○三國
参考人 おはようございます。三國事務所の三國でございます。
私
どもは、八三年七月より、三國債券格付情報を国内及び海外の投資家向けに提供してまいりました。私は、投資家のために格付ランク情報と格付の理由を説明いたします財務諸表分析を提供する仕事を、二十六年間にわたってやってまいりました。その
立場から、今回の
金融商品取引法改正案のうち、信用格付
業者に対する公的規制の導入について、私の
意見を述べさせていただきたいと考えております。
今回、公的規制として、登録制の導入、登録
業者への規制、監督、無登録
業者の格付を利用した勧誘の制限をうたっております。登録制の導入は、
金融行政による信用格付の利用に呼応するものであると理解しております。ただ、私
どもの三國格付は、投資家、正確に申しますと融資、企業間信用等の与信先の管理ということになりますけれ
ども、投資家向けの信用情報を提供するサービスという
立場にあり、当初より
金融行政での活用の枠組みの外に存在してまいりました。したがって、
金融行政における格付の使われ方がどうであるか、そのために登録が必要かどうか等につきましては、当事者ではございませんので、特段の
意見はございません。
格付は、本来、投資家が投資の際に参照するものであります。そこに格付の最大の機能が存在いたします。この点において、いわゆる依頼格付、起債会社が依頼し、起債会社が格付費用を負担する格付でございますが、それであろうと、勝手格付、投資家の依頼により投資家が費用を負担する格付でございますが、両者においては違いはないと考えております。
行政が利用する指定格付機関の格付あるいは登録
業者の格付であろうと、指定外の格付、無登録
業者の格付であろうと、いずれも投資家に参照してもらうことを最終的な、そして最も大切な機能と考えています。
そこで、投資家の利用に絞って
幾つかのポイントを申し上げたいと考えております。
格付が扱っております信用リスクの判断は、本来、投資家が自分で下すものであります。投資家が自分で信用リスクを判断し、自分で投資を決めるからこそ、自分で責任をとることができます。具体的には、社債が債務不履行となり損失が発生した場合に、投資家がみずから納得して損失を甘受することができるというわけでございます。
したがって、投資家が自分で判断できないことを格付会社がかわってやるのかというと、そうではないと考えております。もし判断の代行をするのであるならば、投資家は格付会社の格付に依存するしかないということになります。この時点で格付は、
一つの
意見ではなく、専門的な権威のある
意見であり、投資家は自分で考えずに格付に従うしかないということになります。これは、投資家が判断する余地をなくしてしまうという
意味で問題があると言わざるを得ません。
専門の格付会社の役割は、投資家が判断できないことをかわりに判断することではなく、数多くの銘柄、企業について、長期にわたって信用リスクのユニバースを描き、比較感を提供することにあると考えております。私
どもの場合、現在約千百社の格付を行っております。
投資家が自分の
意見を持ち、多くの
意見を参照できることが、
市場を通じた価格形成にとって不可欠であります。投資家が自分の
意見を形成するときに、格付会社の格付を
参考にいたします。したがって、信用格付はあくまでも
一つの
意見にすぎないという
立場を守り切ることが極めて大事なことはおわかりいただけると思います。
私
どもは、
金融行政に利用されることを目的としておりません。その枠組みの外で投資家向けに格付情報を提供することを仕事としてやってまいりました。したがって、全く
一つの
意見にすぎないという
立場を守れます。しかし、
金融行政で利用される格付あるいは登録
業者の格付には、
一つの
意見以上のものであると受けとめられる危険性があることは確かです。したがって、
一つの
意見にすぎないという
立場をこうした格付ではどうしたら貫徹できるかという問題はありますが、いずれにしろ、
市場にはさまざまな
意見が存在していることが望ましいと考えます。
一つしか
意見がないと極めて危険な
状況が生まれることは、一昨年来の米国サブプライムローン関連商品の格付の問題が示したとおりでございます。したがって、例えば社債が発行されたときには、登録格付
業者による取得格付があり、登録とは無
関係な例えば三國格付があり、あるいは格付ランク以外の形で提示される信用リスクについてのさまざまな
意見も存在するという
状況があってよろしいのですし、また、こうした多様な
意見が混在することが大事だと考えております。
昨年来の
議論として、問題がある格付会社が放置されるのはいかがなものか、厳しく監督して規制すべきという
意見がございます。私は、規制、監督ではなく、規律を与える役割が必要だと考えています。それは、基本的に
市場、マーケットが果たすものだと考えております。例えば、妥当性を欠く高過ぎる格付、低過ぎる格付、不十分な分析による格付などは、
市場参加者の役に立たず、参照されないことになるでしょう。まともな格付こそが投資家によって参照されていく結果、規制、監督という形をとることなく、
市場自体が規律を働かせていくことになることが正しい道だと考えております。
以上でございます。どうもありがとうございました。(
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