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2008-04-08 第169回国会 参議院 議院運営委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成二十年四月八日(火曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員の異動  四月七日     辞任         補欠選任         松野 信夫君     福山 哲郎君  四月八日     辞任         補欠選任         今野  東君     大塚 耕平君      中村 哲治君     大久保 勉君      福山 哲郎君     松野 信夫君      室井 邦彦君     辻  泰弘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         西岡 武夫君     理 事                 池口 修次君                 小川 勝也君                 榛葉賀津也君                 岡田 直樹君                 世耕 弘成君                 山下 栄一君     委 員                 青木  愛君                 大久保 勉君                 大塚 耕平君                 川上 義博君                 佐藤 公治君                 辻  泰弘君                 那谷屋正義君                 直嶋 正行君                 松野 信夫君                 礒崎 陽輔君                 神取  忍君                 島尻安伊子君                 西田 昌司君                 長谷川大紋君                 丸川 珠代君                 山内 俊夫君                 義家 弘介君                 山本 博司君    委員以外の議員        議員       仁比 聡平君        議員       渕上 貞雄君         ─────        議長       江田 五月君        副議長      山東 昭子君         ─────    事務局側        事務総長     小幡 幹雄君        事務次長     橋本 雅史君        議事部長     東海林壽秀君        委員部長     諸星 輝道君        記録部長     富山 哲雄君        警務部長     井高 育央君        庶務部長     古賀 保之君        管理部長     中村  剛君    参考人        日本銀行総裁候        補者        日本銀行総裁  白川 方明君        日本銀行総裁        候補者        一橋大学大学院        商学研究科教授  渡辺 博史君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本銀行総裁及び同副総裁任命同意に関する  件     ─────────────
  2. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) ただいまから議院運営委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本銀行総裁及び同副総裁任命同意に関する件のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁候補者日本銀行総裁白川方明君及び日本銀行総裁候補者一橋大学大学院商学研究科教授渡辺博史君の出席を求め、所信を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) 次に、日本銀行総裁及び同副総裁任命同意に関する件を議題といたします。  候補者から所信を聴取いたします。  まず、白川方明さんからお願いいたします。白川方明さん。
  5. 白川方明

    参考人白川方明君) 白川でございます。よろしくお願いいたします。  本日は所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。  私は三月二十日付けで日本銀行総裁を拝命しましたが、就任後今日まで総裁が欠員であるため、総裁代行としての職務を果たしてまいりました。この間、私が最も強く意識したことは、こうした異例事態が続く中で、日本銀行業務がいかなる意味でも滞ることのないように運営することでありました。  今回、全く図らずも総裁候補としての御指名をいただき、事態の急激な変化に戸惑っています。総裁空席という事態は明らかに異例であり、そうした事態は早急に解消される必要があります。私としては、熟慮を重ねた結果、国会の場で自分なりに所信を申し上げ、その上で同意がいただけるのならば、総裁としての職務を果たすために全身全霊を傾けて努力をする覚悟を決め、その旨、総理に御返事を申し上げた次第です。  日本経済は、現在、国際金融市場動揺世界経済減速エネルギー原材料価格高騰による中小企業収益環境悪化生活関連物資の値上がりなど、内外共に多くのリスク要因を抱えています。先行き日本景気については、当面減速するものの、その後は緩やかな成長を続けるという姿を相対的に蓋然性の高いケースとして想定しています。ただ、最大のリスク要因である国際金融市場動揺について見ますと、米国では一九三〇年代の大恐慌以来の深刻な金融市場動揺が続いています。このような状況の下で日本銀行として重要なことは、予断を持つことなく、見通しの蓋然性上下両方向リスク要因注意深く点検することであり、それに基づいて必要かつ適切な政策を機動的に実施することであると思っています。  昨年夏以降の国際金融市場動揺とそれへの中央銀行対応を見ていますと、中央銀行の本質的な機能流動性の適切な供給配分を通じる金融市場金融システム安定維持であり、危機管理であることを改めて痛感します。幸い、日本金融市場では現在までのところ混乱は生じておらず、相対的に安定を保っていますが、今後とも市場機能維持するために細心の注意が必要であると思っています。  次に、現在の経済金融情勢への対応を離れ、金融政策運営に関する基本的な考え方について申し上げます。  内外通貨歴史を振り返りますと、景気財政為替レートへの短期的な配慮が優先される結果、通貨の発行が過大となり、経済が混乱したことを示す事例には事欠きません。そのような経験を踏まえ、中央銀行という組織に対し金融政策決定の権限を与え、持続的な物価安定の実現という目的に専念させるという考え方が生まれました。これが金融政策独立性という考え方であり、中央銀行の行動を律する重要な原則であると理解しています。しかし、それと同時に、独立性が独善に陥ってはならないことも強く自覚しています。  日本銀行としては、金融政策に関する自らの判断の根拠を国民市場参加者に対して丁寧に分かりやすく説明すること、すなわち透明性を確保することが非常に大事であると考えています。私は、独立性透明性という日本銀行に課せられた二つの重要な原則に基づいて行動することを肝に銘じています。  金融政策運営に当たっては、一方で短期的な景気物価動向に対して十分な注意を払う必要がありますが、他方で、金融政策の効果が経済全体に及ぶには一年から二年程度の長い時間が掛かること、金融実体経済の間には複雑な相互依存関係があることから、足下の動向だけでなく中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があります。これは、従来より日本銀行がフォワードルッキングな金融政策という言葉で表現している考え方です。もとより、経済先行きは常に不確実性に満ちており、中長期的なリスクを的確に認識することは容易ではありません。それだけに、予断を持つことなくいつも謙虚な姿勢で幅広く情報収集に努め、その上で日本銀行内に蓄積されている知識を最大限活用して、適切な政策決定を行うことが求められています。  最後に、総裁という職務遂行に当たっての私自身の心構えを申し上げます。  第一に、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行に課せられた公的な使命の達成に向けて責任を持って取り組みたいと考えています。その際、金融政策金融システム決済システムを始め、日本銀行での様々な業務経験ベースに、専門家として誠実に仕事をしたいと思っています。  第二に、日本銀行という、我が国にとって極めて重要な組織であり、また大きな組織のリーダーであることを十分自覚して仕事に取り組む覚悟です。市場国民に対しては、日本銀行政策運営考え方を分かりやすく説明することに努力します。政策委員会議長としては、メンバーの多様な意見十分耳を傾けた上で必要なリーダーシップを発揮し、政策委員会として適切な政策決定に到達できるように努力します。職員に対しては、モラールを高め、専門的能力が最大限発揮されるような職場づくりに取り組む考えです。  第三に、各国の中央銀行との関係で、あるいはより広く国際金融社会において人的な信頼関係を構築し、緊密な情報交換意見交換を重ねることによって、日本経済ひいては国際経済に対し貢献したいと願っています。  私は、自らが微力であることは十分認識していますが、仮に総裁に選任される場合には、この職務に求められる役割責任を意識しながら努力を重ねることによって、一歩でも二歩でも前に進むために、全身全霊を傾けて職務に励む覚悟です。  御清聴ありがとうございました。
  6. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) 次に、渡辺博史さんにお願いいたします。渡辺博史さん。
  7. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 渡辺でございます。よろしくお願いをいたします。  それでは、御指示に従いまして所信を述べさせていただきます。  最近における世界的な資金の流れを見ますと、潤沢さを増した資金金融資本市場という範疇を超えて、原油などの資源市場にまでその移動する範囲の外延を拡大しながら、高い利回りを求めて、かつ瞬時に世界中を移動するようになっています。  また、新興市場国の貯蓄の拡大をも要因として資金が潤沢になった結果、各市場が同じ方向に動くようになり、プラスという意味での正の相関というか、共に振れるという意味での共振性が強まっております。この結果、リスクに対するヘッジが難しくなっており、市場全体の振幅が増す方向に働いています。  そうした中、米国のサブプライムローン問題に起因して、昨年夏以降、国際金融資本市場は大きく変動するようになり、今年に入ってからますます調整の度合いを深めています。為替相場は約十二年ぶりに一ドル百円の水準を割り込み、原油価格高騰も続いています。  このような急激な市場変動は、市場参加者予見可能性を奪って対応力を損なわせるため、経済を一層減速させるおそれがあります。  このように、サブプライムローン問題を背景とした金融資本市場変動は、特に短期の金融市場の収縮を通じて、投資、消費の両面で米国実体経済減速させています。また、共振性が高まる中で、為替市場変動資源市場の需給が窮屈になることなどに伴う世界経済の下振れリスクが高まっています。  我々が現在直面する課題に取り組むためには、切迫感というか時間の制約という感覚をきちんと持つ必要があります。そして、これへの対応我が国が必ずしも適切に行えなかったことが、長年にわたって世界経済の重要な担い手であった日本が、ここ数年ややその存在感を低下させている背景であります。  今や、米国経済景気後退に伴い、日本経済においても減速感が高まっています。国内要因であった改正建築基準法施行影響は収束しつつありますが、国際的なエネルギー価格穀物価格高騰は続いており、中小企業などや家計に悪影響が及ぶことが懸念されます。  また、中長期的には人口減少という問題があります。これは経済全体の生産性などに大きく影響を与えるとともに、相対的に低い金利という環境の中で、どのように持続的な年金経理を仕組んでいくかという課題にもつながるものであります。一億人という大きな人口を抱える国において急速な高齢化が進行するのは、日本を嚆矢とします。我々にはこの難しい問題に取り組む道筋を全世界に対して示すことが期待されています。  以上申し上げましたことは、この四月から始まりました一橋大学大学院における学生教育においても、若い人々に訴えようと考えていたものでもあります。問題意識を持ち、自らそれへの対応を設計し、かつ自らの汗を流して実行していく必要のある、また彼らの世代にとっても大きな課題であるからであります。  このように、世界経済、そして日本経済が短期的にも中長期的にも重大な局面を迎える中で、日本銀行金融政策のかじ取りはますます重要となっています。仮に副総裁を拝命した場合には、金融政策理念、すなわち物価安定を通じた経済発展を実現するため力を尽くして、総裁をしっかりと支えてまいりたいと考えております。  その際、国民信頼にこたえられるような適切な判断自主独立立場で下していくためには、国際的な経済情勢の不確実性が高まっている時期であるだけに、内外経済情勢市場動向について幅広く情報収集するとともに、多くのリスク要因について、予断を持つことなく、様々な角度から丹念に分析するよう努めたいと考えております。  私は、昨年七月に退官するまでの三十五年間、公務員として勤めてまいりましたが、この期間中の最後の約十年は、財務省国際局あるいは財務官の職にあって、国際金融市場発展や安定のために尽力してまいりました。また、財務省を退官した後も、国際金融情報センター顧問、あるいはハーバード大学シニア・ビジティング・フェローとして、引き続き世界経済国際金融市場の抱えている課題に取り組み、それぞれ関係方々意見交換をし、情報の分析に努めてまいりました。その関係者には、先進国のみならず、近時の世界経済の重要な成長点となっておりますアジアの方々も含んでおります。この面からも、我が国経済の持続的な成長に対して、いささかなりとも貢献できればと考えております。  また、金融政策における中央銀行独立性透明性は、金融政策の信任を得る上で極めて重要であると考えています。市場との対話を通じて説明責任を果たすよう努め、金融政策独立性透明性を確保し、国民の皆様に御信任いただけるよう努力してまいります。  信用秩序維持、すなわち金融システムの安定を図ることも日本銀行の大きな使命であります。グローバル化した金融市場において、中央銀行間の連携協力は極めて重要です。金融市場における緊張感が高まる中、日本銀行は、世界で最も優れたノウハウや知識を持つ中央銀行として、国際金融市場安定化に貢献することが重要であると考えております。また、金融システムの安定には内外金融市場金融機関の実態をしっかりと把握することが重要であります。さらに、銀行券の流通や日銀ネットの運行など、資金決済の円滑な確保も中央銀行としての重要な業務です。  こうした中央銀行としての様々な業務についても、総裁をしっかりと補佐してまいりたいと考えております。  私は、公務員として奉職以来、いかなる職にあるときも与えられた職責を全うするよう最善を尽くしてまいりました。日本経済世界経済が極めて難しい局面にある中で、日本銀行総裁という重責を担う機会を与えていただくこととなれば、日本銀行法理念に忠実に沿い、持てる力をすべて注いで職務に取り組みたいと考えております。  御清聴ありがとうございました。
  8. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) 以上で候補者からの所信の聴取は終了いたしました。  速記を止めてください。    〔速記中止
  9. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) 速記を起こしてください。  これより候補者に対する質疑を行います。  質疑を希望される方は、挙手の上、委員長指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。  なお、質疑及び答弁の際は着席のままで結構でございます。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。  私の方からは白川さんの方にお伺いをしたいというふうに思います。  今回の人事で国会での同意を得られますと、恐らく十一日にワシントンで開催予定G7に御出席をされるんだろうというふうに思います。改めてこのG7に臨むに当たり、国際金融経済の諸課題について御所見を伺いたいと思います。  特に、先ほど所信の中で米国金融市場動揺という表現をされましたが、サブプライムローン問題が世界的に見ても損失が百二十兆円という説もございますし、アメリカでは証券会社FRBが救済をするといいますか、そういうことを通じて中央銀行としてのFRB財務内容悪化といいますか融資の焦げ付き等も懸念をされております。とりわけこのサブプライムローン問題について御所見をお伺いしたいと。  特に、その中で中央銀行のこれから果たすべき、アメリカにおいてということかもしれませんが、果たすべき役割、それから、一部には大変深刻な状況なので、例えば公的資金を投入してでも早期に解決すべきであると、こういう説もございますが、これらについての御所見をお述べいただきたいと思います。
  11. 白川方明

    参考人白川方明君) 今議員指摘のとおり、国際金融市場は大変に動揺をしております。元々アメリカにおける問題の出発点は、住宅価格の下落というところから始まりましたけれども、今起きていますことは、住宅バブルの単なる崩壊ということだけではなくて、もう少し広くこの数年間拡大しましたいわゆる信用のあるいはクレジットバブル崩壊という現象であるというふうに思います。  これは、経済状況が非常に良好な中で非常に低い金利が続く、そういう中で人々リスクに対する認識が非常に甘くなってきて、結果としていろんな形で過大なリスクを取ってきたということであったと思います。これが最も端的に現れましたのが証券化市場でございまして、現在、証券化市場はほとんど今機能を停止しているという状況であります。  その結果、今度はもう少し広く企業金融一般にも影響が出ておりまして、社債金利国債金利に対する上乗せ幅、これはよく信用スプレッドと呼んでおりますけれども、このスプレッドが今拡大をしたり、あるいは銀行企業に対する与信態度が厳格化するということで、企業金融にも影響が及んできております。さらに、株式市場あるいは為替市場もこのところ非常に値動きの大きい、そういう展開になっています。  こういうふうに金融市場が十分に機能しなくなってきますと、これは必ず実体経済影響してくると、そのことがまた金融市場にも影響してくるというふうな状況にあるというふうに思います。  そういう中で、アメリカ中央銀行でありますFRBは、去年の夏から金利を三%引き下げました。それと同時に、流動性供給の面で様々な工夫を行っている。特に、流動性配分という面でいろんな今工夫をしているというふうに思います。  中央銀行の果たす機能はいろいろございますけれども、私、中央銀行歴史を見ても、それから今回のこのケースを見ても、中央銀行にとって本質的な機能は、金融市場金融システムの安定を守っていくと、この一点であるというふうに思っております。その点で今FRBは非常に積極的な対応を取っております。  これは一方で、先ほど議員から御指摘のあった財務内容悪化させるという危険性はこれははらんでおります。はらんでおりますけれども、最終的に流動性危機というものが目前にあった場合に、中央銀行としてなし得る貢献としてやはり流動性供給というのはあると思います。その際、それが最終的に中央銀行財務内容悪影響を与えないように最大限の努力をするということは、同時に今FRBはやっておりますけれども、しかしそのときの決定として流動性供給はやはり必要であるというふうに思います。  問題の本質は、これはクレジットバブル崩壊をした、つまり自己資本が十分にないということでございます。これは、中央銀行によります流動性供給だけではこれは解決しない問題であります。まずは当該金融機関損失を十分に確定して、その上で不足する自己資本を調達をするということが大原則になります。まずは民間ベース努力ですけれども、しかし民間ベースだけの努力で足らない場合には、これは方法はいろいろありますけれども、公的な資本の注入ということも必要になってくるかもしれません。いずれにせよ、出発点はまず現在のロスを正確に認識するという作業であるというふうに思っております。  私自身は、仮にG7総裁という立場出席するということになりました場合には、日本経験を踏まえまして、アメリカに対して今後なすべきことについて自分なりの意見を申し上げたいというふうに思います。そのときに一番意識したいことは、日本経験を生かして、世界経済全体の安定のために何をすべきかについて、これは一人の、この問題を早く経験した国の、先輩国として助言をしたいというふうに思っております。
  12. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 短くもう一問お伺いしたいと思います。  白川さんが三月十七日にこういう本を出されています、「現代の金融政策」という。ちょうど、多分これ、もし白川さんが日銀総裁におなりになれば、基本的な個人としての白川さんの金融政策を示した本になると、こういうふうに思うんですが、一つは、この本について御感想があればお伺いしたいということと、もう一つは、たまたまこの時期に重なったということは多分あると思いますので、この本の内容がまさに白川総裁考え方であると、こういうことになるのかどうか。  それから、この中で一つ重要なことをおっしゃっておられまして、金融政策財政政策関係でありますが、ゼロサムの関係でとらえることは問題があると、あるいは金融政策財政政策とで景気安定化政策の必要な対応幅のようなものを想定して、それを分け合う、分担し合う。例えば、今財政が出動できないから金融政策でカバーすべきだ、こういう考え方は間違いであるというふうにおっしゃっています。これは、我々が言う財政金融の分離に通じる部分があるんですが、この財政政策金融政策との関係について御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  13. 白川方明

    参考人白川方明君) まず、本でございますけれども、私、日本銀行を辞める数年前から一冊だけ本を書きたいなという思いにだんだんなってまいりました。と申しますのは、当時いろんな金融政策をめぐって議論がございましたけれども、やっぱり金融政策が非常に大事な政策ですから、このことがもっともっと国民の間で広く議論される、そういうふうなささやかな土壌をつくりたいなという思いがありまして、大学に行きましたら本を書きたいなというふうに思っておりました。そういう思いで去年の二月から十二月の初めぐらいまでずっと書いておりましたけれども、書いていますうちにだんだん自分自身のいろんな細部にわたる思いも含めて書きたいなということになりまして、随分大部な本になってしまいました。この本に書いていますことは、その当時私が考えたことをできるだけ教科書として分かりやすく書きたいという思いで書いてまいりました。  私、いつも感じましたことは、学者あるいは大学の教師という立場と、それから政策当局者立場の違いを考えました。学者というのは、これは新しい考えを提起していくということに学者のやっぱり存在意義があるというふうに思います。一方、政策当局者は、既存の理論がこれは必ずしも満足すべき理論があるわけではございません。そういう中で、しかし、日々これは答えを出していかないといけない、その中で結論を出さないといけないということでございます。そういう意味で、学者とあるいは研究者と、それから政策当局者の行動原理は、似ている部分もありますけれども、しかし大きく違っている部分がございます。  私は、学者、教師としてこの本を一生懸命書きました。そこに書いていること自体は私の正直な気持ちでございますけれども、しかし、今度、日本銀行の今副総裁を拝命し、仮に総裁ということになりました場合に、そのときに、自分がかつて書いたことにこだわって、今度は逆に現実に起きている変化を見落とすということにはなりたくないなと。そこは常に謙虚でありたいというふうに思っております。ただ、繰り返しになりますけれども、この本に書いた気持ちは、そのときの私の教師、研究者としての気持ちでございます。  それから、財政金融でございますけれども、金融政策は最終的に物価安定の下での持続的な経済成長の実現でございます。したがって、経済全体の需要動向を常に注意深く見ていくわけですけれども、その際、財政だけじゃなくて民間の需要、民間の需要もいろんな需要があるわけでございます。したがって、機械的に財政が出るから金融は引っ込むとか、財政が出ないから金融が出るじゃなくて、最終的にトータルとしての経済の需要動向がどうかということを中心に判断しないといけないと。その点を間違えますと経済が混乱をしてしまうということでございます。それが基本的に財政金融を分離するといいますか、中央銀行独立性を与えて物価安定を実現させるということの基本的な思想であるというふうに理解しております。
  14. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 終わります。
  15. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹でございます。  白川参考人には、二度まで当委員会に御出席をいただき、誠に御苦労さまでございます。また、渡辺参考人にも、本日この場に臨まれたそのこと自体に深い敬意を表したいと存じます。  白川さんには既に前回も金融に関する御見解を伺っておりますし、今回は、むしろ副総裁となってわずか二十日ほどで総裁候補指名された、そのことに関する決意をお伺いしたいと思います。  私はもちろん白川さんが日銀総裁にもふさわしい方だと確信しておりますが、先ほど御自身でおっしゃったとおり、誠に異例の昇格人事でございますので、全身全霊と先ほど二度も言われましたが、もう少し具体的にひときわ強い御決意、そして御覚悟というものを伺っておきたいと思います。  もう一つ同意が得られれば、総裁として、既に就任しておられる西村副総裁と、これも同意されれば渡辺総裁というトリオで日銀の、そして日本金融のかじ取りをされるわけでありますが、私は日銀出身の総裁に学界出身、財務省出身の副総裁で大変バランスが取れた布陣ではないかと思うわけであります。  依然として財務省出身者は駄目というそういう声があることも承知しておりますけれども、私はむしろ、先ほども立派な所信を述べられました国際派の財務官経験者、渡辺さんは白川さんのパートナーとして適任であると思っております。白川さんは西村さん、渡辺さんとどのようなチームワークで今後お仕事をされていこうというおつもりであるか、そのことをお伺いしたいと思います。  時間の制約がございますので、簡潔な御答弁で結構でございます。
  16. 白川方明

    参考人白川方明君) この一か月間、私に起きました環境の変化については戸惑っておりました。私、就任以来、総裁が空席という事態はこれ異例であると、この異例事態を早く解消してほしいということを申し上げました。  今回、政府からお話がございましたときに、私自身考えましたことは、この空席の事態を早く解消する必要がある。そのときに、なぜそれを私が申し上げたかといいますと、中央銀行機能というのはこれは非常に重要でございます。長く中央銀行に働きまして、そのことを身をもって体験し、訴え続けた人間が、いざこういうお話があったときにそれをお断りするということは、これは自分が逃げているなというふうに思いました。  そういう意味で、私自身、微力であることは承知しておりますけれども、しかし、仮にそうなった場合には、これは全力を挙げて総裁としての職務に取り組むという覚悟を決めたいというふうに思いました。  先ほど、西村副総裁それから渡辺候補とのチームワークということをお尋ねでございましたけれども、私、西村副総裁とは審議委員になる前から実は学者として尊敬しておりまして、いろいろ定期的に意見を私はお聞きしていました。渡辺候補についても、随分若いころから財務省日本銀行という関係で、組織は違っておりましたけれども、仕事の上でのお付き合いを願っていまして、その人間性も含めて私、随分親しくさせていただいておりました。  私自身が微力であることは十分認識しておりますけれども、中央銀行仕事は非常に幅広い仕事でございます。一人の人間ですべてをカバーすることはもとよりできないような、そういう仕事でございます。チームワークというのが非常に大事だと思っております。それは政策委員会全体、審議委員も含めてチームワークでございますし、それから執行部の三人という意味で、チームワークが非常に大事だというふうに思っております。  渡辺さんは、国際金融の面だけではございませんけれども、国際金融の面でも非常に幅広いネットワークを持ち、いろんな形で日本のために貢献されてきたという形で、国際金融の面では特に私、渡辺さんをこの仕事については尊敬申し上げておりますし、それから西村副総裁については、学問的、理論的な面で常に私に対して啓発をしてくださったという感じがいたします。この三人のチームでもってしっかり執行の任に当たっていきたいというふうに思っております。
  17. 岡田直樹

    ○岡田直樹君 ありがとうございました。
  18. 山下栄一

    ○山下栄一君 御苦労さまでございます。  日銀で長くお仕事をされて、大学では短かったわけでございますけれども、今も岡田委員からお話ありましたように、副総裁としての立場そのものが初めての御経験で慣れない状況の中で、副総裁に就任したそのときに総裁がいらっしゃらないという、そういう状況で二十日間大変な思いで今日迎えられたと思うわけでございます。日銀の総裁という極めて重い役職が軽く扱われている結果になってしまっていると、大変な不幸な事態になっておる責任は我々立法府にあるのではないかと思うわけでございます。  日銀の独立性金融政策の自主性、独立性ということを盛んに今言われておるわけでございますけれども、政府と連携取って日銀は仕事しなきゃならないと。私は、単に政府からの自主性ということだけではなくて、政治に翻弄されてしまっているという状況の中で、政党政治の中で、単に政府からだけではなくて政治からの距離を置くということも今改めて日本の政治は突き付けられているなと思うわけでございますけれども。  総裁候補としての白川参考人にお聞きいたしますけれども、大変な覚悟総裁候補の受諾の連絡を福田首相にされたということをお聞きいたしましたが、人生何が起こるか分かりませんけれども、こういう事態の中で、私は、かえって国民に、また非常に今国際金融市場そのものが不安定になっている中で、堂々と覚悟を決めて戦っていくという、そういう環境がかえって与えられたのではないかと前向きにとらえて、是非とも頑張っていただきたいと思うわけでございますけれども、改めて国民に向かって、大変な事態の中での御決意になると思いますけれども、披瀝していただきたいと思います。
  19. 白川方明

    参考人白川方明君) 中央銀行独立性ということにつきまして、政府からの独立性ということと、それから今、政治からの独立性という話がございました。  私自身日本銀行仕事をやっていまして感じますことは、形の上でそれは日本銀行の主張とそれから政府あるいは政治の主張がぶつかっているように見えるときも、実はその問題の本質というのは、実は国民自体が持っている相矛盾する二つの要素がそこに反映しているのかなという感じがしまして、つまり短期的に景気が良い、あるいはバブルが発生している、そういうときに、どうしても国民自身がそういう状況に対して割合居心地の良い状況になってくるわけでございます。しかし、そういう状況が長く続きますと、結果として経済が不安定になってくると。  そういう意味では、実は政治というよりかは、その背後にある国民自身にある短期的な利益とそれから長期的な利益、これがぶつかり合っているというふうに私は思います。そういうときに、中央銀行が少し長い目で見て経済の安定性を確保する上でこういう政策の方がいいんじゃないかということで、それを判断して実行するというのが中央銀行役割だと思います。  そうした役割を支えるものは、これは一つ日本銀行自身に対して法律がしっかり目的を与えているということでございますし、それからもう一つは、その上で中央銀行判断する際のバックとなる基本的な専門的な判断能力、情報の分析能力、これが日本銀行を支える、それをバックに最後政策決定をする者が責任を持って実行する強い意志を持つというふうに考えます。  私、今回仮に総裁を拝命するというふうになりました場合には、そのときには、日本銀行法で定めた目的をはっきり意識し、その上で日本銀行に蓄積されている分析能力を最大限活用して、最後、私自身ほかのメンバーと一緒にリスクを取って判断をしていく、そういう決意、覚悟で臨みたいというふうに考えております。  今回のいろんな出来事の中で、中央銀行仕事に対する理解といいますか、そういうものが国民的な意味でいろんな形で議論がなされていくということになった面もあると思います。私は、それを生かして今後職責に励んでいきたいというふうに思っております。
  20. 山下栄一

    ○山下栄一君 どうもありがとうございました。
  21. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 民主党、辻泰弘でございます。  白川参考人に対し二点お伺いいたしたいと存じます。持ち時間五分でございますので、簡潔に御答弁いただければ幸いに存じます。  まず第一点は、物価国民生活の現状についてでございます。  日銀が去る四月三日に発表されました生活意識に関するアンケート調査の結果によれば、現在の物価の上昇を実感する回答が八五・九%に上り、一九九三年の同調査の開始以来の最高水準を示しております。日銀は、日銀法において、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全なる発展に資することを理念としているところでありますけれども、このような国民物価上昇の実感の高まりをどのように受け止め、日銀としてどう対処していくおつもりでしょうか。  また、同調査の結果によれば、現在の暮らし向きについて、ゆとりがなくなってきたとの回答が増加し、暮らし向きディフュージョンインデックス、暮らし向き動向指数が悪化し続けておりますが、この現状に対してはどのような御所見をお持ちでしょうか。近年の政策運営が競争、効率、自己責任の論理に偏り過ぎ、国民生活の後退、地域の疲弊、格差の拡大につながったのではないかとの指摘がありますが、このような指摘に対する御見解をお伺いしたいと存じます。  二点目、金融に対する基本認識についてお伺いいたします。  白川参考人は日銀きっての理論家で、趣味は金融政策と言われるまじめ人間とお伺いしております。白川参考人にとっての金融とは、金融政策とは何なのでしょうか、お考えを承りたいと存じます。また、そもそも人間にとっての金融とは何なのか、御教示いただきたいと存じます。  以上でございます。
  22. 白川方明

    参考人白川方明君) 短い時間でお答えするのが大変難しい御質問でありますけれども、国民物価を認識するのは、必ずしも物価指数ではなくて、国民が頻繁に買うもの、今でありますと例えばガソリンであったり、あるいは食料品であるということだと思います。で、このところ食料品が随分値上がりしておりまして、このことが国民の感じる物価というものが随分上がっているという結果になっているというふうに理解します。  ただ、物価全体見渡しますと、一方で上がっているものがありますけど、他方で電気製品を中心にこれは下がっているものもたくさんございます。指数全体として見ますと、いろんな取り方がございますけれども、直近の数字で前年比一%ということで、以前に比べますと上がっていますけれども、しかしどんどん上がるという状況ではないということでございます。  金融政策は、これ金利が一本でございますから、一つ政策でもってすべてを実現することはできませんもので、したがいまして、物価が全体として持続的に安定していくという状況を想定しながら金融政策金利政策運営していくということにならざるを得ないという気がいたします。  で、金融政策とは何かということですけれども、私は、金融政策という言葉の実は意味が多少広い意味と狭い意味と両方あって、時としてそれが両様の意味で使われているという感じがいたします。本来の金融政策は、これ英語でマネタリーポリシーと言いますけど、マネーに関する政策、つまり中央銀行はお金を発行して、このお金が安心して使える、つまり取付けが起こるというわけではない、金融システム動揺するわけではない、そういう状況をつくるというのが第一の意味。それから二つ目が物価の安定という、この二つの意味であります。  金融システムの安定と物価の安定は、これは関連はしていますけれども、時として両者が違う動きを示すこともございます。そういう意味金融政策は何なのかといいますと、お金の価値を守る仕事だというふうに思います。私自身金融政策は非常に大事な仕事だというふうに思っていますけれども、別にこれ、趣味としているわけではございませんで、仕事の上ではこれをしっかり果たしていきたいということでございます。
  23. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 自民党の山内でございます。  白川参考人には、三月の七日に政府がお名前を出されて以来、ここで二度お目にかかるわけでございます。大変御苦労さんでございますし、また政治がこのような混乱をして白川参考人には大変御迷惑を掛けている、この場を借りておわびをまず申し上げておきたいと思います。  実は人事というものは、私も若いときからいろんな理事長もやらせていただいたり会社運営をやっていた中で、人事は密なるものというようなことでございますけれども、決して密はブラックボックスに入れるというわけではございません。できるだけしっかりといろんな角度から各般の情報を得て、そして最後は、決めた以上は必ずひっくり返さないというのが人事の私はコツだろうと思っております。そういった意味から、政治の混乱が御迷惑を掛けているということに対して大変申し訳なく思っております。  政局を道具に使って愚かな行動を起こしている。私はまさに、経済は一流だけれども政治が二流、三流と言われた時代がありました。今まさにもう四流、五流になってきているんじゃないかと。これは内外からの批判もあるようでございます。心していきたいなと思っております。  そして、一つだけお聞きします。  ずばりお聞きをいたしますが、お隣においでになります渡辺参考人財務省出身であります。今回いろいろ財金の分離と言われておりますけれども、財金分離の観点からいろんな批判もあろうかと思いますけれども、この点について白川参考人の御意見をお聞きして、私の質問を終わらせていただきます。
  24. 白川方明

    参考人白川方明君) 候補者立場で特定の候補について私が個人的な評価をするのは、これは適切ではないというふうに思います。これは総裁の場合もそうですし、副総裁の場合もそうですけれども、日本銀行総裁なり副総裁を務めるのにふさわしい人を任命していただきたいということに尽きます。
  25. 山内俊夫

    ○山内俊夫君 ありがとうございました。
  26. 山本博司

    ○山本博司君 公明党の山本博司でございます。  二点お聞きをしたいと思います。  一点目は金利正常化ということに関しましてでございますけれども、G7を終えても、国内経済景気減速感が強まっておりますので、金融政策のかじ取り大変難しいというふうに、どんどん増していると思います。四月三十日に金融政策決定会合がございますけれども、金融政策の自由度を高めるために年〇・五%にとどまっている政策金利をどうしていくのかという問題があるかと思います。市場関係者は、今景気が大変減速しておりますので引下げというふうな声もございますし、一方では金利の正常化を目指していくためには引上げもというふうなこともございます。こういった御意見に対してどういうふうにお考えがあるのか、御所見をお伺いをしたいと思います。じゃ、まずその点を。
  27. 白川方明

    参考人白川方明君) 実は今日、明日、金融政策決定会合が開かれておりまして、それから月末にはもう一度決定会合が開かれます。金利をどうするかということ、それ自体につきましては、毎回の決定会合で情報を精査して判断していきたいというふうに思っております。  ただ、一般的な構えということで申し上げますと、常に相反する二つのことを私、感じまして、一つは、現在起きている変化に対してこれは鋭敏な目を持って観察をして、もし情勢が変化し、必要な政策があれば、それは機動的に実施していくということが一方で大事だと思います。他方で、金融政策のラグというのは、これは一年から二年、かなり長いラグでございます。どうしても、過去の経験からしますと、足下の状況に引きずられやすいという傾向があることもまた一方の事実でございます。この二つをその時々の中で判断をしていくということでございます。  先ほどの金利正常化論との関係でいきますと、現在の実質金利が非常に低いということは事実でございますけれども、しかし、その低いという事実でもって直ちに毎回毎回の決定会合の政策金利方向が出るというわけではなくて、そこは大きな経済の流れ、傾向というのをしっかり踏まえる必要があるという趣旨でその話を強調している次第でございます。
  28. 山本博司

    ○山本博司君 ありがとうございます。  もう一点最後に、日銀総裁としての資質という点でお聞かせいただきたいと思いますけれども、今マスコミとか、また市場関係者方々白川候補に関しまして、非常に金融政策理論に精通をされていると、また五十代の若さということで、こうした複雑化する金融資本市場への対応で非常にそういう強みがあると、このように賛嘆する声がある一方で、経験不足ではないかという指摘する声もありますし、また、特に日銀総裁というのは市場との対話能力というのが非常に必要な資質というふうに言われておりますけれども、こうした声にどのようにこたえていかれるか、御所見最後にお聞かせいただきたいと思います。
  29. 白川方明

    参考人白川方明君) 私自身、副総裁としてもそうでございますけれども、総裁としての経験が不足しているというのはそのとおりでございます。そのことを十分まず自覚するところからやっぱり仕事が始まっていくというふうに思っております。  長い間、私、いろんな総裁を傍らで見ていまして、自分なりに総裁像というのをつくってまいりました。そういういろんな自分自身のこれまでの思いを胸に秘めて、その上で、自分が今何が足らないのか、足らないことだらけでございますけれども、一つは、大きな組織を代表して金融政策運営していく、対外的にも情報発信をしていくということであるというふうに思っています。  この二十日間、副総裁という立場総裁代行仕事をやってまいりましたけど、この二十日間、自分がかつて、自分が例えば局長であったら、あるいは理事であったら考えなかったようなことをやはり代行という立場に立って日々考えて、どういうふうにしてこのことを説明していくべきなんだろうかということを常に考えていくというふうになってまいりました。これからまた立場が変わりますと、また更にそういうふうに変わっていくというふうに思います。  自分自身は、常に自分が足らざるところを認識して日々研さんを積んでいきたいというふうに思っております。具体的にこういうふうにすれば立ち所にその欠点が克服されるというものではなくて、自分自身がそれを認識した上で努力をしていくということに尽きると思いますし、また、いろいろと御批判を仰ぐ中で自分なりに更に努力をしていきたいという思いに尽きるというふうに思います。
  30. 大久保勉

    大久保勉君 民主党の大久保勉です。  白川参考人に短く三つの質問を行います。  まず第一に、五年間の日銀総裁任期を終了したとき、あなたはどのような基準で名日銀総裁であったという評価を得たいのか。あなたが自らに課す評価基準、特に客観性や透明性の高い指標があれば教えていただきたいと思います。  第二点目は、日本銀行法物価の安定とは、生鮮食品を除くCPI、いわゆるコアCPIでどのくらいをあなたは想定されているのか聞きたいと思います。また、その目標を達成するためにはどのような金利の調整や長期国債買入れ増減等によるマネーサプライの調整を行うのかお尋ねします。  最後に、これまで幾度か公定歩合の変更等の日本銀行の重要な政策決定に関して情報漏えいが発生しました。また、新日銀法下においても、予算執行に関して必ずしも適切とは言えない事例も幾つか発生しました。  あなたは組織の長として、どのような組織運営やガバナンスの点での改善を行うか、是非とも決意をお聞きしたいと思います。  以上です。
  31. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行の目的は法律に明確に規定されておりまして、第一に、物価の安定を通じて国民経済発展に資すること、第二は、決済システムの安定を通じて金融システムの安定を図ることということでございます。  私自身、五年の任期を全うしたときに自分がどういうふうに評価されたいかと、当然のことながら、この法律に照らして自分がしっかりと仕事をしたかどうかと、この一点であります。  そのときに、客観的な指標でこの成果を評価できるのかということでございますけれども、物価ということでありますと物価指数ではありますけれども、ただ、この場合難しいのは、短期的に物価が安定していればいいということではなくて、この物価が持続的に安定をしている、その結果経済が安定をしているということであると思います。そういう中で数字だけにこだわりますと、結果として経済変動が大きくなるということも、かつてバブルのときあるいはバブル崩壊の後も実は経験しております。  ただ、一方で、数字が全くないということは、これは客観性を欠くことも事実でございます。この点は第二の質問とも絡みますけれども、日本銀行は二年前に、各政策委員物価安定という状況はどういう状況であるのかとある種の定義を、これを発表いたしました。九名の委員が全員同じというわけではございませんけれども、この九人の意見を集約しますとゼロ%から二%、中央値としますと一%前後に散らばっているということでございました。実はこの物価安定の理解というやつは、基本的に一年に一回見直しをしていくということでございまして、去年は四月末に行っております。私も今度日本銀行に入りまして、改めてスタッフの研究も踏まえて自分自身考えを固めていきたいと思いますけれども、これまで発表されております数字に私自身、個人的にはそれは大きな違和感はないということでございます。  ただ、繰り返しになりますけれども、国民が願っていることは、ある特定の物価指数でピンポイントで物価安定を定義できるということではなくて、多分物価がどんどん上がっていく事態をこれは防いでほしいと、しかし物価が下がって景気悪化するというのも避けてほしいと、あるいは物価が安定していてもバブルが起きては駄目なんだというのが国民の願いだと思います。それを一言で言いますと、物価安定の下での持続的な成長でございますけれども、それを五年間を通じて振り返ってみてきっちり達成したというふうになりたいというふうに思っております。  それから、三番目の組織管理あるいは機密管理の面でございますけれども、先ほど御質問のございました、金融政策に関する情報漏えいという趣旨でのお尋ねでございましたけれども、私、金融政策決定に関する情報漏えいについては、そうした事実はなかったというふうに認識しております。ただ、今後とももちろん厳密な管理に万全を期していく覚悟でございます。  日本銀行の今度は組織運営、経営ということでございますけれども、日本銀行は五千人の職員を抱える大きな組織でございます。いろんな仕事を行っております。どの組織もそうですけれども、この組織をしっかり運営するということが基本となります。  従来から、日本銀行は明確な経営方針の下で経営資源を効率的に配分し、日本銀行に課された使命達成に向けて最大限の成果を発揮していくというのを、これを基本理念としながらいろんな組織改革の見直しを行ってまいりました。  私、日本銀行に長く勤務した経験を基に、組織の効率的な運営努力する責務があるというふうに認識しております。しっかり取り組もうというふうに思っております。
  32. 義家弘介

    義家弘介君 自由民主党の義家弘介です。どうぞよろしくお願いいたします。  三月二十日以降、日銀総裁が空席という未曾有の事態の中で、白川参考人総裁代行として、また政策委員会議長として務められてきたわけですけれども、三月二十一日の記者会見で、日銀の機能にいささかの影響もないようにしなければならないという強い決意を感じていると述べられておりますが、この影響は現実にはあったのかどうか。そして、本日までの、総裁代行として日銀のかじ取りをされてきましたけれども、この経験を踏まえて、改めて日銀の内外における日銀総裁役割、重要性についてお話しいただければと思います。
  33. 白川方明

    参考人白川方明君) 私自身、この二十日間、総裁が空席という事態であってもその影響がいささかなりとも生じないように努力してまいりました。ただ、実際に影響があったのか、なかったのかというお尋ねでございますけれども、これは自分自身が評価を下すものではなくて、それは客観的に日本銀行を見た方が評価する話だというふうに思います。したがって、私の方から影響があった、なかったというふうには申し上げられなくて、最大限努力をしているということでございます。  日本銀行総裁役割ということでございますけれども、いろんな役割がございますけれども、物価の安定、それから金融システムの安定に向けて組織全体が頑張っているということは、これは総裁がいてもいなくてもそれはもちろん頑張っているわけでございます。  ただ、どの組織もそうですけれども、最終的に組織責任がその人に集約をする、最後いろんな判断を、決断をしていくという人がいないと、やはり組織運営緊張感を、緊張感といいますか、最後ぴりっとしない。そういう意味で、最後決断をする人がやっぱりいるということは非常に大事なことで、これは金融政策に限らず、組織というのはすべてそうだというふうに思います。  それから、二つ目は情報発信力ですけれども、総裁が不在の下でも、残り今七名おりますけれども、七人が力を合わせて政策運営を行っておりますけれども、その七名がそれぞれ対外的な情報発信にも努力をしておりますけれども、しかし、それが総裁というトップではないということによって、情報を受け取る方が何がしか割り引いて受け止めるとすれば、それは日本にとって非常に大きなマイナスだと思います。  そういう意味で、組織運営のトップという面で見ても、それから対外情報発信力という面で見ても、やっぱり総裁役割というのは非常に大事であるというふうに思います。
  34. 義家弘介

    義家弘介君 ありがとうございました。
  35. 大塚耕平

    大塚耕平君 民主党の大塚でございます。  それでは、白川参考人一つお伺いしたいのは、日銀法の三条に定められました日銀の自主性というものと、そして四条に定められました政府の経済政策との整合性、実は、この三条と四条のバランスをいかに取るかということが日銀の幹部の皆様に求められている仕事のポイントだというふうに私自身は思っておりますので、この日銀の自主性と政府の経済政策との整合性というバランスを取る際にどのようなことを基準にそれをなされようとお考えになっているか、その点をお伺いしたいと思います。
  36. 白川方明

    参考人白川方明君) 日本銀行法の第三条は、「日本銀行通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」というふうに書いてございます。一方、第四条は、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というふうに規定しております。  中央銀行歴史金融政策歴史を見ますと、規定の仕方は違いますけれども、政府と中央銀行財政金融、この両者をめぐる様々な短期的な利害の衝突ということから問題が起きているということであります。これをどうするかというのは非常に重要な問題であります。  日本銀行は、金融政策判断するときに、政府が経済全体についてどういうふうに今見ておるのか、あるいはどういうふうな財政運営をしようとしているのかということについては、これは十分な情報を持っている必要がございます。そういう意味で、十分な意思疎通を図る必要があるというのが法第四条の規定する趣旨でございます。  しかし、最終的に、その上で日本銀行金融政策判断するときに何が行動原理になるのかといいますと、それは日本銀行の目的、つまり、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資すると、そのことを日本銀行が自主的に判断をする、つまり独立性を持って判断するということであるというふうに理解しております。  不幸にしてそれでは政府と日本銀行意見が違った場合にどうするのかということで、それについては、今の日本銀行法は政府の代表が金融政策決定会合に出席をして意見を述べるということができます。それに対し日本銀行はどういうふうに考えたのかということも決定会合で言い、その結果を政策決定会合の議事要旨という形で世の中に公表するという非常に透明なプロセスが法的には確立されております。  私の役目は、法律的に確立されていることを実際の運用においてもそれが円滑に進むようにしていくというふうに考えております。いずれにしろ、その課題は非常に重要な課題としてこれからも取り組んでいく必要があるというふうに考えております。
  37. 大塚耕平

    大塚耕平君 日本先進国と比べて著しく財政赤字が多いということの原因は、私自身も日銀で仕事をさせていただいた経験から申し上げると、財政政策金融政策関係及び財政政策金融政策のそれぞれの在り方に改善すべき点があるというふうに認識をしております。  中央銀行制度は百年余りの歴史しかありませんが、その歴史の中で中央銀行独立性というものが大事だということを各国が学んだわけでございますので、この中央銀行独立性ということについて、こうして今回の日銀人事を機会に広く国会の各党の先生方と議論できていること自体は大変な財産だと思いますが、これからも中央銀行独立性理論的裏付けとその必要性の背景について日本全体が造詣を深めていくことが必要だと思いますので、その点についての決意だけお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
  38. 白川方明

    参考人白川方明君) 金融政策独立性というのは非常に大事な原則であると思います。そのことは、一般論、抽象論としては理解されているというふうに思いますけれども、しかし、現実の政策になったときに、なかなか必ずしも十分に認識されないという局面が、時として、かつてあったということだと私は思います。  そのときに、私は日本銀行という立場考えますと、日本銀行が一方で独立性を振りかざして政策運営するという、そういうふうなアプローチというのは余り好きではございません。やっぱり中央銀行は、あらゆる意見に耳を傾けて、その上で最終的には責任を持って判断をすると。判断した結果、必ずしも適切でなかった政策ももちろんあるかもしれません。しかし、そういうことについては、最大限自分たちはこういう状況の下で判断をしたんだということをしっかり説明をしていくと。その上で、私自身が五年後退任するときに、仮に政策判断を間違えたとなりますと、それは自分自身がこれまで培ってきた職業人としての矜持といいますか、そうしたものをすべて台なしにする。そういう意味で、制度だけではなくて、それに対して個人がコミットをしていくということがやっぱり非常に大事だと思います。  理論的にそれをしっかりと説明していくということも大事でありますけれども、何よりも実績をつくっていくと、その結果、だんだんに日本銀行独立性というのは大事なんだなということが更に実感を持って理解されていく、そういう状況にしていきたいというふうに思っております。
  39. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) これにて総裁候補者に対する質疑は終了いたします。  この後は、副総裁候補者に対する質疑に入ります。  質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  40. 辻泰弘

    ○辻泰弘君 民主党の辻泰弘でございます。渡辺参考人に対し、三点お伺いしたいと存じます。  まず第一点は、財務官時代のことについてでございます。  渡辺参考人は二〇〇四年七月から約三年にわたり財務官をお務めになられました。その間、渡辺参考人は一度も為替介入を行わずに退官されたものと聞き及んでおります。人為的な相場形成は避け、市場重視のスタイルを通されたとも伺っているところでございます。つきましては、渡辺参考人の為替介入に対する判断の際の根底を成した基本的な考え方、哲学をお伺いしたいと存じます。  二点目、日銀と財務省のかかわりについてでございます。  中央銀行としての日銀の独立性の見地からする日銀と財務省との組織としてのかかわり方について、そのあるべき姿をどのようにお考えか、御所見をお示しいただきたいと存じます。  三点目、いわゆる天下り批判についてでございます。  日銀の総裁、副総裁ポストに財務省のOBが就任することに対しては、かねてより、日銀を財務省の天下りポストにしてはならない、財務省による日銀正副総裁ポストの確保の既得権化は許されないと指摘する向きがありますが、このような意見についてはどのように受け止められ、またどのようにお答えになるでしょうか。  以上でございます。
  41. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) お答え申し上げます。  最初の為替市場に対する介入の件でございますけれども、私自身、介入というのは大きく分けて三つの種類があると思っておりまして、一つは、例えば九月十一日のようなことが起こった場合に非常に大きくマーケットが揺れたとき、これを市場参加者に対して悪影響を与えないためにどうするかという意味での、ある意味での救済的な介入。それから二つ目は、そこまでは至りませんけれども、何らかのことをきっかけに非常に大きく揺れてマーケットが不安定になっているというときに、その振幅をなるべく小さくする、俗にスムージングオペレーションと言われているものがありますが、これが二つ目。それから三つ目は、時々主張される方がいるわけですが、水準を設定するための為替介入とあるわけですけれども、私はこの最後の水準設定のための介入ということは本来の介入の趣旨を外れているというふうに思っているわけであります。  いずれにせよ、どういう水準にいつ決まるかということについては、今や膨大な取引が行われているマーケットに対して、それに対して手を入れるということは非常に危険が伴いますし、それから、いろんなほかの政策も同じでありますけれども、入っていくときにはいつやめるのかという覚悟がなければいけないということからいいまして、そういう水準設定については私はやるべきではないと前から思っていたわけでありますが。  ただ、そのスムージングオペレーションのようなことについては、ある日突然急激に円がドルに対して上がるということが起こった場合には、そこにたまたま輸出決済あるいは代金決済がありました人たちに大きな影響を与えるわけでありますから、そういうことについての対応というのはあってしかるべきだというふうに思っております。  三年間私がやれなかったことは事実でありますが、実は私の前に、既に三月からやめておりました。私は七月に就任していましたので私がやめたわけではないということでありますけれども、その前段階におきましては、やっぱりアメリカ経済の動きとそれから地政学的な中東の動きというのが非常に大きく絡まっておりまして、それがマーケットを揺らしていまして、一番典型的なのは、アメリカのGDPやあるいは雇用の数字がいいというのが発表されましたが、同じ日にバグダッドで爆弾が爆発したということになるとドルが安くなると。こういうのは市場参加者に予見が不能なわけでありますから、そういうことについてどう考えるかという意味でのスムージングオペレーションはあり得たと思っておりますが、幸いに私が着任してからはアメリカ経済も比較的順調でありましたし、日々の動きはありましたけれども、大きく値崩れをするといったような兆候にはなかったということから、幸いにも私は市場に出ていかなくて済んだというふうに思っているところであります。  それから、二番目の日銀と大蔵省あるいは財務省との関係ということでありますが、日銀法の四条の関係で申し上げれば、整合性を持たなければいけないと。これは、経済政策全体の中でそれぞれが自らの得意とする部分について議論をしていくわけであります。先ほど白川候補者からもありましたように、例えば政策決定会合でも様々な御意見を持った方の意見を集約していくということが必要でありますから、政府と中央銀行との間でも異なった点に立ちまして、それぞれの識見それから判断を闘わせて、それで最終的な結論を持っていくという意味での切磋琢磨が必要であると思っています。  ですから、そういう意味では、ある組織がある組織に対して優越する、あるいはある組織がある組織に対して従属すると、そういう関係をつくるのではなくて、それぞれが自分の得意とする分野あるいは自分責任を持つ分野についてどれだけの識見を持ってお互いに対応していくかという中で本来の一番いい経済施策ができるというふうに思っているわけであります。  それから、天下りの件につきましては、定義の問題もありまして、日銀の総裁、副総裁というポストが下っていくというふうに私はなかなか思い難いところがありますけれども、特定の省庁が特定の機関に対して常に何らかのポストを持っているということについて御懸念があるということについては私も理解をしているところでありまして、そういう点についてなるべくオープンな形での人選をするということが必要であるということは私は考えているところでございます。  私がそれに該当するかどうかということにつきましてはもう委員各位の御判断だと思いますので、それ以上の答弁は差し控えさせていただきます。
  42. 西田昌司

    ○西田昌司君 自民党の西田昌司でございます。御苦労さまでございます。特に白川参考人は二回目でございまして、本当に御苦労さまでございました。  この間、総裁が空席になり、非常に経済も混乱してきておると。このことが非常に経済にも悪影響を与えてきたのは間違いないと思うんですけれども、今日こうした内示を受けて審議をするに当たりまして、新聞の社説ちょっと紹介したいんですけれども。  大体こういう意見が多いんですけれども、今回の渡辺参考人のことにつきましても、渡辺氏の起用案についても民主党の中には天下りだとして難色を示す声があると。だが、財政金融の両方に通じていることは、必要な政策判断し遂行するのにはむしろプラスになるはずだと。説得力に欠ける主張であると。民主党は人物本位で賛否を決めるべき日銀人事を政局を自らに有利にするための道具として利用してきた。そんな愚かな行動には終止符を打ち、決着に向けて協力すべきだと。これ読売新聞なんですけれども、ほかの新聞も含め大体こういう社説が多くて、私も、これは国民の声もそういう方向にあるんではないかなと思うんです。  ただ、その中で非常に気になることが一つありましたので、これはあえて渡辺参考人にお聞かせ願いたいんですが、こうした中で、一部のマスコミ関係者の話として、ある民主党の有力幹部の人から、昨日の内示以前に渡辺参考人、あなたにですね、電話があり、民主党はあなたの人事に反対であるので伝えておくという旨の話があったと言われているんです。  もしこれが事実とするならば、人事に対する政治介入という重大な問題となると思うんですが、この場で本来皆さん方から所信をお聴きして検討するという、この国会の人事同意の手続そのものが形骸されてしまうことになるものでありまして、候補者の方にも重大な圧力、政治的な影響、圧力を与えることになるのではないかと思うんです。  そのことを踏まえてあえてお聞きするんですが、こうした話がありますが、これは事実でしょうか。お答えいただきたいと思います。
  43. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 御質問ではございますが、誠に恐縮ですが、本件についてはお答えを差し控えさせていただければ有り難いと思います。
  44. 西田昌司

    ○西田昌司君 これは返答を差し控えるということでは通らない問題なんですよ。  というのは、我々自身がこれ今国会の人事同意手続として、これ国民の代表としてこの皆さん方の案件を審議しているんです。それが、先にそういうことがもしあるとするならば、これこういう大きな大原則を揺るがす大問題なんですよ。だから、ここは事実関係だけははっきりと答えていただきたいんです。あったのかなかったのか、そのことだけもう一度お聞きしますから、しっかり答えてください。
  45. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 繰り返しになりますけれども、御質問に対してちょっとお答えをするのは差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、衆議院あるいはこの参議院の場において私から所信を申し述べる機会を与えていただいたことについては私は非常に感謝をしているところでございます。
  46. 西田昌司

    ○西田昌司君 もう時間がないのでこれで終わりますが、私は、こうしたところでやはり国会の手続というもの、これは非常に大事なことであります。これが侵害されるようなことであったり、またそれがやみの中で、公にならないところで圧力が加えられたとすることがあったりするならこれは大変な問題ですから、これはしっかりこれからも、もう一度ただしたいと思いますが、もう一度最後にお聞きします。
  47. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 恐縮でございますけれども、三度目、同じ答えをさせていただくことになると思いますけれども、いずれにせよ、こういう形で衆参で私の方からいろんなことを申し上げる場を設けていただいたことについて、とても感謝をしているということだけお伝えしたいと思います。
  48. 山下栄一

    ○山下栄一君 一点だけ副総裁候補に御質問をさせていただきたいと思いますけれども、総裁一名、副総裁二名、三人体制なんですけれども、任期は五年、そして同時に任期終了を迎えるという、こういう人事体制になっておるわけですけれども、この考え方として、総裁、副総裁一体として非常に困難な、また深い金融政策に当たっていくという、それぞれの力を有効に融合させながら、補い合いながら、支え合いながら、執行部、チームとして使命を果たしていくというふうに考えましたときに、人事の提示の在り方として、やはりこの総裁、副総裁、三名一緒に承認してもらいたいと、こういう提示の仕方ではなかったのかなと思っておるわけです。  今回はそういうことに不幸にもならない状況で今日迎えておるわけですけれども、渡辺参考人としては、このようなチームとしての執行体制、三人そろって国会同意人事の承認を得るという、そういう考え方についての御所見というか、お伺いしたいと思います。
  49. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、政策決定会合、全部で九名で構成されているわけですが、そのうち六人の審議委員におきましては、一遍に全部が替わることのないように、五月雨というかカスケードということになっておりますが、その中で総裁、副総裁、三人が同時に替わるということは、まさに今委員から御指摘がありましたように、それなりのチームとして、得意分野、不得意分野などを含めてどうやってカバーし、一体になって進めていくかということを想定した法律であるというふうに、当時改正作業にも参画しておりましたので、理解しているわけでございます。  その中に私が入るかどうかは、まさに委員各位の御判断になるわけでありますけれども、そういう形でチームとして成立し、今回のように若干の時期はずれましても、仮に私が副総裁として拝命した場合には、総裁、そしてもう一人の副総裁とチームの意識を高く持ってお互いに補い合いながらなるべくいい日銀の金融政策を進めていきたいと、そのような覚悟でおります。
  50. 山下栄一

    ○山下栄一君 ありがとうございました。
  51. 大久保勉

    大久保勉君 民主党の大久保勉です。渡辺参考人に二点の質問を行います。  まず第一に、日本銀行の副総裁として、資質に関して質問します。  あなたの通貨マフィアとしての国際的な知名度、そして信頼、さらには元財務官としての政府、財務省の太いパイプをどのように日銀の運営に生かしていくのか、この点に関して質問したいと思います。  第二点は、世界金融システムの健全性に関し、現在の認識をお聞きしたいと思います。特に、米国サブプライムローン問題は、米国のみならず欧州等の主要金融機関の経営問題に波及し、資本不足や信用収縮が深刻になっております。この点を踏まえまして、中央銀行間の協調や通貨安定への決意をお尋ねしたいと思います。  以上です。
  52. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) お答え申し上げます。  必ずしもマフィアという言葉がいいかどうか分かりませんけれども、G7、あるいは先ほど所信の中で申し上げましたように、アジアの中でどういう役割日本が果たしていくかということについて、日本立場を今まで主張し、それで様々な調整を行ってきたわけであります。  これも所信の中で申し上げましたように、今の世界経済というのは非常に密接な関係があるわけであります。津波であれば、太平洋の向こう側で起こったものが日本にたどり着くまで十日、二週間掛かるわけでありますが、それに比べまして金融市場の問題というのは、場合によっては秒の単位あるいは分の単位で来ると。そういう中で、対岸のことであるというような認識を持って対応しているわけにはいかないということからは、国内金融あるいは国際金融が非常に一体化しているという状況にありますので、そういう中で、先ほども申し上げましたように、様々な方々とお話をし、意見交換をしてくるという生活をしておりましたので、今でもそういう方たちとのコンタクトを取れるという中で、なるべく密接にお互いに話し合う中で、日本金融政策を誤らないように、あるいは日本がどういう形で国際金融の安定に貢献できるかということについては努力をさせていただければというふうに思っているわけであります。  二番目の世界の現状につきましては、まさに委員指摘のように、アメリカのサブプライムという非常に変わった仕組みの証券化商品が出たがために、本来の住宅市場のスローダウンというものがより強調された形で今世界経済を覆ってきているわけであります。  特に、先ほど白川候補者の方からもお話がありましたように、今やサブプライム絡みあるいはモーゲージといった不動産絡みの商品ではなく、すべての証券化商品についていろんな変調を来しているということが起こるわけでありまして、日本の場合には八〇年代末、九〇年代末ということから不況の状態があったわけですが、当時は、日本銀行セクターというのが金融市場のほとんどを占めていたわけでありますから、銀行の問題が非常に大きく日本経済影響を与えたわけであります。  ところが、アメリカの場合には、もちろん銀行のロスということをどうやって処理していくかということも一つの問題ですが、実は、今のアメリカ金融市場において銀行セクターが占める割合というのは二〇%から二五%しかなく、残りの大半というのは直接市場から調達する。短期のお金はCPで調達し、若干長めのものは債券なり株式で調達するということで、こちらのマネーマーケットの方が非常に大きく影響を持っているわけでありますが、そこにおいて正常な取引ができていないと。  先ほど白川候補者の方から機能が止まっているというお話がありましたけれども、まさにそういう状況になるわけでありますから、それに対して金利対応するのか、あるいは金利とは別に必要なところにどうやってお金を流していくかということについて、これまで積み上げられた様々な経験、もしそれで足りないとすれば新たなものを考えてどうやって対応していくかということが非常に求められている時期でありますので、今回のG7、あるいはそこでフィナンシャル・スタビリティー・フォーラムというところから最近の証券化市場あるいは金融市場についての様々な問題についてのレポートが出てくるわけでありますから、それを踏まえて世界金融市場あるいは日本金融市場、遺漏なきように努めていくということが必要であるというふうに思っております。
  53. 神取忍

    ○神取忍君 自由民主党、神取忍です。  渡辺参考人に一点質問させていただきます。  渡辺参考人におかれましては、これまでの間、武藤、田波両氏の総裁候補、そして伊藤副総裁候補、三人が否決された中、世界、国内の市場関係者の評価や様々な思いなどが目や耳に入られる中、大変勇気ある大きな決断をされ、本日出席いただき所信を述べられたこと、敬意を表したいと思います。  それで、私は、日銀の政府からの独立は確保される必要があると思いますが、同時に、サブプライム問題など金融市場が不安定の中、経済政策金融政策の食い違いが生じないようにするためにも財政金融の両方に通じていることが大切で、それを判断し、市場に必要なことを決定することがむしろ求められることで、大事な要素だと思っています。そういった中、諸外国の例を見ても、財務省出身者が中央銀行総裁等に就任する例も多いですし、市場関係者の見方も財金分離の懸念を表す意見が見られません。そういった中、本日の各社社説を見ましても、先ほど西田先生も紹介されましたが、出身母体でなく仕事ぶりで判断すべきだ、出身がどこよりも人物本位で判断すべき、渡辺氏は市場重視の考え方で各国の通貨当局者に信頼されているなどがあります。  そういった中、とても大変短い時間の中で並々ならぬ決断が必要だったと思いますが、現在の心境と決意をお聞かせください。
  54. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 過分な評価をいただいて、誠に恐縮する次第でございます。  ただ、いずれにせよ、先ほど白川候補者からもお話がありましたように、中央銀行総裁が空席であるという状況をこのまま放置するということは一国民としてもいいことではないと思っておりますし、特に、昨年、一昨年であればまだ世界経済非常に良い状況でありましたから、そういうゆとりがあったかもしれませんけれども、今や金融市場を中心として世界経済を大きく揺るがす状況になっている中で、中央銀行において中核となる司令塔を欠いていると、そういう状況にあるということは非常に不適切であるというふうには思っているわけでありまして、今回、白川候補者が指定され、そしてその穴埋めというのか、代行として私が副総裁候補者として御指名をいただいたということは身の引き締まる思いでありますけれども、これからも、先ほどもお話ありましたように、西村さんも含めて三名のチームで遺漏なきように最大限務めていこうというふうに考えているところでございます。
  55. 大塚耕平

    大塚耕平君 大塚でございます。  それでは、渡辺参考人財務省設置法に関連してちょっとお伺いをしたいんですが、やはり先ほども申し述べましたように、財政政策金融政策の適切な関係をつくっていくことが日本にとって重要な課題でございます。そういう観点で改めて財務省設置法を見ますと、四か所に日本銀行に関する記述がございまして、特に四条の五十九号というところには日本銀行を包括的に監督するような規定が入っております。  事の是非をお伺いするつもりはないんですが、日本において、中央銀行財政当局の関係において、法制度等に関連してまだ改善の余地があるのかないのかという方向観について御見解をお伺いできれば幸いでございます。
  56. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) お答え申し上げます。  現行日本銀行法の制定の際に様々な観点から議論をして現在の規定ぶりになっているわけでありますが、精神として日本銀行の自主性、独立性をどうやって維持するか、そしてそれを透明な手続に乗せるということは、日本銀行の外の者においてもやはり透明性が要求されているというところがあるわけであります。  したがいまして、あの時点においては一つの帰結として現在の法文ができているわけでありますけれども、様々な経済情勢の変化あるいは金融市場の中の変化というものを踏まえて、その中で行政府と中央銀行の在り方がどうあるかということについては常に新しい目で見直しをしていく必要があるということは、私が常に肝に銘じていることでございます。
  57. 大塚耕平

    大塚耕平君 それでは、もう一点だけお伺いをいたします。  渡辺参考人は国際金融業務に精通をしておられるわけですが、国際金融業務、とりわけ為替については日本銀行財務省がどのようにその業務役割分担していくべきだというふうにお考えになっているのか、御見解をお伺いしたいと思います。
  58. 渡辺博史

    参考人渡辺博史君) 為替の業務につきまして、現在、財務省そして日銀との連携の下において仕事をしているわけでありますが、その他の事象と若干違うところは、為替の問題というのは多少、緊急に短い時間の間に判断をしなければいけないというところの差はあるわけでありますけれども、ただ、それ以外の通常の管理、あるいは日常的なマーケットの接触ということについてどのような分担ができるかということについては、よりフレッシュないい情報をマーケットから取るためにどういうコンタクトを財務省、日銀がやるかということについては、これも新しい目で見ていく必要があるという場合が出てくるんではないかというふうに思っているところでございます。
  59. 西岡武夫

    委員長西岡武夫君) これにて候補者に対する質疑を終了いたします。  候補者お二人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり御意見をお述べいただき誠にありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会