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2007-11-06 第168回国会 参議院 財政金融委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十九年十一月六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十一月一日     辞任         補欠選任      榛葉賀津也君     平田 健二君      轟木 利治君     大塚 耕平君  十一月六日     辞任         補欠選任      森田  高君     平山 幸司君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         峰崎 直樹君     理 事                 大久保 勉君                 辻  泰弘君                 円 より子君                 愛知 治郎君                 田村耕太郎君     委 員                 尾立 源幸君                 大塚 耕平君                 川崎  稔君                 富岡由紀夫君                 平田 健二君                 平山 幸司君                 水戸 将史君                 森田  高君                 簗瀬  進君                 横峯 良郎君                 尾辻 秀久君                 小泉 昭男君                 椎名 一保君                 田中 直紀君                 林  芳正君                 森 まさこ君                 荒木 清寛君                 白浜 一良君                 大門実紀史君    国務大臣        財務大臣     額賀福志郎君        国務大臣        (内閣特命担        当大臣金融)        )        渡辺 喜美君    副大臣        内閣府副大臣   山本 明彦君        財務大臣    遠藤 乙彦君    事務局側        常任委員会専門        員        藤澤  進君    政府参考人        内閣府政策統括        官        藤岡 文七君        金融庁総務企画        局長       三國谷勝範君        金融庁監督局長  西原 政雄君        財務大臣官房参        事官       谷口 和繁君        財務省理財局次        長        中村 明雄君        中小企業庁事業        環境部長     高原 一郎君    参考人        日本銀行総裁  武藤 敏郎君        日本銀行理事   山口 廣秀君        株式会社日本総        合研究所理事        長        高橋  進君        東京大学大学院        経済学研究科教        授        植田 和男君        東短リサーチ株        式会社取締役チ        ーフエコノミス        ト        加藤  出君        みずほ証券株式        会社チーフスト        ラテジスト    高田  創君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政及び金融等に関する調査  (金融機能再生のための緊急措置に関する法  律第五条の規定に基づく破綻金融機関処理の  ために講じた措置内容等に関する報告に関す  る件)  (銀行貸手責任に関する件)  (地域金融機関不良債権処理に関する件)  (国の助成金に関する件)  (金融政策に関する件)     ─────────────
  2. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一月一日、榛葉賀津也君及び轟木利治君が委員辞任され、その補欠として平田健二君及び大塚耕平君が選任されました。     ─────────────
  3. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として内閣府政策統括官藤岡文七君外五名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、参考人として日本銀行総裁武藤敏郎君及び同理事山口廣秀君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 財政及び金融等に関する調査を議題といたします。  まず、金融機能再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づく破綻金融機関処理のために講じた措置内容等に関する報告に関する件について、政府から説明を聴取いたします。渡辺内閣特命担当大臣
  8. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 本年六月十二日、金融機能再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成十八年十月一日以降平成十九年三月三十一日までを報告対象期間として、その間における破綻金融機関処理のために講じた措置内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。  本報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。  初めに、特別危機管理銀行である足利銀行について申し上げます。  足利銀行については、平成十五年十一月二十九日に特別危機管理開始決定がなされて以来、預金保険法に基づき所要措置が講じられてきたところであります。  今回の報告対象期間中には、平成十八年九月期における経営に関する計画履行状況報告同行より提出されております。  なお、報告対象期間外のことですが、平成十九年三月期における経営に関する計画履行状況報告同行より提出されていることを付言いたします。  また、昨年十一月二日に同行受皿になることを希望する者を募集し、本年一月三十日に応募書類審査を通過した受皿候補に対し事業計画書提出するよう要請し、三月三十日までに提出を受けました。  なお、報告対象期間外のことですが、その後事業計画書について審査を行い、本年九月二十一日に当該審査を通過した受皿候補に対して譲受条件等提出要請したことを付言いたします。  次に、破綻金融機関処理のために講じた措置内容について申し上げます。  金融整理管財人による業務及び財産管理を命ずる処分は、今回の報告対象期間中には行われておりません。  続いて、預金保険機構による主な資金援助等実施状況及び政府保証付借入れ等残高について申し上げます。  破綻金融機関救済金融機関への事業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭贈与に係る資金援助は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十八兆六千百八億円となっております。  また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆四千五百十三億円となっております。  これらの資金援助等に係る政府保証付借入れ等残高は、本年三月三十一日現在、一般勘定等の各勘定合計で九兆三千十億円となっております。  ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関処理等に関しては、これまでも適時適切に所要措置を講じることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。  御審議のほどよろしくお願いを申し上げます。
  9. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 以上で説明の聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 大久保勉

    大久保勉君 民主党・新緑風会・日本大久保勉です。  まず、金融庁に質問します。  預金保険機構一般勘定及び特定住宅金融専門会社債権債務処理勘定の直近の資産金額負債金額及びその差額は幾らか、質問したいと思います。また、資産負債差額が将来どのようにして解消されるのか、このことに関しても説明願いたいと思います。
  11. 西原政雄

    政府参考人西原政雄君) お答えを申し上げます。  預金保険機構では各業務ごと勘定を設けて区分経理をいたしております。一般勘定でございますが、預金者保護のための金銭贈与や、破綻金融機関からの資産買取り等の業務経理する勘定ということでございますが、平成十九年三月末現在における資産金額は三千二百十九億円、一方、負債金額は二兆二千五百四十一億円というふうになっております。したがいまして、その差額マイナスの一兆九千三百二十二億円という状況でございます。この差額の解消ということでございますが、今後、金融機関から徴収いたします預金保険料、これが充てられるということになろうかと思います。  それから、続きまして住専勘定の方でございます。この住専勘定は、住専法に基づきまして、住専処理に伴いますいわゆる二次ロス、すなわち旧住専の七社から整理回収機構が譲り受けた債権取得価格回収額の差、これが二次ロスということでございますが、このうちの二分の一は民間負担をするという民間負担分になるわけでございます。その民間負担分につきまして、預金保険機構のこの住専勘定において経理を行うということになっておるわけでございます。  この十九年三月末現在の勘定資産金額ですが、二兆一千六百八十四億円となっております。一方、負債金額は二兆五千四十六億円でございますので、その差額マイナスの三千三百六十二億円という状況でございます。この差額等につきましては、今後住専債権回収ということで補っていくわけですが、さらに加えまして、住専法上、預金保険機構住専勘定に設置されました金融安定化拠出基金というのがございますが、その今後の運用益等により賄われるというような形になろうかと思います。  以上でございます。
  12. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  まず、整理しますと、一般勘定で一・九兆円のマイナスということで、これは将来の預金保険で払っていくと。毎年五千億ぐらいの収入があるということで四年ないし五年で回収するのかなと思いますが、きっちりここの辺り預金保険料回収して、税金として投入する必要がないようにお願いしたいと思います。  問題は住専関連なんですが、三千三百六十二億円のマイナスと。これは、将来資産を売却しましても更に値下がりしている可能性がありますから回収できないおそれがありますから、恐らくその半分は税金投入一般会計の方から投入ということですから、これがなるべく少なくなるように是非とも注文を付けたいと思っております。  続きまして、銀行等保有株式機構が所有する株式簿価総額時価総額及び含み益は幾らか、質問したいと思います。現在の株価で株式処分できるとすれば、その実現益はどのように処分されるのか。一部は民間銀行に配分されると思います、また残りは国庫ということですから、この辺りに関して詳しい説明をお願います。
  13. 三國谷勝範

    政府参考人三國谷勝範君) お答え申し上げます。  銀行等保有株式取得機構がこれまで買い取りました株式合計額は一兆五千八百六十八億円でございます。平成十九年三月末現在で機構が保有する株式は、簿価総額が九千二百八十二億円、時価総額が一兆五千二百十三億円でありまして、その時点で五千九百三十一億円の含み益となっております。また、十九年三月までに売却した株式処分益が五千十三億円となっております。  次に、実現益処分でございますが、機構は、解散した場合におきましてその債務を弁済してなお残余財産があるときに、その残余財産処分を行うこととされております。その際、残余財産の額が銀行等からの拠出金合計額二百八十五億円の二倍の額を基本といたします分配限度額、これを超えるときは、これを超える額を国庫に納付することとされております。  なお、機構平成二十九年三月三十一日又は株式をすべて処分したときに解散することとされております。現時点で、国庫納付の額、時期等につきまして確たることを申し上げることは困難であることは御理解いただきたいと存じます。
  14. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  実現益で五千億余、含み益で五千九百億円余の含み益があるということで、合計で一兆円以上のいわゆる含み益及び実現益があるということですから、是非、国の財政は非常に厳しいですから、こういったところもきっちりと一般会計に返す、こういったことをお願いしたいと思います。特に、国の方は大きな赤字があるということは強調されるんですが、意外と含みもあるんですね。この辺りは懐に入れずに是非国庫に返してもらいたいと思います。  じゃ、続きまして、本論に参ります。足利銀行スポンサー選定が今行われていると思います。このプロセスに関して質問します。  今どういうようなプロセスになっているのか、また、金融庁におきます情報遮断の構築や利益相反防止のためにどのようなことを行われているか、このことに関して質問します。
  15. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 足利銀行受皿選定作業につきましては、平成十八年十一月二日に公募を開始をいたしました。第一段階がスタートしております。第一次審査を通過した受皿候補に対しては、本年一月三十日、事業計画書提出をするよう要請をいたしております。ここからが第二段階でございます。第二次審査を通過した受皿候補に対しては、足利銀行企業価値を適正に評価した上で譲受条件等提出するよう要請をいたしております。ここからが第三段階でございます。今月、十一月二十二日にこの提出期限が来ることになっております。譲受条件等審査をするのが第三次審査でございまして、最終的な受皿決定を行うという段取りになっております。  この三号措置を終える旨の規定は、預金保険法百二十条に規定がございます。これは内閣総理大臣の権限が金融庁長官に委任をされておるところでございます。金融庁担当部署であります監督局信用機構対応室が中心となって、この受皿選定作業を進めているところであります。この選定作業につきましては、必要に応じて金融担当大臣である私も説明報告を受けております。  本件に係る秘密情報取扱いにつきましては、秘密情報の記載された文書秘密文書については作成部数必要最小限にとどめるとともに、その所在を明らかにしております。その所在を明らかにしておく。また、秘密文書の保管に当たっては、施錠できる書庫等で保存をする、第三に、秘密文書を廃棄する場合には裁断処理など確実な方法により廃棄を行うなど、厳格な情報管理に努めておるところでございます。  利益相反の問題につきましては、これまで申し上げてきましたとおり、足利銀行受皿選定作業三つ原則、すなわち、金融機関としての持続可能性地域における金融仲介機能の発揮、公的負担極小化の三原則に基づいて審査基準を明らかにした上で、当該基準にのっとり金融庁組織として厳正かつ公平な審査を行ってきているところでございます。
  16. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  今日は、大臣はずっと答弁書を読まれていまして、いつもの大臣らしくないですね。非常に慎重かなと思います。  ところで、どうですか、三次審査ですか、内容的には満足のものですか。是非頑張っていい先を選んでもらいたいんですが、大臣としては希望どおりですか。
  17. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 私の希望で行っているわけでは毛頭ございませんで、金融庁組織として厳正かつ公正に行っているところでございます。
  18. 大久保勉

    大久保勉君 ということは、ある程度は中身を知っていて、ああだこうだということで、いわゆる三つ観点からいろんな意見をおっしゃっているんですね。
  19. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 必要に応じて報告は受けております。
  20. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  報告を受けても、怖そうな顔だったら、これは何とか、まずいのかなとか、そういう意識が働きます。どうしてこういう質問をしているかといいましたら、実は渡辺大臣地元足利銀行一緒ということで、これまでいろんなことを発言されておりますから、本当に公正な立場でこの問題を解決できるのか、私は非常に疑問なんですね。  特に、いわゆる公的、三つ観点から選んでいくといいましても、どうしても政治家といいますのは地元優先地元の声を聞かざるを得ませんから、いわゆる地元の有権者の方が、何とか先生、足利銀行はここに売ってくださいと、こういったことで、分かった、分かったということで、政治的な介入が行われているのかなという気もしますが、これは大物政治家という意見もあるかもしれませんが、大臣、どう思われますか。
  21. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 私は、大臣になりましてから再三にわたり繰り返し申し上げているところでございますが、金融担当大臣として、国民の立場に立った判断をさせていただきますと申し上げてきているところでございます。そして、そのよりどころは先ほど申し上げた三原則でございまして、地元の側に立った判断をするということはございません。
  22. 大久保勉

    大久保勉君 再三にわたって金融庁に伝えていますが、渡辺大臣が今この問題に関与することは非常に危険じゃないかと思うんです。利益相反になるおそれがありますから、制度的にきっちり考えてほしいです。金融機関には利益相反をするな、情報遮断をしろと言いつつも、本家本元金融庁で非常に疑わしき、疑義が発生するようなことが起こったらよろしくないと思うんですね。ですから、この問題に関してはもう渡辺大臣は入らないと。別の担当大臣をつくるとか、そういったことが是非とも必要だと私は提言したいと思います。  続きまして、十月二十六日に金融庁は、みずほ証券銀行証券業務障壁を定めた規制に違反したとして業務改善命令を出しました。私は、ちょっとこの処分に関しては若干疑問に感じています。どうして今の時期か。  といいますのは、米国等先進国では、いわゆる銀行証券との業務遮断、いわゆるファイアウオール規制から情報遮断、いわゆるチャイニーズ・ウオール規制にかじを切っております。少々違和感があるんです。  ですから、この点に関して大臣はどう思われているか、御所見を聞きたいと思います。
  23. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 平成十九年の四月二日を検査基準日とする証券取引等監視委員会検査及び聴聞の結果、みずほ証券において、親銀行から非公開情報を受領する行為及び親銀行から取得した非公開情報を利用して勧誘する行為が認められたところでございます。この行為証券取引法における親法人と非公開情報の授受の禁止規定に違反する行為でございまして、当社の情報管理体制及び法令遵守体制に問題ありと認められたものでございます。このため、金融庁において先月、金融商品取引法第五十一条に基づいて、顧客情報管理体制の検証や法令遵守意識向上等内容とする業務改善命令を発出をしたところであります。  行政上の対応としては、あくまでも現行の法規制等を前提として、問題となった行為重大性悪質性を十分検証した上で行うものでございまして、本件についてもこういう考えにおいて対応を行っているところでございます。
  24. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  この問題も重要なんですが、まず、いわゆる金融庁の方も情報遮断をするとか、若しくは、いわゆる部門間の遮断をすることも重要ではないかと思っておりまして、金融庁自らが襟を正す必要が是非ともあると思うんですよ。  ところが、金融庁においては、検査監督部門企画部門の間の情報遮断が十分でないとか、ある場合は臨店検査情報がマスコミに漏れたとか、業務改善命令等処分に関する情報新聞に漏れると。つまり、当日の朝刊に載って、午後に実際の発表がある、こういったことが散見されているんです。あるときは、TBSのテレビカメラ一緒検査官があるところに検査に入ると。考えられないことが起こっているんですね。ですから、金融庁自らも襟を正すべきだと考えております。  また、あえて机の上に処分内容書類を置いておいて、新聞記者が中に入ってきまして盗み見て記事を書くと、こういったこともあるやに聞いておりまして、こういったことをきっちり調べてほしいと思うんです。その上で金融機関処分も行っていくと、こういったことが必要だと思います。  このことに対して、大臣の御所見を聞きたいと思います。
  25. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 金融庁におきましては、情報取扱いは厳正かつ適切に行ってきております。金融庁職員が意図的に情報を流したりということはございません。もしそのような嫌疑を受けた場合には、情報を知り得る立場にあった者に対してヒアリング調査等実施をいたしております。これまで情報報道機関に提供したという事実は確認されておりません。  行政処分金融検査に関する情報管理が適切に行われなければ、関係業者の権利、競争上の地位その他の正当な利害を害したり検査監督実効性を損なうことにもなりかねませんので、情報管理には細心の注意を払って万全を期してまいりたいと思います。
  26. 大久保勉

    大久保勉君 是非とも大臣のリーダーシップを期待しております。  続きまして、銀行検査若しくは処分関係で、みずほ証券のケースも問題と思いますが、もっとひどいことがあるということを例示したいと思います。  たまたま週末に朝日新聞を読んでいましたら、非常にびっくりしたニュースがありました。これは資料として配っていると思います。銀行貸手責任。読み上げますと、家を奪われるなら、屋上から飛び降りて自殺する覚悟でおります。間もなく九十歳になる後藤さんは、正月を待たずに家を追われかねない。東京世田谷の自宅がみずほ銀行の抵当に入り、競売の手続が進んでいると。  全部読み上げましたら、内容としましては、相続対策の名の下で強引なセールスがあり、また商品に対する説明が欠如していたこと。また、年収の三百二十倍の貸付けを行ったと。で、最後は無理やり担保処分して回収しようとすると。これは、ここだけ見ましたら貸金業者かなと思いましたら実は銀行だったと思うんですよ。  非常に銀行貸手責任というのをきっちり見ていく必要があると思うんですね。まずはこちらの方を先に私はやってもらいたいなと思っているんです。こういった状況に関して、金融庁の御認識等に関してまず質問したいと思います。
  27. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) たまたま私もこの山田厚史さんの署名入り記事を読んでおりました。こういうことがあの当時は行われていたんだなと、ほかにも例えば変額保険被害者とかいろんな事例がございまして、まだこういうことが終わっていないんだという感想を持った次第でございます。  一般論として申し上げれば、担保追加設定などの取引関係の見直しを行う場合には、お客様の知識、経験、財産状況などを踏まえて、お客様の理解と納得を得るための説明を行う体制が必要であります。銀行の優越的な地位の濫用と誤認されかねない説明を防止する体制が整備されていなければなりません。そのことは、主要行向け監督指針において明示をしているところでございます。  金融庁としては、金融機関がこの監督指針も踏まえながらお客様に対して説明を十分尽くすことが何より重要であると考えておりますし、こうした観点から適切な監督に努めているところでございます。
  28. 大久保勉

    大久保勉君 委員長に一つ提案したいことがあります。  みずほ銀行の事例等、銀行による優越的な地位の濫用事例を調査するとともに、このことを金融庁調査するように求めたり、場合によってはこの委員会みずほ銀行頭取を参考人として招致する、そして実態を解明する、このことを是非お願いしたいと思います。
  29. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ただいま大久保君の件につきましては、後刻理事会において協議することといたします。
  30. 大久保勉

    大久保勉君 続きまして、日本銀行株式買入れ及び処分に関して質問したいと思います。  まず、日本銀行業務方法書第四十九条四により行われた買入れ株式の直近の簿価総額時価総額及び含み益金額は幾らか、質問します。
  31. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) ただいまお尋ねがありました数字につきましては、直近、十九年九月末時点のものでございますけれども、買入れ株式の簿価は一兆五千九百六十八億円、時価は三兆二千百八十九億円、含み益は一兆六千二百二十一億円でございます。
  32. 大久保勉

    大久保勉君 そうですか。一兆六千億円も含み益があるんですか。日本銀行のバランスシートは百兆円ぐらいですから、一・六%の含み益というのはかなり大きい含みだなという気がします。  続きまして、方法書では二〇〇七年九月末までは原則として処分を行わないということであります。しかし、いろいろ話を聞きましたら、既に買入れ消却等を行っているということで、原則処分しないのに処分しているという実態が分かりました。じゃ、ピーク時の購入簿価に対してどのくらい買入れ消却をしたのか、このことに関して質問します。
  33. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 買い入れました株式について、原則として平成十九年九月末までは処分を行わないというのは御指摘のとおりでございますが、例外的に四つのケースにつきましては処分を行うというふうに株式買入れ等の基本要領において定められております。  第一に、発行会社から時価による自社株買入れの要請を受けた場合、第二に、単元未満株を取得した場合、第三に、当該株式の数が総株主の議決権の五%を超えた場合、第四に、買い入れた株式が監理ポスト又は整理ポストに割り当てられた場合でございます。  これらの事由によりまして、十九年九月末までに処分いたしました累計額は三千八百五十六億円でございます。この買入れ株式累計額、先ほど二兆と申し上げましたが、これに対する比率は一九%でございます。なお、これらの取引によります処分益は、これは決算確定済みの十八年度までの累計額でございますけれども、二千三百七十八億円でございます。
  34. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  幾つかの論点がありまして、まず一九%も買入れ処分をしたと。原則しないというのに一九%。私は、二〇%に近い数字というのは原則に当たらないと思うんですよね。つまり、二〇%も処分しているということは、しないと言っているのに勝手にしてしまって、日銀はどういう運営をしているか、非常に疑問です。  二点目は、その間に実現益としましては二千億以上の利益が上がっています。そういう意味では、日銀の年間の収入になっていまして、その分、いろんな経費と相殺できますから、その分、羽ぶりがいいということですね。一部は国庫に納付されていると思いますが、この辺り、もう少し詳しい説明が後日してもらいたいなと思っております。  もう一つ、これが一番重要なんですが、自社株買いを受け入れたということです。じゃ、どういう株式処分したのか。これは、インサイダー取引とか、若しくは株式市場に大きい影響がありますから、日銀としてこういったことをやることは非常に難しい。場合によっては不適切なケースがありますから、この辺りに関して質問をしたいと思います。  どういう基準で自社株買いをしたんですか。インサイダー取引のおそれはなかったんですか。
  35. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) 委員御指摘のとおり、このインサイダー取引等の疑念が生ずるということがあってはならないというのは、もう私どもも全く同じように考えております。  この自社株買入れに関する事務は受託者が行うことになっております。受託者と申しますのは、具体的には信託銀行でございますけれども、その受託者が発行会社から要請を受けたときに、これに応じるかどうか判断されるわけでございますが、それに当たりましては、あらかじめ定めた明確なルールに基づいて行うということになっております。  そのルールについて具体的に申し上げますと、発行会社が証券取引所における売買高加重平均価格、これはその当日の平均価格でございますが、又は終わり値のいずれか高い方の価格で買い入れるという申出をした場合、第二に、その価格が日本銀行取得価格を下回らない場合、日本銀行が損を被らない場合に要請に応じることとしておりまして、受託者に裁量の余地はない仕組みとなっております。こうしたルールや自社株買入れのための手続の詳細につきましては、かねてより公表をしているところでございます。
  36. 大久保勉

    大久保勉君 次に、もう少し突っ込んだ質問をしますが、株式保有銘柄と金額は日銀の中でだれが知り得ているんですか、また情報遮断は十分か、こういったことです。  もし、こういった情報を知っていた場合に、それを第三者に伝えましたらいろんな影響があると思うんですよ。例えば、ある国のトップが、中央銀行のトップが何とかファンドのアドバイザーをしていたと、こういった事例もあったと思うんですよ。もし、保有株式内容を知り得て、どこそこの株を一杯持っているよと、自社株買いをして入手できるよと、こういった情報というのは非常に重要な情報になり得ますから、きっちりと情報遮断しないといけないと思います。  こういったことに関してどういうふうな情報漏えい防止策が行われていたのか、この点に関して質問します。
  37. 武藤敏郎

    参考人武藤敏郎君) まず、日本銀行におきましては、買い入れた株式に関する情報につきまして厳正な遮断措置を講じております。すなわち、内部規程によりまして、株式の銘柄を知り得る者は株式情報取扱者として特に任命を受けた職員に限定されております。なお、総裁、副総裁審議委員理事といった役員は保有銘柄を一切知り得ない仕組みになっております。  その上で、まず一般に、これは株式取引に限らないことではございますけれども、日本銀行の役職員がその職務上知ることができた秘密を漏らしたり盗用することは、在任中はもちろん退任後でありましても日本銀行法によりまして禁止されておりまして、違反した者には刑事罰が科されることになっております。  さらに、これに加えまして、日本銀行では、役職員の金融取引に関しまして、社会の疑念や不信を招くことがないようにするために極めて厳しい内部ルールを設けております。具体的に申し上げますと、まず総裁、副総裁審議委員理事及び監事の役員でございますけれども、これは金融取引等に関する特則を設けまして、日本銀行が保有する銘柄であるか否かにかかわらず、在任中の株式取引は原則として禁止と、退任後も一年間は株式取引を自粛するということになっております。  また、職員につきましても、日本銀行が保有する株式の銘柄を職務上知り得る立場にある者は、株式買入れ等に関する服務規則によりまして、当該職務に就いている間及び当該職務を離れた後一年間、日本銀行が保有する株式の発行会社が発行する株式等の売買が禁止されております。本来、職務上知る立場にない職員が万が一知った場合でも同様の取扱いとされております。
  38. 大久保勉

    大久保勉君 分かりました。  非常に厳しい制度を設けて、情報漏えいを起こさないということが分かりました。そういう意味ではきっちりなされていると思いますが、万々が一のことがありますから、そもそも日本銀行が特定の株式を持つことが適切であるか、こういったことを是非議論してもらいたいと思うんです。この株式保有に関しましては、平時の段階では適切じゃないと私は考えておりまして、早急にバランスシートから外しまして日銀の個別の金融政策に影響させないということが是非とも必要だと思っています。  ちょっと質問を飛ばしまして、財務大臣にここは質問したいんですが、もし日本銀行のバランスシートから外すということでしたら、是非国の方、財務省の方で管理したらどうかなと思います。例えば、預金保険機構とか、若しくは何らかの特別会計にもうそのまま日本銀行株式を移してしまうと。具体的には、買入れした簿価に若干の保有コスト、若干のマージンを入れたものをそのまま預金保険機構とか特別会計に移管してしまうと、こういったことが一番適切だと思います。この中には株式含み益としまして二兆円弱の含み益がありますから、非常に国庫に対して寄与すると思います。これまで銀行の破綻等によって大量の税金投入されましたから、当然ながらその関連取引で利益が上がるんでしたらその利益は当然国庫に返してもらう、これが原則だと思いますが、大臣の大きい立場での議論を聞きたいと思います。  財務大臣、お願いします。
  39. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 大久保委員の御質問でございますが、今お話がありましたように、日本銀行は、株式の変動リスクを回避すること、それから信用秩序を維持するということから、金融機関からの株式の買入れを行ったことは事実であるし、また本年十月から株式の売却を始めたところであるということも承知をしております。この際、日本銀行の損失発生を極力回避するということ、あるいは売却時期の分散に配慮して市場に大きな影響を与えないということ、そういうことを念頭に置いてなされているというふうに聞いております。  日本銀行は、株式の取得、売却をその業務の一環として行っているわけでありまして、財務省としては、日本銀行が既に申し上げた売却の方針に沿って株式を売却していくことは適当であるというふうに考えております。財務省がそれを移管して売却していこうということは今考えておりません。  日本銀行が買い入れた株式処分により利益が生じた場合は、剰余金が増加をして、国庫納付が増加することを通じて国家財政にも寄与しているというのが現状の実態であるというふうに思います。
  40. 大久保勉

    大久保勉君 大臣、認識が若干甘いですね。  つまり、日銀が株式を売却して利益が上がりましたら、それは一般的な収入になりますから、一般的な支出、例えば人件費とかいろんなシステム投資でコストが引かれて、余った分が国庫に納付されます。一部は剰余金として引き続き日銀が持つことになります。  ここで重要なのは、毎年二千億近く利益が日銀に上がりますから、そのことによりまして日銀の運営が甘くなってしまうと。無駄なシステム投資をすると。過去には戸田分館の問題をいろいろ指摘しました。相当無駄な投資をしている。あるときには、日銀というのはシステム会社でありますからいろんなシステムコンサルを雇っていますが、そこに天下っているという事実も明らかになっています。  ですから、こういった状況があるんだったら、もう含み益をそのまま国庫に移してしまうということできっちり管理した方がいいんじゃないかという御提案なんです。もちろん、全額簿価で移しなさいとは言っていません。当然日銀はリスク負担をしておりますから、二兆円弱のうち一千億円とか、場合によっては五千億円は利益を落としますが、その残りの分に関しては預金保険機構に移し、売却に関してはもう既に信託銀行の方が受託しておりますから、十年間毎年少しずつ売るような契約になっておりますから実務的な障害は何もないはずなんです。必要なのは政治の決断です。  是非、額賀大臣渡辺金融担当大臣、御所管ですから二人の御意見を聞きたいと思います。政治家として、答弁書を見ずに答えてください。
  41. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) それは大久保委員の言うとおり、日銀も心して効率化、合理化を図って国民の皆さん方に、透明性を持たせていかなければならないというふうに思っております。  ただ、これは日銀法五条第一項に、日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するように努めなければならないというふうに書いてありますから、しっかりと執行していただきたいと思うし、財務省もやっぱり人件費とかその経費、予算については、認可に当たってチェックをしていく機能がありますから、大久保委員の御指摘するようなことがないようにしっかりと対応していきたいというふうに思います。
  42. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 大変面白い御提案だと思いますね。預金保険機構でいただけるものだったらいただきたいと思いますが、なかなかそう簡単でもなさそうであります。だれがお金を工面するか、一体幾らぐらい対価を払ったらいいか、ちょっと厄介な法制面の問題もございますので慎重に検討してまいりたいと思います。
  43. 大久保勉

    大久保勉君 是非渡辺大臣に慎重ではなくて積極的に検討してもらいたいということで応援しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 水戸将史

    ○水戸将史君 民主党・新緑風会・日本の水戸将史でございます。本日が初当選させていただいて初めての質問でございますが、非常に限られた時間でございますので、簡潔明瞭な御答弁をよろしくお願い申し上げます。  今回は、特に地域金融機関、地銀を始めとした金融機関が抱える不良債権、並びにそれに対する中小企業等々の関係についてお尋ねしたいと思っております。  既に委員の先生にも当局の皆さんにもお配りをした資料をごらんいただければお分かりのとおり、もう何度もこういう資料はお目に掛かっていらっしゃると思いますけれども、非常に倒産件数が昨今増えている、増加傾向の一途にあると言えます。しかし、一方では負債総額はそれほど増えていないということは、一件当たりの負債総額は少ない。つまり、中小零細企業を取り巻く環境は非常に厳しいと言わざるを得ないというわけでありまして、これは数値を見ても分かるとおり、今年度の上半期を見てみましても、倒産件数は前年同期比二三・五%を上回り、また、その中でもとりわけ中小企業の倒産件数が二八・五%増えてしまっていることからもうかがえます。  そこでお尋ねしますけれども、この中小企業の倒産に関しまして、地域金融機関が進めてきた不良債権処理とどういう関係があるか、影響があるかということについてどう認識されていますか。
  45. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 中小企業の倒産というのはいろんな理由があるんだと思います。不況型の倒産ということもあるでしょう。資金繰りが付かなくなって流動性破綻というケースもございますでしょう。不良債権処理が即倒産につながるという具合には一概に言えないのではなかろうかと思います。  金融庁におきましては、金融システム安定確保観点から不良債権の早期正常化に努めてきたところでございます。その中においても中小企業に対しては、言ってみればゆっくり時間を掛けてやっていこうという方針で臨んできたわけであります。地域密着型金融、リレーションシップバンキングの考えに基づいて、地域の取引先との長期的な関係の下で適切な引き当てを行いながら、地域における中小企業の再生を行う中で不良債権処理を行っていくという考えに基づいて実施をしてきております。
  46. 水戸将史

    ○水戸将史君 大臣、御指摘のとおり、確かに地域金融機関が、中小企業に対する今までの支援策の中においてはいろんな取組、働き掛けがございました。  もう既にお答えの中にも入っているんですけれども、いわゆる主要行と呼ばれる銀行が抱えた不良債権比率は、現在、この平成十九年の三月期では一・五%程度でございますけれども、一方、地域金融機関、地銀が、地域銀行が四・〇%、信用金庫が六・五%、信用組合が一〇・三%ということで、主要行に比べれば非常にまだまだ不良債権比率は高いというような現状でございますけれども、この違いはどう大臣は認識をされていますか。
  47. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 中小企業や中小企業の金融仲介の担い手であります地域金融機関におきましては、大手行の基準と同じ基準で不良債権処理を行っていくというのはなかなか現実問題として難しいものがあるなと考えてきたところでございます。  そこで、リレーションシップバンキングの考え方の下に、当該地域の中小企業や個人を主要な融資対象としており、かつ地域経済への影響を踏まえると急激なオフバランス化はなじまないという考え方でやってまいりました。地域の取引先との長期的な関係の下でリレバンを推進し、事業再生、中小企業金融の円滑化等の取組をしてきております。中小企業の経営力の強化や不良債権問題の解決を図るというアプローチを取ってきたところでございます。
  48. 水戸将史

    ○水戸将史君 お答えのとおり、そういう経過を取ってきて、いわゆる地域密着型の中においての中小企業を側面的に支援をしてきたという、そういう実績は確かにこの地域金融機関はあったと思います。  大臣何度もお話がございましたリレーションシップバンキングでございますが、これは御案内のとおり、第一次、第二次に分けながら四か年で、平成十五年度から平成十八年度、今年の三月まで、このアクションプログラムを策定をさせながらいろんな形で金融庁が監督指導の下、地域金融機関に対して様々な働き掛けをしてきたことは事実でございますが、このアクションプログラムに対してどう評価されているのか、またその反省点は何なのかということを簡潔にお答えしていただきたいと思います。
  49. 山本明彦

    ○副大臣(山本明彦君) リレバンの目的は先ほど大臣からもお話ございましたけれども、より地域を知り、より相手方を知り、より優しくしっかりと長い間相手方とお付き合いをする、そして心のこもった融資をすると、こういったことが地域金融機関に求められておる姿ではないかな、私はそんなように思っていまして、今委員お話ございましたように、平成十五年度から二回にわたりましてアクションプログラムを実行してきたわけでありますけれども、その評価ということでありますけれども、件数、金額とも大分増えておりまして、ちょっと申し上げますが、主な点だけ少し申し上げたいと思いますけれども、創業者支援ですけれども、創業者支援が十五年度当初と比べますと千九百件、百七十九億円から十八年度は六千九百件、七百四十二億円まで増えておりますし、ビジネスマッチング、どことどことあなた方ちょっと付き合ってやりなさいよというビジネスマッチングを提案したところが六千二百件から二万四千件まで増えておりますし、いわゆる動産・債権担保ですけれども、不動産に頼らない、不動産担保に余り頼らない動産・債権担保でありますけれども、平成十五年度は一万件で千百億円でしたけれども十八年度は一万八千二百件の二千二十九億円、こういった形で成果はしっかりと上がってきておると、私はそんなふうに判断をしております。
  50. 水戸将史

    ○水戸将史君 確かにこのリレバン、リレーションシップバンキングの効果、効用というのはそれなりに地域にいい意味での影響を与えていることは私も認識をしているわけでありますけれども、さはさりながら、それはやはり先ほど言ったような不良債権処理についても、じゃこのリレーションシップバンキングがどの程度寄与したのかということもやはりある程度これは認識、把握をしていく必要もあると思うんですけれども、今実際この認識、把握はどうされていますでしょうか。
  51. 山本明彦

    ○副大臣(山本明彦君) どのように不良債権処理に貢献してきたかということでありますけれども、いろんな形でアプローチをしてきたわけでありますけれども、金融機関地域金融機関というのは取引先も良くなる、それによって自分も良くなる、こういう形のいわゆる車の両輪として発展をしていくというのが地域金融機関の役割だというふうに、そんなアプローチをして取ってきたところであります。  主要行との違いにつきましては先ほど大臣からもお話ございましたけれども、オフバランス化をあえて図らないということが、これが先ほど私申し上げました心のこもったというんですか、そういう取引をしてきておる。したがって、先ほど委員からもお話ございましたけれども、不良債権比率の推移につきましては主要行と地銀、信用金庫、信用組合とは大分違うわけでありまして、一・五%から信用組合は一〇・三%ぐらい、もうこれだけ違うわけでありますけれども、そこまでやはりオフバランスをしっかりしてしまうと、これはやはり地域の企業というのはそこで音を上げてしまうわけでありますから、それを優しくしていくということがこうした差になっておる。したがって、この不良債権の今の数字というのはそういった意味ではまあ満足のいくところかな、そんなふうに判断をしておるところであります。
  52. 水戸将史

    ○水戸将史君 やはりリレーションシップバンキングという手法をこれは川上から投げ掛けをしたと。いろんな形でこれは派生してくるわけですね。  今、副大臣お答えのとおり、いろんな形で寄与していることは確かであります。例えば、新事業の機能強化とか人材の育成とか、経営の基盤の強化とか、いろんな意味で功を奏していることは確かでありますし、不良債権処理もその一つとしてやはり功を奏したと言えなくもないと思うんで、川下の方からその不良債権というものを見た場合に実証分析を是非、これからこのリレーションシップバンキング、四年間の過去の経過がどういう効果をもたらしたということを、やはり実証分析を含めて、不良債権にどれだけ寄与したかということを是非これは分析をしていただきたいことを強く要望したいと思っております。  そして、このリレーションシップバンキングの中でやったその四年間の結果をこれから恒常的にやっていこうということで、御案内のとおり、監督指導方式に今年度から変えておりますね。  いわゆる今までのアクションプログラムの評価とその改善点をこれから方式を変えて、ある意味中小・地域金融機関の独自性とか主体性を加味しながら、そういう形で金融庁も監督指導していこうという手法に変えているわけでございますけれども、これ、今後、こういう形でその手法を変えながら、どういう形でこのような中小金融機関に対して監督指導を進めていこうとされるのか、これを簡潔にお答えしていただきたいと思います。
  53. 山本明彦

    ○副大臣(山本明彦君) 先ほど成果を上げておるというお話を申し上げましたが、必ずしも全部そうではありませんで、利用者の方からは、事業再生だとか担保保証に過度に依存しない融資の推進だとか地域貢献について、こういったことについてはちょっとまだまだ取組がしっかりいっていないんではないかと、こういう指摘もありました。  そういったことも含めまして今後どのように取り組んでいくかということでありますけれども、中小・地域金融機関がしっかりと地域の特性をまず正しく理解すること、まずこれが一番だと思います。その上で、地域密着型金融のこのビジネスモデル、これをしっかりと確立していくということが二番目でありまして、特に取組が収益につながることも大事でありまして、顧客のニーズを踏まえまして、地域金融機関が自分が何ができるんだ、何もかも全部やろうと思ってもこれは無理でありますから、何ができるかということをしっかり把握をして選択と集中をしっかり徹底をしていく、こうしたことが必要であるというふうに考えております。  金融庁といたしましては、取引先企業が創業時代だとか成長時代だとか安定時代、そうしたライフサイクルに応じた支援を一層強化すること、そして事業価値を見極めるため、いわゆる目利きですね、目利き能力をしっかり身に付けるようにすること、そして三番目としては地域情報をしっかりと生かして地域経済の貢献をする、こうした三点に重点を置いて地域密着型金融の推進を図ることとしております。  先般、先ほど委員も御指摘ございましたけれども、監督指針にこれを盛り込みまして、今までは期限を切って、二回の期限を切って取り組んできたわけでありますけれども、恒久化するという形でこれからの地域金融機関についての指導をしていきたいと、こう考えております。
  54. 水戸将史

    ○水戸将史君 今までのその四年間のアクションプログラムは、事細かくチェックリストを作らせて、監督庁である金融庁がいろんな形で地域金融機関を指導してきたと。今回は、今年度からは、そのたがをある程度緩めて独自性、主体性を重んじていこうじゃないかと今副大臣お話のとおりでありましたけれども、さはさりながら、やはりこれからの金融機関が中小企業に対してどういう形で接していくのかという中において、やっぱり定量的なそういう計数というものをある程度指導の中に入れ込んでいく必要があるんじゃないかと私は思っております。例えば経営の改善や再生計画の策定件数をこの程度にしなさいとか、例えば第三者保証に対しての不動産、やはりどうしても不動産担保に、これ、保証人もそうでありますけれども、やはりどっちかといえば金融機関はそこに傾きがちでございますので、それ以外の、それを要求しない融資額の設定とか、そういうことをこれから監督指導の中に盛り込みながら、この推移を是非、監督庁である金融庁地域金融機関に対してそういうような目でこれからも指導していただきたいことを強く要望していきたいと思っております。  それで、その一つの下支えになるのは信用保証協会でございますけれども、この信用保証協会、御案内のとおり、いろんな意味でこの中小企業を、事業を支援をするという中において保証をする、そして保証のお墨付きを得て金融機関がお貸しをするというようなシステムでございますけれども、確かに昨今見ていましても、弁済率、回収率等々、まだまだ回収率は低い、で、弁済率も、この信用保証協会の抱える回収率は低くて、また弁済率がまだまだ高水準であるという状況について、当局はどう認識をされているんでしょうか。
  55. 高原一郎

    政府参考人(高原一郎君) お答え申し上げます。  信用保証協会が代位弁済を行った場合に、金融機関に代わって債務者に対する求償する権利を取得するわけでございますけれども、このいわゆる償却につきましては各協会で償却基準を定めて償却を行っておりますけれども、償却をたとえ行わない場合でございましても、金融庁と中小企業庁の方で指導をさせていただきまして、求償権を償却するための求償権の償却準備金というのを三年間で全額を積み立てるということにいたしております。  このため、信用保証協会における求償権の処理は実質的には三年間で終えるということになっておりまして、こういった指導を通じまして、信用保証協会の財務内容というのを健全なものに保持をしていくということを引き続きやっていきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  56. 水戸将史

    ○水戸将史君 信用保証協会もいろんな体質改善、自己改革を今、過去数年進めてきておりますよね。いろんな取組をされておりまして、非常に改善をされたのかなという気がしないでもないんです。  ついこの先月も責任共有制度を導入してきていると。今までは、やはり一〇〇%保証、中小企業からそういう不動産担保とか物を取って一〇〇%保証して、そしてそのお墨付きを得た上で中小企業にお金をお貸ししようという制度でございましたけれども、それを方向転換をしながら、八〇%は信用保証協会で保証しますよと、あと二〇%は金融機関、あなた方が責任持ってリスク管理をしてくださいという方向転換をしているわけでございますけれども、そういう中において、また一つの大きな懸念として、やはり金融機関、今まではある意味では甘えの体質というか、信用保証協会が保証してくれればお貸しをしましょうと。この十月からは二〇%は自分のリスクになってくるわけでありますから、なかなか今後、ある意味では貸し渋りも再燃しかねないという、そういうこともあり得るんじゃないかと思いますけれども、そういう懸念についてはどう認識されますか。
  57. 高原一郎

    政府参考人(高原一郎君) お答え申し上げます。  責任共有制度の導入によりまして、委員御指摘のとおり、金融機関がいわゆる責任ある貸手として借り手である中小企業に対する経営支援などに一層力を入れていただくということが促されるというふうに期待をいたしておるところでございます。ただ、中小企業の資金調達の重要性ということにかんがみますれば、これに支障のないように万全を期すことが大変重要であると思っております。  制度の導入に当たりましては、先月の十月一日より、二年三か月間の準備期間を設けて周知の徹底などに取り組んでまいりましたけれども、また、制度の導入の緩和するために、御案内のとおり、小規模企業に対する例外措置などを設けてきております。  委員御指摘のとおり、ほぼ一か月が経過をしたわけでございますけれども、制度の導入を円滑に進めるために、全国五十二か所ございますけれども、信用保証協会に特別窓口、あるいは九か所の経済産業局にも窓口をつくってございます。先週までの相談実績について申し上げますと、金融機関から、技術的に例えばこれが責任共有制度の対象になるのかといったようなお問い合わせが二件ございましたということで、それ以外、今、相談窓口に特別の苦情が寄せられるという状況にはございません。  ただ、この問題につきましては、先ほども申し上げたとおり、万全を期すことが大事でございますので、今後とも、その制度が円滑に運用され、委員御指摘のような問題が起こらないように万全の措置をとっていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  58. 水戸将史

    ○水戸将史君 本当に、ある意味では厳しい目でこれを推移を見守っていただきたいと思いますが、それにプラスして、確かに今までも一〇〇%保証でありましたから銀行はリスクがないわけですね。しかし、そうはいいながらも、非常に高い水準の貸出し金利なんですね。中小企業にお金を貸すときも非常に金利が高いというか、一〇〇%保証してくれるんだったらもっともっと下げてもいいんじゃないかという、そういうお話はこういう国会の場でも再三再四にわたって各議員の皆さんからも御指摘がございました。  一〇〇%保証のときでさえ高いと言われながら、これから二〇%銀行がリスクを負うということになればますます貸出し金利は高くなるんじゃないかということも懸念されると思うんですけれども、こういう先ほど言ったようないわゆる貸し渋り、選別融資等々のそういう懸念もありますけれども、またこの金利の問題についてもできればやっぱり、そうはいうものの八〇%は信用保証協会が保証しているんですから、銀行が貸す側からすれば、借り手の論理でやっぱりもっと借りやすいような形として金利の設定というのをしていくべきじゃないかということを更に一層指導の一環としてこれは進めていく必要があるかなと思っているんですけれども、これについてどういう御認識でしょうか。
  59. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) お金を貸す方がリスクに見合ったプレミアムをいただくというのはある意味当然のことなんでございますが、日本においては長らくそういう慣行がなかったんですね。したがって、保証が付いているのに高い金利を取ると委員今御指摘されましたが、それもちょっとおかしな話だろうと思います。  やはり、リスクがなければ金利は低くなるわけですし、リスクがあるならばその分金利が高くなるということでございます。与信先の事業計画財務状況、返済財源等を把握をして、健全な借り手に対してその信用リスクに応じた金利設定を行う、適切な融資を行っていくというのは当然のことでございます。  金利水準につきましては、各金融機関経営判断で決定すべきものでございますが、信用リスクの改善が、信用保証協会の保証によってより小さくなっていくというのであれば、当然より低い金利での融資が可能になるということであろうかと思います。
  60. 水戸将史

    ○水戸将史君 今大臣御指摘のとおり、そのとおりでありまして、やはりちょっと実情にそぐわない部分も今までも平然として行ってきたというか、確かに経営判断がありますので、その経営者、その金融機関のそういう貸出し判断に基づいて金利というのは設定されるんでしょうけれども、やっぱりそういう意味から含めて、今後金融庁も、先ほど申し上げたいわゆるアクションプログラムから監督指針方式へと変える中においても、こういういわゆる信用保証協会の保証が付いたものに関する貸出し金利に対してもある一定のやはり目線で各金融機関に対しての指導というものをしていただきたいということを強く要望していきたいと思っております。  最後になりますけれども、地域再生機構について若干お尋ねをしたいと思っております。  これは先般、我が会派の森田委員も若干触れました。地域再生機構というものは、もう既に新聞でも掲載をされていますけれども、内閣府に聞いてもなかなか本当のことを教えてくれないんですね。ですから、この場においてもうちょっと具体的にお尋ねしたいんですけれども、もう既に予算要望や概算要求をしているという話でありますから、ある程度アウトラインのみならず中身も具体的に煮詰まっているんじゃないかと思っているんですけれども、この地域再生機構なるものは、どの程度の規模、ファンドの規模とかですよ、これいつからこの機構を立ち上げてやっていきたいということなのか、お答えいただきたいと思っております。
  61. 藤岡文七

    政府参考人藤岡文七君) お尋ねの地域再生機構、あくまで仮称でございますが、につきましては、現在その創設に向けまして有識者から成ります地域再生機構研究会を設置いたしまして検討が行われているところでございます。  この研究会、去る八月七日に中間報告を出してございます。その中間報告では、「地域経済が離陸できるよう集中的に人材・資金を投入するとの機構自体のコンセプトから、機構は、平成二十年度に創設し、産業再生機構同様、業務完了時に解散することとし、かつ、存続期限を創設後五年後に設定すべき」とされているところでございます。今後、この最終報告に向けまして、この研究会で詳細な検討が行われているところでございます。それを踏まえまして、立法への対応を図る所存でございます。  また、お尋ねの資本金の規模でございますが、この地域再生機構、その中間報告では、産業再生機構と同様、株式会社の形態で設立されるということとされてございます。その出資者及び出資金額につきましては、今幾つかの選択肢の中から検討が行われるところでございまして、まだ確定はされてございません。今後、年末の最終報告に向けまして引き続きより具体的な内容につき検討が行われ、それを踏まえまして決定されていくものと承知いたしてございます。  以上でございます。
  62. 水戸将史

    ○水戸将史君 いろんな鋭意そういう検討、努力をされていると思いますけれども、仄聞するところ、このファンドの規模が三百億であると。百億ずつ、国と地方公共団体と金融機関が百億ずつ出し合うというような、それは多分恐らく選択肢の一つではないかと思っているんですが、仮にこの選択肢の一つであるこういうことを進めていこうとするならば、今後地方自治体とか金融機関に対してどういうようなアプローチをされるおつもりですか。
  63. 藤岡文七

    政府参考人藤岡文七君) 地域再生機構の研究会におきましても、正にこの機構が機能を果たすためには、地方自治体及び地域の中核たる金融機関との連携が非常に大事であるということでございますので、現在我々といたしましても御説明をしつつ御協力をお願いしているところでございます。
  64. 水戸将史

    ○水戸将史君 要するに、一口に規模は百億、百億云々ということにこだわるわけじゃありませんけれども、やっぱりお金を集めてこなきゃいけないという、そういう御努力をしなきゃいけないんですけれども、どういう形でアプローチを、例えば地方自治体に対して百億円をどういう形でどういうところにという、そういうことの算段というんですか、具体的にこれからどういう形で進めていくということについてはどうなんでしょうか。
  65. 藤岡文七

    政府参考人藤岡文七君) 具体的な出資をいただくその形態につきましても、現在御相談申し上げているというところでございます。
  66. 水戸将史

    ○水戸将史君 もう既に、産業再生機構以来この地域版として中小企業再生支援協議会という、こういうものが立ち上がって、各地方自治体、都道府県を中心としてこういう機関があるんですね。この機関、この協議会は継続して今いろんな意味での中小企業に対して支援策を講じているということでありますけれども、これとの役割分担、連携というもの、何か同じようなものをつくっていくのかなというような気もしないではない。どこがどう違うのかというか、どこがどういう形で役割分担をしていこうというつもりなのかということをお答えいただきたいと思いますが。
  67. 藤岡文七

    政府参考人藤岡文七君) 地域再生機構と中小企業再生支援協議会との関係につきましては、その中間報告におきましても、正に機構が行う再生はその手法が協議会と異なるということに加えまして、機構地域経済に大きな影響を及ぼす企業あるいは第三セクターに対象を絞った展開をするということにおきまして、おのずとその役割分担が成立するだろうということでございます。  また、両者の役割分担につきましては、相互の連携を十分深く進めていくということとしておりまして、多様なニーズを有する地域にとりまして、地域再生機構の設置が新たな選択肢が加わることになるよう機能するということを期待いたしてございます。
  68. 水戸将史

    ○水戸将史君 もう時間がありませんので最後にしますけれども、これ金融機関も関与するという話に当然なりますけれども、そうなってくると、やっぱり内閣府としても金融庁に対してもいろんな形で役割分担を担うというか、監督指導をする立場として、こういう地域再生機構をつくった場合に、どういう形で地域の企業に対して金融機関が関与していくのかということに対して、内閣府として金融庁にどういうようなオーダーをこれからしていこうというおつもりなのか、それをお尋ねし、お答えいただきながら、私の質問を終わります。
  69. 藤岡文七

    政府参考人藤岡文七君) 地域再生にとりまして、我々としては金融機関、とりわけ地域の中核的な金融機関の果たす役割には非常に重要なものがあると認識いたしてございます。  この中間報告におきましても指摘されておるんですが、機構業務を行います上で地域金融機関との協力、連携は先ほど申し上げましたように重要であるということで、政府部内での綿密な連携、金融庁の理解及び地域金融機関に対する適正な金融検査、監督などの金融行政上の対応を踏まえ、金融機関との協力、連携を確保していくことが肝要であるというふうに認識いたしてございます。
  70. 水戸将史

    ○水戸将史君 私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  71. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 私からは、足利銀行に係る特別危機管理についての報告についてお尋ねをいたします。  平成十五年の十一月二十九日にこの銀行に対しまして特別危機管理の決定が行われて、今日に至っておるわけでございます。大臣はもちろん地元でございますけど、私もその後、党の会合で宇都宮に行きまして、地元の経済界その他の関係者の御意見を聞く機会もございました。県内の貸出しに対するシェアが四〇%以上ということで、大変この銀行処理がどうなるのか、地域経済に大きな影響がないようにしてもらいたいという、こういう要望もあったわけでございます。  そこで、いよいよ、先ほどのお話ですと受皿選定作業のもう第三段階ということですから、もう終局に近づいてきているという印象を持つわけでありますので、振り返って、こうした処理が適切に行われてきたかどうか、お尋ねをしたいと思います。  まず、当時の破綻原因について確認をさせていただきます。  この平成十五年の十一月当時の足利銀行財務状況経営状況から見まして、この預金保険法の百二条の第三号、これによって特別危機管理という認定を決定をしたわけでございます。この三号措置という選択が適切であったのかどうか。つまり、一号措置というそういう選択はなかったのか、できなかったのか。  当時は、りそな銀行に対しましてこの一号措置ということで資本増強がなされたわけでありまして、もし足利銀行もこれができれば、株主の株券がもうゼロになってしまうというような、甚大なそういう株主の権利の毀損ということもなかったでしょうしですね、そういう選択ができなかったのか、このことについて答弁を求めます。
  72. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 荒木先生御案内のように、一号措置というのは債務超過でない銀行に対する措置でございます。  私は、政府に入る前に、今から十年ほど前でございますが、この公的資本注入のスキームを提案をしたことがございました。そこにおいては、システミックリスクの発生するおそれがある場合には銀行のシャッターを開けておいたまま資本増強ができるスキームをつくるべきだということでありました。  そこにおいて債務超過であるか否かは問うべきでないというのが当時の私の主張だったわけでございますが、その後の金融安定化法や健全化法、そして御指摘の預金保険法百二条においては、債務超過であるか否かという区分けが行われたわけでございます。日本の法制度上、こういう区分をせざるを得なかったのかもしれませんが、そういった法律の要件に照らせば、当時の足利銀行が残念ながら債務超過であったということから一号措置は使えなかったものと思います。  それでは、二号措置ではどうかという議論もあるいはあったかもしれません。二号措置は御案内のように預金の全額保護という規定でございます。  三号措置は、まさしく初めて使われる、足利銀行において本邦初めての試みでございました。ここにおいては、特別危機管理銀行として一時国有化をしていくわけでございますが、長銀や日債銀においてとられた措置とは異質の措置が行われることを予定をしていたわけでございます。  したがって、この債務超過であるか否かというところから始まって、二号でいくか三号でいくかという判断が当時行われたものと思いますが、地域において委員御指摘のような非常に大きなシェアを持った金融機関であることを考えれば、三号措置が妥当であるという判断であったかと存じます。
  73. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 債務超過である以上は、もう一号措置というのは現行ではあり得ないわけですね。ただ、この債務超過という認定をしたことについて、当時も参議院でも与党の有力議員からも、私も予算委員会におりましたけど、かなり厳しく政府に対する追及がありました。私もそうかなと思って聞いておったわけでございますが、要するに、平成十五年三月末時点での足利銀行の自己資本比率は四%を上回っておったと。その後、金融庁検査と監査法人の会計検査がありまして、九月末時点では債務超過であるという認定を受けたということでありまして、このわずか半年間で一転して債務超過になってしまったということについて、この政府対応が適切であったのか、こういう追及があったわけですね。  特に金融庁のこの検査のときに、当時は不良債権処理を急がなければいけないというそういう状況にあったわけでございますけれども、それを急ぐ余り、資産評価の方法を急遽変えて、無理やり金融庁債務超過に追い込んだのではないか、こういう趣旨の追及であったというふうに私は聞いておりましたけれども、そういうことは今から考えてどうだったでしょうか。
  74. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 担保評価の方法を変えることによって債務超過に追い込んだのではないかという御議論が当時行われたのは私も承知いたしております。担保評価につきましては、例えばゴルフ場とかホテルとか、そういったところは収益還元法で評価をするというのは当時の検査のやり方としては、これは確立されたものでございました。したがって、足利銀行にだけ特別にそういった評価法を導入をしたという具合には理解をしておりません。
  75. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 もう一点、会計監査の折にそれまで認められておった繰延税金資産の計上が否定をされて、このことも債務超過に陥ることになったということでございます。  そこで、不良債権をどんどん処理していったために恐らくこの繰延税金資産というのがどんどん積み増しをされていったんだろうというふうに思いますけど、当時のこの銀行資産状況から見まして、いわゆる自己資本に占めるこの繰延税金資産の割合が非常に高かったとか、そういうことは分析して言えるんでございましょうか。
  76. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 繰延税金資産の取崩しによって無理やり破綻に追い込んだのではないかという議論も当時行われたことを私もよく存じ上げております。  先生御案内のように、銀行の決算というのは、銀行自らが監査法人による厳正な監査を経て作成するものであります。足利銀行平成十五年九月期の決算における繰延税金資産の全額取崩しということも、足利銀行状況を踏まえて銀行と監査法人との協議の結果行われたものと聞いております。当時、たしか繰延税金資産が五年分認められていたものを、これを五年分認めないと、こういう方針に転換をされたものだと思います。  いずれにしても、そういう判断金融庁においてしたわけではございませんで、当時の監査法人と足利銀行との間で協議が行われて、その結果に基づいて破綻の申立てが行われたものと聞いております。
  77. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 次に、それでは今回のこの特別危機管理に基づきまして、これまで足利銀行にどれだけの公的資金が投入されてきたのか、そしてまた、今後のそうした公的資金、税金投入の見込みは、結局我々の血税を幾ら使うことになるのか、この見通し、見込みについてお尋ねをいたします。
  78. 西原政雄

    政府参考人西原政雄君) お答えいたします。  足利銀行処理に関して公的負担がどのぐらいになるのかという投入額あるいは見込額ということでございますが、この特別危機管理開始決定以降、これまで三回にわたりまして整理回収機構、RCCによる不良債権の買取りが行われております。この合計金額は、買取り価格といたしまして八百五十億円拠出をいたしております。現在、これについてはRCCにおいて回収が行われているということで、十九年三月末における回収額は六百六十九億円ということで、回収率としては七八・七%の状況に現在ございます。  それから、今後のことでございますが、受皿への譲渡ということになるわけでございます。その際には、言わば金銭贈与預金保険機構同行債務超過、これを解消するために金銭贈与というのを実施するわけですが、その一方で、受皿の方はこの足利銀行企業価値を適正に評価する、そうした上で株式譲受けに係る対価、株式譲受け代金ということになりますが、これを預金保険機構に支払うということになるわけでございます。  したがいまして、そういった関係がどういう形になるか、今後確定していくということでございますので、現段階では確たることは申し上げられない状況にございます。
  79. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 併せてお尋ねいたしますが、足利銀行には金融安定化法あるいは早期健全化法に基づいての資本注入もされておると思います。平成十年、十一年当時だと思いますが、これもどのぐらい投入されたのか、お尋ねします。
  80. 西原政雄

    政府参考人西原政雄君) 金融安定化法による注入でございますが、これは九八年の三月でございます。劣後債におきまして三百億円、それから九九年の九月に早期健全化法で優先株、これが千五十億円となってございます。
  81. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 その合わせて千三百五十億円というのは全く毀損されてしまったわけですよね。そのときの投入金額が少なかったのか、あるいは当時の経営状況政府の認定が甘かったのかということになるわけでございまして、結局そういう、もう既に千三百五十億円も投入されて、それが無駄になってしまって、その後の破綻処理であるということを考えますと、三号という非常に強い一時国有化という形になったのはやむを得ないのかなと、このようにも思うわけでございます。  そこで、先ほどもお話がございましたが、いよいよこの受皿の選定が最終段階、第三段階になっているわけでありますけれども、これに合わせて地元、県の方では、これは県と県議会と県民会議の連名で要望が行われておりまして、受皿の選定に当たりましては地元資本の参入に配慮してもらいたい、こういうことを決議をされております。これは私はもう至極当然のことだと思います。  先ほどもリレーションバンキングというお話もございましたけれども、足利銀行が主要行、メガバンクであるわけではありませんで、もちろんこれは今後も地域金融機関として大きな役割を果たさなければいけないわけでありますから、そういう意味では、県の要望であります、あるいは議会の要望であります地元資本参加というのは、これは受皿の選定に当たって十分こたえていかなければいけない話であるかと思います。  この点はどう最終段階の選定に当たりまして配慮していくんですか。
  82. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 先月、十月十九日、栃木県からいただいた要望の中に、先生御指摘の地元資本の参入に配慮した受皿を選定することという項目が盛り込まれておりました。地元資本の参入については、まずは受皿候補において判断をされるべきものでございます。したがって、金融大臣として予断を持ってコメントすることは差し控えさせていただきます。    〔委員長退席、理事辻泰弘君着席〕  いずれにしましても、与謝野大臣のときからの基準として、審査基準として確立してまいりました金融機関としての持続可能性地域における金融仲介機能の発揮、公的負担極小化、この三審査基準にのっとって厳正かつ公正な審査を行ってまいります。
  83. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 この三つの視点の中に地域における金融仲介機能の発揮ということがあるわけでありますから、この点くれぐれも重視をして選定をしてもらいたいと要請します。  そこで先ほども、大臣地元なんで、これは公正さ云々というお話もございましたですね。私もそうしたことはいささかもないと思いますし、今は事実上、受皿が二陣営に絞られているという新聞報道ですが、先ほどのお話ですと、もうそれは全部厳正に秘密を漏らさずにやっておるということでございました。当然であると思います。  ただ、最終的に選定が終わってこの陣営というか、この会社、機関に決まった段階では、どういう基準で選考したのかということはきちんとオープンにして説明をすべきであると考えますが、これはどうなるんでしょうか。
  84. 西原政雄

    政府参考人西原政雄君) 今後、第三段階においてその三基準に基づいて審査をしていくわけでございますが、そうした結果につきましては、我々の判断として明確に公表していきたいというふうに考えております。  それから、先ほどちょっと説明が不十分だった点がございました。三百億それから千五十億というお話のうち、劣後債の三百億の部分につきましては既に返却をしてございまして、残りますのは優先株の方の千五十億ということでございます。
  85. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 分かりました。  最後に、一時国有化ということで株主の権利も毀損されたわけでございますし、やはりそうしたことを強いた以上は、こうした破綻を到来させた経営陣に対しましての民事、刑事の責任追及というのが徹底的に行われなければ、これは関係者の納得がいきませんし、またモラルハザードということにもなってしまうわけでございます。    〔理事辻泰弘君退席、委員長着席〕  現行の経営陣において旧経営陣に対しましてのそうした責任追及が徹底的に行われたのか、この点は金融庁としてはどう評価しているのか、最後にお尋ねします。
  86. 渡辺喜美

    国務大臣渡辺喜美君) 旧経営陣の責任追及というのは預金保険法要請でもございます。  平成十六年に内部調査委員会を設置をして、旧経営陣の業務上の義務違反の有無について調査を進めてまいりました。この結果を踏まえて、平成十七年二月四日、旧経営陣に対して損害賠償請求訴訟を提起をいたしました。刑事面では、違法配当事案について捜査機関に対して証拠資料の提供など、積極的に捜査に協力してまいりました。  違法配当事案につきましては、昨年六月、公訴時効が成立いたしましたが、損害賠償請求訴訟においては、裁判所からの和解勧告を受け旧取締役の責任の明確化と最大限の賠償を求めて交渉してきた結果、本年九月十日に和解が成立をいたしました。俗に言う勝訴的和解というものでございまして、旧取締役が詳細かつ具体的な法的責任を認めるとともに、当行の、足利銀行ですね、の損害賠償全額を債務承認をし、自宅を含む所有資産処分の上弁済に充当する旨の和解案が提示をされております。これに応じたものでございまして、責任追及の面においても預金保険法上の要請にこたえるべく最大限の努力がなされてきたものと考えます。
  87. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 終わります。
  88. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 大臣が入るまで少々お待ちください。  速記を止めてください。    〔速記中止〕
  89. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 速記を起こしてください。
  90. 大門実紀史

    大門実紀史君 大門でございます。  破綻報告については今日は特に質問ございません。ただ、足銀問題は私も破綻の前から取り上げてまいりましたので、今も御意見あったように、地元の経済がうまくいくように頑張っていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  一般質疑ということも今日はありますので、税金の使い道にかかわるほかの問題を質問したいと思います。  お手元に資料を配付いたしました。  今、防衛関連企業と政官癒着の問題が焦点になっております。これに公益法人、社団法人が絡んでいるという問題について今日は質問したいと思います。  資料の一枚目に全体像を図解しましたので、先に全体の話をしたいと思いますが、外務省所管の独立行政法人国際交流基金から、社団法人、公益法人である日米平和・文化交流協会に助成金が出されております。この日米平和・文化交流協会というのは、国会議員あるいは防衛関連企業の役員、山田洋行の社長も入っていますが、などがメンバーで構成されております。会長は瓦衆議院議員でございまして、額賀大臣も八月まで理事をされていたというふうな報告を受けております。  この常勤理事が秋山直紀さんという方ですが、現在、防衛産業の疑惑がマスコミでも取り上げられる中で、この秋山さんがキーマンではないかと言われている渦中の人でございます。昨日も電話で御本人とお話をいたしましたけれども、大変高圧的な方で、公益法人の常勤者という自覚がほとんど感じられない方でございました。  もう一つの安全保障議員協議会というのは、これは国会議員を中心とした任意組織でございます。どういうわけか、会長も同じ、事務局長も同じということでございます。  しかも、この二つの団体は、この国会の裏にあります、有名なあのマンションでございますけれども、パレロワイヤルにそれぞれ事務所を置いております。ただし、この日米平和・文化交流協会、今は九〇一号ですが、去年の六月まではこの議員協議会と同じ一一〇四号にありました。これは登記上確認をいたしました。  しかも、この二つの組織は、ここで働いていた女性が賃金不払で裁判を起こしまして、東京高裁で判決が出ておりますが、その中で、この日米平和・文化交流協会の方には専従職員がいなかったと、この協議会と一体で運営されていた、仕事をしていたということが裁判所の主文に書かれております。  もう一つ不可解なのは、アメリカの企業であります、まあ外交防衛の情報収集とかコンサルタントと言っていますが、実際何をやっているか分かりませんが、アメリカのアドバック社の東京事務所が全く同じ部屋の一一〇四号にあります。この顧問も、事実上この東京事務所の責任者ですが、どういうわけか秋山さんでございます。  この日米平和・文化交流協会の定期総会議事録を入手いたしましたけれども、公開されていないんですけれども入手しましたが、それによりますと、この公益法人の日米平和・文化交流協会は、アドバック社に業務委託をしていることになっております。  申し上げたいのは、この三つの、一つの会社と二つの組織、これはもう一体で同じ部屋で事実上運営されている組織であるということでございます。  あと、全体の関連でいきますと、いろんな防衛関連企業ありますけれども、三菱重工等々ありますが、こういうところがこの議員の協議会や交流協会の方に賛助金あるいは寄附というものを出しております。つまり、この三者一体のこの組織というのは、国の助成金と防衛関連企業の寄附や後援金、賛助会費で運営されている団体でございます。  左上の方に日米安全保障戦略会議というのがありますが、これは、この日米平和・文化交流協会、安保議員協議会、中央政策研究所、アメリカのヘリテージ財団などの任意団体が主催する、毎年五月にワシントン、十一月に東京で開催される会議でございまして、ちょうどあした、港区で日本側の開催が、会議が予定されています。  この会議についてもいろいろ見ましたけれども、まあ額賀大臣よく御存じですけれども、いろんなシンポジウムが行われておりますが、同時に、ちょっと異様だなと思うのは、今回も防衛装備展、つまり兵器の見本市も一緒にこの会議で行われております。ワシントンで行われる場合は日本から国会議員が数人毎回訪米してきたところでございまして、その会議のシンポジウムの中身の発言を見ると、ミサイル防衛構想、武器輸出三原則の見直し等々防衛議論とともに、どうも兵器産業の動向にもかかわる議論がされているところでございます。  全体はそういうことなんですけれども、この日米平和・文化交流協会のお金の使い方に大変疑問があります。私、決算報告十年分を入手して調べましたが、数々の疑問がありますが時間の関係で幾つかだけ触れますけれども、一つは、国からの助成金がこの協会をトンネルにして別組織に流れている問題でございます。  九八年、九九年、二〇〇〇年、〇一年、これはこの決算書にも明らかでございますが、国からの助成金がそれぞれ五百万ずつ、この四年間でいくと二千万助成されていますが、それがそっくりほかの組織に行っております。九八年は国際外交研究所、九九年も国際外交研究所、二〇〇〇年には安保研、〇一年には安保研、五百万がそっくり別の団体に行っております。  この別の団体という国際外交研究所、安保研究所というのは、この秋山さんが関係する、あるいは責任者になっているダミーのような組織になっています。実は、これは昨日、外務省を通じて秋山さんに確認したところ、そういう流れになっているということはお認めになりました。  実は、平成十四年の、〇二年以降はこの安保、実は安全保障議員協議会の、括弧して安全保障研究所となっておりますが、これが安保研究所なんですけれども、これを協会の、右側の社団法人の協会の附属という形にしてそういうトンネル批判をかわそうとされましたけれども、平成十七年五月に外務省の立入検査でそれはまずいと指摘されて、やっと、この資料にあるように、これもどうかと思いますが、安全保障協議会の方に安保研究所を移したという形になっております。  いずれにせよ、形式をいろいろ変えていますが、国からの助成金が社団法人を通じてほかの組織に流れている。つまり、国の助成金を協会を通じて取得をして、それだけだと公益法人ですからいろんな報告きちっとしなきゃいけないんで、自由に使えるように形式が違う組織に移してきたということで、外務省も実はいろいろ指導してきたんだという言い方していましたけれども、私は外務省の対応も非常に甘いと。しかも、今日まで助成金を出し続けているということで、これはこれで別途、外務省、国際交流基金、そして会計検査院を呼んで審議をしたいと思いますけれども、今日は時間の関係でこの二つの組織の役員をされてまいりました額賀大臣に幾つかお聞きしたいというふうに思います。  私は、早く額賀大臣とはこういう生臭い話じゃなくて天下国家をきちっと議論していきたいと思うんですけれども、私のせいではございませんので、いろいろすっきりさせてほしいなという意味でお聞きしますが、大臣はまずこの二つの組織、更に言えばアドバックもそうなんですけど、これはもう同じ部屋で事実上一体として運営されてきたということは、この両方の理事なり役員なりされて御存じだったと思いますが、いかがでしょうか。
  91. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 私は、安全保障議員協議会を中心に議員同士で勉強会をしたりしてきたわけでございまして、全体のことはよく分かりません。  ただ、社団法人の事業計画、日米同盟関係とか安全保障問題についていろいろと意見交換をしたりするという趣旨には、これは賛同して議員の間でいろいろと勉強会をしたりしてきたというのが実態で、中身については承知しておりません。
  92. 大門実紀史

    大門実紀史君 先ほど申し上げた、これは秋山氏も外務省も認めているわけですけれども、国の助成金がいろんな形を通じて別の組織に流れていたと、これも大変な問題だと思いますので、財務大臣としても、元ここの役員だったわけですから、調べるように指示してもらいたいと思いますし、もう一つは、このアドバック社は業務委託を受けているという形になっております。これは議事録に、日米平和・文化交流協会の議事録に載っております。業務委託を受けたらお金もらっているんじゃないかと思って調べましたら、昨日も、昨夜、秋山氏が、直接確認しましたけれども、毎月二十万から二十五万、翻訳料という名目でアドバック社に払っていると。年間にすると二百四十万から三百万ぐらいになると思いますけれども、これは同じマンションの同じ部屋にある自分の会社に、公益法人の事務局長がやっている団体から自分の会社にお金を払っているということになります。これも大変な問題で、公益法人が、こういう国の助成を受けている団体がこんなことやっていいのかというふうに思いますので、これは一財務大臣、申し訳ないですけど、財務大臣というだけではなく、この役員をされてきた額賀さんとしてきちっとしてもらいたいなと、調べるように言ってもらいたいなというふうに思います。  これは、いずれにせよ、この問題は不透明な関係ですので、引き続き追及していきますけれども、額賀大臣御本人に直接かかわる問題を次に幾つかお聞きしたいと思います。  資料の二枚目に、この何年間の国際交流基金からこの協会への助成金額を書いておきました。実は、一個一個は、国際交流基金の方からでは事業名がはっきりしないと助成をいたしません。何がこの名目になっているかといいますと、先ほど言いました日米戦略会議等の、ほとんど日米戦略会議ですけれども、それに参加する国会議員の渡航費用ということで申請をされて助成をしてきております。九八年からの十年間でいくと四千三百万円、国会議員が参加するための渡航費に助成をするというふうになっております。  私は、こういう任意団体が主催する会議に国の助成を受けて国会議員が飛行機代出してもらうと、参加費出してもらうというのはおかしいと思っていますけれども、これは額賀大臣に事前に、今年は額賀大臣があれですかね、この戦略会議の訪米団の団長をされたというふうに聞いておりますけれども、事前に大臣にお伺いしたら、これは社団法人が行うものなので参加費用を自分で負担して参加されたというふうに事前に御回答いただいておりますけれども、当然、公務でなければ自己負担当然なんですけれども、それは全額自己負担で行かれたのかどうか、いかがでしょうか。
  93. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) これは、社団法人が行う業務に対しまして、我々がその業務の一環として参加費用を負担して出席をされて、アメリカ国内でシンポジウムを開いたことでございまして、詳細については承知しておりません。それは主催者の方で聞いていただきたい。我々はそういうことを全部知る由もないし、それからまた、基本的にその業務内容の参加者としてシンポジウムで議論をする、それが最大の目的で出席をしているわけでございます。
  94. 大門実紀史

    大門実紀史君 主催者の方に聞きました。そうしたら、こういうふうに昨日の夜、秋山氏は言っておりました。  参加した議員の皆さん七人だったと思いますけれども、議員から徴収した参加費は一人二十万円でしたと、だけでしたと。ですから、額賀大臣の分も二十万円負担ということを向こうは言っているわけですね。しかし、三枚目にスケジュール見ていただいて分かるとおり、ホテルも超一流のホテルでございます。飛行機代だけでも二十万円では賄い切れるわけがございません。  秋山氏は何と言っているかというと、これ見ただけでも、恐らく飛行機代、ホテル、いろんな移動も含めて、正確に計算をちょっとすぐはできませんけど、恐らく百万以上、百数十万、一人掛かっているんじゃないかと思いますが、二十万だけ議員からもらって、あとはこの公益法人、国から助成を受けている日米平和・文化交流協会から出したと秋山氏ははっきりと言っております。  そうすると、額賀さんが行かれた費用、二十万はもちろん自分で出されましたけど、あとの百万以上は国の助成を受けて、今年の分だと四百万出ていますけれども、それも含めて、国の助成を受けて、たどれば税金ですからね、国際交流基金はですね、国の出資やっていますから。税金を受けて行かれたということになるんじゃないかと思いますが、主催者に聞いたらそう言っておりました。いかがですか。
  95. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 公益法人の事業展開の中で、参加費用を負担して出席をさせていただいたわけで、ただ、その事業が極めて公共的なものであるということから参加をさせていただいたということであります。それ以外の詳細についてこちらで把握しているわけではありません。
  96. 大門実紀史

    大門実紀史君 いや、そうじゃなくて、額賀さん自身が任意団体の主催のに行ったから、参加費払って行ったということを言われるわけで、急にそんな公益性があるなんて言わないでくださいよ。全体で百数十万掛かるのを二十万しか負担されてないということは、あとは税金も含めてほかからカンパ、防衛産業、防衛企業からカンパもあったかも分かりませんけれども、税金もそこに含まれていると、額賀さんの参加費、宿泊代全体の中に税金も含まれているということになるんじゃないですかということを申し上げているんです。
  97. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) その経理内容について、どういう形でこの交流協会が、交流協会でしたかな、平和・文化交流協会が運営されているかについて、詳細把握しておりません。
  98. 大門実紀史

    大門実紀史君 財務大臣にかかわる、今のですね、財務大臣にかかわる今年の、今年のお金の使い方ですから、あいまいにされずきちっと団体に確認をして幾ら本来は払うべきだったのかと、後からお支払いになっても結構だと私は思いますので、それはちゃんと調べて次のときにお答えをいただきたいと思います。  私はこのスケジュール表を見ていてちょっと異様だなと思ったのは、一個一個申し上げませんが、向こうの防衛関連企業、軍事企業の食事会がかなりの回数、見学会もありますが、食事会もかなりあります、夕食会、主催がですね。これは、さっきの会費に含まれたら直接お支払いになっていないと思いますが、これはあれですか、招待、接待ですか。御自分でこの夕食会の会費は払われたんでしょうか。
  99. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) これも交流協会がセットしたものであって、私どもがその詳細について知る由もありません。
  100. 大門実紀史

    大門実紀史君 私大変まずいと思うんですよね。そもそもこの戦略会議、開くことそのものに日米の防衛関連企業が協賛金を出して、このセレモニーそのものにもお金を出して、そしてこういう設定をすると。しかも、日米平和・文化協会にもお金を出している。全体が、その防衛関連企業がお金を出していて、その中のこの夕食会はアメリカも含まれますね、アメリカの企業も、そこに行って、全体含めてたった二十万、飛行機代にもならない自己負担だけで、あとは全部こういうのを受けているというのは、これはその協議会等々、社団法人の形にしているだけで、これはもう事実上接待に当たると私は明確に申し上げなきゃいけないと思います。  だって、この日米のここに出てくる企業というのは、あれですよ、日本が兵器買っている、ほとんどですよ、日本の防衛庁が。こんなところに会費も出さずにずっと接待を受けて、夕食会やって、飛行機代も、そういうところと税金で賄われていると、これは大変まずいことだと思います。守屋次官と山田洋行のゴルフ接待どころではない話だというふうに思います。  今日は時間来ましたから、今日はもう第一部ということにして、これから二部、三部やりますので、明確によく調べてお答えをいただきたいと思います。今日は最後の部分は指摘にしておきます。さっき聞いたことは次のときにお答えいただくように、よろしくお願いします。
  101. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) それは向こうで調べてください。私は関係ありません。
  102. 大門実紀史

    大門実紀史君 違うんです。向こうが言ったんです。向こうが言ったから。
  103. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 額賀大臣、もしあれば。
  104. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) 私は、公益法人の事業に賛同して会費を払って参加したのであって、それは日米同盟関係とか安全保障の問題についての意見交換でありますから賛同をして参加をしたのであって、そのいろいろなスケジュールとか詳細については主催する側が承知しているので、それは委員の方からよく取材をしていただくのが筋だと思います。
  105. 大門実紀史

    大門実紀史君 そう言われるなら言わなきゃいけないですけど、主催者側に聞いた、秋山氏に聞いた話を今日お尋ねをしているんだから、違うと言うならば額賀大臣が調べなさいよ、当たり前じゃないですか。こっちは聞いているんじゃないですか。
  106. 額賀福志郎

    国務大臣額賀福志郎君) いや、だから私は詳細は分からないから聞いてくださいと言っているだけです。
  107. 大門実紀史

    大門実紀史君 聞いたじゃないですか。何言っているんだ。
  108. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  109. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。  財政及び金融等に関する調査のうち、金融政策に関する件を議題といたします。  本日は、参考人として株式会社日本総合研究所理事長高橋進君、東京大学大学院経済学研究科教授植田和男君、東短リサーチ株式会社取締役チーフエコノミスト加藤出君及びみずほ証券株式会社チーフストラテジスト高田創君に御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。  当委員会におきましては財政及び金融等に関する調査を進めておりますが、本日は、金融政策に関し、特に参考人の方々から国内外の金融情勢の現状等について御意見を伺いまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、高橋参考人、植田参考人、加藤参考人及び高田参考人の順序でお一人二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いしたいと存じます。  それでは、まず高橋参考人にお願いいたします。高橋参考人
  110. 高橋進

    参考人(高橋進君) 日本総研の高橋でございます。よろしくお願いいたします。  お手元に、私のペーパー、景気の現状と展望、日銀の展望リポートの評価と題するものをお届けしてございます。私どもの景気の現状判断、それからサブプライム問題についての行方、それから景気の展望とお話をさせていただいて、最後に、資料はございませんけれども、口頭で日銀の展望リポートに対する私の考えを申し述べたいと思います。  それでは、表紙をおめくりいただきまして、下にページ数一と打ってございますが、こちらからごらんいただければと思います。  まず、景気の現状判断でございますけれども、主として左側の四角の中をごらんいただければと思います。足下、家計部門に弱さがございますけれども、基本的には企業部門主導で緩やかな持ち直しが続いているという判断をしております。  まず、家計部門でございますけれども、足下で中小企業を中心としました賃金の伸び悩み、それからガソリン・食料品価格等の価格の上昇、あるいは乗用車販売の低迷、こういった要素から消費全体としては横ばい傾向が続いておるという判断でございます。それから、足下では住宅着工、ここが大幅に減少しているというところでございます。  一方、景気を引っ張っております企業部門でございますけれども、こちらは回復傾向が持続しております。回復の起点になります輸出でございますけれども、こちらは、対米輸出は不調でございますが、それを補って余りある新興国あるいは欧州向けを中心に増勢が強まっております。それから、機械受注、こちらも持ち直す動きでございますし、そして生産、これも、足下では若干、単月では微減しておりますが、十月以降も再び大きく増加する見込みということになっておりますので、繰り返しになりますが、企業部門主導での持ち直しの動きが出ているというのが現状判断でございます。  次のページをごらんいただければと思います。  やはり景気の先行きを考える上で最大の不透明要素がサブプライムの問題でございますので、若干触れさせていただきたいと思います。  サブプライム問題、もう御案内のとおりでございますけれども、そもそものきっかけはサブプライムローンの延滞、抵当権実行の増加でございます。これに伴いまして証券商品の格下げあるいは価格の下落、これが進行して、これを発端として信用収縮の悪循環が続いているという構図と理解しております。  そもそもは、サブプライムローンの延滞増加に伴って、貸手でございましたノンバンク、こちらの事業撤退とか破綻、身売りが増加したわけでございますけれども、一方で、証券商品の価格の下落、格下げ、これに伴いましてヘッジファンドあるいはSIV、こういった運用会社の業績が悪化、経営難が表面化すると。そして、そのプロセス資産の投売りあるいは評価損、こちらが出て金融機関の収益に打撃を与えていると。そして、そういった苦境に直面した金融機関においては資金調達も難しくなってくるような局面になっているということでございます。  右下に最近の米大手機関の損失額をお示ししてございますけれども、もう御案内のとおり、ここに来て更にこの損失額が膨らんでいるというのが実情と理解しております。  次のページをごらんいただきたいと思います。  さらに、こうした証券商品、これが急拡大して保有者も国際的に広がっておりました。したがいまして、格下げとか価格下落に伴います金融機関の喫損、経営への影響について疑心暗鬼が広がって、国際的に金融市場が収縮しているという現状だと思います。  それだけではございませんで、投資家全般の行動がリスク回避方向に大きく転換していると。そのため、企業金融部門で縮小が続いているということではないかと思います。  あるいは、証券商品の評価損の拡大、投資銀行業務の不振、こういったものを背景にしまして、先ほどもお示ししましたが、七—九月期の米証券あるいは銀行の業績が軒並み悪化あるいは赤字化しているということでございます。そして、アメリカでは企業業績を支えてきました金融セクターの失速によって、企業部門全体の収益、これも鈍化しているということでございます。  そうなりますといわゆる金融システム危機を心配しなくてはいけないわけでございますけれども、当面のところは、これまでのアメリカの大手証券金融機関、こういった機関の好業績を反映して、ロスは自己資本で賄えるという状況であるかと存じます。したがいまして、取りあえずはロスを吸収できる状況ですので、金融システムの根幹を揺るがすには至っていない、あるいはこれからも至らないというところが一般的な見方ではないかというふうに思います。  次のページをごらんいただければと思います。  こうしたサブプライム問題が、では実体経済にどういう影響を与えるかというところが次の関心でございます。とりわけ、アメリカ経済に対しましてサブプライム問題は様々なルートで押し下げ作用を与えるというふうに見ております。  一つは、住宅市場の調整の深刻化でございます。そもそもサブプライムローンの延滞はまだ増加しております。そういう中で、中古住宅の在庫増、価格下落、着工の減という形で住宅市場の調整がまだ当面続くと、これが経済の下押しに働くということでございます。  二つ目に、マインド面への影響があるかと思います。左下にアメリカの小売売上高、こちらをお示ししてございます。まだ小売ということを見る限りにおいてサブプライムの問題が実体経済に与えているというふうには見ておりません。しかしながら、いわゆる消費者信頼感指数などを見ますと、もう指数が低迷しているというところでございます。  三つ目、住宅関連業種や金融業を中心とする雇用の減少でございます。こちらも足下でまだ全体では雇用は減っておりませんが、金融や住宅関連を中心に民間の雇用は既に減少に転じております。  四つ目に、住宅価格下落による家計部門での資産効果の減衰あるいは借金体質の更なる悪化ということでございます。皆様御案内のとおり、アメリカは、住宅価格が上昇いたしますと担保余力が出てまいりますので、それをネタにして銀行から借り増しをする、そしてそれを消費に回すといういわゆるキャッシュアウト、これが行われております。足下で住宅価格が下落することによりましてそうしたキャッシュアウトが小さくなっていく、あるいは場合によってはマイナスになる危険性もあるわけでございます。  右下にごくごくラフな机上計算をしてございます。住宅価格が下がることでキャッシュアウトがなくなって消費にどのくらい下押しするかという試算でございます。例えば、住宅価格が一〇%下落するといたしますと、それに伴いますキャッシュアウトの縮小に伴いまして個人消費の下押しが〇・七ポイントあると。これを経済全体に置き直しますと、GDPを限界的に〇・五ポイント押し下げるという試算でございます。ただ、これはあくまでも私どもの試算でございまして、この試算でもまだ過小評価だということは言えるのかもしれません。  いずれにしましても、今後、住宅価格の下落が続きますと消費に影響が出てくるということでございます。  五番目、企業の資金調達環境の悪化ということでございまして、MアンドAあるいはLBO、こういったものに限らず、企業金融は全体的にタイト化してくる可能性があると存じます。  こうした結果、アメリカ経済を展望してみますと、今年はもとより来年に入りましても住宅投資の落ち込みが続いていくと、そういう中で個人消費の伸びが鈍化していくというふうに見込まれます。ただし、アメリカ経済、足下ではドル安あるいは海外経済の好調を反映しまして輸出が伸びております。そして、金融緩和の景気下支え効果も出てくると思いますので、景気後退は回避できるというふうに思います。  ただ一方で、金融緩和の効果につきましては、足下で住宅価格が下落するというような、いわゆるストックの調整が起きているわけですので、その効果について過大な期待は禁物ではないかというふうに見ております。  次のページをごらんいただきます。  続きまして、このサブプライム問題が日本経済にどう影響を与えるかということでございます。金融市場を通じた影響、実体経済を通じた影響、大きくは二つあるかと思います。  まず、金融市場でございます。こちらにつきましては、日本金融機関のサブプライムにかかわる損失は、体力との比較におきまして相対的には軽微だというふうに見られております。ただし、日本市場においても企業金融絡みでのハイリスクの案件、こういったものが敬遠されるなど、一定の影響は出てきておるというふうに見ております。  一方、実体経済の下押し効果でございますけれども、主として二つのルートがあるんではないかと見ております。一つは輸出の減少、とりわけアメリカ経済が減速することに伴います対米輸出の減少でございます。ただ、先ほども申し上げましたけれども、足下では対米輸出の不振を対アジア、新興国向けの輸出がカバーしておるという状況でございますので、それほど深刻な影響はないだろうと見ております。二つ目の影響が、過去二年間を見ますと円安株高でございましたけれども、今後はここが円高に振れていく、あるいは株高が期待できないということになってまいりますので、その水膨れしていた要因というのがはげてくるということではないかと思います。  ただ、いずれにしましても、サブプライム問題そのものがアメリカの経済にどういう影響を与えるか、あるいは為替・株式市場にどういう影響を与えるかということについて現時点での見極めは時期尚早でございますので、引き続き注意して見ていくということでございまして、この問題が引き続き日本経済にとって最大のリスク要因ということではないかと思います。  次のページをごらんいただければと思います。  サブプライム問題でございますが、少しこれを距離を離して見てみますと、世界的な過剰流動性、ここと関連があるのではないかというふうに見ております。  足下の世界の金融環境を見てみますと、そもそもITバブルの崩壊後、主要国の大幅な金融緩和、これによって世界的な過剰流動性が発生したと。その下で各種のファンドが隆盛を極め、金融技術を駆使して運用商品などをてこにして膨脹していった。一方で、新興国、資源国が成長して世界経済に成長期待が生み出されたと。そして、投機マネーがこういった国に投資をするというような形でリスクテークを行うといったような動き、そしてあるいは、新興国、資源国の過剰貯蓄が追加的な流動性の供給源にもなっているということでございます。  これに対して、主要国は低金利政策の正常化に〇四年から着手しております。そして、この数年間の間に何度か株価、金利の乱高下が発生しましたけれども、今回のサブプライムの問題も含めまして、この過剰流動性を背景とした過度のリスクテーク、これが正常化プロセスの中で動いているというふうにとらえるべきではないかというふうに思います。  ただ、足下でも過剰流動性は引き続き供給されております。そういう中で、投資先を求めるマネーと当局のバブル抑制スタンス、このせめぎ合いが続いているということではないかと思います。足下では、行き場を失ったマネーが原油などの商品市場にも流入しているというところは御案内のとおりでございます。  以上がサブプライムでございます。  日本経済に戻らせていただきたいと思います。  七ページをごらんいただければと思います。  企業部門を中心に持ち直しているというふうに申し上げましたけれども、では、日本の景気はこれから展望してみますと加速していくのかということでございますが、必ずしも加速にはならないというふうに見ております。幾つかおもしになる要因があると見ております。  左側でございますけれども、イ、ロ、ハ、ニと四点挙げさせていただきたいと思います。  一つは、申すまでもなくアメリカの景気の持ち直しペースが住宅市場の調整の長期化を主因に非常に緩やかなものにとどまるということでございます。二つ目でございますが、原材料高と低価格競争の双方に引っ張られる形で中小企業の業況が低迷していると。昨今の賃金が上がらない背景の一つには、この中小企業の業況の低迷があるというふうに見ております。ハ、三番目でございますが、建設投資、これの減少傾向が当面続くと見ております。後ほどまた申し上げます。ニでございますが、賃金の本格的回復がなかなか難しい状況が続いている、それが家計支出の抑制につながっているということでございます。  この四点がこれから日本経済にとっておもしになっていくというふうに見ております。  次のページをごらんいただければと思います。  一方、大局観としましての日本の景気でございますが、おもしはありますけれども、景気の底堅さ、これは維持できるんではないかと見ております。逆に景気を持ち上げる要因ということで三点申し上げたいと思います。  一つが新興国、資源国向けの輸出の好調、これが維持できるということ、二つ目に電子部品・デバイスの部門が在庫調整を終了しまして増産傾向に入っているということ、三つ目に、足下は設備投資が落ちておりますが今後を考えてみますと非製造業の更新投資を中心に持ち直していくと見られることでございます。  以上三点の持ち上げる要因、これに対しまして、前ページで申し上げたおもしがございます。したがいまして、このせめぎ合いの結果、二〇〇七年度につきましては、成長率はとりわけ年度前半の減速の影響が出てまいりますので五年ぶりの二%割れになるんではないかと。ただし、潜在成長率程度は維持できるというふうに見ております。  右側の表でございますが、一番上の段に実質GDPをお載せしてございます。一番右端のところですが、二〇〇七年度、私どもの予測が一・七、二〇〇八年度が一・九ということで、二年連続の二%割れということでございます。一方、物価でございますけれども、消費者物価のコアで見まして、足下の景気の底堅さ、それからガソリン高、こういったものを背景に下げ止まっていくと見ております。しかしながら、景気回復の勢いは強くありません。それから、デジタル分野の価格の引下げ、これも続いております。したがいまして、物価の騰勢、これは非常に微弱なものと見ております。  再度、右側の表でございます。下から五段目でございますが、消費者物価(除く生鮮)の見通しでございますが、右端、二〇〇七年度は私どもはゼロ、二〇〇八年度は〇・二というふうに見ておるところでございます。  以上が私どものメーンシナリオでございますが、次のページをごらんいただきたいと思います。これに対しまして、下振れのリスクが幾つかあるというふうに考えております。左側の四角の中をごらんいただきたいと思います。  一つは、言うまでもなく、サブプライム問題に伴うアメリカ経済の鈍化ということでございますが、加えまして原油価格の更なる上昇あるいは住宅着工の減少、これが景気を下押しするリスクがあるというふうに見ております。原油価格につきましては、八十ドル、九十ドル程度であれば企業の増益基調は崩れないと見ております。しかしながら、更に上がるということになれば、中堅・中小企業の収益を更に圧迫するということになってまいりますので、中小企業の倒産あるいはコストアップ吸収のための人件費の削減、そういったことを反映した消費の下押し、これを読まなくてはいけないということでございます。  もう一つの下振れ要因が住宅着工でございます。足下で建築確認を厳格化した結果として住宅着工が大幅に減少しているのは御案内のとおりでございます。問題は、これがV字形で解消して落ち込みが戻っていくのかということでございます。ただ、建築確認そのものが厳格化しているということを考えますと、なかなかその着工が戻っていくには時間が掛かるんではないかというふうにも思われます。  右上で私どもでシミュレーションをしてございますけれども、住宅着工がバツ印でお示ししているようなV字形に戻っていくというよりは、むしろ丸でお示ししておりますように、回復の仕方が鈍いというケースもあり得るのではないかと。この場合には、当然、住宅投資ということで見ますと、その影響が後ろ倒しで残るということでございます。あるいは、建築着工の減少が続くということになりますと、それが建設業界に影響する、それに伴って個人消費が押し下げられる、あるいは、そもそも建築が進みませんので耐久財の購入が減少するというような、思わぬ下押しというのもあるんではないかと見ておるところでございます。  以上が私どもの見通しでございます。  最後に、こうした私どもの見通しを受けた日銀のレポートに対する評価を口頭で申し上げたいと思います。  日銀の展望リポートを拝見いたしまして、私の感想といたしましては、大筋として展望リポートに違和感はございません。従来の景気シナリオを踏襲しつつも、足下の状況に応じて小幅の下方修正が行われている。そして、当面の下振れリスクに多くの字数を書いて言及しておりますので、そのことは妥当だと見ております。  ただし、細部について若干コメントをさせていただきますと、私どもと見方が違う点がございます。  一つは、例えば基本的見解の見通しのところでございますが、やや日銀の見通しは楽観的ではないかなと見ております。主たる違いは、企業部門から家計部門に波及が緩やかながらも着実に進んでいくという記述でございまして、中小企業の業況が悪化していくことを考えますと、そう簡単に進んでいくんだろうかという疑問が一つございます。  それから、上振れ・下振れ要因でございますけれども、ここについて、海外経済を下振れ要因として挙げていること、これはもうそのとおりではないかと思います。一方で、緩和的な金融環境下で振れが大きくなる可能性についての指摘もございます。これは上振れ、下振れ両方のリスクがあると言及されておるわけですが、私はむしろこのことは足下では下振れリスクにつながっていくんではないかと見ております。  それから、住宅投資の減少と、それに伴う消費の下押しリスク。これは展望レポートの中に織り込まれているというふうに日銀は説明しておられると理解しておりますが、どの程度下振れが織り込まれているのかというところがやや疑問でございます。  最後に、委員の大勢見通しの数字でございますけれども、これにつきまして、まず成長率見通しでございますが、当社自体の見通しが民間部門ではやや慎重でございますので、日銀のレポートの下限に位置しております。しかしながら、範囲内ということで特に違和感はございません。一方、消費者物価でございますが、これも大きな違和感はございませんが、ただ〇八年の中央値が〇・四%というふうになっておることについては、若干高いのではないかなという印象を持っております。  私からの報告は以上でございます。ありがとうございました。
  111. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ありがとうございました。  次に、植田参考人にお願いいたします。植田参考人
  112. 植田和男

    参考人(植田和男君) 本日はこういう機会を与えていただきましてありがとうございます。  私からは極めて大ざっぱな話になりますが、幾つかのポイントを申し上げたいと思います。  最初に、お配りいただいた資料で二枚目をごらんいただきますと、世界経済、日本経済の見方についての私なりのまとめをしてございます。  先ほどの高橋参考人のお話とかなりダブりますが、第一に、今回の二〇〇二、三年から始まりました日本経済の上昇は、結局かなりの程度外需主導であったということが一段と最近になって明らかになりつつあるということかなと思います。したがいまして、今後を見る際に、海外経済がどういうふうに推移するかというのは一番大きなポイントである、明らかではありますが、一つのポイントであるかと思います。その上で、日本銀行の展望レポートでもそう前提とされていますが、世界経済は全体としてまあまあ堅調に推移するのであれば、日本経済もそこそこ例えば潜在成長率の近辺では上昇していくであろう。これをメーンのシナリオとして置くことに物すごい無理があるというわけではないかと思います。  しかし、世界経済においては、一方でサブプライム問題の波及が懸念されますし、もう一方で、牽引車になっていますエマージング諸国についてもバブルみたいな兆候が随所に見られますので、これが本当に長続きするのかという懸念もあるということかと思います。  また国内では、先ほども指摘がありましたが、グローバル化の波に乗れていない中小企業の弱さが目立つということですので、全体としてやはり景気については下方リスクがしばらく前に比べますと増大したというふうに見ざるを得ないというふうに思います。ただ、それでもメーンシナリオのように、世界あるいは日本経済が堅調に推移した場合には、ここまでもそうであったように、エネルギー、食料品価格が波を伴いつつも高騰を続けていくというリスクは念頭に置いておかないといけないかと思います。  他方で、日本の国内部門と非常に相対的、相関が強いと思われます国内の賃金あるいは消費者物価指数の弱さは、日本経済がまあまあ推移する場合でも当面続くのではないかというふうに私は思っております。ただ、リスクとして、ここまで景気が強いにもかかわらず消費者物価指数等非常に弱く推移しておりますので、どこかで上昇に転じるというそういうリスクは一応念頭に置いておかなくてはいけないということかと思います。  それでは最初に、サブプライムの話について私からも幾つか申し上げたいと思います。  三ページ目でございますが、ここまで起こってきたことは、サブプライムの問題、大変であったわけでありますが、それがそれにとどまらず広くいろんなところに波及したということでございます。その背景としまして、そこに三点指摘させていただいております。  一つは、よく言われますように、証券商品というものが中核にあるわけでありますが、そのリスクがどういうものであるか、あるいは、それをいろいろ売り払ったわけでありますが、売り払った結果、だれがどれくらい保有しているのかということがだれの目にももう一つよく分からなくなりまして、不安心理の広がりを引き起こしやすかったということがあるかと思います。  それから、非常に動きが広がってしまった一つの背景としまして、サブプライム含まれるわけでありますが、信用リスクを売買するマーケット、一般に、ちょっと前までの状態で行き過ぎがあったのではないかという懸念を広く投資家が持ちつつ売買をしていたということがあったかと思います。したがいまして、その一つの重要な部分でありますサブプライムで問題が発生したときに、自分たちのところも危ないのではないかという不安心理が一気に広がりまして、ほかの信用リスクの市場に大きな広がりを見せたということがあるかと思います。  それから三番目に、こういうモデルは銀行が始めた貸出しを外に売り払うということが基本なわけでありますが、よく見てみますと、銀行が例えばABCPのバックアップラインというような形で結局かなり本質的にかかわりつつ進んできたモデルであった、銀行の関与は断ち切れていなかったということであります。したがって、問題が表面化した中で銀行にも戻ってきて短期金融市場の混乱が発生したということかなと思います。  ただ、一言付け加えますと、いろいろ行き過ぎはあったわけでありますが、ここ五年、十年、特にアメリカ中心に起こってきたことは、相対的に信用度の低い借り手に対してうまく金融仲介をしていくというチャンネルが発展したということでありまして、これはアメリカ経済のダイナミズムの一翼を担ったという点については一応評価が必要ではないかなと思います。  その後、いろいろな中央銀行による対応がございまして、最近を見ますと、八月—九月の最悪期に比べますと、ある程度例えば短期金融市場では安定化しております。といっても、危機が起こる前に比べるとまだいろいろな信用リスクプレミアム等高い水準にあるという状態は続いております。ただ、また九月末、十月の四日からサブプライム問題の一段の悪化ということが起こり、それが市場で不安視されておりまして、クレジット市場の一部では更に事態が悪化するということが続いております。  こういうことを何回か重ねまして、だんだん不安心理の波あるいは価格下落の波等は落ち着いていくということだと思いますが、しばらく時間が掛かるなと思います。その中で、キーになるポイントとしましては、これまで起こった金融的な動きが実体経済に悪影響を及ぼすかどうかということであります。それが起こりますと、第二波、第三波の悪い波につながっていくということかなと思います。  その後しばらく続きますチャート等はちょっと省略させていただきまして、八ページに飛んでいただきますと、実体経済に影響があるかどうかということを世界レベルで見てみますと、最初の方に書いてありますが、これは先ほど申し上げましたように、銀行は売り払ったといっても融資のバックアップ、ABCPのバックアップライン等の形でまだ、オフバランスであるけれども関与をしてきた。ところが、そういうところが焦げ付いてきた中で、自分のバランスシートにこういう問題を抱え込まなくてはいけないのではないかなという雰囲気になってきております。  本当にそういうことが大規模に進行しますと、明らかに銀行の自己資本に対して負担になってきますので、これは場合によってはクレジットクランチ的な話につながっていくリスクがないとは言えないということかと思います。  それから、よく言われることでありますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、クレジット市場全体のバブルのようなものが元々あって、それが一部はじけたにすぎないのではないか、あるいは、中央銀行の多くの人が発言しておりますが、今回の調整は少なくとも一部ある種の正常化のプロセスであるという認識がかなりございます。そうしますと、いろいろなリスクプレミアム等が危機前の状態に戻るというようなところまで例えばアメリカの中央銀行金融緩和をするかというと、それは苦しいな、逆に申し上げれば、リスクプレミアム、クレジット、信用リスクを含んだ金利は前よりも高いところにとどまるという可能性がかなりある。これは実体経済にやはりある種のマイナスの影響を及ぼす可能性があるということであります。  他方、エマージング諸国は非常に依然として好調でありまして、アメリカの利下げもかえってバブルをあおるくらいであって必要なかったのではないかという声も聞かれるくらいでありまして、全体として世界経済どうなっていくかという点についてはまだ予断を許さないというところかと思います。  一つだけ次のページに、今回の事態の銀行貸出しへの影響があるかもしれないという例としまして、ヨーロッパの中央銀行による調査によりますと、見にくい図で恐縮でありますが、銀行の貸出し態度がここに来て急に厳しくなったという結果が報告されております。こういうことがアメリカで起こるかどうかというようなことは次の注目点でございます。  時間の関係で、十一ページ、日本経済の話に移らせていただきまして、まずサブプライムの影響という意味で申しますと、三つのポイントがあるかなと思います。  一つは、日本金融機関が直接に関与していたかどうかということでありますが、これは例外はあるかと思いますが、一般的には小さいと見てよいであろうということかと思います。  二番目に、アメリカ経済等が減速した場合に輸出等を通じて日本経済にどういう影響があるかということであります。これは今からちょっと申し上げたいと思います。  三番目に、マーケットを通じる連関でありますが、為替を通じる連関もありますが、特にここまでは日本株式市場が弱いということが目立っております。これは、サブプライムの影響だけではないと思いますが、一つのポイントであります。それから、短期金融市場では日本でも金利が高止まりしております。  中でも、輸出等を通じる影響はどうかという点で考えてみますと、十二ページ、十三ページでございますが、今のところ、まあ十三ページをごらんいただくと一番はっきりするかと思いますが、これは財務省発表の輸出数量指数、地域別のもの、対前年比でありますが、だいだいのものがアメリカ向けであります。これは明らかに減速しております。しかし、薄いグリーンのアジア向けが非常に好調でありまして、全体としては濃いグリーンでまだ堅調でありますし、今年の第三・四半期のGDP、まだ出ておりませんが、例えばその辺りは外需主導の上昇になるというふうに言われているゆえんであります。  ということで、アメリカは多少減速しておるわけでありますが、新興国の強い成長に支えられまして、今のところ世界経済全体は大丈夫である、その中で日本の輸出も大丈夫であるということであります。  しかし、十四ページをごらんいただきますと、よく言われることでありますが、赤がばら積み船の運賃、船賃ですね、バルチック・ドライ・インデックスというものですが、青が上海の株価指数、黄色が中国の貿易収支黒字でありますが、何となくいずれもバブルのような動きに見えなくもないということで、今後、非常に注意が必要であるということは最初に申し上げたとおりであります。  次に、ちょっと飛ばしまして、十六ページに行っていただきますと、国内を見た場合に、やはり中小企業の弱さが目立つわけであります。一つだけポイントを挙げろと言われれば、最初に申し上げましたように、今回の景気上昇が、かなりの程度、外需、グローバリゼーション、あるいは新興国中心の世界経済成長ということであったわけですが、それに乗り切れていない中小企業が多いと。そして、グローバリゼーションの中で、特にそれは新興国中心であったということで、燃費効率の悪いところで経済活動が強まっておりますので、当然例えば原油価格等は非常に上昇するわけであります。  この上昇したことのマイナスの効果が一番効いているのは、やはり企業部門では中小企業、特に非製造業の中小企業ということかと思います。こういう中小企業の弱さがあるために、外需の内需への波及が非常に弱いものになっているということでありますし、そういうところとある種表裏一体であります消費者物価指数も弱い動きを示し続けているということかなと思います。  ほかにも申し上げたいことはありますが、時間の関係で、最後に金融政策について一言だけ申し上げておこうかと思います。  十九ページに飛んでいただきまして、この間の日本銀行金融政策の最大のポイントあるいは問題点を挙げろと言われれば、インフレ率が非常に低い、あるいは余り上がっていかないという中で、金利を少しずつ調整してきた、あるいは調整する、正常化という言葉も使われますが、という姿勢を明確にしているということでございます。そして、それが、特にインフレ率が余り上がっていかない中で、説明が難しい、分かりにくいという批判を受けているということかなと思います。  そうであるわけですが、私は、必ずしも日本銀行立場を一〇〇%支持するものでは全くありませんが、これは無理にでも理解しよう、あるいは説明しようと思えば、できなくもないということであるかと思います。それについては、そこにございますように、こういう状況下での金融政策の在り方として二つのオプションがあるという観点から御説明させていただくと分かりいいかなと思います。  一つは、日本銀行がやってきましたように、まだインフレ率は低いんだけれども、自分たちの見通しでは少し先、まあ一年ということではないにしても、二年、三年先くらいにはまあまあのところに行くので、それに備えてゆっくり金利を調整するというのは余り悪いストラテジーではないんではないかという立場でございます。もう一つは、そうはいっても、インフレ率が本当に足下では上がるか下がるか分からないという状況ですので、もう少しはっきり上がるまで待って、そこから金利の上昇を開始したらいいんではないかという立場でございます。それぞれメリット、デメリットがございます。  二十ページをごらんいただきますと、日本銀行的な戦略のポイントは、景気はまあまあという中で余りに低金利が長く続きますと、日本銀行が主張しておりますように、経済、投資や資産価格等の一時的には非常に過熱を招き、過熱であるので、その後、急低下を招いて経済に悪影響が及ぶだろうということであったり、あるいは、どこかで急速に金利を引き上げるということが、それ自体金融システム等にマイナスの影響を及ぼすかもしれない、こういうことを重視してゆっくり上げていくんだということかなと思います。ただ、これは逆に、インフレや経済に対する下方リスクを軽視しているという批判を免れにくいということでありますし、過熱を問題視し過ぎるとインフレがかえって上がっていかないということもあるかと思います。  逆に、ゆっくり待ってからようやく上げるという、インフレ率が上がってきてから金利を上げるという立場を取りますと、ある種説明は簡単になります。下方リスクへの配慮も一応できているということかなと思います。ただし、これは逆に言えば、実体経済あるいは資産価格が乱高下してしまうリスクは甘受するんだという立場になるかと思います。  結局、二十一ページでございますが、日本銀行は明らかに、この二つのオプションと区分しますと最初のオプションをこれまで採用してきたということかと思います。しかし、恐らくCPIのインフレ率が日本銀行が思ったほどには上昇しないという中でなかなか説明が難しくなりつつあるという状態かと思います。しかし、今回の半期報あるいは展望レポートでもこれまでの説明を踏襲しております。  ただ、インフレが上がってきていない中、政策金利の引上げペースは非常に緩やかなものでここまで来ております。結果としまして、もう一つの戦略を取った場合と金利のパスは大差ないということに現状ではなってしまっているかもしれません。ただ、どこかで、最初に申し上げましたようにインフレ率が上昇に転じる可能性は残っておりまして、そういうときに備えてということもあって金利を上げるというスタンスは堅持しているということかなと思います。  最後に、日本銀行の見通しが特にインフレ率について外れてきた。例えば二十三ページをごらんいただきますと、日銀の展望レポートの過去四回のインフレ率見通し、真ん中を見ていただきますと二〇〇七年度についての去年の四月のレポート、青がそうですが、赤が十月、黄色が今年の四月、青が出ておりませんがゼロということで、今年の十月であります。ごらんいただくと分かりますように、インフレ見通しは大幅に下方修正されております。  この要因はよく言われるとおりで、一つは、二十四ページにありますような消費者物価指数の基準改定が去年の夏に行われまして、その一部について恐らく日本銀行も見通せない要因があっただろうということ。  それから、より本質的には、二十五ページでありますが、よくコアコアの消費者物価指数と言ったりしますが、生鮮食品と大まかにエネルギーを除いた部分でありますが、これが緩やかにではありますが二〇〇六年の初めまで上がってきていたんですが、その後一年半くらいほとんど上昇しておりません。これは二〇〇六年初めの時点で恐らくどんな人も見通せなかった事態でありまして、こういうこともあって日本銀行の見通しはやや過大、ここまでは過大設計になってしまい、その中で彼らの戦略の説明はやや難しくなってきているというのが現状であるということでございます。  私からは取りあえずこれだけでございます。
  113. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ありがとうございました。  次に、加藤参考人にお願いいたします。加藤参考人
  114. 加藤出

    参考人(加藤出君) 東短リサーチの加藤でございます。本日は財政金融委員会にお招きいただきましてありがとうございます。  私の方からは、主に短期金融市場、金融機関などが短期の資金をやり取りしている短期金融市場の観点から、幾つかの現状の金融状況を御説明させていただきたいと思います。  最初のページ開いていただきまして、二ページというところですが、各国の、主要国の銀行間の無担保のオーバーナイト金利の推移というものを載せております。銀行間で非常に巨額の資金が毎日のようにオーバーナイト、期間一日間で貸し借りをやっておりますけれども、ここの金利に変な動きが出ているということがあるとすると、それは市場で信用不安が起きていたりということで、お金の目詰まり、ひいては実体経済にも悪影響を及ぼすようなお金の目詰まりが起こり得るということになります。  今年の八月九日、欧米の金融市場で、流動性クランチとここで書いておりますが、お互いの財務内容が信用できなくなってお金の貸し借りが止まってしまうというようなことがヨーロッパやアメリカの金融市場で起きました。この状況を、次のページ、三ページ目開いていただきまして、各国の中央銀行の政策金利から日々のオーバーナイト金利がどのぐらい乖離したかと。例えば日本銀行の場合、現在〇・五%というオーバーナイト金利を政策誘導目標にしていますが、それに対して幾ら離れたか。あるいは、アメリカの方ですとフェデラルファンド金利というものが政策金利ですが、その誘導目標からどれだけ離れたかというようなものを表しています。  このグラフごらんいただきますと、八月九日以降、アメリカ、ユーロ、イギリスなどで、中央銀行の政策金利から、このゼロの位置から大幅に上下にぶれているというのがお分かりかと思います。マーケットでお金がうまく流れなくなって、そういうときに金利が上昇する。それを抑え込むために中央銀行が大量に資金供給すると、今度は金利が下がり過ぎたりするというようなことが十月の中旬ぐらいまで頻繁に起きていました。ただ、幸い、ここ二、三週間は海外の金融市場も短期市場の方は落ち着きが出てきております。  このグラフの一番黒い太い線ですが、これが日本の短期金利、オーバーナイト金利です。欧米に比べますと圧倒的に安定しているというのが見えるかと思いますけれども、日本の場合、サブプライムの問題というのは非常に軽微だというのがここで見て取れるかと思います。日本の株やあるいは外国為替のレート非常に荒れてはおりますけれども、それは間接的な影響が多分であったり、あるいはほかの要因もありますけれども、日本銀行に何か信用問題が起きているということではないということになります。  また、蛇足ですが、このグラフの下の方に少しごちゃごちゃと書いておりますけれども、先週、FRB、ニューヨーク連銀が十一月一日に大量の資金供給を行ったと内外の多くのマスメディアが報じていましたけれども、同時多発テロ以降最大の供給と、それだけアメリカの短期市場が大混乱したというような印象を受けますけれども、これ非常に技術的な要因がほとんどでして、実際に多めに供給したのは五十億から百億ドル程度と思われますので、それほど今短期金融市場に問題が起きているというわけではないと。したがいまして、夏場に起きた市場の混乱、銀行間のお金の貸し借りの世界では、ある程度落ち着きは出てきているということになります。  次の四ページ目ですけれども、ただ、期間の短い、期間一日間のお金の貸し借り、オーバーナイトの貸し借りは今御説明したように落ち着きが徐々に出てきているんですが、期間が少し長くなる、例えば三か月というような銀行間のお金の貸し借りですと、これはまだプレミアムが付いている状態になっております。このグラフは三か月のLIBORというロンドンの銀行間金利の基準レートですが、三か月の金利と、それから三か月のOISという、これはデリバティブですが、今後三か月間、オーバーナイト金利がどのぐらいで推移するだろうかという予測をする市場です。それとの金利差というものが結果的に期間の長い取引のプレミアムを表すことになります。  このグラフの数字が上に行くと信用不安が大きいと見てよいかと思います。九月上旬辺り、ポンドやドルは非常にこの金利差大きくなっておりましたが、ここ最近はピーク時より半分ぐらいには来ております。ただ、それでもまだ平時には戻っていない、八月上旬以前の平時のところには戻っていないという状況にはなっております。  続いて五ページ目、アメリカの各種金利を見てみたいですが、やはりアメリカの金融市場が混乱して、そして実体経済に悪影響が出ると、我々の生活にも翻って影響が出ます。ただ、今のところ、通常の企業の資金繰りには直撃的な影響は出ていないということかと思います。  左のグラフ、コマーシャルペーパーの三十日物の発行金利ですが、アセットバックコマーシャルペーパー、いろいろ今発行に問題は起きておりますけれども、この発行金利も九月上旬に比べますと大分下がってきております。また、一番下の方にある黒い線、AA非金融機関と書いてありますが、格付の良い一般の企業の短期の資金調達ですね、においては七月ごろよりも金利が下がっている、FRBの利下げもありますので金利が下がっているという状態ですので、優良な企業においては、資金調達はむしろ環境が良くなっているということだと思います。  左側のグラフの社債の金利を見ていただいても、特にこの夏のイベントによって上がったままになっているということではないと。したがって、優良な企業においては資金繰りいいんですけれども、ただ信用力の低い企業あるいはクレジット市場などの混乱というものが今後どれだけ実体経済に影響を及ぼすかということがポイントになってくるかと思います。  続いて、六ページ目ですけれども、今のところアメリカ経済の方、先行きいったん減速が予想されるわけですけれども、住宅市場を中心にこれから第四・四半期あるいは来年第一・四半期辺りは成長率減速するかなと思いますが、FRBの利下げの影響もあり、来年春以降、早ければ春以降、遅くとも半ば以降は緩やかに持ち上がってくるかなと思っておりますけれども、ここのグラフはGDPに対する、成長率に対する寄与度ですが、下の方の濃い線が住宅投資です。このところマイナスに入っておりますけれども、一方で、その他の部分は上向きになっていると、外需などを中心に上向きになっているということで、今のところはその住宅市場の影響が直接的には見えてきていないというところです。  この六ページ目の下のところに、御参考までにアメリカの民間雇用者数における業種別比率というのを載せておりますけれども、各業種の比率載せておりますが、六番目のところに金融が六・一%、七番目に建設が五・六%ということで、今この問題で金融や建設ではレイオフが拡大してきているとは思いますけれども、まだ全体には波及しないで済んでいるのはこういう構図があるからということかと思います。  このサブプライムの問題、楽観はできませんけれども、一方で、次の七ページ目ですが、これはアメリカの国民一人当たりの金融資産それから不動産資産の推移を表しておりますが、上の方に並んでいる太めの線が金融資産です。二〇〇六年時点では一人当たり十八万六千ドルとなっています。一方、住宅資産ですが、一人当たり七万八千五百ドルということで、金融資産の方が倍以上に大きいというのがアメリカの状況です。  したがいまして、この住宅価格の下落、もちろん影響は大きいわけですけれども、一方で、株などを中心とする金融資産がある程度高水準で推移するならば、全体としての逆資産効果というのはある程度和らげられる面があるかと思います。ただ、かといって、株にバブル的な動きをつくってしまいますと、後で反動が怖いということで、FRBのかじ取り難しいですけれども、今のところはまだその住宅の影響が相殺されている面はあると思います。  今後は、中国やインドなどのエマージング諸国の成長が堅調であれば、アメリカが来年、潜在成長率を下回る二%ぐらいの成長にとどまるのかなと予想しておりますが、その程度であれば、中国の方の輸出がアメリカに対して減るとしても、今の過熱している中国経済にとってはむしろほどよい調整となり得るでしょうから、世界経済全体としては失速までには至らずという絵が描けるかと思います。これはもちろんメーンシナリオであって、リスクシナリオを考えますといろいろ問題はありますけれども、そのエマージング諸国が崩れなければ、日銀の展望レポートの見方というのも、そう外れる、大きくずれるということはないのかなというように思っております。  あと、後半部分、八ページ以降ですけれども、最近の議論、海外の中央銀行当局者なども含めて、このサブプライムローンと金融政策、あるいは資産価格と金融政策といったような問題のポイントを整理してみたいと思います。  まず、元々このモラルハザードの議論というのが常に付きまとっていますけれども、安易に当局が救済してしまうと問題が起きるんじゃないかというような話、例えばその急先鋒がプール・セントルイス連銀総裁ですけれども、ここの横線を引いたところですが、悪事を行ったり、間違った判断をした人々は罰を受けるものだと、大分激烈な言い方をしています。  あとイギリスのエコノミスト誌も、銀行家や投資家は同意しないだろうが、最近の金融市場における急落は良いニュースだと、それはついに人々を正気にさせたとか、あるいは、イギリスのキング・イングランド銀行総裁ですけれども、三つ原則があると、一番目は金融政策はマクロ経済の判断に基づきながらインフレ目標を達成するために遂行される、二番目は金利は愚かな資金の貸手を愚かな判断の結果から守るための政策手段ではない、第三に金融システムの安定を維持する必要があると。  ただ一方で、イングランド銀行は、御承知のように、九月上旬にノーザン・ロック銀行の個別救済を行っていますので、これはこの三番目の金融システム安定維持という点から行っているんでしょうけれども、なかなか難しい判断はあるわけですけれども、日本でも例えば住専問題とかあるいは銀行への資金注入、資本注入というようなときに、世論がどれだけ納得するかという、前にいろんな議論がありましたけれども、あちらでもやっぱり同種の議論があると。そういう中でFRBなど当局の判断が揺れていると、揺れながら判断をしているということかと思います。  続いて、九ページ目と十ページ目に、資産価格、株や土地と金融政策の運営というものに対して大まかに二つの流れがあるかと思います、アプローチがあるかと思います。  一つはFRBを中心とするアメリカの経済学界の主流の考え方ですが、中央銀行は物価の安定、狭い意味での消費者物価、あるいは土地などを含めない物価の安定ということをメーンに考えて、資産などはできれば監督、規制というようなミクロレベルの政策で対応する方がいいというような話です。  もう一つは、十ページ目ですけれども、主にヨーロッパ系の人の考えにありますが、例えばBIS、国際決済銀行のエコノミストがよく言う言い方で、中央銀行資産価格の動きにも配慮していく方がいいと。資産価格を目標にすることは現実難しいんだけれども、ただ、今まで実際過去を振り返ってみると、バブルが経済を混乱させたということはよくあるということからのアプローチだと思います。  この真ん中に載せていますホワイトBIS金融経済局長の去年の論文ですと、日本のようなデフレというのはポジティブな供給ショックだということで、そう心配することはないという言い方で、穏やかなデフレが悪いデフレやひどいデフレになるのは注意する必要があるけれども、それを心配し過ぎて金融緩和をやり過ぎると投資などに行き過ぎが出てしまうと、よって金融政策は目先のインフレ率にとらわれ過ぎない方がよいというような、これは現状の日本銀行のスタンスとかなりオーバーラップするのではないかなと思います。  また、このBISの今年の年次報告書でも、一番下の文章ですが、日本からの資本流出は世界各地で歓迎されざる効果をもたらしている、その低金利ゆえに資金が海外に出ていくと、それで行った先で経済を混乱させることがあると、そういった事実は、日銀は徐々に金利正常化を進めていくべきという考え方を支持する議論をより増加させているというような言い方もあります。  そのFRB的な見方とBIS的な見方が対峙していたと思うんですが、このサブプライム問題を経て、十一ページ目ですけれども、今年の八月、アメリカであったシンポジウムで幾つかの人たちが発言していますけれども、もう少し資産市場にも配慮する方がよかったんじゃないかと、FRBが短期金利を低く維持し過ぎたためにサブプライム問題が過熱したんではないかとか、あるいは、このテイラーという有名な先生ですが、FRBがフェデラルファンド金利をより高くしていれば住宅ブームの大部分は避けることができた、当時FRBが低金利を長く続けていたのには理由がある、九〇年代の日本の教訓からデフレーションのリスクを最重要視していたのだというような議論も出ています。  こういう中で、日本の方、すぐ別に資産バブルのおそれがあるというわけではないですけれども、ただ、今国際金融市場、非常に御承知のように関連性が深いですから、日本の金利がいつまでも低いということをマーケットに予見させてしまうとすぐお金がどんどんと流れていくということで、世界的な過剰流動性の問題というリスクを常にはらんでいるということかなと思います。  あと少し、時間もありませんので飛びまして、十三ページ目になりますけれども、展望レポートが出ましたけれども、日銀の見方に対して、日本銀行は金利を緩やかに引き上げていくという姿勢を示していますけれども、金融市場の見方を整理してみたいと思います。  十三ページ目のグラフは、先ほども少し触れましたが、OIS取引、オーバーナイト・インデックス・スワップと言いますが、どこで日銀の利上げがあるかということを予想する取引です。十一月—十二月とか一月—二月とか書いていますけれども、これは、例えば十二月—一月というのは、十二月の日銀の金融政策決定会合から一月の決定会合までのオーバーナイト金利がトータルで幾らかと、どのぐらいの金利かということを予想しています。それが十二月—一月物は〇・五四ぐらいですので、もし十二月に日銀が利上げをやるとすれば〇・七五辺りに行くはずですので、〇・五四ということは、まあほとんど利上げはないだろうと金融市場は予想しているということになります。  三月—四月取引を見ましても、〇・六三ぐらいですので五割前後の織り込み、利上げは確率五割前後の織り込みという感じで現状、金融市場は見ているということになります。  FRBの方が十二月の金利の会議であるFOMCで利下げを見送れる程度のアメリカ経済の先行きの楽観論というものが出てくれば、日銀の利上げが年明け、第一・四半期辺りに、一—二月辺りにあり得るのかなとも思いますが、まだ市場の方は半信半疑というところかと思います。  あと、最後、十四ページ目ですけれども、金融市場の方の観点から、先行きの来年の三月の総裁・副総裁人事について一言報告させていただきたいと思いますが、この委員会でもいろいろ議論がなされていると思いますけれども、任期が来ても後継者が決まっていないという状態が来てしまうというのが金融市場サイドからしますと非常に不安を感じます。不安定化する要因になると思います。  そういう点で、これは法律上もうしようがないんだろうと思いますが、できることであれば、アメリカ型のように、次の議長が決まらない場合は、決まるまでの間、現職議長が臨時議長としてその間、継続するという方が望ましいんだろうと思います。実際、グリーンスパンも過去二回、当時の大統領やあるいは議会と折り合いがうまくいかなくて承認がじらされたということを二回経験して、その臨時議長ということをやっていますけれども、結果的に空白期間は生じていないということがあります。  したがいまして、空白が生じないような対応というものが必要ではないのかなというように思っております。  私の方からは以上です。
  115. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ありがとうございました。  次に、高田参考人にお願いいたします。高田参考人
  116. 高田創

    参考人(高田創君) みずほ証券の高田でございます。本日は財政金融委員会出席させていただきまして誠にありがとうございます。  これまで参考人の方々からいろいろ細かい分析がなされておりますので、私は、どちらかといいますと、やや歴史的な観点から現状認識を考えさせていただこうかなと思っておりまして、そういう状況の中で、今回の世界的な危機と言うべきかどうかまだ分かりませんけれども、そういう中での日本状況、また、今回の局面というものがどのような特徴があるのかという点を明らかにさせていただきたいなと思う次第でございます。  それでは、まず、私のレジュメの方でございますが、一ページ目のところから、まず日本状況というものを概略的に考えさせていただきたいなと思います。  この絵は非常に単純な絵でございますけれども、私自身、日本の九〇年代以降の状況というものを構造と循環という意味で付けさせていただき、それをイメージ化したものでございます。すなわち、九〇年代以降の大きな調整、これはバランスシート調整というふうに言われますが、その出発点は資産デフレというふうに言われております。こうした状況の中で生じた資産デフレからのバランスシート調整、こういうものがこの十何年に及ぶ極めてまれな調整というものを引き起こした。これが国内固有の構造問題であるというふうに考えることができようかと思います。  こうした点にかんがみますと、この点について言えば私は楽観視しておりまして、さすがに二〇〇六年ぐらいのところから一つの転換点を迎えたと、そういう意味では全般的な上昇基調にあるというふうに私は見ているわけであります。  一方で、海外を中心といたしました循環的状況、こうした九〇年代以降にもそのような循環はあったわけでございまして、こうした局面はアメリカを中心とした流れというところにあるわけでございまして、こういう論点について考えますと、例えば今回、海外要因、中でもアメリカを中心とした状況という点についていえば、昨年ぐらいのところからの調整に入ってきているのではないかと。そういう意味では、構造と循環という二つの軸の中、構造でいえば楽観的に見ながらも、循環的な外部環境というものに調整のリスクを抱えているのではないかという論点でございます。  こうした状況を、次の二ページ目のところには、循環的状況を表します例えば鉱工業生産みたいなものが表しておりますが、下のところに日経平均がございます。従来、こういうものは上と下と大体同じような動きをするものなんですけれども、ここで悲観バブルと書かせていただきました二〇〇二、三年の状況、これは考えてまいりますと、上にあります循環的なものは回復局面にある。今回の景気回復も二〇〇二年からと言われているわけでございますが、しかしながら、大きな株価の下落、また世の中も悲観一色になったというのは、やはり構造的な調整の一番厳しかったところがこの辺になっていた。  また、こういうような底を越えながらようやく今二〇〇六年以降の回復過程にあるということではないかと思いますし、また次の三ページ目をごらんいただきたいわけでありますが、そうした構造問題の背景にあったもの、最初に申し上げましたように、資産デフレから始まったと申し上げました。とりわけ、この右側のところに国富とございますけれども、こちらにございます国富、ちょうどピークの九〇年ぐらいのところから一千兆円近い調整が生じたということでございまして、この規模や、私もよく議論するんですけれども、第二次世界大戦で失った国富の規模、GDP対比で見たそれよりも大きかったのではないかと。そのぐらい大きな調整を九〇年代以降に、当然それは、左側のところにもございますように、民間金融機関の正味資産と申しましょうか、それが大変なマイナスを受けたというところにあったわけですが、そうしたところからようやく改善、構造の問題にめどが付いた。また、そういう状況の中で日本銀行の方も利上げ、いわゆる正常化というところに足を踏み出してきたというところが二〇〇六年以降の状況ではないかと思うわけであります。  そういう意味では、日本銀行の利上げの姿勢、また中立、ノーマライゼーションの姿勢というものは非常に妥当な局面にあるということではございますが、ただ同時に、次の四ページ目以降で、私はよく五回目のジンクスということを申し上げてきたんですけれども、日本金融政策の場合は、七〇年代以降極めて海外の影響を受けていたということではないかという点でございます。七〇年代というのは、今よく言われております市場化、グローバル化の私は出発点だと思います。それは、要は為替が動き出したからということでございまして、そういう状況の中でのグローバルなシンクロナイゼーションが始まった局面であるということでございます。  そこの中での共通点ということ、ちょうどこの四ページ目のところにまとめさせていただいておりますが、日本の利上げ、ちょうど今回、二〇〇六年以降、五回目という形になります。ちょうど一回目が七三年、二回目が七九年、三回目が八九年、四回目が二〇〇〇年、そして今回二〇〇六年ということになるわけでございますが、幾つかの共通点がございます。それは、日本の利上げは常に日米欧の同時利上げ局面にあったと。そして、日銀の利上げは常に最後にあった。そして、日銀の利上げの翌年は世界的な減速になっていると。  そして、次の五ページ目のところでございますが、右から二番目のところにございますように、ちょうど日銀の利上げの翌年に金融市場の変動が生じていると。たまたまこれが今回サブプライム問題に当たっているというふうに考えることもできるかもしれません。そして、この五局面でございますが、すべて原油価格の高騰期と符合しているということでございます。これは単なる偶然の一致という見方もあるかもしれません。しかしながら、私はそれなりの因果関係はあると思っておりました。それはどういうことかと申し上げれば、日米欧の中央銀行がみんなそろって利上げをするということは、世界じゅう経済がいいということにほかならないわけであります。当然、そういう状況の中で経済の拡大、また企業活動の拡大、また信用拡張が生じるわけでございます。そうした状況の中で一斉に中央銀行がみんながブレーキを踏むということになれば、当然のことながらどこかで減速が起きると。しかしながら、日本の場合、それが最後であったものですから、その期間が短くなっているということに当たると。また、六ページ目のところにございますように、原油価格、五回目と申し上げましたが、七〇年代二回、九〇年、二〇〇〇年、そして今回も大変な高騰期でございまして、必ずこれまでは三、四倍の高騰でございます。ただし過去は、今回は分かりませんが、半値に落ちた歴史であるということもあるわけでございます。  こうした信用拡張とその反動というものが繰り返された、しかもそれが大規模で起きていたというのがこの五回目という形になるわけで、そういうわけでは今回の局面をどう考えるか、それはちょっと七ページ目のところでごらんいただきたいと思います。  過去の危機ということでございますが、七〇年代以降、左側は先ほどから申し上げております五回目のジンクスというバランスシート調整でございまして、これはかなりハードランディングに近い状況が少なくとも従来は起きていたということでございます。  一方、最近よく言われておりますのが、例えば、ちょうど先月でございますがブラックマンデー二十周年と言われたように、これは右側のケースでございますが、一時的な危機事例と申しましょうか、今振り返れば一時的と言われた事例、八七年ブラックマンデー、また九四、五年のラ米メキシコ危機、また九八年のLTCM危機と言われたもの。こうしたものは、起こったときは大変なショックと言われたわけでございますが、振り返ってみれば一時的と言われ、こうした状況というものは、実はFRBのアメリカの中央銀行の政策でいえば〇・七五の引下げである程度の収拾が付き、また危機から一年以内のところでめどが付いているというくらいの状況であったわけでございます。  そういう意味からいいますと、今回の状況がこの一時的な状況にとどまるのか、またこの左側のところにあるようなバランスシート調整的な、やや重さというものを抱えるものなのかというところが、私は今回の性格付けをどう考えるかというところであるのかと思うわけであります。  私は、この中でいえば、どちらかといえば右側の一時的な危機に近いとはいいながらも、しかしながら、やはりこうした左側のバランスシート調整的な意味合いもあるのではないかと。そういう意味では、この一時的な危機というような深度をもう超えてしまっているのではないか。もちろん、左側のところにありますような、従来そのままのハードランディングになるとは私は思っておりません。  しかしながら、こうした中間的な状況というものをどういうふうに理解するのか。それは、次の八ページ目のところにありますような今回のリスク要因をどう考えるかという点になるわけであります。先ほど五回目のジンクスと申し上げましたが、そういう意味では、そうした問題の顕在化という部分もございます。というのは、今回の状況というものを考えますと、信用拡張がどこで起きていたのかと。それは、考えてみれば、だれも口をそろえてアメリカの住宅セクターだということになるわけであります。  しかしながら、ここの問題だけであれば、そんなに大きなというところにあるわけでございますが、しかしながら自由証券化等を通じたレバレッジの拡大、信用拡張というものが従来の企業というところではない中で意外と生じていたのではないかと。そういう状況の中での資金調達、拡大していたものの反動というようなものが生じ、こうしたものが当初の市場の予想よりも重いリスクというものをもたらしているのではないか。場合によっては一部に、金融システムのというところに不安が波及するリスクもあるのではないかというような不安が出てきている。  こうしたものは次の五ページ目のところでございますが、たまたま一番左側に今回のサブプライム問題、五回目のというところでいえば今回五回目になるわけでございます。四回目のところが真ん中のITバブル崩壊、そして三回目のというのが、これは言うまでもなく日本も含めたバブル崩壊ということになるわけであります。  従来のこうした調整、バランスシート調整というのは、これまで一般的に言われております企業のバランスシート、また場合によっては国レベル、ラ米の問題等を含めたバランスシートで行われてきたわけであります。そういう面からいいますと、実は今回の場合は、こうした従来ながらの企業、国というところでいえば比較的健全であるという点でございます。だからこそ、実は今回の場合は国レベルではないので株価がそんなに落ちていないという部分にもなるわけであります。  しかしながら、この左側のところにもありますように、実はオフバランス化のビークル、SPV、SIVというふうに言われることもございますが、いわゆる投資ファンドと言われるようなオフバランス化されたものの中で生じた、そういう意味でいえば新たな金融商品を通じた調整というようなものが起きていると。しかも、そうしたものが金融システムに波及しやすいリスクというものを秘めているというふうに見る新しい局面と考えることができるのではないかと思うわけであります。  そういう点からいたしますと、先ほどデカップリング論という議論が出ましたけれども、いわゆる企業若しくは国というレベルで見ますと、それなりにみんな元気であるといったところ、そういうものがある面ではサポート要因としていずれ効いてくる局面もあるのではないかと私は思うわけでありますし、従来ながらの大きなハードランディングにはならないということでもあるわけであります。  しかしながら、次の十ページ目のところにございますように、バランスシート調整という典型的な従来の調整を抱えているというのも確かでございます。ある面でいえば、日本は、この九〇年代以降の状況を振り返れば、正にバランスシート調整の先進国でございます。いろいろな大きなものを体験してきたわけであります。その中で我々がこの十何年間学んだものというのは、バランスシート調整というのは、結局、バランスシートの中の良い悪いの峻別を行い、そしてそこで損失の確定を行うと。その過程の中では資産圧縮なり、また信用収縮というものが一時的に生じる。また、そうしたものが銀行システムを通じたところに波及がそれなりに及ぶと。また、そういうようなものをそれなりに民間セクターだけで対応できる局面と、場合によっては政策的なサポートも必要になるということがあるわけであります。  そうなってまいりますと、先ほど加藤さんの方からもございましたように、モラルハザード論との綱引きというものが必然的に行われてくる状況であったと。こうした状況というものは、日本の例でもそうでございますが、同時に、今現在欧米で行われている状況と、またそれに対応したマクロ的な対応というようなもの、とりわけアメリカを中心とした場合には、できるだけ為替に対応する外需依存的な動向というものは、逆に日本に振り替わりますと、円高リスクを呼ぶリスクというものもあるというのも過去の実例でございました。  そういう中で、十一ページ目のところ、日本の例というものから今回の実例どんなものであるかということを振り返りますと、たまたま八月以降、ドイツの銀行を中心とした救済、これは奉加帳というふうに言われたこともございました。また、十月以降、スーパーSIVと言われて、こうした債権証券債権というものを買い取るべき機関がどうかと。また、そういうものに対応したSIV投資ファンドというふうなものが、結局は銀行とのリスクというものがつながっていたんではないかと、そうしたところが母体として対応すると。  こうした状況というものは、この十一ページ目のところの時間軸で申し上げれば、結局、スーパーSIV投資ファンドの買取りファンドというものは、九三年の共同債権買取機構によく似ているかなと。また、奉加帳的な状況というものも九〇年代前半にあったわけでございますし、また母体行的なひも付きの状況住専処理のところにも使われたということからいたしますと、今の状態は、欧米でいえば、九〇年代日本でいう前半部分のところに当たっている局面なんではないかなと。  しかしながら、当然のことながら、本格的処理ということになってまいりますと、言わばバランスシートから切り離して本格的な処理というふうなことになってまいりますと、まだ欧米のところはその段階までは行っていない。そこまでは行かないで済むということも当然あり得るわけでございますが、同時に、日本の場合も、九〇年代後半は、先ほども議論がございましたように、単に金融問題だけではなく、いわゆる実体経済の方に波及が行った局面でもございました。  そういう意味からいいますと、先ほどちょうど、一時的なものなのか、またある程度深度を含んだものなのかという分岐点にあるということで申し上げたわけでございますが、そうした観点からいいましても、今の状況というものはややそこのせめぎ合いのところにあるのではないかという論点でございます。当然のことながら、日本の反省も踏まえていえば、欧米的な対応は極めて早い対応、時間軸が加速されているという部分はあろうかと思います。  こうした状況の中で、十二ページ目のところでございますが、二〇〇〇年以降の日米欧の金融政策というものを並べさせていただいている次第でございますが、ちょうど二〇〇〇年以降のITバブル崩壊以降、各中央銀行はどんどん利下げをしてきたわけでございまして、そのピーク、ボトムが二〇〇三年であったわけでございます。そこから、アメリカは二〇〇四年から利上げを始め、そしてこのサイクル、連動の中でいえばちょうど九月から利下げに向かい出したというような流れで、先頭車両の方はやや下を向き出してしまったというような状況にもなっているというのが今の局面ではないかと思います。もちろん、日本の場合は大きな流れというものが上を向いているという中からいえば、今回の場合は日本遮断されていると私は考えている次第でございます。  そういうような中で、今回、従来の二〇〇〇年以降の状況とは全く異なっているという点ではございますが、ただ日本の場合も国内要因のところから幾つかの留意点を考えさせていただいたのが十三ページのところでございます。  こちらは先ほど前の参考人の方々から幾つか断片的に出た議論でございますけれども、ここにもございますような正常化というものをもたらすいろんな要因というものが出てきております。これ、どれを取りましても私は当然今後進めていくべき論点ではないかと思うわけでございますし、こうしたところを正常化の中でやっていくことがバブル崩壊からの道のりだというのは全く論をまたないわけでございます。  しかしながら、こうしたものが合成されたときに、しかも海外というようなものから不安定な要素が重なってきたときのリスク要因と申しましょうか、こういうものもマクロ的な中である程度考える必要もあるのではないかと。しかも、こうした十三ページ目のところにあるような要因というのは、どちらかといえば中堅、中小に効きやすい、どちらかといえば地方のところに効きやすい要因というようなものも多い論点でございます。  こうしたところが、次の十四ページのところにございますように、どうも昨今、倒産件数というものも一時から比べますとじわじわと増えてきているのではないかと言われるところにあるというような状況でございまして、そういう点からいいますと、最後に日本銀行金融政策等を議論するということでまとめさせていただければ、大きな流れというものは今の流れというところに全く私は異存ございません。ただ、こうした経済というものは生き物でございますし、また特に今回、金融の問題というのはある面でいえば従来の外科的なものというよりも循環器系と申しましょうか、血の巡りに属するところでもございます。そういう意味からしますと、こうした経済の体温というようなものは極めて常に見詰めて、しかもグローバルな中での連動性というようなものも考える必要もあるのではないかというのが私のまとめということでございます。  以上でございます。
  117. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 円より子

    ○円より子君 民主党・新緑風会・日本の円より子でございます。  本日は、御多用の中、四人の参考人の先生方には、この我が財政金融委員会においでいただき、また大変参考になる御見識を御披瀝いただきまして、本当にありがとうございました。今日はたくさんお聞きしたいことがあるんですが、取りあえず金利と為替を中心にお聞きしたいと思っております。  いろいろ今皆様からのお話大変面白かったんですけれども、まず高橋参考人にお聞きしたいんですが、高橋参考人は、この長期にわたる日本金融緩和が米国のサブプライム問題、住宅ローン市場へのリスク蓄積につながったのではないかという御指摘をどこかで書かれていらっしゃいましたけれども、このように日本が他の主要国と比べて大幅に低い金利を長年続けてきたこのリスクをどう評価なさっているでしょうか。
  119. 高橋進

    参考人(高橋進君) 日本の中央銀行が低金利を続けたことのリスクというのはあると思いますが、続けざるを得なかった背景というのがあると思います。やはりそれは、一つはバブル崩壊後の日本経済の長期の低迷、そういう中での、同じことではございますけれども、デフレ状況というものがあったと思います。そして、そのことがいまだにまだ尾を引いているというところが結局、日銀の政策転換が思うように進んでいないと、その結果、その副作用というものが世界にも出ているということではないかと思います。  そして、私は、決して今のアメリカのサブプライムの問題が日本金融緩和だけで起きているとは申し上げておりませんで、もちろん日本の円キャリートレードというのもあると思いますが、やはりITバブル崩壊以降の世界的な金融緩和、これがリスク蓄積につながった部分というのもあるんではないかというふうに考えております。
  120. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございます。  植田参考人にお聞きしたいんですが、似たような質問になるかもしれませんが、イザナギ景気を超える景気回復がもう五年以上続いておりますが、デフレを脱却できておりません。日銀が長期的に低金利政策を続けるというふうに市場が期待しているためにデフレを再生産しているのではないか、また、デフレを脱却しようとして日銀が低金利政策を続ければ続けるほどデフレが長引いているんではないかという指摘が最近多くなされていると思うんですが、こうした指摘については植田参考人はどうお考えでしょうか。
  121. 植田和男

    参考人(植田和男君) 一部にそういうルートはもちろんあると思うんですね。つまり、金利が低いと、日本銀行は付ける金利が低いと、それにつれてほかの金利も低い、その中に例えば預金金利等もあるわけでして、預金金利が低いと、それが消費等にマイナスの影響を及ぼすということはあるかと思いますが、基本的には、金利体系全般に低いということが資金を借りて支出をするという人の支出意欲を刺激して経済全体を持ち上げるというところに期待して低金利を続けるわけでして、ネットではそちらの効果の方が大きいというふうに見るのが普通であるかと思いますし、これまでのところも基本的にはそういうことであったのではないかというふうに私は思っておりますが。
  122. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございます。  金利を上げるとか正常化するといいますと、いろいろ問題があることも十分分かっております。国債の利払いなどにも影響がありますでしょうし、また、せんだって金融担当大臣と額賀財務大臣にも似たような質問をさせていただきましたら、もう早速様々なメールが我が事務所に届いておりまして、金利が上がればローンを抱えている人たちはどうするんだとか、いろんなすぐにそういう反応はあることはあるんですね。  もちろん、今の住宅ローンだけではなくて、金利が上がれば円高となって輸出に悪影響が及ぶとの懸念もございますでしょう。しかし、いつまでも超金利が続いておりますと国民の受取利子を剥奪していることにもならないかという、そんなこともございまして、金利が、上げるというよりも正常化に戻るだけだと思うんですが、そういう形になっても対応できる経済財政政策を構築すべきだと思うんですね。  また、抜本的に財政構造を改めて将来世代にツケを残さないことが必要かと思うんですが、今、みずほの参考人、高田さんのこの日銀の五回目のジンクスの中に、常に日銀の利上げは最後ということもありましたけれども、今金利を正常化することが必要だと思われているならば、どういう手順でやっていくのがいいのか、高田参考人、加藤参考人、お二人にお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
  123. 高田創

    参考人(高田創君) 先生御指摘いただきましたように、長い目で見れば当然のことながら正常化をもうすべき局面にあると、私はもう全く疑っておりません。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、こうした幾つかのハードルもあるのも確かでございまして、そういうものとの見極めを常にしていかざるを得ないのかなというふうに思っておりまして、そういう意味からいえば、内外両方と申しましょうか、一つは海外からの大きな影響の見極め、日本銀行の方も多分そうした局面にあるんだろうと思いますけれども、その辺を中心としたところの見極めが付くんであれば、やはりどこかの局面で利上げに緩やかに向かっていかざるを得ないと。  しかしながら、今回の場合、大きな調整からの立ち上がり局面という部分でもございます。また、そういう状況の中で、経済主体と申しましょうか、ややデフレに慣れてしまっている部分があろうかと思いますので、やはり緩やかな対応をしていかざるを得ないと、リハビリも必要であるということがあるのではないかと思っている次第でございます。
  124. 加藤出

    参考人(加藤出君) 方向性としては、日本経済の正常化に合わせて金利水準もある程度正常化、その正常な金利はどこかという定義の論争もありますけれども、ある程度正常化に近づけていく方がいいとは思いますけれども、日本経済の例えば消費やあるいは物価の動き、もう少し強めであれば正常化議論を進めていくということにより賛同が得られやすいんだと思うんですけれども、あと一歩というところで足踏みしているゆえに、国内的にはなぜ利上げをするのかという議論が出て、しかし、海外からはその金利差の問題をよく指摘されるというずれが生じてしまうんだと思います。  その金利正常化という点で一つ参考になるのはスイスのケースだと思いますが、二〇〇四年の半ばまでスイスもゼロ金利政策をやっていました。その後、三年近くを掛けて今短期金利二%台に引き上げてきていますけれども、それは例えばユーロとか周辺の国との金利をある程度近づけていかないと為替レートも非常にボラタイル、変動が大きくなってしまいますし、お金の流れが変になってしまうということで利上げをしてきましたが、スイスの場合もインフレ率は決して高くはないんですけれども日本よりはやや高いと、その金利正常化をできる地合いが日本よりちょっと、その経済状態が少しですけどいいということはあるかと思います。  ただ、スイスの場合ですが、一方で十年金利とか国債の利払いに影響を与えるより長めの金利に関しては、金融市場の方が先行きインフレ率が急激に上がるとは予想していないものですから、中央銀行が短期金利を上げても長期国債の金利はほとんど上がらない、あるいは年限によっては下がるというようなこともありまして、結果的にそれほど国の財政にインパクトは与えていないというようなケースも海外においては見られます。  以上です。
  125. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございます。  今、金利差の話も出ましたけれども、変動相場制になって以降、米国の経常収支赤字は常に日本など黒字国からの資金の還流によってファイナンスされてきました。この日米間の恒常的な金利差がこの米国への資金還流を支えてきたんですけど、ドル切下げという特権を基軸通貨国である米国は持っていると思うんですが、こうした通貨システムが健全なのかどうか、植田参考人、高橋参考人、御意見がありましたらお聞きしたいと思いますが。
  126. 植田和男

    参考人(植田和男君) これは、最大のポイントは基軸通貨国でありますアメリカの政策が節度あるものとして運営されるかどうかという点にあるかと思います。ですから、一九六〇年代から七〇年代はそういう点において規律を欠いて、現象面としてはインフレを非常に出してしまったと、そういう中でドルへの信頼が失われたということでございます。  現在は、アメリカを見てみますと、一応インフレの問題はそこそこのところで収まっております。そういう意味では金融政策面で非常に規律を欠いたという状況にはないわけでありますが、しかし、財政赤字の問題、それもあって発生している経常赤字、これが非常に大規模、しかも長期化しているということで、そこから若干ドルに対する信認が多少揺らいでいるという悩ましい状況ではあるかと思います。
  127. 高橋進

    参考人(高橋進君) まず、アメリカの経常赤字のファイナンス構造ですけれども、今は日本からのアメリカへの資金流入だけではなくて、例えば、先進国に加えて産油国であるとかあるいは中国など世界的な過剰流動性といいますか、これがアメリカに向かっていってアメリカのファイナンスを支えているという構図になってきておりまして、日本だけの問題ではないと思います。  そうなってきますと、アメリカは果たしてそれで健全なのかということですが、一つの考え方として、これが続けられるのか。よくサステーナブルなのかと言われますが、こういう観点から見ていく必要があると思うんですけれども、私はそれはやっぱりいつまでも続けることはできないというふうに思います。したがいまして、やはり調整をしなくてはいけないということだと思いますが、ある程度市場の力でその調整は私は始まっていると思います。  最大のポイントは、一つはやはりドルが下落していくということだと思います。日米だけで見ていますとドルの下落は見えませんが、実効レートで見てみますとドルは下落を続けているわけでございまして、やはり赤字を垂れ流している国の通貨が下落していくという形、あるいはアメリカが例えば財政緊縮であるというような形を通じて貿易赤字を縮小していく、あるいは、もちろんドルが下がることで輸出が伸びて赤字が縮む部分もあるかと思いますが、いろんな形で赤字を縮めていく努力もすると、その二つの、通貨の下落と政策努力を通じて緩やかにやっぱり調整をしていくというプロセスが始まっているんではないかというふうに思います。
  128. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございます。  同じ質問を高田参考人、御意見ございましたらお願いいたします。
  129. 高田創

    参考人(高田創君) 七〇年代以降と申しましょうか、戦後の状況を考えますと、御指摘のとおり、常にアメリカが赤字を出し、日本がそこにというふうな状況でございました。そういう状況の中で、常に円高の圧力が加わってきたというような状況でございましたし、またそういう状況が特にアメリカの今危機的な状況と申しましょうか、ストレスが掛かったときにはより強まりやすくなっていたというのが過去の状況でございまして、そういう意味ではやはり日本に大きな影響が及びやすくなっていたというのも確かでございます。  そういう中でのやっぱり日本対応と申しましょうか、そこのところをどう切り抜けていくのか、そこは国家間のいろんな意味での調整という部分もあろうかと思いますし、また民間サイドでの自助努力と申しましょうか、というふうなものがないと、やはり大きなリスクというものを常に抱えているということを意識せざるを得ないのかなというふうに常に感じている点でございます。
  130. 円より子

    ○円より子君 外為特会のことでちょっとお伺いしたいんですが、二〇〇三年から二〇〇四年の円売りドル買い介入によって日本の外貨準備高は今百兆円という巨額に達しております。これによって外為特別会計の借入額、これはその大半が政府短期証券ですけれども、それも急増しております。  この外為特会が本当に百兆円というような、外為特会といいますが、外貨準備高が百兆なんというのは多過ぎるような気がするんですが、この間額賀大臣は、介入のためにそのぐらい十分なものが必要だと。じゃ、介入というと今度は、ドルで持っていらっしゃるからドルを売るんですかという、そんな質疑があったので、不思議なことなんですが。  皆様方は、外貨準備が百兆というのが必要かどうか、またこれを減らすべきと思っていらっしゃるか、ということは円買いをするしかないんですけれども、それが可能か、可能とすればどのようにすればいいか、それぞれお考えを聞かせていただければと思います。
  131. 高橋進

    参考人(高橋進君) この問題を突き詰めて考えたことがないのではっきりとした回答は申し上げられませんが、介入のために百兆円を取っておく必要はないんではないかなというふうには思います。  過去の円相場の歴史を見てみますと、一時八十円を切るところまで円高になったケースはあったと思いますが、しかし、今後の日本のことを考えてみますと、日本経済の実力あるいは海外の経済の実力を考えると、急激に円高になっていくということはなかなか考えづらくなってきているということではないかと。そういう円相場という観点から見たときに、ここまでの金が必要なのかということ、そういう疑問はあるというふうに思います。それから、そういうときでも、果たして百兆まで必要なのかということはあると思います。  減らすべきかどうかということですが、減らすべきという答えになるわけですけれども、減らすか運用するかという手はあると思いますが、減らし方としては目立たない形で少しずつ少しずつ介入していって、環境のいいときに損をしないように減らしていくというやり方はあるというふうに思いますけれども。
  132. 植田和男

    参考人(植田和男君) 外貨準備が必要と思われる額と比べてどうかという問題はあろうと。例えば、最近はアジアのいろんな国についてよく分析されております。日本よりも、言い方は問題あるかもしれませんが、若干信用力の低い、そういう国についても一応詳細な分析をしてみますと、現在持っている外準が多過ぎるという結論が割とよく出てまいります。ですので、日本が百兆円の外準をいろんな要因を考えたとして持っている必要があるかと言われれば、そこまで持っていなくてもいいだろうという答えが出てくるんだと思います。ただ、現状そこまであるのは、御案内のように二〇〇三年くらいまでのいろいろな事態に対応してドル買い介入をした結果でございます。  それでは、これを減らすのが良いことかどうか、減らすべきかどうかということを考えてみますと、これは非常に悩ましいわけでありまして、減らすということを考えれば結局は逆向きの介入をせざるを得ないということであります。そういうタイミングが為替レートの動きによって訪れないとも限りませんが、そうでない場合にそれでも積極的に減らしていくかと言われれば、私は為替市場への影響等を考えると、当面は、お答えはその必要はないのではないか。ただ、これも当面そういう事態考えにくいですが、円の短期金利とドルの金利が現在は後者の方が高いわけです、圧倒的に。これが逆転するような事態になったときにどうかという問題はまだ残りますが、これも遠い先の話かなと思います。
  133. 加藤出

    参考人(加藤出君) 原則論といいましょうか、一般論ではこれだけの外貨準備、もし円高の外貨不足という事態のために取っておくということにしても余りに大き過ぎるということになるかと思います。一般論としては、円安が進んだときに手持ちの資金を使って円買い介入して少しずつポジションを解消していくという方がいいとは思います。その方が国際的にも、円高のときだけ介入して円安は知らんぷりというのも信用上も余り良くはないと思います。  ただ、一方で、では具体的にいつやれるかとなると、今、植田先生もおっしゃったようにすごく悩ましい問題で、特に今のように、例えば個人のFX取引がこれだけ盛んになっているときに日本の当局が円買い介入したとなると、急に慌てて円買いの動きが激しくなる、あるいはそれに乗じてヘッジファンドも仕掛けてくるということがあるでしょうから、非常にここは悩ましい問題であろうと思います。したがって、恐らく当局としては、短期的に見渡した場合、怖くてできないであろうと思います。  ただ、一つ言えるのが、外為特会が政府短期証券を発行していますけれども、その外貨準備で保有している米国債などの利息収入を、それを結果的には外為特会は一般会計に利益を繰り入れているわけですけれども、その外貨運用の利息を円に転換せずに新たに政府短期証券を発行して、それで一般会計に利益として差し入れているという構図ですけれども、これを毎年やっているがゆえに、介入はやっていないのに政府短期証券の発行量が年々増えているという事態になっていますので、この外貨運用の分の利息ぐらいは円に転換してもいいんではないかなと。安易な政府短期証券の発行増を抑えるという意味ではその方がよいんではないかなと思います。ただ、これはきちんと説明マーケットにしないと介入をやったというインパクトになりますので、説明の難しさがありますけれども、うまくやれば可能ではないかなというようには思っております。
  134. 高田創

    参考人(高田創君) 御指摘のとおり、この外貨準備のかさ上げというのは二〇〇三年までの異常な状況の中の状況でございましたので、ノーマライゼーションが必要になってくるということは当然だろうと思います。  ただ、これまでの参考人の方々と同じように、今やるべきなのかということを考えますと非常に悩ましいと申しましょうか、ましてや、場合によってはドルの実効為替レート等で下落が行われている中でのドル売りの介入をするというふうなことはなかなか難しいということからしますと、今の状態というものを極めて長く見詰めていかざるを得ないのではないのかなというふうに思うわけでございますし、また、かたがた今の日本状況を見ておりますと、世界最大のグローバルキャリートレードをやっているような状況でございますので、極めて効率的な運用を国レベルとしてやってしまっているというような状況にも結果としてなっているわけでございまして、そういう点から考えますと、今の状況を多少見詰めていかざるを得ないのかなというふうに見ているところでございます。
  135. 円より子

    ○円より子君 ありがとうございました。
  136. 大塚耕平

    大塚耕平君 民主党の大塚でございます。  今日は、四人の参考人の皆様方におかれましては、お忙しいところ御出席をいただきましてありがとうございます。また、日ごろからそれぞれのお立場日本経済の運営に御尽力を、御協力をいただいていることに御礼を申し上げたいと思います。  今後の金融財政を国会として考える上で、何点か参考意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。  まず、高橋参考人にお伺いをいたしたいんですが、御説明を拝聴しておりますと、日本経済の現状については比較的ニュートラルなような御評価のように聞こえたんですけれども、あえて上振れ・下振れリスクどちらが高いかというふうにお伺いをすると、どちらが高いというふうにお感じになっていますでしょうか。
  137. 高橋進

    参考人(高橋進君) 下振れリスクが高いと思います。  それは、先ほども申し上げましたが、やはりアメリカ経済、サブプライムに端を発したアメリカ経済が私どものメーンシナリオでは、例えば消費に影響が出ても消費はマイナスにならないというふうに見ております。しかしながら、アメリカ経済がもう少し深刻なことになれば、当然それは日本に跳ね返ってまいります。ですから、アメリカ経済がどこまで私どものメーンシナリオ対比で下振れるかというところは極めて心配でございます。  もしアメリカ経済が私どものメーンシナリオどおりに成長が鈍化する程度で止まれば、私はそれが世界経済に与える影響というのもある意味では大したことないというふうに考えております。ところが、もしアメリカが大崩れするということになれば、いわゆるデカップリング論がもう崩壊してしまって世界同時に悪くなるということもあると思いますので、最悪そこまでは考えませんが、しかし、いずれにしてもアメリカ経済が大きな下振れ要因であるというふうに考えます。  それから、最後のところで、私の説明の最後のところでも申し上げましたけれども、原油価格の更なる上昇あるいは建築着工の下振れの回復の遅れ、この辺を私どもは見ているところでございまして、それに対して上振れ要因というのはなかなか見付からないというところでございます。
  138. 大塚耕平

    大塚耕平君 今最後の方で御指摘のありました住宅の問題ですが、いただいた資料の七ページの左側のボックスのハにも建築確認の審査厳格化の問題が記述してございます。  御承知のとおり、八月は新設住宅着工件数は前年比マイナス四割以上ということで大変先行きを私どもも危惧をしているんですが、この後、今年度の住宅着工についての見通しとそれがGDPに与える影響について、所属しておられる日本総研では何か推計をしておられるでしょうか。
  139. 高橋進

    参考人(高橋進君) 私どもの研究所の研究員のレポートが出ておりますが、まず、足下でございますが、大体、住宅投資のGDPに占めますシェアが三・七ポイントぐらいございます。これが二割、三割下振れするというふうに見ますと、一四半期だけの影響で見ますと、七—九で〇・八ポイントぐらい住宅だけでGDPを限界的に押し下げるようになると。もちろん、ほかのところが強いですから結果的に七—九のGDPがマイナスになることはないんですけれども、住宅なかりせばという部分でかなり下押しされてしまうと。  そして、私どもでシミュレーションをしておりますが、果たして住宅着工そのものがすんなりとV字形に戻ってくれるのか、それとも、結局キャパシティー対比で審査がきつくなっているわけですから、当然、その審査の回復というのは後ずれすると思いますので、そうすると着工自体がずっと回復が遅れていくというふうに考えますと、年明け以降、例えばGDPで見た住宅投資ベースで見て年明け以降もまだ下がるという危険性はあるというふうに思います。
  140. 大塚耕平

    大塚耕平君 ありがとうございます。  それでは、植田参考人にお伺いをしたいんですが、御説明いただいた資料の十九ページをお開きいただきまして、低インフレ率下の金融政策のオプションということで二つのお考えを聞かせていただきました。  御説明を伺った印象としては、モデレートなインフレはやはりあった方がいいのではないかという、そういうふうに理解をさせていただいたんですが、その場合、植田参考人がお考えになっているインフレというのは、教科書的に申し上げれば、ディマンドプルなのか、コストプッシュなのか、もう少し、ハイパーインフレとまでは言いませんけれども、もう少し劇的なインフレを想定しておられるのか、どういうものの組合せ、あるいはどのインフレによる現象をより望ましいとお考えになっているのか、その辺のお考えを聞かせていただきたいんですが。
  141. 植田和男

    参考人(植田和男君) 私の念頭にありますのは、率で余り具体的な数字を言うのは難しいかと思いますが、それでも世界的な平均は大体二%くらいのところを目指している中央銀行が多いという事実がございます。それくらいの水準は一つあり得る線かなというふうに思っております。  ただ、日本の場合に、現状、ゼロ近辺か場合によってはちょっと下という中で直ちにそういう水準をはっきりと短期間に目指すのがいいことかどうかというのはまた別問題として、大きな問題としてあるかと思います。その上で、二なのか一・五なのか一なのか分かりませんが、そういうある程度のインフレというものは、長期的にそういうインフレ率が続くのが望ましいということでしょうから、基本的にはいろんな物価が大体そういう率で上がるという状態ということであります。  したがって、需要面から見ればそれを支えるような需要があって上がっていくということでありますし、一方で、賃金もそれに釣られて上がっていくということでありますから、賃金と物価だけのところを見るとコストプッシュ的な側面もあるということでありますが、全般的にはいろんなものの値段が二くらいで上がっていく。もちろん、したがいまして、ある程度需要の支えがないといけないということは事実でございます。
  142. 大塚耕平

    大塚耕平君 今、日本でインフレが起きているかどうかというのは非常に統計だけ見ていても分からないところがございまして、例えばJ—REITなんかは全体としての価格は下がっていますが、局地的には相当去年の秋ぐらいまでは上がっていて、前回のバブル時以上のバブルだと言われるような現象もあったわけでございます。  そういう局地的な現象も含めて、今の物価の情勢、このデフレというのは、八〇年代、七〇年代、六〇年代、割とオーソドックスな経済学が通用していた時代のデフレと同じデフレだというふうに考えてよろしいでしょうか。
  143. 植田和男

    参考人(植田和男君) 現状、デフレという強い表現を使うかどうかは微妙なところかと思います、ゼロをほんのちょっと下回っている消費者物価指数のでき上がりでございますので。いろんな価格を見た場合に、もちろん資産価格の一部に、本当におっしゃったような局地的なバブル的な動きがあるというのは事実かと思います。ただ、それ自体も資産価格全体に広がっているというわけではないと思います。  それから、普通の物価を見た場合に上がっている物価も明らかにあるわけでして、企業周りの物価は、財・サービスともになかなか強い動きをしております。これに対してCPIが余り上がっていないというのは最近の一つの、前の時代とはちょっと違う大きな特徴かと思います。それはそれで、どの物価を見るのか、その上でどういう金融政策をするのかという点をやや難しくしている要因であるということはあるかと思います。
  144. 大塚耕平

    大塚耕平君 それでは、次に、順番からいえば加藤参考人なんですが、先に高田参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、高田参考人から御説明をいただいた三ページの国富の減少のお話、大変印象深く聞かせていただいたんですが、ちょっと私の所見を簡単に申し述べさせていただきますと、ちょうど終戦直後と非常に今日本は現象面で似た感じになっているなというのが私なりの認識でありまして、一つは、その御指摘の国富の問題もあります。それから、財政赤字の対GDP比のグラフなんかをかきますと、もう非常によく似ているわけでありますから、その点でも似ております。今の一点目、二点目、国富そして財政赤字。  三点目は、現象面で見ましても、私が国会で仕事をさせていただくようになってからすぐ個人向け国債が売られ始めて、そして平成十五年からは、財務省の皆さんが海外市場に日本の国債を買ってくれといってセールスに行くようになったと。これ、戦前は、昭和十五年に当時の大蔵省がロンドン市場に行って日本の国債をセールスに行ったと、そして昭和十七年には上野の松坂屋に個人向け国債売場ができたとか、非常に似ているんですね。起きていないのは、四番目のハイパーインフレだけなんです、あとは。  ただ、ハイパーインフレ、今日本で起きるような状況かというと、今、植田参考人に御教示いただいたような状況ですので、すぐ起きるわけではないんですが、その理由は何かというと、終戦直後は物不足だったんですが、残念ながら今、物は潤沢にありますのでその条件は満たしていないと。ただし、この先、昨今の原油とかあるいは世界的な食料事情、中国やインドの発展等を考えると、一気に物不足というものが日本経済に影響を与える可能性もあるなと個人的には大変心配をしております。  そうした中で、高田参考人の先ほどのお話ですと、日米欧の金利のこれまでの調整の経験論からすると、アメリカが下げ始めて、そして、欧州のことはお触れになりませんでしたが、欧州も、ECBも少し引締めを中断をしているような感じがありますので、もうこうなってしまうと、経験論的に言うと、高田参考人の予測では、もう日本は金利は上げられない、ないしは引締め的な運営は当分難しいというふうにお考えになっていますでしょうか。
  145. 高田創

    参考人(高田創君) 私が今回議論させていただきましたのは、いわゆるシンクロナイゼーションがありますと想定される七〇年代以降ということなんですが、少なくとも、過去の歴史を考えますと、アメリカが下げている過程の中で日本が上げているという局面は余り見当たらなかったのかなという点だと思います。  もちろん、そうした決まりが全くあるわけではございませんので、当然独立的に、また今回のようにデカップリングしているような状況に近いということであれば可能性はあるわけなんですが、ただ、さはさりながら、やはりアメリカに続いて欧州もという形になってまいりますと、ますますその目が厳しくなってくるのではないのかなというふうに思っておりまして、そこはこの今回のデカップリングの論をどの程度まで見積もるかというところにも依存すると思いますが、私自身は、アメリカの今回主導しております大きな流れというところの中での利下げということを考えますと、少なくとも利下げの過程の中ではなかなか日本の利上げというのは難しいのではないかなと。  そういう意味でいえば、アメリカ自身が今回の利下げがそんなに長引かないということの中で、次の中立的な状況、また上げの局面をやはり待つという形にならざるを得ないのではないのかなと、そんなふうに見ている次第でございます。
  146. 大塚耕平

    大塚耕平君 あえてお伺いをいたしますが、もし高田参考人が金利政策にコミットできるお立場にあった場合には、上げ、下げ、ニュートラル、この状況においてはどれを選択されますですか。
  147. 高田創

    参考人(高田創君) 私であれば、今の局面はニュートラルと申しましょうか、据置きというところで対応せざるを得ないんじゃないかなと思っておりますけれども。
  148. 大塚耕平

    大塚耕平君 それでは、加藤参考人に大変興味深い資料を御説明いただきましたが、最初に十三ページを拝見して、オーバーナイト・インデックス・スワップでいつごろ利上げがあるかって、何かこれ解散時期を予測するスワップのように思えてしまって、職業病でいかぬなと思った次第なんですが、その一ページめくっていただきますと、十四ページに日銀の総裁、副総裁の人事の問題がございます。  一点、国会の立場からマーケットのメジャーなプレーヤーである加藤さんにお伝えを申し上げたいのは、日銀法上は議長は互選で審議委員の中から選ばれますので、FRBのように臨時議長を選ばずとも、もし、万が一ですが、総裁、副総裁空席の場合には残された審議委員の中から互選で議長を選んでいただくという仕組みになっているはずでありますので、是非マーケットの皆さんにお伝えをいただきたいんですが。  そのことを踏まえた上で、日本では日銀総裁と議長が同一人物であることが前提のように考えられておりますが、議長・総裁分離論というのはどういうふうにお感じになりますでしょうか。
  149. 加藤出

    参考人(加藤出君) それは、例えば議長は金融政策決定会合の議長であり、総裁は例えば内部管理的な面など……
  150. 大塚耕平

    大塚耕平君 例えば、そういうことにはなります。
  151. 加藤出

    参考人(加藤出君) なるほど。  そうですね、ただ、そのリーダーシップという点では、例えば純粋に金利の上げ下げだけをその中央銀行のトップの人が考えればよいのであれば、場合によってはそういうケースもあり得るのかもしれませんが、ちょうど昨今のように、サブプライムのような問題もあり、金融市場あるいは金融機関財務内容等にもうまく目くばせする必要もあり、総合的な判断が必要にもなりますので、となりますとやはり同一、一人の人間がやる方がよいのではないかなと思います。  アメリカでもFOMCの議長とFRBの議長が一緒であるということでありますので、一緒の方がいいんではないかなというように今の印象では思います。
  152. 大塚耕平

    大塚耕平君 あともう一点、我々国会として対処しなければならない問題は、今回こういう事態、現下の状況のような事態に直面して、正副総裁三人が皆任期切れが同じタイミングであるというのは大変問題であると思っておりまして、この際、副総裁の任期は総裁とずらすべきであるとか、副総裁お二人のうち一人はずらすべきであるというようなことを国会として考えなければならないと思っているんですが、その点はマーケットとしてはどのようにお感じになりますでしょうか。
  153. 加藤出

    参考人(加藤出君) おっしゃるとおり、同時に三人替わるということで、場合によってはその政策運営方針がかなり変わるリスクというのがあるんだと思います。  ただ、日銀の政策委員会審議委員が六人いて、来年三月の場合は六人の審議委員の方は替わらないわけですので三分の一の入れ替わりということですが、ただ影響力が大きいということですので、おっしゃるように一人ぐらいは時期をずらしてというのは確かに望ましいのかなと思います。FEDのバーナンキ議長のときも副議長の交代は若干時間のずれがありましたですね。  ただ、一方で、総裁をサポートするという要因もあるのでしょうから、そことのバランスもあるんでしょうけれども、今も確かに金融市場の間で、じゃ来年春の展望レポートはどうなるんだろうか、急に論調が変わるかどうかというようなこともまた関心があるわけですけれども、そういう点では、スタッカー方式というのか、少しずらしてというのは確かに検討すべきアイデアかなと思います。
  154. 大塚耕平

    大塚耕平君 それでは、残された時間で、最初に植田参考人にお答えいただいて、その後、高橋参考人、高田参考人、加藤参考人に簡単に御意見を言っていただければ助かるんですが、日銀の審議委員を御経験になった植田参考人として、日銀の総裁に求められる要素を三つほど是非述べていただきまして、それに過不足があるということであれば、こういう点もマーケットやアナリストのお立場からは日銀総裁に求めたいというような補足をそれぞれしていただければ大変参考になりますので、よろしくお願いいたします。
  155. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) ちょっと、予定の時間が迫っておりますので、答弁は簡潔にお願いしたいと思います。
  156. 植田和男

    参考人(植田和男君) 三つにちょうどなるかどうかあれでありますが、資質ということは別にしまして、やはり政策を決めるということですので、ほとんどの政策決定というのはどういうリスクを取るかという決定だと思うんですね。つまり、これをやれば万全であるという政策というのは大抵の場合なくて、メリットとデメリットがあってリスクも抱えている、そういう中でいろんなオプションがあって、そのうちのどのリスクを取っていくのかという意思決定だと思うわけであります。そういうことをきちんと認識した上で政策決定をし、その結果についてはきちんと説明をし、責任を取れるという資質がやはり大事かと思います。  その上で、具体的な金融政策ということで資質はいろいろ考えられますが、それはよく言われていることでございますので、私はちょっと省略させていただきます。
  157. 高橋進

    参考人(高橋進君) 今、植田参考人がおっしゃった資質に加えて、よく言われていることだと思いますが、一つはやはり非常に深い経済に対する知識、二つ目にマーケットに対する知識、三つ目に国際的な感覚ではないかなというふうに思います。
  158. 加藤出

    参考人(加藤出君) 高橋さんのおっしゃったのに加え、さらに、危機時に頼れる、あるいは何といいましょうか、動じない、物おじしない胆力のある方ということかと思います。
  159. 高田創

    参考人(高田創君) やはり、説明能力と申しましょうか、中でも市場との対話力といいましょうか、そういう点ではないかなと思っております。
  160. 大塚耕平

    大塚耕平君 ありがとうございました。     ─────────────
  161. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、森田高君が委員辞任され、その補欠として平山幸司君が選任されました。     ─────────────
  162. 森まさこ

    ○森まさこ君 福島県から当選をいたしまして、初めて本日質問をさせていただきます森まさこでございます。よろしくお願いします。  参考人の先生方、本日はお忙しいのに貴重なお話をいただきありがとうございます。  私は、二点、大きく分けて、一つは地方経済の活性化の点、もう一つはサブプライム問題についてお伺いしたいと思います。  地方経済の方については、植田参考人の方が中小企業の弱さということを資料の中に触れていらっしゃったので植田参考人の方にお聞きしたいんですけれども、私は東北の玄関口福島県から参りましたが、景気の回復の実感が全くございませんで、毎週末、地元に帰るたびに地元企業の倒産、リストラ、個人破産と暗いニュースばかり耳にします。実は、昨日も福島県の会津若松、喜多方にあります地元を代表する大きな企業が倒産をいたしました。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  このような中で、地方経済の活性化は重大な課題となっておりまして、福田総理も所信表明で公約として掲げ、地方財政については様々な施策を講じているところでございますが、経済、金融観点から、特に地方金融機関につきましてはリレーションシップバンキング、いわゆる地域密着型金融について、第一次、第二次のアクションプラン、これを実行されてきたわけでございますが、本日お配りした資料の一枚開けていただきまして一枚目の方に、この七月に金融庁の方がその進捗状況概要報告したものがございます。  こちらの方の、特に私、本日お聞きしたいのは、四番目の担保、保証に過度に依存しない融資についてでございます。これについて二ページ目をごらんいただきますと、大きな二番目の二、利用者における見方でございますが、商工会議所などを基にいたしました利用者の方にアンケートをしたところこのような評価がなされていて、一番下のポチのところに、依然として担保、保証に依存しており、目利き能力が不足しているとあります。担保、保証の中でも、特に経営者と直接関係しない第三者を保証人とする第三者保証については、アメリカ、イギリス、その他の先進国においてはほとんど見られない制度であります。  これまで金融機関は、中小企業に融資をするときには第三者保証を取ることが多かったわけでございますが、特に地方においては中小企業、零細企業が多く、第三者保証は、いったん企業経営が悪化をいたしますと、保証人となった経営者の家族、知人、取引先が共倒れして連鎖的に債務が広がり、個人破産、多重債務者の増加も招いて、地方の疲弊の一因となっていると私は考えておるところでございます。  この点、経済産業省におきましては、信用保証協会について、原則として第三者の保証を求めないことに近年決定をいたしたところ、御存じであると思います。そして、国民生活金融公庫におきましては、やはり経産省が第三者保証人不要とする制度を設けまして、その融資額を二度引上げをいたしました。昨日の報道で四千八百万円まで増額をしたというふうに発表されております。経産省は、民間金融機関においても同様の傾向が広がることを期待していると発表していますが、私も同感でございます。  そもそも、第三者保証に依存するということは、ビジネスの質を見て融資をするという目利き能力の不足を表しているのであり、グローバルスタンダードの点から見ても、それから地方経済の活性化の点から見ても、民間金融機関も保証人を取らない、第三者保証制度を採用しない方向に変わるべきと考えておりますが、その点の参考人の御意見をお聞かせください。
  163. 植田和男

    参考人(植田和男君) 私、必ずしもこの分野の専門家ではございませんが、思い付くことを申し上げますと、おっしゃるような事実は確かに深刻な問題として伝統的にあるんだと思います。現在も続いている。  対処方針としては、難しいですけれども、おっしゃるように、金融機関の目利き能力をなるべく高めるというのは地道な努力としてあるかと思います。それから、広い意味のいろいろな信用保証制度を適切にそして有効に活用する方法をもっと考えるというのもあるかもしれません。それから、最近の金融技術の発展ということから申し上げれば、既に利用されておりますように、統計的な技術を利用しました無担保ローンの活用ということも考えられると思います。ただ、この分野も、始めてみたものの、もう一ついろいろな問題があってつまずいているというのが現状ではあるかと思います。  ただ、こういうことをいろいろ組み合わせて努力していくということかなと思っております。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕
  164. 森まさこ

    ○森まさこ君 それでは、次の質問に移らさせていただきます。ありがとうございました。  次に、サブプライムショックから我が国が学ぶべきことと今後の行政対応について、高橋参考人、加藤参考人、高田参考人にお伺いしたいと思うのですが、高橋参考人のおっしゃったとおり、このサブプライムローン、米国におけるサブプライム問題の本質は、信用度の低い住宅ローンの延滞が証券化という手法を通じて拡散、増幅していったところにあると思いますが、私はこの点、二つの段階に注目をしております。一つは消費者のレベルでございます。住宅ローンが与えられていたレベルに深刻な消費者被害を生じる問題が指摘されていたということ、それからもう一つのレベルは、それが債権流動化されていったところのレベルでございます。  この点に関して、お配りした資料の六ページ目をごらんください。貸金業制度等に関する懇談会が開かれた折に、私が金融庁に勤務していた折に海外調査をいたしましたときの議事録それからその参考資料でございます。金融庁のホームページにおいて公開をされており、懇談会でも発表した資料でございますが、六ページの最後の丸ポツでございますが、こちらでアメリカのサブプライム問題について指摘をしておきました。  ここで注目していただきたいのは、サブプライム問題は、これは住宅ローンだけではなくて、いわゆる低所得者に対するローンすべてについて略奪的な貸付けが行われていたということでございます。そして、それに対して行政庁が行政処分を行っておりまして、多額の違法収益を剥奪をして被害者に分配するという処理を行っていたということでございます。  これに関する海外事例を後ろの方に添付しておきました。ページ番号がなくて申し訳ございません。後ろの七枚つづりになっております資料八—五—八の海外事例紹介というところにございますが、こちらの方に掲げさせていただきましたように、非常に欺罔的な略奪的な低所得者に対する住宅ローンその他の貸付けについては、FTCなどの連邦委員会それから州のアトーニーゼネラルの方が行政処分を行って、その違法収益を剥奪をしております。  これだけの行政的な措置を行っておりましたので、サブプライムローン問題は証券市場に波及をする前にある程度の救済がされておりました。もし、このような行政措置がなされていなかったら、サブプライムローン問題はもっと大きな被害を世界的に及ぼしたと思われます。  そこで、我が国における行政措置について考えていただきたいと思っているんです。  我が国におきましては、このような消費者被害が起きたときに違法収益を剥奪するシステムはございません。また、まとまって消費者被害の情報を集約するような行政組織がございません。このような消費者被害が、今、流動化という金融技術の革新によって、市場への影響が直結するような、このような今の状況においては、消費者問題の場において生ずる苦情それから被害における情報収集というのは、金融行政の中でも非常に重要な位置を持つのではないでしょうか。  ここでまたアメリカ、イギリスの制度を見てみますと、アメリカ、イギリスにおいては、例えばアメリカにおいてはFTCという公正取引委員会がございますが、約千人余りの職員の半分が消費者保護業務に従事しております。四つある局の中の一つ、消費者保護局に半分以上の職員が集結して、このような消費者市場における苦情、情報を整理し、そしてそれを金融行政に役立てているわけでございます。  このようなシステムを我が国に導入することにおいてどのような御意見をお持ちでしょうか。まず、高橋参考人からよろしくお願いします。
  165. 高橋進

    参考人(高橋進君) 私は、この分野の専門家ではございませんので正確なお答えはできないと思いますけれども、ただ、アメリカで、アメリカのサブプライム問題はおっしゃるように消費者にかかわる問題と、投資家にかかわる問題と、二つの側面があるというふうに思います。  消費者の問題につきましては、おっしゃるようなもし制度があったとしても、実際には相当略奪的な貸付けが行われたということは漏れ聞いております。返済ができないという借入人に対してリファイナンスしてあげるから借りなさいと、そこまで言って貸した業者もあるやに聞いておりまして、かなり略奪的な部分というのがあったというふうに思いますので、もしそうだとすれば、やはりそこをどう止めていくかということの措置というのは必要だというふうに思います。  日本はどうかということですが、不動産バブルの崩壊もあって、住宅ローンについて過度に審査を甘くするとか、あるいは無理な条件で押し付けるということはなくなっているとは思います。しかしながら、住宅ローン以外の分野、あるいは今様々な貸金業者が参入していますので、そういう人たちが略奪的な動きを取らないという保証はないわけですから、必要であればそういう措置をとるということは当然考えるべきだというふうに思います。  一方、投資家サイドにつきましては、もう既にG7等の場でいろいろ検討が始まっていると思いますので、それはそれで整々とやっていくべきかなというふうに思います。  以上でございます。
  166. 加藤出

    参考人(加藤出君) 金融市場的な観点から御意見を述べさせていただきますと、まず一つは、その略奪的金利に対する規制という観点もありますが、一つは利用者サイド、消費者サイドの金融リテラシーを高めていくと。かなり地道なプロセスではありますけれども、金融知識を高めていくという教育などによってやっていくということは大事であろうと思います。  先ほど、私の資料の八ページに、プール・セントルイス連銀総裁が、FRBとしては、FOMCとしてはこれから金利を引き上げていくというアナウンスを二〇〇四年のころからしていたと、ところがそれを受け止めることができなくて変動金利の住宅ローンを組んでしまったり、それは利用者サイドもそうですけれども、一方でそれを薄々聞いてはいながらも変動金利の住宅ローンを消費者に次々と販売し続けるというようなこともありますので、そういう点でも金融リテラシーというものをどうやって向上させていくかという問題がまず一つあると思います。  それから、元々サブプライムというものは、発想としては低所得者の人も住宅購入のチャンスを得られると、以前は門前払いであったのに金融技術の革新によって住宅購入が可能となったという、本来はプラスの面があったと思うんですが、その運用方法に多大な問題があったと。所得の申告を虚偽の報告をさせたりとかいうことで、正しいリスクの評価というものがなされなかったと。しかも、そのモーゲージの業者が、ブローカーがアメリカにおいては非常に零細企業が多いと。従業員数人程度の家族経営のようなところが非常に多いということで、なかなか当局の規制の範囲にも入らなかったというような問題もありますので、その日本との状況の違いというようなものはありますけれども、まあ当面、日本の方は急激に金利が上昇していくということは現時点では予想しにくいので、変動金利の住宅ローンの方が返済に急激に窮するということは近々には来ないであろうと予想はされますけれども、やっぱり潜在的にはリスクはある程度あるでしょうから、先ほどの金融リテラシーの話と、及びその住宅ローンの販売の運用面におけるチェックというようなものも必要なのかなというようには思います。
  167. 高田創

    参考人(高田創君) 私も、今の加藤参考人のお話と類似しているんですけれども、やはりこうしたどうしても長い目で見れば市場化をしていく流れというものは私はそんなには変わりないのではないのかなと思います。  そういう中でいえば、やはり金利の変動も含めた金融、まあリテラシーのお話ございましたけれども、いわゆる金融教育というんでしょうか、こうした論点というのはいろんな意味で今後の自己責任の対応というものを促す意味でもやはり必要になってくるのではないかと。ただ、同時に、やはり今回いろいろ、例えば金融商品取引法もそうでございますし、また同時に、貸金業の世界でいえば貸金業規制法等も出てきておりますように、こうした意味でルールの明確化というようなもの、こうしたものと両建てでやはり対応していかざるを得ないのではないか。  それから、先ほど加藤参考人の方からございましたけれども、確かにアメリカの今回のサブプライムの問題は行き過ぎがあったのは問題だったと思います。しかしながら、アメリカの大恐慌のころも含めて、いろんな意味で新たな貸し借り手の対応ができるような仕組みをつくり上げていったのもアメリカの状況でございまして、そういうようなものを日本としてもどのような形で今後取り入れていくのかという両面がやはり必要なんではないのかなと、そんなふうに考える次第でございます。
  168. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございました。  加藤参考人の資料の八ページにありますように、サブプライムローン問題とモラルハザード議論がなされているんですけれども、ここを見ますと、悪い関係者、ひどい貸出し慣行を懲らしめているということや、それからもう市場も減量すればいいんだというような発言がありますが、こういった問題によって市場が適正な方向に戻ることは歓迎すべきですけれども、それでは問題があった市場で被害を受けた方々は救済されているのだろうかというところが問題になりますが、アメリカ又は欧米においては、こちらの方の救済は、先ほど資料でお見せしましたように、行政当局が介入をいたしまして、違法に収益を行った者からそれを剥奪して被害を受けた者に分配をしております。やはり市場というのは余り行政が介入しないことがもちろんよろしいのでしょうが、先ほどお話に出ましたように、ルールを逸脱した者に対しては罰を設けておくことが必要ですし、違法な収益を剥奪して被害者に戻すということがないと、ルールの逸脱を黙認しているような関係になっています。  その点についてもお話を聞きたいんですが、私が言いたいのは、NOVAのようにシロかクロかということで一気に破綻をするということが良いと思っているのではなくて、徐々にやはり監督、注意をする機関が必要なのではないか。そういう点では、渡辺喜美金融大臣が著書の中で金融サービス士という提案をなさっていますが、消費者保護、利用者保護、コンプライアンスという観点から、早期の段階で早期発見、早期治療、早期に注意をするという、そういう立場の者がそれぞれの段階でいるということも必要だと思います。  それでは、先ほど三人にお伺いしたので、植田参考人の方に、今の話で、日本には後から消費者を被害救済をするシステムがないんですけれども、そちらの方を設けて適正な市場を担保するようにするべきではないかという私の意見に対して、御感想をいただけたらと思います。
  169. 植田和男

    参考人(植田和男君) これは、おっしゃることはよく分かりますが、難しいことをいろいろ含んでいると思います。基本的には、ルールをはっきりさせまして、何が善くないことである、善いことであるというのが分かっている状態で、それを逸脱した例えば略奪的貸出しがあった場合に何か措置をとるということだと思います。  一般論としましては、可能性としましては、借り手の方に問題があって、いろいろ略奪的ローンと見えるようなものを借りてしまった、で、結局問題が起こってしまう、そういうものを後になって救済するということをやり過ぎては、これはまたモラルハザードにつながりますので、申し上げましたように、ベーシックなルール、インフラをきちんとさせた上でそういうことを考えていくということかなと思います。
  170. 森まさこ

    ○森まさこ君 ありがとうございました。
  171. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 公明党の荒木清寛でございます。  まず、高橋参考人にお尋ねをいたします。  冒頭のこの景気の現状判断の中で、企業部門は回復傾向が持続をしているけれども、中小企業は低迷をしていると、またそうしたことが家計部門の横ばい傾向ということになっていると、こういうお話でございました。  大企業は好調だけれども、なかなかその景気回復の効果が中小企業に及ばず、またその企業部門の回復が家計に及ばないというところは、正に我々も与党としてもう一番力を入れなければいけないところでございますけれども、こういう本当に景気回復の効果が中小企業や家計にまで及んでいくようにするために何が一番必要なのか、どういう手を打てばいいのか、お聞かせ願いたいと思います。
  172. 高橋進

    参考人(高橋進君) 済みません。私もそこの答えははっきり持っておりません。なぜかと申し上げますと、やはり今の日本の景気の回復構造にかなり影響されている部分があるというふうに思います。  日本の企業部門は、やはり輸出が伸びることで収益が伸び、設備投資も行っていると。そういう中で、国内に依存した中小企業あるいはサービス産業というのがなかなか回復していかないという構図があります。それから、やはり中小企業の場合には、なかなか仕入価格が上がった場合に販売価格に転嫁できないという収益圧迫、構造的な要因というのもあるかと思いますので、そういったことも中小企業の低迷の要因にあると思います。加えまして、やはり地方経済の疲弊、これも中小企業の低迷の要因にあると思います。したがいまして、今の形の回復を続けていっても、なかなかそれが中小企業に均てんしていかないというのが現状の姿だというふうに思います。  そうしますと、今のその回復の姿をどう変えればいいのかということですが、それはやはり内需主導型に変えていく必要があるということでございますけれども、しかし、じゃ、どうすれば内需主導型になっていくのかというところについてはなかなか一言で処方せんが出てこないと。例えば、地方であれば内発的に地方が活性化していくような手を取ればいいんだと思いますけれども、それは一つ二つの政策措置を講じればそれでいいという話ではないかと思いますので、なかなか難しいというふうに思います。
  173. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 同じことを植田参考人にお尋ねいたします。  先生も正にこの第一ページ目に、今回の景気上昇は外需主導であって、したがって海外経済の動向に今後も左右されると、こういう分析です。  私も愛知県に住んでおりまして、自動車産業ですから、今更国内販売がそう飛躍的に伸びるということは常識的に考えにくいですし、アメリカへの輸出もそれほど伸びないかもしれませんが、恐らく経営者としては中国やインド等にどう売っていくのかというようなことをお考えではないかということも推測をいたします。  ただ、高度経済成長は外需が押し上げたということもありますけれども、内需がかなり牽引したということがあるわけで、そういう経済構造をこの外需頼みというところから変えていかないと私もいけないというふうに思いますけれども、先生はこういう分析に立って、ではどうしていったらいいのかと、こうお考えでしょうか。
  174. 植田和男

    参考人(植田和男君) 私も高橋参考人と同じように、これがというような処方せんを必ずしも持っておりません。  現在の世界経済の動きがグローバル化とかあるいはIT技術を非常に活用するという中で起こっておりますので、中小企業あるいは地方経済の支援ということでありますと、そういうところに中小企業が進出していけるような、例えば人材育成あるいはITの活用等を支援するというのが一つあるんでしょうけれども、これは時間が掛かる道であることは明らかかと思います。  それから、ちょっと誤解を招くかもしれませんが、先ほど申し上げましたように、消費者物価指数みたいなものが結局は中小、特にサービス関係の企業セクターの産出価格に近いようなものであるという面がございます。ですから、卵と鶏みたいな話ではありますが、これがもう少し上がるようなところに持っていければ、こういうセクターの景況感も多少上がってくるんではないかなというふうには思います。
  175. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 そのこととも関連をいたしますが、加藤参考人にお尋ねをさせていただきます。  要するに、私のお聞きしたいことは、どうして日本の物価だけ上がらないのかということでして、先生のこの表の十二ページを見ましても、アメリカとイギリスは上がっておって日本マイナスだということになっております。グローバル経済ですから、世界的にデフレ傾向だとなれば理解はしやすいわけですし、中国が安い製品を輸出しているのは日本だけではないと思いますので、どうして日本だけなかなか物価が上がらないのかと思いますですね。  したがいまして、望ましい形での物価上昇を実現するために今いろいろ日銀も含めやっているわけなんでございますけれども、更にどういうことをしていけばいいのか、御示唆をいただければと思います。
  176. 加藤出

    参考人(加藤出君) 日本の物価が上がらない、端的に言えば、経済の巡航速度とでも言える潜在成長率を現在の成長率が大きく上回っていないという中で供給を需要が上回らないからという、まあ当たり前の話になりますけれども、ということになりますが。  また一方で、ちょうど御指摘いただいたこの十二ページ目の表ですけれども、アメリカとイギリスと日本の消費者物価指数の九月の伸び率を示しております。アメリカが前年比二・八%、イギリスが一・八%、日本は若干のマイナスと。消費者物価は、大体半分が財、物の値段で、残り半分がサービスです。財の値段を見ますと、例えば耐久消費財というところを見ていただくと、あるいはその一つ上の衣料、履物ですと、アメリカ、イギリスはマイナスでデフレになっています。議員御指摘のように、中国等々から安いものが入ってくるわけですし、あとIT関連、競争が激しいですから、物の値段に関しては下落が続くと。一方で食品関連は、アメリカ、イギリスではより上昇が激しいと。今、日本が九月はプラス〇・一、今後もうちょっと上がるとは思いますけど、まだ〇・幾つという上昇で、現状、まあかなり世論的には動揺が起きているところだと思います。  こういう中で、アメリカ並みに四・四%とかいう上昇になりますとかなり所得の低い人には苦しいという状況にはなり得るでしょうから、悪くない形でのインフレ率上昇、中小企業などにも利益が行って、所得が増えて需要が増えて物価が上がっていくという望ましい形ならいいんですけれども、一方で、ここ見ていただきますと、サービス部門のところで、例えば、教育はアメリカが五・三、イギリスが一三・九とか、あるいは医療の伸びも日本よりもはるかに高いということで、そういったような形で全体の数字が押し上げられているとなると、国民としては余り良くないインフレ率上昇ということにもなりますから、あくまで基本は景気拡大に伴う物価の緩やかな上昇という形になれば望ましいんですけれども、まだもう少々時間が掛かるというところなのかなとは思います。
  177. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 高田参考人にお尋ねいたします。  参考人の言われた、日銀が利上げをした翌年は世界的減速になるという、過去四回はそうであったという、このことは初めて御指摘をいただきました。これは、単にそういうジンクスではなくて、因果関係というか法則性があるという、そういうお話でしたので、なおさらこれは深刻に我々もこの状況を受け止めなければいけないと思います。  それで、一番この最後の、そういう中で倒産件数の増加に留意ということは、本当にもしこのことが世界的減速の予兆であれば大変ですし、また倒産が増えているということは大変なことでありますので、我々としても最大限の政策的対応をしなければいけないわけですね。  それで、五回目がこういう、日銀の利上げが世界的減速にというような事態を招かないためには何をしたらいいのか、教えていただきたいと思います。
  178. 高田創

    参考人(高田創君) 今回の場合、私自身は、完全に従来の四回と同じように大きな深度で経済が収縮しちゃう、ハードランディングになってしまうとは思っておりませんで、そこのところは、巷間言われておりますように、例えば今回の場合、企業は意外と元気でございます。特に日本企業ですね。それから、欧米等も同じでございますし、それから国ベースで見ましても日米欧以外のところがということでもございます。  ですから、今回の場合、そういう点からいたしますと、そこの部分をいかにサポートとして引き付けることができるかどうかというところではないかなというふうに感じておりまして、リスクがあるのも確かでございまして、その正常化あるいはまたいろんな政策等もやや結果としてマイナスに働いているところもございますので、目配りをしていかざるを得ないんだろうと思うんですけれども。  そういう意味では、海外のまだ元気がいいところをいかに日本に引き込むことができるか。それから、やはり企業のまだ元気がいいところをいかにもう一段伸ばしていくことができるか。それから、これまでの参考人の方々の議論とも共通するんだろうと思うんですが、やはり先行きに対する見通しがまだ悲観のところからぬぐい去れていないのではないのかなと。  そういう意味からいいますと、空元気というよりは、やはり具体的な政策等を示す中でこういうものが先にあるんだというようなものを、どんどん民間、また先生方も含めて日本国内でそういうふうな目標を付けていくということが重要なのではないのかなと、そんなふうに考える次第でございます。
  179. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 ちょっと金融政策とは離れますが、まだ少し時間がありますので、最後に一問、高橋参考人にお尋ねいたします。  参議院選挙の結果を受けまして、結果もあり、今与党ではあるいは国会ではいろいろな課題について活発な議論をしておりますけれども、その中には歳出増を伴う課題が多いわけですね。公共投資もそうですし、あるいは農業政策、あるいは社会保障政策の見直し等々活発にやっております。もちろん財政再建ということはもう大事ですし、これを外してはならないわけですけれども、ただ、そこで決めた何年までにどうするとか、そういうそのこと自体が何か金科玉条的なものではないというふうに私は思いますし、財政再建はできたけれども国民生活が疲弊してしまったというのであれば本末転倒でありますから、そういう意味では様々な議論をしているんですけれども、こういう国会あるいは与党での議論について参考人はどう感想を、感想といいますか、どのような意見をお持ちでしょうか。
  180. 高橋進

    参考人(高橋進君) 金科玉条ではないとは思いますけれども、しかし私は、一度決めたことを守るというのは政府財政規律に対するスタンスを表すものだと思いますので、それが安易に崩れるようなことがあればマーケットの信頼は崩れるというふうに思います。したがって、一度決めたことは守る最大限の努力をするべきだと思います。さはさりながら、おっしゃるような歳出増の圧力というのはあると思います。  したがいまして、まずは、やはり歳出改革あるいは行革を更に進めて、必要な財源を捻出して新たな分野に振り向けていくという歳出改革、行革を徹底的にやるべきではないかというふうに思います。そのプロセスを経ながら、同時に、社会保障のようにどう見ても歳出が増えていかざるを得ないものについて、国民に対してどういう選択肢を求めていくかという議論になるのではないかなというふうに考えております。
  181. 荒木清寛

    ○荒木清寛君 終わります。
  182. 峰崎直樹

    委員長峰崎直樹君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。当委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時三十九分散会