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国務大臣(
菅直人君) 芦部先生の本、私もこういう質問があると聞いていたものですから、佐藤幸治さんの本、あるいは佐藤功さんの本、樋口さんの本のその
部分も少し復習をしてまいりました。
一番私が、今読まれたところを含めて、
是非芦部さんの本をよく読んでください。
一つ大きな問題が抜けているんですよ、大きな問題が。つまりは、議院
内閣制と大統領制の違いというものの認識がほとんどないんです。
アメリカの仕組みは、前回も申し上げたように、主権者たる
国民が大統領も選びますから、大統領の権限と、それから議会の権限はある
意味で独立でいいんです。議院
内閣制というものと大統領制の違いが憲法学者にはほとんど分かっていません。つまり、彼らは憲法学ですから、政治学じゃありませんから、今まさに
愛知さんが言われた問題は更に憲法学者には分からないんです。
これは、政党というものは憲法には規定がありません。多分我が党の幹事長のことを言われていると思いますけれども、つまり憲法構造には残念ながら政党のことは入っていないんです。
ですから、なぜ私があえて申し上げているかというと、
日本の憲法学者は統治行為は苦手です。
基本的には行政法は明治憲法以来変わっていません。明治憲法は君主制ですから、つまり主権者は天皇であって、その中の
機能を分けているんです。ですから、この今読まれたところでも三権というときに、
国民主権という
意味の権と、いわゆる司法、立法、行政というのはここには、芦部さんの今読まれたところには区別と書いてあるでしょう。三つの
機能としての区別。つまり、警察官はピストルを持てます。しかし普通の税務署員は持てません。つまり、そういう区別と、もちろんそれは権限にも若干かかわりますけれども、国家統治のための本質的な権力というものがどこにあるのかということについては、この憲法は
基本的にはすべて
国民主権で成り立っているんです。
憲法四十一条、もちろん御存じですよね。もしこの中に、四十一条がですよ、前文のところがなかったらどうなります、これ。国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関であるとありますね。この国会は国権の最高機関であってというのがなくなったとしたら、国の唯一の立法機関ということになるわけですよ。国会は立法機関ですか。違うでしょう。もっと大きな仕事があるでしょう、総理
大臣を
国民に代わって選ぶという。それがなぜ国会の権能にはなくて
内閣の方に入っている。私は、それも余り、この憲法の条文の立て方、嫌いなんですよね。六十七条に
内閣総理
大臣は国会議員の中から選ぶと書いてあります。つまり、権力のことを言っているんですよ、
機能のことを言っているんじゃないですよ。
ですから、そういう
意味で、(発言する者あり)いや、そういう
意味で、今も申し上げたように、国会は国権の最高機関であるということをこの間も林さんも言われたら芦部さんのを言われています、いわゆる美称説と。大体司法試験通ろうと思ったらみんなこれを書くんですよ。
しかし、佐藤功さんの
議論は若干変わってきています。ですから、美称説は間違いです。もし
参考にされたかったら、私の書いた「
大臣」という岩波新書を読まれるか、あるいはかつて松下圭一さんという人が三、四十年前に書かれた岩波新書から出ている「市民自治の憲法理論」、私のかつてからの
考え方のベースになっている本ですが、お読みいただければいいと思いますが、美称説と言っている限りは、国会がなぜ主権者である
国民から選ばれて、しかも議院
内閣制で総理
大臣を選ぶかということは出てきません。最高機関だから選べるんです。