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2008-04-22 第169回国会 参議院 総務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月二十二日(火曜日)    午前十時四分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高嶋 良充君     理 事                 加藤 敏幸君                 那谷屋正義君                 内藤 正光君                 河合 常則君                 末松 信介君     委 員                 梅村  聡君                 加賀谷 健君                 行田 邦子君                 榛葉賀津也君                 武内 則男君                 外山  斎君                 長谷川憲正君                 吉川 沙織君                 礒崎 陽輔君                 二之湯 智君                 溝手 顕正君                 吉村剛太郎君                 魚住裕一郎君                 弘友 和夫君                 山下 芳生君                 又市 征治君    事務局側        常任委員会専門        員        高山 達郎君    参考人        慶應義塾大学法        学部政治学科教        授        片山 善博君        佐賀多久市長        内閣地方分権        改革推進委員会        委員        九州市長会会長        代行       横尾 俊彦君        立教大学経済学        部教授      池上 岳彦君        東京大学大学院        経済学研究科教        授        持田 信樹君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○地方税法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○地方法人特別税等に関する暫定措置法案内閣  提出衆議院送付) ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) ただいまから総務委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  地方税法等の一部を改正する法律案外二案の審査のため、本日の委員会慶應義塾大学法学部政治学科教授片山善博君、佐賀多久市長内閣地方分権改革推進委員会委員九州市長会会長代行横尾俊彦君、立教大学経済学部教授池上岳彦君及び東京大学大学院経済学研究科教授持田信樹君、以上四名を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) 地方税法等の一部を改正する法律案地方法人特別税等に関する暫定措置法案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見をいただき、三案の審査に反映をさせてまいりたいと存じますので、どうぞ最後までよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方について御説明いたします。  まず、参考人皆様からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、参考人皆様及び質疑者の発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず片山参考人からお願いいたします。片山参考人
  5. 片山善博

    参考人片山善博君) おはようございます。今日はこういう機会を与えていただきましてありがとうございます。御紹介いただきました慶應義塾大学法学部片山であります。  私の方は、今回議案で出ております三つ法律案について、気の付く点を幾つか申し上げたいと思います。是非お聞き届けいただければと思います。  レジュメを一枚用意していただいていると思いますので、それを御覧いただきながらお話を申し上げたいと思います。  最初に、地方税法でありますけれども、その中の寄附金控除の拡大についてです。いわゆるふるさと納税についてであります。  私は、結論からいいますと、これはやるべきではないと思っております。なぜかといいますと、ふるさと納税について、これ大都市とそれから地方部との財源調整のようなことを一つのねらいとされているんだろうと思いますけれども、例えば大都市部でいいますと、多分大都市部から逃げていく財源が幾らか出ると思います。例えば、東京都から都民税が逃げていくという、こういうことになります。  これはどういうことを意味しているかというと、東京都などの大都市は少々税金が逃げていってもちゃんと賄えるということになるんです。ということは、今設定されている税率が高過ぎるということなんです。税というのは、本来、必要最小限にしか取ってはいけません。これは納税者国民に対する、住民に対する痛みでありますから、不必要に取るべきものではありません。どれだけのコスト自治体に掛かるのか、そのコストをどうやって住民に割り振るかということでありまして、その割り振る税というのは必要最小限に限られるべきです。ところが、少々東京都や大都市から田舎に税が逃げていってもちゃんと賄えるということは、もうそもそも税率の設定が高過ぎるということです。ならば、本来ならば住民税の、都民税を含めた住民税税率を下げるというのが本来の原則であるべきです。  それから、地方部でいいますと、言うなれば住民以外の人を当てにする税制というか、制度になります。本来、自治体というのは、負担分任といいまして、自分たちが行う仕事に必要なコストというのは当該地域内の住民で割り振るわけです。これが負担分任であります。ところが、今回のこの仕組みというのは、何か新しいことをする、それについての財源はるか遠方住民でない人たちに声を掛けて納めてもらうという、こういうことになるわけでありまして、私に言わせれば邪道であります。本来ならば、必要な経費は当該地域住民にお願いをして、これだけコストが掛かりますから税率を上げさせてくださいと言わなきゃいけない。これが地方自治原則なんですけれども、そうではないところに、物ごいをするというと非常に言葉は悪いですけれども、物ごい税制のようなものであります。  聞くところによりますと、できるだけたくさん寄附をもらいたいというので、いろんな特典を付ける自治体もあるんだそうであります。五万円以上の寄附をしてくれたら地元高級肉をプレゼントしましょうなんていうキックバックもあるんだそうでありまして、一体これは何をやっているんだろうかと思うんです。本来ならば、東京都なり横浜市に納められた税はそれなりに何かに使われるわけです、ちゃんとしたことに。ところが、この制度を通じて、事もあろうに牛肉に化けてそれがプレゼントされるという、こんな無駄遣いになりかねないんであります。こんなモラルハザードを生むような制度はやっぱりやめるべきであります。  それから、自治体間の財源調整皆さん言われる方が多いんですけれども、一般の目から見ますとやっぱり奇異に感じます。といいますのは、なぜ自治体だけが優遇されなきゃいけないのか、寄附の対象としてなぜ自治体だけが優遇されなきゃいけないのかということであります。例えば、いろんな仕事を、貴重な仕事をしている主体というのは自治体に限りません。NPOであるとかNGOであるとか、その他いろんな団体があります、社会福祉法人であるとか慈善団体であるとか。そういうところは金がなくて困っているところも多いんです。  自治体というのはそもそも自前で税を調達する課税権があるわけです。ところが、福祉団体でありますとかNPONGOはそういう課税権なんかないわけでありまして、それならばむしろそういう自前財源を調達する機能のないところの方をむしろ優遇してあげた方が世の中の公平公正にかなうんではないか。今回のは何か都会とそれから困っている田舎との対抗関係で論じられることが多いんですけれども、しょせんは役所間のやり取りであります。そうではなくて、目を広げると、役所の外にはいっぱいもっともっとサポートしなければいけない、手を差し伸べなければいけない存在があるということをお忘れではないでしょうかということであります。  道路特定財源については国税といいますかガソリン税の方で専ら議論されるんでありましょうけれども、地方税について感じることを少しお話をいたしますが、私は、道路特定財源で今回の議案にかかっております自動車取得税軽油引取税、この二つ特定財源制はやはり廃止すべきだと思います。いずれも一般財源にすべきだと思います。この二つの税を特定財源の枠の中にとどめておく理由、さしたる理由は見出せません。  例えば、自動車取得税でいいますと、これは今特定財源になっていますけれども、これは取得税です。取得行為に掛かるわけですが、一方、保有については自動車税というのが掛かっています。同じ都道府県税です。この自動車税一般財源です。取得税だけが特定財源になって保有課税一般財源になるというのは、理由は特にないと思います。それから、軽油引取税は、トラック業界とかバス運送事業者が専ら払っているということ、これは確かだろうと思いますけれども、しかし、これもガソリンと併せて全体の石油課税で見てみますと、やはり特定財源にする理由はないと思います。  例えば、マイカーに乗る人、タクシーに乗る人はガソリン税負担している、最終的には。そうではなくて、バスに乗る人は軽油引取税負担をしている。そうすると、乗り物に乗って右往左往する人は何らかの税負担をしているわけでありまして、国民みんながガソリン税軽油引取税は払っているということ、負担しているということなんです。ですから、特定の人が、ドライバーだけが運転しているんだからそれに還元しなきゃいけないというこの道路特定財源理由付けというのは、軽油引取税についても私はないと思います。もっと言えば、軽油を使ってトラック物流をしておりますけれども、その物流で運んでこられる物資を毎日私たちは消費しているわけでありまして、国民みんなが最終的には何らかの形でこの軽油引取税消費行為を通じて負担しているということでありますから、その財源特定性というのはないと思います。是非この際、一般財源にすべきだと思います。  それについては、国税と私は切り離してもいいと思います。ガソリン税の取扱いと地方税は切り離してもいいと思います。地方税だけでも一般財源にするという、そういう考え方があってしかるべきだと思います。  もう一つは、私もかつて知事をやっておりまして痛感しましたけれども、今自治体行政で何が一番重要かといったときに、決して道路だけが一番重要だということではありません。私なんかは一番重要なのはやっぱり教育だと思います。もちろん教育以外にも、子育てでありますとか、特に保育所待機児童の解消の問題とか、いろんな難題を自治体は抱えているわけです。独り道路だけを聖域にして、道路だけに財源の面で優先席優先枠を設けるというのは私はやはり時代遅れというか、ピントがずれているんだろうと思います。  特に気になりますのは、これ笑い話ですけれども、道路特定財源があるので道路はもうきっちり整備をされたけれども、過疎地に行きますと、道路はきっちり整備されたけれども上を走るバスが、自治体がその赤字バス運行を支援するだけの財源がなくなってしまってバスが廃止になるという、こんなところはもう随分あるんです。本当に目の前まで道路がきっちりできたのに、高齢者皆さんはその上をバスで移動することができない。病院にたどり着いたとしても、病院には医者がいない。こんなことになっているわけで、そういうのを見てみますと、道路を造り続けることが一番の重要課題ではなくて、そういうところもあるかもしれませんけれども、地域によっては道路整備は終わったからその上を走るバス運行の方に重点を置きたいとか、それから町立病院の産婦人科とか小児科の医者の獲得の方に、確保の方に少し財源を回したいというところはあるはずであります。それならばやはり一般財源にするということの方が合理性があると思います。  三つ目は、地方法人特別税でありますが、これはもう絶対やめるべきです、こんな悪い改正は。改正というのは正しく改めるんですけれども、改悪であります。  なぜかといいますと、これは、地方自治を進めるために財政面ではできるだけ自由度を増しましょうということを今までやってきたわけであります。地方分権というのは、言うなれば自治体自由度を増すわけであります。その自治体の中で住民意思によって物事を決めていくという、これが地方自治であります。そこで、財政面ではできるだけ自治体財源というのは自由度を増しましょうということであります。三位一体改革というのをやりましたけれども、小泉内閣のときに、これは国から地方へのひも付き財源をできるだけ一般財源、自由な財源に変えましょうというそういう運動をしてきたわけであります。  今回この法案でやろうとしていることは、都道府県税の一番基幹税であります法人事業税、これが一番税収としては多いんですけれども、この半分をあっという間に国税にしてしまおうという、そういう改正案なんです。営々とできるだけひも付き財源地方一般財源にしてこようといって一般財源の充実ということをやってきたんですけれども、さしたる議論もないまま、あっという間に二兆数千億円のものを国税に切り替えてしまおうということなんです。地方分権に全く逆行いたします。  これによって何が起こるかといいますと、自前で調達する都道府県の税が減るわけであります。大幅に減るわけです。自前で調達するということはこれは非常に重要でありまして、要するに自分で汗をかくということです。自分でやっている仕事はこんなことをやっている、したがって納税者皆さん理解してください、納税に協力してくださいというところ、これが地方自治の実は根幹になければいけないんです。ところが、法人事業税の半分が国税に移りまして、国税から今度はお手当のようにして来るわけであります。その分、汗をかかなくていいんです、納税者を説得する必要もないんです。全部それは国が国税として税法改正もやってくれるわけであります。要するに、自治体がますます国の扶養家族のようなものになってしまう。これ自立からは遠のくわけであります。こんなことをしてはいけないと私は思います。  もう一つは、そこに書いていますけれども、都道府県が言うなれば国の徴税請負人になるわけです。国が税制の枠組みを決めて、取るところだけやりなさいよというのが今回の仕組みです。これは恐らく自分で取るのが地方税だという痕跡をとどめたいのでこういう仕組みにされているんでしょうけれども、取ればいいというものではないです、地方税というのは。さっき言いましたように、地方税というのはどういう制度に仕組むか、どういう水準で負担を求めるかということがあって、決まったものを最終的に取るということなんで、今回都道府県に残るのは最終的な取るところだけなんです。これはだから請負でもやれるんですね。一番基本システム設計のところは全部国の方に移るわけです。こういう仕組みはやっぱり地方分権に確実に逆行するということであります。  私はこれは憲法九十二条に違反すると思います。憲法違反であります。憲法九十二条というのは、地方団体制度とか運用とか仕組み地方自治本旨に基づきなさいと書いてあるわけです。これは政府義務国会義務です。地方自治本旨にもとるような法律を作っちゃいけませんというのが国会に課せられた義務であります。それに違反すると思います。  本旨というのは、住民自治団体自治がちゃんと全うされるということです。団体自治というのは、国から独立して物事が決められるということです。今回、国の方で決めるように移すんです。住民自治というのは、その団体の中で住民意思物事が決まるということです。今回、国税になってしまえば、住民意思は全くこれは通りません。だから、地方自治本旨から背くこれは改悪でありまして、憲法違反のような法案は絶対通すべきではないと私は思います。  格差是正のためと言われますけど、格差是正は本来交付税でやることです。交付税が今機能不全に陥っています。かつて長い間補助金化しまして、その補助金化したことのツケを今交付税は背負っているわけでありまして、本来の格差是正といいますか財政調整機能を著しく喪失しています。そのためにこんな変な制度が出てくるんです。びほう策です。原点に返って交付税制度をやっぱり改善、改正すべきです、交付税が補助金化していますから、今。その補助金化した要素を取り除いて、本来の純粋な財政調整機能を発揮できるように交付税制度をもっと抜本的に改革するというのが私は国会仕事だろうと思います。そこをやらないで、単なるびほう策法人事業税だけでお茶を濁して、地方自治からぐんと遠のくようなこんな仕組みはつくるべきではないと思います。  最後に、書いていませんけれども、一つ私は苦言を呈したい。これは専ら政府に対してでありますけれども、とにかく遅いです、こんな改正をやろうとするのが。それは国会ががたがたしたと言われますけれども、国会ががたがたするのはもう去年の七月二十九日、私の誕生日以来分かっているわけであります。それだったら、例年とは違うスケジュールを組んで、例えば政府案を作るのはもっと早くして昨年の年内に決めるとか。それを、国会の参議院の情勢が変わったのに何にも従来のやり方を変えないで、今までどおりのスケジュールでやって今日こんなことになっているわけでありまして、もちろん国会の責任もあると思いますけど、もうちょっとやっぱり政府が目端を利かせて早々といろんな作業をやられないと、今、後で多久市長さんも言われると思いますけど、地方団体はえらい迷惑をしているはずであります。  地方自治地方分権を推進すると言っている官庁それから各政党が、まるで地方分権とか地方自治に反するようなこういうスケジュール物事を論じたり作業しているというのは、私は全くその言行が不一致だと思っております。是非こういうことは改められるべきだと思います。  ありがとうございました。
  6. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) ありがとうございました。  次に、横尾参考人にお願いいたします。横尾参考人
  7. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 多久市長横尾でございます。今日はこういう機会を与えていただいて誠にありがとうございます。  自治体首長であり、また先ほど御紹介がありましたように幾つかの役職もさせていただいておりますので、もろもろの経験、実例を踏まえて、限られた時間ですが、意見陳述をさせていただきたいと思います。  私の場合、お手元に資料を準備しておりますが、そこに入ります前に、まず、平成の大合併を経まして自治体の数は約三千三百から千八百程度になりました。それぞれに首長並びに議会の皆さん知恵を絞ってやりくりに今非常に苦労されているというのが率直なところだと受け止めています。各先生方の御地元にも各市町村あると思いますが、それぞれに本当にやりくりに苦労されているところだと思います。  その状況の中で、今、片山参考人もおっしゃいましたように、国会審議に時間を要したり議決が遅れるということで地方自治体の特に財政にかかわるものが未確定の状況になっておりまして、多くの自治体関係者大変不安感も持っているところでございます。率直な印象で申しますと、まあ一、二か月ぐらいなら何とか耐え得るかもしれないが、それが延びてしまうと、本当に財源不足、どこからそれを補てんするのかということが大変憂慮されるんじゃないのかなということを多くの方々が感じられていると思います。実際に知っている各首長さんたちからもそういう声を聞いております。  また一方で、抜本改革をしていただくように衆参両院で今いろんな議論等が進められていると承っておりますが、例えばこの一、二か月で集中的にやるというのも一つの方法でございますが、先ほどの片山さんの話にもありましたけれども、本格的にやるんであればやはり一年ぐらい掛けてやる必要があると思いますし、その意味では、当面の予算措置をしていただいて、地方に迷惑を掛けないというスタンスで多くの各政党や首相、大臣もおっしゃっていただいていますので、それを踏まえていただいてしていただくのが安心につながるんではないかなと感じております。医療とか福祉、さらに教育につきましても大いに考えなければなりませんが、それらを考えますと、どこかでは消費税のことですとか、先ほどの地方交付税のことですとか、様々な税財政にかかわることの改革が必要だろうと感じながら、日々執務に当たっているところでございます。  なお、最近の状況をまず冒頭に申しますと、現状では佐賀県内、私、佐賀県の中央部から来ましたが、様々な予算について、国会未決のものについては執行留保という形で県から知らせが来ておりまして、決まるまでは執行しないでくれという状況ですね。そんな状況でございます。  何枚かのペーパーを準備しておりますが、まず最初にお開きいただいて、二ページ目からお話をさせていただきたいと思います。  地方現状ということでございますが、基本認識としまして、私は政治行政は未来をつくっていく仕事を使命として市民の皆さんから預かっていると思っております。その上では、税を始めとした様々なお金をお預かりをして、民意によりますビジョンをつくり、予算編成をして実施をしていくというのが我々の仕事だと思っておりますが、そういう意味では自治体を経営するという感覚がこれまで以上に非常に必要だろうと思っています。また一方では、そのことを例えて言うと、経営でいいますところのCEOということも言えるんじゃないかと思います。私、市長就任のときに最初に読んだ本は憲法でございますが、英文であえて読みましたら、地方自治のところの首長のコーナーは何とチーフエグゼクティブオフィサーと書いてありましたので、我々はそういう感覚が必要だと思っています。  実際、とはいえ、大変やりくり苦労の連続でありますが、節減型の財政運営をし、財政行財政改革はもう不断に毎年でも意識をして行っておりますし、そういう中でも我々のところでいいますと約三割強を地方交付税に依存しておりますので、この重要性は避けて通れないものであります。また片方では、職員の減につきましては就任以来ずっと続けておりまして、削減をし、歳出を抑えていくということもやりながら努力をしています。片方では、活性化政策として企業誘致、一年半ほどで六社の誘致に成功しましたが、これもいろいろ知恵を出して、リース方式とか様々な手を打ってやっているところであります。そして、さらには、少子化の傾向がある中、定住促進ということで新たな政策も取り入れて昨年からやっていますが、それなりの効果も出ているところでございます。また、日々の管理につきましては、予算配分に関しまして枠配分という方式を取り入れまして、各部ごとに主体性を持ってやっていくということを意識付けをしながら取り組んでいるところでございます。  その状況を、五ページ目をお開きいただきますと、この約十年ほどの財政状況の数字が出ております。平成の十一年が実は交付税等の増もありましたのでピークの規模、予算規模でありますし、交付税も一番多いわけでありますが、それから比べますと、平成十八、十九年を見ますと率にして二三%ほどのダウン、約四分の一ほどダウンをする交付税の影響を受けまして、全体的には縮小傾向ということにあります。片方では、市民税等、少し景気の回復等があって明るい兆しもありますけれども、まだまだ安心のできない財政状況でございます。  一方では、人件費につきましては、先ほど言いましたように、例えば平成十年から比べますとかなりの額を削減しております。一番下にありますように、職員数も平成十年二百八十三人、これ一般会計ベースでございますが、二百人ということで削減をしてやっているところでございます。これに関する、分かりやすく図表として次のページに出しておりますが、大きく地方交付税、一番上のものが十一年から十六、十七、十八と減ってきているというのが各地方の大変憂慮しているところであります。  このことは、さきの三位一体改革の中にも三つのこと、補助金の見直しや交付税の見直し、そして権限の移譲等があったわけですけれども、どうしてもこの交付税削減が大きく響きまして、そのことが地域間格差につながっている部分も大きくあるんではないかなと受け止めているところでございます。  一ページに戻らせていただきますと、私、先ほど紹介にありましたように、分権改革、一部お手伝いもさせていただいておりますが、分権改革についてはもう長年の懸案で、衆参両院の議決以降、国の重要施策として取り上げられ、そのことを発端に第一次分権改革、そして現在、第二次分権改革と進んでおります。こういった中で国と地方の役割の分担ですとか、あるべき日本の行政の姿を描いていくことが極めて重要だと思っています。とはいえ、先ほども申しましたように、大きく財源が不足している自治体地域間格差もやや開いている状況にございまして、多くの方々が心配をしています。  また、財政につきましては、自主的に運営のできる税財政基盤をつくっていくことが極めて重要と思っています。そういう意味では、この後段、下の方にありますように、国と地方の例えば自主財源に関する確保の意味を含めまして、五対五の税源配分ということは是非今後実現すべきだろうと考えているところであります。また、これからもこういった議論は高まっていくだろうと思います。  また、次のページになりますけれども、特に先ほどの財政支出の中でもありましたけれども、額としてはそう極端に多くなくてもやはり着々と年を追うたびに増えているのが社会保障費、扶助費関係でございます。高齢化の影響、その他の影響もございますが、このことについては抑制の努力も当然していくわけでありますが、一方では地域事情ごとにそれぞれの自治体で工夫をして、福祉の手当てあるいは手を差し伸べる行政というのをされておりますけれども、これらを一律にどうこうというのはなかなか難しい面があるだろうと思います。まして、高齢者の多くおられるところ、あるいは最近話題になっています限界集落を抱えているところほど、こういった意味での様々な心配、また財政的な負担の必要性というのが当然高まっているところでございます。  また、一方では、社会インフラを見てみますと、例えば橋梁関係の点検がまだまだ、市、町レベルあるいは県レベルでもまだ未着手のところもあるようでございますし、それらの財源をどうするのか。さらに、持続可能な町づくりを進めていく意味でも財政の需要にこたえていけるようなやはり地方交付税の新たな展開として、地方団体が申しております地方共有税等も含めた議論を大いにして、是非議論をしていただきたいと感じているところでございます。  また、これらの地方と国の関係や地方財政に関して議論をしていただくには、国と地方の公式の協議の場というものを是非立ち上げていただいて、主管大臣並びに首長関係の代表者と、政治的な判断も含め、大いな議論を是非公式にやっていただく場がとても重要だろうと感じているところでございます。  次に、三ページでございますが、地方税財政関連法案の早期成立ということをタイトルに、小見出しには掲げております。  現状、多久市の例でいいますと、影響額というものを見てみますと、四ページにありますように、当面の交付額等を見ますと、地方交付税の場合、それと地方特例交付金を含めますと五千七百八十七万円の差額になります。年度内の成立であれば七億数千万だったものが、年度内不成立となり六億七千万、これが不足ということがもう確定的な方向になっておりまして、これらは同じような状況が全国の今自治体に影響をしていく心配を皆がしているところでございます。これらに関しまして、これが五月以降に更に続いていくとなりますと、行政財源不足そしてサービスの不足という事態を招きかねませんので、是非これらを早期に成立をしていただくのが重要だろうと考えているところでございます。  また、これを全国的に見ますと、そこにありますように、地方交付税、四月の概算交付額で二千八百億円が減少、地方特例交付金でも三百億円が減少、影響額としておよそ三千百億円が全国の自治体に影響するという事態がありますので、是非是非、ほかのいろんなマターもあると思いますが、地方自治体関係に関しましては早期の成立を是非お願いをしたいというのが率直なところでございます。  また、今話題になっております道路特定財源等ございますけれども、大きな高速道路等の工事の現場等が報道のカメラに映されて、こんな無駄な道路は要らないんじゃないかという議論がよく沸き起こりましたけれども、一方では、非常に日常の生活道路整備ですとか、社会インフラをして地域活性化、企業誘致に結び付ける産業振興の施策の一部ですとか、さらには安全対策等へも予算が行っているようでありますが、必要なものは造っていくという部分も片方では是非御考慮をいただきたいというふうに感じるところでございます。  しかし、一方では、私自身も怒りを覚えましたが、不適切な支出等があるようでございまして、これらについては早急に実態を解明し、是正もしていかないと、論語の言葉にあります信なくば立たず、たまたま私どもには孔子廟がありますのでよく論語を読むんですが、この信頼の信がなくなりますと政治行政も立ち行きませんので、是非そういった改善も全国挙げてやらなければならないことだろうと受け止めているところでございます。  しかし、現状ではやはり多くのところで、佐賀県内でも百六十五億円ほどなくなるんではないかと心配がありますが、この税率の問題、また税率廃止が期間が延びていきますと財源が不足する事態が発生いたしますので、主務大臣がおっしゃり、また与野党でも地方にはなるべく迷惑を掛けない対策を考えてくださるという御発言等あっておりますので、是非そのような対策をお願いいたしたいというふうに願っているところでございます。  まとめとしてでございますが、住民サービス、自治体は本当に細かいところから大きなところまで国や県との連携をし、また予算もいただきながら実行しておりますが、その継続的な推進のためにも関連法案の是非早期の成立をお願いしたいと思っております。  また、片方では、最近の危機管理を始め、安定して安全で安心な町づくり、また住民生活の確保ということも我々の使命でございますが、そういった意味では地方自治体の仕事は、ちょっと待っていいよということは対住民にはございませんので、是非遅滞のない対応をお願いしたいというふうに思っております。ここにも地方に迷惑を掛けないという御発言等を各先生方からもいただいておりますので、このことを強く信じていきたいというふうに願っております。  また、地方財政全体の運営の充実、また財源の確保等について今後様々な議論が起こると思いますが、是非国会先生方の積極的な御理解とリーダーシップをお願いいたしたいと思っております。特に、税財政、そして分権改革につきましては、政治のイニシアチブというものが極めて重要だと受け止めております。政治的な大所高所からの御判断でのリーダーシップの発揮を心からお願いいたしまして、およそ時間となりましたので陳述に代えさせていただきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  8. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) ありがとうございました。  次に、池上参考人にお願いいたします。池上参考人
  9. 池上岳彦

    参考人池上岳彦君) 池上でございます。  本日は、三つ法案について参考人として意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は地方財政を研究しております。そして、地方分権についても研究しておりますので、その観点から今回の改正案について若干の意見を申し述べたいと思います。  まず、最初に確認すべきことですけれども、地方分権のためには地方税を充実させる、それによって地方の公共サービスを実施する財源を保障するということが必要だということでございます。今お話しになられた横尾市長も委員を務められている地方分権改革推進委員会の活動に基づいて国から地方公共団体への権限や事務の移譲が進むわけですけれども、それに応じて地方の経費も増大します。また、教育、保健、福祉、環境といった広い意味での対人社会サービスを担っているのはほとんど地方公共団体ですから、そこで国庫補助負担金の廃止、縮減を更に進めると同時に、その事務を地方公共団体が担うための地方税の拡充と、そのための税源移譲というのが必要であろうというふうに思っております。  そこで、具体的に申し上げたいのは、個人住民税地方消費税の拡充という点でございます。平成十八年度税制改正において所得税から個人住民税所得割への約三兆円の税源移譲が実現しました。今後も、税源移譲を考えていきますと、私は、個人住民税所得割の標準税率を更に引き上げる、そういう意味での税源移譲も私は可能だと考えております。  そして、もう一つ有力なのが、よく話題になります地方消費税の問題でございます。消費というのは所得あるいは資産と比較しまして税源の偏在度が小さい、さらに税収も比較的安定的であるという点から地方税に適してはいると言えますので、消費税についても国税から地方税への税源移譲が必要であります。  それから、これは余り触れられていないことなんですが、最近話題になっていることとも非常に関連しますので、個別消費税の問題でございます。個別消費税の分野の中にも地方税として拡充すべきものはあると私は考えております。例えば、病気であるとか事故であるとか、あるいは環境に対する負荷といったものに結び付きやすい、例えば酒、たばこ、ガソリンといったものに地方税を課します。そうすれば、その消費を抑制すると同時に地方の社会サービスの財源の確保にも貢献することができます。また、そういったものの消費は地域間の偏在度は小さいということがございますので、税源移譲の対象としてふさわしいというふうに私は考えております。  それに関連して、現在大きな問題になっております道路特定財源一般財源化、特にガソリン税等の問題ですけれども、私の意見は与野党いずれともやや異なっております。大きな論点、レジュメにも書いておきましたが、四つあります。  第一は、道路特定財源一般財源かという問題でございます。現時点での燃料の消費量あるいは自動車の購入量とかそういったものは今後新たに道路を建設する必要性と直接結び付くものではないわけでございまして、したがって道路整備に使い道を限定した特定財源制度というのはやはり望ましくないので、一般財源に転換することが必要であろうというふうに考えております。  二点目は、本則税率か暫定税率かということでございますが、重要なのは本則か暫定かという問題ではなくて、暫定税率を廃止したとしても本則税率自体は引き上げることは可能ですから、一般財源にするのであれば、これは時限立法というふうにする必要はございませんので、本則税率に一本化すべきであるということになります。  三番目は、現在の税率が全体として適切かどうかという問題でございます。これはなかなか難しいかと思いますけれども、要するに、日本の税率を国際比較してみますと、課税額というのは先進国の中ではかなり低い方であるということは明らかでございまして、むしろ税負担は軽いというふうに言えるかと思います。現在よく言われますように、地球温暖化防止というものは重要な政策課題ですから、本則税率に一本化したとしても税率自体を引き下げるという必要は私はないというふうに考えております。  そして、最後国税地方税という選択でございます。ここが重要なんですけれども、先ほど述べましたとおり、ガソリン地方税を課せばそれを社会サービスの財源確保に充てることも当然できるわけでございまして、しかもガソリンの消費というのは地域間の偏在度というのは比較的低いということが言えますし、逆に大都市部じゃない方が財源になるということもございますので、地方税としてむしろふさわしいというふうに私は考えております。  要するに、ガソリン税を始めとして道路特定財源とされてきた国税、あるいは先ほど片山参考人も言われたとおり、地方税として、道路目的税になっている分も含めてですけれども、すべて地方一般財源すなわち地方普通税という形にすべきであるというふうに私は考えております。そうしますれば、地方財源自体は減りませんので、それぞれの地方団体が自己決定によってそれを道路整備に使うんならばもちろんそれは自由ですし、他の目的に使用することも自由である、それも地方分権の道であろうというふうに言えるかと思います。  ただ、そのような改革を行おうとしますと、ガソリン税は製造者段階で課税されているというのがございますので、当面はそういう形を取りながら、地方譲与税のような形で、ただしガソリンの消費量に応じて各団体に配分せざるを得ないと思いますけれども、ただ将来は小売課税への転換ということもあり得るかなというふうに思っております。  それから、四番目の論点です。レジュメですと裏の方に参ります。団体間格差の是正方法についてでございます。  今回の法案では、地方公共団体間の財政力格差の是正についての改革が含まれております。地方税財政制度全体の中で団体間格差を是正すべきことは当然であります。ただ、問題は個々の提案が地方税財政原則に照らして正当かどうかというところでございます。  一つは、法人事業税の一部を地方法人特別税に転換するという改革についてであります。  国民は、住民あるいは消費者という立場以外でも、例えば事業者という立場でも地方の公共サービスを受けておりますので、事業規模に応じた地方税負担すべきであります。そういう観点から事業税というのが課されているわけですけれども、地方税の分割基準というのは課税標準となる経済力の分布に合致するものですから、法人事業税の場合、その分割基準というのは事業規模を示す指標に基づくべきであります。  今回の改正案のように、法人事業税を半分地方法人特別税という国税にしまして、それを人口半分、従業者数半分という形で配分するということになりますと、これは課税権に対応しない配分ということになりますので、これは自主財源ではなくなったということでございます。ただし、それは抜本的な税制改革までの暫定措置ということにされておりますけれども、ただ、私思いますに、地方税における配分基準とそれから財政格差是正を含む財政調整制度の配分基準というのはやっぱり混同すべきではなくて、それを混同させるような前例をつくるというのは決して望ましいとは言えないだろうというふうに考えております。  むしろ、法人事業税における最大の課題というのは外形標準課税の拡大、特に事業規模を表すものとして最も適切と思われる付加価値割の比重を高めることであろうというふうに思いますし、それは税収の安定化とともに地域間の税収格差も縮小させるという効果を持っているかと思います。  もう一つは、いわゆる昨年来話題になりましたふるさとへの貢献というんですか、ふるさと納税というんですか、そういう趣旨を含んだ地方公共団体向けの寄附金控除の拡大についてであります。  確かに、国民は、本人若しくは家族の事情によって一生の間に何度も居住地を移動するという例が珍しくございません。そこで個人が所得を得ている時点で住民税を納めるだけではいわゆる生涯を通じた受益と負担のバランスというのは取れません。ただ、現在、居住地に納めている地方税というのは現時点の地方公共サービスを支える財源ですから、いわゆるふるさとに貢献するといっても、それは現在の居住地団体に対する納税義務を減少させるものではないというふうに私は考えております。  むしろ、受益と負担のバランスを考えるためには、過去に育った地域であるとか、あるいは老後に住む地域も含めて、全国的に例えば一定水準のサービスを受けることができる仕組みをつくって、そこに全員が貢献する、つまり納税するという仕組みが実は重要であります。それは何かというと、これは要するに財政調整制度としての地方交付税でございまして、それがしっかりしていれば、それ自体がふるさとへの貢献ということになるんだと思います。そちらが重要でございます。  今回の改正案は、寄附の対象をふるさとのみならず地方公共団体全体に広げて、そして税額控除を行おうとするものですけれども、根本的な問題は、地方税である個人住民税寄附金控除を国がどこまでコントロールすることが適当であるかということかと思います。  居住地以外の地方公共団体に対する寄附金を居住地の税額から控除することは、要するに自主財源の一部が団体間の水平的な補助金になってしまうと。それを国が強制するということでございますから、これは地方分権の推進には合わないというふうに思います。もし国が自らの、つまり国の政策としてふるさとなどへの貢献を促進したいのだというのであれば、それは所得税における寄附金控除に範囲を限定すればいいことでございまして、逆に個々の地方公共団体が、いや、そういう制度をつくりたいんだというんであれば、それは課税自主権の問題だということになりますので、全国的な制度として強制する必要はないだろうというふうに思います。  したがって、根本的な問題、つまり抜本的な改革としては、やはり地方交付税を改善し充実させること、こういう問題を避けて通ることはできないというふうに思います。特に、今、横尾参考人からもお話がありましたように、地方団体が提案している地方共有税への転換、つまり定期的に法定率というのを変更する、それから対象となる税収は国の一般会計を通さないで特別会計に直接繰り入れる、それから特例加算とかあるいは特別会計借入れといったものはもうやらない、それから、これが大事なんですけれども、国と地方公共団体の代表が参加する地方財政会議、そこで制度改革を検討して、その提案については国はその結果を尊重する、そういった改革が必要であると思います。  それから、地方共有税の原資につきましては、現在、地方交付税の原資に国税五税がなっているわけでございますけれども、その国税五税のうち消費税、要するに比較的偏在度が低いと思われる消費税を一部外して、その分を地方消費税に移譲すると。逆に、地方税でありますけれども、法人住民税がございます。法人住民税の一部を、それを地方共有税の原資の方に移すといった、いわゆる一種の税源交換、要するに財政調整制度の中での原資の組替えということになりますが、そういうものも必要になってくるのではないかというふうに思います。  という形で、私の意見は以上のとおりでございます。  ありがとうございました。
  10. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) ありがとうございました。  それでは、最後持田参考人にお願いいたします。持田参考人
  11. 持田信樹

    参考人持田信樹君) 東京大学の持田と申します。  まず初めに、このような意見陳述機会を与えていただきまして、大変感謝いたします。  時間が限られておりますので、お手元に配付されていると思いますが、参考人意見のレジュメに沿って意見を述べていきたいと思います。私の意見は、そのレジュメにある三つ法案についての意見ということになります。  まず第一に、地方法人特別税等についてであります。  私は、この問題を理解するためには日本の地方税の特徴というものをつかむ必要があると考えております。それは配付資料の一に図で示されていると思いますけれども、地方における法人の依存度が国際的に見て極めて高いということであります。  そのことをどう見るかということなんですけれども、私は、税源が偏在するし、そしてまた税収というものが景気変動に振られやすい、したがって余りこれはよくないというふうに考えます。したがって、地方財政を安定して、安心のできる公共サービスを住民皆さんに提供していくためには何が必要か。それを考えると、普遍的でそして景気変動に振られにくい、そういう地方消費税のウエートを長期的に引き上げていくということが抜本的な要諦である、このように考えております。この点については、参考資料の一を時間があれば見ていただければと思います。  そこで、今回の特別税なんですけれども、私の理解が合っているかどうか分かりませんが、こういうことではないかと思います。それは都市と地方の格差問題、これを根底として暫定的な苦渋の選択であると、このように私自身は理解しております。  といいますのは、一つは、交付税の総額というものがここ数年枠をはめられておりまして、大都市部の税収が上がっていきますと、その跳ね返りとして留保財源が拡大していきまして、交付税の総額の中で基準財政需要が占める割合が全く伸びないという状態が続いている、こういう制約の下で選択されたということ。それからもう一つは、本来であれば、マスグレイブも言っていますように、偏在度の高い税というのは国に持っていって偏在性の少ない税を地方に持っていく、こういう税源交換というものが国家の要諦になるわけでありますけれども、残念ながらこの税源交換に関する政府内部での合意というものが現在は形成途上である。このような制約の中では、今回の特別税というものを私はセカンドベストなものとして評価したいと思います。  次に、この税の本質は何かでありますけれども、私は経済学者ですので、立法論はおきまして、この税の本質というのは、我が国で最初の水平的調整を加味した実質的な地方共同税であると、このように私は考えます。  地方に税源を移譲しますと地域格差が拡大します。これは三位一体改革の重要な教訓であります。今回の特別税というのは今後の税源移譲の在り方に一石を投じるものではないかと、このように考えております。そういう留保条件を付けまして、暫定的な措置としてこの特別税というものについて私は理解できるというふうに解釈しております。しかし、地方分権の本筋からいえば、これはあくまでも暫定措置でありまして、自分たちの納めた税金が自分地域に戻ってくるというのが地方分権の本来の在り方だろうと思います。  そういう意味で、私は抜本的な税制改革とこの暫定特別地方税というものをセットにして議論をしていただきたいと思います。その抜本税制改革のときには、生産基準を通じまして最終消費地に税収を帰属させているという現在の地方消費税を大幅に拡充をすべきである、このように考えております。そのことは、今回の地方法人特別税の総額が消費税一%相当にほぼ等しいということ、また、この特別譲与税の配分基準が地方消費税のその他の配分基準と一致しているということから考えて決して不可能なことではないかと思います。  なお、地方消費税は、カナダのハーモナイズドセールスタックス、協調売上税といいますけれども、この協調売上税と並んで私は世界的に見ても遜色のない大変精緻なシステムであると思います。この地方消費税抜本改革というものを射程に入れて今回の暫定措置というものを取りあえず成立させるということについて私は理解できると考えております。  二番目は、地方税法等の一部改正についてであります。  これは論点は二つで、一つふるさと納税であります。  私は、実は、個人住民税検討委員会というものの、平成十六年と十七年ですが、座長をやっておりました。長時間にわたってこの問題については議論をしてきたわけですけれども、その趣旨というのは、要するに、現行制度であれば住所地のある自治体に全部住民税が帰属するということでいいのか、それを別のところに持っていけないかということが一つです。それからもう一つは、寄附金控除によって公益活動を促進できないか、こういう二つのベクトルが混じったところにこのふるさと納税というものが出てきたというふうに理解しております。  問題はその方法論で、私は原理的には三つ方法があると考えております。一つは、税の一部を自動的に住所地以外の自治体に分割する方法です。それから第二は、納税者意思で任意に住所地以外の自治体に納付する。そして第三は、寄附控除を拡大する、この三つです。  財政学者として私の意見は、第一と第二の方法というのは、住民税の税としての性格、負担分任という性格を崩しますので、賢い選択ではないと思います。したがって、寄附控除というのが三つの方法論の中では最もリーズナブルなものである、このように理解しております。  また、今回の制度を見ますと、実は五千円を超えた寄附金のうち、一〇%については地方公共団体以外のNPO寄附ができるということが規定されておりますし、そして、それはしかも国の法律で決めるのではなくて地方の条例で決定するという文言が入っております。それからもう一つは、残りの九〇%については所得税の限界税率に応じて住民税の控除が低減する仕組みをつくっておりまして、これは結局どこの自治体でやってもお互いさまであるということで地域格差が発生しないような仕組みになっているということも注意すべきではないかと思います。  そして、地方税法の一部改正についての暫定措置の問題ですね、軽油引取税自動車取得税、この問題について私の意見を述べたいと思います。  まず論点の一つですけれども、これは特定財源か否かということであります。私は、この問題を論ずる場合に重要なポイントというのは、道路特定財源というのはよく見ると二種類あるということではないかと思います。  一つは、税法上、道路整備に使用することが初めから決められている税目です。これは、地方税の分野にある軽油引取税、そして自動車取得税である、言うまでもありません。こうした税目というのは、税の創設趣旨からして道路整備を目的にしております。したがって、一般財源化するという議論には余りなじまない税である。もし税収に余剰が生じているのであれば、税率の引下げや、場合によっては税の廃止を議論すべきだと思います。  現状を見ますと、国税の方、揮発油税、石油ガス税の方を見ますとオーバーフローが発生している状態のように私は見受けておりますが、地方の方を見てみますと道路関係費に占めるこの税は二割にすぎない。したがいまして、現状では地方道路整備は大幅に不足しているという認識に私は立っております。したがって、この自動車取得税及び軽油引取税について税率を引き下げる、あるいは廃止するというのは余り賢明な選択ではないと思います。  いま一つのタイプというのは、本来一般税でありますけれども、特別法によって使途を道路整備としている税目であります。これは、御存じのように、国税の揮発油税と石油ガス税がこれに該当します。自動車重量税は根拠法がありませんので、当時の経緯からそうなっている。これはそもそも税の使途を特定しない普通税でありますので、道路特定財源の役割が仮に終わったとすれば一般財源化すべきという意見は私は傾聴に値すると思います。  したがって、結論からいいますと、本来一般税であり、特措法、特別法で使途を制限している税については、四月十一日の政府・与党の決定、「取扱いについて」に沿って速やかに政治の世界で協議していただきたいと思います。  もう一つの問題は、暫定税率のことであります。  立法論からいえば、暫定税率と言いながら長く続けてきたというのはこそくでありますし、筋論からいってこれはおかしいというのはそのとおりだと思います。しかし、慢性的な地方財源不足の中で道路財源というのは地方自治体の予算の一部に慣行的に埋め込まれております。それをどう見るかということが重要なポイントではないかと私は思います。  六十年前に現在の地方財政制度の基礎を築きましたシャウプ勧告、これの付録のAを見ますと次のようなことが書かれております。問題は、減税して住民に対する地方団体のサービスを少なくするのか、それとも増税して多くのサービスをなすか、いずれが望ましいかということであります。シャウプ勧告では、日本の国民の生活と安寧の水準を高めるのに最も有望な方法の一つは、集合的消費、つまり地方公共団体の公共サービスを増加させることではないか。個人の消費支出というのはぜいたくな消費にその限りで使われてしまうけれども、地方団体に与えるのであれば日本の最大の資源、つまり国民に対する直接投資になるんだと。その投資というのは改善された教育であるとかあるいはより良い健康、そしてより大いなる保証と安全及び拡張された機会の形を取るであろうと、このように書いてあります。したがって、私どももこの六十年前のシャウプ勧告の精神に照らして、後世の歴史の判定に堪えるような判断をしていただきたいと思います。  最後は、地方交付税法等の一部改正についてであります。  時間がなくなりましたので、結論だけ申しますと、今の地方財政のこの惨たんたる状況を救うにはどうしたらいいかといいますと、私は、交付税総額を確保するということと、それから今回の特別法人税を創設して暫定的に偏在を是正する、それによって疲弊した地方の活力を回復するということが絶対に必要だと思います。そのためには、この地域の活性化対策、地域再生対策費四千億円、これを地財計画に盛り込んでいる今回の法案というのは暫定的なものとして理解できる、これをやらなければ本年度の地方財政は大変な混乱に陥るであろうと、このように思います。  私の意見は以上であります。
  12. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 行田邦子

    ○行田邦子君 民主党・新緑風会・国民新・日本の行田邦子です。  本日は参考人皆様から大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。  まず初めに、片山参考人横尾参考人にお聞きしたいと思います。  この通常国会では道路特定財源について議論がなされておりますが、連日のように新聞でもこの道路特定財源について取り上げられています。そんな中、先日の朝日新聞に、「引退十七市長 一般化支持」「「署名は踏み絵」批判」という見出しの大変興味深い記事が掲載されておりました。記事によりますと、道路特定財源一般財源化の是非について、昨年引退した全国の市長に朝日新聞が聞いたところ、回答した三十五人のうち約半数の十七人が一般財源化を支持すると答えたということです。  かつて冬柴大臣は、道路特定財源と暫定税率を維持するよりどころの一つとして、全国千八百人ほとんどすべての市町村長、六人を除いて全員が道路特定財源維持、暫定税率維持の署名をしていることを挙げておられました。また、私のところにも、福田総理の一般財源化発言以降はぴたりと来なくなってしまったんですけれども、それ以前は議長会や市長会といった様々な地方団体から同様の要望書や決議文といったものが寄せられました。この朝日新聞の記事には、さらに、この署名について、首長にとっては一種の踏み絵、あえて署名しないなら相当なプレッシャーを覚悟しなければならないという元市長の声を紹介しています。  私は、この記事を目にして、首長の本音と建前というんでしょうか、国と地方の関係において、地方自治体の置かれた立場を考えると、取らなければいけない行動と実際の本音というか思いには相当乖離があるのかなということを感じました。また、踏み絵という言葉、非常に強烈な印象を受けるんですけれども、この踏み絵という言葉に今の国と地方の実態が表れているのかなということも考えました。  この国から地方への目に見えない圧力というんでしょうか、こういった件についてお聞きしたいんですけれども、知事の御経験があられる片山参考人と、そして現役の市長でいらっしゃる横尾参考人、お二人に現在の国と地方の関係について首長の御経験からお聞きしたいと思います。
  14. 片山善博

    参考人片山善博君) 首長にはいろんな方がおられると思いますが、ある種のタイプの方は、例えば今回、本当は一般財源にしてもらいたいと思っている人がいたとしてもなかなか言えない人もいるんだろうと思います。  私も首長の経験がありますが、財源というのはやっぱり自由な方がいいんです。いろんな住民皆さんの要求にこたえるためには特定枠でない方がいいんです。だから、合理的な判断をされる方は少なくとも地方財源については一般財源の方がいいと、こう思うはずなんです。  ところが、六人の方を除いて皆さん特定財源のままにしておいてくれ、縛っておいてくれというのはいかにも不合理であります。非合理的であります。それは、やはり一つは、本音を言ってしまうと、例えば国から、特定の省からにらまれたり、その省に別途お願いに行ったときにじゃけんにされたりという懸念とか、場合によっては恐れのようなものを感じるということはあるんだろうと思います。  それからもう一つは、本当に、でも特定財源のままにしてもらっておいた方がいいという方も実はおられるんです。それは、例えば自分の選挙で応援してくれた業界があってそこにツルの恩返しをしたいと思っているときに、一般財源になってしまえば、教育にも使え、福祉にもという、もういろんな声が出ましてややこしくてしようがないから、この際もう国から縛っておいてもらった方が自分がやりたいことがやれるからという方も本音としておられるのは事実であります。  まあ、いろんな方がおられるんだろうと思います。
  15. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 国と地方の関係について率直なところというお尋ねでございますが、振り返りますと、平成十二年に地方分権に関する一括法が成立して、上下関係だったものが対等の、国と地方は一緒の、横並びの関係だというふうに改められたわけでございますが、実際仕事をしながら感じることは、まだまだその実態には至っていない。あえて言うならば、改革は本当に道半ばで、まだまだこれから分権的な発想で変えていかないといけないなということを感じます。  例えば、私も所属している分権委員会では、今調査をしているものに、国による義務付け、枠付け、関与というのがありますが、これを全部総洗いをしたいと、そして不必要なものはできるだけ簡略化して地方の自主性や独自性が発揮できるようなシステムにしていかないといけないんじゃないかということを申し上げています。恐らく、調査を掛けてそれが二度と起こらないチェックシステムをビルトインしたとしても今度はまた出てくるかもしれませんので、そういうのもしないようにしてくださいということを委員会でも議論していますが、まさにそういった思いを各首長皆さん持っておられると思います。そういったときにやはり分権発想が大事だと思います。  そしてもう一つは、国と地方といいましても、地方の中でもう一つ地方地方があります。御案内のとおり都道府県と市町村でございまして、あらゆる権限等が県レベル、都道府県レベルに集中し過ぎても、これは市民から見たらまだまだ不十分じゃないかという印象がぬぐえないと思います。巨大化してしまうと、そこでまたブロック版中央集権になっても困りますので、是非そういったことを改める、そういった改革が今待たれているというふうに率直に思います。
  16. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。首長御経験からの御意見、大変説得力があるようにお聞きいたしました。  この道路特定財源一般財源化というのは、私は、地方の自立というか、地域のことは地域で考えて地域で決めていくという、こういう地方分権を推し進める上で大変良い契機となるというふうに思っています。これまで道路にしか使えなかった財源地方自治体としてもこれからは道路以外にも使えるようになる。そうなると、今までは道路特定財源というと道路にしか使えなかったので、ある意味地方にとっても考えなくてよいので楽と言えば楽だったと思うんですね。それが一般財源化すると道路以外にも使える。そうなると、今本当にそれぞれの自治体で何が一番住民が必要としているのか考えなければいけなくなる。本当に道路が優先順位として一番高いのか、それとも教育なのか医療なのか、こういったことをそれぞれの地方自治体、横尾市長からは市長はCEOだというお話もありましたけれども、首長さんが考える、そして議会も考える、さらには住民も考える。地方分権を推し進める上でこの道路特定財源一般財源化というのは私は大変良い機会だというふうに思っております。  先ほどの御意見の中で片山参考人そして池上参考人からは、道路特定財源一般財源化された後にこれは地方税にしてもいいのではないかというような御意見があったかと思いますけれども、道路特定財源一般財源化された後に、道路関連の様々な負担金や交付金、補助金といったものがあるかと思いますけれども、具体的には、国からのものとしては道路関係の臨時交付金、揮発油税の四分の一が今地方に来ています、こういったもの。それから、道路事業関係の補助金、これも今国から地方に来ています。そして、逆に地方から国へというものでいうと、国の直轄事業の負担金、裏負担金とも言われています。こういったものがあるかと思いますけれども、道路特定財源一般財源化されて、その後、こういった今言ったような負担金、交付金、補助金というのはどのようにあるべきとお考えでしょうか。片山参考人池上参考人にお伺いしたいと思います。
  17. 片山善博

    参考人片山善博君) 今、国、地方地方でも都道府県と市町村と、行政主体というのは三つあるわけですけれども、その三つがそれぞれもたれ合いといいますか依存関係、絡み合っているわけです。例えば、県が道路事業をやる場合でも国から補助金とか交付金が来る。それから、逆に国が高速道路などでやるときには県が直轄事業の負担金を払う。それから、市町村が仕事をするときも県を通じて国から交付金なり補助金をもらう。県もまた市町村に補助金を出すというような関係になっているわけですね。納税者が納めた税がどこでどう使われるのか、どこからどこに回るのかというのはもう分からなくなっているわけです。非常に不透明で複雑な中で監視も行き届かない。そういう中から随分報道されました天下り法人への道路財源の垂れ流しとか、そういう水漏れがいっぱい起こっているわけですね。  だから、この際、私は、三者の関係をクリアにするという方向に改正していく、改善していくということが必要だろうと思うんです。相互もたれ合いをやめて、国がやるものはもう国が責任を持ってやる、県がやるものは県がやる、市町村は市町村がやるというふうに財源を明確に分けて、それぞれが責任を持って支出し、その段階で、それぞれの段階でチェックが可能になるような、そういう方向に少しずつ変えていくということが基本的な考え方だろうと思います。
  18. 池上岳彦

    参考人池上岳彦君) 恐らく地方団体の側で一般財源化に対する不安といいますか、そういうものがあるのは、一般財源化したときに、私が先ほど申し上げたとおり地方税にすればいいんですが、しないで国税のままにしたまま一般財源化すれば当然ほかのところに使われるかもしれないし、あるいは国債の償還に使うかもしれないし、いろんな使い方はあるわけでございます。ということは、一般財源化した瞬間に地方財源が減るんじゃないかというところが大変不安かと思います。そこで私はだから地方一般財源にすべきであるというふうに申し上げたわけでございます。  そうした場合に、それはそれでいいのですが、じゃ国の、つまり国道の整備はどうするんだとか、そっちをガソリンの税でやっているではないかということがございます。当然のことながら、国は当然一般財源を持っている、普通の税を持っているわけでございますから、もし仮にガソリン関係、あるいはいわゆる道路特定財源とされているものをみんな地方に移譲してしまえば、それは当然残った国の一般財源である国の税の中から国の道路の事業を行うということになるかと思いますし、いや、それはやり過ぎであると、先ほどお話ありました地方分権改革推進委員会ですか、そこで補助金のことも多分また問題になるかと思いますけれども、その段階でやはりこの国道あるいは地方道路についても国の補助金の制度が残るのであるということになってしまいますと、それはそれで国から地方に交付される道路補助金は残るんですが、だからといってその補助金がガソリンの税に基づかなければいけないと限ったものではないというふうに思います。それは当然国の責任で税収を確保すべきものであるというふうに思います。  以上です。
  19. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  この地方分権という観点からもう一点お聞きしたいと思います。  池上参考人からは地方交付税について地方共有税というお話もありましたけれども、この地方分権を推し進めるに当たって現状地方交付税の問題点あるいは改革すべき点について、片山参考人、そして横尾参考人にお聞きしたいと思います。
  20. 片山善博

    参考人片山善博君) 交付税にはいろんな問題がありますけれども、本来の交付税のミッションを私は相当逸脱していると思います。ミッションというのは、交付税のその本来の目的、意義というのは税の身代わりとして税収の少ないところに必要な財源を交付するということであります。税の身代わりなんですね。ところが、今の交付税は、例えば整備新幹線を造る、そのときに地元負担金を県が払う、それについて後で交付税で補てんしましょうみたいなことになっているわけです。それから、景気対策のときは、景気対策でどんどん公共事業とか箱物をいっぱい造れば、その借金の返済に交付税を上乗せしてあげますということがあるわけですね。それから、合併をしなさい、合併をしたら合併特例債が発行できて、その合併特例債の償還は交付税で上乗せをしてあげます。これ、もう明らかに補助金になっているわけです。例えば、税だったら、何か仕事をすれば税が増えるというわけではないんですね。税というのは税法とか税条例で決まっているわけで、それを何を使ってもいいということなんですけれども、税の身代わりであるべき交付税が何か造ったり整備新幹線引いたり合併したら増えますよなんていうのは、もうそもそも大きく逸脱しているわけですね。  これは政府地方財源である、本来の地方財源である交付税を恣意的に使い回しをしているということですから、それを私はやめることがもう第一歩だと思います。そのことの結果が今大きなツケが出ていまして、もう景気対策でいっぱい発行した地方債の償還、合併特例債の償還がまた来ます。そういうものを手当てするために四苦八苦しているわけです。そういう今までやってきた悪弊を絶つということをまずやっていただきたいと思います。
  21. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 簡単にまとめて四点あるかなと思います。一つ財源調整機能財源保障機能がありますけれども、この辺りがどうもこれまでの議論を見ますと、余り深い議論がないままに、不透明だ、よく分からない、一体どうなっているんだという議論が先行したように思いますので、きちっと理解をし、またそのことを認識、評価しなければならないと思っていまして、このことは世界的にも先進国では評価されている部分がありますので、この点が大事だと思います。  二点目は、共有税化ということですけれども、地方共有税ということを地方団体としては求めていますけれども、まさにそういった視点で行うとともに、決定につきましては、先ほどもほかの参考人からも意見がありましたが、地方と国で地方に係る行財政の会議を設けて、そこがやっぱりイニシアチブを発揮してリードしていくというのが必要だと思います。  三点目ですけれども、下手をすると交付税が独自に地方に行くという形になりますと、よく財務省議論でありがちなのは、地方にある財源をあげたのでほかはカットするよということになりがちな気配も感じたり心配もします。そうなると、地方にとっては結局脆弱なままになってしまいますので、ここら辺をきちっと担保する必要があると思います。  四点目でありますが、財政改革という大きなスタンスがありますので、是非そういったことを、これが地方の自主自立に通じていくということをやっぱりよく理解をしていただきながらやっていかなければならないだろうということを強く感じております。
  22. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございます。  それでは、最後になりますけれども、池上参考人にお聞きしたいと思います。  今私たちが審議をしている地方税地方交付税改正地方法人特別税においては、地方間の財政格差、税収格差の是正ということが大きなテーマになっているかと思います。もちろんこの地方間の税制格差是正というのはやらなければいけない、国として対応しなければいけないことだとは思いますけれども、今政府から出されている案として地方法人特別税、この地方法人特別税地方固有の税を国有化するという、税制に矛盾しているというふうに私は思います。そして、ふるさと納税についても、本来、そこに住んでいる住民自分が住んでいる自治体に対して住民としてサービスを受けるために財源を税金として支払うものというふうに私は考えておりまして、その点でも受益と負担という考え方から矛盾があるというふうに思っております。このふるさと納税地方法人特別税二つ税制とも何か奇策というか、何か税の原則としてどうなんだろうかなという疑問を率直に感じます。  この点について、地方税制改正する上で守らなければいけない原則、侵してはならない原則ということについてお教えいただけますでしょうか。
  23. 池上岳彦

    参考人池上岳彦君) 先ほども申し上げたのですが、地方税の配分原則とそれから財政調整制度の配分原則というのはやはり違っているわけでございます。  国会審議の議事録などもちょっと拝見したことがあるのですが、例えば地方法人特別税につきましては、地方の税源という枠に入るのか入らないのかということについての認識が人によって違うのかと思います。私、思いますに、地方の税源と言ったときに、普通は狭い意味では自主財源なんですね。自主財源という枠で考えればそれはやっぱり法人事業税というのは自主財源でありますから、その団体の、要するに課税団体財源であろうと。それを更に広げて地方、例えば共有財源ということになってきますと、今地方交付税も実はそういうふうな位置付けがなされるわけでございまして、そこまで入れればそういう言い方もできるのですが、例えば法人事業税という枠に限ってみますと、その枠内で、先ほど申し上げたとおり外形標準課税といった事業税という枠内で、つまり自主財源という枠内での改革は可能かと思いますが、それを共有財源の方に直接入れていくということになると、やはりそれは地方税原則には外れるのかなというふうに私は思っております。  それから、ふるさと納税についても、今お話にございましたとおり、現時点の税を現時点のサービスに使うわけですから、ふるさととかなんとかということにつきましては、これは確かに、教育なりなんなりを全部借金でやっていて後でその公債費を払うために納税しろというなら話は別ですが、実際には原則としてはそういういわゆるサービスに関しては税でやっている、その時点での税でやっておりますので、そうしてくるとやっぱり論理的にはなかなか整合しにくい。ということは、先ほど言ったとおり、そういった地域間のバランスを取っている、あるいは財源を保障するというのはやはり地方交付税のいわゆる財政調整制度の役割であろうということだと思います。  ということは、こういった寄附金控除というのも、私は実は、別にこれは地方公共団体向けの寄附金控除に限らずですけれども、つまり住民税における寄附金控除というのは基本的にはその団体が決めるべきものである、本来ですよ。国が例えばその、例えば赤十字であるとかそういったところについてはもう既に元からあるわけですし、地方公共団体についても元から寄附金控除制度はあるのですが、しかしそれはやはり本来は国から言われてやるのではなくて、地方団体がそれぞれ決めるべきものだろうというふうに考えております。  以上です。
  24. 行田邦子

    ○行田邦子君 ありがとうございました。
  25. 河合常則

    ○河合常則君 自由民主党の河合常則でございます。  今日は四人の先生方、わざわざ御出席いただきましてありがとうございました。なるべく簡単に御質問申し上げたいと思います。よろしくお願いします。  まず、横尾参考人にお願いいたします。  暫定税率が切れて、特にこの平成二十年度は歳入欠陥が生じると。地方財政の穴埋め、これ一、二か月なら何とかなるかなとおっしゃったように、ほかの市長さんからも、自治体の方からも聞かれたというふうにお聞きしましたが、いずれにしましても、これは国が地方に迷惑を掛けないと、こう言って、そういう御発言も総理からございましたし、先生は内閣府の地方分権改革推進委員もされておられますので、この始末は何というか国の立場からいえば、国が起債をして地方へ配るのか、地方へ補てんするのか、それぞれの地方自治体で起債していただいて後の元利償還を国が払う方法があるのか、それとも平成十九年度の繰越金を充てるという手もあるのか。まあ道路特会、平成十九年の道路特会の繰越金の中からでも繰入れするというか、この方法があるのかな、どちらの方を、分権推進委員の一人としては先生どう思っておられるかというのが一つと、もう一つ地方再生対策費、まあリンクしているような感じでございますが、先ほどからいろんな御意見がございます地方法人特別税、これをどう評価されておられるか、この二つをお聞きしたいと思います。
  26. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 最初は穴埋めの問題でございますが、分権委員会委員としてというお尋ねでございますが、今日は多久市長としてお答えをさせていただきたいと思います。  穴埋めにつきましては、もちろん、今お話がありましたように、国の方で手当てをしていただく、あるいは地方の方が起債をしてその後補てんをしていただく、いずれの方法もあると思いますが、仮に長引く状況になり起債をしていきますと、その間、実は財政指数を見ますと起債分が赤字評価の部分に入っていく可能性があります。  我々の、我々地方自治体が非常に懸念するのは、大型事業等を今後やっていく場合、あるいは継続事業を続けていく場合にも借入れ等が発生するわけですけれども、これが実質公債費比率等に影響していきますと、今年、来年の間にほとんどの自治体がすべての指標を公表することになっておりまして、これがイエローカードになっていくとその他の事業にまた影響していきます。でき得れば地方がそのような起債をしないで国の方で十分に手当ていただくというように、先ほど冒頭の陳述で申し上げましたように、そのことが一番地方が望んでいることだと思っております。  また、地方法人税その他に関してでございますけれども、先ほど財源の偏在についてそれぞれの参考人からも意見がありましたように、重要な財政の礎でありますですね。ただ、やっぱりいつも法人関係で我々が懸念するのは景気の変動を受けやすいということでございます。是非その辺を勘案いただいた議論というものがとても大切ではないかと感じております。
  27. 河合常則

    ○河合常則君 関連して、地方再生対策費についての評価はどういうふうに行われますか。
  28. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) これもお手元のペーパーには少し書いたと思いますが、暫定臨時対策としての再生的な対策費を組んでいただいておりまして、いろいろ条件は付いておりますけれども、評価できるものと思っておりますし、この苦境を乗り越える意味ではこれを我々も有効に生かしていかなければならないと感じております。
  29. 河合常則

    ○河合常則君 持田参考人に、持田先生にお願いいたします。  非常に貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。私、今度道路特定財源一般財源化すると総理も決意をなさいましたし、ただ、いろいろな業務今までございまして、単に道路建設や道路改良は単純にBバイCで、費用対効果で決意するというものではないだろうと思っております。  実は道路とか情報通信はネットになって初めて効果が出てくると、そういうふうに思うのでございますが、先生は今のこの道路特定財源のうちの特に地方の部分、これは不足しているので税率はもちろん維持する、それから国の揮発油税とかガソリン、これは八十銭暫定税率乗っておるわけでございますが、これは国が余っているんなら地方へ回せという話も先ほどございました。そうしたらどういう方法がいいのかなと思っておられるのか、それを一つお聞きしたいと思っています。  それから、もう一つは税全体についてでございますが、地方財政計画の在り方というか役割についてどう思っておられるかお聞きしたいと思うのでございます。  私は、国の財政計画と地方財政計画は車の両輪と昔から言われてまいりました。それで、地方交付税法の第七条でこれは国会提出するということが規定もされておりまして、ある面では地方財政の姿を現すものだとも言われております。ところが、やっぱり国民には非常に見にくい、分かりにくいというか、そういう感じを与えていると思いますので、これはどうも、税全体を考えるということも大事なんでございます。そういう意味からも、都道府県の人口とか面積とか自然条件別にとか市町村の人口別とか、若しくは東海ブロックとかそれから東北ブロックとかというふうな分け方による地方財政計画、見方によってはこれが国民に国の姿を分かりやすいものにするのではないかなというふうに思うのでございます。  こういうことで、先生どう思っておられるか是非お聞きしたいと思いました。この二つ、よろしくお願いします。
  30. 持田信樹

    参考人持田信樹君) 大変貴重な質問ありがとうございました。  まず第一の、道路需要についての国、地方の実情についてどう考えるかということについてですが、国の道路財源を見ておりますと既にオーバーフローが発生しておりますので、やはり道路の生産性というものが若干下がっているのではないかと思っております。特に、比較的建設コストの低かった太平洋沿岸ですとかあるいは日本海沿岸の幹線道路は既に完成しておりますので、残っているのは要するに比較的コストの掛かる、例えば山間部を切り開いていって裏と表を結び付ける、そういうプロジェクトが多いわけですね。したがって、道路の経済学的に見た生産性というのは限界的に下がっているというのは事実だろうと思います。また、残っているプロジェクトを見ますと、地域経済を刺激する効果というのはある程度あると思いますけれども、同時に環境破壊という問題も抱えているように思います。これに対して、地方の生活道路については、私の体験から言いますと、私は都区内のある区に住んでいるんですけれども、非常に毎日危険と背中合わせで生活しております。そういう意味で、その地方大都市圏においても生活道路というのは大変未整備であるというのを実感しておりますので、いわゆる高速道路とそれから地方の生活道路は区別すべき。  それから二番目に、国の一般財源化したものをどうするべきかということなんですけれども、私は現状において道路財源の受益と負担というのは一致していないと思っております。つまり、自動車走行による大気汚染ですとか騒音ですとかあるいは交通事故、こういう社会的費用を自動車の利用者の方が応分に負担しているとは私は考えませんし、経済学者は一般的に考えていないと断言できます。したがいまして、暫定税率を廃止しますとこの社会的費用の大きな自動車の利用をますます助長するものになってしまうのではないかと。したがって、一般財源化した後は、まずこれを環境対策と社会的費用の負担機能を持たせるというのが筋ではないかと思います。  それから、最後の地財計画の問題でありますけれども、私はこれは経済財政諮問会議に参加しておりまして、非常に激しい議論を繰り返しました。私はどうやらミクロのハト派というレッテルが張られたようなんですけれども。  私の意見というのはどういうことかといいますと、国と地方のプライマリーバランスを単純に比較して頭から交付税を削減するという方法には問題が多いという立場です。仮に交付税の総額を国民経済の力に見合った形でソフトランディングさせるのであれば、現行の地方財政計画をミクロレベルから、一つ一つの需要項目から精査していくことが望ましいと思います。それをしないで頭ごなしに交付税の総額を削っていくというのは非常に乱暴な話じゃないかと思います。そのためには、地方分権委員会で国と地方の役割をしっかり見直していただきたいと思っております。
  31. 河合常則

    ○河合常則君 ありがとうございました。  片山参考人にお聞きをしたいと思います。  先生は鳥取県の知事なさっておられましたし、それからその前は総務省というか自治省にお勤めでございましたから地方のことをよくお分かりなんだと思っていますが、私は何となく先生の話を聞いていまして、私は実は富山県の出身なのでございますが、富山県のしかも石川県と岐阜県の境目に住んでいるものですからなおさらそう思うのでございますが、太平洋側との地域格差があって、ねたみのような感じがというのもまあ変でございますが、何となく片山参考人には太平洋側と日本海側と、日本海側の知事をされたにもかかわらず、そういう現実の不公平感、余りお持ちでないのではないかなというふうな気もしました。  さっき新幹線の話もございました。それは三分の一負担の一部を交付税で後で措置するからという話などもおっしゃいましたが、こんなこと言えば時系列での格差があると思うんですね。百二十年前は国税で国鉄の時代は東海道線それから山陽線を造ったのでございます。今、新幹線、いよいよ日本海側へ来ようとしたときに三分の一の負担というふうになっていますので、これは北海道へも九州へもそういうことになるわけでございますが、そういう時系列での格差もあるんだというふうに実は思っています。  そういう意味では、そして、非常に変なことを言うようでございますが、一人でも人口を多くしたい、それで地域振興をしなきゃならぬと、こう思って知事さんされておられると思います。そして、そういう鳥取県を次の世代へ残さねばならぬと思っておやりをいただいたと思いますが、知事をお辞めになりましたら東京へ就職なさって大学の教授になられたと。ここは、何といいましょうか、頭脳の流出も地方対都市との間にはあるのでございますが、何となく今までのと、言行不一致しているんではないかなと。そこのことの矛盾をどう整理されておられるのかとお聞きしたいのが一つでございます。  それから、地方財政計画の作り方について、これは片山先生は実務の専門家として、知事ももちろん体験されておりますし、今までの経歴から、地方財政計画、今、持田先生にお聞きいたしましたけれども、片山参考人はどう思っておられるか。これはある面では国全体の税制改革、これは大まかに言って、これは本来こうあるべきだというふうにもなるのではないかなと思いまして、基本的なことをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  32. 片山善博

    参考人片山善博君) 私が日本海側の知事をかつてしていて、日本海側と太平洋側は大きな格差がある、その格差について冷たいんじゃないかという御趣旨だと思うんですけど。  格差があることは事実であります。私もその不公正感、不公平感というのは随分感じました。例えば、鳥取県は整備新幹線は無縁なんですけれども、高速道路の問題を取ってみますと、例えば太平洋側の東名とか名神とか、そういうところについては地元負担金なんか何もなくてできているわけですね。しかも、高速道路が先にできるのとできていないところでは随分その後の成り行き、道行きが違ってくるわけですね。言わば、俗にセカンドネーチャーとよく言いますけれども、一種の自然になるわけですね、地理的条件と同じように。そこで便利なところはどんどん企業も立地する、人口も張り付く、そうでないところは人口が流出すると、こういうことになるわけですね。  そこに持ってきて、やっと高速道路の順番が回ってきたころに高速道路のシステムの改革があって地元負担金を出しなさいと言う。待たされて、待ったから優遇してあげますよじゃなくて、よく待ってくれましたね、もっと痛めましょうと、こういうことになっているわけですね。それは私は不公正だと思います。ですから、これからの、例えば道路財源一般財源化が成った暁にも、その不公正感を除去するような形で道路の箇所付けとか優先順位の決定をしていかなきゃいけない、これは私はそのとおりだと思うんです。  ただ、私が先ほど整備新幹線を批判しましたのは、整備新幹線が必要だということを否定するものではありません。それは必要なところは造ったらいいと思いますけど、それを何ゆえに交付税でサポートしなきゃいけないのかということなんですね。  交付税というのはさっき言ったように税の身代わりなんです、補助金とは違うんですね。もう一つは、交付税というのは普遍的な財政需要に対応するものなんです。普遍的な財政需要なんですね。整備新幹線が普遍的な財政需要でしょうか。例えば、JRの在来線を改良するときに地元負担金を出しますというなら、これは北海道から多分九州まで普遍的な需要としてあり得るんですね。ところが、整備新幹線というのは決まった特定のところしかないわけです。そういうところの財政需要をサポートするために交付税でそれを賄うというのは、これは明らかに間違いなんですね。そのことを申し上げているわけです。整備新幹線が富山に要らないということを言っているんじゃないんです。造られたらいいです、それは。それは、国が造るかそれとも地元負担金を出すかというのはそれは政治が決めることでしょうけど、そのときに、全国の普遍的な財政需要を賄うための交付税をそこに、特定の箇所に導入するというのは明らかにこれは間違いだということを申し上げているわけであります。  それから、地方財政計画の問題なんですけれども、地方財政計画というのは、何か最近は、最近というかしばらく前から、財務省と総務省が地財計画をめぐってしのぎを削って、それでもって財源不足がどうだとか交付税がどうだとかが決まることになっているんですけど、先ほど触れられました交付税法の根拠条文を見ますと、地方団体の、自治体財政の見込みなんです、これは。単なる見込みなんですね。見込みを国会提出しますよということなんですね。それをどう見込むかで財務省と総務省が大げんかしているんですけれども、ちょっと私はずれていると思うんです。もっと素直に地方団体財政を見込んで、今こんな具合ですよというのを国会皆さんに見ていただいて、その上で地方財政全体をマクロで把握をして、今の交付税率が適正なのか、それとも足らないのか、多少余裕があるのかということの判断材料だろうと思うんですね。  ちょっと交付税を決めるときの前段階の査定作業みたいなことになってしまっていまして、その結果、そのときの力関係によって地方財政現状とは違うような地方財政計画が作られてみたり、それから逆に、かつては膨らし粉を入れたような、非常に膨らませたような地方財政計画になったりした。意図的に、政策的に地方財政計画がもてあそばれているような気がします。もっと客観的に、調査に基づいて地方財政計画というのは見込みとして作られるべきだろうと思います。
  33. 河合常則

    ○河合常則君 ありがとうございました。  実は、整備新幹線のその負担の話は、国鉄からJRに変わったときから、民間だったときからの変わり方ですので、これまたひとつ申し上げておきます。まあ余計なことを言いました。  池上参考人最後お聞きします。  私は富の再配分というのが政治の大きな命題だと思っています。それで、地方交付税、それはもちろん財源調整機能とかそれから保障機能があるわけでございますが、本来、地方交付税があってやっぱりこれは地方分権改革を推進できる、それから都市と、東京田舎との、各県との財政力格差を是正することができるという役割もあるわけでございますが、本来この地方交付税制度はどうあるべきだと思っておられるか。先ほど聞いたら、拡大すべきだというふうに思っておられるんだなと思っていますが、何しろ税の体系についての一つの方向を示していただいて、なるほどなと思っています。  それともう一つ交付税についてどう思っておられるかというのが一つ、全体の、それを聞きたいと思っています。もう一つふるさと納税についてですね。  私はさっき田舎の出身だと申し上げましたが、富山県だけで考えると、高校生一万人卒業します、そのうちの八千人が上級学校へ進学します、そして三千人が地元へ残る、帰ってくるんですね。ところが、一人高校を卒業するまで市町村と県とで千七百万円要るそうでございますよ。ところが、国の補助金は三百万円。結局、千四百万円出しておるんですね。そのほかに大学へ行く仕送り、これはもうみんな個人で出しておるわけでございますが、大変なものが東京とか名古屋とか大阪、京都へ行っているわけでございます。ますます差ができるわけでございます。  そういう意味での、なるほどふるさと納税もある意味では、それは仕組みとしてはいろんな方法あると思いますが、物ごいではなしに、これは何か多様な税体系が要るんではないかなと思っています。  そういう意味での、地方交付税も含めて、先生のお考えをお聞きしたいと思います。
  34. 池上岳彦

    参考人池上岳彦君) 先ほど団体間の財政格差是正ということについて申し上げて、その中で、ふるさと納税というやり方は、少なくともこれは国が強制するというやり方あるいは全国的な制度として導入するというやり方は望ましくないという話を申し上げました。それはなぜかというと、その説明のとき申し上げたのですが、私自身も実はふるさとを離れておりますけれども、今の時点での教育あるいは福祉を全国地域で保障すべき制度は、それこそが先ほどお話のあった地方交付税だからであります。  ですから、私が思いますに、今までの政府なり国会なりの経緯を見ておりますと、どうも地方交付税を充実することを避けて通ろうとしているように思えます。ですから、法人事業税についても暫定措置というのが入っておりますけれども、そういうふうに避けて通ろうとしているからそういういろいろな制度をつくろうとしているのかなというふうに思います。  ということは、地方交付税制度がしっかりしていればそういうことを心配する必要はないわけでございます。そうすると、それをやる気がないんであれば、それはそういうふうな形でお茶を濁すということもできるのかもしれませんけれども、基本的にふるさと貢献というのは地方交付税の役割であると私は思っておりますし、その結果として、地方交付税というのは、常に標準的な税制を持っていれば標準的なサービスができるのだということを財源保障すべきなのが地方交付税ですから、その役割は多分拡大するだろうというふうには思っております。  以上です。
  35. 弘友和夫

    弘友和夫君 公明党の弘友和夫でございます。  四人の参考人皆様には、大変今日はありがとうございます。  まず、横尾参考人にお伺いしたいと思います。  私も九州でございまして、一昨日も多久市を通って長崎県に伺いまして、本当に横尾参考人が頑張っておられると。また、地方分権におきましても、七人の侍と言われ頑張っておられるという、本当に敬意を表するわけでございますけれども。  先ほどのお話で、現実問題、今この道路特定財源、暫定税率が切れたことによって、五億七千万ですか、不足し、今執行を留保されているという影響が出ている。私も、お聞きしましたら、多久市において、早期発注によって水路の移設を計画していたけれども契約ができない、五月から始まる農作業に影響が出るとか、それから土地区画整理事業においても予算執行ができないとか、様々の影響が出ておると思いますけれども、これに対しまして、現状、全国的にはそういう問題はもう本当に、三十六都道府県、また十一都道府県におきましては、道路だけじゃなくて、教育だとか福祉だとか、そういう予算ももう執行停止しているところも出てきているというふうに聞いておりますけれども、その現状について横尾参考人にお伺いします。
  36. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 私どものことを少し調べていただいたようでございまして、大変ありがとうございます。  お話がありましたように、財源の凍結状況でありますので、間近に控えた代かき、田植等に一部影響が出ている地域もございますし、ほかのところでもちょっと待ってよという状況が出て、やっぱりいろいろ住民生活にも影響が出てくるなという危機感を持っているところでございます。  少し具体的な数字でいいますと、このカットに関する影響として、八千三百万円ほどがこれは入らない状況になっているなというのが現状でございます。さらに加えて、お話にありました区画整理事業等で見ますと、一千百万円程度の補助金が多分影響を受けると思っています。さらに、国庫支出金等を受けて事業を進めているものがございますので、それらが影響いたしますと、合計二億五千万円ほど間接的にも影響が広がるんではないかなという懸念を持っておりますので、幾つか具体的な例を調べていただきましたように、是非早急な妥結、方向性が見えないと困ると思います。  また、冒頭に申し上げましたように、このことが決まりませんと、取りあえず、今暫定といいますか、既決予算の中で確定が見込まれるものから支出していいのかという話にもなるかもしれませんが、しかしそれはある意味で原資は違うところから持ってくるわけでございまして、例えば基金を余分に取り崩すとか、ほかのものでやるかということになってしまいますが、大変この辺は憂慮しているところでございます。
  37. 弘友和夫

    弘友和夫君 それと、地方分権の方でございますけれども、平成二十一年に新分権一括法案提出したいというお考えがあると思うんですけれども、こういうことで、地方分権改革を進めるというのは、政策等の地域差が生ずるということはあり得る当然のことだと思うんですけれども、それと、一方では地方と都市の格差是正というのが課題になっているということで、地方分権改革の推進するのと地方と都市の格差是正というのをどのように両立させていけばいいのかということについて御見解をお伺いしたいと思います。
  38. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 先ほど税財政議論の一部にもありましたように、地方共有税という形で地方で全体をプールし、これを地方の様々な事情を熟知した地方の代表者と関係大臣等の協議の機関であります財政会議等を設け、そこで議論していけば、当然格差のことも考慮されると思いますので、ここで新たな策を打つのか、一部手直しをして対応するのか等の議論が当然できる道が開けてくると思っております。  また、片方では、それぞれの地域の独自の活性化をしなければなりません。例えば、私どものところで、定住促進の一環として、住宅に人が来ていただく、そこにIターンでもUターンでも結構ですから自分の小さな畑を設けて、そこで営みながら自分の趣味として、友達への友情としてやっていきたいという希望があるやに聞き付け、そのプランを内閣府の方に打診をいたしましたが、農水省と協議いただいた回答は、それは認められないと。理由はなぜかといいますと、その小さな農地で出た農産物が市場価格を乱高下させてはいけないということなんですが、そんな物量が出るわけはないんですね。  例えばこのこと一つを取りましても、何ヘクタール以上の国の権限、何ヘクタール未満の県の権限等ございまして、大本は国との協議になっております。これらもやはり独自にしていただければ、例えばライフスタイルを求めて、あるいは地域の多自然環境を求めていく方にとっても独自の活性化ができます。そのことが、例えば人口増、あるいはそのことを、環境を求めた企業の誘致と広がっていきますので、そういう分権が地域間格差をまた是正していく一つの方法になると思っております。
  39. 弘友和夫

    弘友和夫君 是非、地方分権も推し進めていただきたいと思います。  それで、片山参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、私は片山参考人のいろいろなものも多少読ませていただいたんですけれども、地方自治本旨地方自治の在り方、方向性については非常に私どももそのとおりだなというのが多いんですけれども、ただ現実問題として今、参考人も鳥取の知事をされておられて、今例えば地方を預かる身であれば、この道路特定財源の暫定税率がもうストップしていると、今、横尾参考人からもその困っている状況お話がありましたけれども、現実、今ストップしていることに対して参考人はどのようにお考えですか。
  40. 片山善博

    参考人片山善博君) 今、地方自治体は、横尾さんもおっしゃっておられたように、総じて財源に穴が空いたり、もっと空く見通しがあって困っていると、こう言われるんですね。そのとおりだろうと思うんですが、私は、大変厳しいようですけれども、ちょっとやっぱり見通しと段取りを間違えられたんだろうと思うんです。  といいますのは、そもそも暫定税率というのは平成二十年三月三十一日で切れると法律に書いてあるわけです。我が国は法治国家でありますから法律に基づいて行政をやるわけで、そうすると現行法律がどうなっているかというのが一番重要なわけです。それだったら切れるわけです。切れることを前提に行動しておかなければいけない。ひょっとしたら参議院で賛成が得られて暫定税率は継続、延長されるかもしれない。それは可能性はあります。しかし、それはその後の話なんですね。その延長行為がない限りは切れるわけです。だったら、自治体は切れることを前提にして予算を組んでおかれるべきだったんです。そうなると、今のようなこの参議院の状況になっていても、自治体財政に穴が空くということはないわけであります。やはりそれぐらいのリスク感覚というのはないといけないと思います。  去年までだったら、去年の今ごろまでだったら、そういうリスク感覚がなくても許されたろうと思います。しかし、さっきも言いましたけれども、去年の七月二十九日からはがらっと政治状況変わったわけですから、それに対応してリスクを避ける、そういうことをやっておかれるべきだと思います。ガソリンスタンドだってやっているんです、そういうことを。三月三十一日までに在庫をどれだけ持っておけば一番リスクが少ないかということを一生懸命やったわけです。ところが、全国の自治体は全部延長されるだろうということで漫然と予算を組んでいるわけです。それで今、穴が空いた、穴が空いたと言うのは、私はガソリンスタンドに負けていると思います。  それから、いや、それだったら、でも必要な道路はできないというところもあると思いますね。暫定税率がなかったら必要な道路はできないと。それだったら、実は地方分権の、平成、いつだったでしょうか、十二年から施行された地方分権一括法によって地方税の在り方も変わって、超過課税なんかが非常にしやすくなっているわけですね。そうすると、足らない分は、暫定税率が切れた分は自治体独自の課税によって道路財源を賄うということが本来ならば想定されるわけですね。納税者住民にとっては、暫定税率が切れた分だけ実は担税力がそこで増しているわけです。じゃ、それを当てにして、道路を造るためにはこれだけ必要だから自動車税税率を上げさせてもらえませんかといって住民に投げかける、これが実は地方分権時代の地方財政の在り方の一つなんですね。そんなことをされるべきなんです。それを何もしないで、国が約束したんだから国が補てんしてくれ、起債でやっておいて後で交付税でみたいな、さっきやり取りありましたけれども、そんなもたれ合いをするからますます地方財政悪くなるんです。  だから、今回暫定税率が切れたらもう道路事業は落とすか、そうでなくて、どうしてもやらなきゃいけないんならば独自課税をやる、これぐらいの姿勢がやはり分権時代の自治体には私は必要だろうと思います。
  41. 弘友和夫

    弘友和夫君 分権時代の自治体、今、片山参考人が言われた方向というのは大事だと思うんです。  ただ、現実、じゃ今、三月三十一日で切れるからそういう予算を組んでおくべきじゃないかと、全国自治体は。先の見通しがまずかったんだという、私は現実問題そういうことで本当に、じゃ片山参考人が鳥取県の知事であった場合に、三月三十一日に切れるからそういう予算を組みますよと、これはもうそういう現実じゃないからあれですけれども、じゃ実際はそういうふうに組まれていたのかどうかというのをちょっとお聞きしたいですね。
  42. 片山善博

    参考人片山善博君) 私、今知事じゃありませんので仮定の話になりますけど、参議院がこんな政治状況になっていて容易に通らないだろうなんということは分かりますから、それだったらそれを前提にして内輪で組んでいたと思います。万が一というか、ひょっとして暫定税率が延長されれば、その後の段階でいつでも補正で増額できるわけですから、そういうやり方をされておくべきだろうと思います。  ちなみに、私は知事やっている間に、数年間の間で道路事業も含めた公共事業は、従前一〇〇としたら四二、三まで下げたんです。ですから、下げることがいいとは一概には言えませんけれども、それぐらいの柔軟性は実は公共事業にはあるということであります。
  43. 弘友和夫

    弘友和夫君 参考人の書かれたものに、ガソリン国会などとはしゃぐよりも、道路事業を含む歳出を必要最小限に抑え、徹底して無駄を排除することを国民は望んでいる、地道な作業ではあるがこれが税率問題を解決する近道である、問責などしなくても、決定された税率の妥当性やその決め方の是非は次の選挙で国民が判断すると、こういうのを書かれておりますけれども、私は今後の地方自治体の在り方というか、先ほど地方法人特別税については憲法違反というお話がありました。持田参考人は、現状としてこれは次善の策というか、そういうお話がございましたけれども。  格差是正交付税でやるべきだと、そのとおりだと。交付税が補助金化している現実、後で交付税で見るからということで。それは基本的にはやっていかないといけないんですけれども、現実、都市と地方の格差というものが非常に開いている、また今のこの現実を考えたときに、この地方法人特別税というのはやむを得ない私は措置ではなかろうかというふうに思いますけれども、持田参考人片山参考人にお伺いしたい。
  44. 持田信樹

    参考人持田信樹君) 格差の拡大に対応する本筋というのは地方交付税であることは言うまでもないと思いますが、しかし現在交付税の総額にはたがが掛かっているわけです。そうなりますと、現実問題として垂直調整で行うというのはかなり無理が現状ではあると思います。これだけ経済力も違って地域の発展度が違ってしまったら、税収の格差が出てくるのは当たり前ですよ。だから、自主財源を与える、つまり地方に税源を移譲するということはますます格差を広げるんですよ。これは三位一体改革で非常にはっきりしたことなんですね。しかし、現に今そういうことが起こっているわけです。  そういう意味で、これは現実問題どういうふうに判断するかということなんですけれども、私は、交付税制度が本来の姿に戻ってくるまでは法人事業税辺りを一括して地方共同税みたいにして水平調整の方に移していかないと、今の格差問題は基本的に解決しないと思います。要するに、東京とか愛知とか、豊かなところがある意味で仲間内で助けるという発想をしないと、垂直的にやっても駄目ですよ。
  45. 片山善博

    参考人片山善博君) 格差をできるだけ小さくしたいというのは、これは政治のやはり役割だろうと思うんですね。  そこで、今回はこの法人事業税を分権自治から遠のく方向に持っていこうとしているわけで、私はそれは反対だと申し上げているんです。じゃ何もしなくていいのかというと、そうじゃなくて、今回格差が付いているのは、いろんな理由がありますけれども、自然体で付いているわけですね。これはもう東京と私が元いた鳥取県と比べてみると明らかですけれども、経済力の違いによって自然体でも付くわけですね。それに加えて、ここ数年のいろんな改革によって人為的にかなり格差が開いている面があるんです。それは、さっき持田先生言われたように、税源移譲すれば格差が付くわけですね。  特に間違えたのは、三位一体改革のときの義務教育費国庫負担金を一般財源化したことです。これはその分を税源移譲したわけですけれども、義務教育費国庫負担金というのは一般財源にしても全く改良の余地がないんです、自治体では。一般財源にしたら途端に給料払わないというわけにもいかないし、大幅に下げるというわけにいかない。そうすると、一般財源になったからといって、それに見合う歳出というのは変えられないわけです。一方で、税源移譲ですから、東京都がじゃぶじゃぶになって田舎の方が税収が入ってこないというのは、これは当たり前なんですね。そんなものを一般財源化の対象にすることがそもそも間違っていたんです。  私は当時からもうこの問題を指摘をして、こんなことをしたら絶対に格差が付きますよという話をしていたんですけれども、全国のほとんどの、多くの知事さん方は、いや、絶対そんなことはない、いいんだいいんだと言って一般財源化した。数年たったら格差が付いた格差が付いたって言うので、それは自業自得じゃないかと言えませんし、なかなか、そういう面があるんです。  ですから、今回、本当に原点に返って、間違えたやり方をした義務教育費国庫負担金をもう一回元の二分の一、二分の一に戻す。そんなところを手始めにやられるべきであって、そんなことをしないでこんなまた変なことを法人事業税でやるようなことは私はいけないと思います。
  46. 弘友和夫

    弘友和夫君 最後に、ふるさと税制ですけれども、私も国会で提唱させていただいた関係上、一言。  大変片山参考人池上参考人には評判が悪かったわけですけれども、税理論上だとかいろいろそういうのじゃなくて、私は今、先ほどもお話があったように、地方で育って、そして東京なり大都会へ行って、何らか地方に貢献したいとかいう問題が一つと、それから寄附の文化、持田参考人が言われたように、これは今度NPOでも、森を守る、そういう団体でも、そういうところにも指定してできるようになっているわけですから、そういう文化に、また指定したところの使い道を、税金を使ってもらえるという、そういう効果だって大変風穴を空ける意味においてはあるというふうに思います。  時間がありませんので、片山参考人、じゃ、この税制反対だから、例えば鳥取に、もう税制そのものは反対だから、私は、今住民票がどこにあるか分かりませんけれども、鳥取に、じゃ東京であればそういう一割納税をされるのかなというふうに思いますけれども、持田参考人片山参考人、一言ずつちょっと、時間がありませんので。
  47. 持田信樹

    参考人持田信樹君) 二つ言います。  まず、昔義務教育を受けた、今、後になって負担すべきということについては、私は未来の人間が過去にさかのぼって負担するというのは若干理屈としては苦しいと思います。  むしろ、ふるさと納税というのは、マルチハビテーションの問題として私は財政学者としては理解しております。例えば、単身赴任のサラリーマンが扶養親族の住んでいる自治体住民税の一部を納税する、そういうマルチハビテーションの立場に立って、住民税税収を扶養親族の住んでいる、自治体サービスを受け取っている地域に分割納税するというのは正当性が十分にあると学者としては考えております。
  48. 片山善博

    参考人片山善博君) 大変恐縮なんですけれども、私はこんな制度をやっぱりつくるべきではないと思うんです。  税の議論ではなくてとおっしゃいましたけれども、やっぱり税なんです、これは、税を移動させるわけですから。その結果は税をもてあそぶことになります。税というのは最終的には強制徴収を伴うものなんです。払わなかったら強制徴収をするんですね。それぐらい厳しいものなんですけれども、一割どこでもいいですよというようなことになるわけですね。しかも、さっき言いましたように、自治体によっては、うちに来てください、うちに来て五万円以上寄附してもらったら肉をあげますよなんということになるわけですね。もう明らかに税をもてあそぶことになります。  それからもう一つ、私は、自治体というのはだれに向かって説明責任を果たさなきゃいけないのかということ、ここが一番重要だと思うんですね。納税者に向かって説明責任を果たすわけです。あなた方からいただいた税はこんなに無駄なく使っていますよということ、これが地方自治基本なんですね。  ところが、このふるさと納税をやりますと、東京の県人会に向かって、うちにやってください、うちにやってください、うちこんなものをやっていますよというようなことで、申し訳ないですけれども、今でさえ必ずしも自分のところの住民に厳しく向き合っていない、そういう自治体がまた余計よそのところに向き合うようになる。そういうことを助長するような仕組みというのは決して良くないと私は思います。
  49. 弘友和夫

    弘友和夫君 終わります。
  50. 山下芳生

    ○山下芳生君 初めに片山参考人に一言申し上げたいことがあるんですが、鳥取県西部地震の際に、当時知事だった片山さんが現場に急行されて即座に住宅再建に三百万円支給するという決断をされました。当時、やはり地方では高齢者の方は住宅がつぶれたら自力では再建できない。そういう地方の集落に幾ら道路や橋を公費で直したところで、家を失った高齢者はその村から離れて息子さん、娘さんのところに行かざるを得ない。したがって、集落、地域を守るという立場から住宅再建に公費を投入するのはしっかりした根拠があるんだということで、国会にも来ていただいて、当時私は阪神・淡路大震災の被災者支援を原点として活動しておりましたので、大変励みになったことを覚えております。  その後、各地の被災者も声を上げ、要求を強め、そして去年の参議院選挙の与野党逆転を一つの契機として、昨年の十月に被災者生活再建支援法が抜本改正されて、これからの被災者にはあまねく最高三百万円住宅再建に支援する制度ができたということに、その先鞭を着けていただいた片山参考人に心から感謝と敬意を表したいと思います。  さて、片山参考人道路特定財源について伺いたいと思うんですが、道路だけに優先席を設ける理由はない、教育、医療など他の重要課題もあるという御発言ですが、私も全く同感であります。ただ同時に、地方首長の中には支援者との関係で道路特定財源制度の方がいいと思う方もあるであろうという御発言でしたが、そう思う方は地方首長だけではなくて国会にもまだまだいるというふうに感じております。  私が今心配しておりますのは、首相が提起された一般財源化が仮に実現されたとしても、別の形で、例えば道路五か年計画などで五か年で三十兆円道路に使うんだという形が残ったとしますと、これはやはり一般財源化がされたとしても道路は聖域として残るんではないか。したがって、本当の意味での一般財源化、これまで道路に充てていた税収も含めてすべてほかの課題と同列視して優先順位を付けていくという真の一般財源化をやろうとするならば、総額先決め方式というものは改めなければ、それに地方もまた一緒になって総額先にありき方式で縛っていくというやり方は改めなければ、一般財源化には程遠いものになってしまうんではないかと思っておりますが、その辺りの御意見伺いたいと思います。
  51. 片山善博

    参考人片山善博君) そうだと思います。一般財源化しても、歳出の方をあらかじめもう総額決めて、それは絶対使うんだということになると、それは別の形で優先席を設けたことになると思いますね。ですから、一般財源化するということは、歳出の方も、それは毎年の予算でもって一番合理的な優先順位を付けていくということでないといけないと思います。  ちなみに、道路ではなくて教育の方で、先般、教育振興基本計画というのを作ることになって、その答申が出たんですけれども、それについて、当初は数値目標を決めようというようなこともあったんですね。それは、向こう五年間で幾らぐらいの教育投資をするかということも含めて決めようという考え方が強かったんですけど、結果的にはそういうことは財政を縛るからしない方がいいんだと、こういうことになったんですね。だから、それならば道路教育も同じように扱うべきだろうと、そのときつくづく思いました。
  52. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  持田参考人に伺いたいと思います。  先ほどの御意見で、今の地方財政の惨たんたる現状を救うために交付税総額の確保が必要という御発言がありまして、それにかかわって三つお尋ねしたいと思うんですが、一つは、地方財政の惨たんたる現状とは一体どういうことか、できれば数字も簡単にお挙げいただいて御説明いただきたい。二つ目に、その惨たんたる地方財政を招いた要因はどこにあるか、どう分析されているか伺いたい。そして、三つ目に、その上で交付税総額の確保が必要とされたのは一体なぜか、お聞かせ願えますでしょうか。
  53. 持田信樹

    参考人持田信樹君) どうもありがとうございました。  まず、地方財政現状ですけれども、私は一番心配しておりますのは、債務残高がGDPの全体で一五〇%、そのうち地方の債務が七十兆円になっている。それがこれから地方財政の元利償還の負担になっていくということが大変大きな問題である。その元利償還というのが当然義務的な経費として支払わなければなりませんので、地方財政の硬直性が極めて高くなっていくということが一番大きな問題だと思います。  それから、そうなった原因ですけれども、慶応大学の政治学者の草野厚さんという方の書いた本で「パイプオルガンと政治」という新書があります。これは、日本の地方自治体に何台パイプオルガンが導入されているかということを調べた力作なんですけれども、私はそこに今の地方財政の困難を招いた原因というのがあります。もちろんこれは国が景気対策に地方を手足のように使ったということもありますけれども、地方もそれに乗ったと。両面あるのではないかと、それが「パイプオルガンと政治」ということの意味です。  それと、交付税の総額、これをどういうふうに確保すべきであるかということでありますけれども、私は、交付税の総額を確保するためには、この交付税の理念についてやはり政治の世界できちんと議論をしていただくということが一番重要だと思います。つまり、交付税の水準がナショナルミニマムと言う人もいますし、私のようにナショナルミニマムじゃ低過ぎる、ナショナルスタンダードであるべきだと言う論者もいるんですけれども、それは言葉のあやなんですよ。  要するに、交付税制度で重要なのはその地域の町民の方々、同じ日本国民として何とか我慢できる水準を全国津々浦々に保障すると、それで交付税を判断すべきなんです。それに必要なものが交付税の総額なんです。ですから、そこには単純な受益と負担の関係なんてあり得ないんですよ。それが私の考えです。
  54. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  片山参考人に再度伺います。  昨日、夜、NHKスペシャルで「どうする?大返済時代」と題して、地方自治体の債務残高が総額二百兆円にも膨らんでいる、そのことがサービスカット、それから負担増として今住民生活を圧迫している現状がリアルに紹介されました。ちょうど島根県の実態が映されまして、障害者の医療費の助成がそういう下でなくなって、残念ながらふるさと島根で住むことができなくなって隣の鳥取県に引っ越されて、こちらではまだ助成があるので何とか夫婦で生活できると。ところが、残念ながら鳥取でも四月一日からその助成が、一部自己負担が導入されて途方に暮れておられるという姿が映し出されました。  私は、そういうことが恐らくもう全国の自治体に、先ほど持田参考人からお話があったような状態があるわけですから、起こってくると。これを、元鳥取県知事として財政運営を責任持ってやられていたお立場から、今の事態どうお感じになっているか、なぜそうなったのか、原因はどこにあるとお感じか、そして、地方はもちろんですが、国はどう対応すべきとお考えか、伺いたいと思います。
  55. 片山善博

    参考人片山善博君) 私は、自治体が、これまで本当に頑張ってきているんですけれども、頑張る方向をちょっと間違った面が強いと思うんですね。今までお金いっぱいつぎ込んでいろんなことをやってきているんです。それは何かというと、例えば景気対策で相当の金をハード事業につぎ込んできました。それで疲弊して合併せざるを得なくなって、また合併するときに合併特例債でまたハード事業を一生懸命やってきた。それから道路特定財源道路を一生懸命やってきた。過疎債というのがあって、過疎地域に優遇措置があって、その過疎債でまた道路や箱物をいっぱいやってきた。随分頑張ってきたんです。  ところが、肝心の、さっきおっしゃったような、例えば弱者、ハンディキャップを持った方々に対する施策が今できなくなっている。なぜかといったら、従前ハード事業をやり過ぎたその借金のツケがぐっと重くなって、手元不如意になって必要なこともできなくなった。夕張なんかは小学校を統合してしまうとか図書館を閉鎖するとか聞きましたけれども、そんなことになってしまっているんですね。結局、本来やるべきところに力を余り注がないで、住民皆さんから見たらちょっとずれたところに大金を投じ過ぎてきた、そのツケが回ってきていると思うんです。ですから、もうちょっとやっぱり自治体は考える力を持って、本当に住民皆さんにとって必要なものは何かということを、その優先順位をちゃんと付けていくべきだと思います。  自治体が優先順位を間違えたのはいろんな理由があって、まあ考える力がなかったと言えばそれまでですけれども、国の方が、国の思惑で、こっちの水は甘いよという制度をいっぱい設けているわけです。それが、例えば合併しなさい、ハード事業ができますよ、景気対策をしなさい、借金の返済は後で全部面倒見てあげますよ、そういうことをずっとやってきておるわけです。過疎債だったらハード事業を、過疎地にはハード事業ばかりやらせているわけですね。  ですから、国の方も、自分の思惑とか方針をやめて、本当に自治体が自由に政策選択をできるような、そういうサポート体制にすべきだと思うんです。例えば、過疎地域に対する優遇措置だったら、何もハード事業ばかりじゃなくていいと思うんですね。その道路の上を走るバスに補助金を出したら、それも優遇措置の対象にしてあげたらいいと思うんですね。そういうふうに、国の方が何かハード事業ばかり優先するような仕組みが今までありますから、それを変えてあげるということも非常に重要だと思います。
  56. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  横尾参考人に伺いたいと思います。  お配りいただいたレジュメを見ますと、二ページに、社会保障費抑制の動きがあるが、直接住民と向かい合い行政サービス提供を担う地方では、地域事情によるサービスなどもあり、一律の抑制策は不可能であると。この問題で、まず具体的にどんな御苦労や御努力があるのかということをお聞かせいただきたいと。  それから二つ目に、既存施設の維持補修に係る財政需要の増大が見込まれると。これ非常に重要なことだと思いますが、少し、市政の下でどういうことになっているか。  それから最後に、まずは大幅に削減された地方交付税の復元が必要との認識ということですが、そういうことも踏まえての御発言だと思うんです、御提起だと思うんですが、改めてお聞かせいただきたいと思います。
  57. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 社会保障費です。例えば介護とか福祉のケアをするステーション等を造る必要があります。例えば福祉事務所単位となります。この場合、たしか記憶が間違いなければ、対象者が人口六千人当たりに何人というような数値があります。そうしますと、八千人だろうと一万二千人だろうと実は二という数字を確保しなければならなくなります。こういった基準がほかにも細かく決めてありまして、しかも小規模自治体になりますと兼務体制を取らなければならなかったりします。また逆に、医師不足と同じようにそのような専門的な資格を必要とする職種もありますので、これも探さなければならないということで大変になったりするんですね。  このように様々な基準があるために、独自に、この地域は相互扶助があるからこれはこういうふうに簡素化していこうじゃないかといってもこれはできない部分がございますから、そのようなものを積み重ねていくとこのような事態が発生するというニュアンスもございます。  また、社会基盤等のことですけれども、先ほども言いましたように、国の橋梁はもうチェックはおおよそ終わったと聞いておりますが、都道府県並びに市町村に関しましてはこれからというふうに聞いていますので、こういったチェックをどうするのか。あるいは維持管理につきましても、造ったものの後をどうするか。これは分権会議でも今議論していますが、目的、用途が決まって造ります、補助金を受けて造ったりします。しかし、社会的需要がもう減ってしまった、できたらほかに転用したい、建物とかそうですね。ところが、今のルールですと、残存期間、補助金の価値の残存期間は目的転用は駄目ですよとなっておりまして、この柔軟化ができないものだろうか。そうすると、ほかの費用を、そこの分を縮減したりすることもできますが、それらもろもろも含めてまだまだ維持管理というのが発生しています。  特に震災のときに、先ほど冒頭におっしゃったようなときに、典型で私は思っていますが、避難されるのは学校であります、体育館であります。ところが、体育館に関する予算も含めて文科省予算との余りかかわりがありません。むしろ、さらに神戸等ではっきりしたのは、グラウンドの近くに仮設トイレをできるインフラが事前に備わっていればもっと簡便にそういった衛生面も対応できるということも教訓で分かったわけですけれども、まだまだこれも改善の余地があるところだと思っています。  あと、交付税のことでございますが、かなり、先ほどの私どもの市の統計でも出しましたように、ぐっと減ってきておりますから、二割、二割弱と。そうすると、これをある程度戻していただくことも大変地方が切望しているところでございます。しかし片方では、片山参考人もおっしゃったように、国の政策に付き合わされて、そのうちもらえるよと言って、そして出てみて、そのトンネルを抜けてしまったら止まってしまったということがあるかもしれません。しかし、それはやっぱり今後改善をしていかなきゃいけないだろう。  ですから、そのときそのときに、議会を含め自治体がこれはどこまで負担をしていけるのかどうか、そのときだけじゃなくて、中期的、長期的に、そういったことをやっぱり精査しながら財政運営を努力していくことが片方では極めて重要だと思います。  しかし、現状を見ますと、この間の大幅な削減によりまして交付税本当に困っているところがありますので、この原資を確保していただくか、あるいは共有税という方式で、先ほどほかの参考人もおっしゃいましたように、地方独自財源としてちゃんと対応ができるように、采配できるようにしていただくと、こういったことが今後必要だと思っております。
  58. 山下芳生

    ○山下芳生君 最後に、片山参考人横尾参考人に一言だけ感想を伺えればと思っているんですが、私、地元が大阪でして、大阪でも、先日当選された橋下徹大阪府知事が四月の十一日に財政再建プログラム試案というものを発表されました。その中身は、大変ドラスチックに、小学校一年生、二年生で実施されていた三十五人学級を四十人学級に戻しましょうとか、あるいは高齢者、障害者、乳幼児、一人親家庭への医療費助成を削るですとか、博物館や体育館などの文化施設を廃止して売却する、そういう中身になっております。一千百億円単年度で歳出を削り、そして収入を増やすということで何とか改善していこうということになっておりますが、大阪府下の市町村長さんが猛反発されて、大阪府民も大変批判を強めておりまして、ただ、知事はどうしてもやるんだということで、この間は市町村長さんとのやり取りの中で涙を流されて改革したいと訴えています。この涙がテレビで放映されまして、かなり今空気も変わってきつつあるというふうに聞いているんですが、私が言いたいのは、なぜこんなことになったのかと。  昨日、大阪府庁を訪ねまして財政担当者の話を伺いますと、やはり先ほど片山参考人横尾参考人からお話のあった、九〇年代、政府の景気対策と称する公共投資基本計画にやはり大阪府も増田総務大臣の言葉を借りればお付き合いしていると。バブルがはじけたにもかかわらず、バブル最ピークの一九九一年のときは四千五百億円の建設事業費だったのが、その後どんどん増えて、九五年がピークですけれども、七千五百億円、一・六倍になっております。その結果、大阪府の負債残高が、九一年一兆三千四百億円だったのがピークの九八年、ピークじゃないですね、その後増え続けて七年後の九八年には三兆五千八百億円、約三倍近くにわずか七年間で膨れ上がっている。これが今ちょうど十年たって償還のピークを迎えるようになって大変な財政を圧迫し、三位一体で交付税が削減されたことが追い打ちを掛けていると。  ですから、私は、知事の涙に政府が高みの見物したらあかんと感じているんです。やはり今の財政状況をつくった責任、半分は政府にもあるんじゃないかと。したがって、交付税の復元など責任ある支援を政府が今やらなければ地方は大変なことになるというふうに思っているんですが、是非お二人の感想を伺えれば有り難いです。
  59. 片山善博

    参考人片山善博君) 私は政府は無責任だと思います。それはそうだと思います。ただ、その政府の無責任な政策に、やれ損だ、得だといって飛び付いた自治体もやはり大いに反省すべきだと思います。ちなみに、まあ自分で言うのも変ですけれども、私は平成十一年に知事になったんですけれども、そのときはまだ世の中浮かれた状況でしたけれども、こんなことが続くはずがないと思って、前任者の計画はもう全部軒並み中止しました。だから、やろうと思えばできるんです。ところが、もう考えなしにずっと得だ得だで来ている、そのツケがあると思います。  あと、もう一つは、余分なことかもしれませんけど、やっぱり不透明です、大阪府なんか見てみましても。起債を一〇〇%転がしている、だれも知らない間に、なんというのは不透明ですね。ですから、教訓としては、自ら考える、国が得だというような制度を出してもちゃんと考える生活習慣付けるということと、それから徹底した透明化をするということです。  それから、もう一つ感想を言いますと、あの橋下さんのを私もニュースで見まして、市町村長さんは余りにものんきだなと思いましたね。というのは、小学校の学級編制というのは市町村の教育委員会仕事なんです、三十五人にするのか四十人にするのかは。それを府主導で三十五人にしようねということで府が金出していたんだと思いますけど、その府がもうお金がなくなって撤退したいと言っているときに、市町村長さんは自分の問題としてやっぱり考えなきゃいけないんです、学級編制は市の仕事なんですから。その辺が少し認識がなくて、まるで何か犠牲者みたいな印象を受けましたけれども、それはちょっとやっぱり市町村長さんももう少し自覚をされるべきだろうと思いました。  もう大阪府は本当ににっちもさっちもいかない状況でありますから、私は涙なくても橋下さんには同情を多少しています。
  60. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 自治体、大変財政厳しいですから、やはり改革又は削減、縮減、どうしても必要だと思います。そういった意味では、橋下知事として全力を尽くされて今当たっていらっしゃると思います。かといって、そのことをメッセージを出しても一月やそこらで分かってくれる状況になるとは思えませんので、しっかりと空気ができるまでにはもう少し時間も掛かる面があると思います。そうしたら、本気になって、様々なカットもやむを得ないなという話になるかと思います。  私どものところでは、例えば予算カットを目標を立てましたら数年のビジョンで努力をしていきます。率直な交渉といいますか、市民の方へ説明いたしたりもしました。また、景気対策につきましても、私が市長になってからもそういったお話ありましたけれども、余り軽々には乗りませんでした。国を信頼してなかったからではありません。これは先々大変じゃないかなということでございます。  片方でやりましたのは、経年変化、四、五年でやらなきゃいけない簡単な補修等の工事がありますが、これを集約してある年に集中的にやったことがあります。これはなぜかといいますと、景気が上向かなかったので市内が大変経済体力が落ちたためにこれを前倒しでしよう、そのことで少しでもカンフル注射のように元気を付けてもらおうというふうなことでしたんです。  そういう工夫はできるわけですから、そういったやっぱり賢明な判断というのが自治体に求められると思います。
  61. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。
  62. 又市征治

    ○又市征治君 社民党の又市でございます。  今日は参考人皆さん方、本当にありがとうございます。  まず、片山参考人にお伺いをしたいと思うんですが、これまでも経験に基づいて本当に傾聴すべき御発言多々なさっていただいておりまして、心から感謝を申し上げます。  まず、自治体道路を造りたいという要求は、国が特定財源で縛ったり補助金や地方債で誘導しているからであって、自治体が自由に決められるようにすれば使い道はおのずから多様化すると、こういうふうにお話しになっています。私も同じ趣旨のことを言い続けているわけですが、なかなか、真に必要な道路建設なのか、それとも長年の制度に寄りかかったというか国土交通省の誘導によって虚構された道路需要なのか、論争が様々あります。地方によっても違う、こういうこともあろうと思います。  片山さんは二月二十三日の新聞のインタビューで、福田さんは一般財源化を言えば人気が出ますよと、こう表現されておりますけれども、この一般財源化による人気の中身というのはまさに市町村の手で介護を充実することだったり、赤字バス路線を維持することであったり、地域の公立病院を赤字でも守ることだったり、住民の思いがあるからだと、そんなふうに言っておられるんだろうと思います。  そこで、福田さんが片山さんのお勧めどおりと言うべきかどうか、三月二十七日になって一般財源化を言い出されたんですが、余り人気出てまいりません。それは、財源特例法、これはしっかり守っていかにゃいかぬと言いながら一般財源化と言うから、大半は道路に使うということを国民皆さんが見抜いているからそういうことなんじゃないかと思いますが、それはさておき。  お尋ねしたいのは、近い将来、この一般財源化が実現をして、自治体の使途が拡大をして自由化をした場合、自治体独自の道路政策というのはどのようになっていくというふうに、あるいはどのようにしていくべきだというふうにお考えになっているか、この点見解をお伺いをしたいと思います。
  63. 片山善博

    参考人片山善博君) 今、これまでは特定財源の枠の中で事業の選択をしているわけです。これが一般財源化になりますと、福祉教育やいろんな他の政策課題と一つの同じ土俵の中で吟味をされるわけです。そうしますと、例えばこの山奥を通る道路とそれから学校現場の環境を整えることとどっちが優先しますかという、こういう吟味が可能になるわけですね。今まではこの道路とあの道路はどっちが優先しますかという議論しかしてないわけですね。  ですから、これが本当に他流試合になったときに今までの道路事業の優先順位というものが耐えられるかどうかという、こういう試される時代になるんだと思います。その中で、いや、やっぱりこの道路よりもこっちの学校の方が重要だというようなことが行われるとか、それとも、いや、やっぱりこの道路が重要だということになるか、これはもう自治体の選択だろうと思います。
  64. 又市征治

    ○又市征治君 同じような趣旨の質問を横尾参考人にしたいと思うんですが、それぞれ首長さん方でもいろんな主張があるわけで、そういう意味では今は横尾さん、立場からいうとなかなか言いにくいということがあるかもしれませんけれども、まあ分権改革推進委員会の七人の侍のお一人でありますから率直にお伺いしたいと思うんですが。  横尾さんは、財政力の弱い自治体地方交付税を活用して個性を発揮しているんだ、交付税は非常に重要な財源だと、こうおっしゃっておられる、こういう立場からお伺いしたいと思うんですが、道路諸税が地方一般財源化すれば自由度が増すわけですけれども、その際、道路建設と福祉、介護、医療、教育、その他の行政需要とのバランスを現時点ではどうお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。
  65. 横尾俊彦

    参考人横尾俊彦君) 道路財源に関しての一般財源化ということに関する御質問でございますが、このことについて私は一つ疑問点を強く持っていまして、そもそも道路利用者、予定者の方をターゲットとして創設された税でありましたけれども、どうも余っているらしい、無駄なものに、いすとか何かに化けているらしいということで議論沸騰し、一般財源化にという議論がかなり見えてきている状況になっているんですが、そもそも税論としましては、余ったからほかに使うという粗っぽい議論でいいのだろうかということがどうしても抜け切れません。本来でしたら納税者の方に納得をいただいて変える、必要でなければそれは削減する、あるいは廃止するというふうな議論もあってしかるべきと思います。片方では、では足りない分をどうやって税を確保するのか、財源を確保するのかということを是非国会で大所高所から議論いただくことが大切かなと感じております。  また、今の御質問の点でございますが、バランス等につきましては、これはもう重要なこととして市政運営では考えております。特に過疎地、国土の面積でいいますと、合併前でいいますと国土の五〇%ちょっとが過疎地域であります。人口比でいくと多分八、九%しか当時おりません。しかし、そこには人々が住んでおられ、限界集落等もあり、しかも救急車両が間に合うか間に合わないかで人命を懸けておられる例もありますので、そういった緊急に対応できる医療のネットワークなのか、あるいはそれをつなぐ道路なのかという整備片方ではどうしても必要だろうと思います。  しかし、それが過剰なものとなって、無駄なものに使われているという現状幾つか散見される以上は、是非適切に改革をし、あるべき姿にしてほしいというふうに思っております。
  66. 又市征治

    ○又市征治君 そこで、片山参考人にもう一点お伺いしたいと思うんですが、片山さんの書かれている地方交付税制度機能不全についてです。それは、地方交付税の総額は国税五税の税収によって決まるはずなのだが、総務省と財務省の密室協議で決められている、こうおっしゃっています。  私も、先日、この委員会の質問のためにデータを再確認したんですけれども、過去十年間、交付税の入口ベースは指数でいうとずっと一〇〇より上なんですね。低い年度でも一〇七、高い年度では一二七、こういう数値になりました。ところが、それを基礎にするはずの出口ベースは、全く無関係にこの十年間ほぼ一直線に七三まで下がってきている。これがいわゆる五兆円の削減ということの実態ですね。技術上のからくりは、地方財政計画の操作、そして基準財政需要額、特に市町村分の操作にある、こういうことははっきりしてきているわけですけれども。  そこで、片山さんにお伺いしたいのは、財務省と総務省の密室協議でこういう操作になってきているわけですが、これどこでどう崩せばいいとお考えなのか。理念面でいえば、例えば、おっしゃってこられたように六団体地方共有税の運動などというのがありますけれども、ずばり、経験に基づいて片山さんの戦略、戦術をお伺いしたい、こう思います。
  67. 片山善博

    参考人片山善博君) 本来、交付税というのは財務省と総務省の協議とか財務省の査定で決まるものではないんですね。仕組みは、ちゃんと地方交付税法があって、そこで国税の一定の税の何%というふうに決まっているわけですね。国会交付税の率を決めているわけですね。それに従って財務省は査定すればいいわけです。ところが、それをしないで、もう毎年毎年特例で加算をしたりしてきているわけですね。だから、地方の側もいけないと思うんです。ちょっと足らなくなったら交付税を増やせということをやってきましたから、じゃ特例で増やしましょうというようなことをやってきたので、今度、国が大変で地方が少し余裕があれば返せとか減らせという話になってくるんですね。  だから、そういうことの操作が利かないようにもう切り離してしまって、それで少々地方は足らなくても、その足らない分は地方自分のところで取りあえずしのいでいく、余ったら地方自分のところでそれを財政調整基金に埋めていく。そういう年度間調整というのは国が行うんじゃなくて地方が行うというそういう仕組みに戻すべきだと思うんです。それを五年なら五年ぐらいのタームで国会が眺められて、ああ、どうも地方はこれは大変そうだなといえば交付税率を上げるとか、余裕がありそうだなと思えば交付税率を下げる、それは国会仕事だと思うんですね。毎年の予算編成のときの財務省の査定とそれに対する地方の要求みたいなああいう作業から切り離すことが私はまずは一番のやるべきことだろうと思います。
  68. 又市征治

    ○又市征治君 ありがとうございました。  そこで、池上参考人に今の関連でお伺いしたいと思うんですが、池上さんは地方共有税及び地方財政会議の具体案の提言をまとめられたお一人だというふうにお伺いしていますけれども、それによれば、例の常設機関としての地方財政会議が、中期、つまり三年から五年の地財計画を作って国会で議決をする、計画には地方税税率地方共有税、つまり今の交付税の法定率を定める、基準財政需要額も法律で定めるといった考え方のようでございますけれども、この地財計画及び基準財政需要額の恣意的な切下げも禁じられるし、交付税の法定率も中期ごとに調整される、これはおっしゃるとおり、まさに王道だと、片山さんも今そのことをおっしゃっていたと思うんですが。  そこで、この提言のなさっている意義、もう少しお聞かせをいただきたいと思います。
  69. 池上岳彦

    参考人池上岳彦君) 私が提言をしたというよりは、これはそういう問題について研究会がございまして、私はその委員をやっていて、そこでそういう報告書をまとめたと、それをいろんな方が活用していただくと非常に有り難いと、そういう立場で私は申し上げているわけでございますが。  地方交付税の充実が必要であるということは先ほど来申し上げているとおりでございまして、地方交付税という制度がいわゆる事業費補正の問題を取り上げて非常に攻撃されてきたわけですね。考えてみますと、確かに先ほど片山参考人も言われたとおり、バブル崩壊以降、そういうふうにかなり事業費補正なんかが使われて、濫用と言ってもいいと思うんですけれども、景気対策なりなんなりにいろいろ使われて、その結果借金が増えてしまったという結果もあるわけでございますけれども、地方交付税を本来の姿に戻すためにはどうすればいいかということですね。  名前を変えれば変わるということでもないんですけれども、交付税、交付金という言い方がどうも補助金に似ているものですから、より地方の共有財源であるという性格を明らかにするような名前にまず変えなきゃいけないだろうということはあるかと思いますし、これも先ほど申し上げましたが、明らかに、シャウプ勧告が、先ほども持田参考人も言われたとおり、シャウプ勧告に基づいて最初地方財政平衡交付金というのができたときには地方財政委員会という委員会がございまして、そこには地方団体の代表も入って議論されて、それで、そこでもって出された案について当時の大蔵省とのやり取りがあるというふうな形があったわけでございますが、そういう経験から見ますと、そのときにはいろいろ問題もあったのですが、今改めてそういう制度を復活するとしますと、より進めた形で地方の共有財源としての性格を強めるような、そういう改革にしなければいけないだろうというふうに考えまして、先ほど申し上げた数点の改善すべき点を掲げたということでございますので、地方交付税についてはこれをいわゆる前向きに考えると。  もちろん、総額については税源移譲が進めば、地方税収がどんどん増えれば地方交付税の額は減るはずであるという考え方も当然あり得るのですが、しかし、先ほどからお話出ていますように、果たしていつになったらというところがございますので、住民税にしろあるいは地方消費税にしろ、いつ充実されるのかというのは分からないところがございますが、しかし地方団体の方は待っていられないということがございますので、地方共有税への転換の方をこれを先にやらないとまさに財源保障機能機能不全に陥ってしまうということがございますので、それは急いでやらなければいけないだろうというふうに考えております。
  70. 又市征治

    ○又市征治君 最後に、持田参考人にお伺いしたいと思いますが、先ほどの質問とダブるかもしれませんけれども、非常にそういう意味では地方財政が危機的な状況、そして、今全国あちこちで財政危機だからといってもう行政サービスや福祉がどんどん切り下げられる、大変ひどい状態が進行しているわけですけれども、この今日の財政危機をもたらした根本的な要因と、そしてやはりどこをどのように改善をすべきだというふうに持田参考人はお考えでしょうか。
  71. 持田信樹

    参考人持田信樹君) 財政危機の原因については、地方団体モラルハザードであるという考え方と、国の景気対策に地方が動員されたという二つの考え方があるのは御存じのとおりであります。  私は、モラルハザード論については何人かの研究者と研究を続けてきまして、これは実証的な裏付けがないものであると。特に、市町村の固定資産税について私たちは研究してきたわけですけれども、交付税があることによって地方団体が努力を、徴税努力をおろそかにするということはデータ上確認できないということを主張してまいりました。  それで、やはり問題は景気対策に動員されたということが大きな問題だと思うんですけれども、今後のことを考える場合に、交付税の争点というのは、現行制度交付税率を上げるか上げないかも重要ですけれども、実際の争点になっているのは、財源保障機能を廃止して財政調整機能に特化するかどうか、これが私どもの業界では大きな争点になっています。  私は、そういう意味財政調整機能に特化するのは正しくない、交付税というのは財源調整機能財源保障機能を両方持つべきであるというふうに考えます。  その理由三つありまして、一つは、財政調整に特化すべしという議論の根拠はプライマリーバランスが国と地方では正反対になっているということ、これが根拠になっています。しかし、確かに地方団体のほぼプライマリーバランスは黒字ですけれども、国際的に見るとやはり日本の地方財政の悪化の度合いというのは相当深刻であるというのが一つ。  それからもう一つ財政調整機能に特化すべきだという議論の根拠になっているのは、交付税があるために無駄な支出が増えるのではないかということであります。これに対しては、交付税というのは基本的には財政需要を客観的に測定して、財政収入も客観的に測定していますので、地方団体が勝手に財政需要とか財政収入を操作する余地はほかの国の制度に比べればはるかに少ないと。したがって、その無駄な歳出が増えるということについても疑問を持っています。  そういういうことで、交付税制度についての真の争点は、私は財源保障機能を維持するかしないか、そこにあるというふうに思っています。
  72. 又市征治

    ○又市征治君 終わります。ありがとうございました。
  73. 高嶋良充

    委員長高嶋良充君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は貴重な御意見を賜り、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会