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2009-05-11 第171回国会 参議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年五月十一日(月曜日)    午前十一時開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任         加藤 修一君     松 あきら君      山本 香苗君     弘友 和夫君  四月二十八日     辞任         補欠選任         紙  智子君     仁比 聡平君      近藤 正道君     又市 征治君  五月八日     辞任         補欠選任         柳澤 光美君     川上 義博君      衛藤 晟一君     山田 俊男君      丸山 和也君     中山 恭子君      山本 順三君     川口 順子君  五月十一日     辞任         補欠選任         又市 征治君     近藤 正道君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         家西  悟君     理 事                 神本美恵子君                 那谷屋正義君                 松野 信夫君                 岸  宏一君                 西島 英利君                 浜田 昌良君     委 員                 大久保潔重君                 金子 恵美君                 川上 義博君                 行田 邦子君                 外山  斎君                 徳永 久志君                 中谷 智司君                 舟山 康江君                 森田  高君                 吉川 沙織君                 石井みどり君                 荻原 健司君                 川口 順子君                 塚田 一郎君                 中山 恭子君                 牧野たかお君                 松村 龍二君                 松山 政司君                 山田 俊男君                 弘友 和夫君                 松 あきら君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        農林水産大臣   石破  茂君        環境大臣     斉藤 鉄夫君    副大臣        財務副大臣    石田 真敏君        文部科学大臣  松野 博一君        農林水産大臣  近藤 基彦君    事務局側        常任委員会専門        員        桐山 正敏君    政府参考人        総務省自治行政        局長       久元 喜造君        文部科学大臣官        房文教施設企画        部技術参事官   岡  誠一君        農林水産大臣官        房長       佐藤 正典君        農林水産省消費        ・安全局長    竹谷 廣之君        農林水産省生産        局長       本川 一善君        農林水産省農村        振興局長     吉村  馨君        林野庁長官    内藤 邦男君        水産庁長官    山田 修路君        経済産業大臣官        房審議官     西本 淳哉君        経済産業大臣官        房審議官     上田 隆之君        資源エネルギー        庁省エネルギー        ・新エネルギー        部長       羽藤 秀雄君        国土交通省河川        局次長      田中 裕司君        運輸安全委員会        事務局長     柚木 浩一君        環境大臣官房廃        棄物・リサイク        ル対策部長    谷津龍太郎君        環境省総合環境        政策局長     小林  光君        環境省総合環境        政策局環境保健        部長       原  徳壽君        環境省地球環境        局長       寺田 達志君        環境省自然環境        局長       黒田大三郎君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   河戸 光彦君        会計検査院事務        総局第四局長   金刺  保君        会計検査院事務        総局第五局長   真島 審一君    参考人        株式会社日本政        策金融公庫代表        取締役総裁    安居 祥策君        株式会社日本政        策金融公庫代表        取締役農林水産        事業本部長    坂野 雅敏君        日本中央競馬会        理事長      土川 健之君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成十九年度一般会計歳入歳出決算平成十九  年度特別会計歳入歳出決算平成十九年度国税  収納金整理資金受払計算書平成十九年度政府  関係機関決算書(第百七十回国会内閣提出)(  継続案件) ○平成十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百七十回国会内閣提出)(継続案件) ○平成十九年度国有財産無償貸付状況計算書(  第百七十回国会内閣提出)(継続案件)  (農林水産省環境省及び農林漁業金融公庫の  部)     ─────────────
  2. 家西悟

    委員長家西悟君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、加藤修一君、山本香苗君、紙智子君、柳澤光美君、衛藤晟一君、丸山和也君及び山本順三君が委員辞任され、その補欠として松あきら君、弘友和夫君、仁比聡平君、川上義博君、山田俊男君、中山恭子君及び川口順子君が選任されました。     ─────────────
  3. 家西悟

    委員長家西悟君) 平成十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、農林水産省環境省及び農林漁業金融公庫決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 家西悟

    委員長家西悟君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これら決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれも省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 家西悟

    委員長家西悟君) 御異議ないものと認め、さよう取り計らいます。  速記を止めてください。    〔速記中止
  6. 家西悟

    委員長家西悟君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  7. 家西悟

    委員長家西悟君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 金子恵美

    金子恵美君 民主党・新緑風会・国民新日本金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。  私は、農水省の所管の法人につきまして質問させていただきますが、まずは日本中央競馬会JRAの不適切な随契発注について質問させていただきます。  実は、私は、昨年の十八年度決算審査の際にもJRAのこの随契の問題を指摘させていただきました。そして、速やかに競争契約への移行を図るようにお願いをしたところでございますが、今回も、十九年度決算報告によれば、やはり競争契約への移行指摘された今までの業務のうち、まだいまだ移行措置がとられていないというものも明らかになったということ。そしてまた、さらには競馬場場外馬券売場有料駐車場用地の貸付けが不適切な随契発注により行われていたということが分かったわけでございます。  このJRAは、駐車場用地日本中央競馬会弘済会随意契約で貸し付け、十八年度及び十九年度の貸付料計八億九千百二十一万円を徴していたところでございますが、弘済会では、計二十六億六千五百十一万円と貸付料に比べて多額駐車場利用料金を収受して自らの収入にしていたということが分かりました。  本件につきまして、会計検査院は、弘済会が行っている業務内容は特別な専門知識を必要とするものではなく、随契を、随意契約を締結している事態は適切とは認められないというふうに指摘をしているわけでございます。  そこで、まずお伺いさせていただきますが、今回のこのような駐車場用地の貸付けに関する指摘に関しては、実は、昨年の十月に新聞報道もされておりました。弘済会にはJRAのOBが十一名勤務をしているということも報じられておりました。駐車場用地随意契約で貸し付け理由と、そしてまた契約透明性向上に向けた再就職の在り方についてのお考えを、今日は理事長おいででございますので、お伺いさせていただきます。  よろしくお願いいたします。
  9. 土川健之

    参考人土川健之君) 競馬会理事長土川でございます。  ただいまの御質問に対してお答えをさせていただきますが、まず、駐車場用地随契理由はいかんということでございますけれども、少し話は古くなりますが、昭和四十年ごろ非常に競馬ブームになりまして、マイカーなどの車で来場される方が非常に多くなったと。そういうことで、周辺住民方々、あるいは公の公道でお見えになる車がなかなか進まないということで大変苦情がございました。競馬会として非常に苦慮した時期でございました。  その中で、来場抑制策を何にしていくかという一つの一環として有料駐車場という形を取ったわけでございますが、当時では競馬会は無料で駐車しておりましたので、競馬会がもしそのまま直営という形でやりますと、これ以上またもうけるのかというようなファンからの、サービス面では低下しているんじゃないかという懸念もございました。そういうことで、私ども中央競馬の健全な発展に関する協力の事業を持っております日本中央競馬会弘済会に貸し付けたというのが当時の現状でございます。  その後、今おっしゃったように、弘済会のそこに職員競馬会から行っているんじゃないかと、そういう御指摘もございました。そういう意味では、少しはしょりますけれども、現在、この指摘に対しまして競馬会としてはもう既に昨年の七月にこの勧告の前に検討しておりまして、現在すべての有料駐車場については、一般競争入札により民間業者委託をする等により、弘済会への貸付方式から競馬会の直接運営方式移行したということでございます。  子会社等の、どうしてそこに天下りをさすのかというような御質問であろうかと思いますけれども競馬会は、開催していく上で一般企業などでは実施し難い事業がございます。発馬機業務とか発馬機の整備とか、あるいは競馬公正確保上どうしてもかかる競走馬ドーピングの問題、そういった検査業務に対しまして、競馬会の手足となって子会社業務を実施しているところでございますが、したがいまして、子会社にはそういう競馬知識を持ったあるいは経験を持った方々職員、働く方に競馬全般についての精通している者を求めているところでございまして、このことからも、子会社等から広く競馬事業を詳しく知っている経験のある者を経営層に要望、要請されることも多々ありました。  一方では、問題になっております役務契約の締結に当たりましては、透明性あるいは中立性確保など適切な契約方式を実施することはもちろんでありまして、今、金子先生が御指摘の、懸念されるようなことのないよう、契約についても透明性競争性についての確保は十分に留意してまいりたいと、そのように思っている次第でございます。
  10. 金子恵美

    金子恵美君 今御説明がありましたように、昨年の七月からは検討がなされ、会計検査院から指摘をされる前にもう検討がなされていてということで、実際には昨年の十月ですね、是正改善処置会計検査院から求められた段階でももう検討はされていたということだというふうに思うんですけれども、だからこそ、実際に既に委託方式に切り替えられていたのが、実際にもう一月の段階でもされているところもあれば、三月にもされています。一番遅いものでも大体四月の四日ぐらいですか、にはされているということでお伺いをさせていただいていますので、その中身につきましては、すべてが委託方式になっているということでございますので、詳細について今ここで御説明ということはいただかなくても結構ではございますが。  ただ、問題は、今御説明いただいた中で、本当にその専門的な知識が必要なものだったのかどうかということと、それから、これ昭和四十三年からですか、このような形が続いていたということでございますが、会計検査院指摘によれば、この賃貸方式継続でも競争入札にすることによって、あるいは賃貸方式でなくて委託方式にすることで二年間で七億九千百六十三万円の増収が可能であったというふうに試算をしているわけですね。ですから、これだけ無駄遣いがあったんですけれども、二年間でこれぐらいだったらとおっしゃるのか、あるいは、でも考えれば、昭和四十三年からこれが続いていたということですから本当に多額になるわけですよ。それが本当だったらば増収できた部分であるということを考えていただきたい。やはり、この仕組みの問題といいますか、姿勢の問題というか、そういうことではないかというふうに私は思っているんですね。  そこで、先ほど述べましたように、JRAは十八年度検査報告においても随契見直し指摘されまして、これらの指摘に関する取組状況というものも十九年度の検査報告でされているわけなんですけれども先ほども申し上げましたように、競争契約への移行が実施されているものもあるけれども、しかしながら二十一年度に実施する予定となっているというものもあったということでございます。  であれば、実際にまずは、二十一年度にそれが実施されているのかどうか、どうなっているのかお伺いしたいということと、それから、いまだにまだ検討されているというものがあるわけですね。今もおっしゃっていただきました。その検討が長期化している理由、本当に専門性が必要なのかということももう一度含めてその理由をお伺いしたいということと、それから、今後本当に競争契約の方に移行する、そういう方針というものをお持ちでいらっしゃるものがあるのかどうか、重ねてお伺いしたいというふうに思います。
  11. 土川健之

    参考人土川健之君) 三点あったと思いますので、ちょっと時間が長くなりますけれども、三点お答えさせていただきます。  まず、本年度やるべきだという契約につきまして、検査報告に書いてあるとおり、二十一年四月から競馬場内の開催警備業務については、競馬公正確保上、支障有無等を踏まえまして、まず、指定席あるいは馬主さん等へのエリアの入退場の確認事務あるいは競馬場内の遊園地エリア警備業務については本年の四月から一般競争入札移行しておりますし、そのほか、開催警備業務以外にも、二十一年四月からウインズ館内開催警備業務あるいは指定席入場券発売業務競馬場及びウインズ案内業務ウインズ清掃業務ウインズ不動産管理業務の一部を一般競争入札移行しております。また、これも指摘ございました成績表印刷製本発送業務一般競争移行しております。  それと、検討している事項についてはどうだったかという御質問でございますが、まず、ウインズ館内での平日払戻し警備業務については、現金輸送警備を除く業務平成二十二年、来年から実施をいたします。また、競馬場内での常駐警備業務につきましても、平日払戻し警備業務について、これも来年、平成二十二年から競争入札移行するということを決定をしております。  なお、その検討中の継続の中で一点ございまして、レーシングプログラムというのは全国各地に発送するわけでございますが、これについては今引き続き検討中ということで考えさせてもらっております。といいますのは、オフィシャルの競馬番組競馬出走馬出馬表というものでございますので、これをそのまま競争入札でいいのかどうかというのはいま一度、もう一度今考えているところでございます。  それじゃ、今までどれだけのものをやってきて、これからの計画はどうだということでございますので、これは、競馬会といたしましては、随意契約適正化に関連いたしまして会計検査院からの是正改善処置を求められたこと、あるいは総務省行政評価局から勧告を受けたことについては真摯に受け止めております。  競馬会では、契約競争性透明性を十分に確保するとの観点から、契約全般にわたる見直しを実施し、随意契約から競争入札移行に取り組み、平成二十年四月にホームページ随意契約見直し計画を発表しております。  さらには、平成二十年の四月の公表時点では競争入札としなかった契約についても、引き続き更なる検討を加え、また会計検査院平成十八年度決算検査報告におけます指摘や、昨年の総務省行政評価局による勧告を踏まえまして、昨年十二月に随意契約見直し計画の改定をホームページ公表したところでございます。  それじゃ、数字はどうなっているかと申しますと、まず十八年度の実績ベースでは七五%の随意契約の占める割合でございました。それで昨年の四月の時点では六四%まで割合をしたということ。それと十二月には、検討した結果四五%まで随契を下げております。その四五%の随契の中でも競馬場、あるいはウインズをオーナーから借りているわけですが、これは競争入札するわけにはいきませんので、それは随契という形から引きますと全体では三三%というような数字で今推移しておりまして、今指摘のあります会計検査院あるいは処置要求内容等を踏まえながら、これまでの取組に対する検証、更なる検討継続的に行い、競争性透明性に努める所存でございます。
  12. 金子恵美

    金子恵美君 次に私が御質問させていただこうかなというところまでお答えいただいたわけなんですけれども改善をしていくというような、少しずつではあるけれどもという努力は見えないことはないのですけれども、ただし、先ほど申し上げました駐車場の件につきましても、何十年もそれが続き、そして実は、最近いろんなところから言われたから検討をし、そしてやればすぐできるじゃないかという、数か月間でもうできてしまうと、競争契約移行することができたんだということを考えれば、まだまだ残念ながら、私の申し上げたいところは、努力が足りないところもあったのではないかと言わざるを得ないわけなんですね。  実は、皆様のお手元に資料もお配りさせていただいていましたので、せっかくなのでそれも見ながらのお話になりますけれども先ほどもおっしゃっていただきまして、総務省から平成十四年一月に、まずJRA運営全般についての勧告が行われたと。これは会計検査院に掲記される以前からの指摘だったということでございますけれども、昨年の十二月ですね、総務省が発表いたしました契約の適正な執行に関する行政評価・監視結果報告書の中からこれは抜粋したものでございますが、その中の内容を見ますと、八特殊法人の中で見直し計画を策定したわけですけれども、やっぱり調査をしましたらば、JRAどういう状態なのかというと、まずは随契金額の一千六百十四億円のうち七〇%を占めているというのが、まずその一枚目に書かれているということ。二枚目の方に行きますと、図二の方になりますけれども見直し計画では一千六百十四億円のうち四百五十二億円は一般競争契約等移行するというふうに言っているわけなんですが、四百五十二億円のうち三七%はJRA。  じゃ、JRAは頑張っているのだろうかというと、その次の図三のところを見ますと、今も少し御説明はあったんですけれども、ほかの特殊法人と比較しますと明らかなんですけれども、八特殊法人全体で平成十八年度の実績七五%に比べて二一ポイントを減少させ五四%にするというふうに言っているところ、JRAはそれを本当に大幅に下回る減少幅で一一%、随意契約金額割合六四%ということになっているということでございます。  こういう指摘をやはりされている中で、さらに契約に係る情報公表というものもまだまだ遅れているというような指摘もされていますし、本当にホームページ等での契約に係る情報公表が適切にまだ行われていないという指摘も昨年の十二月の段階であった。それを今少しでも改善する方向にあるということではあるんですけれども、やはり今まで長年続いた体制を改善していくのは、もっともう真剣に取り組む、そういう姿勢が必要になってくるんだというふうに思いますので、その件について御決意等がありましたら、理事長、お願いいたします。
  13. 土川健之

    参考人土川健之君) おっしゃるとおり、契約情報公開については遅れたことは確かでございまして、今年の一月にはすべて国の基準に合わせて情報公開をやっているということと、今の六四%のところなんですけれども、それは四月の時点での数字でございまして、ちょっと私もはしょって先にお話ししましたけれども検討をいろいろ重ねて、十二月の二十四日に、ホームページ見ていただくと分かると思いますけれども、全体では四五%に契約を絞ったというところでございます。  おっしゃるように、まだまだこれから透明性競争性を持って前に進んでいきたいなと、そういうように思います。
  14. 金子恵美

    金子恵美君 JRAを監督する立場である農水大臣にも、どのようなお考えをお持ちか、一言お伺いしたいと思います。お願いいたします。
  15. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今るるJRA理事長から申し上げたところでございます。  平成十七年十二月に閣議決定を行いました行政改革重要方針において、競争性のある契約のうち競馬公正中立性確保支障のないものについては、二十二年までのできるだけ早い時期に競争入札移行させるということが閣議決定をしておるわけでございます。  ここで、公正中立性確保支障がないもの、逆に言えば何が支障があるんだという話ですが、例えば薬物であるとかそういうものに関してはやっぱりよろしくなかろう、あるいはドーピングのような話ですね、さらにはインサイダー取引のようなもの、競馬公正性というものを阻害するもの以外はこれは競争入札なんだということになっておるわけでございます。  そうしますと、これが着実に実施されるようにならなければなりません。私どもとして、これは閣議決定という極めて重いものでございますので、これは着実に実施され、競争性透明性が高い契約がなされますように、農林水産省としても先生の御指摘、首肯するべきところ非常に多うございますので、私どもとしても強い問題意識を持ってやってまいりたいと思っております。
  16. 金子恵美

    金子恵美君 更なる改善をお願い申し上げまして、JRAにつきましてはこれで質問を終わらせていただきますので、理事長、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
  17. 家西悟

    委員長家西悟君) では、土川理事長、御退席いただいて結構です。
  18. 金子恵美

    金子恵美君 続きまして、二、農畜産業振興機構についてお伺いさせていただきます。  同機構については、機構の内部とそして各種事業を担当する公益法人など十二団体に、平成十八年度末時点では総額三千九百五十八億円のこのような多額の国の補助金長期預り金や基金としてプールされていたということがございました。そしてまた、このような状況を受けまして十九年十二月に示されました独立行政法人整理合理化計画においても、保有資金について、国からの交付金を極力抑制し、そして保有資金の規模拡大を抑制することなどが指摘されましたが、十九年度決算でもこの長期預り補助金となっているのが二千八百十五億円、そして同機構からの補助金を基金としてプールをしている公益法人等にも約千四百三十五億円が存在している、合計いたしますと四千二百五十億円に上る状況というふうになっております。つまり、貴重な財源が使用されずに滞留しているという事態が改善されていないという状況にございます。  そこでお伺いさせていただきますが、まず現時点での同機構長期預り金及び同機構補助金の交付によって造成された基金、これにどれぐらい総額あるのか、お伺いしたいと思います。
  19. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) まず、農畜産業振興機構の保有資金でございますけれども、御指摘のとおり、平成十九年度末では二千八百十五億円でございます。二十年度末、この三月の決算はまだ出ておりません。現状がどうなっているかということでございますが、平成二十年度は、御記憶にも新しいと思いますが、これは世界的な穀物価格の上昇で配合飼料の価格が非常に上昇をいたしまして、この農畜産業振興機構を通じて二回に分けて緊急的な事業を実施しております。  あわせまして、事業費で二千六百億円、これに保有資金で大体二千億円程度を充当いたしておりますので、この三月末の時点の現時点では千五百から千六百億程度に資金としては少なくなってきておるというふうに考えております。さらに、この二十一年度も国からの交付金を削減をいたしまして保有資金の抑制に努めました。さらに、今後の価格動向にもよりますけれども、今非常に牛の枝肉価格などが低迷をいたしておりまして、こういうものにも相当の資金を使用する、そのような見込みになっているところでございます。  それから、十二の公益法人あるいは協同組合に対しまして交付している基金でございますが、これも御指摘のとおり、平成十九年度末時点で総額一千四百三十五億円に上っております。これらの基金につきましては国の基準に準じて定期的な見直しを行っておりまして、平成二十年度におきまして十基金について適切な規模への縮小を図る、あるいは役割を終えた四基金については廃止をするということで、約二百億円程度減少する見込みとなっているところでございます。  以上でございます。
  20. 金子恵美

    金子恵美君 もちろん、基金、十分に何かあったときにきちんと活用ができるような体制をつくっておくということもありますけれども、二十年度の決算がまだ出ていないということですけれども、大体の数字といいますか、おっしゃっていただいたわけなんですが、昨年の十一月に行政減量・効率化有識者会議というのがありましたけれども、その中で示された農林水産省の提出資料には、公益法人等に造成した基金については、十九年三月に策定した基金の管理に関する基準ですね、さっきおっしゃっていました、したがって、定期的な見直しをするようにということ、そして適切な規模への縮減、廃止、返納を実施することが示されていると、そういうことから、今おっしゃっていただいたように、基金についての精査が行われているということではございました。  しかし、一方、実は基金や預かり補助金だけではなくて、同機構の十九年度の財務諸表によりますと、一年を超える満期保有目的の債券、一年以上の満期保有目的の債券を約一千億円保有しているということが分かるわけなんですね。巨額のその資金を長期の債券で運用する必要がなぜあるのか疑問に思うところでございますけど、このような債券を保有、運用する必要性と保有規模が適正なのか否か、また適正水準についてどのようなお考えがあるか、お伺いしたいと思います。
  21. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) 保有債券の問題でございます。  御指摘のとおり、トータルで一千六十九億円の十九年度末で債券を保有しております。その内訳を申しますれば、政府出資金が二百九十億円でございます。それから、野菜関係の事業資金に充てるものとして七百八十億円の債券を保有しておりますが、この債券につきましては、債券といいますか政府出資金、それから野菜勘定の事業資金、これを保有しているわけでございますが、安全性なり効率性、流動性を保ちながら運用をしているところでございます。  まず、政府出資金につきましては、独法に変わったときに措置をしたものでございますけれども、事務事業の安定的な運営のための財産的基盤として保有しているものでありまして、その大宗を債券で保有し、安定的に運営しているところでございます。  それから、野菜勘定の事業資金につきましては、野菜の価格が著しく低下した場合に備えまして生産者に対して補給する、こういう支払をするために備えまして、国と都道府県それから生産者がそれぞれ負担をして必要な額を造成しているものであります。  したがいまして、例えばある野菜について、例えば秋に出荷する野菜について価格の低下が生じますれば、その産地ごとに生産者にこういう資金を交付すると、そういうものに備えて保有しているものでございまして、この債券につきましては、そういう償還期がいつ訪れるか、そういう事故がいつあるかといったようなことも勘案しながら保有をしておりまして、原則として、そういう生産者からの交付申請において額が確定した翌月以降に支払うというようなことで保有しているものでございます。こういう多額の支払が必要となる場合におきましても、保有する債券は三営業日後には現金化が可能となるようにしておりまして、このような目的で所持しているものでございます。  まず、この野菜の債券につきましては、多額でございますが、まさにそのような三者が共同で造成した、必要なときに備える資金として保有しているものであるということを御理解いただきたいというふうに考えておるところでございます。
  22. 金子恵美

    金子恵美君 預かり補助金の問題も、基金の問題も、そして債券の問題も、何かあったときにということではあるけれども、でも、例えば今すぐ利用する、活用するというときになったときに、本当に今までのこれまで滞留していたものが透明性があり、そしてそれが活用できるのかというところにやはり疑問を感じる。つまり、やはり必要のない資金があれば一度やっぱり国庫にきちんと返納していくということによって、我々の大切な税金の使い道というものの透明性が高まっていくのではないかなというふうに思います。ですので、今後も、今御答弁いただきましたその債券の問題も、また基金の有用性につきましても、きちんと精査をした上でいろんな御検討をいただきたいということをお願いしておきたいというふうに思います。  実は、今、農畜産業振興機構という個別の法人を挙げさせていただいたんですが、農林水産省においては、当該独法に限らず、独法等からの補助金により造成した基金を保有する公益法人が非常に多く存在しているという指摘がされているわけでございますが、平成二十年の七月に内閣官房に設置されました行政支出総点検会議等の資料によれば、農林水産省所管の公益法人補助金により造成した基金は、同会議の第二ワーキングチームが第四回目開催された時期なんですが、平成二十年の十月時点で百十四基金、十九年度末の残高で八千八十一億円、うち補助金相当分は七千六百六十一億円にも上る状況となっております。  今申し上げたこの行政支出総点検会議の第二ワーキングチームの報告においても、農水省は、補助金の交付により造成した基金を保有する公益法人が多い、基金の規模の算定が合理的な考え方に基づいて行われているかを精査する必要がある、過剰な積立てがあれば国庫への返納について検討を行うべきではないかと指摘をされています。  そこで、このような状況についての認識、基金規模を精査し過剰な積立てについてはやっぱり国庫への返納をする必要があるのではないか、この件について御所見をお伺いさせていただきます。
  23. 家西悟

    委員長家西悟君) どなたに。
  24. 金子恵美

    金子恵美君 大臣に御所見をお伺いさせていただきます。
  25. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それでは、基金につきましての現状認識、国庫返納はどうなんだということでございます。  これは、この間、衆議院の予算委員会でもお答えをいたしましたが、農林水産業の場合に季節によって収量が変わる、あるいはそれによって価格変動が非常に起こりやすいということは委員御案内のとおりでございます。また、いろいろな社会情勢の変化等々、そういうものにいかに適切に対応するか、補助事業を円滑かつ安定的に実施するにはどうすればいいかということで、このような基金というものを造成をしておるわけでございます。  この保有額につきましては、官民でどのような役割分担をするか、あるいは限られたお金をどのように効率的に活用するかということの観点から、従来より事業の必要性などに応じました見直しを定期的に行ってきておるものでございます。逆に申し上げれば、返納可能なものについては国庫返納をきちんと行わねばならないということでございまして、単にそういうことだからいっぱい積んでいますよということで御理解が得られるものだとは私も考えておりません。  したがいまして、資金の有効活用、これに向けて定期的な見直しをきちんと行い、返納可能なものについては国庫返納を行う、当然のことでございますが、これをきちんと果たしてまいりたいと考えております。
  26. 金子恵美

    金子恵美君 もちろん返納可能なものはということですが、その返納可能かどうかということをしっかりと精査をするという必要があるということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。  そこで、行政改革推進本部、平成十八年の十二月のこの推進本部で基金の保有額を一部国庫に返納することを決めたということからも今の御発言だと思いますが、そのときに計画があったんですが、これは十六基金八百十九億円はまず返すということだったんですね。ですので、これまでに、現段階に至るまでに既にもう国庫に返納された、返還されたものがあると思いますので、まずそのことについてお伺いさせていただきたいと思います。
  27. 佐藤正典

    政府参考人(佐藤正典君) 御説明申し上げます。  ただいま委員指摘のように、平成十八年十二月の行政改革推進本部の決定におきまして、十二法人十六基金について向こう四年間で約八百十九億円の返納を行う計画を立てております。平成二十年度末までに十二法人十六基金から約六百二十四億円の返納が行われたところでございます。  また、平成二十年にも、二十年の十二月でございますが、同本部の決定におきまして、八法人十五基金について向こう四年間で約百九億円の返納を行う計画を立てております。これにつきましては、平成二十年度に六法人九基金から約九億円の返納が行われたところでございます。  したがいまして、平成十八年度以降平成二十年度までに返納されたものは、合計で十四法人十九基金から約六百三十三億円となっているところでございます。
  28. 金子恵美

    金子恵美君 さらに、昨年の十二月、また行政改革推進本部の決定として、農水省の所管の社団法人全国農地保有合理化協会など八法人の基金について二十三年度までに国庫に返納させる方針というのが決められているんですが、この取組について農水大臣にお伺いしたいのですが、今後の取組、まだ工程表等はないということだと思いますが、お考え等があればお聞かせいただきたいと思います。
  29. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは委員指摘のとおりでございます。工程表というものが今きちんとしたものがあるわけではございませんが、定期的な見直し等々を行っております。  ですから、そういうものがきちんと運営される、必要でないものと言っては言い過ぎかもしれませんが、国庫に返納すべきものはきちんと返すということを適切に行いますとともに、その経過等々につきましても、それは納税者の代表であります国会に対しましてもきちんとした御報告をしなければいかぬと、このように思っております。
  30. 金子恵美

    金子恵美君 これ以外、農水省、昨年の七月にも、行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄遣い、無駄の集中点検取組、こういうこともやっているんですけれども、実際にその会議がいろいろありまして、行政支出総点検会議とか、今申し上げたような行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄遣い点検とか、あとは先ほど申し上げました行政減量・効率化有識者会議とか、こういうのがいろいろあるんです。  基金についても、先ほど来きちんとその精査をして見直しをしていかなくてはいけない、もちろん無駄遣いはしないということをおっしゃっているんだとは思いますが、この基金に関して言えば、今回の補正予算でも四十六の基金に四兆三千六百七十四億円を支出と。三十は新規造成、特に農水省の所管のものは二十一ありまして、そして、うち基金の新規造成が十四、そして既存の基金に積み増しが七あるということで、七千六億円を支出ということで、衆議院の予算委の方でも大臣御答弁いただいていたと思います。  必要なものは必要、もちろんそうですが、しかし本当に必要なのかどうかということを精査をしなくてはいけないと先ほどからおっしゃっているわけですよね。その中で、私たちも心配なのは、特にその天下り先の公益法人にも行く可能性がもちろんあると。民間団体からの公募によって基金をどこに預けるかということを決めるということも、そういうことの中から公益法人を除外するものではないという、そういう大臣の答弁がありました。やはりこの中では、無駄遣いというのはどういうところで起こってきたかということを、これまでも私も申し述べさせていただいているわけでございますけれども政府がせっかくその無駄遣いをなくすということでいろんな会議を開いてチェックをしているのであれば、なぜここでまた新しい基金を造成しなきゃいけないんだろうかということ。そして、それはまさに今まで、それでは政府が進めていくんだと言っていたこととは矛盾をしているし逆行もしているし、やはりそういったところから本当にこれ大丈夫なんだろうかと心配をしているのは私だけではないというふうに思います。  これにつきまして、指摘というふうにここではさせていただきますので、しっかりとこの件につきましては予算委員会の方でも議論が深まるというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  次に、時間も迫ってまいりましたので、林業公社の経営について御質問をさせていただきたいと思います。林業の関係について、林業公社の経営状況の悪化、深刻なものになっているということの問題を指摘させていただきたいと思います。  林業公社の十九年度末の長期債務残高は、利息を含めますと総額約一兆一千七百億円に上っています。十九年度は岩手県と大分県の公社が解散いたしまして、そして平成二十年度九月には滋賀県が公社の債務を引き受け平成六十一年度までに分割返済を行うことを決定するなど、林業公社の経営状況は全国的に非常に深刻な状況になっています。その背景には、もちろん木材価格の長期低迷により収益が伸びない、借金で運営費を賄っていることなどがあると考えられますが、このような状況が続けば自治体財政や国の財政への影響も懸念されるわけでございます。  そこで、林業公社における長期債務がこのように一兆一千七百億円にも上っているということに関するその御認識、そしてこれまでの施策の在り方、このような指摘に対する見解をお伺いしたいと思います。
  31. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) 林業公社でございますけれども、戦後の地域の森林整備等に成果を上げてきているわけでございます。しかしながら、委員指摘のとおり既往債務が公社全体で一兆円を超えるなど、経営面で大変厳しい状況になっているわけでございます。  これに対する対応でございますけれども、林野庁といたしましても、林業公社の造林地で適切な施業が行われますように、またその経営が改善されるよう、これまでも、例えば高齢級の抜き切りへの助成あるいは低金利での借換え等の金融の優遇措置、それから都道府県が行う林業公社への助成に対する経費についての地方財政措置等の対策を講じてきたところでございます。  これに加えまして、平成二十一年度からは条件不利の森林を対象としました間伐の実施あるいは作業路網の整備に要する経費に対して定額で助成するという方式の導入、それから、都道府県の利子補給等に対する特別交付税措置の措置率を二〇%から五〇%へ引き上げる、また、都道府県が林業公社の債務を引き受ける場合についてもこれをこの特別交付税措置の対象に追加するなどの対策を講じることによりまして、林業公社に対する支援を強化しているところでございます。  さらに、平成二十一年度補正予算案におきましても、定額助成方式による間伐の実施あるいは路網の整備などの追加予算措置を盛り込んでいるところでございます。
  32. 金子恵美

    金子恵美君 この林業公社の問題と関連いたしまして、農林漁業金融公庫への影響についてお伺いしたいと思うんですけれども、公社の経営状況と貸付状況ということですけれども、十七年度末の林業公社の長期債務残高一兆一千八百億、そして林業公社への貸付残高ですね、この公庫の、これが四千百億円だったと。一般会計からの補給金は三百七十七億円に上っていました。そして、十九年度末の状況を見ますと、先ほど申し上げましたように長期債務残高一兆一千七百億円、そして公社への貸付残高は三千六百億円となっている。一般会計からの補給金約三百五十億円というその状況は依然変わっていない状況であります。  公庫は、昨年の十月に日本政策金融公庫に統合されておりますので、会計検査院のこの指摘に関しましてどのような対応措置をしていかれるのかということも含めまして、また具体的に影響等がないのか、公庫に対しての影響も大変懸念されるところでございますので、その件につきまして日本政策金融公庫にお伺いしたいと思います。
  33. 坂野雅敏

    参考人(坂野雅敏君) 御説明いたします。  当公庫は、無利子の森林整備活性化資金、また長伐期施業への転換資金など公社の低利融資による支援のほか、各公社ごとの林業経営に係る長期収支見通しのシミュレーションを指針として作成し、個別に公社が取り組むべき課題などについて意見交換を行うなど、経営改善のきっかけづくりや自助努力への協力を行っております。また、平成十七年から十九年度まで過去に借り入れた高い金利の資金について任意の繰上償還にも応じてまいりました。このように、当公庫は、従来から適切な貸付け、また円滑な債務償還への協力に努めてまいったところであります。  さらに、公庫の資金の償還等で支障が起きないかという御指摘につきましては、これまで公庫が行った長伐期型の借換えや任意の繰上償還はもとより、各公社、都道府県の努力もあり、これまでのところ、林業公社の公庫に対する償還に支障は生じておりません。公庫の資金運用への具体的な影響は現時点では生じていないところであります。  以上であります。
  34. 金子恵美

    金子恵美君 時間が来ましたのでこれで終わりますが、林業公社もこれまでも一定の重要な役割は担ってきたというふうにも思いますが、今後、健全な運営ができるように、自治体任せではなくて国もその辺のところをしっかりと検討をいただきたいと、そして改善できるところは改善していただきたいというふうに思いますのでよろしくお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
  35. 大久保潔重

    大久保潔重君 こんにちは。民主党の大久保潔重です。  私は、環境省所管、後々質問させていただきますけれども、今日は、石破農水大臣、また近藤大臣お越しであります。冒頭、どうしてもこの問題には触れさせていただかにゃいけないということで質問させていただきます。  去る四月十四日、長崎県平戸市生月町の舘浦漁港から出港した第十一大栄丸が転覆、沈没した事故について、その後、関係各位の大変な懸命な捜索にもかかわらず、二十二名の乗組員のうちいまだ十二名が不明であります。  事故発生の翌日十五日には、近藤大臣自ら現地を訪れ、国として船体の引揚げに全力を尽くす旨の発言をされましたが、その後二十三日、水産庁が現地の不明家族を訪問し、引揚げは困難との説明をし、翌二十四日には、石破大臣が閣議終了後、国による船体引揚げ断念表明をし、近藤大臣の発言は事実上撤回される結果になりました。これはどういうことでしょうかね。
  36. 近藤基彦

    ○副大臣近藤基彦君) 四月の十四日の転覆事故を受けて、四月の十五日の夜、平戸の対策本部を訪問をさせていただいて、対策本部の関係者から当時の御事情をお伺いをし、そして、その後、御家族の方々と面談をさせていただきました。  その折に私からお話を申し上げたのは、一昼夜たっていたわけでありますが、まだ十二名の方々が行方不明ということで、海上そして陸上を含め、御生存を信じて全力を今尽くしているところでありますので、今後とも全力を尽くして行方不明者の捜索に当たることが一点。  そして、当時、海中写真が撮れたということで、ただ、まだそれが当該の第十一大栄丸ということは未確認でありましたので、この確認を急がせるというお話を申し上げましたら、御家族の方から引揚げの強い御要請がありました。当該漁船かどうかはまだ未確認の状態でありましたので、国としてはその確認作業を急ぐとともに、確認されれば、あるいはそうでなくてもほかで見付かる可能性もあったわけであります、その当時。それが確認を、第十一大栄丸が確認をされれば国として、引揚げの御要望があったわけでありますので、国の機関として引揚げが可能かどうか。これは、捜索に当たっていたのが水産庁あるいは海上保安庁、海上自衛隊の方々、そして同僚の漁船の方々が捜索に当たっていたわけでありますけれども、水産庁あるいは海上保安庁、海上自衛隊の知見をもって技術的に引揚げが可能かどうか、状況が分かり次第前向きに検討させていただきたいというお話を申し上げたところでございます。
  37. 大久保潔重

    大久保潔重君 沈没したその大栄丸は、十七日の日に水中カメラで煙突にその会社のマークが付いていたということで確認をされたんですよね。それから、海上自衛隊あるいは海上保安庁の技術力といいますか、そういう調査もされたということであります。  この会社の側の大栄水産、船主が、株式会社日本サルベージに調査を依頼をしました。これは四月の二十二日から三日間の調査をしているんですね。この調査の最中に国が引揚げ断念という、この表明するのが全く私は腑に落ちないわけであります。船体引揚げの断念をされたというその根拠、これをお示ししていただきたいと思います。
  38. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 水産庁といたしましては、漁業を所管する立場から、御家族の皆様からいただきました御要望等を踏まえまして、沈没船の船内の確認あるいは船体の引揚げについて、先ほど大臣からお話がありましたとおり、技術的に可能かどうかにつきまして海上保安庁及び防衛省と情報交換を行ってきました。その結果、現場の水深が約八十メートルから九十メートルであること、また潜水士等による船内の捜索や船体の引揚げについては国の装備では技術的に不可能であるというような情報を海上保安庁及び防衛省から得たところでございます。この内容についてできるだけ早く御家族の方に説明をすべきであるということで、四月二十三日から四日にかけて御家族に説明をしたところでございます。
  39. 大久保潔重

    大久保潔重君 海上自衛隊と海上保安庁の技術的には水深八十メートルは無理と、こういうことであります。海上保安庁と海上自衛隊の能力が同じということですか、それは。そのこと自体も、私はいろいろ詳しい人に聞きますが、そんなことはないよという話もありますし、それはそれで、そういう理由だったんでしょう。  日本サルベージの調査が二十四日に終了しております。約一週間後にその調査結果が出て、しかし、この調査の映像というのは公開されておりませんね。不明家族にだけの説明だったと聞いておりますが、この結果について国はしっかり今把握をされておりますか。
  40. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 船主でございます大栄水産が民間のサルベージ会社に依頼をした調査の結果でございますけれども、概要としては、漁網が船体に絡まっているなど、現場の状況等から判断しますと、二次災害の危険性が高いために船内捜索は難しいという旨の説明が家族になされたというふうに承知をいたしております。
  41. 大久保潔重

    大久保潔重君 船内捜索も無理ということでありますけれども、実際、会社の側はこの日本サルベージに対して船内捜索ができるかどうかの調査の依頼はしておるけれども、引揚げについては何かあやふやなんですね、引揚げできるのかどうかという。  このことはどういうふうになっています、日本サルベージの説明は。
  42. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 今回の日本サルベージへの調査は、船内捜索ができるかどうかということについて船主さんから依頼があったということでございますので、この調査は船内捜索については難しいという報告がなされたというふうに承知をしております。
  43. 大久保潔重

    大久保潔重君 四月二十七日には海上保安庁あるいは海上自衛隊の専従捜索も断念をされましたね。  今回の事件について、今の時点で原因、これをどう国は考えておられますか。何か分かる範囲であればお伝えしていただきたいと思いますが。
  44. 柚木浩一

    政府参考人(柚木浩一君) お答えいたします。  今の原因についてのお尋ねでございますけれども、現在、鋭意調査を進めております。まだ原因解明に至るという段階ではございませんけれども、参考までに現在までの対応状況について簡単に申し上げますと、当日、すぐに事故調査官を四名現地に派遣しております。引き続きまして、仲間の船の方々からお話を伺う、あるいは船に関するデータ、いろんなデータがございますけれども、あるいは気象、海象のデータを得ると。それからもう一つは、助かった方々、PTSDの話もございましたので非常に慎重に事を進めておりますが、現在、お話を伺っている最中でございます。  そういうことを踏まえて、原因の究明に鋭意努めてまいりたいと考えております。
  45. 大久保潔重

    大久保潔重君 今回の事故について、とにかくしっかり原因究明ということを図っていただきたいと思いますけれども。  ただ、この事故の原因については、実はこの同じ舘浦漁港から出港した巻き網漁船が、実は十六年前の平成五年にも第七蛭子丸、同じように転覆、沈没しているんですね。これは、当時、船体の大部分に絡まっている網を取り除く手段がなく、技術的に困難との理由から引揚げを断念し、乗組員二十名中十九名がいまだに行方不明のままですよ。生還された一名はいまだに精神的な後遺症を残されているんですね、何で自分だけ助かったんだと。  当時、この引揚げ断念の背景には、補償交渉で不利になることへの危惧があったとの報道も盛んにされましたよ。そして、この事故については海難審判が実施され、約一年後の裁決でその船主であります金子漁業に対して安全指導不足が指摘されました。  あの事件のことも含めて、事故の原因についてしっかり検証するためには、いろんな今専門家の説明がありますよ。しかし、いずれにしても原因究明と再発防止には船体を引き揚げて調査する必要があると思いますけれども、いかがですか。
  46. 柚木浩一

    政府参考人(柚木浩一君) 今御指摘の船体の引揚げでございますけれども先ほど申しましたように、これまでの私ども取組の中では、僚船の方の目撃情報、これが比較的間近なところで目撃をされております。また、船舶の種々のデータ、あるいは生存者の方から転覆時の様子等々、事故原因究明のためのかなりの情報が得られているという状況にございまして、現時点において、このような調査の状況を見る限り、船体の引揚げということが必要だというふうには現在考えておりません。
  47. 大久保潔重

    大久保潔重君 ですから、今調査中の内容についてはどんどんやってください。しっかりやってください。  ただ、いろいろな原因がありますよ。三角波という波によるもの、あるいはブローチング現象、あるいは巻き網の本船の、船の形状によるものかどうか、形態ですね、あるいは巻き網の荷崩れでバランスを崩したとか、いろんなことが言われていますよ。しかし、いずれにしても、こういうことで事故が一回、二回、三回と続けて起きれば、漁業者の皆さんは安心して漁に出られないですね。是非それは責任を持ってやっていただきたいと思います。  次に法律、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の第四十三条は、何人も船舶等を海洋に捨ててはならないと、こう書いてあります。また第四十条、船舶の沈没若しくは乗り揚げに起因して海洋が汚染され、又は汚染されるおそれがあり、当該汚染が海洋環境の保全に著しい障害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認める場合は云々かんぬん、当該船舶の撤去その他当該汚染の防止のため必要な措置を講ずべきことを命じることができるとありますよ。  これは、私が解釈するところでは、よっぽどのことがない限りは引き揚げなさいということじゃないんですか。違いますか。  今日は海上保安庁からはお越しじゃなかったですかね。お答えできませんか。できませんか。大臣か副大臣、いかがですか。
  48. 石破茂

    国務大臣石破茂君) その法律を所管をいたしておりませんので、きちんとしたお答えはいたしかねます。  ただ、私は、例えば昨年のイージス艦の事故等々もございました。一応その関係法令、かなりちゃんと読んだつもりではおります。委員指摘のように、よほどの事情がない限り引き揚げねばならないというようにその法律を読むかといえば、必ずしもそれはそうではないという読み方だと私は記憶をいたしております。これは、例えば今回、この船が非常に油を満載しておって、そこから油が漏えいをしてその地域の環境に多大な影響を与えると、そういう場合はそういう影響を与えないために引き揚げねばならない、そういうことは読める余地は当然あるんだろうと思っております。  ですから、そういう今起こっている沈没という事象がどういうような現象を起こしているかということにそれぞれの法律が対応しておるというふうに承知をしておりますが、よほどの場合でない限り引き揚げねばならないという一種の反対解釈風の読み方ができるかどうかについて、私自身はそういう読み方を必ずしもしないのではないかと思っております。  今、大臣という御指名がございましたのでお答えをしておりますが、必ずしも有権的な解釈を当省が持っているわけではございませんので、もし必要であれば、当該政府の者をお呼びいただきまして御確認をいただきたいと存じます。
  49. 大久保潔重

    大久保潔重君 私は、国交省の海上保安庁の担当にも通告をしておったつもりだったんですがね。  大臣に突然質問になりましたけれども、しかし、大臣、今回の場合は、この第十一大栄丸は東シナ海へ向け舘浦漁港を出港した直後なんですよ。約一時間後に沈没しているんです。ということは、船内にはひょっとしたら一週間から十日分の燃料が満載されておる可能性があります。そうしたら、それが漏れ始めて先ほどの法律によるところの海洋汚染の状況に至ることは容易に推測されるわけです。また、網が船体にかぶさっておるということでありますけれども、巻き網の網というのは相当大きな網ですよ。これがあの海域の大しけでいつ海面まで上がって、これはもう漁船だけじゃない、貨物船も旅客船も頻繁に往来するあの海域、平戸沖で更なる二次災害、三次災害が起こらないという保証はないわけですね。  そういう意味でも、是非先ほどの海洋汚染法あるいは海上交通安全法などにのっとって、海上保安庁長官からしっかり船体の撤去命令を出すべきだと思っておりますけれども、これいかがですか。
  50. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員から、海上保安庁長官が出すべきだと思うがどうかということにつきまして、私、お答えする立場にございません。  逃げておるような答弁で恐縮でございますが、私ども、漁民の方々のいろいろな生活あるいは漁業の安全等々お守りするという立場でございます。必要であれば海上保安庁長官に私から申し上げたいと思いますが、今御指摘のいろいろな法律は当省が所掌しておるものではございませんので、委員問題意識はよく承ったところでございます。
  51. 大久保潔重

    大久保潔重君 ちょっと担当の方がいらっしゃいませんので、そうしたら今後はちょっと大臣といろいろ質問させていただきたいと思います。  私は、四月二十日と三十日、この二度にわたって現地に行ってきました。三十日の日は、民主党の農林漁業再生本部長山田正彦衆議員、またそこの外山斎参議員も一緒に行って、そして現地対策本部を訪れ、長崎県や平戸市の担当者あるいは大栄水産の社長、舘浦漁協はこれは金子組合長、いつ行っても不在ですよ、これもおかしい、担当の理事が対応してくださいました。それから、不明家族のところをすべて回ってきました。  それで、いろんな御意見を聞いてきましたけれども、とにかく行方不明の御家族は、船内捜索、先ほど船内捜索は無理という答弁でしたけれども、本当に無理ですかね、これもまた今度機会があれば徹底的にやらせていただきたいと思いますけれども、船体引揚げをとにかく希望されております。そして、地元長崎県議会の会派、改革21、あるいは県民の皆さんの多く、私も連休中ずっと県内回ってきました、県民の皆さんの多くが船体の引揚げを要望しております。  今回の行方不明者の多くには、日本の将来の水産業を担うべき二十代、三十代の方がたくさんいらっしゃるんですね。特にこういう人命にかかわる問題であるがゆえに、こういう声にきちっとおこたえするのが政治だと思いますけれども大臣、いかがでしょうか。
  52. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それはおっしゃるとおりでございます。  問題は、現行法において引き揚げるという場合に、非常にこういうお話をするとおしかりをいただくかもしれませんが、じゃ、その費用をだれがどのように持ちますかということは、それはやはり議論をせざるを得ないところだと私は思っております。  委員御案内のとおり、保険約款によりますれば、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律やあるいは海上交通安全法などに基づき、委員がおっしゃっているとおりです、海上保安庁等から撤去命令が出された場合には、沈没した漁船の引揚げ又は撤去した際に、これに要した費用について契約保険金額の範囲内で船主責任保険の支払が行われることになるということになるわけで、ですから先ほどの撤去命令のお話につながるんだと思っております。  これは海上保安庁長官でございますので、私から、それ出してちょうだいとか、出すべきではありませんとか、そういうことを申し上げる立場にはありません。海上保安庁長官がその権限に基づいて適切に判断をするものだというふうに考えております。  そうでない場合には保険の対象となりませんねということになります。そうすると、ではその会社が持ちますか、それはもう御家族の方が持つなどということはできませんから、金額的にも無理でしょう、それでは会社も持てませんということになった場合にどうなるか。結局、そういうような問題もそれは議論をせざるを得ないのだろうと思っております。  私どもとして、本当に誠心誠意、漁業者の方々の立場を踏まえて対応していかねばなりません。しかしながら、それではと、国が技術的に引き揚げる装備を持っていないということは今までの答弁があったとおりでございます。これは、海上保安庁にもそんな装備はございません、海上自衛隊にもございません。そうしますと、民間にお願いをする、大変巨額のお金が掛かる、そうしたときに国がそれを持てる仕組みがあるかといえば、今お話ししたように、そういうものに当たらないとせば一体どうなるのだろうかということになってまいります。  これは、事故防止という観点、あるいはそういうコストをだれが持つか、保険の設計をどうするか。本当に御家族の方々が安否を早く知りたい、早く引き揚げてもらいたい、そういう思いはもう百も万も分かります、私がそのお立場でもそう言うだろうと思います。それに対して、今回のことを踏まえて、新しくどういうような制度設計をしていくのかという議論は、もちろん農林水産委員会の場においてもさせていただきたいし、私どもでも検討していかねばならないことだと思っております。  ですから、こういう場合に、本当にそういう御家族の方々のお気持ちにこたえるような仕組みが今ないとせば、どういうものをつくるべきなのかという議論は、それは私どもとしてもやらせていただきたいし、考えていかねばならないことだと思っております。
  53. 大久保潔重

    大久保潔重君 大臣、私は人命にかかわる問題についてお考えをお尋ねしたんですね。大臣からは費用の問題と、こう来たものですから、少し私はがっくりいたしました。しかし、そうはいっても、現実的に費用の問題も大事ですよ。しかし、これは船主責任保険というのもあります。ただ、余り、これは民間が起こした事故だからといってその会社に負担を掛けて、その会社が倒産して今後漁業の営みができなくなれば元も子もないわけですね。  ただ、私が訴えたいのは、大臣も鳥取でありましょう。副大臣は新潟の佐渡だとお伺いしておりますよ。我が長崎県は、日ごろから巻き網漁船と沿岸漁民とのトラブルというのも絶えないわけですね。何でこのようなことが起こるのかということもしっかり現状認識、分析をされる必要があると思いますよ。それから、本当に荒れ狂う天候の中に危険を冒してまで操業しなければならない状況に今日の漁業者を追い込めている我が国の水産業の現状というのをどうとらえられているのか。そういうことも含めて、是非これは、それにつながる、この船体引揚げというのはその大きな要因につながることだと私は思っているんですね。是非お願いをしたいと思います。  それから、後々、不明家族の方々が船体を引き揚げないことに同意したなどとの報道がありましたけれども、これは事実に反しておりますよ。今も船体引揚げを強く望んでおります。我々にも強く嘆願をされました。会社を通して長崎県にも要請されると思います。長崎県の対応については今後県議会でも議論をされると思いますけれども、もし国に対して引揚げを強く求めてきたら、国はしっかり対応していただきたいと思います。石破大臣も四月十七日の日には、国としてできる限りのことをするのは当然との姿勢を示されております。是非その姿勢を貫いていただいて、その石破大臣の政治決断に期待するものでありますけれども、最後にお答えください。
  54. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 事故の原因については、今担当から答弁がございました。本当に引き揚げなければ分からないのかどうかというところは、ぎりぎりと検証することが必要だろうと思います。それは、知識のない者があれこれ言ってもそれは意味のないことです。知識のある者が本当にいろんな事故の前例、過去の経験あるいはいろいろなシミュレーションをやってみなければ分かりません。三角波についても、本当にコンピューターシミュレーションを行ってみて、その船の状況委員がおっしゃったように、どれだけの油を積んでいるか、あるいはそのときの速力、方向等々ございます。そこをもってしても原因が解明できないということであれば、引き揚げなければどうしても分からないということでありとせば、そういうこともあるのかもしれません。私は責任を持って申し上げる立場にはございません。事故の解明という観点が一つございましょう。  もう一つは、御家族の方々が引揚げを切に望んでおられる。それを仮に引き揚げるとした場合に、それはお金の話をするからがっかりするというふうなお話でございましたが、ではと、何があっても国がすべて持って引き揚げますといった場合に、求償権ということを御案内かと思いますが、それがどうなるか。納税者の方々に対して、そういうことが起こった場合に常に国が国民の税金においてそれを引き揚げるということになるかどうか。そのことについては精緻な議論が必要でございましょう。本当にそれは長崎県がどうお考えになるか、国としてどうするか、そこはちゃんとお話をしなければならないことでございます。  ですから、先ほど私は、そういう危険を分散するために保険という仕組みがある。ただ、この場合に、そうすると今度は保険料がどれぐらいになるか、国がどれぐらいのお金を積むか、そこは農林水産委員会等々で御議論をいただかねばならないところでございます。大臣としてこうすべきだああすべきだという考えはそれぞれございますが、そこは納税者の代表であります議会とよく御相談をしながらやっていかねばならないことだというふうに考えております。委員の所属しておられる政党が、あるいはその農林水産委員会等の場において、こういうような仕組みであるべきだと、こういうようにして納税者は負担をするべきだというふうな御議論がありとせば、それはもうきちんと承らねばならない。  私どもは、国民の立場に立ってどのような仕組みをつくるか、どのように納税者のお金を使うかということもちゃんとした上で、御家族のお気持ちにきちんとこたえるのが国の責任だと考えております。
  55. 大久保潔重

    大久保潔重君 石破大臣、過去に北朝鮮の不審船をもっと水深の深いところから莫大な予算を掛けて引き揚げていますよね。そのときには明確な理由があった、今回には理由がないというように受け取れる発言ですよ。  私は今、この限られた時間の中でるる議論を申し上げてきました。このやっぱり事故の背景にはいろんな要因があるんだということで、是非それはやっていただきたいと思いますし、これだけ霞が関の官僚の皆さん、有能なのにもかかわらず、知識がないとか技術的にできませんなんというのは、まさにふだんの努力を怠っていると思われてもおかしくないですよ。国民の皆さんには少なくともそのように今の発言、答弁は伝わったと思うんですね。是非しっかりとこの問題、対応していただきたいと思います。  時間も限られておりますから、私は、環境省ということでありますので話題をがらっと変えまして、エネルギー対策、いや、この第十一大栄丸については、もしまた機会がありましたら是非深い議論をさせていただきたいと思っております。話題を変えます。  エネルギー対策特会について、担当の方はいらっしゃいますですかね。これ、平成十九年度から石油特会と電源特会が統合してエネルギー特会になったわけですが、この支出の部分といいますか、エネルギー需給勘定における剰余金、これが平成十五年から十九年度まで毎年高水準で推移をしており、十九年度は三千十一億円となっております。予算額の見積りに過年度の実績を十分に考慮していないのではないかという会計検査院指摘もありましたけれども、予算額と実績額との間で乖離が生じ、不用額が継続的に発生して多額の剰余金になっていると、こういうことでありますけれども、この適正化対策についてお答えいただけますか。
  56. 小林光

    政府参考人(小林光君) 今、お手元に大久保委員からちょうだいいたしました資料がございます。こちらで私ども所管しておりますのはこの二番目でございます。エネルギー対策特会の環境省決算、ここの御指摘のことにつきましてまず答弁させていただきます。また、今御指摘のありました三千億といったような剰余金のお話、これはエネルギー特会全体の話でございまして、上田審議官が経済産業省から、ここにおりますので、また必要があればそちらからも答弁をしていただこうと思います。  まず、環境省の関係でございます。  御指摘のとおり、十五年度から環境対策、なかんずくエネルギー起源のCO2対策にこのエネルギー対策特会のうちから費用を支出するということになりまして、実はその後、環境省に割り当てられる、そして対策をしっかりやらなければいけないということで、予算額は十五年度から、お手元の表のとおりでございますが、十九年度まで大体七倍に増えてございます。私ども、その後を追っかけまして一生懸命この執行に尽くしてきているけれども、この数字にありますように四割弱の金額がなお執行できていない、執行額自身はやはり七倍増えているんですけれども、後追いになっているということの御指摘かと思います。  私ども、環境対策が遅れていますものですからそのCO2対策が遅れているということで、なかなか実際に対策が行われていない中でこの費用をしっかりと実施していただかなきゃいけないということで、八方手を尽くしておりますけれども、受皿たる自治体の環境部局、なかなか補助裏がない、あるいはやはり環境対策については意識が低いというような民間の方もいらっしゃいます。こういう中で私ども一生懸命その説明そして説得、技術的な指導、当たっておりますが、恐らく、反省すべきはそういったところがまだまだ足らないのかというふうに率直に考えてございます。  温暖化対策、ますます必要でございますので、そういったきめ細かい説明というものを、これ二十八の細かい事業に分かれておりますけれども、それぞれについて尽くしてこの執行率を上げていきたいというふうに考えてございます。
  57. 大久保潔重

    大久保潔重君 エネルギー特会全体についての多額の剰余金について質問したつもりなんですが、審議官は今日はいらっしゃっていないんですかね、資源エネルギー庁の、いらっしゃいますね。いや、答えてくださいよ。それを尋ねたんですよ。環境省の分は後で質問しますから。どうぞ。
  58. 上田隆之

    政府参考人(上田隆之君) お答え申し上げます。  お手元にいただいた資料で、確かにエネルギー対策特会エネルギー需給勘定におきましては、平成十九年度で約三千十一億円の剰余金というのが出ているところでございます。  この剰余金の出ている原因、剰余金の要因でありますけれども、いろんな要因があるわけであります。一つは、これ特別会計において歳入歳出両方あるわけでございますが、歳入予算を上回る歳入があったような場合、あるいは予算の効率的な執行により不用が立ったような場合等々、様々な場合があるわけでございます。会計検査院の方から、御指摘のように、その検査報告におきまして、エネルギー対策特別会計において過年度の不用額の発生要因を十分に見極めて歳出予算の見積りを行う際に反映させるなど、剰余金を減少させるよう御指摘をいただいていることも踏まえまして、私ども、特にその不用額につきまして適切な予算要求に最大限努力をしておるところでございます。  例えばこの平成二十一年度の予算におきましてはできるだけ合理化を行うということで、例えば国家備蓄石油の管理業務というのがございますが、これにつきましてできるだけ、不用があるわけですが、合理化することにより歳出予算額を減らす、あるいはガソリンスタンドの土壌汚染対策の事業につきましても不用を踏まえて減らしていくということで、できるだけ不用が出ないような形の見積りを行いまして、平成二十一年度の予算におきましてはこのエネルギー需給勘定で約二百九億円の削減を行ったところでございます。  今後とも、そういった不用の予算につきましては、発生要因というのを見極めながら適切な予算要求を行ってまいりたいと考えております。
  59. 大久保潔重

    大久保潔重君 今日、国民の皆さんの間でも問題になっている我が国の特別会計、一般会計と別の財布であると、そこに多額の剰余金が発生しているということなんですよ。これについて、特にこのエネルギー特会というのはその特別会計の中でも金額はでかいですよね、これ剰余金がね、でかいですね。ですから、それについてどうやって適正にしていきますかという一つの質問でありまして、その前年度の予算をベースに組み立てるんじゃなくて、やっぱり実績をしっかり分析しながら予算を作っていただきたいというふうに、このように考えています。  それから、先ほど環境省分、このエネルギー特会の環境省分、経済産業省分に比べたら金額的にはかなり小さくはありますけれども、これも皆さんのお手元にお配りしておりますけれども、十九年度の剰余金率、これは三九・三%、やっぱり高いですね。十九年度の予算額と比較しても、歳入決算額はすごく大きいんですよ。歳出決算は今度は小さいんですね。なぜこうなっているかということなんですね。もう少し詳しくお答えいただけますか。
  60. 小林光

    政府参考人(小林光君) 先ほどお答え申し上げましたところと少し重複するかと思いますけれども、歳入決算額、十五年度六十億から十六年度百四十四、十七年度二百八十五、そして十九年度四百四十九ということで、温暖化対策の必要性に応じて繰入れが行われている、そういった御配慮をいただいているというふうに思っております。それに対しまして七倍の歳入ということでございます。私どもも歳出の決算では七倍ほど伸ばしてはいるんですけれども、やはりこれだけの期待にこたえられて今いないというのが正直なところだと思います。  個々に見ますと、やはり事業ごとの執行率が悪いというものがあるわけでございまして、例えば一例を申し上げますと、廃棄物処理施設において温暖化対策をする事業、これはですから自治体の方の受皿といったようなことが問題になってまいります。それから、私ども総合政策局でも所管をしてございますけれども、学校におきましてエコ改修を進めて温暖化対策をすると。これもなかなかやはり受皿という問題がございまして、これも執行率が、むしろ執行できなかった率で申し上げれば、この数字で言いますとやはり三割を超えるといったような状況になってございます。  私ども事業の必要性については本当に大事な事業だと、温暖化対策しっかりやらなきゃいけないということについては本当にそう思っておりますけれども、やはり技術的な指導力、あるいはそういった補助裏を手当てするために地元で頑張ってくださる方々への支援といったようなことがまだ足らないのかなというふうに思っております。ここにありますように、歳出決算額についても過去七倍増やしてきたという実績がございます。今後、この歳入額はそう増えるという時世ではないというふうにも思ってございます。御査定を賜りつつ、また歳出の方は少しペースを遅くはしておりますが追い付いてきているという努力も評価をしていただいて、頑張らせていただきたいというのが正直な気持ちでございます。
  61. 大久保潔重

    大久保潔重君 この特別会計には多額のお金があるということです。もちろん、しっかり無駄を省いて、要らないものはやる必要はないんですけれども、ただ、私は環境省を一応会派で担当させていただいておりまして、昨今の地球温暖化に向けた取組を全世界的にやらなければいけないというときにあって、例えば平成十五年から特別会計の見直しで、歳入構造の見直しでは電源開発促進税というのはずっと十九年度までほぼ減税されていますね。ところが、一方の石油石炭税というのは軒並み増税されていますね。  一方、歳出構造の見直しにおいては、その石油石炭税を財源とするエネルギー需給勘定の中で、例えば石油備蓄などの燃料安定供給対策の費用というのは、平成十五年約三千九百億円から平成十九年度の二千六百億円、かなり減っています。一方の非化石エネルギーの開発、利用促進のためのエネルギー需給構造高度化対策費用というのは二千三百億円、平成十五年、平成十九年には二千七百億円と約四百億円ぐらいしか増えておりませんね。  ここを見るからにしても、環境省が本当に地球温暖化対策に本気で取り組むのか。そう見れないんですね。我々は本当にやるんだったらしっかりそれを支持して支えたいと思いますが、いかがですか。
  62. 小林光

    政府参考人(小林光君) もう御指摘のとおりでございまして、このエネルギー対策特会におきまして、例えば石炭についての増税をというか、それまでは非課税でございましたけれども、税金を掛けさせていただく、そして各いろんな燃料の負担割合を変更するというようなことを行いまして、そして温暖化対策に、原因をつくっている、環境負荷を出している方々の費用負担を求め、そしてその環境負荷を減らす、二酸化炭素を減らす事業の方にお金を投資していくというのがこの特会の改革の趣旨だったわけでございます。それはもう今、大久保委員指摘のとおりだと思います。  その流れに沿ってもっともっとやっていかなきゃいけないというのは、もうそのとおりでございまして、私ども、せっかく納税者からいただいた、そして環境負荷に着目した税金ということになってございますので、私どもとしてはその執行をしっかりやっていきたいというふうに考えてございます。
  63. 大久保潔重

    大久保潔重君 エネルギー需給勘定のうちエネルギー需給構造高度化対策ということであります。  やっぱり国の政策というのは、その時代時代、背景にあって必要な政策をやっぱり打っていかなければいけないと思いますし、まさにこの高度化対策というのは今の時代に、あるいは国際的に求められている政策だと思います。  そのほとんどが経済産業省の所管でありますけれども、是非環境省がもっともっとリーダーシップを取ってやっていただきたいと思いますし、経済産業省と環境省との間での各担当の方の事業の調整とかあるいは連携というのは、具体的に何か図られていますか。
  64. 小林光

    政府参考人(小林光君) 事その環境保全に関しましては環境省がリーダーシップを発揮しなきゃいけないというふうに考えてございまして、額の大小によらずいろいろ経産省とは議論を本当にしているところでございます。  いろんなチャンネルがございますけれども、例えば特会をどういうふうに使うか、あるいは日ごろの行政でございますけれども、環境基本計画の改定、あるいは目標達成計画の改定、あるいはそのフォローアップというようなことで日ごろも非常に激論を闘わせていると、そしてなるべく一致したところを実行していくということをしているところでございます。  確かに執行率は悪いので申し訳ございませんけれども、そういうことで引き続き頑張らせていただきたいというふうに思っております。またいろいろ御指導賜ればというふうに考えております。
  65. 大久保潔重

    大久保潔重君 是非しっかり連携をして、もっと私はリーダーシップを取っていただきたいと思いますし、例えば環境省分のCO2排出抑制対策、予算額でいうと、平成十九年度が三百三十七、二十年度は四百二億、平成二十一年度は四百二十億、微増しながら事業を打ってこられております。  その中でも、例えば京都メカニズムを利用したクレジットの取得事業、あるいはコーベネフィット実現支援事業、こういったところを私は大変評価していますよ。それから、運輸部門や廃棄物処理施設におけるバイオマスの利活用など、これまた私、評価しています。  ただ、その一方で、例えば太陽光、ソーラーシステムの更なる促進、あるいはスローガンは太陽光発電世界一奪還なんと言っておりますけれども、それに向けた意気込みというのは余り事業の中では感じられないですね。是非強くそれを求めていただきたいと思いますし、バイオマスでいいますと、地域に即したバイオマス資源の総合利活用システムを構築するために実はバイオマスタウンというのがあります。これ、この間、環境省の担当の方に聞いたら余り御存じない。これ農水省がやっていることですからと、そういう対応でしたですね。大臣いらっしゃいますけれどもね。これは関係七府省でやっているんですね。環境省はしっかり入っていますよ。例えば、農水省が主導しているバイオマスタウン、それから国交省が主導しているコンパクトシティー、これを有機的に連携させてやるということは、まさに脱温暖化と循環型社会で持続可能な今後の都市をつくっていくという意味では非常に注目できる事業だと思いますので、やっぱり環境省がしっかり力を発揮していただきたいと。  最後、お答えあればお答えしていただいて、私の質問を終わります。
  66. 小林光

    政府参考人(小林光君) 大変良い御指導を賜りまして、ありがとうございます。  ここの、今バイオマスタウンの話、それからコンパクトシティー、こういったことにつきましては、やはり自治体がその事業の受皿ということになろうかと思います。私ども、リーダーシップを取って自治体と一緒になってやっていきたいと思っておりますが、昨年の法改正におきまして、温暖化対策推進法で自治体が実行計画を作らなければいけない。その中で、今御指摘の再生可能エネルギーをどういうふうに拡大していくかというようなこともきっちりと計画に書いていただくということになっております。  そういうことで、その計画を実行する私ども裏打ちということで、御指摘いただきましたエネルギー特会も含めて対策を総動員してやっていこうというふうに考えてございますので、大久保委員からそういう担当がよく知らないじゃないかというような御指摘、そしりを受けないように頑張って、教育も含めて取り扱っていきたいというふうに考えてございます。  ありがとうございます。
  67. 大久保潔重

    大久保潔重君 終わります。
  68. 家西悟

    委員長家西悟君) 午後一時十五分に再開することとし、休憩といたします。    午後零時三十三分休憩      ─────・─────    午後一時十五分開会
  69. 家西悟

    委員長家西悟君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十九年度決算外二件を議題とし、農林水産省環境省及び農林漁業金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  70. 川上義博

    川上義博君 まず、決算委員会の理事並びに委員の皆様方には、こういう機会を与えていただきまして心からお礼を申し上げたいと思います。  午前中の質疑で、大久保さんの答えで大臣は漁業者の生活と安全を守る義務があると、こうおっしゃいましたですね。  山陰沖漁業のことについて質問しますけれども、新協定が発足して大体約十年になるんですね。その間、日韓の共同委員会でほとんどその資源管理のことについて、特に暫定水域のことについて協議がなされてない、たまに小委員会で協議がなされる、あとは現場に協議は丸投げしていると、実態はそうなんですね。  そこで、この十年間でこの日韓の漁業協定が本当に進展したのかどうか、それは大臣の認識を是非、最初にお伺いしたいと思います。
  71. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員は、県議会時代あるいは国会におかれましてもこの問題に深くかかわってこられました。経緯等々はよく御認識でございますから、繰り返すようなことはいたしません。  暫定水域についてでございますが、これも御案内のとおりで、韓国側は韓国の国内事情というものがあって協定に基づく政府間での協議というのはやらないということで、ずうっとそういう状況が続いているわけでございます。それで、これではどうもらちが明かないねということでございまして、暫定水域においては平成十二年から日韓両国の漁業団体の代表による民間協議という場に移っております。  この民間協議の場ですが、十九年からの隠岐北方漁場の交代利用の合意に基づく操業の実現、そのような成果を得てまいりました。漁業者同士が実情を踏まえ、直接に意見交換を行う、そういう場として有効に機能してきたというふうな認識を私は持っておるところでございますが、さはさりながら、じゃ政府は何もしなくていいのと、委員のお言葉を借りれば丸投げじゃないのというような御批判をいただくことがあるわけでございます。  私どもとして、平成十九年よりこの両国政府、日韓両国政府が民間協議に積極的に関与をしなければいけないということ、そして昨年の暮れには、政府と民間との一体的な交渉が行えますよう、漁業者代表が政府間協議へも参加をするということにつきまして日韓両国で具体的な議論を行うということにしたわけでございます。  私は丸投げというつもりは全くございませんで、この長い経緯を経て、政府政府ということではなかなか実情が分からない、あるいは政府としてはこう言っているんだけれども民間の団体が必ずしもそれに応じてくれない、それで非常に交渉が進まなかったという経験をしてまいりました。したがいまして、民間対民間なんだけれども、そこにおいて日韓両国政府が適切に関与をするということ、あるいは政府間の協議の場にも民間団体を入れる。やはり官民どっちかがエクスキューズをして、おれたちは知らないと、ちゃんと言っておいたんだけどやってくれないというようなことがないように、この民間、そして政府の関与の仕方、そのことを有機的に今後も進めてまいりたいと思っております。
  72. 川上義博

    川上義博君 最初に、新協定ができたときに国会承認あるんですよ。これは、共同委員会というのは政府間で交渉するんだという大前提があるんですね。だから、途中で民間を入れたというのは、これは現場サイドで、小さな細部の現場の漁場で何かトラブルがないようなというそういう話なんですよ、民間というのは本来。外交交渉というのは政府がやるべきものでしょう。だからそれをずっと怠ってきたというのは政府、責任あるんじゃないですか。
  73. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、事実として交渉がなかなか我が国の漁業者の方々に得心いただけるようになっていない、事実としてそれはそのとおりです。私もそれは認めます。そしてまた、それで政府に責任はないのかと言われれば、全くありませんなぞという開き直りを申し上げるつもりもありません。  ただ、私もずっと政務次官あるいは総括政務次官としてこのことに関与してきましたが、日韓で議論をするときに、政府はそうなんだけど民間がなかなかねと。韓国のいろんな事情もございます、これは委員御賢察のとおりです。そういうことで、交渉が政府の間では何となく進展したように見えて、民間段階に行くと全然進まないというようなことも長い間の経緯の実情としてございました。  ですから、民間に丸投げして政府が関与しないということを私は申し上げているのではありません。そしてまた、我が党におきましても御党にしてもそうだと思いますが、常に民間と政府との関与の在り方というのは、議論をしながら、民間でここまで進んだと、じゃ政府は総理が向こうの大統領に、あるいは農林水産大臣は向こうの水産の責任者に、あるいは事務方レベルにおいても、先般もいろんな交渉を行ったところですし、また行うつもりもございますが、そこの政府と民間とのうまい具合の役割分担を行っていくことが政府、民間がお互いにエクスキューズをし合わないというような姿を実現するのではないかと、私はそのように思っておりますが、政府としてまだ努力が足りないという御指摘でございますので、今後とも更なる努力はしていかねばならない、民間に投げっ放しということじゃなくて、我が水産庁におきましても、私自身もそうですが、民間の交渉に行っておられる方々と常に連絡を取りながら、こういう方針で臨みたいということを日本側としてきちんと確定をしながら交渉に臨んでおるものでございます。
  74. 川上義博

    川上義博君 いや、民間は民間の役割というのがあるんですよ。そうでしょう。民間の役割というのは否定していませんよ。  ところが、政府はその間、十年間何もしてこなかった、実質的に。だから暫定水域で締め出しに遭っているんじゃないですか。そして、EEZ内で違法操業されて漁具が、韓国の、沿岸国の漁具が放置されているんじゃないですか。そういう現実があるということを認められないんですか。政府政府の役割があるんじゃないですか。  実際、自民党のいろんな議員連盟とかの中で石破さんも自らおっしゃっているんじゃないですか、ここに。向こうに漁具を送り返す、このままでは駄目だと。新たな日韓交渉の枠組みを考えなければいけないとおっしゃっているんじゃないですか。進展がないという裏付けでそうおっしゃっているんでしょう。そういう認識があるからこんな話になるんでしょう。新たな枠組みって何ですか。
  75. 石破茂

    国務大臣石破茂君) どうもお答えの仕方が十分でなくて恐縮でございますが、今申し上げましたように、民間に投げっ放しということではないと。民間の方々ともよく議論をしながら、ここまで議論が進んだと、しかしながらこう言っていると、じゃどうしようかということは、民間は民間の考えだけでやっているわけではございません。政府もそれにいろいろな、助言と言ったら言い方おかしいですね、共に一体となりながら、しかし場としては民間同士の方が、先ほど来申し上げていますように、でも民間団体が言うこと聞かないんだもんねということがないように民間対民間、それに政府が適切に関与をしていくということがよりよいのだろうと。では、新しく何をやったのだというふうな御指摘でございますから、それは政府政府との間に民間の団体の代表も入って議論をする。  先ほど我が党における議論についての私の発言について御指摘がございました。そういうふうに、漁具というものが放置されていることによって漁民というものは非常に迷惑をしていると。じゃ、これは引き取ってくださいというようなことについて、それは民間だけで十分ではない場合もございます。そういう場合には、政府としてきちんと乗り出し、ガバメント対ガバメントでやっていく、それを適切に組み合わせていかねばならないということでございます。  何もやってこなかったではないかという御指摘でございますが、そういうことはないというのは冒頭の答弁で申し上げたとおりでございますけれども、更に交渉の実が上がるように努力をしていかねばならないというのは御指摘のとおりでございます。
  76. 川上義博

    川上義博君 いや、だから要するに新しい枠組みをつくらなければいけないと、その枠組みは何ですかって聞いているんですよ。外務省と連携した新しい枠組みとおっしゃっているんですよ。外務省と話したことがあるんですか。  いやいや、大臣ですよ。大臣がそうおっしゃっているんだから。
  77. 石破茂

    国務大臣石破茂君) じゃ、新しい枠組みは何かというお話でございます。少し長い答弁になりますが、お許しをいただきたいと思います。  十二月に日韓漁業共同委員会というものを開きました。三つの提案を私どもから韓国側に行っております。  まず第一として、暫定水域における資源管理について、日韓漁業協定に基づき政府間での協議を行うこと、これが第一。第二は、韓国漁船の違法漁具の回収・処理費用を韓国側が負担をすること、これが第二。第三は、政府と民間の一体的な交渉を実現させるため、共同委員会の下部機構に漁業者代表を参加させる、この三つを韓国側に対して我が政府として強く求めたということでございます。  しかしながら、二月に行われました政府間協議におきましても最終的な結論は得られなかったわけでございまして、私どもがしておりますこれらの提案について、次の漁期の操業条件等を協議する共同委員会が来年一月に開催されることになりますが、そのときまでに合意を得るべく新たなルートで韓国側に働きかけていきたい、様々なルートを使いまして韓国側に働きかけていきたいと思っております。  ですから、資源管理、そして漁具の回収・処理費用の問題、そして漁業者代表を下部機構に参加をさせる、そういうことを私どもとしては提案をしている。新たな枠組みというのはそういうことです。
  78. 川上義博

    川上義博君 新たな枠組みでも何でもないんじゃないですか、今の。今までやってきたことの練り直しじゃないですか。それで実際実効が上がらないから要するに進展がないということじゃないですか。全然相手からも回答ない、それがずっと繰り返してきているというのが現状じゃないですか。新しい枠組みをつくるんだ、大言壮語されたからにはやるべきでしょう。  もう一つ、そういうことを繰り返して十年間やってきて、被害というのは日本に相当要するに国益の毀損があるんですよ。漁具の回収もそうでしょう、その費用も。焼却もそうでしょう。全部日本が負担してやっているんじゃないですか。そのことについてどう思います。被害があるのか、被害額はどのぐらいに上がるのか。それをはっきり言ってもらわなくちゃ困りますよ。
  79. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 委員がお考えの新たな枠組み、これがあるべき姿だというのはこういうものだという御提案があれば是非承りたいと存じます。私どもとしては、どうやって一歩一歩着実に進展をさせていくかということが極めて重要だと思っております。  何度も同じことを申し上げますが、今まで政府政府でいろんなことをやってきました。これは、委員もいろんなスタッフとしてかかわってこられて、つぶさに見てこられたとおりのことでございます。実際に、政府は分かったと言いながら、現場に下りてみるとうまくいかない、そういうことがずっと積み重なってきた。したがって、民間対民間、漁業者対漁業者、そこできちんとした話合いをしていくということが必要ではないかということが、この民間対民間でこういうことをやっておるゆえんでございます。  新たな枠組みでも何でもないではないかというお話でございますが、そこは漁業者を政府政府の交渉の場に参加させる、これは今までこういうようなやり方はやったことがございません。これだけでも私は大きな進展だと思っています。政府と民間がお互いに協調し合いながらこの管理をどのようにしていくかと、お互いに資源管理によって得るべき利益というものをどうやってお互いに享受するかということの話合いは、この二つの適切な組合せによってなされるものだというふうに私は確信をしておるところでございます。  被害はどうかというお話でございます。  我が国のEEZ内におけます韓国漁船によります被害、負担経費としてはこのようなものが考えられる。第一に韓国側漁船の違法操業による漁獲、第二に違法に設置した漁具による我が国漁船の漁具被害、第三点として韓国漁船による廃棄漁具の回収・処理経費、そして四番目は、これは負担経費という観点でございます。漁業被害には必ずしも入りませんが、違法操業の取締り経費、こういうものが考えられるわけでございます。  暫定水域内におきましては操業条件、取締りでは旗国主義の下で行われておりまして、両国の漁獲割当て等はございません。しかしながら、韓国漁船により海底に広く漁具を敷設した漁業、カニかご等が行われておりますため、事実上韓国漁船に漁場を独占をされ、我が国漁業が被害を被っているということでございます。  韓国漁船による廃棄漁具の回収・処理経費につきましては、十一年度から二十年度まで十年間の合計で約七十三億円を定額で助成をしたところでございます。  また、違法操業の取締り経費につきましては、私どもの負担として、十一年度から二十年度までの十年間で合計九百三十九億円要しておるところでございますが、これは、韓国漁船のみを対象とした経費はどれだけということで申し上げることはできません。韓国漁船の違法操業による漁獲金額や我が国漁船の漁具被害等につきましては、違法操業の全体像がどういうものなのかということが明確ではございませんので正確に幾ら幾らということは申し上げられませんが、我が国にとって大きな負担となっておるということは事実でございます。  ですから、幾らなんだと言われて、幾らですということをきちんとお答えできるだけのそういう前提がございませんので、かくかくしかじか、こういうわけでと、いろんな仮定の前提を置いて計算をすることになりますから、前提の置き方によって数字が随分変わってまいります。しかしながら、この違法操業ということによって我が国が大きな損失を被っているということは申し上げることができます。
  80. 川上義博

    川上義博君 今、七十数億円とかいう数字、初めて聞いたんですけれども、それは漁業の直接補償ですか。直接補償じゃなくて、要するに回収費だとかあるいはそれを処理する費用だとか、そういったものを基金の中で使っているということですかということが一つ。  それから、今、民間協議にゆだねるんだというまた話があったんですけれども、民間の皆さんは、新聞にも出ていましたけれども、こうおっしゃっているんですよ。民間協議に体を張って交渉しているが、もはや解決できる状況ではないと。政府が一体となった、要するに海保とかあるいは外務省とか、一体となった対応をしてほしいんだと。民間ではもう既に対応ができないんだと言っているんじゃないですか。できないと言っているのにまだ民間民間と言うんですか。民対民に任せると逃げるんですか。どうなんですか。
  81. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、新聞で出ておる記事がどなたがどのようにおっしゃったのかということを私、詳細に存じません。私どもはそういうような責任者の方々と常日ごろから協議を行っておる、この一週間の間にも私、何度かお話をいたしました。その方がもう民間ではやれないので政府がやってくれという御発言を、責任者の方から私は承ったことがございません。仮に、どなたかは存じませんが、そういうことをおっしゃっておられる方がおられるとするならば、それは私どもとして真摯に受け止めていかねばならないところでございます。  ですから、政府、民間団体、これが一体となった取組をやっていく、お互いが役割分担の下に最もよく交渉の実が上がるようにやっていくということでございまして、民間の方がそうおっしゃっておられるということであれば、私、また御教示をいただきまして、責任者の方に、どなたがどういう御認識でそのような御発言をなさったのかということはきちんと確認をしてみたいと存じます。  それから、先ほど初めて聞いたというお話でございますが、十年間の合計で七十三億円、これは定額で助成をしたところでございます。直接補償とかそういうようなカテゴリーではなくて、定額の、掛かった経費に対する助成という性質のものでございます。
  82. 川上義博

    川上義博君 今、ある民間の人が、聞いたことがないとおっしゃっているんですけれども、聞いたことあるんじゃないですか。山陰沖漁業対策の場面で何度も何度も、政府はしっかりしてほしいという発言をしているじゃないですか。私も前職のときにそんな話、何度も聞きましたですよ。聞かれてないはずないでしょう。政府がしっかりしてほしいということを何度もおっしゃっているんですよ。我々じゃ限界があるんだと、民間は。そういうことをおっしゃっているのを聞かれているはずなんです。  それから、暫定水域においている資源管理、この資源管理の責任というのは政府にあるんじゃないですか。海洋法条約なんかもそうでしょう、国連の。政府に責任があると、これは責任を持って取り組む必要があると。こういう国連の条約にあるんじゃないですか。それを暫定水域で全くもって何もやられてないと、実質的に何もやられていないというのはおかしいんじゃないですか。
  83. 石破茂

    国務大臣石破茂君) いや、ですから、そういうお声は聞いています。ですから、政府はしっかりしてほしいというお話と、今の民間対民間に政府が適切に関与するというやり方をやめてもう一度政府政府に戻せというのとはお話が違います。ですから、政府がどのようにして関与をしていくか。適宜適切に政府が向こうの政府に対して物を言うということは、それはやっていかねばなりません。それはそうあるべきだということは、私は党の会議でも発言をいたしました。しかしながら、それが今の枠組みは全部やめてもう一度戻せというふうに、そういうような御主張があったというふうに私は少なくとも承知をしていないところでございます。  繰り返しになりますが、なぜこの民対民という枠組みに政府が適切に関与するように、そういうようなやり方に変えたかということはそれなりの理由があってのことでございます。これから先、全くやり方をもう一度元に戻すということであれば、それは韓国側ともよく議論をしながらやっていかねばなりませんし、もう一度民間団体の方々に、あなた方の御発言は今の枠組みを全部もう一回元へ戻して政府政府ということでやれと、こういうような御主張でしょうかということは、それは確認はいたしてみたいと思っております。  それから、国連海洋法条約のお話がございました。国連海洋法条約の解釈につきましては、当たり前のことでございますが、この有権解釈は外務省が持っております。ですから、これは本来的に、もちろん政府一体でございますから、そういうような、外務省だからということを言うつもりはございませんが、外務省にお尋ねをいただければというふうに考えておりますが。  暫定水域におきます韓国の資源管理の対応が国連海洋法条約に違反をしているかどうかということは取りあえずおくといたしまして、国連海洋法条約は条約の前文で、海洋生物資源の保存を促進するということが前文にございます。これを念頭に締結をされておりまして、その趣旨からすれば、暫定水域における資源管理について適切に実施をしていかねばなりません。  国連海洋法条約と暫定水域及び韓国の資源管理の対応の関係として、私の理解は以下のようなものでございます。  まず第一に、国連海洋法条約におきましては、第五部におきまして、五十五条から七十五条まで、排他的経済水域に関する規定を置いております。このうち、生物資源の保存につきましては六十一条第二項でございますが、沿岸国は排他的経済水域における適正な保存・管理措置を確保する旨規定されております。他方、七十四条におきまして、近隣国の間での排他的経済水域の境界画定について規定しておりますが、その三項で暫定的な取決めを締結することができると書いております。この暫定的な取決めにおきまして、生物資源の保存・管理措置を規定すべきか否か、またどのように保存・管理措置を行うかについてはここに明確な規定がございません。  ですから、日韓漁業協定の暫定水域は七十四条三項の暫定的な取決めに該当するものでございますが、生物資源の保存・管理措置について何も明確に書いてありませんから、直ちにかくかくしかじかで国連海洋法条約違反だということが言い得るかというと、明確にこういうようなことが決められていますよ、それにあなた方は違反しているじゃないですかということを条約に基づいて断言できるかどうか、これはよく検討をしていかなければいけない問題だと思っております。
  84. 川上義博

    川上義博君 海洋法違反というのは、共同管理責任というのは、暫定水域というのは共同管理責任が義務がありますよと言っているわけですから、義務を履行しなければいけないでしょう。  じゃ、しからば、EEZの中で違法操業をしている証拠が挙がっているわけですよ。EEZ内においての海洋法違反は明確にやっているんじゃないですか。当たり前じゃないですか。それについてどのような対応をしているんですか。
  85. 石破茂

    国務大臣石破茂君) ですから、先ほど来申し上げておりますように、海洋法条約違反、これは法律ではなくて条約でございますから、条約がある、その条約に基づいて国内法が定められる、それによってかくかくしかじか、かくなることがということが定められ、それによってあなた方は違反をしていますねと、こういうような漁のやり方、こういうような漁の時期の設定、だから違反ですよねという言い方をするというのが通常のやり方でございます。  ですから、先ほど気を付けて答弁をしたつもりでございますが、国連海洋法条約の中に、七十四条三項にどのように保存措置を行うか、管理措置を行うかということが具体的に書いていない。これは、委員も国際交渉の現場に出られたことが何度もおありかと思いますが、違反しているじゃないか、では一体どの条項に違反をしているか。それは、きちんとした保存をしなければいけない、管理措置を確保しなければいけないということに違反をしている。では一体どのことなのかという具体的に向こうから言われた場合に、この条項、この条項、この条項ということをきちんと言えるだけのものが今我が国にあるかといえば、それはそうではない。しかしながら、そういうような操業を行うことによって資源状態が悪化をしているわけですから、暫定水域内の取決めというのをきちんとやらねばならないということは再三再四我が国から申し上げているところでございます。  それは私自身、かつてこういうような暫定水域というものができたときに、そういうものをきちんとやらなければ駄目だということは私は役所の中で申し上げました。それの実現が早かるべく、今後も最善の努力をしなければいけないと思っておりますが、海洋法条約いかんということをすぐ直ちに言い得るかというと、今まで申し上げたようなことで、おたくは海洋法条約違反ですねということがきちんと言えるだけの、そういうような条約の構成になっていない。御案内のとおり、海洋法条約というのはかなりあいまいな部分というのが残してある。そうでなければ、あの海洋法条約というのはできなかったという経緯も御案内のとおりでございます。ですから、そこをきちんと詰めていくために二国間の更なる努力が必要だということになるのだと思います。
  86. 川上義博

    川上義博君 それは、海洋法条約がきちんとなっていないということ自体、前提がおかしいんで、じゃ、今まで暫定もEEZもすべて別にやる必要ないんじゃないですか、きちっとなっていなければ。  ただ、もう一つ、大臣に就任された後にいろんな新聞のインタビューで、この協定ですね、先ほど言った協定の明確化、この明確化というのはよく分からないんですけど、協定の明確化について両国は努力しなければいけないと、そのような発言をされておるんですね。協定の明確化、これは協定が明確化されていないという認識なんですか。あるいは新たに協定を作り直す必要があるということなんですか。境界線を画定しなければいけないということなんですか。この明確化というのはどういうことなんですか。
  87. 石破茂

    国務大臣石破茂君) ちょっとおっしゃる御趣旨がよく理解できなくて恐縮なのですが、海洋法条約があいまいじゃないか、それはおかしいじゃないかとおっしゃいますが、それは海洋法条約の審議のときに委員国会におられたかどうか私よく存じませんが、あのときにさんざん審議はいたしました。あの中で、ここの部分はどうなんだということの詰め、それは必要だという議論もいたしました。しかしながら、あの国連海洋法条約というものが今でも入っていない国がたくさんございます。そこをぎりぎりと、例えば今の管理の方法、保存管理措置、そういうことを明確に条文化した場合に、それでは自分は入らないという国がたくさんあったわけでございます。事が事だけにそれぞれの利害が正面からぶつかりますから、あえてそういう部分をあいまいにした部分がこの海洋法条約というものにはございます。  そこをどのようにして両国間で詰めていくかということが、日韓のみならず、多くの国の水産資源の管理の場でいろいろな議論になり、それでは国連海洋法条約というものはそうなのだと。しかしながら、あなたの国はきちんとやっていない、では、国際裁判に持っていくかということになったときに、じゃ、国際裁判は両方がオーケーしなければ出られないということも委員御案内のとおりでございます。ですから、交渉をどのようなスキームでやるのが一番いいかということにおいて、それぞれの国が最大の努力をしているということだと思っております。  それから、協定の明確化というお話でございました。それは明確にしていかねばならないものはたくさんありますが、特に私は、この暫定水域内の取扱いというもの、漁の時期あるいは漁の方法、そういうものについてきちんとした定めがございません。したがいまして、暫定水域内においてある意味でやりっ放しみたいなところがある。やはり、暫定水域において資源管理というものを旨として、どのようにして漁のやり方というものをお互いに合意の上で資源の保存を図っていくかということについてきちんとクリアにしていかねばならないというのが私の問題意識でございます。
  88. 川上義博

    川上義博君 だから、政府間同士がそういった方法のことについて、資源管理のことについてしっかり議論しなければいけないということでしょう。それをやっていないということなんです。十年間何が進展しているんですかということにつながっていくんですよ。それは認めて、多分普通だったら認められるんですけどね、一生懸命やっているということなんですか。  それからもう一つ、日本の漁業者に損害が生じても補償しないというのは国家のあるべき態度ではないということもインタビューでやられているんですね。それは要するに、損害が生じているというのは明確に認識されているということでこういう発言になっているんじゃないですか。それは認められますか。
  89. 石破茂

    国務大臣石破茂君) どうも私の言い方が悪いのかもしれませんが、何もやってないじゃないか、何も進展がないじゃないかとおっしゃられれば、そうではございませんというふうに申し上げざるを得ないのでございます。しかしながら、それを十分にやっているというふうに開き直るなと言われれば、そういう開き直るようなつもりはございません。更にもっと密接にやっていかねばならないし、これは私、谷大臣の下で総括政務次官しておりましたが、そのときに谷大臣が本当に任期といいますか、御在任の本当に最終局面であったと思います、韓国側といろんな交渉をなさっておられたのを私は目の当たりにいたしましたが、やはり政府としてもっと乗り出さなければいかぬ、そういう場面があれば乗り出していかねばならないものだという認識は強く持っております。  漁業者の方々がこれで十分だと思っておられるなぞというのは、私も鳥取県選出の議員として全く思っておりません。そういう方々政府はまだ十分ではないというおしかりもいただいておるわけでございまして、政府としてはもっともっと役割を果たしていかねばならないという思いは恐らく委員と共通だろうと思っております。  それから、損害が生じているではないかということでございます。それは竹島の近海に全く入ることができないという状況がございます。それによって我が国の漁業者が損害を被っているというよりは、得るべき利益を逸している、逸失利益という言い方が正しいかどうかは存じませんが、そういうことでございます。そこへ入れない、そこは我が国の主権が及ぶところである、そこにおいて本来我が国の漁業者が漁をし利益を得られるにもかかわらず、国際交渉がうまく進展をしないのでということを考えたときに、そこにおいて漁業者が被っておるいろいろな不利益というものについて政府はよく配意をしていかねばならないということを申し上げたものでございます。  それが一体幾らで、どれぐらいを払うべきなのか、これは北方領土等の議論とも相通じるところがございますが、それでは、それに対して政府が補償をするというような、そういうような段階にまだ私はないと思っております。領土交渉は領土交渉としてきちんとしていきながら、我が国の固有の領土である竹島、そしてそこが実効支配されているという現実、これをどうするかというのはまた外務委員会等々で議論をしなければいけないところでございますが、そこにおいてどうやって漁業者の正当な利益を確保するかというときに、本来漁業者が得るべき利益というものをどう考えるかということはよく念頭に置かねばならないということを申し上げたものでございます。補償をするのが当然というようなことを申し上げたわけではございません。
  90. 川上義博

    川上義博君 時間が来ましたけど、最後にもう一点。あれやこれや今、言い訳されていますけど、実際問題、放置の漁具が減っていないんですよ、まだEEZ内で。増えているんですよ、逆に。それでちゃんと適切な処理をしていると言うけれども、それは言い難いですよ。  それから暫定水域、この中の、極端に言いますと、カニ一杯、魚一匹いなくなっているというじゃないですか。それはもう乱獲で政府が何ら対応していないということじゃないですか。そういうことを現実にあるということを念頭に置いて、やっているんだという言い訳は大変詭弁ですよ、それは。
  91. 家西悟

    委員長家西悟君) 質問をまとめてください、時間が来ていますので。
  92. 川上義博

    川上義博君 分かりました。  そういうことで、もう一回やりますけど、何か御意見があったら、今の、答えてください。
  93. 家西悟

    委員長家西悟君) 石破農林水産大臣、時間が来ておりますので簡潔にお願いいたします。
  94. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 時間が来ておりますので、ほかの質疑者に御迷惑をお掛けをしてもいけませんから、委員の御指摘にまた次回お答えをするようにいたしたいと思っております。  しかしながら、先般も民間協議を行ったところでございますが、釜山で行いました暫定水域における漁場清掃の実施についての具体的な議論、これが大幅に進展をいたしております。あるいは、私どもが提案をした浜田沖の操業実現に向け、韓国側から最大限の努力をするという今までにない発言が出てまいりました。  暫定水域におきます我が国漁船の安定的な操業を確保する上で、私どもはこういうような民間協議というものが重要な役割を果たしたというような認識は持っておるところでございます。昨年十二月には、韓国側による減船計画の円滑な実施、あるいは漁場清掃事業の拡大、両国連携しての実施、この合意も見ておるところでございまして、この枠組みが更に実効を得られますよう努力をしてまいりたいと存じます。
  95. 山田俊男

    山田俊男君 自由民主党の山田俊男であります。決算委員会は初めての出席でありまして、行儀作法がよく分からないというところでありますので、どうぞよろしくお願いします。  石破大臣は各方面におきまして大活躍で、とりわけ難しい問題を大変抱えておられるというのを今日の今の場面でもよく承知したわけでありますが、私の方は、日ごろ農林水産予算とそれと決算につきましていろいろ疑問なり感じておりますことを中心にしながら質疑をさせていただきます。  私が一番心配しておりますのは、これは、私が今資料を配りました一ページの資料でありますけれど、ともかく農林水産予算が年々低下しているということであります。この最初のページの資料を見ていただきましても、二十年度は補正でどうにか前年を上回っているわけであります。また、二十一年度も補正が成立すれば前年を上回ることになるわけでありますが、傾向的に大きく下がっているわけであります。  続いて、二ページの資料を御覧になっていただきますと、これは平成元年から平成二十一年までの資料でありますが、平成五年を一番頂点にしまして、二十一年度は額でも半減していることになります。いずれにしろ、この近年の様子は、大変大きな低下の傾向を示していることになります。国全体の一般会計歳出に占める割合も、これ、平成五年の六・一三%が二十一年度予算では二・八九%へとまさに半減していることが見て取ることができます。  次の三ページにありますように、国の全体の歳出の内、一般会計歳出に占める国債費や地方税交付金ですね、この割合が増えてきているということがあるものですから、全体としてそういう面では一般歳出が抑制されてきているわけであります。しかし、それにしても、国債費や地方交付税交付金を除いた一般歳出の中に占めます農林水産予算の割合も、これは平成五年の一一・五%から、さらには平成二十年度、これは補正予算も加えました数字になるんですが、六・四%へと低下しているわけだし、それから、平成二十一年度は、これは当初予算だけですが、これで見ましても五%を切る四・九五%へと低下していることになるわけです。  こうした実態を石破大臣はどう受け止めておられるか、お聞きいたします。
  96. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 私が知ります限り、委員が丁寧なグラフをお示しをいただきましたが、農林水産関係予算が一番多かったのは昭和の五十七年度でございます。予算総額で三兆七千億円というものがございました。直近では、委員がお示しのとおり平成十六年度ということになりますが、昭和の御代では三兆七千億円なぞという、そんな時代もあったということだというふうに承知をいたしております。  これは、まさしく国債費が増えた、そしてまた社会保障関係の予算が上がった、当省で申し上げれば、公共事業費が減った、あとは食管の経費が相当に落ちたということに由来する部分もございまして、一般的な政策的な経費ということでは、何とか何とか予算のピーク時とほぼ遜色ない水準を維持しておる、一般的な政策的経費というものでございますが、何とか維持をしてきたというふうには考えております。  ただ、私はこれから先、ここはまた委員農林水産委員会の場でいろんな議論をさせていただき、御教示を賜りたいと思うのですが、結局、農林水産業を強くしていこうと思えば、やはり投資が必要なのではないかというふうに思っております。投資をし、いかにしてコストを下げ、そしてまた、いかにして付加価値を上げ、農業を産業として、林業を産業として、水産業を産業として、これ口で言うのは簡単なのですが、物すごく難しいということは委員が一番よく御案内のとおりでございます。  投資をしなければコストは下がらない、投資をしていかなければ付加価値は上がらないということで、今、国会に二十一年度補正予算、一兆三百億というものでございますが、これをお願いしておるということが一つございます。それをやっていかねばならないというふうに考えておりまして、農林水産予算というものは、政策的経費もそうでございますし、それ以外もそうですが、私は食料生産というものあるいは国土保全というものを考えたときに、やはり増額というふうに転じていかねばならない時期に来ているのではないかという思いはございます。あわせまして、幾ら付加価値を上げるだのコストを下げるだの言いましても、そういうことがまず難しい地域というものが残念ながらございます。そこに対してどのような手を打っていくかということは、私は納税者の御理解を得ながらきちんと確保していきたいというふうに思っておりまして、なお今後とも委員のお知恵を借りたいと思うゆえんでございます。
  97. 山田俊男

    山田俊男君 大臣から、食管の経費が大きく減ってきていることも農林水産予算全体を減らしてきているということにつながっている部分もあるというお話があったわけで、事実そうであります。食管経費が減っているというその分だけ、かつては国が米価を決めていたわけですから、そうするとそれに伴います米価を決めていくことにおける補てんの水準が間違いなく減ったこと、さらには、生産調整をずっとやっているわけですが、生産調整に対します生産調整助成金の水準も実は大きく減っている。そのことが食管経費を削減させてきていることになります。要は、その分だけ米の生産に取り組む環境が大変悪くなっていまして、かつてはそれこそ三兆円を超える米の総生産額があったものが今や一兆七、八千億の段階に減ってきているというのは端的にそのことを示していると、こんなふうに思うところであります。  もう一方、農林水産予算がこういう形で割合を低下させている原因の一つに、公共事業が年々削減されてきたということも背景にあるかというふうに思います。ところで、それじゃ、国の全体の公共事業を一般歳出から削減した内容、さらに、農林水産予算から公共事業を全部引いたもの、この一般事業に出している予算の比較だけを見ましても農林水産予算の割合は減ってきているということがあるわけであります。  こうした背景には、これはもう一つ、四ページの表を御覧になっていただきますけれど、国内総生産に占めます農林水産総生産の割合がかくのごとく低下しているわけです。古い話でありますが、昭和三十五年の水準は八・六%もあったのが最近時の、取り得る最近の数字では〇・九七%、とうとう一%の水準を切ったということがあるわけで、それからもう一つの表を御覧いただきますが、次のページです。  農業就業者数も減ってきているわけでありまして、かつては、全体の就業者に占める農業者の割合は、そこにありますが昭和三十八年の時点で二六%あったものが現時点、最近時の数字では三・八四%まで低下している。過保護農業だというふうな議論が、市場原理を標榜する皆さん、農業の構造改革を主張する皆さん、学者辺りから出てくるときには、いまだに農業が非常に過保護で予算も使っているというふうに言いますけれど、これ見てもらえば明らかなように大変予算も減っているし、さらには就業者の割合も農業総生産額の割合も低下させてきているわけであります。  要は、大事なのは、国土の大小や気候風土に左右されない製造業等は、それこそこの国の在り方の基本として輸出拡大で生産額を増やしてきている、また増やすことができたということがあります。一方、農林水産業は事業の特性からして、国内の農地だったりそれから林地だったり、そうした国土に制約されて、その上で生産を担ってきているということがあるわけです。しかし、どう考えてみてもこれは明らかなんですけれど、製造業もこの国土の上に、我が国のこの制約された国土の上に成り立っているわけでありまして、国民生活もこの国土の上でなされているわけであります。じゃ、その国土をしっかり景観維持も含めて多面的な機能を農業生産で果たしているという部分があるわけですから、この点についてしっかり評価するという予算編成の形をつくってこれなかったのではないかということがやはりあるんだというふうに思います。  大臣、昨日のテレビでもおっしゃっておられて、よくじっと見させてもらいましたわけですが、耕作放棄地があると、さらに担い手が高齢化して後継者がいないと、大変な危機であります。しかし、これは一面では、農林水産業へのこうした予算の配分をこんな形で減らしてきて、そして多様な対策を打ち切れないできているという側面がここにあるんじゃないかと、こんなふうに思うところでありまして、是非大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  98. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それはもう委員といつも議論させていただきますように、とにかく人、金、物、この三つがもう長期低落傾向で、金でいえば、もう農業所得、コストを引いた所得というのは十五年間で半分になったということであります。  そして、委員がグラフでお示しをいただきましたが、基幹的農業従事者、あなたの仕事は何ですかと聞かれて、私の仕事は農業ですという基幹的農業従事者、これは六割が六十五歳以上であると。十年前は六割が五十五歳以上で、二十年前は六割が四十五歳以上で、ということは、十年たったら日本の基幹的農業従事者は六割が七十五歳以上という時代が間違いなく来るわけで、人も金も、そして耕作放棄地もすべてがずっと低減傾向にあるというのが現状でございます。ですから、今まさしく変えていかねばならないので、何年後みたいな悠長な話をしていても仕方がないと。ですから、平成二十一年度補正予算は一兆円というのをお願いをして、今御審議をいただいておるわけでございます。  その中において、やはり私は、今積極的な投資を行っていかねばならないということを申し上げました。あわせて、そういうようにもうどう見たって条件が不利でどうにもならないという地域に対してもっといろんな多様な政策が打てないものであろうかということで、これは委員の方が私よりも何倍も御存じでいらっしゃいますが、ヨーロッパにおけるそういう制度はどういうものなのか、フランスにおいてどうであり、ドイツでどうであり、スイスでどうであり。そういうことがいかなる納税者の理解の下に支えられているかということで、きめの細かい政策を更に講じる必要があるだろうと思っております。  中山間地直接支払の事業というものも大変各地から評価をいただいておるところでございますが、今省内にプロジェクトチームを立ち上げまして、これをどのようにやっていくか、更にきめ細かく更に拡充していく要があるのではないかという議論を今いたしておるところでございます。  委員指摘のように、納税者の御理解を得ながら、本当に農業が果たすべき役割にふさわしい投資的な予算、そしてまた社会保障的な予算というものをきちんと組んでいきたい、そういう意味での御指摘だと承りました。
  99. 山田俊男

    山田俊男君 大臣が今もおっしゃいましたように、国民全体、消費者の理解を得るための様々な取組をやっておられるということを私もよく見ているところであります。  ただ、その場合、大事なことは、かくのごとく農林水産予算が減じている中で政策展開で大きな制約を受けている。だから、農林水産業が果たしている役割を高らかに大臣におっしゃっていただくという観点、今もおっしゃっていただいたわけですが、その観点が大変私は大事だというふうに思っておりまして、ややもすると、マスコミもそうですが、報道機関もそうですが、生産調整の是非やそれからその方法についてだけ議論をしてしまうと、この大事なところが国民にうまく訴えられないといいますか、理解してもらえないところがあるんじゃないかというふうに思っておりますので、どうぞ高らかに農林水産業の役割を訴えていただきたい、こんなふうにお願いするところであります。  続いて、最近の特徴として、各種の補助金が交付金に大くくりされているわけです。例えば、強い農業づくり交付金などは交付金として大くくりされた一つの例であります。こういう形で大くくりしていくことのいいのは、事業の垣根を取り払って、地域の実態を踏まえて対応できるといいますか、使えるということ。それから、限られた財源を融通して弾力化できる、融通も程度があるというふうに思いますが、弾力化できるということ。  一方、どうも悪いのは、事業内容が大変分かりにくい。さらには、農林水産省の内部におきましても複数の局にまたがる事業になっていまして、どこが担当なのかよく分からないようなところが指摘されてもいるわけです。  一体この交付金の仕組みのねらいは何だったのか、その効果はどんなふうに評価できるのか、農林水産予算の構造の問題に関係するかというふうに思いますが、その点、大臣にお聞きしたいと思います。
  100. 石破茂

    国務大臣石破茂君) まさしくこの補助金が交付金になったと、このことはどうだというお話でございますが、従来の補助金というのは国が必要以上に事細かにああだのこうだのということで審査を行う、よって地方は主体性が全然発揮できないということがございましたので、十七年度予算以降、地方向けの補助金は思い切って交付金化をしたということであります。  入口が大事なのではない、出口が大事なのだという考え方の下に事後評価を重視する、採択時にあれやこれや細部まで審査を行わないということで地方の自由度を大幅に引き上げたのでございますけれども、しかしながら今委員の御指摘にありますように、大きな効果はありましたが、大くくりにしました結果として一つの交付金の担当部局がたくさんできてしまったということで、何が何だか訳が分からぬというようなことになってしまったことも事実として反省をしていかねばなりません。  私どもとして、地方農政局単位ではやったことがあるのですが、逆引き表というのを作ってみて、あなたは何がやりたいですかと、あなたは農協なのですか、認定農業者ですか、何なのですかというこういう逆引き表を作ってみまして、それで持っていったところ、ある人があることをやりたいというときにもう事業が二十ぐらいあるというようなことが起こりまして、一体どこの管轄なんだか、どれが一番その人に合ったんだか訳が分からぬというようなことになってしまいました。  よって、この二十年度補正予算あるいは二十一年度予算そして今御審議をいただいております二十一年度補正予算につきましては、とにかく漁業者の方、林業者の方、農業者の方、そして広く農業者の皆さんといったって、これ農業者というものがあるわけではございません、そう茫漠たるものがあるわけではないので、加工用野菜を作りたいと思っている野菜農家の皆さんとか、やってくれる人がいなくて困っている耕作放棄地所有者の皆さんとか、要するにどの方に我々は政策を発しようとしているのか、そのためにどういうような事業があり、申請のためにどのような手続が必要でというようなことがスーパーのチラシみたいに本当に一目で分かるというものに全部整理をし直さなければ、当省の政策が理解されることはあり得ないということを私は申し上げておるわけでございます。  そういうような意識の下に省内でそういうようなプロジェクトを立ち上げて今やっておるところでございまして、また補助金の整理統合等々につきましても、近藤大臣を長といたしまして議論を進めておるところでございます。  そしてまた、申請書類も何かやろうとすると二十枚ぐらい書類書かなきゃいかぬと。おれは農業をするのが仕事であって書類書くのは仕事じゃない、こんな面倒くさいことをやるんだったらもう要らぬというようなところがあることも残念ながら事実でございます。そこをきちんとしていかねばならないのであって、交付金にまとめたからそれでいいなぞとは思っておりません。  実際に、政策は商品であり、使っていただくのは農業者の皆様、漁業者の皆様、林業者の皆様。政策がきちんと執行できないというのは、それは商品が悪いか、商品の提示の仕方が悪いか、どちらにしても私どもの責任でございます。
  101. 山田俊男

    山田俊男君 大臣のスーパーのチラシみたいによく分かるようなものにしていかなきゃいかぬというのは賛成でありますので、どんどんその形で進めてもらえばと、こんなふうに思います。  もう一つ心配なのは、地方の段階においても農林水産業への支出が減ってきているということであります。  これは三位一体改革も影響しているのかというふうに思います。要は、財源を国から地方へ移管すると。その一方で、見合いで国からの補助金や地方交付税交付金を減らすということをやってきたんですが、残念ながら地方における財源、財政収入が思うように増えていないということが影響しているのかというふうに思います。  ちなみに、これを地方財政白書から見てみましても、平成十三年に都道府県での支出は四兆三千億円、市町村では二兆一千億円、これ農林水産業への支出です。重複を除いた純計で五兆五千億円なんです。ところが、平成十八年度では純計で三兆七千五百億円に大きく減ってきているわけです。  大臣、地方でもこうした支出が減っているということが要は地方における様々な農林水産関係の取組を弱めているんじゃないかというふうに心配するわけですが、大臣の見解をお聞きします。
  102. 石破茂

    国務大臣石破茂君) おっしゃることは事実でございます。ですから、私どもとして、とにかく交付金化を図るということをやってまいりました。あるいは、総務省と連携をしながら十分な地財措置が講ぜられるようにやっていかねばならないということ。  もう一つは、都道府県が関与や負担がないような地域レベルの事業実施主体を国が直接採択する事業実施方式、これを取り入れていかねばならないと思っております。  受益があるんだから負担をしなさいよと言われても、それはとてもできないというところもございます。そしてまた、公益性というものを考えたときに、応益負担、応能負担などということを言うつもりもございませんが、本当にそれ地方の受益として地方が負担するものなのか、あるいはその能力が本当にあるかないか、ないんだったらどうなっても知らないよみたいな話はかなりひどい話でございまして、できるだけ都道府県の負担がないような事業というものをやっていかねばならないというふうに考えております。  地方の財政が非常に厳しいことによって今のような現状が起こっておるということの認識は、委員の御指摘を踏まえ、更に強く持っていきたいと考えております。
  103. 山田俊男

    山田俊男君 大臣、衆議院の予算委員会の大臣の御出席があるようでありますので、私はもう大臣はこれで結構でありますが、改めてまた別の機会にしっかり議論させていただいたら有り難い、こんなふうに思います。
  104. 家西悟

    委員長家西悟君) 石破大臣、御退席いただいて結構でございます。
  105. 山田俊男

    山田俊男君 ところで、農林省の佐藤官房長にお聞きしますが、この交付金とは別に、産地づくり交付金や担い手対策事業等について、自治体や関係団体や農林水産業者による協議会方式を最近取ってきておられる例が増えているということを承知しています。この場合、都道府県や市町村による責任ある対応がややもすると希薄になるんではないかという心配なんです。  この協議会方式の支出が増えてくる中で、国の事業だからということで、都道府県や市町村がこれら事業に、これは都道府県や市町村に悪いんですけれども、ややもすると積極的に関与しないで、そして予算も支出しないし、体制もつくらないと、協議会に任せるわみたいな形になっているんじゃないかということです。  その結果として、地方の財政難も加わりまして、地方自治体の農林水産業への取組が弱くなってきているんじゃないかというふうに考えているんですが、どんなふうに受け止めておられますか、お聞きします。
  106. 佐藤正典

    政府参考人(佐藤正典君) 御説明いたします。  地方の自主性を重視する観点から、地方向けの補助金の交付金化を進める一方で、委員指摘のように、食料自給率の向上など、国として責任を持って政策効果を発揮すべき事業につきまして、明確な政策目標の下、国が直接事業実施主体を採択する方式が望ましい場合がございます。御指摘の協議会は、このような直接採択方式の事業実施主体として、専門的な知識を有し、あるいは事業内容に精通している地域の関係団体等が組織するものでございます。  こうした協議会につきまして、責任を持ってきちんとやっていただくということで、代表者の定めがあること、あるいは会計処理、内部監査等を明確にした規約を備えていること、一つの事務手続につき複数の者が関与すること、二名以上の監事を置くこと等を設立の要件としておりまして、責任ある事業執行体制となるように指導しているところでございます。また、こうした中におきましても、県あるいは市町村の御協力はしっかりしていただく必要があろうかというふうに思っているところでございます。また、協議会に対しまして補助金等を交付するに当たりまして、補助金適正化法に基づく手続により適正な予算の執行が図られるような措置もされているところでございます。  しっかりやってまいりたいと思います。
  107. 山田俊男

    山田俊男君 この協議会方式で支出する形、今もありましたが、いい面もあるし、それからやっぱり心配する部分もあるわけです。  私は、心配する部分で二つあるというふうに思います。一つは、要は、地方自治体も一緒にこの国の事業と併せて負担しなきゃいかぬときに、地方自治体分の負担をややもすると負担できないからといってこの国の事業そのものに十分参加しないといいますか、内容によっては機能しないという側面があるんではないかということと、二つ目は、事務負担が協議会の負担になるものですから協議会が大変苦労するというところであります。  最初の、ややもすると地方自治体が負担を十分できないために国の事業が進まなくなってきているんではないかという実態については、例えば農地・水・環境保全対策の支払については地方自治体に予算がないために取組が進まないという実態があるやに意見を聞くところでありますが、この点はどんなふうに受け止めておられますか。これは吉村局長にお願いします。
  108. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) 農地・水・環境保全対策についての、特に地方負担の問題のお尋ねでございますけれども、農地・水・環境保全対策の取組は、これは農業者だけではなくて地域住民全体の利益につながるものということで、やはり地方公共団体においても応分の負担をしていただくということが適当であるというふうに考えておりまして、実際には都道府県が四分の一、市町村が四分の一、それぞれ負担をしていただいているところでございます。  本対策に係ります地方負担につきましては、地方からの要望を踏まえ、総務省とも御相談をして、普通交付税と特別交付税を組み合わせることによりまして、地方公共団体の負担実態に応じた手厚い地方財政措置が講じられているところであります。こういった措置が講じられたこともありまして、平成二十年度には、前年と比べて面積で二十万ヘクタール増加して百三十六万ヘクタールの農地を対象に、活動組織で千九百増加いたしまして一万九千の活動組織が本対策に取り組んでいるところでございます。  委員指摘のございましたように、地方公共団体の財政事情によりましてこの対策に取り組むことができていない地域があるということはもちろん私どもも承知をしております。農林水産省としましては、今後とも本対策が更に活用されるように、特に全国段階あるいは地方の段階でシンポジウムなんかもやって、この対策の有用性というのをよく地域の方々に理解していただいて、下からも押し上げるような形でこの対策が更に活用されるように努めていきたいというふうに考えております。
  109. 山田俊男

    山田俊男君 対象面積が実績として増えてきているぞというふうにおっしゃるわけですから私も心配しませんが、是非、国のしかるべく対策を着実に打っていただきたい、こんなふうにそれは思います。  もう一つは事務負担についてでありますが、これら交付金事業の実施に当たりまして事務負担が大変増えたと、また難しくなったという地方の声が聞こえる。ところが、それに対して、大臣もさっきおっしゃってもらったように、近藤大臣を中心にしてかなり思い切った対策を講じてもらっているということで承知しているわけでありますが、改善はどんな形で進んでいるんですか、お聞きします。
  110. 近藤基彦

    ○副大臣近藤基彦君) 山田委員のお話のとおり、昨年の九月に、私が座長となりまして補助事業申請手続簡素化等プロジェクトチームというのを立ち上げさせていただきました。この事業では、農林漁業者自らが申請を行う七十二の補助事業について見直しをさせていただきました。  見直し内容は、とにかく申請書類の枚数を減らす、それから申請回数をできる限り減らしていく、そして見やすくする、それから書く欄等を大きくする、それからできる限り書くというよりもチェック、チェックシート等を使って簡単にするということで、現実的にはこの七十二事業、平均をして、申請書類の枚数で四割以上、それから申請回数、これは四半期ごととか上半期、下半期とかいろいろあるわけでありますけれども、これを申請の報告や回数を二割以上削減をさせていただきました。  ただ、これは七十二事業のことでありますし、また昨年も補正予算、あるいは今御審議をしていただいている今年度の補正予算等に新規事業もまた含まれておりますので、このことに関しても、当初から申請書類を簡素化をするように指示を出し、そして最終的には我々のチームでチェックをするという形にしております。  どうぞ先生方の方も、この申請書類、地元へ行ったらちょっと面倒だぞと言っているというお声がありましたら具体にお聞かせをいただければ、私どものプロジェクトチームで簡素化、できる限り簡素化をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  111. 山田俊男

    山田俊男君 相当な簡素化をしたということをお聞きしております。申請書類や報告書の削減、分量の大幅な削減をやってもらっているということも聞いていますので、成果が出るように着実にやってもらいたいと思うんです。  ところで、例えば経営所得安定対策ありますね。これも国の直轄事業でやっているわけですが、これは申請は農政事務所に申請書類を出すという方式なんです。しかし、実際の生産者の申請書類の実務、事務は生産者の組織でありますJA等が担う形が大変増えているわけでありまして、JA等へ参りますと、ともかく営農指導員の机の前に申請書類がどんと積み上がって、これをこなしているんですよというふうに言っているわけであります。  今度の取組の中で相当改善されるのかというふうに思いますが、この本来の事業がなかなかできなくて、その申請事務に忙殺されているという実態について、やはり是非対策を講じていかなきゃいかぬのじゃないかと、こんなふうに思いますが、副大臣、お考えをお聞かせください。
  112. 近藤基彦

    ○副大臣近藤基彦君) おっしゃるとおりでありまして、まだまだ足りないところはたくさんあるだろうと思っております。  申請書類をできるだけ簡素にといっても、税金を投入をして国民の税金を使うわけでありますから何もなしというわけにはいきませんし、ある程度のものはやっぱり必要だろうと思っておりますが、それにしてもまだまだ工夫するところがたくさんあるだろうと思っておりますので、そこは真摯に受け止めて、できる限りの対策は講じていきたいと思っております。
  113. 山田俊男

    山田俊男君 決算委員会ですから、私の単純な頭からすると、会計検査院にもちゃんと聞かなきゃいかぬのじゃないかというふうに思ったりしているんですが、今の事務の合理化問題と関連しまして、私は、会計検査は必ず必要なんです。  ところが、農林水産省からとってみますと多分、ないしは事務負担をやっております市町村やJA等からとってみますと、どうしても会計検査があるために、当然必要なんですが、しかし会計検査を受ける方はそれを意識する余りどうも思い切った対策が取れないで、従来ともかなり複雑な仕組みないしは内容で記入していかなきゃいかぬということになってしまっているんじゃないのかということを心配するわけであります。事業が効果的に実施されるために最低限のことはもちろん備えなきゃいかぬわけでありますが、地域の実態を踏まえたものにしなきゃいかぬのじゃないのかと、こんなふうに思います。  事務負担の軽減について、会計検査院考え方をお聞きしたいと思います。
  114. 金刺保

    説明員(金刺保君) お答えいたします。  会計検査院といたしましては、補助金の原資が国民の税金でありますことから、補助事業者において補助事業が適正に執行したことを説明できることが必要であると考えております。  補助金の申請書類につきましては、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第五条によりまして、政令及び各省各庁の長が定めることになっております。また、補助金の申請事務の簡素化に当たりましては、各省各庁において補助金の適正な執行を図る上で必要な範囲において実施されるものと考えております。  会計検査院は、従来から補助事業者の事務負担について十分配慮して検査を実施してまいりましたが、今後の検査に当たりましても、ただいまの先生の御指摘を踏まえ、補助事業者の事務負担に引き続き留意してまいります。  以上でございます。
  115. 山田俊男

    山田俊男君 補助事業者の事務負担に留意して進めると、こんなふうに会計検査院はおっしゃっているわけですから、その線で今後御配慮を願いたいと強くお願いするところであります。  ところで、今度は、この交付金事業の実施に当たって二つの点について御質問をしますが、ポイント制が採用されているんですね。客観性や透明性確保するという観点からしてそれは望ましいというふうに思います。ただ、どうも、先行して実施したところは相当な取組をやってきたわけですから改めてポイントが上がるかといったら、もう上げてしまっているわけだからそれ以上ポイントは上がらないという意見も聞いたりしています。それから、現行の評価が低いんだけれども、いや、取組いかんによっては評価を大きく上げることができるんだけれども、その結果が今の段階ではまだ出ないんだという意見、こうしたポイント制について意見があります。  否定するわけじゃないんですが、ポイント制の運営についていろんな工夫があってもいいんではないかと、こんなふうに思いますが、本川局長が担当ですかね、お願いします。
  116. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) 御指摘のように、例えば私どもの強い農業づくり交付金、これはカントリーエレベーターでありますとか、野菜や果樹の出荷施設でありますとか、そういうものを整備する施設でありますが、通常、予算を上回る申請が上がってまいります。その中で、どういうところ、どういう地域にお金を配分をするかということを決めなければいけません。そのときに、やはり客観性なり透明性確保する観点から、事業者の方が立てられる成果目標、こういったものをポイントにいたしまして、その高い順から採択をしていくというようなことを行っております。  御指摘のように、確かに今カントリーエレベーターがない地域と、それから既にカントリーエレベーターがあってそれを改修したいという二つの要請が上がってきた場合に、やはり日本農業全体を底上げするという観点からいきますれば、今ないところに整備をするというようなところをまずは優先をしがちでございます。  ただ一方で、先に取り組まれたそういう優良産地の方々が更に追加的なことをやって更にレベルアップを図りたいということも理解できるわけでありまして、そういうものに対応するために、例えば現況の水準の高さ、今努力をしていただいて一定の水準に達している、こういったこともポイントの中に勘案できるように反映させるような工夫も行ってきているところでございまして、これ以外にも直接採択事業でありますとか、一般的なそういう、強い農業づくり交付金以外に、もう少し高いレベルを個別でやってみたいというような場合に直接採択の事業、こういったものを用意しておりますので、こうした措置も併せて運営をしながら先進地域の取組を支援してまいりたいと考えているところでございます。
  117. 山田俊男

    山田俊男君 どうぞ、その進め方で工夫しながら、地域の実態に合わせて、また関係者の意欲、それもしっかり酌み取るような対策を講じてもらいたいと、こんなふうに思います。  もう一点、この事業の実施に当たりましてよく聞く意見でありまして、造林や間伐等の事業に関連して、これは内藤林野庁長官にお願いしたいんですが、公平性と透明性確保するために競争入札が前提だということで、これはこれでいいと思うんですが、この場合、安ければいいと言えないところもあるわけであります。地域の企業の生かし方や事業継続の問題、これらへの配慮をしないとスムーズに進まない。今、競争入札をやると、建設会社が、今仕事がないから、それじゃその事業をいただきますと手を挙げて、そこへ落とした。ところが、事業継続性がなくて、この次どうするかといったときに実施できないという問題を抱えていて本当に困っているんだということを聞くわけでありますが、これらについてやはり工夫がこれも必要だというふうに考えますが、いかがですか。
  118. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) 林野庁が実施します国有林野事業におけます間伐と造林事業の発注に当たりましては、委員指摘のとおり、より一層の公平を図る観点から、随意契約から転換しまして、平成十九年十月以降、一般競争入札を原則として導入したところであります。  しかしながら、この価格だけで落札が決定される最低価格落札方式だけでは事業品質の確保などの点で懸念があるということがあるわけでございまして、今年度から入札方式の改善を図ることとしております。具体的には、最低価格落札方式だけではなくて、価格以外の技術力あるいは創意工夫、地域への貢献などを評価しまして価格との総合点で落札者が決定できる総合評価落札方式も導入していく考えでございます。
  119. 山田俊男

    山田俊男君 ありがとうございました。今年から実施に移すということでありますので、着実に定着させてもらいたい、こうお願いします。  最後に、農林漁業金融公庫事業について質問いたしますが、農業融資について地方の銀行等との業務提携が進んでいる、こう連日新聞に、連日と言うほどではありませんが、新聞によく、こんな形で提携した、提携したと、こんなふうに融資の枠が拡大しているという報道を見かけるわけですが、業務提携はどんな形で実施されているんですか、お聞きします。
  120. 坂野雅敏

    参考人(坂野雅敏君) 日本政策金融公庫は、民間金融機関が農業融資へ参入するのを支援するため、系統金融機関のほか地方銀行、信用金庫など全部で二百十の民間金融機関と協調融資や人材交流を図る業務協力協定を締結したところであります。  業務協力金融機関に対しては、金融機関の目線で農業融資に役立つ業界レポートなどを提供したり、また農業経営体の信用力を判定する情報を提供するなどを通じ、農業融資ノウハウの普及に努めているところであります。
  121. 山田俊男

    山田俊男君 農協、信連、農林中金との関係はどうなっていますか、お聞きします。
  122. 坂野雅敏

    参考人(坂野雅敏君) 日本政策金融公庫の農業融資と系統金融機関の関係につきましては、農協系統は資金調達の大宗が一年物の貯金であることからその融資も償還期間が十年以下の短中期の運転資金、施設資金が中心となっていること、他方、公庫融資は民間では対応できない分野を担当することとし、財政投融資資金借入を活用して基本的に十五年以上の長期、大型の設備資金、施設資金が中心となっていることなどから、両者は基本的には役割分担がなされていることと認識しております。この結果、農業経営に利用される公庫融資のうち、公庫からの直接貸付けのものは全体の約三割、系統金融機関などを通じた委託付けによるものが約七割を占めております。  公庫としては、公庫発足以来のパートナーである系統金融機関とは今後とも協力して国内農業の振興のため努力していきたいと考えております。
  123. 山田俊男

    山田俊男君 地方銀行等との連携のことばっかりが新聞に出るんじゃなくて、農協、信連、農林中金ともどんなふうに連携しているのかちゃんと新聞に出るようにしっかりやっていただきたいと、こんなふうに思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  124. 川口順子

    川口順子君 参議院議員の川口順子でございます。  斉藤大臣には、いつも本当に世界中を駆け回っていらっしゃいまして、御公務に御精励、大変にお疲れさまでございます。  今日は、まずハチの話から始めたいと思います。  最近、ハチがいなくなったとか、ハチの数が減ったとか、そういうことがニュースになっております。  先日、町を歩いていましたら、ローワン・ジェイコブセンという人の書いた「ハチはなぜ大量死したのか」という本がございました。これはアメリカのノンフィクションの科学ライターであるわけですけれども、この本によりますと、養蜂家の巣箱から働きバチが消えるという群崩壊症、コロニー・コラプス・ディスオーダーと言うんだそうですが、が世界各地に広がっているということが書いてございまして、その原因というのは絞り切れていないようですけれども、イスラエル急性麻痺病ウイルスというウイルス感染とか農薬、あるいは寄生虫、これはミツバチヘギイタダニというのがいるんだそうですが、栄養状態とか携帯電話の電磁波とか様々な要因が研究されているということのようで、恐らく複数の要因が複合的に絡み合っているであろうということが書いてございました。  原因が何にしても、自然界の均衡が崩れたということについて自然界がサインを出しているということでしょうし、その因果関係のネットワークの中のどこかには人間がいるということでもあろうかと思います。この結果、はちみつが食べられないとか、あるいはハチは植物や野菜の交配、受精を助けるという役割を果たしているわけですから、実りがなくなるとかそういうこともございますし、人間が困るだけではなくて、実は植物それ自体が生存ができない、あるいは種の保存ができないという意味で困るということかと思います。仕方がないので、中国四川省ではナシの木の受粉を人間が総出でやっているということも書いてございました。昔のレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を思い出させるような本でもあったわけでございますけれども、まず、農水省にお伺いをいたします。  今回のミツバチ不足、これは世界的にもそうでしょうし、国内でも起こっているというふうに承知をしておりますけれども、国内農業への影響は一体どれぐらいの規模で、それが一過性のものであるということなのかどうなのか、どのような対策を取っていらっしゃるかをお伺いをいたします。
  125. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) 御指摘のとおり、数年前からアメリカでそういう現象が生じているということは伝えられておりました。昨年以来、私ども日本でもそのような状況が生じております。  その原因としては、御指摘のように、はっきりとしたことは分からないのでありますが、専門の方にお伺いをいたしますと、やはり日本におきましてもダニの被害、それから農薬の被害などによりまして働きバチが減少しているといったようなことがあろうかと思います。  それと、もう一つの要因といたしまして、これは我が国特有でもあるのでありますが、例えば冬場のイチゴの受粉に使うハチの群れ、これをうまくコントロールするためには働きバチだけではなくて女王バチが必要なわけでありますが、国内の女王バチでは足りませんのでオーストラリアから女王バチを入れておったんですが、オーストラリアで病気が発生いたしましてそのミツバチの供給が止まってしまったと、こういうことも原因となって国内で不足が生じております。  その不足に伴う影響でございますが、私ども調査しましたところ、二十の都道府県から影響が見られるという報告がございまして、そのうち十六都道府県から生産コストが増加をすると、養蜂家の方からハチを借りたり買ったりするそのコストが上がっているということであります。それから、三つの都道府県からは収量が減少したといったようなお話がございます。それから、五つの都道府県からはうまく受粉せずにイチゴで奇形が生じたといったような御報告をいただいているところでございます。  これに対しまして、私どもといたしまして大きく分けて二つの対策を今講じております。  一つは、国内で養蜂家の方が飼っているハチの群れというのは十七万ございます。一つの群れが大体二万から三万の働きバチで成り立っておりますけれども、それが国内では十七万、これがみつを集めたりすることに使っておるハチの群れの数でありますが、そのうち花粉受粉用に使っておるのが三万強でございます。したがいまして、まだそこに間がございますので、養蜂家の方に協力をしていただいて、全県的な全国的な需給の調整もしながらうまくハチの群れが必要なところに行き渡るような、そういう需給調整をやっているところでございます。  それからもう一つは、当面、ハウス内で受粉する時期は終わるのでありますが、またこの秋から今年の冬にかけてミツバチが不足することのないよう、国内でミツバチを増殖する、そのような事業をこの補正予算に盛り込まさせていただいておりまして、例えばこれから植えることができるものでありますと、ヒマワリとかコスモス、こういったものを耕作放棄地のようなところに植えていただいて、地元の養蜂家の方とも連携をしてハチの数を増やす、そのような取組を行えるように補正予算に必要な事業を盛り込んで、その早期成立をお願いをして取り組んでいきたいというふうに考えております。  これらによりまして、今年の秋以降のイチゴ栽培などの花粉交配用ミツバチの次の需要期に向けて十分な対策を講じてまいりたいと考えているところでございます。
  126. 川口順子

    川口順子君 ありがとうございました。  是非、それらの対策が十分な効果を上げるということになることを祈っております。経済状況非常に厳しい中で、ハチも駄目になるということになりますと、泣き面にハチと言いたくても言えないという状況になってしまいますので、対応をしっかりしていただきたいと思います。  これ、ミツバチは一つの例でございますけれども、ほかにいろいろな生物の在り方、生態の異変が、生物間の食物連鎖ですとか依存関係やあるいは経済、グローバル経済の依存関係を通じて日本の国内の農業生産とか食料事情に影響を与えるということがあるわけで、それに対応するために日ごろから監視、調査ということを農水省でやっていらっしゃるというふうに思っておりますけれども、二番目の質問としましては、そういった調査活動に対する予算、それがどういう増加傾向になっているのか、それから組織、人員等、どのような状況になっているのか、海外の動向については十分に調べられる体制になっているのか、お伺いをいたします。
  127. 竹谷廣之

    政府参考人(竹谷廣之君) お答え申し上げます。  今委員指摘のように、海外におきます病害虫でありますとかいろいろな生物の生態、そういったものに関します情報というのは、我が国の農林水産業あるいは国際的な食料事情に大変大きな影響がございますので、これを的確に情報収集し分析することは極めて重要だというふうに認識いたしているわけでございます。  特に病害虫関係の情報につきましては、国際機関、具体的には国際植物防疫条約事務局あるいは国際獣疫事務局といったような国際機関を通じまして各国で情報交換をいたしているわけでございますが、そこから入ってきた情報を私どものいろいろな対策に役立てているわけでございます。  具体的に申しますと、最近の例で申し上げますと、例えば英国におきましてジャガイモの新しい疫病が発生しているといったような情報が国際植物防疫条約事務局、IPPCの方から入ってくると。あるいは、OIEといいます国際獣疫事務局の方からは、各国の鳥インフルエンザの発生状況でありますといったような各種のいろいろな家畜の病気の情報等も入ってきます。先ほど指摘のございましたミツバチの病気の情報等も入ってまいるわけでございます。  そうした情報が入ってまいりますと、私ども、国内に、植物防疫所の中に調査研究部という部、約五十人ぐらいのスタッフがおりますけれども、そういったところでありますとか、あるいは動物検疫所にも一定のスタッフがございますので、そういったスタッフにおきましてその結果を分析いたしまして、そして、それを踏まえまして、行政当局におきまして次なる輸入検疫の対策あるいは国内の防疫対策の立案に役立てているというような取組をいたしております。  また、我が国独自のいろいろな取組もやっておりまして、独立行政法人の農研機構におきましては、近年、温暖化の影響で中国でウンカ類の発生が増えてきておりますけれども、これを気象データとともにシミュレーションいたしまして、我が国の九州地区に飛来する状況等を予測するといって、こうしたものを農業団体等に提供して役立てていると。  あるいは、やはり気温が上昇している関係もございまして、かんきつ類の非常に病気でございますカンキツグリーニング病という病気がございますが、これも昆虫のミカンキジラミといったものが媒介するわけでございますが、それの越冬できる温度が次第に上がってきておりますので、奄美大島から更に九州の南の薩摩半島、大隅半島にも温度的には可能になってきているという、そういった情報も収集したりしているわけです。  あるいは、水産分野でも数年来問題になっております大型クラゲの発生状況、これにつきましては日本と中国と韓国が共同研究をするというような取組も行っておりまして、その発生メカニズムを研究する取組などをやっておるところでございます。そして、それを国内の対策に役立てているわけでございます。  予算的なものは、実はそれぞれの事務費なりあるいは独立行政法人の運営費交付金という形で支出しております。ただ、大型クラゲの方につきましては、予算で毎年約九億円の予算をいただいている対策費の中で取り組ませていただいておるわけでございます。したがいまして、金額的には年によって支出の増減ございますけれども、大体おおむね横ばい程度で来ているのではないかというふうに考えておりますが、なかなか運営費交付金の中での勘定ということなので個別の数字がちょっとはっきり取られない面がございます。  それから、人員面につきましては、おかげさまで、植物防疫所、動物検疫所の重要性ということを御理解いただきまして、これらの組織につきましては増員をいただいておるわけですが、今年の秋に向けましても、二十一年度の措置といたしまして分析要員を増加いただけるというような方向で今予定を立てているところでございます。  以上のようなことで取り組んでおりますが、今後とも国際機関なり関係国と協力をして、しっかりこうした生物関係の情報の収集につきまして取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  128. 川口順子

    川口順子君 しっかり対応ができているという印象は持ちましたけれども、二兆何千億かの農水省全体の予算の中でこれが一体どれぐらいなのか、ちょっと今お伺いをする時間がありませんので、また後で教えていただければ、予算の質問の通告もさせていただいていますので、教えていただければというふうに思います。  次に、環境省にお伺いをしたいと思います。  御案内のように、地球の平均気温この百年間で〇・七四度高くなったということで、日本では約一度高くなり、また特に東京ではヒートアイランド現象もあって三度ぐらい高くなったというふうに承知をいたしております。  その中で、例えば、デング熱の媒介を行うと言われてるヒトスジシマカが一九五〇年ごろには、これは国立感染症研究所の小林睦生博士の御調査ですけれども、北限が福島県の白河よりも南であったそうですけれども、温暖化が進んで今ずっと北上しまして、二〇〇五年には岩手県の大船渡から秋田県の能代を結ぶラインまで北上したというふうに聞いておりまして、温暖化の影響で、まさに熱帯の感染症と考えられているデング熱が日本の東北地方まで広がり得るということであるかと思います。  そこで、環境省に御質問をさせていただきますけれども、このような生物に起きる、生態に起きる変化、これもきっちり環境省としても調査をしていかれなければいけないと思いますが、どのような体制、予算とか組織とか人員とか、そういうことで行っていらっしゃるか、お答えをいただきたいと思います。
  129. 黒田大三郎

    政府参考人(黒田大三郎君) お答え申し上げます。  環境省では、生物や自然環境の状況あるいは変化を把握するために、二本の柱を立てて取り組んでいるところでございます。  一つは、全国を対象といたしまして、自然環境の現状と推移を把握するために、昭和四十八年から都道府県あるいは大学、地域の専門家など多数の方々の協力を得て実施しております自然環境保全基礎調査がございます。これに関しましては、今年度の予算といたしまして約二億五千万円を計上しているところでございます。  それから、二つ目といたしまして、温暖化などによる生態系の異変をとらえる、そして適切な保全政策につなげる、こういう目的でモニタリングサイト一〇〇〇という事業を行っております。この事業は、全国で約千か所のサイトを設けまして、同様に研究者、NPO、市民ボランティア、実際に七千人を超える方々の御協力をいただきまして長期的な生態系の変化の把握というものをつかむと、こういうことをしております。こちらの方も、今年度の予算額といたしましてはおよそ二億五千万ぐらいを計上しております。  体制でございますが、生物多様性に関する情報の収集、分析また提供を行う拠点といたしまして、平成十年度に生物多様性センターを設置しております。現在、約二十人が今申し上げましたような調査の企画、実施等に従事しているところでございます。  環境省といたしましては、こういう調査を通じまして温暖化による生物への影響などの一層しっかりした把握に努めたいと思っておりますし、そういうことで得られた結果を基に、生物多様性の保全のために必要な政策を進めていきたいと考えています。
  130. 川口順子

    川口順子君 今伺ったような体制ですけれども、これは外国と比べてどれぐらい充実をしているのか、お教えをいただきたいと思います。
  131. 黒田大三郎

    政府参考人(黒田大三郎君) 諸外国の温暖化影響に関する調査体制につきましては、必ずしも詳細には把握ができておりません。  私どもが承知している範囲では、例えば米国におきましては内務省の地質調査局というセクションがございまして、ここで、例えば地図とか地質図の作成あるいは地下資源の賦存状況の調査などと併せて野生動植物の調査も担当しております。この地質調査局はそういうふうに所掌範囲も広いということで、職員数は約一万人いるというふうに承知しています。一方でイギリスでございますが、こちらの方は職員数約十名で国立生物記録センターという組織が設けられております。そして、外部の多数のボランティア、専門家などの協力を得て動植物の調査また分析などが行われているというふうに承知しております。  環境省の現在の調査体制、先ほど説明申し上げたとおりでございますが、やはり外国との比較となりますと、国土の広がりであるとか地理的条件、またアメリカとの差のようにそれぞれの組織の役割などに差がありますので、一概に比較というのは難しいかと思っておりますが、数多くの専門家や市民ボランティアの協力を得て私どももこういう生物に関する調査を実施してきておりまして、我が国の状況に応じた体制は一応整備されているのかなというふうに認識しております。しかしながら、今後、これを更に改善強化していく、そしてしっかりした成果を出し、またそのために必要な予算を確保していきたいと考えておるところでございます。
  132. 川口順子

    川口順子君 生態系の変化というのはもう日ごろからの、ふだんのモニタリングが重要であると思います。農水省におかれても環境省でも、そういった調査活動の重要性については十分に御認識をしていただいているようではありますけれども、この問題の重要性にかんがみ、よりおっしゃったように拡充をしていただいて、またさらに効果的な支出をしていただきたいというふうに思います。  斉藤大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。  生物多様性というのは、重要性は言をまたないわけでございますけれども、他方で温暖化という現象も生じているわけでして、非常にざくっとした質問なんですけれども、生物の多様性と温暖化の関係をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、お伺いをしたいというふうに思います。  生物の多様性を守るということがどうして必要なのかということ、あるいは温暖化が生物の多様性にどういう影響を与えているのか、また温暖化対策を講ずるに当たって生物の多様性を守りながら行うという視点が非常に大事であるというふうに思いますが、そういったことについて御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  133. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 生物多様性を守るということと地球温暖化を防止するということはある意味で一体的なものだと、一言で言うとこのように認識をしております。非常に微妙なバランスの上に成り立っているこの生態系、この生態系の中に三万種といわれる地球の生物多様性がある。しかし他方、人類若しくは地球が経験したことのないような急激なスピードで温暖化が進んでいる、そのことが生物多様性を損じている、このように認識をしております。  また、逆に言えば、生物多様性、その生態系を守ることが植物相を守ったり、また全体の生態系を守る、植物相を守ったり森林を守ったりするということから地球温暖化を防止すると、こういう相互の関係、そして一体的な関係があるのではないか、そういう観点から我々は手を打っていかなくてはいけないのではないかと、こういう認識を持っております。  今回、イタリアでG8環境大臣会合がございまして、シラクサ宣言、生物多様性についてのシラクサ宣言という宣言が採択されました。シラクサというのは開かれた都市の名前でございます。そして、そこでは先ほど申し上げました地球環境が生物多様性に与える影響、そして生物多様性が地球環境に与える影響、その相互の観点からより一体的な対策を打っていこうというところに今回の宣言の大きな特徴があるかと思います。この精神に基づいてしっかりと頑張っていきたいと思います。
  134. 川口順子

    川口順子君 ありがとうございます。  この二つの関係、相互の関係をきちんととらえて両方に資するようなそういう対策を打っていくということが必要だという大臣のお考えは、私も全く同じ意見を持っております。生物多様性というのは、本当にネットワークのごとくお互いにずっと広がっていき相互につながっていっているということですから、それが一か所でも壊れると地球の生物全体に影響が及ぶという話でございまして、やはり先ほどのモニターも含め現実をとらえて、対策を早めに打っていくということが私は大事だと思っております。  環境を守るということの意味が何かということですけれども、私は、それは地球と生きる、生きとし生けるものと生きる、そして平和に生きるということではないかなというふうに思っております。  引き続き、環境大臣にお伺いを申し上げたいと思います。  経済と環境の両立という言葉がございます。よく使われるわけですけれども、この言葉の意味としてよく耳にしますのは、環境に対応するときのコストが大きくなり過ぎて経済成長に制約を与える、あるいは逆に経済活動の行き過ぎが環境に悪い影響を与える、環境を破壊するという考え方に基づいて、従来は、環境対応は行き過ぎにならないように、経済には悪影響を与えないように行き過ぎにならないように、そして経済活動も環境を壊さない範囲で、まあお互いに程々にやって抑え合っていくことが大事なんだというふうに使われてきたんじゃないかなというふうに私は感じております。  残念ですけど、いまだに温暖化対策に当たって、経済には悪い影響を与えないようにすべきだという考えを持っていらっしゃる方が散見されますのが私にとっては非常に残念ですけれども、今は経済と環境の両立というのはもっと積極的な意味に使われているんではないだろうかというふうに思います。つまり、ウイン・ウインの関係を築いていく関係であるとか、プラス思考をしてこの点についていくとか、そういうことですけれども、環境に対応するということが新しい技術開発や商品開発の源泉になる、あるいは省エネや温暖化の対策のニーズにこたえるところにビジネスチャンスがあるという意味で今考えられてきているというふうに思います。逆に、企業活動の成果である優れた省エネ性能のある冷蔵庫がなければ我々は温暖化ガスの排出を抑えるということができない。ですから、そういう意味でお互いにプラスになる源になっているということだろうというふうに、これが新しい両立の意味ではないかというふうに思います。  昨年の秋の世界的な危機以来、いわゆるグリーンニューディールということが言われております。新たな補正予算も予算委員会で今衆議院で議論をされております。  こうしたことを考えますと、これからの未来を見渡したときに、展望したときに、今低炭素社会のために投資をすることが経済成長にプラスになる、そしてもちろん環境にもいいということではないかと思いますし、また、斉藤大臣はこの点について、先ほど発表もなさっていらっしゃると伺っておりますので、お考えをお伺いを申し上げたいと思います。
  135. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 経済と環境の問題について、私も今の川口委員と全く同様な認識を持っております。  経済と環境の両立という言葉ですが、昔から使われておりますが、意味合いが変わってきたように思います。昔は、環境は経済の足を引っ張るもの、しかしそこを何とか両立しなきゃいけないというような意味合いだったと思いますが、最近はそうではなくて、まさに環境が経済を引っ張っていく、そしてそこに日本の経済競争力を付けていくというふうに変わってきた、私は、最近の考え方でこれからの経済政策は運営しなくてはいけないのではないかと、このように思います。  今、世界のいろいろな方と話をしていて、世界各国が低炭素社会をどうつくっていくかという競争の時代に入りました。そういう時代にあって、日本こそがその先頭を行くということでなければ、日本の競争力や技術開発力は大きな遅れを取ってしまうと、こう考えておりまして、いわゆる非常に単純なモデルでの経済と環境だけの問題ではない、我々の国の在り方とか我々の生き様ということと関係した大きな問題になっていると、このように考えております。  緑の経済と社会の変革ということを環境省として取りまとめさせていただきました。まさに環境が経済を引っ張っていく、そういう社会をつくっていくと、そういう決意で頑張っていきたいと思っております。
  136. 川口順子

    川口順子君 私も、まさに今、不況から脱出をするということがどうも頭に真っ先に来るんですけれども、実は今、未来の社会に向けてのグローバルな大競争をやっているというふうに認識をすべきであろうかというふうに思います。低炭素社会をつくっていくということがまさに国家戦略であるというふうに考えるべきではないかと思いますので、今の斉藤大臣のお話を伺って大変に心強く感じております。  少し話を変えたいと思います。省庁間の連携の問題と太陽光発電等の温暖化対策を具体例として取り上げたいというふうに思います。  まず、文科省にお伺いをいたします。  文科省で今まで太陽光発電設備の設置を実施をしてきていらっしゃるというふうに理解をいたしておりますけれども、今までやったことからどのようなことを学ばれたか。要するに、今までやったことにどのような効果があったというふうにお考えか、そしてそれを今後の取組にどのように生かそうと考えていらっしゃるか、お伺いをいたしたいと思います。
  137. 岡誠一

    政府参考人(岡誠一君) お答えいたします。  文部科学省では、環境を考慮した学校施設、いわゆるエコスクールづくりの一環として、関係省庁と連携しながら太陽光発電の導入などを進めてきたところでございます。  太陽光発電の効果ということですが、学校への太陽光発電の導入は、再生可能エネルギーの積極的な活用によるCO2の削減という大きな意義があるほか、電気代節約による経済的効率性も期待できるところでございます。また、環境教育の教材としても役立つものでございます。  こういった効果を生かす方策ということですが、再生可能エネルギーの積極的活用によるCO2の削減効果や電気代の節約、環境教育への活用といった点については、一部の学校だけがモデル事業として行っていた段階を超え、できるだけ多くの学校が太陽光発電の導入を進めることで、より大きな意義や効果をもたらすことになると考えているところでございます。このため、スクール・ニューディール構想の中で学校耐震化、ICT化とともに一体的実施の抜本拡大を図ることとし、国の財政支援の大幅な拡充を行うこととしているところでございます。
  138. 川口順子

    川口順子君 IT化あるいは耐震工事と一緒に進めていきたいということでございますし、まさにそれによって予算の効率的な使用を図ることができるという意味で大変に大事なことであると思いますけれども、具体的に、そういった一緒にやるということをどのようにお進めになられるというふうにお考えでしょうか。
  139. 岡誠一

    政府参考人(岡誠一君) お答えいたします。  太陽光発電につきましては、校舎の屋上に設置した場合に、その機器重量に対して建物の安全性を確保する必要がございます。このため、耐震化の済んでいる施設への導入拡大を図るとともに、耐震化事業を行う際に、太陽光発電の導入を見込んで設計を行いまして一連の工事として実施するということにいたしまして、最も効率的な速やかな導入につなげていきたいと考えているところでございます。
  140. 川口順子

    川口順子君 小学校、中学校、高等学校、それぞれあるわけですけれども、今おっしゃったような、そういう設計を一緒にして工事をするということを進めていく中心の組織あるいは人、職というのはどこに置かれて考えているのでしょうか。
  141. 岡誠一

    政府参考人(岡誠一君) 公立小中学校の設置者は地方自治体でございますので、地方自治体の教育関係部局、あるいはそこと連携します部局で進めていくものと考えているところでございます。
  142. 川口順子

    川口順子君 実際に進める段階というのが非常に難しく、かつ最も重要であるというふうに思います。今までなさってきた経験を十分に生かしていただいて、円滑にこれを進めていただきたいというふうに思います。  次に、経済産業省にお伺いをさせていただきます。  同じような質問ですけれども、経済産業省においても今まで幾つかのモデル事業をやってこられて、それなりの効果を上げられてきたというふうに承知をしていますけれども、今までどれぐらいの学校についてなさって、それから、そこで学んだ経験を今後の、まさに今太陽光発電を各学校にということで動いているわけですが、学んだ経験をどのようにこれからの仕事に生かされるか、何を学ばれて、何をどのように生かされるかについてお伺いをしたいと思います。
  143. 羽藤秀雄

    政府参考人(羽藤秀雄君) お答えを申し上げます。  経済産業省における太陽光発電の学校に対する導入の支援の実績でございますけれども、これは平成五年度から平成二十年度までに六百四十五校の学校に対するものとして実績がございます。  この導入支援の方策でございますけれども、これは二つのものがございます。  一つは、新しい技術の実証的な試験研究を行おうとするというものでありまして、具体的には、NEDOとそれからそれぞれ太陽電池システムの設置者の共同研究という形で、NEDOが事業費の二分の一以内を負担をする太陽光発電新技術フィールドテスト事業というものでございます。これが四百四十五校に対して実施をいたしております。  もう一つの導入支援の方策でございますけれども、これは新エネルギーの導入のモデル的な事例をつくり出していくというものでございます。具体的には、自治体などが新エネルギー設備を導入する際に事業費の二分の一以内を補助をする地域新エネルギー等導入促進対策事業でございまして、これによる実績が二百校ございます。  以上につきましては、NEDOを中心といたしまして、そこから学んでまいりました新しい技術の実際の試験研究の成果、あるいはモデル的な事例としての実際の導入に係る具体的な費用負担の在り方であるとか、あるいはその後の現場での新エネルギーの導入の実績、活用の方策などについて、やはりNEDOを中心といたしまして、私ども経済産業省においてその知見を蓄積をしながら、これを今後いろいろな場面において普及啓発活動などを通じまして大いに生かさせていただこうと、このように考えております。
  144. 川口順子

    川口順子君 ありがとうございました。かなりの成果を上げていらっしゃるようで、非常に結構かと思います。  環境省にお伺いをいたしたいと思います。  環境省では、これまで学校のエコ改修とそれから環境教育事業を実施していらっしゃいますけれども、これによっての太陽光発電設備の導入実績どれぐらいで、そしてこれによりましてどのような環境保全効果ですとか教育の効果が上がっているのか。そしてこれを今後の取組にどのように、何を今後の取組に生かされるかということをお話をいただければと思います。
  145. 小林光

    政府参考人(小林光君) お答え申し上げます。  環境省では、いろいろな先端的な環境教育等々の施策、いろんなことをしてございます。その一環といたしまして、平成十七年度から今御指摘の学校エコ改修と環境教育事業というものを始めさせていただいております。これは、太陽光発電だけではございませんが、そういった自然エネルギーの導入、それから、とても大切なことは、壁面あるいは開口部、屋上等々の断熱を通じまして校舎の中の学習環境、温熱環境を改善すると、こういったことを組み合わせまして二酸化炭素を減らす、またその過程を環境教育、生徒さんの環境教育なんかにも使っていくというような仕組みの事業でございますけれども、そうした事業を進めてございます。  そういうことでございますので、太陽光発電自体が目的ということではないのではございますけれども、現在完成をしたもの、そして整備中のもの、合わせますと十五校ほどございますけれども、ここで太陽光発電を導入いたしましたもの、約半分弱の六校ございます。そして、合計の発電能力が百三十キロワット弱ということでございまして、六校でございますから一校当たり二十一キロ強というような発電能力になってございます。  そして、その効果いかんと、こういうことでございますけれども、環境保全の効果といたしましては、太陽光発電だけの効果ではございません、CO2削減の効果ということに相なります。改修後にデータの取れたモデル校、これは一番最初に始めました十七年度開始の学校、九校でございますけれども、改修前と改修後を比較いたしますと、最も多い削減率、CO2ベースの削減率で最も多いものは四五%、平均でも二五%の排出量の削減ということができてございます。ちなみに、電力だけでございますと、一番大きな学校では太陽光発電だけで五割以上の六十キロワットぐらい入りましたけれども、賄っている例もございます。  そうしたことで、環境保全効果、特に新エネの導入と省エネと合わせて講じますと大変高いということが分かってきておりますが、また環境教育上の効果も大変やはり、ビフォー、アフター、両方分かることでございますので、説得力がございます。保護者あるいは地域が学校と一緒になって環境について学ぶ生きた学習ができたとか、あるいは校舎が教材になったとか、そういったような声が特に先生方からいただいているところでございます。  そういったせっかくのいろんなお声、またノウハウもたまってきましたので、私どもとしては、こういったモデルだけではございませんで、先ほど文部科学省の方から御答弁ございましたように、多くの学校で大々的にやっていかれると、こういうことでございますので、こういったことに対するノウハウの公開、提供、そしてインターネットあるいはパンフレット等々で技術的な蓄積をどんどん公開していくということでこの事業が各省の縄張を越えまして、所管を越えまして進んでいくように努力をいたしたいというふうに考えてございます。
  146. 川口順子

    川口順子君 ありがとうございます。各省それぞれ知恵を絞って、それぞれの角度といいますか観点からこれを進めていらっしゃるということがよく分かりました。  モデル事業ということで基本的に各省やっていらっしゃるわけですので、モデル事業という範囲においては、それぞれその各省の関心と深めたい点を中心に設計をなさるということは、それはそれでいいんだろうというふうに思いますけれども、今、予算で、今後すべての学校に太陽光発電をというようなことになり、そして環境エネルギー教育を推進をそこでしていくんだということですと、各省、関係省庁の連携がないとスムーズにいかないし、それぞれの省庁が、今までそれぞれの省がそれぞれの立場で蓄積をした経験が生きていかないということになるのではないかという危惧を、という心配を私はしております。  例えば、先ほど経産省から技術というお話ありましたけれども、じゃその技術が、文科省が今やろうとしているソーラー発電を地域中心に進めていきます、市町村中心に進めていきますということを言われるところにどのようにそれが生かされる形になっていくのか。これ時間も余りありませんし、金額的にもそれぞれ大きな金額であるわけですから、大変な問題だと思うんですね。円滑に進めるために非常にいい仕組みを各省で相談をしてつくっていただかなければいけないと思います。ですから、達成目標を明確にして、それを共有して、それで各省の連携を築かれるということが必須だというふうに考えますので、是非よろしくお願いをしたいと思います。国民の大事な税金でございます。    〔委員長退席、理事神本美恵子君着席〕  それから、太陽光発電というのは設置にも時間が掛かりますけれども、補修、点検、維持、これも非常に時間と費用が掛かるわけでございます。  先般、参議院の環境委員長の有村治子先生とお話をしていましたら、もう大変にいいことをおっしゃって、私は非常に頭が下がる思いをいたしましたんですけれども、それは、今私がここでそれを引用することをお許しいただけるかと思って申し上げますけれども、例えば学校、今窓ガラスがどんどん割られる、新聞見ればそういうことが書いてあるわけです。そういうような状況で太陽光発電をせっかくつくっても、それが壊されるような状況では意味がない。ですから、地域社会全体として太陽光発電を設置して、その維持について皆さんが、大事なものだから守っていこうと思うような仕組みが非常に大事であるというふうに思います。有村環境委員長そういうふうにおっしゃられて、私も本当に心から同感をいたしております。  ということでございますので、文科省、経産省、そして環境省、また、お呼びは今日いたしませんでしたけれども、地方自治体を所管する総務省も含めまして、関係省庁が一体となった取組を是非やっていただきたいということをお願いをいたします。    〔理事神本美恵子君退席、委員長着席〕  そこで、関係省庁が一体となったニューディール構想、これの実行についての取組を、長らくお待たせをして恐縮でございますけれども松野文科副大臣から決意をお述べいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  147. 松野博一

    ○副大臣松野博一君) 学校施設におきます太陽光発電の導入は、日本が世界に先駆けて低炭素・循環型社会を構築する上で大変重要であるということは、今までの御議論の中にあったとおりでございます。  太陽光発電の導入によりまして、教師や子供たちが学校現場で自然エネルギー、再生可能エネルギーの有用性というものを体感ができるすばらしい教材でもございます。次世代を担う子供たちが環境に対する意識を確立をしてもらうということが、今後、地球温暖化対策等のフロントランナーとして我が国が取り組んでいく上において基盤となることだと思っておりますので、しっかりと進めてまいりたいと考えております。  こういった問題意識の中で、平成二十一年度補正予算案におきまして、スクール・ニューディール構想に学校施設への太陽光発電の導入を重要な柱として位置付けております。全国の公立小中学校を始めとします学校施設を対象として、国庫補助に加えまして、地域活性化・公共投資臨時交付金により地方負担の大幅な軽減を図ることとしております。  また、川口先生の方からお話がありましたとおり、関係省庁との連携が重要でございますので、関係省庁、また地方公共団体に対して事業化を要請するとともに、太陽光発電の意義、効果の情報提供でありますとか、実施面、技術面での相談窓口を設ける等、必要な支援を行っているところであります。  これらの取組によりまして公立小中学校施設への太陽光パネルの設置について抜本拡大を図り、まず早期に現在の十倍となる約一万二千校への設置を目指してやってまいりたいというふうに考えております。
  148. 川口順子

    川口順子君 ありがとうございました。質問を終わります。
  149. 弘友和夫

    弘友和夫君 公明党の弘友和夫でございます。  斉藤大臣には大変に、今、日本の行く末のキーマンになっておりますので是非しっかりと対応していただきたいと思いますけど、ちょっと順番を変えて、石破大臣も後で来られるということでございますので、最初に緑の経済と社会の変革、二十一年度の補正予算の部分ですね。これは先ほど川口先生との大臣のやり取りをお聞きしておりまして、まさしく私はこの緑の経済と社会の変革というのは、これを斉藤大臣にずっと語っていただきたいと思うぐらい、今日本が置かれている、どっちの方向に行くんだという本当に大事なことでありますので、これをずっとやっていただきたいと思うんですが、ちょっと時間がありませんので、一項目だけちょっと。    〔委員長退席、理事神本美恵子君着席〕  エコポイントは非常に今いろいろと論議されておりますけれども、地域グリーンニューディール基金ですね、これについて、各地域の特徴を加味して事業計画に応じて補助金の配分を行う、都道府県等において基金を造成するわけでございますけれども、これは自治体それから民間事業者等に十分に知らしめなければ、知ってもらわなければ効果を発揮しないというふうに思うわけでございます。ですから、そういう事業例を含めた制度のPR、そしてまた使い勝手のいい制度にしていく必要があると思いますけれども、ちょっと順番が変わって恐縮でございますけれども、これについてお伺いをしたいと思います。
  150. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 今衆議院で御審議いただいております第一次補正予算の中に地域グリーンニューディール基金、環境省が提案をし盛り込ませていただいております。予算額は五百五十億円でございます。これは都道府県にその基金を置きまして、三年間という期間でございますけれども、地域のいろいろな地球温暖化対策でございますとか、またそのほかの、例えば漂流・漂着ごみの問題、3Rの問題等、地域の環境を保全し、そして経済の活性化に結び付く、そういう事業に使っていただければ、使い勝手のいい制度とすべく今我々も制度設計を行っているところでございます。  このPRをしっかりせよということでございますけれども、これから、まず我々といたしましても、各都道府県の環境政策担当者の方に集まっていただいて、こういうものであるという説明はまず第一回やったところでございますが、これはあくまでも予算の成立が前提となりますけれども、これからしっかりとこれが地域で生かされるようにPR、また地方自治体との協議に全力を挙げていきたいと思います。
  151. 弘友和夫

    弘友和夫君 是非しっかりとPRしていただきたいと思います。  温暖化対策でございますけれども平成十九年度、我が国の温室効果ガス総排出量というのは十三億七千四百万トン、この京都議定書基準年に比べて九%増えていると。御承知のように、京都議定書では二〇〇八年から二〇一二年の排出量を九〇年と比較して六%削減するということを約束をしているわけですけれども、この約束達成が非常に厳しい状態、状況になっていると。だからといってそのまま放置していい問題ではないわけでございますけれども政府は十八年度予算から各省庁の関係予算、京都議定書目標達成計画関係予算として取りまとめをして、毎年度一兆円以上、また京都議定書六%削減約束に直接の効果があるものと分類するものだけでも五千億円以上の額を計上しているわけでございますけれども政府取組状況として、十九年度の京都議定書目標達成計画関係予算の予算額とその執行状況、そして、温室効果ガスの排出量は増えてしまっているわけですけれども、予算によって何らかの成果が上がっているのかどうかという、環境省にお伺いをしたいと思います。大臣
  152. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 平成十九年度の京都議定書目標達成計画関係予算についての御質問でございます。  A、B、C、Dと四つに分かれておりまして、まずA、一つ目でございますが、この削減約束に直接の効果があるものとして五千三百一億円、それから削減に中長期的に効果があるものの範疇に千四百九十億円、その他結果として、目的はほかにあるんだけれども、結果として温室効果ガスの削減に資するもの三千六百五十二億円、その他研究開発や統計など基盤的施策が四百四億円という予算でございます。  これがどれだけ効果があったのかということにつきましては、法律による規制や税制の寄与もございまして、この予算だけでどれだけ寄与があったかということについて削減量をお示しすることは困難でございますけれども、各進捗状況については点検を行い、予定どおり進んでいるもの、また予定どおり進んでいないもの等きちんと把握をしているところでございます。予定どおり進んでいない一つの例として例えば電力等がございますけれども、これらについては、火力発電所における熱効率の更なる向上、また京都メカニズムの活用等を今後計画をしているところでございます。    〔理事神本美恵子君退席、委員長着席〕  いずれにしましても、目標達成計画の厳格な進捗管理を行いまして計画の達成に全力を挙げたいと決意しております。
  153. 弘友和夫

    弘友和夫君 それと、民間企業それから産業界における取組ですけれども政府だけではこれはなかなか地球温暖化対策というのはできないと。やっぱり国民運動として進めるチーム・マイナス六%への参加だとか、昨年十月に試行が始まった国内排出量取引制度への参加、また省エネ家電、電気自動車の技術開発なども含めて、いろいろな形で温室効果ガスの排出量に資する取組がされているわけですけれども、民間企業、経済界の役割というのはこの中でも非常に重要だというふうに思うわけでございますけれども大臣としてどのように評価をし、期待をされているのか、お伺いをしたいと思います。
  154. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 温暖化ガスの排出量の約八割を民間企業が占めております。したがいまして、経済界が果たす役割は非常に大きいと、このように認識をしており、我々も協力をしながら推し進めているところでございます。  経済界は自主行動計画を策定して、その自主行動計画の遂行に全力を挙げていただいているということでございますけれども先ほど申し上げましたように、順調に進行しているところとなかなか進捗していないところ等ございますので、今後よく連携をして、進捗していないところにつきましてはきちっと対策を立てて、京都議定書目標達成のために協力をして頑張っていきたいと思います。
  155. 弘友和夫

    弘友和夫君 それで、民間の企業の役割というのは非常に大事だと思うわけですけれども、私、先日、三月の十七日の新聞を見てびっくりしたんですね。全国紙の全部にこれ全面広告を出しているんです。「考えてみませんか、私たちみんなの負担額。」という、これは経団連だとか商工会議所、それから電機だとか自動車からほとんどすべて網羅した団体が名を連ねているわけですね。  それで、先ごろ、日本政府は、京都議定書に続く二〇一三年以降の地球温暖化対策の新たな取組に向けたCO2削減の中期的な目標を六月までに決定することを表明しました。私たちは、石油危機以来、家庭も産業も最大限の省エネルギー努力を推進してきました。その結果、日本は既に世界トップレベルの低炭素社会となっております。したがって、裏付けのない過大なCO2削減には国民全体に大変な痛みが伴います。また、日本が幾らCO2削減努力をしても、主要CO2排出国の参加がなければ地球温暖化問題は解決しませんと。次期国際枠組みには主要CO2排出国すべての参加が必須ですと。三%削減でも一世帯当たり約百五万円の負担だと。約五十二兆円の社会的負担が必要とされています。これは、仮に一世帯当たりにすると約百五万円の負担に当たりますと。  要するに負担が大きくなるという、今までは経済と環境の両立については程々にというようなことの考えが強かったけれども先ほど大臣が答弁されたように、環境が経済を引っ張るんだと、今の段階では、というところに来ているんじゃないですかね。それが全くの後ろ向きなというか、中期目標を決める前だからこういうのを出したのかもしれませんけれども、全国紙にこれだけ大きなやつ、全国各紙に載せるということは、民間ではあるけれども、これは日本経団連や商工会議所、各業界団体連名ですよ。これはやっぱり国民の意識を誤った方向に持っていくんではないかと。我が国地球温暖化対策、温室効果ガス排出量削減に向けた国民の取組をリードしていくために、こうしたことに対してはやはり断固とした態度を示す必要があるんじゃないかと。  大臣は、大変悲しいと、産業界の本気度を疑われるというコメントを出しておられますけれども大臣は非常に優しい方でございまして、私はこんなものを許していいのかというふうに思うわけですね。  今、先ほどお話があった太陽光発電にしたって、国民の税金を使って、買取りにしても国民の負担でどんどんやっていこうとしているじゃありませんか。エコカーだって、税金は安くして、取得税とか、税金使って対策をしようとしているわけですよ。省エネ家電だってそうじゃありませんか。それは負担はあるけれども、そういう社会にやはりしていかなければいけないというものがあるからやっているわけですよね。その恩恵を受ける事業団体が、これは全然反対のことを言っておったんじゃ話にならないと思うんですよ。これはちょっと信じられないんですけどね。  それともう一つは、このコストが掛かる、百五万円掛かりますよとかそういうことが大体正しいのかどうかと。大臣は、環境ビジネス、二〇二〇年、七十兆から百二十兆、これは増えますよ、雇用も百四十万から二百八十万になりますよ、こう言われている。総理も一月の施政方針演説で、環境問題への取組は新たな需要と雇用を生み出す種でもあります、成長と両立する低炭素社会、循環型社会を実現しますと、このように施政方針演説で述べているわけですね。だから、国全体の方向性はそういう方向に行こうとしているときに、一番大事なというか、八割を占めている産業界が今までと同じような考え方で果たしていいのかどうかというふうに思うんですけれども、斉藤大臣のお考えをいただきたいと思います。
  156. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 私は、記者会見で意見を求められましたので、二点申し上げました。  第一点は、そういうコストが掛かるということはある分析の結果として出たんだろうと思います。では、コストを出すのであれば、その比較をするために、何も対策を取らなかったときにどういうコストを人類は負わなくてはならないのか。また、温暖化対策を進めるということは省エネを進めるということです。そのことによって得られる利益というものも同時に書かなければ、それは正しい情報を国民の皆様に提供することにならないのではないか、これが一点。  それからもう一点は、その経済解析のモデル分析の中には、いわゆるグリーンニューディール的な効果は一切入りません。いわゆる微分方程式のイタレーションの平衡点を求めるということですので、当然コストだけ出てくるわけですけれども先ほど川口委員質問に申し上げましたように、これから世界が競争して低炭素社会を築いていこうというときに、技術立国である日本が低炭素社会ということについて、ほかの国よりも後ろ向きであるということがどれだけ国益を損ねることになるのかというふうな要素については一切入っていないわけでございます。そういう意味で私は悲しいと申し上げたわけでございますが、しかし意見表明の自由は向こうにも、向こうというかだれにもあるわけでございまして、自分は自分の意見を申し上げさせていただいたということでございます。
  157. 弘友和夫

    弘友和夫君 意見表明の自由はもちろんありますから意見広告を出そうと何をしようとそれはいいんですけれども、国の施策として、先ほど言いましたように、例えば税金を使って太陽光発電を普及していきましょう、エコカーも普及やりましょうと、温暖化対策だとか、景気もありますけれども、そういう方向性でいっているのに全然この後ろ向きの考え方、大事な産業界が、そのままでいいんですかということですよね。やっぱりそこに意見交換をしながら考え方を、どっちが変えるのか分かりませんよ、だけれども私は少なくともそういうことをやるべきだと。  経産省おいでいただいておりますけれども、本来だったらこの団体の方も来てて、どういう考えでこれ出されたのかとお聞きしようとも思ったけれども、民間ですし、こういう場であれですから、まあ経産省は今まで大体同じような立場で発言もされておりますけれども、大体どういうことなのかということをちょっと答えていただきたいんです。
  158. 西本淳哉

    政府参考人(西本淳哉君) お答え申し上げます。  ただいま御議論出ておりますように、地球温暖化問題、これは産業界も含めて国民一人一人が考えるべき問題であるというふうに思います。今、次期枠組みの合意に向けた国際交渉とか進んでおりますし、それから中期目標につきましても検討中のところでございますけれども、この中で我が国の中期目標の検討に当たっては広く国民の意見を聴取するということとしておりますので、これまでに産業界も含めて有識者とか一般国民から様々な意見が寄せられておるというふうに思っています。  産業団体の意見広告についてもこうした意見の一つというふうに考えておりますけれども、確かに我が国産業界はこれまでの省エネ努力等によりまして、世界最高水準のエネルギー効率を実現しているということでございますし、排出削減に貢献してきたということも言えると思いますけれども、産業界にはこういったピンチをチャンスに積極的に切り替えていくという姿勢で引き続き低炭素社会の実現に向けて一層の取組を行っていただきたいというふうに期待しているところでございます。
  159. 弘友和夫

    弘友和夫君 まさしくピンチをチャンスにという、ピンチをチャンスにということも一つあると思いますし。  先ほど大臣の、要するに国の在り方、生き様というのを本当にそっちの方向にやらないと日本がまたある意味では生きていけないと。例えば、太陽光発電にしても、経産省が今まで補助金である程度、日本は世界のトップいっていたんですよ、トップを。補助金をやめてしまって今ドイツが一番じゃありませんか。だから、そういうやっぱりこれに技術革新をしながら、これで将来世界の中で日本が生き残っていけるというものを出さないといけない。  EUなんかはもう二〇%削減いいですよと。あるいはまとまれば三〇%と、こう言っているわけですね。アメリカも変わってきたわけですよ、オバマになって。この星を守るためにエネルギーの使い方を変えなければならないと大統領は言っているわけですよ。だから、これは急速に変わってくると思いますよ。だから、日本だけやってもばからしいみたいな話じゃないと思うんですね、全然。だから、そこら辺をやっぱり大きく変えていただかぬといかぬのじゃないかと思いますけれども。  石破大臣ちょうど来られましたので、農水省の方もこれ直接関連はないかもしれません、それはエネルギー起源じゃないとかいろいろありますから。ただ、やはりそういう低炭素社会に向けて農水省の役割も非常に大きいというふうに思いますけれども、中期目標をどの程度にしていくかとか、そういうことはお聞きしませんが、本当にどっちの方向に行った方がいいのかと、また、こういう意見広告もありますけれども大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  160. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 政府全体として取り組んでいかねばならないことでございますが、我々農林水産業をお預かりします立場から申し上げますと、地球温暖化ということは我々の農林水産業にも多大な影響を与えると。それは、日本で熱帯作物が取れるようになって良かったねみたいなことを言う人もいないわけではありませんが、そういうお話ではございませんで、もうとにかくマイナスに働くことがほとんどなわけでございます。そういたしますと、農林水産省といたしましても、農林水産業、これから人口の問題等々もございます、安定的に発展をさせていくためには、この地球温暖化防止のために農林水産省としてできる限りのことはやっていかねばならないというふうに考えております。  具体的には、もう委員御案内のことですから、私として繰り返すことはいたしません。私どもとして戦略も立てておるわけでございまして、今回これも強化されているわけでございますが、農林水産分野におきまして地球温暖化対策というものは積極的に総合的に推進をしていかねばならぬと、京都議定書の六%削減約束の確実な達成に向けて農林水産省を挙げて取り組む所存でございます。
  161. 弘友和夫

    弘友和夫君 斉藤大臣も、また農水の石破大臣も、是非そちらの方向で頑張っていただきたい、いかなる抵抗があろうとも断固やっていただきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  次に、ちょっと話題変えまして、農水省緑の雇用担い手対策事業に係る補助金の過大交付と農水分野における就職の促進ということで、緑の雇用担い手対策事業が十七年度決算検査報告で過大に算定されていたということが指摘されたと。十九年度決算検査報告においても、資格要件を満たさない者に対する助成金が交付された結果、補助金が過大に支出されていたという指摘があったと。この予算は、十九年度及び二十年度六十七億、二十一年度も六十億と例年多額に上がっているけれども、予算執行の適正化事業実施体制の見直しを図る必要があるんではないかと。  今般また会計検査院から不当事項を指摘されたことについてどう反省をし、この不適切な事態が発生する要因、事業実施体制の適正化に向けた取組状況について、農水省にお伺いしたいと思います。
  162. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 御指摘はそのとおりでございます。  何でこんなことになったかということでございますが、直接の原因は、平成十八年度から同事業の研修生の資格要件が変更されておりました。としたところが、宮古地方森林組合、これ岩手県でございますが、この認識が欠けていたということが直接の原因でございます。この指摘は重く受け止めなければなりませんで、本当にこれだけなんですかと、ほかにも同様な不当案件はありませんかということを早急に点検をし、問題がないことは確認をいたしました。研修生の資格要件について、林野庁長官の通知によりまして改めて周知徹底を行いました。  さらに、全国森林組合連合会、これが事業実施主体でございますが、実地研修を行う森林組合等の林業事業体に対して十分な監督指導が行われていなかったのではないかということも原因であると考えております。私どもとして、監督指導体制の強化を指示をいたしました。これを受けまして全国森林組合連合会も、組織の再編による事業執行指導体制の強化、チェックシートの配付や各種会議等を通じた指導の徹底について早急に対応したということでございます。  本当に、遺憾という言葉は私余り好きじゃないのですが、決していいことではございません。こういうことが生じることがございませんように、全国森林組合連合会に私どもきちんと指導をしていきたいというふうに考えておりまして、このような指摘を受けるようなことがないようにいたさなければいけないと反省をいたしておるところでございます。
  163. 弘友和夫

    弘友和夫君 もう一つ、農水省が雇用対策として二十年十二月から開始している農・林・水産雇用事業、これは農山漁村で働く人材を都市から地方へ派遣するという事業ですけれども。これは、現下厳しい経済状況の下で雇用情勢が悪化する中、農林水産業が雇用の受皿となればということで、失業者の就業機会の提供につなげるばかりでなくて、後継者の発掘も期待できると、こういう事業なんですけれども、千九百人の求人の情報で二十一年一月までに就職に結び付いたのは百五十一人にとどまっていると。後で聞きましたら、四月では大分、相当増えているというのはお聞きしたんですけれども。  これを今度また二十一年度末までに五千人の雇用をしようと、こういうふうに報じられているわけですが、果たして大丈夫かなと。事業としては非常にいい事業だと思うんですけれども、これについてお伺いをしたいと思います。
  164. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 大丈夫ですなんて言っちゃったらそれで終わりなんですが。この五千名というのは一体何なんだといいますと、農業で二千二百九十名、林業で二千三百名、水産業で百九十三名、全体で五千名程度の雇用創出を図りたいというふうに考えております。もちろん数字は多少の入り繰りはございますが、委員まさしく的確に御指摘になりましたように、ほかの産業では仕事なくなっちゃったと、じゃ農業でもやるかとか、そういうことを私ども考えておるわけではございません。農林水産業の一番の問題は後継者がいないということでございまして、まさしくそこをマッチングさせなければいけない。ほかで失業する人が出たから、じゃ受皿になりましょうかなぞという話ではない。  あわせて、農業でも漁業でも林業でもそうですが、すぐ始めてすぐできるなぞという簡単なものではございませんで、相当にスキルを上げていかないと、やってはみたけどすぐやめちゃいましたみたいな人が出ては何にもならないわけでございます。  したがいまして、いろいろな新規就業対策を講じておるわけでございまして、二十年度の二次補正あるいは二十一年度当初予算合わせまして五千名の雇用創出を図りたいというふうに考えております。二次補正では措置をいたしましたが、農業で千二百二十六名、漁業で三十名、合計一千二百五十六名の雇用が決定をされました。二十一年度当初予算で措置した対策につきましては、現在、研修生を雇用する事業体を募集中や審査中でございますが、当初目標にしておりました五千名の雇用の創出、これを十分見込めるというふうに考えております。  さらに、今御審議をいただいております二十一年度補正予算でございますが、これは、農の雇用事業を拡充する等によりまして更に七千百名程度の雇用を創出してまいります。このように考えておるところでございます。  先ほど申し上げましたように、相談窓口を拡充をしなければいけないというふうに考えております。つまり、農業をやりたいな、漁業をやりたいな、林業をやりたいな、だけどどこに何の相談に行けばいいんだということがよく分からない。若い者欲しいなと思っているけれども、どこにそういう人たちがいるのか分からない。このマッチングということが極めて重要だというふうに私は考えております。昨年十二月二十四日から四月三十日までの間、お問い合わせは二万三千八百四十六件でございました。その中で採用されました雇用者は、一月末では百五十一名でしたが、四月三十日現在では千七百一名ということになっておるわけでございます。  あるいは、地域において活性化のリーダーになる人材が欲しいなということで、二十年度二次補正で田舎で働き隊という事業をつくりました。これも八百名程度の募集定員を予定しておりましたが、この三倍の研修生が参加をしたということでございます。  要は事業の仕組み方でございまして、そこのコアはマッチングなんだというふうに思っております。そこをうまくやることによりまして、農業に後継者が、林業に後継者が、水産業に後継者がという産業的な、構造的な問題の解決を何としても見出したいと、このように思っておるところでございます。
  165. 弘友和夫

    弘友和夫君 今まで後継者育成のいろいろな政策等もあったと思うんですけれども、なかなかそれが実を結んでこなかったというのも事実だと思うんです。今回是非、これも、先ほど千何百人ですか、千七百ですか、という募集もあったということでございますので、しっかりと後継者の育成ですね、やっていただきたいというふうに思います。  時間が余りございませんで、私、旧緑資源機構事業承継等の問題を用意しておりましたけれども、ちょっと時間がありませんので飛ばさせていただきますので。  鳥獣被害対策でございます。  野生鳥獣による農作物の被害というのは、平成十九年度は約百八十五億、被害範囲や被害額は高止まりしているわけですね。平成十九年十二月に鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律というのが制定をされました。二月から施行されたわけでございますけれども、これで二十八億円の予算が計上されて、総合対策の計画を作るようになる、市町村が。  現在では、千七百八十二市町村のうちの計画策定済みが五百三十、協議中が七十九、二十年度又は二十一年度に策定予定が三百五と、約半数しかこれ取組が進んでいないという状況でございますけれども、現在の取組状況と対策の効果の見通しについてお伺いしたいと思います。
  166. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) 御指摘のように、鳥獣被害防止特別措置法は、市町村が鳥獣被害防止計画を作成していただきまして、そういう市町村に対しまして、地方交付税の拡充措置でありますとか、先ほど指摘のあった補助事業等の各種支援措置を講ずるものであります。昨年の二月二十一日に施行されて一年余りたつわけでありますが、本年の三月末の時点計画を策定した市町村、全国で三分の一をようやく超えまして六百四十三市町村に及んでおります。今年度中に九百以上の市町村、過半の市町村で計画が作成される、作成済みとなる予定でございます。  今後とも、私ども、直接担当者が出向くなりいろいろな工夫をいたしまして、被害に苦しむすべての市町村において計画が策定されるように積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  167. 弘友和夫

    弘友和夫君 それで、いろいろ対応するにしましても、じゃどれだけの、例えばクマが猿がシカがとかイノシシがとか、果たして一体どれぐらいを捕獲をするのかとか、そういう基本となる数字がはっきりないといけないと思うんですね。これは環境省ですか。だから、環境省がそれを把握して対応は農水省がやると、ちょっとそこら辺よくあれなんですが、個体調査です。
  168. 黒田大三郎

    政府参考人(黒田大三郎君) 野生鳥獣の適正な保護管理のためには、個体数の把握というのは非常に重要というのは委員指摘のとおりだというふうに認識しております。一方で、野生鳥獣は自由に動き回りますし、また主に見通しの悪い森林にいるということで、正確な数字の把握というのがなかなか難しいという側面もございます。  環境省では、この数の把握という観点から、大正年間からですが、都道府県から捕獲数の報告を受けまして、それを取りまとめて鳥獣関係統計として自治体にフィードバックをするというような取組をしておりますし、また全国的な生息域の分布、そしてその変化など、鳥獣に関する調査というものを実施してきております。さらに、平成二十年度からでございますが、専門家の協力もいただきまして、シカ、イノシシなど中型、大型の哺乳類の個体数の把握をするための新たな手法の確立と、これに基づく全国的な個体数の推計に取り組んでいるところでございます。  今後とも、野生鳥獣の専門家、それから都道府県、農林水産省など関係省庁との連携を図りながら、野生鳥獣の的確な個体数把握について努力をしてまいりたいと考えています。
  169. 弘友和夫

    弘友和夫君 頭数があって、いろいろ有害鳥獣の処理を、捕獲したりして処理をすると。今それを埋めたりなんかしてやっておるわけですね。やっぱり命あるものをあれするわけですから、やっぱりきちっと後で肉等で処理加工するとかそういうことが必要だというふうに思うわけですけれども、それの整備はどうなっているのか。  それから、補助金の使い勝手が非常に悪いと。というのは、投資効率が一・〇以上じゃないといけないとかいう基準があって、これを、さくを造ったためにどれだけの損害を防げたかとかなんとか、そんなものを農家だとかそういう人が言うのは非常に難しいと思うんですね、計算したりして出すとかということについて。それから、猟友会等も大変高齢化しているというようなことで、有効な防除のものだとか防護さく、防護網、それから捕獲のためのいろいろなものだとか、そういうものを非常にやはり技術開発をしてやるべきじゃないかというものがありますけれども、お答えをいただきたい。  それと、先ほど、斉藤大臣の地域グリーンニューディール基金に関して、御答弁、何か付け加えるということがありますれば、両方お答えいただきたいと思います。
  170. 本川一善

    政府参考人(本川一善君) 御指摘のとおり、捕獲した鳥獣につきましては、そこに放置をしておくことというのは禁じられております。通常、埋めるか、あるいはその自治体の焼却施設で燃やすか、あるいは肉として活用する、こういったことになるわけでありますが、三十市町村程度を、特に鳥獣の被害、捕獲が多い市町村を調査しましたら、その場で埋設するというのが大体八割ぐらい、それからごみ処理場で焼却するというのが、これ複数回答でありますが、五割程度、肉として活用しておるのはまだ一割程度にとどまっております。  一方で、肉につきましては、良質なジビエという、フランス料理なんかで使うですね、そういう形で捕獲鳥獣については注目をされているということもございますので、私ども、捕獲鳥獣の処理加工施設の整備でありますとか、それの商品開発、あるいはこれを流通させるために必要な流通業者との連携強化、こういったことを積極的に進めてまいりたいと考えております。  それから、補助事業につきましては、先ほど来もいろいろお話ございますが、国民の税金を使わせていただくということもございますので、やはり申請いただくものについてきちんとした効果が出るということは確認をさせていただきたいと思っております。ただ、それに伴いましていろいろと項目を立てておるのでありますが、すべての項目についてそういうことを立てる必要はございません。  そういったことも含めて、きちんと現場の方に御説明をしながら、地域が取り組みやすいように、それから、補助金についても先ほど来御論議ありましたが、近藤大臣なりの御指示の下に、四〇%程度補助金の書類を削減するとか、そのような取組をさせていただいております。今後とも、現場にとって使い勝手の良い事業となるように、運用改善に努めてまいりたいと思っております。  それから、捕獲なり対策の内容でございますけれども、確かに猟友会の方が高齢化されるとかそういう形で銃による捕獲というのが非常に難しくなっております。これに対しまして、例えば、近づけないために、イノシシが飛び越えられないような忍び返しのさくを新たに開発をして提案を申し上げているとか、あるいはモンキードッグの導入でありますとか、あるいは多様な、いろいろな種類の鳥獣ごとに使い分けられるような箱わなの整備、こういったものもいろいろ用意しておりますので、そのような工夫を行いながら積極的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  171. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 申し訳ございません。先ほど、地域グリーンニューディール基金につきまして、説明会を開催したと、このように答弁申し上げたところでございますが、訂正をさせていただきます。  四月二十七日付けで各都道府県、政令市に対して基金の積極的な活用を呼びかける通知を発出させていただきました。今後、この説明会を開催するなど、趣旨の内容の周知に努めてまいりたいと思います。申し訳ございませんでした。訂正させていただきます。
  172. 弘友和夫

    弘友和夫君 最後に、マグロはえ縄漁業の国際減船でございますけれども、これは八十七隻減船されるということで、これに対する、これ、私は、国の施策ですからね、全部国が見てもいいんじゃないかと思っているんですが、四月二十三日、宮城県知事が、国際減船に伴って漁船、不要漁船処理費交付金の全額国の負担とすることを求める要望書を総務大臣に提出したということでございますけれども、国が見る部分とそれから地方に出させる部分があるわけですね。だから、地方は金がないから出せないんだというのが非常に多いものですから、是非国の方で、これは特交で見るとか、それから今度の地域活性化・経済危機対策臨時交付金、これも多分使えるとは思うんですけれども、まず特交で見てもらって、それからこういうのを使うとかいう、とにかく地域の負担がないようにしていただきたいと思いますけれども、最後にお聞きして、終わりたいと思います。
  173. 山田修路

    政府参考人山田修路君) 不要漁船処理費交付金でございますが、これにつきましては、減船の際に不要となる漁船をスクラップするものについて減船漁業者等に対して一定額を国が交付するというものでございまして、廃業することに対する補償的な性格を有しております。これにつきましては、都道府県の拠出のいかんを問わず、国が定額を助成することになっております。  都道府県の負担につきましては、これまでと同様に、地方経済への影響の緩和という観点から都道府県に協力を要請するということでございまして、義務負担にはなっておらないわけでございます。これにつきましては、従来から、都道府県が一定の負担を行った場合には特別交付税の措置をしていただいておりますので、今回に当たりましても特別交付税の算定基礎となるように総務省に対して要求を行っております。  それから、今お話がありました二十一年度補正予算の中で地域活性化のための新たな臨時交付金が予定をされております。この対象となりますよう内閣府と協議を行ってきたところでございます。この臨時交付金につきましては、現在制度の詳細を検討している段階と聞いておりますが、内閣府が取りまとめました活用事例集の中では、各省が推奨する地域単独事業としてこの減船に係る都道府県の負担が掲載されております。  水産庁といたしましては、同交付金の対象になりますよう、引き続き内閣府と協議をしていきたいと考えております。
  174. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  私は、諫早湾干拓事業の潮受け堤防の排水門開門について今日お尋ねしたいと思っております。  まず、これまで農林水産省が開門に後ろ向きの理由の一つとして挙げてきた背後低平地の排水不良や洪水時の湛水被害についてお尋ねしたいと思います。  お手元に今資料をお配りをしておりますけれども、この一枚目は、一九八二年から一九九九年の間に背後地で行われた防災対策事業について、昨年の六月、公共事業チェック議員の会の求めに対して、農水省が精査の上お出しになられたものでございます。  これを地図に場所を落としていただきましたものが二枚目と三枚目なんですが、この諫早市が行ったポンプ場の整備が三枚目ですが、これは、御覧のように、低平地というよりは諫早の中心市街に接する部分、半造川沿いに必要なポンプ場が整備をされているということでございまして、農水省が補助をして県が設置をしている上の排水ポンプというのは、二枚目の位置図の①から⑥というふうに設置をされています。  これは、現地でいいますと、小野平野、小野地区と呼ばれるところに言わば集中して、あるいは本明川の河口域のところに整備をされていることが一目瞭然だと思うんですね。この①から⑥は排水ポンプ、排水機場を示したものですけれども、これと併せてかんがい排水事業あるいは排水対策特別事業などが行われてまいりました。伺いますと、これまでの取組で、この小野地区についてはほぼ目標の整備は完了したというふうにお伺いをしております。  そこでお尋ねをしたいんですが、この小野地区ではどのような災害を想定して、どのような能力を目標として整備をしてきたのか、その進捗率はどれだけになっていますか。
  175. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) まず、委員指摘のとおり、これまで私どもとしても、これは県営の事業でございますので、県の要望を踏まえて事業を進めてきたところでございます。  その場合の考え方でございますけれども、これは地元からの要請に沿って、十年に一回から二十年に一回程度発生する降雨に対応できるような排水機能を付与すると、こういうことで対応してきているところでございます。
  176. 仁比聡平

    仁比聡平君 進捗率についてはいかがですか。
  177. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) 先ほど御答弁申し上げましたように、こういった排水対策事業につきましては、これは県が事業主体、この場合で申しますと長崎県が事業主体ということでございますので、国として具体の目標を定めて、その上でその進捗率をはじき出すということはいたしておりません。  ただ、先ほど申しましたように、地元から要請があり、また県からもそういった要請があれば、私どもとしては、地域の実情に合った排水改良が進められるように、先ほど委員からも御指摘もありました排特事業あるいは湛水防除事業といった補助事業を活用して対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  178. 仁比聡平

    仁比聡平君 県の方に私どもの議員がお尋ねをしたところでは、この小野地区における整備というのはほぼ完成をしてきているというふうに伺っております。こうした事業によりまして、小野地区全体に、この図面では分かりませんが、縦横の排水路が整備をされておりまして、これが整備されたことによって排水不良は改善されたというふうに伺っております。  ところが、この図面で言います⑥の排水機場が示されているところに南部堤防という文字がありまして、ここから南東側、ここが森山、旧森山地区の昭和に完成した旧干拓地でございます。あるいはさらに、有明川を挟んで吾妻町側、こうした地区には、この一九八二年以降の排水機場の整備というのは一切行われていないわけです。  ならば、この森山地区やそのお隣の吾妻の方の干拓でそうした要望がなかったのかというと、全くそうではないんですよね。私、強い要望が繰り返されてきたというふうに受け止めております。かなり以前から、諫早市からも背後地における排水対策の整備についてということで要望が上がっておりますし、今回県に確認をいたしましたら、その背後地域でも一時的に農地が冠水する状況が発生しているということで、かんがい排水事業、排水対策特別事業の要望が強く出されているわけです。  先ほど来、県の事業です、主体は県ですというお話なんですが、農水省として、国として、森山地区あるいは吾妻の地区でのこの要望、これはどういうふうに受け止めているのか、計画は持っているのか、お尋ねいたします。
  179. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) 委員指摘がございました森山地区あるいは吾妻地区におきましては、かなり古い時代の排水機場、これは整備をされた経緯はございます。ただ、現在でも森山町、諫早市の森山地区を中心に標高が海抜ゼロメートル以下の農地が三百ヘクタール程度存在しているというふうに承知をしておりまして、現在、調整池の水位をマイナス一メートルで管理をしているわけでございますけれども、集中豪雨時等には調整池の水位が高くなって、他地域と比較して排水が滞ることがあるというふうに聞いております。こういった状況改善するために、森山町の地先の農家を中心に排水改良のための事業の要望があるというふうに長崎県から聞いております。  ただ、今委員が御指摘がございましたように、計画があるかということでございましたけれども、まだ具体の計画にはなっていないというふうに承知をしております。
  180. 仁比聡平

    仁比聡平君 先週、この点、担当の課の方にレクを求めてみましたら、国としてどのような想定でどのような目標で整備をするのかというのは認識がないということを伺って、私は驚いたわけですね。  大臣、この問題について大臣と議論させていただくのは私は初めてでございますけれども、この諫早湾干拓事業の防災効果ということを農水省は一貫しておっしゃっておられて、この低平地の湛水被害あるいは排水不良、これどうするのかということを裁判でも国会でもずっと唱え続けておられるんですよね。ところが、小野についてはこういう事業を進めてきたけれども、森山についても吾妻についてもどんな要望があるかというのを私から問われて、その場ではよく知りませんと。そんなことで国としての責任が尽くされているとお思いなのかという、私はびっくりしているんですよね。  私、現地を訪れまして調査をさせていただきましたが、一つは、小野地区と同じように排水路と排水機場の整備を早くしてほしいという声を直接伺いました。森山地区にはこの南部堤防の陸側に仁反田川という県管理の川がございます。この仁反田川とそれから吾妻との境の有明川、この二つ以外には海に向かって縦に排水するその排水路がないんですね。これが洪水時に内水被害の原因になってきたのではないかと。特に、昭和三十年代にこの森山干拓は完成しているわけですが、その干拓の前に、それ以前にできた干拓地を守っていた堤防、旧堤防と申し上げておきますけれども、この旧堤防の山側と海側の間には排水路が通じていなくて、この旧堤防によって内水が排除されない、これを通してもらえば、二本ほど通してもらえばという具体的な声も伺いましたけれども、排水は大幅に改善されるという声でございました。  もう一つ私が紹介をしたいのは、近年、洪水時の湛水が引いていく時間が早くなったという実感はあるんだけれども、それは調整池のマイナス一メーター管理というよりも、仁反田川の整備、改修が進んだからだという実感をお持ちの方がいらっしゃいます。それは、湛水がいつも諫早湾からの潮に押されての排水不良なのではなくて、仁反田川や有明川の河川整備が遅れてきたことによって内水がはけないと。だから、これの整備が進んだことによってどんどんはけるようになったから引く時間が早くなったというんですね。  これ、私が直接伺った限りの声ですから、これが本当に現場で総意としてとか、あるいは科学的にとか、検証され尽くしたなんて私は申し上げるつもりはないんですけれども、こうした声も含めて県とともに要望を調査して、こうした事業は営農にも防災にもすぐに役立つわけですから、それこそ前倒しで今年度からすぐに事業を着手するべきだと思いますけれども大臣、いかがですか。大臣大臣
  181. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) 先ほど委員指摘がありましたが、実は、私も現地に参りましたときに森山の地先のその排水の問題については直接要望を受けておりますので、要望を承知していないということではございません。ただ、先ほど申しましたように、現時点で、要望はございますけれども、具体の計画はまだ立っていないという状況であるということを申し上げたところでございます。ただ、私どもといたしましても、県からの要望に基づきまして、必要な排水対策が速やかに実施されるように支援していきたいという気持ちは持っております。
  182. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 今局長からお答えをしたとおりでございます。現場の実情というものは知らないということではあってはなりませんので、局長も現地に参りました、担当者も現地との連絡をよく密にしていかねばなりません。  これは、地元からの御申請が上がってこなければ事業は実施ができないわけでございますので、前倒しということは地元から上がってくればもちろん私ども真摯にそれに対応していかねばなりません。現時点で地元でこれをどのような形で申請をするかということについて御議論が行われているのかもしれませんですけれども、私ども事業の申請が上がってきましたときに、その効果の発現が早かるべく努力をするのは当然のことだというふうに承知をいたしておるところでございます。
  183. 仁比聡平

    仁比聡平君 県の事業ということになりますから、県から要望が上がれば速やかに今大臣もおっしゃられたような形で取り組んでいただきたいと私からもお願いをしておきます。  加えて、この仁反田川の河口に、これは局長は御存じかと思いますけれども、万灯樋門という新しい樋門が平成十六年に完成しております。これは県の土木事務所の管理のようですから、むしろ国交省の方の御縁なのかもしれないんですけれども、ここに排水機場も設置をされているわけですね。この樋門はモーターで駆動して県が管理しているわけです。この有明海とりわけ諫早湾あるいは調整池の開門をどうするのかということの議論の際に、この樋門の管理を潮汐の干満の差が大変激しい中で毎日行うことは大変だという議論があるわけですね。この樋門は、直接調整池に接する樋門というのはこれは数に限りがありますから、ここをこの万灯樋門と同様にモーター駆動のものにして行政が一元的に管理するというふうにすればこの樋門の管理というのは随分楽になるんじゃないか、営農者の皆さんにとってですね。  加えて、みお筋、水路を確保するということも排水の上では大事なわけですけれども、この南部堤防と森山干拓の間の水路は、ここは中央干拓地の整備に伴ってきちんとした整備が行われまして、ここ水路、十分確保されているわけですよ。だから、先ほどの地元の方がおっしゃるように、はけが良くなったということだと思うんです。そのみお筋の確保も、この場所やあるいは佐賀県や福岡県なんかでやられているように、人力に頼るんじゃなくて必要ならば重機を入れてそういう形で整備するというふうにすれば営農者の方々、地元の例えば土地改良区や農協の皆さんの御苦労というのは随分負担が軽減されるんじゃないかというふうに思いますけれども大臣、いかがですか。
  184. 石破茂

    国務大臣石破茂君) 重機でどうなのだという御指摘でございます。  河口部の排水樋門では、潮受け堤防の閉め切り以前には潮汐の影響により前面に潟土が堆積しやすく軟弱な泥土であるところから、重機による除去も困難な状況でございました。ですから、ずぶずぶという、変な言い方ですけれども、そうであるので重機が入っても沈んじゃうというようなことでしたから、人力によってみずみちを確保したということがございました。  このため、潮受け堤防を建設をし、調整池の水位を標高マイナス一メートルに管理をすることによりまして、現在では定期的な潟土の除去が必要がない、そういう状況になっておるわけでございます。  今後、潮汐の影響により調整池内の排水樋門等の前面に潟土が堆積するというような影響が生ずる可能性というものは否定ができないわけでございますので、開門調査のための環境アセスにおいて、開門方法に応じて排水樋門の潟土堆積による機能障害の程度を予測しなければならない、それと同時に、これらの影響を極力回避、低減する措置についても併せて検討したいと、このように考えておるところでございます。
  185. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣、一問目で申し上げた駆動式の樋門ということを検討してはどうかという点はいかがです。
  186. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) まず、これは委員の御指摘の点は、開門を言わばした場合のことを念頭に置いているのではないかというふうに考えているところでありますけれども、開門によって調整池の水位が潮汐に連動して変動するということになりますれば、低平地の排水に影響が生じる可能性はあるというふうに考えております。  そのときにどういう対策を取るかということでございますけれども、これについては、開門調査のための環境アセスメントにおきまして、開門方法に応じて数値シミュレーションによりまして、洪水期における調整池、背後地の水位、洪水期と申しましても、これは通常の年に雨の多い時期というものでございますけれども、そういった時期の水位を予測した上で、農地、それから排水樋門、まさに委員の御指摘になった排水樋門ですね、これに対する浸水、湛水、それから被害の程度、これを定量的に予測をまずいたしたいというふうに思っております。  そして、その予測の上に立って、これらの影響を極力回避、低減する措置についても併せて検討するということでございまして、委員指摘のモーターで駆動するような形というのも、当然、その一つの形として検討の対象になるというふうに考えております。
  187. 仁比聡平

    仁比聡平君 整備の手法としては駆動式はあり得るということを今局長はおっしゃったんですけれども、その前提としてアセスが必要だというのは僕は理解がいかないんですよ。  万灯樋門は、これは仁反田川の河口のところで、これは調整池からの影響を遮断するために造られているわけですよね、平成十六年に。この干拓地のほかの樋門だって重要なところはそうしたらいいじゃないですか。  だって、これはもちろん私は開門をすべきだという立場でございますけれども、洪水時には湛水被害が起こっているわけでしょう、マイナス一メーターの管理の後にも。そのときには閉めた上で内水を排除しなきゃいけないじゃないですか。だから樋門が要るじゃないですか。そうした事業を何でそんな先延ばしにしようとするのかというのが全く理解がいかないんですよね。どうですか、大臣大臣
  188. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、今委員の御指摘そのものだけを聞けば、なるほどそうかねという気がしないわけでは正直言ってございません。  しかしながら、アセスというのは、いろんな状況において何が起こるか、それが相互に連関をしてどのような状況が現出するかということを全部総合的にあらゆる観点から行う、これは別にこの諫早に限らず、アセスメントというのはそういうものでございます。  そのように考えてまいりますと、アセスメントをするということと今委員の御指摘のことが全くセパレートして議論ができるかといえば、必ずしもそういうものでもないだろうと。すべてのものが連関してアセスというのは行うわけでございまして、それのみを外して議論をするということは余り適切ではないだろうと。そして、そのときにどういうような状況が起きるかということも、二十年に一回とか、あるいは場合によっては三十年に一回、そういうものも想定をしながらやっていくことになるとするならば、実際にそうでございますが、更に総合的なアセスメントというものがあらゆる観点から必要になるというふうに私は考えております。
  189. 仁比聡平

    仁比聡平君 それはおかしいんじゃないですか。  だって、地元の要望をよく受け止めて、かんがい排水事業だとかあるいは排特事業だとか、こういうようなものはすぐにでもやりたいとおっしゃっているわけじゃないですか。その中で樋門だとか排水機場だとかというのは、それは当然含まれてくる話でしょう。それを、アセス、それも三年だとか六年掛かるかみたいなことが言われているようなことにかからしめるのは、私は逆に営農者の皆さんの要求も後回しにするものだと、そんなものはアセスの名に値しないと私は思うんですよね。  大臣、時間がなくなりましたから一問だけお尋ねしたいんですが、予算委員会で、アセスをいつまでもやるなんというようなことは、予算委員会ではないか、いつまでもやるなんということはあってはならないとおっしゃっているでしょう。総理も早くに結論を出すというような趣旨の御答弁をされてきました。これ、今日お伺いすると、その必要な事業も何だかその先に先送りするかのような、そんな議論に聞こえるんですが、大臣はどんなおつもりなんですか。
  190. 石破茂

    国務大臣石破茂君) それは、県が必要であるということで申請が上がってくれば私どもとしてそれに真摯に対応しなければならないというのは先ほど答弁を申し上げたとおりでございます。  そしてまた、アセスというものを、不必要にという言い方は良くないのかもしれません、ああだこうだ理由を言いながら引き延ばすつもりは私どもとしては全くないと。アセスを行うのにこれは必要な期間というのは、それは環境省において定められているものであって、それをすっ飛ばして短くするなんということを申し上げるつもりは、アセスの正当性に影響を与えますから、そんなことを言うつもりは私は全くないのですが、不必要に延ばす必要は全くなくて、どうすれば早くアセスが行われるかということについては、それはもう最大限の努力をし、きちんとしたアセスの下に今後の対応を検討していかねばならないということを申し上げたものでございます。
  191. 仁比聡平

    仁比聡平君 どうすれば早くできるかといえば、これまでこの海域において調査をされてきたデータは、これは過去のデータはたくさんあるわけで、これについて今後検討に使用することについて関係者は異論ないわけですよ。ですから、これまでのデータを前提に関係者がきちんと合意形成をしていくことのできる、そういう開かれた協議の場を私は継続して持っていくべきことだと思います。  今、意見の聴取があっていますから、大臣、その後決断をしていかれるんでしょうけれども、いたずらに長期にアセスをやるというんじゃなくて、それは関係者の意見をきちんと聴いて合意を形成する、そして、今の防災の問題も含めて、あるいは代替水源の問題もそうですよ、やるべきことは早くやる、着手するということが大臣に求められている、それが昨年六月の佐賀地裁判決を受けて大臣が開門アセスをする、そういうふうに述べられたその本来の姿になるのではないかと私は思います。  強くそのことを求めて、質問時間終わりましたから、質問を終わります。
  192. 近藤正道

    近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  政府の水俣病対策について質問をさせていただきます。  今月で九州熊本の水俣病が公式確認されてから五十三年になります。私の地元新潟の水俣病公式確認から四十四年目でございます。〇四年、チッソと国、県の加害責任を認めた関西訴訟の最高裁判決がありました。〇六年には、衆参で全会一致で水俣病国会決議がございました。にもかかわらず、今、配付資料をお配りしておりますけれども、いまだに多くの潜在患者の皆さんが被害に苦しめられております。  特に、新潟水俣病でございますけれども、被害者数が熊本等に比べて少ない、こういうこともございまして、熊本、鹿児島の次、後回しとも私はされているんではないかというふうに思っておりまして、政府、自治体の対応も遅れて、あるいは結婚や仕事での差別、偏見を恐れて患者の名のり出がなかなか進んでいない、このことは更に対策を遅らせている、こういう深刻な悪循環の中にあるというふうに思っています。阿賀野川流域で、川と結び付いた人々の命と暮らし、これもう本当に破壊をされたというふうに思っております。  そうした反省の中で、新潟県は本年四月から県単独で水俣病条例、これは新潟水俣病地域福祉推進条例、これが正式名称でありますが、これを施行いたしまして取組を進めております。また、新潟県、新潟市の認定審査会も一昨年三月に再開をされました。今年一月には、新潟の認定審査会の鈴木俊委員が、「公健法の審査は地方自治法上の法定受託事務であるけれども、認定基準として最高裁で否定されたいわゆる五十二年の判断条件、これを使うよう求めた自治法二百四十五条の九に基づく処理基準には法的拘束力がないと。県、市は五十二年判断条件ではなくて、最高裁判決にのっとった認定基準によるべきだ」という内容の提言書を新潟県と新潟市に提出をいたしました。新潟県弁護士会も、五月の一日、最高裁判決に従った水俣病の認定審査を求める、そういう声明を出して、この鈴木委員考え方を支持しております。  今日は総務省にも来ていただいておりますけれども、一般論としてお尋ねをいたしますけれども、自治体の法定受託事務における処理基準と異なる事務処理についての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  193. 久元喜造

    政府参考人(久元喜造君) 地方自治法二百四十五条の九に法定受託事務に関する処理基準につきまして規定がございます。  この処理基準は事務を処理するに当たりよるべき基準でありまして、地方公共団体はこの処理基準に基づいて事務を処理することが法律上予定されているというふうに考えております。処理基準と異なる事務処理が行われた場合におきましては、この法的な義務を果たしていないという評価を受けることがあれば、それは違法とされることもあり得るというふうに考えております。
  194. 近藤正道

    近藤正道君 言い換えれば、国の処理基準と異なる事務処理があっても直ちに違法となるということではないと。それが法的な義務を果たしていると評価されるならば違法ではない、適法ということになるんだろうというふうに思います。  先ほどの鈴木俊委員の提言あるいは新潟県弁護士会の声明は、最高裁の認定基準というこれ以上ない適法な基準を採用するよう求めているのでありまして、最高裁基準によって新潟県、新潟市あるいは熊本、鹿児島県の審査会が認定を行ったとしても違法ではないと私は考えます。こういう考え方が言わば学界のまさに通説なわけですね。  これは政府参考人の方にお尋ねをいたしたいと思いますが、環境省は最高裁判決に異論はないんですねというふうに質問をしたいと思うんです。最高裁判決の内容を全面的に受け入れているというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  195. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) 水俣病関西訴訟の最高裁判決におきまして、国及び県が必要な規制権限を行使せず、水俣病による健康被害の拡大を防止しなかったことについて賠償責任があることを認めたものと承知しております。  環境省としましては、この最高裁判決を厳粛に受け止め、水俣病を発生させた企業への対応に長期間を要しその被害の拡大を防止できなかったことについて、真摯に反省しなければならないと考えておりまして、判決自体に異論を差し挟む立場にはないと考えております。
  196. 近藤正道

    近藤正道君 最高裁判決の中には二点識別覚の問題だとか、あるいは家族に患者がいる問題だとか、あるいは口の周りのしびれなどについても言及をしておりますが、このことについても皆さんはそのとおりであると、こういうふうに考えているというふうに理解すればいいんですか。
  197. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) 先ほど申し上げましたように、最高裁判決におきますその判断準拠というものを示されております。これにつきましては、当該訴訟における損害賠償の対象者の確定のための準拠であるというふうに承知をしております。
  198. 近藤正道

    近藤正道君 ですから、私の質問に答えてくださいよ。  いろいろ、皆さんの認定基準よりも幅広くいろいろのことを言っているわけですけれども、これをすべて皆さんとしては容認されると、そのとおりだというふうに理解しているというふうに理解すればいいんですか。
  199. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) お尋ねの点につきましては、いわゆる公健法におきます認定の基準をそれに合わせるべきではないかという御趣旨かと思いますが、最高裁判決におきましては、公健法の認定基準そのものが誤っているとしてその見直しを要請した内容とはなっていないというふうに考えております。
  200. 近藤正道

    近藤正道君 そんなこと聞いてないでしょう。  つまり、皆さんの認定基準以外のことについて、例えば二点識別覚の問題だとか、あるいは家族の中に患者がいるかどうかということだとか、あるいは口の周りがいろいろしびれるとか、そういうことについても患者認定という、認定という方向で幅広く解釈しているじゃないですか。これも全部含めて皆さんはそのとおりでございますというふうに認めるという趣旨で理解をしていいんですかと聞いているわけですよ。
  201. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) 繰り返しになりますけれども先ほどの当該訴訟において、被害があったと推認される方々の基準として、今委員がおっしゃられたような基準が用いられていることについては了解をしているところであります。
  202. 近藤正道

    近藤正道君 ならば、大臣にお尋ねをしたいと思いますが、五十二年判断条件では、水俣病である者を水俣病でないとしております。最高裁の判決はこれを否定して、より広い基準を採用しているわけでございます。  大臣にお尋ねをいたしますが、最高裁判決に沿って認定基準を見直すべきではないでしょうか。
  203. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 答弁に先立ちまして、先日五月一日、水俣市で慰霊祭がございました。私も政府を代表して参加をし、祈りの言葉をささげてきたところでございます。救われるべき人が救われるべく、私も全力を、環境省としても全力を挙げたいと誓ったところでございます。  まずそのことを御報告申し上げて、先ほどの御質問にお答えいたしますけれども、水俣病の認定基準であるいわゆる五十二年判断条件は、公健法に基づき、公平性、統一性の観点から水俣病の認定を行うため、水俣病に関係する医学の各分野の専門家による検討結果として示されたものでございます。その後、昭和六十年及び平成三年に行われた専門家による検討においてもこの判断条件の妥当性が認識をされております。さらに、平成十六年十月の水俣病関西訴訟最高裁判決も、その基となった大阪高裁判決も、公健法の認定基準そのものが誤っているとしてその見直しを要請した内容とはなっておりません。  したがいまして、現時点では、公健法の認定基準が違法とは考えておらず、認定基準を見直すことを考えていないということでございます。
  204. 近藤正道

    近藤正道君 私は、そういう大臣の判断、おかしいというふうに思っています。仮に、百歩譲って、仮にその最高裁判決は五十二年の判断条件について判断していないという立場に立ったとしても、認定患者あるいは医療手帳所持者あるいは新保健手帳所持者は皆、原因企業、国による不法行為に基づく損害賠償の対象者でございます。にもかかわらず、補償基準に大きな格差がある上、括弧付きの患者、被害者と患者間に分断をもたらしております。最高裁判決は、水俣病行政に対する厳しい批判と受け止めるべきではないでしょうか。  大臣、急性あるいは重度の患者に対して、五十二年の判断条件あるいは公健法上の認定、補償協定の連動を認めるにしても、その他の患者に対しては、最高裁判決に沿った基準でいったん認定した上で、個々の被害状況に応じて補償あるいは損害賠償を認めるよう認定基準を見直し、あるいは患者間の格差の是正、解消に努めるべきなんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  205. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 公健法上の認定基準といたしましては、先ほど説明申し上げましたように、水俣病に関係する医学の各分野の専門家による検討結果として示されたものであり、五十二年判断条件が適切であると、このように認識をしております。  平成十六年の関西訴訟最高裁判決を契機に新たに救済を求める方々が増加しておりますが、公健法の認定基準を満たさないものの救済を求める方々に対する救済、これは先ほど私が申し上げました救済されるべき方々を救済すべきだ、こういったところでございますけれども、この救済につきましてはまさに国会において御議論が行われているところでございまして、法案の一刻も早い成立を切望しているところでございます。
  206. 近藤正道

    近藤正道君 いずれにいたしましても、被害の全容をやっぱり解明するためにしっかりと実態調査をすべきだというふうに思うんです。  これは何度も質問に出ておりますけれども、熊本県は最高裁判決の後の〇七年の三月に不知火海沿岸に居住歴のある四十七万人すべての皆さんの健康調査を提案をしております。大臣は是非この要請にこたえて、不知火海沿岸のみならず、新潟の阿賀野川流域に居住している、そういう経歴を持ったすべての人に対する健康調査を実施すべきではないですか。
  207. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 沿岸住民の調査につきましては、平成十九年三月の熊本県の健康調査分析検討事業検討委員会の報告にありますように、疫学的手法によって健康被害の影響を明らかにすることについては実施上の困難があると、このように報告書にございますけれども、我々もそのように考えております。  現に多くの方々が救済を求めている状況にかんがみれば、現在国会で議論されている法案によって速やかな救済の実現を図ることが重要であると、このように考えているところでございます。
  208. 近藤正道

    近藤正道君 三月に参議院の環境委員会で議論がございました。この中で、政府は、微量のメチル水銀を持続的に摂取することによって成人に神経症状が発生する例については承知していないと、こういうふうに答弁しておりまして、遅発性の水俣病の病像を把握できていないということを認めております。  そしてまた、この間一万人のサンプル調査をやったわけでございますが、これは認定申請者あるいは新保健手帳所持者の、病状や日常生活における支障を把握するという口実で、実際は与党案、これは後で言いますけど、与党案の救済対象である四肢末梢優位の感覚障害を有する方がどれぐらいいるのかを調べたものでありまして、病像、認定基準の見直しにつながるものではありません。しかも、この与党案では、認定申請者、新保健手帳所持者の三分の二が救済対象の外になる、これから外れる、切り捨てられる。被害の全容解明のためにはきちんとした私は健康調査は不可欠だ、この国にはその責任があるんだろうというふうに思います。  与党案では公健法の認定申請や訴訟の取下げを条件としております。これは裁判を受ける権利を侵害するものだというふうに思っておりますが、他に国民に同じような処理を求めた法律は一体あるんでしょうか。お答えください。
  209. 原徳壽

    政府参考人(原徳壽君) 今御指摘の点につきましては、与党から提出されている法案の第五条二項の中で、訴訟の提起その他の救済措置以外の手段により水俣病に係る損害のてん補等を受けることを希望している者を救済措置の対象としない旨定めるということが規定されております。  この規定につきましては、それぞれ水俣病の被害を受けたと考えてその救済を求める場合に、公健法による認定の申請あるいは訴訟の提起、それぞれの方策をそれぞれ選択される方々がおられるわけでして、その選択をしている間はそちらの方策を通じての解決を図ることと、そのための趣旨として設けられたものと承知しておりまして、したがって裁判を受ける権利の侵害には当たらないと。なお、同様の例につきましては、平成七年の政治解決におきましても同様に訴訟や公健法の認定申請を行わないことを救済対象の要件としております。
  210. 近藤正道

    近藤正道君 最高裁が国に責任を認めて、歴代の環境大臣が謝罪をしてきた、このことと今回の与党案の中身は矛盾するんではないか、私はそういうふうに思っています。司法ではなくて行政手続によって被害者の迅速公正な救済を図るという公健法の目的にも私はかなっていないと、こういうふうに思います。  与党案でありますけれども、補償水準も最高裁の考え方を大幅に下回っておりますし、三分の二の患者を切り捨てている。しかも三年をめどに対象者を確定して、終了後は地域指定を解除する、まさに水俣病の幕引きを図ると、そういう中身になっております。最高裁判決を受けて当時の小池環境大臣が設置をした水俣病に係る懇談会、この中で恒久的な救済制度を設けると、こういうものが掲げられているわけでありますが、この懇談会の趣旨にも反するんではないかと私は思っております。  いずれにいたしましても、その与党案に乗らないあるいは乗れない人は、これ裁判を、あるいは訴訟をすることになるわけでございます。現在多くの人が司法救済を求めている、これは配付資料でも明らかなとおりでございますけれども、このこと自身、環境省の水俣病対策行政に対する不信の表れとして受け止めることが私はできるんだろうというふうに思っています。  大臣質問をいたしますが、新たな認定審査制度として、例えばC型肝炎救済特措法にあるように、裁判所を認定機関とするということはできないんでしょうか、考えられないんでしょうか。
  211. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) C型肝炎救済特措法は、まず一つ目に、被害者がまず国を相手とする訴訟を提起していただく、そして二番目に、被害者と国で見解が分かれる場合は裁判所が製剤投与の事実、製剤投与と感染との因果関係、C型肝炎ウイルスの感染の有無を判断するという点に特色がございます。これに対して水俣病では、一つに、できるだけ裁判によらずに速やかにすべての被害者を救済することが求められていること、それから二番目に、判断を要するのは四肢末梢優位の感覚障害の有無など医学的事項に限られていること等、裁判所の判断を仰ぐというC型肝炎の場合とは事情が異なると、このように考えております。
  212. 近藤正道

    近藤正道君 多くの患者を切り捨てて、そして裁判するならどうぞと、こういうふうに言いながら、裁判所に認定させるということを認めない、私は非常にやっぱり御都合主義ではないかという、こういう思いがいたします。しかも、与党案のチッソ分社化につきましては、患者救済ではなくてチッソの救済法だとの批判が大変強うございます。また、地域指定の解除につきましても患者団体から非常に強い懸念が出されております。  大臣は三月三日の会見の中で、地域指定の解除について、救済されるべき方がすべて救済された後に考えるべきことだと、こういうふうにお話しになっておられますが、大臣、その救済されるべき方、つまり与党案の対象者となる、私どもに言わせれば、一部の患者を手当てすれば水俣病の幕引きをしてもよいという、そういう認識なんでしょうか、お答えください。
  213. 斉藤鉄夫

    国務大臣(斉藤鉄夫君) 水俣病につきまして私は三つの基本的な姿勢、一つは、認定患者の補償が確保されること、それから二番目に、救済を受けるべき方々があとう限り救済されて今度こそ最終解決になること、そして三つ目に、チッソがこれらの要請にこたえつつ地域に貢献する企業として存在し得ること、この三つの要請を満たすことが大事であると考えております。  私、三月三日の閣議後の会見において、救済されるべき方がすべて救済されて最終解決に持っていくという基本的な考え方に立ってこの指定解除の問題も考えられるべきだと思っております、このように発言をしましたが、まさにこういう趣旨で、その認識に変わりはございません。  いずれにいたしましても、私としても、水俣病被害者の救済を急ぐという観点から、水俣病被害者の救済に係る法案について国会における議論が進められ、一日も早く成案が得られるよう切望しているところでございます。
  214. 近藤正道

    近藤正道君 時間でありますのでこれで終わりにいたしますけれども、胎児性だとかあるいは小児性患者の問題、いわゆる遅発性といいましょうか晩発性といいましょうか、この水俣病についてはいまだ不明な点がたくさんある。これは、専門家のいろいろ研究を読みますと、やっぱりそういうことが語られております。さらに、差別とか偏見からいまだ手を挙げられない人がいるということもまた現実でございます。そういう中で、多くの患者を切り捨てての幕引きは私は許されない、そういうふうに思っております。  不知火海沿岸あるいは阿賀野川流域での環境調査、健康調査に基づく被害の全容解明が絶対に必要であって、加えて、最高裁判決を踏まえた認定基準、補償基準によるすべての患者に対する早期の恒久的な補償・救済制度の創設を求めて私たちも英知を結集していきたい、こういうふうに思っておりますので、そのことを申し上げて、是非、大臣も、私は繰り返し申し上げますけれども、やはり実態調査と最高裁判決を尊重して、このベースの下で全面救済を考えるべきだ、そのことをやらなければ繰り返し繰り返し同じような事態がやっぱり出てくる、それはまさに水俣病の歴史ではないか、そのことからやっぱり目をそらすべきではないということを最後に改めて申し上げまして、私の質問を終わります。  以上でございます。
  215. 家西悟

    委員長家西悟君) 他に御発言もないようですから、農林水産省環境省及び農林漁業金融公庫決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会