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2009-03-31 第171回国会 参議院 政府開発援助等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年三月三十一日(火曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  三月二十五日     辞任         補欠選任         主濱  了君     牧山ひろえ君      松下 新平君     渡辺 秀央君  三月二十六日     辞任         補欠選任         谷川 秀善君     森 まさこ君  三月三十日     辞任         補欠選任         植松恵美子君     櫻井  充君      牧山ひろえ君     金子 恵美君      増子 輝彦君     中村 哲治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         林  芳正君     理 事                 木俣 佳丈君                 工藤堅太郎君                 藤末 健三君                 小泉 昭男君                 浜田 昌良君     委 員                 犬塚 直史君                 小川 敏夫君                 加藤 敏幸君                 金子 恵美君                 亀井亜紀子君                 櫻井  充君                 武内 則男君                 轟木 利治君                 中村 哲治君                 姫井由美子君                 藤原 良信君                 松岡  徹君                 柳澤 光美君                 石井みどり君                 木村  仁君                 佐藤 昭郎君                 西田 昌司君                 長谷川大紋君                 森 まさこ君                 山本 順三君                 谷合 正明君                 近藤 正道君                 渡辺 秀央君    副大臣        外務副大臣    橋本 聖子君    事務局側        常任委員会専門        員        堀田 光明君        常任委員会専門        員        桐山 正敏君    政府参考人        外務省国際協力        局長       木寺 昌人君    参考人        独立行政法人国        際協力機構理事        長        緒方 貞子君        独立行政法人国        際協力機構理事  黒木 雅文君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○政府開発援助等に関する調査  (参議院政府開発援助調査に関する件)     ─────────────
  2. 林芳正

    委員長林芳正君) ただいまから政府開発援助等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十五日、松下新平君及び主濱了君が委員辞任され、その補欠として渡辺秀央君及び牧山ひろえ君が選任されました。  また、去る二十六日、谷川秀善君が委員辞任され、その補欠として森まさこ君が選任されました。  また、昨三十日、植松恵美子君、増子輝彦君及び牧山ひろえ君が委員辞任され、その補欠として櫻井充君、中村哲治君及び金子恵美君が選任されました。     ─────────────
  3. 林芳正

    委員長林芳正君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  政府開発援助等に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ政府参考人出席を求めることとし、その手続につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 林芳正

    委員長林芳正君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  5. 林芳正

    委員長林芳正君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  政府開発援助等に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 林芳正

    委員長林芳正君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 林芳正

    委員長林芳正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 林芳正

    委員長林芳正君) 本日、参考人として御出席をいただいている独立行政法人国際協力機構緒方貞子理事長から発言を求められておりますので、これを許します。緒方理事長
  9. 緒方貞子

    参考人緒方貞子君) どうも、本日は参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。このODA特委への出席は昨年の五月十六日以来しばらくぶりでございますが、よろしくお願いいたします。  この間、日本では、横浜で第四回TICAD、そしてまた北海道では洞爺湖サミット、そして新JICAが発足と、私どもから見ますと大変大きなイベントが続きました。委員の皆様には、JICA活動に深い御理解と強力な御支援をいただき、大変ありがとうございます。改めて感謝の意を表明したいと思います。  平成二十一年度予算では、ODA予算全体としては大変厳しい制約がございます中で、JICA技術協力予算は私が就任いたしましてから初めて増加に転じました。大変心強く存じております。また、円借款につきましても事業規模が増額されておりまして、期待にこたえるべく私どもとしては努力したいと考えております。  新JICAが発足しましてからちょうど半年になります。私どもとしては一体どういうモットーでこの事業に臨むかということを考えまして、すべての人々が恩恵を受けるダイナミックな開発、インクルーシブ・アンド・ダイナミック・ディベロップメントという目標を掲げました。それまでございましたJICAとJBICの海外事務所はすべて統合されました。本部でも、一体的な組織をつくり人事配置を行うなど、かなり大胆な統合を断行してまいりました。また、新しい事業といたしましては、民間連携室そして気候変動対策室設置いたしまして、今日的な課題対応する体制も整えたと考えております。  新JICAが発足いたしまして約半年たちましたが、内外の高い期待を実感いたしております。また、名実とも我が国ODAを一元的に実施できるようになり、相手のニーズに対して支援メニューを組み合わせて提供できるという仕事のやりやすさが私どもモットーになっております。言わば日本ODAワンストップサービスを提供する機関となったと思います。  新JICAが発足いたしましてからの主なトピックを幾つか紹介させていただきます。  まず、イラクでございますが、新JICAの一体の実施体制を構築している良い例としてイラクが挙げられると思います。イラクでは、復興のためのキャパシティーディベロップメントや約三十五億ドルの円借を一体的に実施するために、イラクJICA事務所を開設すべく、既に人員を派遣したところでございます。  また、世界経済危機への対応といたしましては、その影響途上国の脆弱な立場にいる人々に深刻な影響を与えるということを大変憂慮いたしまして、JICAとしては、様々な支援メニューを最大限活用いたしまして、財政支援セーフティーネット強化に取り組む必要があるということから、いろいろな対策を出してまいりました。例えばインドネシアには、先週、百八十五億円の財政支援借款というものを供与いたしました。これなどは非常に新しい対応だったと思っております。  また、ボランティアの拡充ということも考えまして、我が国雇用状況等も踏まえた形で、有為の人材海外で活躍していただくチャンスをつくりたいと考えまして、来年度のボランティア新規派遣数を一割、二百名ほどを増やす計画をいたしております。  今年の課題といたしましては、まず第四回のTICADフォローアップがございます。TICADⅣのコミットメントを確実に実施していくために、他のドナー、国際機関等とも密接な協議を続けております。  また、アフガニスタンパキスタンにつきましては、私、総理の特使として三月、二週間ほど前に訪米いたしまして、オバマ政権の要路にこれまでの我が国が行ってまいりましたアフガニスタンパキスタン支援の全体像ということを御説明してまいりました。現在も非常に治安的には危険が多いところでございますが、五十名以上の日本人の専門家JICAの職員及び専門家が活躍いたしております。セキュリティー面では万全の注意を払っておりますが、農業・農村開発あるいは道路都市開発などのインフラ中心といたしまして日本ODAの展開を図っていくつもりでおります。  その他、不正防止、そして腐敗防止策につきましても、我が国ODA国民の信頼が得られますように、あらゆる形で不正・腐敗防止に留意をしながら事業実施に取り組んでいきたいと思っております。  取りあえず、御紹介まで発言させていただきました。ありがとうございます。
  10. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。     ─────────────
  11. 林芳正

    委員長林芳正君) 政府開発援助等に関する調査のうち、参議院政府開発援助調査に関する件を議題といたします。  本日は、平成二十年度参議院政府開発援助調査派遣団参加議員方々から各十分程度意見を伺った後、七十分から八十分程度委員間の意見交換を行いたいと存じます。  御意見を表明していただくのは、第一班のラオスタイカンボジアについては中村哲治君、第二班のフィジー、ツバルについては亀井亜紀子君及び森まさこ君、第三班のドイツ、スウェーデンについては櫻井充君、第四班の英国、ウガンダ、スーダン、フランスについては武内則男君です。  なお、御意見を表明される際は御着席のままで結構です。  それでは、まず第一班の中村哲治君からお願いいたします。中村哲治君。
  12. 中村哲治

    中村哲治君 ODA調査第一班について御報告いたします。  第一班は、昨年八月十九日から二十七日までの九日間、ラオス人民民主共和国タイ王国及びカンボジア王国派遣されました。  派遣議員は、轟木利治議員、広田一議員中川雅治議員及び私、団長を務めさせていただきました中村哲治の四名でございます。  派遣団は、我が国ODA重点分野一つでありますメコン地域調査対象とし、同地域の中でも、開発途上の段階にありますラオス及びカンボジアを、また、援助国となりつつありますタイ調査対象国として選定し、調査を行ってまいりました。  今回の派遣における当派遣団調査の大きな特徴と申しますのは、NGOとの連携ということが挙げられます。すなわち、ODA派遣調査実施に当たり、外務省からの説明に加えて、現地ODAプロジェクトの事情に詳しい我が国NGOからも意見聴取を行いました。また、調査対象国内においても、現地活動するNGOからの意見聴取を行ったほか、懇談の場を設け、意見交換を行うなど、多元的かつ実質的な調査を行ってまいりました。  以下、調査を通じて気付いたことを申し上げます。  まず、ラオスについて御報告いたします。  ラオスでは、一九八六年に新経済メカニズムと呼ばれる経済改革に着手し、市場経済導入開放経済政策が推進されております。しかし、内陸国という地理的条件と長期間にわたった過去の内戦影響により経済発展は遅れており、依然として最貧国一つとなっております。  派遣団は、首都ビエンチャン近郊にあるナム・グム第一発電所を視察し、現地専門家等から説明を聴取し、意見交換を行いました。  ナム・グム第一発電所は、一九六八年に我が国のほかアメリカ合衆国等各国が設立したナム・グム河開発基金により建設されました。これが第一期工事であります。また、第二期工事であるナム・グム水力発電事業においても我が国オーストラリア等各国協調融資を行い、円借款を供与いたしました。さらに、発電所完成後も我が国は累次の補修工事に当たり無償資金協力を行ってまいりました。  同発電所は一九七一年に運転が開始されておりますが、首都ビエンチャン周辺地域へ電力を供給するとともに、隣国タイ売電を行うことにより、ラオス政府にとって貴重な外貨獲得源になっているという説明がありました。  このように、我が国は、ナム・グム・ダムについて設置当初から各国協力をして援助を行ってまいりましたが、一連の援助について、どのようなODA戦略によって行われたのかについて明確な説明はなされていないように思われます。我が国ODA援助必要性我が国国民に十分理解してもらうことは当然のことでありますが、そのためにも、ラオス政府がダムを外貨獲得の手段として位置付けているにもかかわらず、補修工事資金を、ラオス政府が稼いだ外貨ではなく、なぜ我が国援助でやらなければならなかったのかなどについて、十分に説明する必要があるのではないかと考えます。  また、派遣団は、ラオス中南部都市サワンナケートにおいて、ラオスタイ国境であるメコン川に架けられた第二メコン国際橋を視察いたしました。  第二メコン国際橋は二〇〇六年十二月に完成した全長千六百メートルの国際橋であり、円借款案件として初の国境をまたぐ事業となります。  各国を横断し、国境を越えて人と物が活発に移動できるようにする道路橋梁等運輸インフラのことを経済回廊と申します。我が国は、第二メコン国際橋建設円借款を供与するなど、ベトナムラオスタイミャンマーを結ぶ東西経済回廊支援をしております。国際橋完成により、地域間の物流、貿易及び投資環境整備が促進され、メコン地域経済発展に貢献することが期待されています。特に、内陸にあるラオスタイ東北部にとっては、ベトナムの港湾を利用した物流の促進が図られます。  東西経済回廊整備状況を見ますと、ミャンマー国内を除く東西経済回廊はほぼ全線開通し、舗装についてもほぼ整備が完了したとされております。今後の東西経済回廊計画に向けての道路整備経済開発特区等周辺地域整備などが行われることによって、本案件の意義が高まってくるものと思われます。  ただ、派遣団が本案件を視察した限りでは、第二メコン国際橋建設地域にどう影響を及ぼしていくのか、周辺施設整備がどうなっていくかについて、将来の青写真はまだできていないように思われました。今後は、本案件を含めた東西経済回廊周辺地域についてどのような開発を行っていくのか、具体的なビジョンを示す必要があるように思われます。  次に、タイについて御報告いたします。  タイは、中進国の仲間入りを果たそうとしており、援助受入れ国から援助供与国へ転換しようとする姿勢が明確になっております。  派遣団は、首都バンコク東部にあるモンクット王工科大学を訪問しました。  同大学に対しては、一九六〇年より、前身のノンタブリ電気通信訓練センターに対する技術協力に始まり、モンクット王工科大学になってからも、工学部の主要施設建設に係る無償資金協力教育内容充実のための技術協力などの援助を行ってまいりました。  その結果、同大学情報通信工学分野タイ有数技術力を持つ機関となりました。タイにおける同分野の拠点となるとともに、東南アジア南アジア各国人材育成を行うまでになりました。  一方、同大学においては、在校生に対し、タイ国内日系企業への研修派遣等事業を行っているにもかかわらず、卒業後の進路先について十分把握していないように見受けられました。卒業生の進路先を把握するとともに、援助国である日系企業への就職者数を増加させる取組も必要ではないかと思われます。  さて、タイ隣国ミャンマー国内情勢悪化に伴い多数のミャンマー難民タイへの流入が続いており、このような難民に対する国際的な援助が問題となっております。我が国は、ミャンマー難民キャンプに対するODA援助として、UNHCR国連難民高等弁務官事務所に拠出を行っているほか、草の根人間安全保障無償資金をオランダのNGOであるゾア・難民ケアタイランド日本NGOであるシャンティ国際ボランティア会に供与しております。  派遣団は、タイ国境沿いにあるミャンマー難民キャンプのうちタムヒン難民キャンプを訪問し、ゾア・難民ケアタイランドが行っている難民キャンプにおける教育支援計画を視察するとともに、現地NGO難民等関係者意見交換を行いました。  同キャンプを訪れたときは土曜日であったことから、ゾア・難民ケアタイランドが行っている初等中等教育授業はお休みでしたが、保育所コンピューター教室等では保育活動授業が行われており、保育所園児たちと交流したりコンピューター教室授業風景を見ることができました。  タムヒン難民キャンプにおいては、非政府組織であるNGOUNHCR等国連機関キャンプ支援活動でお互いに協力する一方、ゾア・難民ケアタイランド初等中等教育シャンティ国際ボランティア会はリハビリテーションという分野で、キャンプ設置以来ほぼ恒久的な支援活動を行っております。しかし、これらに対する我が国援助草の根人間安全保障無償資金という一年限りの援助にとどまっていることから、更に継続的な取組を行うことができないか検討する余地があると考えられます。  最後に、カンボジアについて御報告いたします。  将来のメコン地域の繁栄のためにも、我が国の同地域に対する影響力強化のためにも、我が国が引き続きカンボジアに対しODAによる援助を行うことは重要だと考えられます。また、カンボジアは一九七〇年代以降、約二十年にわたる内戦政治的混乱を経て国家再建に取り組んでいるところであります。アジア親日国であるカンボジア支援し、同国の経済社会発展に寄与することで、再び政治的に不安定な状況へ後戻りすることがないよう対応を図る必要があります。  派遣団は、首都プノンペンにおいて、アジアハイウエー路線一つであるカンボジア国道一号線の改修計画を視察いたしました。同事業については、現地NGOだけでなく、我が国NGOからも住民移転等手続において問題が発生しているとの指摘がなされております。そこで、住民移転問題を中心に、現地NGOカンボジア政府の中で同事業を担当している経済財務省公共事業運輸省省庁間移転委員会)と意見交換を行いました。さらには、実際に現地を訪れ、移転地等において被影響住民との間で意見交換を行いました。  現地NGOからは、カンボジア政府が法律を急に変更し、国道の幅を急に広げて、道路付近に住んでいた住民不法占拠とすることで土地を不当に安く収用したことにより問題が発生した、カンボジア政府は、再取得価格を決める市場価格調査住民移転行動計画等行政情報について十分な公開をしていないなどの問題提起がなされました。  一方、経済財務省等カンボジア政府側からは、被影響住民に対する移転手続は何回にも分けて実施しており、十分な納得を得た上で書面契約をしている、我々は、どのような被影響住民であっても、決して強制的に書面契約をさせたり、せき立てるようなことはしていないということが述べられました。実際、派遣団現地住民話合いをしたときにも、出席した住民全員政府と取り交わした契約書を持っており、カンボジア政府説明のとおり、住民の合意を得て移転する手続が実際に行われていることが確認されたところであります。  また、同事業によって影響を受けた住民意見は様々でありました。まず、国道一号線の起点から十三キロメートル離れたコキ市場商店主からは、国道が拡張されることによりセットバックに応じたが、店の奥に余裕があったため移転せずに済んだ、店の規模は小さくなったものの、国道交通量が増加したことにより商売は順調であるとの発言がありました。  一方、移転地においては、移転住民から、国道から離れたのでバナナが売れなくなり、職業がなくなりおかゆが食べられなくなった、なべやかまを売ることになった、井戸水が飲めない、配水設備やトイレの設備が十分でない、移転地が傾斜しており、滑って周辺土地所有者から苦情が出ている、嘆願書を出したが、政府から何ら取り合ってもらえないなどの苦情が述べられました。移転地における住民意見について現地日本大使館及びJICAに対しフォローアップ調査を依頼したところ、移転地意見を述べた住民には実際には移転地に移住していない者も含まれているほか、ほとんどの意見が事実と異なっているとの回答がありました。  このように、同事業によって影響を被った住民には多様な意見があり、事業を肯定的にとらえる住民がいる一方で、被影響住民及びそれを支援するNGOの中にはカンボジア政府及びJICAなどODA実施している側に対し苦情を申し立てている者がおり、現在も現地NGOJICAの間で話合いが続けられているようであります。双方の意見には相当の隔たりがあり、解決は容易でないように考えられます。  しかし、いずれにせよ、国道一号線はアジアハイウエー構想の一翼を担うものであり、将来のカンボジア道路整備に必要不可欠であることについては関係者の認識は一致しております。この問題が今後の工事遂行の障害とならないように、円満な解決に向けて関係者の更なる努力を期待するものであります。  また、派遣団は、プノンペンにおいてクメールルージュ特別法廷を視察いたしました。ポル・ポト派による自国民大虐殺、人道に対する罪などで元指導者たちを裁くクメールルージュ裁判は、我が国がこれまで積極的に協力をしてきたカンボジア和平プロセスに対する総仕上げと位置付けられています。  派遣団は、特別法廷関係者との間で予算確保や今後の審理見通しなどの問題について意見交換を行いました。特別法廷については二〇〇八年度で運営のための予算が枯渇するのではないかという懸念がありましたが、派遣団の帰国後、アメリカ合衆国が初めて特別法廷支援を表明し、百八十万ドルの運営予算を拠出するとの提案がありました。さらに、本年になって我が国も総額二千百四十万ドルに及ぶ追加的な支援を行うことになり、この問題は解決の方向に向かうのではないかと見込まれます。  本年二月十七日、特別法廷の初公判が開かれました。初公判は、本審理に入る前に、刑事事件の証人や民事上の当事者、遺族や被害者を認定するために開かれたものであり、罪状認否等本格審理は次回公判で行われる見通しとなっております。  このように特別法廷は動き出しましたが、今後の懸念事項としては審理がどこまで長期化するかが挙げられます。被疑者高齢化、迅速な裁判の要請、国連カンボジア政府との間で特別法廷実行期間を三年と定めた経緯等からいって、裁判がなるべく早期に決着することが望まれます。  我が国は、これまで本裁判遂行を積極的に支持してきたことから、今後も継続して支援すべきであることは言うまでもありませんが、審理早期決着に向けて更に努力する必要があるのではないかと考えます。  最後になりましたが、今回の調査に御協力をいただいたラオスタイ及びカンボジア各国、各視察先方々内外関係機関の各位に感謝申し上げ、報告を終わります。  ありがとうございました。
  13. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、第二班の亀井亜紀子君及び森まさこ君にお願いいたします。亀井亜紀子君。
  14. 亀井亜紀子

    亀井亜紀子君 ODA調査第二班は、昨年八月二十三日から三十日までの八日間、フィジー諸島共和国及びツバルに派遣されました。ちなみに、南太平洋諸国への派遣は今回が初めてのケースであります。  派遣議員は、溝手顕正団長、藤田幸久議員、水戸将史議員森まさこ議員、そして私、亀井亜紀子の五名であります。  まず、フィジーについてですが、人口は八十三万人、面積は一万八千二百七十平方キロメートルで四国とほぼ同じ広さです。人口構成は、先住民であるフィジー系が約五〇%、インドからの移民の子孫であるインド系が約四〇%、残りは中国系、欧州系、近隣の各島嶼国系となっています。そのため、古くからフィジー系とインド系住民間の対立があります。現政権は二〇〇六年十二月の軍事クーデターによる暫定政府であり、国際社会から承認されておりません。  今回の日本からの公式訪問団は、この軍事クーデター以降初めてのことでした。訪問団として政府要人とお会いすることはせずに、日本ODA事業、具体的には医療関連支援、南太平洋大学支援、マングローブ植林事業等を調査いたしました。  まず、医療関連支援については、植民地戦争記念病院、新医薬品供給センター及び予防接種事業強化プロジェクトを視察しました。  植民地戦争記念病院とは、日本建設した小児病院です。日本で研修経験のある女性の院長に御案内いただき、援助に対し大変高い評価をいただきました。人材流出に悩みを抱えているとのことであり、今後我が国として人材育成にいかに協力していくかが課題となると思います。  新医薬品供給センターについては、今後、同センターがバイオ医療サービスにも力を入れていくことから、この分野での新たな機材の導入、技術の移転、人材育成が不可欠となり、我が国としてこれにいかに対応し、協力していくかが課題になると思います。  予防接種事業強化プロジェクトについては、日本がこの地域の感染症対策に大きく貢献していることが理解できました。しかし、高度な技術であること、そしてプロジェクト終了後の資金的基盤が脆弱であるために、周辺国の中にはこの事業の継続が困難な国もあります。我が国としては、国際社会との連携も含めていかに対応していくかが課題となると思います。  南太平洋大学については、情報通信技術センター整備計画と海洋研究施設整備計画の二つがあり、両者とも高い評価を受けていることが理解できました。  情報通信技術センターについては、同大学に情報通信技術の中核的教育・研究センターを設置し、人材育成を図ることが目的であり、特にこの分野の学生数が急増している状況下では極めて適切な援助であると言えます。  海洋研究施設整備計画については、技術移転は有益な支援であると思います。現場ではオニテナガエビの養殖が進められており、JICAのシニアボランティア方々が活躍されておりました。この養殖が他の種類にまで拡大していけば、養殖産業として十分成り立つ可能性を秘めていることから、我が国としていかに支援をしていくかが課題となると思います。  水産加工部門では、練り製品の製造技術の移転が行われておりました。残念ながら、フィジーには練り製品、かまぼこなどですが、それが存在しないので、まだ広く知られてはいません。しかし、素材はたくさんあり、現地の味に合わせたものを製造すれば事業化も可能とのことであり、その普及に努めるなど、多角的な手法を研究することが今後の課題となると思います。  NGOであるオイスカのマングローブ植林事業については、日本の民間企業の協力により、これまでに二十五万本の植林が完了し、魚、エビ、カニが戻ってきたとのことであります。なお、苗は村人の各家庭で育てられており、植林活動も村人参加の形で進められています。このことから、自助努力支援の重要性を再認識いたしました。  私たちも実際に百本の植林を行ってみました。その際、ビニール、プラスチック、ゴムなどのごみが海岸に多いことに気が付きました。これが苗に引っかかると苗を駄目にしてしまいます。ごみ問題は途上国共通の課題であり、フィジーもその例外ではないと思います。  今回、ごみ処理の問題については時間の関係で調査できませんでしたが、今後、ごみ処理システム、環境保全のノウハウ、環境法の整備などを支援していくことも重要な課題になると思います。  全体的な感想ですが、日本が軍事政権下のフィジーに援助を続けていることに対し、現場から感謝されていることを感じました。また、軍隊が町中に出ていたり軍人を見かけるということもなく、市民は通常の生活を送っているように思いました。航空路線の運航は大変不安定で、到着早々国内接続便がキャンセルされ、ツバル―フィジー間の便も変更し、帰国時も空港のチェックインシステムが故障しといろいろありましたが、それも途上国らしく貴重な体験になりました。  ツバルについては森議員から御報告いたします。
  15. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  森まさこ君。
  16. 森まさこ

    森まさこ君 森でございます。  次に、ツバルのODAについて意見を述べますが、始めに報告の時期について申し上げます。  八月に調査に行きまして、十一月には報告書ができ上がっていたんですけれども、七か月後の今日に報告がなってしまったということで、国会運営の困難さは承知をしておりますが、もう少し早く報告ができなかったかということを今後の課題にしていただければと思います。  ツバルについては、政府からは小池百合子元大臣、鴨下前大臣が訪れておりますが、国会としての訪問は初めてということで、島国を挙げて大変歓迎をしていただきました。JICA日本法人NPOツバルオーバービューほか、現地ODA関係の皆様、大使館の皆様、内外関係者の皆様に大変お世話になりました。ありがとうございました。  ツバルというのは大変小さな島国でございますが、報告書の六十七ページからありますけれども、そこに出ております地図を目にしたことがある方も多いかと思いますけれども、沈み行く島国ということで地球温暖化のシンボルのような島国でございます。これについては、実はこれは温暖化の影響ではないという意見もございましたけれども、私たちの調査の目的はその真偽にあるわけではありませんで、日本からのODA、この援助が現状どうなっているか、効果が出ているのかということに視点を置いて調査をしてまいりました。その結果、やはりフィジーと同じような環境汚染の問題や、それからこのような小さい国家の開発の在り方、援助の仕方について考えさせられることが多うございました。  ツバルのイメージといえば、テレビや新聞で報道される水浸しの広場、それから地面から海水がわき出るシーン、海岸が浸食されてヤシの木が倒れているシーンなどが非常にテレビ等で報道をされておりますが、これについては、専門家によりますと、海面上昇とは必ずしも温暖化現象が結び付くものではないという、そういう専門家意見もあるようでございますが、先ほど申し述べましたとおり、私ども調査では、それについては結論を出すには至りませんでしたし、それが目的ではなかったというふうに思います。  ただ、現地の非常に透明な海の美しさ、空港の滑走路から夜空を見上げますと星が降ってくるようなそんな澄んだ空気の島でございます。そんなところに住んで生活をしていながら人々の健康状態が良好ではないという、そういうショッキングな問題もございました。  それは、一つには環境汚染の問題があるのかと思います。我々は、フォンガファレ島の最北端にあるごみ処分場を視察をし、愕然といたしました。一般ごみのほかにポリ袋、アルミ缶、鉄くず、古タイヤ、バイク、自転車、さらには医療廃棄物、紙おむつが散乱しておりまして、悪臭が漂い虫が飛んでおりました。事前に写真で見ていたものの、想像を超える光景でした。また、ごみ処分場への往復の途中、家々の近くにあるボロービットはごみ捨て場と化していました。  かつては人口も少なく自給自足的な食生活をしていたので、ごみが出てもそれは自浄能力の範囲内でありました。ところが、極めて短い間に首都機能の一極集中、急激な人口集中、生活嗜好と生活資材の多様化及び外国からの物資の流入という現象がこの島国で起こりました。この島国には資源がございません。そしてまた、環境汚染の原因かとも思われますが、沿岸でのこれまでの漁業というものが、魚が少なくなりなかなかできなくなってきた。そこに諸外国からの援助によって様々な物資が島の中に入ってくるわけです。  私たちは島にある唯一のスーパー、生活協同組合を訪れてみましたが、その中にはカップラーメン、缶詰、スナックがはんらんをしておりまして、そういった食生活の変化により人々の健康状態も変わり、そこから出るごみ処理の問題も生じています。  また、約五千頭の飼育豚から出るふん尿排水処理が未処理であるということから、地下水や海岸の砂を生み出す有孔虫の生育環境の破壊をもたらす汚染源となっているということで、この有孔虫は星の砂と言われておりますが、これが失われていることで沿岸の魚の生育状態にも影響を与えているのではないか、そして海岸浸食にも影響を与えているのではないかという意見もあります。  さらに我々は、報告書に書いてあります様々な日本からの援助によって成り立った施設の方に視察をいたしました。たくさんあるのですが、例を挙げますと、七十七ページにございます小児病棟、医薬品センターなどでございます。  小児科がなかったということで、小児科が新たにできたということで、子供たちの病気ということに非常に対処できるようになったということで感謝をされました。ただ、子供たちの病気が結核であったりアレルギーであったりということで、環境汚染の問題が影響しているのではないかと思われます。  そのほか、イエレミア首相外閣僚との意見交換もできました。  最後に、ツバルに対する援助の在り方について述べます。  かつては、太平洋の小さな島国は原初的な豊かさを享受してきました。自給自足経済の下で、一人当たりGNPでは測れない豊かさ、ゆとりというものを持っていたはずです。しかし、近年この自給自足型の経済社会に大量生産、大量消費の経済社会のスタイルが入り込んできたのです。ツバル人にそのすべてを処理できないのは当然でしょう。  そこで想起すべきは、自給自足を主とした社会システムを持つ小さな国家に対する開発協力とは何か、適正な援助はどうあるべきかということです。また、小さな国家の開発で考慮すべきは、いかにして自助努力を根付かせるかということであります。それを踏まえた上で、我が国としても行政、財政、地域開発、産業育成、防災など適正な国づくり支援の在り方について一層の研究が必要かと思われます。  なお、我が国において本年五月に太平洋・島サミットが行われて、ツバルの閣僚も訪れてくるものと思います。  以上で報告を終わります。ありがとうございました。
  17. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、第三班の櫻井充君にお願いいたします。櫻井充君。
  18. 櫻井充

    櫻井充君 ODA調査第三班について御報告いたします。  第三班は、昨年八月十七日から二十五日までの九日間、ドイツ連邦共和国及びスウェーデン王国に派遣され、両国の援助機関等を訪問し、ODA政策の動向等について調査を行ってまいりました。  派遣議員は、白眞勲議員谷川秀善議員、魚住裕一郎議員、そして私、団長を務めさせていただきました櫻井充の四名でございます。  参議院のODA調査は、これまで原則として途上国における我が国援助案件の視察を中心として行われてきました。今回の調査は、新たな試みとして、主要先進国の援助関係者との意見交換中心に、援助政策及びその実施の動向等について調査を行ったものであります。  以下、調査の概要について報告いたします。  なお、お手元に資料といたしまして、両国の援助実施体制の概要図及び日本との援助政策の比較表を用意いたしましたので、適宜御参照ください。  現在、ドイツは、援助政策の最重要目標として、世界の貧困を削減し、平和を構築するなどの目標を掲げるなど、ミレニアム開発目標、いわゆるMDGsの達成を重視した政策を進めております。二〇〇七年のドイツのODA実績は約百二十三億ドルであり、米国に次いでDAC加盟国二十二か国中では第二位、欧州では第一位の援助規模となっております。また、対国民総所得、GNI比は〇・三七%と第十二位であります。  ドイツは、二〇一五年までにODAの対GNI比〇・七%を定めたMDGsの目標達成を対外的にも表明しており、二〇一〇年には〇・五一%の実現を目指すなど、着々と援助実績を伸ばしております。しかし、目標達成のためにはODA予算の拡大だけでは足りず、革新的な新たな資金調達の手法も導入せざるを得ず、現在、排出権取引による収益の一部をODAに充当することも検討しているとのことでした。  その援助実施体制は、お手元の資料にもありますが、政策部門の連邦経済協力開発省、いわゆるBMZと、実施部門でもある援助実施機関から構成されております。BMZは独立した省として設立され、二国間援助や世界銀行などへの拠出等を所管しており、ODA予算のほとんどがBMZに計上されております。  次に、実施部門は複数の機関が所管しておりますが、今回の調査では、特に技術協力の代表的な機関である技術協力公社、いわゆるGTZ、そして資金協力を所管するKfW開発銀行を訪問いたしました。  このうち、GTZはドイツ最大の援助実施機関でありますが、その特徴は、コンサルティング会社等を原則利用することなく、事業をすべて直接実施しております。その業務の委託先は、BMZのみならず、世界銀行や国連機関、EUなど広範囲に及んでおり、これら国際業務による収入は全収入の約三割を占めております。また、後で触れますが、援助に関し民間部門との連携を進め、民間の資金、ノウハウ、技術等を積極的に活用するなど、官民連携をグローバルに展開しております。  次に、スウェーデンは、貧困の削減に焦点を当て、開発援助政策のみならず、通商、貿易、経済や環境など、他の国内政策をも含めた一貫性のある施策を推進し、MDGsの達成を国家政策の目的としております。  二〇〇七年のODA実績は約四十三億ドルであり、DAC二十二か国中では第八位と規模自体は大きくありませんが、対GNI比では〇・九三%で第二位であり、二〇〇八年度予算案は開発援助総額は一%を維持する高水準であります。その援助実施体制は、お手元の資料にもありますが、政策部門の外務省と、実施部門として主に二国間援助を所管する国際開発協力庁、いわゆるSidaから構成されており、我が国と似た体制となっております。ただし、外務省には、外務大臣とは別に専ら援助を担当する国際開発協力担当大臣が置かれております。  援助の特徴としては、NGOの果たす役割が大きく、政府よりSidaを通してNGOに補助金が交付され、これによって国全体の援助効果を引き上げており、その額は援助全体の約八・五%を占めております。  今回の調査ではスウェーデン最大のNGOであるフォーラム南を訪問しましたが、その年間予算の約九割は補助金によるものであり、これにより自ら援助活動を行うとともに、傘下のNGOを通じて四十か国において約六百の援助プロジェクトを支援しております。  また、スウェーデンは紛争後の平和構築に当たっての人的貢献を積極的に推進しており、今回、平和構築の人材研修機関であるフォルケ・ベルナドッテ・アカデミーを訪問し、研修の実情等についても調査を行いました。同アカデミーは、カナダのピアソン平和維持センターと並ぶ世界有数の研修機関であり、現在、平和構築活動派遣される文民のロスター管理、すなわち派遣候補者の登録リスト管理を一元的に実施し、一年に二回人材募集を行い、現地派遣できる要員をリストアップするなど、人材をプールしております。一般市民からは多数の応募がなされ、今後もその数は増大するとのことであります。  今回、このアカデミーに行って感じたことは、スウェーデンは第一次世界大戦、第二次世界大戦に参戦しておらず、百八十年間戦争を行っておりません。そういう思いで平和構築という点にかなり重点を置いていることと、それから、人材をこうやって管理して、それから人材派遣することを可能としているのは、国家として雇用の安定性をきちんと図っている、それから流動性を担保している。例えば、病院で医者が派遣するということになった場合にはすぐに補助員が派遣される、それから二年以上そこで働いた場合にはその人にもそこで働く権利が与えられる、またNGOとして参加して戻ってきた場合にはその病院でまた勤務できる等の体制が整っているからこそこのようなことが可能になっているんだろうと、そういうふうに思っております。  以上が調査の訪問先などの概要でありますが、以下、特に強い印象を受けました点について数点御報告いたしたいと、そう思います。  まず一点目は、援助対象国の絞り込みでございます。ドイツは従来の九十三か国から五十八か国に、それからスウェーデンも限定いたしまして、三十三か国に限定しております。こういう絞り込みそのものが簡単に決定されたわけではなく、国内外を通じて様々な議論が行われた結果、このような形になっています。ドイツの場合には、ドイツ自国で援助を打ち切った場合にはEUで援助を行いますなどということで相手国に御了解をいただいたりとか、それから、スウェーデンの場合にはODA以外の予算対応しますとか、相手国に配慮したような話もしながら、自分たちの自国の利益を確保するためにきちんとした形で絞り込みを行っていると、そのように認識いたしました。  現在、我が国の二国間援助の対象国は百六十七か国・地域に及んでおりますが、こういったことに対して、両国の重点化施策をそのままの形で導入することは難しいと思っていますが、今後、援助の効率化を向上し国際援助でのプレゼンスを高めるためには、援助の戦略性の検討も含め、重点化の議論を進めることが必要ではないかと考えるところであります。  もう一点、中国に対してODA政策をどうするんだということを質問した際にドイツから興味深い回答がございまして、日本は地理的に中国と貿易を進めることは可能であったかもしれないけれども、ヨーロッパの国として中国と貿易を進めていくことはなかなか難しかった、ドイツはほかのヨーロッパの国々に先立って中国に対してODA支援を行った結果、今ヨーロッパの中では中国との貿易高が一番になってきていると。つまり、こういうODAをうまく使って将来的に国の発展のために利用していく、ちょっと言葉は悪いかもしれませんが、そういう政策が必要ではないのかなということを感じました。  それから、現地援助体制強化と権限の移譲でございます。  ここでも面白い話がございましたが、日本ODA関係者方々現地で本当に熱心に会議にも出席されていろんな意見をおっしゃるんだそうですが、最後これでいいですかと決める段になると、ほかの国々の方々は権限が移譲されているのでそこで皆さん了解されるんですけれども日本は本省に確認しますと、そういうことを言うものですから、そこでなかなか決定されずかなり遅れてしまうという、そういう問題がございます。  そこで、今般、新JICA現地において技術協力、有償資金協力及び無償資金協力の三つの援助を一元的に実施、統括する機能を持つことになりました。ですから、いかに現地体制強化して、かつ現地での決定権限を強めていくかについて検討を進めていくべきではないか、権限の移譲をもっともっと積極的に進めていく必要性があるんではないのかなと、そういうふうに感じました。  それから、適正な援助水準の確保でありまして、我が国ODA予算が減額されてきている中で、今回の調査で、日本援助削減によってOECDやG8の枠組み全体の援助が後退したとの印象を国際社会に与えてしまった状況は残念であるというそういう発言もございました。本日は緒方理事長にも御出席いただいておりますけれども、新JICA発足への関心は極めて高く、両国からは我が国との援助協力について強い要望がなされるなど、日本への期待感はいまだに大きいとの印象も得ました。  派遣議員団としましては、日本への期待感を踏まえ、我が国ODAの削減傾向を反転させ、具体的数値目標を示した上で増額に向けた姿勢を打ち出すべき時期にあるのではないかというふうに考えております。  それから、官民連携の推進でございます。  私たちが訪ねた企業は従業員二十二名の中小企業でございました。こちらは医療システムのソフトウエアを開発するIT企業でございまして、国内では刑務所に入っている方々の中の麻薬中毒患者の方々の中毒から離脱するような、そういう治療を行っている企業でございました。この企業をODAとして低開発国、この場合はインドでしたけれども、インドに派遣して代替治療を実施するというそういう政策を取っています。このことによって、要するに国際的な信用力のない中小企業を海外にどんどんどんどん連れていって、そして、その中小企業がどんどんどんどん大きくなっていく、そういうお手伝いをしております。現在、官民連携事業が九十か国以上、約七百七十件が実施されております。  日本でも実は官民連携が昨年の四月から始まったようなんですが、主に大企業を中心として官民連携がなされております。今のこの景気の状況で、非常に極めて厳しい中、特に地域経済が疲弊していることを考えてくると、こういうドイツの中小企業対策という一環としてODAを使ってくるということ、そのことをもう少し積極的にやっていくべきではないのかというふうに感じました。  そこの中でもう一点大事な点は、官の側が、相手国にどういうニーズがあって、なおかつ国内にどういう手法があるのか、どういう技術があるのか、そういうことをきちんと見極める能力があるかどうかということでございまして、今度は新JICAにおいても民間連携室設置されるなど、その推進が図られておりますが、まずは官側の事業の発掘能力、そのための人材育成現地支援体制強化などが課題ではないのかなというふうに考えております。  以上が今回の調査の概要でありますが、派遣団員としましては、調査の成果が参議院でのODA議論に寄与することを切に願うものでございます。  私も、今回、先進国に行くに当たって、これは多分今日この委員会に出席されている議員の皆さんと同じような、行って意味があるんだろうかと、そういう思いで正直行ってまいりました。  ただ、そこの中ではっきりしたことは、自国の利益、例えばドイツでは資源の確保であるとか、先ほど申し上げましたが、中国等の新興国でのビジネスの獲得であるとか、スウェーデンでは国際援助の場でのイニシアチブの確立や外交の強化の有効な手段として、貪欲なまでにODAを利用してきております。ですから、そういう点で、今の日本ODAすべてが問題があるとは申し上げませんが、成功している分野は成功している分野として継続すること、そして、こうやって各国でうまくいっている点があるとすれば、そういったことをきちんと学んでくることが我が国の国益にかなってくることになるのではないのかなと、そういうふうに感じております。  今回の調査において御協力いただきました関係の皆さんに感謝したいと思っておりますし、できれば、今後もこういう先進国に調査に行く価値があるのではないのかなということを付け加えて、報告を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  19. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  次に、第四班の武内則男君にお願いいたします。武内則男君。
  20. 武内則男

    武内則男君 ODA調査第四班から、調査の概要等について御報告をいたします。  内容に入る前に、一言申し上げます。  平成二十年度のODA調査は、四班とも昨年八月に実施をされました。先ほど森委員の方からも御報告があったとおりですが、調査の成果を政府ODA政策やODA予算の編成に反映させるためには、できるだけ早期に報告、意見交換を行う必要があると思われます。本日の報告、意見交換まで半年以上を要したわけですが、来年度以降のODA調査派遣においては、実施後速やかな報告、意見交換の場を設けられることを希望をいたします。  第四班は、昨年八月十四日から同月二十五日までの十二日間の日程で、英国、ウガンダ、南部スーダン及びフランスを訪問しました。  派遣議員は、椎名一保議員及び武内則男の二名で、私が団長を務めさせていただきました。  本調査団は、アフリカの抱えている最大の開発課題である紛争後の平和構築や三大感染症対策などへの取組に当たって、我が国と被援助国の双方にとって望ましい援助の在り方を探ることを主要テーマに据えました。そのため、訪問国として、内戦後の復興開発が進捗しているウガンダ、内戦はようやく終結しつつあるものの、復興開発へのスタート地点に立ったばかりの南部スーダン、両国の旧宗主国であり、ミレニアム開発目標の達成を対外援助政策の中核に据える英国を選定し、また、OECD開発委員会参加国の援助政策を調査するため、フランスを加えたものであります。また、二国間援助実施状況調査はもとより、平和協力国家日本として、ODAとともに国際貢献の柱となるPKOの現状を見るべく、国際機関現地事務所や国連平和維持活動(PKO)関連施設も訪問し、平和構築や難民支援における取組についても調査を行うことといたしました。  本調査団は、まず、出国に先立ち、外務省及び国際協力機構、JICAから説明聴取したほか、欧米の援助政策について豊かな知見をお持ちである大野泉政策研究大学大学教授から英国等主要先進国の援助政策について、また、滝澤三郎国連難民高等弁務官事務所UNHCR)駐日代表(当時)からは、ウガンダ及びスーダンにおける難民、国内避難民支援の現状について説明を聴取をいたしました。  最初の訪問国である英国ですが、英国では、一九六〇年代初め以降、労働党と保守党の間で政権交代が行われると、対外援助政策の目的と実施組織も変更されるという歴史が繰り返されてきました。  現在の労働党政権の下では、ODAの目的から外交・貿易政策が切り離され、被援助国開発支援と貧困の削減、具体的にはミレニアム開発目標の達成が中心的目的として明確に定められています。また、対外援助政策の立案、決定及び実施は、独立の行政機関である国際開発省、DFIDが一元的に掌握いたしております。DFIDは海外に六十四か所の事務所を持っておりますが、個別の援助計画の策定と二百万英国ポンド以下の案件の発掘、形成については、被援助国のニーズをより的確にとらえ、かつ機動的に実施するという観点から現地事務所に権限が委譲されております。    〔委員長退席、理事小泉昭男君着席〕  英国の援助は、貧困国に対する二国間のアンタイド無償支援と国際機関を通じた多国間支援を基本とし、有償資金援助によるODAは過去十年間行われていません。この点では、円借款ODA予算全体の五割を占め、自助努力による経済的自立を支援する我が国の政策とは大きく異なります。  援助予算地域別配分では、アフリカが約六割、これと南アジアの二地域で八割を占めています。アフリカ援助に関して言えば、被援助国の多くと旧宗主国としての歴史的つながりを持つ英国と我が国の場合とでは全く事情が異なりますが、アフリカ開発会議、TICADを主催をする我が国として支援を充実していくためには、国際機関のみならず、英国等の対アフリカ援助に実績を有する国々との一層の協力、協調が必要になるものと考えます。  英国の二国間援助においては、個別のプロジェクトに対する支援のほか、被援助国政府自身による貧困削減政策の実施支援するという観点から、直接的な一般財政支援が半分を占めています。この点についても、英国と歴史的背景を異にする我が国がこの援助手法を採用することは困難と考えますが、しかしながら、我が国のプロジェクト支援と他の国の財政支援連携、協調を拡大していくことは十分に意義のあることだと考えます。  次に、ウガンダについてですが、同国は、北部における二十年に及ぶ内戦状態もようやく終息に向かい、二〇〇六年八月には、政府と反政府武装組織、神の抵抗軍との間で敵対行為停止合意が署名されました。ただし、一時二百万人に上った国内避難民は、帰還が進んではいるものの、依然として百万人を数え、その保護と円滑な帰還が課題となっております。  経済面では、一九八〇年代後半から進められた構造調整政策と市場経済への移行がおおむね達成をされ、二〇〇〇年には貧困削減戦略文書、PRSPの策定も成り、現在はその実施段階にあります。実質経済成長率も近年は五から六%と高率で推移をしており、今後は、農産物を中心とした輸出産品の多様化と付加価値化の促進、一層の成長のための投資の呼び込みなどが取り組むべき課題となっております。ただし、ウガンダは、天然資源に恵まれているとは言えず、原油・鉱物資源や食料価格の高騰が経済に与える影響が大きく、また、内陸国であるため、輸出入が周辺国の政治的安定に左右されるという不安定要因を抱えています。  我が国の対ウガンダ援助は、教育・職業訓練、保健・医療インフラ整備と感染症対策、農業開発及び道路・電力等の経済インフラ整備の四分野中心として行われております。また、国内避難民や帰還民に対する人道支援、退役兵士等社会復帰プロジェクトを含む平和構築に対しては、国際機関を通じて、またNGOとも連携した支援を行っています。    〔理事小泉昭男君退席、委員長着席〕  調査団は、ネリカ米適用化計画に取り組む農業省ナムロンゲ農林試験場、マビラ森林保護区エコツーリズムサイト、邦人NGO運営する元子供兵の社会復帰のための職業訓練センター、現地NGOエイズ支援機構が運営するエイズ・カウンセラー訓練センターのほか、北部ウガンダにおいてスーダン難民の帰還支援、国内避難民の保護及び帰還に当たっているUNHCRグル事務所、オピット国内避難民キャンプ、国内避難民の帰還先地であるラミン・オパド地域などを訪問、現地を視察し、関係諸機関・団体の責任者、避難民、帰還民の方々意見交換を行いました。また、ウガンダ政府の要人では、セカンディ国会議長、駐日大使を務められたババ副大統領府国務大臣、財務計画経済開発省のオマチ総務担当副大臣とキワヌカ投資担当副大臣等の方々意見交換をいたしました。  意見交換の内容や相手方から出された開発ニーズに対する日本への期待協力要請等については、報告書によって御承知願いたいと存じます。  ウガンダの開発の第一の課題は、南北間の格差の解消にあると感じました。  調査団が滞在した首都カンパラでは、ビルやホテルが建ち並び、給電、給水も問題なく、道路には日本車が渋滞の列を作っているさまも見られましたが、北部では、政治的・経済的インフラ整備が立ち遅れ、いまだに内戦影響が色濃く残っている印象でした。  また、北部においては、百万人に及ぶ難民、国内避難民計画的な帰還支援がいまだに重要課題であり続けています。UNHCR職員の説明によれば、北部ウガンダの状況は人道支援の段階から開発援助の段階に移行しつつあるとのことでしたが、それ以前のより厳しい状況を知らない者としては、衛生状態の良好でないキャンプで国際機関援助に頼って生活を維持せざるを得ない人々の沈んだ表情に接したときに、直ちにその言に賛成することはできませんでした。  一方で、ふるさとに帰還した人々を訪問したときには、歓喜に満ちた笑顔や歓声で歓迎を受けました。キャンプに暮らす人々との間の余りに大きい落差を見て、改めて平和の大切さをかみしめるとともに、平和と安定が決して後戻りすることがないように、息の長い援助を継続することの必要性を痛感したところであります。  次に、第三の訪問国である南部スーダンの状況ですが、スーダンは一九五六年に独立を果たしましたが、その前年から始まった南北間の内戦が十五年以上続き、和平十年にして、八三年には再び内戦に突入しました。南北スーダンの包括和平合意が成ったのは二〇〇五年一月で、第二次南北内戦の期間は実に二十年以上に及んでいます。包括和平合意を受けて、北部国民会議党と南部スーダン人民解放運動を中心とする統一政府が樹立されましたが、南部スーダン十州については、自治的な統治機構として南部スーダン政府が置かれています。  スーダンは、経済的にも二百億ドルを超える対外債務や内戦に伴う膨大な数の難民、国内避難民を抱え、非常に厳しい状況にあります。現在、主な輸出は、原油を始めとする石油製品と綿花等の農産物に依存していますが、収支は輸入超過の状態となっています。  南部スーダンについては、歳入のほとんど全部をスーダン政府から配分される石油収入に頼っており、歳出面でもスーダン人民解放運動兵士と警察官などの給与が五割を占めるなど、いびつな構造となっています。復興開発への資金が回らないため、南部スーダン政府は独自に立法、行政、司法府を保有しているにもかかわらず、これらが機能しているとは言い難く、道路、衛生などのインフラも劣悪なままです。最近では、原油・資源価格が国際的に急落、低迷を続けており、これが南部スーダンの開発に与える影響懸念をされます。  南部スーダンの開発における第一の課題は、平和の構築、定着であり、そのための国際機関等による監視、難民・避難民支援、統治機構の確立、職業訓練等の人材育成です。特に、内戦で国や家を追われた五十万人の難民、四百万人の避難民の帰還支援は人道的にも喫緊の課題と言えます。現在はUNHCR、国際移住機関(IOM)、我が国NGOを含む非政府機関等の事業により半数を超える人々の帰還が進んでいますが、生産設備人材のほとんどを失った南部スーダンでは、例えば帰還後の生活に不可欠な井戸を建設する場合、資材を輸入に頼るため巨額の資金が必要であり、職業訓練や教育を提供するのでも外国人に頼らざるを得ない現実があります。さらに、帰還に伴い人口が急増している首都ジュバ周辺には耕作適地が少なく、資材や人材と同様に、食料もほとんどをウガンダやケニアからの輸入に頼っています。  この点で、我が国実施している教員養成を含む基礎教育・職業訓練、水・衛生の確保、物流施設等の分野における援助は極めて重要であるとともに、高い評価を得ているものと思われます。  調査団の南部スーダン滞在は実質二日間でしたが、この間、JICA事業であるジュバ職業訓練センター、包括和平合意の履行支援、避難民支援、地雷除去等に当たっている国連スーダン・ミッションのセクター1司令部、UNHCR南部スーダン事務所、UNHCR支援を受け南部スーダン政府運営をする小学校、我が国NGO運営する自動車整備工場、UNHCR帰還民中継基地、国連スーダン・ミッションによる地雷除去活動現場等を現地視察し、関係者意見交換したほか、ベンジャミン地域協力大臣等の政府要人と会見を行いました。なお、地雷除去活動のサイトでは、バングラデシュ軍高官とともにプロテクターを装着して実際に敷設地帯に入り、除去作業の実際を目の当たりにし、その困難さを実感いたしました。意見交換の概要については報告書を御覧ください。  スーダンでは、今年、大統領選挙及び総選挙が予定をされています。また、二〇一一年には南部独立の是非を問う住民投票も予定されています。一方で、国際刑事裁判所、ICCがバシール現大統領に対しダルフールにおける戦争犯罪に関する逮捕状を発行したことにより、ダルフール地域だけでなく南北間の包括和平合意の履行についても影響が出るのではないかと懸念されているところです。今後の情勢は予断を許さないものでありますが、選挙が成功裏に実施され、安定的な発展につながることを願っております。  最後の訪問国フランスにおいては、OECD開発委員会に参加する先進各国の対外援助の動向等について調査を行いましたが、その内容は報告書に記載のとおりであります。  終わりに、なお、調査団は、帰国後において視察先関係機関であるUNHCR、クラウンエージェンツ及びNGO関係者との意見交換を行いました。その中で、クラウンエージェンツ日本担当取締役スティーブ・テイラー氏からは、我が国の対外援助について、スピード感に問題はあるものの、スタミナがあって最後までやり遂げることから、結果的に米国や英国よりも良い成果を上げているとの発言がありました。我が国ODAに対する外から見た評価の一つとして御紹介を申し上げます。  最後に、三月二十一日にボツワナで開催されましたTICADフォローアップ閣僚会合において、外務大臣は二〇一二年までのアフリカ向けODA倍増などのTICAD支援策を着実に実施する旨表明をしました。  一般会計ODA予算がいわゆる骨太の方針二〇〇六により毎年減額されている中、この公約を実現するためには様々な工夫が必要と思われます。どのようなスキームで、どのような工程で実現していくのか、政府においてはきちんとした計画を策定の上、国会に対しても適宜適切な説明を行うことを求め、私の報告を終わります。  御清聴ありがとうございました。
  21. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  以上で意見の聴取は終わりました。  これより意見交換に入ります。  発言を御希望される方は、委員長から順次指名をいたしますので、お手元の氏名標を立ててお知らせください。  また、発言が終わりましたら、氏名標をお戻しくださるようお願いいたします。  本日は、外務省から橋本外務副大臣及び木寺国際協力局長に、独立行政法人国協力機構から緒方理事長及び黒木理事にも御同席をいただいております。発言に対して回答をお求めになる場合には、派遣に参加された委員に対してだけではなく、御同席をいただいている方々に対してお求めいただいても結構でございます。  また、回答される場合には挙手をお願いいたします。  なお、発言はすべて起立してお願いをいたします。  それでは、発言を希望される方は氏名標をお立てください。  橋本副大臣
  22. 橋本聖子

    ○副大臣(橋本聖子君) ODA特別委員会の開催に際しまして、一言ごあいさつを申し上げたいというふうに思います。  ただいまの調査団の、派遣団の御報告を注意深く拝聴させていただきました。提起されたODAにかかわる政策や諸問題に対する御意見につきましては、外務省としても真摯に受け止め、対応していく所存でございますので、今後とも引き続き御指導よろしくお願い申し上げます。  ODAは重要な外交手段であり、これを積極的に活用し、途上国の人づくり、そして国づくりを支援することは、我が国自身の国益にかなうものであります。  外務省としては、その実施に当たり、我が国の顔の見える援助をいかに確保していくかが重要と考えております。とりわけ、途上国に対する専門家派遣や研修員受入れ等の技術協力事業は顔の見える援助の典型であります。分野は多岐にわたっておりますが、例えば、国民が今一番関心を持っております食品安全について、これは途上国専門家派遣し、食品の品質管理の手法等の技術の向上を図ってきております。例えば、これは私自身が深く携わってきた分野でもありますが、スポーツにつきましては、ODAなどにより体育、そしてまた柔道等の指導者を派遣するなどして、関係者を招聘してきております。伝統の文化あるいは武道の精神といったものを通じて、人とのつながりというものもODAを通じ大切にしてきております。  昨三十日に発表された二〇〇八年のODA実績によりますと、我が国は二〇〇七年に引き続き世界第五位、GNI比では〇・一八%で第二十一位となりました。これは、援助国の中で米国と並んで最低の水準であります。  現在の金融経済危機の下、我が国ODAに対する途上国期待は高まっておりますので、ODA我が国の経済的利益にもつながるとの観点も踏まえ、ODAの減少傾向の反転、拡充を目指す決意でございます。  林委員長を始め委員の先生方の御指導、御協力をこれからもよろしくお願い申し上げまして、開催に当たり、ごあいさつとさせていただきます。  ありがとうございました。
  23. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  それでは、佐藤委員、それから藤末委員、浜田委員、犬塚委員、山本委員の順でお願いいたします。  まず、佐藤委員
  24. 佐藤昭郎

    ○佐藤昭郎君 早速の御指名ありがとうございます。  一番最初に御説明いただいたラオスタイカンボジア班の方にちょっと御質問いたしますけれども、大変短い期間にかなり深く現地調査されたということに対して敬意を表したいと思います。  その上で、これは少しJICAにもあるいはJBICにも絡むと思いますので、ちょっと御質問したいんです。  これ十五ページ、十六ページ、ナム・グム水力発電事業というところに記述がありますが、この一番目のフレーズのところで、日本援助が何のために行われているか説明する必要があるということなんですけど、ここはあれですか、いわゆるフィージビリティースタディーなりアプレーザルなんかを行ってこのナム・グム発電所事業についてはきちっと評価していっておるんですけれども、それと今の状況が違うというところでこのような目的がはっきりしなくなったというふうに結論付けられたのかどうか、それが一点です。  それから二つ目について、補修工事を無償資金で提供していると。ナム・グム発電所の全体のプロジェクトのベネフィットというのが、これは外貨の獲得であり、それから電化の推進ということがあるとすると、これは特別会計でやらない以上、このプロジェクト自身のベネフィット評価と次にこれを無償資金で直すかどうかというのは、これはラオス政府の判断、あるいはその無償資金を提供する際の日本政府の判断にゆだねられると思いますが、この点で、なぜ我が国援助でやらなきゃいけないのか十分説明するということに関して、そうかなと私ちょっと思ったんで御質問させていただきます。  最後に、この十六ページ、第二メコン国際橋。これも最後の結論で、第二メコン国際橋の架設により地域にどう影響を及ぼしていくのか青写真がまだできていないように思われるということなんですけど、これは、今日はJICAも来ておられますけれども、これだけのことをやるためには、リコネッサンスサーベイから始まり、フィージビリティースタディーをやり、そして円借款ですとローンアグリーメントして、アプレーザルして、私はその過程で相当の検討はされたと思うんですが、調査団にはそういった資料提供がなされていなかったかどうか、ということでこういう結論になったのかどうか、ちょっと、我々の援助、ずっと携わっている者から見ると疑問があるので、この点をお伺いしたいと思います。  これに関連して、私は、この参議院のODA特別委員会というのは非常に大きな機能を持ってやっていただいているんですが、やはり既存のプロジェクトなりプログラムのアプレーザルなりエバリュエーションというのはかなり進んでおりますから、そういうところとのひとつ連携を十分取られて、データ不足によるある意味では、何というか、評価不足といいますか、こういう点がないようにやはり連携をしっかり深めていって、既存のエバリュエーションなり調査とも十分に連携する必要があるなという僕は感じがいたしましたので、これはこの委員会として検討対象にしていただきたいと思います。  以上です。
  25. 林芳正

    委員長林芳正君) それでは、第一班のことでしたので中村委員お願いいたします。
  26. 中村哲治

    中村哲治君 貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。  ナム・グム水力発電所に関しましては外貨の獲得手段にもなっていると。そういうことであれば、積立てを行うのか、いろいろな形で準備をしていくというようなことが必要なのではないかと、そういう認識を議員は持っておりました。  もちろん、外貨獲得をして、それはもう使い切ってしまって、傷んでしまったら次もまたODAでその部分は援助してもらったらいいかという、そういう考え方はあろうかとは思いますが、ただ、そうしていくといつまでたっても自立することはできないと。補修をするのであれば、会計のこともしっかりと教えて、そういう人材を育成するところから深く日本がかかわっていく必要があるのじゃないかというような認識をされたということなんです。  それについて、もし改めて議論があればお答えさせていただきたいと思っております。  それから、第二メコン国際橋に関しましても、もちろん道はつながないと意味がありませんから、こういう形で非常につながるということは意味があるということなんでしょうけれども、それじゃ、これでどういう形でこの道が今後、地域の施設の整備と都市間をつなぐ役割を果たしていくのかについては明確な現時点で青写真があるわけじゃない、そういう認識を持ったということでございます。  それについても、もし、よりデータとしてどういうものが必要なのかということも御指摘していただければ幸いでございます。
  27. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  それでは、JICAの方で、資料の関係で黒木理事。
  28. 黒木雅文

    参考人(黒木雅文君) お答え申し上げます。  まず、ラオスナム・グム水力発電所の件でございますが、先生御指摘のとおり、当初、この建設円借款を使ってやりました。目的は、主として国内の電力供給ということでございまして、それで、余った電力をタイに輸出して外貨を獲得するということでございます。  それで、円借款建設した後に補修が必要になったわけですけれども、補修を要請された当時、ラオスの経済状況が非常に悪いということでラオス自身の資金で手当てができない、かつ日本への技術の信頼が厚いということで、その当時、無償資金協力によってリハビリを実施した経緯がございます。  この電力の輸出によって取得します外貨は国家財政全体の中で処理しているということでございまして、必ずしもこのプロジェクトの補修に外貨が直ちに直結しているということではございませんけれども、自立的な維持、運営、管理ができるようにということで、必要があれば技術的な支援もしていきたいというふうに思っております。  それから、第二メコン国際橋につきましては、東西経済回廊メコン地域において非常に重要な物流インフラでございますので、日本として積極的に支援してきたわけでございますが、メコン地域全体の開発につきましてはアジア開発銀行、ここが中心になりまして、日本等も参加して全体的な開発計画ということを議論しております。  今回、メコン国際橋円借款を供与するに当たりましては、当然のことながら、東西回廊全体の開発が今後どういうふうになっていくかということを踏まえて検討してきております。  今後、工業団地あるいは沿線での一村一品や観光事業といった広域協力というものを更に追加的に検討していきたいというふうに思っております。
  29. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  それでは、藤末委員、お願いいたします。
  30. 藤末健三

    ○藤末健三君 ODA委員会の理事をさせていただいています藤末と申します。私は、新JICAにつきまして緒方理事長と、そしてスウェーデンに行かれた櫻井委員に御質問させていただきたいと思います。  まず、新JICAの誕生につきましてはこのODA委員会でもずっと議論させていただきまして、本当に新しい体制ができたことをうれしく思っております。  特に私が感じますのは、新JICAの使命、ミッションとして人間の安全保障の実現ということが明確に書かれてあるということは非常に有り難く、私はこの委員会でも主張させていただきましたが、日本国憲法の前文にありますように、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和に生存する権利を有すると、そして最後に、この目的を全力をもって日本国民は実現すると書かれてございますので、この人間の安全保障、また憲法前文に書かれている概念が前面に出たということは非常に喜ばしいことだと思います。また同時に、JICA研究所という形でございまして、様々な委員から御指摘がありましたように、ODAをいかに戦略的に進めるかという形での研究を行う、そして発信を行う機関ができたことも非常に喜ばしいと思います。  ただ、緒方理事長のちょっと御意見を伺いたいと思うんですが、私は、この人間の安全保障につきましても、平和的生存権みたいな概念、平和という言葉が明確に出た方がいいのではないかと思っております。また、JICA研究所におきましても、後で櫻井委員からも御意見をいただきたいと思うんですが、やはり平和の維持みたいな話、紛争予防というよりも私は平和の維持とか構築といった概念をやはり前面に出していただいた方がいいのではないかというふうに思っておりまして、この平和というものを新JICAがどうとらえるかということについて御意見をいただきたいというのがまず一つ。  そして、二つ目でございますが、これに関係しまして、櫻井委員はスウェーデンのFBAに行かれておられます。FBAはカナダのピアソン・センターと並ぶ平和構築人材の育成機関として有名でございますが、私は、今いろんな、ODA寺子屋みたいな話がございますけれども、この平和構築についての我が国としての位置付けというものを、このFBAみたいな形をやっぱり考えなきゃいけないと思っておりますが、その点について御意見をいただきたいというのが二点目です。  そして、これは意見というか提案でございますが、これは委員長に対する提案でございますけれども、各委員から調査派遣の報告がすごく遅れてしまった、期間がたってしまったということがありましたが、我々理事の方でもなるべく早くやるようにしていたんですけれども、なかなか調整が付かなかったということがございますので、ほかの国会審議の日程、影響を受けないように、これからのルールとして、例えば調査派遣に行かれてから三か月以内には報告していただくというようなルール化を明確にするということを提案させていただきまして、私の質問に代えさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  31. 林芳正

    委員長林芳正君) 最後の部分については理事会等で協議してまいりたいと思います。  じゃ、まず、緒方理事長からお願いいたします。
  32. 緒方貞子

    参考人緒方貞子君) ただいまの御質問との関連から最初に申し上げます。  人間の安全保障という考え方の裏にありますのは、人々を大事にすると。大事にするあるいは中心として考えると。その人々がどういうふうな状況にあれば人々中心とした考え方が成立するかというと、紛争の中で権力からもあるいは他国からも侵されないような平和な状況、それと同時に、あした食べていけるかどうか分からないような不安な状況、この両方を併せて人間の安全保障という形で私は人間の安全保障委員会の一員として数年間この問題を研究いたしましたんですが、平和というものの内容をいろいろ考えてまいりますと、平和と言っただけじゃ足りない面がたくさんあると。  その内容については、紛争がない、あるいは紛争によって人が侵されないというようなこと、人権、人道、倫理の問題が入ってくる。それと同時に、生活的にも、開発途上国などへ参りまして人間の安全保障をどう考えますかと伺いますと、やはりあした病気になったらどうやって病院に行けるか分からない、あるいは食べ物があるかどうか分からない、それも最低限の問題として平和と言うこともできるかもしれません、安定して暮らしていけると。つまり、平和と安定という両方を考えての人間の在り方を非常に重要視するということで出た問題でございまして、平和を軽んじるとか、そういうことじゃないんでございます。  それから、研究所のことについては、これはJICA研究所にしたわけです。JICA研究所というのは、JICAの非常に広範な事業というものに、これはある程度基礎的な実態を研究し、調査し、そしてそれの上に立ったいろんな指針を出していくという意味で、先生のお考えのような問題はみんな含まれている研究所で、ただ、体系的に物を考えるというのは、事業で走り回っておりますとやはりそういう点が不足のことございますから、そういうことから研究所と。開発研究所ともうたわなかったんです、研究所ということにいたしました。  もし、先ほど前に少しお聞きになったようなことを付け加えて申し上げてよろしければ。  先ほどのいろんな御報告、大変私興味深く伺わせていただきました。その中で二、三申し上げればと思いましたのは、JICAの今の事業も決して現場から離れて東京からいろんなことを指導したり指針を立てたりしているわけじゃございませんで、第一、JICAの現場からのいろいろな提案というものがプライオリティーを持つというふうにいたしております、これは事業について。  それに加えまして、今、JICAODAタスクフォースというのが各国にございまして、大使館のODA関係者JICAその他のODAの関係の機関の方たちが協力して協議して、こういう方針でこういう事業をしたらどうかという方向にかなり動いてきております。  ですから、そういう意味では、現場主義、あるいは現場への権限の移譲、現場を尊重する。ということは、つまり、相手国の国も人々政府も尊重して、一番相手の、結局相手の国々のいい状況になるということを目的としているのがODA事業であるというふうに理解しているところでございます。  先ほど、いろいろなバイの、特に、この度はスウェーデン、ドイツ、イギリス、フランスとお出かけになって、実はドイツと二国間でODAについて、対外援助についての協議をしようという話がだんだん盛り上がりまして、この一月に日独の援助についての協議をいたしましたんです。ドイツ側は、先ほどおっしゃいましたようにGTZありKfWがありBMZですから三つ機関があって、ドイツ側は、今度JICA一つになっていいなと、私たちももう少し一つになりたいなというような話がございましたんですが、そこに一つ加えましたのがアデナウアー・ファウンデーション、これはドイツの議員方々のファウンデーションで、そのアデナウアー・ファウンデーションが加わりまして、あちら側からは議員方々もお出になったんです。  実は、今年の十一月に今度は日本の方でやるという話が出ておりまして、その節にはいろんな形で先生方にも応援していただく、あるいは参加していただけたらと思っておりますので。  この一月にドイツでやりましたときはむしろアフリカを対象にいたしましたんです。今度日本でやりますときはアジアを対象にしようと。つまり、アフリカはドイツの方に近い、アジア日本により近いということで、そういう仕分をいたしましたので、こういう形で、二国間の援助状況についてもかなりいろんな形での協力が出てまいりますので、ちょっとその辺は御紹介したいと思いましたんです。  そのほか、世銀あるいはアジ銀、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行等々もいろんな協力の申出がありまして、私どもも積極的にそれに対応しようといたしておりますので、幅広い協力、国際機関政府等々との協力が進み始めているということも御報告したいと思いました。  それから、もう一つ大事な点ですが、人道援助から開発援助への移行なんですが、先ほど平和ということをおっしゃっていただいたのは、恐らく、もっと開発援助は経済、社会の復興あるいは発展だけではなくて紛争直後のいろんな問題にも対応したらどうかという御示唆だったと思うんですが、お話に出ましたスーダンにおきましても、あるいはウガンダにおきましても、実は私元々はUNHCRの出身でございまして、難民の保護と支援をしておりましたんですが、戦争の復興の第一歩はやはり人道援助になるわけです。そこで、人道を対象としたUNHCRのいろんな事業がございますんですが、このごろJICAの方も早く紛争後の事業に入るということで、UNHCRが始めたような事業のところに入っていって、そして人道的なものから開発援助の方へ持っていくという協力が実は進んでおりまして、今のお話にありましたスーダンにおきましても、JICAが行きましてから港も造りましたし、道路もやっておりますし、研修所等々もやりまして、帰ってきた難民に対して、これはもう少し復興の方へ持っていくという事業は進めております。  それから、ウガンダへいらっしゃったんですが、ウガンダの方は、やっぱり北の方のかなり、ローズ・レジスタンス・アーミーという反乱の人たちが随分たくさんの破壊をしておりまして、少年兵なんかも非常に多かったんですが、そこにも、ようやく紛争が終わったために、JICAの方も第一歩としまして北部の方にも今度道路から始めようかというようなことで、開発事業の第一歩を進めるようにいたしております。  そんなことで、人道から、いつまでもただ人道で難民の保護というだけじゃ十分じゃないので、その人たちが暮らしていけるような開発援助へのなるべく早い進出ということをJICAは図っておりまして、アフリカから始めましたのがだんだんこれからアジアにおいてもそういう事業、特にアフガニスタンだとかその他ミャンマー等々においてもいろんな形で人道から復興へのつなぎを積極的にやりたいというふうな計画をいたしておりますので、ちょっとコメントさせていただきました。  ありがとうございました。
  33. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  櫻井委員、お願いします。
  34. 櫻井充

    櫻井充君 藤末議員の質問にお答えする前に、ちょっと今、緒方理事長からお話がございましたので、その点について一、二点お話をさせていただきたいと思いますが、ドイツでは、やはり今お話があったとおり日本の新JICAがどういうふうに活動していくのかということをすごく興味を持って見ております。つまり、組織が今お話があったとおりばらばらになっているために、もうその方が多分効率的であろうと。ですから、日本でうまくいけば同じようなことをやっていきたいという、そういう思いが伝わってまいりました。そういう点から考えても、お互い先進国同士、いい点は学び合っていくという姿勢というのはすごく大事なことではないのかなと、そういうふうに思いました。  それから、ドイツと一緒に協力をしてやりましょうというのは、これはスウェーデンでも同じようなことを言われまして、それは何かというと、お互い国がばらばらでやっていくと、お互いが大事だと思っているところにやってしまうと、ある部分は手厚くなるし、そうでない部分は手薄になってしまうと。むしろ、お互いその国々同士で得意な分野があれば、それを分けて、お互いに自分たちの持っているノウハウであるとかお金であるとか、そういうものを有効活用していくという点で連携を取っていった方がいいんじゃないだろうかという、そういう意見もいただきました。  それから、先ほどちょっと言葉足らずだったのかもしれませんが、要するに私は、新JICAに権限がもっともっと移譲されて新JICA活動しやすいようになった方がいいのになと、そういう応援のために申し上げたところでありまして、決してJICA活動を批判したわけではございませんので、その点は御理解をいただきたいなと、そう思います。  その上で、先ほど藤末理事からあった指摘というのはまさしく同感でございます。先ほど御報告の際に申し上げましたが、スウェーデンは百八十年間戦争をしていないという、そういう立場から、平和が極めて大事なんだと、その点でこういったアカデミーをつくっているんだろうというふうに私は理解しております。一方で、日本は大量破壊兵器の被爆を二回も受けているそういう国でございまして、平和の重要性というのをまた逆の面から物すごく認識している国であって、そういう立場で同じような組織をつくっていくということは極めて大事なことではないのかなと、そう思います。  ただ、これはただ単純な組織をつくれば済むというものではございませんで、例えば、先ほど申し上げましたが、ここで人材を幾ら育成したとしても、急に人が必要だと、二週間以内に来てくれという、そういう呼びかけもするんだそうです。そのときの一番重要な点は職場での理解なんだそうです。つまり、その人が、済みません、医者なので医者の立場で申し上げれば、その医者が離れたときに病院が運営できなくなってしまっては駄目なので、まず病院側がちゃんと理解をしてくれる、そして、しかもそこの中で医者が補充されるとか、そういうことのシステムがきちんとできている上で更に活動ができるということでございます。  ですから、この研究所だけをつくれば済むという問題ではなくて、そういう雇用の流動化であるとか雇用の安定性ですね、もちろんその二年間なら二年間の任務が終わって帰ってきたときに職場がなくなっていたというのでは困りますし、それから自分自身が参加したいといったときに、そこで補充されないから結果的には駄目ですとか、そういうことにならないように、そういった部分も随分きちんと整備していかないと、ただ単純に研究所をつくって人を育てたというだけでは解決しないんじゃないのかなと、そういうふうに思っております。  いずれにしても、私もまさしく同じ思いでして、そういうことも全体を含めて今後整備をしていく必要性があるんじゃないかというふうに思います。
  35. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  誠にすばらしい議論をしていただいておりますが、手が何人か挙がっておられますので、発言はそれぞれ簡潔にお願いいたします。  それでは次に、浜田委員、お願いします。
  36. 浜田昌良

    ○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  各調査団の報告委員の皆様、本当にありがとうございます。貴重な御意見いただきました。  私からは、平和構築の人材育成又はそういう関連分野について質問させていただきたいと思っております。  ただいま櫻井委員からもスウェーデンの育成機関の話がございました。御存じのように、日本でも平成十九年度からパイロット事業始めておりまして、来年度、平成二十一年度から本格事業になります。一年間約六十名の定員で、数か月間の研修の後、実地研修を一年間するというコースが基本になっておりまして、そういうコース以外にも、既に頑張っておられる方々がシニアコースとしてアップ・ツー・デートないろんな情報を得るというコースも付け加えられるようでございますが、具体的にこの機関、FBAに行っていただいて、具体的に運営の上で、人材育成の面で先ほど意見いただきましたが、運営の面でこういうことが良かったなというのがございましたらちょっとアドバイスいただきたいなと。  あわせて、ただいま御報告いただいたとおり、人材の育成というのは研修だけじゃなくてそれを受け入れる社会が必要なわけですが、なかなか日本の場合はそういう意味ではすぐに職場に戻れるというのは一長一短で難しかろうと。そういう意味では、この数年のターゲットの中で、こういうことさえしていれば少しはプラスかなというような身近な御助言をいただければ有り難いと思っております。  続きまして、武内委員にお聞きしたいと思いますが、スーダン、ウガンダに行っておられました。最後の報告のところに、UNHCRNGOの職員、またJICA方々協力隊の方々に会われたという話がございます。こういう方々援助人材のキャリアパスの形成という、これについて御提言いただいていますが、そういう会われた方々がどういうキャリアパスを望んでおられるのかということについて何か御示唆いただければ幸いでございます。  続きまして、中村委員についてですが、いわゆるカンボジアのクメールルージュの裁判というのがなかなか終わらないという状況、御報告いただきました。どういうことでこの辺が延びているのかについて、またそれを早く終えていくためにはどういう工夫が要るのかについて御助言いただければと思いますし、これは外務省にお聞きしたいと思いますけれども、こういう各国で置く独立裁判型というものではなくて、例えば時間掛かるんであれば、いわゆるICCができたわけでございますので、そういうところで引き継ぐということもできるのかどうなのかについてお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  37. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。それでは、まず櫻井委員からお願いいたします。
  38. 櫻井充

    櫻井充君 まず最初の御質問に関してですけれども、正直申し上げまして、かなり年月がたってしまいまして、その時点で詳しい内容を教えていただいたのか、それとも聞いていなかったのかすら忘れております。ちょっと後日、その点については御報告をさせていただきたいと思います。  それから、二つ目の点に関して申し上げると、やはりそこの組織や、先ほどちょっと職場という話を申し上げましたが、そういうことではなくて、社会全体の理解がまず一番最初に必要なんではないのかなと。そういうことがあってこそ初めて様々な活動ができるのではないかというふうに感じております。  ちょっと違う案件になりますが、このSidaだったかと思いますけれども、何か不祥事があって、その組織に対してはかなり皆さん問題があるという声だったんですが、ODA予算を、だからといって削減しろという話にはならなかった。ODAというのはすごく大事なことなんだということの国民の皆さんのきちんとした意識があったからこそ、そのことが実現できているという話がございましたので、国民みんなで全体としてそういった平和維持活動なりに対して十分な理解を示し、そしてみんなで協力していく体制をまずつくるということが一番大事なことなのかなというふうに感じております。
  39. 林芳正

    委員長林芳正君) それでは武内委員、お願いいたします。
  40. 武内則男

    武内則男君 ありがとうございます。  実は、意見交換する中では、大変アフリカ、ウガンダ、スーダンとも厳しい環境の中で非常に頑張られておられまして、そうしたやっぱり我が国援助人材があってこそ、我が国の国際協力というものは成り立っているんだなということを痛感をさせられました。  その人たちとの意見交換の中では、例えばそうした人たちが活躍できるように、大学であったり、あるいは地方公共団体であったり、様々なところできちっとやっぱり我々は広報をしながらそうした人たちの育成というものを是非やっていかなければならないなということと、あわせて、少なくともやっぱり帰国後の再就職の支援であったり、あるいは在外公館等への任用であったりとか、いろんな帰国後の支援をどうしていくのか。そこが大きなやっぱり、彼らが将来にわたって活躍して、あるいは経験をそのまま引き継いで活躍していただけるためにはそこが必要かなというふうに思っておりまして、実はそのことを我々もJICA政府の方にもしっかり申し上げなければならないと思いましたし、そうした議論を是非活発化していきたいというふうに思っております。
  41. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。じゃ中村委員、続いて外務省
  42. 中村哲治

    中村哲治君 端的に例としてあるのはキャッシュバック疑惑というのがありまして、このクメールルージュ特別法廷には国連側の裁判所とカンボジア側の裁判所というのがありまして、そこのカンボジア側に採用されている職員が、結局、キャッシュバックといいまして、給料から採用した人に裏金を渡さないといけないという、そういうことがあるんじゃないかと。それが国連側から指摘されていまして、そういう疑惑があるのでなかなか追加資金需要に対しても各国から協力がされなかったという、そういった問題があったんですね。最初、どこももう追加のお金を国連側に供与するところがないんじゃないかということが言われておりまして、訪問したときにはそこが一番大きな問題だったんですね。何とかアメリカがまず百八十万ドル提供してくれるんじゃないか、ある程度提供してくれるんじゃないかと。帰国後、百八十万ドルという数字も出てきたんですけれども、やはり日本が引っ張っていかないといけないということなんでしょう。その十倍以上の二千百四十万ドルトータルとして供与するというような形でこれを日本として引っ張っていくという、そういうふうな形になったんだろうと思います。  基本的にカンボジアという国もそんなに民主主義的に進んでいる国とは必ずしも言えなくて、例えば総選挙の前にはジャーナリストが親子で殺されたり、そういうことがあるんですけれども、その犯人というのははっきり分からない、こういうことでかなり構造的な、法の支配という意味では問題があります。  法制度整備支援については、JICAの専門官として日本の法曹、弁護士の皆さんが派遣されております。そこで直接聞かせていただいた話としてあるのは、例えば民事執行法を作っても、それが執行停止という形で政治的に圧力掛けて止められてしまうと。こういうことをしていると、私たちは専門家として法制度を整備するために派遣されてもどういう意味があるのかと、そういうふうなことも聞かせていただきました。  当然、それについては政府に聞かせていただいて、これに対して答えも求めたんですけれども、なかなかきちっとした答えもしていただけない状態でありました。ただ、日本のそういう法の支配に対する援助ということに関しては非常に感謝していると。そして、一歩一歩進めていきたいというそういう意気込みはカンボジア政府の方から伝わってきたということでして、構造的にそういった問題がありまして、この国連側とカンボジア側との対立の構造みたいなものもクメールルージュ特別法廷にはありますので、ここをしっかりと日本としても見ていく必要があるんじゃないかというふうに感じております。
  43. 木寺昌人

    政府参考人木寺昌人君) ありがとうございます。  クメールルージュ裁判につきましては、ただいま中村先生から御指摘のありました汚職疑惑、これは国連が引き続き現地裁判所と協議しながら解決していくというふうに私ども了解しておりまして、日本政府といたしましてもその推移をきちんと見ていきたいと思っております。  それから、浜田先生の御指摘のICCとの関係でございますが、ICCの一般的な管轄権、これを、何といいますか、現在どうこうするということではありませんけれども、クメールルージュの裁判というのは、国連の決議に基づきまして日本、フランス、アメリカその他が協力しながらつくった言わば特別法廷でございます。一般法に対する特別法ということで、まずはこのクメール裁判裁判所の裁判というのを先行させるのが理論ではないかと私ども思っております。  それから、財政面でも日本にかなり大きな期待が掛かっているということですけれども、今年お正月、新年早々に中曽根大臣カンボジアを訪問いたしました。そして、これは私の同行した同僚の話でございますが、現地方々と話していると、最近は中国が来ているけれども、いや、中国ではない、カンボジアはやはり日本あってのカンボジアなんだと、そういうふうに受け止められていると。カンボジア和平に日本が大きな働きをしたわけでございまして、クメールルージュの裁判も新生カンボジアのために必要な一環と理解して支援を継続してまいりたいと思っております。
  44. 林芳正

    委員長林芳正君) それでは犬塚委員、お願いいたします。
  45. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 三点、緒方理事長にお伺いいたします。最後の点は櫻井委員の御意見も伺いたいと思います。  まず、二〇一五年までに国連ミレニアム開発目標、GNI比〇・七%目標を達成するという国際公約の取扱いの仕方なんですけれども、今外交防衛委員会や当委員会で外務大臣等に聞きますと、もちろんこれは公約だから達成すると、こう言うんですけれども、二〇一五年までに達成するかどうかについては確約はできないと。つまり、公約として尊重はするがこの期限には縛られないという趣旨の発言に今終始しているんですが、理事長の御意見を伺いたいのは、この目標というものをどういうふうにとらえていくのか。我が国もはっきりと二〇一五年という目標を達成するために本気でやるべきなのか、あるいはこの数字には別に縛られないでやっぱり中身を重視してやっていくのか、そういうお考えかどうかをちょっと確認をさせてください。  もう一つは、JICA活動の今後の方針で早く入るということをおっしゃいました。早く入る、現場に早く入るですね。やっぱり現場もいろいろな危険な状況があると思いますが、早く入るというのは相当なやっぱり準備と覚悟とが必要だと思うんですが、この早く入ることについて一体どのような障害があり、立法府としてどのようなお手伝いができるのかということについて御意見を伺いたいと思います。  そして、最後は、先ほど来話が出ております人材育成の問題です。  やっぱり、人材の育成が最大の問題であろうかと思います。実は、このODA委員会でも前々国会で中間報告というのを出しまして、そこで援助大国から援助人材大国へという提言を出したところでございます。しかし、多分あれ、タイトルが悪かったと思うんですが、人間の安全保障センターを設置をすべしと書いたんですね。センターと言ってしまうと余りにもイメージが矮小化されてしまって、オールジャパンでこの人材育成をしていくんだという気持ちが余り伝わらなかったのかなという気がいたします。  そこで、緒方理事長に、オールジャパンで、官民も問わず、本当に人材を育成していくために、立法府としてどのような取組が望ましいかということについて御意見をいただきたい。  櫻井委員には、先ほど来おっしゃっておられた、見てこられた、どちらかというと大企業中心我が国取組をもっと中小企業に広げる、あるいは地方で今みんな困っていますから、その困っている人たちが海外に行って働きたいという人はたくさんいるんですよね。しかし、なかなかここが結び付かない。この辺について何か御示唆をいただければと思います。
  46. 林芳正

    委員長林芳正君) 緒方理事長、お願いいたします。
  47. 緒方貞子

    参考人緒方貞子君) 今のODAの〇・七%についてはきっと木寺局長からお話があるかとは思うんですが、私も、実はODAは毎年、JICAへ参りましてから予算は切られてまいりました。切られ緒方で終わりたくないということはお願いしたのでございますが、今年は、微増ではございましたが、技術協力の方は少し増やしていただいたんです。何と思いましても、こちらは大きな国の予算の編成の上から来ることではございますんですが、先生方が、もっとODAは増やせ、これは日本にとって大事なことだという声を是非国会の中でも出していただければ。  私ども、それからJICAの責任というのはいただいたお金を最大限に効果的に使うことだと思っております。効果と効率というのは、本当にどこへ行ってもそういうことをやるようにと言われておりまして、私も重々それは承知しておりますし、いただいた限られたもののなるべく効果を、倍の効果を出すようにどうしたらいいかというのが実は私どもの仕事だろうとは考えております。  日本の、ただ、国の在り方から考えますと、どこかでも私は思いました、一国平和主義とか一国繁栄主義はできない世界になってきていると。そういうグローバル化の時代にあって、ほかの国々あるいはほかの人々がどうやって安全で、そして繁栄できるかということは私たち自身の問題だということを、もっともっと徹底していくより仕方がないのかなというふうに考えているわけでございます。  MDGにつきましては、予算のいかんにかかわらず、MDGの達成のための事業を私どもとしてはあらゆることをしていく義務があるというふうに考えているわけでございます。  そして、あと、人間の安全保障センターは、それはそういうセンターができれば私はもちろん喜んであらゆることをしてお手伝いしたいと思いますが、人材育成につきましては、やっぱりこの日本のような国は、非常に優れた技術、優れた科学技術あるいは先端技術を持った若い人が、どんどんどんどん日本のためにも、それから世界のためにも働いていただきたいと。どちらかというと、いろんな形で内向き、そして何となく不十分な、配慮がお年寄りの方、貧しい方等にもできないような、そういう今状況になっている日本の中で、日本の中もきちっと皆さんの思うような行き届いた政治と生活ができなければ、なかなか外まで見ていただいて、やってくださいと私としては言いにくいわけでございます。ですから、国内も良くしてくださることによって国際的にもいろいろやっていきたいと。  そういう広い視野を持った若い方たち。そして、JICAは今年、明日は新しい入構をする人たちが入りまして、三十一名、これは三千人の応募があったんです。それはやはりこういう仕事をしたいなという若い方がいるということで、その点は私、大変心強くも思っておりますんですが、そういう人たちが十分働けるような仕事を私どもしていかなきゃならないし、そういう人材を奨励していただきたいというふうには考えておりますんです。  大変行き届かないことばかりなんですが、非常に限界がある中で頑張っているというふうに申し上げるほかないと思います。  ありがとうございます。
  48. 林芳正

    委員長林芳正君) 櫻井委員、お願いいたします。
  49. 櫻井充

    櫻井充君 ありがとうございました。  二つに分けて考えていかなきゃいけないのかなと。つまり、人材を育てて派遣する場合と、それから企業の海外進出と、二つに分けていかないといけないんだろうなと、まずそう思います。  まず、前段の方で申し上げると、やはりほかの国々で一体どういう人材を望んでいるのかということをきちんと把握して、その上で国内できちんと育てていくことが大切なことなんだと思いますが、一方で、例えば医者のように、我が国に求められても、我が国国内の、特に先生のところの離島であるとか、それから我々のところの本当に田舎であるとか、これはもう完全に医者が足りませんから、幾ら必要だと思ってもなかなか派遣できないので、そういう点をどう解決していくのかというのは一つ課題だろうと思います。一方で、石井先生がいらっしゃる前でこういうことを言うのもなんなんですが、例えば歯医者さんもう余っておりますから、そうすると、そういう余剰の人員の方はやはり海外できちんと活動していただく、そういう点であれば、幾らでも派遣できていくようなシステムというのができ上がっていくんではないのかなと、そう思います。  それから、後半の方の企業の海外進出ですが、ドイツに行って中小企業の社長さんと話をしましたが、やはりすごいと思うのは、いずれ世界的な企業になりたいんだと、皆さんそう意識を持っていらっしゃるということです。その上で、それをちゃんと国が応援しましょうと。  実際、今私は国際協力局の審議官に二件現場のことをお願いしているんですが、日本にはこういう制度がないと言われて断られております。これは二つとも実はもう海外のほかの国々で、例えばインドの案件に関して言うと、ウエストベンガル州では採用されているもので中央政府で何とか採用してほしいんだということだったんですが、これは、たしかインドってベンガル語っていうんですか、あれは、母国語はちょっとよく分かりませんが、それでいいんでしょうか、要するにインド人では二億人ぐらいそういう言葉しかしゃべれない人がいるんだそうでして、それの関連のOSを開発した中小企業がおりまして、それを何とかODAでのせられないのかと言ったときに、これもなかなか難しいような話をされましたし、それから、今鉄道のレールというのは、何か水糸を引っ張って三人掛かりでかなりの時間掛かってやるんだそうですけれども、CCDだったか何か忘れましたが、それを使ってがあっと押していくとあっという間に終わってしまうというそういうシステムがあって、これはベトナムだったかどこかで買いたいといって買ってくれているんですが、それでもお金に限界があるのでODAにのらないんだろうかと相手国から言われているものがあるんですが、そういったものに関して我が国には制度がないと。それから、ある企業だけ、特定企業だけを応援することになると極めて不公平なので、そういうことがどうもできないらしいんですが、そこの制度からまず根本的に変えていただかないといけないんじゃないのかなという点が一点です。  それからもう一つは、今回やはりすごいと思ったのは、官の方が中小企業の技術をちゃんと知っているということです。麻薬管理をちゃんとやっていて、こういうノウハウがあるということを官が知っているから、じゃ、インドでも麻薬中毒の患者さんで困っているので、この技術を持っていったらいいんじゃないかといってマッチングをちゃんとさせているというところがすばらしいところでして、日本の官にそれだけの目があるかどうかというと、甚だ僕は寂しい状況にあるんじゃないのかなと。ですから、そういう点でいうと、そういう目利きのできる人を、いかに今後はその点について人材育成をしていくのかということがすごく大事なことになるのではないのかなと、そういうふうに思っております。  以上です。
  50. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  それでは最後に、山本委員からお願いいたします。
  51. 山本順三

    ○山本順三君 もう三時になっていますから、簡単に行きます。二点。  まず第一点でありますけれども、森委員にお伺いしますけれども、ツバルで本当に国がなくなっちゃう、国全体でニュージーランドに移住なんというそういうイメージができて、その原因というのは実は地球温暖化だ、そんな意識を持っていました。  おととしですか、別府でアジア・太平洋水フォーラムがありまして、ツバルの大統領だか首相だか分かりませんけれども来られて、そのときにもこの話が話題になる、そして当時議長だった森元総理に個人的な陳情が行われた、そして、その結果として鴨下環境大臣派遣されたと、こういう流れが実はあったことを思い出しますけれども。  現実は、例えば出稼ぎ労働者の問題があったりとか、あるいは元々の滑走路建設、島の土壌の成り立ち、いろんな案件でもってそういう事態がわき起こっておる。  その中で、例のIPCC、もう地球温暖化、地球温暖化、大変だ大変だということとはちょっと違ったような報告書ができ上がっている。これは私ども非常に関心が深いんですね。何かIPCCが全部言ったそのことによって、地球温暖化大変だ、じゃどうしようか、じゃCO2、これを排出量をどうだこうだ。よく見ていったらそこに経済原理があったりしてというふうな、そんなことすら感じることが多いのでありますけれども。  そこで、お伺いしたいのは、ツバルに住んでいる人たちが一体全体この海面上昇等々についてあるいは地球温暖化ということについて、実質的に皆さんこういう考え方なのかあるいはどうなのかよく分かりませんが、どの程度の危機意識を持ってどういうふうな対応をしようとしているのか、もしお話を聞いてきたのならお聞かせいただきたいというのが一点。  もう一点、せっかく立ったついででありますから、ひんしゅくぎみでありますけれども、ちょっと申し上げます。  櫻井議員の方から、援助の重点化をやれということを先進国ではやっている、ドイツ、スウェーデンですね。そして、戦略的なODAというんでしょうか、やはり国民の税金を使うわけでありますから、それは国民に対して説明責任が果たせるようなODA、これは非常に重要な観点ではあるんですけれども、いろいろ越えなければならない山があると思うんですね。  私もアフリカに行きました。南アフリカに出ていっている日本の企業の皆さん方ともお話をしましたが、官民協力をしてもらいたいと。もっと官があの端々に行っている民間企業に対していろんな援助の手も差し伸べてもらいながら一緒に構築していきたいという意向があるんだけれども外務省側も、いやいや、さはさりながら、官民癒着と言われたらかないませんからというようなことが大きなネックになってしまっている。そのことをどう乗り越えるかというのが一つの山だと思うんです。  もう一つの山はというと、今度はハートの問題になりますけれども、中国のような形で、まさに資源外交だと。我々は金を出すけれども、資源をもらってくる、あるいはそこで働く人材を供給していく、そこに供給された中国人がチャイナタウンつくって残っていくというような場面場面があるやに伺っていますけれども。そうなってくると、ODAは何のためか、緒方理事長の方からその本質論を先ほど語られたというふうに思いますけれども、その本質論、いわゆるだれのために何のためにということがより明確化しなければならないと思うんですけれども、そこの調整が非常に難しいんだろうと思うんですね。  日本のこれからのODAの進め方、ドイツなりあるいはまたスウェーデンはそうでありますけれども櫻井委員としては、どういう方向付けをしていったらいいのかというふうに思われているのか。  そして、もう一回緒方理事長に、やっぱり日本の侍意識じゃないですけれども、もののふの心といいましょうか、あるいはまさに日本人の武士道とでもいいましょうか、そういった観点からのODAの重要性プラスアルファが要るんではないだろうかと思うんですけれども、そこら辺についてのお考えがありましたら、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  52. 林芳正

    委員長林芳正君) それでは、森委員、お願いします。
  53. 森まさこ

    森まさこ君 ツバルの……
  54. 林芳正

    委員長林芳正君) 御起立の上、御発言をお願いします。
  55. 森まさこ

    森まさこ君 はい。失礼いたしました。  ツバルの気候変動についての御質問でございますが、報道等でセンセーショナルに気候変動、温暖化を原因として島が沈んでいるというふうにされていること、必ずしも証明できないのではないかというのが我々調査団の意見ではございますが、逆に、気候変動、原因ではないというふうにも言えません。つまり分からないということでございます。  例えば、テレビではヤシの木がばたばたともう倒れて浸食されている場面ばかり映されるんですが、そこの私たち反対側も行ってみましたら、反対側は増えているんですね、海岸線が。こっちが浸食されてこっちが増えているだけのことであったりとか。  それから、長老会というもの、昔の隣組の組長さんレベルの会議にお邪魔したんですが、そこでは、昔から海面が増えてそして床上浸水ぐらいになることはあったよなと、長老さんたちのお話にあったりして、必ずしも最近だけに限った状況ではないんじゃないかとは思いましたけれども、気候変動自体がもう地球規模の深刻な問題であることは間違いございませんので、それを否定をするというつもりは私たちはないのですが、報道等は一面だけをとらえたものであるのではないかなというような印象を持ちました。
  56. 林芳正

    委員長林芳正君) 櫻井委員、お願いします。
  57. 櫻井充

    櫻井充君 例えばドイツは貧困の削減であるとか平和維持であるとか、それからスウェーデンも同じように貧困の削減をまず主たる目標として掲げております。しかし一方で、それはだれのためなのかというと、世界全体のためではありますが、自国の利益につながっていくんだという、そのことを国民の皆さんがきちんと理解しておりますし、それから政府もそういう方針で僕はODAというものを行っているというふうに認識しております。  それはなぜなのかと申し上げますと、今回重点化を図っていく際に、支援する国に、援助する対象国に対して随分話合いはするんです、向こうからいろんなことを言われるんですが、最後に何と言うかというと、これは国が決めた方針なんだと、これが要するに我々の国益につながっていくからなんだということをはっきり言うようなんですね、どうも。ですから、そういう点でいえば、やはり最終的にあるのは自国の利益というところにあるんだろうなと、そう思っています。我が国として一体今何が自国の利益なのか、それから、世界全体に対して貢献できるのかということをもう一度根本的に検討しなければいけないとは思っております。  ただ、その中で、まずちょっと、若干お時間いただければですけれども、今の経済状況の中でいうと、アメリカと今までのようなお付き合いをしていくわけにはいかないというふうに私は思っておりまして、そうするとほかの国々ともっといろんな形で交易をしていく必要性があると。そういうことになってくれば、それが一つは、ODAというのが一つのツールとして使われていくんだということを説明すれば、これは国民の皆さんに御理解いただけることではないのかなと。  つまり、少しずつ種をまいて花を咲かせていきましょうというのは、これ日本人は十分理解していることであって、アメリカのように短期間で利益を確保しなきゃいけないというそういう考え方ではないと思っておりますので、長期間の信頼関係を確保するための手段なんだということをまず理解していただくこと。  それからもう一つは、巡り巡っていけば、ドイツやスウェーデンと同じように、世界の貧困を撲滅することや平和維持を確保するということが自国の利益につながっていくんだということをきちんと教育していくことが大事なことではないのかなと、そういうふうに思っています。  それからもう一つ、前段ございました質問でございますが、やはりどこの国も、特にアメリカなどは、政府が最大のロビイストです。その最大のロビイストが、ああやって日本の法律から制度から何から何まで全部変えられていってしまって、そのために日本の企業は随分苦労しております。それと同じことをやろうとは思いませんが、ただ、日本にしかないような技術というのはいっぱいあるわけです。そういう技術を実はちゃんと相手国に持っていくということは相手国の利益にもつながっていくことであって、別にそこで政官財の癒着の構造をつくっていくわけでは、僕は何でもないんだろうと、そう思います。  ただ、いっぱいいろんな技術がある中で、ここの会社のやつを使ってくれとか、今までそういうことがあったから問題なのであって、そういう日本にしかないような、特に中小企業が持っている優れた技術力がいっぱいありますから、それをどう生かしていくのかということ、そういう観点からいけば、それを政官財の癒着と僕は言われる必要性は全くないんじゃないのかなと思っておりまして、もっと勇気を持って日本の技術を海外のために使うんだという観点で、私は官がロビー活動をもっと行っていっていいんじゃないのかなと、そういうふうに思っております。
  58. 林芳正

    委員長林芳正君) 緒方理事長、何か御所見があれば。
  59. 緒方貞子

    参考人緒方貞子君) 大変難しい御質問をいただいたんですが、侍、この間の野球のような侍ジャパンのような華々しい勝利というようなものが、援助の世界では出すものじゃないんだろうと思います。むしろ、人々を全部含んだ国が、人々によって成り立つ相手の国が両方勝つという、そういうことが、むしろ今の援助という、少なくとも援助というようなことを通して何を達成するかというと、人々によって成り立っている国が、人々によって成り立っている国同士が両方勝っていくと。  というのは、日本も、今中小企業のお話しましたが、一村一品運動のようなものは、非常に今アフリカなどに私どももお手伝いして持っていっていますけれども、そこで村ができ、町ができ、市場ができるというふうなことは、日本人々がやっていることが相手の人々に持っていけるもので、そういうことがかなり例としてあると思いますので。  やっぱり私は国ということだけじゃないと思うんですね。国が何かというと、それはその人々によって成り立っている国という部分がかなり大事かなと思っておりますので。  大変不十分でございますが。
  60. 林芳正

    委員長林芳正君) ありがとうございました。  予定の時間が参りましたので、これをもちまして意見交換を終了いたします。  本日は、大変限られた時間ではありましたが、派遣団に参加された方々から貴重な御意見をいただくとともに、本委員会として大変有意義な意見交換を行っていただき、誠にありがとうございました。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時十一分散会