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松村龍二君 自由民主党の
松村でございます。
本日、
刑事訴訟法一部改正
法案について質問をさせていただきます。
私も、
冤罪者が出てはいけないといった思いは人後に落ちないつもりでございます。その
意味において、
捜査当局において限りなく適正な
捜査をやっていただきたいということを望むわけでございます。
私は、ただいまの質問者と違う立場から質問をさせていただきます。
取調べというのは、
一つのやっぱり技術といいましょうか、
一つの力が必要なわけですね。例えば、私が犯人に向かって、お名前は何とおっしゃいますかと、それで、何か殺人
事件があったんだけれ
ども、あなた犯人ですか、いや、そうじゃありません、ああそうですかということでは
捜査にならないわけです。
私は、過去、
警察に勤めていたことがあるわけですが、今から二十年近く前になるんですが、県警本部長時代にこういう経験をいたしております。
私が
警察本部機関誌に、本部長とベテラン何とかが語る、ベテラン刑事十人、ベテラン婦人
警察官十人、ベテラン麻薬
捜査官十人というふうな催物をいたしまして、十人ほどの刑事を集めて座談会を始めますと、
出席している刑事の一人が、本部長、刑事の喜びは何か知っていますかと、こういうふうに尋ねられたわけです。そこで、
捜査で
真犯人を
検挙して結論が出ることかな、しかし喜びというのは何のことか知りませんというふうに申したところ、世間の耳目を引く重大
事件で、
被疑者が
検挙されたがなかなか自供しない、
取調べに当たる刑事の情理を尽くした
取調べにかかわらず自供しない、また
捜査陣の必死の組織
捜査、物証を集める組織
捜査と
取調べに当たる刑事が努力を尽くした結果、ようやく
被疑者が自供する、その後に、その
自白を得た刑事が同僚の二人の刑事と別室でたばこを吹かし、ああ、この結果を知る者は
取調べチームの我々二人だけだな、この瞬間、世間の方はだれも知らない、マスコミも知らない、
警察本部長と上司のだれ一人
事件の解決を知らない、このひとときが刑事の喜びですということを聞かされまして、私
どもが日ごろある面から見ている実態と違う面をかいま見たような気がしたわけでございます。
戦後の世間を揺るがす大
事件がこのような努力で成果を見たことがあることは事実であるというふうに思います。
そもそも、
被疑者取調べを含む
捜査や
刑事司法制度の
在り方は、
犯罪捜査や
社会情勢、これを支える
国民感情、さらには
捜査や
刑事司法に対して
国民が求めるものなどを踏まえて
検討すべきものであり、これらが国ごとに異なるものである以上、
捜査や
刑事司法制度の
在り方も国ごとに異なるのは当然であるというふうに思います。
ちょっと話が飛びますが、近年、経済分野等について新自由主義ないしグローバリズムといった考え方、これが世界標準の自由主義であると。その世界標準の形成を志す向きもありましたけれ
ども、最近ではこれを志向していた人の中からも見直そうとする機運が見られるところであり、まして、一般に国内的な側面の強い
捜査や
刑事司法制度の
在り方については、各国の実情を十分に踏まえ、各国それぞれに特徴のあるものであってしかるべきものと考えます。その
意味で、
我が国の
捜査や
刑事司法制度は
我が国の事情を適切に反映した
我が国にふさわしいものであるべきであって、この点を忘れてはならないことを最初に指摘させていただきます。
そして、そのような
観点から見たとき、本
法律案は
被疑者の
取調べの全
過程について
録音、
録画を
義務付けるものでありますが、
我が国の
刑事司法において
取調べが極めて重要な
役割を果たしていることが全く顧みられていないように思われますし、
被疑者の
人権を保障するとともに、
事案の
真相を踏まえて罰すべき者を正しく罰し、もって
治安を維持して
国民の
安心、安全を守るという二つの
要請を調和させ全うするという視点も欠いているのではないかというふうに思われます。
被疑者を始めとする
国民からの
要請にこたえまして、
事案の
真相を解明するため、
我が国の
捜査における
取調べでは、
被疑者の身上、経歴や
犯罪の動機、態様、結果等について詳細に聴取し、また
被疑者に
真実を
供述させるために
捜査官が粘り強い説得に努めている実態があります。
そこで、まず法務当局にお尋ねいたしますが、
我が国の
刑事司法手続において、
被疑者取調べや
事案の
真相を解明する上でどのような
役割を果たしているか。特に、いわゆる
可視化が進んでいると言われている
外国との比較で法務当局に
説明をお願いします。