○長見
参考人 日本消費者協会の
長見萬里野と申します。
私は、仕事としては、全国
消費者協会連合会の事務局長も兼ねております。どちらかといえば、そちらの視点からきょうは発言させていただきたいと思っております。
基本的には、私も普通の
消費者の人たちも、
太陽光発電に限らず、新
エネルギー産業の育成にもっと国が力をかすべきだというふうに考えているのが大方だと思います。ですから、
太陽光発電の普及に力を入れる今回の
政策自体には大いに賛同するところがあります。
ただし、今回の
新法である
エネルギー供給事業者による非
化石エネルギー原料の有効な
利用の
促進に関する
法律案の中の、家庭用の
太陽光発電余剰
電力の買い取り
価格をすべての
電力需要者の
電気料金に上乗せするということについては、幾つかの疑念を持っています。
これは非常に画期的な
制度になると思うわけです。一般の
消費者の立場で最も疑問を感じるのは、すべての需要家ということになりますから、どのような事情のある家庭からも徴収するということになります。
太陽光発電システムを設備しようとする家庭は、どちらかといえば、多少とも
経済的に余裕のある御家庭になるわけです。その
支援のために、例えば低所得者の
電気料金にも漏れなく上乗せされる、そして徴収されていくということについて、やはりどこか納得できないものがあります。これは、私に限らず、私の周りの者たちの
意見を聞きましても、そこはおかしいんじゃないのというような感想が出てきました。
全員参加型という言葉自体は美しいのですけれ
ども、
電気と水道というのは、生活の中で最後のライフラインになっております。ですから、他の生活費を切り詰めてでも
電気料金を払うという努力をしている人たちもいるということをやはり気にしていなければならないと思うわけです。上乗せ
価格は数十円、少額だというふうに試算されていますけれ
ども、その数十円に重さを感じる人たちもいるわけです。やはりそのことを配慮していただきたいと思うわけです。
そのようなことを考えますと、この
制度が実施された場合、何らかの福祉的な配慮というのがどうしても必要ではないかなというふうに思っております。
それから、地球温暖化を防ぐため、少しでも
CO2削減ができるのなら、
消費者の方もいろいろな協力を惜しまないつもりではいると思います。いろいろな方策を試みなければなかなか温暖化防止の
効果的な進行が難しいというのも、昨今のいろいろな情報でわかっているわけです。そういう
意味では、国民全体の協力が必要なことも多くの人たちは理解をしていると思うわけです。
しかし、
電気料金への上乗せ
制度に同意できないような人たちを、イコール
CO2削減に協力しない人というようなとらえ方、言いぶりというのはやめていただきたいなと思っております。
環境の問題に熱心な
余り、みんなが協力しないのはというような力の入り方をする人たちもおりますけれ
ども、やはりそれは、もう少し諸事情というのを配慮すべきではないかなと思います。
一般の
消費者の人たちも、
CO2削減だとかごみ減量のために、現在、スーパーのレジ袋の有料化だとか辞退の運動というのが非常に全国的に広がっております。既に、府県単位、市町村単位で、
事業者や行政と協定を結んで、レジ袋の有料化を地域的に行っているところが非常に急速にふえているということがあります。
ですから、負担をしないと言っているわけではありませんが、このレジ袋の例のように、趣旨だとか
制度に納得できれば、多くの
消費者は参加してくれることだと思うわけです。
電気料金への上乗せ
制度のことが一般向けに知らされたのが、新
エネ部会の報告書のパブリックコメント募集ぐらいからだと思うわけです。
消費者団体も、なかなかこういうことに気づきませんで、十分な
議論がまだできていません。
四月の初めにいろいろな
消費者団体の方に集まっていただいて、私
どもも学習会をいたしました。その後のいろいろ中身の
議論というのが、時期的にまだできていないところがあります。
そのため、私自身がいろいろな方たちの集まりのついでに少しずつ御
意見を聞くというようなことをしておりますけれ
ども、詳しい中身を御説明するということも、なかなか時間的にも私自身の理解の程度でもしにくいところがあるんですが、一般的にどういうことに疑問を感じられるかというのをちょっと御紹介しておきたいと思います。
CO2削減の協力のためなら、何で
石油や
ガスの料金には上乗せされないで
電気だけなのかということが
一つ言われております。また、新
エネルギーの
利用ということを考えれば、風力だとかその他の新
エネルギーというものの発電の買い取り
価格ももう少し上げるべきではないかというような
意見も強くありました。
私
どもの組織の中にも、地方でNPOをつくって、風力発電会社をつくって努力をされている地域が幾つかあります。そういう人たちは非常に経営に苦労をされていて、今回この話を、ちょうど私
どもの総会が今週の月、火とあったものですから、ちょっと聞いてみましたら、えっ、
電気だけなの、風力も苦労しているんだから買い取ってよというふうな、もうちょっと高くしてくれるともう少し経営的に成り立つんだというような
意見が出ていました。
そういうような、これは今回、家庭用に限るという条件がつけられているわけですが、本当に地球温暖化防止という
目標のためならば、必ずしも家庭用に限らないのではないかという
意見も
消費者側からも出ています。
それからもう
一つ、もう少し
環境問題に関心を持って詳しく知っている人たちの方からは、確かに
太陽光発電で
電気を使っているときには
CO2が排出されないけれ
ども、その
システムの材料をつくるときの製造だとか廃棄に至るまでのライフサイクルのアセスメントとしては、本当に
CO2が全体的に見てどのぐらい削減されているのかやはり示してほしいというような
意見もありました。
それからもう
一つは、料金への上乗せという
制度ですけれ
ども、
電気料金に上乗せするというのは最も簡単な方法で、今や自動振り込みも多いわけですから、大体の
消費者の人は気づかないうちに徴収されるという形のものであるわけですね。このうまい仕組みというのに非常に不信感を持つ人たちもおりまして、やはり何のかんのと言って、
太陽光発電の余剰
電力の話だけではなく、今後いろいろなものがその上に乗っかってくるのではないの、知らないうちにふえていくうまい
制度なんじゃないのというような不信感を持つ人もやはりいらっしゃいます。
それから、マスコミで報道される内容が、
太陽光発電の
買い取り制度の問題については、やはり産業の育成と雇用の拡大が強調されております。みんなが負担するという話は
余り報道されていないわけで、みんなが負担するんだよという話が私なんかの口から伝わりますと、何で産業の育成と雇用の拡大のために
余り余裕のない家庭の人たちも一種のカンパをしていかなきゃならないのかというところにやはり納得できない、それは国策であるのだから、やはり一般財源から出すべきではないかと。税金だったら、低所得の人は税金を納めていない人もいますし、ある程度のバランスというのはとれてきますけれ
ども、上乗せ
価格というのは、確かに使用量によって多分決められていくんだろうとは思いますけれ
ども、それでもやはり全員にかぶっていくというところは、たとえ数十円でも、やはり一般の人たちにはひっかかるものがあるわけです。
この
制度が実施されていくとしたら、やはりこれらの点について、普通の人たちがわかる、理解できるように、そして納得してもらえるような説明を丁寧にしていただきたいと思うわけです。
この
制度の
導入が非常に急がれているというふうに聞いておりますけれ
ども、非常に急ぐということは、それだけ後からいろいろな問題を生んでくるように思います。今回この話をしましたら、また地上デジタル放送のと同じで、後から
消費者はたっぷり負担をさせられるというような、わけのわからないことがさっさと国のリーダーシップで決まっていくのはおかしい、このごろそんなことが多いのよという話が出てきました。
それからもう
一つ、最後に、この
制度が実施されていく場合、買い取り、上乗せの問題ではありませんけれ
ども、太陽熱温水器の販売で非常に悪質商法が横行いたしました。そのために太陽熱温水器の普及というのはとまってしまいました。その二の舞にならないように、いろいろな施策に万全を尽くしていただきたいと思うわけです。
そのためには、もう既に検討されていますけれ
ども、製品だとか
システムの保証体制、それから施工技術の保証とか、
あと、施工技術者、工務店のどこが信用できるところなのかということを、
利用しようとする人にわかりやすくしていただきたいということですね。
それから、メンテナンスの保証というのがやはり重要かと思います。十年保証というのはついているそうですけれ
ども、太陽熱温水器の場合は、売りっ放しで
事業者さんが行方不明になるケースがたくさんありまして、故障しても直せないでそのまま放置されているというケースが多々ありました。大変な苦情が私
どもの方にも入りまして、大変苦労した記憶があります。そのような事態にならないように、そういう
制度的なものも十分に検討していただいて、その上で実施に踏み込んでいただきたいと思います。
しかし、最後にもう一度お願いいたしますけれ
ども、やはり低所得の人たちに対する配慮というのを、ぜひ
制度設計されるときに入れていただきたいというふうに思います。
以上です。(拍手)