○松本剛明君 民主党の松本剛明です。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
国家公務員法等の一部を改正する
法律案について、総理、官房長官並びに公務員
制度改革担当
大臣に質問申し上げます。(
拍手)
本法案は、昨年、与野党で共同修正して成立した
国家公務員制度改革基本法を受けたものと位置づけられています。私たちの理解では、基本法は、官僚主導と言われる現状の
政府のガバナンスを改めるべく、必要な
制度改革を断行して政と官のあり方を見直すことを
目的としています。
自民党の皆さんも、私ども民主党のことをおっしゃっていただく議論はもちろん受けて立ちますが、その前に、自分たちの足元のガバナンスをしっかり見詰め直していただきたいと思います。
総理は、かねがね、官僚は、対決するものではなく、使いこなすものだとおっしゃっておられます。しかし、総理初め自民党の皆さん、すっかり使いこなされてはいませんか。
先日、党首討論を聞いておりましたところ、総理は、国の会計二百十兆円のうち、国債費や
社会保障費などの切れないものが百八十兆円あると主張しておられました。その
説明は私たちも聞きました。その上で、その中身を詰めてただしていったら、実は切れないものとくくっている中に切れるものを混入させていることがわかったから、切れないものは百四十兆円だと申し上げているのです。
民主党の予備的調査による天下りに関する数字、二〇〇七
年度で四千五百の団体に二万五千人が天下り、国の
予算が十二・一兆円流れていることに対する反論も同じです。官僚サイドの言い分をうのみにしていると、
会計検査院が指摘されたことまで含めて、丸々容認することになってしまいます。ぜひ、それぞれ御自身で確認をされた方がよろしいかと思います。
そもそも、総理は、政と官の関係をどうお考えなのでしょうか。
官僚出身の官房副長官が、御自身が政治
任用職であることを全く理解せずに、中立という言葉を使い、他方で、自民党に捜査は及ばないと言ったりしています。
国家公務員法、
人事院規則では、政治的中立を公務員に求めており、特定の政党に反対する政治的
目的をもって、影響力を利用したり、公に意見を述べることは許されていません。
ある省の次官は、我が党の政策を会見で批判する一方で、
大臣と一部与党の方が政策面で対立していると思われるときに、与党の議員と意見交換、意思疎通を行うと公言しています。だれに仕えている公務員なんでしょうか。
憲法に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」とあることを根拠に中立を主張する向きがあります。しかし、憲法は、主権が
国民に存することを宣言しており、そもそも国政は、
国民の厳粛な信託によるものであって、その権力は
国民の代表者がこれを行使するとしています。すなわち、
国会議員の選挙、議会での首班指名という民主的手続を経た
内閣が国政を担うのであって、
国家公務員はそれに従うべきではないでしょうか。都合のいい中立を許してはいけません。
いかがでしょうか。総理の御所見を承りたいと思います。
民主党は、昨年、霞が関
改革・
国家公務員制度等
改革重点事項を定め、総合的な
改革を準備しています。
基本法で一部が進み、さらに今
国会で公文書管理法案が我が党の抜本修正案を受け入れて成立するなど、文書管理等の適正化と
情報公開に関して多少の成果が上がっていますが、合意できずに残された
課題は山積しています。
代表的な点が、天下りです。
総理は天下りをことしいっぱいで廃止すると言われましたが、御指示でできた政令は、各府省による再就職あっせんを廃止する期間を三年以内から年内に前倒しするだけのものであります。まだ、官民
人材交流センター、私たちから見れば、天下りバンクがあります。各府省あっせんを代替して、既に稼働しているのであります。これも、
政府があっせんしていることに変わりはなく、やはり天下りです。
先月の衆議院
予算委員会で我が党の長妻議員が取り上げたように、抜け穴を探して大口随意契約先に再就職させており、まさに官僚のやりたい放題になっています。さらに長妻議員が追及すると、官房長官に答弁を求めているにもかかわらず、天下り先の所管省の
大臣政務官が出てきて一生懸命
説明しているのを見れば、依然として各府省のたなごころの上にあることは明らかで、語るに落ちたとは、このことであります。
総理が各府省のあっせんをなくして天下りをなくしたと思っておられても、依然として権限や
予算がついてくる官民
人材交流センタールート、さらには、隠然として存在をする、各府省があっせんを認めていない水面下の天下りルートがあるのであります。
今から三十二年前の一九七七年に、当時の福田赳夫首相がわたりについて実態調査を行った上で全面
禁止措置を閣議で決定する意向と報道されましたが、今でも厳然とわたりが残っていることは、御承知のとおりであります。
もはや自民党に、天下り根絶は、だれも期待していません。先ほどの信賞必罰の問題も、ぜひしっかり政権としてやっていただきたい。マネジメントができていないのは、自民党政権ではないですか。政権交代しかないことは、
国民の皆様がよく理解していただいているものと思います。
総理から、そして官房長官から、反論があれば伺いたいと思います。
以下、各論について質問いたします。
第一に、
幹部職制度について、基本法において、新たな
制度を設けるものとしています。
任命権者の
人事権が既往の
制度とその運用によって身動きできないくらいに縛られている現状を憂い、
幹部職を政権と運命をともにするいわゆる政治
任用職とまではしないものの、
任命権者が
政治主導で柔軟な
人事が可能となる
制度とすることがねらいです。
具体的には、
内閣官房長官がその候補者名簿の
作成を行うとともに、各
大臣が
人事を行うに当たって、任免については
内閣総理大臣及び
内閣官房長官と
協議をした上で行うものとするとし、
人事の一元化を図りました。同時に、昇任、降任、昇給、降給等を適切に行うことができるようにするとし、柔軟な
人事ができる
制度を用意するよう求めております。
公務員
制度改革担当
大臣も、
予算委員会で、名簿登載時に客観的なスクリーニングをかけているのだから、その先はある種政治
任用の感覚が入ってきていいとおっしゃっておられるように、御理解、御認識は私たちと大きく異なっておりません。
ところが、
政府案には大きな問題があります。
まず、
幹部候補者名簿の詳細は政令で定めるようですが、全府省共通なのか、それとも各省ごと、またはポストごとになるのでしょうか。
対象と登載者が狭まると政治の選択の余地は非常に小さくなります。名簿次第で天と地ほどの開きが生じます。
私たちは、全府省横断的な大きなプールとなる
幹部候補者名簿とすべきと考えますが、公務員
制度改革担当
大臣、どのようにお考えでしょうか、また、
内閣人事局を預かる官房長官はいかがでしょうか。
さらに問題なのは、柔軟な
人事ができるようにするために、いわゆるこれまでの一般職とは線を引いて新たな
幹部職制度を設ける必要があると考え修正を施したにもかかわらず、本法案は、基本法に
規定する新たな
幹部職制度の創設にはほど遠いことです。
幹部職に当たる次官級、局長級、
審議官・部長級の三つの職制上の段階の各段階内にとどまらない降格等について、申しわけ程度に降任の特例が設けられていますが、極めて厳格な要件を付しており、事実上それを困難ならしめていると解されます。
大臣がどのような御
説明を受けたかは存じませんが、
事務局から、そんなに、つまり、降格はめったに起こるものではないという
説明を受けたと公表している外部の方もおられ、私たちの見方と符合しています。
幹部職を現行の一般職の枠内に置いて、実質的に降任がほとんど不可能な、官僚に都合のよい、形ばかりの柔軟な
人事管理を提示する本法案は、明らかに基本法の
趣旨に反し、骨抜きにされています。
本法案のままでいいと本当に思っておられますか、総理、公務員
制度改革担当
大臣、官僚をコントロールすべき立場として、御所見を伺います。
第二に、
内閣人事局についてです。
基本法では、与野党
協議により、
内閣人事庁を
内閣人事局に改めました。幹部
人事を担うコンパクトな組織を政権中枢の
内閣官房のもとに置くのが修正の意図なのであります。
しかし、本法案においては、明らかに基本法の
趣旨を超えて肥大化しています。
例えば、基本法が
幹部職の定数査定を
内閣官房の
事務としているのに対し、本法案では、
国家公務員全体の定数査定
事務を
内閣官房に移管しています。自律的労使関係
制度を構築すれば、
人事院の組織、
所掌事務についても、その存廃も含めて抜本的に変えることになりますが、労働基本権についての実質的な検討を行わないまま一般職についての定数査定権限を
内閣に移行することには、重大な疑義が生じます。
内閣人事局の設計に係る議論からは、官僚が思惑でうごめき、この機会に新たなポスト獲得や組織拡大を企図している様子もかいま見えてきました。
行政管理局を、機能からではなく、組織維持あるいは拡大の論理から丸ごと移そうとして、
内閣人事局に独立
行政法人の
制度や
行政情報システムまで所掌することになりかけました。さすがに指摘を受けてそこは軌道修正されましたが、まだ基本法が求めた姿とは大きく異なります。
総務省の中で次官ポストにも恵まれない旧
行政管理庁グループの独立宣言とやゆする声が霞が関から聞こえてまいります。真の意味での国益官僚の抜てきのための評価機関を相も変わらぬ霞が関の縄張り争いの
対象としてしまう執念に、半ば感嘆しつつも、怒りを禁じ得ないと同時に、しっかりコントロールしていただけない自民党政権の皆さんにも大変残念な思いがするところであります。
公務員
制度改革担当
大臣、本法案を
見直して、本来の立法
趣旨である、主に
幹部職に関することを所掌する
内閣人事局にするおつもりはありませんでしょうか。
第三に、労働基本権の回復です。
先月、超党派議員立法として成立した公共サービス基本法が定めるように、安全かつ良質な公共サービスが確実、効率的かつ適正に
実施されることが
国民の権利であるという考え方に基づいて、その従事する者の適正な
労働条件の確保と労働
環境の
整備に関して必要な施策を講じることも基本法の
目的であります。
基本法では、「
政府は、協約
締結権を付与する
職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を
国民に提示し、その理解のもとに、
国民に開かれた自律的労使関係
制度を
措置するもの」と定め、施行後三年以内をめどとして、必要となる法制上の
措置を講ずることとなっています。
これを受けて、労使関係
制度検討
委員会が設けられました。本年中に結論を出すこととなっていますが、お聞きしている検討のスピード、
内容は、基本法の
趣旨や
政府の公式方針に照らし、著しく不適切かつ不誠実で、本当に意義ある結論を得ることができるのか甚だ疑問です。この検討のおくれは、公務員
制度改革全体のスケジュールにも大きな影響があり、重大な懈怠と言わざるを得ません。
そもそも、労働基本権を制約している現行の公務員
制度は、国際労働機関、国連のILOから
条約違反を指摘され、
制度見直しを促す勧告を再三受けております。公務員
制度改革担当
大臣、
条約違反の現状認識はおありでしょうか。
大臣から方向性を示して検討を進めておられるんでしょうか。この遅々とした検討ペースを打開する決意がおありでしょうか。お尋ねをしたいと思います。
以上、指摘してきたように、基本法に照らせば、本法案には大きな問題があります。しかし、過ちては改むるにはばかることなかれです。本法案策定に当たって、たびたび共同修正提案者の修正経緯、意思を反映させるよう、これは、私ども民主党だけではなくて、自民党、公明党の方々も含めて意見表明の機会を求めてきたのですが、残念ながら、これにこたえていただけませんでした。
でも、自民党におかれては、補正
予算に
賛成をしてから無駄があると指摘することが許されるぐらいの文化のようでいらっしゃいますから、今からでも、私たちの意見に耳を傾けていただいて、本法案についての過ちをぜひ正されたらいかがでしょうか。
総理の御所見を承って、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣麻生太郎君
登壇〕