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参考人(
清澤研道君) 私は、
昭和四十二年に信州大学の医学部を卒業しまして、以後、
B型肝炎あるいは当時は非A非
B型肝炎という
ウイルス肝炎を研究あるいは診療してきた者です。その間、非A非
B型肝炎というのは
がんになるんだというようなことも論文に発表してきました。
お手元にあります肝
がん白書というのは、
平成十一年に私ども
日本肝臓学会で発行したものであります。この背景には、
昭和五十年以後、それまでは年間一万人以内の肝
がん死亡者というのがどんどんと増えてきて、現在では三万人を超えております。そういうように、
昭和五十年を契機に肝
がん患者がどんどん増えてきていったということがありまして、その後、この非A非
B型肝炎というのは
C型肝炎であるということが分かってきたというんで、これはもう
C型肝炎をやはりちゃんと
治療することが肝
がんを
予防する一番の道ではないかというような
観点から、この肝
がん白書というのを作りました。
当時、私、そこの二ページ目にありますように、いろんな章を担当しまして、
最後に肝
がんを減少させるための提言ということをまとめて書いてあります。その表の八の一というのがそうなんですが、これは当時、
平成十一年の四月に
記者クラブで私、
説明をさせていただきまして、以後、
社会にもじわじわと浸透してきて
厚労省等の政策にも反映されたものと思っております。
そこの表の八の一にはどういうことが書いてあるかというと、とにかくゼロ次
予防、とにかく一般的には、まず
予防が大事だと、
啓発活動をしましょうということと、それから、もう四十歳以上の方は一度でいいから
C型肝炎とか
B型肝炎の
ウイルスの
検査をしましょうということを提言しました。それから、過去に輸血のある人、あるいはフィブリノジェン、いろんなそういうリスクのある方にはやはり
検査をしましょうということを提言しました。
それから次に、一次
予防としては
ワクチンの開発ということ、これ
B型肝炎は
ワクチンできましたが、C型は残念ながらいまだに
ワクチンができておりません。
それから、一・五次
予防、これも非常に力を入れたところなんですね。これは要するに、現在
C型肝炎に
感染している方を
治療して
がんにさせないようにするんだということをここでは強調してあります。当時はまだ
インターフェロン治療というのがいい
余り薬ではないというようなことから十分な
治療効果が上がっておりませんでした。最近ようやく
ウイルスの遺伝子型1の高
ウイルス量というような方でも、当時は一〇%以下でしたが、最近では五〇%近くまで
治療効果が上がってきたというようなこと、あるいはそれ以外の2型とか
ウイルスの低い人は八〇%以上の
治療効果があるというように非常に進歩してきております。
二次
予防としては、
がんになった人を早く見付けて早く
治療しましょうとか、あるいは末期の
肝硬変には肝移植も
保険適用でやりましょうというようなことで、大体その当時提言したことは、今考えてみますと結構今の
医療にもう反映されているというように
思いますが、しかしまだまだ不十分です。
それで、一番
最後の方に
検診の結果が書いてありますが、これは、
平成十四年から十八年の五年間に
節目検診あるいは
節目外検診として四十歳以上の方に五歳間隔で
健康診断のときに
ウイルスマーカーを測りましょうということで、これ国を挙げてやったんですね。その結果がそこに書いてあります。結果として、これは
厚労省のホームページに出ていますが、この五年間に
C型肝炎が約九万九千人、それから
B型肝炎が十万一千人の方が
陽性者と判定されております。
ところが、
問題点としましてはどういうことがあるかというと、その
検診を受ける方が何と四〇%に満たないんですね。残りの六〇%以上の方はまだ
検査を受けておりません。これは問題ですね。それからもう
一つは、せっかく見付かったのに、その
方々がその後どういう
治療を受けられているかという情報が全く分かっておりません。せっかくそこまでやったのに、そういうような不備なところが結果としてあるということが分かってきました。
これは、
一つの問題は、国がお金を出すというところと自治体がお金を出すというところが一対一くらいになっていると思うんですが、自治体によってはそういった費用は捻出できないというようなことから
検査してないということもあると
思います。それから、健康保険という、会社勤めの
方々がそういった
検査はされていないというようなことがあるというように今は考えています。
さて、今回の
救済法、これは今までフィブリノジェン等で
感染された
C型肝炎の
方々の非常に心労を思うと、非常に私は画期的なことだというように
思います。与党、野党の国会
議員の
先生方に深甚なる謝意を表したいというように
思いますし、
患者さん共々、私ども医師も喜びたいというように思っておりますが、先ほど
山口参考人の方からお話がありましたように、これ認定方法がどういう手順で行われるかというところで、
カルテにちゃんとそういう記載がないと駄目だということのようなんですが、これは私ども現場にいますと結構そういう相談を受けます。私はお産のときに出血して
治療を受けて、その後肝臓が悪くなったとか、そういうようなことがあるんだけれども、残念ながら
カルテがないんですというようなことなんですが、そこを例えば母子手帳にそういった記載があるかとか、あるいは当時の先ほどのリストの中に、その
病院ではそういう薬剤が使われていたとか、あるいはまだドクターが生存中だったら、そういうドクターの証言があるというようなことがあれば、必ずしも
カルテがどうのこうのというんじゃなくて、やはりそこのところは考えてあげていいんじゃないかなというように私は考えております。
それからもう一点、キャリアの方が、キャリアといいますか、十年以内に病状が進行した場合はこれは再び評価するという記載がありますが、例えばキャリアの場合、キャリアというのは非常に誤解があるんですが、肝機能が正常だと、例えばAST、ALT、昔ふうに言えばGOTとかGPTという酵素が正常という概念が実は今と昔と非常に変わっておりまして、非常に現在では厳密になっています。これは機関によっては四十五以下というような基準を取っているところもありますが、現在では三十あるいは三十五以下と厳密に取っておりますし、そういう方が十年ずっと正常でも、その後十五年、二十年して
病気が出てくるということは幾らでもあるんですね。
特に、今回、母児
感染のこと、こういった
方々から生まれた赤ちゃんが、
子供さんがどうなっているかというと、もし
C型肝炎にかかっているとすれば、今その
方々は多分二十歳代とか三十歳代、それが十年たったら四十とか五十です。だけれども、
C型肝炎というのは六十とか七十で
病気が出てくるということは幾らでもあるんですね。ですから、この十年というのが妥当なのかどうかということは私はちょっと疑問に思っております。
あと、今度は
救済法じゃなくて、いわゆる
医療費補助の面ですが、非常にいい方向には向かっていると
思いますが、まだまだ
問題点がないわけではないと。例えば、非常にお薬は高いですね。一万とか二万とか三万とか五万とかという上限も設けられていますが、その辺が本当に妥当なのかどうかということはもう一度考えていただければ有り難いし、国が一、地方が一というのも、これは地方自治体にとっては非常に負担だと私は
思います。ですから、その辺も国が積極的に負担をするような方向で是非まとめていただきたいなというように思っております。
それからもう
一つは、
C型肝炎に
インターフェロン治療は確かにいいんですが、残念ながら効かないということなんですね。こういう
人たちをどうするかという問題があります。そこの
方々の支援も手厚く考えていただきたいというように
思います。
それから、
B型肝炎のことが多少私は手薄じゃないかなと。私が最近言っているのは、
B型肝炎の逆襲ということを言っているんですね。
B型肝炎というのは結構難しい
病気なんですね。キャリアの数からすると
B型肝炎の方が多いんです。
C型肝炎はこれから減るかもしれませんが、B型はそんなに減ってきません。最近、母児
感染ブロックがやられていますので長い目で見ればいいんですが、二十歳以上の日本人を見ると、
B型肝炎は
C型肝炎より多い。これが非常に問題なんですね。そこのところは私はやはり
B型肝炎についても考えていただきたいというように思っております。
まとめますが、こういった
医療になったということは、日本の戦後といいますか、私流に言えば、未成熟な
医療というものがやはり日本にはあったんじゃないかと。保険
医療というのは非常に浸透していい制度なんですが、中身での、現場での未成熟な
医療ということが、やはりまだまだ日本は遅れていますし、先進国の中ではこの
C型肝炎というのはもうトップの
病気なんですね。これは非常に考えなきゃいけないことです。
最近、心臓カテーテル
検査で
C型肝炎が流行したと、院内
感染したということがありました。あれは使い捨ての道具をずっと使っていたということに欠陥がある。ところが、そういう器具を今の保険では面倒を見ていないんです。これは
病院が持ち出しでやっているんですね。そういうところもちゃんと保険で認めるということがこれ大事なんですね。これが私が言う未成熟な
医療というところの
一つの表れです。
以上、ちょっとオーバーしました。済みません。終わります。