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参考人(
川田武司君) アイシン精機の
川田です。
それでは、
外国人の
雇用の現状について御紹介させていただきます。
まず、当社の概要ですけれ
ども、アイシン精機は、一九六五年に
愛知工業と新川工業、これが合併しましてできた会社です。親会社でありますアイシン精機を
中心に百五十八社から成るアイシングループを形成しております。上に書いていますアイシン・エィ・ダブリュからアイシン化工までの五社が当社の中核
企業でして、組合も一緒ですし、また売上げの九五%を占めております。
グループの概要ですけれ
ども、自動車部品でありますドライブトレーン、ブレーキ
関係及びそれのベースとなる素形材部品等幅広くやっております。そのほかに、右端にありますように、住生活エネルギーということでベッドとかミシンとかガスのヒートポンプ、またシャワートイレ等もやっております。
左側の四番目にありますアイシン・エィ・ダブリュ、これは乗用車のオートマチックトランスミッション、これを年間五百八十万台ほどやっていまして、また皆さんよく
御存じのナビゲーション
システム、これを百三十万台ほどやっております。
次に、
事業の概要ですけれ
ども、グループ全体の売上高は二兆七千億円で、たしかこれは全
世界で自動車部品業界では六番目の規模だと思います。ミッションのほかドライブ関連の売上げが四三%を占めておりまして、その次に多いのがブレーキ関連商品です。下に書いてありますように、得意先別の売上高では、トヨタさん向けの売上げが全体の六五%で、それ以外にフォルクスワーゲン、GMとか、ボルボとか、
世界の主要カーメーカーに供給しております。
それと、グローバルの
展開状況を少し説明しますと、北米に三十二拠点、欧州に十拠点、それ以外、中国、豪州、南米で四十一拠点、計八十三の海外拠点で今活動しております。全
世界の
従業員数は、グループ全体で六万六千三百人でございます。
それでは、本論の
外国人の
雇用の
実態について報告をさせていただきます。
折れ線のグラフがあるかと思いますが、折れ線が当社の単独の売上高の推移でして、棒グラフが
従業員の推移でございますが、二〇〇〇年以降、グローバル化の加速等によりまして売上げが急増し、これに対応する形で増員を図ってまいりました。赤色の
部分が正社員、黄色が有期
契約社員ですが、有期
雇用者を
中心に増員し、〇七年現在で有期の
雇用者は五千二百六十人、全体の約三割に達し、その中で約千八百名の
日系人の方が活躍しております。
次のページがその詳細でございます。縦軸に
雇用の
形態と国籍、横軸に職種を区分しておりますが、千八百三十一人の
外国人のうち、有期
雇用者の
技能職が大多数を占めております。本日はこの
日系ブラジル人の皆さんの仕事や生活について御報告をいたします。
まず、
外国人を
雇用した背景ですが、このグラフは得意先の
国内の日当たりの生産台数の推移です。二年間のスパンで、ピークとボトムでも二〇%のばらつきがあり、部品
産業としては、こうした大きな生産変動の幅の中で安定
雇用を
維持していくには、正社員と有期
契約社員のバランスを考慮した要員管理を図っていく必要があります。
また、最近では労使一体となったワーク・ライフ・バランスが
議論されていますが、
労働時間の短縮の観点からも有期
契約社員の活用が必要となってきております。
左のグラフは、労使で月間の残業時間の限度を定める三六協定の推移ですが、社員の健康の視点から、九二年以前は百五十時間あった協定時間を八十時間まで下げてきております。また、最近では、四十五時間以上の残業は年六回までという厚生
労働省のガイドラインを遵守するということもございますので、右の図のように、生産台数が急増する中でも一人当たりの
労働時間、赤線のところですけれ
ども、抑えられるように有期
雇用者を増員して何とかカバーしてきたという
状況でございます。
こうした背景の中で
外国人を含めた形で有期
雇用者を活用してきたわけですが、
日系ブラジル人との付き合いという点では弊社は二十年以上の歴史があります。彼らの協力なくして生産は成り立たないと言っても過言ではないかと思います。
変遷を少したどってみますと、八〇年代の半ばのバブルがちょうど始まりかけたころだと思いますけれ
ども、自動車の生産台数が急増し、空前の
人手不足の中で
日本人の季節工の増員だけではままならず、
日系人の皆さんに
業務の
請負という形で協力をいただいたのがスタートでございます。
九〇年代の初頭のバブル崩壊でいったん
請負をゼロにしますが、九三年以降徐々に生産が増えるにつれて、直接私
どもで
雇用する形で
関係が再開いたしました。以後十五年ほど直接
雇用の有期
契約社員として活躍していただいておりますが、中には、当時よりずっと私
どもで働き、実際に後進の面倒まで見ていただけるような優秀な社員の方たちも存在するということで、職場の推薦もありまして、二〇〇六年度に正社員の
雇用に踏み切ったというわけでございます。
まず、九三年に
請負でなく直接
雇用にした理由でございますが、トヨタ生産方式をベースにかんばん方式で多品種小ロットの生産を行う物づくりをやっております。製造現場の監督者と作業者の密接なコミュニケーションときめ細かな
業務指示が必要でございます。また、職場における固有
技能の伝承や
改善マインドの醸成という視点からも、正社員と有期
契約社員が一体となって物づくりを行うことが必要であり、有期社員活用に当たり、だれに来てほしいかという指名と、日々直接に
業務が指示できると、こういうような形で直接
雇用を選択したわけでございます。
それでは、弊社で働く
日系人の皆さんのプロフィールについて紹介します。
左側の円グラフが年代別の人員ですが、約四分の三が三十代以下であり、平均年齢が三十三・二歳となっています。
右側の図で勤続を見ますと、約半数が一年未満であり、こういった層は主に母国から出稼ぎに来る
人たちで、母国の
事業を始めるとか家を造るなどの目標の金がたまれば帰国するといった短
期間滞在
中心の
人たちです。一方で、三年以上勤めていただいている方も一五%に上り、こうした層は
日本で
一定の仕事と安定した収入を得て、長期滞在や人によっては定住を求める志向の方が増え始め、ここ数年、徐々に勤続年数が延びる
傾向にあります。
続いて、私
どもでどんな形で働いていただいておるかというところですが、左側の円グラフが有期
雇用者の製造現場の作業内容の比率です。
日系人の方は短
期間でも習熟ができるということを前提に職場の配置を行っていて、アルミのダイキャストなど素形材の成形やワーク脱着などの組み付けの作業を
中心に従事していただいております。また、短
期間の
契約を希望する若年層は、特に高残業で高い収入を求める方が多いので、生産負荷の高い素形材職場を
中心に配置をしております。
また、勤務
形態については、基本的には一勤務七時間五十分、昼夜交代制で、生産負荷が高く、また連続稼働が必要な素形材成形職場などでは三組二交代といった変則的な勤務
形態を取っている職場もあります。
個人の生活面ですが、若手が多いものですから、扶養なしの未婚者がどうしても多くなります。最近では、勤続の延びにつれて、左の赤枠にある世帯主の比率も増え、住居を含めた生活全般のケアが必要になってきております。ちなみに、右の写真は西三河地区の県営、市営住宅で、当初はこうした公共住宅にも住まわれていましたが、最近ではこれだけでは物件が不足であり、私
どもお願いしている管理会社さんで一棟を借り、若しくは新築して住んでいただくようなケースも出てきております。
以上、
日系ブラジル人を
雇用し始めました経緯、彼らのプロフィールを紹介しましたが、こうした労務構成の中で、職場の一体感や建設的な風土を醸成するために我々が行ってまいりました活動を
幾つか紹介させていただきます。
これは、ちょっと別紙の方に写真入りのこういうやつがあるかと思いますが、一枚目の写真ですけれ
ども、一枚目にポルトガル語で書かれたものがあります。これは、トヨタ生産方式というのはいろんな標準類が必要なんですね。この標準類でもって仕事をします。そういうことで、今我々の、
ブラジル人の多いところでは、
日本語とそれからポルトガル語の併記ですべて標準類を作って生産指示をやっております。
それから、下は、
ブラジル人の方も最近十七名ぐらい正規の社員になっていただきました。彼らは、
永住権を持っている方、あれは六か月から三年以内ぐらいで試験を受けるようにしていますけれ
ども、これはその試験の風景でして、この中には
日本人の季節工、それから
日本人の
契約社員、それからもう
一つブラジル人、一緒に同じ試験を受けさせています。
日本人の方は毎年百人ぐらい合格するんですけれ
ども、なかなか、ブラジルの方は
日本語のハンディキャップ等がありまして、今年は十名受けまして一人か二人ぐらいしか通っていないと。現在まで十七名の方が正社員になっております。
次のページ、これが試験問題です。読んでいただければ非常に簡単な問題なんですけれ
ども。
それから、次の下の方にバーモスジェントスという、これは
日本語で言いますと、さあ行こうという
意味合いの季刊誌でして、この中で会社の
考え方とかをいろいろ出しております。
それから、次のページ、これが我々のところで、多分余りよそ様はやっていないと思うんですけれ
ども、社員食堂で
ブラジル人の専用の食事を出しております。初めは味がまずいといってなかなか食ってくれなかったんですけれ
ども、最近では完売するというところで、味も良くなってきて非常に人気がございます。
あとは、イベント
関係で、ファミリーフェスティバル、これは年に一回開いております。八月に毎年開いていますけれ
ども、たしか二〇〇二年のワールドカップのブラジルが勝ったときに西尾工場でこんなふうにミニのリオのカーニバルをやったと、こんなところがございます。
それから、あと、次のページに顔が写っていますけれ
ども、この方たちは
ブラジル人の方で、正規社員になっていただきました。彼らは、良くなったことは何ですかと聞きますと、正規社員になりまして仕事に取り組む姿勢が大分変わってきましたと、今まではよく仕事を変わっていましたけれ
ども、正規社員にしたおかげで、仕事に対する姿勢、取り組み方の
考え方が変わってきましたと。この中には、蒲郡で家を建てて立派に生活されている方もお見えでございます。このほか、
日本語教育とかいろんなことをやりまして、極力コミュニケーションの一体感を出そうということでやってまいりました。
こういうことですが、
最後に、
政府の皆様にということなんですけれ
ども、大きく二点挙げさせていただきました。
一つ目は、
外国人の就労に関する規制を緩和していただければと考えます。私
ども自動車部品
産業は、グローバル化が加速する中で、物づくりの
技能を
日本できっちりと
展開していく必要があります。
我が国は、
少子高齢化や高学歴化が進み、優秀な
技能者、特に若い
技能者の確保が難しくなっております。特に私
どもの
東海地方では慢性的な
人手不足が続き、
日本人の有期
契約社員の
雇用も困難な状態にあります。そういうことで我々、ブラジルの方を雇っておるわけですけれ
ども。さらに、私
どもの仕入先さんにおきましても、いろいろ高校新卒の応募を掛けたけれ
ども、二十六名欲しかったんですけれ
ども入ったのは一名だと、そんなふうなところがありまして、結局
外国人に頼らざるを得ないと、こんな
状況になっております。
地域差はあるとしても、早晩
労働力の不足が懸念する中で、既に
日本に滞在し、
就業年齢が達している日系四世の皆さんやその他の国の人々が
日本で働くための就労条件を、
我が国の
雇用情勢の
実態から御
検討をいただければと思います。
それからもう
一つは、先ほど長期滞在を希望する人が増えてきていると申し上げましたけれ
ども、年金制度や
教育など生活のインフラ面で安心して働き続ける制度の整備をお願いしたいと思います。
まず、年金ですけれ
ども、
日系人が
日本で就労した場合、当然
日本の年金制度に加入し、保険料が徴収されます。その一方で、母国に帰国した場合には受給できる脱退の一時金の金額が三年で上限と決まっております。そういうことで、将来帰国する人にとってはそれ以上の保険料が掛け捨てになるために、三年を
一つの契機に帰国すると、そういう方が増えております。
それからもう
一つは、
教育の問題です。勤続年数が延びるにつれて、
日系人の子女の
教育の問題が出てまいります。これも
地域によっては温度差があるようですが。ちなみに、私
どもの駐在員の話を聞きますと、米国ではどんな田舎の公立学校に行っても、英語を母国語としない子女が編入した場合は、専任の教師による補習が行われたり特別のカリキュラムが組み込まれるなど、公立学校の基本的な枠組みの中で
外国人の対応が織り込まれています。管理会社さんから聞いたことですけれ
ども、言葉の問題で登校拒否になり、その結果犯罪につながるケースもあると伺っております。この辺のところは早急な対応が必要かと思っております。
また、将来ブラジルに戻って職に就きたいという子女もおると。そういう子女にとってはブラジルとしての
教育課程を修了していることが必要でありまして、最近ではブラジルの文部省の認可を受けた学校が是非できないかと、そういうところが望まれているという話を聞いております。
以上、私
ども、活躍している
日系ブラジル人の皆さんの
状況を具体例を通して紹介させていただきました。
以上で私からの説明は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。