○森(英)
委員 千葉大臣が
法務大臣に御就任になって七カ月が経過いたしました。ということは、とりもなおさず、私が
法務大臣を退任いたしまして七カ月が経過したということでございます。初めての
法務委員会での質問をさせていただきますが、よろしくお願い申し上げます。
今お聞きしておりまして、
議論が終局に近づきつつありますけれども、いろいろな論点がいまだ
指摘されているということは感じますが、私個人としては、
自分の産んだ子が、
自分が養育能力がなくなってよそのうちに預けて、いじめられると思っていたら、そうしたら大変いい親でもって、それを育てていただいて成人を迎えそうな、そういう大変感無量の
思いでここに立っているところでございます。
〔
委員長退席、
樋高委員長代理着席〕
私が
法務大臣を務めましたのは、平成二十年九月からの約一年間でありました。ちょうど司
法制度改革の大詰めの時期に遭遇したということもあるかもしれません、実にいろいろな出来事がございました。今から
思い返してみても、なかなかに大変な毎日でありました。次から次へとさまざまな、かつ困難な
判断を求められ、本当に緊張感の抜けない毎日だったというふうに
思い起こします。
千葉大臣、
加藤副
大臣、中村
大臣政務官におかれましても、この七カ月間、外からうかがい知ることのできない大変な御苦労を重ねられて、みずからの職責をこなされてきたのではないかと拝察をいたします。本当に御苦労さまですと申し上げたいと
思います。
法務省は、やや地味な印象ではありますけれども、我が国の基本的な
社会秩序、法秩序の根幹を担っている役所であるというふうに
思います。この役所がしっかりしていないと、我が国の土台がぐらついてしまう、こういうことにもなりかねない、つくづくそう感じるものであります。政務三役の方々のこれまでの御努力に深く敬意を表するとともに、今後一層の御活躍を期待いたしたいと
思います。
さて、私は、
法務大臣の職責を担っていたものの、
千葉大臣のような
法律家ではございません。私は、国
会議員になる前は民間企業のエンジニアをしておりましたし、どうひいき目に見ても、専門的な
法律知識を十分持ち合わせているとは申せません。また、国会に参りましてからも、
法務行政には余りかかわりを持ってまいりませんでした。つまり、およそ土地カンのない分野のトップに突然なってしまったわけです。
しかしながら、私の在任時は、時あたかも、
裁判員
制度が実際に開始されるなど、
法務行政の中に
法律の玄人ではない一般の人々の感覚を取り入れようという時期でもありました。そういうわけで、私のようないわばずぶの素人が
法務行政を担うというのも一面においてタイムリーであったのかなと、ひそかにみずからを慰めているところでございます。
私は、
法務行政をつかさどるに当たりまして、何よりも、いわゆるコモンセンス、
国民の常識に軸足を置こうと
思いました。大変前置きが長くなりましたけれども、今回の
刑事訴訟法改正につながることとなった凶悪・重大
犯罪の
公訴時効の在り方に関する省内勉強会の立ち上げもその一環だったということを申し上げたいわけでございます。
ところで、ここでちょっとわき道にそれますけれども、私は、
自分が
法務行政をお預かりしている間、党利党略はもちろんのこと、一時的な
国民世論のみに依拠して
法務大臣としての
判断を行ったことは一度たりともなかったと自負をしております。
法務大臣としての
判断は、我が国の基本的な
社会秩序、法秩序を担っている者の
判断であって、大きく言えば、天下
国家のためでなくてはならないというふうに
思います。
私が在任中、一番心外であり、また憤りを覚えたことは、現在の総理を初め当時の野党の
皆さんから、私があたかも党利党略のために
法務大臣としての権限を
行使しているかのような、いわれのない中傷誹謗を受けたことであります。きょうは
法案審議でありますので、多くを申し上げません。しかし、私の言わんとすることの
意味、そして、そのようなことがあってはならない、実際問題としてあり得ないことは、現在与党として実際に
法務行政を担っていらっしゃる政務三役の方には語らずとも
理解していただけるのではないかというふうに
思います。
話を戻します。
私は、
法務大臣として
判断を求められる事柄の多くは我が国の基本的秩序にかかわることですから、何事につけ、さまざまな立場の方々また専門家の方々などの御
意見をお聞きし、省内においても十分な
議論を重ねた上で物事を決してきたつもりです。
公訴時効勉強会の立ち上げについても全く同様でありました。
その当時から、
犯罪被害者団体を中心に、重大
事件に限っては、あるいは重大
事件に限らずとも
公訴時効を
廃止すべきとの御
意見がありました。私なりに
考えてみますと、この
公訴時効の問題に関しては、そうした
犯罪被害者団体の御
意見は十分尊重すべきであることは申すまでもありませんが、それはそれとして、いまだ
国民全体としては十分理を尽くした
議論がなされていないのではないかという
思いを抱きました。すなわち、立場によっていろいろな見方はある、そしてそれぞれにそれなりの主張はなされている、しかし、合理的かつ科学的な結論に立ち至るような
議論がいまだなされていないという印象を持ったのであります。
その時点で私は、
公訴時効を
廃止すべきといった一定の方向性を持っていたわけではありません。まずは
国民全体の
議論を深める必要がある、そして、そのためには、
法務省内において地に足のついた十分な
議論を行うとともに、その内容を可能な限り
国民に公表して
議論を喚起していく必要があると
考えたわけでございます。そのような
思いから、凶悪・重大
犯罪の
公訴時効の在り方に関する省内勉強会を立ち上げました。そして、実務的な
作業グループとして、このテーマに大変熱心であった当時の早川忠孝
大臣政務官を座長とするワーキンググループを設置いたしまして、検討を進めさせることといたしました。その結果、今回の
法改正につながる取りまとめがなされたものです。
その後、先ほど申し上げたように、政権交代が起こり、
千葉大臣に引き継がせていただいた際には、実を申せば、
民主党の掲げておられた政策とは違う方向性の本件は、恐らく日の目を見ないだろうと半ばあきらめておりました。しかし、
法制審議会の御審議を経て、ほぼ私どもの勉強会の結論に基づいた
法案を国会に御提出いただきまして、その
成立を目前にしていることは、重ねて申し上げますが感無量の
思いであります。これまでの真摯な検討の成果であると同時に、現政権においても
被害者の方々を含む
国民世論を正しく受けとめていただいたということではないかと、率直に評価している次第であります。
なお、今回の
法案については、国会審議の中でも、現に本日の御
議論を伺っていても、与野党を問わず、検討が拙速だったのではないかという御
意見を耳にすることがしばしばあります。この点については、当初からこの問題を検討する場に加わった者として何とか誤解を解きたいと
考えているところでございまして、
法制審議会、その後の
法務省の政策
会議等における検討については既に
大臣から詳細に御説明をいただいているところでありますので、本日は省内勉強会のことを中心にまず伺いたいと
思います。
まず、
千葉大臣にお伺いいたします。
法務省において省内勉強会を設置してこの問題を検討することとした経緯はどのようなものだったか、改めて
法務大臣に確認をさせていただきたいと
思います。
〔
樋高委員長代理退席、
委員長着席〕