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2009-05-22 第171回国会 参議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年五月二十二日(金曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      下田 敦子君     中村 哲治君      田中 康夫君     福山 哲郎君      姫井由美子君     芝  博一君      蓮   舫君     川崎  稔君      山口那津男君     木庭健太郎君      仁比 聡平君     山下 芳生君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         溝手 顕正君     理 事                 犬塚 直史君                 小林 正夫君                 前川 清成君                 峰崎 直樹君                 森 ゆうこ君                 岩永 浩美君                 坂本由紀子君                 鶴保 庸介君                 荒木 清寛君     委 員                 相原久美子君                 石井  一君                 尾立 源幸君                 大石 尚子君                 大河原雅子君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 川崎  稔君                 郡司  彰君                 自見庄三郎君                 芝  博一君                 鈴木  寛君                 富岡由紀夫君                 中村 哲治君                 広田  一君                 福山 哲郎君                 藤末 健三君                 牧山ひろえ君                 泉  信也君                 市川 一朗君                 木村  仁君                北川イッセイ君                 関口 昌一君                 南野知惠子君                 林  芳正君                 山田 俊男君                 山本 一太君                 加藤 修一君                 木庭健太郎君                 澤  雄二君                 山下 芳生君                 福島みずほ君                 荒井 広幸君    事務局側        常任委員会専門        員        村松  帝君    参考人        野村證券株式会        社金融経済研究        所経済調査部長  木内 登英君        独立行政法人労        働政策研究・研        修機構統括研究        員        小杉 礼子君        三菱UFJ証券        株式会社参与景        気循環研究所長  嶋中 雄二君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成二十一年度一般会計補正予算(第1号)(  内閣提出衆議院送付) ○平成二十一年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○平成二十一年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成二十一年度補正予算案審査のため、本日の委員会野村證券株式会社金融経済研究所経済調査部長木内登英君、独立行政法人労働政策研究研修機構統括研究員小杉礼子君及び三菱UFJ証券株式会社参与景気循環研究所長嶋中雄二君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 平成二十一年度一般会計補正予算(第1号)、平成二十一年度特別会計補正予算(特第1号)、平成二十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題とし、本日は参考人方々から御意見を伺うことといたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  当委員会は、目下、平成二十一年度補正予算三案の審査を進めておりますが、本日は参考人方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  御意見の十五分は着席のままで結構でございます。質疑のときはそれぞれ立ち上がってやっていただければと思っております。  それでは、木内参考人からお願いをいたします。木内参考人
  5. 木内登英

    参考人木内登英君) 木内でございます。よろしくお願いいたします。  私の方で二種類の資料を御用意させていただいておりますが、そのうち一枚の紙、両面でコピーしております。こちらに沿ってごく簡単にお話をさせていただきます。  お話は、私はエコノミストでございますので、経済の分析、見通しが主な仕事であります。前半では、日本、そして日本を取り巻く世界経済現状お話をさせていただきます。二番目は、それを受けまして、いわゆる追加経済対策効果などのお話、そして三番目に、もう少し広い観点から見た政策論という三本立てでお話をさせていただきたいと思います。  世界経済は、昨年のいわゆるグローバル金融危機を経まして、急激なかつてなかったほどの落ち込みを示しましたけれども、ようやく年明け以降は少し安定を取り戻してきております。しかしながら、九〇年代の日本と同じように、世界を支えるアメリカ、そしてヨーロッパでは資産価格が継続的に下がるという資産デフレ、そしてそれに伴い、金融問題、金融システムが非常に不安定であると、そういうおもしは依然として強く残っております。したがって、最悪期は過ぎても、経済が正常に戻るまでには相当時間が掛かるというふうに思っています。  いわゆる景気後退期通常よりも、こうした資産デフレ、金融問題、金融危機が伴う景気後退というのは、通常よりも三倍ぐらい景気後退の期間が長い、後遺症が非常に大きいということであります。ここら辺を照らして考えますと、景気、まだ本当に持ち直す時期にはなっていなくて、来年の後半、年末辺りが何とか世界経済が緩やかに持ち直してくるというタイミングなのではないかなと思っています。  翻って日本でございますが、先日発表されました一—三月期のGDP成長率年率マイナス一五・二%と過去最低水準であります。大幅なマイナス成長が二四半期続いているという状況です。しかし、このちょうど年度の替わり目、一—三月期から四—六月期にかけてがちょうど経済それなりの節目、転換点でありまして、この四—六月期現在ですが、成長率年率プラスの三・八%、五四半期ぶりプラスに転換するという見通しであります。  プラスに変わってくる背景は、一つは、輸出が持ち直してきているということです。二つ目は、定額給付金などの従来の経済対策効果が出てきているということであるかと思います。  日本経済、しばらくは持ち直す方向で行くのではないかなと思っておりますが、残念ながら、秋ごろから年末にかけて再び息切れ感が出てくるというふうに考えています。来年の初めごろになりますと、再び小幅ではありますがマイナス成長に戻っていくのではないかと当社は予想をしています。これをいわゆるダブルディップ、二番底というような言い方をすることが多いです。  なぜそういう形になってしまうのかということですが、一つは、輸出は一時的に持ち直すんですけれども、やはりかぎを握るアメリカ経済、これが先ほど申しました金融問題、そして住宅価格が下がっていく、さらに個人借金漬けになっておりますので、借金を減らしていくといった調整に相当時間が掛かるということでありますので、輸出はいったん戻るんですが、また勢いが落ちてしまうということです。  二番目は、経済対策効果、現在既に実施されている経済対策、そして今後実施されるであろう経済対策効果、秋ごろまでは効果は比較的出てくると思いますが、残念ながら、それだけで日本経済本格回復に向かうというのは難しいと、効果が剥落する中で景気勢いは落ちていってしまうんではないかなと。  三つ目は、日本企業のいわゆる構造調整ということです。経済は安定をしてきておりますけれども、しかし従来と比べると相当売上げが落ちてしまったことは確かです。設備稼働率も約半分ぐらいしかないというのが今の製造業状況ですので、やはり過剰な設備あるいは人件費を削減していくという構造調整はむしろこれから本格化してくる可能性があると。この結果、景気はいったん浮上するかに見えて、また勢いが落ちていってしまうと。  本格回復に入るためには、アメリカが継続的に回復する、そして日本企業構造調整が一巡すると、この二つが重要な必要条件になってくると。その条件が満たされて、緩やかではありますが日本経済本格回復に入っていくのは来年の後半というふうに考えています。  経済対策、いわゆる追加経済対策効果ですけれども当社では比較的大きいと考えております。実質GDPを一・二%ポイント押し上げると。この一・二%ポイントのうち二〇〇九年度分に〇・九%、二〇一〇年度分に〇・三%と。そして、昨年来の既に実施されております経済対策効果を合計しますと、実質GDPを二%ぐらいの押し上げになるんではないかなというふうに思っています。  追加経済対策につきましては、成立した場合ですけれども公共投資経済刺激効果中心になっていくのではないかなというふうに思っています。追加経済対策一・二%の押し上げのうち、〇・九%は公共投資、それ以外はエコポイント制度などの家計への支援策、そして公共投資を増やすことによって、例えば雇用が多少増えると、それが消費押し上げるといった波及効果だというふうに思っています。  今回の追加経済対策、いろんな内容が盛り込まれていますが、経済のインパクトという点でいいますと圧倒的に公共投資部分が大きいのではないかなというふうに思っております。例えば、エコポイント制度あるいは自動車のスクラップインセンティブ制度、一時的には売上げ消費押し上げるかもしれませんが、ならしてみますと余り大きな効果はないのではないかなというふうに思っています。  柱となります公共投資については、いわゆる波及効果民間への波及効果が大きいワイズスペンディングというのが柱であるというような指摘、説明をされてきたわけですが、中身で見ますと、例えば羽田空港の滑走路の拡張とか外環道路の整備などは確かに経済の効率を高め民間投資を促すと、一時的な効果に終わらない波及効果のあるワイズスペンディングということかなとは思いますが、ただ、金額的にいいますと相当部分地方での従来型の投資になってしまっているんではないかなという印象を持っております。ですので、一時的な景気浮揚効果はあるんですが、それが呼び水となって日本経済内需主導回復に向かうというふうに考えるのはやや難しいというふうに思っております。  そもそも日本経済の低迷、不振は、国内要因というよりは海外要因であります。いわゆる外需バブルが破裂したというような言い方もできるんではないかなと思います。その結果、日本経済日本企業は非常に深刻な供給過剰の問題に直面しています。需給ギャップという言葉がありますが、経済全体の実際の活動潜在力に比べてどのぐらいの水準にあるのかと。この需給ギャップ、今マイナス九%ぐらいと、GDP比マイナス九%ぐらいというふうに考えています。これは過去でいいますと最低水準です。例えば二〇〇〇年前後の、前回デフレが非常に深刻になったときでさえマイナス五%強ぐらいでありますので、それよりも更に供給過剰が深刻になっているということであります。  ですから、日本経済が将来非常に正常な姿に戻るためには、やはり増やし過ぎてしまった例えば設備などを削減するという企業構造調整が進む必要があるというふうに思います。これは、やはりこれがある程度進まないと日本経済は正常にならないと思いますし、その間は供給過剰でありますのでいわゆるデフレが強まるということになってしまうと思います。  この需給ギャップ政府財政政策穴埋めするというのは必ずしも正しい考え方ではないのかなという感じがいたします。もちろん、政府需要穴埋めによって民間需要がどんどん出てくれば結構なんですが、そうじゃなければ常に政府財政出動需給ギャップ穴埋めをしなくてはならないと。財政環境は必ずしもそれを許しませんので、需給ギャップの穴を埋めるという議論がありましたけれども、これは必ずしも妥当な考え方ではないのかなというふうに思っております。  繰り返しになりますが、そもそも原因は海外にありますので、国内財政政策だけで日本経済の苦境を救うと、すぐに救うというのはやはり難しいというときに政策はどういうところに重点が置かれるかと。今回の対策の中にももちろんそういうアイデアは含まれておりますが、中長期の観点から日本経済を強くしていくという発想が重要です。  更に言いますと、財政政策だけで日本経済正常化するのは難しいとはいえ、やはりセーフティーネットというのは重要かなと。あえて言いますと、経済政策の柱はこのセーフティーネットに置かれるべきだと。実体経済が過度に不安定になってしまうというのを雇用面金融面から防いでいくということが重要であります。  金融面でいいますと既にいろんな施策は取られておりまして、これは金融市場の安定に貢献しているというふうに思います。日本は再びデフレ局面に入っておりますが、九〇年代の前回デフレと比べますとやはり傷は浅いのではないかなと思います。先ほど申しました需給ギャップでいいますと前回よりもかなり厳しい感じでありますが、一方、九〇年代のデフレというのはいわゆる複合デフレでありまして、国全体として供給過剰になっているから物価が下がるということに加えまして、金融市場が非常に不安定になったと、金融システムがですね。その背景には、やはり企業が非常に不良債権を増やしてしまったと、そこの焦げ付きが、企業が債務を増やしてしまったと、それが焦げ付いて不良債権問題になったと、そして地価が大幅に下がるという資産デフレが伴っているという意味で、単純な価格が下がるだけじゃない複合デフレであったというのが九〇年代の日本デフレだと思いますが、今、日本が直面しているのはもうちょっとシンプルでありまして、主に需給面からくるデフレと。  金融システムの安定はこういったセーフティーネット策によってある程度守られているというふうに思います。特に欧米などと比べますと、日本金融システム金融機関安定性はやはり際立っているのではないかなというふうに考えています。ここが確保されるのであれば、最初に申しました、経済はもう一度ダブルディップと、もう一度経済勢いを失ってくるという局面が秋口から来年の初め辺りに来るとは思いますが、二番目の落ち込みはそこまでは深くはならないのかなというふうに思っています。  ただ、こういったセーフティーネットもやはり出口というのを考えながらやらなくてはいけないということですね。企業の必要な構造調整、供給過剰あるいは競争力を失ってしまった企業の退出というのを妨げるのであれば、むしろ日本経済正常化という流れを邪魔してしまうという面もありますので、状況次第でやっぱり出口を常に模索するという動きが重要なのかなと思います。  そして最後に、私自身は、これから必要な政策というのは、むしろ財政というよりは徐々に金融政策の方に移っていくのではないかなというふうに思っています。  日本経済は深刻な供給過剰を抱えてしまいましたので、デフレというのは避けられない状況になってきます。物価の下落は我々二〇一三年まで続くのではないかなと思っています。ただ、これは必要な調整でもあるということです。それに対して、企業ですとかあるいは個人が余りに悲観的になり過ぎる、必要以上に物価が下がるという不安を抱いてしまうということになりますと経済はもっと不安定になってしまうということでありますので、ここはひとつ金融当局物価の安定にコミットするというような政策を取る必要があるのではないかなというふうに思います。  九〇年代から二〇〇〇年以降も実施されました量的緩和策、これを再び導入するというのはそれなりに有効な政策なのではないかなと思います。あるいは、中央銀行が望ましい物価の安定、物価の姿を目標を提示するというインフレターゲットというのも、デフレが更に厳しいデフレにならない、あるいは複合デフレにならないために必要な施策になっていくのではないかなと考えております。  それでは、私からのお話は以上でございます。
  6. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  次に、小杉参考人にお願いいたします。小杉参考人
  7. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) ありがとうございます。  私からは、私は若い人たちが一人前になる過程調査をずっとやってきました。学校在学中から職業人として自立していく過程というのをずっと追ってきた者です。その一研究者の目から見て現状と、それから今回の補正予算で組まれた政策がどんなふうに評価できるかということを、私の個人意見ですけれども、申し述べさせていただきたいと思います。  現在の若者状況、今、木内さんの方から不安の話が出ましたけど、若者こそ本当に不安に駆られています。特に、今就職活動に入った大学生の不安たるや大変なもので、三年生の早いうちからもう前のめり前のめりで、早く早く早く頑張らなきゃどうにかならないんじゃないかという不安に駆られています。この不安に対して、いや、大丈夫だと言ってあげられる政策が今一番大事なんじゃないかなというふうに思います。  今、その不安の要因というのを幾つか整理したのが私の資料の方の二枚目にも挙げました五つのポイントです。二〇〇三年の自立挑戦プラン以来、日本若者政策というのは進んできて、確かにフリーターの数が減るとか、いろんな政策効果を及ぼしてきているんですが、でも、根本的なところではまだいろんな問題があります。そこがここで一挙に大きくなっているのかなと思います。  まず一つが、たまたま今年二十二歳になってしまった、たまたま十八歳になってしまったというタイミングで生まれた人たちが、今回の新卒採用でひょっとしたらうまくいかないかもしれない。うまくいかなくなったらその後どうなるかというと、かつての例は示しているのは、ロスジェネとか年長フリーターとか言われる状態です。最初状態でうまく就職できないと、フリーター、ニートに非常になりやすい。  日本の人の育成仕組みといいますか、企業育成仕組みというのは、非常に内部、採用した人に対してはとてもうまい仕組みだと言われています。内部育成には非常にたけている。ただ、その分、逆に外から途中で入るのは入りにくいという仕組みになるので、最初でつまずくと、いつまでもそれが響きやすい。これが日本雇用システムの良い面でもあるし、悪い面でもある、両面あるんだと思うんです。企業が人を育てるのがうまいということは、企業に入れなかった人は育ててもらえないということになるということになるわけです。  それからもう一つ、二番目が、生まれた家の家計状況が実はかなり左右しているんです。  子供の貧困というようなことが最近、阿部彩さんを中心に主張されていますけれども、私ども調査の中でも、やっぱりどの段階までの学校を卒業したかということが後々の職業キャリアにかなり影響を及ぼしている。今の状態ですと、高校までで学校を離れた人にはかなり、特に高校中退は一番状態悪いんですが、安定的な仕事に就きにくい状態が加速していると思われます。そういう、たまたまどういう家計状態にあるかによって将来が左右される。そして、そのことがその後の本人の努力によって解消できる部分もあるんですが、解消されないところも残ってしまう。こういう状態があること。  それからもう一つ、三点目は、たまたまどの地域で生まれたかですね。  地域経済格差というのが非常によく言われていますけれども、その生まれた地域にどれだけの元気な産業があるか、それによって実は本人職業キャリアが決まってしまう。  地域間移動というのも、こういう状態になりますとある程度促進しなければならない面があると思うんですが、最近の大きな問題は、地域間移動というのは実は住居を移動しなきゃならないんですよね。若い段階住居を移動する。会社が丸抱えで寮を持ったり、そういう会社がすべての住居の保障をするということがだんだんしにくくなった中で、そこで、今回の派遣切りの問題で住居を失う人がたくさん出てきたのは、実はあの派遣会社というのは、住居セットで、地方雇用機会の少ないところから雇用機会の多い製造業が盛んな地域に人を移動させる仕組みだった。つまり、若者地域間移動を、住宅政策を、ある意味じゃ、日本住宅が非常に、若者個人アパートを借りるには余りにも高いために、自分で就職を探しに行くことができない。  そういう大きな問題が、たまたまどこに生まれたか、いつ生まれたかによってかなり左右されてしまう、こういう状態があって、そのことがここしばらく皆さんによく知られるようになった、そのことが今の不安の大きな要因になっている、そう言えるんじゃないかと思います。  さらに、あと二つの点も大きいんですが、これは元々知られていたことですが、非正社員のままでは自立ができない、家族形成ができない、賃金水準が低いということです。  賃金水準が低いということと同時に、やっぱり今の住宅問題がかなりあるんじゃないかと思います。アパート代が高いから、賃金だけでは食べていけない。もしこれが、アパート代が非常に安い、若い人が入れるような公営住宅がもしあれば、百二十万でも食べていけるかもしれない、二百万以下でも食べていけるかもしれない、そこのところのセットが大事なんじゃないかというふうに思います。  それから、五点目に挙げましたのは、学校最初のこととちょっとかぶるんですが、最初に失敗するとずっと後を引くということです。  特に、私ども調査の中でも、学校中退とか、最初内定取消しに遭ったりして就職できなかったということが後々まで響くということが分かっています。そうすると、例えば、そのときに就職できないから雇用が大変だというだけではなくて、学校を離れることで、彼らは人間関係もどんどん小さくなっていくわけですね。新しい職場に入れば、職場でいろんな人間関係ができて、どんどん発展していったはずの個人が、職場から切られてしまう、行き先を失ってしまう。周りのみんなはうまくやっているけど自分だけがうまくいかないという状態になると、友人関係もどんどん絶っていかなきゃならないような状態になってしまう、そういう孤立化が起こる。  今、ニート対策ということで、地域サポートステーションとか自立塾とかつくっていろいろやっていますけど、そこの状態を見てみますと、やっぱりそういう孤立化した若者たちが来ているんですよね。その孤立化のきっかけというのは、やっぱり学校の中退とか、そういう社会から何らかの形で、あるところで階段を外したことが後々まで響くということになっているんじゃないかと思います。  その次のページからは、一応、今話したことのエビデンス的なものなんですが、ちょっとまだ時間がありそうなのでちょっとだけしゃべらさせていただきますと、例えば最初のグラフは、これは大卒の求人倍率と大卒の無業率というのがどれだけ相関しているかを示したものです。  就職しないフリーター問題などというと若者の意識の問題だということでずっと対策が取られがちだったんですけれども、実はこうやって見ますと、景気が悪くて求人が少なくなる、求人が少なくなれば無業者が多くなると、非常にはっきりした関係があるんです。ということは、今年就職が厳しくなる中できちんと手を打っていかないと、また特定の若者たちが長い間苦しむような事態を生みかねないということです。  次のページにありますのが、これは学歴によってかなり違うぞ、キャリアが違うぞということを示したものです。これは東京都内で調べたものですが、大卒の男性だと斜め線の棒が高いですが、これは正社員の市場にずっといる人たちということです。それに対して、高卒の若者というのは若ければ若いほど不安定な仕事にずっといるというタイプが多くなってしまっている。それが年代が最近になるほどそうだという、学歴間格差が拡大するという状態を示しています。  次のページは女性で、女性ではもっとひどいです。女性の低学歴層の場合の就業機会というのが非常に限定されたものになっています。  ただ、それは地方によって違うのでというのがその次のグラフなんですが、これはまあ長野のある地域と北海道のある地域についての若者たちのキャリアを調べたものなんですけれども、北海道の方は赤い線が多くて、長野の方は黒い線が多い。つまり、これは二〇〇八年の初めに調べたもので今の環境の前の状態なんですが、特に東京であったような学歴間格差というのは地方に行くとちょっと小さい。小さい理由は、長野の場合には高校を卒業した人も安定的な仕事に就きやすい。これは背後にある製造業の問題です。学歴の相対的に低い人の多いのは製造業で、物を作る仕事というのはやっぱりそういう人たちを吸収しやすいし、そこでキャリアを築きやすいんですよね。  それに対して、北海道の札幌を中心にしたこの地方というのはそういう製造業基盤がなくて、サービス系、サービス業中心地域、そういうところでは実は大学を卒業しても長い間非正社員のままであるという層が出てきている。これは実は大学の専門性とすごく関係があるんです。理系であるか文系であるか、人文社会科学系であるかで全然違っています。そういうその地域の産業と職業教育との関係というのは実はきちんと対応を取らないと、学校の中で勉強したことがある意味じゃ役に立たないということになりかねない。その辺のその兼ね合いが今までの日本では十分図られていなかったところがあるんじゃないかと思います。  そこで、こういう状況認識の下に、今回の経済対策によって期待ができることとして私が注目しましたのは、やはりセーフティーネット政策が今回非常に今強く出てきているところです。これは大変大事なことなので、是非このセーフティーネット政策を、特に職業訓練、生活支援というのをセットにした形で考えているんだと、このことを若者たちにきちんと知ってもらう。ここでつまずいても、ここでつまずいたらもう一生駄目なんだではなくて、ここでつまずいてもこうすればいいんだ、ここでこうやってくればいいんだということがはっきり伝えられる必要がある。そういう意味では、ちょこちょことした政策ではなくて、どんと大きな政策で出してもらったというのはとても期待できる、これをどうやって知らせていくかも大事なことだと思います。  さらに、若者の場合には雇用保険受給の資格のない者が多いんですよね。まだ就職していなかったり、あるいは非常に短期の雇用しか経験していなかったり、早期に離職していたり、こういう人たちを対象にした施策として考えてくれていること、それから訓練期間中の生活費給付ということが盛り込まれていること、これは訓練を受けやすい環境が整ったと思います。かつ、その訓練も資格に結び付くような長期な訓練も盛り込まれるということなので、その辺は大変期待しています。  それから、特に就職活動が困難になるような人たちに対しての住宅・生活支援というのをセットにしている。これも大変重要なことで、住宅というのが先ほどから申しましているとおり、実は若者の生活をかなり圧迫している住宅費のことを考えると、ここはとっても大事だと思います。  そして、内定取消しということに対しての対策と、それから教育、雇用分野ではないんですけれども、教育分野についても非常にこうはっきり書かれていて、学校中退というのは実は本当に後々まで響きますので、経済的な理由による学校中退を防ぐということに焦点が置かれた、これも大事なことだと思います。  学卒でうまくいかなかった若者たちを大学がちゃんと、学校が後々までフォローするような、卒業生もフォローできるような相談体制をつくる。大学の、あるいは高校も含めて学校が後々まで面倒を見るような体制をつくれるような、そういう方向も盛り込まれているので、これも大変評価しているところです。  最後のページは、これは実行段階で更に、ここの予算の範囲に書いている中では十分よく分からなかったんですが、実行段階で更に工夫してほしいということは、まず職業訓練や就職支援というのを効果的に行うための仕組みというのを十分考えていただきたいということです。  私が今訓練として最も評価しているのはジョブ・カード制度なんですけれども企業の中で公的に認められたスキームで訓練をして、それをきちんと評価するという制度。ただ、この制度は再チャレンジのときにできたという過程があって、これまで正社員経験のない人とか非常に特定の人を対象にするというような縛りがあったんですね。是非それを外して、緩めていただいて、これから新しい分野に挑戦する人はだれでも使える制度にしていくことが大事なんじゃないかと思います。  そうすると、ある意味じゃ特定の人しか受けられない制度ですとスティグマ、烙印になっちゃうんですよね。あんな仕組み、あんなと言っちゃなんですけれども、よっぽどうまくいかなかった人だけがやる仕組みだよねというふうになると、逆に企業の側から色眼鏡になってしまう。そういう色眼鏡にしないためには、やっぱりチャレンジしたい人はだれでもオーケーという仕組みにしていかなきゃいけないんじゃないかと。  それから、相談という過程、ジョブ・カードには必ずカウンセリングが入るんですけれども、訓練は訓練だけで単一ではなくて、間に相談を組み込んでいくということ。特に、訓練というと同じスキームをみんなにどんとやればいいということになるんですが、実は個々人というのはキャリアを持っていて、これまでのキャリアがあって、あるいは抱えているいろんな問題があって、その中で訓練を受けて次に旅立っていくわけで、その背景に抱えているものによってその訓練効果というのは違うんですよね。あるいは、そういうことを、事情をよく理解した上で支援してくれるという体制があると意欲度も変わってきます。そういう個人に対するケアというのがきちんとすること。それから、訓練の質の保証の仕組みをしっかり入れること。  それから、さらに、就職困難者の住居のことについては、住居問題というのは、今回の場合にはある一定時期についての住居ということを考えていますが、住居というのはずっと住んでいくものなんですね。そのある一定時期だけ保障されるのではなくてその後々までということは、つまり公営住宅などの安い、若者向けの安い住宅政策というのをきちんと雇用政策と結び付けていく必要があるんじゃないか。  そして、最後に窓口の連携、一本化。今回、雇用だけではなくていわゆる福祉の面、あるいは住宅の面と様々な面がこの中に問題が出てきているわけで、これを連動してやらなきゃならない。そのためには、ハローワークを入口にするばかりではなくて、福祉とか学校とか、あるいは事業主団体なども含めてこの政策についてきちんと知って、お互いの必要に応じてその政策の方に行った方がいいよと誘導できるような、そういう仕組みづくりが大事なんじゃないかと。特に、とりわけ学校中退者に対してきちんと対応するというのが大事なことだと思います。  以上です。
  8. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  次に、嶋中参考人にお願いいたします。嶋中参考人
  9. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 嶋中でございます。  私は木内さんと同じようにエコノミストをやっておりますので、若干お話に重なる部分もあるんですが、見方がやや木内さんよりは相対的に、この補正予算を早期に国会通過させて、そして関連法案も通過させることによって経済危機対策がきちっと早く実行に移されるという前提でありますけれども、やや楽観的な見方をしております。ただし、数字的にそんなに異なるものではありませんけれども。  現在、世界経済、非常に大きな落ち込みがあったことは既に木内さんからも御指摘のあったところであります。また、今年の一—三月期の日本のGDP、前期比年率で一五・二%減と、戦後最大の減少になったわけであります。ただし、足下で少し変化が現れているわけであります。  大変恐縮でございます。資料を私、せっかくですから大変多く持ってまいりましたけれども、皆様方に資料を見ながら御説明させていただければと思います。  大変恐縮でございますが、私の持ってきました縦の資料の一ページを御覧いただきたいと思います。  一ページの表の三でありますが、まずアメリカなんですが、オバマ大統領が就任されてからの景気対策、総額で七千八百七十二億ドルのグリーンニューディール政策というのが実施されつつあるわけでありますけれども、これは公共投資や減税などのいわゆる従来型の対策に環境問題を解決するという目的を付けてイノベーションを行ったということだと思います。  そこで、表の三の二でございますけれども、この景気対策の実施タイミングは、アメリカの場合は会計年度が前年の十月から九月まで、今年の九月までということでありまして、二〇〇九会計年度に千八百四十九億ドルということなんですが、実際、大統領が就任されてから時間が余りたっていませんので、事実上、四月から九月までの間に千八百四十九億ドルを支出若しくは減税で行う。そして、二〇一〇会計年度というのはこの十月から来年の九月までですが、三千九百九十四億ドルという巨額な対策が行われるということでありまして、このような一九三〇年代のルーズベルト大統領のニューディール政策以来の大きな景気対策アメリカがやっているわけであります。  また、二ページの図の二というのを見ていただきますと、アメリカのFRBが供給している、これは銀行券と準備預金を足したものでありますが、マネタリーベースという中央銀行が供給しているマネーが、四月は前年比で一一二・四%という猛烈な伸び、そしてそれに伴いましてマネーサプライの伸びも九・六%に達しているということでございまして、図の三にありますように、大恐慌のときはFRBの政策の過ちによりましてマネーサプライが三分の一も激減してしまったというのがミルトン・フリードマンというノーベル賞を受賞した経済学者の考え方なんですけれども、それの失敗に学んで、教訓に学んで現在大きな対策を行っている。  このような状況の下で、ちょっと走りますが、三ページの図の三でございますが、アメリカ経済、大変厳しい状況になりましたけれども、細かくて恐縮でございますが、ISM製造業景況指数という、これはサプライマネジメント協会というところが出しているアンケート調査でありますが、かなり厳しい、昨年十二月には三二・九というところまで落ちておりましたが、四月には四〇・一に回復し、四一という経験的なラインを突破しますと鉱工業生産などが前月比でプラスになってきて景気回復が起こってくるというのが通常のパターンでございまして、この六月一日にも五月分が発表されるんですが、四一を上回ってくるということで期待が高まってきている状態でございます。  そして、アメリカだけではございません。五十七兆円の景気対策を取っている中国でありますが、四ページの図の三というのを御覧いただきますと、赤い線で出しております、中国のCLSAという民間団体が集計しております製造業の景況指数ですが、極めて急速なカーブを描いて回復感が出てきているということであります。  もちろん、図の四でありますが、世界景気の低迷に伴って中国からの輸出は低迷しておりますが、図の二にありますが、緑の線なんですが、固定資産投資という公共投資や不動産投資設備投資を入れたものが、特に公共投資の増加によって四月、三四%増と急速に増えているということで、景気対策効果で中国は盛り上がってきているということでございます。  そして、五ページを御覧いただきますが、五ページの図の四というのをちょっと御覧ください。  これは、やはり製造業の景況指数がどうなっているかということでありますが、ユーロ圏、今金融危機で一番厳しいと言われているユーロ圏でありますが、ここも、ドイツのZEW指数という金融機関の担当者に対するアンケート調査が、足下まで急速に改善をしているということもありまして、これが先行指標になってまいりますので、ヨーロッパにおいても製造業の景況指数が改善に向かっているという状況でございます。これはあくまでも製造業だけの話でございますし、端的に申し上げたわけでありますが、世界景気が底入れから回復に向かおうとしているという状況が今起こっているわけであります。  そこで、日本でございますが、七ページを御覧いただきたいと思います。日本につきましては、今申し上げましたように大変厳しい、世界の先進国の中でも最大の落ち込みを見せるGDPとなったわけですね。しかも、二期連続で二けたの減少になったわけでありますけれども、足下で政策効果と見られる現象がかなり出てきております。  まず、図の一でありますが、これは公共投資を契約ベースで見た公共工事請負金額なんですけれども、一—三月期には前期比で九・五%増となっておりまして、四—六月期以降も上がっていくだろうと思われるんですが、これは〇八年度の第一次補正、これは十月十六日成立ということになりますが、この真水一・八兆円、それから第二次補正が一月末成立でありますが、真水というか国費六兆円の対策が出てきていると。それから、これから四—六月期以降、国費四兆円の当初予算の対策が徐々に出てくるということになります。これまで公共投資は二〇〇二年以降急速に落ちておりまして、これによりまして、地方の建設業者だけではありませんけれども地方の景況が目に見えて厳しくなったわけでございますが、足下で少し回復に向かっているという状況であります。  それから、図の二でありますが、住宅の着工戸数につきましては三月に前月比で二・六%という小幅な上昇になっておりますが、黒い実線ですね。ここから期待されるのは、三月二十七日成立の〇九年度、平成二十一年度予算での住宅ローン減税への期待が出てきているということでありまして、これが一月にさかのぼって適用されるということで、少し住宅を購入する意思が強くなってきている状況であります。本格的にはこの四月以降に影響が出てくるんではないかと思います。  そして次に、図の四でありますが、ここには消費者態度指数、内閣府が出している消費者態度指数というのがありまして、昨年の十二月を底に、まだ水準は非常に低いんですけれども、四月まで出まして、四か月連続の上昇になっております。景気ウオッチャー調査という同じアンケート調査が内閣府から出ているんですが、こちらも急上昇をしておりまして、その理由が、基本的には政策効果ということが言えるのではないかと思います。  何が話題になっているかというと、例えば景気ウオッチャー調査の方でいいますと、高速道路料金の引下げ、それから定額給付金の給付やプレミアム商品券の発行、それから環境対応車の購入に係る減税補助、グリーン家電の購入に伴うエコポイントの付与と、これは政府が打ち出した経済対策に今連動して上向いてきているということが、景気ウオッチャー調査、それから消費者態度指数の各種、雇用環境や耐久消費財の買いどき判断、暮らし向き、それから収入の増え方等のアンケート調査ポイントから見てうかがわれるわけでございます。  そして、図の五でありますが、新車販売でございます。グラフ三本ありますが、一番下の乗用車の販売台数を見ていただきますと、ようやく、非常に大きく落ち込んだんですが、四月に前月比で七・七%増えまして、前年比で三〇%から四〇%ぐらい減少していた状況から二七・二%減にようやく縮まってきたんですが、五月では、関係筋が明らかにしたということで新聞に載っておりますけれども、新車登録日が二日少ないんですけれども、五月トータルで前年同月比プラスを確保できそうだと。十五日現在では一五%程度のプラスになっているということであります。この理由が、四月から始まった環境対応車普及促進税制、エコカー減税ですね、それと、現在国会で審議中の新車買換えに対する補助金制度が成立した場合に四月十日にさかのぼって補助金が受けられることが期待、まあ認知されているということであります。  それから、図の六でありますが、百貨店、スーパーはまだ大変厳しい状態でありますが、これにつきましても、定額給付金、申請されてから実際に給付されるまで一か月ぐらいございますので、これ四月までの状況でありまして、五月以降に期待が掛かっているという状況で、かなり政策が効いているという状況になっております。  それから、次の八ページの図の八でありますが、輸出の数量指数ですね、これが足下で、非常に大きく落ちたんですけれども、底入れの動きを見せ始めておりまして、これは、先ほど言いましたアメリカそれから中国など世界経済が少しずつ、特に中国ですが、良くなっていることの影響であります。  このために、九ページを御覧いただきますと、皆様方は余りデータをふだん御覧になる機会がないかと思いますので、私、あえてデータを基にお話しさせていただいていますが、鉱工業生産指数が、表の一の二段目、三月に前月比久しぶりに一・六%の増加。そして、主要メーカーの生産計画によりますと、四月、五月と四・三%、六・一%の増加が予定されているということでありまして、自動車、それから電子部品・デバイス工業などの、何といいますか、立ち直りというのが大きく効いてきているということであります。このようにして、どうやら景気は今年の二月辺りに底を打ったということが言えそうです。  これはちょっと専門的になりますが、十四ページというのを御覧いただきますと、まず、皆様方、これは景気の一致指数に含まれる構成要素を全部列挙したものでありますが、非常に大きな落ち込みだということにまず注目されると思いますが、それとともに鉱工業生産が、Cの一ですが、二月に底を打っていると。あるいは生産財出荷、稼働率指数、さらに投資財出荷指数、商業販売額、小売業、こういったものが底を打ってきて、十一個の系列のうち過半数の六つ目が底入れしたところが一応簡便的に底ということになりますので、Cの九の営業利益が、法人企業統計が発表されますとどうやら一—三月期が底ということになりそうですので、二月がその中央の月を取るということで、底になるということで、我々エコノミストは二月が底だと言っているわけであります。  しかしながら、これ木内さんもおっしゃっていましたが、十六ページの図の二を見ていただきますと、余りにも大きな落ち込みがあったものですから、供給能力と需要のギャップが猛烈に拡大して、木内さん九%ぐらいとおっしゃっていましたが、私もそのぐらいですね、八・八%のギャップが発生していると、デフレギャップです、四十六・六兆円に達すると。  これに対して、財政だけで穴埋めすることはできないけれども、真水十五・四兆円ですか、こういった経済危機対策で取りあえず呼び水を行って、そこから先、民間の力、そして世界経済もかなり政府対策や金融緩和政策によって上がりそうになってまいりますので、その相乗効果景気回復を遂げていかなければいけないということであります。  そんな中で、十五ページの図の四というのをちょっと見ていただきますと、日銀短観ですね、これは大企業ではもう先行きが、六月には上がるというふうになっているんですが、実は製造業、非製造業合わせて全規模の産業で見ると中小企業や中堅企業かなり弱いということでありまして、この十五ページの表の一に全規模合計というのがありますが、三月にマイナスの四六になっている、良いから悪いを引いた業況判断DIが先行きマイナス六二と、六月まで。さらに中小企業などの厳しさの予想によってもう落ち込みを続けていると、これはやはり中小企業対策欠かせないなという感じがするわけでございます。  というようなことで、景気対策をきちっと成立をさせて、それによって景気回復を、木内さんのおっしゃるような二番底にならないように何といいますかさせていく、これが国の使命ではないかというふうに思いますし、来年度にかけては、オバマ大統領の政策もありますし、私は景気回復の軌道は続くと思っていますので、今ここが正念場だというふうに考えております。  以上でございます。
  10. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 民主党の尾立でございます。お三方の参考人には本当に的確な分析、御報告いただきまして、ありがとうございます。  今日は緊急経済対策補正予算の中身を中心にお聞きをさせていただきたいと思っておりますが、ちょっと政府の予算と、実は私たちも政府が発表する二日前に民主党なりの緊急経済対策、これを、生活・環境・未来のための緊急経済対策と銘打っておりますが、これを発表させていただいておりますので、それとの対比などもしながら御意見を聞かせていただき、今回の補正予算の審議をさせていただきたいと思います。  お手元にお配りをさせていただいております。今日お配りしたばかりでございますので、多分余りなじみがないと思いますので少し説明をさせてまずいただいて、その後、政府と我々の考え方の違いなどを議論をさせていただければと思っています。  お手元の資料一枚で我々の対策の概要をまとめさせていただきました。その基本的な考え方でございますが、まず、生活が第一ということで、生活を良くすれば経済が良くなる。これまでは、どちらかというと、経済を良くして生活を良くしていくという考え方が主流だったと思うんですが、少しその発想が逆であるということでございます。そして、この緊急経済対策期間を我々は二年間というふうに考えておりまして、総額二十一兆円の真水の財政出動を行おうというのが二点目でございます。三点目は、その主眼が、財政出動の主眼が、家計中心に考えさせていただいております。二十一兆のうち約七〇%、十四兆近くが家計を直接支援するようなもので、下のボックスの左側でございますが、家計が自由に使えるお金を、可処分所得を増やしていくと、こういう考え方でございます。さらに、セーフティーネット、年金、医療、介護の抜本的な拡充で現在の不安を軽減し、将来の安心感を高める、これは何よりも大事だと思っております。さらに、我々今回のピンチをチャンスに変えていく、日本経済の体質改善、構造改善をしていく、そのいいチャンスだと思っております。そのためにも、先ほど来お話ございます、外需依存の経済内需主導型の経済へ根本的に変えていくこれをきっかけにしていこう、このように思っております。そのためにも未来に向けた産業をつくっていきたい。そして、何といっても旧来型の発想ではなく、本当に予算を組み替えることでこれらの施策を実行していきたい、これが基本でございます。  そして、もう一点大事なことは、一番下を見ていただきたいんですけれども、二年とは言っておりますが、実はその後に我々のマニフェスト、政策体系がございます。この緊急経済対策プラス、マニフェストをプラスすることで、一時的な対策ではなくて恒久的なものに変えていきたいというのは我々の発想でございます。  急に申し上げてなかなか理解が進まないかと思うんですけれども、その前提でそれぞれの参考人方々に質問をさせていただきたいと思います。  まず、木内参考人嶋中参考人にそれぞれお聞きしたいんですが、政府、今回補正予算十四兆のうち、この委員会でももう既に大変な議論になっておりますが、四・三兆円が四十六の基金を造成することによって、財政出動が行われるということになっております。そして、この有効性について、効果についていろいろ議論されているんですが、少なくともこの基金が複数年度、三年間にわたって支出されるということで、我々は、短期的な経済効果は少ないんじゃないか、また、本当にそれが経済対策に有効なのかということを非常に疑問に思っております。  余りお触れになられませんでしたが、木内参考人嶋中参考人、この基金の造成による経済対策というものについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  12. 木内登英

    参考人木内登英君) 済みません、基金の創設ということですが、お答えする前にもう少し詳細にお話をいただけますでしょうか。
  13. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 木内さんと同じく、基金の増設についてどういう具体的な内容なのかちょっとお聞かせいただきまして、それから、理解を深めてから御説明できればと思います。
  14. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 今回、政府案の中に入っておる基金のことを申し上げております。四十六基金、各省庁、特に農林水産系がその四十六のうち二十を超える大きな数になっておるんですけれども政府案の中に含まれる基金でございます。  もし、木内参考人、お分かりにならなければ結構でございます。御理解いただけている範囲で結構でございますので、お話しいただければと思います。
  15. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) よく内容が分からないということではなくて、ちょっと具体的詳細についてお聞きしたかったということだけなんですが。  基本的には、我々、木内さんも含めてなんですが、マクロのエコノミストでありますので、効果があるなしというのは、例えば公共投資に計上されて、それが、いわゆる一・一とか一・二とか言われる乗数効果を通じてマクロ経済に波及して所得を押し上げ効果というような形で計算できるかどうかということになりますので、その意味では、基金の造成によって経済対策効果があるかどうかというのも、例えば政府最終消費支出に計上されるのか、あるいはその他のところに来るのか、これによるところが大きいと思うんですね。皆様方よく御存じのように、公共投資政府最終消費支出もGDPの一項目でありますから、形としては、当然、予算が計上される以上はGDPは伸びるということにならざるを得ません。  しかし、このような形で景気対策をやるよりももっと効率的な予算の使い方があるのではないかということにつきましては、それは、その方向はあり得るとは思います。ただし、時間の問題とか、いわゆる喫緊の、何といいますか、早めの景気対策をやって実行に移さないと経済が底入れしないとか二番底になってしまうというリスクを考えると、このようなことが起きているということについて、やむを得ない面もあるのかなというふうに私は思います。
  16. 木内登英

    参考人木内登英君) 嶋中さんからもお話がございましたが、我々が経済効果を計算するときには、何に使われるかということで計上しております。ですから、真水の総額あるいは事業総額から単純に計算するわけではなくて、着実に景気浮揚効果が出てくるというのはやはり投資項目なわけですね。  予算の中でどれが本当の投資項目かが非常に分かりにくい構成に今回なっているという印象がありまして、若干うがった見方をすると、投資が大きなウエートを占めていることを余り前面に打ち出していないような構成になったような印象があるんですね。これはもしかしたら、公共投資中心政策といいますと従来ややネガティブにとらえられてきた面がありますので、そういう配慮がもしかしたらあるのかなというまあ憶測は持っているんですが。  その中でも、詳細に果たして投資の項目がどのぐらいの比率を占めているのかというのを計算しますと、やっぱり六兆円前後ぐらいはあるということなんですね。ですから、この六兆円前後ぐらいは着実に景気の浮揚効果をもたらすということです。六兆円のうち、例えば付加価値の増加につながらないような土地の使用などを除いて、さらに多少の波及効果も含めて計算しますと、この部分で大体GDPを〇・九%ぐらい押し上げるというのが我々の計算です。過去の政策と比べても比較的大きな効果はあるのではないかなと思います。  一方で、例えば金融支援などの策は、予算は計上されていますが、果たしてそれが直接経済活動を刺激するかどうか分からないということで、今回の経済対策の特徴は、やはり公共事業的な、公共投資的な比率がいろんな項目の中にいっぱい入っていて、結果的には短期の景気浮揚効果は比較的大きくなるのではないかな。ただ問題は、それが果たして波及効果を生み、日本経済内需主導回復に導くのに十分なものであるかどうかについてはやや疑問が残るというのが私の意見でございます。
  17. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 ありがとうございます。  それでは、今回、我が国は大きな財政赤字を抱えつつ更に借金を重ねての財政出動になるわけでございますが、そうする以上、やはり木内参考人からも最初ございましたように、日本経済の中長期的な体質強化につながるようなお金の使い方であるべきだと、こういうふうに我々は思っておるんですが、今回の政府補正予算の中身で、その中長期的な視点で、これはいいぞと、効果がある、そのように思われるもの、もし具体例がございましたら幾つか挙げていただきたいと思います。嶋中参考人にも同様の、また小杉参考人にもございましたら、お願いいたします。
  18. 木内登英

    参考人木内登英君) 先ほども少しお話しさせていただきました。やはりかぎは公共投資のところだと思います。  九〇年代に相当実施された公共投資、余り波及効果もなく巨額の財政赤字が残ってしまったというふうに評価されております。それを受けまして、今回の対策では一時的な効果に終わらない波及効果の大きい公共支出を中心にしていくというふうに当初聞いておりました。それはワイズスペンディングと、賢い支出、賢明な支出というふうに表現されております。実際の項目を拝見いたしまして、これはワイズスペンディングだと、もうちょっと細かく申し上げますと、例えば公共事業をやったときの景気への影響というのは三つ効果が考えられます。  まず、橋を造ると。橋を造っている段階でそれ自体が付加価値をつくるということで、これはGDPでいいますと公共投資、公的資本形成というところに計上されていきます。一方で、ここに橋ができたりあるいは道ができて、これはやはり、例えば交通のアクセスが良くなったんでここに工場を建てましょうとか新たなビジネスをつくりましょうと、民間のお金が出てくる、これが波及効果です。そうしますと副次的な経済効果が出てくるということです。三つ目は、例えば道路を造るということによって物流が非常に効率化する、効率化すると経済全体の生産性が向上する、そうすると、長い目で見て、日本の潜在成長力、これが高まっていくと。経済効果というのはこの三つの効果があります。このうち、この三つとも効果が期待できるのが恐らくいい支出、ワイズスペンディングだと思います。  今回の中で、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、これはワイズスペンディングなのかなというのが、一つは羽田空港の滑走路の拡張。これが実現されますと、いわゆる深夜でも離発着ができ、欧州とのアクセスも非常に高まると。そうしますと、例えば欧州の企業が従来の、例えば成田を使っていたときと比べますと東京へのアクセスが非常に良くなるので、例えば東京にいろんな拠点をつくっていきましょうということで、例えば新たにビルを建てるとかいうことになれば民間への公共投資になるということです。さらに、それによって経済の効率が高まれば、中長期的な潜在成長率の高まりになると。あるいはもう一つは、大都市圏での外環道路の整備ということで、いわゆるミッシングリンクのところをつないでいくということによって渋滞が解消される。渋滞が解消されると、いわゆる経済の物流の効率も良くなりますので生産性が上がると。あるいは、交通の便が良くなれば民間企業もここに工場を建てましょうかということになります。ですから、この中でやはりワイズスペンディングだなというふうな感じがいたしますのはこの二つであります。  ただ、恐らく実際は、この中に計上されている部分でかなりこれはやっぱり地方に行くお金がある、多いんじゃないかなと思います。そうしますと、もしかしたら従来型の余り波及効果も生まないようなお金の使い方がされてしまっているんではないかと、詳細については分かりませんが、そういう疑問が残るというのが正直なところでございます。
  19. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 私が指摘しましたことは皆、中長期的なものかなというふうに思います。生まれた年がたまたま悪かった、生まれた親が貧乏だった、生まれた場所が悪かったということに対してどう対応するか、まさにこれが中長期的な対応で。  そこで、日本の公共訓練というのはずっと縮小されてきたんですよね、企業の中で訓練する方が効率的だからそっちに集中的にということで。ところが、一方でその企業の中に最初から入れなかった人たちをどうするかというところが今大きな課題になっているんで、それに対して企業の外で訓練をして、その訓練効果をきちんと証明して就職につなぎ付けるという、ある意味じゃ一つの道しかなかったものの周りに幾つか違う道をつくることができるようになるという意味では、大変これは中長期的に効果があると思います。  さらにもう一つは、生活、まさに生活の視点がこの中に盛り込まれている。人は労働だけで生きているわけじゃなくて、もちろん生活があって、住む場所があって、あるいは家族があって、その世話をしたりとか、いろんなことの中で生きているんですが、今回就職支援だけではなくて、住宅が必要だ、住宅を何とかしなくちゃいけないとか、訓練の間の生活費の給付をくっつけるとか、そういう生活の視点が入っているということがこれも大事で、こういう総合的な政策へ向けて一歩出ているなというところは大変中長期的にいいことだというふうに思います。
  20. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 成長戦略という、政府経済危機対策の骨格の中にあるカテゴリーがあるわけなんですが、これが低炭素革命と健康長寿・子育て、それから底力発揮・二十一世紀型インフラ整備ということになっていると思いますけれども。  低炭素革命というところにまとめられている太陽光発電、それから低燃費車・省エネ製品等、交通機関・インフラ革新、資源大国実現、こういったところですが、世界的に今、それこそ百年に一度と言われる不況が訪れたけれども、逆に言うと、一つのちょっと専門用語みたいになりますが、コンドラチェフの長期波動というのがあって、五、六十年ぐらいの波動を持ってその下降局面が起きたと。しかし、歴史の繰り返しに学びますと、次の波がやってきて、それは新しい技術革新によって実現されていくことが多いわけですね。例えば、鉄道だとか、その前は第一次産業革命とかですね、あるいは電気、化学、自動車といった形でありますけれども、そのような新たな波が底流で起こりつつあるところを拾い上げて促進していこうということで、これが国費一・六兆円程度出ることになっていますね。  それから、健康長寿・子育てにつきましても、二兆円程度ですが、これは、そもそも人口がどんどんどんどん減ってじり貧になってしまうということになりますと、やはり国として存亡を問われるということもあります。  そのほか、これは短期的な問題もありますよね、インフルエンザの問題もありますし、また今後の地域医療、医療の新技術を高めていこう、介護職員の処遇の改善とか介護拠点を増設すると。これと底力発揮・二十一世紀型インフラ整備というのは、これはそれぞれ先端技術開発だとか農林漁業とかいろいろございますけれども、ここにも二・六兆円が出されていまして、はっきり言って、もうとにかく今緊急だからというので拙速につくった面もあろうかとは思いますけれども、しかし、それなりに短期的な視点ではなく長期的な視点も入っているんではないかと思います。
  21. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 いい面もあるということなんでしょうけれども、時限的だということに非常に我々残念だなと思っておりまして、やっぱりこれは恒久的な、継続的な制度であるべきだと。二年なり一年、三年で終わるのではなく恒久的であるべきだというまず主張をさせていただきたいと思います。  それで、嶋中参考人にお伺いしますが、五月七日付けの「景気サイクル最前線」、読ませていただきましたが、その中で、今お触れにもなっておりますが、昨年末に景気底入れの時期について、政策のよろしきを得れば〇八年度内、二月というふうに今御判断されているということですが、ここで言う良い政策とは具体的にはどのようなことをお考えでしょうか。  そういう意味で、簡単にお答えいただきたいんですが、オバマ政権の経済対策も御引用になりましたけれども、総額七十六兆のうち実は二十八兆が、すなわち三分の一程度が個人や家庭への減税や補助ということでございますし、二〇一〇年でいうならば四三%が個人や家庭への減税、補助ということなんですけれども、この点についてもそのよろしきを得ればという意味でどう御評価されているのか、まずお聞きしたいと思います。
  22. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 私の書いたものを読んでいただいてありがとうございます。  政策のよろしきを得ればというのは、これは短期的な視点に立って景気を底入れさせるためにはということで申し上げたわけでありまして、それは、先ほど木内さんが言われたような公共投資による効果を早く実現するためにはとか、あるいは、現在、高速道路料金の引下げだとか定額給付金等々いろいろあるわけでありますけれども、そういう政策を早めにつくって早めに実行に移せばということを申し上げたことでありまして、余り長期にわたることを考えているということではありませんし、生活のところにできれば配分するべきだと思いますけれども、その内容によって効果が異なるという観点お話をしたわけではありません。
  23. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 そこで、最初に私が御披露させていただきました私どもの生活・環境・未来のための緊急経済対策なんですけれども、見ていただければお分かりのように、家計が自由に使えるお金を増やすということで、子ども手当、高校授業料の実質無償化、高速道路の無料化、料金のですね、あとガソリンの暫定税率廃止、また中小企業個人の返済条件の緩和、さらには大学でいえば希望者全員に奨学金をお渡しできるようにする等々ございますが、ある意味少しオバマさんの政策に近いものがあるわけなんですけれども、その辺りの御評価、簡単で結構でございます、それぞれの参考人に御意見を賜ればと思います。
  24. 木内登英

    参考人木内登英君) もちろん、こういう施策によって家計の抱えている不安が解消されれば経済活動にはプラス効果だと思います。  一点注意、注意といいますか懸念されますのは、やはり財源がしっかり確保されるかどうかというのが重要でありまして、一時的に所得が増えても、将来的にそれが財政赤字の急速な拡大と将来の大規模な増税となって跳ね返ってくる、ないしは社会保障制度が崩れていくきっかけになってしまうという不安があるんであれば、政策効果はそこで相殺されてしまうということでありますので、財源をかなり明確に確保し、それをしっかり国民に説明した上で所得を増やすような政策をするということが重要だというふうに考えます。
  25. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 私は分かるところが非常に限られているんですが、ここに挙げられましたように、高校の無料化とか教育にお金を掛けるということは大変賛成です。  ただ、お金を掛けると同時に教育の質をどう良くするかということもセットで組み合わせていく必要があるので、多分この中にはそういうこともずっと考えられているんだと思いますが、先ほど示しましたように、その地域の産業需要学校教育の中で何をやるかということをちゃんと組み合わせていかないと、大学は出たけれどということになりかねない。そこのところまで組み込んで、無料化すると同時に教育の質も良くする組合せをしながらやるということが大事だと思います。  教育にお金を掛けるということを皆さんが考えていらっしゃるということで大変うれしいです。
  26. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 尾立先生のおっしゃられるように、民主党の提案されている生活・環境・未来のための緊急経済対策は、オバマ大統領のグリーンニューディール政策とも近く、生活をより中心に置いているように見えます。しかし、それによって、景気対策効果として、より政府が出している対策よりも優れているかどうかについては何とも評価ができにくいなと。あとは財源の問題かなというふうに思います。
  27. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 ありがとうございます。  それでは小杉参考人にお聞きしたいんですが、私もお話をずっと聞いておりまして、また読ませていただいて、生まれるタイミング、場所でその方の将来が大きく左右されるのは、これはもう絶対避けなきゃいけないと、みんな我々はそういうふうに思っているわけなんですけれども、そういう意味で、今回、ニート、フリーター問題は特に専門家でいらっしゃいますが、政府補正予算のうち、このニート、フリーター対策がどの部分で解消されていくのか、中身について小杉参考人の御評価をいただきたいと思います。
  28. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 職業訓練全体の中に、ある意味ではフリーター対策といいますか、ニート、フリーター対策の一部が入っているんだと思います。焦点をそこに当てただけじゃなくて、もうちょっと幅広くなっていますのでかすんでいますけれども、その点は、まず職業訓練と生活費の給付と、このセットの中には含まれているというふうに私は思っています。  ただ、ニート対策として焦点化されていますような個別、今の自立塾とか、特にコミュニケーション能力が低くてとか、そういうことに対する対策はこの中では入っていないのではないかというふうに思いますが、もっと幅広い政策という中の一つとして入っている。特にニートに焦点化された部分については、余り入っているとは思えないという状態です。
  29. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 それでは、改めて個別論点でお聞きしたいんですけれども小杉参考人に。  求職者支援制度というのが今回政府の予算には盛り込まれているんですけれども、これもまた何度も申し上げますが、時限的なものでございます。私どもは、やっぱりこれは恒久的なものに、これはもう世界どこを見ても恒久的な制度としてこの求職者支援制度的なものが埋め込まれていると思うんですけれども、その点改めてお聞きしたいと思います。
  30. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 私も二年、三年で終わらせてほしくない、恒久的にしてほしいというふうに思います。
  31. 尾立源幸

    ○尾立源幸君 ありがとうございます。  それでは、時間が参りましたので次に替わらせていただきますが、私ども、この生活・環境・未来のための緊急経済対策、しっかり御指摘のとおりに財源を確保しながら実行をしていけるように、頑張ってまいりたいと思います。  今日はどうもありがとうございます。
  32. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 関連質疑を許します。相原久美子君。
  33. 相原久美子

    相原久美子君 三人の参考人の皆様、本当にありがとうございます。民主党の相原久美子でございます。  私は、政治というのはもちろん経済を見ながらしなければならないけれども、どこの視点か。やっぱり国民の生活、国民のための政治だという観点から、今国民が不安を抱いていることにどうやって対応していかなけりゃならないのかと、そういう思いから少し質問をさせていただきたいと思います。  まず、木内参考人にお伺いしたいと思います。  今日のお話、それから幾つかの文章等々も読ませていただき感じるのですが、今回の日本経済危機は、いわゆる外国の影響、海外での経済の危機が相当影響しているというようなことをおっしゃられました。これは、昨今ずっと言われていますように、どうしても外需、輸出に依存してきた結果だと言われているわけです。じゃ、そこの評価と、今後このまま外需依存型を続けていくのがいいのかどうか、是非お考えをお聞かせいただければと思います。
  34. 木内登英

    参考人木内登英君) 外需依存度が高いのが悪いということではないと思います。それはすなわち、日本経済海外の人に買ってもらえる非常に優れた製品をいっぱい生み出しているということが一つであるからであります。しかしながら、外需依存度が非常に高まってしまったと。例えばGDPに占める輸出の比率などは、数年前一〇%ぐらいであったのが昨年の時点で二〇%にもなると、外需依存度は二倍に数年の間に高まったということであります。今回は残念ながらその大きな弊害が出てしまったということだと思います。  これは、民間政策、両方あると思いますが、例えば民間企業でいいますと、国内市場をややおろそかにしてしまったんじゃないかなと、国内消費者の嗜好に合うような製品を必ずしも生まなくなってしまったと。一方で、海外、特に新興国の消費者にかなりターゲットを当てて輸出を増やすないしは現地の生産を増やすという方向でいって、内需をややないがしろにしてしまったというのがこの数年の一つの反省だと思います。  もう一つは、政策的にはやはり内需を刺激するという政策が必ずしも取られてこなかったということであります。数年ほど前までであれば、例えば構造改革、規制緩和ということで、その評価は分かれるところではございますけれども、規制緩和によって将来的に内需を拡大させていこう、新しい産業を育てていこうというような考え方があったと思いますが、過去数年の政策でいいますと、やはり内需に目を向けた政策というのが取られなかったということであります。  ですから、外需が悪いというわけではございませんけれども、このままでは確かに内需が刺激される、新しく内需が拡大するという展望をなかなか持ち得ないということであります。ですから、政策的にはやはり内需を刺激するような方向に政策を転換する必要があると思います。  ただ、それは簡単にはやはりできないということですね。経済がこういう状況でありますので、急に個人の所得がいっぱい増えるわけではないということであります。そうしますと、例えば規制緩和、今余り流れはとどまっていますが、というのを進めていくのももちろん一つだと思います。ただ、その場合には、規制緩和というのは一時的にはデフレ効果を生むということでありますので、その場合に、つまり国民に、短期的にはデフレ効果はありますけれども将来的には生活の向上であり内需の振興につながっていくということをしっかり説明した上で、少し先の将来を見据えた内需刺激策の方に方向転換をしていくというのが必要なのではないかなと思っております。
  35. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。また時間があればこの点について質問させていただければと思います。  嶋中参考人にお伺いいたしたいと思います。  現在の金融危機、それから経済危機、日本の置かれた状況、この分析というのは恐らく大方の人がそうそうの大きな違いはないと思うんです。ただ、これをどうやっていくのかということが非常に大きな分岐点になってくるかというふうに思います。その意味では、幾つかのところでお話しされていまして、今も木内参考人の方からもお話がありました。いわゆる新しい産業を日本の中でどうやって生み出して、内需の拡大を図り、国民の所得を増やしていくか、この辺で何か御意見ございましたらお願いしたいと思います。
  36. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 適切な御指摘、ありがとうございます。  まず、当面はG7、G8あるいはG20各国が世界で力を合わせて景気対策に全力を尽くすと、これがこの金融危機に端を発する世界不況を終わらせる近道だと思います。  そして、先ほどのオバマ大統領の例でもありますし、あるいは民主党さんの生活が第一の緊急経済対策にも出ておりますけれども、いわゆる環境問題というものが社会的な課題になっております。社会的課題として大きいものというのは、過去の例を見ると基本的に大きな産業になっていく力を持っていると思います。介護とか医療もそうでありますし、そしてこの環境問題というのは極めて大きな可能性を持った産業になるんじゃないかと。  例えば、グリーンイノベーション機構による未来産業への投資なんというのを提案されていますけれども、こういうようなことによって特に、何といいますか、同じやるんでも、同じ例えば公共投資をやるんでも、熱効率を上げる建物を建てますよとか、あるいは研究開発投資の方向は環境問題に特化してやるとインセンティブがありますよというような形で、環境先進国と既に日本は言われているんですけれども、その存在感を更に強めることによって、先ほど、輸出、外需主導型のことを言われていましたけれども日本のある意味輸出できる重要産業に環境産業を位置付けていくような、そういう努力をやっていくことが必要だと思っております。  その意味では、今環境問題が大変だ、それからパンデミックの可能性もありますから、インフルエンザ問題も大変ですよね。今政治家の皆様が議論されている大きな問題はみんな産業としてビジネス化できる余地がありますから、その基盤を是非政策的につくっていただきたいなというふうに国民の立場からも考えておりますので、要するに、社会的課題が産業たり得るというふうに思っているということであります。
  37. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  それでは、小杉参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどのお話、それから、多分社会保障国民会議委員としても御発言がされておりました中身を見ましても、やはり今若者たち、これからこの国を背負っていく若者たちの先行き次第でこの国の、日本のいわゆる財政状況ですとかすべてが決まっていくわけで、本当に私は深刻な問題だと思っているんです。  それで、先ほど、今回の七千億のいわゆる緊急人材育成支援事業、ここの分について評価をいただきました。ただ、私としては心配なのは、育成して研修してスキルを積む、そういう門は開くのは当然だと思っています。ですから、若者に対して投資をしていく、この国を考えたときにというのは分かるんですが、さてそれじゃ、現実的にやはり仕事に就いてもらって、そして納税をしていくという仕組みまでつくっていかなければならない。これが、今回の七千億の事業の中を見まして、何か御意見ございましたらお願いしたいなというふうに思います。
  38. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 現実的にというところまで落とし込まれては書かれていないように私は思ったので、これからの運用次第というふうに思っております。  先ほど、その運用の課題として、ジョブ・カード制度を是非その柱にしてほしいというようなことを申し上げました。あの仕組みを私が一番評価しているのは、企業の現場で実際に需要があるところで働く経験をして、そこで能力を付けるわけなんで、その先の雇用に非常につながりやすいという意味ですね。  それからもう一つは、それは単にトライアル雇用のような形で企業に補助金をやって雇用の体験をさせればいいという話ではなくて、ジョブ・カードとしたときには、訓練としてのプログラムがきちんとできるということなんですね。これは実は日本の中小企業には訓練をちゃんとプログラムするということが十分できていないところが多くて、見よう見まねで覚えろやみたいなところがまだまだあるところがあるんですよね。そういうところに訓練の仕組みをきちんと提示して、こういう手順でこうやって、あるいはマニュアルなんかを整理すること、あるいは訓練の程度を見える化するとか、何がどれだけできるか見える化するとか、そういうスキームを提供するとか、そういう訓練の仕組みを提供することもセットになっているんですね。  ということは、その個人が能力が上がって就職できるからいいよねというのにプラスして、中小企業の教育力が高まる、それはつまり中小企業の生産能力が高まることにつながると思うんですね。そこまで組み合わされているというところです。運用に当たってというところでは、そういうきちんとしたスキームを是非その中の柱にしてほしいということです。  そこでネックになるのが、先ほど申し上げましたジョブ・カードという制度が再チャレンジのときにできたために特別な人を想定している、非常に再チャレンジが難しい人の底上げをしようねというところが強調され過ぎているので、もっと普遍的な制度にする必要があるので、新しい仕事にチャレンジする人がだれでも使えるような制度にしてほしいというふうには思っております。
  39. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  それでは、木内参考人に先ほどの部分についてまた多少ちょっとお伺いしたいなと思います。  私も、外需、この依存型ということではなくて、内需、外需のバランス、これはお話しになったとおりだというふうに思うんですが、実は内需の拡大というのは、これは産業の育成ということももちろん政策的に必要だとは思うんですけれども、この間、私たちは働く者のいわゆる生活状況を見てきましたときに、企業は一定程度、国内企業、利益を上げてきた、でも、残念ながら労働者への労働分配率、ここが非常に落ち込んできた。あえてそうしてきたのではないかと私は思っているわけですけれども。そうすると、なかなかこの内需というのは産業の育成だけでは成り立っていかないのではないか、そのように思うわけですけれども。  今までのいわゆる、もちろん政策もあります、企業政策もあります、こういう経過を見てきまして、今後の日本企業、それから政策の在り方について、何か御意見あれば伺いたいと思います。
  40. 木内登英

    参考人木内登英君) 労働分配率は民間のいろんな交渉の中で決まっていくものでありますので、なかなか政策でそこの配分を変えていくというのは正直言うと難しいところがあると思います。  過去数年にわたる景気回復の中で、確かに企業の収益は非常に膨れ上がり、一方で、賃金、労働者に配分される比率が低くて、労働分配率が非常に下がってしまったということはあったと思います。ただ、私は、もし今回のグローバルな金融危機がなくて、もっと景気回復が続き、失業率も更に下がり、労働需給が逼迫していればやはり分配率は上がっていく方向にあったのではないかなというふうに思います。ですから、海外で一種そういうアクシデントが起こってしまった結果、残念ながら個人にそういう恩恵が及ぶ前に景気回復が終わってしまったということなのではないかなと思います。  今の景気後退期、我々は来年年末、来年の後半辺りからまた回復に転じるというふうに思っておりますが、確かに御指摘のとおり、失業率も相当高い水準まで行ってしまいます。例えば来年の年末辺りですと六%近くまで上がると、過去最高の水準に行くと思います。そういう状況ですと基本的には人が余る形ですので、労働者、働く人の方が交渉力が落ちてしまいますから、なかなか賃金は上がりにくいということです。ですから、個人の環境というのはやっぱり向こう数年は非常に厳しいんではないかなというふうに思います。  そういう中で、内需を刺激、振興させていく一つの方策、産業育成以外に何があるかという御質問でしたが、一つは、日本経済は確かにGDP成長率という一種フローで見ますと非常に低迷してしまっていますが、一方で、資産、ストックで見ますと依然として世界一流というところがあります。つまり、個人が持っている個人の金融資産というのは非常に巨額のものがあります。これをいかに活用していくかというのは、恐らく今回の緊急経済対策の中でも当初はそういう議論が比較的されていたんだろうと思うんですね。それをもう少し前向きにやっていく必要があるのではないかなと思います。特に、シニア層が抱えている個人の金融資産をいかに経済の活性化に振り向けていくかということであります。  一つの方策として重要なのは、やっぱり物価が上がるという期待をつくるということも重要なんじゃないかなというふうに思うわけです。つまり、個人が金融資産を持っていても物価がどんどんどんどん下がっていくという中では、じゃ銀行預金、金利も低いし銀行預金のままでいいのかということになってしまうわけですね。ところが、物価がどんどん上がっていくという期待、つまりデフレが解消するという期待が出てきますと、個人はこのままでは自分の資産は目減りしてしまうと、そうすると、例えば銀行預金、あるいは現金の形で持っているお金を株式に替えましょう、あるいはそうではなくて土地を買いましょう、あるいは自分の資産をいろんな物で持っておきましょうというような、資産を入れ替えるような動きがインフレ期待が出てくれば出てくると思います。それに伴って土地への需要が出てくる、あるいは個人がいろんな耐久財を買うことにもなってくると思います。  ですから、一つ政策的に重要なのは、今これから日本はまた再びデフレに向かってしまいますけれども、そのデフレ期待を非常に強まらないようにしていく、あるいはできるだけ早期に物価が安定するような期待を高めていくということが実は非常に重要な内需振興の手段になってくると思います。  こうなりますと、私の最初お話の最後の方でもちょっと申し上げましたが、財政というよりはやはり金融政策の話になるんじゃないかなと。例えば、日本銀行がインフレターゲットを設ける、これは日本銀行だけじゃなくて日本銀行と政府の共同の目標ということでもいいと思うんですが、中長期的に物価を安定させる、やはりある程度はゆっくり上がっていくんだということを目標にした政策運営をしますというコミットメントをする、それによって個人物価が上がっていくという期待が出てきますと個人の今いわゆる眠っている金融資産が動き出すと、これが実は重要な内需振興にもなると思いますし、日本が非常に持っている重要な財産を経済の活性化に活用していく重要な手段になるんではないかなと思っております。
  41. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  小杉参考人にお伺いしたいと思います。  いわゆる若者に対する就職支援等々生活支援、先ほど来一定の評価をしていらっしゃるし、必要なのだということで言っていただいた住宅の扶助ですとか、ここで非常に常に問題になってきますのは、セーフティーネットの拡充というのはモラルハザードを起こすというような意見も出てくるわけです。この辺についてどういうような御意見がありますでしょうか。
  42. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) それは必ず出てくる議論なんですけれども、私はそこで大事なのがやはりカウンセリングとか相談とかいうところだと思うんですよね。ほかの国なんかの政策でもその部分がかなり重要で、単に支給するのではなくて常に見守って相談して元気付けて、モラルハザードって、もらえるだけもらって後はいいやというよりは、どうしていいか分からなくなってしまったりすることがあるんで、常にだれかが元気付けるといいますか、そういう役割の人がいるということがかなり大きな部分、自分はだれかに見られているというところが。ニート対策についてはかなりそういうところがあって、それがかなり重要な役割を果たしているんですね、だれかが自分に関心を持ってくれて勇気付けてくれる人がいるということが。そういう個別の人に対してのケアというのとセットにすることで効果は高いのではないかというふうに思います。
  43. 相原久美子

    相原久美子君 嶋中参考人の先ほどからのお話を伺っておりましたときに、当面はとにかく世界との連携を図ってきちっと金融対策経済対策をして、そして次にやはり日本として新たな一歩、政策を打ち出すべきだというふうにおっしゃっていただきました。私もその点は本当に必要なことだというように思っているわけです。ただ、今回の補正の議論のときに、そうはいっても余りにもやはり有効性のないお金の使い方というのはいかがなものかという観点から私たちはこの予算案を見させていただいているわけです。  その意味で、できればこういうような形でもう少しこの予算案を内的な部分で膨らませたらまだ効果が出るのではないかと。先ほど来伺っていますと、皆さんのお考えでは確かに効果のあるものもあるけれどもちょっと懸念する部分もあるというようなニュアンスが含まれていたのかなというふうに思いまして、ちょっとその点、何か我々が見る目ではない方向から御意見があればお伺いしたいと思います。
  44. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) いわゆるワイズスペンディングの問題かと思いますが、そのワイズスペンディングの議論を最初ケインズが一般理論で言っているわけなんですけれども、穴を掘る例え話をして、そういうことではなくて住宅やそれに類するものを造っていく方が賢い支出だろうというようなことを言っています。  しかし、住宅効果があるんですよね。経済効果のあるものをできるだけやっていくことがまさに経済政策というところもありまして、したがいまして、私は、先ほど尾立先生からの御質問ありましたけど、基金の問題等なかなか難しい問題があるんだなとは認識しておりますけれども、それがワイズスペンディングかというふうに言われるとちょっと考えてはしまうわけであります。  ただ、先ほど言いましたように、時間的な制約もあったということで、今後どうするかもうちょっと長期的視点で考えましょうといったときに、やはり産業構造をどうするかということであります。少子高齢化の中で高付加価値産業を育てていって、日本経済の成長を維持していかなければなりません。  そこで出てきたのが、社会的課題として非常に大きい環境問題であったというのが一つあります。あるいは観光というのもありますよね。これは当然、都市の再生、地域の再生によってきれいになっていくことによってたくさん海外から人が訪れるようになるかもしれません。こういうところも産業になっていくわけです。あるいは高度の医療産業だとかロボット産業とか、手先の器用な日本人は割合と細かいナノの世界なんかが得意でもあります。  というようなことで、そういうまさに規制緩和をこれからやっていけばかなり伸びる余地があるような産業を重点的に育てていくような形ですね。政府が常に幼稚産業保護みたいにずっと張り付いていなければいけないような産業をずっと抱え続けると、今までのような旧来型と言われる政策の問題点が出てくるわけであります。  そこで重要なのは、もう一つ、農業ですよね。中国などで生活水準が非常に上がって、日本の作る優秀なおいしいお米を食べたいという人たちも大変増えてきています。そういう食というものも一つの産業になってくるだろう。  というようなことで、これは内需であり外需でありますのでバランスを取ることは難しいですし、また無理に内需主導型ということで、前川レポートというのはありましたけれども、一生懸命日本内需主導型に向かって努力したんだけれども、ちょっとバブル的な弊害になってしまったところもあったわけでありまして、そこら辺も十分気を付けつつ、その意味では財政政策ではなく金融政策だけでというわけにもいかないという、バブルの弊害ということを考えますと、マクロ政策を併用しながら名目経済成長率、インフレ率だけではなくて名目経済成長率をある程度目標を持って望ましい水準に引き上げてくるような、そういう政策にまとめ上げていただければと思います。そういう意味では、民主党さんにも是非頑張っていただきたいなというふうに心から思います。
  45. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございます。  最後の質問になるかと思います。木内参考人にお伺いしたいと思います。  実は、幾つか参考人のお書きになったものを読ませていただきましたときに、今後の労働力不足、ここを指摘されていらっしゃった。多分、対談か何かのところでおっしゃっていたのではないかと。その意味では、定年の延長、女性の労働力の参入、そして外国人労働者の受入れ等々の示唆がございました。ここについて御意見がありましたら、そして、そういう拡大を図るには絶対にこういう政策が必要なんだという、大事にしなきゃならない視点がありましたら、そこもお考えをお聞かせいただければと思います。
  46. 木内登英

    参考人木内登英君) 日本の将来の成長率、いわゆる潜在成長率を考えるときに、人口というのは重要な要素であります。人口減少をしている国だから成長できないというのは全く誤りだと思います。  例えば向こう十年、まあ二十年でしょうか、予想される人口の伸び率というのは、減少はしていますが、マイナス〇・五とかそのぐらいですね。このぐらいの緩やかな人口減少であれば、大体日本の潜在成長率を〇・三%ぐらい落とすと、このぐらいにとどまります。ですから、政策によって例えば経済の効率化を図る、生産性の上昇を図ることができれば、人口減少のマイナスの影響というのは補うことが十分できるんだと思います。そういう意味では、余り過度に悲観的になってしまう必要はないのかなと思っております。  しかしながら、人口の問題は、二十年過ぎますともうちょっと厳しさを増してまいります。ですから、本当の意味で、例えば人口不足をどうやって補うかと。もちろん、それまでには定年の延長、女性の労働参加率の引上げということをやっていけば今申し上げたことも起こらないと。つまり、労働力は減らないことになりますが、ただ、現状で出生率が上がらないのであれば、二十年先には、特に団塊の世代のジュニアの人が退職していくタイミングでは、やっぱり人手不足という問題が日本経済の制約になってくるというときの一つの選択肢としての外国人の受入れというのがあると思います。  ただ、外国人労働者の受入れというのは、純粋に経済的な問題だけでなくて、やはり政治的で社会的な問題でありますので、やっぱり国民のコンセンサスを取ってから実施していく必要があると思います。一つの方策としては、すぐに一気に受け入れますというよりは、二つのステップを取るということは可能だと思います。  一つは、季節労働。例えばスイスなどでも行っているように、外国人の方に来て働いてもらうんですが、期限を決めるということで、家族じゃなくて一人で来て働いてもらうということになりますと、労働力にもプラスになりますし、税金も払ってもらうということで財政にもプラスになってくるということであります。  しかしながら、それでは人口は増えてはいかないわけです。より日本に同化して社会に同化していくためには、定住するないしは本国から家族を連れてきて日本で更に子供を増やしていくと。そうしますと、税金を払うだけじゃなくて、やっぱり年金も払ってもらうということになりますので、日本の将来の社会保障制度の維持のためにはむしろプラスだと思います。  この二つのステップがあるんですね。ですから、社会的なコンセンサスが得られるまでは最初のステップでいわゆる様子を見ていくと。問題がないようであれば、より定住型の外国人の受入れということによって人口の伸び率を増やすこともできると。税金も払ってもらうだけじゃなくて年金保険料も払ってもらえるということですので、社会的な政治的なコンセンサスを取りながら将来的にそういう方向に向かっていくというのは一つの選択肢としてあるのではないかなというふうに思っています。ただ、日本の将来を考えるときに、人口だけが重要な問題ではなくて、繰り返しになりますが、生産性を高めるという努力を常に怠ってはいけないと思います。  さらに、最後に若干加えさせていただきます。  先ほどちょっと申し上げませんでしたが、将来的な日本の姿を考えるときにやっぱり欠くことができないのはアジアとの関係ということでありまして、やっぱりアメリカ、ヨーロッパと、従来日本が非常に強い経済関係にあった国は、これは相当長い長期の低迷に入ってしまいます。一方で、アジアにはやっぱりポテンシャルがありますので、アジア、特に中国と日本がどういう形ですみ分けていくかということが日本の将来を考えるときに非常に重要ではないかなと思います。
  47. 相原久美子

    相原久美子君 ありがとうございました。  今日お三人の参考人意見を聞かせていただき、私たちも、国民のため、そしてこの国のために真摯な議論を続けてまいりたいと思います。  ありがとうございました。
  48. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。  今日は、参考人の三人の先生方、大変すばらしいお話をいただきましてありがとうございました。せっかくお時間をいただきましたので、いろいろお話をお伺いできたらというふうに思っておりますが。  私も実は尾立先生のように我が党のバージョンを用意してくればよかったんでございますが、経済戦略再生会議というのを自民党でつくりまして、最終的に与党案をまとめる前の我が党の案というのを町村委員会というところで作りました。私、事務局長をさせていただいておりましたので、いろいろとこの計画に携わった一人でございますが、大体御理解をよくいただいているなと思ってうれしく思っております。  それで、実は補正予算とこの中期的な戦略の関係というのがございまして、当然、補正予算でございますから年度内の補正をするということでございまして、先ほど来先生方からお話がありますように、まずその経済の中期的な戦略というのが中核ではありますけれども、エコノミストの御両人からあったように、緊急的にやっぱり止血をしなければいけないと。これも、中期戦略ではないんですけれども、やらなければいけない。補正には当然それが入ってきております。  それからもう一つ経済再生戦略で、先ほど嶋中先生からお話があったように、低炭素、健康長寿、底力というのを三本柱にしてやらせていただきました。  そして、実はそれとプラスして補正には安全、安心対策ということでいろんな当面の対策も入っておるわけでございます。分かりやすい例でいきますと、新型インフルのワクチンを作るのに実は鶏卵方式というのがメーンでございまして、それを細胞方式というものに変えていく、こういうことをやっていかなければいけないと。これは科学技術で、回り回って経済効果もあるといえばあるんですが、そういうことよりはむしろ当面の安全、安心の対策と、こういうようなものも実は計上しておるわけでございまして、この三つが実はこの補正には入っているということをまず御説明を申し上げておきたいと、こういうふうに思うわけでございます。  後ほど木内先生にお伺いしたいんですが、そういう中で、実はワイズスペンディングというのは経済的にワイズスペンディングということでありますから、当然、政策論として地方の例えば公共事業で災害対策とか治水というのはなかなかこのワイズスペンディングにはならないんですね。ですから、この経済戦略の中に入っている部分というのは、例えば先ほど御指摘いただいた羽田とか、それからミッシングリンクというのはこれ入っています。それからモーダルシフトみたいなのも入ってくると。しかし、それだけでは政策論全体としてはどうしてもまさにミッシングなものが出てくるわけでございまして、これは安全、安心の中に入れたということなんであろうかというふうに理解をしておるわけでございます。  また、もう一つは、基金の話があるんでございますが、先ほど申し上げたように、この補正予算という財政上の仕組み上の制約というのがございますので、どうしても補正で組みますと単年度で、今年度中に消化をしなければならないと、こういうことでございますから、先ほど来恒久的措置にしていくべきだという御意見が出ておりますが、まさにそのとおりでありまして、この補正予算という財政上の制約の中で、しかしなるべく恒久的措置に近づけるという意味でこの単年度主義の弊害を除くための基金の活用というのを我々考えて、実は最初にこの経済対策をつくり始めるときの総理の指示という中にも、なるべく単年度にとどまらない、単年度を超えたものをやろうではないかと、こういう指示があったわけでございまして、それに対する一つの答えということであろうと私は思っておるわけでございます。  例えば、研究開発を今度やろうというものですね。来年の三月までしか使えないんですと言って今からいろんなテーマを出してくれと、これではなかなか研究開発というテーマ、手が挙がるだろうかと。それから、例えば介護や医療でも基金をつくってやると、こういうことがありますけれども、これは実は制度的要因があって、介護報酬なら報酬の規定、それから医療でありましたら診療報酬の改定と、こういうのが何年かに一回ありますが、基金で複数年度積んでおいて次のそういう改定、恒常的な仕組みをつくるときにこの基金でやったものを今度は恒久的な仕組みでそこに入れていこうと、こういうような考え方で基金というものをつくらせていただいたと、こういうように考えておるわけでございます。  そういうような仕組みでやらせていただいているということをまずお話をさせていただいた上で、それぞれ非常に中身の濃いお話をいただきましたので、質問をさせていただきたいと思うのでございますが。  まず、ダブルディップというお話木内先生していただきました。それで、嶋中先生はダブルディップはちょっとあるかなというお話でありまして、私も、たしかクルーグマンが、六十キロの道が三十キロになると、この在庫調整の話をされて、多分シャープに在庫調整やりますから通常の三十キロのレベルに落ちる手前はもっと落ちる、三十キロ回復してそれから上がっていくんだと、こういうお話だったと思いますけれども。そのときに、ダブルディップというのは、更に三十キロに戻ってそれからまた落ちるというような話なのか、ここでおっしゃっておられるのは、輸出が更に駄目になるということ、それから効果の剥落、これは来年もう一回こういうことをやるかということか、経済対策をやるかやらないかということですが、ですからこれはいろんな状況を考えた上で後で判断をするということだと思いますけれども。  それから、あと、企業がまさに恒久的にこういう状況が続くということを認識すると、こんなようなお話であったわけですが、その一つ要因としてアメリカの調子が更に悪くなるということをさっきおっしゃって、住宅お話をされました。私も前回予算委員会のときに、アメリカ住宅どうなるかなというので、ケース・アンド・シラー、これは今日、嶋中先生が、三ページですかね、この図の八で、これS&Pのケース・アンド・シラー住宅価格、これは現物の表ですけれども、先物の指数というのがアメリカはあるようでございまして、この先物が要するにどうなっているかというのは、アメリカ人たち住宅価格の先をどう見ているかということの一つの反映でありましょうから、その指数のことを実は聞いて、来年の十月が、私が聞いたのが一か月、二か月前ですから、そのぐらいの時点の話ですけれども、来年の十月ぐらいがその指数、先物指数が底になると、こんなようなお話でありましたけれども。しかし、それは今度オバマがああいう住宅対策をやって少し前倒しになってくるんだろうと、そのことも後で嶋中先生にお聞きしたいと思っていますが。  こういう状況の中で、その二番底というのはどういう原因でどういう仕組みで起こり得るというふうに木内先生はお考えになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  49. 木内登英

    参考人木内登英君) 最初お話では私が作っています二番目の資料は特に使わなかったんですが、もしお手元にまだ残っているようでしたらここで少し補足させていただきたいと思います。この赤と黒の方なんですが。  まず、二ページ目ですけれども日本経済は当然まだ外需の依存度、外需の影響を受けます。やはりアメリカの影響を受けますということで、やはりアメリカ経済の姿に左右されると、ここに一つ二番底の原因があります。  この二ページ目にありますのは、赤い部分ですけれども、七〇年以降で、今回のアメリカ、ヨーロッパと似ているように、住宅バブルがあって、さらに住宅バブルが崩壊して、それが金融の問題につながっていったというケースの場合の景気後退の姿を示しています。通常であれば景気後退景気の山から一年ぐらいで底を打って戻ってくる、この黒い灰色の部分のような姿を描くんですが、ただ、住宅バブルの崩壊と金融危機を伴う形の景気後退という特殊な形の場合は、いろんな国の平均でいいますとこの赤いような形になりやすいと。つまり、景気後退が一年強ぐらいでいったん底を打つんですね。今回でいいますと、大体二〇〇七年の終わりごろが世界経済のピークでありますので、そうしますと二〇〇八年の終わりから二〇〇九年の初め辺り、ここら辺でいったん底をつけるというのが平均的な姿であります。しばらくは戻るようになるんですが、また落ちていってしまうと。実際にそれをこなしてある程度回復していくというまでに三年ぐらいの時間が掛かるということですので、今回に当てはめれば、やはり二〇一〇年の終わりぐらいまで見ないと本格回復にはなりにくいということだと思います。  じゃ、なぜこういう姿になりやすいか。やはり金融のおもしが依然として大きいということが背景にあります。アメリカではいわゆるストレステストということで、銀行に対する、大手の金融機関に対する資産の査定を非常に厳しくして必要な資本を積み増ししましょうというようなガイドラインが出てきましたが、私はやっぱりこれは十分ではないというふうに思っています。  アメリカ・オバマ政権は、当初は、例えば日本が二〇〇二年、三年辺りにやったようないわゆる竹中プランの中でやったように、銀行に対して非常に厳しい査定をして資本不足を明らかにした上で公的資本を注入し、いろんな注文を付けながら、いわゆる金融制度を正常化していくという方向を描いていたんだと思いますが、オバマ政権は二つの大きな障害にぶつかってしまったと思います。  一つは、財政赤字が急拡大してなかなか追加の財政が出せないと。もう一つは、国民、議会の間で銀行、金融機関の救済を非常に阻むといいますか、否定するようなムードが非常に強くなったということで、方向転換を強いられたと思います。つまり、一気に公的資金のお金で金融機関を、バランスシートをきれいにするということをあきらめて、かつての日本のように、時間を掛けて、民間金融機関が自力である程度時間を掛けて不良債権を処理していくという方向を選んだんではないかなと思います。そうしますと、話が長くなりますが、資金逼迫というのはどうしても長く続いてしまうということになります。  一時的に急激に落ち込んだときには、企業は急激に生産・在庫調整をし、いったんそこで景気は戻ってくるわけですが、やはり需要が付いてこないと。今アメリカで出ているデータでも、住宅もいったん戻ったかに見えてやはり足下が非常に弱いと、消費もいったん年初戻ったように見えて今非常に弱いという形になっていますので、在庫の調整が一巡したことでいったん景気は戻るんですけれども、結局需要が付いてこない。金融問題がアメリカの、特に個人消費活動を、あるいは住宅投資を非常に阻んでしまっているということで、もう一度景気が落ちていってしまうというのがダブルディップだと思います。  そして、翻って、日本お話でいいますと、五ページ目のような形になります。今、世界経済はリバウンドの局面に入っておりまして、日本はそのリバウンドが比較的長いあるいはやや強めなのかなと思っています。これは、一つには経済対策効果があります。既に成立している経済対策と今後成立するであろう今の経済危機対策ですか、この二つが重なる形になって途切れなく出てくるということで、秋ごろまではその効果もあって戻っていくのかなというふうに思います。しかし、その効果が息切れしてくると、あるいはアメリカ経済などが先ほどのようなダブルディップになってきますと、日本輸出がそんなには伸びないということになって、この青い線が当社見通しですが、もう一度今年の第四・四半期辺り、年末ぐらいにかけていったん落ちてくると。  しかしながら、ダブルディップといっても、今落ちているほどすごく落ちるわけではないんですね。ですから、形でいうとダブルではなくて、二番目の落ち込みはもっと小さいわけです。そういう意味では、私が想定しているのは、変形のダブルディップであって、ここからまた真っ逆さまに日本経済が落ちていくわけではないと。そういう意味では、最悪期は過ぎたというふうに思います。しかしながら、本格回復までには、主にアメリカ、ヨーロッパの金融問題が足かせとなって、すぐには本格回復には向かわないという見方でございます。
  50. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  最初からこの五ページの図を見ていれば余り心配して質問をすることもなかったのかもしれませんが、要するに、在庫調整をちょっとやって、いけそうだというのがちょっと上振れしてそれを戻すと、こんなようなことかなというふうに理解をいたしましたが、そういうことでありますと、大体シャープに落ちていって戻って、しかしこれは前期比、前年比の話ですから、絶対的な水準というのがやっぱりかなり落ち込んでいると。やっぱりそれを戻していくと。  クルーグマンの話でいけば、六十キロが三十キロになって、ゼロから三十に戻って、まあ二番底はあるのかもしれませんけれども、六十近くに戻すというのはこれではいけないわけで、先ほどの整理でいけば、二番目の中期戦略をやって経済構造を変えていって、内需も少し引っ張ってもらう、こういうことになる、こういうふうに思うんですが、そのときに、政策論との折り合いを付ける意味でも、なかなか経済中心でやっていくと格差が広がるとか都市と地方の格差だと、こういうふうに言われておる中で、そういうことにもこたえながら全体としての目配りをした政策をやっていかにゃいけないと。    〔委員長退席、理事岩永浩美君着席〕  そこでちょっと木内先生にお聞きしたいのは、地方の公共事業というものでワイズスペンディングと言えるものがあり得るのかと。要するに、人口が集中しているところはもっとやればもっと効率が上がるということですが、実はそれをもっとやるともっと便利になってもっと人が集まって都市と地方の格差はまた拡大する、こういうことが想定されてしまうんですが、地方も、例えば先ほどの小杉先生のお話で、住宅価格なんていうのは実は物すごく安いんですね。ですから、地方で余り住宅の心配をしなくてもいろんなことはできるというのがあって、分散させるというのは、昔から田園都市構想とかなんとかやってきたんですが、経済学的というかエコノミスト的に言うとなかなかそういうのはワイズスペンディングにならないということになっちゃうんですけれども、その辺は何かいいお知恵があれば、木内参考人、どうでしょう。
  51. 木内登英

    参考人木内登英君) 余りいい知恵はないんですが、一つは既に地方公共団体などで一部で進んでいるコンパクトシティーなどがあると思うんですね。  町をむしろコンパクトにすることによって、これは環境対策にもなります。つまり、自動車の利用をむしろ少し抑えて公共交通機関を使うようにすると。それから、職住が接近する形になるので、例えば、ビジネス街ではウイークデーは人が集まるんですけれども、ウイークエンドは人が集まらないのでいわゆるアミューズメントみたいな仕事が成り立たないというのも、そうではなくて、日本はどうしても職住が離れているという傾向があるわけですね。ビジネス街はビジネス街で、住んでいるところはまた違うと。そうすると、どうしてもビジネス街では成り立たないもの、例えば映画館とかいうものができてしまうと。それが、職住接近する形で更にコンパクトにすれば、いろんなサービス業が活性化する部分があると、しかも環境対策にもなってくるという、地方での新たな町づくりに公的なお金を活用していくというのは、一つワイズスペンディングではないかなというふうに思います。
  52. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  実は、手前みそですが、内閣府で副大臣のときにコンパクトシティーというのを実は始めさせていただきまして、青森の例とか富山の例というのが先行事例であるわけですが、上に伸びるという話も含めてやっていかなければいけないし、ただ、みんなを移ってもらうというところがなかなか実は難しいところがあるんですね。地方で随分苦労してやっていらっしゃる首長の皆様がいらっしゃるのも事実ですので、そういう先行事例を広げていかなければいけないと、こういうふうに思いますが。  それともう一つ、まさにおっしゃるとおりのことで、モラルハザードとセーフティーネットのことを両方おっしゃっていて、中期的な日本経済正常化のプロセスを妨げデフレを長期化させないように配慮する必要があると。もちろんそうなんですが、一方でセーフティーネットは張らなきゃいけないと。これは、いつもトレードオフというのは我々政策をつくっていますとあるんでございますが、このどこで線を引くかについてもし御意見があれば、何か指標になるようなお考えがあればお伺いしたいのと、あわせて、今からはマネタリーだというお話で量的緩和政策についてのお話がありました。インフレターゲットというのも随分我が党でも議論したんですが、結局、前回はそこまでは行かずに、ゼロ政策、量的緩和というふうにやっていったと、こういうことで時間軸効果というのがあったんだと、こういうふうに言われておりますけれども前回の量的緩和政策というのを木内参考人はどういうふうに評価されておられるか、その二つ、お願いいたします。    〔理事岩永浩美君退席、委員長着席〕
  53. 木内登英

    参考人木内登英君) セーフティーネットとモラルハザードの問題というのは非常に難しいと思います。  私が今注目しているのは、従来のセーフティーネットですと、主に金融面企業支援策ですが、中小企業に対する金融面での支援、融資保証制度であったわけですが、グローバル金融危機を経てやはり大企業を救済するというスキームが非常に出てきていると。これは危機融資、緊急危機対応融資ですか、であったり、あるいは間もなく稼働すると思われます資本注入の枠組みということですが、やはり企業の選別が多分重要なんだろうと思います。  そのときに、この企業がやはり日本経済の将来にとって非常に重要であり、しかも救済すること等を条件としてやはり非常に厳しいリストラクチャリングを自らやっていくということをやっぱり常にプレッシャーといいますか約束させるようなことを条件に、国のお金を企業の支援に使っていくということであります。そういう意味では安易なセーフティーネットではなくて、非常に条件付でもあり、常に企業側にも再生への努力を促すものであり、さらに、本来はやはり退出すべき企業を救済することがないようにその企業の選定段階において中立性を保つという仕組みをつくっていくということはやはり重要なのではないかなと思っております。  それから、量的緩和策ですが、完全な実証研究はされておりませんが、私自身が感じているのは、量的緩和策効果はあったというふうに思います。  量的緩和策効果で一番期待されていたのは、いわゆる流動性を供給することによって銀行がそれを貸出しに回すという効果でありますが、これについては残念ながら明確な効果があったとは言えません。しかしながら、二つ効果はあったと。一つは、銀行に常に大量の流動性を供給することによって銀行が破綻することはないという金融システムの安定に貢献したという点です。二つ目は、先ほどもお話が出ましたが、時間軸効果と。デフレが解消するまでは金利を上げないという約束をすること。そしてもう一つは、日銀が長期国債を買取りしていくということによって長期金利の上昇を抑え込んだ、これによって経済にも安定効果をもたらしたと。主に三つあるうちの二つ効果は確認できたんじゃないかなと思います。今回については、最初効果、つまり流動性を供給することによって銀行の貸出しが増えるかどうかと、この点についても今回は効果がある程度は期待できるんじゃないかなというふうに思います。それは既に効果としては出ていると思います。  欧米と比べますと日本の金融は非常に安定しています。その一つの事例は銀行の貸出しが実は増えているということで、銀行の貸出しは今前年比で三%半ばぐらい増えています。アメリカとかヨーロッパですと急激に銀行貸出しは減っておりますので、それだけ見ても日本の金融情勢がまだ欧米と比べると安定しているということだと思います。それは、日本金融機関が依然としてある程度の健全性を保っているということと、加えて、先ほど申しましたような政策が、セーフティーネット政策がある程度効果を現しているということだと思います。  ですから、日銀は既に、量的緩和は導入はしていませんが、いわゆる当座預金の残高を相当引き上げて、流動性は既に供給していると、この効果が私はある程度は現れているんじゃないかなということであります。でも、これは導入しないで、例えば一年後にはもしかしたら効果は薄れてしまうかもしれないという意味では、比較的早期に導入した方が効果としてはあると思います。  最後にもう一つ量的緩和策効果としては為替市場の安定というのが一つは期待できるんじゃないかなと思います。世界全体として量的緩和的な政策を取っていると。日本だけそれに慎重な姿勢を続けていますと、相対的に通貨は、価値は、価格は上がってしまうと。円高というのは今の日本経済にとっては非常にマイナス効果が大きいと思います。  という点を考えましても、過去の事例を踏まえても、今回、量的緩和策を導入することのプラス面というのは非常に大きいんではないかなというふうに私自身は考えております。
  54. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  言葉遣いの問題ですが、量的緩和政策というのが、オーバーナイトがゼロにならないと、その次が量的緩和で、その前にやっていることは量的緩和政策じゃないんだというふうに考えちゃうと実はちょっといけないので、今おっしゃったように実は今でもいろんなことをやっているわけですね、長国の買入れとか。ですから、そういうことも含めて、ゼロに行く前にもいろんなことをやっていて、急にゼロになった、どかっとやるんではないということで手当てをしていってもらいたいと、こういうふうに私も思っております。  そこで、時間の関係もありますので、小杉先生に、企業内教育と雇用の流動性というお話がありました。私も、随分前ですが、サラリーマンをやっておりまして、確かに会社に入る前は自分でネクタイも結べないぐらいのが、電話の掛け方から始まって企業内教育受けたなというのを思い出しながら聞いておりましたけれども。  今後、何といいますか、終身雇用というのがだんだんなくなってくると。終身雇用も一部の大企業の都会だけの話だと、こう言う人もいますけれども、だんだんそういうふうになってくると、企業内でやってくださるところはそれはそれで大変いいことですが、これを外でやるというふうになった場合にどういうことに注意をしなければいけないか。特に、今からは、どこかへ勤めに行くというスキルだけではなくて、自分で個人的に何かをやるとか大きな会社を起業するということではなくて、少しSOHOみたいなことをやるとか、それから最近農水省と厚労省が連携して農業にマッチングをするというのをやっていらっしゃると聞いて非常にいいなと思いましたけれども、一次産業とかそれからサービス業のところにもどんどん行ってもらわなきゃいけないと思うんですが、そういうことについてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  55. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 大事なのは、移動することを前提にすると、その間で能力の評価がきちんと伝えられることだと思うんですよね。一つ企業の中でずっといるという前提だと、企業の中で育つということと同時に、企業独特の評価の仕方だとか暗黙の評価だとかそういうものが積み上がって、それなり企業の中ではお互いに納得のいく評価になったとしても外には通用しないものになるということになるわけですよね。あの企業の中で良かったからといって外では企業に評価されるとは限らない。その移動を前提にして考えると、能力を評価する基準のようなものがきちんとできている必要があると思うんですね。  もう一つは、今は企業の中での話をしましたが、そこで例えば起業をするという話、自分で何か始めるとかそういうことの話ですけれども、そういうときに、やってきたことをだれが一体どこで認めてくれるんだろう。結果としてうまくいけばいいですけれども、うまくいかなくて、ここでの経験は経験として次にどこかにアプライしようとか思ったときに、例えばNPOなんかでいろいろやってきたとかそういうことが次のどこかに採用されようとすると履歴書に実は全然書けないというか、あそこで何やっていたというようなことを書くスキームがないとか、そういうことが起こりますよね。起業とか、今みんなが知っているこの企業でこれだけやったというのとは違って、よく分からないところでいろんなことをやってきたということをちゃんと評価してもらえない。日本若者たちは今社会的企業とかとても関心があって、社会的な働き方、社会に何か貢献するような生き方というものに対して大変関心があるんですが、ただ、いったん最初にNPOなんかに入ってしまうと、そこの経験が全然外には評価してもらえなくて、次にどこかで採用されようとすると履歴書の空白になってしまうとか、そういう事態があるわけですよね。  そこで大事なのが、能力をどう評価して次のキャリアのステップに結び付けるか。そういう一つ企業の中だけで一生終わるのではなくて、いろんなところで、そのときに応じて自分で起こしたり移ったりというような、それができるようにするためには、能力のポータビリティーといいますか、自分の能力をきちんと証明してよそからもちゃんと評価してもらえるような仕組みづくりが必要だ、それが能力評価の基準だと思うんですが、それを横断的労働市場のような形で、職種がはっきり決まっていて、この職種ならこれだけやれるということがちゃんと証明できるような、そういう横断的労働市場の世界があるようなところではとてもそれがやりやすいわけですよね。  ですから、ヨーロッパなんかですと、やはりNPOなんかでやってきたことがまた実は次の就職するときに生きたり、あるいはアメリカなんかでもそういうところがあると思うんですが、日本の場合には企業の中だけでという、そういう形で能力が評価されてきたものですから、そこがない。  大事なのは、多分、外にも示せる基準をどう作っていくかというところだと思います。あるいは途中から参入させる企業がそれをちゃんと評価できる、そのためには、実は企業の中にも今そういうさっき言ったようなどんぶり勘定的な能力評価ではなくてきちんと評価をすることがどんどん広まっていますから、コンピテンシーというような形で個人の能力をきちんと評価するという仕組みがどんどん精緻になっている。この能力の、企業の中にある仕組みとほかのところでやってきた仕組みとをリンクさせるような、そういう方向が大事だと思うんですね。社会的に能力を評価する能力評価基準というのをきちんと作っていく。  実は、私の知っている範囲では厚生労働省の中でそういう能力評価基準を作るような動きがずっと積み重なっているんですが、なかなかまだうまく運用されていなくて、これをどうやって社会的な、何といいますか、通貨のように能力の評価が共通に評価できる基準を作っていくかということがこれから大事なことじゃないかというふうに思っています。
  56. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  全く同感で、本当は政府がパターナリズムでやってあげなくても、そんなことはもうけたいと思っている経営者が自分で作って、ほかのやつに、実はこっそりといいやつだけこうやって採っちゃえば本当はいい話なんで、何やっているんだろうということになるんでしょうが、しかし、そうやって後を押してやってジョブディスクリプション、こうやって標準化していきましょうということを是非専門的な立場からもやっていただければというふうに思います。  そこで、嶋中先生、大変お待たせいたしましたけれども、大体違和感なく御説明が入ったものですから、質問というよりも今後の話で、一つ大変私は興味を持っておりますのは、ニューケインジアンですとか新しい経済思想なんだと、市場原理主義とかレーガン、サッチャーから始まったのはもう終わりましたというような話をよく聞きます。特に、オバマ大統領になったものですから、ニューディールコーリション以来の転換なんですと。あれは、政治的なニューディールコーリションとそれから経済思想の変化と両方が同時に起こったというか、どっちかが原因でどっちかが結果なのかもしれませんが、今後どういう経済思想になっていくのか。  ニューケインジアンというのは、実はケインジアンでない、いわゆるケインジアンでないことをニューケインジアンと言っているということであろうと思いますが、そのことについてどういうふうに思われるかということと、私は今こそ日本の出番ではないかと。ステークホルダーとか、それから公益資本主義なんて言っている人も今出てきていますけれども日本的な、渋沢さんが言っていたような論語とそろばんみたいなことが今最も実は求められているんではないかなと思っていまして、結構うまくいっているモデルだと思うんです。ですから、そのことをもう少し体系的にこういう考え方ですということを出せば、私は日本初のノーベル経済学賞も夢ではないなんていうことをいろんな人にけしかけているんでございますが、どういうふうにお考えか、御教唆いただければと思います。
  57. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 林先生、かなり高尚なお話になってしまうと私は太刀打ちできないですが、ただ、私の知識の範囲内で言えば、いわゆる政府介入主義と規制緩和主義というのは、大きな政府と小さな政府というのは、先ほどお話ししましたコンドラチェフの波の繰り返しのたびに交代して現れています。  今オバマ政権がニューディールということをまた言っているわけでありますが、一九三三年にルーズベルト大統領が就任してニューディール政策を行っていたわけですが、その前の一九二〇年代までの潮流が小さな政府であったわけであります。経済学者としては、アーサー・セシル・ピグーとか今でも非常に有名なハイエクとか、そういうような人たちができるだけ政府の介入を排して自由な企業活動中心にやっていくと。  大恐慌のようなことが起こったときに、その大恐慌の原因は、例えばピグーなんかの考え方によると、労働組合が賃金を無理に上げるから、だから要するに雇用が大量に失われるんだという説明をしたんです。それは経済学的には一つの説明なんですよ。ただ、それは政治的には全く受け入れられなかったわけでありまして、また、そういう大量失業者が出る中で現状を打破しなければならないという考え方としてニューディール政策などが出てきたわけです。これがケインジアニズムということでありまして、一九三六年に一般理論をケインズが書きましたけど、実際には一九三三年のニューディール政策にその思想が実現されているというわけで、日本では高橋是清の政策があったわけであります。そういうふうにして、どうしようもなくなったものが底入れして上昇してきたと。  戦争を挟みましたけれども、その後、日本の高度成長もありましたが、世界的な経済成長があって、一九七〇年代になって資源の天井にぶつかるわけでありますね。つまり、修正資本主義のようなことが成功したんだというふうに思われたわけです。その中では、日本株式会社という、MITIが、何といいますか、市場を主導するというような形のやり方がいいんだというふうに称揚された時期もあったわけでありますが、しかし、何だかんだ言いながら、石油ショックを二度経験して、資源制約の天井の中でスタグフレーションが発生してきますと、今度はまたハイエクがいいというようなことを皆さん言い出すわけでありまして、ケインズ主義が退潮していくわけです。そして、一九三〇年代の大恐慌は、実はマネーサプライを三分の一激減させたFRBの政策の失敗によるもので市場の失敗ではないというフリードマンがノーベル賞を受賞して、そのフリードマンやハイエクの思想である新自由主義、市場重視主義、小さな政府論というのがレーガン大統領、サッチャー大統領の登場によって一つの主流を占めていき、それが構造改革の流れにつながっていって、つい最近まで主流にあったわけでありますが。  また、百年に一度ではありませんけれども、一九三〇年代以来のデフレギャップといいましょうか、非常に大きな落ち込みに直面して、再び、それまで十年間ぐらいは公共事業はいけないんだとか構造改革じゃなきゃいけない、もう何でもかんでも規制緩和という雰囲気があった中で、ちょっとそれは違うんじゃないかという中で、世界的に財政支出が出され、金融も出すというのがケインズのやり方でありますけれども、そして流れが変わってきた。これが成功しますと、やや大きな政府の方がいいんじゃないかという考え方が歴史的な教訓からいえば多くなっていくと思います、潮流としては。  ただし、その時々によって、局面によって同じではありませんから、例えば新しい流れというのはニューケインジアニズムであり、ニュー何といいますか大きな政府主義というような形で、おっしゃるように、日本がやってきているような資本主義というのはひとつ見直しの機運がやってきたと言ってもおかしくない。  なぜかというと、日本は資本主義のつもり、あるいは市場経済主義のつもりでいながら欧米から見れば社会主義国家だと思われてきたわけでありますが、それがいけないんだというふうに言われていたんだけれども、そうじゃなくて、ある程度いわゆる混合経済みたいな日本独特のやり方、これが意外にいいんじゃないかというふうに見直される可能性はこの局面、コンドラチェフの局面からいえばあるとは言えます。しかし、それがまた過剰にいきますと、ついにまた資源制約の天井にぶつかって、再び反省が起こってまた小さな政府へと潮流が変わっていく。そういう大時代的な局面の今、そのコンドラチェフの波の大底局面にあると私は思っておりますので、先生のおっしゃるように、日本の今までやってきたことが一つモデルとしてきちっと提案できれば、今の局面にはマッチしたものになる可能性はあるかと思います。
  58. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  モデルにしてきちっとした体系的な体裁を整えるというのが実は大変大事なことではないかと、こういうふうに思っておりまして、まさに嶋中先生にそのことを言っていただいて我が意を得たりという感じがいたしますが、そういう意味では、やっぱり振り子だなということで、振り子とまた違った方へ行くというような複雑形になるんだと言うような人も出てきているようでございますけれども、やっぱり今のコンドラチェフの波でちょうど来ているんだなということを今日は教えていただいて大変有り難かったということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  59. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 公明党の荒木です。お三方に順次お尋ねをさせていただきます。  まず、木内参考人にお尋ねをいたします。  先ほどの参考人のレジュメでも、お話でも、四—六月期の実質GDP成長率は五四半期ぶりプラス成長への転換が見込まれるとしまして、その理由として、輸出の持ち直しと定額給付金など経済対策効果がその原動力にと、こういうお話でありまして、是非、我々も定額給付金を強く推進してきた立場でありますので、このようにしていかなければいけないと思います。  そこで、私は、この定額給付金を皮切りといたしまして、我が国でも是非給付付き税額控除を今後実現をしていくべきだと、このように思っているわけなんですね。要するに、今回の定額給付金もそうですけれども、こういうときこそ本当に国民の懐を暖めるような政策が必要ではないか、こう思っていまして、この給付付き税額控除を今後採用すべしという考え方につきましては、参考人はどういう見解でしょうか。
  60. 木内登英

    参考人木内登英君) 定額給付金政策の評価はやっぱりその目的にあるんだと思います。私がやや懸念しますのは、この定額給付金の議論が昨年の秋に出て以降、その目的が非常にぶれてしまったということでありまして、当初はいわゆるセーフティーネットといいますか、例えば原油価格の上昇などで家計がダメージを受けたと、そういう人たちに支えるというようなセーフティーネット的な政策だとされていたのが、景気情勢が非常に悪くなってからは景気対策だということで、政策の目的が途中でぶれてしまったということが国民の一種の不信感を招いてしまったと思いますので、もし御指摘のような政策を実行されるんであれば、目的が何であるかというのを当初からしっかりと掲げていくということが必要だと思います。  経済効果については、定額給付金も、規模にもよりますが、大体過去の事例でいいますと、給付あるいは減税した分の三割ぐらいが消費に回るというのが一つのめどだと思いますので、それだけで景気を浮揚させるというのは難しいというのが正直なところであります。ただ、景気浮揚ではなくて、それによって、例えば三割が消費に回るということは七割は貯蓄に行く、あるいは借金の返済に回ると。もちろんそれも個人を助けることになるわけですから、目的がそうであれば、経済効果云々ではなくて、必要な政策であればセーフティーネット政策としてしっかり打ち出していくべきかなというふうに思っております。
  61. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 続いて木内参考人に、先ほどから、過度に外需に依存をしてきたことの弊害が議論されております。ただ、もちろん内需の振興だけで景気回復はできないわけで、依然として外需が重要であると思いますし、従来の米国向けの輸出に過度に、特に自動車の輸出に過度に依存していた構造から、中国を始めアジア、新興国向けの輸出にシフトをするという改革が私は必要かと思いますけれども、そのためには政策的にどういう手を打てばいいのか、お考えがあれば教えてください。
  62. 木内登英

    参考人木内登英君) 先ほどもちょっと申しましたが、やはりアメリカ、ヨーロッパ、特にアメリカ日本にとっては戦後一貫して輸出品を買ってもらった非常に重要なお得意様であるわけですが、アメリカ経済自体はここから長期の低迷に入っていく可能性が高いと。一方で、中国経済はポテンシャルやはりあるんだと思います。そういう意味では、日本の外需、輸出先としては既にそうなっておりますが、よりアジアの方に特化していくというのが日本の国益にもかなうのかなと思います。  しかしながら、日本が戦後やってきた、例えば部品、材料などを輸入して、加工して組み立てて輸出するという加工貿易型というのはもはや成立しなくなってきております。日本が強みを持っているのは、製造業でいいますと、やはり付加価値の高い部品とか材料、更に言いますと電子部品とか太陽電池とか、そういうものであります。ですから、ここで日本はアジアに対してすみ分けをしていくと。組立て工程は例えば中国、その心臓部をなす電子部品あるいは付加価値の高い鉄鋼とか、そういうのは日本で作るというすみ分けをしていく必要があると、こういうことで、それが日本を含めたアジア全体の発展にとって重要になっていくんではないかなというふうに思っております。
  63. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、小杉参考人にお尋ねいたします。  このジョブ・カードにつきましては、これは鳴り物入りで登場したわけで、私ももっと普及をさせていかなければいけない、こう思っております。  そこで、先ほども議論がありましたけれども、やはり企業としては、このジョブ・カードで認証されている訓練が本当に会社の中で通用するものなのか、もう一回訓練し直さなければいけないのではないかという、そういう危惧もあってなかなか普及しないのではないかと思うんですね。  先ほども、そういう意味で客観的な評価基準、横断的な職業能力の評価基準を樹立すべしというお話があったんですが、参考人の先ほどのお話のように、それはなかなかすぐにできるものではないと思うんですね。そうなりますと、今回のお話にありました、このジョブ・カード制度における訓練の質の保証、向上のための仕組みの組み込みということが本当に重要だと思うんですが、具体的にどういうことをしていくべきなんでしょうか。
  64. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 今のところのジョブ・カードの運用の範囲では、質の保証はできていると思っているんですね。だから逆に進まないといいますか、非常にその訓練の質についてかなりこだわっているというか、スキームがきちんとしているので、余りにもきちんとしているので、中小企業で弾力的に運用するのにちょっとハードルになっているところがあると。そのハードルを少し、運用の基準を緩める方向を少し現実的には取らなきゃならないんじゃないかとは思っております。今の段階ではそうだと思います。  将来的にはといえば、もっと質の保証というのは絶対大事になってきますので、質の保証は、今訓練の内容の部分だけで考えていますが、訓練の作り込みの仕方ですね。  例えば、今大学とか何かで教育の質の保証というのはとても大事になっていて、保証するための仕組みを考えていて、そこではやっぱり教育の内容だけではなくて、教員の在り方だとか、それから外部からそれをどう評価させるかだとか、そういうのを組み込むんですよね。  そうすると、職業訓練についても多分そういうところが大事になってくるんじゃないか。職業訓練を提供する教員といいますか、指導する人たちに対して教育をするとか、それから、例えば業界団体の中でその訓練について同じ基準で評価するような業界団体内部での基準を設けて外から評価できるようにするとか、そういう工夫はこれからはあると思います。  現状では少し弾力化して広める、先々はそれぞれの業界の中で基準作りを外部からも透明性のあるものとして築いていく、こういう二段階が必要かなというふうに思います。
  65. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、嶋中参考人にお尋ねいたします。  先ほども、今が正念場で中小企業対策が欠かせないんだ、こういうお話がありました。今回の補正にも、中小企業の金融支援につきましては、緊急保証あるいはセーフティーネット保証の枠の拡大ですとか、あるいは雇用調整助成金についても中小企業には更に厚めにするとか、様々盛り込まれていると思っております。  そういう意味では、こうした政策を今後推進していく、どういう形で運用していけばいいのか、あるいは更に必要な中小企業支援対策があるというお考えであれば教えていただきたいと思います。
  66. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 中小企業については、地域的な立地というのは地方に結構多いと思うんですね。中小企業のうち、建設業とか小売業とかいろいろありますけれども、建設業の方はかなり、公共投資をずっと減らす過程で苦しくなったというところも結構あるんですね。  そういう意味では、今回の景気対策で、質的な問題はもちろんあるかとは思いますけれども、少し一息つくことはできるんではないかと。それと、おっしゃったような緊急保証そしてセーフティーネット保証ですね、ここら辺がかなり、現状、何とか出血を止めて、何というか、非常に厳しいながらも中小企業がもっているという原因になっているという話はよく私が地方へ行きましても耳にいたします。  ですから、ここら辺は強力に続けていただくということと、さはさりながら、中小企業も、日本政策金融公庫、中小公庫さんですね、旧、の中小企業景況調査などを見ると、四月になりまして急速にいわゆる売上DIというアンケート調査のマインドがかなり改善をしてきております。  ただし、これは、先ほど御紹介した日銀短観は良いから悪いを引いた水準なのに対して、前月比で増加しているか減少しているかというものを問う変化の方向なので、この変化の方向が変わっても相当持続していかないと水準の改善になかなかつながっていかないということで、まずやはり持続をお願いしたいということを私は思いますし、あとは、これは中小企業だけじゃなくて中堅企業も結構厳しい状況にありますので、ここら辺のところも政投銀の融資だとかあるいは商工中金さんの融資だとかそういったものもあるかとは思いますけれども、広く地銀さん、信用金庫さん、信用組合さん、そういったものにもできるだけ保証の枠を続けることによって活発に支援するように、公明党さんを通しても呼びかけていただければというふうに思います。  特に知恵があるわけではありませんので、申し訳ございませんが。
  67. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 終わります。
  68. 山下芳生

    山下芳生君 日本共産党の山下芳生です。  まず、木内参考人に二点質問をいたします。  企業による雇用削減がこれから本格化するという御意見でしたけれども、既に昨年十月来、非正規労働者二十万人が解雇、雇い止めになっております。しかし、その上これから本格化と聞いて大変危惧をしているわけですが、一体どのような形で削減がされようとしているのか。  それからもう一点は、そのことが家計消費消費購買力を一層冷え込ませて、需給ギャップを一層悪化させる心配はないのか。  この二点、お願いしたいと思います。
  69. 木内登英

    参考人木内登英君) 雇用削減、もう少し広い目で見ますと、人件費の削減というのは確かにここからむしろ強まる可能性があると思います。  昨年来の企業調整は、一つは非正規社員の削減、そしてもう一つは残業代の削減という形で進んできましたが、いずれもやや限界に近づいてきている感じであります。ここからの人件費抑制といいますと、一つは、やはり正規社員の雇用の抑制ないしは削減、あるいは賃金、ボーナスの抑制ないしは削減ということになります。非常に単純に賃金の給与の水準を計算しますと、非正規社員と比べて正規社員は四倍以上と、これは労働時間が違うというところに起因している部分が大きいわけですが、いうことになります。  そういう意味でいいますと、今までは非正規社員の雇用が削減されることを中心に失業率が上がってきた、失業が増えてきたわけですが、今度はより高い給与の人が削減されてくるという局面に入りますので、例えば失業率の上昇は急加速しなくて今までどおりないしは少しペースが落ちて上がっていく形かもしれませんが、個人全体の所得という点でいいますと、むしろここからが厳しいという形になります。  そういう意味では、御指摘のとおり、需給ギャップが開いたまま、さすがに拡大するとまでは思っていないんですけれども、非常に開いたまま行ってしまうと。ただ、これはやっぱり残念ながらどうしても必要だと思います。雇用の削減だけじゃなくて企業設備も同様ですが、非常に供給過剰を抱えてしまっていますので、ある程度の調整を進めない限りは、企業がまた雇用を増やそう、設備を増やそうという形にならないと。そこの調整が済むまでは、確かに需給ギャップが大きく開いたままという可能性が高まると思います。  過去の例でいいますと、こういう例があります。経済危機が起こる、景気が非常に落ちたときに、非正規社員の雇用の削減、抑制というのは大体三か月ごろ始まるんですね。ですから、昨年の九月に金融危機が起きましたので、十二月辺りから非正規社員の雇用の抑制、削減が始まった、確かにそのとおりです。正規社員はどうかというと、やはり企業が決定するときにもうちょっと時間差が掛かるわけですね。より中長期的な視点から正規社員の場合は雇用を考えますので、そうすると一年ぐらい掛かるというのが過去の例であります。  そうしますと、一つのめどとしては、むしろ今年の秋ごろから正規社員の雇用の抑制が本格化してくる可能性があると。これが先ほど私が申しましたダブルディップになってしまうというふうに考える一つの根拠でございます。
  70. 山下芳生

    山下芳生君 小杉参考人に伺います。  若者こそ不安に駆られているという御意見に同感であります。私どもの党のホームページにも「若者仕事を」というコーナーがありまして、そこにはたくさん深刻なメールが寄せられます。読みますと、努力しても仕事がない、生活ができないことへの言いようのない不安感、絶望感、これが社会への不信へとつながっていると感じております。  参考人はその不安要因を五つ整理いただきまして、大変参考になりました。資料、先ほど聞きながら、若者の中で非正規雇用が〇一年と〇六年比べてみてもうぐんと増えている、特に高校卒の男性、女性は非常にこのわずかの五年間で非正規化が進んでいるということに改めて驚いているわけですけれども、この若者たちが昨年の秋以降、大量に派遣切り、非正規切りで仕事も住まいも失っているということも言えると思います。非正規のままでは自立家族形成ができない低賃金に置かれるという御指摘がありましたけれども、それに加えて、今、物のように簡単に使い捨てられる超不安定性というものも出てきているんじゃないかと思います。  こうした若者の中での非正規雇用の増大について小杉参考人はどう感じておられるのか、また社会としてどう対応すべきとお考えになっているのか、伺いたいと思います。
  71. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 全員を正規の社会にすることはできないと思っています。人生の一時期、一時的な働き方をするというのは、それは御本人のキャリアにとってもマイナスばかりではない、最初から正社員で一社だけという生き方だけがいい生き方ではないと思います。問題はやはり、身分のようにそこに固定されてしまうことが問題で、そこから次に移れるステップが見えること、まずそれが大事だと思います。第二番目には非正規で働くこと、有期限の雇用あるいは短時間の雇用というような働き方、これを正当に評価できるような仕組みにしていかなければならない。やっぱり身分的な感じが非常に強くて、正規と非正規の間の行き来ができないという状態がひどく問題だというふうに思います。そこを解消していくことが不安を解消するためのとても大きなポイントだというふうに思っております。
  72. 山下芳生

    山下芳生君 同時に私は、〇一年と〇六年の間に労働者派遣法の規制緩和がありました。製造業に解禁されたのが〇四年ですから、そこに今大きな非正規切りということの直接の原因があると思いますが、これをこのまま放置しておいて、今先生がおっしゃったような非正規から正規に移れるような可能性というのが生まれてくるんだろうかということを心配するんですけれども、労働政策と今おっしゃった先生の目指すべきありようとの関係はどう考えたらいいんでしょうか。
  73. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 労働政策の中でも、例えばパート法の改正などで正規と非正規の間のギャップをなくそうという、そういう方向性は見えていると思います。派遣法については、派遣そのものは、やっぱり社会の変化の中で派遣という働き方も一定程度必要な働き方だというふうに私自身は認識しております。  ただ、その制度の仕組みとして、派遣という働き方はメリットは何かというと、本当に必要なときに必要なところに行ける、移せることなんですね。つまり、社会の構造転換が大きく進んでいるときには、この派遣の方たちこそが今これから必要なところに移っていけるようにしなきゃならない。そこで大事なのは、私は、派遣の人たちこそ能力開発もきちんとできる、新しい社会に見合った、新しい能力を身に付けやすい仕組みをつくらなきゃならないと思うんです。私自身は、フランスの派遣法にあるような、法律自体の中に派遣の人こそ能力開発ができる仕組みというのを組み込むことの方が大事だというふうに思っています。
  74. 山下芳生

    山下芳生君 派遣をもし前提にするならば、私は、派遣先の労働者との差が余りにも大き過ぎると、均等待遇に近づけるということなしに派遣を前提にすることはできないと思いますが、いかがでしょうか。
  75. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) それはもちろん賛成です。均等ということがお互いに大事なことだというふうに思います。
  76. 山下芳生

    山下芳生君 終わります。ありがとうございました。
  77. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日はありがとうございます。昨日、エコポイントについて国会で質問したんですが、今朝の東京新聞に木内先生の発言が出ております。環境対策という点では評価してもいいとしたが、景気対策としては個人の所得が増えない中の消費の先食い、経済波及効果が四兆円なんてないんじゃないか、また、予算を使い切ってしまった場合どうするのか、不確定要素が多過ぎると見切り発車を批判、その上で、多分に人気取り的な施策、選挙を意識しているとの印象が強いと言い切ったと、こうあるんですね。私は非常に意を強くしまして、全く同じことを考えていらっしゃる。  昨日も質問したんですが、多くの人が買ったらどうするかといえば、予算が三千億円使い切ったらもうやめますみたいなことで、それはやはり不確定要素も大きいし、おかしいというふうに思っております。いかがですか。
  78. 木内登英

    参考人木内登英君) 昨日電話で話した内容がここまで記事になっていると思いませんでしたけれども、そのとおりだと思います。  まず、規模としては非常に小さいわけですね。確かに、その制度によって対象となる商品を買おうというインセンティブは高まるかもしれませんけれども、結局個人のところに入るお金というのはその政府からの補助、つまり三千億ぐらいしかないわけです。これは規模としてはGDPの〇・〇五%ぐらいですから、基本的にはそれを上回る経済効果というのは出ないと。ですから、結果的には、ほかのものを買わずにそれを買うということと、タイミングを前倒しにするということでしかありませんので、多少長い目で見ると効果は余りないと。  一方で、消費行動としてはかなり不安定になりやすいと思います。まず、制度としてやや拙速につくられたなという印象があるのは、エコポイントを何に使えるかというのが最初から分かっていないと。ですから、それが分からないとすぐに買おうとしないかもしれません。ですから、しばらく、当初はすごく、スタート時点から若干効果は薄型テレビなどはあると言われていますが、でも、何を買えるかが分かるまでにはやっぱり買い控えているというのはあると思います。それからもう一つは、その予算を使い切った後にどうなるかというのが分からない、そうすると早い者勝ちになってしまいますので、どこかの時点で前倒しでばっと買って、その後急激な反動減が出てくる可能性があると。  そうすると、経済を非常に不安定化させてしまうという効果もありますので、やや設計自体が拙速につくった結果、こういった、何が買えるか、あるいは予算が使い切った後にどうなってしまうかという不透明な材料がある結果、消費行動はかなりボラタイルになって、トータルの効果は大きくないんですけれども経済はむしろ不安定にさせてしまうという要素があるのではないかなと思っています。
  79. 福島みずほ

    福島みずほ君 では、エコカーはどうでしょうか。役所なども一万五千三百三十二台買うんですね。五百億円以上掛けるんですが、政策の優先順位、あるいはエコノミストでいらっしゃいますので経済観点からいかがでしょうか。
  80. 木内登英

    参考人木内登英君) 今おっしゃられたのは、スクラップインセンティブ制度の方ですね。ですから、これは対象がかなり広いので、本当にエコカーの普及とは言えないような感じがいたします。四月からスタートしているエコカー減税については多少その環境対応車の普及に貢献するという環境対策効果はあると思いますが、スクラップインセンティブの方は余りそういう面での効果はないと。経済的な効果については、エコポイント制と同じだと思います。つまり、使い切った後、政府がじゃ追加で予算を付けるのかどうかがよく分からないとなれば、かなり前倒しで早い者勝ちで買い換えるという人が出てくる、逆にその後はすごく大きな反動減が出てしまうと。  私が心配していますのは、タイミングが、経済全体がもう一度下を向く秋ごろにその息切れ感が出てしまうんじゃないかなということでありますので、エコポイント制と同じような問題を抱えているというふうに思っています。
  81. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党は格差是正とやはり貧困の問題に大変関心を持っていまして、何とかこれを頑張りたい。  嶋中参考人、GDPががっと伸びても、この十年間、二百万円以下の年収の人ががっと増えた、GDPが増えると同時に二百万円以下の年収の人が同じベクトル、同じ図を描いていると、これは政治としては欠陥があったんじゃないか。あるいは、これから景気回復をどうするかってもちろん重要なんですが、国民の皆さんが本当に貧困で苦しんだりワーキングプアで苦しまない経済というのが、共生の経済というのが必要だと思いますが、いかがですか。
  82. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 格差を過度に広げないようにしながら、バランスを取りながら経済成長を進めるということは大事だと思いますので、福島先生のおっしゃるとおりだと思います。  ただ、どうやってその現状を変えるのか、あるいは同時に、これまで悪化してきたいわゆる格差問題ですね、これは同時に、構造改革の中である程度成長率が上がり景気回復したという面があったですね。ここら辺の要素がいわゆるトレードオフみたいになっている面がありますから、余り片方に肩入れし過ぎるとまた生産性が悪くなって大きな問題抱えるので、とにかくバランスが大事だなというふうに思っておりまして、要は過度に資本主義的になるのもいかぬし過度に社会的になるのもいかぬ、どっちかというと中庸の道でこういうものはやった方がいいんじゃないかなというふうに思います。
  83. 福島みずほ

    福島みずほ君 木内参考人、いかがですか。
  84. 木内登英

    参考人木内登英君) ちょっと別のことを考えておりましたので、ぼんやりしておりましたけれども。  やっぱり政策自体に格差縮小をターゲットにするというのも重要かもしれませんけれども、やはり経済全体を正常化させていくという政策の方を優先しないと、経済の低迷は続く一方、財政の支出ばかりが増えてしまうということにもなりますので、政策の重点というのは、現状は危機対応ということでセーフティーネット的な政策中心かもしれませんけれども、比較的早い時期に中長期的な成長軌道に乗せるための政策に重点を移していくという中での将来の格差縮小の方向というのをやはり考えるべきであって、現状は優先順位としては必ずしも高くないような印象があると思っています。
  85. 福島みずほ

    福島みずほ君 厚生労働省はこの間ずっと、例えば自治体にお金を出す、雇用創出やいろんなことをやってきた、シングルマザーの雇用就職支援などもやってきたんですが、なかなか効果が上がらない。小杉参考人、欠点は何なんでしょうか。
  86. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 分かりません。
  87. 福島みずほ

    福島みずほ君 木内参考人、何が問題なんでしょうか。
  88. 木内登英

    参考人木内登英君) 専門家の小杉さんが分からないのであれば私も分からないということなんだろうと思いますけれども。そうですね、済みません、分かりません。
  89. 福島みずほ

    福島みずほ君 済みません、嶋中参考人、お願いします。
  90. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) やはり欠陥が何らかあったんだろうと思いますよ。それは基本的には格差が広がってきたということが事実としてあるから、それはあると思うんですが。  ただ、それ、さっき言いましたように、トレードオフという問題をどの程度認識していたかということですね。あっ、これだというのでこっちの方向に走った、あるいは世界の中での日本の国際競争力を引き上げていかなきゃいけないと、そういうような命題に引っ張られますと、例えば賃金は、相対的に日本の労働者の賃金は高過ぎる、それを何とかしなければいけないというような話にもなっていくわけですよね。ですから、それは先ほどのピグーの話ですよ。労働組合が賃金を上げるから大恐慌は起こったと、そういうふうに新古典派は評価していたわけでありますから。だから、論理の考え方としてはあるけれども、バランスを取っていかないといけないと。そういうことは福島先生始め政治家の皆様にむしろお願いしたいなというふうに思います。
  91. 福島みずほ

    福島みずほ君 ありがとうございました。終わります。
  92. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 お三方には御苦労さまでございます。  まず、ピグーのお話が出ましたけれども、私も大変ピグーを関心を持っております。  まず、嶋中参考人小杉参考人にお尋ねしたいんですが、価値のあるものをつくる、あるいは価値のあるサービスを提供すると、そうした企業になっていくことがひいては日本全体の企業、社会、地域にも貢献するだろうというようなことで、私たちも新たな労使一体の新たな企業の創設というのを勉強しているところなんです。  そういうところで、まず、ピグーのお話が出ましたけれども、マクロ経済的な話でいったときに、今後労使関係というのはどういうふうに強化していったらいいかと。もう労働組合というのは非常に重要なものです。そういうものを含めて労使関係はどのようにあるべきかと、こういった方向性の示唆をいただければと。  それから、小杉参考人には、働き方という見方でどのように労使関係これから見ていったらいいか、つくり直したらいいか、この辺お尋ねします。
  93. 嶋中雄二

    参考人嶋中雄二君) 荒井先生、どうもありがとうございます。  ピグーの話をしたんですけれども、マーシャルという経済学者はウオームハート・アンド・クールヘッドということを言ったんですね。要するに、冷静な冷徹な頭脳と温かい心ということで、両方必要なんだということなんですけれども、労働組合であれ、そして資本家と称される企業の立場であれ、両方を兼ね備えている人が代表であるべきだというふうに思います。  それから、労働組合であっても、国の国際競争力に対して思いを致す必要がありますし、また企業であっても、自分の企業がもうかりゃいいんだというようなことではいけないので、何事もバランスだと私は思います。その両方を兼ね備えて労使が共闘して組めばいいんではないかというふうに考えます。
  94. 小杉礼子

    参考人小杉礼子君) 労使という意味では、やっぱりコミュニケーションをきちんと取ることが非常に大事だと思います。日本の労使のコミュニケーションはずっとうまくいってきたように言われていますが、一つは、やはり労組の方のアウトサイダーが非常に多くなっていったというところに対して労組はちゃんと対応してきたかというところが多分問題なんだろうと思います。  労働組合に入らない労働者に対してどう対応していくのか。これ、今非常にいろんなところで対応が始まっていると思いますけれども、組合の外にいる労働者に対しての取り込みというのが労働組合にとっては非常に大事で、彼らのボイスをどうやって労使の場に乗っけていくか。そこをこれから期待したいというふうに思います。
  95. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございます。  私も、例えば非正規労働者の方とか組合に入らない方がやっぱりみんなが参加するという方向を好ましいと思うんですね。だから、そういう意味でも新たな、何といいますか、一緒に労使がやっていく共同体という意味での企業という意味でいえば、そういうところにこれからの世界にも貢献できるようなお手本作りができるんじゃないかと、このように思っているわけなんです。  それでもう一つ、今度は木内参考人にお尋ねいたしますが、先ほどの家電と車、この件についての経済効果というお話一つ分かりましたが、さて、そこにもう一つの眼鏡でいうとレンズを重ねていただいて環境という視点で見たときに、家電の買換えと、エコカー、エコ家電、これらの取組についてはどのように御感想をお持ちでしょうか。
  96. 木内登英

    参考人木内登英君) 先ほども冒頭でありましたが、環境対策としては評価できるというふうに思います。  エコカーといいますか、スクラップインセンティブ制度の方は対象が余りにも広いので本当に環境対応車の普及という目的はちょっとそぐわない感じがありますが、エコポイント制はそういう目的にかなっていると思いますので、その点は評価できると思います。  一点気掛かりなのは、やはりそれによって特定の業種、企業に恩恵が行ってしまわないかどうかということであります。特に、金融危機で非常にダメージを受けた電機、自動車という二大産業に対するやはり支援となっていないかどうかという疑問を持たれる方も多いと思います。ですから、是非エコポイントを今度何に使えるかというのを決める際にはそういった観点も重視して、さらにそれが環境対策になるような対象を選ぶと。特定企業の救済とかにならないように、そういう疑いを持たれないような公正な選択をしていく必要があるというふうに思っています。
  97. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございます。  私、ポイント制度というのには若干懐疑的なんです。例えば、ブラウン管を買い換えて本来は地デジの薄型ということを奨励しなくちゃいけないんです。ところが、小さな液晶の地デジが映るものから大型化まで含んでいるんですね。ですから、本来はCO2を出すブラウン管を買い換えさせるというインセンティブを与えるということが重要なんです。そこに例えばポイントを与えるということなんだろうと思うんですね、例えばポイントの場合。しかし、ポイントでは駄目なんです。実は、CO2を削減をした分、いわゆるCO2が今CDMでお金に換わる時代でございますから、国がその分買い上げるという発想を入れないと駄目だと言ってきたんですけれども、これは残念ながら実現化されていないわけなんです。  こういったことも含めて、私は組立てというのはすごく重要だと、組立て次第、料理次第で本当に変わるなと、先ほどからお三方のお話を聞いてそういうことも併せて印象に持ちました。  それから、エコカーですね。例えば、高速道路の無料化ということを言っている方もいれば、休みのとき無料にして効果があった、ないと言うんですが、環境上は、これはどんどん車乗るということなんです。じゃ、ETCを配る前にやるべきことは何だったか。簡単なんです。いわゆる省エネカーだったらば割り引くという考え方がないんです。  こういう様々なものを組み合わせてシナジー効果を発揮して私は一つの成果というのは現れるということをお三方のお話を聞きつつ思いましたものですから、私も感想程度に申し上げました。  終わります。
  98. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。(拍手)  次回は来る二十五日午後一時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時七分散会