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2008-06-03 第169回国会 衆議院 議院運営委員会 第38号
公式Web版
会議録情報
0
平成
二十年六月三日(火曜日) 午前十一時三十一分
開議
出席委員
委員長
笹川
堯君
理事
小此木八郎
君
理事
根本 匠君
理事
吉田六
左エ門
君
理事
竹下
亘君
理事
三
ッ林隆志
君
理事
金子 恭之君
理事
川端 達夫君
理事
石田
祝稔
君
井脇ノブ子
君
浮島
敏男
君 大塚 高司君 奥野
信亮
君 亀岡 偉民君
清水清一朗
君 藤井
勇治
君
御法川信英
君 若宮 健嗣君
大畠
章宏
君
三日月大造
君 谷口 和史君
佐々木憲昭
君
日森
文尋
君 糸川 正晃君 …………………………………
議長
河野 洋平君 副
議長
横路
孝弘
君
事務総長
駒崎
義弘君
参考人
(
日本銀行政策委員会審議委員候補者
(
慶應義塾大学経済学部教授
))
池尾
和人
君
—————————————
委員
の異動 六月三日
辞任
補欠選任
あ
かま二郎
君
浮島
敏男
君
小川
淳也
君
大畠
章宏
君
保坂
展人君
日森
文尋
君 同日
辞任
補欠選任
浮島
敏男
君 あ
かま二郎
君
大畠
章宏
君
小川
淳也
君
日森
文尋
君
保坂
展人君
—————————————
六月三日
衆議院憲法審査会早期開会
に関する請願(
倉田雅年
君
紹介
)(第三四二三号) 同(
中山太郎
君
紹介
)(第三五二三号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
日本銀行政策委員会審議委員任命
につき
同意
を求めるの件
議員谷垣禎一
君及び同
横路孝弘
君永年
在職表彰
の件 本日の本
会議
の
議事等
に関する件 ————◇—————
笹川堯
1
○
笹川委員長
これより
会議
を開きます。 まず、
日本銀行政策委員会審議委員任命
につき
同意
を求めるの件についてでありますが、去る五月二十九日の
理事会
において、
大野内閣官房
副長官から、
内閣
として、
日本銀行政策委員会審議委員
に
慶應義塾大学経済学部教授池尾和人
君を任命いたしたい旨の内示がありました。 つきましては、
理事会協議
に基づき、
日本銀行政策委員会審議委員
の
候補者
から、
所信
を
聴取
することといたしたいと存じます。 この際、
参考人出頭要求
に関する件についてお諮りいたします。 本日、
参考人
として
日本銀行政策委員会審議委員候補者
・
慶應義塾大学経済学部教授池尾和人
君の
出席
を求め、
所信
を
聴取
いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
笹川堯
2
○
笹川委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
—————————————
笹川堯
3
○
笹川委員長
まず、
議事
の
順序
について申し上げます。
最初
に、
池尾参考人
に
所信
をお述べいただき、その後、
懇談形式
で、
参考人
の
所信
に対する
質疑
を行いますので、
委員
の
質疑
に対してお答えいただきたいと存じます。 それでは、
池尾参考人
にお願いいたします。
池尾和人
4
○
池尾参考人
池尾和人
でございます。 本日は、
所信
を述べる
機会
を与えていただきまして、大変光栄に存じます。 私は、現在、慶応義塾大学で学生の教育と
研究
に携わっております。
専門
は
金融論
ですが、とりわけ
金融制度
・
システム
や、
金融機関行動
にかかわる問題を
中心
に
研究
し、
著述等
も行ってまいりました。 目の前の
現実
を無視して
金融
の
研究
を行うということはあり得ませんので、一九九〇年代以降の
状況
の中では、
政策
的なイシューにも常に注意を払いながら
研究
を進めてまいりました。この
意味
では、
中央銀行
が取り組まなければならない諸
課題
についても、かねてから関心を持ち続けてきたと言えます。 また、
研究活動
との関連で、
日本銀行
の、特に
調査研究畑
の
人たち
とはかなり以前から
交流
がありました。私
自身
、もっと若いころに、
日本銀行金融研究所
の
客員研究員
を二年間務めた
経験
もあります。 こうした
交流
、
経験
から、私は、
日本銀行
という組織に対して、愛着と言うと言い過ぎですが、それに近いようなものを持っており、今回、
日本銀行政策委員会審議委員
への
就任要請
を受けました際には、極めて短期間に判断をしなければなりませんでしたが、余り迷うことなく、お引き受けしようと決意いたしました。 それで、
現下
の
日本経済
について述べたいと思いますが、
現下
の
日本経済
は、主として
海外発
の
要因
の
影響
で減速を余儀なくされていると思います。 もっとも、もう少し長い目でとらえた場合には、
日本経済
の
成長基盤
は数年前よりは格段に強くなっています。
企業部門
では、
債務
、
人員
、
設備
の過剰、いわゆる
三つ
の過剰などの構造的な問題が
解消
に向かいました。また、
金融システム
の安定も、
基本
的には回復したと
考え
ています。
経済
の
動き
を見る場合、
需要項目
などの短期的な
動き
だけではなく、こうした
企業
、
産業
の構造や
金融システム
の
状況
など
成長
の
基盤
となる
部分
をよく見て、きっちりと
評価
することが重要だと思っております。 このような
日本経済
の現況にあって、
金融政策運営
に関して現在
日本銀行
が表明している
考え方
、すなわち、
経済
、
物価
の見通しと
上下両方向
の
リスク要因
を点検した上で機動的に
政策
を行うという
考え方
は、極めて適切なものだと私
自身
も
評価
いたしております。
金融政策
の
効果波及等
には時間的なラグが存在することを踏まえますと、フォワードルッキング、先を見て行動することは不可欠なことですし、その際にも不
確実性
を考慮に入れた慎重な
対応
をとることが望ましいことは理論的にもよく知られております。とりわけ現在のような微妙な
局面
では、
リスク
に注目することは全く当然のことだと
考え
ています。 この限りでは、
日本銀行
が折に触れて主張してきていることと私
自身
の
考え
の間に大きな違いがあるとは思いませんが、その上で、私
自身
が特に重要だと
考え
ていることを
最後
につけ加えさせていただきたいと存じます。 それは、
金融システム
の
安定性
、
健全性
を
維持
することの大切さということです。もちろん、これは言うまでもないことかもしれません。
日本銀行法
が
日本銀行
の
使命
として
物価
の安定と並んで
信用秩序
の
維持
を
規定
しているのは、こうした認識があるからだというふうに思います。 しかし、一九九〇年代から二〇〇〇年代初めにかけての
我が国
が陥った
長期低迷
の教訓に加えて、今般の
米国
の
サブプライムローン
問題に端を発した
金融資本市場
の
不安定化
の
経験
からも、
中央銀行
が
金融システム
の問題に深く関与する必要があることが改めて強く確認されたと
考え
ます。 そして、この
信用秩序維持政策
という面においては、これまで蓄積してきた学問上の知識や
経験
から私にはいかばかりかの比較優位があり、
政策委員会
での
議論
を
活性化
させる上で
貢献
できるのではないかというふうに自負いたしております。 現在は
経済金融情勢
が大変難しい
局面
にありますが、
日本銀行
の
審議委員
に任命いただきました場合には最大限の
努力
をしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします。 御清聴ありがとうございました。
笹川堯
5
○
笹川委員長
ありがとうございました。 これにて
参考人
からの
所信
の
聴取
は終了いたしました。
—————————————
笹川堯
6
○
笹川委員長
理事会申し合わせ
に基づき、
報道関係
の方々は御退席願います。 これより
懇談
に入ります。 〔午前十一時三十九分
懇談
に入る〕 〔午後零時一分
懇談
を終わる〕
笹川堯
7
○
笹川委員長
これにて
懇談
を閉じます。 この際、お諮りいたします。 ただいまの
懇談
の
記録
は、本日の
会議録
の
末尾
に参照掲載するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
笹川堯
8
○
笹川委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
—————————————
〔
懇談
の
記録
は
本号末尾
に掲載〕
—————————————
笹川堯
9
○
笹川委員長
以上をもちまして
日本銀行政策委員会審議委員候補者
からの
所信聴取
及び
所信
に対する
質疑
は終了いたしました。
—————————————
笹川堯
10
○
笹川委員長
次に、永年
在職議員
の
表彰
の件についてでありますが、
議員谷垣禎一
君は、今月で
在職
二十五年に達せられました。また、
議員横路孝弘
君は、三月をもって
在職
二十五年に達せられましたので、先例により、
院議
をもって
表彰
することになります。
両君
の
表彰文
は、前例に従って作成したお手元に配付の案文のとおりとし、
表彰決議
は、本日の本
会議
の
冒頭
において行うことに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
笹川堯
11
○
笹川委員長
御
異議
なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
—————————————
議員谷垣禎一
君は
衆議院議員
に当選すること九回
在職
二十五年に及び常に
憲政
のために尽くし
民意
の
伸張
に努められた よって
衆議院
は君が永年の
功労
を多とし特に
院議
をもってこれを
表彰
する …………………………………
議員横路孝弘
君は
衆議院議員
に当選すること九回
在職
二十五年に及び常に
憲政
のために尽くし
民意
の
伸張
に努められた よって
衆議院
は君が永年の
功労
を多とし特に
院議
をもってこれを
表彰
する
—————————————
笹川堯
12
○
笹川委員長
なお、本
会議
における
表彰
次第につきましては、まず
議長発議
をもって
両君
の
表彰決議
を行い、次に
議長
が
表彰文
を順次朗読されます。次いで、
表彰
を受けられた
谷垣
君に登壇願った後、同君から
謝辞
が述べられます。
横路
君の
謝辞
につきましては、
会議録
に掲載することにいたします。
—————————————
笹川堯
13
○
笹川委員長
次に、本日の本
会議
の
議事
の
順序
について、
事務総長
の説明を求めます。
駒崎義弘
14
○
駒崎事務総長
まず
最初
に、
谷垣禎一
さん及び
横路
副
議長
に対する
表彰
の
決議
を行います。次いで
谷垣
さんから
謝辞
が述べられます。 次に、
日程
第一につき、
竹本国土交通委員長
の
報告
がございまして、
共産党
及び
社民党
が
反対
でございます。 次に、
日程
第二につき、
東経済産業委員長
の
報告
がございまして、
共産党
及び
社民党
が
反対
でございます。 次に、
日程
第三につき、
佐藤文部科学委員長
の
報告
がございまして、
全会一致
であります。 次に、
日程
第四につき、
下村法務委員長
の
報告
がございまして、
共産党
、
社民党
及び
国民新党
が
反対
でございます。 本日の
議事
は、以上でございます。
—————————————
議事日程
第二十三号
平成
二十年六月三日 午後一時
開議
第一
特定船舶
の
入港
の
禁止
に関する
特別措置法
第五条第一項の
規定
に基づき、
特定船舶
の
入港禁止
の実施につき
承認
を求めるの件 第二
外国為替
及び
外国貿易法
第十条第二項の
規定
に基づき、北朝鮮からの貨物につき
輸入承認義務
を課する等の
措置
を講じたことについて
承認
を求めるの件 第三
学校保健法等
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
) 第四
少年法
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
)
—————————————
笹川堯
15
○
笹川委員長
それでは、本日の本
会議
は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。
—————————————
笹川堯
16
○
笹川委員長
次に、次回の本
会議
の件についてでありますが、次回の本
会議
は、来る五日木曜日午後一時から開会することといたします。 また、同日午前十一時
理事会
、正午から
委員会
を開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後零時三分散会 ————◇————— 〔参照〕
懇談
の
記録
午前十一時三十九分
懇談
に入る
笹川堯
17
○
笹川委員長
これより
懇談
に入ります。 なお、
懇談
は、
理事会申し合わせ
に基づき、速記を付し、その
記録
を公表することになっておりますので、御了承願います。 これより
池尾参考人
の
所信
に対する
質疑
を行います。
質疑
は、各
委員
が自由に
質疑
を行うことといたします。
質疑
される方は、
挙手
の上、
委員長
の許可を得て
発言
されるようお願いいたします。 また、
発言
の際は、
所属会派
及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。 なお、御
発言
は着席のままで結構です。 それでは、
質疑
のある方は
挙手
をお願いいたします。
石田祝稔
18
○
石田
(祝)
委員
公明党の
石田祝稔
です。
池尾参考人
、大変御苦労さまでございます。 一分ということですから、簡単にお聞きをしたいと思いますが、今お述べいただいた中で、
日本
の
成長基盤
は格段に強くなっている、こういう
お話
がございました。どういう面が強くなっているかということと、そしてもう一点は、
政策審議委員
として
貢献
ができる、こういう自負もお述べになりましたが、どういうことで
貢献
ができるか、具体的にその二点、あわせてお聞きをいたしたいと思います。よろしくお願いします。
池尾和人
19
○
池尾参考人
最初
の
所信
の中でも述べましたが、九〇年代の
日本経済
は、いわゆる
三つ
の過剰に非常に苦しんでいたというふうに思うんですね。
過剰設備
、
過剰債務
、
過剰人員
についての問題が
企業部門
の懸命な
努力
の結果として
解消
に向かった、適正な
資本ストック
の水準に戻ったということが、
成長基盤
が強化されたということの最も
中心
的な
内容
だというふうに思っております。 九〇年代、そういう形で
企業部門
が問題を抱えていたわけですけれども、それをさらに悪化させた、あるいはその
問題解決
をおくらせた
要因
として、
金融システム
が
不安定化
したということがあったと思います。 それで、
金融システム
の
健全性
を回復させるという点において、
中央銀行
の
役割
は私は非常に大きいと思っております。もちろん、
金融システム
の
安定化
についての
政策
は、
金融庁
を初めとした
金融監督行政
の
役割
が当然
中心
になるわけですけれども、いざ
金融市場
で危機が起こった際には、
中央銀行
は
最後
の貸し手として
流動性
を供給したり等の
役割
があり、
中央銀行
の
金融システム
問題とのかかわりというのは非常に大切だと思っているんです。 その
側面
に関して、私は、それを第一の
専門
として長らく
研究
し、かつ、
政府
の
金融審議会等
の場でも
議論
にかかわってきたという
経験
がございますので、そうした
側面
については私には何らかの
貢献
をする
可能性
があるのではないかと、ちょっと手前みそですが、思っておるということです。
佐々木憲昭
20
○
佐々木
(憲)
委員
日本共産党
の
佐々木憲昭
です。
金融機関
の
あり方
についてお尋ねします。
日本
の
金融機関
の
ROE
は五%ぐらいで低過ぎると言われています。
アメリカ
のヘッジファンドなどは場合によっては一〇〇%を超える、こういう
状況
ですが、これが正常かどうかというのが一点。 それから、
サブプライムローン
で
債務
の
証券化
ということなんですが、
プロ
の
市場同士
ではなかなか
利益
が上がらないけれども、
プロ
がアマチュアをだますというようなやり方ですね、
被害者
が低
所得者
に及ぶわけですが、こういう
現象
についてどのようにお
考え
か。
最後
に、世界的な
投機マネー
が非常に広がっておりますが、どのような
規制方法
があるか。 以上です。
池尾和人
21
○
池尾参考人
今の御
質問
は、私がかつて述べたこと等を踏まえて御
質問
いただいたというふうに思いますが、
日本
の
金融機関
の
ROE
に象徴される
収益性
は、私は低いと思っております。 それで、
収益性
の改善に向けての
努力
をすべきだというふうに思っておりますが、他方、
金融サービス業
において継続的に四、五〇%の
ROE
あるいは一〇〇%、二〇〇%の
ROE
が上げられるというのは、これは不思議なことといいますか、それはそれで極めておかしなことだというふうに思っております。
金融資本市場
が、初期の
段階
といいますか、いろいろなゆがみを抱えていた
段階
においては、そうした
利益
を上げる
機会
もたくさんあったんだと思いますが、近年、世界的に見て
金融資本市場
は急速に効率化してきておりますから、そうした中で一〇〇%を超えるようなリターンを継続的に上げるというのは極めて困難になっていると思います。 そういう
状況
の中で、しかしながら
収益
を上げなければならないという強いプレッシャーにさらされていた
アメリカ
の
金融サービス産業
が、結果として適正でないような形の
利益機会
を追求するということはあったと思います。そのことが今般の
サブプライムローン
問題の
一つ
の背景をなしているというふうに思います。 だから、
利益
を上げる
努力
をするのは当然ですが、それは一定のルール、
規律
のもとで
秩序
を持って行われるべきものだというふうに私は
考え
ております。
日本版ビッグバン
の際に、
フリー
、
フェア
、グローバルということが言われましたが、私は、まさに
フリー
と
フェア
を両立させることこそが、
金融サービス産業
が
長期
的に
成長
し繁栄していくための必須の
条件
だと思っております。 そういう
意味
で、絶対に強力な
投資家保護
、
消費者保護
ということが
金融資本市場
の
一つ
の大きな
条件
だというふうに
考え
ており、これは
アメリカ政府
もそういうふうにはっきりと言っていることでありまして、私は、そういう形で、
長期
的に健全な
金融サービス産業
の
発展
ということを期待しております。
三日月大造
22
○
三日月委員
民主党の
三日月
と申します。 これまでの
日本銀行
の
金融政策
への
評価
を踏まえて、かつ、当面する、直面する
リスク
を考慮して、これからの
金融行政
はいかにあるべきとお
考え
でしょうか。 これだと漠然とし過ぎておりますので、特に、
池尾先生
、
政策
展開するときの
副作用
について十分考慮すべきだということを二〇〇二年三月の新聞でも表明されておりますが、この間、
日銀
の
長期
にわたる超低
金利政策
は三百兆円もの
利子所得
を奪い、これが
高齢者世帯
に打撃を与えたという
副作用
もあるのではないか。毎月一・二兆円もの
長期国債
の買い入れを継続してきたことが、
財政規律
を緩め、ゆがめてしまった面もあるのではないか。異例の
量的緩和政策
が
市場
にあふれる資金を生み出して、これが逆に
サブプライムローン
だとかの
投機マネー
の原資となってしまった
側面
もあるのではないか。 こういうことに対する
評価
を踏まえて、特に
米国
と欧州の
中央銀行
の戦略が異なっている
現下
において、また、
原油
、
食料価格
の高騰が起こっている今において、どのようにお
考え
でしょうか。
池尾和人
23
○
池尾参考人
今の
局面
が極めて難しい
局面
であるというのは私も強く認識しておりまして、そういう
意味
では、今だけではなくて、九〇年以降、
長期
間にわたって極めて難しい
局面
が続いてきたということで、その中で、すべてを満足させるような形の
経済政策
の
運営
というのは不可能に近かったということがあると思います。その
意味
で、過去の
金融政策
に一切
副作用
がなかったなどということは私は思っておりません。ある種の好ましくない
効果
を
部分
的に伴っていた面はあるというふうに認識しております。 しかしながら、大宗においてはといいますか
中心
においては、
冒頭
の御
質問
のときにも申しましたが、九〇年代、
企業部門
が
過剰設備
を抱えていた。
過剰設備
を抱えているときに、さらに
投資
をしようという人はなかなかいないわけですから、どうしても
経済
は
需要不足
に陥りがちになります。そういう中で、
経済
の、景気の
底割れ
を防ぐためには、どうしても低
金利政策
はとらざるを得ない、そのことはやはり
基本
としてあったのではないかということです。それが引き起こした分配上の問題については、別途
政策
的な手当てを行うという、
ポリシーミックス
での
対応
ということが望ましいことではないかというふうに思っております。
流動性
についても、
流動性
のしっかりとした管理ということは極めて大切であるというふうに私は思っております。
日森文尋
24
○日
森委員
先ほどの
佐々木先生
の話とちょっと重複するかもしれないんですが、今後、いわゆるファイアウオール、この
規制緩和
が進んでいくということが予想されているんですが、そうすると、新たな
金融
のコングロマリットでの
利益相反
という問題だとか、あるいは
銀行
の優越的な地位による不当な商品であるとか
サービス
が販売されるとか、あるいは
銀行部門
以外の損失を
銀行
が補てんするということで
預金保険基金
がなくなってしまう、あるいはそのグループ内で複雑な業務がどんどんふえてコストが増加したり、したがって
行政監督
が非常に難しくなるとか、さまざまな問題が予想されているんですが、先ほど
先生
がおっしゃったような形で
解決
をしていくということになるのかもしれませんけれども、具体的にどう
対応
していくのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
池尾和人
25
○
池尾参考人
御
質問
いただいた
金融監督
の
あり方
については、
基本
としては
金融庁
を初めとした
金融監督行政
の
課題
だと思いますが、
冒頭
に述べましたように、
中央銀行
も、
金融市場
の問題、
金融市場
の
参加者
である
金融機関
の
経営状態等
についてよく知っている必要があるわけで、その当の
金融機関
の
経営内容
が御
指摘
のように極めて
高度化
するとともに複雑化してきているという中で、どのような形でのモニタリングの
あり方
が最も望ましいかということは、これはもう世界的にも
議論
がされている途中の問題だと思います。 最近といいますか三月の末に、
アメリカ
の財務省がその点について二百ページ以上に及ぶレポートを出して、
アメリカ
の
規制体系
の
あり方
を短期、中期、
長期
的にどう見直していくべきかということについて提言をしておりますが、そうした
検討作業
を
我が国
についてもやはり早急にやるべきだというふうに思います。 この問題は、御
指摘
のとおり、決して簡単な問題ではなくて、
高度化
、複雑化しているのをやめさせるというのは、むしろ
金融サービス産業
の
発展
を阻害することになりますし、
イノベーション
を妨げることになるわけですから、
金融サービス産業
が
高度化
、複雑化していくという
現実
を踏まえながら
規制監督
あるいは
金融政策
の
有効性
を
維持
していく
体制づくり
ということは懸命に、要するに民間の
イノベーション
に負けない
イノベーション
を
政策当局
もやっていかないと、その
政策
、
監督
の
有効性
が失われるという話になると思いますので、我々、本当に、簡単にこうすればいいというふうにお答えはちょっと今できない種類の問題ですので、私も直ちに簡単な答えを持っているわけではありませんが、今申したような
意味
で、十分に検討する
作業
をやっていく必要があるというふうに思っております。
竹下亘
26
○
竹下委員
自民党の
竹下亘
でございます。
日銀
の
使命
として、
物価
の
維持
と
信用秩序
という
お話
をされました。では、
物価
について少し
お話
をさせていただきます。
物価
が
経済
の
活性化
の、いわば体温が上がることにつれて
物価
が上がるというのは、ある
意味
で、ある種健全な
部分
があると思うんですが、今
日本
で起こっておる
現象
、確かに名古屋を
中心
に多少いいところはありますけれども、その他の地域で特にいろいろな
影響
が出てきておる。しかし、
原油高
、
穀物高
、
えさ高
、いろいろなものが重なって、ピンポイント的にというか、だんだん
波及
をしておりますけれども、
物価
にかなりの
影響
が出ておる。 では、そういう中で、普通は
物価
を抑えるためには
金利
を上げる、だけれども、今の
経済状況
の中で
金利
を上げると
経済そのもの
まで傷つけてしまいかねない。スタグフレーションとまでは言いませんが、そういう
可能性
すらあるという難しい
状況
にあると思います。 一方で、私は、三%以下は極端に言うと
金利
ではない、
企業
が五%の
金利
を負担して
利益
が出るというのが正常な姿だ、本当はそこへ早く戻していただきたいという思いもある中で、
金利
について
物価
との絡みでどうお
考え
になっているかを教えていただけませんか。
池尾和人
27
○
池尾参考人
これも難しい問題なんですけれども、御
指摘
いただきましたように、
供給面
に
原因
がある場合と
需要面
に
原因
がある場合で、
物価上昇
が起きた場合の
対応
の仕方というのは随分異なってこざるを得ないわけです。 それで、
需要サイド
が盛り上がってその結果
物価
が上昇するというのは、御
指摘
のように、いい
物価上昇
の
可能性
が高くて、その場合は自然な形で
金利
を上げていけばいいというふうに
考え
ますが、今般のように
供給面
で、原材料価格、燃料価格等が高騰する形での
物価上昇
の際に、
物価
を抑えるために
金融
引き締め
政策
をとった場合は、むしろ雇用とか景気に極めて悪い
影響
を与えかねないということで、
物価上昇
の機運が見られても、なかなか
金利
を引き上げるべきかどうかということで判断に悩まざるを得ない、今そういう
局面
だと思っております。 それと、一般的な
物価
の
動き
と並行して、相対価格と言っておりますが、物とか
サービス
の価格の割合の変化が起こっているというのがあると思います。 消費者にとって身近なものの価格は上昇していて、生活者の実感からするとインフレになりつつあるという形になるわけですね。しかしながら、GDPデフレーターといいますか、
経済
全体についての価格動向をならして見る指標を見れば、依然としてある種デフレが続いているというふうなところがあって、すべての財・
サービス
の価格が同じように全部動いているときにはすごく話は簡単なんですけれども、技術革新だとか資源価格の上昇だとかいろいろなファクターがあるせいで、物によって
影響
を受ける度合いが違いますから、上がっているものもあれば、実は下がっているものもあるということで、消費に直結する
部分
での、消費者
物価
指数の
動き
には十分注目していかなければいけないと思いますが、
金利
を上げるべきだというふうに即断できる
状況
では決してないというのが私の今の認識であります。
糸川正晃
28
○糸川
委員
国民新党
の糸川正晃でございます。
池尾先生
が
日銀
政策審議委員
というふうになられた場合には、
金融システム
全体についての
安定性
が必要だとおっしゃられたと思います。特に、郵政民営化について支持をされていらっしゃったと思いますが、民営化をされた後のゆうちょ
銀行
が
金融システム
全体に及ぼす
影響
というのをどのようにお
考え
でしょうか。
池尾和人
29
○
池尾参考人
御案内のように、ゆうちょ
銀行
は、現在、資産運用の
内容
としては、大宗が国債の保有になっているわけです。したがって、ゆうちょ
銀行
が保有国債を大量に処分するというふうな行動に出た場合には、国債価格にかなりの大きな
影響
が出ることは懸念されるわけです。 ただし、私は、現時点でのゆうちょ
銀行
の
経営内容
といいますか、経営方針について熟知しておるわけではないので、その
意味
では断言しかねるところはあるんですけれども、ゆうちょ
銀行
がにわかに保有国債を手放すというふうなことは
考え
がたいと思います。より時間をかけて、
リスク
管理のノウハウだとか、貸し出しの審査のノウハウだとか、そういうものを身につけながら徐々にポートフォリオの
内容
を組みかえていくということは当然予想されますが、きょう、あすに大きなポートフォリオの組みかえをゆうちょ
銀行
が図るとは思われないので、そういう
意味
においては、当面、ゆうちょ
銀行
が
日本
の
金融システム
の
安定性
に対して攪乱
要因
になるというふうには
考え
ておりません。
笹川堯
30
○
笹川委員長
これにて
池尾参考人
の
所信
に対する
質疑
は終了いたしました。
参考人
は退席していただいて結構です。どうも大変御苦労さまでございました。 これにて
懇談
を閉じます。 午後零時一分
懇談
を終わる