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2008-04-15 第169回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十日     辞任         補欠選任         仁比 聡平君     大門実紀史君  四月十四日     辞任         補欠選任         今野  東君     金子 恵美君      大門実紀史君     仁比 聡平君  四月十五日     辞任         補欠選任         舛添 要一君     川口 順子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         遠山 清彦君     理 事                 千葉 景子君                 松岡  徹君                 山内 俊夫君                 木庭健太郎君     委 員                 小川 敏夫君                 金子 恵美君                 鈴木  寛君                 前川 清成君                 松浦 大悟君                 松野 信夫君                 青木 幹雄君                 岡田 直樹君                 川口 順子君                 丸山 和也君                 仁比 聡平君                 近藤 正道君    国務大臣        法務大臣     鳩山 邦夫君    副大臣        法務大臣    河井 克行君    大臣政務官        法務大臣政務官  古川 禎久君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小川 正持君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 一夫君    政府参考人        警察庁刑事局長  米田  壯君        法務大臣官房司        法法制部長    深山 卓也君        法務省刑事局長  大野恒太郎君        法務省矯正局長  梶木  壽君        厚生労働省社会        ・援護局障害保        健福祉部長    中村 吉夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑  事手続に付随する措置に関する法律及び総合法  律支援法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、今野東君が委員辞任され、その補欠として金子恵美君が選任をされました。     ─────────────
  3. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会警察庁刑事局長米田壯君、法務大臣官房司法法制部長深山卓也君、法務省刑事局長大野恒太郎君、法務省矯正局長梶木壽君及び厚生労働省社会援護局障害保健福祉部長中村吉夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 松野信夫

    松野信夫君 民主党松野信夫です。  私の方から、今日は八十分いただきましたので、この法案について質疑をさせていただきたいと思います。  ただ、この法案に入る前に、冒頭、死刑執行の問題について触れておかなければなりません。  もう既に発表がなされておりますが、先週、四月の十一日、死刑執行が四件行われたという発表がありました。その結果、昨年の十二月、今年の二月、また今年の四月ということで、全部で鳩山法務大臣になられてから十件執行がされたということであります。それまでずっと、一時死刑執行が止まっていたのが一九九三年に三年四か月ぶりに再開されて、十件というのは最高だそうであります。鳩山大臣の前の長勢法相のときに十件、今回また十件ということで今までで最高だそうでございます。しかも、長勢法相の場合は四か月置きに執行していた。鳩山大臣になりますとこれが二か月置きに、だんだんとエレベーター式になっているんじゃないかと、こういうふうに言わざるを得ません。  しかも、鳩山大臣記者会見で、これからも粛々とやらせていただくというふうに述べておられるようでありますので、恐らくこのペースで行くのであれば最高の数の死刑執行命令者になるんではないかというふうにも思います。余りにもちょっと異常なスピードで執行がなされているということで、いろんな人権団体等からも批判や抗議も出ているわけであります。  何でこんなに急いで死刑執行をしなきゃいけないのか、この辺について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  7. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 申し上げるまでもなく、死刑は人命を絶つという極めて重大な刑罰でありますから、その執行に関しては極めて慎重な態度で臨むべきでありまして、命令をしなければならない私としては、徹底した調査もいたしますが、斎戒沐浴してからサインをいたしております。  当然、関係記録については精査をいたします。刑の執行停止という心神喪失の可能性とか実態とか、あるいは恩赦出願、それが受け入れられる可能性であるとか、再審が開始される可能性とか、非常上告というまれな例もあるのかもしれませんが、それらの要素をすべて勘案をして精査させるものもありますし、私自身記録を相当細かく毎回読ませていただいておりまして、それらを総合的に判断をして初めて死刑執行命令をするということでございまして、私としては、それらすべて含めて粛々と行わせていただいていると考えております。  我が国法治国家でありますから、刑事訴訟法の半年以内という規定が守られている状況にはありませんで、これを訓示規定と読まざるを得ないのかもしれませんが、法律に基づいて法務大臣としての責めを果たしているという思いでございまして、これからも同じように責めを果たしていきたいと思っております。したがいまして、マスコミ等はまるでランキングのようにこの人数発表したりしますけれども、人数とかあるいはタイミングとかそういうものは全く考えたことがありませんで、大臣としての責任を果たすのみと考えております。  ただ、一つだけ重要なことは世論というものでありまして、もちろん死刑廃止の議連の方々にもお話を承ったことはありますし、あるいは日弁連からの意見も承ったことがありますし、先般はEUの二十七人の大使の方のお集まりに呼ばれまして、講演の中で死刑執行についての説明もいたしまして、国際的な流れがどうだといろんなお話も承っておりますが、我が国世論において、凶悪重大な犯罪に対しては死刑という制度をこれからも置き続けるべきであって、執行もすべきであるという世論がかなり多いというふうにとらえておりまして、私は粛々と任務を法律に基づいて果たしてまいりますが、仮に死刑執行すべきでないという世論が五割を優に超えるような事態があれば、それは当然私の行動には変化が生じるものと、こう考えております。
  8. 松野信夫

    松野信夫君 今、世論お話がありましたが、世論に全部従うというのであれば、政治家の役目というのは一体どこにあるのかなと。世論のことをよく言われるのであれば、内閣支持率はもう大体三〇%を切っているわけですから福田内閣はすぐ辞めなきゃいけない、むしろ世論に従うというのであればそういうふうに言わざるを得ないんじゃないかなという気がしております。  まあ世論の点はさておいても、先週の四月十一日に死刑執行というのは、ちょうどこの日は国連の拷問禁止委員会のマリーニョ・メネンデスさんというスペインの方が国会の方にも来られて、勧告について御報告もされた日でありまして、非常に挑戦的な日だなというふうにもう私自身は言わざるを得ない。もう少しやはり、せっかく大臣死刑の問題について省内で勉強会を立ち上げて勉強しようというようにも言っておられること聞いておりますので、死刑やその執行の在り方について冷静に判断をする。例えば、隣の韓国では事実上死刑執行を停止している、こういうところもありますので、こうした例もよくよく御検討いただいて、慎重に、冷静に御判断をしていただきたいなというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
  9. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今後も様々な御意見は、心を無にして虚心坦懐、すべて伺い続けていこうと思っております。  ただ、よくモラトリアムというんでしょうか、いろいろみんなで議論するから死刑を一時的に執行するのをやめておいたらどうかというような意見を承ることがありますが、これは、そしてその後また粛々と執行することになりますと、一時的に妙な期待を持たせてしまってかえって残忍ではないか、残酷ではないかというようなことがありますので、モラトリアムというんでしょうか、一時延期的なことはできないというふうに考えております。  国会の中にも様々な意見がございまして、これは臓器移植のときにもあったと思いますが、生命倫理等が若干絡むようなテーマになりますと当然政党にとらわれずに様々な意見が出てくるわけで、自民党の中にも死刑廃止を熱心に説いておられる方もおられますし、民主党幹事長は元々、刑事訴訟法の半年というのはなぜ守られていないんだというふうに言われたこともありますし、様々な意見があると思うんですね。  ですから、私はこれからも様々な意見を全部聞いて、それは勉強会もつくっておりますし、みんなで議論をしてまいるわけで、今のやり方、もちろん私の任期の問題もありますが、が唯一のものということで臨んでいるわけではありません。
  10. 松野信夫

    松野信夫君 裁判員制度が来年の五月二十一日から正式にスタートするということで、一般の市民の方も死刑判決に加わるということがいよいよ迫ってきているわけでありまして、恐らく普通の感覚を持っている人からすれば、死刑判決を自ら下したということは、相当これはもう精神的な負担だし、これは一生続く負担ではないかなという気がしております。  最高裁は、最近の新聞報道によりますと、裁判員になった人が死体解剖写真だとかあるいは惨殺された死体写真とかそういうのを見て非常にショックを受けるということから、そういう人たちに対する精神的なケア、緩和の対策が必要だということで、何か相談窓口を設置するんだと、こういうような報道もありますが、私は、まあもちろんそれはそれで結構ですけれども、むしろそれよりは、やっぱり死刑判決に加わる、こういう方の精神的負担の方が、私は惨殺死体見るあれよりはより負担が大きいのじゃないかなというふうに思っておるんですが、これは個人的には、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  11. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 余り軽々に申し上げることではないかもしれませんけれども、裁判員制度における裁判員参加による裁判、この量刑がどうなるかというのは、当然それは、検察側の主張も聞き、被告弁護側意見も聞き、専門の合議する裁判官が類似の事例ではこうですよという説明もあるということでありますが、裁判員制度の大きな趣旨として、国民市民の常識が判決に反映することというのが大きな目的の一つだろうと、こう思いまして、軽々に言ってはいけないのかなと申し上げたのは、つまり、裁判員制度が来年の五月二十一日から始まって、判決の傾向がどういう方向に行くのかなというのはやはり非常に強い関心を私も持っているところでございまして、この間、家庭内暴力を振るう夫を刺した奥さんの裁判というのをテーマにして五チームに分かれたら、四組は執行猶予、一組だけ実刑で分かれたのはどうかというようなことも報道に出ておりますけれども。  ですから、裁判員参加によって量刑がどういうふうになるのかということは非常に関心持っておりますが、これは始まってみなければ分からないことでございます。やはりそれは、先生おっしゃるとおり、人の命を絶つ死刑という刑罰がある、これを選択するようなときに、裁判員の方がやはり非常に重い気持ちになることは当然予想されることでございますけれども、でも、あくまでも六人の裁判員、そして三人の裁判官、九人の合議の中で刑の量定も、量刑もなされてまいりますので、私はそんな中で国民が神聖な気持ちで御判断いただければいいというふうに思っております。  ただ、じゃそれが国民負担になるんではないかということについては、自分は人を裁くということは絶対したくないという信念をお持ちの方等は、例の辞退事由の解釈を広めることによって対処していきたいと考えております。
  12. 松野信夫

    松野信夫君 それから、死刑については最後の質問ですが、これは大臣の個人的なお考えで結構ですが、現行法死刑そして無期がある。ただ、無期の場合についても仮出獄ということで外に出てきてしまう。こういうことで死刑無期かというこの落差がかなりあるわけでございまして、その中間にいわゆる事実上の終身刑ということで重無期刑、仮出獄を認めないと、そういうような刑を設けたらどうかという考えがありますし、また裁判員裁判においては、やっぱり死刑とするには全会一致、今の法律のように多数決ではなくて全会一致でやらなければ死刑判決はやっぱり認めるべきではないと、こういうような考え方があるんですが、こういう考え方については、大臣は率直にどういうお考えでしょうか。
  13. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 松野先生おっしゃるとおり、まあ死刑の次は無期でございますから、いろんな凶悪事件が起きたときに死刑なのか無期なのかというのが国民の注視の的になります。そして、死刑無期とでは、先生指摘のように、無期の場合も一定の年限で仮釈放になるケースが非常に多いものでありますから、死刑無期落差が大き過ぎるのではないかという御指摘は、私はそのとおりだと正直思います。  重無期刑、仮出獄仮釈放のない無期刑というのか終身刑というのか、それを間に挟んだらどうかという考え方は、死刑廃止を求める方からも寄せられる、死刑をやめて重無期刑にしたらどうだと。しかし、逆に無期では甘過ぎるので重無期刑とか終身刑を設けてくれという、むしろ厳罰化を求める方と両方から寄せられることがありますので、まさに双方の意見共にじっくり承っておるところでありますが、ただ、問題は一つ出獄というのか仮釈放が絶対にない、死ぬまであんたありませんよという終身刑というものは、かえって人格を破壊する残酷な刑ではないかという面もあるんだろうと思っておりますが、いずれにいたしましても、今松野先生のおっしゃった重無期刑終身刑議論というのは、我々が時間を掛けて検討しなけりゃならないテーマであることは率直に認めたいと思います。
  14. 松野信夫

    松野信夫君 もう一つ
  15. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 全会一致の件は、これは死刑だけを全会一致にするという考え方は私は取らないわけでございまして、裁判員制度の評議の場合に、例えば死刑であれ何でも同じですが、裁判官からも賛成があり、裁判員からも賛成があり、多数決でそちらが選択されるというときにのみ重い方の刑が選択されて決定されるわけでございまして、そうでない場合は、例えば死刑無期かというときに、裁判官三人全員死刑であると、しかし裁判員六人全員無期であるということになれば、当然この無期の方が選択されるわけでございますし、そういう重い方の刑罰を決定するときには両方から賛成がなくちゃならぬという規定が置かれておりますので、そんなところでクリアできるのではないかというふうに考えております。
  16. 松野信夫

    松野信夫君 この問題については、また議論をさせていただきたいと思います。  次に、犯罪被害者国選弁護の件についてお聞きしたいと思います。まず、国の犯罪被害者支援の全体的な枠組みについてお伺いをしたいと思います。  犯罪被害者等基本法に基づいて犯罪被害者等基本計画というものが既に定められておるわけでございます。現在、内閣府では、犯罪被害者等施策推進会議という組織が設置されていろいろの御検討もされているというふうに聞いております。そうした中で、やはり一つ議論としては、犯罪被害者に対しては経済的なより手厚い支援が必要ではないか、こういう一つ議論もありまして、昨年、平成十九年の九月には経済的支援に関する検討会最終取りまとめも公表されております。  こうしたのも踏まえて今国会では、先週でしたか、犯罪被害者給付金支給法、いわゆる犯給法改正案が成立をしているということで、これによって支給充実がかなり図られるということであります。  今後は、少年審判の傍聴を認めるかどうかという少年法改正案もこれまた控えてはおりますが、一応、犯給法改正、そして、今現在のこの犯罪被害者国選弁護の点もありますので、こういう形で一応の犯罪被害者支援の体制というものは整ったというふうに一応見ていいのかなというふうに考えておりますが、この点について、こうした全体像をどのように考えておられるか、答弁をいただきたいと思います。
  17. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私もすべての経過を知っているわけではありませんけれども、我が国法制度の中で、どちらかというと、やっぱりまだ被害者に対して、松野先生の表現を借りれば手厚くないのではないかという部分が強くあったと思いますし、被害者のつらいお立場というものをもっと考えていこうではないかと。生活の面もそうでしょうと。あるいは、訴訟の中における被害者立場意見というのも途中でちょっと言えるぐらいというのでいいんだろうかと。まあ、少年法の問題は別途別法を提案させていただきますのでまた御議論いただきますが、そうしたことで、犯罪被害者にもっと手厚くというのが一つ政府として取り組まなければならない大きな流れになっていると思います。  私もその関係閣僚会議に出まして、実に広範囲なテーマがあるんだなと。私自身はどっちかというと法務省マターにしか頭は行かないものですが、相当広い範囲でテーマがあるんだなということで、これは、優しい政治を実現するという福田内閣政策目標の一環の中で、内閣を挙げて取り組んでいかなければならない重大課題だと認識いたしております。
  18. 松野信夫

    松野信夫君 次に、厚労省においでいただいておりますので、厚労省関係一点お聞きをしておきたいと思います。  今お話ししましたように、経済的な支援が必要だということで、平成十九年九月に経済的支援に関する検討会最終取りまとめがなされて、その中の提言の第二項のところを見ますと、経済的支援内容についてということで二点取り上げております。一点医療費の問題、もう一点カウンセリング費用の問題であります。  この医療費については、一年以内については警察庁の方で取組がなされているわけですが、一年を超える医療費自己負担分ということで、これをどうするんだということでの提言が出ております。  この内容を見ますと、期間の拡充を検討する必要があるというふうになっておりまして、「長期療養を必要とする犯罪被害者に対しては、厚生労働省において、犯罪被害者を含め、長期療養を必要とする患者が必要な医療介護サービスを受けられるようにするための施策が実施されているところであり、」と、こういうくだりになっております。  そこで、厚労省さんの方に、施策が実施されているとなっているんですが、具体的にどのような施策を実施しているのか、答弁をお願いします。
  19. 中村吉夫

    政府参考人中村吉夫君) お答えいたします。  犯罪被害に遭われた方を含め、事件や事故によりPTSDなど精神的に影響を受けた方の心のケアにつきましては、保健所精神保健福祉センター医療機関などを中心に継続的、体系的な支援が重要であると認識しております。このため、保健所精神保健福祉センターにおきまして、心の健康問題に関する相談を行うとともに、必要であれば医療機関への受診を勧めるといった取組が行われております。  また、こうした相談活動の質の向上を図るため、病院、精神保健福祉センターなどに勤務する医師、保健師などを対象としたPTSD対策専門研修会を開催しまして、この中で犯罪被害者の心のケアに関する研修も行っておるところでございます。  さらに、厚生労働科学研究によりまして、平成十七年度から平成十九年度にかけまして、犯罪被害者精神状態についての実態とニーズの調査や、精神保健福祉センターなどの職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアル作りなどに関する研究を行ったところでございます。今年度からは、犯罪被害者に生じる外傷性ストレス反応中心とした精神疾患実態把握治療方法に関する研究を行う予定となっております。  今後とも、関係省庁と連絡いたしまして、犯罪被害に遭われた方々の心のケア充実に取り組んでまいりたいと考えております。
  20. 松野信夫

    松野信夫君 そういう研修とかマニュアル作りをされる、それはそれで結構ですが、この検討会提言というのは、具体的に一年を超える長期療養医療費自己負担分、これをどうするかという提言がなされているんですが、この提言については厚労省はどういうふうに受け止めていらっしゃるんでしょうか。
  21. 中村吉夫

    政府参考人中村吉夫君) 御指摘のありました提言につきましては、一年未満につきましては警察の方で対応をされているということでございますので、そうした実態を踏まえて更に検討がされるべきものというふうに考えております。
  22. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、今のところ、まだまだ検討ということで大分先の話かなというふうに思いますが、是非積極的な御検討をお願いしたいと思います。  厚労省さんはこれで結構でございますので、お忙しいでしょうから御退席していただいて結構です。  それから、もう一つは、この医療費のほかにカウンセリング費用というのもうたってありまして、ただ、この中身見ますと、カウンセリングについては、基本的には都道府県において予算措置が着実になされるよう、国において啓発、情報提供等取組を行うべきだとなっていて、どうもこのカウンセリングの方については都道府県にお任せということのように思われます。むしろ、余り地方に任せるよりは、一定予算を確保して国は国として取り組んだらどうかと思いますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  23. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 答弁者どなた。
  24. 松野信夫

    松野信夫君 これ、質問通告出していたけどな。
  25. 中村吉夫

    政府参考人中村吉夫君) お答えいたします。  先ほど御答弁申し上げましたように、カウンセリングにつきましては、精神保健福祉センターであるとかあるいは保健所におきまして必要に応じて対処をしておるところでございます。例えば、大阪府などにおきましては、警察の方が中心になられまして関係団体が集まった協議会などもつくられておりますので、そうした連携の中でカウンセリングの必要な方について御紹介をいただければきちんと対応ができると、そういうふうに考えております。
  26. 松野信夫

    松野信夫君 是非、せっかくの提言が出ているわけですから、これは真摯に受け止めていただきたいと思います。  厚労省さん、もう結構ですよ。はい。  じゃ次に、犯罪被害者参加弁護人選任について、被害者の方の資力が要件となっておりますので、この資力要件についてお伺いをしたいと思います。  今回の法案では資力要件が設けられていて、犯罪被害者の方が国選で弁護士さんを頼もうとすると一定の資力が問題にされるわけですね。ただ、私も半分分からないではないんですけど、半分いま一つ分からない。同じ被害者であるわけでございます、犯罪被害者。資力の多い少ない、多寡によって弁護士さんに依頼できたり依頼できなかったりというのは、国選でするというのは、それはどうなのかなという気がしております。  今回の法案では、この対象犯罪としては死傷を伴うという重い犯罪に限定をしておるわけで、それなりの被害者方々は被害を被っていることは間違いない。例えば窃盗とか詐欺とか、そういうような被害者の人はこれには該当しない、こういう仕組みですね。ですから、皆さん重大な結果を受けて、ある意味では同じような被害を受けているというふうに考えられるわけで、やっぱりどうもそうした同じような被害を受けておられる被害者の方について、資力によって弁護士の援助が得られたりそうでないという仕組み自体どのようなものかなと。  また、資力というふうに要件として挙がっていますけれども、その資力をどこまで的確に把握できるのか。基本的にはこれ自主申告というふうになっているんですが、どこまで的確に把握できるかという問題もありまして、率直に、資力というのが問題にされるということについてはなぜそこまでやるのかという疑問もありますが、この点についてはいかがでしょうか。
  27. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 今の松野先生お話は、基本的には財政も極めて豊かであって、それぐらい国が温かければいいなと思う部分がございます。  しかしながら、被害者参加する裁判で、当然法律の知識はない、あるいは証人尋問や被告人質問をするのも自分で十分な知識を持ってできない代わりに弁護士にやってもらうこともあるというようなことで、弁護士の援助を求める制度というのは当然のことだと思いますが、資力が乏しいがために弁護士の援助を得られないということがあってはならないために、この被害者国選ということをお願いをしているわけでございます。  資力の問題も、実際には預金とか現金が主に問題になるということでございますので、事務当局に、豪邸に住んでおって現金が全くないなんていう人がいたらどうするんだなどという私は仮定の質問をしたりしておりますので、資力の判定というのも相当これから研究をしていく必要があるのではないかというふうに考えております。  ですから、私は、本来ならば、先生おっしゃったように重大な犯罪における制度ですから、それだけ被害も大きくて重大であり甚大であるというケースでございますから、被害者は皆一様に困っているというふうに考えるべきで、そう考える場合には、本当に先生の御提案のようであればいいんでしょうけど、現在ある様々な制度等をやはり比較をいたしますと、このような形でスタートをさせていただきたいと願うところでございます。
  28. 松野信夫

    松野信夫君 これから少し細かい質問になりますので、大臣が難しければ政府参考人でも結構ですけれども、まず、資力の証明というものは、私は法案読んでいる限りでは基本的には自主申告でよろしいと、厳密なその資力を証明するような資料を添付しなくてもどうもよさそうで、基本的には自主申告でいいんだというふうに私は読んでいるんですが、実際のところはどうなんでしょうか。一定の裏付けというものは求めるんでしょうか。
  29. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 基本的に被害者参加人の側の申告でありまして、特段の資料等は求められておりません。
  30. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、自主申告でいい、裏付けは特に要らない、こういうことかなと。  そうしますと、法案の中身見ますと、資力要件を満たしているかどうかというのはどうも裁判所が判断するという仕組みのようですけれども、一次的にはまず日本司法支援センター、いわゆる法テラスが受け付けてやりますから、第一次的なスクリーニングというのは法テラスでやって、書類が整っているということになればそれを裁判所に送るということですから、恐らく事実上はこの資力要件というのは法テラスの段階でもう済んじゃっている、そこを通過すると裁判所はもう書面審査でパスする、どうもそういうふうな仕組みじゃないかなと思っているんです。もし間違っていたらそういうふうに御指摘いただきたいんですが、どうもそのように私は思っていて、資力要件を満たしているか満たしていないか、そういうのを裁判所が独自に証拠収集して判断するという仕組みにはどうもなっていないようですが、そのとおりでよろしいですか。
  31. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 司法支援センターは、請求を経由するわけでありますけれども、その際にその請求が要件を満たしているか否かについて実質的な審査を行うものではありません。
  32. 松野信夫

    松野信夫君 実質的な審査はしないけれども、形式的審査はするわけで、これは、基本的にはもう自主申告でいいというふうにさっき御答弁されたばっかりだから、要するに形式が整って一定の基準を満たしてさえすればパスするわけでね。で、私の質問は、裁判所は独自に何か証拠でも収集して実質的な審査はするんですか、できるんですか、そこの質問です。
  33. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 裁判所は、必要があると認めれば事実を調査することはできることになっております。
  34. 松野信夫

    松野信夫君 ああ、そうですか。それは、この法案の何条にどういうふうに規定されているんですか。
  35. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 十二条でございますけれども、刑事訴訟法規定被害者参加弁護士の選定につきまして準用されておりますので、そこで調査ができるというふうに考えられるわけでございます。
  36. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、刑事訴訟法の何条で準用されていて、裁判所が独自に判断、証拠収集等をできるんですか。
  37. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 刑事訴訟法の四十三条の三項でございまして、「決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調をすることができる。」が準用されるわけでございます。
  38. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、裁判所が国選の被害者参加人の弁護人を選任するというのは、これは決定又は命令、この四十三条に該当すると、こういう理解なんですね。はい、分かりました。  それで、もし、これは基本的に自主申告ということですから、この申告が間違っていたという場合どうなるかという問題が必然的に出てきます。法案では、裁判所の判断を誤らせる目的で資力について虚偽の記載がある書面を提出すれば、費用の全部か一部を没収すると、こういう規定になっているんですね。  そうすると、これは目的が明確に書いてありますから、うっかりミスというのはそういう目的がないということでこの規定には該当しないと、こういう理解でよろしいですか。
  39. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 委員が今言われたとおりでございます。
  40. 松野信夫

    松野信夫君 それ以外に虚偽の記載がある書面を提出した場合の制裁というのはあるんでしょうか。
  41. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 資力等につきまして虚偽の記載のある申告書を提出いたしますと、過料、過ち料の制裁がございます。その制裁によりまして資力等を申告する書面の真実性が担保されるという考え方に立っておるわけでございます。
  42. 松野信夫

    松野信夫君 今回の法案の中では特段にその過ち料の記載というのは見当たらないんですが、それはどういうことでしょうか。
  43. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の法案の十条がこれに当たります。十条は、被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある書面を提出したときは十万円以下の過料に処する、これでございます。
  44. 松野信夫

    松野信夫君 うっかりミスの場合は第十条は適用がないということで、それはよろしいですか。
  45. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) おっしゃるとおり、この十条は裁判所の判断を誤らせる目的という要件が付いておりますので、うっかりの場合にはこれによって過料の制裁を受けるということにはならないわけでございます。
  46. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、じゃ、基本的には、うっかりミスで資力の間違った書面を出した場合には、特段の制裁、十条はこれは適用がないということですし、また、その費用の全部か一部没収だと、徴収だと、そういう規定も適用がないということでよろしいですね。
  47. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) おっしゃるとおりございます。
  48. 松野信夫

    松野信夫君 そうすると、制度設計上、余りこの資力の問題を重視するというのは、私が当初申し上げたように余り感心しないなというのが率直なところで、資力要件についても、うっかりミスであれば特段の問題はなし、あくまでも裁判所の判断を誤らせる目的でうその申告をしなきゃおとがめはなしと、こういうことですので、その差というのは非常に大きいわけで、余り資力の有無で格段の差が出てくるという、制度設計上は率直に言っていかがなものかなという気がしております。この点は指摘をしておきます。  それからもう一つ法律内容では、資力要件について基準額は政令で定めると、こうなっておりまして、考慮される必要生計費というのは、被害者参加弁護士の国選の場合は三か月というふうになっているわけです。ところが、被告人の国選弁護の場合は一か月という規定がありまして、被告人の国選の場合は一か月なのに被害者参加弁護士の国選の場合は三か月と、この差はどこから出てきたんでしょうか。
  49. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) これは、やはり被告人と被害者の置かれた立場の差によるわけでありますけれども、被害者参加人の場合は、被告人等と異なりまして犯罪によりまして生命、身体、財産に多大の損害を被るわけであります。そして、収入の途絶等によりまして経済的に困窮することが少なくないわけでありまして、その生活を維持して犯罪による被害からの立ち直りを図るためには、一定期間の生活ができるような必要な財産を確保しておく必要性が極めて高いと考えられるわけであります。  そうした観点から、被告人につきましては一か月の必要生計費を考慮するわけでありますけれども、被害者の場合にはそこを更に手厚く、三か月の必要生計費を考えたということになるわけでございます。
  50. 松野信夫

    松野信夫君 恐らく犯罪被害者の方をより手厚く支援しようという、そういう意図かなということで分からないではないんですけれども、被告人の国選弁護の場合と被害者参加弁護士の場合と、どうしてもバランスをやっぱり良くしていかなければいけないので、余り差が出てくるというのは私はいかがなものかというふうに思っております。  それから、もう一つこのバランスの点で指摘をしておきますと、被告人の国選弁護人の場合は、原則として被告人はその費用を負担すると。ただ、事情によって判決負担をさせない、こういう判決が出る場合ももちろんあります。ただ、国選の被害者参加弁護士の制度ではこれはもう償還不要ということで、言うなら、その分は全部面倒見ましょう、こういう仕組みになって、これもより犯罪被害者に手厚いといえば手厚いわけで、その分全部ただであげますよと、こういう仕組みになってはいるんです。ただ、率直に、被告人の国選弁護人とのバランスを考えた場合に、正直いかがなものかなという気がいたします。  私は、むしろ被告人の国選弁護人の場合と同じように原則として償還を求める、原則として償還を求める、だけれども事情によって、困窮とかそんないろんな事情によって償還は免除する、こういう制度設計の方が、被告人の国選弁護被害者参加人の国選弁護の場合とのバランスがこれの方がむしろ取れているのではないかと率直に思いますが、この点はいかがでしょうか。
  51. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 被害者の場合は、全く自分の責任ではなくて降りかかった災難、犯罪なんですけれども、災難によって裁判参加する、せざるを得なくなった、本人の責めに全く帰すところがないのに弁護士さんに助力を得ようとしなければならなくなったというようなことで、資力要件についても緩めに見て、そしてその償還義務がないと。  それに対して、被疑者国選はちょっと微妙かもしれませんが、被告人国選の場合は、自らが犯罪を、判決確定するまではそれはあれですけれども、自らが犯した犯罪によって逮捕されて裁判になって弁護士の助力を得なければならなくなったと。つまり、被告人の責めに帰す事由がある、被告人が何にもしなければそんな弁護士の助力を得る必要もなかったものが自らの行動によって裁判になる、そして国選弁護人を付けてもらわなければならなくなったということで、実際には後から被告人国選の場合は払わなければならない、まあ実際には裁判所の判断で三分の二ぐらいのケースは払わせていないんだろうと思いますが、そういう仕組みの違いがあるというふうに私は解釈しております。  だからこそ、先ほど松野先生がおっしゃったように、被害者裁判参加における国選の場合は資力に差を付けなくたっていいんじゃないのと先生冒頭おっしゃいましたのはそういう意味でございまして、降りかかった災難という言い方はどうか分かりませんが、被害者には責めに帰すべき事由がないんだから本当は資力なんか調査しないで皆さん国選弁護を、ただでという言い方はあれですが、費用を負担することなく受けられてもいいではないかというふうな答えをしたのも、そういう理由からでございます。
  52. 松野信夫

    松野信夫君 余り資力要件のことばかり細かくやっていると時間がなくなりますが、この資力要件というのがどうもこの法案を見ますと唯一求められる要件のように思われます。  要するに、資力要件をクリアすれば、あとは裁判所が相当と認められるのであれば被害者参加人の国選弁護が付くと、こういう理解でいいのかなと思っているんですが、そうしますと、例えば裁判所が相当と認めれば、犯罪被害者が暴力団員だとか、あるいは例えば自動車過失致死傷で犯罪被害者にも相当の過失が認められる場合とか、あるいは犯罪被害者の方が例えばオーバーステイ、不法残留の外国人であるとか、こういう場合でも特段問題はない、こういう理解でよろしいでしょうか。
  53. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) この国選弁護の前提といたしまして、被害者参加人となることにつきまして、これは裁判所の決定を要するわけでございまして、その際に、今言われたような事情は被害者参加人として参加を許すかどうかという判断の中で反映されることがあるというふうに考えております。
  54. 松野信夫

    松野信夫君 その辺は要するに裁判所にもうお任せすると、こういう理解でよろしいですね。  次に、報酬の件について確認しておきたいと思います。  これは特に法案でどうこうということではないかと思いますが、国選弁護人の報酬、それから裁判員の報酬、それから犯罪被害者参加弁護人の報酬、それぞれがやっぱりバランス良くなっていないと具合悪いなと、こう思っておりまして、裁判員の報酬というのは私がお聞きしたところでは一日の上限が一万円だと、こういうふうに聞いておりまして、一日缶詰になって一万円以下しかもらえない裁判員も非常に気の毒だなというのが率直に思います。  それで、あと国選の被告人の弁護人の場合、一般的に言うと、例えば公訴事実は争わない、公訴事実は争わないで専ら情状面についてのみ弁護する、そうすると公判は大体二、三回程度で終わる、そういう簡易な事件の場合、恐らくこのクラスですと国選弁護人の報酬というのは大体今十万円弱かなというふうに思っているんですが、大体そういうぐらいの理解でよろしいでしょうか。
  55. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 御案内のとおり、国選弁護人の報酬基準は非常に細かくできておりますが、今の例、これは単独事件という一番典型的なもので、しかも否認事件でないという前提で公判回数が二、三回という例を考えますと、基礎報酬額と言われるものが七万円台の後半から八万円ぐらい、それに様々な経費等が付いて、実際の支給額は先生指摘のとおりの額になるのがおおよそのところだと思っております。
  56. 松野信夫

    松野信夫君 それを前提にして、被害者参加弁護士の場合、これは基本的には訴因は争わないという仕組みになっていて、専ら情状面について証人とか被告人とかについて質問をする、こういうことで、ですから、例えば公判二、三回程度出席をして今のような質問をしたりあるいは意見を述べたりするというとほぼ同等ぐらいの報酬が得られるのかなというふうに思うんですが、今私が申し上げたように、情状に関して公判二、三回程度出席して質問をしたり意見を述べる、こういう程度、一番一般的に考えられる程度の場合は大体報酬としてどのくらいを予想しているんでしょうか。
  57. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 国選の被害者参加弁護士に支給される報酬の算定は日本司法支援センターが定める契約約款に基づいて行われることになりますが、現在、支援センターではこの制度の実施に向けて算定基準の検討を行っているところでございます。したがって、現時点でできていない算定基準、被告人国選はもちろんできているわけですけれども、できていない算定基準でどれくらいになるかというのはこれからの問題ではあります。  もちろん、この算定基準を作るにつきましては、日本弁護士連合会等の関係機関と実際どのくらいの業務負担になるのかというような点を十分協議しながら、被害者参加弁護士の方々の労力を適切に反映したような基準になるよう策定作業を進めておりますし、この契約約款は法務省がその後認可をするということになっていますので、法務省としてもその認可を通じて適切な基準になるように努めていきたいと思っております。  ただ、ごくごく大ざっぱなことを更に申し上げるとすれば、これ予算要求上の話を申し上げますと、予算要求上はこれは基準ができる前ですからおおよその概算で予算枠を要求させていただいていますが、そのときの考え方は、二、三回程度、情状のために被害者参加弁護士になられた方が公判廷で負担する業務量は被告人国選の方よりも少ないだろうと思っておりますが、他方でその前の事前準備、被害感情であるとか被害者の方のいろいろな思いを十分に聴取して活動するための準備期間、これは、被告人の場合には接見という形で時間が限られているというような制約があるのに対して被害者の方はそういう制約がございませんので、時間を掛けて被害者と信頼関係を築いて、十分に被害感情等々を理解するために要する業務量、こちらの方は被告人国選よりも被害者国選の方が大きいんではないかと思っております。  それら少なくなる要素と多くなる要素を双方勘案しますと、被告人の国選弁護の水準よりもやや高めになるのかなという前提で予算上の要求はさせていただいております。
  58. 松野信夫

    松野信夫君 是非、約款という形で法務省も関与するわけですから、バランスを失しないように進めていただきたいと思います。  それから次に、犯罪被害者が未成年者であったり、あるいは外国人とか障害者だとか、そういう方もあり得るわけで、こういう方々、いろんな意味でハンディを背負っている人にはいろんな配慮が必要だろうというふうに思います。  外国人の方については、これは通訳が用意されるということですが、そうではない、未成年者とかあるいは何らかの障害を持っている障害者についての、例えばカウンセラーとか、そういう人たちが十分自分の意思を表明して被害者参加弁護士に伝えられるように、その被害者参加弁護士がそういう障害者の気持ちをしっかり法廷で述べられるような、そういうカウンセリング体制というのがやっぱり必要かなというふうに思いますが、その辺はどのように配慮しているんでしょうか。
  59. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 今御指摘あったとおり、被害者参加人が被害者参加弁護士による援助を受けて適切に刑事裁判参加するためには、まずは、被害者参加弁護士の方が被害者参加人から被害の内容や被害感情を十分に聴取して理解することが重要だと思っております。  そして、被害者参加人が未成年者であるとか障害者である場合には、その被害の内容説明すること自体に相当の精神的な負担を感じたり、あるいは弁護士さんとの意思疎通自体がなかなか難しいというようなこともあると思われます。  このために、被害者参加人がこのような未成年者等である場合には、日本司法支援センターにおいて、被害者参加人の年齢であるとか、それから障害者の場合には障害の内容あるいはそれぞれの事件の特徴、特性などを考慮して、通常の被害者参加人の場合にも被害者参加人の意向を十分に聞いて被害者参加弁護士を選定するということになっておりますけれども、通常の場合以上に被害者参加人の意向を適切に見極める努力をして、それぞれの被害者の方に一番適した精通弁護士の方、未成年である、障害者であるということを前提として、そういう方に一番適した精通弁護士の方を指名して通知をするというように配慮することになるんだろうと思っております。
  60. 松野信夫

    松野信夫君 今、未成年者とか障害者に精通した精通弁護士という言葉が出てきました。精通弁護士というのは私は余り聞いた記憶がないんですが、精通弁護士というのは何でしょうか。何か特別な研修を受けているとか、特別な認定を受けた、あなたは精通弁護士ですというような、何かそういうランクとか仕組みになっているんですか。
  61. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 精通弁護士というのは、ややこなれない言い方かもしれません。私たちよく使っているものですからつい使ってしまいましたけれども、被害者支援に精通している弁護士さんのことを精通弁護士と呼んでいます。  これは、現在、日本司法支援センターでこの精通弁護士さんを犯罪被害者の方に紹介するという業務を行っておりまして、そのとき紹介する弁護士さんは、精通弁護士名簿というものを作って、そこに登載をしております。  この国選制度ができた場合には、現在の法テラスにある精通弁護士名簿に登載されている方々中心に契約弁護士さんになっていただけるようお願いしていくということになると承知しておりますが、この精通弁護士名簿に現在登載されている方というのは各弁護士会の会長さんから推薦をしていただきまして、ただ、推薦をするときには要件が幾つかあります。一つの類型は、これまで犯罪被害者等から依頼されて法律事務を行った経験がある、あるいは弁護士会や犯罪被害者支援団体によって行われている犯罪被害者等支援活動を経験している弁護士さんでなおかつ推薦があった方、もう一つは、日弁連あるいは単位弁護士会又は犯罪被害者支援団体が実施する犯罪被害者支援に関する研修を複数受講された弁護士さんで会長さんから推薦を受けた方、こういう方が今登載されておりまして、今言いましたような経歴、経験の方でなおかつ推薦を得られた方を我々は精通弁護士と呼んでいたわけでございます。
  62. 松野信夫

    松野信夫君 是非、精通した弁護士がしっかり対応できるように仕組み等々もやっていただきたいと思います。  それから、参加弁護人の選任とか解任、選任の取消しですね。これについて実際の場面を考えますと、犯罪被害者というのはどうしても私はやっぱりそれなりの感情高まっているわけですね。そうすると、参加弁護人の方が十分にその意を酌み取れないというと、おまえは駄目だというような問題も出てくるかなというふうに思います。そうすると、弁護士ですと、例えば客観的に裏付けのないものに基づいて法廷で質問したり意見を述べるというのにはかなり抵抗があるわけで、どうしても一定の裏付けなりなんなりがないとそんなことは言えませんよと、そういう質問はできませんよということで被害者参加人を抑えたりということもあり得るし、そのことを言ったって余りこの証人あるいは被告人の悪性立証に役に立ちませんよというようなことではねつけたりすると対立関係が出てこないとも限らないわけで、そういう対立が出てきたときに、場合によってはこの参加弁護人の意思に反して裁判所が選任を取り消すということはあり得るんでしょうか。
  63. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今回の法律案では、九条で裁判所が被害者参加弁護士の選定を取り消すことのできる場合を定めております。例えば、被害者参加人と被害者参加弁護士との利益が相反する状況にある場合、あるいは被害者参加弁護士がその任務に著しく反した場合、さらには被害者参加弁護士に対する暴行、脅迫等によって被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でない場合等が挙げられているわけであります。  こうした客観的事実がある場合に裁判所は選定を取り消すことができるわけでありますけれども、そうした客観的な事実がないにもかかわらず、じゃその信頼関係が失われたというようなことで選定を取り消せるのかということになりますと、それは被害者参加人や被害者参加弁護士の主観的な事情あるいは感情によって取消しを認めるということにもつながりかねない。これは国選被害者参加弁護士の制度趣旨に照らして適当ではないというように考えるわけであります。したがって、取り消すかどうかというのは、これはもちろんその事件が係属している裁判所が判断することになるわけでありますけれども、先ほど申し上げたような事由が認められる場合になるのかどうかという判断に懸かってくるということになります。  なお、一言申し添えますと、本制度の下におきましても、被害者参加人は訴訟行為の一部につきまして被害者参加弁護士にこれを委託しないで自ら直接行うことも可能でありますので、意見が対立した場合に被害者参加人が直接そうした訴訟行為を行うということもあり得るのかなというふうに考えております。
  64. 松野信夫

    松野信夫君 この被害者参加人の選任の取消しは、今御指摘法案の九条にあるわけですが、これは刑事訴訟法の三十八条の三の弁護人の解任の規定とほぼ同等でありまして、これと同じような仕組みで、国選弁護人の場合は解任、被害者参加弁護士の場合は選任の取消しと、こういう仕組みになっているわけですね。そうしますと、この国選弁護人の解任、この中で特に一項の第四号に、特に弁護人がその任務に著しく反したということでこれ解任ができるんですが、こういうようなケースというのは年間にどの程度あるのか、これは統計、最高裁辺りは取っているんでしょうか。
  65. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) お答え申し上げます。  裁判所が国選弁護人を解任した件数とかその事例については、そうした報告は求めておりませんものですから、把握しておりません。
  66. 松野信夫

    松野信夫君 恐らく、それは私の経験上からも非常に異例なことだろうというふうに思います。もう何度も取り上げている鹿児島の志布志事件では、国選弁護人の弁護活動に行き過ぎがあったということで、検察官の方が事実上解任の要請をして、裁判所も解任してしまったというケースがあります。非常にこれは異例なことだろうというふうに思います。  今、最高裁の答弁でもこういう統計は取っていない、統計が取っていないということはほとんどそういう例がないからではないかな。やっぱりこういう異例な事態というのについては、しっかり統計を取るなり、あるいはその背景、事情、それが適正かどうか、そういうのを最高裁としても御検討された方がいいのではないか、あるいは検討しているというのであれば、そういうちょっと御報告をいただきたいと思います。その点はいかがでしょうか。
  67. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) その点につきましては、まだ今のところ検討はしておりませんので、今後考えてみたいと思っておりますが。
  68. 松野信夫

    松野信夫君 国選弁護人を解任するというのは本当に異例な事態でありますので、こういう点については是非最高裁としても検討していただきたいと思います。  また、私が聞いているところでは、解任されたということで鹿児島県の弁護士会の方から抗議がなされたというふうにも聞いておりまして、これは一般論ということでお聞きしますが、一般論として、こういう弁護士会から抗議がなされたということについては裁判所はどういうふうに処理をしているんでしょうか。単に聞きおく、聞き捨てするというのか、あるいは、必ず例えば最高裁の事務総局辺りに上げて検討すると、こういう仕組みになっているのか、これについてもお答えください。
  69. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) お答え申し上げます。  一般的に、弁護士会から今委員指摘のように下級裁判所に対して抗議があった場合、直ちに下級裁判所から最高裁判所にその旨を報告するというような仕組みはございません。ただ、下級裁判所が報告や情報提供を必要だというふうに判断した事項については、個別に監督官庁たる上級庁に報告や情報提供がなされる枠組みとなっております。
  70. 松野信夫

    松野信夫君 この志布志事件について報告が上がっているかどうかはどうでしょうか。
  71. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) 本件の委員指摘国選弁護人の解任に関連しましては、鹿児島県の弁護士会が鹿児島地方裁判所に抗議の申入れ書を提出したこと、それから、さらに裁判所に対する国選弁護人推薦手続を約一か月半にわたって停止するなどの措置をしたこと、これについては鹿児島地裁から福岡高裁を通じて情報は得ております。
  72. 松野信夫

    松野信夫君 そういうような、ある意味では異例な事態ですね。弁護士会と裁判所がそこまで対決をするようなというのはやっぱり非常に異例な事態ですので、そういうものについて果たして鹿児島地裁の対応が適切であったかどうかというのを最高裁としてもやっぱりこれはしっかり検討すべきではないかと思うんですが、今のところまだ検討はしていないんでしょうか。  それが一つと、それからもう一つは、この志布志事件については、弁護人の解任だけではなくて、こういう否認事件について保釈が全く認められないで一年以上も勾留が続くとか、あるいは長期間の取調べが事実上放置されていたとか、大変ないろんな問題があるんですが、最高裁の方はこうした問題についての検討というのはどの程度しているんでしょうか。
  73. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) 委員指摘の件は個別の事案のことでございますので、事務当局がその中に立ち入って検討するというようなことはいたしておりません。ただ、氷見事件のときもそうですけれども、志布志事件についてもそうかもしれませんが、一般的に事実の認定やそれから身柄の拘束についての判断は非常に重要なことでございますので、これは個々の裁判官が常にその重要性に思いを致して日々適正に処理をしていかなければいけませんし、個々の裁判官がこれは日々絶え間なく研さんしていかなきゃいけないと思っております。  そういうこともありまして、例えば研修所の裁判官研究会とか、そういうところで今御指摘の保釈の問題だとか身柄の問題についても裁判官同士できちんと議論をしているところでございます。
  74. 松野信夫

    松野信夫君 この検討については、前回、今野委員の方からもそういう資料があったら出せというふうにもありましたし、私の方も、恐らくこれだけの事件について最高裁が何もしないということは考えられないわけで、恐らく裁判官の会同、あるいはいろんな意味でのケーススタディーとして取り組んでおられるはずですので、そういう資料、出せるものは是非出していただきたいと思って、委員長にもお取り計りをお願いしたいと思います。
  75. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまの松野委員の申出につきましては、後刻理事会で協議いたします。
  76. 松野信夫

    松野信夫君 それから、この志布志事件については、お手元に今日資料を配付させていただいております。  これは、私の方が警察庁に要求をいたしまして、どの程度取調べをやったのかというのをいただいたもので、まあ私の方で表題は付けました。「平成十五年 志布志事件 逮捕者別取調べ日一覧」ということでしました。あとは全部警察庁からいただいた資料です。  例えば逮捕者のA、これはAとかBとかになっていてだれだか分かりませんが、例えば逮捕者のA、これ見れば、取調べというのが五月十三、十四、十五、十六、十七、十八、十九、二十、ずっと続いていて、一枚目のところでは六月の六日だけは取調べをしていないけど、あとは全部やっている。次にBさんの場合は、六月の四、五、六、七、八、九、十、全部して、六月二十八日まで毎日やっている。極めてこれは異例というか異常というか、もう愕然とする思いであります。  三月二十七日の当委員会のときにも、志布志事件については、私は、こういう取調べをしているんであれば、必ず警察では取調べの小票を作って、その小票を作った上に供述調書を作成していると。ですから、取調べの小票を、これだけ取調べをしているわけですから、小票を提出するというのが必要だろうというふうに思っております。一部は私も入手はしておりますが、全部入手はしておりません。  ですから、そういう取調べの小票と、それから三月二十七日の法務委員会でも取り上げました鹿児島地検と鹿児島県警との間で行われている協議の結果を警察の方でまとめた報告書、これも一部だけそのとき委員会でお渡しいたしましたが、そういう資料、是非、これについては委員長、そういう報告書と取調べの小票、これは今私も個人的には要求しているんですが、まだいただいておりません。是非委員会としても請求をしていただきたいというふうに思います。
  77. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) ただいまの松野委員の御提案につきましても、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。
  78. 松野信夫

    松野信夫君 もう時間が参りましたので、質疑はこのくらいにしたいと思いますが、この志布志事件の取調べ日一覧、これ見ていただいただけでも、毎日よくぞこれだけ調べたと思うくらいやっております。是非、警察内部の報告書そして取調べ小票、そういう資料を出していただいて、是非集中質疑も当委員会でやっていただくよう最後にお願いをして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  79. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 この法律案は、犯罪被害者等基本法に基づく基本計画を受けて、昨年六月に成立した刑事裁判被害者参加法律が今年十二月に施行されるのに伴って、犯罪被害者方々の長年の要望だった公的弁護人制度を導入するものであって、私どもとしては賛成をいたしたいと思っております。  この被害者参加制度については、国会でずっと論議をこれまでもやってまいりましたし、参議院の法務委員会におきましてもこの参加制度については八項目の附帯決議を実は行っております。附帯決議の中には、例えば、制度趣旨及び内容について国民にきちんと周知しなさいとか、刑事裁判手続における犯罪被害者等と検察官との意思疎通を図るため検察庁もきちんと準備をしなさいとか、被害者参加制度を意識した裁判員制度実施のための万全の準備をするようにとか、こういったものを附帯決議でいたしておりますが、その後、取組状況がどのようになっているか、刑事局長から答弁をいただいておきたいと思います。
  80. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) まず、被害者参加制度趣旨内容についての国民に対する周知につきましてお答え申し上げます。  法務省におきましては、これまで被害者参加制度の創設等に関する法改正内容法務省のホームページに掲載いたしました。また、犯罪被害者週間の啓発事業等におきまして、制度の概要等についての説明会等を行うなどしております。また、検察庁におきましても、被害者支援制度内容等を説明いたしましたリーフレットを犯罪被害者等を含めた国民方々に配布するなどしているところであります。また、司法支援センターにおきましても、コールセンターや地方の事務所を通じまして、犯罪被害者等に対しまして様々な法制度等に関する情報の提供を行っているというように承知しております。  次に、刑事裁判手続における犯罪被害者等と検察官との意思疎通を図るための検察庁の準備についてお答えいたします。  被害者参加制度は大変新しい制度でありまして、検察庁におきましてもこれが円滑に施行できるように、検察官と被害者参加人あるいはその委託を受けた弁護士との意思疎通の在り方等につきまして検討を進めているところでありますけれども、この三月には最高検察庁が通達を出しまして、事件処理段階、公判段階等におきまして、被害者側の要望に対する配慮あるいは説明の在り方等につきまして留意事項を明らかにしているところでございます。今後、この法案が成立いたして被害者国選弁護制度が創設された場合には、これも含めて検討を行いまして、さらに必要な留意事項等について現場の検察官に対する周知徹底を図るものと承知しております。  三番目は、被害者参加制度を意識した裁判員制度の実施のための準備であります。  被害者参加制度裁判員制度、いずれも刑事司法の大変革でありまして、そのいずれも円滑に施行される必要がございます。  現在、その運用上の留意点等につきまして関係機関とも協議して検討を重ねているところでありますが、被害者参加制度の方は今年の十二月二十六日までの政令で定める日から施行されることとなっております。そして、裁判員制度、これは来年の五月二十一日から施行ということでありまして、半年くらいは恐らく先に施行されることになると予想をされますことから、被害者参加制度が施行された後には、その運用状況等も十分に踏まえて、来るべき裁判員制度の施行に向けて検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  81. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今回、この国選被害者参加弁護士の選任請求を日本司法支援センター、法テラスですね、ここ経由で行う仕組みになっておりますが、これは、これまでも統一番号で無料相談を法テラスがこの犯罪被害者について行っている実績がある。この利便性という問題でこうなったものと認識をしているんですが、その一方で、この法テラスの問題は何かというと、実際に法テラスの一番中核になる電話相談がどうなっているかというと、なかなかこれがきちんと伸びずに、どちらかというと伸び悩みの状況がこの電話相談はある。しかも、もう一つ報道で私もちょっとこんなものなのかと思ったのは、実は法テラスがどれくらい認知されているかというような調査がありまして、これを見ると、調査した人の八割の対象者が全く知らないというような回答もなさっていると。  そういう意味では、国民へのPRというのは、もうこの新しい制度もそうなんですけれども、法テラスそのものもなかなかまだ一つ理解されていないところがあると思うんですけど、言わば法テラスの問題、犯罪被害者のこの今回新しく始まる制度の問題、これ、どうやって周知徹底していくのか。まさに周知というのが一番の課題だというふうに感じるんですけど、これについての答弁を求めます。
  82. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 法テラスが国民にとって身近で利用しやすい存在となるためには、今御指摘があったとおり、まず多くの国民の方に認知されることが必要であるというのはそのとおりでございます。しかも、報道にもありましたとおり、まだまだ法テラスの認知度が十分でないということも認識しております。  そこで、法テラスにおいては、その認知度が必ずしも十分でない原因を調査分析した上で、認知度を向上させるために、パンフレットの配布ですとかラジオ広告ですとか自治体広報紙による広報活動などを一層推し進めていくものと承知しておりまして、こうした広報活動の中においても、当然、今回問題になっている犯罪被害者支援業務に関する広報も行われることになると考えております。  ただ、このような支援センター自体の存在、あるいはその業務内容についての一般的な認知度向上のための取組と併せて、法テラスとしては、被害者が最初に接触すると思われる警察、検察庁、弁護士会等の関係機関と連携して、これらの関係機関を通じて被害者の方に法テラスの犯罪被害者支援業務を認識していただけるよう努めていくというふうに伺っておりまして、法務省としても、このような支援センターの活動に必要な協力を十分してまいりたいと思っております。
  83. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 その一方で、犯罪被害者の方たち、これからこういう制度ができるんですけれども、一つの問題は、例えば支援機関に相談した場合、まあ法テラスもその一つになるかもしれませんが、結局、相談するけれども、じゃそこで答えが出てくるのかというと、次の機関に回してくる、次の機関に回してくるという形になって、言わば相談したこれをやりたいということに対してどうなのかということでいうと、これは別に救急のたらい回しじゃないんですけど、言わば相談たらい回しみたいな状況にもなっているという問題が指摘もされているのも事実でございまして、こういった問題については、言わばワンストップサービス化するような一つの機関が必要じゃないかというような議論も実際にございます。  海外の例でいえば、スウェーデンなんかがいわゆる犯罪被害者のための、これは国で専門機関を設けている国もある。ただ、これを法テラスに求められるかというと、これもまたいろんな問題もあるのも事実であって、ただ、できる限り窓口になる法テラスでたらい回しにならないように、相談に来られた方たちがここできちんと言わば次の手続へ進んでいけるという状況ができ上がっているというものをつくることが大事だと思うんですが、この点についても御答弁をいただいておきたいと思います。
  84. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 犯罪被害者の方が必要とするサービスというのは多種多様のものがあるというのは今の御指摘のとおりで、法テラスでも犯罪被害者に対する支援業務として、必要な法制度相談窓口に関する情報提供あるいは犯罪被害者支援に精通した先ほどの精通弁護士の方の紹介などを行っているほか、日弁連からの委託事業として、資力の乏しい犯罪被害者に対して被害直後からのいろんな相談あるいは刑事告訴、法廷傍聴の同行あるいはマスコミ対応といった各種支援に関する弁護士費用の援助も行っておりますし、加害者に対する損害賠償請求等を希望される場合には民事法律扶助業務として必要な弁護士費用の立替え等も行っております。  このように法テラスにおいては民事手続刑事手続の様々な点についての支援を行っておりますけれども、これらの各過程において被害者方々がたらい回しにされたというような印象を抱くことがないように、これらの制度の利用について、一つ制度を利用された方に他の制度についての適切な情報提供を行う、あるいは同一の弁護士さんによる継続的な援助を希望する場合には、その意向をできる限り踏まえて同一の弁護士さんを紹介することができるよう実施体制の整備に取り組んでいるというふうに聞いておりまして、法務省としてもこのような支援センターのサービス提供に必要な協力をしていく所存でございます。
  85. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今もちょっと答弁あっていたんですけれども、結局、犯罪被害者の方が法テラスを通じながらやらなくちゃいけない作業というのは結構あるんですよね。というか、分かりにくい部分もあると思うんです。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  例えば、被害者参加弁護士の選定請求の手続の問題になってくると、刑事裁判参加するための対象犯罪についても要件があります。また、先ほどから論議のあった資力基準の問題も、これ求めるときに一つの手続が必要になります。また、弁護士業務そのものができる範囲の限定とか、ある意味では一般の国民にとって分かりにくい問題、また場合によっては請求に手間が掛かるというようなことも予想される。  そういう意味では受付窓口になる法テラスの役割というのが重大になりますし、例えば一つの例ですけれども、被害者参加人が法テラスに請求する際、その方法の例えば簡素化の問題、申告書をインターネット掲載しておいて分かりやすく、すぐに出せるような体制を整えるとか、資力申告書の記載、これについてもどう簡素化を図るとか、請求の際に適切な助言を行うための職員の研修の問題であるとか、こういったことが考えられると思うんですが、言わば、この国選被害者参加弁護士の迅速かつ確実な選定体制の確保のために法テラスとして是非とも取組を、今やっておかなければならないことが随分あると思いますが、この点についても答弁を求めておきます。
  86. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 国選の被害者参加弁護士の候補の方を迅速確実に指名するためには、質の高い契約弁護士の方を十分に確保することがまずもって重要だと思っております。  法テラスでは、現在、各地の弁護士会から犯罪被害者等の援助に精通したいわゆる精通弁護士の推薦を受けて、精通弁護士名簿を作成して紹介業務を行っておりますけれども、この精通弁護士名簿に登載されている弁護士の方々中心被害者参加弁護士契約を締結していただけるようこれから要請をする予定であると聞いております。  また、日弁連等においては、犯罪被害者等の援助に精通した弁護士の必要性、重要性を踏まえて、弁護士に対する犯罪被害者支援活動研修を実施するなどの取組をされると伺っておりまして、法テラスにおいては、このような日弁連の取組とも連携しながら犯罪被害者等の援助に精通した契約弁護士の更なる確保に努めていきたいと考えていると聞いております。  また、支援センターでは、犯罪被害者方々にとってこの制度が利用しやすいものとなるように、委員も御指摘がありました、資力申告書の書式をホームページに掲載するという取組ですとか、犯罪被害者方々に対してこの制度について分かりやすい説明をするパンフレット等の工夫なども行っていくものと伺っております。
  87. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今お話がずっとあっておりますこの精通弁護士さんですか、現在、各地の弁護士会から犯罪被害者支援に精通した弁護士の推薦をしてもらっているという段階で、もう名簿が大体上がってきているんですね、この精通弁護士名簿というやつが上がってきている。  これ見さしていただくと、どういう問題があるかというと、例えばこれ、精通弁護士の数とその地域における弁護士さんの数、これ比較してみるんですよ。そうすると、大きく分けて二つぐらい問題が出てくると私は思っている。一つは何かというと、やっぱり人口に比して弁護士が少ない地域や弁護士自体が少ない地域ではどうなのかというと、やっぱり精通弁護士少ないんですよね、物すごく。本当に確保できるかという問題が一つ出てくるんです。二つ目は何かというと、弁護士数が多いにもかかわらず精通弁護士数が少ないという地域が実際、表一覧を見るとあるんですよ。そんな問題が実際にあって、言わば犯罪被害者支援に対する地域によって取組、温度差がかなり弁護士会さんにとってもあるというような問題があるんですよ。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  こういう問題を見ていくと、実際にこの弁護士確保を考えるときは立て分けてひとつ考える必要があるんじゃないか。いわゆる弁護士過疎地域というのは、やっぱりこれは弁護士の数自体をどう確保するかという元々根本的問題があるということですよ。それからもう一つは、弁護士が多い地域でも、そういう犯罪被害者支援という問題に対して、どう今度は弁護士さんたちに対して啓発を行っていくかという問題もあるんじゃないかなというようなことを考えるんですが、この辺、是非取り組まなければならない課題だと思いますが、いかがですか。
  88. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) まず、一般論として申し上げれば、法テラスにおいて被害者参加弁護士の選定請求があったときに適切な方を速やかに指名、通知することができるためには、日弁連あるいは各地の弁護士会と連携して、弁護士数が少ない地域も含めて、これから、この制度ができてから契約弁護士の方の確保に努めていくということが非常に重要だというのはもう御指摘のとおりです。  委員指摘の二つの課題に即して申し上げますと、まず、弁護士過疎地域というそもそも弁護士が非常に少ない地域におきましては、法テラスが日弁連とも協力しながら常勤弁護士の確保を図ると。これは、地域事務所というのをつくって、そこに常勤の弁護士さんを置かしていただくというようなことによって犯罪被害者参加弁護士の選定に支障が生じないように努めていくという方針だと伺っています。  また、弁護士数が一定数おられるけれども、いわゆる精通弁護士とか、この種の業務に携わる弁護士の方が必ずしも多くないというところもあるようですけれども、こういうところにつきましては、日弁連あるいは各地の単位弁護士会でも被害者参加弁護士の契約弁護士になるような方々研修をいろいろ行って、一種の啓発を行って、この種の業務の重要性についていろいろと取り組んでいただいていると聞いていますし、そうはいいましても現在精通弁護士名簿に相応の数が登載はされておられますので、そういう方々になるべく多くこの法テラスのやる国選の契約も締結していただけるよう協力をお願いしていくというようなことをもってこの対応策にしていきたいと聞いております。
  89. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 今もお話があったように、この制度が本当にきちんとやれるようになるには何が一番大事かというと、実は法テラスなんですね。やはりその法テラスをいかに、始まったばかりの、まだなかなか認知もされてない部分あるんですけれども、これをいかに充実させていくかというのがやはりこの制度を円滑にいく上での一番の課題だと思うんです。  その意味では、更にこの法テラスの充実というのが一番今の段階では大事な問題だろうと思うんですが、この点についての大臣の決意を伺って、私の質問を終わります。
  90. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 木庭先生おっしゃるとおりでございまして、そもそも国選弁護の費用の支払を裁判所から法テラスに移したということもありますし、今度の被害者参加そして国選弁護ということも、一番重要な役割を担うのは法テラスであって、先ほどたらい回しなどという話もありましたけれども、法テラスが迅速に行動して、さっと、この精通弁護士に国選弁護やってもらいましょうよとすぐ依頼することが一番重要だろうと思うわけでございます。  法テラス、現在約千人の職員で、五十か所の地方事務所、支部十一、出張所六、地域事務所十八というふうに聞いておりますけれども、とにかく法テラスを充実することが司法制度改革の最大の柱であって、今回の国選被害者参加の点も法テラスの充実なくしては実現できませんので、今後の一層の組織の充実について努力をしていきたいと思いますが、冒頭に先生から、法テラスの認知度が二割程度ではないかと、これも問題なんですよね。  結局、法テラスは日弁連から委託を受けたいい仕事もしていますが、法テラスの存在を知らなければ、悩み事がある人あるいは被害者、駆け込むことができないわけでございまして、正直申し上げて、私も法テラスというものがあることは知っておりましたが、法務大臣になったときに、法テラスってどんな仕事しているのと、第一問で法務省の役人に聞いたのがその程度ですよ。やっぱり、法テラスが一体何をしているところかということも余りに宣伝、広報、啓発が遅れていると思いますので、その点も努力しなければならないと思います。
  91. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  92. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  犯罪被害者は長らく、事件の当事者であるにもかかわらず捜査の行方あるいは判決結果さえ知らされない、そうした形で被害者として当然の要求さえ踏みにじられてきたわけでございます。そのように置き去りにされてきた被害者裁判関与の在り方の吟味ということは私どもも大変重要なことだと思っておりますけれども、昨年創設されました刑事裁判への被害者参加制度、この制度自体は、近代刑事訴訟が積み重ねてきた当事者主義的な訴訟構造を始めとした原則に反して、国民的な議論も尽くされていないということを理由に、私ども反対をさせていただきました。しかしながら、創設されたこの制度を資力の有無にかかわらずだれもが活用できるように保障するという施策は当然でございまして、今回の法案には賛成をさせていただきます。  そこで、この被害者参加制度の実施が見えてきている段階でこの具体化について少し伺っておきたいと思うんですけれども、まず、施行ないし実施の目途、めどがどのようになるか、当局にお尋ねしたいと思います。
  93. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 被害者参加制度は、本年十二月二十六日までの政令で定める日から施行することとされております。現段階では、その施行期日につきまして具体的あるいは確定的なことは申し上げられないわけでありますけれども、犯罪被害者等保護支援を一層充実させるという観点からはできる限り早期にこの制度を導入することが重要でありますけれども、一方で、新しい制度が円滑に実施されるよう制度内容等について周知徹底を図ることや、あるいは本法律案によります被害者国選弁護制度関係を含む最高裁判所規則の整備など、あらかじめ十分な準備を遂げる必要もあると考えられることから、こうした点を考慮して、関係機関とも協議しながら今後具体的な施行時期について検討してまいりたいと考えております。
  94. 仁比聡平

    仁比聡平君 裁判員制度が五月二十一日に施行されるということが決まったようでございまして、この被害者参加制度議論の際にも、裁判員制度とそれからこの被害者参加制度、これがほぼ同時に始まることに結果としてなってしまったと。被害者参加制度が先に施行されるということになるのであるから、その中での運用をよく見ていかなければならないという議論もあったところなわけですね。そういった意味では、今のような実施、それに向けての準備、周知、ここは大変重要なものかと思います。  そこで、その参加制度一つ議論として被害者参加人等による証人尋問というテーマがございます。情状に関する事項、犯罪事実に関するものを除く事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項、これが法律上尋問できるということになっておるわけですけれども、この証人尋問の申出時期は、法律上は検察官の尋問が終わった後直ちにしなければならないというふうにされています。ですけれども、刑事訴訟裁判の実際を考えますと、なぜその証人をその法廷において尋問をするのか、その必要性や尋問事項については、検察官あるいは弁護人それぞれからのその尋問の必要性についての整理というのは、その証人尋問に入る前になされているのが当然でありまして、それは裁判員制度になればなおのこと、そのように整理が進んでいくものだと思うわけですね。ですから、法律上の規定規定なんですが、被害者参加人のあるいはその委託弁護士の尋問の申出もできる限り、できる限り事前に通告をされることが望ましいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  95. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員指摘されましたように、法律上、被害者参加人等による証人尋問の申出が検察官の尋問が終わった後直ちにとされておりますのは、証言がなされた後でなければ、被害者参加人による尋問を行うか否か、あるいはその尋問の内容について確定することができないという言わば建前論に立っているわけでございます。  ただ、実際の訴訟の進行を考えますと、今委員指摘されましたように、あらかじめ情状に関する事項について証人が証言することが予定されており、しかもその具体的な証言内容が明らかになっているということも考えられるわけでありまして、計画的な審理を行うという観点、とりわけ裁判員裁判においてはそうなんでありますけれども、計画的な審理を行う観点からすれば、検察官においてあらかじめ被害者参加人による証人尋問の予定の有無やその内容を把握した上で、公判前整理手続等において裁判所や被告人、弁護人に対してその旨を告げることがありますし、また運用上はそちらの方が望ましいというようなことも考えられるように思います。
  96. 仁比聡平

    仁比聡平君 この情状証人に対する被害者参加人の証人尋問がどのような事項にわたり得るのかと、これ広範にわたってしまいはしないのかという懸念も法案審議の中で指摘をさせていただいたところなわけです。現実の運用の中で、言わば無用の混乱といいますか、そういったことを引き起こさないためには、できる限り整理をされていくことが望ましいということを申し上げておきたいと思います。  この情状証人に対する尋問の尋問時間、国会議員的に言うと持ち時間と言った方が分かりやすいかもしれないんですけれども、ここについてどんなふうに考えるのかという点なんですけれども、実際の訴訟の実務の経験からいたしますと、検察側あるいは弁護側がそれぞれどの程度この証人にお聞きになりますかということを裁判所から確認されるということがよくあることでございまして、そうでなければ審理計画というのは立たないと思うんですけれども、この被害者参加人の証人尋問についてはどのようにお考えですか。
  97. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 被害者参加人による証人の尋問は、情状に関する事項について、証人が既にした証言の証明力を減殺するために必要な事項についてのみ許されるということで、尋問が許される事項が限定されております。したがって、通常は被害者参加人側の尋問が長時間にわたって行われるということは想定し難いというふうに考えております。  実際、事案における審理の状況等を踏まえまして、必要がある場合には、裁判長が訴訟指揮権によりまして尋問の予定時間を区切ったり、あるいは仮に尋問が不当に長時間に及ぶというような場合にはこれを制限することもあるというように考えております。
  98. 仁比聡平

    仁比聡平君 この、今の同じ、つまり尋問の申出時期と持ち時間という問題について、被告人質問の場合、まあ被告人質問ですから質問の申出時期という話になるんでしょうが、ここについてはどのようにお考えでしょう。
  99. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) これも、被告人質問におきまして被告人が弁護人等の質問に対してどのように供述するのかということを踏まえないと、被告人に対して質問するかどうか、仮に質問する場合にどういう事項について質問するかという点は確定し難いと思われますので、被告人質問における、被告人質問終了後といいましょうか、当該期日中に申出が行われることも少なくないと思われるわけであります。  ただ、先ほども証人のところで申し上げたのと同様でありますけれども、計画的な審理を行うという観点からいたしますと、あらかじめ被告人が供述する具体的な内容が予定、想定されるというような場合には、検察官において被害者参加人等による被告人質問の予定の有無、その内容を把握した上で公判前整理手続等において裁判所や被告人、弁護人に対してその旨を告げることもあるというように考えられます。  なお、これも付け加えますと、被害者参加人が被告人質問を求める場合であっても、検察官が当該事項について自ら質問することも大いに考えられるだろうというように考えております。
  100. 仁比聡平

    仁比聡平君 その被告人質問について、法案の審議のときに問題になったもう一つテーマに、証拠能力にかかわる争点、分かりやすいもので言いますと自白の任意性。これが公判廷で争われている際に、創設された制度でいいますと、被害者参加人がその証拠能力にかかわる事実関係について問うてはならないということにはなっていないということなんですね。ですけれども、改めて考えてみましても、例えば自白の任意性を始めとして証拠能力というのは、これは検察官に立証責任があるのであって、検察官の立証責任が尽くされずに、そこが部分的に被害者参加人にゆだねられるなんていうようなことは理屈上もあり得ないし、検察のお立場としてもあり得ないというふうに思うんですけれども、そのような、例えば自白の任意性の質問、これを被害者参加人がやるということについてどのようにお考えですか。
  101. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 個別具体的な事件において被害者参加人等による被告人質問を許すかどうか、これはその事件が係属している裁判所が判断することであります。  ただ、今委員指摘されましたように、自白の任意性を立証するために被告人に質問するということになれば、通常は事柄の性質上、立証責任を有している検察官が自ら質問するだろうと思われるわけでありまして、その場合には被害者参加人等が質問することにはならないと考えられるわけであります。  ただ、意見陳述をするために必要があると認められる場合で、審理の状況を質問する事項の内容等を考慮して裁判所が相当と認めるときには、その許可を得て被告人に被害者参加人等が質問することはできるわけでありますので、理屈の上ではそういう場合が全くないとは言えないということだと考えております。その場合も、しかし、その質問の時期等が審理の流れに照らして適当でないというような場合にはこれが許されないということになるのだろうというふうに考えております。
  102. 仁比聡平

    仁比聡平君 いずれにしても、その制度上、理屈上あり得るかもしれないけれども、それが実際の刑事訴訟の上で無用の混乱をもたらすというようなことにならないように運営が期待されるということかと思うんですね。  最高裁の刑事局長においでいただきました。  この参加制度の具体化については最高裁の規則にゆだねられる部分も一定部分あろうかと思うんですけれども、今日、二点だけちょっとお尋ねしたいんですが、一つは、この参加制度の中でいわゆる論告と言われてきた意見陳述の持ち時間の問題なんですけれども、これについては、現行行われています意見陳述については刑事訴訟規則の中で持ち時間を決めることも定められているわけですが、そのような方向でこの新たに導入される意見陳述についても規則でそのような定めを置くということもあり得るのかという点が一つ。  もう一つも併せてお聞きしますが、被害者参加人の委託を受けるいわゆる私選弁護士ですね、この私選弁護士がどのような委託を受けているのか、あるいは一人の被害者がどの弁護士に委託をしているのか、複数の場合もあり得るでしょうし、被害者が多数で委託弁護士が単数のこともあるかと思うんですけれども、そのような手続を明確にする上では書面によってそれを確認するということも必要かと私は思うんですけれども、その二点、いかがでしょう。
  103. 小川正持

    最高裁判所長官代理者小川正持君) お答え申し上げます。  今委員指摘の第一点でございますけれども、現在これは、裁判長は、被害者参加人等が事実又は法律の適用について意見の陳述に充てることのできる時間を定めることができる、こういう旨を最高裁規則で定める方向で作業を進めているところでございます。  それから、第二点の委託弁護士の関係でございますが、この点につきましても、現在のところ、弁護士に委託した被害者参加人は、あらかじめ委託した旨を当該弁護士と連署した書面で裁判所に届け出なければならない旨を最高裁の規則で定める方向で作業を進めているところでございます。
  104. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございました。  この規則とそれから実際に実施が始まった後の運用でこの被害者参加制度というのは本当に厳しく試されていくということになると思いますので、法曹三者の中での協議ももちろん十分行っていかれるのだろうと思いますけれども、国民の声をよく聴きながら具体化を図っていただきたいとお願いをしておきます。  この法案につきまして少しお尋ねをしますけれども、第一は、その被害者への公的支援をどのように拡充していくかということでございます。  今度導入されようとしているこの被害者参加国選弁護というのは、対象になる犯罪被害者というのは本当に限られた一部の方々で、それも公訴が提起をされた後のことなわけですね。この対象になる方々に対しても、重大な事犯なわけですから、裁判が始まる前の段階、とりわけ被害の直後、事件が発生した直後から被害者としての尊厳をきちんと保障されて扱っていかれなければならない。そうでなければ、これまでの被害者の皆さんの置き去りにされてきたという事態は変わらないということになりかねないと思うんです。  加えて、この対象とならない事案につきましては、刑事裁判に至らない、あるいは事件性はないというふうに捜査当局からされた被害者の方、あるいは犯人が特定されていない、特定されていても身柄が確保されていない、不起訴になった、あるいは公判請求されないというような、様々な形で被害者方々は置かれていくわけです。その被害者、すべての被害者方々にどのように公的な支援をしていくのかということが私は政府を挙げて取組が求められているところだと思うんです。  先ほど、この法務の分野で法テラスに対する期待が大臣からも語られたわけですけれども、その被害者全体の、事件発生直後から、裁判はもちろんですが、その判決、あるいはその執行を経て、被害者方々がずっと続くその苦しみをどう公的に支援体制をつくっていくのかということについて、法務当局の御見解を伺いたいと思います。
  105. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) この法案被害者参加人のための国選弁護制度のほかに、今委員指摘のとおり、犯罪被害者の方のいろいろな支援のニーズというのは犯罪直後から様々なものがあると思っております。  現在、日弁連の委託事業として、先ほどもちょっと申し上げましたが、法テラスの方で犯罪被害者法律援助事業というものを行っております。これは、犯罪被害に遭われた方がその直後から様々な法律問題について相談をする、あるいは刑事告訴をしたいというときにその援助をする、あるいは法廷傍聴とかあるいは取調べに同行してほしいという場合に弁護士さんが同行する、さらにはマスコミ対応等々についても弁護士さんが代わっていろいろ行うというような、様々な支援について弁護士費用の援助を行うというものでございます。また、民事的な問題につきましては、御案内のとおりですけれども、法テラスの民事法律扶助制度がございまして、これによって資力の乏しい方には必要な弁護士費用等の立替えを行っております。これらの各制度、この今回の制度も含めてですけれども、実施する上で個々の犯罪被害者の方のニーズに合った連携がされていくことが重要だというふうに思っております。  法務省といたしましても、こういった支援センターの連携の取組につきましては、予算的な面も含めて体制の整備に十分努めてまいりたいと思っております。
  106. 仁比聡平

    仁比聡平君 大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、今お話があったような、そういう当局と法テラスの努力の中で、政治が果たさなければならない役割というのはやっぱり大きいと思うんです。犯罪被害者の皆さんに対する公的支援の在り方というのはまだこれからということだと思うんですね。簡潔に大臣の決意をお尋ねしたいと思います。
  107. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 民事、刑事にかかわらずトラブルがある、民事でもそれはいろんな被害というのもある、そういうときに法テラスが中心となってどんなときにでも相談ができる、できれば余り費用が掛からないで相談ができるということが望ましいし、刑事における被害は被害発生直後から、それこそ犯人が捕まっていない、場合によっては犯人が捕まったと思ったら不起訴だったかもしれない、そういうときでも被害というのは確実にあるとするならば、これを公的に援助していくということは必要だろうと、そういう意見が世の中に広くあることは私もよく分かっております。  今、司法法制部長が御答弁申し上げましたように、現行の仕組みとして法テラスがこれこれのことをやりますということを申し上げた、あるいは日弁連が法テラスに委託をしてくれていて、資力の乏しい犯罪被害者等に対し弁護士による被害直後からの犯罪被害者相談、刑事告訴、法廷傍聴同行、マスコミ対応等の各支援に関する費用の援助をやってくれていると、こういうようなことですが、国ができるだけ被害を受けた方々にきめ細かく被害発生直後から対応あるいは援助できるように、今後仕組みを整えていく必要があるだろうと。これは、今回の被害者訴訟への参加、その場合の国選という考え方は、まだその第一歩にすぎないだろうと思っております。
  108. 仁比聡平

    仁比聡平君 是非、十分に進めていただけるように、私も努力をしていきたいと思うんです。  最後にもう一問だけ聞いておきたいんですが、そういった公的支援、特に専門家の支援を拡充していく上で、犯罪、刑事司法にかかわる専門家である弁護士の国選の報酬をどうするのかということは極めて重要だと思うんですね。先ほど木庭理事からも、人数の少ない単位会のところで精通弁護士を確保することが今の到達としてどうなのかというお話がございましたけれども、犯罪被害者にしっかり向き合って弁護士がその務めを果たしていくという上でも、完全なボランティアにはならない報酬が保障されるということは、私大事だと思います。  これは、刑事被告人、被疑者の国選弁護報酬について昨年の秋に大臣にもお尋ねをしたところでもあるんですけれども、衆議院のこの法案についての会議録を拝見しますと、どうやら被害者国選弁護士の報酬については、被告人国選弁護士の現在の報酬規定との比較で考えられているやの御答弁もあっておりまして、そのこと自体をどうこう言いませんが、私は、被告人の国選弁護も、これから導入される被害者国選弁護も、共に大幅に抜本的に増額されるという、それが当然だというふうに思いますけれども、当局、いかがですか。
  109. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 私、この部屋の中におられる弁護士先生からは一言も言われておりませんが、法務大臣になったときに、国会議員であり弁護士である先生方から、皆さんから異口同音に言われたのは、鳩山君ね、国選弁護というのは完全なボランティアみたいな扱いになっているのを知っているかという話をさんざんされまして、基準の引上げについて、ここにおられる方々は全然そういう話をされませんでしたけれども、随分言われたんで、基準はやっぱり上げないといけないのではないですかと役所にも言っている。  それから、日弁連の先生方がお見えになりますと、これは私にはよく分からないんですが、事務所の規模にもよるんでしょうが、大体弁護士というものは一時間にこれぐらいの稼ぎを出さないと維持できないと、弁護士事務所が。それが今の国選弁護の基準ではとても満たされないということで相当言われておりますので、是非先生方の御協力をいただいて予算面の獲得にも頑張っていきたいと思います。
  110. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 質疑時間終局しております。
  111. 仁比聡平

    仁比聡平君 はい。是非、大臣に頑張っていただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。
  112. 近藤正道

    ○近藤正道君 最後です。社民党・護憲連合の近藤正道です。  最初に、委員会の冒頭、質問がありました死刑執行について大臣にお尋ねをします。  四月の十日、鳩山大臣は東京拘置所、大阪拘置所で計四名の死刑執行命令を出されました。就任してわずか四か月の間に十名執行を行った鳩山大臣でございますが、余りいい表現ではないのかも分かりませんけれども、大臣が当初申されていたベルトコンベヤー式の執行に私は結果として近いんではないかという、そういう危惧の念を持っております。昨年十二月の十八日に国連の総会本会議で採択されました死刑執行停止決議にも正面から挑戦する、そういう中身ではないかというふうに思っております。  先ほども話がありましたけれども、四名の死刑執行が行われた翌日に、国連拷問禁止委員会でこの死刑執行の問題について政府に勧告をした、その起案の中心となったマリーニョ・メネンデス委員が日本に来られまして、私も参議院の院内集会でこのメネンデスさんの話を聞きました。話は死刑の問題だけではなくて、代用監獄だとか難民申請者の本国への強制送還の話もありましたけれども、死刑制度についてもお話がありまして、将来的な廃止を求めつつ、当面は死刑確定者の権利を保護するよう熱っぽくお話をされておられました。  これからが問題でありますけれども、今回執行された大阪拘置所の一人、Nさんというふうに申し上げておりますが、この方は四回再審の請求を行っておりまして、無罪を訴え続けていた人だそうであります。もう一人のNさん、これも同じくNさんと言っておきますが、この方は重度の人格障害と鑑定されておりまして、いずれも有罪判決に疑問の残るケースではないかというふうに私は思っております。  また、東京拘置所で死刑執行されたお二人、SさんとAさんというふうに言っておきますが、このお二人は、最終的には死刑が確定しているんですが、一審では無期懲役の刑の言渡しの方だったわけであります。本当に死刑以外なかったのかと、死刑判断しかなかったのかという点については疑問が残るケースであります。  つまり、この四名とも、私は、慎重の上にも慎重な死刑執行という観点からいくと疑問の残る、そういうケースだったというふうに私は思っております。  そういう意味で、きつい質問ではございますけれども、大臣は、今私が申し上げた四名の事情を全部承知の上でやられたのか、そしてこういう四名の事情は死刑執行指揮書に明確にちゃんと記載がなされていたのかどうか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  113. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) まず、個別の事柄については非常にお答えがしにくいということを申し上げなくちゃならないと思っております。また今、再審とか、お触れになりましたけれども、再審の開始請求とか恩赦の出願という事柄については、それは死刑を受ける人の身内の感情とか、あるいはもちろん被害者の方の遺族の感情とか、そうした点がございますので、どのように再審請求が出てきたかとか恩赦の出願があったかということについては、これは公表しないことにいたしております。  私は、四人の方のケースをまず精査させ、私自身もできる限り記録を精査して、斎戒沐浴してサインをしたということでございますので、それなりの精査はしておるというふうに御理解をいただきたいと思います。  四件のうち、余り個別のことを言うべきではありませんが、一審が無期懲役であったものが二審になって死刑になっているというケースが今回もあったわけでございますが、これは、三審制が保障されている我が国裁判制度の中で高等裁判所が法と正義に基づいてそのような一審とは違う判断をしたわけで、もちろんそれは最高裁まで行けば第三審目があるということになりますが、私は、そういった意味で確定をした判決というものを重視して対処いたしております。
  114. 近藤正道

    ○近藤正道君 極刑でありますので、その執行については慎重の上にも慎重と、言わずもがなのことでございますが、今ほどの、私が申し上げた個別四名の事情については大体大臣もお認めのようでございますが、慎重の上にも慎重という点からいきますと私はいささか問題の残るケースではないかなと、こういうふうに考えているということを申し述べさせていただきたいというふうに思っています。  次は法案のことでありますが、この質問は先ほど仁比議員の質問とも絡むことでございますけれども、改めてお聞かせをいただきたいというふうに思っています。  昨年の九月の、内閣府が経済的支援に関する検討会最終取りまとめの中で、国選被害者参加弁護士の制度運営の際には是非これをしっかりやれという提言をしております。それは、民事法律扶助ないし犯罪被害者等法律援助事業との適切な運営が図れるように配慮しろと、こういうことを言っているわけでございます。法テラスの役割が非常に重要なんだろうというふうに思いますが、この提言はどのように今生かされようとしているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  115. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 犯罪被害者方々のうち資力の乏しい方が利用できる制度としては、この法律案における被害者参加人のための国選弁護制度のほかに、弁護士による被害者の方が被害に遭われた直後からの様々な相談であるとか刑事告訴の援助であるとか、あるいは法廷傍聴の同行、マスコミ対応等々の各種支援について費用等の援助を行う犯罪被害者法律援助事業、それから加害者に対する損害賠償請求等に必要な弁護士費用等の立替えをする民事法律扶助制度などがございまして、各制度の実施上の連携が非常に重要だというのは御指摘のとおりだと思っております。  そこで、これらの実施はいずれも法テラスが担当するものでございますから、資力の乏しい被害者の方も刑事手続それから民事手続の各過程で弁護士による必要な援助を途切れなく受けることができますように、法テラスにおいてはこれらの制度の利用に係る適切な情報提供、すなわち、一つ制度を利用したときには他の関連のこういう制度があるというようなことについても適切に情報を提供するほか、同一の弁護士さんによる継続した援助を希望される被害者の方にはその意向を踏まえた同一の弁護士さんを紹介できるよう、今後、日弁連等の関係機関とも協議をしながら実施体制等を検討していくというふうに承知しております。
  116. 近藤正道

    ○近藤正道君 今ほどの答弁の中でもう一部お話も出ていたようでありますが、改めて、通告してありますんでお聞きしたいというふうに思いますが、刑事裁判参加制度と損害賠償請求に関して刑事手続の成果を利用する制度とを併せて利用する犯罪被害者にとりまして、刑事裁判に関与する弁護士と損害賠償の段階で関与する弁護士というのが違ってくる、異なるというのは、事務承継が煩雑であるほか、信頼関係構築の上からも問題があるわけでございます。  同一弁護士が引き続き受任できる制度や、同一弁護士が簡易な手続で選任を切り替えられる、そういう仕組みを求める声が非常に以前から上がっているわけでありますが、この声にどのように対応されるのか、済みません、もう一回お答えください。
  117. 深山卓也

    政府参考人深山卓也君) 今申し上げたとおり、法テラスにおいては、資力の乏しい被害者の方が刑事手続、それから民事手続といった各過程で同一の弁護士さんによる継続した援助を希望する場合には、その意向を踏まえて同一の弁護士さんを紹介できるように実施体制を検討していくものと承知しておりますが、これに加えて、例えば国選の被害者参加弁護士が選定されていて、その弁護士さんが、じゃ同一だということで、民事法律扶助制度によって損害賠償命令手続の代理人にもなるという場合に、これは同一の方を選ぶということにとどまらず、事務手続がこういう場合には何とか複雑にならず簡略化する方法はないかといった、こういう点の運用上の工夫についても法テラスにおいて今後検討されていくというふうに聞いております。
  118. 近藤正道

    ○近藤正道君 ありがとうございました。  次に、いつも聞いております徳島刑務所事件についてでございますが、四月十一日に徳島刑務所での昨年十一月の暴動事件の刑事公判が始まりました。三月二十八日、調査報告書が出まして、私いただきましたけれども、この中ではM医師による医療行為に対する不満が蓄積していたことがこの暴動事件の背景として明確に指摘をされておりました。にもかかわらず、報道によりますと、検察官の冒頭陳述、この暴動事件を裁く刑事法廷の検察官の冒頭陳述の中では医療問題と事件との因果関係については明らかにされなかったというふうに報じられております。  一方の調査報告書の中では医療行為と関係があるよと明確に報告していたにもかかわらず、刑事法廷ではその因果関係について一切明らかにしない、それは関係ないというふうな態度というのは、事案の真相解明という点からも問題ではないかというふうに思うんですが。やっぱり事実に従って事案の暴動事件の真相も解明すべきではないかと。個別事件ではありますけれども、ここをどういうふうにとらまえておられるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  119. 大野恒太郎

    政府参考人大野恒太郎君) 今委員が御指摘のような報道がなされていることは承知しております。  お尋ねの刑事公判におきまして、検察官は冒頭陳述の中で、徳島刑務所は、受刑者の一人がこの刑務所の医務課長に対する不満を増大させるような動きをしていることを知り、多数の受刑者がこの受刑者に同調してこの刑務所の規律、秩序の維持に重大な支障を生じさせるおそれがあると判断したというようなくだりはございます。  今申し上げたのは公開の法廷で冒頭陳述で検察官が明らかにした内容でございますけれども、それ以上の詳細につきましては、個別事件における検察の捜査、公判の在り方にかかわるものでありますので、説明は差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにしても、一般論としては、検察は法と収集した証拠に基づいて厳正に対処しているというように考えております。
  120. 近藤正道

    ○近藤正道君 三月二十八日いただいた調査報告書では、外部医師の意見としてM医師の医療行為についてこういうことを言っております。直腸指診を多用する傾向、直腸指診以外の神経学的な診療方法を優先させるべき事例が見られるとか、あるいは絶食措置がやや長期間に及ぶ事例があるとか、必要最小限度の期間とすべきだったというふうに指摘している箇所もありますし、あるいは痛覚検査、痛いかどうかという検査でありますが、痛覚検査について皮膚をつまむ方法を多用する傾向があったとか、あるいは皮膚をつまむ方法自体が挑発や懲らしめと誤解されかねない、こういう記載が幾つかございます。  このような指摘をしているにもかかわらず、この外部医師が、M医師の医療行為は通常の医療の範囲を大幅に逸脱したり、明らかな過失等を伴う違法性を伴った医療が行われた事実は認められなかったと、こういうふうに結論しているということは私は極めて不自然ではないかというふうに思っています。  こういう今私が申し上げました記載をするんなら、むしろ通常の医療の範囲を逸脱した違法性があるというふうに評価するのがむしろ私は自然だというふうに、論理としては自然だというふうに思うんですが、こういう異例な事態を指摘しておきながら結論として問題ないと、こういうふうな結論付けの仕方というのは私は問題があるんではないかというふうに思っているんです。  大臣、これを読まれたかどうか分かりませんが、大臣のちょっと所見をお伺いしたいというふうに思います。大臣
  121. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) 吉田審議官をキャップとする法務省のチームが三月二十八日に公表したわけでありますが、今先生から御指摘がありましたように、M医師に関しては、直腸指診を多用する傾向があると、あるいはつまむ、そういう痛覚検査を多用する傾向があると、あるいは絶食期間のこと、先生おっしゃったとおり。また、薬を今日から出さないよというようなときに説明が不十分であるというようなことが指摘されておるわけでございまして、それらを総合して、反省すべき点は誠に多くあるのでこれらは多いに反省をしてもらわなければ困るということなんですが、じゃ、違法かと言われますと、違法行為があるとまでは言えないと。先ほどの先生の表現で言えば、通常の医療の範囲を大幅に逸脱しているわけではないし、明らかな過失というものがあるわけではないと。  こういうことで、ぎりぎりの線かもしれないけれども、違法性は認めないが、大いに反省してこれから出直そうという報告書と私は読んでおります。
  122. 近藤正道

    ○近藤正道君 外部の医師とは一体だれなのかと。法務省が正式な手続に基づいて責任を持って調査、報告したにもかかわらず、この医師の名前が匿名という形になっておりますね。これはやっぱり責任の所在としてはちょっと問題があるんではないか、しっかり名前もちゃんと出した上で報告書を公にすべきではないか、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
  123. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 我々の事務方の方で依頼をした先生でございますので、若干、まず私の方から御説明をさせていただきます。  今回調査に協力をいただきました外部の医師は、都内の病院に勤務しておられまして、大学院の教授を務めておられる外科の医師でございます。この先生の氏名につきましては、先生方にも見ていただいておりますが、かなり詳細な意見書を書いていただいております。その意見書が、個々の受刑者の病状あるいは診断内容について率直に先生がいろいろ意見を書かれたということで、自分の氏名の公表について差し控えていただきたいという御意向であったために、今回、その先生の氏名を直接公表することを差し控えておるわけでございます。
  124. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は報告書を読みました。やっぱり名古屋刑務所事件の教訓が生かされていないと、本当にそういうふうに思っております。  三月二十八日付けの調査報告書、今ほど大臣が違法ではないけれども問題があったというふうにおっしゃいましたけれども、私はそのレベルを超えているんではないか、ここは本当にしっかりと名古屋刑務所事件の教訓を生かすためにも調査をすべきではないか、こういうふうに思っております。  そこで、お尋ねをしたいんですが、刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会というものが法務省の中にあります。これは弁護士とか、あるいは大学の刑事法の先生だとか、あるいは医師が二人も入っております。その他の方も入っておられまして、私はメンバーから見ると非常に公正で、それなりにこういうところで見てもらったらいいんではないかなと、こういう思いがしているわけでございまして、とりわけ医師が二人も入っているということで、これは本来、言わば不服申立てする、あるいは情願をする人の申立てに基づいて事後チェック制度として機能しているということは分かるんですが、まさにこういうところで、こういうまさに第三者、しかもしっかりした人が入っている、こういうところで徳島のこの問題、今回の問題、医療行為に一体どんな問題があるのか。  前回も私、この徳島刑務所の医療体制の問題点について具体的な数字を挙げて御指摘を申し上げましたけれども、こういう第三者機関でしっかり私は調べてもらったらいいんではないかと。法務省の内部の人たち調査をするんではなくて、こういう第三者も入った、医療関係者も入った、こういう機関でしっかり私は調べてもらったらいいんではないかというふうに思うんですが、大臣、そういうおつもりはございませんでしょうか。
  125. 梶木壽

    政府参考人梶木壽君) 全体といたしまして、今委員が言及されました刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会というものを御説明をさせていただきます。  これは、名古屋事件を踏まえまして、行刑改革会議提言により、刑事施設の職員による被収容者に対する違法又は不当な行為等に関する被収容者の法務大臣に対する不服申立てについて、法務大臣からの求めに応じて調査検討を行って法務大臣提言をするということが設立の趣旨としてつくられたものでございます。構成員は今先生がおっしゃったとおりでございます。  今回の徳島刑務所の調査に当たりましては、もちろん医師の医療行為あるいは医療体制についても調査をいたしました。それだけではありませんで、刑務所の処遇、警備の体制でありますとか、あるいは刑事施設視察委員会に対する対応の在り方といったものについても我々の方で広く調査をしたわけでございます。  そういう意味で、この調査検討委員会先生方にお願いをしている事柄と今回の我々が調査をした、少し内容的になじまないというふうに考えた次第でございます。
  126. 近藤正道

    ○近藤正道君 私は、まさに今回のこの事件のきっかけは、たくさんの受刑者が不服申立てを法務省に対して行ったと。ところが、それが誠実に対応できなかったということが大きなやっぱり原因としてあるわけですから、是非ここは、今言った刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会、ここがやるのが私は非常にベターではないかという気がするんですよ。  これは、もう法務大臣がそこで調べてもらいたいということをおっしゃれば動き出すわけでありますし、これはそもそも国連の拷問禁止条約、この国は批准をしておりますし、ここから出ている様々な勧告の中でも、刑務所あるいは入管施設における人権侵害というのはやっぱり非常に大きな問題として取り上げられているわけでありますんで、是非私はこの際、これだけの大きな問題になったわけですから、法務大臣がひとつ決断をされて、この第三者委員会、外部の人で構成されている、法務省の内部の人ではなくて第三者で構成されている、こういう権威のある委員会でしっかりとこの問題をやっぱり調査をしてもらう、それが私は一番いいんではないか、一番妥当なんではないかと、こういうふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  127. 鳩山邦夫

    国務大臣鳩山邦夫君) おっしゃるお話はよく分かります。ただ、調査検討チームも第三者に近いというか、第三者というのか、要するに外部の医師にカルテを全部見てもらった、全部ではないですが見てもらったということで、非常に第三者による調査に似た形であろうと思っております。  また、徳島地検に受理された医師に対する刑事告発あるいは告訴というんでしょうか、この捜査の推移も見守っていかなければならないと思っております。もちろん、先生がお触れになりました暴動に関する裁判についてもその推移は見守っていかなければならないというふうに思っておりますが、行政としては、矯正局も行政として必要に応じて調査はどんどん行っていくと言っておりますので、矯正局が頑張ってやってくれるものと確信はいたしております。
  128. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 近藤正道君、質疑時間が終局しております。
  129. 近藤正道

    ○近藤正道君 はい。第三者でありませんので矯正局の調査には限界があると、そのことを申し上げて、引き続きこのことについては質問するということを申し上げて、質問を終わります。  ありがとうございました。
  130. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 他に御発言もないようですから、本案に対する質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  131. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、舛添要一君が委員辞任され、その補欠として川口順子君が選任をされました。     ─────────────
  132. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  犯罪被害者等権利利益保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  133. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 遠山清彦

    委員長遠山清彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十五分散会