○舛添国務
大臣 厚生労働委員会の御
審議に先立ち、
厚生労働行政についての所信を申し述べ、
委員各位を初め、
国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
厚生労働行政は、最も
国民生活に密着した分野です。雇用
対策、
医療をめぐる課題、年金記録問題、食品の安全の問題など、待ったなしの課題を抱えており、
国民の皆様から真に信頼を得られるよう、
国民の目線に立ちながら、
厚生労働行政の改革に引き続き取り組むとともに、さまざまな課題の解決に向け、今後とも全力で取り組んでまいる所存であります。
現下の雇用失業情勢は、世界的な不況の影響を受けて、有効求人倍率が急速に低下しているほか、非正規労働者の大量離職が生じるなど厳しさが増しています。
このため、
生活防衛のための緊急
対策などに基づき、雇用の場の拡大のための各般の施策を講ずるとともに、雇用の
維持、再就職支援、離職された方の住宅の
確保、
生活保障など、雇用の安定に向けた
対策を実施してまいります。
具体的には、雇用の
維持に努力する企業を支援する雇用調整助成金の拡充、内定を取り消された学生等への就職支援や企業名の公表を含む企業への指導の強化などとともに、都道府県に四千億円の基金を創設し、
地域の求職者の雇用機会を創出する取り組みを支援するほか、年長フリーター、
派遣労働者等を正規雇用した企業に対する助成、全国のハローワークを相談窓口とした雇用促進住宅への入居あっせん、賃貸住宅入居のための資金の貸し付けなどに取り組んでまいります。
雇用保険制度については、非正規労働者に対するセーフティーネット機能等の強化を図るため、契約更新がされなかった有期契約労働者の受給資格要件の緩和等を内容とする雇用保険法の改正案を
提出しました。継続
審議となっている
労働者派遣法の改正法案とともに、早期の成立をお願いいたします。
また、第二次補正予算で創設した助成金等の活用を図りつつ、障害者の雇用
維持、拡大を図るとともに、六十五歳までの継続雇用の着実な推進、六十五歳以上の者の雇用への支援などにより、高年齢者が幾つになっても
安心して働ける社会の実現に向けた環境整備に取り組んでまいります。
非正規労働者を中心とする解雇、雇いどめ等の事案に対しては、
労働基準法や労働契約法等の指導に全力を挙げて取り組んでまいります。
失業者の安定雇用の実現を図るため、今後、雇用の受け皿として期待できる
介護分野等における職業訓練を大幅に拡充するとともに、長期間の訓練を新設する等、職業訓練について、質量ともに
充実強化を図ってまいります。また、訓練期間中の
生活保障給付制度について、着実に実施してまいります。
さらに、ジョブカード制度を積極的に推進するとともに、ニート等の職業的自立の支援を図るため、
地域若者サポートステーションの拡充強化や若者自立塾の
運営に取り組んでまいります。
厳しい雇用失業情勢という難局を乗り越えるためにも、引き続き、良好な
労使関係の
維持発展、政労使の意思疎通の促進に努めてまいります。
我が国の
社会保障は、世界に誇るべき
国民皆保険、皆年金を初めとする各種の制度を整え、世界最高水準の長寿などの成果を上げてきました。しかし、
国民の皆さんにとって
社会保障に不安が生じているのも事実であり、セーフティーネットとしての
安心感、信頼感を高めるためには、今後の
社会保障に関する
負担の増加や機能強化といった課題に対応していくことが必要です。
昨年、
社会保障国民会議において
社会保障のあるべき姿と今後の改革の方向性についての議論の土台が示されるとともに、持続可能な
社会保障制度の構築等に必要となる安定的な財源を
確保するための中期プログラムが策定されたところです。
社会保障の機能強化と安定財源の
確保は車の両輪として対応を進めていくことが必要であり、
国民から
安心、信頼される
社会保障制度を次の世代に引き継ぐことができるよう、全力で取り組んでまいります。
年金制度につきましては、
平成十六年改革によって構築された持続可能な制度の枠組みを確実に
維持していくことが重要であります。基礎年金国庫
負担割合の二分の一の実現が残された課題となっておりましたが、
平成二十一年度よりこれを実施するための
法律案を
提出したところです。
なお、その財源につきましては、
平成二十一年度及び
平成二十二年度は財政投融資特別会計からの繰入金を活用することとしております。また、その後、税制抜本改革により安定財源が
確保されるまでの間についても、臨時の財源を
確保することにより二分の一とすることとしております。
さらに、
年金制度を通じた
国民の高齢期における所得の
確保に係る自主的な努力を支援するため、企業型の確定拠出年金における加入者の掛金拠出を認める等を内容とする
法律案を
提出してまいります。
長寿
医療制度につきましては、来年度から保険料の支払いが口座振替と年金からとの選択ができるようにするなど、さまざまな
改善策を着実に進めてまいりますが、さらに、
高齢者の方々を初め、あらゆる世代の納得と共感がいただけるよう、よりよい制度に見直します。
協会けんぽにつきましては、都道府県別の保険料率への円滑な移行が図られるよう、激変緩和措置を講じてまいります。
国民健康保険につきましては、昨年末の法改正により、中学生までの方については、資格証明書を交付せず、短期被
保険者証を交付することとなりました。円滑な施行とともに、資格証明書の運用について、引き続き、きめ細かな対応を行ってまいります。
地域医療をめぐる問題につきましては、救急患者を確実に受け入れられる救急
医療体制、周産期
医療体制の
充実、病院勤務医の勤務環境の
改善などの
対策を実効性ある形で具体化してまいります。また、
医師養成数について、
医師数抑制の方針を見直し、増員しました。さらに、臨床研修制度の見直しについても、文部科学省とともに進めてまいります。このような各般の取り組みを通じ、今後とも
安心、信頼できる
医療の
確保に努めてまいります。また、診療行為に係る死因究明制度の検討を進めるなど、
医療リスクに対応できる支援体制の整備を図ってまいります。
高齢者の
介護、福祉施策につきましては、本年四月の
介護報酬の引き上げ等により
介護従事者の
処遇改善を図るとともに、認知症
対策の推進、
地域ケア体制の整備、
介護従事者の
人材確保のための施策などに取り組んでまいります。
障害者施策につきましては、利用者
負担のさらなる
軽減や事業者の経営基盤の強化のための緊急措置を講じておりますが、本年四月より報酬の引き上げを行うとともに、障害者自立支援法の施行後三年の見直しに向けて、
関係者の意見も踏まえつつ、さらに検討を進め、今
国会に改正法案を
提出してまいります。
社会保障分野全体を通じた情報化の共通基盤となる
社会保障カードの実現に向け、引き続き検討を進めてまいります。
年金記録問題につきましては、昨年、すべての方にねんきん特別便を送付し、同年末までに六割強に当たる六千九百万人から回答をいただきました。引き続き、住所変更等により届いていない方に対する周知など、一人でも多くの方から御回答をいただくための取り組みを行ってまいります。また、正しい年金記録に基づく年金を早期にお支払いするために、大幅に体制を拡充するとともに、紙台帳とコンピューター記録の突き合わせ、標準報酬等の遡及訂正事案への対応等、着実に作業を進めてまいります。
また、来年一月の日本年金機構の設立に向け、昨年七月に策定した基本計画に基づき、その準備を進めてまいります。
急速に進行する少子化への
対策につきましては、子どもと家族を応援する日本重点戦略に沿って、働き方の改革による仕事と
生活の調和の実現と、多様な働き方に対応した保育サービスなど子育て支援の基盤
充実を車の両輪として進めてまいります。
そのため、
安心こども基金の実施を初めとして新待機児童ゼロ作戦を着実に進めるとともに、次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に係る検討をさらに進めてまいります。加えて、妊婦健診の公費
負担の拡充を行ったところであり、また、本年十月からの出産育児一時金の四十二万円への引き上げなど、妊娠や出産費用の不安を解消し、
安心、安全に妊娠、出産できる体制の整備を進めてまいります。
さらに、育児期の短時間勤務制度の義務化や男性の育児休業の取得促進など、育児・
介護休業制度の見直しに取り組んでまいります。
なお、昨年、
地域及び職場における仕事と家庭の両立支援の促進、虐待を受けた子供等への支援の強化などを内容とする児童福祉法、次世代育成支援
対策推進法等の改正を行ったところであり、今後、その施行に万全を期してまいります。
新型インフルエンザ
対策につきましては、その発生が国際的にも予断を許さない状況になっており、今般改定いたしました行動計画等に基づき、抗インフルエンザウイルス薬の
確保、ワクチンの開発能力の強化や
地域における
医療提供体制の整備の
推進等、今後とも、
関係省庁等と連携し、
対策の一層の
充実を図ってまいります。
また、肝疾患研究の
充実強化、診療体制の整備、インターフェロン治療の
医療費助成など、肝炎
総合対策に全力で取り組んでまいります。
さらに、がん
対策推進基本計画に掲げる目標の達成に向け、がん
対策の
充実を図るとともに、難病研究の大幅な拡充など難病
対策の一層の推進を図ってまいります。
食品の安全性の
確保につきましては、輸入食品の監視体制を強化するとともに、問題事案発生時には、
関係行政機関と連携しつつ迅速に対応するなど、
国民の健康の保護を図るために全力を尽くしてまいります。
薬害肝炎事件の反省に立ち、安全
対策の体制強化など医薬品等による健康被害の再発防止のための取り組みを進めます。
また、革新的医薬品・
医療機器創出のための五カ年戦略に沿って、
関係省庁との連携のもと、研究開発の促進、治験活性化、さらに昨年末に課題の採択を行った先端
医療開発特区の推進などに総合的に取り組んでまいります。
援護行政につきましては、戦没者の遺骨収集や慰霊事業、戦傷病者、戦没者遺族等に対する支援の拡充、中国残留邦人に対する支援策を適切に実施してまいります。また、戦没者等の御遺族に対する特別弔慰金について、特例的に支給するための法案を今
国会に
提出したところでございます。
グローバル化の進展に伴い、
厚生労働分野においても、国際社会の中で日本の果たすべき役割が増しております。昨年の北海道洞爺湖サミットにおける議論を踏まえ、地球規模の感染症
対策や世界の保健システム強化に取り組むとともに、G8各国と協調し、世界規模での雇用状況の悪化への
対策を進めてまいります。
以上、御
説明申し上げましたが、今
国会において
厚生労働省から
提出及び現在継続
審議となっている法案につきましては、早期の成立をお願いいたします。
厚生労働行政には、このほかにも多くの課題が山積しております。
私は、これら諸課題の解決に向けて全力を尽くしてまいりますので、
委員長を初め、皆様方の一層の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)