運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2009-05-12 第171回国会 参議院 外交防衛委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十一年五月十二日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任         義家 弘介君     佐藤 正久君  四月二十七日     辞任         補欠選任         島尻安伊子君     橋本 聖子君  五月八日     辞任         補欠選任         浜田 昌良君     渡辺 孝男君  五月十一日     辞任         補欠選任         小池 正勝君     長谷川大紋君      渡辺 孝男君     浜田 昌良君  五月十二日     辞任         補欠選任         石井  一君     喜納 昌吉君      長谷川大紋君     牧野たかお君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         榛葉賀津也君     理 事                 浅尾慶一郎君                 一川 保夫君                 白  眞勲君                 浅野 勝人君                 木村  仁君     委 員                 石井  一君                 犬塚 直史君                 風間 直樹君                 喜納 昌吉君                 谷岡 郁子君                 広中和歌子君                 藤田 幸久君                 岸  信夫君                 佐藤 正久君                 長谷川大紋君                 橋本 聖子君                 牧野たかお君                 山本 一太君                 浜田 昌良君                 山口那津男君                 井上 哲士君                 山内 徳信君    国務大臣        外務大臣     中曽根弘文君        防衛大臣     浜田 靖一君    副大臣        外務大臣    橋本 聖子君        防衛大臣    北村 誠吾君    大臣政務官        防衛大臣政務官  岸  信夫君    事務局側        常任委員会専門        員        堀田 光明君    政府参考人        外務大臣官房審        議官       北野  充君        外務大臣官房参        事官       兼原 信克君        外務省北米局長  梅本 和義君        外務省中東アフ        リカ局長     鈴木 敏郎君        外務省国際法局        長        鶴岡 公二君        防衛省防衛政策        局長       高見澤將林君        防衛省経理装備        局長       長岡 憲宗君        防衛省地方協力        局長       井上 源三君    参考人        沖縄国際大学法        学部教授     佐藤  学君        拓殖大学海外事        情研究所教授   川上 高司君        同志社大学法学        部教授      村田 晃嗣君        沖縄大学名誉教        授        新崎 盛暉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○第三海兵機動展開部隊要員及びその家族の沖  縄からグアムへの移転実施に関する日本国政  府とアメリカ合衆国政府との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○政府参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、義家弘介君、島尻安伊子君及び小池正勝君が委員辞任され、その補欠として佐藤正久君、橋本聖子君及び長谷川大紋君が選任されました。     ─────────────
  3. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  第三海兵機動展開部隊要員及びその家族沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会沖縄国際大学法学部教授佐藤学君、拓殖大学海外事情研究所教授川上高司君、同志社大学法学部教授村田晃嗣君及び沖縄大学名誉教授新崎盛暉君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 第三海兵機動展開部隊要員及びその家族沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  この際、参考人の方々に対し、本委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、公務御多端な中、本委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にさせていただきたく存じますので、よろしくお願い申し上げます。本日はありがとうございます。  議事の進め方について申し上げます。  まず、佐藤参考人川上参考人村田参考人新崎参考人の順にお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたく存じます。  御発言の際は、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  また、参考人質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。  それでは、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人
  6. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 本日は、お招きいただきありがとうございます。グアム移転協定に関する私見を述べさせていただきます。お役に立てればと思います。  私がお話し申し上げたいことは、二点ございます。  一つは、アメリカの政治、アメリカ政府の中でのこのグアム移転協定位置付けというのはどのようなものなのかということ、それが一点目です。  二点目は、沖縄から見た場合にこのグアム移転協定の内容がどのように映るものなのかというお話をしたいと思っております。  まず一点目でございますが、この行政協定を結んだことによって、これが国際的な取決めである、国際的な条約であるということで、これは相当に拘束力の強い動かせないものであるというような、そういう議論が広くなされているように存じます。ただ、果たして本当にそうなのかということを二つの点から検討したいと思います。  もう一つは、これがアメリカにとってどうなのか、オバマ政権にとって、このグアム移転協定に基づいた計画を推進することがアメリカにとってどうなのかということにも触れたいと思います。  先月の衆議院の外務委員会での議事録、拝見したわけですけれども、そこでの外務省からの答弁、情報が今でも同じであるとするならば、まず一点目ですが、この協定アメリカ議会の議決を経ておりません。その状況がもし変わっていないという前提でまずお話しいたしますと、アメリカ政府が、政府という場合これがまたやや混乱を招く言い方ですが、米政府大統領議会と、御存じのように権力分立ですので、何か二つ分かれているわけですが、アメリカ政府外国条約を結ぶ際にはこれは上院の三分の二の投票が必要であるということ、これは、アメリカ国内法憲法上は条約トリーティーというのはこの形で結ばれたものだけが条約というふうな位置付けになっています。一方、国際法の規定では、それに限らないわけでありますので、ですからそこでまた混乱が生じていると思うんですけれども。  それで、アメリカ国内で、ではトリーティー条約として上院の三分の二の賛成を経たものだけが国際的な取決めかと申しますと、そうではございません。今回のグアム移転協定はいわゆるエグゼクティブアグリーメントという行政協定です。これは議会の、上院の三分の二というものを経ない、要するに大統領が便宜上必要に迫られて結ばなければいけないもの、それを一々上院の三分の二の賛同を経るのは困難ですので、そうしますとこれを大統領に対して、こうした外国との取決めをすることを認めているわけです。連邦最高裁判所判決は、間接的にはこれを認めております。  その中で、このエグゼクティブアグリーメントというものも、行政協定も二種類ございまして、一つはそれを議会にかけるものがございます。これは議会執行部協定というんでしょうか、コングレショナル・エグゼクティブアグリーメントと申すもので、これは要するに大統領が結んだものに対して、あるいは結ぼうとしているものに対して議会の、上院下院の三分の二ではなくて、単純過半数で認めるというものが多うございます。これは、例えばNAFTA、北米自由貿易協定はこれで結ばれています。これは、要するに議会の権限にかかわる予算決定執行にかかわるようなもの、あるいは国内法規の整備にかかわるようなものに関しては、議会の同意がなければ結局は実現できないので、これは議会がかかわるという形になっております。  今回、もしも先月の外務省のお答えがまだそのままの状況であるとして、私もアメリカ議会のサイトで検索を掛けてみましたが出てきていないので、私が知る限りで、アメリカ議会はまだこれに関しての法案を審議してはいないと思いますが、もしもこれがアメリカ議会がかかわらないで結ばれて、そのままで行くとするならば、これはアメリカ国内での位置付けアメリカ政府にとっての位置付けは大変弱いものになります。拘束力がないという形になります。  というのは、アメリカの国務省では、外国との取決めを精査いたしまして、その中で本来拘束力がないものが拘束力を発するようなものをはじくというような、そういうスクリーニングをします。要するに、この協定が全くそうした過程を経ていないということは、アメリカ政府にとってはこの協定に書かれていることは将来的な拘束力を持つものではない。要するに、予算決定執行等に関して、これはアメリカ政府がこれに縛られるというような認識、強い拘束力を持ってこれを遂行しなければいけないという認識を持っていないというふうに自分は考えます。  もちろん、これは国と国との関係で結んだ協定ですから、それは意味がある重要なものであるには違いありません。しかし、法的な観点からして、あるいはアメリカ憲法上これを、議会がこれに対して予算を付けない、執行しないということはあっても、これは全く不思議ではありません。  アメリカは、御存じのように、古くはウッドローウィルソン大統領が提唱した国際連盟上院が否決する、批准しないというようなことがあって、国際連盟アメリカは入らなかったというようなことがあります。要するに、アメリカ政府の中で、大統領がやりたいことを議会が必ず、同じ政党が多数派を取っていても議会が支持しなければいけないという形にはなっておりません。  ですので、この協定に関して果たしてアメリカが、日本側が考えているような、これが非常に強制力拘束力の強いものであると考えているかというと、そうではないのではないかというふうに自分は判断いたします。もしも、この後アメリカ議会がこれを議決するということになればこれは状況が変わってくるわけですが、今のところそうではないのではないかというふうに考えます。  二点目ですが、もしもこれが、仮に米国議会も議決したとして、これをやったときにどのような意味合いを持つのかということなんですけれども、御存じのように、今米国の法廷で、連邦地方裁判所ジュゴン訴訟というものが行われております。要するに、ジュゴンの国際的に認められた希少価値絶滅危惧種海洋生物であるジュゴン生息地であるところにこの基地を造るということで、これを歴史的に記念物とした形で保存の対象としなきゃいけないところにアメリカ政府がかかわる形で基地を造るということで訴訟が起こされています。  地方裁、その一審目で、アメリカ国防総省に対して、要するに今の形のままではこれはジュゴン保存ができないということで改善命令が出されています。現在の状況は、一月以来、判決が出たのは去年なんですが、一月からずっとその改善策を出すということで原告、被告の間でのやり取りが行われていることというふうに承っています。  もしもこれが、一審判決がこのまんま維持されますと、アメリカ国内、今度は国防総省は上告するはずでありまして、次の段階連邦控訴裁判所に行ったときには、これは今までよりもはるかに大きなアメリカメディア注目を集めることになるはずです。  ということは、アメリカの世論の中で海洋生物への保護皆様御存じのように鯨の問題というのがあれだけ大きな問題になったわけでありまして、海洋生物であるジュゴンの、絶滅に瀕しているジュゴン生息地に埋め立てて基地を造るということが、今アメリカ国内ではこれはほとんど知られていない問題ですので、メディアも報道しておりません。これがもしも、もしもですが、その一審が原告勝利のままになって、それで上告された場合にはメディア注目ははるかに高まるはずでありまして、そうすると、環境保護を旗頭にしているオバマ政権にとっては、これは大きな打撃になりかねないというふうに思うわけです。  また、一点目ともかかわりますが、御存じのようにアメリカの財政非常に厳しい状況ですので、オバマ政権がこれまで打ち出してきた経済対策がもしも全部うまくいったとしても、これはなかなか、オバマ政権一期目ですべてがうまくいく、要するに、また肥大してしまった連邦赤字オバマ政権一期目で解消するというようなことはとてもできないわけですので、その中で、アメリカ国内優先順位、要するに軍事費に関しても、軍事予算に関しても今アメリカでは相当深刻な厳しい見直しをしているわけでありますので、その中でこの協定をもしも議会が議決してアメリカ側を拘束するということになった場合に、アメリカが本当にこれを二〇一四年までに、書かれているアメリカ側負担を全部出すのか、そういう選択をするのかというと、考えられないんではないかと自分は思っております。  ですので、これが、もしも今のまま議会がかかわらないならばアメリカにとって拘束力がないものであり、また議会がかかわるとするならばアメリカにとって大きな問題になるということを自分は考えております。  では、これが、この協定沖縄の側から見るとどのように映るかというお話ですが、時間が限られておりますので簡単に申しますと、九五年、九六年、沖縄では少女暴行事件がございまして、その後で非常に反米軍基地の感情が高まったわけです。そのときに、これを抑えるということで、その負担を、沖縄米軍基地負担を軽減するということのシンボルとして、目玉として普天間の返還ということがこのときに出されました。この時点で、後にSACO合意という計画になるわけですけれども、これに至る前、最初時点米軍がどのようなことを言っていたかというと、普天間代替基地はどこか、県内のどこか、北部に、キャンプ・シュワブの中でしょうか、四十五メートルのヘリコプター着地帯を造ればよいというふうに米軍最初言っていたのであるという、そういう証言がございます。  要するに、当初は普天間を返すということが目的だったわけです。その普天間を返すということが次第に様々な思惑、様々な状況から、代替基地、大きな基地を造る、あるいは今のような、滑走路を二本持ち、軍港設備を持つ、そういう普天間とはまた次元の異なる高度な基地を造る、それを造らなければ普天間は返還しないということになっただけではなくて、今回はそれに加えてグアム基地も造らなければ普天間は返さないという話になっているわけです。  十三年間、十四年間の間に沖縄あるいは日本をめぐる国際環境、中国との関係を考えたときに、関係は随分変わってきているのではないか。そのときに、十三年前に普天間基地代替ヘリコプター着地帯でよいと言われていたものが、何で今グアム基地を造らなければいけなくて、また辺野古に新しい基地を造らなければ普天間は返還しないということになってしまうのか。これはどうもおかしいのではないかというふうに考えるわけです。  日米安全保障条約維持していくためのコストを負担する必要があるという議論から、もうこのパッケージ論というのは少し、ややおかしいのではないか、あるいは負担の質が一方的であり、あるいは負担の質が悪いのではないかというふうに考えます。  もう一点最後に付け加えますと、沖縄海兵隊員がずっと駐留する、また、これ定員は削減されても実数はどうなるか分からないということのようですが、沖縄のような後背地の小さいところで海兵隊員がたくさん町に出ているわけです。そうすると、絶えず何か事件が起きるリスクを背負っているわけでして、これは、昨年の二月ですか、ライス国務長官が来日したとき、最初米兵の犯した犯罪に対して謝罪しなきゃいけないというようなことになる。要するに、米兵沖縄の中でたくさんいる、町に出ているという状況アメリカにとって沖縄基地を安定的に置いておくための政治的なリスクになるということ、要するに海兵隊沖縄に駐留し続ける意味はあるのかということを考えなければいけないんじゃないかと思うわけです。  それは、日米安保を安定的に維持するためにもそれは必要ではないかと思いますし、これは前の稲嶺知事、自民党の推薦を受けた稲嶺知事が、海兵隊全面撤去ですか、県外への移転稲嶺知事が主張されていたことを思い起こすべきではないかと思うわけです。  このパッケージ論沖縄に新しい海兵隊基地ができれば、海兵隊の存在は恒久的なものになります。それは必ずしもというか、恐らくはアメリカにとっても得策ではないはずであるということを考えた方がよいのではないかというふうに自分は考える次第です。  そのようなことで、沖縄から見た場合に、普天間は返ってくるはずだったのがどうしてこういうことになったのかという、二つだけお話ししますと、普天間に関しては、名護市の市民投票、全国で多分二件目だったか三件目だったかの市民投票が行われました。これで、住民投票ですね、住民投票が行われました、九五年ですか。これで反対が上回りました。また、昨年の沖縄県議会で、この基地建設に関して全面的にやめるべきであるという県議会決議が可決しております。  沖縄にはそういう民意もあるということをお伝えして、終わらせていただきます。  以上です。
  7. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ありがとうございました。  次に、川上参考人にお願いいたします。川上参考人
  8. 川上高司

    参考人川上高司君) 拓殖大学川上でございます。  本日、在沖縄米海兵隊グアム移転に関する日米協定に関し参考人として招致され個人的な所見を述べる機会をちょうだいいたしましたことを、榛葉委員長並びに各委員皆様に感謝申し上げます。  さて、この度のグアム協定は、ブッシュ政権の下で締結されました二〇〇六年五月の日米安全保障協議会で合意された再編実施のための日米ロードマップ、以下ロードマップと申し上げますが、その関連記述オバマ政権発足早々に確認したという日本にとっては非常に重要な協定であるということをまず申し上げ、第二にそのグアム協定の持つ意義沖縄地元負担軽減抑止力維持バランスシート観点から述べ、それから第三にグアム協定承認と履行がいかに日本安全保障上重要なのかということを述べたいと思います。  オバマ政権、就任しましてから百日以上がたちまして、百日目でのオバマ政権支持率はワシントン・ポストやABCの調査では六九%、ここ二十年間の大統領の百日目の支持率と比較しまして最高の水準となっているわけであります。もちろん発足直後の熱気はやや薄れつつありますけれども、オバマ大統領は破綻した米国経済の立て直しを最優先課題に、イラクからの撤退、それからアフガニスタンの安定化、北朝鮮問題、米ロの核軍縮、中東問題などの多くの問題を抱えて、それらの問題に対して矢継ぎ早に法案を通過させたり、ヨーロッパ、中東、中南米などなどを奔走しながら、これだけの問題を抱えながらよくやっているというふうな評価が高い状況であります。  しかしながら、国防次官補レベル以下の人事の議会承認若しくはそれまでの身元調査の方に手間暇が掛かり、指名はできていてもなかなか正式に職務をスタートできていないのが現状であります。したがいまして、本格的にオバマ政権が稼働するのはもうしばらく時間が掛かりそうです。現在は、ようやく大統領選挙中にオバマが公約していた事柄に対して政策を打ち出そうとしているところだと言えると思います。  従来、考えますと、アメリカでは政権が替わりましたら外交安全保障政策は百八十度転換する可能性があるわけであります。特に共和党から民主党に八年ぶりに政策交代したこともあり、オバマ政権外交政策ブッシュ政権とは大きく異なる方向へかじを切りそうであります。  このような中、オバマ政権外交安全保障政策がきちんと決まらない段階で、早い段階日本重視の方針を打ち出し、クリントン国務長官最初訪問地として二月に日本を訪問し、グアム協定に合意しました。ブッシュ政権のときに決まりましたロードマップオバマ政権が確認したということは画期的なことであると思うわけであります。  現在、オバマ政権では本格的な安全保障政策が練り直されており、その結果は来年初めに出される四年に一度の国防計画見直し、クワドレニアル・ディフェンス・レビュー、QDR二〇一〇で示される予定であります。QDRは現在五つのグループに分かれ、それぞれのイシューで検討がなされ、その中に世界規模での米軍体制見直しチームがあり、再検討がなされていると聞いております。  しかしながら、そのチームの中では沖縄グアムに関しては例外視されていると考えられます。今回の二月十七日のグアム協定並びに二月二十四日の日米首脳会談で、在沖縄海兵隊グアム移転に係る協定実施を含む在日米軍再編ロードマップに基づいて着実に実施していく旨を確認し、しかもゲーツ国防長官も既に一月二十七日の上院下院軍事委員会公聴会グアム沖縄再編計画を完結させる必要があると述べているからであります。  さて、次に協定の持つ意義を述べたいと思います。  ロードマップに合意する際のポイントは、抑止力維持地元からの負担軽減のバランスをいかに保つかが問われたものでありました。まず、沖縄からの負担軽減であります。私はこれを沖縄負担のプラス、それから沖縄からの負担のマイナスのバランスシートという観点から述べたいと思います。  第一に、沖縄負担軽減の最大のものは、何といいましても、在沖海兵隊の一部の要員約八千人とその家族約九千人の計一万七千人のグアムへの移転であります。  これだけの人数の海兵隊関係者グアムに行くわけですから、目に見える負担軽減が非常に大きいわけであります。このことにより、犯罪率が低下し、海兵隊のプレゼンスが低下することによる心理的解放感沖縄県民に出てくると思われます。  一方、これら部隊及び家族グアム移転のデメリットをあえて申し上げますならば、これだけの隊員と家族がいなくなるわけですから、地元経済的な低減があるかもしれません。  第二に、普天間飛行場の移転及び返還であります。  これは、宜野湾市の人口密集地である約二五%を占める普天間基地が返還されるわけでありますから、最大の危険性の除去がなされるわけで、四月八日の伊波宜野湾市長が衆議院外交委員会参考人質疑応答の際に、普天間基地について待ったなしの撤退を求めるとおっしゃいましたように、宜野湾市を始めとする沖縄の悲願が達成されることにもなるわけであります。  普天間基地には、ヘリ基地機能、それから空中給油の機能、緊急時の代替基地の機能の三つの機能があるわけですが、このうち、ヘリ基地機能、緊急時の代替基地機能は、大浦湾からキャンプ・シュワブ南岸部地域の代替施設に移転されます。また、空中給油機の機能は岩国飛行場に拠点を移し、訓練及び運用を鹿屋基地及びグアムに定期的にローテーションすることで負担減となります。  一方、普天間飛行場の代替基地が移設される名護市では、かえって危険が増え騒音が増えるなどの負担が増えることになるわけでありますが、しかし、それに伴いまして、名護市では代替施設の工場建設の経済的効果が期待でき、周辺のインフラが整備され、交付金が支給されるというプラスもあるわけであります。さらに、海兵隊員が増えることから、市の活性化につながる可能性も否定できないわけであります。  第三に、普天間が辺野古へ移転した後に、嘉手納飛行場以南の施設及び区域の統合並びに土地の返還がなされます。それらを合わせますと、那覇市の面積の四分の一に相当する土地が沖縄に返ってきます。返還後には、観光産業や商業用地などの跡地利用が非常に期待でき、返還による経済効果は、平成十八年の沖縄県の調査によりますと、約八千七百億円になると算定されています。  以上のように、負担のプラスと負担のマイナスのバランスシート沖縄全体で考えますならば、負担のマイナス、負担軽減が大きいわけであります。  次に、抑止力維持という観点から申し上げます。これは、なぜ実戦部隊の第三一海兵遠征隊、三一MEUが残されたかということに対する答えになります。  三一MEUの想定される任務は、朝鮮半島危機、台湾海峡への抑止と初動対応、対テロ作戦の実施、災害救助、民間人救出作戦などが考えられるわけであります。三一MEUは、最大四隻の強襲揚陸艦で出動し、歩兵大隊、砲兵大隊混成の航空部隊及びサポートグループなどのエレメントで構成されるわけですが、各エレメントは平時は一つの駐屯地に集結しているわけではなく、緊急時になりましたら一つ部隊として集結し出動いたします。したがいまして、それぞれのエレメントが離れた場合、集結するまでに時間が掛かり、即応性が低下してしまいます。また、特にヘリ部隊の役割が大きく、歩兵とヘリを分散化することは困難になるわけであります。  ロードマップが作成される過程での在日米軍再編協議では、三一MEUを本土や国外に移設したケースなど、いろんなシミュレーションがなされておりました。そこで出てきた最大のかぎは、三一MEUが紛争地域まで展開する際の所要時間でありました。三一MEUは、沖縄から台湾、朝鮮海峡へは一日で展開できます。ところが、日本本土の富士へ例えば移動した場合には、朝鮮半島には二日、台湾には三日掛かります。北海道では朝鮮半島へは二日、台湾へは四日となるわけであります。朝鮮半島有事や台湾海峡有事の際の邦人救出作戦、他国の軍隊が宮古、石垣、尖閣などの先島諸島に上陸を試みようとする場合には、一日、二日の遅れが致命傷となるわけであります。  したがいまして、三一MEUが県外移転された場合抑止効果は著しく低下することになるため、三一MEUは日本抑止力維持のために沖縄に駐留する必要があるわけであります。  以上のことからも、沖縄からの負担軽減をするために、いかにスムーズに海兵隊の一部及びその家族グアム移転するかということが焦点になるわけであります。そのためにグアム協定では、沖縄からの負担軽減を行う際に日本政府海兵隊グアム移転の一部の資金を提供するという確認を行っているわけであります。  ここで、改めて私の個人的見解から強調しておきたいのは、沖縄負担軽減をするために日本米国側に働きかけてこの移転プランが実現したものであり、そのための費用の一部の提供を道義的な責任に基づいて日本から申し出たものと理解しております。  このロードマップが決まりました当時、私は海兵隊司令部でグッドマン海兵隊司令官にインタビューをしました。グッドマン海兵司令官は、抑止力維持しながら大幅な在沖縄海兵隊を削減せよとの難題を命じられて随分頭をひねった結果、実戦部隊沖縄に残すことにより抑止力維持し、モビリティーのある司令部機能をグアム移転させることにより沖縄地元からの負担軽減をするように決断したという具合に述べておりました。  さらに、五月七日、つい先日なんですが、アメリカ国防総省議会に提出しました二〇一〇年会計年度予算案の中で、沖縄駐留の海兵隊グアム移転の事業費として約三億七千万ドルを計上したわけであります。これで、今後移転に向けた動きが更に活発化することが一層予想されるわけであります。  その際に、グアム協定では第四条で日本の資金拠出に関し適正使用を行い、第五条ではグアムに建設する施設に関してアメリカ企業と同等に日本企業も入札に参加できる点が定められました。これらの事業はアメリカの国内法に基づいて行われますが、その際に、国籍等にかかわらず差別されないということがこの協定で確保された点が非常に大きな点であると考えられるわけであります。  また、在沖海兵隊グアム移転の経費総額は見積額百二億七千万ドルで、このうち日本は六十億九千万ドル、その中で財政支出で整備するのは上限二十八億ドルで負担をすると明記され、この上限二十八億ドルが明記されたため、アメリカ側はそれ以上の要求を日本に求めることができなくなったわけであります。  最後に、私が強調したいのは、グアム協定承認日本アメリカとの信頼性という面からの必要性であり、またそれが行われた後はその履行が重要であるということを申し上げたいと思います。  我が国を取り巻く現在の情勢は、先般のミサイル発射問題、それから年間二けたの軍事費の伸びを続け、遠洋航海能力の拡大を目指し海軍力増強を図る中国などの軍事的な脅威が存在するわけであります。  マイケル・マンデルバームSAIS教授によりますと、同盟関係には捨てられる恐怖と巻き込まれる恐怖があると言っているわけであります。オバマ政権がスタートしてから米中接近が高らかにうたわれるようになり、日本はつとに米国から捨てられる恐怖にさいなまされている状況に置かれていると思われます。  特に尖閣列島をめぐり、中国は昨年十二月八日に海洋調査船二隻を尖閣列島から南方六キロの日本領海内を航行させました。それに対しまして、その直後に行われた日中首脳会談で温家宝首相は麻生総理に、尖閣列島は中国固有の領土だという主張をしております。この事態に日本政府アメリカ政府に対して、尖閣列島が日米安保の適用地域となるかどうかの確認を求めましたが、アメリカ政府はいったんは領土問題には関与せずと回答していたわけであります。つまり、日米同盟は希薄化していたわけであります。  同盟が希薄化する理由の一つに、普天間基地代替施設への移転問題があるとリチャード・ローレス元国防副次官は言っておりました。ローレスは、日本政府アメリカ政府の最優先課題である在日米軍再編協議の履行に本気で取り組まずその重要性を理解していないため、日米同盟はマージナライズ化、つまり周縁化していると言っていたわけであります。  その後、二月十七日のグアム協定の調印に続き、二月二十四日の日米首脳会談ロードマップの着実な実施という真摯な態度を日本政府アメリカ政府に示した後、尖閣列島をめぐる問題に対して、三月四日になりアメリカ政府は、尖閣列島は日本の施政下にあり日米安保が適用されると、日米安保に対するリアシュア、再確認を行ったわけであります。  このように、オバマ政権ブッシュ政権と同様にロードマップの実現は重要であると考えているわけであります。したがいまして、グアム協定承認及びその着実な履行が必要であり、オバマ政権の下でのロードマップの再交渉はあり得ないと思います。仮に日本側から将来仕切り直しを持ちかけたとしても、アメリカはそれに応じるかどうか、甚だ疑問に感じるところであります。また、そのようなことを持ちかけた場合、日米同盟の信憑性を疑われることになり、結果的に日本軽視、そして抑止力の低下に結び付くのではないでしょうか。引き続き日本が矛、アメリカが盾という日米安保の原則を維持するためにも、グアム協定承認し一刻も早くロードマップの履行を日本は果たさなければ、日米同盟は希薄化へ向かう可能性があることを申し上げたいと思います。  また、それと同時に、沖縄にとってもこれが最大の負担軽減のチャンスであり、これを逃せば千載一遇のチャンスは二度と訪れないかもしれないということを述べまして、私の参考人としての意見を終わらせていただきたいと思います。  どうも御清聴ありがとうございました。
  9. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ありがとうございました。  次に、村田参考人にお願いいたします。村田参考人
  10. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) 村田でございます。  既に、ただいま川上参考人から非常に詳細な意見の陳述がございまして、私もほぼ同意見でございますけれども、簡単に私見を申し述べたいというふうに思います。  まず、先ほどの川上先生のお話にもありましたように、このオバマ政権発足アメリカ外交の変化の意味ということでございますけれども、オバマ政権あるいはオバマ大統領の登場というのは、共和党八年から民主党に政権が替わった、あるいはアメリカの歴史上初のアフロアメリカンの大統領が登場した、もちろんそういう意味もあるわけですけれども、私はもっと大きな国際システム上の変化に根差したものだろうというふうに思います。  アメリカのイラク、そしてアフガニスタンでの軍事行動によって、アメリカは軍事的にかなりの程度消耗をしている。さらには、グローバルな金融危機の中でアメリカ経済力に大きな陰りが見えるという中で、アメリカの国力が後退の局面に入っている。アメリカの学者の中にはこれを地政学的後退、ジオポリティカルセットバックというふうに言う者もありますけれども、そういうアメリカの国力の後退。さらに、アメリカの論者の中には、かつての米ソ二極から冷戦後のアメリカ一極になり、そのアメリカの力が緩んで、今やもう極のない世界、ノンポーラーの世界に世界は移りつつあるというふうに論ずる者もあります。あるいは、アメリカの時代という大きな時代が終わって、ポストアメリカンの時代が始まりつつあるというふうに論ずる者もあります。  そういう大きな国際システムの変動を機に、オバマという、より多国間協調を重視し、アメリカの限られた国力とリソースを外交関係を活用しながら展開しようとするリーダーが登場したということであろうと思います。  そして、オバマ大統領外交と内政両面で変化ということを強調していることはよく知られるところであります。しかしながら、オバマ外交を考えるときに、実は、我が国を取り巻くアジア太平洋地域では、変化よりもむしろ継続の側面の方がはるかに強いということが指摘できようかと思います。それは、なぜならば、ブッシュ外交においてこのアジア太平洋での政策は数少ない例外的な成功というふうに目されているからであります。そういう意味で、ブッシュ外交からオバマ外交というのは、実はアジア太平洋においては継続の側面というのが非常に高いものであるということが言えようと思います。  さらに、とりわけこの対日政策について言うならば、継続の側面は更に強いと言ってよいと思います。既に、先生方も御案内のように、リチャード・アーミテージ元国務副長官と、そしてハーバード大学のジョセフ・ナイ教授を共同議長にして、過去二度にわたってアーミテージ・ナイ・レポートという日米同盟強化に関する報告書がアメリカで取りまとめられているわけでして、ここ数年間、対日政策に関して言うならば、アメリカははっきりとバイパーティザンの、超党派の姿勢で臨んできていて、共和党と民主党の政権の変化ということは対日政策の大きな路線に変化をもたらすものではないというふうに思います。  さらに、人事のお話が先ほどもございましたけれども、国防省でこの東アジア太平洋地域を担当するグレッグソン将軍の国防次官補の承認が恐らく昨日ですか、上院で認められたと思いますけれども、グレッグソン氏は海兵隊の司令官として沖縄に深く関与した人物ですし、そして、国務省で東アジア太平洋地域の国務次官補に指名を受けているカート・キャンベル氏もクリントン政権で国防次官補代理としてアジア太平洋政策に深くかかわった人であります。つまり、この対日政策、さらに、この沖縄の問題に関して言うならば、ブッシュからオバマに継続しているだけではなくて、そもそもクリントン元政権から一貫して過去十何年間かの政策と人事の継続というものが見て取れるということだろうと思います。  したがいまして、私が申し上げたいことは、日本アメリカ外交を考えるときに、オバマの登場によるドラスチックな変化というものと、そして政策の継続というもの、この両方を我々は非常に慎重に考えなければならないのではないか。そして、オバマ外交の変化というのは日本にとっても大変大きなチャンスをもたらすわけでありまして、例えば地球環境問題についてアメリカがブッシュ前政権のころと比べて格段に熱心になっている、これは日本にとって非常に大きなチャンスであります。あるいは、エネルギー問題についてもアメリカは非常に国際協調的になっているということも、日米だけではなくて、日米中を巻き込んだ形で我々がどれだけリーダーシップを取れるかというチャンスであります。  さらに、御案内のように、去る四月、まさに北朝鮮が彼らが人工衛星と称するミサイルの発射実験を行ったときには、オバマ大統領はプラハで核のない世界についての演説を行ったわけです。アメリカが核保有国として、そして唯一の核を使用した国として核廃絶についての道義的責任があるというふうにアメリカ大統領が高らかと語ったわけです。このことは、戦後一貫して唯一の被爆国として核廃絶を唱えてきた日本外交の姿勢にむしろアメリカ外交が歩み寄ってきたということであって、日本外交にとって非常に大きなチャンスであります。  こういうグローバルなイシューでアメリカの変化を積極的に日本が受け入れて、そしてアメリカの信頼できるパートナーとしてグローバルな課題で日米が協力していくためにも、日米関係で継続している、そして繰り越されている案件について、我々がアメリカにとって重要かつ信頼できるパートナーであるということを示すことが、我々がグローバルな課題での責任を果たす意味でも非常に重要なことであろうというふうに思うわけです。  去る二月にクリントン国務長官が来日をして、そしてここで審議をされておりますところの協定がまとめられたわけでございますけれども、これが国際条約であるのか、あるいはいかなる法的な意味合いを持つ協定であるのかという法律的な解釈はともかく、先ほど川上参考人お話しになりましたように、大統領就任百日目で六九%の高い支持率を誇る大統領の最も有力な国務長官が最初の訪問先として日本を選び、そこで取りまとめた協定であって、この政治的な意義というのは非常に大きいものであろうというふうに思います。  法的拘束力いかんにかかわらず、この政治的約束というものを軽視することはオバマ政権にとって非常に難しいことであろうというふうに思いますし、そういうオバマ政権の一連の対日重視の姿勢というものを、彼らがこの対日重視の姿勢に疲れ果ててしまう前に我々がこのチャンスを積極的に生かす必要があるのではなかろうかというふうに思うところでございます。  さて、より具体的にグアム移転協定意義ということについて、これはもう既に川上参考人が非常に詳細にお話しになりましたので改めて私が付け加えることはないわけですけれども、一方でアメリカのグローバルな戦略の変化に対応してこのアジア太平洋地域での米軍の機動力と柔軟性をいかに確保し高めるかということと、そして他方では沖縄に集中する米軍基地負担軽減の問題という二つの要素があることは言うまでもありません。  さらには、この海兵隊移転の後に私どもが強く願うところの普天間移転でも、先ほどこれは佐藤参考人お話にもありましたけれども、V字形の滑走路の設置について、地元の住民の方々が被られる騒音のような被害の問題と、そして滑走路を沖合に出すことによって生ずるジュゴンの被害という、こういう問題を我々は抱えているわけですけれども。  私がここで申し上げたいことは、国会議員の先生方にまさにこれは釈迦に説法でございますけれども、地元の住民の希望、騒音を軽減したい、あるいは環境を維持したい、これは全く、何と申しましょうか、もっともな希望なわけです。しかしながら、希望をそのまま政治の場に持ち込むことは必ずしも政治家の仕事ではないと。有権者や住民の希望をそのまま伝えるだけでは、これは世論調査会社がその任を果たすのであって、政治家の使命は、住民や有権者の希望を政治的に利用可能な資源との関係でどのように優先順位を立て、どのように実施するかの戦略を立てるのが政治家の使命であって、有権者の希望そのものを繰り返し伝えるのであれば、我々は間接民主制で国会議員を持っている意味はないということになるかと思います。  願望、希望と利用可能な資源との間の組合せをどう考えるか。今、改めてビスマルクを持ち出すまでもなく、政治というのは可能性の芸術なのであって、そのような可能性をどう考えるかということだと思います。  一方で抑止力維持、そして他方では住民の負担軽減、この二つの達成しなければならない目標の中で、我々が持っている資源との関係でどのようなバランスを取るのか、ジュゴン、環境の保全という問題と住民の騒音の軽減というこの二つの課題の中で、このバランスをどう取りながら我々の資源をマックスに利用していくかということを考えなければならないというので、だれもが一〇〇%納得できるような答えを実施することはできないのであって、そういう様々な目標の間でのバランスをどう取っていくかというのが政治に求められている課題ではないかというふうに強く考えるところでございます。  さらに、先ほど川上参考人がこれも御指摘になりましたように、このグアム移転協定の問題というのはこれだけを取り出して単独に考えることはできないのでありまして、中国の軍事近代化や増強の問題、それから北朝鮮によって繰り返される軍事的な挑発行為の問題、こういう日本を取り巻く戦略環境の変化というものを我々がどうとらえるかという戦略認識の問題であろうと思います。  更に言いますと、アメリカが冷戦後、とりわけここ数年来、日本、そしてイギリス、そしてこの移転の対象となっておりますところのグアム、それからディエゴガルシア、これを海外における戦略的な非常に重要な拠点というふうに考えているということは、我が国にとって、アメリカ日本を非常に重要な戦略的拠点と考えていることは、ある意味負担にもつながりますけれども、同時に千載一遇のチャンスでもあって、我が国の経済力が相対的に低下し少子高齢化が進む中で我が国が依然としてアメリカの重要な戦略的パートナーであるという立場を維持するということは、大変に重要なことではなかろうかというふうに存じます。  もちろん、この沖縄における更なる負担の軽減措置というのは様々な形で検討されるべきことでありましょうし、日本政府とそして地元との円滑な意見交換というものをより一層進める必要があるというふうに思います。  しかしながら、このグアム移転協定、更に申しますならば在日米軍再編の問題というのは、一九九六年でしたか、橋本・クリントンの日米安保の共同宣言以降、言うならば十数年間論じられてきたことであって、アメリカからすれば、政治的約束を履行してこなかったのは日本側であるという見方もこれは十分あり得ることだろうというふうに思います。そして、アメリカはそういう政治的継続の中でこの案件を考えているのだろうというふうに推察することはできます。  ここで日本が政治的責任を果たし、アメリカにとって信頼できるパートナーであるという姿勢を示すことで、冒頭申し上げましたように、地球環境、エネルギー、核廃絶、そして、今豚インフルエンザで大変大きな問題になっておりますけれども、世界的な伝染性疾患、こういったグローバルな課題に日本が責任ある国際社会の一員としてより一層大きな役割を果たす上でも、ここで日米の協力、連帯というものを示すということが大変重要な日本外交の課題であって、本当に大きなパッケージというのは、グアム移転普天間とその他基地の返還ということではなくて、グローバルな国際イシューで日米が協力するために、この日米の二国間の案件でどれだけ我々が信頼できるパートナーであるかという姿勢を示すというのが本当に大きな日米の戦略的パッケージではないかというふうに存じます。  以上でございます。
  11. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ありがとうございました。  次に、新崎参考人にお願いいたします。新崎参考人
  12. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 新崎盛暉です。  限られた時間ですので、私は二点に絞ってお話をさせていただきたいと思います。一つは、なぜ今グアム移転協定なのかということです。もう一つは、先ほどから盛んにそれが実現できるかのように言われている負担軽減というものの実態が沖縄においてどのような現れ方をしているのかというこの二点です。  まず第一点ですけれども、なぜ今グアム移転協定というのが必要になったのか、これが最も私などにとっては理解し難い点です。こういう協定が必要だということは、あらかじめ国民、とりわけ直接関連があると言われている沖縄県民に告知され、説明されてきたわけではありません。この協定締結が準備されているというのを外務省が突然発表したのは一月末です。そして、二月十七日には来日したクリントン国務長官との間で締結された。その具体的内容が沖縄県知事に通告されたのは締結の直前、多分前日だったと思いますけれども、そういうことです。  この協定の中身はいわゆるロードマップ沖縄関連部分を条約化したものですけれども、既に二年前、〇七年の五月に駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法というのが制定されていて、米軍再編関係する市町村に出来高払で交付金を支給するということと、それからもう一つは、米国領に米軍移転するための必要経費を支出する手続等は定められているわけです。したがって、条約化されなければ日米合意が実施できないわけではないわけです。  にもかかわらず、なぜ今急遽このような協定が結ばれなければならなかったのか。強いてその理由を探せば、強いてというのは、これは特にケビン・メア在沖米総領事、彼はやがて国務省の日本部長に昇格するとも言われていますけれども、そういう人たちの意識的な言動からその理由を探せば、私は三点になるだろうと思っています。  その第一点は、米軍再編、とりわけ名護市辺野古の新基地建設に強く反対している沖縄県民に対して、反対しても無駄だとあきらめさせるために日米両政府米軍再編への強いメッセージを送ることにあった。  周知のように、これは佐藤さんも触れたと思いますが、普天間代替施設という名目で辺野古に新基地が建設されることに対して、沖縄の県民は一貫して強く反対してきました。これは、現地住民の反対運動や、これを支持するあらゆる世論調査の数字、それから昨年七月の新基地県外移設を求める県議会決議等にはっきり示されていることです。今回のこの協定締結に関しても、県議会締結反対の意見書を採択して、既に政府に伝えてあるだろうと思います。  それから第二番目は、政権交代が想定される政治的状況になってきたために条約化によって次期政権にも縛りを掛けようとした、これも一つ考えられる点です。  それから第三番目には、アメリカの財政危機が深刻化し、軍事費も削減傾向にある中で、議会グアム基地の整備強化のための財政支出を認めさせるてことして日本の資金供与の約束を利用しようというねらいもあるだろう。こういうような三点ぐらいのことが考えられます。  ところが、これは、国会審議の中で政府は、アメリカ政府にも確認済みの両政府の見解だとして、この協定の法的拘束力を強調する先ほどのメア総領事などの見解を明確に否定して、この協定は、辺野古新基地建設米国予算措置等の法的義務を課すものではなく、また、環境影響評価法や公有水面埋立法などの国内法に対して法的優位性を持つものでもないということを言っています。つまり、アメリカ政府も拘束しないし、日本政府も拘束しない。そうだとすれば、この協定締結は、米軍再編、とりわけ辺野古新基地建設に反対する沖縄県民への日米両政府の威嚇的パフォーマンス以外の意味は持ち得ないだろうと私は思っています。  それから、この二、三日連続して琉球新報という地元紙に「翻弄されるグアム」というグアムのルポが載っています。基地が移動されるところですけれども、ここは沖縄の人口でも十分の一で、これに本当に一万数千の米軍家族が来たら人口の一割以上が増えてくるというようなそういうところで、この協定、それに対してアメリカ政府からきちんとした情報がない。これに対して、一方で事がどんどん進んでいく。こういう協定が結ばれたことに対して非常にショックを受けているというニュースが報道されていました。少なくとも、グアムの住民に対する目配りなどというのはだれもしていないということだろうと思います。  それからもう一つの、急いで負担軽減というものについて触れておきたいと思います。  負担軽減、これは〇五年の十月に発表された日米合意、すなわち「日米同盟 未来のための変革と再編」も、あるいはその翌年のロードマップも、そして今回のグアム移転協定も、沖縄県を含む地域社会の負担軽減というのを強調しているわけです。そして、負担が軽減されるんだからグアムへ資金提供するのは、アメリカ側から言えば当然ではないか、日本側から言えばやむを得ないんではないかということで、沖縄が利用されています。  ただ、このロードマップが発表されて以降、例えばロードマップでどういうことが書かれていたか。嘉手納基地について言いますと、嘉手納基地の所属機が本土の数か所の自衛隊基地で訓練移転を行うなどということが明らかにされています。これは軍事的に言えば自衛隊との共同訓練、日米の軍事的一体化の布石にすぎないのですが、地元に対しては、嘉手納町長宮城篤実氏などのマスコミに対する発言によれば、これは地元軽減の一環であるというふうに政府側からも説明されていた、そしてそのように期待していた、ところが、嘉手納基地から確かに移転訓練に出かけて所属機が留守になっている間に何が起こっているかというと、米本国からステルス戦闘機等の最新鋭機が多数飛来して、基地周辺に激しい騒音をまき散らしながら訓練を展開している、これで負担軽減なのか、負担増大ではないかというのが嘉手納町長以下町民の訴えるところです。  この外来機の増大という事情は返還が約束されている普天間においても同じですけれども、これについては伊波洋一宜野湾市長が、直接本人が一月ほど前の衆議院で具体的に述べておられますので、私は省略したいと思いますけれども。  そのほかで言いましても、例えばホワイトビーチ、ここへの原潜の寄港回数がこの三年間、負担軽減をうたうロードマップが発表されてから急激に増加しています。それで、放射能漏れ等のニュースも流れています。  ロードマップの発表から三年たって、沖縄基地被害あるいは基地負担というのは、軽減どころか明らかに増大していると言わなければいけないと思います。  それからまた、ロードマップは、日米双方が、在沖米軍基地を統合して嘉手納以南の相当規模の土地の返還を可能にするんだということを言っています。それで、先ほどの発言の中でも、それが負担軽減だというようなことも言われていましたけれども、ロードマップではこのための詳細な計画を〇七年の三月までに作成すると約束をしています。ただ、それからもう二年もたっているのに、この計画が作成されたということは報道もされていないと思います。  政府が具体的な負担軽減を重視しているのであれば、自ら約束した詳細な計画の作成とかその公表こそが沖縄県民を含む国民への誠実な対応であって、グアム移転協定などよりも先にそういうことが約束履行として先行されるべきではないかと私は思います。  それから、今回の国会審議の過程で明らかにされたことの一つは、グアム移転するという海兵隊やその家族の数が実数ではなくて定数であって、その間には大きな開きがあるということが明らかになりました。  実は、この数字のからくりについては、私が〇七年の四月十日に、先ほどの駐留軍の再編の円滑な実施に関する特別措置法に関連して衆議院の安全保障委員会参考人として呼ばれたときに指摘しておいたことです。  私の指摘は、私が先見の明があったとかそういうことでは全くないわけで、ロードマップが発表された〇六年の五月の時点地元紙の沖縄タイムスが取材によって明らかにした。在沖米海兵隊員はその時点で一万二千五百三十人である、その家族は七千九百十人であるという実数を、取材して米軍基地側に確認をして報道しています。一万二千五百三十人から八千人いなくなるとすれば、確かに三分の二はいなくなるわけですから、米海兵隊は三分の一になって、なぜか家族はマイナスになる、七千九百人しかいないのに九千人いなくなるということになっている。  こういう不思議な実態が三年前から沖縄では常識として共有されているにもかかわらず、この間、現在に至るまで八千人とか九千人とかいう机上の数字が負担軽減という言葉とともに独り歩きしているというのは驚くほかないと言わざるを得ません。  最後に、辺野古の新基地建設についてです。  辺野古に建設が予定されている新基地は、普天間代替施設と呼ばれています。しかし、徐々に明らかになってきた新基地の全容というのは、これは佐藤さんもちょっと触れましたので繰り返しませんが、六十数年前に建設され、すっかり老朽化した普天間基地、この普天間基地というのは、沖縄戦の最中に日本を爆撃するために造られた基地です、そもそもは。それとは似ても似つかない新機能を備えた最新鋭基地が今辺野古で建設されようとしているわけです。  それから、これは去る四月八日の衆議院の外務委員会で伊波洋一市長が指摘していますけれども、アメリカ側の資料によれば、普天間所属海兵隊のほとんどはグアム移転することが予定されている。にもかかわらず、なぜ普天間代替施設という名目で最新鋭基地沖縄の辺野古に建設されなければいけないのか。説得力のある説明は一切ないと思います。  地元紙である琉球新報の社説、これは四月十五日、多分衆議院でこの協定承認された翌日だと思いますけれども、こんなことも書いてあります。再編交渉の過程で、米側が在沖米海兵隊を北海道や北部九州に移転してもよいと提案したが、日本政府はまともに取り合わなかった、これは交渉当事者が認める事実だというようなことを書いてあります。  終わりに、私が強調しておきたいことは、日本が国際問題を処するに対して、軍事戦略、日米の軍事同盟とかいうものを重視するのではなくて、平和外交に徹することによって将来ビジョンを構想していただきたい、そういうことを何よりも希望したいということです。もし、それができないなら、負担も均等に軍事的負担を必要だと言う人たちが担うべきです。沖縄に七五%、全国の〇・六%しか面積がない沖縄に集中させている、これはおかしい。そもそも米海兵隊というのは、一九五〇年代の後半に政治的配慮によって本土から沖縄へ移駐してきたものです。これ以上、言わば構造的沖縄差別の上に成り立つ日米安保体制を維持し続けるべきではないのではないかというのが私の意見です。  以上で終わります。
  13. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 広中和歌子

    広中和歌子君 専門家ではございませんので、非常に素朴な質問をさせていただきます。  最初は、お一人に一分以内で答えていただきたいんですが、一九九五年にSACO最終報告で普天間の返還が決まったと。私は現地に参りましたけれども、宜野湾市、人口九万に膨れ上がっています。しかも、そのど真ん中に基地がございますから、人々がその周辺にひしめいて暮らしている。そういう中で返還することが非常にもう喫緊の課題である。にもかかわらず、これだけ時間が掛かった理由。  それから、次の協定がありますよね、二〇〇六年の今度はロードマップ。そのときに米軍再編沖縄基地の軽減、そしてグアムへの移転と、そういうことが話し合われたわけですけれども、そうした中で、どうして普天間の返還、代替地なしでの普天間の返還を組み込まなかったのか。そして、その組み込む条件として、今このグアム協定で決められようとしている移転費用の日本側負担、なぜそれを絡めなかったのか。それは日本外交上の失敗ではないかと、そういうふうに私は感じるんですけれども、それぞれ御意見をお伺いいたします。
  15. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 時間がございませんのでまとめて大きく答えますと、全般的な話として、日本アメリカとの関係維持するために何かしらのコストを負担しなければいけない、それがどういう形で日本が払うかということになると、それは沖縄に集中するのであると、そうすれば全国的な争点にならない。さらに、それが沖縄に対してはほかで財政的な手当てをしているでしょうと、基地を引き受けて、その代わりに財政的な手当てをしているのだからそれでいいはずであるというかのごとき、そういう論調あるいはそういう意見がこの十五年、特にSACO後目立っているのではないかと考えます。  ですので、では今回のグアム移転協定に関しても、全国紙の報道は本当に小さいものでありまして、本当に非常に大きな問題だと思うんですが関心がない。何でかといえば、これは遠い沖縄で、さらに、金でもう満足しているでしょうという、そういう構造になってしまったからだと私は思っております。  大まかな答えですが、以上です。
  16. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず、議員からの御質問の、なぜ代替基地なしの返還はなかったのかというところから私の私見をお答えいたしますと、私、先ほど述べさせていただきましたように、普天間基地というのはヘリ基地機能、それから緊急時の代替基地機能、それから空中基地機能というのがございますけれども、このうちのヘリ基地機能それから緊急時の特に代替基地機能、これがどうしても必要でありましたので、こういうことはまず駄目になったというのがまず一点目でございます。  それから、二点目なんですが、SACOに時間が掛かった理由、これは私の私見なんでございますが、日本政府内でのやはり確固たる意思の欠如、それから二番目というのは、やはり沖縄での地元の方々等の反対運動。  それから、三番目には、代替基地そのものの技術的な問題、この三点があったのではないかと思います。  以上です。
  17. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) これも川上参考人が言われたこととほぼ同意見でございますけれども、一つは、この問題が日米の二国間の通常の政府交渉と違って、やっぱり沖縄という地元の意向、地元の立場というものを十分考慮しないといけないがために、二者間のゲームではなくて三者間のゲームになっているということが甚だ話を複雑なものにする一つの大きな理由であろうというふうに存じます。  それから、先生が御指摘の九五年あるいは九六年から考えましても、この十数年間の日本の国内政治が必ずしも安定的でなかったということがやはりこの種の外交交渉を進める上である種のハンディになったのではないかというふうに思います。  それから、既にあるものを移すという話でございますから、当然これはアメリカ側にも組織間の既得権益の調整というものがあって、アメリカ政府の中での利害の食い違いといったものもやはりあったのではないかというふうに思います。  それから、さらに、この十数年間、日本を取り巻く戦略環境が大きく変わったのであって、その九五年の段階で想定されたことが果たしてこの二〇〇八年の段階でも同じように言えるかというと、戦略環境の変化に応じてやはり微修正を繰り返していかなければならなかったということが合意、話合いがなかなか進まなかった大きな理由ではないかと存じます。
  18. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 普天間の返還の問題は、九六年ですけれども、これはなぜ組み込まれなかったかというのは、日本政府にその意思がなかったというか、当初はアメリカとしては返還の代償を求めたということ、それがこの間、非常に地元の意向とかそういうので揺れながら、どこまでが獲得できるかという、そういう駆け引きの中でいつまでも残ってきている、私はそのように理解しています。
  19. 広中和歌子

    広中和歌子君 そのように、事実上、なかなか代替地が決まらないというようなことであれば、二〇〇五年の新たな交渉のときに当然何とか普天間代替地なしの移転グアム移転に組み込むべきだと、そのような意見を、そういう感じを持つんですけれども、佐藤参考人、いかがですか。
  20. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 要するに、日本政府がそういう形で米国に対して交渉するということがどうもできない。例えば、前の稲嶺知事は、この当時のSACO案と言われる沖合二キロのところに大きな空港を造る、これに関しては十五年間軍民共用で使った後は米軍は退いて、あとは民間空港にするという案をずっと言っておられました。この案は二〇〇五年でほごにされるわけですが、この軍民共用空港、十五年使用期限ということを日本政府アメリカに対して本当に掛け合っているのかといいますと、これはアメリカはそもそも初めからそれは相手にしていないわけですから、それに対して日本政府アメリカに対して説得していたのかといえば、していないわけです。ですから、自分の側の、要するに自民党の推薦を受けた基地建設に賛成の側の知事の政策アメリカに対して実現しようと本気で交渉したことはないのではないか。  とすると、これはとにかくもう言われるままにやることが日本の利益であるというような発想でこれまで来ているのではないか。それが、そのコストが沖縄だったらばそれは全国的には広がらないと、そういう計算なのであろうと自分は考えます。
  21. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカ側のこれからの対応についてお述べになりましたけれども、佐藤参考人にお伺いいたします。  仮に、アメリカで、この協定と言うんでしょうか、これは条約と言うか協定と言うのか、それが上院で可決されない場合、三分の二か二分の一か分かりませんけれども、そして予算が下りない場合に、そうした場合にはこの我が国の立場というんでしょうか、グアム移転、そしてコミットした負担ですよね、そういうものはどういうふうになるとお考えですか。
  22. 佐藤学

    参考人佐藤学君) もしも議会が一切関与しない、議会の議決を経ないという形で終始するならば、これはアメリカの側には盛り込まれたことを遵守するという、そういう拘束力は発生しません。ですので、オバマ政府大統領がどのように言ったところで、議会予算を付けない、議会がそれを執行しない限りはできないわけですので、ですから、オバマ大統領があるいはオバマ政権が約束することの裏付けはないということになります。  それに対して、では日本はどう考えるべきなのか。これは、こちらの方はもちろん国会で議決するわけですので非常に大きな拘束力を持つわけですが、しかし非常に片務的になってしまう。こちらの方は議会が議決している、しかし向こうの方は議会は議決しないということは、向こうの方では拘束力があるというふうには考えていないということは、これは動かせない、必ず遵守しなきゃいけないという性質のものではないと私は思います。そもそも余りにも片務的であって、これでは対等の約束事と私は言えないと思います。  また、八条のこと、これから素直に読めば、アメリカの側しか変更に関する発議はできないとしか読めないんですね。これも同じことを日本側からも発議できるようなことが盛り込まれていなければ、これも片務的であり、条約として対等なものにならないのではないかと私は思います。ですので、これが将来的に日本政府の対応を縛り続けるということではないと自分は考えております。
  23. 広中和歌子

    広中和歌子君 京都議定書におきましても、アメリカは京都であの議定書にサインをしたんですけれども、上院で可決されなかったということがあるわけです。  今回、今の質問と同じことを村田参考人にお伺いいたしますけれども、もしそのような、つまりこのグアム協定グアム移転に関して、アメリカの方針、オバマ大統領の方針はもとより、議会そのものが変化した場合にはどのようなことが考えられるか、教えていただければと。
  24. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) ありがとうございます。  先ほど佐藤参考人も御指摘になりましたように、予算の裏付けというのはこれは議会しかできないことであると、言うまでもないことであります。  しかし、広中先生が今御指摘になりました京都議定書の場合は、クリントン政権が署名をした段階で、上院では反対多数で、そもそも批准できないことはあらかじめ分かっていたんですね。それを、言うならばある種の政治的なパフォーマンスとしてクリントン政権はあの議定書に署名をしたわけでして、あれが議会で葬り去られることは予想されたことであったと。  今回のグアム移転については、もちろんアメリカ側は国際条約で法的義務を負うものではないわけですから、佐藤先生が御指摘のように必ずこの予算の裏付けがアメリカ側で得られるという保証はないわけですけれども、保証がないということは、絶対に議会予算承認しないということとはこれは全く違うことでありますし、それから、今のアメリカ議会の動向の中で、この協定をあらかじめ議会予算を認めないということが相当の確からしさで予想されるというような状況には私はとてもない。  しかし、御指摘のように、日本側協定でもって法的拘束力を持っておきながらアメリカ側がこの予算執行をしなかったときに、日米関係のクレディビリティーが傷つけられるであろうことは否定できないと思います。しかし、日米関係一つのイシューだけで成り立っているわけではございませんから、ほかの局面もございますが、そういう事態になれば、日米同盟のクレディビリティーがある程度傷つけられるということは、これは否定できないことだと思います。
  25. 広中和歌子

    広中和歌子君 川上参考人も、それから村田参考人も、このグアム移転沖縄負担軽減になるということを強調なさっているわけですけれども。  私たち、この委員会のメンバーで沖縄に伺いました。普天間基地で、司令官にお目にかかって、海兵隊の現状を伺いました。もちろん、どこまで詳しくお話しいただいたかは、それは分かりませんけれども、いずれにしても、海兵隊の人数、現状は一万二千人前後であるということでございました。要するに、海兵隊というのは絶えず動いているので定数を言うことはできないというのが向こうの主張なんですけれども。  つまり、本当の意味での軽減ではないのではないか。そして、アメリカの焦点というんですか、防衛の焦点というのがむしろアジアの先、中近東に向かっている。そういう中において、沖縄のプレゼンスというのがそれほど重要ではなくなっているのではないか、これはアメリカの立場ですけれども。そういうようなことは考えられるのではないのか、お伺いいたします。
  26. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) どなたに御質問ですか。
  27. 広中和歌子

    広中和歌子君 どちらでも。
  28. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず、沖縄の戦略的価値が下がっているのではないかというふうな御質問でございますが、これ、私先ほども申し上げましたように、また村田参考人の方から申し上げましたように、現在、中国のむしろ海軍力は増強しておりまして、かなり米中間の軍事的ニアミスが続いているというふうな観点が一番。  それから二番目に、日本観点からしてみましても、どうしてもやはり抑止力維持ということから沖縄の三一MEUという実戦部隊が必要であるというふうなことが二番目。  それから、その定数とか実数の問題でございますが、これは特にローテーションで動いていることでございますので、もちろんこれは、実態は定かには定まらないと聞いておりますけれども、ただ、少なくとも司令部機能がグアムに行くということは、これは相当の負担軽減だと思っております。  私個人の意見は、日本の本当の抑止力維持するためにはそのまま残っておくべきだと思いますが、しかし、沖縄観点から見ますと、司令部機能がまず先にグアムに行ってしまう、実戦部隊三一MEUはおりますが、具体的にはイラク、アフガニスタンへ展開しているわけでございます。したがいまして、この状況を見ますならば相当の負担軽減であるという具合に思うわけでございます。  以上です。
  29. 広中和歌子

    広中和歌子君 この第三一海兵遠征隊ですか、三一MEU、これはシュワブにもう既に基地があるわけですけれども、そこで活動することはできるんですか、できないんですか。よく分かりませんけれども、一番最初の九六年の段階では、佐藤参考人代替ヘリパッド建設程度で済むのではないかと、そうしたら代替地は必要ないんではないかと、そんなふうに思うんですが、いかがでしょう。
  30. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 要するに、軍事的に普天間が、普天間基地の存在あるいはその代替施設としてどれほど大きなものが必要なのかということ、本当に日本安全保障にとって不可欠なものであるならば、要するに、最初の御質問にあったように、この十何年間動かないわけはない、あるいはアメリカの戦略にとってこれが不可欠なものだったらば、ほっとくわけはない、ほっといてはいませんが、建設しないわけないわけです。要するに、機動隊を出して排除する云々をやって建設していたでしょう。  それをしていないのはどういうことかというと、この基地というものの目的が、要するに辺野古の新しい基地の建設の目的が日本安全保障にどう資するかということではなくて、先ほど川上先生からあったと思いますけれども、アメリカ国内のあるいは米軍内の既得権をどうするのかという話にすり替わってしまった。だから、米軍の中の海兵隊の既得権、要するに数少ない海兵隊だけが持つ海外基地であるところの普天間を米海兵隊がどのように維持するか、そこに話が巻き込まれてしまったのではないかというふうに思うわけです。  ですので、当初、そしてまた九五年、九六年の時点では、政治的な判断、沖縄基地反対運動の高まりというものが物すごく懸念が強かったわけですね。それが様々な形で抑え込まれてきたという中で、当初の目的がなくなってしまった。なので、初めのごく小さい着地帯でよいという話がどんどん大きくなったというふうに自分は考えております。
  31. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず最初に、普天間基地がそもそも返還されるわけでございます。したがいまして、普天間基地自体がなくなるということはそれに相当する飛行場がどうしてもやはり海兵隊には必要でありまして、その飛行場というのは、先ほどから申し上げていますように、空中給油機の機能、緊急時の代替基地の機能、それからヘリ基地機能でありますが、特に有事になりますとそれだけやはり飛行場が必要なわけでありますので、それが必要になるわけであります。  それから、シュワブにヘリパッド、シュワブにそもそもあるというお話でございますが、これは全く用途の違うものでありますので、そこにやはり新たにそういう機能を備えたものが必要であるという点。  それから最後に、従来、ヘリパッドの話ももちろん出ましたけれども、ただその中でいろんな話が、海兵隊、それから米軍の三軍の中、それからアメリカのOSD、国防総省、それから東京、沖縄と調整していくうちに、そこの政治的ないろんな駆け引きの中で海兵隊も皆納得できるようなことで辺野古沖にそれが決まったわけでございます。  以上であります。
  32. 広中和歌子

    広中和歌子君 もうよろしいんですけれども、一つだけ。  日米関係の希薄化ということを村田参考人でしたっけ、御心配になって、川上参考人もおっしゃったかもしれません。これについて私は余り同意できないんですけれども、沖縄の持つ少なくともアメリカから見た重要性というのは日本が考える以上に大切なんだろうと思っているんですけれども、それについて御意見があればお二人にお伺いいたします。
  33. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) 沖縄アメリカにとって戦略的に重要であるということは言うまでもないと思います。それゆえに、この問題についても過去十数年にわたって議論がされていることだと思うんですが、ただ、今日のお話でも出てまいりました軍事的必要性というのとそれから住民の負担というのは両方とも多義的な言葉でございまして、軍事的必要性というのは何も一つの事柄に限ることではない。  例えば、北朝鮮がミサイルの発射実験を行った、そして間もなくもしかしたら核の実験をやるかもしれないと、こういう状況の下で、このグアム移転協定案が日本国の国権の最高機関である国会で否決されるということが北朝鮮にどういう政治的メッセージをもたらすのかということも我々はやはり考慮しなければならないと思いますし、それから住民の負担ということも、この協定が仮に成立したらこれで終わりではないので、例えば環境保全の問題や騒音防止の問題、基地犯罪の防止についてまだまだこれから考えていかなければならない課題は山積しているというふうに存じます。
  34. 川上高司

    参考人川上高司君) 簡単に申し上げます。  まず、アメリカ沖縄をどのくらい戦略的価値を認めているかということなんですが、これはブッシュ前政権のときに、日本、特に沖縄を最重要基地位置付けたということからしても非常に大きい戦略的価値があるわけでございます。  嘉手納では空、普天間では海兵隊というふうなことで二つに分けてあることでございますが、特に嘉手納基地の持つ重要性は非常に重要でありますことは言うまでもなく、普天間におきましても、アメリカはともかく、日本にとりまして非常に、同等以上に重要な価値があるということも申し上げたく思います。
  35. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  終わります。
  36. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 連休明けのお出かけいただきにくいときに参議院外交防衛委員会の審議充実のために貴重な時間を割いていただきました四人の先生方に敬意を表し、感謝申し上げます。発言いただいた順に一問ずつ伺わさせていただきたいと存じます。  初めに佐藤参考人に伺いますが、上院の助言と同意のない国際約束には何ら保証がない、言わば不公平協定ではないかという指摘でございました。私も一つの見解と受け止めます。ただ同時に、大統領憲法上の権限に基づいて締結される国際約束も少なくないと承知をしております。日米間、なかんずく自由な世論の監視の中にある日米同盟関係から判断して、約束の不履行は政治的に許容されるものではないと考えます。  佐藤先生の御指摘は、法的な見解をお示しになったのでしょうか。
  37. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 最初にもう少し言葉を付け加えさせていただきますが、条約上院の三分の二ですが、そのほか、大統領が結んだ国際的な取決めを上院下院の過半数で議決するという、そういうやり方がございます。今回はそれもしていないということですので、議会は関与がされていないのではないかということです。  それで、法的な問題にすぎないのではないかというお話なんですが、不履行をするという主体は、この場合に、要するに大統領はこれを議会に対して説得することはできても、議会に、自分に同意させる義務はないわけです、政治的にも。あるいは法的にもない。  ということは、オバマ大統領がこれを一生懸命に売ろうとして、要するに議会に対して売り込もうとして説得しようとしても、アメリカ議会の中でこれが同意がなければ、今回、予算が計上されたというふうに報道がありますが、それもアメリカ負担する分の十分の一以下の額ですね。それで、それに対して、この後、議会に諮らなければいけない。議会はこれをどのようにでも決められるわけです。  グアムがもしもアメリカの州でありますならば、グアムの選出の議員というものが重みがある。要するに、自分の選挙区にこういう予算を持ってきて基地を造るということ、これは大きな仕事になりますので、グアムの選出の正式の議員がいればグアムはその中で政治力を発揮することができるわけです。そして、議会を動かすことができますが、グアム御存じのように領土でありまして、グアムはオブザーバーを議会に送っていますが、議決権持っていません。  ですので、アメリカ議会が、オバマ政権が結んだ約束であるからといって、非常に厳しい予算状況の中で、この先四年間、毎年決められたような、あるいは想定されているような予算を付けるかどうか全く保証はないわけです。それがもしも、じゃオバマ政権が約束不履行したではないかということになったときにどうなるか。アメリカ国内ではこれは大きな問題にはならないはずです。  というのは、この問題は、要するにグアム移転あるいは普天間の問題というのはもうほとんど知られていません、今のところは。ですから、これがアメリカ国内で大きな政治的なリスクを負う話にもなりません。ですから、オバマ大統領オバマ政権が政治的な生命を賭してこのことを一生懸命やるということは想定できないんじゃないかと思われます。  もちろん、それは一つの国の国務長官が来てサインしたものですから重みがあります。それは否定いたしません。ただ、私が申しているのは、法的なあるいは憲法的なことだけではないということを申したいと思います。  ですので、実質的なこととして、本当にこれが予算を向こうが付けるのかということに関しては、話を戻しますけれども、何も保証はないということです。
  38. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 佐藤先生の御懸念、趣旨はよく理解をいたしました。  確かに、グアムから送られている上院議員、女性だったと思いますけれども、お目にかかったことがあるんですけれども、発言権、発言の権利はあるけれども投票権はないんですよね。  ですから、そういう意味では先生の指摘は当たっていますけれども、オバマ政権であれ何政権であれ、日米同盟の重要性からいって、上院がこれを拒否すると、財政上の事情から拒否するというときには日米同盟が極めて危うくなる、日本側も約束は履行できなくなるというような事態であろうと。私どもも相応の決意のあることだけ申し添えさせていただいておきます。  それから、川上先生に伺いますけれども、グアム協定実施に当たり、日本を取り巻く戦略環境が悪化している中で日本抑止力をどのように確保するかが重要だという指摘がお話の中の中心課題だったように受け止めました。  これに関連して、在沖海兵隊実戦部隊の駐留が継続されることを一つの例として取り上げ指摘されたのは、前方展開能力は落ちないので抑止力の担保になるということをおっしゃりたかったのでしょうか。  川上参考人は、横田の在日米軍司令部の共同運用調整所の設置とか、あるいは府中の航空総隊司令部を横田に移転して米第五空軍司令部と併置することなどなどを合わせて、言わば私は、それは日本抑止力の担保になる、トータルとして担保になるというお考えではないかと推定しておるんですけれども。  したがって、このことは同盟管理の実効を充実させることになると私は理解しているんです。御指摘どおりだと思っているんですが、ただ、川上参考人の別の論文で同盟管理が問題として残るという指摘があるんですが、この整合性はどういうことなんでしょうか。
  39. 川上高司

    参考人川上高司君) 済みません、私、いろんな論文を書いておりますので、どの論文かよく記憶にないわけでございますが、多分違う文脈で書いたのではないかと思いますが、その論文を書いたときは多分まだ今の在日米軍再編協議が締結されていない段階ではなかったのかなという具合にちょっと拝察するんですが。  同盟管理の問題といたしましては、私が主な論議としてまいりますのは、日本側の国益がまず定められ、それからアメリカ側の国益がまず定められ、それが整合性のあるところで日本が主体的に日米安全保障を管理しなくちゃいけない。そうしないと、日本の国益からして、日本の国益が必ずしも達せられない事態があり、同盟管理に問題があるという具合な多分趣旨だったかと思います。  したがいまして、先生おっしゃいました一体化、日本全体として米軍と自衛隊がいわゆる一体化するという言葉を私使っておりますが、トータルとして確かに日本抑止力は増大しますし、それから今回の三一MEUを沖縄に置いたということも、これは特に、先ほど申し上げました台湾海峡有事の際若しくは朝鮮半島有事の際、これはQDR二〇一〇でも検討されているシナリオの一つだと私は聞いておりますけれども、その中でも非常に重要な問題であると私は理解するわけであります。
  40. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 くどいようですけれども、今、川上参考人が、川上先生がおっしゃった意味は、トータルとしては同盟管理というのは強化されるという理解でよろしいんですね。
  41. 川上高司

    参考人川上高司君) ケース・バイ・ケースでございまして、全体として見ますと、これはプラスマイナスで申しますと、一概に申し上げられないんですが、プラス・マイナス・ゼロかなと。  つまり、沖縄で申しますと、司令部がやっぱり移転するわけでありますので、これはかなりのマイナスになると思っているわけでございます。しかも、三一MEUというのは実際的に沖縄にいないわけでありますので、その分をどう補うか、そういう面から多大なマイナス。しかし一方、改編された第一陸軍司令部が座間に来るとか、それからその他の部分で日米が一体化していくとか、これによっても補われている、対中若しくは対北朝鮮に対して抑止力として総体的に補われているという具合に考えているわけでございます。
  42. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 実戦部隊の駐留の継続ということは、やはり前方展開能力を重視してのことという御見解ですね。
  43. 川上高司

    参考人川上高司君) そうでございます。
  44. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 村田参考人に伺います。  基本的な指摘は、私ども政治に課せられた、先生御指摘の指摘は基本的命題として受け止めました。  全体はおくとして、オバマ政権のグローバルな戦略の変化という観点から核の問題にお触れになりました。  そこで、第七艦隊があれば日本防衛は足りるという例の見解についてです。殊更批判をしようという意図は私には全くありません。それはもうくれぐれも、各党の皆様も含めて、誤解をいただかないように申し上げたい、念を押しておきたいと存じます。  私が懸念するのは、在沖米軍を含む在日米軍の穴を埋めるには途方もない防衛力の増強を必要とするであろうと。特にアメリカの核の傘の下でチープライディングしてきた日本にとって、核武装の可否がテーマとなること自体について私は好ましいことではないと考えているんです。自民党内の多くの意見と食い違うか食い違わないかは私は認識しておりませんけれども、私はそういうふうに考えておりまして、そもそも日米同盟を維持したままで日本の核保有についてアメリカが許容するとは私には思えないんですね。  それらの事柄を含め、村田参考人はこの点についてどのような感想をお持ちですか、改めて伺います。
  45. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) ありがとうございます。  核の問題は大変重たい問題だというふうに存じます。今般の北朝鮮のミサイル発射実験を受けても、こういう挑発行為を受けますと、当然日本国民の間に安全保障に対する不安というものが広がってくるわけですから、そういう中で、例えば一部に核武装論のような話に連動するというところはあるかもしれません。  私は、核武装の議論そのものをしてはいけないというふうな立場ではもちろんございません。可能性として核武装を戦略の一つのオプションとして多角的に検討するということはあっていいかというふうに思いますけれども、まさに核武装論をなさるのなら多角的に検討していただきたい。思い付きで核武装を論ずることほど、我が国の国益を害することはないというふうに思います。  先生御指摘のように、日本が核武装を考えたときに、するとそれはNPT体制はどうなるのかと。オバマが核のない世界と提唱しているときに、唯一の被爆国を六十年提唱してきた我が国が率先してNPT体制を破壊しようというつもりか。つまり、我が国は北朝鮮並みの国になろうとしようとしているのかということが問われると思いますし、あるいは、日米ニュークリアシェアリングを問うのであれば、アメリカ日本と核を共有したいと思えるような政治状況、軍事状況をどのように創出できるのか。持つという意思が大事だというような単純粗暴な議論だけでは、私は議論は深まらないと思いますし、そういう方法論を持たない核武装論では、方法論がないがゆえに抑止効果は生まれないわけですね、信憑性がない。しかしながら、そういう方法論のない核武装が出るだけで、日本は危険な核武装を考えているというふうに利用しようと思えば幾らでもネガティブキャンペーンに利用できるわけであって、これは私、百害あって一利ないことだというふうに考えております。  抑止、アメリカの拡大抑止を維持するという意味でも、日米関係が様々なレベルで信頼関係を一層強化していくということが非常に重要だろうというふうに考えております。
  46. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 村田先生の思いとほぼ九割ぐらい重なるという感じを私は受けて、今の御指摘を承りました。  確かに、NPTを脱退してなおかつ原発用のウランの安定供給を受けられるか、一つ一つ議論してみたら、到底ネガティブキャンペーンの材料ぐらいにしかならないという私は総合的な判断をしておるものですから、お若い村田先生、もうちょっと元気が良くて、私の考えは古いと言われるのかと思いましたけれども、どうやら先生の、何というんですかね、頭の中とこの年寄りが大体同じだったのでほっとしました。  それから、最後に新崎先生に一言だけ伺いますけれども、結局、先生が御指摘をされている総合的な結論というのは、日米安保体制を廃棄しない限り沖縄の本質的な負担軽減というのはないんだと、そういう御判断、御見解なんでしょうか。
  47. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 必ずしもそうではありません。  ただ、現実には、戦後六十年間、日米同盟とか日米安保というのは結果として沖縄の構造的差別の上に成り立ってきたということを皆さんはどう認識しますかという問いかけをしているということです。  それともう一つは、私、終わりの方の冒頭で申し上げたことは、軍事戦略的な問題だけで国際関係を考えるのではなくて、もう少し平和外交とか、そういうことを重視した国際関係への対応を優先させることによって、結果的には日米同盟の軍事色が薄まるであろうし、そのことが沖縄負担軽減にもつながるはずだと、こういうふうに申し上げたわけです。
  48. 浅野勝人

    ○浅野勝人君 恐らくこの中で私だけだと思いますけれども、アメリカ合衆国政府のビザを取って沖縄に行った経験というのは、お若い人多いからほかにいないと思うんですね。その時代からの沖縄の方々のその基本的な認識や思いというのは、幾らか本土側、あのころは本土と言っておりました、当時から本土側の人間の一人として理解をしてきたつもりでございまして、今、参考人が、日米安保体制の廃棄を指摘したわけではないと、この運用がいつも沖縄に過重な負担を強いてきた、そのことに対するあなた方の認識はどうなんだという問いかけだということの確認ができて、今日はベリーハッピーでございました。  以上で終わります。
  49. 浜田昌良

    浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。本日は四人の参考人皆様、貴重なお話いただきましてありがとうございました。  それでは最初に、村田参考人また川上参考人に、同じ質問なんですが三つお伺いしたいと思っております。  今回のグアム協定負担の軽減と抑止力維持というのがテーマになっているわけですね。この抑止力といった場合には、沖縄だけじゃなくて日米安保体制全体をやっぱり考える必要があるかなと思っております。  御提案していただいていますように、明年は日米安保改定五十周年という時期で、その日米安保を継続する部分と変化させる部分というのをどうとらえるかというのは非常に重要だと思っております。先ほど村田参考人からは、オバマ演説というのはアメリカ外交日本に寄ってきたんだという非常に心強い御発言もいただいたんですが、私はこの日米安保の中での核抑止力、核の傘というのをそろそろ見直すべきじゃないかなと思っています。  どうかというと、今、日本外務省の考え方というのは、アメリカの核というものは、相手が核を使った場合、大量兵器を使った場合、通常兵器を使った場合、どの場合においてもあいまいに使えるんだという考え方を使っているわけですね。これ、元々は、一九七五年に宮澤・キッシンジャー会談があり、またフォード・三木会談かな、のときに、そういう全体をカバーするんだという発言があったことを外務省は引用しているんですが、実際、アメリカは一九九五年のNPT無期限延長のときに、条件付ながら消極的安全保障を主張したわけですよね。  そういう意味では、そろそろそういうアメリカの核抑止というものも、言わば先制不使用というんですかね、核だけだと大量破壊兵器がありますので、北朝鮮のような国もありますので、大量破壊兵器に対してはこちら核抑止をするというようなことにそれを限定することを考えるべきじゃないかと思うんですが、その辺についてどう思われるか。また、その延長線の中で、やはり逆に、今度は通常兵器は重要だと、精密誘導兵器もそうですし、今回の米国海兵隊の実戦部隊沖縄に置いておくという意味がより一層重要となると考えるんじゃないかと思っているんですね。これが二点目です。  で、済みません、両方で一点なんですが、二点目でもう一点ありましたのが、一九九四年に米朝枠組み合意ってあったんですね、これ。これは何かというと、ブッシュのお父さんからクリントン、民主党に替わった途端、何とアメリカは北朝鮮に、NPTにとどまると、また、朝鮮半島非核化宣言を守るのであれば、消極的安全保障を与えちゃったと。日本政府はそれをのまざるを得なかったというふうなことがあったわけですが、オバマ政権になって同様なことが起こることはないだろうかと、これについて御見解をお聞きしたいのが二点目でありまして、三点目は中国の問題なんですね。  中国に対してこの前、中曽根外務大臣は、十一の提言の中で、中国も軍縮せよ、透明化をせよと。当然の要求ではありますが中国は反発しました。いわゆる、要求するのであれば何かをこちらも受け入れざるを得ないというものがあるんだと思うんですね。特に、中国ははっきり言って、多分日本のミサイル防衛構想に対して快くは思っていないんだと思うんですよ。とは言っても、これを理解してもらわにゃいけない、日本としては。やはり、日本抑止力としてはそういう拒否的抑止力というのかな、そういうものを持たざるを得ないと思っておりますから。そのときに中国自身は、無条件の核の先制不使用というものを宣言している、ずっと一貫的に支持していると。そういう意味では、日本自身が日米安保も核の傘を限定しながら核の先制不使用ということを宣言していくことが、中国との関係でもプラスじゃないかと思うんですが、この点についてそれぞれ、村田先生、川上先生、お答えいただきたいと思います。
  50. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) ありがとうございます。  まず第一点の抑止力のことですけれども、核の先制不使用ということを含めて抑止力の在り方を見直すべきではないかという点についてですが、私はそういう可能性も十分、当然あり得ると思うんです。来年ですか、NPTの再検討委員会になるわけでして、こういう機会に核の問題について国際的な議論を高めていくということは非常に大事だと思います。  ただ、問題は、我が国自身は核を持っていないということであって、つまりアメリカの核戦略に我々がどれだけ働きかけられるかということですから、決定するのはアメリカであって、我々に決定権がないということですね。そうすると、私どもがアメリカの核戦略に働きかけるためには、我々が彼らにとってかけがえのないパートナーであって、日米関係の信頼関係というものがしっかりしているということが大前提でなければ、そもそも我々にバーゲニングの能力がないということだろうと思います。  それから、米朝のことでございますけれども、私冒頭の陳述でブッシュからオバマへアジア太平洋の政策は継続していると申し上げましたけれども、実は対北朝鮮政策も継続しているわけですね。基本的にオバマ政権は話合い重視であります。今般のミサイル発射実験を受けても、この方針は基本的に変わっていないと思います。場合によっては、六者の枠組みと別に米朝の二国間の話合いというものが持たれるという可能性も将来的に出てくると思います。  私は、仮に米朝の二国間の話合いが進んでも、それで北朝鮮をめぐる緊張が緩和される方向であるならば二国か六者かという枠組みに固執する必要はないと思いますけれども、しかし、米朝交渉をすることが自己目的になって、どんどんどんどん六者も空洞化していくということは避けなければならない。やはりそこでも、私どもがアメリカに対してそれ以外のイシューでどれだけのバーゲニングチップ、あるいは彼らにとっての仲間としての価値を持っているかということであろうというふうに存じます。  それから、中国を核軍縮の方向に引き入れるためにも、冒頭先生御指摘の核の先制不使用というふうなことは重要ではないかというのも、これも大いに考慮されていいことであって、米ロで核軍縮が進んでいくだけでは駄目で、やはり中国をどう取り込んでいくかということが非常に重要なことだろうと思います。  そういう意味で、先ほどの御質問とも関係しますけれども、日本が核武装をすることによって得られるメリットと、持とうと思えば持てる国が積極的に持たないという決意を守り続けることの、このことが持つ政治外交的効果というのは私は非常に大きいと思いますし、ミサイル防衛は私、進めるべきだと思いますけれども、他方で、トマホークのような攻撃性のある武器については、導入できる我が国が非常にこれを抑制しているということも大変重要な、何かをしないということの日本外交の効用というものをもっと対外的にアピールする必要があるんではないかというふうに存じます。
  51. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  私は村田参考人とやや異にする意見を持っております。  まず核抑止力の件でございますが、これは今現在オバマ政権下でニュークリア・ポスチャー・レビューというところで検討されておりまして、議員から御指摘のように、核の代わりに通常兵器による抑止力を付けようというふうなことが論議されているわけでありまして、これを日本の国、我が国がどう見るかということでございます。  これは先生から御指摘の御質問の中国の核兵器と結び付くことでございますが、米ロ間で現在STARTに代わる条約を見直すということで新しい提言がなされようとされ、そこではモスクワ合意よりも更に米ロ間で持つ核の弾頭数下げようということになっているわけなんですが、そういたしますと中国の核がどうしても残ってしまいますので、村田参考人から御指摘のように、当然ながら、中国にも核軍縮を求めるというのは当然でございます。  ただ、もしそれが、中国が応じない場合、我が国がどうするか。これで村田参考人と私の多分意見が異なると思うんですが、私の場合は、懲罰的抑止力、拒否的抑止力と考えます場合には、拒否的能力、つまりミサイルディフェンスはそれほど有効性があるのかというふうな考えに立つわけでございます。これは、懲罰的抑止力も、アメリカの中国に対する核の抑止力をどれほど軽減するか、それはもちろんカリキュレーションとかそういうものはかなり複雑にしますけれども、やはりある程度核の担保というのは必要であります。アメリカにとっては全く抑止力は低減しませんが、日本にとってみましたら中国は残りますので、それに対してどう日本抑止力を確保するか。  ここで拡大抑止力の問題になるわけでございますが、ここのところで、通常抑止力で果たしてその抑止が成り立つかどうかと申しますと、私は甚だ疑問でございますので、そこで核武装は当然ながらこれは不可能でございます。したがいまして、それに代わるニュークリアシェアリング、これは、ニュークリアシェアリングの中には、具体的にNATO諸国の核を持っていない国の四か国がやっているような、具体的に、非常時のときに核を貸与して、それを持っていない国が運用するというふうなニュークリアシェアリングから、それから核戦略を情報共有する、情報共有のそういうニュークリアシェアリング、そういうものがございます。  特に私の場合、そういう情報共有をすることによって心理的に、核抑止というのはかなり心理的なものがございますので、中国若しくは北朝鮮に対して日米間の核抑止は担保されているというふうなことで抑止力を付けるべきではないかという具合に個人的に思うわけでございます。  それから、米朝関係、これは現在オバマ政権下で練られていることでございますので、私には甚だ推測はすることは難しいものでございますが、村田参考人から御指摘のとおり、米朝関係は恐らくステータスクオでいくのではないかと私は思っております。つまり、これだけ、北朝鮮の政局の不安定、それからかなりの挑発的な態度が続く中、アメリカ側が対話を呼びかけているわけでございますが、それに対して全く逆のことでこたえていると。これにはやっぱり対話と抑止ということで向かわざるを得ないというふうなことを考えているわけでございます。  以上です。
  52. 浜田昌良

    浜田昌良君 ありがとうございます。  今のお答えの関係でもう少しお聞きしたいんですが、今、村田参考人から、いわゆる核の先制不使用については基本的には核保有国が交渉する話であると。よって、アメリカに対して日本がどれぐらいかけがえのない存在であるかということが重要となると。それは確かにそうだと思うんですが、ただ日本にもできることはあるんだと思うんですね。  それは、いわゆる今、日米安保の中の核の傘をどう再定義するか。つまり、今外務省が言っているのはあいまい戦略ですね。相手が通常兵器であれ何であれ、生物兵器であれ、使った場合には核使うぞと言うことによって相手をとどまらせるというメリットがあると言われていました。しかし、そのメリットは一方ではもうデメリットになっているんじゃないかと思うんですね。つまり、北朝鮮に対しては、いつ先制攻撃があるかもしれないんだから核を持たざるを得ないんだということを走らせてしまうんじゃないかと。この点についてどう思われるか、お聞きしたいと思います。
  53. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) 先生御指摘の点は、十分多角的に検討すべきことであって、私がここでイエスかノーかと即答を申し上げることはできませんけれども、北朝鮮の意図に関して言うならば、例えばアメリカがそのような核の先制不使用という態度を取れば北朝鮮がこの核の問題で方針を大きく変えるかというと、恐らく北朝鮮の意図というのは別のところで働いていて、先生御指摘のように、それを一つのエクスキューズといいますか、彼らが今の路線を突き進む上での口実として使うことはあるにしても、アメリカの態度の変化によって彼らの態度の根本的変化を促すことは甚だ難しいんではないかというふうに、私は個人的に考えております。
  54. 浜田昌良

    浜田昌良君 次に、佐藤参考人新崎参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、今話しさせていただいた、いわゆる日本が核廃絶を叫んでいるというときに、核の先制不使用、その中で日米安保においても核の傘は非常に限定していくということについては御賛同いただけるんじゃないかと思うんですが、そのときに、核の傘を狭める代わりにやはり通常兵器での抑止力というのはやっぱり持たざるを得ないところがあるわけですね。それで、そういう観点から、グアム海兵隊の実戦部隊が残るということについてはどのように、核の廃絶なり先制不使用は賛成なんだけれども、その辺についてのバランスはどういうふうに考えておられるのかについて、それぞれお答えお願いしたいと思います。
  55. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 通常兵器による抑止力が続くこと、これは望むと望まざるとを得ず続くわけですので、嘉手納基地は当分、今返還という話が全く出ておりませんから、この嘉手納の存在というのは続くことが想定されているわけです。嘉手納の騒音というのは大変に、爆音というのは非常にひどいものですので、行く行くは、将来的には嘉手納も縮小した方がよいと自分は思いますが、ただ当分それは続くであろう。  今回のグアム移転協定に引き付けて話しますと、通常兵器による安全保障、あるいは通常兵器を維持する、抑止力維持するということは、私は嘉手納で十分ではないかというふうに思っているわけです。嘉手納の存在がある以上は新しい海兵隊基地沖縄に造る必要はないというふうに思うわけです。というのは、北朝鮮のミサイル問題に対して、あるいは中国が台湾に何か攻撃をしてくるというような状況に、沖縄海兵隊数千人いたとしてこれが何ができるかといえば、そういう事態になったときには、これもうはるかに大きな規模の動員が必要になるはずです。  先ほど川上先生から詳細なお話がありましたが、米軍が、海兵隊沖縄にいてできることというのは、今日本で心配されているような中国の軍事的な台頭であるとか北朝鮮のミサイル問題に対応するということでは私は全然ないと思っておりまして、だとするならば、嘉手納がある以上はその部分の抑止力は十分であろうというふうに考えるわけです。  もう一点、中国との関係なんですけれども、もうこれは周知のように、今、米中間の貿易というのは世界最大になっていて、日米間の貿易の倍だそうですね。それから、中国が持っている米国の国債が七十兆円ですか。ですから、三月に双方のやり取りがあったように、中国がアメリカに対して自分の持っている国債の価値を下げるような経済政策を取るなという注文を出す、それに対してアメリカの側がそんなことはしないというそういう保証をするような、そういう関係になっているという側面も見逃してはいけないのではないかと思います。  ですから、軍事的な対立だけを見ているとそっちに行ってしまうわけですが、本当にじゃ双方が軍事的な対立に走る状況にあるかというと、そうではないんじゃないかと思うわけです。だとするならば、抑止力として、要するに、そこにいて、中国に対してかもしれないし、あるいは周辺諸国からすれば、アメリカ日本に対するコミットメントによって日本を抑えるといういわゆる瓶のふた論としての存在の嘉手納があるわけで、その抑止力が続いている間に違う形での平和的な交渉の構築をしていくことができれば、将来的には特に沖縄基地をなくしていくことができるのではないかと自分は考えております。  以上です。
  56. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 簡単にお答えしたいと思います。  核の問題と通常兵器という、こちらでこちらを補完できるかどうかという議論をされているように聞きましたけれども。  今、嘉手納の例が出ましたけれども、今問題になっているのは、沖縄海兵隊が必要かどうかという、さらに、新しい海兵隊基地を造るのが必要かどうかという、そういう具体的な議論なんですね。そのときに、僕は海兵隊の存在が核を補完するとか、そういう通常兵力の中に海兵隊というものを取り出して考えることはできない。それは、つまり海兵隊がそれに代わるべきような存在ではない。これをなくすことによって、別なもっと核に依存しなきゃいけない状態が生まれるとか、そういうことでは全くないというふうに考えております。
  57. 浜田昌良

    浜田昌良君 確かに、海兵隊をどう見るかという問題かもしれませんが、アメリカの三軍に比べて、いわゆる盾と矛といいますと、矛の中の矛といいますか、非常に前方展開能力が高い、朝鮮戦争でもかなりそういう展開能力を発揮した部隊でありますので、抑止力としての意味が私は大きいのかなと思っております。そういう意味では、核の傘の議論を限定していくんであれば、海兵隊という能力は私は不可欠じゃないかなという理解をしております。  続きまして、皆様に同じ質問をお聞きしたいと思うんですが、それは、今回のこのグアム協定が、一応これについては衆議院では可決をされました。ところが、野党の皆さんは反対をされました。この参議院で否決をされても、一応条約協定についてはこれは承認はされるわけでありますが、民主党の皆さんは次の選挙で政権を取られるということを宣言されておりまして、もし政権取られるとこれが破棄されるかもしれないと、一般論としてありますけどね。このグアム協定が今回承認されながらもその後破棄されるというのがあった場合に、日米関係にどういう影響をもたらすかというのが一つ。もう一つ沖縄基地返還ですね。普天間であれ、嘉手納以南であれ、この返還がどういう遅れをもたらすのか。この二点についてそれぞれ御見解を順番にお聞きしたいと思います。
  58. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 先ほどお答えできなかったことと絡めてお話しさせていただきます。  もしもアメリカ議会が一切これに関して議決をしないとするならば、次はアメリカ予算を付けるかどうか、議会予算を付けるかどうかの話になります。議会予算を付けなければ、あるいは減額するならば、それでこれは向こう側としてはこれをやらないという意思表示になるわけですね。それに対して、そうなったときには、これは交渉する余地があるということでありまして、これは、そこでじゃどうするのかということをできる話だと私は思います。ですので、この参議院で否決するということでもってして日米関係決裂にはならない。それで、アメリカ側が同じ対応をする可能性が非常に高いわけです。  先ほど村田先生がおっしゃっていたように、日米関係、日米同盟というものは、あるいは米軍の世界戦略はこれに懸かっているわけでは全然ないと自分は思います。要するに、グアム移転協定にすべてが懸かっているということでは私はないと思いますので、ですから、交渉の余地、この後やり直しをする余地は幾らでもあるというふうに自分は考えます。ですので、参議院が否決することがどのようなシグナルを送るかということは、私はそんなに大きな話ではない、むしろこれは話をやり直す、より良い形に持っていくための機会になるというふうに思います。
  59. 川上高司

    参考人川上高司君) ありがとうございます。  まず、日米関係に及ぼす影響でございますが、この点に関して私もアメリカ関係者等々に随分質問をしたところ、もうしばらくやりたくないと。疲れたというのもございますし、それからもう論議尽くしたというのがございます。多分しばらくはやらないんでしょう。でも、これは日本側の意図でございますので、もちろん再び交渉にのせることはできますけれども、その際のダメージたるやかなりやっぱり私は大きいものがあると思うわけであります。日米関係には現在のところそれほど大きな課題はないわけですが、どの担当官に聞いてみましても、日米問題の最大の課題はこのいわゆる在日米軍再編協議の履行である、これが解決されない限りは次のステップには進めないと、こういうことを申しております。  それから二番目の問題でございますが、特に沖縄にとりましてこれ以上の米側からの譲歩を勝ち取ることができるかと申しますと、私は甚だ疑問でございます。恐らく、SACO、今回のDPRI、在日米軍再編協議とやりましたけれども、恐らくこれ以上のものはできないんじゃないかというのが私の見解でございます。
  60. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) もしも日本側政権交代によってこのグアム協定が破棄されたり履行できなくなったら、日米関係にとってこれがクレディビリティーを害することであることは言うまでもないと思います。それは、先ほど申し上げたように、アメリカ側の事情でこの協定が履行できなくなった場合にやはり日米関係を害するのと同じだと思います。  ただ、アメリカ側について言うならば、やはりアメリカ議会もこの問題だけを議論しているわけではないですから、ほかの争点との例えば、何といいますかね、票のやり取り等によってこの法案グアムから代表が選出されていなくても通る可能性というのはもちろん十分あるわけであって、議会というのはもっと複雑な存在だと思いますけれども、日本側の理由でこれが履行されなければやはり日米関係を害するだろう。しかしながら、そのことはもちろん日米関係の死を意味するわけではなくて、日米関係ははるかに重層的で複雑なものですから、にもかかわらず日米関係維持されないといけない。しかし、その場合、ほかのイシューで我々が払わなければならないコスト、あるいは手間というものがずっと高くなることは間違いないと思います。  それから、委員の御質問は、何といいますか、民主党が政権をお取りになったときにということと、それから民主党のお立場が同じであるということが前提になっていると思いますけれども、それは政治の世界ですから分かりませんけれども、そもそも選挙の結果どのような形の連立が組まれるのかとか、あるいはそのときに各政党が全体的な御判断から過去の個別の政策についてどのように御判断をお変えになるのかということは、それはいろんな可能性があるんじゃないか。かつて日本社会党は日米安全保障条約と自衛隊を政権党になると突然お認めになったという大変アクロバティックな変化をなさったわけですから、この協定案の賛否について主要な政党がお立場を変えるということは、私の過去の日本政治の経験からすればさほど驚くべきことではないように思います。
  61. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 破棄するかどうかというのはよく分かりませんけれども、先ほども指摘しましたけれども、現在、政府それ自体が、これは四月九日の衆議院の外務委員会ですか、なりで見解を明らかにされていて、アメリカ政府とも確認した上で、例えば辺野古に新基地が造られなくてもこれは協定違反ではないと、あるいはアメリカ予算措置を講じなくても協定違反ではないと、つまり法的義務を課すものではないと言っているんですから、この協定そのものの実効性そのものが、一体何のためにという問題がずっと残っているわけです。  ですから、協定が破棄されなくても内部が形骸化していく、そして別になくてもあってもいいものだったらわざわざ破棄しなくてもいいという、むしろそういう話になっていくのかなと私は思います。  それから、それが沖縄にどういう影響を与えるかと。沖縄のそういう普天間の返還なんかが遅れるのではないかと先ほどおっしゃいましたけれども、アメリカは、あるいは日本政府は、普天間を返還するために新基地を造りたいとかグアム移転したいと言っているわけではないということです。  先ほど言いましたけれども、この普天間基地というのは六十年前に戦争中に造られた基地です。既に老朽化が指摘されて久しいわけです。それで、これは歴代の沖縄県政、これは西銘自民党知事のころからですけれども、普天間の早期、危険だから撤去してほしいというのはアメリカ側にも要請し続けてきたことです。沖縄側のそういう危険性からの要請ではありますけれども、もう一つは、アメリカ自体がこの基地をいつまで使えるのかという問題があると思います。老朽化による限界性です。  したがって、新しい基地を欲しいというだけであって、新しい基地ができないからそれではいつまでも普天間にしがみつけるかといったら、私はそういうことはない、むしろ普天間を放棄せざるを得ない可能性の方が高まっていくと、私はそのように思っています。
  62. 浜田昌良

    浜田昌良君 ありがとうございました。  終わります。
  63. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。  まず、新崎参考人にお伺いいたします。  私ども、委員会としても沖縄に視察をいたしまして、普天間基地の司令官からのお話も伺ったんですが、そのときも、普天間基地ができたころと、そして最近の航空写真をスライドで見たんですね。よく、ああいう写真も使って基地ができた後に周りにどんどん住民が張り付いてきたんだということを言い、ですからそういう中で、騒音被害があるので移転をするんだから日本負担をしろみたいな、こういうような議論がされていると思うんですが、これは私は沖縄米軍基地の成り立ちからいっても随分違う話だと思っているんですが、こういう点について、まず新崎参考人から御意見を伺いたいと思います。
  64. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 普天間基地がどのような経過でどのような時期に造られていったのかというのは、私はもうたくさんいろいろなところで書いておりますが、普天間飛行場というのは、宜野湾村という村役場もあって、国民学校も二つあって、そういう最も平たんな、宜野湾の中の平たんな土地、そういう田んぼがあり畑があり松並木がありという、そういう土地だったんですね。そこが戦場になって、そしてそういう建物も破壊されて、そこに住んでいた人は逃げ惑って、生き残った人たちは収容所に入れられていたと。そのときにアメリカがそこを敷きならして造ったのが今の基地です。  それで、そこへ元住んでいた人たちが収容所から出て戻ってきたら、自分たちが住んでいた場所は米軍が占拠している。したがって、その周辺で生活せざるを得ない、生きていかざるを得ないという状況の中から今の普天間が形成されてきたと。  つまり、普天間市が言わばドーナツ状に真ん中に基地があって、その周辺に人が密集している。これは、基地を目指して人が集まってきたわけではありません。基地から追い出されたから基地の周辺で生活せざるを得なかった。それがだんだんと六十年の間に都市化するとか、そういうことが起こってきたわけで、これは嘉手納などでも基本的には同じですけれども、それを逆に取られて、何もないところに造ったはずの基地の周りに人が集まってきたから危険になったなどというのは本末転倒の議論。しかし、軍事基地とか軍事的観点だけで議論をする人たちはそういう議論を恐らくしたがるんだろうと思います。  以上です。
  65. 井上哲士

    井上哲士君 そういう歴史から見れば、条件を付けることなく撤去すべきだというふうに思うんですが。  先ほど、安保条約沖縄の現状についての質問もありました。この点について村田参考人新崎参考人にお伺いをしたいと思うんですが、村田参考人は、昨年などの新聞見ておりますと、二〇一〇年に新安保共同宣言を出すべきだというような御主張もされております。  安保の歴史を見ますと、五一年に締結されて以来、ガイドラインでは極東における事態というのが日米協力となり、それからその後、新ガイドラインで極東の範囲を超えてアジア太平洋まで広がったと。そして、今回のこの米軍再編協議の中で、日米が新たな脅威や多様な事態に対処し、国際的な安全保障環境を改善するという役割と任務、従来と全く違うものを背負うということになったわけですね。  そうしてみますと、本来の条約とはるかに超えた中身に今なっているんではないかと思うんですが、このことに対する認識についてそれぞれからお伺いしたいのと、特に新崎参考人については、それに加えて、そういう安保条約の実態が沖縄における運用やそしていろんな問題点にどう表れているのかという点についてお伺いしたいと思います。
  66. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) ありがとうございます。  御案内のように、二〇一〇年が現行の日米安全保障条約締結されてから五十年になるわけでして、私は、それを機に安保共同宣言のようなものを発出すべきだというふうに発言し、あるいは書いたことがございますけれども、それは、日米同盟の重要性というものを改めて確認するための言うならば政治的文書という意味で申しておりまして、現行の日米安全保障条約の内容をそれによって変えるというような意図のものではございません。  現行の日米安全保障条約は我が国の防衛と極東の平和と安全のためにあるわけですけれども、しかし、それから五十年、日本の国際的なプレゼンスが増し、そして日本にとっても重要な安全保障上の多くの問題が実はグローバルな問題である。例えば、地球環境の問題もそうですし、それから伝染性疾患の問題のように単に軍事だけでは対処できないようなグローバルな問題がある。そういうことに日米、更には中国も協力して、その他の国と協力して日本がグローバルに対処するということは日米安全保障条約とは別の政治的な事柄であって、必ずしも安保条約の内容を逸脱するというようなことにはならないんではないかというふうに思いますし、例えば日本が国際社会で応分の責任を果たすといったときにも、PKOで現在海外で活動している自衛隊員の数は四十人、これに対して中国は二千人ですか、二けたから違うわけですし、ODAもかつては世界一のドナー国であったのが今や五位、やがて六位に落ちるかもしれないという状況の中で、日本のグローバルなプレゼンスを、日米の協力を軸にしながら、安保改定五十年を機に改めて考えるべきだというのが私の主張でございます。
  67. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) どこから話をしていいかちょっとあれですけれども、確かに五一年に安保が締結されて、安保が締結されたというのは、同じ日に対日平和条約締結されているという、そして翌四月二十八日に安保条約と対日平和条約が効力を発生して、日本が言わば独立をしたと。その代わり、その対日平和条約の第三条で、沖縄は、その規定に従えば、日本の潜在主権は認めるけれどもアメリカが住民も地域も全部管理する、半永久的に管理するという、そういう規定になったわけですね。つまり、安保条約では足りない軍事的役割を沖縄に負わせるというのがそもそもの出発点でした。  六〇年に安保が改定されました。そのときには、日本からの、例えば戦闘作戦行動等については事前に協議を必要とすると。その事前協議もそれを制約するという方向で当初は特に強調されていたものですけれども、そのときに日本基地を、例えばベトナム戦争への日本からの戦闘作戦行動を、中継地点としての沖縄を使うことによって可能にした。これ、当時の六〇年代の国会論議で繰り返し繰り返し何百回かやられていることですけれども、そういう形で沖縄は安保を日本の外側から強化するという、そういう役割を果たさせられてきた。  しかし、沖縄住民の運動等があって、結局沖縄を返還せざるを得なくなった。返還せざるを得なくなったんだけど、アメリカ基地だけは維持したかった。その維持する責任を日本に負わせたというのが基本的な仕組みで、それがいまだに引きずられているから、特に沖縄返還によって、実は沖縄に七五%の基地が集中しているという状況はその段階で生まれているんですね。それまでは沖縄と本土は同じぐらいの基地があったわけです。沖縄返還の際に全体を合わせて統廃合をして、沖縄はほとんど廃止されなくて大和の基地がなくなったから、本土の基地がなくなったから沖縄に七五%が集中するというような状況が今に来ている。  そして、その安保の問題でいいますと、この安保が、さっきガイドラインという話が出ましたけど、そのガイドラインは要するにいわゆる安保再定義という形で、そもそもが日本防衛する、日本は軍事力がないからアメリカ防衛してもらうというのが日米安保の我々に対する説明だったわけですけれども、それがいまだに条約は一字一句改正されないまま、例えば九六年の日米安保共同宣言によってアジア太平洋地域までその適用地域が拡大され、それをさらに新安保共同宣言だとかなんとかいうのが最近話題になっているという、そういう状況だろうと思います。そういう中で、それと結び付きながら沖縄は必要に応じて軍事的に使われてきた、こういうのが基本的な流れだろうと思っています。  こういうところで、ついでに付け加えて、先ほどから軍事的な手段だけではなくて平和的な手段をというようなことを強調したんですが、実はこれ、プレジデントという雑誌のこの前の号ですけれども、飯島勲さんが、例の小泉首相の首席秘書官ですか、今はどこかの大学の先生ですけれども、彼が「孤立を深めているのは北朝鮮か日本外交か」というタイトルの文章を書いています。この中身が非常に面白くて、僕は普通はこの人の見解は賛成じゃありませんけれども、ここで書かれていることは、軍事的な対応ばかりを大騒ぎするのではなくて、もっと別の観点から問題を解決したらどうなのかということを説得力を持って書いておられるので非常に面白く読んだんですけれども、そういういろいろな立場の人がいろいろな方策を考えて周辺との緊張関係を解いていく努力をしていくことが軍事的抑止力とかそういうことを強調する、観念的に強調するよりは必要だろうと思います。  抑止力維持負担軽減のバランスということでずっとこの日米再編来ていますけれども、このグアム協定の中ではいつの間にか日米抑止力維持が日米抑止力の強化にすり替わっているんですね。ここだけがすり替わっています。なぜかというのは非常に問題だと思います。
  68. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  もう一つ村田参考人とそれから佐藤参考人にお聞きするんですが、最初意見の陳述の中で村田参考人が、ブッシュ政権外交の中でアジアは唯一成功したと、うまくいったというようなお話がございました。私、必ずしもそう思っておりませんで、確かに中東のようなああいうイラクなどの破綻ということはないわけでありますが、アジアでもASEAN諸国などは軍事同盟によらない平和の構築ということを求める大きな流れが出てきていて、むしろアメリカの存在意義というのは非常に低くなっているんではないかなということを思っているんです。  そういう中で、今回日本が、このグアム協定米国領土内にある米国基地のために外国がお金を出すという国際的にも前代未聞のようなことをやって、一層依存を強めるということが、私はやっぱりアジアにおける日本の役割をむしろ狭めるんではないかというような思いを持っておるんですが、こういう今回の協定またいわゆる日米同盟の強化という在り方がアジアにおける日本の役割ということにどう影響するのか、村田参考人佐藤参考人からお聞きしたいと思います。
  69. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) ありがとうございます。  ブッシュ政権のアジア太平洋政策が成功したと申しましたのは、成功というのはもちろんだれにとってかということであって、私が申し上げたのはアメリカにとっては数少ない成功であったと。つまり、日米同盟関係は強化されたわけですし、インドとの関係の強化にも成功しましたし、それから、委員御指摘の東南アジア諸国との間でも、関係が強化されたとは言わないけれども、それほど大きなトラブルはブッシュ政権八年間にアメリカと東南アジア諸国との間にはなかったのではないか、あるいは一部のいわゆるテロ対策などではインドネシア等との協力を深めることができたのではないかというふうに思います。  このグアム移転日本が積極的に協力することがこの地域での日本外交の幅を狭めるのではないかということですけれども、これは、何と申しましょうか、このことだけを取り上げて、このことが日本外交の幅を広げるとか狭めるとかを論ずることはできないと思うんです。ほかの事柄との組合せだろうというふうに思います。  先ほど来申し上げているようなグローバルな課題に日本アメリカその他の国と協力して積極的な役割を果たすことができるかどうかというのがまた別の変数としてあって、仮にグアム移転ができようができまいが、もしそういうグローバルな課題に日本が対応することに失敗すれば、どのみち日本外交オプションは小さくなるでありましょう。ですから、他のイシューとの連動だと思います。  それからもう一つは、私はこの沖縄の問題を北方領土の問題と並べて論ずることはやや議論があるところだと思いますが、プーチン首相がお越しになっている。北方領土の返還について日本のそういう主張がある、しかしながら事実として北方領土は現在ロシアが持っている。これを返還するためには、やはり並々ならぬ外交交渉というものが必要であって、沖縄にも現に米軍のプレゼンスというのがあると。これをできる限り負担を軽減するということは、ただ単に日本側の主張や希望を述べるだけではこれは現に存在するものを減らすことはできないわけであって、そこに様々な駆け引きというものがなされるんだろうというふうに思います。  しかし、いずれにしても、このグアム移転の問題を含めて日米関係を強化させるということは、日本外交のオプションを中国に対しても北朝鮮に対しても広げることだと思いますし、日米関係が安定するということが実は日中関係を安定させることにもつながるであろうし、平和外交と軍事的な抑止が二者択一ではなくて、これを並行的に考える複眼的な思考というのが日本に求められているのではないかというふうに存じます。
  70. 佐藤学

    参考人佐藤学君) ブッシュ政権、ブッシュ前大統領のアジア政策の成功というのは、要するに中国との関係をこじらせなかったということであるというふうに考えます。  ずっと、一方で経済的な台頭、そして軍事的な台頭がある中で、ほかの地域、他地域でブッシュ政権が、ブッシュ大統領が見せたような傾向を見せるならば中国との関係というのはもっと軍事的な緊張が高まっていたであろうけれども、それができなかった、しなかったわけですね。それはもちろん、ほかのところに、中東に関心を向けている、あるいは中国との関係で、経済的な関係で相互依存が強まっていったこともあるでしょう。そして、結果として米中関係というものがはるかに、九〇年代よりもはるかに近くなっている。  もちろん、中国とアメリカが完全に一致しているわけでは全然ございませんから同盟関係になるわけではないにしろ、十年前、十五年前と比べて米中間の関係というのははるかに変わっているのだということ、それがあのブッシュ大統領が中国との関係を軍事的な緊張を高める方向に持っていかなかったということでうかがえるのではないかと思います。そういう環境であるということを念頭に沖縄のことも考えた方がよいのではないかというのが私の考えです。  日米間をどうするのかということなんですが、例えば、イラク戦争のときにドイツとフランスが反対をする、それに対してアメリカ国内で非常に強力な反フランスの世論が高まってというようなことがございました、フレンチフライというポテトフライの名前を変えるみたいなことがありまして。  ただ、結果から考えてみたときに、ドイツとフランスの忠告を聞いていた方がブッシュ大統領あるいはアメリカそのものにとって本当は良かったのではないかと。要するに、何がアメリカにとって良いことなのか。善かれと思って、要するに、ブッシュ政権に一緒に付いていくことが本当はアメリカをがけから落としたことになったのではないかと自分は考えます。  そこで、本当は、同盟国として、一番近い同盟国の一つとして日本が助言をすること、あるいはそういう関係になることの方がアメリカにとって実は生産的だったのではないかと自分は思います。もしもフランスとドイツに合わせて日本がちょっと待った方がいいんじゃないかということを言っていたときに、やはりこれは重みが違ったんじゃないかと思うんです。  ですから、同盟関係維持するということは、アメリカがやることにとにかく追従していくことではないだろうし、それはけんかすることでもないし決裂することでもないし、何というんですか、名誉ある孤立をするわけでも全然ない、ただ言うべきことを言う、言わなきゃいけないことは言う関係に持っていかなきゃしようがないだろう。  その上で、このグアム移転協定が様々な問題が指摘されている中でこれを結んでしまって、これをやるんですということを示すことでアメリカに保険料を払うという、そういうやり方はもうやめた方がいいだろうと私は考えます。
  71. 井上哲士

    井上哲士君 それぞれから議論になっているこの協定アメリカでは議会承認を求めないということなんですが、実は、委員会が始まる前の理事会のときに、アメリカがどういうものを議会にかけるかというルールについて、アメリカからの聞き取りについて外務省からあったんですが、いろんな項目がありまして総合的に判断をするということですので、これは多分、政府の側が一定の判断をしたんだろうと思うんですね。  そうしますと、あえて議会の縛りを掛けないという判断をなぜアメリカ政府側がしたんだろうか、ないしは、その判断と同時にそうせざるを得ないというようなことがあったのかもしれませんが、そこの点について佐藤参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  72. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 私が考えるところでは、これはアメリカアメリカ政府と言っているとまた混乱を生じますが、行政府大統領の側が、この協定日本に対して資金の提供を強制するものであるというふうにだけしか考えていないからだと思います。アメリカ側の義務に関しては拘束力を持たせないようにする、アメリカが二〇一四年までに四千億ドルですか、そういう支出をしなければいけないということには拘束力を持たせたくないというそういう意思が、議会を絡ませない、議会の議決を経ない、要するにスタチュートリーアグリーメントにもしないということに表れていると私は思います。  ですから、アメリカの側はそれだけのものでしかないと考えていると私は考えます。それに対して日本側がこれを物すごく強制力の高いものであると考える必要はないのではないかというのが自分の考えです。
  73. 井上哲士

    井上哲士君 今の件に関連して川上参考人にお聞きするんですが、先日、二〇一〇年度の予算案がアメリカで出されまして、このグアム移転事業費も計上されたわけですが、報道でいいますと、当初予算よりも経済危機のあおりで大幅に削られたというふうに言われております。  それから、昨年来、例えばキーティング太平洋軍司令官が十分な資金がないというような発言をしていたり、GAOのいろんな指摘もあって、非常にこの計画自身の資金的な問題がアメリカ内で言われているわけですが、この辺の事情と、そして見通しについては川上参考人はどう思われているでしょうか。
  74. 川上高司

    参考人川上高司君) お答えいたします。  現在、アメリカにおきましては、全体的な予算取りの枠組みの中で、オバマ政権というのは非常に画期的な、ドラスチックな予算カットをまずやり、それから、それに続きましてゲーツ国防長官が革命的と言われるような国防改革費のカットをやったわけであります。それに伴いまして、アメリカの根底からの戦略の見直しが行われていまして、従来型のいわゆる国を対象としたものではなくて、小規模的な国を対象として戦闘行動をやると。最も起こりそうな可能性のある地域と最も危険な国というふうな二つに分けて今現在それを展開しつつあると。そういう練り直しの中で恐らく今回のグアムに対する資金提供というのはなされたものだと私は思っております。  したがいまして、先ほどの問題に絡んできますけれども、現在の米軍再編の問題というのは、アメリカ国防総省の中でまだ論議がされている問題、新たに問題がされている問題でありまして、QDR二〇一〇の一つチームの中で論議がされている問題でありまして、そこに今回のグアム協定というものが結ばれましたことは、非常にこの部分については変更しないというふうなことをアメリカ側が行政的に、政治的にコミットメントしたということで大きなことになると思うんですが、ただ、しかしながら、日本が果たしてこれを履行できるかどうか、まだ甚だ、期待するけれどもまだまだ疑問の余地があるというふうなところから、あくまでもこれは手かせ足かせをはめない政治的な決着をアメリカはしているというふうな柔軟性を求めたのではないかという具合に私は理解しております。
  75. 井上哲士

    井上哲士君 この一〇年度予算案の発表の前の議会公聴会で、コンウェー海兵隊司令官がこのグアム移転計画もこのQDRで再検討される見通しだという発言もしているわけですね。今参考人は、これは変更しないという意思なんだということも言われましたけれども、こういう発言との関係でどう見るのか。逆に言いますと、あえてアメリカ側では承認しないということにはこういうことの背景もあるんじゃないかということも思うわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  76. 川上高司

    参考人川上高司君) アメリカ政府当局者じゃありませんので、その辺の事情は御勘弁願いたいんですが、ただ、私の私見から申しますと、事今回のグアム協定に関する部分に関しましては、アメリカとしては、もしそれが実現するんだったら喜んでやろうと。  ただ、グアムといいましても、そのほかに空軍でありますとか海軍でありますとか、それから艦艇を変更したり、いろんなものを寄港させるという具合になっておりますので、当然ながらその見直しというのはあるわけでございます。  でありますから、繰り返しになりますが、現在進行中の中でも私の私見としての考え方は、これだけクリントン国務長官、それからオバマ大統領、それからゲーツ国防長官が、現在の日本との間の在日米軍再編協議に関しては履行されるべきだというふうなことで発言しておりますので、この部分に関しては変更はないのではないかと個人的に思う次第であります。
  77. 井上哲士

    井上哲士君 ありがとうございました。  終わります。
  78. 山内徳信

    ○山内徳信君 私は、最初川上参考人に質問いたします。その後、村田さん、そして佐藤先生、新崎参考人の順に質問したいと思います。  先ほどの先生方の御意見を聞いておりますと、特に川上参考人村田参考人は今回のグアム協定について、沖縄基地負担の軽減になるんだと、沖縄県民負担の軽減になるんだということをかなり強調していらっしゃいます。私は、外交防衛委員会で余りそういうこと言うなと外務大臣防衛大臣に申し上げておるんであります。  負担軽減という場合に、やはり学者として、これからの人間としてもっと視野を広げて、この地球上に、この沖縄に生きておるのは沖縄県民百三十万なのか、その百三十万の人間が生きておる大地はどうなるのか、陸地はどうなるのか、海域はどうなるのかというところまで議論をしていかなければ。    〔委員長退席、理事浅尾慶一郎君着席〕  二十一世紀は環境の世紀、京都会議とか北海道洞爺湖サミットも日本は開催したわけです。そういう意味で、今日は、私は午後の委員会で、これは辺野古海域と大浦湾のアオサンゴについた写真でございます。それからもう一つは、大浦湾という、これを日本中の人が御覧になったら、やはりこの海は埋めるべきじゃないなと、こういう結論に至るんだろうと思います。現在の麻生総理大臣は、政調会長時代にあの辺野古の海は埋めたくないと、こういうふうにおっしゃったんです。そのことは私は総理大臣にも申し上げてあります。このパンフを説明する時間はございませんから前に進めていきますが。  今、辺野古に新しい基地計画をされつつあって、環境アセスの準備書に対する意見書を今県民、国民は出しております。そういう状況の中で、川上先生が書かれた文書を読んだことがあります。新しい基地建設に向けて反対派がおると、こういうことについてやはりちゃんと政府は対応せぬといかぬのじゃないかという趣旨の論を書かれておりまして、私は非常に残念に思ったんです。反対派は悪じゃないんです。こういうふうな環境を守り抜きたいと、この地球の環境を守り抜きたいという。むしろ、何もしない、上からただ両国で決めたからこれ聞けといって押し付けるのがむしろ悪い方だと思うんです。したがいまして、純粋な県民、国民がこの海を守りたいと、こういうふうに頑張っておることを私は反対派という言葉は使わぬで、私の市では良民と、いい人、良民と言っているんです。  したがって、願わくば川上参考人も是非辺野古に行かれて、この大浦湾に潜られて、この大自然の豊かさ、これを守りたいという気持ちになってほしいと思います。  そこで、時間も限られておりますから、端的にお伺いしたい。  もし、もしの話です。先生のお住まいの地域に日米両政府普天間飛行場の移設先と決まったときに、先生は喜んで引き受けましょうと、地域の人々を説得して、沖縄の人々の負担軽減にもなるから、自然破壊も食い止められるから、ここでやはり受け入れようやと、喜んでそういうお気持ちになられるかをまずお伺いしたいと思います。
  79. 川上高司

    参考人川上高司君) まず、私、辺野古の上をヘリコプターで一時間にわたって飛んだことがございます。それから、辺野古の方も三回にわたりまして実地調査に参りまして、非常にきれいな海でありますし、それからウミガメの産地でありますし、それからサンゴの産地であるし、ジュゴンも生息するということから、非常にやっぱりこれほどの環境、破壊をするべきではないというのは確かに私個人として思いますし、それから、私の住んでいる家のそばにそういう基地が来ますならば、当然ながら不愉快な思いをするのは間違いございません。    〔理事浅尾慶一郎君退席、委員長着席〕  しかしながら、私が先ほど述べさせていただきましたように、この問題は国家の安全保障と、若しくは沖縄もそうだと思いますが、それと環境の問題をどうバランスを取らせるか。若しくは沖縄全体のプラスとマイナスをどう考えるか。辺野古の皆さんには非常にこれは負担を、もし移るならば負担を掛けることになりますが、宜野湾市の皆さんに対しては多大なる危険性の除去ということになるわけでありますし、人口の密集度から考えましてもはるかに違う。それから、シュワブには既に基地がある。いろんなやっぱりそういうふうなバランスの問題が私はあるのではないかと思います。  その上に立ちまして、できますならば、今回もしこれが履行されて辺野古に代替基地が設けられるならば、できるだけそういう環境面に関しましては考慮をして、運用面の考慮、それからいろんな環境アセスの結果出ておりますけれども、住民の皆さんにとってなるだけ負担のならないような結果を出すべきだと思っております。  それから、最後に一言。私が文書で反対派の皆さんとの対話をすべきと書いた意図といたしましては、あくまでもこれ地元の皆さんとの対話を最優先に日本政府は考えるべきだと。アメリカにおきましても、アメリカ基地を見ておりましても、当然ながら住民の皆さんの声は反映させているわけでございます。そういう意味から見ましても、私の論文の趣旨はそういう意味でございます。  以上です。
  80. 山内徳信

    ○山内徳信君 ありがとうございました。  次は村田先生にお伺いするんですが、私が見る限り、私は研究者ではございませんから、グアム協定は読んでいます、上からだけで見るんじゃなくして横からも下からも現地からも見る、そういうことに心掛けておりますが、グアム移転協定は結論的に言えばアメリカの一方的な勝ちであった、外交上の。日本外交の敗北であった。復帰後三十七年の間に沖縄基地はかなり返還されてきましたが、それは個別的に、具体的に年次計画を立ててやってきたんです。それを、パッケージ論をかぶせて、大きな網をかぶせて、そして辺野古新基地ができなければグアム移転もありませんよと、嘉手納飛行場以南の基地の返還もありませんよというのは、これは脅迫的であります、脅迫的。  したがいまして、こういう外交を私は評価できない。日本外交の敗北であった。アメリカのしたたかな戦略。そして、新しくできる基地はあとじゃ何年使いますということを、日本はその条件付けていない、百年使うのか。前の沖縄県知事は十五年使用ですよと、こういう年限を切ったわけです。沖縄側から見ると、私から見ると、やはり古くなった基地は当然無条件に返すべきである、キャンプ・キンザーもその他も瑞慶覧も。それに網をかぶせたというのはアメリカ側のしたたかな戦略。転んでもただは起きない、古くなってもただは返さない。県内移設という条件付けて新しいのを造れと、二十一世紀型の飛行場を造るならば普天間返しましょうと。しかし、それが一四年まで無事故のままにやはり推移するとは限らない。  そういうふうに見たときに、私はこの問題は、普天間は無条件に、アメリカ本国辺りでも、グアムも問題視しておるわけです、チャモロ族は、原住民は。そういう状況を見ると、やはり力のある大国たちがもっと寛容の精神に立って、踏みつぶされておる人を更に踏みつぶしていくという、そういう外交は間違っておる、敗北であると、こういうふうに私は考えますが、村田先生の立場からはどういうふうに、余り長い説明はよろしゅうございますから、結論的なことを聞いておきたいです。
  81. 村田晃嗣

    参考人村田晃嗣君) アメリカ外交がしたたかであるという点については先生と全く意見を同じくするところでございまして、問題は、では我々がどの程度したたかになれるかということで、アメリカのしたたかさを批判しても意味がないだろうというふうに私は思いますということですね。  それから、日本外交の敗北であったのかどうかということもこれは大いに議論のあるところだろうと思います。そのように論ずることはもちろん可能だと思いますけれども、しかし外交上の条約協定というのを条文からだけ判断するという考え方は非常に静的な考え方、つまり止まった考え方であって、政治的ダイナミクスを欠く。これが成立した後にどのように運用していくのか、そしてこれと連動させてほかのイシューをどのように日本に有利にしたたかな外交を展開するか。したたかさはこの先に求められているのであって、ここで静止すべきではないと思います。
  82. 山内徳信

    ○山内徳信君 佐藤先生にお伺いしたいと思います。  佐藤先生がお勤めの沖縄国際大学に大型ヘリが墜落して本館が燃えました、焼けましたね。そのとき、その翌日も私は現場に行っていますが、アメリカ軍は沖縄県警、それからこっちから行った外務省関係者、政府関係者も中に入れなかった。いわゆるこれはまさに植民地的な軍事優先のその実態を暴露しておるような状況であったわけです。先生は日常生活も宜野湾にお住まいでございますから、大変だと思います。伊波洋一市長からはずっと要請を受けております。  したがいまして、あの爆音の実態、爆音訴訟原告団が、市民が勝利をしておりますね。そういう異常な普天間飛行場でございます。そして、アメリカ軍は、いわゆる爆音防止協定、騒音防止協定、これは日米合同委員会で結んでおりますから、その段階としては今のグアム協定よりは違うと思いますが、協定には間違いないんですね。アメリカ軍が守らなければ、嘉手納飛行場の爆音防止協定も全く守らぬと。ずっと年間通して市民から、あるいは首長から、どうにかやれという強い要請を受けておるが、聞かないんですね、聞かない。  ですから、アメリカ軍は軍隊ですから、民間人や市民が言っても聞かない、軍隊は。そういう軍隊の沖縄からの移転について、パッケージでいっぱい条件を付けておりますが、アメリカ軍が騒音防止協定さえも守らないアメリカが、このグアム協定日本から予算を出せと、お金を出せという要求をしても、私は余りまじめに守る必要はないんじゃないかという意見です。  私は読谷ですから、嘉手納爆音訴訟原告団です、嘉手納飛行場の。だから、私は殺人的な爆音と言うんです。そういうふうに爆音防止協定を守らないアメリカと今度は日本グアム協定を結んでおるわけですが、これはやはり、この協定は実効性があって成功すると先生は考えておられるのか、あるいはその逆なのかをお伺いしておきたいと思います。
  83. 佐藤学

    参考人佐藤学君) 辺野古にできる基地滑走路を二本造ります。それは一本を着陸用、一本を離陸用ということで騒音が集落、住宅地に被害が及ばないようにというふうになっているわけですが、固定翼機を飛ばすようになったときには、これ当然一本の滑走路でタッチ・アンド・ゴー、着陸してまた飛び上がるという訓練を、普天間基地で現在やっているような訓練をやるわけです。そうすると、着陸用と離陸用と二本造りましたということには、実際は意味がないわけです。  今回、環境アセスメントに関しても、その準備書の中でどういう飛行機、要するに固定機が飛ぶということを想定していないわけですが、じゃ、固定翼機、要するにヘリコプターでない飛行機は飛ばさないのかといえば、そういう保証は当然できないわけです。  また、爆音の問題、騒音の問題に関していいますと、夜十時から朝六時までは飛んではいけないということになっていますが、これは緊急の場合にはその限りではないと。お話がありましたように、私の大学は普天間基地の隣でございまして、自分のアパートはそこから十五分歩いて帰るところにありますが、毎晩十一時ごろ自分が研究室から家に帰るとき、しばしば十時以降飛ぶわけです。これは要するに、その限りではないということで、それでよいことになってしまう。それに関してじゃ何かの縛りが掛けられるかといえば、掛けられない。運用で対応するということには大きな無理があるということです。ですから、騒音防止協定を結んだところで、米軍側がこれは必要であると言えばもうそれでおしまいというのが、もう山内委員よく御存じのように、それが実態です。  ですから、できた後の運用面の改善をしていくということははなから無理であろうと思います。嘉手納、普天間でできないことを辺野古でやるかといった場合、やらないでしょうというふうに考えております。  ですから、これが負担の軽減になるのか。ならないだろうと思いますし、また、それを全国メディアあるいは東京では、沖縄の県内での対立状況は、現在の位置にV字案の滑走路を造るか、それを数十メートルから百メートル沖合に出すかの争いであるというふうに報道されていますが、これは違うのであって、百メートル出したところで、ヘリコプターが周回すればこれ関係ないわけです。普天間基地状況、どのように市街地を飛んでいるかを見れば、辺野古に新しくできる基地で同じようなことをやるならば、百メートル沖に出すことというのは何の意味もないということを指摘しておきたいと思います。  もう一点だけ。写真で見るきれいな海がつぶされるというのは地元にとっての利害の問題ではないんです、これ。環境に関する関心がこれだけ高まった中で、日本アメリカ政府が、こういう希少生物の生息が確認されているサンゴ礁の海を埋めて軍事基地を新しく造るということが一体どのようなメッセージをほかの国々に送るのかということを考えた方がいいと私は思います。  以上です。
  84. 山内徳信

    ○山内徳信君 最後に、新崎参考人にお伺いしたいと思います。  戦後、五十年代に沖縄基地は、占領軍の時代にも基地はどんどん造られていきましたが、五十年代に入って更に拡張していくと。そのとき、銃剣を突き付けられて、あるいはブルドーザーが入ってきて家屋敷をつぶして、そして次々と基地を造っていった。いわゆる銃剣とブルドーザーによって沖縄基地ができていったと言われております。そういう戦いの中から、沖縄県民は自らの人権、あの当時は人権保障はありませんでした、自らの生活を守るために立ち上がるわけであります。  そして、最近の事例としては、文科省は高校生が使う日本史教科書から、沖縄戦のときの沖縄県民のあの集団死、集団自決については日本軍は関与していなかった、指示、命令は出していなかったという、削除をしていくという、そういう状況があったときに、県民は、はるかに予想を上回って、宜野湾市の海浜公園に参加した人自身がびっくりするほど、十一万の人間が集まってきた。そういうふうにして、どうして他府県では、この教科書は沖縄県の高校生だけが使う教科書でなくて北海道から鹿児島までみんな使うのに、どうして他府県では教科書がそういうふうに改変されていく、捏造されていく、改悪されていく、それに立ち上がらないのに、なぜ沖縄県民はああいうふうなすごい熱気を持って、お年寄りから子供たち含めて、日本の行く末を誤らせてはいけない、戦争に向かってはいけない、こういう思いで参加をしたんだろうと思います。  そういうことについて新崎参考人の、戦後最初の島ぐるみの戦いと最近の教科書をめぐる県民の戦いの背景みたいなのを含めて、お聞かせ願いたいと思います。
  85. 新崎盛暉

    参考人新崎盛暉君) 三十分ぐらいでもあれば今のお答えができると思いますけれども、詳しくは私が書いた本を読んでくださいということですが。  つまり、沖縄の人たちが社会的に何を体験してきたかと、特にこの五、六十年の中で体験をしてきたかというところでいえば、一つの原点はあの沖縄戦、地上戦だろうと思います。その直接体験者はもう人口の上でいえば極めてわずかになっています。にもかかわらず、例えば教科書検定の問題で、一昨年でしたか、あれだけの人が集まったり、その抗議のために集まったのはなぜかというと、やはりそういう体験がずっと語り継がれたりしながら社会的に共有化されているということだろうと思います。語り継がれているというのは、例えば今言葉として出たいわゆる集団自決の関係者などがそのことを意識的に語ったというわけではありません。むしろそういうことは一切黙して語らない人の方が多かったのではないかと思います。ただ、その人たちの子供とか孫とかが、その語れない雰囲気、そういうものから言わば酌み取ったもの、そういうものなどを自分の中で反すうしたり、あるいは、何といいますか、継承していく努力をしている。  例えば、この沖縄戦の問題なんかについて非常に、何といいますか、私などから見ると執念を持ってその事実を掘り起こしたり何かしているような新聞記者とか、そういう人たちを見てみますと、その人たちは四十代ぐらいの人なんですね。四十代ぐらいの人たちが、直接体験していたわけでも何でもない、ただ、彼ら彼女らは社会的雰囲気として、自分たちが受け継いできたものをもう少し共有化するための努力をしたいということを恐らくやっているのだろうと思います。  そういうのがどこかで、例えば何かのきっかけで爆発的に現れる。それが十万人とかそういう規模の集会などでいうと、五〇年代の島ぐるみ闘争というのがありましたけれども、これは米軍に土地を取り上げられた地主に対する同情や共感、ただそれだけで、その集会のスローガンとか要求はそういうものですけれども、それだけでそれだけの人たちが集まっているかというとそうではなくて、様々な人権侵害とかいろいろなものに対する、米軍の支配のやり方に対する異議申立てがそこに出てきている。  この前の教科書の問題でいえば、教科書検定意見の削除というだけが要求されていますけれども、なぜそれだけで、みんながそのことを理解して集まったのかといえば、私はそうではないと思っています。それは辺野古の基地の問題もあります。それで、辺野古の基地を造るためにわざわざ自衛隊の掃海母艦か何かが出動して、業者がなかなかできないような海底の作業などをあっという間にやってしまったとか、そういう自衛隊の出動が、そういう民間の基地建設あるいはそのための調査などに出てくるのは初めてだとか、初めてであるにもかかわらず、当時の例えば安倍首相はこれを国家資源の有効利用だと国会で答弁されていましたけれども、そういうことに対する反発があそこへ結集していくということなんですね。  ですから、このグアム協定、これは僕は、政府自身がこの実効性を否定していますから、余り意味がないような気がしますが、こういうものの一つ一つの積み重ねが言わばそういう問題を、民衆のあれをつくり出してきている。  なお、これはどこで出てくるか我々にも分からないし、これがどれだけの大きさを持ってどこで爆発するかも分からない問題だと思います。  ただ、こういうところでの参考人を含めての議論を聞いていると、どうしても国家と国家の関係とか国家の利益だとか、そういうことの中で、国家を成り立たせている国民だとか住民だとか、我々から見るとグアムアメリカの領土、アメリカ自治領だから、アメリカだからと言ってもう片付けてしまうけれども、そこに住んでいるチャモロ族の問題だとか、そういうことにやはりもう少しは目をやって、その中で一体国を守るというのは何を守ることなのかということが考えられなければ、いつまでたってもこういう問題は解決していかないのではないかと私は思います。
  86. 山内徳信

    ○山内徳信君 ありがとうございました。
  87. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言お礼を申し上げます。  参考人の先生方には、長時間にわたりまして大変有意義な御意見を賜り誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  午後二時に再開をすることとし、休憩いたします。    午後一時四分休憩      ─────・─────    午後二時開会
  88. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) ただいまから外交防衛委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、石井一君及び長谷川大紋君が委員辞任され、その補欠として喜納昌吉君及び牧野たかお君が選任をされました。     ─────────────
  89. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  第三海兵機動展開部隊要員及びその家族沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣府政策統括官原田正司君外九名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  91. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 第三海兵機動展開部隊要員及びその家族沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  92. 広中和歌子

    広中和歌子君 よろしくお願いいたします。  大分古いことになりますが、一九九五年、日米首脳会談が開かれ、橋本総理が沖縄米軍基地の整理、統合をアメリカに要請し、五年から七年以内に代替施設が完成、運用可能になった後、全面的に返還されるという約束がなされました。これをSACOというんですか、SACO、沖縄に関する特別行動委員会が設置されてからはや十五年の時が流れております。  私自身、今回、沖縄基地を訪問いたしましたけれども、今度で二度目でございます。なぜこれだけ時間を掛けても解決されないのか、その一番大きな理由は何だと思われますか。外務大臣並びに防衛大臣、それぞれお答えいただければと思います。
  93. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今先生の御指摘の点につきましては、普天間飛行場の移設・返還について、平成八年の橋本・モンデール会談、SACO最終報告を受けまして平成十六年四月から環境影響評価手続を開始したところでありますけれども、一部反対派の妨害等もありましてそのプロセスが必ずしも円滑に進んでいなかったところであります。その後、平成十六年八月、宜野湾市におけるヘリコプター墜落事故の発生もございまして、市街地に所在する普天間飛行場の周辺住民の方々の不安を解消するため同飛行場の一層の早期移設・返還の必要性が高まりました。  このようにSACO最終報告後約十年にわたり代替施設の建設が進まなかったとの経緯を踏まえまして、生活環境や自然環境、実行性等の、十分考慮しながら米軍再編にかかわる日米協議の中で改めて検討を行った結果、平成十八年五月にロードマップにおいて現在の移設案を日米間で合意をいたしました。  現在、政府としては、ロードマップに従って普天間飛行場の移設・返還を実現するべく普天間議会の下に二つのワーキングチームを設置し、地元との信頼関係を築きながら協議を行っているところでございます。  また、環境影響評価手続については、方法書に沿った調査実施した上で本年四月一日、沖縄県知事等に準備書を送付し、五月一日までに縦覧したところでございますけれども、このような手続を一つずつ、一つ一つ丁寧に行ってきた中で現時点において当初計画から八か月程度遅れているところでございます。  政府としては、今後も地元意見をよく耳を傾け、よく説明をして理解を得ながら、二〇一四年の代替施設の完成目標に向けて、日米合意に従って、一日も早い普天間飛行場の移設・返還を実現していきたいというふうに考えておるところでございます。
  94. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 御質問の通告ございませんでしたけれども、今防衛大臣が御答弁されたことと同様でございますが、SACOのことにつきましては、その中で、普天間の移設につきましては地元の調整等もあり、また米側との調整もありまして遅れておるところでございますが、しかし、読谷飛行場の返還、それから楚辺通信施設の返還などは進展をしてきているところでございます。  私どもとしては、今回、このロードマップに従いまして、是非、まずグアムへの海兵隊移転ということを実現をさせていただいて、そして、そのほかの普天間飛行場の移設、また嘉手納以南の施設、土地の返還、こういうものも同時に進めてまいりたいと、そういうふうに思っているところでございます。
  95. 広中和歌子

    広中和歌子君 当然、防衛大臣外務大臣普天間基地そのものにおいでになったことあると思います。あそこは、向こう側、米軍側に言わせれば、元々その基地ができたときは野っ原であって、人が余り住んでいないというわけですけれども、現在どういう状況になっているかと。九万人の人口が宜野湾市に住んでおりまして、その真ん中にプールのようにというんでしょうか、空き地に基地があると、そういう状況でございます。宜野湾市のほとんどを基地が占めておりますものですから、その周辺は非常に密集していて、そこに幼稚園はもとより、学校そして大学まで建っている。  ラムズフェルド国防長官が二〇〇三年ですか、普天間を訪問されてびっくりなさって、何とかしようというようなこともあって、そして二〇〇五年にワシントンで日米安全保障委員会、2プラス2が開催されたと、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。つまり、アメリカとしては普天間は継続してはいけないという危機意識を持っていながら、日本側が十分に動かなかったこと、そのことについてどのように責任を感じていらっしゃるんでしょうか。
  96. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) どなたに質問ですか。
  97. 広中和歌子

    広中和歌子君 大臣、どっちでもいいです。
  98. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今先生の御指摘、普天間の現状という部分に関しましては、当然我々も先生と同じように、あの地域、飛行場の近くにあれだけの人口が集中しているということに対しては大変大きな問題意識を持っているわけで、今後、今先生が御指摘のあったように、あの普天間をどうするのかというのは我々の最大の課題でもありますし、そのための移設というものを我々も考えておるところでございます。  ラムズフェルド長官がそういった問題意識を持たれたというのは承知はしておりますけれども、我々はあくまでもSACOそしてまたその日米の協議会の中で、我々の問題意識の中で今まで進めてきたところでありますので、逆に言えば、我々の方がそれに対して協力的でなかったとかそういうことではなくて、我々もやれる中で努力をしてきたということだけは申し上げておきたいというふうに思うところであります。
  99. 広中和歌子

    広中和歌子君 この2プラス2というんですか、ロードマップというんでしょうか、ともかく米軍再編が行われると。そして、グアム移転が行われる、海兵隊の一部がそこに移動すると。そういうようなことが行われているときに、普天間をセットで考えられなかったのか。  つまり、一九九五年の段階では、代替地が条件となって普天間の撤廃というのが、廃止があったわけですよね。だけれども、この二〇〇五年の新しい会談が始まった中で、なぜセットで、つまりトレードオフとして考えられなかったのか。  そしてさらに、その立ち退き料と言っては語弊があるかもしれないけれども、グアム海兵隊が八千人移動するについてはお金を付けて出ていっていただくと、そういうことまでされているわけですから、そこのところでばっちり交渉をなさらなかったというのは、私は、外務大臣、申し訳ないけれども、余りにも弱腰外交というふうにしか言えないんですけれども、いかがでしょう。
  100. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 在日米軍のこの再編につきましては、もう度々申し上げておりますけれども、抑止力維持とそれからいわゆる地元負担の軽減の観点、そういう両面から日米で、政府間で2プラス2の協議などを通じて話が行われてきたわけでありますが、今申し上げましたけれども、私どもとしても、抑止力維持をしながら負担を軽減するというそういう考え方に基づきまして、嘉手納飛行場以南の施設・区域、これの返還につながる沖縄海兵隊グアムへの移転、またさらにこの代替施設の建設ということで、これらは相互に関連するものとして日米両政府検討して合意をしたものでございます、もう委員十分御承知のことでありますが。  これは、二〇〇六年五月のロードマップ、それからこの今御審議いただいています協定の前文にも記載をされているとおりでございますが、こういうロードマップに基づいて実施をされます、行われます在日米軍再編事業は、私たちとしてはやはり、先ほどから繰り返していますが、地元の御負担を少しでも減らすと。私も普天間飛行場のところに行ってまいりました。委員もおっしゃったとおり、本当に危険極まりない状況でありますし、事故も事件もある、騒音もあるということで、そういう意味では一刻も早くこれの移転を実現しなければなりませんし、そういう意味で今回のこのロードマップというのは最善の施策だと考えておるわけでございます。  そういうことで、このロードマップを具体的に実施するためにも、このグアム協定を是非御審議をいただいて御承認をいただきたいと思っているところでございます。
  101. 広中和歌子

    広中和歌子君 それでは、グアム協定でございますけれども、午前中、参考人質疑がございまして、いろいろな方から御意見を伺いました。  ある方の御意見でございますけれども、グアム協定で今私どもは日本で審議しているわけですけれども、アメリカ側としては、幾ら大統領が、あるいは向こうの国防長官が合意したとしても、条約にサインをしたとしても、条約ですから上院の可決がなければそれは発効されないということでございますし、予算についても同様だということでございます。  そういうようなことで、もしも万が一何らかの理由で、今経済危機でございますし、アメリカはいろいろなところでお金を使わなくちゃならないと、そういう中で外国基地を建設するためにお金を使えないという状況一つの理由になりまして合意されないとしたらば、その節には、日本の今回審議されている沖縄移転にかかわるお金、二十八億ドルですか、それはどうなりますんでしょうか。
  102. 梅本和義

    政府参考人(梅本和義君) まず、これもこれまでにも御答弁申し上げておりますとおり、アメリカがこの国際約束を上院承認を得る国会承認条約とするか、あるいは行政府限りで結ぶ取決めとするか、これはアメリカの中の立法府と行政府との関係でございまして、それは最終的にはアメリカ政府が判断をするということでありますが、アメリカ政府日本政府との間で約束をしたこと、移転のために必要な措置をとる、資金の拠出も含めてとるという約束については、これはアメリカはこれをきちんと守るというふうに私ども考えております。  さはさりながら、何らかの事情によりましてアメリカ側からの拠出がないというような場合におきましては、この協定の中にも、第九条であったと思いますけれども、アメリカ側の資金の拠出がない場合には日本側の資金の拠出の義務も生じないという仕組みはできているということでございます。  ただ、私ども、あくまでそういうような状況は仕組みとしては確保しておりますけれども、日米両政府ともこの案件は是非とも前に進めるんだということで、これは麻生総理がオバマ大統領とお会いになられたときも、また中曽根大臣クリントン国務長官とお会いになられたときにも着実に実施をしていこうということを確認しているところでございます。
  103. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカは三権分立というのが非常にしっかりしているというふうに私は言われたことがございます。日本はそうじゃないみたいですけれども、みたいですけれども。  京都議定書のときにも、アメリカは京都議定書にサインをしながら、しかしながら上院で批准されなかったためにアメリカは京都議定書の約束から外れたところに存在していると、そういう例もございますから一応心配しておいた方がいいんじゃないかと思いますけれども、外務大臣、いかがですか。
  104. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) この度、米国の二〇一〇年度予算におきまして、この今御審議いただいております海兵隊グアムへの移転に関しまして、米国側の対応というものがこれが公表されました。  これは米国の関連予算の計上ということでございますけれども、七日の日に国防省が公表いたしました二〇一〇年のアメリカの会計年度の国防予算に関する資料の中で、沖縄海兵隊グアム移転に関する措置の開始として三・七八億ドルの予算を計上すると、そういう旨はっきり明記されておるわけでございまして、これはもうオバマ政権の本件の事業に対するコミットメントが改めて確認されたものであると、そういうふうに私どもは認識をしておるところでございます。
  105. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは度々指摘されていることでございますけれども、私どもみんなで普天間に参りましたときに、現実には一万二、三千人ぐらいの海兵隊しかいないと、そういうことでございまして、どこに行っていらっしゃるんですかと聞いたら、何人という具体的な数字はおっしゃらなかったけれども、イラク、中近東の方にも行っているというようなことでございまして、そういう中で、一万八千人から八千人減らしてあげると言われましても大した負担軽減にはなりませんよね。いかがですか。
  106. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 負担の軽減は、沖縄はいろいろな面で御負担いただいている、県民の皆さんに御負担いただいているわけでありまして、海兵隊のこの移転によります負担の軽減、さらに、委員が十分御承知のとおり、普天間飛行場の移転、さらに嘉手納以南の土地とか施設の返還、こういうもの、また、その返還された土地等の今度有効活用による今度はプラス面もありまして、そういう意味で私たちとしては、負担の軽減にもなり、また沖縄の将来の発展にもつながるものではないかと、そういうふうに考えているところでございます。
  107. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカ大統領がブッシュさんからオバマさんに替わったわけですけれども、外交防衛政策に変化が生じると思うかと、これも多くの同僚議員から質問していることかと思いますけれども、もう一度伺います。
  108. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) オバマ大統領になりましてまだ間もないわけでありますが、米国は今その辺の外交政策等を検討中なのではないかと、そういうふうに私は承知をしております。全世界的に見てということでもありますが。  そういうことであろうかと思いますが、ただ、日米の関係で申しますと、私とヒラリー・クリントン国務長官との会談、あるいはオバマ大統領と麻生総理との会談、また事務レベル等におきましても、日米同盟の重要性につきましては米国側もこれを表明しておりますし、またこの核抑止力を含む我が国の防衛についてもヒラリー国務長官は来日時にはっきりとコミットをされておるわけでありまして、私たちとしては、日米関係におけるこの安全保障協力というものは大きな変化はないものと、そういうふうに認識をしているところでございます。
  109. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も時々あの地図を見るんですけれども、グアムの位置というのはかなり日本から離れております。そういう中で、グアムアメリカがどのような展開をするのか分かりませんけれども、そこに重点がシフトした場合ですけれども、日本抑止力へどういう影響があるのか、それによって、もし、自衛隊の沖縄でのプレゼンスや役割に何らかの変化が起こるのかどうか、それについて伺います。
  110. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今般の米軍再編に伴う在沖縄海兵隊グアム移転につきましては、沖縄負担の軽減を図るために海兵隊要員の八千人及びその家族グアム移転させるものですが、他方、沖縄に一定の初動対処能力を有する海兵隊維持されることや、航空輸送や海上輸送の能力向上等が見込まれるなどの要素が考慮されておりますので、基本的には海兵隊が果たしている抑止力維持されるものと考えております。  また、在沖海兵隊グアム移転沖縄における自衛隊の能力強化は直接関係するものではありません。例えば、ロードマップに示されるとおり、在沖縄海兵隊グアム移転に続いて沖縄に残る施設・区域が統合された後、相当規模の土地の返還が可能となりますけれども、海兵隊グアム移転の趣旨や内容をかんがみれば、これらの土地に自衛隊の部隊を配置することというのは現時点では考えておりません。
  111. 広中和歌子

    広中和歌子君 それでは、アメリカ政策にまた戻りますけれども、アフガニスタンとかイラクとか、やはり中近東の不安定地域への関心が非常に高まると。そういう中で、ショー・ユア・フラッグとかブーツ・オン・ザ・グラウンドといったような形での日本の協力というのが今後求められるということがあるとお考えでしょうか、中曽根大臣、お伺いします。
  112. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 今委員の御質問は、アフガニスタン……
  113. 広中和歌子

    広中和歌子君 いえ、アフガニスタンでもどこでもいいんですけれども、これからアメリカというのは、日本アメリカとの関係においては日本防衛すると、この近海を守るということなんでございますけれども、明らかにアメリカは最近全世界的な展開をしていると。そういう中で、どなたか、アーミテージさんでしたけれども、ブッシュの時代でしたが、ブーツ・オン・ザ・グラウンド、あるいはショー・ユア・フラッグとか、つまり、見える形で軍隊を出せと、あるいは軍人を出せと、そういうようなプレッシャーを掛けてきましたよね。そして日本は自衛隊を送ったということです。  そういう中で、今後の日本の対応はどういうものになるのか。少なくともアフガニスタン支援に関してですけれども、まだ自衛隊を送っていないんじゃなかったかしら、今後どういう形で支援をしていくのか。今までどおりの民間支援、国際機関であるとかNGOとか、そういう民間支援でやっていくのか、また、本会議でも御質問したように犬塚案というのもあるわけですけれども、そういう形を支援していく方向なのか、お伺いいたします。
  114. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 米国の要人やいろいろな方々の御発言もあろうかと思いますが、我が国のアフガニスタンを始めとする地域、またそのほかの地域に対する支援というものにつきましては、これは基本的に、外国がどうこう発言されたからとかいうことでなくて、我が国独自の判断でその必要性、緊急性等を判断して行っているものでございます。これがまず基本でございます。  それから、例えばアフガニスタンに申し上げますと、これは、もう委員も十分御承知のとおりでありますが、これはテロ対策という意味においては、海上において補給支援活動を行っておりますが、アフガニスタンの国内におきましても、これはもう教育の支援、保健医療の支援、道路の建設、学校の建設等々、数多くの支援をやっているところでございますし、また、この度、約八万人のアフガニスタンの警察官、これの給与を我が国が半年間負担をするということによって治安の維持、あるいは、今後大統領選挙が行われるわけでありますが、平穏にそういうものが実行されるようにと。  あるいは、この間、三月三十一日にはハーグにおきまして国際会議がありまして、私も出席いたしましたけれども、アフガニスタンに安定をもたらすための我が国も引き続いて支援をしていくと。それは政治プロセスの面あるいは治安改善の面、また経済発展基盤、人材育成等々ということも表明をしてきたところでございますし、さらには、この間、四月には東京でパキスタンの支援国会合を開きまして、これはパキスタンのみということだけではなくて、アフガニスタンの治安の回復あるいは安定にはパキスタンの支援も大事だということで各国が集まって、あの地域全体を支援しようということで会議が開かれて、御案内のとおり、我が国が表明いたしました最大十億ドルのプレッジ、支援を始めまして、各国の御協力、賛同もあって、当初予想以上の五十億ドルという多額な支援の表明があったわけでございます。  またさらに、先日、私はイランに参りまして大統領外務大臣にお会いしたわけでありますが、イランそのものの濃縮の問題はありますけれども、ウランの、それとはまた別に、イランと我が国がまた一緒になって、アフガニスタンからイランの方に来ている多くの難民、こういう人たちに対する対策とか、あるいは麻薬ですね、イランの方にたくさん来ているわけですから、そういうものも協力してやりましょうというような形で、我が国としては、会議の開催あるいはいろんな形での支援というものを我が国独自の判断で行っているということでございます。
  115. 広中和歌子

    広中和歌子君 ありがとうございました。  終わります。
  116. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 藤田幸久でございます。  沖縄と同等に非常に重要な北方領土の問題についてお聞きしたいと思います。  今日も政府委員のところで谷内政府代表の名前がまた消されておりますが、今日で三度目、政府委員として出席をされておらないわけですが、中曽根大臣、今日はなぜ谷内政府代表が出席をしていないのか、その理由をまずお聞かせいただきたいと思います。
  117. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 谷内政府代表の本委員会への出席につきましては、この委員会委員長始め理事、皆さん方で御協議をいただいて出欠についてはお決めいただくということが、これが基本であり、当然のことであります。  私どもとしては、四月でございますか、この新聞の記事が出た後、委員会からの本人に対する出席の要求がありましたときには日程の都合上で出席ができないということであったと、そういうふうに認識しておりますけれども、双方の都合が付けばこれは出席していただいて、何といいますか、委員会でその辺の御審議いただくということは、私どもが別にこれを反対をしたりするものでもありませんし、今回のことにつきましても、これは委員会でお決めいただいたものだと、そういうふうに思っておりまして、その辺のことは与野党間でお話合いされた上ではないかと思っております。
  118. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 簡単にお答えいただきたいと思いますが、今日の都合が付かない理由だけお答えいただきたいと思います。
  119. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 恐らく、委員会から御本人に対してどういうような対応をされたのか、私どもちょっと伺っておりませんので、私の方からちょっとお答えできません。
  120. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  121. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 速記を起こしてください。  中曽根外務大臣。  速記を止めてください。    〔午後二時三十三分速記中止〕    〔午後三時一分速記開始〕
  122. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 速記を起こしてください。
  123. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) お答え申し上げます。  本日は、理事会としての意思決定がなされなかったと承知をいたしております。また、なお本日、本人は国際的な諸問題がありまして所用があると、そういうふうに聞いているところでございます。
  124. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 国際的諸問題がある場合に、大臣委員会出席ができて、非常勤である政府委員出席できないということは極めて異常な状況で、今までそういったことがあったのか。それだけ、大臣出席できる立場にあるということを今承って大変驚いた次第でございますけれども、大分時間が過ぎましたんで、次の質問に移らせていただきます。  今回、プーチン首相が昨日来日をされましたが、先日、私が把握しただけでも、日経新聞と共同通信とNHKでのインタビューに答えておられます。その中で、いや、そんな難しい話じゃないんで聞いていていただければ分かるんですけれども、プーチン首相は、三・五島返還論については、日本国内でも固まっていないと聞いており、反応するのは時期尚早だと答えていらっしゃいます。  ポイントは、結果的に相手方のトップであるプーチン首相が日本で三・五島返還論についていろいろ議論が出ているということを御本人が承知しているということですね。つまり、いろいろ経緯はあったにしても、谷内さんが新聞でおっしゃったことが相手方のトップに三・五島論として伝わっているということですけれども、で、日本外務省あるいは政府としてロシア側に説明されたんですか、つまり、谷内発言について。あれからもう約三週間たっています。
  125. 兼原信克

    政府参考人(兼原信克君) ロシア側への我が方の立場の伝達でございますが、外交上の個別のやり取りでございますので個別には申し上げられませんけれども、我が国、日本の北方領土問題に関する我が国の立場についてロシア側にはしっかりと伝えてきております。この問題の最終的解決に全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  126. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 つまり、三・五島論があるということがしっかりプーチン首相に伝わったということだろうと思います。  それで、ということは、この三・五島論の中身についてちょっと。これは、質問通告で谷内さんあての、これは今日の質問は全部谷内さんあての質問ですので、谷内さんに代わって大臣にお答えいただきたいと思いますけれども、この三・五島論というのは、面積折半案とも言われておりますけれども、これで仮に三・五島案でいった場合に、これは結局最終平和条約に至るんですか、それともその三・五島論でいったん話ができたということは、その後に中間条約、あるいは段階論的に進むんでしょうか、どちらでしょうか。最終、平和条約に行くのか行かないかということについて、イエスかノーかで、大臣、お答えいただきたいと思います。
  127. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 政府といたしましては、今委員が御指摘のような、そういう考え方を検討している事実はございません。北方領土問題に関する立場は、もう従来から申し上げておりますけれども、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して、そしてロシア連邦との間で平和条約締結すると、そういうものでございまして、この基本方針の下に北方四島の返還を実現していく、そういう考えでございます。
  128. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 にもかかわらず、先方の首相に三・五島論があると伝わったということは、そういうことが日本国内で論議になっているというふうに先方に伝わっているわけですから、もしそれが間違っているならば、プーチンさんに対して、いや、日本はそういうことはないんだということを説明していかないと、これは外交上は大変な失点になるかと思うので、これは政府委員ではなくて大臣からお答えいただきたいと思います。
  129. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 先ほども申し上げましたけれども、このことにつきましては、ロシア側にも、先ほど参考人が御答弁申し上げましたように伝えてありますし、また、もちろんプーチン氏はどういうところからこのことを承知しているのかしていないのか分かりませんけれども、我が方としては、従来の政府の考え方に変わりないということはしっかりと外交ルートを通じて伝えてあるところでございます。
  130. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ということは、日本の基本的立場を説明したにもかかわらず、先方の首相は、三・五島論ということが論議にあるということを誤解してプーチン首相がこれだけ公の放送及び新聞等で通信社に対して言っているという、つまり、プーチン首相の認識が間違っている、あるいは、得た情報が、今おっしゃったように別のところから情報が行ってしまって間違っているということでしょうか。
  131. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) これは、共同インタビューにおけるプーチン首相の発言の一部をちょっと御紹介させていただきますけれども……
  132. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 さっき紹介しました。
  133. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) いや、そこではないと思いますが、これは、記者さんから、争いのある島々を面積で例えば半分に分けると、そういう問題について貴首相は妥協に応ずる用意があるかと、そのような質問の仕方であったわけでありますが、日本政府がまだ自身の立場を決めていないと、まさかまだきちんと決まっていないような立場について私から何かコメントするよう求めておられるわけではないだろうと、これは両国間の対話の中にとどまり、我々の専門家である両外務省に作業をさせようということで、プーチン首相はそのように述べているわけであります。  それから、このプーチン首相の側近と言われています先方の政府の官房副長官の発言でありますが、引用させていただきますと、最近、日本側より、クリルを等分することの可能性を含め諸島の問題の解決方法に関する幾つかの発言が聞かれたが、これは少なくとも日本政府が支持しているものではなかったと、そういうふうにロシアの政府の官房副長官の発言もあったわけでありまして、私どもとしては、このことにつきましては政府の基本的な考え方がしっかり伝わっているものと、そういうふうに思っております。
  134. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 先方の官房副長官よりもこちらの政府代表の方が多分格が上なんだろうと思いますけれども。そうすると、こちらの政府代表がかなり大きな紙面で言っておると。それに対して、立場決めていないとおっしゃいましたけれども、これは、要するに三・五島論に対して立場を決めていないんではなくて、日本の立場は、つまり帰属をまず確定をするということが基本だという立場が決まっていないというふうに今だと取られてしまうんですけれども、重要なことは、三・五島論云々ではなくてその帰属が重要であるという、東京宣言であるような、その基本が伝わっていないというふうに今の官房副長官の発言からも取れますけれども、いかがでしょうか。
  135. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 先ほどのプーチン首相の発言の、まだきちんと決まっていない、日本政府がまだ自身の立場を決めていないというこの御発言、これが本当に正確にどういうことを意味するかは私もこれを判断なかなかできかねますけれども、日本政府の考え方というものは私はしっかりと本人は理解しているものと、そういうふうに思います。
  136. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 いや、それもまた矛盾でありまして、日本政府は、その四島がまず歴史上もずっと日本に属していたと、それからその所属を決めるということが日本の基本的立場であって、それ以外の部分についていろいろな意見がありますということを先方の首相がコメントしてくるような状況をつくったこと自体が、これ、交渉事とすればこれは非常にまずい既に状況になっている。それに対して対応しないということは外交上極めてまずいということをまず指摘して、次に移りたいと思います。  今日、資料を四枚お配りしておりますけれども、一番最後の四ページ目の資料です。緊急アピールという資料を皆さんにお配りをしてあります。昨日、全国紙三紙に掲載をされたと理解しています。済みません、私の資料の一番下に「朝日新聞など」と書いてありますが、実は朝日新聞はこれ載せておりませんで、産経、日経、毎日、読売だろうと思いますが、同じものです。  これを見てびっくりしたのは、これ名前が九十何名いるんですけれども、このうち十五名が外務省の大使経験者であります。それから、そのうちの、これ、じゃロシアスクールばかりなのかなと思いましたらば、実はアメリカ大使を経験された方も二人おります。  大臣、これだけの、つまり十五人も日本外交を担ってきた方がこれだけ署名アピール、つまり、この間の谷内さんの発言、あるいは麻生さんも同じようなことをおっしゃっていますが、これに対してこういうアピールをされているということについてどうお考えになりますか。
  137. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) まず、このアピールの一番上に大きく書いてありますが、緊急アピールのこの一番の目的あるいはこの主張というものは、ここにあります「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」ということに表れているんではないかと思います。したがいまして、ここに名前を載せている方々はそれへの賛同者であり、それについて言わば警告的なものを発しているものと、そういうふうに思います。  そこで、まずこの前提となります谷内政府代表の発言につきましては、もう再三この委員会で申し上げておりますように、本人は、三・五島返還でもいいのではないかと考えているといったそういう発言は行っていないという説明があるわけでありますが、この緊急アピールは、歴史的にもまた法的にも日本には四島返還を要求する根拠がある旨の記述があるわけでありまして、これは北方領土問題に関する日本政府の立場が維持されるべきことに強い支持をいただいたものと、そういうふうに認識をしております。  こういう意味におきましては、外務省の職員が署名者として同アピールに参加していても問題になるとは考えておりませんし、またOBが署名者として参加しても問題になるとは私は思っておりません。また、私といたしましても、このアピール、基本的立場を崩してはならないというのはこれは当然のことだと思っておりますし、この関係者の皆さんから北方領土返還に向けた激励をいただいたものと、そういうふうにも認識をしておりまして、身を引き締めて対ロ交渉に当たっていきたいと、そういうふうに思っておるところでございます。
  138. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 五月一日のある新聞の報道によりますと、中曽根大臣自身がこの緊急アピールを出した関係者に電話をされたと。ニュージーランドにいたときでしょうか。それで、このアピールの文章について提言をされたと、修正を求められたと。この新聞報道によりますと、この本文の、「わたくしどもは、」から始まって二つ目のパラの最後のところですね。「対露外交の基軸を否定するかのごとき発言をしたわけです。」と。二つ目のパラの最後の三行ですね、「日本政府の首脳が、初めて四島返還という対露外交の基軸を否定するかのごとき発言をしたわけです。」となっておりますが、元々、その否定するかのごときの部分が具体的に否定した発言というふうになっていたものを、中曽根外務大臣が電話をされた結果、否定するかのごとき発言に修正をしたというふうに報道されておりますが、大臣、ニュージーランドから電話をされてこういう修正を求められたというような事実は間違いございませんか。
  139. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 一部の新聞にそのような経過的なことが記載されていたことは私も承知しておりますが、これは正確ではございません。私は、御指摘のような変更を求めたという事実もございません。私は、単に事実と異なる点がありますと、このまんまではこれはまずいですということを申し上げただけでありまして、一部の新聞によれば、私がこういうふうに変えてくださいと要請をしたような記事がありましたけれども、これは正確ではないことをはっきりと申し上げたいと思います。
  140. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 では、事実と異なる部分、最終的なこれ文面ですけれども、どこが事実と異なっておりますでしょうか。
  141. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) この今委員がおっしゃった三行に関しては、現在は異なることにはなっていないと、そういうふうに思います。
  142. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 この基本的立場の根拠というのは、一九九三年の東京宣言、つまりエリツィン・細川会談だと言われておりますけれども、この東京宣言について、〇五年にプーチン大統領日本にいらっしゃった際に、この東京宣言を文書で確認したいと日本政府側が求めたけれども、当時のプーチン大統領はそれを拒否したと言われておりますが、その事実関係は間違いございませんか。
  143. 兼原信克

    政府参考人(兼原信克君) 二〇〇五年の交渉の記録、今手元にございませんので、確実なことは申し上げられませんが、二〇〇一年のイルクーツクの首脳会談で、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約締結交渉のプロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であるということを確認をした上で、一九九三年の東京宣言に基づいて、北方四島の帰属の問題を解決することによって平和条約締結すべきことを、そういうことを確認するイルクーツク声明が署名されております。
  144. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 つまり、東京宣言を文書で確認するということが重要であって、今回はそういう折半論よりも、今プーチンさんいらっしゃっているけれども、今回、そういったことを基盤として確認をする、文書等でする必要があるんじゃないですか、今回。あしたまでいらっしゃいますけれども、いかがですか。
  145. 兼原信克

    政府参考人(兼原信克君) 今回は、日ロ関係全般にかかわる特定の文書を採択することは予定しておりません。
  146. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 つまり、間違って伝わった、外務大臣も今まで谷内さんについては誤解があったと。誤解どころか、先方のプーチン首相がここまでおっしゃっていると。ということは、とにかく今交渉事において、先方のトップが来る前にこちらからそういった漏れてしまって、先方の首相が来る前にモスクワでこういった発信をされていると。ということは、交渉事ですから、むしろこちらが強い立場で臨まなければいけないわけで、今回はロシア側の方が経済危機等々もあって立場が弱いのに、こちらからそんな情報が漏れたこと自体が交渉上極めてまずかったんではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  147. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 先ほども申し上げましたけれども、この谷内発言につきましては、私どもも、本人がそのような発言をしていないということ、それから全体として流れの中で誤解を与えたかもしれないということ、反省をしているということ、そしてこれに対して私は厳重注意をいたしました。そうして、日本政府の方針というものも確認をしておるわけで、総理の御答弁もたしかあったと思います。  今回、プーチン首相との会談の中では、今参考人が申し上げましたとおり、経済問題や二国間の様々な問題が話し合われることになろうかと思いますが、仮にプーチン首相がこのような誤解のような誤った解釈であるということが分かれば、直ちにその場で私どもとしてはそれは訂正をすることが当然だと思っておりますが、先方も新聞報道等も御覧になられていると思いますので、その後の谷内発言後の経緯についても承知されていると思いますので、私は誤解を生ずることはないと、そういうふうに思っております。
  148. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 時間なので、最後に一問。  先ほどこの緊急アピールで、今基本的には事実関係間違いがないということでしたけれども、三つ目のパラグラフの後半ですね、三つ目のパラグラフというのはかなり長い文章の後半ですけれども、後ろから五行目、「むしろロシア側はより強気となり、問題解決の展望はいっそう遠ざかるのではないでしょうか。」と。つまり、こういうことが出ているようではむしろ解決に妨げるんではないかというふうに書いてございますが、この文章については、この部分についてはどうお感じになりますでしょうか、大臣
  149. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 再三申し上げておりますが、谷内氏本人も御自分発言についてそのような意図ではなかったと、また発言をしていないとはっきり話されているわけでありますし、政府としても対応を取っておるわけでありまして、今委員が御指摘の、ロシア側がより強気となり問題解決の展望は一層遠ざかるのではないでしょうかという、私はこのようなことはないと、そういうふうに思っております。
  150. 藤田幸久

    ○藤田幸久君 ありがとうございました。
  151. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 よろしくお願いします。  アメリカは、四月六日、ゲーツ国防長官が記者会見し、F22の新たな生産中止やミサイル防衛の一部計画取りやめなど、無駄の多い事業の中断をオバマ大統領に提言しています。また、オバマ大統領も、四月一日にはロシアのメドベージェフ大統領と新核軍縮条約の年内締結を目指し協議を始め、四月五日のプラハでの演説で核軍縮に対して強い意欲を示しています。国連安全保障理事会は、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に対し、非難や再発射自制要求を盛り込んだ議長声明を発表しました。それに対して、北朝鮮は核問題をめぐる六か国協議離脱を表明しています。一方、昨日、ボスワース北朝鮮問題担当特別代表は、六か国協議再開には辛抱強さと忍耐力を持って前進すると述べています。世界の外交戦略は、北東アジア情勢に対してダイナミックな変化を与え始めています。  そこで質問します。六か国協議再開に関してボスワース特別代表は辛抱強さと忍耐力を持って前進すると言っていますが、日本はどのようなスタンスで対応していくのか、外務大臣、お答えください。
  152. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 昨日十一日にボスワース特別代表と我が方の次官が会談を行いまして意見交換を行いまして、またその後、齋木局長意見交換を行ったわけでありますが、これらの意見交換におきましては、六者会合は現在難しい状況にあるけれども、北朝鮮はまず六者会合にこれに復帰をすべきこと、そして我々としては北朝鮮の反応には過剰反応しないと、また冷静かつ焦らずに対応する必要があるということ、さらに五者として結束を維持していくことが重要であるということをボスワース氏との間で確認をしたところでございます。  政府としましては、引き続いてこの六者会合プロセスの再開に向けて、米国を始めとする、また議長国である中国等とも緊密に連携をしていく考えでございます。
  153. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 今までは圧力と対話という、圧力が前面に出ていたと思うんですけれども、その意味では対話と圧力という感じですか、逆転するという展開ですか。
  154. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) これは両方同時で、またバランスが取れていなければならないと思いますし、圧力というものがどういうものかということもあろうかと思いますが、この六者、また米国、また日本としては北朝鮮に対して措置をとっておるわけでありまして、そういうものが圧力ということになるんだと思いますが、これは両方同時ということだと思います。
  155. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 やっぱり外務省は対話を主導として動かれてほしいなと思っております。  また、こうした世界の核軍縮などに対する今後の日本外交防衛の方針も変わらざるを得ないと私は思っているんですね。オバマ大統領は、MDやF22といった冷戦型の兵器は時代に合わないとして、来年度の予算教書では防衛関連を中心に大幅に事業を見直し、一兆七千億円の予算カットを打ち出しています。日本もMDやF22に関しては見直すべきだと思いますが、防衛大臣、いかがですか。
  156. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) F22に関しましては、我々とすれば、現在、次期の飛行機という、戦闘機というものに対していろいろと今勘案中でございます。ただ、F22の能力、性能というものに関しては、我々とすれば大変興味のあるところでもありますし、そういった意味では、可能性があればこれは追求していくのは当然のことだというふうに思っているところでありますので、検討の材料としては我々としては今落とすということは考えておりません。
  157. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。  今回の北朝鮮のミサイル発射では、自衛隊はイージス艦やPAC3を大々的に展開したんですね。これに関しての総経費を質問した私の四月八日の質問主意書には、政府側は回答してくれないんですね。  改めてお伺いしたいんですけれども、幾らでしょうか。
  158. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 先般の北朝鮮のミサイル発射に際しまして、万が一の備えとして自衛隊法八十二条の二第三項に基づいて破壊措置命令を出しまして、SM3ミサイル搭載のイージス艦「こんごう」、「ちょうかい」の二隻を日本海中部、イージス艦「きりしま」を太平洋に、そしてまたペトリオットPAC3の部隊を東北地方及び首都圏に所在する自衛隊の駐屯地に展開をさせていただきました。  お尋ねの北朝鮮のミサイル発射に備えた措置に費やした経費につきましては、自衛隊を恒常的に維持していくための経費として計上された人件費、燃料費等の中から支出されるため、今回の事案に係る経費を抽出してお答えすることは困難であるというふうに考えておるところでございます。
  159. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 困難というお言葉があるんですけれども、やればできるということですよね。
  160. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今回の北朝鮮のミサイルに備えた措置として、我が国が防衛にかかわる活動を円滑に行うために自衛隊を恒常的に維持していくための経費として、平成二十一年度においては、防衛省の共通費として約九千二百億円、自衛官給与費が一兆三千八百億円等が計上されているところであります。それらの中から、例えば隊員の給与や糧食に要した費用やPAC3の展開のための車両の燃料やイージス艦の燃料に要する費用を支出しているところでございます。
  161. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 その内訳の細かい明細を出してくれますか。
  162. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) それに関しては、極めて、その期間、最初時点で、燃料の経費等もスタート時点からずっとそれを計算しているわけではありませんので、なかなかこれをすべて細かい中で提出するというのはかなり難しいというふうに考えておるところであります。
  163. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 だから、そういうアバウトなやり方をするから、単なる選挙のためにやったのではないか、パフォーマンスではないかというような疑問を持ったりしますので、今後そういうことをはっきりさせてください。  次に、グアム移転協定について質問します。  政府は、米軍再編に関して沖縄負担軽減抑止力維持が目的だと繰り返してきました。しかし、沖縄県民普天間基地を辺野古に移設することを負担軽減とは思っていません。だからこそ度重なる反対運動が行われ、今日まで移設作業が遅れた経緯があります。外務大臣、こういった県民の思いに対してどのような感想をお持ちですか。よろしくお願いします。
  164. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 沖縄、私も訪問いたしまして、沖縄の県民の皆さんが長年多大な負担をしていただいているということは本当に実感として認識をさせていただいたところでございまして、そういう意味からも、一日も早くそういう御負担、騒音、事故、事件等々、いろいろあろうかと思いますが、そういうものを軽減することは、これ政府として大変重要だと思っております。  そういう意味で、このロードマップにのっとった海兵隊グアム移転というものも、これをやはり、今御審議いただいておりますけれども、実現するということはそれの負担の軽減につながるものと、そういうふうに思っておるところでございます。
  165. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 このロードマップというのはブッシュの時代の政策であって、今はオバマに替わっていますから、今世界情勢のやっぱり防衛概念というのは変わっています。この辺についてはどう思われます、外務大臣
  166. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 米国政権が替わりました。日本でも政権が昨年替わった、政権といいますか首脳が、総理大臣が替わったわけでありますが、これは日米両国間でロードマップは合意したものでございまして、政権が替わりましたからといってこれが全く効力をなくすとかそういうものではないということでもありますし、またヒラリー・クリントン長官が来日いたしました際にもこのことについては確認をされておりますし、またこの協定に国務長官自らが署名をされたということでも、米国のこのロードマップまた再編に変化がないということがこれが確認できると、そういうふうに思います。
  167. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 私は、本当はその目的はほかにあると思っているんです、まあ今日は言わないんですけど。だから、これは日本政府というのはよくも気前がいいなと思っているんですね。もっとほかに意図があっていろんなお金が引き出されていくんではないかという予感はしているんですけど、今日は言いません。  今年の四月二十一日の沖縄地元紙琉球新報で高見澤防衛政策局長が、一九九六年のSACO当時、普天間へのオスプレーの配備に関して公表しないように米国に進言したと報道されています。高見澤氏は同紙のインタビューで、この文書は自分が書いたものではないとし、他国が作成した内部文書にコメントする立場にないと発言していますが、沖縄では新たな密約として反発が強まっているんですね。しかし、高見澤氏はこの文書の中身に関しては、オスプレーについていろいろ議論はしたが、詳細は覚えていないと答えているんですね。しかし、ちょうど二〇〇七年四月の十二日の社民党保坂展人議員の質問に、当時の久間大臣、九六年十一月には防衛長官ですか、これは。全然オスプレーについては議論はしていないと答えているんですね。  高見澤氏はいろいろな議論はしたと言っているんですが、これは矛盾しませんか、浜田防衛大臣
  168. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) お答えいたします。  まず、オスプレーの関係の琉球新報の記事でございますけれども、これは既にその時点で国会でも議論をされておりましたので、私も既に国会で議論している話だというふうに申し上げております。それは平成二十年の十月三十日に山内徳信先生からまさに琉球新報に出ているとおりの内容の問題につきまして御質問がありまして、私はそれに対して誠実にお答えをしたというところでございます。  そのお答えの内容というのは、当時、まさにSACOのいろんな議論をしている中で日米間でいろんなやり取りがございまして、その中で当時、まさに琉球新報もそうだと思いますし沖縄タイムスも多分そうだったと思いますけれども、オスプレーが配備されるんではないかというような議論がもう当時からあったわけでございまして、これは沖縄県の基地をやっていた方々は全員御存じの話だろうというふうに思っております。ですから、そういう中でオスプレーの問題について全く話題に上がっていないということではございません。  一方、具体的なじゃ配備の話が、計画はこれでやりたいということがあったかということについては、政府の答弁は一貫をしておりまして、そういったことはないわけでございます。
  169. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 その当時の久間大臣、久間防衛長官ですか、そのころは。その発言は間違っていたということですか。
  170. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) そういうことではなくて、まさに一般的な議論としてどういったやり取りがあるかということ、いろいろその両国の間でやり取りがあると思いますし、また政府の考え方ではなくてもこういった考え方はどうかとかいろいろな細かいやり取りがあるわけでございまして、そういったものと実際の正式な提案といったものとは全くおのずから話が違うというふうに理解をしております。
  171. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。  事実、報道によれば、米海兵隊が二〇〇九年米会計年度航空機配備計画で次期主力輸送機としてMV22オスプレーを二〇一二年十月から普天間に配備することが分かったと報じられているんですね。政府はこれまで具体的な配備計画を承知していないというのを、答弁の方を繰り返していたと思うんですけれども、今、高見澤さんの言葉だと、あれっという部分があるんですけれどもね。  米国はオスプレーを普天間に配備するつもりのようなんですけれども、であるならば、これはたしか二〇一二年といえば辺野古に基地ができ上がるちょうど直前ですよね、これね。そうであるならば、もしもこれが事実で話がされているならば、今回、普天間のアセスに関してオスプレーのことを盛り込むべきだと思うんですけれども、これはどう思います。
  172. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) お答えいたします……
  173. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 防衛大臣防衛大臣。これ、どう思います。事実、そういうことがあるでしょう。
  174. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 基本的にそんな話を我々具体的に聞いておらないというのが事実でありますので、今先生の御指摘の、要するにそれに書いてあって、そういった計画があるということをおっしゃられても、我々としてはその話を聞いておりませんので、我々として今お答えすることが、これに対して、オスプレーを配備するとかしないとかということを私どもの方では聞いていないのに、それに対してのリアクションができないということであります。
  175. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 じゃ、高見澤さんの意見防衛大臣意見は一致しているんですか。ただ、一般論としては話はなされているということ。
  176. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) 私も、何遍もこの委員会で同じようなやり取りがございますので、議事録を御覧いただければそこに全くそごがないということは御理解いただけると思います。
  177. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それならば、ちょうどオスプレーを意図的に沖縄につくるためのリークの疑いがあるということですね。ということは、沖縄の県民をだましているということ、これは。
  178. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) これはマスコミの報道ですからあれですけれども、私自身、非常に不思議に思っておりましたのは、既に山内先生が国会で提起され、私もお答えした問題について、その文書についてどうかということを新聞社の方がたまたま持ってきて、あいさつの一環ですというようなことで言われたので、私は国会でお話ししている内容をそのままお伝えしたんです。そうしたら、翌日一面トップで全く新しい事実が出てきたような報道がされたというのが実態だろうというふうに認識をしております。
  179. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 一番聞きたいのは、返還密約、今回のオスプレーの密約など様々な密約が米側の公文書で明らかになっているんですけれども、政府は常に密約の存在を否定してきているんですね。この体質を改めない限り沖縄県民の不信はぬぐえないと思っているんですね。  外務大臣、どう思われますか。えっ、じゃなくして、よろしくお願いします。
  180. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 恐縮ですが、質問の趣旨がよく理解できませんでしたので、もう一度おっしゃっていただければ有り難いと思います。
  181. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 返還密約、今回のオスプレーの密約など様々な密約が米側の公文書で明らかになってきているんですね。政府は常に密約の存在を否定してきているんですね。この体質を改めない限り沖縄県民の不信はぬぐえないと私は思っているんですけれども、外務大臣、どう思われますか。
  182. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 今委員がおっしゃいましたような密約というものは存在しないと、私はそういうふうに認識をいたしております。
  183. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 いつもそういうやり方ですよね。  民主党が政権を獲得したら密約の存在を明らかにしたいと思いますが、どう思われます。
  184. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 私の立場からは、ないものはないということしか申し上げられません。
  185. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それならば、民主党が政権を取るまではこの文書を処分しないように是非よろしくお願いします。いや、これはだれだって客観的にはあるということは分かっているんだ、はっきり言ってね。よくかたくなにうそを通せるなと僕は尊敬しているんです、私ね。
  186. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 委員のお言葉でございますが、私ども、うそを通しているという、そういうことではございません。密約があるかとおっしゃいましたから、密約ございませんと申し上げているところでございます。
  187. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 いずれ明らかになると思いますけれども、それまでは我慢しておきましょう。  オスプレーは、これまで度重なる事故で多くの死傷者が出ているんですね。その安全性には大いに疑問のあるものなんですが、もしこのオスプレーが沖縄に配備されたとき、防衛省はどのような認識を持って配備するんですか。もしでいいですが。
  188. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 仮定の問題にはお答えできませんので、ここで答えは控えさしていただきます。
  189. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 防衛大臣は仮定と言うんだけど、もし配備されたときの機能に対しては答える私は義務があると思いますけど、よろしくお願いします。
  190. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 一般論として申し上げれば、我々の沖縄に対するいろいろな影響というものを考えてやることになろうかと思いますが、我々とすればそういった内容に関してまだ詳しいものも聞いておりませんし、配備するということも我々は全く聞いておりませんので、それに対処するだけの今考えがあるわけでありませんので、今ここで詳しくお答えすることはできないということであります。
  191. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それならば、もし、まあ配備されることもはっきりしないままではそのままお答えできないというように言われるんですけど。
  192. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 配備するまでには当然時間が掛かるわけで、我々に相談があって、しかるべき我々との話合いがあった後にそういったことが起こるわけでありますので、今そういったものがない時点で我々としては検討のしようがないということであります。
  193. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 もし配備されたときにはアセスをやり直しますか。
  194. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) まだそれも分かりませんので、今ここでお答えはできません。
  195. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それは、だって当然のことでしょう、これはね。もし、そういうことがあったときにはアセスをやるべきでしょうから。まだという言葉というのはちょっと、返答におかしい部分があるんじゃないですか。防衛大臣、よろしく。
  196. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 出し直すか、出さないかというのは、我々としては、それがもしも我々の、そういった環境基準にもしも掛かるようなものであればそういうこともあり得るかもしれませんが、今の時点でそういうものが分からない状態の中でお答えはできないと言っているだけのことであります。
  197. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それじゃ、もし、あり得るということもあるということですね、防衛大臣
  198. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今この時点で私たちには、そういったオスプレーを入れるという具体的な御相談もなければ、アメリカからのアナウンスもないということだけを、今先生、先ほどからおっしゃって、入れることになったらなったらと言っているから、私どもとしては、今そういうものがないのでそういった検討はできないと言っているだけのことでありますので、これは相手のあることなので、我々のサイドでどうこうする問題ではないというふうに思います。
  199. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 一般論として、さっき防衛大臣が言ったように、もし入ったときには当然、そのアセスをやり直すことが当然のことだと思いませんか、防衛大臣
  200. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) それには、そのときになってみて我々として必要があればそうなるかもしれませんが、今の時点ではお答えができないと言っているだけのことであります。
  201. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 だから、必要になればということは、必要になる可能性はどのぐらいありますか。
  202. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 今この時点で将来の、先行きのことは分かりませんので、私としては今お答えはできません。
  203. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 防衛というものは、安全保障というのは、将来への不安とか将来の危機を感知して物事を、行動を起こす。その将来のことも何も感知しないでやるような防衛というのはありますか、防衛大臣
  204. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 当然、我々、海外からの脅威に対していろいろな対処の仕方を持っておるわけでありまして、そして目の前に起きた事象については関係法令に従って対処していくのが我々の役目でありますので、そういった意味においてはしっかりとやっているつもりであります。
  205. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 関係法令というのは人間が作るものであって、関係法令によって動かされるようなこの防衛、緊急事態のときにそのような思考で物事を動かせると思いますか、防衛大臣。よろしく。
  206. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 済みません、ちょっと質問の意味が分からなかったので、もう一度お願いできますか。
  207. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 関係法令というのは人間が作るものであって、作られたものに対して反応していくというような形で、どうして危機管理、有事のときの危機に対してその反応ができるんですかという。
  208. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 当然我々とすれば、今ある法律の中で対処していく、そしてまた、もしもそれに対処できないものがあったら国会において法律を立法していただくというのが筋でありますので、当然これは我々、今現在あるもので判断しつつ、その中で対処できないものに対しては国会にお願いして法令を作っていただくというのがこれは当然のことだと思っておりますので、今あるものを無視してほかの法令を出すというところにまだ、一般論としてそういうものの話だけでそういうものに対処するのはおかしいと言われても、これは困るわけでございます。
  209. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 まあ法令を遵守するのは大事ですから、これはね。このオスプレーのアセスに対してもし欠陥があるならば、こういう言わばそのアセスに関して欠陥があれば、オスプレーに限らず、アセスの一つの在り方として疑問、欠陥があるならば法令を変えていくという気持ちありますか。
  210. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) ですから、まだオスプレーが配備されるというふうに決まったわけでありませんので、その点について我々、今の時点で私がコメントすることはできないと言っているところでございます。
  211. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 それじゃ、まあ分かりました。  オスプレーには海兵隊用、空軍用、陸軍用などそれぞれ微妙に仕様の違う機種があるようですが、自衛隊は既に購入を検討しているというような情報もあります。どのような機種を選択しているのか、あるいは既に選択したのか。防衛大臣、よろしく。
  212. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) お答えいたします。  今委員の御質問がどういった根拠についてお話をされているのかということ、全く想像付きませんけれども、私どもとしては、防衛計画の大綱、今年、見直しの年でありますし、中期防についても新しい計画を作らなければいけませんので、いろんな技術水準の動向でありますとか、我が国の安全保障環境上どういったものが必要かということをいろいろ検討して、必要なものを計画の中に入れていくということになるわけでございますので、そういう思考過程の中において、現在委員がおっしゃっているような具体的な議論というのはまだ立ち至っていないところでございます。
  213. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 分かりました。ちょっと意地悪な質問組み立てただけでしてね。  米国防総省は、二〇一〇会計年度のグアム移転関連費として三億七千八百万ドルを計上しているんですね。国防総省内に関しては、移転費総額が当初予測した百三億ドルから二百億ドル、三百億ドルに膨らむ見込みがあると言っているんですね。今後の予算計上を不安視する声も出ていますが、今回のグアム協定では、日本政府側の負担額の上限二十八億ドルと規定されていますが、移転費総額が膨らみ、米側から上限を超える負担要求があった場合、政府はどのように対応するのか、外務大臣
  214. 梅本和義

    政府参考人(梅本和義君) これまでも累次御説明をしておりますとおりに、日本側は上限を二十八億ドルとして負担をしていくということでございます。その残余についてはアメリカ側負担をして所要の措置をとるということでございます。
  215. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 喜納昌吉君、時間が来ておりますので、おまとめください。
  216. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 ああ、そうですか。はい、分かりました。どうもありがとう。
  217. 浜田昌良

    浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  本日はグアム移転協定の締めくくり総括質疑でございますので、幾つか確認的に質問させていただきたいと思っておりますが、今回、移転の対象となります海兵隊というものですね、これが他の三軍、陸海空との性格の違い、特に在沖縄の第三海兵隊部隊の特色とは一体何なんでしょうか。外務省にお聞きしたいと思います。
  218. 梅本和義

    政府参考人(梅本和義君) 海兵隊でございますが、海兵隊は、海兵空地任務部隊と呼ばれる空、陸、戦闘支援の統合部隊を百名から数千人の規模で編成することによりまして、米軍のほかの陸海空軍との比較におきましても特に優れた即応能力や緊急展開能力を有する軍種でございます。  例えば、これは有名な例でございますけれども、海兵隊は、過去に一九五〇年、朝鮮戦争において仁川上陸作戦を行うなどの戦績を上げているところでございます。  今般、司令部機能がグアム移転する沖縄の第三海兵機動展開部隊は、海兵隊が有する三つの機動展開部隊のうち、唯一その司令部が米国本土以外に展開をしている部隊でございます。同部隊は、前述のような海兵隊の特徴を生かしまして、近年では、フィリピン、神戸、東ティモール等において人道的支援活動及び災害救援活動等の任務で重要な役割を果たすとともに、アジア太平洋における戦略的な重要な位置の一つである沖縄において地域の安定に寄与しているところでございます。
  219. 浜田昌良

    浜田昌良君 今御答弁ありましたように、米国海兵隊というのは、統合部隊で緊急展開能力が高いという、そういう意味では非常に日米安保の中でも抑止力として大きな機能が期待されるわけですね。  実は私、この外交防衛委員会でこのグアム協定と並行しながら核軍縮の問題を幾つか質問させていただきました。その中で、私自身は、日本が核の先制不使用ということを宣言すべきじゃないか、また日米安保関係でいえば、あくまでアメリカが核の抑止力を使う場合は先方が大量破壊兵器を使う場合に限るべきじゃないかということを幾つか展開させていただいたんですが、そういう核の先制不使用を考えた上でも、それを考えれば考えるほど逆に通常兵力としての米国海兵隊抑止力というのはより日本にとって不可欠と考えるんですが、この点について外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  220. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 委員が御指摘の見解というのは示唆に富むものであると、そういう考え方であると思いますし、また今後の参考にもさせていただきたいと思いますが、海兵隊抑止力の問題につきましては、先ほど参考人からも説明ありましたように、戦略的な機動力を有しているわけでありまして、今後沖縄に現在よりも縮小された一定規模が配置されるわけでありますが、その海兵隊が即応態勢を維持することによりまして抑止力維持することができると、そういう認識を日米で共有をしているところでございます。引き続いて、我が国また極東の平和と安全の維持海兵隊は重要な役割を果たしていくと、そういうふうに考えております。  なお、この関連で、グアムにおけるアメリカ海兵隊の駐留につきましては、この協定の前文におきまして、アジア太平洋地域における安全保障上の米国のコミットメントに保証を与え、そしてまた、アジア太平洋地域における抑止力を強化するものとなると、そういうアメリカ海兵隊部隊グアム駐留の意義、これに係る日米両国の認識を明らかにしているところでございます。
  221. 浜田昌良

    浜田昌良君 次に、防衛大臣にお聞きしたいんですが、今般の在沖縄海兵隊グアム移転につきましては、司令部部隊グアム移転すると、あくまで実戦部隊沖縄に残すと、こういう選択なわけですね。これは、今議論ありました米軍抑止力維持という観点からいえば、私、非常に妥当ではないかと思いますが、防衛大臣の御評価いただきたいと思います。
  222. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 先生御指摘のとおり、沖縄はその地理的特性というものを見ますと、やはり米本土、そしてハワイから等もよりアジアの地域に近くて、そしてまた迅速な対応が可能であると、そしてまた周辺国との一定の距離があるという地理的上の特性もあるわけでございますので、そういう意味では、沖縄における在日米軍の安定的な駐留というのは大変重要であるというふうに考えているところでありますし、この沖縄の特性というものを踏まえますと、沖縄に一定の初動対処能力を有する海兵隊維持されるということは、抑止力維持観点からも重要であるというふうに考えているところであります。
  223. 浜田昌良

    浜田昌良君 次に、海兵隊とこの普天間代替施設問題ですね、この関係なんですが、海兵隊の実戦部隊沖縄に残留する以上、その移動手段であります普天間飛行場の代替施設の県内移設は当然というのが論理的帰結だと思うんですね。これは四月十六日の読売新聞社説にも書いてあるんですが。  もし、これを県外移設を行った場合、在沖縄海兵隊抑止力にどのような問題が生じると思われますか。防衛大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  224. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 普天間の飛行場については、沖縄県民県外への移設を強く希望していることを念頭に置きつつ、抑止力維持を図る必要性を考慮し、米軍再編に係る日米協議の中で検討を行ってまいりました。その結果、普天間に所在する輸送用ヘリコプターを中心とする航空部隊については、沖縄に所在する海兵隊の陸上部隊、後方支援部隊と相互に連携した運用が行えるようにこれら部隊の近くに位置する必要があり、普天間飛行場代替施設は沖縄県内に設けねばならないとの結論に至ったところであります。  したがって、抑止力維持という観点から考えれば、海兵隊がその機能を効果的に発揮させるためには、代替施設は沖縄県内に建設する必要があるというのが政府認識であります。
  225. 浜田昌良

    浜田昌良君 じゃ、次に、その辺野古代替施設をどのように建設するのかという問題なんですが、これに関しまして、四月三十日の読売新聞に米軍再編柔軟にという記事がありました。これは、今般、任命されましたグレグソン米国国防次官補ですね、在日米軍再編問題を担当するわけですが、まずこの人の略歴について外務省から答弁お願いします。
  226. 梅本和義

    政府参考人(梅本和義君) 今般、アメリカの国防省アジア太平洋安全保障問題担当の国防次官補に就くことについて七日に議会で指名が承認をされましたグレグソン氏でございますが、三十数年にわたる海兵隊部隊勤務を経験をした方でありますが、九八年には国防省においてアジア太平洋担当部長を歴任されております。また、二〇〇〇年の七月には沖縄に所在する第三海兵師団の師団長、二〇〇一年七月には、まさにこの今協定でいろいろ御議論いただいております第三海兵機動展開部隊の司令官兼在日米海兵隊基地司令官、また在沖縄の四軍調整官に就任をされております。そこで三年、沖縄の勤務を経験をされております。そして、さらに二〇〇三年には太平洋全体の太平洋海兵隊司令官等を就任をされ、二〇〇五年に海兵隊中将で退役をされた方でございます。
  227. 浜田昌良

    浜田昌良君 今答弁いただきましたように、このグレグソン氏は沖縄にもおられまして、そういう意味では、基地状況についても御存じですし、地元住民のいろんな気持ちも御理解いただいていると思いますし、一方では海兵隊抑止力の在り方というのにも精通されていると思っております。その方が、いわゆる米軍再編柔軟にという表題ですが、発言されたメモにはこのフレキシブルという表現がありませんけれども、ちょっと読ませていただきますが、既に進行中である再編プロセスを進めていくためには、常に経過を再検討し、二国間関係の諸問題を解決する必要があると。非常にこれ、前向きな態度ですね。  決まったものはもうそのとおりやるんだということではなくて、いろんな問題を二国間で話合いで解決していくんだと、こういう態度を取っておられると。非常に私は評価したいと思うんですが、この点につきまして外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  228. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 委員御指摘のこのグレグソン国防次官補の発言とされる部分、今御紹介、委員からありましたけれども、これは、四月の二十八日に米国上院の指名公聴会に際しまして同次官補が議会に書面で提出しました資料にこれが言及されていると、そういう内容であると承知をしておりますが、これは同次官補の担当業務の課題及び優先事項の一つとしての文脈でございまして、その中で、日本及び韓国でこれまで進めてきております米軍再編及び同盟関係の強化について述べたものであります。  在日米軍再編日本政府とよく協議をしつつ、日米両政府間で緊密に連携をしつつ進めていくとの同次官補の基本的考え方を示したものと私は認識をしております。  なお、この御指摘の部分に引き続きまして同次官補は、再編プロセスは複雑かつ何段階にもわたる事業であり、これを実現するためには日米双方において引き続き政治的及び予算上の支持が必要であると、そういう認識も示したと承知をいたしております。  政府といたしましては、このグアム移転事業を始めといたしまして、これを含めて在日米軍再編に関しては、日米間のロードマップ、これに従って米国側と緊密な連携を取りながら着実に進めていきたいと思っています。
  229. 浜田昌良

    浜田昌良君 今、アメリカ側のその柔軟な対応にという発言があったわけですが、一方では、河村官房長官ですね、四月八日の普天間議会でこのような発言がありました。位置の移動などを含め知事意見が提起された場合は、地元の意向を念頭に置くとともに、代替施設の建設は二〇一四年までの完成が目標とされていることに留意しつつ、誠実に対応するものとすると、こういう発言があったんですね。  これ、私は非常に注目したいんですが、今まで事務方から大体聞いているこの代替施設の建設に関しては、合理的理由があれば位置の移動も検討するという、この合理的理由があればというのがいつも付いていたんですよ。これを付けない表現ではあったんですね。  それで、防衛大臣にお聞きしたいんですが、事務方の答弁はこの条件が付いているかもしれませんけれども、是非大臣、この事務方の合理的理由あればというのを落として、大臣のこの地元住民の意見を十分に酌み取ると、その政治的決意を御答弁いただきたいんですが。
  230. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 当然、今先生の御指摘のように、河村官房長官からそのお話が出たわけでありますので、私とすれば、それこそ今官房長官のおっしゃったことをしっかりと受け止めて、同じように、同じ気持ちで対応していきたいというふうに思っておるところであります。
  231. 浜田昌良

    浜田昌良君 ありがとうございます。  それじゃ、地元意見というのはどうなのかという問題なんですが、結構これは複雑になるんですね。といいますのは、辺野古の代替施設計画については二つの異なる声があるわけですよ。一つは、周辺住民の騒音被害を防ぐためになるべく滑走路は沖合に移動してほしい、こういう意見一つと、もう一方は逆に、ジュゴンの生育に影響を及ぼさないようにするために陸地の方に寄せてほしい、こういう意見があるわけですが、この二つの正反対の意見に対してどうやってこのシングルボイスとして受け止められるのか、防衛省からお聞きしたいと思います。
  232. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) お答えいたします。  現在の政府案、いわゆるV字案でございますけれども、平成十八年の四月、防衛庁長官と名護市長及び宜野座村の両首長との間で合意に達しまして、その上で、アメリカ側と交渉を行い、同じ年の五月に日米間で合意をしたものであります。  その後、政府及び自治体の間で、普天間飛行場の移設に係る措置に関する協議会を御承知のとおり設置しました。これまでに九回開催をいたしまして、環境影響評価及び建設計画等について意見交換を行ってきたところでございます。  また、環境影響評価準備書におきましては、方法書に対する知事意見を勘案し、現在の政府案を移動した場合の六つのケースにつきまして主要な項目の予測、評価を行い、生活環境及び自然環境に加え、実行可能性を含め総合的に検討した結果、現在の政府案が適当であると判断をいたし、五月の一日まで縦覧に供したところでございます。  今後、我が省におきましては、五月十五日までが提出期限となっております住民の皆様方からの環境保全の見地からの意見を提出していただいた後、これらの意見の概要とこれに対する事業者としての見解を記載した書類を沖縄県知事等へ送付します。その後、沖縄県知事におかれては、名護市長、宜野座村長や住民等の意見を踏まえて、準備書について意見を述べていただく、こうなっております。そして、県知事意見等を勘案し、評価書を作成するなど、環境影響評価手続を適切に進め、普天間飛行場の移設・返還を着実に実現してまいると、この方向で進めていくということでございます。
  233. 浜田昌良

    浜田昌良君 地元の合意形成については、手順も掛かるでしょうし、時間も掛かるかもしれませんが、そこはしっかりと手順に沿って、また少し時間を掛けてもうまくまとめるようにお願いしたいと思っております。  次に、この協定意味なんですが、協定意味ついては、今日も議論がありましたように、我が国は条約として国会承認を行うと、一方では、米国行政協定なので議会関係しないと、これは非常に片務的ではないか、こういう御批判が野党からあったわけですね、今日の参考人質疑でもありました。  それでは、我が国が国会承認米国行政協定となっている例、特に予算や物品の提供が双務的になっているものの例はどういうものがあるのか、外務省から答弁お願いします。
  234. 鶴岡公二

    政府参考人(鶴岡公二君) 我が国におきまして国会承認条約でありますけれども、米国においては議会承認、すなわち上院の助言と同意を得ないで締結した国際約束に関しまして、過去二十年間の例につきまして調べた結果、次のとおりでございます。  四本ございます。一本は、在日米軍駐留経費負担特別協定二つ目が日米相互承認協定、三つ目が日米物品役務相互提供協定及び同改正協定、四番目が日米の宇宙損害賠償放棄協定でございます。  このうち、ただいま委員の御指摘になられました物品の提供が双務的になっているものといたしましては、自衛隊と米軍との間で物品又は役務を相互主義の原則に基づいて提供するための枠組みなどを規定いたしました日米物品役務相互提供協定、略称ACSAと申しておりますが、この協定及びその同改正協定が挙げられます。  以上でございます。
  235. 浜田昌良

    浜田昌良君 今四つの例を引いていただきまして、特に物品の提供が双務的になっているACSAの例があったんですが、これについては米国議会承認も何もしていないわけです。  野党の皆さんは、今回の協定アメリカ議会は関与していないのでアメリカは何も守らないんじゃないかという御心配があるようですが、今までこのACSAの実施の中で米国が義務を十分果たしていないという、そういう事態はあったでしょうか。
  236. 鶴岡公二

    政府参考人(鶴岡公二君) ACSAの運用におきまして、これまでのところ何ら問題があったというふうには承知しておりません。
  237. 浜田昌良

    浜田昌良君 という状況でありますので、協定の形式自体で問題であるということは私は言えないんじゃないかなと。やはりそれぞれ国の中で国会と行政との関係がありますので、それに基づいた上で実質的に判断していくのが重要だと思っております。  もう一つ、野党から御批判がありまして、一つは本協定海兵隊グアム移転に絡めて普天間の辺野古移設を既成事実化するのは問題じゃないかと、また、日本だけが二十八億ドルの資金負担を約束するのは片務的協定でおかしいじゃないかと、こういう御批判があったわけですが、外務大臣にお聞きしたいんですけれども、普天間移設ができなくても本協定自体の違反とならない、また米国が今回二〇一〇年の予算計上がされたことは先ほどお聞きしましたが、将来にわたって、例えば米国が将来予算計上しなければ我が国も予算執行停止ができると、こういう理解でよろしいのか、外務大臣の見解を確認したいと思います。
  238. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) この協定の第三条の二文、第二文といいますか、後半には、日本国政府として、ロードマップに記載された普天間飛行場の代替施設を完成するという、そういうロードマップで既に表明されてきた政治的な意思を改めて表明する、そういう趣旨のものでありまして、普天間飛行場の代替施設の建設に係る法的義務を日本国政府に課しているものではございません。このことは、本協定に係る米国との交渉の経過とかあるいはその交渉の結果を踏まえて、この第三条の二文が意図を有すると、英語でインテンズ・ツーとなっておりますが、そういうところからも明らかでございます。したがいまして、仮に日本国政府普天間飛行場の代替施設を建設しない場合でありましても、これは本協定の三条二文に違反するということにはなりません。  また、米国における関連予算の計上の件に関しましては、これは既に去る七日に米国防省が公表いたしました二〇一〇米会計年度、これの国防予算に関する資料におきまして、在沖縄海兵隊グアム移転に関する措置、これの開始として三・七八億ドル、これの予算を計上する旨が明記をされております。これはオバマ政権の本件事業に対するコミットメントが改めて確認されたものであると、そういうふうに認識をいたしております。  他方、この協定の法的解釈として申し上げれば、この協定の第二条は米国政府が在沖縄海兵隊グアム移転に係る事業に対して資金の拠出を行うことを義務付けるものでございますけれども、そのための予算措置の時期とか資金拠出の態様についてまでこれは規定するものではございません。仮に米国政府による資金拠出がなされない、そういうことが確認されるような事態となりましたらば、日本国政府はこの協定の九条一の規定に従いまして資金の提供を停止するということができるというものでございます。
  239. 浜田昌良

    浜田昌良君 そういう意味では、この協定によって普天間移設を既成事実化するものでもありませんし、日本だけが片務的に予算を約束させられるというものでもないという理解をさせていただきました。  次に、それでは、この協定については衆議院においては野党の皆さんは反対をされました。そういう意味では、衆議院で、とはいうものの承認されておりますので、参議院の議決によらずにこれは承認される可能性が高いわけですけれども、もし本協定締結されない、そういう場合、普天間の返還、また嘉手納以南の返還の可能性についてどう評価されるでしょうか。  また逆に、仮に、一応今回は協定締結されると、これは午前中の参考人の方にもお聞きしたんですけれども、その後、民主党の皆さんは政権を目指されていると言っておられますので、政権を取られた後、この協定の十条の協議事項によって我が国が本協定を破棄した場合、普天間返還、嘉手納以南の返還プロセスはどのようになると評価されるのか、外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  240. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) ロードマップ及び本協定の前文に記載されておりますように、普天間飛行場の代替施設の建設、それから在沖縄海兵隊グアム移転及び嘉手納飛行場以南のまた施設・区域の土地の返還は、沖縄に関する再編案としてこれは相互に関連をしているものでございますが、普天間飛行場の移設及び在沖縄海兵隊グアム移転が実現をすれば、現在沖縄にあります施設についても不用なものが出てくるということになります。  この結果、施設・区域の統合、返還の実施が見込まれますけれども、このような返還の実現は一九七二年の沖縄返還以降最大規模のものでありまして、これは沖縄経済振興にとっても大きな機会を提供すると、そういうふうに考えられるところでございます。  この在沖縄海兵隊グアム移転は、在日米軍再編のこれは中核となる事業でございます。したがいまして、万一、これを実施するためのこの協定が何らかの理由によりまして締結されない、又は破棄されるということになれば、在日米軍再編事業全体の実施のための基礎が崩れてしまうということで、普天間飛行場の代替施設の建設、それから嘉手納飛行場以南の施設・区域の土地の返還の実施に大変重大な支障が生じるものとこれは考えます。  政府といたしましては、沖縄の県民の皆さんの負担をやはり軽減させるためにも、今後とも地元の声によく耳を傾けつつ、ロードマップに従いまして、普天間飛行場の移設・返還、そして在沖縄海兵隊グアムへの移転、また嘉手納飛行場以南の施設・区域の土地の返還などを含む米軍再編を着実に進めてまいりたいと、そういうふうに考えています。
  241. 浜田昌良

    浜田昌良君 一方では、野党の皆さんは、今回の海兵隊の海外移転のための二十八億ドル、約三千億円は無駄金じゃないかと、こういう御批判をされているわけですね。ただし、先般の政府答弁によりますと、基地返還の直接経済効果が約八千七百億円、税収増が年間一千二百五十億円ですから、単純計算で三年で元が取れるというもので、それほど私は無駄ではないんじゃないかなと思っているわけですね。先ほど、それに住民の方々の安全上の問題もありますし、そういう評価もあると。  じゃ、無駄をなくすって、ほかには無駄はないのかということでいろいろ見てみますと、沖縄米軍施設で働く方は九千名の労働者の方がおられるんですけれども、この方は雇用保険の対象者であるにもかかわらず、昭和三十三年からは駐留軍再編円滑化特別措置法で技能教育訓練は一般会計で行うこととされたんですね。  現在、この方々は沖縄で九千名の方で、雇用保険のいわゆる雇用主負担分、国が負担している分は三・九億円、全国の米軍関係で二万五千人で約十二億円の雇用主負担をしているんですよ。それで、これ昭和三十三年からですから約五百億円以上の雇用主負担をしているんですが、一方で、一般会計でいわゆるこの技能訓練もダブルでやっているんですね。多分、これは昭和三十三年からだと二十億円ぐらいになるんだと思うんですが。  そういう意味では、こういう本来であればもう雇用保険特会で行えるものが、それでやればいいものをなぜ一般会計で二重に計上する必要があったのかと。税金の無駄をなくすという意味であればこういうものも再考する必要があるんじゃなかったのかねと。この点につきまして防衛省にお聞きしたいと思います。
  242. 井上源三

    政府参考人井上源三君) 駐留軍等労働者の雇用の関係の御質問であるわけでございますけれども、こうした駐留軍等労働者につきましては、一般の労働者と同様に、御指摘のように雇用保険に加入をいたしております。したがいまして、在職中又は離職後を問わず各種職業訓練を受講するに当たりまして、雇用保険の被保険者として取り扱われるものであるというふうに承知をいたしております。  それに加えまして、今回のような米軍再編に伴いまして影響を受けます駐留軍等労働者の方々につきましては、米軍再編特別措置法という法律ができておりまして、それに基づきまして、他の施設への配置転換等によりまして雇用の継続を図ることができるよう、今までの職種と異なる職種に配置する場合など必要な場合には技能教育訓練等を実施することとしているものでございます。  また、駐留軍等労働者がやむを得ず離職を余儀なくされる場合、これは今御指摘のように、駐留軍関係離職者等臨時措置法という法律がございまして、それに基づきます特別な措置といたしまして、防衛省におきましては、離職後速やかに他の職業に就くことができるようにするため、離職前に職業訓練の実施でありますとか、離職後の生活の安定に資するため特別給付金を支給することとしているところでございます。また、厚生労働省におきましては、公共職業訓練の実施、公共職業安定所の職業指導、さらには雇用対策法十八条の規定に基づきます職業転換給付金を支給することとしているものでございまして、関係省庁と連携を図りながら各種援護措置を実施をしているというものでございます。  今申し上げました米軍再編特別措置法、そして駐留軍関係離職者等臨時措置法、これらは、米軍再編等によります、言わば国の政策実施に起因をいたします環境の変化に伴って雇用への影響が考えられるというものであるわけでございまして、国自らが雇用主となっているという面もございますけれども、そうした国の直接の政策実施に伴うものであるというような観点から、その影響について第一義的な責任を負う国といたしまして、雇用保険の被保険者としての取扱いに加えまして、先ほど申し上げたような特別法に基づきまして技能教育訓練等を一般会計により行うこととしているものでございます。  御指摘は、税金の無駄をなくすべきではないかということであるわけでございますけれども、これらの制度を踏まえながら、防衛省といたしまして、関係省庁と連携を図りつつ効率的な予算執行に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  243. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
  244. 浜田昌良

    浜田昌良君 答弁が長くてよく分からなかったですけれども、要は、こういうものもありますので、民主党の皆さんも、これは全駐労という皆様を御支援されている組合からの要望で多分二重計上されたものだと思いますけれども、こういうものを是非チェックをお願いしたいということをお願いしまして、質問を終わりにさせていただきます。
  245. 井上哲士

    井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  アメリカ国防総省が七日に二〇一〇年度予算案を議会に提出をしました。その概算説明を見ますと、日本側負担をする在日米軍再編費用の総額が推計で二百億ドルから三百億ドル、二兆円から三兆円に上るということが明記をされました。日本政府は、グアム移転費の六十一億ドルに加えて、普天間基地に代わる新基地の建設費が三千五百億円以上に上るということは最近明らかにしましたが、これ以外はこの再編経費全体については明らかにしておりません。  今回、アメリカ側がこういう明記をしたわけでありますけれども、こういう数字で間違いないということでよろしいでしょうか。
  246. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 御指摘の、米国防省が二〇一〇米会計年度の予算説明資料において日本負担する再編経費の総額の見積りが二百億ドルから三百億ドルに上がるかもしれない旨を表記していることは承知をしております。  他方、これまで累次申し上げておりますとおり、米軍再編措置については、嘉手納飛行場以南の土地の返還などその内容について引き続き日米両政府の間で検討中のものや、具体的な施設の使用や配置といった詳細な内容について日米両政府の間あるいは地元との間で調整中のものがあることから、これに伴う日本側の経費負担の総額については現時点では申し上げる段階にありません。引き続き厳しい財政事情を踏まえて鋭意検討を進めて、所要の経費を精査してまいりたいというふうに思っているところでございます。
  247. 井上哲士

    井上哲士君 これに限らず、アメリカ側が明らかにしているものにもかかわらず日本では明らかにしないというものがたくさんあるわけですね。私はこういう態度は改めていただきたいと思います。  さらに、この二〇一〇年度予算案で、在沖縄海兵隊グアム移転の事業費として初めて三億七千八百万ドルが要求をされました。先ほど来答弁で、これはオバマ政権協定へのコミットメントだというふうに言われているんですが、ただ、昨年末の原案では四億三千五百万ドルを予定していたけれども、経済危機のあおりで大幅に削られたものだと報道もされております。  さらに、この予算案が提出をされるに先立ちまして、五月の六日にアメリカ下院の歳出委員会の軍事建設小委員会公聴会でコンウェー海兵隊の司令官が証言に立っています。この中で、このグアム移転計画が、国防省の進める四年ごとの国防計画、いわゆるQDRで再検討されるという見通しを示しておりますが、このQDRに伴うグアム移転計画の再検討について外務省としてはどのように承知されているでしょうか。大臣大臣にお願いします。
  248. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) これは、コンウェー米海兵隊の司令官が、今委員がおっしゃいましたように下院の歳出委員会において、在沖縄海兵隊グアム移転に関して、インフラや訓練機会といったすべてのことを考慮すれば米側の負担は現在の試算額よりも大きなものになると考える、それから、確定しているタイムラインに間に合わせることができないのではないかと既に懸念している、また、我々、我々というのは海兵隊ですが、我々としてこれらの懸念を念頭に四年ごとの国防計画見直しQDRでございますが、これに非常に強く関与していくことを私は保障する、そういう旨の発言を行ったと、そういうふうに承知をいたしております。  しかしながら、これまでの本件事業、この移転事業に係る米国政府と我が国政府との協議におきましては、政府米国政府からは、在沖縄海兵隊グアム移転に係る経費が増大するということや、また二〇一四年までの移転の期限が守れないといった、そういう説明を受けたことはございません。  また、政府は念のために、今回のコンウェー米海兵隊司令官の発言に関しまして外交ルートを通じて米側に対して確認をしているわけでありますが、その確認の一点は、米国防省は米海兵隊沖縄からグアム移転する再編に引き続きコミットをしているということと、それからもう一点は、米海兵隊グアム移転に関しては、四年ごとの国防計画見直しQDR、この見直しはアジア太平洋地域における訓練上の所要を対象としているものであって、海兵隊移転決定の再考を行うものではないと、そういう点を米側に確認をしているところでございます。  政府といたしましては、米国政府とともに引き続いてロードマップに従ってこのグアム移転を着実に実施していきたいと考えています。
  249. 井上哲士

    井上哲士君 コンウェー証言について今答弁がありましたが、この見積りが、当初の見積りでははるかに不足だということを言った上で、じゃ二〇一〇会計年度予算要求がこういうコスト増を反映しているのかという質問に対して、これは予算要求が出る前の証言でしたから、その後出た予算について、この金額は議論をしてQDRが出るまでのものになると思うと、こういう発言をしております。そして、国防総省は国家の条約や取決めなど優先して資金を充てる必要のあるものと併せて決定しなければならないと言った上で、実際のコストは後続年度、つまり来年度以降になると、正直申し上げて二〇一〇会計年度においては我々をあれこれと固定するようなことは何もなされないと、こういう発言をしております。つまり、今年度予算というのは取りあえずのものであって、このQDRにおけるグアム移転見直しによって変わり得るという、それまでのものしか計上していないという証言なんですね。  この間何度も指摘してきましたけれども、日本の方は従来計画を前提に負担額が決められると、そしてアメリカ側はその金額はなく、しかも議会承認は得ないと。先ほど、これは双務協定というのはいろいろあって、アメリカ側議会承認を得ないものもあるんだというようなお話もありましたけれども、これはアメリカの国土にあるアメリカ基地を造るというアメリカの事業なんですね。にもかかわらず日本だけがこういうふうになっているというのは、やっぱり私はこの経過を見ても余りにも異常だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  250. 梅本和義

    政府参考人(梅本和義君) 米議会の証言において、今、いろいろやり取りがあったという御紹介がございましたけれども、アメリカ予算のプロセスというのはかなり長いプロセスでございますので、これから行政府議会関係でいろいろな協議が行われ、そのうち最終的に予算というものが決定されていくだろうというふうに思っておりますが、私ども、いずれにしても、現政権日本側と約束をしてグアム移転を進めるということについてきちんと約束を守っていく、着実に進めていくんだという意思を持っているというふうに考えております。  それから、確かにコストについても、ロードマップのときのコストの試算というものはあるわけでございますが、それ以来、マスタープランを策定をしたり、いろいろな検討というのは進んでいくわけでございます。そういう中でコストについても、いろいろな当初考えていなかったような要素ということから、試算額からずれてくるということはもちろん可能性としては排除されないわけでありますけれども、これも累次御答弁申し上げているとおり、日本側の本協定の下での負担というのは二〇〇八会計年度ドルで二十八億ドルを限度とするということでございまして、その残余についてはアメリカ側負担をする、アメリカ側グアムにおける施設基盤を整備する同政府の事業への資金の拠出を含む移転のために必要な措置をとるんだということを決めているということでございます。
  251. 井上哲士

    井上哲士君 そのアメリカ側負担が極めて不透明であるということを先ほど来申し上げているんですが。  じゃ、日本がこういう、今再検討が言われる中で負担をさせられる中身はどうなのかということなんですが、まず、これまで沖縄米軍向けに日本が建設している家族住宅というのは何戸なのか、そのうち海兵隊向けは何戸なのか、いかがでしょうか。
  252. 井上源三

    政府参考人井上源三君) 提供施設整備によります現在の沖縄米軍家族住宅の総戸数は約三千五百戸でございます。このうち、在沖米海兵隊施設・区域におきます家族住宅の戸数は約二千二百戸でございます。
  253. 井上哲士

    井上哲士君 日本負担グアムに造られる家族住宅というのは三千五百戸ということが言われているわけですね。沖縄からグアム移転する海兵隊の定員は、一万八千のうち半分以下の八千人だということなんですね。  にもかかわらず、今答弁がありましたように、これまで造っているのは二千二百戸なのに、現在沖縄にあるこの二千二百戸をはるかに上回る三千五百戸という戸数をグアムに建てる。なぜこんなことになるんでしょうか。
  254. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) 在沖米海兵隊グアム移転に関し日本の分担で整備することとなる家族住宅の所要数につきましては、現時点で結論が出ておるわけではございません。引き続き日米間で協議を行っているというところでございます。  なお、御指摘の三千五百戸程度につきましては、あくまでもロードマップ合意時におきましてアメリカ側の見積りであると。今後、所要の数字につきましては、日本の分担する事業は在沖米海兵隊沖縄からグアム移転に伴う所要の増大に対応するものとの考えに基づいて、日米間の協議等を通じて更に具体化してまいります。  他方、委員御指摘の二千二百戸につきましては、あくまで我が国による提供施設整備によって在沖米海兵隊施設及び区域に整備された家族住宅のみの数字でございます。在日米軍自らが整備した家族住宅や在沖米海兵隊の施設・区域外に米軍人が居住する家族住宅といったものは含まれておりません。在沖米海兵隊用とされる家族住宅の全戸数を示すものではないと我々は認識しております。  いずれにせよ、家族住宅の所要数や必要な経費につきましては、引き続き日米間で協議を行い、日本の分担に係る出資、融資等が償還されるようしかるべく精査した上で予算を計上し、国会での御審議を賜りたいと、かように考えております。
  255. 井上哲士

    井上哲士君 三年前からこの数を言い続けて、何も変わっていないんですよ。そして、そもそもアメリカの見積りが余りにも過大な数、それがずっと三年間一緒なんです。  そして今、例えば基地外居住のことも言われましたけれども、全国的に日本が提供した住宅の約二割は空き家です。そして、基地外居住は沖縄でいいますと三割弱ですから、それ加味したって大きな数にならないんですよ。だから、余りにもやっぱり三千五百という数は過大な見積りだと言わざるを得ないんですね。そして、アメリカはこの間、海兵隊の増強を絶えず言っておりますし、オバマ大統領も二万七千人の増員ということを言っておりますが、これは当然グアム海兵隊の定員にも影響します。先ほどコンウェー司令官の議会証言でも、海兵隊員約八千人から一万人がグアムに移動するというふうに言っているわけですから、沖縄の定員八千名以外に二千人の海兵隊が移動することもあり得るということなわけですね。  こういう、沖縄以外からグアム移転をした海兵隊員の入居があり得ないということははっきり明言できますか。それができないという何か担保する仕組みがありますか。
  256. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) 日本の分担する事業につきましては、あくまでも在沖米海兵隊沖縄からグアムへの移転に伴う所要の増大に対応するという考え方に基づいております。数次答弁しておるとおりでありまして、移転の所要に基づいて整備された施設の実際の活用のされ方につきましては、日本の分担に係る考え方を踏まえつつ、事業の効率的かつ効果的な実施観点から、その必要性、合理性について今後さらに日米間の協議を通じて検討してまいります。  いずれにせよ、日本の分担で整備することになる家族住宅の所要の数につきましては、引き続き、先ほど来申しますように日米間で協議を行い、日本政府としてしかるべく精査した上で予算を計上し国会へと、先ほどの答弁のとおりでございます。
  257. 井上哲士

    井上哲士君 つまり、日本の側から、ほかから来る関係部隊は入ってはいけないと、こういう条件をアメリカに提示しているんですか、していないんですか、はっきり答えてください。
  258. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) 先ほど答弁いたしましたように、日本の分担で整備することになる家族住宅の所要数等につきましては、引き続き日米間で協議を行わなければなりません。日本政府としてしかるべく精査した上で予算をこれから計上するということであります。
  259. 井上哲士

    井上哲士君 このアメリカ軍の配置というのはアメリカ自身が独自に決めることなんですね。ですから、いったん施設を建設すれば、日本がその使い方に口を挟むということは困難なんですよ。しかも、出融資を五十年で回収すると言いますけれども、五十年たったら国際情勢や米軍の編成はどうなっているかというのはだれにも分からないわけです。ですから、やっぱりアメリカの領土内のアメリカ基地建設に金を出すというこの前代未聞のやり方がこういう矛盾を生むわけですから、私はこういうやり方は中止をすべきだと強く申し上げまして、終わります。
  260. 山内徳信

    ○山内徳信君 私の質問は、いつも簡単で答弁しやすい質問を考えております。  沖縄県民から不評を買っている在沖メア総領事は、過日、日本政府普天間飛行場の代替施設を建設しない場合はグアム協定三条違反となると、こういうふうに恐喝的なことを述べておりますが、これは参議院外交防衛委員会の尊厳に懸けて、政府の統一見解をここに求めたいと思います。
  261. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) この協定の第三条の二文は、先ほども御質問がありましたけれども、日本国政府といたしましてロードマップに記載をされました普天間飛行場の代替施設を完成するという、そういうロードマップで既に表明をされてきました政治的意思を改めて表明する趣旨のものでありまして、普天間飛行場の代替施設の建設に係る法的義務を日本政府に課しているものではございません。このことは、本協定に係る米国との交渉の経緯やそれからその交渉結果を踏まえて、第三条の二文が意図を有すると、英語で言うとインテンズ・ツーと、そういうふうになっていることからも明らかでございます。したがいまして、仮に日本国政府普天間飛行場の代替施設を建設しない場合であっても本協定第三条第二文に違反することはないわけでございます。  また、第三条第二文が日本国政府に対して法的義務を課していないと、そういう点につきましては、これは念のために四月の六日に米側にも改めて確認をいたしておりまして、米国政府も同様の見解でございます。
  262. 山内徳信

    ○山内徳信君 浜田防衛大臣のお手元にも、これは大浦湾でございます。これは辺野古のサンゴ、ジュゴン、生物多様性の姿でございます。こういう辺野古の海域を見て今の総理大臣は政調会長時代に、あのサンゴの海をつぶすのはもったいない、どうにか残せぬのかと、こういう趣旨の発言をされております。したがいまして、沖縄基地負担の軽減、軽減という言葉の中に、人間だけの負担軽減じゃなくして、こういう大自然の多様性、これをやはり保全をして初めて沖縄基地負担の軽減につながると思っております。  この資料を御覧になって、浜田大臣、どのような今お気持ちでございますか。これはやはりすごいなと、そういうお気持ちになりませんか。
  263. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 当然、先生、私どもも、そういう意味では水産関係も仕事としてやらせていただきまして、いろんな施策も立てさせていただきました。ですから、先生のおっしゃるようなこういう海というものの重要性というのは十二分に認識をしているわけでございますし、先生の御意図とするこの資料についても、私とすれば大変そういう意味では海のすばらしさというのを今実感したところであります。  ですから、その中において、我々としても基地の建設というのをやらなければならないということは、これは当然我々としてもほかに選択肢がないという中での、大変そういう意味ではこれは我々にとっては苦渋の選択であるというふうに思っておるところであります。
  264. 山内徳信

    ○山内徳信君 大事にしていただきたいと思います。  平成十八年四月に普天間飛行場代替施設の建設をめぐる基本合意書があります。それによりますと、名護市長は、住民地域三地域の上空を飛行しないという額賀防衛庁長官のその説明、さらに宜野座村長は、最終的には宜野座村の上空を飛行しない、こういうことを確認して署名をしたと言っております。私は連休に宜野座の村長にそのことを確かめておきました。この宜野座村の上空という場合に、陸域だけなのか海域も含むのかと聞いたら、いや陸域全体を指しておりますと、こういうことでございました。  そこで、現時点浜田大臣にお伺いしますが、この署名をした当時と同じように名護市長と宜野座村長と約束したことをそのまま守っていけますか。はいどうぞ。長い説明は要りませんよ。
  265. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) それでは簡潔に。  代替施設を使用する米軍機が集落上空の飛行を基本的に回避するという方向で対応する、こういう認識に変わりはありません。
  266. 山内徳信

    ○山内徳信君 私は連休に、この首長たちの使った言葉と防衛省の当時の言葉を比較検討したときに、回避という言葉が政府のものには使われております。ここに落とし穴があるなと見たんです。  そして、皆さん方は、そういうふうに首長から言われたときに、いや実は乗員の生命の危険があるとか、そういう場合はもう住民地域も飛行しますよという趣旨の説明がなされておるじゃないですか、どうですか。だから、ちゃんと、飛ばないと言ったら飛ばないということでないといかぬですよ。
  267. 北村誠吾

    ○副大臣(北村誠吾君) 先ほどの答弁を踏まえた上で、これまでも国会や普天間議会等の場におきましても数次申し上げておりますとおり、緊急時の場合や訓練の形態等によっては集落上空を飛行することもあり得ると考えておりますけれども、これは極めて例外的なケースでございますという認識を示してまいったところであります。  いずれにいたしましても、地元の意向を踏まえながら引き続き米側と調整をしていく、こういう姿勢であります。
  268. 山内徳信

    ○山内徳信君 米軍は運用、運用という言葉で全部逃げていきますね。これは答弁は求めません。  それから、防衛省としてアメリカ側とはどういう話合いを確認し合っておりますか、お伺いします。
  269. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) お答えいたします。  副大臣から答弁いただいておりますように、これまでの米側との一連の協議を通じまして、代替施設を利用する米軍機が集落地域上空の飛行を基本的に回避するという方針につきましては、米側からも理解を得ているというふうに認識をしております。
  270. 山内徳信

    ○山内徳信君 ぬけぬけとそういうふうに上手な答弁をして、さっき民主党の喜納昌吉議員のあのオスプレーもぬけぬけと答弁しておりますが、高見澤さん、高見澤さんでしょう。
  271. 高見澤將林

    政府参考人(高見澤將林君) はい、そうです。
  272. 山内徳信

    ○山内徳信君 いや、申し上げますがね、アメリカ軍の記録読んだよ、私は。彼らは訓練という言葉使っています。訓練とか有事のときには民間地上空も飛行すると言っておるんです。そして、さらに彼らは、それはアメリカ軍の権利という言葉使っています、権利。ですから、これは基地の自由使用という発想を彼らは持っておるということなんです。そしてもう一つ外務大臣防衛大臣も心しておいてほしいんです。そういうふうなアメリカ側の見解を公表しないようにしてくれといって日本政府側からアメリカ側に言ったという記録もありますよ。冗談じゃない。  それはまた、今日は皆さん逃げていきますから、アメリカ側に交渉したあるいは持っていったそのときの記録を出してほしい。高見澤さん、あなたにそのことを宿題として伝えておきます。あんまり口合わせをして、要するに結論は、辺野古新基地建設にマイナスになる情報は大方伏せられておるじゃないですか。違いますか。  そして、なぜ喜納さんとか私とかその他の皆さんがオスプレーを執拗なまでに追及するか。その被害は皆さんが受けるんですか。高見澤さん、ああ、これは外務省ですか、北米局局長ですね。あなた方のところにも私の資料は行っておるはずです、これね。  この資料はオスプレーの配備についても書かれていますよ。そして、この資料の出典は、二〇〇九会計年度、これはアメリカの会計年度、海兵隊の航空機の配備計画をこういうふうに書いてあるんです。そういうふうにして、この計画によりますと、普天間飛行場では、オスプレー用のシミュレーターの設置が二〇一一会計年度の第三・四半期から開始されるとなっております。そして、ヘリコプターは二〇一三会計年度第一・四半期からオスプレーへの入替えが開始されるとなっておるわけです。  こういう情報を、国会議員とか民間だとかマスコミの皆さんはちゃんと情報が手に入るのに、日本外務省とか防衛省はこういうものを関知しておりながら、知らぬふりをしております。これは、積極外交とか、そういう外交の面でどんどん遅れるわけです。後れを取った分、対処が遅れますから、被害をもろに受けるのはそういう基地周辺の住民じゃないですか。  その住民は、ここで聞きますが、防衛大臣外務大臣、仮にこのオスプレーの配備が大臣の住んでおる地域の飛行場といったときに、喜んでオスプレーを引き受けるとか、それに異議申立ても何もしないんですか。どうですか。
  273. 浜田靖一

    ○国務大臣浜田靖一君) 基本的にオスプレーに関しましては、先生、この間から話題になっておって、そういったことがもう既に配備が予定されているんではないかということでおっしゃっておられますけど、私自身、こういった紙によっていついつまでに入れるということを私説明受けておりませんので、私とすれば、それに対しては、先生、今日ここで見せてもらったのが私初めて見たことでありますので、オスプレーに関しては、私はこれに対してお答えすることはなかなか難しいということでございます。
  274. 山内徳信

    ○山内徳信君 外務大臣はいかがですか。
  275. 中曽根弘文

    ○国務大臣中曽根弘文君) 今防衛大臣からも御答弁ありましたし、先ほどからも他の委員の御質問にお答えしておりますが、これの配備につきましては米国側からの説明もないわけでありますし、まして私の地元にというような御質問でございますが、そういう仮定の御質問には今お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  276. 山内徳信

    ○山内徳信君 もう最後の締めの質問にいたしますが、私はグアム移転協定の大きなポイントは、辺野古新基地を造ろうというところにあると見ておるんです。そういうふうに見ていったときに、アメリカ側日本から莫大なお金を出させて、そして辺野古にも新基地を造らせて、アメリカ外交はこの結果を喜んでおるでしょう。やはりアメリカ外交の勝利、そして日本はお金も出していく、日本の大事な自然も破壊しながらも基地を造っていくと、こういう外交は終わってほしいと思います。  日本外交は、今回のグアム協定をめぐるやり方ではアメリカの戦略に負けておる、日本外交の敗北であると、こういうことを指摘をして、質問終わります。
  277. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  278. 一川保夫

    ○一川保夫君 民主党・新緑風会・国民新・日本の一川保夫です。  会派を代表して、在沖縄米海兵隊グアム移転に関する協定に関して、反対の立場から討論を行います。  冒頭申し上げますが、民主党は日米同盟を、我が国安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域の平和と安定の礎と位置付けています。同時に、この前提に立って、北朝鮮の核、ミサイル開発など、東アジアの安全保障環境の変化を踏まえ、米軍の世界戦略を見据えつつ在日米軍基地の在り方を検証し、地位協定日本が分担すべき費用等についてもゼロベースから見直す必要があると考えています。このような基本的な考え方は、政府・与党の皆さんにとっても御賛同いただけるものと考えております。  しかし、政府の対応はどうでしょうか。二〇〇七年、本協定の根拠の一つとなった在日米軍再編特措法の際も、そして二〇〇八年、昨年のいわゆる思いやり予算の際も、政府からは時代の変化に合わせて日米同盟の在り方を検証していくという姿勢はほとんど見られなかったと言わざるを得ません。今回のグアム移転協定にしても、二〇〇六年に結ばれたロードマップを前提としながらも、なぜ今、在沖縄海兵隊移転のみ、しかもいわゆる真水部分だけを協定にしたのか、十分な説明はありません。  本協定により、政府は厳しい財政事情の下で貴重な税金を投入することになるわけですから、グアム移転に伴う経費総額百二・七億ドルのうち日本側が約六割を負担する理由と積算根拠を明らかにすべきであるにもかかわらず、まともな説明はついぞ聞かれませんでした。一方で、米側の支出がなければ移転が進展しないにもかかわらず、米国では本協定議会承認を求めておりません。政府は、米側の経済危機と防衛費削減などにより移転ロードマップに従って順調に進むとは限らず、日本側のみが資金を拠出することになるのではないかという懸念もあることをどう受け止めているのでしょうか。  さらに、沖縄負担軽減グアム移転の大きな目的であるにもかかわらず、移転普天間飛行場の代替施設の完成がパッケージとされていることは大きな問題です。協定をのまなければ普天間飛行場の移転はないとでも言うのでしょうか。  沖縄からグアム移転する海兵隊要員約八千人とその家族約九千人についても、定員と実数に大きな差があり、実際にどの程度削減されているのか不透明な中で、漫然と協定締結することに不安はないのでしょうか。本協定の目的が海兵隊員などのグアム移転をもって地元沖縄負担軽減を図ることであるなら、移転の前と後でどのくらいの実数が削減されるのかを示さなければ、沖縄県民の過重な基地負担の軽減策とはならないはずですが、逆に、アメリカから海兵隊の増員の方針も伝わってくる有様です。  そもそも日米両国を取り巻く社会経済、財政事情は大きく変化しており、在日米軍基地の役割は、日本防衛という目的から、地球の半分近くあるいはそれ以上に及ぶ米軍の世界戦略を担うという目的へと比重は大きく転換しています。北朝鮮のミサイル発射を始め、東アジアの安全保障の動向や米国の世界戦略を見据えつつ、日本として安全保障戦略を再構築することが重要なはずです。その中で、日米同盟の在り方を検証し、地位協定、また両国が分担すべき負担の在り方、原則も含めた検討に着手すべき時期が来ております。  このような見地に立って、民主党は、厳しい財政事情の下で国民生活を大切にする視点から、あらゆる財政支出について節減すべきところは節減するとの考え方で国会審議に臨んでおります。そうでなければ、我が国の厳しい財政状況を考えるとき、納税者の理解を得られないと考えるからであります。  衆議院は言うに及ばず、残念ながら本院においても、以上のような指摘に対して政府の説明責任は全く果たされませんでした。本協定は、今回我々が反対することにより、参議院においては承認されないでありましょう。政府及び国会は、この事実を重く受け止め、しかるべき対応を取っていただくことを強く希望いたします。  以上をもって、本協定に対する私の反対討論といたします。  以上です。
  279. 浜田昌良

    浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。  私は、公明党及び自由民主党を代表して、いわゆる海兵隊グアム移転協定締結について承認を求めるの件に対しまして、賛成の立場から討論を行います。  私がこの協定を賛成する理由は次の四点であります。  第一には、この第三海兵機動展開部隊グアム移転は、外務大臣から明確な答弁があったとおり、在外米軍部隊基地見直しの一環ではあるものの、あくまで沖縄県民の希望を体した我が国の要請に基づくものであるからであります。よって、その早期実施に向け、費用の一部を負担するのは当然と判断される点です。  第二としては、それではその費用が妥当かという問題であります。  これについては、本協定の国会承認により、我が国負担の二十八億ドルが自動的に認められてしまうものではなく、あくまで上限値であり、毎年の国会での予算審議において精査を受けるものである点、かつ、予算執行後も我が国の会計検査院の検査を受け、米国側もその現地調査の協力を約束している点から、その適正な予算、決算の執行体制が確保されております。  ちなみに、二十一年度につきましては、我が国負担分三百五十三億円の予算が既に国会で承認されており、また米国は二〇一〇年度国防省予算に三・七八億ドル、約四百億円の予算案を用意しているところであります。また、上限の二十八億ドル、約三千億円という値についても、本協定により実現する基地返還の直接経済効果、約八千七百億円、税収増、年間一千二百五十億円という試算と比較して過大というものではないと判断します。  第三には、今般のグアム移転するのは第三海兵隊の支援部隊であり、実戦部隊沖縄に引き続き駐留することにより、北朝鮮などからの武力行使に対し抑止力維持したものとなっている点であります。  これに関しまして、この実戦部隊の移動手段であります回転翼機、つまりヘリは、その近接で利用可能でなければならず、よって普天間飛行場の代替施設の県内移設は当然の帰結であるにもかかわらず、県外、国外移設を主張することは、地元自治体の理解を超え、時計を一九九六年の日米基本合意の前に戻すものだとの主張がある新聞の社説でもありました。  私が本協定承認に賛成する最後ですが最大の理由は、海兵隊グアム移転によって、普天間飛行場の移設、嘉手納以南の基地返還という沖縄県民の長年の希望の実現に大きな一歩を踏み出すからであります。  四月十五日の参議院本会議での島尻安伊子議員の代表質問を、委員皆様、覚えておられるでしょうか。島尻議員はこう発言されました。「沖縄県民は、我が国の安全保障の根幹を沖縄が担っているという自負心を持っております。後を絶たない米軍人軍属の蛮行に辟易しながらも、我が国の平和維持日本国民の安心、安全を守るため、沖縄は努力し、貢献をしてまいりました。」と。  委員各位の皆様普天間返還の日米基本合意から十三年もたってしまいました。是非この沖縄県民の思いにこたえ、その祈りにも近い希望を実現しようではありませんか。各議員におかれましては、党派を超え、このことを深く御理解いただき、賛同いただきますよう重ねてお願いしまして、私の賛成討論といたします。
  280. 井上哲士

    井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、在沖縄米海兵隊移転に係る日米協定に反対の討論を行います。  反対理由の第一は、日本政府が本協定に基づいて実施しようとする米軍グアム基地建設に対する二十八億ドルもの財政支出に何の道理もないことです。  日本の資金は在沖海兵隊グアム移転に伴う施設等の整備に充てるとされますが、それらはすべて米国領内で行われる米軍基地建設です。安保条約、地位協定に照らしても日本が経費負担を行う義務は全くないばかりか、世界中に広く展開する米軍部隊が本国へ撤退するためにこれほど巨額の財政負担条約まで結んで行おうとする国は、世界のどこを探しても日本政府のほかにはありません。  そもそも在沖縄米海兵隊グアム移転は、米国が自らの軍事戦略に基づいて、陸軍、海軍、空軍、海兵隊の四軍の部隊グアムに集め、戦力投射の拠点にする計画の中心を成すものであり、日本憲法に照らせば財政的に関与すべきでないことは明らかです。日本政府がこのような前代未聞の経費負担に踏み出せば、今後における際限のない米軍への支援拡大の要求をも招きかねないことを強く指摘しなければなりません。  反対理由の第二は、政府グアム移転への財政支援を行う理由に挙げる沖縄負担軽減論が全くのまやかしであることです。  沖縄からグアム移転する八千人が実数ではなく定員数である上に、その定員数には縛りが掛けられないことが審議を通じて明白になりました。沖縄基地は、米軍が世界で戦争をするために出入り自由の出撃基地として使用されてきました。本協定による措置は、その実態を何ら変えるものではなく、その下で起きてきた基地被害の根絶につながるものではありません。  さらに、本協定は、多くの沖縄県民が反対する辺野古沖での海兵隊最新鋭基地の建設をパッケージとして明記しています。この計画実施されれば、辺野古沿岸の海洋環境を始め、沖縄の貴重な自然環境を破壊するにとどまらず、周辺地域に新たな騒音被害や基地被害をもたらすことは必至であります。  沖縄県民は長年、米軍基地が存在するがゆえの耐え難い苦しみを受け続け、日米両政府はそれを放置してきました。これ以上、米軍基地の強化、固定化を押し付けることは、基地の苦しみからの解放と平和を求める県民の願いを真っ向から踏みにじるものであり、断じて容認できるものではありません。  そもそも沖縄基地は、米占領下で、住民を排除し、銃剣とブルドーザーで奪った土地の上に築いたものであり、直ちに無条件ですべて返還するのが当然です。日本政府は、辺野古沖の新基地建設計画を直ちに中止し、その責任において普天間基地の即時無条件、全面返還を図るべきであります。  以上申し上げて、討論を終わります。
  281. 山内徳信

    ○山内徳信君 私は、沖縄日本の未来が懸かっておりますから立たせて反対討論をさせていただきたいと思います。委員長、よろしゅうございますか。  私は、社民党・護憲連合を代表し、在沖米海兵隊パッケージ論によるグアム移転協定に反対する立場から、以下、討論を行います。  私は沖縄出身であります。戦後、米軍は占領軍として銃剣とブルドーザーで家屋敷を破壊し、土地を接収し、広大な米軍基地を造り上げました。今回のグアム移転協定は、沖縄グアムに新たな基地を造り、基地機能を強化し、米軍、日米の軍事的一体化を進める結果になります。グアム移転協定で言う沖縄基地負担の軽減を実質的に実現させるものであるならば沖縄県民は心から喜ぶものでありますが、残念ながら実態は違うのであります。長年にわたって沖縄県民の意思、願い、夢を全く無視し、ひたすら政治的、外交的に沖縄を利用し続けてきた日米両政府に対し、県民に代わって怒りを込めて抗議し、なぜ反対するのかという理由を以下のとおり申し上げます。  その一。日本憲法の柱の一つは平和主義であります。憲法九条は戦争の放棄をうたい、戦力の不保持、国の交戦権を否認しております。政府も国会議員もこの憲法を尊重し、擁護する義務を負うております。今回のグアム移転協定の中にある名護市辺野古沿岸への新基地建設計画日本政府が莫大な国費を投じ、戦争のための基地を造り米軍に提供することは、憲法九条の精神に反する行為であります。  その二。そもそも普天間飛行場の代替施設としてスタートした辺野古新基地建設計画は、代替施設とは名ばかりで、全く性格も機能も違うものになっております。巨大な戦闘能力を有し、空港、将来的には軍港として転用可能な岸壁の建設、ヘリパッド、装弾場、これは爆弾を積むところです、オスプレーの配備、タッチ・アンド・ゴーの訓練などが計画されており、隣接したところに既存の弾薬庫、訓練場、演習場の存在と併せ考えると、恐ろしい総合的な機能を有する最新鋭の戦闘用の基地に転化していくことを沖縄県民は恐れております。これが基地負担の軽減と殊更に強調されているグアム移転協定の実態なのであります。  その三。県民世論は、危険性の充満している普天間飛行場の解決策として海外移転、本国移転を要求し、普天間飛行場の即時閉鎖、返還を求めております。パッケージ論によるグアム移転協定は、辺野古新基地建設が実現しなければ嘉手納飛行場以南の基地の返還も海兵隊グアムへの移転も認めないという、実に沖縄県民の人権無視、非民主的、脅迫的なグアム協定を認めるわけにはまいりません。  その四。二十一世紀は環境の世紀であります。自然環境を大事にしなければ地球は崩壊し、人類は滅亡の道をたどります。辺野古新基地建設予定の海域は、ジュゴン、サンゴ、生物多様性の豊かな宝庫であります。それゆえに、沖縄県はこの海域を保全すべき第一級の海域として現在指定しております。日本政府沖縄県の保全すべき第一級の海域を破壊し、基地を造るという、政府の自然破壊の基地建設計画は間違っております。政府こそ自然環境の保全、保護の模範を示すべきであります。  その五。最後になりますが、アメリカ国民と世界の人々に大きな夢と希望を与え当選されたオバマ大統領に訴えます。沖縄の人々にもアメリカ人と同じように生命、自由、幸福追求の権利があります。戦後六十四年間、アメリカ海兵隊は勝手気ままに普天間飛行場を使い、宜野湾市民に大変な苦痛と恐怖を与え続けてまいりました。世界一危険な普天間飛行場を潔く無条件に即時閉鎖、返還すべきであります。それが大国アメリカの寛容というものであります。人権と民主主義、人類の共生共存を掲げ奮闘されておりますオバマ大統領の格別なる御高配を賜りたく訴えます。  以上を申し上げ、私のグアム協定への反対討論といたします。  ありがとうございました。
  282. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  第三海兵機動展開部隊要員及びその家族沖縄からグアムへの移転実施に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  283. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 少数と認めます。よって、本件は賛成少数により承認すべきものではないと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 榛葉賀津也

    委員長榛葉賀津也君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会