○
参考人(
早川光俊君)
早川でございます。どうも、こういう
機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。
私は、CASAという英語略称で、大阪ベースで
環境NGOをやっております。一九八八年に設立しまして、二十年になります。設立直後から
温暖化問題を一応主要な
活動テーマとして
活動してまいりました。私は、法改正に当たって、やはりその前提として私たちが何を考えるべきかということを
市民の視点から少しお話をさせていただき、法改正についての
意見を言わせていただければと思います。
IPCC第四次報告書の内容は、先ほど
江守さんからも紹介ありましたので、多くしゃべるつもりはありません、私、
科学者でもありませんから。ただ、私が今回の
IPCCの報告書を読ませていただいて思ったのは、今回の
IPCCの報告書は、
科学者の報告書としては非常に珍しく、
温暖化は疑う余地がないという一〇〇%の確信度で物を言っていることであります。その
原因についても九〇%以上の確信度で私たち
人間の
活動によるものだという、ほぼこれも断定したということですね。それで、もう一つこの報告書で特徴的なのは、
温暖化が加速していることを明らかにしたことだと思います。
これは百五十年の
気温の推移、先生方御覧になったことあると思いますけれ
ども、赤いバーが百五十年のトレンド、紫のバーが百年のトレンド、ダイダイ色のバーが五十年、黄色いバーが二十五年、だんだん傾きが激しくなっている、要するに
温暖化が加速しているということを明確に表していると思います。過去百五十
年間で最も暖かい年が一九九八年、二番目は二〇〇五年。最近十二年のうちの十一年が、百五十年のうちのトップ、上から十二番目のうちの十一番目まで入ってくる、一九九〇年を除けばすべてそうなっております。
これは過去一万年の
CO2濃度の推移で、
IPCCの報告書の中に出されている図でありますけれ
ども、一番左が一万年前、そして一番右の真っすぐに上へ上がっているところが現在であります。要するに、一万年単位で見れば、
大気中の
CO2濃度は異常な状況にある、
増加傾向にあるということが一目瞭然なわけであります。
海面水位も上がっています。真ん中の赤いところが観測値で、右側の青いところが将来
予測であります。
どのくらいの
気温上昇までが私たち
人間を含む
地球上の生態系に耐えられるのか、二度だというふうに言われています。この一
年間の、私、
温暖化対策、
温暖化交渉、それからいろんな動向を見ていて、この二度というのがほぼ定着してきたと思います。EU
自身は、一九九六年、
COP3の一年前に、二度という産業革命以前からの
気温上昇幅を
政策目標に据えていろんなことをやってきているわけでありますけれ
ども、ほぼこの一年、二年で二度というのが一つの目安になってきたというふうに思います。
これはイギリスのグレーンイーグルスの
科学者の
会議で発表されたものだと認識していますけれ
ども、一番上の青い
部分、水不足のリスクはこの右の目盛りで三十五億、百万人のリスクという図ですけれ
ども、二度を超えると三十五億人というレベルに達するわけであります。恐らく、このころ
世界人口は八十億ぐらいになっていると思いますけれ
ども、半分近い四割を超える人たちが水不足のリスクにさらされる。
今、九百七十万人の五歳に至る子供たちが毎年命を失っています。その最大の
原因は水不足、きれいな水がないことによる高張性脱水性の下痢だと言われています。その状況にこういった
温暖化のリスクが加わることの意味を私たちは考えなきゃいかぬのだろうと思います。
これからの
予測、一・一度から六・四度。六・四度という
気温上昇もびっくりしますけれ
ども、私が非常にショックだったのはこの一・一度という数字です。
IPCCの第四次報告書は
対策を取っても一・一度は上がってしまうと言っているわけであります。
産業革命以前から二度の
気温上昇が人類の生存に危機を、リスクを負わせるという話をさせていただきましたけれ
ども、既に〇・七四度
上昇しています。二度から〇・七四度を引いてそこから一・一度を引く、残った幅が極めて狭いということを私たちは認識する必要があるんだろうと思います。
どうすればその危険な
温暖化を防げるのか。防げるのかというのは正しくなくて、
安定化できるのかということですけれ
ども、先ほど
江守さんの話にも紹介あったように、
IPCCの第四次報告書は、
二酸化炭素濃度では、
気温上昇二度から二・四度、二度未満がないのが寂しいんですけれ
ども、二度から二・四度に抑えるためには、
CO2濃度が三五〇から四〇〇。現在既に三八〇を超えています。
温室効果ガス濃度では四四〇から四九〇。現在四三〇ppmです。二〇一五年までに
CO2排出量をピークにして
削減に向かい、二〇五〇年までに二〇〇〇年比で五〇から八五%
削減と言っています。
これがその先ほ
ども江守さんも紹介した
シナリオ一ですけれ
ども、二〇一五年までに
世界の
二酸化炭素排出量、ピークを迎える。
日本だけではなくて
世界全体ですから、これはなかなか大変なことですね。二〇五〇年においては
CO2排出量は五〇%から八五%
削減せにゃいかぬ。これが
IPCCの今回の結論です。
一昨年、スターン・レビューというイギリスの財務省が作った、
環境省じゃなくて財務省が作ったことに驚くわけでありますけれ
ども、スターン・レビューはこういう図を掲げています。五五〇ppm、五五〇ppmというと、これは
温室効果ガス濃度ですけれ
ども、三度以上になっています。それでももう二〇一五年までにピークを迎えないと非常にリスクが大きくなる。二〇四〇年まで
排出が増え続けるようだとオーバーシュートですから行き過ぎ、もう間に合わないという結論になっています。
国際交渉の経緯は、もう先生方御承知のとおりなので繰り返しません。
昨年、バリ
会議に私も参加しました。バリ
会議で決まったことについてももう御承知のとおりです。私は、一番大きかったのは二〇〇九年までに合意するということが決まったことだと思います。国際交渉を、私も
COP2からずっと参加してきていますけれ
ども、やはり終わりが決まることが国際交渉を進める最大の要因になると思っていますので、
COP3で決めたから議定書ができた。
COP6までに決めると決まったから運用ルールが
COP6・5で一応政治合意ができたというふうに思っています。
そして、先ほ
ども御紹介ありましたように、これは
参考知見なんでしょうけれ
ども、
IPCCのこういった知見が書き込まれた。これは、単に
参考知見だという話もあるし、そうだと思いますけれ
ども、ただこれを書き込むか書き込まないかについてバリの
会議は二日間徹夜をしました、ほぼ徹夜をしました。要するに、条約の下での決定にこれは書き込まれなかった。議定書の決定にはこれは書き込まれた。要するに、これを書き込むことの意味が、それだけ二日間のほぼ徹夜の交渉をしたことに表れていると思います。そういう意味では
先進国の
削減目標の決定にこれが書き込まれたことの意味は私は大きいと思います。そしてもう一つは、やはりアメリカや
途上国も譲歩の姿勢を示したこと。まだ小さな窓だと思いますけれ
ども、全くの動かない状況から動き出したということを私たちは重視する必要があるんだろうと思います。
残念ながら、
日本は、今回のバリでも非常に厳しい批判を浴びました。御承知のとおりであります。要するに、次期枠組みの
議論で法的拘束力のないセクター別原単位
目標を提案したわけですね。これは、ダボスの
会議で福田首相が国別総量
削減ということを発言されてから多分ポジションが変わったんだと思いますけれ
ども、バリの段階ではそうとしか思えない提案をしたわけですね。その結果がこの化石賞です。
会議二日目です。
〔
委員長退席、
理事橋本聖子君着席〕
私は、これを、一、二、三位を
日本が独占したときに、十数年来のマレーシアの友人にこう言われました。
日本は優れた
技術もあり、
資金もあり、もっともっといろんな意味で
温暖化問題で
国際社会に貢献して、もっと尊敬される国になれるのに、なぜこんな後ろ向きの発言や行動をしてみんなから非難されるのだというふうに言われました。返す言葉が正直言ってありませんでした。
これは御覧になったことがあると思いますけれ
ども、
会議の
最終日にジャカルタ・ポストに
世界のNGOが出した一面広告です。今、
温暖化問題での悪の枢軸は、残念ながら
日本とアメリカとカナダです。私たち
日本はそういうふうに
世界の
市民から思われていることということを知っておく必要があるんだろうと思います。
今後の課題、言うまでもなく六%
削減を確実に達成することです。私には、今このめどが立たないために、ホットエアを買いあさって数字合わせをしようとしているように思えます。できない分をホットエア、要するにロシアやウクライナやハンガリーなどのそもそも余剰になっている
排出枠を買ってきて埋め合わせる、国民の税金を使ってですよね。六%
削減をしたということに数字上はなるんでしょうけれ
ども、それでいいんでしょうか。私は、国内
対策できちっと
削減対策を進めないと、将来の世代に非常に重たい負担を残すと思います。低炭素
社会に向かう仕組みをつくらないと、もっときつい義務、行動を将来の世代が負わされるわけですよね。
もう一つの課題は、言うまでもなく高い中長期
目標を設定することであります、二〇二〇年
目標、二〇五〇年
目標。昨日辺りの新聞で、福田首相が、メルケル首相との会談の後の共同記者会見で、中期
目標も含めて方針をG8の前に発表するというふうに発言したという報道が流れています。期待したいと思っています。
なぜ六%
削減がめどが立たないか。吸収源の三・八%が非常に厳しい、これは前から申し上げておるとおりであります。
もう一つは原子力発電です。原子力発電の是非は別として、八七から八八%の利用率を前提として計画を組んでいること
自身が私には非常に無謀に思えます。
〔
理事橋本聖子君退席、
委員長着席〕
これは、原子力発電所の利用率の推移です。過去最高で八四・二%しかないんです。八七、八八%の利用率を実際に経験したことが私たちはないわけですね。しかも、最近は七〇%前後。去年は、地震の
影響もあって、これ六〇%前後に落ち込んでいると思います。
これは、過去造られた原子力発電所の生涯稼働率、利用率を見たものでありますけれ
ども、美浜一号は五〇%を割っています。それだけ故障と事故も多いわけです。最初に造った二十基余りの原子力発電所について言えば、七〇%はとてもいっていない、六〇%前後の稼働率です。
こういった状況で、新規の原子力発電所の新増設がめどが立たない状況で、本当に八七、八八という数字が読み込めるのかどうか真剣に考える必要があると思います。原子力発電所賛成か反対ではなくて、本当に現実的かどうかを考える必要があると思います。
これは、太陽光発電の導入率の推移です。赤が
日本で、青がドイツです。買取り補償制度、太陽光発電で発電した電力全量を六十円以上で買い取る制度をつくったドイツは、あっという間に
日本を追い越しました。
日本は、
市民が損を覚悟で三十万戸の
家庭の家の屋根に太陽光を付けて
世界一を誇っていたわけでありますけれ
ども、もう完全に水を空けられてしまっております。
風力発電、ドイツが二千二百万キロワット超えました。原発二十二基分ですよね。
日本は百五十万キロちょっとぐらいです。いろいろ言われますけれ
ども、中国は去年一
年間で三百五十万キロワットの風力発電所を造りました。
日本のストックの倍以上です。インドは
世界四位です。中国は五位です。
日本は今
世界十三位です。
私は、やはりG8を控えて
日本での
削減のめどをきちっと立てること、これが第一の課題。そのためには、キャップ・アンド・トレードの
排出量取引、
環境税、自然
エネルギーの買取り補償制度、そして何よりも直接
排出で九割を占める産業界の
対策の強化というものは直ちに行わないと
日本は六%
削減が非常に苦しい状況になることは目に見えているというふうに思います。そして、そのための温対法の改正をすべきだと思います。それに見合った温対法の改正をすべきだと思います。
今回の
温室効果ガスの報告義務の対象者の拡大、それ
自身は賛成です。しかし、権利利益の保護に係る請求によってかなりの
部分の、特に鉄鋼ですけれ
ども、
排出量が公開されていません。本当に公開すべきでないのかどうかをきちっと第三者機関等で審理するなどの改正が必要だと思います。
温暖化センターは今、四十五になりました。特別市などの自治体に拡大すること自体についてはいいことだと思います。しかし実際、
温暖化センター、私
自身も全国センターの
運営委員としてかかわっていますけれ
ども、多くのセンターが
資金がないために四苦八苦しています。都道府県から人件費が出ているところはいいんですけれ
ども、全くNGOに任されて人件費が出ていないところはほとんど
活動ができないようなところも出てきています。返上するところも出てきています。きちっとした
資金の担保を国の制度である以上は付けていただかないと、数を増やしても機能しないことになりかねないというふうに思います。
最後ですけれ
ども、私は、この問題に二十何年かかわってきて、私たち
日本人はこの
温暖化問題では加害者だということをやはり認識すべきだと思います。二度までは主として
途上国に
影響が出る、二度を超えると
先進国も含めて
影響が出ると言われますけれ
ども、その
途上国と言われる国に八割の人たちが住んでいます。そのことを私たちはきちっと考えなきゃいけない。
大臣会合の際に、NGOの国際シンポを開いたときに、小島嶼国の人が来てこう言っていました。私たちは〇・〇一%の
温室効果ガスしか出していない、しかし国が今なくなろうとしている。
今進んでいる
温暖化、これだけ示して終わりますけれ
ども、六・四度の
気温上昇が限りなく
可能性が高いです。この
IPCCの一番、六・四度という、最高六・四度という
排出予測したラインがこれです、
排出予測。現在の
排出量、この黒いところ、白いところ、まあ
研究機関によって違うわけですけれ
ども、最も高い
気温上昇を起こす、最も
排出量の多いラインに沿って今の
排出が続いています。そして、より多くなる
可能性があるというのがこの二〇〇五年、二〇〇六年の赤い点です。
是非、審議を深めていただいて、
温暖化対策を進めていただくよう
お願いして、私の発言を終わりたいと思います。ありがとうございました。