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赤澤委員 これは、報道の内容にはなかなか踏み込みづらいところがあるので、これ以上ちょっとお話がしづらいので、もう
一つ、今度は事実関係の誤認や間違いが多かったんじゃないかという
指摘があるものについても触れておきます。いろいろな批判とか耳に痛いような
意見、コメント等もとりあえず受け入れて、善処をしていただきたいということでお話をします。
昨年の十月十一日日曜日午後九時から、
NHKスペシャルの「原発解体 世界の
現場は警告する」というものが放映されました。
番組がテーマとした原発解体というのは、原子力関係者が廃炉解体工事と呼ぶものであります。用済みとなった原子力発電所から放射能を取り除いて解体して、跡地を昔に戻す工事のことだそうであります。
この
番組についても、原子力発電への不安をあおっているとか、
番組を通じて流れるおどろおどろしい音楽や暗く沈んだナレーション、恐ろしげな情景描写からは、
制作者が抱く原子力への嫌悪感が透けて見えるなどという
指摘があります。
私自身はここでも
番組の内容を論じるつもりはありません。報道の自由を尊重いたします。しかしながら、廃炉解体を研究している原子力デコミッショニング研究会の調査によれば、同
番組が報じた内容に、五十二カ所に及ぶ事実誤認や間違いが見つかっているという
指摘がされています。一時間
番組、正確に言えばこれは五十八分
番組のようです。ネットでチェックするとそういうことでした。五十八分
番組で五十二カ所の間違いといえば、平均して、ほぼ一分間に
一つずつ間違った計算になります。もしこれが本当であるとすれば、廃炉解体という、
視聴者のほとんどが初めて見聞きするような特殊な専門分野をテーマとした
番組だけに、
視聴者に大いなる誤解を与えたおそれが強いと言ってよいと思います。
取材に協力した原子力関係者の怒りを買ったという
指摘もありますし、確かに、この問題を取り上げた記事は、私が見つけただけでも、
日本原子力文化振興財団
理事長が昨年十一月前半に新聞に書いたもの、報道の比較的直後に書かれたもの、あるいは原子力デコミッショニング研究会主査が本年一月に学会誌に書いたもの、それから、
日本原子力技術
協会最高顧問が現在発売中の月刊誌に寄稿したものと、引きも切りません。
これらの記事は原子力関係者が書いたものですが、これら以外にも、昨年十二月号の雑誌に科学ジャーナリストが書いた記事を引用させてもらえば、「「原子力デコミッショニング研究会」は「世界の原発解体
現場の客観的事実を公平に示すことなく、一部だけを意図的に取り上げ、多くの事実誤認を含む
番組を
制作・
放送され、一般
視聴者に多くの誤解を与える結果となった」として十月十五日に
NHKに抗議し、訂正を要求した。その
理由を「一部の事実だけを一般化させて、処理場に関し多くの事実誤認を生んだ作為に満ちた
番組と感じたからだ」と書いている。全く同感だ。」という記述が、原子力関係者だけでない、より中立性の高い立場だと思われる科学ジャーナリストが書いた記事の中でも出てきております。
作為として
指摘されている例を
一つ挙げれば、
番組の中で、「ふげん」の廃止措置
現場で、配管の切り口から滴り落ちる水滴の映像に、至るところに汚染がある可能性があるとのナレーションがかぶっております。だれしもが、液体の滴下で放射能汚染が進むかのような感じを覚える、極めて生々しい
現場映像の趣でしたが、実のところ、切断された配管は放射能とは関係ない窒素ガスの配管で、滴下していたのは凝縮水だから、汚染の可能性は全くないといったようなことが
指摘をされております。
繰り返しになりますが、わかりやすくするために今の例も引きましたけれ
ども、私は報道の自由は尊重いたします。ここで論じたいのは
番組の内容ではなくて、廃炉の解体という特殊で専門的な分野、すなわち、私を含む一般の
視聴者が評価する知識を有しない分野に関する報道
番組が、その分野の専門家とされる複数の関係者から間違いだらけと
指摘され続けている状態というのは、公正中立な、真実の報道を行う
公共放送の使命を負っておられる
NHKにとっても
国民にとっても、決して望ましい状態ではないというふうに考えます。
報道
番組の内容について、ほぼ一分に一回の事実誤認や間違いがあったというような重大な
指摘については、単に、取材内容には自信を持っていますなどというありきたりな紋切り型の
説明で事足りるとするのは私は適当でないと思っていまして、専門家やジャーナリストあるいは一般市民の代表などから成る第三者機関による検証を行うなど、専門的知識のない一般
視聴者も納得できるような、説得力のある仕掛けを工夫する必要があるように思いますけれ
ども、いかがでしょうか。