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2007-10-25 第168回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年十月二十五日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         郡司  彰君     理 事                 主濱  了君                 平野 達男君                 加治屋義人君                 野村 哲郎君     委 員                 青木  愛君                 一川 保夫君                 金子 恵美君                 高橋 千秋君                 藤原 良信君                 舟山 康江君                 米長 晴信君                 市川 一朗君                 岩永 浩美君                 牧野たかお君                 山田 俊男君                 澤  雄二君                 谷合 正明君                 紙  智子君    国務大臣        農林水産大臣   若林 正俊君    副大臣        農林水産大臣  岩永 浩美君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       澤  雄二君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 朝雄君    政府参考人        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       藤崎 清道君        農林水産省総合        食料局長     岡島 正明君        農林水産省消費        ・安全局長    町田 勝弘君        農林水産省生産        局長       内藤 邦男君        農林水産省経営        局長       高橋  博君        農林水産省農村        振興局長     中條 康朗君        林野庁長官    辻  健治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農林水産に関する調査  (品目横断的経営安定対策に関する件)  (米価下落対策に関する件)  (米国のバイオエタノール増産政策に関する件  )  (BSE検査に関する件)  (食品偽装表示に関する件)  (森林整備事業における施業の集約化効率化  に関する件)     ─────────────
  2. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君外六名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 平野達男

    平野達男君 民主党・新緑風会・日本という名前がまた最終的に変わるかもしれませんが、平野達男でございます。  今日は、質問トップバッターということで米を中心に何点か質問をさせていただきますが、その前に若林農林大臣、今まではリリーフエースみたいな形で農林水産大臣環境大臣を兼任されまして、今回主戦投手になったわけでありますけれども、その御感想をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  6. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員承知のとおり、私も二十五年間農林水産省で働かせていただきました。その後二十五年間、衆議院、参議院、籍を置きまして、主として農山漁村農林漁業関係にかかわらせていただいてまいりました。その意味では、私自身、この農林水産業農山漁村の持っている課題というものに常に取り組ませていただきましたが、振り返ってみまして、なかなか思うようにこの課題の解決が進んでいないということ、悔しい思いをしながら非力を嘆きながら、それでも一生懸命取り組まなきゃいけない、そんな思いで取り組んできた半生であったと、自分でそう思っております。  不思議なことに、この期に及んで最高の責任者拝命をしたわけでありますから、今までなし得なかった種々の課題について私の持っております全知全霊、これを集中をしまして、当面しているこれら課題に取り組んでいきたい、そのように決意を新たにしたところでございます。
  7. 平野達男

    平野達男君 今農政をめぐる状況というのは、WTOの問題も含めていろんな問題が山積みだと思います。その中で、大臣がくるくるくるくる替わったというこの状況についてはどのように思われましたか。
  8. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) それぞれの大臣政治家としてその御判断をなされて引かれたわけでございます。それぞれの大臣自身に集中しました各種の批判というものを受け止めておられたことだと思います。  しかし、原因はともあれ、短期の間にこのように大臣が替わったということは、農林漁業者はもとよりでございますけれども、政策の実行を担当しております農林水産省の職員あるいは関係の諸団体の皆さん方からしても、農林水産行政に対するある種の不安あるいは不信、そういうようなものをかき立てるようなことになったのではないかというふうに危惧をいたしているわけでございまして、政治家としてこのようなことになったことは甚だ残念なことであり遺憾なことだと、このように感じているところでございます。
  9. 平野達男

    平野達男君 正に、今おっしゃったように、いろんな大臣がくるくる替わることによって頭がだれか分からなくなってきている。そういう中で、最終的に何かあった場合にだれが責任を持って決定するんだという状況が見えなくなっている状況が何か月か続いたんです。で、これは遺憾とか何かということじゃなくて、やっぱり大問題だと思うんです。こういう状況に至った責任というのは、じゃ、それは一体どこにあるんだということが、きっちりこれは整理されなくちゃならないと思うんですが、大臣はどう考えます、これは。
  10. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) そのことについては私がお答えするようなことではなくて、私も正にその中の一人として任命を受けたわけでございますから、私自身はその課せられた責任をしっかり果たしていくということで頑張っていくと申し上げておきたいと思います。
  11. 平野達男

    平野達男君 しかし、若林大臣内閣一員でもあったわけですから、内閣としてそういう状況をつくったということですよ。しかもその中で代理という形で二回やられて、今回主戦農林水産大臣拝命をされたわけですけれども、内閣一員としてどのように考えているかということは、私個人の問題として私は任務を果たすということではなくて、内閣一員としてどう考えているかということについてはやっぱりきちんとコメントしてしかるべきだと思いますよ。どうでしょうか。
  12. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 繰り返すようでございますが、甚だ遺憾でありまして、私自身は残念なことだと思っておりますが、この責任内閣としてどう取るかという問題であるという御指摘であるとすれば、それは総理大臣の統括した責任として対処されたことだと思っております。
  13. 平野達男

    平野達男君 いずれ、これ最終的には任命責任ということもあるんでしょうけれども、こういう状況をつくったということに対してのしっかりとしたコメントが、まあこれは予算委員会かどこかでやるべきだったと思うんですけれども、内閣からやっぱりあってしかるべきだったと私は思っております。  この問題についてはまた機会があったらどこかでやりたいと思いますが、今日のテーマの米の問題について移らせていただきたいと思います。  質問通告した順番とちょっと変えまして、すぐに米の問題に入っていきたいと思いますが、今日、お手元に二枚の資料を提出させていただいております。一枚目は予算の都合で白黒のペーパーにしてありまして、二枚目はちょっとカラー資料にしてございますが、まず先に、カラーの方ではなくて白黒資料をちょっと見ていただきたいと思います。  これは、棒グラフが米の生産費の推移でございます。そして太い折れ線グラフが、これがコメ価格センターの全産地品種銘柄年産別平均価格でございます。ちなみに、生産費については全算入生産費を、これを計上してございます。この黒線が今言いましたようにコメ価格センターでの年産別平均価格ということになるわけですが、実はこれがそっくりそのまま農家に行くわけではございません。この中からいわゆる流通経費というものが差し引かれて、農家にはその差額が行くということになっていまして、この流通経費が幾らかというのは実はなかなか分からなくて、農協さんに聞いても教えてくれませんね。山田さんがおられますから、山田さんが説明していただけるかもしれませんけれども、何か企業秘密かなんかということでなかなか分からないということになっていますが、いろいろ農家の方にお聞きすると三千円ぐらいじゃないかというふうに言われていますので、この表では三千円というふうに一俵当たり見込んでおります。この差額農家手取りということになりまして、平成十八年産米では一万一千八百二十五円ということになります。  そこで、この表を見ていただきたいんですが、まず一つは、全算入生産費を大きく割り込んでいる状態がずっと続いているということがまず一点あります。それだけではなくて、地域別にちょっと見ていただきたいんですけれども、各地域物財費支払利子地代及び雇用労働費というのがございまして、これは農家から出ていくお金であります。このお金地域別で見た場合には、全国平均は、地域別の前に全国平均なんですが、九千七百九十五円ということで、極めて農家販売額に近くなっている状態であります。もっと大変なのは、例えば中国、四国、九州、この辺りは一万一千八百二十五円を上回る状況になっているということでありまして、これは、この数字がもし正しいとすれば、農家赤字を出しながら米を作り続けているというそういう状態が今起こっているということであります。  もう一枚、今度はカラーの方を見ていただきたいんですけれども、これは全農家平均が左に書いてございます。そして、今度は階層別に見たときであります。いわゆる〇・五ヘクタール未満、〇・五、一・〇というふうに階層別生産費をこれを図にしたやつでありますけれども、御承知のように、規模が大きければ当然生産費は下がってくるということですね。  その一方で、農家手取り一万一千八百二十五円ということで今話を進めさせていただきますが、この一万一千八百二十五円との比較をしていただきたいと思います。この数字を見ますと、一ヘクタール未満については、ほぼこの一万一千八百二十五円以下の状況になっておりまして、赤字を出しながら米を作り続けている状態になっているということでございます。  大臣、このまずざっとした説明でございましたけれども、このデータを見た感想をちょっとお伺いをしたいと思います。
  14. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 稲作経営というのは、他の畜産や果樹、野菜などと違いまして土地利用型の農業でございます。土地利用型農業にかかわっている生産者皆さん方は、長い日本における稲作農業の、水田農業の中でこの稲作と非常に深くなじんでいるわけでありまして、そういうような農家は、自分の生業としての稲作と、こういうふうに考えますと、先ほどお話しになりました物財費、あるいは外に支払う地代利子といったような第一次の生産費を、これはまあ外に出る経費でございますが、あと自家労賃でありますとか自作地地代でありますとか、そういうような、言わばそのことが自分所得としてカウントされるものがある以上は一番作りやすい稲作に従事するという伝統からきた稲作経営での取組というようなことが根深くあると。  そのようなことから、この中にございますけれども、委員がおっしゃられました全算入生産費を割っているにもかかわらず、稲作経営を、稲作作付けを続けているというような実態が出ておりまして、これは日本農業の中でも稲作に限ってある非常に特殊な現象だということを感ずるところでございます。
  15. 平野達男

    平野達男君 こうした状況はいつまで続くと思いますか。
  16. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) これはほっておきますとなかなかその改善は行われにくいものだと思いますが、実はこの稲作に従事している人たちは、主業農業者以外に準主業、あるいはいわゆる兼業の人たちも非常に多いわけでございます。その中で、さらに言えば、この稲作に従事している人たち高齢化が進んでおります。  実は、私の近所に小学校時代の友人がそのまま卒業後も農業にかかわってきて稲作をしております、もう七十三歳でございますけれども。これら、彼らはあるいは彼女らは今なお元気で稲作をしております。よく彼らにいつまでやるんだとこう聞きますと、おれの代で終わりだなと、こう言っているわけであります。ですから、体力がだんだん弱ってきていますから、その彼らもいい借り手がいるならば貸したいと、あるいは請け負ってやってくれる人がいれば請け負ってやりたいという気持ちがある。その全部を出すというわけじゃありませんけれども、自分労働力自分家庭環境に応じて少しずつでも規模を縮小しながら、そして自分野菜とかあるいは果物とか、そんなものに特化して規模を縮小しながらやっていくというようなことを言っておりますし、事実そういうことであろうかと思うんですね。  ですから、長い戦後の農業流れを見ていきますと、そういう社会的な変化、あるいは今の労働力としての農業従事者をめぐる環境変化に応じて、徐々にではありますが、これらの人たちがリタイアせざるを得ない、そういう状況になってくると思うんです。そのときにこの政策がフォローアップをしまして、こういう人たちがその変化に応じながら、規模別に見ますとかなり収益を上げる稲作経営もあるわけでございますし、集団的な栽培、集落営農などを通じて更に利益が出るというような状況の中でそれに参加するというようなことを進めていきますれば、稲作におきましても主業経営がその生産相当部分を担うような、そういう構造改善は進んでいくものと期待をいたしております。  私自身は、農林省の二十五年の生活の中でも十年近くをこの土地問題、農地問題にかかわってきた経験からしますと、私が想定していたよりもなかなかそのような変化が生じておりませんでしたけれども、この十年ぐらいを見ますと意外と規模の大きな稲作経営者の方に土地利用権が移転をしているなというふうに思います。それは、そのような状況変化がいよいよ迫ってきた中で生産者が対応する、また政策の方も、農用地利用増進事業を始めとする諸施策、あるいは地域の集団的な生産条件整備につれましてそのような変化が起こってきているというふうに思います。
  17. 平野達男

    平野達男君 ちょっと答弁が長くてなかなかちょっと整理するのが大変ですが、一言で言えば、大臣認識は、今これからゆっくりこういう構造調整が進むからそれに任せておけばいいんだということを言いたいわけですか。
  18. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 任せておけばいいと言っているわけではありません。そのために施策を、食料農業農村基本法の二十一条ですか、そこにもはっきり書かれておりますけれども、効率の高い安定した経営相当部分生産を担うような農業構造にしていかなきゃいけないというふうに書かれております。その新基本法に従いまして各種施策を今集中的に講じてきておりますし、その施策を更に加速するべく今農政改革対策というものを進めているわけでございまして、そういう対策によりまして、流れに任せるんではなくて、そういう条件に即した形で政策を強化拡充することによって加速されていくということに期待を込めて政策をしているわけでございます。
  19. 平野達男

    平野達男君 私はそういう構造政策を進める前提は、少なくとも米作りをやっている農家においてもある程度の所得が今あるということが前提にならないとそういう議論は成立しないと思います。  何を言いたいかといいますと、今こういう状況で、生産費物財費すらも割るような状況が今ここに起こっている中で農家は今どういう状況になっているかといいますと、私は年金を払いながら米作りをやっていますよと言うんですよ。自分の預金を崩しながら米作っていると言います。全面作業受託に出したら何ぼ取られるか。八千円とか一万円取られるというんです。米売ったとしても手元に来るのが一万一千円とか一万円前後ですよ。今大臣言われたように、何で持っているかというと、自分が耕さなければだれも耕す人がいないから耕しているんですよ。それで、頼みたいと思っても受託料は高くなっている。じゃ、どうしようかと迷うわけです。今この状況をほっておいたら、やっぱりやめますという農家がどんどん出てきてもおかしくない状況なんです、これは。  どんなに考えたって、物財費で一万三千円掛かって米を作っている農家がいるなんというのは、これはとんでもない状況だというふうにやっぱり考えなきゃいかぬのじゃないでしょうか。多分、この農家はぼろぼろの機械を使って、機械の償却もほとんどゼロになって、それをだましだまし使ってやっているんだと思う。いったん機械が壊れたらもうできなくなる可能性があるんです。じゃ、その田んぼをだれが受け取ってくれるか。今、小作料だって、さっき言ったように全面作業受託に出しただけで結構なお金取られますよ。そういう状況の中で、出したくても出せないというところもあるんですよ。  そもそもこれ、今までの農政のツケだと思うんですけれども、ある集落があって、私の岩手県の事例ですけれども、七十歳前後の方々が四十ヘクタール、五十ヘクタールの水田を耕しています。頑張っています。五年後、十年後どうなりますか。地域担い手がいないと言うんですよ。じゃ、その前に、こういう形の中で赤字状態がどおっと続いてしまったら、担い手はいない、受取手はいない、耕作放棄地がぼんぼん出てくる可能性すら私はあると思いますよ。そういう危機感があるのかないのかというお話なんです。  いつまでもこういう高齢者農家高齢者方々が一生懸命頑張っているところに依存して米作りを今こうやって任せておいて、あと品目横断対策だ、構造対策だというふうにやっている状況では私はないんじゃないかと思いますけれども、どうですか、そこは。
  20. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 非常に大事な点だと思います。私は、そのような状況が進んでいる地域が広がってきていることは承知いたしておりますが、逆に、そういう状況であるがゆえに、その政策の効果が発揮できるフィールドも広がっているというふうに考えているわけでございまして、例えば農地政策につきましても、今の規模によります生産費格差をもう一度検証してみますと、かなり規模によって違っているわけですね。  そういう規模を大きくしていくための障害は何かといえば、分散錯圃でございます。大体十ヘクタールなり十五ヘクタール程度の規模人たちに聞くと、圃場としていえば四十から六十というようなもう大きな分散した圃場耕作をしているわけですね。これをもっとまとめたものにしたいと思っても、なかなかそれは、自分農業委員会を通じていろいろやってもなかなかこれが集約できない、そのために更に大きな生産性が発揮できないでいると、こういうことがあると思うんです。  ですから、そういう、今までは出し手の方が余り積極的に出すという人がいなかったという状態が長く続いてきていますから、そういう分散錯圃状態が止まらないわけですけれども、これからの課題は、これをどうやって面的な広がりを持った形で効率的な経営が請け負えるような状況を一方で土地政策としてそのことも併せ進めていきますと、これが面的に利用できるとうんと生産性格差が出てきますから、出し手に対してもそれなりの地代を払うこともできるようになるでしょう。そういう条件が、この長い日本の、まあ戦前から言いませんけれども、戦後の農業史を見てみますと、ようやくそういう状況が今現れてきていると。  決して楽なことではありません。高齢者が進んで担い手がいなくなっているという現実もありますが、そこは、そういうような担い手を一方であっせんをし、あるいはまた担い手を育成するという形で、担い手の方も希望があるわけですから、そういうつなぎをきちっとする、政策的に段取りを付けて環境づくりをすることによって私は力強い土地利用型農業も生まれてくる、そういう可能性が今までかつてないほど出てきたと、こういうふうに考えております。
  21. 平野達男

    平野達男君 日本は過去五十年間で人口が五割増えました。八千万人から一億二千万人になったんです。いろんな推計がございますけれども、今少子高齢化時代に入って、今少子化対策いろいろ議論されていますが、ある推計によれば、これから五十年間で過去五十年間で増えた人口がそのまま減るという推計もある。そこまでペシミスティックに、悲観的にならなくても、あるいはそこまで深刻にならなくても、二割、三割ぐらいの人口は今後五十年間で減っていく。  一方で、このことは何回もこの委員会で申し上げましたけれども、例えば東北だったら仙台はこれからも人口増え続けます。岩手県でもある地域では人口が増え続けるというふうに、人口が増えると見込まれている。日本全体で人口がそれだけ減っていくのに、どこかの都市では人口が増える。どこかの地域がその人口減少のしわ寄せをどかっと受けてくるわけです。それは多分農山村だと思います。現にその状況が今始まっておるんですね。  そういった意味では、今、大臣の言葉を私に言わせれば、農業従事者減少という時代に、入口にもう立っているんだと思うんです。そういった意味では、出し手が今までいなかったというお話がございますけれども、これからは出し手はどんどん出てくる可能性があるんです。それをどうやって調整するか。  その中で、大臣言われましたように、受け手もこれからはえり好みすると思います。分散錯圃でしたら、何ぼ規模拡大したって効率性が出てこないから、規模拡大のメリットが出てきませんから。だから、規模拡大というのはすぐに進まないですよ。ある一定の時間が必要なんです。  しかし、私は言いたいのは、一方で人口減少の波が相当押し寄せてきている。黙っていても、今頑張っている農家は五年、十年たちますとリタイアせざるを得ない。しかし、その前に、これだけの赤の状態が今ここにあるという中では、リタイアするそのスピードがもっともっと速まるかもしれませんよ。  そういう状況の中で、いや、農地の流動化進めていきます、構造改革進めます。いいですよ、それは。それは間違っていませんから、方向では。少し時間軸というか、スピード感というか、危機感というその認識が足りないんじゃないかというふうに私は思いますが、どうでしょうか、もう一回。
  22. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) そのような大きな流れについての認識は共有していると思います。そして、そのことはほうっておけば大変な危機に、今もう危機に入っているというような状況認識も共有していると思います。  しかし、だからといって、今の状態に若干の、そういう成り立たない、生産費を賄えないような農家に若干の助成をしたからといって、高齢化は進む、人口減少は進む。そういう人たちをここでキープしたからといって、農業の将来展望が開けてくるとは私は思わないのです。どうしてもここは将来を展望して、力強い担い手がそこで現れてくるようにしなければ、やはり農業の有効な土地利用は進まないと、このように思います。  かつて並木理論というのがありました。高度成長過程で農村からどんどんと他産業に集合してきます。それで、並木さんはこれが農業の近代化のチャンスだと言って、もてはやされました。並木理論と言ったものであります。しかし、どうなったかというと、兼業の形で、稲作についてはそれを継続しながら兼業収入と合わせ収入で生活していく人たちが多くなってきて、並木さんが言っておられたような形の規模拡大に結び付かなかったということが言えると思います。でも、昨今は、そういう意味での兼業と稲作とを結び付けてやっていくということ自身もいろんな要素から難しくなってきていると。  ただ、稲作については、土曜、日曜だけやっていればやれるんだという、そういうような技術進歩その他の中で最後に残っているのが稲作でありまして、もう委員承知のように、果樹や野菜や畜産やその他、大豆、麦なんかもそうですけれども、主業農業者が実は生産の七割から九割に及ぶ供給量を占めるようになってきているんですね。  だから、稲作といえどもそのようになると思うんですが、しかしその過程では、おっしゃるように耕作放棄地が増えていくというようなことも恐れられるわけでありますから、そこはそうならないようにするために、どのように担い手を育成し、どのように担い手と結び付けていくか。あるいは、個別の農業ではやらないようなところには集落営農をどういうふうに参加を求めながら集落営農の形でやっていくか。それは一朝一夕でできないんですけれども、そういう目標というものをしっかり決めて進めなければ農業の将来はない、こう思っております。
  23. 平野達男

    平野達男君 いずれ、今の農地を守っている、それから米作りを続けている、その大きな部分というのは、基幹的農業従事者の六割は六十五歳以上というデータが出ていますけれども、六十五歳を過ぎた元気な高齢者方々ですね、その方々が採算割れをもう分かっていながら耕し続けている。それは構造改革の妨げになると言う方もいます。しかし、その方々は受け手がいれば出してもいいとも言っているんです。それがいない。今のこの状況の中で、なぜ今の米作りが続いているか、農地が守られているかといえば、そういう人たちの、先ほど正に大臣が言われた農地に対する思い、おれは小さいころから米作りをやってきたんだという米作りに対する思いが支えているんです。だから、それが支えているから、今、何となく、まだ耕作放棄地も四十万ヘクタール弱で、これだって膨大な量ですよ、そこに収まっているのかもしれないんです。  そこで、今の状態で例えば集落営農をつくれ、流動化を進めろといったって、そんなに簡単にできませんよ。そういった実際に進めなければならないという政策の方向性と、実際に今、現状に起こっている、どういう問題が起こっているか、その間のギャップをどうやって埋めるかというのが、多分、今のこの段階での私は最大の問題だと思います。  そこで、こういった農村の構造の問題を今議論しましたけれども、もう一つ考えなくちゃならないことがあるんです。米価下落というのが本当に止まるのかという問題です。というのは、米価の下落がこれからも止まらないと考えたら、これから更にもっと大きな問題が起こるんです。規模拡大といったって、受け手の農家が今度はいなくなってきます。  だって、要するに、米収入が将来も減ってくるかもしれない。それを補う意味での急速な規模拡大ができれば別ですよ。だけれども、日本の場合は、先ほどまさしく大臣が言ったように、規模拡大をやったって分散錯圃ですから、あちこちに分散されて利用権設定が進む可能性があります。そういう中で米価の下落に将来とも歯止めが掛からないということが予想されるとすれば、受け手の方はしり込みしますよ。  そういった意味で、米価についてのこれからの動向について、ちょっとテーマを移らせていただきますけれども、米価下落の原因というのは、大臣、どのように考えておられますか。
  24. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 米価の下落の要因というのは、一時的な、今年産であれば今年産について起こっている要因と、言わば構造的な形で長期の要因と、二つあると思うんですね。  そういうふうに考えますと、今年のことについて申し上げれば、委員承知のとおり、作況は九九ということで、大体平年作の、地域によって違いますけれども、九九であったにもかかわらず、実は需給に見合った形の、予定されている、作付面積が予定の面積を上回ったということになるわけでありまして、生産量が生産目標を上回ると。これは、いろいろな統計予測が発達してきていますから、作付けが終わった段階で大体、平年作であればこのぐらい取れるだろうというようなことが予測されるわけでありまして、その意味で、生産量が生産目標を超えるというふうに関係者が見込んだということが一つあると思います。  それからもう一つは、主たる売手であります全農が、御承知のように、概算金の取扱いの仕組みを見直しまして、集荷段階でまず七千円程度の内金を払う、そして年末までの間にこれを追加払いをする、それで年度末に昔のように精算をすると。こういう三段構えにするということをしたわけでありますが、これは、どういう要素でその七千円という初めの内金を決めたのかというのはつまびらかでありませんけれども、このようなものが、従来のやり方を変えたことによって、生産者の段階で何か先行きこれはもう大変な下落になることを全農が予想しているというふうに予測をしたということもある、また、アナウンスがそのようにアナウンスされたというようなことが影響しているだろうというふうに二つ目考えられるわけであります。  それから三つ目は、やはり過剰な競争体質というものを流通業界は持っているわけでありまして、そういうことを敏感に反応した流通業界の態度があったと。  最後に、大事なことですけれども、消費者の志向が、一時、具体的に言って恐縮ですけれども、魚沼産のコシヒカリとかそういう特定銘柄にうんと集中していたのが、今は低米価の方に消費者が志向してきているというようなことが今年のことについて言えば背景になっているんじゃないかと思います。  そこで、構造的な問題とすれば、やっぱり流通業界の体質と構造、それから今消費者が米の志向で低米価、低価格を志向しているというようなことがあるんじゃないかと。それらが重なって今価格が低下傾向になっているんで、今後、これがもう委員が御心配のように底なし沼のように低下していくと、そんな生産構造になっているとは思っていないわけで、いろんな対応策は可能だと、こう思っております。
  25. 平野達男

    平野達男君 私も底沼の状況に行くとは思っていません。ただ、今大臣の御答弁の中で、前半はなぜ今年が米価下落したかという問題で、後半の部分についてはやや構造的な問題で原因を挙げられまして、後半の部分はそのまま将来にわたって当てはまることだと思います。  さらに、もう一つ私付け加えさせていただきますと、将来的なスパンで考えた場合に、これは農林省も言っていますが、米の需要は落ちると言っていますね。これは一人当たりの需要量については下げ止まっている傾向がございますが、これから人口減少が始まりますから、最大で二五%なんということがちょっと大げさに取り上げられたりしましたけれども、まず落ちる。そういう中で、そういう需要が落ちる予測に沿った需給調整が本当にできるのかどうかという根本的な問題があると思います。これはなかなか難しいと思います、これは。じゃ、難しいとなったら、市場がそれをどう見るかという問題が一つありますね。  それから二つ目は、いろいろ取りざたされているように、米はかつては本当に別格扱いでした。米だけは米だけはという感覚でとらえまして、米は高くてもいいんだみたいな感じはやっぱりあったと思いますけれども、最近はもう食生活が全く残念ながら、残念ながらといいますか、変わってしまった。テレビでは、ある大学の教授が野菜並みとかなんとか、何かそこまで言うかと私は思いましたけどね。そういうことが公然と語られるようになってきて、つまり、米の価格の決定が米だけの特別の世界ではなくて他の作物との比較の中で、作物というか、食物との比較の中で値ごろ感で決定される要素も出てきたんだろうと思って、これはまた米価の下落の足を引っ張る方向にやっぱり動くんだろうと思います。  それから、あと三つ目は、やっぱり流通形態。先ほど大臣もちょっとお話しされましたけれども、今もう大口で米を買う人が増えてきましたから、大量ロットで買うということで、しかも今までみたいに農協さんの、全農さんの系列会社が、売手と買手が卸と仲卸さん、卸の段階で系列的に縦につながっているという状況から、今はコメ価格センターにも第三者が入るようになってきまして、市場の動向がダイレクトに反映されるような仕組みになってきたということもあります。  それから、あともう一つは、よく言われることですけれども、米については価格の弾力性が、需要の価格の弾力性が非常に低い。財とすれば低級財であるということもよく言われてまして、そういったもののそれぞれを、もろもろのことを総合しますと、やっぱり米の価格というのはある程度ここしばらくの間は下がり続けるというふうに市場は見るし、経営能力のある経営者というのはやっぱり見るんではないかというふうに思いますが、大臣はそれに対してどのように考えますか。
  26. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 米価格の将来をどう予測するかということは、なかなか私も今の段階でこうだと申し上げられるような私に知見はございません。しかも、目の前に短期の供給過剰感がありまして、今年の米価がかなり先行き低下するんじゃないかということを危惧している人たちが非常に多い中でございますので、米価格が将来どういうふうになっていくんだというようなことについて今ここで、さほど知見があるわけではありませんが、そんなことを申し上げるというのはやや控えさせていただきたいと思っております。
  27. 平野達男

    平野達男君 米の価格が上がります下がりますということに対してダイレクトに答えられないというのは分かります、そんなこと言ったら、また市場に大きな影響を与えますから。ただ、答えるのがなかなか難しいかもしれませんが、もし下落するという方向で判断する状況があるとすれば、先ほどの話に戻りますけど、経営規模の拡大にブレーキが掛かる可能性もあるんです、リスクしょわなくちゃならないですから。そういうことを踏まえた上で、大臣の言われるところの農地の流動化とかそういったものを進めていく必要があるということなんです。  片っ方で、繰り返しになりますけれども、残念ながら、今頑張っている元気な高齢者方々あと二十年も三十年も農業続けられるわけじゃないですよ。しかも、冒頭で言ったように、こういう生産費、しかも物財費を割るような状況に今なってきている、こういう状況の中で、出し手がどかっといつ出てきてもおかしくない状況です。さあどうしようかという、そういう問題もあるんです。そのときに、繰り返しますけれども、受け手たる、将来の担い手たる今の担い手がどのような経営判断をするかということも考えておかないと、想定する、こうあるべきだという、こういう方向に持っていきたいという構造調整あるいは農地の流動化が進まなくなるということなんです。  ですから、単純に、要するに市場に影響を与えるからどうかという、そういう問題も分かります。だけれども、そこに対しての御認識を持っておられるかどうかということでありますが、どうでしょうか。
  28. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 米が他の商品とは別の、別格であって、米だけは言わば安定的に需要がそれを支え、そして安心して幾らでも作れるんだというような、そういう認識は我々の世代なんですけれども、本当にハングリーの時代でした。私も子供のころは米麦の農家の中で育ちました。でも、そのころも米を自分で作りながらも米飯というのは一日一食でしたね。あとは粉食を常態としまして、米は専ら売っていたという時代ですし、学生時代出てきたらまだ食券のあった時代で、食券持っていかなきゃ食べさせてもらえなかったという、そういう時代を生き抜いてきた我々からしますと本当に隔世の感があるわけですが、しかし、これだけ所得も上がり生産関係も変わり、需要も多様化してきているという中で、いつまでもそういう、米が、そんな認識でいてはならないわけですが、どうしても高齢の世代というのはまだまだ意識転換が十分できないという状態にあるというふうに、生産現場でですよ、私は思っております。  ただ、私まだ、先ほど言いましたように、私は、大臣になってからは週一遍は帰れませんけれども、私もちょっとガーデニングやっているんですけれども、小学校の中に一人面白いのがいまして、県の普及員やって、今、県の技術課長もやっていたんですよ、定年で辞めて村に帰ってきています。農業やっています。そういう連中と話しますと、そういう連中はやっぱりオルガナイザーになって地域のつなぎ役になりまして、作業の受委託から始まって、やっぱり集団的なもの、組織化をしていかなきゃ駄目なんだなといって動き出しているんですね。そういうような行動、活動を支援をしながら積極的にそういうものを広げていくと。これは、あきらめないでそれをやる以外に私は道がないと、こんなふうに思っております。  ですから、価格が低下していくことも想定の中に入れながら、それでもなお生き抜いていけるような稲作経営というものをどうやってつくり上げていくのかという展望を持って米対策というのは総合的に講じなければいけないんで、品目横断の対策ですべてを拾って、個々の農家に対する何か安心感を与えればそれで農業が、稲作農業が展開していくというような、そういう認識はやや狭いんじゃないかと。もっともっと広い、それこそ農地・水・環境対策も含め、そういう担い手の育成対策の制度も含め、広い中で対応を考えていかなきゃいかぬと、こんなふうに思っていますが。
  29. 平野達男

    平野達男君 今の御答弁の中で一点だけちょっと異議を挟ませていただきますけれども、高齢者農家の意識改革が進まないとおっしゃいましたけれども、私はこれは、もし意識改革という言葉を使われるんであれば、かつての高米価政策のツケなんだろうと思います。それから、さらに今の現状でいいますと、先ほど言った、高齢者農家赤字を出してもいいから耕作を続けたいという意識が農地を守っているという、その認識は私は本当、大事だと思いますよ。これをどのように評価するかということが多分、品目横断対策等の評価、それから私どもの農業者戸別所得補償法案との多分決定的な違いだと思います。  私どもは、この今高齢者が頑張っているということ自体を非常に大事な、今農山村の状況を考えるときには非常に大事な要素だと思っているし、これを大事にしなければならないと思っています。そうでなければ、とっくに米価は下落する。物財費を割るという状況だったら、普通に考えたら、普通に考えたら生産やめますよ。やめる一方で米価は下がり続けている。それは、生産者が減りゃ、どこかで米価が上がるかもしれません。しかし、その前に米価は下がり続ける。  だれが受け取るんですかと。もう耕作放棄地は進むんですよ。その状況を一歩手前で今かろうじて防いでいるのがこの高齢者農家だという意識は、これは私どもしっかり持ちたいと思っています。これが今回の農業者戸別所得補償法案の私どもの政策の一つの出発点です。このことだけは申し上げておきたいと思います。  それから、私どもの政策についていろいろ大臣も意識されて御答弁していただいておりますけれども、いずれこの政策については国会で私ども法案出していますからきちっとお答えしますが、品目横断対策の最大の問題点は何かといいますと、これから農村は、今農村は大きな構造調整を迫られているんです。これは不可避ですよ。そういった状況にありながら、入口で四ヘクタールの個別農家をつくりなさい、二十ヘクタールの集落営農をつくりなさいということで、この経営体をつくりなさいということで押し付けたことが私は最大の問題だと思っています、私どもは。  考える余裕を与えなかったんです。考える余裕与えなかったと、いや、考えるかどうかは分からないです、それは地域によります。正直言って、私も集落行ってみて、はっきりと申し上げまして、ここはもう考える力もなくなっているかもしれないという集落はありますよ。しかし、そういう機会すら与えられないで、四ヘクタールだ、集落営農つくれったって、何のためにこういうことをやるんだという、そちらの方からまず議論は始まる。  そうじゃなくて、今これからの要するに農村の構造というのは、将来的にこうなっていきますがという状況は皆さん分かっているんです。分かっているんですけど、つらいからなかなかそれを直視しようとしないという面もある。だけど、それをあえて、こういう状況になっていますねという状況集落の中で再認識してもらったら、これは農地を守るし、集落を守るし、地域の人はやりますよ。  そういうことのためにそういう土俵の場を是非セットしてもらいたいという、そういう政策の柱も私は立てています。そのためには何が必要か。今、農業をいきなりやめてもらっては困るんです。この赤字状況に対してどうするかですよ、米に関して言えば。これをこのままほうっておくというのは、これは私は政府の問題として無責任だと思いますよ。  そしてまた、私どもは今、すべての販売農業者というふうに言っていますけれども、販売農業者に一定の要するに補てんをすべきだと考えています。しかし、補てんしたからといって、繰り返しますけれども、その補てんの規模をどうするかによってそれは考えますが、後継者がどんどんどんどん来るという状況には多分残念ながらないですよ、これからの日本農業者の中では。ただ、そういう状況の中で地域農業をどうしていくか、地域農地をどうやって守っていくか、そういうことを地域の中でやっぱり考えさせるということが私は今非常に大事だと思っています。  何か一方的に構造調整を進める、流動化を進めるというふうに、そういうイメージでどうも答弁が私は受け取ってしまいましたけれども、そういうことではなくて、それ自体が今まで私は構造調整が、あるいは流動化が進まなかった大きな原因だと思っていますし、今正にこういう状況、大きな今までにない変化を迎える中でそういうことを話し合える素地があるから、でき上がっていると私は思います。だから、その素地を生かすために、私どもの今回の戸別農業者所得補償法案ですべての販売農業者にある一定の補てんをして、少なくとも今赤字を出している状況については解消したいと考えているし、その状況の中で地域農業を是非考えていってもらいたいというのが私どもの考え方であります。  それに対してのコメントをいただいている時間はございませんから、是非この問題は早い段階でこの委員会で私どもの法案と今の品目横断対策との違いということで議論をさせていただきたいと思っております。  それで、まだまだこの米の問題については議論したいことがございまして、法案の審議と併せてやっていきたいと思っていますが、足下の問題として、今政府・与党さんの方では米価下落対策で様々な議論がされているようであります。備蓄量の買い増しをしたらどうかとか、回転備蓄をどうもあたかも今回の政策に当たっては棚上げに変えたらどうかとか、そういう種の議論があるようでありますが、現段階で農林大臣はこの足下の米価下落対策についてどのような措置をお考えであるか、お聞かせ願いたいと思います。
  30. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 十九年産米の米価が期待をあるいは予想を超える形で低下しているという、そういう今現象が起こっており、そのことは、このままこういうような米価下落の状態が続く、あるいはこういうことが結果するということになりますと、農業経営にとって大変大きな打撃になるだろうと、そのことは将来の稲作経営の展望を描く上にも大きな障害になるという認識は持っております。  そういうような状況にどう対処するかということについて様々なことが提案を、要請をされ始めているわけでございますが、少なくとも政府がこれを、過剰な生産部分をかつてのようにこれを政府が買い上げて棚上げをして、価格の支持を目的として買い上げ、これを棚上げするといったようなのは食糧法上は御承知のように認められていないんですよね。だから、我々は、政府は、国会で決めていただきましたこの法律に従って、その運用の中で、ぎりぎりの中でその効果が発揮できるような対応をするということになるわけでございまして、今いろいろな御意見を伺っているところでございますが、今の段階で、私は、こうすればここが下げ止まって効果が出るだろうというようなシナリオは、申し訳ないんですけれども、持ち合わせておらない。悩み続けながら、しかしほっておくわけにいかないなと、こんな心境でいるわけでございます。
  31. 平野達男

    平野達男君 食糧法の法律の中に備蓄の規定がございまして、今大臣から御答弁がありましたように、米穀の備蓄とは、米穀というのは米ですね、「「米穀の備蓄」とは、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することをいう。」ということで、不足する事態に備えた制度が備蓄制度であって、この法律の中にどこも価格維持とは書いておりません。  私は、実は民主党内でも様々な議論はあるんですけれども、備蓄というものを一回価格の維持という政策に使った途端に法律違反ということだけではなくて、それに似たような方向に持っていったとしても私は後でいろんな禍根を残すと思っています。価格の制度の価格の維持というのは備蓄とは全く違う世界でやっぱり考えるということが基本だと思っておりまして、いずれ、その一方で、大臣の方はいろいろ今頭をお悩ましだと思いますんで、是非いい政策を、いい政策ってあるのかどうか分かりませんが、出すことを期待を申し上げておきたいと思います。  ただ同時に、米価の問題については、これは短期の問題ということではなくて、繰り返しになりますけれども、長期的な問題もあって、その上でどういう政策を打っていかなくちゃならないんだということもセットで考えていかなくちゃならないということも併せて申し上げておきたいと思います。  ちょっと時間がなくなっていまして、最後の質問に入りまして一言要望として申し上げたいんですけれども、今度は米の米穀からアメリカの米国に変わりますけれども、ベイコクでも米の国のアメリカですね。  米国では、今御承知のようにトウモロコシからエタノール生産が盛んに行われています。このあおりを受けて、トウモロコシの需要が伸びたということで、大豆の生産が減っていると。御承知のようにアメリカでは大豆、トウモロコシ、トウモロコシ、大豆という形で交互で作っていますんで、その大豆の生産を減らしてトウモロコシの生産の方が伸びていると。その結果、大豆の価格が高騰、トウモロコシも高騰で、今、最近ちょっと落ち着いているみたいですが、高騰、かなり高い水準になっています。  一方で、エタノール、アメリカの何か全部のトウモロコシをエタノールに変えたとしても、年間のアメリカのガソリンの消費量の一六%とか一五%にしかならないんだそうですね。それならば、私なんか単純に思ってしまうんですけど、日本のエコカーをどんどん輸出して、燃料効率のいい車を使ってもらってガソリンの節約した方がよっぽどいいんじゃないかなとすぐに思ったりするわけですが。  要は、問題は、このトウモロコシをエタノールに振り向けたことによって、今、日本の畜産農家が非常に大きな影響を受けている。いわゆる飼料価格の高騰ですね。メキシコなんかはトウモロコシが主食ですから、この主食のトウモロコシが買えないで困っている人が出ているというニュースも今入ってきています。アメリカは、御承知のように、今までトウモロコシ、大豆については輸出補助金まで付けて生産を振興してきた。今回、トウモロコシ価格も大豆価格も上がりましたから、その補助金を出さなくて済むようになったんですね。全くゼロかどうかは分かりませんが、かなり削減されている。その削減した分をエタノール生産に振り向けているんです。  ただ、アメリカ一国としては何も問題が起きない。農家は価格上がって、高い価格で売れるからいいということになっているんですが、そのあおりが世界じゅうにいろんな形でひずみとなって出てきている。しかも、その代償がアメリカの年間の、全部のトウモロコシを使ったとしてですよ、まだ全部使っていませんから、全部のトウモロコシをエタノールに振り向けたとしてもたかだか一六%か一七%の消費量にしか相当しない。これは、アメリカ一国にとってはそれでいいかもしれませんけど、世界がこれだけ迷惑を被っているということに対しては、これ大問題だと私は思います。  こういうことを、今WTOでいろいろ御議論になっていますけれども、アメリカのブッシュ大統領に直接言えとは言いませんけど、世界じゅう困っていますよということを、大臣、是非アメリカに強く言ってくださいよ。私は、エタノールを、例えばセルロース系からエタノール作ったりするというのは反対じゃないです。だけど、これだけ世界のいろんな影響、悪影響を与えながら、地球環境ももちろん大事ですよ、トウモロコシのエタノールを作り続けているということに対しては黙っておくということはないと私は思います。どうでしょうか、大臣
  32. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 地球の人類の問題として言えば、これはエネルギーと食料の問題、この資源の問題というのは必ず人類がこれから二十一世紀、生き抜いていくに当たって避けて通れない最大の課題になっているというふうに思いますし、そのエネルギーと食料とが競合関係に立つということへの警鐘は、世界的にもそれぞれの立場から問題を提起している課題だというふうに承知いたしております。しかし、今アメリカが農業政策としてコーンをエタノールの原料として利用しているから、迷惑千万だからそれをやめろなどということを私言うつもりはありません、直接言うつもりはありませんけど、言ってみても全く無意味だと思っております。  私もこの前、環境大臣をずっとやっておりまして、世界の環境大臣会合にも出掛けて、一体この温暖化をどういうふうにするのか、そのためにはこのCO2などの排出源をどのような形で削減をしていくのかというような話合いを主要七か国あるいは十五か国の環境大臣とも議論をしました。アメリカ側からも入ってもらってやりました。それ自身だってなかなかその国際会議の場では合意点が見いだせない。最後は安倍イニシアティブでクールアース50というのをハイリゲンダム・サミットで提案をし、もちろんEUからも提案がありまして、それらを真剣に検討するということになり、そのことが来年の洞爺湖サミット、日本が議長になるサミットの中でも大きな課題になるはずでございます。  そういう大きな流れの中で起こってきている諸現象でありまして、しかも一国のどのような農作物を作付けするかということについて、主権国家に対して他の国がそれに注文を付けて、それで決まっていくというような、そんな世界ではないと私は思っております。日本日本としてどういう対応を取るかということはしなければいけません。いけませんけれども、このアメリカの農作物の作付けにつきまして直接的にそれに注文を付けると、付けていけないとどこにも書いてあるわけじゃないんですけれども、付けることによってそういう効果があるとは私は思っておりません。かつて大豆が大変なことになったこともありました。そのときもそうなんです。
  33. 平野達男

    平野達男君 日本はアメリカから千六百万トン毎年トウモロコシを輸入しています。自由化、要するにトウモロコシについては事実上自由化しているわけです。それが依存先がアメリカです。アメリカの事情によってトウモロコシの価格がこんなに変動していく。日本でそれ言うつもりはありませんというのは、私、今一瞬ちょっとびっくりしましたけどね。これだけ市場を開放しておいて、アメリカの都合でエタノールに振り向けている。それは言ってもしようがありませんというのは大臣としていかがなものですかね、これは。それだったらWTOは、要するにそういう安定的に輸出国の、輸出国の義務だってあるはずなんですよ、その中で世界貿易が成り立っているんだから。  だから、関税がどうのこうのということを議論することも大事です。だけど、今、日本は千六百万トン、こういうトウモロコシを輸入して、千五百万トン以上のやつをアメリカから輸入していますよ。日本は言えるじゃないですか。言ってどうなるか、結果は分かりません。だけど、その結果としてこれだけの輸入をしている日本はこれだけの影響を受けていますということを言わないというのは、これは私はおかしいと思いますよ。このことは強く申し上げておきます。  私もう時間になりましたからあれなんですが、いずれ、米については私どもの、今米価下落が続いておりますし、将来のいろんな問題もございます。それに対しての大きな、抜本的とは言えませんけれども、それに対しての農家経営を支える対策として農業者戸別所得補償法案というのは有効に働くということだけを申し上げまして、そのことについては法案の質疑の中で十分説明していきたいということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  34. 高橋千秋

    高橋千秋君 同じく民主党の高橋千秋でございます。  農水委員会に私六年ぶりに戻りまして、初めての質問でございます。若林大臣質問をさせていただきたいと思います。  私の家は専業農家でございまして、米を作っております。昔でいうと大百姓なんですが、三町歩あります。ミカンを三町歩ぐらいやっておりました。ただ、おやじがだんだん体が弱くなってきまして、毎年毎年米を作るのが大変な状況になってきて、まあ死んでもやるとか言っていたんですが、ついに来年はもうやめようかなと最近言い出してきていまして、この農業の問題というのはこれは大変な状況に来ているなと、改めて私、地域を回って思います。  選挙が終わってからお礼にずっと歩いて、暑いときはそうでもなかったんですが、米の価格が大分下落をしてきた状況も見て、それからさっきのあの品目横断の政策で、担い手政策でそれぞれの集落が今もう頭をひねりながら、鉛筆なめなめいろんなことをやっています。  その中で、ここ一月ぐらい地域を回ると、もう来年から農業をやめようかなと思っているんだという人に何人も実は会いました。こういうことは私初めてです。私も国会議員になって八年目に入りましたが、こういう離農をしようとはっきり口に言い出してきたのは私は今年が初めての経験です。こんなに多く出てきたというのは非常にショックですし、今の危機的な状況が本当に地域にもうだんだん根付いてきているなということを改めて思いました。大変な危機を感じております。  そういう中で、やはり農業政策というのは大変重要ですし、農水省の役割というのは大変重いと思うんですね。  先ほど、平野委員の方から農水大臣のごろごろ替わったということに対する質問がございました。私、前回の所信の大臣のごあいさつを読ませていただいて、この中に一言もそれが触れられておりません。まだ一年たっておりませんが、今年になってから計算してみると六回大臣が替わったわけですね。若林大臣は三回やられています、まあ仮ですが。しかし、六回も替わって、この大変危機的な状況にある農政の中で六回も大臣が替わって一番だれがその被害を被るかといったら、生産者であり、消費者、国民なんですね。そのことに対する反省が一言も書いてない。これは大変ゆゆしきことだと思うし、今日も、先ほど平野さんからの質問でも、遺憾ですという話はありましたが、何かまるで人ごとで、安倍総理の責任だけだというような、そんな雰囲気でした。  私は、農水省としてやはりこれはちゃんと責任を感じて反省をすべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。首をひねられているけれども、それはおかしいと思いますよ。
  35. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) お言葉ではありますけれども、農林水産省として、その所管の大臣がいろいろな事情で辞める決断をして辞めていったことについて、農林水産省として何らかの責任を感じ、またそのことについて農林水産省がおわびをすると、あるいはまたそのことで私がおわびをするというような性質のものじゃないと私は思っているんですが、先ほど平野委員お話をさせていただいたこと以上のことを申し上げるつもりはありません。
  36. 高橋千秋

    高橋千秋君 この都合六回替わられた中で、農水省の業務は何も支障がなかったんでしょうか。
  37. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 私は臨時代理をいたしまして、まだ国会開会中でありまして法案の審議に追われたわけでございます。その後、参議院の選挙がございました。農林大臣の職にありませんでしたが、選挙が終わった後、またまた今度は兼務で大臣を言われました。この時期八月は、概算要求でありますとかあるいは税制改正要望でありますとか、そして大きな問題の政策課題というものがありまして、それは私のところに最終的に相談もあり、私が責任を持って決めるというようなことを八月中、精力的にいたしておりました。  ですから、行政の執行に当たって特段このことで障害が出たというふうには認識しておりませんけれども、しかし人間でございますから、職員の皆さん方がそれぞれの立場で一生懸命取り組んでこられたと思いますが、何か大臣に指示を仰ぐというような個別の様々なことがあって、私のところにそれが上がってこれなかったというようなことがあったかもしれません。しかし、それは私は把握、確認をしておりませんけれども、そこは、農林省の組織としていえば、事務次官をトップとしました組織内において支障がないように行政運営をしていたものというふうに考えております。
  38. 高橋千秋

    高橋千秋君 それじゃ、先ほどの平野さんの質問で、アメリカにも何も言わない、アメリカからは牛肉買え買えといって言われっ放し、農水大臣、六回も一年もたたないうちに替わって何も支障がなかったということであれば、大臣要らないんじゃないですか。大臣大臣いても意味がないんじゃないですか。そういうことに、自ら表明されているんじゃないでしょうか。いかがですか。
  39. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 何か任命権者から言われるようなことを言って、大臣いても意味がないじゃないかと、こう言われるのは私も心外でございますけれども、組織の責任者としてこの日本農林漁業農山漁村の発展のために全力投球してやっているわけでございまして、そのことで意味がないというほど私は存在感がないというふうに高橋委員がおっしゃられているんであれば、高橋委員の御意見として今お伺いをし、胸の中にしっかりと刻んでおきます。
  40. 高橋千秋

    高橋千秋君 大臣任命権者というのは、これは国民が選んでいるんですね。やっぱり農水省自体が国民に向いて、今回のちゃんとやっていくということが必要なんじゃないでしょうか。  今の話の中には非常に矛盾があると思うんですね。ちゃんとやっていた、大臣は替わっていたけれどもちゃんとやっていた。それじゃ大臣要らないんじゃないかと、これは普通の感覚だと私は思います。  農水省に限らずかも分かりませんが、やはり反省をした上で次のステップに行くというのはこれは当たり前のことで、この大臣発言の中にも、今回のこの六回も替わったということに対する反省の言葉は一行もないというのは私は非常に残念だなという、そういう感覚ですし、私は、反省をすべきところはする必要があるんではないかと思います。特に、遠藤大臣はもう顔も見ないうちに辞められましたし、所信自体一回も聞いていないわけで、これは国民にとってもやっぱり大変残念だし、おかしなことではないかなというふうに思います。私の意見というよりも、これは多くの国民がそのように感じているということを、私一人の意見ではないはずです、是非それを感じていただきたい。  先ほどの品目横断の問題でもそうですが、私も農業の分野に随分かかわってきました。何度も同じような、言葉を変えて表現を変えて同じようなことをやってきたけれども、ことごとく失敗をしてきているんですね。それは、反省もない上にまた同じようなことを繰り返してきているところに私は大きな問題がある。この担い手の問題でも、現場は大変苦労しています。はっきり言って、あの二十ヘクタール、四ヘクタールの問題でも、現場の感覚からは非常に離れております。  私は、農水省に必要なのは、反省とやはりもっと現場感覚を持ってほしい、このことをまず冒頭言っておきたいと思います。  それで、これは農水省だけの問題ではないんですが、今日は私は食の安全の問題について質問をさしていただきたいと思います。  厚生労働省からも来ていただいていると思うんですが、今、食の問題は大変大きな騒ぎになってきていて、今日も新聞各紙、社会面、一面見てもこの食の問題が連日出ています。私の地元でも今赤福が大変大きな問題になっておりますけれども、それぞれやり方は違うにしても、この食の問題、大変大きくなってきておりますけれども、農水省の中でいろいろ調査もしていただいていると思うんですが、なかなかこれ判断も難しいし、摘発も難しいということは分かります。しかし、やはり今きっちりしていかないと、またずるずるずるずる同じような問題が出てくると思いますので、是非しっかりやっていただきたいと思うんですが、まずBSEの全頭検査の問題を質問をしたいと思います。  これは、八月の末に厚生労働省が各県に通達を出しました。今まで全頭検査はやってきて、その安全性、国産の牛肉に対する安全性というのは一定確保されてきたんだろうと思うんですが、八月の末に厚生労働省の方から、二十か月未満のものについては自主検査をしているそれぞれの自治体に対してもうやるなと、やったらかえって混乱が起きるから自主検査をするなという通達を出されております。まあ、いろいろ言い分はあると思うんですが、これ自体がおかしいということで、食の安全を確保するのに逆行しているように思うんですね。  我々は、民主党として九月の二十日にこのことに対する抗議を行っております。このことに対して大変批判も出ているんですが、厚生労働省の方、来ていただいていると思うんですが、このことをどう考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  41. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  若干経緯について御説明した上でお話をしたいと思いますが、先生御案内のとおり、平成十三年に我が国で一頭目のBSE感染牛が確認されて以降、大変な混乱が起きたところでございます。  その混乱を防止するといいましょうか、抑止していく目的で全頭検査が行われたということでございますが、その際に、なぜ全頭検査でなければならなかったのかということにつきましては、牛の月齢を正確に当時確認することができなかった、トレーサビリティーがまだ十分ではなかったということ、さらには、国内初のBSE感染牛が発見された直後であって、検査をした肉としていない肉が流通すること自体の強い不安があったと、こういうことでございました。そういうことに基づいて全年齢の検査をしたわけでございますけれども、その後、時間が経過いたしまして、食品安全委員会が設置されまして、食品安全委員会におきましてこの国内のBSEの対策につきまして評価を行ったわけでございます。  その中で、全頭検査につきまして、当時の時点までの結果といたしまして、二十月齢以下の牛につきましては陽性牛は出ていないと、このことを十分考慮すべきだという御指摘をいただきまして、それを受けまして今度は、私どもリスク管理機関といたしまして、それでは二十月齢以下の牛についての検査をやめた場合にリスクがどうなるのかということを諮問したわけでございます。その結果を受けまして私どもは、二十月齢以下の牛の検査は制度としては必要がないということで義務付けを外したわけでございます。省令を改正いたしました。そういうことで、現在、全頭検査の制度そのものとしては義務付けがないわけでございます。  ただし、その際に、やはりまだ日がたって、十分かどうかとかいろいろ御意見がございまして、全頭検査、制度としてはなくなるけれども、そのときに自主的に自治体が行っている検査について十分の十の補助をしておりましたので、この補助だけは継続してほしいという御要望がございました。  そういう意味で、この際の制度改正に伴い生じかねない消費者の不安な心理を払拭し、生産、流通の現場における混乱を回避する観点から、二十一月齢未満の牛について地方自治体が自主検査を行う場合は、経過措置として最大三年間、この検査を継続するということにいたしたわけでございます。  今般、八月三十一日に概算要求を行いましたが、来年の七月三十一日で丸三年が経過いたしますので、それをどうするかという判断をいたさなければなりませんでした。私どもは、従来の経過を踏まえて終了するということで概算要求をいたしましたので、その件につきまして、その趣旨と、そしてまた現場での混乱が起きるといけないと、そういう懸念の表明と必要なリスコミをやっていくと、このことを御説明申し上げたわけでございます。
  42. 高橋千秋

    高橋千秋君 時間がないから短めにやってください。  通達を一部読ませていただきます。  当該経過措置が終了した後に、各地方自治体において、二十か月齢以下の牛に対するBSE検査の扱いについてそごが生じることは、かえって消費者の不安と生産、流通の現場における混乱が生じるおそれがあることから、全地方自治体において二十か月齢以下の牛に対するBSE検査平成二十年七月末をもって一斉に終了することが重要でありますというふうに書いてあります。混乱が生じる、今回のこの通達を出して逆に混乱しているんですね。  それぞれの県の実態を見ると、これに対して納得しているのは二県しかありません。それもやむを得ないということで納得しているのが二県しかない。ほとんどの都道府県はこれに対して反対をしているし、自主資金でもこれを継続したいというふうに言っております。これをやめろと通達を出していること自体が、厚生労働省が混乱を起こしているんじゃないんですか、これ。これおかしいと思いますよ。簡潔に答弁お願いします。
  43. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) お答え申し上げます。  これは私が出した通知でございますので私が明確に御説明をできるわけでございますが、ただいま先生が読み上げていただいた部分というのは、正にそのような混乱の懸念を申し上げたところでございます。しかし、御存じのように、これは自治事務でございますから、制度的に国が強制できるものでは全くございません。私は、十分にその趣旨を踏まえた上でこのような表現にいたしておりますし、その次の行を読んでいただけるとよろしいんですけれども、「したがって、生産者食品等事業者、消費者等の関係者に理解を深めていただけるよう、改めて当該経過措置について周知を図られるようご協力をお願いします。」と、この点がこの通知において自治体にお願いをしたかったことでございます。前段は懸念の表明でございます。
  44. 高橋千秋

    高橋千秋君 役所の非常にうまいところで、逃げはちゃんとつくってあるんですね。こんな文書を地方自治体がもらって、それでどういうふうに考えるかというのは大体分かるじゃないですか。逆に混乱を生じさせているのは私は厚生労働省だと思うし、この二十か月未満の問題についても、食品安全委員会の答申で担保されているのは、安全性じゃなくて検査の限界なんですよね。もうこれ以上検査できないと。こういう段階で完全に安全だということが言い切れるのかどうか、私はそれは大変疑問だと思う中で、こういう通達を出すというのは私はおかしい、食品の安全というのがこれだけ騒がれている中でこういう通達を出すということ自体がおかしいんじゃないでしょうか。  これ、この補助金の予算は幾らですか。
  45. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) まず予算の話の前に、二点補足させていただきます。  一点は、まず私がなぜこのような通知を出して懸念を表明したかといいますと、この間の各自治体からの御質問、御要請の中で、もしやめるのであれば、補助金をですね、やっているところとやっていないところが出ると、これは混乱を来すおそれがあると、そういうようなことの、少なくとも自治体からお話を受けたわけでございます。  したがって、そのような御懸念があるのは分かりますと。これにつきましては、私の方でも努力もいたしますということを申し上げて、リスクコミュニケーションをきちんとやってまいりますということもお話をいたしました。その趣旨でこれを書いたということがまず一点でございます。  それからもう一点は、食品安全委員会の答申の件でございますが、これ、食品安全委員会の答申を受けまして既に省令は改正をいたしておりまして、二十月齢以下の牛に対する検査の義務付けはもう制度として存在してございません。各自治体が任意でやっておられるものを補助金を継続しておるということでございます。  したがいまして、このことは食品安全委員会もリスク評価機関として、その結果を踏まえてリスク管理機関がこういうことをしたということは十分に承知をしておるというところでございます。  それから、予算の件でございますが、平成二十年の要求額につきましては十六億円を要求額といたしておるところでございます。
  46. 高橋千秋

    高橋千秋君 それは七月までですか。
  47. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 二十月齢以下のものにつきましては七月末までが補助期間になっております。二十一月齢以上のものにつきましては通年でございます。
  48. 高橋千秋

    高橋千秋君 これ、国庫補助、この二十か月未満のものについても継続してほしいという要望が大変来ていると思うんですね。  私の県でも松阪肉というのがあって、松阪肉、伊賀肉というのがあるんですが、これ、独自にブランドを確立するために必死に苦労しています。安全ということを確保するために本当にいろいろな対策を打っているというのは御存じのとおりですけれども、そういう地域が努力をして安全ということを打ち出していることに対して、やっぱり国として、十六億のうち二十か月未満というのが多分数億だろうと思うんですが、二億ぐらいのものですか。これぐらい、これぐらいと言ったら、まあ二億でも大変ですけれども、全国で二億ぐらいのものであれば私は継続をして全頭検査すべきではないかと思うんですが、厚労省の岸先生も何か撤回の発言をされたとも聞いておるんですが、その辺はどうなんでしょうか。
  49. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 私の通知の趣旨と制度につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、岸副大臣の件のお尋ねにつきましては、九月二十八日の午前に国会議員の先生方が来省されました。その際に、県が独自に二十か月齢以下の牛のBSE検査を行うような場合に国が口出しをしないようにというふうに御要請がございました。その際に、岸厚生労働副大臣から、それはそうであるというふうに回答したことが御指摘のような、いわゆる撤回云々というようなあの報道につながったのではないかというふうに推定されます。  副大臣は、地方自治体が自らの判断で自主的に行う二十か月齢以下の牛のBSE検査については、当然に自治体の判断にゆだねられている旨を述べたものでございまして、通知の撤回ということではありません。私の通知の趣旨も、先ほど申し上げましたように、これは強制をするものではございませんので、それはよく御理解をお願いしたいと思います。
  50. 高橋千秋

    高橋千秋君 でも、それはおかしくないですか。副大臣は撤回していると言っていて、通知はそのまま撤回しないということですか。趣旨が全然違うんですよね。
  51. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 撤回ではなくて、元々この通知を、先ほど御説明いたしましたが、これは自治体にやめろと強制しておりません、これは。(発言する者あり)それが元々自治事務でございますので、これは強制ができるはずもございません。そのことについて当然に強制できるものではないと副大臣がおっしゃったということですので、撤回ということではございません。
  52. 高橋千秋

    高橋千秋君 いや、今この辺からいろいろ話出ていますが、そもそもそれじゃ出すべきじゃないんじゃないですか、これは。そういうことじゃないですか、口出しをするなと。これは、確かにそういうふうにどこかで抜け道は書いてあるけれども、実際これを出すということ自体がその地方自治体に対して口出ししているということじゃないですか、違うんですか。
  53. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 先ほど申し上げましたように、これ、私ども科学的な見地に基づいて全頭検査がどうあるべきかということの食品安全委員会の認可を受けて行政をやっております。その中で私どもは、もうこれを三年経過して、継続することはできないと判断した中で、自治体からの、お話をしていく中で、やはりそういう混乱が懸念されるので一斉にやめるんならやめると、そういうことは必要ではないかと、こういうお話を伺っておりますので、そういうようなお気持ちも酌みながらこの通知を出したと。それ以上でもそれ以下でもございません。
  54. 高橋千秋

    高橋千秋君 いや、それ以上でもそれ以下でもないというよりも、こういうことを出すということが口出しなんですよ。これを撤回すればいいじゃないですか。どうなんですか。
  55. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 繰り返し申し上げますが、私がこれ出した通知でございます。  趣旨は、趣旨は先ほど申し上げましたように、地方自治法で自治事務でありますから、これは強制できるはずもありませんし、この文言を読んでいただいてお分かりのように、これ強制も何もしておりません。ただ、やはりかえってそれぞれが御判断でやられるときに混乱が起きてしまうのではないだろうかと、そういう懸念を申し上げたわけでございます。
  56. 高橋千秋

    高橋千秋君 この通達一枚出たことで、新聞各紙にもいろいろ出ております。我々は民主党としても抗議をしています。共産党も紙さんがこれ申し入れられております。  これだけの騒ぎにこの一枚の紙がなっているということが、単に意見を表明した、個人の意見を表明したということじゃないわけですよね。これを出したこと自体が、もう既にこれだけの騒ぎになってそれぞれの地方自治体が頭を悩ませているということが、その地方自治体に対する越権行為じゃないんですか。どうなんですか。
  57. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 自治事務に対する技術的な助言をどこまでの範囲でやるかということはいろいろ御議論があろうかと思います。ただ、私ども、もしこれを全く出さずにただ補助金だけを終了したということで、やはり混乱が起きるということはある程度想定されるのではないでしょうか。私どもは、起きる云々ではなくて、厚生労働省の屠畜検査を行う立場からBSE検査の観点からこれは必要がないと、食品安全委員会の答申を受けて判断をして補助金の終了を考えておるわけでございます。それだけでいいのかという問題があろうかと思いましたので、このようなことを各自治体に懸念として表明させていただいたということになるわけでございます。
  58. 高橋千秋

    高橋千秋君 だから、それが越権行為だというんですよ。  むしろ、さっきのその補助金についても、二億円ぐらいのもの、全国で二億円出せば全頭検査できるわけですから、別に打ち切る必要もないんじゃないですか。国民が、消費者が安心して買うための二億円なら、私は非常に安いことだと思うんですよ。これぐらいのお金、ひねり出すということはできるはずですよ。厚生労働省で一杯いろんな今問題出ているじゃないですか。ちゃんとやってりゃその二億ぐらい幾らでもひねり出せますよ。二億円出して継続していただけないんでしょうかね。これは、それぞれの地方自治体から要請が来ています。そのことを深く考えていただきたいと思うんですが。
  59. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 繰り返しになりますが、食品安全基本法に基づきまして食品安全委員会にリスクの評価をしていただきまして、それをリスク管理機関として科学的知見に基づいて適切な管理措置を行っていくということでございますので、現時点で撤回をする考えはございません。
  60. 高橋千秋

    高橋千秋君 若林大臣、どう思われます、この件に関して。
  61. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員承知のとおり、屠場におきます二十か月齢以下のBSE検査の補助の仕組み、これは厚生労働省が責任を持って対応する厚生労働省所管の事業でございますので、私は厚生労働省の判断を尊重していきたいと思っております。  そういう意味で、厚生労働省が、今後とも国民に対して十分理解していただけますようにリスクコミュニケーションに努めていくというふうに申しているわけでございまして、我が農林水産省としても、厚生労働省のそのような努力、これが、要請を受けますれば更にこの周知について協力をしてまいりたいと、こう思っております。
  62. 高橋千秋

    高橋千秋君 もう一度ちょっと厚生労働省に確認したいんですが、さっきの予算の件ですけれども。  さっき十六億でしたっけ、これ、もっとあるはずじゃないですか。それ、七月で終わりの予算じゃないですか、それ。年間でもっとあるはずじゃないですか。
  63. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 全体で全月齢の牛に対する検査の費用として十六億を要求しているところでございます。
  64. 高橋千秋

    高橋千秋君 今年の実績はいかがですか。今年の実績はどうでしたか。
  65. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 委員長の指示に従ってください。
  66. 高橋千秋

    高橋千秋君 済みません。失礼しました。  今年の実績は幾らですか。
  67. 藤崎清道

    政府参考人藤崎清道君) 平成十八年度の確定見込額でございますが、十六億四百万円でございます。
  68. 高橋千秋

    高橋千秋君 ともかくも、これ、今食品偽装の問題が大変大きな問題になってきておりますけれども、やっぱり食というのは、国民にとってというか人間にとって、当たり前のことですが、一番基本です。安心に物を食べられるようにしていくというのは、これは我々の責任だろうと思うんですね。  その意味で、この通達を出されたそれぞれの地方は、まあ何度聞いても同じような答弁しか返ってこないんでしょうけれども、それぞれの地方から見たら、何でこういうものを出すのか、今の食の安全という問題意識からも逆行していると思うし、数億の、まあ二億のものをカットして、そういう信頼感をなくしてしまうようなことをしてしまっていいのかという大変大きな疑問が出ています。私は、強くこのことに抗議をしたいし、撤回をしてほしいし、この補助金については是非継続をしていただきたいと、その要請をしておきたいと思います。  それと、それとは逆に、アメリカからは輸入牛肉の問題で、アメリカの牛肉の問題で、もうアメリカはリスクのない国だといってどんどん日本に買え買えと言ってきている。さっき農水大臣は、アメリカに対してコーンのことは言わないというお話でしたが、私はいろんなことは言ってもいいと思うんですよね。いいと思うけれども、言わない。でも、アメリカからのこの輸入牛肉のことはどんどん言われっ放しじゃないでしょうか。  このことに対する大臣の御姿勢、輸入牛肉のことに対する御姿勢をお聞きしたいと思います。
  69. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 食の安全と消費者の信頼確保というのは食品行政の大前提でございます。その意味で、科学的知見に基づいて対応をするという基本が最も重要なものと考えております。  その意味で、現在米国における飼料の規制あるいはBSEに関する調査、監視のデータ、これらの分析評価を行っているところでございまして、アメリカ側から、OIEという国際機関の方で安全性について国際的なランクが上がったことを契機として、今の日本に対しまして、すべての月齢制限を外してもらいたいという、そういう要請があるわけでございますけれども、我々はそれら米国からの諸調査のデータを提供を求めておりまして、分析評価をしているところでございます。そして、この輸入条件を見直すかどうかにつきましては、その取りまとめ結果を踏まえまして、厚生労働省と連携をした上で適切に対処してまいりたいと、このように思っております。  なお、この分析評価を米国においていろいろと調査をしておりますことにつきましては、日米間の技術者レベルにおきます会合をいたしておりまして、第一回は六月二十七、二十八日、第二回目は八月二日、三日と技術者レベルでの協議をいたしているわけでございまして、この委員会、技術者レベルの委員会からの報告をまずまとめて出してもらいたいと、このように米国側にも要請をしているところでございます。
  70. 高橋千秋

    高橋千秋君 時間がなくなってきましたので、あともう数問しかできませんが。  食品の偽装問題、これ大変大きな問題で連日報道が出ております。私の地元の赤福もそうですし、今年は一月に不二家の問題がありました。それから、昨日逮捕されたミートホープ、それから比内鶏の社長が何か行方不明になっていて昨日出てきました。宮崎の地鶏の話も出ています。これだけずっと出てくるというのは、やっぱりその業界としての体質も当然あるんだろうと思うんですが、農水省の検査も限界があるとは思うんですけれども、やはりもう少し検査体制というか、その辺を強化をすべきではないかと。  それから、業界への指導、それからこういう犯罪を起こしたときの罰則の強化、これは公正取引委員会もその罰則を厳しくするという報道も出ておりましたけれども、やはりこれぐらいなら大丈夫だろうという甘い考えが蔓延をしているところに大きな問題があるんじゃないかなと思うんですが、このことに対して、その検査体制の強化も含めて、農水省としてどう取り組んでいくのかをお聞きをしたいと思います。
  71. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員が御指摘のように、最近におけるミートホープとか赤福を始めとした食品事業者が不適切な事案が相次いでいるということは誠に遺憾でございます。  誠に悪質な行為を繰り返したという意味で、これはきっちりと改善措置をし、そしてまた当事者に対する措置が行われなければならないと考えておりますが、これらの案件のほとんどが、実は最近私どもがお願いをして体制つくっております食品表示一一〇番という制度をつくりまして、一般の消費者、国民の皆さんから情報提供を受けると。とにかく数の多い食品でございますから、抜取りのチェック、調査はいたしておりますけれども、それだけではなかなか引っ掛かってこないということがありますので、消費者側からこれおかしいなというようなことがあれば情報提供をしてください、こういう体制をつくっております。  そして、本年八月からこの食品表示一一〇番の対応マニュアル、それが出てきたときに我が行政側がどう受け止めるかというような対応マニュアルを見直し、強化をしたところでございます。都道府県域の業者であるかどうか、都道府県域の中で対応する業者であるかどうかという判断基準を明確化したり、都道府県は保健所とかJASの担当者がいるわけでありますが、その都道府県と農林水産省農政事務所、さらには刑事上の問題がかかわってくることもあるわけでございますので、警察などとの定期的な情報交換会を開催するなどいたしまして連携の強化を図ってきているところでありまして、こうした情報提供に対してやはり迅速に的確に対応することが大事であります。今後一層このようなことを努力したいと思います。  また、農林省自身のチェックの体制としましては、農林省職員による小売店舗などへの日常的な巡回監視をいたしておりますが、これを更に徹底すること、そして、ブレンド米とか食肉加工品などの重点テーマというものを設定をいたしました。そういう特別調査を機動的に実施するなどによりまして表示の適正化を進めているところでございます。  こうした国民の皆さんからの情報提供や農林水産省自身が行う調査などを通じましてJAS法の違反による事実が判明した場合には厳正に対処するということにいたしておりまして、消費者の皆さん方の御協力を得ながら、同時にまた消費者の信頼を確保してまいりたい、このように考えているところでございます。
  72. 高橋千秋

    高橋千秋君 終わります。
  73. 舟山康江

    ○舟山康江君 民主党・新緑風会・日本の舟山康江でございます。本日は初めて質問に立たせていただきます。  私は山形県に暮らしておりますけれども、その中で、自然の雄大さ、また緑の木々の美しさ、そして地域社会の温かさをつくづく感じているところであります。しかし、その一方で、今地域は非常に厳しい状況にあることはもう皆さん御承知のとおりだと思いますけれども、景気回復と言われながら、地方に行きますと、シャッター通りが広がり、また景気回復の実感はありません。交通機関や学校、病院などがなくなり、非常に今、高齢化、過疎化が急速に進むなど、活力が低下しております。私は、その中で、掛け替えのない地域社会、正に私たち全体の日本の財産であるふるさとをしっかりと守らなければいけない、そんな思いでこのたび立候補を決意し、参議院選挙で多くの皆様から御支援をいただきまして当選をさせていただくことができました。  まさしくこの地域の再生、農林漁業の再生という思いは、大臣を始めといたしまして、ここの委員会に所属の皆様と共有しているものがあると思います。そのためにしっかりとこの場で議論をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  さて、私は、大臣の所信表明演説を伺いまして本当に心強く思い、全くそのとおりだなと思うことがたくさんありました。大臣のおっしゃるとおり、農林水産業農山漁村の役割というのは、私は、食料生産という役割だけではなく、正に地域を守り、自然環境を保全し、景観をつくるといった多面的な機能があると思うんです。  それで、大臣にまずお聞きしたいと思います。  このような多面的な機能というのはだれによって担われているというふうにお考えでしょうか。
  74. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員農林水産省で一緒に仕事をされた経験をお持ちでございますし、その後、山形、私の知る限り、小国町というのはもう山また山の大変な山村と承知いたしておりますが、そういう中で生活をされながら、農林業、農山村と、大変強い関心をお持ちで、その発展のために大変な御努力をしていただいていることに敬意を表する次第でございます。  この農業、農村が持っております多面的な機能については、ここに至るまでにいろいろな経過がございました。農林水産省は常にこのことを国民に対してアピールをしてきたわけですが、一時これが取り上げられるということが本当になくて、じりじり、いらいらした時期が続いたわけでございます。特に、メディアの皆さん方が、そのようなことは農林漁業保護の種にしようとしているんじゃないかというような意味で非常に冷たく批判的だった時代がございます。  しかし、ようやくいろいろな努力が実りまして多くの人の御理解をいただくようになりました。特に、日本学術会議が地球環境・人間生活にかかわる農業及び林業の多面的な機能の評価についてという答申を出していただきました。また、FAOもそういう意味で多面的な役割というものについて取り組んでもらいましたし、OECDもそのようなレポートを出しております。そんなことで、ようやくWTO交渉の中におきましてもこの多面的役割が一定の議論の場にのれるようになってきたと、こういう意味であります。  これを支えているのはもう正に、第一義的にはその地域皆さん方でありますが、このようなことが問題になる地域というのは、やはり農林漁業がその地域における主たる産業としての役割を担っておる、あるいは生活産業として生活を通じて業が営まれているというような、その人たちが中心になって多面的な機能の発揮について大きな役割を果たしていただいていると思っております。
  75. 舟山康江

    ○舟山康江君 ありがとうございます。  おっしゃるとおり、私はやはり、そこに住む人々が多面的機能を担っているんだというふうに思っております。逆に言えば、そこに農林水産業があり、農林水産業に従事している人たちが、それこそ専業だけではなく兼業農家、高齢農家、いろんな人が集まって畦畔管理をしたり水管理をしたり、いろんなものを守っていると思います。そういった意味では、やはり農業がなくなれば、言葉を換えれば、農業に従事しなくなれば、やはりそこに住む意味がなくなり出ていってしまうんじゃないかと思うんですね。そうすると、そういった機能、役割を担うこともできなくなってしまうと思います。  そこで、もう一度大臣に御質問したいと思います。  政府が今年度から進めております特定の経営体に施策を集中させる品目横断的経営安定対策事業、これは結果的に農業従事者を大幅に減少させる方向に行ってしまうと思います。そうすると、農村集落に居住する必要がなくなってしまう人が大勢出てきてしまう。そのことは、つまりは、そこに住む必然性がなくなり出ていってしまうということは、集落を消滅する方向に導いてしまわないでしょうか。
  76. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) この品目横断経営安定対策というものは、主たる農業担い手として力強い効率的な農業を育てていきたいという、言わば産業政策的な視点からこの対策を講じようとするものでありますが、この農政対策というのは、もう委員承知のとおり幅広いものでございまして、これに関連する対策として言えば、農地・水・環境保全向上対策というようなものを並行して打ち出しているわけで、これは兼業、小規模農業者高齢者農業者、更に言えば地域の住民の皆さんも入って、委員がおっしゃられた畦畔の管理も含めまして、地域の共同作業などを進められるようなそういう対応を取ろうとしているわけでありますし、また、小規模農業者や品目横断で対象にならないような人たちにつきましても、この政策の中で、それらの人たちの参加を前提といたしまして、集団的な営農活動でありますとか、あるいは地域自身について言いますと、地域の非担い手方々も対象といたします営農の対策も併せて講じているわけでございますんで、このことだけでその多面的機能が損なわれていくとか、そういうことになると思いませんし、また、このことだけでそれらを保持しようというふうに農林水産行政の中で考えているわけではございません。
  77. 舟山康江

    ○舟山康江君 まず一つは、集落営農で救う手があるじゃないかというお話ですけれども、実際、私の住んでいる町なんかでも、この品目横断経営安定対策に参加している集落営農は一つもありません。と申しますのは、やはり経理の一元化が非常に困難だということもありますけれども、今、先ほど平野委員御指摘の話もありましたけれども、米価が非常に下落して将来の先行きも非常に暗いというような中で、集団で集まってもどうなるのか分からない、そんな不安が非常に大きくありまして、またリーダーが不在ということもありまして、なかなか進んでいないのが現実であります。  また、農地・水・環境整備対策も、理念としては非常によく分かりますし、悪い制度だとは思っておりません。しかし、私は、非常にこれ制度的に矛盾しているんじゃないのかなと思うんです。農地・水・環境整備対策で、片や、そういった集落機能は大事です、だからみんなで力を合わせて、お金を出すからやってくださいと言いながら、片方で、品目横断対策で、いやいや、でもやっぱり地域では大規模農家しか要りません、ちっちゃい農家はもうどんどん土地出してやめてくださいよというようなことでは、これ何か政策が非常に矛盾しているんじゃないかと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。
  78. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) お言葉ではありますけれども、まずは、品目横断対策というのはその人だけが農業やったらいいというふうに考えているわけではございません。これは産業政策としての側面から着目して、そういう農業基本法に定めております効率的で安定的な農業経営を育てるんだという、そういう方針に沿ったものとして企画しているわけでございます。  しかし、産地対策政策の中で、そういう規模に制限なく地域のビジョンをつくってもらって、そのビジョンの中で、地域特産物、ソバでありますとかその他の作物も含めまして、地域での生産組織化というようなこと、あるいはそれぞれの規模の小さい人たちも含めて生産にかかわってもらえるような政策もいたしておりますし、今お話しいただきました農地・水・環境保全対策などのものは、一つの面として地域づくりをしていくということに役立つわけで、言わばその二本立てで、二面性を持っておりまして、二面の政策を並行して進めていこうということで、一本ですべてをやるということじゃありませんから、これがお互いに矛盾するというような御批判は当たらないと思っております。
  79. 舟山康江

    ○舟山康江君 やはり私は、政策というのは目指すべき方向があって、お互いに補完していくんだと思うんです。片方でそれを、何というんでしょうか、できない方向に壊しておいてですよ、壊しておいて、片方でつくりましょうというのは、何かこれ非常におかしいと思うんですけれども、それはまたちょっと後でお聞きしたいと思うんですけれども。  まず、品目横断経営安定対策についてですけれども、これに加入している農家戸数というのは一体どのぐらいになるんでしょうか。
  80. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 今回の経営安定対策に加入している農家の数でございますけれども、二つございます。認定農業者、個別の経営体で六万七千四十五戸、集落営農組織につきましては五千三百八十六組織になっております。集落営農組織でございますので、これに複数の農家が参画をしているわけでございますが、申請書ではそこまでのところは把握できておりませんけれども、本年二月に実施しております集落営農組織調査の実態調査がございます。これによりますと、大体一集落営農組織当たり参加農家戸数というのがおおむね平均四十一戸、もちろん集落営農では何百戸と入っているのもございますし、それより少ないのもあるんですが、この実態調査では平均四十一戸でございます。これから推計いたしますと、五千三百八十六組織に参加しているのが約二十二万戸、認定農業者と合わせますと約二十九万戸程度というふうに推測しているところでございます。
  81. 舟山康江

    ○舟山康江君 そうなると、すべての農家農家数の割合でいくとまだまだ非常に低いと思います。  作付面積の数字なんかが表に出ているわけですけれども、この面積ベースで見ましても、米に関して大体二六%ぐらい。田畑計の耕地面積ベースでの割合で見ましても二四%程度ということで、非常に、四分の一程度しかカバーしていないということになると思いますけれども、この対策が、いわゆる目的が担い手経営安定、さらには食料の安定供給の確保というふうにこの対策の目的がありますけれども、このぐらいのカバー率でどれだけ食料の安定供給が達成されるか、目的が達成されるとお考えでしょうか。
  82. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 今回の本対策の初年度の実績、農家戸数では先ほど申し上げました。  それで、このような農家戸数がカバーしております米あるいは麦、大豆、てん菜、バレイショについての作付面積のカバー率でございますけれども、麦等いわゆる畑作物系につきましては、従来このような品目に対しまして個別で政策を行っておりました対象面積とほぼ同程度の面積を確保していると思っております。したがいまして、今回の対策によりまして、ここのところについては新たな組織体によりましてこの作付けの相当部分が担われたというふうに判断しているところでございます。  一方、お米につきましては、今委員御指摘のとおり、これらの作付対象面積は約四十四万ヘクタールでございます。十八年産の水稲の作付面積から比較いたしますと、委員御指摘のとおり、四分の一でございますけれども、お米は、先ほどのような麦、大豆等とは異なりまして、例えば自家飯米でございますとか縁故米ですとか、市場流通をしているという部分以外のものが相当数ございます。したがって、このような市場流通以外のものが大体百十万ヘクタール程度というふうに勘案いたしますと約四割というふうに思っております。  さらに、麦、大豆等につきましては、御承知のとおり、いわゆる格差是正助成金という形での助成策は講じておりますけれども、お米につきましては収入変動緩和対策ということで、従来の米に対して取っておりましたいわゆる変動緩和対策の延長線上という形になります。  したがいまして、お米の場合には、今回直ちにこの対策に参加をしないということで大きな変動が生じるということではございません。地域によりましてこれから更にこの対策を一生懸命講じようというにはまだまだ時間もございます。したがって、こういった意味で、今回、畑作につきましてはきちんと構造が変わってきている、さらにお米についても地域で取組が始まってそれなりの初年度の実績が上がって、さらにその後については今検討されているというふうに理解しているところでございます。
  83. 舟山康江

    ○舟山康江君 畑作については、確かに数字の上では非常に効果を上げていると思いますけれども、私は、まだまだ全体の生産量を今これだけ自給率の低い中でもっと上げなければいけないということを考えると、これだけで十分だとは思っておりません。  ちょっと時間がなくなってしまったんですけれども、米に関しては、本当に先ほど平野委員から何度も指摘をさせていただきましたけれども、本当にこれ、規模の大きな農家所得、価格の見通しがなくて非常に経営が不安。なかなか経営規模拡大のインセンティブが働かない。片や、ちっちゃい農家は今こういった助成がほとんどなくなってしまって、多少、稲構なんかがあるというようなおっしゃり方もしますけれども、ほとんどないのが現実だと思います。なかなか今、本当に離農が増えて、農地の構造改革が進むよりも先に農業生産基盤自体がもう壊れてしまうような、そんな事態がもう目の前に迫っていると思うんですね。  私は、ちょっともう時間がなくなったので質問できませんけれども、私は、本当に正に大臣の御認識のとおり、農業、農村の役割というのは、やはり地域をしっかりと守る、そこに住んで生活できる体制をつくることがしっかりとその多面的機能を発揮することにつながると思うんです。ある意味規模の大きい農家だけで生産は、まあ百歩譲って、生産が賄えるとしても、地域を守るとか多面的機能というのは一部のちっちゃい農家だけでは絶対にこれは実現できないんです。  そういった意味で、より多くの農家をきちんと政策がしっかりと支えていくということが必要なんじゃないかというふうに思います。  まさしく、これも所信表明演説でおっしゃっておりましたけれども、農業、農村というのは国民の暮らしにおいて重要な役割を果たしているということを是非再認識いただきまして、正にこれは産業政策だけではない、地域政策であり、これから地域をどう考えるのかといったことをきちんとこの農業政策の中に入れ込んでいただかなければいけないと思います。そのためには、やはり私は、農業生産活動が続けられる、そんな体制をつくることがやっぱり地域を守る、多面的機能をきちんと発揮することにつながるんだというふうに思うんですね。そういった意味で、私は、やっぱり品目横断対策というのは一部の農家だけ、特定の農家だけにこの政策は面倒を見るといった、これだけでは本当に足りないというふうに思います。  まあそれでも、今その政策でさえ、米価の下落、麦もそうですけれども、農産物価格が不安定で非常に先行き暗い中で、もう大規模農家もどうしようかと迷っている、小規模農家もこのまま続けていけない、そんな状況では私は地域社会を守っていくことはできないと思いますので、是非政策転換を御検討いただきたい。多面的機能をきちんと発揮するためにも、きちんと生活できるような、そんな手だてを立てていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問と代えさせていただきます。
  84. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 委員がおっしゃっていること、ほとんど問題意識としては共有いたしております。  一点違うのは、大規模農業者であっても、大規模農業者だけでは農業というのは営まれない、これをサポートするような周辺の協力環境がないと農業をやっていけない、農業というのはそういうものだと思っております。  その意味で、地域対策という面的な対策とこの生産対策というのが、やはり二本、二面性がありまして、両面をしっかりとやっていかなければ農業はやっていけないんだという意味で、一つですべてを賄うというのは難しいという認識を持っていることを申し上げておきたいと思います。
  85. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後四時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後四時開会
  86. 郡司彰

    委員長郡司彰君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  87. 加治屋義人

    加治屋義人君 私は自由民主党の加治屋でございます。かねて自分なりに思っていることを少しお話をさせていただきたいと思います。  当委員会での大臣発言にもありましたとおり、今我が国の農林水産業の分野、正に厳しい状況、そして大転換期にあるのではないかと、そういうふうに思っております。歴史が示すように、過去の農業問題は食が足りるか足りないかというただそういう単純なものでありましたけれども、今はどうかといえば、量は足りているのに問題山積、米は余っているのに食料自給率は四〇%を下回っていると、こういうことで、昔の我々の時代と比べて全くおかしな話だねと、こういうことも感じております。内外の食料需給や地球温暖化の影響まで考えなければならない、この高度化、複雑化した農林水産行政の難しいときに御就任をいただいた若林大臣岩永大臣、そして澤政務官には、大変御苦労ですけれども、是非頑張っていただきたいと、そのことをまず申し上げておきます。  私も、おかげさまで先般の選挙で二期目の場をこうして与えていただきました。特に農林水産政策について、私どもの自民党の公約であるマニフェストと他党とのマニフェストの比較において大変苦労をいたしました。私ども国政にかかわる者にとって、国民に約束したマニフェストにすべての責任を持つことは当然だと思っております。したがって、マニフェストに偽りがあってはならない、偽りがあったとすれば国民を欺くことになるよねと、こういう感じを持ちながらの戦いをしてまいりました。選挙に勝つためだけのマニフェストでは羊頭狗肉と同じではないか、国民の信頼を失ってしまうと、そう感じておりますだけに、私は公約としてのマニフェストに政治生命を懸けるほどの責任を感じてこれから仕事をしてまいりたいと、そういう決意をさせていただいております。  山積する問題の一つに、前農林大臣の辞任のきっかけとなった補助金不正受給問題がありました。置賜農業共済組合での不正受給の件は、会計検査院から指摘を受けながら二年も放置をされていたことが国民の目線で見ると全く理解ができない、そういうふうに思います。また、緑資源機構の談合問題しかり、事なかれ、先送りといった役所の隠ぺい体質は国民が最も嫌う特性であります。国を内部から崩壊させるものであります。農林水産省は所管する補助金の種類、金額が多いだけに、今度のことで農林水産省が不正の温床のように本当に見られるというのは残念でなりません。補助金は国民の税金であり、厳正でなければなりません。国民の政治不信を招くことのないよう、強く指摘をさせていただきたいと思っております。  質問に入りますけれども、さきに行われました参議院選挙では格差のことが大変議論の中心でございました。都市と地方、大企業と中小企業、正社員とパートなどに見られる格差は構造的なひずみであって、弱肉強食の行き過ぎとも言われます。  我が国の農業は今や格差の犠牲に泣く典型的な例ではないでしょうか。片方の犠牲の上にもう一方の繁栄があるとか一握りの勝ち組のために大勢の負け組が我慢している構図は、健全とは全く言えません。戦後、工業化路線を進める中で農業は疲弊、衰退し、いつか灯が消えてしまうのではないかと、そういう状況にあるのではないかと思えてなりません。地球温暖化による異常気象、不安定な国際情勢、バイオ燃料など食料輸入を脅かす要素が日々増大している状況の下で、我が国農業がいつまでも低迷していることは大変心配なことであります。他産業の繁栄に取り残された農林水産業格差について、若林大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  また、大臣は先般スイスの方に御出張をなさってWTO関係者との会談をされたやに聞いております。その御出張の状況、あるいは今後WTO、EPAに懸ける決意をいま一度お聞かせいただきたいと思います。
  88. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 加治屋委員にお答えする前に、私から、御指摘がございました農林水産業は大変に補助金も多く、それらの補助金の適正な執行が大変な責任を持って、緊張感を持って執行していかなければならないところでございますが、幾つかの御指摘がございましたように、その補助金をめぐります不正な交付など、不適正な使用などが指摘を受けております。大変申し訳ないことだと思います。そういう意味で、使命感と同時に責任感を持って、国民から預かっております農林行政の中における補助金の適正な執行というものには意を用いながら、御批判を受けることがないようにしなければならないということを組織全体に指示をいたして、身を引き締めて事に当たるという決意でございますことを申し上げたいと思います。  また、今御指摘ございました、いろんな形での格差が論じられておりますが、そのような中にありましても、特に委員が御指摘の、農林漁業というものが戦後の目覚ましい経済発展の中で取り残されて、農業部門の成長が相対的に低く、そこで消費者所得の増加ほどには農産物需要が増加しないというようなこともございまして、農業と他産業との格差が拡大してきたということについては、私も委員と同じような認識を持っているわけでございます。  このような著しい経済成長は、農業について見ますと、農業から他産業への労働力を供給するということによりまして、そのことを契機として規模拡大が進んだという一面があるものの、農業をめぐるこういう状況の大きな変化の中で、農業自身も、果樹とか畜産とか野菜とか需要が拡大する部門に生産転換が進むなどの地域条件に即した多様化が進むことはありますものの、しかし、近年の状況委員が御指摘のように大きな生産性格差、また地域の社会資本の格差、様々な格差の中で大変立ち遅れた状況にあるということも事実でございます。  そのような中にありまして、何とかこの農山漁村そして農林漁業地域の主要な産業であります地域経済の中でしっかりとした役割を果たしていきますように政策を展開しなければならないというふうに思っているわけでございます。  種々の政策を展開するに当たりまして、農林漁業の主要な担い手が元気が出るようなそういう対策を講じなければならないわけでございますが、あわせて、やはり地域ぐるみの、地域としての特色のある営農の展開、そしてそれらの地域としての農山漁村の活性化のための面的な広がりのある地域政策というものも、併せ講じていかなければならないと思います。  委員の長い間かかわってこられました地方自治、とりわけ鹿児島は離島を抱え、また中山間地を多く抱えた中で、非常に条件の厳しい中での地域社会の活動でございます。それらの地域社会に対してしっかりと光を当てていくような政策を展開しなければいけない、このように肝に銘じているところでございます。  また、御質問がございましたWTOの交渉につきまして、両院の御了解をいただいて、先週末にスイス・ジュネーブに行ってまいりました。この農業交渉については、現在ファルコナー農業交渉議長が七月にモダリティー案を提示をいたした以後、これを中心にいたしまして、高級事務レベルでの突っ込んだ検討が進められておりまして、現地の様子を聞きますと、それこそ昼夜を分かたず議長の下での協議に入っておりまして、かなり問題が煮詰まってきているという状況でございます。  私は、ファルコナー議長が十一月中旬にも改訂テキストを出すだろうと言われておりますが、この改訂テキストの中において、我が国がかねて強く主張をしてまいりました事項について、ファルコナー議長に直接お会いをして日本の立場、日本の主張、そして日本は同時にG10、食料輸入国の中でもオピニオンリーダーとして責任を負っているわけでございまして、そのような立場で食料輸入国としての主張をしてきたところであり、おかげさまでそのことは大変有益、有意義であったというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、WTOの交渉に当たっては、我が国の農業が多面的な機能を持っているということを十分踏まえて、そしてまた国内農業におきましても、同時に経営体質の強化に向けた国内農業の構造改革を進めていくということを訴えながら、我が国の農業の存立を懸けた交渉でございますので、この交渉に全力を傾けていく覚悟でございます。どうかよろしく御指導をお願いをいたします。
  89. 加治屋義人

    加治屋義人君 格差問題にしても、WTO、EPA等にしても、正にみんなで共有すべき問題でありますので、一緒になって頑張っていきたいものだと思っております。  品目横断的経営安定化対策については、我が国の農業改革、国際化への対応など、それこそ待ったなしの大重要課題だと、そのように思っております。WTO協定に基づく固定支払を中心として生産量や品質に基づく一定割合の支払をするという日本的直接支払とも言われております。内容についてはもう割愛をいたしますが、若林大臣は、環境大臣を兼務のときに、記者会見でこの制度の促進状況について、説明が十分でなかったようだと言っておられますけれども、そういう中にあって、今この地方、あるいは農家の現状を見ますときに、この制度に対する声としては、小規模農家の切捨てだ、そういう声があることも事実でございまして、私も実は現状ではそういうことが言えるのかねと、そういうふうに思えてなりません。  そこで、一つには、本対策説明はどうだったのか、誤解されている点はないのか、今後の取組について第一点お伺いしたいと思います。  二点目に、特例の活用状況でありますけれども、加入実績で申請件数が申請者全体の一三・八%になっているようであります。これは農地の利用集積の問題あり、特例への説明不足あり、申請をあきらめたと、こういう農家の声も聞きます。そこの辺りをどう分析をされておられますか。  三点目に、農林水産省は品目横断的経営安定化対策について、また農政改革について、現状を踏まえて現場に出向き、農業者関係団体からの生の声を聞くという地方キャラバンを実施しておられます。ここに私も資料をいただいているんですが、これは大変いいことだと思います。取りまとめられた資料について、その一つ一つが読みながら全くそのとおりだと思えてなりません。工程管理し、見直すべきは見直す、そういうことが早急に検討すべきではないかと思いますが、この三点について大臣の考え方をお聞かせください。
  90. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 環境大臣という立場で農政を批判したつもりはないんでありますけれども、ちょうど参議院の選挙が間に挟まっていたこともこれありまして、私も各地でいろいろと農政問題について御批判や御意見、御不満も伺ったところでございまして、そういうものを伺った印象として私は二つ挙げておきたいと思います。  一つは、実はこの農業政策転換に当たりまして、力強い担い手を育成をして効率的な安定した経営農業生産相当部分を占めるような、そういう生産政策というものをしなければならないという課題と併せまして、実はこの農業というのは、そういう人だけでこの地域農業がその人も含めて農業ができるというわけではなく、もっと小規模人たちあるいは非農業人たちも含めて地域全体としてこの農村社会が活性化していかなければ、地域に活力がなければ農業も育たないと、こういう考え方でおりますし、また農林水産行政もそういう視点で政策の持つ二面性というもので展開してきていると思うんでありますが、各地で受けた批判は、この品目横断の経営対策というものだけですべてを律すると、そこで一定規模以上のものだけを対象にして、その規模の小さいものはもう切り捨てるんだというような形の批判が非常に多かったわけであります。  それはやはり地域に新しい政策説明をし、そして納得をいただいて政策を実行していくというには、そういうバランスの取れた他のそれ以外の制度についても、仕組みについても、同時並行的にきちっと御説明をしていかなければ十分な理解が得られないんじゃないか。その意味で、この品目横断という新しい政策を推進するに当たって、その担当者は、新しい政策の組立てですから、現地に行きますとそのことを一生懸命説明をすると。またこれが、後ほど申し上げますが、非常に複雑で理解しにくい仕組みでありますだけに、その仕組みの説明に追われて、聞く方もその仕組みを理解するのが精一杯で、納得というような段階に至らないというような状況があったと私は思うんですね。  ですから、非常に努力をしてきたことは認められますけれども、しかし、もう少し幅広く、農村の地域活性化対策と併せて、そういう小規模人たちも含めて、みんなで農業、農村社会というものを活力あるようにしていかなきゃならないと、その中の一つなんだということの説明っぷりが十分でなかったんじゃないか。あるいはまた、非常に複雑な仕組みになったということについても反省が要るんじゃないかという意味で申し上げたところでございます。  さてそこで、私は八月に農林水産大臣を兼務することになったわけでございます。そこで、そのような思いがございましたので、本省幹部が、自分の所管外のものも含めましてチームをつくって、御用聞き農政をやれと。行って、説得をし、説明するんじゃなくて、まず話を聞いて持ち帰ってくれと。それで、持ち帰ったものをみんなで事項別に整理をして、みんなで総合的な答えを出してレスポンスするというようなことが必要なんじゃないか。だから、仕事に熱心な余り、そのような責任感で一生懸命説明するということも大事ですけれども、その前によく話を聞いてきてもらいたいということを指示をしたわけでございます。いわゆるキャラバン隊と称して四十四道府県に幹部が出掛けていきまして、それぞれ地域でいろんな御批判にも耳を傾けながら様子を聞いてきております。  そういう中で、今それを受け止めまして、省内で、私が本部長になりまして農政改革対策の緊急検討本部も立ち上げております。その中で出てきましたいろんな御意見を集約を今しつつあるところでございます。その集約をいたしまして、改善すべき点がいろいろございます。そういう意味では、改善すべきことは改善をして、関係皆さん方の御理解を改めてお願いをするということをしなければいけないんではないかと考えております。  いろいろ出てまいりました主な意見は、時間も掛かりますので一つ一つの御説明は申し上げませんけれども、かなり幅広い意見が出ているわけでございます。  そして、委員が御指摘の規模につきまして特例要件を定めているわけでございますが、これもまた、中山間地は五〇%までいいですよとか、それから、集中的に、集約的な農業と組み合わせてやっている地域についてはこのような特例がありますよとか、いろいろな特例があるわけでございます。  そういう中で、面積要件の特例を申請をしたものがどのくらいあるかということを申請ベースで整理しますと、委員が御指摘のように全国ベースでは特例申請は一三%、一四%弱というような特例申請の状況になっております。  ちなみに、鹿児島でいいますと、二三%が特例申請ということに今なっているわけでございます。これとても十分な理解の上で出てこなかったところもあると思いますので、このような制度の御理解を求めながら更にこの特例についてきめ細かな対応をしていくということが必要ではないか、こんなふうに考えているところでございます。
  91. 加治屋義人

    加治屋義人君 ありがとうございました。  米については平野委員さん、もう詳しく質問ありましたので、私は簡単に三点だけ質問させていただきます。  十九年産米から採用された需給調整システム、これの制度の基本というのは、何といっても生産、流通、消費、それぞれの責任とその整合性が求められている、そのことだと思っておりますが、現段階での生産、流通、消費の局面をどう大臣は評価をされておられますか、このことが一つございます。  それと、今回の価格下落については大臣、もう百も承知でございます。この現状にかんがみて、大臣責任として何かの手当てを、措置をすることも今必要なのではないかと、そういうことを思いますが、どのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。  三つ目に、産地づくり交付金についてでありますけれども、平成十六年から産地づくり対策として地域自らの計画に基づいて支援するという、農家にとっては大変使い勝手のいい、大変有り難い制度でございます。  しかしながら、この交付金は予算措置であるために平成二十二年度になくなるとお聞きをしておりますが、産地づくりの進捗状況、役割、転作への誘導効果についてどう認識をされておられますか。私は、この対策は恒久的な制度として安定的経営の確立のためにも今後とも支援していくべき制度だと、そういうふうに思っておりますので、大臣の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  92. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 三つの重要事項について御指摘あるいはまた御質問がございました。  まず、生産、米を中心として考えますと、米の過剰状態というのは依然として大きなプレッシャーになっているわけでございますから、水田農業をどのように活性化していくかということが農政の大きな課題であり、そのことがまた品目横断の経営対策の中心になっているわけでございます。  その中にありまして、今までこの三十年余に及びましていわゆる減反政策というものに取り組んできたわけでございますけれども、受け止める側からしますと、実はJAも含めてですけれども、頭からの強制減反反対だと、つまり押し付けの減反は反対だという声が常にございました。そういうにもかかわらず、しかしお米が農業者の側からしますと有利な状況であるだけに、どうしても我が地域にあってはやはり米が中心だと、我が地域も米だというようなことで、言わばそれぞれの地域の特性に応じて他の作物の導入ということを考えていただこうとしても、自主的にはなかなかできないものですから、どうしても国から県、県から市町村というふうに、言ってみれば減反面積、それはまた生産面積、生産量でもあるわけですが、それを割り当てるというような形で下ろしていったわけでございます。  しかし、行政側が下ろしていくというのは、いろいろきめ細かく配慮してもどうしても画一的にならざるを得ない。米も結局は商品でありますから、米の商品特性を見ながら、そのニーズがどういうニーズであるかというのに合わせてそれぞれが生産をしていくという意味で、生産者側も消費者の需要、意向というものに合わせて作っていく、米とても例外ではない。  そういう意味で、品種でありますとか、あるいはそれぞれの地域の持っている特性の銘柄でありますとか、そういうようなものから、あるいは生産者側の組織が消費者側の組織と結び付いての特殊な販売ルートをつくることでありますとか、そういうことをやっぱり生かしていかないと、米の消費の拡大、あるいは米の安定した生産関係ができないんじゃないかというような反省がございまして、種々論議を尽くした中で、ひとつ生産者そして生産者組織であるJAが中心になりまして、市町村段階で市町村長、あるいはJA、農業委員会、それらの関係者の皆さん方で、市町村のレベルで協議会をつくっていただいて、その皆さん方地域に合った作物選択をする中で米をどう位置付けるかということを決めていただきたい。もちろん行政は責任回避をしませんから、行政側として需要を見込んで、全国レベルではこのぐらいの生産目標、都道府県別に見ればこのぐらいの、これらの生産目標、そして市町村段階に至ればこのくらいのことが一つの目標になるんじゃないかという情報提供をしまして、そしてアドバイスをしながら、主体はやはりJAを中心とした生産者皆さん方が主体になって米の生産量、生産目標というのを決め、併せて米以外の作物もその中に取り込んでいただこうと、こういうふうに組み立て直したのが今度の品目横断の制度の中核でございます。  それらが、この初年度でやってみましたところ、私は、いろいろ御批判がありますけれども、私は意外とそれぞれが上手に対応してきているなと思うんです、全体として見ますと。にもかかわりませず、その予定した生産目標を超えて生産をしたという地域も相当数ございます。県別に見ますと、今三十三県ほどがそれを超えておりますが、それを更に地域まで下ろしていきますとなかなかうまく調整ができなかったというようなことがございまして、全体として見れば目標としていた作付けを超えて作付けされていると。そのことが、今年産の作況が九九であるにもかかわらず、全体として余剰と見込まれる、需要を超えた生産が行われているというようなことが生じてきておりまして、そのことが背景になって米のセンターでの価格が低下傾向を示していると、そんなことになっております。  その意味では、それらの行政と生産者諸団体と、その関係が、流通業者も入ってもらっていろいろ計画を立てる、そこのところの関連はもっと密にしながら、行政側も必要によってはもう少し入り込んでそこをちゃんとしていったらいいんじゃないか、そんなように思うのでございます。そういう第二ステージに入りました段階におきまして、初年度でありますからいろいろな試行錯誤もあったと思いますけれども、この筋を更に一層強化をしていかなければならないんじゃないかと、こういうふうに思うのでございます。  そして、実はこの制度を進めていくに当たって、委員が三番目に御指摘になりました産地づくり交付金の役割でございます。これは非常に大きな役割を担っていると私は思うんです。その地域は米だけに頼っているわけにはいかない、米以外のものをどうやって作っていくのかという意味で、その産地の中で有効な農用地利用を進めるための施策をするに当たりまして、そういう生産体制を整えていくその前提として、水田における水田農業ビジョンというものを作って、その実現に向けて進めていく活動に対して産地づくり交付金というものを援助することによりまして、その地域の実情に応じた特色のある産地づくりに向けた取組を期待をいたしているところでありまして、制度自身はその意味で私は評価されているというふうに思うわけでございまして、委員がおっしゃられましたように、この三年間のいわゆるゲタと称する助成の仕組みの上に、特別のこの個々の交付金を有効に活用をする助成策に特色を持たせまして、この三年間これを続けていくというふうにしているわけでございます。  それで、平成二十二年度以降の取扱いにつきましては、この対策の効果を検証をしなければなりません。この効果を検証しながら、米政策改革の施策の方向の検討と併せまして、関係者と十分に話し合っていきたいと、このように考えております。この三年というのは、一定期間ごとにこの対策の効果の検証をしながら、必要に応じて内容の見直しを行って情勢の変化に的確に対応していくという趣旨でございまして、この制度はその後も継続して実施していくという基本は大事にしていかなきゃならない、こんなふうに思っているわけでございます。  三つ目の、三点でございました。  予算委員会でもそうでありましたし、当委員会においても既に多くの指摘をいただいているわけでございますけれども、この十九年産米が、今申し上げましたような背景の中で、この価格の低落が起こっていると、そのことが大変生産者の中に不安や混乱をもたらしているのではないかという御批判がございます。何か手を打たなきゃいけないということをおっしゃっていただいているわけでございまして、私どもとしても、この米の生産者がこのことによりまして不安を持ち、そして将来展望を失うというようなことになってはならないというふうに考えておりますので、このことについて、この経営対策、その担い手経営対策も含めまして、この低米価によります影響というものを何とかここで少なくしながら対策を講じなければならないと思っているわけでありますが。  ただ、いろいろ御指摘になっております政府の買上げによって対処しろということにつきましては、もう委員承知のとおりでございまして、我々政府は法律の範囲内で、違法にならないところで対処していく責任があるわけでございます。その意味で、今の食糧法は、そういう下落が起こったときに、それを下支えするために政府が買い入れるということを、買い入れ、かつこれを隔離して、場合によっては食用に供さないような用途も念頭に置いた対策を講じろというのは、今政府が認められております食糧法上の買入れというのにそぐわないわけでございまして、政府の買入れは不作の場合における需給を回復するために備蓄として持つということに限定されているわけでございます。その備蓄の運用の範囲で、市場価格などへの悪影響がないような形でこれを運用していくということにならざるを得ないわけでございます。  今、適正備蓄は百万トン程度というふうに定められているわけでございます。この今の在庫量は七十七万トンということでありますから、若干の余裕はあるわけでございますけれども、それらの百万トン程度という備蓄の枠を念頭に置きながら、その中で許される範囲で運用上政府もこれにかかわっていくというような工夫を凝らさなければならないというふうに考えているわけでございます。
  93. 加治屋義人

    加治屋義人君 大臣の大変分かりやすく説明いただいていることは大変有り難いんですが、時間がなくなってしまいまして、先を急ぎたいと思っております。  農地政策について岩永大臣に一点だけお伺いしたいと思いますが、農林水産省は、農地の有効利用と面的集積を図るとして、この秋の農地見直しの中で所有と利用を分離するというふうにお聞きをしているんですけれども、利用である賃借について規制を大幅に撤廃する方向だと聞いているんですが、このことによって株式会社あるいは一般企業の参入が大きく増えることになるのではないか。当然だろうと思いますが、それが目的だろうと思いますが、地域担い手と企業とが農地権利取得など競合が考えられますが、担い手を育成するというこのこととの整合性をどうお考えになるのか、岩永大臣にお聞きします。  続けて、澤政務官にお伺いしますが、品目別の経営安定化対策についてであります。  この対策の特徴は、これまでの価格支持から担い手の育成、生産者自らの計画による需給調整の取組に支援するというものであります。サトウキビ、カンショは零細農家で、その多くは特例措置である地域生産農家の半数以上が加入する生産組織への参加をすることでこの支援対象となっていると、こういうことなんですけれども、この特例措置は三年間の時限措置で、四年以降も支援の受けられるためには、この面積の規模その他の要件を満たすことが求められているわけでございまして、離島など制約の多い地域を考えますときに、この新たな要件を満たすことは大変厳しい、そういう状況に予測をしておるわけですけれども、作業の受委託体制の整備に向けた支援策などを引き続いて行うことが大変大切だと、そういうふうに思っておりますが、政務官の御答弁をいただきたいと思います。
  94. 岩永浩美

    ○副大臣岩永浩美君) ただいま御指摘いただいた農地政策の見直しについてでありますが、先生も御案内のとおりに、我が国の農業、農村がやっぱり高齢化社会を迎えて農業従事者が大変減少をいたしております。それゆえに、耕作放棄地の増加や担い手農地の分散化など大変困難な状況に直面していることは今朝ほど平野議員から御指摘いただいたとおりであり、農業を名実ともに足腰の強いものにしていくために、農地政策においてもこれらに対応した施策を講じていかなければいけないことは言うまでもありません。  ただ、今日の委員会の中でも御議論いただいているように、品目横断経営安定対策を今やっている与党として、担い手を中心にということだけではなくて、小規模農家の切捨てということで分散化を図るということではございません。農地の一層の有効活用を促していかなければいけないということ、そのために地域農業を発展させるということを基本的なねらいとして農地政策の見直しを図っていくということが必要だと私どもは考えております。  そういう意味で、いかに個別の家族経営集落営農農地をまとまった形で集積するかという点に絞って今後十分に配慮をしていかなければいけない。そのために、企業の参入が、今回の農地政策の見直しが株式法人の農地参入を促すということを主眼に置いているわけではないことだけは御理解をいただいておきたいと思います。  今先生から御指摘をいただいたことを踏まえて、地域農業担い手をしっかりと育成していくということは当然のことでありますが、小規模農家皆さん方も一緒にその地域農業にいそしんでいくことができるような、そういう農地政策を我々は希求をして、総合的な対策の枠組みを取りまとめていきたいと思っております。
  95. 澤雄二

    大臣政務官(澤雄二君) お答えをいたします。  御指摘がございました品目別経営安定対策の対象者要件につきましては、沖縄県及び鹿児島県南西諸島の生産実態を踏まえまして、認定農業者であるとかそれから耕作規模の要件である以外にも、受託委託制度を要件に加えさせていただいております。つまり、栽培する過程で幾つかの過程がございますが、その中の少なくとも一つを受託、委託していれば対象になるという要件を加えさせていただいております。  それ以外に、今委員から御質問がございました、その受託委託組織のないところは三年間の特例を設けさせていただいております。つまり、三年間の間に受託委託組織を育成してほしいということでございます。したがいまして、当面の間は全耕作者が対象要件にはまっているということでございます。  ちなみに現在の状況を申し上げますと、でん粉の原料用カンショ及び鹿児島県のサトウキビにつきましては、工場への出荷が見込まれているすべての農家から確認申請書類が出されておりまして、このうちでん粉の原料用カンショにつきましては、すべての農家で確認作業が終了をしております。つまり、出荷が見込まれる農家についてはすべて対象として認められたということでございます。これ以外でも、サトウキビについても順次確認作業が行われておりまして、これもほぼ全農家が対象になるというふうに見込まれております。  そして、なぜこういう品目別の経営安定対策を設けさせていただいたかということでございますが、もう皆さん御案内のとおりでございまして、やっぱり高齢化が進んでいて生産原料がどんどん少なくなっていると。特にサトウキビにつきましては、工場立地の要件が大事でございます。つまり、安定的にサトウキビの供給がされないとその工場が立地できなくなると。つまり、生産してもコストが見合わなくなるということがあって、安定的にサトウキビを供給しなきゃいけないという理由がございます。ですから、どうしてもサトウキビについては安定的な生産を守っていきたいという気持ちがこの経営安定対策をつくらせていただいた理由でございます。  それで、御質問の趣旨でございますが、三年間で大丈夫かと、受託委託組織ができるかという点でございますが、これは三年間丸々黙って見ているということではなくて、一年ごとに検証をしてまいります。つまり、一年ごとに、進まなければ何がその阻害要因になっているのかということを検証させていただいて、その問題点については農水省全力を挙げて改善をさせていただくという心構えでおりますので、まずは三年間で取り組ませていただいて、期間内に受託委託組織の育成に当たっていきたいと、このように考えております。
  96. 加治屋義人

    加治屋義人君 ありがとうございました。  次に、バイオ燃料対策について、これは大臣にお尋ねしたいと思いますが、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けて農林水産業者とバイオ燃料製造者による低コストの安定化を図っていく、これは大臣の所信あいさつの中でも言っていただいたわけであります。農林水産業の新たな分野として燃料の原料生産がしっかりと定着していけば、農林水産業者の所得の向上はもちろんでありますけれども、地球温暖化対策にもつながっていくものと、こうしたものに国を挙げて取り組むことは大変結構なことだと思います。  アメリカのトウモロコシのエタノール化など、我が国に対する非常に影響大きいだけにそのことを思っておりますが、私は国産バイオ燃料の振興に当たっては、こういった食料や飼料の安定供給の悪影響がないように十分配慮して、バイオ燃料という新しい分野に挑戦する方々が安心して取り組めるように、例えば新たな法制度をつくるなど、国がきちんと支援の枠組みをつくった上で推進すべきだと、そういうふうに思っておりますけれども、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  97. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 国産のバイオ燃料の生産の振興の問題でございます。  委員御指摘のように、地球温暖化の防止、あるいは地域の活性化などを考慮いたしまして、従来の食料などの生産の枠を超えて農林水産業の新たな領域を開拓すべきではないかということにつきまして、私もそのように考えております。しかし、この場合に考慮すべきことは食料供給への影響でございまして、午前中にも平野委員にお答えをいたしたわけでございますけれども、結局エネルギーと食料の問題ということに相なってきますと、エネルギー対策として食料が食われていくというようなことは、人類の将来の生存にもかかわる問題でございまして、そのことについて、既に国際的にも問題の指摘が行われ始めているわけでございます。  私は、アメリカがコーンからバイオエタノールの生産を急速に進めている結果としましてコーンの価格が高騰し、非常に影響を受けているということについて憂慮している一人でございますが、そのことでアメリカに対して、バイオエタノールへの傾斜をするのはやめてもらいたいというような、そういう意味での意見は、先ほども申し上げましたが、そういうことを申し上げる、今のところそういうつもりはありませんが、しかし、コーンが高騰いたしまして輸入国である日本の畜産その他に非常に影響があるということに関して言えば、安定的な形で農産物貿易が行われないと、専ら原料を輸出国アメリカに依存している日本農業を脅かすことになるということに関して言えば、このことを、飼料の安定的な確保という意味合いで申すべきことは言っていかなければならないという思いはあるわけでございます。  そこで、我が国でございますが、我が国につきましては、そういう食料供給への影響を回避するような形で、例えば、農場残渣でありますとか遊休農用地を活用してのバイオ化するための農産物の品種の開発、そちらの推進といったようなことのほか、セルロース系のバイオ燃料化ということも考えていく必要があると思うわけであります。  例えば、農場残渣でありますけれども、稲わらなどを含むセルロース系のものをバイオ燃料化すると。一番大きなものは実は森林でございまして、そういう森林資源というものを有効に使ってバイオ化していくということが非常に大事なことになってくるというふうに思い、それらの試験研究を含め充実を図っていきたいと、こう思っているところでございます。  余談でありますが、実は、ブラジルの農林大臣が是非会いたいということを私環境大臣のときに言ってこられました。これは、ブラジルはサトウキビからバイオを作っているわけですけれども、この売り込みに来たのかなと、こう思っておりました。そうしましたら、こういうことであります。  もちろん売り込みもあるんですけれども、日本はセルロース系の植物からバイオエタノールを作るというそういう研究開発の部分では非常に進んでいると。ブラジルの場合は搾ったサトウキビからバイオ燃料を作っているわけですけれども、これはもう砂糖との間の競合関係を起こしてきていますから、できればケーンそのもの、搾ったかすですね、かすといっても茎の方も含めたセルロースをバイオ燃料化するということについて日本と共同研究したいというようなことも言ってきたわけでございまして、新しい分野だと思います。  なお、沖縄について言えば、宮古島で、実は廃棄されていくサトウキビから、搾りかすからエタノールを作るという大きな全島を挙げての実証実験事業に着手いたしておりまして、私もそのテープカットに行ってきたわけでございますけれども、いろいろな問題は抱えておりますけれども、非常にこれから大事なものだというふうに認識をいたしております。  これから、法制度の整備も含めまして、あらゆる側面から農産物のバイオ化、エタノールを通じてのバイオ化ということを真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  98. 加治屋義人

    加治屋義人君 時間がなくなりましたので、急ぎたいと思います。  通告していましたので、林野庁にも来ていただいておりますので、簡単に申し上げます。  建築基準法が改正されて、新設の住宅が非常に減少してきているんですね。これ建築基準法はもちろん国土交通省なんですけれども、そこの辺りを林野庁としてどう整合性、取り組んでおられるのかが一点です。  それから、やはり国産材の安定供給をするためには、やはり施業の集約化、このことが最も大切です。このことをどう取り組みを、新生産システムとかいろいろ取り組んでいただいておりますが、簡単にお願いしたいと思います。  三つ目に、これは大臣にお聞きしたいと思いますが、間伐などの作業で森林所有者や地方財政に大変負担が掛かってきているんですね。これは良くありませんので、森林整備を進めていくためにこの森林所有者や地方財政の負担軽減をどのように図っていくかというのは大変今後の森林、京都議定書等々にも大切なものでございますので、一言このことについてコメントをいただきたいと。  以上で私の質問を終わります。
  99. 辻健治

    政府参考人(辻健治君) 今先生からのお話の、改正建築基準法の施行に伴う建築確認手続の遅れから、八月の新設住宅着工戸数は対前年同月比四三%減ということになってございます。このため、杉の乾燥材の正角の価格が七月以降、じり安傾向に転じるとともに、製材品の八月の出荷量は対前月比九三%という、そういった状況になっているわけでございまして、今後、木材加工流通業者の資金繰り等に影響が生ずるのではないかと懸念しているところでございます。  こうした状況のため、木材加工流通業を含む建築関連の中小企業を対象とした運転資金の貸付け等の措置が講じられているところでございまして、農林水産省といたしましては、運転資金の貸付け等の措置が活用されるよう、業界団体、都道府県を通じて周知を図っているところでございます。  また、間伐の促進、そして原木の安定供給の話でございますけれども、このために取り組んでいることといたしまして、一つは、森林組合等の林業事業体が森林所有者に対しまして、こういう間伐をやると、そのときにこのくらいのコストが掛かって、間伐材がこのくらいで売れると、そういったことを森林所有者に積極的に提案をするようなそういう取り組みをやって森林施業の集約化を図っていこうと。それから、作業道等の路網と高性能林業機械を組み合わせた低コスト作業システムの開発普及。それと、原木供給可能量情報の取りまとめと需給情報のマッチングと、こういった取り組みをすることによりまして国産材原木の安定供給を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  100. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 京都議定書の約束期間がいよいよ来年から本格的に始まるわけでございます。日本は御承知のようにCO2の削減六%というのを国際的に約束をしているわけでございますが、そのうち三・八%は森林で吸収をしていくからということでございます。その意味では、森林整備を早急に進めてこの三・八%という約束を守り抜かなければ信用されないことに相なるわけでありまして、その意味では、間伐を含む森林整備を急速に拡大を、拡充をしていかなければなりません。  そのためのいろいろな施策を今長官が申し上げましたように講じているところでありますが、委員御指摘のそのことによる個人あるいは自治体の負担の問題がございます。その意味では、来年度の概算要求におきましては、平成十九年度予算に措置した定額の助成方式の継続に加えまして、個人や地方の負担を求めずに、民間事業体の森林整備の意欲を最大限に活用するための新たな施策を講ずることによりまして、この負担問題に配慮した森林の間伐の促進、森林整備を進めたいと、このように考えているわけでございます。  さらに、地方負担を軽減するために、森林整備に係ります地方財政措置の充実につきまして総務省に要望をしているところでございます。地方負担の軽減を図りながら、この間伐を中心としました森林整備を強力に進めてまいりたいと、このように考えております。
  101. 加治屋義人

    加治屋義人君 ありがとうございました。
  102. 谷合正明

    ○谷合正明君 公明党の谷合正明です。大臣、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、あらゆる技術の中で、第一の、そして最も尊敬に値するものは農業であると、これはルソーの言った言葉でございます。また、農村を大事にしない社会は、人間や生命を粗末にする野蛮な社会となり、すべての面で行き詰まる、そういう警鐘を鳴らし続けてきた識者もいらっしゃいます。正に、農業については、多面的機能という言葉を持ち出すまでもなく、私たちは本当に第一にしていかなければならない私は産業でもあると思っておるわけです。  その農業が、やはり今、我が国だけじゃないんだと思いますけれども、特に我が国においては、高齢化であるとか後継者不足、そして埼玉県ほどになったという耕作放棄地の増大、そして農家所得減少等、大変厳しい局面に置かれているということでございます。  そこで、この一大農政大転換と言われる品目横断的経営安定対策が本格的に今年から実施されたわけでございます。午前中の質問の中にも、実際にこの経営安定対策に申請して加入した農家戸数は幾らあったのかと、そういう質問もございました。  この本対策の加入申請については、作付け計画面積についてはほぼ計画どおりいったというふうに発表しているわけでございますが、一方で、加入戸数については認定農業者集落営農の両者合計で今七万二千四百三十一経営体と。ただ、集落営農については正確な数字が発表されておりませんので、先ほども掛け算で、平均戸数で掛け算をして二十九万戸ですか、出しました。米作、水稲の農家に限って言いますと二十一万戸と先日の予算委員会でも答弁されております。  やはり、この数というのが私は非常に少ないのではないかと。ここまで農政の大転換と言ってきた、宣伝してきた割には加入農家数が少ないということは、安定対策の魅力が十分に伝わっていないということもあると思いますし、また、一方でこの要件を満たせない農家が大変多くいるということでございます。  まず、農水省において、この参加農家数について今どのように把握して分析していらっしゃるのか、その点について伺います。
  103. 高橋博

    政府参考人高橋博君) まず、本対策の参加農家数につきましては、先ほどもお答えさせていただいておりますけれども、個別の経営体、認定農業者ベースで六万七千余、集落営農組織で五千四百弱ということでございます。大体一集落営農組織当たり四十人程度ではないかという調査結果が別にございますので、推計ということで二十九万戸。米の場合には、このうち集落営農組織が三千七百八十五戸、認定農業者五万五千という数字がございます。  したがいまして、これを用いまして約二十一万戸、委員の御指摘の数字推計をさせていただいたわけでございますけれども、まず、このうち麦でございますとか大豆、あるいはビート、てん菜、でん原用バレイショという畑作物につきましては、これらの対象作物につきましては、従来から麦に対します麦作経営安定資金、あるいは大豆の交付金というような品目ごとの対策を講じておりまして、それらの対象の面積が約、それぞれ、麦につきましては二十六万程度でございまして、それから大豆についても十万程度というような数字がございます。これを今回、品目横断的経営安定対策の導入に伴いまして、麦については二十五万四千ヘクタール、大豆で十一万ヘクタール、てん菜で六万六千、でん原用バレイショで二万二千という形で品目横断的経営安定対策を導入して、その対策に加入した人が従来とほぼ同程度の作付けを行うということでございますので、この畑作関係については、先ほど申し上げましたように、基本的に新しいこの対策の加入要件、そういったことに参画をされた方々でこれまでの生産を担う構造ができているのではないかと理解しております。  ただ、お米の場合につきましては、先ほど来申し上げておりますけれども、ここについては、お米の生産そのものが畑作と異なっておりまして、自家飯米でございますとか、あるいは市場を介さないで流通するお米というものが相当数ございます。そういうような状況と、もう一つは、お米については他の作物とは異なっておりまして、国内で基本的には市場が完結をしている。その中できちんとした需給調整を図りながらこのお米の作付け構造を強くしていくということでございますので、他の畑作物と異なりまして、ここの構造転換については地域ごとの着実なる推進、その当該地域でどういうようなお米の生産構造を今後担っていくのかということを地域ごとにきちんと話合いをしていただきながら、そこで認定農業者で引っ張っていく地域、あるいは集落営農で担う地域、それぞれごとお考えいただきながら推進をしていくという丁寧な手順をこれから踏まえていっているところでございますので、まず一歩、今年はまずその第一歩であったというふうに理解をしているところでございます。
  104. 谷合正明

    ○谷合正明君 畑作については面積にしても農家戸数にしても大丈夫、クリアしたと、米作については一歩前進したと。そう伺いますと、じゃ、なぜ一体地方キャラバンを今回農水省全省挙げてやってこられたのかと。やっぱり実態としては本当に厳しい声が寄せられていると思うわけであります。  私ども公明党も選挙の前から農林水産業活性化本部で各地を巡回して回ってまいりました。私自身も岡山とか愛知とか兵庫とか、また先日も福井県の方にも行きましたけれども、本当に二週間前、福井行った際も、例えば集落営農、二十ヘクタールないと駄目だというふうに言われていると。昨日確認したら、そんなことはないんですと。そんなことはないというのは農水省が言うんですね。ただ、現場ではいまだにそんなことが、集落営農を実際やっている方の中で発言を聞くというのは、これは実際としてございます。  そもそも、品目横断的経営安定対策という名前が分かりづらいというか取っ付きにくいと。名前が悪いと、率直に言うと。という声も相当聞かされました。あるいは高齢の方で、市町村によっては六十五歳以上の方はもう認定農家として認められないという条例もあって、いわゆる認定農家への参加が閉ざされているという状態も見受けられているわけでございます。  そういう中で、まず大臣にお伺いしますけれども、先ほども加治屋委員から質問ございましたが、今回地方キャラバンが必要と判断した理由、一番の理由というのは何なんでしょうか。
  105. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 先ほども御説明申し上げましたが、私は、やはり新しい制度を設計をし、つくり上げますと、その担当者はそれを何とか分かってもらおうということが先に立ちます。私も農林省におりますときにいろんな制度をつくりました。そのいろんな制度を普及に入るときには、どうしてもその制度に中心を置きまして、何とか理解してもらおうということに行くわけですが、そうすると、理解できない、あるいはまたいろんな意見があってもそれは十分伝わらない。相手の皆さんも、何か意見を言いにくいという雰囲気が出てきております。  私もそういう経験を持っておりますので、今回のこの品目横断経営安定対策というのは、ただでさえいろんな複雑な仕組みになっているということもあり、現実からするといろんな無理をお願いしなきゃいけない、そういうことになっておりますから、その制度を理解をする、説得をするということも大事ですけれども、その前に、今の時点でどういうふうな理解をしていただいているのか、これに対してどんな、それが実は当たらないことであっても、それは違いますよとその場で言わないで、いろんな批判は素直に聞いてくるということが大事じゃないかと。そういうことをしないと、今、地方、地域において、この制度に対する不信、不満、いろんな御意見というのは、我々それにこたえていくことができないんじゃないかと。そういう意味で、キャラバンを編成をして回ってくるように言ったわけでございます。  時間の関係があると思われますので、一つ一つ申し上げたいんでございますけれども、主な代表的なことだけちょっと申し上げますと、まず何といっても、品目横断経営安定対策については、その仕組みや内容が難しい、分かりにくいと、もっと分かりやすい説明が必要なんじゃないかと。例えばビデオを作ったりするとか、そういうような分かりやすい説明をしてもらいたいと。それから、いろんな規模の要件がいろいろありますけれども、これはもっと弾力化してもらいたい。また、緑ゲタと言われます生産条件不利補正対策の過去の生産実績に基づく支払だけでは豊作になった場合でも収入が増えなくて、何となくこれは違和感があるとか、書類や申請手続はとにかくもっと簡素化してもらいたい。あるいはまた、緑ゲタについて言うと、その交付金を、交付時期をもっと早く交付してもらいたいといったようなこと。それから集落営農についても、その集落営農を進めるに当たっていろんな種々の要件、条件があるわけですけれども、これらを組織化し、運営していくに当たって、もっと現実に即したような組織化、その運営の在り方があるんじゃないかといったようなことなど、更に具体的にいろんな意見が出てきております。  これは、やはり普通ですと行った担当者が答えちゃうんですけれども、私は、直接でない責任者、課長クラスが手分けをして行っておりますから、自分の専門外のことについてもいろいろ聞かれるんですね。聞かれたものはもうそこで答えないで、一度帰ってきて、みんなで総合的な検討をした上で答えを出していこうじゃないかと、こういう仕組みにしたということでございまして、今それを集約して検討をしているところと、このように申し上げたいと思います。
  106. 谷合正明

    ○谷合正明君 必ず実のある改善策をという声がありまして、聞いたけれども結局集約して答えが何か不十分だというと、よっぽど、期待値を高めておきながら何かはしごを外されるみたいな思いをさせてはいけないと思っておりますので、しっかりと実のある改善策というものを実行していただきたいと思っております。  そういったキャラバンの意見の中にも、米価下落対策というのがあったと思います。先ほど来、何度も質問に出ております米の備蓄制度の活用でございますけれども、大臣の方からは、主要食糧法において米価維持のために備蓄制度を使うことはできないとしつつも、法の枠内で運用することは考えると。農水大臣として、主要食糧法の運用上、米の備蓄をどの程度まで積み増すことを考えているのか。今、百万トンのうち七十七万トンあると。あと二十三万トン余裕があるわけですね。その百万トンという備蓄の根拠も、かつての農林水産委員会質疑の中でも、通常八十から九十万トンあれば備蓄としては十分だと。ただ、七月、八月の新米が出る前の時期には百万トンあれば大丈夫だということでの数字だったと思いますけれども、大臣、どの程度まで積み増すことができると考えていらっしゃるのか。
  107. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 実は、この適正備蓄水準というのは、食糧法に基づきまして基本方針というのを定めているわけでございます。基本方針の中で適正備蓄水準というのが定められているわけですが、これは、食料農業・農村審議会の中の食糧部会にかけまして、専門家の意見を十分聞いた上で、そこで決められているのが今百万トン程度と、こういうふうになっているわけでありますから、今の時点で緊急にこの備蓄水準自身をどう動かすかというようなことを今私どもが物を申し上げられるような状況ではございません。  そしてまた、この備蓄水準については、米の消費が減ってきているという状況を反映すればもっと少なくていいんじゃないかという意見も識者の中にはいるわけでございまして、この備蓄水準をどう設定するかということは、いろんな意見を伺ってみないと私の方で申し上げることができないわけでございます。緊急に今の時点で考えるとすれば、どうしてもこの適正備蓄水準の百万トンというのを念頭に置きながら運営をしていかなきゃいけないと思っております。  ただ、いろんな意見の中に、これを言わば、備蓄ということでありますから、これを隔離して、あるいはほかの用途に充ててしまうというようなことをこれでやれというのを表立って出ますと、それはこの食糧法の中で予定していることではありませんと、そういうことはできないんですということに相なるわけでございます。その意味では回転備蓄という考え方でございまして、この備蓄は主食用としてまた売り渡していくと。  同じように、実はこの基本方針の中で決められた基本計画というのがあるんですが、市場への影響を考えながら年間通じて安定的に売っていくようにということも実は決められているんですね。これはもちろん運用の在り方ですから、そういう事情によって市場に悪影響を与えないような処理の仕方はどこまで許されるかというようなことも詰めていかなきゃいけないと思っておりますが、今我々が与えられている与件として言えば、適正備蓄水準の百万トン程度というのを枠組み、念頭としてこの運用を図っていくということしか申し上げることはできないのでございます。
  108. 谷合正明

    ○谷合正明君 重々理解した上で質問させていただいているわけですが、実際、その過剰米吸収がどの程度米価下落防止効果を持つのだろうかと、これ普通に素朴な疑問として持つわけでございます。  この辺り、今答えられる範囲でどうでしょうか、政府の方で、答えていただけると思いますが。
  109. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) 価格につきましては、現在も、例えば全体需給が緩和傾向にあるということでございますけれども、例えば、昨日のセンターの入札であれば、北海道産のきらら等はむしろ値上がりしておるということもございます。個別銘柄ごとにもかなり動きが違ってきたりもしておるということでございまして、一般論として言えば、買入れということになればその分市場が引き締まるということもございますけれども、今申し上げましたように、様々な要因で決まってまいりますものですから、なかなかその影響を一概に見通すということは難しいのかなというふうに考えております。
  110. 谷合正明

    ○谷合正明君 分かりました。  それで、生産調整の方なんですけれども、結局のところ、一つ反省しなければならない点というのはこの生産調整の話だと思っておるんですね。皆さんそう考えていらっしゃると思いますけれども。ただ、強制的な生産調整が今できない中で、それは、もうあと生産調整に参加する農家に対するメリット措置をこれ十分手厚くするよりないと考えておるわけであります。  十九年産米で過剰米が生じて、二十年産米が出荷される段階でも在庫が残ると予想されているわけであります、今。そうすると、二十年産の生産調整においては目標数量を更に下げなきゃいけないという事態も想定されると。そうすると、生産調整にこれまで協力してきた農家がまた更にこの生産調整の引下げ分を引き受けざるを得ないと。よっぽど、何というんですか、生産調整に協力しない農家との不公平感が高まるのではないかと指摘されておりまして、この点、生産調整に参加する農家に対するメリットをどうするのか。産地づくり交付金というのは、もう答弁の中で繰り返されておりますけれども、果たしてそれだけで本当に今の水準でいいのかという問題がございます。  是非、この辺り、生産調整のメリット措置について前向きな答弁を期待したいわけでありますが、いかがでございましょうか。
  111. 岡島正明

    政府参考人(岡島正明君) お答え申し上げます。  現在、正にメリット措置としては、今委員御指摘のように、産地づくり交付金等々あるわけですけれども、今後とも、国としては、需給の均衡を図るため、すべての都道府県で生産調整の実効性が確保されるよう工夫していく必要があると、そういうふうな認識でございます。  それとともに、今委員御指摘のように、生産調整参加者へのメリットということございますけれども、一方で、現に一〇%強の方々が参加していないと、非参加の方がいらっしゃいます。そういう方々には、実は十九年、初めての試みですけれども、重点取組県ということで、私どもの地方農政事務所も始め各農家に、例えばパンフレットを配るとかいろんな形で、今こういう制度になっていますよということもお話ししながら、やはり参加していただく努力ということも併せて必要かなというふうに考えているところでございます。
  112. 谷合正明

    ○谷合正明君 是非、この点は今年だけじゃなくて来年以降も続く深刻な問題だと思っておりますので、是非適切な措置を講じていただきますようお願い申し上げます。  時間が余りないので、はしょりますが、米ですね。品目横断的経営安定対策では、米についてはゲタの対象作物とはなっておりません。これは、関税、今七七〇%を超える関税に守られているという国境措置のためにゲタがないわけでございます。  しかし、WTOの交渉次第では、関税の引下げであるとか、あるいは米の生産費が今実際に販売価格を上回っているという状況があるという中で、米にもゲタをという声もあるわけであります。実際、民主党さんの農業者戸別所得補償法案でも米にゲタというのがあるわけでありますが、まず一般論として、米にゲタを履かせることについて大臣の見解を伺いたいと思っております。
  113. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 過剰がこの段階まで来ている中で、一般的にゲタを履かせるという形で助成をするということの政策的な意味合いとか効果ということを考えますと、このことをしたからといって生産過剰というような米問題の解決にはならないんじゃないかというふうに考えているわけでございまして、やはりこの米価の下落による農家所得の低下というのは、国内の需要に応じた米の生産が行われない、過剰が生じているということによって発生しているわけでございますから、やはりその基本的な問題を回避して当面の困っている状態を救済するというような意味合いでゲタを履かせてしまうということをしても、この過剰状態は、むしろ見方によっては、このことによって更に生産に刺激的な効果を与えて過剰が発生することがあるかもしれない。もっとも、その生産調整に参加した人についてだけやるというんだからそういうことはないよという意見もあるかもしれない。  しかし、根本的な問題として言えば、この米の需要、これも、米という商品があるんではなくて、それぞれ、どこどこの産地のどこのどういう銘柄だというようなことで商品として既に流通をしているという実態があるわけですから、きめ細かな需要に応じた生産を、需要の動向を見極めながらきめ細かく生産の調整をしていくというような措置によって需給を均衡させていくということを重視しなければ政策的にはならないというふうに思うわけでございます。
  114. 谷合正明

    ○谷合正明君 今日は、米価下落対策に関連して、ほかにも集荷円滑化対策の見直し等用意してきたんですけれども、時間が迫っておりますので食品の安全の方について移らせてもらいます。  昨日、ミートホープの元社長が逮捕されました。御承知のとおり、これJAS法が適用されなかったと。虚偽表示、いわゆる不正競争防止法違反で逮捕されたわけでございまして、このときも言われたのは、JAS法は生鮮食品と加工食品に分けていると。ただ、加工食品にはいわゆる業者間取引について表示義務がないということで、今回ミートホープの問題が起きたわけでございます。  中間報告を今取りまとめているということでございますが、このミートホープ以来、もういろいろな食品にまつわる問題が度々起きておりまして、私はむしろ、もうある程度その結論は見えているわけでありまして、結論というのは、いわゆる加工食品の業者間取引についても表示義務をということはもっとスピーディーに行えばいいと思っております。  その点、まず大臣に、このJAS法の見直しも含めて、食品の安全について大臣の決意なりを聞かせていただきたいと思っております。
  115. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 相次ぐ加工食品の不当表示を始めとして、あるいは虚偽表示、そして悪質な食品衛生法にも反するかもしれないような事案が発生してきているということに憂慮いたしております。  これにはいろいろな対策を講じなければならないんでありますけれども、今委員が御指摘になりました業者間取引がJAS法上の対象になっていないということについてでございますが、今月末には有識者からの結論をいただくことになっております。もう先が見えているというお話もございます。私も期待をしていますのは、やはり有識者の方も、この業者間取引についても全く業者に任せっきりにするんではなくて、表示上の義務も掛かるような形で制度を拡充していかなきゃいけないというふうに、私どもとしてはそのように考えているところでございます。  ただ、業者間というのは、やはりミートホープのようなことが起こると、ただただあきれ、驚き、そして怒りに至るわけですけれども、業者間というのはお互いそれで生業して食べているわけですから、お互いがもっと分かり合っている。つまり、これとこれとこれと細かいことを決めなくても、繰り返し反復継続して少数の取引先との取引が継続的に行われていることが普通ですからね、どこまでを法的な規制とするかといったような規制の仕方についてはいろいろ工夫を要するんじゃないかというふうに思っておりますが。  いずれにしても、そこに全く規制が掛からないという状況はここで改善をしていかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  116. 谷合正明

    ○谷合正明君 もちろんまじめにやっている業者もたくさんございまして、業者の中での自発的な取組というのは第一義的には大事だと思っておりますし、また行政側の体制強化ということも併せて必要であろうというふうに思っております。  最後に、都市農業について大臣の御所見を伺いたいと思うんですね。  所信の中には都市農業という言葉は出てまいりませんでした。ただし、統計的にいう都市的地域農業産出額というのは三割近く、全産出額の三割近くあるというふうに私認識しております。私も澤政務官とともにこの都市農業の検討をずっと党内で重ねてきてまいりました。東京も含めて愛知県など、いろんなところで現場の声を聞かせていただきました。  本当に今、特に市街化区域内に農地を持っていらっしゃる方というのは、都市計画法上、十年以内に宅地化しなきゃいけないという前提の中でやっていると。生産緑地制度というのはあるけれども、ただしその要件が大変厳しい要件、いわゆる相続税法上終身営農も課せられているとか、いろいろ厳しい環境の中でやっております。  多面的機能ということが先ほど来ずっと出ておりますけれども、正に都市農業というのは多面的機能を持っているんですね。防災ですとか市民にとってのレクリエーションの場であるとか、そういったことでいえば、日本農業の一つのモデルになり得るということを言う識者もいらっしゃるわけです。  都市農業が出てないということで、都市農家の方が今の大臣どう思っているのかと心配しておりますので、大臣のこの都市農業についての前向きな御答弁をお伺いしたいと思います。
  117. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 若林大臣、簡潔に願います。
  118. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 都市農業は大事だと思っております。大都市周辺部、都市内において軟弱野菜などを中心に、都市内部で生産された野菜はシェアにおいても相当大きなシェアを占めているという現実もございます。そういう意味で、新鮮な農産物を供給するという生産面での役割も大きな役割を果たしているというふうに思っております。  しかし、それだけじゃなくて、その周辺に住んでいる人たち農業体験の場にもなるわけでございますし、災害が起こった場合の避難場所としてのオープンスペースを確保しているというような意味合いもあるわけでございます。また、その近辺の人からすれば、管理された生産緑地というのはそれなりの憩いを与えていると、今委員がおっしゃられました多面的な役割も果たしているという意味で非常に大事なものだというふうに私は認識をいたしているところでございます。いろいろと申し上げたいこともあるわけでございますが、認識としてはそういう認識を持っております。  私は、農地課というところにおりまして、都市計画法を作って線引き問題が出たときの農業側の担当者をやっておりまして、市街化区域の中の農地をどうするかといった議論をしたことがございますが、日本の中ではっきり位置付けたのは、横浜市が実は農政課というのがあったんですけれども、これを契機に緑政課というふうに課の名前を変えたのが非常に印象的でございました。それは今の多面的機能に着目した横浜市の中における生産緑地の評価だったと思います。  以来、私もそういう意味合いでまじめに、真剣に取り組んでいる都市農業者に対しては敬意を払っているつもりであります。しかし、だからといって他の地域農業者と同じような意味でのすべての優遇策を講ずるかということになりますと、これはまた別の問題、税制などについてございますので、いろんな条件が掛かってくるということも、これまたやむを得ない面もあるんではないかというふうに考えております。
  119. 谷合正明

    ○谷合正明君 終わります。
  120. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  最初に大臣にお願いをしておきますけれども、私の持ち時間は十五分なので、答弁は極力簡潔に、結論の部分を中心にお願いをしたいと、中身は濃くということでよろしくお願いします。  それで、品目横断的経営安定対策の問題でお聞きします。  私、九月に群馬県の高崎市、それから北海道ということで、この制度が始まって実際どうなっているかということで調査をして歩きました。その中でやはり一番の問題になっているのは、生産者の多くが収入減になるということなんですね。品目横断的経営安定対策というのは、担い手を限定して、そこに政策を集中するということですよね。大規模経営農家とそれから集落営農ということなんですけれども、そういう意味では北海道というのは規模が大きいからいいんじゃないかという話が当初ありました。これは北海道のための政策じゃないかという話があったんですけど、その北海道でも出ている声は、これまでの手取りの実感と懸け離れていると。小麦で十ヘクタール換算で百三十七万円もの手取りの減が見込まれている町もありますし、農協単位で見ても、例えば知床半島の付け根のところに斜里町というところがあるんですね。ここは小麦の生産なんですけれども、ここで品目横断対策をやって、四億円の減収になるというんですよ。四億円ですね、物すごい額なんですけど。  それで、ここは父親の代にはやらなかったような工夫とかいろいろ努力していて、天日干しでもって本当に高品質の麦を作っているんですよ。若い人たち担い手も結構頑張っているんですけれども、こういうところでそういう努力して、農林水産大臣賞だとか天皇杯なんかも受けているんですね。ところが、そういう努力してきたにもかかわらず減るということでは、一体何のための努力だったんだろうかと。本当に意欲をそぐような事態になっているということなんですね。  それから一方、群馬県の小麦の産地であります高崎に行きましたけれども、こちらは規模はもう少し小さいんですけれども、きぬの波というしこしこ感のうどんの小麦作っていまして、頑張ってやっているんですけれども、ここでも現行の手取り水準も確保できないばかりか、必要経費も賄えないということが出されたんですよ。  やっぱりこういう問題というのは、そもそもこの法案の審査の段階で私も何度も質問しましたけれども、そういう事態にならないかということは指摘してきたわけですよ。そして、麦、大豆作っても赤字になるといった場合には、もういよいよ赤字になるんだったら、米も大変だけれども、米の方がまだましだといって米にシフトするということになると、米の価格も下がっていくという心配ありませんかというふうに言ったんですね。ところが、そのときの答弁は、農水省は、いや、そうならないようにするから心配ありません、大丈夫ですという答弁が返ってきたわけですけれども、そうやって通しておいて、実際にどうなっているのかということを見ますと、やっぱり心配したとおりの事態が今あるじゃないかと。  だから、本当に私は怒りで一杯なんですけれども、そういう事態をつくり出したことに対して農水大臣はどのように責任を感じておられるか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  121. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) さて、簡単にとおっしゃられましたけれども、群馬県あるいは北海道、ある地域を挙げながら、しかもそれぞれの数字を挙げての減収が起こっている、さあ、どうするんだと、こういう話になりますと、やっぱりそれぞれについて、その地域はどういうことでありましょうか、その中の生産者というのはどんな状況であるんでしょうか、様々なことを考えながら一つ一つお答えをしないと何とも申し上げられないという意味で、限られた時間の中では本当に答弁に苦しむわけでございます。  そして、この法案出したときに、大丈夫だと、そんなことにならないようにすると、こう言っていながら、実際は現場は大変なことになっているではないかと、その責任はどうなんだと、こう言われれば、それぞれの地域でこの新しい政策がしっかり受け入れられていないという現実は、キャラバン隊を派遣してのいろいろな調査の中で我々も感じていることでございますので、この政策をこれから実行に移していくまだ初年度で、端緒でございますけれども、この政策が有効に現場で活用されましてこれからの新しい農業の展望が開けるように、そのために改善すべきことは改善していかなきゃいけない、こういう思いでございまして、委員がおっしゃられました今キャラバンの結果を集約をしているところでございまして、私が対策部長になりまして、農政全般、農政改革対策緊急検討本部というものを立ち上げて、そこでいろいろ検討を今しているところでございます。  そして、改善すべきこと、できることはできるだけ早く改善をしていきたい。来年度の予算にかかわるものであれば来年度の予算要求に反映するような形にしていきたい。いろいろとこれから対策をきめ細かく検討をしなきゃいけないと、こう思っておりますというふうにお答えさせていただきたいと思います。
  122. 紙智子

    ○紙智子君 担い手と言われる人も減収になっているということで、具体的にちょっと言いますけれども、高崎市では主に麦生産について調査したときに、まず出たのが支払の額の問題で、一俵につき七千円の経費が掛かるのに、JAの概算払は一俵五千四百円しかならないと。これでは生産の継続ができないというのが大体聞いた、どこでも出ていた問題なんですね。それで、しかも三回に分けて払われるものですから、来年の準備ということでは、これが非常に遅れてしまうと来年の種も含めて払えない、資金繰りだって大変だというので、JAの側も立替払という形で精一杯努力しているということなんですけれども、こうなった背景は、結局この交付金の交付が足掛け二年から三年ということでなっていることがあると思うんですね。地方キャラバンですか、皆さんもされてそういう結果をまとめているんだけど、その声の中にも指摘されていると思うんです、その問題は。  それで、大臣、この麦生産者は来年の種代も確保できないということを言っているわけですけれども、これは早期支払もという話も聞いているんですけれども、これもあるんだけれども、問題はその交付金の基礎となる地域の単収ですね。これが近年の作柄水準と懸け離れているということがあるわけです。麦生産はこの品目横断的経営安定対策でむしろ危機にそういう意味では直面しているということなわけで、具体的にじゃどうするのかというのが、今本当に早く出してやらないともうやらないと言い出しかねない。もう現に出ているという話もあるんですけれども、やらないと言っている人がね。そういう事態だというふうに思うんですけれども、これ具体的に、言える対策というか、今、どこまでやれるのかということを是非お答え願いたいと思います、短めに。
  123. 高橋博

    政府参考人高橋博君) 今委員御指摘の麦の関係につきましても、大臣からの御指示によりまして各地域状況について伺っているところでございます。その中で、資金繰りの関係の話につきまして、各地域からこれは共通的に出てまいっております。  このため、先般、大臣が今回のキャラバンについての取りまとめを御発表いただいた際に、併せてこの資金繰りの関係で、緑ゲタの支払時期につきまして、従来、年末、十二月を目途にしておりましたものについてはできるだけ早期に払うような事務手続を始めろというような御指示をいただきました。これを受けまして、私どもといたしましては、今月、十月もう下旬でございますけれども、この時期から全国で順次この緑ゲタの支払につきまして手続を開始をしているところでございます。
  124. 紙智子

    ○紙智子君 十二月の予定が十月ということでは、これ自体は現地にとってみれば少しでも助かると思うんですけど、このほかにも、時間がないので二つまとめてちょっと質問をしますけれども。  そのほかにもいろいろ出ていまして、例えば書類の煩雑さという問題もあるんですね。過去実績を確定するために農地の台帳を調べなきゃいけないと。担当者が調べるとびっくりすることの連続だというんですよ。相続分割で名義が変わっていたり死亡した人の相続人が不明だという例も少なくないと。担当者がプライベートなことまで立ち入らないと分からないということもあって、非常に大変だと。結局、過去実績があっても証明できないというのもたくさんあるというんですよ。現場では、この農地の台帳を基準にそんなにこだわる必要があるんだろうかと、県や市町村で掌握している実績でいいんじゃないかという声もあるんですね。その点、どういうふうに思うのかということ。  それから、麦の流通経費というのがこれまた生産者の肩に掛かってくるというので、ただでさえもう減っているという中で、流通経費も聞くと、麦のまず品代で二千二百円というのが最初あるんですけど、それから千百円の手数料が引かれるというわけですよ、まあ乾燥したりとかということも含めていると思うんですけれども。そうすると、手元に来るのはもう千円ぐらいになっちゃうということで、こういうところまで生産者が負担しなきゃならないというのはおかしいんじゃないかと、国が負担してもらいたいという話も出ています。この点についてもちょっと答えてもらいたいということ。  もう一つ、北海道の空知で出た問題なんですけど、麦や大豆の等級格差が問題になっているんですね。それで、例えば一等の麦は三千円、二等の麦はいきなり半額になると。それで、品質格差がすごく多いわけなんですけれども、二等を作っていると、だから安いものですから赤字になっちゃうということなんですね。一等を作りたいんだけれども、しかし需要と供給ということでいいますと、製粉会社の方が求めているのは、色が多少悪くても、やっぱりコストを安くするために二等を集めていくという事態があるわけですね。  それから、大豆の場合も同じようなことがあって、お豆腐屋さんはどうせつぶすわけですから、見た目は気にならないので、三等から下のものを持っていくわけですよ、コストを安くするために。三等を作ろうとすると、これはもう黄ゲタはもうないですから、農家にとっては大変なわけですよね。一等を作れば、今度はそんな高いものは買えないというので豆腐屋さんは買わないという、こういう矛盾を一体どうしたらいいのかと。政策として出されている交付金までこういう等級の格差を付ける必要があるのか疑問だという声が出ているんですけど。  ちょっとこれら含めて、短くというと厳しいかもしれませんけれども、お答え願いたいと思います。
  125. 高橋博

    政府参考人高橋博君) まず、申請書類の煩雑さにつきましては、制度初年度であるということと、やはり貴重な税財源をベース、財源といたします国費によります交付であるということで、ここについて一定のやはりきちんとした手続が必要であるということは御理解いただきたいと思います。ただ、当然のことながら、二年目以降は簡素化すべきものは当然、初年度で必要であっても二年目以降必要でないものもあるわけでありますし、さらに私どもも、この手続合理化についてはもう常にこれの改善を図ってまいりたいというふうに思っているところでございます。  それから、麦の流通経費について国費をということでございますけれども、要は、民間で取引されている手数料を国が面倒を見るということについては、ちょっと私どもとしては担当の関係ではございませんけれども、いかがなものであるかというふうに思うわけでございます。  それから次に、品質によります価格差でございます。日本の麦、大豆につきましては、どうしても諸外国に比べて非常にまだ品質的には劣る部分が多いということでございます。お米の場合はもう既に世界に冠たる品質を持っているわけでございますけれども、このような加工原材料用についてはまだまだこの部分について、一部確かに優秀なのもございますけれども、全般的には品質が劣る。したがって、この品質の向上を図るためにこの黄色のゲタというものがあるわけでございまして、この趣旨をひっくり返すようなことについてはいかがなことかというふうに思っている次第でございます。
  126. 紙智子

    ○紙智子君 もっとこのほかにも様々な問題があるんですけれども、今、対策委員会の中で順次できるものから出していくということなので、やっぱりできるだけ早くそういう改善ということで出していただきたいんですけれども、私はやっぱり制度そのものに大きな無理があるというふうに思っています。予算委員会では米価の暴落の問題を質問しましたけれども、本当に深刻だと思うんですね。  それで、この品目横断的経営安定対策も相まって、全国のやっぱり農業、農村が今本当に混乱し、悲鳴を上げているというふうに思うんです。やっぱり問題の所在は、この食料自給率を引き上げる、あるいは農村を活性化させるということの鉄則ということでは、農産物の価格支持制度というのは今まであったんですけれども、WTO基準に合わせるためにこれを放棄して、市場原理主義と。制度も、これ非常に欠陥だらけの品目横断的経営安定対策ということを導入したというところがそもそもやっぱり問題だというふうに思うわけです。これ自体を転換しなければ、もう手先だけでいろいろなことをやっていたとしても本当にもたないと、日本農業はもうあと何年ももたないんじゃないかというふうに思うわけですよ。  ですから、食料自給率はそういう意味では下がり続けていく方向だというふうにもう本当に深刻に思っているわけで、これ自体を本当に抜本的な転換をするということがどうしても必要だというふうに私は思いますけれども、大臣、最後にいかがでしょうか。
  127. 若林正俊

    国務大臣若林正俊君) 御意見としてお伺いをしておきたいと思いますが、我々の農業政策の基本は食料農業農村基本法に基づいてそれを進めていくというところにあるわけでございます。共産党はこれ自身にも反対をされたわけでございますから、そういう意味ではなかなかかみ合わないところがあるのはやむを得ないと思うんですけれども、御意見は御意見としてお伺いをいたします。
  128. 紙智子

    ○紙智子君 終わります。
  129. 郡司彰

    委員長郡司彰君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十八分散会