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2009-04-09 第171回国会 参議院 財政金融委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年四月九日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月七日     辞任         補欠選任         川崎  稔君     水戸 将史君      水岡 俊一君     池口 修次君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         円 より子君     理 事                 尾立 源幸君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 小泉 昭男君     委 員                 池口 修次君                 川上 義博君                 喜納 昌吉君                 富岡由紀夫君                 藤末 健三君                 牧山ひろえ君                 水戸 将史君                 峰崎 直樹君                 山下八洲夫君                 尾辻 秀久君                 末松 信介君                 鶴保 庸介君                 中山 恭子君                 林  芳正君                 藤井 孝男君                 森 まさこ君                 荒木 清寛君                 白浜 一良君                 大門実紀史君    副大臣        財務大臣    石田 真敏君    事務局側        常任委員会専門        員        大嶋 健一君    政府参考人        金融庁総務企画        局審議官     河野 正道君        金融庁総務企画        局参事官     居戸 利明君        外務大臣官房長  河相 周夫君        外務大臣官房審        議官       中島 明彦君        財務大臣官房参        事官       林  信光君        財務省理財局長  佐々木豊成君        財務省国際局長  玉木林太郎君    参考人        日本銀行総裁   白川 方明君        日本銀行総裁  西村 清彦君        日本銀行理事   水野  創君        日本銀行理事   堀井 昭成君        日本銀行理事   山本 謙三君        日本銀行理事   中曽  宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  )     ─────────────
  2. 円より子

    委員長円より子君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月七日、水岡俊一君及び川崎稔君が委員を辞任され、その補欠として池口修次君及び水戸将史君が選任されました。     ─────────────
  3. 円より子

    委員長円より子君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として金融庁総務企画局審議官河野正道君外六名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 円より子

    委員長円より子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 円より子

    委員長円より子君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁白川方明君、同副総裁西村清彦君、同理事水野創君、同理事堀井昭成君、同理事山本謙三君及び同理事中曽宏君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 円より子

    委員長円より子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 円より子

    委員長円より子君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題といたします。  日本銀行から説明を聴取いたします。白川方明日本銀行総裁
  8. 白川方明

    参考人白川方明君) 今回、日本銀行金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚くお礼申し上げます。  日本銀行は、半期ごとに、通貨及び金融調節に関する報告書を国会に提出しております。本日は、最近の日本経済動向金融政策運営について申し述べさせていただきます。  まず、最近の経済金融情勢について御説明申し上げます。  我が国経済を見ると、海外経済悪化により輸出が大幅に減少していることに加え、企業収益家計雇用所得環境悪化する中で、内需も弱まっています。金融環境を見ますと、CP社債市場発行環境改善していますが、資金繰りや金融機関貸出態度が厳しいとする先が増加しているなど、全体としては厳しい状態が続いています。これらを背景に、我が国景気は大幅に悪化しています。  日本銀行では、年四回、政策委員による経済物価見通しを公表しています。最近では、本年一月に、平成二十一年度の成長率について、委員中央値で見てマイナス二%とする見通しを公表しました。それ以降も、毎月の金融政策決定会合において、情勢の厳しさに関する認識を深めてまいりました。最近発表された三月短観などの経済指標は、こうした認識を裏付けていると見ています。その上で、改めて一月時点見通しと比べますと、我が国経済はやはり下振れて推移してきている可能性が高いと見ています。今後は、内外在庫調整の進捗を背景に、輸出、生産の減少テンポは緩やかになっていくと予想されますが、国内民間需要は更に弱まっていくと見られます。このため、我が国景気は、当面、悪化を続ける可能性が高いと予想されます。  物価面では、国内企業物価は、国際商品市況下落を主因に、下落を続けています。生鮮食品を除くベースで見た消費者物価の前年比は、石油製品価格下落食料品価格の落ち着きを反映して足下低下しており、今後は、需給バランス悪化も加わって、マイナスになっていくと見られます。  次に、経済物価先行きに関するリスク要因について申し述べさせていただきます。  まず、世界的な金融情勢海外経済動向次第では、我が国景気が下振れるリスクがあることに注意する必要があります。また、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクもあります。さらに、金融環境が厳しさを増す場合には、金融面から実体経済への下押し圧力が高まり、金融実体経済の負の相乗作用が強まる可能性もあります。  物価面については、景気の下振れリスクが顕在化した場合や国際商品市況下落した場合には、物価上昇率が一段と低下する可能性もあります。この場合、企業家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクに注意する必要があります。  以上を踏まえて、金融政策運営について御説明申し上げます。  日本銀行は、金融政策面から我が国経済を支えるため、昨年秋以降、政策金利の引下げ、金融市場安定確保企業金融円滑化支援という三つの柱を中心に様々な措置を実施してきました。まず、政策金利については、昨年十月、十二月の二回にわたって引き下げ、現在は無担保コールレート誘導目標を〇・一%前後としています。また、金融市場の安定を確保するため、各国中央銀行と協調して金額制限ドル資金供給を行っているほか、円資金についても、長期国債の買入れ額を年二十一・六兆円まで増額するといった措置を講じながら、潤沢な資金供給を続けています。さらに、企業金融円滑化支援するため、企業金融に係る金融商品担保適格基準を緩和し、企業債務担保に低利、金額制限資金を供給する企業金融支援特別オペを実施しているほか、CP社債の買入れも行っています。  この間、金融システムの安定を図るため、日本銀行は、金融機関保有株式の買入れを再開したほか、金融機関向け劣後特約貸付けの供与に向けて具体的な検討を行っています。  現在は、経済物価先行きについて不確実性が極めて高い状況にあります。日本銀行としては、今後とも、我が国経済物価安定の下での持続的成長経路に復帰していくため、中央銀行として最大限の貢献を行っていく方針です。  ありがとうございました。
  9. 円より子

    委員長円より子君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 大久保勉

    大久保勉君 民主党大久保勉です。  本日、四月九日、白川総裁日銀総裁就任されましてちょうど一年だということです。この間、百年に一回の金融危機というのもありまして、大変な時期に総裁就任されたと思われますが、この間を振り返りまして何か御感想はございますか。
  11. 白川方明

    参考人白川方明君) 一年を振り返って、最初総裁代行、それから総裁、この一年ちょっとを振り返っての感想ということで御質問でございますけれども日本銀行に課せられた物価の安定、それから金融システムの安定という使命達成に向けて、役職員と力を合わせてこの一年間、仕事に努めてきたということでございます。それ以上、振り返ってということではございませんで、それに全力を尽くしてまいりましたということでございます。
  12. 大久保勉

    大久保勉君 実は私ども民主党同意人事で、事実上は野党の方で拒否権がございますが、自信を持って同意に賛成いたしました。そういう意味では、私ども民主党も及び与党の方も白川総裁就任に対しまして責任がありますし、また政治の現場の方も応援していかないといけないと思っております。  そこで、皆さん配付資料を配ります。こちらは日経ヴェリタスの四月五日の記事で、先方から許可をもらいまして配付させてもらいました。  これを見ますと、「日銀白川総裁就任一年 市場評価及第点」ということで、五点満点で三・七点ということで、まずまずということで、非常に評価が高いと思います。だれが評価したかといいましたら、日銀ウオッチャーの有名な六人です。例えばJPモルガン証券チーフエコノミストであったり若しくはBNPパリバ証券チーフエコノミスト、六名ですから、いわゆる専門家が玄人の目で日銀総裁及び日銀の体制を評価していると思います。私ども、こういったものを参考にしまして議論していきたいと思います。  特に六項目中最も評価が高かったのが海外との連携で四・三点、次が金融政策の四点ということです。最低が市場との対話景気判断で、共に三・三点ということです。特に特記すべき点は、JPモルガン証券の方が、海外銀総裁と直接かつ同じ知的レベルで対等に対話ができたと絶賛と。直接というのは英語でもって、かつ同じ知的レベルというのはバーナンキ議長と同じように、いわゆるPhDを持った方と同じように深い見識でもって議論ができたということで、非常にすばらしい評価だと思っています。ただ、これは評価した人の方がちょっとおかしいんじゃないかと思いますが、驚いた、象牙の塔などと冷やかしちゃいかぬな、財務省ある幹部、こういった意見もありまして、だれもが認めているという状況です。  こういった意味で、私ども同意人事に賛成して本当に正しかったと思っております。こういう危機状況ですから、白川総裁是非リーダーシップを持って活躍してもらいたいと思いますが、この記事を見られまして何か御所見はございますか。
  13. 白川方明

    参考人白川方明君) 御指摘記事について、今拝見いたしましたが、詳しくは承知しておりませんけれども、高い評価をいただいたということでありましたら、それは私個人に対してではなくて、日本銀行役職員全体が力を合わせて日本銀行政策業務運営に取り組んできたという結果に対するものだというふうに思います。そうした意味で有り難く受け止めたいというふうに思います。  私としては、先ほども申し上げましたけれども物価の安定と金融システムの安定という日本銀行に課せられた使命を達成するために日々努力を積み重ね、これからもしっかりと職責を果たしていきたいというふうに考えています。
  14. 大久保勉

    大久保勉君 実際に、白川総裁の謙虚な考え方ですが、私もそう思います。白川総裁を支えた人たち評価されるべきだと思います。例えば、海外との連携金融政策評価海外との連携といいますのは、やはり海外のいろんな会議がある場合に根回しをするとか、若しくは適切なところに登場してもらって適切な発言をするという意味では、非常に事務方若しくは理事皆さんの活躍もあると思います。そういう意味で、今日は堀井理事にも来てもらいまして、御苦労さまと言いたいということで来ていただきました。  続きまして、若干改善を要する面としまして、市場対話が総じて低めということなんですが、スポークスマンの役割が総裁、副総裁に偏り過ぎだという指摘がございます。工夫余地があるんじゃないかということで、具体的には、理事政策決定委員発言する機会をもっと増やしたらどうだ、こういったことに対して、白川総裁、いかがお考えですか。
  15. 白川方明

    参考人白川方明君) まず、金融政策説明中央銀行仕事説明というのは非常に大事であるというふうに思っております。日本銀行役職員は、それぞれの立場から適切な情報発信を行うことに努力をしているというつもりでございます。  少し具体的に申し上げますと、副総裁については、日本銀行政策業務全般について講演インタビューなどを行っております。それから、審議委員につきましては、地域経済実情把握を兼ね全国各地に出張して、講演地元産業経済界との意見交換記者会見を行っております。また、理事でございますけれども、それぞれ担当の分野がございますけれども、自分の担当する分野につきまして講演インタビューそれから記者レク等を行っております。  こうした対外的な情報発信意見交換については、もちろん、私どもとしても現状がこれでもう改善余地がないというふうに思っているわけではもちろんございません。日本銀行として努力工夫を重ねていきたいというふうに思っています。  ただ、金融政策決定会合決定内容に係る日本銀行としての正式見解につきましては、金融政策決定会合が終了したその日の原則午後三時半からですけれども政策委員会議長である私が記者会見を行って説明するということが適当であるというふうに思っております。
  16. 大久保勉

    大久保勉君 一つ問題意識がありまして、日銀自身は今や世界日本銀行だと思うんです。日銀政策によって場合によっては海外金融市場にも影響しますから、英語で直接的に発信するようなことも必要だと思うんですね。もちろん白川総裁が行った方がいいんですが、もし時間がないとかということでしたら、英語専門スポークスマンをつくったらどうかなと思います。例えば、堀井理事は非常に英語に堪能と聞いておりますが、堀井理事英語スポークスマンとして外人記者クラブで定期的に発言するとか、若しくは代わりの人を養成するとか、そういったことはいかがでしょう。じゃ、ちなみに堀井理事、いかがですか、そういったこと。
  17. 堀井昭成

    参考人堀井昭成君) 今の御提案でございますが、職掌柄海外出張が非常に私の場合多うございます。急に日程が決まるというケースもございます。実際、一月の最終週からこの間の日曜日まで十週間ございましたけれども、チェックしてみますと、毎週どこかに海外出張する結果になっております。したがって、こうした事情の下ではなかなか定期的に私の方から情報発信するというのは難しいと実務上思っております。  ただ、これまでも海外金融当局はもとより内外市場関係者とできるだけ可能な限り頻繁に積極的に意見交換あるいは情報発信をしてきた、あるいはそれに努めようとしてきたところでございますが、今後とも工夫を重ねながらこの面で総裁をしっかりと補佐していきたいと考えております。
  18. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。特に海外を担当する理事という仕事が非常に大変な仕事であると、ますます重要度を増しておりますから、いわゆるチーム日銀ということで組織的に対応して、そこを強化することを是非考えてもらったらどうかと思います。  この点に関して、白川総裁海外部門を強化する、更には英語でのスポークスマンをつくるとか、そういったことに関して何か御意見はございますか。
  19. 白川方明

    参考人白川方明君) まず最初に、英語での情報発信あるいは海外での情報発信ということについて申し上げたいと思いますけれども、先ほど堀井理事から回答させていただきましたことに加えまして、総括的なことを申し上げたいと思います。  私自身、これだけ経済金融がグローバル化している中で、英語での情報発信それから海外での情報発信、こうしたものが非常に重要であるというふうに強く思っております。前からそういうふうには思っておりましたけれども、実際この仕事に就いてみてその感を一層深めております。  現在、そうした観点から、総裁、副総裁それから審議委員の主な講演は、これは英語に翻訳をしてホームページでも公開しております。それから、私もそうですし堀井理事もそうですけれども、可能な限り海外講演を、インフォーマルな場での講演をするとか、あるいはそもそも英語講演をする等の努力を積み重ねております。これからも更にこの充実を図っていきたいというふうに思っています。  それから、先ほど来委員指摘のとおり、これはチームとして情報発信力を強化する必要があるというふうに思っておりまして、私、折に触れてスタッフに対してもいろんなレベルでの情報発信、これは総裁、副総裁審議委員ですと政策という大きなレベルですけれども、それだけではなくて、もう少しテクニカルなこと、実務的なことも含めて情報発信が必要ということを常々申していまして、そうした地道な努力を積み重ねています。  専門スポークスマン英語によるスポークスマンということでありますけれども、これは日本銀行の行っている政策業務全般をカバーするという意味では何よりも私であり、それから副総裁が、それから審議委員、これがもっともっと努力をしていくというふうに考えております。
  20. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。特にこれからは映像時代ですから、直接英語で語りかける、また、例えばCNNニュースに乗るとかそういったような形で、より見える形で日銀存在感を高めてもらいたいなと思います。  続きまして、ちょっと辛口のポイントとしましては、日銀景気判断がいつも遅れているというような厳しい指摘もございます。明らかに後手に回ったというような指摘もありますし、また政府内には日銀の対応はいつもワンテンポ遅れると、政府内からも批判があります。むしろ政府の方がいつも景気判断に対しては遅れておりますから、そういった政府から言われるというのは非常に問題だと思います。  そこで、情報化社会若しくはグローバル化しまして、スピードが非常に上がってきていると思うんです。これまでの日銀組織の在り方若しくは会議の持ち方をもう一度見直したらいいんじゃないかなと思います。  こういった意味で提案したいんですが、例えば日銀短観、各種統計分析、特に日銀支店長会議、これまでとずっと同じ方式になっていますが、早く機敏に対応するために組織的な改革とかを検討すべきじゃないかと思いますが、この点に関して総裁の御所見を聞きたいと思います。
  21. 白川方明

    参考人白川方明君) 私ども、毎回毎回の決定会合におきまして、金融政策の前提となります景気判断についてもこれはベストを尽くしてきているという自負はございますけれども、その結果としての経済見通しについての評価というのは、その後の経済に対する政策の結果として評価をいただくものというもので、これからも更に努力をしていきたいというふうに思っています。  具体的な経済予測行い方についてですけれども、ちょっと先に現状を申し上げたいと思いますけれども。  毎回の決定会合では、経済情勢点検のために様々な情報を集めて丹念にリスク要因点検をしております。そのときに、これは日本銀行マクロ経済統計を見て経済判断を行っているんではないかという御批判を時々ちょうだいいたしますけれども、もちろんマクロ経済統計は非常に重要な統計でありますけれども、一方ではその限界も我々は常に意識しております。したがいまして、国内支店、事務所を通じて得られる様々なミクロ情報、それから内外金融市場情報など、多岐にわたる情報を集めております。更に加えますと、日本銀行金融機関の考査あるいはオフサイトのモニタリングということを行っていますけれども金融機関を通じての情報も入ってまいります。そうしたものすべてを組織としてできるだけ有機的に活用して景気判断を行うというふうにしております。更に磨く方法があるということは、私もそのように思っております。  この一年といいますか、サブプライムローン問題が起きてからの経験を改めて振り返ってみますと、これは日本銀行に限らず各国中央銀行に共通する課題でございますけれども金融システム実体経済のこの相互作用をいかに的確に把握するか、これが最も大きな課題だというふうに思っております。この面で私は更に改善余地があるというふうに思っておりまして、これから努力を更にしていきたいというふうに思っております。  その成果は、具体的な組織変更ということじゃなくて、具体的な我々の判断を通じてその成果を出していきたいというふうに考えています。
  22. 大久保勉

    大久保勉君 じゃ、具体例でいいますと、ここは質問通告していませんが、例えばリーマンショック後、世界中央銀行同時利下げをしたと、日銀はそういった波に乗っていない面もありましたですよね。その辺りが日銀はワンテンポ遅れると、こういった厳しい批判だと、言われていると思います。  その点に関して、どうしてそういった事象になったんですか。
  23. 白川方明

    参考人白川方明君) 経済金融の厳しい状況については認識をしております。  それで、各国政策金利の水準がそろっているかどうか、あるいはその変更の時期が同じかどうかということで認識的確性判断されるということではないと思います。例えば欧州中央銀行は、現在、欧州の域内の経済金融情勢判断した上で今政策金利をたしか一・二五%にしているわけでありますけれども、しかし、そのことをもって欧州中央銀行が的確に経済情勢判断していないということでは必ずしもないというふうに思います。各国経済の置かれた状況認識した上で、その上でその状況の中で最も適切な政策を追求していくということであるというふうに思います。  あの時点で一番大事なことは何かといいますと、何よりも金融市場の安定をしっかり維持するということだったと思います。リーマンの破綻以降の経験は、金融市場の安定を確保するという中央銀行として最も重要なことが必ずしも適切にできていなかったという地域があったというふうに思いますけれども日本銀行はその面では相対的には安定性を維持したというふうに今でも思っております。
  24. 大久保勉

    大久保勉君 続きまして、一年たった段階で同意人事に関して評価しないといけないと思います。やはり同意人事がうまく機能したかということなんです。  今回、同意人事に関しましては初めて意見陳述機会をいただきまして、その中で決定いたしました。その結果、先ほど申し上げましたが、海外銀総裁と直接かつ同じ知的レベルで対等に対話できる、こういった総裁を私ども日本国民が持つということは非常に光栄なことだと思います。ですから、これからも同意人事というのは極めて重要なプロセスだと思います。  そこで、確認したいのは、総裁に確認したいんですが、意見陳述の際に日銀の運営に関する基本的な方針を言うと、これはこれまでございました。もう一つ、市場政府との約束、私が就任期間中、こういうことをやりたいと。もちろん、これは前提条件があってもよろしいです、異常な経済状況じゃなかったらこういうことをしますと。こういった、より積極的な約束をする、こういうことをしたら、より日銀の運営が透明化する、さらには政治に対して中立性を増すと思いますが、そのことに関して、総裁、さらには副総裁の御所見を聞きたいと思います。
  25. 白川方明

    参考人白川方明君) 同意人事の御審議に関しまして候補者の所信表明の手続をどうするかということ、これ自体は国会がお決めになることなので、私が具体的に所見を申し上げることは差し控えたいというふうに思います。  ただ、私自身はということで申し上げますと、所信表明の機会をいただいた際に、総裁就任した場合に日本銀行政策業務運営をどのような考え方で行っていくかという基本的な方針を述べさせていただきました。また、市場や国民に対して政策運営の考え方を分かりやすく説明していくことを、あるいは政府との間でも連絡を密にし十分な意思疎通を図っていく考えであるということなどをお約束いたしました。こうした基本的な取組姿勢について所信をしっかり述べていくことは重要であるというふうに思っています。
  26. 西村清彦

    参考人西村清彦君) 副総裁の立場としましては、総裁を補佐して、日本銀行業務運営に対して責任を負っていくという形で職掌は決まっております。その下で私のバックグラウンド、学者としてのバックグラウンドを生かして総裁をお助けするということを申し上げたわけです。このことについて考え方の変化はもちろんありませんし、今後の副総裁もそういう形で総裁を助けていくという、それを、自分のバックグラウンドの知見をできるだけ生かして助けていくという形で方針を表明するということが極めて重要だというふうに思っております。
  27. 大久保勉

    大久保勉君 じゃ、この項目の最後の質問なんですが、これまで日銀に対しまして、こういった財政金融委員会に対して様々な指摘をいたしました。それが、この国会で議論されたことがどのように日銀の実際の経営に生かされているか、この観点から質問したいと思います。  今日、水野理事がいらしてもらっていますから、昨年の五月二十七日にこの委員会で、日本銀行の天下り問題、また随意契約と連動している、こういった問題をるる指摘していたんです。その後に、この質問の前に事務方の方と話をしまして、じゃどういうふうな改善をしたんだと、若しくは五月二十七日の議論で、総裁の方が注意してやりますとか前向きに検討しますということに対して、日銀の中でその話を受けて、どういう会合を開いて、どういうことを検討したんです、資料を下さいと言ったんですが、いまだかつて出てきていません。この資料はあるんですか。
  28. 水野創

    参考人水野創君) 今御指摘いただきましたけれども日本銀行では、民間への再就職について、個人の識見や能力を期待して外部から人材を求められた場合に限って、世間からいたずらに批判を招くことがないように留意しつつ慎重に対応するという方針で臨んでおります。  そうした方針の下で、昨年五月に当委員会白川総裁から御説明申し上げましたとおり、大口契約先を含めた調達先への再就職に関しては、再就職先の日本銀行の調達への依存度の大きさでございますとか在職中の職務と再就職先との関係、あるいは再就職先で予定される職務の内容等を総合的に勘案して、日本銀行の職務の公正性確保の観点から問題がないことを慎重に確認した上で対応するということをしております。  また、調達事務の……
  29. 大久保勉

    大久保勉君 簡潔にお願いします。
  30. 水野創

    参考人水野創君) はい。  調達事務の面でも、予定価格の厳正な管理や事業者との接触規制など、職務の公正性を確保するための仕組みを整備して厳正に運用しております。  私どもとしては……
  31. 大久保勉

    大久保勉君 結構です。  私が質問しているのは、こういった議論をして、その後に会議をしたのか、その議事録はあるんですか、このことだけ質問しているんですよ。ですから、あなたの考え方は分かります。でも、あなたが考えて、いつも同じことを言っているだけじゃないですか。つまり、日銀として具体的なことを考えた会議をしているんですか。ですから、メモがあるかないか、そのことを教えてください、イエスかノーで。
  32. 水野創

    参考人水野創君) そのメモがあるかないかという意味では、ございません。
  33. 大久保勉

    大久保勉君 じゃ、どうしてないんですか。つまり、一切、日銀会議というのはメモも取らないんですか、議事録も取らないんですか。でしたら、本当に国会で指摘して改善しているかどうかも全く分からないですよ。どうして取らないんですか。
  34. 水野創

    参考人水野創君) お答え申し上げます。  会議そのものでそういうことをしているということであればメモがあるわけですけれども会議でそういうことをしているということではございませんで、再就職の自主ルールをどうするかということについて、私どもとしても、職務の公正性に対する国民の皆様からの信頼をしっかり確保していくということは極めて重要であるというふうに思っております。  そうしたルールは、他のルールと同様に職務の公正性に対する信頼確保ということのために……
  35. 大久保勉

    大久保勉君 結構です。  真剣に聞いてください。ここで、国会で議論していますよね。それに対して会議もしないということでしたら、じゃ電話で部下と話をしたんですか。つまり、あなたはだれとも話をしていないということですか。
  36. 水野創

    参考人水野創君) お答え申し上げます。  ですから、個別の案件において部下の報告を受け指示をしているということでございまして、それは会議というような意味合いではなくて、業務の遂行の中で実際に一つずつのものについて判断をし指示をしていると、そういうことでございます。
  37. 大久保勉

    大久保勉君 ですから、国会で議論しまして総裁が検討しないといけないとか問題提起をしても、結局は会議もせずに何もしていないんじゃないですか。実際に国会運営としてその場限りの発言をして、いわゆるみんなが忘れてしまって風化してしまえばいいということを考えているんでしたら、これは大間違いですよ。  あなたはガバナンスの責任者でもありますよね。ですから、考え方を変えないとちゃんとした日銀運営ができないんじゃないかと思います。特に、議事録を作る、会議をする、このことを是非実行してもらいたいと思いますが、どうですか。
  38. 水野創

    参考人水野創君) お答え申し上げます。  今御指摘いただいたようなことで、我々の作っているルールについて、その内容を社会経済環境の変化に対応して見直していくということは必要であるというふうに私どもも思っておりますし、そうした観点に立って必要な見直しを行い、そのためにやっているわけで、今後ともそういうようなことをしていきたいというふうに思っておりますし、その間に会議等を行った場合には当然議事録を残していくというふうにしたいと思っております。
  39. 大久保勉

    大久保勉君 あなたが必要であると思っているんだけれども、具体的な組織としての行動をしていないでしょう。そこが問題です。  じゃ、ここは質問通告していませんが、もう一つ。じゃ、一例を挙げましょうか。公用車の問題で議論しましたが、白川総裁自身は今何という車に乗っていらっしゃいますか。これは大門委員もちょっと指摘、おかしいということで言われたと思いますが、レクサスのハイブリッド、一千五百万円以上する特注車に今でもお乗りなんですか。これはお答えすることできますよね。
  40. 水野創

    参考人水野創君) その車を使用しております。
  41. 大久保勉

    大久保勉君 要するに、ここで議論しても実際何も変わっていないということがありましたら、これは今後改善すべきじゃないかと思うんですね。この委員会の持ち方自身が問題ですよね。結局は、個別の問題提起をして、答弁書を作成する、そのことで終わっておりますよね。僕ら自身が期待しておりますのは、問題提起をして、組織としてこれを受け入れるか受け入れないか、それは日銀の問題です。ただし、正当に反対するんだったら議事録を残す、指摘が正しかったら改善する、このことをしないと、財政金融委員会自身日銀報告の意味がないんですよね。  白川総裁に質問しますが、こういった現状に関しては、水野理事のこれまで行われたことに関してはどう思われます。
  42. 白川方明

    参考人白川方明君) まず最初に、財政金融委員会での様々な御意見については、私としても、それから組織としても、これは真摯に受け止めております。その上で、様々な今日御提起のあった、あるいはこれまで御提起のあった論点も含めて、我々として最終的にこのような方針で臨むことが必要であるとか、あるいはそうではないということは、その都度しっかりと説明をしていきたいというふうに思っております。  それから、今の具体的な論点につきましては、これは議事録を残す、日本銀行の中でこれは様々な打合せ、これを会議と呼ぶかどうかは別にしまして様々な打合せ、あるいは個人で、双方間で話し合うということはもちろんございます。そのすべてについてもちろん記録を取っているわけではございませんけれども、しかし、その問題意識はしっかり受け止めて、その上で我々の組織としてしっかり対応していきたいというふうに思っております。
  43. 大久保勉

    大久保勉君 また来年か再来年同じような質問をしますから、そのときにはきっちり議事録を残して、日銀としてこの問題に関してどう考えるか、是非、一年後の質問を楽しみにしたいと思います。  続きまして、国債市場日銀金融政策に関して質問したいと思います。  まずは財務省の方に質問したいんですが、リーマンショックを受けまして海外投資家が一斉に国債、特に変動利付国債とか物価連動国債を売ってきました。いわゆる暴落しまして、理論値だったら例えば九十円なのに実際の売値が八十円という状況になっていまして、こういった変動利付債を持つ地銀若しくは金融機関自身が非常に困ったという状況が発生しました。  一方で、国債の発行体であります国債課の方も、こういった状況というのは自分たちの商品が安く売られ過ぎということで機敏に反応しまして、いわゆる買入れ消却、バイバックをして、その結果投資家の信頼を回復したと、こういった事象がございました。これは非常にマーケットでは高く評価されております。  そこで質問したいんですが、この場合、買入れ消却した金額と、恐らくは買入れ消却した値段というのは非常に理論価格に比べて安いと思います。ですから、理論価格と実際の価格の差、この分利益になると思いますが、この金額は幾らか、このことを質問したいと思います。
  44. 佐々木豊成

    政府参考人佐々木豊成君) お答え申し上げます。  平成二十年度の買入れ消却の金額、まず買入れ消却の金額でございますが、変動利付債が一兆五千億円、それから物価連動債が一兆四千九百億円でございます。  それから、理論価格との関係でございますけれども、理論価格の算出につきましてはいろんな市場参加者の間でも様々な方法でやっておられると思いますけれども、変動利付債につきまして、買入れ消却の実施時点のイールドカーブから導かれる将来の十年固定利付債の予想利回りを基に計算するという方式でやりますと、実際の買入れ価格との差が変動利付債で九百億円になります。物価連動債につきましては、将来の物価の前提を置くというのは大変困難でございますので、理論価格を出すというのは私ども非常に困難だと考えておりまして、はじいておりません。  ちなみに、参考でございますけれども、額面価格と買入れ価格との差がどれだけあったかというのを申し上げますと、変動利付債につきましては約五百億円、物価連動債につきましては約千五百億円でございます。
  45. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。少なくとも変動利付債に関しては九百億円理論値よりも安く買い取ることができたということで、国家財政にも寄与しております。こういった意味で、投資家の方も非常にハッピーであり国家財政にとってもプラス、これはやはり現場の力だと思うんですね。ですから、こういったマーケットを見ながら、また市場の実勢を見ながら機敏に動く体制を是非もっと応援してほしいなと思います。  今日は財務大臣にいらしてもらっていますから、是非、組織のトップとしましてこういったことを行っていることに対しましてどう評価しているか、若しくはそのことに対して今後推奨するか、こういったことを聞きたいと思います。
  46. 石田真敏

    ○副大臣(石田真敏君) 今先生がおっしゃられたとおりでございまして、私どもといたしましても、国債の発行あるいは買入れ消却に当たりましては、国債市場特別参加者会合あるいは国債投資家懇談会、そういうものを行うなどいたしまして市場との対話を重視しているところで、そのことは非常に有意義なことだと思っておりまして、今後も国債市場動向について注意深く見守っていくとともに、機動的かつ弾力的に対応してまいりたいと思っております。
  47. 大久保勉

    大久保勉君 では続きまして、今日の新聞等を見ましたら、補正予算等で十五兆円規模の予算を作るということが書かれていました。ということは、財政面で赤字国債ないしは建設国債の発行があるということじゃないかと思います。また、景気がかなり落ち込んでおりますから、法人税、個人所得税等も減ると思いますから、税収不足。そういったことでどのくらいの国債の増発になるか、これは非常に難しいと思いますが、昨年に比べて最大何兆円の国債の増加になるか、このことを財務大臣に質問したいと思います。
  48. 石田真敏

    ○副大臣(石田真敏君) 今日、報道されておりましたけれども、先日、総理の方から、経済対策につきまして、主要先進国を超える直近の落ち込み幅あるいは国際協調の観点などを踏まえまして、GDPの二%、それを上回る真水規模の対策を検討するようにという御指示があったところでございます。この御指示を踏まえまして、その対策の取りまとめに向けて調整を行っているところでございまして、財源につきましては今後その内容等を踏まえる中で検討させていただきたいと思っておりまして、現時点では国債発行の増加額等についてお答えをすることはちょっと控えさせていただきたいと思います。
  49. 大久保勉

    大久保勉君 そういう答弁を予想はしておりましたが、一応エコノミストたちと話をしたら、恐らくは十兆円程度は補正予算関連で国債の増発があるんじゃないかと、さらには税収の落ち込みで五兆円から十兆円、合計で二十兆円以上の増発が必要じゃないかというような話もあります。  ここは後で日銀に聞きますのでいったんここで終わりまして、日本銀行に質問したいのは、国債の買い切りオペの金額を月一・八兆円に増額しております。月一・八兆円のペースで買っていきましたら、いつかいわゆる日銀券シーリングを超える状況になると思います。じゃ、何年後に日銀シーリングに達するか。これは、日銀シーリングに達しないために買い切りオペの国債のいわゆる期間を短くすることも可能ですが、取りあえず分かりやすいために、もし平均残存五年の国債を買い続けたら何年後に上限に達するか、質問したいと思います。
  50. 中曽宏

    参考人中曽宏君) お答え申し上げます。  現在、日本銀行が保有してございます長期国債の残高は四十三兆円でございます。一方、銀行券の発行残高は七十七兆円でございます。したがいまして、両者の乖離は三十四兆円となってございます。  これに対しまして、現在、国債買入れのペースでございますが、年二十一・六兆円、これは増額後の金額でございますが、二十一・六兆円に上ってございます。この規模で長期国債の買入れを毎年行っていけば、長期国債の保有残高は数年間のうちに銀行券残高に近接していく可能性が高いと見ております。  この数年間というのが具体的に何年かという点、この点につきまして、平均残存期間、先生おっしゃった五年というふうに置いてみますとどうなるかという御質問だと思いますけれども、この点は、まず申し上げなくてはならないのは、いろんな仮定を置かなくてはならない。例えば、今後の銀行券残高の推移次第で変わってきますし、買入れ国債の平均残存期間が仮に一定でございましても、その内訳がばらつきがございますと大きく前後することになります。つまり、その期間が遅くなったり早くなったりするわけでございます。  そこで、あえて一つの仮定計算といたしまして、銀行券残高を足下の水準で横ばいとします。かつ、買入れ国債の残存期間のばらつきがおおむね均等であるというような仮定を置いて試算をしてみますと、御質問の時期は今から四、五年を経過したころになるものというふうに見てございます。
  51. 大久保勉

    大久保勉君 ということは、四、五年後には日銀シーリングを超える可能性もあると。さらには、買い切りオペの金額を一・八兆円から場合によっては増額して月々二・五兆円とか増えてきましたら、その期間が短くなる可能性があります。  そこで、何とか日銀シーリングを守りたいと、絶対に日銀シーリングを守るんだということでしたら、買い切りオペの期間を短く短くしてしまえます。そのことが日銀のオペレーションに影響しないのか、若しくは市場に混乱をさせないか、そういった危惧があります。  この点に関してどう思われるか、質問したいと思います。総裁、お願いします。
  52. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  銀行券とそれから長期国債の関係についての御質問でございますけれども日本銀行を含め中央銀行の負債のこれは大宗は銀行券でございます。経済は成長をし、その結果、銀行券が増えていく。それに見合って資産を買っていく必要があるわけでございますけれども、銀行券が長期的な言わば負債であるのに対応して、長期的な国債をそれに対応を付けるというのが基本的な考えでございます。  もしこれがすべて長期の国債で仮にオペをやるというふうになりますと、これは短期の変動に対して、短期的にマーケットは変動しますので、そういう状況に対しても長期国債を売ったり買ったりしないといけないということで、かえって長期国債市場に対しても悪影響が出てまいります。そういう意味で、長期債に加えて短期のオペも必要であると。ただ一方で、短期のオペが余り増えますと、今議員がおっしゃるように、かえってこの短期オペが毎日大変な金額で、頻度で繰り返されると、これはこれでまた市場に対して攪乱的な影響があります。両者のバランスを取って、いわゆる銀行券ルールという形で運用をしているわけでございます。  そういう意味で、私どもとしては、そのバランスを適切に図っていくことが大事だというふうに考えています。
  53. 大久保勉

    大久保勉君 より具体的な質問をしたいと思いますが、先ほどの補正予算絡み、さらには税収の減ということに関しまして、恐らくは追加国債発行が補正予算絡みで十兆円、さらには税収減で五兆から十兆円と計算しますと、十五兆円から二十兆円の国債の発行が予想されます。市場では、なかなか消化できなかった場合は金利が上がります。長期金利上昇要因になりますが、その結果、景気を更に悪化させる、冷え込ませるということになることが考えられます。  この点に関して、景気を更に悪化させないためにも、長期国債を購入して長期金利を下げる、こういった政策が必要じゃないかと思いますが、総裁の御所見を聞きたいと思います。
  54. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えします。  まず最初に、政府・与党において現在検討しています包括的な経済危機対策につきましては、私から具体的にコメントすることは差し控えたいというふうに思います。その上で、一般論としてお答え申し上げたいと思いますけれども、長期金利がどうやって決まるのかということについて、もうこれ釈迦に説法ではございますけれども、これは基本的には先行き経済物価に関する市場の見方を反映して決まりまして、それに債券を保有することに伴う様々なリスク、それが上乗せされてくるということでございます。  したがって、財政規律の面で将来この財政規律が失われるのではないかとか、あるいは金融政策の運営が物価の安定を通じて経済の持続的な成長を図るという目的から離れて金融政策が運営されるのではないかといったふうな不確実性、懸念が生まれない限り、基本的には長期金利は市場参加者の経済物価見通しから大きく離れた形で形成されることはないというふうに考えています。  多少具体例で申し上げますと、一九九〇年代以降、御承知のとおり我が国の国債残高が急増したわけでございますけれども、そうした中にあっても、景気の低迷が長引いたことを反映して日本の長期金利はこの間低下傾向をたどってまいりました。その後、例えば二〇〇三年以降を見てみますと、国債の増発額が抑制される中で日本の景気が回復に向かう、それを反映して長期金利は上昇を行いました。  こうした経験から見ましても、経済対策の効果に対する市場の期待と整合的な金利形成であれば、これが景気を冷え込ませるということにはならないというふうに考えています。  ただ、繰り返しになりますけれども、長期金利が経済物価情勢と整合的な形で安定的に推移するために最も大事なことは、これは、政府においては財政規律をしっかり守るということでありますし、中央銀行においては物価の安定を通じて経済の健全な発展を図るという金融政策を適切に運営することであるというふうに思っております。
  55. 大久保勉

    大久保勉君 私は、こういった非常時にはもっと踏み込むべきじゃないかと思います。  じゃ、質問しますが、米国のFRB、三十兆円相当の米国国債を買うと、金利を下げるためにも買うということを言っていますよね。ということは、白川総裁の理論から考えたら無駄なことをやっているんですか、FRBは。
  56. 白川方明

    参考人白川方明君) 他国の中央銀行金融政策について、私の立場で具体的にコメントをするということは差し控えたいというふうに思います。  ただ、言えますことは、どの中央銀行も今非常に経済金融厳しい中で、自国の金融市場、自国の金融制度、さらにはそれぞれの国の中央銀行法の枠組みの中で最適な方法を模索しているということであります。例えば、海外中央銀行はやっていないけれども日本銀行だけがやっているという政策もございますけれども、これは別に、日本銀行だけしかやってないということでこれはおかしな政策ということではなくて、日本のこの状況の中でふさわしい政策を追求しているということでございます。そういう意味で、FRBの政策について直接コメントすることは差し控えたいというふうに思います。
  57. 大久保勉

    大久保勉君 いや、都合が悪いからコメントしないように私には聞こえます。  むしろ、こういった状況でしたら、銀行券シーリングを撤廃するということを表明しまして、さらには長期金利も下げるために買い切りオペの金額を増やす、この結果、景気をてこ入れする、そういった大きな判断が必要なときじゃないんでしょうか。そういった思いで質問したんです。もう一度質問したいと思います。
  58. 白川方明

    参考人白川方明君) 我々が長期国債オペを、これ従来から行っておりますけれども、先般国債のオペの金額を増額したのも、これは金融市場の安定を確保するために円滑な金融調節を実現していく必要がある、そのためには長期国債オペも増やした方が適切であるというふうに判断したわけでございます。  つまり、目的は流動性を潤沢に供給する、その手段として国債オペを使っているわけでございます。現状、流動性を適切に供給するために国債オペをやらないと流動性が供給できないという状況ではございません。国債オペももちろん増やしておりますけれども、これを増やさないともう流動性供給はこれ以上できないということではもちろんございません。  それから、あと国債買入れの目的が、そうした金融政策の目的から離れて長期金利を引き下げる、財政負担を軽減する、財政ファイナンスを容易にするということに焦点を当てて運営されますと、あるいはそういうふうに運営しているというふうに内外市場関係者から見られますと、これはかえって今議員が御懸念になっている国債のマーケットに対しても悪影響が出てくるというふうに思います。この点は、日本の残念ながら財政バランスが非常に悪いという状況の中では、その点についてのやっぱり細心の注意もこれは必要であるというふうに思っております。
  59. 大久保勉

    大久保勉君 続きまして、日本銀行は劣後ローンを約一兆円引き受けると発表されています。この条件をお尋ねしたいと思います。  これは関連しまして、金融機能強化法で金融庁は、優先出資証券の引受条件は平時の状況の金利だと、さらにはその出資を受け入れた後の金利ということで、例えばメガバンクの優先出資証券の金利が一〇%以上であっても実際一%から二%という超低利で引き受けるということを表明しております。  日銀の場合は、劣後ローンの若しくは劣後債の条件はどう考えていらっしゃいますでしょうか。
  60. 白川方明

    参考人白川方明君) 現在、劣後ローン供与の具体的な条件につきまして鋭意検討を行っておりますけれども、今日の時点では先般発表いたしました基本的な考え方を申し述べさせていただきます。  劣後ローン供与は、これは金融機関自身による市場調達を基本としつつ、ストレス下でも金融仲介機能が適切に働くための安全弁として、この安全弁ということを強調したいんですけれども、安全弁として機能することを想定しておりまして、金融機関自身による市場調達、それから金融機能強化法に基づく調達と相まって、金融機関の自己資本基盤の強化に資するように制度設計をしたいというふうに考えております。  そうした趣旨を踏まえまして、貸付利率についての基本的な考え方を申し述べますと、まず利率は市場実勢を勘案し日本銀行が定めるということでございます。その際、金融機関市場において円滑に資本を調達できる環境下においては金融機関自身による市場調達努力を阻害することのないように、また将来の返済インセンティブを高めるような工夫、つまりいつまでも日本銀行からの劣後ローンの供与に頼るということのないような、そういうふうな制度設計にしたいと思います。  現在、鋭意検討を行っております。できるだけ早く政策委員会で結論を得まして、実施要領を決定し公表したいというふうに考えています。
  61. 大久保勉

    大久保勉君 時間が参りましたので、最後の質問ですが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命も劣後債並びに優先出資証券を積極的に購入することは、金融システムを盤石にするためには必要だと思います。この点に関して金融庁の御所見を聞きたいと思います。
  62. 居戸利明

    政府参考人居戸利明君) お答え申し上げます。  先生御指摘の点は、ゆうちょ銀行あるいはかんぽ生命から見ますと資金の運用のやり方の一つになると思います。両社の資金の運用は、他の民間金融機関と同様、基本的にはそれぞれの経営判断の下で行われるものでございます。  両社におかれましては、銀行法あるいは保険業法あるいは郵政民営化法で与えられた権能を御活用いただきまして、かつ適切なリスク管理の下で的確な資金運用に努めていただきたいというふうに考えております。
  63. 大久保勉

    大久保勉君 終わります。
  64. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 民主党の大塚耕平でございます。  先ほど大久保委員が言っておられましたけれども、今日、まさしく一年前の今日、四月九日が総裁就任された日でございますので、一年まずはお疲れさまでしたということを申し上げたいと思いますが。  今、大久保さんの最後の方のやり取りを聞いておりまして、ちょっと通告している問題のこれは二番から入らせていただかないといけないなというふうに思いまして順番を変えさせていただきますが、今委員の先生方にもまたちょっと配付資料を配らせていただいておりますが、グラフと、もう片面が私の作ったポンチ絵になっておりますけれども。  大久保委員が先ほど、この局面、もっと日銀は言わば金融緩和的あるいは平時ではない対応に踏み込むべきではないかという御意見があったわけであります。これはなかなか、多分与党の中でも我々民主党の中でも、さあ、この局面、金融、これからさらにどうするべきなのか、あるいは財政との関係どうするべきなのかというのはいろいろ意見があります。私自身は、大久保さんとはもう日ごろから本当にいろんな意見交換をさせていただきながらいろんなサジェスチョンをいただいておるんですけれども、そろそろ金融政策の方も限界を意識しながらやっていただかないといけない局面なのではないかなと個人的には思っております。  委員の皆様方、もしよろしければお手元の資料を御覧いただきたいんですが、これは以前にもこの委員会で一度配らせていただいたんですが。  伝統的金融政策とか非伝統的金融政策とか、関係者の間ではそういう言葉をよく使うんですが、つまり今の大久保委員の御意見は、左側の伝統的な、つまり平時の政策からどんどんどんどん今右の方に行っている中で更にもう一歩踏み込むべきではないかという御意見で、それは一つ御意見として理解できる部分もありますし、それが可能ならやったらどうかなと思う面もあります。さりながら、日本には大変な財政的な制約があって、これは世界の中でもう最悪の財政状況だということを考えると、果たしてこれどこまで右の方に行っていいものなのかな、あるいは逆に最悪だからこそ右の方にどんどん行かなくてはいけないのかなというのが、これは日銀だけに任せられるあるいは責任を押し付ける問題ではなくて、財政を預かる国会として真剣に考えていかなくてはいけない問題だと思っております。  それで、我が党の基本的な立ち位置、この半年間の立ち位置についてちょっと先に日銀の皆様方に御説明を申し上げておきますと、私も八年間ここで仕事させていただいておりますが、与党の皆さん民主党、基本的に、長い間、どちらかというと民主党の方が、できるだけ財政規律を維持して、そして金融政策は、言わば非伝統的なこと、アブノーマルなことはやらない方が望ましいという意見の方が野党の方が強かったです。先ほども申し上げましたように、与野党それぞれに両方の意見がありますから、完全に一色にはならないんですけれども。さりながら、去年のリーマンショック以降、とてもそういう原理原則を言っていられる場面ではないだろうなということで、民主党が言わばこの図でいうと大分右の方に立ち位置を変えたという中で、この半年間、もちろん与党の御意見、そして白川総裁は総理といつも会っておられますので官邸の意見ども、そして野党の意見もしんしゃくしていただきながら日銀自身が自主的に金融政策判断してこられたと、こういうことだと思っております。  しかし、そろそろまた少しターニングポイントが近づきつつあるなという感想を抱いているということをまず最初に申し上げたいと思います。その上で、二問目から入らせていただきたいんですが、是非、必ずしも金融が御専門でない委員の皆様方もいらっしゃいますので、一体、伝統的金融政策、非伝統的金融政策とは何なのかということをきっちり定義をしていただいて、あるいは説明をしていただいて、その上で今の金融政策がどういう状況なのかということを説明をしていただきたいというふうに思います。
  65. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  今の大塚議員の質問にきっちり答えようとしますと、どうしても大学の講義風になってしまいますので、できるだけそうならないようにしたいと思います。  伝統的政策と非伝統的政策という言葉については、実はこれ、その言葉自体は今使われておりますけれども、論ずる人によって実は定義がかなり異なっているというのが実態でございます。ただ、政策金利の引上げとか引下げ、これが伝統的な金融政策だということについては意見の一致はほぼあるというふうに思いますけれども、例えば社債CPの買入れ、これは明らかに個別の信用リスク中央銀行が負担する行為ですから、これは非伝統的政策というふうにみんな見ているというふうに思います。  ところが、例えば国債の買入れでございますけれども、今お配りになりましたこの表では、これは国債買入れというのは伝統的政策の一番左にあるわけでございます。これ、まさに日本では、ずっと国債を中心的な手段として使ってきましたから、まさに日本では伝統的政策ですけれども、しかし多くの国では実は国債買入れは行っておりません。したがって、海外ではむしろこの国債買入れを非伝統的政策として区分していて、そういう政策をやっていいのかという議論を今海外で、一方でまたやっている。そういう意味で、その伝統、非伝統ということも、実はかなり人によって、それから置かれた中央銀行状況によってまた異なっているということでございます。  私自身は、そういう意味で、一つ一つの政策を伝統か非伝統かということで区分することもそれはある程度は大事だと思いますけれども、大事なことは、どういう政策を取るにしても、それぞれの国の金融市場の構造、それから中央銀行の制度を照らして、その上でその時々の経済金融状況に照らして最適の政策を追求するという姿勢にあると思います。その中央銀行としての最適な政策というのは、これは物価の安定を通じて経済の健全な発展に貢献する、それから金融システムの安定に貢献するということであります。  それがまず、議員の質問の最初の部分に対する教科書的なお答えでございます。その上で、日本の状況ですけれども、現在直面している状況は、これは極めて異例の状況でございます。十年ぐらい前も日本は大変厳しい状況に直面しましたけれども、またそのときとは違う厳しい状況に直面しております。この現在の厳しい状況に即して、どういう政策の枠組みが最適かということをずっと考え、実行してまいりました。  現状、これは三つの柱で私どもは整理をしております。  一つは、政策金利の引下げということで、これはまさに伝統的な金融緩和政策でございます。第二は、金融市場の安定を確保するということであります。金融市場の安定を確保するというふうに言いますと、ごく常識的にそれはそうでしょうという感じになるところはございますけれども、実は現在の状況では私はこれが最も大事だというふうに思っています。去年の秋以降、まさに経済ががけから落ちるように世界的に落ち込んだその最大の理由は、この最も大事な金融市場の安定というところが崩れてしまって、金融機関間の信頼が崩壊したということに最大の原因があります。そうしたことを防ぐためには、これは金融市場の安定を確保することが大事だという思いでございます。そのための手段として、金額制限ドル資金供給オペを行うとか、あるいは国債の買いオペもこれは増額をしているということでございます。第三は、CP社債の買入れが典型でございますけれども企業金融円滑化中央銀行の持てる手段で支援をしていくということでございます。  現在の局面では、特に二番目、三番目の、つまり市場安定と企業金融円滑化ということが特に大事だというふうに思っています。中央銀行としてどこまで踏み込むことが適切なのかという、これは大塚議員御指摘の非常に重たい課題を常に意識しながら、先ほど申し上げた日本銀行使命達成にこれからも努めていきたいというふうに考えています。
  66. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 石田副大臣におかれては、急にそこに同席していただきたいとお願いをしまして恐縮でしたが、今、白川総裁がまさしく、実はこのポンチ絵、これはあくまで私の個人的なイメージ図ですから、この国債購入というのは必ずしも諸外国では伝統的な政策ではないんだというふうにおっしゃったんですが、今日は末松政務官もいらっしゃいますので、多少何か、今日のこれから数十分間の議論で与謝野大臣にお伝えいただいた方がいいなと思うことがあれば是非お持ち帰りいただきたいんですが。  そこで、石田副大臣にお伺いしたいんですが、中央銀行が国債を購入するということは諸外国では必ずしも常識的なことではなかったということは御存じでしたか。
  67. 石田真敏

    ○副大臣(石田真敏君) 誠に不勉強ですけれども、存じ上げておりませんでした。
  68. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いや、御就任されたばかりですし、急なことですので、もちろん結構なんですが。  事ほどさように、実は日本の常識、世界の非常識、あるいは世界の常識、日本の非常識ということは多々あるわけでありまして、日本では財政法で原則としては日銀の国債引受けは禁止されているんですが、いったん発行されたものが市場に流通しているものを買い上げるのは財政法で禁止している引受けではないからといってたんまり買っているわけですね。だから、そのことは白川総裁がおっしゃったように、実は国債購入というのも、もう必ずしも伝統的な政策の枠組みでないことをやっているというふうに言うこともできるという一つのお考えであったわけでありますが。  つまり、後で財政状況の話もさせていただきますが、本当に中央銀行にできることは最大限やっていただいて、経済の底割れ、金融市場の安定を守っていただくという、これはやっていただかなくてはいけないんですが、片方で、じゃ財政は破綻していいのか、あるいは財政が破綻するような方向で中央銀行が加担をしていいのかというと、それはそうではないと。一体日本はどういう状況なんだということを財政当局にはよくよくお考えいただいて中央銀行との連携をしていただかなくてはいけないと、そういう局面なんです。  既に昨日、私ども会議で御出席いただいた財務省や金融庁、日銀の職員の皆さんにはお伝えしましたが、例えば金融サミットで、財政出動しましょうといって日本はアメリカから言われて、基本的には協力する姿勢を示しておられる。それ自身はいいんですけれども、その一方で米国自身は、オバマ大統領の今年の予算教書には、任期中にプライマリーバランスの赤字は半減させるというふうにはっきり言っているんですね。そして、アメリカの財務省は、債務残高の対GDP比、日本でいうと一六〇%とか一七〇%になっているものを、これをEU基準の六〇%を意識しながら運営するという、明言しているんです。だけれども、アメリカよりも実は財政状況が悲惨で世界最悪なのは日本なんですね。ということは、日本はどういう行動を取るべきかということは本当によくよく財政当局にも中央銀行にもお考えいただきたいという、そういう脈絡で、後の方でちょっと日銀法と財政の関係も議論させていただきたいと思います。  そういう認識をお話しさせていただいた上で総裁にお伺いしたいんですが、今三つの当面の目標があるということで、金利の引下げと金融市場の安定と最後に企業金融円滑化ということをおっしゃられたわけでありますが。  皆さんにお配りさせていただいたお手元の資料のグラフの方ですね、これを御覧いただくと、右下は日経新聞のグラフの切り抜きで、上は日銀からお出しをいただいたグラフなんですが、どのぐらい金融緩和をやるとどのぐらいこれが貸出しに反映されているか、つまり信用乗数が高ければ高いほど金融緩和が進んでいるというふうに言っていいかと思うんですけれども。実は、九二年ぐらいから信用乗数はずうっと下がり続けて、そしてちょっと最近、ある局面から、この日経新聞の注書きによると、量的緩和を解除したところから上がって、そして横ばっていたものが、しかし、去年の秋以降、一生懸命企業金融のことも考えて金融緩和や非伝統的政策をやっていただいているんですが、信用乗数がまたここに来て落ち始めているという、こういうグラフなんですけれども。  一体、今やっておられる金融緩和がなかなかこの信用乗数に及ばないのは、そもそもそれは及ばないものなのか、それとも及ばない現象になっていることに何か理由があるのか、そこについてちょっと御説明をお伺いしたいと思います。
  69. 白川方明

    参考人白川方明君) 最初に結論から申し上げますと、いわゆる信用乗数ということは、これ自体が政策の効果を測る上で一つの有用な指標であるということではございません。このグラフに示されたのと全く同じようなことが今アメリカでも起きております。しかし、そのことがアメリカにおいて政策効果が及ばないことの例証であるというふうには議論されていないように感じています。  少し詳しく申し上げます。信用乗数について、ほかの議員の方もいらっしゃるのでちょっと説明させていただきますけれども、これは、マネーストック、以前はこれマネーサプライと呼んでいましたけれども、このマネーストックをマネタリーベース、つまり銀行券と中央銀行当座預金の合計金額でございますけれども、それで割った数字でございます。  この分子のマネーストックの方は、経済物価情勢や金利水準などを踏まえまして、銀行がどの程度貸出しをするか、あるいは企業家計がどれぐらい資金を調達するかということ、両方の相互作用の結果としてこのマネーサプライの水準は決まってまいります。一方、マネタリーベースですけれども、こちらの方は、かつてのような量的緩和時代には中央銀行が意図的に当座預金の増嵩を図るという場合もございますけれども、最近のように様々な市場安定化策の結果として市場動向に応じて変動するケースもございます。  このため、マネーストックとマネーサプライの比率であります信用乗数は、これまでもその時々の金融情勢を反映して大きく変動しております。足下のマネーストックは二%程度の伸びで、これは比較的安定的に推移しております。一方、金融市場安定確保のために日本銀行が積極的な資金供給を行っています関係で、マネタリーベースの方はこれは増えているということでございます。したがって、その分母、分子の関係で先ほど議員の御指摘のあったような数字になっております。  この信用乗数の動きそれ自体のちょっと説明を離れて少し実態的なことを申し上げますと、今経済には中央銀行が潤沢に資金を供給していますから、ここで言うマネタリーベースといいますか流動性、これ自体は総量としてはたくさんあるわけでございます。しかし、それにもかかわらず、金融機関あるいは企業、個人がリスクを取って様々な投資を行っていく、支出を行っていくというふうになっていないのは、これは基本的には、先々の信用のリスクが非常に大きい、あるいはそれとの比較で自分の体力、自己資本が十分ではない、あるいはそういうふうな状況になるんではないかという、そうした懸念があるわけでございます。したがって、これは流動性の問題ではないと。もちろん流動性の問題はこれからも残りますし、個別にはもちろんございますけれどもマクロでは流動性はかなり潤沢に出ているけれども、しかしそれでもそういう信用リスクが怖いということでございます。  したがって、企業金融支援ということもまさにその問題に対して働きかけようという政策でございます。現状、それが十分に効果が発揮されているかというと、残念ながら日本も含めて各国まだそれが十分に行き渡っていないということでございます。
  70. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 ありがとうございます。つまり、この信用乗数は政策経済現象の結果として出てくるものであるという御説明だったと思うんです。それで私も認識は一致しておりますので。  ということであれば、二つちょっとお願いしたいことがございまして、一つは、今総裁自身もおっしゃったように、分子の方が増えるような、つまり信用創造が行われ貸出しが増えるような、企業資金繰りに資するような行動はまた別途やると、マネタリーベース、分母が増える以上に貸出しが増えるようなことは何か別のこととしてやる必要があるということで、そこは御努力いただきたいと思いますし、この点はちょっと後で金融庁にも聞きますので、お願いしますね。  それからもう一点は、ということであれば、日経新聞さんを引用しておいて日経新聞の記事は間違いだと言うのは日経新聞に申し訳ないんですけれども景気は気からでありますので、例えばこの記事は今週の月曜日に出たんですけれども、信用乗数が下がっているので貸出効果が全然増えていないというのは結構大きな記事で書いていまして、多くの人は読むんです、これ。私の経験上、日銀記者クラブにいる記者の皆さん日銀のしかるべき方々がレクをしないとあの記事は書きません。ということは、どなたかがやっぱりそういう方向でお話しになっている可能性があるということですから、そうでなかったとすれば、いや、それは日経さん間違いだよということをきっちり御指導いただいて、誤ったメッセージが世の中に伝わらないようにしていただかないと、日本全国の多くの方々が、今度は日経さんを褒めますけど、日経新聞読んでいるんですよ。褒めておかないと後で怒られますので。読んでいる記事金融緩和の効果は全然及んでいないと出ているわけですね。じゃ、これを書かせた人はだれですかという話です。独自に日経さんが書いたということなら、それはそれでよくこの後議論しておいてほしいんですが。そういう情報のマインドに与える影響も大変大きいものがありますので、是非、先ほどの大久保さんの話じゃないですが、広報あるいは日銀の意思の伝え方ということがございますので、よろしくお願いしたいと思います。  その上で、金融庁にお伺いしますが、結局いろいろやっていただいているのは評価しているんです、私たちも。しかし、本当にそれぞれ選挙区に帰ると、中小企業、零細事業者、もちろん中堅企業も最近苦しいですけれども、私の地元の愛知県なんかは自動車関係の中堅、もう本当に厳しいです。なぜこんなに企業金融が厳しいのかということを理由も含めて、これは総裁ではなくて金融庁の方にお伺いをしますが、一体、大企業、中小企業、零細事業者ごとにどういう状況になっていて、それはなぜそうなっているのかということについて、ちょっと簡単に認識をお伺いしたいと思います。
  71. 河野正道

    政府参考人河野正道君) お答え申し上げます。  まさにこの企業金融状況につきましては、私どもも今非常にあらゆるルートを使いまして情報収集に努めましてそれぞれ対応を進めたいと考えておるところでございますけれども日銀総裁がいらっしゃる前で日銀短観を引用させていただくのは恐縮ではございますが、この短観が四月一日に発表されまして、その中を見ましても、実はもうこれは大企業、中堅企業、中小企業とも前回調査に比べてその資金繰りDIが低くなる、あるいは様々な指標を見ましてもその状況は一段と厳しくなっているということでございますし、私ども、また特にこの中小企業につきましては四半期ごとにヒアリングをさせていただいております。  これは中小企業金融に関するアンケート調査でございますが、これの結果を三月の二十七日にも公表させていただきましたけれども、そういう中でも、これは中小企業ということでございますが、特に販売不振、在庫の長期化等の要因が一番要因として多く挙げられておりますけれども、その資金繰りが一段と厳しいものになっているという結果が出ておりますので、これは大変私どもとしましても厳しく受け止めております。
  72. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 昨日、内藤局長にもお伝えをしておきましたが、議事録に残る形でもう一回お話をさせていただきますけれども、今企業資金繰りが厳しいということで、去年の秋には金融庁には金融検査マニュアルの改定もしていただいて、債権の査定の仕方の緩和もしていただいた、これはこれで良かったと思います。    〔委員長退席、理事大久保勉君着席〕  しかし、大変資金繰りが厳しいので、じゃ新たに借りてくださいと。借りられるのはいいですけれども、新たに借りると、売上げが減っているのに新たに借りて返済元本が増えたら、もう一年か一年半たったらもっと厳しくなっちゃうんですよね。だから、本当は今は売上げが減って財務内容が悪いからといってなかなか貸出しが受けられない、じゃその貸出しを受けられるようにしてあげてそれで助かるかというと、売上げが復元してこないと返済元本だけが増えちゃって、あと半年後か一年後にはもっと厳しいことになるんです。  だから、査定基準を変えていただいたというのはいいんですが、もう一つ、本当なら、平時なら私もこんなことを申し上げませんし多くの議員の皆さんも言わないと思いますが、これやっぱり元本はいずれは返すんだけれども、当面は返済しなくてもいいと、金利だけちゃんと返していれば、あるいは金利ですら一時的に猶予するという何らかの政策判断をしないと、企業資金繰りは本当にこれどうにもならない状況になりつつあります。  日銀総裁はちょっと一段落してきたというような御発言記者会見等であったのは新聞で拝見しておるんですが、必ずしもそうでもないなというのが多分選挙区に帰っている多くの議員の実感であります。是非、ここは何ができるかというのは何とも想像が付きませんが、昨日私たちもまた金融対策の第四弾というのをお示ししておりますので、金融庁、日銀、それぞれ対応可能なことは是非やっていただきたいなということを申し伝えておきたいと思います。  その上で、今度は少し、日銀がじゃ何のために金融政策をやっているのか。今、金融緩和をやって、先ほど、今三つの目的があるということで、金利の引下げ、金融市場の安定、企業資金繰りということだったんですが、もう一つ、雇用ということについてお伺いをしたいと思います。  先般、総理も御出席財政金融委員会でもお伺いしましたが、改めてちょっともう一度説明をしていただきたいんですが、私の知り得る限りでは、FRBには雇用の安定というのも中央銀行政策目的に入っていまして、諸外国がどうなっているのかということと、一体、雇用の安定というのは日銀法の日銀政策目的の一部と考えていいのか、あるいは対象外なのか、ここについて総裁から御説明を受けたいと思います。
  73. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行金融政策の目的は、日本銀行法の第二条に規定されておりますように、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。したがって、雇用の安定自体は金融政策の目的として日本銀行法に文言上は規定されているわけではございませんけれども物価の安定を通じて我が国経済が持続的に発展することによって雇用の安定も図られるというものだというふうに考えております。    〔理事大久保勉君退席、委員長着席〕  一方、諸外国の中央銀行法の規定でございます。その中で雇用の位置付けでございますけれども、まず米国では、今議員御指摘のとおり、雇用の安定が物価の安定や長期金利の安定と並んで金融政策の目的として中央銀行法に規定されております。もっとも、この法律ができた後、長い時間がたつ中で、米国の中央銀行であるFRBでは、この金融政策の目的について一般に説明するときには、これは物価の安定を通じた持続的な経済成長であるというふうに説明をすることが多いように感じております。一方、欧州中央銀行やイングランド銀行は、金融政策の目的について、これは物価の安定維持というふうにシンプルに規定しております。  ただ、各国、その規定の仕方はもちろん歴史を反映して違いがございますけれども、そうした法律の規定の多少の違いはありますけれども、第一義的には物価の安定というふうに目的が規定されておりまして、これを通じて経済の持続的な発展に資するという考え方がこれは共有されているというふうに理解しています。その意味で、雇用の安定についてもそうした下で達成されていくというふうに考えているというふうに整理をしております。
  74. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 確認ですが、そうすると、明文上は書いてないんですが、間接的には雇用の安定も日銀は十分に配慮すべき政策目的だということでよろしいですか。
  75. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央銀行法、日本銀行法規定は、これは国会がお決めになった規定でございますけれども物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございます。そういう意味で、主たる目的を物価の安定、つまり、中央銀行物価の安定ということにこれは貢献できるんだと、そのことが国民経済の健全な発展につながっていくんだという思想でございます。  この意味としていろんなことがこの場でも議論されてまいりました。例えば資産バブルというものが起きてきたときに、それはじゃどこに入るのか入らないのかという議論がございました。いろんな、国民経済の健全な発展ということをどういうふうに解釈するかというふうな議論がございますけれども、繰り返しになりますけれども雇用の安定自体を目的にして金利政策を運営するという考え方はこれは取っておりません。ただ、物価の安定、国民経済の健全な発展ということを果たしていけば、それは当然雇用に対しても好影響が及んでいくと、そうした状況を実現したいという理解でございます。  お答えに対してストレートにイエス、ノーで答えているわけでないことは十分認識しておりますけれども、そういうふうに考えています。
  76. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いや、これ、なぜこのことをお伺いしているかというと、非伝統的金融政策というのは、総裁もよく記者会見でも言っておられますし御著書の中でも言っておられますが、どんどんどんどん金融政策が事実上の財政政策化していくことだということなんですね。  これから財政出動は、厳しい財政状況の中でも雇用の安定のためには財政出動しなくてはいけないかもしれないと、そのときに、じゃその財政出動を中央銀行としてサポートする余地があるのかどうかと、こういう問題なんですね。企業資金繰りをサポートするためにはマネタリーベースを増やすという緩和をやると、しかし雇用の安定のためにはそれはやるべきなのかやらざるべきなのかと、こういう話なんですが。  この話ばっかりもしていられないので、最後に一つ確認ですが、しかしFRBは書いてあるわけですよね、FRBの言わば根拠法に。そうすると、FRBは雇用の安定を彼らの金融政策の目的としていて、日本銀行の場合はそれは直接的には目的としていないという、そういう整理でよろしいですか。
  77. 白川方明

    参考人白川方明君) ちょっと私、記憶が必ずしも定かではございませんけれども、先ほどFRBの目的は三つあるというふうに申し上げましたけれども雇用の安定という条項が入ったのはたしか一九四六年のことだったというふうに思います。大恐慌の経験を経て、それからケインズ政策というものが入ってきて、そういう当時の時代の雰囲気の中で雇用の安定ということが入ったわけでございます。  その後、一九六〇年代のアメリカの経済を考えますと、議員よく御存じのとおり、アメリカではスタグフレーションという状況が生じて、それは経済の落ち込み、あるいはその中に当然雇用ということも入りますけれども経済の短期的な落ち込みに過度に配慮した政策が積み重ねられていって、その結果として徐々に徐々にスタグフレーション体質になっていったということがございます。  そうした反省もあって、近年、FRBは、法律の書き方はそういうふうになっているんですけれども、通常、FRBのチェアマン、議長等が議会で金融政策の理念を説明するときには、先ほど私が説明しましたように、物価の安定を通じて経済の持続的な発展に貢献することがFRBの役割ですというふうな整理の仕方をしています。つまり、多少、彼の法解釈、それからそれが議会でどういうふうに受け止めていくかということ自体も、実は時代とともに変遷をしているというふうに思います。  ただ、繰り返しになりますけれども、それは雇用が重要じゃないということをFRBが言っているわけではもちろんございません。それから、日本銀行も、もちろんその雇用の安定ということが非常に大事だと、それに貢献する道筋として先ほど申し上げたような論理で考えているということでございます。
  78. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 まあここで結論が出る話ではありませんが、是非私たちもしっかり考えますので、よく政策決定会合の場でも御議論をいただきたいと思います。  その上で、結局、雇用の安定なのか、あるいは需給ギャップを埋めるためなのか。いずれにしても財政出動をしなきゃいけないと。しかし、冒頭申し上げましたように、しなきゃいけないけれども、本当に金融サミットで言われたとおりにほいほいやっていいのかということについては、これまた日本は日本の事情があると。それを財務省におかれては国際会議に出たらしっかりと御主張をしていただきたいというふうに思うんですが。  実は先ほど冒頭お配りしたポンチ絵のこの非伝統的金融政策に行く途中に、最近何度も私が取り上げさせていただいている日銀法三十八条、四十三条というのが書いてあります。今日は三十八条、四十三条の話ではないんですが、三十八条は、政府の要請があれば、いざというときは日銀はまあ何をやってもいいと、誤解を恐れずに言えばそういうことが書いてあって、四十三条は、日銀が新しい業務、つまり日銀法に書いてない新しい業務をやるときには大臣の認可を受けなさいと、こういう話なんです。  そのほかに今日は三十四条についてちょっと確認をしておきたいんですが、先ほど来出ている財政法との関係ですね。三十四条には、ちょっと委員の皆様のお手元にはなくて恐縮ですので読ませていただきますが、日銀法三十四条には、「日本銀行は、我が国中央銀行として、前条第一項に規定する業務のほか、国との間で次に掲げる業務を行うことができる。」と。財政法第五条ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において担保を徴求することなく行う貸付け、そして財政法その他の会計に関する法律の規定により国がすることが認められる一時借入金について担保を徴求することなく行う貸付け、三、財政法第五条ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行う国債の応募又は引受け。あと四、五とあるんですけれども、この三ですよね、そしてあるいは一になるんですが、つまり国債の引受けをするとかしないとか、こういう話なんですが。  これ、副大臣ないしは財務省にお伺いをしたいんですけれども、この条文は、国会の議決を経れば、つまり日銀は国債の新発債の引受けをしてもいいという理解でよろしいですか。
  79. 佐々木豊成

    政府参考人佐々木豊成君) 今御紹介がございましたように、日銀法三十四条では財政法を引用してございまして、財政法五条ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内において行うことができるということでございますが、そのただし書の国会の議決を経た範囲内でというものは、やはり財政法の解釈でどのようなその範囲かということだろうと思います。
  80. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 つまり、国会の議決で、いや、これからだんだん、日銀のできること、日銀独自でできること、例えば四十三条で認可を受けてできることにも限りが出てくるわけですよ。そのときに、国会の議決で新発債引き受けていいよということになったら日銀が引き受けていいということですね。
  81. 佐々木豊成

    政府参考人佐々木豊成君) 財政法上は、ただし書におきまして、「特別の事由がある場合において、」という言葉が入っております。この「特別の事由がある場合において、」ということにつきましては特段のいろんな修飾語が付いていないわけでございますけれども、ただし書である以上は本文との関係において本文の趣旨に対する例外でございますので、その趣旨を踏まえた範囲であろうと考えております。
  82. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 その特別の事由というのは、例えば総裁はこの特別の事由という、財政法に書いてある特別の事由があって国会の議決があれば引き受けなきゃいけないというのが逆に言うとこの三十四条なんですよね。特別の事由というのはどういうことだというふうに、例えば今少し念頭にあることがございましたら聞かせていただきたいんですが。
  83. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  まず、財政法との関係で御説明いたしますけれども日銀法、財政法でございますけれども日銀法第三十四条においては、議員御指摘のとおり、日本銀行財政法第五条ただし書の規定による国会の議決を経た金額の範囲内で国債の引受けができるというふうに規定されております。  しかし、今理財局長からも御答弁ございましたように、財政法第五条の本則においては、公債の発行について、日本銀行にこれを引き受けさせてはならないということが、これが定められております。これは、中央銀行がいったん国債の直接引受けを始めてしまいますと、財政支出の拡大に歯止めが利かなくなりまして、その国の通貨やあるいは経済運営そのものに対する内外からの信認が失われることになりかねないというふうな理解に立ったものだというふうに理解しています。  三十四条の規定に基づく国債の引受けでございますけれども、こうした考えに照らして、問題がない場合に限って、極めて例外的に行われるものだというふうに理解しています。  実際、この規定に基づいてどういう場合にこれが発動されているかというのが議員の御質問でございますけれども、現在、償還期限の到来する国債、つまり、日本銀行は国債買入れを行っていますけれども、期限が到来します。償還期限の到来した日本銀行保有国債の借換えのための引受けにこれは限られておりまして、かつ、これについても、政策委員会において金融政策遂行上必要な資産の流動性を確保する観点から問題がないことを確認した上で決定する扱いと今しております。
  84. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 どうして今日この質問をさせていただいているかというと、冒頭申し上げましたように、ちょっとまたいろんな節目が近づいているなという個人的な感触があるものですから、やがてこの条文やら日銀法の、今から申し上げますが、三十三条やあるいは目的規定の解釈というところを関係者で議論しなくてはいけない場面が来るんじゃないかという気がしているんです。  実は、三十四条、その前の三十三条、三十三条から日銀ができる業務が書いてあるんです。三十三条には、「日本銀行は、第一条の目的を達成するため、」と書いてあるんですね。ところが、三十四条は、「日本銀行は、我が国中央銀行として、」と書いてあるんです。目的が一個だけなら、第一条の目的を達成するためというふうに、つまり国債の日銀引受けの条文の頭に付いていればいいはずなのに、第三十四条は我が国中央銀行としてしかるべきときにはやれと書いてある、通常日銀がやっていい業務は三十三条に第一条の目的を達成するためと。まくら言葉が違うんですよ、実は。そこで、第一条の目的を見てみると、これは申し上げるまでもなく、いろいろ書いてありますが、「信用秩序の維持に資することを目的とする。」というのが一番最後の部分に書いてあるんですね。  一体、この三十三条でまくら言葉に第一条の目的を達成するためにこういうことを行っていいと書いたものと、三十四条でいざというときに日銀は国債を引き受けなければならないということを書いているところに我が国中央銀行としてという、こうまくら言葉が変えてある、この変えたことには何か理由があるんでしょうか。これは財務省にちょっとお伺いをしたいと思います。もし現時点日銀法の解釈について、そこのまくら言葉が違うことに意味があるというふうに認識しているのかしていないのか。
  85. 佐々木豊成

    政府参考人佐々木豊成君) 三十四条に第一条の目的を達成するためという文言がないということにつきましては、解釈に違いが出てくるかどうかという点について、明確にちょっと今この場でお答えするのは難しいんですけれども、目的規定日本銀行法全体に掛かっているわけでございますので、その趣旨は全体としてこの三十四条にも掛かっているとは思いますが、あえて改めて付いていないということについての重みといいますか制約の強さというのは、あるいは違いがあるのかもしれません、ちょっと私は明確にお答えできません。
  86. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 いいんです、今日はそんなにしっかりここをやるよという通告をしていないので、これから一緒にお考えいただきたいんですけれども、これは平時であればこんなことを全然議論する必要もなかったんですけれども、ひょっとしたら今年度中にこういう議論をしなければならない局面が来るかもしれないなという気がしているんです。  といいますのは、もう時間も限られてきていますので問題意識だけ申し上げますけれども日銀法の第一条には、日本銀行は、我が国中央銀行としてかくかくしかじかを行い、もって信用秩序の維持に資することを目的とすると書いてあるんです。ところが、よく考えてみたら、中央銀行とは何かという定義はどこにもないんですよ。憲法にも出てきていない。憲法を改めて読んでみると、憲法八十三条には、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と、こう書いてあるんです。中央銀行という機関は憲法上は出てきていない。そして、日銀法にいきなり第一条に「日本銀行は、我が国中央銀行として、」と書いてあるんだけれども中央銀行とは何かということは定義されていないんですよ。  そうなると、今日お配りした、また先ほど見ていただいた伝統的、非伝統的の上の絵ですけれども、ここはまさしく白川総裁、一番御専門のところなんですけれども中央銀行というのは一体何なんだということを議論しておかないと、これから今までやったことのない政策をやる、あるいは財政法上の特別の事由があるから国債を引き受けろという判断をどこかでしなければならない局面が来たときに、一体中央銀行とは何なのかという定義がないと、きっちりした判断ができないんじゃないか。そこで、先ほどFRBのことも聞いたんですが、FRBは雇用の安定ということが目的に入っているわけですよ。  だから、実はこれは平時であればこんなことも考えなくてよかったと思うんですが、日本銀行法の上に中央銀行法というものも考える余地というのがひょっとしたらあるんじゃないかと、あるいは中央銀行の定義とは何かということをどこかでしっかりさせておく必要があるんじゃないかと。だから、中央銀行は一体政府の一部なのか、それとも政府の一部じゃないということを前提に今後も運営していっていいのかということについて、こういう経済状況になり、そしてこれから数年内の間に日本の財政は大変な状況になる確率が高くなっていますので、そのときにどういう役割を中央銀行が果たすべきなのかということをしっかり整理しなくちゃいけないなという思いを最近強めております。  というのは、恐らく、これは副大臣、政務官、お持ち帰りいただきたいんですが、どうも日本はこれ、今のこの金融危機を乗り切って、その暁に財政再建するときには、通常の方法ではなくて、財政再建にかかわる何か法律みたいなものをきっちり作らないとできないだろうと。しかし、そのときに中央銀行は無関係ではいられないだろうと。しかし、じゃ一体中央銀行とは何なんだというのは憲法にも出てこない。日銀法にも中央銀行というのは何かを定義されていない。しかし、日銀のやっていい業務について、通常の業務については三十三条で第一条の目的を果たすためと書いてある、しかし通常じゃない業務をやるとき等を含める三十四条以降には中央銀行として何かやれと書いてある。じゃ、一体その中央銀行とは何なのかというのをちょっと一回よく考えてみないといけないなという気がいたしております。  今日は問題意識だけ申し上げまして、最後に総裁に何か感想でもあれば感想をお伺いして、終わりにさせていただきたいと思います。
  87. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央銀行について憲法上規定がないという御指摘ございましたけれども世界中央銀行制度をもちろん全部知っているわけではございませんけれども、憲法に明示的に中央銀行ということをうたっているのは多分スイスで、多分スイスが極めて珍しい、例外だと思います。  近年、中央銀行というのは歴史的な経緯の中で生まれたということもありますので、必ずしも各国中央銀行法がきっちりと体系立てて整備されていなかった面もあるんですけれども、過去十数年間、中央銀行の独立性を強化する中で各国中央銀行法がかなり整備をされてきました。その結果、日本銀行法もそうですけれども、それぞれの中央銀行の目的、それからできること、これははっきり法律に規定されているということでございます。  議員の御指摘は、法律の規定も踏まえた上で、しかし、この難しい経済金融の中で、あるいはグローバル化が更に進展する中で、中央銀行仕事は本当に何なのか、その本質は何なのかということをもっと深く考えてこれからも政策を考えろという、そういう御指摘だと思います。私は、そこについては、常に中央銀行がこの難しい情勢の中でどういう政策をやることが我々に課せられた使命達成にとって最適なのか、これを真摯に考えていきたいというふうに思っています。
  88. 大塚耕平

    ○大塚耕平君 終わります。
  89. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 私は、白川総裁を始め日銀各位にお尋ねいたします。  まず、景気動向でございますけれども、四月一日発表の短観では、企業の景況感を示す業況判断指数は大企業製造業で過去最大のマイナスに落ち込みました。その一方で、大企業製造業の三か月後の景況感の回復も見られるわけでありまして、在庫調整が進展をして先行き改善するのではないかとの見方もあります。  エコノミストの間でも、今後の景気の落ち込みがいつ底入れするかについてはいろんな見解がございますけれども総裁日銀としては景気の今後の動向についてどのように分析をしているのか、特にまた中小企業の現況についての認識についてお伺いをいたします。
  90. 白川方明

    参考人白川方明君) 我が国経済現状を見ますと、内外在庫調整の進捗を背景に、輸出、生産の減少テンポは緩やかになっていくということが予想されますけれども、一方、国内民間需要はこれから更に弱まっていくというふうに見られます。このため、景気全体としては当面悪化を続ける可能性が高いというふうにまず判断しています。  その先の景気動向を見通すに当たって、いろんな要因ございますけれども、私一番感じますことは、これだけ今世界が同時に景気後退になっている、つまり日本の景気を議論するときには日本の景気だけではもう議論できない、世界景気がどうなっていくかということにも相当程度私は依存しているというふうに思います。そう申し上げた上で、今、日本の経済について相対的に蓋然性の高いシナリオとしては、二〇〇九年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれて我が国経済も持ち直していくということを一応これは標準的な姿として想定しております。  ただ、この席でも度々申し上げていますけれども、こうした標準的な見通しについての不確実性は、これは高いというふうに認識しています。そういう意味で、そこについては常に予断を持つことなく点検していきたいというふうに思っています。  それで、中小企業現状でございますけれども、せんだって発表しました短観の結果を見ますと、もう議員よく御存じのことでございますけれども企業の景況感は大企業、中小企業ともこれは大幅に悪化をしています。もっとも、先行きについては若干違いがございまして、大企業については多少の改善を見込んでいる一方で、中小企業の方は更に悪化するという、そういう見通しになっています。  なぜ中小企業はそういうふうな見通しになっているかということでございますけれども、大企業のリストラで、あるいは業績不振の影響が及んでくる可能性や、今後国内民間需要が更に弱まっていくことがより中小企業の方に強く出ているのだというふうに考えられます。  更に具体的に言いますと、中小企業の中でも製造業につきましては、海外経済の落ち込みを背景輸出が大幅に減少しているほか、製造業の大企業からの受注減少ということに直面している企業も多いというふうに思います。それから、非製造業の中小企業ですと、例えば運輸なんかが典型的ですけれども、製造業との関係が非常に強い非製造業でございますから、こうしたところは製造業の落ち込みの影響を強く受けているなというふうに感じております。それから、個人消費これから弱くなっていくということを申し上げましたけれども、個人消費関連の中小企業も、これは総じて業況が悪化しているという印象を持っております。  企業金融については、先ほど別の議員の方の御質問の中でも随分出てまいりましたけれども企業収益悪化背景資金繰りが苦しいというふうに判断している中小企業が大幅に増えているほか、金融機関貸出態度が厳しいとする先も増加しております。  ただ、足下を見てみますと、緊急保証制度の保証承諾額が今急増していますけれども、そうしたことにも代表されますように、中小企業資金繰りに対してこれまでの施策がプラスの影響が及んできているという面もございます。また、日銀の行っています一連の企業金融円滑化支援も、これも企業金融全体の逼迫度の緩和を通じて中小企業の方に好影響が及ぶことを期待しております。
  91. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、当面の金融政策運営についてお尋ねいたします。  四月七日の政策決定会合で、日銀は当面の金融政策運営についての方針を決めました。これについて幾つか伺います。まず、政策金利を〇・一%に据え置いたことについてであります。  これは、平成十年秋の金融不安を受けまして同十一年二月以降ゼロ金利政策が採用されまして、いったん中断されましたけれども再度採用されまして、同十八年七月十四日の解除に至るまでゼロ金利政策が継続をされました。今回は百年に一度の危機、少なくとも戦後最大の経済危機でありますので、もう一度このゼロ金利政策の復活もあり得るのではという見解もあったわけでございますけれども、先般の会合では、これについては否定的な意見の方が多数を占めたということでございます。  そこで、そうした否定論が強かった理由がどのような点にあるのか、また今後の動向によってはゼロ金利の復活というのが選択肢として考え得るのか、この点について御説明願います。
  92. 白川方明

    参考人白川方明君) ゼロ金利政策に関する御質問でございますけれども世界的に厳しい金融経済情勢が続く下で、主要国の中央銀行は短期金利を大幅に下げております。  具体的に申し上げますと、日本銀行のコールレートの誘導目標は、これは〇・一%前後、FRBはゼロから〇・二五%、欧州中央銀行は一・二五%、それからイングランド銀行は〇・五%と、それぞれ極めて低い水準になっております。  今申し上げたのは、これは誘導目標金利でございますけれども、実際にオーバーナイトの金利が幾らかといいますと、日本は大体〇・一%で目標どおり推移しておりますけれども、FRBは、よくゼロ金利というふうに言われますけれども、実はオーバーナイト金利は〇・二%程度で今推移しております。そういう意味で、オーバーナイト金利に関する限りは日本銀行が最もゼロに近いということでございます。ゼロに近いということをどう評価するかは別にしまして、事実としてそういうことでございます。  先ほど各国中央銀行の金利を申し上げましたけれども、実はどの中央銀行も、超低金利あるいはゼロ金利が金融市場あるいは金融機関経営に与える副作用を実は明確に意識しておりまして、金利を更に引き下げることが金融緩和政策の効果発揮という面で見ても実は必ずしも望ましくはないという見解を出しております。これはイングランド銀行あるいはFRBの議事要旨にも出ております。  日本銀行でございますけれども、〇・一という最も今低い水準まで下げておるわけですけれども、これは一方で、経済金融面から強力に支援するということでございます。ただ一方で、金融取引に伴う様々なコストをカバーし、金融活動の基盤やあるいは取引のインセンティブをぎりぎり残すという難しいバランスで、我々はその〇・一というのが現状最適だというふうに考えております。  将来どうかということでありますけれども、私自身は、このゼロ金利政策に限らず、様々な政策について、あらかじめ特定の選択肢を最初から排除するというアプローチは、それは取るべきではないというふうに考えています。そういう意味では、常に虚心に経済点検し、どういう政策を取るべきかということを考えるというのが私の政策に当たっての信条でございます。  ただ、そういうふうに申し上げた上で、先ほど申し上げたようなことを考えますと、現状この〇・一が最適だというふうに考えています。
  93. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、適格担保の範囲を拡大をしたことについてお尋ねいたします。  具体的には、今回の政策決定会合で、この適格担保の範囲を地方自治体などが金融機関向けに相対で発行する縁故債まで広げる、また政府に対する証書貸付債権の範囲も拡大するということを決定をいたしました。特に、この縁故債を購入するということについては、これによって地銀の中小企業向けの融資を拡大をするということにつながるというふうに期待していいのか、見解をお尋ねいたします。
  94. 白川方明

    参考人白川方明君) 今議員御指摘のとおり、日本銀行は先般、公的機関に対する証書貸付債権の適格担保化ということについて決定を行いました。今委員がおっしゃった縁故債と呼ばれるのは、これはやや専門的な話になりますけれども、地方債の中で公募ではない債権、それから証書貸付債権、両方含む概念だというふうに理解いたしましたけれども、今回、証書貸付債権について適格担保化を図りました。  これはどういう趣旨で行ったかということでございますけれども、まず、日本銀行金融市場に対して潤沢に資金を供給していくために、様々な資産を担保にして資金を供給するということをメーンに据えております。その際、地方公共団体の証書貸付債権についても、一定の市場性を備えていれば適格担保にしようということでございます。  このことの効果いかんということでございますけれども、まず、今回のこの措置自体で実は担保が大きく拡大するということでは必ずしもございません。これ、今回同時に取りました政府保証の付いた証書貸付債権も含めて大体四兆円から五兆円ぐらい担保が増えてくる、その中にこの地方の分も入ってくるわけでございますけれども、全体として、今回行いました一連の措置がどういうふうに中小企業の方に影響を及ぼしていくか、あるいは地方銀行の資金供給に影響を及ぼしていくかということでございますけれども、まず第一に、潤沢な資金供給は、金融機関が与信行動、与信活動を行うための資金調達にやっぱり安心感を与えるということになります。そのことは貸出しをしやすくするということになります。  それから第二番目に、これは証貸債権ではございませんけれども金融機関から日本銀行は今CPとか社債とか買っておりますけれども、これは大企業向けではございますけれども、そうしたことが実は中小企業も含めて金融機関の貸出余力を拡大するということになり、結果として中小企業にも及んでくるということになります。それからさらに、こうした措置は大企業資金調達環境を改善して、企業間信用を通じて中小企業にも影響をしていくということになります。  縁故債については、先ほど申し上げたようなことでございますけれども資金供給を円滑に行う手段としてこれは活用をして、今回、適格担保にしたということでございます。  御質問の趣旨が、その担保を超えて買い切りということまで含めた御質問でしょうか。ちょっと私、質問の趣旨を必ずしも正確に理解しなかったもので。担保の件でよろしゅうございましたでしょうか。
  95. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 担保の件で。
  96. 白川方明

    参考人白川方明君) はい、分かりました。
  97. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その担保に取る縁故債ですが、これは都道府県発行のものは当然でしょうけれども、市町村発行のそうした縁故債についても担保に取るということがあり得るのか、またその場合に、市町村もいろんな財政のところがありますので、何らかのそうした危惧というのがないのか、その点についてお願いいたします。
  98. 西村清彦

    参考人西村清彦君) お答え申し上げます。  今回の措置ですが、これは地方公共団体に対する証書貸付債権の適格基準として、第一には貸付条件の決定方法というもの、それから第二点は当該の地方公共団体における公募地方債の発行実績等を勘案して行うという形にしております。こうした基準の詳細そのものは今後具体化させていくという予定ですが、現時点の方向性を申し上げますと、まず、金利競争入札やそれに類する方法で貸付条件が決定されているかというのが重要な点であるのと、もう一点は、債務者が全国的に幅広い投資家に購入を募る公募地方債を発行しているのかどうかと。ちょっと入り組んだ表現になっていますけれども、そういう形で考えていきたいというふうに考えております。  したがいまして、こうした要件を満たし得るものとしては、実は都道府県だけではなくて政令指定都市といった地方公共団体も入ります。その債務も該当していくというふうに考えております。他方、これ以外の市町村については、現時点ではこうした要件を満たしていくのは厳しいのではないかというふうに考えております。
  99. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 最後に、本年三月、日銀金融危機対応として民間銀行の資本を引き受ける、つまり劣後ローンの供与をするという異例の方針を打ち出しました。これは国際的にも余り例がないということで、私は英断であろうかと思います。  ただし、今回の措置は、国際業務を行う大手行が対象でありまして、大部分の地方銀行は含まれていないということでございます。現下、資本増強の必要が高いのはむしろこの中小企業金融との関係でも地方銀行であるというふうに思いますが、こうした国際統一基準行だけではなく、地銀、国内業務を行う銀行もこうした対象に含めるということは考えられないのか、最後にお尋ねいたします。
  100. 山本謙三

    参考人山本謙三君) まず、私どもの考え方を御説明申し上げたいと思います。  今回、劣後ローンの供与につきまして検討を開始しましたのは、株式市場を始めとしまして金融資本市場が依然不安定な状況にある下で、個々の金融機関先行きの株価下落などを懸念しまして自己資本制約を意識するような場合、マクロ的に円滑な金融仲介機能の維持に支障が生じる可能性があるということを踏まえてのものでございます。  したがって、今回の検討では、株価下落の影響が金融機関の経営面に直接的に影響する度合いを勘案しまして国際統一基準行を対象とすることとしたものでございます。これを国内基準行にまで拡大することは考えてございません。是非私どもの考え方を御理解いただきたいと思います。
  101. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 終わります。
  102. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  白川さん、一周年ということで、おめでとうございます。  大久保さんの資料、また今日の毎日新聞の社説もそうですけれども白川総裁評価というのはどんどん上がっているようでございますけれども、世間の評価が上がれば上がるほど私の評価は下がるという関係にございます。  一年前とは大違いだなというふうに思うんですけれども、まあ大変な一年だったというふうには、その点は同情はしているんですけれども、私は日銀に一貫して申し上げてきたのは、こういうときですから何もおやりになるべきではないとは決して申し上げているわけではございませんけれども中央銀行ともあろうものが個別経営、個別企業、個別銀行の中身に入るようなことはおやめになるべきだということを再三申し上げてきたわけでございます。それは、幾ら金融システムの安定とか美辞麗句並べても、結局は市場経済のメカニズムを壊してしまうものになりますよということを申し上げてきたわけでございまして、もう多くを述べる必要はないんですけれども、そういう点でいくと、今回の劣後ローンの問題とかもまたまた踏み出されたなというふうに思っております。  バブルのときはみんなが踊るというのがありますけれども、こういうパニックのときはみんなが右往左往して、打つ手でいえばもう何でもありと、行け行けどんどんと。行け行けどんどんという点ではバブルのときと似ているわけですね。バブルとパニックというのは、どうしてこうやってみんな同じことをやるのかといいますか、人間というのは浅はかだなというふうに思うわけですけれども。しょせん日銀のこの間の対応も、私は思うんですけれども、しょせん人間のやることだなと。まじめな顔をして議論されているかも分かりませんけれども、大した話じゃないんじゃないかなというふうに私は見ているところでございます。  CP社債、国債の買い増し、銀行保有株の買取り、劣後ローンの引受けと、異例の措置だというのは自覚されているようでございますけれども、何といいますか、一回一線を越えてしまったといいますか、人間というのは一度一線を越えるともう行き着くところまで行ってしまいますから、何かもうどんどんどんどん行っちゃっているんではないかという心配を私はしているんですけれども。  例えば、日銀が今までCP社債、国債買い増しいろいろやって、これまた買い増しやられますけれども、それに対して市場といいますかマーケットといいますか、反応が良くないとかそれじゃ足りないとか株も上がらなかったとかいろいろあると、更に何かやらなきゃと、何かやらなきゃいけないというふうな、そういう深みにどんどんはまっていくというふうな状況に少しなっているんじゃないかなと思いますけれども白川総裁、率直な心理状態といいますか、どういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  103. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  まず、一番最初にお話のございました評価ということについて。  これは、私自身に対してもそうですし、それから日本銀行全体に対する評価ももちろんそうでございますけれども中央銀行政策に対する評価、過去の評価をずっと見ていますと、いかに移ろいやすいかというのを常に感じております。これは、バブルのときの日本銀行金融政策あるいはバブルが崩壊した直後の金融政策、それからゼロ金利、量的緩和のときの金融政策もそうですし、それから近年ではグリーンスパンの下での金融政策、いずれもその時点での短期的な評価と五年たち十年たった時点評価は随分変わっているというように思います。  そういう意味で、私自身は、仮に短期的な評価としてポジティブな評価をいただいた場合でも、あるいは否定的な評価をいただいた場合でも、日本銀行に課せられた使命に即して、つまり長い目で見て物価の安定を実現し経済の持続的な発展を図ると、その一点に照らして行動をしていきたいということでございます。それで、その上で、今、大門議員が御指摘になった点については、私自身は常にその問題は考えている、考えていると言うと非常に大変失礼な言い方かもしれません、それは意識している、重く受け止めている問題意識でございます。これは私に限らず、他のボードメンバーもスタッフも同じ思いでございます。  中央銀行組織というのは、先ほど大塚議員の御質問の中にもございましたけれども、これは非常にこの民主主義社会の中にあってユニークな組織だという感じがします。つまり、目的はこれは国会ではっきり規定をして、その上で、その時々、完全に政府と同じように行動しますと、これは結果として通貨への信認が失われるという苦い長い歴史を経て現在のこの仕組みができているわけであります。  そういう意味で、中央銀行は全く独自に行動しているわけではもちろんありません。しかし、一方で、中央銀行に課せられた大きな意味での使命達成ということも日本銀行法の中でしっかり考えないといけないという、その両者のバランスでございます。  現在、異例の政策を取っておりますけれども、確かに人間は、これは金融機関中央銀行もそうですけれども、一回異例の政策をやりますと、だんだんそれが何か当たり前になってくる、そういう心理状態というのは私は非常に怖いものがあるというふうに感じています。  今回、アメリカのバブルがなぜ起きたのかということを考えてみた場合に、これはいろんな理由がございますけれども、一つの理由として、これはアメリカに限らず世界的に低金利が長く続いたということは一つの要因として指摘できるというふうに思います。じゃ、そのときになぜそういうことになったのかといいますと、今思い起こしてみても、皆さん御記憶にあると思いますけれども、例えば二〇〇三年が特にそうでしたけれども世界的にデフレのリスクということが喧伝されたわけであります。そのデフレのリスクを強く意識する余り様々な当時としてやっぱり異例の措置がとられて、米国でもとられたわけでございます。  往々にして、危機の後の様々な問題に対処するためにいろんな政策を取って、それがまた次の危機の温床になるということは、これは長い経済の歴史、金融の歴史を見ますとよく見られる現象であります。一方で、しかし政策当局が手をこまねいたために大きく不況に陥った一九三〇年の経験もございます。  そういう意味で、これは正解があるわけではもちろんございませんけれども、常にバランスを意識しながら中央銀行として使命を達成していきたいというのが、抽象的ですけれども、私の思い、感想でございます。
  104. 大門実紀史

    大門実紀史君 先ほど大塚さんの資料面白いなと思って、伝統的、非伝統的の話ですけれども。本当にどんどんどんどん非伝統的な方向に、これ、ずっと右へ行けば行くほど社会主義に近づいちゃうんですよね。これ、自己矛盾なんですよ、括弧付きですけれどもね。括弧付きですけれども、社会主義的な、こうなるんですよね。だから、どうなっているのかなというふうに思っているところでございます。  要するに、せっかくですから大塚さんのこの表を使わせてもらって言いますと、要するに日本の場合は、この金利政策が手の打ち方がもう余り手数が残っていないと。しかし、何かやらなきゃいけないと。それで、この非伝統的な、やったことないところですね、何かやらなきゃいけないというプレッシャー多分すごいと思うんですよね。そうすると、もう金利政策そのものは日本はアメリカに比べてそんなにばんばんやらなきゃいけないほど、そこまではまだ至っていないんですけれども、とにかくやらなきゃいけないとなると、金利政策でもう打つ手が少ないというか、余りやらない。だから、非伝統的なといいますか、やったことないことをやらなきゃいけないと、何かそんな程度の話じゃないかなというふうに見ていたりするわけですけれども。  今大事なことを言われたので一つだけ。もういろんな議論する気はありません。一つだけ、国債の話だけ申し上げておきますけれども、銀行券ルールの問題ですね。つまり、今、日銀の発行している銀行券の残高七十七兆円だと。日銀が保有する長期国債の残高の上限は七十七兆を超えないようにするという話ですよね。それが一つの歯止めだというお話をされたわけですけれども。私は、これは先ほど言った両方バランス考えながらとおっしゃりながらちょっと危ないなと思っているのは、逆に言うと、七十七兆までオーケーと、七十七兆までは保有しますというメッセージにもなっているということですね。これはやっぱり気を付けてもらわなきゃいけないと思うんです。  つまり、本来保有すべきじゃないという立場でいえば、もちろん今撤廃しろという声が多いので、それで逆に反論といいますか、守りますとおっしゃっているのかも分かりませんけれども、余りこの七十七兆といいますか、日銀券の発行残高が上限だと、そこまではやりますみたいに聞こえる場合もありますので、そこは逆に気を付けていただきたいと思いますし、もう一つ意見だけ申し上げておきますと、劣後ローンですけれども、これも日銀はまず自己資本、自力で各銀行が資本増強すべきだと、それはもうそのとおりですよね。二番目が、金融機能強化法を使ったらどうかと、ティア1の関係ですよね。で、劣後ローンですか、これでティア2やったらどうかと。この三つの方法があると、選択肢があると。  日銀は、その三つ目の劣後ローンでティア2のところを補強する、安全弁として用意したと、こういうふうにおっしゃっておるわけですけれども、これほとんど、金融機能強化法もこの委員会でやったんですけれども、ほとんど使われないんです。使われていないんですよね。北洋銀行だとかありましたけど、あんなのはうさんくさいんですよ。金融庁が頼んだ可能性が高いんですよね。ほとんどニーズがないんですよね。さらに、この日銀の劣後ローンも私ほとんどニーズがないんじゃないかと思っていますけれども、何かやらなきゃ、出しただけみたいなふうに私は非常に感じるんです。  そんなことを繰り返していると逆に中央銀行の信頼性を失いますので、出すなら効果のある、ニーズがあるという点でやるべきだと思いますけれども、じゃ劣後ローン、私はニーズがないと思いますけれども、どうとらえておられるか、それだけ聞いて質問を終わりたいと思います。
  105. 白川方明

    参考人白川方明君) 劣後ローンについては、今、大門議員御指摘のとおり、これはあくまでも安全弁として用意したものでございます。  その安全弁ということの意味を少し申し上げたいんですけれども、現在、日本の金融機関は、マクロとして見た場合に、資本制約があるがために貸出しを大きく絞り込まざるを得ないという状況ではこれはございません。ただ一方で、短観の結果にも出ていますとおり、金融機関貸出態度について厳しいというふうに回答する企業が増えていることもこれは事実でございます。実際の貸出しは今、実は他の国と違って日本は増えているわけなんですけれども、しかしなぜ企業がそういうふうに感じているかということを考えた場合に、金融機関からしますとそれなりの理由はやはりあるんだというふうに思います。  それは、先々、例えば世界金融システムがまた混乱する、その過程で株価が下落するという可能性も排除できないなというふうに市場参加者が思いますと、それは当然株価が下がり、金融機関の自己資本にも影響してきます。そのときに、金融機関はできるだけ自力でやっていく、これはこれでもちろん立派なことなんですけれども、しかし、個々の金融機関が自己資本を、基盤をしっかり守るというために頑張れば頑張るほど、実は全体として信用は収縮し、一種の合成の誤謬が生じてしまうということを我々は強く懸念しています。  そういう意味で、今直ちに使うニーズがなくて、むしろない状態の方が望ましいわけですけれども、しかしそういう安全弁がないと、最後、経済の収縮の危険性はやっぱり排除できないという、そういう意味で、これは非常に苦渋の選択ではございますけれども、今議員が御指摘の点も十分認識した上で決断したものでございます。
  106. 大門実紀史

    大門実紀史君 終わります。
  107. 円より子

    委員長円より子君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十八分散会