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2008-06-03 第169回国会 参議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年六月三日(火曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  五月二十九日     辞任         補欠選任         柳澤 光美君     鈴木  寛君  五月三十日     辞任         補欠選任         塚田 一郎君     舛添 要一君  六月二日     辞任         補欠選任         鈴木  寛君     白  眞勲君      舛添 要一君     西田 昌司君      山崎 正昭君     南野知惠子君  六月三日     辞任         補欠選任         青木 幹雄君     長谷川大紋君      木庭健太郎君     浜四津敏子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 今野  東君                 白  眞勲君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 西田 昌司君                 南野知惠子君                 長谷川大紋君                 丸山 和也君                 浜四津敏子君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君        発議者      松岡  徹君        発議者      松野 信夫君        発議者      前川 清成君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁刑事局長  米田  壯君        法務省刑事局長  大野恒太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百六十  八回国会松岡徹君外五名発議)(継続案件) ○法務及び司法行政等に関する調査  (性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関す  る法律の一部を改正する法律案に関する件)     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、柳澤光美君、塚田一郎君及び山崎正昭君が委員辞任され、その補欠として白眞勲君、西田昌司君及び南野知惠子君が選任されました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会警察庁刑事局長米田壯君及び法務省刑事局長大野恒太郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 今野東

    今野東君 民主党の今野東でございます。  提案、去年の十月に提出されておりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案、いわゆる取調べ可視化法についてようやく質疑をさせていただけることになりましたことを喜びながら質問をさせていただきます。  さて、我が国刑事司法については国連人権機関から度々勧告を受けております。特に二〇〇七年の国連拷問委員会からは、未決拘禁に対する効果的な司法的統制の欠如が指摘されておりまして、刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さに深刻な懸念を持たれております。  なるほど、警察拘禁中の被拘禁者に対する適切な取調べの実施を裏付ける手段がありません。また、取調べ持続時間に対する厳格な制限もありません。すべての取調べについて弁護人の立会いが許されているわけでもありません。しかも、こうして取り調べる側によって作り出された自白裁判所において許容されているというのが残念なことに事実であります。そして、その結果、志布志事件富山氷見事件引野口事件のような無辜の市民人権を著しく侵害し、罪に陥れる冤罪事件警察司法によって引き起こされております。  にもかかわらず、我が国は来年五月から裁判員制度施行しようとしています。私がにもかかわらずと言ったのは、裁判員制度スタートさせる環境は本当に整っているのだろうか、こんな状態で裁判員制度スタートさせても混乱を招くだけではないかという疑問があるからでありますが、そこで、取調べ可視化法法案提出に心血を注いでこられた提案者皆さんミスター可視化皆さんにお伺いをしたいと思います。  来年の五月からスタートする予定の裁判員制度ですが、裁判員となった市民心配一つ裁判に拘束される期間の問題があります、どれぐらい拘束されるんだろうか。裁判所説明によれば、まあ三日か四日で済むんですなどという説明もあるんですが、しかし、警察検察段階供述調書に関して拷問があったのではないかとか、あるいは強制脅迫があったのではないかといういわゆる任意性が争われた場合、裁判が長期化して裁判員負担が大きくなるのではないかと心配をするのですが、このような点で取調べ可視化にどのような効果が期待できるのでしょうか。  これは前川議員にお伺いしたいと思います。
  7. 前川清成

    前川清成君 おはようございます。よろしくお願いいたします。  今野先生の御質問で、今裁判員に関してお尋ねをいただきました。  可視化については、もちろん冤罪をいかにして防止するかという視点もあるんですが、私たちは、来年五月二十一日から始まる裁判員における、裁判員皆さん方の御負担をいかに軽減するか、こういう意味でも可視化是非に必要だというふうに考えております。  およそ四千人に一人の割合で裁判員ないし補充裁判員に選任されるわけですけれども、最高裁平成十八年に実施したアンケートでも、七六・六%の皆さん方仕事や家事を理由参加は困難ですというふうにお答えになっています。今野委員質疑の中にもありました、最高裁はおよそ七割の事件は三日で終了するというふうに説明をしています。しかし、残り三割の事件をどうするのか。  最高裁自身も、実は国民司法参加には従来反対をしておりました。二〇〇〇年九月十二日に司法制度改革審議会に提出した意見書の中で最高裁は、国民に極めて大きな負担を求めることになると述べた上で、その一例として、O・J・シンプソン事件では陪審員は二百六十五日間隔離されてしまった、こういうふうに紹介しています。まさに現代の赤紙とならないように、裁判員負担軽減というのは必須の政策課題ではないかと私たちは認識しています。  ところで、裁判が長期化する理由でございますけれども、大きく分けて三つあろうかと思います。一つは、あのオウム事件のように起訴される犯罪が多数に及ぶ場合、二つ目には、鑑定の結果がなかなか出てこない場合です。一つ目犯罪が多数の場合には、部分判決制度というのが導入されまして、一応の手当てがなされました。鑑定結果がなかなか出てこない場合、これはもちろん裁判迅速化という点では困るんですけれども、裁判員皆さん方にその間出頭してお待ちいただいているわけではありませんので、ある程度考慮しなくてもいいのではないかと思います。  三つ目が、今野委員おっしゃったように、刑事訴訟法三百十九条一項で、強制拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留され又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白は、これを証拠とすることができないと定めておりまして、いわゆる供述調書捜査段階における調書任意性が争われた場合、これは裁判が相当長期化いたします。  これまでは、まず被告人質問におきまして、被告人自ら捜査段階における取調べ状況について供述させる、それを打ち消すために検察側から捜査官証人申請をされまして、捜査官側被告人との間で延々水掛け論が続くというのが裁判の実態でありました。この結果、例えばあのリクルート事件では一審が十三年、公判回数が三百二十二回に及んでおりますけれども、これはおおむね調書任意性に関する審査でございました。もしもこのような裁判市民皆さん方が巻き込まれてしまうと、まさにお仕事があるいは御家庭が崩壊してしまうのではないかと思います。  しかしながら、よく考えてみますと、この取調べ状況というのは、私が今申し上げたように、延々と水掛け論を続けないと明らかにならないものなのか。むしろ水掛け論をしたところではっきり分からない。だから、実際に職業裁判官でさえ、任意性で切らずに信用性で切っているというのが状況であります。  しかしながら、取調べ状況録音録画しておきますと、延々と時間を空費することなく、脅迫があったかなかったか、不当な取調べがあったかなかったのか、ビデオを再現することによって一見して明らかになります。それゆえ、裁判員負担を軽減するためにも、私たちは、必ず取調べ可視化、すなわち録音録画が必要ではないかと考えています。  長くなりますが、もう一点申し上げさせていただきますと、現場のほとんどの警察官、検察官の方々は法と正義を実現するために懸命に汗をかいていただいていると思います。そんな多くの現場皆さん方にも、これで弁護士からしようもない言いがかりのような主張が出てきても、ビデオを再現することでおれたちの正しいことがはっきりするというふうにお考えいただいて、この可視化に歓迎をしていただけるのではないかと、そんなふうに考えています。  以上でございます。
  8. 今野東

    今野東君 一般の市民裁判員となって裁判参加していく、そのときに、速やかにできるだけ負担をお掛けしないで裁判を進行していくという上でもこの可視化法案、大変重要なことだと改めて思いました。  さて、今回のこの法案の大きな柱、これは取調べ段階での可視化でありますが、もう一つの柱が検察官手持ち証拠についてその標目の一覧表開示を求めている点だと思うんですが、現行刑事訴訟法でも既に、これは公判手続においては一応証拠開示の方法が定められているわけですが、現行法だけでは不十分だということなのでしょうか。あえて証拠リストまで開示する必要性についてどのようにお考えなのか、松野議員にお伺いします。
  9. 松野信夫

    松野信夫君 今野委員から大変適切な御質問をいただきました。  被告人弁護人が十分な防御を行う、これは我が国刑事訴訟法はいわゆる当事者主義の立場に立っているわけですので、十分それぞれ武器を持って公判廷で戦っていただくと、こういう構造になっているわけであります。そうすることが誤判を防ぐ大きな要因にもなるだろうと、このように思っているわけで、そうすると、大体検察官手元に収集している証拠、これはどのようなものがあるのか、十分にやっぱり検討する機会を与えなければ十分な防御活動はできないであろう、このように思っております。  確かに、委員が御指摘のように、公判整理手続において証拠開示というものが認められているわけですけれども、そもそも検察官がどのような証拠手元に置いているのか、これがやはり明らかにならないと開示請求もできない、こういうことだろうと思います。そういう意味では、今回の法案証拠リスト開示される、それに基づいて具体的に開示を求める証拠を特定することもできる、こういうような仕組みになっているわけであります。そうすることによって十分な防御活動ができるように、これを一つ大きく担保する役割がある、このように考えております。  付言しておきますと、一九九八年に国連人権規約委員会日本政府に対して勧告を行っております。それは何かと申しますと、弁護側によるあらゆる証拠資料へのアクセスを保障するよう法律と実務を改める、こういうような勧告もしているわけでありまして、こういう国際的な要請にも今回の法案というものはこたえるものだ、このように考えております。  以上です。
  10. 今野東

    今野東君 国際社会要請でもあります。是非可視化を成立させていただきたい、この場におられる各委員皆さんにも改めてお願いをしたいと思いますが。  これまで説明をお聞かせいただいて、この法案裁判員制度施行するに当たって是非とも整備しなければならない法案だというふうに皆さん考えだと思いますが、この法案附則を見ますと、その第一項で「この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行」としておりまして、附則の第二項では「三年を超えない範囲内において政令で定める日までの間」と、段階的な適用になっているんですね。この理由はどの辺りにあるんでしょうか、松岡議員にお伺いします。
  11. 松岡徹

    松岡徹君 平等にありがとうございます。  附則の点でございますけれども、今、前川委員あるいは松野委員からもございましたように、この法案趣旨は、すべての取調べ可視化というのがその本意でございます。しかし、附則で第一項、一年六月以内というふうに定めたのは、先ほどもありましたように、実は来年から裁判員制度が始まるわけであります。少なくともこの裁判員制度に間に合わせるということがこの法案一つの貢献といいますか、重要な役割だというふうに思っておりまして、第一項にこの一年六月以内というふうに定めたところであります。  この法案、実は昨年の十二月に我が党が参議院に提案をいたしまして、そのころからさかのぼりますと、来年の裁判員制度スタートするちょうど一年半、一年六月ぐらいだという目安で出したわけであります。したがって、一年六月以内に何とかこれを、まずは長期三年以上の刑にかかわってスタートをさせていこうということであります。  第二項の公布後三年までにというのは、実は、先ほど冒頭申し上げたように、これはすべての事件取調べにかかわる可視化でございますので、そうしますと、軽微な事件がたくさんございます。例えば、特に多いのが道交法による速度違反でありますとか駐車違反とか、そういったことにかかわってくるわけでありますが、それを整備していくためにも多少時間が掛かるだろうということで、一つは三年以内。  もう一つは、それ以外に、例えば司法警察職員等々の権限を与えられている分野がございます。例えば、民間船舶船長に、司法警察職員等指定応急措置法及び大正十二年勅令の第五百二十八号によりまして、それぞれ特別司法警察職員としての職務を行うことが、権限が付与されているわけであります。こういったジャンルがたくさんございまして、実際、現状を見ましたら、そういった船舶民間船長がそういった事件に出くわしたとしても、実際は取り調べないで、帰って司直の方にそれをゆだねるというのがほとんどでございまして、直接民間船長がその船舶内で取調べ権限を行使するという事例はほとんどゼロというふうな状況でございます。しかし、法律上その権限が与えられておりますので、そういったところを整理をしていくということが大事だということでありまして、それを第二項のところで三年以内というふうに分けたところでございます。  以上です。
  12. 今野東

    今野東君 ありがとうございました。  さて、それでは、時間もありませんので、政府法務省警察庁にお伺いしたいと思いますが、この委員会でも度々出ております、問題にされております、今日も出てくるだろうと思いますし、私も口にしましたが、富山氷見事件、それから鹿児島志布志事件など冤罪事件が続いているわけですけれども、いずれも密室での取調べうそ自白を強要したことが指摘されております。  警察庁、この点については間違いありませんね。イエスかノーだけでお答えください。うそ自白を強要したことが事実でありますね、取調べ段階では。
  13. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 富山事件につきましては、その当時の捜査員の認識はともかく、結果としてこれは真犯人が別にあったわけでございますから、自白うそであったと。ただし、強要したというような事実はないと承知をしております。  それから、鹿児島事件につきましては、その取調べにつきまして様々な問題がございまして、判決におきましてその信用性というものを否定されたということを承知しておりまして、多々反省すべき点があるというふうに考えております。
  14. 今野東

    今野東君 そういう答弁をするから可視化が必要なんですよ。  可視化をしていればこのような冤罪はかなりの程度防止できたのではないかと思われるわけですが、政府はこのことについてどのように考えていらっしゃるんでしょうか。法務省警察庁に伺います。
  15. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 御指摘氷見事件志布志事件につきましては、最高検察庁が検証しているわけでありますけれども、その中で、自白以外の証拠吟味や、それから自白信用性に関する検討が十分でなかったという問題点指摘されているわけであります。ただいまのお尋ねは、いわゆる可視化が制度化されていればこうした事件が防げたのではないかということでありましたけれども、仮定ということでございますので、なかなかお答えすることは困難であろうというふうに思います。  ただ、その取調べの全面的な録音録画を義務付けることにつきましては、被疑者録音録画を意識して警戒する結果、真実を供述することをためらったり、あるいは録音録画向きの作為的な発言をする等々によりまして取調べの機能が損なわれ、真相を十分に解明し得なくなるなどの問題があるのではないかと考えているわけであります。  最高検察庁におきましては、今年の四月、接見や取調べに関する一層の配慮や、取調べに関する不満等に対する適切な対処等内容とする取調べ適正確保策を公表したところでありますので、今後とも検察当局においては適正な取調べの実現に努めるものと承知しております。  また、取調べ録音録画に関しましては、現在、検察当局におきまして、裁判員対象事件のうち自白事件については原則としてその全件につきまして取調べの一部の録音録画試行しております。これは取調べ適正確保にも資すると考えられております。  以上です。
  16. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 先ほど法務省答弁と同じような話になりますが、富山事件志布志事件共に様々な要因があってこのような深刻な無罪事件になっているものというように承知をしております。例えば、アリバイの吟味が両事件とも不十分でございましたし、富山事件について言えば、足跡からする犯人の足の大きさの問題の吟味とか、あるいは凶器の捜索が不十分であるとかといったことがございましたし、鹿児島事件につきましては、例えば、その買収の原資が十分に解明されていないというような問題もございました。そういう様々な原因の中でこのような無罪事件が起こったんであろうと考えております。  警察といたしましては、そういった点を踏まえまして、昨年、緻密かつ適正な捜査の推進についてという通達を流しまして、かつ昨年、犯罪捜査規範も改正をいたしまして、物的証拠の重視、あるいは被疑者が例えば障害を持つ方であればそういうことへの配慮、それから供述を過信しないといったようなそういう対策も講じておりまして、そして本年に入りまして、適正化指針取調べ適正化に対して強力な対策を講じようということとしております。  なお、警察におきましても、本年四月三日、取調べの一部の録音録画試行に踏み切るということを表明をしておりまして、現在準備中でございます。
  17. 今野東

    今野東君 要するに、法務省警察庁にとっては可視化は好ましくないのだと、成立してほしくない法律なんだということはよく分かりました。  今おっしゃった警察庁が既に可視化を一部やるんだという話なんですけれども、それでは、そういうことをおっしゃるので、ちょっと通告しておりませんけれども、これどういうふうに録画、どこからするんですか。取調べ調書を読み聞かせるところから確認するんですか、その以前から録画録音をすることになるんですか。
  18. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 先ほど言いましたその四月三日試行を表明した警察庁の一部録音録画でございますけれども、これは刑事裁判において、特に裁判員裁判におきまして迅速かつ効果的な立証が可能になるように、そういうことを試行をして、そしてその効果を検討しようというものでございます。  それで、現在考えておりますのは、調書を作成をいたしまして、その調書内容被疑者に読み聞かせ、そして署名押印を求めている状況、さらにはその自白内容に間違いがないこと等を確認している状況録音録画するということとしております。
  19. 今野東

    今野東君 そんなものは何の役にも立ちません。無理やり自白をさせて、そして調書を取って、それを読み聞かせて、読み聞かせるところからスタートをするんでしょう。その以前が問題なんじゃないですか、志布志にしたって氷見事件にしたって。何の反省もしていないということがこれでよく分かります。  この委員会は残念ながら全国放送されておりません。インターネットでは放送されているのかな。これを御覧の皆さん国民皆さん、こういうふうに法務省やあるいは警察庁反対をしている法律こそ必要なのであります。私はそう訴えておきたいと思いますが。  さて、既に警察でも一部今おっしゃったように可視化が導入されている。恐らく何の役にも立たないだろうと思います。都合の悪いところは撮らないで、そして調書だけ読み聞かせるところからスタートするなんて、そんなもの可視化でも何でもありません。警察段階での取調べがより重要なのであります。志布志事件にしたって氷見事件にしたって、そこが大事なんじゃないですか。無理やり強要させたんじゃないですか。そこを撮らないで、それ以降のところを撮って何の役に立つというんですか。警察段階でいったん虚偽であっても自白を強要されてその旨の供述調書が作成されてしまいますと、検察段階では抵抗する気力も失ってしまって捜査官の言うままになっているケースも非常に多い。氷見事件がこの例でした。  そうなりますと、警察での全面的な可視化こそ重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。もう一度今のところを確認したいと思います。今後、どのように可視化を進めますか。それとも、自分のところだけ都合のいいように調書を読み聞かせるところからスタートさせるんだということを主張するんですか、お尋ねします。
  20. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 取調べ適正化につきましては、警察庁におきましては適正化指針を策定をいたしまして、現在その実行段階でございます。これは捜査とは別の総務、警務部門監督の組織を置きまして、取調べ監督対象行為と私ども呼んでおりますが、そういうチェックポイントをチェックをいたしまして、そして内部の自浄作用を発揮いたしまして適正化を図ってまいりたいと考えております。  一方、裁判員裁判が来年いよいよ施行をされます。その裁判員裁判におきまして迅速かつ効果的な任意性立証をいたしまして、そして、先ほどから御議論になっております水掛け論といったものを防ぐという点からも録音録画試行に踏み切りまして、そしてその効果を検証しつつ、より良い方法を探ってまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  21. 今野東

    今野東君 そういう子供だましみたいなことを、可視化可視化って世間がうるさいから、一部だけちょんちょんちょんとこうやっておいて、そしてごまかしておこうという手口は、もうこれは認められませんよ。是非この可視化について、この委員会でも大臣にも御理解いただいて成立をさせていただきたいと思いますけれども。  適正化指針というふうに言うんだけど、だから大丈夫だみたいな言い方をしますけれども、しかしそれでは、拘束をしている方法とか、代理監獄とか、弁護人を全部の取調べに立ち会わせるとか、そういうことが、氷見事件志布志事件から反省していなければならないことが全く盛り込まれていないじゃないですか。だから私たち可視化が必要だと言っているんです。時間がありませんから、これ以上の残念ながら議論はできませんが。  それから、取調べの撮影方法についてですけれども、アメリカの研究者でラッシターというオハイオ州立大学の教授がいらっしゃるんですが、この撮り方についても大変重要なんです。要するに、被疑者だけをフォーカスする、アップして撮る、そして取調べ官は全体の風景の中で撮るという撮り方では、これは自白任意性信用性、有罪有無の判断に関して望ましい取調べの方法ではないという結果が出ているんですね。つまり、被疑者だけがアップされて、そこに大きく映されているという強迫感、これは正しい撮り方ではないということを言っているわけです。  検察で一部可視化が進んでいて、私たちも視察に行きました。これもやっぱり被疑者を大きく撮って、そして全体を、今度は取調べ官は全体の中の風景の一つとして存在しているというふうでした。  取り調べる側がどんなに怖い顔をしているか、どんな言葉を発しているか、そのことをきちんと撮っておく必要があるんです。だから、撮り方というのも大事なのだということを私はここで提起をしておきたいと思います。  もう残り時間二分になりました。  大臣、これまでのこの短い時間のやり取りを聞いていただいていて、可視化というのが大変重要なのだと、しかも、調書を読み聞かせるなんていう中途半端なところからじゃなくて、最初の段階から録画録音をしておく必要があるのだということ、警察にとっては正しい公正な取調べをしていれば、何の、何のマイナス点もないわけだということはよくお分かりだろうと思いますが、全体のこのやり取りをお聞きいただいてどのようにお感じでしょうか。
  22. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 要するに、一番大事なことは何かと。それは幾つもあるのかもしれません。それは、氷見事件とか志布志事件のようなことがあってはならないと。でっち上げだと思われてしまうような結果を招くような取調べがあったとするならば、これは真剣に反省をして、出直すような気持ちで警察も、場合によっては検察も努力を開始すべきだと思っております。  ただ、もう一つ大事なことは、我々国会議員全員の課題であることは犯罪をなくすことだと、犯罪の少ない治安のいい世の中をつくることであることは間違いがありません。そのためには、犯罪が現実に行われているわけですから、多数存在をする、凶悪犯罪もある、この犯罪が真相が究明をされて正しく裁かれることが治安のいい国をつくるためには非常に重要だと思っているわけでございます。  そういった意味で、今の今野先生のお話を聞いておりましてつくづく思うことは、それは犯罪を少なくしようという思いは同じだと思います。まあ私、使わないと言った言葉ですが、冤罪をなくすということも大変重要だと、私はよく理解をしておりますし、その点については警察も検察も反省の上に立って適正確保方策を出しましたし、私も反省して謝ったこともあるわけですから。  ですが、全面的に可視化をすると真相の解明に支障を来すというのが私どもの基本的な考え方であって、真相が解明されなくなると。我が国では取調べというものが刑事司法手続の中で非常に大きな比重を持っていると。それは、おとり捜査も潜入捜査も通信傍受も司法取引も、そういうことはやってはいけない。それは、ヨーロッパ、アメリカとは相当違う刑事司法制度を持っている国の中で、取調べの重みというのは非常に大きいわけですから、これを全面可視化して、黙ってしまって、あるいは演技をしてしまうとか、あるいはプライバシーに関する話ができないとか、心の琴線が触れ合うような説得や話合いができないとかとなって、これが真相の解明を阻害をして、犯罪が言わば証明されないで犯人が笑うというような結果が絶対起きてはならぬなと、こういう価値も考えていかなければならないというのが私の考えでございます。
  23. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 今野東君、質疑時間が終局しておりますので、簡潔におまとめください。
  24. 今野東

    今野東君 警察の一部可視化ということについて最後に言いたいですが、国民皆さん、でっち上げの場面となる可能性のあるところを撮ろうとしないというところに当局の非常に不遜な態度があると私は思います、指摘させていただきます。  大臣、私は大臣の性格大好きですけれども、今日の考え方はちょっと違います。可視化こそ裁判員制度スタートさせるについては必要だという実感を改めていたしました。  ありがとうございました。
  25. 西田昌司

    西田昌司君 自民党の西田昌司でございます。  今大臣が御答弁いただきまして、まさに私が申し上げたいことを既に鳩山大臣の方から御指摘いただいたんですけれども。  今回のこの刑事訴訟法の一部改正の法律案、いわゆる冤罪防止、そのきっかけとなったのがあの氷見、志布志事件であって、我々自民党の中でも実はこれPTをつくりまして非常に熱心に議論をしてきたわけです。しかし、その中で、結局やはり可視化ということが冤罪防止のための決定的な解決手段ではない、むしろそのことによって非常に大きな問題点があるんじゃないかと。そのことを考えますと、これはやっぱり全面可視化ということには賛同できないということで、我々自民党自身は、可視化というよりも、まず捜査適正化確保策をこれを提言して、それぞれ実行してもらうように言ったわけなんですが、私は、今の民主党さんの質問、やり取りを聞いていまして非常に疑問に思いますのは、まさに我々自身がそういう同じような意識であの冤罪を防止しようというところからPTでやってきたんですけれども、その中でやはり一番気にしますのは、国民自身が、先ほど大臣がおっしゃったように、やはり安心、安全の治安のいい町、国というのを望んでいるんですよ。  この可視化によって、逆にその巨悪が解明できないと、本当の真実が知れなくて、結局は犯罪者をやり得で逃がしてしまうということになってしまうんじゃないかと、こういう議論はなかったんでしょうか。まず、民主党さんの中でそういう議論がされなかったのかどうか、そこをお伺いしたいと思います。
  26. 前川清成

    前川清成君 私は、二〇〇四年の七月に当選させていただいたんですが、その年の十一月十七日に奈良市の富雄北小学校の小学一年生の女の子が二回の性犯罪の前科を持つ男によって誘拐されて殺されてしまうという大変痛ましい事件が起こりました。その事件が発覚したその当日にこの法務委員会で当時の南野法務大臣にもお尋ねをさせていただきましたし、それ以来、この法務委員会でもあるいは予算委員会でも、安心して暮らすことができる安全な社会、私も今二人の子供の子育て真っ最中ですけれども、朝元気に出掛けていった子供たちが夕方また元気に帰ってくる、おなかをすかせて、時にはどろんこになって帰ってくる、この親としての当たり前の幸せを守ることこそ今政治に課せられた最も大きな仕事一つだと、私も西田先生同様に考えています。  だから、治安を守るためにこそ警察にも頑張っていただかなければならないという質問も度々させていただきましたし、真相を解明するためにこそ私たちはこの可視化を実現しなければならないと考えています。  なぜ真相解明のために可視化かと申しますと、捜査の実態ですが、犯罪の嫌疑があるというふうに疑われた者はまず逮捕されまして、七十二時間、そして十日間プラス十日間、合計二十三日間、一つの罪名で身柄を拘束されることになります。しかも、起訴後も否認していたならば、自分の罪を認めていなかったならば、これは本来の法律趣旨とは異なって、罪証隠滅のおそれがあるとかあるいは証人威迫のおそれがあるという理由で保釈を認めない、いわゆる人質司法と言われる実態があります。このために、今の逮捕、勾留は、本来、当事者主義訴訟の下では裁判の準備のための身柄拘束であるにもかかわらず、取調べのための身柄拘束になっています。これは厳然たる事実であります。  その上で、捜査官皆さん方は、例えばあの富雄北小学校の悲惨な捜査現場を見られた、あるいは遺族の……
  27. 西田昌司

    西田昌司君 弊害について聞いているんです。
  28. 前川清成

    前川清成君 今から申し上げます。  あの遺族のあるいは家族の皆さん方の厳しい処罰感情に接せられるわけです。当然、捜査官皆さん方は正義感ゆえに厳しくその被疑者被告人と向かい合うことになります。しかしながら、その被疑者被告人である人は、罪を犯したというふうにこれは全知全能の神様が認めたわけではなくて、認めたわけではなくて、(発言する者あり)いや、これがその真相解明で一番大切なところですから、必ず説明させてください。(発言する者あり)
  29. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 前川君、質問にお答えください。
  30. 前川清成

    前川清成君 はい。弊害については、何にもありません。むしろ、むしろ可視化をしなければ弊害があるということを申し上げたいのであって、取調べをして、無理やりに密室の中で二十三日間強引に取調べをして、うそ自白をさせて冤罪を生んでしまったならば、真実の犯人は、先ほど鳩山大臣がおっしゃられたように笑って大手を振ってしまうわけです。真犯人が処罰されないんです。これこそ、治安にとって最も悪い影響を及ぼすことになります。  裁判というのは神様がするんじゃなくて、だからその結果、私たちの歴史は、たとえ百人の有罪者を逃がすことがあっても、一人の無辜の者を、無罪の者を罰してはならない、そういうデュープロセスの思想でやってきたということを認識する必要があるのではないかと私は考えます。
  31. 西田昌司

    西田昌司君 時間が限られているんで、民主党さんの方は提案者として先ほどこの利点を述べられているんですよ。それはもう聞いたんです。だから、今利点聞いてないんですよ。  私たちが言っているのは、この可視化によって、全面可視化によって捜査自体が成り立たなくなってしまうんじゃないかと、その弊害について民主党さんは議論したのかと聞いたんですよ。そうすると、あなたが今答えられたのは、そのことに一切答えられずに、私がもう一度催促したら、これは弊害はないと、こういうことをおっしゃっているわけですよね。だから、私言っているのは、この利点を聞いているんじゃないんです。弊害があることがそもそもの問題だと言っているんですよ。  例えば、この一番の問題は、今あなた方がおっしゃっているのは、まず冤罪をこれで食い止めることができるとか、先ほども、これが国際的な基準とかいうところから考えてもいかがなものかとか、いろいろ先ほど答弁でおっしゃいましたけれども、しかしこれは、先ほど鳩山大臣もちょっとお触れになりましたけれども、元々ほかの外国と捜査のやり方自体が違うわけなんですよ。日本においては、司法取引もなければ、通信傍受もなければ、まさに逮捕者からの自白に基づいて、そこからまた証拠固めをしていくと。こういう捜査手法を取らないと、実際問題犯人を捕らえ、(発言する者あり)静かにしなさいよ、あなた方、答弁時間私のものじゃないですか。答弁じゃない、質問です。  それで、一番大事なのはそのバランスなんですよね。ですから、例えば、日本の方でこの捜査をちゃんとした犯罪者を逃がさないようにするためには、民主党さんの方で例えば今言った通信傍受を認めるとか、司法取引を認めるとか、おとり、潜入捜査を認めるとか、そういう考えが片っ方あって、それで片っ方でこの捜査の全面可視化というものまでやっていこうという議論があるんならまだ私は分かるんですけれども、今聞いていると、そんなことまさに全然議論の対象になってないじゃないですか。まさに、自分たちの中でおっしゃっているのは、これについて弊害ないとおっしゃった。  だから、質問に答えてください。この全面可視化やることによってそういう弊害があるということを党内の中で議論されなかったのか、そのことだけ言ってくださいよ。その部分で、そのバランスであるというなら分かるんだけれども、今あなた方の答弁でしたら、そのことについて全くなきがごとき言われているんですよ。だから、質問に答えてくださいよ。
  32. 前川清成

    前川清成君 今お答えしたとおり、真相を解明するために、笑う犯人がいなくなるために可視化が必要だ、こういうふうに申し上げているのであって、可視化によって真相解明については何ら支障は生じないと、私たちは検討の結果、そのような結論に至りました。
  33. 西田昌司

    西田昌司君 いや、これ、とんでもない話をおっしゃっているわけで、先ほど今野委員が、是非これは国民皆さん方に聞いていただけとおっしゃったけれども、私も全く同じ気持ちですよ。是非、全国の皆さんに、この民主党のおっしゃっている案がいかに現実離れしたでたらめか、この捜査可視化によって捜査に支障が生じないなんてことがこれあり得るんですか。刑事局長、ちょっとおっしゃってください。これ、とんでもない話だと思うんですよ。
  34. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま委員が御指摘がありましたように、日本の捜査手続の中におきましては、諸外国で認められているような強力な証拠収集手段、例えば、通信傍受あるいはおとり捜査、秘密捜査、潜入捜査、あるいは司法取引等が認められていないわけであります。  そうなりますと、勢いやはり関係者を取調べの過程で説得して事実をしゃべっていただく、その中でまたいろいろ裏付けをして事実を解明していく、そういうやり方によらざるを得ないわけでありますけれども、最初から最後まで全部録音録画が義務付けられるということになりますと、例えば組織犯罪を例にお考えいただければというふうに思うわけでありますけれども、直接の実行行為者がたまたま逮捕されていても、それに対して組長等が指示を与えているという場面があり得るわけでありますけれども、実際にビデオカメラを向けられた状況の下でそうした上層部の指示というものを果たして供述し得るだろうかという点については大変疑問に思うわけであります。  実際に様々なもちろん工夫をして説得に努めるわけでありますけれども、しかし反面、それは被疑者の側からすれば、言わば組織に監視されているというにも等しい状況になりまして、やはり取調べによる真実解明には支障があるんだろうというふうに考えておるところでございます。
  35. 西田昌司

    西田昌司君 今具体的に、例えば組織犯罪の場合のことを例に取っておっしゃいましたけれども、この問題一つそうですよ。  例えば、今ここでこのまま話を全面可視化になっていたら、今のような犯罪は、まさに親分のことを指してしまう、それが公になってしまうとまさに自分の命自身が危なくなってしまう、だから言えない、だからそこには載せないでくださいねと、調書には載せないで、その聴き取りだけして、そのことを基によって様々な取調べをしてまたそれを逮捕できると、こういうことの積み重ねやっているわけですよ。  全面可視化するとそれができなくなってしまうおそれがあるんですよ。それいいんでしょうか。そのことについて議論されて、担保されるものがあるんでしょうか。
  36. 前川清成

    前川清成君 委員先ほどお述べになりましたように、この委員会室も撮影されて、録音録画されています。じゃ、真実が話せないんでしょうか。録音録画されても真実を話す方は真実を話すと思います。そもそも報復を恐れるのであれば、録音録画されていても供述しないはずであります。
  37. 西田昌司

    西田昌司君 この委員会の審議を取調べ室と同じように言うのは失礼ですよ。全然次元が違うじゃないですか。  これはお互い対等の立場で言っているんですよ。ところが、皆さんよく考えていただきたいのは、犯人、容疑者と取調べ官がこれ対等で、そしてにこにこお客さんを扱っているように、怖い顔をしているのはどうかというような話も言われているけれども、そんな形で実際取調べができるんですか。それこそ民主党が言っている議論がいかに暴論かということをまず国民皆さんに知っていただきたいですよ、私は。  その上でもう一つ申し上げましょう。昨日、昨日というか今日、私、ニュースで見ましたけれども、川越で何かパトカーが追いかけていって、立てこもりしている事件があるんですよね。何か強盗を行ったんですか、その跡を追いかけていって。一人捕まりましたけど、今まだ朝のニュースでは立てこもり中だと言っていました。当然現場でこれ逮捕されました、一人。そこで、現場警察はどうするんですか。取調べするんでしょう、そこで。逮捕したときにそこで取調べをして、それがまた調書になってくるはずなんですよ。  ところが、民主党さん、皆さん方が出した法案では、これすべての取調べについて全部可視化しろと。そのためには、これどう書いてあるんですか、「映像及び音声を記録媒体に記録しなければならない。この場合においては、同時に、同一の方法により二以上の記録媒体に記録する」という、非常に大掛かりな記録装置をもってしなければこれできないわけですよね。  だから、そうした場合、こうした現場での対応に、できるんですか。実際に現場調書が取れなくなってしまうおそれがあるんですが、これどう考えておられるんですか。
  38. 前川清成

    前川清成君 今おっしゃったように、取調べ室とこの委員会室とは次元が違うんだ、捜査官被疑者とは対等な立場でないんだとおっしゃる発言こそ自身が私は大変問題だと、憲法の考えているデュープロセスを全く御理解しておられないのではないかと思います。  捜査は、現在の刑事訴訟法においては、被疑者取調べの客体ではありませんので、まずその点の憲法の三十一条以下の刑事訴訟に関する、三十一条から四十条までの詳細な人権規定を御理解をいただかなければならないと思います。
  39. 松野信夫

    松野信夫君 少し補充させていただきたいと思います。  西田委員の御指摘の中で、少し誤解をしておられるのではないかと思いますので、前提の点について御指摘をしたいと思います。  日本の捜査手法というのが非常に限定されている、こういう御指摘がありました。だから取調べが必要だと、こういう御指摘なんですが、その中で、例えば盗聴も認められていないとか、おとり捜査も駄目だとか、司法取引もされていないとか、こういう指摘がありました。確かに、我が国司法取引はこれは採用しておりません。ただ、それじゃ通信傍受全くしていないかというと、そんなことないわけで、既に平成十一年の八月の法律で、いわゆる通信傍受法、盗聴法、これが制定されているわけですね。これは裁判官から発付される傍受令状に基づいて、令状によって可能になっているわけですから、されてないということはないわけです。それから、おとり捜査についても、全くされていないかというと、そんなことないわけで、一部のおとり捜査についてはこれは最高裁判所も認めているわけです。余り細かく言うのもあれですが、これ、最高裁の決定の平成十六年の七月十二日について、大麻の取引についておとり捜査がなされたんですけれども、これは刑事訴訟法百九十七条の任意捜査として許容されると、おとり捜査をしたけどこれは適法だと、こういうふうな裁判例もあるわけで、全くされていないということではないわけです。  ついでにちょっと申し上げておきたいんですが……
  40. 西田昌司

    西田昌司君 そんなことより、今言った質問に答えてくださいよ。
  41. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 簡潔にお願いいたします。
  42. 松野信夫

    松野信夫君 捜査が限定されると言うけど、アメリカの場合は捕まえてもすぐ釈放する、日本はなかなか釈放しない、人質司法ということで取調べだけやると。だから、そういうバランスを考えなきゃいけないと、バランスを考えなきゃいけないということだけはちゃんと指摘したいと思います。
  43. 西田昌司

    西田昌司君 さっきから言っていますが、私が言ったことに答えていただかないと議論にならない。  だから、今言ったのは、例えば、皆さん方が言っている方法だと現場取調べができなくなるんじゃないのかということを言っているんですよ。そのことについて言ってくださいよ。できるんですか。この形でできると言っているんですか。どういう形でできるんですか。  あなた方の法案の中なら、これすべての取調べはですよ、これ撮らなきゃならないじゃないですか。だから、取調べのときにその装置を持っていくということをおっしゃっているわけですか。どういう意味なんですか。
  44. 松野信夫

    松野信夫君 ちょっと質問趣旨が必ずしも判明しないんですが、要するに、我々の方は、取調べ室にビデオ録画できる装置をちゃんと用意しなさいと。これは悪いけどアメリカでも韓国でもやっているわけですよ。我が国の科学力がアメリカ、韓国にそんなに劣るとは我々は到底考えられません。取調べ室にちゃんとそういう装置を置けばいい、それだけの話です。
  45. 西田昌司

    西田昌司君 だから、取調べ室だけで取調べしているんじゃないと言っているんですよ。今警察現場でやっているのは、取調べ室だけじゃなくて、現場でもあれば、そこで任意の話も全部あるんですよ。  実際の現場の話をしてあげてくださいよ。この法律ができると、そういう現場の話ができなくなるんじゃないかということを言っているんですが、刑事局長、答えてください。
  46. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 今、西田委員がおっしゃっているのは恐らく、例えば誘拐の現場でその誘拐犯人の片割れを捕まえたと、直ちに路上でも何でもその犯人を取り調べて、そして人質の在りかを探るとか、そういったような場面ではないかと思います。その場合は、録音録画資機材をまさか、どこにその現場が設定されるかさっぱり分からないわけですから、持っていって調べるとかそれを使うとか、そういったことはもう恐らく不可能であろうというように思っております。
  47. 西田昌司

    西田昌司君 今言いましたように、民主党の案というのは、本当に現場の対応を今どうしているかということをほとんど無視というか分からないままに、とにかく可視化すれば良くなるという思い込みが非常にきつ過ぎると思うんですよ。  それで、例えば裁判員制度の話もおっしゃいましたけれども、私は裁判員制度は基本的に賛成できませんが、決まってしまっているんですが、しかし、この制度ができた根本にあるのは何かというと、いわゆる法曹の方々、難しい試験を受けて、法曹試験を受けて通った方々ばかりなんだけれども、その方々が余りにもオタクの議論になってしまって国民の常識というものがないんじゃないかと、まさに国民の常識というものをもう一度取り戻そうと、そこから始まった話だと私は理解しているんですよ。  ところが、この皆さん方の言う話でいうと、取調べの方法も含め、何かそれこそ犯人の人権ということをお考えになって、犯人じゃない、容疑者の人権ということを考えられる。これはもちろん大事なことではあるけれども、もっと大事なことはどうして治安を守るかと、こういうことなんですよ。で、そのことが欠けているという、その国民の一番の常識が欠けていると思うんです。  そこで、こういうことも含めて、やはり大臣、今日来ておられますけれども、冤罪防止ということが一番大きな問題で、いろいろこれは法務省なんかでも考えてこられたと思うんですけれども、その辺につきまして、今の議論も含めて、大臣に御答弁していただきたいです。
  48. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 西田先生のお話は基本的には非常によく理解できることでございまして、この全面可視化の問題については、もう衆参十回、二十回と委員会質問を受けていると思うのです。で、いろんな質問を聞いたことがあります。いわゆる容疑者以外のでも可視化しろという質問を受けたこともあります。ですから、私は例えば犯罪の疑いがあって逮捕した、その場で話を聴くこともあるでしょうと、これもやっぱり捜査の一環の取調べでしょうと。そこまで全部可視化ということであれば、現実に可能であるかということも考えるべきではないですかという答弁を衆議院か参議院かでしたことがあるんです。  で、西田先生のお話はその点に触れるものではないかなという気がいたしまして、現実問題というのも考えたいと思っておりますが、私は、先ほど申し上げましたように、それは、全く無実の人をまるででっち上げたような形で裁判が行われたという例が現実に生じてしまったということについては本当に真剣な反省をしなければならないと。それは、今、容疑者の人権とおっしゃったけれども、冤罪は絶対あってはならないという一つの巨大な価値があると。  しかしまた、こちらに物すごい巨大な価値があるのは、治安のいい国家をつくるということであって、そのためには真実を常に解明しなければならないと。そのためには、先ほど組織犯罪の話が出ましたけれども、全面可視化と、もう逮捕からすぐ全面可視化ということで本当に真相が解明できるだろうかと。黙ってしまう、演技をする、プライバシーに関して話し合うことすらできないというような状況の中で。私はやっぱり、我々でも、もちろんこの委員会はそれは国会テレビで流れているかもしれませんけれども、いわゆるぶら下がりでカメラを向けられますと多少心境は変化しますからね、我々のように慣れている人間でも。  だから、今までの部分的な可視化についての御批判はそれはよく承りましたし、全然分からないわけではありませんけれども、やはりその感想を聞きますと、緊張してしゃべらなくなった、あるいは急に言葉を選んで物を言うようになったとかいろんな報告がされておるものですから、とにかく冤罪は絶対いかぬが、全面可視化によって取り逃がし、結果としての取り逃がしがひどく増えるのではないかという大きな不安を抱いております。
  49. 西田昌司

    西田昌司君 今、大臣おっしゃったように、やはり弊害があるということを是非民主党の皆さん方にも御認識していただきたいんですね。その中で、じゃどうすればもっと良くなっていくんだと、これはやっぱり我々自民党も何も冤罪がいいなんて思っている者だれもいないんですから、現実問題でもう少し折り合いが取れた話ができるんじゃないかと思うんですよ。  ただ、これが全面可視化すればすべて解決してしまうという、それはちょっと私は思い込みではないかと。現に、現にですよ、今のこの捜査手法が全部私は正しいとは思いませんよ、それはもちろん、問題もあるだろうと。しかし、それは、その上でそれぞれ捜査に当たる捜査官が、やはり自分たちの行っている仕事というのがいかにこれ重要で、これもし間違ってしまうとそれは国民の信頼を損なうだけじゃなくてその人そのものの人権侵害にもなりますし、自分たちの組織自体の信頼を失ってしまうことにもなるので、もう一度、そういうことは捜査員捜査官一人一人のモラルに基づいて是非これはやっていただきたいということを申し添えておきたいと思うんです。  同時に、先ほどから氷見事件、よく志布志事件も話になるんですけれども、氷見事件の場合は非常に私もこれ残念な事件というか、少々奇妙なところがありまして、そもそも真犯人が後で見付かったと、こういう事件なんですよね。だから、これは本当にとんでもない事件ではあるんです。しかし、なぜその真犯人が見付かったのかということを聞いていくと、別の事件で逮捕した人間が警察取調べで分かってきたわけですよね。まさに今の取調べの方法によって実は真相解明されたという一面があるわけです。  もしこれが、(発言する者あり)いや、冗談抜きに本当そうですよ。もしこれを全面可視化で、この一定の捜査だけをやるような形の捜査手法でやっていくとこれはできたのだろうかと、実はそういう気がするんですよ。  だから、ここは実際捜査に当たられた警察に聞きたいんですけれども、今のもし全面可視化になっていたら逆に氷見事件の犯人は見付からなかったんじゃないかと私は、素人考えでありますけれども、素朴な疑問が、思います。是非お聞かせいただきたい。
  50. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 確かに富山氷見事件につきましては、鳥取県警察におきまして捕まった真犯人、これが富山事件も自供し始めまして、そして富山警察に身柄を移して、取調べをして全面自供に至ってこのような事案が発覚したというものでございます。  全過程可視化していたらできなかったのではないかと。先ほどちょうどその逆の、全過程可視化していればそういう無罪事件は起こらなかったのではないかというお話がございまして、言わばそれは仮定の問題で様々な要因があると申し上げましたけれども、そういう意味ではこれはそうすれば必ずそうなるというものではございませんが、ただ、取調べの全過程可視化というものは取調べの機能を大きく損なうということは間違いないところでございまして、そういう中であるいは真相の解明というものにこの事件についても支障を来したという可能性はあろうかというように考えております。
  51. 西田昌司

    西田昌司君 国民は笑っていますよとあなた方はおっしゃっているけれども、もっと真剣に考えなきゃ駄目ですよ。捜査というのは、現実、(発言する者あり)いやいや、あなたがこちらの方に言ってこられるから言っているんですよ。  要するに、捜査というのは実際に犯人挙げていくためには、虚々実々織り交ぜ様々な情報を得ていかなければならないわけです。その中で人権守るのは当然のことだと。しかし、そのことによって、全面可視化によって、じゃ人権が守られ、そしてすべてがうまくいくかというと、そうじゃない部分がかなりあるんじゃないかというのを今ずっと述べてきているわけですよ。そのことを真摯に受け止めるべきですよ。笑っている場合じゃないんだよ。(発言する者あり)そんなこと言っていないじゃないか。いいかげんにしなさい、あなた。  だから、私が申し上げたいのは、こういう捜査可視化ということの意図は私は分かります、冤罪をなくしていこうというね。しかし、そのことによって今たくさん問題点を取り上げましたけれども、結局のところ、このことによって、皆さん方の言っている法律を通してしまうと現場でのまず取調べができなくなってしまうおそれが多分にあると。そしてさらに、この真相を究明、解明していくための方策がこれ奪われてしまう可能性が非常に高い。結果として、これは治安を守ることができなくなってしまうと。  したがいまして、我々はこのことを賛成するわけにはいかないし、是非、民主党の皆さん方にも本当にこの捜査可視化だけじゃなくて全体としてバランスの取れた国民の常識にかなうものを提案していただきたい。そうでないと、皆さん方のおっしゃる話は今テレビに映って、恐らくどちらが非常識なことをおっしゃっているかは国民が理解していただけると思いますけれども、是非やっぱり常識にのっとった提案をしていただきたいと思います。  以上で質問を終わりたいと思います。
  52. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私ども公明党も、この可視化の問題、様々な検討もさせていただきましたし、また氷見事件志布志事件等、そういった問題を抱えて、私たちの党も、三月十四日です、今年の、刑事手続全体の在り方との関連を踏まえて取調べの全体の適正化を図るため、取調べ可視化に加えて弁護人の立会い権の保障や早期の接見交通の確保等を内容とする、あるべき取調べ適正化についてという提言を取りまとめさせていただいて、法務省警察庁に申入れもしたところでございます。それを受けて、四月三日、最高検察庁が出されたのが取調べ適正確保方策でございました。また、警察庁平成二十年度中の取調べ録音録画試行をそれぞれ発表もされたわけでございます。  今回、民主党から全面可視化を目指す、目指すというか全面可視化刑事訴訟法の一部改正案が今回出されたわけでございます。私どもも将来的な全面可視化の方向性ということについては共通するものがあると思っております、あると思っております。ただ現段階で、先ほども御指摘がありましたが、日本の捜査方法の問題、そして今の捜査の現状を考えたときに、直ちに全面可視化ということが果たして本当に我が国司法の中で正しい判断であろうかどうかということについては、いささか疑問を持っているというのが今の我が党のスタンスでございまして、まず検察、警察もそれぞれ可視化の方向で取組を始めたばかりであり、我々は、これらの施策、可視化だけでなく、その他の適正化警察、検察が今歩み始めたその施策の十分な検証を行う必要もあると、こういうふうに認識もしておる次第でございまして、まず法務省警察庁にそれぞれ、様々な問題を抱えた上でどう取調べ適正化を図っていこうとしているのか。概要を簡潔にそれぞれまずお聞きしておきたいと思います。
  53. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま委員指摘されました公明党の三月の提言の趣旨を重く受け止めまして、法務検察当局におきましては、四月三日に接見や取調べに対する一層の配慮、あるいは取調べに関する不満等に対する適切な対応等を内容とする取調べ適正確保方策を公表したわけであります。  概要でありますけれども、まず被疑者弁護人等との間の接見に関する配慮でありますが、取調べ中に被疑者から弁護人等と接見したい旨の申出があった場合には、その申出があった旨を直ちに弁護人等に連絡する。また、取調べ中の被疑者について弁護人等から接見の申出があった場合には、できる限り早期に接見の機会を与えることにする。そして、そうした経過をすべて記録するとされたわけであります。  また、取調べに当たっての一層の配慮といたしましては、刑事施設等における所定の時間帯における就寝、食事等への配慮、あるいは取調べ時間への配慮取調べ時の休憩への配慮、問答式の供述調書の活用等を決めております。また、取調べに関する不満等に対する対応策でありますが、取調べに関して被疑者あるいは弁護人等から不満等の陳述、申入れがなされたときには、上司がその内容を把握し、速やかに所要の調査を行って必要な措置を講じるとともに、調査結果等を記録にとどめる、組織的に対応することにしたわけであります。また、その結果等につきましては、捜査公判の遂行に与える影響等を考慮しつつ、可能な範囲において被疑者弁護人等に説明を行うこととされております。そのほか、取調べ状況報告書を作成した際には、その内容被疑者に確認させ署名指印を求めることとされております。  公明党からは、取調べ録音録画試行に関しましても、裁判員裁判対象事件のうち一般に任意性が争われやすい事件については、原則として録音録画を実施するような御提言をいただきました。この点につきましても、検察は本年の四月から、裁判員対象事件のうち自白事件につきましては、組織犯罪と一部の例外を除きまして、原則として全件について録音録画を実施する本格的な試行を開始しております。  検察当局におきましては、今後、こうした方策を確実に実施することによりまして取調べ適正確保に努めてまいりたいと、こう考えているわけでございます。
  54. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 警察庁におきましては、本年一月二十四日、取調べ適正化指針を策定をいたしまして、そして本年三月、この実施のための取調べ適正化のための監督に関する規則、国家公安委員会規則を制定をいたし、また犯罪捜査規範を四月に改正をしたところでございます。  この内容は、先ほどから答弁で申し上げておりますけれども、捜査を担当しない総務、警務部門取調べのチェックを行うということを主たる内容とするものでございます。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  また、犯罪捜査規範改正によりまして、現在までは身柄拘束被疑者だけですが、任意捜査段階被疑者に対しても取調べ状況報告書を作成をし、そしてその正確性の担保のため、その取調べ状況報告書に被疑者から署名押印を求めるということにしております。  接見につきましては、これは検察と同様でございますけれども、取調べ中において弁護人等と接見したい旨の申出があれば直ちにその申出があった旨を弁護人に連絡する等、弁護人等との接見に一層配慮するということを本年五月八日、通達をしているところでございます。  また、録音録画につきましては、裁判員裁判における自白任意性効果的、効率的な立証に資する観点から、検察庁による試行の検証結果もしんしゃくしながら、今年度から取調べの一部録音録画試行を実施することといたしたものでございます。
  55. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 法案提出者にお伺いを幾つかしておきたいと思うんです。  この法案を出すまでに様々な検証もなさったと思うんですが、その中でまず冒頭お伺いしておきたいのは、今捜査機関側からいろんな意見が出てきたわけですね。これを全面可視化することについてはこういうことがあるよ、こういうことがあるよということがあったわけでございまして、こういった捜査機関側に対するヒアリングというか調査というものを民主党としてはどうなさったのかをまずちょっと伺っておきたいと思うんです。
  56. 松岡徹

    松岡徹君 そもそもこの法案を提出するに至っての、参議院で提出する動機といいますかきっかけは、木庭先生も御存じのように、氷見事件あるいは志布志事件でございます。しかし、こういった自白信用性が問われる裁判、あるいは冤罪を生み出すあるいは生み出してきた様々な過去の事件の中で問われるのが自白信用性でありまして、その自白が取られるのが取調べなんですね。  民主党としては、過去に二〇〇三年の段階で、衆議院ですけれども、党として弁護士の立会い権を付与する法案を提出いたしました。そのときにも、そのきっかけはそういう取調べをどう公平にするかと、防御権も含めて与えていくかという観点でございました。その翌年の二〇〇四年に、それに今度は可視化という法案を同時にプラスして提案をさせていただきました。  いずれも衆議院ではそれぞれ解散等によって廃案になったという経過がございますが、今回もそういった議論を積み重ねた上で出したわけでありますし、同時に、附則にありますように、来年から裁判員制度が始まります。過度の市民裁判員負担を掛けることのないように、あるいは裁判が迅速に行われるようにということで、可視化は今取り入れるべき課題であるということも含めて検討してまいりました。  木庭先生御指摘のように、その間にそれぞれ我が党としても警察あるいは検察の方からの意見のやり取りもさせていただきました上で、今回の法案にまとめてきたという経緯でございます。
  57. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほど法務省刑事局長警察庁の刑事局長が今後の適正化ということでこんな方向でやりたいという話をしたわけですね。それはそれで、これまでの捜査の在り方からすれば、私はかなり変わってきた部分もあるし、可視化についても初めて警察として、その内容がどうかということは別にして、踏み込み始めるということも出てきた。  私は、やっぱりそういった経過を踏まえる必要があるんではないかなという気もしているんです。つまり、試行するとおっしゃっているわけですから、それを十分踏まえる必要もあるでしょうし、またあわせて、一部録音録画ということに、現実検察庁も既に行っている、警察が行う、こういった経過をやはり我々国会としては見詰める必要もあるのではないだろうかと、こんな思いもするんですが、その点について法案提出者はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  58. 松野信夫

    松野信夫君 試行状況について見詰めたらどうか、こういうお話でありますが、私は、まず一点、一部の録画録音、これは既に検察ではもう始まっている。そして、警察の方でもやろうとしている。これは恐らく、録画録音はやっぱりしなきゃならないだろう、こういうお気持ちを持っておられる。そういうお気持ちを持っておられることは、これは評価をしていいと思います。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  しかし、逆に考えると、一部の録画録音だけということになりますと、私はかえって弊害が出るおそれもある、このように考えております。というのも、要するに、無理やりに自供を迫って自供させる、そこのところはビデオに撮らない。もうでき上がった、もう観念をして自白をした、その後の言うならばおいしいところだけビデオに撮る、そういうのを場合によっては裁判員にも見せるということになると、実はそれがうそ自白うその自供だった場合でも、裁判員はそういうきれいにでき上がったところだけ見せられるということになると、ああ、この自白というのは真実だというふうに誤解をしてしまうおそれがむしろあるのではないか、この点をやはり考えなければいけない。  ですから、やるなら私はもうやっぱり最初から一気にやらなければいけない、特に警察段階で一気にやらなければいけない、これを私どもは考えた、これが一つと。  それから、もう一つ指摘したいのは、確かに警察、検察の方で、長時間の取調べはいけませんとか、あるいは脅迫的、威迫的な取調べはいけませんとか、そういうような指針を出しておられる。しかし、これはまあ言うならば当たり前のことでありまして、残念ながら、これまでの歴史を見てまいりますと、そういうふうに一定の文書なり何なりで指針は出される、犯罪捜査規範というのもきちんと書いてある、こういう違法な取調べをしちゃいかぬと、あるいは取調べの相手方の気持ちも十分踏まえてやりなさいと、そんなことはちゃんと書いてあるけれども、現実にはそうなっていなかったという長い歴史があるわけです。  そういう歴史をひもときますと、やはりここで思い切って全面的な可視化をしなければ、幾ら何回も何回も適正化適正化というのばかり繰り返していても現実には一向に適正化がならない、こういう歴史を私たちは学習すべきだと、こう思います。
  59. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その一方で、やはり全面可視化については、先ほど自民党の先生からも意見があり、また警察庁も意見を申し述べておりましたが、やはり全面的可視化、すべてを可視化ということになってしまうと、取調べの最中に言及したような被害者のプライバシーという問題について、それが後に公になってプライバシー侵害という問題が起きるのではないかという指摘はいつもなされます。このプライバシー侵害という問題についてどうお考えになっていらっしゃるのかというのがまず一点、確認をしておきたいことであり、もう一つは、やはり可視化という問題、もう映るという問題、これも先ほどから大臣もおっしゃっていましたが、そうなると、やっぱり被疑者供述をためらってみたり、かえってそのことが、犯罪動機を含めた事実の詳細の解明が不可能になってしまって、可視化によって真実から遠のくというおそれがないのか。事件の真相をきちんとするというのがまさに捜査の基本であり、ある意味では被害者やその遺族に対してこたえられない結果になってしまうのではないかという指摘があるのも事実であって、この二点、プライバシーの侵害という問題、そして全面可視化が真実から遠ざける、この二点について、それぞれ民主党として、法案提出者としてどう考えているか、申し述べていただきたいと思います。
  60. 前川清成

    前川清成君 そもそも、現在の取調べにおきましても、プライバシーにわたること等が取調べ室でやり取りされて、それがある場合には手控えに記載され、それが調書に記載されているということですので、取調べ室の中でプライバシーに関する情報がやり取りされるということは全然変わらないのではないかなと、そんなふうに思います。  ただ、ビデオに撮られて、それが流出することによってプライバシーが侵害されてしまう場合もございますので、今回、法案の百九十八条の二の五項におきまして弁護人らに複製の適正管理義務を義務付けますとともに、第六項では弁護目的以外の利用を禁止しておりまして、これに違反したときは八項で一年以下の懲役に科すことになっております。さらには、弁護士法七条一項によりまして禁錮以上の刑に処せられたときは弁護士資格を喪失することになりますので、十分なサンクションを置いているのではないかと、そんなふうに思います。  二点目の真相の解明について、これは先ほどからも何度もやり取りをやりましたので、もうあえて重複はいたしませんが、私たちは、むしろこれによって真犯人が逃げないという意味で真相解明になると思っています。  それと、そもそも、今木庭委員が言及された、日本において精密司法と言われるような、動機であるとか本人の生い立ちであるとか、それが判決に詳細に書かれる。先日の光市の死刑をするかどうかの判決も、十時ごろに判決の言渡しが始まって、最後が読み上げられたのが十二時ごろ。二時間ぐらい掛かる判決というのは何百ページもの判決なんですが、来年五月二十一日から裁判員裁判施行されることになります。そうなりますと、今まで精密司法と言われていた何百ページにも及ぶような判決を書くこと自体がかなわなくなってしまいまして、裁判員の在り方が捜査に対して影響を与えてしまう、それゆえに今までの精密司法というのがそのままには当てはまらなくなるのではないかと、この点だけ御指摘を申し上げたいと思います。
  61. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その辺が、今、全面可視化にすぐ法律で踏み切るべきか、もう少し状況を掌握すべきかと、その辺が少し考え方がいろいろあるなという思いをしながらお聞きをしておりました。  法務省の方に少し確認をしておきますが、検察においては今、取調べ録音録画試行を行っているということを先ほどお話をされました。実際試行されてみて、その実施状況効果について、特に取調べの適正の確保に資する面という面からどうそ状況を掌握されているのか、法務当局からお伺いをしておきたいと思います。
  62. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 検察庁における取調べ録音録画試行でありますけれども、平成十八年の八月から実施されております。  今年の三月末までに受理された事件について申しますと、三百八十八件既に実施をしております。去年の暮れの段階で百七十件ということを最高検の検証で申し上げましたけれども、その後も件数が増えているということでございます。今年の四月以降は、先ほど答弁申し上げました公明党の御提言も受けまして、裁判員対象事件のうち自白事件については、一部の例外を除きまして、原則として全件、本格的な録音録画試行をしているということで、ますます件数的には増加することが見込まれるわけであります。  この試行効果でありますけれども、今年の三月二十一日に公表されました最高検の検証取りまとめによりますと、試行した方法の録音録画、つまり取調べの機能を損なわない範囲内で検察官が相当と認める部分を録音録画するというやり方でありますけれども、これは裁判員裁判自白任意性効果的、効率的に立証する手段になり得ると評価されております。  そうした方法であれば、取調べの機能を害することを防止することもおおむね可能ではないかと思われるわけでありますけれども、しかし検証の報告書の中には、被疑者が実際に供述態度や供述内容を変化させたというような例も報告されております。それからまた、録音録画を拒否したという例も報告されておりますので、この辺りは今後更に試行を重ねて具体的に分析をしていく必要があるだろうというふうに考えております。  この取調べ録音録画取調べの適正の確保の関係についてのお尋ねでありますが、いったんこの録音録画を開始いたしますと、仮に検察側立証にとってはマイナスの供述が出てきても、録音録画を中断せずに最後まで録音録画をすることにしておりますし、また事後の編集ということも禁じております。その録音録画をする取調べの前に適正でない取調べが仮に行われていた場合にも、それは録音録画時における被疑者供述内容や態度におのずと反映されることになりますので、捜査機関といたしましては、言わば撮り直しの利かない本番の録音録画を行うわけでありますので、取調べ適正確保に一層意を用いることになり、そうした意味で、今回やっている試行の方法は取調べ全体の適正確保にも資する面があるというように評価しているところでございます。  なお、一つ申し上げますと、相当数の録音録画試行を行っているわけでありますけれども、実際にこれが裁判所証拠として提出された例はまだ非常に限られているわけでございます。これは、実際はその自白任意性というものが裁判で問題にされる例というのが決して多くないという実情を反映していることだろうというふうに考えております。
  63. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私も持ち時間がもう残り少なくなったんで、最後に大臣にお聞きしておきたいと思うんです。  私は、海外の事例等を引くと、やはり全面可視化の問題というのは念頭に置きながら考えなければならない問題であり、その意味では、民主党さんがそういった問題提起をされたことについては私自身は高い評価をしております。  しかし、可視化の進展とともに、本当に捜査の手法というのを日本の場合どうすればいいのかというような整理が今我が国でまだ付いていないという気もいたしておるのも事実でございまして、もし全面可視化という問題をするんであるならば、それとともにやはり刑事手続の見直し等を含めたものがセットになった形でなければ、なかなか私は難しいところがあるのではないか。一番大事なことは、やはり刑事司法全体、そのバランスという問題も大変大事な問題だと思っておる一人でございます。  そういったことを含めて、大臣に対して、今回こういった法案出されたわけですが、この刑事司法の中における、どうこれを向上させ、その中で可視化という問題をどう位置付けていかれようとしているのか、大臣の見解を伺って、私の質問を終わります。
  64. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 度々申し上げておりますように、犯罪のない国、社会をつくる、凶悪犯罪の少ない国家、社会をつくるというのが安全、安心という意味でも国民みんなの願いであろうと思っております。  そのためには、犯罪を犯した人間が確実に検挙され、犯した犯罪が明らかにされ、教唆した人も共犯者も明らかにされて、正しく裁判を受け、正しく裁かれるということが一番大事なんだろうと思うわけでございまして、それぞれの国は同じような目標を持っておって、独特の、独自の刑事司法制度というんでしょうか、あるいは捜査の方法というんでしょうか、そうしたものをつくり上げているんだろうと思います。  例えば我が国では、確かに絶対あってはならない冤罪ということを私は度々申し上げておりますが、これは、有罪率が日本は高過ぎるなどということを言う方もいますが、これは、被疑者というか、この人は有罪であるという確信がもう極めて高いものにならなければ起訴はしないと。ところが、イギリス辺りは、五〇%ルールというんでしょうか五一%ルールというんでしょうか、この人が有罪か無罪かという確率でいうならば、有罪の確率の方が幾分高いなというときに起訴して裁判にかけるということが許されていると。これは捜査手法の問題以前の問題として、全く違う司法文化なんだろうと、私はそういうふうにとらえるわけでございまして、そういう意味で、外国でやっているから日本もやればいいという考え方には全くくみする気持ちはありません。  ただ、木庭健太郎先生のおっしゃることはすべてごもっともでございまして、ちょっと違うところもありますけれども、郷土の先輩の木庭先生のおっしゃることはおおむね全部理解できるわけでして、だから、当面はとにかく間違った取調べが起きないように、自白任意性信用性が高まるようにということで公明党さんの御提案はほとんど適正確保の方針に生かしてきていると、こういうふうに考えております。
  65. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  66. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  この取調べ全面可視化の民主党案の審議入りを私どもも強く速やかにということを今国会冒頭から、あるいは先国会から求めてきておりまして、その意味でも今日のこの実質審議入りというのは大変歴史的な意義が深いものだというふうに思っております。  これまでの各党の御議論をお伺いをしておりましてもやはりその感を深くしておりまして、だからこそ、私は、この委員会で、学識経験者はもちろんのこと、冤罪事件の元被告人皆さんも参考人としてお招きするなどして、この国の、私たちの国の刑事司法、中でも取調べを中心とした供述証拠の採取過程がどのような問題を抱えているのかと、このことを徹底して議論を尽くすのがこの参議院法務委員会の大きな国民的な役割なのではないかと思い、求めてまいりましたが、それが残念ながらかなわず、今日、この午前中の審議で採決を行うという方向が理事会で確認をされて、私は同意はしませんでしたが、極めて残念に思っております。  ここまでの議論をお伺いをしましても、様々な論点と、そしてそれぞれについての、私は半ば思い込みではないかという議論も散見されるところでありまして、これをきちんと国民的な議論に堪えるだけの審議を尽くすというのはこの国会の責任なのではないでしょうか。  これまで提案者の中からもこの法案の提出に至る経緯についてお話がございましたけれども、私なりに理解をするなら、従来の密室・人質司法、そしてその中で自白が強要され、それが調書という形で証拠化され、これに基づいて刑事司法が運営をされてきたと、それが数々の重大な人権侵害を生み出してきたということがとりわけ志布志事件氷見事件によって白日にさらされて、国民的な世論がこの捜査の適正、取調べの適正、可視化を求めているという状況の中での審議でございます。  もう一点は、裁判員制度の実施を前にして、多くの国民皆さんがこの状況の下で、つまりこのような刑事捜査に関する人権侵害状況が伝えられる中で市民が人を裁くことができるのかと、この強い懸念がこれだけに声が上げられているわけですね。だからこそ、私たちが、立場の違いはあれ、徹底して審議を尽くして国民皆さんにきちんと御判断のいただける議論にすると。民主党からも自民党からも、今日、国民の常識という言葉が出ましたけれども、どちらが常識にかなうのかというのは、これは国民皆さんが決めることでございます。それをきちんとはっきりさせるのがこの国会の責任だということを改めて強く申し上げたいと思うんです。  そこで、私は今日、質問としては部分可視化という、特にこの一年の検察庁、警察庁の取組を提案者皆さんがどのようにお考えかをまず伺いたいと思うんですけれども、通告の順番とは違いますが、まず警察庁お尋ねしたいんですね。  先ほど来、これまではやってこなかったが、部分的な録画録音試行をするというお話がありました。その計画の中身そのものはもう御答弁があっているからいいんですけれども、昨年ちょうどこの時期に、刑事局長とも私議論いたしましたが、警察庁はそのような録画録音には大きな弊害があると。例えば、今日も出ました真実を語ることがためらわれるとか、あるいは組織犯罪の場合の報復のおそれがあるとか、プライバシー侵害のおそれがあるとか、そういったようなことが言われてきたわけです。  そのようにおっしゃってきた録画録音の弊害というのは、これから試行しようとするそこの場面においては一体どうなるのかと私は理解がかなわないんですけれども、いかがですか。
  67. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 録音録画につきましては、今委員も御指摘になりましたように、様々弊害といいますか、そのマイナス点ももちろんあろうかと思います。  そういったことを、昨年秋に法曹三者の協議会に参加して、私どもも録音録画ということについて議論に参加をいたしました。それから、検察庁が既に録音録画試行をしておりまして、その試行の結果、どの程度の言わばマイナスが、どういう対応でやればどの程度のマイナスがあるのかというようなことも慎重に見極めてまいりました。  そういった点を踏まえまして、今回、録音録画試行に踏み切るわけでございまして、その取調べ機能をやっぱり損なわないような形で、そして裁判員裁判の中で供述任意性効果的、効率的に立証していく方策を探るために今回試行に踏み切ったと、こういうものでございます。
  68. 仁比聡平

    仁比聡平君 そうしますと、これから試行されるというそ取調べの場面も、これは当然、何というんですかね、リハーサルではなくて現実の事件の中で試行されるわけですから、当然、その事件供述証拠の採取過程にかかわるお話なわけですけれども、そこについて取調べの機能は損なわれないと、録画録音をしても損なわれないというふうに判断をされたんですか。
  69. 米田壯

    政府参考人米田壯君) これは、確かに御指摘のとおり、模擬裁判とか模擬捜査ではなくて現実の生の事件の中でやっていかなければいけませんので、当然試行でありまして、何らかの踏み出しはしなきゃいけませんが、余り大胆なことをやってしまって、もしその事件の真相解明に大きな影響を与えるということであってはならないと考えております。  したがいまして、試行の進め方については一歩一歩着実に、慎重にそういった取調べの真相解明機能を見極めながら進めてまいりたいというように考えております。
  70. 仁比聡平

    仁比聡平君 ちょっと端的に聞きますけれども、試行の中ではどこの場面をどういった判断によって録画録音をするというふうに決するわけですか。
  71. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 捜査が一定程度進展をいたした段階で、犯人が一応心から自白をしているというような場面がありますれば、それを、供述調書の録取内容被疑者に読み聞かせ、そして署名押印を求め、そしてその後、自己が供述した内容に間違いがないこと、任意にした供述であること等を語っているような状況、これを録音録画することにいたしたいというように考えております。
  72. 仁比聡平

    仁比聡平君 先ほど民主党の先生の質問の中でも出ましたけれども、今の局長の答弁は、心から自白をしているという場面以降の読み聞かせや捺印、そういったところを録画するんだと、そこに限るんだという理解でいいですね。
  73. 米田壯

    政府参考人米田壯君) 先ほども申しましたように、これ試行でございますので、ある程度いろんなことは試さなければならないとは思っております。しかしながら、一方で生の事件を扱っておりますんで、その事件の立件そのものが危うくなるということはあってはならない。そういったことで、今申しましたような方法で取りあえず試行をするということでございますが、試行の結果につきましてはまた検証いたしまして、その後更により良い方法を探ってまいりたいと、このように考えております。
  74. 仁比聡平

    仁比聡平君 今の自白をしたというところからしか録画はしないとおっしゃっている点について、提案者のどなたかにお尋ねをしたいんですけれども、調査室の資料の中に、三月の自民党さんのこの問題についての中間提言ですか、というのの資料がございまして、その中に、裁判員制度の下で自白任意性について裁判員にも分かりやすい立証を行うということが一つの目的として書かれているわけです。  今ほどの警察庁の御答弁からすると、心から自白をしておりますという被疑者供述映像だけが録音録画をされて、裁判員の前に出てくるのは、あるいは裁判官ももちろんですけれどもね、キャリア裁判官も含めて裁判所の前に出てくるのは、映像といえばそういう映像と。これが本当に裁判員制度の下での自白任意性についての立証に資するのかと。私は逆に、裁判員を誤らせる、裁判所を誤らせるということになりはしないのかという強い懸念を持っております。  例えば、裁判所が去年の秋ですかね、十月、東京地裁でこれは検察取調べのこれ試行の中でのDVDだと思いますけれども、これを証拠採用はして法廷で上映はしたけれども、裁判所証拠価値を過大に見ることはできないという判決をした例がございます、御存じかと思いますけれども。この中で判決は、自白から一か月後に十分余の間、自白した理由、心境を簡潔に述べたものを撮影したにすぎず、自白に転じるまでの経緯を撮影したものではないと、調書任意性についての有用な証拠として過大視することはできないというふうに判決をしたわけですね。  職業裁判官刑事裁判の実情をよく心得ておられる裁判所にとってみれば、今検察庁やあるいはこれから警察庁試行しようとしているそういう録画録音というのは、そういう性格のものに私はなると思います。けれども、こういった媒体がどんどんたくさん裁判所に出てくるという状況になったときに、裁判員がどんな心証を持つのか、あるいはそのような一部録画録音裁判員にも分かりやすい立証を行うものだというふうにとらえる立場というのは、一体その刑事裁判における事実認定や心証形成というのをどんなふうにお考えなんだろうかと改めて強く疑問に思うんですが、提案者、どなたかいかがでしょう。
  75. 前川清成

    前川清成君 先ほど今野委員質問に対して裁判員皆さん方負担という点でお答えをいたしましたけれども、裁判員の分かりやすさという点でもまさに同様ではないかと思っています。  すなわち、一部の可視化であれば、被告人が法廷で訴えている、脅迫されたとか、その違法、不当な取調べ状況というのは録音録画されておりません。したがって、法廷で再現することができません。その結果、またやっぱり法廷で被告人質問捜査官の証人調べという水掛け論を繰り返すことになって、結局、先ほど職業裁判官でさえその任意性の判断がなかなか難しいんだというお話を申し上げましたけれども、結局、裁判員皆さん方にとっては、法廷で述べている被告人を信じていいのか、捜査官を信じていいのか、全くつかみどころがない状況になってしまって、一部可視化というのは大変大きな問題があるのではないかと私たち考えています。
  76. 仁比聡平

    仁比聡平君 法務省刑事局長に同じ点を尋ねておきますけれども、今、これまで試行してこられた部分的な録画録音なんですが、これをどの場面を撮影するということにするのかというこの基準やその決し方、これについては、最高検の試行の検証についてという、そのものを見ますと、おおむね二つの類型が録音録画の対象とされているというような分析もあるようですけれども、これ今どんなふうにしているのかという点、どうですか。
  77. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員指摘されましたように、最高検の検証報告書には二つの類型が記載されておりますけれども、これはまだ試行段階でありますので、そこに限定するということではありません。要は、裁判員裁判の下で自白任意性効果的、効率的に立証するという観点から、最も適切と考えられる場面について録音録画試行していくということでございます。  同じ検証の報告書の中に、実際にどういう場面について録音録画を行ってきたかというところもございまして、一番多いのがやはりその事件で争点となりそうな事実関係についての取調べ、これが一番多かったわけであります。それから、自白した理由について調べるということもございましたし、また自白するまでの取調べの経過がどういうものだったのかという点について取調べを行うというようなことも挙げられているところでございます。  この辺り、先ほど申し上げたような目的に照らして、何が最も適切かという点で検察官が判断して試行しているという状況でございます。
  78. 仁比聡平

    仁比聡平君 大野局長も、これまでのままでいいとは思っていらっしゃらないのかなというニュアンスを今の御答弁の中でも感じるんですけど、もうちょっと拡大していかなきゃいけないんじゃないのかという方向をお持ちなんでしょうかね。どうなのかな。いや、いや、もう答弁求めません、あえて。  検証の中で類型として二つ出ているのは、その一は、既に作成し証拠調べ請求を予定している自白調書、これを被疑者に示すなどして自白の中身について聴くという場合。二つ目は、被疑者供述を録取した検察官調書について、被疑者が読み聞かせを受け閲読する場面、それを確認して署名する場面を録画録音するというものという、この二つと言っているんですよ。  だから、警察庁がこれからやろうとしておられると御説明になっているのと大して変わらないですよね、と私は思うんですよ。それを裁判員を始めとした裁判所に、裁判員対象事件じゃなくてもですけれども、争われたときに出して、だからといって、これまでの任意性をめぐる問題や供述信用性をめぐる問題が解決されるとは私には到底思えないわけでございます。いずれにしても、その録音録画を部分可視化という場合は、どこをやるのかというのはこれは捜査機関の側が決することになりますですね。  その警察やあるいは検察官が一体どのような立場でこれまで捜査をしてきたのかということが随分問題とされてきたわけですが、志布志事件について一つだけちょっと紹介をいたしますと、提案者松野先生もこれからも恐らく随分取り組んでいかれると思うんですが、取調べ小票それから内部記録の問題がございます。例えば、ある取調べ小票によりますと、ある被疑者はその志布志事件において、十三回の会合に出席して総額百七十八万円のお金をそれぞれ受け取ったんだというようなことを取調べ室で供述させられているわけです。これはあり得ないことなんですね。  私もこの委員会で四回の買収会合、その特定がどうしてなされたのかという議論をしてきましたけれども、実は、初めから四回というふうに鹿児島県警は特定をしていたわけではなくて、ですから、たたき割りが続けられていた時期の元被疑者供述の中には、四回だとか七回だとか、十回だとか十回以上だとか、十三回ありましただとか、様々な供述が行われているわけです。こういったありもしない事実がさもあったかのように供述がなされて、それがあり得ない形で一つに収れんしていくというプロセスが冤罪を生み出した、権力犯罪だと指摘をされているわけですよ。この過程を検証可能にすることなしに、一体どうやって再発を防止するのでしょうか。  もう一つ、内部記録にかかわって、検察が県警と訴訟方針の打合せをしているわけですけれども、その中で川畑元被疑者の踏み字の問題についてこう言っているくだりがあります。これは松野先生、取り上げられたことがあったと思いますが、磯辺警部が、結論は、すべては自白を得るための手段といえばそれまでであるが、それで自白が取れるのかという疑問も感じる、結果的に有形力の行使と言われても仕方がないというふうにその会議で語ったときに、地検の検事は、今の警部の考えは絶対言わない方がいい、言えば追及される、尋問されたらとぼけて、意見を聞かれたら門前払いにするか、先ほどの警部の考えを証言したら結果的に自白を取るためと結論付けられ、国賠に対しても物すごい影響を与えかねないというふうに、法廷でどう臨むべきかのアドバイスをしているわけですよ。  こういう警察官やあるいは検察官が、一〇〇%みんながみんなそうだとは言いませんよ、だけれども、そういう取調べ官が自ら、ここの場面は録画する、こいつは今正直に語っているからこの映像を撮っていればこれは裁判員にいい説得材料になるだろうと、こんなやり方やったら無法を覆い隠すということになるじゃないですか。そして、実際そういうことが起こるんじゃないかという懸念が刑事司法への国民の信頼をどんどん深く傷つけていくし、そういった事態が取調べ室の中では行われているんじゃないかという思いを抱いたままの市民裁判員が、どうやって出てくる証拠を信頼すればいいんですか。  私は、こういう部分可視化というのは本当に極めて問題だと思いますが、こういった志布志事件取調べ状況、その教訓から考えても、私は今こそ全面可視化こそが求められていると思います。提案者、いかがでしょう。
  79. 松野信夫

    松野信夫君 もう私の方からさして答弁する必要がないほど仁比委員の方が質問の中でお触れいただきましたので、私も仁比委員の今のお話、全く大賛成でございます。  先ほどから申し上げているように、一部の可視化をするというと、どうしても取調べ側にとって都合のいいところだけ録画録音してそれを裁判員に見せる、これは結果的に非常に誤った、ミスリーディングなやり方になりかねないわけであります。それを、仁比さんも言われるこの志布志事件というのは、我々にある意味では悪い教訓として与えているのではないか。ですから、その点を十分に私どもも検討させていただいて、やっぱりこういう権力的な犯罪、これをやっぱり防止する観点からも、全面的な可視化をしないとかえって弊害が発生する、こういうふうに考えているところです。
  80. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間がもう少しになってきまして、最後のテーマになるかもしれないんですけれども、民主党の皆さんの御提案になるこの全面可視化ですね、これがかなったときに、その記録媒体をどのように使っていくのかという、この問題がございます。  私は、取調べの対象となる被疑者のプライバシーの問題だとか、あるいは組織犯罪に関与する人物の背景、あるいは背景の陰の黒幕というような、こういう背景を取調べの過程で捜査機関が聴くということはあり得るし、それをしゃべるということはあり得ると思うんです。これが、カメラが入ることによってその話そのものが全くできなくなるという状況になるのかと。これはそうなってしまうから取調べのすべてが台なしになってしまう、根底から覆されてしまうというような趣旨の御発言も今日もありましたけれども、これがそうなるという、何というんですか、科学的なといいますか、そういう供述心理といいますか、そういうようなものというのは、私はこの国会の場では議論をされてないと思うんですね。  一年前から、警察取調べ官はそう思われるかもしれないけれども、だけれども、そのことというのは何に基づいてそうおっしゃっているんですかといいますと、今も御発言がありましたけれども、経験に基づくものですというお話があるんですよ。そうなると、刑事司法は一切触っていけないということになるでしょう。なるでしょう。だから、そのことをきちんと議論をしていかなければならないんですよ、徹底して。  私は、実際にカメラが入っても、それは最初戸惑いはあるかもしれません。今試行の中で、いや、カメラ遠慮してくださいとおっしゃる被疑者がいるのかもしれませんけれども、それはそれが当たり前になればさしての問題は起こらないのではないかと私は思っているんですが、それが正しいかどうかも皆さんとよく議論をしなきゃいけないと思っています。  ただ、録画、記録媒体をどう使うのかという問題。刑事裁判は公開の法廷ですから、ここの場ですべてが上映されるということになれば、うちの親分は実はこういうふうに指示をしましてというような話をしゃべりにくいという人が出てくるというお話もあるのかもしれないんですが、この辺りを、つまり刑事訴訟法上の媒体の利用の仕方というのをどういうふうに考えるかと。これまでは検察の側が有罪立証をするというそのために必要な証拠請求をされて、それを裁判所が採用するかどうかという場面で議論されていたと思うんですが、これからはどうするというお考えでしょう、提案者
  81. 松野信夫

    松野信夫君 また大変いい御質問をいただきました。  最初の前半部分について、私の経験からしても、案外、例えば暴力団員が親分のことあるいは組織のことというのはこれはしゃべっているんです。しゃべらない人はしゃべらない。これは、テレビが入ろうと入るまいと、しゃべる人はしゃべるし、しゃべらない人はしゃべらないんです。  私自身の経験から言うと、日弁連の民事介入暴力対策委員会というものがありまして、これは暴力団対策をやっていたんです。私もそのメンバーになっておりまして、当時、日弁連は法務省警察の方の御協力をいただいて膨大な暴力団員がかかわった供述調書を見せていただく、それを分析して、暴力団員というものが親分のこと、組織のことをどういうふうにしゃべっているのか、これを徹底して調べたことがありました。私もかなりチェックしましたけれども、供述調書の中でかなりしゃべっています。うちの組は組長がだれ、若頭がだれ、こういう指示系統になっています、これちゃんとしゃべっている。だから、しゃべる人はしゃべる。ですから、こんなのは供述調書として僕らも見れるわけですから、ですから、テレビカメラが入ったから一切それはしゃべらなくなるというようなことには私はならないだろうというふうに思っております。  ですから、そういうふうにして撮られたビデオというものは、あくまで供述調書任意性があるのかどうかというために実際の法廷で取調べがなされるわけですから、我々は全面的な可視化、全面的に録画録音というふうにこの法案ではうたっておりますが、現実に法廷で取り調べられるというのは、何もそれを全部再生するというわけでなくて、やっぱり任意性の点を判断するに必要な限度、あくまで弁護人から見てその防御に必要な部分に限って法廷で再生される、こういうふうに考えています。
  82. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間が残念ながらなくなりましたけれども、論点をきちんと整理して、現場の実態を、何というんですか、やじの、怒号の飛ばし合いではなくて、きちんと事実としてこの委員会の場にテーブルにのせて、各党いろんな懸念もあるいは国民的な期待もある中ですから、この議論を徹底して尽くすということがやっぱり求められているということを改めて強く申し上げまして、私の質問を終わります。
  83. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。  いわゆる取調べ可視化法案、やっと本日、実質審議にたどり着くことができました。昨年の十月にこの法案、参議院に出されたわけでございますけれども、この間の提案者の御努力、御見識に心から敬意を表させていただきたいというふうに思っています。  私も今日の議論を聞いておりまして、本当にたくさんの論点が出てまいりました。願わくば、このことについてもう少し論議を掘り下げる、あるいは私の場合は、研究者等をこの委員会に呼んでいただいて、今の訴訟構造とのかかわりとかあるいは取調べの実務なども踏まえながらもう少し論議を続けてほしかった、そういう思いは強くあるわけでございますけれども、今日で採決ということでございますので、残念ながらそれに従わざるを得ません。是非、今日の委員会でこの法案をすっきりと通していきたいと、こういうふうに思っているところでございます。  最初に、法務省の方にお尋ねをしたいというふうに思っておりますが、私どもは取調べの全過程の録音録画、これが必要であると、こういう立場。一部の可視化はかえって問題をおかしくする、真実の発見を遠ざける、そういう懸念すらあると、こういうふうに思っておるわけでありますが、皆さんはそういう立場ではない。皆さんは、今日もいろいろ御答弁やあるいは発言ございましたけれども、説得を通じて被疑者取調べ官との信頼関係を築くことが可視化をやると困難になり、被疑者供述をためらわせる要因となる、その結果、真相をその分遠ざけてしまうと、こういう議論をされているわけですよね。これはこの委員会でもそうですし、この間ずっとそういうことをやってこられました。  そこで、お尋ねをしますが、志布志事件では結局十二名の元被告のうち半数以上の方が自白をしているわけですよね。富山氷見事件でも被告人とされていた方は取調べでは自白をしているわけです。最初にお聞かせをいただきたいのは、こうした人たち志布志あるいは氷見で自白をした人たちは、取調べ官の説得を通じた信頼関係に基づいてこれは自発的に自白をしたと皆さんはおっしゃるんですか。これは先ほど来いろいろ議論がありましたけれども、これは是非聞かせていただきたい。  私は率直に言いまして、密室に連れ込んで、これは言葉は悪いけれども、締め上げて、よく言う言葉ですよね、それで引き出したと、そのまさに端的な表れだと、こういうふうに思うんだけれども、皆さんは、志布志あるいは氷見の自白をやった人たちについては取調べ官との信頼関係の中で自発的に話していただいたと、今でもそういうふうにおっしゃるんですか、明確に御答弁ください。
  84. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 志布志事件について申し上げれば、判決の中でも誘導的等の取調べが行われたというような認定が行われております。したがいまして、その志布志事件における自白が、先ほど申し上げた説得によって信頼関係が形成され、それによって真実が吐露されたと、そういう見方はしておらないところでございます。
  85. 近藤正道

    ○近藤正道君 富山
  86. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 富山につきましては、取調べの適不適については特段の指摘はなかったかというふうに理解しておりますけれども、しかし最高検の検証の中でも、この事件においても供述信用性自白信用性吟味等において十分でなかったという反省がなされておりまして、その意味で、この氷見事件におきましても、取調べも含めて反省すべき点が多々あったというように理解しております。
  87. 近藤正道

    ○近藤正道君 富山事件についても、氷見事件についても、誘導、脅迫、違法の取調べによって虚偽の自白が行われたという整理でいいんでしょう。  端的に答えてください。
  88. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 答弁先ほど申し上げたとおりでございます。
  89. 近藤正道

    ○近藤正道君 全然はっきり答えない。  法務大臣にお尋ねをいたしますが、二〇〇七年、去年ですね、二〇〇七年の五月の十八日、国連拷問禁止条約に基づく日本政府の第一回報告に関する国連拷問委員会の最終見解が出されました。この中で同委員会は、日本政府に対して、取調べ可視化ほか四つの点について一年以内に日本政府の情報提供、追加の情報提供を求めた。この期限が先月の末なんですよ。  そして、私はどういうふうな日本政府が報告をするのか注目をしておりました。当然取調べ可視化を実現すべきだと、国連拷問禁止委員会はそういう意見を述べて、それに関する日本政府の情報提供でございますので、日本政府の立場はもとよりのこと、この間、取調べ可視化をめぐって様々な議論があった。とりわけ志布志だとか氷見事件、あるいは北九州の事件、引野口というんでしょうか、こういうことについてはやっぱり言及をされて、我々としてはこういう立場で取調べはやっているけれども、こういう問題も起こったと、その上で我々としてはこういうふうにしたいと、こういう報告は当然国連に対してなされるべきだ、なされるというふうには思っていたら、私はそういうものもちゃんと踏まえて日本政府としてやっぱり報告をすべきだという質問委員会でもしていますし、この間、この拷問禁止委員会委員が来て院内で集会があったときに、民主党の委員皆さんも共産党の委員皆さんも、やっぱりちゃんと現実に今、日本で起こっているこういう問題についてもちゃんと報告すべきだと、こういうふうにその場で法務省の担当者にお話をされていた、私もその場面に立ち会っておりますが。  ところが、先月の末に出たこの日本政府の情報提供を見ましたら、こういう志布志富山も北九州の事件も一切書いてない、ネグられていたと。そして、単に、今言った、信頼関係に基づいて供述を得るんだ、それが必要なんだというきれい事、建前論を言っている。そして、今この委員会でも、志布志についても、とりわけ富山については反省の弁もない。  これでは私は、こんなことをやっているから、先ほど来議論がありましたけれども、やっぱりしっかりと取調べ可視化、こういう形できちっと枠をはめないと、結局密室の中に被疑者を連れ込んで締め上げる。つまり、自白証拠の王だと、その証拠の王を引き出すためには多少のやり方もそれは我慢してもらわなきゃ治安が守れない、この論理の下でこれからもずっと行うんではないか、私はそう思えてならない。  何で日本政府は、国連拷問禁止委員会の直近の報告に対して、こういう、日本で今これだけ大きな問題になっているまさに取調べの可視に直接かかわるような事件を全部報告の中から消し去るのか。大臣から是非その辺のところをお聞きしたいと、こういうふうに思います。
  90. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 一年前、昨年の五月に、先生御指摘のとおり、国連拷問禁止委員会は、留置されている者の取調べに弁護士、弁護人が同席できるようにすることなどを勧告をしまして、それに対して一年以内に答え、情報提供という形での答えをということであったわけでございます。  今回の情報提供では、確かに、御指摘のように、氷見事件あるいは志布志事件引野口事件については触れておりませんが、これは個別の事件について回答せよということではありませんでしたから、取調べ適正化については今後、私、全文を実は読んではまだいないんですけれども、こういうふうにやりますというふうな形での情報提供、すなわち警察も検察も共に取調べ適正化方策を決めておりますね。そうした内容を盛り込んで情報提供を行ったということであろうと思っております。  一年前の勧告は確かにいろんなことが書いてありまして、弁護人被疑者に付き添うような話だけでなくて、すべての取調べの電子的及びビデオによる記録、取調べへの弁護人のアクセス及び立会いなんて書いてありますから、これは当然可視化のことも含まれているわけでございましょうが、いつも申し上げておりますように、それは拷問禁止委員会からの勧告ではありますが、それぞれの国にはそれぞれの文化、文明、社会構造、事情等があって、それぞれの国が独自の判断で犯罪のない世の中を、あるいは凶悪犯罪の少ない世の中をつくるために刑事司法制度をつくっていっているわけでございますので、我が国としてはこういうやり方でやっております、改善すべき点はこんなふうに考えておりますという情報提供をしたことで、私は十分だと思っております。
  91. 近藤正道

    ○近藤正道君 それぞれの国の固有の伝統文化、それに基づく刑事施策、これがあるということについては私は否定するものではございません。  その上でお尋ねをするんですが、これちょっと通告をしていないんですが、是非大臣の決意をお伺いしたいんですが、日本政府は自ら国連人権理事会の理事国に立候補して、この間、二回ここに当選をしているわけですよね。ここで政府は、国連人権法の枠組みに従うことを国連の場で誓約しているんです。人権理事会によって示されたすべての勧告についてはやっぱり基本的に前向きに従う、尊重する、こういう態度を持ってしかるべきなんではないかと。  国連の、日本政府が批准して参加をしている国連拷問禁止条約に基づく委員会が、数度にわたって、代用監獄の話ありますけれども、今日は取調べ可視化の話ですからこれに集中いたしますが、これについてはやっぱり問題がある、身柄を拘束された者についてはちゃんと録画をして、そしてそういう監督の下でやっぱり置かなければおかしいですよと、これが世界の人権のスタンダードですよと、こういうことを言っているわけですから、人権理事会に二回立候補して当選をした、世界のまさに人権の先進国たらんとする日本がこれを無視するというのは私はおかしい。これは基本的に尊重するという態度が、大きな方向性がきちっとやっぱり示されなければ、人権理事会の理事国として私は恥ずかしいんではないかと、こういうふうに思うんですが、大臣の所見といいましょうか、決意を聞かせてください。
  92. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 人権については非常に難しい概念の問題があろうかと私は思っているんです。もちろん、今、従来から話題になっております人権擁護法関係の事柄もございますけれども、例えば私は、粛々と死刑を執行いたしますと人権無視だとしばしば言われる。しかし、私は逆に、人権や人の命をとても大事に思えばこそ、その人権、最高の人権である人の命を奪った人に対して厳しい判断が下ることも当然あるべしと、死刑という制度を認めておりますし、また、そのような判決を受けた人は粛々と執行されるべきだと考えるわけです。人権重視の考えだからこそ、言わばやや厳罰化的な物言いになるというケースが多いと思うわけでございます。  したがって、私は、この刑事司法制度はそれぞれの国に根付いたものがある、それぞれの国に一番いいものがあると。そのことで、そういうその国独特のやり方で犯罪を減らすこと、凶悪犯罪を減らすこと、これは人権を守る最高の政策だと私は考えます。
  93. 近藤正道

    ○近藤正道君 皆さんが当初は取調べの可視、絶対駄目と。それが今度は一転して一部の可視を認めた。まず法務で始まって、次警察へ入った。やっぱりこれは、世界の人権の流れに抗するわけにはいかないという形でそういう方向に転換されたんだろうというふうに思って、その意味では、これは評価しなきゃならぬところもあると思うんだけれども、今日ずっと議論がありましたけれども、一部可視は逆にマイナスの側面、かえっておかしくするんではないかという議論がまさに今沸騰しておりまして、その辺のところについて、まさにもう一歩の御努力を是非お願いをしたいと、こういうふうに思っているんです。  とにかく、この間皆さんがおっしゃるんで、もう私はあえて申し上げる必要もないんですけれども、一部録音録画では、この間の志布志事件を見ても、これは問題何にも解決していないわけですよ。逆に、全部きれいにおしろいをしてお化粧をしてきれいなところだけ写真撮られたって、かえって問題の本質を隠ぺいしてしまう。あるいは踏み字事件だって、これでは全く、一部可視ではあの踏み字事件の防止にはならなかったと。しかも、先ほど来議論がありましたけれども、試行とはいえ、大阪地裁あるいは東京地裁で、一部可視については証拠能力を否定したり、あるいは証明力を大きく減殺をした、こういう判決が出ているわけでございます。  一部可視、録画では、こういうやっぱり弊害、結局やってもその前がおかしければみんなやり直さなきゃならない。この辺の弊害が現に大阪地裁、東京地裁で指摘をされているわけですが、この弊害については、法務省、どういうふうにお考えなんですか。
  94. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 今のお話は、確かに一部の録音録画ということで、検察も警察も、検察は昨年から、警察は今年からということなのだろうと思っております。一部といっても、撮り始めたら、録画ですね、中断はしないとか、あるいは編集はしないとかというようなことでニュートラル性を確保しようとしていると思います。  今先生おっしゃったのは、つまり、DVDだと思いますが、それが自白任意性信用性か私忘れましたが、その証拠としては採用されなかったと。ということは、実にいいとこ取りでなくてニュートラルに撮っていることの証明ではないかなと、こう思います。
  95. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) ただいま大臣から答弁申し上げた点につきまして、技術的な点について事務当局の方からお答えさせていただきますけれども、自白任意性も含めまして、検察官立証責任があるわけであります。実際にその犯罪を実質的に立証をするのは自白調書ということになるわけでありますけれども、その自白調書任意性立証する手段として録音録画をしているということでございます。  検察官立証責任がありますから、その録音録画等を用いて裁判官あるいは将来は裁判員が、まあ裁判員が関与する場合でありますけれども、任意性があるという認定に達しない場合にはその不利益は検察官に来る、つまり証拠として自白調書が採用されないということになるわけであります。  裁判員裁判を目指して試行をしているわけでありますけれども、録音録画を出すことによって、もちろん検察官としてはそれがプラスになることを期待しているわけでありますけれども、しかし実際の裁判の例等を見るとそれでマイナスという判断もあり得る。それでいいんだろうというふうに考えているわけであります。つまり、自白のその任意性をめぐって長く審理が続くということは、裁判員裁判の下ではもはやもうそれはあってはならない事態であります。  したがいまして、立証責任を負う検察官としては、ここを見てくださいということで録音録画を補助証拠として請求する場合があるわけでありますけれども、それで心証が取れればもちろん検察官のねらいどおりということになるわけでありますけれども、逆にそれではやはりその任意性についての心証が来ないということであれば、それは任意性が否定され、自白調書の採用が行われないということでも、これは制度が当然に予想しているわけであります。先ほど大臣がニュートラルだというふうに申し上げましたけれども、それはそういう趣旨でございます。
  96. 近藤正道

    ○近藤正道君 おかしな論理。それは検察官立証責任がありますから、それは検察官が自業自得でそれをやればいい。ただ、どこから始めてどこで終わらせるか、それは全部検察官の自由ですよ、裁量ですよ。その中で検察官がそれはやる。それはその結果、否定される場合もあれば肯定される場合もある。  私は、東京地裁と大阪地裁以外にこういうケースあるのかって聞いたら、一切調べてないと、法務省は。本当なのかなと。私はまだほかにもあるんではないかと思うんですよ。裁判所がこの間、試行でDVD等についてどういう判断をしたのか。あるのかって聞いたら、それは一切統計取ってないから分からないと。全く私はあれなんですけれども。  ただ、いずれにしても、検察官はそれはいいかもしらぬけれども、裁判員がたまったもんじゃないと、こんなことをやられて。その一部録音録画やられたと。ところが、その録音録画される前の取調べにやっぱり問題があると、こういうふうに被告人が言った。そういう弁護方針が示されれば、結局前に戻って例の水掛け論をやらなきゃならぬわけでしょう。それじゃ裁判員がたまらない。前川さん、そうでしょう。  そのことについてもう一度。今までいろいろお話が出ましたけれども、これでは裁判員、ほんの数日で遠くからこの忙しいのに出てくるのに、場合によってはそんなに多くはないかもしらぬけれども、また延々と水掛け論やられたらたまらない。まさにその禍根を断つために、それは最初から最後まで、このやっぱり原則をこの際打ち立てなかったら、裁判員制度たまったものではない、私はそう思うんですが、いかがですか。
  97. 前川清成

    前川清成君 先ほど木庭委員にもお答えしたとおりでございまして、違法、不当な取調べがあって、被疑者が抑圧されてしまって虚偽の自白をしてしまったと。その後から、抑圧されて虚偽の自白をした後から録音録画が始まったならば、法廷で被告人が、いや実は捜査段階でこうこうこういうことがありましたと、だから私はうそ自白をしてしまいましたと、こういうふうに言うたところで、その状況については全く証拠が残ってない。  そうなると、繰り返しになりますけれども、捜査官の尋問と被告人質問とを延々繰り返すことになってしまって、職業裁判官でさえ分からない任意性に関する判断を市民である裁判員の皆様方にお願いすることになる。結局は何も分からないまま御判断いただくことになって、裁判員皆さん方の御負担が大変大きくなるのではないかというのを危惧するゆえに、私たちは一部可視化では駄目なんだ、全面可視化でなければならないと、そういう信念を持っているところでございます。
  98. 近藤正道

    ○近藤正道君 先ほど、この可視化が実現をすると捜査の支障を招くんではないか、この国の治安が維持できないんではないかと、こういう懸念が示されました。  そこでお尋ねをしたいんですが、取調べ可視化、これはまさに世界の刑事司法一つのスタンダードに私は今なりつつあると。この間、いろいろ少し調べてみましたけれども、これを取り入れている国はどんどん今増えている。アメリカでもそうでありますし、韓国でもそうでありますし、アメリカの状況等についても少し勉強させていただきましたけれども、私が見る限りにおいては、やっぱり導入の際には、みんな取調べ当局はこれについて、こんなことをやったら犯罪人が増える、治安が維持できない、物すごい反対をした、どこでもそうだったと。しかし、可視化をやったら治安が悪化したと、こういう話は特段私が調べた範囲ではないんですけれども、皆さん、これを提案するに当たって、取調べ可視化を実現したところでどんな弊害があるのか、本当に治安がおかしくなったのか、真実が発見できないような事態になったのか、捜査官はみんな自信喪失に陥って、まあ今まで密室に連れ込んでやっていたわけですが、それができなくなったと、もう何にもお手上げだと、こんな場面なんて出たんでしょうか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  99. 松野信夫

    松野信夫君 外国の方では今可視化が大きな流れになっている、それは委員指摘のとおりでありまして、私どもも、この法案作成するに当たって外国の例を大分調べさせていただきました。日弁連も調べております。また、法務省当局も調べておるようでございまして、法務省当局からもそういうお話は聞いておりますが、可視化が実施をされたことによって、例えばしゃべらなくなったとか治安が悪くなったとか、そういうような弊害は出ていないというふうに聞いております。  むしろ、今委員指摘ありましたように、大体どこの国も可視化を導入するについては取調べ側は反対をするんです。イギリスもオーストラリアも反対をしていたんです。ところが、実際に可視化が導入された後、むしろこれを積極的に活用するということで大きく受け入れているということで、むしろ弊害どころではない利益の部分が出てきている、こういうふうに見ております。  というのも、やっぱり可視化を導入するということは、別にそれによって特別に弁護側が有利になるとか検察側が有利になるとかそういうわけではなくて、あくまで中立、客観的に撮るわけです。ですから、取調べをする側にとっても、いざとなったときには適正な取調べをしたじゃないかということで、我が身を守る役目もこの可視化というのが果たしてくれるわけであります。ですから、そういうことで弊害は出ていないということです。
  100. 近藤正道

    ○近藤正道君 最後に、この可視化法案のもう一つの目玉であります検察官手持ち証拠リスト開示についてお聞きしたいというふうに思っています。  松岡発議者にお聞きしたいと思うんですが、これまで数々の刑事事件、とりわけ被告人が無罪を争ってきた事件で、検察官手持ち証拠リスト開示されていれば真相が明らかになったと思われる事件があると聞いておりますが、なぜ今の現行法、まあ今の現行法ではリスト開示をしないですね、現行法では駄目なのか、リスト公開が必要なのか、リスト公開がない場合、公開がないためどんな弊害があったか、実際にどのような例を把握されておられるか、今回の法案ではその点どのようにこれが改善されているのか、松岡発議者の御答弁をいただきたいと思います。
  101. 松岡徹

    松岡徹君 ありがとうございます。  今回の法案の中に、証拠開示といいますか証拠リスト開示というものが入っておりまして、今もありましたように、元々可視化法と言われているこの今回の法案は、すなわち事実の解明でありまして、特に、この法案提案する背景となった様々な冤罪事件があります。その冤罪を起こした原因が一つ自白の強要というのが言われてきました。過去にも様々ありましたけれども、一九八〇年代に松山事件とか免田事件、財田川、次々と死刑判決による再審の無罪判決が出ました。それぞれが共通しているところは自白の強要でありました。自白の信憑性が問われていくということがありまして、今なお、再審事案ですけれども、例えば袴田事件であるとか狭山事件というのがあります。それぞれが本裁判になって自白を翻しているということであります。  そのときに、やはり証拠が、元々証拠というのは、当然検察の側は、起訴する側はこの被疑者が犯人だということを証明するための証拠を提出しますが、弁護側は当然弁護する側でありますから無実であるというような証拠を集めようとします。あるいは、その証拠のほとんどが警察や検察が持っています。証拠開示を求めます。しかし、これは証拠開示を求めてもすべてがすべて開示されているわけではありません。そういう意味では、弁護する側にも公平に客観的な証拠開示すべきだということが一つであります。  もう一つは、今回、証拠開示リストというのは、すなわち客観的な証拠を保管しているのは検察でありますから、どんな証拠があるのかというのが全く弁護側には分からない。すなわち、その証拠を要求する、請求するにしても、どんな証拠があるのか分からない状態では請求のしようがない。  私は長年狭山事件の再審無罪の取組をしてまいりました。その中で狭山弁護団がずっと証拠開示を求めてきました。数年前に検察の方に求めたら、検察の方の答えは、証拠は積み上げれば二、三メートルあると言われました。二、三メートルあるけれども一体何が証拠としてあるのか分からない。そして、二十数年来その証拠開示されていないという状況であります。  証拠が一体どんなものがあるのかというのが、これは狭山事件の再審事例でありますけれども、今の現実の事件についてもそういうことが起きているということでありますから、やっぱり証拠についてはどんなものがあるのかというものをしっかりと公表する、そしてそれを見た弁護団がこの証拠とこの証拠開示してほしいというのを初めて選べるわけでありまして、それこそ公正な裁判が運営されていくというふうになるのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味で極めて大事な観点でもある証拠開示リストという法案でございます。  以上です。
  102. 近藤正道

    ○近藤正道君 終わります。
  103. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本法律案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本法律案に対する意見を聴取いたします。鳩山法務大臣。
  104. 鳩山邦夫

    ○国務大臣(鳩山邦夫君) 本法律案については、政府としては反対であります。     ─────────────
  105. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、青木幹雄君及び木庭健太郎君が委員辞任され、その補欠として長谷川大紋君及び浜四津敏子君が選任されました。     ─────────────
  106. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  107. 仁比聡平

    仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、刑事訴訟法の一部改正案に対して賛成の討論を行います。  我が国被疑者取調べについては、代用監獄に最大二十三日間の留置、勾留、早朝から深夜まで一日十時間を超えて行われることが多いと指摘をされ、しかも細切れ逮捕、勾留により二十三日間を大きく超える留置、勾留が行われること、そして、任意取調べまでもが自白強要の場とされてまいりました。  志布志事件においては、被疑者を大声でどなりつけ、机をたたき、いすをけり、うそをつくな、死刑にしてやるなどと脅し、踏み字を強要し、認めれば家に帰してやるなどと利益誘導を図り、恐怖にさらされた多くの被疑者らはノイローゼ、うつ病、自殺未遂などに追い込まれました。鹿児島裁判決は、選挙違反事件の核心を成すところの四回開かれたとする買収会合事件そのものがあったとは言えないと認定し、起訴事実を排斥いたしました。この事件は、代用監獄における違法捜査人権じゅうりん、弁護権の侵害、そして検察に追従した裁判所による身柄拘束など、我が国刑事司法が抱える構造的なあらゆる問題を提起していると言わなければなりません。  本法案に賛成する第一は、被疑者供述及び取調べ状況の全過程が録音録画により記録されることから、取調べの透明性が確保され、違法、不当な取調べや虚偽自白の強要から被疑者防御権や黙秘権などを保障することができること、また自白任意性信用性の判断における客観的な証拠として冤罪を防止する大きな力になることです。  第二に、新たに始まる裁判員制度を前に、だれにも理解される、分かりやすい、信頼に足る記録が必要だからです。  相次ぐ冤罪により、今、司法への国民的な不信感はかつてなく高まっています。国連人権委員会国連拷問禁止委員会の厳しい指摘を謙虚に受け止め、真に人権のとりでとして司法の民主化を大きく前進させるためにも、今こそ捜査の全過程の可視化が必要不可欠であることを強調し、賛成討論を終わります。
  108. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  刑事訴訟法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  109. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  111. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  112. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 法務及び司法行政等に関する調査のうち、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律案に関する件を議題といたします。  本件につきましては、千葉景子君、今野東君、南野知惠子君及び浜四津敏子君の四名を代表いたしまして、南野知惠子君から委員長手元性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律案の草案が提出をされております。内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、まず提案者から草案の趣旨について説明を聴取いたします。南野知惠子君。
  113. 南野知惠子

    南野知惠子君 ありがとうございます。  ただいま議題となりました性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律案の草案につきまして、その趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。  性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律においては、性別の取扱いの変更の審判の要件として、性同一性障害者であることのほか、二十歳以上であること、現に婚姻をしていないこと、現に子がいないこと、生殖不能の状態にあること等を規定しております。  これらのうち、「現に子がいないこと」とするいわゆる子なし要件は、子がいる性同一性障害者にも性別の取扱いの変更を認めた場合には、親子関係などの家族秩序に混乱を生じたり、子の福祉に影響を及ぼしかねないなどとする議論に配慮して設けられたものでありますが、これに対しては、子がいる性同一性障害者等から法改正の要望が出されている一方、その家族の一部からは慎重な検討を求める意見も出ているところであります。  本草案は、以上のことを踏まえ、子の福祉に配慮しつつ、子なし要件の対象を未成年の子に限定し、子がすべて成年に達している場合には性別の取扱いの変更を認めようとするものであり、性別の取扱いの変更の審判の要件のうち、「現に子がいないこと」を「現に未成年の子がいないこと」に改めることとしております。  なお、この法律施行期日については、公布の日から起算して六月を経過した日とするとともに、性別の取扱いの変更の審判の制度について、改正後の法律施行状況を踏まえ、性同一性障害者及びその関係者の状況その他の事情を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする旨の規定を置いております。  以上がこの法律案の草案の趣旨及び主な内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  114. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 本草案に対し、質疑、御意見等がございましたら御発言願います。──別に御発言もないようですから、本草案を性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十一分散会