○衛藤晟一君 私は、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、ただいま
議題となりました
厚生労働委員長岩本司君に対する
解任決議案について、
提案の
趣旨を説明します。
まず、
決議案の
案文を朗読いたします。
本院は、
厚生労働委員長岩本司君を
委員長の職より解任する。
右
決議する。
具体的に
提案の
趣旨を説明する前に、参議院第一党である民主党の議会運営のやり方に多くの重大な問題があったこと、そして
国民生活に多大な影響を与えてきたことを改めて申し上げておきたいと思います。
国民の皆様には、その理不尽さを知っていただくとともに、このままでは議会制民主主義の土台を揺るがすものになることに警鐘を打ち鳴らすものであります。
まず、
国民生活の根幹である本年度の予算でありますが、その審議における民主党の対応には常軌を逸したものがありました。
予算案は二月二十九日に参議院に送付されました。本来なら、すぐに審議入りしなければなりません。しかしながら、民主党は予算
委員会開会に
反対し、いたずらに時間を空費し、参議院で審議が開始されたのは二週間後の三月十三日でありました。
この間、我々は、参議院
議長に円滑な審議が実施されるよう努力いただきたいと再三にわたり要請いたしましたが、何ら有効な手が打たれなかったのであります。
議長の職にあっては、元所属会派の
価値判断を離れ、大所高所から議会運営に努力いただけるのではないかという我々の期待は全く裏切られたのであります。
さらに、民主党は今年年度末には尋常でない国会運営を行いました。民主党は、ガソリン税の暫定税率の延長を規定した道路整備費の財源等の特例法案を、自らが
委員長職を持つ財政
金融委員会へ付託したのであります。
法律の所管は国土交通省であり、全くお門違いの
委員会での審議となりました。
委員会で思うがままに法案をもてあそびたいとの思惑で、こうした不可解極まりない理不尽な行動を取ったのであります。
暫定税率は一か月間切れた状態となり、
国民生活を大混乱に陥れたのは記憶に新しいところであります。こうした国会運営は、昨年の臨時国会から枚挙にいとまがないのであります。改めて民主党に猛省を促します。
さて、現下の
我が国の情勢を見ますと、
少子高齢化が急速に進み、経済
活動や
社会の仕組みも大きな変革が求められております。
国民生活の安心、安全につながる
社会保障制度についても、時代の流れに合わせて構造的に改革されなければならないことは言うまでもありません。
医療制度、年金、介護など、あらゆる面で長期的な視点から抜本的に変革していかなければなりません。これまで、
政府・与党は一丸となって
国民の声に真摯に耳を傾け、国会でも十分な審議を通じ、より良い政策を打ち出してきました。しかしながら、昨年夏の参議院通常選挙の結果、国会においては、
衆議院と参議院で多数を占める会派が異なる、いわゆるねじれ国会の状態が生まれました。
こうした国会情勢を前提に我々与党は、政策の決定
過程においてはあらゆる工夫と努力を重ね、野党の
意見にも
配慮して、国会では丁寧にかつ真摯に議論、審議を行ってきたのであります。それが議会制民主主義にかない、
国民の負託にこたえ得るものであるとの強い責任感からであります。与えられた環境において、最大限、国家
国民のために努力をするのが政治家に課せられた使命であります。
少子高齢化社会における
医療制度を改革するこの重要な時期にあって、その最前線の議論の場である参議院厚生労働
委員会は、
国民の皆様が注視している重要な
委員会であることは言うまでもありません。
国民の期待にこたえ、しっかりと議論をし、納得のいく結論を得なければなりません。
我々、参議院厚生労働
委員会の
委員は、強い責任感を感じつつ、議論を重ねてきたのであります。そして、
高齢者医療の改革という重要課題を抱えているだけに、岩本
委員長には
委員各位の活発な議論を引き出し、これを積み重ね、党利党略に偏らない結論を導き出す
委員会運営を期待し、また願ってもいたのであります。
しかしながら、岩本
委員長は、
委員会運営において、これから述べますように全く公平性を失い、所属会派の意向に左右され、まさに政局のみを念頭に置いた党の方針に操られてこられました。結果として、多数の
委員のみならず、
高齢者を始め
国民に大きな不安を与えたのであります。
民主党は、後期
高齢者制度は問題が多いとして、その廃止法案を提出していますが、
委員長は、
国民が注視するこの重要法案の審議をたったの二日間、審議時間にして約八時間という極めて短期間で済ませました。ついに昨日、我々与党欠席の下、
委員長の強権で
採決されたのであります。
ちなみに、
後期高齢者医療制度を導入した第百六十四回国会では、全体の審議時間は四十一時間、うち野党だけでも二十八時間が確保されています。今回はまさに、前代未聞の乱暴でいいかげんな
委員会運営と断ぜざるを得ません。
順を追って述べますと、まず先週、厚生労働
委員会の
理事会において、廃止法案の審議も始まっていない時期にいきなり民主党の
理事から、法案
採決の
日程、いわゆる出口の
提案がありました。与党のみならず民主党以外の野党の
委員も、前代未聞のことと驚き、あきれたのであります。
さらに、
委員長は、六月三日の
理事会においては、民主党の家西
理事から、五日に
参考人質疑を三時間、締めくくり
質疑を二時間行った後、
質疑終局、
討論、
採決するとの
提案を受け、他の
理事の
意見を封じ込め、議論も
採決もせず、一方的に
委員長宣言を行ったのであります。
その際、我々与党
理事のみならず、共産党、社民党のオブザーバーからも
意見を聞かず、
意見を述べる時間も与えず、皆が
異議を唱える中、
理事会を閉会したのであります。過去に、我々与党が多数を占めているとき、
委員会の
参考人などの
日程をいきなり
委員長宣言のみで決めるといった暴挙は一度たりともありません。あくまでも全会派の同意を得て
日程を決めておりました。
この
委員長の党利党略のみを考えた行動に対して、我々与党は強く抗議をし、撤回を求めましたが、
委員長は何の修正行動も起こさず、昨日、廃止法案は
委員会において議決されたのであります。
自らの
提案した法案を何の議論もせずに、議決することのみを最優先し、他会派の
意見を封殺する、まさに議会制民主主義にもとる暴挙であります。
一部では、この週末の沖縄県
会議員選挙をにらんだパフォーマンスとの見方がありますが、私もそうした民主党の政局のみを
意識した議会運営の
在り方に大いに疑問を感じていることをこの際強調しておきたいと思います。
ただ、岩本
委員長にも同情すべき点はあります。個人として直接抗議をしに行くと、申し訳ないと言われます。他の
理事の方も公の場でなければ、党の方針ですから仕方がない、私も組織の一員ですと言われるのであります。本音のところでは民主党の
委員も運営のやり方はおかしいと認識されているのであります。党の方針と本人の考えにそごが生じることは起こり得ることであります。しかし、良心の呵責にさいなまれながら、嫌々
委員会運営を行うというのはいかがなものでしょうか。
委員長や
理事は公の立場であります。それだけに、党利党略を優先した
委員会運営ではなくて、自らの良心と正当な判断に従って、議会制民主主義の議論のルールを、民主主義の土俵を維持することに全精力を傾けなければなりません。ルール無視のごり押しで何でも決めてしまう態度は、いかに所属する党の方針だからといっても戒められなければなりません。私は、この点が同じ議会人として極めて遺憾であり、民主党に猛省を促したいと思うのであります。
報道によりますと、四日に参議院の野党四党の幹事長・書記局長会談が開催されています。その席で、廃止法案の
採決日程を
委員長が勝手に決めたことについて、民主党は他の野党三党に対し、申し訳ないと非を認めたとのことであります。我々与党や
国民に対しても同じように謝罪をしていただきたいと思っています。
委員長としても、その職責を汚したことを大いに反省していただきたいのであります。そして、
日程を白紙に戻し、もう一度十分な審議時間の確保に努めていただきたい。強く再考を求めます。
国民の皆様には、廃止法案のいいかげんさとともに、その法案が参議院の厚生労働
委員会で
採決された
過程の不正、理不尽さを明確に分かっていただきたいと、この場を借りて訴える次第であります。
我々は、
国民の間で
後期高齢者医療制度に関して不満や批判があることを重々承知しております。それだけに、
医療制度の
在り方についてしっかりと時間を掛けて、丁寧かつ十分な議論を積み重ねたかったのであります。議論を尽くし、
国民の皆様の
意見を聞き、我々
委員が納得した上で、最後には法案が
採決されるのは致し方ないことであるという具合に考えておりました。もちろん我々は、この無責任法案に強く
反対させていただきますが、議論を尽くす労を取ることなく、自ら提出した廃止法案の拙速な議決のみに邁進し、他の
意見を聞こうともしなかった
委員長は、残念ながらその任に値しなかったのではないでしょうか。
岩本
委員長の主張、ポリシーは何かと、そのホームページを拝見しました。そこでのあいさつの中で
委員長は、政治家として課題に真摯に取り組み、平和で豊かな
日本、そして世界が豊かで安寧な
社会を築けるよう努力、精進していく
所存ですと述べられております。しかしながら、
委員長として取られた行為は、ホームページで支持者に約束された政策努力、精進につながるものでありましょうか、疑問であります。
また、民主党の意向を受けたと思われる
委員長の軽挙妄動は、我々がこれまでに与野党を問わず、その協力の下、地道に営々と築いてきた議会運営の王道を壊すことになるのではないでしょうか。まさに断腸の思いであります。
もとより、今回の一連の言動は、
委員長個人の判断ではなく、民主党の政局を念頭に置いた政略の一環であろうと考えます。民主党の議会運営の
在り方に関しては、この
機会に猛省を促したいと思います。ねじれ国会の中で参議院の過半数近くを占めているということは、それだけ国政を担う責任が大きく、
国民への説明も的確にできる政策対応ができなければなりません。
我々与党は懐を深くして、野党などからの様々な議論を真摯に受け取り、しっかりとそしゃくして国政に邁進していく覚悟であります。しかし、残念ながら、民主党には責任ある参議院第一党としての行動をしなければならないという認識が欠如していると断ぜざるを得ません。
本来なら、こうした
委員長解任
決議を提出したり、民主党の議会運営のやり方を指弾することは、極めて遺憾であり残念なことでもありますが、あるべき議会制民主主義を取り戻し、一刻も早く正常な状態に回帰させるためには、誠にやむを得ざるものであります。
最後に、我々参議院議員は、今後とも、良識の府を目指し、正常な議会運営を心掛け、与野党間で審議を積み重ねる姿勢を終始貫いていくことを
国民にお約束します。
以上、
解任決議案を提出する理由を申し上げ、本
決議案に対して議員各位の
賛同が得られますよう要請して、私の
提案理由の説明を終わります。(
拍手)
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