運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2010-04-21 第174回国会 参議院 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十二年四月二十一日(水曜日)    午後零時三十分開会     ─────────────    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      大島九州男君     徳永 久志君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         石井  一君     理 事                 主濱  了君             ツルネン マルテイ君                 藤田 幸久君                 有村 治子君                 牧野たかお君                 加藤 修一君     委 員                 相原久美子君                 犬塚 直史君                 大石 正光君                 大久保潔重君                 風間 直樹君                 徳永 久志君                 室井 邦彦君                 森 ゆうこ君                 浅野 勝人君                 加納 時男君                 神取  忍君                 川口 順子君                 佐藤 正久君                 丸山 和也君                 山下 栄一君                 山本 香苗君    事務局側        第一特別調査室        長        杉本 勝則君    参考人        大阪女学院大学        教授        大阪大学名誉教        授        黒澤  満君        財団法人日本国        際問題研究所軍        縮・不拡散促進        センター所長   阿部 信泰君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題及び地球温暖化問題に関する調査  (「日本国際社会における役割リーダーシ  ップの発揮」のうち、アジア安全保障及び我  が国の軍縮外交について)     ─────────────
  2. 石井一

    会長石井一君) ただいまから国際・地球温暖化問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、大島九州男君が委員を辞任され、その補欠として徳永久志君が選任されました。     ─────────────
  3. 石井一

    会長石井一君) 国際問題及び地球温暖化問題に関する調査を議題といたします。  まず、「日本国際社会における役割リーダーシップ発揮」のうち、アジア安全保障及び我が国軍縮外交に関し、我が国軍縮外交について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、大阪女学院大学教授大阪大学名誉教授黒澤満参考人及び財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長阿部信泰参考人に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人におかれましては、御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、両参考人から忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず黒澤参考人、そして阿部参考人の順でお一人二十分程度御意見を冒頭お述べいただきたいと存じます。その後、午後二時二十分ごろまでをめどに質疑を行いますので、御協力のほどお願いいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、黒澤参考人から御意見を聴取いたします。黒澤参考人
  4. 黒澤満

    参考人黒澤満君) 黒澤です。今日は、お呼びいただきまして非常に名誉なことだと思っておりますし、よろしくお願いしたいと思います。  それで、お手元に二枚のレジュメが配られていると思いますので、それに従って二十分間お話しさせていただきます。私はどちらかというと、今までの政府軍縮政策に批判的な観点から御意見なんかを述べさせていただきたいということであります。  まず一ですが、この辺は外務省文書でありますけれども、軍縮・不拡散に関する日本の基本的な考え方というのは何なのかということが書いてありまして、まず一は、平和への願いと唯一被爆国としての使命で軍縮を進めると。それは、平和国家であり、日本国憲法があり、唯一被爆国である、核兵器廃絶を求めると。  それと、二番目には、日本安全保障上の観点が重要だと。そこでは、中国ロシアという軍事大国があるし、北東アジアというのはまだ緊張があるし、北朝鮮の核、ミサイルの問題もあると。だから、こういう点も考慮すべきだと。  三番目が、人道主義的アプローチというのがありまして、非人道的武器禁止ということで、対人地雷禁止条約とかクラスター弾禁止条約日本は積極的に賛成しているという話。  それから、人間安全保障観点もあるんだということでありまして、これは一人一人の人間に着目して、対人地雷とか小型武器クラスター弾に対応しているというのが全体の考え方ですね。  それで、核軍縮・核不拡散についての日本基本的立場としては、以下の二つの要請の上に成り立っていると言っているわけで、唯一被爆国として、また長期的な観点から日本安全保障環境を向上させるために、核廃絶に取り組むべきという要請。それから、日本はその安全保障を核を含む米国抑止力依存している中、日本安全保障を害してはならないという要請。この日本要請のバランスでやっているんだというのが日本政府立場です。  日本核兵器脅威に対しては、米国核抑止力依存するが、それと同時に、日本唯一被爆国として、また、日本安全保障環境を向上させるために、核兵器のない平和で安全な世界の一日も早い実現を目指して、現実的な核軍縮措置を着実に積み重ねていくという、現実的、漸進的なアプローチを採用していると、これが今の政府立場です。  三は、これは私の個人的な考え方で、軍縮というのはどういうふうに考えるのかということで、国際の平和と安全保障考える上でこの四本柱が重要なんだと。軍縮軍縮だけで絶対進まないわけでありまして、核兵器のない世界といっても、核をどんどん減らしていくということをやっても絶対成功しないわけで、だから、この四つの柱を徐々に進めていくことで軍縮も進んでいくし、お互いに相互依存関係で、一部が進めば他の方も進むと。  だから、第一は武力行使禁止武力を使わないということを、このノーを国際的に強くしていかないと駄目で、そして、そのためには、紛争があったら平和的に解決するというメカニズムも整備していかないと駄目ですよね。それで、平和的に解決していくと武力使わなくて済むわけだし、そうしたら軍備もだんだん要らなくなるわけだし、そして、それに対してやっぱり違反するやつがいたら制裁という集団的安全保障体制をちゃんと確立しないと駄目で、そして軍縮をしていくと。  だから、軍縮を一部進めることによって武力行使使用が減るかも分からないし、平和的解決が進むかもしれない。だから、この四つを並行してやらないと、軍縮問題を考えるときも、軍縮だけ、減らせ減らせといっても減らないと思うし、その辺が、先ほどの日本核軍縮に対して日本安全保障を害してはならないというふうなことを言うわけで、軍縮はそんなために、減らすためにやるわけじゃなくて、安全保障を高めるためにやっているわけだから、上の要請とも合うんではないかと。  それで、次の四と五は、一般的に日本軍縮外交というのはどう見られているかということで、これはある外国の研究者分析を基礎に私なりに少し変えたもので、外から見たらどういう感じかということで、中にいるとなかなか分かりにくいのでね。  それで、メリットというか、一つリーダーシップ一つは財政的・技術的支援一つ被爆の実相の記憶を続けているという三つメリットを挙げているわけね。  一つは、リーダーシップとして国連総会決議を毎年出しているとか、国連軍縮フェローシップをやっているとか、国連軍縮会議を開いている、あるいは最近のICNNDの報告書を作ったとかということが一つリーダーシップの現れとして対外的に評価されています。  二番目は、軍縮に関して、KEDOとか、あるいは旧ソ連の非核化支援とか、CTBTOの事務局でありますとか、地震の関係とか、あるいは中央アジアのニュークリア・ウエポン・フリーゾーンをつくっていくときに、財政的、技術的あるいは知的にも援助しているというメリットがあると。  三番目には、やっぱり広島長崎の問題がありまして、そして国連軍縮フェローシップ広島に来ますし、そして原爆展世界中でやっていると。これは日本核軍縮政策として非常に評価できるというのが三つですね。  それで、評価できないと言われておりますのは、一つプルトニウム計画、これは六ケ所村であるわけですけれども、一つは内在する核兵器拡散への危険、だから日本がこれを使って核を持つかも分からない。それから、これは他国に対する非常に悪い見本になっていると。イランに使われたり、ほかの国が、日本がやっているからいいじゃないかという形で、これは非常にマイナスだという意見があります。  それから、二番目は、アメリカ拡大抑止への過度の依存。そして、過度に依存することによって核軍縮への日本の道義的な側面は弱体化しているのではないか、あるいは、日本の主張の信頼性を弱めているのではないかという考え方があります。  三番目は、日本核武装論。この前、国会議員二百四名の方がオバマに手紙を書かれたというのは僕は非常に高く評価しているし、あちこちで日本はちゃんとやっているよということで、あれを使って話をしておりますけれども、あそこではフォー・ソウル・パーパス、核の唯一役割は核の脅威に対してだということをサポートします。それをアメリカが採用しても日本核兵器を持ちませんということをはっきり言っているわけですよね。  だけれども、時々国会議員の方が日本核武装論というのを北朝鮮なんかを背景に言われるわけで、それで、日本では何か一人ぐらい変なことを言っているなというんだけど、あれは海外へ行くと非常に大きなニュースになるわけですね。だから、核を持つということは、国際的には日本で一人言っただけでも大きなニュースになって、持たないということを二百四人言っても余りニュースにならないんですけれどもね。ということで、僕は国会議員の人、非常に慎重にそれはやっていただきたいなということを思いますよね。  これが大体分析で、あとは私の個人的な、特に外務省あるいは政府に対する注文、あるいは提言ということで十分間ほどお話しさせていただきます。  まず、外務省人事政策というか、外務省の中での軍縮の取扱い、阿部さんが隣におられるので非常に言いにくいところもあるんですけれども、私の立場は、最初に言いませんでしたけれども、いろんなところで講演するときに、私は大阪にいますという話をするわけですね。それはどういう意味かというと、東京広島長崎の真ん中にいますと。だから、東京へ行って外務省の仕事をすることもあるし、あるいは広島長崎へ行っていろいろ演説することもある。どちらにも付かないで、中間的なところで私は研究者としてやっていますと。だから、アクティビストでもありませんし政治家でもありませんというのが立場ですから、自由に今回もしゃべらせていただきます。  それで、まず外務省人事なんですが、これも外から見ているだけでどこまで正しいかどうかは自信ありませんが、外務省人事政策というのはジェネラリストを育てて、大使を将来育てるという形でいきますので、エキスパートをなかなか育てないわけですよね。軍縮というのは非常に専門知識が要るし、長年やらないとなかなか分からない分野で、それを今までやったことない人がぽっと来てやるということだってしばしばあるわけです。  一つ例を出しますと、CTBTの交渉中に、ちょうど佳境にかかったときに、軍縮大使が替わったわけですよ。その方は、安全保障軍縮なんというのは一回もやったことがない人で、女性の方で、社会問題とかそういうことをずっとやっておられて。それで、ここから先どこまでほんまか分からないんだけれども、どうしてあの人がなったんですかというのを聞くと、御主人がスイス大使だからという答えをもらったわけですよ、ジュネーブだからということでね。それで、前の大使は非常に優秀な方で、そのとき、アメリカ大使を替えないで七年ぐらい同じ大使で来たわけですよ、重要なときだからね。ほかの国も、日本みたいに二、三年でころころ替えるんじゃなくて、専門家大使になっているところが非常に多いわけですよ。だから、そこへいくと日本というのはもう、二、三年たったらまた新しい人が行くわけですね。  軍縮世界というのはマフィアみたいなところがありまして、顔でいろいろやっているところがあって、だから僕は、やっぱり外務省としては、軍縮とか環境とかなんとかは専門家を育てるべきだし、そしてそこの大使を長くやらせるべきだというふうなことを常に考えています。だから、二、三年でころころ替わりますから、課長なんかと話をしていても、三年先のことはもう聞いても答えないんですよね、私、三年先いませんからとか言って。そうなると、例えば次のレビューカンファレンスのことを考えてくださいよと言っても、私はもうここにおりませんという返事が返ってきますよね。だから、この辺は継続性がなくて、それで新しい人来て、優秀なんだけれども、やっぱりずっとやっている人とは違うし、そして世界に出て顔が利かない。  世界で顔利くのは、今、天野さんですよね。それと、僕は阿部さんと二人ぐらいだと思いますよね、軍縮ずっと専門でやってこられているのは。だけれども、そういう専門家をもっと育てるべきですし、だから外務省はころころ普通の会社みたいに二、三年で替えないで、軍縮やる人はそういうものに特化してずっとやらせるべきではないかというふうに思いますね。それが一番目。  それで、二番目は外務省内部での、あるいはさらに防衛省との調整がどうなっているのか。  外務省というのは、軍縮というのは今、軍縮拡散科学部ですよね、局じゃないんですよね。それでいろんな、これも外から聞いている話だから、中に入っていないので分かりませんが、北米局なんかと議論をすると大体向こうの力に負けて帰ってくるという話をよく聞きますし、それでやっぱり、総政局の中にあるんだけれども、僕は軍縮局として独立させるべきだと思いますし、北米局並みの予算も人も付けて、日本が本当に軍縮外交やるんだったらね、そういう形で外務省で局として軍縮を置くべきではないかということを考えております。  それから、これはよく分からないんだけれども、防衛省との間でどれだけ調整があるのか。特に、今、防衛計画大綱をやるという話になっていますよね。あそこで核の使用をどうするか。防衛大綱というのは、今までのはずっと、核の脅威に対しては、日本アメリカ核抑止力依存すると書いてあるわけです。だから、それが防衛計画大綱で僕は一番中心なんで、ほかの脅威に対しては核に依存するとは書いていないわけですよね。だけれども、国会で答弁ではそうだという話があって、その辺整合性がどう取れているのかなということが常に疑問になっておりますし、そして、これからまた新しい防衛計画大綱ができるわけで、その辺り、やっぱり外務省防衛省、その辺がちゃんと調整してやっているのか、あるいはちゃんと調整して、特に軍縮の人も入ってちゃんとやってほしいなというのが二番目です。  それから三番目は、国際的会議とかで日本はいろんな核軍縮に対して活動をしているわけでありまして、それで、今回もオーストラリアと組みまして日豪提案という形で五月三日からのNPT検討会議文書をもう既に出しておりますよね。  それで、僕はたまたま五年前も十年前も十五年前もNPTの再検討会議に四週間ずっと出させていただきまして、ずっとフォローしているんだけれども、九五年は日本は何も提案しなかったんですよね。それで、存在意義も余りなくて、日本提案出さないと駄目ですよと、そして日本はどっかその会議のポストを取らないと駄目ですよということを九五年からずっと言い続けてきたわけね。それで、二〇〇〇年には日豪提案を出しています。  そのときに、私はその九五年から行っているんだけれども、JACグループということで、ジャパン、オーストラリア、カナダ、これはアメリカ核抑止の下にあるんだけれども、核軍縮に熱心な国ですよね。だから、それをまとめて日本リーダーシップを取ってJACグループで行くべきだという話もしましたけれども、二〇〇〇年は日豪だけでやりましたと。それで、その後も日豪はずっと続いておりましてということなんだけれども。  例えばNACという非常に重要なグループがありますけど、新アジェンダ連合ですよね、そこは七か国が、非常に重要な七か国がいい提案を出して、二〇〇〇年のNPT会議ではそのNAC提案が多く取り入れられたと。それは七つの国で、みんな専門家ばっかり、あのときの大使は非常に専門家が入っていたわけです。だから、日本はそういう同じ立場にある国を集めて、リーダーシップを取ってグループをつくって、核兵器国と非同盟諸国の間で活躍すべきではないかと。  ここは、GJACというふうに書きましたけど、ドイツだけじゃなくてオランダとかノルウェーとか同じような考えの国がいるわけだし、だから核抑止というところで共通するわけで、日本核抑止日本だけで考えないで、世界的に拡大抑止をどうしていくかという提案を出しながら、そしてP5、核兵器国と非同盟諸国の懸け橋として僕は日本は大きな役割をできるのではないかと。だから、この辺で日本リーダーシップを取るべきだというふうに考えております。  四番目は、核武装論への対応ということと非核原則明確化ということでありますが、日本では核武装なんかしないよというふうにみんな一般的に考えているかもしれませんが、海外ではまだ非常に日本核武装するのではないかと。だから、国際会議によく出ますとそういう質問が数多くあります。  例えば、今回アメリカがニュークリア・ポスチャー・レビューを決めるときに、核兵器役割を下げるのに反対する共和党の連中が、核兵器役割を下げたら日本核武装しますよという理論を使うわけですよね。海外ではそれが通用するわけです。だから、減らされると怒るという議論にもなるわけで、だからそれは、日本核武装しないということをもっとはっきり発信しなきゃ駄目だし、そして、どうしてしないかということをちゃんと理由を付けて、例えば日本核兵器をもう持ったら日米関係はこれは最悪になりますよと。あるいは、中国とも韓国とも関係が悪くなるし、韓国とか台湾も持つかもしれない、だから日本は損しますよと。それから、日本経済制裁を科せられるかもしれないと。そうしたら石油は止まるかもしれない、九九%輸入しているやつがね。食料も六〇%止まるかもしれない。原子力平和協力協定で全部止まりますから電気も四〇%止まりますよというふうな、いろんな理由を示して日本は持たないということを国際的に言うべきではないかと。  それからもう一つ非核原則も最近密約が出てきて、日本の言っていることは何なんだということがこれ今国際的に問題になっています。日本の言っていたことはうそではないかと。日本非核原則があってやっていましたよということで、だけれども、本当は密約があって、それで政府はずっと隠していたということは日本にとって非常に恥ずかしいことだったと思いますし、それに対して今の鳩山首相非核原則を厳守するしか言わないんですよね。  だから、もう少しさっきの核武装論、三原則というのは持たない、作らないも入っているわけだから、日本政府立場、持たないということと非核原則を厳守することをもっと明確に、その言葉だけじゃなくてちゃんと理由を付けて言うべきではないかというふうに考えます。  以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  5. 石井一

    会長石井一君) 次に、阿部参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。阿部参考人
  6. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) 今日はこのような機会をいただきまして、どうもありがとうございました。  最近の核軍縮・不拡散をめぐる動きにつきまして概観しました上で、私が日ごろ感じておりますところをこの機会に申し上げさせていただきたいと思います。(資料映写)  最近は非常にいろんな動きがありまして、日本オーストラリアでつくりました不拡散軍縮に関する国際委員会、あるいはアメリカ核戦力態勢レビューの発表、それからアメリカロシアの間の戦略核削減の合意、それから来月にはNPT運用検討会議というものが開かれるわけで、大変いろんな動きがありますが、今日はざっとこの辺をおさらいをしまして、その上で私の考えを述べさせていただきたいと思います。  まず、日豪国際委員会でございますが、これはオーストラリアからこういうことをやろうという提案がありまして、当時の福田総理がこれを受けて、やろうじゃないかということでスタートしました。オーストラリアの方はエバンス元外務大臣日本からは川口順子外務大臣共同議長として出まして、一年間非常に集中的に議論をしまして、専門家のみならず各国原子力産業の方あるいはNGOの方の意見なども聴きまして、議論をしまして報告書をまとめました。  一つ主眼点は、現実的に実行できるような核軍縮提案を出そうじゃないかと。それによって、各国の実際の政治指導者に実施してもらおうと、こういうことを主眼として作りまして、ざっと申し上げますと、ここにありますように二〇二五年までに各国核戦力最小限にしてもらおうと、これを最小化地点という名前で呼んでおりますが、それまでのために短期的行動計画中期的行動計画というのを提案すると。それから、その後は最小限にした核をいよいよ各国が廃棄をしてゼロに持っていって核兵器のない世界をつくろうと、こういう二段階アプローチでいこうというのがこの提案の大きな主眼でございます。  例えば、この最小化地点段階においてはアメリカロシア各々五百発まで減らしてもらおうと。今、各々五千発を超えると言われている核兵器を保有していますので、それを十分の一以下まで減らすということでございますし、それから、核兵器を持っている国にはすべて先制不使用を約束してもらおうと、それを反映するような核戦力配備態勢を実現してもらおうと。つまり、今のところは、もしどこかで警報が出て核攻撃があったというようなことがあれば、すぐに何十発、何百発という核ミサイルを発射して反撃をするという非常に恐ろしい状況にあるわけで、それを是非とも警戒態勢を緩めてほしいと、こういうようなことをいろいろ提案しております。  この中で、短期的行動計画というものの中にどういうものが入っているかというのをざっとここで項目を並べてみましたが、時間の関係もありますので細かく説明することは控えまして、例えば、筆頭にありますのが、アメリカロシア戦略兵器削減交渉を早く妥結してほしいというようなこと、あるいは核兵器に関する政策を転換するということ、その中には核兵器使用目的を限定するというようなことも提案しております。  この辺が今回の報告書のすぐにやってほしいことということの主眼になっておるわけですが、この短期行動目標はその意味において、次にありますアメリカ核戦力態勢レビュー、最近発表されました報告書の中でどこまでそれが実現されたかということを御覧いただく比較の対象という意味でもこれをここに並べてみました。後で比較いただくと分かりますけれども、一部のものは今回のアメリカ政策発表、それからアメリカロシアとの戦略核削減合意で実現しております。あるいは、オバマ大統領は将来の政策目標としてこれを掲げておりますので、そういう意味において、この日本オーストラリア国際委員会報告書を受けてそちらの方向へ進むという大きな方向がオバマ大統領の体制である程度受け入れられて動き始めているということが言えるかと思います。  ここで最近出されましたアメリカ核戦力態勢レビュー、英語でニュークリア・ポスチャー・レビューと言っておりまして、なかなか日本語に訳しにくいんですけど、戦力態勢のレビューというふうに書いておりますが。  一つ、オバマ大統領が去年プラハで演説をしまして、核兵器のない世界を実現しようという高い目標を掲げたわけですけれども、今度のこのレビューの中で大統領はこれを何とか実現の道に付かせたいということで大変努力したと聞いておりますが、現実には、やはり国防省、それからその背後におりますアメリカの議会の保守派の方から、そんな夢のような理想を掲げてアメリカを急速に引っ張っていくのは危険だという大分ブレーキも掛かったようでございまして、その意味においては、今回の報告書は恐らく大統領の理想と現実の間の妥協の産物であるということが言えるかと思います。  この報告書を読みますと、もう何度も繰り返し繰り返し出てくる言葉、表現が、アメリカと同盟国、それからパートナーという言葉を使っておりますが、そのための抑止力を保持するということが言われております。そこで、この両者の間の妥協の産物として今回の報告書ができたということが言えるかと思います。  あと、報告書をざっと私が読みましてこれはいいなと思った点は、例えば現在の緊急の課題としては核の拡散を止めるということ、それから核テロを防止するということが緊急の課題であるので、これを最優先課題として取り組むということを言っております。同時に、北朝鮮とイランの核計画を阻止しなければならないということもはっきり言っておりますので、これは、とかく現在、世界的にはイランの方は注目を集めておりますけれども、どうも北朝鮮はだんだん忘れられがちでありますので、その意味において、この報告書アメリカがはっきりと北朝鮮を阻止するんだということを言っているというのは心強いところがあります。これを受けて、実際の行動としては、先日、核セキュリティーサミットというのをワシントンで開きました。また、IAEAを強化しなければいけないということも繰り返し言っております。  そこで、日本との関係でも非常に大きな意味がありますのは、核軍縮を実現したい、それから核の拡散を止めたいという意味においては、世界各国に対して核兵器というものの役割はもうだんだん少なくなっておるんだと、核兵器は非常に使うのが難しい兵器なんだと、非常に大量破壊でありますし、非人道的な側面が強いので非常に使いにくい兵器なんだということで、核兵器の価値を下げる、役割を下げていけばそういう核兵器を持とうという国もあきらめるんじゃないかと。そういう意味において、意欲を減退させようということで今回の報告書でも非常に真剣に議論されたようで、どういうふうになったかと申し上げますと、結論としては、この報告書では、アメリカ核戦力の基本的な役割アメリカ、同盟国、パートナーに対する核攻撃を抑止することにあると、こういう表現になっております。  それから、アメリカというのは、核兵器米国及び同盟国の死活的利益が脅かされたときにこれを守るためのという、究極的な場合のみに使うというような表現で、非常にアメリカが使う場合は限定されるんだということを言っております。これをもって各国NPTを遵守して不拡散の義務をちゃんと履行するようにということを説得しようと、こういうことでございますね。  それからもう一つは、NPTに入って核兵器を持たないと約束をした国についてはアメリカ核兵器を使わないという約束をしようということ、これは専門的には消極的安全保証と言っておりますが、それをはっきり言いましょうということになっております。  これは、今までは、アメリカ政策としてはこのほかに、核兵器国と同盟した国が攻めてきたらばそのときは保証の限りではないという表現も加わっていたんですね。これはつまり、冷戦時代に、例えばヨーロッパ正面におきましてワルシャワ条約に入っているどこかの国が攻めてきたというときに、その国自身は核兵器を持っていないかもしれませんけれども、背後にいるソ連は核兵器を持っている。ということは、これは全体として核を持って攻撃してくるという大きな戦略の中の一環ではないかということで、そういう意味においては、同盟国が使った場合には、これは、来た場合には例外であると、こういうことがあったんですが、今回はそれが削除されております。非常に限定的な形になっております。  NPTを遵守している国ということですが、新聞、メディアでは非常に単純にするためにNPT遵守とだけ書いてありますけれども、実際の報告書を読みますと、及び核不拡散の義務を履行している国と書いてあります。ですから、NPT、条約の文字面の上でだけ守っている国では駄目なんで、実際のいろんな不拡散の義務を守っていなければいけないというどうも追加が加わっているようでございます。そういうことで、とにかくちゃんとやっている国にはもう核兵器は使わないんだと、したがって、そういう国も核を持とうなんということを考える必要はないんだということを説得しようとしているわけでございます。  それから、この日豪国際委員会報告書、それから日本の国内でも最近いろいろ、岡田外務大臣の発言などで、核兵器というようなものを使うのは、先制使用するのはやめるということを宣言するべきじゃないか、あるいは、核兵器というのは相手の核に対してしか使わない、唯一の目的であるということを宣言すべきであるというようなことがいろいろ議論されておりますが、それについては今回の報告書では、先ほど申し上げましたとおり、基本的役割という表現でしか言っていませんのでそこまでは踏み込んでいないわけですけれども、その点については今回の報告書で、将来、唯一の目的というものを宣言できるような環境を醸成するためにアメリカは努力するんだと、こういうことを言っております。  この点は私は評価のできる点じゃないかと思うんですが、現実問題として、実際の核抑止ということを考えれば基本的役割というところまでしか今回は言えないんですけれども、将来の方向性としてはアメリカ唯一の目的ということを宣言する方向で努力するんだと、こういうことを言っておるわけで、この意味においては日豪国際委員会報告書の提言とも軌を一にするわけで、歓迎できる点だと思います。  それから、実際問題として、核戦力というものをできるだけ低い水準で維持すべきであると。核弾頭も減らすべきだということで、米ロの合意などを行うということを言っております。  それから、アメリカは新しい核弾頭はもう開発しないんだということも言っておりまして、その意味において、したがって実験する必要もない。実験する必要がないのであるから、核実験禁止条約、これはアメリカは早く批准すべきだと、こういうことも言っております。  実はこの核実験の禁止条約、これは日本も非常に強く早く発効させるべきだと言っているわけですが、アメリカなどが批准しないためにまだ、署名開始から十年たっていますけれども、発効していませんが、これを実現するためにはやはりアメリカが先頭に立って批准をして発効に持っていくということが必要なので、オバマ大統領がこれをまた宣言しているということは非常に心強いところでございます。  それから最後に、オバマ大統領のこの報告書は、アメリカ政府は、核兵器のない世界を実現する、そのための条件をつくるためにこれから積極的に活動していくと、こういうことを言っておりますので、全体の方向性としても大変心強いものがあります。  そこで、では、日本として何をすべきかということで私の考えを最後に述べさせていただきたいと思いますが、鳩山総理も、去年、国連の安保理事会に行きまして演説をされまして、核廃絶の先頭に立つということをおっしゃっております。私は、是非ともこの目標を日本の現実の外交活動、その他の活動を通じて具体化すべきであるというふうに考えます。  そのためには、まず一つは、この日豪国際委員会、三百ページぐらいの非常に分厚い報告書でいろんな提言が、たくさんいい提言がありますけれども、かなりのものはやはり提言にとどまっておりまして、それを実行するためにはいろんなフォローアップの活動が必要でございます。ですから、それはやはりこの会議をスポンサーしました日本オーストラリア政府が先頭に立って活動しないと実現しないと思いますので、その活動を是非とも日本オーストラリア協力して進めていただきたいと思います。  実際、今度のNPT会議に向けて日本オーストラリアで共同して実践的軍縮・不拡散の措置というものを提案しておりますので、具体的な活動としておりますけれども、実際、私の観点から申し上げますと、この提案はある意味では難しい運営を迫られるNPTの再検討会議の場面で何とか実現できるような非常に現実的な提案になっておりまして、その意味においてはおとなしい提案なので、私の観点からすると、もう少し踏み込んで大胆に幾つかのことをこれからやっていただきたいということでございます。  一つ私が、日本政府あるいは民間の方も含めて是非ともやっていただきたいと思いますのは、やはりオバマ大統領、アメリカの大統領、世界の一番強い国ですが、その大統領が核兵器のない世界を目指したいということを言って、それを今政策として進めようとしているわけですので、それを実現するように支援するということが日本としてもこの理想を実現する一番近道じゃないかと思うんですね。その意味において、アメリカをできるだけ支援するということが大事かと思います。  一つは、例えば、これからアメリカの議会で核実験禁止条約の批准の審議が始まりますが、条約の批准には上院で三分の二の多数を取る必要がありまして、民主党は残念ながら三分の二持っていませんので共和党の支持を多少獲得しなきゃいけないんですけれども、大変難しいと言われております。  そのときに、例えば、保守派の人はこういう議論をするんですね。日本拡大抑止依存しているんだと、核の傘に依存していると。どうも最近、日本から、この傘は大丈夫なのかということが時々聞こえてくると。先ほど黒澤先生もおっしゃいましたですけれども、それを逆手に使って、日本なんかが心配しているんだから、核兵器のない世界というようなことを言って核兵器をどんどん減らしたり、あるいは実験しないなんということを言っちゃったら駄目なんだということを保守派がワシントンで議論していますので、そういったときに、その当事者である日本の方がワシントンに行く機会アメリカの議会の方たちにお会いして、日本は、私の立場からいえば、アメリカの核の傘に依然として依存しています、これは現実の問題としては当面やむを得ないけれども、しかし、アメリカに実験してもらう必要はもうないと思うし、条約は是非とも批准してほしいと。日本の人からこういうことを言ってもらうということは恐らく非常にアメリカの国内の議論に大きな影響があると思いますので、それは私は大いにやっていただく機会があればやっていただけたらと思います。  それから、アメリカロシアが今度削減条約を実施したんですが、実は、これは批判する人はまあ程々の削減でしかないということを言われています。実際、確かにそれほど大きな削減ではないので、是非ともこの次の削減をやってほしいんですね。ですから、これも日本からアメリカ、それからロシアに働きかけて、次の削減をやってほしいと。  特に、そろそろ戦略核だけではなくて戦術核、例えば極東とか北東アジアとかヨーロッパの正面とか、そういったところで使うことを考え核戦力、これも削減する段階に来ている。それぐらいまで削減しませんと、今NATOで議論をしておりますNATOに配備されているアメリカの戦術核の削減あるいは撤去、あるいは次の段階として中国も含めた軍縮という段階まで進めませんので、その意味において、是非ともアメリカロシアを早く次の段階の削減に踏み込むように働きかけると。これも、非常に日本の外交として重要な課題かと思います。  それから、その意味において、アメリカロシアは既にいろいろ対話をしておりますけれども、アメリカ中国の間で真剣に実質的な戦略対話をして、どうやって中国の透明性を欠くところのこの核戦力増強、強化、近代化、あるいはその他の軍備の強化というものをとらえるのか、どこまで行くつもりなのか。あるいは、アメリカとの関係中国はどう考えているのかということを真剣に議論していただいて、この辺でやめたらどうかというようなことをしませんと、なかなか、この北東アジア、西太平洋の場面での軍縮交渉というのは進みそうにありませんので、その意味において、米中の戦略対話というのを真剣に始めてほしいと。  一応、始めるということについてアメリカ中国の間で合意はしたようですけれども、どの程度密度の高いものになるかどうかは分かりませんので、その辺をアメリカ中国日本から働きかけるということが大事かと思います。  同時に、その際には、アメリカ中国だけで話すんじゃなくて、日本も時々入れてもらう。あるいは、その対話の前か後に、日本アメリカあるいは中国との間でどういうことを話すのか、話したのか、日本立場はこうなんだということを表明する機会も是非ともつくってもらうということが大事かと思います。  それから、日豪委員会の提言の中にもありますけれども、それじゃ、その核兵器役割をどんどん低減するという状況において、ずっとそれが減っていったときに、アメリカの核の傘というのは、いつかの段階でこれはなくならざるを得ないんじゃないかということを言われていますので、そのときに一体日本の防衛はどうなるのか、周辺の国の核戦力との関係日本の抑止はどうするのかということについて、これは真剣に考える必要があると思いますので、その研究のための研究と協議をするということ。  それから、そういった問題も含めて、世界的に核軍縮・不拡散を進めるためには、ひとつ世界的な核不拡散軍縮の研究のためのセンターをつくってはどうかということが提言されております。これについても、やはりこの報告書に盛られたこういう提言は日本オーストラリアが積極的に旗を振らないと動かないと思いますので、是非ともこれは日本も積極的に検討をしていただきたいと思います。  それから最後に、こういうものは、何も単に政府、議会だけで議論するだけでは不十分で、そもそも、核兵器に携わるかもしれない科学者、核物理学者とかそういった人たちの最初の教育の段階から、平和というものは何であるのか、武力行使というのは何であるものなのか、あるいは核兵器とはどんなものなのかということを教えて、軽率にそういうものの研究開発に携わってはいけないということを教育するというようなこと、あるいは、NGOが最近非常に活動を強めておりますので、そういった面との連携も強めるというようなことが必要になってくるかと思います。  以上、簡単でございますが、私の意見を述べさせていただきました。  ありがとうございました。
  7. 石井一

    会長石井一君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、質疑を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。  本日は、当初の予定よりも質疑の時間が三十分短縮されております。委員の一回の発言は三分程度となるよう、またその都度答弁者を明示していただきますよう御協力をお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。  犬塚直史君。
  8. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 本日はありがとうございます。  阿部参考人黒澤参考人に同じ質問を一つさせていただきます。  いよいよ、今年の五月から六月にかけて、ICC、国際刑事裁判所のローマ規程の見直し会議が行われます。御存じのように、これは国境を越えて許し難い戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、侵略の罪などを起訴し訴追できるという世界の裁判所でありますが、ここに戦争犯罪とされる犯罪が列記されておるわけですが、今までのところ、毒ガスの使用ですとか窒息ガスの使用ですとか、あるいはあの扁平になるダムダム弾というんですかね、あれの使用しか書かれていないと。九八年以来、ここに核兵器使用も戦争犯罪になるんだと、つまり、核兵器をどんな状態で使ったとしても、これを使うことを決断をしたという意思決定にかかわった人も含めて個人の罪が問われるんだということを明記すべきではないかという議論がずっと行われておりまして、残念なことにまだ実現していないと。  私もこれはもう五回ぐらい提案をしているんです、国会で。そのたびに言われるのは、P5の国がそもそもICCに入っていないではないかと。そういうことを明記してしまうと、ますますハードルを上げてしまうだけであって実効性に足りないという、何か本末転倒のような話しか返ってこないわけですけれども、この状態に対して両参考人の御意見を伺いたいと思います。
  9. 黒澤満

    参考人黒澤満君) 今の結論に対しては、私は賛成ですということを申し上げます。  だから、私も入れるべきだと思うし、そして今の規程でも、人道に対する罪とか核兵器を使えばそれで罰せられる可能性はほとんどカバーされると思いますけれども、仮にそれで抜けてもカバーされるようにという意味で入れるのと、核兵器使用というのはもっと非常に重要な犯罪ですよということを明記することによってその重大さをみんなに知らしめるという意味で、私は是非入れるべきだと考えています。
  10. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) 核兵器使用した者を個人も罰しようと、国際刑事裁判所でですね、という考えは、たしか条約がローマで交渉されたときに、最終段階で非同盟諸国から出てきた提案だったと記憶しておりますが、同時に、そのときの段階までこの条約の原案には、生物化学兵器を使った者は、その携わった個人も処罰するという規程があったんですね。非同盟諸国がこれに対して、生物化学だけじゃなくて核兵器だって入れるべきじゃないかというんで、核兵器も入れるという提案をして、ところが、核兵器は実は五大国が持っているわけで、持っている人は使えなくなっちゃうと困るんで、核兵器持っている国が反対をして三つとも全部落ちちゃったんですね。  それが歴史でございまして、現実問題として、私は将来向かう方向としては、核兵器はまずそもそも禁止をしなきゃいけない、核兵器禁止条約というのはできるべきだと思います。それは廃絶と同じ時をして発効するということなんですが、同時に、その段階においてはそれに携わった個人も処罰するというのが方向であると思いますが、現実問題としては、核兵器を持ってそれを核抑止力として配備している国はあるわけで、そういう国がそれを使った個人を処罰するという規程をのむわけはないんで、今すぐには無理だと思うんですね。  したがって、これは私は方向としては、一つは最近いろいろ言われていることで核兵器使用のタブーという表現がございますね。つまり、いろいろ核兵器の使われた結果について聞くにつけても、核兵器というのは使ってはいけない兵器なんだと。つまり、現代も非常に世界は文明化しておりまして、いろんな兵器についても、地雷とかクラスター爆弾も禁止する。なぜかといえば、非常に影響が非人道的だと。そういうものも禁止するんであれば、核兵器は当然禁止すべきじゃないかということで非常にタブーが強まっておるんで、このタブーの議論をどんどん強めていけば、私は方向として核兵器もじゃ禁止しようという方向が強まるんじゃないかと思うんで、それが一つの方向だと思います。  もう一つ、ちょっと時間が掛かりますが、参考までに申し上げさせていただくと、一つの入口として考えられるのは、それじゃ、国家が使ったときは、まあまだ持っている国があるんであれだけれども、核テロを使った者に対してはもう処罰したっていいじゃないかということが、私は一つの入口として、そこから始まって広げていくという方法があるかと思うんです。  これは、実は非常に面白いのは、今回のアメリカ核戦力態勢レビューの中にテロに対してアメリカは断固許さないという表現があって、その中に個人も許さないと書いてあるんです。個人も最後まで追及すると書いてあるんですね。  ということは、ただ、アメリカはこれはICCを念頭に置いて言っているんじゃないと思います。つまり、ICCにアメリカは入っていませんのでね。と思いますけれども、これは非常に、そういう意味においてはアメリカ政府考え方としては面白いそこに萌芽、芽が出てきていると思うのは、個人も追及するんだということをそこで言っているので、そういう意味においては、私はそこもこの芽を伸ばしていけるんじゃないかなと思います。
  11. 石井一

    会長石井一君) よろしいですか。いかがですか。  加藤理事。
  12. 加藤修一

    ○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  どうも大変、両参考人、ありがとうございます。非常に有益なお話、いただきました。また、軍縮関係についても懸命に取り組んでいることに対しては心から敬意を表したいと思います。  私は、まず最初に、気候変動と安全保障との関係についてお聞きしたいと思っています。  アメリカが最近出した、これ国防総省でしょうか、QDR二〇一〇年、この中でも初めて気候変動と安全保障に言及しているわけでありますし、それから、我が国防衛省で出しております東アジア戦略概観、この中でも気候変動と安全保障、そしてさらに気候安全保障という言葉についてもしっかりと記述しながら、気候変動の安全保障にかかわる極めて重要な要因であるということで指摘しているように思います。この辺についてどのようにお考えか。つまり、気候変動が安全保障に対しての影響についてはどのようにお考えかという点が一点。  二点目は、核の平和利用に関する件でありますけれども、原子力発電の動きで、私は反原発でも脱原発でもないわけでありますけれども、最近の国際市場における原子力発電所のビジネス展開の関係については、やはりやや慎重が欠けている可能性があるんではないかなと、そんなふうに考えておりまして、単にCO2削減とか国際経済の面における競争を懸命にやらなければいけない、何としてもビジネスとしてその仕事を取らなければいけないという、そういうことだけで動き回るのはどうなのかなと、慎重な行動が必要ではないかなと。  それは、核拡散が増大し人類の安全保障上懸念が生じるというふうに考えているからでありますけれども、例えば、ロシアがベトナムの原発の仕事を取ろうとしたときに軍事協力を含めて合わせ技で取っていると。あるいは、韓国が、これはアラブ首長国連邦だったでしょうかね、そこの原発を取るに当たっては相当ダンピングしている。二、三〇%のダンピングと工期を相当短縮しているということを考えてまいりますと、極めてこれ重要な施設でありますので、そういうことで、経済的な面から見るとそういうふうにダンピングしたところから買うというのはあれですけれども、ただ、安全保障上の関係とかそういった面を考えると、やや慎重な対応が望まれるんではないかなと、そう思っておりまして、この原発の拡大の動きとそういう安全保障上の懸念ということ、核拡散関係ですね、そういった面についてどのような見解をお持ちかというのが第二点目です。  第三点目は、これは今国会における文部科学省から出ている法案でありますけれども、RI、これ、ラジオアクティブな、放射性のいわゆる物質ですね、放射性同位元素等による放射性障害の防止に関する法律、これの改正案が出てきておりますが、要は、これにかかわる産業廃棄物、ある一定のクリアランス、放射性のクリアランスレベル以下のものについては足切りでいわゆる単純な産業廃棄物というふうに考えると。ですから、多少の放射性を帯びていても市中に出回るという、最終処分場にも当然出回ってくるという話になるわけで、それはどうチェックするかという厳しい法律がありますから、法律の目をくぐってそれが一般社会に出るということは余り考えたくない話でありますけれども。それと同時に、いわゆる汚れた爆弾という、ダーティーボムの話でありますけれども、この両者をどうチェックするかというところは非常に問題になり得るなと。チェックの体制が日本としてその辺のところは十分になされているのかどうなのか、その辺のもし状況がお分かりでしたら教えていただきたいということでございます。  それから、最後でありますけれども、先ほど黒澤参考人からは、人道主義的アプローチということで、非人道的武器禁止対人地雷禁止条約あるいはクラスター弾禁止条約関係の話がございました。  この動きの中で、金融面での動きも大きく変わってきているように私は思っております。倫理的ないわゆる投資、融資、これをもっと拡大していくべきであるということで、二〇〇五年以降では、ノルウェーの年金基金でありますけれども、総資産が約四十兆円ございます。このノルウェー年金基金が、クラスター爆弾あるいは対人地雷の製造企業への投資、融資は禁止だと、あるいは核兵器製造、人権侵害あるいは環境汚染などを行う企業への投資、融資は禁止にしますよと、こういう倫理的な投融資の動きが出てきている。あるいは、今二〇〇五年の話でしたが、二〇〇六年までには、ベルギーの金融大手KBCでありますけれども、これまた爆弾製造企業の投資、融資の禁止対人地雷もそうでありますし、あるいは生物兵器、劣化ウラン弾を含めて禁止、等々含めて、ベルギーにおいてはこういう面における法律も作っているということでございます。  要は、年間一兆五千億ドルぐらいの軍事費が使われていて、最近はまたそれが伸び始めてきているという話がありますので、そういうある種の投資、金融の関係についてどう方向性を変えるかと、削減の方向に持っていくかという件については、こういう倫理的投資、融資の関係についてももっと関心を持つべきでありますし、そういうことの増大をどういう仕組みでつくり上げていくかということは極めて重要な視点でないかなと、こんなふうに考えておりますけれども、この辺についての御見解がもしあれば教えていただきたいと思っております。  以上、四点お願いいたします。
  13. 石井一

    会長石井一君) 相当な御質問が出ておりますが、それじゃ、今度は阿部参考人の方からひとつお願い申し上げましょう。
  14. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) 最初の御質問で、気候変動と安全保障関係ということなんですが、気候変動と安全保障は二つの観点がございまして、一つは、核兵器を実際に使った場合に気候に非常に大きな影響が出るということで、これは冷戦時代に大量にアメリカとソ連の間で核兵器を使い合うと核の冬が来る、爆発と放射能だけのみならず、その核の冬の結果、人類は滅亡するんだということが言われたわけですが、最近の研究でも、冷戦時代のようなものは余り今想定されなくなったんですけれども、例えばインドとパキスタンの間でお互い五十発ずつ核兵器を使って戦争をしたという、比較的そういう意味においては小規模の衝突をしただけでもかなりの世界的な気候変動が起こって、農業生産その他に深刻な影響が出るというような研究発表が出ております。そういう意味において、そこまで考えると、核兵器というのはまさに小規模であっても非常に使いにくい兵器であると。  今、御承知のとおり、アイスランドで火山が一発爆発しただけで、その火山灰の影響で今年から数年間は農作物に影響が出ると言われておりますけれども、そういったことを考えれば、何十発と使ったらどうなるのかということがあります。  あともう一つ、別の概念からしますと、むしろ気候変動によって国家の安全保障が影響を受ける、あるいは逆に、意図的に気候を変動することによって仮想敵国を窮地におとしめるという非常に極端な考え方もあったようでございますが、冷戦時代にそういうことも議論されたというふうに聞いております。現在においてそこまで考えている国があるかどうかは非常に疑わしいんですけれども。現実の問題として、例えば温暖化が進んである国の一部が、肥沃な農耕地帯だったものが砂漠化するということは、その国の経済ひいては安全保障に深刻な影響を与えるということにおいて気候と安全保障関係というのは出てくるかと思います。  それから、核の平和利用、原子力の平和利用についてですが、現在、気候変動の問題もあって各国が原子炉をどんどん建設しようとしているということで、それだけでやっていいのかと。核の拡散の心配というのは非常に持たれておりまして、その意味においては、日本は私が見るところ、むしろ優等生で非常にまじめにやっておりまして、日本原子力施設を提供する、技術を提供するという国は、例えばIAEAの査察に関しまして追加議定書という、その国が報告したところだけじゃなくて疑わしいところも査察官が見に行けるという非常に強力なものですけれども、それを受け入れた国でなければ日本は提供しないという方針を取っております。  それから、インドとの関係なんかでは、日本はインドと協力してもいいんだけれども、まずそのCTBTを批准して核実験しないということを約束してくださいというようなことをいろいろ条件を付けていますので、その意味においては日本は優等生なんですが、逆に産業界からはそういうことを言っているから日本は原子炉売れないんだという不満もあるようでございますので、この点は私はやはりIAEAとか、それから原子力供給グループという輸出規制のグループがありますが、そういったところでこういった日本が自主的にやっている厳しいルールをみんなで適用する、競争条件は平等にしようじゃないかという議論日本が進めるということが正しい答えじゃないかと思いますね。その意味においては、例えば、それのみならず、売るときの輸出信用とか保険とか、そういった条件についても特別扱いで安く提供するというようなことはやめようじゃないかと、みんな同じ基準で競争しようというようなことをやっていったらいいんじゃないかと思います。  それから、ラジオアイソトープの問題ですが、これは現在、例の核テロ防止との関係で、今、ダーティーボムを造らせないためにそういった放射性物質を管理をどうするかと、強化しなきゃいけないということで、IAEAその他の機関中心に非常に各国の管理を強化するということで、日本もむしろ逆にその強化する方の先頭に立っておりますので、政府、監督機関もその辺は大分厳格にやっていると思いますが、もちろんその対象になりますのはかなり放射性の高い危険なアイソトープでございまして、非常に低い、その意味において安全だと言われているものまでどうするのかといった廃棄物の扱いにつきましてはまた別の議論があるかと思います。  そこは恐らく世論の啓発を含めてやらなきゃいけないと思いますが、とかくその放射性だというだけでもうみんな跳び上がっちゃって、そのレベルに関係なく廃棄物は問題だということになるんですが、そこはやはりどの程度ならば問題があるのか。例えば、ラジウムで健康とか何かいろいろなことをやっておりますが、いろいろな放射性のものは自然界にもいろいろ存在するわけで、その程度のものであれば問題ないんだということを理解を広めると。あるいは、そのレベルの何倍までは問題ないんだというその辺を広くみんなで議論して決めて、納得した上でやれば私はよろしいんじゃないかと思います。  それから、人道主義の点ですが、おっしゃるとおりで、これは最近の例の企業の倫理的な責任ということからもかなり議論が進んでおりまして、国連でも最近、任意でございますけれども、世界的にグローバルパートナーシップということで企業の責任を自覚してもらおうと。社会的に問題のある部門での投資あるいは企業活動は自粛しようじゃないかと。これは前のコフィー・アナン事務総長のときに大分積極的に推進しまして、日本の企業も幾つか参加しておりますが、私が記憶しておるところでは、たしか欧米の企業に比べて日本の企業の参加はまだ少ないというふうに聞いておりますので、そういう意味においては、参加を広げることによってある意味でのそういう抑制が働くかと思います。  以上です。
  15. 黒澤満

    参考人黒澤満君) 一番目は、阿部さんが述べられましたように、核の冬とかそういうところで影響してくると思いますし、もちろん環境とか人権なんかは平和であって初めて維持できるわけで、戦争が起こればその環境も人権もなくなるわけですから、その武力行使禁止をやめさせるというところで関係が非常に深いのではないかというように考えます。  それで、二番目の平和利用に関しては、これは特に米印協定辺りから非常に僕はおかしくなったんではないかと。米印協定をアメリカが強引に進めましたときに、我々は不拡散立場から非常に反対したんだけれども、ビジネスのところからこれは非常に有利なんだという議論と、それから地政学的に中国を囲むところでインドとの関係が重要なんだという二点が優先されて米印協定が進んでいったわけで、だから、そういう意味で、不拡散の側面が非常に欠けていたし、そしてビジネスとか地政学的という要請が優先されたというところが問題であって、今、加藤先生がおっしゃいましたように、ビジネスでどんどん出ていくと。アメリカが協定を結んだら、その後フランス、ロシアがインドにどんどん出ていっておりますし、ビジネス的に。だから、そういう意味で、やっぱりもっと不拡散の側面で。  だから、今回のニュークリア・セキュリティー・サミットでも、高濃縮ウランはもう減らしていく、そしてプルトニウムの使用も減らしていくという形で、平和利用であっても核兵器に転用可能な物質は極力減らしていく、そして高濃縮で余っているやつは薄めて低濃縮にしていくという方向が今の方向ではないかというふうに考えます。  それから、三番目の放射性物質に関しまして、IAEAの核テロの定義というのがあるんですけれども、少し広い定義でありまして、最初は核兵器を盗んで使うと。二番目は、核兵器の材料をどこかから入手して核兵器を造って使うというのが二番目で、三番目にこのダーティーボムというのが入っているわけですよね。だから、これは核兵器じゃなくて、放射性物質を通常爆弾と混ぜて行うと。これは非常に可能性が高いというふうに考えられておりますし、それから四番目には、テロリストが原子力発電所、そういうところを攻撃するという非常に広いIAEAの定義がありますので、そういう意味では一つの核テロでありまして、これをやっぱり防止するために、そういうあるいは病院にあるとかというふうな物質も管理していく必要があろうと思いますが、細かい法律については存じ上げませんので、そこまでにさせていただきます。  最後のところは、やっぱり企業の社会的責任とか、先ほど言われました国連のグローバルコンパクトですか、それで企業が倫理的にも社会的責任を持って行うと。だから、その辺はやっぱり税制優遇措置なんかもとって、政府としても進めていくべきではないかというふうに考えます。  以上です。
  16. 石井一

    会長石井一君) ツルネンマルテイ君。
  17. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 民主党のツルネンマルテイです。  阿部参考人に二つ質問させていただきます。  一つ目は、核兵器の削減についてですけれども、その意義について。  参考人のこのレジュメの一ページの下には、この削減の目標が書いてあります。すべての核兵器を持っている国の核弾頭保有総数をすべて合わせて二千以下に削減、あるいはアメリカロシアのそれぞれが五百発まで削減と書いてあるんですね。私は、これはもちろんできればすばらしいことですけれども、できたとしても、それで核の脅威はどのくらい減るんでしょうか。つまり、例えば五百発もあってもこれで世界すべてを滅ぼすことができるんですから、だから、それでは全くまだその脅威が残っているんじゃないかなということ、それを参考人がどう考えているか。  そしてもう一つは、その夢のような話、核兵器のない世界を今目指していますけれども、これは本当に実現可能かどうかということ。仮にそれぞれの核を保有している国がそれを達成していっても、今よく言われているのは、テロリストの手にどうしても核兵器が残っているおそれがあるんですね。かえってその場合は、それはもっと恐ろしいことになりますね。  だから、この二つの、核兵器のない世界ができるか、それに対してのどういう問題があるか、この削減には意義がどのくらいあるかということ、この二つです。
  18. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) 核兵器を二千に減らせば安心かというと、必ずしもそうではない。五百発使っただけでも大変なことになるわけですが、ここは率直に申し上げて理想主義と現実主義の妥協であって、その最小限地点までまず行ってほしいという目標を、核兵器を実際持っているアメリカロシア中国とかの指導者に、まあしようがない、そこまでやろうかと思わせるためにその程度の目標にしたということでございまして、実際はアメリカの有識者とかなんかでは、いやいや百発まで減らせるんだ、百発ありゃ十分なんだという議論もあります。そういう声もあったんですけれども、ここは議論した結果、この国際委員会の中で議論した結果、ちょっとそこは理想が高過ぎるかもしれないということでこの数字に収まったという背景がございます。  それでは、じゃ、理想として核兵器のない世界が実現できるのかということですが、私は実現できると思います。ただし、実現するためには幾つか非常に大きな達成しなければいけないことがありまして、一つは、核兵器がだれも持たなくなったという状況においては、もしだれかがまだ一個を隠し持っている、あるいは十個隠し持っている、世界各国が自分の言うことを聞かないとこれを使うぞということを脅された場合にどうするのか。あるいは、なくしたという国も、いやいや、ちょっと事情が変わったので自分はもう一回造り始めるというようなときにどうするか。あるいは、核兵器は使わないけれども、どこかの国が通常兵器で戦争を始めたというときにどうやって平和を回復するかということについて、現在の安全保障理事会よりも更に強力な、しかも有効な平和維持の枠組みをつくらないといけないと。  つまり、現在の安保理事会は五大国が拒否権を持っておりまして、いろんな問題が起こってもなかなか決まらない、なかなか有効な手が打てないということでいろんなところで紛争が発生するし、紛争が続くという状況で、そういう状況だとやっぱりこれは核を持っていた方がいいなということになっちゃってゼロは実現しないということなので、その意味において平和を維持するための強力な組織をつくる。一部の人は世界政府ができなきゃ無理だと言う方もいらっしゃいますけれども、世界政府と似たような非常に強力な権限を持って、悪いことをしている国は実力ででも抑えられるような強い組織ができないといけないと、それが一つでございます。  もう一つの条件は、現在IAEAが各国の査察をして核物質を核兵器に使っていないかと調べているんですけれども、ゼロに持っていくためには、本当にどこにもそういうものは残っていないということを世界中で確認するようなことができないとなかなかみんな安心して自分もゼロにしようと言わないんで、その意味において、IAEAを抜本的に強化して、追加議定書も全部例外なく守ってもらって、さらに、もしかするとそれよりも更に強力な査察制度をつくって、どこでもいつでも調べに行けると。どこにも濃縮ウラン、プルトニウムが残っていない、爆弾も残っていないというのを確かめられるような制度をつくらないと実現しないと、こういうことを言われておりますので。  しかし、これは夢ではない、私はできるんだろうと思います。結局、世界はやっぱり人間がつくっているものでございまして、人間がやろうと思えば私はできると思います。
  19. 石井一

    会長石井一君) ほかに御発言はいかがですか。  それじゃ、藤田理事。
  20. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 阿部参考人にお聞きしたいと思いますが、核を含めて、広く参考人は、対人地雷禁止、クラスター爆弾を含めて、いろいろ政府でかかわってこられましたけれども、人間が意思を固めればということとの関連で、アメリカはかなり大きくいろんな意味政策転換したということなんですが、日本の場合に政権交代が起きたと。先ほど、黒澤参考人が冒頭でおっしゃった、今までの日本政府に対していろいろな意見があって、これを、その意思を反映させていくような政策決定を更に加速するにはどういうふうにしていったらいいのか、政府にいらっしゃった立場も含めておっしゃっていただきたいと思います。  それから、黒澤参考人に関しては、ある意味では政府、それから専門家、NGO、市民等々のいろんなステークホルダーのかかわり方が変わることによって、あるいはその連携の仕方を変えることによって、その意思を政策決定に反映させるためにはどういう運動を国内国外を含めて展開したらいいのかについてお答えいただきたいと思います。
  21. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) アメリカ政策は、今度の核態勢レビューでも非常にはっきり出ておると思いますが、核兵器はもうできるだけ減らすと。核兵器に対する依存は減らすと。しかし、安全保障抑止力は維持するんだということで、アメリカは核以外の通常戦力の抑止力をどんどん強化すると言っていますですね。また同時に、非常に人道主義的な観点からの批判もありますので、できるだけ大量破壊ではなくて目標を絞って使える有効な兵器を開発しようということが出ておりまして、幾つかこれは問題を提起しております。  一つは、アメリカ自体がそういうできるだけ、例えばイラクの戦闘なんかもそうですけれども、いろいろ一般市民を犠牲にしたというので非常に批判されておりますが、それじゃ、できるだけもうピンポイントで相手の兵隊だけを殺傷できる兵器を使おう、あるいは最近はアメリカでよく言われておりますのは、非殺傷兵器というのを開発しようじゃないかと。要するに、殺さない兵器、相手を一時的に無力化する兵器とかいろんなものを造ろうという努力がなされております。  それから、更に進んで、今度は核兵器はやめて、例えば大陸間弾道弾がありますけれども、これはやめる。核弾頭は積まないけれども、それに通常弾頭を爆薬を積んで、一時間足らずでアメリカ本土から発射して相手の国のどこか急所を突いて相手を屈服させようというような兵器も今開発しておると言われておりますが、これは、そういう意味において、大量破壊兵器を使わない、より人道的な差別的な兵器をつくるという意味においては、ある意味では理論的にはいいのかもしれませんが、今アメリカでも大分議論が出ておりますが、本当にそれでいいのかと。逆に言うと、そういう兵器は今度は使いやすくなるんですね。それでいいのかという議論も大分ありまして、そこのところはよく考える必要があるかと思います。  それと、もう一つは、今回の核態勢レビューをよく読んでみますと、アメリカは核の役割を低下する、その代わり通常戦力の抑止力は強化するんだということで、同盟国にも協力を求めると言っていますね。ですから、そういう意味においては日本政策についても問題を提起しておりまして、アメリカが核の役割を低下して、核の傘の大きさも小さくする、日本に掛かる核の傘も小さくなるということは、この報告書が言っていることは、ということは日本アメリカ協力して通常戦力の抑止力を強化しなきゃいけないと、こういうことを言っているんですけれども、日本政府としてどういうふうに反応するかというところは、そこは大いに議論を要するところかと思います。  それから、三番目に、そういうアメリカの新しい方向性が出ているんですけれども、実際にそれではアメリカの方向にみんなが従って同じ方向に動くためには、ロシアとか中国とかほかの国、フランス、イギリスとかですね、ほかの主な国も自分らもそういう方向に向かおうと言ってくれないと核戦力は削減できないですね。ロシアは逆に今、違う方向の議論を国内でしていますので。ロシアが減らないと、アメリカは、それじゃ今度は次の段階の減らすのはできませんねと、こういうことになるわけですね。  これからの一つの大きな課題は、ロシアのような国、アメリカがやっているような最先端の通常戦力兵器を開発する科学技術も少し最近は衰えてきたし、財力もないという国が、むしろ逆に安全保障のためには今度は核兵器役割を大きくするんだと言い始めておるわけですが、そういう国をどうやって説得して核兵力の削減をさせるかと、これも三番目の大きなチャレンジだと思います。  以上でございます。
  22. 黒澤満

    参考人黒澤満君) ありがとうございます。  藤田さんの質問ですが、政府専門家もNGOも一緒になって議論してということで、手前みそになるかも分かりませんが、私と阿部さんが中心になりまして、昨年、日本軍縮学会というのを立ち上げました。  これは、普通、学会というのは本当もう学者だけでやるんだけれども、軍縮の問題を学者だけでやっていても全然意味がないし、政治家も入っていただいて、それから外務省の方も入っていただいて、そしてNGOも入っていただいてということで、昨年の四月と八月に既に会合をしまして、来週の日曜日、今度の日曜日にまた東京NPTレビューに関してやりますので、よければ是非政治家の方にも来ていただきたいんですが。日本で今までそういうフォーラムがなくて、学者は学者でやっていたし、NGOはNGOでやっていたしということで、それではやっぱり日本として軍縮に進まないだろうと、だから全体で議論すべきだと。右も左も、官も民もですね、ということで、現在百二十五名ぐらいです。  政治家がそこに入っておられて、川口さんには既に去年の四月には報告もしていただいておりますので、そういう形で政治家、それから外務省の現役の方々、それからOBの方々も入っておりますし、それで学者が半分ぐらいいるんだけれども、あと広島市長、長崎市長、原水禁、原水協、その他様々なNGOが参加しています。それでみんなで議論しようというのが我々の目的でありまして、今までこういうフォーラムがなかったので、これからうまくこれを活用していきたいし、そして政治家の方にももっと多く参加していただきたいというふうに考えております。  それで、会合は年に二回ぐらいですけれども、ニューズレターは年に三、四回出しておりますし、そして年に一回機関誌も出しまして、創刊号はギャレス・エバンズと川口順子さんの巻頭のアーティクルがありまして、それから専門的な分析とか書評とかいろいろありまして、日本軍縮学会というので検索して入っていただければすべてネット上でオープンにしておりますし、今度の日曜、どこでどういう形でやるかというのを全部ありますので、ちょっと今、アドレスが非常に長いので、日本軍縮学会というので検索していただければすぐ出てきますので、是非政治家の方にもっと入っていただきたいなというふうに考えております。  だけれども、これは学会としてやるので、政治運動でもないし、あるいは平和運動でもないと。あくまでも学術団体としてやりますよと。だから、それをベースにいろんな形で組んでいただいて、運動を進めていただければというふうに考えております。  以上です。
  23. 石井一

    会長石井一君) それでは、有村理事。
  24. 有村治子

    ○有村治子君 自由民主党の有村でございます。今日は両先生、ありがとうございます。  軍縮ということを考えたときに、やはり相手国あるいは相手というのがあるんですが、国内の支持率というのもこれまた大事な要素だというふうに思っています。  それで、先ほど阿部先生がおっしゃったように、国内の世論がまとまる、まとまらないだけでなく、相手の出方によってもそれが成功したかどうかというのの判断が出てくると思うんですけれども、やはり外交とそれから内政問題が表裏一体で、世論の後押しがあってこその外交ですし、その外交の余波をやっぱり国内問題も直撃受けるということを考えると、どのようなアプローチがやはり支持率を上げてきて、本当はトップリーダーもいい意図を持ってやってきたんだけれども、思ったほど国内の支持率が上がらなかったとか、そういう教訓や知恵がありましたならば、その相関について御言及をいただきたいと思います。  以上です。
  25. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) なかなか難しい質問でございまして、確かに私が軍縮について感じますことは、やはり理想が一つ日本の国内にあるわけでございますね。広島長崎の経験もあって、核は廃絶しなきゃいかぬというのがあるんですけれども、若干それは神棚に飾るお経みたいになっちゃっていまして、毎年八月になると、総理、参議院議長、皆さんが広島長崎へ行って核廃絶に努力しますと言うんですが、もうそれが終わるとみんな何となく忘れた感じで、余り実際の活動に移していない。  実際の、今度は自衛隊をどうするか、日本の防衛力はどうするのか、あるいはアメリカの同盟関係をどうするかとなると、余りその話は入ってこないんですね。そういう意味において、非常に日本の国内において核廃絶の理念というものと現実の外交、安全保障、同盟関係というようなものの断絶が大きいんじゃないかと思うんですね。  ところが、今回のアメリカの新しい政策によって核が実際に削減され始める、ゼロに向かっていくんだということで、ある意味では初めて軍縮という問題と実際の日本の国の安全保障、防衛力、同盟関係というのをどうするかというのを、実際の連携が出てきたんですね。それまでは、軍縮はどうぞそっちでやってください、我々は防衛は防衛でやりますという感じだったんですね。  そういった意味においては、先ほど私がお願いを申し上げたいろんな軍縮と核の傘がどうなるのか、あるいは米ロ関係、米中関係のようないろんな議論を、軍縮の人と安全保障の人と両方一緒になってみんな議論しないと意味のある議論ができなくなってきたんですね。そこで、私は、是非ともこれは一緒に議論する場をつくっていただきたいし、一緒に議論しなければ正しい答えは出てこないと思うんです。  ということで、答えになっているかどうか分かりませんけれども、その断絶があるがゆえに、私は、なかなか、理念はあるんだけれども世論の支持に直結してこないということがあるんじゃないかと思うんですね。  例えば、世論調査をして、核兵器はなくすべきかどうか、日本核軍縮に努力すべきかどうかというと、みんなイエスだと答えると思うんですね。実際何をするかとなると、なかなかそこのところの次の答えが返ってこないんで、そういう意味において両者を結び付けた現実的な議論を是非とも展開したいと思います。
  26. 石井一

    会長石井一君) 黒澤参考人も何か御意見ございますか。
  27. 黒澤満

    参考人黒澤満君) 私も阿部さんと大体同じ意見なのですけれども、そういう、今まで私はそんなに意識していないけれども、軍縮の人は軍縮だけで、安全保障の人は安全保障の人だけで議論しているという傾向が日本であったように思いますが、今回、学会をつくったのも、半分は安全保障の人が入っておりますし、そういう側面から多面的に議論していきたいということを考えてやっております。
  28. 石井一

    会長石井一君) 大石正光君。
  29. 大石正光

    ○大石正光君 いろいろ大変御苦労さまでございます。  今、阿部先生がおっしゃった正しいことというのは、ちょっと何が正しいことなのか、御自身がお考えになっている部分の中で正しいというお言葉をされたのか、その正しいというのは何を理屈に正しいと言うのか、元が変われば全部変わるんですよね。時代によっても変わってくるし、より近い理念に持っていくという理屈はあるけれども、その辺はやはり疑問だと思うんです。  特に、アメリカとかソ連と日本考える核とか、アレルギー、原子力に対するもの、要するに原発に対するものというのは非常に違いがある。そう考えると、一体、核アレルギーという日本の特殊なものというのは、原子力やあらゆるものに関してすべてアレルギーになっている部分というのは非常に強いんですよね。特にマスコミとかそういう広報関係は、よりそういうものに対する一部分をクローズアップして本来の姿を表していない部分がある。  今、温暖化の中で大変この原子力というものが、結局は今まであるような地球上にあるエネルギーを利用する中で、やっぱり一つ、ある程度安定的であり安全である部分というのがより重要視されてきているわけですけれども、そうなったときに、日本がこれからエネルギーの発展の中で原子力という一つのイメージと、原発という、要するに原子力という爆弾というものに対するイメージが全部ダブっちゃって、先ほどお話しのように、棚に上げてしまって、八月の原爆の日、そういう部分、長崎広島がやればすべて終わりみたいな感覚。  ところが、結局、原発を造るときにはそれとダブらしちゃって全部すべて報道したり、いろんな情報が入るわけです。そうなると、一体これから日本の国だけではなくて、アメリカもそうでしょうけれども、そういうものに対する意識をどう専門家として変えていけるのか。変えるのがいいのかどうかは別にしても、変えて、地球というものがよりこれからますます人口が増えていく中で、生存していく中でのエネルギーの確保の部分の中での考え方を地球上により広めていけるという部分の中で、何か御提案とかお考えがあればちょっとお聞きしたいと思ってお話し申し上げました。  お二人それぞれ、もしありましたら、お願いいたしたいと思います。
  30. 石井一

    会長石井一君) それでは、まず黒澤参考人、今度はいかがですか。
  31. 黒澤満

    参考人黒澤満君) エネルギーの確保というのはこれから非常に重要になると思いますし、その中で原子力がある程度の役割を果たしていくというのは避けられないことだと思いますよね。  それで、一部には原子爆弾と原発は一緒だから両方駄目だという見解もありますし、そしてそれは全然違うんだという考え方もありますよね。だから、これはやっぱり基本的には教育が重要だろうけれども、私自身は違うと考えております。その中で核爆弾につながるようなところは当然だんだん減らしていくし、そして核兵器に使われる核分裂性物質は使わないという形で、だから日本のプルトニウムも若干問題になるかもしれません、その点では。  だけれども、エネルギーの確保から低濃縮ウランを使っている場合に、そしてIAEAの査察を、追加議定書も含めて、受けている場合には僕はこれで行けるのではないかというふうに考えておりますので、世界的にもそういう基準で、IAEAの追加議定書を基準とするというのが今一つ動きになっていますので、それを最低限にして平和利用は認めるというのが僕はこれから進んでいく道ではないかというふうに考えております。
  32. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) エネルギーと環境問題という観点からしますと、これから世界の経済が発展していくためにはエネルギーが必要、できるだけ環境に優しいエネルギー源を使うとしましても、ある程度原子力エネルギーを使わざるを得ないということは否めないところだと思いますね。  風力、水力、いろいろありますけれども、天候に左右されるということもありますので、基本的なエネルギーとしてやはり原子力がある程度のシェアを占めざるを得ない。  他方、いろいろ言われているみたいに、原子力がこれから飛躍的に伸びるかというと、それも起こらない。恐らくは、現在のエネルギー供給に占めるそのシェアを維持するか、ちょっと伸びる程度であろうかと思いますけれども。  ただ、悩ましいところは、結局、現在考えられている原子力は、核融合炉ができるまでは基本的に核分裂でエネルギーを出すと。それは濃縮ウランかプルトニウムしかないということで、爆弾に使うものと共通したもの、原理が使われると。そこが悩ましいところでございまして、どうやってそれを分けて、軍事用に使われないようにするかということでいろいろ苦労してきたわけですけれども、その辺を分けるのは、結局、IAEAとか何かの国際的なルールを強化して、そのルールの適用を強くするという以外に基本的にはないんでございますね。もちろん、日本でこれからMOXを使い、それからその後は、私が聞くところによると高速増殖炉でプルトニウムを使ってウランのなくなる日のために備えるんだということなんですけれども。  これも国際的に、先ほど黒澤先生がおっしゃったように、各国がどう見るかというのを非常によく考えなきゃいけないのは、プルトニウムはまさに兵器用に使えるそのものなんですね。ですから、その生産を増やすということについてどうなのかというのは難しいところで、ここも先ほど、私、軍縮コミュニティーと安全保障コミュニティーの対話ということを申し上げましたけれども、もう一つは、この軍縮コミュニティーと原子力産業コミュニティー、あるいは原子力技術コミュニティー、ここの間の対話が実はあんまりありませんで、私ども国際委員会で、二〇二五年までに最小限に持っていく、その後、今度は廃絶へ持っていくんだということにしましたけれども、逆に今度は、原子力産業界は何を考えているかというと、将来、二〇五〇年ぐらいにウランの資源が枯渇し始めるということを考えて、それまでに高速増殖炉を実用化しなきゃいかぬということを考えているんですね。ということは、もうプルトニウムのまさに生産に走るということなんで、そういうのが核ゼロに向かう世界で可能なのかどうかということですね。  済みません、その辺よく考える必要があると思うんです。
  33. 大石正光

    ○大石正光君 皆さんのそういう専門の言葉は、皆さん御専門だから、それを聞きたいと思って質問したわけじゃありません。いろいろ、千人から千五百人の人を集めて、研究会開いて勉強会している。政治家はもっと入れとおっしゃった黒澤さんですよね。だったら、何のために政治家を入れてそういうことをおやりになるのか。政治家が入ることによって、より政策や、さらには国民にアピールして、原子力の安全性や、さらに不拡散の問題を、より意識を変えるなり前進して、アレルギーを消していこうという意識があるんだろうと私は想像したから御質問したんです。  それがなかったら、皆さんはそういう学者の範囲から一切出られないという、要するに専門的なことは別に分かっているわけで、それじゃなくて、専門家から見て、日本のアレルギー性をどう変えたらいいのかとか、マスコミに対してどういうふうにアピールしたらいいのかというアドバイスがあれば聞きたいとお話をしただけでありまして、専門的な言葉は別に私は聞きたいと思っていないんで、私の質問の仕方が間違っていたのかもしれませんけれども。  さっき、最初に言ったことの中で、どうやったら国民の意識を前向きに変えさせられるかという部分で皆さんのお考えがあれば、お答えいただきたいと思います。
  34. 石井一

    会長石井一君) ほかに御発言がございますか。犬塚直史君。
  35. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 私の地元に、離島が多い地元なんですけれども、例えば対馬とか上五島なんというところに、高レベルの核廃棄物の最終処分場を持ってくるという話が過去ありまして、まあ今も続いているんですがね。そうするともう町の中の、小さな町の意見が全く二分されて、大きな議論になるわけですね。  考えてみると、先ほど阿部参考人がおっしゃいましたけど、IAEAを主権国家を超えるぐらいの権限を与えて、いつでもどこでも査察に入れるんだという形をつくったとしても、やっぱりその先、この原発、高レベルの核廃棄物でさえも、これはテロリストの手に渡ったら結構な被害になると。フランスのミッテランのアドバイザーをしたジャック・アタリは、脱原発やらない限りは核不拡散はあり得ないということも本に書いたりしているんですけど、そう言われればそうかなと思ったりもいたします。  この件について、つまり核廃絶ということを本気でやるときの脱原発というこの二つの関係について、もう一度お二人の参考人の御意見を伺いたいと思います。
  36. 黒澤満

    参考人黒澤満君) 極端な意見を言いますと、やっぱり原発からまだ核兵器ができることもありますし、それから、いろんな廃棄物とか問題がありますから、核廃絶をやるためには原発もなくすというのが理念的には正しいかもしれませんけれども、僕は現実の問題としてはその選択肢は取れないのではないかと。  だから、その辺は常にジレンマが伴いますけれども、原発に関する最終処理場も含めて厳格な国際管理なりを強化することによって、そちらは残しながら核兵器はなくしていくと。だから、もちろん核に関してはそういう兵器の側面とエネルギーの側面があるわけですけれども、僕は切り離してできる限りいけると思いますし、いくべきだと考えます。
  37. 阿部信泰

    参考人阿部信泰君) それは原子力を、全く始まっていない、始める前の段階であれば、こういうものを使ってエネルギーをつくり出すべきかどうかということを考えて、やめるという結論もできたかもしれないんですけれども、これだけ世界中に何百という原子炉があってエネルギーの供給源になっているという状況で、もうやめたというのはなかなか難しいと思いますね。ですから、これはそういう意味においては、二酸化炭素を直接は出さないエネルギー源として活用していくと。  なおかつ、核兵器を造ったりする国はあるんですけれども、原発をやればすぐ核兵器ができるということじゃなくて、これはやっぱり隠れて、そういう意図を持って核兵器を造ろうという国が問題なんですね。ですから、私は、原発産業を持つ国が即悪だということではなくて、そういう隠れた意図を持つ国が悪いんであって、それを取り締まれば問題は解決するんじゃないかなと思います、あるいはコンテーンできると思います。
  38. 石井一

    会長石井一君) ほかに御発言はございませんか。  それでは、参考人に対する質疑はこの程度といたします。  一言ごあいさつ申し上げます。  黒澤参考人及び阿部参考人におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、おかげさまで大変有意義な調査を行うことができました。調査会を代表し、両参考人のますますの御活躍を祈念いたしまして、本日の御礼とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  39. 石井一

    会長石井一君) 速記を起こしてください。  次に、アジア安全保障及び我が国軍縮外交について委員間の意見交換を行います。  議事の進め方でございますが、去る四月七日及び四月十四日に行った調査の概要と論点整理について調査室長から説明を聴取した後、お手元の資料も参考にしながら、二時四十五分ごろまでをめどに委員間での自由な意見の交換を行っていただきたいと存じます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、調査室長から説明を聴取します。杉本第一特別調査室長。
  40. 杉本勝則

    ○第一特別調査室長(杉本勝則君) 三年目における国際問題に関する調査の概要について御説明いたします。  今日、気候変動、金融危機などが国際安全保障の新たな問題として重要性を増す一方、アジアでは軍事予算の増大など伝統的脅威も存在し、地域の平和と安定のための取組が求められております。また、温暖化対策に伴う原発利用の拡大に起因する核テロリスクや核開発国の増加に対する核軍縮・不拡散が重要な課題となっております。これらの点を踏まえ、三年目においては最終報告に向け、国際安全保障の新たな課題、アジア安全保障及び軍縮問題への取組において我が国が果たすべきリーダーシップについて取上げいたしました。  まず、四月七日の調査会では、国際安全保障の新たな課題について調査を行い、調査会では、大量破壊兵器の拡散など様々な国際安全保障上の脅威の増大、科学技術や情報化に支えられた社会インフラの脆弱性、気候変動に起因する安全保障問題、核テロやサイバーテロへの取組強化の重要性などについて意見が述べられました。  続く四月十四日の調査会では、アジア安全保障への我が国の取組について調査を行いました。調査会では、地域安定の基盤である日米同盟の維持・深化の在り方、日米中三国の安全保障面における相互依存関係の構築、東アジアにおける経済相互依存体制の促進、重層的な地域安全保障ネットワークの構築の重要性などについて意見が述べられました。  また、本日、ただいまございましたように、我が国軍縮外交について調査を行い、各参考人からは、我が国核軍縮政策の課題と今後の在り方、核軍縮・不拡散に関する日豪国際委員会米国核戦力態勢レビューなどについての意見が述べられました。  なお、お手元には、以上述べました調査会における議論を主要論点別に取りまとめたものと参考人意見陳述の骨子を配付いたしておりますので、本日の意見交換の参考にしていただければ幸いでございます。  以上でございます。
  41. 石井一

    会長石井一君) これより委員間で自由に意見交換を行っていただきたいと存じます。  発言を希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願い申し上げます。  発言の時間は三分程度、これはもっと少なくても多くても結構ですが、それでは発言を希望される方は挙手をお願い申し上げます。  まず、川口順子先生辺りからいかがですか。
  42. 川口順子

    川口順子君 何を申し上げていいのか、ちょっと今一生懸命見ていたところなんですけれども、今までの議論についてよくまとめていただいているというふうに思います。  客観的な分析ということも大事ですけれども、この調査会としては、例えばここに二つ、二つといいますか、一つですが、アジア安全保障における我が国役割というところが書いてございますけれども、多分それと、それから国際安全保障という名前が適切かどうか分かりませんが、広く国際的な新しい課題、一番一ページ目の上の方に書いてある様々なこと、それに対する我が国役割、何をすべきかということと、我が国としてやるべきことを二つ、塊として分けて、それで議論をしていくというのが適切なんじゃないのかなと、まとめるといたしましたら、という気がこの紙を見て思いました。  この紙、一ページ目に国際安全保障における我が国役割、課題は何かというふうに書いてありますけれども、多分これからまだ議論をしていくということなのかもしれませんけれども、多分もっともっと幅広く、例えば貧困の問題もありますし、そういった問題に対しての我が国がやるべき責任というのは何かということも含めて、二〇一五年、ミレニアム・ディベロップメント・ゴールズの期限でもありますし、少し予算、あるいは実際にやることとして何ができるかという議論も膨らませたらいいのかなというふうに思っています。  今の時点で何がという、その答えを私の方で申し上げられないのは申し訳ないんですが、一部の議員の間で議論をしている例えば国際連帯税の話とか、そういうことについても、より実質的に中身を付けていくということも議論をしてもいいのではないかというような気がいたしております。  突然の御指名でございますので、用意ございません中ですが、取りあえず感想でございます。
  43. 石井一

    会長石井一君) どうもありがとうございました。  どうぞ御自由に御発言を。大石正光君。
  44. 大石正光

    ○大石正光君 川口先生の後で非常に緊張しておりますけれども。  実は、私はこの日米中という関係の部分、日本中国というものは、天安門事件以前と以後、まるっきり中国の体制が変わって、中国自体も民主化というものに対して非常に積極的になってきましたね。それに併せて、この②に、日中関係の中で、中国が民主主義になることを望んでいると同時に、中国と台湾との関係というものが大きく変わってきている。  その後、一つの転換は、台湾政策中国側の窓口の代表がだんだんだんだん若返ってきていると同時に、特に今やっている王毅というのは駐日大使をやった非常に現代的な、近代的な教育を受けた青年だったんですよね。それが台湾弁公室の中国側の代表になったということは、要するに今までの中国が台湾に求めている考え方から大きく変わったと、踏み込んでいったんじゃないかと気がしてならないんですね。  かつて私は、香港が中国に吸収されるときに、私は李登輝に三年ぐらい、毎年行ってお会いをしました。で、そのときにお話ししたことは、慌てなくてもいいですよねと、そう言った。向こうはそうですねと言うから、もう一つ踏み込んで、中国は香港をのみ込んだけれども、あと十年たてば香港が中国をのみ込むように変わりますよと。ということになれば、台湾は十年たてば香港的な中国になってくるから、決して台湾がすり寄ることなく、じっくり待っていれば自然に解決に向かっていく問題が大きく広がっていくと。そういうことをしながら、時代が変わっていくことによって、中国が民主主義というものを取り入れれば取り入れるほど、国内の問題により広がって、課題が増え、今では要するに温暖化だけではなくて環境問題も、かつての日本の昭和三十年代に苦労した部分をまともに食らっているわけですね。そういう問題が、一斉にいろんな問題が出てきて、中国自体も大変苦労しているというのがあると思うんです。  でも、そう考えてみると、このアジアというものを考えたときに、何が解決の最大のポイントかというと、やっぱり国力と国民の生活の豊かさがいろんな課題の解決の最大のポイントじゃないかなって気がする。豊かな国でもやっぱり個人個人が豊かじゃないと、どんなものも解決できない。しかし、豊かになればある程度その解決に向かうことが可能になって、手を結ぶことがどんどん積極的にできる、それがこのアジアの最大のかぎじゃないかなという気がするんですけれども、何か答えになっていなくて申し訳ないんですけれども、率直にそんな感じがいたしました。
  45. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 私は、今のこの意見交換の何というか趣旨というのがちょっとはっきり分からない。つまり、今私たちに配付されたこのペーパーが参考人の発言の概要、もう既に終わっていること、そして私たちはいろんな意見を述べた、それもここに入っていますけれども、これに対する意見を期待しているか、あるいはこれに含まれていない何か新しいことを提案してもいいかということは、これは、趣旨はだれに質問したらいいか分かりませんけれども。
  46. 石井一

    会長石井一君) いや、それは新しいことでも結構ですよ。大体のガイドラインを示しておりますが、今また新しい意見がいろいろ出ていますから。
  47. ツルネンマルテイ

    ○ツルネンマルテイ君 そうすると、一つは、検討してほしいというか提案ですけれども、このテーマは、日本国際社会における役割リーダーシップ発揮というのがテーマですね。それで、ここではそれをいろんな意味でディスカッションしていますけれども、例えば、今は、鳩山総理大臣がよく主張しているこのアジア共同体、これは総理だけではなくて以前にもそういう動きもあったんですね。恐らくそれに対しても賛否両論があるんですね。あるいは、それはこのアジアでの安全保障に対してどのようにかかわっているか。私には意見はありませんけれども、こういうことも私たちもここでかなりこれからも話題になる、そのアジア共同体ということは。それを賛否両論でもいいですから、それについても何かこの場でも意見交換してもいいんじゃないかなという提案です。今日じゃなくても、これからの。
  48. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 まず、川口委員国際連帯税に係る御提案といいますか提議に私は大賛成であります。  それから、今ツルネン理事が言われた東アジア共同体、経済的にはもうかなり網の目のように組み込まれているわけですが、安全保障の面ではまだまだ、共同訓練等々行われているようですけれども、ヨーロッパの例えばNATO、そしてEU、OECDですか、それからアフリカでさえもAUというのができてきた、にもかかわらずアジアにはそういうものはなかなかなくて、そういう構想が全く出ていなくて、普天間問題ばかりがクローズアップされているというのはやっぱり非常に問題ではないかなと。  前政権のときから世界の中の日米同盟と言っていたわけですから、やっぱり日米同盟二国間だけで考えるのではなくて、これを多国間で考えていくぐらいの、具体的に言えば国連憲章八章に基づく地域的な取決めというのがありますので、こういうところに向かって、例えば日米同盟に今度は韓国を入れる、中長期的には中国を入れるというようなものに置き換えていくということがあってもいいのではないかなと。今、具体的に在日米軍基地の七か所には国連旗が立っておりますので、朝鮮戦争終わっておりませんので、そういう意味では、地域的な取決めに今の日米同盟を発展させていくと、多国間の枠組みにしていくと、日米同盟を憲章八章に基づく地域的な取決めに発展をさせていくということがあってもいいのではないかと思います。
  49. 加藤修一

    ○加藤修一君 今日参考人にも質問したわけなんですけれども、一点目は、やはり世界の軍事費総額、これは一兆四千億ドルを超えると、これは二〇〇八年の実績でありますけれども、前年比四%増ということで、今、世界の様々な課題解決のためには革新的資金調達のメカニズム、先ほど川口先生からは連帯税の話があって、今犬塚さんからも話がありましたけれども、貧困の問題あるいはMDGsに対してどういうふうに対応するかという意味では、資金需要は相当あるわけでありますので、それにどう対応するかということを考えた場合には、この軍事費に対して兵糧攻めをするということも非常に大事であると。そこに金融の面からお金が流れないようにどう考えるかという、そういう仕組みをどうつくるかというのが極めて私は重要であると思っております。  それで、先ほどお話しした件と若干重なりますけれども、クラスター爆弾禁止条約等を含めて、例えば二〇〇七年にベルギーで国内金融機関の爆弾製造者への投資、融資の禁止法律ができた。この法律は、ベルギーに限らず、ルクセンブルク、アイルランド、また討議中の国はレバノンとかメキシコ、ルワンダ等、そういうところで広がりつつあるというふうに、特にEUでこういう面についての関心が大きいということだと思うんですね。  先ほど参考人からも話が答弁としてあったのは、国連のグローバルコンパクト、いわゆる会社の、企業の社会的責任、CSRも当然そうなんでしょうけれども、いかなる投融資を今後進めるか、その場合に倫理的な面からの制約をどう課すかという、そこに関心が若干移りつつありますし、拡大の方向ではないかなと、そう思っております。そして、UNEPのFIとか、そういう投融資原則についてしっかりと認識を深める必要があるんではないかなというのが第一点であります。  それから、その関係でもう少し話しますと、JBICの調査でありますけれども、地球温暖化、CO2削減という緩和の関係ではたしか四千億ドルを超えるぐらい必要になってくる話がありますし、適応では一千億ドル超える、あるいは水インフラの関係では二千億ドルを超えるという、そういう観点考えると、やはり投資需要、融資需要が相当数あるということですから、こちらの方にどうやって流れを変えていくかという、金融上のですね、そういうことが極めて重要だというふうに認識せざるを得ないんではないかなということが一点目。  二点目は、やはり核テロの関係で、せんだって参考人が言ったのは、核兵器を核テロとして考えるというのはなかなか生じづらいだろうと、問題はやはりダーティーボム、汚れた爆弾の方が蓋然性は極めて高いという話がありましたので、これは日本としてどういうふうに対応するかということについてはまだまだ十分ではない、チェック体制等を含めて十分ではないわけでありますので、そういうところについてはしっかりと対応をやっていくことではないかなと。  三点目は、平和と環境の問題で、実は一九九二年にリオ・サミットがあって、そこでアジェンダ21が採択されておりますけれども、持続可能な開発のための人類の行動計画というふうに、これ自体を採択したということで、その中の、二十七の原則がありますけれども、第二十五原則とか第二十六の原則、第二十五原則は「平和、開発及び環境保全は、相互依存的であり、切り離すことはできない。」と、第二十六原則は「各国は、すべての環境に関する紛争を平和的に、かつ、国連憲章に従って適切な手段により解決しなければならない。」と、こういうふうに第二十五、第二十六原則として規定しているわけで、これは採択された文書の中の一部であるということについてはもう少し我々は認識を深めていかなければいけないのかなと、そんなふうに思っております。  以上です。
  50. 大石正光

    ○大石正光君 ちょっと一言、いいですか。
  51. 石井一

    会長石井一君) はい、どうぞ、大石委員
  52. 大石正光

    ○大石正光君 川口外務大臣に、逆に私、質問したいくらいでございまして、実は陸軍の最前線が関東に来ていますよね、米軍の。それから、沖縄も海兵隊が来ていますよね。要するに、日米同盟というものの在り方で、日本の防衛じゃなくて極東アジアの防衛のために日本が出先になっている部分というのが非常に強いような感じが私はしていたわけです。ですから、一体日米防衛の在り方、五十年間やってきているけれども、それに対してもう一回検証し直して、要するに米軍がなぜ陸軍の最前線の基地をこの日本の厚木に持ってきているとか、沖縄に海兵隊を持ってきているという、その問題こそが日本独自の防衛というものの考え方の中で、もう一回日米の防衛、日本の防衛の在り方を見直すことなり検討することが、普天間基地の課題の問題の解決につながると。  それは外交防衛委員会でやるべきことなんだろうけれども、しかし、そういう部分がどうしても疑問で、私、何となく国民も、またマスコミも日米同盟ただそのもののラインに乗ってきただけで、そういう根本的なものを何にも議論しないで今日まで来ているということに対する非常に疑念があるんですね。そういう問題がこういうところで議論されて、そういう部分をクローズアップして、専門家なり、ことがやれれば私は非常に勉強になると率直に思うんですけれども。
  53. 石井一

    会長石井一君) その今の問題の提議は、川口先生に答えていただくというのはいささか、川口先生が現職の外務大臣のときにあなたが野党として聞くのならいいけれども、今度は政権交代はしておるし、それで、しかもそれをこの時期にやるというのはどうなんですか。
  54. 大石正光

    ○大石正光君 政権交代したから、もう一回自民党がやってきた防衛政策を民主党から見直して、普天間基地の以前にそういうことをやってから普天間基地の問題を解決するべきだと思ったんですけれども、逆になっているからしようがないけれども。
  55. 石井一

    会長石井一君) しかし、そういう課題を調査、これに出そうとすれば、やっぱり別の参考人でも呼んでセッションを持つとかということになりますから、ここの、現調査会報告書の中身としてはそこまで踏み込まないということでやったらいいんじゃないかなと。私は別に、十分理解はいたしますけれども、そういうことで。  どうぞ、ほかに何か御意見、御提案がありましたらお伺いをいたします。そうでなければ、何かありますか、よろしゅうございますか。  それじゃ、まだ少し時間的余裕がございますが、今日はこの程度で調査会を終えさせていただき、調査室の方で、今の議論をも踏まえてリポートをまとめさせるということにしていきたいと思います。  連休明けにまだ時間的余裕がございますので、必要があれば調査会を続行することもあり得ますけれども、取りあえず予定の調査会、地球温暖化と国際問題は、今日をもって一応終了するということで終えさせていただきたいなというふうに思います。よろしゅうございますか。  委員各位には、貴重な御意見を熱心にお述べいただきまして、誠にありがとうございました。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十八分散会