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2008-05-22 第169回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年五月二十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十日     辞任         補欠選任         松野 信夫君     徳永 久志君      水岡 俊一君     今野  東君      丸山 和也君     若林 正俊君  五月二十一日     辞任         補欠選任         徳永 久志君     松野 信夫君      若林 正俊君     丸山 和也君  五月二十二日     辞任         補欠選任         鈴木  寛君     足立 信也君      舛添 要一君     森 まさこ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 足立 信也君                 小川 敏夫君                 今野  東君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 丸山 和也君                 森 まさこ君                 山崎 正昭君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        内閣府副大臣   山本 明彦君        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   大谷 直人君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁刑事局長  米田  壯君        金融庁総務企画        局審議官     細溝 清史君        金融庁総務企画        局参事官     三村  亨君        法務省民事局長  倉吉  敬君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        財務大臣官房審        議官       川北  力君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○保険法案内閣提出衆議院送付) ○保険法施行に伴う関係法律整備に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、水岡俊一君及び鈴木寛君が委員辞任され、その補欠として今野東君及び足立信也君が選任されました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  保険法案及び保険法施行に伴う関係法律整備に関する法律案審査のため、本日の委員会警察庁刑事局長米田壯君、金融庁総務企画局審議官細溝清史君、金融庁総務企画局参事官三村亨君、法務省民事局長倉吉敬君、法務省刑事局長大野恒太郎君及び財務大臣官房審議官川北力君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 保険法案及び保険法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 前川清成

    前川清成君 おはようございます。民主党の前川清成でございます。  懸案の保険法に入る前に、月曜日の決算委員会確認を少しだけさせていただきたいと思うんですが、お手元に、理事会の御許可を得て、「もっと便利な未来に向けて」というパンフレットを配らせていただきました。  倉吉局長、これは法務省作成パンフレットであることについて争いはありませんね。
  7. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 御指摘のとおりでございます。
  8. 前川清成

    前川清成君 委員皆さん方もこのパンフレットを見ていただいたらと思うんですが、これは平成十年に登記簿謄本手数料、一枚八百円から千円に値上げするに当たって、こうこうこういう理由で値上げをしますよというので配ったパンフレットでございます。  一枚開けていただきますと、この度、この度というのは平成十年時点ですが、従来の手書きの登記簿謄本に代わって登記簿コンピューター化します、そのための経費として今後三年間で三千七百十億円掛かりますと。で、謄抄本発行事務コピーがちょっときれいではないんですが、全体の事務の六七%を占めています、三年間の謄抄本発行予想数が二億四千七百万通ですと。ついては、三千七百十億円に六七%を掛けて二億四千七百万通で割ったこの金額が千円になるというような理由で、まさに使い道を限定して、しかも期間も決めた上で、特定財源暫定税率としてこの八百円から千円に値上げされました。  それから十年がたちまして、コンピューター化は既に終わりました。終わったにもかかわらず、いまだにコピー一枚が千円。私はこれは少し高過ぎるのではないかということで、月曜日の決算委員会大臣質問をさせていただきましたところ、是非見直すと、こういうような御発言を賜りました。  あれから中二日しかたっておりませんけれども、大臣、その後の検討状況等、あるいは補足してお聞かせいただくようなことありましたらお聞かせ願えませんでしょうか。
  9. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) コンピューター化は、登記事務については平成十九年度に完了いたしております。ただ、まだ地図の方のコンピューター化はあと一、二年掛かるんだと思います。ちょうどそのときに登記特会も廃止をされて、一般会計と一緒になるということだろうと思います。  したがいまして、コンピューター化を進めてきたわけですから、そのためにハードというのか、そのための費用がかさんできた。これが一応完了に近づいてきておりますから、今度はランニングコストしか掛からなくなるわけでありますので、登記証明書値段というものは、今後三年間に大体どれくらい費用が掛かって、どれくらいの申請があるかということで割り算して決めるということでありますので、今後は当然下がる方向になると私は確信いたしております。
  10. 前川清成

    前川清成君 ランニングコストにつきましては、登記特別会計余剰金が三百七十三億円ありますので、これで十分賄えるのではないかなと思っています。  もう一点だけ御確認をさせていただきたいんですが、この登記簿謄本、そのコンピューター化のための割り勘費用ということで一通千円、国民皆さん方からお預かりしているわけですけれども、公用役所皆さん方謄本を取ったり、あるいは閲覧した場合にはただというようなシステムになっています。そのただの割合が少なかったら、まあまあしゃあないかなというふうに大目に見ることもできるかと思うんですが、平成十八年度ですと、謄抄本、合計で七千五百四十五万六千九百五十一通発行されておりまして、うち千五百五十二万八千二百二十二通、率にして二〇・六%が公用閲覧に至りましては五一・九%が公用ただで取られております。  官だけがただで、民間だけが、しかも半分以上官の割り勘を負担するというような理由は私は全くないと思っているんですが、大臣、この点もいかがでしょうか。
  11. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 公用のものをただにしております。これは登記手数料令第十九条という政令でございます。これを、公用ただにしないで、公用でも料金を取ることにするとします。そうしますと、国もあるでしょうが、自治体が多いんでしょうか、そういうところから証明書料金あるいは閲覧料金を取るということになります。いずれそれは国民の負担になるんだから同じじゃないかという意見もあります。  ただ、私が、おとといでしたかさきおととい、決算委員会前川先生質問にとっさにお答えいたしましたのは、私自身が、先生割り勘とおっしゃいましたが、三年間の経費を三年間の予想される請求数で割って値段を出していると、それを民間に負担させて一通千円だと、こう決めていると。ところが、その割り算するときの分母の方の公用が抜けているというのは、私の答弁が不正確だということになりますね。費用を割ることの分母の方は申請数から公用のものを除くと私は答弁していないわけです、あのとき。ということは、本来、公用も取るのが筋ではないかというふうに考えた。つまり、公用ただにするがゆえに民間値段が高いというのはこれはおかしいと、そう思いまして、今後、民事局長も納得をしておりますので、指示をしてその研究に入ろうと、こう思っております。
  12. 前川清成

    前川清成君 これで終わるんですが、公用だからすべてただというのは極めて私は偏った考え方ではないかなと思います。  例えば、倉吉民事局長法務局の視察のために東京から新幹線に乗って奈良に行かれる。新幹線切符代も近鉄の特急券代奈良交通バス代も全部有料です。あるいは公用で電話を掛ける、NTTはただでは許してくれません。あるいは公用郵便を送る、切手を張らなければ郵便局は届けてくれません。公用だからただという考え方は本当に正しいのか、私は極めて偏った考え方ではないかと思いますので、是非この点は御検討をお願いをしたいと思います。  それでは、保険法質問に入らせていただきたいと思うんですが、まず最初、大臣に基本的な認識ということでお伺いしたいんですが、私は、一昨年大きな問題となりました保険の未払、不払の問題、これは大変大きな消費者問題ではなかったかな、こんなふうに思っています。大臣衆議院質疑の中で、契約者消費者と呼び換えた上で、消費者に温かい保険法というような表現をお使いになられましたけれども、この保険法業界の側だけで見るのではなくて、国民の側から、契約者加入者の側から見る、そういう視点が極めて大事ではないかなと思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。
  13. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 全く前川先生指摘のとおりでありまして、そういう観点がないならば、この保険法改正の意義の過半は失われてしまうであろうと私は考えております。  もちろん、法務省という役所生保業界損保業界監督するわけではありません。それは監督官庁金融庁であったり、あるいは共済であれば農水省であったりするんでありましょう。しかし、この保険法というものを商法の中から独立して、一つ保険法典として整備をして独立をさせると。そこで一番大事な観点は、やっぱり保険会社というのは強いものであって、力のあるものであって、保険契約者は基本的に言えば弱い一人の生活者あるいは消費者だと。もうこの観点に立ってできる限り法律を作ったつもりでございます。
  14. 前川清成

    前川清成君 私も本当に大臣の御賢察のとおりであろうと思っています。従業員が何万人、資本金が何千億円という片や大きな組織があって、一方で一人一人の消費者皆さん方。しかも、保険金が必要になるときというのは、火事で家が燃えてしまって生活の基盤がなくなっちゃった、あるいは一家の大黒柱が亡くなってしまって明日の生活費をどうしようと、そういう大変困窮されたときです。だからそういう意味で、業界側にだけ偏った法律を作るというのであれば本当に今回の改正どれだけの意味があるかなと、そんなふうに思っています。  そういうコンテクストでお聞きしたいんですが、大変問題となりました保険金の未払、不払についてこの法案ではどのような手当てがなされているんでしょうか。
  15. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 保険金の不払問題、今委員から御指摘ありました。支払事由に該当するにもかかわらず該当しないといって保険金支払わなかったとか、それから、告知義務違反による解除が認められないケースなのに告知義務違反だといって保険金支払わなかったもの等々があると、このように聞いております。  保険法案では、保険契約締結時の告知についての規定をまず見直しまして、保険募集人による告知妨害等があった場合には、保険者告知義務違反理由保険契約を解除することはできないということにしております。また、保険給付履行期についての規定も新設いたしまして、保険者が適正な保険金支払のための不可欠な調査を行うために客観的に必要な期間が経過した、その後は保険者は遅滞の責めを負うんだと、こういうことを定めております。  そして、ここがポイントでございますが、これらの規定については、保険法案規定内容よりも保険契約者等に不利な内容合意をすることはできない、そのような合意は無効であるという、いわゆる片面的強行規定とすることにしております。  これらの規定によりまして、保険募集人による告知妨害等があったにもかかわらず告知義務違反理由保険金支払われない事案には対処することができます。そしてまた、調査の名目で保険金支払が不当に引き延ばされるということを防ぐこともできます。  このようにして適正かつ迅速な保険金支払がされるものと考えております。
  16. 前川清成

    前川清成君 個々の論点についてはこれからもう本当に根掘り葉掘り、重箱の隅をつっつくようにお尋ねしたいと思うんですが、今日から審議が始まりますので、私は、大臣にお答えいただいたように、まず基本的な理念を是非局長から語っていただきたいなと思っています。  要するに、保険に関する契約関係というのは、個々消費者皆さん保険会社の提供する商品を購入するか購入しないかの権利しかありません。自分でオーダーするなんということはできません。二番目に、いつ保険金がもらえるかという肝心かなめ情報保険会社から聞くしかない。情報は一方的に偏在している。三番目に、肝心かなめお金をいつもらえるか、これも保険会社が決める。そういう意味で、大変消費者の側が弱い立場にあるんではないかなと、そういうふうに思っています。  私は、山本大臣御存じないかもしれませんが、当選して以来、サラ金の金利、これに頑張ってきたつもりなんです。サラ金は借りる人も借りない人もいます。しかし、保険、これはほとんど、この国に暮らすほとんどの人が何らかの意味でかかわっておられる。そういう意味において最大の消費者問題だ、最も身近な消費者問題ではないかな、そんなふうに思っています。  未払についても、何が原因であの大きな未払が起こったのか、そこについて是非コメントをお願いしたい、こう思うんですが、山本大臣、お願いできますでしょうか。
  17. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 不払、未払、支払漏れと、いろんな理由があろうかというふうに思っております。やはり、今委員指摘のように、消費者が一番でありまして、ほとんどの国民が入っておるわけでありますから、そうした意味で、これは保険というのは病気になったり事故に遭ったり災害に遭ったりしたときの、まさに国民それぞれが危機管理自分で行っておる、そうした大変大切なものだというふうに思っております。そうしたことで、支払った契約者お金支払わなかった、いろんな理由支払わなかったということは、これは大変大きな問題であるというふうに私どもも承知をしております。  不払、未払、支払漏れ、いろいろありますけれども、先ほどの告知義務違反の問題があっていろいろあるわけでありますから、一つ請求主義というのがあったのではないかというふうに思っております。先ほど、保険会社の方が優越的地位があるという話がございましたけれども、請求主義であることはこれ間違いありませんので、契約者の方から請求をしてこなければ払わなくてもいいんだ、こういうことが非常に大きな理由の中にあったというふうに私は思っております。  したがって、いろいろと中のシステムを変えまして、請求主義だとか支払漏れとかないような形のものを、今システムを構築をしてきておるというふうに私は承知しております。
  18. 前川清成

    前川清成君 大変下世話な、平たい言い方をさせてもらいますと、保険会社の方は、理念的には副大臣おっしゃったとおりかもしれませんが、保険会社の方は保険金を払わない方がもうかるわけです。払ったら払うだけ損する。ですから、構造的に消費者保険会社の方とは利害相反関係にあるわけです。ですから私は、ただただ保険会社の良心にだけ頼っても仕方がない、消費者が守られる仕組みをつくっていかなければならないと、そんなふうに思っています。  それで、今回、消費者庁の構想を福田総理の方がなさっています。どの権限消費者庁に移すのか移さないのか、いろいろありますけれども、この保険会社に対する監督権限、これも保険会社が倒産しないように見張るとか、保険会社が悪いことをやったときにどうこうするというのは、これは金融庁に残してもいいのかもしれませんが、しかし消費者を守るという側でいくと、やはり消費者庁に移さなければならないのではないかな、そんなふうに思っています。これはきっと通告していないと思いますので、私のコメントだけにさせていただきます。  その点で、その不払、未払に関して二十一条の条文についてお尋ねをしたいと思うんですが、まずその前提で現行約款、例えばおおむね生保の場合には五日以内、損保の場合には三十日以内に支払う、そう定めた約款がほとんどではないかなと思うんですが、この点、簡単で結構ですが、現行約款状況を教えていただけますでしょうか。
  19. 三村亨

    政府参考人三村亨君) お答えいたします。  保険会社が使用しております現行保険約款規定におきましては、生命保険損害保険共保険金支払査定調査に要する期間を除いて一定期間保険金支払旨規定をしております。例えば生命保険でございますと、請求した日から五日以内、ただし五日以内に調査が終わらないときは調査終了時などとなってございます。  なお、支払時期が定められていない約款というものはないものと承知をしております。
  20. 前川清成

    前川清成君 三村さん、聞かれたことだけ答えてくださいね。そうでないと、もう次回お呼びしません。これは金融庁の方にも言っておきます。僕は今、生保は五日、損保は大体三十日でいいですねと聞いたんですから、それだけ答えてくれたらよかったんです。もうお聞きしません。  それで、次に倉吉局長にお聞きしたいんですが、二十一条一項にある相当期間とは何日を指すのですか。
  21. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは、具体的に何日かということはこの規定から直ちには出てこない、個別の契約の類型によっても様々でありますし、いろいろ違うので、具体的な数字として決めることはできなかったので相当期間としているわけでございます。個別の契約ごとに判断されるものと考えております。
  22. 前川清成

    前川清成君 今、先ほど三村さんのお話の中で、生保については五日間と、こういうふうに決められていると、二十一条一項に関連して五日間と、こういう話がありました。  そこでお聞きしたいんですが、新法ができました。相当期間内に支払わなければならないということですが、じゃ、今後約款改正されて五日が例えば七日になったらどうか、十日になったらどうか、三十日になったらどうか、あるいは一か月になったらどうか、そのそれぞれの場合に金融庁約款に対する監督がどうなるのか、お伺いしたいと思います。
  23. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 一般論で申し上げますと、各保険会社におきまして、恐らく今回の保険法改正に従って約款について見直しが行われるものと存じますが、それにつきまして、約款内容について見直しがきちんとなされるよう金融庁として保険各社に対してお願いしてまいりたいと考えております。
  24. 前川清成

    前川清成君 答えていないよ、そんなの。質問に答えさせてください。
  25. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 再度答弁求めますか。
  26. 前川清成

    前川清成君 はい。
  27. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 三村参事官、再度答弁ください。
  28. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 一定期間につきまして何日ならいいのかということにつきましては、今、その相当期間について今回の保険法改正に伴い今後検討が行われていくものと考えております。それにつきまして申請がありますと、保険法に照らして当方としても審査をしてまいりたいと思っております。
  29. 前川清成

    前川清成君 山本大臣、例えば、約款改正されて生命保険保険金支払時期は請求から三十年後と、こう定められたときは、金融庁は認可しませんよね。
  30. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 法律に合っているものなら認可せざるを得ないと思いますけれども、法律に合っていないものなら認可しないわけでありまして、保険約款審査基準といたしましては、保険契約内容保険契約者等保護に欠けるおそれのないものであること、保険契約内容に関し特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものではないこと、保険契約内容が公の秩序又は善良な風俗を害する行為を助長し又は誘発するおそれのないものであること、(発言する者あり)ちょっと待ってください。保険契約内容保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたものであること等が定められておりまして、これらの基準を充足すれば認可される枠組みでありますので、三十年がどうかということにつきましては、こういったものを考えて適切かどうか判断をすることだと思います。
  31. 前川清成

    前川清成君 僕ね、僕は山本大臣のお立場を考えて、今あえて百八十日とか言わずに三十年と言ったんですよ。三十年で、今判断分からないんですか。
  32. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 常識的にという言葉はここでは余り言えないと思いますので、そのときになれば不適切だというふうに判断する可能性はあるというふうに思います。
  33. 前川清成

    前川清成君 先ほど鳩山大臣がおっしゃった法の趣旨が、全く金融庁は御理解になっていないのではないかなと思います。  それで、私は質問主意書を出しました。副大臣、当然御覧になっていると思います。例えば五日だったらいいのか、七日だったらいいのか、十日だったらいいのか、三年後だったらいいのか、あるいは三十年後だったらいいのか。保険法では相当期間としか書いていない、相当期間は何日ですかと聞いたら答えられませんと言う。約款でどう決めるか。約款では、今、山本大臣がおっしゃったように、保険契約内容保険契約者保護に欠けるおそれのないこととしか書いていない。  じゃ、これは通告していますので山本大臣にお答えいただきたいんですが、保険契約者等保護に欠けるおそれのないものとはどういう意味なんですか。
  34. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 山本大臣、御答弁をお願いいたします。
  35. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 具体的には、例えば保険金支払免責事由告知義務等規定において、保険契約者等の利益を不当に害するものとなっていないことということになっています。
  36. 前川清成

    前川清成君 ですからお聞きしているんですよ。その今御答弁された不当に害するものというのはどういう意味ですか。──ちょっと委員長、止めてもらえませんか、時間の無駄ですから。
  37. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 山本大臣、御答弁できますか。
  38. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 保険会社が任意に契約解除できる規定があるものということとなっております。
  39. 前川清成

    前川清成君 答えになっていません。
  40. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 金融庁三村参事官、御答弁できますか。
  41. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 保険契約内容保険契約者等保護に欠けるおそれがないものであることと申しますのは、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、保険契約者等の利益を不当に害するものとなっていないことでございまして、具体的に申し上げますと、保険目的が不測の疾病、発病等によりまして一時的に多額の資金が必要となることについて保障を行うものでありながら、きちんとした期日に支払われないような仕組みになっているものといったようなものについて、保険契約者等保護に欠けるおそれがあるというふうに判断されると考えております。
  42. 前川清成

    前川清成君 委員長、私は支払時期に関して、保護に欠けるものというのはどの期間ですかと、こう聞いているんです。それに答えないんです。答えさせてください。答えられないんだったら止めてください。
  43. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 金融庁三村参事官前川委員質問に的確にお答えをいただきたいと思います。
  44. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 支払時期に関しましても、現在の約款でございます五日を、五日という期間を更に引き延ばしていくという御指摘につきましては、現在の保険会社の慣行と照らし合わせますと、そういう動きにはならないのではないかというふうに考えております。
  45. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 前川清成君、質問を再度明確におっしゃってください。
  46. 前川清成

    前川清成君 もう一度言います。先ほどの山本大臣答弁に言うところの保険契約者等の利益を不当に害するものになっていないこととは、支払期限の関係でいうとどのような概念と理解すればよろしいんでしょうか。
  47. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 保険法の今回の改正相当期間という定めが置かれますので、そういったことを踏まえて今後慣行がつくられていくものと考えております。
  48. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  49. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を起こしてください。
  50. 前川清成

    前川清成君 結局、鳩山大臣、今の御議論を聞いていただいてあれだと思うんですが、要するに、保険金というのは福井日銀総裁が村上ファンドに預けていた、いつになってもいいから大きくなって返ってこいというお金じゃなくて、今日にでも必要な、明日にでも必要なお金なんです。それを私は極端な例で三十年後どうですかと申し上げている。その三十年後がいいか悪いか判断できないような基準金融庁の金融行政が行われている。言葉を換えると、金融庁のさじ加減で行われているということ、それが問題だと言っているんです。  この問題は、実は私は月曜日にいただいた質問主意書で同じことを問うている。先ほどの山本大臣の御答弁質問主意書に書いてあるとおりです、答弁書に書いてあるとおりです。結局、その基準を、明確な基準が定まってないのに、約款はこれはいい、あれはいいというのをやっている。それを前提で法務省が作った法案相当期間としか書かれていない。まさに今回、未払、不払に対して手当てがなされたといいながら、何ら手当てがなされてないことになるのではないかなと、私はそう思っています。  この点、その保護に欠けるおそれのないものについては二十九日の委員会で詳しくやり取りをさせていただくということですので、法案に戻りたいと思うんですが。倉吉民事局長相当か不相当かはどのような事情をしんしゃくして判断されるんでしょうか。
  51. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) まず、相当期間かどうかということでありますが、保険金支払のために必要な調査に要する合理的な期間ということでございます。これはこう申し上げるしかないわけですが、個々契約類型によってもちろん違うだろうと思います。先ほど来、損害保険の場合には原則として三十日、それから生命保険の場合には原則として五日としている例が多いんだという御紹介がありました。そこら辺も踏まえまして判断するということになろうかと思います。  ちょっと具体的に申し上げますと、例えば、この相当期間あるいは必要な期間ということでこの保険法ができました。その後具体的な事件になって、何が相当期間、何が必要な期間かというのは裁判で争われて判例が集積されて決まるわけでございますけれども、例えば三十日というのが今までずっとあった、それがこの法案ができた後、原則として六十日だとしたということになったら、それが相当期間と言えるかどうかというのはやはり問題になるところだろうと思います。この幅が短くなればなるほど、それは今の段階でどうだということは法務省としては答えられませんが、最終的には裁判で判断される、しかしそれは合理的な期間でなければならないということであります。
  52. 前川清成

    前川清成君 裁判所に振ったところで、最高裁が珍しく意見書を出して、中間試案に対して、この相当期間では裁判規範にはならないという最高裁からの意見書があります。今のお話だったらブーメランで戻ってきます。  それと、今年の四月三日、民主党の法務部門会議に生保協会をお呼びいたしました。その際、日本生命の常務である筒井義信一般委員長は、私が相当期間とは何日ぐらいですかとお尋ねしたところ、分かりませんというふうにお答えになっています。最高裁も分からない、天下の日本生命も分からない。一体だれが分かるんですか、倉吉さん。
  53. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 申し訳ございません。繰り返しになりますが、個々の判例の集積によって最終的には決まるものでございます。それぞれこの契約において、この事情において、あるいは仮に支払が延びたとすると、原則としての三十日ではなくて、こういう事情があったんでこの事項について調べなければならなくなったのでこれだけが必要になったということが争われるわけでございます。それは、個々のその事件の事実関係の下で争われることですので、ここで一律に幾らなんだというのはお答えし難いということは御了解いただきたいわけでございます。
  54. 前川清成

    前川清成君 いろんな生命保険あるいは損害保険の類型があるというのは当然承知しているんです。でも、例えば民事訴訟法の二百五十一条一項、判決は弁論終結したときから二か月以内に言い渡さなければなりませんよと、こう書いてあります。裁判も、例えば公害事件で当事者がたくさんいらっしゃる、因果関係が争われるという長期間掛かる事件もあれば、欠席判決で一回で終わるような事件もあります。様々な類型がある中で民事訴訟法は二か月以内と、こういうふうに決めてある。従前は二週間だったやつを民訴法の改正で二か月と決めました。ただし書がありまして、こうこうこういう事件には、民事訴訟法の二百五十一条一項ですけれども、ただし書があります、対応できない場合にはこうしてくださいと、こうなっているわけです。  だから、この保険法も立法技術的には、みんなが、最高裁も分からない、日本生命も分からない、金融庁も分からない、倉吉さんも分からない、だれもかれも分からない、分からない、分からないと言っているのであれば、例えば現行の実務が生保については五日になっている、損保については三十日になっているのであれば、五日、三十日という原則を決めておいて、その上でただし書を設けるというようなことは技術的に十分可能だったはずなんです。それをなぜしなかったんですか、倉吉さん。
  55. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 確かに、代表的な類型だけを抜き出してこれは基本的にこうだという決め方は、それは可能であったかもしれません。それは当然議論の対象にもなっているわけでありますけれども、ただ、これから保険として新しい商品も出てまいります。そういう場合にはどうだろうかというのはまた別に考えなければならないということになります。  そして、かえって、(発言する者あり)この点だけ是非お聞きいただきたいんですが、無理に具体的な日数を法定しようとすると、これは様々な種類の内容がいろいろございますので、それに対応することができるようにある程度長めにするということもならざるを得ないというようなこともあろうかと思います。そこで、相当期間あるいは必要な期間と定めているわけでありまして、それは現行約款の実務が原則としてこうだということはそれぞれ決めているわけでございますから、おのずから定まっていくであろうと思っているわけでございます。
  56. 前川清成

    前川清成君 これからいろんな商品が出るかもしれない、それに備えてゆるゆるのルールにしておきますというのは、先ほど申し上げたように、保険会社の利益だけを考えた立法の仕方ではないかと私は申し上げたいわけです。  それで、次に履行期の、履行遅滞の話をさせていただきたいんですが、特に二十二条二項に関連してですが、今回は相当期間を経過するまでは履行遅滞にもならないことになっている。これが私はちょっとバランスが悪いんじゃないかなと思っています。  例えば、保険会社の方が、モラルリスクがある、調査を尽くされる、で、徹底して調査を尽くした結果、やっぱり払う必要がなかった。それはそれで終わったらいいと思うんですが、相当期間内、例えば今日、先ほどの山本大臣のお話で、三十年が相当期間かどうか分からないということですから、払う払わないを三十年間裁判で争って、結局払わなければならないという判決が確定した。三十年後に生命保険もらったのに、遅延損害金は保険会社の方は支払わなくて済むというのがこの相当期間の解釈になってしまうのではないか。  ですから、私は、なぜ相当期間を経過するまでは遅延損害金も発生しないような立法にしたのかを倉吉さんにお尋ねしたいと思います。
  57. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいま御指摘の第二十一条一項でございますが、これは保険給付を行う期限を保険会社との合意によって約款によって定めた場合の規定であります。その定めた場合であっても、その期限が、保険事故、てん補損害額、それから保険者が免責される事由その他のもろもろの確認をすることが必要とされる事項の確認をするための相当期間を経過した後であれば、その相当期間の経過によって期限は到来するんだと、こういう規定でございます。  つまり、今極端な例がいろいろ出ておりますけれども、例えば百日と決めていたと、原則を。けれども、相当期間は三十日だということであったとすれば、仮に約款上百日と決めていたとしても三十日で期限は来ますよという規定でございまして、これは保険契約者保護する規定でございます。
  58. 前川清成

    前川清成君 その今例で挙げておられたように、相当期間が三十日なのか何日なのかがはっきり分かっていたら、倉吉局長のおっしゃるとおりですよ。でも、その三十日かどうなのか分からないんでしょう。山本大臣がおっしゃるように、三十年が相当期間かもしれないんでしょう。そうしたら、結局は、保険会社支払うと決めるまではいつまでたっても遅延損害金は発生しないという立法になってしまうのではないかと、こういうふうに申し上げているわけです。  そこで、保険法案の十四条には遅滞なく通知しなければならないと書かれています。二十一条、先ほど私、二十二条と申し上げたかもしれませんが、履行期に関しては二十一条ですので訂正させていただきます。二十一条は請求と書かれています。これ通知と請求と言葉が違うんですが、それぞれ違う概念ということで理解してよろしいですね、倉吉局長
  59. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 通知というのは保険事故がありましたという通知でございまして、請求とは別の概念でございます。
  60. 前川清成

    前川清成君 そうすると、保険会社は、事故がありましたという通知を受けて、自らが保険金支払義務発生しているということを認識しながらも、請求を受けない限り、支払義務は発生しないし履行遅滞にもならないと、こういうことですね。
  61. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 単なる通知と請求とは違いますので、改めて請求の意思表示が要るという前提でございます。
  62. 前川清成

    前川清成君 その相当期間の始期が通知から始まらずに請求から始まるのはどうしてですか。
  63. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 通知というのは、あくまでもこれこれの保険事故がありましたということが通知でございまして、その後、通常の約款上では、これこれの金額があって、何月何日にこうこうこういうことがありましたという、一応所定の手続を経て請求をするということが定められている例が多いようでございます。そういうことを請求と呼ぶのだと、そういうふうに考えております。  民法上何を請求と呼ぶかというのは後から解釈でできることでありますから、通知のところが非常に整っていて全部できていれば、事後的に裁判で判断するときに、そのときに請求があったと見る余地は当然あるだろうと思います。
  64. 前川清成

    前川清成君 これは三村さんでも倉吉さんでもどちらでもいいんですが、現在の実務において保険金請求というのはどのような形でいつ行われていますか。分からないんだったら分からないでいいです。
  65. 遠山清彦

  66. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 現在、その保険会社の実務におきましては、事故通知が行われた後、請求が行われると、そういうふうに理解をしております。
  67. 前川清成

    前川清成君 だから、請求はどの時期に行われるんですかという質問、分からなかったら分からないで結構です。ロスタイムはやめて。
  68. 遠山清彦

  69. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 事故に関する様々な資料、書類等をそろえた後に請求ということになろうかと思いますが、それはその具体的な事情によって変わってまいるものと理解をしております。
  70. 前川清成

    前川清成君 分かっているんだったら最初から言ってくださいね。これは、鳩山大臣、この法案の致命的な欠陥を金融庁も認識しているから、今ごまかそうとしたんです。  倉吉さんも、請求というのは所定の手続を経てと、こういうふうにおっしゃいました。現在の実務において保険金請求というのはどういう形でされているかというと、保険会社に通知を送ります。すると、保険会社の損害調査部がさんざん調べて、保険会社の方がこれは支払っても構わないと決定した後に、初めて請求書の用紙を契約者に渡しているんです。だから、そのときからその相当期間が経過すると、こういうことです。  そもそも、保険契約者の側に、保険金の受取人の側に請求書の用紙はありません。用紙がないんだから、倉吉局長の言うところの所定の手続を取ることはできない。そうなると、この相当期間請求のときから始期が始まってしまうので、いつまでたっても、その相当期間が何日かというのも大変大きな問題ですけれども、始期が通知のときからではなくて請求のときから始まっているというのは、私大変大きな問題だと思っています。  ですから、今の実務を前提にすると遅滞は始まらないということになってしまいます。また後でお聞きしようと思うんですが、もちろん、裁判を起こせばその段階で遅滞が始まるのかもしれませんが、保険金、一年間に何千万件と請求されるのを一々裁判を起こすわけにいきませんので、この請求の始期については私は大変大きな問題であるということをまず指摘しておきたいと思うんですけれども、もし、この点で法務省の方で何か反論があればしてください。
  71. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 今、委員の御指摘のことももっともでありますが、ただの通知と請求というのはこれは法律的には意味合いが違う、このことはその前提で委員も御指摘になっていると思います。  現実には、確かに対象となる保険契約特定であるとか、保険給付の額の算定であるとか、それから保険給付請求権者の同一性の確認、振り込み口座の指定等のために請求手続が必要になっている、これはそのとおりでございます。  ただ、現実にそのような請求書類が提出されていない場合でありましても、事実関係によっては、先ほど私が申し上げましたが、この時点で請求があったと見るのが相当なんだと裁判で判断された例はございます。これは最高裁の判例もございます。
  72. 前川清成

    前川清成君 だから言ったんですよ、その全部裁判するわけにいかないでしょうと。それだったら、もう鳩山大臣の大嫌いな訴訟社会にしないと仕方ないんですよ。  じゃ、全く法律に関して知識のない方が請求するというのはどういうやり方があるんですか、倉吉さん。
  73. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 法律的な知識がないということを言われましたので、非常に苦しいことは認めますが、自分が権利者であると、そしてこの保険金額は幾らになるはずだと、何月何日にこれこれの保険事故が発生したと、それでこの契約に基づいて保険金支払ってくださいという意思表示をするということになろうかと思います。
  74. 前川清成

    前川清成君 もうこれ以上やりませんが、今指摘されたような事項を市民の方が、弁護士でもない、法律について特に学んだような方でもない方が御自身で請求するなんということはほとんど不可能だと思います。ですから、例えば電話で家が火事になりました、あるいはお父さん亡くなりましたと、その通知の時点から始期は始めるべきではないかなと私は思っています。  それで、大臣、そういうふうな意味でちょっとお聞きしたいんですが、大臣大臣所信の中で訴訟社会にしてはならないというふうにおっしゃいました。その趣旨がどういう意味をおっしゃっているのか、少し、できれば簡単に教えていただけませんでしょうか。
  75. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 例としていいかどうか分かりませんが、アメリカのマクドナルドでコーヒーがこぼれてやけどして三億ぐらいという認定が陪審でなされて、結局は何千万になったか分かりませんが、日本人は非常に驚いたわけですね。  それが例だというわけではありませんが、日本という国は元々和の精神というのを非常に貴ぶ国であったと。これは非常にウエットな文明なわけで、これをお話しすると大体一時間掛かるんですけれども、いわゆる一神教で、何というんでしょうか、畑作、牧畜というか、そういうところで発生した文明というのは戦いを常に行うと。非常にドライですよね。そのドライということと訴訟社会ということと私は関連があると思っているんです。裁判にしなくて話合いでまとめるというのがやっぱり和の精神ではないかと。  私は、何でもかんでも、肩触れ合ってちょっとごみが付いた、訴訟だと、そういう国にはしたくないという気持ちでございまして、和をなす文明の正反対に敵をつくっていさかいをやる文明と。これが白人社会は主にそうですよと言うとちょっと人種差別の発言になりますが、傾向としてはそうなるわけでございまして、そういう意味で、ですから、救急車が病院に駆け付けると弁護士も駆け付けるという話がありますが、そういうふうにはしたくないなという思いがあります。
  76. 前川清成

    前川清成君 和の精神というのはそもそも聖徳太子に由来するのかもしれませんし、これは奈良県の先人でございますので。  大臣のおっしゃっていることは、私もまさにそのとおりだと思います。救急車を弁護士が追いかけていくような社会では決してならないと思うんです。  ただし、訴訟を起こさないと正義を実現できないのであれば、その正義を実現するために裁判を起こす。それをサポートしていかなければならないし、そもそも訴訟を起こさなければ正義を実現できないような社会であってはならないです。裁判を起こす前に正義が実現される、そういう社会であってほしいなと思っています。  その関係で今、今日、理事会の御許可を得て某海上火災保険の示談の提案書を配付させていただきました。  例えば、交通事故が起こりますと、自賠責保険というのがありますが、その自賠責保険は、例えば後遺症一級の両眼失明の場合には、後遺症慰謝料一千百万円というふうに定められています。これに対して、裁判を起こすと、この一千百万円ではなくて、例えば大阪地裁基準ですと三千万円。同じ交通事故で同じような損害を受けていながら、自賠責だと一千百万円で裁判所は三千万円なんです。保険会社は示談代行を行うわけですけれども、これは保険会社の取決めで、自賠責会社がやるのではなくて、自賠責と任意保険会社とが異なっている場合には任意保険会社がやることになっています。任意会社が示談金を支払って、その後自賠責からお金を回収すると、こういうシステムでやっていますけれども、任意保険会社がその被害者の方に示談を提供するのは、なぜか、ここにもありますが、自賠責基準で提示されているわけです。  どうして、これは金融庁に対する質問ですが、自賠責基準で示談がなされているのか。そもそもそういう実態を知っているのか知らないのか。検査をやっていますから必ず知っているはずなんですが、知っているにもかかわらず放置しているのはどうか。結局は訴訟社会にしろというふうに金融庁は思っているのかどうか。そこをお伺いしたいと思います。金融庁
  77. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 示談の過程につきましては、被害者との間の合意に向けて保険各社において様々な話合いがなされていくものと承知をしております。自賠責保険基準につきましては、自賠法に基づき、公平かつ迅速な支払の確保の必要性を勘案して定められているものだと承知をしております。  一方、任意保険基準につきましては、各保険会社が提供しております対人賠償保険における保険金及び損害賠償額算定の目安として定められたものでございまして、被害者の個別具体的な事情を十分考慮した上で、裁判基準も参考としながら加害者と被害者との間で実際の損害賠償額が協議されていくと、そういうふうな実態だと認識をしております。(発言する者あり)
  78. 前川清成

    前川清成君 委員長質問に答えさせてください。
  79. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 三村参事官質問に答えてください。
  80. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 個別の事情につきましては、ここでは……(発言する者あり)
  81. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 委員皆さん、静粛、静粛にしてください。  答弁を終えてください。
  82. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 個別の、どういう交渉過程でどういう提案がなされるかということにつきましては、基本的には保険会社契約者あるいは被害者のことを考えながら進めていくものだというふうに考えております。
  83. 前川清成

    前川清成君 お手元に、これは死亡事例なんですね。これは入院雑費が一日千百円となっています、これは自賠責基準です。ちなみに、大阪地裁基準は一日千五百円です。これはお亡くなりになっている事例ですけれども、自賠責基準で死亡慰謝料が遺族一人の場合九百万円、これ裁判所基準ですと二千七百万円で三倍も違っている。  これは、私は、個別事例の話、個別具体的な話をしているのではなくって、金融庁監督している損害保険の示談の実務においては自賠責保険基準に基づいて示談案が提示されていますと、そういう実態を知っているんですか知っていないんですかと、知っているんであったらどうして放置しているんですかという質問です。  答えさせてください、委員長
  84. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 個別の検査等におきましてそういう事情について承知をするということはあろうかと思いますけれども、一般論として、保険会社が示談に当たって、当初に自賠責保険基準で提示をし、それで交渉を進めようとしているということにつきましては、金融庁といたしましては、自賠法に定められた保険金額以上の保険金支払われるような場合には、あくまでも加害者と被害者との合意形成を目指して各保険会社において協議が進められていくというふうに承知をしております。
  85. 前川清成

    前川清成君 質問に答えさせてください。
  86. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) いや、今知っていると言っていますよ。知って、しかもそれをいいと言っています。
  87. 前川清成

    前川清成君 じゃ、確認します。  私の質問に対して、知っているし、金融庁としてはそれを認めていると、こういうことですね。はいかいいえで答えてください。
  88. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 個別の交渉につきまして承知をしているということではございませんので、一概に、はいといいえという割り切ったお答え方ができないので恐縮でございますが、具体的な状況に応じて、各社において加害者と被害者との間の合意形成を目指して協議をされていくというふうに理解をしておるところでございます。
  89. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を止めてください。    〔速記中止〕
  90. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 速記を起こしてください。
  91. 前川清成

    前川清成君 金融庁にお尋ねをしますけれども、金融庁としては、各損害保険会社が被害者に対する示談に当たって自賠責保険基準で提示し、そしてそれで示談をしているという実態を承知しているし、それについて認めている。認めているというのは、そういう事態は良くないですよ、自賠責保険での基準で示談するのは良くないから改めなさいという行政指導はしていないということでよろしいですね。はいかいいえで答えてください。
  92. 三村亨

    政府参考人三村亨君) そのような行政指導を行っておりません。
  93. 前川清成

    前川清成君 はいかいいえで。
  94. 三村亨

    政府参考人三村亨君) はいでございます。
  95. 前川清成

    前川清成君 委員長、今のはこれ、時間五分ぐらいロスタイムですから、余計に。  大臣、結局私が申し上げたいのは、任意保険会社は自賠責基準で示談をしてしまって、それで示談金を支払うと、その後、自賠責会社から全部お金が返ってくるんです。任意保険会社保険料はもらっているけれども自腹はゼロ。それはおかしいじゃないかと思うんです。  先ほどお示ししましたけれども、裁判を起こしたら実は示談金は三倍に跳ね上がるわけです。自賠責保険基準がどう、任意保険基準がどう、裁判の基準がどう、一人一人の被害者の皆さん方は御存じありません。ないことを利用して、言葉は悪いですが、被害者の知らないことに乗じて保険会社は自賠責保険で示談をさせて、それによってぼろもうけをしていると。ぼろもうけをしているというのは、任意保険保険料はもらっているけど自腹は切らないという意味でぼろもうけをしていると。しかも、その実態を知りながら、金融庁は知らぬ顔なんですよ。だから、先ほどの保険金支払時期についてもそうです。検査をやっていますが、こんな実態はずっと前から知っている。知っていても知らぬ顔なんです。  ですから、福田内閣の副総理格でいらっしゃる鳩山大臣におかれて是非お願いしたいのは、この保険会社監督権限金融庁に残したらあかんと思います。消費者庁に移さなければならないと私は思っているんです。  鳩山大臣、御感想で結構です。
  96. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 正直に申し上げますと、消費者庁の問題が出てきました。まあ、これはもちろん総理の公約、施政方針演説でもあったわけですが、いよいよ具体化してくるので、まだまだ省庁間の協議の段階だと思います。  ただ、私は、消費者庁がどういう権限というか、今ある各省庁の役割をどういうふうに引き受けていくのかという話が出たときに、ああ、今保険法審議をやって、これは基本法だけれども、保険関係の業法とか監督というのはこれは当然消費者庁に行くんだろうねと私は民事局長に言いました。ただ、まだそういう具体的な検討がなされているわけではないということのようでありますが、私はそういうことを役所内で発言したことがあります。  それから、余計なことかもしれませんが、私は今回の保険法審議の中で、精いっぱいこれでも消費者生活者に温かいというか、少しでも有利になるようにという配慮はいろいろとちりばめられているとそれなりに自負はいたしております。  大学時代に、何という教授だったか覚えておりませんが、大学の講義の中で、損害保険とかあるいは生命保険とかいろいろあるが、そういうものを民間の会社にやらせるのは危険であるという講義を聞いたことがあります。本来、そういうものは全部国がやればいいんだと、損保生保も。まあ、といっても国の役人が信用できるかという問題は別にあると思いますが。ただ民間会社にこれを一種の金融としてやらせることが正しいかどうかには大きな問題があるんだよ、諸君という、こういう講義を聞いたことがありまして、いろいろな保険金の不払の事件とか、先ほどの約款の話とか、前川先生のいろいろな御質問や鋭い御指摘を伺っておりますと、やっぱりその教授の講義のことが多少頭によみがえってくる思いがするわけで。  金融庁というのはよっぽど厳しくやらないと、この程度の答弁しているようではそれは消費者が泣くことが起きるような気がしますので、政府としてはこれは真剣に取り組むべき問題だと思うし、消費者庁ということであれば、個人的な意見としては、やはり消費者庁が物すごく厳しく消費者のために頑張るというのであれば、こういう分野は絶好の分野でしょうな。
  97. 前川清成

    前川清成君 ありがとうございます。是非、大臣にはますます御活躍いただくことを陰ながらお祈りをいたします。  それで、次に同じような問題で等級の問題を取り上げさせていただきたいと思うんですが、皆さん方も御存じのとおり、最初、自動車保険に加入しますと六級に、それで事故を起こさなければ毎年毎年等級が上がっていって保険料が安くなる。しかし、事故を一回起こすと三等級下がります。それで保険料が高くなる。例えばですが、加入した年に二回事故を起こしてしまうと一挙に一等級になってしまう、それで保険料が高くなる。  私は、リスクの高い人が高い保険料を負担することは公平だし、それ自体は問題はないと思っています。問題なのは、実は損害保険会社は一等級になってしまうと翌年、契約を引き受けません。引き受けたとしても、対物や車両は駄目で対人だけということになってしまいます。結局は、その結果どうなるかというと、自賠責しか入っていない車が世の中を走ってしまう。その結果、被害者の方々が大変つらい思いをする。この仕組みが本当に正しいのか。  これも、四月三日の民主党法務部門会議で損害保険協会で三井海上の何とかさんという専務がお越しになりました。こういう制度は私、良くないのではないかとお尋ねをしましたら、不良な客を排除するためですというふうに御発言されました。  損害保険会社にとって不良な客、すなわち保険金をどんどん払わなければならない、自分のところのもうけを妨げる、それは不良な客かもしれません。しかし、私は、先ほどの大臣のお話もありましたように、保険会社というのは金もうけをするだけの会社ではなくて、公の器、まさに国がやってもいいような公の器なんだろうと、そういうふうに思っています。  保険会社が引き受けない。その結果、事故が起こってしまう。高リスクの方ですから事故が起こる可能性が高い。そんなときに被害者が泣いてしまう。被害者を泣かしてまで保険会社がぼろもうけをするこの等級という制度、とりわけ、保険を引き受けないという今の制度の在り方は被害者救済という点で大変問題があると私は思っています。  山本大臣、専門的、技術的なことは結構でございますので、今の点について御感想や、あるいは金融庁の、政治家としてのお考えがありましたら、是非お聞かせいただけませんでしょうか。
  98. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 今お話ありましたように、事故を起こした場合に点数が下がってくるという話は私もお聞きをしております。ただ、それを事故件数が多いから、多いからあなたには、もうあなたの保険は引き受けませんよということがあるかどうかは私はよく承知はしておりませんけれども、対人については少なくとも引き受けなければいけないという指導はしておるというふうには聞いております。ただ、その他については必ずしも引き受けなければならないという指導はしていないというふうには私は聞いておるところでありますけれども、これもやはり弱者救済ということはしっかりこれから考えていかなければならないというふうに思っております。
  99. 前川清成

    前川清成君 対物だって、例えばどなたか独り住まいのおばあさんの家が飛ばされてしまって路頭に迷っちゃうということもあるんですよ。対人だけ入ったらいいけど、対物やあるいは車両は入れなくてもいいということに私はならないんだろうと思うんです。  で、今も大臣のお話の中にありましたので、ちょっと付言させていただきますと、時間の関係でこれが最後の質問になると思うんですが、四月六日に金融庁が私の部屋にいらっしゃいました。そのとき、どういうわけか、三井住友海上の社員三人が同行されました。なぜか同行されました。  そのときに私は、この四月三日の民主党法務部門会議で三井住友海上の専務さんがこんなことを言っていたねという話をしましたら、その名前は言いませんが、三井住友海上の社員の方は、任意保険は自賠責保険ではありませんと、したがって引き受けなくても違法ではありませんと胸を張っておっしゃいました。しかし、行政上の監督を受けることはあるんですとお答えになりました。これ、答えは私はメモした上で本人にも指し示しましたし、その場に金融庁の職員三人の方もいらっしゃいました。  そこで、山本大臣にお尋ねしたいのは、違法ではないんだけれども行政指導をする、監督をする、これは一体どういうことなのか。お聞かせいただけますでしょうか。
  100. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 行政指導というのは、法律に少しでも順応したような形で進んでいってもらいたいというような形で、処罰を加えるということではございませんけれども、相手方が法の精神にのっとっていろんな業務が遂行できるようにする、そうした形が行政指導かな、そんなふうに思っております。  私も、今のお話、詳しく内容をお聞きしておりませんから分かりませんけれども、先ほどの話にありましたように、リスクの高い、先生言われるリスクの高い人という話がございましたけれども、そういう事故件数の多い人にとっては必ずしも引き受ける必要はないということを申し上げたのかなと、そんなふうに私は思っております。
  101. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 前川清成君、質疑時間が終局しております。
  102. 前川清成

    前川清成君 時間の関係でこれで終わりますけど、山本大臣、私が申し上げているのは、リスクの高い人は世の中に対して迷惑をまき散らす可能性が高い人なんですよ。その迷惑を社会全体で平等に公平に分担しましょうというのが保険という制度なんですよ。だから、リスクの高い人ほど保険に入ってもらわないと困るんですよ。だから、そういうふうに金融庁は指導すべきじゃないか。保険会社に損をさせろなんて言っていませんよ。リスクの高い人は高い保険料をお願いしたらいいんですよ。  その点の消費者を守るというような問題意識が、今の副大臣の御答弁にはつめのかけらも感じられない、まさに保険会社を守る、業界を守るという意識しか考えられない、感じられないのが大変不満であることを申し上げまして、残念ながら時間が来ましたので、今日はこれで終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  103. 松野信夫

    松野信夫君 民主党の松野信夫です。  私の方からも保険法案について質疑をさせていただきたいと思いますが、その前に少し確認をしておかなければならない事件が発生をしております。今日の新聞各紙に大きく載っております。現職の宇都宮地裁の裁判官がストーカーをしたという容疑で逮捕される、こういう事件であります。  実は、昨日の夕方、この事件の発生を知りましたので、急遽これ質問するということで最高裁の方にも御通知申し上げて、今日は来ていただいているかと思います。  まず、この事実関係、これは新聞記事に少し載ってはおりますが、事実関係、こういうふうな容疑で逮捕されたということが間違いないかどうか。特に、この女性職員、女性というストーカーの対象は、被害者は裁判所の職員だと、こういうふうにも書いてあるんで、ちょっとびっくりするような事件であります。事件の概要について分かっている範囲で御説明ただきたいと思います。
  104. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) お答えいたします。  お尋ねの事案は、今お話がありましたけれども、宇都宮地方裁判所の下山芳晴判事が、被害者である二十歳代の女性裁判所職員に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、平成二十年二月十九日ころから同年三月十九日ころまでの間、十数回にわたり被害者の携帯電話に、メール機能を用い、今度いつ会えるかななどと面会を求めるなど、被害者に義務のないことを行うよう要求する内容の電子メールを送信し、被害者に対し行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法等により、付きまとい等の行為を反復して行うストーカー行為をした、こういう疑いで昨日通常逮捕されたものであると承知しております。
  105. 松野信夫

    松野信夫君 本当、びっくりもするし、とんでもない事件だというふうに思いますが、ただ、これ現職の裁判官を逮捕するということですから、恐らく、逮捕したのは山梨県警だということですが、県警のトップクラスあるいは警察庁のトップの方にも、逮捕状を請求するかどうか、多分議論が上がっていたんではないかなという、それだけのことだと思いますし、また、なぜこれが事前に防止できなかったんだろうか。恐らく高裁段階ぐらいまで、こういうふうな事件が起こっていて女性職員が困っているということが、かなり裁判所の上の方にも上がっていたのではないかと。そうすれば、それなりにもっと何らかの手が打てたのではないかという気もするんですが、その点はいかがでしょう。
  106. 大谷直人

    最高裁判所長官代理者(大谷直人君) 裁判所といたしましては、この四月に入りまして被害者の申し出によりまして本件被害を知ることとなりました。下山判事からも事情を聴取いたしました。しかし、被害者は既に警察に相談をしているということでありましたので、捜査の妨げとならないようその進展を見守っていたということでございます。
  107. 松野信夫

    松野信夫君 恋愛感情を抱くのは、人間ですから、それはまあ自由と言えば自由ですけれども、しかしこういうような事件を起こしてまでいいかというととんでもない話でありまして、こういう方が、それこそ先ほど前川委員質問していた相当期間がどうかというような点についても判断を下していくということになるわけで、まあそれだけ裁判官というものは具体的な法の判断を迫られるわけですから、本当に大丈夫だろうかなというふうに思います。  特に質問通告していませんでしたが、法務大臣、この事件をお聞きになってどのようにお考えでしょうか。
  108. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 裁判官が起こした事件でございますから、これは最高裁の方がどうお考えになるのかなと思いますが、ただ松野先生、私はやっぱり法曹の質の高さというものを信じたいと考えている人間でございます。  数日前の決算委員会前川先生からやはり三千人問題についての御質問もいただいた。河井副大臣が前に委員会答弁をした、つまり千何百人に増やしていく段階においては条件は付いていないが、平成二十二年ごろには三千人にするということについては、法曹養成の整備がきちんとできていると、つまり法科大学院がきちんと機能して立派な人材がよく教育されているという条件が必要だと、これが付いていると、閣議決定においてですね、そこに大きな違いがあるということ、そんなことを御答弁申し上げましたが。  それは人数、人数と、確かに人数の議論は私もしますし花盛りではありますが、一番大事なのは法曹の質の問題だろうと、こう思っておりまして、その法曹の裁判官の、しかも五十五歳のベテランというふうに聞いておりますが、がこういう事件を起こしますと、これから裁判員制度が始まるというのに、法曹そのものに対する信頼の失墜につながるので大変憂えております。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕
  109. 松野信夫

    松野信夫君 また、いずれこの問題についてはいろいろ質疑させていただきたいと思いますが。  次に、今大臣の方から法曹の質の高さというお話がありましたが、残念ながら、最近少しその法曹の質がいろいろ問われるケースが続いております。その一つが、もう既に何度も当委員会で取り上げられている志布志事件であります。残念ながら、警察、検察の劣化だというふうに私はもう言わざるを得ないケースだと思っております。  それで、時間の都合もありますが二点だけお尋ねしたいと思いますが、まず第一点は、この事件の捜査の端緒というのは一体何であったのか、この点がまだ必ずしも明らかになっておりません。  元被告人の皆さんあるいは弁護人の皆さん、この人たちは、この事件というのは完全な捏造だと、でっち上げだというふうに言っておられるわけであります。是非、彼らのそういうような無念な思い、これをやっぱり晴らすためにも、この志布志事件というのは一体何であったか、一体どういうことから始まったのか、この捜査の端緒を是非明らかにしていただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  110. 米田壯

    政府参考人米田壯君) この志布志事件の捜査の最初の端緒に関しましては、鹿児島県警察において缶ビール一箱を送り投票依頼を行ったという旨の情報を入手しまして、そして投票日後、本格的な捜査を開始をしたということでございます。そして、その捜査を進めている過程でさらにビール以外の現金及びしょうちゅうの授受があるという情報あるいは供述を得まして、そしてその当該しょうちゅう等の供与について更に捜査を進めたと。そしてその過程で、それまで県警が把握していなかったいわゆる買収会合の事実についても把握するに至ったと、こういうような経過で捜査が進められたものというように承知をしております。
  111. 松野信夫

    松野信夫君 警察の方にビールを配ったということだという、これがその捜査の端緒だということであれば、そういうような事実がまず真実かどうか、これは当然客観的な証拠、客観的な裏付けでやることが本筋だろうと思います。何かたれ込みがあった、だけれどもそれがガセネタなのか本当なのか、当然これは客観的な裏付けでやっぱり確認をしていかなければ、そのガセネタに踊らされるということだって十分あり得るわけですね。  結局それは、客観的な裏付けあるいは証拠というものはあったんでしょうか、どうですか。
  112. 米田壯

    政府参考人米田壯君) まず、このビールの件につきましてはその関係者の事情聴取等を進めましたが、立件には至っておりません。ただ、その過程で関係者から缶ビール一箱、その情報どおりの缶ビール一箱の任意提出は受けておるということでございます。
  113. 松野信夫

    松野信夫君 ビールあったけれども、それは結局立件には至ってないわけですから問題なかったと思うんですね。  そうすると、その後やっぱり一番の問題は、この事件では買収がなされたという、買収事件が中心なわけですけれども、だけれども、この買収の方も私がいろいろ聞いているところでは、どうも垂れ込みがあって、そういう垂れ込みに引き回された、そういうふうに聞いております。  そうした中で見ますと、元被告人の皆さん方も口々に言っているんですが、何ら客観的な証拠というのが結局出なかった。結局、長時間にわたる取調べ、取調べ、取調べ、それのみに頼っていて、客観的な証拠もない中で、言うならば買収が四口もあったということで作り立てられたと、こういうことではないかと思うんですけれども、何かその買収関係でも客観的な証拠というのが後から出てきたんでしょうか。
  114. 米田壯

    政府参考人米田壯君) この件につきましては、私どもも検証結果報告書を出しておりますが、非常に裏付け事実に乏しいという中での事件検挙だったということで、これは反省をしているところでございます。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕
  115. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、結局、客観的な裏付けあるいは証拠がないまま取調べだけに頼って長時間脅迫的なことでなったと、だからやっぱりでっち上げじゃないかと、こういう指摘もせざるを得ないわけですね。  それから二点目は、元被告人の中山信一さん、この方が県議に当選しておられるわけですが、この人のアリバイ、これが後から問題になったように記録上はなっております。それで、本来ですと起訴前に本当にアリバイがあるのかないのか、こんなことは捜査のイロハのイだと思いますので、起訴前にきちんと確認をして、そこでアリバイが確認されれば当然起訴には至らない、もし裁判の途中でアリバイが明らかになればもうその時点で公判はもうやめてしまう、取下げということだってあり得るわけですね。このアリバイの存在を知ったというのはいつの時点になるんでしょうか。
  116. 米田壯

    政府参考人米田壯君) これもこの委員会で何度か御答弁させていただいておりますが、元被告人がこの年の七月十七日に起訴されましたが、その一週間後、七月二十四日にアリバイが成立する可能性のある事実につきまして鹿児島県警が把握をして、その後所要の捜査をしたというものでございます。ただ、その時点では、要は別の会合に出ておったということでございますけれども、それは時間的な関係から必ずしも両方の会合に出ることは不可能ではないというように認識をしていたというように承知をしております。
  117. 松野信夫

    松野信夫君 中山さんが買収されたとされた会合に出ることが可能であったかなかったか、実は中山さんの方は別のこれは同窓会の会合に出ていたと、こういうことで、結局裁判所の判決も、別の同窓会の会合に出ていたので検察側が主張する買収の会合には出ていなかったと、つまりアリバイの成立を明確に認めたわけで、ですから、そういうようなことが何で警察、検察の方ではっきりしなかったのか、本当に私はこの点は不思議に思っております。  裁判所の判決見ただけでも、これはもう明確にアリバイの存在、これがあるからある意味では無罪と、こうなっているわけで、アリバイがはっきりした後も公判を継続して、そのアリバイつぶしに奔走したというふうに私は言わざるを得ない、そのように思いますが、法務省の方はそのアリバイつぶしに奔走したというふうに言われても仕方がないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  118. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員指摘のアリバイに関する情報でございますけれども、検察官がこれを知ったのは起訴後のことでございます。ただ、検察官といたしましては、そもそもそのような情報があってもその信頼性と申しましょうか、その点がどうなのかという点が一つと、それからいま一つは、実際に被告の方が同窓会等に参加されていたとしても、なおその公訴事実に係る買収会合に出席することは可能ではないのかということで公判を継続したと、こういうことでございます。
  119. 松野信夫

    松野信夫君 ただ、本当はそれはおかしいんですよ。もう何度も指摘していますが、この買収会合をされたという第一回の会合の日時の特定というものが検察側で全然やらないで、結局この日時の特定がなされたのは第四十二回公判です。起訴から約二年たっている。起訴から二年たってようやく買収したという日時の特定がなされている。これは余りにもずさんというか、僕はでっち上げだからやっぱりこういうふうに日時の特定もできなかった、こういうふうに指摘せざるを得ないと思いますが、何か反論されるならどうぞ。
  120. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 検察官がこの事件を起訴した時点で、第一回目の会合の日付につきましては平成十五年二月上旬ころというように記載したわけであります。また、第四回目の会合の日付につきましては同年の三月下旬ころと記載したわけでありますけれども、その時点では訴因の特定としてはこれで十分であるというように考えたわけでございます。そのようなことで公判を進めたということでございます。  その後、御指摘のありましたように、具体的に日付を十五年の二月八日とそれから三月二十四日というふうに特定したわけでございますけれども、これは裁判の過程で弁護人から求釈明の申立てが何回も行われました。また、それまでの公判経過ということで、実際にその日付の特定というものは、そうした公判の経過に照らし、訴因の機能等も考えまして、特定する必要があると判断して、このような特定に至ったものというように理解しております。
  121. 松野信夫

    松野信夫君 もう余り長々これしませんが、ただ私は、警察官が報告している内部文書の点はもう何度も指摘しておりますが、その内部文書を見ても、警察と検察とのやり取りを生々しく書いてあるんですが、なぜ特定したかというと、要するに消去法で特定しているんです。この日では駄目、この日でも駄目、この日でも駄目、結局残るはこの日しかないなと、じゃこの日にしようということで、結局、第一回目の会合は平成十五年二月八日にしようと、こういう決め方。こういう決め方でいいんだろうかと。こういう消去法で実は日時を決めたということは認識しておられますか。法務省、どうですか。
  122. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 日付の特定につきましては、公判の過程で訴因を特定するということで、検察側もこれを特定したわけでありますけれども、それはそれまでの公判に出ている証拠等からそのように特定したものでありまして、今回の裁判の中におきましても、当時のその買収会合に出席されたとされる方の自白を中心にそのような特定に至ったというように理解しております。
  123. 松野信夫

    松野信夫君 要するに、消去法で決めたというのを認めたのか認めていないのかよく分からないので、消去法で決めました、いや、そうではありません、どっちか、イエスかノーだけで答えてください。
  124. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 消去法で決めたかどうか、その辺りでありますけれども、あくまでも積極証拠に基づいて認定したものだというふうに理解しております。  ただ、具体的に捜査をしていく過程で日付を特定する際に、これと矛盾するといいましょうか、日にちがあることを消去していく、そういう手法自体は決してあり得ないことではないというように理解しております。
  125. 松野信夫

    松野信夫君 志布志についてはまたいろいろと御質問したいと思います。  今日は保険法案でありますので、これについて御質問したいと思います。  まず、私の方からは、他人の生命に掛ける保険、これを質問したいと思います。  よく会社が従業員のために団体生命保険というものを掛ける、これはよくあることであります。そういう他人の生命に掛ける保険についての質問でありますが、これまでこうしたケースで掛けられた場合に、被保険者である従業員が亡くなったというときに、その保険金保険契約者である会社のものなのか、それとも亡くなった従業員、被保険者である従業員の遺族のものなのかということで紛争がありまして、裁判もありました。  できるだけこういう紛争が発生しないように明確にやはりしておかなければいけない、こう思いますが、本法案ではこうした紛争が発生しないような何らかの手当てというのはあるんでしょうか。もしよろしければ大臣の方でお願いします。
  126. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 会社が従業員の身体、生命に保険を掛けるといういわゆる団体生命保険というような形のものについて、特に何がこうだという規定を置いているわけではないと思いますが、要は保険法案の第三十八条で、当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約、つまり従業員に死亡保険契約を掛けるような場合には、その被保険者の同意というものを効力の要件としているわけでございますから、同意がないと契約は効力を失うということでございます。したがって、この場合、会社が社員を被保険者とする場合の同意というのは、保険金の受取人が一体だれであるかと、あるいは額が幾らであるかといった契約の基本的な内容を全部説明をして、同意を取って初めて団体生命保険としての効力を持つというふうに考えております。  したがって、個々従業員、被保険者である、いわゆる一般的に言うならば保険を掛けられた個々従業員契約の基本的な内容を知らない、漠然と同意をしたと、あるいは会社が雇用者だという強い立場を盾に取って強制的に文句言うなといって同意をさせたというような場合は、被保険者の、つまり従業員の同意があったとは言えないで保険契約は効力を有しないと、こういうふうにこの保険法案で解釈できるわけでございます。
  127. 松野信夫

    松野信夫君 保険法案の三十八条の解釈はそのとおりで、同意がなければ効力を生じない、こういうふうに規定があります。ですから、同意がきちんとなされるかどうかというのは重要なポイントであります。  ただ、これまでの実態を見ますと、大臣も今少しお話しされたかと思いますけれども、どうもきちんとした形、保険契約内容期間がどれだけでどういう特約が付いている、どういう場合に保険金が下りる、保険金額は幾らだと、そういうような具体的なところまできちんと説明をした上での同意かどうかとなると、これまでの例というのはいささかずさんだというふうに言わざるを得ないケースが多いかと思います。  それで、もし今大臣も言われたように十分に認識をしない形であったとすれば、これは同意がなかったと、同意がなかったというふうに判断される場合も当然出てくると思います。そうすると、この第三十八条でいきますと効力を生じないということになりますから、この場合は、保険契約者たる会社の方も保険金はもらえないし、従業員の遺族も保険金はもらえない、結局保険者たる保険会社の方がある意味ではもうかっちゃうという結果になるんではないんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
  128. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 効力を失いますので、そのとおりでございます。
  129. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、この同意というのは非常に重要なポイントになるわけで、今のお話ですと保険会社だけがもうかっちゃうということになるんですが、それでよろしいんですか。
  130. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 契約自体が無効になりますので、保険会社は受け取っていた保険料を不当利得返還で返さなければならなくなります。だから、保険会社が一方的にもうけるというわけではございません。
  131. 松野信夫

    松野信夫君 それで、ちゃんとした同意があったという、これは立証責任はどなたが負うことになるんですか。
  132. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) それはだれとだれとの間の紛争という前提でしょうか。
  133. 松野信夫

    松野信夫君 保険会社に対しては、両方考えられるわけですね。遺族の人はこれは遺族のものだということで訴える場合もあるでしょうし、保険契約者たる会社の方が保険会社を訴える。いずれにしても、訴えられるのは保険会社ということになるわけです。こういうケースでどうでしょう。
  134. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 申し訳ございません。いろいろなパターンがあるものですから。  要するに、同意がないから契約が無効であるとだれかが主張するということになるんだろうと思います。その契約の無効を主張する人が同意がないことの立証責任を負うということになるのではないかと思いますが。ちょっといろんな場面があって、私も混乱しているかもしれません。少し検討させてください。
  135. 松野信夫

    松野信夫君 普通、裁判の感覚でいうと、ないことを立証するというのは、これは悪魔の証明ですから、ないことを証明というのはこれはなかなか難しいことではないですか。訂正ですか。訂正してください。
  136. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 申し訳ございません。ただいま委員の御指摘のとおりであります。  申し上げたかったのは、この契約の効力はないぞとだれかが主張すると、主張された側が、これは有効だと主張する側が有効要件として同意は取っていたということを言わなければならなくなると、こういうことでございます。大変失礼いたしました。
  137. 松野信夫

    松野信夫君 まあ、多分そうだろうというふうに思います。これはちゃんと質問通告していたところですから、その辺はちゃんと、訂正なんかしないで答えてください。  それで、私の元々の質問は、こういうケースで遺族の人と会社の方とで保険金はだれのものだという争いが現実に出て、これは事件としては最高裁判所まで争われた事件もあるわけです。それで、できるだけこういう紛争を防止するために、一つは同意というのが重要だということは、これは御指摘のとおりでありますが、ただ、同意ということだけでこういう紛争が収まるとは思えません。むしろ、やっぱりまずはその被保険者の方々、つまり従業員の人たちにきちんと、あなたのためにこうこうこういう保険が掛けられているというようなことで、そういうような通知あるいは被保険者証といったものがきちんと被保険者である従業員の元に届けられるというようなことが私は第一点、まず大事なことだろうというふうに思いますし、やはり場合によっては約款辺りで、法律規定がしにくいんであれば約款辺りで、どちらが保険金請求する権利があるのか、例えば、いったんは会社が保険金を取得するけれども、必ずそれは従業員の遺族に引き渡されるものかどうか、そういうものがきっちり明確になっているということが必要ではないかと思います。  まず第一点の通知とかあるいは被保険者証を被保険者に交付しておくという、これはいかがでしょうか。
  138. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 松野先生おっしゃるとおり、そういう考え方もあると私は思いますし、そういう議論も様々にされているだろうというふうに思っているわけで、今後の検討課題ではないかというふうに思います。  というのは、先ほどの質問保険会社保険契約者、これは強い者と消費者生活者という弱い立場なんだということを申し上げましたけれども、これは憲法の何か理論でも出てきますけれども、やはり憲法の間接適用とかいう理論出てくると思いますが、会社と従業員というのもやっぱり強い者と弱い者の関係がどうしても出てまいりますから、雇用主と従業員という関係になるわけですから、やはり先ほど申し上げましたけれども、押し付け的に団体生命保険に入らされるということも絶対ないとは言えないような気がするわけで、その辺はできる限りはっきりした方がいいし、当然保険契約ですから、保険契約者は会社でございましょうけれども、被保険者従業員の場合に受取人がだれになるかということももちろん決めて、はっきりしておかなければならない。  ただ、一般的に企業が団体生命保険契約する場合というのは、もし従業員が亡くなったときに、死亡したときに払う退職金分をこの保険で得ようという考え方が多いわけでありましょう。そんな中でだれが受取人か、ちょっとトラブルが起きるようなことがあるんだろうと、そう思っております。  ですから、被保険者証のようなもの、これははっきり書いてあるわけですから一つ考え方だと思いますが、現在は、先ほど私御答弁申し上げたような形で、きちんと説明をして被保険者がそれを全部理解しておれば事足りるといたしておりますし、逆に、被保険者証を作ることによってコストが増加するというようなことにもなりかねないと思います。ですが、一つ考え方だと思い、これからも参考にしていきたいと思います。
  139. 松野信夫

    松野信夫君 今大臣も言われた被保険者証を作って交付をしておく、そういうことで権利関係を明確にしておく、一つの考えだ、御指摘ありまして、私もそのとおりなんですが。  ただ、今大臣の方で、そうするとコストが掛かるじゃないかと。これは、確かにコストが掛かるということは当然考えられるわけですけれども、ただ、その後の膨大なコストを掛けて紛争が発生する、それを防止するという意味では、それだけのコストを掛ける価値は十分にあるし、現実には団体の生命保険というものは大体一年更新でやっているわけで、一年に一回だけ通知を出せば済むというようなものでありますし、また、団体生命保険の場合は大体配当金というのが掛けた契約者である会社の方に配当されるわけですから、もしかするとコストが掛かるというのであれば、会社が受け取る配当金が若干減るかもしれないというだけであるわけで、被保険者証を発行しないでいいんだという理由には、余り私はコストの点を理由にすることはできないと、こういうふうに思っております。  それから、従業員が亡くなった、だけど従業員の方にそういう通知だとかあるいは被保険者証だとか、そういうのがないと、一体遺族とすると、どういうような保険に入っていたのか、あるいはもしかしたら会社だけが保険金を取ってしまって、遺族の方には全く支払われないということになってはいないか、当然不安もあるわけですね。そうすると、被保険者立場からすれば、自分がどういう保険掛けられているか、当然それは知りたいし、知る権利もあるだろうというふうに思います。  この場合、本法案では、被保険者立場というのは、同意というところは出てくるけれども、被保険者はこういう権利があるというふうなことは本法案の中に余り書いてない。そうすると、被保険者自分保険はどうなっているか、例えばその遺族が知りたいという場合に知ることができるかどうか。法案の中ではどうか。あるいは、いや法案の中ではそうは書いてないけれども、約款でその点はちゃんと手当てをしていますというなら、それでまあ一つの方法だと思いますが。  双方、法案ではどうか、約款ではどうか。まず、法案については法務省の方からお願いします。
  140. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 先ほど大臣から答弁申し上げたとおりでございまして、法案では被保険者の同意を要件とするということを定めているのみでございます。
  141. 松野信夫

    松野信夫君 じゃ、そうすると、法案の中では被保険者のそういう意味の権利はうたっていないと、同意だけしかうたってないと。  じゃ、約款の方ではどうでしょうか。金融庁、どうでしょうか。
  142. 三村亨

    政府参考人三村亨君) お答えいたします。  約款におきましては、この保険の目的を踏まえまして、保険契約の締結に際して、保険契約者である企業から死亡退職金規程等の提出義務、死亡保険金受取人については死亡退職金規程等に定める受給者とすることなどの規定を設けております。  支払の際には、当該保険金支払を弔慰金受給者にお知らせすべきと考えておりまして、遺族への周知を徹底するよう、保険会社に対して指導を行っているところでございます。
  143. 松野信夫

    松野信夫君 遺族にちゃんと払われるように、今の答弁ですと指導を徹底しているということですが、具体的にどういうような指導を徹底しているのか、もう少し具体的に答弁できればお願いします。
  144. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 具体的には監督指針におきましてきちんと通知をするように定めておりまして、そういった通知が行われているかどうか、日ごろの監督あるいは検査の段階におきましてチェックをしているところでございます。
  145. 松野信夫

    松野信夫君 何か、余りどうもしっかりとした体制が取れてないんじゃないか、だからこそやっぱりこういう裁判も何件も起こって、死亡保険金が遺族のものなのか、それとも勤めていた会社のものなのか、もう争いが絶えないわけですよ。その辺は、しっかりやっぱり金融庁の方で指導していただかないと、せっかく法案が成立したとしても、また同じような紛争が起きますよ。この点だけ指摘しておきます。  それで、この団体生命の関係でいいますと、従来から団体生命の保険金額というのは青天井で、幾らでもいいというふうに従前なっていた。そうすると、勤め先の会社がかなりの多額の保険金を掛けていて、従業員が死んでもそれには渡さずに会社だけがぼろもうけをしたと、こういうケースもあるわけでございます。  大きな社会問題にもなって、最近その青天井式の団体生命は少し変わってきまして、新しく総合福祉団体定期保険と、こういうのも発売されるようになって、これは一応の天井が掛けられているわけですね。これは、勤め先の会社が受け取る保険金内容というのは主契約とヒューマンバリュー特約に分けられる、こういうふうな仕組みでありまして、ヒューマンバリュー特約の適用を受けると、勤め先の会社の方は上限が二千万ということで、従業員の遺族が受け取るより多くはならないと、こういう仕組みのようでありますが、しかし、最高二千万までは受け取ると、こういう仕組みであります。  そうすると、亡くなった従業員の遺族が例えば二千万、そうすると会社の方も二千万、両方とも二千万ずつということであれば、遺族の皆さんから見れば、例えば過労死辺りで亡くなった方もおられると。そうすると、会社のために一生懸命自分は尽くして働きに働いて、しかし結果的には過労死だと。それで勤め先の会社は二千万、このヒューマンバリュー特約というので二千万取っちゃうと。これは遺族の方々から見ればとんでもないことではないかと思います。  こういうヒューマンバリュー特約というのは私はやっぱりおかしな制度だと、これはやっぱり廃止をしなければ、従業員は一生懸命働いても会社の方はそれだけある意味ではもうかると、こういう仕組み自体はやっぱりやめさせなきゃいけないと思いますが、金融庁はこの点はどうでしょう。
  146. 三村亨

    政府参考人三村亨君) お答えいたします。  従業員が死亡された場合、企業が遺族の方に支払うこととしております死亡退職給付金のほか、例えば代替雇用者の採用、育成の費用ですとか、代替雇用者が育成されるまでの間の収益低下に備える保全費用ですとか、あるいは遠隔地で死亡された場合の企業が負担すべき遺族の渡航費用とか、そういった諸費用が発生をいたします。  ヒューマンバリュー特約は、企業がこうした経済的損失に備えるものでございまして、被保険者たる従業員の同意を前提として保障をしているものでございます。企業にとって従業員が亡くなられた際の損失に対する保障であり、一定の合理性があるのではないかと考えております。
  147. 松野信夫

    松野信夫君 いや、私はあんまり合理性があるとは到底思えないですね。  今、亡くなったとすると、勤めた会社の方もいろんな費用が、負担するというお話ありましたけど、だけど、亡くなるケースもあれば、突然辞めていくというケースだってもちろんあるわけですね。そういうようなことも考えると、むしろ企業から見ると死んでもらった方がもうかるというような仕組み自体が私はいかがなものかと。こういう仕組み自体はやっぱり約款を認める段階でやめさせるというようなことでないと、人の死に、労働者の死によって会社がもうかるという仕組み自体が私はやっぱり許されないことだと、このように思っております。  確かに会社の方から見ると、こういう保険掛けておくと、まず保険料は損金でこれ落とせます。それから、退職金の積立てもしているかもしれませんが、これも二千万なりなんなりが下りてしまえば退職金の積立ても取り崩さないで済んじゃう。ある意味では会社にとってはもう結構毛だらけみたいな話になってしまうわけで、こういうヒューマンバリュー特約自体、これをやっぱり許すべきではない、こう思いますが、大臣はどのようにお考えでしょう。
  148. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 現在、ヒューマンバリュー特約はこの法案で禁止しているわけではありません。それは、一つには会社が従業員を育てるためにあるいは高度な技術を得させるために様々な投資をする、不幸にして亡くなってしまった場合に、その分また新たに研修とか、あるいは人材を引っ張ってくるとかしなければならないので、そういうような場合に備えて人材育成を含めた生命保険契約というのが締結される、これを禁止してはいないわけでございます。また、ヒューマンバリュー特約であっても、先ほどからしつこいようですが、従業員に完全に知らせて同意を取っていなければいけないという規定は当然適用されるわけでございます。  ですが、絶対あってはならないのは、ヒューマンバリュー特約のような形のもので会社がもうかることがあっては絶対いけないということ、これは非常に厳しく監視していかなければいけないんだろうと思っております。  私の大好きな作家である森村誠一先生の推理小説をほとんど読みましたが、その中に、身寄りのない人ばかり集めてきて、山谷とかそういうところで、それで会社の従業員にして生命保険掛けて、死ねばもうかると、こういう推理小説がありまして、私はそのときに、なるほど企業が、会社が従業員全員に保険を掛けるというのは意味は十分分かるけれども、やっぱり気を付けなくちゃいけない点もあるという点では、私は松野先生とほとんど変わらないと思います。
  149. 松野信夫

    松野信夫君 それでは次に、保険金支払時期の問題についてお尋ねしたいと思います。  これは先ほど前川委員の方からかなりしつこく、厳しく追及もあってましたので、私の方はそんなに時間を掛けることではありませんが、理事会の御承認いただいて、皆さんのお手元には「保険金請求の流れ」という手作りの資料をお届けさせていただいております。  一般的に考えられる多くのケースでは、交通事故が発生したあるいは火災が発生した、そうすると、時間の経過で申し上げると、その後いろいろ調査をしたり治療をしたりして損害額が確定をする、その後保険金請求すると。今回の法案の立て付けで見ますと、保険給付を行う期間が決まってない場合には相当期間ということで、保険金請求から一定期間経過した後、遅滞に陥る、こういう仕組みになっているかと思います。  そうすると、これまでの法制度から見ると、つまり保険金を受け取る側、保険金請求する側から見ると、少し後退をしたことになるのではないか、このように思います。従来ですと、民法四百十二条の規定で、期間が定めてなければ四百十二条の第三項が適用されて、履行の請求を受けたときから遅滞の責任を負うと。上の図でいけばCの地点でいいわけですが、今回の法案ですと、それよりももうちょっと後のDの地点にならないと遅滞にならないということになろうかと思いますので、そうすると、少し遅滞になる時期というのが今回の法案だと従前より遅れる、こう思いますが、このとおりでよろしいでしょうか。
  150. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいまの御指摘は二十一条の二項の方でございましょうか。
  151. 松野信夫

    松野信夫君 はい。
  152. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 期限の定めのない場合の前提であったと思います。  期限の定めのない場合には、民法の規定では請求があったときから遅滞に陥ると、こうなります。しかし、保険契約の場合には、最小限保険契約者の側が立証責任を負う事項として、保険事故が発生したこと、それで損害額というのがございます。それを保険会社の方で最小限調査確認する必要はありますので、その必要な期間を経過するまでは遅滞の責任を負わないとしているわけでございます。現実には、期限の定めがないということは現在の約款上はもうほとんどないだろうと、こう考えております。
  153. 松野信夫

    松野信夫君 しかし、約款行政、先ほど金融庁答弁いろいろ聞いてみると、金融庁もていたらくだなというふうに率直に言わざるを得ない。そうだとすると、今後どういうような保険商品が出てくるかも分からないわけでありますから、今回の法案が仮に成立をしたとすれば、しめしめということで、期限を定めない、そういうような保険商品ができてくれば、従前の扱いよりは悪くなるというふうにこれは指摘せざるを得ないと思います。  それから、もう一つ指摘をしておきますと、保険法案の関連法の改正もありまして、例えば自動車損害賠償保障法、これも改正の対象になっておりまして、これの十六条の九というので、これも保険法案の二十一条の規定と大体同じように、要するに確認するために必要な期間が経過するまでは遅滞の責任を負わないと、こういう同じような条文になっております。ただ、そうすると、私はこれまでの確立した判例といささか合わなくなるのではないか、こういうふうに危惧を持っております。  例えばお手元の資料、「保険金請求の流れ」の例一で見ますと、これまでの確立した判例でいきますと、交通事故が発生いたしますと、この時点から催告を要することなく損害の発生と同時に遅滞に陥る、しかも裁判になったりすると、弁護士の費用についてもこの交通事故発生時点から遅滞に陥って弁護士の費用請求する、こういう仕組みになっております。これは、当委員会は弁護士出身の委員が多いんでその点は十分もう常識だと思いますが、我々が裁判を起こすとすれば、まさに事故発生のときからずっと延滞損害金を請求する、裁判の判決もこれを認めると、こういうふうな仕組みになって、まず確立をしているわけですね。  そうすると、いざ裁判でなったときには、弁護士費用も含めて交通事故発生のこのAの地点からずっと遅延損害金請求ができるんですが、保険金請求というような観点に立った場合には、今回の法案だとBでもなくCでもなくDの地点、相当期間が経過した後にようやく遅滞に陥ると、こういう仕組みになっておりますので、どうもずれが出てくるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
  154. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいま委員が御指摘になっている点は、保険給付を行う期間の定めがない場合でございまして、現行の各種の保険ではすべて約款期間を定めておりますので、その場合には二十一条の第一項の方に参ります。二十一条の第一項でまいりますと、ここで書いてある相当期間を超えた期間が経過してから支払うという約款である場合には、その相当期間まで縮められますので、決してこの保険法案によって現行の取扱いが後退するということはございません。  期間の定めがない場合というのは、先ほどちょっとほとんどないという話をいたしました。委員から御指摘がありまして、期間がない商品を新たにつくるということもあるだろうと、それはそのとおりかなとも思いますが、それはまた、そのような商品が売れるかどうかということになりまして、新しい新商品としてうまく消費者に受け入れられるかどうかというところもあろうかとも思います。
  155. 松野信夫

    松野信夫君 実際、現在の自動車保険、火災保険にしても期間の定めがあるというふうに言われておりますが、ただ仮にそれを前提としたとしても、期間の定めがあるならあるでいいですけど、そうすると、期間の日からしか遅滞に陥らないということになりますので、現在の判例で事故発生から遅滞に陥っているというのとはどうしてもやっぱり違いが発生するんではありませんか。民事局長、どうでしょう。
  156. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 期間の定めがある場合には、現行の今の保険法案の条文がない状態であっても、約款によって期間の定めがあって、その期間が徒過したときから遅滞に陥るということになると思います。で、事案によっては、その期間の長さが余りにも長く決められているので、公序良俗等あるいは信義則等に反してその期間の長さはおかしいということで裁判で修正されるということはあろうかと思います。
  157. 松野信夫

    松野信夫君 それは答えになってないです。  私が言っているのは、交通事故の場合ですと、事故発生の最初のこのAの地点から既に遅滞に陥って遅延損害金が発生するでしょうと、これは多分争いがないと思いますね。だけど、期間の定めがあろうとなかろうと、保険金請求するという観点に立つと、Aの地点からは保険金請求する観点で遅滞には陥ってなくて、相当期間経過したところか、あるいは期間が定められているときは期間が徒過しないと遅延損害金は発生しないから、いずれにしろずれは発生するんじゃないですかと、こういう指摘です。どうでしょう。
  158. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) いわゆる不法行為による損害賠償請求をする、被害者が直接加害者に対して損害賠償請求をするときは、その事故が発生したときから遅延損害金が発生します。  で、今問題になっておりますのは、保険契約に基づいて、契約に基づく請求権として、その請求権がいつ遅滞に陥るかという話ですので、これは保険契約の解釈になりますので、約款があればその約款によって期限が定まると。その期限が余り不合理ではいけないから、今回の保険法案ではその最初の期間が余りにも長くしているときは短くなるよということを二十一条の一項で書いているということでございまして、不法行為に基づく損害賠償請求請求するときはもうもちろん委員の御指摘のとおりでございます。
  159. 松野信夫

    松野信夫君 この点についてもう少し議論をしたいけど、時間の関係でこの程度にしておきます。  次に、契約の解除の点、これを質問したいと思います。  保険法案で言いますと三十条とか五十七条とかに規定があるところでございまして、今回の法案の中によりますと、重大な事由による解除というのが認められるわけです。例えば三十条でいきますと、一号とか二号とかいうのはこれは割合明確ですのでまあいいかなと思いますが、第三号のところは、信頼を損ない、契約の存続を困難とする重大な事由というようなことになっていて、極めてあいまい。極めてあいまいで、言うならば、そそっかしい人がおられて何回も何回も事故を起こす、そういうような人もいるし、場合によっては、もうクレーマーのようにいろいろ不平不満をすぐぶつけてくるような人もおられる。例えばそういうようなそそっかしい人あるいはクレーマーのような人をこの三号の規定で、もうおたくとの契約は解除しますよというようなことは認められるんでしょうか、どうですか。
  160. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 結論から言うと、ただいま委員が御指摘のようなケースではこの条項による解除は認められません。  ここの三十条の三号といいますのは、条文に書いてあるとおりでございますが、「前二号に掲げるもののほか、」と、こう書いてありまして、この一号、二号に書かれていることに比べても遜色ない、比肩するほどの重大な事由があった場合に限って解除を認めると、こういうものでございます。決してあいまいな要件を定めたものではございません。  この要件につきましては、保険者の信頼を損なう事由であるということ、かつ当該保険契約の存続を困難とするものであるということが必要とされております。極めて厳格なものでありまして、例外的な場合にのみ認められるものであるということが一応規定上は明らかになっていると考えている次第であります。  ちなみに、現在用いられております約款にも同様の解除の規定がございます。これに基づく解除が訴訟で争われたと、果たしてこんな事由で解除できるのかということで争われたというケースがあるわけですが、その上で解除ができると裁判所が認めたものといたしましては、保険契約者がごく短期間の間にもう何十もの保険契約に入っている、いかにもおかしいと、そういう重複して加入した事例等々がございます。そのような事例に限られるだろうということでございます。
  161. 松野信夫

    松野信夫君 時間ですからもう終わりますが、そうだと、今局長が言われたようなケースというのはむしろ第三十条の一号か二号に当たる、ある意味ではもう保険金詐欺あるいは詐欺同然と思われるようなケースではないかと。そうすると、何も三号を設けないでも、一号か二号の保険金詐欺あるいはそれの疑いが強いということで解除ができるわけで、私はこの三号でどうも保険者立場に立ち過ぎているのではないかというふうに指摘せざるを得ないし、非常に局長が言うほど明確ではなくて、存続を困難とする重大な事由なんというのはいかにもどうとでも解釈できる文言で、全く縛りになっていないというふうに言わざるを得ないと思います。  もう少し具体的なケースがもし指摘できるなら、一号、二号ではなくて、保険金詐欺ではなくて、こういうケースですと具体的な指摘ができるなら、お願いしたいと思います。
  162. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 倉吉民事局長、簡潔な御答弁をお願いいたします。
  163. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) はい。  それでは、もう一つだけ裁判で認められた事例を付け加えさせていただきたいと思いますが、保険契約者兼被保険者が傷害疾病定額保険契約を締結した直後から、入院治療の必要性があったかどうか疑わしいにもかかわらず、様々な傷害、疾病を理由に入院を繰り返したと。  要するに、どういうケースかと申しますと、ストレートにこの契約について保険金詐欺を働いている、あるいはモラルリスクのあるケースだということが直接は証明できない。しかしそれをうかがわせるような間接事実が幾つかある、しかし直接証明までは至らないようなものが事実上この第三号で認められると、こういうことになるのではないかと考えております。
  164. 松野信夫

    松野信夫君 この点については更に議論したいと思いますが、時間ですので、これで終わりたいと思います。
  165. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 午後二時十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ─────・─────    午後二時十分開会
  166. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、舛添要一君が委員辞任され、その補欠として森まさこ君が選任されました。     ─────────────
  167. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 休憩前に引き続き、保険法案及び保険法施行に伴う関係法律整備に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  168. 森まさこ

    ○森まさこ君 自民党・無所属の会の森まさこでございます。  本日は、初めて法務委員会において質問をさせていただき、光栄に存じます。私は弁護士出身でございますので、鳩山大臣が日夜法の支配を行き渡らせるために奮闘なさっているお姿を見て頼もしく思っております。  個人的には、私、消費者弁護士でおりますので、消費者法がなぜ司法試験の科目でないのかなと思っております。これから少し消費者庁のことについても触れさせていただきますが、是非、今、法曹人口の問題、質の低下、そしてモラルの低下という問題もありますので、昔は教養選択科目というものが司法試験の中にもありました。消費者法の司法試験科目について御検討ただければと思います。  さて、それでは消費者庁について述べさせていただきますが、福田総理が、本日の資料一枚目にございますように、四月二十三日の第六回消費者行政推進会議において「消費者庁(仮称)の創設に向けて」という意見を提示されました。そして昨日、この推進会議において消費者庁設置の最終報告の素案が示されました。  また、資料二にあるように、五月十九日には、パロマガス湯沸器による死亡事故の被害者の御遺族、それからコンニャクゼリーによる死亡事故の被害者の御遺族とお会いになりまして、またシンドラーエレベータの被害者の御遺族の方の陳述書もお読みになられました。私は総理と被害者の御遺族の方々との面談に同行をしておりましたが、そのときに総理が漏らされたお言葉、小さな命が簡単に失われる、このような被害が二度と起きないように、強い権限を持った消費者庁を設立しなければならないという御発言が胸に残っております。  この消費者庁の議論はぽっと出たものではなく、実は従来からあったものでございます。現在のよく縦割りと言われます省庁の体制でございますが、戦後復興のために産業育成に重点を置いてそれぞれの専門分野の省庁がつくられました。これについては、そのときの社会情勢に応じて成果を上げてきたと思います。ところが、それが成功して、復興をして経済が発展してまいりますと、企業が大きくなり、そして大量な商品が作られるようになる。そうしますと、一人の消費者との間に情報の格差、政治力の格差、経済力の格差というものが生じてきて、いったんトラブルになったときには対等に闘えなくなる、裁判において法の支配を、その恩恵を消費者の方が受けられなくなるという場合も生じてきました。  諸外国はこれにいち早く反応して是正をしてまいりました。つまり、今日ほとんどの諸外国に消費者問題を専門とする行政機関が備えられています。アメリカにおいては五十年前に消費者問題に対応する機関がつくられましたし、つい最近は韓国にも消費者院ができました。その消費者院つくったときのその趣旨というものは、経済界と対立するものではなく、消費者保護をすることによって経済も発展をする、そういうウイン・ウインの関係なんだというようなことが発表されております。  さらに、昨今のサブプライムローンの問題、これを教訓にして、格差社会の底辺、低所得者の方々から搾取をする、アメリカでは略奪的取引というふうに言われておりますが、サブプライムローンの中でも特に略奪的な貸付けがなされている分野が放置されていたことにより、それ以外の経済の分野、そして世界にも重大な影響を与えてしまったという反省の下に、これからは経済学もそして経済法も、生産者の立場からではなく消費者サイドからの立場で構築していかなければならないという議論がほとんどになってきております。  それを受けてOECDの最近の会議においても、そのコンシューマーサイドからの経済学、経済法というものがこれから構築されなければならないという、そういう論文がたくさん出されたところであります。  また、このOECDについて申し上げますと、その前のOECDの会議におきまして、消費者保護執行機関を諸外国につくるべきだという勧告が二〇〇七年の七月十二日に出されております。このとき日本は副議長国でありました。そして、日本だけが消費者保護執行機関持っておりませんので、それをいち早くつくる必要があるんですが、政府においても、平成十四年に既に実は国民生活審議会において消費者行政を一元化する、勧告権を有する常設機関を設置するという報告書を出しております。また、平成十七年にも消費者基本計画の中で同様のことが閣議決定によって決められています。  このような流れを受けての福田総理の今回のお取組ということで、突然出てきた議論ではなく、長い歴史的な変遷の下で社会的な変容に対応するものである、そして海外の情勢も踏まえたものであるという非常に理論的な理由があるものであります。  この消費者庁福田総理の先ほどの国民を救うという優しいお心と強い信念の下に、本当に消費者の目線に立った実効性ある組織の創設を期待しているところでございますが、そのためには各省庁の皆様や閣僚の皆様の御協力が不可欠でございます。法務大臣におかれましては福田総理消費者庁構想に御協力をいただけるのでしょうか。消費者庁創設についての法務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  169. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 福田内閣の一員として消費者庁構想に全力で協力をしていきたいと思っております。  アメリカではラルフ・ネーダーだとかコンシューマリズムだとか、強力な消費者運動が以前からあった。日本にもいろいろあるわけであります、あったわけであります。しかしながら、一国の総理大臣消費者の視点からすべて見直そうといって消費者庁をつくろうとおっしゃったという意味では、これはコペルニクス的転換と言ったっていいぐらいの大胆な発言であり、これはみんなで応援をしていかなければならないだろうと思っております。  そこで、ちょっと余計なことを申し上げるわけでありますが、私は長年、環境問題をいろいろ勉強をしてきて、環境省が環境と経済の調和なんて平気で言うんですよ。そういうような在り方は良くないんです。環境省が経済と調和だなんて、経済成長と地球環境問題は両方とも両立するみたいな、それはできる限り両立に努めるのはいいんですよ。そういう妥協をしたら、もう環境省も昔の環境庁も価値がないんですよ。そういう意味でいえば、消費者庁というのができたら、みんな各省庁仲よく協力してというんじゃなくて、他の省庁と全部戦うぐらいの、そういう消費者庁でなければ消費者のために大した力を持たないんじゃないかと、私はそう思うんです。  実は、民主党の先生方にも聞いていただきたいんですが、私、昔文部大臣をやったときに、結局、学習塾の問題があったんです。私は業者テスト禁止だとかそういうことをやっておりましたが、学習塾の問題にどう対応するのかと私は役人に言ったんです。そうしたら、いや、学習塾は文部省は手は触れることができないと言うんです。なぜと言ったら、あれは経済産業省が一生懸命育てているから、学習塾については文部省は物は言えないと言うんですね。そういう行政だとうまくいかない。例えば文部省が、学習塾はいわゆる小中高校の普通の教育について害があると思えば学習塾と戦ってやるぐらいのことを言う文部省だったら国民のためになるんですね。  そういう意味で、どうせ、どうせというか、消費者庁をつくるならば他省庁と戦うような、保険については金融庁と戦うような、そういう消費者庁にしましょうよ。
  170. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございます。力強い御意見を伺いました。  各省庁が消費者庁ができてどれだけ自分のところの所管が切られるんだろうか、少なくなったら先輩方に申し訳ないというような、そんな考えでいてはいけないと思います。公務員が意識を改革しなければならないんですが、この今のよどんだ空気ではなかなか無理であると思います。  こんなことがありました。総理のところにお連れした被害者を、昨日は自民党の消費者問題調査会、こちらの方に来ていただきまして、そのときはシンドラーエレベータの被害者の方もいらっしゃいました。皆さん覚えていらっしゃいますでしょうか、小学校六年生の男の子です。自分たちの住んでいるマンションのエレベーター、いつも乗っているところでドアが開いたところで急に上昇したという、それによってお亡くなりになったと。そのお母さんが来て皆さんの前で決心して顔を見せてお話をしてくださった。その息子さんの前に十何件も同様の事件があったのに企業が隠していた、そして、担当の国交省も何もしていなかったということをお話しになり、さらに、私たちも驚いたことに、二年前の事件でありましたが、あの後二年間、企業シンドラー社は一度も謝罪も連絡もない、さらに、国交省に何回も足を運んで、どうやって事故になったのか調査してくださいと言っても、調査機関もつくられていなかったと発表になりました。  そこで、その後、私たちの司会が国交省担当者どうなんですかというように質問したところ、国交省が立ち上がって、私は担当ではありませんと言ったんですね。これこそが今私たちが消費者被害がなかなかもう本当に解決されない、そのお母さんが、たった今、何回も国交省に行ってどこが担当だか分からない、たらい回しにされて二年間たちましたと言っている目の前で、私は担当ではありませんので分かりませんの一言で、もう本当に、本当だったら国交省を代表して、また政府を代表しておわびします、何とかいたしますというような、そういう答弁が聞きたかったんですが、そういう公務員の意識、私はやはり公務員というのが国民へのサービスをするという意識が欠けていると思います。  そこで、大臣にお願いしたいのは、やはり法務省は、丸山委員も以前質問の中で触れられていたように、霞が関の法務部として、公務員全体、霞が関官僚の全体の国家公務員法遵守、法令遵守、国民へのサービス意識というもののアップに努めていただきたいと。自分たちはこの分野しかやりませんということですから、うまく消費者又はそれ以外の問題も対応できないというふうに思いますので、これは私のお願いですが、お願いを申し上げます。  次に、違法収益の吐き出しについて取り上げたいと思います。  これは消費者庁の中でも目玉機能として位置付けられているものですが、一つ、五菱会やみ金事件というものがございました。今日配付している資料の中にもあったと思いますが、資料五です。これにあるように、五菱会やみ金事件では、外務省と法務省が協力して約三十億円の違法収益をスイスから返還していただいたということで、私も消費者弁護士として、違法収益の剥奪の国際基準基準ということはありませんが、相場から申しまして半額というのは非常に高い金額でございますので、すばらしい成果であったと思います。これに対する法務省大臣のお取組について、本当に高く評価したいと思います。  そこで、今後ですが、戻ってきたのはいいんですが、その後、被害者の方になるべく返還をされるということが重要でございます。この被害者に支給する手続が開始するということについて、法務省としてどのように準備をされているか、お伺いしたいと思います。
  171. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) スイス政府からの資産の譲与でありますけれども、これは本当に近々行われる見通しであるというふうに聞いております。  この譲与が行われますと、検察当局におきまして犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律に基づきまして、まず弁護士である被害回復事務管理人を選任いたします。それと同時に、可能な限り早期に支給開始決定を行うことになります。支給手続開始決定がなされますと、検察官は支給対象犯罪行為の範囲等を公告いたします。それと同時に、知られている被害者等への通知を行うわけです。そして、支給申請期間内に被害者等から申請がなされますと、これに基づきまして、今度は被害回復事務管理人からの審査報告などを受けた上で支給の当否等を裁定いたします。そして、不服申立て等の手続を経て、原則としてすべての裁定、それからこれに要する費用等が確定した段階で実際の被害回復給付金の支給が行われると、こういうことになるわけであります。  現在までの作業でありますけれども、検察当局におきましては、今申し上げました支給開始手続決定に伴う公告に備えまして、支給対象犯罪行為の範囲の検討を進めているところであります。また、通知する先の知れている被害者の氏名、連絡先等を調査しているところです。大変な数になるというふうに伺っております。また、弁護士である被害回復事務管理人もお願いする必要があるケースと考えられますので、その選定作業も行っております。  何分、この法律に基づきます手続はこの件が初めてということになるものですから、それぞれの手続につきまして現在具体的な検討を重ねておりまして、できるだけ早くかつ多くの被害者の方々に被害回復給付金が支給できるように努めているという状況でございます。
  172. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございます。  私も、日本では数少ない、前川先生と同じ消費者事件を多くやる弁護士でございますが、アメリカの制度がどうなっているのかなと思って、留学をして研究をしたことがございます。そのときにこの違法収益の吐き出し制度について学びまして、戻ってきてこれを是非日本に導入したいと論文を書きました。そして、その一部ですけれども、この刑事手続の中の別表に、この組犯法の別表に入っている犯罪だけですけれども、一部この違法収益の吐き出し制度が今回導入をされて初めての回収ということで、非常に歴史的なことだと思っておりますが、やはりそれまでに若干時間が掛かったということについては、私は少し不満を感じております。  この五菱会やみ金事件が起きたことによってこの法律ができ上がる、世論の盛り上がりがあって作られたんですが、それが二年前作られて施行されました。二年間たっております。事件が始まってからはもう八年ぐらいたっております。被害者の方々の記憶も大分失われているでしょう。そして、手元にある証拠も散逸されているでしょう。お金は戻ってきたけれども、それを被害者の方に戻すにはなかなか大変な作業があると思います。  その点で一番大事なのは、いかに被害者を掘り起こすかということでございます。これがアメリカの制度でも一番ポイントにされている部分でございます。それによって、この被害回復事務管理人というものを弁護士を選任することができるというふうになっておりまして、今回は選任していただけるということでございますので大変有り難いんですが、弁護士の持っているノウハウをもって、この事件にできれば関与をした弁護士さんたちのノウハウを使って一人でも多い被害者を掘り起こしていただきたいとは思いますが、この被害者の人数が六万人と報道されております。ところが、これは梶山率いる五菱会やみ金グループ、あまたのうちのグループのうちのたった一つのグループだけで六万人でございます。一つのグループについて警察の突き上げ捜査がたまたまうまくいったというだけで、そのほかにも十数のグループがございます。この組犯法ではほかの被害者にも返還ができるというそういう規定になっておりますので、ほかのグループについても被害者を掘り起こすべきだと思います。  ところが、六万人の被害者のうち、警察に四万人については資料があります。こういう被害者、知れている被害者については、その当時の住所を追っていって今の住所を調べるとか電話番号を調べるとかという作業を今なさっているということでございますが、それ以外の十数グループの被害者の方々にはどうやって広報をするのでしょうか。今考えていらっしゃる方法を教えてください。
  173. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今御指摘のありましたように、できるだけ多くの被害者の方々を掘り起こすと申しましょうか、申請の機会を確保することが大変重要であるというように考えております。  検察当局が具体的に取る方策といたしましては、法律に定められております官報への公告、それから検察官において把握している被害者の方々への通知というのがあるわけでありますが、それ以外にも、例えば検察庁のホームページに公告事項掲載も予定をしております。  ただ、ホームページをそうした方々が皆さん御覧になるということはなかなか期待し難いわけでありまして、被害者団体等の関係機関に公告事項等の情報提供を行って公告を依頼するなど、いろいろな方法で隠れている被害者の方々にこの手続が開かれたということをお伝えするような方策を現在検討しているところでございます。
  174. 森まさこ

    ○森まさこ君 この広報の仕方ですけれども、ホームページは見ませんよ。やみ金の被害者の方々の生活というものを、現場を想像していただいて公告をしなきゃいけないと思います。これについて被害回復事務管理人の意見を聞くという制度になっているんでしょうか。教えてください。
  175. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 法律上はそのような形にはなっていなかったかと思いますけれども、実際の運用に際しましては、検察官とそれから事務管理人である弁護士さんとの間で密接な打合せをしてやっていくことが期待されるところでありますので、そうした中で周知の方法等につきましても更に検討が進められるものというふうに考えております。
  176. 森まさこ

    ○森まさこ君 アメリカでは例えばどういうことがなされているかといいますと、その犯罪によって被害者が使った媒体をそのまま使うんですよ。  例えば内職商法、日本でも大分はやっていますが、不景気になると必ずはやる消費者被害でありますが、内職しませんかと言って、それでしますというふうに言うと、それにワープロが必要です、三十万円です、一万円から三十万円、そのぐらいの金額を最初に払わせるような詐欺ですが、アメリカでその大規模な内職商法が行われたときに、消費者庁に対応するFTCの消費者保護局が取った違法収益を返還するための広報制度というのは、内職をしたいと思うような所得の方々がよく読んでいる新聞、まあスポーツ紙に近いような新聞です、そこに内職しませんかという広告を、詐欺師が載せていたそれと全く同じ広告を同じ場所に同じ曜日に載せまして、ここに引っ掛かった方はFTCと書いたんです。それでほとんど一〇〇%の被害者が掘り起こせたといいます。その被害金額も、いち早い迅速な調査によってほとんどすべての財産をフリーズしておりましたから、被害者には全額が返ったと。  一人の被害金額は非常に小さいんですけれども、そういったことがあったとFTCの官僚が本当に誇らしげに語っていましたが、そういう工夫をなかなか、こう言っては申し訳ないんですが、霞が関のお役人がしろと言っても難しい部分があると思いますので、やはり現場の弁護士又は被害者団体の方々が本当に被害者の立場に立って、どれだったら目に入って被害者が名のり出れるのかと、そういう制度をつくりたい。  そうしますと、今法律上は被害事務管理人の意見を聞くようになってないと言いました。そのとおりなんです。法制審議会のときに、ここについても弁護士の意見を入れてくださいというふうに私たち日弁連は要望を出しましたが、いやそれはそういう必要はないと、弁護士を雇うことができるという規定にはするけれども、それは集まった被害者に対して財産を分け与える破産管財人のような役割だけを与えますということでしたが、この違法収益の剥奪及び返還で一番大事なのがさっき言ったように掘り起こしでございますので、その部分に事務管理人の意見が聞けるような制度を是非次回は改正をする必要があると思います。この今回の五菱会のやみ金事件が一番最初の先例になりますので、この先例を教訓にして次回以降改正をしていただきたいというふうに私は強く要望します。  そこで、この附帯決議を資料四の一に、この法律ができたときに附帯決議がなされています。そのときに、広報の制度についてもまた検討すると、見直しをするというふうになっておりますので、是非見直しをしていただきますようにお願いを申し上げるところでございます。  次に行きますが、戻ってきたお金を被害者に配りました。きっとあの被害者が全部は掘り起こせないと思います。そして残余財産ができたときには、今の法律では国庫に入ることになっております。ところが、この財産というのは元々は被害者が被害に遭った財産であって、税金として納めたものではないんです。国庫に入るということは理論上少しおかしいし、被害者の納得感、国民の納得感もないと思います。本来、犯罪被害者の財産でありますから、被害者の本人に返らなくても、少なくとも同様な犯罪の被害者のために使うのが望ましいというふうに思います。  これについても、附帯決議の資料四の二をめくっていただいて、その七項の方に、「一般会計の歳入に繰り入れる給付資金に関しては、両法の施行後の状況等を勘案し、これを新たに判明した犯罪被害者等に支給することができる制度や犯罪被害者支援団体等の経費に充てることができる制度など、犯罪被害者等の支援に直接利用できる方策について、引き続き検討すること。」というふうになっております。  これについてのお考えをお聞かせください。
  177. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今、委員が引用されました附帯決議の中で、「両法の施行後の状況等を勘案し、」と、こうなっておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、今回の五菱会の事件が第一回目の事件ということになるものですから、その運用等も十分に見た上で更に検討を進める必要があるんだろうというふうに考えておりますけれども、制度を設けたときの基本的な考え方は、被害回復給付金支給制度は、没収、追徴の対象となった当該の財産犯等の犯罪行為だけではなしに、これと一連の犯行として行われた財産犯等の犯罪行為の被害者についても広く給付金の対象になるということと、いったん残余金が生じた場合であっても、さらに、特別支給手続というものを設けまして、更にこの財産を給付金の支給に充てるというような、そういう仕組みになっておりますので、基本的にその給付金の支給後に残余金がどれくらい生ずるんだろうかというのは、まだ見通しが必ずしも明らかでないところでございます。それほど多くないんじゃないかというような議論もございます。  それでもなお残余金が生ずる場合どうするかということになりますと、犯罪被害者等の経済的な支援の在り方につきまして、政府が被害者保護支援のための施策を全体的に検討しております。その中で、法務省といたしましても、引き続いてこの問題の検討に加わってまいりたいというふうに考えております。
  178. 森まさこ

    ○森まさこ君 その件なんですが、私は、この法案を作られるときに、法案提出資料に私の論文も入れていただいて大変うれしかったんですけれども、この部分については本当に不満が残りました。  今おっしゃったように、法制審議会でもおっしゃっておられましたが、残余財産が出るという見通しがないと、余るか余らないか分かんないから、余ったときは国庫に入れてと、全く理由になっていないんですね。余るか余んないか分かんないけど、余ったときどうするかというのを検討しているんですから、これはどうするのが一番この制度の趣旨に見合うか。被害者救済のためにやるんですから、被害者の救済の制度に利用するのが当然だと思います。  そして、いや、余ったときがあるんじゃないかと、これはもう本当に百億のうち五十億がスイスにあるんですよと、そこまで法制審議会で質問がありましたときには、さらに法務省の方が、いやこれはこれ一回きりですと、たまたま、もうスイスに五十億もあるなんておいしいことはないんですというようなことをおっしゃいました。ところが、その後事件が次々に起こっております。今、本当に詐欺事件というのは、情報が発達し、インターネットが発達して、全国から被害者を多数に一瞬にして集めることができる、そしてそれをマネーロンダリングするんですね。  最近、ちょっと皆さん御記憶にあるところからいえば、エビ養殖の詐欺事件、ワールドオーシャンファーム、これが約四万人から六百億円を集めたという詐欺なんですが、そのうち四十八億円がアメリカに送金されて、現在、今アメリカで凍結をされております。四十八億円です。スイスの金額と変わらない金額なんです。これは凍結されておりますが、今、日本政府は何もしておりません。そういった、この後も近未來通信という事件もありました。それもマネーロンダリング、中国の方に多額の送金がされておりますね。そういった多額、大規模な詐欺事件がこれからはどんどん、また国際的なものが起こっていきますよ。それを余らないからというふうに理由でおっしゃるのは全く納得できないので、これは是非、附帯決議の方に書いてあることでもございますから、被害者の方に使える制度というものを是非この委員会でも御検討ただきたいと思います。  そして、その後また、私怒ってばかりいますけど、法制審議会で、それじゃ余った金額を被害者基金にしたときに使い道がないじゃないかというような反論もあったんです。被害者のために振り込め詐欺に注意しましょうというような宣伝費ぐらいじゃ、そんなにもう使い道がないですよというような反論がございましたが、これはもう本当にいろいろなあまたの制度がございます。  例えばアメリカで、ニューヨークなんかでは、消費者相談というもの、被害に遭った人の相談をもっと増やすために、今国民生活センターには実際ある部分の五%の相談しか寄せられていない、国民が知らないからなんです。そういうものを周知させるために、バスの車体に、詐欺に遭ったら〇一二〇何番みたいに書いて走らせたりとか、そういうことをして実際に市民の目線のレベルで広報するということもしましたし、それから、もう一つ私が今提案したいのは、これはやみ金事件の被害者ですけれども、やみ金の被害というものは二大ツール、他人名義の携帯電話と他人名義の銀行口座です。その二大ツールを押さえないと被害が減らないんですが、なかなか捜査がうまくいっておりません。  そこで、最近、名古屋銀行が画期的なシステムをつくりました。これは銀行口座の方の取引で、今は窓口の人が怪しい感じかどうかというのを注意しましょうという形ですが、そうじゃなくて、もうシステム的にお金の出入りで、ふだん全く出入りをしてないような口座にぼんと大きな振り込みがあるとか、全然、多数の違う名義の人から振り込みが来てそのたびに出されているとか、そういう怪しげなものがあったらアラームが点滅するようになっていて、その場合には、間違いないですかと口座名義人に確認したり、次に振り込みがあるときに窓口で注意したりということで、大分犯罪が減らせているということなんですが。  名古屋銀行、これを開発するのに数千万円掛かったということですが、全国の銀行にそれをつくるとするとどのぐらいになりますかと全銀協さんに聞いたら、いや、もう数十億掛かるからできませんよと言うんですけれども、そういうものの被害防止のための予算にこういう余った犯罪収益というものを使っていくということもあると思いますから、使い道の方もいろいろと考えられるということで、是非この辺は更に御検討をいただきたいということをよろしくお願いをいたします。  それから、次でございますが、今、ワールドオーシャンファームについて全く動いてないというふうなことを言いましたが、これはなぜかというふうに申しますと、実は刑事立件がまだなされていないということでございます。刑事立件もなされていないとこの組犯法上の制度が使えない、これは刑事法でございますから。そうしますと、違法収益が海外にマネーロンダリングで行ったと、アメリカで凍結をしてそれが何らかの情報で入ってきても、日本政府は何も動けない、それが日本のお金なのにということになります。  ここで、これをずっとほっておいたらどうなるんだろうかと申しますと、ほっておくと、やはりそれはその国その国違うと思いますが、いったん凍結したものがある程度になると、それは国庫なり州の予算、歳入にされてしまうと思います。それで、今回のスイスも、非常にゆっくりやっていたために返してもらうのに交渉が難航したということも聞いておりますから、凍結されたらすぐ返してといって返してもらうことが大切です。  そのためには、この組犯法という刑事法だけではなく、行政法や民事法で違法収益を剥奪する制度をつくっていく。すなわち、消費者庁福田総理がおっしゃっている違法収益剥奪制度を整備していくということが大切だと思います。それについても、先ほどの附帯決議の十二項に、新たな被害者救済の仕組みというものを排除しないと、そしてそれも検討していくということをしております。  法務省の方が自分たちのところにある刑事手続以外に、行政や民事の方で違法収益剥奪について検討していくということについてのお考えをお聞かせください。
  179. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 実は、多方面の検討の御意見も伺っておりますが、現時点で、今、違法収益の剥奪の制度についてどのようなものが念頭に置かれているのかというのは必ずしもはっきりしませんけれども、かなり実は問題があると、このように考えております。  若干申し上げます。  この違法収益の剥奪制度という、似た制度が現行の民事保全制度、それから民事執行制度の中にもあるわけです。一応、民事裁判を前提として財産を押さえるという手続はありますが、この現行の制度を超えてその資産全体を凍結するような制度、これを導入するということにするとすれば、当然ながら財産権の侵害の問題が起こります。  さらに、消費者の損害賠償という、これは私益、私の益ということになりますが、その私益の確保のために行政機関による捜索、押収のような制度を設ける、こういうことも考えられているのではないかと思うんですが、そのようにするということは、やはり住居の不可侵という憲法上の保障、これを害することになるおそれもあるだろうと。  このように今のところ問題点があると考えているところでございます。
  180. 森まさこ

    ○森まさこ君 法制審の当時の答弁どおりの御答弁、ありがとうございます。  私たち消費者弁護士が、悪徳業者が先ほどのような何百億、お金を取られて、取り戻そうと思って弁護団をつくります。それから、先ほどの、今ある民事保全制度を使おうといたします。しかし、それには、まずどこにお金が隠されているのか分からないといけませんが、これはもう本当に一介の民間弁護士、それから被害者の情報だけでは容易に知ることができません、もう本人や会社に置いておくわけないんですから。その部分についてアメリカや諸外国の制度では、先ほどのような捜索、押収のような強い制度でなくてもいいと思いますが、今、金融庁の証券監視委員会なんかの検査もできているわけでございますから、そういった行政の知り得る情報で取りあえず凍結をし、それはもちろんそれなりの疎明資料が必要だと思いますが、凍結をした上で、そしてきちんと裁判をして、そして被害者に戻すということをしております。  もう一つは、民事保全をするには保証金を積まなくてはなりません。しかし、財産をむしり取られた被害者に保証金を積む財産的な余裕がございません。そういった様々な問題があるからこそ、この制度が提案されているということだけ申し上げておきます。  それでは、やっと保険法質問に入らせていただきたいと思います。  本日のこの保険法でございますけれども、共済契約にも適用範囲が拡大されることになった、それから、傷害疾病定額保険についても設けられたということでございますが、元々、共済は保険とは本質を異にするので適用への拡大は慎重にすべきという意見もあるようでございますが、共済とそれから傷害疾病定額保険について法務省としてはどのように考えているか、お考えお聞かせください。
  181. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 現行商法の保険契約に関する規定、これはもちろん営利保険と相互保険を対象とするものでありまして、共済契約を対象とするものではありません。また、共済事業に関する法律の中には、商法の保険契約に関する規定の一部を当該共済契約に準用するもの、これはありますが、共済契約一般に適用されるような契約ルールはこれまでなかったわけでございます。もっとも、共済契約保険契約と同一の機能を有しているところがあるわけでありますから、一般的には共済契約にも保険契約に関する商法の規定が類推適用されると、このように言われてまいりました。  ただいま委員からちょっと御指摘ありました共済と保険、少し違うということもありましたが、しかし、共済契約保険契約契約内容については、どちらも事故や病気といった万一の事態に備えて多数の人たちが資金を出し合い、そうした事態に遭った方に保障を行うという仕組みを前提としている点に共通性があるわけでありまして、そうしたところから、共済についても基本的なルールがある方が望ましい。また、法律上の契約ルールがないという共済契約一般について基本的な契約ルールが定められるということになれば、契約上のトラブルを解決することもより容易になるということもございます。そこで、保険法案では、共済契約のうち実質的にこの保険契約と同様の内容を有するものについてはこれを法案の適用の対象とするということにしたわけでございます。  それから、傷害疾病定額保険ですが、これについても現在一般的な契約ルールはないわけですけれども、傷害疾病定額保険は人が保険の対象であると、それから保険給付一定額の保険金の給付である点で生命保険と共通点があるということで類推適用されるという理解が、生命保険に関する規定が類推適用されるというのがこれまでの一般的な理解だったと思いますが、これについてもきちっと契約ルールが適用されるということで、今回の保険法案では明確に章を設けて対象にしたところでございます。
  182. 森まさこ

    ○森まさこ君 今の御答弁ですと、消費者保護のために共済についても規定を、適用範囲を拡大されるということでございますので、消費者のためにということであれば非常に私は歓迎すべきことだと思います。  次に、保険金の不払問題についてお伺いしたいと思いますが、最近の報道によりますと、主要な保険会社に直接寄せられた平成十九年度の苦情件数は平成十七年度の二倍に当たる約四十万件を超えたということが判明したそうであります。  また、生命保険では、国民生活センターへの苦情や相談が増え続けており、平成十九年度の件数は一万六千件を超えるという見通しでありまして、過去最高であった平成十八年度より三千件も多くて、そして相談者としては六十歳代と七十歳代だけで全体の半分近くなるということでございます。この理由としては、大量の団塊世代が保険料の支払を終え、本人や家族が受取側に回り出したこと、そして保険金不払問題で保険会社への不信感が増していること、投資性が強く複雑な内容保険商品が増えていることということが挙げられております。  現在審議中の保険法案は、時期的に言いますと平成十八年の十一月から法制審議会の保険法専門部会で審議が行われておったと承知しておりますが、その途中でいわゆる保険金不払問題が発生したということでございますが、この保険金不払問題が今回の保険法にどれだけ反映をされているのかということを伺いたいと思います。
  183. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 御指摘のとおり、今回の保険法案審議というのは、この不払問題が起こる前から既に研究会等で検討を重ねていたところです。その過程で不払問題が起こったということになりますが、当然そのことは検討の素材に上がりまして、このような不払をなくすために契約ルールのレベルではどんなことができるだろうかということも当然議論の対象になったわけであります。  その結果、この不払に対処するために、例えば告知義務につきまして、自発的な申告義務から重要な事項のうち保険者告知を求めたものについて告知すれば足りるという質問応答義務に改めました。それから、保険募集人による告知妨害等があった場合には、保険会社の方から告知されていないじゃないかということで契約を解除するということはできない、告知義務違反理由にする契約解除はできないんだということも定めました。それから、保険金支払が不当に引き延ばされることがないように保険給付履行期についての規定も新設すると、こういうことにしたわけでございます。
  184. 森まさこ

    ○森まさこ君 三十条についてお伺いしたいんですけれども、今の関連ででして。  三十条は、重大事由による解除、これが新設されておりますね。今までこの規定はなかったというふうに承知をしておりますが、重大事由による解除というのは今までもなされていたわけでありますが、これは約款に書かれていたわけです。そして、約款理由保険会社が解除をするということが行われておりました。  資料の三の一を御覧ください。これは金融庁の資料でございますが、不適切な保険金不払、その原因が何だろうかという資料でございます。  上から区分のところを見ますと、詐欺無効ということで十一件とそれから明治安田が二百六件というふうにあります。詐欺無効であるという理由で、本当は詐欺無効でないのに不払していると、そういうふうにこの表を見るんですが、その中に上から四段目、重大事由の解除というのがございます。重大事由でないのに重大事由であると解除をして不払であるというものがこれだけの数があるわけでございます。それなのに、新しい保険法にわざわざ重大事由による解除を条文でできるようにしたということは、これ理由はどこにあるんでしょうか。
  185. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これはモラルリスクの排除というところに尽きるわけでございます。この重大事由による解除というのは、確かに約款では設けられていたものでありますが、それが委員の御指摘のように拡大解釈されて、それで不払の一事由になっていたということもあるいはあったのかもしれません。  今回のこの第三十条の一号、二号、三号、とりわけ三号で重大事由ということでバスケットクローズの規定を設けたわけですけれども、この規定は極めて限定的に解釈されますのでそのような心配はない、むしろモラルリスクを排除するのに適切な規定であると考えております。  と申しますのは、第三十条の第三号を見ていただきますと、「前二号に掲げるもののほか、」と、こう書いてあります。この一号や二号に掲げるものに比肩する、これと比べても遜色のない重大な事由があった場合に限って解除を認めるということでありまして、第一号に書いてあるのは故意による事故招致、第二号に書いてあるのは保険金詐欺のことが書いてあるわけであります。それに比肩するようなものということになります。しかも、三号の条文を見ていただきますと、「保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする」、存続を困難とするような重大な事由と、こうなっております。したがって、十分に限定的に読めるというふうに考えているわけでございます。  ちなみに、それでは具体的にどんな場合がこれに当たるのだという話になろうかと思いますが、実はこれまで、約款上こういう規定があって、それの重大事由ということで解除が許されるだろうかというのが争われた事例がございます。その裁判で争われた事例で、裁判所がこれは重大事由による解除を認めていいんだという認めた事例がございますが、これは、例えば保険契約者がごく短期間の間に何十もの保険契約に重複して加入した場合などがございます。要するに、一号、二号をずばりと立証することができない、これは保険金詐欺だと、あるいは故意による事故招致によるものだという証拠がずばりとはないんだけれども、間接証拠として何十も入っていておかしいじゃないかと、そういうのがあると、そういうケースを第三号で認めて、それでモラルリスクを排除しようと、解除を認めて、というものでございます。
  186. 森まさこ

    ○森まさこ君 その比肩する程度のものであるという限定的解釈をするということについては、この条文で読める以外は、何かお示しになるというそういう御予定がございますか。
  187. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいまの答弁も含めまして、政府の見解としてはそうであるということでよろしいかと思います。もうこの条文から読めると考えております。
  188. 森まさこ

    ○森まさこ君 それでは、ここで金融庁にお伺いしたいと思いますが、金融庁がこの新しい、新保険法というのを前提に保険会社監督したり検査をしたりしていくときに、どのような解釈基準でいくおつもりなのでしょうか。この重大事由というのは、そもそもまず約款にあったものですから、約款にあったその重大事由について金融庁の検査マニュアル、それから監督指針に規定が、記載があるのかどうか、それから、今後記載していくおつもりがあるのかどうかについてお答え願います。
  189. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 金融庁といたしまして、今後とも、今回の法令改正等を含めまして、監督上の着眼点を明確化するとか、検査における適切な検証の確保の観点から、必要に応じて監督の指針、保険検査マニュアルの改訂等を行ってまいりたいと考えております。
  190. 森まさこ

    ○森まさこ君 私も金融庁におりましたとき検査官もやらせていただいたんですけれども、この検査マニュアルそれから監督指針というものを具体的に書いておかないと、現場の検査官、それから現場で監督というのをすることができません。特に、地方の財務局の職員が実際には検査、監督しているんですよ。金融庁から出かけていってやっているわけではない。そういう意味で、こちらについてはこの趣旨に従った具体的な記載を今後していただけるようによろしくお願いをいたします。  それから、また法務省の方にお伺いしたいと思いますが、先ほど保険金の不払問題のときにお答えをいただいたように、質問応答義務へ改めることになったということでございますが、そうしますと、質問自体があいまいだとまたこれ意味がない、なくなってしまいますので、質問事項が明確である必要があると思いますが、これについてはどんなふうにお考えでしょうか。
  191. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは契約ルールでありまして、しかも重要な事項のうち保険会社がこれは質問しなければいけないということで決めた事項ということになります。したがって、それなりに契約上の中身として重要なものであることということが当然に前提となりますし、それから何を対象にしているのかということは、これは相手にそれを伝えてそれに対して答えてくださいよということを言うわけですから、当然に具体的で明確なものでなければならないと、このように考えております。
  192. 森まさこ

    ○森まさこ君 これについても、金融庁は検査マニュアル、監督指針についてどのように対応していかれるのか、お答え願います。今、法務省さんからは、具体的で明確でなければならないというふうにお答えいただいたんですが。
  193. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 告知ということにつきましては、保険会社が被保険者の危険度を判定をしていく上で非常に重要な行為でございます。このような告知の性格にかんがみ、告知において保険契約者等が適切に告知すべき内容を理解した上で正確な回答を行うことが重要だと考えております。  したがいまして、御指摘のとおり告知に関する質問事項は明確であるということが重要であると考えており、今回の法令改正等を踏まえ、必要に応じて監督指針等の改訂等を行って適切に対応してまいりたいと考えております。
  194. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございます。  が、そうはいっても、弁護士としていろいろな事例を見てきました経験からいきますと、法律上はそれでいいかもしれませんが、いざトラブルがあって、立証しようと思うと証拠がないんですよ。しかも、これは言った言わないの世界ですよね、具体的に明確に質問しましたと。  そういう実際の保険募集とか契約締結に際しましては、営業職員が申込書の記入から審査から査定から成立に至るまで、顧客に対する様々な対応、これをしているんです。ですから、この保険金不払問題を根本的に解決するためには、保険会社の営業職員に対する指導、教育についても徹底する必要があると思いますが、これについては金融庁さん、監督責任を持っていらっしゃる金融庁さん、どう考えていらっしゃるか、お答えください。
  195. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 保険契約者保護観点から、営業職員などの募集人は募集に係る適切な資質を有していることが必要であり、保険会社は募集人に対する指導、教育の徹底を図ることが重要であると考えております。今後とも、営業職員の指導、教育の徹底に関しましては適切に各保険会社監督してまいりたいと考えております。
  196. 森まさこ

    ○森まさこ君 よろしくお願いします。  次に、責任保険契約における被害者の優先権の付与についてお伺いします。  今回の保険法見直しにより、責任保険契約について被害者に特別先取特権を付与することによって、加害者である被保険者の倒産時にも被害者が優先的に被害の回復を受けることができるようになったということは、これは被害者の保護の充実ということで大変重要な規定であると思います。  これまでは、責任保険における加害者が破産をしてしまった場合、保険金は破産財団に帰属をしますから、被害者は一般破産債権者として他の一般破産債権者と平等に弁済を受けることになってしまいまして、責任保険に加入している加害者が有責な事故を起こして責任を負った結果として、保険金支払があっても被害者以外の一般債権者に対する弁済率が高まるという、そういう結果が生じるということになっておりました。  世間一般の感覚からすれば、事故があった場合、保険金は事故の被害者の保護のために優先的に充てられるべきと考えるのが当然であると思います。ここについては、立法論の必要性が特に高い最重要な課題であったと思いますので、高く評価したいと思いますが、ここで冒頭の方の質問を思い出していただきたいんですけれども、やみ金の被害者の被害金が返ってきた、そういう犯罪被害者の収益がある場合に、先日こういったことがありました。五菱会やみ金事件の日本国内における犯罪収益が二億円ぐらいでしたかね、見付かったと。それで、それに対して、取りあえずスイスが返ってくるか分からないので、それを期待して民事的な損害賠償請求訴訟を起こしたんですが、その途中で国税が一億円持っていってしまったということで、国税が優先するようになっております。  これについては、今回の保険法の被害者保護趣旨ということからするとなかなか納得ができない。しかも、国税といっても犯罪収益に掛けられた税金ですよ。これについては、オウム・サリン事件の被害者に対しては特例法が作られまして、国税に優先するということで被害者への返還が優先されました。こういったこと、それから保険法の今回の趣旨を受けて、これから一般的な犯罪被害者については、その犯罪収益については優先して弁済を受けることができると、そのような規定を作るということについて法務省さんのお考えをお聞かせください。
  197. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) オウムの事件について今御紹介がありました。あれについて特別法を作って国税に優先するという規定を設けたわけであります。  一般的に犯罪被害者についてすべて国税について優先するのだと、言ってみれば委員の御指摘は、今回の保険法で設けましたような先取特権、これを被害者に認めるということを保険法ではいたしましたが、それと同じようなことを一般的な犯罪被害者という範疇で設けようということだと思いますが、それは範囲が非常に膨大になり、また抽象的であり、どこまで特定できるかと。それから、政策的に国税に優先させる、国税だけではないと思いますが、もし先取特権ということになれば、先取特権にするだけのものが既存の権利との関係でどれくらいそこは優先できるのかというような様々な検討が必要になろうかと思いまして、今の段階ではやや難しいのではないかというふうに思います。
  198. 森まさこ

    ○森まさこ君 それでは、そのオウムの場合は特別にしたという理由、それから今回の保険の場合に特別にしたという、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  199. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) オウムの事件につきましては、国会の中で様々な議論が起こりまして、議員立法としてでき上がったわけであります。  あれは、オウムというあの事件の、地下鉄サリンを始めとする極めて特殊な大掛かりなテロであったと。それからそれが、言わばあれで事件に遭った方は全国民だれもが遭う可能性があった。それを、あれだけ大掛かりなテロ事件として起こった被害者であったということで、それは国全体で支えていくべきだと、国民全体で支えていくべきだという一つの政治的な価値判断があったのだろうと思います。  そのことについては本当にそうだったんだろうなと思っておりますが、それと同じようなことがそれぞれについて言えるかとか、様々な議論がやはり必要であろうと。全国民がそれを支えていくんだと、それについて全国民の了解が得られるといいますか、そういうことが必要なのかなというふうに思っております。
  200. 森まさこ

    ○森まさこ君 もう一つ、今回の保険法について特別とした理由をお聞かせください。
  201. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これにつきましては、本来、責任保険の場合の被害者というのは、本来であればこの保険金というのは確かに損害賠償請求権として、例えば私が自動車事故を起こして被害者がそちらにいると、その人に賠償するために保険に入っているという場合には、いったん私に入るわけですけれども、本来被害者に入るのがこれが望ましい、保険制度としてもそうあるべき金であります。そこで、政策的に検討を加えた上で、これはすべて先取特権として認めて被害者に行くのが正しいのだと、こういう判断を法制審議会でもいたしましたし、それを受けて法案にしたということでございます。
  202. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございます。  最後に一つ質問をいたしたいと思いますが、今回、保険法見直し、諮問事項の中に高齢化社会へ対応するようにということで約款の分かりやすさということも対応されておられるようですが、その中の一つとして遺言による保険金受取人の変更というものがあります。遺言によって保険金受取人を変更することができるということは、高齢化社会において遺言の重要性が増すということも予想されますので、理由も分かりますが、そういったことが起こりますと、一方、トラブルが起きてくるというおそれもあると思いますが、その辺については法務省としてはどうお考えでございましょうか。
  203. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 確かに、遺言者の、保険に入った保険契約者の意思を尊重するのが相当であると、高齢化社会で遺言の中でそれぞれこの保険金の受取人をこうしたいということがあるだろうと、様々なニーズがあるだろうということで、今回、遺言による保険金受取人の変更ができるような制度を創設いたしました。  今御指摘のありました相続人間の利害が対立しているような場合に何か新しいトラブルの種にならないかということでありますけれども、もしそういうトラブルが、利害が対立しているという事情があるのであれば、それは保険金受取人の変更が遺言によるものであるか否かを問わず、変更の効力が相続人間で問題になることはあり得るということになろうかと思います。この点は、保険金受取人の変更、遺言によって変更することによる固有の問題ではないというふうに考えられますので、保険法案が今回のような明文を設けたからといって、これによってトラブルが増えるということはないと考えております。  それから、生命保険契約に基づく保険金は本来相続財産ではないわけであります。理論的にそれが遺言の対象かというようなところは概念的には非常にこれまで議論されていたわけでありますが、今回とにかく保険法で変更ができるということにいたしましたので、その点の解釈上の疑義がなくなってはっきりいたしました。遺言で変更することができるんだということが相続人の間でみんなはっきりしたということになりますから、その意味ではそれを尊重するということでかえってトラブルの解消になるのではないかと思っております。
  204. 森まさこ

    ○森まさこ君 分かりました。  いずれにしても、従来の制度と変わる制度が設けられたということで、相続事件も大分弁護士時代しましたが、本当に深刻なトラブルになる場合が多うございますので、制度が変わったということについて十分に広報、周知の方を徹底していただきたいと思います。  ありがとうございました。終わります。
  205. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 午前中から議論をしておりますが、今回のこの保険法というのは、商法の保険契約に関する規定がある意味で百年ぶりに見直されて、新たに保険法という一つの単独の法律を制定するということで社会的意義は大きいですし、また、先ほどから議論になっておりますし、共済契約にも適用範囲を拡大するとか、また傷害疾病保険に関する規定の新設の問題であるとか、何より私たち法律家じゃない人間にとってみると、今回ようやく、この保険に関する項目につきましてもこれまでの片仮名の文語体からようやく平仮名に今なったと、そういう意味では、いずれも必要な法改正だと思いますし、それよりやはり論点として大事なのは、今も議論をされておりましたが、消費者保護という観点をきちんとその中に盛り込んでいこうという、それが完全に盛り込まれているかどうか、その辺はまた議論はありますが、いずれにしても、そういった消費者保護という観点も、初めてと言うと失礼になるかもしれませんが、盛り込むことができたという意味が私たちは大きいと思っておりますし、その意味で是非とも成立をさせなければいけない法案一つだというふうに思っております。  ともかく百年ぶりの改正でありますから、様々な検討も行われてこられたと思いますし、もちろん法案をいろいろ作っていく過程の中でパブリックコメントの手続もやっていらっしゃいますし、ともかく、まず議論をするに当たって、この法案が出るまで法制審議会においてどのような議論を整理なさってきたか、簡潔に当局から御報告をいただいておきたいと思います。
  206. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) まさに百年ぶりの改正ということで、これまで手順を踏んでやってまいりました。  要するに百年ぶりなので、現代社会に合った適切なものにしよう、それから口語体にしようと、様々な要請が出ていたわけであります。これを踏まえて、平成十八年の九月がスタートでございますが、法務大臣から法制審議会に対して保険法見直しについての要綱を示してくれという諮問がされました。これを受けまして審議会は保険法部会を設置いたしまして、部会は十一月から審議を開始いたしまして、平成十九年八月に中間試案を取りまとめ、広く国民の意見を聴くためのパブリックコメントを実施いたしました。そのパブリックコメントの結果も踏まえて本年一月に保険法見直しに関する要綱案を示し、これを本年二月に法制審議会において要綱として決定され、法務大臣に答申されました。法務省においては、この要綱を踏まえて立案作業を行いまして、閣議決定は本年の三月四日でございます。翌五日に保険法案を今国会に提出させていただいたと、こういう経緯でございます。
  207. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もちろん法律作られて何が大事かというと、これがきちんと法の趣旨が徹底されて、何より保険法意味は何かといったら、これまで被保険者と言われる契約者の方々、ここにある意味じゃ混乱が至らないように、どう現場が混乱しないようにやっていくかということも大変大事な観点だと思うんです。  ともかく百年ぶりの改正ですから、実務で滞ったりいろんな問題が起きるとこれ大変な問題ですし、今法制審議会の経過もお話はいただきましたが、言わば使う側とともに、保険者側、保険業界とか共済業界についても、これはなかなか大変な問題があったと思うんですけれども、そういった代表も交えてどんな議論なされたのか、その辺も併せて御報告いただければと思います。
  208. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 先ほどの保険法部会というのを申し上げましたが、これには生命保険業界から二名、それから損害保険業界からも二名、共済団体の全国的な組織であります日本共済協会、ここからも一名、委員として参加していただきました。要綱案の取りまとめに至るまでのすべての議論に、これは積極的に取り組んでいただきました。  この取りまとめがされた平成二十年一月十六日、ここはある意味で象徴的なことだったと思っておりますので御紹介させていただきますが、この取りまとめがされた平成二十年一月十六日の保険法部会の二十四回会議で、損害保険業界委員から、この審議に対する総括的な感想として、この部会で検討された内容につきましては、条文となるものにとどまらずに、その前提とかあるいは目的となっている考え方や価値観、そして我々の要望も含めて、しっかりミッションとして真摯かつ前向きに実践していく所存でございますと。もちろん、保険契約者保護するための様々の規定が置かれたわけでありまして、その点について真摯に受け止めるということが宣言されたということを御紹介させていただきます。
  209. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ともかく、これ、今もちょっと何かいろんなお声が上がっておりましたが、いずれにしても、今回大事な点は、保険契約者というものをどういうふうにして位置付けていくかという問題だと私は思っております。  ともかく保険というのは、万が一何か起きたとき、国民生活にとって欠かせない重要な役割を果たすものですけれども、ただ、本当に仕組みそのものはもう毎年毎年複雑になっている面もございます。  一方、保険会社というのはどういう存在かというと、ある意味じゃ大企業で、今度は保険をする側はどうなのかというと、これは大半消費者。という問題でいくと、どうしても、その立場、交渉なり情報量を考えれば、それは圧倒的に契約者消費者の方が条件が悪いのは事実であって、その意味でも、この保険法をつくる際には、保険契約においてそのルールを見直すのであれば、この巨大な保険会社と、弱い立場であると言っちゃどうなりますか、その保険契約者というのがある意味では対等にできるためには、やっぱり契約者保護という面、そのルールをつくらなければならないと思っておるんですが、今回の法案の中でそういった点がどういうふうに、言わば保険契約者等保護のためにどのような規定が設けられて、どうこれを使おうとしているのか、この点を御説明をいただいておきたいと思います。
  210. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 基本的なところをちょっと御紹介したいと思います。  第一に、告知についての規定見直しました。保険契約者等保険者から質問された重要な事項について告知をすれば足りると、まずこういうことにいたしました。それから、保険募集人による告知妨害や、告知しなくてもいいですよと、そんなことを言うと保険会社保険に入れてくれませんよというような、そういう教唆があった場合には、保険者は原則としてその告知義務違反理由として保険契約は解除することはできないと、こういう規定を設けました。  第二に、保険給付履行期についての規定を新設いたしまして、保険者が適正な保険給付を行うために不可欠な調査をするために客観的に必要な期間、これが経過した後は保険者は遅滞の責任を負うんだということを明確にいたしました。  第三に、保険契約締結後の危険の増加という講学上の問題がありますが、それについての規定見直しまして、保険者が通知を求めた事項について、保険契約者等に通知義務違反があった場合に限って保険者は危険が増加したということを理由にして保険契約を解除することができると、保険者の解除権を制限する規定を設けました。また、この保険契約を解除した場合であっても、危険の増加との間に因果関係がない保険事故、これについては保険者保険給付を行う責任を負うと、こういうことにしているわけでございます。  そうしたところが主なところでございます。
  211. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 先ほども問題になっていたのは、保険金の不払という問題ですね。  この問題、不払には様々なケースがあると伺っておりますし、基本的には、保険会社監督を通じて業務の改善というのがそれは基本なんでしょうけれども、先ほどお話があったように、不払の中には、募集する人が告知しなくていいよと言って勧誘をしたにもかかわらず、後になってこれが告知義務違反ということで支払わなかったと、こういった事例も結構起こっておりますし、また、このような事例だったらやはり勧誘員を指導監督する立場にある保険会社監督ということで本来は改善すべきでしょうけれども、それとも、やっぱり法の仕組みとして保険会社告知義務違反を主張できないようにするという形で対処する方法、先ほども議論になっていた告知妨害という問題なんだろうと思うんですけれども、こういったルールを保険法案ではある程度仕組もうというふうになっているというふうにお聞きしておりますが、どういう形のルールにしてあるのか、御説明をいただいておきたいと思います。
  212. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 結論から申しますと、保険契約者等による告知義務違反があった場合であっても、保険媒介者が告知妨害やそれから先ほど申し上げた告知しなくていいよというような教唆をしたときは、保険者保険契約の解除をすることができないものといたしました。  これは、従来の解釈では、保険媒介者、いわゆる募集人と言われている人たちでありますが、あの人たちは保険会社の代理人ではございません。代理人ではないので、不告知というか、そういう告知されるということを受領する権限がないんだと、だからその人たちが何をしようと保険会社には法律的には効力が及ばないんだと、こういう解釈がされるということがあったわけであります。  しかし、これはいかにも論理としてはおかしい。そこで、これは明文ではっきり置こうということで、保険募集人がそのような行為をしたときには、それを理由にして、それを理由にしてというのは、そのために告知ができなかった、その不告知理由にして解除をすることはできないという規定を置いたわけでございます。
  213. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その意味では本当に、募集人の告知妨害に関する規定、これが新設されたことそのものは極めて私は評価をするし、適切なルールだと思うんですけれども、ただ法案そのものをちょっと読ませていただくと、告知妨害があっても一定の場合に保険者保険契約を解除できる旨の規定というのが、これは第二十八条であってみたり五十五条であってみたり八十四条の第三項、こんなのが設けられていると。こういう規定を作ってしまうと、せっかくこの告知妨害という新規規定、これがある意味じゃ中抜けというか、抜けてしまうようになるんじゃないかというような、これ実際に御意見もあります、こういう。これはどうなのかということも是非教えていただきたい。  しかも、やっぱり募集人の行為だけに着目するんじゃなくて、何か様々なケースがあると思うんですね。そういう意味じゃ、どうバランスを取るかというようなルールづくりが必要なんじゃないかなということも思いますし、ともかくこの点について御説明をいただいておきたいと思うんです。
  214. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 御指摘のとおりでありまして、モラルリスクとのバランスが大きな問題になります。  それで、これは端的に申しますとこういうケースがございます。保険募集人の方が自分の親族を保険に入れると。そのときに親族、その保険に入る方が実はこういう病気を持っていてまずいんだと、これはもう告知するのはやめようと思っているときに、保険募集人がこれは告知しない方がいいよと言って一緒にぐるになってそれで告知をしなかったと。このような場合には、確かに保険募集人による告知しなくていいよという教唆行為がある、あるいは告知妨害行為があるんだけれども、それがあろうがなかろうがこの人は告知をしなかったんだということになります。  そのような場合にまで告知妨害があったからという表面的なことをとらえて保険会社からの契約の解除を認めないと、これはまずいだろうということで、要するに、因果関係がない場合、告知妨害とそれから起こった結果について因果関係がない場合については、これは契約の解除ができないという場合の例外にしようと、こういう規定でございます。
  215. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私もちょっと具体的に幾つか聞いておきたいと思うんですけれども、その告知義務違反と因果関係がない場合のことをちょっと聞いておきますけれども、例えばこんなケースはどうなるのかというお尋ねをするんですけれども、例えば、過去の病歴について告知義務違反があったから、その病気とは無関係の別の病気になったり死亡した場合でも告知義務違反があったことを理由保険金というのは支払われないことになるのかと。  特に生命保険の場合には長期の契約が多いと思うんですけれども、保険に加入する段階で告知義務違反があったとしても、そこから何年もたった後に全く別の原因で死亡するということは珍しくないというふうに思うんです。このような場合にまで告知義務違反の責任を問うことになったら、これはちょっと契約者にとっては負担が重過ぎると思いますが、言わば告知義務違反があった事実と保険事故の間に因果関係がない場合であっても保険金支払われないのかどうか、これもちょっと具体的に伺っておきたいと思います。
  216. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいまのケースというのはまた先ほどと逆のケースでございまして、告知義務違反があった事実と因果関係がない保険事故ということになります。  これについては、元々保険者が引き受けていた危険が現実化したものにすぎないわけでありますから、保険者がこのような保険事故についてまで責任を負わないという根拠はございません。合理的ではないということになりますので、保険法案においては、例外的に、告知義務違反に係る事実に基づかずに発生した保険事故については保険者を免責とはしないということをそれぞれその条文のただし書のところで明記しているところでございます。
  217. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今度は、一つ聞いておきたいのは、さっきもちょっと、いわゆる今回、保険金受取人の変更の問題、ちょっと遺言のことで議論がさっきあっておりましたが、生命保険のように長期の契約の場合は契約後に保険契約者の側の事情が変わるということも多いわけであって、つまり、特に保険金受取人をだれにするかというのは実際に保険料を払う保険契約者にとっては重要であり、いったん契約時に保険金受取人に定めたとしても、その後に変更したいというニーズというのは当然あると思うんです。  ところが、商法ではこの保険金の受取人の変更についてはルールが明確じゃなかった、先ほどもちょっと議論になりましたが、明確でなくて、実際に保険事故が起きた後になってだれが保険金を受け取るかをめぐって訴訟になった事例は幾らでもあるわけであって、特に生命保険では保険金の金額が高額になることもあるわけで、不明確だと保険金をめぐる争いがますます深刻になる可能性があると考えられるわけです。そのために保険金受取人の変更については明確なルールを設ける必要があって、明確なルールを設けることが結果的に保険契約者又は保険受取人の保護につながる問題だと思うんです。  じゃ、この法案では、この保険金受取人の変更についてどのようなルールが設けられたのか、これも簡潔に御説明をいただいておきたいと思うんです。
  218. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 幾つかございますが、まず、商法の下では保険契約者契約の締結時に保険金受取人の変更権を留保していた場合に限って受取人の変更が認められると、こういう解釈がされておりました。保険法案では、そこを全部外しまして、保険契約者は原則として保険金受取人の変更権を有するということをまず明らかにいたしました。  それから、保険金受取人の変更の意思表示を当然だれかにするわけですが、その相手方について現行商法には明文の規定がないわけですけれども、保険法案では、この相手方は保険者である、保険会社であるということを明示いたしました。  それから、保険金受取人の変更の意思表示の効力発生時期、これもいろいろ議論がございました。保険法案では、意思表示の通知が保険者に到達したときに当該通知の発信時にさかのぼって効力が生ずるということにいたしました。つまり、保険金受取人を変更するという意思表示をした後亡くなってしまった、その後到達したというときどうなるんだということが争いになりますので、それは発信時に遡及するよということを明確にしたわけです。  それから、遺言による保険金受取人の変更が認められるか否かについてでありますが、保険法案ではこれを認めるということを明確にいたしまして、遺言による場合には、ただ保険者への通知を対抗要件とする。具体的には、遺言執行者なんかが保険会社に遺言を見たら変更すると書いてありましたと通知したら、それで対抗要件が備わると。ここまで明確に整備をして、その意味では、委員指摘のとおり、その後の紛争が少なくなるという意味でも保険契約者保護になっていると、こう考えております。
  219. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 変更した点を今幾つか挙げていただいたんですけれども、なぜそんなふうに変更したのかということを確認しておきたいと思うんですけれども、まず一番目、答弁が今あったように、商法では契約の際に変更権を留保した場合に限って保険金受取人の変更を認めている。今回の保険法案は原則として保険契約者に変更権を認める、こうしていると。  それは、どうしてこれ、こういう違いが起きてきたのか、そこの説明を伺っておきたいと思います。
  220. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) まず前提として、保険契約、長期間にわたる継続的な契約であるというのがあります。保険契約者保険金受取人との間には何らかの属人的関係があるからこの人に受け取ってもらうと、こうするわけでありまして、そういう属人的な関係というのも長期間契約が続いている間に変わるということは当然にあり得ることであります。そして、一番大事なのは、やはり保険契約者の意思を尊重することであろうと。保険契約者がこうしたいと思っているのであれば、この人に受け取らせたいと言うのならそれに従うのが一番いいはずだという、最後はその政策判断でございます。
  221. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今おっしゃったみたいに、保険金受取人の変更は保険者に対する意思表示によってすることとされているわけですね、保険法案は。でも、現行商法の下では、保険者だけでなくて変更前の保険金受取人や変更後の保険金受取人に対する意思表示でもよいとしたこれ裁判例があると聞いているんですよね。  だから、保険金受取人の変更について意思表示の相手方を保険者に限定したと、これはなぜか。この点もきちんと明確にしておいていただきたいと思うんです。
  222. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) この点は、実は商法の規定は明確ではなかったものですから、解釈上争いがありました。確かに委員指摘のような見解を取った判例もあったわけです。しかしながら、保険金受取人をだれにするかというのは、生命保険契約にとっては最も重要な契約の要素の一つでありますから、その変更の意思表示についても、これは原則に返って、契約当事者である保険者を相手方とするというのが自然であり、簡明であろうというふうに考えられたわけであります。  また、判例の立場によれば、新旧保険金受取人に対する意思表示さえあれば保険金受取人の変更の効力が生ずるということになるわけですけれども、それが保険者に通知されない限りは、対抗要件を備えておりませんので、保険者としては変更前の保険金受取人に対して保険金支払えば足りると、こういう理屈になります。  こういうふうにいたしますと、変更自体は効力を生じているから、変更後の保険金受取人は、保険金を受け取った変更前の保険金受取人に対して不当利得返還請求権を使ってそれを取り戻すという、こういう迂遠なことになりかねない、ならざるを得ないわけでございます。そういうこともきちっと法律的には整理したいという思いがございまして、保険会社を相手にする、保険者を相手にするということにいたしました。
  223. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、先ほど少し理由はおっしゃってはおりましたが、民法原則で言うと、意思表示というのは、通知が相手方に到達したときに効力を生じることになると。ところが、保険法はどうなっているかというと、保険金受取人の変更の意思表示が到達したときは、通知の発信時にさかのぼって効力を生ずることとしていると。こういうふうにして民法の原則と異なっているということについて、どうこれは考えればいいのかと。これも当局に確認しておきたいと思います。
  224. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 確かに到達主義という原則が民法では取られているわけですが、この到達主義の原則を取りますと、保険契約者保険金受取人の変更の意思表示を発した後、その通知が保険者に到達する前に保険事故が発生した場合、生命保険でいえば自分が死んでしまった場合と、こういうようなことになろうかと思いますが、この場合には、当該保険事故に基づく保険金が元の保険金受取人に支払われることになります、到達しておりませんから。それでは保険契約者の意思が尊重されない。そこで、変更の意思表示が到達することが必要だよと、そういうことに保険法ではいたしました。その上で、意思表示の効力発生時期は通知の発信時にさかのぼらせると。若干技術的でありますが、そういう工夫を凝らしまして、保険契約者の意思を最大限尊重するようにいたしたわけでございます。
  225. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、遺言の問題もございました。保険法案、これは初めてですけれども、遺言によって保険受取人の変更を認めると。  高齢化社会とか、先ほど議論もありましたけれども、そういった意味では今の社会のニーズにこたえたものになるんだろうとも思っておりますが、一つ何か心配されるのは、遺言によって保険金受取人の変更を認めていくと、遺言によって保険金受取人、これは変更がされたことを知らずに、例えば保険者の側が元の保険金受取人に保険金支払ってしまって、二重払いの危険を負うのではないかというふうなことがこれも指摘をちょっとされておったんですけれども、こういう言わば遺言による保険金受取人の変更について、保険者の側の二重払いの危険を防止するためにどのような手だてが取られているのか、この辺も伺っておきたいと思うんです。
  226. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) まさにその二重払いの危険が生じないようにするために手当てをしなけりゃいけないというのが大きな課題でございました。  保険法案ではどうしたかということでございますが、遺言によって保険金受取人の変更はすることができると。ただ、それがされた場合には、生前の意思表示による場合とは異なりまして、保険者への通知を対抗要件とすると、こういうことにいたしました。通知が対抗要件になりますので、通知があればその保険者は払わなきゃいけないと、そういう義務を負うと、こういうことになります。  この通知はだれがするんだということになるわけですが、本人は亡くなっているわけですから、当然、遺言執行者あるいは相続人と、それは遺言によって決まるということになるんだろうと思います。
  227. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、先ほどの議論の中で、今回の保険法が新しくできる中で大きな一つは、責任保険における被害者の保護という点でございます。  責任保険、損害賠償責任を負った場合に備えて加入する責任保険、自動車保険とかPL保険とかございますが、保険契約者や被保険者保護だけでなくて、損害を受けた被害者の保護を図ることが重要なポイントになりまして、ところが、商法そのものは責任保険一般について特別の規定がない。加害者である被保険者が倒産した場合には、保険者が他の債権者への弁済にも充てられるために、被害者は十分な弁済を受けることができないということが問題になって、実際にこのことが裁判で争われた事例はありまして、結局は規定がないわけですから救済されなかったというような問題があった。  こういう責任保険について、今回保険法案では、被害者保護観点から、先ほど別の方に局長御答弁されておりましたが、初めて保険法の中で先取特権ということを認めるようにしたと。そういう意味では非常にこれ大きな論点の一つだと思うんですよ。  でも、これが設けられることは非常に大きいとは思っているんですけれども、ただ私がお聞きしているのは、法制審議会の中においては、被害者に直接請求権を認めた方がいいんじゃないか、この方法の方がいいんじゃないか、被害者保護のため、こういう議論もあった、いや、そうじゃなくてやっぱり先取特権だ、二つが提案されていたというふうに私は伺っております。  この二つの中でなぜ、ある意味では直接請求権の方が分かりやすいような気もしないでもないんですよ。でも、最終的には法案見る限り先取特権を認めたわけでございまして、なぜ先取特権としたのか、また先取特権を設けることでどのような形で被害者保護ができていくのか、併せて御答弁をいただいておきたいと思います。
  228. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 御指摘のとおり、法制審の部会の審議の過程でも直接請求権を認めるかどうするかということで議論がされました。ただ、直接請求権を一般的に認めると一つ問題があるなということが気付かれたわけでございます。それは、被保険者の損害賠償責任の有無やその額に争いがある場合に、紛争の当事者ではない保険者が被害者との間でこれを確定しなければならないということであります。  ちょっと御説明いたしますと、被害者が保険会社に対して請求をすると、保険会社はその損害賠償請求権が幾らかということが争いになった場合、例えば過失相殺がどうだったんだとか損害額はどうだということになります。そうすると、これは被害者と被保険者との間で起こった事故でございますから、そこで議論させるのが一番いい。それを、保険会社の方が入ってそれをやるというのはかえって迂遠である、確定するのは大変だということが判明したわけでございます。  そこで、被保険者と被害者との間の過失の割合、今申し上げましたが、そういった事項について争いがある場合に保険者が被保険者に代わってこれを証明するというのは極めて困難であると。そこで、直接請求を認めることはせず、しかし同じ効果が得られる、倒産した場合に被害者が直接お金を得られるということで先取特権を付与するのが相当であるという、こういう結論に達しました。これを受けて今回の法案になっているということでございます。
  229. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 また、この保険法案二十二条の規定についてちょっと伺っておきたいんですけれども、保険法案では被保険者自身が保険金請求権を行使できる場合を限定している、これが二十二条の二項ですね。さらに、保険金請求権の譲渡を禁止している、これ三項ですね。なぜこのような規定を設けているのか、この点もちょっと伺っておきたいと思うんです。
  230. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは、被害者が先取特権を実行する前に被保険者自身が勝手に保険金を受け取っちゃう、あるいは保険金請求権を、被保険者がもう倒産しているというようなそういう状態でございますから、第三者に譲渡してしまう、こういうことをされますと先取特権を実行することができなくなります。せっかく優先権を認めたのにその実効性が失われるということになりますので、そこで保険法案では、まず、被保険者は被害者に弁済をした金額又は被害者の承諾があった金額の限度で保険金請求権を行使することができるということにいたしまして、被保険者自身が保険金を勝手に受領するということができる場面を制限いたしました。  第二に、保険金請求権の譲渡、質入れ及び差押えを原則として禁止するということにいたしまして、被保険者以外の第三者が保険金請求権を取得したり、第三者が保険金を受領することができる場面を制約したと、こういうことでございます。
  231. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 あと私が十分足らずになりましたので、企業保険の問題は次回またちょっと聞かせていただこうと思います。  そして、とにかく百年ぶりの改正でございますから、その施行に当たって、約款の改定の問題、システムの変更の問題、実際は様々な実務の対応が必要になってくると思いますし、この保険法を新たにやる以上は、やはり保険金不払のような今のような問題が再び起こらないような一つ保険法になっていかなければならないと思っておりますし、ある意味では、法律施行ということになればやはり十分な準備期間を確保する必要があると思いますし。  そこで伺っておきたいのは、この保険法施行時期についてどういう時期を予定をされているのか、これを伺っておきたいと思います。
  232. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは保険法案の附則の第一条に規定しておりますが、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日と、こうしております。二年というちょっと長めの期間を設けました。これは、ただいま御指摘をいただきました、この保険法が成立、公布された暁には、個々保険会社や共済団体等において保険法の定める契約ルールに合わせた約款等の改定、これが当然必要になります。また、これに対して監督官庁検討をして認可をすると、こういうことになると予想されるわけであります。その間にどのように保険の規律が変わってくるのかということをまた広報しなければならないという問題もございます。そうしたために、相当期間としてこれだけの期間を置いたということでございます。
  233. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 保険法案規定がすべて既存の保険契約とか共済契約にも適用されるようになっていくとするならば、例えば保険料の計算が合わなくなったり、利害関係者の期待を不当に損なうという可能性は十分あると思っております。また、生命保険のような長期の契約もあることからすれば、既存の契約には一切保険法の適用がなされないということになってしまうと、これまた法改正趣旨というのが十分に実現できなくなってしまう可能性もある。だから、そういう意味では、施行時期というのも大事なんですけれども、経過措置をどうやってどうしていくのかというのも極めて重要な意味を持っていると考えているんですけれども。  そこで、保険法施行前に締結された保険契約や共済契約にもこの保険法というのは適用されるのか、適用される規定があるならばそれはどのようなものがあるのか、これを確認をしておきたいと思います。
  234. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは附則の第二条以下に規定しているところでございます。まず、原則として、施行日以降に締結された保険契約について適用されると。新法主義が原則だというのを附則の二条に決めておりまして、ただ施行日前に締結された保険契約にも適用される場合というのを附則三条から六条までにわたりまして長々と規定しております。  その従前の例によるとされる場合というのはどういう場合なのかというのを簡単にちょっと御紹介させていただきますが、まず附則三条で、施行日前に締結された損害保険契約について保険法規定が適用される場合を規定しております。これは、保険価額の減少、危険の減少、それから保険給付履行期、責任保険契約についての被害者の先取特権、先ほどの規定です、こういう合理的なのは全部やろうと、それから重大事由による解除等を掲げております。  それから、附則第四条及び第五条では、施行日前に締結された生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約について保険法規定が適用される場合を規定しておりまして、具体的には、保険給付請求権の譲渡等についての被保険者の同意の点、それから危険の減少の点、それから保険給付履行期、重大事由による解除、それから契約当事者以外の者による解除の効力等の規定を掲げております。  さらに附則六条では、施行日前に締結されたすべての類型の保険契約につきまして保険法規定が適用される場合を規定しておりまして、具体的には保険者の破産の場合がここに入っております。  このように、できるだけ合理的なものについては前のものにさかのぼって、従前のものについても適用されると、こういうふうにしているわけでございます。
  235. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 大臣、最後に、細かいことをいろいろ議論させていただいたんですけれども、言わば今回の保険法消費者というか契約者というか、そういった消費者側、生活者の側にとってどういう効力を生じてどういうことになっていくのかということについて私は今日は論議をさせていただいた、それを目指したと思っておるんですけれども、是非、そういった観点からこの保険法というのがきちんと施行をし、できるようなことを大臣にも決意を持って臨んでいただきたいし、もう一つは、先ほどの議論の中で消費者庁の話もございました。やっぱり消費者に立っていろんな法をもう一回根本的に見直すという問題についても是非頭の片隅に入れていただいて、前回、父権訴訟の問題とかちょっと言いましたら、なかなかそれは今の日本の法体系では難しいという話もありました。実際、そうだと思いますよ。でも、消費者保護生活者という立場に立って行政全般を見直すのであれば、そういった問題までやはり私は法務省は踏み込んでいかなければならない課題も抱えたままであると思っております。  そういった意味も含めて、消費者保護契約者保護という観点から、この保険法、きちんと成立をし遂行するに当たっての大臣の決意を伺って、議論を終わりたいと思います。
  236. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 木庭先生の御質問の基本的な趣旨も、あるいは保険法を商法から独立させて保険法案として提出する意味合いのかなりの部分も、あるいは午前中の民主党の方々の質問趣旨も、ほとんど私は同じ方向、すなわち保険会社保険契約者というものの力関係、もちろんモラルリスクの問題はある、あるけれども、基本的に立場の弱い生活者消費者を守っていく、より有利に導いていくという同じ方向にそろっているだろうと思うわけでございます。  じゃ、今度の保険法消費者保護に関して何をするかという質問はそれぞれに出て、先生もされた。そうすると、例の告知義務の話とか告知妨害があったときの話とか、あるいは保険給付履行期の、先ほど質問が随分ありましたが、履行期の問題とか、あるいはそういうことに反する約款は駄目だよという片面的強行規定の問題とか、答弁とするとこういうことになってしまうんですが、それだけじゃわびしいんで、もっと幅広い意味でこの保険法趣旨というのが生かされるようにしなければいけないだろうと。  例えば裁判、訴訟になれば、この保険法というものを、消費者に有利に作られているわけですから、それは裁判、訴訟になった場合にはそういうふうなことで裁判官は考えてくれるだろうと期待をしますけれども、例えば金融庁などの答弁を聞いていますと、何かそういう、我々みんなそろっている方向についての理解が乏しいような気がするわけですよ。  だから、やっぱりそういう意味では、法務省も、こういう消費者生活者保険契約者になるべく有利、有利という言い方がいいのか分かりませんが、有利に物事を判断しようという法律を作った以上は、それは政府全体に我々が声を掛けていく責任があるんだと、そうした中で消費者庁の問題が出てくればまた我々も意見を言わなければならぬなと、そういうふうに思います。
  237. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。  ありがとうございました。
  238. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  大臣、お疲れのところですけれども、この保険法の問題で私いろいろ資料を調べておりましたら、平成七年度の生命保険協会がお作りになられた一般課程テキストというのが出てまいりまして、これを見ますと、業界の共通教育における業界統一カリキュラムの標準テキストですというふうにあるんですね。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  ここで生命保険についてどう言っているかといいますと、一人は万人のために、万人は一人のためにという相互扶助の精神で成り立っているものです、本来助け合いであり、貯蓄とは異なりますという、こういうふうに書いてございまして、この建前と、一方で保険金の不払や保険料の取り過ぎ、こうした消費者被害、苦情の激増というこの現実との余りの乖離に、私は本当にあきれますし憤りを禁じ得ないわけですが、午前中、前川議員の質問に対する金融庁当局の答弁を聞いておりまして、その思いを一層深くしたわけでございます。  私も先週の五月十六日の決算委員会で、渡辺金融担当大臣に、この被害や苦情の激増をどう認識しているのかというふうにお尋ねいたしましたら、相談、苦情が増加傾向にあることは分かっているが、それは一連の保険金不払の問題があって、それが世間の注目を集め、契約者の問題認識が高まっているということもその背景の一つではないかという、全く歯切れの悪い、渡辺大臣らしくない答弁で、決算委員会は大変あきれた雰囲気が広がったんですね。  山本大臣に私、個人的な恨みは全くないんですけれども、通告してないんですが、このような認識で間違いないんですか。
  239. 山本明彦

    ○副大臣山本明彦君) 認識というのは、それぞれ思いいろいろあるというふうに思いますけれども、やはり我々金融庁も、利用者保護を図ってすべてのことを行っておるわけでありまして、今、未払、不払、支払漏れがありましたけれども、そうしたことを踏まえて、実際出てきたことは事実でありますから、そうしたことを踏まえて、利用者の方がこれからはそうした漏れがないような形で保険金が受け取れるような形で保険会社を指導してまいりまして、大分時間も掛かりましたけれども、制度が整ってまいりまして、これからは今までいろんな理由がありますけれども、請求主義という点もございますし、商品が多様化し過ぎてしまってなかなかそれにフォローができていかなかった、いろんなことがありますので、中のガバナンスも含めまして、システムも含めまして、請求漏れがないように、そして支払漏れがないような形のシステムを大分構築してまいりましたので、今からは今までのようなことはない、そんな形で我々も指導しておる、利用者のために指導しておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  240. 仁比聡平

    仁比聡平君 改善されてきたというふうにおっしゃるんですけれども、それだったらこんなに相談、苦情が激増しますかということなんですよね。  加えて、金融監督行政が、そういった市場あるいは保険企業をつくってきたという、あるいはそういう事態を放置してきたという、このことについての反省も、せんだっての決算委員会での渡辺大臣の口からも語られなかったというのが、私は何だかちょっと、一体どういうことなんだろうかというふうに思うんですよ。  トラブルがない方が相談することはあり得ないわけですから、ですから、相談が今激増しているという事実は、これまで泣き寝入りをしてこられた方がどれだけ多かったのかということのあかしにほかならないと思うんですね。その認識が政府全体にあるのかと。保険をめぐる消費者被害は後を絶つどころか深刻さを増しているという点についての認識を鳩山大臣にもお尋ねをしたいと思うんですけれども、前川議員の質問に対して、消費者保護観点がないならばこの保険法案の意義の過半は失われてしまうというふうに大臣、午前中答弁されましたから、もう少し具体的にお尋ねしたいと思うんですけれどもね。  渡辺大臣は、そのときの質問で、不払の大きな要因として、各保険会社が入口、保険の募集から、出口、保険金支払まで、商品の特性を踏まえた適切な管理体制が整備されていないまま商品を開発、販売してきたことが考えられるというふうに答弁されまして、先ほど副大臣もそのような御趣旨の御発言がありました。実際、金融自由化、それから保険業界でも規制緩和が行われて以降、保険商品の複雑化、多様化がどんどん進んで、リスク性の高い商品も急増していると、これが被害要因になっているという中で、その下での契約法の役割、この保険法ですね、提案されている保険法の役割というのを総論としてどんなふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
  241. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 四十万件の苦情が生損保に寄せられているということは、二年前より倍増したと。私、この新聞記事を見て考えたことは、苦情を寄せる人は、分かって不満を持ったから苦情をよこすわけです、苦情を寄せるわけで、言葉は悪いけれども、ちょろまかされて気が付かなかった人がいっぱいいるかもしれませんね。例えば、自動車の関係でいえば、対物とかいろんな事故を起こしてしまった、それが主たる契約にある、ところが、代車の分も払ってやると書いてあったのに気が付かなかったなんという話はどうも山のようにあるだろうというんですね。  そういう意味では、今回の保険法改正趣旨というのは、先ほどから何度も申し上げて、民主党の皆様方に御答弁申し上げたように、あるいは森さんに御答弁申し上げたように、ただいま木庭先生に申し上げたように私は思っておりますので、とにかく、強い立場にある保険者保険会社がその立場を利用して、よりもうけを得ようとして、ごまかしと言うとちょっと言い方は変かもしれませんが、そういうことがないように厳しく金融庁も監視をしてもらいたいと思うんですね。  例えば、さっき前川先生が、生命保険で、亡くなった後三十年後に支払うという約款があったらどうなんだと。私は、先生方と違って弁護士じゃないから法律の知識は余りありませんけれども、ただ法学部を出ただけですけれども、そういうのは公序良俗に反する無効な契約とか約款というように私は勘では思うんですね。それくらいのことを金融庁が言えなくてどうするんですかと私は思うわけ。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  だから、これは保険法質疑であって、それは共済も取り込みますよとか、傷害疾病定額保険なんというのは書いていなかったから書きますよとか、そういう全く基本的な概念を確定し、ルールを決める法案だから、業法ではないんだけれども、しかし、どんなに立派な基本法を作っても、業法の運営がうまくいかない、監督官庁がよく監督しないとすれば、これせっかくのいい条文が泣くんですよ。そうならぬように、副大臣、頑張ってください。
  242. 仁比聡平

    仁比聡平君 私も、監督行政が極めて不十分で、そのことがこの被害、苦情の激増ということの要因の一端を成しているということを指摘をしてきたわけですけれども、契約法、この保険法が本当に今大臣がおっしゃるような総論の趣旨を具体化したものに実際になっているのかということについても極めて疑問に感じているわけです。  基本法ですね、もちろん、なんだけれども、現実に市場の保険商品というのは極めて複雑化、多様化している。ここを規律するというものでなければ本当の消費者保護というのは果たせないのではないかというふうにも思うんですけれども、それでも、今日の議論でも出てきますように、消費者保護ということで具体的な柱は、告知義務の問題、それから告知妨害の問題、それから給付の履行期の問題、それらを通じての片面的強行規定の問題であって、しかも、午前中の議論のように、それぞれの保護規定と言うが本当にそうなのかと、むしろ現行法よりも後退するのではないかという疑問が指摘されているわけです。  局長にちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、この契約法としての基本法をどんな考え方で作ったのか、商品性とかかわる監督行政、こことの立て分け、これはどんなふうな発想で提案されているのか、お尋ねしたいと思います。
  243. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) これは、まず契約ルールでございます。しかも、保険法という、保険契約全般に通じて一般的なルールとしてどこまで書けるかというところがございます。  その上で、しかし、保険契約者保護の要請は近時特に強いと。特に、この保険という分野においては保険会社保険契約者との関係、それから約款が膨大になる、そういった問題から見れば、この契約のルールというのを保険契約者保護というところを常に視点に置きながら定めていかなければならないと、一般法のルールとしてそれを決めていくんだということでございます。  理念としてはそういうことでございまして、その上で、先ほども申し上げました告知に関する規定であるとか、先生の御指摘になった履行期規定であるとか、それから、それを片面的強行規定にするといったような保険契約法、一般ルールとしてできるところを最大限図っているというつもりでございます。  もっとも、消費者保護を実現するためには契約ルールを設けるだけでは必ずしも十分ではない、この点はそのとおりでございまして、保険会社や共済団体との監督規制とも相まってこの契約ルールが消費者保護を図る一助になるというふうに考えているわけでございます。
  244. 仁比聡平

    仁比聡平君 もう少し具体的に聞きますけど、多様化する商品がいろいろありますから、ですから一律に言いにくい部分もないわけじゃないんですが、例えばそれぞれの商品ごとの説明義務、重要な事項の、あるいはそれを証する書面の交付義務、こういったものを契約法の中に盛り込んで、これが尽くされなければ契約の効力を否定するというような立法政策だってあり得ると思うんですね。だけれども、そういった立法政策は今回お取りにならないということについて、論者、学者の中からも、百年ぶりの改正はそうだけれども、だけれども今回の目玉は一体何なのかと、消費者保護と言うけれども、実は中身がないんじゃないかという厳しい声もあるでしょう。どうですか。
  245. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) そのような御意見があるということは私も承知しております。現に、法制審議会の部会でもそういうことが議論もされているわけでございます。  ただ、これは保険契約法としての一般ルールでございますので、個々の商品についてどれくらい類型化して個別にこの場合にはこうだああだと書けるかというと、これは様々、それぞれの契約、商品の中身というのが千差万別でございまして、これを一律に規定していくというのは、しかも、その中の概念をきちっと明確に書いて書き分けていく、それについてどのような効果を与えるのかというのをそれぞれ整序させていくというのは、これまたなかなか難しい問題でございます。それで、提案した保険法案のような内容消費者保護を図っているということでございます。
  246. 仁比聡平

    仁比聡平君 百年ぶりの大改正なんですよね。その百年ぶりの改正に当たって、もちろんすべてを書き尽くすことはそれは無理かもしれないけれども、大きな問題を抱えているその分野について、そうした整理をして法案化するという能力は法務省民事局にはあるはずでございます。それをなぜやらないのかと。それをやらないという立法政策が、鳩山大臣の総論的な御答弁とは逆に、被害とそれを生み出してきた規制緩和後の市場の現状、これを追認するということになりはしないのかということを私は感じるんですね。  そこで、大臣が何度もおっしゃっています契約における強者、弱者の問題で最後、総論お尋ねしておきたいんですが、保険契約は付合契約の典型というふうに言われておりまして、この付合契約というのは、契約内容が一方当事者によって事前に作成されていて、その契約内容契約するかどうか、これのみを選択することしかできない、そういう契約ですね。保険商品というのはまさにそういうものなわけですけれども。  こういった力関係の中で、契約の成立効力をめぐっても特段の消費者保護が求められるという、こういった御認識は大臣、おありですか。
  247. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 学生時代に民法等を習っておったときに奄美大島に旅行に行ったんですね、友達と。船に乗ったら、船に乗って一杯やっておったら、約款が書いてあるでしょう、運送の。そうすると、まあ好き勝手なことが書いてあるわけですわね、あれ。要するに、船の中で物を盗まれたって責任負わないだとか、何かそういうのがありますわね。だから、あの約款を全部読んで納得して、これは契約をしたといって船に乗る人というのは余りいないわけですね。  だから、保険契約はもちろんそうではない、みんな慎重に読むものとは思いますけれども、やっぱりその約款の作り方が巧みにできていて、消費者が気が付かなかった、失敗したなんということが絶対ないように、そういう約款を認めないように金融庁に頑張ってもらいたいということを先ほどから何度も申し上げているわけでございまして、この保険法を作ったことは、今提出してこれが成立することを私は、いろんな御批判はあるかもしれない、ただの民法、商法の世界よりも後退したじゃないかというような御指摘もゼロではないけれども、私はこれはかなり、三歩、五歩、十歩前進することではないだろうかなと思っていますし、まだ不十分な点があるならばまた更に改正を加えていって、更に消費者生活者保険契約者に有利な方向に持っていくように努力すればいいと、こう考えております。
  248. 仁比聡平

    仁比聡平君 そういった力関係の下で特段の消費者保護が求められるんだということを否定されるお立場ではないんだろうと思うんですけれども、先ほど、今御答弁の中にあった保険会社約款の問題で一つ取っても、これ事前に消費者が、どの保険自分に合うかなといって約款をいろいろ調べるということは現実には無理、不可能なことになっているんですよ。ホームページで主要商品の約款を公開しているのはわずか四社にすぎません。実際には、契約締結後に、あるいは締結と同時に約款が渡されて、読む間はないというのが現実なんですよ。  そういった問題も時間があればまたただしていきたいと思いますけれども、今日は残りの時間、他人の生命に掛ける保険、その典型は団体定期保険ですけれども、これを保険法上どう考えるべきかについてお尋ねしたいと思うんです。  住友軽金属事件と呼ばれる最高裁の判決で、最高裁、こんなふうに判示しました。このような運用が、従業員の福利厚生の拡充を図ることを目的とする団体定期保険趣旨から逸脱したものであることは明らかである。しかし、他人の生命の保険については、被保険者の同意を求めることでその適正な運用を図ることとし、保険金額に見合う被保険利益の裏付けを要求するような規制を採用していない立法政策が取られていることにも照らすと、遺族の主張を採用することはできないという、そういう全体の趣旨なんですね。  この企業が従業員の命をカタにしてというか担保にしてといいますか、ここで利得をするということは趣旨から逸脱したものであることは明らかだとしながら、だけれども、我が国の立法政策の下での現行法という下ではその遺族の要求にこたえることができないというふうにしたような立法政策、つまり従業員を被保険者とする死亡保険金を企業が受け取るという、こういう保険契約を是とする立法ですね、これは主要国の中で日本だけだという指摘があるんです。これは事実でしょうか。  加えて、法案提出に当たって、政府は諸外国における団体生命保険の実情と考え方について調査をしたか、してないか、そのことを局長、お尋ねします。
  249. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 実は、個別に全部調査をしたということはございませんが、保険法部会における審議の過程で紹介がされました。この審議の中では、ただいま委員指摘平成十八年の最高裁判決も踏まえて、企業が保険金受取人になるのがいいのかと、その当否が議論がされたわけでございます。  その際に、諸外国の中には企業が保険金を受け取ることを法律によって禁止している例があるということも紹介されました。そして、ただ他方で、諸外国の中には企業が事業活動にかかわるキーパーソンに生命保険を掛けることが広く行われている例もあるという実務の紹介もされました。  このように、この部会におきましては、団体生命保険に関する諸外国の法制について独自の調査を行わなかったわけでありますけれども、そしてすべての立法例を網羅的に検証したというわけでもございませんが、各委員や幹事からそれぞれ諸外国の法制や実務の紹介がされ、それを踏まえた議論がされたところでございます。
  250. 仁比聡平

    仁比聡平君 今お話にあったその審議会の各委員や幹事というのは、先ほど御答弁があったように、生保業界を始めとして様々な業界の方々も入っておられるということなんだろうと、もちろん研究者の方もいらっしゃるわけですけれども、ということだと思うんですけれども、諸外国で企業のキーパーソンに生命保険を掛ける例があるということと、日本で大きな問題になってきた団体定期保険、つまり、その企業、工場に勤める従業員全員に、全員なり大きなその団体にですね、従業員の、ここに生命保険を掛けるというのは、これは私、場面が違うんじゃないかと思うんですよね。  この商品の仕組みについて簡単にちょっと御紹介をしますと、お配りをしている資料で、いろいろ批判の下で総合福祉団体定期保険とヒューマンバリュー特約というこの組合せが今広がっているわけですけれども、二枚目には契約の形態が書いてあります。それで三枚目に、インシュアランスという保険統計の資料から、平成十八年度決算におけるこの総合福祉団体定期保険の新契約、それから、その次のページはこの新契約も踏まえた保有契約高、これについての実績をちょっと紹介をいたしました。  これ御覧いただければ分かりますように、平成十八年度決算だけで、保険会社全社を合計しまして百万人を超える従業員が新たに被保険者となり、トータルでは二千七百七十万人もの労働者、従業員、サラリーマンがこの被保険者となり、その保険金総額は七十七兆三千百億になりますか、こういった規模、相当巨大な規模になっているわけです。  財務省おいでいただいていると思いますけれども、この保険に関して企業が保険会社支払保険料、これは会計上あるいは税法上損金ということになりますね。
  251. 川北力

    政府参考人川北力君) お答え申し上げます。  法人税におきましては企業会計の慣行により算出される損益を基礎としておりますが、企業会計上は、法人が保険料を支払う場合におきましては福利厚生費なり支払保険料として費用計上されることが一般であるというふうに考えられます。  したがいまして、法人税法におきまして、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算される費用等の額は法人税法の損金の額に算入されるということになっておりますので、御指摘保険料につきましては、そうした会計処理に従いまして基本的に損金の額に算入されるということになろうかと思います。
  252. 仁比聡平

    仁比聡平君 財務省、今の確認だけでございますので、退席いただいて結構でございます。  そういう仕組みと規模の中で、先ほど御紹介したように、ここまで最高裁が言うのかという判決が出ているわけですけれども、だけれども、諸外国の法制度の調査もせずにこうした立法提案をしておられる。この問題状況を追認するということになりはしませんかという思いが私はいたします。  そこで、この最高裁も言っています被保険利益について、我が国の法制上どう考えるかということをお尋ねしたいんですが、ある論者によりますと、この被保険利益というのは、契約者と被保険者の間に、契約して保険会社お金を払う人と、保険が掛けられて、その人が死んだら受取人にお金が行くというその被保険者、この間に経済的な利害を始めとした利害関係、被保険者が死亡すると契約者生活が破綻するといった関係、典型は御遺族ということになると思うんですけれども、こういった被保険利益というのが必要なんじゃないのかと。  ところが、今の法制で、過労死で一家の大黒柱を亡くして遺族が悲嘆に暮れている中で企業が多額の保険金を取得しているというような出来事が起こって、ここに対しては国民感情もそれから従業員の納得もこれは得られないという状況が起こっているからこそ、こういった紛争がずっと相次いでいるわけですね。これは情緒論だとか感情論の問題では私はないと思うんですよ。これは情緒の問題ではなくて法理の問題。つまり、従業員の命をカタに他人、とりわけ企業が利得するということが正義にかなうのかという問題にかかわる問題だと思うんですね。  かつて日本の法制度でも、この被保険利益を保険契約の柱の要素にするという考え方が取られていたという法制度研究もございまして、ところが今は同意主義ということになっているんです。この被保険利益というのを特にこの団体定期保険においてどう考えるのかと。法務省、いかがですか。
  253. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 被保険利益を取るのか同意主義を取るのかという、こういう厳しい御指摘であったと思っておりますが、この保険法案は同意主義を取ったということになろうかと思います。御批判はいただくところだと思いますが、若干説明させていただきたいと思います。  この保険法案では、当該被保険者の同意がなければ生命保険契約の効力を生じない、もちろん団体生命保険契約もこの中に含まれると、こういう法制を取っているわけでございます。したがって、会社が受取人となるというその今の団体保険契約についても、個々従業員の同意がなければその従業員との関係では契約は効力を有しないことになります。これによりまして、団体生命保険契約についても少なくとも個々従業員の意思によらずに会社が保険金を受け取ることとなるという、こういう事態を防止する機能は果たすものと言うことができようかと思います。  これによって、被保険者の同意を契約の効力要件とするということによりまして受取人による保険金の受領を根拠付けるという、そういう法政策、法制度を選択をいたしました。その結果、今御指摘のあった被保険利益を要するという法制は取らなかったということでありますが、これは契約の有効性というものを被保険者本人の意思にゆだねるということにするのが最も合理的であると考えられるということが部会の結論であった、それを受けての法案ということになります。
  254. 仁比聡平

    仁比聡平君 時間がなくなってしまいましたので、団体定期保険の詳しい話は、金融庁おいでいただいているんですけれども、ちょっと次回に譲らなければならないかなと思うんですけれども、法案との関係で、民事局長にもう一点お尋ねしておきますけれどもね。今、そうした法制は取らなかったというふうにおっしゃったんですけれども、そうしたら、どんな法制を取りましたかということで、同意というこの保険法案をまるで目玉のようにおっしゃってきたわけですけれども、これはこれまでの、現行法の商法六百七十四条一項とどう違いますか。  これまでも、他人の生命に掛ける保険、これについては被保険者の同意が必要とされてきたんですよ。この同意というのも、衆議院で御答弁されていますが、真意に基づく同意でなければならないのはそれは当然でしょう。現行法の、商法上の同意だって、それは変わらないじゃないですか。商法の解釈でもこれまで同意は契約の有効要件とされてきたんです。ところが、その法制度の下でこうした被害が繰り返されてきたと、これが正されないまま新しい法制度なんて言えるのかという話なんですよね。  そこで、この同意が従業員に対してどのように取られてきているのかという調査を行ってきましたか、この法案作りに当たって、というふうに伺いましたら、法務省金融庁もそういう調査はしていないということなんですよね。  この住友軽金属の名古屋製造所の工場に勤務をしている労働者の方からこんなお手紙をいただきました。  九〇年代にこの保険が問題になったときに、当時の職場の主任が朝礼の場で、会社は団体保険に入っている、この保険に不同意の方は人事まで申し出るようにという趣旨の通知があったが、それ以降は、総合福祉団体定期保険に切り替わったそのときに食堂の前の掲示板に張り出されただけで、一回限り、その後は毎年一年一年更新されているはずなのに、九六年から後ですよ、今日まで十二年間一度もその食堂の掲示すらないというんですから。これで真意に基づく同意が取られているなんてあり得ますか。あり得ないでしょう。
  255. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 倉吉民事局長質疑時間が終局しておりますので簡潔に御答弁ください。
  256. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただいまのようなケースで、それは具体的にちょっと、もう少し詳しく聞かないとここで断定的に申し上げることはできませんけれども、いかにも会社側がその強い立場に出て、従業員に詳しい説明もしないで、保険金がどういうふうに支払われるのかというのもよく分からないまま無理やり契約をさせられたと、そういう実態であるとすれば、それは真意に基づく同意とは言えないということは明らかであろうかと思います。
  257. 仁比聡平

    仁比聡平君 契約をさせられたどころか、そういう契約の被保険者になっていること自体、従業員は全く知らないというそういう事態なんですよ。引き続きこの問題をただしていくということで、大臣も是非お勉強ください。よろしくお願いします。
  258. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  保険法案の前に、今月の一日の日に施行されました戸籍法の改正のことで法務省の方に一つお聞きをしておきたいことがあります。戸籍法が改正され、施行されまして、外国人の離婚届の不受理申立てができなくなっているという問題であります。  改正戸籍法の二十七条の二第三項で、何人も、その本籍地の市町村長に対して、あらかじめ、法務省令で定める方法によって、離婚届の不受理申立てができると、こういう規定になっているわけでありますが、実は外国人の場合はその本籍地がないということで、外国人については離婚届の不受理申立てができないと、こういう問題が一つありますし、また改正戸籍法では、離婚届が夫婦の一方から出された場合などには、その離婚届を持って来庁しなかった側に対して離婚届が受理されたという通知を送ることになっております。しかし、外国人の場合にはその通知も除外をされているということになっております。  今、私は今回の改正戸籍法でそういう規定になっているんではないかということなんですが、まず、今私が申し上げたこと、これは正しいかどうか、局長から御答弁ただきたいと思います。
  259. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 戸籍法上、改正戸籍法上でございますね、外国人の方が不受理申出の制度の対象とはなっておりません。また、離婚届等がされた場合の通知についても外国人の方に対して行われていないということ、委員の御指摘のとおりでございます。
  260. 近藤正道

    ○近藤正道君 これは気が付かなかったのかどうなのかよく分からないんですが、外国人については、日本国籍を有する者と比べて、親族法上非常に不安定な地位に置かれると。外国人の場合は、日本人の配偶者であるという問題が即この人たちの在留資格の喪失の問題とストレートに結び付いているわけですね。ですから、離婚ということになると直ちに在留資格を失う。  この離婚の問題についていろいろ紛争があるときに、まあ日本人であれば、離婚届の不受理の申立てを、争いがあるときに不受理の申立てをしておったり、あるいはそうじゃなくて離婚届が出されたときに直ちに対応できるような、そういう制度が今度の改正戸籍法で整えられているにもかかわらず、外国人の場合にはそれがないと。そうすると、全く対抗する手段がなくて、一挙に離婚されて同時に在留資格を失うと。これは本当に差別的な結果になってしまう。  これは、何とかしてやらないとまさに外国人差別という結果になるんではないか。どういうふうにこれに対して対応されるのか。今、こういう戸籍法の改正を受けて、それが施行されてこれは困ったという、言わば悲鳴を上げている人たちが何人かいるようでございますが、法務省としてはどういうふうに対応されるんでしょうか。
  261. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 外国人の方がこれらの制度の対象外とされてしまうということに不都合があるということは、もう委員指摘のとおりでございます。  これは、戸籍法という制度の中にのせるのは、戸籍法が日本国民を対象にする法律であるものですからそこでというところがあるわけですが、何らか実務上、外国人の皆さんに対しても日本人と同様の対応を取るべく早急に必要な準備を進めているところでございます。
  262. 近藤正道

    ○近藤正道君 戸籍法は日本国民を対象というふうに言っても、条文の中には何人もという規定が随所にあるわけでありまして、私はどうしてこういう過ち、結果としての過ちを犯してしまったのか、是非お聞きしたい。  そのことと、対処法なんですが、やっぱり法的にきちっと対応するということが一つと、もう一つは、法的に法改正を含めて対応するには一定の時間が掛かるわけで、しかし同時に、社会はどんどん動いて、人間関係も動いているわけで、当面、直ちにこういう差別的な状況はやっぱり何らかの形で解消しなきゃならぬと。抜本策と当面策と、そしてどうしてこういうことになってしまったのか、この三つについてお答えいただけますか。
  263. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) まず、前提の問題でございますけれども、何人もと、戸籍法よくそこは書いてあるわけですけれども、これは日本国籍を有する者であるという前提でございます。これはもう戸籍法を通じての解釈でして、戸籍法というのは日本国籍のある人についてどうするかということを規定している、そういう法律であるということでございます。  これまで、言わば行政上のサービスとして不受理申出という制度を通達上やっておりました。これを戸籍法上の制度としようということで戸籍法に持ってきたわけですけれども、そのときに日本人が対象になってしまったと、こういうことでございます。  繰り返し申し上げますが、こういう制度が不都合であることは委員指摘のとおりであります。早急にこれを改めるように、外国人の方についてもとにかく急がなければいけません。そのこともありますので、通達を用いて実務上できるだけ早く元の形にしたいと思っております。
  264. 近藤正道

    ○近藤正道君 分かりました。了解をいたしましたが、結婚とか離婚とかというのはまさに毎日のように起こっていることでありますので、可及的速やかに、取りあえず通達で外国籍の方が困らないような措置を至急講じていただきたいと強く要望申し上げて、本題の保険法質問に入っていきたいというふうに思っています。  実は、幾つか用意しておりましたけれども、大体問題意識は同じでありまして、私の聞きたいことはもう本当に皆さん質問されておりますので困っているわけでございますが、私も、今ほど来話がありました団体定期保険、団体生命保険について是非お聞きをしたいというふうに思っております。  私は、やっぱり他人の命あるいは不幸、このことによって企業が一定の利益を確保する、このことは本来あっていいんだろうか、公序良俗との関係で、あるいは倫理とのかかわりで根本的に問題があるというふうに思っておりまして、そういうものが従来かなり野放しだったと。それがその後、歯止めを掛けられつつも、今回の保険法の中で一定のやっぱり合法領域を確保するということになるということについて、大変危惧の念を持っている一人でございます。  そこで、まず最初に、一番最後でこんなことを聞くのもなんでございますけれども、団体生命保険趣旨、目的をまず明確にしていただきたいと、こういうふうに思っています。いかがですか。これは、今日は金融庁、来ていますよね。
  265. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 団体生命保険保険約款には、保険趣旨、目的が死亡した従業員の遺族の生活補償であり、死亡退職金規程等に準拠して保険金支払う旨明記されてございます。
  266. 近藤正道

    ○近藤正道君 ここに金融庁が今年の三月に保険会社向けの総合的な監督指針というものを出しておりますが、この中にも書いてありますが、全員加入の団体定期保険、団体生命保険、これは当該保険の目的、趣旨が遺族及び従業員生活補償にあるということを明確にしているわけでありますが、先ほど来、そういう側面は否定はしないけれども、本来もっとまた別のところにあるようないろんな話が出てくるわけなんですが、皆さんが作られた監督指針の中では、団体定期保険生命保険は遺族及び従業員生活補償にあると、これが目的なんだということを明確にしているわけでありますが、これでよろしいんですか。
  267. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 委員指摘のとおりでございます。
  268. 近藤正道

    ○近藤正道君 そういたしますと、お聞きいたしますが、主契約、主な契約において、遺族に支払われるべき保険金を会社が利得するようなケース、これはあるんですか、ないんですか。
  269. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 現在の団体生命保険そのものの主契約において会社が利得をするといったことはないと考えております。
  270. 近藤正道

    ○近藤正道君 そうおっしゃいますけど、依然として主契約趣旨、目的がそうでないという形で使われているケースはあるんじゃないですか。  ヒューマンバリュー特約であっても保険金は原則遺族に支払われるべきだと、こういうふうに思っておりまして、そのヒューマンバリュー特約で会社が保険金を受け取った場合、会社の逸失利益を超える金額は遺族に交付するのが私は筋ではないかと、こういうふうに思っております。会社が受領する部分があるとすれば、それは不当利得になるのではないか。  先ほども大臣が、会社がもうかってはならないと、これは厳重に監視をしていかなければならないと、こういうふうに御答弁をされておりましたけれども、今のヒューマンバリュー特約の中で会社が受領する部分がもしあるとすれば、これは論理の問題でありますが、不当利得になるんではないか、そういうものがあるとすれば、こういうふうに私は思うんですが、金融庁の見解はいかがですか。
  271. 三村亨

    政府参考人三村亨君) 御指摘のヒューマンバリュー特約につきましては、企業が従業員の死亡による負担すべき経済的損失に備えるためのものでございまして、被保険者たる従業員の同意を前提の上に保障を与えているものでございます。  したがいまして、団体定期保険一定の必要性があり、被保険者保護等にも配慮されたものであること等から、公序良俗に反するということまでは言えないのではないかと考えております。
  272. 近藤正道

    ○近藤正道君 そんなことを聞いているんじゃないんでして、質問をよく聞いて答えてくださいよ。  私は、公序良俗に反しているかどうかとかそんなことじゃなくて、例のヒューマンバリュー特約という形で一定の金額を会社が取るわけですよ。しかし、その中身を見たときに、本来遺族に行くべき部分が会社に行っているような場合には、これは不当利得という形で構成することは可能なんじゃないですかと、こういうことを聞いているわけ。どうですか、もう一回。
  273. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 三村参事官、的確な御答弁をお願いいたします。
  274. 三村亨

    政府参考人三村亨君) ヒューマンバリュー特約におきましては、企業が受けた実際の逸失利益の多寡にかかわらず定額の保険金支払われることとなっておりまして、なかなかその部分を不当利得であるということを強制するということは難しいのかなと考えておりますが、委員の御指摘のような金融商品の申請が行われた場合には、審査基準を踏まえまして適切に審査してまいりたいと考えております。
  275. 近藤正道

    ○近藤正道君 法務省民事局長にお尋ねをいたしますけれども、倉吉局長衆議院法務委員会の中で、遺族補償規定により死亡退職金を従業員の遺族に支払うことが定められていると、その金額を超えない範囲で会社が保険金を受け取るという場合、このような場合にはおよそ会社に不当な利益が生じないわけであり云々と、こういうふうに言っています。  この答弁は、遺族補償規定による死亡退職金を超える部分の会社の保険金受領を不当利得というふうに考えていると、論理的にそういうふうに私は受け取っておるんですけれども、実質的な中身で会社が余計なものを取った場合は不当利得になると、論理的にはそうだと、こういうふうに私どもは考えてよろしいんでしょうか。
  276. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) そこで申し上げた意味は、その不当な利益、裸の意味で、社会的な意味で会社が何か余分に取り過ぎているよと、そういうものではないという意味で申し上げております。  不当利得返還請求権が発生するということになれば、これは法律の世界では、契約に基づいて交付したものが不当利得返還請求権が発生する原因が起こるとすれば、それは契約の全部又は一部が無効になって、だからその合意自体の効力が否定されるから、不当利得返還請求権に基づいて返還を請求できるんだと、こういうことになります。  そういう法律的な意味での不当利得返還請求権が発生するという意味で申し上げたわけではありませんで、そういう死亡退職金についての会社の中で規約が従業員との間で結ばれていると、その限度で仮に保険に入っているとすれば、それは会社に余分な利益は残らない、不正な利益と目されるようなものは残りませんと、そういったものもあるということを申し上げたわけでございます。
  277. 近藤正道

    ○近藤正道君 さっき鳩山大臣が、会社が人の不幸でもってもうけるなんというのはそれは駄目だと、厳格にやっぱり監督をしていかなきゃならぬと、こういうふうにおっしゃいました。  ですから、私はこの定期団体生命保険についてはそもそもいかがわしいという思いがあるんだけれども、仮にその約款上許容できる余地があったとしても、これは実質的に遺族のあるいは従業員の利益を不当に侵害しないと、このことが大前提で、約款の名を借りて事実上従業員に行くべきものを会社の方が取っているというような事態になれば、それは不当利得という形でもって返還を求めることだって可能だと、大臣はそういうふうにおっしゃっているというふうに私は受け取ったんですが、これは法律的な話をちょっと超えて、大臣の先ほどの、厳格にチェックをしていかなきゃならぬ、監督していかなきゃならぬと、こういうふうにおっしゃった趣旨をもう少し敷衍して教えていただけますか。
  278. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まず、従業員を被保険者とするわけでありますから、ちゃんと中身を全部説明して同意を取っているかということが大変大事であって、さっき仁比さんの質問でしょうか、そんなのは張り紙一つないというような話を聞くと、その辺は厳しく完全に同意を取っているかどうかというチェックはしなければならないだろうということを思います。それから、そもそもそういうような事柄で、被保険者である従業員が不幸にして亡くなることによって企業に利益がもたらされるというようなことはあってはならないと思います。  ただ、ヒューマンバリュー特約については私もよくまだ考えがまとまらない部分がございます。それは、会社が特別に一生懸命育ててきた、お金をつぎ込んで育ててきた人材が亡くなってしまった場合にどう考えるかという問題はあるかと思います。  衆議院保険法審議のときに、未成年者だったかな、未成年者に生命保険掛けるのはおかしいじゃないかと、これは禁止したらどうだという意見があって、なるほどなと聞いておったら、多分事務当局の答弁であったかと思いますが、未成年者であっても特にスポーツの英才教育のように徹底して自分のお子さんに投資をしている場合があるから、その場合は生命保険を掛けて万一の場合に備えるべきだという、そういう答弁があって、ああそんなものかなと、自分ではよく分からぬなと思って聞いておった記憶があるわけで、それも一種のヒューマンバリューのような話なんだろうと。  ですから、ヒューマンバリュー特約というのを何も禁止すべきとは思っていませんが、そういう名を借りて企業が、不当利得とは申しませんが、不当に利益を得るようなことがあってはならぬと、そこは痛切に思います。
  279. 近藤正道

    ○近藤正道君 かなり際どくて、まあ首の皮一枚とは言わぬけれども、それに近いような形でこの保険の言わば合法性が辛うじて維持されるのかなと。その場合の一つの条件が被保険者の同意と。これがあって何とか辛うじてこの制度の合法性が担保されていると、こういうふうに、この法案を見る限りそういうふうに思いますが、問題はその同意の取り方について規定が全くないということでございます。  午前中も、被保険者証の交付をしたらどうかと、こういう話がございました。私は被保険者証のやっぱり交付というのは必要だというふうに思うんですが、まず大前提として、書面でやっぱり了解をきちっと取る、書面で了解を取ると。その書面を取るに当たって、契約の中身、保険のやっぱり中身は分からなきゃ困りますので、被保険者証の交付がやっぱり伴うべきだと。被保険者証を交付して、そして、それで中身を了解した上で書面で同意を出すと、こういうようなことをきちっとやらないとやっぱり問題が残るのではないか。  大臣検討をするということでありますけれども、そうではなくて、これは約款になるのかどうなのか分かりませんが、このことをやっぱり強くこれから求めていくべきではないかと。そうじゃないと、この制度はやっぱりおかしいよということになるのではないでしょうか。  コストだってどのぐらい掛かるのか分かりませんが、そもそもコストの試算をやったのかどうか、これも私是非聞きたいというふうに思っておりますが、もう一度、書面による同意、このことを大臣にお聞きをしたいと、こういうふうに思います。
  280. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 書面がいいのか被保険者証というのがいいのか、あるいはそれらはなくてもいいのか。とにかく被保険者である従業員の完全な了解を取ることが必要だと思う。  で、これは不幸にして事件が起きたときに意味を持つ保険ですから、できれば、その従業員の家族がそれを見て、ああ、うちのお父さんはこういう保険に入っているというのかな、こういう保険の被保険者になっているんだなということを認識する必要があるだろうと思うんですね。  だから、同意というのは少なくとも、言葉で、あなた、今度会社で団体生命保険に入るからいいかい、はい、いいよというのは同意にはならないんですよね。どういう場合に、幾らぐらい、だれに払われるか、受取人がだれであるかということまで全部きちんと説明して初めて同意ということですから、書面とか被保険者証の発行というような仕組みをつくれば確かに完全なる同意に近づくなと思いますから、検討課題だとは思います。
  281. 近藤正道

    ○近藤正道君 もう少し、まあ法案の中でそれは明記されればいいんですけれども、今の出されたものについてはそういうふうなものがなされておりません。  どうやって真意に基づく同意、この実効性を確保するかということなんですが、今大臣の頭の中には一つの素案みたいなものはまだないんでしょうか。
  282. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 保険法については、何年も前から強い関心を抱いてきたのではなくて、法務大臣になってから初めていろいろ勉強したり研究していることでございますので、まだ確たるものがまとまっておりませんが、専門家にいろんな検討を命ずる権限法務大臣は持っていると思います。
  283. 近藤正道

    ○近藤正道君 是非その権限を発動して、できれば参考人質疑の後の、もう一回質疑の時間があるようでありますんで、そのころまでに大臣考え方でも披瀝していただければ大変有り難いと、こういうふうに思っています。  それと、保険給付履行期の問題でございます。これも午前中議論になりました。  私は、やっぱり相当期間ということにつきましては大変心配をしております。最高裁の判例が平成九年の三月に出ておるわけでありまして、三十日と、それと調査終了後遅滞なくと、期間内に必要な調査を終えることができないときと、こういう形で判例的に一応整理されていたものが、今回の相当期間ということでどういうふうになるのか、後退するんではないかというそういう懸念を持っておりますが、まず、この法案二十一条の相当期間の立証責任というのは基本的にだれが負うんでしょうか。
  284. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 二十一条一項の相当期間の方、約款に期限が定められていて、しかしそれは相当期間を超えている、だから、約款では例えば六十日と決まっているけれども、本件では三十日が相当なんだと、こういうケースであれば、当然、三十日であるということを主張、立証する側が立証責任を負うと、こういうことになります。
  285. 近藤正道

    ○近藤正道君 どっちが、だれがやるんですか。
  286. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ですから、保険契約者の側ですね。つまり、約款でいったん六十日というのを合意している、それを実はそれより短いんだよと、必要な期間はそうではないんだよということを言うわけですから、保険契約者側が立証責任を負うということになります。  前提として若干ちょっと説明をさせていただきたい、時間が掛かって申し訳ございませんが。  実は、ここの相当期間、一項に書いてある部分ですが、これは約款一定期間についての定めがある、それについてそれを整序するという、こういう規定でございます。  約款には通常どういう規定があるかといいますと、例えば損害保険であれば、原則として請求されたときから三十日以内に支払いますと、ただし、更に調査が必要な場合にはその必要が終えた後と、こういうふうにこれまで書いてあったわけですね。平成九年の今御指摘のあった最高裁の判例では、最初の三十日と、これはまあいいだろうと、合理的な範囲内だろうと。しかし、その後、ただ調査が終わったら更に調査が必要なときは調査しますと、それが終わったときはというんじゃ幾ら何でも余りにも漠然とし過ぎていると、こんな約款は無意味であるということで無効であるということにしたんです、ただし書部分を。そうすると、本文部分の三十日だけが残った、だから三十日以内に支払いなさいと、それで三十日以後に遅延損害金を付けたと、こういう事例でございます。  何を言いたいかと申しますと、その最高裁で争われた事例というのは、実は十二月の暮れに火災保険に入って、それが年明けの正月の明けたころ、三日か四日に火で燃えてしまったというケースでございます。当然に捜査の手が入りまして、保険金詐欺じゃないかということで、それで保険会社も出し渋ったわけですね。それでずるずるずるっといったやつなんですが、最高裁は約款を客観的に解釈をして、そこのただし書で書いている部分は全く無意味であると、こういうことにしたわけであります。  今回の法案ではそういうこともすべてひっくるめて相当期間でないといけないと、期限を定めた場合には、確定期限であろうと不確定期限であろうとですね。だから、本文の場合については、今の約款の本文に照らして言いますれば何日と書いてあるのが一番明確だと、こういうことになるでしょう。  しかし、何かモラルリスクめいたことがありそうだなと、保険会社が何か調査が更に必要だと、こういうときには更にそれは必要な調査をさせないといけないと、こういうことになるわけですが、それは無制限ではないということを示すためにいろんなことを二十八条一項で書きまして、それについての相当期間としているわけです。  したがいまして、この保険法案ができた後、各保険会社約款をこれから検討することになると思いますが、これからは保険会社、先ほどのただし書の部分について最高裁の判例が駄目だよと言ったような約款、これはもうなくなると思います。当然にこういう事案について、こういうケースについて更に調査が必要な場合にその必要な期間とか、より具体的に書くことになる。その具体的に書く必要な期間とは何だろうかというのの解釈の最終的な指針を示すものがこの二十八条の一項ということになります。  したがいまして、あっ、条文間違いました、失礼しました。二十一条一項だと大臣からおしかり受けました。申し訳ありません。  それで、そういうことになりますので、特にその……
  287. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) そろそろ答弁をおまとめください。
  288. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) ただし書の部分についてはいろんな決め方があると思うんですが、そこについては……
  289. 近藤正道

    ○近藤正道君 質問時間なくなったよ。
  290. 倉吉敬

    政府参考人倉吉敬君) 済みません、必要な期間ということで十分に整序ができると、こう考えているというところでございます。
  291. 近藤正道

    ○近藤正道君 時間ですのでやめますけれども、いずれにいたしましても、調査に関する証拠だとか資料は圧倒的にみんな保険会社が持っているわけですよ。そういう中での相当期間、まあ相当期間のいかにあいまいかということは午前中も議論がありましたけれども、私はこれが現実にどういう機能を果たすのかということについては大変心配をしております。  この法案は、とにかく消費者保護というそういう大命題の下で、それに資するという形で出されているにもかかわらず、現実の果たす役割が果たして本当にそうなっているのかどうか、聞けば聞くほど心配になるわけでございますが、今局長は長答弁しましたので、私のもう一つ聞きたい時間がもうなくなりましたので、それは次回に譲るとして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  292. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  293. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  保険法案及び保険法施行に伴う関係法律整備に関する法律案審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  294. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会