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2008-04-16 第169回国会 参議院 政府開発援助等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月十六日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月九日     辞任         補欠選任         下田 敦子君     姫井由美子君      徳永 久志君     牧山ひろえ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         溝手 顕正君     理 事                 大塚 耕平君                 富岡由紀夫君                 藤末 健三君                 谷川 秀善君                 山内 俊夫君                 谷合 正明君     委 員                 犬塚 直史君                 大石 正光君                 加藤 敏幸君                 亀井亜紀子君                 島田智哉子君                 武内 則男君                 谷岡 郁子君                 轟木 利治君                 長浜 博行君                 姫井由美子君                 牧山ひろえ君                 米長 晴信君                 椎名 一保君                 田村耕太郎君                 鶴保 庸介君                 西田 昌司君                 松村 祥史君                 森 まさこ君                 浮島とも子君                 近藤 正道君    事務局側        常任委員会専門        員        堀田 光明君        常任委員会専門        員        桐山 正敏君    参考人        中央大学法科大        学院教授        国際連合大学学        長特別顧問    横田 洋三君        拓殖大学学長        外務省国際協力        に関する有識者        会議議長     渡辺 利夫君        政策研究大学院        大学国際開発戦        略研究センター        教授       大野  泉君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府開発援助等に関する調査  (新たな国際援助在り方に向けた提言に関す  る件)     ─────────────
  2. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ただいまから政府開発援助等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九日、下田敦子君及び徳永久志君が委員を辞任され、その補欠として姫井由美子君及び牧山ひろえ君が選任されました。     ─────────────
  3. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 政府開発援助等に関する調査のうち、新たな国際援助在り方に向けた提言に関する件を議題といたします。  本日は、中央大学法科大学院教授国際連合大学学長特別顧問横田洋三君、拓殖大学学長外務省国際協力に関する有識者会議議長渡辺利夫君及び政策研究大学院大学国際開発戦略研究センター教授大野泉君に参考人として出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人方々からの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、横田参考人渡辺参考人大野参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  御発言の際は、その都度委員長の指名を受けてからお願いをいたします。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、横田参考人からお願いいたします。横田参考人
  4. 横田洋三

    参考人横田洋三君) 本日、こういう形で日本ODA政策についてお話をする機会を与えられまして、大変光栄でございます。  私は、ごく最近ですけれども、既にお手元に配付されているかと存じますが、ODA研究会という私を中心にした研究会を組織しまして、参議院事務局から委嘱のありました主要先進国における海外援助制度動向に関する調査報告書をまとめさせていただきました。本日は、そういうことで、この報告書の中に書かれていることを中心に御説明させていただき、さらに御質問を通して重要な論点を深めさせていただこうと、こう思っております。  資料としましては、既に配られております参議院政府開発援助等に関する特別委員会参考人質疑資料というのがございますが、これの私の関係のところは十二ページから二十一ページまでのところと、あと若干後ろの方の新聞切り抜きに言及させていただこうと思っております。それともう一つ、本日別途配られました、一番頭のところに参議院政府開発援助等に関する特別委員会平成二十年四月十六日、参考人横田洋三と書いてあるのがございますが、これにいろいろ資料が付いておりますので随時言及させていただきますし、また先生方も御覧になって御参考にしていただければと存じます。  最初に、私はこれまで大学国際法国際経済法国際人権法、こういったような分野を研究してまいりまして、その過程で、国連世界銀行それからILOその他様々な国連機関に短期あるいは長期にかかわる機会を持たせていただきました。日本ODA在り方については、そういうことで過去三十数年、研究者としてあるいは実務の面でいろいろな形で接点を持っておりまして、その流れで申しますと、今日の私の報告はこの報告書に書かれていることなんですけれども、こういう文書にする場合には、御存じのとおり多少いろいろなところへ配慮しまして表現が穏やかになっていますが、実は私の気持ちは非常な危機感を持っております。  国際的な全体の流れで見ると、特に日本ODAのこの十年ぐらいの変化は、極めて国際的に見て問題があると思います。是非この機会に、国会の先生方にも政府関係者の方にもこの点、十分にとらえて、日本ODA政策の今後の在り方を、私の感じる危機意識を共有していただいて、変える方向で検討していただければと、こういうふうに思っております。  まず最初に、この後で言及しました、この文書の頭に書いてあります提言骨子というところを少し追いながら説明させていただこうと思います。私は、この報告書全体の中では第十章の総括というところを担当させていただきました。ここのところを参考にしながらお聞きいただきたいと思います。  主要先進国は近年、ミレニアム開発目標、MDGsと略しておりますが、の目標年である二〇一五年を見据えて、また紛争予防環境保全資源確保経済的利益確保などの国際的、国家的利益実現を念頭に、戦略的観点から政府開発援助ODAの大幅な増額に踏み切っております。  こうした中で、日本は、長期不況財政緊縮影響により、ODAが一九九七年をピークに目に見えて減少傾向を示しております。このことは、この同じものの資料資料三と資料四というのを開けていただきますと、グラフになって示されているかと存じます。資料三、横のものですけれども、「わが国のODA予算の現状」というところを見ますと、右上の表を見ますと、もう明らかに一九九七年をピークに年々減少していると。一番多いときの約三分の二にまで落ち込んでいるというのが明らかでございます。  元へ戻りますけれども、かつては一九九一年から十年間、世界トップドナーであった日本の今日の凋落ぶりはだれの目にも明らかである。個別にあるいは国連などの多国間機構を通して、紛争、テロ、環境破壊人権侵害貧困などの地球規模問題と取り組むべくODA増額と活用を進める先進国に比べて、近年の日本ODA実績は極端に後ろ向き、内向き印象が強い。  ODA額世界的標準値になりつつある二〇一五年までに国民総生産、これはGNIと略しておりますが、普通よくGNP、GDPというのは使われておりますが、ここでは国民所得を使っておりまして、数字的にはそれほど大きな変わりがありませんので、GDPと表現しても間違いではありませんが、それの〇・七%達成日本も正式に決定、公表し、タイムテーブルに沿ったODA増額実現すべきであると思います。  また、その際には、ODAの額、つまり量ですけれども、それのみを問題にするのではなく、その質、具体的に申しますと、贈与比率通常グラントエレメントと言っておりますが、それからアンタイド化、つまり日本援助した場合、その援助お金使い方について日本の国内で使うということを条件付けるのがタイドでございます。どこで使ってもいいというふうにするのがアンタイドということで、このアンタイド化一〇〇%ということは、どこで使ってもよい、一番いいところで必要な財やサービスを購入するようにというふうにするというのがこのアンタイド化一〇〇%でございます、これの実現。  そして、適正な二国間、多国間のバランス。二国間というのは、日本から例えばフィリピン、インド、インドネシアというふうに二国間で援助を提供する形ですけれども、それに比べますと、マルチ多国間というのは通常国連開発計画とか国連人口基金とかあるいは世界銀行、IMF、そういったところに日本お金を出して、そこを通じて、日本お金が国際的な機構を通じて使われるというところにあるかと思います。このバイ、マルチバランス確保、それから人権環境平和構築といった日本外交において重要な視点となっている問題にも十分な配慮を払って、質的向上を図るべきであるというふうに考えております。  特に、日本援助の特徴として成果が上がっております南南協力、これは例えば日本マレーシア援助して、マレーシアがそのお金を使って更にアフリカのどこかの国を援助するという一種の玉突き現象で、日本はある途上国に支援するんですけれども、その途上国は更にそのお金自分の国のお金を使って別の途上国を支援すると。これをやりますと、複数の国に対する支援になります。この南南協力というのは日本が早期に始めた援助形態で、非常に効果が上がっているというふうに評価されております。  それともう一つは、草の根人間安全保障無償資金というもので、これは、これまで日本ODAについてしばしば使いにくい、使い勝手が悪い、約束してもお金が出てくるのに二、三年掛かるというようなことが問題になっておりましたが、この草の根人間安全保障無償基金というのは、このお金一定額、二千万とか場合によると五千万まで現地の大使の裁量で、いいプロジェクトであればそれに資金を提供できるという割合に柔軟性のある資金供与在り方です。これも非常に効果が上がっておりまして、評判も良くて、年々この枠だけは増額しているという状況にございます。これを、いいものですので、更に強化拡充していく必要があるというふうに私どもは考えております。  それから、援助の実施に当たっては開発援助人材育成急務であります。日本JICAあるいはJBIC、国際協力銀行それから外務省、この三つが主な援助機関ですけれども、やがてJICAの下に国際協力銀行援助部門が統合されるということで、かなり一本化された援助体系がつくられるということになっていることは御承知のとおりでございますが、そこで実際に開発援助人材としてかなり人たちが動かなければいけなくなるわけですけれども、その人材日本はずっと不足しております。  それから、国際機構、例えばUNDP日本かなり多額お金を出しておりますが、そのUNDP職員として働く日本人、これが本来日本人としてUNDPで働くべき人数よりもはるかに少ない人数で、これは結果的にどういうことを意味しているかといいますと、UNDPプロジェクトを作ったり、援助の額を決めたりということの重要な部分を支えているのは実はUNDP職員なんですね。その職員の中に日本人決定のレベルに人がそろっていませんと、せっかく日本UNDP多額お金を提供しても、そのお金使い方については日本の物の考え方日本方針というものが反映できないということになるわけです。  そこにやはり日本人でしっかりした人が入っていくということが必要で、最近UNDPについては徐々に増えておりますけれども、ほかの機関ユニセフあるいは人口基金世界銀行、そういったところは決して日本人の数は増えておりません。場合によると減る傾向にあります。こういったところでの人材育成急務であろうと考えております。  それからもう一つ最後の点ですけれどもODA日本国民の税金を使って国際的開発事業に貢献するものですから、効率性透明性応答責任あるいは説明責任とも言われておりますが、アカウンタビリティーのことです。それから、ODA本来の目的効果的に上げられるようにガバナンス通常、統治と言っておりますが、私の場合には管理運営能力というふうに、上から押さえるという印象を与えないためにこういう言葉を使っておりますが、ガバナンス視点を取り入れていく必要があるだろう。とりわけ援助に絡まる汚職の問題が途上国においては非常に深刻ですので、この点でガバナンス要素をきちっと押さえるということが日本援助を今後進めていく上で非常に重要なポイントであろうと、こう思っております。  そこで、もう一度この参考人質疑資料という方に戻っていただきまして、今度はこの資料の十二ページから、少し重要な点だけ私の方から指摘をさせていただこうと思っております。  「はじめに」のところは飛ばして、十三ページのところから項目ごとに私どもが考えております提言が書かれております。  まず第一に指摘されておりますのは、政府開発援助増額必要性ということでございます。その第二パラグラフのところをちょっと読ませていただきます。  「そこで、日本政府に対するまず第一の提言は、援助額の大幅な増大である。とりわけミレニアム開発目標実現のために各先進国に求められている、二〇一五年までに国民所得GNI)の〇・七%をODAに振り向けるという目標の、日本としての達成である。日本の二〇〇六年度の対GNI比率は、〇・二五%で経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)のメンバー国二十二カ国中十八位である。この比率を一気に〇・七%まで引き揚げることは困難としても、ドイツイギリスフランスイタリアなどが公約しているように、段階的に達成することをめざす必要がある。」、こういうふうに考えております。  これについては、お手元資料をちょっと御覧いただきたいと思いますが、もう一つの方の、私の先ほど説明させていただきました骨子が載っている方の資料の四というところを開けていただけますと、この一番下のところにこういうことが書かれております。主要先進国ODA増額目標というところですけれどもアメリカはいろんな意味ODAについては決して模範の国ではなくて問題があるわけなんです。そのことは、この私どもの研究した成果の中でも反映されておりますけれども、しかしそのアメリカでさえミレニアム挑戦会計という別口のファンドを作りまして、そこに将来的に年額年額です、五十億ドルまで増額するということを、これは増額ですので今まである金額に加えて増額すると、そういうことをコミットしております。あとは、イギリスフランスドイツ、カナダ、イタリア、それぞれに二〇一五年ないし二〇一三年までにGNI比〇・七%達成ということを目標にしております。  この主要先進国援助額増額動きはいろいろな国際的な動きを反映しておりますが、国際社会全体で見ますと、やはり紛争予防のために開発援助効果的に使うべきであるという考えとか、あるいは貧困撲滅のためにもっと援助増額すべきであるというような、国際的に形成されつつあるコンセンサスを基礎にしているというところがありますが、もちろん援助というのはそれだけではなくて、援助する国の利益も当然背後にあります。ただ、そういう援助の本当の目的の中の自国に利益になる部分というのは、ほとんどの国は余り表に出しません、それ説明してもほかの国が余り感心してくれませんので。しかし、実際には、その観点は非常に援助額増額するという理由として重要な要素であります。  その動きが今非常に国際的には活発になってきておりまして、一つには資源確保ということで、いろいろな国に援助増額して、同時にその国と経済関係を密にすることによって、その国が持っているいろいろな天然資源、石油とか天然ガスがすぐ思い浮かびますが、そうした資源をもっとその国との関係でもって深めることによって安定的に供給できるようにしようというようなことで動いているというところがあります。  それから、もちろん市場開拓、経済的な意味での市場開拓のための援助増額ということもあります。今、世界全体で見ますと、環境政策もそうなんですけれども、与えられたパイを増やすということが非常にしにくい状況になりました。これまでは、いろんな意味世界資源は無限のように考えられていましたが、今はもう有限であるという考え方で、これをどう配分していくかというところに一番の関心があるわけですね。その場合の配分の方式として、実は国際的にはきちっとした政府があって、そこがいろいろな国のニーズに応じて配分していくというような、そういうようなことはやっておりませんので、個々の国が資源のある国あるいは環境影響のある国、そういうところと個別に交渉して自分の国に必要な資源確保したり市場を拡大したりということをやってきております。  そういう意味からいいますと、日本にとってもこのODAというのは、日本国家としての利益を考えた上でも重要なポイントであろうかと思っております。その点を私としては特に今日強調させていただこうと思っております。  なお、一つ注意させていただきますけれども援助額を国際比較するときには為替のレートをどこに取るかによって数字が変わります。ですから、一位になった、二位になった、三位になったというところのその数字だけを余り気にすることはなくて、多分今円高になっておりますので来年の数字日本が少し上がる可能性もあるという意味では余り一喜一憂すべきことではないということは言えると思いますが、それにしても、この前の方の資料後ろの方に新聞切り抜きがございまして、そこで、例えば八十一ページに読売新聞切り抜きで今年の四月五日の記事で、日本は前年比三一・三%の減となり、国別ではドイツフランスにも抜かれて三位から五位に順位を下げたと、こういうふうになっておりまして、このことの意味というのはやはり大きい、そして日本として正面から取り組んでいくべき問題であろうと、こういうふうに思っております。  続いて、元の資料のところに戻りまして、第二の提言項目であります、十四ページにありますミレニアム開発目標実現への協力。これは、今度日本がG8サミットを洞爺湖で開くというときにも当然に出てくる議題ですし、それからその前にアフリカ開発会議TICADⅣが横浜で開かれますが、そこでも大きな問題になる、つまり世界的な意味での開発戦略でございます。このミレニアム開発目標協力するというのは、これはもう世界中の国にとって、特に先進国にとって大きな責任であり課題であります。日本ODAを進めていく上では、ミレニアム開発目標に貢献するという視点、これは日本の先ほど申しましたような資源確保とか市場確保というような二国間の利益の問題だけではなくて、国際社会全体の利益を考える上で重要な視点でございます。  それから、そのほか人権への配慮というのが十四ページに書かれておりますが、ODAを提供する場合には、極端な人権侵害国に対する援助については人権状況などを慎重に踏まえて考慮すべきであるということで、これは既に日本ODA大綱、第一次ODA大綱、第二次ODA大綱でそういうふうに書かれておりますが、実際には、原則としてはそれでよろしいのですけれども、具体的にどの国にどういう援助を出すかという時点で人権観点がどのように配慮されているかということが日本の場合にはこれまで不明確でした。この点では、できれば援助機関の中に人権のアドバイザーを置いて、一つ一つプロジェクトについて人権にどういう影響があるかということをアドバイスをしてもらう、そういう仕組みをつくることが必要であろうというふうに考えております。  あと環境への配慮が第五の点として書かれております。細かい点は省略させていただきますが。  十六ページには軍事的援助の回避という、日本国憲法の建前を踏まえて日本は軍事的な援助は一切しない、同時に軍事的に予算をたくさん使っている国にも援助は控えるというようなことをやっておりまして、これは世界的に評価されていることですので、日本はこの方針を堅持すべきだろうと思います。  それから、地域としては、伝統的には日本はこれまで近隣のアジアが対象国として大きかったわけですけれども、今でもその数字は変わっておりませんが、近年ミレニアム開発目標重点地域アフリカ、とりわけサハラ以南アフリカということになっておりますし、世界的に援助は今アフリカに焦点を当てようという動きがありますので、日本TICADⅣ、これまでにTICADⅠからⅣまで主催しておりまして、これは非常に高く評価されております。今度のTICADⅣでも日本はどういう形でそれを進めるかについて注目されておりますので、是非この点も強調していっていただきたいと思います。  それから、日本では平和構築という考え方が現在強調されて日本外交一つの柱になっておりますが、平和構築というのは紛争から平和時へ移るその過程をスムースに進めるための援助ということですので、これが平和の定着あるいは紛争予防ということにも貢献する援助形態になりますので、日本は是非この点も強調していく必要があるだろうと思います。  あと開発援助人材育成については先ほど触れたとおりでございます。  それから、民間のNGOとの協力もこれは先ほど申しました草の根人間安全保障協力基金で既に実行されておりますけれども、更にこの点は強化していく必要があるだろうと思います。  それから、国連関係機関、例えばUNDPであるとかユニセフであるとか人口基金であるとかあるいは世界銀行、アジア開発銀行、こういった国際的な開発機関との協力も、日本だけで独自に進めるよりも効果的になる場合がありますので、考慮していく必要があるだろうと思います。  最後になりますけれども、やはりガバナンスの問題は援助にとっては非常に重要です。援助効果的に目的実現のために使われるためには、ガバナンス観点をないがしろにすることはできません。とりわけ汚職の問題が援助とのかかわりでは常に問題になってきておりまして、国連機関でもその点が問題になってきておりまして、日本の場合にはその点で日本援助がいろいろと問題を起こすことがないようにガバナンス視点をしっかり押さえる必要があるだろうと、こう考えております。  以上、私の報告は既にまとめました主要先進国における海外援助制度動向に関する調査の結果を中心お話をさせていただきまして、後ほど御質問を受けて更に論点を深めたいと、こう思っております。  ありがとうございました。
  5. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いいたします。渡辺参考人
  6. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 渡辺でございます。  お招きいただきましてありがとうございます。ただ、報告の時間が大変短い二十分ということでございますので、ポイントを二つに絞って申し上げてみようと思います。  第一は、既に横田先生の方からも冒頭御報告がありましたけれども日本ODAの量的規模の問題、これをどうしたらいいかと、これが第一点であります。第二点は、私ども非常に懸念していることなんですけれども、最近日本の民間企業がODAへの関心を失いつつある、これをODAの方に再度顔を向けさせる、そのためにはどんなことをしたらいいかと。この二点について、二点目はあえて言えば官民連携という表現で言っておりますが、この二点に絞ってお話をしてみたいと思います。  第一から入ります。  御承知のことと思いますが、先々週の土曜、日曜にG8の開発大臣会合が開催されました。それに先立ちまして四月四日にOECDのDAC、開発援助委員会が二〇〇七年の国別援助実績の報告をいたしました。予想されていたことではありましたけれども、改めてそういうふうに公的に発表されますと驚愕させられます。日本ODA供与額は二〇〇六年には世界第三位であったんですけれども、それから更に順位を下げて、フランスドイツに次ぐ第五位になってしまったと。余計なことを一つ付け加えれば、はっきりしないことではありますけれども、恐らく今年、二〇〇八年にはオランダにも越されて六位になる可能性なしとしない、このような状態であります。  主要諸国が二〇一五年までに対GNI比〇・七%まで持っていこうという大方の合意を持っており、そのために一生懸命努力しているわけですけれども、片や日本は、厳しい財政状況があって、他の先進国とは逆に削減を続けてきているということであります。政府決定した二〇〇六年の骨太の方針、これに基づいてODAの量もおのずと決定していくわけでありますが、これが二〇一一年まで続きます。その間、ODA予算はマイナス二からマイナス四の幅で削減を余儀なくされているというふうな状態でありますから、この状態が続いていけば日本の順位は今よりも下がっていってオランダなどにも抜かれ、二〇一一年までを考えると更に他の国にも抜かれる、ごくごく平均的なODA供与国になってしまうということが懸念されます。  のみならず、これはお耳にされていると思いますけれども、いわゆるエマージングドナー、新興ODAの供与国、中国、韓国等を始めとする、こういった国々が伸びてきております。これは、OECDのDACのメンバーカントリーではありませんからまだ計算の母数には入っていないわけですけれども、もしこれが入るというふうなことになれば、世界ODA全体に占める日本のポジションというのはますます小さいものになってしまう。やはりここは危機感を持たざるを得ないということです。  もちろん他方、財政再建という立場が日本国としては非常に重要なテーマになっているわけですから、一面ではやむを得ない。そのことを私どもは知らないはずはないわけであります。とはいいますものの、かかるほどまでに大きな削減ということでありますれば、そこから生じるであろう負の効果、これについてはやはり真摯に政治家としては受け止めてほしいと思っております。  つまり、このように大きなODAの削減、これは受取国の落胆といいますか失望を招いているのは申すまでもありませんし、国際機関の落胆をも招いております。後者について言えば、これほどまでに下がってしまうならば、特にDACにおける日本発言力の低下に恐らくかなり高い確度を持ってこれはつながるというふうに言ってよかろうと思うのであります。  日本、これも言うまでもないことですけど、エネルギーや食料を圧倒的に開発途上国に依存している。加えて言えば、軍事力の海外展開ということは憲法上極めて強く抑制されている。そのために、国際秩序形成に軍事力をもって臨むという、そういう面での貢献もなされていない、できない。こういう両面を持つ日本ODAをこのような形で減少し続けるということは、つまり国際的に共通の課題に対して日本は積極的な関心をもう失ってしまった自己中心的な国家だと、こういうイメージになることを恐れておりまして、今度のG8開発大臣会合に出られた要人たちとのお話をしてみると、やはりそのような、まあ明確には外交官ですから言いませんけれども、そのような表現がにじんでいるということを私は感じたわけであります。  加えて申しますと、今、横田先生のお話にもございましたように、一九九〇年代においては、とりわけ九七年ころまでは日本は突出したODA大国であったわけであります。特に日本が比較優位を持つODAであるところの借款、円借款ですね、これを中心国際社会に大きな存在感を示してきたというわけであります。この対象国が東アジア地域であり、東アジアの発展を誘発する呼び水としての効果というものは大なるものであったと。これについては随分多くの研究論文もあります。  しかし、過去には大きな貢献をしてもらったけれども現在はこのざまだというふうなことになりますと、過去に我々がやった貢献というものがだんだん忘れられていって、そしてそれが無になってしまうと。現在のODAの急減というのは過去の日本ODAの貢献を無にしてしまいかねない、私はそういうことをも恐れているわけです。どうやら現在の日本は、自衛隊の協力にも後ろ向きだ、ODAにも後ろ向きだと、そういうイメージが定着していることを恐れるというよりも、もはや定着し始めているのではないかとさえ考えるわけであります。  繰り返しになりますけれども、私どもは、現在の日本の財政状況にかんがみて、量的な拡大を図れと、ただそう単純に主張しているわけではもちろんありません。それからまた、ODAには改革すべき様々な問題があるということも知っております。ごくごく簡単に申し上げれば、政策的に言えば選択と集中が必要である。ばらまき型であってはまずいという意味ですね。それから、実施面でいえば透明性確保、もっとクリアにしていかなきゃならない、そういう不断の努力が求められているということはよく知っておりますし、そのことは中間報告にも、それに至る幾つかの文献の中にも我々は書き込んでございます。  それからさらに、ODAだけでいいとは思えない。むしろODAが民間の投資を誘発する触媒的な効果を持って、ODAは少ないけれども、開発途上国への資金フロー全体としては効率的なある規模のお金が、大きな規模のお金流れているというふうなメカニズムをつくり出したい、そのために官民協力が必要だという提言もしておるわけでありまして、単純にODAの拡大を図れとのみ主張しているわけではもちろんありません。  申すまでもないことですけれども、五月末にアフリカ開発会議がある、七月には洞爺湖サミットがある、日本が議長国であると。この一連の会議におきましても、ODAを通じての支援の規模それから達成時期、こういったことが必ず焦点になるはずであります。日本の首相は、この議長役としてこういった諸問題について各国首脳からの合意というものを取り付けなければならない、そういう役回りになっているわけであります。今のような状態を何とか反転、復元させていくという意向を示すことなく、そういった調整役がこの二つの大きな国際会議でできるかどうか、私は非常に心配しております。  そんなことで、私は、この日本の首相の発言が説得力を得るためにも、首相自らが会議の冒頭でこれから日本国際社会共通の課題に今までとは違って積極的に取り組むんだという姿勢を明らかにすべきだろうと思うんですね。それだけでは抽象的でありますから、もっと具体的に踏み込んだ数値を設定してこれを表明すべきだろうと思いますね。  現在は、もちろん骨太の方針に基づく義務的な予算削減の期間にあるわけですが、この期間にあってもなお他の費目とは区別して、二〇一〇年までにODA実績GNI比〇・二五%にまで引き上げるといった主張は冒頭のステートメントでやってほしいと思いますね。現在は、二〇〇七年時点、先ほどのDACの報告ですが〇・一七%であります。DAC加盟国は二十幾つですか、二十二ですが、そのうち二十位になってしまっているわけですね。これでその二つの会議をクリアできるか、説得的に合理的な理由を持って説得できるか、なかなか難しいんではないか。  くどいようでありますが、この義務的予算削減期間においても、政治的考慮によって〇・二五%までは達成するんだというステートメントが必要ではないか、かなり踏み込んだ提案をしているようでありますが、そう思います。  それから、これ以降、その義務的予算削減期間が終わった後についてでありますが、それ以降についても私どもは次のように考えております。  ODAについては、国内政策にかかわる予算とは別の角度から政治的判断を加えるべきであると。そして二〇一五年までにGNP、これはGNP比になっていますが、GNP比〇・七%達成、その数値目標をやはり掲げる必要があるというわけです。もうちょっと申し上げますと、二〇一一年まではこれは〇・二五%、それ以降二〇一五年までに〇・七%達成という姿勢をやはり示して、日本の意思あるところを国際的にアピールしてほしいと、そういうことであります。  十年前には世界第一位の実績を誇っていた日本が、なおかつGDPの規模でもなお世界第二位にある日本が、ODAにおいて第五位、間もなく六位、GNI比でいえばDAC加盟諸国中もうしんがりだという状態であります。  こういう事態に至っているわけですから、現在は、外交の将来の在り方と関連してODAを最も真剣に考慮しなければならない、これは国運を賭するぐらいの覚悟で仕事をやってほしいと政治家の先生方には思います。今が最もこの問題を真剣に考える機会だと私は考えているということをお伝えしたかったわけであります。  これが第一でございます。  第二には、民間企業と政府ODA関係について、ちょっと総論的なところと具体論を申し上げます。  私は、日本ODAには他の国々のODAとは違った際立った比較優位があるとかねてより主張してまいりました。一言で言いますと、日本ODAは円借款の供与により東アジアの産業発展をインフラ建設によって支える、このことを主目的に供与されてまいりました。もう一度言いますと、円借款、東アジア、産業インフラ、これが日本ODAを特徴付ける三つのキーワードであったわけでありまして、この三つのキーワードから構成される日本ODAがいわゆる日本援助、ジャパニーズスタイルODAだということであります。これが功を奏して、東アジアのしばしば奇跡と言われた大きな発展が見られたということであります。  この産業インフラというのは極めて重要なものであります。一国の産業発展にとりましてインフラ建設、これは欠かすことはできません。しかも、開発効果は大きいわけですね。インフラというのは巨大な構造物ですから、この建設過程に多くの民間企業を内外から導入する、そのことによって直接的な効果というものがまず生まれましょう。それから、インフラが完成すれば、そこに集まってくる民間企業の生産費というものを減少させるということになるわけで、その生産費を切り下げるという意味での間接的な効果を持つと言うことができます。中国の地図を見ても、長江のデルタ、あるいは珠江ですね、広東省のデルタ、あるいはタイの東部臨海工業地帯等を見ると巨大な産業集積ができ上がっているわけでありますけれども、ああいう産業集積をつくり出すに際しての日本のインフラ建設のためのODAというのは、極めて大きな効果を持ったものだと思います。  実は、こういう日本の、日本援助と私が名付けているんですけれどもODAを支える理念が、これは御承知のように自助努力支援であったわけでありまして、この旗はずっと降ろしておりませんし、今後も降ろすべきではないというふうに私は思います。  借款でありますから、当然のことながらいずれの時期かに元本と利子の返済を必要といたします。ですから、借款の返済コストを上回るベネフィットが得られるように努力する、自助努力を東アジアの国々は懸命に続けたのだろうと思います。その結果が良と出たということだと思いますね。ちょっと言葉遣い、妙かもしれませんけれども、その意味では、日本ODAは自助努力をある種のコンディショナリティーにして成り立ったものだったということが言えると思うんですね。東アジアの国々は、このコンディショナリティーにこたえようということで一生懸命頑張って経済発展を実現したということだろうと思います。  アフリカ諸国に東アジア型の自助努力を求めることがそう簡単であろうとは思ってはおりませんけれども、しかし東アジアで実現されたこの日本の比較優位を持つODA在り方と理念というものを持ち込んで、何とかこれがうまくいくようにというそういう姿勢が日本ODA、対アフリカ支援の方針でもあってほしい。後で大野さんの方からもそれに類した発言があるいはあるかもしれませんけれども、私どもはそう考えておるわけであります。  そのことを更に、時間もありませんが、若干敷衍させていただきたいと思うんです。  私も長らく開発経済学といいますか、という分野からアジアを、いろいろな国を見てきたわけですけれども、やはり経済発展をもたらすものは市場経済だなとつくづく感じております。申すまでもなく市場経済の主役は民間企業であります。逆に言いますと、ODAそれ自身が持っている開発効果というのはそんなに大きなものじゃ実はないんですね。中心はやはり海外直接投資だろうと思います。つまり、ODAは海外直接投資と結び付いて初めて見るべき効果を持つんだというふうに考えるべきだろうと思います。  海外直接投資というのは、単なる技術の移転ではありません。単なる資本でもありません。そういうものを含めた、あるいはそれらを最も有効に結び付ける企業者的な機能をも含めた言わば経営資源のパッケージトランスファー、これを海外直接投資というふうに言っていいだろうと思いますね。ODAそれ自体に比べてかなり大きな開発効果を持つということです。つまり、ODAは民間資本の導入のための呼び水、我々は触媒効果という厄介な言葉を使っていますが、触媒効果によって初めて強力な開発効果を持ち得るんだと、こう考えるべきだろうと思います。実は量的に言っても、開発先進国から開発途上国流れ資金フローですね、このうちの七五%、もう八割近くが民間資本であるわけですからね、量的にも限られている。それから、今申し上げたように性格においても限られているというわけであります。  ともすると、我々はこのODAの開発効果ということだけを論ずる傾向がありますけれども、それだけでは議論は不十分であります。ODAが民間企業の開発効果を発揚させるメカニズム、これはアジアから幾つもの例があるわけでありますから、そういうものを分析して、その分析効果を、分析から得られたインプリケーションですね、政策的なインプリケーション、これをもっと別の例えばアフリカその他に持ち込んでいろいろ考えるという姿勢が必要ではないかと思っているのであります。  今インフラと民間企業の関連について論じましたけれども、これからやや離れて、官民協力というものを具体的に進めるために何をしたらいいかという提言も今回試みております。  と申しますのは、私ここしばらくODAの問題に関心を持ってまいりましたけれども援助のフロントの事業現場で実際に働くのは企業なわけですよね。どうもその企業のODAに対する関心がここのところ薄れてきているなと、こんなにまで薄れてしまっていいのかなと。援助の量が減ったこと自身も憂いの対象でありますが、それがゆえにでしょうね、こんなにまでなってしまったんで、民間がODAにかかわってもやはり収益には到底結び付かない、そういう考え方が背後にあるのでありましょう。だんだんだんだん関心が失われてきているということを実は大変恐れているわけであります。日本資金フローが全体としての開発効果を大きくするためには、民間企業のODAに対する関心がこんなにまで薄くなっていたんじゃ日本ODAの将来はないんではないかとさえ感じ始めております。  そんなことで、官民連携について具体的な提案を幾つかしております。  私どもの中間報告の十一ページ辺りを見ていただければ、これは余り解説を要さず御理解いただけるだろうと思いますが、若干二、三分時間残されておりますので、さっと申し上げますと、第一が官民対話の枠組み構築、できるところからやろうということですね。ODA並びにODAの実施機関とNGOや大学辺りの定期協議のつまりダイアログの場というのは既に設定されていてかなり密度を濃く開かれているんですけれども、何と考えてみたら不思議なことに、民間企業とODAとの政策的ダイアログの場というのはないんですね。これを早速構築してほしいということであります。これは経団連側からもそういう主張がなされております。私は真っ当な考え方だと思っているのであります。  二番目でありますが、ある日本ODA、ある国で日本が民間投資をやる、海外企業進出をしていこうと、こういう場合、その行為が日本外交や開発に関する課題の解決という言わば上位目標達成に当たって非常に重要だと認めた場合には、これを積極的にODA案件と認めてODAと企業との連携を図る、ODAもそれなりの民間企業行動に対するリスクを担うという方向も必要ではないか。アフリカ等を考えるとそう思います。  あと二点は簡単に申し上げます。  現地タスクフォース、在外公館を中心にJBIC、JICA、ジェトロその他が現地でタスクフォースをつくって活躍しております。すべてが成功しているとは言えませんけれどもかなり数、いい例が見られます。そういった中に、実は企業は入っていないんですね。あるいは企業の組織、商工会議所のようなものは入っていないわけです。これはちょっとまずいのではないか。現地タスクフォースへの民間企業の参加ということを提言もしております。  それから最後ですが、企業からこういうものが我々として直接投資でやるんだが、しかし同時にODA案件としてもかなり有効である、官民連携でいこうじゃないかという提言を企業からした場合、これを政府が受け付ける窓口等は用意するべきである。逆に、政府の方から民間企業に働きかけて、どうやったらいいではないかというこの両者のいいコラボレーションを実現する少なくとも窓口というものが必要であろう。  ただ、官民連携ということになりますと、何で国民の税金を企業のために使うんだと、こういう反論が必ずやあろうと思いますから、そういう反論に対して正当に答えられる説得力のある答えを用意できるようにしておくべきだ、そのために第三者の評価機関はきちんとつくって透明性確保に努めるべきだと、こういうふうにも思っております。  若干時間超過して申し訳ありません。以上でございます。
  7. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  次に、大野参考人にお願いいたします。大野参考人
  8. 大野泉

    参考人大野泉君) 大野と申します。よろしくお願いいたします。  本日は、新しい日本ODAを語る会の共同幹事の一人といたしまして、一昨年の七月から昨年の十月にかけて非常に白熱した議論を関係者で行いまして、その最大公約数とも言える意見を集約する形で取りまとめさせていただきました提言、皆様のお手元にこのパンフレットとそれからこのパワーポイント形式の資料があると思いますが、こういったものをマニフェストとして、私的マニフェストとして提言させていただきました。今回、そういったものを紹介させていただく機会をいただきまして、本当に有り難く思っております。  本日は、この二つの資料を基に御説明させていただきたいと思いますが、私自身、今の政策研究大学院大学に参る前はJICA日本の技術協力それから世界銀行それからまた日本に戻りましてJBICで円借款といった業務を担当したこともございまして、非常に異なる職場で援助の実務を経験してきました。そういった経験を通じて、日本援助の良さというのを非常にしみじみ感じたんですね。と同時に、やはりもっと良くできるんじゃないかと、そういった可能性も感じました。そういった経験も踏まえまして、今大学を拠点にして、外部という立場ではありますけれども、外からODA政策の分析とか調査提言を行っていると、そういうことでございます。  こういった経験に基づく問題意識とか、まさにお二人の先生方がおっしゃられたように、今年、二〇〇八年というのは日本でいえば開発の年ということで、よく考えますと、これは四十年に一度のもう絶好の機会なんですね。TICADは五年に一回、それから日本が議長国となってサミットを主催する、これは八年に一回回ってきます。こういった千載一遇の機会にやはり世界も注目していると。日本として開発の分野でどういったメッセージを出していくのか、それを本当に真剣に考え、その機会を使っていくことが必要じゃないかというふうに思いました。そういったこともありまして、有志の方たちと集まってこういった活動をしたわけでございます。  加えて、この資料を御覧いただけると思いますと、今年は秋には新JICAが発足いたします。一つページをめくっていただくと幸いでございますが、御承知のようにこれは数年前から始まっていたODAの本格的な実施体制の改革がこれをもって形式的には完了するわけですね。ですから、戦略的なレベルでの改革それから外務省の政策立案機能の強化それから今年の秋で新JICAができるということで実施レベルでの体制的な整備が整うということで、そういった意味では世界最大級の二国間の援助機関が誕生するということで援助効果が更に改善するだろうということで、やはりこれも国際社会日本に大きな期待を寄せていると思います。  そういう中で、有志が集まってつくってきた活動なんですが、どういうことをやってきたのか、どういう会なのかといったことをちょっと簡単に御説明したいと思います。  このマニフェストの冊子の一ページ目に「はじめに」というページがございます。そこの最初の行が、「日本ODAは、今、「崖っぷち」に立っています。」と書かせていただきました。この言葉にはまさにこの会に集った人たちが抱いた共通の危機感、それが集約されているのじゃないかと思います。横田先生や渡辺先生がおっしゃったとおり、日本ODAは五位に転落したというような残念な知らせが最近報道されていますが、そういった危機感というのが現実になりつつあるんじゃないかというのが共通の認識です。  そういったことを背景にして、一年以上にわたりまして、政界とかマスコミ、産業界、NGO、学界、官界それから援助実施機関の方たちなどがこれは本当に半ば自発的に集まりまして、皆さん本当に手弁当で、それで日本ODAが直面する課題は何なのか、何を変えればいいのか、どうすべきなのかといったことを本当に真剣に議論しました。本当に使った予算というのはこの冊子を印刷した予算だけです。  この冊子の恐らく最後の方の十二ページ目に問題提起者と取りまとめチームと書かさせていただいています。御覧いただけますように、まさにマルチステークホルダーによる取組でございまして、政界からも大きな御協力をいただきまして、昨年度はODA特別委員会の当時筆頭理事を務めてくださった阿部先生、それから今日御出席いただいております犬塚先生、それから遠山先生にもお話ししていただきましたし、谷合先生にも会議には参加いただきまして、その後もいろいろ激励をいただいております。そういったこと、それからまたODA有識者会議のメンバーの方々も何名か御参加いただいていると、そういった取組でございます。  次のページなんですが、そういったことを踏まえた、作ってきたこのマニフェストの幾つかのメッセージというのを御紹介したいと思います。全体像というのはこの冊子の小さい二と三といったところで、三十の提言一覧表と書かせていただいています。そこを御覧いただけますと、全体で十の課題に基づいてどういった提言をつくらせていただいたかといったことが御覧いただけるかと思います。  例えば、理念と戦略につきましては国会を含めた政治のかかわりを強化していくということ、それから途上国の現地の体制を強化するためにタスクフォース、ODAタスクフォースもより効率的に働けるようにするということ、それから世界援助潮流をリードするために基本的な発信メッセージを明確にした上で、例えばシンクタンクみたいなものをつくってみようじゃないか、それから国民参加ということでやはりODAの広報というのを改革しよう、実施体制とかいろんな制度を行政改革していこう、それからもちろん予算の問題ということを含めても経済水準にふさわしいODAの額ということと同時に、一般会計予算とともにいろんな財源ということも考えていこうじゃないかというような話、それからキャリアパス、人材育成の話、官民連携の話、アフリカ支援と、そういったようなことを網羅させていただいております。  こういったものを貫くメッセージとして三つほど強調したいことがあります。こちらのパワーポイント資料の方に目を向けていただければと思います。  三つほど挙げたいと思うことは、一つODAから国際協力へといった考え方でやっていこうじゃないかということ。それから二つ目は、日本途上国の現場それから国際援助社会というそういった三つの場、そこを軸に考えて、そこのそれぞれの場で有効な援助をしていこう、国際協力していこうということ。それから三つ目ですが、これは自助努力支援とも重なるメッセージですが、卒業のための援助といったことを基本メッセージにしていこうじゃないかということです。  簡単に一つ一つ説明させていただきますと、まずマルチステークホルダーによる国際協力をというところなんですが、これはもう十年以上にわたるODA予算削減というのは非常に悲しいことでありますが、やはりこれは根本的な問題が、理由があるんだと思います。それは日本にとって何のためのODAなのか、私たちの日々の生活とどういうふうにつながっているのかと、やっぱりそこが一人一人の国民のレベルでよく分からないというところだと思います。ですから、やはり理念とか戦略性については、それをより開かれた、ODAを超えた広いコンテクストで議論していくと、そういった場が必要じゃないかというのが私たちの問題意識です。  日本トップドナーだった九〇年代までは、国民各層で広く議論をしなくても、恐らく政界も財界も多分時代ごとに、あるときは戦後賠償だ、あるときは高度成長期の輸出の促進だ、あるいは冷戦時代の西側援助だなどなどいろんな理由からアジア重視だということについてのコンセンサスはあったと思います。また、黒字還流が国策だったという時期もあったと思います。  ただ、冷戦も終わって国際的な援助環境が非常に変わっている今、例えば市民社会が台頭しているアジアの援助から卒業国が出てきている、新興ドナーが出てきている、それからアフリカ開発に国際的な関心が集まっている、そういった中で日本としての世界観を問い直すことなく今に来ているために、やはりODAの戦略性といったことが不明確だといったことになっているんじゃないかと思います。  という意味では、進行中のODAの体制改革は非常に画期的だと思いますが、三層というような構造の枠組みを超えて、やはり一歩進んで民間や国民の参加を含めた四層構造というふうに、これは有識者会議の中間報告でも名付けていますけれども、そういった発想で取り組む必要があるんじゃないかというのが基本的にございます。  そういった視点から幾つかの仕掛けというものを提言させていただいています。これは例として書いてありますが、幾つかもう少し具体的に御紹介したいと思います。  次のパワーポイントのページをめくっていただけますでしょうか。  これは現在の日本ODAと四層構造、オールジャパン、マルチステークホルダーによる国際協力、進むべき方向といったものを図示したものです。外務省有識者会議の中間報告でも同じような発想ではありますけれども、恐らく一層、二層、三層という言葉遣いが若干違います。ただ、これは序列を言っているのではなくて、政策の体系、流れからこのような形で付けさせていただいているだけです。  まず、現在の三層構造といったことを考えたときに何がやはり問題かというと、一層と民間と国民、ここは非常に政治と国民というのは関連しているわけですけれども、そこと援助業界と言われる二層、三層、政府と実施機関、そこのかかわりが非常に断絶しているということではないでしょうか。ODA予算の削減というのは確かに二層、三層の援助業界関係者、私も含めてですけれども、それにとってみれば深刻な問題ですけれども、政治家や有権者にとってみれば必ずしもそうじゃないというのがやっぱり現状じゃないかというふうに感じています。特に、やはり国民の今の関心というのは、医療であったりとか年金であったりとか教育問題とか地方の活性化とか、そういったときにやはり票にならないといったことを皆さんよくおっしゃられます。  そういう中で、しかもこのように国際環境が変わっていく中、やはり司令塔たる第一層が今こそ世界の中の日本とかその中で国際貢献という観点からODAをどう位置付けるのかと、そういったような議論をしてほしいと。ただ、必ずしもそこでの議論というのが司令塔において透明性ある形で伝わってきてないと、そういったような課題もあると思います。また、それがゆえにということもあると思いますが、行政、政府に対してどういう戦略に基づいて予算を配分していけばいいのか。重点国、重点地域、重点分野、多国間、二国間の援助の配分の仕方、その辺がよく分からないということがあって、それで外務省を含む総合調整機能を担う関係省庁も恐らく苦労をしているということもあるのではないかというふうに思います。  ということで、提案したい四層構造というところを下に書いてありますが、これは実は犬塚先生からは図をドーナツ型にして一層と四層はくっつくようにした方がいいんじゃないかと、そういった御提案をいただきまして、まさにそのとおりなんですが、もう印刷してしまったものですから。でも、気持ちはそういうことでございます。  ですから、やはりそこを凝縮してみんなでやっていこうというのが趣旨です。そのための仕掛けとして幾つかあるんですが、限られた例を言いますと、やはりODA政策に対して国会のかかわりをもっともっと強めてほしいと。私はこの参議院ODA特別委員会というのはすばらしい機会だと思いました。ただ同時に、ほかの援助国を見てみると、もっと国会が強い役割を果たしている国もあるんですね。  ですから、そういった意味で、国会に専門委員会を、ODA政策も含めた専門委員会を設置するというような話、それからやはり司令塔におきまして、これは官民から成ります諮問会議といったものも開いて、それで民間の声を吸い上げた形での戦略ということを作るということができるような体制にしてはどうかというような話。そして、外務省援助政策を一元的に立案、調整することを前提として新JICAが三つのスキームというのを統合的に、一元的に管理しながら実施していくと、そういったような仕組みをつくるということ。  それから、やはり国際協力戦略シンクタンクという提言をしておりますが、これは官主導ではなくて民にも開かれた形でこういうシンクタンクをJICAの研究所とはまた別につくって、そこでもちろん国際的な援助潮流とか援助のグッドプラクティスなども整理、体系化すると同時に国内での国際協力についての議論を喚起していくと、そういったことも必要じゃないかというふうに思います。  また、官民連携の重要性というのは渡辺先生がお話しされたとおりだと思います。そのための仕組みづくり、マルチステークホルダーで議論するような協議会の場をつくろう、ミクロの制度設計をしようというようなこと、それから広報の改革とか、より人材の流動性が高まるようないろんな職場で国際協力に携われるようなキャリアパスをつくっていこうと、そういうための仕組みとして人材育成センターというのも提案させていただいております。  そういったようなもし広い基盤ができれば、国際協力がみんなにとって身近になって、予算増額の話、財源面の改革、例えば国際航空税とか消費税の一%を振り分けてはどうかと、そういった提案も私たちはしておりますけれども、そういったことに対しても、なぜなのかといったような理解がより得られるようになるんじゃないかというふうに思います。  次のページですけれども、三つの場で有効な理解される国際協力をと書いてあります。  つまり、この日本それから途上国の現場、国際援助社会と、この場それぞれにおいてやはり効果があって理解されて、そしてしかも同時にこの三つをつなぐ形での協力というのは非常に重要じゃないかというふうに思います。つまり、そのネットワークも強化した上で日本の中にある良い経験、良さといったものをやはり途上国のニーズに合う形でこたえていくと。その結果というのをベストプラクティスとして国際援助社会にも発信していくと、そういうような体制ができないかということです。  そのためにやはり幾つかやるべきこともあって、途上国の現場における現地の体制を強化する、これはODAタスクフォースを強化していこうというような提言ですが、具体的にはこのマニフェストの中でも書かせていただいていることは、特に新JICAが設立されるということを考えたときに、やはりJICAの権限といったものを強化して、現地では例えばタスクフォースの事務局機能を担うなど、そういう形で恒常的に開発援助に携わるプロフェッショナルたちが大使館あるいはほかの関係機関、民間それからNGOの方たちも含めた形で連携しながら活動していけるようなそういった体制ができないかというような提案もさせていただいております。  同時に、新JICA調査研究機能を強化して、良い経験といったものを体系化していく、日本の比較優位に基づいた経験というのを発信していく、そういったこともやっていってほしいと、プラス、シンクタンクといったものができれば非常にいいと思います。  それから、三つ目ですけれども、基本メッセージとして私たちが出したいと思っているのは、卒業のための援助をということなんですね。これは自立のための支援ということでもありまして、基本的な考え方というのは、援助はやはりやめるために援助するというのが根本だというようなことを再確認することです。  非常に日本人にとってみれば当たり前なのかなというふうに思われるかもしれませんが、やはりチャリティー精神が非常に中心となる欧米のドナー、援助国にとってみては、彼らは必ずしもこういうふうに考えていないと。いずれは、もしかしたら自分たちの競争相手にもなるかもしれない、あるいはパートナーなんだと、そういったような考え方というのは余り強くないと。これはやはり日本自身が最初先進国に仲間入りした非西洋国家であり、また自分たちが自分自身の努力によって、自助努力によってここまでの経済的な地位を築いたと。同時に、そういった経験を共有しながら東アジアの諸国と一緒に援助を通じて歩んできたと、そういったことだと思うんですね。  ですから、日本が自らの東アジアにおける経験を糧にして世界が共通に直面している課題に対して取り組んでいくといったこと自体が、途上国のニーズにこたえる意味でも、やはり日本にとっても非常に意味があることではないかというふうに思います。  そういった意味では、成長を支援していくといったことが重要になりますが、同時にそれは成長自身が包括的じゃなきゃいけないと思いますし、社会的な安定、社会的な貧困削減というのも同時にもたらさなきゃいけないということで、環境面とか格差の問題とか社会的な問題とか、そういったことにも対応していくと、そういった取組です。  四月の初めにG8の開発大臣会合が開かれましたが、そのときの議長総括を読んでおりました。そうしましたら、まさにそういったような趣旨が生かされたような議論がなされたというふうに聞きまして、ここはその総括の抜粋を付させていただいておりますけれども、やはり日本としてはこういったことを自信を持って示していけるんじゃないかというふうに思いました。  次のページめくっていただけますでしょうか。  最後に一言ですが、アフリカ支援について考えることを紹介したいと思います。  たまたまなんですが、有識者会議のメンバーとしてアフリカの支援についても渡辺先生を含め会議先生方といろいろ話させていただく機会がありまして、そういった意味有識者会議提言と重なるところが非常に多いんです。  アフリカ支援というのは、やはりある意味では日本ODAの問題の縮図じゃないかと思うんですね。それは、例えばなぜアフリカなんだ、どこまでアフリカを支援するのかといった理念の問題から始まって予算の問題、現地の体制、人員の問題、やはりないない尽くしというのが現状でありまして、そういった意味ではこの問題というのは本当に集中して考える必要があるというふうに思います。  それから、非常にアフリカにおいてはいろんな援助機関が活発で、活動しています。援助協調も活発です。ある意味では、援助協調というよりか援助競争じゃないかというような現場もあります。  配付させていただいた資料の別添のところなんですが、幾つか図表を添付してございます。ちょっとそれを御覧いただけますか。  図表の一というのは、日本の二国間のODA地域的な配分とアフリカのシェアの推移というのをある程度長期の期間見ているものなんですけれども、この比率というのは、二〇〇六年は、これは済みません、書いてませんが、三四・二%だったそうです。金額も非常に大きいと。ただ、これを除けばほぼ一〇%前後という推移です。なぜ二〇〇六年が多かったかというと、ナイジェリア等を含むアフリカの諸国に、主にナイジェリアですけれども、公的債務の債務救済をした、これが非常に大きくて、それを除いたいわゆる真水と言われる部分ですけれども、そこは五百億円強というふうに聞いております。ですから、これは恐らくベトナムとかインドネシアとか、そういったアジア一か国に対する支援よりかはるかに小さいわけなんですね。  また、ほかの援助ドナーがアフリカへのODAを増やす中、例えばこれは二〇〇五年は比較的多いですが、二〇〇四年と十年前とを比べてみますとほぼ半分に減っていると、そういったことがございます。  そういったことを考えますと、やはり二〇〇八年以降、もちろんグレンイーグルズの二〇〇五年のサミットのときの公約というのもありますし、そこは恐らく債務救済といったことを入れると多分達成されるんだと思います。ですから、その後の、つまりTICADそれからサミット、そのとき、これからどうしていくんだといったときに、日本がどういうビジョンを持って二〇〇八年以降のビジョンをどんな形で示していくのかと、これは本当に考えていただきたいと思います。私たちは、やはり金額も含めて、もちろん中身も含めた形でのビジョンを示していただきたいというのが根幹にございます。  図表の二ですが、その下にございますが、これはアジアとアフリカを比べると、DACの二国間ドナーの中で日本はアジアでは今でも三割強とトップドナーであると。ただ、アフリカではやはり本当にこの中の数字にも出てこないという形で、援助金額では非常に小さいドナーだということが分かると思います。そういう中で、やはりきらりと光る有効な援助をしていくためにはどうすればいいのかと。それはやはり選択と集中といったことはあると思いますし、いろんな機関と連携してやっていくといったことがやはり不可欠じゃないかというふうに思います。  それから、次のページなんですが、図表三、これはアフリカは意外と日本に身近なんだといったことを示すために外務省資料を活用させていただいています。  非常に歴史的にもそれから距離的にも遠いというイメージがありますけれども、いろんな意味で、毎日の食生活それから資源といった意味でもアフリカと私たちって非常に強い関係があるわけなんですね。ですから、そういったことを考えると、やはりこれだけの国際的にお互いに依存し合っているグローバル化の中で国際益と国民益といったものは本当に不可欠ではないかと思います。  そういった中で、アフリカの支援の骨子というのを提案させていただきますと、そのパワーポイントのページに戻っていただきますと、これはマニフェストの提言二十七で書いているのは、やはり二〇〇八年以降も贈与を含めた形で拡充していってほしいということ。  それから、やはりいろんなステークホルダー、民間の方、NGOの方も含めた形でアフリカの支援の在り方それから具体的な方法について議論する、そういった開かれた協議会をつくってほしい。特にこれはアフリカから始めようじゃないかというような提案。  それから、やはり成功例をつくっていかなきゃいけないということで自立のための支援それから卒業のための援助と、そういったことをできる可能性がある国といったことを幾つか絞りまして、援助増額分をやはりその国に集中して、本当に長期的な意味で人と資源、体制を強化していくと。そういった意味で成功例をつくっていくと。そういったビジョンというのを日本の理念とともにアナウンスしていってほしいというふうに思います。  それから最後ですけれども、これはやはり官民の連携。やはり民間の投資、アフリカが期待しているのは日本の技術であり投資であり貿易の関係であります。そういったことを考えていったときに、やはり援助を超えて開発といったフレームワークで考えると、そういったときに民間の投資が来やすい形で、アジアよりかもっといろんな意味でリスクが大きいと。そのためのリスクを緩和できるようないろんな制度設計をしていってほしいということがございます。  これらが、私たちが感じましたアフリカの支援について特に強調したい点でございます。  最後に本当に一言だけ申し上げさせていただきますと、昨年十月にこのマニフェストを公表させていただいてから、発表のセミナーも十二月にさせていただきました。その後、いろんな関係者から連携のお誘いもいただきまして、また渡辺先生の御厚意もあって有識者会議へのインプットもさせていただきました。経団連とかNGOの方たちとの意見交換もいたしました。  あとそれから、イギリスとかアメリカにも出張いたしまして、その中で非常に彼らも私たちの取組に関心を持ってくれましたし、私たち自身が、やっぱりイギリスというのは非常に面白い例で、サッチャー政権時代、八〇年代それから九〇年代は援助というのは非常に低い支持があったと。非常に援助額も低かったと。だが、それを変えたのは政治なんですね。九七年以降、やはり国としてのODAの位置付けというのを非常にまた違う形で明確にして、新しい省庁をつくり援助も増やしていくといった政治的判断もしているということで、これはやはり政治が変わることの意味、大きさといったことをまざまざと感じました。  ということもありまして、今日、何といっても、こういった本当に国民を代表する皆様のいらっしゃる場に御説明させていただく機会をいただきまして、本当に私たちとしては光栄に思っております。もし、こういった方向に御賛同いただけるのであれば、是非皆様のマニフェストとしても御活用いただければ非常に有り難いと思います。  本当にありがとうございます。
  9. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  参考人に対する質疑を行う際は、御起立の上、御発言ください。  参考人方々の御答弁につきましては着席のままで結構です。  また、各委員発言時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。  それでは、順次発言を願います。
  10. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 まず、横田参考人お話を伺いたいと思います。  ODA増額についてMDG、ミレニアム開発目標GNI比〇・七%、これを二〇一五年までに達成するということについて、先般、参議院外交防衛委員会で高村大臣に質問をいたしました。二〇一五年というこの期限目標については、必ずしも絶対にこれをやるというわけではないと。しかし、GNI比〇・七%については必ずこれは国際目標として達成すると、そういった答弁だったわけですね。    〔委員長退席、理事山内俊夫君着席〕  考えてみますと、我々、選挙区に帰りましてODA増額を訴えて選挙には勝てないわけでありまして、やっぱりここのところ、有権者の皆さんにいかに広く理解していただくか、もっと言うと、ODAがもっと身近に感じる形でないと、決して私は掛け声をどんなに掛けてもGNI比〇・七というのは大変難しいんじゃないかと。そういう現実というのは各国多分同じだと思うんです。  こういうことに何とか創造的に対応するために、例えばシラク大統領が主導しているリーディーンググループ五十一か国、最近航空券課税などを始めました。あるいは、イギリスも違う取組をしている。我が国でも最近、開発のための為替取引課税というような超党派の議連も立ち上がっているわけなんですけれども、そういう言わば逃げではなくて、やっぱりしっかりと国民の皆さんにODAの重要さ、我が国は食料の六割、原材料とエネルギーのほとんどは海外に頼っているわけですから、やっぱりODAをしっかりと皆さんにPRしていくということは大事じゃないかと思うんです。  今日は、実は立法府ではODA委員会というのはここしかありませんので、そういうもう総論のところはいいと思うんです。やっぱり各論のところで皆さんのお知恵をいただいて、最終的には立法化をしてしっかりとこの流れを変えていくというような議論を是非させていただきたいと思うんです。    〔理事山内俊夫君退席、委員長着席〕  そこで、横田参考人開発援助人材育成の必要というまとめの部分でおっしゃっているところに、例えば外務省及び内閣府が行っている平和構築人材育成プログラムの拡大強化を強く提言をすると、こういうふうにおっしゃっておられます。私も実はこの広島大学委託の寺子屋に行って、一日参加をしてまいりました。本当にすばらしい講座ですので、ここで強くおっしゃっているように、これはもう是非拡大発展をさせていかなければいけないと強く思いました。  それと同時に、中身を見ますと、やはりまだまだ専門家の方々を対象とした、もう既に経験のおありになる方あるいはもう完全に英語もできておられるアジアの方々を今のところは対象としておられると。日本には、地域に行けば、意欲はたくさんある、海外平和協力活動をやりたい、これをキャリアにしたい、そういう方々がたくさんおられるんですけれども、こことこういう取組をどういうふうにつなげていったらいいか、まずこの辺から横田参考人に伺います。
  11. 横田洋三

    参考人横田洋三君) ありがとうございます。  犬塚先生の御指摘の点、それから御質問の点、いずれも大変重要なポイントをついておられます。  MDGの目標年である二〇一五年までにGNIの〇・七%というのは、先ほども御指摘しましたように、ほかの先進国アメリカを除く先進国が皆はっきり目標として立てておりますので、ここで仮に日本がいずれは達成するということではインパクトは小さいと思うんですね。  ただ、日本が二〇一五年というのを遅ればせながら出すとしても、日本の経済力が大きいですから、一挙にかなりの金額がODAに回されるということが分かりますので、その意味では〇・七%達成というのは意味がありますが、いつ達成するか分からないような状態ですとやっぱりインパクトは非常に小さい。私は、是非この際、二〇一五年という国際的な合意のある年に達成するためにこれから先七年こういう計画でいくのだというのを発表していただければというのが私の希望でございます。  それから、国民に理解してもらう、訴えていただくということは、これは大変大事なことで、この点についてはメディアの協力も必要なんですが、私は、私の所属している大学という場がもっと実はODAについてきちっと教育し、情報を提供し、それから先ほど雑談の中で渡辺先生がおっしゃっていたことなんですが、学生に途上国に行くようなプログラムを作って、現場を見てもらって学生に関心を持ってもらう。  私もそのようなプログラムを中央大学で行いまして、数は少なかったんですが、実際に行った学生はもうほとんどがそれまでとは違った援助に対する関心、それも人が分かる、途上国のどういう人たちがどういう日本援助で生活が変わっていくのかというのがよく分かるという意味で、これから先、私や渡辺先生のところで育った学生が有力な人材としてODAにかかわっていくことを期待していますし、またそれは可能だろうと思いますが、これは大学でもっと大規模に進めるべきだなと思っております。  最後になりますけれども、この人材育成観点で、御指摘いただきましたように今は二つのプログラムが行われておりまして、広島大学中心に行っているのは、これは教育訓練を短期に行いまして、その後、実際にODAの現場に行って、UNDPとかユニセフとか国連関係機関の中でインターンという形でもって経験を積んでもらうというプログラムで、このプログラムの特色は、日本人十五人それからアジアを中心にした海外からの途上国の参加者十五人という、日本人と海外の人が一緒になって勉強し、そして実務を経験するという、これは非常にもう最初の年から効果が上がっておりまして、これは十五人に絞るのはもったいないのでもっと規模を大きくしてほしい、十倍ぐらいにしたいというのが私の希望でございます。  それから、もう一つが内閣府で行っております。これは犬塚先生御指摘のとおり、ある程度経験を積んで、語学力もある程度ある人たちが更に高いレベルの訓練を受けて、それから研究成果を上げて、これはもう国際的な援助機関のトップに行けるような人を育てると、こういうプログラムで、これも非常に立派ないい人材が育ってきておりますので、ただ人数は十名前後ですので、もっとこれを大きくしたいと思っております。  ありがとうございました。
  12. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 次に、渡辺参考人に伺います。  官民連携という視点から、それでは援助にかかわる人材をどうやってもっともっと、今、横田参考人、十倍とおっしゃいましたけれども、そういうレベルで十倍、百倍、千倍に広げていくのかという視点で御質問いたしますけれども、例えば有名なアフガニスタンで井戸掘りをしたりかんがい施設を造った中村哲医師、元々は医師でありながら、クリニックを一つ造るよりも井戸を一本掘った方がいいということで、二十年にわたって水のことをやってこられて、井戸も千本掘ったと。最終的には大規模なかんがい施設を、お医者さんでありながら自らが簡単な工作機械を動かして、現地の人たちと一緒になって、技術的には非常にローテクといいますか、現地の人たちが後でメンテできるようなテクニックで大変大きなかんがい施設を造り出したというような話があります。  また、先週私が地元に帰りまして、今建築関係の下請、孫請の人たちが大変な状況ですので、そこでちょっといろんなお話をしまして、雑談でダルフールの話をいたしました。ダルフールで難民キャンプ、九万人のカルマ・キャンプというのがあるんですが、そこに行きますと、ハットという雨漏りがひどいような家が、九万人分ですからたくさん並んでいるわけですね。そこで要望されるのは、ビニールシートを上にかぶせてくれという話なんですけれども、そういう話をいたしましたら、今職がなかなかない大工さんが、いや、おれたちは道具箱が一個あれば家はどこでも造れるということを言われるわけですね。つまり、ゼネコンやあるいは商社というレベルではなくて、もう少しローテクの、しかも我々の身近にたくさんいて、しかも地方では仕事を探しておられるような方々が実はこうした海外の援助人材としての宝庫ではないか、私はそんな気がいたしました。  そういう視点からいいますと、例えばマイクロクレジットみたいなものを我が国としてもっと真剣に取り組むべきではないかと思うんですが、官民連携の立場から渡辺参考人の御意見を伺いたいと思います。
  13. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) どうも犬塚先生、ありがとうございました。  官民連携の観点に立って人材をどのように育成確保するかという御質問ですけれども、やっぱり企業のOB、リタイアされた人たち、大変な今までのビジネスのノウハウ、知識をたくさん持っている。ある場合には海外と非常に接触をし、開発途上国での駐在経験を大変豊富に持っているようなそういう方々がリタイアして、今まで蓄積してきたノウハウも知識もそのままの形で雲散してしまうというのはいかにももったいないということだと思います。  例えば、国際社会貢献センター等にはそういう海外経験を豊富に持った人たちというものがプールされているわけですけれども、こういったものが官民連携の下で積極的に活用されるという方向は考えられてしかるべきだと思うんですね。JICAでもシルバーボランティア制度というふうなものがありますけれども、やはりインパクトを与えるという面ではまだまだ小さなものだと思います。団塊の世代が一挙に出てきた、退職してきたという現時点でこの発想がなされていない、制度化されていないというのは大変残念なことだと思います。  私、大学人ですから、本当は大学のことも言いたいんですけれども横田先生がおっしゃってくださいまして、ほとんど同意見でありますので、これは繰り返すのはやめます。  それからもう一点、私ども日本ODAの事業現場で働く人々をどうも日本人だと、もう無条件的に前提としてそう考えているくせがあるわけです。先ほど来議論されているように、南南協力人材面で活発化するというアイデアも必要なんじゃないかと思うんですね。  一例を申し上げます。タイ。タイという国は大変立派な国です。援助の受入れ国であると同時に、もはやそこを卒業すると同時に自らがその援助のドナーになっていく、そのための組織というものも既にでき上がっております。特に私が注目したのはインドチャイナ、つまりラオスとベトナム、カンボジア、ミャンマー等の森林破壊ですね、これを防除したいというためにタイが積極的に協力を始めているわけであります。日本がタイに資金面あるいは援助のノウハウ、知識等を出すと同時に、タイはその森林防除のための積極的な援助をやると。日、タイ、インドシナ、こういうやり方ですね。  日本が直接インドチャイナの森林破壊防除のために協力しようと思ったって、生態学的な条件が違いますから、日本人材というものはどうしても有用にはなれません。そこで、タイの人々に活躍してもらう。そのための資金的なバックアップや日本が今まで蓄積してきたODAのノウハウ等を提供するという形で、成功したアジアの国々の人材をより後れた国々のために積極的に使うということだと思うんです。日本は相当な高給料を払わなきゃならない、しかし率直に言ってもっと低い給料でもってたくさんの有能な人材が利用できる、そういう人材面での南南協力ということは、今生態面で言いましたけれども、医療面、保健面その他幾つか考えられると私は思っております。  そういったことがアフリカ、つまり日本と成功したアジアの国々が協力してサブサハラ・アフリカ協力に携わることができないかということですね。もう少し抽象的になりますけれども言えば、日本ODAのアジア型、先ほど申し上げた、の成功体験をいかにしてアフリカに持ち込むかということですね。そのサーキットの中に人材という要素をはっきりと組み込むということも考えてしかるべきだと思います。そういうことを持っている知恵者が何人もおりますので、意見も聴取し、いずれそういった発言提言もしてみたいと思っております。  ありがとうございました。
  14. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 もう各参考人方々はよく御存じだと思いますが、ジェフリー・サックスという方のお書きになった貧困の撲滅、あの本を読みますと、やっぱり同じ貧困でもレベルがある、どうしようもない貧困のところには援助していかなければいけない、一段目のはしごに足が掛かればあとは自助努力で何とかいくというレベルがあると。貧困の削減といったときには、この一段目に足が掛かったところではなくて、やっぱり一段目に足が掛からないところをどうやって援助していくか。おっしゃるように、まさに人材、まずは日本人材そしてアジアの人材そして一緒になってアフリカ人材という話になってくるのかなと、そんな気がいたします。  実は前国会で当ODA委員会が、援助大国から援助人材大国へという提言を行いまして、横田参考人に長になっていただいて更に調査をしていただいたわけでございますけれども大野参考人に伺います。この総論の部分ではなくて各論の部分で、実は大野参考人がお出しになったこのまとめの中に、キャリアパスを確立をし、人材育成制度を整備をすると、この一項がございます。特にその中で、今読ましていただきます。「具体的には国内のNGO、地方自治体、大学、企業、省庁、新JICA、警察、自衛隊などと連携しながら、海外の国際機関援助機関とも交流を行う、「人材育成センター」の整備が焦眉の急です。」ということをここに書かれておるんですね。  私はこれは、当委員会提言をいたしました人間の安全保障センターと非常に近いものがあると思うんですが、この内容につきましてもう少し教えてください。
  15. 大野泉

    参考人大野泉君) ありがとうございます。  まさにここで私たちが提案させていただいたことは、犬塚先生を含めた先生方提言をまとめられたときの資料ども勉強させていただきまして、まさに人間の安全保障センターの考えといったことを私たち活用させていただいております。  やはり幾つか日本の中でも課題があって、これだけ国際協力に関心を持っている人たちは増えているけれども、そのポストがなかなか広がらないということ。ただ同時に、日本のいろんな人材を活用していける可能性はたくさんあるのに、例えば警察官、地方自治体の方それからもう退職されたシニアボランティアの方と。ただ、それが一つのキャリアパスとなって、自分たちの一つ一回職業を移ったらまたそれを続けていくことができないと、そういうような問題もあるということで、それをやはりつなげていけるようなそういったような一つ人材登録をする。あるいはそのセンターをつくってその中で生涯キャリアをやはりつなげていけるようなある一定の資金面での支援、あるいはそこでその経験を生かした形での研究活動それからアドバイスなどもできる、そういったような仕組みができないかというようなことでございます。  ですから、やはり幾つか既にこの人材育成については、JICA人材育成センターとか幾つかいろんな点はあるかと思いますが、それをやはり生涯の面で、職場を変わることに伴って必要な資金面、社会的な保障の面それから実際にその経験を生かして職場から職場へやはり発信していけるような、そういったような機能といったことを担えるようなそういった枠組みというのができないかということが大きな問題意識としてあります。  それから、もう一つ考えているのは、ポストの問題とともに、やはりいろんなレベルで国際機関日本、それから日本のいろんなレベル、政府、実施機関、NGO、ビジネス、地方、そういったところで自由に職が流動できると、そういったこと自体がやはり日本の生きた人材というのを活用でき、またそれが国民の参加といったことも広げていくということになると思います。  ですから、そういったようなことができるようなやっぱり仕組みづくりというのを、これはある意味で労働の問題それからいろんな待遇の問題、いろんな多分側面が出てくると思うんですけれども、それをやはりしっかりと整備していくといったことが、是非やっていただきたいというふうに思っています。
  16. 犬塚直史

    ○犬塚直史君 選挙区に戻りまして、こういう人材、まあ名前はいろいろあると思うんですが、人材育成センターでも人間の安全保障センターでも、こういうアイデアの話をしますと、いや、実はそういう仕事だったら私もやってみたいという若い人はたくさんいるわけですね。若い人だけではなくて、まさにリタイア、退職をされたばかりの人についてもこういうことをやりたいという方は本当にたくさんいるわけですね。また、そういうあらゆる職業の人たちが活躍する場があるというのが平和の定着と国づくり、まさに日本外交の主軸にしている人間の安全保障ということだと思うんですけれども、いかんせん、例えば医者にしても海外で半年なり医療活動をしようと思うと自分の勤めている病院を辞めて行かなければいけない、看護師の方にしても無理やり休みをたくさん蓄積して行って帰ってきてもその内容を理解してくれる人が余りにも少ない。  翻って、諸外国の取組を見ますと、例えばドイツの文民警察の方がPKOで行って帰ってくるといい経験をしたということで非常に認めてくれる、あるいはイギリスの看護師の方も同じようなことをおっしゃっておられた。緒方理事長が言っている援助日本の文化にすべきという大変大きな目標達成するためには、やっぱりオールジャパンでこの辺の社会的な基盤を整えなければいけないんじゃないかと思うんですね。  そうした中で、横田参考人渡辺参考人の書類の内容を見せていただくと、どうも現状のいろいろな取組、これを強化拡大していくべきであるという内容なんですけれども、私は逆に、それはもうもちろん当然のことなんですが、それと同時に、やっぱり社会的な基盤を立法措置をもってこうした国際平和協力活動がキャリアとなり得るような、安心して子育てをしながらでもこういう活動に加わることができるような社会保障制度の継続性や年金の継続性、あるいは危ないところに行くときの旅行傷害保険、そして帰ってきたときの精神的なケアも含めて、そういった基盤を、何と呼んでもいいんですけれども、我がODA委員会の前回の提言ではこれを人間の安全保障センターの設置をすべしということを言っておるんですが、私はやっぱりここから一歩進めて立法作業に入るべきだと思うんですが、お三方の御意見最後にお伺いして、私の質問を終わりにいたします。
  17. 横田洋三

    参考人横田洋三君) 基本的には今の犬塚先生の御指摘、私も賛成です。  ただ、私が現在始まっているプログラムを拡大強化というふうに申しましたのは、始まったばかりなんです。非常にもうすぐに結果が出ております。こういうものをまた横へ置いてまた別のものを始めるというよりは、いろんな意味でリソースを集中的に使うという意味で、まず始まってうまくいっているところをどんどん拡大していく中でまた必要なものをつくっていくという方向もあり得るのではないかという、そういう観点で今回はそこの拡大強化ということを強調しましたが、犬塚先生がおっしゃっておられるような人間の安全保障センターはそれとは矛盾せずに、むしろそれを相互に強化しながらいけますので、私は大変いいお考えであると思います。  一つだけ、安全の問題は日本人材育成の仕組みの中では非常に弱いところです。欧米のNGOや援助機関はみんなこの安全の問題を非常に重視しておりまして、安全のセキュリティーアドバイザーというのが大概付いております。これは警察とか軍の中でそういうものを専門にしている人がアドバイザーとして付いていって、この国の危険度はこのくらいだということを判断して、こういうところには近寄らないようにとアドバイスをする、そういう人たちが具体的にいるんですが、日本はそういうことをやっておりません。  それから、危険のもう一つは、そういうテロとか治安の悪い点だけではなくて病気が怖いんですが、日本は御存じのとおり、こういう被援助国は比較的熱帯地方に多いんですが、熱帯病に関する専門性は今、日本の医学では非常に弱いです。むしろタイとかインドネシアとかシンガポールの方がはるかに日本の医療よりも進んでおります。こういった点も実は日本は強化していかなければいけない点がまだたくさんあると、こう思っております。
  18. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 犬塚先生のおっしゃること、もちろん賛成であります。そういう立法化の方向に進めれば大きな一歩になるとは思います。  しかし同時に、まず足下を見詰めてほしいと思います。と申しますのは、幾つか例がありますが、例えばJOCV、青年海外協力隊にしても、行って帰ってきた後のフォローアップというのは、フォローあるいは仕事を紹介するというふうなことは今なお非常に不十分であります。こんなことはやらなきゃならないという話はもう三十年も前から言われていることなのに、いまだにそれが進んでいないという現実が一方においてあります。ですから、その現状をよく見据えて現状のものをより良くするという観点をまず持ってほしいと。それから、次のステップとしておっしゃるような立法化の方向に進んでいってほしいと思います。  ついせんだって、いつでしたか、四、五日前でしょうか、経団連のODA委員会で私話をする機会がありまして、そのときにちょうど経団連のODAに関するペーパーが発表されたときでありまして、その発表に基づいて経団連と政府との交渉がなされたようでありまして、先ほど申し上げたOBをいかにODAの事業に加わらせるか、特に人材面で、という話合いはかなりの密度でなされたようでありまして、我々が想像しているよりももう進み始めていると思います。ですから、そういう合意ができれば、その上に制度化するために立法化というふうに考えてほしいと思います。  犬塚先生のおっしゃること、大変よく分かりますが、同時に、今まで言われてきて、必要性がうたわれてきながらほとんど日の目を見ていないものをまず固めるという戦略からスタートするのも方向ではないかとあえて言わせていただいたわけです。  ありがとうございました。
  19. 大野泉

    参考人大野泉君) 私としては、この人材育成センターといった枠組みということをやっぱりつくるといったことを、まず議論を始めること自体非常に大事だと思うんですね。  それはなぜなのかといった議論、そのためにはどういうことが、日本の今転職等、そういったことは前に比べて非常に流動化は始まっていますが、それでも国際協力という一番現場と日本日本の中でもいろんな政策、実施それから草の根レベル、いろんな関係者というのを動員していくといったことを考えると、やはりそういった議論を高めていくというためでも、具体的な法律の可能性を含めて、私は行動していくといったことは非常に意味があることだと思います。もちろん今までも、渡辺先生もおっしゃったように、いろんな仕組みというのが民間企業等の中であるいはJICAの中であるいは青年海外協力隊の中でいろんな個別の取組はあると思うんですが、それをじゃどうやったらつなげられるのか。  あるいは、地方の活性化、地方の国際協力というのも非常に今推進されています。ただ、それを本当にどうすれば、それがいろんな意味で、地方の活動が、例えば公害への取組、そういった北九州の活動が今非常に国際的にも注目されていますが、それが国際協力として実現され、しかもそれが北九州の中のやはり非常に貴重な資産になっていくと。  そういったことを具体的にやっていくということは必要だと思うので、私は、つないでいくという発想の中の一環で、やはりこういった法律も含めた包括的な議論というのをしていくといった意義が非常に強いと思いました。
  20. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 民主党・新緑風会の谷岡郁子と申します。  今日は先生方の大変意義深いお話、ありがとうございました。  ただ、私どものように一般の市民たちと毎日過ごしておりますと、一体援助業界というものがあるんだろうかというふうに意地悪に考えてしまうことがございます。そして、先ほど横田先生の方から極端に後ろ向きで内向き日本というお話が出たわけなんですが、私も全くそれに賛同する反面で、なぜ存在感がなくてはならないんだろうか、なぜ外交力が必要なんだろうか、そこが国民には見えていないなというふうに感じてしまうわけでございます。  国際的発言力を持ってじゃ何を発言したいのだろうかというふうに考えましたときに、九・一一以来の状況の中で、本当に日本はイラク戦争を避けるためにあるいは平和のために発言してきたのだろうか。環境問題で本当にモデルとなるような国としてやってきて、それを発信してきたのだろうか。あるいは、チベット等の人権問題に対して私たちは日本として積極的に発言しているのだろうかということを考えてみますと、発言力は何のための発言力なのか、あるいは存在力というのは何のための存在力なのかというふうに考えてしまうわけでございます。  日本は大国意識に縛られているのかもしれないと。先進国ではあるべきですし、あろうと思いますけれども、では、その大国意識なるものが言わば援助ODAの正当化ということではやっぱりかなり怪し過ぎるのではないのかと。あえて怪しいという言葉を使わせていただきますけれども、例えばコンサルタントと言われるところに、例えば中国などの不発弾の処理の問題ですとか様々な問題を考えていますと、言わば怪しげな企業、怪しげなコンサル、怪しげなNGOというものが国際的な国境の向こう側でうじゃうじゃと訳の分からないことをやっているというようなイメージを一般国民がこの間に持ってしまったという状況があるのではないだろうか。  防衛省に絡む国際的な言わば不透明な事件そしてその問題というものが続いた中で、いわゆるその国際的という中により不透明性が加わった形で、人々が言わば訳が分からない状況というものを感じているのではないか。こういうものを払拭しないと、本当に国民の多くがとても苦しいと感じているときにもっとODAに費用をと言っても、なかなか国民の多くはぴんとこないのではないかというふうに私は感じてしまうわけです。  政界や官界、あるいはそれとの癒着があるんではないか、本当にNGOなのか、本当にコンサルなんだろうかと人々が感じてしまうようなこういう状況、これを除去して、国民がもう一度すっきりと安心した気持ちでODAにどうぞどうぞ費用をという状況をつくるためには一体何が必要なのだろうかというふうに考えてしまうのですが、横田参考人、どういうふうにお考えになりますでしょうか。
  21. 横田洋三

    参考人横田洋三君) 大変重要な根本的なポイントについての谷岡先生の御質問だったと思います。  私は、国連とか世界銀行とかILOとか、そのほかそういう国際的な場面に出ていったときに、いろいろな諸外国の代表や諸外国の政府関係者、そのほか一般の市民の人と接すると、そこで出てくるいろいろな日本に関するコメントあるいは国際社会の問題に対するコメント、それを聞いていると、まず第一にもう地球は一つの村という印象が非常に強い。つまり、インドに行ってもブラジルに行ってもジュネーブに行ってもニューヨークに行っても、そこで話をするときには日本の話題出てきますが、同時に、日本がどうする、あるいは日本が良くなる悪くなるというそういう問題よりも、人々の生活がどうなるかというところにみんな関心を持って、そこで日本はもっとできるんではないかというそういう期待を表明するんですね。  そういう流れの中で見ると、今まで日本には、七〇年代から八〇年代にかけて経済成長をして世界の第二の経済大国になり、そしてまた援助の面でも九〇年代十年間世界第一の経済大国で日本がどういうODAをするのか、日本がどういう経済的な方向を取るのかに対して、世界の国々が非常に世界全体の問題として関心を持っているというそういう事実があるんですね。そういう目で眺めたときに状況は今変わりつつあると。日本には余り期待しない動きが出てきている。  昔ですと、今から十年前、十五年前は一体この問題について日本はどうするんだということを必ず私の友人なんか聞きに来るんですね。今は、それが日本よりも、私に聞きに来る質問が、中国はどうなるんだとかインドはどうなるんだ、韓国はどうなるんだと、こういう質問に変わってきているというところを私はちょっと危機意識として持っている。  それを考えたときに、日本の一般の人たちはそういうふうに物を見ているだろうかと。世界の問題にこういう問題があって、日本がそこでどういう役割をこれまで果たしてきて、今後どういう役割を果たすべきかというような考えを日本の一般の人が持っているかというと、残念なことにその部分がちょっと日本世界の一般の人の問題の関心と違う点なんですね。  世界に行きますと、日本というのは物すごく存在感はあるんです。その存在感は、大体自動車でありトラックでありコンピューターでありテレビであり、そういう製品なんですね。先ほどちょっと指摘がありましたけれども日本の食料の自給率は三九%、それから石油に至っては九九・九%海外依存。そのほかにもエネルギー源その他全部海外に依存し、それから市場も実は日本世界に物すごく依存して、外へ行くと日本の物であふれているわけなんです。  みんなはそれを評価はしているんですけれども、そういう日本が存在感が現実にあって、それにもかかわらず世界の問題の解決についてになると最近の十年間は後ろ向きになっている、内向きになっているというこの危機感を私は先ほど説明したかったと、こういうことなんですね。  私が一番強調したいのは、依然として世界日本に対して大きな期待をしています。それは第一に、日本がやっぱり憲法の九条を持って、要するに軍事的には大きくかかわらない、必要なときにはある程度の協力はするけれども、軍事的に大きな役割を果たすよりはむしろ経済的そして文化的、技術的、そういう面で日本協力する国だということに期待があります。  それからもう一つ、アジア、アフリカの国は、日本はやっぱり非ヨーロッパ国であって、にもかかわらずヨーロッパの国をしのいだというそういう国として見ているんですね。自分の国もそうなれるはずだと、こう思って誇りの源泉に日本という国があるんです。日本がここまでやっているんだから自分たちもできると。それがやっぱり日本は駄目になっちゃったんだと思うと、彼らの何というんですか元気の源泉も失われてしまう。私は、やっぱり日本が元気であり続けることが非常に世界全体にとって大事だと、そういう意味で申し上げたんです。
  22. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 済みません、大変長い御答弁ありがとうございました。もう少し短くしていただけるともっと有り難かったんですけれども。ごめんなさい。  実は、幾つかまだ質問したいことがございます。  これはどなたにお聞きするのが一番いいのか、恐らく大野さんかなというふうに思うんですが、例えば私は仲間とともにジンバブエの支援を二〇〇六年ぐらいからやっております。私の友達が草の根資金があるということを聞きまして、先ほど横田参考人もこの部分は本当にどんどん増やすべきなんだとおっしゃった、小規模のことを現地でやっている。現地のホームをつくり、音楽教育をつくり、その機関をつくるということで、日本からの支援をしております。ところが、現地の大使館の方へお願いに行きますと、その担当官がそのことについては知らないと言い、いや、あるはずだと言うとやっと何か月かして出てきて、その挙げ句に今度は言わばシーリングが二百万だというようなことを言って、日本からの情報とは全く違ったというようなことが現実問題起こっているわけですね。  これは一体、システムの問題なのか人の問題なのか、あるいはシステムの言わばコミュニケーションの問題なのか、それともこれは現地が無知であったのか、それとも言わば、ひも付き、政府関係ない、JICA関係ないような、一般の人々が本当に草の根で、私に言わせれば純粋に草の根でやっていることに対する何らかの差別感があったのか。一般の人々は本当にそんなふうなことをいろいろと考えてしまうわけですね。  そういうことがODAに対する国民の信頼感を言わば失ってきた一つの理由ではないかなと思うんですけれども、今後そのようなことが繰り返されないために、大野さんとして持っていらっしゃる提言、多分そのどこをその装置の中でいじることが大事なんだろうということ、その御示唆ございましたら教えていただきたいと思います。
  23. 大野泉

    参考人大野泉君) ありがとうございます。  私自身はジンバブエの個別の事例ということを残念ながら承知しておりませんので、それが本当にそうだったかとか、なぜだったかといったことは分かりません。  ただ、一般的に私も理解しているところでは、草の根人間の安全保障無償というのは非常にある意味で、現地のNGOあるいは現地のコミュニティーが提案する事業に対して、一定のシーリングはあると思うんですけれども、それに対して大使館が審査をしながら支援していくという意味で、ある意味で円借款事業とか、円借款ではなくても比較的大きい規模の無償資金協力とかJICAの技術協力を補完的にしていくといった意味で、しかも現地の自発性を尊重するといった意味では非常にいい取組なのかなというふうに思います。  ただ、恐らく現地での、特にアフリカなどは人員の体制が必ずしも人数が多くないとか、いろんな理由があるのかもしれません。そういった意味で、幾つか理解していることでは、たしか現地で草の根人間の安全保障無償を担当する方たちの人数を増やしましょうとか、あるいはマニュアルを作っていきましょうと、そういったような取組はなされていると思います。そういった意味では、私自身は具体的に問題点といったことは、この取組については承知はしておりません。  ただ、同時に、全体的なことを申しますと、このマニフェストの提言でも申し上げたように、やはり例えば現地の体制を強化して、その中で民間の方たちそれからNGOの方たちなども一緒に議論しながら、日本援助の何を強化していけばいいのか、どういうところに重点的に支援していけばいいのか、連携の仕組みはどうすればいいのかといったことをやっぱり現地でも現地ODAタスクというのが大使館、JICA、JBIC等実施機関、一緒になってつくられていますから、それを開かれたものにしていくと、そういったことは非常に重要だと思いますし、現地での権限を強化していくといったことは非常に私は重要だと思います。
  24. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 次に、私は国連大学とはこの間かかわってまいりまして、本当にたくさんのことを教えていただいたというふうに感じております。例えば二〇〇六年にカルザイ大統領がアフガニスタンからいらっしゃったときに緒方貞子さんがコメンテーターであったあの講演というものは本当に私にとって心残るものでありましたし、大変いいプログラムを持っていらっしゃると思います。  同時に、国連大学日本にヘッドクオーターがある唯一の国連機関であるというふうに理解しております。先ほど来、日本の国際的な人材養成ですとかそして開かれた戦略的シンクタンクの必要性でありますとか、そういうことが何回も議論になっているわけですけれども、私は、既に国連大学という形で利用できる形で、非常に国際的に開かれたものというものが存在しているのではないかなというふうに感じます。  私が少し調べさせていただいたところによりますと、国連大学が留学生なんかに使っている外務省からの支援というのは、大学連携の中で貸与として六千四百七十一万円なんですね。その一方で、留学生独自で外務省自身が四十億ぐらいの費用を持っておられ、そして文科省は約四百億の留学生に対する費用を持っておられるわけですね。そして、留学生の文科省から来るものの費用のかなり部分は実は中国人が六〇%以上使っていますし、そして九割はアジアからということになります。  国連大学の装置の方が明らかにアフリカを含めた大きな広がり、満遍ない広がりということを持っていると思いますし、ここに対してお金を入れることによってもっと包括的な、そしてODAを今後一緒に日本人とやっていく人たちのための支援というものを学生の時代から連携的にやっていくことというものが可能であり、より有効に費用が使えるのではないのかなと。また、政治に余り縛られないような形で、戦争が起こっているような状態のときにも国連機関というのはいろいろなところに入れるというようなこともありまして、かなり日本として満遍ないODAということが可能になるのではないかと。  先ほど来出ておりますように、南南支援というような結び付きにつきましても、例えば国連大学のチャネルを利用することによって可能になっていくのではないかなというふうに思います。せっかく国連大学日本にある、しかしながら国連大学に対する支援というものは日本政府としてどんどん減ってきていると。そして、それは約二億円ぐらいしか年間文科省からはないですし、外務省からも五億円ぐらいと。そうではなくて、ここにもう少しきっちり踏み込む、そしてもっとチャネリングとして、国会を含めてのところで国連大学というものをしっかりとしたシンクタンクとして利用するということによって、私たちの国のODAというものは精度を上げることができるのではないかというふうに私は実は感じている者なんですけれども、そこの問題について、横田参考人、どんなふうにお考えになっているのか教えていただきたいと思います。
  25. 横田洋三

    参考人横田洋三君) ありがとうございます。  先ほどは時間を使い過ぎましたが、今度は簡単です。もう今おっしゃられたことに一〇〇%賛成です。私は、今国連大学の学長特別顧問という立場におりまして、今おっしゃられたことはもうすべて私の意見と一致しておりまして、それを進めたいと思っております。  国連大学はこの先、今までなかったディグリープログラムを始めようという検討を始めております。二、三年後に開始ということで、今までのグローバルセミナーとか国際講座とか大学院共同講座に加えて、もっと幅の広いディグリープログラムを開始しようということで検討を始めておりまして、そこにも途上国からの学生に対する大規模な奨学金の供与というのはこれ絶対必要ですので、日本政府にも是非ODAの一環として考えていただきたいと思っておりまして、ありがとうございました。
  26. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 どうもありがとうございます。  本当に、私も、新たなものを幾つもつくるよりは、今あるものをどういうふうに有機的につないでいくのかということを考えないと、効果的な効率的なことは考えられないというふうに思っておりますので、大変力強い御意見でございました。  そしてその上で、この参院のODA特別委員会、一体、この半年間私もかかわってまいりまして、何をやったらいいんだろう、どんな審議をすればいいのだろう、何を目標にして、そしてどんなふうにやることにおいてその意味があるのだろうと。この二週間、参考人方々から大変私たちは学ばせていただいたわけです。しかし、一方で残念なことに、現場、直接ということの意味での声というものはまだ伺えていないのかなというふうに思います。日本人の方以外からの声というのはまだ伺えていないのかなというふうにも感じます。そして、そのような形だけで議論が進められるということに対しては、私自身は違和感を感じるたぐいの人間でもあります。  その意味におきまして、今後私たちはODA特別委員会としてそして国会の役割としてどのような形でどういうところに目標を持ちどんな視点を持ってそして何を審議していったらいいのだろうかということを、御三人の方から残る時間で是非お一人お一人御示唆をいただければ幸いと思います。
  27. 横田洋三

    参考人横田洋三君) やはり二つのことがあります。  一つは、やはり世界の中で日本が何を求められているかということをしっかり押さえて、その人たちのニーズに合った援助をしていくということだろうと思います。  これまで日本はいろいろな援助をしてきましたけれども、どちらかというと日本の経験に基づいて、こうやれば日本はうまくいったんだからやりなさいという形でやったんですが、それが必ずしもうまくいかないということが分かってきまして、今外務省JICAもそれからJBICもみんな、現地でどういうことが求められ現地の必要とされているものが何かということを考えるようになってきたんですね。  これが非常に少しずつ効果を上げてきていますので、この方向性を追求することが大事で、それをやはり何らかの形で国会の方で法律を作るなりあるいは予算を検討する場合にそういう視点をどうやって入れていくかということを考えていただければと思います。例えば、奨学金とかそれから人材育成については是非、日本人人材育成ももちろんですが、途上国の人の人材育成というところにもっと日本予算を付けるような方向性をやっていっていただきたい。  もう一つは、やはり現在の日本の若者に、おっしゃるとおり、先ほどの御質問にもありましたが、日本の若者は国際協力に物すごく関心あります。ところが、実際にはそういうところにつながるような教育研究のプロセスがないんですね。ですから、その機会大学はつくらなければいけませんが、同時に大学がそういうものをつくることについて是非国会の先生方の御理解と御協力をいただきたいと、こう思います。
  28. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 今、谷岡先生からのコメントですが、とても異なことをおっしゃっているなというのが直感であります。私どもからすれば、国民から選ばれてきているわけで、国民のグラスルーツと一番深い接触を持っているのは政治家じゃないかと思っているんですが、どうも御発言を聞いていると違うようですね。  やはり国民が何を考えているか、それを最も深く知識として持ちということがもちろん一つ必要ですが、同時にそういうルートを通じてリーダーシップを持って国民を積極的に説いていくということはどうしても必要なのではありませんでしょうか。  食料や資源を圧倒的に開発途上国に依存し、先ほども申し上げたように国際的にどんな秩序が乱れても復興支援と開発支援しかできないような我が国。一方的に国際的な受益者なんであって、そのお返しをしなくていいのかというふうなことは、例えば選挙民になったら胸に響くことかもしれませんよね。あるいは、自己中心的な国で私的な利益ばかりを追求していてやっぱり日本国民は本当に幸せになれるんですか、やはり自分を超える第三者、自分以外の何者かに対して何かをするということが人間の幸福につながるんだ、君たち、あなたたちそう考えたでしょう、個人の生活で、国家だって同じことですよというふうな言葉遣いをいろんな例を使いながら国民の世論をリードしていく、そういう二面を役割にしていただきたいと私は思っているんですが、まさにその場だと私は思ってここに来ているんですが、少々異な質問で驚きました。  それから──じゃそこで時間あれでしょうからやめておきます。
  29. 大野泉

    参考人大野泉君) 私も渡辺先生のお話かなり共鳴するところがあるんですが、私はこの参議院ODA特別委員会というのは非常に重要な場だと思うんですね。ここがやはり日本ODA、国際協力開発援助について議論をする、国民から選ばれた方たちが議論をする唯一の場ですよね。それができたといったことは実は非常に画期的で、そこにおいてやはり世界の中で日本はどういった国になりたいのかといったことも踏まえて、その中で国際協力援助は何なのかといったことをやはり議論していただきたいと思います。  初め、なぜ援助というのは存在するのか存在感が分からないというような、そういったこと自体疑問があるといったことをおっしゃいましたけれども、やはり私たちというのは、日本として過去から、江戸時代から明治時代にかけて、それで戦後を日本人として頑張ってきた、そういったやはり歴史もあり、それを基に戦後も自ら、それから平和国家として、それから技術力を磨いて、それで東アジアの国民とともにここまで来たと。やはりそういった日本が歩んできた道があると思うんですね。それをもって日本というのはどういうふうに国際社会に貢献したいのかと、そういったこと自体をやはり私は議論していただきたいと思います。  参議院ODA特別委員会は、元々は恐らく決算といったことを中心予算的なところを中心に見ていくというところで始まったというふうに承知していますが、それがこういった形で、こういった場で、広い形で政策イシューといったことを議論し始めているといったことは私は本当にうれしいと思いますし、同時に国政と外政をつなぐという形で、例えば人材の問題というのは、若い人材それから大学生それから職の話それからシニアの方たち、やっぱりそれは日本国民、それからそうやって外をつなぐ非常に重要なものだと思うんですね。そういったような発想から国政と外政を、外をつなぐと、そういったことで何をしなければいけないのか、そういったことも是非議論いただきたいと思います。  それから、できればほかの国、援助国の国会あるいは援助機関というのは、それぞれやはりその国の考え、理念があった上で国際協力をある意味で位置付けながら援助をしているわけなんですね。法律がある国もあります。それから、専門委員会がもっと日本よりか政策も含めて議論している委員会もあります。是非そういった方たちとの意見交換などもしていただいて、もちろん被援助国の方たちもそうですけれども、そういった形でのやはり意見交換なども今後していっていただければ非常に有り難いと思います。
  30. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 短くいたします。
  31. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 時間が来ています。
  32. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 渡辺参考人に申し上げておきたいんですけれども、私がどのようなつもりで言っているかということに対して、私の言い方も悪かったかと思いますが、決め付けではなかろうかと思います。  実際問題、大学の教育を通じてまた市民活動を通じて、私たちが世界における地球市民としてやらなければいけないことというものは次の世代にも伝えるべく様々な形で努力をしておりますし、また愛知万博などを通じてこれまで私自身がそういうことをやってきたということは知っていらっしゃる方は知っていらっしゃると思いますので、そのように日本の国が今やるべきことを私が知らないというような言い方というのは大変失礼であるというふうに私は感じております。と同時に、私は、申し上げたのは……
  33. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) いや、もう分かりました。これぐらいでとどめていただきたいと思います。
  34. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 そして、ですから、先ほどの意見は撤回していただけないでしょうか。
  35. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 委員長として整理をさせていただきます。  あとは、取扱いについては理事会等で考えさせていただきます。もうこれ以上議論を深める必要はないと判断しますので、どうぞやめてください。
  36. 谷岡郁子

    ○谷岡郁子君 分かりました。ありがとうございました。
  37. 森まさこ

    ○森まさこ君 自由民主党・無所属の会の森まさこと申します。  先ほど、横田参考人最初のお言葉、いろいろなところに配慮して表現がソフトになっておりますが、私の気持ちとしては非常な危機感を持っていますという御発表のときのお言葉、非常に私も深く受け止めまして、これから私ども会議員も努力をしていきたいと思います。  私は、本日は法制度の整備についてまずお伺いをしたいと思っております。  と申しますのも、私は議員になる前、弁護士として活動をしておりまして、お配りをさせていただいた資料の三番でございますが、日弁連の制度で海外に研究留学をさせていただいたことがございます。この日弁連の制度というのは、パブリック・インタレスト・ロイヤー、すなわち公益的な活動をしている弁護士を海外に留学をさせて、そしてその後人権の保護そして国際的な人権活動の、そのような弁護士活動に益するようにということで設けられた制度でございます。  こちらの上の方に書いてありますように、公益的な活動、人権擁護、消費者、環境、女性、障害者、司法制度そして国際司法支援の国際協力にかかわる課題というふうに書いてありますが、この二期生として行かせていただきまして、下の方にありますように、本年度まで行った弁護士がその後、国際的なそういったODAの活動の方にも参加をしているというような実績がございます。  資料のこちらの方は二番の方でございますが、これが日弁連が取り組んでおります国際的な法整備支援に関する活動でございまして、JICAの依頼を受けて、一ページの下の方に書いてありますが、インドネシア、モンゴル、ラオス、ベトナム、カンボジアの方に法制度をつくるというような活動の方に弁護士として行かせていただいております。  実際に行った同僚の話を聞きますと、東ティモールの方に行った弁護士ですが、こちらのJICA制度ではないんですけれども、何十万人という方が殺害、虐殺されてそして建物なども破壊をされているような現地に赴いて、停電や断水が毎日のように起こる中で、手元参考となる法的な図書など全くない中で基本的な民法、刑法とか人権侵害を受けている方を救済するための法制度をそれでは五日間でつくりなさい、ドラフトしなさいとか言われながら必死の思いでしてきた。そして、一緒に働いている、東南アジアからの弁護士は一人だけだったらしいんですが、ほかの国の弁護士も次々とマラリアやそういった怖い病気にかかって、いつもだれかが体調不良を訴えているというようなそのような中で法整備をしてきたというそういう経験も伺っております。  私が今日お伺いしたいのは、日本ODAというものは今後選択と集中をしていくべきだということが参議院提言やそれから外務省有識者会議の中間報告ODAを語る会のマニフェストにも書かれておりますが、具体的にどのように選択を行い集中していくべきかという問題の中で、比較優位ある分野に集中すべきというようなことでありますが、この法制度の整備それから人権を救済していく、そういうスキルを持った法曹教育というものが日本の比較優位ある分野に位置付けられるのではないか。日本はそのような法制度をきちんと持っておりますし、そういう知的な貢献というものを優位性を置いていって重点的にしていったらどうかというふうに思うわけでございます。  特に、日本の場合は欧米型の法制度ではない非西洋的な日本独自のいろいろな工夫を重ねた法制度を持っております。それが途上国にとって受け入れられやすい、アレルギーがないという点もありますでしょうし、これから日本の企業が入っていく際にも、そこでいろいろなトラブルがある際にも、同類の法整備があるということでは非常に紛争が解決しやすいという面もあるかと思います。それから、実際に紛争が起こったときに、そのような経済法分野もそうですけれども、そうではない人権侵害が行われた場合にそれを救済していくために、日本の法曹がその国内に入って救済をする場合にも日本の法制度と類する法制度があるということが非常に活用しやすいと。  私も実際にアメリカで留学をしてアメリカの法制度も学びましたが、やはり背景となるところが違うとなかなか裁判でも闘いにくい部分がありますが、そういったいろいろなメリットもあると思うんです。そういったことについて各参考人の御意見を伺いたいと思います。
  38. 横田洋三

    参考人横田洋三君) ありがとうございます。  私も実は法律を法科大学院で教えておりますので、今おっしゃられたことにはもう全く賛成です。法整備支援は日本効果的に協力できる非常に重要な分野で、しかも途上国でとりわけ紛争をやっと乗り越えて国内の社会秩序を安定させて発展に向けていくために、国内法がきちっと完備しそれを公平に実施する裁判制度それから弁護士の人たちですね、有能な弁護士の人たち、そういう人たちがそろっているということは非常に大事なことなんですね。  その点で私は今、森先生がおっしゃられたことに賛成ですが、もちろん森先生も御経験になったと思いますけれども、実は日本の場合にちょっと難しい問題があります。それは何かといいますと、日本の法律の専門家はみんな基本的に日本の実定法の専門家であって、日本語で日本の実定法を勉強するのが基本ですから、これが支援に行ったときには日本語で日本法をやってもうまくいかないんですね。結局英語なりフランス語、大体英語はこのごろ中心ですけれども、それを使ってやるということになりますので、その点で特別にプラスアルファの経験と能力を持っている人が行くということになって、森先生とかそれからここに名前が挙がっています北村先生とか伊藤先生は私もよく存じ上げていまして、本当に優秀な方です。  ただ、これは留学経験があるとかごく例外的な方で、もう少し幅広くやっていくためには日本の弁護士の先生方その他がもっと国際経験を積んで人材として育っていくことも大事かなというふうに思っております。
  39. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) ありがとうございました。  先ほど来、私はODAの触媒効果を高めるためにはインフラの充実が必要であるという主張をしてまいりましたけれども、そのインフラというのは、先ほど申し上げたインフラは言ってみればハードインフラといいますか巨大な構造物の建設のことを意味していたわけですけれども、インフラは産業インフラのみに限られない、言わば制度インフラというものを充実する必要があるだろうと思うんですね。  とりわけ経済成長のためには市場が必要であると。市場が成長するためには、市場効果的に展開させるためにやはり制度が必要であると、こういうことですね。また、その制度というものを優れたものにするためには政府の能力が必要であるというロジック、当たり前のロジックですけれども、非常に発展段階の低い国においてはまずそこから始めなきゃならないということがあるわけですね、物的なインフラと同時に。今申し上げたような意味での知的インフラの充実に日本は力を貸していかなきゃならないということだろうと思うんです。  今までは、日本は専門家を派遣したりそれから向こうから研修生を受け入れたりして、そういう言わば知的支援を担ってきたことは事実なんですけれども、物的なインフラに対する注力に比べてみればこちらの知的支援の比重は情けないくらい小さいものであったと言わざるを得ません。ですから、もう一つの新しいフロントは知的支援部分の拡大ということになっていくんではないかと思います。  私もティモールのケースを若干なりとも知っておりますけれども、それからアフリカの幾つかのケースに見られるようなしばしば破綻国家と言われるような国をどうやってビルドアップしていくか。その一番のベースにあるのは御質問にあったようなところなのだろうと思います。産業インフラプラス制度インフラ、その一番ベースから協力していくということが必要だと。  ただ、これをやり出したら切りがないという御意見はもちろんあります。そこで選択と集中ということを言っているわけであります。その選択と集中の基準をどう求めるかというのは、一般論的には言えません。ODAプロジェクトごとにやはり選択と基準の軸は変わってきます。有識者会議でもそういうワーキングチームをつくって、もし必要があればやっていこうというふうにも考えて今いるところです。現在の段階ではかなり総論的な段階で終わっていますので、御覧のように。  ありがとうございました。
  40. 大野泉

    参考人大野泉君) ありがとうございます。  私は必ずしも法律の専門家ではないんですが、今、森先生がおっしゃられた視点日本というのは非西洋国家として欧米の制度を輸入しながらそれを自分たちの体系に合わせてきたと、そういった経験。それから、私自身、そういったこと自体が、法制度整備だけではなくて、一般的に日本のいろんな海外援助をするときに非常に重要な日本のアプローチとして誇れるものだと思うんですね。  たまたま私も二〇〇六年に外務省国別評価の仕事でベトナムに行ったことがございます。そのときに、日本もベトナムの司法省に協力をしておりまして、その司法省のベトナムの関係者お話を聞いたことがあるんですが、そのときにはやはり非常に長いタイムスパンを追って、まずは旧社会主義、社会主義から市場経済に移行している段階で基本的な法制度、民法、民事訴訟法の整備というところから始まって、次は施行段階、それから今度それに携わる人材育成と、そういった息の長い形で支援をしてきてくださって非常に有り難いと、そういうような意見をいただきました。多分これは非常に長い期間をもって共同作業をしながらやっていくという、そういった日本のアプローチが、多分すばらしい専門家の人材に、資質にも恵まれていたと思うんですね。  ただ同時に、そのときにほかの国、どれくらいの国でやっているんですかというようなことも別のときにJICA等の関係者に聞いたときに、必ずしも大きな国になかなか広がっていっていないと。それは、恐らく横田先生がおっしゃったような、やはり人材確保していくことそれから長期にわたって取り組んでいかなきゃならないと、そういったことで法曹人材も非常に競争が激しい世界なのでなかなかそれが難しいと、そういったような問題もあるだろうというふうに理解します。  ですから、これは非常に重要な取組ではありますが、やはりそれを行うときには、どの国に取り組んでいくのかということを、そういったことをやはり幾つか絞った上で、その国の援助ニーズを考えた上で、その上で長期的に取り組んでいく。恐らくたくさんの国に一度ということは多分難しいんじゃないかというふうに思いました。  それから、もう少しこれを広く考えていったときに、投資環境整備といったことを考えたときに恐らく日本の比較優位が生かせる分野としては、やはり官と民が対話することによって民間企業の意見を取り入れて、ではその国の投資促進のためにはどういった具体的なボトルネックがあるのか、そういったことを民間の方から具体的に提言しながらそれを一緒に協議していくと、そういったことも私は日本の比較優位があるのかなと。  具体的には、例えばインドネシアでは、日本・インドネシアの戦略的行動投資計画とか、ベトナムでは日越共同イニシアティブとか、そういった意味で、現地の援助関係者それから民間の企業が一緒になって、ベトナムの官民が一緒になって何が課題なのかといったことを議論する。その中にやはり投資環境、法令のことも出てくるんですね。具体的な企業の現場感から提言をしていきながらそれを改善していくと。それをアクションプランを作りながら、支援できるところはODAで支援しながら相互にモニタリングしていくと。インフラもあるでしょう、人材もあるでしょう、法律的な改正もあるでしょう、税関の話もあるでしょう。そういったところというのは非常にその国の開発それから日本の投資の促進それからそういった官民連携と、そういったような意味でも非常に私は有効だと思いますし、ですから広義に考えてやっていくといったこともあるのかなというふうに思いました。
  41. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございました。  今のような投資の促進にも非常に意義深いと思いますし、それからもう一つ、やはり私は弱者保護という立場で弁護士をしてきたという側面から申しますと、やはり途上国貧困がありますと、どうしても貧困層からの搾取、人権侵害というものが起こり、そこから憎悪が生まれてそしてテロの原因になるという指摘もされておりますから、そういった搾取をされている方の人権を救済するための法制度そしてそれを執行する法曹の養成というものに日本が貢献をしていけたなら、日本に対する信頼も生まれてくるのかなというふうに考えております。  それから、人材の点でありますが、横田参考人からも御指摘がございましたが、私も来月ロースクールに行ってこの問題について講演をするので是非宣伝してこようと思っているんですが、日弁連のこのような留学制度があるということを弁護士でも知らない人が多いんです。若者で興味を持っている方が多いというふうにおっしゃいました。  その興味を是非生かすためにも留学をして、私の行ったのはニューヨーク大学のプログラムなんですけれども、グローバル・パブリック・インタレスト・プログラムといって、途上国を含む世界中の法曹が集まってゼミで国際人権について研究をしていくプログラムなんですけれども、そこでやはり途上国の現状について知っていく、そこで自分たちが何をしていったらいいのかというのを考えさせられる、そこに自分の法曹としてのスキルを生かせないかということにそこで初めて気付いていくということもありますので、最初から若い人たちがこれをやろうというふうになかなか決めるのも難しいと思いますが、せっかくロースクールで学び、せっかく弁護士資格を取るんですから、それが何か、ただ日本の中で大きな法律事務所で働いていくということが、非常にその点が人気があるんですけど、それだけではなくて、何か弁護士人生の中でその技術を生かしていく、そういう場所もあるんだということを是非ロースクールでも宣伝していただけたら有り難いなと思います。  そして、この推薦制度で留学をする弁護士が増えれば、戻ってきたときに日弁連の国際人権委員会で活動いたします。私もそこで今幹事になって活動しておりますが、数々の国際会議にも出席をするようになります。そういったことによってこのような人材確保されていくということにもなると思います。  そして、そことの連携がなかなか今、キャリアパスということでございますが、取れていませんので、国際機関の方でもこの制度を認識をしていただいて、横の連携を取っていただくということ。それから、こういったことで海外に、例えばティモールに行って戻ってきたときに日本の事務所で仕事がないということを心配する若者もございます。ですので、そういった弁護士であっても国際的な人権活動をしてきた者が戻ってきた場合にいろいろな国際機関等で働く場、それを生かせる場はあると思います。そういったものも連携をしていけたらいいのではないかなと思っています。  これに関連して、次の質問ですけれども資料一を御覧ください。  自由民主党では、昨年の六月に法制度整備支援についての戦略ビジョンというものを取りまとめまして、私が今提案したようなことをまとめてあるんですけれども、ここには、克服すべき問題点もあるということを同時に指摘をさせていただきました。  上から三つ目の四角の右側でございますが、我が国が克服すべき問題点でございます。戦略性が欠如している。それから二つ目に司令塔が不在である。三つ目でございますが、今言った人材の不足。そして最後に経済界、国際社会から評価がされない。やはり道を造ったり建物を造ったりするのに比べれば法整備は見えにくい支援でございますので、この点をやはりアピールしていくということが指摘をされてございます。  これについても、本当はどのように克服していったらよいか御意見を伺いたいと思っていたんですが、ちょっと時間の関係上、次の質問と一緒にお伺いをさせていただきます。  次の質問は、環境について質問をさせていただきたいと思っています。  横田教授調査外務省の中間報告の方でも、気候変動問題への対処について、気候変動について脆弱な途上国に対しては省エネ等の技術を持つ我が国として支援を行っていくべきというふうに指摘をされております。  ここで、資料の四を御覧ください。これは福島県いわき市にある研究機関でございますが、この研究機関では石炭ガス化複合発電という技術を研究しています。これは、石炭の火力発電を行うに当たり石炭をガス化する、いったんガスにしてから発電するということで、発電量当たりの石炭使用量を減らすことにより排出CO2が二〇%削減される、石油火力発電並みのCO2の排出量に抑えることができるという技術です。  今年度中には実用化に向けた一定の研究成果が獲得できるというふうに期待をされておりますが、こういった技術が世界の中でどれぐらいあるかと申しますと、資料四の最後のページでございますが、アメリカに二施設それからオランダとスペインに各一施設の計四施設しか、世界中で四施設しかございません。五つある施設の中の一つが我が国にあって、CO2を二割削減できるという研究結果がこの五つの施設の中でも一番トップレベルにあると言われております。  このような我が国の先端環境技術を生かして、発展途上国に対してCO2の排出を緩和する技術の支援を行っていくということもODAの中で比較優位のある分野として位置付けるべきと考えておりますが、この点についての御意見も併せてお聞かせください。  全参考人からお願いします。
  42. 横田洋三

    参考人横田洋三君) 最初の点は、私も法科大学院にかかわっておりまして、若い人たちで国際協力に関心のある人はたくさんいますが、残念なことに、この人たちはみんなまず弁護士になるための新司法試験に合格ということを目標にするために、結局その試験科目に集中して勉強しますので、そうすると、今言ったような開発援助に関連する国際経済法とか人権に関する国際人権法、コースとして私担当しておりますが、関心を持つ人は残念ながら少ないんですね。いることはいるんです。この人たちは非常にいい学生です。  私は、今のところそういう形で、私のできる範囲内でもって授業の中で今おっしゃられたような点、強調しておりますが、わずかですが、そういう関心持っている学生さんいますので、将来弁護士になられたら、日弁連の留学制度とかそういうことも今頭に入れておいてもらって、是非そういう方向を学生にも取ってもらうように私の立場でしていきたいと思います。  それから、環境問題についておっしゃられた、これ大体二〇%ぐらい排出量を削減して同じ発電量が得られるというのは非常に画期的な技術だと思いまして、こういうのは私是非進めていくべきだと思います。石炭の資源はまだ日本にも、もう経済的に成り立たないために掘らないんですが、あり得るし、それから途上国にもたくさんあるんですが、現在は石油の方が手近なのでそれを使っているという状況で、これは一つの技術としていいと思います。  実は日本はこういう技術は、六〇年代のあの公害問題を経験して痛い目に遭った結果でしょうけれども、物すごく技術進んで、恐らくCO2の排出量の制限を含めて、自動車の排気ガスを含めて世界で一番トップレベルの技術持っているんですが、難しい問題は、それをお金を掛けて開発したのをただでほかの国に渡すことができるかどうかという問題があって、これは工業所有権、知的財産権の問題なんですが、この辺も少しクリアにしなければいけませんが、私は基本的には、環境保全のための様々な技術、例えば建材で外気を直接室内の温度に影響させないための技術もこれは日本が一番進んでいますし、建材ですね、それから太陽光利用も進んでいますし、いろんな意味日本にはCO2、気候変動枠組条約の枠の中でCO2排出量を削減するための技術持っておりまして、これをどうやって途上国日本がせっかく開発した技術をただで渡すのではない形でできないかということを考えておりまして、私の一つの提案は、国連機関にファンドをつくって、そこが工業所有権を買い取って後は無料で使わせると、こういうことをしてはどうかと思っているんですが、まだそれは構想の段階でございます。  いろいろな工夫があり得ると思います。
  43. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 環境問題についての森先生の御質問についての私の考え方をちょっと申し上げてみますと、先端的な環境、省エネの技術を積極的に移転するということはよろしいんですが、ただ、問題はコスト、ローコストであるということがキーワードになってくるだろうと思います。  私自身この考え方を持つに至った原体験を申し上げますと、小渕内閣のときに江沢民さんが、九八年ですね、あのときに日中環境開発モデル都市構想というのが出まして、重慶と大連と貴陽ですね、貴州省の省都、貴陽、この三つの都市を日中協力してクリーンメカニズムをつくって、このメカニズムを周辺諸都市に拡大していこうと、こういう構想が出て、それの日本側代表になって、日中のついに政治家ならぬ私が政治折衝の前面に立たされてしまったという経験を持ち、それ以来その三つの都市を年中のように何十回か回ってきたんですけれども、やっぱりその経験の中でローコストであるということが非常に重要だということが分かりました。  例えば脱硫装置を設置を義務付けようとしても、日本の持っている脱硫技術、御承知のようにもう九九・九%脱硫しないと気が済まないような、もう強迫神経症的な技術しか日本にはないんですね。これ非常に高いわけですね。これじゃちょっと設置不可能ですね。簡単な計算をしてみますと、もう脱硫率五〇%でもこれを所定のところに、決められたところに全部設置するとなれば硫黄の排出量は半分になると、こう考えて安いものを作る。ただ、その技術は既にないわけですね。ですから、中間技術とか適正技術というものを改めて開発していく、あるいは日本がかつて旧時代に持っていたものを復元するという努力をやっていかなきゃならないという問題があります。  時間がないようですが、もう一点だけ申し上げますと、ただし中国でも成功したものがあります。それは集じんです。これは安いもので、そんな技術的レベルも高くない、したがってローコストだということですね。出力十万キロワット以上の発電所に電気集じん機の設置を義務付けたら、ここに巨大な内需が生まれたんですね。その内需に応じて中国のビジネスが活性化しました。アメリカとスウェーデンから電気集じん機のテクノロジーを導入してやりました。環境内需が大きいものですから異常に売れまして、規模の経済も働いて、ついに売価の一%を切りましたね。そして、中国の集じん機は何と、東南アジアを回ってみるというと、ちょっと集じん機の後ろへ行って、分かります。メード・イン・チャイナがほとんどに今なっているというふうな状態であります。  ちょっといろいろ申し上げ過ぎたかもしれませんが、要するにハイテクと同時にローコストというのがキーコンセプトになろうと思います。くどいようですが、それが今、日本にないという、これをどうするかというふうに頭をお互いに回しながら物を考えていきたいと思っています。
  44. 大野泉

    参考人大野泉君) まず最初に、森先生がおっしゃられた司令塔の確立、戦略の強化それから人材の話、これは恐らく森先生のコンテクストは法制度整備支援ということに特定されたんだと思いますが、私は、冒頭説明させていただいたマニフェストにも書きましたように、やはりこれ自体本当に重要で、まず日本の国際協力といったことをどう位置付けていくのかといったことを含めて、司令塔、戦略の強化そして人材の話といったことをやはり強化していく必要があると思いまして、そういったことも含めて是非引き続き具体的なレベルで御検討いただきたいと思いますし、議論させていただければと思っています。まさにこれは賛同いたします。  それから、環境につきましては、やはり日本というのは、そういった意味で公害も含めて自分たちが体験したことでもありますし、そういった技術力もあるということで、やはりそういった比較優位たるものというのはあり得るわけで、日本の企業のそういった技術それから人材も活用しながら支援していくといったことは重要だと思います。  それから、クリーン開発メカニズムというものがODAでも使われるようになったということで、幾つか最近事例が出てきたと思いますが、そういったことが今後活用されていけば日本も排出クレジットを得ることもできますし、途上国のCO2等の削減ということにも寄与すると思いますので、そういったことはやはり推進していくべきだというふうに思います。たしかインドのデリーのメトロ、地下鉄などもそういったことを活用したものだと思いますし、日本の技術も活用できるというふうに理解しています。  と同時に、恐らくこの問題は、そういった意味で適応、何というんですかね、そういった環境、温暖化対策、例えば省エネとか公害といったことを緩和しながら気候変動問題に対して対応していくといったことと同時に、特にアフリカなどの最貧国を考えた場合には、やはりその適応といったことも考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。やはりこれらの国というのは、一番自分たちは排出していない、余り排出していないというところですけれども、ただ同時に、一番そういった地球温暖化とか気候変動の影響を受けやすい地域、国だと思うんですね。そういった意味では、水の問題とか土壌とか洪水の話とかいろんな意味で、いろんな形でその被害が現れてくると思いますので、そういったことも問題意識に入れた上で、アフリカへの協力の仕方ということもTICADを含めて考えていただければというふうに思います。  幸いなるかな、私は、国際協力自体というよりか、やっぱり環境問題に対する国民の意識というのは非常に今高まっていると思うんですね。議員の先生方も議連ができたとかそういうことも伺いますし、そういった意味ではこれを国内と海外をつなぐやはり一つの大きな軸になると思いますし、そういった意味で、例えば財源の話でも、こういったことを説明しながら環境特別枠とか環境との関係での新しい財源を考えていくとか、そういったことも踏み込んだ上で御議論いただけると非常にすばらしいなというふうに思います。
  45. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございました。終わります。
  46. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。  本日は、参考人の先生の皆様、大変に貴重な御意見をいただきまして、心から御礼を申し上げたいと思います。  まず初めに、今日は質問時間が十五分ということで、お一人ずつ質問をさせていただきたいと思います、一問。  大野参考人にお伺いをいたします。  新しい日本ODAを語る会の提言は、ほかの提言と違いまして、特に政治の関与、国会に専門の委員会設置をというところまで踏み込んで御提言されているところが特徴的なのかなというふうに承りました。  先ほども類似の質問がございましたが、もう少し具体的に、参議院ODA特別委員会の果たしてきた役割について高く評価していただいたということで分かりました。今後の在り方なんですけれどもODAの政策形成におけるこの参議院ODA委員会が今後どういうふうな役割を担っていけばいいのかという御助言がございましたら、お伺いしたいと思います。  そして、それに伴いまして、他国ではどういうふうな仕組みで、例えばイギリス等ではどういうふうな仕組みを持っているのか。  大野参考人御自身の中で、援助の選択と集中ということを言われましたけれども、こういった援助戦略が他国ではどのように議論されてきているのかというようなことについてお伺いしたいと思います。
  47. 大野泉

    参考人大野泉君) ありがとうございます。  ODAの政策形成にかかわる国会の関与の在り方なんですけれども、幾つかイギリスあるいはアメリカ等の例を簡単に紹介させていただきます。  例えば、アメリカでは対外援助法がある、国会には専門の委員会はございません。ただ、予算委員会かなり、まああれは大統領制で三権分立ということで非常に過剰なくらい予算を審議するということがあります。  片や、イギリスというのは議院内閣制で日本に似ている制度だと思いますけれども、国際開発省という省が九七年にできたということもありまして、国際開発政策というのがあり、それに対応する専門の委員会というのがイギリスの議会の中に下院の中にあります。そこでやっていることというのは、毎年これは七、八回だと思いますけれども、DFIDという国際開発省の基本的な政策とか予算の使途それから幾つかテーマを、そのときそのとき国あるいはテーマを絞って議論を行っているということをしています。イギリスの場合はニュー・パブリック・マネジメントという中で行政府かなり強い力を持っているというところで、予算の枠全体についてはもうある程度決まった中で、その下で議会がチェック機能を果たしているということがあると思います。  強調したいのは、国際開発法という法律がありまして、そこできっちりとイギリス援助の理念は何なのだということを示していることです。それは貧困削減に資することについてイギリスはすべての援助をしていく、MDG達成目的だといったことを明確に出しているということです。ですから、そういった意味で、DFIDに対しては、ほかの省庁に対してもそういったMDG達成のために必要なことがあれば調整機能をしなさいと、そういったことまでマンデートがあります。  同時に、つい最近ですけれども、これは二〇〇六年にこの法律の追加規定が出まして、そういった意味イギリスは非常に今ODAの増加ということに国を挙げてコミットしているんですけれども、議員立法で援助増額ということをやっていこうと。国連ミレニアム開発目標達成のためにGNI比の〇・七%を二〇一三年までにイギリス達成するんだということ、それから援助効果向上のための国際的な協議、パリ宣言と言われているんですけれども、そういったものも遵守していこうといったことを、これは法律として追加規定として作ってしまったと、そういったこともございます。  そういった意味で国会の議論それから議員の役割というのは非常に重要だと思いますし、それから幾つか、もし時間をいただければと思いますが、国内の中でシンクタンク、独立したシンクタンクがございまして、そこが議員さんを招いてそういった援助政策、各党のODAに対する提言ども議論をするセミナーなども行っているということがあると思います。  ですから、私としては、このような形で、一つのこれは例かもしれませんけれども、やはりODAの基本政策あるいは重点国の考え方ども含めて、あるいはテーマについてもやはり国会の方も関与した形で議論いただくと。それから、国会の議員の先生方政府、実施機関研究者、開かれた形での議論をしていく、そういったような場というのもどんどんどんどん増えていけばいいかなと思います。  それから、アメリカについては、先ほど申しましたように、特別な委員会はないと申しましたが、今非常に面白い動きがございまして、ブッシュ政権後の対外援助をどうするかといったことが議会の中あるいはシンクタンク等で非常に議論されています。超党派の議員がつくったコミッションがございまして、それはヘルプコミッションというんですが、そこが最近、昨年の末に提案をしているのは、やはり国防総省が非常に援助に対して力を持ち始めた、それがいいのかどうかといったようなことが議論されておりまして、それに基づいて国際開発庁という援助を専担する機関の役割をやはりもっと強化するべきじゃないか、あるいはそこを独立すべきじゃないかというようなそういった議論もされております。ですから、そういったことまで踏み込んだ形での議論が、委員会があるかないかということは別にして、なされているといったことを申し添えたいというふうに思っています。
  48. 谷合正明

    ○谷合正明君 続きまして、渡辺参考人にお伺いをいたします。  ODAと民間投資の在り方について、それに関連してアフリカで自助努力の発揚につながる日本ODA供与の在り方というのはどういうものなのかなと改めてお伺いしたいわけでありますが、実は今ニュースで話題になっているのは、食料とエネルギー価格の高騰で大変、例えば世銀の総裁はアフリカで三十三か国、このまま行くと不穏な社会、政治情勢に直面するんだと。WFPでは二十三か国が食料の深刻な情勢に直面するというような報告もありました。  いずれにしても、その報告の中で出てきているのは、従来型の食糧援助から現地の食料市場を構築し、農業生産を増進させるような資金援助を呼びかけているものであります。つまり、私は、これはODAによる援助だけではなくて、民間投資も呼びかけたんだなというふうに理解をしているわけであります。  実際に私が把握している範囲では、このODAと民間投資、DAC諸国のこの割合、DAC諸国の中で援助と民間投資の比率が二〇〇二年は、ODAが八〇%、民間投資が八%だったと。しかし、二〇〇五年にはODAは三五%で民間投資が六〇%だと。民間投資がかなり増えていると。ODA援助総量自体も倍増しているにもかかわらず、それ以上に民間投資が増えているわけですね。東アジアではこの貿易投資、援助が一体となって東アジアの開発は成功したというお話でございました。  そこで、お聞きしたいのは、今後我が国のODAの対象地域というのは、アフリカというのが一つ重点エリアになるわけでありますが、この渡辺先生のコンテクストからいうと、このアフリカ日本がこれまでやってきたような自助努力の発揚につながるODAの供与の在り方というのはどういうふうなことが可能なのかと。先生はそういう姿勢が大事なんだと言われましたけれども、もう少し具体的なお考えをお伺いしたいと思います。
  49. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 率直に言って、目下考慮中、検討中ということでございます。私の中に、頭に像を浮かんでいる国が三つ、四つあります。しかし、ちょっと私、立場上これを申し上げることができないので、ちょっと差し控えさせていただきますけれども。  要するに、このODAと民間投資とインフラ等がパッケージとして有効性を持つ、そういう条件を持った国がアフリカの中にも幾つかあるということですね。その国が受け取っているODAの中でそれがマジョリティーであるような、マジョリティーというのは日本ODAのプレゼンスが大きいような。ということは、比較的小さな国でそれから親日的で政府ガバナンスが比較的しっかりしていてという国を幾つか選択基準として選び出す、シャッフルして選び出す。そこに選択、集中して日本ODAの成功事例としてその波及効果をねらうという戦略を今考えております。アフリカは、御承知のように膨大な貧困国を抱えておりまして、これに日本ODAがすべてに対応するなんということはできるはずもありませんし、またすべきでもないと思いますね。そういう意味で申し上げております。  一点だけ付け加えますと、私は人間的能力においてアジアとアフリカで差があるというふうな観念をもとより持っておりません。しかるべき条件があれば、アジアで実現されたことはアフリカでも実現されるであろうという信念を持って今までも勉強してまいりました。アジアの開発、私はかねてより予測していたつもりですけど、私が勉強を始めていたころはそんなことはあり得ないというのがごくごく一般的な議論でありまして、現代のコンテクストに直しますと、アジアでできたことがアフリカでできないはずはないという基本的な信念の下で今後も仕事をしていこうと思っております。  お答えになったかどうか分かりませんけれども、モデル国を選んで日本援助、したがって自助努力支援というコンセプトを大事にすべきだ、こういう基本的な考え方を今なお持っております。
  50. 谷合正明

    ○谷合正明君 それでは、横田参考人にお伺いをいたします。  つまり、アフリカ支援については、対象国をいわゆる選択、集中ですとかめり張りとかいろいろな言葉があろうかと思いますが、今の渡辺参考人のお答えとしてはモデル国を選択していくという話でございました。本当にアフリカに対する課題というのは、例えばアフリカ支援するための平和構築のための人材育成をどうやってやっていくのか、あるいはMDGの達成に向けてどうするのか、そしてまた日本の自立支援型援助をどうするのかと、いろんな課題があります。ガバナンスの課題もございます。我が国らしさを発揮できるアフリカ支援の在り方について、やはり全部を全部、五十三か国トップドナーになるというのは難しいんだろうなと思っております。そうすると、やはりマルチとバイをしっかり使い分けていく必要もあろうかと思っております。  そこで横田参考人にお伺いしたいんですが、この特にマルチの方ですね、多国間、国際機関を使った我が国の援助の取組についての先生の御所見をお伺いしたいと思います。というのは、私はどうしてもこういう話をすると、日本国連職員を増やさなきゃいけないとかそういう話はよく聞くんですけれども、それから先の話がなかなかよく見えてこないなというふうに思っています。
  51. 横田洋三

    参考人横田洋三君) ありがとうございます。  お手元に配った資料の、私の参議院政府開発援助等に関する特別委員会最初に書いてあるものの資料の十三、十四、十五辺りをちょっと見ながらお話しさせていただきたいと思います。  マルチは、もちろん渡しますとUNDPユニセフ、そういう機関がその先は実施していくわけですね。そうすると、普通は日本援助が渡された後はもうコントロールできない、したがって目に見える日本の貢献にならないからバイの方が目に見えると、こういう議論をしがちなんですが、実はそうではなくて、日本の場合にはこれまで、例えばUNDPで言いますと、二〇〇〇年ごろまで数年間、第一の拠出国だったんです。そうしますと、日本の意向を聞かずに、UNDPはどこの国にどのくらいどういう種類の援助をするかということを決められないんですね。場合によると日本人が事務次長になっていたり、場合によれば事務局長にさえなれるんですが、実は日本援助がだんだん減ってきたために事務局長のポストは得られなかったんですが、そういうところに日本人が入れば非常に効果的に今度はマルチの場を使って日本援助政策が実現できますので、そういう意味でもっとグローバルに考えていただきたいというのが私の視点です。  この資料の十三を見ますと、UNDPだけについてですが、UNDP国連機関では最大の援助機関ですから、見ますと、二〇〇〇年がトップであったのが二〇〇二年には二位になり、二〇〇三年には三位になりという形で年々落ちてきていて、二〇〇六年の時点で第六位になっているという状況。こうなると、当然ですけれどもオランダとかアメリカ、ノルウェー、スウェーデン、こういう国のUNDPの中での影響力の方が大きくなってきますので、その辺が一つ考えなければいけない問題であろうと思います。  もう一つは、マルチ援助というのは、その国がどういう分野でどういうふうに発展すべきかということについてかなり総合的に研究調査をし、経済学的な分析を加えた上で答えを出しますので、ある意味では援助効果が本来高いはずなんですね。日本はそこにある程度力を入れるんだということを方針として示すことによって、日本援助がただ単に日本国家利益に奉仕するだけではなくて、国際社会の関心事項である開発問題に取り組んでいるんだというイメージを多くの国々に与える意味でも、私はマルチ部分の強化というのは必要であろうと思います。  それから、アフリカの特定の国については、資料の十二というのを見ると、かつては二〇〇〇年の時点では日本が第一の援助国であったんです。ガーナ、ガンビア、ジンバブエ、スワジランド、タンザニア、中央アフリカ、モーリタニア。これがその後、全部日本は第一でなくなっています。第一の援助国というのは、この国に対してどういう開発政策を取るかということについて日本発言権が一番大きい国なんですね。それがもう今では日本発言権は全部低下しています。こういうことを考えると、どの国を重視するかというのは、やはり過去の実績を考えると、まずこういう国について日本が第一の援助国になり集中的にそこを援助していくというそういう方針が必要ではないかと思います。
  52. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。
  53. 近藤正道

    ○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。  今日は三人の先生方、大変貴重な御意見、御提言をいただきまして、ありがとうございました。大変参考になりました。  質問時間が十分でありますので、一つぐらいの質問しかできないかもしれませんが、三人の先生に御質問をさせていただきたいというふうに思っています。  現在、我が国の援助政策というのはODA大綱及び国別援助計画による枠組みによって実施されているわけでございます。私は、ODAの憲法上の根拠は憲法の前文なんだろうと、この前文を受けて、武力行使をしないこの国の外交のまさに重要なツールとしてODAが実施されているんだろうと、こういうふうに思っています。そういう意味では、ODAの量がこの十年で四割減ということで、これでいいんだろうかと危機感を持っておりますし、先生方の今日のお話、それぞれ胸に響くものがございます。  しかし、ある意味ではODAは何のためにやるのか考える今はまさにチャンスではないか、ピンチはチャンスではないかと、こういうふうに思っておりまして、是非ここで徹底的に議論をすればいいと、その議論の中でやっぱり乗り越えていけばいいんだろうというふうに思っておりますが。  まず今日、横田先生の方から我が国のODAの課題について幾つかの提起がございました。私、全く賛同するものでございますが、横田先生のような御意見であるならば、今この国のODAの枠組み、ルールを定めているODA大綱、これは極めて総花的ではないかなという気がいたしておりまして、もっと目鼻立ちのはっきりした、理念を鮮明にして、なぜ日本ODAをやるのか、やる場合にはこういうルールに従ってこういうことに配慮してやるべきだ、もっと明確に打ち出すべきではないかと。  そういう意味では私は、ODA大綱をこの際やめて、ODA基本法みたいなものを作るべきではないかと。先ほどアメリカで対外援助法があるという話がありましたけれども日本外交の最重要のツールということであるならば、大綱などにとどめておくのではなくて、むしろこの際基本法にきちっと仕立てて、そして理念や枠組み、配慮事項を明確に定める、それに従って行っていく、こういうふうに私はすべきだと。ODA大綱は全面的に改めるべきだと、こういうふうに思う。そういう意味では今がチャンスだというふうに思いますが、三人の先生方、それぞれどういうふうにお思いなのか、御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  54. 横田洋三

    参考人横田洋三君) ありがとうございます。  私も、ODA基本法を持っている国もありますし、そういうものが日本であってもいいと思いますが、それがあったとしても、私はODA大綱に対応する閣議決定レベルの方針は必要で、それはなぜかといいますと、過去三十年、四十年の日本ODAの歴史を見ても、時代によってどの国を重点区域にするかとか、マルチとバイの関係をどうするかとか、いろいろなことが世界の情勢の変化によって変わってきております。冷戦時の援助と冷戦後の援助はもう全く違いますね。ところが、法律をいったん作りますと、その辺、時代の変化に合わせて即応できないというちょっと固い部分がありますので、基本法は作ってもいいんですが、それはなるべくまさに一般的でないといけないんですね。ODA大綱そのものがもう少し具体的な、必要に応じて五年か十年に見直しては改正していくと、こういうアプローチが多分私は一番いいと思います。  それはそれですが、現在は第二次ODA大綱があってそれでやっていますが、何が一番問題かといいますと、いろんなことが書いてあって総花的であるということはもう先生の御指摘のとおりなんですが、なかなかいいこと言っているんです、みんな。その一つ一つが具体的な援助の場でどう守られているか、実現されているかというところをチェックする機能が全くないのが問題なんです。私はそのチェック機能をどこかにつくるということを考えたいと、こう思っております。
  55. 渡辺利夫

    参考人渡辺利夫君) 今、横田先生のおっしゃった答えに私も近いんですけれどもODAというのは極めて迅速な現実対応型のものでなければならない。基本法がその行動を縛るようなものになってしまうとまずいなというのがかねてよりの思いであります。  それで、ODA大綱で私は目下のところは十分ではないかと。ただ、おっしゃるように、実は我々のODA総合戦略会議有識者会議の前の組織が発信元になって、私どもは修文に深くかかわった人間でありますけど、おっしゃるように総花的に過ぎる。総花的に過ぎると何度も主張しました。つまり、もっとまさに選択と集中すべきだという意見は言いましたけれども、やはり各省庁との調整の過程でやればやるほど総花的になってくる、いつもの政府文書と同じような性格を持たされたと。  ただしかし、その点について若干エクスキューズをしますと、そのすぐ後に五年くらいを目途の中期政策が出され、それに基づいて国別政策も十幾つつくっております。こちらの方はもう少し回転速くやっています。その過程で、さらに改善と点検というふうなものも逐次やっております。でありますから、制度自身それは決してのんびりとしているものではないということは言い得るだろうと思います。  それからもう一つ、時間が長くならないようにしますけど、もうこれは釈迦に説法でありますけれども日本ODAの歴史半世紀の中で画期的なことが今起こりつつあるわけですね。それは日本ODAのシステム化ということですよね。海外経済協力会議が戦略決定、コントロールタワー。その下に、外務省が戦略に基づいた政策を決める。その政策に基づいて実施機関が新しく与えられた三つのメニューを最適にブレンドできて実施をする。それを企業とNGOその他が支えるという非常にきれいな構図ができております。  でありますから、日本ODAをより良くするための制度は、まあこれから魂を入れるという問題が残っていますけど、制度的な図柄は完成しております。でありますので、問題はこれが本当にうまくワークするかどうかを、今、横田先生がおっしゃったのとは違う対象ですけれども、これが本当にうまくワークし得るかを評価しコメントする場がもう一つ必要かな、第三者機関が必要かなというふうに今は感じております。そのことも、有識者会議まだ続きますので、いずれ議論の対象になると思っております。
  56. 大野泉

    参考人大野泉君) 私も両先生と近いところはあるんですが、私は基本法というのはやはり作る意義が非常にあると思います。  このマニフェストの中でも、提言一、二、三で国会の役割の重要性といった専門委員会の話、それから司令塔の役割、それをもっと民間にも開かれた形で助言していくような会議が必要だというようなこと等々、それで司令塔はそれを踏まえて選択と集中をやっていくといったことを提言させていただいていますが、その根本となる理念といったことというのをやはり開かれた形で議論し、それをやはり明確な形でうたい上げると。  恐らくそれは日本国憲法のよって立つところだと思いますし、日本という非常にやはり海外に依存した国であるということ、両方だと思いますが、そういったところが出てくると思うんですね。そういったことを再確認していくと。ですから、シンプルな形での法律的な枠組みというのは私はやはりあった方がいいと思います。ただ、それがODA大綱を代替するものでは私は決してないと。それぞれの役割が私はあると思います。  それから、やはり枠組みをつくった、そういったことによって、例えばじゃ日本として人材の問題をどう考えていこうかといったことも関連して出てくるわけですね。ですから、そういったことはやはり一つの開かれた形で、しかも国民を巻き込んだ形での議論の一つの出発点にもなると考えます。  それから、御参考までになんですけれども、ほかの、谷合先生がおっしゃっていた質問とも関係するんですが、どういうふうに選択と集中をやっているかということをちょっとその関係で述べさせていただきますと、例えばドイツなどは、もう自分たちの中で幾つの国を重点パートナー国とするかといったことを決める、それから準パートナー国とするかと決めて、その中で、じゃ重点パートナー国についてはドイツが比較優位を持つ例えば幾つかのリストの中から三つに絞って支援をしていく、パートナー国については一つに絞ると、そういったことを明確に位置付けています。  それから、イギリスの場合は、国際開発省が財務省と三年間の協約をもって、ニュー・パブリック・マネジメントの中で幾ら予算をもらえるので、その代わりどういった形でMDG達成のために成果を出していくかといったことを約束するわけなんですが、そのときにその成果をモニタリングする国というのを明確に定めているんですね。アフリカでは十六か国あるんです。それがやっぱり重点国になって毎年毎年のレビューで国会にも提出する報告書の中にも書かれるし、国民からも読まれるというふうになっています。ですから、彼らはMDG達成が大事だという法律の下に、DFIDが財務省とそういう約束をして予算をもらい、それを幾つかの国において明確にしながら状況報告している、そういった体制があると。  多分、アメリカは、対外援助法はありますが、そこまでは規定はしていないと思いますが、例えばアメリカの場合は、MCC、ミレニアム挑戦会計といったものをつくり、それによってアメリカが重要とする三つの理念、民主主義、人材、もう一つありますが、その三つの、良い統治ですか、人材それから自由主義経済に基づく市場主義といった、そういったことを達成している国に対しては優先的に贈与の援助をしていくと。  同時に、そうじゃない国においてもUSAIDという開発機関を使って、今は非常に安全保障的な観点が強いですけれども、脆弱国も含めて支援をしていくということで、非常に一つアメリカの理念を守っている国に対して成果重視的にお金を配分していき、同時に脆弱国に対しても支援していくというそういった仕組みがあるということで、やはりある意味で司令塔の役割が非常に明確で、何のために支援をしているのかといったことが非常に明確だということがありますので、私はやはり日本としても今、司令塔それから政府レベルそれから新JICAの誕生といったことでいろんな制度構築がされようとしていますが、やはりその中身についての議論を今こそ行ってほしいというふうに思っております。
  57. 近藤正道

    ○近藤正道君 ありがとうございました。  終わります。
  58. 溝手顕正

    委員長溝手顕正君) 以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は長時間にわたり大変有益な御意見をお述べいただきまして誠にありがとうございました。当委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時十三分散会