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2008-03-25 第169回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年三月二十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      福山 哲郎君     小林 正夫君      佐藤 正久君     河合 常則君      山内 徳信君     福島みずほ君  三月二十五日     辞任         補欠選任      犬塚 直史君     内藤 正光君      浜田 昌良君     渡辺 孝男君      井上 哲士君     大門実紀史君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鴻池 祥肇君     理 事                 尾立 源幸君                 櫻井  充君                 津田弥太郎君                 羽田雄一郎君                 水岡 俊一君                 椎名 一保君                 伊達 忠一君                 林  芳正君                 山口那津男君     委 員                 相原久美子君                 浅尾慶一郎君                 石井  一君                 植松恵美子君                 大石 尚子君                 大久保潔重君                 川合 孝典君                 小林 正夫君                 自見庄三郎君                 辻  泰弘君                 友近 聡朗君                 内藤 正光君                 中谷 智司君                 藤原 良信君                 森 ゆうこ君                 森田  高君                 米長 晴信君                 荒井 広幸君                 有村 治子君                 加納 時男君                 河合 常則君                 佐藤 信秋君                 末松 信介君                 田村耕太郎君                 谷川 秀善君                 南野知惠子君                 松村 龍二君                 山田 俊男君                 山本 一太君                 谷合 正明君                 渡辺 孝男君                 鰐淵 洋子君                 大門実紀史君                 福島みずほ君    事務局側        常任委員会専門        員        村松  帝君    公述人        シンクタンク山        崎養世事務所代        表        山崎 養世君        株式会社日本総        合研究所調査部        主任研究員    河村小百合君        国際基督教大学        教養学部教授   八代 尚宏君        跡見学園女子大        学マネジメント        学部准教授    中林美恵子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成二十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成二十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成二十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成二十年度一般会計予算平成二十年度特別会計予算及び平成二十年度政府関係機関予算につきまして、四名の公述人方々から順次御意見をお伺いしたいと存じております。  この際、公述人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、誠にありがとうございます。御出席をいただきまして、心から感謝を申し上げます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成二十年度総予算三案につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十分程度で御意見を述べていただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、経済財政について、公述人シンクタンク山崎養世事務所代表山崎養世君及び株式会社日本総合研究所調査部主任研究員河村小百合君から順次御意見を伺います。  まず、山崎公述人お願いをいたします。山崎公述人
  3. 山崎養世

    公述人山崎養世君) おはようございます。  本日はこのような機会をいただき、大変にありがとうございます。お時間も限られておりますので、端的に私の意見を述べさせていただきたく存じます。  今回、道路の問題で予算国会で非常に大きな焦点になっておる、これは非常に象徴的なことであろうと。先生方承知のように、元々この道路特定財源という制度は、これ全くなかった制度、これを田中角栄議員が三十四歳のときに、昭和二十七年、参議院で百回連続答弁をお一人でなされ、徹底的に審議をされて、憲法違反じゃないかと、要するに行政の予算編成権を縛るものである、これを、日本自動車社会にしないことには復興ができないと、日本経済大国になれないということで、総意としてこの道路特定財源制度をつくられて、その後この自動車社会ができ、日本は今では世界一の自動車大国と言ってよろしいんじゃないでしょうか。  一九六八年には世界第二の経済大国になったわけですから、非常に最初制度としてはすばらしい制度をつくられたというふうに私も思っておりますが、ただ、やはり、もう人口減少社会に入ってきて、本来のやはり財政基本である税収配分というものは一般的なその財源の中で配分をしていくものでありましょうし、また暫定的に決めたというような財源については、それについて見直しをし、あるいは廃止をしていくというのは、これは一般論として見れば極めて当然のことであろうと思います。そういうことで、この道路財源の問題についていろいろとこの国会審議をされているということは、私は徹底的に審議をされていくということが非常にいいことであるというふうに思っております。  ただ、私は今日あえて御発言をさせていただきたいのは、この道路一般というよりももっと深刻な問題がこの道路問題の中にはあって、それが今までの今年の国会審議の中ではほとんど取り上げられていない。その問題についてちょっと焦点を当てたいというふうに思います。  実は私、先々週、この「道路問題を解く」という本を書きまして、ダイヤモンド社から出しております。これは、「日本列島快走論」という本を四年前に出しましたが、この道路問題につきまして、私として今までの、二〇〇二年からいろいろな活動をしておりますが、その総括ということで書かせていただきました。  先生方承知のように、実はその道路特定財源ができたと同時に、もう一つ制度が誕生しております。それが有料道路制度でございます。これも田中角栄議員提案したものでございまして、つまり天下の公道、道路無料というそれまでの原則に反して有料道路という制度をまずつくったと。これは大変な炯眼でございまして、これまた、これがないと有料道路整備されなかった。  しかし、さらにもっと大きいのは高速道路整備でございます。名神東名高速道路整備が始まったのは昭和三十一年、一九五六年のことでございます。これはアメリカ提案です。アメリカブルッキングス研究所が研究し、そして技術を供与して、世界銀行が三分の一のお金を出して融資をしたおかげで名神東名高速道路ができ上がりまして、このときに必要予算四千五百七十三億円でございまして、これはその当時の、昭和二十七年当時の道路予算の二十三年分に当たります。とても財源がないから高速道路借金で造ったという歴史がございます。  ちなみに、実はアメリカは全く同じ年に自分の全国高速道路網を造っておりますが、ガソリン税を導入しまして、その財源範囲内で高速道路を造りましたから、利用者からは無料というので最初からアメリカはスタートしております。ところが、日本の場合は、財源がなかったから借金を返すために道路整備特別措置法、つまり一般的ではない、原則から外れている特別措置として借金を返すまでは料金を取っていいよというつくりで始まったわけでございまして、これ、ごく当たり前のいわゆるプロジェクトファイナンス法であったわけでございます。  名神東名、それでは今まで取った料金は幾らか。少なくとも統計がある限りでは七兆五千億円取っております。先ほど建設費四千五百七十三億円、その十倍以上の金額を取っている。どうしてそういうことができたか。つまり、借金はとっくに返しておるわけですが、この田中角栄総理が誕生した一九七二年にいわゆる道路プール制というものができて、名神東名で取った料金をほかの路線料金建設に回すことができるようになったということでございます。これも皆さんが御承知のとおり。  この高速道路制度小泉政権のときに非常に大きな変化を受けまして、道路公団民営化というものが行われましたのも皆様の記憶に新しいところであると思います。今世間での理解は、もう高速道路の問題は終わったんだと、道路公団もう何も問題ないんだと、JRと同じように成功なんだと、こういうふうに理解する方が多いんですが、私はこれは実態を甚だしく逸脱した、実は本当の実態は、この道路公団の問題あるいは高速道路の問題は全く解決をしていないどころか、この国家予算の根幹にかかわる借金爆弾と化しているということを今日御説明を申し上げたいと思います。  まず、国鉄について申し上げれば、JRは十一兆円の借金を引き受け、かつ国庫一般財源で後で引き受けました。ところが、この高速道路道路公団の現在残っております借金は現時点で四十兆円ございます。これは、民営化が決まったときに何が決まったかと申しますと、二〇五〇年までに借金はすべて返しまして高速道路無料開放するというのがこれが民営化法案が決定したことでございます。よく当時の担当大臣なんかがただほど高いものはないとか、高速道路ただでいいわけないとおっしゃいますが、そのときに作られた法案は、少なくとも二〇五〇年には無料開放するということを決めておるわけでございます。借金返済するから無料で開放できる、これは現在の法律が決めておることです。  それでは、この決めておる法律は本当に守られるんですか、仮にそれが守られないときに国家財政国民経済にはどのような影響があるのかということなんですが、まず一つは、現在九千三百四十二キロメートルまで高速道路を延伸することはもうこれは確定をしております。そのために、高速道路機構という組織が新たに積む借金が二十兆円でございます。二十兆円、四十兆円の上に乗ってくるということをまず一つ指摘させていただきたい。  それともう一つは、道路中期計画、昨年発表されておりますが、そのほか全体計画基本計画、その中で一万四千キロの国幹道のうち一万一千五百二十キロメートル、これは高速道路民営化会社が造る高速道路でつくるわけです。つまり、これから三千三百キロ更に拡張していく、今までの予算と同じようなコストが掛かると計算すると、先ほどの二十兆円プラス三十兆円、合計すると今の四十兆円プラス二十足す三十は九十兆円の借金を抱えるということが、道路中期計画提案するということは、そういうことを提案、この高速道路について九十兆円まで借金が膨らむんですよということを提案することと同義でございます。  この借金には金利が付いてまいります。今の金利は低いんです、一・八しかありません。しかし、七〇年代、八〇年代、政府が想定したのは四%より金利が上がらないということを二〇五〇年まで想定しております。しかし、七〇年代、八〇年代、四%まで下がった時点は二つしかないんです。今世界で起きていることは、石油の価格の上昇途上国物価上昇、これから世界は高インフレ、高金利時期にこれから十年、二十年入るのはほぼ確実と申し上げてよろしい。そのときにこの借金返済はどうなるのか。  簡単な私、グラフを作ってまいりました。  時間終わりでございますか。まだよろしいですか。
  4. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 大丈夫です。
  5. 山崎養世

    公述人山崎養世君) それでは、こちらの方の、金利が上がるとどれだけ恐ろしいことになるのかというのが、こちらのお手元配付資料の横のグラフでございます。これは、四十兆円から借金が増えないと想定しても、これだけの違いがあるんです。金利が三%上昇した、つまり七%の平均金利になりますと、何と二〇五〇年に残る借金は五十二兆円になるんです。  後で御説明を申し上げますが、この八割以上、九割程度国庫負担になります。つまり国民負担になるんです。それまで高速道路ユーザーというのは、申し上げますと、税金を払っております。ガソリン税、そのところから払っております。これは高速道路建設に使われず、ほとんど一般道路建設に流用をされております。その上で料金を二兆六千億も取られている。つまり、高速道路ユーザー二重取りをされているんです。税金料金二重取りをされている。ほかの国は大体、高速道路ユーザーから取ったような税金で大体高速道路整備をしているからそれ以外に料金を取らないで整備できているだけの話。例えばイギリスは、年間一兆三千億、日本の六分の一の予算高速道路一般道路整備してきておるわけでございます。それがいわゆる道路の普通の国。先進国税金範囲一般道路高速道路も造ると、これが常識でございます。  さらに、これから国鉄赤字路線のような高速道路過疎地赤字路線をいっぱい造り上げれば何が起きるのか。実際に、人口減少社会、それから交通センサス調査、いずれを見ましても、これから交通需要が減るのは明らか。何よりも、私は、いかにこれがもったいないことであるのかということを是非先生方に御理解をいただきたいと思います。  それは、こちらの方、縦書き、下に三十二と書いておる、国際競争力の確保、地域の自立と活力の強化、これは昨年の道路中期計画の三十二ページ、昨年十一月発表のものです。これを御覧いただくと、実に驚くべきことが書いております。  これは、高速道路現状について実に率直に語っておられます。都心部では通過交通によって深刻な渋滞が発生している、迂回させる必要があるが、環状道路の料率が割高だから都心部への交通が集中することが止まらない。もっとすごいことが書いているのは次でございます。並行する一般道は混雑しているにもかかわらず、高速道路には比較的余裕がある高速道路の区間が全国の約六五%。つまり交通需要がないんです。ないわけではないんです。その地域はちゃんと車利用したいんです。  ちなみに、東京都の自動車への交通依存度は三割しかありませんが、全国三十五の道県では、自動車への交通依存度は九〇%を超えております。日本は、自動車が要らない東京とあるいは大阪と、それ以外のほとんどの地域自動車しか交通がない社会に分かれている。その中の高速道路、何と六五%は、車ちゃんと使いたい、だから、隣の国道は込んでいる、だけど高速料金が余りに高くて使ってない。つまり、宝の持ち腐れになっている高速道路が三分の二もあるんですよ。五千キロもある。これが無料になれば五千キロの高速道路建設するのと同じ効果がある。もっと言えば、アクアライン、四国への三本の橋、これが無料になればどれだけ大きな経済効果があるか、どれだけ大きな交通量をこれ賄うことができるのか、これは私は明白な話であろうというふうに思っております。  ですから、私、こちらの先生方、そりゃ無料化当たり前だと、そうすれば経済効果がある。問題は、じゃどうやってできるんだと、そういうお話になってくると思うんです。そうしますと、結局、現在の高速道路機構、わずか八十五人しか職員がいない。この組織借金のありようをやはり見なくてはいけない。  そうしますと、こちらの中の、ちょっと申し訳ありませんが、このダイヤモンドのカラーの記事の二ページ目、大変見にくいんですが、高速道路機構借金というところございます。後で、私の本には詳しく書いておりますのでお読みもいただきたいんですが、一言で申し上げますと、借金は全く民営化されておりません。つまり、高速道路機構あるいは高速道路民営化会社が自前で借金をできているのは、この四十兆円に及ぶ借金合計のわずか七兆円にすぎないんです。そのほかは国からの出資、国からの貸付け、国の保証、つまり国掛かりの借金が八割にも及ぶという実態なんです。借金は全く国が抱えているんです。それだったら、いっそのこと国の本体の借金に戻せばいいじゃないですか。つまり、この高速道路問題は、金融的に申し上げますと、不良子会社をつぶしてその借金国本体が引き受けてしまった方がコストもはるかに安いじゃないですか、確実に返済できるではないですか、そういうお話でございます。  この財源に本来一番適しておったのは財政投融資剰余金等々でございました。二十七兆円あったわけです。つまり、財政投融資制度ででき上がったこの借金財政投融資金利上昇のための準備金二十七兆で消せば一番良かったんです。ところが、これは国債返済に充てられてしまいました。  ですので、私は、やはり良識の府としての参議院是非考えていただきたいのは、本来であれば、それは暫定税率であって、下げるべきであろう、そう思います。一般財源化して年金にも使うべきだと思います。しかし、その前に、この高速道路借金を返すことに道路財源を使うべきではないか、どうしてもそれが足りないのであれば、暫定税率を維持しても国民お願いすべきではないか。一リットル二十五円下げるよりは、高速料金一キロ二十五円なんです、一リッターで十キロぐらい走れたら、二百五十円楽になるんですね。ですから、私は、本来であれば一般財源化、そして暫定税率ということも引下げ、これは当然だと思いますけれども、この経済効果。  それともう一つは、将来への借金、つまり費用対効果から見てそういうことを考えるべきです。実際には、国はこれは借金を、国債を片方で発行していますから、こういうその道路公団のような借金については、やはり特殊法人整理会計なるそういうものをつくり、優先順位の高いものから国債総合管理の中で返済をしていけば十分に返せる。そして、全国高速道路首都高阪神高速を除いて無料になれば、どれだけ大きな経済効果があるか。それがやはり税収増ということにもなりますし、高速道路が使えるようになり、そして出入口がいっぱいできれば、既存の交通システム輸送量は飛躍的に増大するということは、将来の道路を造らなくてはいけないニーズが減るわけです。現に、秋田で初めて直轄高速道路できました。今まで三千台しか通っていなかったところ、一万台通るようになったんですね。ところが、有料期間になると七千台降りている。つまり、無料になれば、新しい道路を造ることを減らすこともできる、そういうことも是非御考慮いただきたいと思います。  申し訳ありませんでした、ちょっと時間をやはりオーバーしてしまいましたが、私のお話、これとさせていただきます。  ありがとうございました。
  6. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、河村公述人お願いいたします。河村公述人
  7. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 日本総合研究所河村と申します。本日はこのような機会をちょうだいいたしまして、大変光栄に有り難く存じます。  私の方からは、長年、金融財政がオーバーラップするような分野を中心として我が国財政運営を見させていただいてまいりました民間シンクタンクの立場から意見を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  まず、我が国財政現状ということでございますけれども、もう御案内のとおり、一般政府ベース債務残高の対GDP比規模がもう実に一八〇%に達しているということで、非常によろしくない状況ではないかと思います。我が国財政が抱える課題というのは、これほどの規模の大きい債務残高を一気に減らすことはとても無理ですので、その方向性だけでもいかに持続可能な形に整えて次の世代に渡していくのか、そういった辺りを整えていくことが最大の課題ではないかというふうに思っております。そういった意味では、この国の在り方、そして財政運営在り方、そういった意味で幾つかの観点から抜本的な改革を行うことが必要ではないかというふうに思っております。  そこで、本日はお時間も限られておりますので、その観点のうちの一つ我が国にある意味で特有の課題なんでございますが、そこについて申し上げさしていただきたいと思います。  その課題というのは、我が国の場合、よその主要先進国ではほぼ例がないことなんですが、これまでの財政運営を振り返ってみますと、金融的な手法を用いた財政活動運営というものをされてきた規模が極めて大きかったということが言えるかと思います。これは、いわゆる租税等原資とします無償資金ではなくて、政府としてバランスシートを広げる形で市場からお金を調達して、そのお金原資に何がしかの財政的な目的を持った政策運営をなさるというものだと思います。これは当然ながら、バランスシートを広げておりますから当然ではありますが、先行きの金融市況等に依存いたします金融リスクを大きく抱えることになります。この点についてはもう当然ながら、既にこちらの国会の場でも、そして政府の方でも十分に認識されていらっしゃることでありまして、だからこそ資産債務改革というものが行われることになり、その一環として金融資産についてもいろいろな角度での改革が行われてきたということだというふうに承知しております。  じゃ、この大きな金利リスク、どこにあるのかということで申し上げますと、非常に分かりやすく申し上げて、そのバランスシート規模ということで申し上げますと、一番大きいのが恐らく財政融資資金特別会計だろうというふうに思います。これは平成十九年度末、この三月末の予定額ベースで約二百四十六兆円の残高がございます。そして、二番目が外国為替資金特別会計、こちらは約百三十兆円の残高があります。三番目になりますと、これは近々国の機関から外れることになるのかも分かりませんが、公営企業金融公庫、こちらの方はかなり規模が落ちますが、二十五兆円ということになろうかと思います。  このように見ると、今申し上げた数字はあくまでバランスシート規模でして、特に財政融資資金特別会計などにつきましては、資産債務改革観点から既にいろいろな意味での金利リスクへの対応がなされていまして、財投債を使ってアセット・アンド・ライアビリティーの方でのミスマッチ縮小ということも行われておりますし、最近ではちょうど金利リスク縮小のための証券化なども行われたところだというふうに思います。  ですから、このバランスシート数字だけがすべてを物語るわけでは決してないんですけれども、やはり規模の面で見たこの外国為替資金特別会計我が国外貨準備の勘定でございますけれども、これ実は財投の方のバランスシート規模で約半分強ぐらいがあると。しかしながら、これまでのところどうかというと、やはりかなりこの資金、特殊性があるということで、この資産債務改革であるとか特別会計改革の議論の中ではややちょっとほかの会計とは別の位置付けの扱いになってきたのではないかなと思います。  そこで、昨今、この外貨準備の積極運用ということがいろいろ話題になっていることもありまして、この点についてじゃどう考えたらいいのかということをこれから申し上げさせていただきたいというふうに思います。  我が国外貨準備外国為替資金特別会計に入っているお金ですが、この抱えるリスクの考え方としては二通りがあるかと思います。メーンは金利リスクでございます。これは日米金利差に依存するものであります。アメリカ金利日本金利を上回っている限り稼げるという話であります。もう一つは為替リスクであります。ただ、これはやや特殊なところがございまして、我が国の場合、よその国でもそうですが、政府の会計でございますので現金主義というものが使われておりまして、その特有の事情がありまして、損益のカウントをする上ではこの為替リスクはカウントされないという、そういう形になっております。  これは、ですから、実際に外貨建て資産を売却するときであるとか、これから少し申し上げますが、将来仮にこのバランスシートを何らかの形で切り離すとか、それから時価評価をしなきゃいけなくなるようなことになったときに初めて問題になるものでありまして、当面今のこの制度の中で運用していく場合には問題にならないというものだろうと思います。  じゃ、外貨準備の積極運用をめぐってはどういうことを考えるべきかということを申しますと、三つ大きく論点があろうかというふうに思います。  一番目でございます。積極運用することによって、ちまたではいろいろシンガポールの例であるとかいろいろな諸外国の例が言われてはおりますが、果たしてそのような形で高い利回りが毎年稼げるのか、財政再建に貢献するというようなことが持続的に期待できるものなのかどうかというのが一番目。  二番目は、現状外貨準備、これは実は大変大きな規模世界の中で見ても抱えておりますが、しかもこれは先ほど申し上げましたような金融的な手法でやっておりますので、マーケットから為券を発行してお金を調達しつつ、そのお金で外貨を買うというような形になっておりまして、そういった会計の中で金利リスクそれから為替リスクへの対応をこれからどう考えていくべきか。  それから三番目の論点というのは、ソブリン・ウエルス・ファンドの在り方が国際金融市場の中でも今大変いろいろ問題になっている中で、我が国がもしやるんであれば、ベストプラクティスというものをいかに確立していくか、コード・オブ・コンダクトというものをいかに確立していくかということが問題になってくるんではないかというふうに思います。  このような三つの論点があるかと思いますが、そういった中で、では、諸外国の外貨準備政策運営がどうなっているのかということですね。お手元にお配りいたしました資料の二ページ目のグラフを御覧いただければというふうに思います。  これは、一九八五年のプラザ合意のときから、かなりちょっと時系列的に長いんですが、主要国、欧米先進国それからアジアの国なども含めて外貨準備がどのような残高で推移してきたかというのを示したものでございます。一番上のグラフを御覧いただきますと、中国と日本が図抜けて増えておりまして、下の方、たくさんの国があるんですが、もうほとんどグラフびたっとくっついてしまってお分かりにくいことがよくお分かりいただけると思います。この点よく御覧いただくために、この左側の目盛りのスケールを実際には小さくいたしまして、三千億ドルというような形にいたしましてみたのがこの真ん中のグラフでございます。一番上のグラフではオレンジの点線になっておりましたユーロ圏が、真ん中のグラフではこのオレンジの今度実線になって、この辺りにスケールが移ったなということで御覧いただければと思います。  御覧になりますと、我が国経済規模の面で、そして経済の成熟度合いの面で、これ国際収支の不均衡にも関係してまいりますが、類似しているような欧米の主要国、まあアメリカは基軸通貨国ですので少し立場が違いますけれども、そういった国がどのように外貨準備をコントロールしてきているかと見ますと、適正水準について必ずしも定説があるわけではないんですが、どうもやはり三百億ドルから八百億ドルぐらいのところのレンジでほぼ横ばいで推移するようにしてきているという姿が見えるかと思います。こういった辺りが、やはり外貨準備、保有する形態には、日本のように政府が持ったりそれから中央銀行が持ったり折半にしたりといろんな形がありますが、いずれの形をするにせよ、為替リスクであるとか金利リスクであるとか、国民資産をそういったマーケットのリスクにさらすことになりますので、必要最小限は保有するけれどもそれ以上は持たないという各国の考え方がこの事実によって示されているんではないかというふうに思います。  ちなみに、一番下のグラフはアジア各国、これは輸出ドライブで成長してきた国、日本も確かにその一員ではあるんですが、その国の外貨準備高の推移でありまして、これは真ん中のグラフとは違いまして、やはり右肩上がりの国が多いかなというふうな感じになっております。やはり輸出が各国の経済成長を引っ張る上での中心でございますので、自国通貨高をやはりいろいろ介入等の形によってできるだけ抑制してといったスタンスがここに出ているかと思います。  これが現実でありまして、じゃ我が国外貨準備規模といいますと、先ほど御覧いただきましたように、主要諸外国、我が国と並べて比較することができる欧米主要国と比べると、我が国の二十分の一ぐらいの規模しか持っておりません。それぐらいに我が国の場合は非常に規模が大きい、裏返せばそれだけ我が国政府として抱えているリスクが極めて大きいということが言えるかと思います。  次に、諸外国のソブリン・ウエルス・ファンドの運用の現実ということを一言申し上げたいと思います。  一般的に情報開示は進んでおりませんが、ノルウェーなどの一部の国の、極めて開示が進んでいる国の例を見ますと、必ずしも毎年毎年ステディーに高い利回りを稼げるわけではありません。当然ながら、国際金融市場の影響を大きく受けます。年によっては、株式市況が悪い年ではマイナス三〇%といったような値下がりということになることもあります。これは十分覚悟しておくべきであろうと思います。  こういったことを踏まえて、今後望まれる検討の方向性ということでございますが、我が国の場合、これほどの外貨準備を持っていて、狭義の外貨準備として適切な水準、必要な水準というのを相当上回っているだろうなということは事実だと思います。私として積極運用すべきだともすべきでないとも思ってはおりませんけれども、もし御検討されるんであれば、幾つかの点についてお考えいただければと思います。  一つ目は、先ほど申し上げましたように、積極運用とはいっても、年によって非常に大きく数字が振れ得るということです。そのためには十分なリザーブを積んでおく必要があります。そうしますと、そのリザーブどこから持ってくるかということになりますと、やはり今毎年一般会計に相当な規模、来年度は一兆八千億でしょうか、繰り入れておりますが、場合によっては何年間かその繰入れを止めてリザーブを確保しなければいけないというようなことにもなろうかと思います。  そして二番目は、この外貨準備の抱えている大きなリスク。本来は、バランスシート、両建てで売却して縮小していくのが筋だろうと思います。しかしながら、いろいろアメリカとの関係であるとか、大変いろいろ政治的に難しい問題もあって、なかなか難しいのも現実であろうかというふうに理解しております。ですから、ソブリン・ウエルス・ファンドも、やり方によっては、外貨準備から切り離すことによってこのリスクをコントロールする手段として使うことももしかしたらできるかもしれないというふうに考えております。こういった辺りは、場合によっては、本質的には郵政民営化で取られた考え方と少し通ずるところがあるかも分かりません。  三番目。移行するとすれば、会計はやはり是非とも今のような公会計のベースではなくて、国際金融市場のプレーヤーとして活動するのであれば民間のベース、時価評価のベースに従うべきだろうと思います。当然ながら、競争規制などに従う必要もあろうかというふうに思っております。  最後に一点。やはり考慮すべきは、当然ながらアメリカの反応かなというふうに思います。こうしたことをする場合、やはり当然ながら米国債を売却しなければいけないということが出てくるかも分かりません。それをアメリカが果たしてウエルカムと考えるかどうか、そういった辺りも考える必要があろうかと思います。  現在の市況を考えますと、円高が非常に進行しておりますし、非常に国際的な金融市況も不安な状況にありますので、具体的にすぐにどうのというようなことではないかと思いますが、我が国の中長期的な課題として、この金融的なリスクを大きく抱えている政府部門の改革一つ観点として是非とも御検討をいただければというふうに思っております。  以上でございます。
  8. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対して質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をいただきます。
  9. 小林正夫

    小林正夫君 おはようございます。民主党・新緑風会・国民新・日本小林正夫です。  それぞれの公述人から大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。限られた時間ですけれども、何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、山崎公述人につきましては三点お聞きをしたいと思っています。一つは、先ほどお話がありました、先生のお書きになった「高速道路はタダになる」、この本も拝見をさせていただきました。この中で言っていることは、なぜ高速道路無料化の約束が守られていないのかと。先ほどのお話で一部そういうお話もありましたけれども、このことに対してどう考えられているのかということを改めてお聞きします。それと、高速道路無料化の財源、これについてはどうしていくのか。それと、地方経済活性化の対策は何なのか。この三つについてそれぞれ質問をいたしますので、お答えいただければと思います。  先ほどのお話の中で、高速道路無料化していくことは国の約束事項だった、それが国は法律違反をしてその約束を守ってこなかった、このようなお話と、この本にもそのように書かれております。さらに、二〇五〇年までに借金返済高速道路無料開放することも定めているけれどもその約束も多分守られないだろうと、こういうことも最近の著書の中で書かれておりました。  特に政官業、こういうものを背景にしたいろんな私は課題があるんだと思いますけれども、特にこの政官業、これらを関係した背景を含めまして、まず一番目の質問は、高速道路無料化の約束がなぜ守られないのか、これからもそれが大変、希望的には、守られない可能性が大きいと、この辺についての課題について教えていただきたいと思います。
  10. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 御質問にお答えをさせていただきます。  私の理解では、元々、先ほど申し上げましたように、高速道路制度というのは道路整備特別措置法というもので決められておりまして、これは、アメリカでのインターステート制度ができる前の有料道路制度がありましたものですから、一部、それのいわゆるプロジェクトファイナンス法とそっくりでございます。つまり、一定の路線、例えば名神という路線を決めまして、そこに建設費その他の費用は掛かりますと、で、料金を取りますと。まあ担保金融ですね。要するに、それを担保に取っておいて、必ず料金借金返済に充てなさいという強制的なこういう約束でございます。世界銀行、ある意味では、担保に取って料金を取ることで借金返済を確実にしたわけです。それを、その国際的な約束を法律の形で担保をしていった。これは非常に当たり前な法律でございまして、逆に言えば、ある路線で取った料金を、自分がお金を貸していないほかの路線に使っちゃいけないと、これが当然のことながらプロジェクトファイナンスのもう一つ原則でございますから、名神東名で取った料金名神東名借金返済に充てていき、その借金返済が終わった暁には本来の高速自動車国道に変わるという当たり前の法律であったわけでございます。  ところが、田中角栄さんが七二年に総理になられたときに、まあ天才でございますから、私どものような凡人のように、実はそのときには道路予算は何と二兆円になっているんですね。わずか二十年で財源が百倍になるものをお考えになられたわけですから、大変な天才でございます。ということは、二兆円の税収があれば三か月分で名神東名借金はそのとき返せたんですね。  ところが、その全く逆をやられて、プール制というのを、これを政省令の改正だけでしてしまいました。つまり、ある路線で取った料金を、全国すべての高速道路計画での建設借金返済が終わるまで取り続けていいよと。これは驚くべき、私、素人でございますが、法律の根本変更でございますから、本来は法改正でやるべき話を、これを政省令、つまり国会を通さずに決めてしまった。これがやはり根源であろうというふうに思います。  これにつきましては、実は私、下河辺淳さんという方から後日談といいますか、下河辺さんは、角栄さんが今生きていたら、あなたの言うとおり無料にするよとおっしゃって私のところにお話に来られたんですけれども、そのときは一般道高速道路も全力で早く造りたかったからそうしたんだと、あれは三方一両得だったんだ、そういうお話でございました。しかし、それが今も続いてきてしまった。  財源お話でございます。  こちらにつきましては、まず、これは国際比較をしてみれば、日本道路支出は、ヨーロッパのイギリス、フランス、ドイツ、イタリア四か国の道路支出合計と同じでございます。各国はそのお金をもって高速道路一般道路も造っております。一般的に言って財源は大きいですし、もちろん宮崎のようにまだ高速道路が通っていないところ、地方によってないところございます。ただ一般論から言っても財源が大きいという認識があったがゆえに、小泉首相は道路財源一般財源化していいんじゃないかと。暫定税率を特に一般財源化をしてほかの財政目的に使ったらどうだということは、借金返済に充てるということも当然立派な一般財源化の目的でございますから、それは一義的にあるべきだったと。  第二番目は、先ほども申し上げました片方で国には貯金があったと。特にこの財政投融資のいわゆる金利変動準備金がついこの間まで二十七兆円もあったわけでございます。片方で借金があり片方で貯金があれば、貯金をもって借金を返す、これは当たり前の、家計でも企業でもやることですから、本来はあれは私、この高速道路借金返済に使ってもらいたかったですが、国が国債返済に充てるということを決めてしまいましたので、残念ながらそれがほとんど消えてしまっております。  ということになってくると、やはり道路財源の中から財源を捻出していくのが筋ではなかろうかと。それによって、実は、先ほど申し上げましたように、これから高速道路無料になる、しかもこれから二キロ、三キロに一つ出入口を造りますと、一般道路との接続が飛躍的に向上いたします。今ある道路が使えるようになって輸送量が上がれば将来の道路建設額は少なくて済むわけでございますから、将来の節約ができるわけですから、今道路財源を使って高速道路無料化の財源にすることができる。  それともう一つ申し上げれば、実は国は既に三十三兆円の借金を自分でし、借りてあげているんですね。つまり、道路公団の四十兆円の借金は、何も自前で四十兆の借金していたんじゃなくて、国がほとんど借りて、又貸しをしていた部分が三十三兆にも上りますから、新規の借金は要らないんです。もう国債は発行してしまっているんです。  ですから、財政的、金融的に申し上げれば、七兆円分の財源を用意しさえすれば無料化は完全にできてしまいますよということと、仮にそれを国債で発行いたしますと、今の金利で固定できます。一・五%で固定できますから、将来の金利上昇するというリスクもないということになっています。  そして、最後に地方財政、これはもう言うまでもございません。アクアラインがただになり、四国の三本の橋がただになり、そして全国高速道路無料になれば、いかに地域経済が潤うかは、これは私が先生方に御説明を申し上げるまでもないことであろうと。これこそ国土の均衡ある発展に最も資する政策であると思います。
  11. 小林正夫

    小林正夫君 よく分かりました。  二〇〇三年の十一月の衆議院選挙、民主党は高速道路無料化、これを打ち出してマニフェストでしっかり国民に訴えました。そのときに先生の方から大変な御協力をいただいたことを改めて感謝申し上げます。また、私たちもそのマニフェストの実現に向けてこれからも取り組んでいきますので、どうぞ御協力をよろしくお願いしたいと思います。  そこで、約束が守られない、高速道路無料化ということが実現しない、それは政官業との関係も問題があるんだと、こういうふうにお話をされておりますけれども、ここの部分についてもう少し先生のお考えをお聞きをしたいと思います。
  12. 山崎養世

    公述人山崎養世君) これは私、人にいろいろ教えてもらいました。元官僚の方、財務官僚、建設官僚、そういった方々の言葉を援用いたしますと、やはり角栄さんというのは天下取りの名人でもあると。つまり、みんなが得する制度をつくっていって、そしてそれが資金が環流するメカニズムをつくり上げたと。それは古い政治、かつてそういったことで、途上国あるいは復興途上国であった日本もそういう時代があったということだと思います。私が教えてもらった言葉は、例えばまんじゅう五個といった言葉も教えてもらいました。そういう当時は、道路予算の五%は何らかの形で環流していくんだよと、そういう時代があったと思います。  しかし、今、地元に戻られて、私は、地方であればあるほど、農業者、ガソリンスタンド、観光、経営者の人ほど高速道路無料化を求めていると、これは時代は変わったということを私は申し上げたい。政治家としても、地域発展がメリットであるとすれば、そろそろこれは頭を切り替えるべき時期に来ているのかなと思っております。
  13. 小林正夫

    小林正夫君 ありがとうございました。  河村公述人に二点お聞きをいたします。これは財政健全化の問題で、特に日本平成二十年度予算、このことに対して具体的に二つ質問をいたします。  公述人は、二〇〇七年二月のビジネス・アンド・エコノミック・レビューの中で、各自治体の財政力や経済力にはばらつきが存在するので、国と地方の関係の将来的なグランドデザインを描く上では何らかの財政保障や財政調整のメカニズムを何らかの形で仕組むことが不可欠になると、このように言われておりました。  今回提案されている平成二十年度の政府予算を見ますと、地方自治体の格差是正ということで、国は手を付けずに東京都や愛知県などの法人税の一部、三千七百億円程度規模でほかの道府県に移すこと、こういう考えが示されておりますけれども、私は本来、財務省で対応すべき施策をほかに転嫁しているんじゃないかと、私はこのようにこの考え方を持っているんですが、このことに対する御所見をお聞きをしたいということと、ふるさと納税が話題になっております。生活している地域以外のふるさとに納税するというこの考え方、このことについて御所見をお聞きをしたいと思います。
  14. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 一点目の方から申し上げます。  国と地方の関係でございますけれども、二十年度予算における措置については、現在の国と地方の制度の前提の上でとられたものというふうに理解しておりまして、個人的にはやはりこの国きちんと立て直していくためには、もっと、例えば道州制の導入であるとか、この国の在り方自体をもっと抜本的に変えていくことが必要なんではないかなというふうに思っております。  それから、ふるさと納税につきましては、まあ趣旨についてはよく理解できるんですけれども、実際にこれに従ってどれほどのお金が動くかなというところもありますので、やはり多少の効果は期待できるかとは思いますけれども、大きく何か根本的に問題を解決できるようなそういった施策ではないのかなと、やはりまた別途もっと大きな意味でこの国の在り方を考えていく必要があるんではないのかなというふうに考えております。  以上です。
  15. 小林正夫

    小林正夫君 引き続き御質問しますけれども、財政健全化の中で社会保障制度、これをどうしていくのかという点について質問をいたします。  二〇一一年度までに財政健全化の一定のめどを付けるためということで、公共事業だとか社会保障などの歳出を削減する、こういうことが今進められておりますけれども、社会保障の関係でいろいろ課題も出てきていて、舛添厚生労働大臣ももうこれは限界に来ていると、こういうようなお話もあります。  したがって、この財政健全化を図る中で、日本の人口、高齢社会、まさにこれから二、三十年そういう日本の人口構成が続くわけなんですが、この社会保障制度在り方をどう考えていくのか、この辺について御所見をお聞きします。
  16. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 社会保障の分野については私は必ずしも専門ではございませんので、一般論として申し上げさせていただきたいと思います。  やはり根底には少子化という人口減の問題がありまして、少ない現役世代の人口で比率が高くなってくる高齢者世代を支えなければいけなくなるということだというふうに思いますので、やはりその分については必ずしも公共事業とかの分野向けの歳出と同じように考えることは非常にやはり難しくて、ある程度これから歳出が重くなっていくことは覚悟はしなきゃいけないことなんではないのかなというふうに思っております。  以上です。
  17. 小林正夫

    小林正夫君 もう一度山崎公述人にお聞きをいたします。  先ほど、地方が元気にならなければ日本経済の復活はあり得ないと、このような趣旨のお話がありました。特に東京一極集中、あるいは道州制、地域間の格差解消、それと地方分権、このことをひっくるめて、地方が活性化するために、先ほどの高速道路の話もありましたけれども、どのような政策を具体的に展開していったらいいのか、また道州制について御自身の考え方についてお聞きをしたいと思います。
  18. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 大変大きなテーマでございますので、かいつまんで申し上げますと、今後、高齢化の影響が最も出る都道府県は東京都でございまして、何と一人当たり所得は二五%も減少していきます。財政はこれから最も悪化し、かつ高齢者が倍以上になります、後期高齢者が。ということは、医療それから介護施設、待ったなしになりますが、最も土地が高いわけです。  その中で、日本というのは、トップ五十社のうち三十八社、七六%が東京、つまり法人税収その他が極めて東京に偏在をしていて、地方の経済は本当に干からびている。その中で、東京財政がこれから十五年でメルトダウンすることはほぼ確実なんですね。そうすると日本全体が沈み込む。そのときに、土地が安い日本の地方、これは九七%の地域が過疎です、そこが利用されていない。欧米はどんどん田園地帯の中に企業の本社が移っています。そのトレンドに乗らずに相変わらず途上国型の首都集中を続けることは極めて危ない、私はそう思っております。
  19. 小林正夫

    小林正夫君 ありがとうございました。  終わります。
  20. 森田高

    ○森田高君 おはようございます。新緑風会の森田高です。本日は、櫻井筆頭理事を始めとした民主党の皆様の寛大な御裁可の下、予算委員会で二回目の質問をさせていただきます。  まずもって、御多忙中にもかかわらず本日公聴会に御出席ただきました公述人の皆様に心から御礼申し上げます。また、大変貴重な御意見を賜り、併せて感謝申し上げます。  本日の公聴会におきましては、医療などの社会保障政策、そして公共事業政策と連関した財政政策に関してお伺いしたいと思っております。  まず、資料一を今お配りしていただきまして、御覧いただきたいと思います。  今ほどお話がありましたように、少子高齢化の進んだ我が国はこれから本格的な人口減少社会に入っていくと様々な統計が示しています。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、標準的な中位推計でおおむね二十年間で約八百万人の人口減少と、高齢者数、とりわけ後期高齢者数の顕著な増加が示唆されています。  私は国会に来てから約八か月間たちましたが、これから、この間にも大田経済財政担当大臣を始め様々な識者の方々が異口同音に、医療費を始めとした社会保障費用の伸びがGDPの伸びを上回っているから抑制の必要があると、さも当然のように語られることに違和感を覚える者の一人でございます。  なぜなら、一般論として、社会の高齢化が進めば就業率は徐々に低下します。あるいは、社会全体の労働生産性は低下していき、一方で人間が高齢化すれば生活習慣病の罹患率、これは程度の差があるにしても、努力の有無にかかわらず一定限度上昇することになります。言うなれば、高齢化が進むという時点において、GDPと社会保障費用の連動は物理的に困難な政策目標であるとも考えられます。  一方で、医療費の将来推計は簡単なようでいてなかなか困難であるとも言えます。表にお示ししましたように、医療費推計は将来の人口推計と年齢ごとの一人当たりの医療費の伸び率によって規定されます。この二つのスペキュレーションが正しければ、エクセルレベルのPCスキルでも医療費の将来推計は極めて容易にできます。しかし、この推計が難しく、これがあいまいであれば、例えば厚労省が今まで示してきたように、二〇二五年における我が国国民医療費の将来推計が百四十兆だったり、あるいは百兆だったり、最近では六十九兆とか五十六兆とか言っているようですが、かなりぶれまくってしまうということになります。  いずれにしても、将来推計が困難な状況下であれば、政策のかじ取りを行う者は、その時々の社会の実情と財政やあるいは各々の現場の状況を的確に把握しながら、どのようにバランスを取るかということが重要かと思います。  先ほど、小林議員から、今後の我が国社会保障システムの在り方財政状態を踏まえた上でどのようにあるべきかと河村先生に御質問がありましたが、もう一点河村先生にお伺いしたいと思います。  社会保障の在り方に加えて、公の部分と自助の部分、民の部分のバランス、どのような構図が望ましいとお考えになりますか、御教示いただきたいと思います。
  21. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 公と民のバランスということでございますが、一般的に、世界的に見ても小さな政府というのが志向されている中で、大きな流れとしては日本もやはりその方向が望ましいであろうというふうに思っております。  ただ、やはり、さはさりながら、いろいろな政府の政策の目的あるわけでありまして、何でもかんでも民間の方にゆだねられるかというとそうでもない。ただ、さはさりながら、公と民の間の中間的な類型なども出てきておりますので、そういったものも使って、いかに効率化とそれから財政的な負担の最小化を両立させるかといったことを考えながらバランスを取っていくのがいいんではないかというふうに考えております。
  22. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。  次に、資料二枚目を御覧いただきたいと思います。    〔委員長退席、理事林芳正君着席〕  日本の場合、社会保障費、特に医療費の支出は先進諸外国の中で総じて非常に低い水準であるということが知られております。一方で、固定資本形成への支出、いわゆる公共事業の支出は非常に高い水準であるということも知られています。今国会においても道路財源のことが大変大きなテーマになりました。右側のグラフは、縦軸が医療費の対GDP比です。横軸は公共事業費のGDP比でございます。G7間の比較でございますが、医療費は最低、公共事業支出は最近数年でかなり削減されたとはいえ、それでもまだ堂々の第一位という、まだ日本は公共事業大国であると言えるということです。  高齢化が進む、予防医療を普及させても、国民全体としての各種疾患の有病率は上昇します。これを止めることは物理的に困難であり、やはり上昇が避けられない。そのような状況を踏まえて、この医療費やあるいは社会保障費と公共事業費の歳出構造のバランスの悪さ、私はバランスが悪いと思いますが、どのように評価され、今後どのように対処すべきか、山崎先生の御見解をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  23. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 私、この医療費と公共事業費というのは非常に実は、先ほどの小林先生の御質問と絡めますと三次元になってくるかと思います。というのは、医療費、介護というのを企業あるいは提供者の立場からだと、四階建ての構造と申し上げてよろしいんじゃないでしょうか。つまり、施設、病院というのは土地の上に建ちます。土地の上に建物が建つ、その上にお医者さんや看護師、そして事業者の利益と、これ四段階になるわけですね。大都市圏では断トツ、大きな医療費支出の原価計算をすると、土地代に消えているわけなんですね。  実は、医療法人をお調べになってください。地方発の医療法人がどんどん東京に進出する。それはなぜか。医療費のプライスは一つ、価格は一つですが、コスト構造が全然違うんです。つまり、これから医療費、介護の実質を増すためには、土地の安いところに介護施設を造れるような時代にしなくてはいけない。そのときに、アクアライン片道三千円、往復六千円を取れば、木更津が全く使われずに一坪五万円で放置をされているわけです。羽田空港から十五キロ、十分で来る首都圏です。あそこから南、房総半島、恐らく二百万人ぐらいここに受入れができないと、首都圏でこれから増える三百万から四百万の後期高齢者の方、行くところがないと思います。  ですから、この国土政策、交通政策と医療費削減、すべて連動をしている。ですから、日本全国環境のいいところに、どこだってそれが不便だったらやっぱりだれも行かないんです。コストが高かったら行かないんです。でも、そこを例えばアクアライン無料にしたと考えてください。鎌倉だってすぐに行ける。東京だって戻れる。今、江戸川区そのほか東京二十三区、もう介護施設造れなくなってきています。これから財政が悪化すればますます造れません。  ところが、何百万人、三百万人増えた人、この人たちをそのまま孤独死させる、そういう行政であっていいのか。それを考えれば、先ほどの例えば高速道路無料にするというのは一見無関係ですが、日本全国どこにでも住めるような国にするということでは、医療費、介護の一つコスト削減の大きな手段であると私は思っております。
  24. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。  次に、河村先生にお伺いします。  三枚目を御覧ください。かつて、社会保障政策ばかりで恐縮なんですが、先進国の中でもかつては我が国よりも更に下が存在していました。英国でございます。かつての保守党の鉄の改革路線の下、医療は崩壊して入院待ち六か月、救急外来の平均待ち時間が十二時間などということが実際に起こったということが言われています。言わば、医療崩壊あるいは福祉崩壊が、我が国に先行すること十年、発生したと言えます。しかし、政権交代で誕生しましたブレア政権は様々な改革を継続するとともに、社会保障費用の大幅な増額を行い、医療費に関しては政権下の十年間でおおむね倍増を達成し、医学部定数も約五〇%の増員、結果として十年間で国内の医者の数をおおむね三五%増員せしめました。同時に、この十年間の経済成長も、GDPの成長率はおおむね四%台で継続して着実に達成して、一方で債務残高も増えていません。言わば、この英国の十年間は経済社会保障の二兎を追って二兎を得たと、そういう状況だと理解できます。  この状況、英国の取組というものを、大変恐縮ですが、どのように評価されるか、そしてこの成功体験が何が最大の原因だったのか、もしよろしければ御見解をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  25. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 必ずしもイギリスについて詳しく専門的に研究しているわけではないんですが、一般的に承知している範囲内で申し上げたいというふうに思います。  イギリスが確かに日本よりかなり先行する形で経済的に、そして社会的に相当厳しい状況に置かれて、それをなおかつ様々な構造改革で立て直してきたというのは今お話のあったとおりかというふうに思っております。実際に、財政のバランスも、日本ともう比較するのが大変失礼なぐらいずっと良好な形で来ているというふうに思っております。ですから、そういった意味でイギリスのそういった改革の成功の秘訣、それはある意味一つ政府のリーダーシップということにあったでしょうし、それから保守党の後、労働党が政権を取る中で、その労働党の志向される路線というものが微妙に世の中の流れ、構造的な流れに追い付いていくような形で変わられたということも大きかったんではないのかなというふうに思っております。  ただ、イギリスについてやはり考えておりますのは、今おっしゃられたような財政数字であるとか、それから社会保障の関係の支出の数字であるとかというところを見れば非常にうまくいっているように見えますけれども、やはり負の側面が確かに多少なかったわけではないのではないかというふうに承知しておりまして、やはり社会的な安定の問題とかでまだなお課題を抱えているところがあるというふうにも聞いておりますし、やはりそういったところも参考にしながら、日本の場合には少し後塵を拝しながらこれから改革を進めていく立場にあると思いますけれども、やはりそういったところ、マイナスの側面いかに抑えながらこの難しい課題、複数の課題を両立させていくのかというところについて参考としていくのがよいのではないかというふうに考えております。
  26. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。  山崎先生にお伺いします。  先ほど国土交通軸の活性化というものは医療や福祉に関しても活性化をもたらすというお話がございました。その上でお聞きしたいと思うんですが、一定レベルの社会保障の維持というものは、国民に老後の安心感をもたらすだけではなくて、個人の金融資産を消費に向かわせることができる一つの要因だと私は思います。同時に、医療と福祉事業というのは安定的な数百万人規模の雇用の創出といいますか、継続にもつながると思います。トンネルを掘る、橋を架けるということは、一つの事業が終わればその段階で一定の雇用は終わります。ところが、医療や福祉に関しましては数百万人の雇用が、特に日本の場合これから高齢社会がどんどん続くわけですから、雇用が維持される、そういったマーケットになる、すそ野の広いマーケットになるという考え方もあります。  所得移転という観点から見れば、道路や橋を媒介とした所得移転が今までの姿であるとすれば、公共投資の、これから先の我が国の政策というものは医療や福祉、そういったものを媒介とした所得移転という観点があってもいいんじゃないかなと思いますし、これが今この国の置かれた状況、高齢化社会、それに適合した望ましい姿ではないかなという、私はそういう気もするんですが、何か御見解があればよろしく御教示いただきたいと思います。
  27. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 今の先生の御質問は、少し角度を変えますと、今後の産業とはどういうものが伸びるのかというお話だと思います。  名神東名、新幹線、アメリカ日本の共同事業でできた太平洋ベルト地帯、ここは実はもう実質空洞化しているのは御存じのとおりです。トヨタ、キヤノン、コマツ、そういった企業、業績伸びています。売上依存度、海外六割、七割、八割です。日本を出ていった企業が成功しているんです。つまり、物づくり、工場だけに依存するのでは駄目だ。そして、先ほど先生おっしゃられたように、それがどんどんサービス産業にほかの国は行った、医療そのほか。これはアメリカもそうです。  もう一つ観点で見ると、実は土地を使う産業なんです。病院、医療、介護、もっと言えば農業、観光、すべてです。土地の安いところで経済活動が行われるようになる。ヨーロッパを見ても、ほとんどこれは田園地帯の観光というのは巨大産業になっているわけですね。それも、先ほど申し上げましたように、交通が今までは余りにもコストが高くて、日本は国内交通高速道路を筆頭として余りに高いということが一つの原因なんですが、もう一つは、イギリスの場合はその地方に海外から進出をしてもらっていると。これなくしてやはり経済成長はなかった。だから、地方分散化やっています、高速道路ただです、でもそれだけではうまくいきません。日本の場合は、アジアの企業が地方の町や村に進出できるような国にすること、そしてその先に経済活動が盛んになり、そこに病院、学校、観光施設がどんどんどんどん栄えるということが次のやはり日本経済戦略であろうと考えます。
  28. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。  最後に山崎先生に一点お伺いして、質問を終わりたいと思います。  高速道路無料化は私も大変すばらしい政策だと思っております。その上でお伺いしたいと思うんですが、道路財源、今非常に大きな問題になっておりますが、私は、道路財源をやはり総合交通体系の一環として使っていくべき、そういった見解があってもいいのかなというふうにも思います。  例えば、我が国の空港の発着料、世界的にも極めて高くて、それが国際競争力を落としていって、ハブ空港に関しても、韓国であったり香港であったり、そういうところと比べると非常に不利な状況かなと思いますし、実際、国際港湾では釜山に相当出し抜かれてしまったと、そういう状況にございます。国益を考えた場合、空港発着料の軽減のためにそういう財源を一部使っていく。  あるいは、整備新幹線が全国に今造っています。ヨーロッパの状況を考えると、今新幹線というのは、スペインであり、フランスであり、ドイツであり、スウェーデンであり、イタリアであり、スイスであり、多くの国々がモーダルシフト、交通の移転、自動車から鉄道への回帰、これが進んでおります。それらの国々は、非常に短いスピードで、五年、十年のスパンでもう長い幹線鉄道がどんどん高規格で造られているわけです。  LRT、町づくり、コンパクトシティー、いろんなところの公共交通体系の整備、町づくりの体系の在り方に関して財源というものがある意味、使途拡大されていいと思いますが、最後にその御見解お願いしまして、終わりたいと思います。
  29. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 私も先生の御意見に賛成でございます。  道路特定財源、もっと正確に言うと、一般道路にしか財源を使わない、高速道路で取った税金すら高速道路に使わないで一般道路建設に使う、これは余りにも狭過ぎるということだと思います。それは、高速道路借金を返すことに使えば、当然、今度はJR、私鉄と組んで高速道路の基点と駅を接続すれば鉄道会社ですらもうかるようになる、都市開発ができる。あるいは、先生おっしゃられたモーダルシフト、これも不可欠です。非常に長い距離は鉄道でやる方が、あるいは海運の方が合理的でございます。  さらに、これは日本国内、リサイクルをやろうとすれば、高速道路無料化ではないと、東京や大阪の、例えばこの携帯電話を秋田県小坂町に持っていくことはできないわけですね。これは資源問題なんです。日本国家安全保障、資源安全保障のためにも、交通コストを下げると同時に、それがだれにでもアクセスができ、高度化する、それを日本全国で実現するということは非常に大切なことだと思います。
  30. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございました。
  31. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今日、ソブリン・ウエルス・ファンドの話を河村さんが持ち出してくれまして、本当にタイムリーというかラッキーというか、それにつきまして、山崎さんにも後でお伺いしますが、河村さん中心にちょっとお伺いしたいと思います。  河村さんが本当にいい流れで説明ただいたんですが、もうこれは本当に、国としてのアセット・ライアビリティー・マネジメントの話から出てきまして、国が全体としてどういう資産を、どういうカテゴリーの資産をどれぐらいの期間どんな利率で持っているか、これを全部洗いざらい調べた中で出てきた話なんですね。  外貨準備とか公的年金とか、埋蔵金、埋蔵金あるかないか、いろんな議論が林筆頭ともありますけど、埋蔵金とか、あと国有不動産、こういうものをやっぱり公的セクターから民間セクターに出していって財政再建に役立てるのもそうなんですけど、金融市場のグローバル化ですね。やっぱり日本一つの目玉というのは、経済規模でいうとアメリカ日本の三倍あるんですけど、バランスシート規模日本の方が五倍でかい。これだけ大きな資産を持った国は世界にありませんから、そういう国が持てる資産を民間に出してくる、これは非常に大きなインパクトがあると思うんですね。  それともう一つは、ここの委員会でも非常に話題になっているんですけど、役人を過度に信用しちゃいけないというのがあるんですね。こんなことを言っちゃ怒られるかもしれませんけど、役人に大金を渡しておくと何に使うか分かりませんから、それをやっぱり民間に政治がしっかり情報公開を果たしながらしっかり効率的に運用してもらう、こういう流れをつくっていこうというふうに思っています。  外貨準備の話が出ました。僕は、はっきり言って規模が大き過ぎると思うんですね。百兆ドルも要るのかどうなのか。これはお立場上なかなか結論は出ないかと思いますけど。そこで、一部積極運用という話が出てくるわけですね。積極運用の目的は何なのか。よく言われますけど、別に欲をかこうということだけじゃないわけですね。いろんな経済変動がありまして、その経済変動を避けながら国民資産を守り育てるのが我々の役目であるわけです。  例えば、これ私の個人的な感想なんですけど、二十年続いてきたデフレ基調がそろそろ終わってインフレ基調になってくるかもしれません。そうしたら、今持っている資産在り方というのを世界的な経済の傾向に合わせて変えていかなきゃいけないわけですね。  外貨準備百兆ドルありますけど、私は、例えばアメリカの意向とおっしゃいましたけど、米ドル建てだったら文句ないと思うんですよ。例えば、今財務省証券を盲目的に、自動的に買っていますよね、八五%以上ぐらい。僕はこれを、一つは米ドル建ての株式、不動産、金融派生商品、この辺りに変えるだけでもやっぱり資産運用の効率が必ず変わってきますし、アメリカはそんなに目くじら立てて怒らないと思うんですね。しかも、今やタイミングがいいわけですよ。物すごいアンダーシュートしていて、もう過小評価されていて、しかしながらアメリカが絶対つぶさない資産って、山崎さんもお詳しいと思うんですけど、例えばファニーメイとかシティバンクとか、絶対あるわけですよ。こういうものにシフトしていくだけでも運用の多様化そして効率性、全体としての安全性の向上が図られると思うんですが、これは山崎さんもお詳しいんで、河村さんと山崎さんに端的にお答えいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  32. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 今いろいろなお話を伺ったんですが、御質問の御趣旨というのは、じゃ今の状況、タイミングをどう評価するかという御質問で……
  33. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 いや、だから、国の対応が株式とか不動産とか金融派生商品に、米国債に盲目的に投資しているやつを多様化するということの評価ですね。
  34. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 額、規模とかにもよると思いますが、そういった考え方は十分考えられるところだというふうに思っております。ただ、その資産の種類ですけれども、株式それからフィックスドインカムの債券ぐらいまでですとオーソドックスかなというふうに思いますが、金融派生商品まで入ってくるということになってくると、多少十分に議論を尽くした上で検討した方がいいのかなというふうに思っております。  それから、現在の市況の影響ですが、確かに、ある意味ではプライスが下がっておりますので買い場というような感じでマーケットの感覚ではなるかも分かりませんが、逆に言うと、アメリカの立場辺りからすると、事の是非は別として、これほど日本を始めとするアジアなどの公的資金、公的外貨準備が米国債をバイ・アンド・ホールドの形でこれほど大量にある意味で買い支えているような状況の中で、しかも、このような非常に金融不安というような状況に今あるかと思いますけれども、こういった例えば株式であるとかそういったところに乗り換えるとすれば、当然ながら米国債の方を手放す、それからロールオーバーしないといったことで対応しなきゃいけなくなってくるわけでありまして、同時に、そういったところで全体的な国際金融市況にどういう影響が出るか、別にアメリカの顔色だけをうかがわなければいけないということではないんですけれども、やはりそういったところを全体的に判断して具体的に進めていく必要があるんではないのかなというふうに思っております。
  35. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 先生、大変的確な御指摘だと私はまず思います。  私、実は二十年前、徳山二郎先生という方に依頼されまして、中曽根さんに対して外為法の有事条項というのを発動してアメリカ国債を売るべしという提案をいたしましたのが八五年の八月の十九日です。その一か月後に実はプラザ合意というのになりまして、そこで初めて百八十度変わりまして、日本アメリカ、ドイツの協調介入が始まって、そこからアメリカのトレジャリーを自動的に逆に買う体制、それは日米円・ドル委員会、八〇年に始まったところから、要はアメリカ財政赤字をファイナンスするために日本の金よこせと、これが金融自由化の本質だったわけですね。  今必要か。必要ありません。当時はアメリカは本当に困っていました。今所得収支は黒です。何よりも金利がわずか三しかないんです。我々かつて一五%もらっていた金利、三しかもらえない。ニューヨーク・タイムズが日本のことを笑っています。何で日本アメリカ国債いつまでも買い続けるんだ、ばかだねと。そこまで言われているわけです。私は全く必要はないし、アメリカ人ももう求めてない。  それよりももっと戦略的に使ったらどうか、その発想も大賛成。私は、例えばインドの国債を買うべきだと思います。インド、中国、二〇〇六年から為替はもう基調、大変化、これから十年、二十年、為替の上昇が続きます。金利は八%です。しかも、インドは今インフラの建設が必要なんです。日本の資金、そして日本の技術、日本の企業が欲しい。ここでインドに出ていけば、例えば外貨準備の五%、一〇%使えば、日本とインドは大同盟国になれる、その提案を私、一昨年、日本とインドの政府間協議でいたしました。インド側は理解したにもかかわらず、日本が全く動いておりません。  私、先生の考え方におおむね賛成です。ただアメリカだけである必要はない、世界の戦略投資に使うべき、そういうふうに思っております。
  36. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 貴重な御意見、ありがとうございました。  私も、どの部分を使うか、元本なのか、リターンの部分を別会計にして使うのか、そこで規模やサイズやタイミングや発表の仕方というのは変わってくると思うんですが、タイミングという話で今がいいかという話もあるんですけど、じゃ例えば百兆ドル持っているわけですよ。ところが、百二十円から九十五円まで下がって、これ、評価的に言えば二十数兆円吹っ飛んだ計算になるわけですね。  財務省は、リスクを取らない運用をしているためにトレジャリーを買い続けるんだと言っていますけれども、トレジャリーで運用すること自体がもうリスクになっているわけですね。ここで〇・七五下がったら、ほとんど日本国債金利の差がなくなるわけです。それで、為替の影響で二〇%以上吹っ飛んでいるわけですから。  ですから、ここで日本がやるべきかやらないべきかというのは、僕は、ある意味日本の独自の判断でもいいんじゃないかと思うわけですね。今、山崎さんが言われたように、今やアメリカ借金の肩代わりをしているのは中東、中国の方がでかいわけですよ。日本のポジションというのは橋本さんが言って大きな暴落をしかけてしまったようなときとは大きく違うと思うんですね。ですから、私も、将来的には山崎さんの言われるようなエマージング通貨も含めて多様な運用の仕方というのはあるような気がいたします。  今度は、次に、外貨準備からソブリン・ウエルスのもう一つの柱ですね。  世界のソブリン・ウエルス見てみますと、大体石油収入か年金、外貨準備、この三種類に分かれると思うんですが、日本は残念ながら石油収入はないんですけど、公的年金というのは莫大なものがあるわけですね。大体、今度返ってきますから、百五十から百六十兆円あります。これが今、GPIFというところに独法で持たれているわけですよ。独法ですから、これ年間三%ずつ人件費を削減しなさいという縛りが付いているんですよ。山崎さんは投資銀行にいらっしゃったんで、三%ずつ人件費を減らしていって本当に望ましい運用ができるのか、僕は甚だ不透明だと思うんですね。  やっぱりGPIFを独法でなくして民間会社にして、世界の大学の基金や世界の年金型のソブリン・ウエルスがやっているように、有能な人材をマーケットプライスで採ってきて、成果報酬で評価していって、そしてしっかりとやっぱりリターンを出していく。これが百五十兆円全部というのはなかなか難しいと思うんです。やっぱり運用の大敵は規模ですから、規模が大きければ大きいほどなかなか難しくなっていく。  しかし、例えば、今、年金系ソブリン・ウエルスですね、カナダとかノルウェーとかアメリカのカルパースとかアラスカの年金基金とか見てみますと、大体平均して過去五年の直近の運用利回り一〇%ですよ。一〇%で十年運用できたら、資産規模は二・六倍になるんです。  今、日本の年金中期目標、年金局なんかがつくっているやつは三・二ですよ。しかも、三・二のうち、JGB、日本国債を三分の二持たされて三・二。一・五%の利回りの商品を三分の二持たされて三・二目指せって、ここもまあ無理だと思うんですけれどもね。仮に三%達成できたとしても、十年で一・三倍にしかならない。十年たてば、資産規模は倍、半分になるわけです。  僕は、日本の年金というのは、これから少子高齢化に入っていって、賦課方式をやめるにしても積立方式にするにしても、やっぱりこのままもたない。ですから、やっぱり一部だけでも効率運用をすべきだと思うんですが、今の運用の在り方とこれからのあるべき運用の姿について、お二人に端的にお答えいただきたいと思います。  河村さんから。
  37. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 年金の方でも積極運用を考えられるということは、それは当然私も検討の課題であろうというふうに思っております。独立行政法人、人件費等の縛り非常に厳しい、それもおっしゃるとおりだというふうに思っております。  ただ、民間にやはり委託して、そういったところの知恵を使って国民資産をいかに大切に安全性等を確保しつつ効率的に運用するかということ、十分検討されてしかるべきですが、やはり制度設計上は年金という国民からお預かりしたお金ですので、やはり最終的な責任というものは政府が持たなければいけないわけでして、そういった辺りのガバナンスをどういうふうにするかというのはひとつ工夫する余地が十分にあるのではないかなというふうに思います。  そして、今、田村先生、いろいろな諸外国の年金の積極運用のお話、実例を出してお話しになられて、確かにそういった例があることは私も承知しております。ただ、先生、今最近五年間とおっしゃいましたが、この年金の積極運用に限りませんけれども、ほかの部分で積極運用についてディスクローズしている国のデータ見ますと、かなり大きくやられている年というのは、今からさかのぼること五年ではなくて、もう少し前の辺りで結構やられた年がございます。一九九九年、二〇〇一年、二年辺りですと、マイナス三割とか付いたのはそういった年なんですね。  ですから、運用のタイムスパンどう御覧になるかということで、確かに最近五年ぐらいで見れば高いパフォーマンスが出ているかも分かりませんけれども、やはりもう少し長い目で見ると、市況の変動、それなりの影響があるということは覚悟しなきゃいけないというのは、これは外貨準備の場合であってもそれから年金の場合であっても同じことだろうというふうに思っておりますので、そういった市況の変動があり得べしということで、それに耐えられる仕組みをどうつくっていくのか、そして中長期的な意味国民資産を預かってどう効率的に運用していくかということを是非とも御検討いただければというふうに思っております。  以上です。
  38. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 先生から、また大変これも私、貴重な的確な御指摘をいただいたと思います。  私も実は年金運用というのをなりわいとしておりまして、まず、日本の公的年金がグローバル運用をするようになったこと、そして日本以外の外国の投資顧問会社を使うその第一号でございますし、制度設計もいたしました。  ただ、その経験から申し上げますと、日本の場合は非常に超低金利というのが恒常化をしておると。先生の御指摘のように、一・五%の国債を買っておいて、片方でかつて予定利率五・五です、国民に五・五お届けします、複利でとお約束しているのは守れるはずがないわけなんですね。  ですから、資産運用の九割は資産配分で決まります。技術は一〇%にすぎない。つまり、国債にするのか、株にするのか、外国にするのか、その割合決定が一番最も重要であり、そこに世界の運用機関は全勢力を注いでおりますが、日本の場合はこれが極めて固定的に最初から決められている、ここに根源問題があります。  そういう意味では、ハーバード大学の資産運用であるとか、シンガポールの公的年金の資産運用であるとか、ノルウェーであるとか幾らでも成功事例があるわけですから、そういうやはりプラクティスを本格的に導入することなくして、百五十兆円の運用が二%か五%かというのは数百兆円単位で五十年間で年金財政国家財政に大きな影響を与える実は最も大きな変動要因であるにもかかわらず、そこは余り議論されずに、今まで保険料がどうか給付がどうかということばかりが語られている。  私は、積立金運用をするのであれば、その部分は積立金運用にふさわしい長期運用の根本的な哲学と体制と政策に変えない限りは日本の年金財政が好転することはないと思います。
  39. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 大変勉強になりました。  今、自民党の中で私と前の金融大臣の山本有二先生で議連を立ち上げまして、これは自発的な議員連盟でこの問題を、日本版ソブリン・ウエルス・ファンドの問題を取り上げると同時に、国家戦略本部、党の正式な機関決定ができる組織の中でプロジェクトチームとして立ち上げていまして、民主党さんの中でも近々やられるような話を聞いていますので、ここで余りやり過ぎますとマニアックな議論になりがちなんでこの程度にしまして、是非今後とも御指導をいただきたいと思います。  今日は大変ためになる御議論をありがとうございました。時間がありますが、ここで終わります。  ありがとうございました。
  40. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子でございます。  本日はお忙しい中、わざわざ国会までお越しくださいまして、また貴重な御意見を賜り、心から感謝申し上げます。大変にありがとうございました。  私の方からは、先ほどから大変専門的な御意見も伺い、また質疑もございましたが、私の方から基本的なことをお二人の公述人からお伺いしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、今国会、衆参予算委員会一つの議論というか話題となっております暫定税率の廃止についてお二人から御意見を伺いたいと思いますが、もしこれが仮に暫定税率が廃止された場合に経済の混乱が予想されまして、更に景気への懸念も懸念されるかと思います。  GDPあるいは経済の具体的影響についてどのようにお考えになられているのか。また、あわせまして、国と地方の財政への影響も、これも併せてお二人から御意見をちょうだいしたいと思います。
  41. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 私、これは企業を経営しておった立場からしますと、非常に今回の暫定税率の廃止云々の話は奇異に見えるわけでございます。これは廃止されることはもう数年前から分かっておるわけでございまして、企業が事業計画をするのであれば、少なくとも一年ぐらい前には徹底的に議論をして正しい方向を出すというのがあるべき姿ではないかと。今のお話はあたかもすぐにこれから、ある部長が社長に、実は来週から予算ないんです、うちの会社と言ったら、その部長はただでは普通済まないのではないかと。だから、非常にその点は奇異には感じます。  ただ、これがまた先ほど申し上げたような全体的な政策の中でどうあるべきかという問題はまた別のものであろう。それは、例えば環境の政策、環境の課税という観点もある。そして、先ほど言いましたように、高速道路借金というような非常に大きな重要なものもある。そういうことを考えながら、真剣な議論の中にもやはり正しい方向を出していただきたいというのが一国民としての願いでございます。
  42. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 私も、この暫定税率の問題はもうずっと前から分かっていたことであるにもかかわらず、そしてその道路特定財源であるとか極めて本質的な問題を含んでいるにもかかわらず、ちょっと、今日の時点までこういう状態で来ていることは非常に残念といいますか、もっと早い段階で本質的な議論を是非ともやっていただければよかったんではないかなという気がいたしております。  あと、気になりますのはこの暫定税率ですね。ガソリン税のことばかりがわあわあ言われておりますが、ほかにもいろいろ、金融取引の関係とか細かい税制等いろいろありまして、やはりそれは混乱はそれなりには、もうこのままもし行くとなりますと出ざるを得ないということになろうかと思いますけれども、そういったところを是非御配慮の上、是非とも抜本的なところに踏み込んだ議論をお願いしたいというふうに思っております。
  43. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  お二人の御指摘はしっかりと承りたいと思いますが、その上で、どのような影響を受けるのかということで、その点でもし具体的なお考えがあれば改めてお二人にお伺いしたいと思います。
  44. 山崎養世

    公述人山崎養世君) ガソリンあるいはもっと広義に言いまして石油というのは、GDPに占める割合がアメリカでこのごろ上昇しても七%です。人件費が七〇%でございまして、日本も大体そのようなものでございまして、石油の中のしかも一小部門であるガソリンの価格がGDPにどのような影響を与えるかというのは、これはほとんど影響はないと言わざるを得ないですね。    〔理事林芳正君退席、委員長着席〕  なぜかと申し上げますと、九九年、一バレル十ドルだったんですね。先週、一バレル百十ドルになりました。これで世界がオイルショックになったかというと全くなっていないわけなんで、これは私、去年、「米中経済同盟を知らない日本人」という本の中で、なぜ石油が十倍になっても経済が影響を受けないのか書いておりますので詳述しませんが、世界の労働コストと不動産コストが下がる方が石油価格の上昇よりはるかに大きなデフレ効果を持っているというのが本質でございますので、ここで石油が上がる下がる、あるいはガソリンが上がる下がるが、ではトータルに日本経済に大きな影響があるか。それは御担当のところは大変だと思いますが、国民への注意喚起という以上に大きな経済への影響は私はほとんどないと申し上げていいと思います。
  45. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 当然ながら、家計部門それから企業部門、当然、今この三月の時点で企業行動それから家計行動に影響が出ておりますし、四月以降も影響が出るというふうに思います。当然ながら、GDPを四半期ベースではじくときに、特殊な要因が入ってきて数字が下振れする上振れするという、そういった影響が出てくると思います。  ただ、さはさりながら、それを例えば通年とかのベースでならしてみたときにどうかというと、それはそこまで大きな影響にはならないんではないか、いろいろなセクターの影響が相殺される部分もありますし、全体として見れば果たしてどの程度の影響が残るかということになるかと思います。
  46. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  続きまして、山崎公述人高速道路無料化についてお伺いしたいと思いますが、従来、山崎公述人高速道路無料化を主張されておりまして、高速道路無料化によりまして、一般道路を走るよりガソリン消費が減るので地球環境にも優しい、また交通と物流のコストが大きく下がり幅広い産業にもメリットが生まれる、またビジネス、通勤、買物、レジャーの範囲も広がる、高速道路無料化によりましてこういったメリットがあるんではないかということでこういった御意見があるかと思いますが、しかし、高速道路はもちろんのことなんですが、直轄道路とか地方道、そういったもののすべての整備が整った上でのことでなければ、高速道路無料化というのが果たして今申し上げたような効果が上がるのかどうかということで、そこは少し疑問なんですけれども、道路のネットワークの在り方道路整備在り方について、それも含めた上で高速道路無料化について、そのほか課題がありましたら、公述人の方からお伺いをしたいと思います。
  47. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 言わば高速道路無料先進国というべきアメリカでは、一般道路高速道路、まず交通事故死亡率が十分の一でございます。当たり前でございまして、歩行者はおりません、信号はありません、対面通行はありませんから、交通事故、渋滞、特に都心部で、やはり日本の場合も、渋滞も排気ガスも交通事故も八割が起きております。都心へ入ってくる特にトラック、これ先ほど、まさしく道路中期計画が指摘しておるわけですね。せっかく造った高速道路の五千キロ、三分の二は料金が高いがゆえに使われない。だから都心部に車が、トラックが入ってきてしまう。石原さんに怒られるような物質をまき散らしている。これは、何も入りたくて入ってきておるわけではないわけでございまして、成田から例えばアクアライン通っていけばそのまま東名高速に抜けられる、そういうところも来ざるを得ない。  つまり、無料にしないがゆえに、せっかく造った八千キロのうちの何と五千キロ、アクアラインや四国の三本の橋も宝の持ち腐れになっているがゆえに、今先生がおっしゃっていただいたようなメリットが実現をしていないということが最大の問題であるというふうに私は思っております。
  48. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 済みません、ちょっと繰り返しになるかもしれないんですが、高速道路を含めて直轄道、一般道、そういった道路がすべて整備されて初めてその無料化が生かされるのかと思うんですけれども、まだそれが、道路整備が進んでいない中でこれが果たして効果を生むのかどうかというところで、もう一度、済みません、お願いいたします。
  49. 山崎養世

    公述人山崎養世君) もう一度、それでは申し上げます。  整備を、全部計画をやったから、じゃそのときに高速道路のメリットが出てくるかといいますと、やはりどんな場合でも、私ども経営者というのは、まず今までの実績を見ます。今までの高速道路を使った実績はどうでしたか。計画どおり造ったもの、そのうち三分の二が料金が高くて使われないではないですかという実績があるわけですから、これからさらに計画どおり一万一千五百二十キロまで三千三百キロ造ったとしても、ほとんど過疎地赤字路線ですから、維持するため、そして借金を払うために更に料金が上がることが予想されるわけですね。  ますます全国高速道路は、使えない高速道路ばかりを造り、国民税金もその中に投入され、かつ地域の人にとっては恨めしい道路になっちゃうわけですね。隣の国道を走らざるを得ないわけですよ。信号で止まらせられ、子供が出てくるようなところの一般道路を使わざるを得ない。そういう状態をやめた方がむしろ高速道路計画は早く完成いたします。  アクアラインが無料になれば、第二アクアラインを造れというニーズが出てくるわけです。これは某大手ゼネコンのトップが私にわざわざお願いしに来たことなんです。かつての自民党道路部会長の後援会の皆様は、幹部皆様無料化に賛成でございます。なぜか。それは、地元のゼネコンにとっては、三キロに一つ出入口を造り町ができる方が、道を造るよりも建設需要も不動産需要も多いからでございます。私はそう思います。
  50. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  時間の関係で、次、河村公述人の方にお伺いしてまいりたいと思います。  これも大変基本的なことなんですけれども、今の日本経済現状認識ということでお伺いしてまいりたいと思います。  この今の日本経済は、アメリカ発のサブプライムローン問題に端を発しまして、世界経済の減速、こういった影響も懸念されておりまして、その中で最近の日本の景気の状況を公述人はどのように認識されていらっしゃいますか、お伺いをしたいと思います。
  51. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 現在、アメリカ発、ヨーロッパの方に震源もあるかと思いますけれども、金融の面の影響が非常に実体経済の方に効いてきたということで、非常に数字としてはつかまえにくい部分も確かにありますけれども、やはりダウンサイドリスクというものが少し高まっているような状況ではないのかなというふうに認識いたしております。
  52. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございます。  今、景気が踊り場に入ったとも言われておりまして、そういった中で、アメリカ経済の悪化が、今の状況が相当続くようであれば日本の景気にも悪い影響も与えてくるかと思いますが、アメリカは既にこの経済対策をまとめておられまして、日本におきましても、過去におきましても、過去、景気が悪化した場合、景気対策を実施してきたわけなんですが、現時点におきまして日本が景気対策を実施する必要があるのか、また、今後こういった対策を進めていくのであればどのような政策が必要と思われているのか、河村公述人にお伺いをしたいと思います。
  53. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 私は、一般論としては、景気対策ということでは、日本の場合には、公共投資であるとか、先ほど私がお話をさせていただいたような、要するに租税資金がなければ金融的な手法を使ってマーケットからお金を調達してきて財投で、例えば旧住宅金融公庫であるとか、そういった形の景気対策をやってきたということがあろうかと思いますが、昨今の財政状況ということも当然ございますし、それから、そういったやり方の効き目、効果の面ということもございまして、そういったやり方に頼るのは果たしていかがなものかなという部分が部分的にあるというような、そういった考え方を持っております。  ですから、確かに今、日本経済が踊り場的な局面に入りつつあって、ダウンサイドリスクがあってということではあろうかと思いますけれども、基本的には、じゃ、そういうふうに下振れたときにどういう形で成長を引き出していくのかというときに、政府の方から需要をつくり出してやっていくというふうな旧来型のやり方ではなくて、やはり何としても民のサイドから成長力の源泉が出てくるような形の、ですから、割と短視眼的なやり方ではなかなか難しいことかとは思いますが、そういった政策を堅実に手堅く打っていくことこそが大事なんではないかというふうに考えております。
  54. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  引き続き河村公述人にお伺いしたいと思いますが、財政改革方向性ということで、政府としては財政健全化を実現するために二〇一一年度のプライマリーバランスの黒字化を目指しております。もし今のこういった経済状況が長引くようであれば、今後の改革の進め方として考えていかなければいけない部分もあるかもしれませんが、今後の財政改革をどのように進めていけばよいとお考えか、この点をお伺いをしたいと思います。
  55. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 二〇一一年度プライマリーバランス黒字化の達成ということでございますが、私はかねがね、このプライマリーバランスは当然ながら公債費を除くベースの話でありまして、我が国のように、冒頭私が申し上げさせていただいたように、多額の債務残高を抱えている国がプライマリーバランスのベースで黒字化を達成したといっても、本当にまだ財政構造改革の、申し訳ないですが、入口にも到達したことにもならない、入口が遠くに見えてきたかなぐらいのことの意味でしかないかなというふうに思っております。  そういう意味では、超低金利が長く続いて、世界的にも続いて、日本が一番低かったわけですけれども、そのおかげでやはりどうもこの国全体として財政の危機感に対する感覚が麻痺しているような感じを受けております。これほどの、GDP比一八〇%というとんでもない債務残高を抱えて、どういうふうにこれを後の世代に引き継いでいくのか。私たちのこれから寿命残りは何年です、三十年です、四十年です、あとは知りませんでは余りにも後の世代に対して無責任過ぎるというふうに思っております。  そういった意味では、今日、時間の関係で申し上げませんでしたけれども、この国の在り方自体を抜本的に変えていく改革というものが必要であろうと。やはり今の中央集権のようなやり方ではどうしても歳出の削減、いろいろ努力をされていることはよく分かりますけれども、非常に限界があると。この国がこれから先、この経済構造の中、少子高齢化がこのまま進んでいく、いろいろ少子化対策打ってもある程度避けられないところもあるというそういう経済構造の中でどうやって生き延びていくのか、この国としてどうやって経済成長をつくり出していくのか。付加価値を生み出す経済活動都心部だけ、例えば、それから愛知県の、中京圏の辺り、大阪だけではなくて、全国地域全体でどうつくり出していくのかということを真剣に考えるべきときですね。  やはり中央集権ではやや限界はあるのではないか。やはり各地域にもう少しいろんな意味での意思決定の権限を与えて、自立のための緊張、自立していくため、自分たちが生き残っていくため、後の世代にこの財政運営を引き継いでいくためには何を最優先でお金を使わなきゃいけないのか。どういった意味というのは、もうある意味ではある程度我慢しなければいけないのかといったところを自立のための緊張を持って考えていくようなこの国の在り方を整えていくことが必要ではないかというふうに考えております。  以上です。
  56. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 ありがとうございました。  少し話は変わりますが、ちょっとお二人に雇用対策についてお伺いをしたいと思います。  最近の雇用情勢といたしまして、就職氷河期と言われた時代が終わりまして、ここ数年では企業の方が人材を採りづらいという状況にもなっているとも言われております。しかし、ここに来まして企業の採用意欲が抑えぎみに転換してきた、そういった気配もあると言われておりますが、少子化を背景に企業の人材獲得に向けた動きは今後も続いていくとは思いますけれども、その反面、ニート、フリーターが固定化されて更に高齢化するといったこういった課題も、危険性もあると思いますが、今こういった日本が、先ほども申し上げましたが、景気が踊り場というところの中で、今後の雇用形態のあるべき姿、また雇用対策について、それぞれのお立場で何か御意見がございましたらちょうだいをしたいと思います。
  57. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 私は、現在の雇用の問題というのは格差問題というのと密接な問題があって、そして世界に共通する問題と日本固有の問題があるというふうに思っております。  つまり、世界の工場が中国に移転し、インドやベトナムに行くということは、労働者のコストがみんなそこが基準になってしまっていると。そうすると、資本家であり投資家である人たちはこれ株式の収益は増えますから、だから、所得階層というのは、昔は南北に格差があった、現在は国の中の格差が先進国途上国も広がる。放置すれば更に大きくなって、労働はどんどん外国に出ていくと。これをそのまま推進してしまっているのが今までの日本のいわゆる小さな政府というやり方。  実は、大きな政府の時代が始まっています。イギリスがその成功例でございまして、それをとどめるために医療、福祉、そして教育。フィンランドもそうです。国家の再生のために教育予算を増やして、一人も落ちこぼれが出ない教育をすることで国民所得がどんどん上がっていったと。  日本の場合は、市場原理という名の下に、これは子供に市場原理適用できません。なぜか。親の財力が市場原理に反映してしまうから。市場原理を適用していいのは銀行とか証券とか株式市場です。ところが、そういうところの大企業の経営者は守りながら、一番弱い国民のところに市場原理を押し付けてきたというそのツケが今は出ていると私は思います。  ですから、平たく言えば、やはりイギリスを真剣に学んで、市場経済といっても海外からの企業、これを地方に持ってくること。東京ではなく地方に、日本から、日本発の世界に向けた大企業、若者がつくれること。アジアの大企業が地方に来れること。そういうことももう一つの条件。これが雇用を生むというふうに私は思います。
  58. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 今お話があったような世代の、今の二十代から三十代辺りでしょうか、その世代のニートであるとかフリーターであるとかそういった方々が多くなっているという状況、これはやはり過去十年間、もう少し長いでしょうか、日本経済がたどってきた非常に厳しい成長の過程のある意味では被害者的なというか、本来雇用というものは長期的な視野に立って行われるべきものであって、ある程度ステディーに安定的に行われることが望ましいものではあるんですけれども、やはりそれを雇う側の民間企業の立場からするとなかなかそうもいかなかったのが事実ということで、そういった過去十年間のある意味では被害者的な立場になっているのではないかなというふうに思っております。  それが非常に深刻な問題なのは、一つ日本のこの社会的な意味、それがひいてはこの国の経済成長にとっての意味では非常に大きな影響を及ぼしていることだというふうに思います。やはり収入が安定的に得られなければ、その世代の若者たち、本来であればこの国のこの活力、それから成長力の源泉を一番エネルギッシュに生み出していくべきはずの世代がそういう状況に置かれているということは、その方々個人、個々人にとっても、それから御家庭にとっても非常に残念なことでありますし、この国全体にとっても非常に残念なことであろうと。その経済の活力を一番生み出すはずであるべき世代がそういった状態に陥っているということが、この国全体の経済在り方、ひいては財政在り方を決めていく上で非常に大きなマイナス影響を及ぼしていると。  少子高齢化が進む、少子化、少子化ということが言われていますけれども、簡単にお金だけで解決できるだけの問題でもありませんで、やはりそういった世代が安心して生きていける、自分の人生に対しても、それから社会に対しても、この国に対しても安心感を持てるような国にしていくという意味で雇用対策というものは非常に重要ではないかと。  これまでにもそういった意味では幾つかいろいろ対策が実施されていることは承知しておりますが、是非とも、単にそういった世代を救うとかそういう観点だけではなくて、この国の在り方全体、将来像を決めていく上では非常に重要な問題であるというふうに御認識いただいて、是非とも更なる対策の充実をお願いできればというふうに思っております。
  59. 鰐淵洋子

    ○鰐淵洋子君 今日はお忙しい中、山崎公述人河村公述人、大変にありがとうございました。  以上でございます。
  60. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。  政府系ファンド、SWFについて、田村委員とは違う立場で質問をさせていただきます。  国会の中でも政府系ファンドを立ち上げようという動きが強まっておりまして、そのための議員連盟をつくるということで私も声を掛けられましたけれども、お断りをいたしましたが。たしか日本外貨準備が約百兆円ということで、運用益もこの五年間で見れば三%少し程度ということで、それならもう積極的に運用してもっと稼いだらどうかというふうな話とか、あるいはそれを財政再建とか、先ほどもありましたけれども、社会保障とかに役立てればいいじゃないかということ。あるいは、円キャリートレードで日本金利が安いですから、それを外国が借りていって投資をしているのに日本ただお金貸しているだけと。何といいますか、鉄砲玉を日本が用意をして外国が撃っている、日本も撃ったらどうかというふうな例え話とか含めて、そういう気持ちはよく分かるんですけれども、私はこの政府系ファンド、国のまさに富、国の資金を運用するものですから、そういう運用益だけで考えていいのかなというのを基本的に問題意識を持っております。  実際は、この間やっぱり中国が、あるいはアラブ、UAEがいろいろやっていますので、それが表面化して日本もやらなきゃというふうなちょっと焦り、焦りといいますか、急に慌ただしくなっているわけですが、それぞれ各国、ただ運用益を稼ぐだけではなくて、それぞれの思惑とか戦略とか政治的な動きを持ってやっているわけですね。  その点では、安全かどうかと、そういうことに投資するのが、国民資産を、安全かどうかという議論をする前に、そういう政府系ファンド、国民の富をそういうところに投資をするというときに、運用益を稼ぐだけじゃなくて、まず戦略といいますか、日本が何を考えてやるのかというところが私、問われるべきじゃないかと思っているところでございます。  例えば中国は、やはり日本を超えて外貨準備を稼ぎ出して、確かにそれをどうするかという問題がありました。UAE、アラブもオイルマネーが余っていると、ロシアもオイルマネーと、そういうところがあって、日本も確かに外貨準備があるからこれを何とかしようというところは分かるんですけれども、やはりそれだけでこの政府系ファンドの問題を考えていいのかというふうに思います。  そこでお伺いしたいんですけれども、私はそんなに専門家ではありませんけれども、こういう問題を当該委員会で取り上げてきて、例えば中国の有限責任公司ですか、CICですかね、がいろいろ投資をしておりますけれども、なぜ中国が今投資をしているかというと、政府系ファンドでやっているかといいますと、やはり一つ外貨準備、ドルペッグですから、ドルとつながっておりますから、ドルが下落すると心配だと、だから何とかしなきゃいけないと。それだけではなくて、やはり中国経済、不安定要素がいっぱいありまして、それをハイリスク・ハイリターンの運用で切り抜けざるを得ないということもあると思います。若しくは、今アメリカの企業にばんばん投資をしておりますけれども、そういう企業の技術、こういうものを取り込みたいというふうな思惑もあるのではないかと思いますし、アラブの場合ですと、いずれにせよ原油が枯渇した場合のために今稼いでためておきたいと。ロシアの場合ですと、エネルギーをさばくためのインフラ投資につぎ込みたいと。  それぞれ国によって、ただ運用益を稼ぐだけでなくて、そういう政治的なそれぞれの国の戦略というものがあると思うわけですけれども、私はそういうふうにまずとらえるべきだと思いますが、河村参考人の御意見を聴きたいというふうに思います。
  61. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 中国であるとかそれからアラブの国々について、どういう意図で投資を行っているかということですね。  これらの国々、決して情報開示が進んでいるとは言えませんので、オフィシャルにどういうふうに考えているかということはちょっと我々の立場から計り知ることはできません。先生がおっしゃったような意図ももしかしたらあるのかも分からないし、だからこそこの国際金融市場がかなりの警戒を持って見ているというところがあろうかと思います。  ただ、中国の場合にはちょっと違う、本当に背に腹は代えられない事情もあるだろうなということもう一つありますので申し上げさせていただきますが、要するに、中国も中央銀行のバランスシート上で外貨準備持っておりますので、ちょっと専門的な話になりますが、不胎化のオペレーションを金融政策上するときにどうしても逆ざやになります。ですから、簡単に考えると、日本は外為特会で外貨準備を持っていて、日米金利差、過去を見るとアメリカの方が高いことが多いですから必ず稼げる、為替リスクはカウントしない、だから稼げると、そういう構図で、百兆円のバランスシートを持っていれば、持っていると仮定しますと、日米金利差が一%付けば一兆円毎年もうかる、でもひっくり返れば一兆円損失が起きると、そういうことだと思いますけれども、中国の場合は逆なんですね。ですから、そういった事情もあって、やはり積極運用を少しすることによって多少なりとも利回り稼げればというお考えもどうもあるように間接的には伺っております。  ただ、さはさりながら、あの国の場合、ブラックストーンへの出資で見られますように、時価ベースでは本当にまた含み損がもう出ているようですけれども、国内からのリターンを短期的にも取れということに対するプレッシャーはかなり強いようでありまして、そういったプレッシャーがあったからこそ、その後にあったような外資系の金融機関の救済絡みのような話についても中国が断ったような話もあるというような感じも聞いておりますし、それなりに厳しいんではないのかなというふうに思っております。  先生がおっしゃった、その運用益のことだけから考えるべきではないということ、誠に貴重な点でありまして、御指摘ごもっともであるというふうに私も考えております。  もし積極運用するのであれば、二つの観点から考える必要があろうかと思います。まずは積極運用する側、日本の側の観点、それから今度、そういった積極運用を受ける国際金融市場の視点、両方から考えるべきだというふうに思います。  まず日本の側からすれば、当然ながら外貨準備といえども、それも当然ながら年金と一緒です、国民資産ですので、効率性を求めて高い利回りは目標としてもいいんですが、同時に安全性というものも両立させる必要があると。そういったときに、先ほどもちょっと申し上げましたが、投資の対象をどこまで広げるのがいいのか、株式であったらどこの国までにするのかとか、それから債券を入れるのか、それから実物資産を入れるのか、それは各国のソブリン・ウエルス・ファンドを見てもいろいろな考え方があります。本当にオルタナティブ投資までやっている国まであるんですけれども、そういったところまで含めるのがいいのかどうか。それから、その対象国、先進国にするのかエマージング経済にするのかによっても違ってきますし、そういったところは、もし日本がやるとすれば慎重にやはり考えるべきところがあろうかというふうに思います。  もう一つは、投資を受け入れる国際金融市場側からの要請ですけれども、本来であれば民間のプレーヤーがマーケットを構成しているはずであるべきところであって、そこにこの巨大な各国の政府お金を持ってプレーヤーとして出てくることはちょっとかつては余り想像できなかった、想定されていなかった事態ではないのかなというふうに思います。でも、さはさりながら、いろいろ過去の金融緩和の影響であるとか、それから原油高の影響等もあって、国がこれほどの余剰資金を各国が抱えている、そうすると国際金融市場においてだれがリスクマネーの供給者になるかということを考えたときに、もう現実問題としてある程度こういうソブリン系がお金を出さざるを得ないような状況になってきているんではないかなと思います。  そうすると、国がリスクマネー供給するときにしかるべき在り方というのは当然あるはずであるべきでありまして、どういうことかというふうに申し上げますと、やはり政治的な意図を持ってどこかの国がどこかの国の戦略的なセクターを買収するとか、そういうことというのは非常にやはり望ましくないということがあろうかと思いますし、あとは市場の安定ということがやはり国際金融市場非常に大事でありますから、しかも日本の場合にはG7の一角を占める非常に重要な地位を占める国でありますから、そういった国の公的な資金が何か短期的な売買で低いところで買っていって高くなったらぱっと売り抜けるといったそんなようなオペレーションをすることが果たして許されるかといいますと、私は決してそうは思いません。  先ほど申し上げましたベストプラクティスであるとかコード・オブ・コンダクトを国際金融市場でつくり上げていこうとするのであれば、しかるべく本当に分散投資を行って、政治的な意図はありません、そしてバイ・アンド・ホールドを原則といたしますというような形で、世界の各国に、投資先はいろいろ吟味しながらリスクマネーを供給していくといったそういうスタンスでやって見せることが必要ではないかというふうに考えております。  以上です。
  62. 大門実紀史

    大門実紀史君 おっしゃるような方向に行けばまだいいんですけれども、実際にはダボス会議やG7、G8を含めて、この政府系ファンド、SWFの透明性を確保すべきだという話になってきておりますね。IMFも行動規範をつくるべきだというふうな話になっております。  私、面白いなと思ったんですけれども、ダボス会議で元財務長官、アメリカの財務長官のローレンス・サマーズさんが、この政府系ファンドが各国政府への政治的影響力拡大に使われたり、あるいは投資先の国や企業の判断をゆがめる事態を懸念をするとサマーズさんが言われているんで、大変面白いなと思って見ていたんですけれども。  実は、このG7とかG8で、あるいはIMFで、この今の政府系ファンド、特に実際に言えば中国、中東、ロシアのことだと思うんですけれども、これについて非常に懸念を示しているのは、そういう国が先ほど河村参考人がおっしゃったようになればいいですけれども、何を考えているのか分からない、何を目指して投資しているのか分からないと、そういうところを実際には懸念していることが本音で、一般的に政府系ファンドについて懸念しているというよりも、本音で言えば、そういうところが何を考えているのかもっと透明化してほしいということがあるんではないかと私思うんですけれども。  しかし、考えてみますと、ファンドというのは不透明だからもうけられるという部分があるわけですね。最初からどこにこういう目的で投資しますと言うと、そんなハイリターン得られないというんで、ファンドの不透明性といいますか秘密性があるわけです。そういう点でいきますと、私、今非常に話題になっております中国、ロシア、あるいはアラブもそうなんですけれども、こういう国は民主主義的なチェックが余り利かない国であると。つまり、意思決定を一定一部の人間が、独裁的とまでは言いませんけれども、やろうと思えばできてしまうと。国民も公開しろと余り言わない国であるというところでそういうことが起きているというふうに思うわけですね。  例えば、日本政府系ファンドをもし立ち上げたとすると、そうはならないんではないかと。野党が、野党がといいますか国民が、どこに投資するんだ、どうしているんだ、公開をしろということをやっぱり民主主義国家というのはかなり厳しくチェックすると思うんですね。そうすると、さっき言った、ばんばんもうけているところの国とは違って、いろいろそういう基本的な矛盾があるんではないかと。  ですから、政府系ファンドで、運用益だけでもうとにかくやるべきだと言う人がいるんですけれども、ほかの国、中国とロシアとアラブがやっているから日本でも同じことができると思ったらまた大間違いではないかと。つまり、民主主義チェックシステムとこのファンドの世界というのは基本矛盾が私はあると思うんですけれども、では今度は山崎参考人の御意見を聞きたいと思います。
  63. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 非常に本質的な御指摘だと思います。  そもそも企業経営というのは民主主義と相入れない部分があるわけでございまして、つまり、トップというものが、ある意味では例えばCEO一人で最終的に判断し、決断しないといけない、それをあとは株主は承認をするだけと。  この投資の世界は、まさしく先生おっしゃったように、投資はもっとそうでございまして、多数派になった途端負けが決定いたしますので、少数派に先になり、多数派が同じ意見になったときに自分は抜けるという、常に矛盾をはらんでおるわけであります。ただし、これは一般論でございまして、為替の世界はこうです、ゼロサムゲームですから。  ところが、一方で資本主義経済経済成長をする。そうすると、株式というのは経済のデリバティブでございます。経済成長マイナス借金返済が企業収益として残る。だから、ウォーレン・バフェットとか、ああいう人たちの考え方は結局ここなんですね。経済成長をし、かつそれを、経済成長を速くする、安定的にする企業に、安いときに買って、もう愚直にずっと十年でも二十年でも持つと、こういう人だけが最後に勝つという実証結果が出ております。  国家でそれが、まねができないかというと、難しいけれどもまねをすることは理屈の上では可能ですよと。だけれども、人間はやはり欲望と恐怖でございまして、上がればもっと上がると思うものなんですね。下がればもっと下がる。それが失敗したらワイドショーでたたかれ、成功したらヒーローになって、そういう国論のようなものが形成されればその国は投資が民主主義プロセスではできにくいでしょうし、そこら辺はやはり担当者と国民のレベルあるいはコミュニケーション、そういうものによると私は思います。理屈としてはあり得ますが、非常に難しいということは先生のおっしゃられるとおりだと思います。
  64. 大門実紀史

    大門実紀史君 じゃ、同じテーマで、河村さん、一言
  65. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 先生おっしゃられたとおり、ディスクローズ、非常に重要な点だと思います。やはり国際金融市場からあらぬ何か不安を抱かれたりとかしないようにするためには、やはりきちんと情報開示をして、どういった先に投資しているのか、ノルウェーのように個別の銘柄ごとの保有株式数まで出す必要があるか、そこはちょっと議論の余地があるかも分かりませんが、でも、あのくらい徹底して、分散投資はしている、政治的な意図は一切ありませんということでやって見せるのも一つの手ではないかと思います。  先生おっしゃるとおり、確かに、ファンドの運用とそれからリターンは両立しないものではないかと、おっしゃるとおりだと思います。でも、やはり国民資産を預かってやるものなわけですから、プライベート・エクイティー・ファンドとは違いますので、やはりしかるべき公的な主体が行うリスクマネーの供給だということに立ち返れば、当然できる投資戦略は限られてくるわけでありまして、限られてくる中でステディーな利回りを得られることができればというふうに考えるのが妥当な線ではないかなと。ですから、積極運用によって一般会計への繰入れがもっと上乗せできるとかということを単純に期待するのは、私としてはいかがなものかなというふうに考えております。
  66. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。
  67. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。今日は本当にありがとうございます。  まず、外為特会、外国為替特別会計について河村参考人にお聞きをいたします。  外為特会は、日本は非常に巨額、ありますし、外為特会はどうあるべきか。  社民党自身は、今財政が非常に逼迫しており、財政再建の観点から、できるだけ一般財源化にするなり、せめて剰余金二・三兆円を入れるべき。先ほど日本財政の未来に対する危機を語られましたけれども、外為特会はどうあるべきかという点についての御見解を教えてください。
  68. 河村小百合

    公述人河村小百合君) これほどの規模に膨らんでいてリスクが極めて大きいということは先ほど申し上げたとおりなんですけれども、今、会計制度の問題といいますか、それに助けられているところがあるかと思いますが、日米金利差だけで稼げて、名目的なお金の流れで見れば一般会計に、何でも、何か相続税収に匹敵するような規模なんだそうですが、これがなければ予算が組めないぐらいの歳入を我が国の一般会計にもたらしているということが今事実だというふうに思います。  でも、だからといってこれをそのまま放置していいのかというと、私は必ずしもそうは思いませんで、黙ってやっていて、過去三十年間、日米金利アメリカ金利がずっと上だったからこれからもそうだろうというようなことを当てにしてやるのはちょっと危険ではないかと。やはり当然ながらリスク管理は考えるべきであって、過去ひっくり返ったことがないといっても、私調べましたら、七二年には逆転していることがございます。比較する対象の金利がありまして、アメリカの市場金利日本の規制金利を過去比べておりますので、市場金利同士で比べたらどうなったかというと、もう少し逆転している回数が多いかもしれません。  そういうことを考えると、目先の繰入れのことだけにとらわれないで、やはり将来的な在り方というものを検討していったらいいんではないか、このバランスシートの大きな規模をこのまま維持するのはやはりちょっと危険ではないかと思いますので。だからといって、じゃ、今すぐにばっと縮小できるかというと、そんな簡単な問題ではないことは重々承知しておりますが、是非ともやはり前向きな、建設的な御検討をお願いできればと思っております。
  69. 福島みずほ

    福島みずほ君 ディスクロージャーの議論がありましたが、日本政府は米国債をどれぐらい持っているかを明らかにしていません。  河村参考人はどれぐらいだと試算をしていらっしゃいますでしょうか。
  70. 河村小百合

    公述人河村小百合君) ちょっとこれは試算ができるような筋のものでもありませんで、できるとすれば、過去の外国為替市場介入のオペレーション、ある程度さかのぼった年限のところまではディスクローズされておりますので、実際にはドル買いに介入やっていらっしゃることが非常に多いということがありますので、ドル資産が相当な割合を占めているであろうということは推察はできますけれども、具体的な数字までは私ども一般の国民の立場からは全然分からないものでございます。
  71. 福島みずほ

    福島みずほ君 アメリカはホームページで公表しているので、大体これぐらいだろうという日本のエコノミストは試算をしておりますが、日本は、私が言うまでもなく、世界の四分の一の米国債を保有をしております、民間と国合わせて。  サブプライムローンもそうですが、EUが相対的に地位が向上したりする中で、日本の外為特会はもう少しリスク分散をするべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか、河村参考人。──公述人です、済みません。
  72. 河村小百合

    公述人河村小百合君) おっしゃるとおり、よその国の例を見ましても、確かにユーロの地位が上がってまいりました。単一通貨の導入というのは、当初特にアングロサクソン系の国からあんなことができるのかという感じで非常に疑問視されておりましたが、EUはやってのけたわけでございますね。当然ながら、金融市場の競争力も非常に強化されているというふうに私自身も感じておりますし、そういったところの裏返しとして、各国の外貨準備の運用資産の構成を見ても、ユーロの比率がじわじわじわと高まってきていることは間違いない事実であろうかというふうに思います。ですから、同様の方向での検討を日本としてもある程度は考えてもいいのではないかなということは思います。
  73. 福島みずほ

    福島みずほ君 両公述人は地方の活性化ということについて非常に考えていらっしゃると思いますが、まず河村公述人に、論文の中で地方自治体の起債マネジメントの方向性という論文を大変面白く読まさせていただきました。  雪降る夕張に行ったときに、やはり起債をどんどん自治体がやってきて、三位一体ならぬばらばら改悪で蛇口が閉められると、どこの自治体も今、全国本当に疲弊をしていてお金がないという状況があるわけですが、地方財政の再建化、さっき地方分権のことをおっしゃいましたが、地方財政の再建とそれから起債マネジメントはどうあるべきかということについて教えてください。
  74. 河村小百合

    公述人河村小百合君) ここでは、じゃ、自治体の起債についての国と地方の税源の負担の問題について意見を言わせていただければというふうに思います。  夕張の例を今、福島先生はおっしゃられたんですけれども、やはりあのような小規模な自治体の方が実は起債の規模が都市部に比べて非常に大きい、住民一人当たりの起債額とかを見ると大きくなっているという事実があります。それはなぜかというと、その償還財源をどれだけ自前で賄っているかというと、交付税措置が付いているような関係もあって、必ずしも自主財源で賄っているわけではないと。国からもらえる交付税などを当てにしてたくさん起債ができるようなそういう仕組みが過去ありまして、今もなお続いております。  やはり私は、これから真の地域経済の活性化などを考える上では、やはり地域格差、経済力の格差が残る以上はある程度財政調整的な措置は必要だろうと思いますが、本来的な金融取引であります起債の世界財政調整を持ち込むのはやはりちょっとおかしいのではないかと。抜本的な国と地方の在り方の見直しの中で、是非ともその起債のところで、何かはっきりしない形で地方の起債の面倒を国が見る、これはある意味では意図的にだれが借金を背負っているのかという認識をあいまいに、お互いにあえてあいまいにしてきたようなところがあるんではないのかなというふうに思っておりまして、これはこれほど大きな債務残高を国が抱えた中で決していいことではないと。地方は交付税が来るから自分の借金じゃないと思っており、国はそんなことはない、これは一応名目上、地方の借金だというふうに言って、そんなことは決してよくないわけで、やはりそういった辺りはきちんと切り分けて、起債の世界は起債の世界、そしてあと財政調整が何か残るのであれば、ちょっといろいろ道州制導入すればどうのという議論も当然あってまた別になってくると思いますけれども、やはりそういったところはきちんと切り離して、財政規律が働く形での制度設計を是非とも御検討いただければというふうに思っております。
  75. 福島みずほ

    福島みずほ君 赤字国債というか国の借金の点について御両人も先ほど少しおっしゃいましたが、赤字国債残高がもう莫大であると。  日本の、ちょっと話が大きくなって済みませんが、財政再建はどうあるべきかということについて、山崎公述人河村公述人お願いします。
  76. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 財政再建を例えば過去果たしたアメリカやイギリスの例を見ましても、必ず二つのプロセスをたどっていると思います。  最初から緊縮をしたのでは先ほどの実は地方財政と同じでございまして、疲弊している経済主体に更にお金を供給を絞れば本当にこれはつぶれてしまいますのでそれはできない。そうすると、やはり経済成長を生むしかないわけですね。アメリカの場合はそれを減税を行って、最初財政赤字が大きくなったけれども後でこれを回収すると。ただ、レーガノミックスでやったことは、金融緩和、そして通信とそして交通の規制緩和をやって航空自由化をやって全国どこにでも住める国にしたんですね。この観点日本は抜けております。金融自由化やった、通信の自由化もかなりやった、しかし交通自由化をやっていないんですね。だから全国に住める国になっていない。だから、道州制もこのままでは永遠に不可能です。東京にしか経済基盤がない、大企業の四分の三が東京にある、これどんな制度を継ぎはぎしても私はこれは不可能であるというふうに思います。  先ほど申し上げましたように、ですから経済成長をやはり生まなきゃいけない。ある程度生み、かつ地方の場合であれば収支の均衡をできるだけの自立性を持たせることがもう一つ必要ですけれども、それができた上で財政均衡法をどこかの段階で入れるんでしょうが、当面はまだ不可能ではないでしょうか。
  77. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 二つの観点から意見を言わせていただければというふうに思います。  一つは、財政再建の在り方なんですが、私も民間シンクタンクにおりますので、国と地方の財政収支のシミュレーションなど簡単なものですがいろいろやってみたりしますけれども、それをやって当然ながら分かりますことは、今やはり非常に低い金利水準にこの国が支えられているということで、金利水準の前提がちょっと狂ってくると本当に大変なことになってまいります。ですから、やはり今の段階で本当に抜本的な改革も含めてやらなければいけないということが大事ではないのかなと思っております。  もう一つは、増税というオプションは非常に政治的には出しにくいオプションであることは重々承知しておりますが、そのような十年先、二十年先を見据えたようなシミュレーションをいたしますと、例えば、割と比較的近い未来の時点で一定程度消費税を上げるとかいったことをすると、あとの形が、当然ながらそのような税収の基盤がその時点で大きく上がりますので全然違ってまいります。ですから、そういった意味で、この債務残高の現実から目をそらすことなく、どういうふうにすればこの国の財政を持続可能な形にしていけるのかということを、より現実的な視点で国民にも是非語りかけていただいて意思決定をしていただければというふうに思っております。  もう一つは、抜本的な財政再建を図っていくためには、別の観点ですが、先ほども申し上げましたが、この国の在り方、形を、国と地方の関係、抜本的にやはり見直してやっていくことがなければなかなか達成は難しいんではないのかなというふうに思っております。  以上です。
  78. 福島みずほ

    福島みずほ君 前鳥取知事でいらした片山さんが、道路特定財源というふうに特定財源と縛らずに、医療に使うのか、雇用に使うのか、道路に使うのか、道路を走るバスの補助に使うのか、地方自身が選択できるようにすべきではないか、そのためにとにかく地方分権をやるべきだというのは私たちのあるべき姿をやはり示しているのではないか。  道路が必要だと思う自治体は道路をそれは本当に造るわけですし、医療がやっぱりここは大事だと思う自治体はそこにお金を振り向けるでしょうし、もし、もしというか、河村公述人が地方分権やいろんな点についてかなり語ってはくだすったんですが、先ほど財源の問題、財政の分担の問題、国と地方の関係についておっしゃったんですが、地方の疲弊が地方に行くと本当に心にしみるので、その点についてのアドバイスをお願いします。
  79. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 今、福島先生おっしゃられたとおりに、やはり自立のための緊張を持って各地方が自分たちの地域で必要なものは何かについて優先順位をそれぞれ付けていくような意思決定の枠組みが是非ともこれから財政再建を達成していく上では必要ではないのかなというふうに思っております。  でも、地方分権をどのような形で進めるにしても、ある程度成長力を持っている地域とそうでない地域の差はやはりどうしても残ってしまうと思いますので、しかるべき形で財政調整の仕組みを残すことは必要になってくるであろうと。しかしながら、でもその財政調整の仕組みが今のような形で何かするとちょっとひょっとしたら財政規律の緩みを生んでしまうような、そういった形のものにならないようにやはり制度設計の上では十分に工夫して制度をつくっていくことが必要ではないのかなというふうに考えております。
  80. 福島みずほ

    福島みずほ君 高速道路無料化の点についての山崎公述人の御意見、非常に論文も含めて面白くというか、非常に参考にさせていただきます。  もう一つ、論文の中に郵政民営化のことがありますので、郵政民営化した後の今の現状と郵政民営化についての御意見を教えてください。
  81. 山崎養世

    公述人山崎養世君) 私、九九年に小泉当時の議員が「郵政民営化」という本を書かれたときには非常にこれは感銘を受けまして、つまり、財政投融資システムで、郵便局が問題なんじゃなくて、このシステム全体を、言わばその主役であるのは大蔵省であると、そこでの財政システムの問題だというのがいつの間にか郵便局が悪いということになったわけですね。郵便局というのは国にお金を預けた預金者なんですよ。そして、大蔵省がお金を特殊法人に貸した。貸し手と借り手の責任を問わずに預金した人に責任を押し付けたということが私、郵政民営化一つ非常に大きなゆがみであったと。  じゃ、郵便局の経営という形で、特に郵貯の金融機関としての経営を見たときは、実は民営化されたにもかかわらずほとんど問題は解決しておりません。というのは、やはりまだ百兆円以上の定額貯金が残っております。これは、あしたにでも引き出しできる預金でございます。つまり、これは負債でいえば日にちが一日しかない負債。持っているのは、一番多いのは十年国債国債金利が、これはどこかで日本国債が大暴落すること、どこかで参ります、これは五年、十年以内に。二%一日で暴落をした途端に郵便貯金は、これは郵貯銀行は自己資本がきれいになくなるんですね。自己資本比率わずか二%しかない。  この問題を私は生田さんにも指摘いたしました。生田さんは、確かにあなたのおっしゃるとおり、そのときには破産しますとおっしゃったんですね。この問題はいまだに手を付けられていないというふうに私は思っております。
  82. 福島みずほ

    福島みずほ君 では河村公述人、済みません、一分なので貴重に使って。  社会保障費などの二千二百億円のカットを何とかやめさせたいと思っているんですが、財政全般の削減や今の予算在り方についての御意見一言教えてください。
  83. 河村小百合

    公述人河村小百合君) 社会保障費、なかなかやっぱり難しい問題があることはよく承知しておりますが、やっぱり全体的なそのバランスの問題もありますし、非常に大事なのは、負担と給付の公平性を是非とも確保していただいて、効率性はなるべく追求する形でバランスを取ってやっていただければというふうに思っております。  以上です。
  84. 福島みずほ

    福島みずほ君 どうもありがとうございました。
  85. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人先生方一言御礼を申し上げます。  本日は、有益な御意見をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時に再開をいたします。休憩といたします。    午後零時十分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  86. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成二十年度総予算三案につきまして、公述人方々から御意見を承ります。  この際、公述人方々一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございました。  本日は、平成二十年度総予算三案につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十分程度で御意見をお述べいただいた後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、経済財政について、公述人国際基督教大学教養学部教授八代尚宏君及び跡見学園女子大学マネジメント学部准教授中林美恵子君から順次御意見をいただきます。  まず、八代公述人お願いいたします。八代公述人、どうぞよろしくお願いします。
  87. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 議長、ありがとうございました。  本日は、参議院予算委員会の公聴会に公述人としてお招きいただきまして、誠にありがとうございました。ここでは当然のことながら私個人としての意見を述べさせていただきますので、私が属している組織の見解とは同じではないことを念のためでございますが明確にさせていただきたいと存じます。  お手元に「日本経済課題」というパワーポイントの資料がございますので、これに沿って御説明させていただきます。  当面の日本経済現状でございますが、日本経済は九〇年代の初めから平均して一・五%の低い成長が続いております。二〇〇一年ごろから諸外国とそれほど実質成長率の差はないわけでありますけれども、もう一枚めくっていただきまして、次の物価上昇率、ここではGDPデフレーターという総合物価で見ているわけでありますが、ここでは非常に大きな差がございます。欧米に比べて約三%近いデフレになっているわけで、これが依然として解消されていないということが日本経済の大きな問題であるわけです。  デフレが長期に持続いたしますと、名目金利がゼロ近くになったとしても、実質ベースでは、つまり、企業の製品価格、サービス価格が下がる中で名目金利が横ばいということは実質的にはそれはプラスであるわけですので、それが経済に非常に大きな影響を与えてしまう。それがまた、デフレが続く中で、バブル崩壊後、不良債権等、負の遺産の処理に長い時間が掛かっていることの一つの大きな原因にもなっているわけであります。それにもかかわらず、右の失業率のグラフを見ていただきますと、ようやく二〇〇一年辺りから失業率は下がり始め、現在では欧米よりも良い水準になっているわけであります。  過去に景気刺激策とか経済停滞の結果、次のグラフでございますが、一般政府ベース、国、地方、社会保障を合わせた政府全体の歳出歳入バランスはようやく縮小に、赤字が縮小に向かっているわけです。これをよくワニの口というふうに言われるわけですが、上あごの歳出と下あごの収入というものがようやく閉じつつあるわけで、この路線是非継続していく必要があるんじゃないかということでございます。  ただ、もう一枚めくっていただきまして、欧米の財政収支と比べますと、依然として日本の場合は赤字幅が大きいわけでありまして、ユーロの言わば財政規律に縛られている欧州諸国と比べまして、日本の場合はまだまだ財政再建道半ばということになっているわけであります。  それで、このように長期経済停滞が続くことの大きな要因ですが、次の五ページの表を見ていただきますと、米国と比べた日本の労働生産性の水準というものでありますが、九〇年代までは急速に米国の水準にキャッチアップしてきたわけでありますが、九〇年代以降は停滞をしているわけであります。  これには幾つかの理由があるわけでありますが、次の六ページを見ていただきたいと思いますが、やはり生産性の格差というのがなかなか埋まらない。日本の製造業、この場合は、その赤の方で書いてあるものでありますが、これは依然としてOECDの中では高い水準にあるわけですが、もう一つの非製造業を含めた全産業ベースで見ますと著しく低い水準にあるわけであります。こういう形で、生産性の格差が大きい、特に右のグラフで見ていただきますように、流通とか運輸、サービス分野の生産性の低さが非製造業全体の低さの要因になっているわけでございます。  次の七ページを見ていただきたいと思いますが、こういう生産性の格差ということでありますが、これは日本国内の要因による面もございますが、やはり九〇年代以降、世界経済に起こっている大きな変化と密接な関係があるわけです。つまり、九〇年代以降、御承知のように、東西の壁が崩れて旧東側の経済圏が西側と一体化する、言わば市場経済範囲世界的に拡大したわけで、その中で猛烈な競争が起こっているわけです。  そうした中で、貿易取引だけではなくて直接投資の取引が急速に増えておりまして、このグラフで見ますように、対内直接投資、お互いに直接投資を出し合っているわけですが、それを国内に呼び込む力という意味日本は非常に遅れている。このグラフで見ますように、米国とかヨーロッパの方ではどんどん直接投資の残高が増えているのに対して、日本では非常にわずかな伸びにとどまっているわけであります。もちろん、これは政府の公約である対内直接投資の残高を倍増するということは辛うじてできているわけでありますが、倍増したところで実は諸外国と比べればはるかに低い水準になっているわけであります。これは、九〇年代以降のグローバリゼーションの中で言わば企業が国を選ぶという時代になっているときに、残念ながら日本は選ばれていないということを示しているわけであります。  右のグラフは、これはフローの方でありますが、日本から海外に行く直接投資と海外から日本に入ってくる直接投資を比較しているわけでありますが、ここにも大きな格差がある。対内直接投資はもちろん増えているわけですが、それ以上に日本企業が海外に行く直接投資の方が大きいわけで、この格差はむしろ拡大しているわけであります。ですから、日本の企業にすらある意味では選ばれていないといいますか、外に出ていくほどのペースで外国の企業が日本に入ってきてくれないということであります。これによって国内の雇用機会は奪われている面もあるわけで、これが一つ日本経済の停滞の原因にもなっているのではないかと思われます。  もう一つの、八ページでありますが、こういうグローバリゼーションだけじゃなくて、急速な高齢化、人口減少社会への転換がもう既に始まっているわけでありまして、これまでの日本は人口が増え続けるということを当然の前提にしていたわけでございますが、もはやそのピークに達して、今後は長期にわたって人口が減り始める。ここの青い線と赤い線は、赤い方が最近の推計でありまして、人口推計が新しくなるごとにこの減少のスピードは速まっているわけであります。  もちろん、人口が減るということ自体にそれほど大きな意味はないと言う方もおられるわけです。世界には小国であっても豊かな国はたくさんあるわけですが、過去の日本のように、人口が増えることを当然の前提にして雇用慣行とか社会保障制度ができているわけでありまして、そういう制度をそのままにして人口減少社会に突入するとこれは大変なことになるわけであります。  ですから、その意味で、過去の豊かな、若年労働者を中心とした人口が持続的に増えてくると、そういう社会経済環境の下で適応していた制度、慣行というものを新しい人口減少社会に適応するものに変えないと大変な負担に、あるいは問題が起きてしまうのではないかということでございます。その意味で、長期的に維持可能な社会保障制度の構築であるとか、あるいは新しい高齢化、人口減少社会にふさわしい産業構造にしていくということが大事ではないかと思います。  こうした中で、やはり今の生じている雇用問題あるいは所得格差の問題ということを解決するためには、何といっても新しい成長というのが大事であります。新しい成長を生み出して新しい雇用機会をつくる、それによって衰退部門から成長部門に雇用や需要を移していく。それによって初めて経済成長と所得格差の是正ということが両立するのではないかと思います。  そのためにはやはりどうすればいいかというと、日本経済のオープン化といいますか、自由な貿易投資の拡大、これは戦後日本がこれまで自由な貿易体制の中で発展してきたわけですから、これを更に進めていくということが大事であります。対内直接投資の阻害要因を除いていくということ、それから技術開発の促進ということ、環境技術あるいは先端医療のような革新的技術特区をつくるということも一つの策であるわけです。  それから、何よりも新雇用戦略というのが大事でありまして、若年者、女性、高年齢者等の雇用機会を拡大させる、消費者の立場に立った規制改革の推進で需要と雇用機会を拡大させていくということが大事ではないかと思います。  以下の資料は、後でまた御質問があったときに使わせていただきます。  私の冒頭の発言はこれで終わりたいと思いますが、最後に、これまでのキャッチアップ期の生産者主体の経済構造から、新しい時代にふさわしい消費者、生活者主体の構造に転換をするということ、これを確実に実現することが新成長戦略の大きな柱になるのではないかと思われます。  御清聴どうもありがとうございました。
  88. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  次に、中林公述人お願いいたします。中林公述人
  89. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 大変ありがとうございます。このような貴重な場にお招きいただきましたこと、心より感謝申し上げます。  私も、専ら個人の意見ということで、何ら私の所属します組織を代表するものではないということをあらかじめお断りしておきたいと思います。  まず、私の場合は、財政規律といったことを中心にお話をさせていただくことをお許しください。  平成二十年度の予算編成におきまして、それがどのように実行されようとしているのか、またどう評価されるべきなのかということに的を絞ってお話しさせていただきたいと思います。  平成二十年度の予算編成ですが、まず非常に困難な状況がある中で、特に平成十九年度の税収の伸びよりも小さい伸びが二十年度あったと、これは財政の歳入と歳出をいかにバランスさせるかにおいて大きなハードルになりますけれども、この点で、財政の健全化努力ということでは特に新規国債発行額を減少させるといった意味で相当の努力をしているという面を一つ評価しておきたいというふうに思います。  それから、国と地方を合わせた債務残高の対GDP比ですが、この点においては、先ほど申し上げました努力の後にもかかわらず、結局二十年度末で一四八%にも対GDP比で上ると言われる国、地方合わせた債務残高が見込まれる予定です。これは非常に、世界においても、特に先進諸国の中で例外的に高い累積債務をため込んだ国ということになります。これを考えますと、今後の経済あるいは財政運営においては大きな大きなリスクを日本は抱えているということが言えると思います。大体先進諸国、特に欧米の国々では六〇%から七〇%程度の累積債務ということになっておりますので、日本のこの一四八%と見込まれるこの二十年度の数字というのは大変目の前が本当に暗くなるような大きな数字であるということをしっかりと私たちは認識しなければならない状況に来ているというふうに思います。  さて、次のパワーポイント資料の歳出面での評価についてですけれども、かなりめり張りを利かせることに重心を置いている、少なくともその努力をしているということが見て取れるというところをひとまず評価させていただきたいと思います。  成長力強化策ということで、再生医療の実現化に二十億円、そしてレアメタル開発の推進に十億円などが挙げられます。それから、国民の安心、安全対策ということで医師の確保対策に百六十一億円など、そして社会保障費関係では対前年比の伸び率で三%、そして科学技術振興費では対前年度伸び率で一・一%、それから中小企業対策費として対前年比伸び率で二・二%、これらはこれから日本が必要であるという分野において、少ない財源の中でも特に前年度よりも伸ばしていこうというところに重点を置かれた、めり張りを利かせた分野になっております。  それから、マイナス面というのがありますけれども、公共事業関係費、今道路財源などで非常に議論が紛糾しておりますけれども、公共事業関係費は対前年度比伸び率で既にマイナス三・一%です。ODA、これは世界にとって日本の貢献度を示す上で大変重要なものではありますけれども、伸び率としては昨年度に比べてマイナス四%というふうな大きな削減になっております。ただし、内容を効率化することによって、金額は減ったけれども、実際に行われる事業はもっと目に見えるいい効率的な事業にしようというところに目を配っていこうという気持ちを二十年度の予算案の中では表している点は評価してもいいであろうというふうに思います。  さて、次のページで、道路特定財源ですけれども、道路特定財源につきましては、特に道路関係、非常に無駄が多いということが大変大きくクローズアップし、そして指摘されております。道路に使わない分は減税しようという声がありますけれども、これを減税にしてしまうだけの余裕が一体日本にあるかどうかというのが私の素直な、素朴な疑問です。それだけ余裕があるならば、ほかに回さなければならない重要な政策課題日本にはあるのではないだろうか、一つ一つの政策課題もそうですが、歳入と歳出のバランスをきちんと考えるという国家としての最低限の心配りの部分は一体どうなったのだろうか、そういったところを非常に私は心配に感じます。それを一言で表させていただくと、減税に回してしまう余裕が本当に日本にありますかという疑問です。  そして、できれば道路、確かに無駄の部分も多いと思いますし、地方にこれは必要か必要でないかというところをもっと厳密に見極めてもらう必要もありましょうし、そして中央省庁がきちっと査定をしていくという厳しいプロセスも必要になってくると思います。こういった厳しいプロセスということを前提にして、道路に使わない分というのは是非一般財源として、なるべくたくさんの額を一般財源として使っていくということが日本にとって必要ですし、これは当然のことであるというふうに考えております。  そして、自動車に関してですけれども、リッター二十五円の税金が下がって、その分ガソリンが安くなれば、私自身も実際に大学に通勤するのに車なものですから、ガソリンスタンドに行くときっと私もうれしいだろうなと思う反面、この財政というものを見てきてしまっている以上、とてもそんな余裕はないはずなのにというのが当然頭をかすめます。そのときに、やはり日本の前途を不安に思ってしまうと、うれしいとばかりは言えない状況だと私個人で考えますし、そういった意味を含めましても、できるだけ一般財源として使う、そして必要な政策にお金を回す、あるいは歳入と歳出のバランスをもっと責任を持った形で運営できるように努力していくというところに目配りをするためにも、是非こういった道路財源についてはより厳しい査定をしていく必要があるというふうに思っております。  自動車の外部不経済という点ですけれども、環境問題につきましても、それから渋滞を引き起こすこと、それから事故を引き起こす、そのときにいろいろな、ただで人は動きませんので、お金が掛かります。環境をきれいに保つためにもお金が掛かりますし、それからCO2、いわゆる温暖化にかかわってしまうような問題をどうやって解決していくのかを考えただけでも非常にたくさんのお金が掛かるわけです。ですから、車を運転してガソリンを使っているということは、たくさんの外部不経済を引き起こしていることを忘れてはいけないというふうに思っております。  さて、次のスライドといいますかページに行きたいと思います。  二〇一一年までにプライマリーバランスを黒字化をするという目標を日本は掲げております。ここにも枠の中に囲って書かせていただきましたけれども、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六というものの中でいろいろなことが決定されておりますけれども、二〇一一年までにプライマリーバランスを黒字化するという目標に達するかどうかということについて多少の言及がされております。これを私なりに解釈いたしますと、最大の歳出削減、これは十四・三兆円の削減ケースになりますけれども、これを行って、かつ内外経済が順調に推移した場合であっても赤字のままではないかというふうな解釈ができるような推計が実際になされております。その下に参考資料として、どういうものにそういった試算が参考として挙げられているか、もちろんこれは閣議決定の対象ではありませんけれども、こういった参考資料の中から私が見させていただいて、どうもこれは非常に危ない状況に、目先の問題でさえ解決できないような状態になっているのではないかということを感じているということを指摘させていただきたいと思います。  そして、政府は二〇一〇年代半ばに向けて債務残高の対GDP比を安定的に引き下げていくということをうたっております。しかし、二〇一一年度のプライマリーバランス黒字化さえもなかなか難しい状況になっている昨今、そして二〇一〇年代半ばまで例えば債務残高についてGDP比を安定的に引き下げていった、それがたとえできたところでその先に何があるのかということを日本はもっと具体的に、政策的に、特にこういった予算委員会のような場所で具体的に議論をしていただく必要があるのではないかと思います。  このプライマリーバランスの黒字化というのは本当に、もう大海の中に一滴の水を垂らすほど本当に小さな小さな入口です。しかし、これさえもできなければ全く話が始まらないということで日本政府は当面の目標として掲げておりますが、一四八%のGDP比にもなるというこの累積赤字、債務をこれからどういうふうに解決していくのか、そのためにはどのような構造転換が必要なのか、こういったことを話し合わなければ、日本が将来どこへ向かっていくのかということが当の日本人にも分かりませんし、それから、海外から日本を見ておりましても、ちっとも日本はどこへ行こうとしているのかが見えません。これは対外的に日本の立場を説明していく上でも大変大きな問題になるというふうに私自身感じております。  特に、私の場合はアメリカの上院の予算委員会で十年ほど公務員をしておりました。したがいまして、ちょっと例といたしまして、変則的ではありますがアメリカの例を取り上げさせていただきたいと思います。  次の表を御覧ください。  このグラフは、アメリカの大統領府が出したグラフでございます。二〇八〇年まで推計をして、アメリカの将来がどうなるのかということを示しています。その中で、やはりアメリカの、現在は財政均衡というのは努力すれば何とかなる、しかし将来はとんでもない問題が見えている、だから今のうちからいろいろな改革をしなければいけないというのを訴えるのにこのグラフが使われています。  そしてその次のグラフですが、これは議会予算局です。行政府ではなくて議会府の方が出しているグラフです。これも多少大統領の数字とは違いますけれども、こちらの場合は、違う政策オプションを取った場合に、二〇八二年までにどういうふうな将来像が描けるのかということをグラフに示したものです。  こういった長期の見通しというものが非常に重要になってまいりますし、先ほど八代公述人からも御指摘がありましたように、次のグラフにありますような日本の人口の少子高齢化というものが大変大きな問題になっておりますので、日本も長期的なバランスを考えていく必要があると思います。  そして、日本では財政制度審議会の中で富田委員が長期的なバランスを試算してくださっています。これは政府のものというよりも参考資料ということでそういった議論の中には使われておりますが、まだ日本では主流になっておりませんので、こういった動きをもっともっと活発化させて、そして、こちらの立法府がそういったものを先導していく必要があるのではないかと思います。  それから、財源政府サービスの問題ですが、こういった将来的な問題があるということをかんがめば、当然歳入と歳出のバランスを考えたペイ・アズ・ユー・ゴーという厳しい財政規律を保って財政運営を考えていく必要があるというふうに思います。  この後また、細かいことは委員の皆様との応答の中で詰めさせていただければと思います。  ありがとうございました。
  90. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 小林正夫

    小林正夫君 民主党・新緑風会・国民新・日本小林です。  今日は御意見いろいろお聞かせいただきまして、ありがとうございました。また併せて、貴重な資料もいただきまして、今後の活動に生かさせていただきたいと、このように思います。    〔委員長退席、理事伊達忠一君着席〕  八代公述人に労働関係を中心に少し質問をさせていただきたい、このように思います。  まず、日雇派遣から抜け出す策は何なのかと、こういう質問をしたいと思います。  公述人におかれましては、規制改革会議の前身である規制改革・民間開放推進会議において委員を務められました。労働者派遣法の見直しについて度々発言もされておりまして、事前面接の解禁、あるいは派遣禁止業務の解禁、雇用契約申込義務の見直しを行うべき、こういう趣旨の発言が多く見られると私は感じております。さらに、次のような発言もございました。日本的労働慣行である正社員の働き方を守るために派遣労働の働き方を制限しなければならないという考え方はおかしく、そのために様々な規制がなされているものであり、こうした考えを改めるべきである、こういう旨の発言もされていると記憶しております。私は、昨今のこの非正規雇用者がこれだけ増えて不安定な社会を生み出してしまっている、こういう社会を見るときに、八代公述人のこうした考え方はどうしても理解できない、こういう立場に私はおります。  特に、二〇〇三年の労働者派遣法改正以来、携帯電話を使って派遣先の指定などを行う日雇派遣、あるいはスポット派遣が広がっていて、いわゆるネットカフェ難民も非常に多くなっており、現在では社会問題と指摘されております。そのことは、いわゆる雇用の不安定さ、あるいは劣悪の労働条件、そして禁止業務への派遣とか二重派遣、あるいは労働条件の明示がされていないケースなど、法の違反も大分昨今では見られるようになりました。労働者派遣事業に関連する法令違反で文書指導がされた件数は、二〇〇六年度に六千二百八十一件、二〇〇二年度から四年間で十倍以上に増えている。これはまさに労働者軽視であり、悪質さを私は感じます。これは、これまでの派遣を始めとする規制緩和によるものであって、労働者保護を置き去りにして使用者のための規制緩和を行ってきたことが原因であることは明白だと思います。これは規制改革会議に大きな責任があると私は考えております。  そこでお伺いしたいんですが、この日雇派遣、あるいは日雇という働き方を望んでいる方も確かにいらっしゃると思いますけれども、そこから抜け出したいと、まあこういうふうに思っている方も私は数多く、どちらかというとその人の方が多いと、このように思っておりますけれども、この人たちが常用雇用から遠ざかっている理由は何なのか、どうしたらこういう状態から抜け出せるのか、このことについて御所見をお伺いいたします。
  92. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  今様々な御質問をいただきましたが、少しちょっと整理してからお答えしたいと思います。  まず、二重派遣を始めとする違法行為が許されないのはこれはもう当然のことであって、これはもう厳しく処罰していただかなければいけないかと思います。規制緩和は決して違法を奨励するためのものではないわけで、きちんとしたルールで合法的な仕事をするということが当然のことでありますので、まず違法の問題は違法の問題としてちゃんと解決していただきたいというのが第一点であります。  それから、派遣の問題と日雇派遣の問題はまたちょっと違うわけでして、まず日雇派遣の方の問題からいきますと、こういう新しいタイプの派遣というのは、ある意味で当初は必ずしも想定されていなかった面があるんじゃないかと。今議員の御質問のように、携帯電話の普及ということがあって、言わば電話一本でハローワークに行かなくても仕事が見付かるというような形で、利用者の方もある意味では非常にそれを、便利さというのを活用していた面があると。しかし、別の面からいいますと、何といっても一日単位で仕事が区切られていますと、当然ながら毎日違う仕事をする場合もあるわけで、熟練形成というものもままならないわけで、やはり長い間働いていても質が向上しない、したがってなかなか正社員の道に行くことが困難であるという問題があります。ですから、これは少しでも長く、一日よりは一か月、一か月よりは三か月、三か月よりは半年という形で、働く期間を延ばしていくというためにはどうしたらいいのかということが大きなポイントではないかと思われます。  今、厚生労働省の方では、専門家の方が集まってこの日雇派遣の問題を議論されているというふうに聞いております。ただ、そこでやはり議論されるポイントといいますのは、この日雇派遣を禁止したらその人たちはじゃどうなるのだろうかというポイントで、例えばその人たちがすぐに正社員になれるのかというとそれはかなり難しいわけでありまして、例えば派遣ではない直用という形の日雇の方に移るということになった場合、それはそれとしてどういう意味を持つのだろうかというような問題もあるわけで、いろんな形から多面的にこの問題を厚生労働省の方の研究会で議論していただく必要があるんじゃないかと思われます。  それから、こういう日雇ではない派遣の問題、これは委員承知のように言わば派遣元の会社の正社員である常用雇用型の派遣と登録型の派遣に分かれるわけでありまして、この正社員である派遣社員については本来問題はないはずなわけですね。つまり、きちっとした雇用が保障されていて、ただ働き場所がそれぞれ違うということにすぎないわけであって、正社員でも、コンサル会社なんかはあちこちクライアントの下で行って働くということは一般に行われているわけです。問題はこの登録型の派遣であるということであります。  今の派遣法というのは、ある意味でこの登録型の派遣の人をどう考えるかというときに、どちらかといえばこれは望ましくない働き方であるという形で、対象業務であるとかあるいは働く期間というものを規制するという考え方になっているんではないかと思われます。その派遣期間が延びたときにも、雇用の申込義務という形で、派遣先の方から正社員としての、その派遣社員がやっていた仕事を正社員がやる場合にはその人に雇用の申込義務を、しなければいけないというような規制が掛かっているわけでございます。  これが本当にこの派遣社員のためになっているかどうかというのが実は大きなポイントでございます。つまり、雇用の申込義務があれば、その方が正社員になりやすいという考え方は当然あるわけでございます。ただ、企業の方がもしこの人を正社員として雇いたいと思っていれば、それは別に規制がなくたって勝手にやるわけであります。むしろ、よその会社に優れた派遣社員を取られないうちにもうさっさと正社員にしてしまうということは当然考えられるわけで、もし逆にこの企業がこの人を派遣社員としてでは喜んで雇うけれども正社員にしたくないというふうに考えていたとすれば、三年の雇用契約があったときに、三年後には雇用の申込義務が必要だとすれば、ある意味で二年半で雇用契約を解消してしまうということが当然行うわけでありまして、そうなった場合には、これは別に違法でも何でもないわけでありますが、そうなった場合には、この派遣社員の人から見れば、そういう規制がなければもっと長くこの会社で働けたかもしれないのにやむを得ず会社を変わらなければいけないということになってしまうのじゃないか、そういうふうに考えられても仕方がないんじゃないか。  ですから、委員もおっしゃるように、私は、派遣法というのは、派遣事業者を規制する法律というより、派遣労働者を保護する法律でなければいけないと思います。それは、あくまでも派遣社員の利益のために何が必要かということを考えて、派遣社員と正社員とのできる限り均衡待遇の強化、こういうことをどんどん厳しくするのはいいと思うんですが、就業期間を制限するという形で規制するということが本当に派遣社員のためになっているかどうかということをやっぱり考えなければいけないんじゃないか、そういう趣旨で先ほど委員が御指摘になったような発言をしたわけであります。
  93. 小林正夫

    小林正夫君 派遣という働き方はある、このように私も認識をしております。ただ、日雇派遣、先ほど公述人おっしゃったように、携帯電話一本でどこに行かされるか分からないと、こういう働き方をせざるを得ない人が相当増えてしまった、このように思います。私は、やっぱり雇用の大原則は期間の定めのない雇用であり、直接雇用、これがやはり私たち雇用の大原則、このように思います。  そういう立場から見ると、日雇派遣、派遣会社に登録して、そこから派遣先が決められて、要は働く人間は直接契約をしていないところで働かなきゃいけないという、この実態が今本当に世の中に蔓延していると。やっぱり働かせる側が責任持って雇用してその労働者を働かすという、こういうやはり私は社会に戻していかなきゃいけない。  私は、やはりこの二〇〇三年の労働者派遣法の改正、これは当時の規制改革会議の中で、規制緩和の中でそういうことを求めた、またそれを政府が実行した、私はこのことに大きな誤りがあったんじゃないかと思いますけど、公述人はいかがでしょうか。
  94. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  最後の点でございますが、規制改革会議の方でこういう規制緩和をする必要があるということを提言いたしまして、これは規制改革会議の答申というのは二つに分かれております。問題意識という委員だけの意見の部分と、具体的施策という、関係各省、この場合は厚生労働省と合意した部分という二か所に分かれておりまして、この規制の緩和部分は厚生労働省との合意に基づいたものでございます。これは、厚労省の審議会でその後審議され、国会に上程されて、国会の決議を得て法律となったわけでありまして、規制改革会議だけが勝手に作ったものではないということは御承知のとおりだと思いますが、まず述べさせていただきます。  それから、おっしゃいましたように、この日雇派遣というのが決して望ましい働き方であるとは私は思っておりません。これは全く同意見でございます。ただ、それを禁止することでもっとより良い働き方に本当に行けるのかどうかという点がやや御意見と違う点であるわけです。  今、この日雇派遣の問題点というのは、さっき申し上げましたような不安定性ということもさることながら、非常に派遣会社のマージン率が高いということ、一説によると五割以上を取っているということになるわけで、このマージン率が低ければもっと労働者の手取り部分は大きくなるわけであります。  ですから、何でこんな大きなマージン率を労働者は甘んじて受けているのかというと、一つは情報の不足ということ。したがって、今厚生労働省ではもっときちっと派遣会社がどれくらい派遣料金と労働者が受け取る料金との差があるかということを明示せよというような指導をされていると聞きますが、これは一つのやり方だと思います。  それからもう一つ、私の専門といたします経済学の立場からの御提言といいますのは、こんな高いマージンを取っているということは、やはりこの業界が余りにも寡占的に過ぎる、民間のよく言われている二つの会社辺りが独占的に日雇派遣をやっている、もっと他の会社がこういう日雇派遣に参入すれば競争を通じてこの労働者の取り分が上がるのではないか、これは経済学の非常に単純な議論でございます。  例えばNPOとか、私の個人的な全くの印象でありますが、連合がワークネットという派遣会社を持っておられる。これはまさに連合が非営利でやるわけですから安心して派遣労働者がここを使えるということなんですけれども、例えばこのワークネットが日雇派遣をやっていただくと、言わば非常に少ない手数料で日雇派遣者を雇えるわけで、争って日雇派遣の方はこっちに行くんじゃないかと。そうなると、こういうふうにピンはねされる率がもっと少なくなる。つまり、これは事業者間の競争を通じて派遣労働者の言わば利益を高めようという考え方で、禁止だけじゃなくて、例えばこういうことを政府がもっと奨励するというのも一つの手段ではないかと思われます。  以上であります。
  95. 小林正夫

    小林正夫君 日雇派遣、私は派遣という働き方に問題が大きいなと、このように感じておりまして、むしろ有料職業紹介という、そこで紹介されて働き先と直接雇用を結んでいくと、こういうやはりここは働き方に変えていかなきゃいけないんじゃないか、このように私どもは考えているということだけお話をしておきます。  次に、ハローワークの民営化について八代公述人のお考えを聞きたいと思います。  公述人は、ハローワークそのものは必要であるけれども、それは民間でやれるんだと、民間の業務としてやっていくべきだと、このような主張をされているというふうに私認識しておりますけれども、この公共職業安定所の役割をどのように御理解されているのかお聞きをいたします。
  96. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  公共職業安定所というのは、言わば失業している人、求職者にとっての最後のセーフティーネットであるわけです。これは政府として当然維持しなければいけない機能ですし、日本政府は既にILO条約を批准しておりまして、この無料の職業紹介のネットワークを全国的に広げるということにコミットしております。したがって、この無料の職業紹介所であるハローワークというものを今後とも政府が責任を持って維持していくということは当然のことだと思います。  ただ政府が責任を持ってこの無料の職業紹介機能を維持するということと、これを自ら公務員がやらなければいけないということとは違うんではないだろうかということであります。  既に御承知のように、警察庁の中でも駐車違反の取締り業務、これはこれまで警官がやっていた業務を民間人にやらせるということで、これは守秘義務を掛けたりいろんなほかの規制を掛けての上でありますが、それによって貴重な警官を本来の犯罪行為の抑止という形に振り向けられるわけであります。ですから、ハローワークについても、この窓口で職業紹介をするという業務がなぜ公務員にしかできないのだろうかということになるわけです。  ただ、もちろん長い間ある意味で経験を持っておられる公務員がハローワークを運営しているわけですから、あるいは民間に任せるとその機能が低下するかもしれない。したがって、いきなりハローワークを民間に開放するんじゃなくて、市場化テストという手段で、つまり官のハローワークと民のハローワークがお互いに競争するような形でテストをしてみようと、それで実際にやってみて官の方が効率的であればこれはもう官に任せる、あるいは民の方が効率的であれば民にやってもらうということを実験するわけですね。これを市場化テストの仕組みにハローワークも乗せたらどうだろうか。これはよく言われています初めに民営化ありきではないわけであります。  そもそもこのハローワークは民営化の対象ではないわけで、あくまでも政府がやる仕事の民間開放の一つの手段にすぎないわけでありまして、この民間開放するかどうかも含めて実際に競争を通じてやってみようということであります。  本体の市場化テストはまだこれから法案が通ればのことでありますが、既に厚労省では、モデル事業としてハローワークの一部のキャリア交流プラザ等をこの市場化テストの対象にしております。これは本来の意味の市場化テストではなくて、今全国で十五にあるキャリア交流プラザの五つの部分を民間に開放し、残りの十の部分を官のキャリア交流プラザのままにしてお互いにパフォーマンスを競っていることをもう三年近くやっております。  その結果は必ずしも民のパフォーマンスがいいとは言えない。まあそれほど違わないけれども、若干ながら官のパフォーマンスが高い場合もあるということで、これは長い間の経験もあったかと思います、官の経験があったかと思います。  ただ一つ明確に現れたのは、官のキャリア交流プラザのパフォーマンスが良くなっている、この市場化テストの後ですね。これは、官のそういうハローワークの業務の一部に競争が導入されたことによって、言わばより真摯にというか、失礼ですが、より一生懸命そういう仕事をやっていただく、サービスを提供していただく、それによって明らかに効率性が高まったと言えるんじゃないか。これは諸外国の例でも言われていることであります。  ですから、大事なことは、官がいいか民がいいかということ以前に、独占的に行われている官の事業に言わば競争を導入するということもこういう市場化テストの大きな機能であって、ハローワークが決してこの対象にしてはいけないというほどの何か根拠があるかどうかというのは、私は定かではないというふうに思っております。
  97. 小林正夫

    小林正夫君 一部ハローワークの民営化の実施もしてみて、その結果はやはり民間が負けていると、こういう結果も出ているところもあるわけで、八代公述人がおっしゃるように、民営化ありきじゃなくて、本当にこれはやっぱりよく考えながら進めていかなきゃいけないということだけ指摘をしておきたいと思います。  幾つか質問を用意したんですが、ちょっと時間の関係で、私このように思っているんですが、経済財政諮問会議だとか規制改革会議という会議体は小泉政権の下で民間有識者と呼ばれる皆様方の御意見をお伺いをして規制緩和にアクセルを踏むことが目的だった、このように私は理解をしております。各省庁がコントロールできない場所での論議といえば聞こえはいいけれども、新たな既得権益が法律改正によって実現されてきたのであって、労働法でいえば、この象徴とも呼べるのが二〇〇三年の労働者派遣法の改正だったと、このように私は思います。  参議院選挙の結果、私ども民主党は、ようやく政策決定の場が国会の中に戻ってきたと、このように考えておりまして、経済財政諮問会議や規制改革会議の皆さんの御意見は御意見として、現実可能性については担保があるわけではなく、もはや存在意識に欠けているんじゃないかなと、このように思います。  小泉政権下で、働く人を大切にする社会づくりとは逆方向の施策が推進され、社会に大きなひずみが出てしまって、その結果がさきの参議院選挙に顕著に現れたと私は思っております。そのことを指摘して終わりたいと思います。  中林公述人には大変申し訳ございませんでした、質問なくて。  ありがとうございました。
  98. 森田高

    ○森田高君 新緑風会の森田高でございます。  まず、御多忙中にもかかわらず公聴会においでいただきました両先生方に心からお礼を申し上げます。また、先ほど来、大変重い御意見を賜っておりますことを改めて感謝を申し上げます。  本日は、午前同様、自分自身の歩んできた医療という窓口を通じた財政政策に関して何点か御質問申し上げたいと思います。  その前に、まず中林先生にお伺いしたいんですが、先ほど来、GDP対比の債務残高一四八%、恐らく九百兆円以上なんだと思います、大変重い債務だと思いますが、ここで教えていただきたいのは、この国、日本という国は、債務が大きい反面、世界最高水準の国家資産を併せ持つと言われております。資産と債務、あるいは粗債務と純債務、この辺りの関係を大きく整理してもらいますとどのようになりますか、御見解をいただきたいと思います。
  99. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 資産とおっしゃいますと、国民のいわゆる貯蓄高ですとか、そういったものを指していらっしゃるんでしょうか。──はい、そちらですね。  日本では今、非常にそれはため込んでいて、例えば富国ファンドみたいなものをつくったらどうかという声もあるほどため込んでいる状況かとは思いますけれども、必ずしも日本にこれ、国債、赤字を消化するだけの能力があるから日本財政赤字は安泰だというような理論にはならないだろうというふうに思います。これは、将来経済がどういうふうに動くかということにもよってきますけれども、今の日本財政赤字の額というのは、私がアメリカにおりまして、予算委員会アメリカ財政赤字の額を心配していたときよりも何倍も大きいものです。  これを考えますと、いつ、例えば通貨あるいは世界的な大きな出来事あるいは災害、経済的な大きな変化、こういったものが起こったときにどうなるかということを考えますと非常に心もとない状態ですので、これは日本の持っているいろいろな財政力といいますか、国民の力も含めた、そうして貿易黒字なども含めた力を含めても、必ずしも安泰ではないというふうに思います。
  100. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。  では、一枚目の資料を御覧ください。  午前でも少し申し上げたんですが、世界で最も高齢化の進んでいる我が国の医療費、これはもうOECDヘルスデータ見るまでもなく、極めて低い水準であるということが知られています。現在の国民医療費約三十三兆円は、我が国のパチンコ産業の売上げとほぼ同程度と言われており、少なくてもG7の水準には程遠い状況でございます。また、資料二枚目は、医療費の国際比較に加えて、高齢化というファクターとベッド数というファクターを加味したものです。いずれにしても先進国の中では最底辺であり、我が国が国力に見合った医療費を出してきたとは到底考えられません。  この絶対的な医療費の不足、これは今日の医師不足、看護師不足、看護職員の不足、それがもたらす過重労働、現場の絶望、それに続く立ち去り型のサボタージュと言われる現象、最終的には地域基点の医療崩壊、そして医療事故率の上昇、最終的には医療不信、医療訴訟の増加、すべてに連関していると私は思います。  また、どんなきれい事を言ったとしても、現場の、医療現場のですよ、政治不信はこれはもうますます強まっていると言わざるを得ません。例えば、今厳しくても頑張れば数年先に光が見えるとすれば、これは人間頑張れると思います。だけど、今厳しい、でも来年はまた二千二百億の削減だ、その先も削減が続く。どん底のようにこの暗いトンネルが続くということです。  これは、やはり国民に安心、安全と言っても、これはだれも政治、社会を信用できないといってもやはりこれは仕方がないことかなと思いますし、金銭面では確かに予算を削減すればそれはバランスシートは取れるかもしれません。だけれども、維持可能な社会保障と先ほど八代先生おっしゃいましたが、これは供給が破綻すれば社会保障制度全体は維持可能ではありません。そういった観点から非常に問題がある政策ではないかなと、私は医療の現場の一員でございましたので、そのようにも考えます。  結果的に、国民社会保障に関する自己負担、これが増えていきますから、ますますディフェンシブになります。個人金融資産千五百兆あるといっても、資産を消費に回せない、ため込んでいかなきゃいけないわけです。将来的な有料老人ホームで何千万要るか分からない、医療費の自己負担が必要、民間の医療保険に入る可能性がある、だったらその保険料をまた別にため込む必要があるかもしれない。いろんなやはり悪循環が消費に関しても広がっていくんじゃないかなと思います。  一般論として、社会が高齢化すれば医療費は掛かります。これは生物の宿命でございます。そして、社会が高齢化すればある程度は、上限はあるにしても、労働生産性も低下せざるを得ないと思います。これもまた必然でございます。  であれば、一言で言えば、今日の政策目標である、例えばGDPと社会保障費用の連動、これはなかなか実現困難な目標ではないかなと思う一方、やはり今必要なのは、ちまちました、申し訳ないですけれども、骨太か何か分かりませんけれども、医療費、社会保障費削減ではなくて、先ほど中林先生がおっしゃったようなドラスチックな歳出構造の変革、これは人口減少社会、もうしようがないんです。今から二十年間で八百万人人口が減りますから、そして後期高齢者二倍に増えます。  ですから、もう医療費も社会保障費掛かってしまう、じゃそこに合わせて国家財政をどう合わせていくか、そのポートフォリオが絶対に必要だと思いますが、大変恐縮ですが、御両人の御見解をいただきたいと思います。
  101. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  今議員がおっしゃったように、高齢化によって医療費が増える、介護費が増えるというのは、ある意味でどこの国もそうでございます。ですから、その医療費の、介護費の増加というのを当然ながらある程度は考えなきゃいけないというのもそのとおりでありますが、ただ問題は、現在の医療費の使われ方というのが本当にこれ以上言わば効率化の余地がないようなものであるか。そうであればおっしゃるとおりだと思いますが、いろんな資料によれば必ずしもそうなっていない。  これはよく言われることでありますけれども、地域間の医療格差といいますか、同じ日本人でありながら、例えば福岡と長野の間には大きな医療費の格差がある、しかしパフォーマンスの点では別に何も違いがないと。あるいは、日本では非常に諸外国に比べて人口当たりのベッド数が多い、いわゆる社会的入院と言われている現象であって、病院が言わば介護施設のようになってしまっている。そうであれば、介護保険をつくったときのような考え方でまさしく病院というものを本来治療する場に戻していく、これによって、ある意味で医療費の合理化の余地は大きいのではないかと。  そういう意味で、今、経済財政諮問会議では、厚生労働省と協力いたしまして医療費の効率化プログラムというのを提言しているわけでありまして、例えば後発薬、ジェネリックというようなものも日本では諸外国に比べてわずかしか使われていない。同じ効用でありながらはるかに安い値段の薬が現に存在するにもかかわらず、ほとんど使われていない。仮に、これが先進国の中でも少ないドイツ並みの四〇%になったとしたら、かなりの額、医療費が節約できるわけであります。  ほかにも、例えばCTスキャンとか、こういう非常に高価な医療機器が諸外国に比べて非常に多く導入されている。これをもっと集約化して特定の病院で効率的に使えば、ある意味で医療費はもっと減るんではないか。ばらばらにあちこちに分散していますので、それぞれの病院で採算を取るためにやはり言わば過剰検査というものが必要になってしまっているんじゃないか。こういう様々な言わば医療費の効率化の余地というのが多いわけであります。  あるいは、今おっしゃったように、病院の勤務医の方は非常に激務の中で働いておられるわけですが、他方で、開業医の方では患者が減っている場合もあるわけで、あるいは夜間診療はほとんどなされないと。そういう開業医と勤務医との間の仕事の差とか、あるいは非常にその診療科の中で不足している部分と余っている部分があると。皮膚科とか耳鼻咽喉科とかそういうものは非常に増えていますが、必ずしもそこでは救急患者は来ていないんじゃないかと。こういう様々なやはり医療費、今の医療供給体制の問題を放置したまま必要に応じて医療費を増やしていくと、今後の高齢化社会ではある意味では財源がパンクしてしまう可能性がある。  ですから、必要な医療にはきちっと手当てをするにしても、現在諸外国と比べてまだまだ効率化の余地がある部分についてはやはり一生懸命それを進める必要があるんじゃないかというふうに考えております。
  102. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 大変ありがとうございます。日本にとってたくさんの中の一つの大変重要な課題であるというふうに思っております。    〔理事伊達忠一君退席、委員長着席〕  医師不足の問題が今随分言われていますけれども、これに関しては、例えば臨床の研修必修化ということで、制度が変わったことによって医師不足というのが地方で非常に大きくクローズアップされています。それから、病院勤務医の厳しい勤務状況ですね。それから、産科等におけるリスクの高まり、いろいろな訴訟なども起こっておりますし、こういったことも医師を萎縮させるような社会状況に変化してきています。それから、女性医師が増加することによって、その方たちが結婚や出産で一時職場を離れたときにまた帰ってくるときに非常にハードルがあって、そういった人たちを十分に受け入れてくることができなかったことのマイナス点なども指摘されています。  そういった点で、今年度の、今年度といいますか平成二十年度の予算編成の中ではその辺をもうちょっと考え直さなきゃいけないということで、確かに努力は見えているんですけれども、恐らく焼け石に水だとおっしゃるような方々が多いのかもしれませんが、少なくともこの辺の問題については非常に着目していることは確かです。例えば診療報酬本体も、〇・三八%ですけれどもプラス改定を行っておりますし、それから十九年度予算に比べて一・七倍の予算を緊急医師確保対策ということで盛り込んでいます。  こういったことも含めまして、非常に日本にとって大きな問題であるということはもうだれにとっても間違いのない事実であると思います。ただ問題は、こういった医療制度というものは国によって様々です。本当に、アメリカのように民間の保険会社でこれを保っているようなところは大変大きな医療コストを払っております。日本よりもずっとずっと大きなそういう医療費を払っていて、例えば二〇〇四年の数字ですけれども、GDP比にいたしますと、国民の負担率というのは、日本では総医療費は八%、アメリカでは一五・三%、イギリスでは八・一%、ドイツ一〇・六%、フランス一一・〇%などなどということで、特にアメリカと比べますと非常に大きな差が出ているわけですけれども、これをだれがやはり背負っているのかといいますと、かなり医療の現場の方々が長時間の勤務をしたり無理をして、相当のしわ寄せがいっているのではないかというふうにも考えています。  また、八代公述人が御指摘になられたように、人口当たりのベッド数はやはり日本はかなり増えてしまっています。これは、本来であれば養護施設などに入っていらっしゃるべき方々一つの政策をきっかけに病院に入るということが過去あったということが指摘されているとおりであると思いますので、これは大きな政策の指導といいますかリーダーシップが必要になって、これからもう少し、いかにして医療の資質を効率的にしていくのかということが大事になってくると思います。  ただ、効率的にという部分におきましても、病院を中央に集めてもっと効率的に行うということを、アイデアを考えていらっしゃる医療関係の先生方もたくさんいらっしゃるのを私存じているんですけれども、それだけではなくて、絶対的な予算が必要だということでいらっしゃるかもしれません。その場合は、これこそ本当に財源がなくして医療改革というのはできないと思いますので、それを大々的に変えてくださるのはやはり国会の皆様の御努力だと思いますので、この辺の御審議お願いしたいところではございます。
  103. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございます。医療の効率化、確かにおっしゃるとおりでございます。  ただ、総じて言えば、我が国の医療費の資質というのは、先ほども申し上げましたように先進国で既に最低水準になっておりまして、ぞうきんをどこまで絞れるかなという部分はあるんだと思います。おっしゃるように、ベッドの数は確かに多いです。ただ、高齢化が進んで核家族化が進んでいますから、これを一気にはしごを外すんだということには現場と国民レベルで対応できない部分も多分多いんだろうと思います。ですから、そういったところにも慎重に御対応いただきたいなと思いますし、同様にジェネリックの話がありました。  私もジェネリックは一面において医療費をある意味圧縮する上で非常に必要なツールだと思っています。ただし、これは一つ、政策上の一つのトレードオフが製薬業界とないといけないのかなということも考えております。  それは何かといいますと、製薬業界、もう今更言うまでもありませんが、百打数打って一本ヒットが出るかどうか、新薬開発はそういう厳しいリスク事業です。現実問題、これは三枚目のグラフでお示ししておりますが、大体薬価改定のたびに五%から七%薬価は下がります。ですから、一般に十年の特許期間があれば十年間の中で薬価というものは三割下がってしまいます。極めて厳しいリスク事業にもかかわらず価格が安定しない、大変これは厳しい環境だと私は思います。  この国がこれからどういう産業を成長産業ととらえるのかということ、これが大事だと思うんですね。世界に伍して戦える、資源も使わない、本当に知識、インテリジェンスの集約である製薬産業というものをこれからこの国が大事に思うんであれば、やはり新薬の価格というものは十年間なら十年間ぎっちり安定させる、これがジェネリックを普及させる一つのトレードオフだと思います。  同様に、検査技術に関して、大変進歩して、先ほど八代先生おっしゃったように、大変機器の投資の部分では無駄があることは事実です。であれば、例えば電子カルテの共通サーバーを作って、診療所、病院、日本中の医療機関がそこにアクセスすれば無駄な二重検査、三重検査しないための投資というのがこれはできると思うんです。ただ、なかなか進まない。ここは難しいところはありますが、そういったところはどんどん進めてもらいたいと思います。ただし、労働集約型の産業です、医療というものは。ですから、そこは絶対に人間を守るという観点、これは働く人がいなくなれば医療は崩壊しますので、そこは是非理解ただきたいと思います。  さて、削減ありきのところで八代先生にお伺いしたいと思うんですが、時間も大分なくなってきましたので、このグラフの三つ目ですね、非正規保険証交付状況の変遷というところです。  これは、かつては世界に誇るべき公的医療保険制度があったこの日本という国の中で、今、実際上の無保険者が増えているということでございます。資格証明書、実質保険証がないから全額自己負担、これは今三十四万世帯に増えています。短期被保険証、二週間しか有効期限がないもの、これは今、すごいですね、百十五万世帯まで増えています。例えば、もう百五十万世帯、一世帯平均大体これ一・五人から六人ぐらいいますから、ざっぱり推計しますと二百八十万人弱、正規の保険証が持てないという人が今増えています。  いろんな背景があると思うんですね。高齢化が進んでいる、あるいは先ほど来、小林先生の話があったように、非正規雇用が増えていてなかなか困難な状況になってきている。  そういう状況があると思うんですが、こういう状況で八代先生の場合は混合診療ということをかつてから非常に強く主張されてきたということを踏まえましてお伺いするわけですけど、アメリカのように全部しろとおっしゃっているわけではないと思うんですよ。一部は公的保険、一部は民間の保険というふうにしていく際において、やはりどうしても先端医療を受けることができない人が、これはもう数千万の単位で出てしまうんじゃないかという懸念があります。アメリカでは、自己破産の理由の第一位というものは医療費の未払です。そういう状況もございます。  更に言えば、例えば混合診療が解禁されて、いろんな説がありますけれども、十兆円市場だと言われています。十兆円のお金、これはだれかが払わなきゃいけないわけで、それは国民が払うんです、結局は。そんなときに、例えば民間保険をそこの間に入れるという考えは当然あると思うんですが、ただ、これはメディカルロス、給付指数ということもやはり考える必要があると思うんですね、医療は公共の財産ですから。  公的な医療保険であれば、一般には給付率は大体九八%です。アメリカの例で言えば、民間保険会社の給付指数は八割といいます、大体八〇%。この差一八%は、いわゆる保険会社の利益であり、株主配当へとあてがわれます。アメリカの保険会社は患者さんに給付することをメディカルロスと言います。私は、これは大変けしからぬと思いまして、本来患者さんに還元すべき集めた保険原資というものをロスと言ってしまう、本当のロスは一八%ではないのか、保険会社の利益であり株主配当がロスじゃないのかと。  医療というものをどうとらえるかによってこの価値観は変わってくると思うんですが、こういった価値観が、これからこの国に高齢化が進んでいってますます支払余力が下がってしまう状況、そして格差がどうしても今拡大している、この状況において本当に正しいと思うかどうか、済みません、残り時間少ないですが、御見解いただきたいと思います。
  104. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 一分で混合診療の問題はとても答えられませんが、一言言わせていただければ、アメリカというのは医療保険に関しては日本にとって何の参考にもならない国ですね。先進国の中でそういう皆保険でない国というのはアメリカぐらいしかないわけでありまして、今おっしゃった民間保険会社がいろいろ暴利をむさぼっているということも、まさに公的保険がいわゆるメディケード、メディケア以外には存在しないということから生じているわけで、日本ではそれに対してきちっと公的保険は存在している。  ただ、おっしゃったように非正規被保険者の問題がある。これはきちっとやっぱり対応していかなければいけないわけですし、こういう人たちもきちっと皆保険の対象から外さないようにしていかなきゃいけない。現在、生活保護者の人もある意味では保険の対象外になっているわけですけれども、そういう人も含めてきちっとすべての人が保険の対象になるということが第一歩であろうかと思います。  混合診療については、後でまた御質問があると思いますけれども、まずどんな混合診療かがポイントでありまして、現在でも特定療養費制度というものが現にあるわけでして、これも一種の混合診療であります。ですから、それはそういう格差を生まない害のないような形での混合診療の形を考えていくというのが必要ではないかと考えております。
  105. 森田高

    ○森田高君 ありがとうございました。
  106. 櫻井充

    ○櫻井充君 民主党・新緑風会・国民新・日本の櫻井充です。  今日は、八代公述人、それから中林公述人に御出席ただきまして、本当にありがとうございます。  今、森田委員から医療の問題がありましたので、ちょっと順番変えまして医療の問題からお伺いしていきたいと思いますが、まず混合診療のことについて、基本的にどうお考えなのか、済みません、端的にお答えいただければと思いますので。八代公述人、よろしくお願いします。
  107. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今混合診療という言葉を言われましたが、これはきちっと定義しなければいけないわけで、一般にこれは同じ治療行為の中で保険診療と保険外診療を言わば併用するという考え方であります。  これは、ある意味では、保険というのは医療保険に限らず保険事故に対応して支払われるものですから、一定の範囲を決めておかなきゃいけないというのは当たり前のことであるわけですが、利用者が、保険の加入者がその範囲を越えて言わば診療を受けた場合に、本来、保険料を払って資格があるにもかかわらず保険給付をしないというのが今の混合診療禁止の論理であるわけで、これは一種のペナルティーであるというふうに考えます、患者に対してということですね。  そういう意味では、この混合診療ということは私はむしろ患者にとっての選択肢を広げるものであると。公的保険の範囲内の医療行為だけじゃなくて、それとそれ以外の、例えば新薬であるとか新しい技術というものを患者がお医者さんと相談して使う、その保険でカバーされない部分だけは自己負担で行うと、これが混合診療の考え方でありますが、これは今禁止されていることと比較しますと、その保険外診療をちょっとでも使えば保険診療を一切払わないというペナルティーをなくすということがこの混合診療解禁の一つの大きな意味だというふうに理解しております。
  108. 櫻井充

    ○櫻井充君 ペナルティーでは私はないと思っています。それは何かというと、アクセスの平等性だと思っております。  つまり、公的医療保険は、低所得者の方も高額所得者の方々も、皆さんが保険料を出し合って互助会組織としてでき上がっております。そうすると、何を担保しなければいけないのかというと、私はアクセスの平等性なんだろうと、そう思います。ですから、いわゆる保険点数上のもので病気になった際にそれを利用するということは、これは全く問題がないと思っておりますし、一部例外規定として厚生労働省が取りあえず医療として認めております、しかし保険に収載まだできませんというものは、これは特例規定としてそれに対してアクセスできると、ここまでは担保されても私は許される範囲なのかなと。  ところが、問題は、そうでない医療、これは医療と呼んでいいかどうか現時点で分からないものですね。そのものを使う場合に、じゃだれが一体使えるのかというと、これは悲しいかな低所得者の方々が利用できるような代物ではございません。そうなってくると、高額所得者の方々だけが保険を更に大きく、何と言ったらいいんでしょうか、アクセスが増えてくるということになってくると、私は不平等ではないのかなと。それから、そのことによって公的保険の分野がまた更に圧迫されるんではないかという点から考えてくると、果たして混合診療というものが、今公述人がおっしゃっているようなメリットだけなのかというと、私は疑問を感じておりますが、いかがでしょう。
  109. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今二つ、あるいは三つのことを言われましたので、順番にお話ししたいと思います。  今、櫻井議員がおっしゃったように、現在の保険制度の下でも特例規定として特定療養費というのが認められております。ただ、この範囲は刻々と変わっております。例えば、私が規制改革会議におりましたときに回数制限の問題がありました。例えば、腫瘍マーカーというものが保険では月に二回しか使えない。しかし患者によっては三回、四回必要になる部分もある。もし患者がこれを三回、四回使うと保険自体が適用されなくなると、これは極めて私はやっぱり問題だと思います。そういう意味で、規制改革会議と厚労省の方が協議して、こういう回数制限というのはやめようじゃないかと。腫瘍マーカー自体は公的保険で認められているものであるわけですから、しかも公的保険では何らかの制限を設けなければいけない。例えば、二回と設けたときに三回、四回とした場合には、この追加部分というのは言わば特定療養費、一種の混合診療でありますが、これで見ようと、こういうような形で特定療養費を拡大していただいたわけであります。  あるいは、乳がんの手術のときに乳房を切り取る、そうすると、言わば一種の美容整形として元の形にするということが行われているわけですが、美容整形というのは当然ながらこれは自由診療でありますから、これを一緒にはできない。従来の医療では、いったん乳がんの手術をした患者が退院して三か月か半年した後またこの美容整形を受けに来る、これならばいいと。こんなナンセンスなことはおかしいんじゃないか、一緒にやった方がはるかに患者の負担も小さいし、医療費も少なくなるんだったら一緒にやるべきじゃないかということを主張して、これも特定療養費の拡大という形で認めていただいております。  ですから、混合診療がいいか悪いかという抽象的なことではなくて、何が特定療養費の対象になるかということを、どんどん患者の利益に立って言わば広げていく、これをずっと規制改革会議ではやってきたつもりであります。  ですから、ある意味でそれはそんなに特例といっても必ずしも特例でない場合もあるわけでありまして、この特定療養費の費用を広げていく、その対象としては、決して櫻井議員がおっしゃったように医療と呼べないようなものまで入れるというようなことを私は全く考えておりません。当然それは医療の中身でなければ意味がないわけで、ただ、医療の中身といっても、欧米では普通に行われていても日本ではなかなか治験が遅いということで認められないものはたくさんあるわけであります。だから、そういうものについては、例えば厚生労働省の審議会で一つ一つ個別に技術を認定すると、これはすごく時間が掛かるわけですね。それを、例えばもう少し包括的といいますか一定の基準を定めて、欧米では当たり前に使われている技術とか医薬品であればかなりスピーディーに特定療養費の対象に含める、これも一つの規制緩和ではないかと思っております。  それから、金持ちが得をするじゃないかということでありますが、これは何と何を比較するかの問題であります。先ほどの腫瘍マーカーの例でも見られますように、公的医療費が例えば一〇〇であって追加的な自由診療部分が例えば一〇であれば、これは決して金持ち優遇ではないわけですよね。むしろ逆であって、これまでのような厳しい規制によってその一〇の追加負担で済むものが一一〇必要になるわけです、この混合診療が禁止されることによって。ですから、こういうものについてはやはり幅広く認めていく必要があるんじゃないかと。それは決して金持ち優遇ではなくて逆であるわけです。  それはむしろ、特にがんなんかの場合典型ですが、患者が新しい薬を求めて治療を受けたいというときに、日本ではそれが禁止されているというのは非常に不当なことではないかと。そういうことで、昨年末にがん患者の方が東京地裁に、この今の混合診療の禁止規定というのは一種の法律違反である、あるいは、そもそもそれを禁止する法律が明確でない中で厚労省がこれまで原則禁止、例外自由にしてきたということを訴えて、地裁判決ではそれが認められたわけであります。まだもちろん厚労省は係争中でありますから結論は出ておりませんが。  ですから、ある意味でむちゃくちゃな、何でも混合診療の対象にしようというなら議員のおっしゃっているとおりでありますが、我々はそんな非現実的なことは考えていないわけで、あくまで医療界の専門の方が常識的に考えてこれは医療の中身である、しかし日本では残念ながら公的保険にはまだ入らないというようなものをもう少し包括的に特定療養費の規制緩和拡大という形で認めていただいたら、これは患者にとって極めて大きなメリットになるんじゃないかというふうに考えているわけであります。
  110. 櫻井充

    ○櫻井充君 おっしゃる点だけ聞くと、それはそのように取れるかとも思います。  まず、その前に、先ほど腫瘍マーカーの話がありましたが、あれはあくまで医療費抑制策の中で回数を制限せざるを得ないものが出てきている結果そうなっているということだけはこれは御理解ただきたいと思うんです。  先ほど効率性の中で様々なことがございましたが、しかし医療費は、日本の医療費は対GDP比で見たらアメリカの半分ぐらいです。コストが元々安いわけですよ。長期入院だとかなんとか言われますが、それはアメリカの場合にはドレナージといって管が、手術の後、管が入ったその段階で退院させられていますから、その後、自宅で自分が全部ケアしなきゃいけない。それは日本は退院するところまでは、ちゃんと管が抜けるところまで面倒見ている社会ですから、これはどちらがいいのかということの議論はまずしていかなきゃいけないことなんだろうと、そういうふうに思っています。  ただ、ちょっとここだけ議論していてもあれなので。ですから、これは一つは医療費を公的給付を増やすべきなのかどうなのかという、もう一つ議論だと思っているんですね。それは何かというと、公述人は二〇〇六年の日本経済研究センター会報の中で、要するに公的保険の適用対象範囲を基礎的な診療に限定し、それを超える部分は民間保険という組合せが可能になれば医療サービス産業が自由に発展するというふうにお述べになっていて、我々からすると、公的保険の更に上に乗せてやりましょうという考え方ではなくて、むしろ最終的にいうと公的保険を抑制していくんじゃないかと、そういうことを想定されて混合診療というふうにおっしゃっているんじゃないかということを我々は心配しているわけです。これは公的給付が抑制されるということは、低所得者の方々にとってみれば死活問題ですから、これだけの発言を取られると、本当に今おっしゃっているような利用者の立場だけに立って御発言されているような感じが私はいたしません。  その上でもう一つ申し上げれば、民間保険という組合せが可能となれば医療サービス産業が自由に発展しとありますが、アメリカの医療というか、僕がお医者さんたちに話を聞くと、決して自由にやれているわけでも何でもないと。つまり、保険会社に一々頭を下げて保険会社にお伺いを立てないと医療ができないということ。そのことでだれが利益を出しているかというと、あくまで金融セクターが利益を出しているだけであって、医療産業全体なのか、医療直接的なものなのかというと、決してそうではないんだろうと思っております。  今の日本の民間保険会社の、先ほど森田委員からありましたが、メディカルロスは四〇%程度と言われております。つまり、あとの部分は相当な利益を上げているような、保険に対してみんなが加入しなければいけないような社会になるということは私は非効率的ではないのかなと、そういうふうに考えております。  つまり、医療というのは、医療というのは公的部門でやったものと、これは公的部門の中でも無駄は随分ありますよ、それはもう認めた上でですが、民間部門でやった場合に、どちらに患者さんに対して、患者さんに対して有利なのかといえば、私はトータルとすれば公的保険で賄った方がはるかに効率的だ、だから日本の医療費はこれだけ安い中でやれているんだと、そう考えています。  ですから、その点でいうと、混合診療という、聞こえがいいんですが、公的給付をここに書いてあるような形で抑止、限定するんだという考えに立たれると、とても受け入れられないんではないのかなと、そう思いますが、いかがですか。
  111. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 基礎的医療費というふうに私が言ったときに、その中身は基本的にそれは医療の専門家の間で決めていただくというのが前提になっているわけです、そこに書いているかどうかは覚えておりませんが。  問題は、すべての医療を公的保険だけでカバーする、それは理想かもしれませんが、医療技術というのは日進月歩であります。高齢化によってどんどん高齢者の医療費も膨らんでいきます。そういうことをしたときに、本当に政府として、あるいは被保険者としてやっていけるかどうかというのは、これは別に患者の立場から見てもやはり危惧せざるを得ないわけであります。これは公的保険でカバーされる範囲をどうするかというのは大きな政策課題であります。かつて医師会の幹部の方もこういうことを言っておられました。今後、将来は遺伝子治療というのが一般化するだろうと。しかし、遺伝子治療というのは非常にお金が掛かるもので、こういうものをすべて公的保険でカバーするということは無理ではないかと。これは一つの非常に誠実なお答えではないかと。それから、もう一人の医療の専門家の方はこういうことも言っておられます。つまり、今の医療の中には介護的な医療というのがたくさん入っている、これは先ほど中林公述人もおっしゃったような問題でもありますが、したがって、医療の世界では混合診療は認めるべきではないが、今の介護的医療の中のものを介護の世界に移す必要があると。これもやはり広い意味での医療保険の対象範囲を、ある意味ではその範囲を明確化するということになるわけで、こういう余地は日本ではまだまだ大きいんではないかと思います。  ですから、問題は、おっしゃっている医療と言うときの医療の定義をやっぱりきちっとしなければいけないんじゃないかと。今の日本の医療保険ができた当初は、医療といえばやっぱり感染症であり急性症であったと。こういうものは当然混合診療の対象にならないのは当たり前のことであって、むしろ公共サービスのようなもので完全に公的にやった方がむしろいいに決まっているわけであります。ただ、今高齢化が進む日本の医療では、医療というのはどんどん慢性症の比率が高まってきていると。ある意味で医療と介護の境目も極めてあいまいとなっていると。こういう状態のままで、医療だからといってどんどん際限なくそれはすべて公的保険の対象にするということが本当に消費者、納税者、患者にとっていいことなのかどうかというのを考えなければいけない。  だから、基礎的医療とそれ以外の医療を分けるということが直ちに医療の質を落とすというふうに短絡的に考えられてはいけないんじゃないかと思います。それはまさに基礎的医療の範囲をどう定義するかに懸かっているわけであって、それは専門家の間できちっと議論していただきたい。ただ、その議論が全く始まってないわけですよね。医療といえば、現在の医療がすべて公的保険の対象であるかどうかという神学論争から進んでいるわけでありまして、そこはきちっとやっぱり医療の中身を定義する、そうするとおのずからどこまでの医療を公的の保険の対象にするかということが決まってくるわけであります。  先ほども議論がありましたように、既に特定療養費という範囲はいろんな形で厚労省自体が広げているわけでありまして、これも一つのやはり公的保険の対象となる医療の範囲をどうするかということの議論の進捗でもあるわけですから、決してそういう形で、基礎的医療費と言ったからといってこれはもう医療費の抑制だというふうに考える必要はないんじゃないかと思っております。
  112. 櫻井充

    ○櫻井充君 経済財政諮問会議は公的給付の抑制を訴えているわけです、現実的にですね。これは、済みません、正確な数字忘れましたが、平成三十七年になるとたしか十数兆円ですね、厚生労働省が予定していた額よりも十数兆円抑制しているわけですよ。今公述人はそうおっしゃいますが、まだどこが医療でどういうことだということの区別がないまま経済財政諮問会議からはですよ、経済財政諮問会議からは完全に公的給付の抑制を言われているわけです。  我々は、まあ僕は内科の医者です。現職の医者です。私は今心療内科の医者として治療もしております。私は、カウンセリング三十分やって、病院の収入全体でですよ、病院の収入全体で再診料プラス八百円です。これでは心身医学、成り立ちません。このストレス社会の中で心療内科医が増えないのはここに最大の原因がございます。ですから、産婦人科の医者が今どんどん減っていると。これあったのがなくなっているから皆さん崩壊した崩壊したと言っておりますが、心療内科そのもの自体が成り立っておりません。これでなおかつまた公的給付を抑制しなきゃいけないような経済財政諮問会議からの数字を出されたときに、これでは医療産業は全く僕は成り立っていかないんじゃないのかなと、そう感じております。  今介護のセクターのお話がありましたが、医療と介護というのは、これは国がお金を回しております。言わば価格は、価格といいますか、労働者の給料は、ある程度国がもうこれは規定することだと私は思っております。今介護のところでせいぜいまあ地元に行きますと二百五十万ぐらいです、平均給与。これじゃ内需の拡大も何もないんですよ。先ほど財政再建のお話が、中林公述人から話がありましたが、あそこの道筋の中で言えば、一番大事なことは内需の拡大であって、内需の拡大を行っていくためには一体どの産業に力を入れていくのか。ここの分野でいうと、幾ら混合診療だなんだという話になってきても、先ほど申し上げましたが、金融セクターは利益が出るかもしれないけれど、医療の現場で働いている人たちの利益が私は出るとはとても思えません。特に、我々の業界でいえばコメディカルスタッフであるとか、そういう人たちの給料が上がってこないということが実際地域経済がなかなか改善してこないことなんだろうなと、私はそういうふうに思っています。ですから、先ほどからお話があった、混合診療が解禁されるとこれだけその利用者にいいんだということには僕はならないんじゃないかと。  そして、もう一つ私はちょっと危惧しておることがありまして、大変申し訳ございませんが、要するに、国会で一度混合診療に関しては請願も受けて、これは混合診療、基本的に認めないという方向、そしてその間に厚生労働省が努力をするという約束をしていたわけであって、それをなぜ待っていただけないのか、私には理解できない部分があるわけです。  要するに、今回、規制改革会議からまた更に混合診療の解禁をということが出されました。しかも、その混合診療の解禁をという中で、これは平成十六年の六月三日に主要官製市場改革ワーキンググループの議事録の概要の中で、大変申し訳ありませんがこのまま読ませていただくと、八代委員からこのときに、不妊治療、予防治療は今までにない論点であり、そこで対立点を明らかにすることが大事。医療界は診療報酬引下げで一層経営が苦しくなっているので、公開討論で敵方、括弧医療界と書いてありますが、仲間割れを促す。当会議の主張を明確にしていく。仲間割れのためには東大病院だけで認めろと言っても駄目で、例えば臨床研修指定病院など八百ぐらいあるレベルの低い民間病院でもできるようにしろと主張していくと仲間割れが生まれる。  こういうことまでして国会で決められたことに対して穴を開けていかなければいけない、そういうやり方って私はいかがなものなのかなと感じているところがございます。  別に今日はこういうことだけを申し上げたいわけでも何でもありません。我々は我々として、何と言ったらいいんでしょうか、きちんとした国会で、我々は国民の皆さんから選んでいただいて、それで国民の皆さんの立場で議論をさせていただいております。  ですから、委員委員としてここの立場でお話しされることは分かりますが、考え方を主張されるんであれば私はそれで理解いたしますが、決してそうではないようなやり方をされると、果たしてこの国のためになるのかどうかということは僕はちょっと難しいところが出てくるんではないのかなという感じがしております。  もうちょっとお話をさせていただきたいのは、これは学校の問題についてですが、済みません、ちょっと、株式会社立大学の中で、八代公述人は株式会社立大学をたしか推進されていた立場かと思います。私は、LEC大学のところでの問題点があって、結果的に、今は一校だけだったかと思いますけれども、統廃合されるという形になりました。株式会社立大学がなぜ優れていて、なぜ推進しようとされたのか、その点について教えていただけますか。
  113. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) できれば、その株式会社大学に行く前に、先ほどの混合診療の話でいろいろ言われた点についてちょっとお答えしてよろしいでございましょうか。
  114. 櫻井充

    ○櫻井充君 はい。
  115. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) まず、何か引用されました議事録の話ですが、これは私はチェックしておりませんし、基本的に公開もされていない議事録の内容について、その真偽も含めて責任は持てませんので、この中身についてはお答えすることは差し控えたいと思います。  ただ、今、議員が述べられた内容について、ちょっとこの表現はどうかと思いますけれども、混合診療に関して言えば医療界にもいろんな意見があるわけで、今、櫻井議員がおっしゃっていることが医療界全体のコンセンサスでは必ずしもないんじゃないかと思っております。  私よりよっぽどこちらの方の方が明確に言っておられますけれども、ちょっと引用させていただきますと、これは平成十五年三月十三日の読売新聞の「論点」というところで、国立循環器病センター名誉総長の川島康生先生という方が投書をしておられます。  この方は当然お医者さんだと思いますが、川島先生によれば、国民皆保険は良質の医療を国民に提供してきた、しかし、成長低下と高齢者の増加で医療費の多くを老人医療費に費やすことを余儀なくされ、日本の医療水準の向上は鈍化し、欧米諸国に差を付けられている。現在の保険医療体制の維持には更なる税、社会保険料の投入や自己負担増が必要である。そういう意味ですが、ただ、昨今の情勢では公的負担増が容易に受け入れられるとは考え難い。したがって、現実的な手段としては、良い医療を求める人に費用を負担してもらうということが一つの対策ではないだろうか。混合診療の導入は営利優先の医療に流れるという主張があるけれども、それを防止するために第三者に対しても徹底した情報公開を求めればいいのではないか。これによって病院は高い水準の医療を提供するために設備の充実に努め、欧米の半分以下といった危険水準の看護師の数を増やし、より安全な医療提供体制が可能ではないか。混合診療の導入で国民皆保険が崩壊するという主張もあるけれども、今や実質的な意味国民皆保険の崩壊を防ぐためにこそ混合診療の導入が必要だというふうにこのお医者さんは言っておられるわけでありまして、これはいろんな意見一つでありますけれども、どういう制約条件の下で何を考えるかということが大事ではないか。それから、この方も混合診療という言葉を使っておられますけれども、実際にはそれは既にある特定療養費という制度をどういうふうに弾力的に考えていくかという問題になるわけであります。  そういう意味では、やはりもう少し現実的な立場で制約条件を考えてやればいいわけでありまして、低所得者層の人が損をしないような形で、きちっと皆保険体制を維持するような形で特定療養費の拡大をする余地は十分にまだあるんではないかというふうに考えております。  株式会社大学の方に移りたいと思いますけれども、この株式会社大学というのは実は構造改革特区で初めて認められたものであります。これは決して、櫻井議員がおっしゃるように、株式会社学校の方が今の学校法人よりも必ず質が優れている、だから認めなきゃいけないという論理ではないわけであります。これは、言わば消費者の多様な選択肢の一つとして、国公立あるいは学校法人以外でも、例えば学校設置会社による大学、高校、中学等があってもいいんではないかという要望にこたえて特区という形で認められたわけであります。  現在、学校設置会社が経営する学校は全国で二十一校あります。小学校が一、中高が十四、大学、大学院が六つあります。委員御指摘のように、そのうちのLEC大学というのが言わば文科省の規定に違反した行為をしたわけで、文科省から処分を受けたわけであります。これは当然のことであって、株式会社学校であろうが学校法人であろうが、ルールに反したことをすれば厳しく処罰されるのは当たり前のことであります。  なぜこういう学校法人じゃない株式会社学校を認めることが人々のためになるかと申しますと、結果的に、例えば、今はどんどん社会人という学生が増えているわけですが、その社会人学生たちが多様な授業を受けたいと思ったときに、どうしても都心の利便性のあるところで教育を受けたいわけでありますが、学校法人の場合ですと、まず寄附行為というのが前提になる。土地や建物を寄附した上で大学をつくらなければいけないから、どうしても言わば土地の安いところにしかつくれないわけでありまして、そういうことになると、忙しいサラリーマンなんかはなかなか受けれない。  ですから、その意味で、従来の寄附行為という、土地、建物を法人が寄附して学校法人をつくり、文科省に認めてもらい、補助金とか税制上の優遇措置を受けるという仕組み以外に株式会社という形で、少ない資本で建物を賃貸して、そこで授業をするというやり方があってもいいんではないか。ただし、大学でありますから、教育内容はきちっと文科省の規定に沿ったものでなければいけない。逆に、教育内容が優れたものであれば、ある意味で、学生の立場から見て、なぜ国からの助成とか税制上の措置が著しく違うのかという疑問が起こるわけです。  残念ながら、この特区でも、株式会社学校というのは文科省に認めてもらったわけですが、依然として税制上や補助金の差は付いているわけで、こういう利用者の立場から見ればなぜ自分たちだけが高い授業料を払わなければいけないかという問題は残るわけでありますが、少なくとも、こういう消費者の多様なニーズにこたえた大学を一つでも多くつくる。そのときは学校法人という特定の形態だけに限定する必要はないんではないか、問題は教育の中身である、中身が悪ければきちっと文科省がそれを管理すると、そういうことを、株式会社学校であろうが学校法人であろうが公立大学であろうが、平等にきちっと規制するということが私は消費者にとって必要なことではないかと考えております。
  116. 櫻井充

    ○櫻井充君 おっしゃることはもうごもっともの点も随分ございます。  ただ、現実からしてみると、そのLEC大学の例だけで大変恐縮ではございますが、予備校生と一緒に授業もやっていた。それから、教師はビデオで録画した、そしてそれを授業で使っていた。とても大学とは呼べないところで、予備校の延長線上なわけです。  そうすると、今お話がありましたが、なぜ社会人の方がもう一度大学に行かなきゃいけないのかということが私にはちょっと理解できないわけですね。つまり、大学という名前の付くところがどうなのかということだと思っています。つまり、専門学校でも何でも、知識が習得できればいいのかもしれません。つまり、LEC大学などに行った人たちからしてみると、資格を取りやすいからここはいいというふうに言っている方々が随分、アンケートを見るとそうだったわけですけれども。そうすると、資格を取るところが僕は大学ではないと思っておりますから、もっと様々なことを学ぶことが大学だと思っているので、そういうようなことに限っていくとすると、大学ということではないんじゃないのかなと、そう思います。  それから、先ほど私学助成のお話がございましたが、私学助成で、例えば株式会社が、それであれば例えば補助金を受けることができる、税制上の優遇措置もあると。これが結局は株主の配当の原資になる可能性もあるわけですね。そうすると、果たしてそれが、今度は逆に言うと、一般的な株式会社と横並びになったときには整合性が取れるのかどうかというと、僕はちょっと難しいんじゃないのかなと、そういうふうにも思っております。  いずれにしても、質だということであったとすれば、特にLECの場合には認可が余りにおかしなことがあって、とても一般の大学として認められもしないようなところで結果的には認められてしまって、だれが困ったかというと先ほど出てきた消費者が一番困っているわけですね。これは授業料も払っているんです。卒業証書ももらってないんです。こんなところだと思ってやめている人がいっぱいいるわけです。そうすると、結果的には消費者が困っているわけですよね。  ですから、そういう点から考えてくると、何でも規制緩和をして全部のところがやれるようにしていくということがいいのかどうかというと、僕はちょっと違うんじゃないかと。つまり、規制緩和をして入口のところで緩めるんであれば、出口のところでもっとちゃんとチェックするところもつくらなきゃいけないのに、今そこの部分ができ上がってもいない中でその規制だけ緩和していくから様々な問題が起こってくるんじゃないのかなと、そういう感じがしています。  もう一つ、特区というお話がありましたが、本来特区というのは、地域にとって特別なものという意味合いと全国展開していく上においての社会実験的な意味合いの特区と二つあるはずなんですね。そうすると、学校などの株式会社立特区からすると、本来であればこの株式会社立大学がうまくいったかどうかという経緯を見てから特区として今度は全国に解禁するべきなんじゃないかということを私は訴えることが筋ではないのかなと、そう思っているんです。  ところが、これ平成十五年の五月になりますが、宮内議長と八代委員が文部科学省に出向いていって、要するにLEC大学のまだ申請が行われている時期ですが、このときに、もう二年以内に全部要するに解禁しろと、全国展開しろという要望も出されているわけですよ。つまり、御主張は御主張として承りますが、しかし、成功するかしないかも分かる前からこうやって、何というんでしょうか、全国展開してこいというようなやり方をするということそのもの自体に私はもう一つ問題があるんではないのかなと、そう思います。そうしないと、今私が申し上げたとおり、消費者の人たちが困ってくるという事例があるからでございます。  この点についていかがでしょう。
  117. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 逆の順序でお答えさせていただきますが、まず、私と宮内議長が文科省に出向いて要望を出したということなんですが、それは当然文科省の方からそういう資料を櫻井議員は入手されたと思いますが、私の方は記憶はございません。また、そういうメモも私は全然チェックもしておりませんし、言わば文科省はそういうことに対する反対者の立場から言っているわけでありまして、言わばソースの明らかでないそういう資料に基づいてやはり言われるのはちょっと私としては心外ではないか。  そもそも、言ったとしても、それはLECについてやれというようなことは私は言うはずはないわけでありまして、言ったとすれば、それは速やかな特区についてやったものについては全国展開のプロセスを考えるべきだという一般論で言ったとしたら可能性はありますけど、特定の会社のケースについて言うというのは私はちょっと信じられないと思います。もしそういう資料を櫻井議員がお持ちであったとすれば、それは私は一種の捏造の可能性は非常に大きいと思います。(発言する者あり)LECのことではないということですか。はい、それでは分かりました。  それで、元に戻しますと、特区の全国展開というのは、私がまさに評価委員長をやっておりました特区評価委員会のある意味では仕事でありまして、これはきちっと文科省と一緒に話し合った結果、ほかの特区の例も全部そうでありますが、特区でやったことについて障害はないということが検証されれば、もっと正確に言いますと、弊害が認められなかったということでいいわけですが、そうすると全国展開するという、これは特区法自体がそういう仕組みになっているわけです。  なぜそう急ぐかということは文科省等からもいろいろ言われているわけでありますけれども、これは実は規制改革会議の方から、特区に逃げ込むことをやっぱり防ぐべきではないかという、つまり、各省が本来ならば直ちに全国展開すべき規制について、取りあえず検証するという名目で特区に逃げ込むということを防ぐ必要があるというような御意見もあったわけです。ですから、その意味では、きちっとした検証をした上で、速やかに特定の地域だけじゃなくて全国で使えるようにするというのが実は特区法の基本的な考え方であるわけです。  それから、今、LECについて消費者が、学生が損をしたとおっしゃったわけで、それは全くそのとおりです。ただ、それは学校法人についてもあちこちで起こっていることでありまして、例えば、文科省が定めた定員以上に学生を入れた私立大学というのはよく聞きますし、また定員割れの学校もあちこちにあります。そういうところで今文科省が学校評価でいろいろ指導しているわけですが。  ですから、それは、櫻井議員がおっしゃったように事後規制は絶対必要であります。ちゃんとした学生が不利にならないような立場でやるために政府として規制する必要があると。ただ、この事後規制というのは、株式会社学校だけじゃなくて、繰り返しになりますが、学校法人、公立学校も含めて平等にちゃんと規制しなければいけないということで、LECに問題があったということは御承知のとおりでありますが、それはやはり等しい立場であらゆる多様な形態の学校をちゃんと規制していくということが大事ではないかと思っております。  それで、配当に利益が回るからいけないというふうに櫻井議員がおっしゃったわけですが、これは経済学の立場から見ると甚だちょっと理解し難いことであります。(発言する者あり)税金がね、はい、分かりました。つまり、株式会社学校に税金を入れると、その税金が言わば配当の形で株主に流出すると、これはいかがなものかということであります。ただ、その学校法人も私学助成金を受けているわけであります。学校法人も設備が必要であれば銀行からお金を借りて設備を造るわけであります。配当はありませんが利子の形で、まさに櫻井議員が先ほど指摘されたように、金融セクターに税金がまさに紛れ込んで流れるということは現に起こっているわけであります。  ですから、配当をすれば営利であると、金利であれば非営利であると、そういう(発言する者あり)もう一度、じゃ最初から説明させていただきますが……(発言する者あり)
  118. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 御静粛にお願いをいたします。
  119. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) もう一度最初から説明させていただきますが、経済学では資本コストという概念がございます。これは、設備投資をしたときに、そのためにどれだけお金が掛かるかという議論でありまして、これは株式を発行して配当を払うというのも資本コストの一部でございますし、銀行からお金を借りて金利を払うというのも資本コストの一部であります。  ですから、資本コストという意味では配当と金利には別に違いはないわけであります。ですから、その税金というものが私立学校にも行けば、それは金利という形で金融セクターに行くという可能性は当然あるわけでありまして、それは別に構わないというのであれば、これはむしろ銀行業界が非常に喜ぶような話になるんじゃないかというふうに思っております。  取りあえず、それでお話を終わります。
  120. 櫻井充

    ○櫻井充君 ちょっと最後のところは僕は違うんじゃないかなと思いますが、時間がないので。  もう一つ、私学助成のところで、憲法論議を盾にして私学助成がいつも問題にされて、結局そこで門前払いするのはおかしいじゃないかというお話になっていますが、憲法解釈が現状そうであったとすれば、基本的にはこれは変えられないわけであって、憲法を我々、それをまず守り、その上で法律を組み立てていくわけですよ。ですが、その私学助成が駄目だというものが、八代公述人の論ですと、憲法論議だけを盾にして私学助成が認められないのはおかしいんじゃないかという御発言もなされているんですね。ですから、そうだとすると、憲法って一体何のためにあるのかなと、そういう感じがしているわけでございます。その点についてはいかがですか。
  121. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 私は別にその点について憲法を変えろなんてことは一切言った覚えはありません。問題は憲法の解釈であります。  憲法の解釈のときに、公の支配に属せざる教育、福祉、慈善の事業に対して公金を支出してはならない、したがって私学助成金も株式会社には出してはいけない、なぜならば株式会社は公の支配に属していないからというのが文科省の一つの解釈でございます。問題はこの公の支配の解釈であって、これは憲法ではなくてまさに学校教育法の解釈であるわけです。あるいは、もっと言えば、ちょっと忘れましたが、私学助成金を規定している法律でありますけれども、学校教育法であれば文科省が株式会社学校を言わば学校として認めた段階でこれはクリアされているわけであります。  問題は一種のトートロジーでありまして、学校法人でなければ公の支配に属していないというのが文科省の解釈であって、それはおかしいんじゃないか。だって、文科省がきちっとカリキュラムを規制し、それから例えば入学定員とかいろいろな形の規制をしていれば、これは立派に公の支配に属することになるんじゃないかと。だから、学校法人以外でも、文科省がコントロールしているいわゆる学校であれば、これを学校法人でないからといって私学助成の対象にするということはできないということはおかしいんじゃないか。あるいは、百歩譲ってそれができないとしたら、例えばバウチャーの形で、学校ではなくて個人に対して給付するのであれば更に問題は少ないんではないかと、こういう議論をしていた記憶がございます。
  122. 櫻井充

    ○櫻井充君 憲法の解釈というのは、これは個人個人によって違うということはあると思っております。ただ、それは今、公にどういうふうに理解されているのかということを前提に話をしてくるということが筋ではないのかなと。各個人がこうだから、だからこういうふうにみんなで解釈すべきだというふうにはそう簡単にいかないんじゃないのかなと、憲法九条の解釈なんかに関しても我々はそういうふうに思っています。  それから、労働問題についてもちょっとだけ質問させていただきたいんですが、要するにハローワークの民営化ということに、それを推進されているようですが、今ハローワークの民営化に関して民間会社でじゃどれだけ手を挙げているかというと、今のところ、それこそさっき出ましたが、LECとグッドウィルぐらいなんだろうと思っております。この二社とも結構問題がある会社でして、そうしてくると、大概のところはハローワークそのもの自体が民間ではなくて公的セクターでやるべきではないのかというお話をされていて、しかも、それはそれで基本的にはある種落ち着いたところなんではないのかなと、そう思っていますが、そこでも混合診療のときと同じような形でいまだに民営化するべきではないのかというふうに御主張されているようですが、その点について、なぜそういう、民間と官の方での市場化テストをやってみても官の方が優れていたという結果も出ているはずですから、そうしてくると、なぜ民営化にこだわるのか、その点について教えていただけますか。
  123. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) さっきの点にちょっと戻りますが、私は決して憲法解釈を議論しているわけではなくて、学校教育法の問題を解釈しているわけで、憲法解釈をする権利は私は全然ないと思っております。それだけであります。  それからもう一つは、今、LECとグッドウィルが応募してきたというのは私は初耳でありまして、この法案は別にまだ国会を通っていないわけでありますから、およそ募集規定も厚労省は掛けていないはずであって、それはちょっと、多分それは何かの間違いではないかと思います。それはきちっと法律が通った後、厚労省の方から募集が掛けられて、そのときにどういう会社が来るかというのは別の話です。  それから、先ほどちょっと私がやや誤解を受けるような表現をしたかと思いますが、ハローワークの一部を切り出したキャリア交流プラザとか求人開拓事業というのをモデル事業としてこれまで厚生労働省でやってきました。そこで、全く初めてのことなので、民間の会社が入って、パフォーマンス的にはそれまで長らくやってきた官の事業者と比べて同じかやや劣るというようなパフォーマンスをしてきたということを申し上げたわけで、これはやはり、企業でもそうですが、全体としてやっている事業のごく一部だけを切り離してさあやってみろといってもなかなかうまくいかない可能性がある。したがって、これだけを見て民間の事業者が劣っているという結論は到底出せないわけで、厚労省の評価委員会でもそういうことになっていたと思います。  例えば一つ、細かいことで申し訳ありませんが、ハローワークの中にキャリア交流プラザという組織があるときはハローワークの所長がそれを兼ねているわけですよね。ところが、その一部だけ民間に切り出すと、民間はそれを管理する人が別途必要になる。そういう意味では、ある事業の一部だけ切り出しても必ずしもイコールフッティングになっているかどうかというのがよく分からないんで、その辺りは市場化テストの監理委員会がいろいろ今検討されている途中であります。  それから、櫻井委員はさっきから民営化という言葉を何回も使っておりますが、我々はハローワークの民営化というのは全く検討に入っていないわけでありまして、民営化というのは、例えばJR民営化のように、完全に経営主体が民間に移ることを一般に意味するわけです。ハローワークについては、先ほどの議員の方の御質問にも答えましたが、あくまでも経営主体は国であって、厚生労働省であって、これはILO条約の制約からも当然そうでなければいけない。  ただ、厚労省がきちっとハローワークを無料の職業紹介ネットワークとして全国的に展開する義務は今後とも負うわけでありますが、具体的に窓口業務をやるのが本当に厚労省の公務員でなければできないほどハローワークの業務というのは高度に専門的なものであるかどうか、あるいは専門的でなくても民間人では到底できないような特殊な技能があるのかどうかということが問題になっているわけです。  それをまさしくテストするのが市場化テストでありまして、今検討、何というか、挙がっている案というのは、一つのハローワークを二つに分けて、片一方を官、片一方を民に分けて、それぞれがどれだけいいサービスを民間の方に提供できるかを競ってみる。その成果を一定の期間の間に見て、もし民の方が優れていれば民の民間開放を広げていく、さもなければ官のままでやっていくということをこれから実験しようというものにすぎないわけで、始めに民営化ありきという考え方では全くないわけであります。  ですから、こういう市場化テストということをすることによってより良い職業紹介サービスが提供されるとすれば、それは求職者にとって当然望ましいことではないだろうか。今は人材ビジネスもどんどん発達してきておりますので、その中には、そういう問題のあるところだけじゃなくて立派な人材ビジネスの会社もありますので、そういうところがやはりそのノウハウを使ってこれまで官の事業者が独占していた業務に参入する。それによって官の事業者も刺激を受けて一生懸命やると。市場化テストの目的というのはここにもあるわけであります。  諸外国の例でも、競争した結果、官が勝ったというケースは決して珍しくないわけで、問題は、競争を導入するということが実は市場化テストの一番大きな問題であるわけでありまして、民営化とは違うということを是非理解お願いしたいと思います。
  124. 櫻井充

    ○櫻井充君 済みません。言葉が間違っておりました。これは民間委託でございます。済みません。  今ずっとお話をお伺いしながら、やっぱりこういう議論を国会で本当はできれば僕はもっといいんじゃないのかなと正直思いました。つまり、私は今まで規制改革会議であるとか経済財政諮問会議であるとか、そういう方々是非国会に来ていただいて自由に発言していただきたいと。そして、それを我々がどう受け止めるのかということが問題なのであって、そこを今日、本当に僕は八代公述人には物すごく感謝申し上げているんですが、今日来ていただいて良かったなと、本当にそう思います。  ですから、規制改革会議の方は残念ながら来ていただけませんでしたが、これからやっぱりこういう機会が僕はもっともっとあっていいんじゃないのかなと、そういうふうに思っています。  なぜこういうことを申し上げるのかというと、今の政治の在り方は、済みません、最後にちょっと、八代公述人の考えと私の考えとちょっと違うところがあるものですから、政治の在り方でいうと、我々国会議員は最後は選挙がございます。それから、国家公務員は国家公務員で、国家公務員法に規定されている中で制限されております。私は、さっきの混合診療の問題一つ取っても、命にかかわることに対して最終的に責任の所在のない方がどこまで意見を言っていいのかというところがあるんじゃないのかというふうに考えているんですね。  これは総合規制改革会議の中で、多分これは清家委員とお呼びしてよろしいのか、ちょっと名前間違っていればこれ訂正させていただきたいと思いますが、この方が、結果的にはお辞めになられているんですが、この会議は運動体でもなければ敵と戦う組織でもないと思っている、私は専門家としてその知見を述べるために参加している、この会議は官庁と戦うためではなく、国のために必要と考えられる規制緩和があればそれについて専門家として意見を述べるところであると認識している、なお申し上げたいのは、特に規制緩和について官庁との関係もあるかもしれないが、むしろ民間の業界同士の利害対立の問題もある、このような民間の利害対立の問題は、本来この会議で決めるべきではなく、政治家が選挙で国民に選択を求めるべき問題である、つまり、政治家が本来政治決定すべきものを、選挙で選ばれたわけではない我々がこっちとこっちというように仕分けするとはやり過ぎではないかと思うというふうに述べられておりまして、僕はまさしくこれが正論なんではないのかなと、そう感じております。  ですから、私は、今日は八代公述人のお考えは随分聞かせていただきました。そこの中で参考になるところもございました。そして私と意見の違うところもありましたが、そういったことを是非国会の場でもっと積極的にやっていった方が、お互いに、何というんでしょうか、メリットがあるんじゃないのかなと、私はそう思いますが、いかがでございましょうか。
  125. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) まず、清家さんのお話の方にちょっと戻らせていただきたいと思いますが、我々といいますか、規制改革会議も諮問会議も、決定する権利は何もないんですよね。規制改革会議委員というのはあくまで答申をまとめる。答申の中でも先ほど申し上げましたように具体的施策と書かれていて、各省と合意するところを各省の方と意見交換をしながら共同で決めていく、それで各省が合意すればそれは答申に盛り込まれ、それが閣議決定されて、担当省庁の法案となって国会に出てきて、国会審議して国会が決められるものであるわけです。  ですから、そういう民間委員が何かを最終的に決めるなんというシステムには今の行政の仕組みはなってないわけであります。そういう意味では、清家さんの言っておられることというのは別に変わらないわけであります。  問題は、各省と交渉するときに、いろんなやり方があるわけですが、やはり各省の方の御意見というのはやっぱりかなり伝統的な面がある。それを我々が、あるいは専門委員の方の協力を得て、医療の分野であれば専門委員は当然お医者さんであります。よく規制改革会議にはお医者さんもいないのに医療問題を議論するのはおかしいという御意見がありますが、これは間違いでありまして、かつてお医者さんが規制改革会議の前身の組織委員になったこともありますし、ずっと専門委員としては参加されております。  そういう意味で、各専門委員の知見を使って、各省の方といろいろ議論しながら合意できるところはまとめていくというプロセスでやっているわけでありまして、これはいろんな形で貢献している面もあるんじゃないか。先ほどの学校の問題なんかにいたしましても、株式会社学校の問題ばかりが議論されておりますけれども、例えば不登校児童のためのNPOの学校なんかも特区で初めて認められたわけであります。これは長らく文科省が放置してきた問題でありまして、こういうことは残念ながら文科省の審議会でもなかなか出てこない。  そういうものを、規制改革会議とか特区のプロセスで草の根の意見を吸い上げて、各省庁と交渉する過程で、各省庁の人もこれはもっともであるという形で制度改革を認めていただいているわけであります。だから、あくまで各省庁が合意していかなければ何も決まらないというのが規制改革会議であり、そのほかのものでもあるわけであります。  国会でということでありますが、これはまたそういう何というか御意向があれば改めて検討させていただきたいと思います。私の一存では何とも言えないと思いますので、よろしくお願いいたします。
  126. 櫻井充

    ○櫻井充君 今るるお話がありましたが、必ずしもそういうことになっていない場面もあるようでして、例えばハローワークのことに関する大田大臣の私的な懇談会などは、本来のメンバーでないのにオブザーバーとして随分いろいろ発言されていて、ある委員の方なんかが、ちょっとこういうことじゃないんじゃないかという御発言もされておるようですが、そういう点を含めて、もうちょっとやり方というのがあっていいんじゃないのかなというふうに、私は個人的にはそう思っているところがあったものですから、先ほどああいう形であの発言をさせていただきました。  済みません、もうあと時間がわずかになって、中林公述人にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、先ほどの中の財政再建は、これはだれしも今の中でいえばやらなきゃいけないことであって、ただし、これはやる時期とやる方法を間違って二回失敗しているわけです。これは平成九年と平成十三年かと思います。  私は、何が失敗なのかというと、要するに、景気の悪い時期に個人の負担を増やすようなやり方をして個人消費が落ち込んでしまったということがまず一つだとは思いますが、抜本的に言うと、次の産業をどうするのかということが全く議論されてきていない。そうすると、どこを主要産業とするのかということがなければ、どこで税収を確保して何をやっていくという、その国家のビジョンというのが全くでき上がらないんだと思っているんですね。  そういう点でいえば、これから高齢社会を迎えるということでいうと、医療や介護産業というのがもうこれから主力になってこなきゃいけないんじゃないかと。そうすると、これは、先ほど申し上げましたが、国がお金を回すシステムですから、基本的に申し上げれば。そうすると、支出は当然増えると思っています。支出はそれなりに増えますが、お金さえ回れば、お金さえ回れば結果的には僕は問題ないんじゃないかと。それからもう一つ言うと、雇用が生まれさえすれば、雇用がきちんと生まれ、先ほど言いましたが、二百五十万程度の所得の人であったら、その個人消費といったら限界があります。この方々が例えば四百万なら四百万まで仮に増えたとしますよね。そうすると、それが全部個人消費にほとんど回ってくるはずですから。  そういうことになってくると、どこがエンジンとして回すのかということになると、医療や介護の部分というのは、いたずらに抑制するのではなくて、やっぱり公的分野がドライブを掛けるような形にしないといけないんじゃないのかなと、そう思いますが、その点についてまずいかがですか。
  127. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) ありがとうございます。  医療に関して、それから社会保障関係費についてのことでございますけれども、まず、全体の歳入と歳出のバランスを考えるということは非常に大事だと、そして、長期的にこれを見た上でどの産業が大事かということについては議員のおっしゃるとおりだというふうに思います。  実は、私の夫が勤務医で外科医です。ですから、先生方のおっしゃることというのは本当に身にしみてよく分かっているつもりでございます。その上でいろいろ考えてみますに、やはり、特にこういった予算委員会で議論をする場合には、どこに財源を求めるのか、だれに支払ってもらうのかということを考えておく必要があるというふうに思います。  というのは、社会主義体制で、すべて税金で集めたお金を産業の中に流し込んでいくのか、そしてそれが一番効率のいい社会経済在り方なのか、これは、言ってみれば、限りなく社会主義に近い方向になっていく可能性が残っていると思います。それとも、政府税金で集めたお金を分配するという作業はある程度の限度にとどめておいて、その先をある程度自由に活性化される経済をデザインしていこうというふうに考えるのか、この辺が大きな違いになってくると思うんです。  そのときに、やはり国民にその信を問うていく必要がありますけれども、その場合に、どうしてもこの政策をしたならばこれだけのお金が掛かるということをセットで議論しないと、国民も選択のしようがないと思うんです。欲しい欲しいというのは、当然国民の側からしたらすべて欲しいと思います。道路も欲しいですし、病院も欲しいですし、最大限の保険のカバーしてもらえる範囲も欲しいです。だけれども、そのためにはじゃどれくらいコストが掛かるのかということがやはり一番大事な議論の基本になるのではないかと思いますので、特に予算委員会という場所ではその辺を御考慮いただければというふうに考えます。
  128. 櫻井充

    ○櫻井充君 僕は社会主義政策、悪いと思っておりません。つまり、全部が僕は社会主義だと言っているわけではなくて、医療の分野は社会主義の方が効率的ではないのかと思っているだけの話です。  一方で、例えば建設業なら建設業でどうかというと、例えば中心市街地の空洞化の問題を考えると、それから、これからの高齢社会を考えたら、もう一回これ地ならししてもらって区画整理事業をやってもらって、まあ五階建てか十階建てのマンションを建てて、そこに高齢者の方に住んでもらった方がよっぽど効率的なんですね。ですが、それはもう民間需要でやればいいわけですよ、民間のファンドとかそういうものを使って。  そうすると、建設業がむしろ公共事業に依存している体質がおかしい、今の医療を民間の方にどんどんシフトさせていくというのが僕はおかしくて、流れからするとそうではなくて、そうではなくて、医療や介護というような公的セクターでお金を回していくと。むしろ、建設業なら建設業というところはむしろ民間で今のような、例えば高速道路無料にすると出入口に町ができますから、そういう民間セクターでお金を回すようなことを考えていくというふうにしていくことの方が大事なんじゃないのかなと。つまり、産業ごとによってある種色分けしていくということが大事じゃないかと思っているんですが、その点についていかがですか。
  129. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) それはもう御指摘のとおりだと思います。これから時代が変わって、そして要らなくなった事業というものも当然出てくるでしょうし、それから将来的にますます需要が拡大しなければならない産業もあると思います。  ただ、どうしてもやはり日本に欠けているのは定量的な議論であると指摘せざるを得ません。議会の中に定量的な試算をできる機関を置くというのは大変なことかもしれませんけれども、いずれ、長い将来、日本が構造的な変化をしっかり国民に問うていくためには定量的な数字を出していく必要がどうしてもあって、これは避けて通れない道だと思いますので、そういった一部社会主義的な産業を発展させていくためにはでは税金でどれくらい取っていくのかということをオプションとして、セットで、裏表のセットで出していかなければいけないというふうに、改めて、同じことですけれども、言わせていただきたいと思います。
  130. 櫻井充

    ○櫻井充君 イギリスは結局医療費を増やして成功しているわけですよ。つまり、経済というのは、僕が勉強してきてみて初めて分かったのは、医療と違って実験ができないということなんです。そうすると、実験ができない場合にどうするかというと、ほかの国でどうだったのかと、昔こういう同じ場面があったらどうだったのかということを検証するしかないんですね。そういう点でいうと、全額税方式でやっているイギリスがああいう形で医療費を増やしたとしてもそれほど借金を増やしていないんだとすると、今までの概念そのものを変えていかないといけないんじゃないのかなというふうに思っております。  済みません、これで質問を終わります。  ありがとうございました。
  131. 林芳正

    ○林芳正君 自民党の林芳正でございます。  今日は、八代公述人、また中林公述人、お忙しい中御参集いただきまして、本当にありがとうございました。また、今そこの席で櫻井委員とのやり取りをずっと聞かせていただいておりましたが、本当に私も来ていただいてこういう場で御議論いただいてよかったなというふうに思っております。  私、最初から余談になりますけれども、議員仲間でバンドをつくっておりまして、ギインズというのでございますが、その中で、実はこれは元々は捕鯨問題をやっておるものですから、それをテーマにして、お互い意見は違っても意見が違うということを認め合うということは大事ではないかということで、「アグリー・ツー・ディスアグリー」という歌を作ったことがございますが、今それを、やり取りを聞いておりまして、なるほど、そういうことが可能なことがあるんだなと思って、来ていただいて本当によかったなというふうに思っております。  そこで、私の方からもせっかくの機会ですのでいろいろ聞いてまいりたいと思いますが、今大変興味深い、格調の高い御議論があったと思っておりますのは、あるパートは社会主義でもいいではないかと、こういう今御議論がありました。私も冒頭に、経済思想と言うとちょっとあれかもしれませんが、どういう考え方で政策をつくっていくのかという基本のところをお二人に聞いてまいりたいと思うんです。  それは、随分前ですが、加藤紘一さんに薦められて「市場対国家」という本を、面白いよと言われて、これは随分分厚い本ですが、ヤーギンさんという方ともう一人、書かれた本であります。これは、いろんな時代のいろんな国で、コマンディングハイツという言葉を使っておりましたが、だれが政策を主に決定するのかと。時々においてそれは、例えば社会主義のソ連であればこれは政府でありますし、非常にフリードマンなんかが元気なころのアメリカでは市場にゆだねようということがあったわけですけれども、要は、この本で著者が言っておりますのは、一つの正解がないと、これは時代、またその社会に応じてどちらを、市場か国家かどちらにより重きを置いて物事を決めていくのかというのは様々なケースがあると、こういう本でございます。  日本の記述もあるわけでございますが、まさに、最初に夜警国家という経済思想があって、その後いろんな格差が出てきて福祉国家というのが十九世紀から二十世紀の初頭にかけて出てきて、それをやり過ぎて非常に今度は財政がもたなくなってきてフリードマン、シカゴ学派的なものが出てきているんではないかと、大ざっぱに言ってそういうことでございますが。  ちょうど、ちょうどと言うと語弊があるかもしれませんけれども、昨年の七月に参議院選がございまして、どうも今までずっとやってきたこのシカゴ学派的なものが、否定とまではいかないまでも、かなり疑問符を付けられたんではないのかなと。私自身も候補として戦っておりまして、この参議院選における国民のマンデートというのは何なのかなと、こういうふうに思っておりまして。  行ったり来たりして、イギリスでは政権交代起これば国有化したものをまた民営化する、またその逆もあるということでございますが、今、方向性としてどちらに向かって国民の意識としては行っているのか、また、お二人が今専門家として御覧になっていて、今からどういう方向に進んでいったらいいとお考えなのか、それぞれ御見解を御開陳願えればと思います。
  132. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  まず、夜警国家という概念でありますけれども、これは、要するに政府というのは警察、防衛、消防ぐらいやっていればいいという、非常にある意味で小さな政府論だというふうに一般には理解されておりますが、これは実は必ずしも正しくないんじゃないか。これは、アダム・スミスの「国富論」という本を本屋で立ち読みしていただければ分かると思いますが、実は、この「国富論」の実にその四分の一は財政論で占められているわけです。ですから、アダム・スミスが決して政府の役割を小さくていいと言っていたわけではないわけであります。  なぜ夜警国家という概念が出たかというと、これ若干経済学史的で申し訳ありませんが、その前にマーカンティリズムという思想がありまして、これはイギリスの東インド会社に見られるような国家独占貿易です。国が独占的にインドとの貿易を行って全く競争を排すると、こういうことは断じてしてはいけないという批判としてアダム・スミスの夜警国家が出たわけでありまして、政府がきちっとやるべきことをやるということを決してアダム・スミスは否定したわけではないわけであります。  シカゴ学派というのは極端にいろいろなことを言う人たちでありますが、日本でそういうシカゴ学派的な思想の政策が現に行われたかどうかというと、私は極めて疑問だと思います。それはむしろ、小泉政権のやり方を新自由主義だというレッテルを張られたわけであって、実際にやられたことというのは、ある意味では、何というか、もっと現実的と申しますか、そんなに極端なことではなくて、今まで何でも国がやることが正しいことであると、ある意味でマーカンティリズムに近いような思想を若干軌道修正したという形で、人々に市場というのもちゃんと使えるんだという方向に転換したのだと思います。  その意味では、私は、市場重視の考え方というのはまだ始まったばかりであって、決してこれで終わったわけではないと思っております。市場という言葉もいろいろ誤解されまして、私は健全な市場主義ということを言っているわけでありまして、そういう意味では、政府がきちっとコントロールすると、すべきことはすると、その上で民間が自由なビジネス活動をするというのが望ましいやり方ではないかと。  それから、世界の流れは明らかにグローバリゼーションという形で来ておりまして、冒頭の陳述でも申し上げましたように、かつての共産主義体制というのが崩壊して市場経済と統合してしまったと。一方で、インドとか中国とか、かつて低開発国と言われていたところが急速に力を付けて、これも市場主義の中に入ってきた。その意味では、日本以外の国はほとんどそういう意味では市場主義の中に生きているわけでありまして、そのダイナミックな流れに残念ながら日本は乗り遅れているというふうに理解しております。  それが、九〇年代以降、アジアは成長センターとして非常に中国を始め高い経済成長を実現している、日本はその中でわずか一・五%の低成長にあえいでいるということの違いは、やはりこの市場をうまく活用するかどうかということにおいて、残念ながらこれまでの日本の政策は十分成功してなかったと言えるんではないかと思っております。  その意味では、やはり国際的な流れとうまくこの流れを活用するような形でもっとオープンな国をつくっていく、自由貿易体制を国内でも取り入れていく、そのためにはきちっとした政府の監督機能、あるいは公平な競争を維持するための十分な投資といいますか、そういうものもちゃんとやっていく必要はあるんじゃないか。やっぱり政府が賢明でなければ健全な市場は育たないわけでありますから、政府が要らないわけじゃない、むしろもっと政府の機能というのは必要とされているというふうに私は思っております。
  133. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 市場と国家ということですけれども、これはまさしく八代公述人がおっしゃったように、どちらもなければならない重要なものだというふうには思います。  ただ、ちょうど私がアメリカ予算をやっておりましたころに、やはり共和党と民主党の対立軸というのは、大きい政府か小さい政府かということがかなり問われておりました。その大きい政府か小さい政府かということに関しては、市場に重きを置くのか、それとも国家政府がそれをコントロールする方に重きを置くのかということの違いとして出てきております。  国家というものについてかなり不信感を抱いていたのが共和党の方だと私は思います。つまり、小さい政府をうたっていた方です。  なぜならば、こちらにいらっしゃるのは政治家の皆さんですけれども、政治家の方々ですとかあるいはお役人、こういった人たちにすべてを任せておいて、一番効率的なお金運営ですとかサービスの運営が本当にできるのか、本当にこれを一〇〇%信用できるのかというところに問いの根源が出てくると思うんです。  共和党の方は、いや、政治家と役人にすべてを任せてそして民衆、民はそれに従うだけでは、本当のいい効率的な社会は構築できない、本当だったら、私たち国民が自ら立ち上がって、そして、特にアメリカなどはNPOですとか市民社会が中心になってできた国ですから、こういった自分たちの能動的な動きがあって初めて国家というのは健全にチェックされるのであって、本当に国家に任せておくことがすべて安泰ではないんだという思いから、なるべく政府の力を小さくしながら、しかしながら、しっかりと市場をチェックするという機能を持たせることによって最低限のそういった権限ですとか役割を国家に与えようというのが小さな政府の根本だというふうに思います。  その反対に、民主党はどちらかというと、アメリカは非常に市場中心主義の国家ではありますけれども、比較的の問題ですが、民主党はどちらかというと、政府というものは元々善であると、役人がしっかりしている、そしてたくさんの役人を雇って、そしてこの人たちにきちっとした税金の再分配をやってもらえばみんな公平になってなおさらいいではないか、その方が国民にとって幸せなのだと。極端なことを言えば、そういったいわゆる国家に対する信頼が厚いわけですね。政府というものはいいものなのだという信頼がなければ、やはり国家に対する依存というのは当然低くならざるを得なくなるわけですから。アメリカでいえば、民主党的な考え方の極端な人たちというのは、国家に対する信頼が厚いというふうに言い換えてよろしいのではないかと思います。  そこで、振り返って日本を考えてみると、日本で、どうでしょうか、政府に対する信頼というのは厚くなってきているんでしょうか、薄くなってきているんでしょうか。  国家財政運営をするに当たって、私は、ちょっと話がずれますが、女子大で日本財政というクラスを教えさせていただいています。本当にもう十代、二十代そこそこの若い女性たちが日本財政について学ぶ最初のころというのは、何もよく中身が分からなくて、日本財政ってこんなにちゃんと健全にいっているんでしょうって思い込んでいる人もいるようです、若い子たちですから。そして、二、三回授業を受けますと、とんでもない状況だということがだんだん見えてきます。そして四、五回目ぐらいになりますと、女子学生が質問してくるんです。先生、どうしてこういう状況になってしまったんですか、だれがこういうふうに運営しているんですか、教えてくださいと言われて、私も本当に、我々大人が非常に責任を持った運営をしてこなかったので申し訳ないというふうにしか私自身は本当に思えないような状況になってくるわけですけれども。  当然いろいろな理屈はありますが、やはり大人として常識感覚で考えますと、こういった財政運営というのはいかにも政府の信頼を損ねる原因の一つになりかねないというふうに思います。このまま放置していかに国民政府を信頼できましょうか。これを考えますと、日本国家なのかそれとも市場なのかということを考えるに当たって、なるべくたくさんの信頼をやはり政府に集めなければ、国家に集めなければ、あるいは議会ですね、立法府にも集めていかなければ、いわゆる社会主義的な、税金をたくさん集めてその再分配は国家に任せなさいというだけの信頼を国民にやはり問うていけない状況になっているのではないか。  ですからこそ、やはりどのように税金を使うのかという歳出面のセットにした議論をサービスと同時にして、財源とサービスの質を必ずセットにして議論をしていくということが国民理解を得て信頼を得るための一歩なのではないかというふうに考えております。
  134. 林芳正

    ○林芳正君 ありがとうございました。  お二人の基本的なスタンスというのは今お聞きしていて分かったわけでございますが。  そこで、小さな政府という言葉がございます。それで、これもいろいろな意味で使われているんではないかなと、こういうふうに思いますし、八代先生の、これはESPですから経済企画庁の二〇〇五年のやつに、「「小さな政府」の手段としての市場化テスト」と、これは市場化テストについての論文だと思いますが、最初のところに小さな政府についてお書きになっておりまして、これもちょっと参照させていただきながらお伺いをしたいと思うんですが。  効率的な政府とか事後チェックへ行くということ、また構造改革をやって市場の良さを先ほどの市場化テストみたいに入れていくということとか、更に言えば、そういうことをやって、私は事後チェックの方が逆に人がたくさん掛かるような気もしないでもないんですが、そういうことをいろいろやって、政府の人数が減ったという意味での人件費ベースで見た政府の小ささということと、それからもう一つは、所得の再分配をどれぐらいやるのかということにおける小さな政府というのはちょっと違う概念ではないかなと、こう思っておりまして、私は今、中林先生がアメリカの例を出されて、民主党がどちらかというと大きな政府で、共和党がどちらかというと小さな政府でといった場合は、両方の意味が入っていて、かつ、どちらかというとやはり再分配をより大きくやるという意味アメリカの民主党は大きな政府ということではないのかなと、こういうふうに思っております。  それで、第一の意味での小さな政府というのは、まさに目指すべき私も方向だと。なるべく無駄な人員を抱える必要はないですし、効率的に物事をやってもらうというのは当たり前なんですが、第二の意味での再分配をどれぐらいやるべきなのかということは、これはどちらかが正解というんではなくてイデオロギーなんだろうなと、こういうふうに思うわけであります。  最初にお聞きしたのはそういう意味で、これからも再分配を増やしていくという方向にはなかなかなりにくいというようなスタンスのようにお伺いはしたんですが、一方で、我々のように選挙の洗礼を受けますと、どうしても諸外国と比べて日本独特と言っていいと思いますが、格差ができてしまう要因というのが幾つかございまして、それは先ほど来議論になっている社会保障のニーズが人口構成がだんだんと高齢化することによって増えざるを得ないと。そうすると、全体の歳出は、掛け算の積だとしますと、単価を幾ら削っても、もう一個の掛けるA掛けるBの方が増えれば、これどんどんどんどん膨らんでいかざるを得ないと。単価ももうかなり限界まで来たんではないかなと、こういうふうなことをこの間も厚生大臣から聞かせていただいたわけでございまして、まず、そういった社会保障という、人口が高齢化していってここが増えていくということがございます。  もう一つは、日本の地理的条件なのか社会的条件なのか分かりませんけれども、東京に一極集中していて、この間も私申し上げたのは、私のふるさとの下関市というのは人口三十万人、この間合併してなったんですが、せいぜい中華料理かイタリア料理屋までしかやっていけないと。インド料理屋はもう無理だと。要するに、百万人ぐらいの規模じゃないとできない産業というのがあるわけでございまして、これはなかなか、これだけ込んでいて土地も高くて不便だと思いますよ。私は、選挙区帰りますと、本当にきれいな空気でほのぼのとした気持ちになるんですが、そういうことがあっても、どうしてもみんな東京に来てしまうと。もう大阪も東京に吸収されているというような状況の中で、これだけ一極集中しているところというのは、まあフランスがある程度そうかもしれませんけれども、OECDの中を見ても珍しいぐらい一極集中をしているわけでございまして、イコールフッティングがそもそも地方と東京で成り立たないんではないかと。  そういった意味で、例えば地方交付税の制度みたいなのがそういうところへ出てくるわけですが、そういった中で更にこの再分配を少なくしていくという方向が、まあ経済学的にはあり得るのかもしれませんが、政治学的に、中林公述人は政治学が御専攻というふうにお伺いしておりますが、今から方向性としてどうなのかなというふうに私はちょっと今迷いがありまして、そのことについてお二人からもしコメントがあればいただきたいと思います。
  135. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) お悩みの深いところを心から理解申し上げます。  特に、選挙結果を受けて、本当に日本国民が何を望んでいるのかというところをやはり考えると、本当にいろいろな日本の矛盾というものを感じる機会があるのかなというふうに思いますけれども。やはり、政治学というふうに言うには大げさかもしれませんが、やはり民意というものをどのようにとらえるかということが非常に重要で、日本の民主主義というものについてつくづく考えますに、まだまだ日本国民自身が民主主義を勝ち取ったという実感がないがゆえに、まだ我々がこの国をつくっていくんだというような力強い市民活動というものが発展途上なのではないかというふうに思います。  ただ、私、NPOなどの活動をよく見ていますと、日本にもそのような機運が根付いてきておりますので、非常に勇気付けられる部分もたくさんあります。ですから、恐らく日本はこのまま足踏みをするのではなくて、きちんと民主主義の成熟に向かって進んでいくことができるというふうに心から信じていますけれども、今現在、もっともっと日本人がやっていかなければいけないのは、自分たちの地域をどういうふうに活性化させていくのかという住民の知恵の絞り合いと、それから、中央で成功した人などが田舎に帰ってにしきの御旗を掲げるというような、自分の故郷に対するUターンといいますか、そういった中央で得たものを持っていくといった愛郷心といいますか、そういったものが必要なのではないかというふうに思っています。  これはほかの国々ではよくあることなんですけれども、日本はどうしても中央へ中央へというふうな動きが余りにも激しくて、中央に出ていくと戻ってこない。特に、この間、田舎の方に私も行きまして伺ったことなんですけれども、田舎で成績がいいと東京に行ってしまって二度と帰ってこない、成績がいいとお役人になってしまってそのまま東京に根付いてしまうとか、いろんなことをたくさんの方がおっしゃっていました。その中で感じられるのは、やはりなかなか地元に優秀な人たちがUターンで戻ってきてくれない。これはやはり一人一人がやはり胸に手を当てて実行して、どんどんどんどん地方に戻っていく必要があるし、そしてそこで得た経済力などを還元していく必要があるんだと思います。  ただ、これは政治的にシステムをこうすれば必ず一朝一夕に良くなるというものではなくて、本当に政治の民主主義の成熟化というものも同時に必要になってきますので、非常に気の長い話ではあるかもしれませんけれども、そういった機運をどんどん活性化させるための政策をしていく必要がある。  そして、特に市民活動などに対してはどんどんどんどん推進していく必要があるというふうに思っておりますので。これは個人的見解ですけれども、NPOなどは、日本ではまだまだ認定NPOというのは非常に認められづらくなっています。  私もアメリカ一つNPOをつくりましたけれども、五〇一(c)(3)というもので、アメリカで公共的な利益を最ももたらすと言われているNPOです。いわゆる日本でいう認定NPOで、寄附をする方も減税措置がとられますし、寄附を受ける方も一〇〇%の減税措置です。そういったものをとるのに、ある程度の書類がきちっとそろえば、試験運転期間が何年かあって、その後もう一度査定を受けてオーケーということになる程度の認可で済みます。ですから、日本の比ではないほどの市民活動が活発に行われておりますし、更に付け加えれば、財政問題なんですが、財政の規律についても実は市民活動をしている人たちがたくさんいます。  日本では、特に財政問題というのは歳出と歳入の大変大きな問題ですし、国民というのは、あたかも私たちにこれを下さい下さいと言わんばかりの利益団体だというふうに見る人たちもいます。特に、公共選択論などで学問としてなさっていらっしゃる方々は、できれば法律財政均衡を盛り込んで、そういった国民的な圧力団体を排除すべきだというような結論に達するほど、あたかも国民を利益団体のように取り扱う傾向があります。  ところが、私が市民レベルから、あるいは政治学的なレベルから見てみますと、民主主義の発展というのは実はもっともっと根深いところで発展するものであって、単なる国民は利益団体でも邪魔者でもないというふうに思います。  こういった、特に財政関係についてもっと規律を役人も政治家も持ってほしいということを訴えかけるNPOがたくさん存在して、その活動内容を一つ一つ具体的に見ていきますと、実はまだまだ日本の民主主義も発展の余地がありますし、それから国民も、欲しいと言うばかりではなくて、もっと国家的な規律を持ちましょうという人たちが必ず日本だって出てくる余地はあると思いますので、そういった意味で、必ずしも絶望するのではなくて、あるいは日本は再分配ということで、特に高所得者から低所得者に持っていく、あるいは中央に税金が集まったものを地方にお金だけ分配すればいいんだといったやり方に対して、実はそうではないのではないかという草の根の人たちが私はいるのではないかというふうに思っておりますので、そういった人たちがもっと活動しやすいように、そして発言しやすいようにしていくことの方が民主主義の発展という意味では大事なのではないかというふうに思います。
  136. 林芳正

    ○林芳正君 たしかコモンコーズというのがワシントンにあって、財政規律のNPOではありませんでしたが、そういう一般国民の利益を代表するといいますか、そういうことをやっていたというのを今思い出しておりました。  実は、公益法人の改革というのを遅ればせながら我が国もやりまして、今まで特増という、非常に取るのが難しかった寄附が免税になる公益法人というのを、公益が認定されれば自動的に特増になるという仕組みをつくりまして、今年の十二月だったと思いますが、制度が始まるということでございますので、そちらに加えて、団塊の世代が今、第一次的に最初の職場から退職をしていかれますので、私の描いている理想形としては、そういう方がUターン、Jターンで帰って公益法人の新しい形をつくって、今まさに中林さんがおっしゃったような活動を地方でやっていただけると、こういうことなんでございますが、なかなか社会的なそういうことに対する経験の深さというんですか、昔は欧米は教会税というのがあって、もう寄附をするのが当たり前、収入の一〇%だったと思いますけれども、そういうことをやっていたところと、五公五民も取られてとにかくお上に召し上げられるのは勘弁してくれということを江戸時代三百年以上やっていたわけですから、そこの違いはなかなか大変だなと、こういうふうに思うわけでございますが、しかしおっしゃるように、そういう方向に持っていかなければならないというのは当然だと、こういうふうに思いますが。  しかし、そういうのができて、そういう人がわあっと言うまで待っているというわけにもいかないんで、我々も、党の中でも財政改革研究会というところでいろんな議論をしていろんなものを発信をしておりますが、今まさにお話があったように、財政再建というのは大変に大事であると、これはもう論をまたないわけでありますが、なかなかこの理屈の中で、そして大学の教え子の皆さんにも言うと、これはひどいねと。これはひどいねというのは、そこまでは総論で共有できるわけですけれども、じゃこれをバランスさせるためにここを切りますというと大変大きな騒ぎになると。しかし、二〇〇六年の骨太では五年間の計画をまとめました。しかし、先ほど申し上げましたように、特に社会保障の部分ではもう悲鳴に近い声が現場からも上がっていると、こういうことであります。  そこで、個別の話はお聞きをいたしませんけれども、そもそも財政再建をしないと最後どういうふうになるのかと。だんだんだんだん国債が積み上がっていって、今八百兆だとすると一六〇%ぐらいにGDP比でなると思いますが、これが二〇〇%、二二〇とずっと今の調子で増えていくと。金利もいつまでもゼロ金利ではありませんから、二%、三%というふうになっていったときに一体どういうことが起こるのかと。私は地元では、アルゼンチンやブラジルのように最後はなって、あなたの百万円で今は軽自動車ぐらい買えるけれども、そのうち大福一個しか買えなくなるんですよ、何の増税法案国会で通らないままにあなたのお金は百分の一になるんですと、こういうことを言うんですけれども、しかし余りリアリティーがないんですね、今の状況で。  ですから、その手前で、どういうことが起こってどういうふうに、この財政再建を怠っているとどういうことになるのかということをお二人から見解をお尋ねしたいと思います。
  137. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  今の御質問とその前の質問を併せてお答えしたいと思いますが、まず、私は何が何でも小さな政府が必要だとは言っていないつもりであって、必要なのは効率的な政府なわけですね。ただ日本の今の中央集権体制を前提とすると、大きな政府で効率的ないわゆる活動をするというのは非常に難しいんではないかと。やはり、そういう意味では徹底した地方分権が必要であって、スウェーデン等、大きな政府と言われているところは同時に地方分権も進めているわけです。  だから、そういう意味で、官から民へ、国から地方へという考え方で初めて効率的な政府というのが実現できるんじゃないかということであります。  それから、事前規制から事後チェックにするとかえって公務員の数が増えるんじゃないかということはよく言われますが、民間活動に対するインパクトは全然違うわけです。事前規制の最たるものは参入規制でありまして、外資規制であるとかいろんな形で多様な経営主体を排除する。それは既得権を保護することにはなりますが、競争を通じて経済の活性化というのはできない。それは結果的に国民の犠牲を強いることになるわけであります。  ですから、役人の数はある程度増えるかもしれませんが、事後チェックにすることによってむしろ経済の活性化でお釣りが来ると。  それから、必ずしも公務員を増やさなくても、今、中林公述人が言われたみたいにNPOがその役割を代替することは十分可能であって、これは情報公開を国が徹底的に強制すれば、それを評価する主体は別に公務員でなくてもNPOでもいいわけであります。ですから、そういうものをうまく組み合わせていけば効率的な政府というのはできるんじゃないか。  それから、所得再分配ということがいいか悪いかということですが、これは先ほどの混合診療と同じように所得再分配の中身であるわけです。日本は所得再分配の面では大きな政府と言えるか小さな政府かという点の議論があるわけですが、日本の今の所得再分配の大部分は、実は世代間所得分配といいますか、いわゆる社会保障、社会保険を通じて、ある意味で若年世代、勤労世代から高齢者への移転が行われている。しかし、本来の必要な垂直的な所得再分配、つまり豊かな人から貧しい人への再分配は実は非常に少ないわけです。  これは、社会保障費の中身を見ていただきますと、諸外国と比べて生活保護とか住宅とか家族というか、そういうものの比率は合わせても一割ぐらいで、ほとんどが医療と年金に費やされているわけでありますが、この大部分はやはり世代間の移転になっているわけで、今後高齢化社会が進むとますますこれが拡大してしまうと。それは非常にある意味では非効率的な所得分配なわけですよね。  やっぱり大事なのは、日本であればきちっとした、憲法が言うように健康で文化的な生活水準をきちっと維持することが大事なんですが、なかなかそれが今は実現されていない面もある。これは、実は小さな政府だからそうなっているわけではなくて、所得再分配の仕組みが実は非常に非効率的な面があるんじゃないかと思っております。  その意味で、私は、大事な点は、今後どんどん増える高齢者の間の所得再分配。つまり、団塊の世代が典型でありますけれども、豊かな高齢者が貧しい高齢者を扶養するといいますか、そういう形で後の世代にできるだけ迷惑を掛けないような形に所得再分配の中身を変えていく必要があるんじゃないかということであります。  今の社会保障が世代間移転の形が強いというのは、高度成長期ではそれが当たり前だったわけです。つまり、働く世代はどんどん賃金が年に一〇%も実質で上がっていきますし、引退した世代は過去の年金に依存していますからほとんど増えない。したがって、豊かな働く世代が貧しい高齢者に所得を移転するということは公平なことであったわけですが、今の低成長の中では逆にそれは非常にある意味で働く世代に大きな負担を掛けていることになる。その意味では、もっと効率的な所得再分配で、効率的にやはり本当に困っている人たちを救うような形に社会保障を変えていく必要があるんではないかということであります。  地域間の所得再分配のことでございますが、東京一極集中で大阪が、関西経済が衰退しているという御指摘はよく言われております。私も関西の出身ですから非常にこれは問題だと思っておりますが、ある意味でこれは人災の面があると思っております。  具体的に言いますと、これは工場等立地規制法がかなり大きな役割を果たしているわけであります。現に名古屋経済は極めて好調であります。求人倍率も非常に高いわけです。名古屋というのはこの工場等立地規制法の対象外であります。東京もそうでありますが、東京は本社機能というのが非常に重要でありますから、工場が立地されていてもサービス産業の方で代替できた。関西は残念ながら中小企業が中心であったために、工場等が立地されて新たに設備が造れないとなると、関西の外に出ていかざるを得ない、名古屋とかあるいは海外とかですね。もうこれは明らかな人災であります。  これが、九四年に大阪の沿岸地域での新規工場立地が制限されましたが、二〇〇二年で、これは私も覚えておりますが、まさに規制改革会議でこういう工場等立地制限法を撤廃したと。その結果、やはり今大阪に有力な企業がどんどん戻ってきて、徐々に活性化が進んでおります。その意味では、イコールフッティングの問題じゃないかとおっしゃいましたが、ある意味では名古屋と関西の間には非常にイコールフッティングはなかったわけで、それが今ようやく撤廃されたわけであります。  もう一つは、これも二〇〇二年に行われた都市再生特別措置法でありますが、これは先ほどもちょっと議論がありましたけれども、容積率の緩和ですよね。大都市の中心部というのはまだまだ効率化の余地があるわけですが、様々な規制によって高度利用が妨げられている。これがその都市再生特別措置法によって一種の特区ができたわけでありますが、これで大規模な建物あるいは事業が可能になった。この第一号が心斎橋のそごうの建て替えでありますが、今大阪の駅の中心部はこれで非常ににぎわっております。ある意味で、こういうふうに規制改革を通じて、ある意味で産業あるいは住みよい生活をつくる、あるいは地域間の格差も是正できるという一つの例になっているわけであります。  ですから、こういう容積率をどんどん、どんどんではありませんが、一定の範囲で緩和して老朽ビルの建て替えを促進する。あるいは、コンパクトシティーというのが今青森とか富山でやっておりますけれども、こういうものを下関とかほかの町でもどんどん取り入れることで中心市街地をもっと活性化させるということで、イタリアレストランだけではなくて、フランスレストランとかいろんなレストランがまさに都市部で集積することも可能ではないかと思っております。  最後に、財政再建をしないとどうなるかということでありますが、これは一つは、単に国債残高が増えるということだけではなくて、今のままで放置しておくとこれが発散するということが問題なわけです。発散という意味は、財政赤字を賄うために国債を出すと、しかし、その国債の利払い分も財政赤字ですから、その利払い分を賄うために更に国債を出すという形で累積的に国債の数が広がってしまうと。これは絶対防がなければいけないわけであります。それを放置しておいたらまさに借金地獄になるわけでありまして、それは個人でも国でも全く同じで、それは林議員がおっしゃったように、日本はそういうことすらコントロールできない国なのかということで、どんどん企業が逃げていく。これは、海外企業が逃げていくだけでなくて、日本の企業もどんどん日本から逃げていってしまって、雇用も失われ、税収も失われ、さらに財政の赤字が拡大すると。  これは経済学的には簡単な数式で説明できるわけで、金利が成長率よりも低い、成長率が金利よりも高い条件をつくる、それからプライマリーバランスを均衡させるという、少なくとも均衡、それから場合によっては黒字にしなければいけないわけですが、そういう条件の下で初めて国債の発散を防ぐことができる。だから、これが最大の政策ターゲットになっているわけであります。  ですから、それはやはり我々の子孫に対して責任があるわけで、言わば親が自分たちの生活を楽しむために子供たちにどんどん借金を残していく、こんなことは普通の家族はしないことでありますが、それが国全体になると平気で行われているということはおかしなことであって、やはり先ほど中林公述人がおっしゃったように、生徒たちがちゃんと安心した生活をできるためには我々の世代がきちっとそういう不始末をちゃんと片付けなきゃいけない。もちろん、単なる不始末ではなくて、必要なものに対してはちゃんとお金を払わなければいけませんが、まだ膨大な無駄が残っているわけで、だからこそ行政改革財政再建をする余地は大きいんではないかと思っております。
  138. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 再分配の問題なんですけれども、済みません、ちょっと風邪を引いておりますので声が荒れておりますが、先ほどの経済的なインパクトについては八代公述人のおっしゃったとおりだと思います。これからどんな経済的な状況が訪れるか分かりません。そのときに大変高い金利日本が向かっていって、そして経済が停滞する、そして企業も外に出て行ってしまう、これは日本経済にとって大変危険なことであるというふうに思います。  ただ、それだけではなくて、やはり再分配、資源をどういうふうに再分配するのか。先ほど私は、お金持ちから持っていない人に、持てる者から持っていない者にということで再分配を例えて申し上げましたけれども、実は、八代公述人もおっしゃったとおり、最も日本で一番多く行われている再分配というのは若い世代から高齢者の世代へという再分配だというふうに思います。  この再分配の中で、高齢者に対して若い人たちが再分配しているということの証拠が、現在私たちが持っている財政赤字、公債の額なんだと思います。もしこれを現在の世代の中で解決しようとしたら、上がってくる税収でそのサービスを賄うというのが当然のことです。そうすれば、現在生きている私たちの世代の中で再分配が行われるということになります。その税収は、もしかしたら本当に持てる者からたくさん取る税収なのかもしれません。  いずれにいたしましても、現世代の中で再分配をしようと思えば、当然その税収の、入ってくる税収と出ていくお金、これを単年度内できちっと解決するように努力するのが本来の再分配の姿であるというふうに思います。ところが私たちは、財政赤字はいいじゃないかという名の下に、その再分配を若い人たちに押し付けている。若い人たちどころか、まだ生まれてこない人たちに押し付けているということになります。  ですから、今少子化ということが言われておりますけれども、これでは生まれてきたくても、生まれてこない方が幸せではないかというふうに思って、うがった言い方をしてしまっても仕方がないほど日本の将来世代に対する再分配のいびつな形というのはもうこれは否めない。これこそが、本当の今の日本財政赤字の額が示している不健全な再分配の在り方の象徴であるというふうに思います。
  139. 林芳正

    ○林芳正君 最後に、せっかく今日は八代先生がICUの教授としていらっしゃっていただきましたが、たまたま財政諮問会議委員でもございますので。  これを最初につくるときにいろいろ議論が橋本行革であったと承知しております。それで、モデルと言うほどでもないんでしょうけれども、大統領経済諮問会議、CEAですね、こういうのが原型の一つとしてあったと思うんですが、これを経済財政諮問会議をつくるときに、大統領諮問会議は中林公述人もお詳しいと思いますけれども、エコノミストが三人ぐらいいらっしゃって、その下にスタッフがいて、大統領に直属で本当にアドバイズをすると、こういうことでありますが、我が国経済財政諮問会議はそれをモデルにしたんですけれども、閣僚が常駐で何人か入って結果としてはしまったわけでございまして、そうすると、どうしても諮問をしていながら、そこで決まったことがミニ閣議のような、ちょっと中途半端な感じがするわけでございます。  そういった意味では、私は、そろそろこの中途半端な状態を、経済諮問会議なら本当にマクロの経済のアドバイズをするところに特化して、さっき櫻井委員もここで御議論があったようですけれども、意思決定をしているのか諮問をしているのかがなかなか外から見ると、議事録をよく読んで、最終的には閣議でというのは分かるんですけれども、どうも大臣があそこに並んでおられるとそう見えないところもあるわけでございまして、私は、今度いろいろと省庁再々編なんてことが議論をされるときには、そういう方向で見直して、きちっと政治は最終的に責任を持つという体制を外に向けても見えるようにした方がいいというふうに思っておりますけれども、そのことについて八代先生の御意見を聞いて、質問を終わりたいと思います。
  140. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) はっきり言って、経済財政諮問会議がなぜ今の体制になったかということは私もよく分かりません。私は政治学ではありませんので、経緯もよく存じません。ただ総理から任命されて民間委員をやっているわけでございますので、残念ながら今の林先生の、どうすればいいかということについては余りいい知恵はございません。  ただ、議事録を読まないと分からないとおっしゃいましたが、それはきちっと日本の法制度というのは、閣議決定である意味政府の意思が決まり、国会でその議論がされるということはもう明らかであるわけでして、ちょっとその辺りは別に、諮問会議がどうかということとはちょっと別の次元の問題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  141. 林芳正

    ○林芳正君 もう答えは結構でございますが、私も党で骨太の方針等の受け手をやっておりましたので、なかなか今公述人がおっしゃったようには少なくとも党や周りが受け止めていなかったと。いなかったという過去形にしておきますけれども、そういうことだけを申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  142. 山口那津男

    山口那津男君 公明党の山口那津男でございます。両先生には長時間にわたってお疲れのことと思いますが、しばらく御見識を承りたいと思います。  まず初めに、両先生にお伺いしたいと思います。  八代先生御提出の参考資料によりますと、正社員と非正社員の数というものがこの九〇年代を通じて非常に接近してまいりまして、現在では大体二対一の数、つまり正社員は約三千四百万余り、非正規社員は千七百万人余りということになっております。そして、非正社員の比率については、年齢と性別の壁がある、とりわけ男性においては若年層、そして女性においてはかなり各年代を通じて非常に非正社員の比率が高いと、こういう状況であります。さらにまた、正社員とパートタイムの年齢別の賃金格差というものは男女共に著しいものがあるわけでありますが、とりわけ男性の一般とパートタイムの差は非常に大きいと、こういう現状が示されているわけであります。  まず、中林先生にお伺いいたしますが、アメリカでの生活も御経験をされ、また女性としてキャリアアップを果たしてこられたと、こういう御経験から、我が国において個人としての労働力、労働生産性の質を高めていく上において、御自身の体験から、これからどうあるべきかということについて御意見を承りたいと思います。
  143. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) ありがとうございます。  日本に戻ってまいりましてやはり感じましたのは、日本の雇用の流動性というものが著しくやはりまだ欠けていたと。今でこそだんだんそれが流動化しつつありますけれども、まだその途中であるがゆえに非常にいびつな形で、例えば派遣ですとか、そういった形でそこが中心になって進んでしまっている部分があるように感じます。  本来であれば、本人の将来の職業の希望ですとか、そういったもので自分から、自ら就職先を探していく、その就職先は正規雇用ということが一番理想的でありますし、それから雇用の流動性が増しますと恐らく政府の形も変わってくるのではないかというふうに思います。やはり日本のお役人は非常に長いこと霞が関の中で過ごされますし、それから政治家の方々も、もちろん別の御職業をお持ちの方もたくさんいらっしゃいますが、やはりまた別の仕事へ動くということも、日本全体での雇用の流動性というものがあって初めて自由活発な就職活動ができるということになると思いますので、そこは、もっとこの基盤としての日本の雇用の流動性というものを増していくように考えていく中でその正規雇用というものを増やしていくということが重要なのではないかというふうに思います。
  144. 山口那津男

    山口那津男君 八代先生にお伺いしますけれども、この非正社員に対してはとりわけキャリアアップの道というものが非常に閉ざされているわけであります。また、正社員の中でも、現実には自らのキャリアアップを図っていくためには環境が整っているとは決して言えないと、こう思います。いずれにとりましてもそういう道をつくり出していくということは必要だと思いますし、それは制度、仕組みの面からも、また雇用環境等の様々な社会的な環境の面からもいずれも必要なことだろうと思っておりますけれども、先生の御見解を承りたいと思います。
  145. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  まさに今議員のおっしゃった点が大きなポイントではないかと思います。日本の場合は高度成長期を通じて、言わば正社員といいますか、企業の中で、ずっと同じ企業の中で働き続けることによって技能を蓄積する、熟練労働者になるというやり方で専ら技術がつくられてきたわけであります。これはこれで非常に優れた仕組みであるわけでありますが、これが低成長になり、グローバル化が進み、高齢化が進む、あるいは情報技術が進歩してくるといういろんな条件の中で、ある意味で昔のような高い効率性を発揮できなくなってきている。つまり、非正社員が先ほどおっしゃったように全体の三分の一を占めるというような形に拡大してきているわけであります。  この非正社員の人たち、先ほど小林議員の方からも日雇派遣の話が出ましたが、そういう方々も含めてどうやってキャリアアップをしていくのかというのが大きな課題であるわけです。かつてはとにかく企業の中に雇ってもらえば企業が自動的に訓練してくれたんですが、もはやそういうことが難しい時代であれば、やはり政府がきちっと責任を持ってそういう、企業の外でも訓練機会が与えられるような仕組みをつくっていく必要があるわけであります。ジョブ・カードというような仕組みも考案されておりまして、政府が職業訓練所という従来ある組織以外に企業に委託して技能を形成してもらう、それに対してある程度の補助金を出すというような仕組みも四月から動き出しますし、ますますそういう政府の、企業の外の労働市場における技能形成の役割が大きくなってきているのではないかと思われます。  ただ、この正規、非正規という言い方に私は非常に、ある意味ではそれ自体に問題があると思います。つまり、終身雇用の人たち以外は全部ひっくるめて非正規であると、言わば全部が悪い働き方であるというようなイメージでとらえるのはやはりおかしいんではないかと思われます。それはなぜかと申しますと、非正規の中でも、先ほど議論になりましたような日雇派遣という一日単位の働きをする方から、ある意味で三年、五年の長い有期契約の方もおられますし、あるいは派遣社員でもまさに派遣元の正社員の方もおられるわけでありまして、まさにその間には非常に大きな差があるということであります。  現在、この千七百万人もいる非正社員の人たちを全部正社員にするということが政策目標だというふうに考えると、これはなかなか困難なことであるわけでありますが、この非正社員の中でもより良い言わば働き方というものを求めていくといいますか、それができるような環境にもっと政府が支援していくと。正社員でなければ意味がないというオール・オア・ナッシングではなくて、もっときちっと教育訓練をすることによって技能を高めていく、そうすれば正社員への道ももっと広がるわけで、そのためにはやはり継続的な働き方、それは必ずしも特定の企業に限らなくてもそういうものがもっと必要になってくるんじゃないかと思います。  それから、中林公述人が先ほど言われたように、雇用の流動性というのが物すごく重要でございます。かつての日本では雇用の流動性というのは非常に大きかったわけです。これは終身雇用を貫きながら雇用の流動性が実現したというまれなケースでありまして、私もOECDに勤めておりましたときにこれが非常に諸外国の関心を呼んだわけですが、どういうことかと申しますと、大企業が子会社をつくってどんどん成長分野に労働者と資本をシフトしていくと。例えば、繊維とか鉱山会社が、繊維とか鉱山業というのは将来性がないために、例えばバイオとかハイテク分野に子会社をつくって社員をそこに移していくということが現に行われて、終身雇用を維持しながら雇用の流動性というのが可能になったわけです。  ただ、そういう夢のような環境というのはもはや難しいわけで、低成長が進み、企業がどんどん海外に出ていく中で、どうやったら雇用の流動性を確保できるかということが今問われているわけでありますので、言わば特定の企業の中だけで雇用を保障するんじゃなくて、市場の中で雇用を保障するといいますか、そういうような方策というものをもっと考えていく必要があるんじゃないかと思っております。
  146. 山口那津男

    山口那津男君 財政再建を果たしていくためには、一面、経済成長によって自然増収を図るという方法もありますし、また税制を改正して増税を図るということもあります。また一方で、歳出を削減をする、行政を効率化する、これも非常に必要なことだろうと思いますし、それは一時的なことではなくて、やはり恒常的な仕組みと努力が必要だろうと、こう思うわけであります。  行政改革を推進する制度をつくるときに、我々は事業仕分が大事であるということを申し上げました。それは法律の中にも概念としては入っているわけでありますが、実際にそれをどう実行していくかということが今問われているわけであります。経済財政諮問会議におきましても、最近この事業仕分について御議論があったと、こう伺っているわけでありますが、この点について両先生に幾つかお伺いしたいと思います。  まず、八代先生に伺いますが、かつて特別会計について、母屋でおかゆ、離れですき焼きと、こういうふうにやゆされました。そして、特別会計については整理統合化というものが近年進められたわけでありますけれども、しかし、これから先必要なことは、個々に、特別会計の個別の事業、個々の事業について、果たしてそれは現在でも必要なものかどうか、あるいは国が担わなければいけないものか、地方に任せてもいいものかどうか、はたまた民間に任せてもいいものかどうか。これを、今までの国の役人の目だけではなくて、地方公務員の目からも、あるいは民間の目からもこれの精査をした上で仕分をしていく、そして取捨選択していく、こういうことが必要だろうと、こう思うわけであります。  これから事業仕分の具体的な方法を進めていくに当たって、まず八代先生のこの事業仕分に対する基本的な御認識を伺いたいと思います。
  147. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今議員がおっしゃったとおりでありまして、事業の仕分といいますか、国のやっている仕事の一種のリストラといいますか、事業の再構築というものが最も求められているかと思います。その意味では、大きく分けて、もはや政府がやる必要がないもの、民間に任せた方がはるかにいいものというものは民営化すべきであるわけです。  それから第二に、民営化はよくないと、官が依然として、政府が依然として責任を持ってやるべき事業というのがあるわけですが、その中でも本当に公務員でなければできないかどうかというのをもう一度きちっとチェックする必要があるということで、これは例えば、先ほども言いましたが、警察における駐車違反の取締りとか、刑務所における官民合同刑務所のような形でもう既に一部実現しておりますが、あるいは市場化テストということを使うと。  それから、特別会計等におきましても、特別会計というのは元々一般会計から分かれているというのは、事業性があるから分かれているわけでありますから、そうであればもっと事業として独立させると。官のまま事業でやるか、あるいは民間にゆだねるかという選択肢も当然あるわけであります。  それから、政府としてやるべきことであっても、国ではなく地方に任せた方がいいものというのはたくさんあるわけであります。まさに地方分権というのは、同じ政府の中でも地方の方がある意味でより住民の身近なところで行政が行われるわけですから、住民の目線で行われる。それから、何よりも地域間競争ということが可能になる。  これから言わばモデルなき時代に日本は突入しているわけですが、かつての高度成長期ではどこか模範となる国の仕組みをまねすればよかったわけですが、日本がこれだけ成熟化すると模範とすべき国というのは必ずしもないわけで、自分で考えていかなきゃいけない。そのときに、国が審議会等を使っていろいろやるよりは、地方にできるだけの権限と責任を与えて、それぞれ地方が独自の、独自というか多様な政策を追求していただいて、その中でいいものをほかの地域がまねをするという、そういう地域間競争によってベストプラクティスをつくっていく時代になっているんじゃないか。米国では現に五十の州が様々な制度を持っていて、その間で絶え間のない制度間競争が行われているわけですが、日本もできるだけそれに近づけていく必要があるんじゃないか。これは、地方分権と同時に、今議論されている道州制の議論でもあるわけであります。  この一つの具体的なポイントとして、地方支分局の国から地方への移管ということが今、地方分権推進委員会で行われていると思います。これは行政サービスにとっては何の違いもないわけで、身分が国から地方に移るだけであります。しかも、その地方の方がより住民に近いところで行政ができる。ただ、これがなかなか、各省庁の強い抵抗に遭っているわけで、これは是非やはり実現していく必要があるんじゃないか。  だから、まさに今議員がおっしゃいましたように、政府の事業の仕分というのは今非常に重要な時期を迎えておりまして、やはり国民にとって何が一番大事かという視点から速やかに進めていかなければいけないんじゃないかと思っております。
  148. 山口那津男

    山口那津男君 経済財政諮問会議の議事録を拝見しますと、この事業仕分のところは「政府機能の見直しについて」という表題で、一つは国と地方の仕分について、そしてもう一つは官と民の仕分についてと、大きな二つのテーマで議論がなされているようであります。しかし、また一方で、事業仕分の概念図を見ますと、行政サービス全体をまず官が行う必要があるかないかで分ける、そして、官が行う必要がないものの中で、需要がある事業そして必要性が失われた事業に分ける、そして、この必要性が失われた事業は廃止をすると、こういう概念になっているわけですね。ところが、この議事録の議論の中では、官が行う必要がなく、かつ必要性が失われた事業をどう廃止していくか、これをどう選別していくかということに対する議論がなされた形跡がありません。しかし、私は、ここが今非常に重要な、これからの重要な作業だと思っております。  現に、この国会道路特定財源をめぐるいろんな議論がありました。そして、様々な道路特定財源を使った無駄な事業というものが指摘をされました。政府もそれを受けて一部廃止をすると、こういう決断をしたものもあります。これは事業仕分を国会の議論を通じて行っていると言ってもいいわけでありまして、本来であれば、これを政府の中で自らが行っていく仕組みとその作業、実行が必要だろうと思います。  この点について、これからどういうふうに進められることが望ましいか、これについて八代公述人の御意見を伺いたいと思います。
  149. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) この事業の仕分も含めて、今おっしゃったように、特別会計あるいは様々な国のやっていることをどういうふうにやっていくか、特に、今御議論があったようにどこを廃止していくかというのは非常に重要なポイントでございます。ただ、個別の事業名を挙げてこれを廃止する、これを廃止しないということを諮問会議でやるかどうかはこれからの総理の御判断でもあるわけでありまして、私がどうすべきかというのはちょっと控えさせていただきたいと思いますが。  いずれにしても、例えば行政改革推進事務局というか、そちらでもいろいろやっておられることですし、何らかの形で諮問会議の方でもやはり議論をしていく必要は当然あろうかと思います。ただ、繰り返しになりますが、その個別事業をどうするかというのはまた別の問題ではないかと思っております。
  150. 山口那津男

    山口那津男君 まさにこの経済財政諮問会議という限られた人たちのサークルでこの事業仕分すべてができるとは到底思えません。むしろ、望まれているのは、この行政組織全体の中にその膨大な事業をどうやって不断にこれを仕分けていくか、見直していくか、その仕組みをつくり出すこと、ビルトインしていくこと、これが大事な課題だと思うわけであります。  現状ではいろんな道具があります。例えば、財務省が行っているものは、予算の執行の調査ということで、付けた予算がどう効率的に使われたか使われていないかということをチェックしております。あるいは総務省から言うと、行政評価ということで、個々の政策を目的やあるいはその効果について分析をし評価をしていくと、これは事後のものも事前のものもあるわけであります。あるいは決算は、実際に使われてしまったお金の、適正かどうかというところでこれを分析しているわけですね。  私は、それらがもっと総合的に有機的に審査された上で一つの仕分の結論が出されていく、こういう仕組みをつくることが今一番望まれていると、こう思うわけでありまして、八代公述人の御決意といいますか、これからの臨む姿勢といいますか、感想でも結構です、いかがでしょうか。
  151. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) おっしゃったように、それは一種の総合調整という概念ではないかと思います。今財務省の主計局では例えばそういう予算を通じた総合調整、それから総務省の、昔行政管理局と言われていたところでは定員というか人員を通じた総合調整ということをやっているわけでありますが、ある意味で、それから決算はやっぱり会計検査院がやっていると思いますが、ばらばらで行われていて、なかなか一方の成果を他方に生かすというような総合的なことが十分行われているとは言えないんじゃないか。したがって、どうしたら効率的にそういう仕組みをつくっていけるかということは非常に重要なポイントではないかと思います。  その点、例えばこれは新しい制度にかかわることですが、RIAといいますか、レギュラトリー・インパクト・アナリシスといいますが、規制の効果分析といいますか、これはやはり新しい規制あるいは古い規制がどれだけ経済に大きな、社会に影響を及ぼすかというのを数量的に把握する。これはOECD諸国ではもう昔から行われていることですが、日本ではほとんど進んでいない。一応やることにはなっているんですが、極めて形式的にやられている。しかも、各省が自ら自己評価でやっていると。  こういうものはやはり第三者の目できちっと効果分析をしなきゃいけないんで、本当はそれが定員の査定とか予算の査定にフィードバックされなければいけないわけで、これは中林公述人が後からお話しになるかもしれませんが、アメリカではGAOといいますか、そういう、日本の会計検査院に相当するところがもっと、単なる不正の防止だけではなくて、効率的な行政という形で予算の処理がされているかどうかをチェックするわけでありまして、そういうような組織なんかも日本に導入するかどうかというのも大きな一つのポイントになるかと思いますが、そういう点についてやはり今後いろんな場で検討していく必要は当然あろうかと思っております。
  152. 山口那津男

    山口那津男君 続いて八代先生に伺いますが、今度は、官で行う必要がある、そして国がやる必要がある、公務員が担う必要があるという事業だとしても、しかしそのやり方が本当に能率的かどうかと、特にその内部の管理の在り方、業務というのが本当に効率的かどうかというところは今までは厳しい目が入ってこなかったと思います。予算一つ取ってみても、部局ごとにいろんなまとめた予算は書いてありますけれども、その省全体で果たしてその内部管理業務にどれだけ使われて、本当にどう効率的に使われているのか不明であります。  実際、ささいな例でありますけれども、例えば公務員が出張して仕事をする、この出張のときの航空券の手配、これは各課ごとにやっているんですね、今まで。しかし、それをもっと大きな単位でまとめてやれば、団体割引やその他いろいろ効率的なやり方というのは可能だと思いますね。あるいは公用車、これについても、それぞれが持つのではなくて、もっと運営のやり方を変えれば効率化につながると思いますし、実はこの点はささやかな努力というのは重ねられてきたんですね。  もっともっとやるべきことがいっぱいあると思いますが、この点についての今後の在り方について御意見を伺いたいと思います。
  153. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) ありがとうございました。  まさに議員のおっしゃるとおりでありまして、今の政府、官庁に一番欠けている点は、民間ならどうするだろうかという発想なわけですね。おっしゃったように、公務員の出張だって一つの省庁がまとめて、あるいは官全体がまとめてやればもっと割引を得られるわけです。例えば国際機関なんかでも、例えばIMFとか世銀なんかは、特定の航空会社と契約して、その代わり大幅なディスカウントを要求しているわけで、これは非常に事業費の節約につながる。ただ日本政府でさすがにそこまではなかなか難しいかと思うんですが、とにかく民間であればどうしただろうかということを常に考慮していくということが大事ではないかと思います。  その意味で、先ほど申し上げました市場化テストはまさにそういうことをしようとするわけでありまして、官がやっている事業を民間事業者がイコールフッティングでやろうとしたらどうなるだろうかということがまず出るわけで、そのためには今官の事業がどれだけのコストを掛けてやっているかということを調べなければいけないんですが、各省に聞いても答えが出てこない。これは決して隠しているんじゃなくて、そもそもそういう計算をしてないわけですよね。  おっしゃったように、官がある事業をしているときにそれにどれだけコストを掛けているかというのは、財務省に対する予算書はあるわけですが、その予算を取った後それがどういうふうに使っているかということについての言わば試算自体がない。場合によっては財務諸表もないし、そういう損益計算書に相当するものもないと。これがすべて営利を目的としてやっているわけではないからそういうものは要らないといったような言い訳が使われているわけであります。  しかし、営利を目的とするかしないかというのは、言わば利益の配分の問題でありまして、非営利であってもきちっと最大限の効率性を追求するということは国民のために不可欠であるわけで、それはある意味で、企業会計の導入も含めて、企業と同じようにやったらどこまで効率的にできるかという視点からやはり全面的に国の仕事というのは見直す必要があるんじゃないか。もちろんそれは例外もあって、到底企業に対応する事業がない場合はあるわけで、それはやむを得ないわけですが、そういう例外的なものを除いて、一般的にはやはり企業と同じベースでやったらどうなるかという視点から大々的に行政の見直しをする余地は十分に残っているんではないかと思っております。
  154. 山口那津男

    山口那津男君 中林先生に伺いますが、この事業仕分について今いろいろ御議論させていただきましたけれども、アメリカの上院の予算局にいらっしゃったというこういう御経験も踏まえて、上院に匹敵するのがこの参議院だと思いますが、参議院では予算委員会のほかに歳入を議論する財政金融委員会というのがあります。さらに決算を議論する委員会がありますが、近年は決算重視ということで、ここの議論というのを非常に重要視してきたわけですね。もう一つ特色があるのは行政監視委員会というものがあります。これはやはり省庁横断的に行政施策の効率性を問う、こんなチェックをしているわけでありますが、その総合的な視野で議論するというのは本当に必要だと思うんですけれども、なかなかそういう場が必ずしもありません。事業仕分は行政の、政府の中に、そして我々国会としては様々な委員会のその機能を総合しながら、相互連携しながら議論を深めていきたいと、こう思っているわけでありますが、その御経験から参考になる御意見があれば伺いたいと思います。
  155. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) アメリカでの経験からということなんですけれども、日本においてのやはり事業仕分なり、そして政府の無駄遣いをどういうふうに見極めていくかということについて、やはりいろいろなところで分断されていてこの連携が取れていないということを私も感じております。  日本にも会計検査院というのがありますが、アメリカでは、GAO、ガバメント・アカウンタビリティー・オフィスというふうなものがあります。以前はジェネラル・アカウンティング・オフィスという会計、まさに会計のオフィスだったんですが、二〇〇二年からアカウンタビリティー・オフィスということで、単に会計がきちんと使われているかどうかを見るだけではなくて、いかに効率的に予算が使われているかということを検査しようと。そして、政府がその与えられた責任をきちんと全うしているか、その責任を果たしているかどうかをきちんと見極めよう、評価しようというオフィスになっています。アメリカでも様々なオフィスがいろいろな長期の予算の見通しを立てたりします。当然その無駄を省くことが財政赤字縮減にもつながりますので、非常に重要な仕事です。  今日の冒頭でのプリントの中に大統領府の長期見通し、そして議会府、議会予算局ですね、こちらの長期見通し、二〇八二年までのものを出させていただきましたが、実はGAOも大体同じぐらいの時期にこれを出しております。そこも非常に厳しい見方をしておりまして、七十五年先にはアメリカ予算を一律カット、一七・四%を行わなければ財政赤字の解消はできない、あるいは所得税を全員に対して三八・一%アップしなければどうにもならない状況であるという非常に分かりやすい試算を示して、今の現在のアメリカの状況はどうであるかということを説明しています。  こういったところが様々な定量的な数字できちっと証明したものを出すことによって、議会ではそれを参考にして、大統領府のものも参考にします、それから議会の予算局のものも参考にします。そして、GAO、これは独立の機関ではなくて、議会の一〇〇%附属機関です。ですから、議会の手足として動くもので、検査する先は行政府です。議会が検査せよという命令が下ったところで、GAOはガバメント・アカウンタビリティー・オフィスの名の下に行政府をきちっとチェックいたします。この要員は、一時は五千人ほどいましたが、今は三千人ちょっとぐらいになっていますけれども、十分に活動していて、これを議会がフルに使えるということになっています。ソースは一つだけではありません。幾つかあります。  そして、やはり議会の中で長い時間を掛けてそういったチェックを、またこの事業は要らない、要るというものの仕分を行います。このために、例えば大統領の予算教書が二月の第一月曜日に毎年出てくることになりますが、そこから審議を始めて十二月のクリスマス時期まで続いていることがあります。本来であれば九月の終わりにおしまいにするんですが、大体最近は長引いて十二月ぐらいまで、つまり一年近く審議を議院の方でするわけですね、議会の方でするわけです。その段階で国民との意思疎通も図りますし、それから様々な委員会の連携というのも行います。  そこで考えてみますに、日本には衆議院参議院という二つの院があります。これは、選挙区からしても国土の小ささからしても、アメリカなどでは本当に選挙の制度も上院と下院では違いますし、国土も非常に広いですから様々な形で国民の代表を送るという趣旨もありますし、それから、かなり役割も実は違っています。日本の場合は、恐らく参議院の重要性というのは、これ私の本当の私見ですけれども、こういった決算ですとか政府の無駄遣いですとか、あるいは事業の仕分、これは将来にとって日本にとっても大事な事業だからもっとすべきだ、あるいは、これはもう要らなくなったからもっと減らすべきだ、そういったことも含めて、決算、そして行政の監視、この辺に重点を置いて議会活動をしていくことは一つのオプションとして非常に有益なのではないかというふうに思います。  一年三百六十五日、非常に限られています。衆議院には衆議院のすることがありますでしょうが、参議院にはこの限られた時間を有効に使って更に国民の利益に資するための活動を、衆議院とのある意味すみ分けというものを行うということも一つの生きていくオプションなのではないかというふうに、私は外から見ていて実はそういうふうに、アメリカから見ていて思っていたものですから、日本に来ても若干その気持ちをまだ持っているということで、アドバイス的なことにはならないかもしれませんけれども、一言言わせていただきたいと思いました。
  156. 山口那津男

    山口那津男君 両先生には貴重な御意見ありがとうございました。これからの資とさせていただきます。  終わります。
  157. 大門実紀史

    大門実紀史君 日本共産党、大門でございます。  本当に長時間にわたる異例の公聴人聴取ということで大変御苦労さまでございます。特に八代さん、大変お疲れだというふうに思います。  八代さんと野党といいますか、やり取り聞いていると、公述人の御意見を聴くというよりも、もう論戦の様相になっておりますけれども、私はもう論戦する気はございません。個々の御意見もうよく十分知っておりますし、私たちと違うのもよく分かっております。問題は、八代さんの御意見のような方がなぜ経済財政諮問会議の重要メンバーになっているか、そして政策に関与しているかと、私はその仕組みが問題だというふうに思っております。  強いて言うなら、その諮問会議、大変評判悪いんです、国会では。これは参議院選挙の後特にそうですけれども、櫻井さんとか私は前から諮問会議攻撃を国会でやっておりましたけれども、今はもう、野党はもちろんですけれども、与党、特に参議院の与党の中には、もうこの諮問会議に相当いろんなことがやられてきたといいますか、そういう点で相当批判が強いところでございます。小泉内閣のときはこの諮問会議が割と機能していたと私思いますが、この間、それほど前ほど力持ってないのかなというふうに思ったりもいたします。  いずれにせよ、先ほど林委員からありましたけれども、今後どうするのかということですけれども、小泉さんのときは諮問会議を最大限活用してというのがございましたが、安倍さん、福田さんのときはもう何かずるずるとやっているといいますか、もう余り必要ないんじゃないかと私は思っております。次の内閣辺りで諮問会議はなくなるんじゃないか、なくした方がいいんじゃないかと私は思いますけれども、八代さん、いかがお考えでしょうか。
  158. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 私が諮問会議をなくすかどうかを決める立場にはないので、当然ながら、私はただ任命されたのでベストを尽くすだけで、今一生懸命やっております。
  159. 大門実紀史

    大門実紀史君 やっていらして、規制改革会議から全体見ておられますけれども、もう諮問会議、どうなんですか、実際。議事録はずっと読んでおりますけれども、前ほど緊張感もないし、なくなっていくような雰囲気はお感じになりませんか。
  160. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 私は前の諮問会議は出ておりませんし、余り議事録も読んでおりませんで、どれくらい緊張感が変わったかというのはちょっと分かりません。ただ、今の諮問会議でも我々は一生懸命緊張感を持ってやっております。つまり、どういうことかと申しますと、今、構造改革の必要性というのは小泉内閣のときと何も変わっていない。諸外国がどんどん前に進んでいく中で、日本も前には進んでいきますが、むしろその差は広がっている状態だと思います。  ですから、いろんな反対意見があることは承知しておりますけれども、やはりやるべきことはきちっとやる必要があるんじゃないかと。日本にとってやるべき仕組みの改革、これは、高齢化、国際化、あるいは情報通信の普及といいますか、こういうことに対して日本は極めて乗り遅れているわけですね。ですから、我々はもっと、先ほども申し上げましたが、自分たちの子供の世代に対して責任を持っているわけで、こういう長期停滞をいつまでも続けていてはいけないんじゃないか。日本には十分それを改善するポテンシャルがあるわけであります。  ですから、それはいろんな面で、それは労働面から資本面からいろんな形でその改革の余地があると私は信じておりますので、ひたすらそれに対して邁進しているだけでございます。
  161. 大門実紀史

    大門実紀史君 もう世界的にとおっしゃいますけれども、世界的にはこういう、新自由主義という言い方はされたくないとおっしゃいましたが、いずれにせよ、この小さな政府、規制緩和、何でも官から民と、こういうのは逆に言えば見直されているんですよね、世界的に言えばですね。その辺もお考えになった方がいいなと思いますし、やっぱり、先ほどありましたけれども、参議院選挙で厳しい審判を受けたというのは、八代さんのせいじゃないかも分かりませんが、考えてもらいたいなと思います。  私はもう、労働の問題も、混合診療、個別にお話伺いたかった点ありますけれども、もうそういう議論いたしません。今後の教訓とするために、この経済財政諮問会議何だったのかと。まだやっていますけれども、何だったのかという点でお聞きしたいと思いますが、私は、竹中さんとはもう五十何回国会で議論してきた仲でございまして、最初、竹中さん頑張ってああいうものをつくってやった、最初から知っておりますけれども、どういう仕組みになっているかというと、諮問会議というのは、もうおっしゃるとおり、あくまで諮問会議ですよね。閣議決定されてずんと政策実行されるわけです。  しかし、その閣議決定する前の政策決定が小泉さんの時代どうあったのかといいますと、民間議員の方がいらっしゃる、民間議員からペーパーが出ると、それが会議をリードするわけですね。各大臣が出ておられますけれども、各大臣の意見よりも民間議員のペーパーが重視されると。これはなぜかというと、やっぱり小泉さんだったからですね。小泉さんは各大臣が言っていることよりも民間議員の言うことを大事にして、民間議員は民間議員で、トラの威を借りるといいますか、もうばあっとやってしまうと。各大臣にさえ難癖付けるというふうな時代が続いて、これは事実としていろんなことありまして、もう一々言いませんけれども。  先ほどあった混合診療のこともそうですね。大変見識のある参議院から送り出した尾辻厚生労働大臣のときにすごいやり取りがあったわけですよね、民間議員の方と。それで、最後は小泉さんが民間議員を応援するという形になって、いろいろなことがありましたし、八代さんがやっておられることでいえば、甘利経済産業大臣が諮問会議で、やっぱり非正規雇用の問題、何とかしなきゃいけない、正社員化のことを考えなきゃいけないと、国会ではそういう議論があったわけですよ、野党が言って、経済産業大臣も企業にそれを求めていくと。それがあったにもかかわらず、諮問会議でそういう意見を言われると、民間議員の方から違う話になってしまう、規制緩和が大事だというふうになってしまうと。  例えば、医療の総額管理のときもそうでしたし、とにかく民間議員の方の大変力が強かったわけですね。小泉さんが全面的にそれにお墨付きを与えるということで、いろいろ批判されているような施策が進んできたというのが実態だったというふうに私は理解しているわけでございます。  諮問会議の目的は、大田大臣なんかよくお分かりになっていないで、政策決定の主導権を、何ですか、財務省から官邸に持ってくることだというようなことをおっしゃっているわけですが、全然そうではありません。かつて財務省が主導権を持っていたときがいいとは言いませんけれども、官邸といっても、官邸なんか実体ありません。ありません。要するに、さっき言ったように、小泉さんが民間議員の意見を大事だと思ったらそれが官邸の意見になるわけですね。今は、官邸の意見といっても小泉さんと福田さんとは違いますから、各省庁の意見も聴こうというふうなところありますから、前ほど民間議員の意見でばんばん進むという状況にはなかなかなっていないということだと思います。  そこで、この民間議員の存在といいますか役割が、私は、今は少しおとなしくなっていますけれども、相当、ちょっと暴走もあったんじゃないかというふうに思うわけです。そもそも民間議員って何だろうと私は思うんですが、四人選ばれることが法律で決まっておりますね。二人は必ず、言ってしまえば経団連の代表の方です。今回も、御手洗さんは経団連の会長ですし、伊藤忠商事の丹羽さんですよね。お二人は大体企業出身者ですね、今までもそうですね。あとの二人は学者の方というふうになっております。  私は、この枠組みそのものがおかしいと思うんですけれども、仮にそうだとしても、あとの二人の学者の方はやはり、向こうはもう大企業、企業の、財界の、経済界の代表なんですから、あとの二人の学者は、少なくとも、少なくとも国民全体の利益とか、あるときは労働者の利益とか、そういうふうな立場で御発言をされるべきだったんじゃないかなというふうに思いますが、いまだ、議事録、要約版ですけれども、見させていただきますと、その二人の学者の方も、前もそうでしたけれども、やはり今も経済界のスタンスでお話をされているというふうにしか見えませんし、八代さんはもう御存じのとおり、労働団体からも相当八代批判というのが出ていたり、いろんな国民の諸団体からも八代さんがあのとき言ったことは何だというふうに批判されるようになっているのは、やはりスタンスが、スタンスが経済界の言われ方、あるときはそれ以上の提案をされているということにあるんじゃないかと思ったりするわけです。  そういう点では、民間議員の中の学者の方々の役割というのは、どういうふうに考えて今そういう任務をされているのかお聞きしたいと思います。
  162. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) いろいろ御批判をいただきまして、ありがとうございました。  細かいところから申しますと、甘利大臣と私と意見が対立したと、甘利大臣はあることを言われたけど、私といいますか民間議員は規制緩和が大事だと言ったというような御発言ですが、ちょっと私はどのことかよく理解していない、多分中小企業の話ではないかと思いますが、私は、やはり中小企業は当然大事であるし、中小企業はきちっと、何といいますか、雇用を確保してくれなければ労働者全体の何というか利益にはならないと。しかし、そのためにはやはりきちっと伸びる中小企業が伸びるような、伸びられるような環境をつくっていかなきゃいけない。  先ほど都市再生特区の例で申しましたように、規制緩和がきちっと新しいビジネスをつくり雇用を生み出している例は幾らでもあるわけであります。ですから、決して私は甘利大臣のおっしゃっていることと矛盾したことを言ったつもりはございません。  それから、労働団体が私を批判していると、したがって私は財界の味方だというのも、ちょっと余りにも、やや、ちょっと何というか、シンプルな見方ではないかと思います。と申しますのは、労働者の利益というのが私は本当にそれは一体的なものなのか、特に労働団体というものが本当に労働者全体の利益を代表しているかどうかというのは必ずしも一律に言えないんじゃないか。  それはなぜかといいますと、これはいろんな面であるわけですけれども、例えば今問題になっていますのは、子育て期を終えた女性が正社員として再就職しようとすると非常に難しいわけですよね。その意味でそれが少子化の一つの対策になっている。子供を育てるためにいったん企業を退職すると、もうほとんど戻れない、したがって子供を持たないことにしようという人も増えているんではないか。  その意味で、先ほどから申し上げているように、もっと流動的な労働市場になっていけば労働者全体にとってメリットが大きいんではないだろうか。ですから、そういう意味で、例えば労働組合の組織率もどんどん落ちておりますが、そういう意味で労働団体が吸い上げられない労働者の利益というのもやっぱり存在するんじゃないかというふうに思っております。  ですから、それは、それを考えるときにはやっぱり労働者がいろんな意味で多様な仕事が見付かるような状況、企業の外でも訓練を受けられるような状況、能力と意欲のある人がどんどん仕事ができるような状況をつくっていくということが大事ではないかと思っております。  その意味では、評判が悪いことは承知しておりますが、私はちゃんとやはり正論といいますか、労働市場全体にとって望ましいことは何なのかと、財界と労働界の対立という伝統的な枠だけじゃなくて、やはり労働者の間の利害対立という面にもきちっと目を向けるということが労働政策としても産業政策としても必要ではないかと思っております。  それから、学者としていろいろやっていけというのは全くおっしゃるとおりで、是非そういう観点からも頑張っていきたいと思いますけれども、やはりそれは新しい成長戦略といいますか、成長率を高めて企業が利益を上げ、労働者がもっと雇用機会を得られる、それによって労働者の賃金も上がるという状態を誘導していくというか、そういう状態にしていくということが大事であって、これは決してだれかが得をするとだれかが損をするというような、ある意味で十九世紀のような階級対立の状況とは大分違うんじゃないか。そこがなかなか今仕組みがうまくいっていなくて、結果的にだれの得にもならない長期停滞というものが残念ながら続いているわけで、これは是非、何というか、全体がウイン・ウインの関係になるような状況を是非つくっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  163. 大門実紀史

    大門実紀史君 ちょっと一言言うと、甘利さんの話は二〇〇六年十月十三日の諮問会議ですので後で御覧ください。おっしゃったようなことではございません。  あと、労働組合に吸い上げられていない労働者のためとおっしゃいますけれども、吸い上げられていない、つまり非正規雇用とか、今ワーキングプアで問題になっています、そういう人たちが一番八代さんに怒っているということも御承知をください。  八代さんの個々の政策見解ももう聞かなくても分かっているんで、大本の考え方だけちょっとお聞きしたいんですけれども。私は、先ほど申し上げましたように、竹中さんとは最初からずっと議論をしておりましたけれども、彼がよく言ったのはサプライサイドが大事だと。七年前ですからなかなか経済も大変なときでしたけれども、どうやって景気を良くするかでサプライサイドが大事だと、分かりやすく言えばサプライサイド重視の経済学ということで、そういう議論をした覚えがあります。  しかし、もう七年たって、サプライサイド、つまり供給側ですね、供給側が力を付ければ、企業が力を付ければ需要も後から付いてくるということを言われました。恐らく、八代さんのお考え聞いていると、大体似たような話かな、まだそんなことおっしゃっているのかなと思いますが、今、実際七年たってみて需要は付いてきませんでした。きませんでした。ですから、家計だとか地方だとか中小企業とかは大変な状態だと思うんですよね。  先ほどからずっと聞いていると、成長重視、効率化と、いろいろなこと言われますけれども、そういうやっぱり需要をきちっと考えていかないと、サプライサイドが間違いとは言いませんけど、サプライサイドばっかり偏るとやっぱりこういう結果になったんではないかと。竹中さんがいれば竹中さんに聞きたいんですけれども、同じようなお考えだと思うんで、いかがでしょうか。
  164. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) まず、非正規の人がみんな私を怒っているというのは、必ずしもそうではないんで、私の方にもちゃんと非正規の方からサポートの連絡、手紙もいただいておりますので、その点だけ一言申し上げたいと思います。  それから、もう一つ、竹中さんと私が全く同じ意見かどうかというのは、竹中さんもいろんなことを言っておられますから必ずしも保証はできませんが、供給だけじゃなくて需要が、両方とも大事だというのは、これは当然のことだと思います。  ただ、その需要というものをどういうふうに議員は考えておられるのかという点でありまして、例えば財政需要ということであれば、やはり九〇年代、すさまじい財政支出がなされたわけであります。あるいは減税もなされたわけでありまして、幾らサプライサイドがやってもうまくいかないというふうにおっしゃいましたが、需要サイドも同じようにある意味では十分やったけれども、これも十分にはいってないわけで、やはりそこは両方バランス取って考える必要があるんじゃないか。その需要サイドを景気刺激をたくさんした結果、先ほどから議論になっているように膨大な財政赤字、債務残高が増えているわけで、やはりそうではなくて、財政ももちろん重要でありますが、それは効率的な投資をしていくということが大事であって、単に需要を付ければいいというものではないんだと。  それから、生産性を上げるといっても、それは単に機械的に上げるんじゃなくて、新しい需要をつくり出すような規制改革をすることによって生産性も上がり、したがって投資需要も増えてくる、雇用需要も増えてくるという形で、どっちが先というより、それはもう同時に決まることではないかと思います。  それから、七年もサプライサイド政策をして一向に成功していないんじゃないかということでありますけれども、どれだけ十分なサプライサイドの政策がなされたかというのは私は疑問だと思います。逆に言えば、生産性向上の政策が極めて不十分だったからいまだにこの需要が付いてないというのが私の考え方でありまして、その意味では、更なるそういう生産性向上の努力をする余地はまだまだ残っているんではないかと思っております。
  165. 大門実紀史

    大門実紀史君 じゃ、中林公述人にお伺いいたします。  アメリカ経済にお詳しいということで、サブプライムローン問題、ドル安問題になっていますけど、私は、それもありますけれども、基本的にはアメリカ基本的な力といいますか、双子の赤字ですよね。特に、もう時間ないので細かく言いません、要するに、その双子の赤字を減らす対策をやらないで、例えば財政赤字だったらブッシュのときに軍事費を六十兆か百兆かと、カウントありますけれども、増やして、また増やしていますよね、そういうこととか、何の反省もなく。今度の大統領選挙で変わるかどうか分かりませんが、このまま行っちゃうんじゃないかと思うんですが、その点でアメリカ経済、これから日本にも影響大きいので、どういうふうに見られておられるか簡単にお答えいただければと思います。
  166. 中林美恵子

    公述人中林美恵子君) 一言でということなんですけれども、やはりアメリカ日本の失われた十年あるいは十五年から学ぶところが非常に多くて、やはり初動といいますか最初の対処が非常に重要だ、財政出動もあるいは必要かもしれないというところをもっと学んで動きを速くする必要があると、この問題は非常に根深いというふうに思っております。
  167. 大門実紀史

    大門実紀史君 どうもありがとうございました。
  168. 福島みずほ

    福島みずほ君 社民党の福島みずほです。  今日は御両人、どうもありがとうございます。  社民党は、二〇〇二年から格差是正ということで、経済財政諮問会議、規制改革会議の方針に真っ向から対決をしてきました。  八代公述人にまずお聞きをいたします。  二千二百億円ずつ毎年形式的に社会保障費をカットしたことで、全国を回りますともう本当に悲鳴が上がっています。骨太方針二〇〇六で、相変わらず、これから五年間、二千二百億円社会保障費をカットすると提起がありました。形式的にカットする、ギリシャ神話でベッドに合わせて手足を切るという神話がありますが、形式的に二千二百億円カットすることで現場の人が悲鳴を上げる。  八代公述人、この二千二百億円社会保障費のカットに関して、舛添大臣ももうやっていけないと、はっきりそう言っています。八代公述人の現在の御意見をお聞かせください。
  169. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) これは先ほども議論になったところでございますが、確かに、今の制度を変えずに一律に二千二百億カットしていくというのは大変なことだと思います。ただ、一方で、今の制度にはかなりの無駄がある、効率化の余地があるんではないかと思っております。先ほども申し上げましたようなジェネリックの問題とか、あるいは地域間格差の問題とか、あるいは日本の医療というのはまだまだ標準化ができていない、つまり病院によって同じ病気に対しても違う治療が行われていると、そういう標準化が行われていないことで様々な無駄が起こっている。  あるいは、よく言われていることですが、出来高払という診療報酬体系が残っていると。出来高払というのは、ある意味で、お医者さんがいろいろなことをする行為に対して払われるわけでありますが、普通のサービス業であれば、お客が言わば受け取るサービスに対して値段が付けられるわけであって、それを供給側はできるだけ効率的にサービスを提供するというのが常識である。ところが、医療の場合には、残念ながら医療費を掛ければ掛けるほど医療機関が収入が出るという仕組みがまだまだ残っているわけです。ですから、それは包括払いといいますか、これは先進国ではあちこちでやっておりますが、そういう形で患者にとってサービスの質を維持しながらコストを効率化させていく余地というのはまだまだあるんじゃないか。  残念ながら、そういう制度改革になかなか結び付かないことがまだまだ残っているというのが残念でありますが、今の制度のままでこういう効率化というのをやめてしまうと今後の高齢化社会では大変なことになるわけでありまして、これは是非医療の質を落とさないような形でコストの削減をしていくことを厚生労働省と一緒に考えていくべきではないかと思っております。
  170. 福島みずほ

    福島みずほ君 私たちも反対ですし、厚生労働省ももうできないとはっきり言っているわけです。経済財政諮問会議は間違っていると思いますが、どうですか。私が手法が間違っていると明確に思うからです。ベッドに合わせて手足を切る。つまり、国会でもそうですが、ここに無駄がある、ここに無駄がある、道路特定財源のこの使い方はおかしいじゃないか、この議論なら分かります。しかし、経済財政諮問会議は二千二百億円カットする。今まで五年間やってきて、二〇〇六年からまた五年間形式的に二千二百億円ずつ自動的、形式的、機械的にカットをする、これは手法として間違っている。つまり、どこをカットすればいいか、もう死に物狂いでやって現場がもうおかしくなっているんですよ。その自覚はあるでしょうか。
  171. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今、福島議員がおっしゃった点は必ずしも正確ではないと思います。単に形式的に二千二百億円をカットしているだけではなくて、厚生労働省と一緒になって医療、介護の高コスト構造是正プログラムというのを同時にやっておりまして、そこには私が先ほど申し上げましたようなジェネリックの問題とか、あるいは公立病院の医療費の効率化とか、いろんな点を厚生労働省と協力してやっているわけでございます。そちらの方はきちっと厚生労働省が今いろんなプランを作っていただいている最中でございます。
  172. 福島みずほ

    福島みずほ君 では、厚生労働省がここに無駄があるしここはこう考えるという提言を経済財政諮問会議は尊重されたらいかがでしょうか。厚生労働省はもうできないと言っているんですよ。つまり、二千二百億円を形式的に押し付けるから現場が悲鳴を上げているわけで、経済財政諮問会議の手法に極めて問題があるというふうに思います。  次に、労働ビッグバンのことについてお聞きをします。  規制改革会議の第二次答申ですが、確かにこれの労働法の部分など、問題意識の部分というふうにされていますが、これも政府の公式の文書です。労働ビッグバン路線そのものですが、同じ考え方でしょうか。
  173. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今、福島議員が問題意識とおっしゃいましたが、それはひょっとして規制改革会議のペーパーのことではないですか。
  174. 福島みずほ

    福島みずほ君 そうです。
  175. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 私は、残念ながら規制改革会議のメンバーではありませんので、規制改革会議がどういう答申を出してどういうことをやっているかというのは十分に存じませんが、規制改革会議というのは諮問会議の下にある組織ではございません。別の組織でありますので、規制改革会議の方に聞いていただきたいと思います。
  176. 福島みずほ

    福島みずほ君 これが出しているものが労働ビッグバン路線そのものだと思ったもので、そういうふうに質問をいたしました。  この間、経済財政諮問会議は労働法制の規制緩和を提案をずっとされ続けてきております。御手洗さんは、派遣法に関しては事前面接をなくせ、あるいはもっと業種の制限を全部撤廃すべきだというふうにも言っております。このような労働法制の規制緩和に関して八代公述人、どうでしょうか。  舛添大臣は、先日この委員会で、ディーセントワーク、人間らしい労働とは何を指すと考えるかということに関して、常用雇用、直接雇用が望ましいというふうに答えました。八代公述人は、過去、再チャレンジ支援策の中心は労働市場の流動化だというふうにおっしゃっています。労働法制の規制緩和を、派遣法の規制撤廃とを一貫して主張し、見直しをリードされてこられたわけですが、間違っていたんではないですか。
  177. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) まず、労働ビッグバンという言葉はいろんな意味に使われていますが、単なる規制緩和ではないわけで、これは規制の組替えであります。つまり、今の私の理解では、派遣法、パート法、高齢者雇用安定法というように、労働者の属性ごとに別々の法律があると。これを言わば金融ビッグバンと同じように、一つ法律、例えば均衡待遇の重視といいますか、そういう方向に変えていく、それによって言わばその派遣と請負との間のすき間に落ちるような人たちをきちっと救済していくということが大事であるわけです。  これは私が総合規制改革会議にいたときの第三次答申でありますが、こういうことを書いております。派遣労働者と常用労働者の均衡待遇が実現すれば、派遣対象業務や派遣期間の制限は不要であり、これを撤廃した方が労働者の働き方の選択肢拡大という観点から労働者の利益になるということでありまして、無条件に派遣とか派遣の規制を撤廃しようというのは、私がいたときの規制改革会議で少なくともそういうことは言っておりません。ですから、ビッグバンというのはあくまで労働者にとって働きやすい規制に変えていくということが大事なわけであります。  この労働専門調査会では今まで三つの報告書を出しておりますが、第一がワーク・ライフ・バランスの実現のためにどうしたらいいかということ。第二番目が外国人労働者の問題と在宅勤務を増やすためにはどういう形が必要か。最後の報告書は、高齢者の雇用を増やす、特に高齢者が言わば定年退職後は一年間の有期雇用を継続しているのがほとんどであるという現状改革し、どうしたらもっと責任のある形で働けるかというためにはどうしたらいいかということを検討した報告でありまして、いずれも単なる規制緩和ではありません。すべて労働者が質の高い働き方をできるためにはどうしたらいいかという観点からの言わば提言をしているわけでございます。
  178. 福島みずほ

    福島みずほ君 労働者派遣法の期間を撤廃したり、労働者派遣法の規制を緩和することが質の高い労働にどうつながるんですか。
  179. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今申し上げましたように、単純に派遣の期間とか派遣対象業務を自由化するんじゃなくて、あくまで一方で均衡待遇ということを進めるというふうに、一緒にやるということが第一です。  それから、派遣の期間の問題でいえば、御承知のように、一年間の就労よりは三年間の就労、五年間の就労というふうに、同じ企業で例えば長い期間働けば働くほどその企業に特有な技能を吸収できやすい。その意味では、短い派遣期間より長い派遣期間の方が労働者にとって望ましい場合もあるわけであります。  もちろん、これは福島委員がいつも言っておられるように派遣の固定化につながるとすれば問題でありますが、同時にそれは、三年ごとにあるいは二年ごとに派遣労働者が企業を変わらなければいけないという状況になれば、なかなか熟練形成というのは進まないんじゃないか。その意味では、一定の条件の下で派遣の期間の見直しといいますか、より長くするという方向は派遣労働者の熟練形成にはプラスになる面も大きいんではないかと思っております。
  180. 福島みずほ

    福島みずほ君 三年あるいは五年、今は三年もありますが五年、長く働くのであればなぜ直接雇用にしないのか。均等待遇は本当に進んでいません。  舛添大臣は、ディーセントワークに関して、ILOが言っているように直接雇用、常用雇用が望ましいと言いました。私もこれはそのとおりだと思っております。この点についてはいかがですか。
  181. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 常用雇用が望ましいかどうかは、やっぱり労働者の判断もあるわけで、無条件に望ましいとは言えないと思います。  それは、今の正社員というのは、御承知のように、雇用の保障、年功賃金の代償として長時間労働とか絶え間のない転勤とか配置転換という犠牲を払っているわけであります。派遣社員にアンケートを取りますと、正社員になりたいけれどもやむを得ず派遣社員になっている方というのも当然おられますが、最初から派遣社員で働きたいという人もかなりの数おられるわけでありますから、一方的に常用雇用だけが望ましい働き方で、派遣はすべて悪い働き方だということは必ずしも正しくないんじゃないかと思います。  大事なのはその中身でありまして、常用雇用でもひどい働き方もあります。派遣でも、専門職であれば極めて質の高い、ある意味では給料の高い派遣もあるわけで、問題は働き方の中身であって、派遣は一律に悪い、常用雇用は一律に望ましいという形の切り口というのは別の問題があると思っております。
  182. 福島みずほ

    福島みずほ君 派遣が全部悪いなんて言っていません。非正規雇用が拡大をした結果、年収が二百万円以下の人が今四分の一にもなった現状、あるいは多くの派遣の人たちに今まで会ったからです。  正社員が長時間労働だというふうにおっしゃいました。正社員の働き方も問題です。では、お聞きをします。日本版エグゼンプションについて、これは導入すべきだという論者でありますが、現在もこれを維持されますか。
  183. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) その前に、今、福島議員がおっしゃった点でありますけれども、いろんな派遣社員があるというのは全くそのとおりだと思いますが、常用労働でなければいけないのかという点につきまして、それは、メリット、デメリットがあるというのは既に申し上げたとおりであります。  ちょっと言いたいことを忘れてしまったので次に行きますが、ホワイトカラーエグゼンプションでいきますと、私は、ホワイトカラーエグゼンプションというものが非常に誤解されているというふうに思います。  これは、法律を出した厚生労働省の責任もあるんじゃないかと思いますが、つまりホワイトカラーエグゼンプションというのがあたかもただ働き残業を正当化するというような批判がされたわけです。しかし、厚生労働省が出した原案には、きちっとその歯止めは実はあるわけです。つまり、ホワイトカラーエグゼンプションの対象になった労働者については、年間百四日の言わば強制休暇というものを義務付けられるということであります。  ですから、今の働き方であれば、集中的に働く、その仕事が終わったらまた別の働き方をするということで休む暇がないわけです。ところが、このホワイトカラーエグゼンプションがきちっと法律どおり実施されたといたしますと、言わば集中的に働いた後は年間百四日の休暇を取らなければいけないわけで、これは事業主に義務付けられているわけですよね。ですから、そういう意味で、今の言わばだらだら働くやり方と比べてセーフティーネットがきちっと付いているわけです。ですから、問題は、今それすらない状態のことと比べて、私は、これはある意味では一つの労働者にとって選択肢を広げるやり方ではないかと思っております。  問題はその運用でありまして、福島議員もいつも言っておられますように、現在サービス残業というのが横行している、これはきちっと基準監督署が取り締まらなければいけないと、これは当然のことです。ですから、最初から違法を前提にして規制緩和はけしからぬという言い方はおかしいわけで、規制緩和をしようがしまいが、きちっと法律どおりに、のっとった労働行政をしてもらわなきゃいけない。しかし、ホワイトカラーエグゼンプションの厚生省原案の考え方というのは、そういうふうに一種の規制緩和と規制強化を組み合わせた仕組みであるということを御理解ただきたいと思います。
  184. 福島みずほ

    福島みずほ君 今、名ばかり管理職というものがマックなどの判決で出ておりますが、ホワイトカラーエグゼンプションは管理職一歩手前の人間に関しても労働時間規制をなくすもので、先ほど八代議員は、正社員だって長時間労働だとおっしゃいました。私たちは、正社員の本当に死ぬほどこき使われる、非正規雇用は死ぬほど安くこき使われる、そういう労働法制をどう変えていくか、日本版エグゼンプションなんて論外だというふうに思っております。  福田総理は賃金の引上げを経団連会長に求めましたが、日本の低賃金は、派遣や請負等の非正規労働者を増やしたり、今までの労働法制の結果だというふうに考えませんか。
  185. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 今の最後の点で思い出しましたが、労働規制緩和によって非正社員が増えたというのが今の福島議員のお話だと思いますが、それは私はちょっと事実に反しているんじゃないかと。  つまり、非正社員が増えた最大の原因はやっぱり長期停滞であるわけでして、この九〇年代以降の一・五%という低成長の中で、これまで過去の高い経済成長の下では、少ない非正社員をバッファーにして正社員の雇用を守ってきた日本的な雇用慣行というものが低成長によってより多くの非正社員を必要としているわけです、正社員の雇用を守るために。これは、企業の行動原理としてある意味ではやむを得ないことであるわけでありまして、それを規制しようとしたら、逆に行ってもっと正社員の雇用が減ってしまう、少なくとも企業は新規採用を抑制することはできるわけですから。ですから、ある意味で、そういう長期経済停滞をいかにして早く脱出するかということが非正社員を減らすための最大の目的になるわけであります。  ホワイトカラーエグゼンプションのことに戻りますが、繰り返し申しますが、今の名ばかり管理職の問題は私は論外だと思います。管理職というのはきちっと自分の裁量で働ける人たちであって、働けない人を名ばかりの管理職にするということは基本的にやっぱりそれは今の法令違反であって、きちっと取り締まられるべきだと思いますが、ホワイトカラーエグゼンプションというのは、繰り返し申しますが、その対象となった人には強制休暇が義務付けられるわけであります。これが労働者にとってメリットかデメリットかというのは明らかではないかと思います。
  186. 福島みずほ

    福島みずほ君 賃金は九年間、御存じのとおりみんな下がり続けていますし、労働分配率も年々下がっています。企業が空前の好景気でありながら労働者の生活が良くない、そして、少なくとも労働者派遣法の規制緩和が日雇派遣、製造業まで及んで、日雇派遣が製造現場に拡大をしたと、明確に法律の結果だというふうに思います。  市場化テストについてお聞きをいたします。  八代公述人も加わった市場化テスト評価委員会の中で、民間実施地域において求人確保が十分に進まなかったことは当該地域の求職者の就職機会観点から大きな問題と言えるというふうにされて、問題点が指摘されております。要するに、官の方が良かったという結果が明確に出ております。ですから、ハローワークに関する、特に市場化ですね、これはやめるべきではないですか。
  187. 八代尚宏

    公述人(八代尚宏君) 市場化テストの前に、規制緩和されたことによって派遣が製造業の現場に及んだということで、労働者にとってマイナスになったという御主張だと思います。  ただ、じゃ、派遣が製造業の現場に及ばなかった前は何が起こっていたかというと、今派遣の人がやっていることは請負労働者がやっていたわけでして、この請負労働の方が派遣より本当にいいかどうかというのはまた別の問題であります。  ですから、規制で物事を何でも解決できるというのはやっぱり別の問題でありまして、やはり労働市場の実態に応じて多様な働き方を実現できるような効率的な法整備というのが必要なわけであって、派遣が問題である、だから請負は構わないというわけにはいかないんじゃないか。ですから、請負も、派遣とか、そういう働き方の違いにかかわらず、均衡待遇を実現するような新しい法整備が私は必要だと思っております。  市場化テストの観点に関して福島議員がおっしゃっているのは、今のハローワークの市場化テストの前の段階として、言わばモデル事業として、先ほども言いましたように、キャリア交流プラザ等求人開拓事業、ほかにも幾つかありましたと思いますが、そういうものを厚生労働省がこれまで疑似市場化テストという形でやってきているわけであります。おっしゃったとおり、特にこの求人開拓事業において民間事業者が予想したほどの結果をもたらしていないというのは全く事実であります。  ただ、これはあくまでも、繰り返し申し上げますが、ハローワークの中の仕事の一部を切り出して、なぜかこれだけを民間の事業者にやらしたわけでありまして、いろんな結果が出ておりますが、これが果たしてハローワーク本体について同じように当てはまるかどうかは別であって、ハローワーク全体を一体として市場化テストに掛けるということによってどういう結果が出るかは全く分かりません。  いずれにしても、ハローワークの民間開放が必要かどうかは市場化テストの結果決まることであって、最初からそういうモデル事業の結果だけで本体の市場化テストをやめる、あるいはそれをやることを恐れるという必要性は全くないんじゃないかと思っております。
  188. 福島みずほ

    福島みずほ君 偽装請負があるから派遣は製造業にも導入すべきだとしましたが、請負にもメスを入れず、派遣を製造業にも拡大をした結果、現状ではひどい状況になっていることは八代公述人は御存じだと思います。  社会保障費の二千二百億円のカットや労働法制の規制緩和や様々な構造改革が人々の生活を破壊したという思いがとてもあります。経済財政諮問会議はその役割を終えるべきではないかということを、個人的には、というか、社民党は思っております。  今日はどうもありがとうございました。
  189. 鴻池祥肇

    委員長鴻池祥肇君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、御礼を申し上げます。  本日、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後五時四分散会