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2009-04-14 第171回国会 参議院 環境委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年四月十四日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         有村 治子君     理 事                 岡崎トミ子君             ツルネン マルテイ君                 神取  忍君                 松山 政司君     委 員                 相原久美子君                 大石 正光君                 大久保潔重君                 佐藤 公治君                 轟木 利治君                 水岡 俊一君                 川口 順子君                 矢野 哲朗君                 若林 正俊君                 加藤 修一君                 浜四津敏子君                 市田 忠義君                 荒井 広幸君                 川田 龍平君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 堅一君    参考人        弁護士        日本弁護士連合        会公害対策・環        境保全委員会委        員        佐藤  泉君        早稲田大学法学        部教授        早稲田大学大学        院法務研究科教        授        大塚  直君        社団法人土壌環        境センター副会        長兼常務理事   大野 眞里君        大阪市立大学大        学院特任教授        日本環境学会会        長        畑  明郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付) ○委員派遣承認要求に関する件     ─────────────
  2. 有村治子

    委員長有村治子君) ただいまから環境委員会を開会いたします。  土壌汚染対策法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として弁護士日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会委員佐藤泉さん、早稲田大学法学部教授早稲田大学大学院法務研究科教授大塚直さん、社団法人土壌環境センター副会長兼常務理事大野眞里さん及び大阪市立大学大学院特任教授日本環境学会会長畑明郎さんの四名に御出席をいただいております。  この際、参考人皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本参議院環境委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。皆様から忌憚のない御意見を賜り、本案審査参考に資する御意見を賜りたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、佐藤参考人大塚参考人大野参考人畑参考人の順でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、参考人皆様及び質疑者の発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず佐藤参考人お願いをいたします。佐藤参考人
  3. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 弁護士佐藤でございます。  私は、この法律施行前、施行後を通じて、土壌汚染に関する訴訟、紛争、その他の法律相談を数多く担当してきました。その中で、現在の法律問題点と今回の改正が与える影響について意見を述べさせていただきます。  まず第一に、現在の法律問題点でございます。現在の法律はまじめな事業者不利益な側面があるというふうに思っております。これは言い換えれば、悪質な業者に有利な点があるということでございます。どうしてかというと、自主的な対策にかなりの土壌汚染対策をゆだねておりまして、その結果、深刻な汚染についてはどうしても隠す、そして、先進的な企業ほど先に自主的調査をして公表するという、こういう傾向がございます。したがって、法律対象をもっと広げるという必要があるというふうに思っています。  第二番目に、軽微な汚染と重大な汚染というものが分けられていないという問題がございます。日本全国でいろいろな汚染がございますが、その汚染は様々であります。それに対して、環境基準という基準を基にしてマルかバツかということを付けるということが現在多く行われています。これでは、本当に緊急を要する案件と、しばらく様子を見ても大丈夫だという案件が区別されていないということがあると思います。  三番目に、現在の対策は非常に掘削除去という手法が多く取られているという問題があります。なぜ掘削除去が好まれるかということについては、安易で工期が短いということで、売買をする場合にはどうしてもこの方法を取らざるを得ないということが多くあるというふうに思います。しかし、掘削除去というのは、汚染対策をしているというよりは汚染物質を一か所からほかに動かしているということにすぎない。その結果、本来汚染していない場所に汚染を拡散しているのではないかという危惧を抱いているわけであります。  四番目に、土地所有者に対して過大な負担が掛かっているという問題があります。汚染原因者ではない、ただ土地を持っているというだけの人が、昔にあった汚染をどういうふうに対策するかということで経済的にもまたその対応についても非常に苦慮しているという事実があちこちに見られるように思います。これは、汚染原因者に対して請求をするという仕組みがなかなか難しいということに問題があるというふうに思っております。  五番目に、掘削除去された土壌がどうやって処理されているのかということが現在あいまいであるということがあるというふうに思っております。  このような問題に対して今回の改正法がどのような対策をしているかということでございますが、今回の改正最大のポイントは、調査契機を広げると。つまり、法の網を多くかぶせていくということにあります。  私は、この改正自体には賛成でございます。ただし、その対策の仕方によってはかえって汚染を拡散してしまう、あるいは悪質な汚染を隠してしまうということがあるのではないかというふうに危惧しております。  例えば、軽微な汚染と重大な汚染が分けられていないということについては、これがこのまま続きますと掘削除去を非常に増やしてしまうと。調査が増えるということは、イコール掘削除去を増やすのではないかと。今回の法律では多少の対策をしておりますが、やはり心理的な条件としてはできるだけ自分土地からなくなってほしいという気持ちが強いものですから、汚染が拡散するということを危惧しております。これは不動産を持っている人にとっては大きな負担となるということで、善良な土地所有者に非常に大きな不利益を課すのではないかということを危惧しております。  また、土壌汚染処理明確化ということについては、新たに土壌汚染処理業という許可制度をつくるということが提案されております。土壌汚染処理というのは、汚染土壌を搬入するということであります。都道府県としては、自分の県からはなくなってほしいということで外に汚染土壌が出ていくことについては歓迎ですが、自分の県の中に汚染土壌が入ってくるということについてはどうしても危険を感じるということがあります。そうしますと、優良な汚染土壌処理業者を育成するということが、都道府県としてはできるだけ自分の中にはそういう処理業者が欲しくないということに働くのではないかということを危惧しております。したがって、全国でのレベルで土壌汚染対策するというときに、都道府県がどのように優良な土壌汚染処理業者を育成していくかということについて私は危惧を持っている次第であります。どうやって処理基準を明らかにしていくか、それから処理業者を育成していくか。新しい処理技術をどんどん開発して、より土壌汚染が適切に処理できるようになっていくか。これは、土壌汚染処理業というもののこれからの発展というんですか、新しい発展が必要な問題でありまして、これをどうやって国として支えていくかということが私としては重大な課題であるというふうに思っております。  以上の点を踏まえまして、私の改正に対する意見としては、まず第一に、現在の調査対策技術をもっと充実させていくということがないとこれからの法律運用は非常に難しいと思っております。  私が経験した事例の中でも、埋設された廃棄物原因土壌汚染が起きているということが非常にケースとして多くあります。これは地表では汚染がないわけですね。地中にだけ汚染があると。今までの調査方法処理方法ではなかなか対策がしにくいというものであります。それから、大気汚染物質が飛来したことによる、それから自然由来による、こういう汚染もございます。海面を埋め立てたことによる汚染もございます。それぞれ汚染となる原因が違うわけです。こういう汚染原因が違うものに対してどうやって調査をして対策していくかということが現在の土壌汚染対策法の中の仕組みでは十分に育成されていないというふうに思います。  がんの治療についても、現在は切るというだけではなくて様々な対応方法で、封じ込めるとか、それから化学療法をする、経過を見る、いろいろな方法が取られるようになって、できるだけ切らないという方法が優先される時代になっております。ただ、切らないというためには、十分な検査をする、そして技術は確立していくということが必要であります。ということで、土壌汚染も医療と同じように適切な診断ができる、なぜその汚染が発生しているのかということを判断できるということがあって初めて対策が適切になるのではないかと思います。  現在、この参議院調査室参考資料がお手元に配られておりますが、この二十五ページを御覧いただきたいと思います。この二十五ページには、今回の法改正についてパブリックコメントを募集した結果が載せてあります。その中の多くの関心事は、自然的な由来のものについてどうするかということについて、不安の数がかなり多く寄せられています。日本の場合には地質的に土壌汚染物質を含む地質が多様にあります。このようなものに対してどういう対策をするかということで、実際は土壌汚染対策法対象になっていないわけですけれども、汚染物質としてはあるわけでございますね。そういうものについて、どうやって国としてそれを管理していくかということについて、国民として多くの不安が寄せられているということではないかと思います。  それから、リスクコミュニケーションというものについても不安の声が挙げられています。土壌汚染が発見された場合に、その汚染についてどの程度対策が必要なのか、だれに危険が及ぶのかということについて、自治体と住民、それから企業、それから従業員、こういう方々が一緒に話し合うということが必要であるというふうに言われていますが、その手法がなかなか確立されていない。そのために、情報公開をするというその手法についても現在不明確な面が多いというふうに思っております。したがって、調査対策、そしてリスクコミュニケーションというものをきちんとしませんと、いたずらに不安をあおるのではないかというふうに思っております。  二番目に、今回の問題で重要なことは経済的な支援をどうするかということであります。私が相談を受けている中にも数多く、汚染原因者ではない個人所有土地であるというところについて土壌汚染が見付けられるというケースがあります。こういう場合には、対策費用を捻出するということが非常に困難であります。対策はしたい、だけれども金融機関は貸してくれない。それから、どんな対策をしていいか分からない。こういう案件に対して国が手を差し伸べなければ適切な対策が進んでいかないというふうに思っております。  そのためには、現在土壌汚染対策基金というものがございますが、その利用が十分ではないという状況を踏まえ、その利用拡大する、そして資金援助などの円滑な活用をする、それから多額な費用によらなくてできる処理方法を適用する、そういう方法によって適切に土壌汚染を管理していくということが必要であるというふうに思います。例えば、太陽光発電等自然エネルギー利用拠点その他、国の環境政策利用するような形でこの土地を有効に利用する、つまり、死んだ土地にしないということも必要ではないかと思います。その意味で、今後土壌汚染をより適切に調査し、そして対策し、そしてその土地利用していくということは、今後の日本にとって重要な課題であるというふうに思っております。  最後に、今日、この参議院環境委員会調査室資料の中の八十五ページ以下が日本弁護士連合会が出している意見書の概要でございます。これについて御説明したいと思います。  まず、今回の改正で盛り込まれなかった点なんですが、土壌汚染法律の目的として未然防止、つまり、これから土壌汚染を発生させないということが入っていないということが問題であるということが考えています。これに対しては、現在廃棄物処理法水質汚濁防止法等一定対応が図られているということはあると思いますが、それ以外の原因でも土壌汚染は発生しているということを思いますと、これから土壌汚染を起こさないということが一番大切でございまして、これが現在の法律に盛り込まれていないということについて、更に意見を述べているわけであります。  それからもう一つ、今回の改正に盛り込まれていない点として、操業中の工場、つまり現在稼働している工場について土壌汚染調査対策を進めるということが必要ではないかということも、日本弁護士連合会意見書では述べております。この点は今回の改正に盛り込まれていませんが、引き続き私としては、是非今後も継続して対策を行い、そして、一度起きてしまったらこれは大変な問題でございますので、これを未然に防止する、そして小さく抑えるということが何よりも重要ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  4. 有村治子

    委員長有村治子君) 佐藤参考人、ありがとうございました。  次に、大塚参考人お願いをいたします。大塚参考人
  5. 大塚直

    参考人大塚直君) 早稲田大学大学院法務研究科教授大塚と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  本日は、長年にわたって環境省とか国交省などの調査審議に加わってきた立場から、二〇〇二年の土壌汚染対策法問題点と今般の改正案に関する私なりの評価について申し上げたいと思います。  二〇〇二年に土壌汚染対策法制定された際に残された最大の問題は、これに関する搬出汚染土についての規制がないということでございました。搬出汚染土が夜陰に紛れて投棄、放置される可能性はございましたけれども、これについての強制力のある規定は置かれなかったということがございます。  他方土壌汚染対策法制定後に明らかになった問題点としては、二つの点が重要であると思います。まず、この法律調査契機につきまして、三条調査四条調査改正案の新五条調査でございますけれども、これが挙げられておりますが、これらが余り用いられておりませんで、法律に基づく調査というのは調査全体の二%にとどまるという結果が生じたことでございます。他方で、自主調査は八七%を占めるわけであります。  このように、法律に基づく調査対策がなされず行政把握が十分でないという状況は、調査対策に対する公平性とか信頼性の観点から問題がございます。また、行政指導に基づく汚染対策がなされる場合には、対応透明性とか不平等性が生じるおそれがございます。  現行法については、四条調査というのは汚染が発覚した後でなされると考えてよいわけですので、それほど多くは用いられないわけでございます。  三条調査については二つの制約がございます。第一に、水質汚濁防止法有害物質使用特定施設使用廃止時に限定されます。第二に、調査義務都道府県知事の確認によって猶予されるということになっておりまして、さらに省令と相まって、猶予の数というのは極めて多い状況にございます。二〇〇三年の二月から二〇〇八年の八月末まで、有害物質使用特定施設使用廃止件数は四千七百五十一件に上っておりますが、そのうち猶予件数は三千六百七十六件に上っております。法律制定の当初から、法律に基づく調査がそれほど多くならないということは予想できたとも言えますが、これほどまでに少ないということになることは予想できなかったわけでございます。  次に、もう一つの問題として、この法律自体は、省令とともに、対策として多くの場合に盛土とか覆土、封じ込めなどを求めている、いわゆる汚染管理主義というのを取っているわけですが、しかし、不動産市場要請から掘削除去対策の八割程度を占めるに至ったということがございます。  このような状況は、三つの点で問題がございます。第一に、掘削された汚染土搬出された後、投棄され、環境リスクが増加される危険がございます。第二に、掘削除去のコストが盛土封じ込め等の十倍程度に上るということから、土地所有者原因者等対策を取ることが困難になるという問題がございます。第三に、その結果、土地塩漬け、いわゆるブラウンフィールド問題を引き起こすというおそれがあるということがあります。  このブラウンフィールド問題につきましては、土壌汚染をめぐるブラウンフィールド対策手法検討調査検討会が用いた試算によりますと、我が国の潜在的なブラウンフィールドは二・八万ヘクタール、土地資産額では十・八兆円、土壌汚染対策費でいうと四・二兆円に上ると言われております。売買ができなくなり、利用されなくなるような塩漬け土地ができてしまうということが問題だということでございます。  この点につきましては、国交省不動産鑑定評価基準運用上の留意事項がこういう不動産市場要請を強めたという指摘もございます。  さらに、土壌汚染対策法自体指定区域指定措置命令とを分離しておりまして、指定区域指定の際にどういう対策を取るべきかを明らかにしていないということ、掘削除去ないし原位置浄化をしない限り指定区域を解除されず、汚染地についての台帳から削られないということにしたこと、こういうこともこのような不動産市場要請を強めたという見方もございます。  土壌汚染対策先進国であったアメリカにおきましても、オンサイト処理、その場での処理というのが原則とされておりまして、この点について、私は法律制定直後から審議会等で指摘してきたことではございますが、現行法令では必ずしも明確になっていないということがございます。  法律制定当初から掘削除去というのは一部では問題視されていたわけでございますけれども、当時の不動産業界では、完全に浄化された土地を求める市場傾向には逆らいにくいという姿勢が強かったと見られます。いずれにしましても、対策の八〇%も掘削除去になるということは予想されていなかったと言えます。  今回の改正案の主要な特色は、次の三点にあると思われます。第一に、法律に基づく土壌汚染把握機会拡大しているということ。第二に、掘削除去を回避し、いわゆる制度的管理というのを明確化しているということでございます。第三に、搬出される汚染土適正処理確保を図っているということがございます。  つまり、今回の改正案は、法律制定時に積み残された問題とその後に明らかになった問題点に対処しようとしたものだと言えます。法律を抜本的に改革するということを意図しているものではなくて、現在の問題に対処しようとしたものということになると思います。  第一に、法律に基づく土壌汚染把握機会拡大でございますが、この点については四点特色のある点がございます。  第一は、一定規模以上の土地であって土壌汚染のおそれのある土地につきまして、形質変更時における都道府県知事による土壌汚染調査命令規定を入れたことでございます。第二は、三条調査猶予される土地につきまして、利用方法が変更されるときに届出義務付けて、都道府県知事がチェックする規定を置いたことでございます。この二つの点は、先ほど申しました三条調査におきます第一点、第二点の問題点対応する点と言えます。  さらに、③といたしまして、自主調査の結果土壌汚染が判明した場合に、土地所有者等申請に基づいて規制対象区域として指定し適切に管理する指定申請の手続を入れたことが特色でございます。これによりまして、土地所有者等が自ら自主調査の結果、指定申請をすることによって法律の世界に入ってくるということになりました。多くの施設設置者がこれを活用することが期待されるところでございます。  さらに、都道府県知事によって土壌汚染に関する情報収集、整理、保存、提供することに関して努力義務規定が入れられました。これらによって、法律に基づく調査拡大が図られることが期待されます。  第二点は、掘削除去の回避と制度的管理明確化でございます。  改正案は、規制対象区域二つの地域に分類しまして、更に講ずべき措置内容明確化しております。二つ区域、すなわち形質変更届出区域と要措置区域という二つ区域を分離いたしまして、実施される対策行政が明確に指示することによって、封じ込めなど、掘削除去がなされていない場合でも、汚染経路が遮断されていれば土地利用上障害がないということを制度上明確にしたという点に意義があると思います。従来は省令におきまして措置命令内容として封じ込め等で十分であるということを示していたわけですけれども、それにすぎなかった、そこにとどまっていたのに対して、今回はこれを制度上明確にしたという点に意義があると思われます。封じ込め等でも十分な対策であるということを公的に明らかにすることによって、掘削除去の偏重をなくし、封じ込め等に対する制度的管理リスク管理というのを進めていくという契機になると思われます。  第三に、搬出される汚染土適正処理確保について申します。  この点については三点内容がございます。まず、規制対象区域内の汚染土搬出規制をしているということであります。第二に、搬出汚染土に関する管理票の交付及び保存というものを、今までは通知でやっておりましたけれども、これを法律上の義務としたということでございます。第三に、搬出汚染土処理業について許可制を導入したということでございます。収集運搬については関与者が多いものですから許可制は導入しておりませんが、収集運搬以外の処理について業の許可を必要としたということが改正案内容でございます。  いずれも搬出汚染土適正処理に向けた重要な進展であると考えます。先ほど申しました(1)の点から、法律に基づく調査が従来よりも増えるわけですけれども、その点からもこの搬出される汚染土適正処理確保ということが重要になってまいりますので、必要な改正点であると考えます。  さらに、その他の点といたしまして、指定調査機関指定の更新などによる信頼性の向上の規定が入れられています。  さらに、衆議院で追加されました六十一条二項につきまして、私なりの理解を申し上げておきたいと思います。  この規定によりますと、公園等公共施設若しくは学校、卸売市場等公益的施設又はこれらに準ずる施設設置しようとする者に対して、都道府県知事は、設置を予定している土地が法四条二項の環境省令で定める基準に該当するかどうか、つまり、土壌汚染のおそれのある土地であるかどうかを自主的に把握するように促すことになります。  法律的には、設置者は、自主的な把握にできる限り努めればよく、義務までは負うものでないと考えられます。  自主的な把握としては、例えば、その土地の売主又は貸主に過去の履歴を聞くこととか、都道府県土壌汚染担当部局にその土地の過去の履歴を聞くことなどが考えられます。履歴から汚染のおそれがあるとされたときには、別の土地を探すことも考えられますし、その土地において自主的な土壌調査を行うことも望ましいわけでございます。その結果、汚染が判明しましたら、十四条の自主的な指定申請を行うということが望ましく、申請が行われれば、都道府県知事が、直ちに対策を必要とするかどうか、対策が必要な場合にはどういう措置をとるかということを指示することになると思われます。  この規定評価といたしましては、公共施設公益的施設設置者に、土壌汚染のおそれのある土地であるかどうかの履歴の調査を含めた自主的な把握を呼びかけているという点に大きな意義があると思います。  さらに、これらに準ずる施設というふうにしてありますので、相当多くの施設がこの規定対象になると考えられます。そのため、自主調査法律の世界に入れようとする改正案のほかの規定と同様の趣旨を持つものと考えてよいと思われます。  最後に、今回の改正案評価と今後の課題について若干申し上げておきたいと思います。  今回の改正案評価といたしましては、先ほど申しました三つの大きなポイントについて総合的な対策を講じたものと言えると思われます。現行法のすき間を埋めたり、現行法制定後に生じた問題点に対処する上では、優れた現実的な対応をしていると評価できると考えます。  今後の課題といたしましては、取引の際に売主の調査義務を認めるかどうか、土地利用用途に応じた汚染除去を検討するかどうか、いわゆるサイトリスクアセスメントというのを調査の際に導入するかどうか、原位置浄化の位置付けについて再検討する必要がないか、さらに大きくは、法律の目的規定に生活環境保全を含めるべきではないか等々の問題がございますけれども、いずれも社会において相当のコストを必要とすることになりますので、徐々に対応していければ望ましいと考えております。  以上で私の意見陳述を終わります。どうもありがとうございました。
  6. 有村治子

    委員長有村治子君) 大塚参考人、ありがとうございました。  次に、大野参考人お願いいたします。大野参考人
  7. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 今御紹介にあずかりました社団法人土壌環境センター副会長兼常務理事をやっております大野と申します。  このような機会をいただきまして、感謝申し上げます。  まず、私の意見陳述をする前に、土壌境センターについての、活動についてちょっと御紹介をしたいというふうに思います。  土壌境センターは平成八年の四月に設立されておりますけれども、それ以前に、平成四年に土壌環境フォーラムというものを立ち上げまして、土壌関係汚染問題をいろいろと調査研究している企業あるいはその有識者というような方々で集まった、一応自主的な研究機関、任意的な団体をつくりまして、その後、平成八年四月に社団法人として環境省の、当時環境庁の認可を受けまして設立された団体でございます。現在、平成二十一年三月段階で土壌汚染対策にかかわる百六十五社を会員とした団体でございます。当センターは、会員会社の技術の向上とか技術の育成ということを目的として活動するとともに、我々のいろんな知見を踏まえて、土壌環境対策に係る政策提言あるいは環境省に対する施策のサポートというようなことを行っている団体でございます。  主な活動の中に、我々が、会員がどういう調査を、汚染対策を実施したのかという、あるいは法の対象以外にどれぐらいのものの調査対策が行われているのかというような自主的な調査も実施しておりまして、今回の法律改正を行うに当たりましてもそのような情報利用していただいたという経緯がございます。それから、適正な土壌環境対策をやるために土壌環境監理士という資格制度を自主的に設けまして、技術者の資質の向上というようなことを行っております。平成十四年に本法律ができたわけでございますけれども、その後、実際にいろんな対策にかかわる中でいろんな問題が出てきたということで、当センターといたしましても、その経験を踏まえまして、平成十九年十月に、制度改正が必要であるということで、環境省に対して政策提言もさせていただいております。そういう団体であるということをまず御紹介しておきたいというふうに思います。  私のペーパーがございますので、ペーパーに基づきまして少し御紹介をしたいと思いますが、平成十四年の土対法制定時に想定していたことでございますが、この土壌汚染というものの基本的なところというのは、土地の改変等によりまして健康被害をどう防止するかということが基本的な考え方であるというふうに思っておりましたので、法の対象となる汚染地というのは非常に限定的になるだろうというふうに考えておりました。また、過去の汚染地にかかわることもありまして、調査義務などの発動も非常に限定的にならざるを得ないのではないかというふうに考えておりました。  それから、環境基準というのは、これは望ましい基準ということを定めておりまして、これは、必ずこれを遵守しなければいけない、あるいはこれを超えたからといってすぐ健康被害をもたらすというものではないものだというふうに考えておりました。環境基準というのは、この土地に七十年間住み続け、七十年間例えば二リットルの水を飲み続けた場合の影響を考慮して基準を設定しておりますので、そういうような状態にある、置かれる方というようなことはまた非常に少ないというふうに考えてもおりました。  一方で、こういう法律がいったんできますと、やはり土壌汚染に対する関心というようなことも非常にあるというふうに思っておりましたので、土地売買に伴いまして調査対策も法の外側で進むだろうというふうなことは想定をいたしておりました。  法制定後のことでどういうことが起きたかというふうなことでございますが、法の対象となる調査発動のケースというのは想定どおり非常に少なかったというふうなことがあります。逆に、自主的な調査対策ケースは予想以上に多かったというふうなことがあります。  我々のセンターの調査でも約八千件ぐらいの自主的な調査が行われておりますけれども、これは全体の調査の件数からいうと八〇%から九〇%ぐらいの比率が自主的な調査ということになります。また、その自主的な調査の約半分近くから汚染が見付かったということで、これもまた、調査をしたら汚染というのがかなり見付かるんだなということが分かったということになります。予想どおり自主的な対策が進んだという面もあったわけですけれども、逆に、予想以上に極端な対策である掘削除去が行われるという、また場外に汚染土搬出されるということが生まれたということは若干想定外であったというふうに考えております。  どういうふうに我々自身が、このような現状が起きたわけですけれども、不合理であるというふうに思ったかということについて三点ほど指摘を挙げますけれども、まず、自主的な調査汚染地が多数見付かったにもかかわらず法の外側に置かれているということがまず一つでございます。それから、きちんと管理していれば問題ないケースであっても掘削除去というある意味で極端な対策が法の外側で進められてしまったことが二点目として指摘、挙げられるんではないかというふうに思います。それから、土壌汚染対策は進みましたけれども、掘削対策が主流になり、汚染土を場外に搬出することにより、逆に不適切な処理により汚染の拡散あるいはその可能性が非常に生じたということが不合理な実態、三番目として挙げられるんではないかというふうに考えてございます。  それ以外に、加えて、実は自主的調査で発見された汚染地あるいは掘削除去対策が取られたところというのは、ほとんど土地取引の利益が見込めるような土地で行われたということになります。したがいまして、今まで土地対策が行われたところはほとんど東京圏、近畿圏、それから愛知圏というようなところで八割ぐらいが行ってしまうという状況でございまして、その他いろいろと土壌汚染に絡むような地域というようなところはむしろ土壌汚染対策は余り進まないでそのままになってしまっているという状況がございます。それが、一つ逆に、地方圏で汚染土壌が見付かったところがそのまま空き地になっているという実態が発生しております。  次には、法の対象外の自主的な調査がなぜ進んだかということでございますけれども、まず第一に、土壌汚染対策法が平成十四年に制定されたということが挙げられますけれども。  そのほかに、ここにはちょっと書いておりませんけれども、ISO14000という環境システムの規格の制度ができましたので、それに伴いまして各企業が持っている土地を自主的に一応調査をしていくというふうなことが非常に行われたということが一つ、二点目に挙げられます。  そのほか第三点としては、先ほど大塚先生からありました不動産鑑定評価基準運用上の留意事項というのが国土交通省から平成十四年七月三日に出されておりますけれども、この不動産鑑定の評価留意事項というものについては、あくまでも土壌汚染対策法の枠内での汚染地あるいは指定区域というものを対象としてこの評価というものを運用しているわけでございますけれども、これが指定区域外についても非常に大きな影響を与えたということがあります。  四番目ですが、今のものと若干リンクするところもあるんですが、平成十六年十二月に大阪アメニティパークで、土壌汚染について、大阪府警が三菱地所の社長や三菱マテリアルの方を宅建業法違反の告知義務違反ということで書類送検をいたしまして、三菱地所の会長や社長が引責辞任するということが発生しております。これは土地取引の関係者に決定的な影響を与えたというふうに思っておりまして、土地取引に際しては土壌汚染調査というのは完全に必須要件になったということが言えるんではないかというふうに考えております。  なぜ掘削除去のような不合理な対策が進んでしまったのかということが、ちょっと触れておきたいと思いますが、一つは、指定区域指定されても盛土あるいは封じ込めなどの適切な対策を取り適切な管理が行われていれば健康被害を起こさない、そういうリスクを管理することができるわけで、その上での土地利用というのは何ら問題ないというものなわけですけれども、そういうことがやはり国民に十分理解されなかったんではないかというふうに考えております。  それからもう一点、不動産鑑定の、先ほどの説明にありました留意事項の中では、指定区域が解除されない限り汚染の存することを前提として鑑定評価することというふうになっております。つまり、盛土封じ込め対策では指定区域の解除ができず、不動産鑑定上では依然としてきずものの土地として扱われまして、指定解除までの費用を考慮しなければならないということになったということがあると思います。こういうようなことがありましたものですから、一気に掘削除去をしてきれいにしてしまうということが一般化されていったのではないかというふうに考えております。  また一方で、対策というのは、多分、汚染土壌対策というものをきちっと対策するという、完全に汚染がなくなるような対策というのは掘削土壌以外にはないわけですね。現地でそういう対策を行った場合に、一〇〇%それを浄化する対策というのはやはりあり得ないわけです。そういたしますと、それを一〇〇%ではないということになりますと、やっぱり掘削除去ということが一番完全な方策というふうに思われてしまったということがあるんではないかというふうに思います。そういうことで掘削が主流になったということになろうかと思います。  この掘削の汚染土を場外搬出というようなことによりまして、新たな汚染をもたらす可能性というのが非常に出てきたということになります。指定区域の場合は、これは環境省告示でもって、平成十五年三月六日の公布で汚染土管理票というマニフェストを使用することを義務付けております。しかし、自主的な開発調査をやっているところはその義務はないわけでございまして、それにつきましては、我々の土壌境センターでこの汚染土管理票というものを販売いたしまして、その販売が毎年二十万枚、大体販売をしているわけですけれども、そういう自主的なものに対しましてもそういう汚染土管理票利用するというようなことをやっておりましたけれども、なかなか全部のところでそういう管理票利用されているとは限らないというところで、いろいろな問題もあったというふうに思います。  今回、そういう不合理な問題に対してどういうふうなことが行われたのかということを我々なりに見ていったときに、まず、自発的な調査であっても汚染地であることが発見された場合には法の枠組みの中に入ってもらうことが必要であるというふうに考えておりましたけれども、今回の法改正の第四条又は第十四条のところでその辺のものは対処されているんではないかというふうに考えます。  それから、汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがあり対策措置が必要な場合であっても、過剰な対策にならないように、あるいは摂取経路を遮断する対策、適切な対策が取られていれば十分であるというようなことを公的にお墨付きするようなことが必要であるというふうに考えておりましたけれども、その点については改正法の第七条で一応対処されているんではないかというふうに思っています。  それから、汚染が発見され、かつ、健康被害のおそれがないような区域については情報管理レベルでよいことも認めて、土地形質変更を行う場合に対策を管理できるようにすることが必要であるというふうに思っておりましたけれども、法の第十一条一項と第十二条で対処されているというふうに考えます。  それから、摂取経路を遮断する対策が取られていても、汚染土対象地に残っており、それから要措置区域が解除されてもその情報を管理し、形質変更の場合には届出が必要になるような形式が必要ではないかというふうに考えておりましたけれども、今回、法の第十一条一項、あるいは第十二条、第十五条でそういった面についても対処されているというふうに考えております。  最後にちょっとなりますが、今後、自主的な調査が増えるというふうに考えております。その一つは、平成二十二年の四月から資産除去債務に関する会計基準化が行われます。あるいは、それに伴いまして、引当金が計上を求められるということになりますが、そういうものに対しまして、当然、今後関連して自主的な調査が増えてくるというふうなことになりますが、その際、資産除去債務や引当金計上の費用評価については過剰にならないことが必要であるというふうに考えておりますけれども、今回、その辺の対策に対する基準というようなことがきちっと整理されれば、その辺の過剰な対応というものも抑制することができるんではないかというふうに考えております。  また、自主的な調査が増えたというふうなことがありましても、先ほどの第十四条の指定申請というようなところで恐らく十分対処できるんではないかというふうに考えています。  それから、汚染土を場外搬出した場合のいろいろと問題というようなことが指摘されておりましたけれども、それについては今回、掘削的な対策というものはできるだけ抑制するというようなことが対応できますし、それから場外搬出した場合についても管理票というようなことで管理する仕組みが一応用意されたと。  それから、万一場外搬出した汚染土についても、一応それを処理する事業者に対して資格要件を与えると、満たす処理業者であることを条件としたということで、そういう意味で、そういうような対策を、外に持っていく場合についても必要な対策というものは用意されたんではないかというふうに考えて、そういう意味で大変評価をしております。  以上でございます。
  8. 有村治子

    委員長有村治子君) 大野参考人、ありがとうございました。  最後に、畑参考人お願いいたします。畑参考人
  9. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 大阪市立大学の畑と申します。  資料としましては、昨年十一月に日弁連の機関誌の「自由と正義」という雑誌があるんですけれども、それに土壌汚染対策法の特集がありまして、それの巻頭論文を付けております。二番目には大塚先生も書かれていますので、また参考にしていただければと思います。  元々、私は七年前にここに、法律できるときの、制定のときの参考人で、大野参考人と私とあと二人の方だったんですけれども。そのときに、ちょうど五月だったんですけれども、四月ですから今、似た時期ですけれども、非常に問題はいっぱいあるということで、当時は一応民主党の福山議員の紹介でこれ参加したわけですけれども、十五項目ぐらい問題あるということで、中でも大きな問題点は、二番目の、この法律はやっぱり土壌汚染の事後対策法である、未然防止法ではないということです。  それから、地下水の汚染の防止の観点がほとんどないと。土は人間が動かさないと動かないんですけれども、地下水は勝手に動きますので、そこの防止の対策がこの法律では非常に問題があると。  それから、五番目の三条の調査対象ですね、これが一番問題なんですけれども、いわゆる水質汚濁防止法有害物質使用特定施設の廃止時、それも法律施行後の廃止時、さらに宅地等への転用する場合だけ、そういう形で非常に法対象を狭くしていると。それから、それ以外にも金属鉱山・製錬所、廃棄物処分場の跡地周辺、軍事基地等を対象外にしていることです。  それから七番目が、調査対策を原則として汚染原因者でなく土地所有者等義務付けている点です。  それから十番目が、対策は原則として覆土、つまり五十センチ以上の盛土でよしとする、土壌の浄化は特別な場合だと。これは保育園とか幼稚園とかそういう場合だけだという感じになっておりまして、この法律制定時から非常に問題があったと思っております。  とても土壌汚染問題の根本的解決につながる法律とは言えませんし、そればかりか、土壌汚染を覆土で隠ぺいし、言わば臭い物にふたをする、後世に負の遺産を残すことを合法化するざる法ではないかということで批判したわけです。やはり法施行後五年、今六年ですけれども、たった現在、そのざる法性はますます明らかになったのではないかと思っております。  二番目のは、もう御存じのように、先ほど言われましたように、法対象が非常に、二%しかないとか、廃止工場の八割は調査を逃げている、つまり宅地等に用途を転用しないということで、ブラウンフィールド化している。それから対策も二%しかないと。それから、四条の調査命令も、発動したのは五件。これは、環境省は課長会議の何か通達出していまして、一キロ以内ぐらいに直接水道の飲み水に使用している場合だけ発令しろ、それ以外発令するなというそういう通達を出しておりまして、結果的に五件しかないと。しかも、それは岩手県とか鳥取県とか、皆さん御存じの特定の知事がおられたときしか、県しか命令を出しておりません。そういうことで、非常に実効性の乏しいざる法となっていると思います。  先ほどの土環センターの大野さんのこの調査、これはもう省略します。  それで、いわゆるこの法律自身は盛土、舗装等で摂取経路を遮断する対策で十分であると言っているんですけど、リスク管理といっておりますけど、汚染土壌が残っている限り半永久的に管理する必要があるわけですね。  特に問題なのは地下水の問題です。土壌汚染されていますと、必ずそれに接触している地下水は汚染されます。その地下水は勝手に動きます。ということで、確かに直接都市部では飲み水にしていないんですけど、地下水によって汚染が拡散するという点で、その地下水のくみ上げ処理とか遮水壁で囲むとか幾つかの方法があるんですけど、一〇〇%水をカットすることは技術的には困難です。幾らお金を掛けても困難です。ということで、こういうリスク管理には非常に問題があるということで、やはりリスクゼロ型の掘削除去の方が結果的には多く採用されているし、その方が私はいいと思っております。  当然それを掘削除去した汚染土壌については適正に処理することは当たり前のことでして、これは技術的に、最近、秋田とか川崎とか幾つかにその汚染土壌をきれいにするプラントもできておりますし、問題はコストですね、お金が掛かりますから。その負担をだれがするかという問題だと思っております。  それから三番目の、大野さんのおられる土環センターの調査によれば、いわゆる製造業だけじゃなくてサービス業も含めて九十三万か所ぐらい汚染地があるんではないかと推定されています。これの調査費用が二兆円で、浄化費用が十一兆円で、合計十三兆円の土壌浄化ビジネスです。既に二〇〇七年でほぼ二千億円近い、年間二千億円の土壌浄化ビジネスになっております。二〇〇八年はちょっと景気の悪化で初めて落ち込むようですけど、それまではずっと右肩上がりで土壌浄化ビジネスの業界は成長しております。  それと、あと汚染地ですけど、基本的には東京、関東、近畿、中部の三大都市圏のいわゆるオールドエコノミーというか、そういう重化学工業の工場地帯のところに多いということです。  それから四番目は、私自身いろんな事件にかかわっているんですけど、基本的には市民、住民の依頼によってやってきたものが二十件以上あります。その中で法対象になったものは、この二十件のうちわずか三件です。大阪のカネボウの中研の跡地、神戸の日本テルペン化学、川西の中央北地区、これは皮なめし工場です。ということで、大半が法施行前に廃止された工場、事業場や廃棄物処分場周辺の跡地です。ということで、法施行前に廃止された工場跡地、特に有害物質を取り扱っていた事業場をやっぱり法対象にする必要があるし、ドイツなんかでは廃棄物処分場の跡地周辺も法対象にしております。  あと、先ほど出ましたように、私はこの二番目の、②の大阪アメニティパークの、OAPの事件にかなり三年間ぐらいずっと住民に頼まれてかかわったんですけど、このときには土壌汚染対策法は全く役に立たなかったです。宅建業法でやっと三菱は対策とか調査をやったということになったわけですね。  それからあと、七番目以降、そこに滋賀県の例がありまして、私、滋賀県に住んでおりまして、有村委員長も滋賀県出身だそうなんですけど、守山、野洲とか信楽では、これは水道の飲み水の汚染が起こりました。それから、住友大阪セメント、セメント工場もいろいろ問題あるんですけど、それから、今、滋賀県の知事が栗東の新幹線の駅止めましたけど、この産廃処分場の問題がもう一つありまして、そういう周辺で地下水汚染土壌汚染が起こっております。  それから、このテルペン化学で、神戸の、非常に印象的だったんですけど、法対象になっているんですけど、法施行時に稼働していた施設では使っていた薬品だけの元素を、有害な元素を対象にしていまして、過去にあった施設の有害物質についてはこれは法対象にならないんだという解釈を神戸市、環境省がしておりまして、それは何かの間違いじゃないかと思ったんですけど、あくまで自主的調査だと。非常に法律自身を狭く運用していると。いわゆるこういう土壌汚染というのは、一回汚染されますと十年、二十年、三十年、数十年間は蓄積します。そういう意味で、過去の汚染も考慮して調査対策しないと意味がないと思うんですけど、非常に法律運用が狭くなっている問題があると思っております。  それから、ここには書いていませんけど、武田薬品の神奈川の湘南工場の最近例知ったんですけど、これは工場の廃止は最近なんですけど、施設が法施行前に廃止されていた、だから法対象にならないと。神奈川県の条例でやっと対象になったという事例がございます。  あと、四日市の例のフェロシルト事件とか産廃処分場の問題とか、あと岐阜とかです。僕自身は、ずっとイタイイタイ病を起こした三井金属の神岡鉱山の排水・土壌汚染対策を四十年近くやっておりますけど、ここは一応今成功しましたけど、工場の下に汚染土壌が残っていまして、約九十トンぐらいカドミウムが残っているんですけど、完全に地下水くむまでに処理するには百年掛かると言われています。  そういう意味で、汚染土壌を残しますと非常に半永久的に処理コストが掛かるということです。結果的には取ってしまった方が安く上がる。これは産廃処分場でも一緒なんですけど、豊島とか青森、岩手のように全量撤去した方が後々ランニングコストというか排水処理とかいろんなリスク管理費用が結果的には安く上がると思っております。  それから、皆さん御存じの築地市場の問題です。この問題につきまして、一応最近かかわっておりまして、もう御存じなので飛ばしますけど、これは面積的には日本最大土壌汚染地になりますということで、一千億じゃなくて六百数十億円対策費が掛かる。それも、二メートル土取って、汚染土壌は下に残ります。汚染地下水は半永久的にくみ上げて処理する、このコストがまた掛かります。そういう対策を東京都がやろうとしています。  今回の法律の件ですけど、僕は基本的にはやっぱりリスクゼロ型の掘削除去土壌浄化対策の方がいいと思っていますし、盛土封じ込め等は、こういう安易な対策は問題があると思っています。特に今回の法律はそういう点を、何か掘削除去を排して安易な対策、安上がりな対策を推進、推奨しようとしているということで問題があると思っています。  そういう意味で、東京都の条例とか滋賀県の条例のいわゆる一定規模以上の土地の改変、これは今回の法律には適用されているんですけど、問題はあとは、東京都、あと神奈川県横浜市、川崎市、大阪府等が採用しているんですけど、過去に有害物質を取り扱っていた工場、事業場については条例の対象にするということはやっぱり法律についてもやっていく必要があるんじゃないかと思っています。  それと、滋賀県の条例は、今回、環境省委員会では全く取り上げられなかったんです。私は滋賀県に今住んでいるんですけど、一応、二〇〇七年に滋賀県の公害防止条例、一部を改正しまして、地下水汚染未然防止、それから地下水汚染の早期発見と改善、法施行前に廃止された跡地を土壌調査対象とするというこういう条例を定めて、もう施行しております。こういうことをやっぱり全国法律でもやってほしいなということです。やはり条例、要綱の方が進んでいると思いますし、進んだ条例、要綱を参考とした根本的な法改正をやっていただきたいと思っております。  終わりの部分はもう繰り返しになるんですけど、特に強調しますと、やはり法施行前、実際に僕が土壌汚染の問題にかかわっていると、ほとんどは法施行前の工場、事業場の跡地なんです。それも製造業だけじゃなくて、もちろんガソリンスタンドとかそういうサービス業なんかもあります。そういう法施行前に有害物質を扱っていた工場跡地とか廃棄物処分場の跡地を法対象にする必要があるんじゃないかと思っております。これは日弁連の意見書でも提案されていますし、地方自治体、神奈川県とか先ほどの滋賀県とか東京都とか、条例ではそういうことを定めているところもあります。  それから、やっぱり土壌汚染未然防止です。こういうことも今回全く入っていませんが、やはり長期的にはこれをやっておかないと、いったん汚染された土は、先ほど大野さん言われましたように、一〇〇%きれいにすることは技術的にはできません、多分幾らお金を掛けても。そういう意味で、やっぱり汚染しないということが一番大事ですので、未然防止をやっていく必要がある。そのために、やっぱり操業中の工場、事業場についても滋賀県のように井戸を掘って調べる、常時監視するとかそういうことが大事ではないかと思っております。  そういう意味で、確かに今回の法改正は法対象一定拡大するプラス面あるんですけれども、マイナス面もありまして、特に掘削除去を排するということは問題があるんじゃないかと思っています。  それと、築地市場の移転問題に関連しまして民主党が修正案を出しまして、衆議院で修正案が通ったようですけれども、いわゆる土壌汚染対策法施行以前の廃止工場、事業場であっても、公園、学校、市場等の、これは築地市場を完全に意識しているんですけれども、そういう公共施設等に利用する場合は法対象とするということが通ったことはそれなりに画期的だと思うんですけれども、私としてはやっぱりすべての施行前の有害物質を扱っていた廃止工場、事業場も法対象にすべきではないかと思っています。  そういう意味で、東京都環境条例とか滋賀県の条例とか、あと川崎市、横浜市、大阪府等の進んだ条例、要綱を参考にした抜本的な法改正を今後やっていただきたいと思っております。  あと、ちょっとくだらない新聞記事を幾つか、朝日新聞とか、それから公明党さんの聖教新聞も頼まれまして、最近、三月に。これ百万か所ぐらい汚染用地がある、築地市場のことも書いてくれよということで少し写真とちょっとコメントが入っております。それと、社民党の社会新報とか、赤旗とか東京新聞とか、あと毎日新聞とか朝日新聞等にも書いておりますし、あと、最後にちょっとありますように、中国の土壌汚染問題、最近中国は恐らく空気も水も土も食べ物も汚染されていまして、非常に問題がありまして、最近中国の土壌汚染のこともやっておりますので、また参考にしていただければと思っております。  以上で終わります。
  10. 有村治子

    委員長有村治子君) 畑参考人、ありがとうございました。  以上で参考人四人の皆様からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 轟木利治

    ○轟木利治君 民主党の轟木でございます。  参考人皆様方、大変お忙しいにもかかわらず貴重なお時間をいただきまして、また大変貴重な御意見をいただきましたことをまずもって御礼申し上げたいと思います。  早速でございますけれども、お聞きしたい点について質問させていただきます。  まず、参考人佐藤参考人畑参考人にお聞きしたいと思います。  一番問題は、これまでの現行法の中で、その法による対象物件が非常に少ないということ、そしてその結果が自主調査という形になっているということが大きな問題だと思っております。その原因を幾つかお話もいただきました。  私もいろいろ考えていきますと、現行法汚染対策法では、いろいろお伺いした条件の中で更にもう一つ付け加えるとすると、やっぱり附則の三条、このことによって対象となるべき物件が狭められているということは事実だろうと思います。  そして、今回、政府案の方は、一定規模以上、三千平米と言われておりますが、その土地であって土壌汚染のおそれがある土地形質変更時において調査命令を出すこととしております。この対応現行法の第四条の改正でございまして、第三条に対しては先ほどの届出ということになっておりますが、基本的にはその規模というものは適用されていないということ、したがって附則の三条は残るという形になるんではないかと思っております。確かにその形質変更時の調査ということになりますので附則の三条による適用外の土地でも対象となる可能性は高いと思いますが、参考人として、現行の三条、これからこの新たな四条、そしてこの一定規模という条件、これにかかわる関連性を含めて、どういった見解をお持ちかということをお聞きしたいのが一点でございます。  そしてまた、土地利用という意味では、規模だけで汚染対策の必要性、その方法は決まるものではないと思っております。その利用目的によって汚染対策というものも変わってくるのではないかと思います。  民主党として、一定規模以外に公共施設、公的施設等に対し調査対象とすべきという主張をしてまいりました。個人的にも、土地をそのままむき出しに使うということも、学校だとか幼稚園とかあるわけですから、そういった利用方法も加味してやっていかなきゃならないと思いますが、この民主党の考え方についてどう思われているか。  そして、衆議院での修正案では、表現として都道府県知事基準に該当するか否かを把握させるよう努めるものとするという表現になっております。この表現に対してどういう御認識をお持ちかという点について、お二方からお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  12. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 佐藤でございます。  まず第一に、自主的調査というものはそれ自体はどんどん推進すべきものなんですね。ですから、自主的調査というのはもっとやっていただきたい。だけれども、問題は、それに頼ることによって悪質業者が野放しになっているというところが問題なわけです。したがって、これからも自主的調査は促進する必要がある、そして今まで野放しに、ある意味で規制になっていなかった悪質な業者も、悪質な汚染についてもどんどん発見していく、このためにこの法律があるんだというふうに思っております。  そして、三条の現在改正は余り大きくないというところは、私としても、本来であれば、過去に廃止されたところ、それから操業中のところ、こういうところについても汚染が深刻な例があるというふうに思っておりますので、今後この三条についても見直す必要があるんではないかというふうに思っております。  四条の方は、今回一定規模以上のものについては調査をするということで、この規模の取り方なんですが、東京都の事例を考えると適切な範囲ではないかなと。余り厳しくやりますと本当に宅地に住んでいる人たちも自分土地利用できないというふうになってきますので、大規模開発に限定するというのはやむを得ないだろうと。ただし、小規模で家庭内でやっていたような小さな工場で深刻な汚染があるというのは本当は三条で掛けてほしいなというところでございます。  それから、公共施設について一定は必ず何らかの対策が必要ではないかということについては、不特定多数の人が出入りするというところについては私はやはりそれなりの対応をするということが必要であるというふうに思っておりますので、その意味では今回の修正は賛成でございます。  ただし、土壌汚染がある土地というのは管理しなければいけませんので、本来、民間が持っているよりも公共に近い人が持っているということはある意味で安全でもあるわけですね。ということで、公園等その利用状況によっては十分対策が必要であるけれども、だからといって公共がこれを持たないというふうになるというのはまたこれも問題でございまして、そういう意味では私は、将来的には土壌汚染土地の幾つかはかなり公共的な、所有か管理かは別にして、きちんと管理する、そして有効に利用するということを確保するということは必要ではないかというふうに思っています。  以上です。
  13. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) まず、附則三条につきましては、これはもう築地市場の移転問題で衆議院の川内議員なんかと私一緒にやっているんですけど、やはり法施行前の廃止工場、事業場をその法対象にしないという附則三条は取っ払うべきだと私は思っております。  それから、二番目の一定規模の問題ですけど、これはこれでそれなりに評価できるんですけど、ただ、規模だけでやっていいのかという問題があると思います。例えば、水質汚濁防止法の排水基準の適用の仕方なんですけど、有害物質を扱っている場合は排水量に関係ありません。普通は排水量一日五十トン以上という場合に排水基準を掛けるんですけど、僕は以前京都市の公害の局におりましたけど、そのときには、有害物質を扱っている、それが出る、排水に出るところは排水量に関係なしに排水基準規制を掛けております。そういう意味で、やっぱり有害物質を扱っている工場、事業場については、規模についてはむしろ取っ払うべきだと私は思っております。  それから、民主党案の今回の、公共施設等に転用する場合に調査義務付ける、これはこれでそれなりの意義は、築地市場の移転問題を法対象にするという意味で意義はあると思うんですけど、ただ、これだけではまだ問題があると思っています。  やはりさっき、何度も言うんですけど、過去に有害物質を扱っていた工場、事業場は基本的には汚染している可能性が強いですので、僕もいろいろ、大阪のUSJも住金の跡地なんですけど、あの場合なんかはほとんど工場の敷地内に産廃を埋めていたんです、それも大量に七十万トンという。それが今ジュラシック・パークという恐竜のパークになっているんですけど。  それで、過去に工場、事業場が工場敷地内に産廃を埋めたりとか、それから別に故意でなくても非意図的に液が漏れてしまった、それで床から、それから排水、例えばあとは排水溝です。必ず排水パイプというのは、時間がたちますと穴が空きます。だから、穴が空いて、そこから廃液が漏れてしまって汚染してしまう。これは大学なんかでもそういう例はありますし、先ほどのカネボウの中央研究所なんかはほとんどその下水管の途中で液が漏れてしまって土壌汚染してしまったという例がありますので、そういう意味で、やっぱりその有害物質を扱っていた工場、事業場については汚染の危険が強いということで調査義務付けるべきだと思っております。  以上です。
  14. 轟木利治

    ○轟木利治君 ありがとうございました。  実は、私もこれまで製造業の工場で実際に働いていた人間ですから、工場跡地を活用するというのは非常に慎重にしないと大変周りの住民に対しても迷惑を掛けるのではないか、そんな思いがございますけれども、いろんな御意見をいただきまして、ありがとうございます。  次に、大塚参考人大野参考人にお聞きしたいと思います。  改正法案の第十四条の件でございますけれども、指定申請ということで、自主調査において土壌汚染が判明した場合は申請することができるということになっております。この表現についてどう受け止められるかということと、これは調査して問題があった場合に申請するということなんですが、逆を考えれば、調査して問題がなかった場合も申請をして、逆にこの土地は安全だという情報提供も必要なんではないかということも考えますが、その点についてどうお考えか、お二方からお聞きしたいと思います。
  15. 大塚直

    参考人大塚直君) 大塚でございます。  十四条を読みますと、土地所有者等はというので、ちょっと飛ばしますと、調査した結果、当該土地土壌の特定有害物質による汚染の状態が環境省令で定める基準に適合しないと思料するときはということになっておりますけれども、この調査につきましては、どの程度調査をするかというのは必ずしも明確になっていないということがございまして、サンプル調査などをしただけでもこの基準に適合しないというふうに思料するときは指定をすることを申請することができるというふうに考えられます。  その意味では、詳細な調査までしていない場合も十四条での指定申請ができるということになっておりますので、必ずしも詳しい調査をして非常に費用を掛けて調査をしなくてもこの申請ができるというところにかなり大きな意味があるというふうに考えられます。これはあくまで自主的な指定申請ということでございますので、申請をすることができるというところに意義がございまして、それ以外の強制的に指定をするというものとは趣旨が異なるということでございます。  そういう意味で、今回の改正の作業の審議会とかの議論では、自主調査というのをできるだけ法の世界に入れるということが必要だということを非常に議論されたわけですけれども、これもその一環でございまして、自主調査というのを法の世界に入れるというためにこういう指定申請というのをしていただくということが考えられたもので、特色のあるもので活用されていくことを期待しているところでございます。  以上でございます。
  16. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 十四条の指定申請の詳しいことについては大塚先生のとおりだと思いますけれども、一つ御指摘をしておきたいのは、通常見付かった場合に申請するのは非常に隠したいというあれがあるのではないかというふうな御質問があろうかと思いますけれども、むしろ今回の法改正では、そのきちっとした法の枠組みの中で処理をするということをすれば、ある意味で過剰な対策をしないで法の下にきちっとしたその対策を取ればそこでの、言わば健康へのリスクをきちっと管理した形で対策を取ればそこでの土地利用が可能になるという面がございますので、そういう意味できちっと申請した方がいろんな意味で自由度が担保されるという面がありますので、そういう意味で、この届けることができるというような形でも問題ないのではないかというふうに考えてございます。  そのほか、もう一つは、もし安全だったら、ことも届けた方がいいんじゃないかという話ございましたけれども、やはり安全であればそのまま土地利用とか実際の土地売買とかそういうのもスムーズに進むことになろうかと思いますので、そこまでやらなくても大丈夫ではないかというふうに思います。  以上でございます。
  17. 轟木利治

    ○轟木利治君 終わります。
  18. 神取忍

    ○神取忍君 自由民主党、神取忍です。  本日は四人の参考人の方々、大変貴重な御意見をありがとうございました。  私は、人の健康は地球の健康からというテーマで政治活動を行っているので、その観点からお話をお伺いしたいと思います。  まず、各参考人の方々にお伺いしたいと思います。  土壌汚染対策として完全な掘削除去対策が行われるのであれば、健康の観点からは大変理想です。しかし、掘削により汚染土が場外に拡散したり水源地に汚染拡大するのであれば、それはかえって問題が広がってしまいます。また、健康に影響しない形での土地利用なら、費用対効果の観点から、より合理的な処理方法があればそちらを選ぶべきだと思います。この点、不動産鑑定では、盛土封じ込めといった対策で、依然としてきずものの土地として扱われるものとの指摘がありますが、そのほかにも土地取引上どのような問題があるのか、各参考人にお伺いしたいと思います。
  19. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 佐藤でございます。  例えば私が経験した事例では、Aという土地汚染原因物質があると。Bの土地所有者から相談を受けまして、隣地なわけですね、それで、私の土地へAの土地から汚染物質が流れてきていると。自分土地掘削除去をしても原因物質は隣の土地にあるわけで、こっちを対策してもらわないと困るわけですね。ところが、日本土地というのは所有者がそれぞれ別個でありますので、隣の土地対策しろというふうに請求する権利がないということで、このように汚染原因というのは隣の土地から来るときもある、それから地層的にある場合もある、いろいろな原因があるわけです。そうしますと、掘削除去という方法だけでは対応できない場合が多々あるというのが現実であるというふうに思っております。  そういう意味で、やはり私は、掘削除去に反対するわけではなくて掘削除去が必要な場合も当然あるだろうと、しかし、それでは適切でない場合もたくさんあるという中で、どうやってそれを現実的に対応していくかということがこの法律運用の一番難しいところであり、かつ重要なところではないかというふうに思います。  法律土壌汚染対策すべきだと言うことは簡単でありますが、実際、土地はいろんな人がいろいろな形で持っている。それから、その土地の中には砂の土地もあるし、岩の土地もあるわけですね。そうしますと、どういう対策がいいかというのはケース・バイ・ケースで考えなければいけない。これを今後どうやって運用していくかということが非常に重要ではないかというふうに思っております。
  20. 大塚直

    参考人大塚直君) 掘削除去をしないとその土地がきずものとして扱われる、それ以外に土地の取引上どういう問題があるかということでございますが、そのきずものということの内容が問題であると思います。  汚染がその土地の下に眠っているということは事実ですので、これが将来外に出ないように何らかの対策を取る、あるいは管理をしていくということが非常に重要になってきますので、土地の取引においてはその点を考慮しながら取引をしていくということになると思います。  ただ、従来それが非常に問題だというふうにされてきたところがないわけではないんですけれども、これは覆土とか盛土とかをすればほとんど対応ができる、土地汚染が下に眠っていることによって健康に対する影響というのはほとんど考えられないということがございますので、その点を注意した上で土地の取引がなされるように不動産市場の方が変わっていっていただくというのが非常に重要な観点であろうと思います。  もう一つは、ブラウンフィールド問題という先ほど申しました問題がございますけれども、非常にコストが汚染の除去について、掘削除去について掛かるということがございますと、それによってその土地は実際には使えないという問題が生じてしまいますので、そうすると、日本の国土というのはそれほど広くない、あるいは港湾設備等が整っているところというのは従来それほど広くないわけですけれども、そういう重要な土地について新しい開発行為とか工場等が建てられないという問題が発生してしまいますので、そういうことをできるだけなくしていくという、都市計画とかその土地の全体の有効利用という観点からの問題もあるということでございます。  以上でございます。
  21. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 掘削対策に伴う問題というのはありますけれども、一つは、掘削対策というのは封じ込めとかそういうものよりやっぱり十倍コストが掛かってしまうという面が言われております。そういうふうな対策をやるとどうしてもやはり、そこまでやらなくちゃいけないということになりますと、対策をやらないままそのまま放置されるというようなこともありまして、この貴重な土地を有効利用できないという問題が発生する。先ほどブラウンフィールドという話がありましたけれども、そういう問題の原因一つにもなっているんではないかというふうに考えております。  要は、土壌汚染というのは、私どもの考えでは非常に一般的に、過去はある程度土壌汚染するような活動というのは当たり前のこととして行われてきているわけでございますけれども、それが直ちに健康の被害をもたらすというものでは必ずしもないということをやはり考慮する必要があるんではないかというふうに思っております。  したがいまして、きちっとした、人に触れるというような状況がないような管理、リスクを管理するといいますか、そういうようなことをやりましたら、そのような状況の中できちっと土地利用が進むような形を皆さんにやっぱり御理解をいただいて、土地利用に際しても、あるいはその土地売買においてもそれを前提とした取引ができるような形になっていくのが望ましいんではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  22. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 掘削除去の問題ですけど、いわゆる環境基準の設定の根拠なんですけど、よく行政とか企業は直ちに影響はないとかいう言い方するんですけど、元々環境基準等はどういう形で設定されたかといいますと、やはりイタイイタイ病とか水俣病のように非常に低濃度の有害物質を長期間暴露することによって被害が起こるわけです。そういう意味で、じわじわと来るものですから、目に見えてすぐ人が倒れるとかそういう急性中毒ではないんです。そこを逆手に取って、影響はすぐないとか、出ていないとか、直ちに健康に影響はないという形ですぐ行政は逃げる場合が多いんですけど、やはり長期的な影響を考える必要があるということで、土壌汚染とか地下水の汚染を残すということはやっぱり将来いろいろな問題が起こる可能性があるということで、掘削除去の方がいいと思いますし、それから費用対効果ですけど、これは時間スケールを考慮しないと駄目だと思うんですね。  例えば岩手県の例ですけど、旧松尾鉱山という硫黄鉱山があるんですけど、これ岩手県の方は御存じなんですけど、日本で一番大きい鉱山がありまして、いまだに酸性の水が出てくるんです。北上川を汚染するということで、非常にでっかい排水処理設備が造られています。これ半永久的に稼働しています。それを国とか岩手県は税金でやっているわけです。そういうコストは莫大なコストになります。そういう意味で、青森・岩手県境の不法投棄のときに、当時の増田知事が、やはり長期的に見ると全量撤去した方が安上がりであると、この松尾鉱山の例を考慮して岩手県はそういう判断を取ったと聞いております。  そういう意味で、本当に、当面はそれは掘削除去はコストは掛かりますけど、長期的に見ると、そういう維持管理コストを考えるとそんなに高いものではないという場合もあるということです。  それから、覆土の問題ですけど、これは用途を非常に限定されます。例えば、通常、ビルなんかを建てる場合は基礎工事をやるわけです、くいを打ったりとかですね。下をかき混ぜますから、そういう工事をしたら、下に汚染土壌が残っているとその汚染土壌対策も要りますし、五十センチぐらい覆土しても、これは豊洲の例ですけど、あそこは地下水位がほとんどゼロメートルのときがあるんですけど、土を多少上へ入れても、地下水が上昇してきて雨水と地下水が混ざり合ってまたその入れたきれいな土が再汚染される危険性が高いんです。OAPでもこれは実際に起こったんですけれども、五年ぐらいでもう起こっちゃったんです。ということで、その五十センチぐらいの覆土では将来的には安全な対策にならないし、地下は触れなくなると、地下の倉庫とか地下の構造物を造れなくなる、造りにくくなるという問題はあります。  OAPにつきましてはどうするかといいますと、五十年後建て替えるときにやりますということで三菱は説明している。当面は、二メートル土入れ替えて、地下水はくみ上げて今延々と処理しているんです、コストを掛けて。取りあえずそういう、これは暫定的な対策だと私は思っております。恒久対策はやはりきれいにするということが大事じゃないかと思います。  以上です。
  23. 神取忍

    ○神取忍君 ありがとうございました、いろいろな御意見を。  それでは、大塚参考人畑参考人にまた御質問をさせていただきたいと思います。  今回の法改正汚染土壌の運搬に関する規制が設けられました。汚染土壌処理業者許可制にして汚染土壌の運搬、処理をマニフェストによって把握することは、私はその辺は評価しています。しかし、規制が厳しくなればなるほど、これをかいくぐるような形で不法投棄が起こる可能性もあると思います。悪いことに、廃棄物と異なり、土壌の場合はそれが汚染されたものなのかどうなのか外見では見分けが付きません。不法に廃棄された汚染土壌から、知らず知らずのうちに健康が害されるおそれがあると私は思います。  この点、今回の改正で不法投棄の発生が抑えられるのか、また不法投棄を防ぐためにほかにどのような方法があるのか、各参考人にお伺いしたいと思います。二人の参考人お願いします。
  24. 大塚直

    参考人大塚直君) 大塚でございます。  大変重要な御指摘だと思います。今回の改正は、先ほどちょっと申し上げさせていただきましたように、法律制定時には義務付けがなされていなかった搬出汚染土についての規制をしたということに大きな意義があるというふうに考えております。  今御指摘いただきましたように、処理業者について許可制を取るとか運搬についてマニフェストを入れるということで、従来に比べれば格段に義務付けが強化されているということでございまして、不法投棄は必ずしも目に見えないというところが先ほどおっしゃっていただいたようにもちろんあるわけですけれども、従来に比べれば恐らく格段に減るのではないかと思います。ただ、完全になくすことができるかというのは、確かにそうは言いにくいところがございまして、そこは、廃棄物でも今でも不法投棄の問題がございますように、規制を強化しても完全になくすというのはちょっと難しいところが残念ながらございます。  これは、ただ土壌については汚染土ではない土のリサイクルということも一方で必要だということもございますので、そういう観点も考慮しながら、土が回っていくということも一方では必要な点もありますので、そういう点も考慮しながら徐々に規制を強化していくということが必要ではないかと思います。今回はその第一歩を記したということで、かなり画期的な第一歩ではないかというふうに私は思っていますけれども、そういうふうに位置付けられるのではないかと考えております。  以上でございます。
  25. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 今、大塚先生言われましたように、これは廃棄物の問題と一緒でして、廃棄物処理法上いろんなマニフェストとかやっておりますけど、やはり不法投棄はなくなっておりませんし、僕自身も滋賀県の栗東とか四日市の日本最大の不法投棄の大矢知の問題にもかかわっているんですけど、これ同じことが起こり得ると思います。法律で幾ら汚染土壌のマニフェストを定めてフォローしたとしても、やはり限界はあると思います。そういう意味で、やはりもう少し排出者責任をどう担保していくかという、これは廃棄物も一緒ですけど、取っていく必要あると思います。  これは残土についても一緒でして、残土も結構怪しいものがありまして、僕は汚染土壌も残土も廃棄物扱いというか、廃棄物処理法対象にすべきだと思います。そういう意味で、もちろん廃棄物処理法ももっと強化しないと駄目なんですけど、強化した上で汚染土壌と残土等を管理していく。  最近でも残土に関連して、石原産業のフェロシルト事件というのがありましたけど、こういうことはついこの間も起こったばかりですよね。あれ、フェロシルトの回収に五百億円掛かるんですよ、これ石原産業が負担して、三年間赤字決算なんです。やっぱりいったんそういう不法投棄しますと非常にコストが掛かるという問題はありますので、この辺は、せっかく法律作ったんですから、きちっとそれは運用というか施行していってほしいなと思っております。  以上です。
  26. 神取忍

    ○神取忍君 ありがとうございました。  終わります。
  27. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  今日は、四人の参考人、大変有益な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  私は、皆さんの資料をちょっと拝見させていただいて、佐藤参考人企業の社会的責任ということについて、あるいは情報公開ということについても触れられておりますし、あるいは、大塚参考人参考文献の中ではありますけれども、欧米の土壌汚染浄化に関する費用負担あるいは土壌汚染企業の責任ということに関した資料も掲載されている。    〔委員長退席、理事松山政司君着席〕  あるいは、大野参考人資料の五ページでありますけれども、資産除去債務の関係に触れられておりまして、先ほども説明の中で引当金計上の関係がありました。あるいはさらに、企業の関係についても触れられている畑参考人の関係もございまして、企業の責任とかいわゆる情報開示、これは極めて重要なことだと思っておりまして、二〇〇八年の十二月でありますけれども、金融商品取引法、これは上場企業対象になっている法律でありますけれども、その中で、内閣府令、これ、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令、これ自身が改正されたわけでありますけれども、いわゆる国際会計基準とのコンバージェンス、収束させる、日本の会計基準も国際会計基準に合わせていこうという、そういうコンバージェンス項目に向けた表示の変更が明示されたわけでありますけれども。先ほど大野参考人もこの辺について話ししておりますけれども、私は非常に注目すべき変更の一つではないかなと思っております。  二〇〇八年、昨年の三月末に公表されました資産除去債務に関する会計基準の新規適用に伴って、いわゆるバランスシート、貸借対照表、その流動負債とかあるいは固定負債の科目に資産除去債務が追加された点が挙げられておりまして、これ、大野参考人大塚参考人に特にお聞きしたいわけでありますけれども、こういう改正がされたという点で、いかなる効果とか、あるいは逆に影響が考えられるか、この点についてどのように見解をお持ちかなと。よろしくお願いしたいと思います。
  28. 大野眞里

    参考人大野眞里君) では、今の御質問にお答えしたいと思います。  債務に一応計上しなければいけないということになりますと、それをどう評価するのかというのが問題になると思います。従来の方法、今までの土地の鑑定とかそういうようなものを踏襲していきますと、これは掘削除去まで全部やった費用を計上しなければならないというようなところまで、極端なところまで行ってしまう可能性があろうかと思いますけれども、今回法律の中に、一応どういう、要は、指定区域になった場合にどのレベルの対策をしなければいけないのかというのを環境省の方で一応基準を作るというような形になっております。  そういう意味で、その基準対応するような形のものを一応想定すれば、そこをベースにして将来的な債務の評価というようなことが行われると思いますので、ある意味で妥当なレベルのことが可能になるんではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  29. 大塚直

    参考人大塚直君) 大塚でございます。  大野参考人がおっしゃったとおりでございますが、ここにも大野参考人がお書きになっておられますように、引当金計上の費用評価につきまして掘削除去を前提にして過剰になるというおそれがございますので、そうならないようにしていくという必要があると思います。先ほど大野参考人もおっしゃったように、環境省の方でそれも検討されているようですので、その点も踏まえて、過剰にならないように注意をしていくという必要があると考えております。  以上でございます。
  30. 加藤修一

    加藤修一君 これ今、上場企業対象ということでありますから相当の規模の企業対象になる話なんですけれども、ある本によりますと日本の環境債務の規模として、土壌汚染が十三兆円から三十兆円、アスベストが十兆円以上、PCBは四千億円から一兆円程度と試算されておりまして、全体では二十兆から四十兆円以上になる可能性がある。  そういう意味では、上場企業情報開示をこういった形でするというのは極めて重要なことでありますけれども、こういう環境債務にかかわっては、私は中小企業も決して免れることはできないように思いますけれども、相当厳しいことになりかねないなと、先ほど話がありましたように、そう思っております。ですから、やはりただ早期に取り組む必要が当然あるわけで、そういった意味では税制上の対応とかあるいは政策的な支援というのは極めて重要だなと、こういうふうに考えているわけでありますけれども、この辺について四人の方にお願いしたいなと思いますけれども、大野参考人からちょっとお願いいたします。
  31. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 今、税制上とか政策的な対応ということについては、ちょっと私も専門外なことになりますので余りなかなかお答えにくいんですが、環境債務というものが問題だというのは確かにおっしゃるとおりかもしれませんけれども、やはり産業活動というのは要は我々生きていくためにも不可欠な活動でございまして、それに伴いましてそれなりのちょっと汚染とかそういうようなことが行われたということは過去の問題としてあるわけですけれども、じゃ、それが健康の被害をもたらすような本当にそういう汚染なのかということになりますと、必ずしもそうでない場合がいっぱいあるわけです。  したがいまして、やはり汚染というものが健康に影響を及ぼさない形で管理されていれば、その土地利用とかあるいはそこの土地取引というようなことが可能になるような条件を、やはり法の下に条件をそろえておくということが一番大事なんではないかというふうに考えております。それがやはり、何といいますか、完全に浄化するとかなんとか、そういうようなことになりますと大変なコストが掛かります。要は、健康の被害が起きないようにきちっと対応するということがやっぱり本質的な課題だと思いますので、ある程度汚染との付き合いというようなことも、管理した状況での付き合いというものもやっぱり日本の国民、知恵を出して、そういうことも必要なんではないかというふうに考えております。  それにいたしましても、やはりきちっとした枠組みというか、条件さえきちっとつくってしまえば、つくるということが非常に大事なんではないかというふうに思います。  以上でございます。
  32. 大塚直

    参考人大塚直君) 大塚でございます。  今、委員もおっしゃいましたように、環境債務が非常に額が多いということがございますけれども、これに関しましては、原因負担とかあるいは受益者負担とか土地所有者負担ということを考慮しながら、必要なものはもちろん除去していくということでございますが、それ以外に管理をしていくということを特に健康との関係を考えながらやっていくということが必要だと思います。  アスベストについても、御案内のように既に石綿に関する法律がございますが、PCBについても処理法律がございますけれども、それぞれそういうことを考えながら検討している結果だと思っております。  加藤議員がおっしゃいましたように、税制上の対応として優遇措置というのも非常に重要だと思いますし、さらに、土壌汚染に関しましては、基金が現在設立されておりますけれども、これについて適用の対象拡大するというようなこと、更に活用していくというようなことが必要になってまいると思います。  以上でございます。
  33. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) まず、情報の点なんですが、日本の上場企業は大きく二つに分かれておりまして、心配だから汚染のありそうなところは全部調べたという会社と怖いから全く調べていないというところに、二つに分かれております。そうしますと、一生懸命調べたところは全部明らかになってくるわけで、大変な負担を抱えながらもやっていくわけですね。ところが、全く調べていないところは規制が掛かっておりませんので、それで野放しになっていると。  したがって、情報の公開の仕方というのは、間違った情報公開を求めると、一生懸命やっているところだけが非常にマイナスの情報を出してしまうという危険があります。そういう意味で、私は将来的には、この法律ができた後は、上場企業に対しては、自分のところについて汚染可能性があるところについては調査をしたのかしないのかというところまで求めないと、そして基本的には自主調査をどんどん進めてもらう、そして対等に情報公開するということが必要ではないかと思っております。  それから、環境除去債務についても、まじめにやればやるほど費用が掛かってくるわけですね。そういう意味で、やはり適切な情報の公開の仕方、算定の仕方を取らないと、ある意味で非常に情報は偏った情報が出てしまうということがあると思います。    〔理事松山政司君退席、委員長着席〕  資産除去債務の場合は、上に建物がある場合には、建物を除去する場合の債務としてなっているわけで、土地だけを持っている場合には必ずしも掛かってこないというふうに理解しております。そういう意味では、これで土壌汚染の債務が全部出てくるということではないというふうに思います。  それからもう一つは、やはり中小企業のことも考えますと、これは財政的な支援をしなければ、この際調べて早めに対策しようという企業を援助できないというふうに思いますので、是非、税制上それから、何というんですか、貸付金その他の方法で支援をしながら対策を進めていただきたいというふうに思っております。
  34. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) これは日経新聞等でも拝見しましたけど、この環境債務ということをこういう企業の会計の中に入れていくことについては大賛成ですし、ストック型汚染と僕らは言っているんですけど、土壌汚染と産業廃棄物の問題というのがやっぱり現在はかなり先送りされていると。言わば臭いものにふたをしてわざと調査しないとか、調査してもできるだけ安価な対策で終わらせて、将来世代にやっぱり負の遺産を送っているところがあると思いますので、やっぱり早めにそういう資産計上していくことはいいことだと思っていますし、非常に面白いのは、上場企業で一番環境債務たくさん計上しているのはOAP事件を起こした三菱マテリアルです。  それと、僕はイタイイタイ病のことをずっとやっているんですけど、結局、イタイイタイ病の場合、公害を出せば結果的に高く付いた例なんですけど、ほぼ掛かった費用が六百億円以上掛かっております。もちろん、死んだ人は、補償を出していますけど、帰ってこないということで、そういう絶対的な損失があるんですけど、経済的な損失という意味で六百億円以上掛かっています。やっとその汚染された農地の復元が来年ぐらいに終わります。  結局ほぼ四十年ぐらい掛かって、最近、三井金属の神岡の社長は朝日新聞に「私の視点」で書いていましたけど、結局四十年掛かって解決したと。そして、住民と企業が信頼関係ができたということで、結局、百億円の公害防止投資を事件が起こる前にやっておけば六百億円の被害は起こらなかったわけです。結局、公害を出せば、後で非常に社会的コストも企業負担が重くなるということで、やはり事前にそういう環境債務を計上して対処していくことが今後大事になるんじゃないかと思っております。  以上です。
  35. 加藤修一

    加藤修一君 ありがとうございます。  終わります。
  36. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党の市田です。  今日は、参考人の皆さん、貴重な御意見ありがとうございました。  まず、畑参考人にお聞きいたします。  陳述の中でもお述べになりましたが、畑参考人は、リスクゼロ型の掘削除去等の土壌浄化対策、これを排して盛土封じ込めなどの安易な対策の推奨に今度の法改正がなりかねないと、そう指摘をされています。  私も、今回の改正案掘削除去の偏重ということが強調されて、現行の指定区域を要措置区域と要届出区域に分類をして、知事が技術基準に基づいて指示する制度を新たに盛り込んでいると、これが掘削除去の抑制につながるのではないかという懸念をしております。  私事ですが、私は築地に四年前に住んでいまして、今、豊洲に住むという皮肉な、豊洲への移転には私は反対でありますけれども。畑参考人は、東京ガスの豊洲工場跡地問題あるいは大阪アメニティパークなど多くの土壌・地下水汚染事例にかかわってこられたわけですが、先ほどもお述べになりましたけれども、このリスクゼロ型の掘削除去を抑制して覆土や封じ込めなどのリスク管理型を普及するということについて改めてもう少し詳しくお伺いしたいのと、若干他の参考人の方からも出されたことなんですが、掘削除去というのはかえって汚染地域が広がって汚染拡大につながるのではないかという考え方についてどうお考えかと。コスト問題はよく分かりました。中長期的に見れば、中途半端な処理はかえってお金が掛かるというのはよく分かりましたが、今の点について御意見をお伺いしたいと思います。
  37. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 確かに、今回の形質変更届管理区域、それから要措置区域ということで、従来の指定区域を二種類に分けて、結局対策を緩める。そして、掘削除去をできるだけやらさないという方向になるおそれは十分あると思っております。  それで、リスク管理という、これは言葉はいいんですけれども、元々この環境リスク論というのはどこから来たかといいますと、アメリカから来たものでして、これBSE問題が一番典型なんですけれども、いわゆる全頭検査なんか要らない、百万人に一人しかBSEにならないんだ、全頭検査のコストは無駄だと。要は、アメリカの場合はリスクとベネフィットを比較してベネフィットの方が大きければリスクはある程度我慢すると。みんな飛行機とか自動車は交通事故の可能性があるけれども乗るでしょう、ベネフィットがあるから乗るでしょう、環境も一緒ですという形で、こういうことを中西準子なんかは言っているんですけれども、経産省もそういうスタンスなんですけれども、これは僕は全く間違っていると思います。  基本的には、僕はやっぱりEUが取っている予防原則、これは朝日新聞の知恵蔵に環境リスク論とEUの予防原則を比較して書いたことがあるんですけれども、やはり、今EUが進めているRoHS規制とかREACH規制という化学物質の規制は、言わばカドミウムとか水銀とか危ないものはもう製品に入れていかない、工業製品に入らなければできた廃棄物、廃製品も危ないものが入っていないということです。鉛とか先ほどのカドミウム、水銀など、基本的には六物質に対してはもうやれている。日本のメーカーもEUに輸出はそれができている。自動車とか電気製品を輸出していますから、対応できるんです。  更にもっと、三万種類というすべての工業製品、化学物質に対して規制を掛けようとすると、従来は医薬品と同じように、医薬品だけが安全を証明しなければ販売できなかったんですけれども、すべての工業製品についてメーカーが安全を証明する義務を持たせるという、そういうREACH規制は今もうヨーロッパで始まっています。順次強化されていきますけれども。そういう動きがあります。  それから、やっぱりリスク管理というのは問題ありますし、本当にリスク管理できないんですよね。土壌は確かに人が動かさなければ動かないんですけれども、地下水は勝手に動きますから、これはどこへ行くか分からないということで、何か法案にもちょっとありましたように、海辺の埋立地はいいんだと、汚染されていても。これはもう論外でして、やっぱり廃棄物処分場は山の中に造るか海に埋めているかどっちかなんですけれども、山の場合はもちろん排水は河川の上流に入ってきますし、海の場合もやはり、大阪湾のフェニックスとかありますけれども、東京湾の埋め立てていますけれども、やはり海の汚染を起こします。完全にその汚染水を海に流さないことはできません。今、遮水していますけれども、あれは堤防だけ遮水していまして底は抜けていますので、必ず汚染が海に広がります。それで魚の汚染も起こりますし、そういう意味で問題があるということです。  それと、確かに掘削除去した土地をどう処理するかというのはもちろん問題なんですけれども、僕のかかわった京都府の日本最大のクレー射撃場、これは麻生首相が好きらしいんですけれども、要するに鉛の散弾、これを撃つんですよ。それで皿を割るらしいんですけれども。当然鉛の散弾がそこへ散らばって、クレー射撃場の中が鉛で土が全部汚染されちゃったんです。その土、今京都府立の施設なんですけれども、京都府は十億円以上掛けて全部、秋田県の小坂にあるんですけれども、土壌処理施設で土をきれいにしてまた戻す、そういうことをちゃんとやっているんです。  そういう意味で、それは搬出土壌処理の仕方、適正な処理をやっぱりどう担保するかという問題でして、これは産廃と一緒でして、ただ今の現状からいくともちろん産廃と同じように汚染土壌がどこへ行っているか分からぬという問題は起こり得ると思いますので、それは十分注意しながらやっていくしかないと思っております。ただ、技術的にはできると思います。
  38. 市田忠義

    ○市田忠義君 他の三人の参考人にお伺いしたいんですけれども、今日お述べになった御意見と提出された資料を拝見させていただいて、佐藤参考人は、仮に汚染されていても健康へのリスクが低くて十分に利用できる土地は幾らでもある、そうした土地売買が普通にできるようにならないといけませんと、そうお書きになっています。また、大塚参考人は、掘削除去方法が過度に多く取られることは合理性に欠き、対策費用を高額化させると。さらに、大野参考人は、きちんとリスクを管理しておれば掘削除去という不合理な対策が行われなくてもいいと、こうお述べになっています。  率直な疑問なんですけれども、ちょっと失礼な質問になるかもしれませんが、周辺住民や居住者などが安心、安全のために掘削除去などを要請した場合でも、合理性に欠く、対策費用が高額化されるそういう掘削除去を行わなくてもリスク管理で十分だと、そういうお考えなのかどうか、お三人の方に、時間が限られていますので簡潔によろしくお願いいたします。
  39. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 私も自分土地汚染されると言ったら、自分土地はきれいにしたいというふうに思います。ただし、自分土地だけきれいにすればよいのかという問題があるんだと思います。  それが適正に処理できればいいというのは確かにそうであります。ただ、日本土地をみんながきれいにしようと思って全部掘削するとどうなるかということでありまして、最終処分場はそんな容量もございませんし、何よりも土地というのはそこにあることによって、植物もすんでいる、動物もすんでいる、地中にはミミズもいるということで一定の生態系を持っているわけですね。そうすると、確かに掘削除去しなければいけない場所は私は相当あると思います。しかし、そうではなくて、環境基準に合わない土地は全部掘削除去しようというふうに国民が思ったら、日本の国はめちゃくちゃになると私は実は危惧しております。  そういう意味で、両極端な意見ではなくて、どうやって日本の国土を守りながら土壌汚染対策を進めるかということが重要であるというふうに私は思っております。
  40. 大塚直

    参考人大塚直君) 大塚でございます。  重要な御指摘、ありがとうございます。二点申し上げておきたいと思います。  第一点は、もちろん掘削除去が必要な場合とかあるいは原位置浄化が必要な場合というのはあると思います。特に地下水との関係でそういう場合というのは、現在の環境省省令でもそういう場合は認めていますので、そういう場合はあるわけですけれども、その場合がかなり限定されているのにもかかわらず、必ずしも必要でないような掘削除去が行われているということが問題だということでございます。周辺住民とか居住者の方の安心、安全の観点からも掘削除去が必要でない場合というのもかなり多いわけですけれども、そういう場合についても掘削除去がなされているということが問題ではないかということでございます。  それからもう一点でございますけれども、先ほどの掘削除去に伴う環境リスクの増大という観点についてでございますが、この点については先ほど御質問があったところと関連いたしますが、廃棄物と違って汚染度というのは残念ながら廃棄物以上に見えないものですから分からないというところがございまして、そういうものはできるだけ移動しない方がいいというのが一般的には言えるということを申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  41. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 掘削が、今、大塚参考人からもお話がありましたように、状況によっては、今の地下水汚染とかそういうふうな影響、地下水を周辺で飲料用に利用しているとかそういうような条件のところでは、明らかに掘削して汚染物質そのものを地下に漏れないようにするというような対策というのは必要になる場合もあるんではないかというふうに考えております。そういう意味では、だからケース・バイ・ケースではないかというふうに考えます。  安全、安心のためにやっぱり掘削除去を求める住民がいたときに、それはそのまま掘削除去をすべきなのかという話になりますと、これもまたやはり理性的な対応をできるだけ求めていく必要があるんではないかと。そういう意味で今回、法律の中にちょっとリスクコミュニケーションという言葉がありまして、そのやり方もいろいろと問題ありますけれども、きちっとやはり情報公開をいたしまして、それをまたどういう影響あるのかということをきちっと公にできるような形で進めていくことによって、合理的な対策を進めることで、過度の安全、安心というようなことで対策を取らなくても済むような状況がつくれるんではないかというふうに思っています。  以上でございます。
  42. 市田忠義

    ○市田忠義君 最後に、畑参考人にもう一問お聞きしたいんですけれども、自分も豊洲に住んでいるということもあるんですけれども、東京ガスの豊洲工場跡地での土壌汚染問題などを見ていますと、やはり法施行以前に廃止された一定規模以上のすべての工場、事業場も法の対象とすべきだというふうに私は考えています。  今度の法改正で、一定規模以上の土地形質変更する場合、知事は土壌汚染調査を命ずると、これは一歩改善だと私は思っているんですが、依然としてやっぱり施行前の廃止工場、事業場は放置されたままになっている、こういう点について、あと二分半ほどありますので、どうぞ。
  43. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) だから、今回のもちろん一定規模以上の、多分三千平米ぐらいになると聞いておりますけれども、それはもちろん改善、今の法律の、ざる法のざるを少し目を埋める、目を小さくするということにはなると思いますけれども、完全にざるは目が埋まった状態ではないと思っております。  やはり法施行前の有害物質を扱っていた工場、事業場、これは水質汚濁防止法の特定施設以外にもいっぱい出ていますので、やっぱり有害物質を例えば運搬とか保管したところでも汚染は起こっていますので、それから交通機関とかそういうところなんかでも起こっていますので、やっぱり過去のこれは負の遺産だと。製造業の当初負の遺産という言葉が言われたんですけれども、土壌汚染は。過去の負の遺産をいつかの時点で一掃するためには、きちっとまずはやっぱり調査をすべきであると。  もちろん一〇〇%の工場が全部汚染されているとは僕は言いませんし、多分半分ぐらいだろうという土環センターの推定なんかもありますけれども、やっぱりやってみないと分かりませんから、調査はまずちゃんとすべきである。これはカドミウム汚染米と一緒でして、ついちょっと前、一九九八年ぐらいに、五十ヘクタール単位にワンポイントでじゅうたん的に米を全部調査したら、またいっぱい準汚染米が出てきたという問題がありました。そういう意味で、やっぱり危ない可能性のある工場、事業場については調査を法的に義務付けてしていくべきであると。  あと、対策はどうするかというのは、やっぱりケース・バイ・ケースになると思いますけれども。  以上です。
  44. 市田忠義

    ○市田忠義君 終わります。  ありがとうございました。
  45. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 荒井広幸です。  今日はありがとうございます。  早速ですが、大野参考人にお尋ねしたいんですけれども、このセンターは土壌、地下水の汚染回復、こういうための技術研究もしているということですが、回復あるいは汚染浄化という意味では、技術的にはどういうところまで行っているんでしょう。今、物理的な話が非常に多いですね。掘削から、それから盛土からというようなことがあるんですが、もう一つ進んでいるはずの例えばバイオで対応する、いろんなことがあると思うんですが、どんな現状なんでしょう。回復、浄化の技術研究、一般論で結構ですけれども、どこまで進んでいるんですか。
  46. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 今の質問に一言でお答えするのは非常に難しいんですが、バイオを利用するとかそういう話になりますと、どちらかというと有機溶剤とかそういった汚染ですね、そういったものの対象になろうかと思いますけれども、一つ、そういうものでもって浄化するという話もありますけれども、また非常にそれも難しい側面があります。どこまで行ったら本当に浄化できたのかという非常に判定するのも難しいとか、そういうこともありますので、実際上はなかなか余り利用されてないという側面があります。  しかし、そういう対策についても、やはりできるだけ安い、コストの掛からない対策ということで、やっぱり会員企業の方でも、非常に、これは環境省のいろいろなそういう意味での資金的な支援も受けながら、そういうコストの掛からないあるいは分解効率の非常に高いものを開発するというようなことが出てきておりますし、また、一つ変わってきている状況は、これマーケットになってきているというところがありますので、これは、できるだけ安い技術で適切な対策が取れるような技術開発というようなことがやっぱりかなり進んできているということが言えようかと思います。  ちょっと抽象的な話になりますけれども、以上でございます。
  47. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございます。  そうしますと、畑参考人にお尋ねしたいんですが、お書きになったもの等で若干関係したものも、質問もございましたけれども、有害金属の使用を削減していくんだと、これからの時代というのはそういうことなんだという御指摘をされているわけですけれども、もう少し解説していただけますでしょうか、有害金属の使用削減という考えについてですね。
  48. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 私は元々の出身が京大の工学部の金属でして、それでずっと金属にこだわってやっているんですけど、金属というのは、確かに人間生活とかいろんな経済に役立っているんですけど、プラス面とマイナス面があって、金なんかは全く毒性がないんですけど、金以外の金属はほとんど何らかの毒性はあります。鉄なんかもたくさん取ったらやっぱり問題なんですけど。  確かに、それで必須金属で見ましても、多過ぎても少な過ぎても駄目なんですね。これは、生物は人間も含めて海から生まれた関係で海の中のやっぱり金属の濃度というのが影響しているんですけど、そういう意味で、例えばカドミウムとか水銀とか鉛とかは元々生物とか人間が利用しなかったんです。カルシウムとか鉄とか銅とか、こういうものは生物が利用したのでこれは必須金属になっているんですけど、全く利用しない不要な金属というのがあるんです。  そういうものの典型的なものが水銀であり、カドミウムであり、鉛とか六価クロムとか、そういう非常に有害な重金属なんです。そういうものはやっぱり基本的に、水銀は水俣病を起こしましたし、カドミウムはイタイイタイ病を起こしたと。鉛はもう古来からある毒物なんですけどね。これはもうギリシャ・ローマ時代からいろいろ毒ありますし、砒素なんかもそうですけど。  そういう明らかに人体に有害と分かっている金属についてはできるだけ使っていかないようにしようと、特に工業製品に使っていかないと。例えば、水銀なんかかて、昔はいろいろ、おしろいとかそれから不老長寿の薬とか、多分早く死んだと思うんですけど、そういうものに使われていたぐらいなんですけど。それらは、明らかにやっぱり有害なものはできるだけ減らしていこうという意味で、僕の書いた本にはいろいろ書いてあるんですけど、やっぱりEUは、ヨーロッパが進めているこういう、元々これは北欧とかスウェーデンの方から始まったんですけど、有害な金属をやっぱり規制していく、工業製品には使っていかないと。そうすると、やっぱり安全な工業製品なので、後、環境汚染も少ないし、廃棄物についても処理、リサイクルしやすくなる。根本的にはそれやらないと。  それで、金属というのは基本的にはなくならない、地球上からなくならないんです。量は常に一定なんです。全部地下資源にあった分ですから、鉄はさびて酸化鉄になりますけど、鉄そのものの量は、地球上の存在量は変わらないです。隕鉄が降ってきて、その分は鉄が増えたかも分からないですけど。そういう意味で、絶対、金属はどこに行っても形変えるだけで、なくならないんですよ。  だから、有害な金属というのは、一回使うとどこかに行っちゃうんです。例えば、水銀でも今、石炭火力発電、石炭の中、少し水銀入っているんですけど、豊洲も石炭からガス造っていましたので水銀汚染あるんですけどね。そういうのは、火力発電は飛んでいるんですよ。アメリカなんかでは一番多いんですよ。中国からも今、水銀が飛んでいるという話もありますし。  そういう意味で、やっぱり危ないものが入っているものはできるだけ削減しよう、減らしていこうと。一遍にゼロにはできませんから。そういう動きというのはヨーロッパを中心に今始まっていますので、やっぱり日本も余りアメリカに追従するんじゃなくて、さっきのリスク論ですね、リスクとベネフィットを比較して、少々のリスクは我慢しろというんじゃなくて、やっぱり予防原則というか、安全なものにしていく、すべての消費するものとか物を、物資をですね。これは食べ物も含めてだと思いますけどね。  例えば農薬なんかも、結構昔は米にも水銀の農薬とか、それから今でも果樹、リンゴとかああいうものは砒素、鉛系の農薬なんかも使われていましたし、シロアリの駆除剤はあの和歌山のカレー事件で砒素が、亜砒酸が使われていましたし、そういうのがまだ使われているんですよね。そういうものをやっぱりどんどん減らしていくか代替のものに替えていく。  例えばカドミウムについては、昔はニッカド電池、まあ今も使われているんですけど、カドミウムはやっぱり問題があるということでだんだんリチウムイオン電池に切り替わっていっていますし、そういう代替のものがあるものについては替えていく。  ただ、自動車の鉛バッテリーは今代替はないんですよね。だから、リチウムイオン電池で自動車搭載型というのはまだ十分実用化されていませんので、そうなれば鉛バッテリーも使わなくて済むというようなことになると思います。  以上です。
  49. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございます。私は、考え方として非常に賛同するものでございます。  そうなりますと、先ほど、なかなか技術的にも難しいものもある、効くところもあるかもしれませんし、新たな技術対応できる。しかし、原則的には代替できるもので安全性の高いものに置き換えていく。こういう人間の安全保障的な考え方というのはそのとおりだと思うんです。  そこで、佐藤参考人にお尋ねするんです。  安全性を証明するという時代にだんだん入ってきていると。そのときに、未然防止というのはその一つの表れだと思うんですね。未然防止ということはそれぞれの参考人も重要なポイントとして、特に畑参考人は言っていらっしゃいますけど、企業にとって未然防止をするということについていろんな紛争や訴訟をやってこられたと思うんですが、CSRの一環かもしれませんけど、未然防止というところについてお考え、特にございましたらお願いしたいと思います。
  50. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 佐藤でございます。  未然防止というのは自分の会社だけではできないということが大事なことであります。日本の製造業というのは全部を自分で作っているわけではなくて、鉱山から何かを持ってきて、それを途中で加工して日本に持ってきてセットアップしているというのが現状であります。世界中の製造業がそれぞれいろいろなサプライチェーンの中で原料を調達し、部品を加工し、そして連携して商品を届けているわけです。  そういう意味で、未然防止というのはイコール情報の伝達である。つまり、どんな情報を伝達することによって相互に危険な物質を取り扱わないようにするかということでありまして、そういう意味では、今、日本企業の多くが自分が買っている部品、原材料、そういうものがどういう物質を持っているのかということについて情報を集めているというのが現状であると思います。  まだまだ道半ばでありまして、隠されたままある意味で汚染物質が入っている部品を買ってしまうとか原料を買ってしまう、そして知らないで消費者に届けてしまって後で問題になるということがまだまだ続いております。日本の製品でさえそうですから、輸入商品についてはなおさらでございます。  そういう意味で、これからの時代というのは、やはり情報をいかに公開してもらうか、そしてそれを伝達していくかということが重要である。そのためには、世界全般において有害物質含有情報について共通のルールを持って、必ず伝達するというシステムが必要ではないかというふうに思っております。
  51. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございました。  大塚参考人にお尋ねするんですが、皆さんに聞きたいところですが、大塚参考人代表して、法律学的に。  自主調査がここまで多いならば、大阪のアメニティパークが決定的だと、大体認識一緒のようでございますけど。それならば法律に取り込んだらどうだというシンプルな考え方があると思います。いかがでしょう。
  52. 大塚直

    参考人大塚直君) 今回の法律改正に関連する審議会におきましても、その自主調査をできるだけ法律に取り込もうということで議論をしてまいりました。  その最もシンプルな方法というのは、自主調査であっても、それで有害物質とかが発見されて基準を超えているという場合にはそれを報告してもらおうと、都道府県に報告してもらおうということも考えていたわけでございます。意見としてはそういうものがあったということがございます。  ただ、今回は、それに関しましては、十四条の指定に関する申請のところと、それから六十一条の都道府県知事による土壌汚染に関する情報収集、整理、保存、提供というところにはそれが表れているわけですけれども、シンプルに、基準を超えていたら報告してもらうということ自体は明確な形では入っておりません。これについては、もしそういうものをシンプルな形で入れるとすると、報告をしないという場合に罰則を掛けなくちゃいけないんじゃないかという議論がございまして、しかし罰則を掛けるということになると、自主調査の結果を、まあそもそも自主調査をしなくなってしまうんじゃないかという問題がございまして、そういうものをそのままの形で入れるということはなかなか難しいということで入らなかったというところがございます。  それから、自主調査に関しましては、今の六十一条のところで、都道府県情報とかを収集してもらって、場合によってはその汚染度マップみたいなものも作るということも含めて対応していこうということを考えているということでございます。  もう一つの問題がございますけれども、自主調査をしてもらったときに、それを都道府県に持ってきてもらっても、かなりいいかげんな調査であったり、公定の調査に届いていないというようなレベルの調査もございます。そういうものを持ってこられたときに都道府県がどういうふうに対応するかということは、かなり対応に困るのではないかという御意見も審議会では出されていたところでございます。  こういうものに関しましては、十四条の四項で、都道府県が、それに関してもいろいろな対応をしながら、どの程度調査であればどういうふうに対応するかというようなことを考えて検討できるという仕組みを今回入れたということでございまして、結局、自主調査というのはピンからキリまでいろいろなものがあるものですから、それに応じて柔軟に対応できるような仕組みを入れたということであります。  ですから、今議員が御質問いただいたように、自主調査についてはできるだけ法律対象の中に入れていく、法律の世界の中に入れていくということを非常に工夫をして条文化したということになると思います。  以上でございます。
  53. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございます。  最後になりますが、畑参考人にお尋ねします。今度退官されたということでございますが。  経済成長と環境の両立ということで、我が国も積極的に、過去の教訓などを踏まえ、技術、資金も応援していこうというのがいわゆる武力に訴えない日本の生き方でございます。そういうもので考えたときに、いわゆるアジア、中国、インド、こういったところに対して我が国はどのような、過去の水質汚濁、また現在こういう課題土壌汚染もございます、農作物の汚染もあります。こういったものについて、どのように我が国政府として途上国、問題がある国にどんな協力ができるか。一言では難しいかもしれませんが、参考になればとお尋ねいたします。
  54. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 一番いい例はイタイイタイ病だと思うんですけど、先ほども少し紹介しましたけど。  僕は、だから、三井金属については評価しているんですけど。結局、カドミウムの排出量をほぼ四十年間で十分の一以下にしまして、神通川のカドミウムの水質は鉱山の上流も下流もほぼ一緒になったと。もちろん、ゼロエミッション、ゼロ排出にはならないですね。ゼロにはできないんですけど、少しは出るんですけど。それで、ほぼ無視できるぐらいの濃度になって、自然界レベルになって神通川は清流に戻って、下流の農地も復元田ということで、千ヘクタールぐらい復元して、数百億円の費用が掛かったんですけど、来年終わると。また汚染物質流したらまた再汚染されますから、これも一種の未然防止だと思うんですけど。  それで、三井金属つぶれたかといいますと、決してつぶれていませんね。今、三井金属は先ほど言いました鉛の、自動車のバッテリーの日本最大のリサイクル工場になっているんです、神岡鉱山が。今、神岡鉱山は、鉱石は掘っていませんけど、自動車のバッテリーを回収して、それをまた鉛にして、自動車のバッテリーは非常にシンプルな製品でして、プラスチックの箱に鉛の電極が入っているだけです。あと硫酸が入っていまして、まあ硫酸は処理したらいいので、プラスチックと鉛はまた再利用できるんです。あとそれ以外にも三井金属は、皆さん持っている携帯電話の中の銅の薄い箔というんですけれども、回路に使うんですけれども、これの世界トップシェアなんですよ。最近ちょっと何か経営苦しいようですけれども、それでも倒産はしていないし、神岡鉱山も操業を続けながらちゃんとそれなりの利益を出して、経済と環境の両立というのができたわけですね。それで、この前、朝日新聞にも神岡の、まあ三井の取締役ですけれども、神岡の社長は「私の視点」に、今四十年たって成功したと、対策は。  これは、参議院の議員やられた近藤忠孝イタイイタイ病の弁護団長がNHKの「その時歴史が動いた」にも出ておられましたけれども、弁護団も被害者も企業評価しているんですね、今。一応企業、経済活動と、上流の神岡鉱山は操業を続けています、工場。鉛、亜鉛造っているんですけれども。しかし、それで下流の農業も両立するということで、やっぱり経済と環境の両立はやればできるんだと。  アジアの問題ですけれども、一応このアジアの土壌汚染で私、最近、韓国とか台湾とか中国の調査やっているんですけれども、特に中国は皆さん御存じのようにひどい状況でして、僕は主に南の方の広東省とか湖南省の鉱山を見に行ったんですけれども、ほとんど排水は垂れ流し状態です。もう鉄分を、真っ赤な水がそのまま垂れ流されて、谷間は全部泥の海になっていると。下流にがんの村が幾つかできていると。がんの原因もよく分からないんですよね、砒素なのか。多分、砒素でがんになっていると僕は思うんですけれども。あと、カドミウムによってイタイイタイ病みたいな患者も出ていまして。  そこの省の研究所の人がいろいろ調べていまして、その人に調査、案内してもらって、うちの中国の留学生がガイドしてくれたんですけれどもね。それで、日本にも一応中国の研究者を呼びまして、それで日本の富山とかイタイイタイ病の視察もやってもらいまして、これはテレビとか毎日新聞なんかに紹介されたんですけれども。それで、復元の現場なんかも見せたんですけれども、それをそのまま中国に持っていくのは無理ですね。中国にそんなお金がないとか。やはり、日本の経験を生かしてほしいんですけれども、このままいくと中国は環境よりも経済成長優先でいっていますから、何か行くところまで行かないと反省しないのかなという気はあります。  だから、日本としては、やっぱりできるだけ日本の経験を知らせて、こういう解決の仕方をしたんだということでそれを紹介して、それを中国側がどうやって自分でやっていくかという、そのときに技術援助とか経済援助できることはやっぱり日本がやっていくべきだと思っております。  以上です。
  55. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 ありがとうございました。
  56. 川田龍平

    ○川田龍平君 川田龍平です。  今日は貴重な御意見参考人の皆さん、ありがとうございます。  早速質問させていただきます。  土壌汚染対策法を始め環境関係法は市町村の役割が重要だと考えていますが、現実に地域で土壌汚染の問題が生じた場合に市区町村が住民への汚染状況の説明や緊急的な対応を行うことになると思いますが、環境省都道府県、それから市区町村の相互に補完的な体制を整える必要があるかどうか、その点でこの法律が十分かどうかということ、あるいは課題があると考えているかどうかを参考人にお聞きしたいと思います。各参考人お願いします。
  57. 佐藤泉

    参考人佐藤泉君) 佐藤でございます。  市町村というのは住民に最も近い自治体でございますから、非常に重要な機関でございます。ただし、技術的な人的支援それから財政的支援を考えますと、市町村が土壌汚染について判断をし、決定をしていくということは非常に難しい側面があるのではないかというふうに思います。そういう意味では、私は、国、都道府県、市町村というのはそれぞれ連携しながら、自分の強いところ、そして得意なところというものを生かして協力関係に立つということが必要だと思います。  例えば、私の経験でも、市町村よりもっと小さいかもしれませんが、自治、何というんですか、自治会というんですか、というのが非常に土壌汚染では重要な役割を持っているんですね。自治会の住民の方々にチラシを配って、東京の場合には自治会に入っていない住民もたくさんいるわけです。そういう人たちにもできるだけ声を掛けてもらって住民に理解していただく、そういうときに市町村の役割は非常に大きいわけですね。それから、井戸水の把握、それからここにどんな人が住んでいるか、こういう把握もやはり市町村にはそれなりのノウハウがあると。  そういう意味では、住民に密着した市町村、それからそれなりのたくさんの件数を手掛けている都道府県、そして国としての更に高い視野での国全体のバランスとしての意見、そういうものを総合して対策を進めていくことが必要であるというふうに思っております。
  58. 大塚直

    参考人大塚直君) 今、佐藤参考人がおっしゃったことでほとんど尽きていると思いますが。環境行政一般につきまして、環境省あるいは国と都道府県、市町村というのが連携をして対応していくということが必要だと思います。  それぞれの役割分担というのは非常に重要でございまして、土壌汚染については、基本的には土壌の問題ですので身近な問題ということも言えますが、他方技術的な力とかあるいは財政的な能力とかを持っているところが対応しなければいけないというところもあるわけでございます。この法律におきましては都道府県が多くの場合に役割を果たすということになっておりまして、もちろんこれは政令市とか中核市とかも対応することになりますけれども、それよりも小さい規模の市町村というのはそれほど大きな役割は果たしていないということになると思います。  現在のこういう役割分担というのは私は基本的には適切であるというふうに考えていまして、もちろん、市町村はほかの環境問題につきまして、景観とか騒音、振動とか、本当に身近なものについて非常に大きな役割を果たしていただくことが必要だと思っておりますが、大気汚染とか水質汚濁とか広がりのあるものについては必ずしも市町村が大きな役割を果たすのが適当だと思わないところもございますし、それぞれの分野に応じて考えていくということが非常に重要であると考えております。  以上でございます。
  59. 大野眞里

    参考人大野眞里君) 何かを言いたい、お答えしたいと思ったんですが、佐藤参考人、それから大塚参考人で尽きているんではないかというふうに思います。済みません、以上でございます。
  60. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) 難しい問題なんですけれども、一応二つの事例で紹介したいと思いますけれども。  一つは、滋賀県の栗東の産廃問題ですけれども。栗東市は住民も含めて、僕はほとんど行政からは委員に呼ばれないんですけれども、珍しく栗東市の調査委員には住民推薦で入っていまして、それで栗東市としていろんな対策案の意見を出しているんですけれども。それに対して滋賀県は、今、嘉田知事なんですけれども、嘉田知事は有名なんですけれども、新幹線の駅は止めたんですけれども、それからダムもある程度止めようとしているんですけれども、この産廃問題についてはからっきし駄目でして、今、栗東市とか周辺の住民の反発を食らっていまして、要は住民はやっぱり全量撤去を要求しているんですよね。確かに僕らも全量撤去が一番望ましいんですけれども、コスト的に二百数十億掛かるので無理なので。  ただ、県が考えている案は、要するに遮水壁で、ソイルセメントの遮水壁で囲って水をくみ上げて処理して産廃を残そうという、そういう案で四十五億円なんですけれどもね。僕らはそれよりも安い方法で効果的な対策ができますということで、底の粘土層が破壊されているんですけれども、その粘土層の修復と、明らかにドラム缶が三千本以上入っているのが分かっているので、そういう明らかに有害なものはやっぱり全部掘削して掘り起こす。そういう対策は二十億円ぐらいで済むんですよね。そういう提案を栗東市として、その委員会として提案しているんですけれども、県の方はそれをつぶしに来ていまして、県の対策案を強引にやろうとしたんですけれども、結局は、周辺の住民の同意が得られない、自治会の同意は得られないし、七つの自治会のうち一つしか同意が得られなかったし、議会でも、多分これは自民党と共産党が反対してちょっと通らない可能性が強いので、結局、県案についてはちょっと棚上げになっているんですけれども。  そのときに環境省が果たした役割は非常に悪い役割をやっていまして、要は、環境省がどうも全量撤去をやるなと、現地封じ込めやれと。これは土壌汚染対策法と同じスタンスでして、土壌汚染対策法掘削除去をやめろと、できるだけ現地封じ込めとか土かぶせて終わりにしろと、それと同じことがやられていますね。  これは、四日市の日本最大の不法投棄、百六十万、百七十万立方メートルが不法で、全部足すと三百万立方メートル、巨大なごみの山ができているんですけれども。そのときも、当初、県は不法投棄の部分については全量撤去をしますという案を出したんですけれども、それに対して環境省は、聞くところによると、環境省が圧力を掛けて、結局むちゃくちゃひどい対策なんですけれども、土かぶせて雨水だけ処理する、それで終わりにしようという。  岐阜の、あと椿洞の産廃の不法投棄事件でも、これは市長が当初、全量撤去をやりますということの方針を打ち出していたんですけれども、環境省がいろいろ圧力を掛けて一部撤去で百億円という形で決着ということで、そういう意味でやっぱり今、県とか環境省が市町村に対して果たしている役割というのは決して余り好ましくないという状況だと思っております。
  61. 川田龍平

    ○川田龍平君 ありがとうございます。  時間がちょっともうないんですけれども、岡山市の小鳥が丘団地では、平成十六年に岡山市の水道局による水道管入替えの工事のときに土壌汚染が発見されて、これまで揮発性の有機化合物であるトリクロロエチレンが最大環境基準の二十七倍、ベンゼンが二十六倍検出されるほどの状況にあると。このため、窓を閉めていても異臭によって眠れない人であったりとか、頭痛や鼻炎などに悩まされる人であったり、中には住宅ローンが残っているにもかかわらず引っ越しを余儀なくされた人もいると聞いているんですが。  この土壌からの揮発経由による摂取、また住宅地における土壌汚染の場合というのがどうなのかという、長期的に濃度が高くない水準の暴露環境の中での暮らし、健康被害を受ける場合も考えられますが、こうした低濃度の長期暴露による健康被害について、参考人意見を、答えられる方に答えていただきたいと思うんですが。
  62. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) これは私の資料にも書いていますように、私も三回ほど現地に行きまして、住民にも頼まれまして、それで今裁判にもなっております。  それで、この団地ってちっちゃい四十戸足らずの団地なんですけれども、団地の入口というか、道に入ると、川田議員も行かれたんですかね、もうぷうんと変な油臭いにおいがするんですよ。それで、二十四時間それを吸っていまして、多分外出した方が気分がいい、家にいると気分が悪くなると。実際に何かいろいろ発疹とかできものができたりとか。台所の下に物入れがあるんですけれども、その床がコンクリートを張っていないところが何か噴火口みたいになっていまして、ガスが噴き出してきているんですね、メタンガスとかいろんなガスが。それから、庭の土がぶわぶわになっているんです。非常に軟らかくなっているんです。下から噴き出してきて、一部黒っぽい油そのものが出てきて、十センチ掘りますともう真っ黒けの油まみれの土なんですよ。これは元々何か廃油のリサイクル業者でして、そのかすをまた豊島に持っていったというんです。豊島の産廃業者と何かセットだったらしいんですけれども。  そういうところで健康被害がある、実際に健康被害が起こって裁判を起こしているんですけれども、全く行政の方は、もう岡山市も県も取り合おうとしないと。基準もないと。土壌汚染の大気の基準はないんですよね。土壌の溶出量とか含有量しかない、地下水の基準しかありませんからね。そういう意味でやっぱり裁判に訴えられない、裁判やってもこれは勝てるかどうか分からないと。  もう日常的にずっと、それで、外へ引っ越したいけれども、その家はもう銀行の担保価値ゼロなんですよ。全然お金も貸してくれない、売れない、その家ももういろいろマスコミに出ていますから。そういう悲惨な状況になっているところがあります。だから、実際に人が住んでいるところで日常的にVOC揮発していきますから、そういう大変なところの問題が起こったところがあるんですけれども、それに今の土壌汚染対策法は全く役に立たないという意味で、大気の基準なんかも設定要ると思います。  ただ、さっきの豊洲の問題でも、これ、ベンゼン、シアン、水銀は蒸発するんですよね、常温でも。それの基準はないという、やっぱりそういう問題はあると思います。大気汚染防止法で少し大気の環境基準はあるものはあるんですけれどもね。土壌汚染についてはないということで、問題あると思っています。  以上です。
  63. 川田龍平

    ○川田龍平君 ありがとうございます。  それから、今、汚染原因者の分社化を内容とする、水俣病についてなんですけれども、分社化を内容とするこの与党法案というのは今国会に提出されているんですが、汚染負担の原則が今度薄くなる傾向にあるという印象を持っていますが、この土壌汚染法とこの汚染負担の原則についての参考人の御意見を伺いたいと思います。これも答えられる方で結構です。
  64. 大塚直

    参考人大塚直君) これは法律制定のときも、結構、衆議院の方で参考人で呼ばれましたのでお話ししたことがございますが、現在の七条についての理解というのはちょっといろいろございますけれども、ただ七条の中には、一応原因者も措置命令対象になるということにはなっており、さらに八条で、その土地所有者等措置をした場合に原因者に対して求償できるという規定が入っていますので、土地所有者というのが非常に強調されている一方で、原因者についてもきちんとした規定を置いているということに土壌汚染対策法はなると思います。  これは法律制定のときにいろいろ御議論があって結果的にこういうふうになったということで、私は高く評価しているところでございます。  以上でございます。
  65. 畑明郎

    参考人(畑明郎君) すぐ終わります。  だから、この汚染負担原則ですね、基本的には従来の公害法はそれで貫かれているんですけれども、特に土壌汚染については、農用地の土壌汚染防止法はイタイイタイ病を契機として制定されたんですけど、これは基本的には汚染原因者負担です。だから、神岡鉱山、三井金属が土壌復元費用を、これは国の法律があって少し減額されていますけど、基本的には企業負担、人体被害の補償に農業被害の補償すべて、だから五百億円近い金額を企業は支払っているんです。それが水俣病の場合、僕はチッソは非常にけしからぬと思うんですけど、三井金属はやっぱり、財閥系企業とそうでない企業の違いか、世間体があるのか知らないですけど、やっぱりきちっと三井金属は、三井財閥の一員だったし、対応を取って原因負担を貫いているし。  この土壌汚染対策法が元々できたときに、やっぱりその汚染負担原則は全く貫かれない、土地所有者責任主義と言われていましたけどね。それで、汚染原因者がオーケーしたら所有者が請求できますよと言っていますけど、普通はオーケーしないです。汚染原因者イコール土地所有者だったら問題ないんですけど、汚染原因者は必ず逃げますから。それをまた証明しようとするとやっぱり裁判しかないとか、そういういっぱい、カネボウでもこれ裁判起こっているんですよ、企業同士が裁判やっているという。  やっぱりそういう意味で、土壌汚染対策法はPPPは貫かれていないということで問題はあると思っています。
  66. 川田龍平

    ○川田龍平君 ありがとうございます。  では、時間ですので、ありがとうございました。参考人、ありがとうございました。
  67. 有村治子

    委員長有村治子君) 以上で参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の方々に一言御礼を申し上げます。  本日は貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)     ─────────────
  68. 有村治子

    委員長有村治子君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  滋賀県及び福井県における自然公園に関する実情を調査し、もって本委員会に付託を予定される自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案審査に資するため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 有村治子

    委員長有村治子君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 有村治子

    委員長有村治子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十二分散会