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2008-06-11 第169回国会 参議院 災害対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年六月十一日(水曜日)    午後零時四十分開会     ─────────────    委員異動  四月二十三日     辞任         補欠選任      小川 敏夫君     郡司  彰君  四月二十四日     辞任         補欠選任      大島九州男君     藤谷 光信君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         一川 保夫君     理 事                 高橋 千秋君                 森 ゆうこ君                 加治屋義人君                 神取  忍君     委 員                 青木  愛君                 郡司  彰君                 鈴木 陽悦君                 広田  一君                 藤谷 光信君                 山根 隆治君                 吉川 沙織君                 佐藤 信秋君                 佐藤 正久君                 末松 信介君                 塚田 一郎君                 山田 俊男君                 西田 実仁君                 山口那津男君                 仁比 聡平君    事務局側        常任委員会専門        員        伊原江太郎君    参考人        京都大学防災研        究所巨大災害研        究センター長・        教授       河田 惠昭君        東京大学地震研        究所教授     島崎 邦彦君        関西学院大学総        合政策学部教授  室崎 益輝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○災害対策樹立に関する調査  (大規模風水害及び地震への対策等に関する  件)     ─────────────
  2. 一川保夫

    委員長一川保夫君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。  議事に先立ちまして、委員会を代表して委員長より一言申し上げたいと思います。  先月、ミャンマー連邦を襲ったサイクロン及び中国四川省発生した大地震は、お手元に配付した資料にあるとおり、史上まれに見る極めて甚大な被害をもたらしました。  犠牲となられた方々とその御家族に対し謹んで哀悼の意を表しますとともに、今なお厳しい避難生活を余儀なくされている被災者方々に対し衷心よりお見舞いを申し上げ、被災地の一日も早い復旧復興がなされるよう心から祈念するとともに、我が国災害対策防災対策の教訓にしてまいる次第であります。     ─────────────
  3. 一川保夫

    委員長一川保夫君) 次に、委員異動について御報告いたします。  昨日までに、小川敏夫君及び大島九州男君が委員辞任され、その補欠として郡司彰君及び藤谷光信君が選任されました。     ─────────────
  4. 一川保夫

    委員長一川保夫君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  災害対策樹立に関する調査のうち、大規模風水害及び地震への対策等に関する件について、本日の委員会京都大学防災研究所巨大災害研究センター長教授河田惠昭君、東京大学地震研究所教授島崎邦彦君及び関西学院大学総合政策学部教授室崎益輝君、以上を参考人として出席を求め、その意見を聴取することについて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 一川保夫

    委員長一川保夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 一川保夫

    委員長一川保夫君) 災害対策樹立に関する調査のうち、大規模風水害及び地震への対策等に関する件を議題とし、参考人から御意見を承ることといたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、本日の議事の進め方について御説明をいたします。  最初河田参考人島崎参考人及び室崎参考人の順序でお一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  また、参考人質疑者ともに御発言は着席のままで結構でございますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず河田参考人からお願いをいたします。河田参考人
  7. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) 河田でございます。  私の話は、ミャンマーサイクロン災害、それから二〇〇五年八月二十九日のハリケーン・カトリーナで襲われましたアメリカ合衆国ニューオーリンズの話、そして我が国洪水、それから高潮津波についてお話をさせていただきます。(資料映写)  この二〇〇五年八月にニューオーリンズ上陸しましたカトリーナは、カテゴリー五という非常に大きなハリケーンでございまして、この百年間三つしかまだ上陸していない大きなものでございます。このハリケーンで、八十年ぶりにアメリカ合衆国では千人を超える死者が出ました。概数で千八百人と言われています。元に戻らない住民がおりますので正確な数は分かりません。そして、およそ八百五十億ドル程度、八兆五千億程度被害が出たということが分かっています。  このハリケーン・カトリーナは今から三年前のイベントですが、現在ニューオリンズ人口が七〇%しか戻っておりません。すなわち三十五万です。そして当時、八五%の市民が前日に避難命令が出ておりましたので市外に避難しておったわけですけれども、当時、七万五千人の住民のうち八百人が亡くなりました。  と申しますのは、このニューオリンズというのは地下水をくみ上げておりまして、八〇%以上が海面下にあるということで、合計九億五千万トンの海水が市内に入りまして、六メートルを超える浸水深になったところがある。つまり、二階で溺死している方がいるということでございます。そういう大きな災害がアメリカで起こって、これを我が国でどうするか。我が国からも調査団が行って、そして国土交通省に対して提言をさせていただいたところでございます。  次に、ミャンマーサイクロン災害ですが、サイクロンハリケーン台風はすべて同じ性質のものです。このサイクロンベンガル湾で通常発生するんですが、過去三十年間、このように真東に行ったサイクロンはありません。一九九一年にサイクロンバングラデシュを襲いまして、十四万三千人亡くなる高潮災害発生しております。このとき実は湾岸戦争のちょうど休戦時代の第七艦隊がベンガル湾に停泊しまして、米軍大量ヘリコプターによる救援活動が功を奏して、いろいろなものが被災地に送られたというわけであります。  このように、イラワジ川の河口を中心に、五月二日から三日にかけて九百六十二ヘクトパスカル、そんなに大きなサイクロンではありませんが、潮位が四メートルぐらい上がったということで、およそ十三万四千人の方が死者、行方不明となっております。ただし、この数字は非常にけたが一けたまで残っておりますけれども、実際には一家全滅した家族の数は分からないということでございますので、この程度被害が出ておるというわけであります。  二〇〇四年の十二月の二十六日にもインド洋大津波がありました。これは千三百キロにわたってインド・オーストラリアプレートユーラシアプレート境界が割れたわけですけれども、この実はプレート境界は北に伸びておりまして、ミャンマーからバングラに伸びております。もし千三百キロでこの破壊が終わらずにもっと北へ伸びていたならば、ミャンマーバングラデシュでプラス百万人ぐらい亡くなっただろうということが当時から分かっておりました。ですけれども、幸いそういうことが起こらなかったということで、両国は何らその後対策はやらなかったということが分かっております。ですから、起こらなかったら良かったじゃなくて、起こったときにどうなっていたかということを少し考えていただくだけで随分被害は少なくなったんだろうと考えています。  被災地は、実は私、一九九一年のバングラデシュ水害のときは四回調査に行っておりまして、まさに今ミャンマー被災地状況は当時のバングラ状況と同じであります。すなわち、サイクロンシェルター等がほとんどなくて、要するに家ごと高潮で流された。堤防もありません。ですから、そういう状況サイクロン上陸して高潮が襲ったというわけであります。  さて、この図はベルギーのルーベンス大学がまとめた図面でありますが、一九九〇年代には年間水災害発生件数が世界でおよそ二百件程度でした。この一件は死者が十人以上あるいは被災者が百人以上を一件と数えておりますが、これが二〇〇〇年に入った途端におよそ倍の三百六十件から七十件出るような状況で今推移しております。  この図は、御承知のように、地球温暖化が進みますと海面上昇するという図であります。いろいろなシナリオがありますけれども、最悪の場合、六十センチぐらいこの百年間で上昇するのではないかというわけであります。後ほど東京湾高潮お話をさせていただきますが、東京湾の将来の高潮というものはこの海面上昇を考えて新たに再検討しているわけであります。  この図は、上が一時間に五十ミリ以上、下が一時間に百ミリ以上の気象庁のアメダス観測点年間発生箇所数です。この三十年間アメダス観測点我が国におよそ千三百地点あります。そして、御承知のように、我が国の大半の自治体の雨が降ったときの処理能力は一時間に五十ミリであります。すなわち、五十ミリ以上の雨が降ると必ずマンホールから雨水が逆流して路上浸水が起こるというそのレベルが五十ミリでございます。それから、我が国の一時間の最高記録というのは、一九八二年、昭和五十七年の長崎豪雨水害、二百九十九人亡くなりましたが、このときに百八十七ミリ一時間に降っております。そういうことで、こういう大雨が過去十年間、非常に、その前の二十年間の平均に比べますと、百ミリに関しましては倍以上降るというふうな形で推移していくと言われます。  すなわち、この図は、地球シミュレーターで今後地球温暖化が進むと雨がどうなるのかということでございますが、日降水量が百ミリ以上となる豪雨日数というのは、現在の年三回程度から年十回程度まで増えるということがコンピューターのシミュレーションで出てきております。こういう形で、地球温暖化によりまして、雨が降るときには徹底的に降る、降らないときには全然降らないという、こういう両極端現象が起こりやすくなっているという特徴があります。  さて、この映像は、一九四七年の利根川の決壊した映像であります。現在東北本線利根川を横切っているところで実は右岸が決壊したわけでありますが、このように三日掛けてはんらん水東京湾にまで伸びてきたわけであります。ですから、このときは二千人の方が亡くなっておりますけれども、このはんらん原、実は大変今大きな問題が起こっております。すなわち、地盤沈下でございます。過去五十年間最大四・八メートル地盤沈下したところがあります。これは、昭和の初期から実はこの地で地下水を大量にくみ上げた結果であります。大阪でも天保山を中心に二・八メートル沈下したところがありますが、この東京あるいは大阪、名古屋という大河川沖積平野ではすべて地下水を過剰にくみ上げた結果、地盤沈下が、現在止まっておりますけれども累積のものが大きいというわけであります。  さて、この図は、東京利根川にどれぐらいの雨が降って、そして一秒間に何立方メートル水が流れているかというわけであります。一九四七年のカスリーン台風では、一秒間に二万二千立方メートルの洪水が流れました。その後のデータはすべてそれを上回ることにはなっておりませんが、現在、この利根川の流せる能力というのはおよそ一万六千立方メートルに落ちています。なぜかと申しますと、流域地盤沈下、それから流域に非常にたくさんの人が住む都市化が起こっておりまして、ですから、降った雨がすぐに川に出てくる、こういう現象が続いております。ですから、堤防そのものも低くなっておりまして、スーパー堤防を造っておるわけですけれども、治水安全度は少しずつ下がっているという現状があります。  荒川についても同じであります。荒川は、御承知のように下流側は人工的に造った川であります。一九三三年に完成しておりますけれども、荒川放水路という名前が正しいかと思いますが、そこではやはりカスリーン台風のときに一万立方メートル少し流れたということでございまして、現在その能力が八千数百トンまで落ちているということで、荒川流域あるいは利根川流域は、現状はかつてに比べると少しずつ治水安全度が落ちているということが分かるわけであります。  このように、この荒川流域では非常に地盤が沈下したところがあります。海抜ゼロメートル地帯というのは通常満潮のときに海面下にある面積を指しますが、ここでは百十六平方キロに百七十六万人が住んでいる。そして、ここにもちろん地下鉄の駅もございます。いろいろな地下施設があるわけでございまして、こういったところが高潮あるいは洪水等はんらんで水没するおそれがあるのではないのかということが大変大きな懸念として残っているわけであります。  これは利根川の図でありますが、現在、政府の中央防災会議の大規模水害対策に関する専門調査会利根川荒川を集中的に検討しております。今日は実は二時からその専門調査会が行われる予定になっておりますけれども、このように利根川の左岸あるいは右岸が決壊して、かつ、その避難勧告出たところの住民の何%が避難していただくかによって被災者の数が大幅に変わるということも分かってきております。  左のところには、どれぐらいの人が逃げたかというそういうパーセンテージが書いてございますが、今平均的には、避難勧告対象地域住民の一〇%弱しか逃げないという結果が出ております。ほとんどの方は二階に上がればいいと誤解しているところがあります。ですけれども、利根川あるいは荒川が決壊いたしますと、四メートル、五メートルを超える水深になるところがございます。二階でも決して安全ではありません。また、二〇〇四年の七月のあの新潟水害、刈谷田川が決壊したわけですが、二階建ての家がたくさん流されまして、家ごと流されて亡くなった方が三人実は出てきております。ですから、二階でも安全ではないんだということは、こういう土でできた堤防の場合に周知徹底しておく必要があるのではないかと思います。  また、利根川とか荒川は、基本的には二百年に一回の大雨が降っても大丈夫なような堤防あるいはダムあるいは遊水地等を整備する計画国土交通省が進めております。しかし、地球温暖化で千年に一回の雨が降るような形で出てきますと、この住民避難率によって随分変わります。それから、各河川にはポンプとかあるいは水門とか、いろいろな施設が設けられております。これが当初の機能を発揮するあるいは全然発揮しない、こういう場合にこの洪水規模が非常に変わります。こういった形で、いわゆる人的な被害がどれぐらい変わるかということも数値的には今明らかにしているところであります。  このように、最近では地下浸水発生する。左の図は一九九九年のJR博多駅前地下街デイトスに近くの御笠川がはんらんして水が入った図であります。また、右は東京で起こった平成十六年の台風二十二号の豪雨でありますが、やはり地下に水が入るということが起こっております。  この図は、上が広島県の厳島神社で、海に実はこの神社が設けられておりますけれども、この回廊が一体どれぐらい冠水しているかという図であります。これまでおよそ二十数回、二〇〇六年には二十二回もこの回廊が海の水につかるということが起こっておりまして、少しは海面上昇の影響、それから台風コースが最近、昔と違いまして非常に複雑な動きをしております。この二〇〇四年あるいは二〇〇六年には台風瀬戸内海を迷走するというふうなことが起こりまして、こういう冠水が増えているというわけであります。  また、大阪湾あるいは伊勢湾東京湾ではゼロメートル地帯が増えておりますが、高潮が大きくなりますと非常に危険なところに住んでいる方の人口が増えるということも分かっております。  これは東京港の例であります。今、東京湾計画高潮、いわゆる設計のとき、海岸護岸等設計のときに使っている潮位というのは、東京湾で一番大きな高潮を起こしたキティ台風コースに、一九五九年、昭和三十四年の伊勢湾台風をモデルに走らせております。しかし、伊勢湾台風よりも昭和九年、一九三四年の室戸台風の方が上陸時の気圧が十ヘクトパスカル低くございます。ですから、この室戸台風地球温暖化によって伊勢湾台風に代わって上陸するというふうなことが起こる、そういう想定。  それから、海面が六十センチ上がる、そして全水門が閉鎖不可能。例えば、この条件は、台風上陸前に首都直下地震等が起こりますと、液状化等によって水門、鉄扉、陸閘が閉まらないということが起こります。すぐには修理できない。台風シーズンにこのような地震が起こりますと、その後の修理が大変時間が掛かるというわけであります。そして、海岸護岸が二か所で決壊すると、浸水面積が六千ヘクタール、最大浸水量が八千四百万立方メートルという非常に大きな数字になります。現在、千葉県側あるいは神奈川県側のデータを精査しておりまして、東京湾一帯は一体どうなるのかということの定量的な評価をさせていただこうと考えております。  このように、専門調査会では荒川利根川中心に大規模災害発生時の応急事業をどうするかということを真剣にやっております。今年度中にその成果をまとめて、大綱とかあるいは洪水防災戦略のような形で公表したいと考えております。  また、今、実は東海地震以外に東南海南海地震発生切迫性が高まっております。二〇〇三年九月二十六日に発生しました十勝沖地震が、三十年以内の発生確率が六〇%で逆断層型の地震を起こしております。ですから、この東南海地震はいつ起きてもおかしくない、あるいは東南海地震が起きますと、それに連動する形で南海地震が起こるということが心配されております。  これが、東南海南海が連動しますとどういう津波が来るかということであります。三重県あるいは高知県の一部では、高さが十二メートルを超える津波が来ることが予想されています。この津波は実は瀬戸内海全域に入ります。広島あるいは岡山の低いところにもこの津波がやってくる。瀬戸内海全域には、地震が起こってからおよそ三時間で津波の第一波が到達することが分かっています。  これが、現在、大津波警報、いわゆる三メートル以上のところに出る警報でありますが大津波警報津波警報、二メートル以上、それから二メートル以下の注意報、これぐらいの地域津波に襲われるということが予測されています。  この図は、実は三重県の尾鷲でホームページに載っておりますハザードマップであります。赤い点一つ一つ住民一人一人なんでありますが、地震が起こった段階で、どのレベル避難を開始していただくかによって助かるか助からないかが分かるようなハザードマップになっております。私ども動くハザードマップと呼んでおりますが、こういうものが市民に公開されておりまして、これで非常に関心が高くなったといいますか、非常に啓発が進んだということが分かっております。  また、同時に、こういう実際の写真にコンピューターグラフィックスによる津波を張り付けまして、小学生がこういうのを見ますと泳ぐことができないということは如実に分かるわけでありまして、津波が来るって言うたら小学生は泳いだらいいということを言う人がいるわけですが、こういうふうな動画を見せるということは大変効果があるというわけであります。  こういう防災の問題は非常に時間が掛かります。ですから、私どもは、戦略を作っていただきまして、アクションプランを十年単位で実施していただきたいということを申し上げております。三重県、和歌山県、奈良県、大阪府、すべて戦略が継続中でありまして、知事が替わってもこの戦略は変わっておりません。ですから、長丁場の対策を今府県を中心にやっていただいておると。  これは、大阪府が南海地震津波対策で考えております達成目標政策行動計画であります。津波による死者がゼロ、あるいは堺泉北港の広域津波災害への適切な対応をするということで、アクションプランを今粛々と実施しているという状況であります。  この図は、高知県の須崎港で津波防波堤が今竣工する直前になっているわけですけれども、この津波防波堤ができましても、実は次の八・四の南海地震津波市街地はんらんすることが分かっております。すなわち、ハードな施設被害をシャットアウトすることは不可能であります。ですから、そういうもので外力を少しコントロールしてから市街地はんらんを抑える、しかし住民も、特に海岸沿いの方は逃げていただかなければいけない。そういうことになりますと、どの地域住民に逃げていただくかということを事前に知っていただくということが大変重要であります。  津波に関しましても、津波特徴を知る、あるいはどこがやられるか弱いところを知る、対策を知るという三つの知るということで防災は構成されておるわけですけれども、およそ三十のメニューがあります。この三十のメニューをすべてやるのではなくて、その地域に応じた対策を選択をしていただきまして、防災戦略を作ってアクションプランを実行していただく、こういう形で我が国津波防災対策が進捗中だということでございます。  以上、簡単でございますが、私の説明は以上でございます。
  8. 一川保夫

    委員長一川保夫君) ありがとうございました。  では次に、島崎参考人お願いいたします。
  9. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) それでは、日本地震予知・予測についてお話をさせていただきます。  最初日本地震の課題を御説明して、その後、現状お話ししたいと思います。(資料映写)  日本における地震問題点、二つ大きくございます。一つは、日本皆さん方が本当に震災危険度お気付きになっていないと思われる点でございます。それから、個々の震災ではなくて、先ほどもちょっとありましたが、震災が連発して来る、こういう事態をなかなか考慮されていない、この二点についてお話ししたいと思います。  一般の皆様に御講演をすることがあるんですけれども、例えば地震というのは低頻度巨大災害という特徴がございます。これはなかなかつかまえにくい特徴でございまして、簡単に言いますと、巨大災害ではなく低頻度災害ということで、皆様のお宅が例えば火災に遭うのはどのくらいの低頻度と考えていらっしゃるかというふうにお伺いします。この場合、戦争地震による火災を除きますけれども、大体、こんなふうにお伺いすると五十年から百年だとか数百年という答えが返ってきますが、実際には千五百年に一回という程度頻度でございます。しかし、十分これに対して火災保険という形で対処されているわけでございまして、三十年確率でいうと二%、この十倍が交通事故で負傷する確率、この十分の一が交通事故で死亡する確率ということになります。  保険お話をしましたけれども、現在、火災保険に入っている方のうち地震保険にも加入されている方は四割程度、非常に増えましたけれども、やはり地震保険に入らない方の方が多いのが現実でございます。実際そういう方にお伺いすると、ほとんどのお答えは、地震保険の方が高いというお答えがあります。これは非常に簡単なお話でございますけれども、なぜ地震保険の方が高いかというのは、これはまさに地震のリスクが高いからでございまして、そういう簡単な理屈すら多くの方が御存じないというのが日本現状だと私は思っております。  それから、台風あるいは風水害との比較ですが、これは保険関係の個人の住宅、家財の損害額で比べますと、大きいときでは二十倍程度、年平均しても七倍強、実は地震の方が災害額が大きい。先ほどのお話のように温暖化するとこの差は縮まるかもしれませんけれども、それが現状でございます。  このように地震のリスクが高いにもかかわらず多くの方がなかなか気付いていただけないということは、そのようなとんでもない被害を起こす地震、これが比較的まれである、ですから、通常はそういった現象は起こりませんので、ついついそういったものは忘れがちである。しかし、国を預かる皆様方は、そのとんでもないことが起こるんだ、起こり得るんだということを是非お考えいただきたいと思っております。  これは例えば過去百年間の住宅の被害でございますけれども、三十回、二十一回、十五回というように比較的小被害、こう言ってはなんですが、これは頻発します。しかし、これは全体から見ますとごく一部にすぎません。計七十七万棟のほとんどは関東大震災の五十八万棟で占められています。地震災害の本質は、このようにとんでもないことが起こる、そしてそのとんでもないことが全体の九割、八割を占めてしまうという、そういうことでございます。そして、そのとんでもないことが起こるまでは、そんなものは起こらないだろうと思っているということがこれまでも繰り返されてきたと思います。  仮に、死者、行方不明者数が千人を超える、このような震災を私は勝手に大震災と呼んでおりますけれども、これについても、例えば日本で何年に一回ぐらいかということを一般の方にお伺いすると、大体五十年以上に一回ではないかというお答えが返ってまいります。これは非常に自然なことで、ある意味、皆様方の経験に裏打ちされていると思います。実際には、過去二百年間の統計を取りますと、十二年に一回というのが現実でございます。ですから、人間の一生の間に五、六回起きて不思議はない。もっとも、自分が被災者になるかどうかは別ですけれども、それほど頻度が高いのです。  ただ、こういう二百年の統計を取りますと、昔は家が非常に貧弱だったのでそのまま比べられないんではないかというお話がございます。しかし、一方では人口が増加して、かつ非常に脆弱な都市が生まれていますので、皆さん御存じのように現在でも多数の家が強烈な揺れに耐えられない状況でございまして、今度の四川の地震では皆様のおかげで学校の問題が解決に向かうことができたようで大変喜んでおりますけれども、この内閣府の統計にありますように、実際に個人の方は耐震改修も耐震診断も行っていないというのが現状、皆さん御存じのとおりでございます。このようなことを考えますと、二百年の統計といいましても現在でもそのまま通用するのではないかと私は考えております。  なぜ皆様が五十年に一回だと思われるかといいますと、戦後、経済が成長して繁栄したこの五十年間に、阪神・淡路大震災を除いて大震災と言われるような大震災が起こっていないというのが現実でございます。これで左側を見ていただきますと分かるように、一九四三年から四八年までの六年間に五回大震災が繰り返したということは現実にあるわけでございます。これがなぜ日本国民の記憶として定着しなかったか。これはもちろん戦争があった、戦争の方が悲惨だったということが一つです。それから、中には、戦争中だったので地震発生自体が秘密であった、機密事項であったと、そういうこともございます。ほとんどの方はその後の幸い大震災の起こらなかった静穏な時期に人生の大半をお過ごしでございますので、それから、五十年に一回ぐらいだろうと、そういう経験的な数値が出てくるんだろうと思います。  しかし、先ほど申し上げましたように、平均して十二年に一回だということは、どこかで固め打ちの地震が起こるということでございます。そして、この地震は、先ほどのお話にもありましたけれども、南海地震、あるいは東海、東南海地震、このような地震の前後に集中して起こるという性質がございます。南海地震の三十年発生確率は公表時には四〇%でしたけれども、現在五〇%を超えておりますし、東南海地震は先ほどのお話にありますように六〇から七〇%と、今にも起こりつつあるのではないかという数字に次第に上昇しているところでございます。  過去の例をもう一つ申し上げますと、右側の安政のときは、特に固まって一年以内に東海地震南海地震、それから江戸地震が起きております。現在の中央防災会議の推定によりますと、一年以内に計二百六兆円が失われたということでございます。これは架空の話ではございません。実際に過去に起きたことでございます。しかし、一般の皆様は余り御存じない。  実際このような震災がこの平和な今の時代に繰り返して起きるとしたらどうなるかと考えてみますと、大変恐ろしいことがあるのではないかと思います。最初震災、二回目の震災ぐらいは世界各国が非常に同情してくれて援助の手を差し伸べてくれるかもしれませんけれども、三年目にもまた大震災が起こる、四年目にもまた大震災が起こる、こういう繰り返しがあれば、世界中の人は一体この国はどういう国なんだろうかと思い始めるに違いないと思う次第でございます。  皆様御存じのとおり、神戸の地震ではアジア有数のハブ港であった神戸港がその地位を失っております。いったん失った地位はなかなか取り返せません。それから、この間の中越沖地震では、御存じのように、自動車の部品メーカーが被災したことによって自動車の生産が停止されております。私がもし自動車産業に携わっていましたら、あの一社だけに部品を作らせるのは危険だなと思うに違いありません。もう一つの選択肢、あるいはもう二つの選択肢をほかの場所に備える。今回は、そういった地方の問題ではなくて日本がその対象になるのではないか。日本でしかできない、そういったものは世界各国から見たら非常に危険ではないか、日本だけに任せておくことがいいのだろうかと、そういう話になりかねない。その意味では、日本の国難が起こるのではないかと思います。  安政の一つ前は宝永でございますが、このときは関東大地震が起きて、その後、宝永の南海東海地震、私どもが知っている日本最大地震が起きます。その後、おまけに富士山が噴火するという、こういう現象が重なりました。  その一つ前の慶長のときは豊後の大津波ですから、別府湾から四国、それから近畿の有馬—高槻構造線、これが恐らく一週間以内に続けざまに地震発生するという、こういったことが起きたと思われます。  このように連発する、二つ影響があると思います。一つは、当然、累積効果ですね。どんどん被害が大きくなる。それで、外から見ていると、実質以上に危険だというふうに評価される。この間もサッカーの選手が来ないとか、そういうことがありましたけれども、実質以上に言わば風評といいますか、そういったふうに感じられるのではないか。それからもう一つは、間隔によるんですけれども、応急対策をしている、あるいは復旧対策、復興対策、それを一方でしているときにもう一方で地震が起こるという非常に厄介な現象が起こるかと思います。さらには、これは累積的な効果ですけれども、地震保険など、すべてが一遍に起きてしまえばそれに対して支払をすることができますけれども、支払が済んだ後で次の大震災が起こる、こういうことが起こると一体どうしたらいいのか、これまで考えられていないのではないかと思うので、是非この連発するということも考慮して対策をしていただく必要があるかと思っております。  昭和、安政、宝永とさかのぼっていて、宝永は先ほど申し上げましたけれども、全長六百キロを超える大地震が起きたということでございます。それよりも前もほぼ規則的に百年から百五十年で南海地震が繰り返しておりまして、今世紀の前半にはまず間違いなくこの地震が起き、その前後にはそれ以外の地震が連発する、どのような間隔かは現在分かりませんけれども、そういうことが予想できると思います。  しかし、まだ時間の余裕があるだろうと思われるかもしれません。しかし、最近の地震を見ていますと、既に規模は小さいながら連発の震災が起きております。  一つの例だけ挙げさせていただきますけれども、福岡県西方沖の地震でございます。この緑色が余震でございますが、実はその後の調査等々から、ここは非常に長い活断層系の北の半分だけが壊れたんだということが分かっております。南の半分はまだ手付かずといいましょうか、壊れていない状況で、それがまさに博多の町の真ん中を通っているということでございます。  現地へ行ってみますと、南の方ではこういう段差が付いておりまして、普通は土地の境界になっておりましてこんなふうに家を建てることがないんですけれども、北へ行きますと段差が付いておりませんので位置が分からなくなり、しかもそこはこのような高層マンション群になっているという状況でございます。更に北へ進みますと石油基地が存在する、こんな状況でございます。これはごく一部でございますけれども、現在でもそういった連発する大震災という危険はゼロではないということを申し上げたいと思っております。  私が勧めることは、日本地震のリスクを世界に開示する、あるいは国民にも開示する、そしてそれだけではなく対策を進めてそのリスクが実際に減らせることを示す、こういうことが必要だと考えております。  現在、日本の震源、海溝で起こる地震と直下型に分けますと、海溝型はほとんどが既知の震源でございまして、長期予測で既に三つ地震がここで起こる、マグニチュードXと予測されているどおりに起こっております。一方、活断層で起こる直下型の地震はほとんど未知の震源でございます。そこにございますけれども、その理由は、これまでの活断層調査がマグニチュード七以上であったことと、それから、沿岸はごく一部しか調査が行われていないという、この原因でございます。  現在どこまで地震予知が進んでいるかといいますと、ごく一部ですが、非常に規則的に起こる地震については予知ができております。東海地震については現在ゆっくり地震というものが検知されておりまして、これが先行して起こる可能性が非常に大きいと思います。活断層に関しては、まだまだ調査が不十分なところがたくさんございます。  これは釜石沖の小さい地震ですけれども、マグニチュードも位置も時間もほぼ予定どおりに起きておりまして、この次もう一回起きて、それも予測どおりになっております。  これは東海地震の例ですけれども、皆さん御存じのように、毎年私もこの防災訓練に参加しております。  これは平成十八年度の例なんですけれども、訓練は、実際にどういう変化が起こるかということも予想して、それに対して備えます。これは訓練用なんですが、実際、気象庁へ参りましたところ、現実はこのような変化が起きておりました。佐久間、本川根という場所で、先ほどのこの下の二つの場所ですけれども、まさに訓練とほとんど同じ現象が起きているということがございました。量は現実の方が小さいんですけれども、これが左側が現実でございまして、ゆっくり地震があの位置で起きている。右は訓練に想定したものでございます。ですから、左のようなことがより震源域に近いところで更に加速していけば、これは訓練と同じようにといいましょうか、本物の東海地震発生につながるんだろうと思っております。  主要活断層帯については、調査は不十分でありますけれども、既に北海道から九州までこのような活断層帯の発生が高いということが分かっております。  それから、済みません、レジュメのところで、南関東のやや深い地震を追加していただければと思います。済みません。一番大事なところを省略してしまいました。訂正いたしたいと思います。  実際、関東は大正関東地震の後の静穏期から活動期へ抜けるところでございます。赤い点線内でマグニチュード七程度地震が三十年以内に七〇%ぐらいの確率発生するだろうというのは予測でございます。しかしながら、素性が残念ながらよく分かっておりませんで、唯一素性が分かっているのが、皆様エレベーターが止まったり鉄道が止まって帰宅が深夜になった二〇〇五年七月二十三日の地震で、これはフィリピン海プレートと太平洋プレートの境目で起きた地震でございまして、ほぼ二十五年に一回繰り返していることが分かっていますので次の地震も予想が付きますが、これ以外については現在調査中で、なかなか昔の地震の記録を得るのが難しい状況でございます。  一方、海溝型の地震に関してはかなりの部分が既知でございまして、このような予測が行われているというような状況でございます。  以上です。
  10. 一川保夫

    委員長一川保夫君) ありがとうございました。  次に、室崎参考人お願いいたします。
  11. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 関西学院大学室崎でございます。  今日お話をすることは二つございます。それは、これからの日本地震防災対策の特に留意すべき点がどこにあるのかということについてでございます。  一点は、想定外、予想外、思わぬことが起きる、そういうことを前提とした少し地震対策ということを考えておかないといけないんではないかということでございます。思わぬことが起きるというのは、四川の大地震やスマトラの話もそうですし、それから先ほどの河田先生や島崎先生の話でも御理解をいただけたと思います。ところが、やっぱりそういう想定外ということに対して本当はしっかり備えるようになっているのかというところが問題でございます。(資料映写)  その想定外に備えるというのは大きく三つのポイントがあるように私は考えております。  一番目は、我々はつい、大きな災害が起きたときに我々の口実、言い訳として使う言葉が想定外のことが起きたということで、思いもよらぬことが起きたということで我々専門家の責任も少し回避をするような傾向があるわけですけれども、本当にしっかりそういう次のリスクを予見し、予知しようと努力していたのかというところが問われている。もう少し言いますと、しっかりその被害を想定をする科学技術、そういうものの発展に努めなければならないけれども、現状では必ずしもそうなっていないということであります。そういう意味でいうと、想定科学を進化させるということが求められていると。  それから、二番目は、ここに体質改善的な減災対策が要るということを申し上げました。これはややもすると、カンフル注射を打ったりとか薬漬けにするというようなところに、目の前のリスクに目を向けがちでそういうところに力点が置かれがちでありますけれども、実は我々の健康な体、体そのものをしっかりした頑丈なといいますか、そういうものにしていくという持続的な努力が根底になければならないんですけれども、そういう視点の体質そのものを変えるという対策が、やはりこれがしっかりしていると風邪にもかかりにくいし腹痛にもなりにくいという、思わぬことが起きてもしっかり健康が管理できておれば十分対応できるということだろうと思います。  それから、三点が、とはいうものの思わぬことがやはり起きる。我々でいうと、ニーズに対してシーズが足りないというんですけれども、我々が持っている資源を超えるような大きな被害災害が起きたときにその資源をどう配分するかというようなことを含めてですけれども、そういう思わぬ事態が起きたときの緊急対応の体制をどういうふうに構築するかということに対してしっかりそれなりの戦略なり考え方を持っておかなきゃならない。この三つに集約されるだろうというふうに思っております。  少し、今申し上げた三つの点について補足をさせていただきたいというふうに思いますけれども、なぜ想定外が起きるのかということであります。まさにそれは低頻度というか、百年に一回とか二百年に一回というような頻度でしか発生をしない。ところが、その間に我々の国土の状況や都市構造の状況が大きな変化をしているわけです。先ほど来少し石油コンビナート等が津波等で被害を受けるというような話がございましたけれども、まさにそういう意味でいうと、海溝型の洗礼というのはそういうコンビナートは受けていないということでございますし、すると、一体それはどうなるのかということはなかなか想像を超えるわけであります。ところが、我々の学問の世界というのは経験則、過去にこういうことが起きたからこういうことが起きるだろうということで論理を進めますので、過去に起きていないことに対しては全くある部分、想定の科学というのは無力な部分がございます。そういう意味で、必ずしも予測が不十分なところがあるということと同時に、未知の危険をどういう方法でというか、どういうふうにしてそれを予測し予見をするのかというようなことが欠かせないように思っております。  これもよく一般の方から、例えば大阪の上町断層で被害が起きたらということで、大阪府の想定は一万人だったのに内閣の想定はどうして四万人だとかという疑問が呈せられたり、あるいは私なんかは、首都直下の地震が起きると、国の予測では火災による死者というのは数千人でございますけれども、私はそんなことはないと、数万人が死ぬかもしれないというふうに申し上げます。これはどちらが正しいかとよく聞かれるんですけれども、僕はどちらも正しいというか、それを精密にというか、そういうのをしっかり幾らということを予測するほどの我々は技術を今持ち合わせていない。そうすると、最大限こういうことが起きる、うまくいくとこういうことがあるというふうにして、やっぱり幅を持ったものと被害をとらえないといけないですけれども、ややもすると特定の非常に断定的に考えてしまう。  例えば、これはある都市ですけれども、地震時における火災件数の予測値は四十件というふうに出されました。そうすると、その地域の消防隊が八十台だとか百台の消防ポンプ自動車を持っているということから、それで消せるんだというふうに判断されて、だから今度はどんどん燃え広がることは起きない、だから密集地の延焼対策はしないでいいんだというように判断をされた自治体がございます。でも四十件という保証は必ずしもそうではなくて、それは四百件かもしれないと考えた場合に、じゃ四百件で消せるのかというと、そうではなくて、やはりそれは密集地の市街地の整備をやらないといけないということになるわけでありまして、かくかように、やはり想定の揺らぎというものが対策の揺らぎを引き起こしているということは極めて重大だというふうに思います。  そういうことと同時に、先ほど少し質的な問題で申し上げました。これもいろいろ御指摘したいことがございますけれども、例えば石油コンビナートがどうなるのかと先ほど申し上げました。これは津波が石油コンビナートに入ったときというのは我々は余りそれは想定していないのかもしれませんけれども、予測を超えた大きな津波が来ることもありますし、防潮堤が壊れていることもございますし、ゲートが閉まらないこともある。そうすると、いったん大きな津波が入ると非常に巨大な力で配管やパイプラインやタンクを引き倒していくわけであります。でも、そういうことに対して今まで余り大きな事例がないものですから、そういうことに対しての検討は十分されていない。  あるいは超高層のビルでございますけれども、これも先生方御存じかもしれませんけれども、日本の建築基準法というのは地震と火事は同時に起きないという前提で作られているわけであります。どういうことかというと、防火扉とかスプリンクラーとか消火設備だとか、その他防災に関連する設備については耐震化が義務付けられていないものですから、防火扉が閉まらないとか消火設備が機能しないということになります。その点を考えますと、超高層ビルは全館が火の海に包まれるということは決してそれは確率の低い現象ではないということになってまいります。  例えばそういうようなこともございますし、それから火災死者で先ほど少し申し上げましたけれども、内閣府の調査では、例えば首都直下の場合でいうと、全焼した建物が百棟あれば大体一人という、六十万棟燃えて六千人の死者という数字を出しておられます。ところが、過去のあらゆる地震を、どの地震を見ても、少なくとも百棟燃えると大体十人は亡くなって、だから十棟燃えると一人と。阪神大震災、あの風が全くなくて、それから破壊消防といわれるぐらいに瓦れきの山になって、非常に火災が燃えにくい状況でも要するに六千棟から七千棟燃えて五百人が焼死をしているわけです。  そうすると、そういう関係を少し考えるならば、やはり今の予測で本当にそうなんだろうかということを含めて、この辺あたりのことをもう少ししっかり、やはり敵を知り己を知れば百戦危うからずということでございますので、災害対策最大の前提はしっかりした被害予測をするというところにあるということをもう一度考え直していかないといけない。  体質改善の話は、私としてはやはりそういう長期的な問題というのは、燃えにくい都市にする、壊れにくい建物にするということも必要ですし、それから、しっかりその地域のネットワークなり連携ができるような地域社会のコミュニティーのしっかりした強化を図るというようなことを持続的にやらないといけないということでありまして、そういうものは今必ずしもそれが、何か今ようやく耐震化については一歩前に進んだような感じがありますけれども、全体として見るとそういう長期的なことは後手に回っているように思いますので、そういうことを考えていただきたい。  応急態勢の話もたくさんございますけれども、やはり巨大な災害を受けたときのいわゆる資源、人的資源を含めてどういうふうに配分をし、優先順位を決めて対応を図るかということにつきましては、日本だって、あれは中国だからああいう対応が遅れたんだという話ではなくて、先ほど来、島崎先生の話にもございますけれども、東海、東南海南海が同時に起きた場合に、あるいは首都東京被害を受けたときに、我々の持っているいわゆる消防や警察や自衛隊のそういうマンパワーだけで十分対応できるのかというと、それは非常に心もとない状況にございまして、まさにそこもしっかり考えないといけない。  あともう一つ、二つ目の大きなテーマでお話をしようとしたのは、対策に体系性というか戦略性を持たさないといけない。どう見ても我々の対策というのは、ややもすればいろんな、予算要求書みたいにあれもこれもいっぱい書いてある。これはその優先順位が必ずしも明らかではない、あるいはその相互の対策の関連が明らかになっていなくて、あれもこれもというメニュー方式で書いてあるわけでありますけれども、やはりその中でも限られた予算、資源の中で今何をやるべきかというか、どこから重点にしていかなければならないかという、やはりそういう戦略というか、あるいは対策一つ一つの吟味をして政策をつくっていかないといけないように思います。  その中で言うと、基幹的なというかその一番大本になる対策は何かということの中からその強化を図ることと、もう一つは、いわゆるウイークポイントというか、我々の対策の中で抜け落ちているものが一体どういうものがあるかということを考えながら、その一番ウイークポイントの是正を図っていくということが必要ではないかというふうに思っているところでございます。  その中でまさに基幹的というか一番ベースになる対策は何かということで、これは先ほども少し申し上げましたけれども、耐震化の話とコミュニティーの形成の話と、それに加えて、私はヒューマンウエアというか人間自身の意識の問題がすごく重要だというふうに思います。耐震化がなかなか進まないというのも、それはどうしてかというと、先ほど来の島崎先生の話とも関係するんですけれども、過去の経験がうまく伝承をされていないということもございますし、自分だけはまさかそういう目に遭わないというふうに思っているという楽観的な気持ちもございまして、やはりそこをしっかり変えていかないといけないというふうに思っています。  そうすると、そのキーは何かというと、私は、いろんなことがありますけど、防災教育というのをもっとしっかり位置付けてやらないといけないと。しかも、防災教育は学校教育に任せるんではなくて、私は、学校教育と地域教育の二本柱で、地域教育もかつては公民館運動で、いろんな形で教育の展開がしっかり国としても責任を持って図られたわけですけれども、今地域教育というものに対してしっかりそういう形でバックアップをするような状況にはないように思います。先進的な地域ではそれぞれいろんな取組をされていますけれども、きちっと国全体として地域防災教育を進めるという状況にはなっていないように思っている。かつ、その内容が本当に実効性のある内容になっているかどうかということも問われているように思いますので、防災教育というものをもっと根幹に据えたような防災対策のフレームをつくらないといけないというふうに思います。  それから、少しウイークポイントというか対策が遅れている部分というのを申し上げますと、一つはやはり火災対策であります。もはや火災は起きないように思っておられる方がおられるかもしれませんけれども、例えば首都直下の予測で申し上げても、死者でいいますと、家屋の倒壊で亡くなる人よりははるかに火災で亡くなる人が多いわけです。六十万棟も燃えるという話は、先ほどの島崎先生の風評被害とも関係するんですけど、三日三晩東京が火の海になるということであります。そういう映像が世界に発信されるだけでも風評被害も膨大なものですし、何よりも、先ほど私の見解では六十万棟燃えると六万人が死ぬかもしれないというように思っておりますので、まさにそういうことで言うと、耐震補強、耐震化と同時に火災対策を強めないといけないというふうに思っているところでありますが、なかなかそこの解明や研究が進んでいないという現状でございます。  もう一つは復興対策というもの。やはり今までの我が国防災対策は、一方で応急対応、火災でいうと自主防災組織を組織してバケツリレーで消すんだというのが一つの伝統的な対応でございますし、消防庁でも緊急援助隊という、これは非常に有効な方策でありますけれども、ともかく起きてから頑張るんだというシステムが非常に優先されてきたように思うんですけれども、最近の災害というのは間接被害が膨大なものに上ります。経済や地域や暮らし、住宅再建等でも非常に多大な困難を強いられる状況になりますと、むしろ復旧復興対策というところのしっかりした戦略を持った制度やそういう仕組みをつくっていかないといけない。まさにここは予防と応急と復興、三本柱にして、中でも遅れている復興対策を力を入れるということが必要だろうというように思っています。  あともう一つ、これで終わりますが、大規模建築群というものがございます。これは、さっき一番最初に申し上げました低頻度災害に対して我が国の都市構造や地域社会が今までまだかつて洗礼を受けていないということを申し上げたわけですけど、その最大のものは何かというと、巨大な建築群が存在をし、巨大なターミナルが存在をし、大きな大規模地下街が存在しているという状況であります。こうした今までそういう大きな洗礼を受けていないところが一体どういうことになるんだろうかということに対して、しっかりこれも被害のリスクの評価もしつつ、しかるべき対策をやはり取らないといけないんではないかというふうに思っているところでございます。  以上でございます。
  12. 一川保夫

    委員長一川保夫君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 参考人皆様、それぞれの専門分野から本当に今日はありがとうございます。貴重な御意見を拝聴いたしまして、感激いたしました。もっともっと時間があれば詳しいお話できたんだろうなと思っておりますけれども、その分私の方からもいろんな形でそれぞれの専門について伺わせていただきたいと思います。  私は秋田県の出身でございまして、昭和五十八年の五月二十六日、マグニチュード七・七という日本海中部地震、これは、当時テレビ局の人間でございましたのでマスコミ人として体験をさせていただき、取材それからレポーターとして被災地を本当につぶさに見て回って、悲惨な状況をかなり、多くの死者の皆さん、特に小学生の悲惨な死も見せていただきました。こうしたことは二度と起きてほしくないという気持ちを当時から強めて、昨年の九月から当災害対策特別委員会に所属をさせていただいておりまして、再び質問の機会をいただきましたので、今日は、最初にお三方に質問をさせていただく、それからあと時間があれば、残れば個々に質問させていただきたいと思います。  ミャンマーサイクロン被害から四十日、四川の大地震から一か月、大体たとうとしておりますけれども、現地からの情報がつぶさに伝わらないとはいえ、被害の大きさ、それから復興復旧の遅れが感じ取られていて、まさに参考人皆様がおっしゃっている災害対策の必要性、改めて強く感じている次第でございます。  災害とは一口に申しましても千差万別、いろんな形態があることは御承知のとおりでございますが、さっき室崎先生がおっしゃった想定外という言葉、最近よく出てきておりますけれども、想定されて対応しないのは人災に当たるんじゃないか、そういう気持ちを持つわけでございます。予知と想定外では余りにも乖離し過ぎております。  皆様方はいつ災害が起こってもおかしくない状況被害想定をすべきだという、事前にいただいた文書の中にも拝見できました。私も万一に備えるには何が起こってもおかしくない状況を常にとらえておかなくてはいけないと思っております。ただ、国や自治体となりますと、簡単には対応できておりません。生命とか財産にかかわる重大な点であることを非常に緊張感を持ってとらえておりますけれども、行政にとってはなかなか難しくて、これ悩ましい点でもあると思うんですね。  そこで、何かインセンティブというとちょっと語弊がありますけれども、国や地方自治体を何か積極的に動かす方策、我々政治の分野で進めなければならないという点も併せて、是非その具体例とか御助言をいただければ、それぞれの参考人の皆さんからいただければ幸いと思います。
  14. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) やはりこの防災の問題は民主主義の発達と非常に関係があるということです。すなわち、阪神・淡路大震災の後、被災住民の間で住民参画というところが非常に高くなりました。すなわち、行政と住民というのはこれまで一線を画していたというのが現実ですが、実は行政と住民が相携えてやらなければいけない問題がある、こういう認識が実はボランティアを中心に出てまいりました。特に社会福祉の問題はそうであります。  ですから、例えば災害時要援護者の問題も、従来は本人の問題だと言われておったんですが、そうではなくて本人と周囲との問題だというところまで来ております。ですから、そういう災害時要援護者の問題なんかも含めて、いわゆる行政と住民が協力してできる分野が一体どこがあるかということをもっと明らかにしていく必要があると思います。今は特に自治体の方は財源が非常に乏しいということで具体的なことがなかなかできない、しかし志のある方はたくさんおられます。そういったところで、やはり住民の啓発とともに、そういう相携えていく仕組みづくりというか、こういったものが大変重要かと思います。
  15. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) 大変難しい御質問で、国や地方自治体を動かすにはどういうインセンティブがあるかという御質問かと思いますが、残念ながら、一つには今回のような外国での被害だと思います。  前に台湾でも大きな地震がございましたけれども、そのときはどちらかというと、言葉は悪いですが、人ごと的な印象を持たれたかと思うんですが、今回は幸いなことに、それまで日本でもいろいろな地震災害があるんだということが多少は広く国民の皆様に伝わっていることもあるかと思いますけれども、それぞれ、学校の例にしましても決して人ごとではなくて、やはり自分たちに跳ね返ってくることだという形での報道あるいは御意見が非常に広くあったと思う。それがやっぱり国や地方自治体を動かす一つの力ではないかと。  ですから、なるべく個別具体的に災害の有様を皆さんにお伝えして、機会と言っては言葉が悪いですけれども、事あるごとにそれを訴えていくということかと思います。
  16. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 行政が意欲を持って防災対策に取り組めるやっぱり環境をどうつくるかということだろうと思うんですね。そうすると、なかなか防災対策というのは一生懸命やってもその検証ができないというところがございます。災害が起きてみてそれはよく頑張った、起きなければ何のためにやったのかよく分からない。そこに行政としてもなかなかやる気が出てこないというところだと思うんですね。  一つは、これはそういう手法をしっかり確立しないといけないんですけれども、行政が行っている防災対策の事前評価といいますか、そのことによってどれだけの例えば人命被害軽減の効果が上がっているのか、あるいは経済的にも経済的なリスクをどれだけ低減する効果が上がっているのかということを評価をして、それに見合った財政的な支援をする。  頑張ればというと、じゃ頑張っていないところはもらえないとか、例えばその対策の効果によって、例えば耐震補強というのを考えていただくと、耐震補強をしっかりやると、大きな地震が起きたときには仮設住宅も造らないでいい、公営住宅も造らないでいい、あるいはその職員の残業手当も要らないというようなことで、むしろ予防に力を入れることによって膨大な経済的なメリットがあるわけです。そうすると、そのメリットに見合うようなそういう対策をやられたその対策に対してむしろ後付けとしてきちっとそれを補助金なりそういうものでバックアップをするということになれば、やはり頑張れば頑張るだけの経済効果というものを、むしろ事前の段階でそういう仕組みにすれば、かつ私は、そういうことで後で得られた補助金はもっと更に予防対策に使っていくというような形の、やはりこの見えない行政の取組をきちっと見える形にして評価をして、それに対して必要な国の支援を与えるという制度なりシステムをつくるということは有効ではないかと。  それから、もう一つ付け加えて言うと、防災セクションというのがまだまだ日陰の存在というか、昔のように窓際族が防災担当者になることはなくなって、かなり今は優秀な人が防災担当者になっているわけですけど、でも全体の行政の仕組みの中では総務とか経済、そういうところの方が優れたポストであってという、まだそういう慣習が残っている。これは国がどう支援するかということではないですけれども、やはりそういう機運というか防災行政というのが非常に重要だというような社会的なコンセンサスをつくっていくと。  少なくとも国においては、国はそうではない、違うかもしれませんが、国においても内閣府等の防災部局のやはりそういう地位というか権限というのをもっと強くすることが、結果的にはそれが防災行政の必要性と重要性を明らかにすることなので、そういうことについても御努力いただければ有り難いというふうに思います。  以上でございます。
  17. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 ありがとうございました。  なかなか見えない部分があると言いましたけれども、さっきの尾鷲の場合のシミュレーションを見たら、多分この委員会の中の皆さんもびっくりしたんじゃないかというぐらい、ああいうシミュレーションのケースもあるなという感じがいたしました。  それから、室崎先生に重ねて今の部分でもう一回伺いたいんですが、住民による減災活動というのがこれからの大きなかぎを握ってくるんじゃないかと思うんですが、ただ、今日的に、先生もこの参考資料の中で訴えていらっしゃいますが、コミュニケーションの希薄さというのは、この社会情勢などから、すぐにはその地域の協業とか自助とか共助に結び付けていくというのは非常に難しいんだろうなと思っております。  そこで、市民レベルでのその減災の取組の問題点、それから地域に対する、重ねて申し上げますが、行政の役割それから支援策、こんなところはどういうお考えをお持ちでございましょうか。
  18. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 河田先生が少しお話しされた行政と市民のパートナーシップというところともかかわっていくと思うんですね。僕は地域レベルにおける防災教育というかあるいはリスクコミュニケーションという場においても、行政と市民と、市民の中にはいわゆるNPOだとかそういうボランタリーな人たちも含まれるし、それから中間支援組織も含まれるんですけれども、それと専門家とメディアという、その四者がしっかりスクラムを組んで地域地域教育にかかわっていくと。  それは、だから一つは私なんかの一つ責任なんですけど、もっとその地域防災教育のコミュニケーションの場に専門家が出ていって、一緒にその教育のツールを作ったり開発をしたり実践をしていくような場をやっぱり持っていかないといけないんではないかというふうに思っております。
  19. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 ありがとうございました。  じゃ、次に島崎先生に伺いたいのでございますが、私も去年の災害対策特別委員会の中で、実は地震が積雪期、冬場に起きたときの危険性というのをちょっと質問させていただいて指摘させていただきまして、私も秋田なんで、豪雪期になるといわゆる救急体制とかそれから市民生活がいろんな意味でパニックを起こすのでございますが、この積雪、豪雪地帯地震対策というのは先生どんなお考えをお持ちでございましょうか。
  20. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) 御指摘ありましたように、豪雪期に地震があった例がございまして、マグニチュード五程度ですと普通は被害がないんですけれども、積雪の重みがある、そこで揺れますので家が多数倒れるといったことが過去にもございます。  御存じのように、それだけではなくて、もちろん救出活動から消火活動から、あらゆる活動がやはり積雪期でありますとそれ以外の期に比べて非常に不十分でございますので、震災あるいは防災対策すべてに言えることかと思いますけれども、個別具体的に問題をとらえる、総括的にとらえるとそういった細かい点まではなかなか思いが及ばないかと思うんですけれども、実際、積雪期もそうですが、梅雨のときも別の問題があるでしょうし、個々その時間帯、季節等々によって御存じのように災害の様相は非常に異なってまいりますので、総括的ではなくてやはり個別的にあらかじめ対策を考えておくということがまず一番だと思っております。
  21. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 時間なくなりましたので、最後に河田参考人河田先生に伺いたいんですが、今日はミャンマーサイクロンそれからカトリーナをお話しいただきましたが、最近ようやく、去年九月の段階でMJO、マッデン・ジュリアン・オシレーションの話をちょっとさせていただいて、偏西風も随分変わってきている。このMJO振動が、いわゆるサイクロン台風、それからハリケーンと、この関連性を最近ようやくテレビも報道し始めたんですが、河田先生の地球規模の偏西風、MJO、MJ振動と言われるものに対する御認識というのはどういうお考えでしょうか。
  22. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) まだまだ知見が不十分でございまして、地球温暖化がほとんどそういうものに影響しているというのが九〇%以上認められてきたという段階でございますので、やはり科学的な知見を蓄積しなければ、いろいろな変動が実は重なっていることはもう間違いございませんので、そこはやはりきちっとやる必要があるだろうと思います。  特に、台風がたくさん生まれるのか、あるいは少ないのか、あるいは強くなるのか弱くなるのか、こういったところをもう少し科学的に追跡しないと、非常に大きな問題が残る可能性があると思いますが。
  23. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 ありがとうございました。  最後に、時間ちょっと、もう一分しかないので、室崎先生、民間の資源活用とともにマスコミの連絡情報と行政との一体化という部分を訴えていらっしゃいましたので、このマスコミとの連携というのはどういうふうにお考えなのか、最後に聞かせてください。
  24. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 防災教育の強化とも関係するんですけれども、やはりそのリスクなり危険性を市民一人一人がしっかりそれを理解をする、そこから防災は原点だと。  そうすると、専門的な知識や、そういう過去の経験みたいなのをだれがどういう形で伝えるのかというときに、メディアの役割というのは極めて大きいんです。私が講演会で十人に対してしゃべっても、それをきちっとメディアで報道することで何万人の人がそれを学ぶということ。そうすると、専門家とメディアがしっかり力を合わせて市民と向き合うという関係ができないと、本当の意味での市民教育というのはできないというふうに、そういうふうに思っています。
  25. 鈴木陽悦

    ○鈴木陽悦君 ありがとうございました。  終わります。
  26. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。自由民主党の塚田一郎でございます。  三人の参考人皆様には、今日は貴重なお話を大変ありがとうございました。  私は新潟県が地元でありまして、今日御質問の機会をいただいたということも、そうしたことも御配慮いただいたのかなと思っております。特に、先ほど島崎先生から、思ったよりも地震というのは頻発をする可能性があるんだ、過去もそういうことがあったと。次々に災害が起こるというお話を聞きながら非常に身につまされました。  私、四十数年足らずのまだ生涯でありますけれども、生まれた直後に新潟地震がありまして、その後、四十年後に御承知のとおり中越地震、これでもうしばらく同じ新潟県に大きな地震が来ることはよもやないだろうと私だけではなく多くの方々が当然思っていたやさきに、わずか二年足らずで中越沖地震と。しかも、この最後の二つの地震というのはかなりの地域が重複しているということでありまして、まさにおっしゃっていることが本当にそのとおりなんだなということを身につまされております。  そうしたことも踏まえて、それぞれの先生に御質問をさせていただきますので、簡単で結構ですが、お答えをいただければと思います。  最初に、河田参考人にお伺いをしたいと思います。  いわゆる風水害の恐ろしさということは私も非常に感じています。新潟にも七・一三水害ありましたし、つい最近もこの二月に佐渡沖で高波の被害がありました。この佐渡の高波被害の現場に視察に行って感じたことは、過去の予測をしていた性質の波と全然違う性質の、あるいは方向性ですとか来る場所だとか、そういうものが想定外のところに来たということを現地の方がおっしゃっていたのが非常に印象に残ったんですね。ですから、既に防波堤とか造っていただいているんですけれども、余り有効に機能しなかったと。それは波が来る方角が予想と違っていたり、あるいはその規模が違っていたりということなんです。  そうすると、どの程度そうしたことに予測をしていけるのかということの疑問がありまして、こうした点を踏まえて、先生として、例えば地域もそうなんですが、こういうところにいわゆる水害はないだろうというところにもしかしたら今後高波が襲ってきたりということもあると思うんですが、こうしたことにどのように予測をして対応していくのか、先生の御所見をちょっとお聞かせいただければと思います。
  27. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) 今のお話は寄り回り波のお話だと思いますが、従来、低気圧が日本海からオホーツク海に抜けますと、うねりが入ってくる。これが実は富山湾の海谷で非常に大きく屈折して、晴天下にもかかわらず大きな波がやってきて浜辺で仕事をしている方たちが波にさらわれるという、これは江戸時代から発生している現象です。  今回、二月の寄り回り波は、うねりの上に、実は低気圧が日本海の中部にあってこのうねりを発達させたという非常にまれな現象が起こっております。起こってからコンピューターで数値計算をやりますとぴたっと合います。  ということはどういうことかといいますと、レアなケースであろうとなかろうと、今の科学技術ではかなりのことを予測できるということなんですね。ですから、地震もそうですけれども、どれぐらいの確率で起こるのか、あるいはそれとコストとどう対応を付けるのか、こういった視点がまだまだルール化されていない。  ですから、これまでは被害が起これば二度と被害を繰り返さないような対策をやるわけですけれども、このように地球温暖化によって低気圧の経路もあるいは発達のプロセスもいろいろ変わってきますと、これまで起こっていないようなことが起こる危険性が実は出てきているわけであります。高潮もそうです。ですから、それはもういわゆる数値計算で非常にフォローできる話でございますので、そういうやっぱり事業を展開しなければいけない。  これまでの防災というのは起こってから次起こさないような対応がほとんどですけれども、地球温暖化のようないわゆる先行事例がある場合は、それに伴ってどういう異常なことが起こるのか、あるいはそれによって被害が集中するところがあるのかないのか、こういったことはかなりの精度で予測できますので、そういう研究を新たに立ち上げていかなければ、今おっしゃったような初めて起こる問題というのはなかなか対処できないと。  私、実は一九七〇年の寄り回りの災害のときは大学院の一回生でして、現地へ行って視察しておりまして、三十八年ぶりに今回大きな災害が起こっております。ですから、そういうやはり大きな災害は、残念なことにといいますか、低頻度ですから、やはりそれが繰り返すということの特性を重視した対応が大事だと思いますが。
  28. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。貴重な御指摘をいただいたと思いますが、是非参考にして、特にそうした防災の面で政府の方にもお願いをしていきたいなと思っています。  次に、島崎先生にお伺いをしたいんですが、やはり地震のリスクを、これだけ実はあるにもかかわらず国民として十分に意識できていないという貴重な御指摘だと思うんですが、そもそも論として、どのようにしていけばもう少しこうした我々自身の地震に対するリスクの意識を高めていけるのか、教育とかいろんなことがあるんだと思うんですが、そうした点をまず一点お伺いしたい。  もう一点は、先ほど先生が日本地震リスクをきちっと開示をしていくべきではないかというような御指摘をされたというふうに思います。これ、やはりリスクを開示することは大変重要なんですけれども、一方でやはりそれに伴う経済的なデメリットというのをこれやはり考えざるを得ないわけですね。日本がリスクが高いというふうになれば、海外から日本に対する投資や、これは株式のみならず直接投資もあるでしょうし、いろんなことに対してそのリスクを回避する動きも出てくるわけですよね。そうすると、ある意味日本はリスクが高い、特に首都圏はこれだけ過密ですからリスクは高いということを開示するのはいいんですが、それによる政治的、経済的デメリットをどのようにヘッジできるのか。ここがやはりセットでないと非常にやはり、ただリスクがありますというだけでは難しい。  この二点について先生から御説明いただければと思います。
  29. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) この二つは非常に関連していますので、一緒にお答えできればと思いますけれども。  御指摘のように、単にリスクを開示するということでは非常にデメリットが多い、むしろやめるべきだというのは当然のことだと思います。しかし一方、リスクを開示しないままにこのような連発地震が始まってしまったならば、その時点でたとえリスクを開示してもだれも信用してくれないし、かつリスクは膨大なものと外から見られるに違いない。ですから、それを考えればリスクを開示すべきだと私は思うのですが、ただ開示しただけでは、御指摘のようにかえってデメリットが大きい。  その間を取るとどういうことかと申し上げますと、単にリスクを開示するだけではなくて、リスクを低減できる方策を示した上で開示する、実際にリスクを低減していく様を世界の人に見せる、これがなければ本当に逆効果だし、何もしないまま過ごしてしまえば更に恐ろしいことが起こる、このように考えております。
  30. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  今のリスクに関してまた室崎先生に今度お伺いをしたいんですが、いろんなトータルな意味でのリスクについてお話があった中で、是非お伺いしたいのは、いわゆる日本の場合は経済的機能が大変に集中しているという、このリスクが私、一番実は大きいと思っています。  さっきいわゆる大都市への高層ビルとかそうした集積のお話ちょっと出たんですけど、日本ほどやはり経済、政治、すべてにわたって一極集中、東京一極集中の国はなくて、さらにそこにそうした災害のリスクが高いということになると、これは物すごい大きなリスクだと思うんですね。  首都圏に直下型が来たら云々ということ以前に、こうしたことというのは実は余り十分に本当に、先ほどのお話じゃないけど、認識されて、そのリスクが我々として開示できているのかといえば、多分そうではないと思うんですが、まさにすべてが機能集積をしている東京地震が起きたらちょっと考えたくないようなことが起きるんではないかと思うんですが、こうした点をもっと我々自身は意識をしていかなければならないし、その点について先生、どんなふうにきちっと認識をしていくべきか、あるいはそれに対して、私はもっとある意味ではそういったことを警告していただくことも必要なのかなと思うんですが、その点について先生の御所見をお聞かせいただければと思います。
  31. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 今御指摘されたとおりだと思うんですね。まさに地震災害というのは単に人命被害に対する影響だけではなくて、政治、文化、経済、自然、ありとあらゆるところに大きな影響を与えていくと。最近の地震といいますのは、これはやっぱり日本なり世界の国が大きく発展してきたこととも関係するんですけれども、むしろ経済だとか文化だとか自然等に対する影響が非常に大きくなっていると。阪神大震災でも、むしろ直接被害よりは間接被害という経済に対する被害の方が何倍も大きくなっている。となると、やっぱりその経済被害というものに対してしっかりした戦略といいますか対策を講じないといけない。  その前提は、まず経済被害はどういう被害が起きるのかというところの分析はまだまだ、先ほど私が被害予測で遅れているという部分の一つは経済分野、それは単に、日本のいろんな企業に対する影響もありますから、その地域の中小企業に対する影響、阪神の場合はケミカルシューズの工場がどんどん倒産をしていったというようなこと含めて、非常に広範に被害が広がっていく。そこをやはり視野に置いて、そういう経済的な事前の対応はどういうものが要るのか、あるいは事後の対応はどういうことが要るのかということをしっかり考えないといけない。  特に、事後の対応も、今は住宅に対してはようやくいろんな支援制度ができましたけれども、経済支援に対しての制度というのはまだ必ずしも十分確立をしていないということもございますので、やはりそういう意味では経済というものを一つの焦点に置いたしっかりした、いろんな予防から復旧復興対策というのを取り組んでいかないといけないというのは御指摘のとおりだと思います。
  32. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございました。  時間が限られておりますのでこれぐらいにいたしますけれども、新潟のときも、地震の直接の被害もそうなんですけれども、風評被害が大変に大きく尾を引いております。原子力発電所が直接ダメージを受けたわけではないんですけれども、あたかも原発事故が起きたかのような誤解が生じた結果、県内の観光業界等々非常な影響があって、なかなかそうしたところから立ち直れないということがありますので、これが日本の場合、首都圏に仮にそうしたことがあった場合に、もう計り知れないやはりダメージがあるんだろうと思っています。そうした点、先生方の御指摘もまた参考にして今後役立てていきたいというふうに思います。  どうもありがとうございました。以上です。
  33. 西田実仁

    ○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。    〔委員長退席、理事高橋千秋君着席〕  今日はお三方、大変先生方お忙しいところ、ありがとうございました。  今いろいろともうお話がございましたけれども、私の方からまず島崎先生にお聞きしたいんです。  今回のこの四川の大地震ということを受けて、こうしたことが、日本が何をそこから学び取るのかということもすごく大事だと思っております。地震そのものということもそうですし、それによる被害、またそれ以降の救援、こうしたことについて今回の四川大地震から日本が学ぶべきことをまずちょっと教えていただきたいと思います。
  34. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) 既に申し上げましたけれども、皆さん、他山の石といいましょうか、四川から何を学ぶかという形で御議論をいただいて、大変有り難く感じております。  御存じのように、四川の大地震は活断層で起きた地震でございます。恐らく数千年から一万年に一度活動するような、そういうものでございますが、ですから非常に低頻度でございますが、起こるとまさにとてつもなく大きいという言わば低頻度巨大災害の典型のようなものであると私は感じております。  日本には、先ほども幾つか御紹介しましたけれども、実際にそういった可能性を秘めているものがたくさんございます。そういったものに対して、先ほどから繰り返し申し上げていますけれども、やはり個別具体的に、本当にここで活動が起きたときにどういう被害が個別的に具体的に起きて、例えば一番簡単な例で言えば、あなたの家はつぶれますぐらいの個別的、具体的な指示ができればどなたも恐らくそれなりの行動を起こすということで、総体的な、全体で何人死亡するとか、それも重要ですけれども、やはり個別具体的に被害をあらかじめ想定して備える、それが第一だというふうに感じております。
  35. 西田実仁

    ○西田実仁君 続いてお聞きしたいんですが、島崎先生、今の個別具体的な、確かにそれはもう自分の財産がどうなるのかということは最大の関心事だと思います。実際、技術的にはそれは十分可能ということなんでしょうか、四川のああいう大地震規模のものが来た場合に。
  36. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) 現在、各大学でいろんなシステムをつくっております。    〔理事高橋千秋君退席、委員長着席〕  私が最近聞いた例では、名古屋大学の福和先生のところのシステムですけれども、実際に名古屋の例ですけれども、東南海の大震災が起きたときの振動の様子、それから各個人のお宅の設計図と申しましょうか、どこに壁があってという、そういうものを入れると、お宅は危ない、危なくないというそういう判定まで出る。そこまでシステムを開発して、個別具体的に実際にそういう催物をして地域住民の方と接した場合に、もう一〇〇%危ないと言われた方はすぐ耐震改修をどうしたらいいのか、あるいは耐震診断をまず受けるにはどうしたらいいのかというふうに相談されるということで、やはり個別具体的なシステムというものはまだ先駆けができている程度だと思いますけれども、十分可能で、そのぐらいきめ細かくしていかないと本当の実効性が上がらないのではないかと思っています。
  37. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございます。  そういう意味では、そうした個別具体的な被害ということをきちっと判定できるような技術又はシステム開発を国としてもまた支援すべきだろうということに多分なるんだと思います。  続きまして、水害について河田先生にお聞きしたいと思います。  私、地元が埼玉でございますので利根川は特に関心が高うございまして、利根川におきまして、今、栗橋町では堤防強化事業を始めようとしているわけです。先ほど先生の御指摘ですと、スーパー堤防というお話がございましたけれども、ここの地域においては、当初はスーパー堤防を予定しておりましたけれども、予算等の制約もあり、住民アンケートを取った結果、堤防強化という形で、暫定スーパーという言い方もしますけれども、基本的にはスーパーではない、そんな巨大なものではないということになったわけであります。  そうした、いろんな予算制約から、本来はスーパー堤防の方が治水安全度というものは高いんでしょうけれども、しかし、それが現実的には取られないと。住民方々も、引っ越さなきゃいけないとかいろんなことがあると、スーパー堤防よりも堤防強化という方を現実的には取るという選択になっているわけですね。特にこの利根川の今整備が始まろうとしている堤防強化事業、これで本当に大丈夫なのかと。先ほどのお話ですとスーパー堤防でないと厳しいのかなという印象も受けたものですから、ちょっとお聞きしたいと思います。
  38. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) まず堤防ですが、利根川だけではなくて、荒川あるいは淀川、全国の一級河川のいわゆる下流側堤防をこれ以上高くすることは現実不可能になっています。というのは、堤防を高くするだけでは洪水は守れないわけで、堤防を高くするときには必ず堤体を太くしなければいけません。しかし、普通、大河川の河口部では人家があるいは道路が河川の近くを走っておりまして、堤防を引くという、引き堤といいますが、これをすることがもう不可能な状態になっています。  ということは、最近の被害の出方を見ますと、特に土でできた堤防が破堤するということが大変大きな被害をもたらしている。すなわち、堤防の上から水が漏れるだけだとそれほど大量に、かつ高速のはんらん流は市街地に行かないんでありますけれども、堤防が土でできている場合は越流した途端にもうその堤防の高さの分だけ堤防が破壊してしまう、そして大量の高速流が行くということであります。  ですから、堤防を補強するということは大変大事ですし、また堤防は実は歴史的に切れやすいところがあります。水衝部と申しますが、ですから、昔からそこには水害防備林と呼ばれております竹林とか、そういったものがつくられて備えていたわけですね。すなわち、河川堤防全長にわたって同じような危険にさらされているわけではなくて、直線の河道でも水が当たっているところとそうでないところがありますので、歴史的に決壊したところを補強するということを優先していただく。  スーパー堤防というのは実はいい方法なんでありますが、これ全川にわたってやるには実は数百年以上掛かるわけでありまして、利根川でも例外なく百年以上掛かると思います。そうしますと、やはり危険なところからその被害をゼロではなくて少なくするという減災の発想で対策をしていただくことが現実的だと思います。ですから、必ずしもスーパー堤防にすることがベストではなくて、そういう江戸時代からの歴史が残っておりますので、切れやすいところの堤防を補強していただく、そして万が一、例えば千年に一度の雨が降って川から水があふれても、堤防が容易に破堤することのないような構造にすることも非常に大事かと思います。  ですから、やはり国土交通省はそれを今進めておりますけれども、なかなかやっぱり堤防の補強ということも随分実は財源が必要になっておりますので、ですから、どういう優先順位でやっていくかということが次に大きな課題になると思いますが。
  39. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございます。  今、減災というお話がございまして、次に室崎先生にお聞きしたいと思うんですけれども、地元でよく消防団の方々と懇談をする機会があります。その際に必ず出てくる言葉は、いろんな地域防災力を高めようとか災害対応力を高めようとかするときに、だれがどこに住んでいるのかまずもう本当に分からなくなっていると。そこでよく個人情報保護法という壁が大きいんだという話を現場でお聞きするわけですけれども、そうした自助、共助による減災という視点から、今それがなかなかできなくなってきている、その一つの障害にそうした法律の壁があるのかないのか、改善すべき点があるのかどうか、この辺についてはどう思われますでしょうか。
  40. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 今の御質問の一つのポイントは、個人情報保護法等のいわゆる平常時の個人のプライバシーなりを守るということと災害時にやっぱりそういう人たちを助けるということの少し制度的ないろんな矛盾がある、出てくる、それはどうなんだということだろうというふうに思います。  そこで考えないといけないのは、やはり我々は最終的には人命というのをしっかり守っていかないといけないということを基本に考えていく。そういうことと、でもやはりプライバシーは守るという、この二つのことを両立させる方法はないのかということにやっぱり尽きるんだと思うんですね。その根本は、やはり地域コミュニティーの結び付きの強さであるとかあるいは信頼感。例えば、民生委員が非常に努力されているところでは要援護者の人たちというのはみんな手を挙げて名簿を公表することに同意をされているという話も聞きます。それはどうしてかというと、やっぱりそれは一つの信頼感がそこにでき上がっているかどうかということになってくるわけでありますので、僕はやはり、一方で、これは教科書的な言い方ですけど、日常的にそうした消防団員だとか民生委員だとかいろんなボランティアだとか、そういう人たちとその被災地市民、その中での要援護者との日常的ないろいろ連係プレーだとか取組、例えば日常的には福祉関係でしっかりボランティアがケアをするというような、そういう人間関係の取組をしっかりやっていった上でやはりそういう災害時の情報の伝達なり共有ということが成り立つように思います。  とはいえ、いつまでたってもなかなかコミュニティーができない、どうするかということについては、僕はやはり、災害時には人命尊重の立場から、その名簿については人命優先の関係から積極的に活用できるような方策、我々は金庫方式と言っているんですけど、そのときに金庫の扉を開けるというようなことも含めてやっぱりそれは考えていかないといけないというふうに思っております。
  41. 西田実仁

    ○西田実仁君 今先生御指摘のとおり、人命が一番大事なわけですので、そのときには、その金庫方式というんでしょうか、それが大事だと思いますね。  その上で、災害時の要援護者、特にお年寄りとかあるいは障害をお持ちの方とかこうした方々、あるいは透析患者の方とかいろいろいらっしゃいますけれども、いわゆる福祉避難所みたいなものを自治体によっては設けているところもあるし、まだ設けていないところもあると思うんですね。こうした整備もやっぱりどんどん進めていく必要があるんじゃないかと思いますけれども、これを普及させるために何かいいお知恵とか方策がございましたら教えていただけますか。
  42. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) それももう御指摘のとおりだと思うんです。僕は、先ほども申し上げましたけど、やはり日常的に福祉と防災の連携というものをしっかりつくり上げていくということがまずは基本にないといけない。  そうすると、要援護者の在宅のケアといいますか、そのサポートも、場合によっては消防団員の方だとかそういう人たちとあるいは民生委員の方が一緒に行くというような、そういう取組の延長上に防災と福祉が日常的に連携をしていくような、そういう実績が積み上がったときに、災害が起きたときはそれが有効に働くということだろうと思います。  御指摘の福祉避難所については、これはもう間違いなく必要なことですので、これについてはもう積極的にすべての自治体が設置するように働きかけるということだろうというふうに思っております。
  43. 西田実仁

    ○西田実仁君 ありがとうございました。  終わります。
  44. 仁比聡平

    仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は、三人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。あわせて、災害対策の各分野において大変重要な役割を果たしておられることに心から敬意を申し上げたいと思います。  まず、河田参考人からお尋ねしたいんですけれども、避難勧告が出ても、約一〇%くらいしか避難を実際にされないという現実の中で、どれだけ避難をしていただくのかということがかぎであるというお話がございました。そこに関連して、この尾鷲市の動くハザードマップ津波のシミュレーションというのは私も認識を深くしたところなんですけれども、こういった被害想定の可視化といいますか、あるいは室崎先生からもお話のございました防災教育というような点について河田参考人がどのようにお考えかということが一点。  もう一点、先生から御指摘があってございます温暖化による海面上昇というこの世界的な科学的な指摘が、この例えばハザードマップ作りあるいは地域防災計画作りなどにどのように今反映しているのか、あるいはしていないのか。その二点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  45. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) いわゆる科学技術が進歩いたしましたので、こういう水害が起こったときとか高潮が来たときにどれぐらいの外力になるかというのは、非常に精度が良くなっております。ですけれども、そういうものに基づいて避難勧告とか避難指示を出してもなかなかそれに従っていただかないというのは、これは情報というものについての誤解があると思うんですね。  というのは、精度が高くて早く出せば人間は逃げる、こういう簡単なものではなくて、避難率の高いところを見てみますと、必ずハイテクとローテクの組合せがうまくいっているんですね。すなわち、自主防災組織の組長さんが走り回って高齢者の住宅なんかに直接行って一緒に逃げるとか、あるいは福祉・児童委員が一緒に逃げてくれるとか、あるいは近所の人が避難するとか、そういう行動を見るとこういう情報が生きてくる。  それからもう一つは、やはり避難勧告を出す場合にもっと具体的なイメージがわくような出し方をしなければいけない。あと例えば五十センチでもう堤防を水が超える、こういうふうな出し方ならいいんですけれども、警戒水位を突破したから避難しろというのはこれは非常にもう無理な話ですので、やはり自分の身近なところでイメージできるような情報に加工しなければいけない、この点がやはり自治体にまだまだ不足しているところがあると思います。  それから、今地球温暖化によるいろいろな影響ですけれども、実は国土交通省中心にその作業をやっている最中でございます。例えば、大阪は、室戸台風コース伊勢湾台風を走らせて、三メートルの高さの高潮が今計画されておりますけれども、地球温暖化によってこの台風コースも変わる、海面上昇も起こるというふうにやりますと、試算的には更に一メートル上昇するということが分かっております。ですけれども、日本施設というのはすべて地震の外力を受けますので、単純にかさ上げするだけでは無理でありますから、つまり基礎のレベルから耐震補強をやらなければいけないという非常に大規模な公共事業になりますので、そういったものも踏まえてどういうふうな対策をつくればいいかということを今内閣府あるいは国土交通省あるいは農林水産省、いろんな省庁が協力して協議している最中でございます。
  46. 仁比聡平

    仁比聡平君 今、政府の取組について、特に海岸四省庁を中心にした取組について御紹介もいただいたんですけれども、自治体のハザードマップとか防災計画などとの関係で今その温暖化問題というのがどのように取り組まれているかという点についてはいかがでしょう。
  47. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) 具体的に東京湾高潮の問題についてですが、この委員会には東京都、横浜市、横須賀市、それから千葉県、こういった自治体の委員も入っておりまして、その委員会の、どういいますか、決定を受けて自治体で具体的にどうするかということがつながるような委員会の運営をしております。ですから、今政府の委員会にも自治体の代表も入って、具体的に対策をやっていただくのはやはり都道府県レベルでやっていただかなければいけませんので、そこのところはその差がないような仕組みが普通は通常行われていると解釈していただいていいと思いますが。
  48. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございました。  島崎参考人にお尋ねをしたいんですが、問題意識は共通するんですけれども、震災危険度に気付かないという国民的な意識というものがある中で、その意識化をどうすればよいのかという点に関して、特に活断層の問題についてお尋ねしたいと思うんです。  私、出身は福岡で、西方沖地震を体験しているわけですけれども、先生が今日御指摘にあったように、警固断層の引き続く危険性というものについて常に市民あるいは県民が意識しているかというと、決してそうではないだろうという現実は私も感じます。あわせて、活断層の危険性がそういう形で、つまり西方沖地震という形で具体化したのだけれども、そのほかの活断層についての意識が深まっているかというと、必ずしもそうではないようにも思うんですね。  そういった中で、政府や自治体での取組について何か先生から御提案がありましたらお伺いをしたいと思うんですけれども。
  49. 島崎邦彦

    参考人島崎邦彦君) 御指摘のとおり、警固断層は地震の後非常に有名になりましたけれども、もう何年かたつと忘れられてしまうという、確かにそのとおりかと思います。  二つあるんですけれども、活断層の場合は、地震というのは、揺れて、その後何も見えなくなる、被害は残りますが、なくなってしまうんですが、活断層というのはそこにあるんですね、ものが。その場所に行くとこれが活断層だと触ることができる。実際に警固断層の現地へ行きますと、先ほど見ていただいたように、場所によっては段差が付いていて、これだというものが見えるわけですね。それは防災教育には非常に役に立つ。ですから、地域の人がそこを通ると、ああここに活断層があるんだなと、そこで坂を越えなくちゃいけないんだとか、そういう意識が本当はあるべき、地域教育の中でどこに活断層が存在するかということを皆が学んで知っておくべきだと思うんです。ところが実際は、見過ごされている単なる段差であって、たまたまここに段があるんだねと思っているだけのことが多いわけですから、一つは、地域防災教育でせっかくあるそういった地形を生かして、ここに将来地震の震源となるものがあるんだということで教育していただくということが一つあるかと思います。  それからもう一つは、国としては活断層の調査を十年掛けてやりましたけれども、先ほど御指摘したように、主要活断層帯の三〇%では未調査であったりデータが不足したりして十分な評価が行われていない状況であります。それ以外にも、短い活断層でも実際には被害が起こる、あるいは長大な活断層の一部が活動してこの間の中越地震のような被害が起こる。様々な例が知られておりますので、是非継続して活断層の調査をしっかりやるという、そういう体制をつくっていただきたいと思います。  以上です。
  50. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございました。  室崎参考人にお尋ねをしたい中心は、基幹的対策としての防災教育の強化という点について特にお話がございましたけれども、学校教育あるいは地域教育、かつての公民館運動などと照らしても、今なかなか、不十分ではないかというような御趣旨でもあったかと思うんですが、ここをどうしていくのかという点についての具体的な御提案や、あるいは御存じの先進的な例、あるいは失敗例などもありましたら、少しお話しいただければと思うんですけれども。
  51. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) まず大きく、防災教育というのはどういう形で進めたらいいのかというフレームの問題についてちょっとまずお話ししてから、少しその地域教育の話をさせていただきたいと思うんですけれども。  まず、僕は、今学校教育に無理やりいろんなことを詰め込もうとしている。ところが、学校教育は総合学習の時間というところで防災をやるんですけれども、いや環境教育もやらないといけないとか消費者教育もやる、いろんなことを学校教育に全部今詰め込もうとすると、やっぱり学校教育のカリキュラムがにっちもさっちもいかなくなる。そうすると、防災教育なんかは消防自動車が来て放水訓練をしておしまいという形で済まされているところがあるんですね。  僕は、そのやっぱり不十分さはむしろ地域教育で補った方がいい。学校教育は、例えば理科の教育とか自然の教育で、活断層というのはどういうものかとか、地震というのはどういうように起きるのかとか、そういう一つの専門的、専門的っておかしいですけれども、教科の知識は学校でしっかり自然教育、自然だとか、あるいは社会教育の中で要援護者の問題だとか、そういうことをしっかり教育していく。  ところが、それを今度はきちっと総合化する、あるいは実践的に体験をするという教育は地域教育でしっかり位置付けてやる。そうすると、それは単に地域の自治会がやるとかボランティアが地域教育、防災教育をやる。今割合、防災教育というのは何か地域のボランティアなりがやったり町内会がやったり、あるいはまちづくり協議会がやったりするような、いわゆる民間のところにゆだねられている。そこは非常にすぐれた成果がありますけれども、僕はそこに少し行政が、まさに市民と行政の連携という形で行政がしっかりそこに、地域教育にかかわっていかないといけない。そうすると、地域教育の担い手はまさにコミュニティーセンターであったり公民館であったり、あるいはまさにそういう地域教育の、行政がかなりそこに関与しながら公民館のプログラムとかあるいはコミュニティーセンターのプログラムの中でしっかりやって、市民がそこにしっかり参加をしていくというような形で、例えば町の中にみんなで出ていろんな、これが断層だということをやるということも必要だし、避難の訓練みたいなものも行政も一緒になってそういう地域をやる。先ほど言った、そこに私は専門家も入る余地があるんではないか、我々も一緒になってそういうことをやっていけば、要するに地域教育の防災メニューとかカリキュラムがしっかりしたものになっていけば地域の力が付くんではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  52. 仁比聡平

    仁比聡平君 今、最後のところでおっしゃった、地域のそういった取組に研究者、専門家の方々がどのようにかかわっていただけるのかと。そこの窓口を、市民にとってみれば、例えば今日おいでいただいた三先生方に教えていただきたいなんというのは、もう雲の上の存在のようなイメージはありますものですから、例えばそこのネットワークなんというのはどんな可能性があるのかという点について、最後、室崎先生にお尋ねします。
  53. 室崎益輝

    参考人室崎益輝君) 今まで専門家の取組は比較的遅れていたように思うんですけれども、最近やはり専門家は専門家としてその社会的責任をしっかり果たす、専門家の地域貢献みたいな、社会貢献というのを果たしていこうという機運が出ていることは確か。  例えば、地震学会というのは子供の要するに地震に対するセミナーとかそういう学校をつくって子供たちに教えるということもありますし、それ以外に災害情報学会っていろんな学会が、学会としてやっぱり地域教育なりそういう市民との連携を持っていこうというような動きも出てきております。それから、専門家を中心としたいわゆるNPO組織というんですか、そういう防災関係の研究組織もたくさん今生まれてきている。そういうNPO的な研究者の組織や学会がむしろ積極的にそういう地域の取組にかかわっていくということを展開していけば、僕はすそ野が広がっていくように思います。  そうした中で、研究者の中にややもすると社会にちょっと背を向けたというか、象牙の塔にこもったような体質も同時にその中で変わっていくように思いますので、むしろ一方では研究者自身、我々はそういう取組を積極的にやるように我々の仲間に働きかけると同時に、やっぱりそこに地域とのつながり、そういうNPOだとか学会がそういうことに取り組んでいくということが必要ではないかというふうに思っております。
  54. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) 委員長、いいですか。
  55. 一川保夫

    委員長一川保夫君) はい。河田参考人
  56. 河田惠昭

    参考人河田惠昭君) 地域防災力の向上ですが、私、平成十六年度、十七年度、内閣府の事業で名古屋市でやった例があります。これは、実は研究者が四つの代表的な地域で二年間掛けてワークショップをやりまして、地域ごとにどういう危険が内在しているのか、例えば東海地区というのはブラジルから来ているいわゆる自動車産業で働いている方がたくさんおられて、日常的にコミュニケーションが非常に難しい、あるいは一つ地域では商店街が中心になっておりまして、ほかの地域の人たちが日常的にそこに訪れている、こういう四つの典型的な地域で実は地域防災力の向上のプロジェクトを、大学の研究者が複数入りましてやらせていただきました。  その後、名古屋市は実は防災は消防局がやっておりますので、消防署員というのは火災とかがなければ日中要するに現場に行くことができますので、消防署員が手分けしてその地域を訪れて、それぞれの地域の要するに自主防災会とかそういった組織の強化に携わっているということで、名古屋市は御承知のように東海地震で強化地域に入りましたので、そういう取組をして非常に今実績を上げているという例があります。
  57. 仁比聡平

    仁比聡平君 ありがとうございました。
  58. 一川保夫

    委員長一川保夫君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきまして誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時三十四分散会