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参考人(
石戸谷豊君) おはようございます。
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
日弁連の
消費者庁の提言は一九八九年の松江の人権擁護大会で行われておりますので、今年で二十年ということになります。このときの提言は、
消費者庁の
設置と
消費者の
権利実現のための法
整備とセットで提言しているというところに特徴があると思います。
その中で、まあ
製造物責任法とか
団体訴権とか何もない
時代のことでありましたので、クラスアクションであるとか父権
訴訟制度の点についても言及した様々な法
整備の提言を行っております。そこは、そのとき提言したというだけではなくて、それを更に具体化するための提言、
意見書というのを次々と出して、全力で
被害救済と防止に当たってきたということであります。
数えてみましたら、主な
意見書、提言、松江の人権大会を起点としますと百九十本
程度になっております。一九八五年に
消費者問題対策
委員会が日弁連にできておりますので、そこから数えますと二百十本余りになっております。
そういう意味からしますと、こういう
意見書を受けまして、新規の立法だとか様々な法改正が行われてきたということがありますので、この二十年間に個別
分野の法
整備についてはかなり
実現してきたという点も、一部というか、部分的ではありますけれ
ども実現してきたこともまた事実であると思います。
しかし、
消費者庁の方につきましては政治の大きい力が必要だということでありまして、これが本格化してきたのが二〇〇七年の末ごろかなというふうに思っております。
日弁連におきましても、二〇〇八年の三月に
消費者行政一元化推進本部を
設置いたしました。この本部というのは、会長を本部長としまして、全副会長、それから
全国にあります五十二の単位
弁護士会の全会長を含む百五十名
体制の組織でありまして、要するに日弁連が
全国の
弁護士会とともに総力を挙げるときにこの本部
体制を取るということになっております。
消費者庁と
地方消費者行政の充実というのは一体として展開しなければいけないということでありますので、全単位会の
取組も不可欠であるという
関係になると思います。
そういうことで
活動してきまして、本部
設置以来、シンポジウムは日弁連、
全国の
弁護士会で総計三十五回、同じく
意見書、会長声明は五十八本、単位会の動きに呼応しまして、
地方議会からの
地方消費者行政の抜本的
拡充等を求める
意見書などは
全国二百十二
自治体で採択されるなどということで、全力を挙げて取り組んでまいりました。
政府提出
法案に対する
意見は、
資料に付けていただいております二〇〇八年の十一月十九日付けの
消費者庁設置法案に対する
意見書と
消費者安全法案についての
意見書ということになります。この
意見につきましては、
審議の際、また全党の
修正協議の際に十分に活用していただけたというふうに思っております。
政府案につきましては、全会派による歴史的な修正合意がなされました。これは大変画期的な
内容でありまして、日弁連の
意見の趣旨にも合致しております。具体的にどの
意見の部分がどうこうという点については差し控えますが、基本的な部分、理念というか骨格の部分の点について触れさせていただきますと、日弁連のこの八枚物のリーフレットを御覧いただきたいと思いますが、五ページのところです。
これは二〇〇八年の六月に出したものなんでありますけれ
ども、「
消費者庁のしくみ」ということで、「
消費者庁を
消費者による
消費者のための
行政にするために」ということで、真ん中辺に「
消費者代表で構成される
消費者委員会の
設置」というのをうたっておりまして、その
内容としまして、星印として、
一つ、「
消費者庁が
消費者のために
機能し続けるよう、
消費者自身がチェックする
仕組みが必要です。」、
一つ、「
消費者代表で構成される
消費者委員会が、
消費者庁の企画・立案部門、執行部門に対して積極的な提言や勧告をすることができるようにすべきです。」、
一つ、「
消費者委員会が形骸化せず実行力を持つために、独自の
事務局と調査権限が必要です。」というふうに打ち出しております。
これはもう、
名前といい
内容といい、ほとんど超党派で成立した中身そのものではないかというふうに思っております。
日弁連の方は二十年掛けて山頂を目指して歩んできまして、途中、若干この歩いている道が少し違うのかなという感じもありましたけれ
ども、山頂に登り詰めると、超党派の皆さんと山頂で出会って、おうと歓声を上げたような気分であります。是非この修正合意の
内容で
消費者庁と
消費者委員会を
実現していただくように
お願いしたいと思います。
検討事項というのも、
課題もあるわけでありますけれ
ども、それらにつきましては
附則で年限を切って書き込まれておりまして、それらの
課題に
消費者庁と
消費者委員会が本格的に取り組める
体制を是非一日も早くつくっていただきたいと願っております。
ということで、まずは立ち上げて、その中でということなんですけれ
ども、一点だけ、立ち上げまでに詰めていただきたい点がありますので、それを申し上げたいと思います。
この
消費者庁構想で
消費者委員会というのが大変重要な
機能を果たすということで、
修正協議におきましてもそこが協議のキーポイントとなったということで、
消費者委員会が誕生するということなんですけれ
ども、この
消費者委員会というのは
消費者委員と
事務局から成っております。組織が動くためには
事務局に人が要るというのが
事務局的リアリズムでございまして、今日呼ばれた三人というのは各
団体のそれぞれ
事務局長でありまして、それゆえに、その
事務局体制の充実をというのがいずれの
団体からも出ているわけであります。
消費者委員の方につきましては、これまでの法律、
附則、
附帯決議の中で、
委員が十人以内、すべて民間から登用される、非常勤であるが、初代の三人については常勤的に勤めることが可能になるように人選し、財政的な
措置も行うと。
施行後二年以内の常勤化を図ることを
検討するものとされておりまして、大変具体的になっております。
これに対しまして、一連の
審議を通じまして、
事務局の点についてはまだ明確になっていないというふうに見ております。
委員についての人数あるいは権限などは非常に詰めていただいたわけですけれ
ども、例えば証券取引等監視
委員会が三名の
委員であるけれ
どもばりばりと仕事をしていると。八条
委員会でありながら大変な成果を上げている。しかし、そこの三名の
委員の裏には三百七十四名という
事務局体制と職員がおるわけでありまして、公正取引
委員会が五名の
委員で構成されている、しかしながら、その
委員を支える七百七十九名の人員がいるということであって
委員会が
機能するわけであります。
この
消費者委員会が具体的にそれではどういうことをやるのかということをまず確認しておくことが大事だなということで、まず
設置法、
整備法、安全法に定めている
事務をちょっとまとめてみたものがございます。
別紙一が
設置法に定められた
消費者委員会の
事務でありまして、これは大きく見ると三つありまして、第一が
設置法六条二項一号と二号の
事務でありまして、重要事項について自ら調査
審議して建議する、あるいはその諮問に応じて調査
審議するという
内容が重要事項でありまして、その重要事項が
消費者の利益の擁護増進に関する基本的な政策に関する重要事項以下七つ列挙されております。第二が、六条二項三号の
事務でありまして、これは
消費者安全法二十条の規定で、
内閣総理大臣に対して必要な勧告をする等の
事務でございます。第三としまして、六条二項四号の
事務がありまして、これは
消費者基本法以下十三本の法律に定められた
事務を処理するということになっておりまして、その個別具体的な法律に定められた
事務を整理しているのが別紙二の
整備法所定の
事務ということになります。
この十三本の法律を見ますと、
消費者委員会の関与の仕方は様々でありまして、
消費者委員会に
意見を聴くとするもの、それから
消費者委員会に諮問しなければならないとするもの、
消費者委員会が調査
審議するとするもの、
消費者委員会が
意見を述べることができるとするもの、
消費者委員会の議決を経なければならないとするものなど、関与の態様は様々でありますけれ
ども、その
内容は多岐にわたっております。
それとは別に、
消費者安全法に定められた
事務というのがありまして、これが別紙三になっております。大別すると六項目に分けられると思います。
第一が六条四項の基本方針の策定
関係でありまして、第二が七条の
都道府県知事による基本方針の変更
提案に関するものです。第三が十三条二項で、
消費者事故等に関する取りまとめ結果の
消費者委員会への報告というのがありまして、第四が十七条四項のすき間事案に対する
事業者に対する勧告、命令にかかわるもの、第五として十八条の同じくすき間事案に対する譲渡等の禁止、制限に
関連するもの、そして、第六として二十条で、
内閣総理大臣に対して
消費者被害の
発生、拡大の防止のために必要な勧告をすることができるとするのが第一項でありまして、その勧告に基づいて講じた
措置について報告を求めることができるとするのが第二項であります。
ということで、三法で定められた
事務そのものが大変広
範囲であるわけなんですけれ
ども、これにとどまっているわけではありません。
設置法には五本、安全法には二本の重要な
附則が付いております。これらの
附則は書きぶりとしてはいずれも、
政府はこれこれの事項を
検討、あるいは
検討して必要な
措置を講ずるものとするという規定ぶりになっているわけでありますので、それ自体は直接
消費者委員会の
事務として書かれているわけではないんですけれ
ども、
附帯決議の二十三項を見ますと、
消費者庁関連法案の
附則各項に規定された見直しに関する
検討に際しては、
消費者委員会の
意見を十分に尊重し、所要の
措置を講ずるものとすることとしております。つまり、これらの
附則はいずれもこの
消費者委員会が
検討するということが大前提とされております。
そこで、念のために
附則に掲げられた
検討事項というのを整理してまとめてみたのが別紙四であります。大変重要な重い
課題がそれぞれ
附則の方に掲げられております。これらについても
消費者委員会が
検討するということになっております。
さらに、
附帯決議二十三項目のうち、
消費者委員会に
関連するものを別紙五としてまとめてみました。
附帯決議の二項から八項まで、十四項、十九項、二十一項、二十三項というふうに
消費者委員会関連の
附帯決議が掲げられております。
例えば十九項を見てみますと、今後三年
程度の
集中育成・
強化期間後の国による
支援の在り方、
地方の
支援の在り方ですね、
消費生活センターの
設置、
相談員の配置、処遇等の望ましい姿について、その工程表も含め
消費者委員会で
検討を行うことというふうにされておりまして、これらについても
消費者委員会が
検討をしなければいけないというわけであります。
事務局の問題については
附帯決議の八項で
措置がされておりまして、
消費者委員会の独立性を担保するため、
事務局については財政上の
措置を含めた
機能強化を図るとともに、その職員については専任とするように努めること、また、
事務局職員の任命に当たっては、多様な
専門分野にわたる民間からの登用を行うとともに、同
委員会の補佐に万全を図ることとされております。
この
附帯決議は
消費者委員会発足時において
実現されている必要があるというふうに思います。というのは、先ほど見ていただきましたとおり、
附則において
発足当初に特に重要な任務が課せられているからでありまして、しかも、三年以内とされているものにあっても、本
委員会の
審議において指摘されてきましたとおり、三年に限らずできるだけ早くやるべきだと、一日も早くということが挙げられているわけでありますので、これは
委員会を
発足させながら充実をというわけにはいかない
内容であるというふうに思います。
そういうわけでありますので、超党派の合意
内容を具体化して十分な
事務局体制で
委員会が
発足できますように
お願いをしたいと思います。
審議をずっと改めて見てみましたらば、
委員会については大変
審議が深まってきて修正合意に至っておりますけれ
ども、
事務局については、三月十八日の
衆議院の
特別委員会におきまして人数についての質問がなされておりましたが、その段階においては、具体的にこういう形にしようというところまで詰まっておりませんので、実際の人数についてもまだ大きな幅がある、そういう段階でございますという答弁がありました。その後、修正合意で
消費者委員会の
機能というか
役割が大きく変わったと思います。
当
委員会においては四月二十三日に、現段階で具体的にイメージというものが私は全く示されていないというふうに思っておりますという指摘がありまして、本当に重要な
機能、
役割というものを果たすために、それを支える
事務局についてもしっかりした
体制をつくることが重要だというふうに思っておりますという指摘がありまして、質問がなされました。全く同感であります。是非この点を詰めていただければというふうに思っております。
以上、その点について今日申し上げたい最大の点であります。
残りの時間につきまして、
消費者問題に関する
特別委員会の点について触れさせていただきたいと思います。
今
国会で衆参両院で
消費者問題に関する
特別委員会が
設置されまして、このことの意味というのは大変大きいというふうに思っております。
消費者問題は日々
発生しておりまして、しかも多数の
省庁に
関連していることが多いわけであります。そういうふうに多数の
省庁に
関連する事項を迅速に速く処理するということは法
整備の段階でも言えることでありまして、その理由でもって一九六八年の
消費者保護基本法が議員立法で成立しているということであります。そして、二〇〇四年の
消費者基本法も議員立法で行われております。
今回のこの法律の名称も含めての大修正というものも、まさに超党派での議員立法の実質を持ったものだというふうに考えております。特に、既存の
縦割り行政の下における
行政上の取締り法規が多いわけでありますけれ
ども、それらの法律というのは監督官庁が業界を監督するための発想で作られておりますので、所管を
消費者庁に移すというだけでは
縦割りのものが横断的になるという
関係にありませんので、例えば取引
関係の法律においても
表示、広告といったように横断的な法
整備が必要になってくると。今後
整備していく
課題は多いというふうに思っております。
そういうふうな多数の
省庁に
関連する場合に、じゃ、どの
委員会で
審議するのが適当かなどの問題もまたあると思います。しかしながら、
国会で
消費者問題を幅広く
審議する
特別委員会が
発足して
活動しているわけでありますので、
消費者問題に関する
特別委員会で一元的に
審議を進めるのが適切かつ効率的であるというふうに考えております。
最後に、
消費者委員会の方で
意見を出して
提案した法律というのは、
消費者庁の方から
政府提出
法案として出されることが多いとは思いますけれ
ども、議員立法として
審議をしていただいて成立するということも多いと思います。現実問題として、これまで
消費者問題
関連の法律で議員立法で成立しているということは多いわけであります。そういうふうな意味からしましても、
消費者問題
特別委員会は、
消費者庁や
消費者委員会がちゃんと
機能するように監視していただくということだけではなくて、
消費者関係の法
整備のためにも常に動いて
活動を継続している
委員会であってほしいということを強く切望いたしまして、
意見陳述とさせていただきます。
どうもありがとうございました。