○
参考人(
大野輝之君) 東
京都の都
市地球環境部長の
大野でございます。
本日は、東
京都の温暖化対策の御
説明をさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私はパワーポイントを用意をいたしませんでしたので、お手元のA3の
資料の方で御
説明申し上げたいと思います。
まず、最初の表紙のところでございますけれ
ども、二〇〇六年十二月、左の方に「「十年後の
東京」策定」と書いてございます。東
京都は、その上に書いてございますが、二〇〇二年の二月から「地球温暖化阻止!
東京作戦」というのを始めておりまして、この二〇〇二年から温暖化対策を進めているわけでございますが、特に最近強化を始めましたのは、この二〇〇六年十二月の「十年後の
東京」という
都市戦略を作ってからということでございます。
この中で、温暖化
ガスの
削減目標としまして、二〇二〇年までに二〇〇〇年比で二五%
削減するという
目標を立てました。これを具体化するために、昨年六月に「東
京都気候変動対策方針」という方針を立てました。
この中で、大規模な
事業所に対します
排出量の
削減義務の導入と、それを補完する
排出量取引制度の導入という方針を提起したわけでございます。この方針につきまして経済界の方からもいろんな御
意見をいただきましたので、
意見交換会、ステークホルダーミーティングと申しますものを三回
程度実施をしてまいりました。
昨年の十二月以降でございますが、
一つは
事業として
補助制度をつくるとか、そういう
事業としては、実行プログラムを作ると同時に、東
京都の
環境審議会で条例改正の御議論をいただきまして、この三月に、つい先週でございますけれ
ども、最終答申をいただきました。この後は、この最終答申を基にしまして、今年度中、二〇〇八年度中に条例改正をして
削減義務の導入を図ってまいりたいと思っております。
一ページ目の左側の方にロンドン、パリ、ニューヨーク云々という記載がございます。これは、二〇〇七年、昨年は、東
京都は六月に気候変動方針というのを出したわけでございますけれ
ども、同じように、ロンドンは昨年二月、パリは昨年十月、ニューヨークは四月に同じような気候変動対策の方針を立てております。それぞれ記載のようなかなり高い
目標を掲げているということでございます。これは必ずしも偶然ということではございませんで、世界の大
都市四十の
都市が集まった世界大
都市気候先導グループというグループがございます。この中で情報交換をしながら、各国の首都が
中心になって気候変動対策をリードしていこうというふうな
取組を進めているということでございます。
では、一ページお開きいただきたいと思います。まず、東
京都の
地球温暖化対策の全体像でございます。
左側の方に
棒グラフがございまして、東
京都の
CO2排出量の
現状が書いてございます。ここは、二〇〇〇年比でというふうに申し上げていますので二〇〇〇年のデータを掲げておりますが、約六千万トンの
CO2が
東京の
都市活動に起因して発生をしております。そのうち、四四%が
産業・業務
部門、
家庭部門が二四%、
運輸部門が三〇%というふうな構成になっております。
この
産業・業務
部門の四四%ですが、そのうちの約四割が大規模な
事業所から排出をされております。この大規模な
事業所と申しますのは、約千三百の
事業所でございまして、
事業所数ではわずか〇・二%
程度なんでございますけれ
ども、その〇・二%が約四割を排出しているということでございますので、私
どもとしては、この大きなところについては
削減の義務を導入する必要があるだろうと思っております。
その大規模
事業所の
削減義務につきましては、この後詳しく御
説明申し上げます。
〔
会長退席、理事
広中和歌子君着席〕
先に、
右側の方の山吹色でございますが、中小規模
事業所に対する対策でございます。
中小規模の
事業所、約七十万
事業所、都内にあるわけでございますけれ
ども、なかなか省エネの知識が十分にないというようなことがございまして、
取組がまだ十分進んでいないということがございます。ただ、それだけ逆に、少しの
取組でかなり大きく減らせるという余地があるということもございます。
一番右に書いてございますけれ
ども、
平成十八年にこの中小規模
事業所の二十四か所の
調査をしたわけでございますけれ
ども、この
調査によりますと、約五百六十万円投資をしますと
CO2が一一%減らせると。しかも、これによりまして光熱費が減りますので、それで毎年百六十万円光熱費が減るということで、投資をしても三・五年で元が取れると、
CO2が減るということになっております。中小規模の
事業所に対しましては、こうした省エネの促進をいろんな形で進めていこうと思っております。
それから二つ目は、
家庭の節電、省エネでございます。
これについてもまだまだ本格的には
取組は始まっていないと思っておりまして、節電の徹底でございますとか、特に
太陽光、太陽熱の普及に力を尽くしてまいろうと思っております。また、もう
一つは高効率の給湯器の普及であります。
家庭で使っている
エネルギーを見ますと、約三分の一が給湯、お湯を作るために使われております。ここが非常にウエートが高いわけでございますけれ
ども、これについては、例えば
東京電力さんの方ではエコキュートというような高効率の給湯器、
東京ガスさんの方ではエコジョーズというふうな給湯器が出ておりまして、これに交換するだけで十数%から三十数%ぐらい
CO2が減るという
効果がございます。まだまだ普及が遅れておりますので、こうしたものの普及を促進してまいりたいというふうに思っております。
それから、
自動車でございますけれ
ども、これについても、低燃費車の
利用の促進ルールを作ることでございますとか、それから、
事業者のエコドライブの促進等々について進めてまいりたいと思っております。
一番左の下でございますけれ
ども、こうした温暖化対策を進めることによりまして、
一つは、企業や
家庭の光熱費が減るというメリットがございます。それから二つ目には、省
エネルギーや再生可能
エネルギー、自然
エネルギーの新しいビジネスが発展するというメリットがございます。そういう
取組を通して、最終的には
東京が低炭素社会のモデル
都市として世界にアピールしていけると、そうしたメリットがあるだろうと考えております。
では、もう一枚おめくりください。大規模
事業所への対策でございます。
大規模な
事業所に対しましては、先ほど申し上げましたように、総量
削減義務と
削減量取引、
排出量取引の制度を導入していこうと思っております。私
どもはこれを突然やぶから棒に去年言い出したというわけではございませんで、実は二〇〇二年からこの前のステップの制度を実施をしております。
一番下に横長のチャートが書いてございますが、東
京都は二〇〇〇年の十二月に
環境確保条例という条例に改正いたしまして、これに基づいて、二〇〇二年四月から大規模な
事業所に
削減の計画を作ってもらう制度を実施をいたしました。この制度は、最初、二〇〇二年から二〇〇四年まで三年間実施をいたしました。実施をしたんですけれ
ども、この三年間の
取組によりますと、
目標を自主的に立てていただいたんですけれ
ども、三年間で二%という
削減目標でございました。
ちょっとこれではいかにも不十分であるということで条例改正をいたしまして、二〇〇五年から現行、新しい制度に移行いたしました。
これは、計画を作っていただくことは義務ですけれ
ども、
削減自体は義務ではないと。ただ、前の制度と違うのは、まず案を出していただきまして、その案を我々が見させていただきまして、こういう点ああいう点の対策をされたらどうですかという御指導を申し上げて、かつ、その結果をAとかBとかCとかランキングをして発表するという制度でございます。この制度によりまして、五年間で六%の
削減目標と
目標が上がりました。これは一歩、大きな成果であったと思います。
ただ、この後、ポスト
京都の大幅な
削減を考えますと、なかなかこれでも不十分だろうというふうに考えまして、第三段階として総量
削減義務の導入を提起をしたということでございます。ですから、我々としては、第一、第二、第三と、ホップ・ステップ・ジャンプというふうに段階を踏んで制度の強化を進めてきているというふうに考えております。
上の方に返っていただきまして、この総量
削減義務でございますが、基本は、右の方でございますけれ
ども、自分の
事業所で減らしていただくというのが基本でございます。どうしても減らし切れない場合に、補完として
排出量取引、ほかからの
削減量も充ててもいいでしょうというふうな考え方になっております。
じゃ、実際どんなふうに減らされるんだろうかということでございますけれ
ども、
東京のその千三百の対象
事業所のうち、
東京は非常にオフィスが多うございまして、約一千か所はオフィスの業務
部門でございます。
したがいまして、ここではオフィスを例に挙げて御
説明を申し上げるわけでございますが、真ん中辺にオフィスビルの
エネルギー消費というグラフがございます。このオフィスビルを見ますと、約三割の
エネルギーが空調関係、冷暖房関係で使われております。約二割が照明でございます。それから、それ以外、約二割がコンセントからの、パソコンを使うとかこういう機器を使うとか、そういう機器。残りがそれ以外となっております。
今日は、この一番ウエートの大きい空調関係と、それから照明について例を示して御
説明申し上げますが、まず冷暖房設備でございます。
これも、最新の省エネ機器は非常に効率がいいものが出てきておりまして、これに買い換えることによって、例えば四割とか三割とか、使用
エネルギー、つまり
CO2が減るということがございます。
その右にブルーのラインで対象
事業所の現況を書いてございますけれ
ども、これは、私
どもが
調査をいたしまして、対象になる
事業所がその空調機器、熱源機器など、いつ導入されたもので、いつになったらどれぐらい更新されるかという
調査をしたものでございます。
それによりますと、二〇一五年には約七割が更新時期を迎える、二〇二〇年には九割が迎えるということでございますので、こういうタイミングをとらまえまして、一番効率がいいものに替えていただければ相当
効果が上がるだろうというふうに考えています。
あるメーカーに聞きますと、この空調機器も、やっぱり性能がいいもの、普通のもの、すごくいいものとあるわけでございますが、すごくいいものというのはちょっと高いものですから一割ぐらいしか売れていないというお話も聞いていますので、
削減義務を課すことによって一番いいものに買い換えるということからすれば相当
CO2削減の
効果が上がるだろうと思っております。
照明につきましても同様でございまして、インバーター照明の最新のものに替えますと、既存のものの約五割
エネルギー使用量が減るということでございます。これも同様に更新時期を見ますと、二〇一五年には
東京の大規模
事業所の九割が更新時期を迎えますので、その機をとらまえていいものにしていっていただくというふうなことを考えているわけでございます。
これ以外にも、小まめな節電でございますとか、様々な設備の更新によりまして大規模な
事業所には相当
削減の余地があるんじゃなかろうかと考えております。
もう一枚おめくりください。では、実際にどんなふうにして
削減の義務を課していくんだろうかということでございます。
削減義務量の設定方法でございますが、私
どもが考えておりますのは、左上のボックスでございますけれ
ども、まず基準の
排出量、これをベースにするということで、これは各
事業所の実際の過去の
排出量をベースにしようというふうに考えております。
エネルギー使用の実態というのは、同じオフィスビルでも、例えば外資系のテナントが入っているビルなんかはどうしても使用量が多いとか特徴がございますので、なかなか一律の基準というわけにもまいりません。したがいまして、これは、各
事業所の実際の
排出量をベースにして、これをまず基本にしていこうと。これに
削減義務率を掛け合わせますことによって
削減義務量が決まってくるということです。
この
削減義務率に関しましては二つの視点を踏まえて決めようと思っております。
一つは、実際にどれぐらい
削減の余地があるんだろうかということでございます。我々は千三百
事業所のデータを二〇〇二年から持っておりますので、実際にどういうふうな対策が各
事業所でやられているかという把握をしております。それに基づく分析を現在進めておりまして、そのデータを踏まえて、このくらいの余地があるだろうという言わば積み上げを行っております。
ただ、積み上げだけですと少し足りない分がございますので、もう
一つの視点は、二〇二〇年までに二五%減らすというマクロの大きな
観点からいってどのぐらい必要なんだろうかということで、積み上げの視点と上からの視点と両方合わせまして
削減義務率を決めていこうと考えております。基準の
排出量にこの
削減義務率を掛けることによりまして、個々、千三百
事業所それぞれに応じた
削減義務量が決まってくるというふうに考えております。
具体的な例で下の方に
三つの例をお示ししておりますけれ
ども、まず左側でございます。一般の
事業所の場合でありますけれ
ども、例えば一万トンの
CO2を出している
事業所があったとします。ここに一〇%の
削減義務が掛かりますと一千トンの
削減が義務になりますので、これを新しい
削減義務期間の間に
削減をしてもらうということになります。
これに対して、特例と申しますか、配慮が二つございまして、
一つは、配慮の一と書いてございますが、既にこれまで相当減らしてきている
事業所でございます。この場合には全く同じように扱うのはおかしいわけでございますので、こうした
事業所の場合には、過去に減らした分をその義務の履行に充ててもいいという制度にしようと思っております。例えば、過去に五百トン既に
削減実績があるものについては残り五百トンを
削減すればいいというものでございます。これが配慮の一です。
配慮の二、
右側でございますけれ
ども、これは、新しいビルなどで、今までの
削減実績はないんだけれ
ども、新しいビルなので初めは相当いい省エネ効率の機器が入っていると。逆に言うと、余り
削減の余地がないと。当然これもございます。この場合には
削減義務率を軽減すると。例えば半減するということによって、やはりこの場合にも、本来は一千トンの
削減義務なんですけれ
ども、五百トン減らせばいいというふうな配慮をしようと思っております。
これによりまして、これまで取り組んだところ、あるいはこれから取り組もうとしているところについては、その努力が配慮される制度になるんだろうというふうに考えております。
もう一枚おめくりください。大規模
事業所対策でございます。
削減量取引の方でございます。
今申し上げましたように、私
どもは、基本としては自分の
事業所で減らしていただくということでございますけれ
ども、しかし、業況が回復するとか活動量が増える等々でどうしても減らし切れない場合がございます。その場合に、直ちにこれが条例違反で罰則の適用というのでは余りに厳し過ぎますので、そういう場合にはほかの
事業所から
削減量を調達してもいいですよという制度にしようと思っております。
そのパターンが大きく
三つあると考えておりまして、
一つが大規模な
CO2排出
事業所、つまり対象
事業所同士の取引です。この場合、ただし、取引ができるのは
削減義務量を超えて減らした分だけということでございます。こういう制度ができますと、私
どもの方で登録簿を作りましてこれを公開しますので、それを見ていただければ、どの
事業所が義務量以上に減っているか、どの
事業所が足りないかというのが分かりますので、その情報を基にして取引をしていただくと。あるいは、その仲介
事業者の方が仲を取り持って取引をするというふうな形が進んでいくだろうと、進めていきたいと思っております。
それから、第二は中小規模
事業所の
削減量の調達ということであります。
中小規模の
事業所には
削減義務は課しませんけれ
ども、やっぱり中小の
取組の促進は大事でございますので、中小規模
事業所が省エネ対策をやって、それで減らした分についてはその
削減量を認定しまして、それを調達することによって大規模
事業所の
削減義務の履行に充てられるという仕組みを考えております。これによって、大規模の方もメリットがあるし、中小の方もメリットがあるという形になると思っております。例えば、同会社、系列会社間での取引でございますとか、省エネ
事業者等が仲介をした取引というものが進んでいくと思っております。
それから、第三はグリーン電力証書の購入ということでございまして、現在でも、自然
エネルギーを
利用する場合にそれが証書という形で取引がされております。
例えばソニーさん。ソニーの本社さんなんか銀座にございますけれ
ども、ここは、使っている
エネルギーのほとんど全部をグリーン
エネルギーで使っているということでございます。といっても、これは直接そこに風力発電があるわけじゃございませんので、風力発電で例えば青森の方とかで発電されたものを証書化してその
環境の価値の分だけを充てるという仕組みがございます。この仕組みを我々も支援していこうと思っておりまして、対象の
事業所が
削減を履行する手段としてグリーン電力の購入によってもいいですよということにしようと思っています。これによって、一方では再生可能
エネルギーの拡大につなげていこうということでございます。
概略、以上のような制度を現在考えているということでございます。
もう一枚おめくりいただきまして、あとは
参考でございますが、少しだけ残りの時間で御
説明をさせていただきます。
この
削減義務と
排出量取引制度につきましては、昨年の六月に提起をしたところでございますが、かなり経団連を始めとして経済界の皆様からいろんな御
意見をいただきました。ステークホルダー会議という
意見交換会をやったわけでございますが、今年の一月に経団連などの団体から
意見書をいただきました。
その要旨がこの
参考というペーパーの左の上に書いてあるわけでございますが、EUの方で
排出量取引をやっております。それを引き合いに出されまして、東
京都はEU—ETS、EUの制度の問題点を学ぶべきであるということで、EUの制度には実効性がないんだということであるとか、EUにおいてもEUの
排出量取引は批判に遭っているんだと、東
京都がEUの失敗例を後追いすることは賢明ではないんじゃなかろうかという御
意見をいただきました。
これに対する私たちの基本的考え方でございますが、
右側にございます。
一つは、東
京都の今御
説明しました制度は、我々が五年間あるいは六年間都でやってきた制度をベースにしたものでございまして、これはEUの仕組みをコピーしたものではございません。これが第一点です。
それから第二は、
削減義務と
排出量取引にはいろんなバージョンがございまして、これが世界各地で検討が進んでおります。したがいまして、これはそういうことでございますので、東
京都の制度を議論するときに、EUがどうだこうだという議論するのは余り
意味がないだろうと思っております。
ただ、経団連様から東
京都の制度の批判として、EUの制度と同じであって、かつ、それが機能していないんだという御指摘をいただきましたものですから、私
どもとしても、今後の建設的な議論の出発点とするためにEUの実態についても若干調べたものでございます。これは、一月に開かれました関係団体のステークホルダー会議で紹介をした
資料をこのページ以降に
参考としてお付けしております。
今日はここがメーンでございませんので詳しくは御
説明いたしませんが、例えば第一点でございますと、論点一と書いてございますが、御批判をいただいたのは、EUの制度自身が実効性が上がっていないんだというふうな御指摘がございました。これもいろんな理由がございまして、EUは二〇〇五年から制度を実施しているわけでございますが、実はEUが二〇〇五年に制度をつくるときには、EUの制度は一万一千五百の施設が対象なんですけれ
ども、各国ともにそれぞれの施設がどういう
排出量かというデータを持っていなかったんですね。ですから、客観的な割当てができなかったという実態がございます。これに対して、私
どもは既に二〇〇二年からデータを持っておりますので、もっと客観的な割当てができると考えております。
EU自身も、第一期はそういうことだったんですが、今年から第二期に入っておりますし、それから二〇一三年からは第三期に入るというふうに
予定を発表しておりまして、そこではかなり厳しい
目標が立てられているということでございます。これを含めまして、
幾つかの点について我々が
調査した中身を記載してございますので、これは
参考にしていただければと思います。
以上でございます。