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2008-11-05 第170回国会 参議院 外交防衛委員会 第4号
公式Web版
会議録情報
0
平成二十年十一月五日(水曜日) 午後一時一分
開会
─────────────
出席者
は左のとおり。
委員長
北澤
俊美
君 理 事
浅尾慶一郎
君 犬塚 直史君 藤田 幸久君 浅野 勝人君 木村 仁君 委 員
喜納
昌吉君
佐藤
公治
君 徳永 久志君 白
眞勲
君
牧山ひろえ
君 柳田 稔君 岸 信夫君 小池 正勝君
佐藤
正久君 橋本 聖子君
山本
一太君 浜田 昌良君
山本
博司君 井上 哲士君 山内
徳信
君
事務局側
常任委員会専門
員 堀田 光明君
参考人
ペシャワール会
現地代表
中村
哲君
独立行政法人国
際
協力機構広報
室長
力石
寿郎
君 ───────────── 本日の会議に付した
案件
○
テロ対策海上阻止活動
に対する
補給支援活動
の
実施
に関する
特別措置法
の一部を改正する
法律
案(
内閣提出
、
衆議院送付
) ─────────────
北澤俊美
1
○
委員長
(
北澤俊美
君) ただいまから
外交防衛委員会
を
開会
をいたします。
テロ対策海上阻止活動
に対する
補給支援活動
の
実施
に関する
特別措置法
の一部を改正する
法律案
を
議題
といたします。 本日は、
参考人
として、
ペシャワール会現地代表中村哲
君及び
独立行政法人国際協力機構広報室長力石寿郎
君に御
出席
をいただいております。 この際、
参考人
の方々に対し、本
委員会
を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、大変御多用の中にもかかわりませず本
委員会
に御
出席
をいただきまして、誠にありがとうございます。特に
中村参考人
は、遠路、長時間を掛けての御
出席
を御快諾をいただきまして、誠にありがとうございました。 皆様から
忌憚
のない御
意見
を拝聴して、今後の審査の
参考
にしてまいりたいと存じておりますので、本日はよろしく
お願い
をいたします。 議事の進め方について申し上げます。 まず、
中村参考人
、
力石参考人
の順にお一人二十分程度で順次御
意見
をお述べいただき、その後、
委員
からの
質疑
にお答えをいただきたいと存じます。 御
発言
の際は、その都度、挙手の上、
委員長
の許可を得ることになっておりますので、御
承知おき
をいただきたいと思います。 また、
参考人
、
質疑者
とも
発言
は着席のままで結構でございます。 それでは、まず
中村参考人
に
お願い
をいたします。
中村参考人
。
中村哲
2
○
参考人
(
中村哲
君)
中村
です。
ペシャワール会現地代表
として
発言
を許していただきたいと思います。 私は、実はおとといまで
ジャララバード北部
にあります
干ばつ地帯
の
作業現場
で
土木作業
をやっておりました。なぜそうなのか。今日の
議題
と
一見関係
ないようですけれども、実は
アフガニスタン
を襲っているのは、最も
脅威
なのは大
干ばつ
でありまして、今年の冬、生きて冬を越せる人がどれぐらいいるのか。恐らく数十万人は生きて冬を越せないだろうという
状況
の中で、私
たち
は、一人でも二人でも命を救おうということで力を尽くしております。そのために
用水路
の
建設
、これは冬が勝負のしどころでありまして、何とか完成しようということで力を尽くしておるわけであります。 繰り返しますけれども、
アフガニスタン
にとって現在最も
脅威
なのは、みんなが食べていけないということであります。 イギリスの著名な
団体
の発表によりますと、恐らく五百万人の
人々
がまともに食べられない、
飢餓状態
にあるというのが
アフガニスタン
の
現実
でありまして、このみんなが食べていけない
状態
、そのためにみんな仕方なく悪いことに手を出す、あるいは傭兵となって軍隊に参加するという悪循環が生まれておりまして、今日審議される事柄と決して無縁どころか、
一つ
の大きな要因を成しておるのではないかというのが私
たち
の認識であります。 例えば、穀物の
自給率
は半分以下、小麦の価格はこの一年で三倍から四倍に高騰しておりまして、普通の
人々
はもう生きていけない。私
たち
の職場でも
職員
百五十名の給与を過去五回にわたって上げましたけれども、それでも食えない
状態
と。
一般
の
人々
にとっては
戦争
どころではないというのが思いであろうかというふうに私
たち
は考えております。 衣食足って礼節を知るといいますけれども、まずみんなが食えることが大切だということで、私
たち
はこのことを、水それから食物の
自給
こそ
アフガニスタン
の生命を握る問題だということで、過去、
ペシャワール会
は
干ばつ対策
に全力取り組んできました。私
たち
は
医療団体
ではありますけれども、
医療
をしていてこれは非常にむなしい。水と清潔な
飲料水
と十分な
食べ物
さえあれば恐らく八割、九割の人は命を落とさずに済んだという苦い体験から、
医療団体
でありながら
干ばつ対策
に取り組んでおります。 その結果、現在、
ジャララバード北部
、具体的にはニングラハル州
北部全域
に展開いたしまして、五年前から
用水路
の
建設
に着手いたしまして、現在二十キロメートルを完成しつつあります。その結果、それまで荒廃していた
砂漠化地帯
で十数万人の
人々
が帰ってきて
生活
できるようになる。更にこれが二十数キロ完成いたしますと約五千ヘクタールから六千ヘクタールの新たな
開墾地
が生まれまして、二十万人、三十万人以上の
食料自給
が可能になるということで、
地域住民
と一体になって
仕事
を進めておるところであります。 それだけではなくて、こういった
人海戦術
を使った、現在五百名以上の
作業員
が私
たち
と
仕事
をしておりますけれども、当然雇用が発生する。それを聞き付けて、
パキスタン
に逃れておった
干ばつ避難民
が戻ってくる、あるいは
国内避難民
が戻ってくるということで、
仕事
をしている間は日当で何とか食い、それから水が来れば、これは
自分たち
の土地ですから、
自給
自足の国なんですね、
アフガニスタン
は八割以上が
農民
の国でありまして、彼らは水さえあれば、所得こそ少ないですけれども、農産物さえあれば決して貧しい国ではない。彼らの要求というのはそう高くない。家族がまず一緒にふるさとにおれて十分な
食べ物
があること、それ以上の望みを持つ人は私は少ないと思います。 そういうことでありまして、私
たち
は、まずは水、それも清潔な
飲料水
。これは、具体的には千五百本の井戸を私
たち
は掘ってきましたけれども、この
事業
も継続されております。さらに、
農業生産力
、
農業自給率
を高めるということに力を尽くしております。 さらに、今
アフガニスタン
の問題がいろいろ言われておりますけれども、この
干ばつ
に加えまして、
アフガニスタン
をむしばんでおるのが
暴力主義
であります。これは
アフガン人
の
暴力
であることもありますし、
外国軍
による
暴力
のこともある。これが
アフガン
の
治安
の
悪化
の背景を成しておりまして、私どもはこれに対しても心を痛めておる次第であります。 今、盛んに報道されておりますけれども、
アフガニスタン
は現在
治安
が悪くなる一方でありまして、しかもその
治安悪化
が隣接する
パキスタン
の
北西辺境
州まで巻き込んで膨大な数の
人々
が死んでおるということは
皆さん御存じ
だと思います。 先ほど冒頭に述べました
干ばつ
とともに、いわゆる対
テロ戦争
という
名前
で行われる
外国軍
の空爆、これが
治安悪化
に非常な拍車を掛けておるということは、私は是非伝える義務があるかと思います。 一口にいろんな反
政府運動
だとか
武装組織
だと言いますけれども、
アフガン土着
の
反抗勢力
を見渡してみますと、基本的に
アフガン
の
伝統文化
に根差した保守的な
国粋主義運動
の色彩が非常に濃い。切っても切っても血がにじむように出てくる。決してある特定の、旧
タリバーン政権
の
指令一つ
で動いておるわけではない。いろんな諸党派が乱立しまして、それぞれに
外国軍
と抵抗している
状態
。それから、かつてなく
欧米諸国
に対する憎悪が
民衆
の間に拡大しているというのが、私
たち
は
水路現場
で
一般
の
農民たち
と接しておりまして感じる実感であるということは伝えておきたいと思います。 もちろん、いろんな
反抗勢力
の中には、私
たち
の
伊藤
君、
職員
の一人であった
伊藤
君が
犠牲
になったように、とんでもない無頼漢もいますけれども、各
地域
でばらばらにそういった自発的な
抵抗運動
が行われておる。それだけ根が深いわけでありまして、恐らく二千万人の
パシュトゥン民族農民
を抹殺しない限り
戦争
は終わらないだろうというのが、これは私ではなくて、
地元
の
人々
、これは
地元
の
カルザイ政権
も含めた
人々たち
の
意見
でありまして、しかも、
武装勢力
といっても、
アフガン農村
について
日本
で知っている人は少ないと思われますけれども、
兵農
未
分化
、すなわち侍と百姓が未
分化
な
社会
でありまして、すべての
アフガン
の
農村
は
武装勢力
と言えないことはない。その中で
混乱状態
が何を引き起こすかというのは御想像に任せたいと思います。 しかも、
アフガン農村
では復讐というのは絶対のおきてであります。ちょうど
赤穂浪士
のようなものなんですね。私
たち
は
ニュース
の上で、
アメリカ兵
が今年は何名殺された、
カナダ兵
が何名殺されたということは
ニュース
になりますけれども、その背後には、一人の
外国兵
の死亡に対して、何でもない普通の人が死ぬ
アフガン人
の
犠牲
というのはその百倍と考えていい。すなわち、
外国人
の戦死あるいは
犠牲者
の百倍の
人々
が、日々、
自爆要員
、いわゆるテロリストとして拡大再生産されていく
状態
にあるということは是非伝えるべきだと私は思います。
アフガニスタン
と
パキスタン
の
国境地帯
もこの悲劇が及んでおりまして、現在、
抵抗勢力
が何か危ないと
パキスタン側
に逃れるということで、
パキスタン側
、
アフガニスタン側両側
から挟み打ちのようにして
軍事作戦
が行われておるようでありますけれども、これがまた今度は、うそのような話で、
パキスタン国境地帯
から
アフガン側
に流れてくる
パキスタン難民
というのが発生する。こういった事情の中で、私が二十五年いる中では現在最も
アフガニスタン
は
治安
が悪くなっておる
状態
だと言うことができると思います。 さらに、対
日感情
につきましても、これは少しずつ陰りが見えてきておるということは私は是非伝えておく必要があると。かつて広島、長崎というのは
現地
では有名でありまして、
アフガン人
の
知識人
のほとんどは、
アフガニスタン
の
独立
と
日本
の
独立
が同じ日だというふうに信じている人が多いくらい親日的なんですね。ところが、最近に至りまして、米国の
軍事活動
に
協力
しているということがだんだん知れ渡ってくるにつれて、私
たち
も身辺に危険を感じるようになりました。 やはり、あの最も親しいと思っていた
日本
が同胞を殺すのかと思えばこれは面白くないわけでありまして、これは日々
日本
に対する
感情
は悪くなっているということははっきり言ってもいいんじゃないかと思います。かつては、我々、
外国人
、
欧米人
と間違えられないために
日の丸
を付けておれば、まず山の中のどこに行っても安全だった。ところが、今その
日の丸
を消さざるを得ないという
状況
に立ち入っているというのが
現実
であります。 私の舌足らずの点は後ほど質問の中でるるお答えしたいと思いますけれども、現在、
日本
の中でいろんな
議論
がされておりますけれども、よく私
たち
、私
たち
といいますか、
日本
で当然のように
議論
のベースになっておる
国際社会
という言葉、これに私は率直に
現地
から疑問を呈さざるを得ない。
国際社会
という
実態
は何なのか。少なくとも
アフガン
の
民衆
は
国際社会
の中には入っていないということは、
一連
の
議論
の中から私が率直に、先ほど
忌憚
のない
意見
をということでしたので
忌憚
なく申し上げますと、
国際社会
の
実態
というのは、少なくとも
アフガニスタン
、
パキスタン
の
民衆
はその中には入っていないということは言えると思います。私
たち
は、
国際社会
、
国際協力
、
国際貢献
と言うときに、何をもって
国際
と言うのかという土俵からして十分な審議を尽くさなくちゃいけないのではないかというふうに思います。 話が長くなりますけれども、やはりこれは、
国際
というのは、国や
国家
が、
国家
、
民族
、宗教を超えて、
人々
が互いに理解し合って命を尊重すること、これが平和の
基礎
であろうと
現地
にいて分かるわけですね。今、
日本
はその分かれ目にある。これが最後になりますけれども、いかにより良い
世界
、より安全で平和な
日本
を
自分たち
の
子孫
に残すか。我々は十年、二十年かすると死ぬ、あるいはぼけてこの世からいなくなってくる。この
日本
の
子孫たち
にどういう
世界
を残すのか、私
たち
は
岐路
にあると思います。 この
アフガン
問題というのは確かに局地的な
国際紛争
かもしれませんけれども、これを
目先
の政治的な道具にしたり、あるいは
目先
の経済的な利益という観点から見るのでなくて、実際にこれからの
日本
の
岐路
を決定する重要な問題だとして
先生たち
の十分な討議を
お願い
いたしまして、舌足らずではありますが、私の
意見
とさせていただきます。 どうも御清聴ありがとうございました。
北澤俊美
3
○
委員長
(
北澤俊美
君) ありがとうございました。 次に、
力石参考人
に
お願い
をいたします。
力石参考人
。
力石寿郎
4
○
参考人
(
力石寿郎
君) 本日は、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。 私の方からは、我が国及び
JICA
がこれまで
アフガニスタン
に対して行ってきた
復興支援
につきまして御説明をいたしたいと思います。 お手元にお配りしております
資料
がございます。「
アフガニスタン
の
復興支援
について」という
資料
でございます。一は
国際社会
における
復興プロセス
ということで、
先生方
もよく
御存じ
だと思いますので、これを説明する代わりに、これと、一、二、三、四
ページ
目に大きな
資料
が添付、
カラー
の
資料
が添付され……(
発言
する者あり)
北澤俊美
5
○
委員長
(
北澤俊美
君) ちょっと
速記
を止めてください。 〔
速記中止
〕
北澤俊美
6
○
委員長
(
北澤俊美
君)
速記
を起こしてください。
力石寿郎
7
○
参考人
(
力石寿郎
君) それでは、この大きな
カラー
の
縦表
がございますでしょうか、これの大きいやつでございます。それをちょっと御覧いただきたいと思います。 これの、
アフガニスタン
の
支援
を理解する上で非常に分かりやすい見方は、一番上のこの緑色の
部分
、これがいわゆる
ボン
・
プロセス
という
政治プロセス
でございます。すなわち、
タリバン政権崩壊
後の
アフガニスタン
の建国のための
基礎づくり
、議会の形成ですとか
大統領選挙
ですとか、そういった
一連
の政治的な枠組みをつくる
プロセス
を
ボン
・
プロセス
と呼んでおります。これが一番左の上の緑の
部分
。 それから、それに続く
部分
が
アフガニスタン
・コンパクト。これは
アフガニスタン
の
開発
の
計画
でございます。
ANDS
と書いてございますのは
アフガニスタン
・ナショナル・ディベロップメント・ストラテジーという略でございまして、通称、我々はアンズと呼んでおります。この中に今後の
アフガニスタン
の
開発
の
方向性
を記した
計画書
がございまして、これが承認され、そして二〇〇八年、今年でございますが、これが正式に
フルANDS
といいますか、完成型になったという
状況
であります。 そして、その欄の下にずっと、左側に赤い字で
分野
が書いてありまして、これまで
日本
がやってきた様々な
協力
が
分野ごと
に記されてございます。この
一つ一つ
のバーが
協力
の長さを表しております。ざっと御覧いただければお分かりのとおり、かなり多くの
協力事業
を
日本政府
及び
JICA
の方で展開してまいったわけでございます。 今日は時間も非常に少のうございますので、その後ろの方に、その次の
ページ
ですね、二枚ほど
地図
、
カラー
の
地図
と囲みがあるのが続いておりますけれども、この
最初
の
地図
の方が
JICA
が
アフガニスタン
に対して行ってまいりました
支援プロジェクト
の
マップ
になっておりまして、一枚目の
マップ
が二〇〇二年七月から二〇〇八年十月、先月までですね、で終了した
案件
の
プロジェクト
の
名前
が
エリアごと
に記してございます。そして、次の
ページ
が十一月四日現在ということで、今もなお
実施
中の
プロジェクト
の数々を
地域別
に表してございます。 これだけ文字で御覧いただいてもなかなか分かりづらいということもありますので、その後の
ページ
から
写真
を
幾つ
か、
先生方
に具体的なイメージを持っていただくための
写真
を用意してございますので、御覧いただければと思います。 一番
最初
は
カブール
の現状ということで、
カブール
ってどんな感じなのかなというところで
幾つ
かの
写真
を御紹介してございます。この
右下
の
写真
の山が見えますが、これ多分アスマイ山だと思いますが、
貧困層
の
人たち
が家を造ってそこに住んでいる。水がないので、一番下まで下りてきて、くんでまた上に持って上がるというような
状況
でございます。
カブール
市は今非常に
人口
が過密になっていまして、従来の
カブール
市が持っていたいわゆる
許容量
をはるかに超えた
人口
が住んでいるがために様々な
生活
上の不便が生じている
状況
にございます。 次の
ページ
をちょっと御覧いただきますと、これからは
分野別
にどういうことをやってきたかというのを絵で御紹介してございます。
最初
が
社会基盤
の
復旧支援
。これは、二〇〇二年から開始された
緊急復興支援調査
というのを
JICA
が行いまして、
調査
だけではなく、実際に物を直しながら
調査
を進めていくという新しい
手法
で
支援
をしたものでございます。 例えば、
最初
の上の方が
カンダハル
の
道路プロジェクト
、それから右側の方が
マザリシャリフ
の
市内
の目抜き通りの
道路プロジェクト
、これ、いずれも未舗装で大変な土ぼこりが上がっていたところを緊急に舗装いたしまして市民の
生活
の便宜に供しているということでございまして、非常にこの
プロジェクト
は感謝されております。それから、下の方は
学校施設
、これは
カブール
六校、
カンダハル
七校、
マザリシャリフ
七校、これを
建設
いたしました。それから、以前、一九七〇年代に
プロジェクト
としてやっておりました
結核研究所
の
プロジェクト
、これの建物がもう
瓦解寸前
の廃墟になっていたものを完全修復してよみがえらせて、今は非常に活発に
結核
の防止の
活動
が行われているということでございます。
右下
の
写真
が
カンダハル
の
農業水路
、これは、しばらく手が入っていなかったものですから、土砂が埋まって役に立たなかったものをしゅんせついたしまして、十キロメートルしゅんせつをして元の
かんがい水路
の復活を図った。 次の
ページ
に行きますと、
除隊兵士
の
社会復帰支援
というのを
JICA
の方で
実施
しておりまして、これは
カブール
におきまして五百五十名の
除隊兵士
に対する
職業訓練
を
実施
しまして、この一番上の
写真
の真ん中に写っている方は
日本人
の
JICA
の
専門家
、アドバイザーでございます。これは二〇〇四年一月からやった
プロジェクト
ですが、四年ちょっと
たち
まして、今は非常に軌道に乗っておりまして、ここの
職業訓練校
を卒業した
人たち
の六〇%以上が就職できるに至っております。様々なコースで、
自動車整備
ですとか溶接とかコンピューターとかそういうことを、除隊した
兵士
に手に職を与えて就職を図っているということでございます。 それで、次が
実施
中の
重点分野
における
支援
の
幾つ
かを御紹介しております。
最初
は、
農村開発分野
。これにつきましては、
かんがい
や
道路
、農道ですね、それから
農村
の
インフラ改善
をやっておる
プロジェクト
。それから
農民
の
生活向上支援
。さらには、中央から地方に
自治権
が移譲されるんですけれども、それにまだ十分な用意ができていない、
能力
が追い付かないというところで
行政
の
能力向上支援
もやっております。その他、ナンガハル州の
稲作農業改善支援
。この一番下の、左下の
写真
が
ジャララバード
で
稲作指導
を直接
支援
している
JICA
の
日本人専門家
でございます。
右下
の方の
写真
は
農村道路
の
再建
なんですけれども、これは参加型の
プロジェクト
でございまして、どういうふうにやるかといいますと、まず、いろんな近くの村落の
住民
の
代表者
をみんな集めまして、
農村開発委員会
というものを組織します。この
委員会
がそれぞれの
住民
の
意見
を調整しながら
プロジェクト
を
実施
するというやり方です。
住民
自らが決めた
プロジェクト
を
地域住民
が参加してこれを
実施
すると。隣の村、そのまた隣の村との連帯をつくっていくというような
手法
の援助でこの
道路再建
をやっているという例でございます。 次が
保健医療セクター
でございまして、これまでやってきた主なものは、建て直しをした
国立結核研究所
を
中心
にした
結核予防
の
プロジェクト
。それからリプロダクティブヘルス、
母子保健
を
中心
とした
能力向上
の
プロジェクト
。さらには、
都市型保健システム
。これは病院のレファレルシステムとか、そういったものが
中心
なんですけれども、それの
整備
、
ノウハウ
の伝授というような
プロジェクト
をやっております。 次の
ページ
は
教育セクター
でございまして、まず、
フォーマル教育
。一年から六年生の
教師用教材
の
作成
ですとか、いわゆる
教育指導要領
の
作成
。それから、一万人の教員に対するトレーニング。まず、
アフガニスタン
では
先生
の数が足りないんです。
就学児童
はどんどん増えていきますので、
先生
の
教育
を急がなくちゃいけませんが、なかなかその基になる
指導要領
がないと素人の
先生
がいい授業ができないということになります。そこで
全国共通
の
学習指導要領
を
JICA
の
協力
で作りまして、
相手側
と相談しながらもちろん作るわけですが、それを
全国
に頒布いたしまして、それを使って
学校
で
先生方
が
子供たち
を教える、こういうような構造になっております。そのほかでは、
障害児
の
教育
。
戦争
や地雷で傷ついた身障者、そういった
児童
も多いので、これらに対する
教育
の
整備
、そういうことをやっております。 それから、ノンフォーマルの
教育分野
では、
識字教育
ですね。非
識字者
を
対象
として、今のところ約千六百人を
対象
に
識字教室
、それから
職業訓練
を併せて
実施
するような
プロジェクト
をやってございます。それから、約一万人に対する
識字教育
の
実施
につきましては、
カブール
、バーミヤン、
マザリシャリフ
といったところで行っております。
写真
はそれぞれの
現場
を写したものでございます。 さらに、
教育セクター
で
職業訓練
、これにつきましては先ほど御紹介しましたので、ダブりますので省略いたします。 さらに、その次の
ページ
で
運輸交通セクター
がございますが、これまでにやってきた
日本
の
貢献
としましては、まず
カブール—カンダハール
、約五十キロの
道路
、それから
カンダハール
とヘラート間、百十四キロメートルの
道路
、
マザリシャリフ
の
市内道路
、こういったところを
中心
に
無償資金協力
で
実施
しております。さらに、
道路
を造っただけでは早晩傷んできますので、これをどうやって管理するかという
ノウハウ
を教えるために、
公共事業省
の
道路維持管理局
の
能力向上プロジェクト
を
技術協力
で行っております。さらに、
カブール
の
道路技術センター
を修復しまして、そこで十分な
訓練
が行えるようにしております。 次の
ページ
は
都市開発セクター
でございます。 これは、先ほど申し上げたように、
カブール
の持続的な
開発
に向けた
計画策定支援
。つまり、
カブール
のいろんな
インフラ
や何かが
能力
を超える
人口
を抱えるに至っておりまして、このままに放置しますといずれの
インフラ機能
も麻痺して多くの
住民
が困窮するということなので、これから首都である
カブール
の
機能
をどうやって維持発展させていくかという
開発
計画
を策定しまして、その
開発
計画
に基づいて個々の
プロジェクト
を
実施
するという
手法
でやっております。
一つ
は、今深刻な問題は
カブール
市の水が大変不足しておるということでございまして、今やっておりますのは
カブール
盆地の深層地下水の賦存量
調査
、それから
カブール
市内
の水供給のための新たな水資源
開発
、こういったことも
実施
しておるところでございます。それから、
カブール
首都圏の地形図、これは正確なものが存在していないのでいろんな
プロジェクト
をやるに際しても不便がございますので、これを作っていると。さらに、
カブール
でもう
一つ
足りないものは電力でございます。この電力の供給改善
支援
をやっておるという
状況
です。 下の
写真
は深層地下水の
調査
ですが、みんなきれいに仲良く並んでいますが、これ、実はこのリグは五百メートル以上の深層地下水の
調査
も
実施
できる機材でございます。それから、右の
写真
が地形図
作成
の技術指導を
日本人
の
専門家
がやっているところでございます。 以上が、これまで
日本政府
、
JICA
がやってまいった
プロジェクト
の概要でございます。 今後でございますけれども、先ほど触れました
アフガン
の
国家
開発
戦略に基づいて引き続き保健、
教育
、農業・
農村
開発
、
インフラ
整備
などの
分野
で
支援
を継続してまいりたいと考えております。また、
アフガニスタン
側の自助努力の促進、政府の
行政
能力
の強化、これを同時に図っていきたいと考えております。さらに、首都
カブール
の再生のための先ほど申し上げたような新都市の
建設
も含めた将来
計画
を作るというようなことをやってございます。 安全対策でございますけれども、先ほどお話がありましたように非常に
治安
が
悪化
しておりまして、
一つ
例をここで引用させていただきますと、
治安
に関する事件の数でございます。二〇〇三年は全
アフガニスタン
で五百八件発生していたのが二〇〇七年は六千七百九十二件に達しております。それから、いわゆる自爆テロ、爆弾を爆発させて攻撃するやり方ですが、二〇〇三年には二件発生していたものが二〇〇七年では百六十件に増えております。この数字を御覧いただくだけでかなり
治安
が
悪化
しているということが御認識できるのではないかと思います。
JICA
の方では、これら刻々と変わっていく
治安
情報の収集、それからお互いの連絡体制の
整備
、それと、ちゃんと万一のときに身を守る防弾車の使用、それから安全確保のための行動規制というものを課しております。これはすべての
JICA
関係者にあまねく適用している安全対策方策でございます。 最後に、今四十五から五十五ぐらいでしょうかね、まあ人の人数は変わりますが、それぐらいの規模で
JICA
の
事業
は展開しておりますが、今非常に
治安
が悪くなってきたということもあり、彼らが日常
生活
する上で非常に大きな規制をさせていただいていまして、想像を絶する困難な勤務を強いているところでございます。 例えば、買物に行ってはいけない、町に歩いて出かけてはいけない。それから、外食は許されない、全部賄いですね、自分の宿舎で食事を作って食べるということであります。それから、不要不急のもちろん外出、車での外出も含めて不要不急の外出はしてはいけない。通勤時間帯は毎日変更しなさい。それから、テロの標的になりやすい施設や軍の関係の施設などには近づかない。そのようなことを強いておりまして、もちろん娯楽などは皆無でございます。そういう中で、長い人でありますと二年を超える勤務を
お願い
をしておって、本当に我々、同僚も言っておりますけれども、頭の下がる思いがしております。 このような
状況
で、歯を食いしばって引き続き
アフガニスタン
の
支援
に邁進しているところでございます。 以上で私の御報告を終わります。
北澤俊美
8
○
委員長
(
北澤俊美
君) ありがとうございました。 以上で
参考人
の
意見
陳述は終わりました。 これより
参考人
に対する
質疑
を行います。
質疑
のある方は順次御
発言
を願います。
犬塚直史
9
○犬塚直史君 民主党の犬塚です。 両
参考人
、本日はありがとうございます。 新
JICA
、これは絶対に成功させなければいけないという気持ちも多分共有させていただいていると思いますし、我々も全力で応援をする覚悟であります。 今日は、遠いところ、
中村参考人
、ようこそお越しいただきました。 我々はこうして一万キロも離れた居心地のいい会議室で
アフガニスタン
のことを論議しているわけであります。ただ、先ほど
参考人
がおっしゃったように、今が
日本
の
岐路
であるという気持ちは与野党を通じて共有させていただいていると思います。 そこで、まず、
中村参考人
が、これはもう既に七年前の衆議院の
参考人
としてこちらに、
日本
の国会にお越しいただいたときにこういうことを言っております。
日本
に対する信頼というものは絶大なものがある、それが、軍事行為に、報復に参加することによって駄目になる可能性がある、私
たち
が数十年掛けて営々と築いてきた
日本
に対する信頼感が、
現実
を基盤にしないディスカッションによって、軍事的プレゼンスによって一挙に崩れ去るということはあり得るということをおっしゃっているわけですけれども、外からこの
日本
の国会の論議を見ておられて、今どういうふうにお感じになっておられますか。
中村哲
10
○
参考人
(
中村哲
君) これはおっしゃるとおりでありまして、先ほど申しましたように、どういう立場から、どこで、何を見ようとして見るかということで見え方は違いますけれども、少なくとも、
一般
の九九%の
アフガン人
の気持ちに立って物を見ますと、これは確実に私の言ったとおりに、空から降ってくるあの爆弾が、
日本
もそれに加担してやっているという認識が少しずつ浸透するに従って我々の身辺も危なくなってきているということは是非お伝えしたいと思います。 以上であります。
犬塚直史
11
○犬塚直史君 そうした困難な
状況
の中、二十五年余にわたって、まさに
現地
化というよりも土着化して、これは
中村
先生
がおっしゃったことですが、土着化して頑張っている
活動
に心から敬意を表したいと思います。 その上で、私は最近、
現地
でヨーロッパのPRTと民軍が一緒になっている
活動
の
実態
を聞き取り
調査
をした際に、何が何でも応援はするが、モスクだけは
再建
することはできないというようなお話があったのが非常に印象に残りました。 そこで、
中村
医師の報告の中で、「誤解される「マドラサ」」と、マドラサというのはイスラム神
学校
と訳されているわけですけれども、これについての御報告がありました。ちょっと引用させていただきます。マドラサは通常イスラム神
学校
と訳され、タリバーンの温床として理解されているが、
実態
は少し違います。マドラサは
地域
共同体の
中心
と言えるもので、これなしにイスラム
社会
は成り立ちません。イスラム僧を育成するだけではなく、図書館や寮を備え、恵まれない孤児や貧困家庭の子供に
教育
の機会を与えると。そのマドラサを水路と一緒に
再建
の
協力
をさせたという、その体験を少しお話しいただけますか。
中村哲
12
○
参考人
(
中村哲
君) まず、PRTについて言いますと、ほかの
地域
は知りませんけれども、
ジャララバード
を
中心
に、東部、南部、北部で、北部というか北東部で行われておるPRTの
実態
というのは、実は
軍事活動
の一環としてとらえてまず間違いない。 例えば
医療
関係でいいますと、突然米軍の装甲車がやってきて薬を配らせてくれと言う、診療所で。で、とんでもない、なめちゃいけないよ、我々は医者だぞ、正しい診断なしに兵隊が薬を配れるかと言って私
たち
は断りましたけれども、ほかのNGOはそうはいかない。反対するとやられるかもしれないという恐れでもってそれを受け入れる。副作用も分からない、何も分からないということで、薬をばらまいて一日で過ぎ去ってしまう。これはごく一例でありますけれども、明らかにこれはPRTの、いいPRTもあるんでしょうけれども、私が目撃したPRTというのは、ほぼ米軍の
活動
を円滑にするための宣撫
活動
に本質的に近いものだというふうに考えて間違いないと思います。 だから、私
たち
がヘリコプター、米軍から襲撃を受けたときも、PRTと密接な関係を持ってというふうに言いましたけれども、PRTと接触すること自体が危険を招くということで、一切
ペシャワール会
としてはPRTとの接触を断っております。もちろん敵対するつもりはありませんけれども、巻き込まれるつもりもありません。 それから、マドラッサについて言いますと、これは
日本人
全体がイスラム
社会
についての認識が薄いので分かりにくい点もあるかと思いますけれども、どだいこのイスラム神
学校
という訳し方がおかしい。少なくとも
アフガニスタン
におきましては、各
地域
を束ねる
中心
地がこのマドラッサでありまして、私
たち
の
用水路
の開通によりまして、
人口
それまでわずか二、三万の
地域
が二十万人以上に膨れ上がってくる。そうなりますと、その
地域
を束ねる
中心
が必要になってくるわけでありまして、いろんな
地域
が、いろんな
民族
や部族が入り乱れておりますので、
アフガニスタン
というのは雑炊
状態
。その異なった集団を束ねるのがイスラム教であり、マドラッサであるわけですね。
地域
の紛争も、普通金曜日に長老
たち
や村長さん
たち
が集まって、そこで解決を図るということで、必ずしも新聞、報道機関などで放送されておるようなタリバーンの温床だとか過激派の育成機関だとかいうわけではありません。 これは私
たち
が率先して建てたというより、
地域
の
人々
が要請しまして、空き地があったので、これは何の空き地だと言うと、マドラッサの予定地だけれども、国連や外国NGOはマドラッサとモスクの
建設
だけは外してあるということだった。じゃ我々ついでに建てましょうかと、建物だけは建てましょうということで始めまして、十二月までに完成予定であります。そうしますと、一千名の学童と六百名を収容するモスクができまして、この二十数万人の
人口
を束ねる
中心
となる予定であります。 なぜ我々がそれに手を付けるかといいますと、
農村
共同体の秩序、これはマドラッサなしには完成しないというのが私
たち
の基本的な考え方でありまして、単に宗教勢力を敵視するのではなくて、本当のイスラム教徒というのは決して人殺しをしてはいけないというのもイスラムの教えの中にあります。むしろ宗教者の平和的な気持ちに訴えかけまして、
地域
に平和をもたらそうということと同時に、イスラム
社会
でこれだけ戦乱がありながらストリートチルドレンが少ないのはなぜかといいますと、これはマドラッサがこういった
人々
を吸収してそこで育てるという貧しい学童に対する
教育
機能
も兼ねているわけでありまして、それに着目して
建設
を開始した。 面白いのは、そのとき集まってきた長老
たち
がこれで自由になったと叫んだ。それまでイスラム教徒であること自身が罪悪であるかのように取られる。単にマドラッサで学んでいるということだけで爆撃の
対象
にされて学童が何百名も死ぬという中で、外国のNGOがやったというのはこれは画期的なことだということで、東部では非常に喜ばれました。 そういうことでありまして、私
たち
は
日本
や
欧米人
の偏見を超えまして、
地域
の人にとって何が大切かという視点でこのマドラッサの
建設
を進めているわけであります。 話がくどくなりましたけれども、そういう次第でございます。
犬塚直史
13
○犬塚直史君 私は、
日本
のかつては良かったイメージ、広島、長崎は有名であった、日露
戦争
に勝ったというようなイメージがもう今や崩れつつあると。しかし、しかし
日本
はまだそういう言わば宗教的な確執からは無縁な立場であり得ると。マドラッサの
建設
を始めとして
日本
なりの立場というのはあるんじゃないかと。別にほかと一緒になって同じことをやらなくても
日本
なりの援助の仕方があるんじゃないかと。私どもはそういうふうに思っているわけであります。 そこで、我々が今討議をしていることの
一つ
は、いかにして今OEFとかPRTが
アフガニスタン
の地から出ていけるのかと。やっぱり人道
活動
をするための空間を維持するために軍事的な組織のプレゼンスが必要ということを認めたとして、ではどのような形でこれがつくれるのかということについて、これはやはり七年前ですが、
中村
先生
がおっしゃっていることをまた引用させていただきたいと思います。これは衆議院の
参考人
質疑
のときです。「これもまた言いにくいことでございますけれども、
日本
の警察や自衛隊も含めまして、はるかに
現地
は
治安
部隊の実戦を積んでおります。これは、
パキスタン
の
治安
部隊の
仕事
でありまして、
外国軍
隊が、言葉もわからないという中で、とてもあのまねはできるものではない、」ということをおっしゃっているんですね。 今、我々が一番民主党の法案で
中心
にしたのは、
治安
構造
分野
改革といいまして、
現地
の警察あるいは軍あるいは司法というものをいかにして応援していくかという視点での立法をしたわけですが、この
現地
の
治安
部隊の外国の政府からの応援ということについて、
中村参考人
の御
意見
をいただきたいと思います。
中村哲
14
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 外国の軍事面の援助は一切不要でございます。 具体的な例を挙げますと、これがすべての
アフガン
全土に通用するかどうかは別といたしまして、PMS、
ペシャワール会
のワーカーである
伊藤
君が死亡した後、
現地
の
治安
当局と
地元
住民
が話合いをしまして
地域
治安
委員会
というのをつくり、そこが我々を防衛するという形を取っておる。何のことはない、これが伝統的な
アフガニスタン
の
治安
体系でありまして、旧タリバン政権もそれにのっとって
アフガニスタン
全土を治めたという経緯があります。 それを考えますと、
治安
問題というのは基本的に警察の問題であって軍隊の問題ではないということが私
たち
の基本的な認識でありまして、物取り強盗からあるいは武装集団の解決に至るまで、これは
地域
長老会、
地域
共同体と密接にありますそういった
治安
委員会
の設立によりまして、少なくとも、
アフガニスタン
の都市部は別といたしまして、
農村
部ではそれが最も良好な形態でありまして、陸上自衛隊の派遣は有害無益、有害無益という言葉が嫌ならば百害あって一利なしというのが私
たち
の
意見
でありまして、要するに軍事面に関与せず、そういった
地域
の自治体制に沿った形での
治安
体制の確立、これは十分可能なことではないかと思います。 ただし、これはアメリカのPRTあるいはNATO軍とは無関係なところで
日本
独自で進めれば、私は武装解除、武装解除
プロジェクト
、外務省が行いました武装解除
プロジェクト
というのがありましたが、案外これは十分希望が持てるのではないかというふうに思っております。 以上です。
犬塚直史
15
○犬塚直史君 今おっしゃった警察の
機能
についてもう少し伺います。 今警察が、内務省が大変な腐敗を抱えていて、末端の
アフガニスタン
政府の警察官は麻薬取引に自ら積極的に加担をしているというふうに聞いておりますが、
現場
から御覧になっていかがでしょうか。
中村哲
16
○
参考人
(
中村哲
君) これも伝えたかったことの
一つ
ですけれども、
日本
で考えるような警察力、すなわち中央集権的に警視庁と警察庁がありまして、これが
全国
隅々まで統括して目を光らせるという体制は
アフガニスタン
では不可能。先ほど言いましたように、
アフガン農村
においては成人男子のすべてが兵員であります。したがって、
地域
の伝統
社会
に沿った形の防衛というのはあり得る。これも是非言っておくべきでありますけれども、
農村
地帯に行けば行くほど、すなわち
日本
で危険地帯と呼ばれるところに行けば行くほどいわゆる昔ながらの伝統、これは良しあしは別といたしまして非常に強固なものがある。客人と認められれば自分の命を代えても守るというのが大体の
アフガン
社会
のおきてであります。 それを考えますと、私
たち
がそういった
地域
に本当に役に立つということでもって入っていくならば、
地域
の
人たち
が守ってくれる。もちろん
伊藤
君の場合のケースもありますけれども、あれは、詳しくは今日は申しませんけれども事故に近かった。そういった形で、合同
治安
委員会
というのを設置して、今のような形で私が守られているような形でその
地域
の
治安
を守るということは十分あり得ます。 また、
日本
のいろんな
プロジェクト
を成すに当たりましても、PRTやNATOとは無関係にそれをすることができるというならば、
住民
挙げて歓迎するであろうということは私ははっきり申し上げておきたいと思います。
犬塚直史
17
○犬塚直史君 今、
日本
独自の
活動
として中立性を持って、しかも
現地
をよく理解をして、
現地
の宗教を含めてこれを尊重する立場で
支援
をするのであれば、
現地
挙げて応援をしてくれるだろうという心強い御
意見
をいただきました。 そこで、少しさかのぼりまして、九・一一後の
ボン
合意というものがありました。この言わば停戦合意、これからの復興をどうしようかという会議に北部同盟の
人たち
は入ったけれどもタリバンが入らなかった、これが
一つ
大きな障害であったと言われておりますが、
参考人
の御
意見
を伺いたいと思います。
中村哲
18
○
参考人
(
中村哲
君) このことについては、私は
一般
的なことしか言えませんけれども、北部同盟もタリバーンも実は似たり寄ったりの内戦であったということですね。ただし、この北部同盟は少数
民族
であった。少数
民族
が多数
民族
を支配するという変則的な形になって、あのときだれもがこれは長続きしないと、少数者が多数派を支配はできないだろうということでありましたが、それが
現実
のものとなってきました。 実際には、カルザイ大統領を始めといたしましてパシュトゥン、タリバーンというのはパシュトゥン出身者が多かったわけですけれども、このパシュトゥンの
地域
に
開発
を集中させたり、それをなだめるような政策が各国によって取られましたけれども、まだまだ
行政
内部ではタリバーン全体が冷や飯を食っているという
状態
。さらに、タリバーンの構成
民族
でありますパシュトゥン
民族
は、
アフガニスタン
北西辺境
州の多数派を成しておりますパシュトゥン
民族
と一体でありまして、このために非常にややこしいことになっておる。この事態はそう長続きしないというのがこれは一致した見方であります。 以上であります。
犬塚直史
19
○犬塚直史君 先ほどおっしゃった、二千万人のパシュトゥン人を抹殺しない限りはこの
軍事作戦
の成功はあり得ないだろうという趣旨のことを先ほどおっしゃいました。
アフガニスタン
の南部、東部、そしていわゆるFATAという
地域
、そして
パキスタン
の北部、西部というところ一帯にこのパシュトゥンの
人たち
が住んでいると。 そういったいわゆる国境をまたいでこの
人たち
が存在をしておるという中で、今我が党が出したこの法案の中核を成すのが、実は抗争停止合意の推進ということを言っているわけであります。これは、国境も実ははっきりしない、そして
全国
的な停戦を命ずるような、言わば停戦を強制できるような主体も存在しない中にあって、
幾つ
でもいいから
地域
的に抗争停止合意というものをつくっていこうじゃないかと。 その際に最も大事になるのは、
日本
が国として停戦合意ができたならばこういう
支援
をしていくんだという
一つ
の覚悟といいますか準備だと我々は主張をしているんですが、
参考人
の御
意見
を伺いたいと思います。
中村哲
20
○
参考人
(
中村哲
君) これは既に、おっしゃることは非常に真っ当なことでありまして、これは
カルザイ政権
、あの米軍に擁立された
カルザイ政権
、それから
パキスタン側
の方も同じ動きをしておりまして、新聞で
御存じ
かと思いますけれども、今もうこの
戦争
では事は解決しない、基本的に対話路線でいかないと駄目だということが、
アフガニスタン
、
パキスタン
両国政府にとってはこれは死活問題になりますから、非常な熱意でディスカッションといいますか対話が開始された直後でございます。これは米軍もイギリスもそうでありまして、武力では勝たないという共通認識が広がりつつあるというのは
皆さん御存じ
かと思います。 その中にありまして
日本
がどういった態度を取るか。これはやはり、平和
国家
を自称する
日本
といたしましては、おっしゃったとおりに、このまとめ役、調停役として振る舞うと。これは
パキスタン
、
アフガニスタン
共に対
日感情
はまだまだましですから、十分力を発揮し得る政策ではないかと思います。ただし、これが米国やヨーロッパ諸国の手先と思われるような動きを避けて、
日本
独自の動きであるということを明確に打ち出すべきだというふうに私は思います。 以上であります。
犬塚直史
21
○犬塚直史君 これは今年になってお出しになった「対
日感情
の動き」という
中村参考人
のメールの一節なんですが、少し引用さしていただきます。六月になって
日本
軍、ジャパニーズトゥループ派遣検討の報が伝えられるや身辺に危機を感ずるようになった。
日本
が兵力を派遣すれば、我が
ペシャワール会
は邦人ワーカーの生命を守るために
活動
を一時停止する。これまで少なくとも
アフガン
東部で親
日感情
をつないできた糸が切れると、自衛隊はもちろん、邦人が攻撃にさらされよう。 これは、この国会にも実は報告書が提出されたばかりなんでありますけれども、そのように余り知られていない
現地
視察がどのような形でそうやって
現地
に広がり、
参考人
の耳に入ったんでしょうか。
中村哲
22
○
参考人
(
中村哲
君) これは
パキスタン
でかなり大々的に報道されました。その際に、我々自衛隊と言っていますけれども、英字紙ではジャパニーズトゥループと書いてあった。パシュトゥー語放送でもこれは報ぜられまして、私のところで働いている
職員
は、言いにくいものですから顔で分かるんですね、こういう放送があったが本当かと。制服着た人がうろうろしているとかえって我々危なくなるということを率直におっしゃったのを覚えております。そういうことで知りました。
パキスタン
のテレビ放送、それから
アフガニスタン
のラジオ放送、それからそれを聞いた
職員
が心配して我々に述べたということでその記事を書いたわけであります。 以上であります。
犬塚直史
23
○犬塚直史君 済みません、
JICA
の
力石参考人
、大変失礼しました。最後に伺いますが、この六月の
現地
調査
は、
現地
の
JICA
にも
調査
団は来たんでしょうか。
力石寿郎
24
○
参考人
(
力石寿郎
君) これは来なかったということでございます。接触はなかったというふうに理解しております。
犬塚直史
25
○犬塚直史君 最後に
中村参考人
に御
意見
を伺います。
日本
が
国家
として政府としてこの
アフガニスタン
に対する
支援
、どのようなものを
現地
から期待されますか。
中村哲
26
○
参考人
(
中村哲
君) まず、何をすべきかという性急な結論を出さず、大きな目で
アフガニスタン
の流れを見て、これが有効だという道を宣言すること、すなわち何をすべきかと同時に何をしていけないかということを明確にするだけで大きな方針が出される、対
日感情
の好転も見られるのではないかと思います。 今の対
テロ戦争
の破綻というのはだれの目にも明らか。ただ、それを言うとみんなから責められるので、みんな黙っている。裸の王様。その中にありまして、
日本
が独自に、先ほど申されました
治安
の回復も、米軍に寄らず、NATO軍に寄らず、独自に
地元
に寄り添って、
地元
が納得する形で
治安
の確立を回復しながら
支援
の道を探っていく。
支援
の道は明らかであります。 先ほど
JICA
の方もおっしゃられたように、水さえあればいろんなことが
アフガニスタン
でできる。このことについて力を入れるべきだという宣言をし、そして、
国際社会
というこのマジックのような言葉に踊らされずに、
日本
独自の道を見出す。過って改むるにはばかることなかれという言葉がありますけれども、誤りは誤りと認めて、まだ間に合う。ここで
議論
を尽くして、性急な結論を出さず、しかし大局は大局として見据えて決定していく、抽象的ですけれども、私はそれを望みたいと思います。 以上でございます。
犬塚直史
27
○犬塚直史君 ありがとうございました。 以上です。
佐藤正久
28
○
佐藤
正久君 自由民主党の
佐藤
正久です。 本日は、
中村参考人
そして
力石参考人
、本当に御多用の中御
出席
ありがとうございました。 お二人の話を聞いて、やっぱり本当に
現場
の方々はそれぞれの
分野
で一生懸命頑張っておられるということを、肌でというわけにはいきませんけれども、私の経験なりにイメージをオーバーラップさせていただいたというところでございます。
ペシャワール会
の方はやっぱりどちらかというと地方の、まあ田舎の方での
支援
というものを
中心
にされて、
JICA
の方はどちらかというと主要な大きな都市、
カブール
とか
ジャララバード
、あるいは
マザリシャリフ
、あるいは
カンダハル
というようなところでの
支援
というものを
中心
にやっているように拝聴いたしました。 そこで、
最初
に
中村参考人
の方にお伺いしたいんですけれども、今
地図
をお配りさせていただきましたけれども、
ペシャワール会
の方々が
活動
をされている現在の州、これはどこの州でされているか、端的にお答え願いたいと思います。
中村哲
29
○
参考人
(
中村哲
君) これは、ニングラハル州の北部、すなわち
ジャララバード
という都市から、クナール州というのがありますけれども、それの州の境目に至るまでの
農村
地帯、それから
ジャララバード
南部、スピンガルという山脈がありますけれども、ソルフロッド郡、アチン郡、ホギャニ郡、チャプラハル郡、こういった山のふもとで、これは水利
事業
ではなくて
飲料水
確保の
事業
を進めておりまして、ニングラハル州の
ジャララバード
を挟む南北だということでございます。 以上でございます。
佐藤正久
30
○
佐藤
正久君 東部のニンガルハル州の方で行っているというふうに確認いたしました。 私の今までの経験からいっても、イラクといってもなかなかイラク人というふうに一くくりにするのは非常に難しくて、実際にそれぞれ場所によってやはり宗派が違う、あるいは
民族
が違う、いろいろそれぞれ場所場所で違うというふうな感じがいたします。
アフガニスタン
も多
民族
国家
でいろんな、当然、ペルシャ系のパシュトゥン人とか、あるいはタジク人とかハザラ人とか、あるいはトルコ系のウズベクあるいはトルクメンとか、もういろいろいらっしゃいます。 今日の
中村参考人
の話は、どちらかというと東部のパシュトゥン人の人が多くいるところでの経験というものを基にしてお話しされたということでよろしいでしょうか。
中村哲
31
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 そのとおりです。私が見聞きできる範囲というのはパシュトゥン
社会
を
中心
とした
農村
部でありますが、先ほどから訴えております水の需要、これは北部、それから
アフガン
西部に共通したものがあるということは事実でありまして、事実、
カブール
市内
の水自身が非常な欠乏
状態
に陥っている。しかも地下水がどんどん下がっていくという
状況
を考えますと、東部だから東部だけで特殊だという問題でもなかろうというふうに私は推定しております。 以上でございます。
佐藤正久
32
○
佐藤
正久君 私も海外に二度ほど、こういうPKOとかあるいは
復興支援
の方に、イラクと、あるいはゴラン高原ありますし、シリアとレバノンの方で経験をさせていただいていましたが、私のこれまでの経験からしますと、恐らく、パシュトゥンを含め多くの
アフガニスタン
に住まれている方々が
日本
に好意を持っているというのは、そういう戦後復興とかあるいは長崎、広島、あるいはそういう日露
戦争
というものだけではなく、
日本
は今まで非軍事の
分野
で、しかも
地域
とかあるいは
民族
とかそういうものに分け隔てなく
支援
をしてきたというところが一番大事な
分野
でないかなというふうに私は思っています。 よって、我々がサマワに行ったときも、
日本
の、特に先輩の方々が、文民の先輩の方々が今まで培ってこられた
地域住民
との信頼というものを非常に大事にし、それを守り、できればそれを発展する形で
支援
をしないといけない、自立
支援
をしないといけない、これでなければ血の通った
支援
はできないし、安全もままならないというふうに思いました。そこで、やっぱり政府もそうですけれども、
地域住民
の立場で共に考え、共に決定し、共に行うということをほかの軍隊とは違うやり方でやらせてもらったと思っています。 しかしながら、やはりそこには
治安
という
部分
がどうしても考えなきゃいけないということはどこの
支援
組織でも同じだと思います。PKOについては、国連の第二代総長のハマーショルドさんが、PKOは軍人の
仕事
ではないけれども、軍人でなければできない
仕事
だというふうなことを言われました。恐らく
復興支援
の
分野
でも、やはり国連のPKO、あるいはそういうある程度の武力集団が関与しなければ国づくりとかあるいはそういう
再建
というものができない時期とか場所もあるんだろうということでいろんなところに今展開をしていると。昨年末に民主党の方々が提案されたテロ根絶法案という中でも、そういう発想の下に、自衛隊が
活動
するという場合もあるという前提で自衛隊を
アフガニスタン
本土で民生
支援
を行うということも踏まえた法案を出されたと思います。 それで、
中村参考人
にお伺いしますけれども、そういう民主党の方々も一部賛同されておられるように、自衛隊が
治安
維持ではなく民生
支援
という形で
現地
に入るということについて、どういう要領であれば非常に
現地
の方々とマッチングするのか、絶対マッチングしないとお思いなのか、その辺りをお聞かせ願いたいと思います。
中村哲
33
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 自衛隊派遣によって
治安
はかえって
悪化
するということは断言したいと思います。これは、米軍、NATO軍も
治安
改善ということを標榜いたしましてこの六年間
活動
を続けた結末が今だ。これ以上
日本
が、軍服を着た自衛隊が中に入っていくと、これは
日本
国民にとってためにならないことが起こるであろうというのは、私は予言者ではありませんけれども断言いたします。敵意が
日本
に向いて、復興、せっかくの
JICA
の
人々
がこれだけ危険な中で
活動
していることがかえって駄目になっていくということは言えると思います。 してはならないということは、これは国連がしようとアメリカがしようとNATOがしようと、人殺しをしてはいけない、人殺し部隊を送ってはいけない、軍隊と
名前
の付くものを送ってはいけない、これが復興のかなめの
一つ
ではないかと私は信じております。そのことは変わりません。
佐藤正久
34
○
佐藤
正久君 もう一度確認しますが、
治安
維持任務ではなく、民主党さんが出された法案も、人道
復興支援
という
分野
で、あるいは民生
支援
という
分野
での自衛隊の
活動
を一応考えているというふうに私は理解しております。今言われた、
治安
維持
分野
ではなく
復興支援
分野
で自衛隊を運用するということについてはいかがですか。
中村哲
35
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 ならば、
JICA
を全部引き揚げて全部自衛隊員を送ればいいことでありまして、それなら、それじゃないとできないというならば、麻生首相自ら銃を握って前線に立ってもらいたい、その上で考えてほしいと私は思います。
佐藤正久
36
○
佐藤
正久君 冷静にちょっとお話ししたいんですけれども、自衛隊が
復興支援
あるいは民生
支援
で
現地
で行うということと
JICA
の方々を引き揚げるということとどういうふうな関係があるんでしょうか。もう少し丁寧にお考えをお聞かせください。
中村哲
37
○
参考人
(
中村哲
君) これは明らかであります。自衛隊が
復興支援
に携わるというならば、現在、
復興支援
で死力を尽くしておられる
JICA
の方々の立場はどうなるのか。
JICA
の
人々
はただの付録なのか。自衛隊が銃を捨てて現在の
JICA
の
仕事
ができるのかということを考えますと、自衛隊がしゃしゃり出てくるなら
JICA
の
支援
も要らないということであります。また、NGOも要らないという
議論
になってくるかと思います。 私が言いたいのは、軍隊と名の付くものを、
日本
では軍隊とは呼びませんけれども、実質的にこれは
国際
的には軍隊だ、軍隊と受け取られるものを
現地
に送る必要が、あえて復興というならばあり得るのかと。
治安
という意味ならば、先ほど民主党の方が御質問されたとおりでありまして、自衛隊を送らなくとも
治安
を守る、
日本人
ワーカーを守るという方法は幾らも存在するわけであります。その道を探らずしていきなり自衛隊が復興に出てくるのは私はおかしい。自衛隊派遣は、七年前と同じことを言いますけれども、有害無益と私は強調したいと思います。
佐藤正久
38
○
佐藤
正久君 私も
国際貢献
というのは、海外
支援
イコール自衛隊という考えは持っておりません。非軍事、先ほど言いましたように非軍事であるのが一番いいわけで、実際そういう非軍事での海外
支援
が主流だということは、今の
日本
の政府の
活動
から見てもそれは明らかです。 ただし、場所とか
地域
で使い分けをした方がいいんではないかという
部分
があろうかと思っています。同じ
地域
で自衛隊と
JICA
の方がやるという場合は、今、
中村参考人
言われたような懸念もあるかもしれませんけれども、場合によっては、
アフガニスタン
でもいろんな
地域
がございます、そういう
治安
の
状況
によっては、
JICA
の方々がされるような
復興支援
を行う場所と、あるいは自衛隊というものを使いながら
復興支援
する場所と、使い分けをしながら困っている人を助けるというやり方も私はあろうかと思います。これについて、
力石参考人
の方にお考えをお聞かせ願いたいと思います。
力石寿郎
39
○
参考人
(
力石寿郎
君) 大変難しい御質問だと思うんですね。自衛隊が来たら、先ほど
中村参考人
がおっしゃったように、やはり印象としては軍隊の印象を持たれますので、そうすると、今まで民生
支援
中心
にやってきた
日本
までがついに軍隊を送ったかと、そういうようなとらえ方をされてしまうおそれが多々あるというところは否めないと思います。 その上で、それが可能かどうかというのは私の立場では何とも申し上げられようがないので確たるお答えはできないんですけれども、
一般
的には、
現地
の
武装勢力
の
人たち
も事あるごとに声明を出している、あるいは警告を出しているように、外国の軍隊は全部出ていけ、
外国人
もすべて出ていけということを繰り返し言っていることから推察すれば、自衛隊が歓迎されざる存在に映るのは恐らく必定だろうというふうに思います。ですから、使い分けができるかどうかというのは非常に難しい判断だと思います。
佐藤正久
40
○
佐藤
正久君 やはり、
復興支援
のときに
治安
をどういうふうに認識し、そういう情勢から自分の身を守るかという
部分
が
一つ
はポイントになり、あるいは、
一つ
は
地元
の方々にいろんな、おふろとか食事とか無用な負担を掛けずに自分で全部面倒を見れる、自己完結性の
能力
を持って
支援
をするという
部分
が多分今回我々がサマワに派遣された
一つ
の要因ではなかったかなというふうに思います。 私
たち
がサマワに行ったときもあるいはゴラン高原に行ったときも、彼らは同じようにやっぱり言われました。おまえ
たち
は客人だからおれ
たち
が絶対守るんだと。何があっても命を懸けて守る、部族の名誉に懸けて守るということは言われるんですけれども、さはさりながらも、やはり自分で自分の身を守るために、先ほど
力石参考人
が言われたような情報収集というものはしっかり行いながら、あるいは行動規制というものをやりながら行わないといけないと。やはり全幅の信頼を向こうに預けるという
部分
だけでは、身を守れる、あるいは部下を守るということには非常に懸念を私は有しております。 そこで、
力石参考人
にお伺いしますが、
現地
の方で実際にいろんな
活動
をされております。そのときの
治安
対策の
一つ
として、PMCと言われるような民間の警備会社とか、そういうものを実際に使われておられるのかどうか、それについてお答え願います。
力石寿郎
41
○
参考人
(
力石寿郎
君) 行く場所とかそのときの
状況
によって警護を付ける場合がございます。そのような民間のセキュリティーガード会社と契約を結びまして、必要な場合に必要な出動を
お願い
しているというのが現状でございます。
佐藤正久
42
○
佐藤
正久君 やはり場所場所でそこは異なると。私と同じ認識なんですけれども、
住民
と一緒に
活動
するといっても、場合によっては一〇〇%安全確保というわけにはいきませんので、それなりに
自分たち
で情報を集めて分析をして、必要に応じてやはり何らかの手段を使って守ると。
現地
の
治安
を維持するというのではなく、自分の身の安全を守りながら
復興支援
を行うという
部分
がやっぱり基本ではないかなと思います。 ちょっと観点を変えて、お二人に確認いたします。 仮に今ISAFとかいうものがなくなったら、
アフガニスタン
の
治安
は改善すると思われますか。
力石参考人
から
お願い
いたします。
力石寿郎
43
○
参考人
(
力石寿郎
君) これも非常に難しいお話ですが、ISAFが一定の
治安
抑止力を発揮しているというのは確かなことだと思います。ですから、二つの見方がありまして、
一つ
はISAFがいるからあれだけで済んでいるというような見方と、ISAF、すなわち軍隊がいること自体が
治安
を悪くしているという見方と両方可能なんじゃないかと思うんですね。
現地
の
人たち
は恐らくそのような多様な
意見
を多分お持ちなんだと思うんです。ですから、一枚岩で
意見
が一致しているということは多分ないので、そこはISAFがいなければどうかという推測はなかなか難しいと考えます。
中村哲
44
○
参考人
(
中村哲
君) 私もほぼ類似の
意見
でありまして、背に腹は代えられないということで、米軍の
協力
者となる、あるいはISAFの傭兵となるということが普通でありますけれども、一方、先ほど
JICA
の方がおっしゃられましたように、今まで平和だったところがISAFが進駐したがために
混乱状態
が起きるというのも事実でありまして、これは国軍
兵士
、警察はもちろん国軍
兵士
も含めてアンビバレンツといいますか、複雑な
感情
でおると。いったん事があるときは国軍自身が米軍に向かって発砲するであろうということは想像に難くないわけであります。 それを考えますと、ISAFの存在が
治安
にどれだけ
貢献
しているのか。一方で悪くしながら、一方では雇用機会を与えて安定させているというのも事実でありますが、全体的に見ると、じゃ、ISAFが来なければどうだったのか。私が経験したタリバン政権時代、皆さんがお嫌いになっておるタリバン政権時代は今の百倍は
治安
はましだと。ともかく、
外国軍
が入ってきてから
治安
が
悪化
したという事実はこれはどうしようもない事実だというふうに、これは
アフガン人
のほとんどが認めておるところであります。
外国軍
に対する嫌悪、食えないのでやむを得ず従っておるというのがもう
現実
でありまして、私
たち
の
作業現場
、少なくとも下々から見た
現場
というのは、ほぼ一〇〇%が非常に反米主義的な傾向が強いということはお伝えするに値すると思います。 以上です。
佐藤正久
45
○
佐藤
正久君 いろんな
意見
がやっぱりあって、多様性、背に腹は代えられないという
部分
もやっぱりあるのかなという
部分
を私も感じます。しかしながら、やはり
治安
の維持というのは非常に
復興支援
を行う場合においての
一つ
の前提要件になりますので、それをどういう形で保っていくか。そのために、警察あるいは国軍の育成というものも、今
アフガニスタン
の
カルザイ政権
を
支援
する形で国連の機関とかあるいは
日本
とかあるいはドイツ等が行っているわけですけれども。
中村参考人
にお伺いいたします。前の旧国軍
兵士
を武装解除、動員解除して
社会
復帰させるDDRというものについて、これはインターネットの記事で昔見たんですけれども、
中村参考人
はどちらかというと批判的なコメントがやっぱり載っていたと思っています。
計画
倒れに終わったというような趣旨だったと思いますけれども。今はDDRが取りあえず
アフガニスタン
政府の意向としては終了し、そして非合法の
武装組織
の今武装解除、
社会
復帰の方をやっていると、DIAGというふうに呼んでいるようですけれども、これを行っていると。このDDR、DIAGについての
中村参考人
の率直な評価をお聞かせください。
中村哲
46
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 DDR自身は、私はこれは動機は非常にいいというふうに評価いたします。
日本
は、そういった意味で、しかも、たとえ結果がどうなろうと、あれができたのは
日本
が平和
国家
だというイメージを背景にしてできたわけでありまして、私はそれをやった人を悪く言おうとは思いません。ただ、その結末が、結局、今の悪循環にのみ込まれて無駄に終わることがあるんじゃないかということを私は申し上げたわけでありまして、その努力自体は率直に大いに評価したいというふうに思っております。 以上です。
佐藤正久
47
○
佐藤
正久君 同じ質問を
力石参考人
にもお伺いしたいと思います。 DDR、DIAGに対する評価をお聞かせください。
力石寿郎
48
○
参考人
(
力石寿郎
君) DDRにつきましては、私ども
JICA
の中ではあれは成功事例だったというふうに評価しております。 DIAGにつきましては、
中村
さんがおっしゃったように、
状況
が良ければ通常は非常に効果を上げる
手法
だと思います。実際、似たような
手法
で過去、例えばカンボジアなどで
日本政府
が行ったいわゆるガンフリービレッジをつくっていって武器を全部供出させて、その武器をサレンダーした村には
開発
の見返りをちゃんとやっていくということで、それを一村ずつ攻めていくというか
実施
していってかなりその
地域
の潜在的な
治安
が良くなったという成功例もあります。 ですけれども、
アフガン
については、今のような
治安
の
悪化
がありますと、逆に武器を持っている
農民
あるいは市民がそれを放したくないというそういう精神的な
状況
に追い込まれますものですから、果たして武装解除が効率的にできるかというのはなかなか難しいかなというのが私の印象でございます。
佐藤正久
49
○
佐藤
正久君 やはり、そういう今
治安
を改善する
一つ
のやり方として警察あるいは国軍の育成と同時にDDR、DIAGをやっているわけですけれども、そういう中でも、それが過渡的であればやはり、もう一回言いますけれども、自分の身を、あるいは自分のグループを自分で守るためにいろんなことを、先ほど民間の警備会社を使うとかいろいろ言われましたけれども、いろんなことをやるんだろうというように思います。そのためにはやっぱり情報収集・分析というのが
一つ
の
基礎
になると思います。 そこで、
中村参考人
にお伺いいたします。今どういう形でそういう
治安
情報というものを吸い上げて、それを自分のスタッフの方に伝えているのか。やり方がもしもここで答えられるんであれば答えてください。
お願い
します。
中村哲
50
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 これは皆さんに言えないこともあります。どういうことかといいますと、これは先ほど、
アフガン農村
の性質からして、彼ら自身の秘密にしていることは外部に漏らさないという約束の下に進められることもありますし、例えば
パキスタン側
でこういう動きがあってこっちに影響があるだろうという情報、一方は意図的に
カブール
側から流される情報、で、情報源はどこなのかということを知って、ああ、ここだったらいつもこういう情報を流しているなということで大体の推測を付ける。それから地理関係。どこの
地域
にどういう部族が住んでいて、どういう考えをして、どことどこの部族が闘争関係にあるか、これも把握しておかないと、とばっちりがこっちに来るということもありまして。 先ほど言いましたように、私
たち
が守り得る大っぴらな手段と申しますのは、
地域住民
と
治安
当局が一体になって
治安
委員会
を設置して、そこが我々を客人として守るという形態。これは実は
アフガン農村
社会
における普通の形態でありまして、我々はそれによって守られておる。それは武器を持たない場合もありますし、場合によっては武器を携行するという場合もあるということなんですね。それによって少なくとも私自身の身は現在守られておるというのが実情であります。
佐藤正久
51
○
佐藤
正久君 当然細部は言えないと思います。ただ、そういう情報は頻繁に入手をし、分析をし、それを活用しているということだと思います。 今年の六月から八月のニンガルハル州におけるテロも大体毎月二十件を超えているというふうに聞いています。 八月に非常に悲しい事件があったわけですけれども、八月においても結構今までよりも
治安
が危なく、
状況
が荒れているというものは、そういうどこかのルートから
中村
代表の方には入っていたというふうな認識でよろしいでしょうか。
中村哲
52
○
参考人
(
中村哲
君) ええ。私
たち
が予測していたのは、四月ごろからだんだん悪くなってきて、恐らく今年の冬、もう五百万人の追い詰められた飢えた
人々
は黙っていないだろうと。それまでにいろんな、単に政治的な動きだけではなくて物取り強盗が増えるだろうから、徐々に邦人を帰すべきだというのが私の判断でありまして、それを
実施
しておるやさきでありました。 以上です。
佐藤正久
53
○
佐藤
正久君 どうもありがとうございました。 今後ともしっかりと安全というものを確保しながら、
住民
の目線に立った
活動
を、あるいは本当に困っている人への
活動
を
JICA
さん、そして
ペシャワール会
の皆さんにはやっていただきたいと思います。 以上で終わります。ありがとうございます。
浜田昌良
54
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。 本日は、
中村参考人
また
力石参考人
、お忙しい中御
出席
を賜りましてありがとうございます。特に
中村参考人
には、非常に遠方といいますか厳しい中で
農村
開発
、また
かんがい
、水の
開発
をされたことについては敬意を表したいと思います。
中村参考人
のいろんな今までの講演された内容等を見させていただいたんですが、ちょっとああそうなのかなと思ったのは、例えば政府の
無償資金協力
とか
JICA
のとか、そういう外部資金との連携を余り何かされていないような感じがしたんですが、特に、資金面で
国際
機関であったり
日本
の政府であったり、そういうものを使うと使いにくいというようなところが何かあるんでしょうか。
中村哲
55
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 実際には、我々は一〇〇%自己資金だと言っておりますけれども、過去、外務省無償資金ですか、大使館を通じて行われる、によって車両の供与を受けたこともありますし、これは公的資金とは言えませんけれども、郵便局ボランティア基金、これが予算の四分の一を占めていたこともあります。現在、私
たち
の資金そのものが郵便局ボランティア基金よりも増えてきましたので、やはり郵便局としてはより少ないところにこの恩恵を及ぼそうということで今のところ一〇〇%回されております。 肝心の御質問の答えですけれども、これは公的資金を受けますと非常に動きにくい面も出てきます。それはもちろん悪いことをする
団体
がおるから厳しくするんでしょうけれども、余りに規制が厳しくて運用がしにくい。例えば組織でもらいますと非常に厳密な会計報告をしなくちゃいけないので、そのためにまた一人雇わなくちゃいけない。そのために組織を守るのが主体になって肝心の
事業
が、私
たち
の場合、ほかのところ全部とは言いませんけれども、ついそういう傾向になりがちであるということで私
たち
は今すべて自己資金。 例えば年度予算にはないものを必要だからすぐやろうと、こういう決定が速やかにできるということ、それから募金者というかお金をくれる人を喜ばすような宣伝をしなくていいということ、これが非常なメリットでありまして、お金がある間は
自分たち
でやって、お金がなかったら政府に頭を下げてお金をもらおうかなというふうに考えております。
浜田昌良
56
○浜田昌良君 ありがとうございました。
アフガニスタン
で長年の経験を持っておられまして、その経験は何物にも代え難いものだと思います。そういう意味では
日本政府
のいろいろな資金が
中村
さんの
団体
にとっても使いやすいような形になることを我々は政府に働きかけていきたいと思っております。 逆に、
JICA
の
力石参考人
にお聞きしたいんですが、そういうNGOとの連携、
現地
ではどのような形で取られているのか、お聞きしたいと思います。
力石寿郎
57
○
参考人
(
力石寿郎
君) 数は限られておりますけれども、数件、NGOとの連携を組んでやっている
事業
がございます。
浜田昌良
58
○浜田昌良君 分かりました。 他機関との連携についてはこれぐらいにしまして、次の話に移りたいと思いますが、WHO、
世界
保健機構がこの二〇〇八年に発表した数字なんですが、
アフガニスタン
で毎年一万五千人の方々が命を失っていると、こういうものがあるんですが、この原因は何だと思われるでしょうか。
中村参考人
、
力石参考人
にお聞きしたいと思います。
中村哲
59
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 WHOですから恐らく保健関係、恐らく病死でしょうけれども、たった一万五千人では、これは私の印象ですけれども、一万五千人ではないということは確実だと思います。 私の東部で見る限りのことで、これは北部、カーブルのことよく知りませんけれども、
犠牲者
の大半は子供の腸管感染症、下痢ですね、下痢、それから腸チフス、肝炎などの腸管感染症によるものがほとんどであります。先ほども申しましたけれども、くどいようですけれども、私
たち
医療団体
が清潔な水と
食べ物
と言って頑張っておるのはそういう理由によることであります。ほとんどは子供の下痢による死亡者が圧倒的多数だということが言えると思います。
浜田昌良
60
○浜田昌良君
力石参考人
、いかがでしょうか。
力石寿郎
61
○
参考人
(
力石寿郎
君) やはり基本的なベーシック・ヒューマン・ニーズの
インフラ
が
整備
されておらない、十分なきれいな飲み水が確保されないということがあるのと同時に、地方におきましては
医療
施設が非常に足りない。非常に遠隔の地から病人を運んでこなくちゃいけないとか、あるいは妊産婦の方が定期健診をなかなか行えないとか様々な理由で乳幼児・妊産婦死亡率、それが高いのと、また、我々が今取り組んでおります
結核
でございますけれども、これは相当いい成果を出していると思います。 ただ、やはりそういう
医療
に対するアクセシビリティーといいますか、特に
農村
地帯では非常に悪うございますので、その上に更に、
中村参考人
が言われたように、きれいな飲み水がないとか、まだまだ民生の
分野
でやるべきことはたくさんあるんじゃないかというふうに考えております。
浜田昌良
62
○浜田昌良君 ありがとうございました。 今、
力石参考人
が触れられました
結核
なんですね。これはWHOが今年出した
写真
集、
結核
が何千もの
アフガニスタン
の命を引き裂きつつある、今がそれを直すときだというこの
写真
集がこれ出たんです。(
資料
提示)少し紹介させていただきますけれども、この
結核
という問題がかなり成果を上げられていると
力石参考人
はおっしゃったんですけれども、実はこの
写真
集によればまだまだであるというような
状況
でございまして、一例紹介されているのが女性、女の子なんですが、この方なんですね。この方はファジリアさんといって、二〇〇七年五月十九日に病院に担ぎ込まれたんですが、二年間間違った情報で
結核
と診断されなくて、最終的には脊椎
結核
と診断されたという
状況
でございます。 しかし、こういう
状況
は彼女だけじゃなくて、毎年
結核
で今言いましたように一万五千人の方が亡くなっていて、かつそのうちの一万三千人が女性なんですね。しかも働き盛りの女性であります。そういう意味では非常に働き盛りということも含めてこの問題の深刻さを感じるんですが、しかも、そういう
人たち
が実は、先ほど
貧困層
の話もございましたですけれども、不法占拠された住宅があります、そういう住宅の中で、閉ざされたドアの中で閉じ込められているという
状況
でございます。 そういう意味で、
アフガニスタン
の
日本
の復興というのは、
中村参考人
が取り組まれておられます食料の面と
医療
の面、この二つをうまく両輪のように進めていく必要があると思うんですが、まず少し
力石参考人
に、
結核
面で少しいい成果も上げているという話もありましたが、今まで
JICA
として取り組まれてきた内容についてお話しいただきたいと思います。
力石寿郎
63
○
参考人
(
力石寿郎
君)
結核
の
プロジェクト
は、これまで金額、
計画
額にして七・八億円程度を掛けまして、
日本
の
専門家
延べ二十九名派遣をしております。今、現在では
カブール
に四名派遣中でございます。
専門家
以外には、保健
分野
の
相手側
のカウンターパートの
人たち
、これの研修、
日本
に呼んで研修をするわけですが、これがこれまで合計百七十六名研修に来ております。 私どもが
現地
で展開しているやり方は、いわゆるDOTSという、これは専門用語になりますが、県の
結核
担当者にそのDOTSをどうやって行っていくかということを教えて、その先は、
日本
の
専門家
はなかなか
治安
の問題もあって奥地までには行けないんですが、そこで
現地
で
活動
している
地元
NGO、その
人たち
に託してDOTSの薬配布、それから薬を各患者に飲ませるという、そういう
活動
を根気よく続けてきております。 そういうことで、既に二〇〇二年からこの
プロジェクト
を始めておりますので、もう六年以上たつわけでございまして、この成果といいますのは、まずDOTS
手法
が定着してきたということで、ほかの国の例でも類推できるんですが、DOTSが定着しますと、あるところまでは新しい患者の発見で人数が増えていくんですけれども、あるところからずっと下がっていくというのを我々経験的に分かっておりますので、まずひたすらDOTSの普及をやるというところに力を入れております。
浜田昌良
64
○浜田昌良君 そのDOTS、直接監視法の普及というのは重要だと思っています。また、
現地
では磯野光夫さんが頑張っておられるというふうにも聞いております。そういう意味で引き続き、この
プロジェクト
は今日の
資料
によると二〇〇九年までとなっておりますけれども、引き続き取り組む課題だと思っておりますので、力を入れていただきたいと思います。
中村
代表にお聞きしたいのは、じゃ、
カブール
の話だとそういう
状況
なんですけれども、
ジャララバード
なんかではこういう
結核
の問題はどういうふうになっているのか、どういうふうにまた逆に、代表はお医者さんでもありますので、取り組んでおられるのか、お聞きしたいと思います。
中村哲
65
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 これは、カーブルのような大都市と
農村
地域
では随分事情が違うということは御理解いただきたいと思います。 というのは、単に
外国人
が入れないというだけではなくて、先ほどおっしゃいましたようにアクセスが非常に悪い。私
たち
も、ハンセン病の根絶
計画
である程度の事情分かりますけれども、定期投薬というのが非常に難しい。これは各診療所のあるところはまだましであります。
アフガニスタン
の全土で診療所のあるところを探す方がまだ早い。ほとんどの
地域
が無医地区であります。こういった
状況
の中で、
一つ
のトライアルとしてある
地域
を選んでやるという、まだ途上段階だということを意識してやれば、これは徐々に徐々に、何年も何十年も掛けて私は実現できるものではないかというふうに思っております。 そういうことでありまして、すぐに何でも実現せよというのは余りに性急過ぎるというふうに私は思います。これはほかの
分野
でも同じでございます。 以上でございます。
浜田昌良
66
○浜田昌良君 ありがとうございます。 確かにすぐに成果は出にくいと思いますけれども、この
結核
の
分野
は、
日本
は戦後毎年十六万人ぐらいの方が亡くなっていたのが今はもう数千人以下になっておりますから、かなり保健衛生の
分野
で成果を上げた
分野
だと思っております。そういう知見を是非
アフガニスタン
でも使っていただきたいなと。 調べましたら、
日本
の
結核予防
会の
結核研究所
で、
アフガニスタン
の
専門家
で五十六名の方を
日本
で研修して
現地
に送り戻しているということが分かっております。そういう方々としっかり
現地
で連携していただいて、特に
中村
代表はお医者さんでもありますので、この
カブール
だけではなくて、そういう村落における
結核
対策というのについて是非お力をお貸しいただきたいと思います。 本件については、
日本
の厚生労働省、外務省、そのほか
JICA
、またWHO、またNPO法人が連携しまして、ストップ
結核
パートナーシップというもののアクションプランを作っていまして、
日本
の経験と資金と技術によって
結核
患者、毎年百六十万人死んでいますけれども、十六万人削減していこうということを提案したものが今年の秋出ました。そういう意味では是非
アフガニスタン
においても、
世界
の中では十七番目に患者数が多い国であります、死亡者も多い国でありますので、お力をお借りしたいと思います。 それでは、次の話に移りたいと思いますが、先ほど少し話も出ましたが、
ペシャワール会
では
伊藤
さんの残念なことがあったわけでございますけれども、なぜ、あそこまで村民に慕われていて、また安全にも十分配慮されていて、それでああいうことが起きるんだろう。また、ああいうことによって今後
伊藤
さんの死を無にしないようにどう改善していけばいいのかという点について、
中村
代表の御
意見
を賜りたいと思います。
中村哲
67
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 これは二つありまして、
一つ
は先ほどから繰り返されております組織あるいは個人レベルでの防御体制、それからもう
一つ
は
治安悪化
を促す要因の退治、この二つが組み合わさないと、これだけということはないわけでありまして、幾ら
日本
が
治安
がいいからといって無防備でおれば新宿で刺されたりするわけでありまして、私
たち
は個人的な防御につきましてはいろいろ対策を講じてきましたけれども、その具体的な方法については先ほど申し上げたとおりでございます。個人自身が気を付けなくちゃいけない。つい
日本
の感覚でぶらぶらっと出てやられてしまうということは是非避けたいと思いますけれども、それが不幸にして起きてしまったということですね。 私が申し上げたいのは、以前はそんなことは考えられなかったのになぜ起きたのかということを考えますと、これは
外国軍
の干渉、米軍及びNATO軍の
アフガニスタン
への軍事介入、あるいは
パキスタン
の軍事介入と無縁ではなかろうと思います。その背景について責任を持つのが
日本
国家
の政治家の責任ではないかというふうに私は思います。何もこれで国を責めようとは思わない、我々が無防備だったとしか言いようがない。しかし、我々としては最善の力を尽くしたつもりであります。 その背景についてもっと詳しく突っ込んだ
議論
があっていいのではないか。あのとき報道されたのは、
中村
代表は
治安
の認識の甘さを認めたという報道が大々的にされた。これは誤報でありまして、私がはっきりバンコックで述べたのは、私を含め報道機関それからいろんな
日本
の機関、
日本
国民すべてがこういった認識が甘かったということが、
中村
代表が自分の
治安
の認識の甘さを認めたということで矮小化されてしまったということに私はついでながら不満を述べておきたいと思います。
浜田昌良
68
○浜田昌良君 ありがとうございます。 まさに個人としてできる対策、個人ではできない対策、両方あるんだと思います。 この後者の関連で少しお聞きしたいと思うんですが、先ほど御説明の中で、いわゆる空爆がなされていると、爆弾が空から降ってくるという、こういう表現もあったんですが、
ジャララバード
のどちらかで
中村
さんが何かそれを経験された、見られたことはあるでしょうか。
中村哲
69
○
参考人
(
中村哲
君) これは私は落ちてくるところは見たことはありませんけれども、二〇〇一年以後ですね、ソ連軍時代にはありました。これは最近の高性能火薬の威力というのは物すごいものでありまして、村全体が真っ黒になるように見える。我々、落とす側の映像しか見ませんけれども、落とされる側の映像というのはほとんどない。死んじゃうんですね。そういうことを考えますと、もう少し死ぬ人に、その空爆によって死んでいく
人たち
の命に対する配慮があってもよかったんじゃないかと、的外れかもしれませんが、私は思います。 カーブルで私
たち
二十名、死ぬのを覚悟で食料配給をしたことがあります。まともに爆弾の下におったので、それは十分私としては理解しておるつもりであります。
浜田昌良
70
○浜田昌良君 今、ソ連の侵攻のときには実際に体験されたという生々しいお答えをいただいたんですが、ここで一点ちょっと
中村
代表に、少しこれ認識が我々と違うなという点があるんです。 何かといいますと、先ほどの御
発言
の中で、米国の
軍事活動
に
協力
していると知れ渡ってしまうと身の不安が感じるという話がございました。今この国会で審議をしている新補給
支援
法、前のテロ特措法は廃案になりましたので、期限切れになりましたので、この新しい
法律
の場合はOEFという陸上作戦とは完全に切れた関係になっているんですね。司令部は違いまして、それぞれ陸上と海上阻止
活動
は。よって、この海上阻止
活動
に給油している
日本
というのは空爆を
支援
しているわけでは全くないんです。そこは是非、多分
現地
では
中村
代表の影響力って大きいと思いますので、それは前の
法律
とは違って、
日本
はあくまでインド洋上で不審船があるとそれを無線照会をして、旗国の同意の下でチェックをするというものに給油をしているのでありまして、航空母艦とかそういうものじゃないということを是非御理解賜りたいと思いますが、それはよろしいでしょうか。
中村哲
71
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 それは、私に通じても
現地
の人には通じないということ。それから、この給油
対象
のほとんどであります
パキスタン
の軍隊、これが今大々的に
パキスタン側
から空爆しておるわけでありまして、おっしゃられることは
現地
に対しては説得力はないと思います。たとえ一%であろうと二%であろうと米軍に補給しているという事実、このことは
現地
に対して非常にアレルギーと言えるほどの反応を起こすということは確実だということは申し上げておきたいと思います。
浜田昌良
72
○浜田昌良君 米軍に
支援
しているという意味では、別に
日本
の米軍基地もありまして、そういう関係にもあるわけですが、あくまでも
日本
としてやっているものは、空爆をしたり、また掃討作戦をするような部隊への給油ではないということは是非
中村
代表自身も御理解いただいて、
現地
の方の誤解が解けるように御
協力
賜りたいと思いますし、先ほど
国際社会
という、
国際
のとらえ方が違うんじゃないかという御
意見
もいただきました。いわゆる
国際社会
に
アフガン人
が入ってないんじゃないかという話かもしれませんが、我々自身も
国際社会
って別にアメリカの声ではないと思っています。我々としては、例えば
国際
連合、国連で、
アフガニスタン
に対して各国ができる範囲で
協力
をしろと、復興に
協力
をしようという要請もありましたし、また
日本
が行っているこの海上阻止
活動
に対しても高い評価もいただいていると。そういう意味では、
国際社会
というのは
一つ
には国連の中で評価をされているという位置付けを御認識いただきたいんですが、この点についてはいかがでしょうか。
中村哲
73
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 それは内輪の
議論
でありまして、
アフガニスタン
、
パキスタン
ではそういう
議論
は通じないということですね。そのことだけはお伝えしたいと思います。あれはOEF内部での
軍事活動
、一言で言えばそういうことでありますので、それが、その油がどこの国にどれぐらい行って空爆には使われてないと言っても、
現地
の人にはすっきり受け入れられない事実があるということは是非伝えたいと思います。
浜田昌良
74
○浜田昌良君 そういうふうに考えますと、逆に言うと、ISAFなりOEFというものに対して
協力
している国が四十数か国あるわけですね。
欧米諸国
だけではなくて、例えばアジアではモンゴル、
パキスタン
、トルコという国があるんですが、こういう国に対しても
現地
の方々は憎悪の念を持っておられると考えてよろしいんでしょうか。
中村哲
75
○
参考人
(
中村哲
君) 面白くない感じは持っているでしょうね。しかも、参加国の大半は、参加しないとテロリストの味方と思われるので、嫌々ジェスチャーで参加しているというところがほとんどであるということは知っておいてもいいんじゃないかと思います。
浜田昌良
76
○浜田昌良君 時間なので最後の質問にさせていただこうと思うんですが、先ほど自民党の
佐藤
委員
からもいろんな御質問ございました。
佐藤
委員
はイラクのサマワで、
現地
で
現地
の
住民
の方に給水
活動
されたり復興
活動
されたりしたわけですね。サマワにおいては、
日本
の陸上自衛隊が
現地
の方々からも評価をされ、
学校
も補修をし、そういううまい関係ができたんですが、今、
中村
代表の御
発言
だと、
日本
の自衛隊はそういう関係は
アフガニスタン
では築けないよというようなお話なんですが、そのイラクでできて
アフガニスタン
ではできないというのはどの辺が違うと考えればよろしいんでしょうか。
中村哲
77
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 それは私もよく分かりません。イラクと
アフガニスタン
では、恐らくは、
社会
構造の違い、文化の違い、いろいろあると思いますけれども、
アフガニスタン
では非戦闘地帯は存在しない。あっても、部隊が駐留すればそこが戦闘地区になる。例えば、我々の水路沿いに自衛隊があの大事な
仕事
を守らなければといって来れば、我々としては大変迷惑な話だと。恐らく水路の
作業員
五百名は全部武装して自衛隊に反抗するでありましょう。 そういうことを考えますと、私は、おっしゃる質問の答えにはなりませんけれども、その辺はイラクとは随分違うんだと。しかも、自衛隊が出てくる必然性はないということははっきり申し上げたいと思います。
浜田昌良
78
○浜田昌良君 念のために言っておきますけれども、私ども自衛隊は行くべきと思っていませんので、その前提で聞いておりますので、その点は確認させていただきたいと思います。 早速、今日はいろんな御所見をいただきましたので、我々
日本
としてできる援助又はいろんな
支援
の在り方について
参考
にさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。 終わります。
井上哲士
79
○井上哲士君
日本
共産党の井上哲士です。 今日は、
中村参考人
、
力石参考人
、御多忙の中、また、とりわけ
中村参考人
は遠路、本当にありがとうございます。
現地
からではないと聞けない貴重な本当にお話を聞かせていただきました。 〔
委員長
退席、理事
浅尾慶一郎
君着席〕 まず、
中村参考人
に総括的にお聞きをするんですが、いわゆる対
テロ戦争
として七年間、始まってから
たち
ました。軍事力ではテロはなくならないというのが私は実感として持っておるんですが、この点、
中村参考人
、
現地
におられての実感はいかがでしょうか。
中村哲
80
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 軍事力ではおっしゃるとおり絶対になくなりません。なくならないどころか、ますます拡大していくであろうと。今までの過去六年間の経過を、それから、ソ連軍がかつて、もう随分古い話になりますけれども、ソ連軍の駐留の結果を見ても、これは火を見るよりも明らか。肝心の米軍自体が今、対話路線に切り替えつつあるということは、恐らく撤退もそう遠いことではないのではないかというふうに私は思います。 以上です。
井上哲士
81
○井上哲士君 先ほどの質問にかかわってなんですが、現在審議しておりますこの給油
支援
活動
で、
日本
が給油するのはあくまでもOEF—MIOに限るんだと、OEFとは違うんだということを政府は再三説明をするんですが、それは
現地
ではなかなか通用しないという先ほどお答えがありました。 実際上、そのOEFとOEF—MIOというものは
現地
では区別をされて理解をされているのか、その辺はどういうふうに
現地
の皆さんはお感じになっているのか、
お願い
したいと思います。
中村哲
82
○
参考人
(
中村哲
君) これは、OEFと同一視されていると思います。この誤解を解くのは容易ではない。実際、油だけではなくていろんな米軍施設が
日本
の援助で建てられている。
ジャララバード
市内
でも皆知っている。これは米軍施設だけれども
日本
の援助によって建てられたということは堂々と皆言っている。そういうことを考えますと、これを分けて考えるというのは、
日本
の中のコップの中の出来事でありまして、普通は皆そう考えないということは知っておくべきかと思います。
井上哲士
83
○井上哲士君 先ほどイラクとの違いというお話もあったんですが、やはり
アフガニスタン
でソ連のあの占領をはね返したことにあるように、長期にわたって他国軍が駐留をするということに対する
民族
としての誇りを傷つけるというんでしょうか、そういうこともあろうかと思うんですが、その辺の
外国軍
が駐留していることに対する国民的
感情
はどういうことでしょうか。
中村哲
84
○
参考人
(
中村哲
君) これは
カルザイ政権
を含めまして、一〇〇%とは言いませんけれども、ほとんどの人は反米的であるということは私は断言したいと思います。 ただ、それを口に出すと、反米主義者、彼らは決して反米主義者なんではなくて、外国からやられるのが嫌いなんですね。しかし、それを言うと、アルカイダに通じているだとか反米主義者だとかいう烙印を押されて過激派の味方だということを言われるので、それを恐れて黙っているだけ。内心
アフガン人
のほとんどはほぼ反米的であります。これは私は、いろんな人と接して実はということから推測できることで、確信を持って申し上げたいと思います。
井上哲士
85
○井上哲士君 今のこの対
テロ戦争
というのは、タリバン政権がアルカイダをかくまったということを理由に始まったわけですね。そこで報復
戦争
が始まり、そしてタリバン自体がもうテロ組織なんだと、テロ
団体
なんだと、だから悪だという図式でずっと七年間続いてきたわけですね。 しかしながら、今いろんなお話がありますように、国内においてはタリバンの支配というものがいろいろ復活をし、そして地方の
行政
などにはもう入ってきているということもあります。それから、様々な形でのタリバンとの和解というものが国内でも進んでおりますし、
国際
的にもそういう声が上がっております。 例えば、オマル師もその和解の相手に加えるのかどうかとか、その辺のいろんな
議論
もあるようなんですが、そうなりますと、そもそもタリバンとは何なのかということがあると思うんですね。どうもここがはっきりしない
議論
がずっと私は政府の答弁聞いてもあるような気がするんですが、そもそもタリバンとは何であり、今どういう
状況
であり、そしてその和解の対話というのはどういう形で今進んでいるのか、お教えいただきたいと思います。
中村哲
86
○
参考人
(
中村哲
君) タリバーンについては、これは随分ややこしい説明が必要になります。タリバーンというのは元々神学生という意味で、正義感に燃えたイスラム教のマドラッサで学ぶ学生
たち
が
カンダハール
で悪徳軍閥を殺害して発展した組織ですけれども、実際これを政治的に利用したのはアメリカのCIA、それから
パキスタン
の諜報機関、それから外国の石油資本、こういうのがタリバーンを
支援
してできたといういきさつがありますけれども、単にそれだけでタリバーンが国土の九割を占めたとは、速やかに占領できたとは思えない。そこには何らかタリバーンを受け入れる素地があったわけでありまして、タリバーンの基本的な方針というのはパシュトゥーン、主にはパシュトゥーンに共通する、
アフガン人
に共通するおきてを基にして政治交渉を重ねて
国家
を統一したといういきさつがありまして、その辺がなかなか理解しにくうございます。 現在おりますタリバーン、いろんな人がタリバーン名のってやっておりますけれども、どれが旧政権のタリバーンなのか新しく名のってやっているのかよく分からないという
現実
。それから、決定的に違うのは、こういった土着の国粋主義者とアルカイダと体質が随分違う。実はタリバーンの上層部の過激な
意見
等を持つ
人々
は、パンジャーブ、アラブそれからウズベキスタン、タジキスタンの都市中間層、ちょうど
日本
でいろんな新興宗教が出てきましたように都市中間層から
アフガニスタン
に流れてくるというのが
現実
でありまして、
国際
主義のアルカイダと土着主義のタリバーンとでは随分性質が違うということは知っておいてもいいのではないかと思います。 ニューヨーク・テロ事件に際しましても、あの中に
アフガン人
は一人もいなかった。あの
アフガン人
の戦闘員、あの田舎っぺのおじさん
たち
がライフルを担いでニューヨークに攻めていくなんということはとても考えられない。コンピューターを駆使し、そして流暢な英語をしゃべり航空機を乗っ取りということは、タリバーンの中核部隊には絶対にできない。 そういうことを考えますと、私
たち
はもっとタリバーン、アルカイダ対正義の味方米国という図式をもう一度研究し直す必要があるんじゃないかと、かように思っております。答えになりませんけれども、私はそう思います。
井上哲士
87
○井上哲士君 タリバン政権が崩壊をし、その後
国際
的な人道
復興支援
が行われました。政府答弁などでも、例えばGDPの成長率はこの間年平均一〇%だとか、初等
教育
の就学率が二割弱から九割弱まで向上したとか、そういういろんな指標が挙げられて、進んでいるんだというお話があるんですね。しかし、そうであるならばもっと
カルザイ政権
の求心力というのが高まり、タリバンからの離反というのが起こると思うんですが、実際には復活ということになり、今の政権が実効支配できているのは首都とその周辺にとどまると、こういう指摘もあるわけですね。 これは、
力石参考人
も、それぞれお聞きしたいんですが、こういうふうに、結局現政権への求心力がむしろ下がっているというこの
実態
についての理由について、それぞれどうお考えでしょうか。
浅尾慶一郎
88
○理事(
浅尾慶一郎
君) どなたからお聞きになられますか。
井上哲士
89
○井上哲士君 じゃ、
力石参考人
。
力石寿郎
90
○
参考人
(
力石寿郎
君) 大変難しいお話ですが、
カルザイ政権
そのものは、
国際社会
が
協力
して、先ほど御説明した
ボン
合意に基づいた
プロセス
で民主的に誕生した政権でありますから、それを
支援
した諸国、
日本
を含めて、これを支えて安定した
国家
建設
の基をつくりたいと願っていたのはどこの国も同じだと思うんです。 〔理事
浅尾慶一郎
君退席、
委員長
着席〕 しかし他方、国内
治安
がいつまでも収まらないという
状況
で、やはり、あと、もちろん麻薬の問題ですとか汚職の問題とかも取りざたされている中で、余りにも長い時間国の中が平定できなかったということで、多くの
人たち
が今の政権に対して落胆しているのが
一つ
の原因ではないかなというふうには思います。
中村哲
91
○
参考人
(
中村哲
君) ちょっと質問、もう一度
お願い
します。
井上哲士
92
○井上哲士君 いわゆる
国際
的な
支援
で経済指標などは上がっていると報告されているんですが、にもかかわらず
カルザイ政権
への国民的求心力が逆に低下をしているという
実態
があるわけですが、その理由をどうお考えかと。
中村哲
93
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。
一つ
は、
人々
が期待するほどの
生活
向上がなかったということ、それどころか以前より悪くなったということ。今年の冬は特に五百万人が餓死に直面して、数十万が死ぬであろうと言われている。あのとき、
復興支援
のときに、
復興支援
ブームが起きたときに、はっきり
カルザイ政権
は言った。君らの衣食住は保障するから帰ってこいと言って難民
たち
を呼び返した、その結末がこれだという失望感。みんなが食えないということですね。それから、
カルザイ政権
自身が外国の後ろ盾によって成り立っておる政権だということ、この二つが非常に大きな要因として大きな不信感を生んでいるというのが事実だと思います。 みんなが言っているのは、政府がないということをもう東部でははっきり言っている。米軍が引き揚げると数日で崩れるんじゃないかと私が聞くと、いや、数日じゃない、一分で崩れると言っている。こういった不信感がやはり、民生向上を無視して民生を
軍事活動
に従属させてきた、そのことの結末が今破綻となって現れていると、こういうふうに理解してほぼ正確ではないかというふうに思います。 以上です。
井上哲士
94
○井上哲士君 先ほど
力石
さんからも麻薬の話がちょっと出たんですが、大飢饉のときも旧タリバン政権のときは非常に厳格で、ほぼケシの栽培は根絶をしたというふうに聞いておるんですが、この間急速に伸びてきているわけですね。 よくこの間のケシ栽培の増加とタリバンと結び付けて論じられるんですが、かつては厳しく規制したということが言われ、そこをどう考えたらいいかなというのが私ちょっとよく分からないんですが、今のこのケシ栽培の急増ということと、それからタリバンなどとの関係も含めて、それぞれからまた
お願い
したいと思います。
力石寿郎
95
○
参考人
(
力石寿郎
君) ケシの問題はかなり深刻に推移していまして、今
世界
の九三%のケシが
アフガニスタン
で栽培されていると言われております。 これが、旧タリバン政権時代にはほとんどなかったものが急速にそれだけのものになったという背景には、やはり反政府
武装勢力
の
人たち
の資金源ということになるからだというふうに思います。また、それを買う外国がそれだけいる、お客さんがですね、という関係で成り立っているものだと思いますので、これを根絶させるためにイギリスなんかが
中心
になって
現地
でいろんな
計画
を作ってやってきましたけれども、どんどん事態は
悪化
するばかりということで、今非常にケシの問題というのは
一つ
頭が痛い、
開発
を進める上でも
一つ
の大きな障害になっているというふうに理解をしております。
中村哲
96
○
参考人
(
中村哲
君) ケシの問題については、私はずっと代々の政権を見てきましたけれども、空爆以後、米軍の占領下で急速に広がったという事実、これはどうしようもない。これはいろんな説がありますけれども、先ほど
JICA
の方がおっしゃられたとおりで、一番根底にあるのは、みんなが食えない、小麦を作るよりはケシを作った方が百倍収入が多いというのでやむを得ず作るというケースが私は多いと思います。 これにはいろいろありますけれども、政府の要人の親族が麻薬王であるといううわさも飛び交っておる。麻薬マフィアの跳梁。
カルザイ政権
が、余りにケシだケシだと言うのでついに怒りまして、使う方も悪いんじゃないかと。禁煙運動をあれだけやっているなら、ケシの絶滅をどうして使う方はやらないんだと言うのも一理あるわけでありまして、私はケシ問題については、これは貧困の絶滅以外にケシをなくす方法はないと思います。 〔
委員長
退席、理事
浅尾慶一郎
君着席〕 実際に私
たち
の新しい
かんがい
地域
、だれも、あんなもの作って、やばいもの作って食っていこうと喜んで作る人はないわけで、
自給
自足できるならそっちがいいわけで、実際、私
たち
の
かんがい
地におきましてはケシを作っている農家は一軒もありません。だから、
農村
を豊かにすること、これ以外に根本的な方法はないというふうに私は思っております。
井上哲士
97
○井上哲士君 衆議院の
質疑
の際に、自民党の方の
質疑
の中で
ペシャワール会
の話が出たんですけれども、
一つ
は、元々
アフガン
というのは砂漠の国なのに、砂漠の国の
干ばつ
というのは一体何なんだかよく分からないと、こういう質問が自民党議員から出ました。これ
中村参考人
、いかがでしょうか。
中村哲
98
○
参考人
(
中村哲
君) これは、想像だけで物を言ってほしくない、実際に
現地
を視察して見ていただきたいと思います。かつて、十数年前豊かな穀倉地帯であった
地域
が軒並み砂漠化していくという事態、これは実際に私の目の前で起きておるわけでありまして、
現地
の人に聞いていただきたい。
アフガニスタン
全体はオアシス農業でありまして、カレーズと呼ばれる地下水を利用したり、あるいは大河川から流れてくる
用水路
を引いて、元々砂漠だった
地域
を人工的に造って耕作地にしたオアシス農業なんですね。ところが、それを養う水が年々かれてきて砂漠化してきたという
実態
がある。それが半端なものではない。現在、ヘラート、それからカーブルでの盆地
地域
の地下水の下降というのは半端なものではない。また、川の水、カーブル川、クナール川の川の水の低下というのは壊滅的な打撃をこのオアシス農業に与えると。 乾燥地に
干ばつ
というのはどういうことなんだというのは、私のように一生懸命してきた人間についてはナンセンス。これは実情を見て、そこで困っている
農民
の実情を聞いてから論議していただきたい。既に数百万人の
人たち
が
生活
する空間を失っている。そのことを十分見極めずに、勝手な漫画のような
議論
をしないでくれと私は言いたいわけであります。 以上であります。
井上哲士
99
○井上哲士君 実は、同じ人物が更にこう言っているんですね。同じ
先生
が言われています。
ペシャワール会
は千五百の井戸を掘った。では、なぜ
伊藤
さんが殺されたのでしょうか。これは、二〇〇三年九月に大統領から深掘りの禁止令というのが出ているんです、井戸を掘っちゃいけないと。なぜ掘っちゃいけないかといえば、深い井戸を掘ると浅い井戸の水が枯渇する、そして自然水路と言われるカレーズがうまくいかなくなってしまう、だからむやみに井戸を掘っちゃいけないんですと。ダムを造れば水をつくっていいじゃないかと言うと、下流で農業をしておる人が困ると、こういう
発言
をされておられますが、これについてはどうお考えでしょうか。
中村哲
100
○
参考人
(
中村哲
君) それはある程度本当ですね。私
たち
も、地下水による
かんがい
というのはこれは余りに影響が多いということで基本的にしないという方針で、大河川からの取水あるいは雨水の地表水をためるため池の無数の造成によって水を確保するという方針に切り替えました。 先ほどの話にちょっと戻らざるを得ないですけれども、乾燥地での
干ばつ
はどうなんだという
意見
も、これはかつて
アフガニスタン
は一〇〇%に近い
自給率
を誇っておった農業立国であるということを知らずに、ただ乾燥地だから乾いてもどうってことないんじゃないかというのについては私は怒りを感じる、私はそう思いますね。数百万の人がそのために難民化している、そのために傭兵化して
治安
がますます乱れているというときに何てことを言うんだというふうに私は言いたいと思います。つまり、
食料自給
率が半分に落ちたということは、あの
自給
自足の国で半分の人が食えなくなったということなんであります。 地下水についてはそういうことでありまして、地下水利用というのは限界でありまして、私は、政府が出した深掘りの井戸の禁止あるいはダムの禁止というのはある程度うなずけるものがあると思います。 以上です。
井上哲士
101
○井上哲士君 ちょっと先ほどの質問にも返るんですが、経済成長が毎年一〇%というふうに言われながら八五%が従事をする農業が非常に深刻な
実態
があるということが、今お話がありました。 要するに、農業の
自給
を高めていく、農業で
人々
が暮らしていけるようにするというのが一番ポイントだとお聞きをして思うんですが、ここはこういうふうに立ち遅れたままむしろ大変な事態が進んでいるということは、どこに一体問題があるのか。
国際
支援
なども改善するべきところがあるんじゃないかと思うんですが、これもそれぞれから
お願い
をしたいと思います。
中村哲
102
○
参考人
(
中村哲
君) これも私
たち
が初めから言っていることの繰り返しですけれども、
現地
に合った
支援
というのをもう少し
調査
してほしかった。これは先ほど民主党の方が御質問されたとおりでありますけれども、そんなに慌てなくていいから、
現地
にとって本当に何が大切なのかというのをもう少しじっくり見て決めてほしかったということがあります。 みんなが食えないときに、あなた
たち
がこんな惨めな姿になったのも
教育
がないばかりになったのよと言わんばかりに鉛筆を配っていく。
学校
が悪いと言っているんじゃないですよ、
教育
が悪いと言っているんじゃないですよ。しかし、
学校
へ行くにも、子供が生きてなきゃ行けないじゃないですか。そういう
現実
を無視して上澄みの
部分
だけが突出して行われた。放送、
道路
、これは必要なものであります。しかし、それ以前にみんな生きていかなくちゃいけないということがどこか忘れられていた、このことが問題なんじゃないかというふうに思います。さらに、それを
戦争
で解決しようとすることによって、食えなくなった
人たち
が米軍の傭兵あるいは反政府勢力の傭兵として大量に流れていくという悪循環をつくってしまった。これが
アフガン
復興の現在の破綻の姿であろうと私は思います。 以上です。
力石寿郎
103
○
参考人
(
力石寿郎
君)
中村
さんがおっしゃるとおり、
アフガニスタン
というのは本来豊かな農業国であったわけでありますので、私どもも農業
分野
については力を入れております。 何をやっているかというと、今すぐ即効性のあるものはなかなかできないんでありますけれども、残されている農業試験場を少し手を入れて、それで
アフガニスタン
の農業普及員、研究員を育てる。それはどういうことかというと、今の
アフガニスタン
の土壌に合った、しかも収穫量の多い作物は何がいいのかというような選定ですとか、あるいは品種の改良、
ジャララバード
におきましては
かんがい
稲作の指導をやってその技術の普及というようなことを地味ではありますけれども続けております。 これは、確かに
中村
さんのおっしゃるように、いったん避難民として国外に行ってしまってその土地が荒れてしまって、それでまた帰ってきたときはもう砂漠化しているとか、農地に適用できないとかということがかなりあちこちで起こっているのかなと思いますけれども、
日本
としてできるのは、やはり
現地
に合った、ニーズに合った農業とは何かというその同定をいたしまして、
現地
に張り付いて
日本
の技術
専門家
が、農業
専門家
が、日々
相手側
の
職員
、スタッフを
教育
訓練
して、それをもって更に地方の方に出かけていって農業普及をやっていくと、こういう地道な積み重ね以外にないのかなと思います。即効性のある解決策というのは恐らくないんじゃないかなと思っております。
井上哲士
104
○井上哲士君 時間ですので終わります。 本当にありがとうございました。
山内徳信
105
○山内
徳信
君 本日は、
参考人
の皆さん方には、長時間になりまして大変お疲れのところでございますが、私の持ち時間、二十八分でございます。どうぞ最後まで、皆さん方のお話を私
たち
は今後に生かしていきたいという思いで勉強させていただきたいと思います。 私は、社民党・護憲連合の山内
徳信
であります。特に遠方から、この参議院の
外交防衛委員会
の
参考人
として、本当にお忙しい中を、飛行機を、国連機を乗り継いで来られたということを伺っておりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。 〔理事
浅尾慶一郎
君退席、
委員長
着席〕 沖縄県は、去る太平洋
戦争
の末期、
日本
国唯一の日米両軍による地上戦の死闘が繰り広げられた県であります。私は少年でございましたが、
戦争
の理不尽さと戦場の地獄を体験をした者の一人であります。したがいまして、
中村
さんのあの
現地
のお話、あの大
干ばつ
、あの
子供たち
、そして緑豊かな
地域
がしばらくすると砂漠化しておる、そして水路を開いていく、井戸を掘っていく、そういうお話を伺っておりますと、私は戦後三か所ぐらいの収容所に収容されていました。
学校
へ行かずに、夜になると、午前二時ごろ、小
学校
五年生でしたが、鉄条網の中から逃げて食料を探しに出かけていくんです。そして昼、米軍の基地の近く、陣地の近くまで行って、埋められた缶詰など、あるいはちり捨て場へ行って食えるのを集めて、また夜夜中、収容所にこっそり潜っていくと、そういう体験をした少年の日が思い起こされてなりません。 さて、沖縄県は、アジア太平洋
地域
の平和の構築を目指して沖縄平和賞を制定いたしました。平成十四年八月三十日、
中村哲
さんは
ペシャワール会
の
現地代表
として初の沖縄平和賞に輝かれました。改めてこの場をお借りいたしまして心からお喜びを申し上げます。
現地
における筆舌に尽くし得ない御苦労に心から敬意を表し、今後の御奮闘を祈念申し上げ、以下数点についてお伺いしたいと存じます。 第一点目は、なぜテロが発生するのか、テロの発生要因の根源的な論議を私は公式の場で聞いたことがありません。真にテロをなくしていくために何が必要か、
日本政府
として何に力を入れるべきか、
現地
の生の声をお聞きしたいと思います。これが第一点であります。よろしく
お願い
いたします。
中村哲
106
○
参考人
(
中村哲
君) なぜテロが発生するか、これはいろんな考え方、見方があると思いますけれども、そもそもテロというのは何なのか。我々、赤穂四十七士を、飛躍するようでありますけれども、あれは明らかにテロリスト、これをテロリストと呼ぶ人は
日本人
の中にいないと思います。明治維新の志士
たち
をテロリストと呼ぶ人はいないと思います。 元々テロというのは、話が抽象的になりますけれども、弱い人が強い人に向かって用いる最終手段であります。窮鼠かえって猫をかむ、それがテロというものではないかと思います。 我々、テロリズム、テロリズムと言いますけれども、
赤穂浪士
をテロリストと呼ぶのも嫌だし、西郷隆盛をテロリストと言うのも嫌なんですね。それを考えますと、テロは、テロリズムはいいとは言いませんけれども、弱い者が追い詰められたときに使う最終手段。現に浅沼書記長がテロリストにやられたけれども、あれはちょっと違いますけれども、それを考えますと、弱い者を追い詰めないということじゃないかと思います。 具体的には、
アフガニスタン
におきましては貧困の退治。みんなが食えない
状態
、食えないとみんな悲壮になって、フランス革命もロシア革命も、食えない、追い詰められた
状態
で爆発的に発生した。今
アフガニスタン
はまさにその
状態
でありまして、フランス革命前夜に近い。私が訴えたいのは、こういった
状態
をまず解消して、まともに人が食えるようにしてほしいと、こういうことであります。これがテロをなくす一番の要因であります。 孫子の兵法にありますけれども、敵を決して追い詰めちゃいけない、逃げ道をつくって圧迫しなくちゃいけないという点から見ても、今の米軍の戦略はこれは大失脚。やはりこれは貧困の撲滅、これが
中心
に据えられないと、ある程度の武力行使というのはやむを得ないにしても、それを
中心
に据えないと永遠にテロはなくならないと私は思っております。 以上でございます。これは大きなテーマですので、話せば長くなるので御勘弁願います。
山内徳信
107
○山内
徳信
君 二点目は、
日本政府
は対
テロ戦争
の一環として新テロ特措法を延長し、引き続きインド洋上でアメリカ等多国籍の軍艦に無償給油を続けるため、法案の一部改正の提案がされ、今参議院
外交防衛委員会
で審議中であります。
アフガン
戦争
やイラク
戦争
を目の当たりにされている
中村哲
さんは、
日本政府
のやっておるインド洋における自衛艦による無償の燃料給油
活動
が国益であり、テロをなくするための
国際貢献
であると政府は強調されておりますが、
中村
さんの御見解を承りたいと思います。
中村哲
108
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。 これは今まで述べてきたとおりでありまして、決して
建設
的なことにはならない。国のおきてまで破って
戦争
に
協力
するのかと言われても仕方がない。これは
戦争
ではないと言っても、だれも納得しないでしょう。日中
戦争
が満州事変だと言ったって、あれは事変であって
戦争
ではないと
日本政府
は当時言ってた。しかし、今ごろそんなこと言ったって、だれも信用しない。OEFが
戦争
ではないと言っても、これは対
テロ戦争
なんて自分から言っている。しかも報復
戦争
だということをアメリカが自分から言っている。それに
協力
すること自体が私は
日本
の戦後のおきてを破るものだというふうに思います。 簡単に憲法改正だのをそのためにするというのは本末転倒でありまして、
戦争
というのはそんなお花畑のようなものじゃない。現在の
日本
国憲法というのは、そういった私
たち
の御先祖様の血と汗によってできた
一つ
の記念塔であります。それを簡単に漫画のような
議論
で変えちゃいけないと、私はそう思いますね。 これはやっぱり
日本
は
日本
としての使命がある。ちょっと
目先
の、先ほども言いましたけれども、
目先
の経済的利益だとか、あるいは政治的な利害だとかいうことで決めることではない。恐らくこの対テロ法案をめぐって、
日本
というのは決定的な分
岐路
に立っておるというふうに私は思っております。 私はあと二十年も三十年も生きませんけれども、自分の
子供たち
のことを心配する。そのときに責任が取れるのかと私は問いたいわけであります。単に憲法違反だとか九条がどうのこうのだとか解釈だとかよく分かりません。しかし、
戦争
は
戦争
だ、人殺しは人殺しだ。民法で言えば、アメリカが殺人者とすれば
日本
は殺人幇助罪に相当すると、私はかように思っております。 以上でございます。
山内徳信
109
○山内
徳信
君 三点目は、先般発生しました不幸な悲しい出来事について質問をさせていただきます。
ペシャワール会
の
現地
スタッフの一員でありました
伊藤
和也さんが何者かに拉致され殺害されるという痛ましい事件が起こりました。
伊藤
和也さんの捜索のために険しい山岳地帯を多くの
アフガン
の
人々
が頑張っている姿がテレビを通して私も知ることができました。
伊藤
和也さんが
現地
の
人々
から信頼されている、そのことが手に取るように分かりました。
伊藤
和也さんの事件を通して、私はそのテレビを見て新聞を読んだ後、このことを私はどのように解釈すればいいのかということを一人考えてみました。これは
日本政府
に対する警告ではなかろうかというふうに思いました。アメリカによる
アフガン
戦争
やイラク
戦争
を後方から
支援
し、追従している
日本政府
に対する警告だと私は感じました。 そこまで、同じ
日本人
で同じ国会議員でありながら、なぜ私がそこまで気付くかといいますと、それは先ほど、テロは追い詰められた弱い
人々
が支配をしておる者に対する
一つ
の抵抗であるという趣旨のお話がございました。沖縄県は、広島、長崎、東京大空襲を含めていっぱい
戦争
の
犠牲
を被ってきましたが、とりわけ半年近い戦場になって、アメリカのジャーナリストによると、
世界
の
戦争
史上かつてない地獄の凄惨な姿が沖縄戦であったというふうに本国に打電をしております。そういう中を生きて、しかも二十七年間、アメリカ軍の直接統治下にあって無権利の
状態
でした。既に憲法ができて人権が保障され、主権在民が、平和が唱えられておるときに、独り沖縄は二十七年間無権利の
状態
を生きてきた。 私が感じたのは、
伊藤
さんの
犠牲
というのは、それは
日本政府
と
日本
国民にある種の警告を発しておるんだと、こういうふうに受け止めたわけでございます。
伊藤
さんについては既に前の方々からの質問でお答えもいただいておりますが、改めてこの場で、私の警告という受け止め方について、
現地
で必死に頑張ってこられた、あるいは
中村
さんのメンバーであった
伊藤
さんの
犠牲
を無にしてはいけないという思いでの質問でございます。よろしく御見解を賜りたいと思います。
中村哲
110
○
参考人
(
中村哲
君) お答えします。
伊藤
和也君のことについては余り話したくないです。
一つ
は、先ほどセキュリティーという面で、国が守る、しなくちゃいけないこと、それから個人でしなくちゃいけないこと、これは両面あると言いましたけれども、私
たち
としてもこれを教訓にして生かしたいというふうに思っております。 私
たち
は、この
伊藤
和也君の死と同時に思い出すのは、これは
日本
側と
現地
側と温度差がややありまして、過去五名
現地
で私
たち
の
事業
のために殉職者を出しております。
伊藤
君が六人目であります。そのうち三人は、
アフガン
戦争
中、すなわちソ連軍の
戦争
中に死亡しました。一人は、看護師でしたが、山の中の診療所を造りに行って、川の中に転落して死亡しました。一人は、井戸を掘っている最中に転落して死亡しました。
現地
では六人目ということになりますけれども、私は、これは、語弊がありますけれども、人間が生きて生まれてくるその尊さというのは
世界
中同じであろうというふうに思います。ということを考えますと、語弊はありますけれども、
伊藤
君の死を特別視はしたくないというのはどこか自分の中にあります。 しかし、それを政治的に利用するというのは、これは許されない。貴重な
犠牲
を出したから、
日本
も
戦争
に、対
テロ戦争
に
協力
しなきゃなんてことを聞くと、これは私は血圧が上がる思いがする。 だから、私
たち
は、この
伊藤
君について言うならば、人間の生死、それから親の気持ち、これは
世界
中同じであると。これは頭で分かっても、なかなか身近で考えにくいんですね。しかし、そうはいっても、
現地
の
人たち
と身近にあった私にとりましては六人目の殉職者でありまして、その
人たち
の死を無駄にしてはいけない。そのためにこそ、これで我々はしっぽ巻いて逃げるということはない。むしろ
活動
を強化いたしまして、一層力を尽くしたいというふうに思っております。 以上でございます。
山内徳信
111
○山内
徳信
君 ありがとうございます。 私は、踏んでいる者は踏まれている者の痛みを知らない、この言葉を沖縄にいてよく使ってまいりました。今、民主主義だとかきれいなことを言って外国の軍隊が
アフガン
やあるいはイラクに入ってきたわけです。ところが、
状況
は御承知のとおり、ベトナムと同じように泥沼化をしておるような
状況
だと思っております。 私は、きれいな言葉じゃなくして、それぞれの国、それぞれの
地域
を
中心
とした自治というものを育てていく。経済的には、
中村
さんがおっしゃるように、食っていけるような、
生活
できるような農業環境を
整備
をしていく。そういうふうにして、宗教も環境も違う中にあって、そこにふさわしい自治というのが最も望ましいんだろうと思います。 二十七年間の沖縄の異
民族
統治から学んだ県民の教訓は、自治に勝る統治はない、自治に勝る民主主義はないというのが沖縄県民の声でございました。したがって、任命主席を押し付けられた県民は、自ら選挙で主席を選ぶ、自ら県知事を選ぶんだといって自治の獲得に立ち上がって、人権を守り抜くためには平和憲法の下に復帰する以外にないと、こういうふうに壮大な復帰闘争が始まるわけであります。
中村
さんにお伺いいたします。アメリカ政府による、あるいはアメリカ軍による
アフガン
、イラクの民主化の可能性についてお伺いしたいと思います。
中村哲
112
○
参考人
(
中村哲
君) 自治による民主化ということですけれども、私
たち
が想像するような中央集権
国家
というのは、
アフガニスタン
では将来的にも生まれようがないと思います。
アフガニスタン
は初めから自治の国であり、各
民族
、部族が寄り合って、それぞれの
生活
スタイルを守りながら、多少争いはありましてもそれなりにまとまってきた。そのことは、そのことが絶対いいとは言いませんけれども、それはそれで責めるべきものではないのではないかと。
世界
中何でもかんでも、いわゆるデモクラシーと称して中央集権
国家
をつくることがいいとは私は思っておりません。むしろヨーロッパの方が進んでおりまして、地方自治、これは経済的にもロスが少ないんですね。そういうことを考えますと、
アフガニスタン
は
アフガニスタン
の形があっていいんじゃないかと。それは彼ら自身が決めることなんじゃないか。
外国軍
が行って、このデモクラシーじゃ駄目なんだと、そのデモクラシーの中身は、もちろん民主主義という中身は我々と考えているものは違うでしょうけれども、私は、そういう押し付けはしてはいけない。基本的にその
地域
のことは
地域
のことで守るべきだというふうに私は思っています。 将来的にも、
アフガニスタン
が現在我々が想像するような中央集権の国民
国家
ができる見通しは、あってもまだまだ先だと思えますというふうに私は思います。 以上でございます。
山内徳信
113
○山内
徳信
君 ありがとうございました。 これをもって終わります。
北澤俊美
114
○
委員長
(
北澤俊美
君)
参考人
に対する
質疑
はこの程度にとどめます。 この際、一言御礼を申し上げます。
参考人
のお二方には、長時間にわたり貴重な御
意見
をお述べをいただきまして誠にありがとうございました。
委員会
を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後四時一分散会