○
参考人(
池上重弘君) ただいま御紹介にあずかりました
池上と申します。
静岡県
浜松市よりやってまいりました。本当に今日この機会を与えていただいたこと、深く感謝いたします。
それでは、掛けさせていただきます。
私、これから二十分ほど
お話をさせていただきます。お手元の
資料のうち、淡い
クリーム色の付いているA4判横長の
パワーポイント資料、基本的にはこれに沿って話を進めてまいります。それから、もう二枚、もう少しオレンジがかった色の
外国人集住都市会議の概要と書いてあって、もう一枚とじてあるものがございます。これも話の途中で御覧いただくことになろうかと思います。
パワーポイントの字がいささか小さいものですから、場合によっては画面が見えにくいかもしれません。その場合には、お手元の紙の
資料を御確認いただきたいと思います。
それでは、私の話ということで、今日は、
地域における
外国人との
共生という
テーマの下、
静岡県における多
文化共生の現場から、
日系人の課題を中心にという
テーマで
お話をさせていただきます。
まず初めに、私
自身の
立ち位置、ポジショニングについて
お話をさせてください。
ここに
三つ書いてございます。私
自身、
静岡県
浜松市の大学の
教員であります。生まれは実は
北海道札幌市なんですが、
浜松で職を得て十二年になります。その間、九〇年代の半ばから二〇〇〇年代に入って、
浜松市における
外国人の
状況、それに対する施策、様々なことをまさに私
自身が
生活者として見てまいりました。
大変私事にわたって恐縮なんですが、
子供がおります。その
子供たちの
幼稚園時代の友達が
小学校時代、
中学校時代どうなって、
高校進学を果たしたか果たさなかったかということも含めて見ておりますし、私の家のすぐ前の
ごみ捨て場は
外国人の
皆さんも使う、三軒置いて隣が
外国人が集住するアパートである、そういう中で日々
研究教育及び
地域での
実践活動に携わっております。
二つ目、
地域の実践ということですけれども、私
自身は
NPOを主宰したり、特定の
支援活動をしているわけではございません。けれども、
静岡県の多
文化共生推進会議の委員として、また
浜松市や県内の磐田市、掛川市の
共生推進協議会等の座長として、いろいろな立場で
外国人の方々と接している
日本人住民、あるいは
外国人の方で御
活動されている方々との関係の中でいろいろと考えているわけでございます。
また、もう一つ、今日、途中で
お話しさせていただきますが、
外国人集住都市会議というのがございます。二〇〇一年に
浜松市長の主導で立ち上がった
会議ですけれども、この
会議にも二〇〇四年度からアドバイザーとしてお手伝いをさせていただいております。
そういう立場で、
行政の
当事者ではない、全く地元との接点を持たない学者でもない、
地域に
生活しつつ、
行政の
皆さん、
地域の
皆さんと
かかわりを持ちながら
研究教育を展開している、そういう立場として今日は
お話をしてまいります。
また、もう一つ、私の
立ち位置ではっきりさせておかなきゃいけないことは、私
自身は実は
文化人類学、
社会学の
研究者であるということです。また、もう一つ加えるならば、実は元来の専門はインドネシアでありまして、
ブラジルの
研究者ではございません。けれども、フィールドワークを行い、
地域での
活動をしている、ここに
アクターと書いてありますが、
アクターとの
かかわりの中で
地域の問題を考えていきたいというわけです。しかしながら、個別具体的な問題をじっくり取り組んでそれだけを見るのではなくて、むしろその問題を広域的な
広がりの中で俯瞰的にとらえるような、例えて言うとヘリコプターアイとでも言えるような、そういう視点で考えております。
報告の構成、ここに書いたとおり、大きく
三つお話をさせていただきたいと思います。
昨年、二〇〇七年の九月、十月に
静岡県下の十二の町で
外国人実態調査というのを行いました。これは
ポルトガル語の
調査票を使った
ブラジル人対象の
調査ですけれども、
外国人登録、
公立学校経由で千九百二十二部を回収しました。
回収率は三五・三%と決して高くはないんですが、実は
ブラジル人の場合、こういったアンケートへの
回収率は極めて低いです。したがって、三五・三というのはまあまあのところかなと私は思っております。
これについては実はまだ
最終報告書ができていません。今月の末に提出となっていますが、二月四日に
静岡県庁で開かれた多
文化共生推進会議で
速報版を既に報告しております。今日は、その
速報版の中から
定住化にかかわる
ポイントを裏付けるような数字を
静岡県庁の許可を得た上で御紹介したいと思っております。
二つ目は、
地域の課題と
取組であります。
先ほど来申し上げているように、私
自身が
地域の
生活者であるという視点を大事にしつつ、課題の構図を提示した上で、
静岡県における
取組の事例について、ごく大ざっぱですが、御紹介申し上げます。
しかし、ここは何といっても国会ですので、やはり
国会議員の
皆様方に
地域の声をどう届けるかというところが、私、
浜松からやってきた者としての非常に重要なミッションであろうと了解しております。既に、実はこれまでも
外国人集住都市会議というのがございまして、現在二十三
都市あるんですけれども、二年に一度東京で会合を開いて、
地域の声を国政に反映させるべく
規制改革の要望をしたり、あるいはその
会議で
提言を採択したりしています。その話をちょっと今日はさせていただきます。
そして
三つ目、これが今日一番、私、力を入れたいところであります。多
文化共生における
企業の
かかわりという問題です。
なぜ
外国人が
日本に来るのか、なぜ
ブラジル人が
日本に来るのか、一番大きな目的は何といっても就労、つまり働くことであります。しかしながら、今までこの十数年を見てきて、働く場の
当事者である
企業は
外国人の
生活の問題についてほとんどかかわってこなかったという事実があります。
しかしながら、ここ一、二年、すべてとは申しませんが、幾つかの
企業では先駆的な
取組がなされていますし、また
地域の
商工会議所、さらには
経済団体なども多
文化共生の
必要性について明確な意識、認識を持って
提言等をまとめております。そういった
方向性について
お話をすると同時に、一
企業の善意で終わらないで全国に
広がりを持ってこれが進行していくためには、
是非国政レベルでの強い関心、働きかけといったことが必要であるということを
お話ししたいと思っています。
それでは、
静岡県
外国人労働実態調査の
速報版より四点
お話をしたいと思っております。
まず一点は、
定住化志向が強まっているけれども、実は
短期出稼ぎ志向の人も現在でもいるんだということであります。
ここにある
グラフは、青色が
日本での
滞在年数、通算です。そして、赤い色が
静岡県での
滞在年数です。御覧いただいてお分かりのとおり、この部分ですね、二四%、突出しております。十五年から十七年という長い
滞在の人がかなりおります。
日本での
滞在年数は十五から十七年が最も多く二四%、これは
入管法の改正のあった九〇年代初頭に来日した
人たちです。大ざっぱに言うと、十年未満と十年以上で半数ずつになります。
静岡県内に限定してみますと、
日本での
滞在よりも短い傾向があります。また、二年未満の
短期滞在者の比率が高いことから、国内でも違う場所を転々としていることがここからうかがわれます。しかしながら、一方で、十五年以上県内に
滞在する
人たちも二割近くいて、
静岡県内での
定住化傾向も顕著になっております。
在留資格でいうと、九〇年代の終わりぐらいから
永住ビザ取得の条件が緩和され、現在では、私たちの
調査では五〇%が
永住ビザを取得しております。また、
永住資格を持たない者も、その七六%、多くが
永住資格の取得を考えていると答えております。
二つ目、
労働状況はこの二十年間で変わらないということです。
静岡県の
調査ということもあるんですけれども、ほぼ六割が派遣、請負という
間接雇用の形態で働いています。正社員はわずか一四%、
自営業も二%のみであります。母国の仕事を聞いてみますと非常に多様です。
自営業をやっていた人、大きい
会社で働いていた人、いろいろなんですが、
日本に来ると、そのほとんどが
輸送機器関係、
輸送機器に限定しなくても
製造業で働くということで、
日本の側の受皿の環境が大きく
就業先を規定していることが分かります。
また、もっと重要なことは、十数年時間がたっているにもかかわらず、来日時とほぼ現在の仕事、職種、業種、変わらないと、つまり進歩がないということであります。これが今、二〇〇七年の
調査でも裏付けられております。
勤続年数が短い者も四分の一いるんですが、八年以上という長い
勤続年数の者も一五%、これがほぼ
長期滞在の
定住層と重なると思われます。
しばしば話題になる
社会保障の問題見てみましょう。
会社の
健康保険三五%、
国民健康保険二七%、未
加入も二六%と、非常に未
加入が多いわけであります。年金も五割が未
加入です。
労働者の
高齢化も今進んでいて、恐らくもう十年後、十五年後には
生活保護の
受給者としての
外国人という問題が大きくクローズアップされることだろうと思われます。
雇用保険も未
加入が多いです。
次に、
日本語の能力ですけれども、来日前の
日本語能力は、余りできないあるいは全くできないというのが三分の二です。現在の
日本語能力については、お手元の
資料の左側、
オレンジ色、黄色というのがまあまあできるということなんですけれども、漢字の
読み書きとなるとそれがうんと下がっていることがお分かりいただけると思います。
ブラジル人の場合、概して
自己評価は高いというふうに私の
ブラジル人の同僚は話しますが、それでもなお漢字が入ってくると
読み書きに大きな支障があることが分かります。
その下を御覧ください。その下の
グラフです。実は私、これまで長く、
浜松や
静岡県では
ブラジル人の
コミュニティーができているので
ポルトガル語で
生活できるからみんな
日本語は必要と思っていないんだと言っていました。ところが、今回
調査をしてみますと、実に、
ポルトガル語で十分に暮らせるので
日本語要らない、じきに帰るから要らない、わずか〇・五%です。ほとんどいないんですね。
日本語の学習の
必要性は強く認識されているということが分かりました。
次に、
滞在の
長期化、
定住化志向について
お話をいたします。上の方の
グラフは、来日前にどのくらいの予定でいましたかという質問です。これを見ると、一年から三年が四六%、最も多いです。つまり、当初は短期の
滞在予定で来日したけれども、次第に
滞在が
長期化する、
定住化志向が強まるというわけです。
下の
グラフを御覧ください。下の
グラフは、今後どうしますかという意向の
調査です。これを見てみますと、
日本に永住すると明言している者は二割います。さらに、一番多いのは四割で、
日本に長く
滞在するという
人たちです。この
人たちのほとんどが働く年限の多くを
日本で暮らしますし、恐らくかなりの数がこの後、
日本で結果的に永住するだろうと思われます。
日本での貯蓄、していない人が多いです。仕送りもしていない人が多いです。こういったところからも、意識とは別に
定住化傾向が認められると言えようかと思います。
それでは次に、
地域の課題と
取組について
お話をいたします。この点については、既に
先生方も各所で
お話を伺っていると思いますので、私詳細に
一つ一つは取り上げません。
大きく
四つ構図としてまとめてまいりました。
まず、一番の大きな問題は
労働にあります。先ほど来申し上げているように、ここ十数年の
長期滞在にもかかわらず、
間接雇用による
不安定就労が相変わらず変わらないということ、
業務請負あるいは
偽装請負による
製造業現場での
単純労働が圧倒的多数であるということ、そこからくるように劣悪な
労働環境、
労働災害が補償されないというような
状況もあります。
今言ったような
間接雇用に起因するわけですが、
社会保障の面でも、保険への未
加入、そこからくる
医療機関での受診の遅れや、大きな病気、けがのときの
高額負担、さらに、先ほどちょっと言及しました
年金問題等も今後発生してくるものと思われます。
子供の
教育について見ますと、
公立学校では様々な制度、施策、進んではおりますけれども、それじゃ
外国人の親御さんが
子供を安心して通わせる
状況になっているかというと、残念ながらそこまではまだ道が遠いわけであります。
一方、
浜松で
外国人学校を見学されたと伺っておりますけれども、
外国人学校も
授業料が高額で、なおかつ非常に幅があります。つまり、
教員の質、校舎の問題、そういったことを考え合わせると、中には
学校とはとても呼べないようなところも多々あるわけであります。親の将来設計が定まらないために、
子供がどこに軸足を置いて、どこにいかりを下ろして自分の将来設計を描くのか、ここが見えにくくなっている
状況であります。
日本語がある程度できる
子供たちであっても、
学習言語が身に付かないということが多々あります。
先ほど私事として話をしました、
幼稚園のころから私の息子の同級生だった
子供たち、
中学校三年、高校一年、遠州弁といいますけれども、
浜松の言葉はべらべらです。けれども、少し抽象的なことを考えるような学習、思考の
レベルの言語となるとなかなか難しいです。それでも、最近
高校進学が少しずつ増えてはきていますが、やはり
定時制高校への進学が圧倒的多数を占めるという点であります。
一方で、少し明るいニュースですけれども、
大学進学を果たす
子供たちも増えているという点はここで強調しておきたいと思います。しかしながら、その
大学進学を果たした
ブラジル人の
子供たちは、一方で
ポルトガル語がなかなか不十分な
レベルであるという現状も
是非頭にとどめておいていただければと思います。
生活の場面では、
生活習慣の違いあるいは
理解不足によって
文化摩擦のようなものが起きてまいります。
行政サービスへの接近が難しいというようなこともございます。やはりその根本に、青い枠の中ですけれども、
日本語能力の不足あるいは
日本社会についての理解の不足という、
初期段階で本来であれば身に付けておいていただければよいなと思うことが身に付いていないという現状があります。
こうした
状況に対して、これまでの
対応を見てみますと、
日本の場合には
国レベルの政策というよりもむしろ地方での具体的な
対応の方が先行してまいりました。地方
自治体の
取組、
多言語で
対応する
相談員を配置する、あるいは
多言語での情報の提供を行うといったこと、こういうことがあります。
二つ目、
教育委員会や
公立学校の
取組としては、
外国人の比率が一定以上になった場合に、数が一定以上になった場合に
教員の数を増やすという
加配教員の配置であるとか、多
言語対応の職員を配置したり、
学校文書を翻訳したり、さらには
進学説明会をしたりもしています。いますけれども、これもなかなか親御さんみんなに届くような
対応かというと、そうなっていません。
三つ目、ボランティア、
NPO、あるいは
国際交流協会、
地域社会の
取組もここ数年非常に顕著になっております。ここに
外国人向け防災訓練と書いてあります。
静岡県の場合、特に地震の問題、地震への心配というのが大きくて、幾つかの
自治会では
外国人も加わった
防災訓練が進んでおります。
それでは次に、
外国人集住都市会議について
お話をいたします。これについてはお手元の
パワーポイントの
資料と並んでA4判
縦サイズの紙二枚とじてあります。こちらも併せて御覧ください。
外国人集住都市会議というのは、御覧になってお分かりのとおり、愛知、
静岡、群馬、長野、岐阜、三重といった
中部地方を中心とした町であります。
南米系の
日系人を中心とする
外国人住民が多数を占める
都市の
行政あるいは
国際交流協会等で構成しています。
外国人住民に係る施策あるいは
活動についての
情報交換をする、
地域で顕在化する問題の解決に共同で取り組むという面と同時に、
首長会議等を開催して、国や県及び
関係機関に
提言をしたり、先年などは
規制改革要望を出したりしてまいりました。二〇〇一年、十三
都市で発足し、二〇〇七年、二十三
都市が参加、今年は更にもう少し増えると聞いております。
この
集住都市会議は、二〇〇一年、
浜松市で会合を開きまして、
浜松宣言及び
提言というのを採択しました。大きくそこにある
三つなんですけれども、
公立学校での
指導体制あるいは就学の充実など
教育をめぐる問題について、
医療保険制度あるいは
労働環境の整備など、そして
外国人登録制度の見直しなど手続に関することなどが
提言されています。
その後、二〇〇四年
豊田宣言、そして二〇〇六年よっか
いち宣言ということで、基本的には
浜松宣言で出た枠を踏襲して、そのときの問題に引き付けて国へ向けての
提言を行うという形になっております。特に二〇〇六年よっか
いち宣言は、
子供たちの
教育を
テーマに御覧のような一から五のようなトピックについて
提言を進めてまいりました。二〇〇七年みのかも二〇〇七
メッセージということで、すべての人が参加する
地域づくりを
テーマにということで
三つの
ブロックに分かれて、
地域コミュニティー、
自治体と
企業との連携、
外国人児童生徒の
教育という
三つの
ブロックに分かれて、
研究調査、
提言への準備を進めております。
今年二〇〇八年は日取りが決まりました。十月十五日水曜日であります。
是非メモを
お願いしたいんですが、十月十五日水曜日に東京で
首長会議が開催されます。場所は未定ですけれども、この近辺と聞いております。
是非先生方にも御出席をいただいて、地方のダイレクトな声を受け止めていただければなと思っております。
今、私、市の
レベルの話をしましたけれども、県の
レベルでも三県一市、愛知県や三重県など三県一市のまとまりが二〇〇四年にできまして、二〇〇七年には六県一市に発展、要望を出したりもしております。基本的には、この
集住都市会議が訴えかけるような
枠組みを県の
レベルで訴えていくというふうになっております。
地域における多
文化共生の実現にはいろいろな
関係者の
連携協力が必要であります。ここに書いてあるのは、実はみのかも
メッセージの最後の部分を私なりに図にしたものですけれども、
自治体だけでは駄目です。
自治会だけでも駄目です。今一番注目を浴びているのはこの
企業の
取組であります。
企業との連携というのがどうなされていくか、ここは非常に関心を呼んでおります。また、
外国人住民自身も、これまでのように支援される側ではなくて自立して
社会に参加する側としてどう
地域社会に向かっていくかというところも今注目を浴びています。
それでは、最後のパートです。多
文化共生における
企業の
かかわりというところです。
自治会だけではやり切れないという言葉は、実は昨年度、二〇〇六年度
総務大臣表彰を受けた
静岡県磐田市の
自治会長さんの言葉です。そこは半分が
外国人という
公営住宅を擁するところなんですけれども、
防災訓練などを
外国人の住民とも一緒にやっているという、そういうところですが、非常に先駆的なところですが、やはり
自治会だけではやり切れないという声が出てきます。
地元で暮らしていると、
外国人が制服を着て道路で待っておるわけですね。朝、
派遣会社の車に乗るのを待っているわけです。どの
会社の制服か、みんな知っています。小学生も知っています。そういった、ここに
本体企業と書いていますけれども、地元の主導的な
企業の
社会的責任に対して、
地域住民は非常に厳しい目を向けているという点をお伝えしたいと思います。
一方で、
日本経団連も
外国人の
生活支援へ向けて積極的な姿勢を示しております。
去年の今ごろ、二〇〇七年の三月に出た第二次
提言においても、一歩踏み込んで、直接
外国人材を雇用していない
企業でも、子
会社、
関連企業の雇用がある場合には連帯して責任を果たすべきであるということを明言しております。また、
生活支援に向けて
企業が資金を拠出するスキーム、
枠組みをつくる、そのことも検討が必要だということを
経団連が明記しております。
また、
地方レベルでも、豊田や
浜松の
商工会議所が
外国人雇用企業のガイドラインを作っております。二〇〇八年一月、出たばかりですが、東海の三県一市が地元の
経済団体と合わせて、
外国人労働者の
適正雇用と
日本社会への適応を促進するためにという憲章を出したりしております。
先生方も御覧になられたと思いますけれども、今
静岡県では、
企業の中で
日本語を学んでもらうという
取組が始まっています。A社というところは六千人規模のうち
外国人七百人。直接雇用の
外国人に
日本人の社員が
日本語を教えるという、非常に興味深い
取組をしております。B社は従業員千人のうち派遣の
外国人百四十人。そこでは、
浜松の
国際交流協会と連携した
日本語教育の先駆例が展開しています。
また、
輸送機器の大手
企業の担当者と私、ある機会に話をしたところ、請負なので
企業が直接教えるというのは難しいと。けれども、場所を提供したり、あるいは請負
会社に対して
日本語を学んだ従業員を入れてほしいというふうな
お願いをするという点は可能であると。
こういうふうに、
企業内での
日本語教育について、
地域にもあるいは
企業にもメリットがあるんだ、当然
外国人自身にもメリットがあるということが認識され始めております。
最後になります。全国的な
取組に向けてということです。
浜松の
商工会議所も二〇〇七年、ガイドラインを作りました。しかし、ある公の場でその
商工会議所の会頭さんが、なかなか一つの
企業だけ先んずるというのは難しいんですよ、全国一律に用意ドンであればいいんだけれどもというふうに言っておりました。なかなか全国一律の用意ドンができない。是非、
国レベル、全
国レベルで
取組を進めるために、
経済団体のイニシアチブと並んで国政
レベルの問題提起、問題の共有、働きかけ、こういったものが必要であろうと思っております。
かつて公害の時代に環境に配慮した
企業に
社会的な評価が高まりました。今、環境に配慮するのは
企業にとって当たり前のことです。同じように今、人の処遇に関して
企業の姿勢は問われています。人に配慮した
企業に評価が高まって、あと十年、二十年して人に配慮するのは当たり前の
企業姿勢だというふうに考え方が変わっていくといいなと思っております。
一方で、多
文化共生というのは、実は
外国人施策にとどまらないということを最後に申し上げたいと思います。これは
外国人を含んだ
地域社会の在り方を構想することであり、つまりは
日本の
社会をどうつくっていくか、どう変えていくかという
日本社会のミッションであるという考え方、これを
是非先生方にも共有していただきたいと思っています。
外国人と受入れ国の両方が歩み寄って
外国人の権利と義務を保障する、そして
社会参加を実現する、
日本の
社会の側も
外国人を迎え入れて活力を得て、
地域の産業が、
社会が、文化が発展していく、そういう統合政策こそ今必要であるということを
お話しさせていただきました。
御清聴ありがとうございました。