構なことなんですけれども、私は、それだけで済むのかと。つまり、意図的に不払を隠しておいて、その責任を隠ぺいしたまま、言われたら払いましょうといって案内を出すと、こういうことが許されていいのかなと、こんなみっともないことが、一部上場した第一生命でこんなことをやっていていいのかなというふうに思います。  それで、行政上の問題点としては何が問題かといいますと、二〇〇七年の二月に、つまり金融庁から、生保がいろんな不払を起こしているというので報告を出せという報告命令を出して、そしてその十月に各大手生保が報告を出したわけでございます。この時点で、第一生命は、別病院は個別に案内をしております、そしてホームページに載っけたようにシステムをつくって検索できるから大丈夫ですと、漏れはありませんという報告を金融庁にしております。  これは、なぜそういうことをやったかというと、当時、前回この委員会指摘したように、第一生命はそもそも請求したものだけ払うという請求主義を会社の方針としてやっていましたので、たくさんの支払漏れがあったわけです。社会問題になったからといって、ちゃんと報告しろと言われると、第一生命だけが物すごい多い数字になってしまうと。数字を減らすために、こういうものを意図的に除外したということでございます。  それが指摘されたからといって今から払いますというのは、払うのはいいんですけれども、この報告は第百二十八条に基づく報告でございますので、これに対して虚偽の報告をしたということは、これは大変重い罰でございます、虚偽報告というのは。これは業務停止処分に該当すると思います。私は、きちっと、今調査に入ってもらっていますけれども、その結果、この報告が虚偽だったらば、間違いなく第一生命を業務停止処分にすべきだと、法律的にいえばそういうことになるわけですから、是非そういう厳正な処分まできちっとしてもらいたいと思いますが、亀井大臣、いかがでしょうか。
  146. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 現在、金融庁としては、これは当然の話でありますけれども、全力を挙げて調査しております。その結果については、責任を持って適正な対応をしてまいります。今調査中でありますから、その結果を推測してどうこうするというようなことを私は今申し上げるわけにはまいりません。
  147. 大門実紀史

    大門実紀史君 それで結構です。事実が明らかになったときには、きちっとした処分をお願いしたいと思います。  私は、質問しているのは、別に第一生命をどうこうしてやろうと思っているわけではありません。第一生命というのは、元々、一番契約者に親切な会社だったんですね、昔は。途中で方向として請求主義でやると決めてからおかしくなって、それを更に隠そうとするからどんどんどんどんうその上塗りが続いていると。是非、上場した機会に、きちっとうみを出して、責任を取る人は取って、再スタートを図ってもらいたいと。このままうやむやにして、黒々としたまま行くべきではないという点で、特に上場した会社ですので、そういう意味で、自浄能力を発揮してもらいたいという意味質問しているわけでございます。  そういう意味で、許せないのはこの第一生命の社長、渡邉光一郎さん、もうテレビにしょっちゅう出てきて時の人ですけれども、このままいくと七月に生命保険協会の会長になるということになります。こんな会社の社長が、この不払隠しの、しかも陣頭指揮を執ってきた人物が生保業界を代表するなんということは、もう国民、契約者、株主をばかにした話だと思います。これはもう、金融庁の指導で問題の白黒が七月だとまだはっきりしない可能性がありますけれども、少なくともこの渡邉社長が生保協会の会長就任するのはストップさせるべきだということを申し上げておきたいと思います。これも多分、亀井大臣は、そういう結果が出たら厳正なる対処をしてもらうと思うので、今の時点ではそれだけ申し上げておきます。  それで、本題に入りますけれども、この生命保険協会なんですけれども、そもそも、これは金融庁所管の公益を目的とした社団法人でございます。本来は生命保険業の健全な発展、信頼性の維持、そのための必要な行動を行うということになっていますけれども、ところが、とんでもない政治工作、国会議員工作をやってまいりました。  生保業界から自民党国民政治協会へは毎年合わせて約五千六百万円の献金がなされてまいりました。これはもう衆議院で我が党の佐々木憲昭議員が取り上げたことがございます。その献金も、各大手生保で割り振りを決めて、あんたのところは幾らというふうに割り振りを決めてやっておりますし、パーティー券も相当購入しているだろうという、そういう可能性がございます。  何を目的にお金をばらまいたのかというのは、実は生命保険協会の内部資料を入手をいたしました。その時々いろんなことをやっていますので、その状況に合わせて目的はいろいろでございますけれども、その都度、生保各社で役割分担まで決めてやっております。今日はそのうちの一つを明らかにしたいと思いますけれども、これが国会運営にかかわる重大問題でございます。  先ほどの申し上げました不払の問題が社会問題になってきたのは二〇〇五年から二〇〇六年辺りでございまして、先ほど申し上げましたとおり、二〇〇七年二月に金融庁から生保各社に報告を出しなさいという命令が出ました。そういう中での二〇〇七年五月十八日に、衆議院財務金融委員会でこの生保問題、不払問題の参考人質疑が行われることになりました。  この内部資料によりますと、協会の資料によりますと、生保業界あるいは生保協会そのものが、この参考人質疑の時間を短くしてもらいたい、厳しく追及されたくないと、そういう目的で、当時の自民党の金融関係の有力者そして衆議院財務金融委員会の理事メンバーに要請を行ったという資料がございます。これも各生保、特に大手四社ですね、第一生命、日本生命、住友、明治安田が中心に分担をしております。  その内部資料によりますと、要請先議員と担当会社ですが、その資料に出ているのは、尾身幸次さん、当時の財務大臣でございます。この担当は第一生命が要請をすると。石原伸晃さん、当時は自民党幹事長代理、党金融調査会顧問でございます。担当は、これは生命保険協会が担当と。次が金子一義さん、当時の自民党の金融調査会会長でございます。担当は住友生命が担当すると。そして、山本明彦さん、衆議院議員ですね、当時財務金融委員会の自民党の筆頭理事でございます。担当は、これは生命保険協会が担当と。  どういう要請を行ったかはちょっとまだ私の方で分かりません。名前が内部資料で、生命保険協会の資料で出ているわけですから、各議員が自ら明らかにされればいいと思いますけれども、要するに自民党金融関係の重鎮ばかりでございます。ただ、実際に財務金融委員会参考人質疑の時間とか何かを決めるのは理事懇で決めるわけでございまして、今申し上げた中の与党筆頭の山本明彦氏の役割は決定的であったというふうに推測をされます。  そして、実際に五月十八日の衆議院財務金融委員会参考人質疑は、大変不思議なことに、わざわざ午前中に明治安田生命のコールセンターの視察を入れて、質疑そのものは午後の短い時間でやる、しかも損保と合わせてやるということで、生命保険、生保が一時間、損保が一時間だけの短い質疑となりました。もしも生保業界の要請にこたえて国会の運営が、委員会の運営がゆがめられたとしたら、これは大問題だというふうに思います。  まず、金融庁のかかわりで亀井大臣にお願いをしたいのは、大手生保各社だけではなくて、生保協会そのものがこういう政治工作で動いていると。これは生保協会の定款には一切ない、こんな政治行動をするということは一切書いておりません。裏の行動でございます。この生保協会というのは、金融庁から指導、改善命令を受ける公益の社団法人でございます。隠れてこういう政治工作をやっちゃいけないところですね、生保協会というのは。是非検査、調査をしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  148. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 私は、今委員の御指摘の関係、初めて私お伺いするわけでございまして、事実関係がどういうことなのか、一般的に国民の一人一人あるいは業界団体等が政党なり国会議員に対してそれぞれの立場から要請行動をやるということはあるわけでございまして、その内容が、これが適切であるかどうかということであろうと思います。  委員指摘の内容がどういうことであるかということがやはり私は問題であろうと思いますので、内容が不確実なもので、それが適切であったかどうかということを私はここで申し述べるわけにはまいらないと思います。
  149. 大門実紀史

    大門実紀史君 必要があればこの資料お渡しいたしますので、検査をしてもらえればと思います。  こういう各生保が、国会委員会の運営を動かしてもらいたいということで、さっき言ったように献金をしている政党の議員を中心に動いていると。パーティー券だって恐らく買ってもらっている可能性があるわけですけれども、そういう関係は明らかにきちっとすべきだということを申し上げておきます。  また、このときの生命保険の参考人というのは、斎藤勝利当時生命保険協会会長、これ第一生命の社長でございます。質疑で、山本明彦衆議院議員はその参考人質疑のときに、これ議事録にはっきりと出ておりますけれども、意図的な不払と請求漏れ、支払漏れは違うんだとか、あるいは第一生命の取組は大変よく頑張っているというふうな持ち上げの質問をやっております。まさに、生命保険協会の要請の意図にこたえているということが言えます。これは、そういう要請で質問したら請託に当たりますし、もしどこかでお金をもらっていたら収賄の疑いが大変濃いということになるわけでございます。  その山本明彦衆議院議員は、その年の八月二十九日に金融担当副大臣に就任をいたします。ついでに言えば、九月十八日の金融審議会でも保険の窓販問題で生保の立場に立って発言をしております。そして、二〇〇八年の大手生保が横並びの業務改善命令を受けるわけです。このときの金融担当副大臣山本明彦氏でございます。このときは外資系一社、第一生命が特にひどかったということがあったにもかかわらず、大手横並びの処分になったわけでございます。つまり、第一生命が目立たないようになったと。これ、第一生命にとっては不幸中の幸いでございまして、あのときに第一生命だけ特に厳しい処分があったら今回の上場はなかなか難しかっただろうということでございます。また、山本大臣が当時盛んに金融庁に対していろいろ発言していたというのはマスコミ関係者の中でも大変有名な話でございます。  こういう生保業界から国会議員が工作を受けるということがベースにあって、国会参考人質疑が短縮される、不払隠しがうやむやになる、金融庁が甘い処分をする、公益通報者が命懸けで身の危険を賭してした通報を無視をすると、立入検査でもおとがめなしになると。そしてその結果、無事第一生命が株式上場したというようなことだとすれば、これ大変大きな黒々としたやみの世界だと、やみがあるというふうに思います。  私、政権が替わった今こそこの一連の流れを解明してほしいというふうに思いますけれども、亀井大臣、どうでしょうね。政権替わったんだからこういうことはもう全部解明するという点でいかがでしょうか。
  150. 亀井静香

    国務大臣(亀井静香君) 私は東京地検特捜部に籍を置いておるわけじゃございませんので、そうした事案の内容を調査するとか捜査するとか、そういうことができる立場ではございません。議員がそれぞれ議員の良識において行動しておるわけでありますから、金融庁の立場においては、今委員が御指摘のことについての調査をするといいましても、それは金融庁の立場からの調査にこれは限られるわけでございます。
  151. 大門実紀史

    大門実紀史君 是非、金融庁がやれることは最大限やってもらえれば、私も最大限やれることはやります。  是非、これは保険業界と財政金融委員会財務金融委員会国会委員会との関係も出てくる大問題でございますので、委員長にお願いしたいんですけれども、このすべてを知る人物というのは第一生命社長の渡邉光一郎氏でございますので、委員会参考人として呼んでいただくように理事会で協議をしてもらいたいと思います。
  152. 大石正光

    委員長大石正光君) 理事会で協議をさせていただきます。
  153. 大門実紀史

    大門実紀史君 今日はこれで終わります。
  154. 大石正光

    委員長大石正光君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時十分散会