○古川俊治君
是非、長期的な視点も含めて御検討いただければと思っております。
これから医療行為の
特許についてお伺いをしようと思います。
実務上、医療というものは産業ではないという解釈がずっと続けられておりまして、人間の治療方法や診断方法という発明は産業上の利用可能性がないということで
特許能力が否定されてまいりました。これは伝統的に、すなわち医療行為というのは人の尊厳や生存というものに深くかかわるものであるから、
特許保護の対象とせずに人類のために広く開放すべきであると、こういう議論が行われてきたわけであります。
しかしながら、現状の医療の実態というものを見ますと、この根拠というものが必ずしももう的を射ていないんだろうというように考えております。
その理由といたしましては、医療行為が人の生存や尊厳というものに深くかかわる、これは事実としましても、人の生存や尊厳に深くかかわるものというのは医療のほかにも幾らでもあるわけですね。そういったものの中に
特許性の認められているものも数多くあるということがまず
一つの問題であります。
それから、人の尊厳や生存に深くかかわる、だからこそこれを人類のために広く開放をすべきであると、そう考えられるほど重要な
技術なわけですね。であれば、
特許の対象として発達を促進し、それこそが本当により大きく人類の福祉に貢献するんではないか、それこそが
特許という
制度を設けた趣旨に合致するんではないか、こういう考え方もできるわけでございます。
少なくとも今医薬品といったものやあるいは医療機器には
特許が認められておりまして、現代医療というものは、我々が薬や医療機器というものなしにはもう医療が行えない。非常にある意味で、医療の行為自体を、この
特許にはないということで否定しても、結局その医薬品や医療機器を通じて現代の医療というものが大きく
特許権によって左右されているという側面は絶対否定できないわけでありまして、そうすると、いたずらにこの医療行為だけを
特許を否定している限り、やたらに、それ以上にやはり医薬品や医療機器に頼る医療というものをつくり出すという原因にはなるかというように考えられるわけでありまして、そういった意味では、この実態を顧みるに、もはや医療は人の生存や尊厳にかかわるから
特許権の保護を与えないというのはもう合理的な理由がないと考えられるところでございます。
この点は裁判例でも
指摘されておりまして、リーディングケース、有名な判例でございますが、東京高裁の
平成十四年四月十一日、これは今問題としまして、もし医療が
特許を認めてしまうと、医師が損害賠償や差止め請求を受けることを恐れてやらなくなるからという理由があるんですが、これに対してしっかりとした法的な保護を手当てをしておけば十分に医療行為について産業上利用できる発明として
特許性は認め得るというようなニュアンスの判断を行っているということがあるわけでございます。
これを受けて、
平成十四年の七月三日に知的
財産戦略会議が知的
財産戦略大綱を発表しましたけれども、また同年十二月にバイオテクノロジー戦略大綱におきまして、再生医療や遺伝子治療関連
技術などの
技術開発を促進するため、先端医療
技術の
特許法における取扱いを早急に明確化すべきであるとの考え方が示されました。これを受けて、実際に十四年の八月に経産省の中に医療行為の
特許に関するワーキンググループができまして、私も実はその
委員の一人としてこれを議論を行って、医療
特許を認める方の
推進派の一人として頑張って発言をさせていただいたわけでございますが、そこにおいては、当時問題であった培養皮膚シートとか人工骨などの人間に由来するものを原料又は材料として医薬品又は医療機器の製造する方法、これについてはオート、自分に戻すような方法を前提とするものであっても
特許の対象とすると。しかしながら、一般的に医療行為を
特許に、能力を認めるという取扱いにはならなかった。その後、この議論というものは
内閣府の知的
財産戦略本部の調査会において受け継がれているようでございますけれども、現在においてこの議論の
状況はどうなっているのか、御報告をお願いしたいと思います。