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2008-06-10 第169回国会 参議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年六月十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月二十八日     辞任         補欠選任         米長 晴信君     加賀谷 健君  五月二十九日     辞任         補欠選任         加賀谷 健君     米長 晴信君      谷合 正明君     弘友 和夫君  五月三十日     辞任         補欠選任         弘友 和夫君     谷合 正明君  六月二日     辞任         補欠選任         牧野たかお君     山崎 正昭君      山田 俊男君     若林 正俊君  六月三日     辞任         補欠選任         米長 晴信君     大塚 耕平君      山崎 正昭君     牧野たかお君      若林 正俊君     山田 俊男君  六月四日     辞任         補欠選任         大塚 耕平君     米長 晴信君  六月十日     辞任         補欠選任         一川 保夫君     西岡 武夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         郡司  彰君     理 事                 主濱  了君                 平野 達男君                 加治屋義人君                 野村 哲郎君     委 員                 青木  愛君                 一川 保夫君                 金子 恵美君                 亀井亜紀子君                 高橋 千秋君                 藤原 良信君                 舟山 康江君                 米長 晴信君                 市川 一朗君                 岩永 浩美君                 牧野たかお君                 山田 俊男君                 澤  雄二君                 谷合 正明君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   若林 正俊君    副大臣        農林水産大臣  岩永 浩美君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       澤  雄二君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 朝雄君    政府参考人        文部科学大臣官        房審議官     田中  敏君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       藤崎 清道君        農林水産大臣官        房総括審議官   吉村  馨君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        吉田 岳志君        農林水産省総合        食料局長     町田 勝弘君        農林水産省消費        ・安全局長    佐藤 正典君        農林水産省生産        局長       内藤 邦男君        農林水産省経営        局長       高橋  博君        農林水産省農村        振興局長     中條 康朗君        林野庁長官    井出 道雄君        水産庁長官    山田 修路君        資源エネルギー        庁原子力安全・        保安院審議官   平岡 英治君        国土交通大臣官        房審議官     西脇 隆俊君        国土交通大臣官        房審議官     石井喜三郎君        環境大臣官房審        議官       谷津龍太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農林水産に関する調査  (アフリカ開発会議及び若林農林水産大臣の欧  州出張の結果に関する件)  (国際的な食料価格高騰問題に関する件)  (食料自給率向上に関する件)  (水田・畑作経営所得安定対策に関する件)  (農産物輸出促進に関する件)  (米粉及び新規需要米に関する件)  (農地政策に関する件)  (農村政策に関する件)  (畜産・酪農経営安定対策に関する件)  (国際的な食料需給ひっ迫及び価格高騰問題  への我が国対応に関する決議の件)     ─────────────
  2. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、文部科学大臣官房審議官田中敏君外十四名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 農林水産に関する調査を議題といたします。  アフリカ開発会議及び若林農林水産大臣欧州出張の結果について、政府から報告を聴取いたします。若林農林水産大臣
  5. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員長始め委員各位におかれましては、日ごろから農林水産行政推進に格段の御理解と御指導をいただき、厚く御礼申し上げます。  委員会の冒頭にお時間をいただきまして、初めに、アフリカ開発会議TICADⅣについて発言させていただきたいと思います。  第四回アフリカ開発会議TICADⅣは、五月二十八日から三十日の日程横浜において、福田総理議長の下で、アフリカから五十一か国、関係国際機関等の参加を得て開催されました。  私は、五月二十九日に成長加速化分科会出席し、食料問題とアフリカ農業開発について演説を行いました。その中で、農業アフリカ開発のかなめであるとした上で、食料価格高騰問題については、各国農業生産強化することが基本であると述べました。  また、稲の品種改良等研究開発普及かんがい整備等が重要であり、関係国際機関等と連携して米の生産倍増のために取り組む考えを柱として主張し、食料安全保障の確保、成長を加速化するための食料増産及び農業生産性向上重要性等が、最後に採択された横浜宣言等に盛り込まれました。  続きまして、欧州訪問の結果について発言させていただきます。  私は、六月二日から八日までの日程欧州を訪問し、FAOハイレベル会合OECD閣僚理事会WTO非公式閣僚会合、G10閣僚会合等出席いたしました。  六月三日及び四日は、ローマにおいて、国際連合食糧農業機関FAOが開催した世界食料安全保障に関するハイレベル会合出席いたしました。  ハイレベル会合では副議長に指名され、四日に開催された閣僚級会合議長を務めました。この閣僚級会合では、各国首脳級出席され、食料価格高騰問題について様々な意見を述べ合いました。  また、各国食料生産強化基本とする食料安全保障の確立という我が国立場について各国理解を求め、ハイレベル会合の成果として取りまとめられた宣言に反映されました。  さらに、本宣言では、食料政策貿易政策全般について、国際的価格不安定性増大につながる制限的な措置の使用を最小にする必要性を再確認することとされております。また、バイオ燃料生産や利用については、食料安全保障達成維持必要性等を考慮した詳細な検討が必要とされており、我が国主張が盛り込まれたものとなりました。  OECD閣僚理事会であります。六月五日にパリにおいてOECD閣僚理事会出席いたしました。この閣僚理事会では、価格高騰による食料問題に対して様々な取組を総合的に実施する重要性と、OECDがこれまでの知見や経験を生かし、農産物市場構造的変化対応した新たな検討を行う必要性主張し、その趣旨が議長報告に反映されました。  さらに、同日、WTO非公式閣僚会合が開催され、私は甘利経済産業大臣とともに出席いたしました。同会合では、今後のプロセスを中心議論が行われ、モダリティー合意に向けて、閣僚関与の下、非農産品市場アクセス交渉、いわゆるNAMAを中心にジュネーブにおいて高級事務レベルによる集中的作業を進めさせることが確認されました。私からは、交渉内容をしっかり詰めることが基本であること、今後、食料価格高騰問題も踏まえ議論していく必要があることを主張いたしました。  このほか、パリにおいてはG10閣僚会合出席し、G10の結束を再確認する等、交渉関係者との意見交換も行いました。  WTO交渉が大詰めとなり、七月には北海道洞爺湖サミットが開催されるなど重要な時期を迎えますが、今後とも食料輸入国としての我が国立場が反映されるよう最大限努力を払ってまいる所存であります。
  6. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 以上で報告の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 平野達男

    平野達男君 おはようございます。平野達男でございます。  大臣、数々の国際会議への御出席、本当にお疲れさまでございました。今日は、農林水産委員会でございますけれども、恐らくは今通常国会質疑を伴った最後委員会になるのではないかというふうに思います。今日はこれまでの私の質問確認という意味で、これまで何回か質問に立たせていただきましたけれども、質問事項についてはかなり重複する事項がございます。以下、質問の通告に従いまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、総理も先般のFAOの主催のハイレベル会合演説をやりまして、世界最大食料輸入国である我が国としても、自ら国内農業改革を進め、食料自給率向上を通じて、世界食料需給安定化に貢献できるようあらゆる努力を払いますというふうにはっきり明示されています。国際的に言うまでもなくて、政府方針として、四五%まで自給率を上げるということを一応政府方針としては出しているわけですが、改めて総理はその旨を国際的に表明したんだろうというふうに思います。  そこで、自給率向上向上というふうに言うんですが、これは私何回も申し上げたとおりですけれども、やり方として二つあるだろうと。  一点目は、我々の食生活を変えると。できるだけ国産品のものを消費していくということですし、一番分かりやすい例は米の消費拡大だろうと思います。一人当たり五キログラムの消費を増やせれば自給率が二%向上するということも何回か申し上げました。しかし、何といっても、これだけたくさん輸入している穀物、小麦については五百万トン、大豆についても相当量輸入しています。飼料のトウモロコシについては一千六百万トン輸入している状況の中で、生産余力がありながら相当量輸入をしていると。これ何とかしなくちゃならないということのためには、いわゆる生産費市場価格との差を補てんする措置をしっかりやっていかなければ増産はおぼつかないということでありますけれども、この認識については、大臣、一致しているというふうに了解してよろしいんでしょうか。改めて確認をさせていただきたいと思います。
  8. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員から重ねて御質問がございました。また、確認意味での御意見もいただきました。その意味で、今まで私がいろいろと御答弁申し上げてきたことを総括するような意味で答弁させていただきたいと思います。  農業に期待されております食料安定供給という役割を果たしていくためには、効率的かつ安定的な農業経営農業生産相当部分を担う力強い農業構造を確立していく必要がある。その際、海外との間にある埋め難い生産性格差につきましては、一定の国境措置経営所得安定対策等を組み合わせることによりまして、これを補正して、国内農業の持続的な発展を図っているところでございます。  自給率向上に向けた国内生産増大につきましては、生産者消費者実需者ニーズに的確かつ積極的に対応することを通じてその生産を拡大していくことが重要であります。そのためには、農産物価格は、需給事情品質に対する市場の評価を反映をして生産現場に伝えるシグナルの機能を果たしていくことが必要だと考えております。  御指摘補てん内容が、民主党が御提案されました直接支払というようなものに限られているのかどうか。その辺、補てんというものの内容が明らかじゃありませんけれども、仮にこうした市場シグナルとは直接関係なく何らかの補てんを行うということであるとすれば、生産者品質向上でありますとか、また需要に応じた生産を展開していくといったような努力でありますとか、また中にはコスト削減意欲の低下ということも懸念されるわけでありますし、また消費者ニーズに合わないような農産物生産を助長することとなるおそれもございます。それらの農産物に対して、そういうような言わばニーズに余り合わないような農産物に対しても財政支出を行うということにもなりかねないといったようなことから、結果的に農業生産維持増大には直接つながらない、消費者理解も得られないというおそれがあるものと考えております。  政府としては、さきに述べたような、需要に応じた生産推進するとともに、消費面においても食事バランスガイド普及活用など、分かりやすく実践的な食育推進などの取組を通じて、これを総合的に進めることによりまして平成二十七年度に四五%という食料自給率目標達成に向けて最大限努力を行ってまいりたい、このように考えているところでございます。
  9. 平野達男

    平野達男君 従来の答弁の繰り返しなわけですけれども、今大臣が言われた、需要に応じた生産というふうに言われましたけれども、麦にしたって大豆にしたって、後でちょっとテーマとして取り上げたいと思いますけれども、米粉にしても需要はあるわけです、もちろん品質問題等はございますけれども。これだけ大量の穀物輸入しているということは、需要は厳としてあるということでありますね。あと、要は、それを国内生産してそれを消費者に提供するということを政策として打ち出すか打ち出さないかです。そして、打ち出す以上は、繰り返しになりますけれども、生産費市場価格との差に厳然とした差がありますから、これを埋めると。埋めるためには財政措置をしっかりやるということが大事なんだろうと思います。  大臣の話は、財務省とかそちらの財政当局の方にかなり気を遣った発言というふうに私は受け取りましたけれども、本当に自給率を上げるということであれば、私は何回も繰り返し主張してきましたけれども、コストが掛かりますよということをむしろ政府が、要するに農業担当大臣がきっちり言っていくということが大事じゃないでしょうか。自給率向上自給率向上というふうに旗だけ上げて、今みたいに、あと農業者自助努力に期待します、あるいは需要に応じた生産を振興します。これでは今までの延長線上ですよ。何も変わらないですよ。だから、逆にもっと厳しいことで言ったら、何もしないということにもなっちゃうと思いますよ、私は。  こういう問題につきましては、大臣、是非、自給率向上というのは簡単じゃありませんと。もちろん、生産者努力しなくちゃなりませんよ、それは生産性向上して生産コストを下げる努力をしなくちゃなりませんから。消費者にも努力を求めなくちゃなりません。だけど、やっぱりそれでも限界があるというのは歴然としているわけですから、そのコスト差を埋めるということについてはきちんとした私はメッセージを発するべきではないかというふうに思います。  そして、先般、大臣は、大変私はああこれはいいなと思ったことを発言されました。それは工程表を作るということであります。工程表食料農業農村基本法の中で実はあるんですが、どこをどう読んでみても自給率向上につながるとは読めないんです、私にとっては。一つは、これは、この基本計画、二十年度まではかなり細かく工程表が組まれていて、二十年度以降については矢印がぽんと出ているだけで、具体的な計画がどこにどのようになるかということについて、二十一年度以降までははっきり視野に入れてやっていたような計画にはなっていません。  ここで改めて、二十一年度以降に、自給率向上ということを特に意識した、この基本計画策定、たしかこれ五年ごとに見直すということになっていましたね。これやるべきではないでしょうか。私の質問は、そのやるべきではないかということと併せて、大臣の言われた自給率向上に向けての工程表というのを具体的にどのように考えておられるのかという、この二点についてちょっとお伺いをしたいと思います。
  10. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 食料自給率につきましては、平成十七年の三月に策定をされました、委員もお示しになられました食料農業農村基本計画において定められているわけでございまして、消費面及び生産面での課題を示しながら、食料自給率向上について、平成二十七年度の目標を四五%と設定しているところでございます。このため、現行基本計画に基づきまして、生産面では、食品産業農業連携強化などによる需要に即した生産推進するとともに、消費面では、食事バランスガイド普及活用など、分かりやすく実践的な食育を進めているところでございます。  さらに、現在の自給率向上に向けた取組状況を踏まえて、食料自給率目標達成を確実なものとするために、生産面においては、農地をどこまで使えるのか、品種改良をどう考えるのか、単収をどこまで上げられるのか、また消費面においては、米の消費拡大や油脂の過剰摂取抑制、食べ残しの抑制についてどのような対応が可能かなど、様々な幅広い視点から検討が必要になってくると思います。  さらに、委員が御指摘になりました、具体性を取り入れた形で、この工程表というものが、農業行政担当者はもとより、その生産現場で指導的な立場に当たっている人たちも、そのことが一つの指標たり得るような、そういうガイドラインになっていくようなものが必要なんじゃないかということを考えて、先般、委員に御答弁申し上げたわけでございます。その点、現在の定められている工程表を、更に踏み込んでこれを進めるようにしなきゃいけないと思っておりますが、今、私のそのような考え事務方に指示をして、事務方検討を開始させているところでございますが。  さらに、このことについてはいろんな要件がございます。財政上の制約もございます。しかし、いろんな考え方、パターンとしては、それら政策を展開するに当たって、財政上の支援措置というのはどうなっていくのかというようなことも念頭に置きながら作らないと、絵にかいたもちあるいは実現不可能な計画になっていくだろうと思いますので、この見直しに当たっては、財政上の問題をどう位置付けていくかというようなことも念頭に置きながら工程表を作らなければならないと、私はそんな重いものと受け止めて検討に着手をしたところでございます。
  11. 平野達男

    平野達男君 今、国内産の麦、大豆も、ゲタ対策と併せて産地づくり交付金を乗せながら転作作物として作っているわけです。まあ、北海道では産地づくり交付金はありませんけれども。そういう財政支援をしながらそういった穀物を作っているという実態は、先ほど私が言っているように、生産費市場価格との差を補てんしなければ、我が国の場合は残念ながら今圧倒的に輸入に頼っている穀物生産ができないんだということをはっきり示しているわけです。  これからその格差をいろいろ埋めるために、繰り返しになりますけれども、生産者努力をしなくちゃならない。しかし、努力してもその格差は埋め切れないということをはっきり認識した上で、じゃ本当に自給率を上げるためには何が必要かとなりますと、財政発動だということだと思います。それをできるかできないかは、政治の判断であると同時にやっぱり国民の判断だろうというふうに思います。  そういった意味においても、きちっとした情報発信政府の責任で、繰り返しになりますけれども、自給率向上についてはコストが掛かりますと、あらゆる努力をやったとしても最終的にはコストが掛かるんですよということをきちっと発信していくことが私は大事ではないかということを、繰り返しでありますけれども、強く申し上げておきたいと思います。  そして、次に、そうやって生産増産補助金をもって仮に振興していく、推進していくということになりますと、WTO上やっぱり様々な問題になってくるんだろうと思います。しかし、ここに来て、これは先般来、WTO交渉の国際的な環境というのは変わったんじゃないかということがこの委員会の中でも何回か指摘されておりますけれども、世界的に今食料不足が懸念される中、その地域の持っているポテンシャルを最大限活用して作れるものは作っていこうじゃないかということが今、先ほどのローマサミットの中でもほぼ統一した見解として共通した認識になったんではないかというふうに思います。  そこで、このWTOのいわゆる生産刺激的な補助金ということの扱いについて、我が国はこれからどういうスタンスで臨もうとしているのか、見解をちょっとお伺いしたいと思います。
  12. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) FAOにおきます世界食料サミット議論、私も議長席に座りながら、様々な意見があるなということをしみじみ感じたところでございました。全体で百七十か国からの皆さん方がそれぞれのお国の事情を背景にしながら主張をされるわけでございます。そういう場面において感じますのは、それぞれの事情がありますけれども、それらを一つ合意、排除するのではなくて、どこかに共通点を見出しながら合意していかなきゃいけない。そういう立場もまとめていくことには大事なことだということをしみじみ感じたわけでございまして、このFAO宣言につきましては、最終の時間まで間に合わずに、時間を延ばして延ばして、延ばしながら最後のもうぎりぎりの調整をすることになったわけでございます。  その意味で、でき上がりましたあの宣言というのは相矛盾するようなことが中にいろいろ書かれているわけですね。それらをどう読み取りながら、具体的な政策づくりを逐次積み上げていくときにどのようにそれを扱っていくかということだと私は思うんです。  その一つとしてすぐ参りますのは、G8サミットであります。これは主要国でありますが、関係のメンバー以外の国々も来ていただいて、いろいろな意見をそこで交わすわけでございます。そういう意見を交わす中で、また立場の違う米国あるいはEU、そういう諸国も来て意見を交わしていくわけですから、その中で何か一致点というのは、すぐこれだというのは出てこないと思うんですね。しかし、その議論を通じて、どういう意見が多数の意見を占めるのかなというようなこともにらんでいかなきゃいけない。  そして、そういうものと実はWTOが、いつになりますか、ラミーは今月末までと、こう言っておりますけれども、農業以外の分野で、先ほども報告いたしましたが、なかなか煮詰まらないことが多いので、この六月末までにモダリティーを確立するということは非常に大変なことだというふうに思うんですけれども、それを目指して努力しようということになっています。  しかし、私は、このモダリティー議論の中で、食料の安全保障問題ということもモダリティー議論する課題の中に入れて議論してもらいたいということを実はOECDの方ですね、そこの農業問題のときに議論をし、そしてWTOにおいてもこの食料の安全保障という視点というものも入れた議論が必要であるということを非公式閣僚会議でも申し上げたところでございます。  そういうことがどこまで取り上げられて、どういうふうに収れんしていくかというのは、実は今進められているようなタイミングで世界全体がゴールに向かって進んでいくとすれば、私が一応球を投げたことがどこまでその中で熟した議論になるかということについては、やってみなきゃ分からないわけですけれども、やや今までの議論と違う角度からの球を投げていますので、それがどのようなことになっていくのかはこの大詰めになったWTO交渉の締まり具合だと思うんです。  それにしましても、WTO自身の、先進国、途上国も含めて、委員が言われました市場歪曲的な政策は削減するということについては共通の実は理解になっているわけでございまして、そのために、いわゆる黄色の政策というものは一定の制限が更に強化されるという方向になっております。今、ファルコナーが提起しております黄色の政策の削減率につきまして、我が国は大体ファルコナーの削減率の方向でいいんじゃないかというような水準でございますけれども、それぞれの国別に削減率が違っております。その削減の範囲の中で各国政策補助金の運営をしていくということになっていくわけでございますので、削減率の見通しを付けた上で、先ほどの国内自給率向上というものと組み合わせてこれから考えていかなきゃいけない、こう考えております。
  13. 平野達男

    平野達男君 いずれその削減率を、できるだけ日本の場合は幅を持って動きやすいような削減率、もし仮に受け入れるとすれば、そういった率にするということに向けて努力をするということの御答弁だったと思います。是非その方向でやっていただきたいと思います。  あともう一つ我が国には直接関係ないかもしれませんけれども、短期的には食料支援というのは非常に大事なわけでありますけれども、アメリカがもう事実上ほとんど無償と言ってもいいような過剰農産物をいわゆる開発途上国に提供しているということが、その地域の自立、農業生産の自立といいますか、農業生産の振興を大きく妨げているというような指摘も以前からかなりなされているのではないかというふうに思います。  アメリカの場合は、特に過剰農産物食料支援という形で出すときには、アメリカの政府が手配する船会社で船も何か政府で調達して、それでそれも全部アメリカが面倒を見るということで、お金が全部アメリカに残るような形になっていると。安い食料だけ開発途上国に行くという、そういうやり方を取っているというふうに聞いています。  それで、これWTOの協議の項目として、この食料支援については我が国はこれまでどういう位置付けで臨んできたんでしょうか。また、これからどのようなスタンスで臨むおつもりなんでしょうか。簡単でいいです。
  14. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 食料援助につきましては、WTO農業交渉の中で、そのやり方によっては輸出補助金と同様の貿易歪曲的効果があるというような観点から、二〇〇五年十二月の香港の閣僚会議がございました。その香港閣僚宣言におきまして、二〇一三年までに輸出補助金と同等の効果を持つすべての措置に対する規律を確保するということが決定されたわけでございます。  この基本方針の下で議論が行われ、現在のファルコナー議長モダリティー案では、食料援助については無償のみとすると、商業取引と競合しがちな有償援助、有利な形のですね、その有償援助ということについてはこれを廃止すると。それから二つ目は、緊急性のない食料援助は特に厳しい条件の下でしか認めないなどの規律の強化が盛り込まれているところでございます。  なお、我が国は従来から輸出入国のお互いのバランスの取れた貿易ルールを確立するという観点から、すべての形態の輸出補助金は撤廃をしなきゃいけない。形態がいろいろあります。例えば、今言われた運賃を全部見るとか、これも輸出補助金考えて、こういうことは全廃をすべきである。さらに、食料援助については本当に真に必要なものに限定すべきであるということを主張してきておりまして、現在の農業交渉はこのような我が国主張も反映されたものとなりつつあるというふうに認識しているところでございます。
  15. 平野達男

    平野達男君 次の質問に移ります。米粉の問題であります。  先般来、私どもは、新潟とか山形に行きまして、米粉活用状況あるいは飼料米の活用状況について視察をしてまいりました。  米粉につきましては、これまで製粉技術が必ずしもきっちり確立していなかったということもありますし、それから小麦と米との価格差がかなり大きいということもあって、かなりその用途が限定されていたということもございます。ここに来て製粉技術もかなり進歩してきた、それから小麦と米との価格差もかなり縮まってきたということもございまして、かなり米粉活用についてはその機運、環境がかなり整いつつあるのではないかというふうに思います。  そこで、米粉活用方向について、ちょっと時間がございませんので、大臣、簡単なコメントで結構ですから、今どういうことを考えておられるか、一言二言で結構ですから、答弁難しいかもしれませんが、御見解を伺わせていただきたいと思います。
  16. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) まあ一言で言うとすれば、私も委員と同じように、米粉需要の拡大を大いに期待をしながら、それに応じて米粉生産というものを拡大していくという方向で、今申しました加工技術とかあるいは新商品の開発とか、そういうようなことに力を入れていくべきだと、こう考えております。
  17. 平野達男

    平野達男君 今、日本は四百七十万トンぐらいの小麦を輸入しています。仮にエタノールとガソリンの関係じゃないですけれども、E3、E10とかってありますね。米粉を一〇〇%で使うこともいいんですが、例えば政策として、小麦粉と米粉を混ぜて、五%の米粉を混ぜる、あるいは一〇%の米粉を混ぜるというようなことで、もしそれが消費者に受け入れられるということでありますと、仮に一〇%の輸入小麦が国内産の米粉に置き換わるということでありますと、一気にそれだけで四十七万トンの需要が生まれます。そういった意味で、この米粉活用というのは、農地を守るという意味においても転作を推進するという意味においてもいろんな効果があると思います。  私は、新潟県でR10プロジェクトをやっていまして、私らも大体似たようなことをちょっと考えてきたんですが、一〇〇%米粉で使う製品開発普及と併せて、これは多分製粉会社との協力が不可欠だと思いますけれども、混合した粉を使ってもらうような運動を是非起こしていったらいいんじゃないかなというふうに思っておるんです。  例えば、新潟県の名前を借りるのであれば、R10プロジェクトでもいいです。それで、米をどんどん使いましょうと、そうすることが農地を守ることになる、農村を守ることにもなります、国を保全することにもなりますといったスローガンと併せてやっていくことを是非推奨したいと思っておるんですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員の今申し上げていただきましたその考え方に私はほとんど異論はございません。むしろ積極的にそのような進め方をすべきだと思っております。  実は今、新潟のお話がございましたが、群馬にも非常に熱心なところがございまして、やはり中小でございますけれども、米粉を一生懸命やっているのがございます。  米粉の場合は、一〇〇%というのはどうしても固くなりがちなんですね。その意味では、そういう需要もあるようなんですね。ですから、この需要の開発に併せましていろんな商品開発が必要になってくるというふうに思うんです。混ぜ具合もそれぞれのお客さんをねらった新商品というようなものはあり得るわけで、そういう意味では、幅広く、一〇〇%にこだわるんではなくて、委員がおっしゃられるような形で対応をすべきじゃないかと思います。  米粉パンの普及などにつきましては、今言ったように、いろんな制約があるために非常に低い水準ではありますが、例えば平成十五年は一千トン、平成十六年が三千トン、平成十七年がやはり三千トンで動きませんでしたが、平成十八年には六千トン、もう着実に少しずつ上がっているんですね。しかし、それじゃなかなか全体の需給に影響するようなことになりません。そのネックを打開しないといけないという意味で、委員がおっしゃられたような加工技術の問題とかあるいは新たな製品の開発普及といったようなことを図って、かなり強力にてこ入れをしていかなきゃいけないだろうと、こんなふうに考えております。
  19. 平野達男

    平野達男君 今、米粉普及については地域レベルでの取組中心になっていますが、先ほど私が言ったような観点から、どちらかというと国家プロジェクトみたいな形で、まさにもう国家プロジェクトと位置付けて国が推進をするということの発想が私は大事じゃないかと思います。  ここで、そうしますと、やはりそれを進める場合には、米粉用の米を作った場合と主食用の米を作った場合の差額というのがどうしてもまた問題になってきまして、我々の出した農業者戸別所得補償法案の考え方に従えばその問題は解決するんですが、仮にそれがないということでありますと、産地づくり交付金をどうするか、そういった問題について早急なやっぱり詰めが必要なんだろうと思います。  いずれ、方向性が一致するんであれば、その方向性の実現に向けて我が党としてもいろんな案を出していきたいと思いますので、是非政策の競い合いをやっていきたいというふうに思います。  水田は今、本地面積で二百四十万ヘクタールでしょうか。主食用の米は百六十万ヘクタールあれば足りるというふうな状況です。その八十万ヘクタールにきちっと作物を植えてもらうような状況をつくるということが非常に大事でして、麦、大豆、これは当然振興しなくちゃなりません。しかし、水田の特質上どうしても畑作物を入れるというのはなかなか難しいということもありまして、そういうところには米粉用の米あるいは飼料米、あるいはホールクロップサイレージ、こういったことの推進が大きなかぎになるんだろうということについての認識はほぼ一致していると思いますので、その方向に向けた具体的な政策を出すと同時に、実行に向けた努力を共にやっていきたいというふうに思います。  それから、あと最後質問になりますけれども、一点だけ要望で申し上げておきます。  今、米から、ミニマムアクセス米を使っているということだったと思いますが、エタノールを造るということを実証的にやっておりますね。この間の質問で、新潟県なんかでも取り組んでいると、山田委員からの御質問でもあったと思いますが。私は日本の米作りに関して言いますと、エネルギーをかなり投入しています。そのエネルギーを多投入した米から更にエネルギーを投入してエタノールを造るということは、多分エネルギー収支からいったらほとんど合わないんではないかというふうに思います。この実態を是非示していただきたいと思います。  今現場は、米からエタノールを造るということに対して非常に大きな期待を掛けている方がたくさんいます。夢を与えるのはいいんですけれども、実態はどうなんだということもきちっと示しておかないと、すぐ要するに米を作ってエタノールにすればいいんじゃないかという議論に走りがちになるということについては、これはきちっとチェックしておく必要があると思います。特にも私は、繰り返しになりますけれども、エネルギー収支からいったら多分ペイしないと思います。相当のマイナス収支になるんじゃないかという感じを直感ですが持っています。これを是非政府見解として、どういう形かでまとめて出していただくことを強く要望しておきたいと思います。  答弁はちょっと時間の関係で結構です。はい、分かりましたとは言わないでしょうから、強く要望を申し上げておきたいと思います。  それから、最後質問なんですが、MA米、これは前回もいろいろと質問をさせていただきました。繰り返しの要望ですけれども、予定価格の作成については、具体的なやり方については会計法の問題があって公表できないんだというようなことをいろいろ言われますが、これだけ米の国際価格が高騰している中で、時価で予定価格を設定するというようなやり方は、もうこれは御承知のように国際の高騰価格に更に拍車を掛けることになります。  こういう中では、予定価格については異常な価格、国際価格が高騰している中では別な考え方で予定価格を設定しますということを、政府としてきちっと私はやっぱり明示すべきではないかと思います。そうすることが、今、米の国際価格の高騰というのは需給がタイトになっているときですから、ああ、日本は無理して米を買わないなということのシグナル市場に送りますので、この高騰に一定の歯止めを掛ける効果もあると思います。  それから、あと、無理して結局輸入しないということは、日本の場合は主食用の米は余っているわけですから、米を国際市場から無理して買わないということで人道的な意味合いもあるということの二つの両面の効果がありますので、是非この方針基本的なスタンスを明らかにして示すべきではないかと思いますが、再度、大臣見解をお伺いしたいと思います。
  20. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) このMA米の買入れ価格の問題でございますが、委員御承知のとおり、これは予算決算及び会計令、予決令に従って行動しなければなりません。予決令では、予定価格の決定方法が八十条に決められておりますが、これらは、取引の実例価格のほか、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないと、こういうふうに決められております。まあ若干の幅があると。  そういう幅の中で、先般、十九年度におきますミニマムアクセス米の購入につきましては不落になり、何回か繰り返して不落になっております。その場合のこの予定価格考え方というのは、委員がおっしゃるほど鮮明ではございません、この予決令の中で考えていかなきゃいけないわけでございますが。と同時に、国際的な批判を受けないような形でオファーをしていかなきゃいけないということもございます。それらのことを総合的に勘案しながら、この予定価格を定めているところでございます。  そういう意味では、やはり予決令の許される範囲内において、今委員がおっしゃられたような、その需給状況といったようなことも含めまして総合的に勘案して決めてまいりたいと、このように考えております。
  21. 平野達男

    平野達男君 まあ私は予決令というのがどういうものかつまびらかではございませんけれども、いずれミニマムアクセス米を買うという前提に立ちますと、予定価格は、通常の考え方でいきますと適正な価格ですから、適正な価格が何かというと、時価等を反映した形で予定価格を設定しなくちゃならないはずなんですね。この原則を崩さない限りは、ミニマムアクセス米ということに対しては日本は買い続けるということになるんだろうと思います。  繰り返しになりますけれども、今は異常な、価格が高騰しているというときですから、予定価格の設定は、先ほど言った予決令でしたか、そういったものではなくて、ある一定の基準の中で、この一定の基準というのはどうするかという問題がございますけれども、高騰しているときには過去の趨勢等を勘案した価格設定をして、結果的に不落になることはあり得るんだということを私はきちっと明示すべきではないかと思います。  このことは何回も言ってきて、どうしても意見は擦れ違っておりますけれども、こうやることが、繰り返しになりますけれども、国際市場市場というものに対しての日本のシグナルを発することになりますから、まあ例の米緊急対策の中でアナウンスメント効果、アナウンスメント効果というような再三言葉は出てきましたけれども、そういった効果も出てくるんだろうと思います。  これは是非、この委員会での議論を踏まえた上で政府の中で御議論をいただきたいと思います、まあしていると思いますけれども。そして、通常の予定価格の設定方式とは違う方式でやります、これは政治判断ですという形での対応を是非お願いしたいと思います。  あと、時間になりましたから質疑は終わりますけれども、これから洞爺湖サミットが始まります。バイオ燃料の取扱いについては、引き続き我が国のスタンスをきちっと主張していただきたいと思いますし、ここは財政金融委員会ではありませんから投機マネーの話は余り議論をしませんでしたけれども、穀物価格の高騰の背景にあるのは原油の、燃料の高騰であって、その高騰の背景にあるのは過剰マネーの存在があります。これをどのように取り締まるかというのは、財政金融委員会の中でもいろいろ議論したけど、どうしても答えが出ない。答えが出ないんですが、政治の、何というんでしょうか、思いというのをコメントとして何か出すということも考えてみたらいいんではないかというふうに思います。  今は、お金は国境がないから自由に動く状況になっていますけれども、いたずらに投資をすることによって価格をつり上げる、それが世界経済にマイナスになっているんだというようなことも是非大臣の方から総理の方に引き続き強く主張していただいて、洞爺湖サミットでもこの投機マネーについての何らかのメッセージを発するような方向での働きかけもお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  22. 主濱了

    ○主濱了君 主濱了でございます。  早速質問に入りたいと思いますが、ちょっと通告している順番を変えまして、私も食料自給率から質問をさせていただきたいと思います。  食料自給率向上につきましては、先ほど平野達男委員からお話のあったとおり、総理の引上げに対する固い決意が示されたと、こういうことでございます。  若林大臣基本的な考え方を伺いたいわけなんですが、食料自給率について次の意見を持っている方がいらっしゃるんですよ。その要点だけお話をしますと、食料自給率を決めるのは政治ではなくてマーケットであると、こういうふうなことですね。それから、自給率政策でコントロールしようというのは無理がある、こういうようなことも言っております。それから、自給率六%上げるためには幾ら予算が必要なのかを示し、そして国民に支持か否かを問うべきであると、こういうふうな考え方。食料安定供給政府の役割だが、自給率向上以外でも可能ではないかと。さらには、自給率にこだわっていては政策の幅を狭めてしまう。そして、最終的には多国間や二国間の枠組みを活用して食料供給体制を構築することが政府の取るべき道だと、こういうふうな考え方を持っていらっしゃる方がおります。  これは経済財政諮問会議を支えるメンバーのお一人の考え方であるわけであります。どちらかというと自由貿易と、こういうふうな考え方のようなんですが、こういう考え方に対する若林大臣の御見解をまずお伺いしたいと思います。
  23. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今委員がおっしゃられました学者の方でございます。私も新聞記事を拝見をしておりますし、また経済財政諮問会議におきます各種発言についても注意深く見ているわけでございますけれども、私は、その学識経験者であります学者の方とは全く意見が異にしておるということを御報告申し上げておきたいと思います。
  24. 主濱了

    ○主濱了君 非常に私思ったとおりの回答で、しばらくぶりに一致をしたというふうにうれしく思っております。自給率向上は必要であると、こういうことを確認させていただいたということでございます。  それで、次はちょっと短い質問なんですが、平成二十七年のこれは目標になっていますね、四五%自給率達成、これは大丈夫か、こういう問題が一つ。もう一つは、これは四五%というのは実現可能な数字であると今まで説明されてきておりますけれども、では、本来どの辺にその自給率があればいいのか。これは四五%が最終だということではないと思います。本来、自給率というのは一国、日本は独立国ですから、この独立国である日本の自給率どの辺にあればいいか。これについて二点、併せて伺いたいと思います。
  25. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今公式に食料農業農村基本計画において定めております自給率は、委員がおっしゃられますように、平成二十七年で四五%を達成するという目標を決めております。この目標達成はどうだと問われれば、にもかかわりませずこれを決めたときよりも自給率が現実下がっているという状況がございます。下がっていることには種々の要因がありますけれども、弁解はしてみても私は世の中通じないというほど厳しく受け止めておりまして、少なくともこの四五%を決めたときには、実現可能性をも考慮して四五%として定めたということになっております。その意味では、実現可能であるという前提でこれを決めたわけですから、これは何が何でも実現していかなきゃいけない。大変厳しい状況でございます。しかし実現しなければならない。  と同時に、この基本計画の中では、実は望ましきは、過半が自給できるということが望ましい姿ではあるがということで、実現可能性を考慮して四五%と、こう言っております。そこで、さらに、従来以上に国内生産力を高めていくという目標政府として掲げるということが、決める場合には、あるべき姿としては、やっぱり五〇%を超えるような水準というものを目指すということが私は適当ではないかというふうに考え、そのような考え方に基づいて我が政府部内でこれからも話を進めていきたい、こんな気持ちでおります。
  26. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  五〇%を超えるということなんですが、実は一九六〇年、七九%だったんですよね。そこからずうっと落ちてきているという今の現状。五〇%を超える辺りと、私はもうちょっと上を考えていたんですが、いずれ実現を目指していただきたいと、このように思います。  それから、ちょっと質問重複いたしますので、省略する部分ありますので申し訳なく思います。  それで、食料自給率を上げるためには、生産面とそれから消費面、両方必要だと、こういうことでございます。特に、消費面では食育という言葉が再三にわたって出てきておりますが、この食育についてお伺いをしたいと思います。  まず、農林水産省の方にお伺いしたいんですが、農林水産省が担当する食育関係事業の中で、食料自給率向上に向けた施策と、そして実際もうやってきているわけですけれども、その成果、もしあればですが、その成果について御説明をいただきたいと思います。
  27. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 食育という視点に立ちまして、食料自給率向上に向けてどういう政策を展開をしてきているのか、その効果はどうかということでございます。  平成十八年の三月に決定をされました食育推進基本計画というのがございます。その基本計画におきまして、食育推進に関する施策について基本的な方針として、食料自給率向上に資するような施策を実施することというふうに食育計画の中では定められているわけであります。  このことを踏まえまして、農林水産省では、日本の気候風土に適した米を中心に構成され、伝統のある優れた食生活の継承にも資するという意味で、かねてから日本型の食生活の実現を図るということをまず第一に施策として掲げているわけでございます。と同時に、地産地消あるいは農林漁業体験の推進ということによりまして、生産者消費者との間の信頼関係を構築をしていく、そして、地域におきます農林漁業について消費者側が理解を深めてもらうということに重点を置いて食育を進めているところでございます。  具体的には、委員も御承知だと思いますけれども、めざましごはんキャンペーンというのを展開をいたしました。また、食事バランスガイドというものを作成して、これを活用した日本型の食生活の実践の促進を図っているところでございますし、学校給食における地場産物の活用を進めるということなどを通じたいわゆる地産地消を推進するということ。三つ目として、教育ファーム、つまり体験でございます。教育ファームなどを通じた農林漁業体験活動を促進するといったようなことに取り組んでいるところでございまして、これらの施策の結果として食料自給率向上に寄与するように更に一層進めなければならないと、このように考えているところでございます。
  28. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。米中心の食文化、従来の日本型の食文化、それに地産地消と、こういうところが中心でございましょうか。  では、文部科学省にお伺いしたいんですが、同様に、まず文部科学省の方で実施している食育自給率向上に資するような施策、そしてその成果についてお伺いをいたします。
  29. 田中敏

    政府参考人田中敏君) 御説明を申し上げます。  子供に食に関する正しい知識あるいは望ましい食習慣ということを身に付けさせることができるよう、学校においては食育推進するということを文部科学省として積極的にやっているところでございます。  食に関する正しい知識ということにつきましては、単に食品の栄養とかあるいは健康に関する知識ということにとどまらず、我が国食料自給率課題を始めといたしまして、食料生産、流通、消費ということに対しての子供の関心、理解ということが深まるということも大変重要な要素だというふうに位置付けて指導が行われてございます。  特に、食料自給率に関連いたします学習内容ということを御紹介申し上げますと、例えば、小学校社会科におきましては、様々な食料生産が国民の生活を支えていること、あるいは食料の中から外国から輸入しているものがあること、我が国の主な食料生産物の分布とか土地の利用の特色はこんなふうになっているというようなことを扱っているところでございまして、例えば、ある教科書によりますと、私たちの暮らしにとって食料の安全性あるいは自給率は解決しなければならない問題になっていきますというような記述をしているところでございます。  また、文部科学省が平成十九年三月に作成をいたしました食に関する指導の手引ということにおいて、小学校の社会科での食に関する指導の展開例として、自給率の低さあるいは食の安全などの日本の食料生産に関する問題点というふうなことを例示として取り上げているところでございます。  文部科学省といたしましては、食料自給率向上などの観点も踏まえまして、学校における食育推進により子供たちが生涯を通じて正しい食に対する態度が養われるというふうに考えているところでございます。
  30. 主濱了

    ○主濱了君 三十年代に学校給食が全国に普及しました。それとともに私は食料自給率が落ちてきているのではないかと、少なくとも普及とともに自給率が落ちてきている、これは因果関係があるなしにかかわらず間違いないことであります。  学校給食法というのが昭和二十九年にできまして、私は岩手県の村民なんですけれども、村立の小学校にも大体昭和三十五、六年に学校給食が入ってきました。そこで完全に食の欧米化が始まった。コッペパン、それからシチュー、さらには脱脂粉乳と、これらは皆さん御経験済みだと思うんですが、こういうことが始まってからずっと落ちてきていると、こういうふうに私は実際思っているんですよ。  ここまで落ちてきて、じゃ、これをどうやって引き上げるか。私は、五年後、十年後を見たとすれば、やっぱり子供たちの口を借りてこの食料自給率向上させる必要があるのではないか、今まで落ちてきたものの逆戻しをして引き上げていく必要があるのではないかと、こういうふうに思っているんです。ただ、これは言うは易く行うは難しと、こういうところなんですが、この関係で、学校給食、子供たちの口を借りて将来の自給率を上げていくと、この辺、何かいいお考えがあればお示しをいただきたいと思います。
  31. 田中敏

    政府参考人田中敏君) お答え申し上げます。  現在、食育の観点から、学校給食において地場産物の活用ということを文部科学省としても積極的に推進をしているところでございます。地場産物の活用については、環境、食文化、産業ということについての子供の理解、あるいは生産者への理解ということから教育的意義を持つものだというふうに考えてございまして、平成二十二年度までに食材ベースで三〇%とすることを目標に、現在約二三%でございますけれども、積極的な取組が進んでいるところでございます。  文部科学省としては、地場産物活用事例集ということを作成をして各学校に配布をいたしましたり、あるいは地場産物を活用いたしました魅力ある献立というようなことを推進する事業、これはモデル事業でございますけれども、実施をしているところでございます。また、本年度、平成二十年度におきましては、新たに地場産物の活用方策に関する調査研究ということを実施し、いろんな教育的観点を含めた食育あるいは地場産物の活用ということを進めているところでございます。  なお、現在御審議いただいてございますけれども、学校給食法の改正ということも現在作業が進んでございまして、食育推進の観点から、学校給食の目標に、我が国や各地域の優れた伝統的な食文化の理解を深めること、あるいは食料生産、流通、消費について正しい理解を導くことというようなこともきちんと位置付けるとともに、栄養教諭が食に関する指導を行う際に、地域の産物を学校給食に活用するなどの創意工夫を行うことということを法律上明記をさせていただいているところでございます。これは現在御審議をいただいているところでございます。  文部科学省としては、このような政策、施策を通しまして、学校給食における地場産物の積極的な活用ということを進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  32. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  それじゃ、ちょっと次の問題に移らせていただきまして、これは畜産物の自給についてであります。これは二月の二十日、畜産物価格の審議の際に一回質問をさせていただいたわけなんですが、その前に、皆様のお手元に資料を差し上げております。この資料を御覧いただきたいと思います。横長のA4の資料でありますが。  まず資料一の左側の方を御覧いただきたいんですが、棒グラフが二本あります。そのうちの右側が、これが二〇〇六年、平成十八年の食料自給、食品別の食料自給になっております。下の方には食料自給率三九%というのが表示されております。この中で注目していただきたいのは、中ほど下の畜産物一六%です、食料自給率、畜産物一六%、そして、その横の薄く塗ってあるところが輸入飼料による生産部分と、こういうことで、それも含めるとプラス五一できると、こういったようなことになっております。  その右側、食料自給率の推移、これは農林水産省の平成十八年度の食料需給表の参考資料になっておりますが、この食品別自給率の中ほど、肉類のところをちょっと御覧いただきたいんですが、大体九〇から始まりまして、平成十八年、一番右側ですが、五五と、こういうことになっております。これと、例えば先ほど見ていただいた一六%、これ大きな差があります。カロリーベースの食料自給率は一六、それで食料自給率の推移の参考資料の方では五五と、こういうふうな大きな差があります。  資料二の方を御覧いただきたいと思います。次のページですが、次のページの資料の二の、これは食品別自給目標と、こういうことになっておりますが、この中ほどの肉類のところを御覧いただきたいと思います。平成二十七年度の目標は六二であります。高いんですよね、結構高い。こういうふうな表示をしております。  私は、二月の二十日の質問の際にこの点を指摘させていただいたわけですが、澤大臣政務官からは、要するに畜産とか酪農政策上、国内生産された畜産物がどのくらいであるかを把握するためなどのためにこういったような、要するに食料自給が一〇〇%と仮定した場合の自給率を載っけることも必要なんだと、こういうふうな御答弁をいただいているところであります。  私は、逆に、今食料自給率が非常に低迷をしております。そして、飼料自給率についてもかなり注目をされていると。このような中にあって、消費者についてもそれから生産者についても、どちらにも認識をしていただくためには、白書のような、先ほど資料一の左側にあります白書のように、これは何といいますか、食料自給率、カロリーベースの食料自給率をベースにして、そしてそれに飼料自給率が一〇〇%のものを付記すると、こういったような表現がいいのではないかと。  このような、実は前回も提案したわけなんですが、改めて今日は資料をもって提案させていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  33. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) 委員指摘のように、平成十八年度の畜産物の自給率は重量ベースで六七%、しかし輸入飼料による生産部分を除いたカロリーベースの自給率は一六%でございます。我が国の畜産は輸入飼料に大きく依存しているわけでございます。  農林水産省でございますけれども、毎年度公表しています、先ほど資料にもお示しいただきましたが、白書、それから食料自給率レポート、今手元にございますが、その中では、一ページ割きまして牛の絵をかいて、実際はどれだけなんだという絵をかいて分かりやすく輸入飼料で食べている割合がどれぐらいだということも示させていただいております。  しかし、いずれにしましても、委員指摘のように、飼料米の必要性については、これは国の支援も飼料米にこれからするわけでございますから国民の理解がどうしても必要だと。その国民の理解が必要なためには輸入飼料に依存している姿が消費者の方々にはっきり分かるように、今までも努めてきたつもりでございますが、これからますますそういう努力をしていきたいというふうに思っております。
  34. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  それでは、先に進ませていただきます。  次は、青森県六ケ所村の核燃料再処理施設についてなんですが、実はこれは地元の三陸沖に放射能を含んだ廃液を排出すると、こういったような施設であります。三月にこれは質問をさせていただいたんですが、時間がなくてちょっと中途半端になってしまいましたので改めて質問をさせていただくものであります。  この核燃料再処理施設ですけれども、これは竣工予定は五月というふうに三月では伺ったんですが、現在、どういう状況にあるんでしょうか。言いますけれども、私は決してその竣工を急げという趣旨で聞いているのではありません。問題があったらば慎重に扱ってください。なぜ遅れているんだ、慎重に扱ってください、こういう趣旨で聞いておりますので、決して急げという意味ではありませんので、そこのところはよろしくお願いします。
  35. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 本年三月に御質問をいただきました際、事業者であります日本原燃は本年五月に竣工予定というふうにしている旨お答えを申し上げたわけでございますが、その後、五月二十九日に至りまして、日本原燃の方から竣工の予定については今年の七月に変更したいという届出が出されてございます。  この変更の理由なんでございますが、昨年の十一月から、これは再処理施設の工程の一つでございますけれども、高レベル廃液ガラス固化施設というものがございまして、この試験運転におきまして安定した運転をすることが十分にできなかったということでいろいろなデータ取得等を行う必要が生じておりまして、これを着実に実現していくために少し時間を要するということで変更の届出があったものと承知しております。
  36. 主濱了

    ○主濱了君 今、ガラス固化施設が原因だと、こういうふうにお話あったんですが、実はこれ、二回延びているんですかね、昨年の十一月竣工予定がまた延びて、再度延びたと、こういうふうなことで私理解しているんですが、そのときはたしか耐震構造計算に誤りがあったというふうなお話でありました。  東京電力の柏崎刈羽原発、これ新潟県の中越沖地震で深刻なダメージを受けたわけであります。今回の再処理施設の竣工が延期したその理由、やはり同様に耐震構造に誤りがあったということ、さらには活断層も近くに存在するという主張もあるわけでございます。  これらを総合的に勘案しまして、施設そのものは本当に安全なのかどうか、どう考えているのか、これについて端的にお話をいただきたいと思います。
  37. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 今御指摘のございました耐震構造計算の誤りということも、これも過去何度か竣工の予定を変更してきた中の一つの原因となったものでございまして、これにつきましては昨年の四月に発覚をして、そして八月までには必要な対応が行われたというものでございます。  御指摘のございました再処理施設の耐震安全性、これは大変安全確保上重要なことであるというふうに考えてございまして、これにつきましては過去の安全審査の過程でも基本的に確認をしてきたというものでございます。  さらに、耐震安全性の一層の向上ということを踏まえまして、一昨年九月に改定されました原子力安全委員会の新しい耐震指針というものがございます。この新しい耐震指針を踏まえても再処理施設の安全性が確保できるのかという点については、耐震安全性評価、バックチェックと言っておりますが、これを行うように事業者に指示をしておりました。この報告書が昨年の十一月に提出をされておるわけでございます。  今現在、この報告書について原子力安全・保安院におきまして確認を行っておるところでございますが、これにつきましては専門家の意見も聴取をし、また最新の知見というものもしっかりと反映をして厳正に確認を行っていくということにしておるところでございます。
  38. 主濱了

    ○主濱了君 じゃ、もう一つ端的に伺いたいんですが、活断層があるという主張があるわけですけれども、この活断層についてはどうなんでしょう。刈羽原発のときは、分からなかった活断層にかなりダメージを受けたというふうに聞いておりますが、これはいかがなんでしょうか。
  39. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 今の点でございますが、先月二十七日に日本地球惑星科学連合二〇〇八年大会という場がございまして、そこで研究グループの方の発表がございました。その指摘のことであると思いますけれども、ここにおきましてはデータとして新しいものが示されたようではないと思っておりますが、ただ、先生方の御指摘の詳細についてまだ十分把握しておりませんので、その内容についてのコメントは差し控えたいと思いますが、今申し上げましたバックチェックの評価というものについては、これは厳正に行ってまいりたいと思っておりまして、その際には専門家の意見の聴取ということも行うことにしております。今のような御指摘につきましても、指摘内容も含めまして最新の知見をしっかり反映をして確認をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  40. 主濱了

    ○主濱了君 施設そのものについての安全性ですね、どうもまだ、耐震の方は大丈夫だけれども、元々の活断層なんかもどうなっているのか、その関係がちょっとよく分からないということであります。  それで、ちょっと先を急ぎますけれども、活動の方でありますけれども、核燃料再処理施設は原発一年分の放射能を一日で放出をする、こういうふうな主張あるいは報道があります。これ、いかがでしょうか。
  41. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 御指摘の点でございますけれども、これは単純な比較をするのは適切かどうか疑問のあるところではございますが、その御主張というのは、原子力施設から放出される放射性物質の量を、これは単位はベクレルという単位が用いられるわけでございますが、その数字で単純に比較したものというふうに想像しておるところでございます。こういった異なる施設からの放出量は、施設によって考慮すべき放射性物質の種類等異なっておりますので、こういった多様性の違いも考えますと単純な比較というのは適切でないと考えております。  放射能の評価、放出放射能の評価というものは、放出によりまして一般の公衆がどれだけ影響を受けるのかということを評価することが重要だと考えております。再処理施設から放出される放射性物質につきましても、原子力発電所を含む他の原子力施設と同様でございますが、一般公衆への影響が年間一ミリシーベルトという線量限度というものがございまして、これを超えないように安全規制を行うということにしております。再処理施設の安全審査時には、再処理施設周辺の一般公衆の方が受ける線量につきまして、年間約〇・〇二二ミリシーベルトという評価をいたしておりまして、法令で定めます年間一ミリシーベルトの規制値を大きく下回った値であるということを確認しているところでございます。
  42. 主濱了

    ○主濱了君 よく分かりません、はっきり言って。  単純に伺いたいんですけれども、じゃ、今放出量と影響度合いと両方に分けてお話をされたというふうに思ったんですけれども、放出量は原発の一年分を出すんですか出さないんですか、端的にお答えいただきたいと思います。
  43. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) そのベクレルという単位で単純に比較するということ自体は余り適切でないと思うわけでございますが、それを前提といたしまして、六ケ所再処理施設と、原子力発電所もいろいろございますので、原子力発電所のモデル的なケースで試算したものとを比べてみますと、年間の放出放射能の量、これはベクレルで示されるわけですが、これにつきましては六ケ所再処理施設に比べますと約二けた多くなるという試算もございます。しかし、放出放射能によってそれが一般公衆に与える影響というものを評価いたしますと、ほぼ同水準になるという試算もございます。  いずれにしましても、一年間の一般公衆の線量限度に対して十分に低い値になっているということでございます。
  44. 主濱了

    ○主濱了君 分かりました。  二けた違うという、それだけ百倍以上の量が出ていると、こういうことになるわけですが、そういうふうな量が出されておりながら影響度合いは原発と同じあるいは基準よりもずっと下回っているという御説明でしたね。これ、どなたが確認してだれが判断したんですか、そういうふうなことになるということを。
  45. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 再処理施設の安全審査というものを行っておるわけでございますが、これは原子炉等規制法に基づきまして、事業者からの申請に基づき、これは当時、科学技術庁の担当になりますけれども、科学技術庁で安全審査を行い、さらに原子力安全委員会のダブルチェックを受けてこの評価を行ったというものでございます。
  46. 主濱了

    ○主濱了君 なかなか専門的なことで難しい問題なんですが、このことは当然、地元である青森県あるいは隣県であります岩手県や北海道、そちらの方には十分説明していますでしょうか。
  47. 平岡英治

    政府参考人(平岡英治君) 安全審査の結果につきましては、評価書その他公表されておるものでございますし、また地元への説明といったことも折に触れて行われているというふうに理解しております。
  48. 主濱了

    ○主濱了君 この問題、かなり専門的分野、そしてしかも放射能ということで我々素人には分からない部分もあるわけですが、今後とも、次は七月竣工と、こういうことですので、またその時期を見て伺わしていただきたいなというふうに思います。  それで、私の地元、三陸沿岸なわけであります。非常にここは国立公園、陸中海岸国立公園というのもありますし、それから世界三大漁場の一つでもあります。おいしいものがいっぱい捕れるんですよね、ウニとかアワビとかホヤ、それからワカメ、十一月にはサケが捕れますし、九月にはサンマが捕れると。非常にいいですね。それから、陸中海岸の中には「喜びも悲しみも幾歳月」のトドケ崎の灯台があります。そういったようなところでどうしてもこの地域は放射能で汚染されてもらっては困ると、このように私は思っております。  それで、様々な団体、当県でも活動していますけれども、様々な団体が切実な要望とか、それから再処理施設の廃止を含む反対運動を繰り広げているわけですけれども、漁場を守る、そして漁業を振興すると、こういう立場にある農林水産省としてどう対応するのか、その御決意を伺いたいと思います。
  49. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 現在、六ケ所核燃料再処理施設は本格的な稼働に向けて、先ほど来やり取りがございました、その安全面を確認しながらいろいろな試験が行われているというふうに承知いたしておりますが、当然のことながら、本格的な稼働に向けては慎重の上にも慎重に完璧を期してもらいたいというふうに考えているところでございまして、農林水産省としましては、漁場保全の立場から、関係者の皆様の心配しておられるその気持ちを十分受け止めまして、漁業者の皆さんが適切に漁業活動を営んでいくことができるように必要な調査を続けております。また、関係省庁と十分連絡をして、今後とも本格的な稼働に至るまでのプロセス、その後の経過も含めしっかりと注視してまいりたいと、このように考えております。
  50. 主濱了

    ○主濱了君 保安院の方からちょっと気になるような御答弁がありましてちょっとびっくりしたわけなんですが、これは、漁場を守る、日本の漁業振興を図ると、こういう立場から、場合によっては、あるいは必要に応じてこの核燃料の再処理施設を停止をすると、こういったような強い立場も持って臨んでいただきたいものだなと、私はこれは要望だけしておきたいと思います。  それでは次の問題に移ります。  次、森林のCO2の吸収源についてお伺いをいたしたいと思います。  皆さんもう既に御承知のとおり、日本の京都議定書における国際約束は六%で、そのうち三・八%が森林吸収源が分担をしていると、こういうことでございます。京都メカニズムが一・六%、それから、その他、このその他が実は国民であるとか産業界であるとかいろいろなものが入って〇・六%を減少すると。こういったような配分になっているわけであります。  国内産業とか、それから国民が分担する部分、非常に少ない。様々な配慮があったと思います。経済成長とか、それから私どもの豊かな生活、そういったようなものに対する様々な配慮があったとは思いますが、私はもっともっと産業界あるいは国民自身、自分自身も含めてですね、もっと、何といいますか、その生活自体を根本から変えていかなくちゃいけないんじゃないかな、そういう努力をしなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。  この三・八%を配分、担当する農林水産省としてどのように考えるか、お伺いをいたしたいと思います。──そうですね、まず環境省にお伺いをし、その後、三・八%を分担する農林水産省と、こういうことでお願いをいたしたいと思います。
  51. 谷津龍太郎

    政府参考人谷津龍太郎君) 御説明申し上げます。  森林による三・八%分の吸収量の考え方というお尋ねでございます。これは、国際交渉の結果、我が国に認められた上限いっぱいを充てているわけでございます。六%削減目標に大きな位置を占めているというのは御指摘のとおりだろうと思います。  一方、国内の排出削減対策を積極的また着実に実施すべきと、これは全く御指摘のとおりでございます。平成十七年に京都議定書目標達成計画をまず策定をいたしまして、その後、本年三月に全面改定を行って順次対策を強化しているところでございます。  現在、二〇一三年以降の新たな枠組みの国際交渉が進められております。また、昨年の美しい星50、また、福田総理の昨日の御発表に基づきまして、二〇五〇年に向けてより大幅な削減をこれから目指していかなければいけないということで、様々な施策を総動員いたしまして排出削減を強化すべしというのは御指摘のとおりであると認識しております。
  52. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) 京都議定書の目標でございますけれども、温室効果ガスの総排出量は、二〇〇六年には一九九〇年に比べて六・二%増えています。ですから、六%プラス六・二%をしなければいけないという状況になっておりまして、こういう状況の中で、六%のうち三・八%を森林吸収源でやるということは非常に大事で、何としてもここは死守をしなければいけないというふうに認識をしております。  そこで、農林水産省としては、決意だけではなくて、具体的にどうやってこれを達成するかということでございますけれども、以下のような施策を進めております。  美しい森林づくり推進の国民運動の展開、追加的な間伐材への地方債の適用、農林水産省幹部による全国キャラバンの実施、森林施業の集約化の促進、不在村森林所有者を対象としたふるさと森林会議の開催、林業就業者の確保・育成のための緑の雇用対策事業の実施、路網と高性能林業機械を組み合わせた低コスト高能率の作業システムの整備、林地残材や間伐材等のバイオ燃料への有効活用、そして市街地における森林吸収源対策等でございます。  何としても三・八%を達成するために、こうした施策、総合的に今推進をさせていただいております。
  53. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございます。  必死になって頑張ると、こういうふうなお話でございました。国際約束ですから、これはもう達成しないとちょっとまずい問題になるというふうに思っております。  しかしながら、この達成するための予算の獲得状況を見ますと、細切れにやっているんですよね。前は、たしか補正と当初予算を合わせて八百億であるとか、やっぱり補正と新年度合わせて五百億であるとか、こういったような細切れの予算措置をしていると。私は、それは非常に残念であります。この約束期間中に、二〇一二年の約束期間中にきちっとこの三・八%を達成するのであれば、これはちゃんと二〇一二年まで必要な額をきちっと確保しておく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。  それで、これは国の予算措置だけではなくて、本当は地方の負担の分であるとか所有者の負担の分であるとか、非常に幅広く気配りをしなければいけないというふうに思うんですが、取りあえずは、国の分についてはきちっと二〇一二年までの分を確保する必要がある。ですから、それを債務負担行為という格好で、掛かる費用を一二年まで出して、それをもうちゃんと確保しておくべきではないだろうかと、こういうふうに思うわけであります。  これは、何しろ先ほどおっしゃったように国際約束です。何としても実現しなければいけない問題であります。だったらば、そういうふうな手法を用いたらいかがかなと、こういうふうに思うんですが、これは主管であります環境省と、それから実際に予算要求をする農林水産省、それぞれに伺いたいと思います。
  54. 谷津龍太郎

    政府参考人谷津龍太郎君) 御指摘の吸収源対策に関する予算の確保ということでございます。これ、極めて重要だろうと思っております。  実際の予算につきましては、林野庁におかれまして所要の予算の確保ということをやっていただいているというふうに承知しております。環境省の立場から御説明を申し上げますと、私どもといたしましても、温暖化対策のための森林吸収量の適切な算定手法などにつきまして所要の取組を行っておるところでございます。債務負担行為をどうするかという点につきましては、事業を所管している立場ではないので、直接のお答えは避けさせていただければと思います。  よく、省庁連携の下で、全体としての予算の確保に努めてまいりたいと思っております。
  55. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) この森林吸収源対策につきましては、御承知のように二十万ヘクタール毎年追加的措置をしなければいけないということが分かりました。したがいまして、十九年度で、さっき委員指摘になりましたが、七百六十五億円、二十年度で五百四十六億円を措置させていただきました。  このほか、先日法案を通していただきましたけれども、今国会で成立をしました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法で、追加的な間伐については地方債の対象とする、元利償還に係る地方財政措置を講ずるということで、地方公共団体の負担軽減、平準化を実施してまいります。また、森林施業の集約化や作業路の作設に対する支援を通じて生産コストの低減を図ってまいります。また、間伐材の用途を拡大することの支援などで間伐の収益性を高めることで、実質的に個人負担の軽減につながる施策を講じてまいります。  先ほどの、平成二十四年まですべて債務負担行為でというお話でございますが、農水省としては今、二十四年まで一体幾らの予算が必要なのかという試算はさせていただいております。今後とも、森林吸収源対策が着実に実施されるように、財源の確保を含めて引き続き全力で取り組んでまいる所存でございます。
  56. 主濱了

    ○主濱了君 今年の一月の十八日から国会始まったわけなんですが、ちょうど私、APPFの会合がありまして、出席をさせていただきました。そのAPPFの中で、この地球温暖化防止についての日本の主張をさせていただいてきております。この中で、やはり森林吸収源対策であるとか様々なことを申し上げてきましたので、これは是非ともよろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、残された時間で、水田・畑作経営安定対策についてお伺いをいたしたいと思います。  はっきり言っていいのかどうかあれなんですが、農家を回りますと、どうも品目横断ではもうなかなかやっていけない、難しいと、こういう率直な声を聴いてまいりました。多分、農林水産省の方でも様々な調査をしてそういう声は吸い上げているというふうに思っておりますが、端的に、今回、水田・畑作経営安定対策に変えた、多分内容も変えていると思います、名前だけではなくて内容も変えていると思います。具体的に、実は、私、今まで口悪く、経営規模による切捨てであるとか、それから、対象農作物による切捨てであるとか、過去実績による切捨てであるとか、こういうお話をさせていただいたんですが、その経営規模、対象農産物、さらには過去実績、この点について、三点に絞って改正点があればお知らせをいただきたいと思います。
  57. 岩永浩美

    ○副大臣岩永浩美君) 委員指摘のように、去年までの品目横断経営安定対策、大変評判が悪かった。正直に申し上げて、図らずも私は去年の八月から農林水産大臣の職をいただいておりますが、委員御承知のとおりに、委員のときには対政府に対して厳しい指摘をしてきたことは御案内のとおりでございます。そういう中にあって、去年からずっと私たちはその改正点についていろいろな話をしてまいりました。  経営規模要件については、当初から、原則の四ヘクタール、二十ヘクタールという規模要件に加えて各種特例を設けておりました。しかし、地域の実態に即してきめの細かな運用を図るためには、これらの特例に加えて、地域農業の担い手として周囲から認められ、熱意を持って営農に取り組む人にとって本対策への加入の道を開く必要があるとの生産現場からの強い要請がございました。  去年の見直しにおいて、新たに市町村特認制度を設けることにいたしました。これは、特認として知事特認ということをやっておりましたが、昨年一年間の実績を見て、知事特認の実例が一件も上がってきませんでした。要するに、実態の把握は、市町村長が実態の把握はできるということで、知事特認から市町村長の特認で了承するということにいたしたものであります。具体的には、地域の担い手として地域水田農業ビジョンに位置付けられた認定農業者又は集落営農組織であって、市町村が本対策への加入が相当であると認めるものについては加入できるようにいたしました。  水田・畑作経営所得安定対策の対象品目については、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であること、それからほかの農産物と組み合わせた生産が広く行われていることという法律の基準に従って、現在は米と麦、大豆、てん菜及び北海道のでん粉原料バレイショなどを対象としているところでございます。今回、その見直しは行っておりません。これは以前からそういうふうな形でやっておりました。  また、過去の生産実績に基づく支払、いわゆる固定払いについても見直しを行っているものではありません。過去の生産実績がない場合の支援については、固定払いとは別の仕組みではありますが、新規参入者への対応、経営規模の拡大や生産規模強化への対応によって麦、大豆などの作付けを拡大する場合には、担い手経営革新促進事業という新しい事業によって経営の安定が図られる水準の支援を行っております。二十年度以降も引き続き同様の支援を行っていきます。
  58. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  様々な施策を講じて、目的とするところはやっぱり元気な農家、それによる日本農業の再生であるというふうに思っております。その指標になるのが私は生産農業所得ではないかというふうに思っております。残念ながら、この生産農業所得はかなり低下傾向にあります。今、平成十八年度で見ますと、三兆二千億までずっと下がってきているということでございます。  この生産農業所得、様々な施策を講じた結果、目標年次の平成二十七年度、これは生産農業所得どれぐらいと見込んでいるのか、これをお知らせいただきたいと思います。
  59. 岩永浩美

    ○副大臣岩永浩美君) この件については、農業農村基本法の二十一条においては、他産業並みの労働時間で他産業従事者と遜色のない水準の生涯所得を確保できる効率的かつ安定的な農業経営を育成して、これら農業経営農業生産相当部分を担う農業構造を確立するということを目標にいたしております。その中で、農家と農家以外の世帯の所得水準については、生活の仕方が異なっておりますから単純に比較することはできませんが、賃金構造基本統計調査などに基づいて一定の前提の下に試算をしていただくと、他産業従事者の年間所得として五百三十万が一つの目安に今なっております。それに対して、平成十八年度の専業農家の一戸当たりの農業所得、個人じゃなくて一戸当たりの農業所得は四百二十九万円、総所得は五百四十八万円となっております。  それで、このような一定の所得水準を確保し得る担い手の育成に向けて、水田・畑作経営安定対策の各種施策を今それぞれやっているところでありますが、今後も、営農の形、地域の特性に応じた担い手への様々な支援を積極的に推進することによって、若い農業後継者にとって他産業並みの所得が確保できるように努力をしてまいりたいと思っております。
  60. 主濱了

    ○主濱了君 ありがとうございました。  所得という面からお話をいただきました。  私は、農家の所得の総計である生産農業所得、要するにこれを多分日本の全国の農家が分け合っているというふうに思うんですが、これが全体として低下をしてきていると、これを問題にしているわけなんですよ。これを底上げしないと個々の農家が豊かにはならないんだ、こういうふうに思うわけであります。ですから、その生産農業所得が今三兆二千億まで下がってきている、これに一兆円を継ぎ足して例えば四兆円台に上げると、こういったような大胆な本当は施策が必要ではないかなというふうに思っております。  やはり個々の農家に頑張ってもらうためには、先ほど来言っておりますが、コストが掛かります。このコスト、私どもはしっかりとつぎ込んでいく必要があるというふうに思っております。具体的には、農家への直接支払の交付金を増額する。この農家への直接支払の交付金、交付金自体は要するに生産農業所得にカウントされるんですよね。御存じのとおり、この生産農業所得というのは、農業総産出額に所得率を乗じた一つの額があります。それに対して、補助金類、交付金類ですね、中山間などの交付金類が加わったものが農業生産所得になるというふうに思っております。  ですから、先ほど申し上げましたように、農家の所得の総計であると、私はこういうふうに理解しているんですが、それを上げないと個々の農家が豊かにはならないんじゃないか、そういう施策を講じていかないと個々の農家が元気にならないんじゃないか、このように思っているところであります。  そして、なかなか予算上厳しい、あるいは、先ほど平野委員からお話あって大臣から答弁があったわけですけれども、WTO上も配慮しなくちゃいけないと、こういったようなお話もあります。しかしながら、WTO上はAMS上限ありますね。このAMSはかなり余裕があるんですね、今、日本は。現時点におきましては、AMSの約束水準の一九%しか使っていないと。ほんの一九%しか使っていない。一言で言いますと、WTOに顔を向けている。でも、今の日本の農業の実情というのはそうじゃないんですよ。WTOなんかに顔を、なんかにというのはちょっと失礼なんですが、そちらの方に顔を向けることも必要なんでしょうが、それ以上に、今の大変な日本の状況を救うためには、この余裕額を活用してもっと農家を支援する必要があると、このように思います。  それから、ドーハ・ラウンドの方では更に約束水準を引き上げると、こういったような動きはありますけれども、私は今の日本の農業を見れば、そういうふうなところは、どちらを取るかといったらば、やっぱり日本の農業を支援する方策を取るべきである、このように私の思いを述べさせていただきまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  61. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 午後一時まで休憩します。    午前十一時四十五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  62. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  63. 一川保夫

    一川保夫君 御苦労さまでございます。民主党の一川保夫でございます。  この国会、実質これが最後だというふうにお聞きしましたけれども、この国会におけるこの委員会でのいろんなやり取り、それから我々民主党が一生懸命勉強しながら提出しました農業者戸別所得補償法案というものを中心にしながらいろんな議論があったわけでございますし、そういう面では、今日、食料を取り巻くいろんな話題もたくさんございまして、農業に従事する人はもちろんのこと、一般の消費者も含め、そしてまた国民全体にやはり農業政策食料政策というものについて非常に関心が高まってきている時代ではないかなというふうに私は思います。そういうことからすれば、今この時代こそ、我が国農業政策というものをしっかりと点検をして、見直しを掛けるところはしっかりと見直しを掛けていくということは非常に重要な時代ではないかなというふうに私は思っております。  そこで、私自身も週末になれば田舎に帰って農村地域を歩いたりあるいは漁村地域を歩いたりということをよくやりますし、またそういった方々と話をすることも割と好きな方なんですけれども、また一方では、最近の世相なり日本の社会というものを見たときに、最近でも報じられましたように、二年ぶりに我が国の自殺者が三万人を超えるんじゃないかというような報道がございました。その中身を見ると、意外と農村地域をたくさん抱えているような県で割と自殺者の比率が高いというようなデータもそのとき出ていたような気がするわけですし、また一方では、大都会でも当然自殺者の増加率が増えてきておるわけですけれども、そういうような報道があるということとか、あるいはまた、先日ございましたような秋葉原におけるああいう無差別的な殺人事件、あるいはまた身内内のあってはならないような殺人事件というのもこの世の中非常に目立ってきておるわけです。  一方、私自身もいろいろと田舎の方を歩いてお年寄りの方々と話すると、今日、後期高齢者医療制度ということが特に話題になっておりますけれども、私は、基本的にあらゆる分野の政策が、高齢者に対して非常に冷たい政策が動いているんじゃないかという感じがいたします。そういう中で、これまで戦中戦後、我が国の復興、発展のために大変努力してきたお年寄りの方々が、どうも今の時代、年配に対するいろんな敬意だとかそういう思いやりが欠けているんじゃないかと、逆に邪魔者扱いされているんじゃないかというようなことすら発言する、そういう農村地域の老人の方によくお目にかかります。  そういうふうなことをいろいろと考えながら、私なりに総括的に今日は大臣基本的な姿勢を聞くわけですけれども、これからの農業政策というのは、これまでのような基本的な認識をもうちょっと改める中で新たな発想で物事を考えていかないと、日本という国そのものが駄目になるんじゃないかなという感じすらするわけです。私が今ちょっと例示的に挙げましたようなこういう世相上の出来事も、こういう分野に対して、私はやはり農業、農村というそういう産業なり地域が、そういう人間の心をいやすとか、あるいはいろんな人間関係を良くするという面でまだまだ役割を果たせるんじゃないかなという感じがするわけです。  それが最近、どうも農業、農村を取り巻くいろんな政策も、市場原理主義といいますか、経済効率的なそういう流れがずっと、そういう路線で歩んできておるわけですけれども、それが今日、日本という国そのものを危うくさせている一つの要因ではないかなという感じがするわけです。  我々小さいころは、学校の行き帰り、小川に入って遊んだりいろんなことをしながら、また地域の伝統文化と接する中でいろんな経験をしてきておるわけですけれども、そういうことすら地域社会としては維持できなくなってきておる。  そういうことをいろいろと考える中で、私は大臣基本的なところで幾つかこれからお尋ねしたいというふうに思いますし、そういう中で大胆にしっかりと政策の転換を図っていただければいいわけですけれども、我々も政治家でありますから、これからいろんな選挙を通じながらそういうことを国民に訴えて、どちらを選択するかという時代は当然来るわけですけれども、本日は、まず基本的なところで幾つかお尋ねしたいなというふうに思っております。  まず最初に、私は、やはり最近食料をめぐる世界的ないろんな事情について、その専門的な方々からも相当厳しい警告的なお話はよく聞かされます。一般の農業に従事している人、あるいは農村地域に住んでいる方々も、今、日本という国は飽食の時代、いろんな面で食生活は若干乱れておりますけれども、それに不自由するということはまずないわけでございますが、世界的には中長期的には食料不足は間違いなく来るだろうというようなことは言われております。  また、最近の食料とエネルギー源とのいろんな競合とか、あるいは国対国でも小麦だとか米を中心としていろんな争奪戦が起こってきているんじゃないかとか、あるいはまた隣の中国又はアジアでは大国であるインドなんかでも、人口は世界全体の六十五億とか六億とか言われていますけれども、そういう中でもその両国で相当のシェアを占めているというのは事実でございますし、そんなことをいろいろと考えますと、日本の、我が国農業政策をこれから動かしていくためには、世界的なそういう食料を取り巻く厳しい情勢変化というものをやはり我が国農業政策の中にもしっかりと取り入れていく、そういうことは大変大事なことだと思います。  大臣も、いろんな国会の中のやり取りの中では、先ほど来もいろんな国際会議に精力的に出られていろんな発言はされておるという報告がありました。それはそれで非常に結構なことなんですけれども、そういう一つの流れというものを先取りしながら、我が国農業政策にそれをしっかりと反映していかないと、後でそれに立ち遅れてしまっては何にもならないというふうに私は思います。  日本の国内農業政策は、御案内のとおり、新しい今の基本法に基づいての基本計画というものを五年ごとに見直しを掛けてやっていらっしゃるわけですけれども、こういった基本計画も五年ごとにやるということは、その間のいろんな農業食料、農村地域を取り巻く情勢の変化をしっかりととらまえて、それをその計画に反映して間違いのない農業政策を実行すべきだというふうに当然なるんだと思いますけれども、私は今の動いている基本計画には、先ほどちょっと触れました世界のそういった厳しい食料をめぐるいろんな状況変化というのは今の基本計画の中にはバックグラウンドとしては入っていないんじゃないかなという感じがするわけです。  そうしますと、五年を待たずして、やはり今の農業政策を今の国際的な食料をめぐるいろんな事情に合わせて、なおかつ我が国の農村地域は非常にいろんな面で悩んでいる、過疎化、高齢化が大変著しく進んできておるわけだし、場所によっては限界集落を超えてもう廃村になっているところもあるわけです。私の地元である能登半島の地域でも、県が調べたところによりますと、十年後も引き続き農業を継続しますかという問いかけに対しては、はっきりとやりますといったのは三割ぐらいしかなかったというふうにも聞いております。  そういうようなことをいろいろと考えますと、やはり我が国の今農業、農村、食料を取り巻くこういうもろもろの政策を是非、農林大臣は農林省経験豊かなわけですから、しっかりと見直しを掛けて一つの方向付けをする非常に重要な時代だというふうに私は思うんですけれども、大臣の御所見を伺いたいと、そのように思います。
  64. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員がおっしゃられますように、世界穀物中心とした食料需給というのは様変わりをしてきております。これが一過性のものなのか、それとも構造的な要因としてなお今後も中長期に続くものなのかということについてはいろいろ論議がございますけれども、我々は、これは一過性のものではなくて今後もそういう、大きな転機を迎えているという認識でおるわけでございます。  そういうような基本的な世界食料需給の変化というものを踏まえ、また一方、我が国の、委員が御指摘になりましたように、高齢化が更に一層進んでいく、そして過疎化が進み、地方が大変疲弊をしていくというような状況があるといったそういう変化というようなものをしっかりととらえて、委員がおっしゃるように、私はやはり、ここで日本の農業基本的な政策を改めて検証をした上で、これからの先を展望した農業政策というものをつくっていかなきゃいけない、そんな思いでございます。  その一つとして、農政の改革の中の基盤であります農地制度については、どうしてもこの秋までには農地制度の改革に見通しを立てて私が改革を提案をすると、そして多くの議論をいただこうと、そんな思いでおりますが、これは農地制度に実は限らないと思います。  そういうことを、生産基盤である農地の制度の在り方というものを大幅に思い切って見直していくということを念頭に置きながら農業政策の見直しを掛けていかなきゃいけないと、こんなふうに思っております。
  65. 一川保夫

    一川保夫君 是非、そういう問題意識を持っていただいて、見直すところは大胆に見直しを掛けていただくということも大変重要な時代だというふうに私は思います。  農地制度は農地制度として今いろんな分権の話題の中で議論されているというふうに聞いておりますけれども、農地の荒廃というのはある面では非常にずさんな面もありますから、そこはそこでしっかりと農地を管理する、やはりそこが我が国のこれからの農業生産の大きな基盤でもありますから、間違いのない格好に是非持っていきたいなという感じはしております。  そこで次に、ちょっと話題は、これまでの農業政策の中で経営規模の拡大あるいは効率化を進めるという一つの路線の中でずっと動いてきておるわけですけれども、そういう市場原理主義的な動きについていろんな方々、もう政治家の中にも、そこはちょっと今までやり過ぎたという面で見直すべきだという意見もだんだん聞こえるようになってまいりました。  私自身もかねてから言っておりますように、今の農政が進めようとしている、ある一定規模以上の部分について施策を集中していくというようなことについてはやはり問題が多いというふうに思いますので、そこの点で幾つかお聞きするわけですけれども、私自身も地元では大規模農家の皆さん方と時々意見交換することに努めておりますが、大規模な農家は農家として非常に悩んでおります。  それは、米価そのものが下落してきているということもありますし、転作物を相当大規模に作付けしなきゃならないという問題もあります。それからまた一方では、消費者ニーズというのがいろいろと聞こえてくるわけだけれども、大規模な農家は、じゃそういうものにフットワーク良くこたえることができるかといったら、そうはいかない。そういう面の悩みもあるように聞いておりますし、一つの農村社会の中で大規模な農家が、じゃその集落全体の皆さん方と仲良くうまくいっているかといったら、どうもそこはうまくいっていないケースが割と目立つんじゃないかという面の一種の疎外感というものを持っているような感じもいたします。  そういう面では、大規模な農家を育成していくというようなその姿勢は、姿勢というか農政の基本的な方向付けというのは全然反省しなくていいのかどうか。そこは大臣どう思いますか、大規模農家を志向するということについては。
  66. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) これは作目によって違うと思うんですよ。米は全体の総生産の中で今二二%ですよね。あと、野菜類が二五%ぐらいになっているでしょう、野菜は。あと畜産、それぞれの作目別に違いますが、果樹。それぞれが非常に多様な農業が今進められておりますから、大規模化といいましても、例えば露地野菜にしても、野菜類について言えばそう大きな規模というものは経営的にも有利性が出てこないということがあると思うんですね。畜産についてはかなり、大動物についてはかなり大きな、肥育牛も酪農も相当大きなもう規模に達しているわけでございます。  ですから、大規模によってメリットの出るような作目の経営については、やはり規模拡大によって経営効率を上げていくというのは、これはやらねばならないことだというふうに思うのでございます。  その中で、委員がおっしゃられているのは稲作の農家であろうかと思います。稲作農家は、農業の総産出の中に占める比率は先ほど言いましたように二二%であります。金額にして一兆八千億。これが、農業を主にしている人が三八%で、準主業の農家が二四%、副業的、本当に副業的な農業をやっている人が三八%、約四割弱あると。こういうような作目、農業経営というのは米以外はないんですよね。米以外はほとんどないんです。ですから、それ以外の、米と米以外のものとに分けた上で経営の在り方というのを立てていかなきゃいかぬと、こう思うんですね。  だから、競争的な条件でそれはいかがなものかと、こういうふうなお話もあろうかと思いますけれども、やはり私は、野菜にしても果樹、花卉そして畜産にしても、そういう競争的な経営改革を進めた結果として今のような状況ができ上がっていると。決して楽なことではありませんけれども、これはこれでやはり成功してきたものだというふうに認識いたしております。  米については、やはり土地利用型の農業、特に日本の稲作について言えば、なかなか規模拡大が難しい、種々の条件で難しい。しかし、やはり方向としては、単一経営で規模拡大をするか、あるいは集団的に規模拡大をしていくのか、その集団のつくり方も、言わば法人経営で、家族的な法人経営でやっていくやり方、いろいろな様々なやり方ありますが、やはり規模拡大は進めていかないと日本の米、水田稲作経営というのは私は発展しないというふうに考えております。
  67. 一川保夫

    一川保夫君 今まで進めてきたやり方は間違いないというような大臣の答弁ですけれども。  私は、今サラリーマンの世界でも団塊の世代が定年退職を迎えて大変な状態、大変な状態というか、いろんな面の影響があるわけですけれども、そういう方々が農業に戻る、農村に帰るというようなこともある程度目立ちつつあるわけです。  私は、やっぱり小規模、要するにほかに所得がある兼業農家の方々が、割と農業が好きだから規模は小さいけれども農業をやりたいという人もたくさんいらっしゃいます。そういう面では一種のホビー農業というふうにも言われていますけれども、私はやはり小規模専業農家みたいな人がこれから増えてくるんじゃないかと思うんです。それは、専業という言い方がいいのかどうか分かりませんけれども、別に今体を動かしている仕事は農業しかないということであれば、ほかからいろんな所得があったとしても、小規模専業農家的な方がこれから農村地域で増えてくる可能性というのは十分あるような気もします。  私は、農外所得の割と多いそういう兼業農家というのは、我が国の農政としては別に排除する必要はないと思うんです。農林省の投資額としては、その人たちにそんなに大きな投資額を掛けなくても農業をやっていただけるわけだし、生計は別の部分から入ってくるわけですから、専業的に農業をやるという人に比べれば、農業関係の投資額はそう大きくならないんじゃないかなという感じすらするわけだし、また高齢化社会の中ではむしろそういう方々を、しっかりと農村社会で高齢者の方々を受け入れていくということも非常に大事なことではないかなというふうに思います。  我が国の工業の世界を見ますと、一般のやっぱり工業分野では、大企業もそれは当然牽引車としてはありますけれども、ほとんどは中小の企業がそれを支えているのが日本の工業です。そういうことを考えますと、日本の農業も、中小の農家があって、そしてそこが大中小の何となくバランスの取れた地域社会の中で農業をやっていくということは、私は間違った方向じゃないというふうに思いますけれども、大臣はその点いかがでしょうか。
  68. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 私もそういう様々な形の農業のかかわりというのはあると思っております。  農村地域で、多様な農業の在り方として、小規模の農家とか兼業の農家とかあるいは高齢農家であっても生きがいを持って農業に取り組むというような人、あるいはまた自給的農業に取り組んでいくというような人たちがその地域社会の中でいるということを排除するものでは全くありませんし、基本計画の中の見通しにつきましても、そういう自給的農家というのは四十万ないし七十万ぐらいは二十七年になっても存在するということを前提に政策を組み立てているところであります。家族経営が三十三万ないし三十七万、法人経営は一万、集落営農は二万ないし四万というようなことを想定しまして、そういういろいろな農業者は、これらの集落営農の構成員になるとか、あるいは法人経営の中で補助労働をやりながら土地を出資するというようなかかわり合いもあるでありましょう。そういうような中に、自給的な農家を自給的農家として、これが地域社会の中でそれなりの役割を果たしていくことも想定をいたしておりまして、これらが大体今申し上げたように四十万ないし七十万というふうに想定しています。  ただし、もう農業からリタイアをすると、しかし土地は持っていたい、貸しているという土地持ち非農家ですね、土地持ち非農家というのは実はもっと増えていくだろうというふうに想定いたしておりまして、現在は土地持ち非農家は百十六万戸と見ていますが、土地持ち非農家の方は、百五十万ないし百八十万ぐらいまでは土地持ち非農家であると。しかし、この人たちも村に住んでいてくれるということは、補助労働をやる、提供するということもあるでしょうし、あるいは土地を提供をした中でその経営に参画をするという方もおられるだろうと思うんですね。  そういうような多様な形で農村、これは水田地帯が多いんですけれども、水田地帯でない果樹地帯なんかについてもあり得ることだというふうに考えております。
  69. 一川保夫

    一川保夫君 そういう多様な、規模についても大中小のいろんな方々が混在する中で、農村社会、農村地域が維持されていくということは私は自然なことだろうと思いますので、そういった面に対する施策の配慮というものもあってよろしいんじゃないかなというふうに私は考えております。  そこで、最近の話題の中にもう一つは象徴されますけれども、町村官房長官が米の減反政策を見直したらどうかということに言及されました。これについて、その当日だと思いますが、農林水産大臣はマスコミのインタビューに対して、官房長官の真意を聞かないと分からないというような趣旨のことの発言があったと思いますが、真意は聞かれたのかどうか。  そしてまた、福田内閣としては、この減反政策といいますか生産調整の政策、米の政策について、そういった閣内の不統一があるのではないかという感じすらするわけですけれども、そこはいかがでしょうか。
  70. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 私は、町村官房長官に真意を確かめまして、お話をしました。その官房長官の気持ちというのは、その後も記者会見などでいろいろお話ししていますけれども、官房長官は、世界的に穀物の需給が逼迫して価格が高騰している中で、我が国農業政策についても抜本的な見直しが必要な時期に来ているんではないかと、そういう認識で物を言ったものであり、我が国生産調整というものが休耕を義務付けているようなEUの減反というものとは違うんだと。休耕を義務付けているんではなくて、主食用米の消費が減少しているので、供給過剰になりがちな主食用米から麦、大豆、飼料作物といった自給率の低い作物だとかに転換を進めているということも承知していると。しかし、水田というものをもう少し積極的に評価してはどうかという気持ちがあると。それは、米粉という加工用の米の生産をするとか、あるいはえさ用の米の生産をする、あるいは米の粒ではなくて、ホールクロップサイレージのような形で水田を有効に利用していくというようなことを積極的に進めてはどうかというような意識であるということを私は確かめまして、その限りにおいては私と全く意見が一致しているというふうに思っております。  そして、福田総理のお話がございましたが、総理も、この二十七年目標の四五%というのはなかなか達成できないで大変だというのは分かるんだけれども、しかし国民の願いというのは、いろいろ様々あるけれども、やはり半分以上ぐらいは国内農産物でカロリーが満たされるようなことにならないものかというような思いを持っておられるわけであります。  そういう中で、平野委員とのやり取りもございましたけれども、それをいつをめどにして組み立てていくかということがあるんですけれども、我々としては二十七年に四五%ということを決めて政策展開をしてきているわけですから、二十七年は二十七年という一つ目標の中でどこまで上げられるのか、四五%以上上げられるのか上げられないのかということの検討をすると同時に、しかし基本計画の中にありますように、願わくば過半を自給できるようにしたいという方向が出ていますから、もう少し先の年次までレンジを増やして目標を、目指すねらいとしてはもっと高いものが描けないかということを私は考えているところでございます。
  71. 一川保夫

    一川保夫君 町村官房長官も本音的なところでちょっと発言があったように私は推測するわけだけれども、基本的には、やはり今日の日本の農業政策を抜本的に見直したらどうかという発言が出るぐらいに、私はやはり与野党を超えてそういう問題意識を持っていろいろと議論をすべき、そういう時代に来ているというふうに思いますので、引き続きまた当委員会等でそういう議論が深まればいいなというふうに思っております。  そこで、もう一点、ちょっと時間がなくなりましたけれども、大臣の御所見を伺っておきたいんだけれども、私は最近、農村地域を歩いて思いますのは、農村というのは、その時点その時点のキャッシュフローというものは確かに少ないけれども、それなりのやっぱり先輩諸氏の御苦労されてきたストックというものが十分あると思うんです。ですから、その農村社会、農村地域というものをもう一回見直しを掛けて、その地域に住んでいる人はもちろん、そこで生まれ育った人間ももっとその地域に誇りを持って頑張っていただけるような政策というのがあってよろしいんじゃないかなというふうに思います。  そういう中の社会資本的なストックの一つに私は農業用水というものがあるような気がします。それは、戦後、引き揚げてきた方々が本当の小さな渓流をせき止めて水を引っ張って、それをずっと山腹に小さな水路を造って耕してきたという歴史がありますけれども、今そういうような小さな施設はほとんど維持管理はされていなくて、ほったらかしというのが現状です。  私は、それは一つの例でございますが、平野部の農業用水というのはその時点で、その場でなくなってしまう用水じゃないと思うんです、確かに蒸発するものはありますけれども。それは、地下に還元をされ、やっぱり下流域を潤すということにも当然なるわけだし、潜在的な農村の資源としては、この農業用水というもののネットワークといいますか、この仕組みというものをやはりしっかりと維持管理しながらそれを継承していくということは、何となく農村地域に潤いを持たせるという面では非常に大事な施策じゃないかと思うんですけれども。  まあ、最近のいろんな仕事を見ておりましても、どうしてもやっぱり大規模な方向に志向しながら物事が進んでいるという面では、そういう先輩の皆さん方が鋭意築いてきたいろんな資産がだんだんだんだん継承されないままに農村社会が崩壊していくようなことを心配するわけですけれども、その点について大臣の御所見を伺っておきたいと、そのように思います。
  72. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員がおっしゃられましたように、日本の農業の特徴というのは、やはり水利システムがしっかりしているということだと思います。これはもう千年、千五百年、本当に我らの先祖が営々として造り上げてきたものでありまして、その過程においては、いわゆる水争い、水紛争というようなこともございました。しかし、みんなでその地域が水路を引き、そしてそれを維持管理して今日まで来たという長い歴史があるわけでございます。これは、まさに社会資本そのものだと私は考えております。そのシステムを十分使いこなせるような、生かしていけるような、そういうことが大事だというふうに思うのでございます。  この水利の施設というのは、ただ単に今言った農業生産を支えるという基本的な施設であることは当然でありますけれども、同時に、委員の地域もそうだと思いますけれども、このことが洪水を防止したりあるいは水と親しむ空間というものを造り上げたり、いろいろなそういう、生産と直接かかわらない、あるいは憩いの機能を持っていたり、いろんな機能を持っているというふうに思うのでございます。  したがって、大規模な公共性の高い農業水利施設は、国によって直轄管理をしたりあるいは都道府県や市町村の管理、いろいろあるんですけれども、中小規模の農業施設につきましては、施設の定期的な整備、補修に対して助成をするとか、施設の管理技術に対する指導について指導員を助成するとか、あるいは既存施設の有効利用を図るためのストックマネジメントに取組をすることを進めるとか、様々な施策を講じているわけでありますけれども。  近年の農村の高齢化とか過疎化の進展の中で、これらの水路などの施設の維持管理というのは非常に大変なことになっているということは承知いたしておりまして、そういう資源を適切に保全するというための地域の共同活動を支援すると。委員も御承知の農地・水・環境保全対策というものを十九年度から実施することにしたわけでございます。もちろん、これをもっと拡充すべきであるとかいろいろな御意見もあろうと思いますが、方向としては、やはり地域共同の活動というものを支援をしながらこの農業水路というものを有効に活用していくような、そういう社会システムというものを大切にしていかなきゃいけないと、こんな思いでいるところでございます。
  73. 一川保夫

    一川保夫君 どうもありがとうございました。
  74. 山田俊男

    山田俊男君 私は、地球的な規模で食料の確保、これが大きな課題になっているときに、当然これは我が国についてもそうでありますが、その基盤になっております農地の問題につきまして本日は質疑をさせていただきます。  当委員会の冒頭に、若林大臣FAOサミットにも御出席いただいて大きな役割を果たしてきてもらっております。福田総理も御出席になられて、食料自給率向上の問題であったり、さらには、これは断じて止めなければならないというふうに思いますけれども、食料輸出国を中心とします輸出の規制の問題について、さらには、これも食料生産国を中心にします食料とエネルギーの争奪の問題、これらについて総理も的確な提案をしてきてもらっているわけでありまして、今後ともこれらの取組を本当に強めていく必要があろうかと、こんなふうに思います。  そんな中で、この食料の安定確保ということに欠かせない基盤であります農地の扱いについて、最近時、二つの動きがあります。一つは、地方分権推進委員会におきまして、これまで農林水産大臣の権限でありました四ヘクタール以上の農地の転用の権限について都道府県知事への移譲の問題が出ているわけでありますし、さらには、もう一つは、経済財政諮問会議におきます民間側委員の提案でありますけれど、農地の利用については基本的には自由にしようと、しかしその一方で、農地の所有についても、農業生産法人の要件緩和という観点で農地の所有についても弾力的な規定を入れていくという提案になっておるわけでありますけれど、この二つの提案が一緒になって進んだときに、本当に大事な我が国農地は守っていけるのかと、こういう問題意識であります。  そこで、なおこれらのことについて敢然と戦っておられます若林大臣に対しまして、大変高く敬意を表する次第であります。  さて、質問でありますけれど、地方分権委員会では、まちづくりの一環として転用権限の知事への移譲を求めておられるわけでありますが、御案内のとおり、もう我が国は昭和四十三年に都市計画法を導入して、その下に都市計画地域を定めております。これは、中には市街化区域として十年以内に転用を計画的に進めていこうという地域もあるわけでありますが、その一方で、市街化調整区域、調整区域という言い方が分かりにくくて、市街化を少し待つ区域としか読めないわけでありますけれど、しかし、規定の解釈としましては市街化を抑制する区域ということのようでありますけれど、その規定。さらには、線引きをしないまま非線引きの、しかし非線引きであればわざわざ都市計画区域というふうに言う必要はないというふうに思いますけれど、非線引き都市計画区域というのを設定されているわけであります。  一方、翌年の、一年遅れて、一年遅れた経緯までは十分勉強しておりませんが、一年遅れて農振法が制定されて、その上で農用地区域並びに農振区域の設定がなされたわけでありますけれど、その都市計画区域と農振区域は多く重複しているところがあります。  この都市計画区域の理念と、それと農振法におきますこの理念、これがどこかで相克しているんじゃないかと。そのことが、農地の扱いについて大変あいまいといいますか、もう少しよく分からない。そして、現状の多くの農地転用を始めとする農地利用についての混乱を生んではいやしないのか。こういう問題意識の下にまず質問したいわけでありますが、農水省の中條局長に御質問しますけれど、この四十三年の都市計画区域設定以降、市街化調整区域、市街化区域、さらには非線引き都市計画区域の中で一体どれだけ農地の転用があったのか、お聞きしたいと思います。
  75. 中條康朗

    政府参考人(中條康朗君) 農地の転用面積についてのお尋ねでございますが、ちょっと手元に累積の面積はないんですけれども、平成十八年度の面積はございますので御紹介を申し上げたいと思います。  全国の農地転用面積でございますけれども、平成十八年度で約一万七千ヘクタールとなっております。そのうち、委員指摘の市街化区域内の農地転用面積は四千七百ヘクタール、約二八%になってございます。また、市街化調整区域内の農地転用面積につきましては四千ヘクタール、二四%となっております。非線引きの都市計画区域内の農地転用面積、これにつきましては四千ヘクタールということで、約二四%となっているところでございます。
  76. 山田俊男

    山田俊男君 そうしますと、まさに市街化を抑制すべき調整区域、さらには、それこそ非線引きの農村地帯と思われる地域においても農地の転用が進んでいる実態が分かるわけであります。  さて、四十四年から実施しました農振法、まずこれは、農用地区域においては農地の転用は極力制限して、そしてきちっと農地の確保を図ろうという理念であるわけでありますが、都市計画法の理念とそれと農振法の理念といいますか、これがきちっと調整が進んでいるんでしょうか。どんなふうにこれ調整を図ってこられたのか、そのことをお聞きしたいと思います。
  77. 中條康朗

    政府参考人(中條康朗君) 農振地域の設定と都市計画の調整についてのお尋ねでございますけれども、委員指摘のとおり、国土が狭小な我が国にありましては農業的土地利用と非農業的土地利用との調整に留意する必要があることから、農用地区域の設定に当たりましては都市計画制度との適切な調整を図ってきているところでございます。  具体的に申し上げますと、市街化区域あるいはその用途区域につきましては農業振興地域に設定しないという一方で、市街化調整区域それから用途地域外につきましては、先ほど委員指摘のように、積極的に農業振興地域に設定をいたしまして、これらの地域内の優良農地について農用地区域に設定しているところでございます。  また、計画的な市街地整備のために、農用地区域内農地を市街化区域へ含める必要が生じた場合には、市街化区域内において他に代用する、代替する土地がないかどうか、あるいは農地の集団化に支障を及ぼすことがないかどうか等々につきまして確認いたしまして、集団的農地については極力市街化区域に編入されないよう慎重に対応しているところでございます。  一方で、市街化区域内におきましては、計画的な市街地整備の見込みがないことから市街化区域内の土地を市街化調整区域に編入する場合には、当分の間、営農が継続されることが確実な農地については農用地区域へ編入するように努めているところでございまして、今後とも、農用地区域の設定に当たりましては都市計画制度との適切な調整を図りまして優良農地の確保に努めてまいりたいと、このように考えております。
  78. 山田俊男

    山田俊男君 それなりの調整の努力をされているという事情は分かりました。  ところで、大規模商業施設の設置についてお聞きしたいわけでありますが、この大規模商業施設が、それこそ非線引きの都市計画区域、非線引きの白地地域というんですかね、を始めとする郊外に設置が進んでおります。もちろん、市街化調整区域にも多く設置されているように聞いているわけでありますけれども、言うなれば都市計画区域を外れて、そして逆に言うと、そのことによって都市計画区域がどんどん拡大しているというふうに言えるのかもしれません。  一体、大規模商業施設の設置にかかわる農地転用面積はどのくらいに上っているのか、これも中條局長にお聞きしたいと思います。
  79. 中條康朗

    政府参考人(中條康朗君) 大規模商業施設の設置に係る農地転用についてのお尋ねでございます。  平成十八年度におきます店舗等施設への農地転用面積につきましては約一千三百ヘクタールとなっておりまして、全国におきます農地転用面積全体、これは一万七千ヘクタールでございますが、その約八%となっているところでございます。このうち、農地転用面積が二ヘクタールを超える大規模な商業施設への農地転用面積でございますけれども、百九十二ヘクタールということでございまして、全体の約一%ということになってございます。
  80. 山田俊男

    山田俊男君 これを見ましても、現に大規模商業施設の農地転用の実態が明らかになっているわけであります。  ところで、これは国土交通省にお尋ねしたいわけでありますが、まちづくり三法が昨年の十一月から改正され施行されているわけでありますが、どういう問題意識でこれが改正され、さらに、このことで無秩序な農地転用は抑制されたと見ていいのかどうか。それから一方で、どうも用途変更があったり、ないしは地区設定、地区計画の設定があったりすると、これは許可しますよという流れになっているんじゃないかと。一体、ちゃんとまちづくり三法の歯止め措置が利いているのかどうかというのが懸念されるんですが、いかがでしょうか。
  81. 石井喜三郎

    政府参考人石井喜三郎君) お答えいたします。  先日のまちづくり三法の改正、特に都市計画法の改正でございますが、先生御指摘のとおり、郊外に大型のショッピングセンターができると、その反面、中心市街地の空洞化が進むという、こういう状況を受けまして、コンパクトなまちづくりを推進するという観点から、都市構造であるとかあるいは道路等のインフラに大きな影響を与えるような大規模集客施設等の無秩序な郊外への拡散を抑制するということを主眼として制定を行ったところでございます。  具体的には、大きく言いますと三つの内容がございます。  まず第一は、いわゆる開発許可でございます。市街化調整区域についても、まとまった実は大規模な施設については開発許可ができるという規定が従前の十号のイというものでございましたが、これを廃止をいたしました。さらに、これまで公共施設については、病院であるとかこういうものは郊外に立地する必要もあるだろうということで、これは許可の対象ということから外してチェックをしておりませんでしたが、これをチェックすることにいたしました。  二点目でございますが、都市計画の作用が及ぶ区域というのは都市計画区域ということで枠取りをしてございますが、その外については制限が及んでおりませんでした。この外についても準都市計画区域ということで一定の歯止めを掛ける区域の設定ができますが、なかなか設定条件が厳しい、あるいは、市町村の方が設定されるということで、そういう企業の進出その他の関係でなかなか設定がされないということがありましたので、この設定要件の緩和並びに知事が設定できるというように改正をいたしました。  それから三点目は、今御指摘の用途の件でございますが、今までは十一あるうちの六の用途で大規模集客施設、スーパーが立地ができましたが、これを三つだけということで、商業と、それから沿道沿いの近隣商業と、それから準工業地域という三つに限定をいたしました。  それで、このような施策の効果はどうかということでございますが、施行されて、十一月ということでまだ半年でございますから、はっきりとしたデータを私どもつかんでおるところではございませんが、大規模集客施設の郊外立地については、これは開発許可で取るものがまず全面的になくなりましたので、減少する傾向が出てきていると。一方で、商業地域のところへ、いわゆる中心部に立地が増えてきておりますので、無秩序な市街化の抑制という効果はこれから期待できるのではないかというふうに考えております。  それから最後の点でございますが、地区計画を作れば調整区域でも開発ができるんではないかと、あるいは用途を変えれば、これは市街化区域内の話になりますが、例えば工業地域でもできるんではないかという点でございます。用途については、これはまさに都市が工業地域であったところを商業地域に変えてやるということになれば、これはまさにそういう用途に持っていくということで、都市計画の本当の筋ではないかと思っております。  一方、地区計画でございますが、これが今までの開発許可と違うところは、地区計画というものを市町村が作る場合には、利害関係者の意見聴取、あるいは案を公告縦覧いたしまして意見を聴くということで、当該地域についての判断を要するということで乱開発には一定の歯止めが掛かってくるというふうに考えております。
  82. 山田俊男

    山田俊男君 まちづくり三法の改正につきましては、それこそいったん大規模店舗法の規制緩和を行った政策の誤りを正すという、私はそれはそれで画期的な取組であったかと評価するわけでありますが、しかし昨年施行以降、聞こえてくるところによると、農地転用を含めて郊外への設置の希望がまだ強いと、まだ現にあるということも聞いているわけでありまして、是非まちづくり三法の運用をしっかり点検いただいた上で取組を強めてもらいたい、こんなふうに思います。  ところで、中條局長にまたお尋ねしますけれども、農地の転用権限を知事に移譲してそれで本当に大丈夫なのかという心配なわけです。今までのこうした議論、今示していただいた数字の中でも、権限移譲したらそこで開発が進みかねないという心配があるわけであります。もちろん、地方の皆さんがこういうまちづくりをやる、こういう農村整備をやるということであればいいわけでありますが、そこになかなかこれまでの経緯からすると心配な部分があるわけであります。大臣許可にかかわる、すなわち四ヘクタール以上の農地の転用について、過去の事例として、どんな用途だったり、それから面積としてどの程度あったものなのかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  83. 中條康朗

    政府参考人(中條康朗君) お答えいたします。  農地転用許可基準につきましては、平成十年の農地法の改正によりまして法定化し明確化したところでございまして、これに併せまして、事務次官通達等によりまして細部の取扱いにつきましても補足をして基準の明確化を図ったところでございます。しかしながら、個別審査に当たりましては、農地の集団性それから市街地の進展度合い等々の要件の運用につきましての解釈、それから判断につきましてどうしても許可権者にゆだねざるを得ない部分も残るわけでございまして、県ごとに多少ばらつきが生ずるおそれのあるところでございます。  大規模な改正につきましては、優良農地が含まれる可能性が高いわけでございまして、民間の開発でございましても、地域の活性化の観点から都道府県が企業誘致等に積極的に関与している場合がございます。特に大臣許可に係ります四ヘクタール超の農地転用につきましては、店舗等の商業サービス等の用地あるいは鉱工業用地等の割合が高くて、大臣から知事に転用許可権限を移譲した場合に、産業振興の観点からこれらの転用規制が厳格になされず農地転用が進むおそれもあるところと考えております。  事例でございますけれども、平成十八年におきます四ヘクタール超の大臣許可面積についてでございますが、これは四百四十四ヘクタールございまして、その内訳は、商業サービス等の用地が二百三十三ヘクタール、これは五三%と大宗を占めております。それから、駐車場、資材置場等が百ヘクタール、これは二三%でございます。鉱工業用地が四十四ヘクタールで一〇%となってございます。  なお、これは先ほど、まちづくり三法の施行の前の十八年度でございますから、直近のものについてはこれからその成果を見てみたいというふうに考えているところでございます。
  84. 山田俊男

    山田俊男君 それでは、国交省にお尋ねしたいわけでありますが、国土審議会におきまして国土づくりの論議がなされております。大賛成です。  ところで、昨年の十二月には国土形成計画案が作成されて報告されております。まちづくりについてはコンパクトなまちづくりをやりましょう。食料自給率の確保から資源の確保をやります。美しい国土を形成します。それから、新たな公という認識でもった地域の取組強化しますという、新しい理念や観点が入れられているというふうに思います。  一体、この国土形成計画の中で農地の扱いについてはどのような位置付けであるのか、お聞きしたいと思います。
  85. 西脇隆俊

    政府参考人(西脇隆俊君) お答え申し上げます。  委員今御紹介ありました国土審議会、十二月に計画案が出ておりますが、その後、本年二月に国土審議会にお諮りをいたしまして、おおむね妥当という答申をいただいております計画案におきましては、今委員指摘のように、コンパクトシティーへの転換に向けた取組でございますとか、食料自給率の確保に向けた支援の確保とか、美しい国土の形成とか、そういうことで農地に関連をしております様々な考え方が計画全般に盛り込まれておりますが、その中でも特に農地についてまとまって記述されている部分について御紹介を申し上げますと、農地については国民に農産物を供給する重要な基盤であり、農業の有する多面的機能が発揮される基盤でもあることから、優良農地を確保するとともに、農業上の土地利用の維持に努めていくというふうに位置付けされているところでございます。
  86. 山田俊男

    山田俊男君 是非、国土形成計画の具体化に当たっては今の観点をしっかり生かして進めてもらいたい、こんなふうに思います。  ところで、農水省の経営局長にお尋ねいたしますが、先ほど来申し上げましたもう一つ農地についての提案のことでありますが、経済財政諮問会議の動きです。  農地の利用、所有から利用を分離して、利用については企業、会社も含めて自由にするという観点です。しかし、その一方で、農業生産法人の要件を緩和して、所有、これは所有にかかわる話ですが、農地の所有についても実は大幅な緩和の中で企業が実質農地の所有を図っていけるような提案になっていると見ております。このままで、農地の利用は行わなくなった、さらには、会社についても、会社の事業目的を転換して農業生産から撤退したというような事態の中で、この農地の扱いについて、ひいては我が国農業のありようを大きく混乱させかねない提案ではないかというふうに思っているんですが、歯止めが掛からないんじゃないか、こういう思いであります。  どうぞ、この点についてどういうお考えでおいでになるのか、お聞きしたいと思います。
  87. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 農地政策の改革につきましては、先ほど大臣からも説明申し上げましたように、農林水産省といたしましては、先般の経済財政諮問会議におけます総理の指示を踏まえまして、この秋をめどに改革のプランをまとめることとしております。その具体的な内容検討事項につきましては、昨年十一月に農林水産省として取りまとめました農地政策の展開方向についてに即しまして現在検討を進めているところでございます。  この農地政策の見直しに当たりましては、本日も様々な観点から御議論ございましたように、農地を確保し、これを最大限有効利用していくことが重要との認識の下で、その一環といたしまして、所有権と利用権の規制を切り離しまして、所有権については厳しい規制を維持しながら、利用権については規制を見直すという方向で検討していることでございます。  いずれにいたしましても、農地につきましてはその権利を有する者、所有権、利用権に限りませんけれども、あるいは個人、法人を問わないわけでありますが、農地農業上の利用が確保されるよう努める必要があるというふうに考えております。これを担保するためにどのような措置が有効であるか、現在検討しております。  なお、委員指摘の、先般の経済財政諮問会議におきまして民間議員から意見が出されました農業生産法人の要件の緩和につきましては、当然のことながら所有権の取得に対する規制緩和の見直しをも意味するものであります。所有権の取得制限の見直しにつきましては、これまでも様々な問題点が指摘されてきたところでございます。このようなことも含めまして、先ほど申し上げましたように、今回、所有権と利用権の規制を切り離して、所有権に対する規制は維持しながら、利用権の規制を見直すことで、農地の利用についてより借りやすく自由に取り組めるようにしていくということをしておるわけでございます。  この観点で、先ほどの、経済財政諮問会議におきまして大臣からも御発言がございましたように、このような基本的な検討方向の中では、民間議員が提案されたような農業生産法人の要件の緩和見直しというものは検討の論点にはなりにくいというふうに考えております。
  88. 山田俊男

    山田俊男君 先ほど来申し上げましたが、大臣がこの二つの動きに対して大変な頑張りを行ってもらっております。まさに、この二つの動きについて、ここで方向を誤りますと、それこそ我が国の大事な農地、そして食料生産基盤のこの大事な国土、ひいてはこの国の在り方にもかかわる重大事でなかろうかと思います。これまでの議論を通じまして、大臣のこの点についての御見解、決意をお聞きしたいと思います。
  89. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) もう今更申し上げるまでもなく、農業生産の基盤というのは農用地でございます。そして、その農用地をいかに有効に活用して生産力を上げていくかということが一番大きな国家的課題だというふうに認識しているところであります。その農用地の利用の在り方というものを農地制度見直しの中で抜本的に考えていこうというのが、昨年の農地制度の在り方についての見直しの方向であるわけでございます。  そういう方向を進めていくに当たりまして、農地の非農地化、転用という問題と、農地農地として利用するための権利移動というのは、農地法の仕組みの上でいえば車の両輪になっているわけでありまして、転用の部分だけを取り外してこれで有効利用を考えるというわけにはいかない。常に、その農地が非農地化していくということについてどのような規制をきちっと掛けていくかということと、農地農業上有効に利用していくかということとは非常に関連を持っているわけでございます。  そういう意味からしますと、いろいろな提案がございますけれども、やはり農地政策を一体として考えていく。そのときには、農地法のみならず、農業振興地域整備法を含めまして、広い意味での農地制度全体についてここでしっかりと見直していく必要があり、その見直しに当たっては、やはり農業上の、細かいことは申しませんけれども、今まで許可が要らなかったような公的な学校、病院等の転用も改めて許可の対象にするとか、あるいは、農用地区域の見直しに当たって、今まで全く自治体に任せていた部分についても、そういう農用地を確保するという視点から、いろいろと指導、措置が講じられるようなことを考えるなど、いろいろなことを今考えているわけでございます。  そういう中の一環として物事をとらえていかなきゃいけないだろうというふうに思うわけでありまして、今度の規制改革会議は、もう勧告が出ました。一次勧告が出て、内閣がそれをどう受け止めるかということを今協議中でございますが、それはもう近々に決めなきゃいけない事態になっておりますけれども、私は、そういう農地制度全体の見直しの中で有効な農用地確保ということが図られるようなことを旨としてといいますか、そういう規制の下に種々地方分権の問題が考えられてしかるべきものだと。それは農地制度一体として検討さるべきものだということを思っているわけでございまして、省庁間の話合いの中におきましても、かなりそういう点では認識の歩み寄りといいましょうか、それらができ上がってきているんじゃないかということを期待しているところでございます。
  90. 山田俊男

    山田俊男君 これで終わりますが、今、農水省、若林大臣の決意をお聞かせ願いました。  そして、先ほど来質疑させていただきましたが、国交省におきます国土形成計画のこの方向、これらは共に相連携して、そして我が国のこの美しい国土を守っていきたい、こんなふうに是非御努力願いたいと思います。  どうも大変ありがとうございました。     ─────────────
  91. 郡司彰

    委員長郡司彰君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、一川保夫君が委員辞任され、その補欠として西岡武夫君が選任をされております。     ─────────────
  92. 牧野たかお

    牧野たかお君 自民党の牧野でございます。  今日は、事実上最終日ということで、皆さんが大きなテーマで質問をされておりますが、私はもう少し小さなテーマで質問をさせていただきたいと思います。  まず、農産物輸出促進について伺いたいと思いますけれども、食料自給率というのは、この委員会で何回も言われているように、私は食料自給率という言葉じゃなくて食料構成率と呼ぶのが正しいと今でも思っていますけれども、三九%、カロリーベースでと言われているように、圧倒的に日本は農産物輸入が多いわけでございます。十九年度の統計ですと、輸入額が五・五兆円に対して、農産物の輸出といいますと二千二百二十億円だそうでございますので、比較すると三・六%ぐらいにしかならないということであります。  ただ、近年、世界的な日本食ブームとか、アジア諸国の経済発展に伴って富裕層が増えているということで、新たな販路として海外に農産物を輸出するということも増えてまいりました。緑茶で見た場合、輸出の歴史はもう明治の初期の段階からありますので古いんですけれども、十年前の輸出量がおよそ六百トンだったのに対して、最近は千六百トンぐらいになっております。また、温室メロン等の高級品の農産物も海外で積極的に展示とか商談会を行っております。そういうことがだんだん盛んにはなってきているんですけれども、現実の話を聞いてみますと、大きな障害として相手国の関税が高いということがあるというふうに言われております。  お茶を例で挙げますと、韓国は関税が五一三%ですので、日本で百グラム千円とすると、向こうでは六千円になってしまうと、そういうことです。タイではお茶が三〇%。メロンでは、台湾が二五%、韓国四五%、タイが四〇%というふうになっております。関税がないというところもあるんですけれども、アジアで見た場合、シンガポールとかマレーシアとかあるんですが、今申し上げたみたいに、こういう農産物の種類によっては高い関税が掛けられている国があるわけですけれども、こういう高い関税を下げる努力というのは農水省としてやっていらっしゃるんでしょうか。
  93. 吉村馨

    政府参考人(吉村馨君) 委員指摘のとおり、我が国の高品質農産物の輸出を拡大する上で、相手国の関税を引き下げるということも非常に重要な課題だというふうに考えています。こういった観点から、EPA、経済連携交渉基本考え方を整理した、みどりのアジアEPA推進戦略というものがございますが、その中でも、EPAを通じて日本ブランドの農林水産物、食品の輸出を促進するということとされております。  個別の経済連携交渉、EPA交渉におきましても、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めるという立場から、我が国の輸出関心品目につきまして、相手国の関税引下げを踏まえた交渉を行ってきているところであります。具体的に、既にEPAを結んでおりますタイとの間では、メロンは関税撤廃ということになっておりますし、緑茶の関税割当ての枠内税率、これも関税撤廃という扱いになっているところでございます。
  94. 牧野たかお

    牧野たかお君 一番は、この近隣でいうと韓国が非常に関税が高いわけでありますけれども、韓国の側に聞いたわけじゃないですから分かりませんけれども、日本と非常に気候風土が似ていますので、農産物も多分日本と似たようなものが多いかと思います。ですので、多分韓国も自国の農産物を守るために日本の農産物に対する関税を高く掛けているんではないかなと思いますけれども。  私、これはWTOとかの関連でいうと難しい面もあるのかもしれませんけれども、ちょっと私だけじゃなくて、こういう農産物に要はかかわっている人たち意見を聞いてみると、ちょっとひがんでいるかもしれませんけれども、どうしても日本の農政の場合、米が中心ですので、その本丸の米を守るためにはほかの農産物は余り熱心にこういう関税の交渉をしないんじゃないかというような話も聞いたりもしますけれども、それは私はそうじゃないと思って、思わなければいけないし、また農業というのは、もちろん日本の農政全体で見れば、先ほど来お話が出ているように、米が日本の本当に本丸と思います。それは私も間違いないと思いますけれども、先ほど大臣がおっしゃったみたいに、日本の農業はやっぱり多様な農業でありますので、そういう生産額だったり、カロリーベースで計算されないような農産物に対しても、やっぱり私はそういう輸出に関してももっと力を入れていただきたいなというふうに思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。
  95. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) お気持ちは分かるんですけれども、この関税というのは交渉事で決まってくるわけですよ。そうしますと、あなたの国のこれを下げてくれと言いますと、それじゃ日本のこれは下げるのかと、こういう交渉事というのがずっとあるわけですね。それで組み立てられてくるわけであります。  お米とおっしゃったけれども、お米だけじゃなくて、例えば酪農品ですね、日本に関して言えば、酪農品だとか、あるいは甘味資源、砂糖だとか、それぞれまだまだ日本の多様な農業を守るために関税で守らなければ守り切れないものがいっぱいあるわけですね。だから、それらをある程度犠牲にしながら相手国も下げてもらうと、こうやり取りをしているわけですね。  例えば、果物について言えば、東南アジアというのは果物が輸出産品として非常に優位なんですね。だから、果物の関税をうんと下げてもらいたいという話が出ます。そのためにバナナなんか大分下がってきましたね。こちらが下げる、その代わりこちらの関心品目についてはこうしてもらいたいと、こういう交渉事になるわけです。  ただ、FTAとかEPAの場合は、総括してその国との間で交渉をしていきますから、先ほど吉村審議官が言ったように、一つ一つできてきているんですね。例えばASEANと今、国会で最後の承認をもらえるかどうかということになっていますけれども、ASEAN諸国との間でも一応協定ができてきたわけであります。だから、そのときにはお互いにこれは除こう、これは除こう、これは入れようという交渉事の中で決まってくるわけでありまして、そういう意味では、例えば関心品目であるお茶について殊更にそれを軽視しているということではありませんけれども、トータルの中のバランスで物事を決めていかなきゃいけなくなるんじゃないでしょうか。  それで、韓国との間はこれから韓国とFTA交渉を再開することになっています。そういう中でどう扱うかということじゃないかと思いますが、これはこれからの交渉事だと思います。
  96. 牧野たかお

    牧野たかお君 そういうふうに気に留めておいていただければいいと思っていますが。  それで、農産物の輸出の話を今しましたけれども、最近一つ問題になっているのが、日本で努力をして品種改良した農産物の種苗が違法というか密かに海外に持ち出されて、その海外で生産されたものが逆輸入されたりしていた例が幾つも出ているということであります。  調べたところだと、平成十七年以降でいいますと、北海道のインゲンマメとか小豆、栃木県などのイチゴ、山形県の桜桃など十品種以上が、要はそういうふうに違法に持ち出されて向こうで栽培されていたのが確認されたということでありますけれども、この対策はどういうふうに今やっていらっしゃるんでしょうか。
  97. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 非常に大事なことだと思います。いわゆる知的所有権であります。知的所有権という、その開発者としての立場というのは守っていかなければなりません。その意味で、そういう育成者の権利を守るために侵害物品の輸出入に対します水際での取締りというものを強化をいたしておりますし、育成権者の保護の強化を図るために種苗法を改正して罰則の引上げなどの措置を講じているわけでありますが、問題はアジア地域、非常に風土的にも似ているアジア地域でございます。これらの地域に輸出をしていくということになりますと、やはりそれが保護されるかという問題を伴うわけでございまして、それぞれの国の法制度の下で我が国の品種が適切に保護されることが大事になってきます。  そこで、各国に対して個別の働きかけは行っておりますけれども、同時に、本年の七月に設置予定であります東アジア植物品種保護フォーラムというものを立ち上げまして、そういう場を活用して、海外の諸国が植物品種の保護制度をできてないところはつくってもらう、今あるところはこれを強化してもらう、こういうことをそれぞれの国の農政担当者の方に認識を持ってもらってその国での法制的な整備を図ってもらうということを働きかけているところでございます。
  98. 牧野たかお

    牧野たかお君 やっぱり外国の政府の協力がないと、これは幾ら日本だけで取り締まろうとしてもなかなか難しいところがあるんじゃないかと思いますので、今おっしゃったみたいに是非外国との協力を強力に進めていただきたいと思います。  次の質問に入らせていただきますけれども、先ほど平野委員もおっしゃっていたバイオエタノールの話ですけれども、このバイオエタノールの中で、何回もこの委員会でも質疑があって、大臣が、我が国としては要は木質系のとか繊維系の、セルロース系のバイオエタノールの活用考えていきたいと。要は、それを中心として考えていきたいという答弁を何回もされていますけれども、私はそれで、方向として非常にそれでいいと思っておりますが、現状を見た場合、なかなか先ほどのお話にありましたように難しい、現実的に言うとかなり難しい面もあるんじゃないかなというふうに感じております。  これも資料をもらって見たところによりますと、アメリカではかなり技術が進んでいるみたいですけれども、アメリカでその生産費用を見た場合、一ドル百五円に換算してみますと、一リットルのバイオエタノールを作るのにトウモロコシだと七十四円生産費が掛かるのに対して、木質系のバイオマスだと百円というように一・三五倍ほど木質系の方が高くなるそうです。これは、原料を糖にしてそれを発酵させてエタノールを造るわけですけれども、その糖にする過程が、何回も出ているように、木質系の場合はその繊維をほぐして糖にするまでの工程が幾つもあるものだからそういうコストが掛かるというふうにその資料に書いてありましたけれども。  これから政府として、まずはその生産コストを下げる研究が成果を上げないと、これは幾らバイオエタノールを木質系で造るといってもなかなか絵にかいたもちで終わってしまう可能性があると思いますので、生産コストを下げる研究というのはこれからどういうふうにやっていらっしゃるんですか。
  99. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 今委員から御指摘がありましたように、この木質系のバイオマスからエタノールを製造するに当たりましては、糖化、発酵を経まして、エタノールに変換される成分であるセルロースあるいはヘミセルロースといったものと、それ以外の成分であるリグニンの分離というのが避けられない工程でございます。現在はこのリグニンを分離するために非常に手間が掛かっておりまして、お金も掛かるということでありますが、これを克服するためには、低コストでリグニンを分離する技術の開発でありますとか、その技術に適した酵素をどう選択するかといったことが課題でありまして、そういうものに取り組んでいるところでございます。  またさらに、これまではこのリグニンといったものはほとんど利用されていないわけでありますが、これは使いようによっては高付加価値の製品に転用されるものでございますので、こういったリグニンを活用できるように木質成分全体を総合的に活用することによりましてエタノール製造の採算性を高めることにも取り組んできているところでございます。  また、今年度からは、新たに全国の民間企業、研究機関、大学等が持っております研究成果に基づく先進的な技術を活用しまして、木質バイオマスからエタノール等を効率的に製造するシステムの実証実験に取り組むこととしております。  こういったことを積み重ねまして、木質バイオマスのエネルギー等への実用化技術の確立に向けて努力しているところでございます。
  100. 牧野たかお

    牧野たかお君 今の長官の答弁は、多分今までも何回も伺った話と同じじゃないかと思うんですが、要するに、今年から今おっしゃったみたいに民間企業とか大学に研究をしているところなのか、これからするところなのか、そういうところを公募するという話だったんですが、何か今年度は十二億ぐらいの研究関係の予算を組んであるみたいですが、これバイオエタノールの分とするとどのぐらいの予算を組んであって、それと、何というんでしょう、今の公募の状況とか、実際に、理念は分かるんですが、どういうふうに今動き出しているのかという具体的なことをちょっと今伺いたいなと思って質問しました。
  101. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 十二億の内訳がはっきり決まっているわけではありませんが、私たちの見立てとしては、およそ三分の二、八億ぐらいはそういうことに使ってはいかがかと思っております。ただいま公募中でありますけれども、関心は非常に高うございまして、各大学あるいは研究機関、それから化学メーカーその他の企業からいろいろな問い合わせについては殺到しているという状況でございます。  ですから、研究としても、これから一から始めるというよりは、各研究機関、企業がやっていらっしゃったことをどうやって統合したり組み合わせしたりしてその開発期間を、例えば酵素の開発期間を短くしていくかとか、目の付けどころをどこに置くかということによってかなりその研究開発の期間が短縮されるという可能性があると思っておりまして、今非常にたくさんのお申し越しがありますので、厳正中立な研究者から成るグループにお願いをして、まず実証としてやっていて一番見込みのありそうな研究はどれであるかということを選択しようとしているところでございます。
  102. 牧野たかお

    牧野たかお君 是非その研究は成果を上げていただきたいと思います。  私は、この木質系のバイオマスによるバイオエタノールの製造というのは、将来考えたときに、今これだけ石油が高騰して、日本という石油資源を持たない国がこれだけ苦しんでいて、本当にじゃ何の資源があるかといったら、私はこの森林の木質系バイオマスしか日本の、自分たちで持っている資源というのは、エネルギー資源というのはそれしかないと思いますので、これは本当に単なるモデル事業とかそういう事業ではなくて、本当に日本のエネルギーを考えるような大きな私はテーマだというふうに思っております。  そういう中で、そういうことを言っているとちょっと現実的過ぎますけれども、今と将来はまた違いますので、今の時点で言うのが正しいかどうか分かりませんけれども、今現在のもしこのバイオエタノールの製造技術が完成してそういった製造ができるとしても、実はその材料となる間伐材をどうやって持っていくかということが大きな私は課題になると思うんですけれども。  このバイオエタノール自体の製造というのは実は、私も素人ですからもらった資料を見ただけですけれども、これしょうちゅうを造るのとほとんど変わらないですよね、工程とすると。だから、その要するに原料の糖まで造るのが大変であって、糖から要は蒸留を繰り返して、最後は水分をなるべく、ほとんどなくして要はアルコールにするわけですから、原理としてそうだと思うんですよね。  だから、さっき申し上げたみたいに、その一番最初の糖に造るまでが大変だと思うんですが、そういう工場の過程、工場を将来的に造るというものができたときに、じゃどうやって原料をそこに運ぶかだと思いますけれども、今林野庁で考えているのは、製材の余ったものとか建設廃材とか、一番の将来的に考えていらっしゃるのは間伐材だと思いますけれども、その間伐材を今一立方を運搬するコストというのが一万円から一万二千円ぐらい掛かるんですけれども、アメリカと今日本は必ずしも一緒じゃありませんが、アメリカの今の製造の原料費を日本円に換算すると、一立方当たり三千五百円から六千円ということですので、要は運び賃の方が倍掛かっちゃうという、購入費よりも倍掛かっちゃうということですので、これを何とか将来的にしないと、本当にバイオエタノールとしてこれが日本の新たなエネルギーになるのは難しいと思うんですが、それはこれからどういうふうに考えていこうと思っていますか。
  103. 井出道雄

    政府参考人(井出道雄君) 我が国の林業の場合、従来は曲がりのない材、いわゆるA材というものだけが製材品として使われるということですから非常に高コストであると。これが、最近は、曲がりが少々あっても、まあこれB材と言いますが、これが合板や集成材にも使われるようになって、搬出の単位当たりのコストが下がってきました。  今問題になっていますのは、C材と言われるパルプチップであるとか木質バイオマスとして利活用される部分についても利用できるようになれば、それ自体も搬出をできまして単位当たりのコストが下がってくるということになりますし、あわせまして、今間伐促進のために、路網の整備や高性能林業機械を組み合わせまして、この搬出の効率化に努めているわけでありますが、そういったことも効果があると。さらには、非常にバルキーなものでありますから、できればこの素材生産現場で発生した枝だとか丸太というのは、できるだけ現場で粉砕をしまして荷物を軽くすると。そのためには、そういった現場に運んでいきまして、チップにできるような移動式のチッパーの試作などといった技術開発にも取り組んでいるところでございます。  また、今年度からは、新たにこういった様々な開発されつつある技術も活用しながら、この間伐材の収集、運搬を低コスト化するというようなことにつきましても、民間企業からの提案を実践しまして、木質バイオマスを安定的に供給できるモデルの構築に取り組むこととしているところでございます。  今後とも、こういった施策を組み合わせまして、この木質バイオマスの利活用に資するよう、この収集・運搬コストの低減に努力をしていきたいと考えております。
  104. 牧野たかお

    牧野たかお君 是非将来の、私は本当に大きな、日本のエネルギーを考えた中で画期的な私は道として開かれるか開かれないかというのは本当に大きなテーマだと思いますので、是非、一生懸命取り組んでいただきたいと思います。  時間がなくなってきましたので、済みません、最後の、農薬の登録適用の拡大について質問したいと思いますけれども。  農産物への農薬の使用というのは、平成十四年度に農薬取締法の改正によってそれぞれの農作物の登録されたものしか使えなくなったというふうに伺っておりますけれども、これは環境を守るということでとられた措置だと思いまして、それは必要な措置だと思います。  ただ、今、それからもう五年がたとうとしているわけですけれども、実は農産物を作っている現場ではかなり困ったことがいっぱい起きているというか、そういうふうに言われておりますが、どういうふうに変わったかというと、要するに農産物を単品、例えば米とか麦とかいうのは大くくりで米、麦の適用の農薬を使えばいいんですが、野菜とか果樹の場合、細かくグループ分けをして、そのグループごとに、入っていればそのグループごとの同じ農薬を使えるんですけれども、それにグループ分けされていない農産物がまだいっぱいあるかと思いますけれども、まず農水省で把握している国内農産物の品目は、私も分かりませんけれども、何百種類か分かりませんが、何百種類あって、そういうふうに今グループ分けされていない農産物というのはどのぐらいあるんですか。
  105. 佐藤正典

    政府参考人(佐藤正典君) 御説明申し上げます。  農薬の登録の際の適用作物につきましては、「農薬の登録申請に係る試験成績について」の運用についてという通知によりまして定められているところでございます。現在、食用作物四百七十三、飼料作物五、その他非食用作物三百二十、計七百九十八の作物がここに記載されております。  委員指摘の、グループ化されている、これは負担を軽減するということでグループ化される措置がとられているわけでございますが、この作物群は十四グループございまして、ここに入っている作物は百七十三作物となっております。したがいまして、現在、グループ化されておりません単体の作物は六百二十五という状況でございます。
  106. 牧野たかお

    牧野たかお君 それで、何が困っているかといいますと、農薬って作るのはメーカーが作るんですけれども、単体の場合、地域特産品という、俗に言われるやつですけれども、そうすると生産額というか生産量が少ないものですからなかなかメーカーが研究開発をして作るというまで至らない品目もあります。  それで、例えば静岡県の例出して言いますと、県の方でまだ十九の農産物、一応要望出しているんですけれども、まだ認められていないものがあります。これは首都圏ばっかりで作っているわけじゃなくて、言いますと、カリフラワーとかブロッコリーとかメキャベツ、ワサビ、アスパラガス、里芋、エシャレット、ショウガ、こういったものはまだグループ分けされておりません。ですので、これ単体で登録された農薬は使えますけれども、今申し上げた中ではほとんどは多分単体でも登録されている農薬があると思うんですが、一つの例出しますと、ワサビは実は、まあ皆さん食べますけど、単体で農薬がない状態で、やっとワサビの中でもアブラムシ用の殺虫剤というのが今年、ほかのグループと同じ農薬が使えるようになったんですが、青虫という、私も聞いたら、要はチョウチョの幼虫ですけれども、青虫というのが一番被害が大きいそうなんですけれども、その青虫の被害があっても、実は単体で農薬として登録してないものだから、というか登録されているものがないものだから、実は今もう手の打ちようがないというのを組合からこの間言われたんですけれども。  そういうふうに、私はこれ、農薬の適用登録しなければいけないという法律を作って、実際は国から、要は産地といってもそこの県でしょうけれども、県とメーカーが協力して臨床のデータを集めて、それから申請をして認められたら登録されるという制度になっているみたいなんですけれども、もう五年たっておりますが、やっぱりそのグループ分けが進んでいないから、中にはそういう、生産額がというか、生産量が少ないために非常に使用したくても使用できない、農薬を使用したくても使用できないというような農産物がまだかなりあると思うんですけれども、これを早く登録をしてあげないと、今そういう農家の生産現場では困っているということがございますので、これからちょっと農水省としてどういうふうに取り組んでいかれるのか、伺いたいと思います。
  107. 佐藤正典

    政府参考人(佐藤正典君) 御説明申し上げます。  二つお尋ねがあったと思います。グループ化の推進について、それからワサビの農薬の登録についてであったと思います。  まず、生産量の比較的少ないいわゆる地域特産農産物、マイナー作物とか呼ばれたりしておりますけれども、こうしたものそれぞれにつきまして農薬登録を取りますことは、委員指摘のように、手続とかあるいはデータ作成とかそういった面が煩雑になるということで、先ほど来出ておりますグループ化ということで似通った作物をまとめていく、例えばスモモとアンズのようなものをまとめていくとかいう対応をしているところでございます。こうしたグループ化は、先ほど申しましたように十四作物群ということになっているわけでございますが、こうした作物群の形成につきましては、当然のことながら、作物に対する農薬の残りやすさとか、あるいは作物の利用する部分の形状とか、そういった共通する部分の科学的に合理的な説明が必要だというふうにされているところでございます。  お話にございました、静岡県から御要望をいただいておりますメキャベツとかそれからエシャロットなどなど十九品目、十九作物の関係につきましては、こうした科学的なデータの収集が不可欠となっているところでございまして、県などにおきましてデータを作成していただく必要があろうかというふうに思っています。  農水省としては、こうしたグループ化に必要なデータ作成につきまして食の安心・安全確保交付金を各都道府県に支援しておりまして、そうしたものも活用いただければというふうに思っております。  それから、ワサビの関係でございますけれども、委員指摘のようにアブラムシの関係につきましては、関係者集まっていただきまして、ワサビ使用農薬検討会ということで集まりをつくっていただきまして、様々な農薬あるいは水質汚濁の検討をしていただきました。その結果、必要なデータの収集あるいは水質汚濁の防止等に必要な体制の整備が行われまして、三種の農薬につきまして新たに登録が行われたところでございます。  御指摘の青虫の関係でございます。青虫類に効果のある農薬のワサビへの適用の拡大につきましては、平成二十一年度に静岡県と長野県が登録に必要な試験のデータを作成するというふうに計画をされているというふうに聞いておりまして、そのデータがそろい次第、適用拡大に向けて関係機関との検討に入りたいと考えているところでございます。
  108. 牧野たかお

    牧野たかお君 時間がなくなりましたので、終わります。また次の機会に続きをやりたいと思います。  ありがとうございました。
  109. 谷合正明

    谷合正明君 公明党の谷合です。  まず初めに、世界で起きています食料価格高騰問題について大臣にお伺いいたしますが、食料サミットを終えて帰国されて、先ほど午前中に出張報告ということで報告をいただきました。まず冒頭に、この食料サミットを終えて、この報告の中に触れられていないようなことも含めてどういうふうに感じ、まあ所感というのはどういったものなのかということと、また一般論として、この価格高騰問題について、短期的に取り組むべき課題であるとか、中長期的に取り組むべき課題であるとか、そういったことについてどう整理、認識をされているのかについて、まず冒頭御質問させていただきます。
  110. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 冒頭、報告を申し上げましたけれども、ローマにおいて開かれました世界食料安全保障に関するハイレベル会合でございます。これに総理とともに出席をいたしました。私は副議長に指名されまして、閣僚級会合議長を務めたわけでございます。  百七十に及ぶ各国が参加をいたしておりましたけれども、私が議長をやっておりましたときは大統領とか農林大臣とか、そういう主要な閣僚あるいは国の代表格の皆さん方でございました。それぞれの国の事情を大変熱心に訴えておられました。それをずっとお聞きしながら、農業の多様性というのはそうなんだなと、そしてまた、それぞれの国の事情というのはみんなそれぞれが違って悩みを持っておられるんだなということを感じました。我が国もそのうちの一つでございます。  そういう意味で、五日の日に宣言が採択されましたけれども、この宣言最後決めるに当たっても大変もめまして、最後はもう議長が裁定をするというような段階まで行きましたけれども、ある国同士、これを、主張を降りましてまとまったということでございました。  そのもめたのは実は輸出規制の部分の表現でございました。この輸出規制というのは、広い意味では輸出税も含む概念ということになるわけでございますけれども、その国にとってみれば国内の治安維持といいますかね、国内の治安を守るためには輸出の規制もしなきゃならない場合があるというような主張でございます。そのことは十分配慮してやらなければならないということが話合いの中で大分行われたわけでございます。最終的にはこの部分の表現をやや抽象的にしたわけですが、その輸出規制については、国際価格不安定性増大につながる制限的な措置の使用を最小限のものにする必要性を再確認すると、こういう表現になっているんですね。ふらっと見ると何のことかよく分からないんですけど、これは輸出規制のことであると我々は認識をし、説明もそのような説明をしながらこのことを確認をしてもらったので、何らかの形の輸出制限を、輸出国が勝手にするわけではないというような足掛かりはここで得られたのではないかなというように思うわけでございます。  また、バイオ燃料生産利用についても大変もめました。これは、ある国の大統領は、いいエタノールと悪いエタノールがあると。何か健康にもそんなのがあると言われているわけでございますけれども、決して食料生産を阻害をしない、そしてまた全体の効率を上げていくためのエタノール生産というのは、その主張した国、まあはっきり申し上げればブラジルでございますけれども、何らどこにも迷惑掛けていないんだということで、大統領自身が五分の制限時間を三十分も演説しまくったというほど、それもほとんどがバイオのことでございまして、バイオは石油代替品として大事なものであるし、地域の振興にも大いに役立つんだということを盛んに言っておりました。  そういう意味で、国際的な調整というのは一義的にいかないんだなということをしきりと思いましたけれども、この部分についても、バイオ燃料生産や利用につきましては食料安全保障達成維持必要性を考慮した詳細な検討が必要であると、こういう表現にして、ブラジルも納得をし、アメリカも納得したと。  なお、詳細な検討が必要だという中には万感こもっていると思うんですけれども、しかし、それが盛り込まれたことによりまして、我々は、洞爺湖サミットでも更に議論されるでありましょう、洞爺湖サミットにこのローマ宣言というのはつないでいくことができたんではないかというふうに思い、我が国としていろいろな主張をしてまいりましたけれども、食料安全保障を国家の政策として位置付けるというようなことも明確にされましたし、食料生産強化するとともに農業への投資を拡大するというような部分も入りまして、我々はこの宣言文は結果として高く評価される結果になったんではないかと、このように考えております。
  111. 谷合正明

    谷合正明君 我が国主張が盛り込まれたということであります。よくよく読んでみると、いろいろ各国の思いが込められていて、どう読み取るかというのは非常に難しいんだと思います。そのことがよく分かりました。  改めて、我が国食料安全保障について確認をさせていただきたいんですが、この食料安全保障についてどういう基本方針の下で今我が国は成り立っているのか。その時代というか世界状況が変わるからといって、その基本方針がそうそう変わるものではないと認識はしておりますが、さはさりとて、昨今のこの食料価格の高騰であるとか需給の逼迫というのは非常に大きな現象でもあります。その意味でも、改めてこの基本方針について確認させていただきたいというふうに思っております。
  112. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) 食料安保の基本は変わらないというふうに思います。食料安全保障の観点からは、まず国内にある農地等の農業資源を最大限有効に活用して国内農業生産増大を図ります、まず。そして、加工、外食用も含めて国産農産物での供給体制を強化することで食料自給率向上を図ること、これが基本であるというふうに考えております。  しかし、我が国では国土資源に制約があります。すべてを国内生産で賄うことは困難でありますから、同時に、必要な輸入の確保を図るとともに、基本的な食料については短期的な不測の事態に備えた備蓄を行う必要があるものと考えております。  こうした考えに基づいて、食料安全保障の確保のために平常時から、食料供給力の重要な要素、これ三つあると思っておりますが、一つ農地農業用水等の必要な農業資源の確保、二つは農業の担い手の確保・育成、三つ目は新たな農業技術の開発普及等の取組を進めております。そして自給率目標達成を目指しているわけでございます。  最後でありますが、不測時への対応として、不測時の食料安全保障のマニュアルに基づきまして、適切かつ効率的な備蓄の運用や、国内外の食料需給に関する情報の収集、分析、提供等を行っているところでございます。
  113. 谷合正明

    谷合正明君 よく分かりました。  国内農業資源の確保であるとか、また国際的なルールの確立など、輸入食料の安定的確保であるとか、あるいはこれまで余り食料安全保障という観点では語られていないような都市農業の振興だとか、私は、基本方針のその下で考える細かい施策については、時代時代、合わせていろいろ補強していくような形で考えていくべきであるというふうに考えております。  先ほど、国内自給力を高める三要素ということで、農地農業用水というお話がございました。水資源について質問をさせていただきます。  この水資源については、TICADⅣの横浜行動計画にも、食料価格高騰への対応ということで、水資源及び土地利用管理の向上というものが一つ大きな項目として掲げられました。今石油の高騰であるとか、あるいは食料穀物の高騰という陰に隠れてはおりますけれども、私は、本質的にはこの水の問題というのが非常に大きい、古今東西、これはデリケートな問題でありますので、非常に大きいんだと思っております。  今後、世界食料需要増大していくのであれば、当然生産性向上させなきゃいけないし、そのためにはかんがい耕地を拡大していくということが一番の早い道であります。そのためには、そうすると、水の需要供給というんですか、水資源をしっかり確保しなければならない。  もう一方、食生活の高度化ということで、畜産物消費量の増加が世界中で、特に中国、インドで増加しているわけでありますが、特に畜産物、例えば牛肉一キログラム生産するのに約水は二十トン必要だというふうに言われております、これは飼料も含めて。そういう意味で、水資源の確保というのは今非常に重要な要素になっていると思います。  今、一方で、バーチャルウオーターという言葉に象徴されるように、我が国は一体どれだけ水の、何というんですか、自給率というんでしょうか、食料自給率が三九%でありますが、結果的に残りの六〇%を輸入に頼っているということは、六〇%の輸入に頼っている農産物生産するのに必要な水までも間接的に輸入しているというふうな考えでございます。そう考えると、大体食料自給率と同じような水の自給率なのかなとも言えると私は思います。  翻って、世界を見渡してみますと、世界人口の五分の一というのが安全な飲料水へアクセスできないと。果たしてこういう状況が、我が国は水が豊富な国でありながら食料を海外からの輸入に頼っていると。一方で、世界で水不足で困っている地域はやっぱり残っているという問題。もう一つは、輸出規制という問題がありますけれども、現にオーストラリアでは干ばつで輸出ができないという事態、小麦をできなくなったわけでありまして、この水不足問題で結果的に輸出もできなくなってくる国も現れるんであろうと。水が豊富な地域とやっぱり水がなかなか少ない乾燥地域というのは世界に偏在しております。水収支の観点からいうと、我が国はもう少し国内農地、水というのをしっかり利用しないと私はいけないと思っております。  森林大国の日本が今、山が荒れて森林管理に苦しんでおります。水の豊富な我が国が、もしこのままでいくと、将来水管理というか水利システムが弱体化して、本来持っている強みを生かし切れないんじゃないかというふうな危惧さえするわけでありますが、まず大臣に水資源に対する基本認識について伺いたいというふうに思います。
  114. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) もう農業生産にとって水は不可欠な生産要素であることは委員のおっしゃるとおりでございます。  地球的に見ますと、温暖化に伴う気候変動というのは一番農林水産業に影響を与えていくわけですが、その影響の中に、水の不足を招くと。豪州のお話がございました。これも温暖化に伴うものであるかどうかというのはいろいろ議論のあるところでありますけれども、あるところでは集中的に豪雨が起こる、あるところでは乾燥、雨が降らなくて干ばつが発生するというような、地球の中でも非常に偏在をしてくると。豪雨のところは水害が起こると同時に、それが全部流失してしまうわけであります。そういった意味で、この地球温暖化に伴う気候変動が大きくなるということは、水資源というものの確保といいましょうか、有効な利用を図っていかなければならないことはますます高まってくるというふうに思うのでございます。  さて、我が国における農業用水でございますが、国内の水利用のおおむね三分の二を農業が使っていると、農業がこれを占めているというふうに、現状がそのようになっているわけでございまして、我が国の水資源の重要な構成要素になっておるんですけれども、渇水の対策とかあるいは水質の改善でありますとか、また豪雨などに伴う水害の防止といったような水資源をめぐる様々な課題というものに的確に対応していくためには、やはり水に関係する省庁がお互い緊密な連絡を取りながらいろいろな取組を進めていくということが非常に大事だというふうに考えております。  このために、流域の健全な水循環の構築に向けまして、水質の改善や水害の防止などの対策について各省連携して検討を行っていくとともに、渇水時などにおいても関係省庁の連絡会議を設置して、政府全体として効率的な渇水対策が可能となるように情報交換を今進めているところでございます。  農林水産省としては、このような水田が中心でございますけれども、それは循環的に繰り返し農業的に使われているという意味でもかなり有効な水利用の仕方だと、そういうシステムだというふうに考えているわけでございますが、そういう立場に立ちまして、関係省庁間の連携を図りながら、農業生産にとって欠かすことのできない農業用水の確保と、そしてまたその効率的な利用に努力していかなければならない、こう考えております。
  115. 谷合正明

    谷合正明君 おっしゃるとおり、関係省庁がしっかり連携を取るということが大事であると思います。生活用水は厚労省、工業用水は経産省、農業用水は農林水産省、水資源についていうと国土交通省がやっているということでありますので、もう少しこの水というものを戦略的に取り扱うために政府として力を、省庁横断的に取り組むためにも、まず六割から七割は農業用水ということでもありますから、しっかり農林水産省としてもその辺りのリーダーシップを取って、省庁連携のリーダーシップを取っていただきたいというふうに思います。  それから、水資源管理、先ほど横浜の行動計画で申し上げましたが、世界の中にこの水資源管理をしっかり推進していくということでありますが、我が国が果たすべき役割ということなんですが、一体どういったものがあるのかと。  水が不足している地域というのは欧米とかアフリカとか基本的に乾燥地域で、一方でアジア・モンスーン地域と、やっぱり大きく分けると二つの地域があって、一概に水の利用というのが一つとしてくくり切れないものでありますから、我が国農業の技術だとか伝統的な知恵だとか、そういったものをどのように、今アフリカにネリカ米などを普及させようとしておりますけれども、どのように水資源管理で我が国は貢献していこうと考えているのか、その点について確認をさせてください。
  116. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 先般のTICADⅣの中で横浜宣言が定められました。成長の加速化の中で、農業及び農村開発の部分につきましてこのように言っております。TICADⅣ参加者は、アフリカ大陸の経済活動の主要な構成要素としての農業の役割を確認し、現在の農業生産性を高め、水資源の供給及び管理などを通じてこの重要な分野への支援を急速に増加することの必要性を強調したと、こういうふうに書いてございます。  この場合の、我が国のいろいろな支援があり得るわけでございます。このネリカ米を中心としてアフリカのお米を十年で倍にするということを目標として定めたわけでありまして、日本の責任も、これJICAが中心になってやるんですが、大変重要でございます。  このネリカ米自身は水稲ではないんですけれども、しかし水稲にしますと収量が上がるという、そういうこともあるようでございまして、やはり水の管理というのが大事になってきます。そのときに、我が国の特徴として世界が認めていることは、やはり土地改良区というような形で利用者参加型の水利システムを造り上げたということでございます。  そういう意味で、大規模な水開発をして引いてくるということももちろん大事でありましょうが、少ない水をどう有効に利用していくかという意味では、水資源に対しますそれを有効利用するための生産者参加型の水管理システムが注目されているということもあると思います。いろいろな貢献は、資金的な貢献も必要でしょうし、あるいは科学的な知見も必要だと思いますけれども、やはり日本の特徴として言われるこういうシステムというようなものをまず生産者理解してもらうと。みんなで水資源を守っていくんだという、そういう体制をつくっていけるように各種の指導者の育成とか農村のキャパシティービルディングというようなことについても力を入れなきゃいけないんじゃないかなと私は感じたところでございます。
  117. 谷合正明

    谷合正明君 分かりました。  次の話題に移ります。  まず、日本の国内の米生産でありますが、先ほどから出ている米粉の話を質問させていただきたいんですが、まず、輸入に大きく依存している穀物の代替を促進するために、米粉だとかあるいは米油だとか稲発酵粗飼料、飼料米などへの支援措置を拡充すべきであるというふうに思います。  まずこの点について、本農林水産委員会でも先日飼料米の視察をさせていただきましたが、まだまだこの支援措置については不十分だというような声もございまして、この点についてまた更に一層支援を拡充していただきたいと思いますが、この点について御回答ください。
  118. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) 我が国のお米でございますけれども、御案内のとおり、大部分は主食用としての生産でございますが、食料自給率向上、それから国内の水田機能の維持活用、さらには輸入飼料穀物の代替という観点から、米粉、稲の発酵粗飼料、飼料用米などの生産振興は極めて重要になってきております。  しかしながら、本格的な生産、利用を実現していくというためには、生産コストの大幅な低減、国産米を活用した製品、食品の付加価値化による需要の拡大が必要でございます。このようなことから、まず、産地づくり交付金活用した地域の創意工夫による非主食用米の生産支援、これに加えまして、十九年度の補正予算で認めていただきました地域水田農業活性化緊急対策を活用した低コスト生産技術の確立、定着の支援、それから強い農業づくり交付金を活用した水稲直播機の導入支援、さらには飼料用米の利活用に関するモデル実証を全国展開するとともに、耕畜連携水田活用対策事業により稲発酵粗飼料の生産推進ということを進めているところでございます。  これらの対策を推進しまして、一層非主食用米のコスト削減、需要拡大による生産振興に取り組んでまいりたいと考えております。
  119. 谷合正明

    谷合正明君 今、政府の小麦売渡価格が四月に三〇%引き上げられて、これは昨年の十月に一〇%引き上げられたことに続いて大幅な引上げでございまして、秋にもまた、これ下がることはないだろうと言われております。そうした中、これ、消費者もまた食品会社も大変苦労をしております。中長期的に見れば、やはり米粉をしっかり拡充していくということが大事だろうと思っております。  先ほど来出ておりますが、この米粉の製粉技術を普及したりですとか、あるいはパンであるとかうどんであるとか、食料品ごとに適当な米粉というのをしっかり開発していくべきだと私は思うんですが、この点について今どのように取組をされているのか、お伺いしたいと思います。
  120. 町田勝弘

    政府参考人(町田勝弘君) 米粉の利用促進を図っていく必要があると、御指摘のとおりだと思います。  米粉につきましては、現在パンなどに使用されております原料米六千トン程度となっております。今後これを拡大していくためには、産地、製粉メーカー、製パン、製めんメーカー、スーパー、こういったものが連携いたしまして、確実に流通、加工、消費する体制を構築することが不可欠であるというふうに考えております。また、その際には、ただいま御指摘をいただきました製粉技術、またパン、めんといった用途に合ったような品種開発、改良を進めていくことが重要だというふうに考えております。  こうした観点から、私ども昨年十月から「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会を開催しております。引き続き、この米粉、また非主食用米の利用拡大に向けて幅広く検討してまいりたいというふうに考えております。
  121. 谷合正明

    谷合正明君 是非よろしくお願いいたします。  さらに、次の質問に移りますが、先ほど食料安全保障国内自給率を高めるという話の中で、政務官の方から担い手の確保ということがありました。そこで、担い手といいましても、いろいろなことが考えられるんですが、例えば外国人の労働者という、今日はそこまで直接議論できないと思いますが、将来の日本農業の担い手として外国人労働者ということが検討されるべきではないかなと、好むと好まざるにかかわらずと思っているんです。  というのは、今、外国人研修生・実習生制度というのがございます。これは平成二十一年度の常会で制度見直しに向けた検討が法務省の方で行われております。いろいろなことがこの制度をめぐっては、国際協力という趣旨の下でやっているわけでありますが、一方でいろいろ雇用の問題で、例えば低賃金の長時間労働の問題なんか発生しているわけでありますが、まず、農林水産省としてこの外国人研修生・実習生制度についてどのように評価をされているのか、お伺いしたいと思います。
  122. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 外国人研修制度でございますけれども、途上国等の人材育成を目的としまして、諸外国の青壮年を我が国生産現場に受け入れ、実際に作業従事をしながら技能の習得を目指す研修ということでございます。  現在、農林水産業あるいは食品産業におきまして、平成十八年度において、研修生で約二万一千人、技能実習生につきましては申請者ベースで約一万人ということになっております。これについては年々増加傾向にございます。  この本制度によります研修生の受入れにつきましては、途上国からも高い評価を得ているというふうに認識しておりますけれども、一部では研修生として受け入れた者を単純労働者として酷使する等の不適切な研修事例も見られておりまして、運営の適正化が求められているところでございます。関係府省におきまして御指摘のとおりの見直しが行われているわけでございます。  農林水産省といたしましては、これまで従来の将来の担い手という者につきましては、新規就農者も含め基本的には国内ということを前提に置いて検討してきたわけでございますが、将来については、これは農林水産業あるいは食品産業だけではなくて、国内の労働力についてどのように考えていくのかということで、関係省庁間で慎重に検討する必要があるというふうに考えております。
  123. 谷合正明

    谷合正明君 これ、単純労働者を受け入れるという話ではなくて、本当に担い手をどうやって確保していくのかという中で、例えば言葉であるとか労働条件であるとか賃金など、たくさんの課題がありまして、この辺りを真剣に議論しないと、結果的に、制度が不十分で法を犯したりだとか、そういう問題に行き当たりますので、私はこの外国人の労働者の問題についてもしっかり省内で検討すべきであるというふうに考えております。  このことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  124. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  世界的な食料の逼迫問題は昨日、決算委員会総理質問いたしましたので、今日、これも本当に逼迫している問題ですけれども、畜産、酪農の追加対策について大臣にお伺いしたいと思います。五月の二十三日に大臣あてに申入れを行いました。その中身に沿って大臣質問をしたいと思います。  まず、乳価の問題です。今年の二月に加工原料乳生産者補給金が一円、そして飲用乳価は三円引き上げられたんですけれども、その後も配合飼料の価格は引き続いて高騰いたしまして、さらに燃料価格の急騰とそれから生産資材の値上げということで、酪農、畜産の経営が困難な局面をずっと続けてきている。とてもではないけれども、この一円とか三円ぐらいの値上げでは経営が継続できないという事態になっているわけです。生産コストの上昇に見合うように、補給金それから飲用乳価、抜本的に再度引き上げなければ酪農の経営は困難になっていると思うんです。  そこで、大臣生産コストの上昇に見合う乳価の再引上げをすべきではないかということについてお答えいただきたいと思います。
  125. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員も今お話ございましたけれども、二十年度の加工原料乳の生産者補給金単価につきましては、配合飼料価格安定制度による補てんというものを踏まえまして、配合飼料価格について二十一年三月までの実負担額を織り込んで算定をしたわけであります。他方、配合飼料価格安定制度は、配合飼料価格の高騰が続く中で、財源などの問題から一部補てんの停止を検討せざるを得ない、言わば危機的なピンチの状態になっているのが現実でございます。  このような状況を踏まえまして、加工原料乳の生産者補給金の単価につきまして、私どもはこれを見直しを前提に、六月十二日の食料農業農村政策審議会の畜産部会を開くことにいたしておりまして、そこでの御議論をいただきながら適切に判断をしてまいりたいと、こう思っているところでございます。  なお、飲用乳につきましては生産者団体と乳業メーカーとの言わば民民交渉によって決定されるものでありまして、農林水産省が直接これに干渉はできないのでありますけれども、今委員が御指摘になりましたように、大変酪農経営が厳しい状況にあるという中で、加工原料乳の方も、我々、期中の改定をしなければならないのではないかというようなことから審議会で意見を聴取するつもりでいるわけでございますが、そういうような酪農経営の窮状ということにつきましても、乳業メーカーも言わば運命共同体でございますので、その辺の事情をよく承知をいただいて前向きな交渉がまた行われるということを期待しているところでございます。
  126. 紙智子

    ○紙智子君 私どもも、安全安心な国産牛乳を生産する会というのがありまして、この会の方々から生産現場の実情をお聞きしました。  千葉県で百五十頭搾乳している方は、昨年の生乳の一キロ当たりの経費というのが百八円だったんですね。それが手取り乳価で九十円程度だと。だから、生乳を搾るたびに赤字になるということで訴えられておりました。それに、ふん尿処理の施設ですね、これも借入金の償還や設備費を差し引きますと労賃が出てこないと。こういう声というのは、一部だけではなくて全国に共通する声であるというのは言うまでもないと思うんです。現に、昨年の四月から今年の四月までの一年間に酪農家が約千二百戸離農しているわけです。離農率は四十六都府県が六・六%ということですから、全国の平均の離農率五・二%よりも更に上回っていて、都府県というのが非常にそういう意味ではきつい状況になって、わけてもやっぱりきつくなっていると。  このまま、乳価も引上げもせずに酪農家の経営困難を放置していれば、それこそ国民の需要に見合う乳価の供給も困難になりかねない事態だというふうに思うんですよ。ですから、大臣、やっぱりこういう事態に対してどのように大臣御覧になっておられるか、お願いいたします。
  127. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 大変厳しい環境の中にあるものと事態を認識をいたしているつもりでございます。
  128. 紙智子

    ○紙智子君 それで、飲用乳価ですけれども、乳業メーカーと生産者団体との交渉で、民民ということはいつも言われることなんですけれども、政府としても飼料価格の続騰や燃料価格の高騰などを考慮した単価になるように再度の価格交渉を乳業メーカーに指導すべきではないかと思うんです。先ほどもちょっと触れられましたけれども、改めてその点、大臣、いかがでしょうか。
  129. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) このような厳しい環境条件の中にありまして、生産者の側からは飲用乳向けの乳価の再引上げを求める声が強まってきているということは承知いたしております。  各生産者団体におきましては、既に乳業メーカーに対して二十年度乳価の期中改定に向けた再交渉の申入れを行ったということも聞いております。乳業メーカー側も、酪農家が飼料価格の高騰などによりまして極めて厳しい状況にあるということについては理解しているものと思われます。そこで、農林水産省としては、生産者団体と乳業メーカーが認識を共有をして、我が国の酪農の安定的な発展のために前向きな交渉が行われることを期待しているところでございます。  なお、農林水産省としては、この民民の交渉に直接干渉することはできないのでありますけれども、生産者団体と乳業メーカーが認識を共有できるように、また両方の願いが実現されていくためには製品価格への反映について量販店や消費者理解が得られる必要があるわけでございまして、これらについての環境づくりというものを引き続き行っていきたいと考えております。
  130. 紙智子

    ○紙智子君 ドイツも、生産者組合が引上げを求めてずっと一週間にわたる行動をやっているんですね。それで、政府の支持を取り付けて、それこそ、十六州の農業担当者ですね、ここの担当者に対してもずっと理解を求めて、乳価の引上げの要求を政府としても容認しているという記事が載っています。是非、そこのところは力を入れてやっていただきたいと思うんですが。  次なんですけれども、配合飼料価格安定制度の問題です。  この制度が飼料価格の長期の高騰を想定していない制度であるために今のままでは制度が破綻しかねないと、その見直しが求められているということですね。ところが、この間の新聞報道などによりますと、前向きの見直しということではなくて、今まで行ってきた生産者の実質的な負担の増加を前期の四%までに抑える追加補てんという補てんを廃止しようということになっているわけですね。これでは畜産・酪農経営を守るどころか経営を直撃するものになってしまうと思うんです。そういう検討はやっぱり中止すべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  131. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) そもそも配合飼料価格の今後の見込みを正確に予測することは、御案内のとおり大変難しいわけでございます。原料価格、それからフレートの動向等いろんな要素が絡んでくるわけでございますが、主な原料でありますトウモロコシのシカゴ相場の動向を見てみますと、やっぱりこの次の七―九月期も配合飼料価格は上昇する可能性は高いのではないかというふうに見込まれるわけでございます。  このような中で、現状のまま今の通常補てんを継続しますとどういうことになるかと申し上げますと、補てん財源の不足額が更に拡大します。これはいわゆる借金でございますが、生産者サイドの借金が二千億円以上となるということが見込まれる状況にあるわけでございます。こうした中でこの特例的な四%の追加補てんを継続いたしますと多額の補てん財源の借入れを必要としまして、生産者等のこれは後年度負担ということになりますので、この後年度負担が極めて多額になります。また、価格への反映ということが進んでいる畜種にもこれは一律に補てんされるというふうな問題もございます。  こうした状況を踏まえまして、農林水産省としましては、加工原料乳生産者補給金単価等の期中改定、それから経営安定対策の充実強化を図るということを前提にこの四%の追加補てんを停止することを検討せざるを得ないのではないかと考えている次第でございます。  以上でございます。
  132. 紙智子

    ○紙智子君 例えば、都府県の酪農をやっていらっしゃる方は配合飼料に相当頼ってやってきているわけですよね。ですから、その四%を抑える補てん金を廃止するということによって非常に大きな打撃を受けるというふうに思うんですよ。  今言われたように、基金そのものは生産者、それから飼料メーカーですか、出し合って積んでいるわけで、その枠組みそのものを、結局国としても要するに出さないというわけですよね。だから、その枠をもっと広げればこれは続けられるんじゃないのかというふうに思うわけですよ。これ出さないから、今度どんどん借金が増えるという形になるんですけれども、国がもっとそこのところに出したらどうなのかなと思うんですよ。  それで今、畜産・酪農関係からは、今のような長期にわたる飼料価格の高騰の下では現在の農林水産省の畜産・酪農対策では畜産・酪農経営は困難だと、やっぱり新たな経営対策を求める声が広がっているわけです。その要求のポイントは不足払い制度を畜種別に導入できないかという声です。  酪農について言いますと、二〇〇一年の四月まで加工原料乳について不足払い制度が実施されていたわけですけれども、これが二〇〇〇年の法改正で現在の補給金制度になったわけです。二〇〇〇年に三万三千六百戸あった酪農家が二〇〇七年には二万五千四百戸ということで、二五%減少したんですね。つまり離農が急速に進行したということがあるわけです。それから、乳用牛の飼養頭数も二〇〇〇年の百七十六万四千頭から二〇〇七年になりますと百五十九万二千頭ということで、一割減っていることになっているんですね。この乳牛の減少が言わば現在バター不足の原因の一つにもなっている、基盤そのものが減ってしまっているということなわけです。  結局、実需者ニーズ生産者に伝達をして需要の動向に応じた加工原料乳の生産を促進するというこの法改正の目的、ねらいそのものがこれ失敗したんじゃないのか、現実から見ると逆に酪農基盤を壊したんじゃないかというふうに思うんですけど、このことについての反省が求められるんじゃないのかと思うんですけど、いかがでしょうか。
  133. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) 今御指摘のとおり、加工原料乳の補給金制度は平成の十三年度から変わっておりまして、以前の不足払いから現行の方式になったわけでございます。  その際にも様々な議論、いろんな議論が行われまして、以前の不足払いの算定方法というのは市場実勢が生産者サイドに的確に伝達されない、常に固定的な支払になってしまう、他方、そういう意味からしますと生産者努力が報われないということが指摘されていたわけでございます。そういったこれまでの不足払いの問題点を踏まえて現行の加工原料乳の生産者補給金制度に変わりまして、そして生産者努力が報われる、すなわち一定の補給金をあらかじめ算定をし、それを超える部分については生産者団体と乳業メーカーが交渉して自分たちの原料乳についての適正な評価を受けながらその所得を確保していくという方式に変わったものでございます。  以上でございます。
  134. 紙智子

    ○紙智子君 現実に、だけど実際に法改正してこんなふうに酪農家が減ってしまっているわけですね、頭数も減っているんですよ。これについてはどういうふうに見ておられるんですか。
  135. 内藤邦男

    政府参考人(内藤邦男君) 酪農農家の廃業につきましては私どもも調査をいたしましたけれども、高齢化ですとか、そういったいろんな様々な個々の事情がございます。他方、そういった廃業する方がおられる一方で、規模を拡大し生産性向上されて経営を伸ばしておられる酪農家もおられるわけでございます。  そういった意味では、私ども、こういった生産者努力が報われる制度を十分に活用していただいて、酪農経営を発展、伸ばしていただけたらというふうに思っているわけでございます。
  136. 紙智子

    ○紙智子君 現実の姿にきちっとやっぱり目を向けて、それでそこに真摯にどうやってじゃ対策を取って、本当に続けられるようにするかということで考えていただかないと本当に困ると思うんですね。幾らやっぱりいろいろ言い訳をされても、現場農業者というのは一番よく分かっていると思うんですよ。  だから、全国農業協同組合中央会も、二十一年度以降の更なる飼料価格の高騰や飼料価格の高止まり等に対応するために、売上げ収入金額と生産コストに着目して所得を確保するように畜種ごとに抜本的な新たな経営安定対策を確立することと、こういう要望を上げているわけです。このような農業者の要望を真剣に検討すべきだと思いますけれども、大臣、これいかがでしょうか。
  137. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 今の飼料価格の高騰の追い打ちを受けて畜産経営が大変苦しい状況になっているということについては認識を共有しているつもりでございますが、この場合の経営への影響というのはまさに畜種ごとに違うんですね。酪農、あるいは肉用牛、養豚、採卵鶏、ブロイラー、それぞれの飼料価格の高騰によって受けている経営上の状況がみんなそれぞれ違っております。  そういう意味で、この飼料価格財政補てんというのが非常に困難な状況考えますと、やはりこれを、畜産を支えている経営の畜種ごとの経営の状況というものを実情をしっかりと把握した上で、それらについて有効な経営対策を講じていくということが今一番求められているというふうに認識をいたしておりまして、委員がおっしゃられるような形の不足払い制度といったようなもの、あるいはその差を補てんするといったようなことで対応をするよりも、やはり経営のそれぞれの状況に着目した経営対策を講じた方が有効だと私は考えております。
  138. 紙智子

    ○紙智子君 その前提となる議論として、非常に国際的にも様々な今変化が起こってきていて、供給そのものも非常に求められてきている中で、延長線で、これだけやっぱり飼料が高くなるということは想定していなかったわけですから、そういう中で、実際に逼迫する事態になっている中で、やっぱり今までの枠ではなくて、延長線ではなくて、本当にここは私は政治決断というものが必要になっているというふうに思うんですよ。やっぱりそうしなかったら続かないです。もう今の時期を見てやめるかどうかということを決定しようとしていますから、そこをやっぱりしっかり見ていただいて対策を打っていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  139. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  この際、主濱君から発言を求められておりますので、これを許します。主濱了君。
  140. 主濱了

    ○主濱了君 主濱了でございます。  私は、民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党・無所属の会及び公明党の各派共同提案による国際的な食料需給ひっ迫及び価格高騰問題への我が国対応に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     国際的な食料需給ひっ迫及び価格高騰問題への我が国対応に関する決議(案)   世界食料事情は、昨今の食料需給ひっ迫及び価格高騰によって大きく変化している。特に、基本的な食料である米、麦、トウモロコシ等の穀物価格の急激な高騰は、途上国を中心とした暴動の発生等、社会不安を引き起こしている。こうした状況は、世界的な人口増、地球温暖化等による気候変動、途上国における食生活の高度化等といった構造的な要因とともに、原油価格の高騰、食料輸出国による輸出規制、食料バイオ燃料仕向け量の急増、そして市場への投機資金の流入等、様々な要因によるものとみられている。  国際的な食料需給の不安定化は、世界の平和・共存が脅かされる事態に直結する問題であると認識し、世界平和を希求する我が国としては、そうした事態を回避するため、国際的なリーダーシップを発揮して積極的に取り組む必要がある。  よって政府は、世界各国農業生産強化基本とした食料の安全保障が確実に確立されるよう、次の事項の実現に努めるべきである。  一 我が国は、食料自給率がカロリーベースで三九%と、世界最大農産物輸入国であることから、ぜい弱な農業構造の改革や日本型食生活の実践等、生産消費の両面から食料自給率向上に取り組んでいるところであるが、昨今の国際的な食料需給のひっ迫等にかんがみ、この取組の一層の強化を図ること。  二 我が国は、国際約束に基づいて毎年約七十七万トンのミニマム・アクセス米を輸入しているが、今後ともこれを続けることは、米の世界市場における価格暴騰・需給ひっ迫をさらに促進しかねない要因になるとの懸念があることから、その輸入については、平成六年五月二十七日の「ウルグアイ・ラウンド農業協定における米のミニマム・アクセス機会の法的性格に関する政府統一見解」に基づいて、適切に対応すること。  三 国際的な食料安全保障の確保に向け、本年七月に北海道で開催される洞爺湖サミットにおいて、本年六月に国際連合食糧農業機関が開催した「世界食料安全保障に関するハイレベル会合」での議論を踏まえ、アフリカ諸国等途上国に対する食料需給ひっ迫価格高騰問題への緊急的な支援策はもとより、気候変動や原油価格高騰問題等を含めた包括的な枠組みによる抜本的な対応策を提案すること。  四 食料の輸出規制については、その発動に当たっての国際ルールの明確化を図るとともに、一定の場合に食料輸出国に対し、輸入国との事前協議の義務付け等、実効性のある規律強化策について国際的な合意を得るべく、WTO農業交渉の場等での働きかけを強めること。  五 穀物を原材料とするバイオ燃料生産拡大は、食料不足や飼料価格の上昇等を引き起こす懸念があることから、バイオ燃料増産に当たっては、食料・飼料供給との適切なバランスに配慮することが各国共通の取組となるよう、洞爺湖サミットをはじめ、国際会議の場等で積極的に働きかけること。  六 途上国の食料問題に対する我が国の具体的な施策については、本年五月の第四回アフリカ開発会議で取りまとめられた「横浜宣言」の趣旨にのっとり、アフリカをはじめとする途上国の自立的な開発の促進を支援し、農業生産性向上生産拡大を図る観点から、農業分野における基盤整備や人材育成、研究開発等を軸とした支援を着実に実施すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  141. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまの主濱君提出の決議案の採決を行います。  本決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  142. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、若林農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。若林大臣
  143. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重させていただき、関係省庁との連携を図りつつ、今後最善の努力をしてまいる所存でございます。
  144. 郡司彰

    委員長郡司彰君) なお、本決議については、本日、福田内閣総理大臣に当委員会として申入れを行うことといたしております。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会