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2008-01-23 第169回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年一月二十三日(水曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成二十年一月二十三日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、議員山本孝史君逝去につき哀悼の件      ─────・─────
  2. 江田五月

    議長江田五月君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。浜四津敏子君。    〔浜四津敏子登壇拍手
  3. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 私は、公明党を代表し、福田総理施政方針演説につき質問をいたします。  初めに、薬害C型肝炎訴訟和解により順次解決の運びに至ったことは大変喜ばしく、総理の御決断に私どもとしても感謝申し上げたいと思います。  しかし、手放しに喜んでばかりはいられません。私は、全国原告団代表山口美智子さんの言葉に胸をえぐられるような強い衝撃を受けました。  それは、第一点として、山口さんが国会議員との懇談会において次のように語られたことです。薬害被害を受け、病気を抱える私たちが自ら動かないと国は動いてくれなかったと。この言葉の持つ重みを国会議員の一員として、私自身強い反省を込めてかみしめました。  政府の当初の和解案全国原告団に拒否されて初めて一律救済に国が動いた事実は認めざるを得ないと思います。この悲痛な叫びを総理はどのような思いで受け止められたのかをお伺いしたいと思います。  第二点として、山口さんは、私たちは今、頂上に登ることができました。しかし、多くの肝炎患者さんはまだ頂上に達していません。一般肝炎対策にも力を入れていただきたいとも語っています。  私は、今後、国が救済対象者拡大を恐れて、今回の対象者以外の被害者救済に消極的になるのではないかと心配しています。総理は、肝炎被害者だけでなく、オウム被害者原爆被害者中国残留邦人などの支援にも心を砕いておられますので、杞憂にすぎないかもしれませんが、この際、救済に重点を置いて、一般肝炎患者さんを含め、支援に取り組む姿勢を明確にお示しいただきたいと思います。  総理施政方針で、今年は生活者消費者が主役となる社会へのスタートの年との決意を表明されました。その観点から、国民皆様に直結する年金医療介護消費者保護などについて伺います。  社会保険庁は、昨年十二月から、これまでの調査年金記録漏れ可能性が高い人から優先してねんきん特別便を送付しています。しかし、これまで窓口で訂正した人は少数にとどまっています。それは、特別便を受け取る人の多くが高齢者ですから、通知を受け取っても開封しなかったり、また開封しても意味が分からなくて放置している人が大半だからではないでしょうか。再度、特別便を送付しても余り効果は望めません。電話や訪問などで、直接高齢者に分かりやすい説明をするなど具体的な取組をする必要があると考えますが、いかがでしょうか。  次に、救急医療対策についてお尋ねします。  昨年来、たらい回しによる死亡事故が後を絶ちません。  公明党は、昨年九月、救急医療体制整備に関するプロジェクトチームを立ち上げ、救急医療現場に何度も足を運び、関係者の声を聴きました。また、全国救急医療に関するアンケート調査も行いました。  私どもが視察した東京都災害救急情報センターでは、一一九番通報があれば、今患者さんを受け入れることができる病院がどこにあるか、すぐに判明する救急受入れ表示システム導入しています。それにより、救急隊員が受入れ病院を探す必要がなく、患者さんをすぐに適切な医療機関に運ぶことができるようになっています。こうしてたらい回しが起きないシステムをつくっているのです。  そこで、国がリーダーシップを発揮して、まずは救急情報システム整備法救急医療対策推進法制定し、全国で市町村を超えた広域連携体制の構築と救急受入れ表示システム導入早期に図るべきと考えますが、いかがでしょうか。  また、たらい回しの大きな原因一つは、何といっても医師不足医療スタッフ不足です。  我が国には、資格を持ちながら出産子育て介護など、現場を離れた女性医師助産師看護師などがたくさんおられます。そこで、院内保育所などの環境整備とともに、退職した女性医師らが安心して再び医療現場に戻れるよう研修システム及び再就職先につなげるシステム全国整備すべきです。この研修を個々の病院に任せることは余りに無理があります。国が拠点病院を指定して、そこで研修を受けた女性医師らが安心して再就職できるよう国が後押しをするべきと考えますが、いかがでしょうか。  次に、介護問題について三点伺います。  一つには、現場介護に携わる人たち労働条件が余りにも過酷だという点です。介護従事者の多くは、高齢者の役に立ちたいとの理想を胸に資格を取得し、仕事を始めます。しかし、早朝から深夜まで重労働で、懸命に仕事をしても給与は一か月十数万円ほどの低賃金、その上、人手不足で疲れても休暇も取れない、せっかくヘルパーの資格を得ても現場ではお手伝いさん扱い、そんな厳しい現実に直面して、このままでは生活できない、将来に希望が持てないと、耐え切れず退職していくのが現状です。  介護に携わる人たちがいなくなれば介護保険制度も立ち行かなくなり、まさに介護保険制度の根幹を揺るがす問題です。まずは、介護に携わる人たちが誇りと自信を持って仕事をできるよう、また安心して暮らせるよう、労働条件福利厚生向上に全力を挙げるべきです。  二つ目に、できるだけ多くの希望者介護資格を取れるよう、放送大学に介護学科を新設するとか、介護職を目指す人たちへの奨学金推進及び充実を図るべきです。  三つ目に、法律に基づき都道府県が介護事業所に対して行う監査についてです。この手続が煩雑過ぎて多くの時間を取られ、介護職員が本来の介護サービスにかかわる時間を取られてしまうのです。この事務手続軽減策を図るべきです。  以上三点について総理見解をお伺いいたします。  次に、消費者保護についてお伺いします。  近年、悪徳商法はますます巧妙となり、殊に高齢者をねらって老後の資金として長年蓄えた貯蓄や退職金をだまし取る事件が後を絶ちません。  公明党は、昨年五月、特定商取引法割賦販売法の改正に関するプロジェクトチーム議論を重ねました。その結果、特定商取引法割賦販売法の大胆な見直しが必要との結論に達しました。悪徳商法の根絶に向けて、これらの法改正を含め、強力に取り組む必要があると考えますが、総理見解を伺います。  数年前、日本の著名な学者が「なぜ日本は没落するか」という本を出しました。その中で、その原因教育の荒廃にある、つまり、日本では教育知識を習得させるだけのものとなり、人間を無気力に洗脳してしまったと指摘しています。  第二次世界大戦で起きたホロコースト、大虐殺は、当時、ヨーロッパの中で最高の教育水準を誇っていた国が行いました。その原因は、知識だけを詰め込んで、人間性や人格を高めるという人間教育を欠いていたからだと言われています。知識人によるホロコーストという歴史的事実からしっかり学び、知育、徳育、体育のバランスの取れた人間教育の実現こそが、未来の日本人間性豊かな、品格の高い国にするものと確信します。  そこでまず、子供学力向上について伺います。  昨年十二月の調査によれば、日本子供たち知識や技能を実際の場面で活用する力や読解力に大きな課題があることが明らかになりました。  いわゆるゆとり教育見直して、授業時間を増やすことが進められていますが、時間を増やすだけでは、考える力や活用する力、読み取る力を身に付けることはできないと考えます。しっかり知識を身に付けさせることも大事ですが、それとともに、自ら考えさせ、学びたいとの意欲を向上させ、好奇心探求心を引き出す質の高い授業こそが学力向上させます。  先日、授業に「よのなか科」を取り入れるなどユニークな取組で有名なある公立中学校を訪問しました。その中学校では年々学力向上しています。それは、その中学校では学校を支える地域本部設置し、父母やOB、地域の大人たちら多彩なスタッフと大学生が様々な活動学校を支えていることが理由の一つと言われています。例えば、土曜の午前中や放課後、夏休みなどに、子供たちが自主的に勉強する寺子屋を運営したり、図書館の運営や校庭の整備などにも取り組んでいます。その結果、教師負担が大幅に軽減され、教師授業に集中し、子供たちに向き合う時間が生み出されています。  また、「よのなか科」の授業では、例えばホームレスや自殺などについて子供たちが互いに議論をして、自分たち考え授業をしています。授業では、本物のホームレスの人やその支援をしている人にも来てもらって、直接子供たちが話を聞く機会があり、様々なことを学んでいきます。この中学は、まさに社会総掛かり教育を具体的に実践して、学力向上のみならず、人間力向上に大きな効果を上げている例と思います。  より良い教え方を教師が身に付けるように、そしてそれを後押しするため地域全体で子供教育にかかわることが教育再生のために不可欠と考えますが、教育に懸ける総理決意を伺います。  二点目は、徳育についてです。  公明党は、これまで職業体験ボランティア体験自然体験文化芸術体験など様々な体験学習を進めてきました。  職場体験に参加したある子供は、これまで、お父さんは休みになるとテレビの前に寝転がっているだけ、尊敬できないと思ってきたが、社会の中で大人の人たちが一生懸命働いていることが分かってお父さん見直したとか、野菜嫌い子供学校の食育の一環として自分野菜を育てることで自然に野菜嫌いが直った、あるいはボランティア体験で人の役に立つ喜びを知った、障害者高齢者への偏見がなくなったなど、子供たちは様々な体験学習を通して、目に見えない、人間として大切なことをたくさん学びます。  今、徳育推進が言われていますが、教室の中で教科書を読むだけで効果が上がるとは思えません。それよりも、様々な体験活動や読書を推進して、子供たちが自ら考え、行動し、感動する中で人間としての基本社会のルール、礼儀などを自然に身に付けることができると考えますが、総理のお考えを伺います。  三点目は、幼稚園保育園などの費用負担軽減です。  子育て経済的負担は大変大きく、例えば私立の幼稚園では年間五十万円以上の負担があります。昨年改正された教育基本法では、幼児教育は生涯にわたる人格形成基礎を培う重要なものと位置付けられています。小学校中学校は無料なのに、その前の幼稚園保育園費用が余りに高いというのは本末転倒ではないでしょうか。今こそ、幼児教育無償化へ向けた制度設計に積極的に取り組むべきと考えます。今後、幼児教育無償化をどのように進めていくのか、総理のお考えを伺います。  次に、環境対策についてお伺いいたします。  近年、地球温暖化原因と見られる大干ばつやハリケーン、洪水などの自然災害世界中で多発し、まさに地球上のすべての人々にとっての非常事態と言っても過言ではありません。  昨年末のCOP13では、温室効果ガス削減について、二〇〇九年末の妥結を目指してポスト京都議定書枠組みに関して交渉を開始することで合意がなされました。我が国は今年、この交渉の進展に重要な役割を持つG8サミット議長国であり、世界温暖化対策、特にアメリカ中国などすべての主要排出国が参加する新たな枠組みづくりをリードする使命があります。  私は、我が国議論をリードするには自らが確固とした削減政策と中長期の排出削減目標を示す必要があると考えますが、総理のお考えを伺います。  我が国排出削減を進めていくためには、産業社会石油依存を見直す必要があります。原油高の今こそチャンスです。特に風力や太陽光発電バイオマスなど、新エネルギー利用拡大に積極的に取り組むべきです。我が国は新エネルギーを三%にするとの目標がありますが、目標の引上げを含め、新エネルギー導入を加速度的に行うための施策につき、総理見解をお伺いします。  石油脱却に向けてかぎを握っているのが自動車向けガソリン等であり、代替燃料としてバイオエタノール燃料が注目を集めています。私は、石油産業社会に代わるバイオマス産業社会をも展望し、食料との競合問題への対応も含めて、バイオマス活用推進を図るバイオマス推進基本法制定してはどうかと考えますが、総理の御所見をお伺いします。  日本発環境に優しい製品世界製品になりつつあります。例えば、昨年、ニューヨークの冬のシンボルであるロックフェラーセンターのクリスマスツリーは発光ダイオードによる明かりでした。家電製品や車などでも日本省エネ技術世界でトップの水準です。この技術世界に広く提供し、日本省エネ基準世界基準とすれば、地球規模温暖化対策の大きな前進になるとともに、日本経済発展にもつながることは間違いありません。そこで、我が国洞爺湖サミット省エネルギー国際基準化イニシアチブを提案し、今後の検討課題としてはいかがでしょうか、総理の御所見を伺います。  我が国の対中国ODA環境対策を重視してきましたが、円借款については今年で円満に終了することになっています。しかし、環境対策はなお長期的な取組が必要であると考え公明党は日中の共同出資による日中環境基金設置を提案してきたところです。中国環境悪化我が国に直接の影響を与える問題でもあり、ビジネスベースに乗らない部分について政府ベース基金設置し、我が国の経験、技術人材等も生かして中国環境保全に協力すべきと考えます。その事業として、具体的には、海洋の汚染源地域にある小都市の下水処理事業を始め、廃棄物処理事業中小企業環境対策事業、さらには日本に飛来する黄砂の発生源対象とする植林事業などが想定できます。  さきの日中首脳会談温家宝首相からも環境基金について言及があったと聞いております。今年は、胡錦濤主席の来日、洞爺湖サミットの開催もあり、日中の環境協力を大きく前進させるまたとない機会です。日中の戦略的互恵関係基礎を築くものとして日中環境基金設置に是非積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、総理の御見解をお伺いします。  次に、中小零細企業支援についてお尋ねします。  中小零細企業が大変厳しい状況にあることは周知の事実です。中小零細企業への支援なくして、地域経済のみならず、日本経済活性化も、またそこで働く人の生活の安定もありません。大企業は下請にしわ寄せを押し付けないように、またいずれの企業従業員の働いた分を適正に賃金に反映させて給与所得が増えるように、労働法制などの見直しが必要と考えます。  また、中小企業支援策として、金融円滑化のため、予約保証制度及び売掛債権早期現金化支援制度の創設が必要と考えます。また、無担保無保証融資の更なる拡充など、既存の融資制度保証制度の一層の拡充も必要です。  さらに、多くの中小零細企業が、交際費損金算入限度額を現在の三百六十万円からせめて五百万円に拡大されることを望んでいます。これを実施すれば、中小零細企業事業活動拡大するだけでなく、幅広い業界にお金が回り、経済活性化後押しになることは明らかです。  政府として大胆に取り組むべきと考えますが、総理の答弁を求めます。  公明党は、女性の一生をトータルにサポートする女性の一生サポートプランを検討してきました。その中から代表的な政策について総理の御意見を伺います。  第一の政策は、女性の健康や医療について調査し、研究する女性健康研究総合センターの設立です。  公明党はこれまで女性専門外来設置推進してきましたが、まだ男性と女性の違いによる性差医療は進んでいません。アメリカでは各州にこうしたセンター設置されています。日本でも、女性医療の中心となる健康センター設置して調査研究を進め、さらに女性専門外来を担当する医師を養成するなど、真に女性のための医療に活用してはどうでしょうか。  第二は、女性健康パスポートの発行です。  あるヨーロッパ在住日本人女性出産のために現地の病院に行ったところ、医師から、あなたが生まれてからこれまでに受けた予防接種病歴治療歴記録を見せてくださいと求められました。安全に出産するためには不可欠だというのです。その国では、一人一人、生まれてからの自分の健康に関する記録を一冊の手帳として持っていて、病気やけがのときは当然ですが、特に妊娠、出産のときにその情報を見ながら医療を受けるというのです。  そこで、女性の生涯にわたる健康を守るために女性健康パスポートを発行して、予防接種病歴治療歴出産健康診断などの記録を記載し、併せて女性特有病気予防などの情報も提供してはどうでしょうか。  第三は、若い女性向け総合カウンセリング窓口設置です。  若い女性の多くが、健康や仕事人間関係など様々な悩みがあっても安心して相談できる場所がなく、一人で悩み、不安を抱えています。そこで、各地の女性センターなどで気軽に安心して相談でき、その解決のために具体的なアドバイスをしたり、専門家を紹介する総合カウンセリング窓口設置することを提案します。あわせて、窓口に行けない女性のためにインターネット等でも相談できるようなシステム整備することを提案します。  第四は、かねてより公明党が提言してきた仕事生活調和推進基本法制定です。  仕事生活を調和させることは、人間として豊かな生き方ができる社会づくり基本になります。家族団らんの時間もでき、子供たち心身共に健全な成長のためにも不可欠です。今こそ仕事生活調和推進基本法制定が必要と考えますが、いかがでしょうか。  以上、総理女性政策に対するお考え公明党女性の一生サポートプランについての御意見をお聞かせください。  次に、行政改革につき、三点提案させていただきます。  第一に、大胆な歳出改革を行っていくためには、歳出構造そのもの見直し、個別に点検していくことが重要です。  まず、事業仕分の実施です。国の事業一つ一つについて、本当に必要なのかどうか、国がやるべきなのか、それとも地方又は民間でできるのではないか、あるいはそもそも廃止すべきではないか、複数の省庁で同じことを重ねてやって無駄ではないかなどの観点から、より積極的かつ綿密に仕分を推進すべきです。さらに、規制改革市場化テストについて、その対象範囲を広げていくべきです。また、政策評価省庁に任せるのでなく、内閣で一元的に政策評価を実施していく厳格な事後評価システム導入も必要と考えますが、いかがでしょうか。  第二に、税金無駄遣いの徹底的な排除であります。  度重なる行政不祥事防止のために特に重要と考えるのは、会計検査院機能強化であります。先般の公明党調査で明らかになったことは、会計検査院税金無駄遣いとして各省庁に返還を求めたにもかかわらず、いまだ返還していないお金が約百億円にも上るという事実です。国民皆様からは厳しく税金を取り立てながら、役所はその税金無駄遣いした上に、無駄遣いした金を返すように言われても返そうともしないことに、私は心からの憤りを覚えます。各省庁が早急に返還するよう、総理が断固リーダーシップを発揮されるよう強く求めます。  憲法には、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と明確に定められています。つまり、我々国会議員も、そして行政に携わる公務員も、国民のために奉仕するのが仕事であり使命であるという余りにも当たり前のことです。その姿勢、志を一人一人が日々肝に銘じていれば、税金無駄遣いをしたり、不正行為をしたり、怠けたり、手抜きやいいかげんな仕事をすることなどできようはずがないではありませんか。今回の年金薬害問題も、役所の職員がやるべきことをやらなかったその結果であり、それが国民の生命や生活を脅かし、取り返しの付かない重大な結果となってくるのです。  いま一度、憲法に定める公僕の自覚に立ち返ることが行政改革政治改革の大前提と考えますが、総理の御決意及び御所見を賜りたい。  ところで、政府ガソリンなどの暫定税率を今後十年間維持し続けて道路特定財源に充てるという方針ですが、十分に納得しておられない国民方々も多くいらっしゃいます。それは、本当に必要な道路かどうか十分に検討されているのか、不必要な道路に使われるのではないか、まず最初に予算ありきなのではないか、まして十年間も必要なのかなどという疑問です。さらに、必要な道路は建設すべきであることは理解できる、また開かずの踏切の解消や危険な道路や橋の補強なども必要であることは分かるが、仮に予算に余剰が出た場合には医療介護、福祉などに使うという柔軟性を持ってもらいたい、もっと温暖化対策のために使ってもらいたいというお声もあります。  また、この暫定税率を含む租税特別措置法案及び予算関連法案が年度内に可決されないということになると、国民の身近な生活に具体的にどういう不都合や混乱、デメリットがあるのでしょうか。これら国民皆様の率直な疑問、お声に納得できる具体的で十分な説明をしてくださることを総理にお願いいたします。あわせて、地球温暖化対策に充てることを法律に明記することについて、総理のお考えを伺います。  最後に、昨年一年を象徴する漢字は「偽」、偽りでした。食品表示偽装事件古紙偽装事件などが相次ぎました。華道や茶道、あるいは柔道、剣道などに道があるように、本来、商いには商いの道があるはずで、その道を踏み外した結果がこうした事件ではないでしょうか。  翻って、政治の分野ではどうでしょうか。ある識者の言葉に、政治には二つの道がある、一つ覇道覇権の道、そしてもう一つ王道正道の道とあります。覇道覇権政治というのは、党利党略権力闘争政治、そして王道政治とは、人間の幸せのため、人間主義政治です。日本は今どちらの道を進もうとしているのか、またどちらの道を進むべきなのか、我々政治にかかわる者は常にそれを自身に問いかける必要があると思います。  すべての法案など諸課題につき、選挙に勝つためとか党勢拡大のためなどの党利党略でなく、真に国民のためとの一点で議論し合い、より良い結論を出す合意形成型の政治が今求められています。対決のみ、反対のみ、党利党略覇道覇権政治ではなく、日本の将来のため、国民皆様のために、是非とも正道人間主義政治を共に前に進めていこうではありませんか。  政治の在り方についての総理のお考えを伺い、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  4. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) 浜四津議員にお答えをいたします。  薬害肝炎問題についてまずお尋ねがございました。  私自身、一日も早くこの問題を解決をしたいと思っておりましたけれども地方裁判所ごとに異なる内容の判決が出されてきたこの訴訟について、裁判所、すなわち司法の判断もありまして、また一方で、原告団方々の一律救済要請にどうこたえるか、随分悩みました。現在の法制の下ではこの要請にこたえることには限界がありますので、最終的には議員立法による解決を決断した次第でございます。  昨年末に原告団方々にお会いした際に、皆様の大変な御苦労や、訴訟提訴から五年間、今日を迎えるまでの厳しい歩みや思いについてお聞かせをいただきました。そして、改めて、行政被害者の立場に立っていたのかどうか、解決まで大層時間が掛かったということなどについて申し訳なく思いました。  一月十一日には、この国会の場で、与野党が一致してC型肝炎感染被害者救済するための特別措置法を成立させていただいたわけであります。長年にわたるC型肝炎訴訟の問題が全面解決につながったことについては大変喜ばしく思っております。  また、この問題に対し、国民の健康や生命にかかわる仕事を担当する厚生労働行政が正面から向き合ってこなかったこと、その結果解決に時間が掛かったこと、これは大いに反省しなければなりません。  御指摘のように、なお多くの肝炎ウイルスの感染者、患者方々がおられます。こうしたすべての感染者、患者方々対象に、早期発見、早期治療に取り組むことが重要な課題だと考えており、来年度からインターフェロン治療に対する医療費助成を実施するなど、総合的な肝炎対策の実施に全力で取り組んでまいります。  次に、ねんきん特別便についてのお尋ねがございました。  年金記録問題の解決のためには、国民お一人お一人に御自身記録を入念に御確認いただいた上で回答をいただくことをお願いを申し上げております。このため、ねんきん特別便を受け取られた方に確実にお手続いただけるよう、政府広報等を通じて国民各層にねんきん特別便の趣旨や確認の手続等の周知を図っているところであります。また、ねんきん特別便については、分かりにくいという指摘もありますので、より分かりやすくするように工夫をしてまいります。回答をいただいていない方に対しては、今後、発送から三か月後及び六か月後をめどに、再度はがきを出して確認をお願いしてまいります。  さらに、お気軽に御相談いただけるよう、自治体や高齢者福祉関係団体などの御協力をいただきながら十分な相談体制を整えるとともに、相談に来られた方に記憶の呼び起こしを親身に働きかけるなど、お一人お一人の立場に立って親切丁寧な対応を行ってまいります。  次に、救急医療についてのお尋ねがございました。  救急医療をめぐる昨今の事件を踏まえれば、速やかに国民が安心できる体制を構築すべきとの問題認識は私も同様に持っておるところでございます。  御提案の趣旨を踏まえ、救急患者の受入れが可能な医療機関を検索するための救急医療情報システムについて、ITを活用しながら、診察の可否や空ベッドの有無等の情報を迅速かつ正確に更新できるようにする、また近隣の都道府県との連携体制が取れるようにするというような改善を図ってまいります。こうした対策を進めていく中で、必要に応じて法制面での対応についての検討もしてまいります。  女性医師等についてのお尋ねがございました。  医療現場における女性の進出が進む中にあって、医師不足が深刻な状況を踏まえると、女性医師等の離職防止や復職の支援がこれまで以上に重要であると考えております。このため、昨年五月末に政府・与党で取りまとめました緊急医師確保対策に基づいて、院内保育所の運営を支援する事業拡充、退職した女性医師に対する復職のための研修支援する事業等に取り組んでおるところでございます。  今後とも、これらの取組を含めまして、女性医師等の方々が安心して再就職や就業の継続ができるような環境整備に努めてまいります。  次に、介護従事者の待遇についてお尋ねがございました。  介護を支える人材の安定的な確保のためには、介護従事者の労働環境の改善を図ることが重要であると認識しております。このため、介護従事者の実態を十分調査するとともに、健康診断教育訓練を始め、働きやすい職場環境の実現に向けた事業主の取組支援し、介護に携わる方々が安心してやりがいを持って働き続けることができる環境づくりに取り組んでまいります。  また、介護従事者の養成についてでございますが、放送大学においては多くの実習を伴う介護福祉士養成の学科等を開設することは現時点では確定しておりませんが、放送メディアを効果的に活用して、広く国民が福祉や介護に関する基礎知識を習得することができるように、今後、関係科目を開講していただく検討をしていると聞いております。  また、日本学生支援機構の奨学金事業については、介護職を目指す学生への貸与を含めその充実を図ってきており、近年では、事業全体で見れば貸与基準を満たす希望者のほぼ全員に貸与できる状況になってきております。政府としては、事業の健全性を確保しつつ、平成二十年度においても奨学金制度を充実することとしております。  次に、介護事業所に対する監査の事務手続についてお尋ねがございました。  事業所の効率的な経営や労働時間の短縮につながるように、監査に関する事務手続を始め、事業者の事務負担の軽減について現在検討を行っているところでございまして、作成書類の簡素化など、来年度より実施可能なものから順次取り組んでまいります。こうした取組を通じまして、介護労働者が本来の介護サービスにかかわる時間を確保することによりまして介護サービス仕事が魅力あるものとなるように努めてまいります。  悪徳商法への取組についてのお尋ねがございました。  クレジットを利用した訪問販売などにより高齢者の方が深刻な被害を被る事態が発生しており、消費者保護政府の最重要課題一つと認識しております。このため、悪徳事業者の取締り強化に加え、国民本位の視点に立ち、規制の後追いからの脱却や被害者救済策の充実を中心に、特定商取引法及び割賦販売法を抜本的に強化する法案を準備するよう指示しております。これによりまして、悪徳商法の根絶に向けた取組を一層強化してまいります。  子供学力向上についてお尋ねがございました。  学力向上につながる信頼される公教育を確立するために、学校、家庭、地域行政が一体となって教育の再生に取り組むことが必要であります。このため、地域全体で学校支援する学校支援地域本部の創設をするということなどを含めまして、教員が子供たちと向き合える時間の拡充を図るとともに、教員の質の向上にも取り組みます。また、学習指導要領を改訂して必要な授業時間を確保し、基礎学力向上や応用力の育成を図ります。  徳育推進についてでございますが、子供たち思いやりの心や基本的な社会道徳などを備えた人間として成長する上で、自然体験を始め、社会奉仕、文化芸術などの様々な体験活動や、また読書活動も重要と考えております。また、次代を担う子供たちの健全な育成を図るためには、これらの取組を十分に推進していく必要があると考えております。  幼児教育無償化についてでございます。  将来の無償化について、財源、制度等について検討をする必要があるとは考えておりますが、歳入改革に合わせてそれらの問題を総合的に検討することといたしております。  幼児期の教育人格形成基礎を培う重要なものであると考えておりまして、平成二十年度予算においても、保護者負担の軽減を図り幼児教育の充実に取り組んでいるところでございます。  次に、我が国の中長期削減目標環境問題でありますが、目標の設定についてお尋ねがございました。  我が国としては、現在、世界全体の温室効果ガス排出削減を実現していくことを念頭に、いかなる対応を取るべきか検討中であります。その検討の中で、我が国としても温室効果ガス排出削減について、どのような国別の目標をどのような手法によって設定すべきか、多様な選択肢を含め真剣な議論を行っているところであります。特に、我が国はG8サミット議長国であると、こういうふうな立場でありますから、全体をまとめていくという立場も考慮して考えてまいりたいと思っております。  環境分野で先進的な知見を有している我が国としては、温暖化対策で他国をリードするという、そういう姿勢で臨んでまいります。我が国としては、できるだけ早い段階でこの議論の結果を明らかにしてまいりたいと思います。  新エネルギー導入の加速化についてのお尋ねがございました。  政府としては、新エネルギーを一次エネルギー総供給の三%程度にすることを目標としておりまして、これまで各種措置を講じてまいりました。この三%という目標値は、水力発電、地熱発電などが入っていない数値でございまして、これらを加えた再生エネルギー全体の水準は現状でも五・一%でございまして、主要先進国と比較して遜色のない数字であります。  しかしながら、新エネルギーの普及はエネルギー源の多様化や地球温暖化対策観点から極めて重要でございまして、現在の水準に満足することなく普及に向けた取組を加速していく必要があると認識しております。具体的には、新エネルギー技術開発や設備導入支援、電気事業者に対する新エネルギー電源の利用義務付け制度などの新エネルギー対策の抜本的強化について速やかに総合的な検討を行ってまいります。  バイオマス基本法の制定についてのお尋ねがございました。  食料自給率が三九%と低い我が国におきまして、食料供給と競合し合わない稲わら、間伐材等のセルロース系の原料等を活用することによりまして国産バイオ燃料の大幅な生産拡大が重要であると考えております。このため、農林水産業者とバイオ燃料製造業者が一体となって取組を進めるべく、現在政府において新たな法制度の構築に向けて検討を進めております。  サミットにおける我が国省エネ技術の扱いについてのお尋ねでございますが、我が国省エネ技術世界最高水準にありまして、これを排出の伸びが著しい途上国などに提供することにより、世界全体で大きな排出削減に貢献することが可能であります。また、これは我が国の強みを生かして国際標準をリードする点でも効果があります。我が国経済の発展にもつながるというように考えておりますので重視しております。  国際的にエネルギー効率を向上させていくことは温暖化対策の大きな前進になると考えており、G8議長国である我が国として、この分野での取組推進に向けても北海道洞爺湖サミットなどの場を通じまして国際的な議論を主導してまいります。  次に、日中環境基金についてお尋ねがございました。  中国環境問題は、我が国のみならず、アジア、ひいては世界環境に影響を及ぼし得る重要な問題であります。私の昨年十二月の訪中では、中国指導者との会談におきまして、気候変動を始めとする環境、省エネ分野での日中の協力は子孫と国際社会に対する責務であるという旨述べまして、戦略的互恵関係の重要な分野として両国の協力を更に推進していくことを強調してまいりました。具体的には、環境関連情報の共有や人材育成、技術移転、共同研究などを進めてまいります。  中国環境エネルギー問題については、我が国の有する高い技術、知見、経験と解決すべき具体的な問題を念頭に置きながら有効な協力を探る必要があります。こうした点を踏まえ、御提案の基金についても検討してまいります。  次に、中小企業対策についてお尋ねがございました。  我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力でございまして、中小企業活性化に万全を期してまいります。  まず、大企業中小企業の調和の取れた成長を実現するため、下請適正取引ガイドラインの普及啓発、下請代金法の厳格な運用を強力に取り組んでまいります。また、中小企業労働者を含め、すべての人が成長を実感できるように、正規・非正規雇用の格差の是正、改正最低賃金法等による労働条件の改善、日雇派遣の適正化など労働者派遣制度の見直しなどを通じて、働く人たちの雇用の安定と所得の向上を図ってまいります。  中小企業経営の命綱であります金融の円滑化に対しても万全を期してまいります。予約保証制度導入売掛債権早期現金化、さらには無担保無保証融資拡充など、現場のニーズを踏まえ、中小企業の資金繰り円滑化のための総合的な施策を展開してまいります。  法人が支出する交際費につきましては、原則として損金不算入とされていますが、経営基盤の脆弱な中小企業に配慮する観点から、四百万円に達するまでの九〇%相当額について損金算入を認める措置を講じているところでございまして、平成二十年度税制改正において、その適用期限を延長することといたしております。  このような支援策を中心に、予算、金融、税制等を効果的に活用し、地域におられて努力を重ねている中小企業皆様の努力をきめ細やかに支援してまいります。  次に、女性をサポートする仕組みづくりについてのお尋ねがございました。  女性が生涯を通じて健康で明るく充実した日々を自立して過ごせるようにするために、女性の健康問題を始めとする日常生活社会生活上の諸問題に関し支援することは大変重要な課題考えております。健康問題への対応については、現在厚生労働省において、性差を考慮した女性の健康支援に関する研究を進めるとともに、女性の健康づくり推進懇談会設置し、女性の健康を支援する仕組みづくりについても検討を進めております。議員御提案の内容も参考にさせていただき、取り組んでまいります。  また、女性対象とした相談窓口については、現在各地域女性センター等におきまして専用の相談窓口が設けられております。中には、再就職や起業など仕事に関する情報やサービスをワンストップで受けられるような取組をしたり、御提案のようなインターネットで相談を行っている女性センターも見られます。こうしたきめ細やかな取組を紹介するなど、女性に対するサポートに努めてまいります。  仕事生活の調和の推進についてのお尋ねでございますが、国民皆様が意欲を持って働きながら、豊かさを実感して暮らせるよう、多様な選択が可能な社会をつくることが大切であると考えております。このため、今般、政労使の合意により、仕事生活の調和、ワーク・ライフ・バランス憲章及び行動指針を定めたところであり、今後、これらに基づき、仕事生活の調和の推進に労使ともに取り組んでまいります。  次は、行政改革でございますが、行政については、二十一世紀にふさわしい行政システムの構築に向けて、政府がやるべきこと、民間がやるべきことの仕分を行いつつ、無駄のない効率的な行政の実現に努めてまいります。規制改革については、民間活力を最大限引き出すよう、今後とも積極的に進めてまいります。また、市場化テストについても、公共サービス改革法に基づき、引き続き対象事業拡大に取り組んでまいります。  政策評価については、平成十七年十二月に改定した政策評価に関する基本方針に基づき、重要政策に関する評価の徹底を図ることとしております。また、経済財政改革の基本方針二〇〇七において、経済財政諮問会議が総務大臣からの意見を踏まえまして、政策評価の重要対象分野を提示する仕組みが整えられたところでございます。  税金無駄遣いの徹底的な排除についてのお尋ねがございました。  政府における無駄を徹底して排除するよう取り組んでいくためには、政府として、会計検査院の決算検査報告をしっかりと受け止め、その機能が十分に発揮されるよう努めていくことが必要であると考えており、関係府省に対し、会計検査院の決算検査報告において指摘された事態について、確実に改善するよう指示しました。  また、御指摘の会計検査院より指摘された事態に関する国などへの返還状況については、これを公表し、その改善に努めることが国民行政に対する信頼を取り戻すためにも重要であると考えておりまして、国等への返還状況を決算検査報告に掲記することについて会計検査院要請をいたしました。  公務員改革についてお尋ねがございました。  御指摘のとおり、公務員国民のために奉仕するのが仕事であり、使命であるという自覚を持つよう意識改革が必要であると考えます。常に国民の立場に立つをモットーに仕事への取組を大きく変えていきます。また、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう総合的な公務員制度改革を進めてまいります。  次に、税制改正法案が年度内に可決されない場合の国民生活への影響についてのお尋ねでございますが、まず、揮発油税等の暫定税率が失効した場合には、国、地方とも大幅な歳入減となり、道路整備に重大な影響を及ぼします。また、ガソリン供給など流通面に混乱をもたらす可能性もございます。地球温暖化対策が喫緊の課題となっている中で、CO2対策にも逆行をいたしますといった事態が生じます。  このほか、税制改正法案が年度内に成立しない場合には、マイホームなどの土地の売買を行った場合の登記にかかわる税負担が増加する、また、東京の海外金融市場の優遇措置が失効しまして、我が国の金融市場の国際的な信認が失墜、競争力が損なわれることになります。またそのほか、いろいろな面に影響が生じてまいるところでございます。  税法の取扱いについて、何よりも国民生活等の混乱を防ぐことを考えていく必要がございまして、法案の年度内成立はどうしても必要であります。  ガソリン税を地球温暖化対策に充てることについてお尋ねがございました。  揮発油税の使途については、受益者負担考え方に基づいて、道路整備に充てた上で、道路歳出を上回る税収について一般財源とするということといたしておりまして、この度、道路整備費財源特例法案を提出させていただくことといたしております。  道路特定財源は、円滑な交通を実現することでCO2の減少効果があるのみならず、ガソリン等の燃料課税が地球温暖化対策上果たしている役割は無視し得ないものでありまして、私の施政方針演説においても、現行税率維持が地球温暖化問題への対応の観点からも必要であると申し上げております。  最後になりますが、政治の在り方についてお尋ねがございました。  浜四津議員御指摘のとおり、私たち政治家には、国民のためという一点では政治家すべてが共通の認識を持っているものであります。そのために、より良い結論を得るようお互い努力すべき責任がございます。選挙は政治において大変重要なものでございますけれども、選挙目当ての党利党略は何よりも優先する、そういう政治であってはこれはならないと思っております。実際上も、いわゆるねじれ国会の下では、与党も野党も、自分考えだけに固執していては何ら結論を得ることはできません。政治が動かなければ不利益を被るのは国民であり、不毛な対立の応酬は国民に対する政治の責任放棄というそしりを免れません。  私は、一つ一つ政策について、真に国民のために最善の結論を得るという考え方の下で、野党の皆さんとよく話し合い、御意見も積極的に取り入れ、進めてまいりたいと考えております。そういう対応こそが政治国民の負託にこたえる道であると信じております。議員各位の御協力を改めてお願い申し上げる次第でございます。  以上です。(拍手)     ─────────────
  5. 江田五月

    議長江田五月君) 工藤堅太郎君。    〔工藤堅太郎君登壇拍手
  6. 工藤堅太郎

    ○工藤堅太郎君 民主党・新緑風会・国民新・日本の工藤堅太郎でございます。  昨日の我らが会派輿石会長に引き続いて、会派を代表し、ただいま議題になりました福田総理施政方針演説を始めとした政府演説に対する代表質問を行います。  福田総理、あなたが総理に就任されてから既に百日が経過をいたしましたが、日本国の総理として、一体国民をどこに導いていこうとしておられるのか、この国をどんな国にしたいのか、一向に伝わってきません。失礼ですが、あなたの言動に真心がこもっていると感じられないといいますか、余りにも軽くて無責任で、まるで人ごとのような言動が多いと思うのであります。本日は力強い御答弁を期待いたします。  それでは、まず冒頭お尋ねいたしますが、米国のサブプライムローン問題により広がった世界同時金融不安に対し、米国は昨日、金利の引下げを発表いたしました。日本政府の動きは何も見えないのでありますけれども、どのような対応をするのか、総理、まず明確にお答えをいただきたいと存じます。  総理、あなたは福田政治が目指す目標として、新たに生活者消費者が主役を掲げられました。昨年の参議院の選挙以来、私たち民主党が打ち出している国民生活が第一の盗作ではないかと思われるほど、いや、そう思われても仕方がないほど似通っているということは、小泉、安倍両政治の反省の上に立って、やはり国民の目線で政治が行われるべきと気付き、それが必然的に民主党のスローガンに似通ったということだろうと私は思います。  総理、あなたが真に消費者を重視するというのなら、まず第一に素直に国民の声に耳を傾けるべきではありませんか。その上で実行することは、今年の四月からガソリン税を引き下げることであります。  最近の各マスコミによる世論調査を見ますと、国民の圧倒的多数がガソリン税の引下げを求めています。これは無理もありません。原油価格の高騰によってリッター当たりのガソリン代が既に百五十円を超える高値になっており、マイカーの運転も容易でなくなっているからであります。とりわけ、運送業の人たちが悲鳴を上げているのが実情であります。  総理、あなたもよく御存じのはずですが、このガソリン税というのは本来一リットル当たり約二十九円なのに、租税特別措置法によって約二十五円上乗せされております。つまり、暫定税率を課しているわけであります。言わば、税金の二重取りをやっているものであり、到底許されるものではありません。  そもそも道路整備費用に充てるという名目で作られた道路特定財源である揮発油税、つまりガソリン税などは一九五四年に作られました。ところが、第一次オイルショックの後の一九七四年四月に、二年間の暫定的な措置として税率が二倍に引き上げられたものであります。あくまで国の税収が減ったためと、油の需要抑制のための緊急措置でありました。このような暫定税率は、やはり道路特定財源である自動車重量税や自動車取得税にも適用されています。  ところが、政府・自民党は、黙っていても従来の二倍の財源が入ってくることに味をしめ、しかも道路の建設以外の公共事業に充てることができるうまみもあって、その後、五年ごとにこの暫定税率を延長してまいりました。完全に既得権にしたわけであります。既に三十四年も過ぎ、本来なら暫定税率を元に戻すべきであり、それが理の当然なのであります。  幸いなことに、暫定税率の期限は今年三月末で切れます。しかし、政府・与党は今回、何と暫定税率を更に十年も延長することを決めたわけであります。これは、国民、特に自動車ユーザーを侮辱したものと同然の措置であります。納得できない、道路整備に充てない部分は直ちに減税し、納税者に還元すべきだとの抗議の声が全国で高まったのは当然のことであります。自動車・石油業界の二十三団体からの抗議の署名は一千三十五万人分にもなりました。  暫定税率を延長する理由というのが、引き続き道路整備の財源に使うため必要だからというものです。しかも、地方自治体がそれを強く望んでいるからと主張しています。しかし、一番の理由は、一番の理由は、既得権益を失いたくないだけということが最大の理由ではありませんか。  言うまでもありませんが、ガソリン一リットルには四十八円六十銭、四十八・六円の揮発油税と五・二円の地方道路税が掛かっています。暫定税率を延長せず元に戻せば、その半分の二十五・一円分は価格が下がるわけであります。ガソリン代の高騰に悩んでいる国民にとってはささやかな減税になるではありませんか。総理、どうして切ない国民希望を踏みにじろうとしているのですか。  福田総理、私たち民主党は、いち早くこうした国民の切なる願いにこたえて、ガソリン税の引下げを含む暫定税率の廃止を打ち出しました。是非、同調してもらいたい。具体的には、租税特別措置法改正案に反対し、廃案を目指します。それでも政府・与党があくまで暫定税率の延長を強行するのなら、他の野党とともにこれを阻止するために徹底的に戦うことを今から宣言しておきます。暫定税率廃止について福田総理見解を求めます。  道路特定財源は、国税である揮発油税、自動車重量税、石油ガス税、そして地方税の自動車取得税等、八種類があります。これらの税収は総額五兆六千億円で、このうち国税が三兆四千億円、地方税が二兆二千億円となっています。政府・与党は、暫定税率がすべて廃止されれば、国税で約一兆七千億円、地方税で九千億円の財源が不足し、道路整備ができなくなるとアピールして、廃止した場合の財源の手当てをどうするのかと私たち民主党に迫っております。  民主党は、道路特定財源の役割は既に終わったとして廃止し、一般財源化するよう提案しています。当然のこと、道路特定財源が廃止になっても、必要とする道路整備はできます。必要な道路は当然、当然造らなければなりません。それには一般財源を使って手当てをします。また、道路のための特定財源に代えて、新たに地球温暖化対策税をつくることも考えております。  政府・与党のやり口で許せないのは、暫定税率を十年延長する上に、道路特定財源を使い、新たに十年間の道路整備中期計画を作り、ここに五十九兆円もの道路整備費を充てることにしたことであります。これはまさに道路族議員の陰謀としか言いようがありません。つまり、今後、道路特定財源はほかに一切使わせないと宣言したようなものだからであります。しかも、当初案は六十五兆円でした。冬柴国土交通大臣、あなたもこの企てに積極的に加担したのですか。国民、とりわけ自動車ユーザーが喜んでいるとお考えですか。率直な見解を示していただきたい。  更に私が指摘したいのは、この道路特定財源の一般財源化は、前の小泉、安倍両総理のときには、一度は構造改革のシンボルとなる目標として打ち出されたということであります。両政権とも前向きに取り組もうとしながら、結局は自民党のいわゆる道路族議員や国土交通省らの激しい抵抗に遭って骨抜きにされたものであります。  平成二十年度予算では、三兆三千億円の道路特定財源のうち、わずか六%の千九百二十七億円しか一般財源化しておりません。巨額の余剰金があるため、使い勝手にしたいとのねらいから、道路特定財源の看板を外したがらないわけであります。いつまでもこれら既得権にしがみつく道路族議員らの横行を許しておいていいのですか。総理、あなたの御感想をお聞きいたします。  また、噴飯物なのは、この道路特定財源を元に高速道路料金の値下げをしようとしたり、言わば国民の目くらましをしようとしている点であります。余りにもこそくであります。道路公団を民営化したのに、まだ税金を投入するというのは本末転倒ではありませんか。  冬柴国土交通大臣、あなたは庶民の味方を標榜する公明党の幹部ですが、いつまでこうしたいいかげんなことをやる自民党と付き合うのですか。あなたの御見解をお伺いいたします。  このほか、増減税の特例を認める租税特別措置は実質的な補助金であり、その効果がはっきりしないものや、減収額さえ把握していないことから、私たち民主党は租税特別措置改革・透明化プログラム法案国会に提出する考えであります。  民主党の調査によりますと、二〇〇八年度の租税特別措置改正で必要な百三十七項目のうち、九一%が政策効果を十分に検証できておりません。政府は安易に租税特別措置の期限切れの延長をするべきではありません。    〔議長退席、副議長着席〕  特に、暫定税率の維持なども租税特別措置法改正案に含めて一括で処理しようとするのは、徹底審議を行う上で問題があります。国民の監視が行き届かないとされる租税特別措置だけに、一層の透明性と公開性を確保する必要があるからであります。総理、改めて御所見をお伺いいたします。  福田総理、よもや忘れてはおられないでしょうが、あなたが小泉内閣の官房長官をお辞めになった直接の原因年金未納問題でした。年金問題に何か特別の気持ちをお持ちなのかどうかは知りませんが、私が指摘したいのは、五千万件に上る宙に浮いた年金基礎年金番号との記録統合作業についてであります。  実に四割近い千九百七十五万件もが持ち主を特定することが困難なことが分かりました。自民党が参院選の公約に掲げた今年三月までの名寄せ作業がとても終わりそうにないことが明らかになりました。昨年十二月十二日のことであります。そのとき、総理、あなたは、公約というほど大げさなものかどうかと言い切りました。私はこれを聞いたとき、一国の総理言葉とはとても思えませんでした。自らが総裁として代表する自民党の公約を、大げさなものかどうかで片付けてしまう感覚を疑いました。余りにも国民をなめ切っております。無責任極まりない発言でありました。反響の大きさに慌てて、その後トーンダウンさせましたが、この一言が一気に内閣支持率を大幅にダウンさせたのは至極当然であります。  年金問題担当の舛添要一厚生労働大臣の発言もひどいものでありました。昨年八月二十八日の就任の際の記者会見で、最後の一人、最後の一円までやることを公約として申し上げたと大見えを切りました。ところが、後になると、私自身もスローガンと言ったと前言を撤回する始末でありました。オーバーな物言いは選挙だから許されるとでもいうのでしょうか。事は多くの国民の老後の支えとなる年金問題であり、これでは国民を欺いていたことになります。それほど重大なミスなのに、へらへら言葉で済まされていいものではありません。  私は思い出します。昨年七月の参院選のとき、自民党は、消えた年金はありませんと大書した宣伝文句を大量にばらまき、その上、今後一年間ですべての統合を完了させますと大見えを切りました。選挙運動の先頭に立った当時の安倍総理は、最後の一人まで記録をチェックしますと絶叫していたではありませんか。  政府・与党の皆さんに私は恥を知れと言いたい。入力ミスなどによって大量の記録漏れを生み出したこと自体が大問題なのに、その照合作業について詳しい実態を掌握しないまま、できもしない約束をする行為が恥知らずなのであります。長年の自民党政治が作り出したうみによるものに間違いありません。スポークスマンである町村官房長官が、五千万件すべての行き先を確定することまで説明したつもりはないと見苦しい言い訳をしたのも言語道断であります。  総務省に設置した年金記録問題検証委員会は、昨年十月に報告書をまとめました。その中で、責任問題について、歴代の社会保険庁長官は責任が最も重いと指摘しております。次いで、歴代の厚生省の事務次官や幹部は重大な責任がある、職員は責任の一端があるとなっています。では、これまでに責任を取って辞任した人が一人でもいたでしょうか。ゼロです、ゼロですよ。給料の一部を返上したのがせいぜいであります。だれ一人責任を取ろうとしませんが、総理は、三月末にすべての名寄せが完了しなかった場合、公約違反を素直に認めて潔く辞任するおつもりですか、明確にお答えを下さい。  また、宙に浮いた年金の持ち主が特定、統合されるのにこの先何年掛かるのですか。専門家の間では、早くて五年、下手をすれば十年掛かり、結局、統合できるものも一千万件程度と見ております。福田総理と舛添大臣の見解をお聞きしたい。恥を知るもののふらしい明快で率直な答弁を期待いたします。  次に、ねんきん特別便についてお尋ねいたします。  すべての年金受給者三千万人と現在の年金加入者七千万人の計一億人に送るとの触れ込みで十二月中旬から始まりましたが、順調に進んでいるのですか。昨年暮れの発表によりますと、年金受給者四十八万人のうち、実際に社会保険事務所に相談や訂正の手続に訪れたのは八%に当たる三万六千人にとどまっています。こういう状態で持ち主の判明が進むのですか。なぜ少ないのか、送付した内容に不備はないのか、さらに、効果についてはどう考えておられるのか、また、送還された記録の統合作業には相当の費用と時間が掛かることが予想されますが、この点はどうなのか、舛添大臣、詳しく現状認識を示していただきたい。  というのも、ねんきん特別便を受け取った受給者が、自分たちに落ち度がないのにもかかわらず、自助努力で記録を訂正しなければ統合されない仕組みになっているのに、そのことを知らないために、特別便が届いたことで記録の統合が完了したと思い違いをしている受給者が多いと見られるからであります。特別便に記載されているのはこれまでの年金加入歴だけで、新たに見付かった記録の内容はどこにも記載されていないのです。このままでは更に申請が低迷するのは間違いありません。何かの注意喚起をするなど、手を打つ必要があるのではありませんか。舛添大臣の明快な答弁を求めます。  さらに、最近心配なことが起きております。それは、厚生年金をめぐり社会保険事務所が延滞金を不正に減額したり、記録の改ざんに関与している疑いが発覚していることであります。不正減額は全国三百十二の社会保険事務所のうち三分の一に当たる百五か所で明らかになり、三千七百七十四社に対して約十億円に上っております。また、不正な改ざんは年金記録確認第三者委員会の調査で判明したものであります。  厚生年金の保険料は半額を企業負担しています。ところが、不況の影響でこの負担が重くのしかかり、企業の中には、保険料を滞納したり、社員の標準報酬月額の記録を少なく改ざんするところが増えてきております。問題なのはその不正に社会保険事務所が加担していることであり、モラルの荒廃極まれりと言うしかありません。舛添大臣、厚生年金保険料をめぐるこれらの問題について、現状はどうなのか、いかなる対策を講じているのかについて答えてください。  福田総理、私たち民主党は、年金問題の抜本改革のため、すべての国民が同じ年金制度に加入し、納めた年金保険料に見合った年金を受給する公的年金一元化を提案しております。そして、基礎年金の保険料については、消費税を財源に充てることにしております。政府の被用者年金一元化法案は、事実上、共済年金の優遇措置を温存するにすぎません。直ちに撤回すべきであります。年金改革についての総理の御見解を伺います。  次に、総理、あなたの政治姿勢の特徴は協調重視であるようですね。前任の安倍総理が、霞が関の官僚を敵に見立てて、殊更、対決したのとは対照的です。福田総理は、官僚の知恵を借り、利用する伝統的な自民党政治のスタイルに先祖返りしたように見えます。このことが際立ったのは、独立行政法人の整理統合問題でありました。  言うまでもなく、独立行政法人は、行政組織をスリム化する目的で、一九九七年、橋本内閣のときに、英国のエージェンシー制度に倣って導入されました。二〇〇一年四月、小泉内閣のときに五十七でスタートしましたが、二〇〇五年十月には百十三まで膨らみました。特殊法人が相次いで独立行政法人に姿を変えたためで、官僚にとっても天下り先として肥大化していったわけであります。当然、巨額の補助金が支出されており、毎年、三兆五千億円に上っております。  この独立行政法人こそ、国家公務員の天下りと押し付け的談合の温床とみなし、昨年八月から華々しく始まった政府の整理統合の取組も、福田総理になってからは様変わりしました。廃止、統合、財政支出の大幅な削減という目標がしぼんでしまいました。現在、百二ある独立行政法人のうち、廃止、統合、民営化は十六にとどまりました。削減されるのはわずか千五百七十億円にしかすぎません。  渡辺行政改革担当大臣が三十五の廃止、統合を目標に掲げたのに対し、関係する省の官僚や族議員、さらには大臣までが強く抵抗したためであります。特に私が問題にしたいのは、総理、あなたまでが最終的に都市再生機構と住宅金融支援機構の見直しを先送りすることに加担したことであります。  独立行政法人の改革をしないと国民の信頼回復は得られない、政治家のリーダーシップの問題だと檄を飛ばした当の総理、あなた自身リーダーシップに疑問符が付いたことを自覚しておられるのですか。率直な見解を求めたいと思います。また、渡辺大臣にもこの間の経過を含めて感想と御意見をお伺いいたします。  後を絶たない官製談合や公務員の不祥事の元凶になっているのが天下りであります。  政府・与党は昨年の国会で、天下り防止をうたい文句にして、官民人材交流センター、いわゆる新人材バンクを強行採決の末つくりました。  私たち民主党が反対したのは、天下りのあっせんを禁止し、再就職のあっせんを新人材バンクに一元化するといいながら、肝心の事前規制を撤廃したため、事実上、野放しにしたことであります。民主党はこれに対して、天下り根絶法案を提出し、天下りを原則禁止する期間を現在の離職後二年から五年に拡大、天下りの規制対象を営利企業に加えて非営利企業にまで拡大しています。また、古巣の官庁に対する働きかけ行為を禁止する措置や早期勧奨退職の禁止も盛り込んでいます。  そこで、福田総理に、政府の天下り規制の取組で、天下りを背景とする官民の癒着がなくなるのか、お答えをいただきたいと存じます。  最近も新聞報道によって、天下りした官僚が主要ポストを占める財団法人が所管する施設の売却で巨額の収入を得ていたことが発覚、生き残りを図る役所と官僚のしたたかさが明るみに出ました。これは、国土交通省が所管する財団法人高速道路交流推進財団のことで、元々は旧建設省所管の道路施設協会であります。高速道路のサービスエリアとパーキングエリアの運営を独占し、その後、道路サービス機構とハイウェイ交流センター二つの財団に分かれました。道路公団の民営化に伴い、サービス機構が名称変更して交流推進財団となったものであります。  この交流財団が全国に所有していた施設を高速道路会社に売却をして約三百八十億円の収入を上げていたもので、本来、公益法人は利益の追求を目的としないため、役割を終えれば解散するのが筋であります。ところが、交流財団は、保有資産を活用して公益事業を行うとの目的で存続をされ、実態は国土交通省の天下り先であり、利権の温存がねらいと勘ぐられても仕方がありません。  冬柴大臣、実際のところどうなっているのですか、所見を示していただきたいと思います。  今年の予算案の特徴と意義について、額賀財務大臣は、改革と成長の予算で、地方と都市の格差に配慮しながら、財政再建を目指す旗を降ろさずに守り抜いたと記者会見で胸を張ってみせました。本当にそう言えるのですか。国民の大多数は首をかしげています。  私が指摘したいのは、地方向けの歳出を増やしたとして地域活性化事業などを殊更に強調していますが、その多くは明らかに来るべき総選挙を意識したばらまき事業にすぎません。  とりわけ問題なのは、三年ぶりに地方自治体の税収不足を穴埋めする地方交付税の総額が配分ベースで前年度より増やしたという中身に一種のマジックがあることであります。つまり、交付税特別会計にある地方自身の借金の返済を中断して財源をひねり出しているからであります。また、優良企業が多い東京都や愛知県などから地方税の法人事業税を四千億円取り込み、他の地方に配り直す地方再生対策費を交付税の特別枠として設けていることであります。あくまで一時しのぎ、見せかけの地方重視でしかありません。民主党は、地方交付税制度の抜本的見直しによって財政調整能力を強化するよう提案しています。  総理にお尋ねします。こうした交付税の在り方で税収不足に直面している地方自治体が立ち直れるとでも思っているのですか。  次に、特別会計のいわゆる埋蔵金について額賀大臣にお聞きします。  自民党では、特別会計には五十兆円近い積立金や余剰金があると強調していますが、実態はどうなのか。特別会計は、かねてから事業の無駄を隠す不透明さが指摘され、霞が関の官庁の隠しポケットと呼ばれてきました。政府は、今年の予算案で、財政融資資金特別会計の積立金の一部を取り崩し、約十兆円を国債償還に充てることにしていますが、まさに場当たり的な対応であります。  私たち民主党は、かねてから、国の補助金制度を廃止した上で、特別会計の無駄を省き、地方が自由に使える一括交付金を配分するよう主張しています。福田総理、地方を真に重視するならば、民主党案に転換するようお勧めしたいと思いますが、お考えはいかがですか。  古来、日本では、農は国の本と言われ、農業政策は国策の基本でありました。しかし、現状は、お寒い食料自給率を見れば明らかなように、農村は疲弊しております。政府・与党の農業政策の失敗が大きな原因一つであります。  私のふるさと岩手県の場合、米作りは高齢者方々が中心であり、自分がやめたら田んぼは荒れ果ててしまうとの危機感を多くの人々が抱いております。収入が少ないためで、年金を取り崩して米作りに取り組んでいるのが現状であります。  私たち民主党が農業者戸別所得補償法案を作り、国会に提出し、参議院では可決いたしました。この法案は、食料の安定供給及び安全性を確保するのが目的で、米、麦、大豆など主要作物を生産する販売農家に対し、赤字を出さない程度に価格と生産コストの価格差を補償するものです。  これに対して政府・与党は、昨年、戦後農政の大転換と位置付けた大規模な農業を優先する政策である品目横断的経営安定対策を発表しました。これは露骨な小規模農家の切捨てであり、農民の強い反発を買ったのは当然です。同じ補償でも、民主党案がすべての販売農家が対象なのに対し、政府案は四ヘクタール以上の農家で米が対象に入っていません。今年は、批判にこたえて、米の生産調整に協力することを前提条件に一から二ヘクタールの小規模農家も対象に加えるようですが、総理、どうするつもりですか。この際、私たち民主党案に同調したらどうですか。見解を求めます。  福田総理、あなたの今年の仕事始めで、堂々と粛々と正道を歩む、奇策があるわけではないと話されました。それはそれで結構です。正道を歩むのは、国民の声に真摯に耳を傾けようとしない自民党ではありません。  なぜなら、直近の民意である昨年七月の参議院の選挙で国民の圧倒的な支持を得たのは、第一党になった私たち民主党であります。インド洋で海上自衛隊が給油支援活動をする必要はもはやなくなったと野党が結論を出したのを無視して、衆議院における多数の力を盾に新テロ特別措置法を再可決するという暴挙を平然と行ったのは政府・与党だからであります。実に五十七年ぶりであることがいかに異例の事態であるかを雄弁に物語っております。  冒頭申し上げましたが、国民生活が第一という民主党のスローガンに極めて似通った、生活者消費者が主役という自民党の新しいスローガンは、小泉、安倍政権のときから見れば百八十度転換したかの感があります。民主党が打ち出した数々の政策法案に対して、これまたほとんど百八十度転換して、似通った政策法案考えているようであります。  私たちから見れば、次の衆議院の選挙を意識して一時的にすり寄ってきたとしか見えないのですが、これだけで自公政権が変わった、反省したとはとても思えません。なぜならば、長年にわたる政と官の持ちつ持たれつの癒着によって強大な力を有するようになった官僚の数々の暴走を政がきちっと抑えることができない、コントロールができない状況にあるからであります。  官僚の天下りが引き起こす切りがないほどの税金無駄遣いをどうにもできない現状では、国民の目線に立った政治はできません。この税金無駄遣いをなくしたら、財政の再建はもとより、地方の活性化、第一次産業中小零細企業の健全な発展を含め、我が国に明るく希望に満ちたすばらしいあしたが見えてくるのではありませんか。官をコントロールするには、癒着のない、しがらみのない政党が政権に就かなければなりません。すなわち、民主党を中心にした現在の野党が政権に就かなければならないということであります。  江戸時代を思い出してください。士農工商や数々の制度を残したまま幾ら将軍の顔を替えても、五代将軍、六代将軍、七代、八代、幾ら顔を替えても何の改革にもならなかった徳川幕府時代のようなことではどうしようもないではありませんか。要するに、スローガンだけ似せてもどうしようもないということであります。  政権に就いた政党がひどい政治を行っていると、次の選挙で国民からノーを突き付けられます。そうならないためにお互いに努力するわけで、常に政治に緊張感が出てまいります。常に国民の目線で政治が行われるようになります。それが真の民主政治だと私は思います。  私は岩手県をふるさとにしております。地方経済の発展、向上なくして格差解消の方途なしということを政治信条として日々の活動に取り組んでまいりました。かつて自民党王国と言われた岩手県ですが、民主党の小沢一郎代表の下、今では国政、地方政治共に自民党を圧倒しております。すなわち、時代は変わる、歴史は動くのであります。私たち民主党は、もはや賞味期限が切れた自民党に代わっていつでも政権を担当する用意があります。福田総理、あなたをもって自民党政治にピリオドを打つ日が一日も早く来ることを祈念して、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  7. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) 工藤議員にお答えを申し上げます。  まず、最近の世界的な株価の下落などに対する対応についてお尋ねがございました。  このところ株式市場においては、サブプライム問題等を背景として、アジアの新興市場も含めて世界的な株安が進行しております。他方、サブプライム問題の我が国の金融機関への影響は限定的でございまして、また、我が国経済は企業部門が底堅く、基調はしっかりしております。ただ、米国経済や各国金融市場の状況を始め、今後の内外の経済動向を引き続きよく注視する必要はあると考えております。この問題については、関係各国とも引き続き密接な連携を取ってまいります。  まずは、この問題を考えるときに、現在国会に提出している十九年度補正予算、二十年度予算、関連法案早期成立を図ることが景気には一番良い影響を与えるということでございます。このことは工藤議員もよく承知をされておるものと思っております。  暫定税率の廃止についてお尋ねがございました。  道路特定財源の税率水準については、厳しい財政事情の下におきまして、地域の自立、活性化国民生活のために真に必要な道路整備などを実施していくために、現行水準を維持させていただくよう国民皆様にお願いをすることといたしました。  仮に道路特定財源暫定税率が廃止された場合には、国民生活に欠かせない道路整備の実施が困難となるほか、地方公共団体によっては福祉や教育などの住民サービスの見直しにつながるおそれがございます。  なお、原油価格の高騰が国民生活等に与える影響を踏まえ、昨年十二月に原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議を開催しまして、中小企業対策、各業種向けの対策、離島、寒冷地の生活関連対策など予算措置を含めた具体的な政策パッケージを取りまとめたところでございます。  道路特定財源の一般財源化についてお尋ねがございました。  道路特定財源につきましては、税収の全額を毎年度の予算道路整備に充てることを義務付けているこれまでの特定財源の仕組みを見直して、納税者の理解を得ながら一般財源を確保するということにいたしております。  平成二十年度予算においては、真に必要な道路整備を行いながら、厳しい財政事情を勘案して、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で十九年度を上回る千九百二十七億円を一般財源として確保したところでございまして、骨抜きという指摘には当たらないものと考えております。  租税特別措置についてお尋ねがございました。  租税特別措置については、真に有効な措置への集中、重点化に取り組んでいるところでございます。また、租税特別措置法は所得税法、法人税法など各税法に規定された措置について各種の特別措置をまとめて規定しているものでございまして、今回の税制改正でも、スクラップ・アンド・ビルドの考え方等によりましてこれらの全体を通じた見直しを行っているところでございます。  税制改正法案については、改正内容全体をできる限り一覧的に分かりやすく示すことが重要であると考えております。税法が国民生活に与える影響の重要性にもかんがみ、何とぞ立法府におかれては速やかに御審議をお願いしたいと存じております。  次に、年金記録問題でございます。  この問題につきましては、昨年七月五日に政府・与党で決定した方針に基づいて、本年三月までに五千万件の未統合記録と一億人のすべての年金受給者や現役加入者の方々記録をコンピューター上で突き合わせ、その結果、記録が結び付く可能性がある方々へねんきん特別便をお送りすることを予定どおり順次実施しております。  また、こうした作業を行っても、なお統合できずに残る記録につきましては、四月以降も粘り強く統合を進めてまいります。具体的には、ねんきん特別便を三月までにお送りした以外のすべての方々にも十月までに順次お送りいたします。こうした取組により、国民お一人お一人に記録を御確認いただくことにしております。さらに、記録の内容に応じた調査、照会等の対策を講じることによりまして、記録の統合を行ってまいります。  年金記録は長きにわたって管理され、件数も膨大であり、内容や保存状態も様々であります。このため、これをやれば解決という特効薬的な方策はありませんが、国民の御納得を得るまで粘り強く取組を続けてまいります。  年金制度改革についてお尋ねがございました。  民主党が御提案されている自営業者を含めた公的年金一元化に関しては、公平な保険料徴収のための正確な所得捕捉をどうするのか、自営業者には事業負担分を含め二倍の負担を求めることができるのかなど、検討すべき課題も多いと考えております。  しかしながら、現在のように制度が分かれている状態を改め、一元化を進めていくということについては同じ方向と考えております。政府としては、まずは被用者全体の公平性を確保することが重要という観点から被用者年金の一元化法案を提出をしたものでございまして、本法案について是非御審議をいただきたいと考えております。  また、政府としては、社会保障国民会議を開催し、年金制度を含め社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて議論を行っていくこととしておりますが、各党各会派が年金制度の在り方に関し真摯に話し合うことを望んでおります。  独立行政法人改革についてお尋ねがございました。  独立行政法人の整理合理化については、千五百七十億円の削減をもってのみ評価するのは適当でないと思います。今回の整理統合化においては、真に不可欠かどうかという観点から見直しを行って十六法人を削減するとともに、存続する法人についても本来の目的にかなう事業のみに限定しました。  御指摘の住宅金融支援機構についても、特殊会社化を含めて組織の在り方を検討し、二年後に結論を得ることとしております。また、都市再生機構については、事務事業のスリム化、関連会社等との随意契約の見直しを行うとともに組織形態について検討を行い、三年後に結論を得ることといたしております。先送りという言葉には該当いたしません。この都市再生機構については、高齢化社会における高齢者向けの住宅政策の在り方、そして都市防災をどう考えていくのかなどということを十分に検討、整理することが必要でございまして、国民生活上の必要性を吟味することなく単に民営化するということはよろしくないと考えております。  さらに、独立行政法人の人事や業務の方針内閣で一元的に管理するということにいたしております。独立行政法人は何が何でも削ればよいというものではなくて、国民にとって必要なサービスを確保しつつ、無駄を徹底的に排除してまいりたいと思います。  天下り規制の取組についてお尋ねがございました。  昨年の通常国会で成立した国家公務員法等改正においては、いわゆる天下り問題を根絶できるよう各府省の再就職あっせんを官民人材交流センターに一元化するほか、営利企業等の地位に就いている元職員の出身省庁への働きかけを規制し、これに関する不正行為に対して刑罰を導入しております。また、これらの規制の実効性を確保するため外部監視機関を設置し、厳格な監視を行うこととしております。これらによりまして、天下りにより生じ得る不正行為を防止しつつ、退職管理の適正化を進めることといたしております。民主党案によれば、公務員行政に抱え込み、人材の流動化が困難になるといった問題がございます。  今後とも、引き続き、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めてまいります。  次に、地方交付税についてのお尋ねがございました。  地方交付税は地域間の財政力格差を調整するとともに、全国どのような地域であっても一定水準行政を確保するという、地方にとって重要な機能を有しております。  したがいまして、当該年度や翌年度以降の交付税の総額を確保するために、地方交付税特別会計においては税収の動向等に応じて様々な措置を行っておりまして、平成二十年度におきましては借入金の償還の繰延べを行うことといたしております。  その上で、財政健全化の方針を維持しつつ、近年の地域間の財政力格差の拡大に早急に対応するため、税体系の抜本的な改革までの間の暫定措置として、地方と都市の共生の考え方の下に地域間の税源の偏在をより小さくする措置を講じるとともに、その効果を活用して、特に財政の厳しい市町村に交付税を重点的に配分することによりまして地域活性化を図っていくことにいたしております。  次に、補助金制度についてお尋ねがございました。  地方への補助金を廃止した上で、特別会計の無駄を省き、地方が自由に使える一括交付金を配分するという御提案でございますが、地方への補助金は社会保障など義務的な性格のものが多くを占めており、また御提案の一括交付金の具体的な内容や方法が示されておりませんので、実現できるかどうか私どもには分かりません。  政府としては、国と地方公共団体との役割分担に応じて、地方税財源を十分充実確保する観点から、補助金、交付税、税源配分の見直しの一体的な改革に向けて検討を進めてまいります。  民主党の農業者戸別所得補償法案についてお尋ねがございました。  農業従事者の減少、高齢化等によりまして生産構造の脆弱化が進んでいる中で、将来にわたり食料を安定的に供給していくためには、小規模、高齢の農家の方々にきめ細かく対応しつつ、意欲ある担い手への支援を充実し、力強い農業経営を育成していくことが重要であると考えております。  一方、民主党の提出されました農業者戸別所得補償法案につきましては、必要となる一兆円の積算や財源が明らかでない、すべての販売農家を対象としておりまして、将来の地域農業を背負っていくべき担い手が育成されないと考えられるということ、また、行政による生産数量の目標設定のような計画経済的なことを行おうとしていることというようなことから、国内農業の体質強化につながらないのではないかと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇拍手
  8. 冬柴鐵三

    国務大臣(冬柴鐵三君) 工藤議員から私に対して三点にわたって質問をいただきましたので、順次お答え申し上げます。  まず、道路の中期計画についてのお尋ねに対してであります。  現行の道路整備計画が今年度末に期限を迎えるに当たり、地域の切実なる要望を踏まえ、改めて道路整備の必要性を検討しました。  その結果として、地域の自立、活性化に役立つ道路整備や通学路の歩道整備、都市部の渋滞対策や開かずの踏切の解消など、国民生活に欠かせない対策は今後も進めていかなければならないと考え、国土交通省として、今後十年間を見据えた道路の中期計画の素案を昨年十一月に策定したところであります。  この素案では事業量六十五兆円としていましたが、厳しい財政事情を踏まえ、高速道路の料金引下げなどのソフト施策の活用のほか、車線の減少など規格の見直しを進めることにより徹底したコスト縮減に取り組むこととし、約一割の削減を行い五十九兆円とした次第でございます。  引き続き、事業の重点化、効率化に積極的に取り組むことで、真に必要な道路整備を計画的に進めてまいります。  次に、高速道路料金の引下げなどに税金を投入することについてのお尋ねがございました。  高速道路会社は、民営化の際に、建設費について、車線数の見直しやインターチェンジ形式の変更等による六・五兆円のコスト縮減を行い、管理費について、維持修繕、料金収受業務等の頻度、単価等の見直しによる約三割のコスト縮減を行いました。高速国道の料金を約一割程度引き下げるとともに、民営化後も民間のノウハウを生かした割引などを行っております。  一方で、今回の料金引下げに係る措置は、地域活性化や物流の効率化、都市部の深刻な渋滞の解消、地球温暖化対策などの国の政策課題に対応するために、会社がコスト縮減など更なる経営合理化に取り組むことによる措置の実施と併せて国費を活用する枠組みをつくるものでありまして、民営化の趣旨に反するものではございません。  第三点目は、高速道路交流推進財団についてのお尋ねがございました。  高速道路交流推進財団の今後の取扱いにつきましては、二十年度から順次事業等を整理縮小し、五年後をめどに解散し、その保有資産については高速道路利用者へ還元を図ります。  当財団は、平成十五年三月二十五日の政府・与党協議会で、財団法人はサービスエリア、パーキングエリア事業から撤退し、保有資産を活用し、公益事業を行うことにより高速道路利用者に還元するとされたことに基づきまして、平成十八年四月一日にサービスエリア、パーキングエリア事業から撤退し、高速道路利用に係る障害者支援に関する事業等の実施により高速道路利用者への還元を実施してきたものでございます。  しかしながら、この際、資産については一層目に見える形で還元するため、学識経験者らによる国民から納得の得られる第三者機関を設置し、客観的な視点で使途を決定し、真に高速道路利用者の利便の増進につながる形での貢献を行った上で財団は解散いたします。(拍手)    〔国務大臣舛添要一君登壇拍手
  9. 舛添要一

    国務大臣(舛添要一君) 工藤堅太郎議員にお答えいたします。  まず、年金記録問題の見通しにつきましては、先ほど総理がお答えいたしましたとおり、昨年七月五日に政府・与党として決定いたしました方針に基づきまして、一億人のすべての年金受給者や現加入者の方々にねんきん特別便を本年十月までにお送りし、国民お一人お一人に御自身記録を御確認いただくことを始め、各般の対策を着実に実施することとしております。国民皆様の信頼回復に向け、引き続き全力を挙げて取り組んでまいります。  次いで、ねんきん特別便につきましては、昨年の十二月十七日から発送を開始したところでありますが、今後、本年三月までに名寄せの結果、未統合記録と結び付く可能性がある方々へねんきん特別便をお送りすることを予定どおり順次実施しております。  回答状況につきましては、昨年の十二月二十六日までに約四十八万件をお送りしたのに対し、今月七日現在で約三分の一に当たる約十六万件の御回答をいただいており、その評価については更に推移を見る必要があると考えております。御回答をいただいていない方に対しましては、今後、発送から三か月及び六か月後を目途に再度はがきを出して確認をお願いするなど、徹底した対応を図ってまいります。  また、今回のねんきん特別便では、個人情報保護の観点から、新しく結び付く可能性記録に関する情報を御本人に直接お送りしないこととしていますが、電話や来訪による照会や相談において記憶の呼び起こしを積極的に働きかけるなど、お一人お一人の立場に立って懇切丁寧な対応を図ってまいります。  したがって、今回お送りしている加入履歴の内容を国民皆様お一人お一人に入念に御確認いただくことで未統合記録との統合が着実に進むものと考えております。さらに、訂正の申出をいただきました記録の統合処理については、記録調査年金の裁定変更の処理などが必要であることから一定の期間等を必要としていますが、これについても必要な事務処理体制の整備を図ることにより統合作業を着実に進めてまいります。  次に、ねんきん特別便についてでありますけれども、ねんきん特別便の送付に当たりましては、送付用の封筒の表やリーフレット等に、記録に漏れがある可能性があるため十分にお確かめいただきたい旨を案内しているほか、政府広報等において加入期間がつながっていない記録の例を図示するなどしてねんきん特別便の見方について周知を図っているところでございます。  また、本年一月十六日の発送分からは、送付用の封筒の表に、御確認に当たってはお近くの社会保険事務所にお越しいただきたい等の旨を付記することにより注意喚起を図っているところであります。  さらに、国民の目線に立って年金記録問題への対応をするため、昨日、民間の有識者の方をアドバイザーとして任命したところでございます。  こうした様々な取組を通じて、国民に分かりやすく注意喚起を行ってまいります。  最後に、厚生年金をめぐる問題事案などについてのお尋ねがございましたが、延滞金の徴収漏れにつきましては、昨年十二月に社会保険庁において全国調査の結果を公表しております。  今後、事務処理に関与した職員等に対して調査を行い、原因を明らかにし、厳正に対処するほか、適正な事務処理手順の徹底など、再発防止に取り組んでまいります。  また、厚生年金の標準報酬月額の変更等は事業主の届出に基づいて行うものであり、社会保険事務所において届出と異なる処理を行うことは許されず、特に遡及した引下げの場合には関係書類の提出を求めるなど、慎重な確認を行っております。  しかしながら、年金記録確認第三者委員会から標準報酬月額等の記録訂正に合理的な理由が認められないとの指摘がこれまでに十二件のあっせんで行われておりますが、これらについては事実関係を調査しているところであり、仮に不適正な処理が確認された場合には厳正に対処してまいります。(拍手)    〔国務大臣渡辺喜美君登壇拍手
  10. 渡辺喜美

    国務大臣(渡辺喜美君) 独立行政法人についてのお尋ねでございます。  今回の独立行政法人改革については、福田総理リーダーシップの下、内閣全体で極めて前向きに取り組んできた成果であると考えております。  昨年末に閣議決定した独立行政法人整理合理化計画は、総理の指示に従い、関係大臣との折衝を行いました。そこで、各独立行政法人の在り方について徹底して議論をし、最終的には総理、官房長官にも御調整をいただき、取りまとめたものであります。まさに、政府全体として策定をしたものであります。  具体的には、日本貿易保険の株式会社化、万博記念機構の廃止など、全事務事業の六割以上について見直しを決定をいたしました。また、存続する独立行政法人について、そのガバナンスを強化するため、人事管理や事後評価について内閣として一元的に関与する仕組みをつくり、真に国民のための仕事をする独法といたします。  さらに、随意契約を徹底的に見直すほか、独法の資産について、現時点で六千億円を超える土地、建物を売却等処分することも決定をいたしました。その売却収入の国庫返納等のための法整備も早急に行うことといたしております。  一部の課題につき先送りとの御批判がありましたが、総理からの御答弁にもあったとおり、都市再生機構については、事務事業の徹底したスリム化、随意契約の廃止、加えて、関連会社等への天下りの停止、関連会社等に蓄積された剰余金の回収といった課題に直ちに取り組んでまいります。  これらを含め、今後、今回の計画に盛り込んだ事項を迅速かつ着実に具体化し、独法改革を更に推し進めてまいりたいと考えます。御協力のほど、よろしくお願いをいたします。(拍手)    〔国務大臣額賀福志郎君登壇拍手
  11. 額賀福志郎

    国務大臣(額賀福志郎君) 工藤議員にお答えをいたします。  特別会計の積立金についてのお尋ねがありました。  特別会計の保有する積立金等につきましては、それぞれ所要の目的があって積み立てているものであり、無駄があるというものではありません。例えば、その約八割は厚生保険、国民年金等の保険事業の積立金であり、これは将来の給付に充てるため積み立てているものでございます。  一方で、現下の厳しい財政状況にかんがみまして、可能な限り財政健全化への貢献を図る観点から、特別会計に関する法律を作りまして、関係規定を整備したところであります。  近年は、この規定に基づきまして、平成十八年度において財政融資資金特別会計の積立金約十二兆円を国債整理基金特別会計に繰り入れました。四特別会計の剰余金等の約一・八兆円を一般会計へ繰り入れ、平成十九年度において七特別会計の剰余金等約一・八兆円を一般会計に繰り入れ、さらに、平成二十年度において財政投融資特別会計の積立金九・八兆円を国債整理基金特別会計へ繰り入れるとともに、五特別会計の剰余金等約一・九兆円を一般会計へ繰り入れているのであります。  今後とも、各特別会計の状況を見ながら可能な限り財政健全化へ活用を図ってまいりたいと考えております。(拍手
  12. 山東昭子

    ○副議長(山東昭子君) それでは、これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ─────・─────    午後一時一分開議
  13. 山東昭子

    ○副議長(山東昭子君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。鶴保庸介さん。    〔鶴保庸介君登壇拍手
  14. 鶴保庸介

    ○鶴保庸介君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、昨日の尾辻議員会長に引き続き、総理施政方針演説などに関して質問をさせていただきます。  さて、総理は、就任以来、国民の立場に立ったぬくもりのある政治を目指されています。この度の施政方針演説でも、生活者消費者が主役となる社会を実現する国民本位の行財政への転換を五つの基本方針の第一に掲げられました。  本日は、この総理国民本位という理念の実現のために政治はどうあるべきかという観点から質問をさせていただきます。  まずは、外交問題についてお聞きいたします。  来る二十九日、三十日に日本で北京オリンピックハンドボール競技の再予選が行われます。恣意的な審判に対して、日本ハンドボール協会と韓国が国際ハンドボール協会に対して再三にわたり抗議をしてきた結果ですが、私は現在、日本ハンドボール協会の副会長を仰せ付かっております関係で、この問題に関しては深く関心を寄せてまいりました。学生時代の経験者という立場からは正直憤りを隠せませんが、問題はこの件に潜む日本外交への懸念を払拭できないことです。  スポーツの世界において、審判が不公平、不公正なジャッジを意図的に行うことは論外でありますが、今回の場合は、この問題に絶大な影響力を持つ王族の存在と審判の買収工作さえうわさされています。そして、もしこれが事実ならば、これはハンドボールという競技に限ったことではなく、他のスポーツ界でもあり得ることであると考えるべきではないでしょうか。  事実、ハンドボールに限らず、最近は世界のスポーツ界において日本のスタンダードがないがしろにされ、世界標準が日本抜きに確立されていくという声も多く聞かれます。関係諸国との友好を維持していくことは大前提ですが、外交面で主張すべきはしっかりと主張する姿勢が必要です。国民の関心の高いこれらの問題について、国民の納得を得るためにも、特に今回のような場合には政治的にもしっかりサポートしていく必要があるのではないでしょうか。そんなスポーツ外交の在り方について、総理の率直な御認識、御感想をお聞きいたします。  外交面で主張すべきはしっかりと主張するという姿勢が必要だといえば、最近注目されているのが捕鯨問題です。  我が国は、南極海におきまして、鯨に関し、国際条約に基づく合法的な調査を二十年余にわたり実施してまいりました。しかしながら、反捕鯨の団体は、調査を行う船団に対し悪質かつ暴力的な妨害活動を続けています。化学薬品を調査捕鯨船に投げ込む、頑丈に武装した大型船で調査船に体当たりを仕掛けるなど、信じられない妨害活動によって我が邦人に負傷者が発生し、また、船体に損傷を受ける等ゆゆしき事態が生じております。加えて、本年におきましては、我が方の制止を振り切り調査船に乗り組むなど、傍若無人の活動を行っています。  ちょうど昨日午前中にも、調査船が補給活動をしている間に調査船と補給船の間に大型ゴムボートを割り込ませる妨害行為が行われています。幸い双方に負傷者はありませんでしたが、ゴムボートが一時補給船のワイヤに絡まるなど、危険な事態が発生しています。  これらの行為は、海上における邦人及び邦人の財産への明らかな侵害であり、捕鯨の当否を棚上げにしたとしても断じて許すことのできない問題であります。このような事態を起こさないためにも、外務省を始めとして我が国政府が一丸となって毅然とした対応を行うことが必要であると考えますが、どのような御認識をお持ちでしょうか。  なお、この問題については、数年前から幾度も外務省に毅然たる態度を取るよう要請してきました。その後、いかなる措置がとられ、いかなる効果が上がったのか。何度も繰り返されるこれらの事態を見ると倍旧の注力が必要であると考えられますが、いかがお考えでしょうか。併せて御答弁いただければ幸いです。  こうした事態に陥ると、必ず外交の重大な手段としての役割を期待されるのが戦略的なODAの活用です。しかし、先述のハンドボールの例でも、アジアの協会長が今後オイルマネーを武器にして関係諸外国へ重大な影響力を行使するのではなどと取りざたされています。我が国の財政状況と冷徹な国際社会の現実を前に、我が国のODAは量から質への転換を迫られていることを忘れてはなりません。  ましてや、今年は第四回アフリカ開発会議やG8北海道洞爺湖サミットの開催等、日本の国際協力にとり非常に重要な年であります。日本外交におけるODAの効果的活用について、どのような方針で臨まれるおつもりでしょうか。  私の経験を申し上げると、一昨年八月、私は、第三回参議院ODA調査団の団長としてインドネシアを訪問いたしました。その際、我が国のODAを活用した事業であるコタパンジャン・ダムを視察しました。このダムをめぐっては、現地住民の一部が日本政府に対して訴訟を起こしていたのですが、現場を訪れた際にも、現地住民のデモ隊に取り囲まれるという貴重な経験をいたしました。  現地住民のプロジェクトに対する意識について日本政府が十分認識していたのかどうか、その当時、大変不安に思いました。こうした事態は極めて残念であります。援助関係者が現地住民の意識に配慮し、ODAを効果的に実施していくことによって、我が国国民にもそれが重要だとの認識が芽生えていくのではないでしょうか。施策の経験なども踏まえ、現地住民のためになるODAを実現するため、具体的にどのように現状を改善していけばよいか、総理のお考えを伺いたいと思います。  そして、地球環境問題です。  今年は環境、気候変動問題を主要議題とする北海道洞爺湖サミットが開催され、我が国にとっては環境立国日本を強くアピールできる絶好の年であります。  京都議定書に関しては、その目標達成が厳しいとの報告があった一方で、政府としても産業界の取組強化や国民運動などの追加対策を講じ、何とか目標達成を果たそうと懸命に努力しているところではありますが、私はその実現には政府、民間の努力に加え、国民一人一人の協力こそが重要なかぎを握るものと考えます。  総理自ら政府広報の先頭に立っていただき、温暖化の現状、また国民一人一人の協力の重要性を今まで以上に丁寧に説明していくことが大事なのです。そこで、総理にはこの場で国民に向け改めて京都議定書の意義、現状、また国民への協力の要請をしていただければとお願いをしておきます。  サミットでは、環境先進国としての日本を強くアピールできるのはもちろんのこと、京都議定書以降の次期枠組みに関する議論我が国が主導していく良い機会であります。  昨年末開催された国連気候変動枠組条約第十三回締約国会議でも、ポスト京都議定書についての交渉を始めるとの決議が採択されました。今後、世界は、温暖化問題を避けるのではなく、いかにして自国の経済成長と両立させていくかという方向に動いていくでしょう。しかしながら、その手法、目標に関して、先進国、途上国で、また先進国同士においても意見が統一できていないのは総理も御承知のとおりであります。かかる観点から、我が国は次期サミット議長国として、米国や中国など、各国間の利害をどう調整できるのかが世界中から注目されております。そこで、北海道洞爺湖サミットではいかにして議長国としてリーダーシップを発揮するお考えか、福田総理にお伺いをいたします。  我々地球上のすべての人間は、自由が保障され、人権が尊重されなければならないことは言うまでもありません。人権は、人類が不断の闘いの中で獲得したものではありますが、いまだ内戦状態にある国々や独裁者に支配される国々にあっては、人権がじゅうりんされ、自由が制限されています。  こうした世界の現状に目を向け、グローバルな観点から人権確保の対応が求められます。国際社会全体で人権問題に取り組むために、国際連合では一九四八年に世界人権宣言を行いました。今年はこの世界人権宣言の六十周年に当たり、世界各国で啓蒙のためのイベントが企画されると聞いています。  我が国にあっては、幸いにも物質的、精神的に豊かになり、かつてのように人権圧迫が著しい状態は改善されてきました。ただ、今でも弱い立場の者を対象にしたいじめや虐待、嫌がらせなどが横行している現状が見られ、また、地域社会の中でわがままな言動を行う人も多く見受けられるようになりました。また、地域格差の拡大が今後どのような形で差別問題に発展していくか予断を許しません。  人権問題がすべて解消することは難しいとは思いますが、それを軽減、根絶していく努力を全国民政府を挙げて行わなければならないことは言うまでもありません。特定の団体や組織、グループのために運動を展開するのではない、全国民を挙げて人権を守る国であるということを内外に示すことこそ重要ではないでしょうか。  そこで、総理には、我が国における人権問題の現状についてどのような認識をお持ちなのでしょうか。そして、人権擁護の法的体制については人権擁護委員法がありますが、更に総合的に人権擁護を推進するための法的な整備の必要性についてどのようにお考えなのか、率直なお考えをお聞きします。  道路問題についてお尋ねします。  繰り返しこの場でも議論になっておりますとおり、今や道路特定財源をめぐる問題は国民の最大関心事の一つになっています。  私は、かねてより、昨今の公共事業不要論に対し、地方の立場から大変な危惧を抱いてまいりました。景気が停滞し、将来への不安が蔓延する今だからこそ、今後この日本をどんな国にしていくのか、しっかりとした理念やビジョンを持ち、真に必要な事業は必ず実現するという姿勢を貫いていかなければならないと強く感じているところです。ただ、つまるところ、私はこの問題の根本には三つの信頼が欠けているように思えてなりません。  まず一つは、国土交通省が今後十年間の中期計画なるものを出し、その計画達成のためには暫定税率の維持が不可欠であることを強調してきましたが、この中期計画が必ず今後の十年間の間に達成されるのか否かという点であります。  既にばらまき型の公共事業は論外です。真に必要なものを着実に進めるというのは当然のことであると思います。しかし、真に必要な事業に限定しても、これらをいつまでに達成していくのかについては必ずしも計画のとおり進むものではなかったように思います。十年たってみてもほとんど計画は進んでいない、また十年の再延長をお願いしますというのであれば、国民の納得を得られないように思います。  税率のみで先進諸外国と比較した場合、決して日本ガソリンの税率は高くはありませんが、暫定という言葉に期待する国民思い政治はこたえるべきです。道路整備を待望しつつ後回しにされてきた地方の思い国民政治への信頼を取り戻すためにも、今後十年の中期計画の達成についての総理決意のほどをお伺いいたします。  次に、もう一つの信頼、財源問題です。  最近の原油価格高騰とも関連し、道路特定財源に係る暫定税率を廃止すべきとの意見が聞かれるところです。確かに、原油価格の高騰は国民生活産業に影響を与えており、税率の引下げによってガソリン価格が下がることはだれもが望むことであります。  しかし、そもそも税率を下げただけで二十五円ガソリンが本当に下がるでしょうか。伺う限りでは、二十五円の多くはガソリンをめぐる業界の利益に消えていく可能性も払拭はできません。また、暫定税率を廃止した場合には、国と地方合わせて約二・六兆円もの税収減が生じ、高速道路整備はおろか、老朽化する道路や橋の維持更新さえままならない状況に陥ることになると聞きます。  この点、他党の議員の中には、他党の議員の中には、暫定税率を廃止しても道路整備は続けますと公言される方もいらっしゃるように伺います。果たしてそのようなことが可能でしょうか。仮に二・六兆円の財源を捻出するとしたらどのようなことになるのか。直轄事業の地方負担分廃止で地方の負担は浮かせると民主党は主張されておられますが、結局のところ、その事業を維持しようとする限り、国の財政負担は変わらないどころか、増えてしまうはずです。  財源の裏打ちのない議論ほど国民の信頼を損ねるものはありません。基礎年金十九兆円もの財源をすべて税で賄うという政策を打ち出している党が、農業者所得の補償に一兆円の税金をつぎ込むという同じ党が、道路でも減税を打ち出しているんです。このような国民を惑わす無責任極まりない議論に終止符を打つためにも、国家の置かれている状況を正直にお答えをいただければ幸いです。  三つ目の不信は、なぜ特定財源を維持しなければならないかということです。  民主党が言うように、地方自治体が自由に使える財源を認めることは、一見国民の利益に即しているように見えますが、これは生活道路のみに当てはまる議論であり、高速道路や都道府県間の間を結ぶ道路のようにネットワークによって機能している道路には当てはまりません。例えば、それぞれの自治体が独自の判断で高速道路を造ったり造らなかったりした場合には、本当に道路として機能するでしょうか。特定財源維持の必要性についてお考えをお伺いします。  以上述べてきました道路問題の本質は、地方のあるべき姿をどうするかということに尽きると思います。先日の国土開発幹線自動車道建設会議、いわゆる国幹会議でも、国土の均衡ある発展という言葉は死語にはなっていないと冬柴国土交通大臣が自ら答弁されたと聞きます。私は、もしも地方の最低限のインフラ整備までをも否定する政策こそが日本を救うものだと考えるならば、その政策は間違っていると思います。  しかし、国家の財政は地方のすべての要望にこたえることを許しません。だからこそ、完全な地方分権の完成しない限り、地方の要望のどこまでを認めるか、だれもが納得する客観的な基準が必要となってまいりました。そこで、究極の地方とも言える基礎的条件の厳しい集落、いわゆる限界集落に関して質問をいたしたいと思います。  昨年十一月、総理を本部長とし、全閣僚が参画する地域活性化統合本部会合において、地方再生戦略が取りまとめられました。この地方再生戦略に関連して、二点ほどお伺いをいたします。  まずは、地方再生戦略においては、基礎的条件の厳しい集落について国土保全、水源涵養等の面で最前線の機能を有するとの位置付けを示し、生活者の暮らしの維持確保、地域産業の再生、域外との交流の維持促進の観点から支援策を体系的に示しております。また、地域の自由な取組の立ち上げを包括的に支援する地方の元気再生事業も斬新で希望の持てる制度であると評価はしております。  しかしながら、これら集落の多くは今後も維持できるのかどうかという究極の判断を迫られつつあります。この場合、住民の話合いなどの結果、集落を維持するのが難しいとの結論に自主的に至った場合でも、放置されるだけなのでしょうか。それとも、何らかの撤退措置なるものを用意するおつもりなのでしょうか。維持していくとしても、水源地の維持、国土の保全といった観点から、政府として集落維持存続のための条件を明確にしていかなければなりません。  では、それらの条件とはどんなものなのでしょうか。支援の結果、すべての集落が再生することが最も望まれるはずですが、現実にはなかなか難しい。とすれば、どの地域をどのように支援していくか、維持の困難な集落に対しては政治に何ができるかを真剣に考える時期が来ていると思います。そして、このことは過疎の集落のみに当てはまるのではなく、都市に対比される地方そのものの今後の在り方にも影響する大変重要な問題だと考えています。  政府の大方針として、どのような視点でこれら集落に対してどのような施策を実施するお考えなのでしょうか、率直な見解をお伺いします。  地方の再生のためには、今ある人的、物的資源を有効に活用する必要があることは言うまでもありません。その中でも、既存インフラの活用については所轄官庁が各省庁にまたがっていたために責任主体が必ずしも明確ではありませんでした。そこで、地方再生戦略においては補助対象財産の転用の更なる弾力化を政府一体となって推進するということになっております。  しかし、このことについて質問をさせていただきたいと思いますが、例えば廃校舎などを旅館、工房などに転用していくことについては集落の活性化の重要な手段の一つであるにもかかわらず、私の地元などでは、廃校となった小学校施設の転用、利用を申し込んだ民間団体が耐震基準を満たしていないという理由で断られたケースが散見されます。しかし、耐震基準を満たしていない公共施設を利用しているケースは参議院の清水谷宿舎を含め、現在でもたくさんあるはずです。厳し過ぎる転用基準の運用の在り方は見直されるべきだと考えます。  今後、地方再生戦略に基づき、民間転用に当たっての条件の弾力化をどのように政府として進めていくのか、御見解をお伺いします。  最後になりますが、私の地元和歌山県出身の先達、陸奥宗光の言葉に、政治はアート、すなわち芸術なり、サイエンスにあらず、巧みに政治を行い、巧みに人心を治めるのは、実学を持ち、広く世の中のことに習熟している人であるというのがあります。国民本位の政治を標榜される福田総理は、これまでの豊富な経験を生かし、まずは芸術家のように温かく繊細な心根で国民の声、そして声なき声へ真摯に耳を傾けてこられました。そして、その真価が問われる正念場はこれからだと思います。  野党諸君とも腹を割って話し合い、日本の進むべき方向を明確にされたなら、共に決然と実行に移す覚悟も必要です。さきの陸奥宗光翁は「他策なかりしを信ぜむと欲す。」とも言われています。様々な意見を丁寧に集約し、最後は決然行動する。国民の目線に合う政策ならば、きっとこれは国民の理解されるところとなるでしょう。  我々参議院自民党は、第二の勢力になったとはいえ、この難局に一丸となってこうした総理を先頭に国政に邁進することをお約束し、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  15. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) 鶴保議員にお答えをいたします。  最初に、スポーツ外交についてのお尋ねがございました。  スポーツにおいては公平なルールと審判が何よりも重要でありまして、それが阻害される場合には日本として主張すべきことは主張していくことは必要であります。今回のハンドボールをめぐる問題を契機に日本オリンピック委員会は国際戦略プロジェクトを立ち上げ、この面での取組を強化したと承知しております。政府としても、日本オリンピック委員会や各種スポーツ競技団体と連絡を密にしてまいります。  次に、捕鯨問題についてでございますが、我が国が行っている調査捕鯨は、国際捕鯨取締条約に従い公海上で実施する合法的な活動であります。  捕鯨問題については、捕獲や調査の適否、やり方について、習慣などの違いも背景に異なる考え方がございます。感情的な対立に流されることなく、冷静に科学的議論を行うことが重要でありますが、今般のような妨害行為は関係者の身体、生命を危うくする許し難い違法行為です。妨害行為の発生を、直ちに関係国に適切な措置をとるよう求めたところでありますが、こうした違法行為の再発防止のため、政府一体で取り組んでまいります。  次に、効果的で現地住民に貢献するODAの実施についてのお尋ねがございました。  本年はG8北海道洞爺湖サミットや第四回アフリカ開発会議が開催される重要な年でございまして、我が国の地位に見合った国際的責任を果たすためにODAを効果的に活用していきたいと考えております。  私は、途上国支援についても自立と共生の考え方が当てはまると考えます。直面する問題に自ら取り組み自助努力を行う相手に対して、我々の知恵と経験を分かち合う協力を行うことが重要であり、現地住民のためにもなると考えております。我が国は、こうしたオーナーシップとパートナーシップを理念とした援助を実施してきておりまして、アジアを中心とする途上国の発展に貢献し、成果を上げてきております。    〔副議長退席、議長着席〕  政府としては、こうしたアジアの経験をアフリカを始めとするほかの地域にも広げる努力をしてまいります。また、現地住民のニーズ、問題点のより的確な把握、援助効果の持続性の向上など、一層質の高いODAを目指していく所存でございます。  次に、京都議定書の意義と現状、国民への要請についてのお尋ねがございました。  我が国世界の先例たる低炭素社会への転換を進め国際社会を先導する上で、北海道洞爺湖サミット我が国環境問題への取組世界に発信する大きなチャンスです。こうしたチャンスをしっかり生かしていくためにも、京都議定書に掲げる六%削減目標は確実に達成していかなければなりません。今年度中に京都議定書の目標達成計画を改定し、約束したとおり、二〇一二年までの間に目標を達成してまいります。  その際には、産業界の更なる努力だけでなく、温室効果ガスの排出量が増大している民生部門における国民皆様一人一人の取組が不可欠であります。息の長い取組となりますが、取りあえずは、低炭素社会はどうすれば実現できるのか、国民の皆さんに分かりやすくお示しするための環境問題に関する懇談会を近々開催することとしております。  サミット議長国として、北海道洞爺湖サミットにおける地球温暖化問題への対策に向けたリーダーシップの発揮についてお尋ねがございました。  気候変動問題の解決には、世界全体としての排出削減を実現するような枠組みを構築することが何より重要であります。そのためには、米国、中国、インドを含むすべての主要排出国が参加する枠組みを構築することが不可欠であります。  本年のG8北海道洞爺湖サミットでは、バリ会議の成果も踏まえまして、議長国として各国の理解と賛同を得て、二〇一三年以降の実効性のある枠組みづくりを進展させるような成果を目指します。このために、我が国自身排出削減に向けて一層努力をいたします。また、排出削減と経済成長の両立を目指す途上国を支援する資金メカニズムを構築するなど、地球環境問題に対する国際社会全体の取組後押しをいたしてまいります。  次に、人権問題の現状と人権擁護を推進するための法的な整備の必要性についてのお尋ねがございました。  我が国においては、子供や老人などに対する虐待や女性に対する暴力、学校や職場におけるいじめ、障害等を理由とする差別、偏見など、依然として数々の人権問題が存在すると言わざるを得ず、人権の擁護は重要な課題であると認識しております。  御指摘の人権擁護を推進するための法整備については、人権擁護推進審議会の答申や人権擁護施策推進法の附帯決議などを受けて与党内においても様々な御議論がなされておりますが、政府としては、こうした議論を踏まえつつ、引き続き真摯な検討を行ってまいります。  道路の中期計画の達成についてお尋ねがございました。  現行の道路整備計画が今年度末に期限を迎えるに当たりまして、改めて道路整備の必要性を検討しました。その結果として、地域の自立、活性化に役立つ道路整備や開かずの踏切の解消など、国民生活に欠かせない対策は、厳しい財政事情の下でも今後も進めていかなければならないと考えております。  こうした道路に対する地域国民の切実な要望にこたえるため、今回の中期計画の素案では、例えば、今後十年間で全国約十七万キロの生活幹線道路ネットワークのうち、救急車両がスムーズに走行できない箇所など約一万三千キロに重点化して取り組み、その解消を目指します。今後十年間を見据えた道路の中期計画を策定し、真に必要な道路整備を計画的に進め、地域住民の期待にこたえていく所存であります。  道路整備の財源についてのお尋ねがございました。  仮に暫定税率を廃止すれば、国、地方合わせて二兆六千億円の大幅の減収となり、地域の自立、活性化に役立つ道路整備、都市部の渋滞対策、橋梁の耐震化などの対策を進めていくことが極めて困難になります。  また、地方では、道路特定財源に加えて一般財源や地方債により道路整備の多くを賄っているのが現状でございまして、とりわけ削減が困難な維持補修費や公債費の負担が大きい地方公共団体にとっては、暫定税率の廃止に伴い予算全体の編成に苦慮する地方公共団体もあり得るところでございます。  民主党の御提案は、地域生活に根差した道路整備ニーズにこたえられないだけでなく、地方財政に深刻な影響を与え、福祉、教育などの住民サービスの低下につながりかねません。大きな問題をはらむものと言わざるを得ません。  こうした点を踏まえると、現行税率の維持がどうしても必要であると考えるべきことは議員の御指摘のとおりでございます。  道路特定財源維持の必要性についてお尋ねがございました。  先ほど申し上げました様々な政策課題に対応するためには、地域の日常を支える生活道路だけではなく、高速道路など広域的な基幹ネットワークとしての機能する道路も重要でございます。そして、国、地方各々が連携して全体として必要な道路整備を行うことが、これが必要であると私ども考えております。  そのためには、厳しい財政事情の下で国、地方とも財源の確保が必要です。このため、国民皆様道路特定財源の趣旨をよく理解していただき、その上でこれを維持するかどうか、その維持することがどうしても必要であると考えてお願いをすることといたしております。  基礎的条件の厳しい集落に対する施策の実施についてお尋ねがございました。  基礎的条件の厳しい集落については、国土の保全、水源の涵養、貴重な郷土文化の伝承等の様々な多面的機能を有していると考えておりまして、集落の状況に十分な目配りを行いつつ、まずは集落を活性化し、住民の生活の維持を図ることを目指したいと考えております。  しかしながら、集落を今後とも維持するかどうかの判断が求められる場合がありまして、その場合には、何よりもまず第一に、集落の在り方について住民自身が集落の将来をどう考えていくかが大事であると考えております。その上で国、自治体は、住民の判断を尊重して、きめ細かな支援等によりまして住民自身の選択が円滑に実現されるよう進める必要がございます。  防災面等の理由から集落の住民の方々の自主的な判断で移転が選択された場合には、政府としては、移転先での住民の生活の円滑な再建、移転跡地の国土の保全を目指し、必要な施策を実施してまいりたいと考えております。  補助対象財産の転用の弾力化に関するお尋ねがございました。  補助対象財産の転用につきましては、原則、各省庁の承認が必要でありますが、地方分権を推進する観点から、これまでも基準の弾力化や手続の簡素化を進めてきたところであります。しかしながら、社会経済情勢の変化に対応して、地方公共団体が補助対象財産を有効活用しようとする際の支障を軽減するために、昨年十一月の地方再生戦略において補助対象財産の転用等の更なる弾力化を政府一体となって推進するとしたところでございます。  今後は、地域活性化につながるよう、転用承認の基準の更なる弾力化や手続の簡素化に早急に取り組んでまいります。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  16. 江田五月

    議長江田五月君) 大河原雅子君。    〔大河原雅子君登壇拍手
  17. 大河原雅子

    ○大河原雅子君 民主党・新緑風会・国民新・日本の大河原雅子です。会派を代表して質問いたします。  昨年七月の逆転の夏、東京選挙区から初当選させていただきました。政治生活であるの言葉どおり、私は三人の子供子育てをする中で、妻として、母として、生活者として、この国の抱える数多くの矛盾や課題に出会いました。そして、納得のできる解決策を得るため、情報公開と参加を道具として仲間たちとともに活動に取り組んでまいりました。とりわけ、東京都議会議員としての三期十年は、市民の生活の中から出てくるニーズを丁寧に集め、生活実感に基づく政策を実現する生活者政治を実践してきたと自負しております。  その中の一つとして、食べ物の安全をテーマに取り組みましたが、消費者のニーズという言葉の裏には必ずと言っていいほど作る側、売る側の論理が隠れており、法律はこれにお墨付きを与え、むしろ擁護するような位置に置かれています。  その原因一つは、国民の健康や命の安全を基点に、危険の回避や未然防止の視点から法律やルールが作られていないことにあります。国民一人一人の生活を安全、安心できるものにするはずの政府が、国民を見ず、課題をとらえず、根本的な解決方法を見出す努力もしていないのです。そればかりか、あらゆる分野で政官業の癒着は根深く、天下りと無駄な公共事業が繰り返され、そのツケばかりが国民に押し付けられています。  この国では、年金医療子育て介護の不安、過酷な労働と、若者たちにも拡大する新たな貧困など、多くの問題が起こっています。国民が必要最低限の文化的な生活が送れる基準は、年金受給者でも生活保護家庭でも同等であることが当然のことだと思います。生活の最低基準を設定することは政治基本的な役割です。ほころびを繕うだけの政治ではなく、根本からこの国の転換が必要です。持続可能な成長と自立した個人が連携して地域で豊かに暮らし、大事なことは自分たちが決め、地域社会の運営を担っていく市民の力を生かす仕組みを新たにつくることが重要なのです。  地域主権、生活が第一の視点から質問さしていただきます。  まず、冒頭、株価問題について質問を追加さしていただきます。  日経平均は、福田総理の就任時より、一万六千四百三十五円七十四銭でしたが、それが昨日の終値で一万二千五百七十三円五銭、わずか四か月足らずで三千八百六十円以上も下落しています。これはまさに福田売り以外の何ものでもありません。市場に対する福田政権の無為無策、マーケットが大いに警鐘を鳴らしているのが実態です。  この市場の警鐘に総理はどのような政策をもってメッセージを出していくのでしょうか。現在の金融株式市場の危機の克服に対する明確なメッセージを求めます。  初めに、福田総理施政方針で発表されたいわゆる消費者庁についてお尋ねします。  昨年は、食品の原材料や産地、有名なしにせによる賞味期限改ざん問題が相次いで明らかになり、偽装事件に対する国民の怒りが頂点に達し、食に対する不安が高まった年でした。  民主党は、昨年の参議院選挙において、食の安全、安心の確保を重点公約に掲げ、まずは、現在、内閣府、農林水産省、厚生労働省に縦割り、分断されている食品安全行政の一体化を提案いたしました。  ここに来て福田総理は、消費者行政を一元化する考えを示していますが、民主党の政策をつまみ食いしているような印象を受けます。総理施政方針演説で、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的、一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足させるとし、消費者行政担当大臣を常設されるとされました。お言葉は結構なのですが、強い権限とは一体何なのか、総理の答弁を求めます。  米国産牛肉の輸入問題を見ても、十分に客観的なリスク評価がされたのか、疑念がないとは言えません。このリスク評価に際しても、農水省や厚労省などの監督官庁の主導が目立ちました。脆弱な食品安全委員会の改革が行われないまま、新しい組織が本当に産業主導の官庁から独立して消費者の権利を擁護できるのか、そのためにどのような行政組織として設計するのかが問われているんです。  新しい組織が独立性を確保するには、三つの要件が求められます。第一の要件は、監督官庁に対して是正の勧告権を持つこと。第二は、独自に行政処分を行う権限を持つこと。そして第三に、この組織の運営に消費者が参加することです。これら三つの要件を持ってこそ、総理が言われる強い権限を持つ組織が確保されると考えます。総理、私の提案に対して明快なお答えをお願いします。  次に、食料自給率、農業政策についてお尋ねします。  政府・与党の場当たり的農政の失政により、農村は過疎化、高齢化、従事者の減少など深刻な構造変化に見舞われており、日本の食料自給率は、二〇〇六年、カロリーベースで三九%、ついに四〇%を割りました。  農業は、生産することだけでなく、環境保全、水循環の維持、安らぎを与えるなど多面的な機能を持ち、農業を国で支えていくことは農村の再生と地域経済活性化につながると確信しております。農業生産は、食べ物の安全、安心の確保、全国的なレベルで地産地消、旬産旬消を推進することが消費者生活者の利益にもかなうものと思います。そのためにも、国内の自給率向上は何をおいても重要なのです。日本の自給率の将来、そしてその具体的な政策について、総理並びに農林水産大臣の見解を求めます。  昨日、我が党の輿石議員の農業政策に対する答弁で、福田総理は、小規模・高齢農家の方々へのきめ細かい対応に努めつつ、現場の実態に即した経営所得安定対策による意欲ある担い手への支援の充実を行うと発言されました。また、民主党提案の農業者戸別所得補償法案に対しては、必要となる予算の財源を含め詳細が不明と批判されました。それでは、福田総理の発言のどこに詳細な内容が示されているのでしょうか。  民主党提案の法案は、既に本院で可決された法案です。政府の責任者たる福田総理がこれを批判された以上、御自身の発言された施策について、予算規模、財源、事業の詳細についてこの場で御説明いただきたい、いかがでしょうか。  次に、公共事業について伺います。  二〇〇八年度公共事業関係予算は、当初ベースで七年連続減少の六兆七千三百五十二億円となりました。この規模は、過去最高であった九七年度の九兆七千四百四十七億円に比べ約三〇%の減少です。国や地方の赤字財政が拡大し、また、公共事業に関する様々な無駄が指摘され、事業に絡んだ談合や汚職が絶えない中、この規模の縮小は当然です。しかし、少子高齢化の進展や、社会資本の老朽化、地域格差の拡大など時代の変化に対応し、事業の中身自身は変わってきているのでしょうか。  そこで、来年度公共事業予算において、政府はどのような施策に重点を置いているのか、また、今後の公共事業の目指す方向性について、総理及び国土交通大臣の見解を伺います。  さて、厳しい財政状況の下では、今まで計画されてきた大規模事業についても中止や縮減を余儀なくされるケースがこれからも出てくると考えられます。例えば、ダムについていえば、利根川水系の戸倉ダムが建設中止になりました。巨大公共事業は計画から完成まで人の人生の半分以上掛かる場合もあります。  そんな中、事業に翻弄され、疲弊した住民や地域が公共事業の中止によってますます疲弊し、崩壊するような事態は避けなければなりません。また、何十年もインフラの整備を止められ、兵糧攻めにされて苦しんできた地域に、公共事業中止後の支援の手を差し伸べるのは当然のことと言わなければなりません。ところが、公共事業中止後の支援体制や生活再建について、いまだ法律や制度は整備されておりません。こんなことでは見直しは進みません。  国が決めた事業でも、時代が変わり情勢が変われば見直しや中止もあり得る、そしてその際にはその事業計画に翻弄された人々や地域の再建に国がしっかりと支援を行う必要があります。公共事業中止後の生活再建の基本的な法律や制度を総理制定するおつもりがあるのか、見解を伺います。  次に、無駄な公共事業の代名詞として多くの国民の批判を受けているダム建設について伺います。  福田総理の地元、群馬県の八ツ場ダムについてです。このダムは、総理のお父上、福田赳夫元総理の時代から福田ダムとやゆされてきました。  一九五二年に初めて計画が発表されてから実に半世紀以上が過ぎております。この間、ずさんな計画なため、住民の厳しい指摘によって度々計画は変更になり、完成予定年度も二〇一五年度と当初の二〇〇〇年度から十五年も遅れ、総事業費も前計画の二千百億円から四千六百億円に上昇したほか、建設事業費に基金事業や起債の利息を含めるとその総額は八千八百億円にも達し、文字どおり日本のダム史上最も高額なダム建設になると言われています。  多くの住民の生活を奪い、貴重な自然と野生生物のすみかを奪い、下流の住民からさえも無駄な公共事業と批判を受けたこの八ツ場ダムを、それでも建設する理由は一体どこにあるというのでしょうか。首都圏の水がめを目的とした八ツ場ダムですが、首都圏の人口は二〇一五年以降は減少し、水需要も今後、確実に減少することが示されております。現在でも利根川、荒川水系の水需要は十分に余裕があると言えるのに、なぜさらにこのような巨大ダムを建設する必要があるのでしょうか。  周辺地域は浅間山の噴火による火山灰等が堆積した極めて脆弱な地層であることから、ダムが建設されれば地すべりを起こし、周辺地域を巻き込む甚大な被害をもたらす危険があることも指摘されています。政府はそれでもなお八ツ場ダムの建設を推し進めようとするのでしょうか。総理及び国土交通大臣の所見をお伺いいたします。  次に、緑のダムについてであります。  我が党は、二〇〇〇年十一月、緑のダム構想を発表しました。その骨子は、日本にある約二千六百のダムの総貯水量が二百二億トンであるのに対し、森林二千五百万ヘクタールの総貯水量は一千八百九十四億トンとダムの約九倍にもなり、その効用はダムをはるかに上回るというものです。  人工的なコンクリートのダムは周辺住民の悲しみや怒りを生み、さらに税金を食いつぶしますが、緑のダムは住民に安らぎと憩いの場を提供するいやしの空間を生み、人間のみならず野生生物にもすみかを提供するとともに、併せて水源涵養機能や崩落予防の機能を持っている極めて優れたダムであると言えましょう。これに対して反対意見のあることも承知はしておりますが、どれも定性的なものであり、私どもの定量的な提言を覆すほどのものではありません。  今、我が国の山林は、後継者不足から危機に瀕しています。例えば、森林所有者不在村面積は三百二十七万ヘクタールとなっており、森林の整備が十分に行われていません。また、我が国の木材輸入は世界の四割近くを占めている一方で、木材自給率は二〇%程度と低迷しています。世界の森林がすさまじい速さで消失している現実を考えるとき、国内の自給率の向上こそが最も重要です。さらに、日本に課せられている京都議定書の削減目標達成のためにも、吸収源である森林の整備は欠かせません。  民主党は、緑のダム事業として、間伐など森林整備を大幅に増額すべきであると主張しています。これによって、森林の整備が行われ、林業労働者の後継者が育ち、地域活性化し、ダムなどの大規模公共事業に頼らない、持続可能な地域づくりが可能になると考えます。現在の政府予算規模では吸収源マイナス三・八%の確保も難しい状況であると考えますが、総理、農水大臣、いかがでしょうか。また、民主党が主張する森林整備への更なる予算の上積みについても、併せてお尋ねいたします。  また、国土交通省は、治水や利水計画を考えるに当たって、森林の整備や活用をどの程度考慮に入れているのでしょうか。緑のダム、森林の保水力について国土交通省が真剣に調査をしたことがあるのでしょうか。森林の保水力を軽視し、いたずらにコンクリートのダムの必要性を強調してばかりいるのが現実かと思います。森林の持つ保水力を向上させること、きちんと保水力の調査を行うことが第一ではないでしょうか。国土交通大臣の見解を求めます。  次に、子育て介護における人材確保についてお尋ねします。  我が国において、かつて子育て介護は、家族、中でも特に女性が担ってきました。しかし、ライフスタイルの変化や保育所の整備介護保険制度導入等に伴い、現在、子育て介護は家族のみでなく社会全体で支えるものに変化しています。今後も、少子高齢化が進む我が国においては、更なる子育て介護支援が必要です。  子供を産み育てることは、保護者が責任を持つものであると同時に、社会全体が、次代を担う子供の育ちを応援し、環境整備すべきものです。  民主党は、これまでも子供第一、チルドレンファーストの方針を掲げ、子供が安心して育つことのできる社会の実現を訴えてきました。労働力や年金の担い手確保のための人口対策としての少子化対策ではなく、一人一人の子供に視点を置き、総合的な子育て支援を提案しています。今こそ人づくりへの効果的な予算配分が求められているのです。さきの臨時国会では、中学校修了まで子供一人当たり月額二万六千円を支給する子ども手当法案を本院に提出いたしました。さらに、父親も母親も仕事生活のバランスを取りながら育児に参加できるような働き方の見直しや、多様なニーズにこたえ得る保育サービスの充実など、子育てしやすい環境整備を最優先で進め、社会全体で子供たちを支える社会を目指しています。  政府は二〇〇七年十二月に、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略会議の最終まとめを出しましたが、その内容は従来の焼き直しにすぎず、意欲を感じることはできません。子供や家族を応援すると言いながら、一人親家庭、特に母子世帯への支援が削られています。政府は、本年四月から児童扶養手当を削減することを決めていました。標榜するスローガンと実態が大きく懸け離れています。この措置は当面凍結されることとなったようですが、母子家庭の不安は大きく、民主党はさきの臨時国会で児童扶養手当法の改正案を提案いたしました。母子世帯の母は不安定な非正規雇用が多く、平均年収は約二百三十三万円です。子育て支援、一人親家庭の支援策としてどのような政策をお考えなのか、政府見解を伺います。  また、介護・福祉人材の確保のためには、ライフスタイルに応じ、その働き方にふさわしい処遇の下で働くことができるよう、労働時間の短縮によるワーク・ライフ・バランスの実現や、正規・非正規労働者の均衡処遇等を図ることが必要です。働きたい人が男女を問わずやりがいを持って働き続けられる、その環境をつくる施策に政府を挙げて取り組む必要があると考えますが、御所見を伺います。  次に、分権改革について伺います。  一九九三年六月、地方分権の推進に関する決議が衆参両院で決議されてから、はや十五年の歳月が流れようとしております。この間、地方分権推進法の制定とそれに基づく累次にわたる分権勧告を経て、九九年には地方分権一括法が制定されました。国と地方の役割分担の明確化や機関委任事務の廃止等々、地方分権はそれまでの中央集権型行財政システムに風穴を空ける歴史的第一歩を踏み出すはずでした。しかし、地方の財政規模は大幅に縮小される一方、国から地方への権限の移譲は今後の大きな課題として取り残されたのであります。結果として、国の財政健全化には寄与したものの、地方財政には苦渋と困難を押し付けるものでしかなかったことは明白です。  次の分権改革を目指し、一昨年の十二月には地方分権改革推進法が成立し、その推進計画の策定とともに、三年以内に新地方分権一括法を国会に提出することとなっております。私たち民主党は、個別のひも付き補助金が中央による地方支配の根源であり、様々な利権の温床になっていることから、原則撤廃を主張しております。新地方分権一括法ではひも付き補助金を原則全廃し、それに見合う税財源を地方に保障する措置を盛り込むべきと思いますが、総理はいかがお考えでしょうか。  地方分権は、なお道半ばであります。国と地方の関係を上下主従の関係から対等協力の関係に改め、中央政府に対する地方政府の確立こそ分権改革の本旨です。地方の、地方による、地方のための自治を確立するには自治行政権、自治立法権、自治財政権の確立が必要不可欠なのです。  増田大臣は、昨年、二〇一〇年の通常国会に提出を予定していた新地方分権一括法案について、せめて半年は前倒しする必要があると述べたと報じられておりますが、その御発言は事実でしょうか。事実であるならば、一括法の基となる推進計画はいつごろ取りまとめられる予定でしょうか。あわせて、今度の一括法に盛り込もうとする法案の真髄は一体どのようなものでしょうか。今度こそ、地方が果たしている役割に見合った税財源の配分の見直しが行われると理解してよいのでしょうか。また、大臣が一括法に懸ける思いとは一体どのようなものなのか。未完の分権改革はこれで完成した分権改革になるとお考えでしょうか。大臣の率直なお考えをお聞かせ願います。  今年から京都議定書の第一約束期間が始まりました。言うまでもなく、地球温暖化問題は喫緊の課題であり、国民の関心も非常に高まっています。  昨年、IPCCが第四次報告をまとめ、二〇一〇年から一五年までに世界のCO2排出はピークを迎え、二〇五〇年には九〇年度比で半減以下にすることが可能となるような仕組みづくりを求めています。科学は結論を出しました。次は、政治地球温暖化、気候変動問題にどう向き合っていくかを示す番です。  昨年十二月のCOP13では、二〇一三年から始まるポスト京都の枠組みについての議論が活発に行われ、その結果、来年末までに合意するとしたバリ・ロードマップが確認されました。会議のプロセスでは我が国は抵抗勢力と受け止められ、激しい非難を浴びるといったこともありましたが、バリ・ロードマップに対する総理の評価をお伺いします。  昨年、本院予算委員会などにおいて総理は、日本温室効果ガス排出削減の総量目標の策定を明言されました。しかし、バリ会議では、我が国の総量削減をどう考えているのか、日本政府からの発言は残念ながらありませんでした。  また、一月十六日に関係四大臣が会議を開催されましたが、温室効果ガス削減の数値目標を設けるか否かについては意見が対立し、まとまらなかったと聞いております。こうした意見対立のために、京都議定書が締結されて以降の十年はまさに温暖化対策にとっての失われた十年であったと言わざるを得ません。その結果、昨年度の我が国温室効果ガス排出量は基準年比六・四%増となっており、京都議定書で約束した六%削減目標の達成も危ぶまれています。議定書目標達成計画の実効性の乏しさも含め、これは政府の無為無策の結果ではないでしょうか。総理見解をお伺いします。  今週からダボス会議が開催され、総理も出席されます。この地球温暖化問題について、数値目標の設定も含め、総理はどのような御発言をされるおつもりですか、お伺いします。  バリで先進国は二〇二〇年に九〇年比二五から四〇%削減が必要との議論がされたように、国際的な潮流は削減量の明示です。我が国も更に大きな削減目標を掲げる時期に来ています。私たち民主党は、昨年、脱地球温暖化戦略をまとめました。我が国の中長期的な数値目標の設定、総合的な効果を踏まえたキャップ・アンド・トレード型の国内排出権取引市場の創設、再生可能エネルギーの利用比率の拡大等を強く主張しています。このことについて総理見解をお伺いします。  次に、障害者施策について伺います。  昨年九月二十八日、遅ればせながら、ようやく我が国も国連障害者の権利に関する条約に署名しました。この条約策定に当たっては、日本政府はNGOと連携を図り、率先して役割を担ってこられたものと認識しています。しかし、残念ながら条約の政府の仮訳文は、現行の国内法の枠内にとどまった過小解釈がなされ、国連における議論から大幅に後退しているとの批判は免れません。  本院内閣委員会では、昨年七月、条約の早期批准の英断を政府に促すため、障害を理由とする差別を禁止する法制度の整備の促進を求める決議を与野党一致で行っています。一日も早い条約の批准が必要と考えますが、仮訳文の修正も含めた条約批准に向けての検討状況、見通しについて、そして障害者差別禁止法制定に関して政府見解を伺います。お答えください。  民主党は昨年九月二十八日、障害者自立支援法改正案を本院に提出しました。以来、一日も早い審議を求めてきましたが、与党がこれを拒否、二度にわたる会期の延長にもかかわらず、一切審議されておりません。この与党の対応について総理はいかがお考えか、答弁を求めます。  一昨年に施行された障害者自立支援法は、障害が重いほど負担が重くなる応益負担の仕組みです。この結果、全国で多くの障害者がサービスの利用中止や抑制、制限に追い込まれています。障害者福祉政策の転換は一刻の猶予もなりません。審議を一切拒否する与党の行為は、国民の意に背くものではないでしょうか。  与党が公表した見直し案は抜本的とは名ばかりで、根本問題である応益負担の仕組みを存続させたまさに偽看板であります。民主党が主張する、定率一割負担つまり応益負担の原則を撤廃し、応能負担に改めるべきです。総理、いかがお考えでしょうか、御答弁願います。  犠牲は、常に弱い者の上に押し寄せています。豊かさを物で測り、金で測り、力の強い者がすべてを独占することが過ちであることはだれもが知っています。実際、利益追求、効率優先の行き過ぎが私たちを襲い始めている今、一刻も早くこの現状を是正しなくてはなりません。生活者消費者の視点で国民本位の政策を実現すると言明された福田総理並びに関係閣僚の皆さんには、施政方針演説の精神が偽りであったと言われることのないよう真摯に対応されることを希望します。  この国を公正で安心できる国に変えるには、政官業の根深い癒着を断ち切ることが必要であり、それには政権交代しかありません。生活第一を真っ先に提言した民主党にこそ変革の力はあるのです。このことを国民皆様にも訴えさせていただき、私の代表質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  18. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) 大河原議員にお答えいたします。  最近の株価の下落などに対する対応についてまずお尋ねがございました。  このところ、株式市場においては、サブプライム問題等を背景としてアジアの新興市場も含めて世界的な株安が進行しております。他方、サブプライム問題の我が国の金融機関への影響は限定的であり、また我が国経済は企業部門が底堅く、基調はしっかりしております。  ただ、米国経済や各国金融市場の状況を始め、今後の内外の経済動向を引き続きよく注視する必要があると考えておりますので、関係各国と引き続き密接な連携を取ってまいりたいと思います。  まずは、現在、国会に提出しております十九年度補正予算、二十年度予算、関連法案早期成立を確実にすることが最善の策と考えております。このことについては、大河原議員もよく御理解いただけるものと信じております。  消費者行政の新組織の権限についての御指摘がございました。  国民目線に立ち、消費者行政を統一的、一元的に進めていくためには、常設する消費者行政担当大臣の指揮の下で新たな組織や役割を的確に果たしていくために必要な権限を与える必要がございます。新組織の権限については、例えば関係機関の長に対する勧告権限等が考えられますけれども消費者からの情報を一元的に集約し、各省の政策に反映させるために必要な権限について、現在進めている国民目線の総点検も踏まえながら検討していきたいと思います。  消費者行政の新組織に対する御提案がございました。  新しい組織は、国民意見や苦情の統一的な窓口になり、その情報を集約し、政策に直結させ、消費者を主役とする政府のかじ取り役になるものであります。このような新組織をつくることにより、各省縦割りになっている消費者行政の弊害が是正され、消費者の利益を擁護できる行政組織となるものと考えております。新組織の権限や体制の具体像については、なるべく早く固める考えでございます。  次に、食料自給率についてのお尋ねがございました。  国民に対し食料の安定的な供給を確保していくことは、国の最も基本的な責務でございます。政府としては、平成二十七年度に食料自給率を四五%とする目標の達成のためには米の消費拡大が重要であると考えておりまして、食品企業やスーパーとも連携した国民運動として、めざましごはんキャンペーンを展開するとともに、農商工連携の強化や食育、地産地消の全国展開など、消費、生産両面からの取組を重点的に行ってまいります。是非この運動に御参加をいただきたいと思います。  経営所得安定対策に関する予算規模等を説明せよというお求めがございました。  政府政策については、既に提出している予算を計上し、予算及び財政投融資計画の説明に詳細が明らかになっておりますので、まずはそちらを御覧いただきたいと思います。  その上で経営所得安定対策の予算を申し上げれば、関連対策を含め、総額二千三百九十二億円を計上しております。その財源は、一般会計のほか、外国産麦の売買差益等でございます。対策の内容としては、意欲ある担い手や小規模、高齢の農家が参加する集落営農を支援するものとして、生産条件の不利を補正する対策、収入減少の影響を緩和する対策、集落営農の経営改善等を促進する対策等でございまして、農林水産省のホームページに示しているとおりでございます。  公共事業についてのお尋ねがございました。  平成二十年度公共事業予算案では、三%削減を継続しつつ、地域国民の視点に立ち、地域の自立、活性化、安全、安心の確保等の課題にこたえるため、事業のめり張り付けを強化し、重点化、効率化を徹底してまいります。また、公共事業のコスト縮減を図るとともに、社会資本の長寿命化を進め、ストックの有効活用を積極的に進めることといたしております。  御指摘をいただいた社会資本の老朽化はこれからますます進み、例えば橋梁の維持修繕などがより大事になってまいります。したがって、そのために必要な道路特定財源の現行税率を維持することがどうしても必要であります。  公共事業中止後の生活再建についてお尋ねがございました。  公共事業中止後の地元住民の状況は事業ごとに多様ですので、事業者、地元自治体等が連携して必要な対応を個別具体的に検討する必要がございます。このため、事業ごとに住民の方々の御意向等をよく伺い、事業者、地元自治体等が協議して、各主体が役割分担の上で、下水道や公園整備など実施可能なことの実現に努めてまいります。  次に、八ツ場ダムを建設する理由についてお尋ねがございました。  八ツ場ダムは、流域の五百万人近くの住民の方々の生命等を守る治水対策と、一都四県への安定的な水供給の両面から必要な事業として推進してまいりました。このため、コスト縮減、環境保全、安全への十分な配慮が行われた上で、関係自治体のできるだけ早期の完成要望を踏まえた着実な事業推進が求められていると理解しております。  議員から福田ダムというお言葉がございましたけれども、このような言葉を私は生まれて初めて伺いました。どこからそういうようなお言葉言葉を見付けてきたのか。余り造語はなさらぬようにしていただきたいと思います。  間伐等の森林の整備についてのお尋ねがございました。  森林整備については、森林吸収源対策としてだけでなく、森林の有する国土の保全等の公益的機能を十分に発揮させるために不可欠なものであり、造林、間伐や路網整備等を行ってきたところでございます。特に、温室効果ガス削減目標を達成することは喫緊の課題でありまして、平成二十年度においては、平成十九年度補正予算も合わせて総額五百四十六億円の追加的な予算を計上し、目標達成に努めているところでございます。  次に、子育て介護の人材確保に関するお尋ねがございました。  保育士やホームヘルパーなど、子育て介護分野で働く人材には女性の占める割合が高いことから、性別を問わず、その能力を一層発揮できる雇用環境整備に取り組むことが重要であると認識しております。このため、労働時間の短縮、職場内保育の充実、正規労働者への転換の推進に取り組むことにより、男女を問わず、やりがいを持って働くことができる環境づくりを進め、子育て介護の人材の確保を図ってまいります。  子育て支援についてのお尋ねがございました。  子育て支援については、働き方の改革による仕事生活の調和の実現と、保育など子育て支援サービスの基盤の整備の双方を車の両輪として進めていくことが重要と考えております。このため、ワーク・ライフ・バランス憲章の行動指針において初めて労使が合意して具体的に示された残業削減等の数値目標の達成や育児休業制度の拡充などを図るほか、保育サービスの質と量の充実に向けた新待機児童ゼロ作戦を展開してまいります。  また、母子家庭に対する支援については、子育て生活支援策、就業支援策、経済的支援策などの総合的な支援を進めてまいります。特に就業支援策を強化し、ハローワーク、自治体を通じたきめ細かな施策を充実してまいります。  介護・福祉人材のワーク・ライフ・バランスの実現に関するお尋ねがございました。  保育士やホームヘルパーなどの介護・福祉人材の安定的な確保のためには、御指摘のように、仕事生活の調和が図られるような職場環境の実現や、正規労働者と非正規労働者の格差の是正などが重要であると考えております。こうした取組については、さきも述べましたことでありますが、介護・福祉分野で働く人々がやりがいを持って働くことができる環境づくりを進め、人材の確保を図ってまいります。  地方への補助金の見直しについてのお尋ねがございました。  地方分権を進める上で、補助金を見直すとともに、地方税等の財源を充実することは重要な課題であると認識をいたしております。このため、政府としては、現在、国と地方の役割分担や国の関与の在り方の見直しを行うとともに、補助金、交付税、税源配分の見直しの一体的な検討を進めてきておるところでございます。  次に、バリ会議の成果についてお尋ねがございました。  我が国は、すべての主要排出国の参加する実効性のある枠組みを構築することが何よりも重要との観点から、さきのバリ会議ではそうした枠組みの構築のための交渉の場を立ち上げることを最重要課題として対応いたしました。我が国は、具体的な決定案を早い段階で提案するなど積極的に貢献した結果、日本提案におおむね沿った形でバリの行動計画が採択をされた次第であります。二〇〇九年の合意を目指し、すべての国が参加して二〇一三年以降の枠組み等を交渉する場の立ち上げに合意できたということは大きな成果であったと考えております。  地球温暖化対策における国内での取組状況についてのお尋ねがございました。  我が国では、京都議定書が発効した二〇〇五年に約六十項目に及ぶ対策を含む京都議定書目標達成計画を策定し、地球温暖化対策は前進しておりますが、既存の計画による対策のみでは六%削減目標の達成は極めて厳しい見通しであります。そのため、地球温暖化対策推進本部において関係省庁が密接に連携し、今年度中に京都議定書の目標達成計画を改定し、約束したとおり、二〇一二年までの間に目標を達成してまいります。産業界の更なる努力に加えて、温室効果ガスの排出量が増大している民生部門も含めたあらゆる分野において、既存対策の着実な推進だけではなく、法制度の拡充等を通じた対策の強化など、必要な追加対策を国民の協力も得ながら強力に推し進めてまいりたいと思います。  ダボス会議への出席と数値目標の設定を含む発言の予定についてお尋ねがございました。  ダボス会議については出席する方向で検討中であります。G8議長国として、北海道洞爺湖サミットやTICADⅣに向けた我が国考え方を表明する所存であります。  地球温暖化問題の解決には、世界全体としての排出削減を実現するような実効性のある枠組みを構築することが何よりも重要であります。このことを念頭に、いかなる対応を取るべきか検討中であります。その検討の中で、我が国としても、温室効果ガス排出削減についてどのような国別の目標をどのような手法によって設定すべきか、多様な選択肢を含め真剣な議論を行っているところであります。本年のサミット議長国として、関係国の議論を取りまとめ、枠組み構築のリーダーシップを取るという立場で臨んでまいります。  我が国の中長期的な地球温暖化対策についてお尋ねがございました。  地球温暖化問題の解決に向け、我が国は美しい星50を提言し、二〇五〇年までに世界全体で半減させるという長期目標や二〇一三年以降の新たな枠組みを設計するための三原則を提唱してきました。現在、美しい星50を具体化し、我が国自身の行動や世界に向けての提案を表明する方向で検討しているところであります。  また、御提案の国内排出量取引制度については、他の手法との比較やその効果産業活動国民経済に与える影響、国際的な動向等の幅広い論点について総合的に検討してまいります。  再生可能エネルギーについては、更なる技術開発や設備導入支援などを通じまして導入拡大に向けた取組を加速していく必要があると認識しております。  障害者の権利に関する条約についてお尋ねがございました。  政府としては、本条約の意義を十分に踏まえ、今後可能な限り早期の締結を目指して、訳文の作成を含め、国連における議論を十分に踏まえて必要な検討を行ってまいります。障害による差別禁止については平成十六年の障害者基本法の改正において明示されておりますが、差別禁止法制の在り方に関しては条約の締結に向けて必要な準備を行う中で慎重に検討してまいります。  次に、障害者自立支援法についてのお尋ねがございました。  民主党が提出された法案については利用者負担について旧法と現行法の考え方を併存させておりまして、負担考え方が整合的かどうか、市町村等の事務が無理なく行えるかどうかなどの課題があると考えております。なお、法案の審議の進め方については国会がお決めになることであり、私から申し上げることは差し控えます。  また、障害者自立支援法の利用者負担については、既にきめ細かな軽減措置を講じているところでございますけれども、与党における検討結果も踏まえ、来年度において低所得者を中心とした更なる軽減等の緊急措置を講ずることといたしております。  残余の質問は関係大臣から答弁をさせます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣若林正俊君登壇拍手
  19. 若林正俊

    国務大臣(若林正俊君) 大河原議員の御質問にお答えをいたします。  まず、食料自給率の向上についてのお尋ねでありますが、総理がお答えしたとおり、目標の達成に向けて危機感を持って取組を一層推進する必要があるものと認識いたしております。このため、これまでの取組を点検、検証しつつ施策の推進に最大限の努力を行っていくこととしており、特に自給率に影響の大きい米、飼料作物、油脂、野菜の重点品目については、集中的に消費、生産の両面での取組を強化してまいります。  具体的な取組としては、食料自給率に関する戦略的な広報活動、米の消費拡大、飼料自給率の向上、油脂類の過剰摂取の抑制など、野菜の生産の拡大食育の一層の推進、この六つの取組を中心に、消費者、生産者、食品産業事業者などの関係者との連携を図りながら着実に施策を推進してまいりたいと考えております。  次に、森林、林業についてのお尋ねでありますが、地球温暖化防止、国土の保全等の公益的機能を有している森林を緑の社会資本として位置付け適切に整備していくために、緑の雇用対策などによる担い手の確保、市場のニーズに対応した木材製品の安定供給体制の整備などを進めながら国産材の利用拡大を軸とした林業、木材産業の再生を図り山村地域活性化していくことが重要であると考えております。  平成二十年度における間伐などの森林整備に向けては、森林吸収源対策として、平成十九年度補正と合わせて総額五百四十六億円の追加的な予算を計上したところであります。その確実な実施を図るためにも、政府一体となって間伐の遅れの解消等を目標とする美しい森林づくり推進国民運動に取り組むなど、国民各層の理解と協力を得つつ森林の整備推進してまいる所存でございます。(拍手)    〔国務大臣冬柴鐵三君登壇拍手
  20. 冬柴鐵三

    国務大臣(冬柴鐵三君) 大河原議員にお答えいたします。  公共事業についてお尋ねがございました。  国際競争の激化や少子高齢化の進展、さらには大地震や台風等の頻発する自然災害等に対し国土交通省としてもしっかりと対応していかなければならないものと考えております。  このため、平成二十年度の公共事業関係予算では、財政健全化に向けた厳しい歳出抑制の中ではありますが、一つ、大都市圏、地域の拠点的な空港、港湾や国際物流に対応した幹線道路網の整備等による国際競争力の強化や、中心市街地の活性化や民間の創意工夫を生かした町づくりの推進等による地域活性化に重点的に取り組んでまいります。  また、二つとして、住宅の寿命を延ばす二百年住宅の推進や、公共交通機関、町づくりにおけるバリアフリー化の推進等の地球環境問題と少子高齢化への対応、三つ、道路橋梁の予防保全対策の充実強化等の国民の安全、安心の確保といった分野における事業、施策を重点的に推進してまいります。  二点目に、八ツ場ダムを建設する理由についてお尋ねがございました。  八ツ場ダムは、一都五県、約四百八十万人の住民の方々の生命、財産を守る治水対策上極めて重要な施設であり、また、一都四県の水需要にこたえるとともに、河川流量が豊かなときには取水できますが、河川流量が少なくなると原則として最初に取水できなくなるような不安定な取水を解消し、安定的な水供給を確保するために、利水上必要な施設でございます。  利根川水系においては、平成八年の渇水を始め、平成になって以降十九年間で取水制限等を余儀なくされた年は五年もあります。社会経済活動に影響を及ぼしています。また、近年の少雨傾向によるダムの水資源開発施設の供給能力は低下しているのが現状でもございます。このため、八ツ場ダムに参画している利水者は、合計毎秒約二十二立方メートル、日量にして約百九十万立方メートルの水道用水及び工業用水を八ツ場ダムから得ることを表明しているのでございます。  一方、地すべり対策につきましては、専門家の指導をいただきながら、地形や地質などを十分に調査し、対策が必要とされる場所については、押さえ盛土等を実施することにより安全性を確保することといたしております。  八ツ場ダムについては、関係都県と密接な連携を図りつつ、地元住民の方々の意向を十分に踏まえた生活再建対策を鋭意進めるとともに、コスト縮減や情報公開等にも努め、また環境保全にも十分配慮しつつ、できるだけ早期に完成できるよう着実に事業を進めてまいりたいと考えております。  森林の保水力についてのお尋ねがございました。  我が国は国土の約七〇%が森林であるという世界有数の森林大国であり、森林には地球環境保全機能、保健、レクリエーション機能その他様々な機能があり、森林保全は重要で、適切に保全すべきものと認識をいたしております。  しかしながら、平成十三年に発表された日本学術会議の答申でも指摘されているように、森林には、一つ、治水上問題となる大雨が降った場合、森林の土壌は既に飽和状態となっており、降った雨のほとんどが河川に流出する状態となることから、大洪水においては顕著な効果は期待できないこと、一方で、二つ目、利水上問題となるような渇水時、すなわち雨が降らない日が長く続いた場合には、森林の蒸発散作用により森林自身がかなりの水を消費するため、河川の流量がかえって減少する場合があるといった評価がなされているのでございます。  よって、人々の様々な社会生活が営まれており、世界有数の森林大国でありながら毎年のように洪水、渇水の被害を受けている日本の国土の現状におきましては、森林のみでは洪水や渇水を防ぐことには無理があります。したがって、森林の保全と併せて、今後とも必要なダムの整備を図っていくことが不可欠であると考えております。(拍手)    〔国務大臣舛添要一君登壇拍手
  21. 舛添要一

    国務大臣(舛添要一君) 大河原雅子議員にお答えいたします。  まず、子育て介護の分野での人材確保の問題です。  これらの分野で働く方々につきましては、女性の占める割合が高いことから、性別を問わずその能力を一層発揮できる雇用環境整備や、仕事と家庭の両立の推進に取り組むことが重要であると考えております。そのため、短時間労働者の正規労働者への転換の推進や、労働時間の短縮、職場内保育の充実、キャリアアップの仕組みの構築など、雇用環境の改善に取り組んでまいります。  次に、子育て支援、一人親家庭の支援についてお尋ねがございましたが、子育て支援につきましては、先ほど総理からお答えいたしました仕事生活の調和の実現や、新待機児童ゼロ作戦の展開に加え、次世代育成支援策の再構築に向けた検討に鋭意取り組んでまいりたいと思います。また、母子家庭の母などに対する支援につきましても、総理がお答えいたしましたとおり、就業支援策の充実を始め、自立と生活向上に向けた総合的な支援を進めてまいります。  次に、介護・福祉人材のワーク・ライフ・バランスの実現に関して問いがありましたけれども、これも総理から御答弁いたしましたとおり、仕事生活の調和、ワーク・ライフ・バランス憲章の行動指針で示された残業削減などの数値目標の達成や育児休業制度の拡充など、働き方の改革を進めるほか、改正パートタイム労働法に基づき、正規労働者との均衡待遇の確保などに取り組むことにより、介護・福祉サービスに携わる方々がやりがいを持って働くことができる環境づくりを推進し、介護・福祉人材の確保を図ってまいります。  次に、障害者権利条約、障害者差別禁止法の問題であります。  障害者権利条約は、国際社会における障害者の権利の保護と促進を達成していく上で非常に重要なものであると考えておりますが、厚生労働省といたしましても、外務省等関係省庁と十分に連携を図りながら締結に向けた対応を検討してまいります。  また、障害による差別の禁止につきましては、平成十六年の障害者基本法の改正により、法の基本的理念等に明示されたと承知しておりますが、お尋ねの差別禁止法制の在り方に関しては、今後、条約の締結に向けて必要な検討を行う中で、関係省庁と連携しながら慎重に検討してまいりたいと思います。  最後に、障害者の所得保障についてでございますが、障害者の所得の確保に係る施策の在り方につきましては、昨年末に取りまとめられました与党障害者自立支援に関するプロジェクトチーム報告書において、障害者の所得の確保に係る施策の在り方については、就労の支援を含め、幅広い観点から検討を行うこと、社会保障制度全般や一般的見直しに関する議論との整合性や財源の確保を図った上で、障害者基礎年金の引上げや住宅手当の創設についても検討を行うことなどの御提言をいただきました。  これらの提言につきましては、今後、幅広く検討を進めるとともに、来年度予算案に計上した諸事業の活用も図りながら、一般就労への移行促進や工賃倍増五か年計画の取組を進めてまいります。(拍手)    〔国務大臣増田寛也君登壇拍手
  22. 増田寛也

    国務大臣(増田寛也君) 大河原議員から新分権一括法案についてのお尋ねがございました。  御指摘の発言は、地方再生、地域活性化を進めていくためにも地方分権改革をスピード感を持って進めていくことが必要でございまして、政府として取組を加速する必要があるとの趣旨で申し上げました。  政府では、今春以降、順次出される地方分権改革推進委員会の勧告を受けまして、地方分権改革推進計画を策定をして、新分権一括法案平成二十一年度中、できるだけ速やかに国会に提出をすることとしております。したがいまして、同計画の策定につきましても前倒しの努力をしてまいります。  現在、この分権委員会におきましては、国と地方の役割分担を徹底して見直し、地方自治体に対する国の法令による義務付け、枠付け及び国の関与の見直しや地方税財政基盤の確立に向けた国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含めた税源配分の一体的な改革、そして地方支分部局の抜本改革などについて精力的に検討しているところでございます。こうした地方分権改革を具体的に実現をしていくものがまさにこの新分権一括法案であると、このように考えております。  地方が自ら考え実行できる真の分権型社会の実現に向けまして、私は昨年まで地方自治の現場仕事をしてまいりましたが、今後担当大臣として最大限の努力をしてまいる考えでございます。(拍手)     ─────────────
  23. 江田五月

    議長江田五月君) 市田忠義君。    〔市田忠義君登壇拍手
  24. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党を代表して、福田総理質問をいたします。  今、日本の経済は大きな岐路に立っています。  自民、公明の歴代政権はこれまで、大企業のリストラを容認し、労働法制の規制緩和を推し進めて低賃金の非正規雇用を拡大し、大企業、大資産家のもうけをひたすら保障してきました。その上、この間、大企業、大資産家への七兆円もの行き過ぎた減税を進め、足りなくなった歳入を庶民増税と負担増、社会保障の切捨てに求めてきたのであります。その結果、確かに大企業の利益は一九九七年と比べて二・二倍になりました。しかし、それは国民には波及しませんでした。この事実は政府も認めざるを得ませんでした。労働者の賃金は連続的に減り続け、家計が消費や貯金に回せるお金、いわゆる可処分所得はその間におよそ一割、二十四兆円も減ったのであります。  そして、これは日本全体の従業員の七割を占める中小企業を直撃しました。昨年の中小企業の倒産件数は、前年と比べて一七・二%も増えました。しかも、その七七%が不況型倒産であります。とりわけ国民の懐と直結する飲食業や小売業などが直撃を受け、町場ではシャッター通りどころか焼け野原だという怨嗟の声があふれています。それに加えて、原油と穀物価格の高騰が打撃を与えています。  今こそ、大企業、大資産家本位、輸出頼みの経済政策から、国民中小企業を応援し、家計に軸足を移すことこそ、国民にとっても日本経済のまともな発展のためにも不可欠ではありませんか。  そのためには何が必要か。  第一に、政府の決断で直ちに国民の懐を暖めること。具体的には、障害者自立支援法による障害を持つ人たち負担を元に戻すこと、高過ぎる国保料を引き下げること、そして七十五歳以上のお年寄りに差別医療と新たな負担を強いる後期高齢者医療制度を撤回することであり、これらの負担をつくり出す仕掛けともなっている社会保障費の毎年二千二百億円の削減をやめることであります。  第二は、大量の非正規雇用を生み出すもととなった労働法制の規制緩和、とりわけ労働者派遣法の抜本的な見直しを行うことであります。派遣してはならないところに労働者を派遣したり、労働者の又貸しである二重派遣など、違法派遣を繰り返していたグッドウィルが厚生労働省から業務停止命令を受けました。遅きに失したとはいえ、これは当然であります。しかし、そのことによって最大の犠牲を被っているのが違法状態の中で働かされてきた労働者、その多くが二十代、三十代の若い人々であります。何の責任もない青年たちが職を失い、路頭に迷うようなことは絶対にあってはなりません。違法派遣と知りながら派遣労働者を使っていた受入先の企業に直接雇用させるなど、政府は雇用の確保に力を尽くすべきであります。  総理は、労働者派遣制度の見直しに言及されました。それなら、単なる適正化ではなく、少なくとも人間を物扱いにする日雇派遣は直ちに禁止すべきではありませんか。さらに、登録型派遣を厳しく制限することを始め、労働者派遣法を派遣労働者保護法に抜本改正することを求めるものであります。  第三は、最低賃金の引上げであります。生計費原則に基づき、時給一千円への引上げを決断すべきであります。  第四は、中小企業への支援であります。当面の緊急対策として、原油高に伴う原材料費、燃料費の上昇分を中小、下請、物流業者に一方的に押し付けることのないよう、大手商社など大企業を強力に指導するよう求めます。また、中小企業に働く労働者の賃金を引き上げるためにも、最低工賃を引き上げ、下請代金を時給千円の最低賃金を保障できる水準に定めるべきであります。これらを全体として保障し、中小企業を応援するために、今ある下請振興基準を実効あるものにするとともに、下請二法の抜本拡充を求めるものであります。  次に、国民の命と健康を脅かす医療崩壊ともいうべき重大な事態の進行についてであります。  病院から次々と医師がいなくなり、病棟の休止や病院自体が閉院に追い込まれる事態が各地で広がっています。日本産科婦人科学会の調査によると、出産のできる病院、診療所は二〇〇二年には六千三百九十八か所だったのが、二〇〇六年には三千六十三か所と半分以下になり、地方でも都市でもお産難民が急増しています。救急医療を担う施設もこの五年間に一割減少し、救急車で運ばれた患者が搬送先を見付けられずに死亡するという悲惨な事件が続発しています。  なぜ、これほど深刻な医療崩壊が引き起こされたのか。その根本原因は、医療費抑制のために医学部定員の削減を閣議決定までして医師の養成数を減らしてきた政府の失政にあります。現在、日本医療機関で働く医師の数は二十六万人、OECD加盟国の平均と比べて十四万人も足りないのです。そのため、病院に勤務する医師は週平均七十時間から八十時間もの長時間労働、しかもその大半を患者の命と直面するという極度の緊張を強いられ、疲弊した勤務医のリタイアで更に医師が不足する事態が広がっているのです。  ところが、政府はいまだに、医師基本的に足りている、問題は医師の偏在と言い続けています。一体、どこに医師が余っている都道府県があるというのか、具体的に答えていただきたい。  医学部定員の削減を決めた閣議決定を見直し、抜本的な医師増員に踏み出すべきと考えますが、いかがですか。  医療崩壊がこれだけ深刻化している中にあって、政府は公立病院の統合、廃止、縮小を更に大規模に進めようとしています。  総理は、道路特定財源を維持する理由の一つに救急病院への交通の利便性の確保を挙げました。巨額の金を投じて道路を造っても、行った先には病院がなくなっているというのがあなたの政治ではありませんか。病院を立ち行かなくし、あちこちで病院の閉鎖を余儀なくさせておいて、道路病院を結ぼうというほど本末転倒の政策はありません。  公立病院や診療科を減らす計画を自治体に押し付けるのはやめて、国と自治体が地域医療を守る責任を果たし、国立病院、公立病院が産科、小児科、救急医療などを守る先頭に立つよう改めるべきではありませんか。  最後に、地球温暖化対策についてであります。  国連の潘事務総長は、IPCCの総会で、世界の科学者の知見を集めた国連IPCCの業績をたたえつつ、科学者は仕事をした、今度は政治指導者たち自分たち仕事をする番だ、今行動を起こさなければ重大な危機に直面する、また、ビジネスには基本ルールが必要だとも述べました。総理は、この国連事務総長の発言をどのように受け止められておられますか。  日本は京都議定書で約束した温暖化ガスの一九九〇年比六%の削減どころか、逆に六・四%も増えています。最近発表された世界銀行の調査では、日本温暖化対策の進捗状況は先進国中最下位にランクされました。京都の名が泣いているとは思いませんか。  最大の問題は何か。もちろん、家庭や個人の努力、国民的な運動も必要であります。しかし、日本のCO2排出量の八割を占めているのは企業・公共部門なのであります。この部門を日本経団連の自主行動計画任せにしておいたことが、削減どころか排出増の結果をもたらしたのであります。今こそ、政治のイニシアチブの発揮が求められています。  ヨーロッパなどで既に実行されている、政府と経済界との間で削減協定を締結するなど、企業社会的責任を果たさせるルールを確立することが不可欠であります。ヨーロッパにできて日本にできない理由は何ですか。端的にお答えください。  また、現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入を検討すべきだと考えますが、総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  25. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) 市田議員にお答え申し上げます。  国民中小企業を応援する政策転換についてのお尋ねがございました。  景気が長い回復が続く中で、足下では賃金が伸びず、家計への波及が遅れております。景気回復の果実が家計に十分波及し、国民が景気回復を実感できるよう、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正、日雇派遣の適正化等の労働派遣制度の見直しなどの施策に積極的に取り組んで、全員参加の経済戦略を展開してまいります。  そのために、従来型の同業種間の縦つながり、縦のつながりに加えて、企業規模や業種をまたいで横断的に協力し合うつながり力を更に強化して、地域経済の活力の復活や中小企業の生産性の向上に取り組んでまいります。  具体的には、地域連携拠点を全国に二百から三百か所整備し、ITを徹底して活用し、経験豊富な大企業の退職者や中小企業、農業、大学が相互に連携して新たな商品やサービスを生み出す取組支援してまいります。また、中小企業事業承継を円滑にするための税制の抜本的見直しを行うことといたしております。これらを始めとする取組により、中小企業などの底力を引き出し、活力ある経済社会を構築してまいります。  障害者自立支援法の利用者負担についてのお尋ねがございました。  御指摘の利用者負担については、既にきめ細やかな軽減措置を講じているところでございますが、与党における検討結果も踏まえ、来年度において低所得者を中心とした更なる軽減等の緊急措置を講じることといたしております。  次に、国民健康保険についてのお尋ねがございました。  国民健康保険は、住民の相互扶助により成り立つ社会保険制度でありまして、すべての被保険者に公平に保険料を負担していただくのが制度存立の前提であります。保険料の賦課に当たっては、低所得の方々については保険料を軽減するとともに、保険料を賦課した後に失業など保険料を納めることができない特別な事情が生じた場合には減免等を行うというきめ細やかな配慮を行っているところでございます。  後期高齢者医療制度についてお尋ねがございました。  七十五歳以上を対象とする後期高齢者医療制度は、今後、高齢化に伴う医療費の増大が見込まれる中で、現役世代と高齢者負担の公平化を図るとともに、後期高齢者の心身の特性にふさわしい医療を提供することを目的として、平成十八年の医療制度改革において創設することとしたものでございまして、本制度の理念や方向性は適切なものと考えております。  一方で、高齢者方々の立場に立ったきめ細やかな対応に努める必要があると考えておりまして、与党プロジェクトチームにおける検討結果を踏まえまして、保険料についての激変緩和措置を講じ、制度を円滑に実施してまいります。  社会保障費の抑制についてお尋ねがございました。  本格的な人口減少社会が到来する中で、次世代に負担を先送りすることのないよう、二〇一一年度には国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するなど、引き続き歳出全般にわたる抑制努力を行っていくことが必要であります。特に社会保障については、高齢化の進展等に伴い、経済の伸びを上回って増大していくことが見込まれております。社会保障の国民の暮らしを支えるセーフティーネットとしての役割の重要性は十分認識しておりまして、こうした認識に立ちつつ、その持続可能性を確保していくために、給付の合理化、効率化にも引き続き取り組んでいく必要があると考えております。  グッドウィルの派遣労働者の雇用の確保についてお尋ねがございました。  グッドウィルに対しては、事業停止命令に併せて、雇用の安定を図るための措置を講ずることも命令しておりまして、具体的には、派遣先を含む他の事業主への雇用のあっせん等を積極的に行うように指示しております。また、同社の派遣労働者に対しては、都道府県労働局において個別の相談に応じる体制を整えるとともに、ハローワークにおいて個々の労働者のニーズに応じたきめ細やかな職業紹介を行うことなどを内容とする雇用対策を全国で実施しているところであります。  労働者派遣制度についてのお尋ねがございました。  御指摘の日雇派遣や登録型派遣については、労働者の側でも一定のニーズがある反面、不安定な働き方でございまして、これを見直すべきとの意見など様々な議論があると認識しております。このため、労働者派遣制度については、まずは日雇派遣の適正化などのためのガイドラインを早急に策定するとともに、登録型派遣の在り方など制度の根幹にかかわる問題について、厚生労働省に研究会を設け、検討を進めてまいります。  最低賃金の引上げについてのお尋ねがございました。  最低賃金については、さきの国会で成立した改正最低賃金法に基づいて、生活保護との整合性にも配慮しつつ、あわせて成長力底上げ戦略推進円卓会議において中長期的な引上げ方針について政労使の合意形成を図り、引上げに取り組んでまいります。  なお、御指摘のような水準に最低賃金を大幅に引き上げることについては、中小企業を中心として事業経営が圧迫される結果、かえって雇用が失われるおそれがあることも考慮しなければなりません。  原油高に伴う中小企業支援についてのお尋ねがございました。  原油価格の高騰については、コストの増加を価格に転嫁することが難しい中小企業の割合が九割に迫るという調査結果もあることなどから、中小企業の経営に大きな影響を与えているものであると認識をいたしております。  こうした状況の下で、コスト増の転嫁を不当に妨げる買いたたき等の違反行為を防止するために、下請代金法に基づく検査を積極的に行うなど同法の厳格な運用に努めるとともに、下請代金の決め方などについても下請事業者に配慮するよう商社、運輸会社等の関係団体に対して要請を行うなど、下請中小企業対策に万全を期しているところでございます。  中小企業に働く労働者の賃金についてのお尋ねがございました。  最低賃金についてはさきにお答えしたとおりで、改正最低賃金法に基づき、生活保護との整合性にも配慮しつつ、あわせて成長力底上げ戦略推進円卓会議における政労使の合意形成を図り、引上げに取り組んでまいります。なお、自宅などで委託を受けて物品の製造、加工等を行う家内労働者の最低工賃についても、最低賃金との均衡などを考慮しつつ適切に見直してまいります。  また、下請代金の額については、下請振興法に基づく振興基準において、労務費等の要素も考慮しつつ、下請事業者と親事業者とが協議して決められるべきものとされております。この基準の周知徹底に努めてまいりたいと思います。  いわゆる下請二法についてのお尋ねがございました。  大企業中小企業の調和の取れた成長を実現するため、下請取引の適正化は極めて重要な政策課題であると認識をいたしております。  お尋ねの下請二法については、製造業に加えてサービス業を対象にするとともに、下請代金法の勧告の際に事業者名の公表ができるようにするなど、平成十五年に抜本的な改正がなされておりまして、両法の適正な運用に努めてきておるところでございます。特に最近においては、中小企業をめぐる厳しい状況を踏まえて、下請代金法の厳格な運用や下請振興法に基づく振興基準の周知などに徹底して取り組んできております。今後とも、各都道府県に下請取引の駆け込み寺を整備するなど、下請中小企業対策を着実に推進してまいります。  次に、医師不足の現状、医学部定員についてのお尋ねがございました。  全国的に、産婦人科、小児科などの診療科については医師不足問題が深刻になっておりまして、地域に必要な医師を確保していくことは喫緊の課題と認識しております。このため、昨年五月末に取りまとめました緊急医師確保対策に基づいて、来年度予算案において医師確保対策の推進のための予算を大幅に増額し、小児科、産科を始めとする病院勤務医の働きやすい職場環境整備などの対策を盛り込むとともに、本年四月の診療報酬改定において病院勤務医の負担軽減や産科、小児科等の重点的な評価を行うことといたしております。さらに、医学部の定員についても、医師不足地域や診療科の医師を確保するために増やすことといたしております。  地域医療についてのお尋ねがございました。  地域医療の確保につきましては、平成十八年の医療法改正におきまして医療計画制度の見直しを行い、各都道府県において救急医療、小児科医療等について医療機関の機能に応じた役割分担と連携による医療提供体制の構築を図ることとしたところであります。今後は、それぞれの地域の実情を踏まえて策定される医療計画に基づき、国公立病院や民間病院等が適切に役割を分担し、連携しながら地域医療を担っていただくことが必要と考えておりまして、国としても引き続き、国民が安心できる医療提供体制の確保に向け、都道府県の取組支援してまいりたいと思います。  地球温暖化対策に関する潘国連事務総長の発言についてお尋ねがございました。  IPCCは、気候変動に関する最新の科学的な知見に基づき各国政府情報を提供することによりまして、気候変動対策についての国際的な議論に大きく貢献しております。昨年末のIPCCのノーベル平和賞受賞は、その貢献が世界に広く認められたことを示しております。潘事務総長の発言は、このようなIPCCの業績を評価し、国際社会地球温暖化防止に向けて更なる努力を行うことを呼びかけたものと考えております。  本年G8議長国である我が国としては、こうしたIPCCの科学的知見も踏まえ、主要排出国すべてが参加する実効性のある二〇一三年以降の枠組みづくりに向けて国際的な議論を主導してまいります。  京都議定書の六%削減目標の達成に向けた認識についてのお尋ねでございますが、御指摘のあった世界銀行の調査は、一九九四年から十年間の各国の二酸化炭素排出量につきまして増減の傾向を評価したものでございまして、絶対量評価ではありません。そのために、この調査におきましては、一位がウクライナであり、二位はルーマニアでございます。そういう東欧諸国が高い評価を受けたという、そういう結果になっております。  我が国は、省エネ、新エネ技術や公共交通機関の利用率など世界的に優れた点を有しておりまして、他の先進国と比べ劣っているとは考えておりません。他方、京都議定書目標達成計画による対策のみでは京都議定書の六%削減目標の達成は極めて厳しい見通しでございまして、今年度中に目標達成計画を改定し、六%削減目標を確実に達成してまいります。  具体的には、産業界の更なる努力に加えて、温室効果ガスの排出量が増大している民生部門を含めたあらゆる分野において、既存対策の着実な推進だけでなく、法制度の拡充等を通じた対策の強化など、必要な追加対策を国民の協力も得ながら強力に推進してまいります。  企業温室効果ガス削減についてのお尋ねがございました。  現行の京都議定書目標達成計画において、自主行動計画は産業エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすものであると位置付けられております。また、透明性、信頼性、目標達成の蓋然性が向上されるよう、政府の関係審議会等において定期的にフォローアップを行っているところであります。目標達成計画の見直しに当たり、自主行動計画の拡大強化を働きかけてまいりましたが、目標の引上げやこれまで計画を策定していなかった業種における新規策定、数値目標を設定していなかった業種における目標の定量化等の促進が進められております。  このように、自主行動計画における効果が着実に上がっている中で、計画を公的協定とすることは現時点では考えておりませんが、今後も産業界の更なる努力を促すなど、六%削減目標の確実な達成のために、あらゆる部門における対策の一層の強化を進めてまいります。  環境税についてお尋ねがございました。  地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民事業者などの理解と協力を得るよう努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると考えております。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  26. 江田五月

    議長江田五月君) 福島みずほ君。    〔福島みずほ君登壇拍手
  27. 福島みずほ

    ○福島みずほ君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、福田政権に対して質問をいたします。  まず、命の問題に政治家として取り組んできた、尊敬する山本孝史さんの御冥福を心からお祈り申し上げます。  社民党は、今国会を命を守る国会と名付けます。命を守るため、特に税制、地方、医療、雇用の問題の政策転換を全力でやっていきます。  社民党は、七年前から、新自由主義、規制緩和である小泉構造改革に対して、改革の方向が間違っている、国民生活と命が破壊されると批判をしてきました。結果は、まさにそのとおりになりました。改革は偽装でした。  私は、去年、特に地方を回りました。自治体財政の逼迫、三位ばらばら改悪の失敗、雇用の場がない、学校病院の統廃合、病院がなくなる、医師がいなくなる、道路があってもそこに走るバスに補助金が出せない、農林水産業の切捨てで山や田が荒れるということが起きています。命の悲鳴が上がっています。これは、まさに自民党政治の結果です。  総理施政方針演説には、国民の痛みや悲鳴の原因を直視し、解決をしていくという処方せんはありません。まさに政治の責任の放棄です。今必要なことは、格差と貧困をまさに生み出し、地方を疲弊させてきた法制度を変えることです。三位ばらばら改悪は失敗だったとお考えになりますか。  地域の疲弊の中でも、特に中小企業は疲弊をしています。日本企業数のうち九九・七%が中小企業で、雇用者の七〇%が中小企業で働いているのに、中小企業対策予算は一般歳出の〇・三五%にすぎません。総理中小企業への支援予算を増やすべきではないですか。  次に、社会保障費の削減についてお聞きをします。  政府・与党は、暫定税率をこれから十年間維持し、五十九兆円を聖域として確保しようとしながら、人々の命に直結する社会保障費については、二〇〇二年以降、十年間に毎年自動的に二千二百億円を削減していく方針を堅持をしています。政治の優先順位が間違っています。総理社会保障費を自動的に毎年二千二百億円ずつ削減することはもうやめると明言をしてください。  また、この二千二百億円は、日本が毎年在日米軍に払っている思いやり予算にほぼ匹敵をします。思いやりということであれば、米軍に対してではなく、まず国民に対してこそ必要ではないでしょうか。  あの経済財政諮問会議の骨太の方針二〇〇六の財政削減計画は、社会保障費の削減は示されているものの、例えば毎年三兆円もの剰余金が発生している外国為替特別会計の削減については言及されていません。また、防衛予算の具体的な削減計画は全くなされておりません。財政再建の方向が間違っていると思いますが、いかがですか。  総理、骨太の方針による財政削減計画は明らかに破綻しかかっていますが、新たな見直しは行わないのですか。  次に、医療についてお聞きをします。  医師不足、産婦人科医不足、医師の偏在は極めて深刻です。少子化対策と言いながら、子供をとても産めない状況が広がっています。自分の暮らす地域で安心してお産ができるという当たり前のことが各地から急速に失われていっています。岩手県では、遠くの病院へ行く車の中で子供を産んだという話を聞きました。命の誕生に格差が生じています。地方の実情を無視したお産施設の集約化と絶対的な産婦人科医不足を招いた責任をどう考えるのですか。特に、産婦人科医の確保や助産師さんの活用などは急務だと考えますが、いかがですか。  医師不足医師の偏在を生んだのは、まさに厚生労働省の行政の失敗だと考えますが、いかがですか。この医療崩壊を現場で働く人たちが犠牲的に何とか支えているのが現実です。  また、妊婦さんの健診も一回一万円近く掛かるため、健診を受けない妊婦さんも増加をしています。政府は、健診補助について積極的な財政手当てをし、女性を応援することが必要だと考えますが、いかがですか。  また、各地で減少している緊急医療施設はどう改善するのですか。具体的に示してください。  社民党は、自分の暮らす地域で安心してお産ができる体制の確立や緊急医療制度の改善に全力を挙げていきます。  社民党は、二〇〇六年に強行採決によって成立した医療制度改革法に反対をしました。後期高齢者医療制度は、七十五歳以上の人たちだけで健康保険制度をつくり、高齢者負担を増やすものです。高齢者は死ねということかという怒りの声が上がっています。この医療制度改革は失敗です。社民党は、後期高齢者医療制度を廃止する必要があると考えますが、いかがですか。  また、応益負担導入した障害者自立支援法は廃止する必要があると考えますが、いかがですか。  次に、格差と貧困の問題についてお聞きをします。  総理は、日本に貧困の問題はあるとお考えでしょうか。あると考えるなら、それを具体的にどう解決をしようとしているのでしょうか。  まず、不公平税制の問題があります。政府は、所得税の累進課税をどんどんフラット化してきました。社民党は、法人税と所得税の最高税率を一九九九年当時に戻すことで少なくとも二・三兆円の税収を確保できると試算しました。富裕層を優遇し、大衆課税で税収を上げようとしたことが間違っていたのではないですか。社民党は、消費税の増税ではなく、不公平税制の是正こそが必要だと考えますが、いかがですか。  今、年収が二百万円以下の人が働く人の四分の一を占めるようになりました。それは、労働者派遣法が規制緩和されたからです。製造業も含め、ほとんどの職種で派遣が可能となりました。誤った法律が非正規雇用の拡大をまさに促進をしてきたのです。だからこそ、格差や貧困の拡大の大きな原因一つである労働法制の規制緩和を見直し、派遣法を一九九九年改正以前に戻すべきだと考えますが、いかがですか。  環境の問題についてお聞きします。  社民党は、「もうひとつの洞爺湖サミット宣言・社民党」を発表する予定です。EUは、二〇二〇年までに自然エネルギー導入率を二〇%にする目標を掲げています。日本はわずか三%です。環境問題でリーダーシップを発揮すると言うならば、原子力発電所のための電源特別会計を自然エネルギー開発に振り向け、雇用も広がり、地方分権型のエネルギーである自然エネルギーを促進すべきではないですか。  社民党は、二酸化炭素も駄目だが、放射能も駄目という立場です。  去年、中越沖で耐震設計の想定をはるかに超える地震が発生し、市民が指摘していたとおり、活断層があったこと、柏崎刈羽原子力発電所の耐震設計がでたらめであったことが明らかになりました。これをどう反省するのでしょうか。  さらに、地震大国日本が大規模な地震が続く地震活動期を迎える中で、多数の原子力発電所の運転が行われている状況を根本的に考え直すべきではないですか。  男女平等と少子化対策についてお聞きをします。  現在の民法は、今を生きる女性たちの生き方にそぐわないものです。選択的夫婦別姓の導入や婚外子差別撤廃を含めた民法改正が必要だと考えますが、いかがですか。  離婚後三百日以内に生まれた子は前夫の子と推定する民法七百七十二条によって戸籍のない子供たちが少なくとも百二十七人いることが明らかになりました。民法七百七十二条の改正が急務だと考えますが、いかがですか。  社民党は、保育施設の増設、産休中や育児休暇中の所得保障の引上げ、パパクオータ制の導入教育費の無料化など、根本的な改革こそが必要と考えますが、どうですか。  平和の問題についてお聞きをします。  総理は、憲法九条違反である自衛隊海外派兵恒久法について言及されています。このような憲法違反の法律は決して許されないと考えますが、いかがですか。  また、憲法審査会において憲法改正案作りをすべきではないと考えますが、いかがですか。  暫定税率についてお聞きします。  社民党は、暫定税率を廃止すべきと考えています。その場合に、環境税を導入環境への負荷をなくすべきだと考えますが、いかがですか。さらに、地方切捨てとならないよう財源の手当てを行います。  不公平税制の是正ができないこと、労働者派遣法の規制強化ができないことなど、すべて既得権益や経済界への配慮のためではないでしょうか。自民党では利権の構造にメスを入れることができません。それは福田政権の限界であり、まさに本質です。  国民の悲鳴を聞こうともしない自民党政治を終わらせ、命と生活を守り、未来に希望が持てる社会へとつくり直すため、社民党は全力を尽くすと申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔内閣総理大臣福田康夫登壇拍手
  28. 福田康夫

    内閣総理大臣福田康夫君) まず、三位一体の改革についてお尋ねがございました。  三位一体の改革においては、地方の自主性、主体性を高めるとともに、国、地方を通じた財政の健全化を図るために補助金の廃止、縮小、税源移譲、地方歳出の見直しに伴う地方交付税総額の抑制を行ったところでありますが、結果として地方交付税の削減が急激に行われたということもありまして、特に財政力の弱い地方団体には厳しいという声もあったと認識をいたしております。  今後とも、国と地方公共団体との役割分担に応じて地方財源を充実確保する観点から、補助金、交付税、税源配分の見直しの一体的な改革に向けて検討を進めてまいります。  中小企業支援予算のことでございますが、我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力でございます。  平成二十年度予算案においては、厳しい財政状況の中で、農商工連携、地域連携拠点の整備中小企業金融の円滑化など、中小企業の将来の発展につながる重要施策に重点化を図りつつ、予算全体が厳しい中にあっても中小企業支援のための予算は二・二%増の金額を確保しました。こうした予算効果的に活用しつつ、地域に根差して懸命に汗を流している中小企業皆様に対して手を差し伸べ、後押ししていく政策をきめ細やかに展開してまいります。  社会保障費の抑制についてお尋ねがございました。  本格的な人口減少社会が到来する中で、次世代に負担を先送りすることのないように、二〇一一年度には国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するなど、引き続き歳出全般にわたる抑制努力を行っていくことが必要であります。  特に社会保障については、高齢化の進展等に伴い経済の伸びを上回って増大していくことが見込まれております。社会保障の国民の暮らしを支えるセーフティーネットとしての役割の重要性は十分認識しておりまして、こうした認識に立ちつつ、その持続可能性を確保していくために、給付の合理化、効率化にも引き続き取り組んでいく必要があると考えております。  財政再建の方向が間違っているのではないかというお尋ねがございました。  基本方針二〇〇六においては、歳出削減等と併せて、特別会計改革においても最大限の取組を行い、必要となる国民負担増をできる限り圧縮するということを明記しておりまして、平成二十年度予算編成に当たっても、外国為替資金特別会計より一・八兆円の一般会計への繰入れを行うなど、着実に実行しているところであります。  また、防衛予算につきましても、基本方針二〇〇六において、二〇一一年度までの五年間、人件費を含む国の予算について名目伸び率をゼロ以下の水準とするなど、具体的な歳出改革の内容を明記しております。  次に、財政削減計画の見直しについてのお尋ねがございました。  政府としては、基本方針二〇〇六に沿って歳出全般にわたる改革を確実に実施してきているところであります。今後とも、財政健全化に向け安定した成長を図るとともに、歳出全般にわたってこれまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、基本方針二〇〇六で示された五年間の歳出改革を着実に実施してまいります。  医師不足などについてのお尋ねがございました。  医師不足問題の背景には、大学の地域医療機関に対する医師派遣機能の低下、病院勤務医の過重労働、出産、育児等による女性医師の離職、医療に係る紛争の増加に対する懸念などの複合的な要因が様々に関係しているものと認識しております。  医師不足問題の解決に向けて、医師不足地域や診療科の医師を確保するため医学部の定員を増員する、病院勤務医の働きやすい職場環境整備などを進める、また、本年四月の診療報酬改定において医師不足が深刻な産科、小児科等の重点的な評価を行うなど、様々な対策を行ってまいります。  後期高齢者医療制度の創設などを内容とする平成十八年の医療制度改革は、今後高齢化に伴う医療費の増大が見込まれる中で、現役世代と高齢者負担の公平化を図りつつ医療制度を将来にわたり持続可能な制度とすることを目的としたものでございまして、その理念や方向性は適切なものと考えております。  一方で、高齢者方々の立場に立ったきめ細やかな対応に努める必要があると考えておりまして、与党プロジェクトチームにおける検討結果を踏まえ、保険料などについての激変緩和措置を講じ、制度を円滑に実施してまいります。  障害者自立支援法の利用者負担についてのお尋ねでございますが、御指摘の利用者負担については既にきめ細やかな軽減措置を講じているところでありますが、与党における検討結果も踏まえ、来年度において低所得者を中心とした更なる軽減等の緊急措置を講じておるところでございます。  次に、貧困の問題でございますが、国民生活の様々な局面で格差と言われる問題が生じておりまして、苦しい生活を余儀なくされている方もおられます。そういう社会状況を改善するために様々な取組を行っております。いわゆるワーキングプアといった状況については、日雇派遣の適正化等の労働者派遣制度の見直しなどを通じまして改善を図り、生活保護世帯などを対象に自立支援プログラムを一層推進するなど、国民が安心して生活できる社会を目指してまいります。  不公平税制の是正が必要とのお尋ねがありました。  近年、経済のグローバル化等に対応した税制改正も必要であったところでございまして、こうした努力もあって景気の回復や雇用の拡大等に一定の成果が上がってきたものと考えております。  他方で、我が国の家計の所得再配分において社会保障が主要な役割を果たしていることを踏まえまして、税制だけでなく社会保障も勘案した政策全体の効果考える必要があります。  今後、社会保障を持続可能な制度とするためには安定した財源を確保しなければなりません。このため、社会保障給付や少子化対策に必要な財源をあらゆる世帯が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的な改革について早期に実現を図る必要があると考えております。  労働者派遣法についてのお尋ねがございました。  これまでの労働者派遣法の改正は、経済産業構造の変化や価値観の多様化などによりまして企業と労働者の双方が多様な働き方を求めるようになってきたことから、労働者の保護に欠けることのないよう留意しながら、こうしたニーズに対応し実施してきたものであります。  労働者派遣制度については、昨今の様々な問題を考慮し、まずは日雇派遣の適正化などのためのガイドラインを早急に策定するとともに、制度の根幹にかかわる問題については、厚生労働省に研究会を設け検討を進めてまいります。  原子力と自然エネルギーの関係についてのお尋ねでございますが、原子力発電は発電過程で二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、供給安定性に優れた電源であります。また、御指摘の自然エネルギーは、地球温暖化対策に加えてエネルギー源の多様化の観点からも重要でありますが、コストや供給安定性において課題がございます。そのため、電源特別会計と石油特別会計を統合して創設されたエネルギー対策特別会計において課題解決に向けた技術開発や導入拡大のための支援措置など、既に対策を講じておるところでございますが、更に導入を加速するための方策を検討しております。  柏崎刈羽原子力発電所で想定を超える地震が発生したことについてのことでありますけれども、原子力発電所については、安全の確保が大前提であり、耐震安定性についてもその時々の最新の知見に基づき最善を尽くすべきものと考えております。柏崎刈羽原子力発電所についても、当時の最新の知見に基づき設置許可を行ったものでありますが、新潟県中越沖地震により、同発電所では設計の際に用いた基準地震動を超える揺れが発生いたしました。今回の地震においても、同発電所では、止める、冷やす、閉じ込めるという基本的な安全性は確保されておりますが、今後、今回の地震により得られた最新の知見をしっかり反映させ、国自らが活断層などの現地調査を行うことなどによりまして、今後の耐震安全性の確保に万全を期してまいります。  原子力発電所の運転状況を考え直すべきではないかということでありますけれども、原子力発電所については、安全の確保は大前提であり、地震についてもしっかりした対策を講じることが必要不可欠であります。現在、すべての原子力発電所について、新潟県中越沖地震などで得られた最新の知見も踏まえ、耐震安全性の再評価を行うよう電気事業者に求めております。政府としてもその評価結果を厳正に確認し、安全の確保に万全を期してまいります。  選択的夫婦別姓、婚外子差別撤廃を含めた民法改正についてのお尋ねでございますが、これらの問題については、婚姻制度や家族の在り方と関連して、これまでも様々な議論がされてきたと承知しております。国民の意識の動向も踏まえつつ、与野党間でよく御協議をしていただきたいと考えております。  次に、民法七百七十二条の改正についてのお尋ねでございますが、この民法の規定は嫡出推定の制度を定めるものでございますが、法律上の父子関係をどのように設定するかという身分法の根幹を成す規定であり、基本的に維持されるべきものと考えております。  国際平和協力活動に関する一般法についてのお尋ねでございます。  いわゆる一般法の整備は、我が国が平和協力国家としての役割を果たす上で迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくために望ましく、また、国際平和協力に関する我が国基本方針を内外に示す上でも有意義と考えております。  一般法については、憲法の範囲内で活動を行うことを前提として、与野党における議論国民的な議論の深まりを十分に踏まえて検討を進めてまいります。  憲法審査会における憲法改正案作りについてのお尋ねでございますが、国の基本を定める憲法に関する議論につきましては、昨年の通常国会で関係各位の御努力により国民投票法が成立いたしました。  もとより国会が決めるべきことでありますが、今後は、国会のしかるべき場において、国民投票法の審議過程で積み残された諸課題や、改正するとすればどのような内容かなど、すべての政党の参加の下で幅広い合意を求めて真摯な議論が行われることを強く期待いたしております。  道路特定財源暫定税率環境税についてのお尋ねでございました。  地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、その効果国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組の現状などを踏まえて、国民事業者などの理解と協力を得るよう努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると考えております。  いずれにせよ、欧州の主要国がガソリン税金を段階的に引き上げている状況において、地球温暖化対策に逆行しかねない道路特定財源諸税の暫定税率の廃止を行うことは、国際的な理解を得難いのではないかと考えております。  残余の質問は関係大臣から答弁させます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣舛添要一君登壇拍手
  29. 舛添要一

    国務大臣(舛添要一君) 福島みずほ議員にお答えいたします。  まず、産科医不足の問題ですけれども、この問題の背景としましては、産科などの医師不足に伴い広く薄い配置などによる病院勤務医の過酷な勤務環境、ハイリスク分娩の増加などの産科医療リスクの高まりや産科医療に係る訴訟の増加に対する懸念、女性医師が大きな割合を占めていること、少子化による出生数の減少など様々な要因があると思います。  また、産科医療につきましては、限られた医療資源を重点的かつ効率的に配し、医療機関相互の連携体制を構築することが有効である一方で、その集約化に当たっては、地域における必要性を勘案して都道府県において適切に実施するように促しているところであります。  産婦人科医の確保や助産師の活用についてでありますけれども、産婦人科医などを中心に地域に必要な医師を確保することは喫緊の課題考えております。医師不足問題の解決に向けて昨年五月末に政府・与党で緊急医師確保対策を取りまとめましたが、平成二十年度予算案にその具体化するための措置を盛り込んでおります。  産科医確保対策といたしましては、大学の医局や都道府県医療対策協議会からの医師派遣機能の強化を行うとともに、産科医療補償制度の早期実現など医療リスクに対する支援体制を整備し、院内保育所に対する支援拡充など女性医師の働きやすい職場環境整備を行うほか、院内助産所の設置支援や開設のための研修事業などを通じて助産師の活用を行うこととしております。これらの施策を通じまして実効性のある対策を総合的に講じてまいります。  妊婦健診の公費負担についてお尋ねがございましたけれども、母子保健法におきましては、市町村が必要に応じて妊婦に対して健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨することとしており、公費負担などの取組は各地域の実情に応じて実施されております。  また、平成十九年度予算において、妊婦健診を充実するための地方財政上の措置を講じたところでありまして、健康な妊娠、出産を迎える上で最低限必要な五回を基準として公費負担拡充するよう自治体に促すとともに、各市町村における公費助成の取組状況を調査したところであります。  こうした取組を通じまして、経済的な理由から健診が受けられないことがないように、国として自治体と連携を図りつつ、引き続き妊婦健診に係る費用負担の軽減に努めてまいります。  次に、救急医療でございますけれども、厚生労働省といたしましても救急医療の確保は喫緊の課題考えております。このため、先般改正しました医療法で、本年四月までに都道府県が策定することになっている医療計画においても救急医療を重点的に位置付け、体制整備を促しているところであります。  また、最近の事案も踏まえまして、都道府県に対して改めて現行の取組について徹底した総点検を行うとともに、受入れ可能な医療機関に関する情報の迅速で正確な更新、受入れ医療機関の円滑な選定を支援する医師等の配置などの取組要請しております。  これらの取組を進めるため、来年度予算に所要の予算を盛り込んでいるところであり、厚生労働省としては、今後とも関係省庁と連携の上、救急患者を確実に受け入れるシステムの構築に努めてまいります。  最後に、子育て支援の改革でございます。  保育所の受入れ児童数の増加につきましては、平成十四年度から待機児童ゼロ作戦を進め、平成十九年四月一日の待機児童数は四年連続で減少し、約一万八千人となっております。平成十六年末に決定された子ども子育て応援プランなどに基づき、平成二十一年度までに受入れ児童数の拡大を図るとともに、特に待機児童数五十人以上の市町村については重点的な施設整備を行うこととしております。  また、平成二十年度予算案におきまして、家庭的保育事業事業所内託児施設に対する支援の充実を図ることとしており、保育所の受入れ児童数の拡大と併せて、子育てに関する施策を総合的に展開することにより待機児童の解消を図ってまいります。  産休中に支給されます出産手当金については、平成十九年四月より、少子化対策の観点ども含め、賃金の六割相当額から三分の二相当額に引き上げたところであります。また、育児休業給付につきましては、昨年の雇用保険法改正におきまして暫定的に給付率を四割から五割に引き上げたところであります。  男性の育児休業の取得促進のためのパパクオータ制の導入につきましては、我が国の男性の育児休業の取得状況を踏まえると、まずは現行の法制度の周知や社会全体の機運の醸成から取り組んでいくことが重要だと思います。  このため、厚生労働省といたしましては、全国の労働局において男性も育児休業を取得できることを周知徹底、次世代法に基づく企業の認定基準に男性の育児休業取得実績を盛り込み、男性の育児休業取得を促進することなどに取り組んでいるところでありまして、これらにより、男性も子育てしながら安心して働き続けることができる社会の実現に努めてまいりたいと思います。(拍手
  30. 江田五月

    議長江田五月君) これにて質疑は終了いたしました。      ─────・─────
  31. 江田五月

    議長江田五月君) 議員山本孝史君は、昨年十二月二十二日逝去されました。誠に痛惜の極みであり、哀悼の念に堪えません。  同君に対しましては、議長は、既に弔詞をささげました。  ここにその弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ さきに財政金融委員長の重任にあたられました 議員山本孝史君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます     ─────────────
  32. 江田五月

    議長江田五月君) 尾辻秀久君から発言を求められております。この際、発言を許します。尾辻秀久君。    〔尾辻秀久君登壇
  33. 尾辻秀久

    ○尾辻秀久君 本院議員山本孝史先生は、平成十九年十二月二十二日、胸腺がんのため逝去されました。享年五十八歳でありました。誠に痛惜哀悼の念に堪えません。  山本孝史先生は、平成十八年一月、国立がんセンター中央病院において、現在の医療では治ることのないステージ四の進行がんであるとの確定診断を受けられました。奥様には、何も治療しなければ余命は半年と告げられました。  胸腺がんは非常に珍しいがんで、元々外科手術による切除が難しい上、他の臓器への転移も見られたことから、抗がん剤による化学療法が選択されました。  自来、山本孝史先生は、末期のがん患者として、常に死を意識しながら国会議員仕事に全身全霊を傾け、二年の月日を懸命に生きられたのであります。  私は、ここに、山本孝史先生の御霊に対し、謹んで哀悼の言葉をささげます。  山本孝史先生は、昭和二十四年七月七日、兵庫県芦屋市にお生まれになり、その後、大阪市南船場に転居されました。  先生が五歳のとき、兄上が自宅前でトラックにひかれて亡くなられております。山本先生は後に、母が亡きがらとなった兄の足をさすっていた姿を今も鮮明に覚えていると書き残されています。  山本先生はその後、立命館大学在学中に身体障害者の介助ボランティアを体験され、これをきっかけに大阪ボランティア協会で交通遺児育英募金と出会うことになります。交通遺児の作文集を読まれたとき、夭折した兄の無念さや両親の悲しみが一気に胸にあふれたと述べておられます。  大阪交通遺児を励ます会を結成された先生は、活動を展開するため、全国協議会の事務局長に就任されました。交通遺児と母親の全国大会を成功させ、参加者とともに銀座をデモ行進されたと聞きました。  先生の政治世界における御活躍の基礎は市民活動にありました。  山本先生は、大学卒業後、財団法人交通遺児育英会に就職され、その後、米国ミシガン州立大学に留学、家族社会学を専攻して、高齢者福祉や社会貢献活動、死の教育の在り方について学ばれました。大学院修士課程を修了された後、育英会に復職され、平成二年に事務局長に就任されました。  災害や病気、自殺などで親を失った子供にも奨学金を支給したいと願っておられましたが、監督官庁の反対に遭い、縦割り行政を痛感されていた平成五年、先生に転機が訪れます。  誘いを受け、日本新党から旧大阪四区に立候補され、ボランティア選挙、お金の掛からない選挙を展開し、当選されました。次いで、平成八年の総選挙には新進党から近畿比例区に立候補され、再選を果たされました。  衆院時代の山本先生は、年金医療制度の改革、介護保険の創設や残留邦人の援護などの問題に取り組まれました。また、当選の翌年から長きにわたって厚生委員会の理事の職を務められました。  質問等の回数は、本会議での代表質問二回、討論二回、委員会での質疑七十回、質問主意書は医療問題、援護事業などに関するもの三十四本を数えます。  特に、薬害エイズ事件の真相解明では、隠されたファイルの存在や加熱製剤承認後も非加熱製剤が使用され続けていた事実を明らかにされました。また、脳死臓器移植問題では、いわゆる金田・山本案と呼ばれる対案を提出され、国会論議を深めることに貢献されました。  先生は、平成十三年、参議院に転じ、大阪選挙区から立候補され、当選されました。再び年金医療制度の改革に取り組まれ、亡くなられるまでの間、参議院本会議での代表質問が五回、予算、決算、厚生労働などでの委員会質疑は五十八回に及び、質問主意書についても年金社会保険庁問題などで十一本を数えます。  この間、党務においては、民主党次の内閣の厚生労働大臣、年金改革プロジェクトチームの座長などを務められました。  また、山本先生は、平成十五年、参議院民主党・新緑風会の幹事長に就任されました。幹事長在任中の平成十六年の参議院選挙は年金が大きな争点となりました。先生は、年金政策の第一人者であり、民主党の年金改革法案の実質的な立案者であったと伺っております。  山本先生は年金論議を終始リードされましたが、政府年金改革法案の代表質問に立たれた際、この壇上から次のように訴えられました。  議場の皆様に申し上げます。年金改革はこの国のありようを決める大事業であり、そして、我々は国民の代表であります。年金改革とこれからの国のありようについて、この参議院において真摯に、真剣に、そして徹底的に議論しようではありませんか。  使命感に満ちあふれた名演説でした。  厚生労働委員会における小泉総理との白熱したやり取りは今も語りぐさとなっております。我が党は厳しい選挙戦を強いられることになりましたが、このときの躍進こそ、民主党が参議院第一党となる礎となっていると言えましょう。  山本先生は、我が自由民主党にとって最も手ごわい政策論争の相手でありました。  私は、平成十六年から十七年にかけて厚生労働大臣を拝命いたしておりました。その間、山本先生から、予算委員会で三回、厚生労働委員会において八回の御質疑をちょうだいいたしました。先日、会議録を読み返してみましたところ、百七十問ございました。その中で印象深いのは、平成十六年十一月十六日の厚生労働委員会の質疑でした。山本先生は、助太刀無用、一対一の真剣勝負との通告をされました。  この質疑の中で、私が明らかに役所の用意した答弁を読みますと、先生は激しく反発されましたが、私が私の思いを率直にお答えいたしますと、幼稚な答えにも相づちを打ってくださいました。先生から、自分言葉自分考えを誠実に説明する大切さを教えていただきました。そして、社会保障とは何かを御指導いただきました。昨日も、先生にしかられないように、社会保障には特に力を入れて質問をいたしました。  山本先生は、平成十七年、参議院財政金融委員長に就任されました。新しい分野で活躍しようとなさっていたそのやさき、病魔に侵されておられました。  山本先生は、平成十八年五月二十二日、医療制度改革関連法案の代表質問に立たれ、この壇上から次のように語り始められました。  理想の医療を目指された故今井澄先生の志を胸に、私事で恐縮ですが、私自身がん患者として、同僚議員を始め多くの方々の御理解、御支援をいただきながら国会活動を続け、本日、質問にも立たせていただいたことに心から感謝をしつつ、質問をいたします。  そして、最後に、がん対策法の今国会での成立について、議場の皆さんにお願いをします。日本人の二人に一人はがんにかかる、三人に一人はがんで亡くなる時代になっています。今や、がんは最も身近な病気です。がん患者は、がんの進行や再発の不安、先のことが考えられないつらさなどと向き合いながら、身体的苦痛、経済的負担に苦しみながらも、新たな治療法の開発に期待を寄せつつ、一日一日を大切に生きています。私があえてがん患者と申し上げましたのも、がん対策基本法を成立させることが日本の本格的ながん対策の第一歩となると確信するからです。  また、本院厚生労働委員会では、自殺対策の推進について全会一致で決議を行いました。私は、命を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。がんも自殺も、共に救える命がいっぱいあるのに次々と失われているのは、政治行政社会の対策が遅れているからです。年間三十万人のがん死亡者、三万人を超える自殺者の命が一人でも多く救われるように、何とぞ議場の皆様の御理解と御協力をお願いいたしますと結ばれました。  いつものように淡々とした調子でしたが、先生は、抗がん剤による副作用に耐えながら、渾身の力を振り絞られたに違いありません。この演説は、すべての人の魂を揺さぶりました。議場は温かい拍手で包まれました。私は今、その光景を思い浮かべながら、同じ壇上に立ち、先生の一言一句を振り返るとき、万感胸に迫るものがあります。  先生は法律を成立させただけではありませんでした。やせ衰えた体を押して、がん対策推進協議会を欠かさず傍聴されるなど、命を削って、立法者の責任を果たされました。  山本先生は、昨年七月の参議院選挙にも立候補され、再選を果たされました。  十二月四日、筆頭発議者として、被爆者援護法の改正案を提出されます。これが国会議員として記録に残る最後の仕事となりました。衆参両院で延べ三十七本の議員立法を提出されたことになります。国会議員こそ立法者であるとの信念を貫かれたのであります。  先生は十二月二十二日、よみの国へと旅立たれました。先生の最後の御著書となった「救える「いのち」のために 日本のがん医療への提言」は、先生が亡くなられる直前、見本本が病室に届けられました。先生は、目を開け、じっと見詰めてうなずかれたそうです。そのときの御様子を、奥様は告別式において、次のように紹介されました。  私は、彼の手を握りながら本を読んであげました。山本は、命を削りながら執筆した本が世に出ることを確かめ、そして、日本のがん医療が、ひいては日本医療全体が向上し、本当に患者のための医療が提供されることを願いながら、静かに息を引き取りました。  バトンを渡しましたよ、たすきをつなぐようにしっかりと引き継いでください、そう言う山本先生の声が聞こえてまいります。  先生、今日は外は雪です。随分やせておられましたから、寒くありませんか。先生と、自殺対策推進基本法の推進の二文字を、自殺推進と読まれると困るから消してしまおうと話し合った日のことを懐かしく思い出しております。  あなたは参議院の誇りであります。社会保障の良心でした。  ここに、山本孝史先生が生前に残されました数多くの御業績と気骨あふれる気高き精神をしのび、謹んで御冥福をお祈りしながら、参議院議員一同を代表して、お別れの言葉といたします。
  34. 江田五月

    議長江田五月君) 本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会