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赤石参考人 NPO法人しんぐるま
ざあず・ふ
ぉーらむの理事、
赤石千衣子と申します。きょうは、この機会を与えていただき、大変ありがとうございます。
私は、
母子家庭になってから二十数年、いろいろな苦労がございましたけれども、今は、
母子家庭の
お母さんと
子供が集える場をつくり、さまざまな調査や
研究や
相談活動を行っている
NPO法人の
理事をしております。関西と
福岡、
福島、沖縄に
姉妹団体がございます。
私は、
児童扶養手当法の一部を
改正する
法律案に賛成の
立場から
意見を述べさせていただきます。
国会議員の皆様、
母子家庭の
暮らしというのはどんなものか御想像いただけるでしょうか。
私は、もう
子供が二十七歳になっておりますけれども、二十数年前、小さな
子供を育てながら、十万円以下、九万五千円の
給料で
保育園で働いておりました。
児童扶養手当が当時は三万円で、一カ月の収入は大体十三万五千円ぐらいでした。
これで、家賃は五万円、六畳と四畳半のアパートです。幸いながら、
ユニットバスはついておりました。
食費は四万円程度、さらに、電気、ガス、
水道代で一万円、
電話代三千円、そして
保育料二万円などを払うと、もうこれでぎりぎりの
生活です。これが二十数年前でございます。
被服費はほんのわずかで、お下がりをもらったり。お弁当をつくって
子供を連れて公園に遊びに行く、それが唯一の楽しみのような
状況だったと思います。月末にさまざまな経費を払いますと、月の初めからは一日千円、これで
食費を払うのでございます。
その後、私は
正社員になる
仕事を得ましたので、何とか今
給料も上がって
暮らしているわけです。もしそのままでしたら、
子供を育てて教育を受けさせることは、本当にとても困難だったろうと思います。
二十数年前は、まだ
正社員になる道がありました。では、現在はどうでしょうか。
私
たちは、現在、
NPOの
団体で
電話相談、
メール相談、
グループ相談などを受けております。
グループ相談会では、
お母さんたちが集まって
自分たちの
状況を話し合うので、とてもいい分かち合いの場となっております。
そこでお話しされることなんですが、
離婚の
理由ということですけれども、そこで集まられる方は、八割近く、
借金、
暴力による
離婚でございます。そういう
借金や
暴力で悩み、
生活苦がある、夫の
給料が減ってしまったため、
カードローンで家計の不足を補って
自転車操業をしている、そんなような方がたくさんいらっしゃいます。夫だけの
借金でなく、
自分も
借金を重ねているというような方がいらっしゃいます。ですから、本当に多重債務というのは身近な問題です。
それから、かなり高学歴の方でも、
専門職で働いていたけれども、ていのいいリストラというんでしょうか、独立を迫られ事務所を開設したが、
事業がうまくいかないということで、だんだん、
お金を妻には一週間に千円、二千円しか渡さないというような
状況で、経済的な
暴力をする。さらには、
事業もうまくいかないので、身体的
暴力も加わる。さらには、その夫さんは結局
事業がうまくいかないので多重債務も抱えていたというようなことで、逃げ出してきた。でも、夫さんが謝るので一度は戻ったが、また
暴力が重ねられ、やはりもうシェルターに逃げ込むしかなかった。そんなような方がたくさんいらっしゃいます。
現代の社会の変化とか働く
状況の変化が、
家庭をも立ち行かなくしている。
離婚が
家庭を崩壊させているのではありません。その前に、社会の
状況が
家庭を崩壊させているというふうに私は思います。
では、
離婚した後はどうなのかということなんですけれども、まず、
日本の
母子家庭の
お母さんがどれだけよく働いているかということを知っていただきたいと思います。
日本の
母子家庭の母は、約八五%が働いています。これは世界一と言ってもいい数字です。スウェーデンやイギリスよりもずっとよく働いております。本当に誇っていい数字ではないかと思うんですが、全然番付には出てきません。
しかし、
仕事といっても、パートや派遣の
仕事しかありません。十万円とか十五万円のお
給料しかもらえないのです。十年前、一九九八年に、常用
雇用で働く
母子家庭の母は五〇%を超えておりました。約半分。ところが、五年後の二〇〇三年には三九%に激減。これは一体どういう変化だったのでしょう。
日本の中で
雇用が本当に大きく変わったということです。そして、二〇〇六年には四二・五%に回復したんですけれども、そのまま低いままで、就労収入はわずか百七十一万円です。
家を持っている
母子家庭の
お母さんは少ないので、民間アパートを借りますので、家賃は七万円、八万円となります。十四、五万円で七万円の家賃を払う、この
生活であります。私の二十数年前より家賃だけ高くなっている、そういった
状況です。
ですから、
児童扶養手当が月額約四万円支給されるということで、かつかつ
暮らしている。しかも、
正社員になってお
給料が上がる道というのは、パートあるいは派遣の方にはなかなかチャンスがないわけです。ですので、五年後に削減ということが二〇〇二年に決まったときには、私どもはとてもびっくりいたしました。
では、職業訓練をすれば就労収入は上がるのでしょうか。
私の会員で、七歳、五歳、三歳の
子供を抱えて、実家の
借金があって
離婚したOさんのお話をいたします。
Oさんは、
仕事がなかなか見つからなかったので、おすし屋さんで昼間のパートをしました。そして、
保育園にお迎えに行きます。そして、
子供を三人寝かしつけた後、またそのおすし屋さんで夜中にバイトをしました。そうしますと、お子さんは小さいので、起きてしまうんです。それで、携帯で
お母さんに電話してきます。ママ、どこにいるの、ママ、どこにいるの。そんな中で、彼女は
医療事務の通信講座も受けていたんですが、やはり夜中に帰ってから勉強するというのは長続きしないために、体調を壊して
仕事をやめたということです。今もうつを抱えておりまして、お電話しても、うつを抱えて大変な
状況だということです。
生活保障とセットでない職業訓練では
実効性がないということを申し上げたいのです。
就労
支援がいかに問題を抱えているか、現場を見ていないかということは、この資料、これは二〇〇七年十月二十二日の朝日新聞ですが、予算を消化していない実例ということで配らせていただきましたので、後でじっくりお読みください。
そういうことで、二〇〇二年に母子寡婦福祉法が
改正されて、就労
支援が始まったのですが、
実効性がなかなか上がっていないという
状況なんです。
そして、二〇〇八年四月から、
児童扶養手当を五年以上受給している世帯にはその支給額を最大で二分の一まで減額することとなりました。幸いなことに、私
たちはこんなことではとても立ち行きませんという声が
国会の皆様にも届いたのか、
児童扶養手当の削減、つまり一部支給停止は事実上の凍結ということを決めてくださり、本当にありがとうございました。この場で、与野党の
国会議員の皆さんに本当に感謝を申し上げたいと思います。当事者の方も本当にほっとしております。
ですが、これだけではやはり解決しない問題がございます。
今どのようになっているかと申しますと、
お母さんたちに二月からお手紙が届いております。
子供が八歳以上、
児童扶養手当を五年以上受給している
お母さんには、「
児童扶養手当に関する重要なお知らせ」という書類が届きました。この意味がよくわからなかったんですね。
あなたは平成何年何月何日において
児童扶養手当の受給から五年を経過する等の要件に該当することになります、この場合、下記一または二により必要な書類を
提出していただければ何年以降も、ちょっと抜かしますが、同様に
児童扶養手当を受給することができます云々かんぬんという、
児童扶養手当一部支給停止適用除外事由届出書と関係書類を出せという書類が来たんです。
みんなびっくりしてしまいまして、削減は凍結じゃなかったの、やはり削減されるんですかという問い合わせが私
たちの事務所にたくさん来ました。全然意味がわからないんです。せめて、この書類を出せば
児童扶養手当は継続で支給できますよ、そのお知らせですというのがタイトルにあったらよかったんですけれども、「重要なお知らせ」ということだったんですね。それで、泣きながらお電話される方もいらしたり、私どもはもちろん解説文をホームページにアップしておりますので、そこのアクセス数が急増いたしました。それで、いろいろなブログにも、ここを見なさい、ここを見なさいと。ほかに説明がなかったんですね。そういう
状況でございます。
実際には御苦労されたことはよく私は存じ上げております。職場に一々就労証明の証明書をもらうのは大変なので、給与明細書のコピーでもいいですよとか、本当に配慮していただいたところもあるのですが、しかし、現場は混乱しております。事務費はゼロで、自治体の方
たちは四分の一の受給者にこの書類を出させるという
事業を今行っておりますので、大混乱が予想されます。出さない方は支給停止になり、削減されるのです。こんなことでよいのでしょうか。
母子家庭の
お母さんは八五%が働いています。そして、現況届というのを毎年八月には出しております。ですので、就労所得があるかどうかということは確認されるわけでございます。ですので、こんなに多くの方に書類を出させるような対応はぜひ改めていただきたい。
そして、こうした混乱を回避するためにも、シンプルに、現在審議されている
児童扶養手当の一部
改正案はぜひ成立していただきたい、そのように思うわけです。
母子家庭の
状況が非常に厳しいと
国会議員の皆さんが認識されたからこそ、今すっきりと
改正していただきたいというふうに思っております。
今の
日本の
母子家庭の
状況を一言で言うと、五つの貧困にさらされていると思います。経済的な貧困はもちろんです。時間的な貧困というのがあります。
子供と過ごす時間がありません。時間も奪われています。さらに、精神的な貧困。精神的なゆとりはありません。そして、健康も悪化して、健康の貧困。そして最後に、教育の貧困です。
このようなことで、今、
次世代育成支援法も審議されておりますが、本当に
母子家庭の
子供たち、次世代を育成することができるのでしょうか。こうした
状況を打開する、最低限、
児童扶養手当は支給を続けること、さらに、
実効性のある就労
支援を行うこと、これが私
たちのお願いです。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)