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2008-05-27 第169回国会 参議院 財政金融委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年五月二十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十二日     辞任         補欠選任      森田  高君     前田 武志君      石井 準一君     田中 直紀君      森 まさこ君     舛添 要一君  五月二十三日     辞任         補欠選任      前田 武志君     森田  高君      舛添 要一君     森 まさこ君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         峰崎 直樹君     理 事                 大久保 勉君                 辻  泰弘君                 円 より子君                 愛知 治郎君                 田村耕太郎君     委 員                 尾立 源幸君                 大塚 耕平君                 川合 孝典君                 川崎  稔君                 富岡由紀夫君                 平田 健二君                 水戸 将史君                 森田  高君                 横峯 良郎君                 小泉 昭男君                 椎名 一保君                 中山 恭子君                 林  芳正君                 森 まさこ君                 荒木 清寛君                 白浜 一良君                 大門実紀史君    国務大臣        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融)        )        渡辺 喜美君    副大臣        内閣府副大臣   山本 明彦君        国土交通大臣  平井たくや君    事務局側        常任委員会専門        員        大嶋 健一君    政府参考人        法務大臣官房審        議官       始関 正光君        財務大臣官房長  丹呉 泰健君        国土交通大臣官        房審議官     川本正一郎君    参考人        日本銀行総裁   白川 方明君        日本銀行理事   山口 廣秀君        日本銀行理事   水野  創君        日本銀行理事   山本 謙三君        預金保険機構        理事長      永田 俊一君        独立行政法人都        市再生機構理事        長        小野 邦久君     ─────────────   本日の会議に付した案件政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく  通貨及び金融調節に関する報告書に関する件  ) ○金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る五月二十二日、石井準一君が委員辞任され、その補欠として田中直紀君が選任されました。     ─────────────
  3. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として法務大臣官房審議官始関正光君外二名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、参考人として日本銀行総裁白川方明君、同理事山口廣秀君、同理事水野創君、同理事山本謙三君、預金保険機構理事長永田俊一君及び独立行政法人都市再生機構理事長小野邦久君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 尾立源幸

    尾立源幸君 おはようございます。民主党の尾立源幸でございます。  今日は、白川総裁を始め日銀の皆様には、ありがとうございます。  それでは、早速でございますので、質問を始めさせていただきたいと思います。  まず最初に、白川総裁に決まるまでなかなか国会の方も最終的な意思決定ができなかったわけでございますが、結果的にはさしたるマーケットに大きな影響混乱も生じさせなかったのかなと思っておりまして、その点は、我々の責任として、大変なマーケット混乱を起こすようなことになれば国会のまた責任を問われますが、そういうこともなかったということで、ちょっとほっとはしておりますけれども、ただ、まだ次に決めていかなきゃいけない人事案件もございます。そういう意味で、現在空席になっております副総裁人事、また審議委員のこの方々について、これから決まっていくことだと思うんですけれども。  その中で、昨日、この審議委員の候補に池尾教授がということで、これまた私たちが常々強く言っております議院運営委員会でこの提示がなされるまでは事前に政府の方で人事案件を漏らさないようにということを強く言っておるわけでございますが、またしてもこれが破られたということで、これ日銀総裁ではなく、政府には強くまた抗議をしておきたいと思います。  そういった中で、副総裁人事ということは、これはまだ我々も今の時点では分からないんですけれども、これも憶測ではございますが、空席が長期化するのではないかというふうに、こういうふうにも報じられております。そんな中、日銀をお預かりになっていらっしゃいます総裁として、この副総裁人事空席化、決まらないということに関しましてどのような見解をお持ちなのか、率直にお聞かせをまずいただければと思います。
  9. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  副総裁を含めまして政策委員会任命は、これは日銀法規定に従いまして政府任命し、両院の同意を得て決定されるというものでございます。  したがいまして、日本銀行総裁という立場でこの件について具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。  そのことを申し上げた上でということでございますけれども、政策委員会メンバーが欠けているということは、これは異例でございます。日本銀行業務を円滑に遂行していくという上でも、それから金融政策決定に当たり多様な意見を吸収してその上で決定をしていく意見多様性という面から見ても、これは望ましくないというふうに思っております。  ただ、日本銀行を預かる総裁という立場で考えますと、どのような事態になりましても、結果として日本銀行の円滑な業務が損なわれたり、あるいは金融政策判断が間違うということは、これはあってはならないわけですから、私としましては、西村副総裁それから他の審議委員と力を合わせて、日本銀行の機能がいささかも損なわれることのないように最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。
  10. 尾立源幸

    尾立源幸君 ありがとうございます。  我々も、また提示があれば早急にその決定に参加をしてまいりたいと思います。  次に、今回のメーンでございます展望レポートについてお聞かせをいただきたいと思います。  今回の展望レポート、少し中身が変わっております。特に、各政策委員経済物価見通しが上振れまたは下振れする可能性について想定した確率分布を集計したリスクバランスチャートというもの、これが盛り込まれておりますが、このチャートを導入したまず意図を改めて御説明をいただきたいと思います。  また、物価につきまして白川総裁は、五月十二日の都内での講演で、原材料価格上昇などによって経済情勢が大きく変化した場合には金利を引き下げる方が経済持続的成長に貢献する場合もあると、こういうふうに述べたと報道されております。御承知のとおり、この展望レポートにも、国際的に原材料価格が上がって、それが足下の景気減速につながっているという認識が示されております。そういう中で、国会、これまた皆さん方に注目をされました四月のガソリン税引下げ、この暫定税率が廃止されましたこと、このことがどの程度物価影響を与えたのか、日銀白川総裁立場からお教えいただければと思います。  二点でございます。
  11. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  最初に、展望レポートで今回リスクバランスチャートというものを導入したことから御説明いたします。  多少、ちょっと前置き的な話になりますけれども、日本銀行は半年に一回、先行き経済物価見通しを公表していくということをやっておりまして、それが展望レポートでございます。  基本的に経済物価のメカニズムを中心に記述しておりますけれども、参照的に参考数値として、政策委員会メンバーそれぞれが先行き成長率あるいは物価上昇率をどのように見ているかというものをこれ掲げております。従来は、これは各委員一つ数字として、例えば成長率は一・五%であるとかあるいは二%であるという、一つの点として数字を表しておりました。しかし、実際には、経済先行き予測につきまして、一〇〇%これについて確実に実現するわけではなくて、非常に幅のあるものでございます。したがって、幅のある予測であれば幅のあるものとして出した方が我々の見方を正確に表現できるというふうに思いまして、それぞれの見通しについて、確率分布といいますか、中心値平均値を真ん中にどの程度バランスをしているのかというものを、これを出しまして、これを政策委員会全体として集計したもの、これをリスクバランスチャートという言葉で呼んでおりますけれども、これを出しました。  これを今回初めて出しましたのは、また後ほど御説明する機会もあろうかと思いますけれども、現在、経済物価先行きをめぐって非常に不確実性が高いという状況でございます。ひときわ不確実性が高いということですから、今回は明示的にその不確実性を先ほどのリスクバランスチャートで示した方がいいというふうに思って、今回これを導入したものでございます。  少し具体的に申し上げますと、二〇〇八年度から二〇〇九年度にかけまして相対的に蓋然性が最も高いと判断しました見通しでございますけれども、成長率潜在成長率並み、すなわち一%の半ばから後半という姿を想定しています。物価については一%程度という伸びを予想しました。しかし、先ほどの不確実性でございますけれども、第一に、サブプライムローン、住宅問題に端を発しました国際金融資本市場の動揺や、あるいは、そのことと関連していますけれども、米国経済に不確実性が大きいということ、それから、高値を更新しています原油価格に代表されますように、国際商品市況先行きについても非常に不確実性が高いというふうに判断しております。このように経済物価についての不確実性が高いということで、先ほどのリスクバランスチャートを導入いたしました。  これ、もちろんこれだけがすべての方法というわけではございませんけれども、こうしたリスクバランスチャートも含めて、我々自身経済中心的なシナリオと、標準的なシナリオと、それにどういうふうなリスクを我々が特に重視しているのかというものをお見せしたいということでございます。  今回は、景気については特に下振れ方向リスクが大きいという判断でございまして、このチャート上も、分布を書きますと、左の方、つまり成長率が低い方に傾いた、そういう分布になっております。  それから、二つ目の御質問でございますけれども、物価が上がる過程でも場合によって金利引下げが必要なことがあり得るということを申したことでございますけれども、これはごく一般的な整理として申し上げたわけでございますけれども、景気とそれから物価が同じ方向に変化するとき、これは金融政策上の対応は簡単でございますけれども、景気物価がそれぞれ異なる方向、つまり景気は悪化するけれども物価が上がるというような局面において、金融政策はどう対応すべきかということを一般論として申し上げました。  石油価格が上がるような、いわゆる供給ショックの場合でございます。これは、海外に対して購買力が移転するという意味で国内的には景気悪化要因、しかし物価という面ではこれは上昇要因でございます。詳しい説明は省略いたしますけれども、この景気物価が相異なる方向を示すときには、最終的には中央銀行として物価安定の下での持続的な経済成長を実現するという我々自身に課せられた使命に照らして判断をしていく必要があると、場合によっては金利引上げが、場合によっては金利引下げが必要であるというその筋道を説明したものでございます。  それから、暫定税率でございますけれども、今回の税率変更は、四月単月に限って見ますとこれは消費者物価を押し下げる要因、五月以降はその要因が消えるということでございます。ただ、いずれにせよ、金融政策の運営上は、ごく一時的な物価動きということではなくて長期的に見てどういうふうな動きをするのかということでございます。  そういうふうに考えますと、今回のような間接税変更といったごく一過性特殊要因につきましては、この要因を除去した上で基調的な経済物価動きを見ていく必要があるというふうに判断しております。
  12. 尾立源幸

    尾立源幸君 暫定税率は非常に短期的なものだったので、我々は長期的なものということを望んでおったわけでございますが、そういう意味では除去されてしまうということで非常に残念でございます。  それでは次に、日銀独立性についてでございます。  白川総裁は、参議院の議院運営委員会での所信聴取の際に、独立性について政府と十分な意思疎通を図る必要があるが、最終的には日銀金融政策について自主的に判断すると述べられております。全く理念としてはそのとおりだと私も思いますが、独立性制度的にどのように担保していくべきなのかについてこれから少し議論をさせていただきたいと思います。  ちょうどタイムリーに、総裁教授時代にこの本でき上がったということで、三月の十七日の出版でございます。「現代の金融政策」というタイトル、川崎議員はもうお買いになったということで、私は図書館から借りてきたんですが、六千円ぐらいでちょっと高いと言っておりましたけれども、この中で非常に独立性についてすばらしい議論がされておりますので、この点をちょっと深掘りをさせていただきたいと思います。  今お配りをさせていただいておりますのが、そのコピーをさせていただいておりまして恐縮でございますが、BOXという囲みで中央銀行独立性指数というすばらしい研究成果でございます。この中で、独立性についてOECD加盟中央銀行独立性指標という表ですね、この中で、中央銀行政治的独立性を測る指標については総裁委員会メンバー任命任期委員会への政府出席がないなどの基準によって中央銀行政治的独立性を測っておられますが、これらの基準には、今申し上げたような基準独立性を測る上でどのような意味があるのか、少し御教授いただければと思います。
  13. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えします。  最初に、この独立性指数IMFエコノミスト各国中央銀行制度を比較するときに使った指数でございます。  済みません、私自身ということではもちろんございませんけれども、このIMFエコノミストがどういう観点で独立性を測ったのかということでありますけれども、ちょっと大学のゼミ風になって恐縮でございますけれども、大きく分けて、この図でございますけれども、右の軸にはエコノミック・インディペンデンス、それから縦軸の方にはポリティカル・インディペンデンスという言葉が書いてございます。  独立性を担保するものとして二つの側面に分けているわけですけれども、エコノミック・インディペンデンスというのは、これは中央銀行政府に対して直接信用を供与するという道が開かれていますと、その分独立性が、幾ら決定権中央銀行にあっても実態的に独立性が阻害されてしまうおそれがあるということで、それに関係するものをエコノミック・インディペンデンスという指標でくくっております。  他方、縦軸ポリティカル・インディペンデンスとかあるいはポリティカル・オートノミーと呼ばれるものでございますけれども、これは、そこの参考に書いてございますけれども、例えば、上から二つ目がそうですけれども、総裁任期が五年超であるということ、これは総裁任期があるいは政策委員会委員任期が短いと、それだけ中長期的に見た物価安定を実現しにくくて、どうしても短期的な視野に流れやすいということで、一般論として言うと長い方が独立性が高いということでございます。  あるいは、金融政策変更政府の承認が必要かどうかと。必要があれば、その分独立性が下がってくるということになります。あるいは、政府意見が対立した場合に、中央銀行立場を強める法的保護規定が存在するとか、それぞれ各国状況に応じた規定がございますけれども、それぞれ一応金融政策決定するということについて独立性を高めるというふうに考える指標を並べたものでございます。  ただ、こういう指標は、どれを中央銀行独立性を実態的に支えるものとして重要と考えるか、実は各国状況によって違っております。そういう意味で、これはあくまでもIMFエコノミストの試算ということでありまして、私としましては、この本で申し上げたことは、この十数年間、各国とも中央銀行独立性を強化する方向制度改正を進めてきたということに力点があるわけでございますけれども、そういうものとしてこの表を掲げております。
  14. 尾立源幸

    尾立源幸君 ありがとうございます。  この種の指数にどの程度妥当性があるのかどうか判断するほど私にはちょっと知見がないので何とも申し上げられませんが、恐らく理論派白川総裁が著書にわざわざ引用されている、掲載されておられることを考えると、相当な妥当性があるのではないかと私は思っております。  そんな中で、我が国中央銀行ポリティカル・インディペンデンス政治的独立性は、八ポイント中なんでしょうかね、満点は八ポイントと考えてよろしいんでしょうか。その中、一ポイントでございまして、OECDの中では最低。それで、左側にエマージング諸国発展途上国というふうにも書いてございますが、途上国平均三・四でございますが、これも大きく下回っております。  こういう状態で政治的独立性について、最終的には日銀が自主的に判断するという精神論だけで本当に日銀独立性が担保されるのかどうか、守れるのか、私はこの表を見たとき大変ショッキングな思いでございまして、少し考えていかなきゃいけないのかなと。これは委員皆さんもこの表を見ていただくと、一つ指数ではございますが、相当、何かやはり仕組みとしてもう少し担保をしていかなきゃいけない部分があるのではないかというふうに思っております。  そういう意味で、総裁のお口から、御自身のお口から直接はなかなか言いづらい部分もあると思うんですが、一般論として日銀独立性を向上するためにはどんなことをしていけばいいのか、例えばで結構ですので、この表を参考にしながら教えていただけませんでしょうか。
  15. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央銀行金融政策独立性ということは経済物価の安定を図っていく上で非常に重要な原則であると思います。  独立性をどう担保していくかということでございますけれども、これは日本銀行に限らずどの国の中央銀行もそうですけれども、最終的に独立性のよりどころというのは、中央銀行が的確な判断をしていく、その結果、経済物価が安定していくという実績が積み重なっていくということが最終的にその独立性を支えていくというふうに思います。  私としては、九八年の日銀法改正によって日銀独立性が強化されました。その下で日本銀行自身がしっかりとした政策運営を行っていく、それから政策の根拠をしっかり説明していくことを通じて、つまり実績を通じて独立性を更に実のあるものにしていきたいというふうに考えています。
  16. 尾立源幸

    尾立源幸君 具体的なことについては御自身の口からはなかなか言えないのかなと思いますので、私の方から申し上げさせていただきますと、これは当然世界の中で多くのプロの方が御覧になっている論文でございますし、その指標だと思います。そういう中で、わざわざポリティカル・オートノミー指数の比較ということで八項目が挙げられておるわけですよね。欧州中央銀行については、こういった八項目についてそれなりの形式的な外形的な独立性を担保するような措置がとられているということで、日本だけ丸が一つということでございまして、やはりこれを見ると精神論だけではうまくいかないのではないかなと、このように思います。  そういう意味で、例えばその最後の、政府意見が対立した場合に、中央銀行立場を強める法的保護規定が存在する、さらには、委員会への政府出席がない、こういうことも他の国々では当たり前のように行われておることがなぜされていないのか、改めてちょっとその点お教えをいただけませんでしょうか。それに代わるような何かいいものが日本我が国には存在するのか、制度として何かあるのか、その辺、もしあるなら教えていただきたいと思います。
  17. 白川方明

    参考人白川方明君) 今御指摘の具体的な点ですけれども、この表の最後のところにあります政府意見が対立した場合に、中央銀行立場を強める法的保護規定が存在する、確かに欧州中央銀行法等を見ますとそうした規定がございます。  ただ、現在の日本銀行法でも、金融政策決定については、これは日本銀行自主性を尊重するということが、これは法律的にはっきり書かれております。そういう意味で、日本銀行自身は様々な意見を聴いた上で、その上で最後日本銀行判断において自主的に行うということが現に法律に書かれていますから、この条項がないことが我々自身金融政策をやっていく上で非常に不都合になっているということでは私はないと思っています。  それから政府との関係、これは、もちろん各国のいろんな状況に応じていろんな仕組みあるいは慣行ができております。例えば、政府との関係でいきますと、現在は政府が、日本銀行の場合は政府を代表する方が日本銀行金融政策決定会合出席意見を述べる、その意見はすべて議事要旨に出して公表していくという非常に透明なプロセスが用意されております。海外中央銀行では政府の人が出席するということはないケースも多いですけれども、しかし日本の場合、政府出席するけれどもこの透明なプロセスがあります。したがって、政府の方が金融政策について意見を言われるときにはこの仕組みを活用していくということ、これは逆に透明な仕組みでございます。  そういう意味で、制度がそれぞれ完全に一対一で対応していかなければならないということではなくて、その精神において独立性を高めていくような運用を更にしていくということが大事だというふうに思っております。
  18. 尾立源幸

    尾立源幸君 分かりました。  細かくお聞きすれば運用面、精神面でということでございますが、客観的にこういう形ではなかなか表せられないということで、この点、日銀独立性については今後また議論をさせていただいて、更に独立性を高めるような方策についても、我々政治家も考えていきたいと思っております。ありがとうございます。  それでは次に、都市再生機構の方にお話をお伺いしたいと思います。  まず、先週の月曜日でございますが、夕方のニュースだったかと思いますが、都市再生機構の賃貸住宅の多くが登記されていないという問題がテレビで報道をされておりました。  まず、賃貸住宅の総数と、総数というのは戸数じゃなくて何棟かということですね、そのうちどの程度が登記されていなかったのかについて御説明をいただきたいと思います。さらに、普通、固定資産税というのは登記とともに、よく税務署なんか、あと市区町村等々がその登記を見て新たに建物が建ったなということで固定資産税を賦課するような、こういう仕組みもございますが、こういうふうに登記がなされていない場合、しっかり固定資産税は皆さん方の方でお支払いになっていらっしゃったのか、その点についてもお聞きをしたいと思います。
  19. 小野邦久

    参考人小野邦久君) お答え申し上げます。  私どもの賃貸住宅の棟数でございますけれども、全体で一万七千四百棟でございます。このうち、現在確認調査中、整理中でございますけれども、未登記住棟はおよそ一万六百棟、全棟数に占める未登記住棟の割合、棟数の割合はおよそ六割ということでございます。  こういう表題登記、当時、表示登記でございますけれども、これが行われていない物件が多数あるということは大変誠に申し訳ないと、違法状態でございますので誠に申し訳ないと思っているわけでございまして、現在、法務当局とも御相談、御指導をいただきながら、違法状態の早期解消に向けて全力で取り組んでいるところでございます。  なお、二点目のお尋ねの固定資産税等の公租公課、この問題でございますけれども、これは私どもUR賃貸住宅を造りました完成の都度、課税当局に賃貸住宅の図面等をお渡しをいたしまして、これによって現況を申告をいたしております。これに基づく課税台帳等によりまして、毎年度確認した上で税務当局から納税の督促が来るわけでございまして、未払等は一切ないということでございます。
  20. 尾立源幸

    尾立源幸君 ありがとうございます。  それでは、今度法務省にお聞きしたいと思います。住宅を建設をした際には登記をするということが不動産登記法上の義務になっていると思いますが、住宅完成後、いつまでに何をしなければならないのか、またそれを怠った場合はどのような罰則があるのか、御説明をいただけますでしょうか。
  21. 始関正光

    政府参考人始関正光君) お答え申し上げます。  今委員が御指摘のとおり、住宅を建設された際には表題登記をしていただく必要があるわけでございますが、この登記の申請は所有権の取得の日から一月以内にしなければならないということになってございます。  また、申請をすべき義務がある者がその申請を怠った場合につきましては、十万円以下の過料の制裁の制度がございます。
  22. 尾立源幸

    尾立源幸君 この一万六百棟未登記のものは一か月以上当然たっているんですけれども、そういった場合、過料等々についてはどのようになるんでしょうか、法務省。
  23. 始関正光

    政府参考人始関正光君) お答え申し上げます。  一般論として申し上げることになりますけれども、登記官が申請義務がある登記がされていないことを知った場合には、申請の義務がある者に対しまして不動産登記準則の規定に基づきまして建物表題登記の申請を催告するという手続を取ることになってございます。そして、催告を受けてもなお登記の申請がされないというような悪質な場合には、不動産登記法の規定に基づきまして過料の制裁を科する手続を取るということになります。
  24. 尾立源幸

    尾立源幸君 そうすると、登記官が知ってからというのが一か月の起算の始まりだということですか、過料を加える。
  25. 始関正光

    政府参考人始関正光君) 実務の状況としてはそのとおりでございます。
  26. 尾立源幸

    尾立源幸君 そうすると、登記官はいつ知って、今どのように都市再生機構の方にこの件を督促をされているんでしょうか。
  27. 始関正光

    政府参考人始関正光君) 先ほど都市再生機構の方からお話がありましたように、件数が非常に膨大でございまして、先般のテレビ報道で全体像として非常に多くの未登記があるということが分かった状態でございますので、まだ個別具体にどの物件がどういうふうな状態かというのは、今事情をお伺いし始めたところでございますので、これからということになります。
  28. 尾立源幸

    尾立源幸君 じゃ、まだ全体を把握されていないと、すなわち登記官が知ったということになっていないということですか。
  29. 始関正光

    政府参考人始関正光君) そのとおりでございまして、全体を知ってから催告をするということになります。
  30. 尾立源幸

    尾立源幸君 じゃ、一棟だったらすぐ分かるけれども、一万棟だったら分からないので、全体が分かるまでは知らないという認識なんですか。
  31. 始関正光

    政府参考人始関正光君) その知る知らないというのは、それぞれの建物一棟について知る知らないということになると考えております。登記官、それぞれ登記所ごとに建物を登記していただくことになりますので、各登記官が認識した時点で催告をさせていただくということになろうかと思います。
  32. 尾立源幸

    尾立源幸君 それでは、違法状態が続いておるわけなんですけれども、スケジュール、いつまでにこれを知るのか教えてください。
  33. 始関正光

    政府参考人始関正光君) ただいまの点につきましては、都市再生機構から現状の報告を今受け始めたところでございますので、これをしっかり受けて実情を把握した上で、円滑に登記がされるようにしていきたいというふうに考えております。
  34. 尾立源幸

    尾立源幸君 いつまでにとお聞きしておるんです。
  35. 始関正光

    政府参考人始関正光君) 何しろ件数が膨大であります上に全国に及んでいるものですから、今の時点でいつまでということは申し上げられません。
  36. 尾立源幸

    尾立源幸君 何か月なのか、一年なのか、三年なのか、どのぐらいですか。
  37. 始関正光

    政府参考人始関正光君) 現時点ではまだ何とも申し上げられません。
  38. 尾立源幸

    尾立源幸君 じゃ、いつそれは何とか申し上げられる状態になるんですか。
  39. 始関正光

    政府参考人始関正光君) 何度も申し上げて恐縮でございますけれども、都市再生機構の方で今お調べいただいて順次登記所に相談していただくという、これから相談していただくという状況でございますので、今の段階では何とも申し上げられないわけでございます。
  40. 尾立源幸

    尾立源幸君 理事長、いつまでに全貌を法務省、登記官に明らかにできるんですか。
  41. 小野邦久

    参考人小野邦久君) 具体的な棟数、未登記の状況等については、今全力を挙げてやっておりますので、少なくも六月末までには全体の概数をつかみまして、具体的な是正の方向で法務当局に御相談をしたいというふうに思っております。
  42. 尾立源幸

    尾立源幸君 理事長、さっき一万六百とおっしゃったじゃないですか。何でそれ、今分かっていらっしゃる一万六百、すぐお出しすれば分かる話じゃないんですか。
  43. 小野邦久

    参考人小野邦久君) 具体的な精査をいたしませんと、一万七千四百あることは分かっておりますけれども、これが未登記、これは登記してあるということを確認するということを全支社を今通じてやっておりまして、正式にこの数だということを確定するのはしばらく時間が掛かる、支社別にどういう、法務局ごとに幾つということを確定していくのは時間が掛かるわけでございまして、なるべくそれを早急にやって、法務当局に御相談をしたいというふうに思っております。
  44. 尾立源幸

    尾立源幸君 私の聞き間違いなのか、委員皆さんもどうか分からないんですけれども、最初聞いたとき、一万七千四百棟あって一万六百が未登記で、それは六割ですよとおっしゃったじゃないですか。それを、何をまた確認しなきゃいけないんですか。分かっているんじゃないですか、一万六百と。
  45. 小野邦久

    参考人小野邦久君) 答弁の最初に申し上げましたものは概数でございます。現在、整理統計中、調査中でございまして、およそこのぐらいだろうという数字でお話をしておりまして、確定の数字ではないんでございます、支社別に大体このぐらいということで。  この問題が発覚しましてからもう十日ぐらいたつわけでございまして、大変申し訳ないと思っておりますけれども、今全力を挙げて具体的な数値というものと、具体的に支社別、法務局別にどこにどのくらい未登記の建物があるのかということの確定作業をいたしておりまして、その確定作業が終わった後、法務当局とも御相談をして、どういう嘱託登記をしていくのか、これは具体的な図面等が全部必要でございますので、そういうものをきちっと、所在とあれを把握した上で御相談をしていくということになります。
  46. 尾立源幸

    尾立源幸君 当然、税金もこれまで使ってきた独立行政法人都市再生機構、このようなずさんな管理。何ですか、これは。こんなの通常の仕事の範囲じゃないんですか。まずそのことを強く申し上げたいと思います。  そしてもう一点、別の観点から申し上げますと、独立行政法人に移行されたときに登記を一部されているんですよね。わざわざ自分の方から登記申請をされています。じゃ、なぜ一部はして一部は残したんですか。四割はして六割は残しているんですか。そして、理事長、そういう行為をやったということは、未登記であれば違法だということが分かっていたからじゃないんですか。やらなきゃいけないと思ったから四割はやられたんですよね。途中で何でやめちゃったんですか。それともう一つ、いつ理事長は未登記だという認識をされたのか、その点も、三点教えてください。
  47. 小野邦久

    参考人小野邦久君) まず、なぜやめたかということでございますけれども、今のところの調査では、未登記の状態は大体四十年の前半から四十年代の末に建てました私どもの賃貸住宅について起こっております。その後も、五十年代あるいは六十年代のものでも未登記のものもあるんでございますけれども、これは比較的登記をしているものの方が多いと、こういう状態になっておりまして、やっぱり私どもの賃貸住宅でございますから、これについて例えば所有権を争うということは余りないものでございますから、我々がお客様に賃貸住宅として供給をするということと、それから税金は、これは税務当局からの課税、納付命令によってきちっと図面等を提供して納付しておりまして、遵法精神がなかったということではないと思いますけれども、実務上支障がないというので四十年代のあれからやめてしまったと、こういうことではないかと思っておりまして、この点については大変反省をいたしております。  そういう点で、今後、税金の問題はないわけでございますけれども、こういうものの違法状態の是正措置をとにかくなるべく早くやっていこうというふうに思っております。
  48. 尾立源幸

    尾立源幸君 理事長、いつ認識したのかとお聞きもしておりますが。
  49. 小野邦久

    参考人小野邦久君) 申し訳ございません。  私、これは、この問題が発覚しまして担当が説明を私のところに来たときに初めて、一万棟以上の表示登記のないものがあると。すぐ、じゃ税金はどうなっているんだと、こういうふうに聞いたわけでございますけれども、これは問題のないという状態でございましたけれども、これだけ多くのものについて表示登記あるいは表題登記がないということ、これは大変遵法精神の欠如ということになるわけでございまして、私といたしましても大変反省をいたしております。
  50. 尾立源幸

    尾立源幸君 たまたま理事長はこの時期に理事長に就任された、いろんな天下りの関係でこうなっちゃったんだと思います。悪い時期にお当たりになったのかと思いますけれども、八王子市内の四十六棟のマンションの手抜き工事、これもございましたね。そのときは、構造計算書を紛失したということで、小野理事長自身、二度の厳重注意処分、これは国交省から受けられたんですか、だれから受けられたのか分かりませんが、受けられています。その際、小野理事長委員長となってコンプライアンス委員会を設置されておりますが、登記を怠っていたというのはコンプライアンス違反の私は最たるものだと思っております。国交省はどのような処分を検討しているのか。  また、小野理事長は、国会でも、随分お出ましいただきましたけれども、六月に退任されてしまうと聞いております。二度の厳重注意と今回の未登記の問題、これもコンプライアンスの違反だと思うんですけれども、そういったことの責任を考えますと、これ、申し訳ないんですけれども、退職金にもちょっと影響してくるんじゃないかなと私は思うわけでございます。  当然、この退職金の算定というのは、最終月俸ですか、在職年数と業績勘案率という、こういう掛け算になっておりまして、独立行政法人の場合、大体、ほとんど一なんですよね、又は一・二とかいうのもありますが。一を下回ることはないと、こんなことになっていますが、私、これだけのことであるならば一下回るんじゃないかなとちょっと心配しておるんですよね。  そんな意味で、国交省、どのようにこの点考えておられるのか、御見解をお聞かせください。
  51. 平井たくや

    ○副大臣平井たくや君) 今回の件は大変遺憾に思っております。したがいまして、私からも、早急に是正をしていただきたいと、理事長にもこの場で申し上げたいと思います。  それと、処分等々の問題でございますか、御質問は。に関しましては、全貌が明確にすべて分かって、この是正措置がされてからということになろうかと思います。
  52. 尾立源幸

    尾立源幸君 今聞いていただいていましたか。六月に退任予定なんですよ。
  53. 川本正一郎

    政府参考人川本正一郎君) 人事のお話につきましては、先生、予定と言っておられましたように、確定したお話ではございませんので、この時点でどうこうというのは控えさせていただきたいと思います。
  54. 尾立源幸

    尾立源幸君 じゃ、仮に、その処分が、最終の全貌が明らかになる前にお辞めになった場合に、退職金は留保されるんですか。
  55. 川本正一郎

    政府参考人川本正一郎君) 仮定のお話でございますので、退任されるかどうかについてもまだ未定ということでございますので、この時点ではお答えは控えさせていただきたいと思います。
  56. 尾立源幸

    尾立源幸君 これは、国民、注視をしております。平井副大臣、政治家としてどのように考えていらっしゃいますか、今のお話お聞きになって。このまま、処分が決まる前、また全貌が明らかになる前にすっと辞めたらそのまま全額払うと、こんな話でいいんですか。
  57. 平井たくや

    ○副大臣平井たくや君) 私も全貌を今、全部把握しているわけではありませんので、最終的には大臣判断されることだと考えております。  私自身としてどう思うかということですが、どう思うというよりも、今これは早急に是正していただかなきゃいけないと。それと、これははっきり言って法律を守っていないわけですから、そのことに対してやはり感覚的にはおかしいのではないかと、そのように思います。
  58. 尾立源幸

    尾立源幸君 これは引き続き、その後の経過も含めて私の方でもフォローさせていただきますので、早急に是正をしていただく、早く全貌を明らかにしていただきたいと思います。  では最後に、預金保険機構にお聞きをさせていただきたいと思います。  整理回収機構が今やっていることでございますが、借り手企業に対して債権者による破産申立て、こういうものを整理回収機構が行っておりまして、経営者を外して管財人が経営を掌握、営業を維持したまま売却を探し、売却益を債権回収に充てる処理スキームを実施していると聞いております。このような仕組みを整理回収機構は債権者破産を使った事業再生、これは新しいビジネスモデルとして今やっているというふうに聞いておるんですけれども、こういう呼び名が付いております。  これまで何件ぐらいこのスキームでやられて、そのうち事業再生に結び付いた例は何件あるのか、出資者として把握されている範囲で結構でございますので、御説明をいただきたいと思います。
  59. 永田俊一

    参考人永田俊一君) お答えいたします。  ただいま御指摘いただきました債権者による破産申立て、こういった仕組みを使いまして事業再生をやっておるわけですが、どの程度あるかという御質問だと思いますが、整理回収機構が確認しております範囲では平成十七年四月以降に事業再生を目的として破産手続開始の申立てを行った件数は十七件でございまして、事業体別に見ますとこれが九件になるというふうに承知しております。  このうち事業再生に結び付いた事例ということでございますが、スポンサーへの事業譲渡まですべて完了したということだといたしますと、当該件数は事業体別に見て、先ほど申し上げました九件のうち七件ということになると承知しております。
  60. 尾立源幸

    尾立源幸君 譲渡までを再生というふうに言うのではなく、その後経営が以前よりもきちっとうまくいっているという、そういう実態を把握されていますかということなんですけれども。
  61. 永田俊一

    参考人永田俊一君) お答えいたします。  案件によりまして私ども把握といいますか、の程度は違うかもしれませんけれども、RCCとの間で定期的な協議等も行っておりますので、私どもとして、機構としてはどうなっているかということはできるだけ把握しているようにしております。大体、事業再生にかけました案件につきましては、こういう手法も使いながら何とか地方なり、あるいは経済全体のお役に立つように再生をしてもらいたいという気持ちでやっておりますので、全部が成功したとは申し上げられませんけれども、成功した事例も多いというふうに、そちらの方が多いのではないかというふうに私は認識しております。
  62. 尾立源幸

    尾立源幸君 中身についてはなかなか預金保険機構さんの方ではフォローはできていないというか、一件一件については分からないということでございまして、またこの委員会にRCCの方をお呼びしてこの件についてはお聞きをしたいと思いますが。  ただ、預金保険機構としては、この債権者破産を使った事業再生というのは一つの手法としてはあるべきものだなという、認められているという認識でよろしいんですか。これはいいよと、このモデルは。そこだけ最後にお聞かせいただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  63. 永田俊一

    参考人永田俊一君) お答え申し上げます。  結論的に申し上げまして、そのとおりでございます。  それは一つの手法として、事業再生をする手法はいろいろあります、民事再生だとか。その中で、破産法を使った方が非常に適切に再生ができるというケースも先ほどの言ったぐらいの件数はあるのでございまして、そういうものについては努力をするという必要があるというふうに感じております。
  64. 尾立源幸

    尾立源幸君 ありがとうございました。  終わります。
  65. 大久保勉

    ○大久保勉君 民主党の大久保勉です。  本日は、初めて白川日銀総裁質問します。白川新体制に対して、一点、金融政策、二点目、国際金融界の中での日銀のリーダーシップ、そして三点目は日銀のコーポレートガバナンス、こういった三つの観点から質問したいと思います。  まず一点目、金融政策に関して質問したいと思います。  米国サブプライム問題は戦後最大の金融危機であり、今後、実物経済に波及していくという観測がありますが、白川総裁の御認識を聞きたいと思います。
  66. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  国際金融資本市場では、サブプライムローン問題に端を発しました動揺が続いておりまして、現在なお不安定な状態にあるというふうに認識しています。FRBのバーナンキ議長は、四月の初めに行いました講演の中で、現状は戦後最も厳しい金融危機の一つであるという認識を述べられましたけれども、私も全く同様の認識に立っております。  やや詳しく申し上げますと、一時の過度な悲観論は、これは後退しましたが、米欧の証券化商品市場は機能が大きく低下しておりまして、今発行が基本的に止まっております。それから、銀行間の資金のやり取りであります短期の金融市場も、これも引き続き緊張感が根強く残っております。それから、より広く企業金融全般で見てみますと、社債の国債に対する上乗せ金利、信用スプレッドでございますけれども、これは引き続き高水準でございますし、それから欧米の金融機関の貸出態度は、これは期を追うごとに厳格化しております。こうした金融情勢を背景に、アメリカの経済情勢でございますけれども、住宅投資が減少しているということは、これは変わっておりません。それから、先ほど申し上げましたような金融環境のタイト化の影響も加わりまして、減速傾向が強まっております。  当面、停滞あるいは緩やかな後退という可能性が高いというふうに見ておりますけれども、年の後半以降、FRBでは徐々にこれが回復をしていくという見通しに立っておりますけれども、やっぱり最大の不確定要因は住宅市場に、住宅価格の下落に底入れ感が出てくるかどうかということでございます。もし、住宅価格の下げ止めが出てまいりますと、そうするとFRBのこれまでの三・二五%にわたる大幅な金利引下げ、それから減税の効果も相まちまして、次第に回復をしていくというFRBのシナリオの蓋然性が高まってくるとは思います。  ただ、再々申し上げていますとおり、非常に不確実性が高い、特に住宅価格、それから金融市場の面で不確実性が高いというふうに見ておりますので、その辺、私どもとしては慎重に見ております。  ポイントは、金融資本市場、それから資産価格、それから実体経済、この三者の相乗作用といいますか、マイナスの相乗作用がどのようになっていくのか、いつ収束に向かうのか、これが最大のポイントだというふうに考えております。
  67. 大久保勉

    ○大久保勉君 続きまして、グリーンスパン前連銀総裁が、過去に、バブル発生は崩壊した後でないと分からず、それゆえ不可避であるという趣旨の発言をされております。それに対して白川総裁は、最近、資産価格の上昇にも利上げが必要であるとグリーンスパン氏批判とも取れる発言をされました。その真意を聞きたいと思います。  また、今後、日本の不動産、株式等の資産価格が上昇した場合に事前警告的な利上げもあり得るのか、この点に関して質問します。短い言葉でお願いします。
  68. 白川方明

    参考人白川方明君) 私の発言は、グリーンスパン議長の金融政策を批判したということでは全くございません。資産価格が上昇する下での金融政策の在り方ということについて一般論を申し上げたわけでありますけれども、資産価格の変動は、これは経済に対して非常に大きな影響をもたらします。  したがいまして、金融政策の運営に当たっては、資産価格の変動が様々なルートを通して経済に及ぼす影響、これを十分見極めて運営していく必要があると、あくまでも物価安定の下での持続的な経済成長ということに資産価格がどのような影響を与えるか、そのことに注意しながら金融政策を運営する必要があるということを申し上げたわけで、そういう意味で批判ではございません。  それから、資産価格の上昇を食い止めるための予防的な引上げということではございません。あくまでも資産価格の変動の影響を十分考慮した上で、しかし物価安定の下での持続的成長という観点に照らして政策を行っていくということに尽きてまいります。
  69. 大久保勉

    ○大久保勉君 続きまして、白川総裁は、理事時代に日銀の資産担保証券の購入を事務方として提案され、政策決定会合で採用されました。サブプライム危機がより一層深刻化して国際金融市場が例えばメルトダウンしそうな場合に、緊急危機対応対策として米ドル建てのCDO、MBS等の資産担保証券やジニーメイ、ファニーメイ等の米国エージェンシー債を日銀が購入することがあり得るのか、質問します。
  70. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えします。  日本銀行が資金供給を行うオペでございますけれども、そのときにどのような資産を購入するかということは、これは日銀法規定されております。その中で日本銀行として具体的にどのような資産を買っていくかということにつきましては、幾つかの基準がございます。一つは、円滑な金融市場調節の実現やあるいは金融政策の波及経路の強化を図る上でこれが必要かどうかということでございます。それから二つ目は、これは中央銀行としては当然のことでございますけれども、資産の健全性、財務の健全性ということにも配慮して判断をしていくということでございます。  今議員からお尋ねの件でございますけれども、具体的にお答えすることは差し控えさせていただきますけれども、今申し上げました二つ基準に照らしまして中央銀行として適切な判断をしていくということに尽きてまいると思います。
  71. 大久保勉

    ○大久保勉君 分かりました。  私の感想ですが、これまで白川総裁とやり取りしまして、前の福井前総裁とは大分違いまして、非常に安定的、そして言っていることが明快で、事務方としては非常に安心できるのかなと思います。まあちゃめっ気とか若しくはサプライズが少なくて、この辺り、新聞記者と話をしましたところ、過去の記者会見で居眠りをしている方がいらっしゃるということも聞いておりまして、非常に活性化した議論も必要かなと思います。  そこで質問しますが、今後五年間、いわゆる国会とのコミュニケーションとか若しくは市場とのコミュニケーション、記者とのコミュニケーションを図る際にどのようなことが念頭にあるか、若しくは抱負を聞かせていただきたいと思います。
  72. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融政策の意図あるいは金融政策判断を分かりやすく説明するということは非常に大事であると思っています。二つの理由からなんですけれども、一つは、金融政策の効果が円滑に波及していく上で大事であるということでございます。それから二つ目は、中央銀行金融政策独立性を有していますから、当然、その裏腹としてしっかりその判断の根拠を説明する必要があるというふうに思っております。  金融政策説明、これは日本銀行全体にも当てはまりますけれども、私自身説明する場合にもこの二つのことをいつも意識して行っていきたいと思います。具体的にそれをどのようにやっていくことかということは、もちろんそれぞれの人の個性が反映すると思いますけれども、日本銀行全体としましては、まず展望レポート、それから議事要旨、それから政策委員会の、私も含めまして政策委員会メンバーによる記者会見、講演、それから国会の場、いろんな場がございますけれども、そうした場で、様々な場を通じて、先ほどの二つの点を実践していきたいと。  金融政策説明の分かりやすさということは、これは、先ほど記者会見の話がございましたけれども、例えば記者が対象の場合、それから専門的なエコノミストが対象の場合、それから広く国民の場合、それぞれその対象によって異なってまいります。自分自身がまだ総裁に就任して一か月半足らずでございますけれども、その場で一番求められている説明の、何といいますか、目的といいますか、そのことを十分わきまえて的確な説明をしたいというふうに努力し、まだ努力をしているその途上でございまして、いろんな不十分な点があると思いますけれども、これから研さんに努めていきたいというふうに思っています。
  73. 大久保勉

    ○大久保勉君 すばらしい答えだと思いますし、私ども、同意人事で賛成をしました。私どもは同意人事に賛成して正解だったと思います。私ども、すばらしい日銀総裁を選ぶことができたと思って、確信しました。  では続きまして、二点目として、先進国中央銀行の中での日本銀行のリーダーシップに関して質問したいと思います。  日本銀行の提出資料によりますと、日本銀行は平成十八年度に合計五十一の国際会議に出席している、そして平成十九年度には大幅に減り四十四件しか出席していないということであります。この特別な理由はありますか。平成十八年から十九年で国際会議に対する出席件数が減ったことに対する理由です。
  74. 白川方明

    参考人白川方明君) 結論から申し上げますと、特別な理由はございません。これは、たまたま前年あった国際会議がこの年はなかったとか、あるいは国際会議自体も実は今リストラというのを進めていまして、国際会議自体がなくなってしまったとかいうこともありまして、これは何か日本銀行サイドの意図ではなくて、幾つかの個別の事情が重なったということでございます。
  75. 大久保勉

    ○大久保勉君 続きまして、配付しました資料の一ページを見てください。  国際会議でどんどん日本銀行が発言し、日本立場を国際金融界に主張する、そして日銀が世界をリードする、是非やってもらいたいんですが、具体的にどういった指標で見ていいか分かりませんでしたので、一つ指標として国際会議で議長を務める、非常に重要な仕事ですが、どの程度議長を務めているかということで資料をいただきました。実はといいますか、残念ながら四件しかないです。大体五十一の国際会議で一割弱の会議に議長としてやっていらっしゃると。非常に評価できますのは、例えばマーケットコミッティーというところで中曽金融市場局長が議長を務められている、こういったものは内外から非常に評価されていると思います。  こういったことをどんどんやるべきだと思いますが、このことに関して日銀総裁に対して質問したいと思います。現在の認識、今後の目標を質問します。
  76. 白川方明

    参考人白川方明君) 経済金融のグローバル化が進んでいますから、国際会議の重要性も高まっております。そうした中で、大きな経済である日本を代表する中央銀行として国際会議の場でも積極的な役割を果たしていきたいというのがまず基本認識でございます。  現状でございますけれども、今この表にございますとおり、幾つかの委員会の議長を務めておりますが、これはいずれも非常に重要な委員会の議長でございます。BISには大きな委員会として四つございます。バーゼル銀行監督委員会、それからグローバル金融システム委員会、それから決済システム委員会、それからマーケッツ委員会、この四つの委員会がございますけれども、この四つの委員会のうち、その一角を占めますマーケッツコミッティーは、これは日本銀行金融市場局長が議長を務めております。昨年来のサブプライムローン問題の中では、実はこの委員会は非常に中心的な活動をした委員会でございます。その委員会の議長を務めております。それから、先ほどのグローバル金融システム委員会、これは今は日本銀行は議長を出しておりません。これはFRBの副議長が今議長を務めておりますけれども、これの前の前は、これは日本銀行の副総裁最初は当時の福井副総裁、その後は山口総裁が議長を務めておりました。  このように、BIS、中央銀行の集まりでありますBISの委員会では日本銀行は大変活躍をしているというふうに思います。ただ、現状に満足しているわけではございません。これからもっともっと貢献をしていきたいというふうに思っています。
  77. 大久保勉

    ○大久保勉君 是非、もっと頑張ってもらいたいなと思います。やはり中央銀行、特に日銀の方は非常に優秀ですが、どうしても内弁慶になって、国内では優秀なんですが、なかなかその優秀さを国際社会に向けて発信できない、こういったこともあり得るかなと思っています。  そこで、将来の日銀総裁候補若しくは将来の国際局長候補をどうやって育てていくか、この点に関して質問したいと思います。  世界に通用する人材として、そういった人材を育成するために日銀は毎年三十五名の海外留学生を出しております。また、総合職では全体で六割から七割が海外留学をするということで、かなり力を入れていることは分かります。また、BIS、IMFなどの国際機関に約十名派遣しているということで、かなり英語力を上げていきたいとか若しくは国際社会に通用させたいと、こういった意図は分かるんです。ところが、量はいいんですが質はどうかということで質問したいと思いますが、国際機関に十名、人を派遣しておりますが、すべてエコノミストとかアナリストという立場で、いわゆる研修生的な意味合いしかないということなんですね。  そこで質問ですが、いわゆるディレクターとか管理職として外人の部下を持ち組織を運営するような派遣者はいるかいないのか、このことに関して質問します。
  78. 白川方明

    参考人白川方明君) ディレクターといいますか、管理職の定義にもよりますけれども、現在、我々と最も関係の深い国際機関であります例えばBIS、それからIMFで、ディレクターという意味でいきますと現在日本銀行からの出向者はございません。ただ、ディレクターということからいきますと例えばBIS、これは我々にとって一番重要な国際機関でございますけれども、ここのディレクターが実は外部からの出向者、派遣者というケースはございません。いずれも、ある時期BISに入ってプロパーの職員として勤めておるというケースでございます。そういう意味で、いきなり日本銀行から出向者がBISの例えば局長になるということはなかなか先方のガバナンスからして難しいなというふうに思います。  ただ、御趣旨は、そういう国際機関でディレクターが務まるような人をどんどん養成するように今からしっかりやるようにというふうなことだと思います。そういう観点からしますと、エコノミスト、アナリスト、これは将来非常にやっぱり大事な経験だというふうに思います。これは分析力を高めていく上でも、それから英語力を高めていく上でも、それから後々当時の仲間がそれぞれまたその機関で偉くなっていくということですから、大変大事なやっぱり仕事だというふうに思っています。ただ、その上で更にその見直しの余地がないかどうか、これはしっかり考えていきたいというふうに思っています。
  79. 大久保勉

    ○大久保勉君 これだけ聞いたら非常にまともで、いわゆるディレクターで送り出すのは難しいのかなという気になりますが、今日は丹呉財務省の官房長がいらしています。じゃ、財務省はどうか、この点に関して質問したいと思います。
  80. 丹呉泰健

    政府参考人(丹呉泰健君) お答えいたします。  まず、財務省から現在国際機関に派遣している職員の数でございますが、国際通貨基金を含めまして十一の機関に職員を派遣しておりますが、その総数は六十四名でございます。そのうち管理職ということでございますが、いわゆる課長職相当以上の者は現在十七名でございます。
  81. 大久保勉

    ○大久保勉君 この数字が明らかですが、財務省はやはり歴史的な意味で非常に強い、若しくは人材もいっぱいいるということです。ですから、日銀も是非努力して、六十名とは言いませんが二、三十名国際機関に出向できるようになり、そのうち二割か三割は管理職として、いわゆる将来の議長として職務を全うするだけのいろんな能力を高めていったらいいと思います。  こういった財務省の人材を見ましたら、こういった人材も日銀総裁、副総裁等に活用できるのか、あるいは理事として活用できるのか、こういったことも是非考えるべきだと思うんですね。やはりこれからは内弁慶じゃいけないと思うんです。国際的な社会においてどのように日本の主張を通していくか、若しくは日本中心になって政策を、若しくは金融政策を作っていく、これが是非必要だと思います。世界第二位の経済国ながら金融界は非常に地位が低いと思います。こういう認識で質問しました。  この項目最後質問なんですが、G7財務大臣中央銀行総裁会議、BIS会議等で、日本銀行日本の国益を明確に主張するのみならず国際金融界における日本責任を十分に理解した上でリーダーシップを発揮していくことが必要であると考えております。このことに対する現状認識と決意を伺いたいと思います。日本銀行は国際会議において日本経済力やその職員の優秀さに比べて、何度も言いましたように内弁慶であると私は思っています。御認識を聞きたいと思います。
  82. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融経済のグローバル化の進展に伴いまして、中央銀行の間で国際的な対話や協力を行う重要性は一段と増しているというふうに思います。日本銀行は、BISそれからG7、G10、様々な国際会議の場あるいは個別の中央銀行同士での場を通じまして様々なテーマに基づいて議論を交わしていますし、それから連携を進めております。単に議論をするだけでなくて、具体的な中央銀行業務という面でも様々なことを実施しております。足下では、昨年夏以降の国際金融資本市場混乱に際しまして、日本金融危機の経験を踏まえまして様々な助言、経験を話しておりますけれども、それも我々としての国際金融社会に貢献する一つの方法だというふうに思っております。今後とも積極的に努力をしていきたいと思っております。  私自身、九七年の春から三年半ぐらい、BISを中心として国際金融の仕事に携わる機会がございました。そのとき初めて、これはちょうどアジアの金融危機が勃発する前後でございましたけれども、その経験を通じて、国際的な会議での意見交換、それからそれに基づいての様々な施策の実施、これが大事だということを、個人的にも非常に強くその思いを深めました。そういう思いをしっかり持って、これからも、先ほど委員おっしゃったように、日本銀行が国際社会に貢献できる、そういうふうな組織にしていきたいというふうに思っております。
  83. 大久保勉

    ○大久保勉君 この点に関しては、是非、白川総裁のリーダーシップを期待します。  続きまして、最後の観点として、日本銀行のいわゆるコーポレートガバナンス、組織運営上の課題に関して質問したいと思います。  配付しました資料の二ページ、上の部分を見てください。いわゆる世界の金融機関では四十代のCEOが珍しくなくなっておりまして、幹部の若年化傾向が顕著であります。金融環境がグローバル化し、また激化することにより、それに対処していくためにはどうしても若い人材の活用が必要だと私は考えております。  そこで、日本銀行の理事、局長はこの二十年間で若返ったかどうか、この点に関して質問したいと思います。
  84. 水野創

    参考人水野創君) お答えいたします。  理事の平均年齢は、表にございますように、二十年前、一九八八年の三月末が五十七歳一か月、本年三月末時点が五十六歳五か月でございました。また、局長の平均年齢は、二十年前が五十二歳三か月で、本年三月末が五十三歳五か月でございました。  平均年齢は以上のとおりでございますけれども、現在勤務しております局長経験者の中で、局長就任時の年齢が最も若かった職員は四十六歳で局長に就任しておりまして、日本銀行では年齢にとらわれない適材適所の人材活用に努めていると申し添えさせていただきたいと思います。  以上です。
  85. 大久保勉

    ○大久保勉君 分かりました。  続きまして、局長とか若しくは理事が若くなるということは、場合によってはその方と同期の方は日本銀行にいれなくなってしまうと、早期退職をせざるを得ないと、こういった私はあしき慣行があるとしましたら問題です。この辺りに関して是非、人事改革をしてもらいたいんです。  本論に入る前に、じゃ現状はどういうふうになっているかということで質問したいと思います。  こちら、三ページを見てください。こちらは、役員及び参事役級以上の職員の再就職状況、過去五年分ということで、どういった企業に再就職しているのか、いわゆる天下りリストとも考えることができます。もちろん、完全に天下りではなくて、本人の実力で就職するケースもありますから、これは一つ一つまばら、一つ一つ精査していく必要があると思います。  ただ、天下りといいますのは、いわゆる日本銀行の取引先に日本銀行のいわゆる権力若しくは力でもって押し込んでいく。二点目は、いわゆる随意契約等で取引先の方、いわゆるいい、言わばおいしい案件を与えるから、その見返りとしてOBを引き取ってくださいと、こういったやり方です。三番目は、いろんな機材を購入する、その見返りとしてOBを派遣する。こういったことは私はあしき慣行と思っています。  そこで、分析しましたところ、過去五年の職員の再就職先に、いわゆる日銀考査先としましては、都民銀行、茨城銀行、朝日信金、商工中金、農林中金、東濃信金、池田銀行があります。また、大口随意先、こちらのリストは二ページの下の方です。大口随意契約先としましては、IBMが平成十八年度は七十六億円、二位がNTTデータ、四十六億円、三位が東芝、四十一億円。平成十九年もほとんど同じような感じです。  じゃ、こういったところに天下りをしているかといいますと、日本IBM、NTTデータ、セコムに天下りが行っています。さらには、大口機材購入先、具体的にはトヨタファイナンス、リコー等が数多く見られているという実態です。  政府の天下り規制や中央銀行としての倫理性の観点から、こういったことに対して不適切じゃないかどうかの認識を聞きたいと思います。
  86. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  日本銀行では、民間への再就職につきましては、個人の識見や能力を期待して外部から人材を求められる場合に限って、世間からいたずらに批判を招くことがないよう留意しつつ慎重に対応することを基本的な方針として臨んでおります。  その上で、日本銀行と当座預金取引を有する金融機関への再就職につきましては、まず役員の場合は、退職後二年間自粛する。局店長級の職員の場合も、退職前二年間に就任していた職位が当座預金取引先である金融機関と密接な関係があるときは、当座預金取引先への再就職を退職後二年間自粛する。それから、考査役経験者につきましては、考査役として実地考査を行った先への再就職を当該実地考査後五年間自粛するといった自粛ルールを設けまして、これを厳格に運用しております。  また、大口契約先を含めた調達先企業への再就職につきましては、再就職先の日本銀行への調達の依存度の大きさや在職中の職務と再就職先との関係、再就職先で期待されている職務内容などを総合的に考慮しまして、調達の公正性確保の観点から問題がないことを慎重に確認した上で対応しておりまして、調達事務の面でも予定価格の厳格な管理や事業者との接触禁止、接触規制など、職務の公正性を確保するための仕組みを整備しております。  このようにしまして、日本銀行では、民間への再就職については、職務の公正性に対する信頼確保の観点から細心の注意を払って対処しております。この点、どうか御理解いただきたいというふうに思います。
  87. 大久保勉

    ○大久保勉君 この点に関しては理解できません。問題があると思います。  まず、日銀考査先に関して、二年間はできないけど二年たったら再就職できると。でも、日銀考査の担当官は、もしかしたら後輩たちということでしたら、先輩がいる銀行に対してなかなか厳しい考査ができないということでしたら、利益相反ですよね。やはり、認識は甘いと思います。さらには、日本IBM、NTTデータ、セコム、常時上位の随意契約先です。これは、私は二年前か三年前に同じような質問をしておりますが、全く現状は変わっていないと思います。  もう一度、天下りをしないと宣言していただけますか。
  88. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  繰り返しになって恐縮でございますけれども、日本銀行としましては、先ほど申し上げました三つの、役員それから局長、支店長級それから考査役経験者について厳格なルールを設けております。それから、大口の調達契約先につきましても、これは厳格なルールを設けております。  議員が御指摘のとおり、日本銀行政策を遂行していく上で日本銀行の職務の公正性というものに対する信頼をしっかり確保する、これは大事でございます。それは、私自身、強く意識しております。細心の注意を払って行っている。  先ほど、金融機関の考査という話が例えばございましたけれども、金融機関の考査は、これは日本銀行の実地考査に向かった職員が金融機関の資産内容、それからリスク管理の体制をしっかりこれは点検をするわけでございますけれども、この点でもし御指摘のように先輩がいるからということで手心を加えますと、これはもう考査結果それ自体の信頼性が失われるわけでございます。そうしたことは現に行われていませんし、あってはならないというふうに思っています。そのために、先ほど申し上げたルールも設けていますし、実際にも厳正な考査を行っています。
  89. 大久保勉

    ○大久保勉君 まだ弱いですね。日銀の内部の論理であって、世間は許さないと思います。今、非常に天下りに対して厳しい意見がありますが、やはり日銀が信頼されるためには、白川総裁のリーダーシップでこの点に関して是非新しい改革をしてください。  一つ提案したいのは、先ほどの若年幹部を実現するためには、どうしても天下りをせざるを得ないような状況があるからおかしいと思います。ですから、定年まで働けるような職場環境にするとか、若しくは上司と部下が年次が逆転してもいいような賃金体系を考えるとか、積極的な前向きの改革が是非とも必要だと思っています。  また、三十代、四十代、いったんは割増し退職金で日銀を辞めたい人は辞めてもらうと、ただし、外部に行って本当に力を付けてきたらもう一度日銀に戻ると、そういった人材の活用というのもあり得ると思います。これは日本の、邦銀とか若しくは民間のメーカーで行われていることです。日銀はこの点では五年、十年遅れているんじゃないかと思いますが、この点に関して総裁の認識と決意を聞きたいと思います。
  90. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行では、従来から、慫慂に応じて満五十五歳未満で退職する職員を対象にしまして、退職一時金を割増しして支給する制度を現に設けております。また、幹部職員への登用につきましては年次にとらわれることなく適材適所の観点から行っておりまして、現に上司と部下の年次が逆転しているケースも少なくございません。そうした場合、上司より年次が上であることをもって部下に退職を慫慂するということも行っておりません。  もとより、社会経済環境が変化する中で、日本銀行が将来にわたって優れた人材を育て、高いモラルを持って活躍させていくためには、変化に対応して人事管理の仕組みを柔軟に見直していく必要があるということはそのとおりでございまして、現実にも日本銀行は様々なことにトライしております。  日本銀行は従来からそうした見直しに努めてきましたが、御指摘のあった若い人材の活用といった視点も踏まえまして、今後とも中央銀行にふさわしい人事管理の在り方を真摯に検討し、その上で必要な見直しを行っていきたいというふうに考えています。
  91. 大久保勉

    ○大久保勉君 これに関連しまして、質問通告していないんですが、人事改革の場合、場合によってはいわゆる外国人、日本の国籍を有しない人も積極的に活用していくことも必要じゃないかと思います。  それは、第二点目のいわゆる中央銀行界での日本銀行のリーダーシップという観点もありまして、例えばBISの経験者とか連銀の経験者を日銀が採用して、日銀の方がいわゆる小委員会の議長になるときにはそういったことをサポートするとか、そういったことも含めまして日銀の活性化が必要だと思います。  こういった点に対して、もし御意見若しくは認識があったら、総裁若しくは代理の方、是非お答えください。
  92. 水野創

    参考人水野創君) お答え申し上げます。  幹部級の職員につきましては慎重に検討する必要があるというふうに思いますけれども、それ以外の大多数の職員につきましては、外国人を採用することにつきまして基本的に制約はないと考えております。  以上です。
  93. 大久保勉

    ○大久保勉君 制約がないというよりも、積極的に活用するかしないかということです。答弁を、じゃ、総裁お願いします。
  94. 白川方明

    参考人白川方明君) 幹部級の職員につきましては先ほど申し上げたことでございますけれども、それ以下のレベルでいきますと、これは職員ということでは必ずしもございませんけれども、例えば金融研究所というところには、まさに専門的なエコノミストがここに集まっているわけですけれども、海外の学者あるいは学者の卵のような人が研究員としてかなりの期間滞在して切磋琢磨も現実に行っております。  以上でございます。
  95. 大久保勉

    ○大久保勉君 是非、いわゆる日銀という組織を強くするためには、外部からどんどん人を、新しい血を入れまして活性化をしてもらいたいなと思います。これが日本の国力にとってプラスになると私は確信しております。  続きまして、資料の四と五。資料四を付けましたのは、天下り先としてトヨタファイナンスがあるということで、公用車の調達状況というのを調べてみました。これはすべてリース契約ということで、七年リースですから、金額がございます。これを合計しましたら年間のいわゆる公用車運行のためのコストということです。一億円弱という感じです。  どういった車を購入しているかということで、五ページと六ページ、出してもらいました。特に、道路特定財源の方で高級車購入に対して世間の批判は非常に厳しいものがあると思います。ということで、そういった観点から、日銀は違うんじゃないかということで出してもらいました。  ところが、ちょっと私もびっくりしたのが、五ページの一番上を見てください。いわゆる本店役員。七月に日本でサミットがありますから、地球に優しいということで排気量を出してもらいましたところ、全部五千㏄、四千三百㏄ということで、余り地球に優しくないなということで、まず一点びっくりしました。  車種、一番上はLSということで、これは地球に優しいんですが、いわゆるLS600hLというやつで、いわゆる一千五百万以上する最高級車ということで、なかなかすばらしい車だなと思いましたところ、納入期間を見ましたら、平成二十年三月。ここで、日銀さんよおまえもかといいますか、新しい総裁が来たらすぐに最高級の車を買わないといけない事情があるのかなと思って、これは、さすが日銀自身はもう少しまともな感覚かと思いましたが、ちょっと私は異常に見えました。  もちろん、車の購入の仕方だけが問題といいますよりも、いわゆる倫理性とか、日銀はどういうことを期待されているか、こういった観点から、認識、世間に対してこういったデータを公表し説明していくことが必要だと思います。  そこで、白川総裁に、このリストを見た率直な感想をお聞きしたいと思います。
  96. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行では、業務及びその財産の公共性にかんがみまして、経費予算につきましても適正かつ効率的な運営に努めてまいっています。  公用車の調達につきましても、こうした基本的な考え方を踏まえて対応しておりまして、日本銀行総裁としての見解ということでございますけれども、これを維持、徹底していくということが大事だというふうに思いました。
  97. 大久保勉

    ○大久保勉君 私は、白川総裁はそのままで非常にすばらしい方だと思います。ですから、高級車がなくても、若しくはいろんな施設がなくても、是非、白川総裁の頭、理論若しくはいわゆる性格、すばらしい人間性、こういったものを是非主張してもらいたいと思います。高級車がないとなかなか格好が付かないと、これは古い時代の発想だと僕は思います。  そこで、最後質問なんですが、こういった公用車を選ぶ場合の車種、排気量、車のメーカーに対してどういう基準で選定しているんでしょうか。このことを質問して、私の質問を終わります。
  98. 水野創

    参考人水野創君) お答え申し上げます。  公用車の選定に当たりましては、企業や政府における配備状況も踏まえつつ、一般の乗用か、災害対策用か、それから主にだれが利用するのかといった用途に応じた車種、排気量にするとともに、競争入札を基本として費用の縮減に努めております。  また、環境面への配慮から、いわゆるグリーン購入法で定められました低公害車、二十年度の一般乗用車の場合ですと平成十七年排出ガス基準七五%低減レベル、かつ平成二十二年度燃費基準を満たす車種の導入を図っておりまして、これがメーカーや車種に大きな影響を与えている面があるかと思っております。  先ほど、現在の総裁車についても御指摘をいただきましたが、これは前の総裁車の走行距離が既に十八万キロ超になっておりまして、運転中にエンジンが停止するなどの不具合も発生したということで更新することにして、さきの基本的な考え方に基づいて調達したものでございます。  以上です。
  99. 大久保勉

    ○大久保勉君 終わります。
  100. 川崎稔

    川崎稔君 民主党・新緑風会・国民新・日本川崎です。本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。また、白川総裁を始め役員、関係者の皆さん、御多忙のところ、本当にありがとうございます。  まず、今月十二日に発生いたしました中国四川大地震の経済面への影響について質問をさせていただきます。  最初に、四川大地震の被災者の皆さんに心からお見舞いを申し上げ、亡くなられた方々に哀悼の意を表したいと思います。  その上で質問をさせていただきたいと思います。御承知のとおり、中国の地位といいますか、日本にとって最大の貿易国といってもいいわけでありますが、その中国との関係ということを考えましたときに、今回の大地震の影響、この点を伺いたいということであります。四川省の中国のGDPに占める割合、これは恐らく四%ぐらいじゃないかと思いますし、農産物の生産額に占める割合も八%程度というふうに言われておりますけれども、今回の四川大地震が中国経済全体に及ぼす影響という点についてはどう見ておられますでしょうか。
  101. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  中国四川省で発生しました地震では、大変多くの人的被害が発生しましたほか、道路などの社会的なインフラが被災するなど、その影響は広範囲に及んでおります。私も、川崎委員と同じように心からまず哀悼の意を表しますとともに、一日も早い復旧をお祈りしています。  そのことを申し上げました上で、影響でございますけれども、現時点では被害の状況など全貌がなかなか分かりません。特に数量的な情報がなかなか入っておりませんので、中国経済に与える影響を定量的に評価することはなかなか難しいわけでございます。  ただ、議員御指摘のとおり、中国全体に占める四川省の割合はGDPベースでは四%でございますし、農畜産業など第一次産業ではもう少しウエートが高いということでございます。その意味で、まず今回の地震につきましては、農畜産業などの生産や価格に与える影響、これを意識する必要があるというふうに思います。  ただ、中国経済につきましては、今回の地震の影響もこれは大きいと思いますけれども、それ以前から抱えています様々な問題、この影響も実は中国経済を評価する上では大変大きいというふうに思います。これは、上振れ方向、下振れ方向、両方ございますけれども、上振れ方向でいきますと、設備投資といいますか固定資産投資が大変な勢いで伸びているということでございますから、これが更に上振れるという力が一方であるのかもしれませんし、他方で、このところ食料品を中心としてインフレ率がかなり上がってきています。それで、中国人民銀行の方も預金準備率を引き上げるなど金融引締めを強化していますけれども、その影響が予想よりも大きい場合には景気が下振れるというリスクもございます。それから、国際金融資本市場やアメリカ経済の動向いかんによっては中国を含め新興国に大きな影響を与える可能性もございます。  現時点では、このような上振れ、下振れ、様々なリスクについて定量評価はできませんけれども、政策当局者としては、こうしたリスクを念頭に置いて情勢判断をしていく、政策運営を行っていくことが大事だというふうに思っています。
  102. 川崎稔

    川崎稔君 ありがとうございます。  今伺いまして、中国経済、上振れ、下振れ、両方リスクがあるというお話でございますし、物価面という点についても御説明をいただいたわけでありますが、地震の影響という意味では、恐らく物価に対しては食料不足あるいは資材が不足する、あるいは交通インフラ等のネックが生じてくるということでいえばインフレが進むおそれが高いんじゃないかというふうに思うわけですが、今中国人民銀行の政策変更のお話もいただきましたけれども、地震によってこの辺に政策面でもやはりインパクトというのはあるでしょうか。ちょっともう一度確認をさせていただきたいんですが。
  103. 白川方明

    参考人白川方明君) 先ほどはちょっとマクロ面からお話を申し上げましたけれども、若干補足する意味でミクロ的なお話を申し上げたいというふうに思います。  中国経済影響がどのように金融政策影響するかという場合に、最終的には日本経済にどのような影響が及んでくるのかということだというふうに思います。  そういうふうにまず考えた場合に、この四川省に進出しています日本の企業ということが一つのポイントになってまいります。四川省におきましては、自動車、電機、流通など約二百社の日系企業が事業を展開しておりますけれども、多くの先で、徐々にではありますけれども、工場の操業や営業を再開し始めるというふうに聞いております。それから、四川省は一大農業産地でございますので、農産物の生産や価格がひいては我が国の輸出にも影響を与えてくるというふうに思います。  ただ、現時点では、我が国経済に目立った影響を与えるような、そうした現象は出ていないんではないかというふうに見ています。いずれにせよ、注意して見ております。  中国経済全体について考えた場合、もう少し申し上げますと、日本にとって中国は最大の輸入相手国でございます。特に、食料品、衣料品、それから工業製品など様々な財を中国から輸入しております。日本にとって中国は一大供給基地でございます。  マクロ的に見た場合に、先ほど申し上げましたとおり、数量的にどの程度影響があるのかということは評価はできませんけれども、いずれにせよ、例えば地震の場合、供給力が絞られて商品市況が上がってくるんじゃないかというのが、これ、一つのルートでございますけれども、国際商品市況は、これはエネルギーもそうですし、それから食料品もそうですけれども、ここのところ大変な勢いで上がっております。これは四川省の地震が起こる前から大変な勢いで上がっているということでございます。  この国際商品市況上昇日本経済にどのような影響を与えるかということで、これまた定性的な話で恐縮でございますけれども、交易条件が悪化して日本の内需が減るという効果、それから交易条件の改善した国への日本の輸出が増えるという効果、その両者、プラスマイナス両方あって日本の需要がどうなるのかということを見ていく必要があるわけですけれども、私どもとしては、どちらかというと下向きのリスクの方を重視をしているということでございます。  それから、物価の方も、この結果、直接、間接に影響してくるわけですけれども、海外からの輸入商品、輸入原材料の上昇が人々の予想インフレ率に火が付くことがないかどうか、これが重要なポイントだというふうに思います。  ちょっと長々申し上げて恐縮でございますけれども、そのように思います。
  104. 川崎稔

    川崎稔君 ありがとうございます。  私が質問させていただこうと思っておった項目を大分先取りして答えていただいたので大変恐縮なんですが、ただ、いずれにいたしましても、非常に上振れリスクという意味での設備投資に勢いがかなりあったと、これは地震の前からということなんですが。それに、今回の地震によって恐らく、短期的にはともかく、中長期的にはかなり復興需要みたいなものが加わってくるわけでありますから、そういう意味でインフレの加速ということが懸念されるんじゃないかなというふうに思っておりますが、加えて、原油がこれだけ高いという中で、マクロ的な判断を今いただきましたけれども、当面の政策運営という意味でのスタンス、もう一度まとめて確認をさせてください。
  105. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  中国経済も含めて世界経済の動向を織り込んだ上で日本金融政策の運営のスタンスということでございますけれども、足下の日本経済は、これは減速をしております。減速の主因は、去年の夏までは建築基準法の改正に伴う住宅投資の減少でございましたけれども、足下は交易条件の悪化といいますか、商品市況の上昇、交易条件の悪化に伴う内需の減少ということだと思います。しばらくはこの減速局面が続くというふうに見ておりますけれども、しかし、その後は徐々に潜在成長率並み成長軌道に戻っていくというのが我々の標準的なシナリオでございます。数字にしますと、一%台の半ばから後半という数字でございます。  ただ、これは今時点で我々が蓋然性が最も高いと考えるシナリオで、見通しではございますけれども、先ほど来説明申し上げていますとおり、非常に不確実性が高いと、その不確実性はどちらかというと下向きの方の不確実性だというふうに考えています。その意味で、現在は金融政策の運営の方向について特定の方向をあらかじめ想定するということは適切ではないというふうに考えていまして、注意深く展開を見ていくという姿勢で臨んでおります。
  106. 川崎稔

    川崎稔君 ありがとうございます。  いずれにいたしましても、その下振れリスクの方に若干注目しつつという政策運営でございますが、今減速しているというだけに、これからも細心の注意を払って政策運営をお願いしたいと考えております。  続きまして、今回の地震を契機といたしまして、金融界、特に中央銀行業務運営も含めて、災害への備えということでちょっと改めてお聞きをしたいというふうに考えております。  まず最初に、ライフラインとしてのお金ということを考えた場合、思い出されますのが、阪神大震災、このときに、一般的にライフラインというのは水や電力と言われるわけですが、このときの経験でお金、通貨というものが改めてライフラインの一つだというふうに認識をされたわけですけれども、このときの日銀の経験について、総裁の感想なり、聞かせていただければと思っております。
  107. 白川方明

    参考人白川方明君) 阪神・淡路大震災が発生しました際、被災地の中心にありました日本銀行の神戸支店は、震災が発生しました当日の一九九五年の一月十七日も、これは営業を行いました。  この神戸支店の現金関連業務について若干数字を申し上げた方がいいかなというふうに思いますけれども、初日こそ現金の支払は官庁給与の支払で三千万でございましたけれども、わずか三千万でございましたけれども、翌十八日からは金融機関の現金引き出し需要が多額に上りまして、日本銀行はそれにこたえる形で三日間たくさんの支払を行いまして、三日間で支払総額は一千億円にも上りました。  それから、被災地の民間金融機関に対しまして、汚れた紙幣の交換に応じますことを要請するとともに、日本銀行においては週末に、これは臨時に営業を行いまして、損傷した、傷付いた銀行券や貨幣の引換えにも積極的に応じました。  こうした経験に照らしましても、お金というのは地震で被災をした地域の当座の経済活動にとっては、これはなくてはならないものでございます。大地震等の災害が発生しました場合に、決済システムの円滑かつ安定的な運行の確保とともに、現金の円滑な供給を確保することが極めて重要であるというふうに思っています。  日本銀行のホームページの中に雑誌「にちぎん」という雑誌がございます。その中に、今の神戸の震災のときの、例えば日銀神戸支店の金庫の生々しい光景が載っておりますけれども、あの光景を写真で見る、あるいは先輩から話を聞くたびに、地震のときに中央銀行が現金供給の面でしっかりと責任を果たすことが大事であるということを、改めてその思いを深くしました。そういう意味で、非常に大事な仕事であるというふうに思っております。
  108. 川崎稔

    川崎稔君 確かに、三日間で一千億の支払をしたという意味では、もう災害が発生した直後から現金が必要になってくるというわけでありますけれども。  そこで、ちょっと総裁に確認をいたしたいんですが、余り知られてないこととして政府の中央防災会議、こちらに実は総裁出席をされているわけですけれども、具体的にはどのような役割を担っておられますか。
  109. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  政府の中央防災会議におきまして、日本銀行は、災害対策基本法に定めました指定公共機関の代表者としまして、その委員任命されております。私は総裁に就任した直後、四月の半ばでございましたけれども、中央防災会議が官邸で開かれまして、私自身出席いたしました。  この中央防災会議のまず役割でございますけれども、中央防災会議それ自体は国の防災基本計画の作成や防災に関する重要事項の審議等を行うわけですけれども、私は日本銀行という日本の決済システムを担う組織の代表としまして、通貨及び金融調節、それから資金決済の円滑な確保を通じた信用秩序の維持の観点から、関係行政機関と協力しつつ、事態に対応できるように審議に貢献していくということでございます。  会議そのものは頻繁に行われるわけではございませんけれども、こうした精神に従って、日本銀行は、災害に対する備えといいますかについて十分力を入れて取り組んでおります。
  110. 川崎稔

    川崎稔君 ちなみに、日銀の方でそういったいろんな備えをされているわけですが、その具体的な被災想定、どの程度の例えば災害なり被害を想定した上で準備をされておられるのか。といいますのも、今回の四川大地震もこれだけ甚大な被害が出ているわけですけれども、やはり天災ということを考えた場合、全く想定外のことも起こり得るわけでして、そういう意味では日銀ではどの程度の被災想定を置いた上で準備をされておられるか、お聞かせください。
  111. 山本謙三

    参考人山本謙三君) お答えいたします。  日本銀行は、災害に遭う場合に、日本銀行自身が受ける影響といったものを念頭に置きまして、大きく分けまして三つの被災想定を置いております。  具体的に申し上げますと、第一に、東京にあります日本橋本店の機能は維持されておりますけれども東京近郊にあります電算センターの機能が停止してしまう場合。第二に、その逆でございまして、電算センターの機能は維持されておりますけれども東京にあります本店が被災している場合。第三に、本店が被災し、かつ電算センターの機能が停止している状況。この三つの場合に分けまして、そのそれぞれについて業務継続体制を構築しているということでございます。
  112. 川崎稔

    川崎稔君 そういった上で、具体的にどういった業務を災害が起きたときに何とかして継続しようということで計画をされておられるのか。本当に国民生活を維持していくという観点から、ある程度日常の業務に比べたら異なる体制なり業務ということになると思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  113. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 委員御指摘のとおり、災害が発生しましたときに、まずどの業務、これを継続するか、重要業務の特定というのがまず最初にまいります。私どもでは、具体的な対象業務として五つ、通貨の円滑な供給、これは現金の円滑な供給を含みます。それから金融調節、第三に決済システム、日銀ネットなどの安定的な運行に関する措置、それから第四番目に金融機関に対する資金の貸付け、第五番目に金融機関による金融上の措置の実施に関する要請、これらを重要業務として特定をしております。  こうした重要業務の特定の背景としましては、日本銀行が国民生活に直結する現金の受け払いを適切に行う、決済システムの円滑かつ安定的な運行を確保するという観点から優先して対応すべき業務として特定したものでございます。
  114. 川崎稔

    川崎稔君 そういう意味では、今おっしゃった五つの業務、継続されるというために、日常からいろんな準備といいますか備えをされておられるんではないかというふうに思うわけですが、例えば今、平時において人員あるいは設備、システムといった面でどういった備えをされておられるか、お聞かせください。
  115. 山本謙三

    参考人山本謙三君) お答えいたします。  まず、平成十七年十月に公表されました首都直下地震対策大綱におきましては、日本銀行経済中枢機能として位置付けられておりまして、重要な金融決済機能を当日中に復旧させる、またそのために必要な要員を徒歩圏内に確保するということが求められております。  こうした要請を受けまして、私どもでは、被災時の初動体制の立ち上げを円滑に行うため要員制度を整備いたしまして、本店近隣に必要な要員を居住ないし宿泊させるという形の対応を取っております。また、東京が被災した場合に備えまして、大阪にバックアップセンターを整備しております。  このほか、本支店の建物の店舗や金庫など業務関係施設あるいは施設の設備充実ということを図りますとともに、建築物、構造物の耐震化、自家発電機の設置、水や食料の備蓄などを行っております。  また、被災などによりまして日本橋本店が使用不能になった場合を想定しました代替業務拠点の整備といったことも完了しております。
  116. 川崎稔

    川崎稔君 今伺った中で、本店近隣への例えば人員の配置とか大阪バックアップとかいった問題に加えまして、御説明いただいた建物の耐震化。本当に中国の今の現状を見ますと、日本ではまずああいったところまではないとは思うんですけれども、やはり建物の耐震化というのは意外に重要だと思いますし、日銀の建物の中には、まあ堅牢な建物ですけれども、古い建物もあろうかと思いますので、耐震化については力を入れていただきたいというふうに思っております。  一方、日銀の方で災害に向けて準備を、備えをしておくというだけではなくて、やはり一方で取引先の金融機関、こちらの方もある程度しっかりと対応してもらわなければいけないわけですが、こういった金融機関あるいは関係団体との連携というものについてはふだんどういうふうに取っておられますでしょうか。
  117. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 委員御指摘のとおり、金融経済機能を維持していくというためには、中央銀行とともに民間の金融機関が協力しながらしっかりとした体制を築いていくということが重要であると考えております。  日本銀行では、いわゆる考査、あるいは考査を用いませんオフサイトのモニタリングと呼んでおりますが、日々の接触を通じまして各銀行の業務継続体制の整備状況について把握を行っておりまして、必要な助言を行っております。また、それらの一環として、様々な調査資料や論文の公表あるいはセミナーの開催といったことも行っております。  このほか、金融市場全体で、業務継続体制の面では市場参加者の間でかなりの努力が行われています。そうした議論に私ども自身も参加し、その訓練などの充実を積極的に支援しますとともに、私ども自身もその訓練に参画するという形を取っております。
  118. 川崎稔

    川崎稔君 日銀から御覧になって、率直に、例えば金融機関サイドの対応、準備といったものについてどういう評価されておられるのか。遅れているのか、進んでいるのか。あるいは、地域的に進んでいるところと遅れているところがあるとか、あるいは業態の面で進んでいる先と遅れている先があるとか、そういった点についてはいかがでしょうか。
  119. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 金融機関といいましても非常に多様でございます。業務継続体制の整備につきましては、各金融機関が置かれた環境とか立場によりまして想定すべき災害でありますとか期待される対応水準といった点が異なるということについてはまず留意すべき必要があるというふうに考えております。  その上で、私どもの認識を述べますと、まず第一に、大方の先が業務継続体制整備の必要性、そうしたものに対する認識は随分深まってきたと。実際にも、大手行だけではなくて地域の金融機関を含めまして業務継続計画の整備は着実に進展してきたというふうに認識しております。ただ、これもまた金融機関全般に言えることでありますが、緊急時の要員確保といった面ではなお改善の余地があるというふうに考えております。  もとより、業務継続体制の整備でございますので、事柄の性質上これで十分ということはないわけであります。私どもとしても、金融機関とともに業務継続体制の整備に向けた働きかけを更にやっていきたいというふうに考えております。
  120. 川崎稔

    川崎稔君 そういう意味では今おっしゃった点に関係するんですけれども、日銀として今、逆に課題というか、そういう面でどういった点がまだこれからもっとやらなきゃいけないなというふうに思っておられるか、その辺りいかがでしょうか。
  121. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 日本銀行自身業務継続体制は、長年にわたり先輩から受け継いでまいりまして、かなりの整備を進めてきたというふうに考えております。  ただ、新型インフルエンザなど、これまでに想定されていなかったような被災想定ということも、可能性も考えていかなければならないというのが現実に起こってきております。そうした新たな環境の変化ということも踏まえまして、現在の体制を点検し、整備していくということが私どもにとっての課題であるというふうに認識しております。
  122. 川崎稔

    川崎稔君 確かに新型インフルエンザということについては、まさに国を挙げて危機管理という点で検討を進めていかなければいけない問題なんですが。  そういう意味で、お手元にお配りした資料の一枚目の資料なんですが、これが日銀が作成された資料の中で、米国での訓練の想定シナリオなんですね。これ、昨年実施された訓練だということなんですが。恐らく新型インフルエンザ、災害とある意味で共通している部分と違う部分というのは当然あるわけですね。日銀から御覧になって、どういった点が違うのか、どのように見ておられますでしょうか。
  123. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 私ども、従来、業務継続体制を整備する上で想定しておりますような災害というのは、例えば地震や台風などの自然災害あるいはシステム障害などの技術的災害あるいはテロなどの人的災害というのが一般的に想定されてきたものだというふうに認識しております。これらの災害は、大づかみに言いますと、人的な被害に加えまして、経営資源でありますところの建物、システム、各種設備などに被害を及ぼすものであるというふうに認識しております。一方、新型インフルエンザの場合は、職員への感染などが起こって業務継続を行う人員の確保、これが困難になるという面が大きな特徴であるというふうに思います。  また、これまで想定してまいりましたような一般的な災害というのは、通常でありますと限定された地域、ある意味で局地的でございまして、あるいは短期間の事象、単発の事象として発生するものだというふうに認識をしておりました。これに対して新型インフルエンザの場合は、地域自体が広範にわたるということ、それから期間も長期間にわたって継続して、かつ波状的に起こり得るといった特徴がございます。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  業務継続体制の検討に当たりましては、このように新型インフルエンザの可能性によって生じ得る経営資源面への影響の違いでありますとか地域の広がり、継続する期間、そうした違いに着目して整備を図っていくことが大事であるというふうに考えております。
  124. 川崎稔

    川崎稔君 今、新型インフルエンザと通常の災害との違いということで御説明をいただいたんですが、いずれにしても、社会的機能を維持していくという点では中央銀行が果たす役割というのは小さくないと思うわけですね。  資料一にあります米国のように、かなり大規模な訓練、想定されているわけですが、日銀の方ではこういった具体的な対応策の検討、この点についてどの程度進んでおられるのかお聞かせいただけますでしょうか。
  125. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 日本銀行におきましても、政府における取組を踏まえまして、今年度の業務運営方針として新型インフルエンザへの備えの充実というものを掲げまして現在検討を進めているところであります。  具体的に申し上げますと、これまで構築してまいりました地震やテロを基本想定としました既存の業務継続体制、これをベースとした上で、ただいま申し上げましたように、人員の確保が困難になるおそれがあり得ること、あるいは被害が一定期間継続するおそれがあるといったそうした新型インフルエンザの特徴を踏まえまして、継続すべき業務の洗い出し、あるいは要員の選定作業を進めているところでございます。また、職員の罹患を予防しつつ業務を継続する観点から、マスクなど必要な衛生用品の備蓄といったことも検討しておりますし、公共交通機関を用いないで出勤できる体制といったようなことの検討も進めていく考えでございます。
  126. 川崎稔

    川崎稔君 ありがとうございます。  いずれにしても、検討中でこれからいろんな形で具体化していくとは思うんですが、恐らく最も重要だと思われるのはやはり訓練だと思うんですね。災害にしても、あるいはこの新型インフルエンザの対策にしても、緊急対応計画あるいは業務継続計画といった形で、プランニングを実際に訓練で実践してみるということが求められるんではないかと思うんですが、日銀で通常行っている訓練あるいはこれから考えておられる訓練、どういったものがおありでしょうか。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕
  127. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 委員御指摘のとおり、業務継続体制の整備の確認という観点からも非常に訓練というのは重要であるというふうに考えております。  まず、日本銀行内部で単独に行う訓練といたしまして三つほど挙げさせていただきますと、まず、災害発生時に本店内に設置します災害対策本部の運営訓練、それから第二に、日本銀行日本橋本店が使用不能となる場合にその本店の機能を担うことになります代替業務拠点、ここでの業務継続の訓練、そして本店が甚大な被災を受けた場合には大阪支店に機能の一部を移転するわけでございますが、その大阪支店での本部機能、本部業務を代替して実施する訓練、こういったことを行っております。  それから第二に、取引先金融機関なども参加して日本銀行と合同で行う訓練といたしまして、一つは、日銀ネットのシステム障害を想定いたしましたバックアップシステムへの切替え、あるいは第二に、取引先のコンピューター接続の切替えの訓練などを行っております。また、政府との間でも緊急時における連絡体制を確認するといったような訓練を行っております。  訓練というのは、業務継続体制の整備がどの程度できているかという確認、それから職員一人一人が初動体制を身に付けていくという意味で極めて重要だというふうに考えておりまして、私ども訓練の充実に更に努めてまいりたいというふうに考えております。
  128. 川崎稔

    川崎稔君 ありがとうございます。  今伺って、とにかくもう今回の四川大地震を契機としてというか、改めてその災害への備えを強化していただきたいということと、ここに来て新型インフルエンザへの対応という新しい要素も出てきてまいりますので、そういう意味中央銀行としての業務継続体制というものについては充実を是非図っていただきたいというふうに考えております。  三点目の質問なんですが、三点目は、新総裁である白川総裁に組織の運営ということについてお伺いをしたいというふうに思っております。  まず最初に、基本的な現状認識ということなんですが、日銀は全国で約五千名の職員を抱えた巨大な組織でありますけれども、この組織の運営という点を考えた場合に、総裁から御覧になってその強み、長所、一方で問題点、課題というのはそれぞれ何だというふうにお考えでしょうか。
  129. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行の強みでございますけれども、日本銀行に三十四年勤務しまして、今回日本銀行に参りまして今二か月ぐらいですけれども、それを通じて感じますことは幾つかございます。  第一は、これはしっかりとした調査、分析に裏付けられた的確な分析、判断を行う、その面でどの程度実績を残しているかということについては、これは第三者の評価にまつべきものでございますけれども、しっかりした調査、分析に基づいて政策判断し実行していくというのが日本銀行の強みだというふうに思います。  経済は常に変化をしていきますから、固定的な解答があるわけではございません。多少きざな言い方かもしれませんけれども、中央銀行は常に学習を続ける組織でなければならないというのが私の信念の一つでございますけれども、そういうふうな組織文化というのが、これは日本銀行にかかわらず、どの中央銀行にも何か備わっているような感じがしますけれども、これが中央銀行の強みの一つだというふうに思っています。  それからもう一つは、中央銀行は、先ほどの現金の供給もそうですけれども、これは銀行の銀行として、具体的な中央銀行業務を通じて経済金融に貢献するということも中央銀行の役割でございます。つまり、抽象的に経済はこうあるべきだということを意見を述べるだけじゃなくて、自分たち自身が持っている手段がありますから、その手段を使っていろんなことができるというのが中央銀行の強みだと思います。  中央銀行が提供しています商品は、基本的には銀行券とそれから当座預金という、ある意味では単純な商品ですけれども、しかし、この単品で実はいろんなことができる。それは、金融政策もそうですし、それから決済システム運営もそうですし、いざという場合には、最後の貸し手としてお金を供給して金融システムの安定を守る。これもすべて実は銀行券を発行し、当座預金を発行するというところに根差しているわけであります。ここを出発点として政策の在り方を考えていくというのが中央銀行の強みだというふうに思います。  三つ目は、これは強みという言葉で表現するのがいいかどうかは分かりませんけれども、中央銀行がそうした政策をしっかりやっていくというためには、やっぱり国民の信頼が必要であります。常に外部との接点を意識しないといけないということで、中央銀行はいろんな例えば講演とか記者会見も行っていますけれども、それからいろんな論文も発表しております。これは、先ほどの第一の学習ということとも関連しますけれども、国民の方に多く理解してもらわないと政策が遂行できないという思いであります。これも中央銀行の強みだというふうに思っております。
  130. 川崎稔

    川崎稔君 まさに常に学習を続ける組織というのは、本当に新総裁らしいなということで、本当に日銀に対して是非そういうスタンスで臨んでいただきたいんですが。  そういう意味で、実は資料二にお付けしておりますのが、これは日銀からいただいた資料ですが、総合職のうち大学卒の退職者数、ここ十年間でどれぐらいいるのかということを示している数字であります。特に三十歳代以下の若手が毎年かなりの数辞めていっているんですね。これは、もちろんバブル崩壊後、労働市場自体が流動化が進んでいるということで、別に日銀に限った話ではないわけではありますけれども、優秀な人材の確保ということを考えましたときに、日銀の方では今、現状をどう受け止めておられるでしょうか。
  131. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行にいったん入行しました職員が日本銀行の仕事を十分にまだ経験していない段階で退職するということは残念なことだというふうに思っておりますが、最近の若手職員の退職の理由を聞いてみますと、日本銀行の仕事に引き続きやりがいを感じつつも、日本銀行で培った経験や知識を生かし、ビジネスや研究など異なる分野で自分の力を試してみたいという動機も多うございます。それから、委員も御指摘のとおり、日本経済全体として労働市場の流動化が進む中で、労働市場の繁閑に応じましてある程度の中途退職者が発生することはやむを得ないという面もあるように思っています。  ただ、いずれにしましても、私どもとしましては、引き続き採用、能力開発、処遇等の面で適切な対策を講じるとともに、働きやすい職場環境、さらにはチャレンジのしがいのある仕事に取り組むことを通じまして、必要な人材の確保とモラールの維持向上に努力していきたいというふうに考えています。
  132. 川崎稔

    川崎稔君 是非、若手職員の皆さんの士気、これを維持していただくということをお願いしたいと思います。  新総裁に御就任なさって、日銀の組織運営という点で、五年間の任期中にどのような点にこれから力を入れていかれたいとお考えなのか、あるいは日銀をこれから五年の間にどのような組織にしたいというふうにお考えなのか、最後に率直に新総裁の思いのたけをおっしゃっていただければというふうに思っております。
  133. 白川方明

    参考人白川方明君) 思いのたけということでもございませんけれども、いつも感じますことは、金融経済がこれだけグローバル化しているわけですけれども、各国といいますか、各国中央銀行はお互いに安定的な金融経済環境をつくり出すという点で競争をしているという感じがします。魅力ある金融経済環境をつくれば、それだけそれぞれの国がより発展をするということになる。そういう意味で、お互いに競争をして、これは民間のビジネスだけじゃなくて、中央銀行もそういう意味では競争をしているというふうに思います。  それと同時に、これだけ金融市場のグローバル化、一体化が進んでいますから、中央銀行全体として世界の金融システムの安定に貢献していくということも同時に必要になっています。自分自身中央銀行総裁としてそうした意識を持ちながら仕事をしっかりしていきたいというふうに思っております。  多少具体的に、具体的というか、もう少し抽象度を下げて申し上げますと、先ほど中央銀行の強みということを三点申し上げました。その三点、つまり、常に学習を続けるという、そういう組織文化を大事にしないと政策業務はきっちり遂行できないということをまず意識したいと思っています。それから二つ目には、日本銀行はこれは銀行ですから、銀行の銀行として具体的な業務を通じて国民に貢献する、国民にとって役に立つ、そういう組織にしていきたいなというふうに思っています。それから三つ目は、独立性を与えられている以上しっかり説明をしていく、対外的な接点を大事にしていくということを考えたいと思います。  この具体的な中身としては時々いろんな課題に多分直面していくと思いますけれども、そうした気持ちを持って日本銀行の組織運営に当たっていきたいというふうに思っています。
  134. 川崎稔

    川崎稔君 本当に是非これからの五年間というものを、まさに日本経済、より良くしていただくために活躍をしていただきたいというふうにお願いをする次第であります。  最後に、三つ目の資料をお付けしておりまして、これは生活意識に関するアンケート調査調査委託先との契約状況という資料をお付けしております。  これ、時間がございませんので指摘だけにとどめさせていただきたいんですが、生活意識のアンケート調査は、非常に短観と並んで私も信頼申し上げている、重宝している調査なんですが、これが平成十七年度から十八年度、十九年度、二十年度と委託先が変わっていっているわけですね。業者の選定方法として、指名競争見積りから随意契約にいったん変わって、その後は一般競争入札ということで競争性を高めているわけですが、ただ私がちょっと気掛かりなのは、一般競争入札を進めている中で十八年度、十九年度、二十年度と契約金額が上がっていっているということでありまして、これ調査方法は、当初は訪問留め置き調査ということだったのが、最近は郵送調査で、むしろコスト的には掛からない調査に変わっていっているわけです。  そういった中で金額が変わっていっているということでありまして、これはなぜこのようなことをわざわざ取り上げさせていただいたのかというと、先般も決算委員会の方で、政府の世論調査に関して委託先の選定でちょっと議論があったんですが、世論調査というのはサンプル数と調査方法が決まれば大体価格がある程度決まってくるということで、非常に何というか透明性を特に要求される業務でございますので、この点を特にお願いしたいということを申し上げまして、ちょっと最後しり切れとんぼになってしまったんですが、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  135. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時六分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  136. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政及び金融等に関する調査のうち、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づく通貨及び金融調節に関する報告書に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  137. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 今日もいろいろお聞きしようと楽しみにしておったんですが、民主党の三人の専門家の方々がすばらしい質問を先取りされまして、できる限り重複しないように聞いてまいりますが、出したやつが抜けているということがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。  まず、大久保先生の御指摘に、グリーンスパンさんの話とバブルの話を絡めて総裁に御質問があったんですけど、総裁が一週間前ぐらいですか、メディアの会見にお答えになった話ですね。私は、どちらかというと、総裁の御意見、なかなかいいかなと思うんですけど、中央銀行というのは、物価の監督をやる、物価の何ですかね、監督者であるということなんですが、物価といっても、一般消費財みたいに実物物価もありますが、金融資産市場の物価、これも非常に重要だと思うんですね。  どちらかというと、今まではバランスを取って実物の物価の方を重視してこられた。中央銀行の伝統的な物の見方というのは、そういうことだったと思うんですが、私は、今回のサブプライムショックに端を発します全世界で起こっているような経済混乱を見てみましても、金融資産市場の物価、これに、より注意を払って金融政策の運営をやっていくということがもう欠かせない。どちらかというと、こっちの方の金融資産市場の物価、これに重きを置いて、できたらバブル発生前の予防的な施策も積極的に打っていくべきではないかというような考えを持っているんですが、総裁、いかがですか。
  138. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融政策の目的をどういうふうに理解するかということは、各国中央銀行にとって非常に難しい課題だと思っています。どの国も金融政策の目的が物価の安定であると、それを通じて持続的な経済成長を実現していくということについては意見の一致を見ていると思いますけれども、そのことを実践的にどう行っていくかということでいろんな考え方の違いがあるんだというふうに思います。  資産価格は、午前中の部でも申し上げましたけれども、経済金融に対して非常に大きな影響を及ぼします。そういう意味で、物価それから持続的な成長影響を与える大きな要因でございますから、当然、資産価格の動向を無視する中央銀行というのはないと思います。考慮をしているわけですけれども、その考慮の仕方でございます。  例えば、今のアメリカを見てみますと、同じ資産価格でも、住宅価格は、これは引き続き下落していまして、まだ下落に歯止めが掛かってないという状況であります。ところが、一方で株価の方を見てみますと、こちらの方は、もちろんアップダウンはございますけれども、しかし、この三月以降は株価はどっちかというと上がってきているわけであります。そういう意味で、同じ資産価格を見ていくというときでも、上がっているものもある、下がっているものもあるということでございます。  その点では、物価も確かに上がっているものもありますし、下がっているものもあるということでございますけれども、資産価格の方は、これは、より長い将来を見通し経済主体が将来をどう展望するかということによってまた変わってくるわけであります。その分、資産価格の方が変動が大きいし、また取り上げる資産によって価格の動きも異なっておるというふうに思います。  そういう意味で、なかなか物価ではなくて資産価格をターゲットに金融政策を行うということは現実問題としても難しいし、それから、かえってそれをやりますと経済の変動が大きくなってくるというふうに思います。  繰り返しになりますけれども、資産価格の変動も加味した上で物価経済情勢判断していくというのがオーソドックスな対応だというふうに思います。この実践が難しいことを十分申し上げた上で、それが基本的な対応方針だというふうに思います。
  139. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございます。  もう一つ、今度は何を監視していくかという話を、何をというのは主体の話ですけれどもね。中央銀行の役割というのは、物価の安定と金融システムの安定、これを果たすために頑張っていただいていると思うんですが、金融システムの安定の方を見ますと、大体、中央銀行というのは伝統的に、金融機関、中でも銀行、日銀さんでも考査というのをやられていますけど、これをしっかりチェックしていく、これが金融システム全体の安定につながるという考えだったんですが、アメリカの例で見ますと、サブプライムショックに端を発する金融市場の混乱の中で、証券会社に対して資金のある意味供与を中央銀行が果敢に行っているわけなんですが、これ何でかといいますと、証券会社やファンドというのは、もう釈迦に説法ですけれども、レバレッジを掛けるために投資のお金に大分銀行借入れを大幅に混ぜて、中でも短期借入れですね、短期の中でも超短期。例えば、アメリカの証券会社が全投資資金のうち四分の一を調達したのが、今日借りたら明日返すという超短期、一日借りの資金だったと言われています。ああいうショックが起こったときにそういうお金をたくさん入れていたら、これはもう収縮が加速度的に起こるのは避けられないと思うんですね。  つまり、今までは銀行を見ておけばよかったんですけれども、これからは証券会社もファンドも、全体を見ていって、そして場合によってはそれをファンドや証券会社、被害のサイズと被害の拡大スピードによると思うんですけれども、に応じて、場合によってはそういうものに資金を入れていくというような選択肢もあり得るのではないかなと思うんですけれども、これからこういうほかの金融機関にも監視を広げていって、そして場合によってはアメリカのように果断な政策を打っていくということが必要だと思うんですけれども、総裁はいかに考えられますか。
  140. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行の使命は、物価の安定と金融システムの安定でございます。日本銀行法律日銀法の条文から引用しますと、金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を通じて金融システムの安定維持を図るということが使命でございます。  実は、日本銀行は、今御指摘のFRBとは異なる歴史的な事情から、既に、預金を取り扱う金融機関といいますか、銀行だけじゃなくて証券会社も実は日本銀行の取引先にしております。取引先にしているのに伴いまして、日本銀行自身が証券会社の経営内容をチェックをするという考査も現に行っております。ここは、実はアメリカのFRBとは大きな違いとなっております。  法律的な枠組みが何であれ、いずれにせよ、今議員御指摘のとおり、証券会社あるいは広くファンドが金融全体の中で大きな役割を果たすような今は経済に現実になってきております。したがって、どの中央銀行にとっても、証券会社の活動も含めて幅広い金融機関の状況を、プレーヤーの状況を認識するということが大事になっております。  日本銀行は、現実に考査、それからオフサイトのモニタリングを通じて証券会社の状況、これは日本に拠点のあります内外の証券会社の拠点について、現実に情報を収集して、そのことを金融システムの安定にも金融政策の運営にも役立てております。そうした一般的な情報収集を超えまして、流動性をいざという場合に供給することも必要になるんじゃないかということでございます。  この点、FRBは、今回ベアー・スターンズの件で初めて日本銀行流にいきますと特融を実行したわけでありますけれども、日本銀行は、この面ではかなり前から、実は証券会社を資金供給の対象に現実にもう行っております。最後の貸し手として特融を行ったのは昭和四十年の山一特融と、それから一九九七年の山一特融、二回特融を行いまして、これはいずれも証券会社自体を救うということではなくて、金融市場の安定のためにこれを実行したものでございます。  それ以外にも、日本銀行は、補完貸出制度と呼んでおりますけれども、常時、若干のペナルティー金利を払えば貸出しを行うという制度も、常設のファシリティーも設けておりまして、この点でも、実はFRBが今回こういう制度を導入しましたけれども、日本銀行は既にこの制度を持っております。  いろんな金融機関に資金を出すことそれ自体がもちろん必要ということではなくて、本当にこれを出さなければ金融システムが不安定になり、経済全体が混乱するというときに幾つかの条件を付けた上で貸出しを行うというふうにしておりますけれども、そうした体制は現実に組んでおりますし、そうした機能を適切に遂行することが大事だと思っています。
  141. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 サブプライムショックを契機に今世界の金融市場が混乱を継続しているのか、収束しつつあるのか、これは評価の分かれるところで、総裁も先ほどの民主党の同僚議員の質問に対してなかなか判断が難しいという話をされていたんですが、私がいろんなマーケット関係者に聞いてみますと、これはもう私の私見ですし、偏った人の意見を聞いている可能性が高いのであれなんですけれども、大体六、四で悲観的な方が多いような気がするんですけれども、やっぱり中には終わりの始まりだという方もいらっしゃいますし、まだまだ続くという方もいらっしゃいますし、中にはもう終わったとか、これからは晴れ間が見えてくるだろうとか、いろいろいらっしゃるわけですね。  これは別に混乱というよりも、サブプライムショックを契機にリスク資産の再評価が行われていて、その再評価プロセスが始まりなのか終わりなのか、継続しているのか終わっているのか、この辺の評価が難しいと思うんですが、この中で行われていることというのは、ざっくり言ってしまえば、アメリカに一極集中していた世界のグローバル金融がクロスボーダー、いろんな地域に、そしていろんな商品に、例えば穀物とか原油とか、こういうものに多角化といいますか、分散化というか、こういうものが起こっていて、市場が更に複雑化している、こういう認識ではないかと私は思っているんですけれども、総裁は、今のリスクの再評価の過程で起こっていることというのはどういうことだと思われていますか。
  142. 白川方明

    参考人白川方明君) サブプライムローン問題に端を発した国際金融資本市場の性格をどう理解するかということは、現在いろんな人が議論をしている段階でございまして、まだ正解が出ているというわけではございませんけれども、まず、基本的な性格ですけれども、住宅価格が大きく下落をしたということからスタートしまして、そこから複雑な住宅ローン資産を組み込んだ証券化商品の値段が下がっていく、それから、複雑な証券化商品であるゆえに、このリスクを正確に評価することが難しくなってくるということで、そのことがまた更に関連する金融資産を市場で売却をするという動きになる、それがさらに、今度はそれが実体経済影響をしていくという、そういう複雑なプロセスが現実に進行を今しているということだと思います。  よくこれは価格の発見という言葉を使いますけれども、今何が価格であるのかということについて発見できていない。これはリスクを再評価しているということとほぼ同義ではありますけれども、確かに市場の価格というものは、取りあえず価格が付いているケースでも、しかしその価格が本当にその価値を表しているかどうか、だれも自信を持てない。そういう意味で価格が発見できていないという状況だと思います。  先ほど悲観、楽観が六対四だというお話ございましたけれども、私が欧米の金融機関、エコノミストと話をしましても、確かに両方あります。どちらかというと、金融の世界に近い人の方が慎重な見方をしているなという印象を持ちますけれども、いずれにせよ、慎重な見方が残っておりますし、私自身も当面は慎重に見た方がいいというふうに思っています。  それで、グローバルな資金の流れとの関係で御質問ございましたけれども、これは今起きている混乱を整理するときに、私はミクロとマクロと両面で考えた方がいいというふうに思っています。直接的には、これは金融機関それから投資家のリスク管理が結果として明らかにこれは間違っていたわけですけれども、これはリスク管理のやっぱり失敗であったと。その緩和の局面でリスク管理が甘くなっていったということはあると思いますけれども、いずれにせよ、これは個々の金融機関による、あるいは投資家によるリスク判断の誤りであったということでありまして、このことはまず強調しておく必要があると思います。  その上で、マクロの経済金融環境の影響もこれはあるというふうに思いますし、それから委員御指摘のグローバルな資本の流れとか、あるいはその背後にあるいろんな金融の技術進歩の影響、この両面で考える必要があると思います。  中央銀行立場から見て非常に関心があります一つの事項は、個々の金融機関のリスク管理の問題とそれからマクロの環境の連関であります。この数年、非常に世界の物価が安定する中で高成長が続くということで良好な経済環境が続いたわけであります。人間性の常として、良好な経済環境が続きますとだんだんにリスク認識が甘くなってくる、その結果、よく専門家がレバレッジを利かせろという表現を使いますけれども、より多くの借金をしてリスクを取っていく、リターンを上げていくという行動になっていくわけであります。  そういう意味で、マクロの経済環境の面で我々自身今後どういうことを考えるべきかということは一つの論点でありますし、それから金融機関のリスク評価につきましても、リスク管理体制について規制監督当局はどういうことを今後より注目すべきなのかということを今もう一回点検しているということだと思います。  以上でございます。
  143. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 ありがとうございました。  私が申し上げたかったのは、もう今まではどちらかというと、アメリカもアジアも日本もお金があったらアメリカに丸投げじゃないですけれども、投資しておけば何とかもうかるんじゃないかみたいな、そういう投資の姿勢があったんですけれども、それが再評価の過程の中でアメリカだけじゃちょっとやばいなと、やっぱりそれをまた世界中のいろんな商品に分散し始めた、そういうことが起こっているんじゃないかなと思うんですけれども。  裏を返せば、ドルがこれからやっぱり非常に心配になってくると思うんですね。中央銀行の方に通貨、為替の話を聞くのは余りよろしくないということもありますけれども。ドルが非常に心配でして、実際もうアメリカの高官も政府関係者もかなりドルの下支えをするような発言を始められていますが、やっぱりこれから一種のドル離れというのは起こっていると思いますし、また今、ドルが下落しているからドル建ての原油価格がそんなに上がっていないということもありまして原油価格が一気に上がっている、ドルが弱くなっているから原油が上がっているという相関関係もあると思うんですね。やっぱり経済の安定、物価の安定、金融システムの安定のためには為替をどう見るかというのも非常に大事だと思うんですが、これ、ドルが私は先行きまだまだ厳しい局面もあるんじゃないかと思うんですが。  その中で、これもお門違いで恐縮なんですけれども、日本の外貨準備見てみますと、一兆ドルぐらいもうドルに投資しているんですよね。これ、ちょっと規模が大き過ぎますし、これ各党の方からもいろいろ指摘がいろんな委員会であるところなんですけれども、これ適正規模なのか。G7のほかの六か国を見てみますと、大体GDPで日本は二〇%の外貨準備の積立てがあるんですけれども、ほかの国というのは二%から三%で、十倍ぐらい経済規模に比べて余剰ではないかという気がするんですが、発言ができるところで結構なんですけれども、いかが考えられますかということなんですけれども。
  144. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本の外貨準備は、これはもう大半が政府の外国為替資金特別会計で保有しているものでございます。日本銀行自身の外貨資産も若干はございますけれども、大半がこれは政府でございます。  政府の保有する外貨準備の規模等につきましては、これは政府自身が決めていくという性格のものでございますから、私がこの場で具体的にコメントすることは、申し訳ございませんけれども、差し控えさせていただきたいと思っています。
  145. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 それでは、ちょっと白川マジックについてお伺いしたいんですけれども、量的緩和というウルトラCを発案された方ですので。  私も民主党の先生方に負けないようにこの本を借りてきまして、三百八十三ページにゼロ金利制約下の難しさという項目があって、これ見させていただいたんですけれども、ゼロ金利は脱しましたけれども、〇・五%というそういう幅しか今持っていないわけですけれども、先ほど申し上げましたとおり、グローバル金融が複雑化、多角化、分散化していまして、リスクが低まったかというと、まだまだ分からないわけですね。まだこれから何が起こるか分からない。  ゼロ金利よりはいいんですけれども、〇・五しかないというところでなかなか難しさがあると思うんですけれども、これを書かれたときにゼロ金利の話をいろいろ分析されたと思うんですけれども、今御自身がこういう金融システムの安定や物価の安定を、難しいグローバル経済の、複雑化されたグローバル経済の中におかれまして日本のかじ取りを任される役になられまして、この文脈で今の〇・五しかないところのかじ取りをどう考えられるかということなんですけれども、どうですか、白川総裁、またウルトラC、何か起こったときありますか、どうですか。
  146. 白川方明

    参考人白川方明君) 私、前回、日本銀行に勤務していましたとき、二〇〇一年の三月に、これは理事として量的緩和政策決定ということに関与いたしましたけれども、これはあくまでも政策委員会メンバーとしてではなくて、事務方の責任者としてこの政策にかかわったということであります。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  ゼロ金利制約のことでございますけれども、確かに短期金利がゼロに到達しますと、金利はそれ以上に下がり得ないという意味でゼロ金利の制約があるということはそのとおりでありますし、私が大学時代に書きました本でもそのことについてるる議論をしております。  ただ、私いつも、本でも若干書きましたけれども、ゼロ金利制約の議論を聞きながら、私自身が多少不満を感じましたのは、すべての議論が短期金利の一点に集中して議論が行われているという感じがいたします。企業が家計の行動に影響を与える金利は、必ずしもオーバーナイトの短期金利、あるいはその中でも特にオーバーナイトの金利というわけではなくて、中期から長期、幅広い期間にわたる金利でございます。それから、その金利も、普通の人が国債金利で調達できるわけではありませんから、信用のリスクを加味した金利、民間ベースの金利でございます。それから、現実にその金利でもって金融機関が貸出しをどの程度積極的に行うかということでございます。  そういう意味で、短期金利がゼロになったから、それでもう既にそこから先金融政策の効果が一切ないということではないというふうに思います。金融環境を幅広く点検しないといけないというのがまず最初に申し上げたいことであります。その上で、現在の短期金利の水準を考えてみた場合に、今コールレートが〇・五%、消費者物価上昇率が一・二%ですから、実質金利はゼロ若しくは若干のマイナスでございます。  大事なこと、金融政策上大事だと思うことは、現在の短期金利の水準が経済全体との関係で今どういう水準にあるのか。つまり、適切な水準にあるのかどうかということでございますけれども、潜在成長率は今一%の半ばから後半程度ということでありますから、それとの比較で見て、今短期金利という面から見て適切な今水準にあると。何かゼロ金利制約に近いために、結果として短期金利の水準が今不適切なところにあるということではないと思っています。  いずれにしましても、中央銀行経済を支えていく上では、一つ金利政策という面でしっかり対応するということと、それから今アメリカが対応していますように、金融市場の安定をしっかり維持していくということを通じて全体として経済の安定を支えるんだと思います。幾ら短期金利を低くしても、金融市場が不安定になっていますと、結局民間が調達する金利は上がってしまいます。そういうふうな事態になりますと、金融政策の効果も減殺されます。  ですから、結論になりますけれども、今、日本銀行自身が非常に制約があるがために中央銀行としての機能が適切に果たし得ていないと、そのために経済に何か悪影響が出るということではないと思っています。
  147. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 その経済なんですけれども、一部は不況の中で物価が上がっていく、スタグフレーションに入りつつあるんじゃないかという意見もあります。今やもうだれでも知っている原油価格の高騰ですね。ガソリンは来月百七十円になるんじゃないかと言われています。小麦、トウモロコシも上がっていますね。大阪ではもう既にお好み焼きやタコ焼きが三割から四割上がっていますし、イタリア料理屋へ行くと、普段メニューをよく見ていなかったんですが、よく見てみると、パスタとかピザが上がっていまして、もちろんワインやチーズも上がっています。  そういうことで、不況の中で、また川崎先生が御指摘になったとおり、日本のデフレを、デフレといいますか物価の安定、下落ぎみの安定だったんですけれども、それを支えてきてくれた中国の安い賃金でのいろんな製造、その輸出というのが、もう国内でかなりインフレが起こっていまして、日本物価を安定させてきた又は長期的に下落ぎみにさせてきたような要因が大分変わってきていまして、物価は上がるし、でも日本の中では購買力は高くなっていないので景気は良くならないというようなことで、スタグフレーションの可能性があるのではないかと言われますが、その辺り総裁は端的にどう思われますか。
  148. 白川方明

    参考人白川方明君) 中国等の影響でございますけれども、一番最初の局面では、労働集約的な財の生産を増やし、先進国から見ますと安い商品が入ってくるという形で物価の下落要因として作用してきました。しかし、中国を始め新興国がその結果輸出が増えて経済成長を実現していきますと、今度は消費財についても、それからエネルギーについても需要が増えてくるということで、物価が上がってくる局面になってまいります。  現在、日本の、他の先進国もそうですけれども、全体として物価上昇率が下落する局面からこれが上がってくる局面に入っているということでございます。原因が何であれ、海外から入ってくるものの値段が上がってまいりますと、これはスタグフレーションといいますか、景気物価で相異なる影響を与えてくるというのはそのとおりでございます。  中央銀行として最もここで悩むことは、物価景気が相反する方向に向かっているときにどのような政策をすべきかということであります。これはちょっと午前中の話とも若干重複をしますけれども、判断基準としては、物価安定の下での持続的な経済成長を実現するということだと思います。これを具体的にその局面局面でどう判断するかということですけれども、私自身は三つの次元に分けて判断をした方がいいと思っています。  一つは、交易条件が悪化をして日本全体の所得が減ってくるために、消費にしても投資にしてもそれが減ってくるという需要面のマイナス効果と、それから交易条件の改善した国といいますか、新興国を中心に輸出が増えるという効果、この需要面でのプラス効果を勘案して、全体として需要が増えるのか減るのかというのが第一点でございます。第二点は、仮に需要が増える場合、減る場合、それぞれに応じて需給ギャップが変化しますから、物価がどう変化するかということ。それから三つ目には、いったん物価が上がりますと、人々の抱く予想インフレ率が変化する可能性がございますから、そのことが原因となって二次的、三次的な物価上昇をもたらす可能性があるということでございます。この三点を頭の中では点検しながら経済景気物価状況を見ていくと。  我々としては、スタグフレーションといいますか、物価はどんどん上がっていくけれども、しかし経済成長率景気の方は悪化をしていくということのないように政策運営をしていくということに我々の対応としては尽きるというふうに思います。
  149. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 スタグフレーションは、スタグネーションとインフレーションの合体した言葉なんですけれども、僕は、金融政策というのは、伝統的な議論でいえばよくひもに例えられますよね。ひもを引っ張って過熱ぎみのときは抑えることができるんですけれども、何というんですかね、低迷しているときに金融政策景気を底上げするというのはなかなか難しいということで、スタグネーションとインフレーションに分けますと、インフレーションには日銀さんを始めとする中央銀行は対処できるけれども、スタグネーションの方ですね、本当に経済が悪くなって消費が減って失業が増えるというような状況には、金融政策ではなかなかそれを押し上げることはできないんではないかと。伝統的にもそう言われていますし、今の経済の中でもそうではないかと思うわけです。  ここも含めてお聞きしたいんですけれども、そういう中で、先ほど政治の介入が中央銀行、いろんな意味日本の中ではあるんではないかという議論がよくされます。人事の話を中心に午前中は民主党さんがされていたんですけれども、人事は置いておいて、例えば重要な中央銀行判断の直前になると、政治の方がいろんなノイズを発するわけですね。これ私、いかがなものかと思うんですけれども、私もノイズ出したりしていますけれども、これいかがなものかと思うわけですね。マーケットとの高度なコミュニケーションが求められる作業にそこまで民主主義が介入すべきかどうなのか。  それで、インフレーションとかデフレーションには対応できますけれども、景気そのものには金融政策というのは限定的な影響しかないと思われるんですけれども、こういう何かノイズを発するような政治からの圧力というのをいかに考えられ、今後はこれにいかに対処されるおつもりなのか、ちょっと決意も含めてお伺いしたいと思います。
  150. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えいたします。  最初に、金融政策が上下で非対称性があるかということでございますけれども、まず一般論から申し上げますと、金融政策は引締め方向だけじゃなくて、緩和方向であっても経済物価影響を、少し長い時間を掛けてですけれども、影響を与えることができるというふうに考えています。  ただ、経済が過去の大きな行き過ぎの調整期にある場合であるとか、あるいは金融市場が不安定な場合などには、単純に政策金利を引き下げるだけでは十分に緩和的な金融環境をつくり出せないということもこれはあるというふうに思います。  これは日本のバブル崩壊以降の経験でもそうでございますし、それから、現在問題となっていますアメリカのケースを考えてみましても、去年の九月以来FRBは三・二五%、フェデラルファンドレートを下げてきましたけれども、信用度の低い社債の金利は当時に比べて下がっているわけではなくて、逆に少し上がっている状況でございます。そういう意味で、短期金利だけで信用度の低い社債の金利まで下げられているわけではございませんし、その背後には住宅バブル崩壊後のいろんな問題がそれに投影しているわけであります。  現実に、アメリカの場合でいきますと、資本が大きく毀損をしたわけですから、最終的に金融機関が従来と同じような活動を行っていくためには十分な資本を調達しないといけないと。これは金融政策によっては解決のしない問題ですから、金融機関自身が自らの努力によって資本を調達することが必要であります。そういう意味では、大きな経済金融の調整期には金融政策だけでは対応できないというのはそのとおりだというふうに思います。  ただ、中央銀行からしますと、一方で必要な努力というのは関係者が行うということでありますけれども、中央銀行がすべきことは金融市場の安定性を維持するということであります。金融市場ががたがたしていますと、そうした取組自体が、必要な取組自体がこれは遅れてしまうわけでありますから、金融機関が取組ができるように、安定的な金融環境をつくるように様々な措置を講じる。その中にはオペの期間を例えば調整をするとか、あるいは担保の範囲を見直すとか、あるいはオペの先を見直すとか、いろんな施策が含まれますけれども、そうしたことを一生懸命行っているわけであります。  それから、あとは、中央銀行の行う金融政策についていろんな声が出てくるということについてどう考えるかという話であります。  これもいつも申し上げていることでありますけれども、金融政策の目的は物価の安定を通じて持続的な成長を実現することでありますけれども、そのためには、中央銀行が中立的かつ専門的な立場から経済物価情勢の分析を行いまして、中長期的に見た経済の姿を点検した上で自主的な判断責任において政策を実行すべきだというふうに考えます。  これは歴史から得られた教訓でありますけれども、日本銀行法においても中央銀行独立性というのははっきりうたわれているというふうに思いますし、それから政府との関係につきましても、金融政策決定会合における政府からの出席者がそこで意見を表明し、そのことを議事要旨で公開していくという透明性の高い仕組みができています。私としては、そういう既に用意されている透明性の高い仕組みを活用するということが出発点になるというふうに思います。  それから、日本銀行自身としてそれ以外に何ができるのかということでありますけれども、先ほど申し上げましたけれども、日本銀行のよって立つ基盤というのは、物価の安定と金融システムの安定に責任を持つという専門家としての立場から、専門的な知識、経験を蓄積して、それに基づいて発言をしていく、取り組んでいくと。そのことに誠実な組織であるということを続けることによって、やがては今先生がおっしゃったような、何といいますか、慣行というものはいつの間にかだんだん薄れていくということになるということを期待しております。
  151. 田村耕太郎

    田村耕太郎君 まだいろいろ質問を用意していたんですが、民主党の専門家の先生方に出番を奪われましたので、これで終わります。頑張ってください。  ありがとうございました。
  152. 白浜一良

    ○白浜一良君 公明党の白浜一良でございます。  白川総裁、おめでとうございます。  大変な紆余曲折がございまして、質問通告はしてないんですけど、今日、一斉に報道されていましたね。副総裁のポストが一つ空いているわけでございますが、この国会では政府が提案しないと、こういうことでございますが、総裁の誕生自身が大変な曲折があったわけでございますが、実際、今一名欠員で、副総裁という重要なポストが欠員なんですが、今日の報道を見ますと、いろいろ支障を来すんじゃないかと、そういう懸念をされているような報道もございますけれども、実際、総裁として全責任取って今運営されているわけでございますけれども、この欠員になっているという事態を率直にどのようにお考えになっていますか、お感じになっていますか。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕
  153. 白川方明

    参考人白川方明君) 午前中も申し上げましたけれども、欠員という事態それ自体は政府国会のお決めになることでありますから具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、日本銀行の運営を預かるという立場で考えた場合には、何よりも日本銀行という組織は、これ金融政策だけではなくて、様々な政策、それから様々な業務を行う非常に大きな組織であります。様々な業務を行い、大きな組織でありますから、当然それに伴うもろもろの仕事が発生してまいります。業務が滞ることのないように全力を挙げてはいますけれども、しかし、法律で、総裁一人、それから副総裁二人ということが法律規定された仕事をやっていく上で適切な人員であるということでありますから、そうした人員が一人欠けているということは、ほかの条件が一定であれば、確かに負担になっておりますし、これは望ましいことではないと思っています。  ただ、私の立場に立った場合は、一方でそういう感想を申し上げると同時に、しかし、結果として日本経済金融に迷惑が掛かってはいけないということですから、これはそういうことがないように全力を挙げて努力をしていると。その結果をどういうふうに評価をするかというのはこれは国民の皆様でありますけれども、私の、執行の長としてはそういう心構えで行っております。
  154. 白浜一良

    ○白浜一良君 大変なお立場でございますので、本当に活躍されることを祈っております。  それで、何点か今日はお伺いしたいわけでございますが、昨年の十月のいわゆる展望レポートとこの四月の展望レポートでいろいろちょっと若干変化が出ておりまして、例えば金融政策見通しという面では、昨年の十月には、経済物価情勢の改善の度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整を行う、こういう表現をされているわけでございますが、この五月、日本記者クラブで総裁が講演されたその中身を見ますと、特定の方向性を持つことは適当ではないと、このように表現されているということで、若干ニュアンスが違うわけでございますが、この違いの中身、それと日銀としてはどういう方向性を考えていらっしゃるのか、まずこの点をお考えをお聞きしたいと思います。
  155. 白川方明

    参考人白川方明君) 多少、今議員がおっしゃったことと繰り返しの部分があるかと思いますけれども、現在のように経済物価先行きにつきまして不確実性が極めて高いという経済の下では、先行き政策についてあらかじめ特定の方向性を持つことは適当でないというふうに今回判断を改めました。その結果、我々としては、毎回の決定会合において経済物価情勢の見通し、それからそれに随伴する様々なリスクを十分点検していきたいということでございますけれども、なぜ変わったのかということであります。  昨年十月との比較で見まして一番大きな変化の要因は、これはエネルギーそれから原材料価格高の影響が、これがやっぱり確実に日本経済影響を与えてきているということでございます。従来もそれは理屈の上ではもちろん理解していたわけですけれども、それが現実のデータでだんだんに裏付けられてきたということでございます。  二〇〇二年の初めを起点にして計算してみますと、対外的に、原油価格等の上昇によりまして海外に所得が幾ら移転したかというのを計算してみますと、大体これ四・七%に当たります。これはもちろん二〇〇二年以降の累積でございますけれども、特に足下、これが大きくなっています。これはマクロの計算上そうですけれども、これは結局、企業なり家計に必ず実質的な所得減という形で影響を与えております。  今、じゃどこに影響を与えているか。どのセクターにも影響を与えていますけれども、特に企業部門の収益がそれによって影響を受けているというふうに思います。  現在、企業の収益水準自体は、これは歴史的に見ても非常に高い水準でございますけれども、これまではずっと増益増益で来ましたけれども、これが二〇〇七年度に初めて、全体をくくってみますと、増益から若干の減益という形に多分なったというふうに思いますけれども、これは今申し上げたようなことがやっぱりもう一つ大きく影響をしていると思います。その影響が特に大企業というよりか中小企業の方に出てきている、その結果、設備投資の増勢もやっぱり鈍化をしていくという力が働いてまいります。そのことがまず一つ要因でございます。  それから、国際金融資本市場動きも、これも不確実性が高くなっております。既に出てきている影響については私どもの見通しにも反映させますけれども、この先、最悪期が一方では終わったという見方もありますけれども、しかし他方で、これはまだまだこれからだという見方もあって、ここはなかなか決め打ちができない状況だと思います。そういう意味で、これは不確実性のある話であります。  そういうふうに考えますと、メーンのシナリオとしては日本潜在成長率並み成長を遂げるだろうということではございますけれども、どちらかというと、この不確実性が多い中で、下向きのリスクが高いなというふうに判断しています。その関係で、従来は、今後は方向としては金利水準を引上げの方向で調整をするというところを、今回はこの不確実性状況にかんがみて、特定の方向を持たないということを申し上げました。  ただ、ちょっとバランスを取って申し上げますと、今は全部下振れのリスクを言いましたけれども、一方で上振れのリスクももちろんあります。今、日本経済を覆う、日本経済の不確実性として一番大きいのは、エネルギーもそうですし、アメリカの金融資本市場の動きもそうですけれども、この不確実性という霧が非常に濃いわけですね。この霧が晴れた場合には、今度は、今金融政策も非常に緩和的ですから、これが持っている刺激的な力がもっと発揮されるということもございます。  そういう意味で、上方向、下方向、両方のリスクは意識していますけれども、結論的には、今、下方向を意識した方が適切だというふうに判断したことから、金融政策判断も、去年の秋のレポート対比、変更いたしました。
  156. 白浜一良

    ○白浜一良君 長々と答弁いただきまして、ありがとうございました。  それで、今の御答弁にも関連するんですけれども、もう一つ、昨年の十月と比較いたしまして、同じ話なんですが、いわゆる経済成長率見通しも当然ですが若干変更されたと。平均レベルでいいますと、昨年の十月には一・八程度見ていらっしゃったんですか、この四月には一・五程度と、こういうことで、この点、今御答弁いただきましたので重複する話もあろうかと思いますけれども、成長率をいかほどにするかというのはこれ大変難しい実態もございますしね。いわゆる人によっていろいろ言っていることが違うんですが、自由民主党のいわゆる重鎮というか、そういう方でも、中川元官房長官ですか、なんかはもう四%ぐらいできるんだと成長路線でおっしゃっていますし、与謝野元官房長官は二%ぐらいがいいんだと、こういう、それぞれ解釈があるわけでございます。  これは、総裁としてこの成長率見通し、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  157. 白川方明

    参考人白川方明君) 現在、日本成長率の実力をどの程度に見るかということでございますけれども、私どもの内部の推計、これは公表もしておりますけれども、大体一%台の半ばから後半という数字を公表しております。  潜在成長率を計算する方法というのは幾つかございますけれども、これ基本的には労働力の伸びと、それから資本設備の伸びと、それから経済全体としての生産性の伸びというもので規定されます。こうしたことについて過去のデータに基づきながら計算をしてみますと、先ほど申し上げたような数字になってまいります。  中央銀行立場からしますと、これが実力の成長率、潜在成長率であるとすれば、この成長率が実現するような安定した経済を実現したいというふうに思っています。一方、潜在成長率を引き上げることそれ自体は、これは金融政策では実現できませんけれども、これは、技術革新がもっともっと進んでいくとか、あるいは資源の効率的な配分が実現できるような、そういうことが行われて初めて実力としての成長率がだんだん上がっていくということであります。  繰り返しになりますけれども、金融政策の方は、人々が生産性を上げていくための安定した金融環境をつくるという点では貢献できますけれども、実力それ自体を上げるためには実体的な努力が必要だというふうに思っております。
  158. 白浜一良

    ○白浜一良君 そうですね、余り言えませんものね、それは。  それから、いわゆる金利というのは、産業部門でいうと安い方が使いやすいわけでございますが、一方、生活者の立場に立てば、預金者という立場からなると、やっぱり金利は高い方がいいと。まあ当たり前の話でございまして、そういう面で、日経新聞が四月に実施した「家計が望む金融政策」ですか、この調査によりますと、据置きという回答が四八%、利上げというのが四四%、引下げが八%、こういうふうに調査が出ているらしいんですが、どうでしょう、日銀総裁立場は別に家計の立場で云々かんぬんじゃない、全体的なお立場、それはもうよく分かっておりますが、こういういわゆる家計の立場からの意識調査の結果というか、どのようにお感じになりますか。
  159. 白川方明

    参考人白川方明君) 今議員が引用されました調査というのは、日本経済新聞社の調査でございます。実は、私ども自身も四半期に一回アンケート調査を行っておりまして、同じような感じを回答者から得ております。金利は当然のことながら債権者と債務者で相異なる影響を与えることはもちろん承知しておりますし、長期にわたる低金利の下で家計の利息収入が伸び悩む、そのことについて大変苦痛を感じている世帯が多いということも十分認識しております。  ただ、議員も御指摘のとおり、日本銀行が使える手段というのは、これは金利という一本でございます。どちらのグループ、つまり低い金利水準によって痛みを被るグループにしても、あるいは逆のグループでも、これは局面によってもちろん状況は変わってまいります。私としましては、日本銀行に課せられた持続的な物価の安定、それを通じて経済の持続的な成長を図っていくという、その使命に忠実に政策をやっていくということにやっぱり尽きると思います。その間に家計の方が受ける痛みについては、十分な理解とその感性を持った上で、しかし最後判断としては今申し上げたようなことで判断するということではないかというふうに思っています。
  160. 白浜一良

    ○白浜一良君 それは当然のことだと思います。  それから、日銀が定期的にいわゆる地域経済の報告をされていますね、さくらレポートといいますか。これは四月の報告によりますと、当然今の話全般的に関連あるんですが、ちょっと下降ぎみと、全国九地域のうち八地域が少し下方修正されたということでございますが、これ直接金融されているわけじゃないので日銀としてできることには、限られるんでしょう、それはよく分かっております。ですから、いわゆる地銀とかが資金が行き詰まればちょっと供給を考えるとかそういうこととか、いろいろ持っているそういう経済情報を交換し合うとか、その程度はできるんでしょうけど、どうでしょう、これ、そういうことしかできないんでしょうかね、やっぱりこれ。せっかく全国の日銀支店長会をやって、いろんな情勢を踏まえて会議をされているわけでございますけれども、いかがなものでしょう。
  161. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行では、本支店のネットワークを活用しまして、まず各地域の経済金融情勢を丹念に調査をしております。マクロの経済といっても、これ結局はそういうような地域、東京も含めまして各地域の経済の集合体でございますから、まずは各地域の経済状況について正確に認識するということでございます。これは、私自身もかつて日本銀行の大分の支店長を務めたことがありますけれども、相当な時間を使って地域の経済調査に実は当てております。そうした情報は、先ほどのさくらレポートもそうですけれども、本部の方に集約されて金融政策決定にも生かされております。それが第一の役割でございます。  それから第二は、これはちょっと多少地味なことなんですけれども、日本銀行が、中央銀行が資金を供給するオペレーションということで申し上げますと、これは本店で行うオペレーションだけではなくて、日本銀行の三十二の支店を通じて行う、つまり地域に所在する金融機関に対しても直接資金を供給するというオペの道を実は開いております。  多少脱線しますけれども、アメリカはごく最近まで、実はニューヨークに所在するプライマリーディーラーという先を対象に、これは大体多分二十先ですかね、もうちょっと少ないかもしれません、それぐらいの数のプライマリーディーラーを対象に実はオペをやっていますけれども、去年の十二月から全国規模でこれを拡大しましたけど、日本銀行はそうした全国規模のオペをもう既に行っておりまして、地域の金融機関にも直接資金供給をするという道を開いております。  それから、地域の金融を支える金融機関に対して、日本銀行金融機構局のスタッフがそれぞれの地域に出向きまして、いわゆる金融高度化セミナーというんですが、金融機関経営を行っていく上で様々な例えばリスク管理の在り方であるとか、そういったことについてセミナーを行っております。これも、金融機関がしっかりリスク管理を行うことは、結局は地域に資金が円滑に回るための一つの大事な施策だと思いまして、これにも力を入れております。  一つ一つは地方の経済に対して強力な決め手になるわけではありませんけれども、日本銀行のできる機能は何なのかということを点検して、そうしたことも現実に行っております。地味な取組ではありますけれども、意味のある取組だというふうに思っています。
  162. 白浜一良

    ○白浜一良君 当然よく承知しております、直接そういう作業にかかわっているわけじゃないので。今三点ほどお述べいただきましたけれども、適切に対応をお願い申し上げたいと。大変ばらつきがあり過ぎるというか、全国を見ますと、だから非常に心配しておりまして、地域にも貢献していただけるように我々もお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  私、言葉を聞いていただいたら分かりますが、ちょっとなまっておりまして、大阪でございますが、いろいろ頑張っている産業もいっぱいあるわけでございますが、近畿の見通しも若干下方修正されまして、一部に減速の動きが見られると、こういう表現をされているんですが、これは何かこういう特記するような具体的なものがあるんでしょうか。
  163. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  御指摘のとおり、近畿地区の景気につきましては、基調としては緩やかに拡大しているという判断でございますが、ただ、足下につきましては一部に減速の動きが見られると、このように見ております。  減速感が出ていることについてどういう背景かということでありますが、二点考えております。一つ原材料価格上昇していること、それから円高といったことの影響によって企業収益に陰りが出てきているなというのが一つであります。そしてもう一つが、そうした企業収益の陰りというのは、特に中小企業に対しまして設備投資を手控えさせたり、あるいは賞与など賃金を抑制する動きにつながっているということがあるというふうに見ております。  したがって、これらの要素によりまして近畿地区の景気につきましては減速感が出ていると、このような判断でございます。ただ、全体感として見た場合には、やはり、近畿経済拡大の基点となっておりました輸出につきましては、新興国向けを中心として依然として好調であるというふうに私どもは見ております。  それから、大企業の設備投資につきましても、電機ですとかあるいは鉄鋼などにつきましては引き続き活発だというふうに認識しておりまして、全体としては近畿経済の緩やかな拡大基調というのは崩れていないと、このように認識しているということでございます。
  164. 白浜一良

    ○白浜一良君 今のお話聞きますと、そういう原油とか資材の原材料高とか、そういうことは全国的な傾向で特別関西というか近畿にかかわったことじゃないですよね、今おっしゃったことは。影響を受けているというだけの話で。そのように理解しておきたいと思いますが。  それで、今日は渡辺大臣にも本当にお越しいただきまして恐縮でございます。  こういう大変景気動向が非常に難しい局面に来ますと、銀行は貸し渋りをまたやるんじゃないかと、こういうことがあって、先日報道をされておりましたが、金融庁もその辺の監督をしっかりやっていくような流れ書いてございましたけれども、この点、今どうなっているでしょうか。
  165. 渡辺喜美

    国務大臣(渡辺喜美君) 金融庁としては、節目節目で金融機関に要請をしております。昨年の暮れ、それから今年の三月だったでしょうか、ちょっと正確に覚えておりませんけれども、様々な金融機関の団体の皆様方にお集まりいただきまして、私だけでなく、財務大臣、経産大臣等、政府を挙げて金融機関に適切な金融仲介機能を発揮していただくようお願いをしているところでございます。  景気のダウンサイドリスクが高まっていますときには、どうしても貸出し態度というものが慎重になる傾向がございます。しかし、金融機関というのは、まさしくリスクを取って金融仲介を行うというところにそのレーゾンデートルがあるわけでありますし、また、リスクを取らなければもうからないのが金融機関でありますから、是非、適切にリスクを取っていくことが肝心なことだと考えております。
  166. 白浜一良

    ○白浜一良君 原油高、原材料高ということもあって、私どもも政府にいわゆる融資の拡大を訴えてまいりまして、また三月、年度末の資金繰り対策も、これは手を打っていただいたわけでございますが。  これはちょっと、非常に俗っぽい言い方をしますと、すべての銀行というわけじゃないんですが、銀行によりましては、いや、これ金融庁の監査が厳しいんで、ちょっと融資もなかなかねと、そういう何か逆に、良かろうと思っていることが逆手に使われて融資が抑制されているという、こういうこともあるというふうに実際利用者の方から聞いているんですよ。こういうことはよく御存じなんでしょうか。
  167. 渡辺喜美

    国務大臣(渡辺喜美君) まさに金融検査を理由に貸出しを抑制するなどということがありましたら、これは言語道断でございます。  金融検査マニュアルを理由にして、健全な事業を営んでいる融資先に対して貸し渋り、貸しはがしというような不適切な取扱いを行っていないかどうか、これも検査対象にいたしております。また、きめ細かな経営相談、経営指導等を通じて積極的に事業再生、企業再生に取り組んでいるか、こういうことも検査の対象にしているところでございます。
  168. 白浜一良

    ○白浜一良君 適切に対応を、今難しい時点でございますので、しっかりお願い申し上げたいと思うわけでございます。  関連して、日銀も考査されていますね。ちょっと金融庁とは立場が当然違うんですけれども、その日銀の考査を通してこういう実態というのはいろいろお伺いになったことはございますか。
  169. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融庁が、貸出しの判断金融機関が自らの経営方針によって決定すべきことであり、この企業には貸出しを行ってはいけないなどという判断や働きかけを金融検査が行うことがない旨対外的に説明されていることは承知しておりまして、この点、実は日本銀行の考査についても全く同じことが当てはまります。  日本銀行の考査では、金融機関の資産内容の調査や信用リスク管理体制について実態把握を行いまして、必要に応じて助言を行っております。これはあくまでも金融機関サイドのリスク管理体制の高度化を図ろうとするものでございまして、個々の融資案件について金融機関に対してある種の働きかけを行うというものでは全くありません。この点、私どもが毎年公表しています考査の実施方針においても、金融機関自身の経営戦略や自己責任を尊重する考え方を基本に据えております。こうした私どもの考査における基本方針は、金融機関の間でも十分に理解を得ているというふうに思います。  なお、日本銀行として、今の御質問の点にも絡みますけれども、金融機関のリスク管理体制が高度化していきますと、金融の円滑化にも資するというふうになると考えておりまして、金融機関の融資姿勢を含めて企業金融の動向については引き続き子細に点検してまいりたいというふうに考えております。
  170. 白浜一良

    ○白浜一良君 しっかりお願い申し上げたいと思います。  渡辺大臣、結構でございます。ありがとうございました。
  171. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 渡辺大臣、どうぞ退席してください。
  172. 白浜一良

    ○白浜一良君 あと少しだけちょっと総裁にお伺いしたいんですが、最近、電子マネーなどございますね。それで、中飛ばします、いっぱい通告していますけれど。あとちょっとだけお付き合いいただきたいと思います。  それで、市場規模というのは二〇〇八年度末一兆三千八百億円、前年度の一・六倍になっていると、二〇一一年には三兆円ぐらいになるんじゃないかと、こういうふうに言われておるわけでございますが、私も正確にこれ理解しているわけじゃないんです。理解しているわけじゃないんですが、聞くところによりますと、この電子マネーというのは、確かに銀行で決済されていくとそれ全部計数化されるのは当たり前なんですけれども、電子マネーそのものはなかなかそういうマネーサプライに出てこないという、この辺のいわゆる実態、どんどんやっぱり時代は変わりますんで、新しいそういう貨幣の形態も変わっていくわけでございますが、いわゆるマネーサプライの統計の仕方と電子マネーの関係とか、この辺はどのように認識されているんでしょうか。
  173. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) 現在利用されております電子マネーにつきましては、主として小口の決済に用いられているということでございます。したがって、その利用規模につきましては、現金ですとかあるいは預金通貨に比べますとかなり限定的なものにとどまっているというのが実態であります。したがってということになりますが、マネーサプライ統計等に与える影響ということで見ますと、これまでのところは目立った攪乱要因になっているとは考えられないと、こんな状況でございます。  もちろん、これから先、電子マネーの利用が広範化し、現金とかあるいは預金通貨に取って代わるような動きが大規模に生じると、このような事態になった場合には、マネーサプライ統計等、金融政策運営に当たって金融環境を把握する上での情報に不規則な変動とかあるいは情報量の不足が生じるといった可能性も排除し得ないと、このように思っております。  したがって、電子マネーの動向については今後とも私ども注意深く見てまいりたい、このように考えている、こういう状況でございます。
  174. 白浜一良

    ○白浜一良君 ですから、そういう実態に合わないような計数取っても意味がないんで、市場としても、まあまあ小さいからいいですけれども、どういうふうに拡大していくか分かりませんから、これを研究して、実体経済、実態に即した統計を取れるようにやっていただきたいと、このように要望をしておきたいと思います。  最後に、昨日、日経新聞読んでいたら東大の藤井先生がいろいろ書いていらっしゃって、この中から二点だけお聞きしたいんですが、一つは、金利上昇の気配というのは今まで大変低金利でフラットだったんですが、イールドカーブ、こういうのがあるんですね。そのイールドカーブがどのように変化していくのかとお考えになっているかということを聞きたいわけでございますが、余り急激な変化は望ましくないんで、安定したそういう形が望ましいと思うんですけれども、この点に関して総裁の考えを伺いたいと思うんですが。
  175. 白川方明

    参考人白川方明君) イールドカーブといいますか、あるいは長期金利先行きそれ自体について、中央銀行総裁立場予測を述べるということは必ずしも適切ではないというふうに思いますので、少し一般的な考え方から申し上げたいと思うんですけれども、長期金利は、市場参加者が経済物価情勢の先行きをどのように判断するかということが基本になってまいります。つまり、成長率物価上昇率が今後どうなるか、それから、そうした将来の見通しというのはこれ一〇〇%確実に分かっているわけではありませんから、そうした見通しに対してどの程度確実性があるのかといった、そういった要因によって長期金利の水準は決まってまいります。  中央銀行立場からしますと、経済物価情勢の見通しそれ自体は、先ほど展望レポート説明でも申し上げましたけれども、日本銀行としての一応の見通しは持っておりますけれども、ただこの見通しどおり実現するかどうかはもちろん分かりません。仮に成長率なり物価上昇率が高くなっていくということであればもちろん長期金利は上がりますし、逆であれば長期金利は下がりますけれども、私どもとしましては、経済物価情勢の安定を保つということが長期金利の安定的な形成につながるということになりますので、そうした面で努力をしていくということになりまして、長期金利の水準それ自体を何か固定的に調整をするということはもちろんできませんし、また不適だというふうに思っています。いずれにせよ、長期金利動きについては、その動きが何を意味しているのかを私どもとしては注意深く見ていくことが大事だというふうに思っています。
  176. 白浜一良

    ○白浜一良君 そのとおりだと思います。しっかりお願いしたいと思いますが。  もう一点、この藤井教授がおっしゃっているのは、金利の期間構造を的確に把握するためには、そのデータが分かりやすく提供されていることが重要だと、このようにお述べになって、それで、アメリカのFRBはホームページで主要年限の国債金利がずっと掲載しているというふうに書いてある。日本にはこういうのはないんだということで、こういうデータの提供が大事じゃないかということをこの藤井先生はおっしゃっているわけでございますが、この点はどういうふうに受け止められるか、どのようにしようとされているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  177. 山本謙三

    参考人山本謙三君) 私どもも、昨日の藤井先生の論文は読ませていただきました。  今御指摘のありました計数は、アメリカではコンスタント・マチュリティー・イールドと呼ばれているようなものだそうでございます。これは、アメリカの財務省が算出、公表しているものをFED、米連邦準備制度がホームページ上に転載しているというものだと承知しております。  日本銀行も、各種の金利の動向でありますとか、そのイールドカーブ分析の重要性というのは重々認識もしておりますし、私どもの内部的にも様々な努力をしております。その上で、私どもの金融政策に有用な情勢判断上必要のある、また市場において必ずしも入手できないような金利データ、例えば無担保のコールレートでありますとかレポレートと呼ばれるもの、これは私ども自身が集計をして公表しているという状況にございます。  御指摘のありましたコンスタント・マチュリティー・イールドというものでございますが、イールドカーブの分析にとっては重要な指標一つだというふうな認識は持っております。ただ、これ、実はマーケット関係者の間では既に自分たちで計算しているというようなこともございますし、また、これ以外にも様々な金利指標があって、有益なものもあるということで、私ども、現時点で日本銀行自身がこれを計算し公表していくというふうな考えは持っておりません。  ただ、どのような金利指標というのを作成していくのが適当かということについては、引き続き研究を進めていきたいというふうに考えております。
  178. 白浜一良

    ○白浜一良君 基本的な答弁、総裁いただきました。  これ、私も昨日読んで、ちょっと確認の御質問をさせていただいたんですけれども、いずれにいたしましても、やっぱり市場の信頼性というのは一番大事で、そのために必要な情報を提供すると。これはもう日銀に限りません、政府そのものがそうだと思いますが。そういう面で、新総裁にもなられましたので、最後に御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  179. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央銀行として、金融政策に限りませんけれども、政策運営を適切に行っていく上で必要な情報を公開していくということは、これ大変大事なことだというふうに思っております。  私自身、直前、藤井先生と同じように、大学は違っておりましたけれども、大学で学生に公共政策、私の場合は金融政策ですけれども、それを教えるという立場にありまして、いろんな日本の公的機関のホームページを見る機会が多うございました。そのときには、日本銀行も含めて、公表データについてここは改善する余地があるなというふうなことを多々感じておりました。そうした気持ちを忘れずに、さらにまた新しい目でどのような情報が必要か、しっかり点検していきたいというふうに思っています。
  180. 白浜一良

    ○白浜一良君 終わります。
  181. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  総裁としての白川さんには初めて質問をさせていただきます。  以前から素朴で実直な方だなというふうに思っておりまして、確かに今日、大久保さんからございましたとおり、五千㏄の高級車には似合わないなというのも思いますし、お話がやっぱりちょっと眠くなるというところもあるかも分かりませんけど、私は、白川さんらしくやっていただければいいんではないかと、是非頑張っていただきたいなというふうに思います。  御本も買わせていただきました。六千円という少々高い本ですけれども、その価値はあるなと。もうこんなに附せんを付けて、私が一番熱心に読んだんじゃないかと。図書館から借りている場合ではないと申し上げておきたいと思います。  この本は、もちろん日銀総裁になると思っていらっしゃる前に書かれた本だと思いますので、余りこれを使ってどうのこうのとは思わないんですが、白川さんらしい学者肌の非常に何というか誠実なことが書かれているんで、これもちょっと使いながら質問をさせてもらいたいと思います。  大変いい本だと思いますけど、今これ、何部ぐらい、何万部ぐらい売れているんですかね。
  182. 白川方明

    参考人白川方明君) これ、出版社がもちろん民間の会社ですから、民間の会社のことを私の立場で何か数字を申し上げるのは多分ちょっと適切ではないのかと思います。ただ、多分、先生がお持ちの本は第一刷りだと思いますけれども、今たしか第三刷りまで行っていると思いますので、この種の専門書としては思ったよりかは売れたのかなと思っています。
  183. 大門実紀史

    大門実紀史君 私もあちこちで宣伝をしていきたいと思います。  私なりの感想を述べさせていただきますと、とにかく分かりやすいですね。非常に分かりやすい本でございますし、もっと広く読まれていいと思いますし、非常に基礎から分かる金融政策みたいなことと、何といいますかね、ちょっと実録的な日銀論みたいなものもありますし、大変もっと普及すべき、この委員会の指定文献ぐらいにしてもいいじゃないかと思うぐらい本当に思うんでございます。問題意識も、私がずっと速水さんから福井さんにわたって質問してきたところと重なる部分もありますし、もちろん違うところもありますけれども、本当に白川さんらしい本だなというふうに思っております。  この白川総裁の本の前書きにもありますけど、やはりこの数年間は何だったのかということを私も同じように問題意識を持っておりますんで、今日は、個々の金融政策、これから何度もお聞きする機会があろうと思いますので、若干、この数年間何だったのかという総括的なことも含めて、基本的なこれからの総裁のお考えを聞いていきたいというふうに思うわけでございます。  私は、白川さん、理事のときから御存じだと思いますが、基本的に日銀にずっと質問してきたのは、速水さんのときからそうですけど、日銀独立性にこだわっていつも質問してまいりました。もちろん中央銀行政府が協調するのは当然のことでございますけど、この数年間、かなりそれを超えたことがあったんではないかなと思って、心配も含めて質問してきたわけです。  いろんな議論がありましたけど、要するに、財政支出はもうできないと、景気対策としても財政支出はできないから金融政策でやれと、日銀がやれと、少々無理なこともやれというふうな時代が続いて、一時は、言うこと聞かなければ総裁首だと言わんばかりの与党の一部の方の大変ヒステリックな質問がこの委員会の場でもされたのを強く記憶しております。その後、私が質問して、そんなこと、言うこと聞かなくていいという反論の質問を何回かした覚えがあるのがこの委員会での流れでございました。  白川さんもこの本の前書きの中に、そういう時代とはおっしゃっていませんけど、とにかく今は冷静に議論ができるときになったとおっしゃっておりますけど、どうなんでしょう、振り返って、あのときはやっぱり冷静な議論がされなかったというふうにとらえていらっしゃるんでしょうか。
  184. 白川方明

    参考人白川方明君) まず最初に、私の、これ、日銀に入る前でございますけれども、本についての過分のお言葉をいただきまして、ありがとうございました。  今御紹介のありました本の序文とも関係しますけれども、私、金融政策の仕事に企画局というところの審議役としてかかわりましたのが二〇〇〇年の六月からですけれども、それから二〇〇六年の七月まで、これは最後の四年間は理事でございましたけれども、事務方として金融政策の仕事にかかわってきました。  特に、二〇〇〇年から二〇〇四年、五年にかけて経済の情勢が非常に厳しかったわけであります。経済の情勢が厳しい、具体的に申し上げますと、不良債権の金額が非常に多い、銀行は不良債権の問題に直面し、それから物価上昇率も、これをどう評価するかについては様々な議論がありますけれども、これが若干のマイナスという事態が長く続いたわけであります。企業は三つの過剰に直面する大変厳しい状況でありました。  経済が大変厳しいそれまで経験したことのない事態を経験しますと、当然、金融政策についてもいろんな議論が行われて、日本銀行として、もちろん日本銀行の中にもいろんな意見はございますし、最終的には合意の上で結論を出していくわけですけれども、金融経済の専門的な立場から見た場合に、私自身として必ずしも納得できない議論もこれは行われたというふうに思います。そういう意味で、ただ、これはどっちかが間違っているとかどうだということではなくて、別に論争をすること自体に意味があるわけではなくて、最終的に物価安定の下での持続的な経済を実現するということでの議論であったというふうに思います。  中央銀行としては、組織に蓄積された経験なり知識と、それから何よりも現実、毎日の金融市場を見て、そこで我々自身判断したことを、これをきちっと物を言っていくということがやっぱり大事だというふうに思います。  さっき、冷静という言葉をちょっと引用されましたけれども、どうしても経済状況が厳しいときには目先の政策の方に議論が集中していく。これはこれでもちろん日銀にとっても大事なことなんですけれども、ただ、少し経済状況が回復しますと、改めて中央銀行の在り方とか政策の在り方を議論することが可能になってくる。それを冷静に議論をすることができる状況になったという言葉で表現をしております。  以上でございます。
  185. 大門実紀史

    大門実紀史君 私は、確かにあのときに比べたら今は随分冷静な議論といいますか、当たり前ですけれども、されるようになってきたなというふうに思っておりますけれども。  そういう時代が続いた中で、日銀は、やはりそういう与党の圧力といいますか、政治的な環境といいますか、そういうものに一定譲歩せざるを得ず、もちろん、むちゃくちゃな議論がありましたですね、株そのものを買えとか不動産まで買えというような、そういうものは拒否されましたけれども、やはり一定譲歩をされて、私はいつも指摘しましたけれども、量的緩和そのものがおかしいとは申し上げておりませんが、異常な量的緩和、あるいは銀行が保有している株式まで買い取ると、そういうところは踏み込んだといいますか、やはりちょっと違うところまで行かれたんじゃないかなというふうに感じているところでございます。  一般論で結構ですが、これからのために原則的なことでお聞きしたいんですけれども、御本の中にもあります金融政策の失敗の原因の一つとして時間的非整合性と。私、この本、読ませてもらって初めて分かりましたけれども、なるほどなと思いました。まだ読んでいない方がいらっしゃると思うので、この時間的非整合性、これについて簡単に説明していただけますか。
  186. 白川方明

    参考人白川方明君) 時間的非整合性という言葉自体はいろんな文脈で使われますけれども、この文脈で申し上げたいことは、要するに、目先の景気を浮揚するということをねらって過度な金融政策を行いますと、例えば、足下物価は安定している、で、景気を良くすると。例えばバブルのときがそうですけれども、そういうときに、目先の物価が安定しているということでずっと金融緩和を続けていきますと、結果として経済が大きく過熱し、バブルが拡大し、崩壊をしていくと。そうすると、長い目で見て、結局、物価安定それ自体も実現していかないと。つまり、短期的な利益に余りにも焦点を合わせて政策を行っていきますと、長期的に見て実は望ましくない結果になってくるということで、それを経済学者が時間的非整合性という言葉で表現をしている。これは昔から、難しい言葉を使わずとも、皆さん物価安定が長い目で見て大事だということを多少学問的な言葉で表現したということでございます。
  187. 大門実紀史

    大門実紀史君 そうですね、別にこんな難しい言葉を使わなくていいわけですが。あのときにやっぱり、率直に申し上げて、株価対策のために日銀も力貸せというふうな意見はあったわけですね。私は、まさに今おっしゃった、目先の利益のために全体を間違う、そういう議論がされたんではないかと思います。  もう一つ、いいこと書かれております。次のページ、九十六ページですけど、政府や議会との関係についても、短期的な利害に基づく圧力が掛からないよう法的枠組みを設計することが重要となるというふうに書かれております。  先ほど、午前中に尾立先生が出された資料、私も同じ資料を用意したんですけど、もう中身は触れませんが、日銀独立性、外国に比べて高くないということがもう既に議論されました。それを踏まえて、やはり私は、この数年のことを思うと、一般的な外国と比べてではなくて、この数年の経験を踏まえると、やはり白川総裁がここの御本に書かれているように、こういう短期的な利害に基づく圧力が掛かりやすいと、政治から。これに対してやっぱり法的枠組みを設計することは私は必要だと思います。もちろん、今の立場でそういうものが必要ですとおっしゃるわけにいかないと思いますが、学者としてはそういう問題意識を持たれたんだと思います。  まあお聞きしても午前中と同じ答弁だと思いますから求めませんですけれども、そういうところが今後大事になっていくのかなと、この本を読ませてもらって感じたことでございます。  具体的な話で、日銀の私は問題視してきました大量の国債の買いオペの問題でございます。  これは、原則論としても書かれておりますが、要するに、日銀独立性を保つためには政府に対する与信を与えるということは基本的にはすべきでないということが原則ですよね。にもかかわらず、国債というものを買って政府に対して与信を与えると、結果的にはそういう政策が取られてきたわけでございます。  これは、御本の中、一々もう指摘しませんけど、量的拡大の効果という点で幾つかの点で白川総裁、評価されておりますが、私が申し上げたいのは、量的緩和そのものというよりも、異常な部分、買い過ぎだと私は思ってきたわけですが、その買い過ぎの部分も含めて、効果が、本当にここまで買う必要があったのかどうかという点ではいかがでしょうか。
  188. 白川方明

    参考人白川方明君) まず最初に、量的緩和政策の効果でございますけれども、今時点でどういうふうに評価するかということでございます。  量的緩和政策を始める時点では、これは初めての政策ですから、決定をしたときの議事要旨にも書いてございますけれども、効果を検証しながらこれを進めていくということで取り組んでまいりました。  量的緩和政策の経験を踏まえて現時点でどう評価しているかということでございますけれども、金融機関の流動性に対する不安を払拭しまして、極めて緩和的な金融環境を提供することを通じまして景気回復の基盤を整えるという効果はこれは発揮したというふうに思っております。これは大変異例な政策ではありましたけれども、現実にあれだけ大規模なバブルが崩壊をしてしまい、厳しい日本経済、それから金融システムの状況に照らしますと、量的緩和政策の枠組みそれ自体は必要かつ適切であったというふうに今では考えています。  ただ、この政策を、じゃどこまで進めるのが適当であったかということでございますけれども、今申し上げたとおり、金融システムが現実に不安定になっているときには、あれだけ量を出すこと、あるいはゼロ金利にすることというのは意味があったわけでありますけど、逆に言いますと、金融システムの不安定性が後退した後とか、あるいはいわゆるデフレスパイラルの縁に立たされたというような状況が後退した後ももしこれを長く続けますと、今度はその副作用というものも出てまいります。  この副作用というものを考えてみますと、一つは、金融システムのショックに対する耐久力というのが結果として弱くなってしまう、将来何らかのショックが起きた場合に逆に耐久力が弱くなってしまうということが一つと、それから人々が過度にリスクテークに積極化してしまうということも可能性としては意識されます。  日本銀行としては、そうしたことも意識しながら、最適のタイミングで量的緩和政策を解除をしようというふうに努めました。ただ、これをどういうふうに評価するかということは、今回私が書きました本も含めてですけれども、これ、学問的にしっかり検証していくという話でございますから、私自身がここでそれ以上立ち入った評価をすることは適切ではないというふうに思っています。  それから、長期国債の買入れでございますけれども、これ、この本でも多少書きましたけれども、中央銀行バランスシートを考えてみますと、右側には負債、つまり銀行券と当座預金がございます。負債があるということは、当然それに見合って何かを買わないといけない、何かを保有しないといけないということであります。  今もそうですけれども、中央銀行の負債として一番大きいものは、これは銀行券でございます。今金利が非常に低い金利でございますから、銀行券の発行残高が非常に高い水準で推移しております。これ自体がどんどん増えているわけではございませんけれども、今名目GDP対比約一五%でございます。日本銀行、百二十年強の歴史がございますけれども、過去百年近くの平均値計算しますと、大体これは八%、平常時は八%。銀行券のこの比率は極めて安定した数字でございますけれども、今は金利が非常に低いことと、それから、かつて金融システム不安が発生して、いったん銀行券が出てしまったものがなかなか戻ってこない、これは銀行の預金金利が高くありませんからどうしてもそういうふうになるわけですけれども。したがって、銀行券がたくさん滞留しているわけであります。  そのときに、じゃ、左側の資産で何を買うかということになりますと、民間の資産を買うかあるいは国債を買うかということになってまいります。つまり、中央銀行としては、安全性、流動性、中立性等を考えて一番いい資産を、望ましい資産を買うわけでありますけれども、今言った基準に照らしますと、全体としての流動性に配慮しつつ、国債というのが最も自然な選択だと思います。そのときに、政府から中央銀行が国債を直接買いますと、これは引受けになりますから、これは非常に危険な道であります。したがって、引受けは行っておりません。あくまでも市場から、市場のふるいに通したものを買うということを行っています。  問題は、買い入れる国債の量が適切かということでありますけれども、先ほど申し上げたような銀行券の発行量が現実に非常に高い水準であると。それから、量的緩和の中で当座預金の残高も増えましたから、それに見合って長期国債を購入を増やしたということでございます。  ただ、実は長期国債といいますと、非常に期間の長い国債というイメージになりますけれども、実際にはこれは期間一年超の国債をすべて長期国債という名前で呼んでおります。現実には、期間一年超の中で、金融機関が様々な期間の国債を持ち込みまして、この量的緩和期も平均的な残存期間は実はそんなに長いものではなくて、期間によって若干違いますけれども、三年前後、三年から四年ということでございました。  これはFRBもそうですけれども、国債全体としての流動性、つまり期間のばらつきを考えた上で、いつでも国債がいざという場合にはこれは売却をできるとか、いざという場合にはこれを償還で減ってくるということ、そういう状況を全体として保てるように維持してまいりました。  長期国債の問題は、これは結局、量的緩和政策をどのように評価するかということとイコールではございませんけれども、かなり関連した問題であり、その中で我々としては十分中央銀行の資産の健全性にも配慮しながら運営をしてきたということでございます。
  189. 大門実紀史

    大門実紀史君 よく分かりました。できるだけこれから答弁は簡潔にお願いしたいと思うんですけれども。  ただ、負債と資産で説明されるのはちょっと意外かなと思っております。負債が増えた原因そのものが元政策にあるわけですので、それを言っちゃうとどんどんどんどん買わなきゃいけなくなりますので、ちょっと違うのかなとは思っておりますが。  今現在はどうなっているかというのを二枚目の資料でお配りいたしましたが、今も実は国債買いオペは変わらない規模で続けられております。ところが、買いオペを続けると日銀の保有国債残高というのはどんどん増えるはずなんですが、保有残高はどういうわけか減っております。この仕組みを簡潔に説明してもらえますか。
  190. 山口廣秀

    参考人山口廣秀君) お答えいたします。  先生からいただいた資料を確認いたしますと、私どもが持っております長国の残高は十八年三月末で六十・五兆、十九年三月末で四十九・二兆、二十年三月末で四十六・九兆ということでありまして、減少しておるわけでございます。  実は、私どもでは、私どもが持っております国債の満期到来時の取扱いについてルールを決めております。一つは、長期国債の満期到来時には割引短期国債による乗換えを行うということを一つのルールとしております。それからもう一つは、割引短期国債の満期到来時には基本的に現金償還を受けると、このようなルールを定めております。  この二本立てでルールを作っておるわけでありますが、こうした取扱いの下で、近年日本銀行の保有する長国が、先生の資料にありますとおり減少しておるわけでありますが、これにつきましては、一つ日銀の長期国債の買入れにおきまして残存期間の短い国債が多く含まれておるというような実情が一つあります。したがいまして、保有長国の満期到来額が多額に上ると、こういう現象が起きているということが一つであります。  それからもう一つは、国債整理基金が買入れ消却を行っておりまして、これに際して財務省から要請が私どもにありまして、その要請に応じて国債整理基金に対して国債売却を行ったと、こういったこともあります。これらが相まって私どもの国債保有残高が減ってきておるというのが実態でございます。
  191. 大門実紀史

    大門実紀史君 大変うまいやり方だなといいますか、さすが専門家だなと。買い続けても残高が減ると。しかし、私そもそも疑問なんですけれども、なぜ同じ規模で買い続けなきゃいけないのかと。これは、率直にいうとあれですか、国債の利回りを安定させるために買いを減らすわけにはいかないというふうな事情でもあるんでしょうか。
  192. 白川方明

    参考人白川方明君) お答えします。  今現実に非常に金利水準が低い下で、銀行券の発行残高は非常に高くなっております。その中で資金を、じゃどうやって供給するのかということを考えた場合に、もしこれを、長期国債の買入れを全くやめますと、今度は毎日毎日短期の資金供給を連日物すごい量で頻繁にやらないといけません。ある程度の期間を取ってみて、銀行券の残高がかなり高水準であるということになりますと、そういう長期的、安定的な言わば負債に対応してある程度期間を持った国債で買い入れませんと、先ほど申し上げたようなオペレーションになってしまうということでございます。
  193. 大門実紀史

    大門実紀史君 私はこの数年間、余りにも異常な量的緩和を、特に小泉内閣のときですね、進めた背景にはいろいろあったと思いますが、財務省の意向もあったのではないかと実は思っておりまして、当時は国債の市場価格が下落していったもので、機関投資家がリスクは高いけれどもといって社債の方に流れる傾向があったと。そうすると、国債消化に困るということで、財務省は日銀に国債支えてほしいというような意向を幾つかの人から聞いたことがあるものですから、そういう面でそういうことにまた日銀が使われるのかという危惧を当時抱いたものですから、今ももしそういう役割を果たさせられているとしたら、違うのじゃないかなと思ったもので、そういうことのないようにしてもらえればと思います。  この数年間の総括的なことでいえば、どうしてもお聞きしなきゃいけないのは、中央銀行の信頼を著しく低めた前総裁の村上ファンドへの投資の問題でございます。白川さんはもう見るからに身ぎれいな方だと思いますけれども、あの件は、ああいうことは二度とあってはいけないことだし、世界の中で中央銀行として大変恥ずかしいことだったと思いますが、あの件について白川さん、いかがお考えでしょうか。
  194. 白川方明

    参考人白川方明君) 私、これ所信、副総裁の就任のときに、これは、あれは衆議院でしたか、で申し上げたことの繰り返しになりますけれども、まず福井前総裁のファンドのことでございますけれども、前総裁のファンドへの投資につきましては、これは民間企業在職時に当時の村上氏の理念に共感して行ったものだというふうに聞いております。  総裁就任後も保有を続けたわけでありますけれども、そのこと自体は改正前の日本銀行の内規に違反するものではなかったというふうに承知しております。ただ、その後、村上氏が違法と疑われるような取引に手を染め、結果として、福井前総裁の村上ファンドへの投資が多くの方々から御批判をいただくことになったということは大変残念に思っております。  私自身は、日本銀行の今の規程がしっかりございますので、その規程に従ってすべて対応していきたいというふうに考えています。
  195. 大門実紀史

    大門実紀史君 今までいろんな総裁といいますか、速水さんなんかは少し反骨的なところがあったり、福井さんはちょっと軽いなと思ったり、いろんなことがありましたけれども、私は本当に白川さん、今日申し上げたとおり、学者らしい実直さといいますか、信念を堅持して頑張っていただきたいというふうに申し上げて、今日は質問を終わります。  ありがとうございました。
  196. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  197. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 金融商品取引法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。渡辺内閣特命担大臣
  198. 渡辺喜美

    国務大臣(渡辺喜美君) ただいま議題となりました金融商品取引法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  我が国金融資本市場の競争力の強化は、一千五百兆円に及ぶ家計金融資産に適切な投資機会を提供するとともに、内外の企業等に成長資金を適切に供給する等の観点から、極めて重要な課題となっております。このような状況を踏まえ、必要な制度整備を行うため、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、多様な資産運用、調達機会の提供を促進するため、特定投資家、いわゆるプロ投資家に直接の参加者を限定した取引所金融商品市場を開設できることとし、この市場に関連した情報提供の枠組み等について所要の整備を行うこととしております。また、上場投資信託、いわゆるETFについて、商品現物と交換可能な投資信託を導入できるようにするなど、その多様化を可能とする枠組みの整備を行うこととしております。  第二に、多様で質の高い金融サービスの提供を促進するため、証券会社、銀行、保険会社等の間の役職員の兼職規制を撤廃するとともに、証券会社、銀行、保険会社等に対して利益相反管理体制の整備を求めることとしております。また、商品現物取引、排出量取引、投資助言業務等に係る銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大を図ることとしております。  第三に、公正、透明で信頼性のある市場の構築を図るため、金融商品取引法における課徴金制度について、算定方法の見直し、対象範囲の拡大及び除斥期間の延長等を行うこととしております。  以上が、この法律案の提出理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  199. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十九分散会