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2008-04-09 第169回国会 参議院 国際・地球温暖化問題に関する調査会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月九日(水曜日)    午後零時三十分開会     ─────────────    委員異動  四月三日     辞任         補欠選任         舟山 康江君     加賀谷 健君  四月八日     辞任         補欠選任         浅尾慶一郎君     藤田 幸久君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         石井  一君     理 事                 今野  東君                 広中和歌子君                 室井 邦彦君                 川口 順子君                 野村 哲郎君                 浜田 昌良君     委 員                 加賀谷 健君                 喜納 昌吉君                 工藤堅太郎君             ツルネン マルテイ君                 藤田 幸久君                 松岡  徹君                 峰崎 直樹君                 山根 隆治君                 荒井 広幸君                 神取  忍君                 佐藤 正久君                 島尻安伊子君                 西田 昌司君                 加藤 修一君                 山内 徳信君    事務局側        第一特別調査室        長        藤崎  昇君    参考人        独立行政法人国        立環境研究所特        別客員研究員   西岡 秀三君        財団法人世界自        然保護基金(W        WFジャパン        気候変動特別顧        問        鮎川ゆりか君        東北大学東北ア        ジア研究センタ        ー教授      明日香壽川君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国際問題及び地球温暖化問題に関する調査  (「日本国際社会における役割リーダーシ  ップの発揮」のうち、国際的な取組日本の役  割・課題―二〇一三年以降の問題―(北海道洞  爺湖サミットに向けた課題日本役割)につ  いて)     ─────────────
  2. 石井一

    会長石井一君) ただいまから国際・地球温暖化問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日までに、舟山康江君及び浅尾慶一郎君が委員辞任され、その補欠として加賀谷健君及び藤田幸久君が選任されました。     ─────────────
  3. 石井一

    会長石井一君) 国際問題及び地球温暖化問題に関する調査を議題といたします。  本日は、「日本国際社会における役割リーダーシップ発揮」のうち、国際的な取組日本役割課題―二〇一三年以降の問題―に関して、北海道洞爺湖サミットに向けた課題日本役割について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。  本日は、独立行政法人国立環境研究所特別客員研究員西岡秀三参考人財団法人世界自然保護基金(WWFジャパン気候変動特別顧問鮎川ゆりか参考人及び東北大学東北アジア研究センター教授明日香壽参考人に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  各参考人におかれましては、御多忙なところ御出席をいただきまして本調査会に貴重な御意見をちょうだいいたしますことを、会を代表して厚く御礼を申し上げたいと思います。  本調査会では、「日本国際社会における役割リーダーシップ発揮」について重点的かつ多角的に調査を進めておりますが、本日は、国際的な取組日本役割課題―二〇一三年以降の問題―に関し、北海道洞爺湖サミットに向けた課題日本役割について各参考人から忌憚のない御意見を賜りまして今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず、西岡参考人鮎川参考人、そして明日香参考人の順でお一人十五分程度意見をお述べいただいた後、午後三時ごろまでをめどとして質疑を行いますので、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、西岡参考人から御意見をお述べいただきます。どうぞ。
  4. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) どうもありがとうございます。西岡でございます。  私の説明は、お手元に配付しております、ちょっと私、今日になってまた別なのを配付してしまったんですけれども、題から言いますと「低炭素世界構築に向けた日本役割」という割と字の大きく印刷したものが一つあります。ほぼこれを中心お話をしたいと思っていますので御用意ください。それと同時に、今日持ってまいりました、ちょっとグラフが入ったようなのが、裏表付いたのがございます。その辺り中心としてお話をしていこうかと思っております。(資料映写)  今、画面に急にまた、これはもう何度も御覧になった方は何度も御覧になっているんですけれども日本が誇る地球シミュレータで、二一〇〇年までの温度上昇シミュレーションしたものです。  今、一九九二年という数字が出ておりますけれども、赤くなりますと大体二度ぐらいで、EUが危険と言っているレベル、それで、黄色くなりますとこれ、五度、六度ぐらい、六度以上になりますとちょっともたないということですが、御承知のとおり、北極の方は全体として平均よりも温度が二、三倍上がるということで、もう既にかなり赤くなったり黄色くなったりしている。そして、この温暖化の問題というのは、世界に一斉にいろんな問題が起きるんだということをこれで見ていただこうというのがこの絵の趣旨であります。  今、二〇七六年まで見ましたけれども、ヒマラヤの辺りだとか、こういった雪のダムが全部解けてしまうとか、北極のシロクマの話は有名ですけれども、そういったことが起こるということでございます。  お手元の紙の方に戻っていただきたいんですけれども、私、今日は、低炭素世界構築に向けた日本役割という話で二つお話をしたいと思っております。  一つは、日本役割一つは、真ん中辺りに書いてございますけれども、三のところに書いてございますが、低炭素時代日本モデルを作るということは、これは特に外に向かってどうということではないんですけれども、これが基本だろう。そして、四のところにあります途上国リープフロッグを助ける。途上国がいかに、今までの先進国が進んできたエネルギーをたくさん使う文明を飛び越えて、リープフロッグ、カエル跳びをして別な低炭素時代に直接行ってもらいたいと。この二つに対して日本が大いに貢献するべきだということを中心としてお話をいたします。  能書きは頭に書いてございますが、私の方は、そういうことで、洞爺湖サミットでどういう交渉をするかという話ではなく、遠い先からのバックキャスティング向こうでこういうことをしなきゃいけないんだったら今、何をするかということでお話をさせていただきます。  現在、世界が何を問われているかといいますと、先ほどの絵でございましたように、もうこれは低炭素社会に行かざるを得ないということであります。これは、今まで二十世紀エネルギー消費社会から全く違う方向へ行くということであります。  お手元の配りましたグラフの書いてある絵の①、英語で書いてあります、アンソロポジェニックCO2エミッションという裏表の文書の最初でございますけれども、これは、先ほどのシミュレーション研究をやっておりますところで、例えば五〇〇ppm、これ、三度ぐらいになるかと思うんですけれども、それに安定化するにはどういう道筋で排出をしていったらいいかということのシミュレーション世界最高のコンピューターで最高モデルでやっているんですが、五五〇ppmでスタビライザーというところを御覧になっていただきますと、ちょうど今ごろをピークにして、これからどんどんどんどん減らしていって、究極には、今が大体この二〇〇〇年ぐらいですから八とか九とか十とかいう辺りなんですけれども、一にしなきゃいけないと。これが科学者の言うところの低炭素社会必然性であります。実際、五五〇ppmで止めたとしても、中のフィードバック等々がありまして、どうしてもそういかざるを得ないということのようであります。  そうなりますと、洞爺湖を目の前にいろいろしなきゃいけないんですけれども洞爺湖では一体その方向に向かって何をやるかということを考える必要があるかと思います。早急に答えを出すというよりも、長期に考える必要があるかと思います。  そのために、一にございますけれども認識として、世界は大きく低炭素社会方向へ向かうという腹を固めてもらいたいということです。究極的にはゼロ排出という長期の明快な方向がございます。それから、二十世紀は、今エネルギー高騰時代ですけれども、いずれはエネルギー時代から決別して低炭素へ行くと。これは、言ってみれば第三の、第一がエネルギー、第二が機械情報としますと、第三の産業革命ではないか。  そのときに、IPCCの、今、画面の方で、あちこち飛んで申し訳ございません。美しい星50で二〇五〇年の排出量を半分ぐらいにするということはどういうことだといいますと、この絵でいいますと、上から二段目のところ、カテゴリーⅡのところです。二〇五〇年の二酸化炭素排出量マイナス六〇からマイナス三〇にするということを意味しているようだということです。これは、産業革命からの気温上昇を二・五度程度にとどめるということを意味しているかと思います。それをもうほぼ所与にしようと。  これにつきましては、これは非常に難しいという意見があって、こんなにまでしなくてもいいんではないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。しかしながら、私ども環境の、特にインパクトの関係をやってきた研究者からいいますと、やはりこの線は守っていただきたいと。安全な気候であり、かつ到達可能な目標だと私は思っております。後ほどお話ししますけれども、これは非常に難しいねという意見がある中で我々、一応計算をしてみたということです。  そして、二番目でございますけれども世界は一体今、何をするべきかと。全力を挙げて文明転換を行う時期でありまして、考えてみますと、もうそういう方向へ行くんだったら全部で知恵を出し合おうよということを知恵の共有のときと言っておりますけれども、もう余り、だれが得する、だれが損するという話以前に、それはまた後で考えるとして、省エネ知恵あるいは低炭素社会をつくる知恵、こういったものを共有する必要があるだろうと。これが認識の二です。  それでは、日本は何をするかということでございますけれども、やはりそういう社会ができるんだということを見せる。日本でいいますと、今から、私ども七〇%と言っていますけど、それくらい下げた二酸化炭素排出でも十分豊かな生活ができるんだという姿を見せることが一番の貢献であると私は思っております。二〇五〇年に五〇%削減、これ、一人当たりですね。世界の一人当たり排出量を等分だとしてしまいますと、日本は八〇%ぐらい本当は減らさなきゃいけないんです。ですけれども、このときも、途上国は現在よりも半分ぐらいの一人当たり排出量にとどまっているという状況です。ですから、いかに、日本がちゃんとやればできるんだと見せることは非常に大切だと。  そういう意味で、私ども炭素シナリオという研究をやっておりまして、後ほど見ていただきますが、お手元に、この白い表紙の低炭素シナリオというもので三年間研究しておりまして、これは技術的に可能だと。しかも、ポイントが、決して供給側で頑張るということではなく、需要を半分にするほどの省エネができるんだというところにあります。今からちゃんとその方向付けをして、社会資本投資をして、産業誘導していけばできるということをこの研究では申し上げております。  二つ目日本の役目というのは、途上国リープフロッグを助けると。  リープフロッグといいますと、途上国に今まで我々がやってきた道じゃなくて別の道を選んでくださいなんて言うんですから虫がいいと思われるかもしれませんが、今お手元にプリントで出しました④という英語で書いてあるものをちょっと方向を変えて見ていただいて、リープフロッグ日本と書いてあります。実は、このリープフロッグといいますのは、後から遅れてきた国が先に進んできた国のいいところ取りをするということで、それをやったのはまさに日本だというところです。  この裏表の印刷したものの英語のところ、四番目、④と書いてありますけれども、これを見ますと、驚いたことにといいましょうか、百年単位ですけれども、話は。イギリスが例えば一番ピークを迎えたのが、これはエネルギー効率ですけれども、一八八〇年ごろだと。そして、日本がそのピークを迎えたのは一九七〇年ぐらいです。その間にどれだけエネルギー効率を良くしたかといいますと、四分の一ぐらいになっているんですね、たしか一に対して二・五ぐらいですから。ということは何だと、我々はまさにリープフロッグしたではないかということです。ですから、これはエネルギー効率だった、今度は二酸化炭素効率でも途上国はそれはできなくはないということで、我々がそういった方向をきちんと示す必要があるんではないかと。  途上国に対して今やるべきことは、リープフロッグの例というのは、よく、中国で携帯がいっぱい日本よりもはやってしまって、あそこは電線がなくてもできるんだよなんていうのはありますし、今だと、もっと実質的な話として、製鉄なんか韓国の方が大分良くなったとかございます。ですから、こういうことはできる。しかしながら、余り最新機械を持っていって、さあ使いなさいと言っても駄目ですから、それは細かい、ESCO的といいましょうか、どうやったら省エネできるかといったことをみんなに教え込むといったことの援助の方が非常に大切ではないかなと思っています。  セクター別の今、目標設定だとか、いろんなことを言われております。でも、考えてみたら、セクター別ということは、いろんな技術世界にあるでしょうと、その技術をみんなで一丁さらけ出してみましょう、見せ合いましょうと、そして、いい技術をみんなで使っていこうじゃないかと、それを、だれが金を払うという話は別としまして。そういう面から見ると、我々の技術の言ってみれば棚卸しをしまして、いいものはいいねということを認めようというのがセクター別アプローチ基本です。基本といいますのは、それをどう使うかはまた別としまして。  我々の方で計算してみますと、今の状況日本技術、もういろんな技術を我々は持っています。それを途上国等々に移転することで約百億トンのCO2削減できる、二〇二〇年ごろ。ということは、現在、ここで単位が書いてありますが、世界全体で七ギガトン出している。それが将来、倍にはなるでしょうけれども、その増加分のうち三ギガトンぐらいはそれで稼げるといった簡単な計算ができます。ですから、いかにうまくその技術を移転できないかと。  もう一つ、お手元に配りました一枚ペラの裏表の方で、今度は②という、二〇二〇年の世界限界費用曲線ですけれども、それを御覧いただきますと、横軸には何トン減らせるか、縦軸には値段が取っております。こうやって見ますと、途上国、右の方の線を見てみますと、これは単位CO2eqです。六千の辺りまで、言ってみれば、ただのコストで、要するに省エネでもうかるんですね、向こうが、入れた方が。こういった技術がたくさんあるということを示しております。ですから、そういうちょっとやればできるようなことに対して、余りお金も掛からないんだったら、そこを目掛けて援助をきちんとやっていくといったことが我々にできることではないかと。  私は、相手が、ここで書かれていませんけれども中国インドがほとんどで、それだったら、日本韓国などとも組んでアジア知恵バブルをつくったら、ヨーロッパはお金バブルをつくっておりますけれども、そういう意味で、知恵共同体をつくったらどうかということを申し上げたいと思います。お金は、最近、国際連帯税構想等々、議員の方も動いておられると聞いておりますけれども。  そういったことで、私が今日意見を述べましたこの二つのことについて、日本長期に見て方針を立てて世界に貢献することができるであろうと。洞爺湖における交渉事の派手さではなく、長期をにらんでこういったことに対する地ならしをどれだけやったかということが今度問われるんではないかと私は思っております。  以上です。
  5. 石井一

    会長石井一君) 次に、鮎川参考人
  6. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) 今日は、こうした場に御招待いただきましてありがとうございます。鮎川としての意見を申させていただきたいと思います。(資料映写)  それでは、これは、今、西岡先生お話にありましたようなIPCCの去年発表された第二ワーキンググループのグラフなんですけれども、これは、一九九〇年レベルからどのぐらい気温が上がるとどういう影響が出るかという表なんですが、私たち環境NGOとしては、工業化前に比べて二度未満に抑えるべきだというふうに主張しております。  というのも、この赤い線がその線なんですけれども、この左側を見ればまだ余り影響は出ていないけれども、その右側を見ると大きく影響が出てきている。そして、既にもう〇・七八度気温が上昇していて、これから二〇三〇年まで十年ごとに〇・二度ずつ上がっていくということが予想されているので、一・一四度まで上がってしまうということは避けられない状況になっています。それで、二度未満に抑えるということは非常に難しくなってはいるんですけれども、それを一応目標にしています。  そのためには、やはりこのシナリオで出されたところで、ここ、西岡先生意見が違うんですけれども西岡先生カテゴリーⅡとおっしゃいましたが、私たちカテゴリーⅠでないと駄目だというふうに主張しています。  というのも、やはり二度未満、ここ、二度未満ももう既になくなっていて、二度から二・四度までの気温上昇になっていて、それはまだ可能性があるというふうにされているわけです。それで、そのためにはやはりこのカテゴリーⅠを追求しなくてはならなくて、これが基になって、条約交渉でも、やはり先進国は二〇二〇年までに二五から四〇%という数字がここから出てきています。  そして、先週行われたタイでの初めての気候変動条約の下におけるAWGでは、AOSISは、IPCCのこの四次報告はもう既に古くなっていて、そして三五〇ppm以上にしてはならないというような科学的知見が既に今、最新情報として出ているということを繰り返しどの国も、AOSIS及びSIDSと言われている小島嶼国が言っておりました。それで、そういう意味ではカテゴリーⅠをやらなくてはいけないということです。  バリに戻りますけれどもバリにおいて日本は、京都議定書を越えて新たな枠組みに移行するというような発言をして、京都議定書を否定するのかという形で環境NGOから大きく非難されました。そしてまた、条約の下での決議文の中に数値目標を入れることに強く反対したために、カナダ、アメリカとともに交渉を妨害している国として非難されて、そして、これがジャカルタ・ポストに載せられた一面広告です。  そのとき、AWG京都議定書の下では、数値目標に対して、二〇二〇年までに二五から四〇%の幅で先進国削減しなくてはいけないということに対して賛成が次々と表明される中、日本は黙っていたんですけれども、反対もしなかったので、これに合意したということになります。そのとき、日本の政府の交渉官がおっしゃっていたことは、やはり日本数値目標に積極的になれないのは国内事情にある、つまり、産業界が非常に反対しているからだということを強くおっしゃっていました。  それを受けて日本としては、数値目標を掲げなくてはならないという機運が出て、ダボス福田首相発言の中にそれを盛り込んだわけです。日本は、主要排出国とともに今後のGHG排出削減について国別総量目標を掲げて取り組みますというふうに言われました。日本として国別総量目標を掲げるというのは初めておっしゃられたので、非常にこれは評価に値するのですけれども主要排出国とともにという言葉を使ったためにこれは非常に大きな問題となって、現在もなっています。これは、つまり、先進国歴史的責任とか、共通だが差異ある責任原則を踏まえていないということになります。  それから、その目標設定当たり公平性を確保するよう、エネルギー効率などをセクター別に割り出し、削減可能量を積み上げることが考えられるというボトムアップ方式が言われたんですけれども、それが基で、今の日本の政策がこれに基づいてつくられています。むしろ、私たちとしては、こういった方式だと二五から四〇%というような大きな削減量というのは出てこないはずなので、むしろトップダウンで、気温上昇工業化前に比べ二度未満に抑えるためにはどのぐらい削減量が必要かというような方式でまず目標を定めるべきだというふうに思います。  そのほかにも、基準年の見直しなど、削減量として温暖化を危険な域に行かせないために必要な量にならないようなことを提案していて、これらすべては経団連を始めとした産業界の意向を反映したものでありました。  それが、先日、千葉で開かれたグレンイーグルス・ダイアログで発表というか、それをベースに議論がされたんですけれども、まず、それに対して先進国途上国共に批判が続出しました。主要排出国というカテゴリー合意した覚えはないということが途上国から言われましたし、バリ合意を踏まえていない、つまり、先進国途上国取組の違いを認識していない。そして、セクター別アプローチ自体は極めて複雑で、国によっても解釈やコンセプトが異なり、時間を掛けてじっくり議論してからでないと決められないということになりました。そのセクター別アプローチ京都方式総量削減、つまり、キャップを代替するものとなってはならない、キャップがあっての上の一つのツールであるということがここでは話されたわけです。  そして、バリで決まったこととは何かともう一回振り返ると、これがその削減のところなんですけれども、すべての先進国締約国による計測、報告、検証可能で各国に適合する緩和の約束又は行動、これには排出制限及び削減数量目標を含めるということが書いてあります。途上国に関しては、技術、資金、能力向上による支援を受け、実行可能となる持続可能な発展概念にのっとった途上国締約国による各国に適合する緩和行動という言い方になっていて、先進国総量削減、そして、途上国は持続可能な発展という概念の下で行うということが原則になっています。  これが先週開かれたバンコクの会議の模様なんですけれども、左の下の方は、G77が文章について修文を議長に迫っている場面であります。結局は、最終日も深夜まで合意ができなくて、一時ぐらいにようやく終わったというような状況でした。  それに対して日本が国連にその前に提出した意見書は、やっぱりダボス首相発言を基に作られているんですけれども、やはりセクター別アプローチ可能量ボトムアップ方式で積み上げて出すと。各国間で検証をして国別総量目標を設定する。それも、主要排出国という言葉を使っているので中国インドも含めるというようなニュアンスがあります。これによって各国間の国別総量目標公平性を確保できるというんですけれども、結局、すべての国がある意味国別総量目標を掲げるということが何となくニュアンスとしてあるわけです。  途上国、特に主要排出途上国が野心的な目標を掲げて実効的な削減に取り組むことを確保し、知的財産権の保護に留意しつつ、ビジネスベースでの技術移転が進む仕組みを構築するという言葉が入っているんですけれども、これが非常に途上国に反発を受けています。  途上国目標を掲げなくてはいけない、野心的な目標を掲げるということと、それから、技術移転に関して知的財産権の保護に留意しつつビジネスベース、つまりコマーシャルベースでの技術移転をまず前提にしているわけです。それに対して途上国側としては、このAWGというのは条約の実施ということが第一の目的なので、条約上では先進国途上国技術移転することが義務になっているんです。それを履行するのが当たり前なのに、ここではもうビジネスベースの話になっていると、テクノロジートランスファーではなくてテクノロジートレードだというふうに非難が結構出ました。  それから、炭素リーケージが生じないようにしつつ、ベストプラクティスの実施を通じて、グローバルにセクターごとのGHG排出単位効率指標などの改善を図ると。これもまた、グローバルにという言葉を使っていることによって、すべての国がそういう意味のアクションを取らなきゃ、先進国途上国の違いもなく同じようなやり方でやらなくちゃいけないということを意味している、示唆しているということで、非常に途上国の反発を招いたわけです。  その結果、主要排出国途上国も含むということから、彼らも国別総量削減目標を持つことにつながるというふうに警戒感を持たれた。そしてまた、それは共通だが差異ある責任原則を踏まえていないということが何回も言われました。バリ合意された途上国先進国取組の違いを踏まえていないということも何回も言われました。日本がどのぐらいの削減をするのかという先進国としての明確な姿勢を示さずに提案されたので、日本途上国も同じ取組をするように受け取られてしまったわけです。  結局、セクターアプローチというのは、ある意味途上国参加の道を開く有効なツールであるにもかかわらず途上国の拒絶反応を導いてしまって、日本が参加してほしいと思っていた途上国がそれを受け付けなくなってしまったということで、日本の意図とは逆の効果となってしまったということがあります。  G8サミットなんですけれども、やはりG8サミットは今まで国連交渉へ結構影響を及ぼしてきた経緯があるので、そして、特にバリでアメリカが初めて折れる形でアメリカもバリ・ロードマップに参加したいと表明したことがあるので、今年のG8サミットは、昨年のハイリゲンダムでは二〇五〇年半減の長期目標に言及したことがありますが、それよりもう一歩踏み込んだものが期待されているわけです。  それを実現させるため、そして日本リーダーシップ発揮するには、京都議定書はほんの第一歩ですけれども日本はその達成を国内削減で可能にすることをまず第一とします。主要排出国という言い方をやめて主要経済国に改めてほしい。これは、タイではメジャーエコノミーズというふうに英語では改めたんですね。ただ、日本語では、首相がもう発言してしまったので改められないというふうに政府の方たちは言っておりました。  共通だが差異ある責任原則を踏まえて、先進国日本としては、中期目標IPCCの第四次報告に基づいて二〇二〇年までに九〇年比二五から四〇%の削減幅で提示してほしいと思います。プラス5という新興途上国に対しても、グローバルな排出が一〇から一五年までにピークアウトするよう、バリ合意を踏まえ、先進国の支援の下、何らかの形の削減行動を取ることのコンセンサスを得ることがリーダーシップ発揮する目標となるかなと思います。グローバルな長期目標として、二〇五〇年までに二〇〇〇年比五〇%削減以上をG8プラス5で合意するようまとめるということが課題かなというふうに思います。  それのためには、経済的手法の導入と再生可能自然エネルギーの大幅利用を可能とする技術開発、政策導入、そして、低炭素社会を実現するために必要な分野における規制措置も必要かなと思いますけれども、一番必要とされているのは首相の決断です。これが一番重要かなというふうに思います。  以下は、国内排出量取引についてちょっと話してくれと言われたので、資料は用意しましたけれども、ちょっと時間がないので見ていただくことと、諸富先生とWWFとが作ったこの「脱炭素社会排出量取引」という本がありまして、これが非常に詳しくいろいろ書いてありますので、是非御覧になっていただければと思います。  以上です。よろしくお願いします。
  7. 石井一

    会長石井一君) ありがとうございました。  次に、明日香参考人
  8. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) 東北大学の明日香です。  このような機会をいただき、どうもありがとうございます。  私は三番目ですので、ちょっとダブるところがあるかと思いますが、私なりに、地球温暖化問題でなぜ日本が悪役なのかというテーマで発表させていただきたいと思います。(資料映写)  悪役かどうかというのは周りが決めることでありまして、先ほどもありましたように、実際に日本とアメリカとカナダ、これにロシアが入るといいった場合もあるんですけれど、国際社会においては悪役と言われているというふうに考えてもおかしくないと思います。  これはNGOが出した広告なんですが、これとは別に、温暖化交渉をずっと時系列的に追っているアカデミックなペーパーでも、日本は例えばギャング・オブ・フォーの一員とか、そんなような表現が使われています。だから、日本はよく環境立国なり環境で頑張っているというイメージが国内にはあるんですが、国際社会あるいはアカデミックな社会ではそうでもないですよというのは御認識いただければと思います。  これも、日本でもちょっと話題になったんですけど、化石賞という、その日で一番交渉を阻害した国に与えられる賞なんですが、日本が三つ取ったと。先ほども申し上げたように、自分がどう思っているかではなくて、周りがどう見ているかの世界でして、少なくとも日本はこのように見られているというのは、繰り返しますけど、御認識をお願いできればと思います。  その国が頑張っているかどうかというのは、いろんな考え方なり計算の仕方なり見方があります。日本のパフォーマンスも実際それほど良くないと。これは世銀が去年出したレポートの紹介なんですが、日本の政府の温暖化政策を先進国の中で最下位に評価しています。  どうやってやったかというと、国の温暖化、温室効果ガスというのは五つのファクターで増えると。一つは、人口が増えれば増えると。一つは、一人当たりの所得が増えれば増えると。その二つは政府が余りコントロールできないんですが、例えば化石燃料の中でどういう燃料を使うか、石炭を使うか天然ガスを使うかというのは変えられますし、エネルギーの中で何を使うか、原子力を使うか再生可能エネルギーを使うか、そういうのによってもまた違ってきます。あと、産業構造ということで、GDP当たりエネルギー消費量というのも政府がある程度コントロールできると。その三つの政府がコントロールできるものとできないものを比較して、どれだけ頑張ったかで排出量上位七十か国を評価したところ、日本は上から六十一番目でして、先進国の中では一番下だったと。  その理由が、非常に単純ですが、余り知られていないんですが、日本で石炭消費量が非常に増えているんですね。先進国の中で、これだけの化石燃料の中に石炭が占める割合が増えたのは日本だけです。なので、先進国で最下位になったと。  どうして増えたかというと、火力発電所が増えたから。これは電力会社だけではなくて、工場の中での自家発電の発電所も石炭を使うようになったと。結局、石油の代わりに石炭を皆さん使うようになってCO2が増えてしまったと。  当然、じゃ何で石炭なんですかということで、安全保障の問題もありますし、でも、一番やはり大きいのは安かったからです。ですが、このときに何らかの政策があれば、カーボンに価格が付くような政策があればこのような状況にはなっていなかっただろうというのが容易に想像できます。  その日本の問題点、幾つかあるんですが、三つにちょっとまとめてみました。  まず、問題その一。三つの中の一つのまたその一なんですけれど、実際には、先ほどWWFの方のお話にもあったように、交渉の進展を阻害する側にいる方が多いというふうに考えられると思います。例えば、バリでも二〇%から四五%の数字を入れる入れないという話になったときに、やはり入れない方に日本は回っていたと。リーダーシップを取るというのは口だけと最初書こうかなと思ったんですけれども、それだとちょっとあれなので、聞こえていると。  どういうことかというと、やはり皆さん考えていただければ分かると思うんですけれども、だれかがリーダーシップを取ろうというときに、その人が、自分はこれだけ頑張る、だからみんなも頑張ってくれと、付いてきてくれというふうなのが普通、リーダーシップだと思うんですね。自分はやらないし、自分が何をやるかをあいまいにしながらみんな付いてきてくれと言っても、その人には、みんな信頼していないし、リーダーとは皆さん認識しないと。まさに日本は、リーダーシップを取る取ると言いつつ、自分が何をやるかというのはあいまいにしたままで、ほかの国にこういうふうにやってくださいというふうに言っていると、少なくとも国際交渉の場ではそのように皆さんが聞こえているということだと思います。  これも、交渉担当者なり政治家の方も悪いところはあると思うんですが、やはり国民全体の意識が低いんだと正直な話は思います。  ちょっとビデオを見ていただきたいんですが、これはコンテストで一位を取ったビデオなんですが、アメリカで作られたもので、アメリカは六十一億トンのCO2を出していて、それは十二億頭の象に相当するというようなものなんですが、何を言いたいかというと、日本はまさにまだ自分には落ちてこないというふうに思っているんですね。ですが、世界はそうではないと。例えば、オーストラリアでは物すごい干ばつで、イギリス人が来て以来の大干ばつになっていますし、ギリシャでは山火事で三分の一の山がもう燃えてなくなってしまっていると。去年、バングラデシュでは三千人の人が洪水で死んでいると。  だから、世界では、もちろんそのすべてが気候変動とは結び付かないんですが、少なくともこれより温暖化が進めば気候変動がより大きくなるとそういうような被害はもっと大きくなるというのを皆さん肌で感じていると。ですが、日本は幸運なことに、何千人、何万人という人が死ぬ状況ではないのでやはり意識が低いのかなというふうに私は思っています。だから、ほかの国では既にこういう状況になっているということを申し上げたいと思います。  問題その二なんですが、やはり先ほどのともダブるところはあるんですが、自分が何をやらないと言って、途上国にこうやってくださいというのがどうしても目立っているんですね。  主要排出国という言葉を使っているのは日本だけです。主要排出国ってどこですかと聞かれて、多分答えられる人は日本にもいないと思います。というのは、何番目からが主要なんですかという話になりますし、一人当たり排出量はどんどん出していてもいいんですかということになりますし、そういうあいまいな言葉を使って、かつ裏で中国インド責任転嫁しているというのが、そういうふうなイメージで日本は見られているというのが現状だと思います。途上国から見て、一人当たり排出量って非常に大きなファクターです。それがすべてだと言っても過言ではないと思います。    〔会長退席、理事広中和歌子君着席〕  結局、ここの図でありますように、どうせ先進国の人が偉いことを言ったって彼らは何も変えない、かつ自分たちはそのままであると。こういう状況を変えない限り世界は変わらないのに、先進国は自分たちだけ既存利益を守って、かつ何か問題が起きたときには自分たちお金があるから逃げられるんじゃないかというような、これはあくまでもイメージですけれども、私が途上国の人と話をすると皆さんこのようなことはずっと言い続けますし、これからも言い続けます。だから、こういう問題を理解しないと、この温暖化問題に関しては建設的な議論というのは難しいということだと思います。  日本の問題その三ですが、これも今と結局同じようなことを、途上国技術・資金移転の重要性に対する認識が全く違うと。先ほど、コマーシャルベースでの技術移転というので、日本政府はそういう文言を入れてタイでいろいろもめたということなんですけれども、コマーシャルベースだったらわざわざ国連で議論する意義がないんですね。コマーシャルベースというのは、そのままほっておけばそのままで、ガソリンなり石油の値段が高くなればそのまま省エネが進みますので、そもそもそういう話をする場ではなくて、それ以上の技術移転あるいは資金移転をするためには何をすればいいかというのを考える場なのに、わざわざコマーシャルベースでやりましょうと言うことは、完全に矛盾しているというか、何が求められているか、何を議論しているかということすら認識されていないのかなと。    〔理事広中和歌子君退席、会長着席〕  今、実は、バンコクでああいう発言をしたというのは私は知らなかったのでちょっと驚いたんですが、まさにそこにいた人たちは、何言っているんだというふうにお考えになったことかと思います。  かつ、日本はいろいろ資金移転をします、資金提供をします、それは何億円ですというような話はよく出るんですが、それも余り認識されないんですが、やはりよく見ると、既存ODAの付け替え、流用なり代用とか、そういう場合が少なくないんですね。全部とは言いませんけれども、かなりの部分、半分以上がそうだという場合がほとんどだと思います。  途上国の人たちが求めているのは、既存ODAではなくて、既存へプラスアルファなんですね。プラスアルファを言わないで、そこら辺をあいまいにしてこれだけ出しますよというふうに言っても、追加的ですよと言わないままにこれだけ出しますよと言っても全然意味がないということです。だから、途上国の人もばかではないので、この数字というのは実際日本のODAの付け替えかどうかというのはすぐ分かりますので、そこを問題にすると。  なぜ付け替えじゃ駄目かというと、当たり前といえば当たり前で、温暖化対策に行くODAが増えれば、例えば病院なりに行く、ほかの目的のために行くODAがなくなると。だから、ODAの意義である途上国の人たちの生活を良くするということを考えれば、矛盾するということです。なので、技術・資金移転、日本技術移転、資金移転は非常に大事だと。技術移転は特に大事だと。リープフロッキングという今お話もありましたし、それは大事だと言うんですけれども、かつ、日本技術をこれだけ変えればすぐぱっと変わりますと言うんですけれども、それは全然途上国の人にとっては、それでって、じゃ、それでどうする、そのためにはどうすればいいのと、そのお金をどうすればいいのというようなことが問題であって、そこで答えを日本が用意しないと交渉が前に進まないですし、日本は全くいつもと同じことしか言わないなと、大事なところになると何も具体的な話はないなというふうに国際交渉では思われてしまうということだと思います。  これは、もう時間もあれなんですけれども、COP13で、米国は出ていけと言われたんですけれども、それは実は技術移転をする、しないでもめたときですね。アメリカは技術移転をしないということにこだわったので、パプアニューギニア代表の人が米国は出ていけと発言したと。このとき鴨下さんは、実は前の夜までは米国と一緒だったんですけれども、空気を読んで、米国案は支持しませんと言っています。このときに、日本からもある意味では裏切られて、アメリカの代表団は嫌々だけど皆さんの言うことに従いますというふうに言っています。だから、もしこのとき鴨下さんが前の夜の日本政府の代表交渉団のポジションと同じようなことを言ったら、多分日本も出ていけと言われている可能性はあると思います。だから、まさにこういうような交渉バリなりタイでは行われていて、コペンハーゲンでも同じようなことが起こるかもしれませんし、起こらないように我々が何をするべきかということだとは思います。  これは強調したいんですけれども技術・資金移転は、途上国にとって本当にある意味じゃ最重要条件だと思います。というのは、途上国もある程度削減はしなきゃいけないと、削減するというような文言は入ったんですね。でも、ある意味では、それは途上国にとってギブ・アンド・テークのギブだったんですけれども、当然テークが必要だと。それは、技術移転をしてくれれば削減するよということなんです。だから、まさにそこの今カードの出し合いが動いていて、そこでどれだけ先進国がカードを出せるかというのが途上国を巻き込む一番重要なことです。  どの問題に似ているかという、どの問題というか、エイズの問題に似ているというふうに私は考えているんですけど、どういうことを言いたいかというと、実はエイズも、途上国にとってエイズの薬は高いと、エイズの薬を何とか安くしたいと。実際、今三百万人ぐらい患者さんがいて、何百万人と死んでいると。実は知的所有権、さっきも出ていましたけれども、知的所有権が入った薬というのは月三万円掛かるんですね、エイズの方が飲む、一日二回飲まなきゃいけないんですけれども。ですが、いわゆる知的所有権のないジェネリックな薬だと三千円で済むと。三千円と三万円というのは途上国の人にとって非常に違うんですね。まさにエイズのときにも、先進国政府なり企業は、そんなことをやったら会社がつぶれてしまう、企業収益がなくなってしまうと抵抗したんですけど、何百万人という人の命と引換えに、あと国際世論が動いて、エイズに関しては知的所有権をある程度免除するというのがWTOの下で決まりました。  まさに、このような状況気候変動問題、温暖化問題でも起こすかどうかというのが我々に問われていて、もちろん、すべてただにしろとか、そんなことはとても私も考えていませんし、途上国の人も考えていないと思います。ですが、何らかの特別な措置、コマーシャルベースじゃなくて、何らかの政府がかかわる、政府だけじゃなくて国民全体がこの技術移転の問題にかかわってほしいというのが、それで状況を何とか変えてほしいというのが途上国の人たちの真摯な考えだったり、真摯な意見だと思いますので、まさにこれにこたえるようによろしくお願いしたいと思っています。  最後の写真は、バングラデシュの洪水の写真で、私は一番インプレッシブな写真だと思ってはいるんですけれども、まさにこういうことが日常茶飯事で途上国では起きていると。ある意味では日本は幸せなんですけれども途上国のこういう状況をどういうふうに考えるか。どちらかというと、日本はいつも国内に目が向かいがちで、はっきり言って票にならない分野だと思うんですけれども、是非、今一番重要なときなので皆さんに御検討をよろしくお願いしたいと思います。  以上です。ありがとうございました。
  9. 石井一

    会長石井一君) ありがとうございました。  これより質疑を行います。  本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行いますので、希望される方は、挙手の上、会長の指名を待って御発言くださいますようお願いいたします。  なお、時間は一回三分程度となるよう、また、答弁者を明示していただきますように御協力をお願いいたします。  それでは、質疑のある方はどうぞ。  峰崎委員
  10. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ちょっと、今日は少し早く出なきゃいけない用事がありますので、三人の先生方、本当、失礼だと思いますが、最初に質問させていただきます。  最初に、明日香参考人にお伺いします。  実は、前に明日香さんが書かれた論文の中にトービン税の話があったと思います。今、超党派で国際連帯税を導入する国会議員の会ができまして、ここにも随分、会長代行を始めとしておられるんですけれども、トービン税の導入について、今、我々も国際連帯税の中の非常に重要なかなめとして考えてはいるんですが、タックスヘーブンのような国へ資本取引その他を移してしまうということでなかなか難しいのかなと思っているんですが、その点、明日香参考人、どういうふうに思っていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。  それから、三人の方にお聞きしたいんですが、最近、私、見ていまして、温暖化の問題で排出権取引というところに、私ももちろんそれは非常に重要なポイントだと思っているんですが、環境税というのが非常にトーンダウンしてしまったなと。西暦二〇〇〇年ごろには、諸富先生なんかも、鮎川さん、一緒に共著を今度出されていますけれども、お呼びしたりして、非常に炭素CO2中心にして、カーボン、トン当たり三千円だとか、いろんな提案などして我が党もまとめたこともあるんですけれども炭素税を中心とした環境税をどのように考えておられるのか。  その関連で、CO2に着目をしちゃうと、実は原子力発電を非常に積極的に推進する役割を果たしてしまうんじゃないかということがあって、なかなかそのときに、カロリーベースでそういったものに全部、例えば電力なら電力に掛けていくとかいろんな代替案も考えたんですけれども、その意味で、そういう炭素税の導入の難しさみたいなところと、質問で言えば、今申し上げた炭素税に対してはもっとやはり取り組む必要があるんではないかというふうに思っているんですけれども、その点どういうふうに考えておられるかということ。  それから、ちょっと長くなりますけれども、原子力発電です。これは廃棄物問題というのが最大の問題だと思っているんですが、この問題を考えたときに、炭素CO2というものの排出といわゆる廃棄物の問題とをどのように考えておられるのか。お三方にちょっとお聞きしたいなと思います。
  11. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) トービン税に関しては、もちろん技術的にどうだこうだという議論はあると思います。ですが、どちらかというと、技術的には可能なんじゃないかと。というのは、やはり今、電子商取引なり、そういうインフラが非常に世界中でできつつありまして、昔に比べると、そこら辺のいろんな技術的な問題というのはかなり解決できるようになってきているんじゃないかと。だから、そういう意味では、やはり政治的な意思の方がより大きいんではないかというふうに私は理解しています。  お金をどこから取ってくるかというのは非常に大きな問題でして、ODAがこういう状況で、トービン税なり連帯税というのは本当に、中期的にぱっと盛り上がる議論になってはいるような感はあるんですが、やはり真剣に考えるべきだとは思いますし、まさにこれからどんどん世界での格差が大きく問題になってくると思いますので、頑張っていただければと思います。  あと、炭素税と排出量取引、どっちがいいか、どう違うかという話なんですけれども、おっしゃるとおりに、炭素税は日本でも議論がありまして、世界でも議論がありました。どちらかというと、炭素税は政治的な反発が多くて排出量取引にというところは否めないところはあるかと思います。  ですが、それとは別に、元々京都議定書の何%削減というのは排出量取引に合ったものなんですね。というのは、炭素税は掛けてもどのぐらい減るか分からないと。ですが、排出量取引というのは基本的に排出量キャップ掛けられますので、何%守れるかというのがかなり確実になるということは一つ大きいと思います。  あと、御存じのように、EU―ETS、EUでの排出量取引制度ができまして、それができたことがやはり大きいんですね。  というのは、今、オーストラリアでもニュージーランドでもどんどんつくろうとしているんですが、やはり世界全体で同じ仕組みがあった方が、世界全体でのコストも新しく導入する国のコストも少なくなるんですね。それは炭素税と別でして、国際炭素税が入ればまた別なんですけれども、現時点、国際炭素税がない状況国際的には排出量取引があった場合は、その二つを比べると、排出量取引があった方が、国際社会全体でもその国だけで考えてもコストは安くなる、効率的になるというのが経済学的に証明できます。なので、そっちに動いているというところはあるかと思います。  ですが、どちらも基本的には、ある目標があって、それを達成するための手段であるので、排出量取引があればすべてできるということではありませんし、それと組み合わせて炭素税なり税金なり、規制の方は掛けるべきだと思います。よく排出量取引だけで何でもできるというような議論があるんだけれども、それは誤った議論だと思います。  原子力はお任せします。
  12. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) まず、環境税と排出量取引なんですけれども、私たちは国内排出量取引を推薦しているんですけれども、これですべてが解決できるわけではなくて、やはり様々なポリシーミックスとともにやらないと効果が上がらないということでポリシーミックスを提案しているんですね。そのうちの一つが環境税です。税の場合は、上流に掛けて、そして排出量取引の対象部門には七五%還付するという案になっている。そうすると、その排出量取引の対象になっていない部門の人たちはやはり環境税で削減をしていくと。そういうようなのがこの本に提案の一つとして入っています。  やはり、今、明日香先生もおっしゃいましたけれども排出量取引の最大の利点というのは、上限を掛けるので削減量が確実になるという点があります。それに対して税の方は、コストは明確になるけれども削減がどのぐらいできるか分からないという点があるので、やはりそれなりに長短あるということで、両方をミックスする必要があるんじゃないかというふうに思っています。  それから、原子力の点についてですけれども、廃棄物問題、特に放射性廃棄物問題というのは何万年にも及ぶその毒性が地球に存在するということがあるので、その問題が一番大きいかなと思っていて、やはり原子力が温暖化対策になるとは私たちは考えていません。やはり別のもっと大きな環境問題を引き起こしてしまうということと、あと原子力の場合は核拡散という脅威がまたもう一つ別の側面からあって、特に今、インドとかイランとかパキスタンとか、そういう途上国にも、中国とかも含めてですけれども、原発を推奨しようという案が出ていますが、そうなると、その核拡散の危険性というのはどんどんどんどん大きくなっていくわけですね。それをどこで止められるかというと、現在の核不拡散条約、NPTでは機能していないわけですから、非常に危ないことに手を出すことになるというふうに思います。  それと、日本エネルギー政策は原子力に偏重して、すごく偏って重きが置かれ過ぎていて、そして、むしろすごい膨大な予算が原子力に使われていて、それも、特にバックエンドと言われているプルトニウムの再処理と高速増殖炉の方にすごい膨大な金額が使われています。これによって温暖化を解決しようとしたら、本当にもう何百年と掛かっちゃうんですね。  ですから、やはりその同じ金額を、日本に豊かにある自然エネルギー可能性をもっと探り出すような方向研究開発予算を振り向けるべきだと。それと、省エネルギー技術日本はすごく得意としているので、まだまだいろんなところからそういう可能性が出てくる可能性がある。そういうことを引き出すためにも、CO2に価格を付ける排出量取引とか、そういう規制は必要じゃないかというふうに思います。
  13. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) まず、炭素税あるいは取引の話でございますけれども、私は、もう一つ前のところに戻って、今はもう安定な気候というのは非常に希少な資源になっているということを考えていただきたいんですね。大昔は、それこそ石炭なんかは土を掘れば出たものだから、だれもその値段を付けなかった。しかしながら、今は気候についてはだれかが汚せばだれかが損するという状況になっているわけですから、そういった意味で、いわゆる経済の内部化を図る、市場の内部化を図る必要があるだろうということが原則として私は言えるかと思います。今、もう既にどういうシステムがいいか、すなわち取引がいいか税金がいいかと、いろんな損得あります。  今の御質問で非常にやっぱり思い出しますのは、みんな本気じゃなかったんですね。結局、税金のことを私も中央環境審議会、二年、かんかんがくがくやったけど、はい、それは駄目だった、じゃ今度は取引だ、これも駄目だと。要するに、駄目駄目と言うために論議しただけであって、どこに問題があるかという全体のデザインがかかれていないということなんですね。イギリスなどは全体のデザインかいていますから、それは、税金も入れましょう、そして取引も入れましょう、そして規制もしましょうと。さて皆さん、そのうちどれをどう取りますか、それはうちの全体でやりますよと。そういったことに早く向けば、当然すべて入ったような形がもうできているはずだったと私は思うんですけれども。  今、先ほどの絵にもございましたけど、やはりそれは腹がくくられていなかったというところに問題があります。ですから、もうここまで来たら、私は腹くくって、もうすべて何でもありということでやる必要があるんではないかと思っています。それが第一点です。  第二点が原子力の話ですけれども、ちょっと手前みそになるかもしれませんが、この七〇%削減シナリオのパンフレットの六ページを見ていただきたいと思うんですけれども、これも今、私がお話をしました、シングルイシューばっかりやっている、原子力がいいのか悪いのか、そんなことばっかり言っているけど、一体全体どれだけエネルギーが要るのということをまじめにやってくれたのはだれですか。  最近、需給見通し出ましたけれども、あれはほとんど需要のことについては手を付けておらない状況ですね。例えば、今問題になっております交通量の伸びというのは古いデータを使っているということですから、まだまだ需要に手を付ければ減らせるんです。どうして需要にみんな手を付けないか。それは、皆さんにもと言っちゃいけないんですけれども、我々国民にも責任あると思いますけれども、皆さんも、もう少し国民もしっかりしろと言ってくだされば結構なんですけれども。  今この六ページの絵を見ていただくと、我々は、上の方のグラフですけれども、二次エネルギーの量、すなわち消費側のエネルギーの量というのは二〇〇〇年と比べたら四〇%ぐらい削減できると。実は簡単なんですね。ここも既に蛍光灯になっていますけれども、普通、白熱灯を蛍光灯に替えれば、それだけでもエネルギーは四分の一になるわけですから、もうそんな技術は山ほどある。ただ入らないだけ、入れないだけという状況は非常にあります。私どもは、そいつを全部、いろんな技術、六百の技術をかき集めまして、実際合理的に入れていったらどうなるだろうかということを考えて、本当に無理しないでですよ、皆さんに節約してくれなんて一言も言っていませんよ、そういうことで計算してみると、四〇%ぐらい減らせるんです、どういうシナリオでやろうとも。  そうしますと、そのデザインがあれば、その下の方に一次エネルギーの供給量と書いてあります。そのエネルギーをどうやって供給するかと、そして低炭素にするかということでございます。シナリオAとかBとか、これは私どもシナリオはGDP一人当たり二%の伸び、あるいは下の方がGDP一%の伸びですから、そんなに無理している話じゃありません。  そして、二〇五〇年、下の方のグラフの真ん中のところに原子力と書いてございます。この量はどういう量かといいますと、ここで仮定した量というのは、今、立地が決まっているところは全部入れてあります。できるということであります。しかし、どう考えてもこれ以上は入れられない。入れてもしようがない、別な言い方をしますと。ですから、これからは国内で原子力の話というのは、今もうある十分安全なものをきちんと最大考えても入れていくぐらいで終わるだろうと。  そうしますと、私は原子力の問題というのはやはりこれから途上国の問題だと思います。途上国、まあ幾つか挙がっていますけれども、もう既にやっておりますけれども、本当に今お話があった核不拡散の話であるとか安全性の話、こういうのを保障してやれるかどうかというところが多分ネックになっていく。それは、お互いに監視をして、今でも核不拡散条約があるわけですから監視していくと。なかなかそれだけに頼るわけにいかないんではないかと。  もう一つ、全体のストラテジーとしまして、これまたシングルイシューにならないでほしいと。すなわち、原子力があればすべてが解決しますよとか、そういうような言い方はやめましょうと。やはりそれは、今の時代だと、自然エネルギーもできる限り組み込んでいこうじゃないかと。私はあと十年ぐらいはそういう模索の時期が続くと思うんですね。ですから、余りこれだけやればいいという話は今の時点ではしない方がいいという具合に思って、そういうバランスの取れた全体のデザインをかいていくということを早めにやっていく必要があるんではないかなというのが私の意見であります。
  14. 石井一

    会長石井一君) 加藤修一委員
  15. 加藤修一

    ○加藤修一君 今日は、三人の参考人の皆さん、大変ありがとうございます。有益な話をお伺いすることができました。  温暖化の問題はやはり文明的な課題であると思いますし、西岡先生の論文等も読んでまいりますと、エネルギー多消費型の技術文明から、やはりライフスタイルとかビジネススタイル、これを根本的に変えていかねばいけないと。そういった意味では、二〇一二年で済むような問題ではないことは言うまでもない話なんで、百年単位でどういうふうに将来展望を決めていくかという極めて重要なことであります。  そういった意味では、スタート時点でどういうふうに考えるかと。先ほど二〇五〇年で半減という話がありましたけれども、これは日本にとって相当厳しい話で、八〇%とか八五%とか、いや、中には一〇〇%だと、削減という意味でありますけれども、そのぐらいに最小化を目指さなければいけないという話になってきていて、そういった意味ではバックキャスティングアプローチ、これを是非しなければいけないということに、それがやはり戦略性の一つだと私は思っております。  先日、G20があった際に、英国の前首相のブレアさんが来て、ゼロエミッションだ、そういった意味では革命だと、そういう言い方をしていたわけですけれども、まさに私はそうだと思っておりますが、ただ、今回、改訂版の京都議定書目標達成計画が閣議決定もされたわけでありますけれども、先ほど来から議論になっております環境税の関係とか排出量取引の関係についてはまだ両論併記で入っていないと。これは二〇〇八年から二〇一二年という話でありますけれども、将来的な長期的な展望を考えた場合には、先ほど言いましたようにスタートが大事であると。  そういうことを考えていくと、両論併記で入っていないということは決定的に欠けるのではなかろうかと、そういう議論があるわけですけれども、こういう議論に対しては三人の先生方はどのように考えていらっしゃるか、これが第一点であります。  それから、環境経済的な戦略を立てなければいけないということを考えていった場合には、やはり日本の法体系の整備も当然必要であると。  先ほど西岡先生は、安定な気候は貴重な資源になっていると。そういった意味では国際的な公共財という言い方ができると思うんですけれども気候安全保障基本法ということについても議論になっているように思うんですね。従来から温暖化にかかわるような様々な法律がある、省エネ法も含めて。そういう法律を再編成をする必要があるのではなかろうか、その上に基本法がしっかりと作られていくと、そういうふうに議論が高まってきているように考えておりますけれども、こういう動きに対してどう考えられるか。  最後でありますけれども、EUの排出量取引の関係でありますけれども、二〇一三年から第三ステージになるということで、これはオークション方式も入っていくと。最終的には一〇〇%オークション方式になった場合に、これは政府が排出量についてオークションするわけでありますから、政府が売ると。買う方は様々な活動をしている企業等でありますけれども、これはある意味では環境税的な側面もあるのかなというふうに思っているんですけれども、先ほど鮎川先生の方からは両方ミックスする必要があるという話がありましたけれども、まさにそういった意味ではオークション方式に、最終的にやっていく方法がそれに近いというふうに判断していいのかどうなのか。  以上三点にわたって、各先生からお話が伺えればよろしいと思います。よろしくお願いいたします。
  16. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) オークションにつきましては多分、鮎川さんがお話しいただけると思います。  ほかの二つですけれども、私も中央環境審議会それから産業構造審議会のメンバーとして実はこの議論に加わっておりまして、私の方はどちらかというと入れる方向でと言っていたんですけれども、いずれにしましても大切なのは、次の枠組みの時点にはそれは多分もう入っているだろうし、国際的に連携が取れた形になっていると思います。  それを見越して、なるべく早く、今のうちから日本の中でも市場を開くなり、税金を入れたらどういう問題があるかといったことの検討をすぐに始めておく。あるいは、京都議定書に間に合うかどうか分かりませんけれども、もうそういうことが動き出す時期には来ていると私は思っております。それが第一点です。  それから、第二点の、安全保障基本法という話がございました。私ども、小さな委員会、中環審の下でやっております国際戦略委員会というのがございまして、そこで安全保障についての議論を一度やったことがあります。その中で、気候というのが、別な意味での不安定な気候ですね、脅威になってきた。安全保障というのは、何から、だれから何をどうやって守るんだというのが基本でございますけれども、そういう面から見ると、世界の人々の安全といいましょうか、快適かつ生活が全体で脅かされていると。そういうものを守るために、一体だれからという話になると、それは多分みんなからということになってしまうんですけれども、どうやってというのは今まさに国連枠組条約で検討している話かと思いますけれども、そういう形できちんとしていこうという話が進んでいるかと思います。  特に日本は、大平総理のときだったと思いますけれども日本の総合安全保障方針というのを決めて、日本は軍事だけではなく、経済力をもって近隣の国を、仲良くしていきながら、そういう雰囲気をつくっていく、志を一にするものと組んでと書いてあったかと思いますけれども、そういうのが日本の政策の基本だと。非常にいい基本ができていると思います。これを今度、気候の問題にも十分当てはめ、単に交渉だけじゃない、先ほどのお金の話も含めて、あるいは人材のことも含めてやるべきだと。  この基本法ということになりますと、これは善しあしがございますけれども、最終的に本当に気候状況が悪くなったときに、どこかの国が物すごくたくさん出していたと。そういうところに、ある意味での強制的な行動の発現ができるかという問題が出てくるらしいですね。すなわち、WTOで、あそこの、おまえのところは、もう高いCO2を出している製品は買わないというようなことができるかどうかというところまで行くという具合に、私は国際法の専門ではございませんので、そういうことが論議されているし、ひょっとしてそれくらいになる必要がある時期が来てしまうのかもしれないという具合に思っているということであります。
  17. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) 第一の質問なんですけれども、私たちも新しい閣議決定された目達計画は実に実に不十分だというふうに思っています。やはりこれだけ大幅に日本排出量が減少方向に向かっていない中で、今までのやり方の延長線上でしか追加対策がつくられなかったと。抜本的な政策が入れられなかったということが決定的に京都議定書の遵守への日本の不熱心さをすごく象徴しているというふうに思います。  これはやはり、二〇一三年以降の京都議定書の枠組みを変えようと、変えてしまえば第一約束期間を何となく数値合わせだけでやれば済むんじゃないかという、非常に甘い産業界の意向を反映したものじゃないかというふうに思っています。  でも、実際には、昨年のIPCCが発表したように、非常にもう深刻になっているという状況があって、二〇一三年以降は六%どころではない、もっともっと大幅な削減をしなくてはいけない。そのためには、やはり今からその排出量取引なり環境税なり、そうした経済的手法を導入して日本社会構造を低炭素型の社会に向けた構造変革を起こすようなことをやっていかないと、二〇一三年以降の大幅削減を実現することができなくなります。  そして、国際競争力も落ちていくし、今お話にありますように、カーボンマーケットという排出量取引のリンケージが世界レベルで行われつつあるので、そういうところで日本がすごく後れを取ってしまうということがあると思うので、やはり今すぐにでも、今ようやく検討会が始まりましたけれども、これは洞爺湖サミットで消えてしまうのではないかという懸念がありますが、経産省と環境省とそして内閣の下で、それぞれ何かいろいろなところで検討会が始まっていますが、これを一本化して、そして西岡先生がおっしゃったように、コンプリヘンシブな、包括的な、すべてを含めた対策の一つとしてこういう環境税なり排出量取引なりを位置付けて、そしてそのほかにはいろいろな規制を入れると、そういうような温暖化対策法、温暖化法を日本として一刻も早く入れなくてはいけないというふうに考えます。  第二の点ですけれども、ちょっと私、法律には強くないので余りいいお答えができるかどうか分からないんですけれども、やはりそういう安全気候保障法というのは視野に入れてもいいかなと思います。  というのも、国連事務総長などがやはりクライメートセキュリティーという言葉を使い始めたのが二年前ですね。そして、やっぱり温暖化を防止することは世界の平和と安全保障に欠かせないものだという意識が出てきているので、そういうような法律が国際的にできるという可能性はあるし、あった方がいいかなと思います。そういうこともあって、昨年のノーベル平和賞が気候変動関係者に与えられたのだというふうに理解しています。  それから、三番目のEU―ETSのオークション方式ですけれども、環境税方式に似ているとはいえ、やはり経済学的にいうと、一番効率的でそしてフェアな排出枠配分方法になるということが言われています。なので、どういうふうになるかということは期待しています。  それと、ちょっと追加なんですけれども、先週のタイで行われたバンコクの会議で、ツバルとかAOSISの国が非常に注目すべき提案をしていて、それは、国別目標を決めますね、そのときの国別排出枠をオークション方式にしたらどうかということを言っていました。つまり、日本は今、六%削減ということで、九〇年レベルの九四%は排出してもいいという排出枠を与えられているわけですけれども、この排出枠を各国が買わなくちゃいけないと、そういうようなことを提案していました。それはなぜかというと、適応基金が余りに足りなくて、そして、自分たちが余りにもう既に被害を受けていて大変な思いをしているのに適応基金が集まらない。その適応基金の収入源として、それとあと技術移転の収入源として使うということで、そういうことすら提案されていたということをちょっと補足させていただきます。
  18. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) まず、排出量取引制度導入の時期に関する私の考えなんですが、よく京都議定書の第一約束期間二〇一二年までは入れなくていいと、今、経団連の自主行動計画があるからいいんじゃないかというような議論があるんですが、そういう第一約束期間とかとは関係なく、ある状況があってある制度を入れればより良い状況になるということを考えたときに、何でそのより良い制度を入れないかという問題だと思うんですね。なので、京都議定書の第一約束期間とは関係なく排出量取引制度がより効果的、効率的、公平的に目標を達成できるんでしたら入れるべきだというのが学者としての意見です。  かつ、国際交渉において入っている、入っていないとでは全然違うと思います。実際、私、中国の人に言われたんですけれども日本はいろいろ言うけどやらないと、中国は言わないけどやるというふうに言われまして、まさにそこら辺の、国内でいろいろできないのに何でそんな偉そうなことを言うんだというような議論は出てくると思います。  気候安全保障法ですか、私、先ほど、海外では既に象が落ちてきているのを感じているという話をしたんですけれど、今ヨーロッパでたくさん問題があるんですけれど、問題になっているのは、やはりアフリカからの難民なりイミグレーションは非常に大きな問題になっています。  どういうことかというと、いろんな問題で、特に干ばつの問題でかなりアフリカからヨーロッパに人が流れているんですね。船で何百人と毎日ヨーロッパ全体では来ていると。実際、彼らは、聞くと、もう農業はできなくなる、干ばつで農業ができなくなっているというのが彼らのまず出てくる答えなんですね。  だから、まさに環境難民という点からヨーロッパは気候変動なり温暖化という危機を感じていますし、実際、サハラ砂漠では、モロッコではどんどん、来るなと言っていて、その人たちは、結局サハラ砂漠で飢え死にになり何千人というレベルで死んじゃっているんですね。  だから、そういう非常に大きな危機意識を世界は持っていると。ある意味では日本は平和な国で、それはそれでいいんですけれど、世界はそういうふうに考えていないと。だから、気候安全保障なりそういう議論が出てきているんだと思います。  もう一つ排出量取引もちょっと絡めて申し上げますと、今までCO2というのは出してもどうでもいいというふうに考えられていたと。今、何が行われているかというと、CO2を出すのはいいのだけれど、管理してコストを払ってくださいと、でも、減らしたらコストがなくなりますよと。  よく省エネ、いろいろポテンシャルはあるけれど、そんなものできるのと、日本は七〇%もできるんですかというふうに聞くんですけれど、皆さん、ちょっと考えていただきたいのは、例えば自分のポケットに入っているお金があって、それが、自分が例えば電気をちゃんと消したりつけたりするごとに、ちゃんと節約したらポケットのお金がすぐ増えたり減ったりしたらば絶対みんなちゃんと節約すると思うんですね。現時点では、自分のポケットは全然関係なくて、国民の税金でこの建物の電気代が払われていると、そういう状況だからみんな省エネをしないと。自分のポケットが、本当に努力によってお金が変わるんだったらみんな努力をすると思うんですね。  まさに排出量取引制度も、そのようにCO2というのに値段を付けることによって、たくさん出している人は払ってくださいと、減らした人は払わなくていいですよと、その分、得しますよということを言っている制度なんです。だから、だれかが損をするんじゃなくて、頑張った人は得をするという制度だということは認識していただければと思います。  オークションの話にもつながるんですけれど、結局、省エネをしないということは、そのお金というのを石油会社さんなり産油国に払っているんですね。皆さん、一般に、税金を払うのは嫌なんですけれど、ガソリン代を払うのはそんなに文句を言わないと。だから、結局、お金を海外に出すのではなく国内で使うというのも、排出量取引制度なり温暖化対策というのには非常にポイントがあるということです。  国内で使うやり方として炭素税なり排出量取引制度があるんですけれど、現時点では、排出量取引制度の方が経済学的な見地からも効率が、効率というか、メリットが大きいというのが現状だと思います。  おっしゃったように、オークションの場合は炭素税と全く同じなようなことですね。政府の収入になりますので、それを使ってもいいと。  もう一つ、実は排出量取引制度も、炭素税と少なくとも一般の方から見れば同じなんです。どういうことかというと、上流に掛ければ下流で、例えば電気代が上がるんですね。電気代が上がるということは炭素税を掛けたのと同じような形ですので、排出量取引制度も結局、炭素税と同じような効果があるということは言えると思います。結局、値段が付いて、たくさん使う人はたくさん払うと、ですが、節約した人はお金を得をするというような制度です。  こういう話になると、炭素税なり排出量取引なり、困る人はだれなんですかという話になると思うんですけれど、それはまた、産業の国際競争力というところで、後で多分質問も出るかもしれませんので、お答えしたいと思います。
  19. 石井一

    会長石井一君) 喜納昌吉君。
  20. 喜納昌吉

    喜納昌吉君 鮎川ゆりかさんに質問したいんですけれども、私は、この文明というのは、大地から循環サイクルが切れてしまったと思っているんですね。それゆえに温暖化などが起きていると思っているんですね。  すべての人が平等に生きる権利をで国際先住民族権利宣言に言及していますが、私もかねてより先住民の運動にはかかわってきたんですね。九三年の国際先住民年に、沖縄で世界の先住民を集め、イベントをしたこともあります。九八年には、アメリカ先住民を訪ね、バスで北米大陸を横断し、アメリカ憲法のルーツでもあるイロコイ連邦を訪ねたこともあります。  そこで私が感じるのは、先住民とは文明から遅れたかわいそうで助けなければいけない存在、よく人権問題でそういう見方をするんですけど、私は反対の方向から見るんですね。彼らこそが地球を裏切ることなく今日まで生きてきた人々だと思っているんですね。今後、世界は彼らのその生き方に学ばなければいけないと私は思っているんですね。彼らの英知によって私たちが救われるという、謙虚な気持ちというんですかね、言わば地球が最初であるという、そういう文明観が起こってこないと、私はこの温暖化問題、砂漠化の問題も絶対解決できないと思っているんですね。  そこで、日本の先住民族であるアイヌの故郷アイヌモシリで行われる洞爺湖サミットでは、アイヌの人たちの参加、活躍の場があるべきだと思うんですけど、鮎川さんの御意見、また具体的なアイデアなどがあれば教えてください。
  21. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) おっしゃることは本当にそのとおりだと思います。  やっぱり、先住民というか、私たちも昔は自然とともに、自然が継続できるような方法で狩りをしてきたし、魚を捕ったりとか、そういう中で暮らしをつくってきたわけで、そういうことが基本だというふうに思いますし、私たちもそこに立ち返って、私たち文明を、そして豊かさとは何かという概念を考え直す必要があると思います。  G8における先住民の問題なんですけれども、先住民のいろいろなイベントというのは札幌の方で行われる予定になっています。札幌の方のNGOが先住民サミットというのを開く予定でおりますし、それに関連した問題を、札幌の方のNGOフォーラムというのができましたので、そこの方で今、企画している最中です。
  22. 石井一

    会長石井一君) それじゃ、川口順子理事。
  23. 川口順子

    ○川口順子君 西岡参考人に御質問したいんですけれども、この低炭素社会シナリオ、ちょっと全部目を通す時間はないんですが、今、大変に興味深く見させていただいているんですけれども、私も需要サイドのエネルギー削減を図るというのは非常に大事だと思っていますし、今までの政策が必ずしもそこに対して十分ではなかっただろう、これはいろんな理由があると思いますけれども、ということもそうなんじゃないかなと思っております。  ただ、質問としては幾つかありますけれども一つは、この間、経産省が長期エネルギー需給見通しというのを出したわけですけれども、今その資料を持っていないのできちんと比べることができないんですが、そこにおいてもかなり需要サイドについては議論をしていたという記憶があるんですね。  それからもう一つ、私のこれも記憶なんですが、二〇二〇年までに五十二兆円必要だというふうにたしか書いてあったという記憶があるんですけれども、このコストを見ますと、六兆円とか、けたが一つ違うコストが、しかも二〇五〇年ということで出ているんですが、もしも今その長期需給見通しをお持ちでいらっしゃらなければ申し訳ないんですけれども、需要サイドの削減のどういったところが違うのか、それから、コストが違いが出てくるのはどういったことなのか教えていただければ幸いですし、もし今難しければまた後で伺わせていただければ幸いでございます。それが一点です。  それから、この本の七ページのシナリオ二つありまして、それぞれこの一番冒頭のところに削減率が書いてあるわけなんですけれども、実際に政策をやる立場からしますと、どの分野でその政策を取るのが最もコストベネフィット上コストエフェクティブかという発想で対応策を取っていかなければいけないというふうに思うんですが、その観点からいうと、どういうことに優先度を高めて取り組むべきなのかということをお伺いしたい。それが二番目の質問です。  それで、三番目の質問なんですけれども、これ、モデルとして大変に興味深いモデルだと思うんですが、少し勉強をしてみたいと思いますので、先生が御存じのほかの日本社会全般についてこういった網羅的なモデルがあるかどうか、あったらどういうものがあるということをお教えいただければ幸いです。  以上、三点です。
  24. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) ちょうど手元長期エネルギー需給見通しのポイントというのを持っております。これは、二十年三月、総合資源エネルギー調査会需給部会で出したものです。  私もまだ実は精査をしておらないんですけれども、私、これの説明を受けたときに一つだけお伺いしたことがありまして、ぱっと見たときなんですけれども、先ほども申し上げたかもしれませんけれども、じゃ、国内の交通の需要はどう見ているんですかという話をしました。  そうしますと、今のところは古い、古いといいましょうか、今、国交省が出している、生きているといいますか、その計画を使っているという話を聞きました。そして、我々は違いますよと、我々はもっともっと減ると考えておりますよという話をしましたら、やはり国の計画というのは、それぞれの省庁、つかさつかさでやっている部分については手を付けられないということがあって、それは向こうから言ってきたのをきちんと使ってやるんだと、我々も実はよくそういうことをやるんですけれども。  ということで、今のところ、それから産業界のことについても、今、川口委員のおっしゃったように、多分かなりのネゴをやっているらしいんですけれども、実際のでもないんでしょうね。要するに、業界は自分が専門家と思っていますから、なかなかそれ以上に切り込めないと、私などはちょっといささか素人ですから切り込み過ぎて怒られているんですけれども。そういう状況であって、なかなか需要の方には手が付いていないということをこの需給見通しを見ていても思いました。それが一つです。  ですから、なぜかといいますと、これまでは、エネルギーはたくさんありますよ、たくさんありますよで、いかにそれを使って便利なことをやりますか、これが技術開発だったんですね。だから、どんな新しい技術を見ても、必ずその裏にはエネルギーがくっついているという状況だったわけです。これを何とか直さなきゃいけないというときには、やはり本当に我々が望んでいるサービスをきちんとしたエネルギーで供給してくれるかということについて十分考えなきゃいけない。  簡単な先ほど申しました蛍光灯の例で、先ほど明日香さんが余りはっきりおっしゃらなかったけれども、明らかに蛍光灯に替えたら蛍光灯を作っている某電器会社はもうかる。これは知的産業に、そちらに一単位加わったわけですね。我々需要側は、お金払わないで得したと。しかしながら、損したのは一か所だけありまして、それはエネルギーを供給しているところです、当然エネルギーが少なくなるんですから。それは電力会社であったり、エネルギーの会社であったりすると。それが新しい産業構造の転換なんです。それが新しい時代なんです。  ですから、今後は、もうその電力会社にキロワットアワーで幾らというふうなことを言っていないで、いかにESCOのようなもので、一単位の電気でどれだけいいサービスをするかという産業に変えていく、これがまさに産業構造の新しい転換だと私は思っております。そういう方向をきちんともう腹に据える必要があるだろうと。一点です。  第二点ですけれども、五十二兆円です。五十二兆円、たしかこれ、二〇年だったかなと思うんですね。そうしますと、単純に割りますと三兆円ということになりますね。私の方はこれが約GDPの一%と言っておりますけれども、七兆とか八兆とか数字が出ております。  コストというのをまず二つ考えていただきたいのは、一つは、コストというのはどこかへ消えてしまうものではないということですね。これは、新しくちょっと無理して蛍光灯を替えなきゃいけないからその分ちょっとお金が掛かりますねと。だれかに払うし、それは先ほどの話じゃないんですけれども、努力した人、某電器会社がもうかるということでありまして、それが幾ら掛かるかというものを集計したのがコストになっているわけですね。  ですから、まずコストという概念を、どこかへ消えてしまうような、もちろん、それは先ほどの話じゃないけれども、ほっておけば勝手に向こうへ飛んじゃったという話はまた別ですけれども基本的に中に戻ってくる話ですから、余りそうコストが、某新聞のようにと言っちゃいけないんだけれども、コストが掛かってそれを国民に押し付けると、そういう言い方ではないんじゃないか。国民も、某電器会社に、蛍光灯会社に勤めている人は給料になって戻ってくるんだというつもりで考えていただきたいと思います。  私どもは、計算しますと一%ぐらい掛かります。そのコストの計算というのは、先ほどコストカーブをお見せしましたけれども、先ほどのコストカーブで、ただでは入らない、もうちょっと炭素の値段を付けてちょっと上がる部分がありますね、その部分を集計したものが私ども、コストと言っています。しかし、本当にゼロより上からのところはほんのわずかなんです。その下のところの、ちょっと本来なら入れちゃいけないところ、なぜかというと、ここは、コストカーブの下のところは、ゼロのところや下のところというのはゼロコスト以下で入っているわけですから入れちゃいけないんですけれども、これとこれと足したもので計算しております。  そんなわけで、コストの計算の仕方はそういうことだということと、コストの意味というのはそういう意味だということで、要するに、あなた、燃費のいい車あるから、プリウス買いなさいよ、あなたの古い車捨てなさいよという、まだ償却済んでいないものを捨てるために幾らかやっぱりお金が掛かっちゃうわけですね。プリウスはもうかるんだけれども、その分を計上したというようなことであります。第一点。  それから、政策、どの点が変わっていくかと。今、実はそれを検討しているところであります。我々の方はボトムアップでやろうとしていますので、例えば、家庭の中で一番エネルギーを使っているのはどこかというと、多分給湯であろうと。そうしたら、給湯を合理的にするにはどういうやり方をしたらいいかという実に実務的なやり方をやっているんですけれども、消費側で約三分の一ぐらいでしょうかね、やっぱり大きいのが電力供給のところだったと思うんですけれども。済みません。まだ答えが出ておらないんですけれども、そういう具合に目標を、ターゲットを定めた形の政策を打っていくという方向で今、検討をしているし、またそれを是非使っていただきたいということであります。  最後が、日本モデルですね。  我々がこの検討をするときに幾つかのモデルを検討しました。外国ではこういったモデルはもう山ほどやっておりまして、それが我々、外国でのソサエティーではかんかんがくがくやっておるんですけれども日本には残念ながら余りなかったです。  美しい星50をやったときに、経産省の方も技術を集めたシナリオを作って、一体それが実現できるかということについて検討なさっておられまして、結論として、何とかいくだろうと、技術の面ではということで二〇五〇年五〇%というのが出ていったということも聞いています。  それから、原子力の関係だと、原子力の長期ビジョンということで、やや原子力偏重ですけれども、これでどれだけ減らせるかということで、相当減らせるという結論も出しております。  もう一つ、今御質問にありました社会全体のということなんですけれども、昔は未来学がはやったころはいっぱいあったんですけれども、最近ちょっと、余りこれがというのは見られない感じがいたしますね。ちょっと勉強不足のところで、申し訳ありません。そんなところです。
  25. 石井一

    会長石井一君) 広中和歌子理事。
  26. 広中和歌子

    広中和歌子君 お三方、本当にありがとうございます。  実を言うと、私も非常に環境に関しては混乱しているところがございます。  明日香参考人鮎川参考人日本人の環境意識が非常に低いということ、それは単に一般の人だけじゃなくて政治家も低いのであって、一応クールアース50などと時の総理はおっしゃってもなかなか現実には政策の中に反映されないということをおっしゃったわけですけれども、実を言うと、日本人の多くは、自分たちは環境先進国であるというふうに長い間思っていたんじゃないかと思います。  それは、公害で非常に苦しめられた、苦しんだ一九六〇年、七〇年代、そのころに、ともかく目に見える形で被害が頻発すると。そういう中で、一般の人々、国民も怒ったし、それから行政も何かせざるを得なかったし、また企業の方も手を打たざるを得なかったと、そういうことがあると思います。そこで使われたのが経済的手法であり、規制であり、補助金みたいなものも、課徴金など、いろいろなことで政策が、遅ればせながら、つまり被害の後にそういう政策が入ってきたと思うんでございますが、結果として、当時、企業などはGDPの二%を公害対策に使って、そしてその結果として日本の産業競争力が付き、そして日本の経済成長につながったと、そんなふうなストーリーがございますよね。橋本元総理なども日本のこうした成功の例を途上国にも話して、そして引っ張って、リードしていったらいいというふうに言われているわけです。  私なんかも時々そういう話をさせてもらうことがあるんですけれども、これからの環境問題に関しまして、目に見える形の被害というのがないわけじゃないんだけれども、少なくとも日本の中で非常に希薄であるというようなこともあり、そういう中でどうやって国民が、国民がというんですか、税金なり様々な規制でもって、環境により良い、環境のために政府がやりやすい規制なり経済的手法なり、そういうものを使えるようになるかということが問われているんじゃないかなと思うんですけれども。  私が伺いたいのは、どのような形で国民に一種の危機感をあおっていくかと。それが今、必要なんではないかなと思うんですが、アル・ゴアの映画であるとかいろいろございましたけれども、我々日本人を動かす大きな力みたいなもの、何かあったら是非教えていただきたい。  今、鮎川参考人もおっしゃったように、やはり日本では、環境省が幾ら一生懸命やっても経産省とかほかのところが足を引っ張るようなこともあるし、税金は安ければいいと思う人が多くて環境税などなかなか入りませんけれども、それをどうやって変えていくかということ、何かいい案があったら教えていただきたいと思うわけでございます。  それから、西岡参考人には、日本というのは非常にいい公害防止技術を持っていると思うんでございますけれども、それは当然、日本が海外進出したときにその公害技術が使われている、そのスタンダードが守られていると私など単純に今まで思っていたんですが、なかなかそういうわけではないということを聞いているんですが、それは私にとっては驚きであり、それを法律の形あるいは条約の形で入れていくにはどうしたらいいかということについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それと同時に、日本はこれから人口減少社会に向かっていくわけです。二〇五〇年には一億人、そして二一〇〇年には六千万、七千万ってこう減っていくわけですけれども、そうすると、CO2排出なんというのも、ほっておいても自然に減っていくようなものなのか、人口との関係について御高察があれば教えていただきたいと思います。  以上です。
  27. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) 非常に難しい質問で、私たちも非常に悩んでいる部門です。一般の人へどのように危機感をあおっていくかということなんですが、私たちとしてはできる限りの、自然への影響で今こんなに起きていることだというようなことをあらゆる場面で訴えたりしていますし、WWFの中には温暖化の目撃者というプロジェクトがありまして、実際に被害に遭っている方たちの生の声を聞くというプロジェクトがあります。  そのプロジェクトのシンポジウムを二〇〇五年に東京で開いたんですけれども、そのとき、フィジーの方とネパールの方と、アラスカとか北極圏の研究をしている方のお話を聞いたんですけれども、そのときネパールの方は、ヒマラヤの氷河湖が決壊してすごく被害を受けたし、氷河湖はどんどん大きくなっていっていつ決壊するか分からない、自分には祈るしかない。そしてフィジーの方は、干ばつで水不足に悩んでいると言って、これは神から与えられた試練だと思っていたけれども、人間の行いによって起きている現象だと聞いたので、人間が原因なら人間が解決できるのではないかと涙ながらに語ったりとか、それ、結構インパクトがあったんですけれども。  やはり、日本ではまだハリケーン・カトリーナもないし、二〇〇四年に台風が十個上陸したという画期的なこともありましたけれども、実際に肌で感じるというのは非常に難しいですね。ですから、やはりそういう被害を受けている人の生の声を聞くというのが一番効果的かなというふうに思います。実際に私もそういう話を聞いたり、先週タイでAOSISの国の人たちが、次から次へとどんなに大変かという話を耳にするにつけて、やはりすごくその被害というか、緊急性を感じるということがあると思うんですけれども、これは私たちにとっても課題です。  それから、技術移転が行われていないという話ですけれども、これは、条約の下での技術移転が行われていないというのが途上国の最大の不満なんですね。それに対するお金も出されていないということで、日本はODAという形でいろいろな形で支援をしているんですけれども、それはやはりローンであったりソフトローンであったりとかいう無償の供与じゃないわけなんです。  そこが一番の問題で、そこら辺が先進国としての義務を果たしていないと非難されている理由なんですけれども日本政府としてはというか、日本としては、やはり民間セクターが開発した技術をそのまま出すことはできないという立場があって、そこら辺がこの技術移転の問題の最大のネックになっていて、やはりその知的財産権という、IPRと言うんですけれども、それについて、やはり先進国はそれがあって当然だと、それに対してお金を払うのは当然だという立場を貫いていますし、それに対して途上国は、やはりそういうことを言われても自分たちには払う能力がないし、政府が関与する余地があるんじゃないかというふうに言っているので、ここら辺は非常に課題だというふうに思っています。
  28. 広中和歌子

    広中和歌子君 技術移転じゃないんです。  例えば、日本の工場が海外で操業するときに、日本では絶対しないような、いわゆる技術で公害を出すということはグローバルな目で見て公正じゃないですよね。それをしちゃいけないんだろうと思うんですよね。それをNPOの立場として大いに主張していただきたいと思うんです。
  29. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) それは本当におっしゃるとおりで、公害輸出という意味だと思いますけれども、結構、やはり日本で規制が厳しくなった分、海外で公害を出している企業というのはありますね。それについては、やはりその地元のNGOたちと組んで日本のNGOがそういった企業に対して抗議行動をしたりとかいうのは、八〇年代とか九〇年代に行っていたと思います。  今の段階では、やはりCO2排出に関していうと、日本で出せないからといって海外に行って出したらいいのかといったら、それはモラルにも反しますし、やはりそれはまずいということで、これもまたちょっとWWFのプログラムの宣伝になっちゃうんですけれども、クライメートセイバーズというのがあって、グローバルな企業が削減目標を持つんですね。そういったときには、先進国途上国も含めてその持っている施設全体で何%削減するということを誓うんですけれども、その場合は途上国の工場も含まれてやるという、やはり多国籍企業というふうなところでそういう取組を進めていくことによってそういうことを防ぐことができるんじゃないかなというふうに思います。
  30. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) 先ほど環境意識という話が出ました。正直な話、例えば仙台だと暖かくなった方がいいという人が多くて、はっきり言って、海外が大変だよと言っても、我々の意識ってそう簡単には変わんないというのが一般的な、まあ一般的なという言い方は語弊あるかもしれませんけれども、普通の方々の意識だとは思います。  やはり一番大きく変えるのは、CO2に値段を、付いたと、そのCO2の値段が今日は幾らになっていると。これは、やっぱりCO2を出すということがお金掛かることなんだと。それを節約すれば自分のポケットがこれだけ膨らむんだということが、みんな老若男女分かる。新聞にその数字が出るということが一番大きいと思います。  もちろん、その海外の悲惨な状況を、今、実際、例えば世界の米価格は非常に高くなっていますし、麦の価格もシカゴでは史上最高なんですね。ですが、日本は全然そんなの新聞記事にもならないと。そういう現状ですから、国民の意識を変えるためには、CO2の値段というのがちゃんと出ていて、それが新聞に出ていてみんな分かっているということが一番大きいと思います。  公害の話が先ほどあったんですが、やはりCO2はもう既に水銀と同じような汚染物質なんですね。皆さん、そういう認識はないと思って企業の方も、効率を下げたから排出量が増えてもしようがないじゃないかということをおっしゃる方がいるんですけれども、そうではないんですね。それを出すことによって、もう既にいろんな方が、まあ死んでいるという言い方は語弊があるかもしれません、被害を受けていると。だから、水銀と全く同じような汚染物質だという認識が必要だと思います。  かつ、それを出すのをやめろと言っているわけじゃなくて、出すんだったらコストを払ってくださいと言っているということです。そのコストも日本全体で払いましょうと、どこかの産業にコストを責任転嫁するわけじゃなくて、日本全体で。かつ、そのためにどうすれば一番安くできるかというのが排出量取引制度だと思います。  先ほど五十二兆円というお話が出たんですけれども、五十二兆円、いわゆる初期投資コストで、その後浮いた省エネコストというのは入れていない計算だと思います。なので、かなりミスリーディングな数字だと思います。  あと、先ほどちょっと質問で、そういう各産業のコストをどういう研究機関がやっているかということなんですけれども、マッキンゼーというコンサルタント会社が全世界の各産業ごとの限界削減費用のカーブをかいています。この前バリでも発表がありましたし、洞爺湖サミットに向けて全世界のデータを出すと言っています。なので、そういうのが出れば日本でも、もう数字は私、知っているんですけれども、幾つかそういう動きはあります。その中で、どういうふうにデータが、どういう前提が違うのかという突き合わせの作業をして共通のそういう削減コストカーブというのを作るというのが理想だと思います。  以上です。
  31. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) 今の件ですけれども日本政府が五月八日にパリで世界の関係者を集めて比較の研究をやろうということをしておるということを申し上げたいと思います。  質問にございました二点について申し上げますが、私のこの絵の入った、ちょっとたくさんになります、この書類の六ページをちょっと見ていただきたいんですけれども、こんな絵があります。上の方にグラフがあって、下の方に棒グラフみたいなのがあるんですけれども、六ページでございますけれども。  先ほど私、日本リープフロッグに成功したという話をいたしまして、七〇年代は非常に長期的に見ればすばらしい国だったんですね。しかしながら、今でもその夢をいろいろと語る方もいらっしゃるんですけれども、実際何が起こっているかというのは、六ページの上の絵を見ていただくと、先ほどのリープフロッグした後、ほかの国がどんどんどんどん日本に今、追い付いている状況、特に右側のエネルギー消費原単位の推移というのを見ていただきますと、一九九〇年から二〇〇五年ぐらいにわたる非常にバブル以降の停滞期において技術進歩も余り進まなかったという状況が見られております。それに比べますと、ヨーロッパの国、アメリカも含めてでございますけれども、非常な勢いで、これはGDP当たりエネルギーでございますけれども、それを下げていると。その様子がまさに、この左の絵というのは、これは二酸化炭素削減目標値をえい、やっとかいた絵ですけれども、ちょっと似ているなと思いますが、目標を定めればどんどん進むんじゃないかということで早めにやっていただきたい。  日本が二・二二トンとあります。これは古い方のエネルギー需給見通しで最大の努力をしたときということで挙がっている数字です。二・二二という数字が左の絵にございますけれども、それが日本数字です。ですから、早く目標を定めてほしいと思います。  実際それを分析したのが下の絵でございまして、一九七三年から、茶色の方ですけれども、一九九〇年のころはどこで二酸化炭素を減らしていったかといいますと、一番左に、下の方に出ております、三・九〇と書いてありますが、エネルギー効率が非常にいい技術開発をしていったということが言えます。その間に経済成長は、右側の方にあります⑤、七・五二と書いた縦に長い上の方に向いた棒ですけれども、経済成長しながらエネルギー効率を改善していったと。  一方、この紫色の方は一九九〇年から二〇〇四年の絵でありますけれども、それから見ますと、今CO2が減っているのはむしろ産業構造変化であると。第三次産業への移行であって、エネルギー効率変化自身は一・四五と書いてございますけれども、かえって、言ってみればマイナスだったといった状況があります。  私は、これが一番日本の産業にとって危険な状況であるということを言っておるんですけれども、皆さん、昔の夢ばっかりおっしゃって、なかなか本気になっていただけないというのが残念です。一点。  それから、第二点ですけれども、その次のページ、七ページに私どもがやりました墨絵でかいてあるやつ、下の絵を見ていただきます。富士山の下辺りにGDPがどうなっていくかという話が書いてあります。  私ども二つシナリオシナリオA、シナリオBでやっておりますけれども、例えばシナリオAでいきますと、人口が九千四百万人と想定されております。シナリオBの方はゆったりした社会で、これ、人口が増えるんですね。そうなりますと、人口はまず減っていくと、しかしながらGDPは上がっていくと。おっしゃるように、人口の減る要因は、やっぱり需要全体については減る方向になります。ですから、例えば交通量がもう既に減っているという話をしましたけれども、交通量なんかますます減っていくであろう。しかも、高齢化で特に自動車からの排出等々は、自動車に乗る人も少なくなるという状況で効いてくる。  人口の影響につきましては、最初に大枠に産業の構造を推定するときにその数字を入れてやっておりますので、そこで大体、おっしゃるように、人口が三千人減るのならば二千人分ぐらいはやっぱり減っていくということで、それだけでも結構稼げると。そんなこと言っちゃ、どっちを稼ぐ、何がいいのかよく分からないという状況は見られます。
  32. 広中和歌子

    広中和歌子君 ありがとうございました。
  33. 石井一

    会長石井一君) それじゃ、山内徳信君。
  34. 山内徳信

    ○山内徳信君 私は、WWFジャパンの顧問をしていらっしゃいます鮎川先生にお伺いしたいと思います。  今年は、二〇〇八年を国際サンゴ礁年として国際的な取組が進んでおりますが、なかなか、日本国内ではそういうPRも不十分のような感じがいたします。  そこで、国際サンゴ礁年にふさわしい、快挙といいますか、三月二十二日に、WWFJの皆さんは、衛星利用測位システムを使って、あるいは潜水を通して、沖縄の太平洋側にあります、沖縄本島の太平洋側ですね、大浦湾にそそり立つアオサンゴと、こういうふうにマスコミは報道をしております。そして、目崎茂和南山大学教授は、内湾にこれだけのサンゴ群落があるのは珍しい、また十数メートルもそそり立った壁を形成しているのは見たことがない、形状的には世界でもまれではないかと、こういうふうにこのアオサンゴの群落を評価をしていらっしゃいますが、やはり陸上においても、あるいは海洋においても、そこに住んでおる生物たちは悲鳴を上げております。  先ほど、明日香先生のお話の中にも、アフリカからヨーロッパ等々に多くの難民といいますか、人間が移っておる状況の説明がございました。そういうことで、やはり今残っている自然環境、これを守っていくということは非常に大事なことだと思います。  そこで、私の質問は、自然保護関係のお仕事をしておられるWWFJとして、環境省と力を合わせて、このそそり立つアオサンゴを是非守ってほしい。そういうふうに現場で個々の対応をすることによって、今問題になっている地球温暖化への人間として、人類として、あるいは日本国民として具体的な貢献であり、実践だろうと思っております。そのことについて顧問としてのお気持ちを是非お伺いしたいと思います。
  35. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) 済みません。私、顧問とはいえ気候変動の顧問でして、確かにサンゴ礁のことをやっている人たちはWWFの中にいますし、この目崎先生は私たちのまさに顧問であって、そういうことをやっているんですけれども、申し訳ないんですけれども、ちょっとこのそそり立つサンゴに対しては、エコパートナーズという助成基金がありまして、それを使って地元のNGOに対して支援をする形でこれを実現させようというふうにやっております。
  36. 山内徳信

    ○山内徳信君 ありがとうございました。
  37. 石井一

    会長石井一君) それじゃ、荒井広幸君。
  38. 荒井広幸

    ○荒井広幸君 長時間ありがとうございます。  私は、家庭の電力需要を削減するという形で貢献する家電の買換えの特例というのを提案しているんですが、これについてお三方から御意見を伺いたいと思っているんです。  まず、京都議定書の問題意識の走りは、京都議定書、我が国は達成困難ではないかと。このときに、まず私たち一人一人ができるのは家庭ですから、家庭での細かに電気を消すなどということももちろんあるわけですが、もったいないので何年も使っているという一方の経済的な気持ちはありますが、本当にもったいないというのは、炭素社会を招かないことはやっぱり本当にもったいないとは言えないということですから、家電を特に、先ほどお話がありましたように、蛍光灯なども非常に大きな分野ですが、電力需要は約三分の一からもうちょっと多いわけですね。その最たるものはテレビとエアコンと冷蔵庫なんです。これを置き換えをさせると。  置き換えをさせますと、先ほどもお話がありましたように、経産省の試算では、みんなで最善の努力をしたら一家の家は五十万円の投資が必要だというような経産省の答申なんですが、果たしてそれだけの投資をするだろうかと、経済的な考え方で。  そうなりますと、幾つかの組合せが必要だと。一つは控除ですね。買ったら、それを税金からまける、それから補助金を出す。これは今までもやっていることなので、これもグリーンカーと同じようにできると思うんですが、私は二つの新しい概念を提起をしています。  一つは、企業に使われているESCOです。これをホームESCO、つまり新しい家電に置き換えますと電力料金が下がる、下がる分を前取りしてローンを組む、これは金融機関の力が必要なんですが、そして毎年安くなった分、これで返済をしていく、こういう考え方を一つきっちり立てるべきだと。そのときに、ローンの金利は優遇させますから、優遇金利の分の利子補給を国が行う。  もう一つの提案は、まさに国内版CDMクレジットの制度化です。これは今、経産と環境で始まっているのは、言ってみればBツーBですね。これをBツーC、つまり家庭に置き換える。家電を買い換えますことによって家庭からの排出量は下がるわけですから、その部分、これをクレジットで計算をしてあげる。  そうすると、エアコンの場合は、五年ぐらい新しい最新の家電にしますと二トン削減できますので、相場がトン二千円とすれば四千円、これはキャッシュバックできるわけです。非常にインセンティブが働きます。クレジットですから、仮に今一・六の枠ですが、これは足りないでしょう、恐らく。海外から、企業から買うんだったら国内から買う、こういう発想あっていいと思いますので、国内版CDMクレジットでこれをキャッシュバックも含めて考える。  この四つで買換えの特例を掛ける。この買換え特例は第一約束期間、二〇一二年までとする。これによりまして、一つは、先ほどのリープフロッグのところですが、たまたまではありませんが、日本はしっかりできているものですから、家電リサイクル法によりまして、テレビ、エアコン、冷蔵庫、これは原則的にリユースはできませんから、どこかの国にこれが持っていかれるというのは建前はあっちゃいけないんです、実は行っているんですけど。バーゼル条約違反すれすれなんですね。これはもう全部、リユースではなくてほかの2Rの方に持っていく努力が必要なんですが、そういうことも含めて非常に世界の国にも、それによって、日本技術力の結集ですし、安くなりますから、それは海外の購買力の低い方々も買えるということで世界貢献にもなります。  こういったことを私は考えておるんですが、この家電買換え特例というものについてどのように評価されるか。効果があるか、あるいはやるだけの意味があるか、この辺ざっくばらんにお三方にお聞かせいただければ幸いでございます。
  39. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) ちょっと話が大きくなってしまうんですけれども、よく私、聞いた話なんですけれども温暖化対策にも心技体が必要だと。心というのは、心で何とかしなきゃいけないと。技は技術ですね。体は制度です。だから、心だけあっても駄目ですし、技術だけであっても駄目で、制度がなきゃ駄目です。でも、制度だけあってもしようがないんですけれど、ですが、制度がなければ、技術も生まれませんし、心も生まれないというのは確かだと思いますので、そういう意味でいろんな制度が可能だと思います。  そのときに、今お話を聞いて正直思ったのは、やはり一番最初にやらなきゃいけなくて、かつ効率的なのが炭素に価格を付けることかなと。それで買換えも進みますし、行政コストも低いですし、国全体でのコストも、例えばどの製品を買い換えるとか、そういうのを決めなきゃいけないので、そういうのを決めると結局はすごく細かく大変な作業になると思うんですね。政府はそういう情報は全部分かっていませんので、そういう、いわゆる情報の非対称性において一番効果的、効率的なのは、排出量取引でカーボンに価格を付けて市場に任せるというのが一番いいのかなと。  ですが、当然個々の補助金政策というのも私も重要だと思うんですね。よく言われているのは、まさに先ほど出たオークションで得た収入をそういうところに充てると。政府がある程度補償するときの、ローンでもいいし、キャッシュバックでも何でもいいんですけれど、それは家庭だけじゃなく産業に対してもそのような制度は必要だとは思います。  ですが、順番としてどっちがいいかというと、排出量取引制度を入れて、その後に、そこで例えば困る企業なり、もっと促進したい家庭なり企業に対してはそのお金を使うという方がより効果的、効率的なのかなとは思います。
  40. 鮎川ゆりか

    参考人鮎川ゆりか君) 私も明日香先生と同じような考えなんですけれども、やはりこの私たちの提案の中にもそういう部門も入れています。排出量取引は大規模排出者に向けた政策なので、小規模排出者である業務部門だとか家庭だとか、そういうところに対してはいろいろほかの措置を考えているんですけど、その一つとして国内版CDMというのもやっていて、それもやはり一トンが同じ一トンだというふうにきちんと保証できるように、ベースラインを作るための国連のCDM理事会の日本版みたいなものをつくって、そこでちゃんとやると。そういうふうにやることによって一トンの削減というものがきちんとした裏打ちが、AAUの裏打ちがあるということを保証するような制度を提案しています。ですから、そういうふうに制度、CO2に価格を付けるということがまさに一番買換えが進んでそれぞれの部門での削減が進むことだと思います。  そして、さっき広中先生のところで答え忘れちゃったことが思い付いたのでもう一回ちょっと言わせていただきたいなと思ったんですけれども、ちょうど一年ぐらい前の昨年の一月末にヨーロッパに行ったんですけれども、ドイツに行ったんですけれども、そのときちょうど第二フェーズに向けて各国排出枠の割当てについて国会で議論しているんですね。ですから、どの産業に何トン排出枠を与えるかというのが国会で議論されているんです。それがすごくショックで、ショックというかカルチャーショックで、国会でそのぐらい議論するようになれば国民もすごく意識が上がるだろうなということで、すごくそういう意味のやっぱりキャップ・アンド・トレードというか、そのぐらい切実に各業種が国会に、国会でも議論されていることに対していろいろ言ったりとかお願いに行ったりとか、それでまた議論がいろいろあったりとかして、それで、それをまたEUの委員会に持っていって却下されたりとか、そういうのがニュースになるし、国会でやられているということがすごく大きいなというふうに思いました。
  41. 石井一

    会長石井一君) 西岡参考人、いかがですか。
  42. 西岡秀三

    参考人西岡秀三君) 特にございませんが、家庭の中では、給湯の次にやはり冷蔵庫を、ずっとつけっ放しですから非常に効くということで、もし個別にどれかを選ぶということになりますと、冷蔵庫等々は非常にいいんではないか。  しかし、もう一つ大切だといいましょうか、今ドイツの方で太陽エネルギーが非常に伸びているといったこともあって、あれも補助金でもっともっとやっておけばよかったなんということがあって、どこが一番効率的なのか、もう少し検討させていただければと思っております。
  43. 石井一

    会長石井一君) それでは、島尻安伊子委員。最後の質問者です。
  44. 島尻安伊子

    島尻安伊子君 ありがとうございます。  私は明日香参考人にお聞きをしたいというふうに思っておりまして、参考資料としていただいた「豊かさと公平性をめぐる攻防」と先生がお書きになっているものをちょっと見せていただきまして、その最後の方、「時代は動いている」という中で二酸化炭素排出総量のラベル表示というものを見付けましてとても興味があるんですけれども、この件に関しての、「オックスフォード大学に計算方法の開発を委託する」というくだりがあるんですけど、ちょっとこの辺のことを詳しくお聞きしたいなというふうに思っておりまして、今現在はまだこれは出ていないのかなというふうに思うんですけれども、いつごろ出て、この計算式、いわゆるこのスケールが世界的に認知されるものになり得る可能性というか、この辺をお聞きしたいというふうに思います。お願いします。
  45. 明日香壽川

    参考人明日香壽川君) そこに書きました多分スーパーはまだやっていないと思うんですが、幾つかそういうのをやっている製品なり商店はあります。  まさに今、僕がそこで言いたかったのは、CO2排出量が、例えばお弁当だったらカロリーというのが出てくると思うんですけれど、それと同じような感じで、このお弁当は作るのに何カロリー、まあお弁当はちょっとあれですけれど、この車を造るには何CO2必要で、運転するのにはどのくらいのCO2を出しますよというのが商品として出るということが非常に重要だとは思います。  今、カーボンオフセットという言葉をお聞きになった方もいらっしゃるかと思いますけれども、まさに商品にCO2が値段が付いて、それでクレジットみたいなのが普通にコンビニで売られるような状況になっていると思います。でも、結局は、そのCO2が見えるという、CO2の量が見える、自分が買ったものが、出したものが、何かをやるとどれだけCO2になるんだということが見えるということが一番大事だと思いまして、見えただけじゃなくて、それは価値があるんだということをみんなが理解するということが一番大事だと思います。  実際、そのCO2排出量、例えばこのコンピューターはどれだけCO2を出したかというのを計算するのはそんな簡単じゃないんですね、どこからどういう部品を使ってきてというのは。だから、かなり本当にやるんだったら時間掛かりますし、実際、それで国際的なルールができるのはちょっと時間掛かると思うんですが、ある意味ではもうそれは先行してやっているところもありますし、数字の細かい、正しい、正しくないというよりも、数字が見える化していって、同じものだったらより少ないものを選ぶということが非常に革命的だとも私は思っています。
  46. 島尻安伊子

    島尻安伊子君 ありがとうございました。
  47. 石井一

    会長石井一君) それでは、多少時間が残っておりますが、本日はこの程度質疑を終了させていただきたいと存じます。  一言ごあいさつ申し上げます。  西岡鮎川明日香参考人におかれましては、長時間にわたりまして大変貴重な御意見の陳述をいただきまして、ありがとうございました。調査会にとりまして大変有益な参考意見でありました。  それでは、本日はこれで散会いたします。    午後二時五十分散会